運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-04-23 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十三日(火曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————   委員異動 四月二十二日委員小滝彬辞任につ き、その補欠として西岡ハル君を議長 において指名した。 本日委員坂本昭君及び久保等辞任に つき、その補欠として高田なほ子君及 び藤原道子君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            高野 一夫君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            西岡 ハル君            片岡 文重君            久保  等君            高田なほ子君            藤田藤太郎君            藤原 道子君            山下 義信君   政府委員    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君   参考人    評  論  家 阿部真之助君    東京旅館組合連    合会会長    小林  毅君    上野旅館従業員    組合執行委員  酒井 義雄君    鳩森小学校長  吉川 芳次君    売春対策国民協    議会国会対策委    員長      本多シズエ君    日本経済新聞論    説委員     神田 道徳君    東京都カフエー    料理組合連合会    会長      鈴木  明君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○旅館業法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。委員異動を報告いたします。四月二十二日付をもって、小滝彬君が辞任し、その補欠として、西岡ハル君が選任されました。次いで、四月二十三日付をもって、坂本昭君が辞任され、その後任として、高田なほ子君が選任されました。
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 旅館業法の一部を改正する法律案を議題といたします。本日は、本案審査上の参考に資するため、参考人各位の御出席をお願いいたしまして、各界の貴重なる御意見を拝聴いたすこととなっております。この際、一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には、お忙しいところ出席をいただきまして、まことにありがとうございました。これからそれぞれのお立場から御意見を拝聴いたしたいと存ずるのでありますが、時間の関係もございますので、お一人二十分程度で御意見を御発表願いたいと存ずる次第でございます。短時間でございますので、意を尽すことが困難かと存ぜられる次第でございますが、一つよろしく御意見の御発表について、御配意をお願いしたいと思う次第でございます。また、関連事項等についての御意見がございましたならば、あわせて御発表をお願いいたします。次に、委員の方にお諮りいたします。議事の都合上、午前中予定いたしました三人の参考人の御意見発表が済みましてから御質疑を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。それでは、参考人方々から御意見の御発表をお願いいたします。まず最初評論家阿部真之助君にお願いいたします。
  5. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) 私は、旅館というようなことには何も知識がないもので、多分最近問題になった、何と言いますか、温泉旅館関連してこういうふうな問題が出てきたことだろうと思う。お配りになったこの「改正要点」というものを拝見しますと、幾つかの要項があるようですが、私は、一番問題になる点は、第一の「善良風俗が害されることがないように必要な規制を加え得るよう法目的を改めること。」というこの一項目が一番重要な点だろうと考えておる。第一、この「善良風俗が害されることがないよう」という、この善良風俗ということは一体どういうことだろうと。いうことは、これははなはだばくとしてどうもわからない。人によってまあいろいろお考えはあることだろうと思うが、人によって主観的にきめられるということで取り締ろうということは、一体非常に危険があるんじゃないかと、こう思うんです。多分、この場合においては、警察官取締りということになって、警察官認定によってあるいはこの善良風俗が害されるか害されないかということをきめられるだろうと思う。つまり、言えば、警察官良識にわれわれが信頼しなきゃならぬということなのですが、現在の警察官は、私は皆悪いとは言いませんが、安心して警察官認定によって取締りを受けるということはできるかどうかという点なんです。自然、この法律が行われるようになれば、旅館に対してかつてあったような臨検というようなことが行われるようになりはしないか。これは、われわれが関係しておる文筆の方から言うと、ちょうど検閲というものに当ることだろうと思う。何か旅館の中に風俗を害するようなことはないかという、そういう予見のもとに臨検が行われるというようなことがあると、善良宿泊者は安心して旅館に泊ることはできないということになりはしないか。同時に、これは、ひどい人権じゅうりんというような事実が起る可能性が十分ある。一体、男女が旅館に宿泊するということが善良風俗を害することであるかどうか。場合によると、夫婦でも、どうも家の都合旅館に宿泊しなきゃならぬようなことがある。そういうものが善良風俗を害するという、そういう認定のもとにしばしば臨検を受けるということになったならば、現在のいわゆる民主主義の自由、人権というような原則というものは全く破壊されてしまうおそれが多分にある。だから、一体善良風俗ということは、むろんわれわれは言葉自体に対して反対する理由一つもないのですが、一体これは具体的には何をさしていることかということがはっきりしていないというと、これは人権じゅうりんということになるおそれが多分にあるように私には考えられる。かつての検閲制度あるいは臨検というようなことも、そういうりっぱな目的、りっぱな名目によって人権じゅうりんが行われてきた。今度といえども旅館業取締り風俗取締りというものを導入した場合において、決して危険が起きないということは私は言えないことだろうと思う。もしも、善良社会の秩序を守り、風紀を守るという、そういう必要があるというのならば、この立法に当ってもこういう危険がないという、それだけの十分の法的措置を講ぜらるべきものだろうと思うのですが、この法案をざっと拝見しますというと、これらに対する用意というものは少しも認められていないということなんです。ただもう警察官良識にまかして風俗取締りをやる、それだけのことだと、ずいぶんこれは私たち安心しておられない事態が起るだろうと思うのであります。だからこの点に対しては十分私は御考慮を願いたいと思う。多分こういうふうなずいぶんきびしい風俗立法であると私は思うが、こういうきびしい立法考え出されたのは、前に申し上げた鳩森事件というものが動機になったと思うのであります。どうも学校近所にああいう温泉旅館が並んでいるということは子供教育上思わしくないという、そういうふうなことだろうと思う。いま一つは、同時にまた、こういうことが心配されていたことだろうと思うのです。やがて売春法というものが実行され、そうしてこれらの業者が転業する場合には、大部分旅館というような名目でもって、また、あの辺にたくさん店を開くようになる、こういうものを前もってそういうことができないように立法的措置を講じてやった方がいいんじゃないか、こういうふうなお考えがこういう法律ができた動機だろうと、これは私の想像なんですが、しているのです。かりに、これらの業者旅館の名義において、結局は売春的なそういう場を提供するということがあったとしても、そこまで家の中へ立ち入って厳重な措置を講ずるということが適当であるかどうかということも、これは一つの問題だろうと思う。そこまで売春行為というものを徹底的に追い詰めてしまうと、これらの売春婦たちの行く場所はもう非常な険悪な状態になるだろう。つまり自分たちの安全を保護するためには、ギャングのような一つの組織を持つ、そういうものをうしろだてにして、自分たち営業というと語弊がありますが、業務を営まなければならぬという、そういう考えに陥ってくるだろう。私ども売春禁止というあの法律そのものは認めざるを得ない。いやしくも国家がああいう売春というような恥ずべき行為を公然と認めて、しかもその業者から税金を取り立てるというようなことは、私は国辱だろうと思うから、それは国の道徳上そういうものは禁止すべきものだろう、国家が認めないという立場はとるべきだろうと思うのです。しかしながら、売春という事実は、私をして言わしむれば、人間悪とでもいいますか、人間の本性から起った一つの悪なので、これを法律でもってどんなに追及しようと、私は絶滅することができるものではないだろうと思う。そのためにかつて、古今東西と私はいってもいいだろうと思うのですが、この売春立法というものはかって成功したためしがない、今後といえども私は売春立法というものが成功して、りっぱな成果をあげるということは期待できないだろうと思う。ただ現在において売春法の主要なる問題点となるのは、売春婦一つの奴隷的に雇い入れて搾取する、こういう業者があるということなんで、こういうものは私は絶対に絶滅すべきものであろうと思うが、売春婦そのものの居場所を徹底的に追いまくってしまう、そしてそれらのうしろだて、再びギャングのような暴力団のようなものの陰に隠れるようなところに追い込んでしまうということはかえって危険だと思う。それらも退治してしまえばいいじゃないかといえばそれまでですが、現に暴力団狩り、愚連隊狩りというようなことを警察は総力をあげてやっているけれども、事実はまあ私をして言わしむればほとんど効果がない、あとからあとから暴力団というものははびこつておる。それらを売春婦たちうしろだてにするようなことになったら、これは大へん重大な問題だろうと思います。この間パリから私の友人が帰ってきましてあちらの様子を聞いたのですが、フランスでも売春立法ができて売春が禁じられ、公娼を認めないということになっておるそうですが、実態は従来とあまり変っていない、売春婦たちはやはり町に出てお客さんを誘っておる。それで旅館もしくは自分のアパートにお客さんを連れ込むというような形は少しも変っていない、ただ業者を取り締っておるということなんだそうですが、あまりどうも売春なんか、近ごろはざる法とか何とかいって……水も漏らさないように、一人残らず売春婦をなくすというような非常に潔癖な考え方が一部では行われておるようですが、これは私は理屈をいえばそうあって望ましいというだけのことで、売春に関する人間悪に根ざす非常に根深いそういうものを、一時にそういうことをしようと思うとかえってその反動が強い、かえって逆効果一になってほかの害毒が起ってこようと思うので、あまり強い取締りというような方法でこの問題を解決しようというのはあまり気短かに過ぎることだろうと思う。これと旅館業法とどういう関連があるか知りませんが、そういう心持が今度の旅館業法改正に間接にもしくは直接に働いておるのじゃないだろうかと思う。そうだとすると、こういう心持は改めなければならぬことだろうと思うのです。  ついでに第二点なんですが、学校環境をよくするために百メートル云々ということなんですが、なるほどどうも学校近所に怪しげな家があるということは教育上好ましくないという亡とは当然な話ですが、一体これはこれまでの規則をこしらえて、もう旅館はきれいなものだということになれば、旅館そのもの学校そばにあって何が悪いか。これはおそらく学校そばにそういう淫売窟があるということを予定しての問題だろうと思うのです。そらなると、そのものと一般善良な純粋な旅館業を一緒にしてしまって、旅館業は全部学校そばに置いちゃならぬというような形になると、ずいぶんこれはおかしなことになりはしないか。私は旅館だのホテルだのは決していまわしいもの、非教育的なものじゃなくして、人間社会には必要なものだろうと思う。それがなぜ学校そば、百メートル以外に追放されなければならぬか、私には理解できないことなんで、多分これは淫売窟というものの存在を予定されての立法だろうと思う。また、教育的立場から考えてみても、一体学校近所だけきれいならば、自分の住んでおる隣のうちに淫売窟があってもそれは教育的に一向差しつかえないかどうかということも考えられなければならぬと思う。そういう淫売窟なんというものは一体どこにあっても悪いことだろう。それはだから事実淫売窟というふうなものでなくても、そういうふうな行為が行われておる場はどこかにあるはずで、これはどらも人間である限りやむを得ないことなんで、あまり目立たない、そういうことでわれわれは当分しんぼうしなければならぬ。そうなると、一体風紀取締りなんかというものを旅館に持ち込むことは適当であるかどうかはまた考えなければならないので、第二の施設構造設備及び施設利用方法基準という程度で、風紀取締りまで警察官が立ち入るということはよほどお考えになる必要があるんじゃないか、かように私は考えておるのであります。  なお、お尋ねがありましたならば、私の考えを補足いたしたいと思います。この程度で……。
  6. 千葉信

    委員長千葉信君) 御苦労さんでした。
  7. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に、東京旅館組合連合会会長小林毅君にお願いいたします。
  8. 小林毅

    参考人小林毅君) 本日は私ども旅館業者のために、旅館業法改正について、一部の業者意見をお聞き下さることにつきまして、そういうような機会を与えていただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  いろいろ今度の改正案を拝見いたしまして、一応今の私ども業態がいろいろな形を持っておりますときに、こういうような業法改正をしていただくということは、ある程度業界を健全化するためにはやむを得ないのじゃないかという点はよくわかりますし、同時に、売春防止法が実施された暁においては、当然ある程度業法のそれに伴う改正が必要であるということは、私ども平素考えておったところでございますが、今度こういうような改正案を出していただきまして、大体お尋ねをいただいておりますこの改正案の方針のうちの(1)につきましては、私ども旅館業者が、旅館業本来の趣旨に反したような利用の仕方が現在世間一般相当に行われておりますので、こういうように旅館を悪い意味利用していただかないように、善良風俗が害されないような規制を加えていただくということは、これはある程度やむを得ないかと考えております。それですから(1)の点については、ある程度はやむを得ないものである。それから(2)の点でございますけれども施設構造設備及び施設利用方法基準政令で定める、この施設利用方法基準政令で定めるということは、その利用方法基準内容いかんでこれは非常に問題があるんじゃないかと思っております。それから施設構造設備でございますけれども、現在私ども東京都内では、旅館客室数基準は七部屋以上で、広さとしては四十二畳、客間が四十二畳以上でなければ旅館基準として許可されないということになっております。しかしながら、これを全国的に考え、また、終戦後の旅館、全国の旅館が皆大部分焼けまして、あとどうしても宿泊施設が必要であるというために、たとえ一部屋でも二部屋でもというような気持の時代に、実は三部屋以上あれば旅館として許可してもいいんじゃないかという基準ができまして、現在では三部屋、五部屋、七部屋という旅館がございます。そういう点から考えて参りますというと、部屋の数、構造設備というような点につきまして、部屋の数ということを考えた場合には、部屋の数はやはりその中をとっていただいて、大体五部屋くらいを基準として考えていただきたいと私ども考えております。それはなぜかと申しますというと、旅館業というものは、いろいろこの始めまするに非常に何と言いますか、固定資本が初めにかかりまして、そうしてまた、その割合宿泊料というものは、非常にその投下資本に対する割合というものはマッチしておりませんので、どちらかと申しますというと、あまり割に合わないような営業形態でございます。それですからあまり部屋数が少いと自然とある程度まで、何か投下資本に対する元を取り戻すというような考えから参りますというと、ある程度部屋の数というものがなければ、自然と何か旅館の本来の利用の仕方と違った方向でもって旅館利用して、そうしてその償いをするというようなことが考えられますので、しばしばこの点につきましては、現在でもそういうことが行われているのでございまして、旅館交通機関補助機関として公けの機関でございますから、これはやはり主として旅行者を泊めるというのが旅館の本来の目的だと私ども考えております。まあその他のいろいろな利用方法があっても、少くとも旅館というものの本来の営業形態というものは人を泊めるのだということになっておりますので、それ以外の利用方法にやたらこれが利用されますというと、旅館というものの本来の性格を失ってしまう結果、どうも旅館に対する社会的の批判は非常に悪くなりまして、終戦後、特に旅館子供学校へ入れるなというような学校があったというようなことを聞いておりまして、非常に私どもは遺憾にたえなく感じているところでございます。そういう関係がございますので、あまり部屋数の少いものをやたら旅館として許可していただくということは、結局業界悪評を、社会的な悪評を買う原因になりがちでございますので、まあ最低部屋ぐらいに部屋数をきめるような場合にはきめていただきたいと考えております。それからその部屋の広さでございますけれども、これも構造設備の中に入るのだろうと思いますが、普通大がいは六畳以上でございますけれども東京、大阪というような大都市になりますと、土地の関係が非常に窮屈になっておりまして、坪三十万、五十万、百万だと言われるような場所で、そういうようなやたら広い部屋を作るということは困難でございますので、部屋の広さとしては、従来昔から考えておりまする四畳半ぐらいのものが、旅館客間としては最低の大きさであるというようなことを一つ考えをいただきたいと考えております。それからこの施設利用方法基準内容でございますけれども、その基準内容がどういうふうに政令でおきめを願うかしれませんが、このきめ方いかんによっては、非常に私ども旅館業者営業が窮屈になりますばかりでなく、実際に営業しておりまして、この他の業法の中に、無断に、理由なくお客さんを断わってはいけないというような規定もございますので、    〔委員長退席理事山木經勝君着席〕 そういう規定と非常に——一方においては、やたらお客さんを断わってはいけない、それから一方においては、泊めてはいけないというようなことをやたら厳重にきめられてしまいますと、私ども業者は泊めていいのだか、泊めて悪いのだかわからないというようなことになりますので、その辺のこともお考え下さいまして、旅館が悪い意味利用されない程度利用方法基準をおきめを願いたいと考えております。それからこの(3)の点でございますけれども、(3)は一応営業許可が取り消されたような場合には、三年間ぐらいは許可しないというようなことは、こういうことはある程度やむを得ないのじゃないかと考えております。それからその次は(4)の点でございますけれども、ただいまお隣りの阿部先生からだいぶお話がございました通り、私ども旅館学校そばにあっていけないというようなことはどういうわけだろう、非常に不審に考えるのでございまして、こういうような規定を実際旅館業法の中に盛り込まれるということは、私ども業界としては非常に何と言いますか、遺憾に感ずるところでございまして、旅館業者そのものというものは、初めから何か風紀を乱すような業態だということを頭においてのこういうような規定らしく見えますので、この規定をよく見ますというと、周囲の環境が清純さを失われなければいいのだというようにとれますけれども、少くとも、こういうような規定を設けられるということは、私ども旅館業者としては、はなはだ遺憾でございまして、もしそういうような風紀を乱すような行為のある旅館業者だというようにとられましたならば、最初から旅館業者として許可を与えていただかなければいいのでございまして、こういうような場所的な制限を設けていただくということにつきましては、私どもは、できればこういうものははずしていただきたいと考えております。それからその他(5)もこの程度はやむを得ないと考えております。(6)は当然の点にからんでおりますの。で、同様にお考えを願いたいと思います。それから(7)でございますけれども、やはりこの経過規定を設けていただきまして、現在申し上げました通り、まだ三部屋、四部屋というような小さい旅館もたくさんございますので、この経過規定を設けていただきまして、その間に新しい旅館業法基準に合うような設備に変えるように猶予をいただくという点から考えまして、この(7)の経過規定をぜひ設けていただきたいと考えております。なおこれは先生方には十分御承知だと思いますが、現在の旅館あり方と申しますというと、実際には現状におきましてはいろいろなあり方がございまして、都市旅館と、温泉地観光地旅館と、それから都市旅館の中でも施設の大きい旅館になりますというと、当然料理兼業というような形になっておりまして、旅館業態そのものが、かなり利用される方々からいろいろな方法利用されておりますので、そういうような非常に私ども旅館業者過渡期に追い込まれておるということは、戦時中に実は料理はぜいたくである、ぜいたくであるから料理屋は全部やめてしまえ、それで料理屋旅館に転向するなら認めてやろう、こういうことがございまして、料理屋さんが全部一応旅館に転向したことがございます。そのときに旅館に転向しまして、実際に料理屋さんはそれでは旅館をやったかと申しますと、大多数の転向した料理屋さんは、どちらかというと、旅館の名において料理屋をやっておったというようなことが今日に残って参りまして、地方などに参りますと、相当施設をした旅館は、大がい料理兼業の現在形で残っておるわけでございます。それから温泉地旅館におきましては御承知通り、これはいろいろ兼ねたような形で存在しております。もちろん温泉地旅館はこの都市旅館のいわゆる、いろいろな何と言いますか、用事のために旅行する方の宿泊施設とは違って、大体遊びのために温泉地に参る、観光地に参るということになりますので、旅館営業実態が当然いろいろな変化を、違った形をもってくるというのは、これもある程度現在の社会においてはやむを得ないのではないかと考えておりますので、非常にこういうような旅館業者営業実態というものがいろいろであるということは、この業者規制するところの旅館業法をきめることが、作ることが、いかにむずかしいかということになりますので、それらの点をお考えいただきまして、あまり現在の旅館業態実態に、何と言いますか、そぐわないような規定にならないように、一つ風俗営業、もちろん旅館において悪い意味での風俗面においての利用方法をなくすような施設にしていただきたいということを、作っていただくということはけっこうでございますが、そのためにあまりに厳重に過ぎるというようなことの一つないように御考慮をいただきたいと考えております。私が申し上げることは以上でございますが、何なりまた、後ほどお尋ねがございましたら、お答え申し上げます。
  9. 山本經勝

    理事(山本經勝君) 御苦労様でした。
  10. 山本經勝

    理事(山本經勝君) 次に酒井義雄君。
  11. 酒井義雄

    参考人(酒井義雄君) 上野旅館従業員組合の執行委員でありまして、並びに全国旅館従業員組合連絡会議の議長をやっております酒井義雄でございます。私たちの立場から、この席で意見を述べさしていただくということになりましたことについては、全国の旅館従業員全員にかわりまして厚く御礼を申し上げます。業法の一部を改正する法律案のこの御趣意に対しては大へんにけっこうなことだと思いますが、私たちの立場から一つ一つ簡単に意見を言わしていただきたいと思います。この旅館業法というものが、まるで業そのものが世間のいわゆる善良なる風俗を非常に逸脱したものであるというふうなお考えがあるとすれば、本質から違うと思います。健全なる旅館営業は、学校の玄関の前にあっても決しておかしいものでない。また、全国の大多数の旅館はそういうふうな営業を日々やっておるわけでございます。ある特定の例があったからといって、その特殊な例に基いて、善良なる旅館が不必要な規制を加えられるというようなことがあったとするならば大へんな問題だろうと考えます。なお、この改正のいわゆる目的と言いますか、要するに、一般の大衆に気持よく旅館施設利用させるというふうなところに観点があるというふうに考えられますが、この法案全体をながめまして、外の形と言いますか、旅館施設であるとか、利用方法であるとかいうふうな点から、非常にいわゆる旅館そのもの規制を加えるというふうなお考えのようですが、この旅館利用しているのは、いわゆる国民全般であるというふうな観点もお忘れなく、旅館のみを責めるというようなことがあっては、多少ピントがはずれるというふうに思います。なお旅館には、これは女中にしろ、番頭にしろ、従業員はつきものでございまして、主人一人がいかにさか立ちしようとも、十数室、二十数室のお客の接待はできないのであります。従って、この快適な旅客の宿泊をさせるということについて、この法案が従業員の内容、あるいは実際の実態というふうなことについて全然配慮がなされてないように思うのです。そういう点私たちとしては非常に不満でございます。現在の私たちの労働条件というふうな観点から考えますならば、法の主目的とする快適な宿泊をさせるとか、あるいは一般旅客に対して十二分にサービスをするということにはほど遠いのであります。と申しますと、要するに、現在の労働基準法というものは、私たち従業員の現在の労働条件からいけば労働基準法は行方不明でございます。こういう点を本質から改めなければ、私たちはいわゆる安定した生活、いわゆる生活の安定というものから発するところの、ほんとうに明るい、真心込めたサービスというものは望めないというふうに考える次第でございます。たとえて申しますならば、いわゆる勤務する以上、一定の生活保障給というものが当然あってしかるべきだと考えますが、私たちの給与の実態は旅客からいただくチップであるとか、あるいはつけ出しの奉仕料だとかいうような実に不安定な収入に依存をしておる現状でございます。まあ理解のある旅館主は固定給を支払っておるといっても、それは非常に申しわけ程度の微々たるものであって、まあちょいとぜいたくな子供が一カ月間に使う小づかい程度のものしか固定給としてはもらっておらぬのであります。なお、時間的関係に言いましても、非常に旅館従業員の勤務は長時間でありまして、肉体的の疲労というものも大へんなものでございます。あるいは休息設備、大体旅館の従業員はその店に寝泊りをしておりますけれども、その設備が非常によろしくないということも全国共通の現象です。    〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕 いわゆる旅客を泊める部屋の方にばかり経営者は、旅館主は気を取られて、従業員のいわゆる休息安眠というふうな観点は抜けております。さらにまた、旅館営業上必要な消耗品、たとえば石けんであるとか、タオルであるとかいうふうなものがいわゆる女中の負担になっておる。不安定なチップの配分の中からこれらの費用を負担しなければならない、こういうふうな実態であります。さらにまた、旅客の宿泊料が貸し倒れになったような場合、その負担を係の女中にさせるというふうな残酷な慣習が全国的にございます。まあ今申し上げましたようなことがわれわれの現実でありまして、こういうふうないわゆる現在の世間の労働常識と言いますか、常識的労働条件というものからはるかに遠い、また、完全に置き忘れられた存在にある私たちの立場が全然考慮に入らずにただ単に部屋を、あるいは学校との距離的関係を、あるいはまた、施設利用方法ということのみにとらわれた業法改正というものは、仏作って魂入れずというふうな結果になるのじゃなかろうか。なお、基準法において私たちが、いわゆる施行規則第二十七条で一時間の労働時間を余分に法律で定められてあります。私たちだけがなぜに八時間労働から一時間余分に働かされなきゃならぬのか、あるいは旅館業法という営業そのものから、その一時間の余分が必要ならば、他の条文においてそれを裏づけるだけの保障があってしかるべきだと私たちは考えます。しかるに基準法にはその観点が何もありません。なお、健康保険に至っては基準法においてわれわれにそれだけの余分な労働を与えておきながら、課しておきながら健康保険の強制適用外にしているというふうな観点に至っては、これは諸先生方の真剣な御検討を私たち全従業員こぞってお願いする次第でございます。旅館業というものがそういう観点から時間的に世間と比べてやむを得ないならば得ないなりに、従業員の保護といわゆる生活の安定、あるいは健康の保持と、あらゆる点において施策をお願いしたい、こういうふうに考えるわけでございます。そしてそういうふうな普通の条件に恵まれて初めて私たちが宿泊する旅客にいわゆる明るい真応をこめたサービスができる、それによって旅客が初めて快適な宿泊ができるというふうに考うる次第でございます。  それからこの第二番目にあります施設利用方法等の政令がわかりませんので、この内容によっては大へん問題も起きるかと思います。たとえばふろの使い方というふうなところにポイントが行って、学校の窓からふろの中がのぞけたのでは何にもならないのであります。ですから、政令の定め方というものはいわゆる旅館業実態に沿ってやっていただきたい。  それから(7)の三年間の経過規定は大へんけっこうでございますが、旅館業というものはぼろもうけのできる営業ではございません。確実な商売でしょうけれども、いわゆる外交員の腕一つで百万の売り上げが三百万も五百万もできるというふうなものではございません。あくまで部屋の数、畳数というものが営業基準になります。ですからいかに優秀な設備を誇り、いかに教育された訓練された従業員を備えてみても、さらにまた、いかに恵まれた場所旅館営業してみても、やはり収益というものは、畳数と部屋数というものに本質的な何がありますので、この経過規定で、施設のいわゆる改善しなければならないとするならば、この点もいわゆる裏づけというものに御配慮がなければ、いわゆるささやかなる旅館営業で細々と生活をしておる旅館主のしわ寄せがどこへくるか、従業員のいわゆる経費と従業員の面に支払う金銭というふうなところにまずそのしわ寄せの一端がくる。現在の営業あり方から見て私らはそう感ぜざるを得ないのであります。ですから、の施設の改善というふうなことがどの程度のものであるかはわかりませんが、経過規定というものを設けられるだけの御配慮があるならば、どうかこの裏づけというものをお忘れのないようにお願いしたい。  それから教育環境ということが大へん問題になっておりますが、これもいわゆる特定の地域における問題、それ自身の問題でございまししょうが、全体の観点というものも、これはいわゆる角をためて牛を殺すというふうなことのないように、なお、この教育環境というここにあげられてある観点からは多少離れるかもしれませんが、修学旅行とてもいわゆる教育以外のものではないはずです。修学旅行も重大なる教育一つです。この修学旅行の宿泊について、現在の実情からかんがみていわゆる小学生、中学生、高校生等の修学旅行の宿泊の実態を私たちの立場から見た場合に、これを規制する何ものもない。現在のままでいいか、決してよくございません。修学旅行がこのままあるいうふうな宿泊の状態に置かれているということは、これはこの際、今からではもうすでにおそいくらいです。これに対する宿泊の規制というものは絶対になされなければならない。ふとんの重荷でふすまがはずれるような、物置に荷物をほうり込んだような宿泊をさせておいて、どうして学生が無理なスケジュールで一日を追い回されて、翌日の見学のためにいわゆるほんとうの休養をとり、安眠ができますか。みな寝ていられないので夜中の三時、四時に起きて騒いでいるじゃありませんか。そうしてこの先生は何をしているか、PTAの父兄は何をしているか、自分らはいわゆる校長であるとか、PTAの会長の婦人であるとか、つき添いであるとかいって学生と同じ値段で泊っておきながら、一室を要求して宿泊する。校長であるから一部屋、女であるから一部屋、そしてそのしわ寄せは結局生徒の方にやってくる。そして子供はぎゅうぎゅう詰めで寝ておる。さらにまた、この衛生的面から言うならば、子供を寝せる寝具に至っては貸しふとん屋から借りてくる、あるいはその店でその寝具を十分用意している店もございましょう。けれども、その寝具を一斉に日光消毒をしておるという所を私見たことがございません。さらにまた、敷布、まくらカバー、あらゆるこまかい点について、一年に二百万近い学生の修学旅行が何日も泊るその旅館の宿泊の実態について、そういうこまかい点まで配慮されなければ、この修学旅行の教育目的というものは十分に達せられないのじゃなかろうか、現在のままでは断じてならぬと思います。  それから風紀問題その他の例でございますが、かりに、売春防止法の問題その他にからんで、売春のいわゆる場所提供の観点で警察が旅館主に必要な措置をするというふうなときに、係り女中なるがゆえに、同時に検挙されて、五日間も留置されるというふうな事例がすでにございます。従業員に何の責任がありますか。自分の与えられた主人に対する当然の勤めをしておる従業員が、いわゆるねらった星が入ったからというふうなことで、経営者ともども検挙されて五日間も留置場にぶち込まれる、こういうのが現在の実態なんです。だから規制を加えるのもけっこう、あるいは取締り方法を定められるのもけっこう。けれども、世の中はなかなか諸先生方がお考えになっている通りには現実は動いていかないのです。そういう点も十分御配慮いただいて、私たちがこういう情ない状態で働いておりながらなおかつ、そういう過酷な目にあうということのないように一つよろしくお願いしたいと思います。  それからさらに旅館の、いわゆる売春防止法が完全施行された後における旅館のそういうふうな横すべりといいますか、いわゆる旅館実態が現在の吉原のわけのわからないような存在になるのじゃないかというふうな観点も多分にあるようですが、まあ私らに言わせれば、家には家風がある通り旅館にも、いかに小さな旅館にでも旅館の主人には主人の見識がございます。また、その旅館主の見識に基いて全国の五万数千軒の旅館は長年にわたって正常なる、純粋なるいわゆる旅館営業をしてきておるのでございます。今後不純なものが新たにできることは知りません。けれども、現在いわゆるまじめな営業をしておる旅館主がそういうふうな単なる世間の心配の通りに、たとえば上野の旅館街に吉原が引っ越してしまったというふうな事態は絶対に起らない。不心得な旅館主が、現在の法の盲点をくぐってやっておるような事例も聞いてはおります。それはそれで例外でありまして、全体は絶対に違う。いわゆる旅館主には旅館主の見識がある。見識によって一つ営業をしておる。また、女中には女中のプライドがあります。この女中の仕事というものもふまじめな者、努力をしない者にはとうてい勤まらない仕事なんです。また、その旅客を扱うという旅館女中には旅館女中のいわゆる見識もございまして、そんなに皆さんが御心配になるほど悪いものじゃないのです。そういう点もかねがねお考えの中につけ加えていただきまして、将来の心配のあまり、将来の無理な予想のあまり、現在のいわゆる善良なる旅館に不必要な規制を、不必要な必要以上の制限を加えるために警察の干渉を受ける、保健所の役人がのさばる、そして旅館主も泣く、従業員が泣くというような、こんなふうにならないように十二分な御配慮をお願いしたいと思います。  御質問がありましたら、あとでいかようでもお答えさしていただきます。一応私の話をこれで終らしていただきます。
  12. 千葉信

    委員長千葉信君) 御苦労さんでした。  それではただいままで御意見をお述べ願いました参考人方々に対して、御質疑のおありの方は順次発言願います。
  13. 山本經勝

    ○山本經勝君 東京旅館組合連合会の会長さん、小林さんにお伺いしたいのですが、今、酒井参考人のお話を伺っておりますというと、何と言いますか、従業員の方々、女中さんやあるいは番頭さん、その他雑役の方々もおいでかと思うが、いずれにせよ、雇い入れられた従業員はこの旅館組合連合会傘下でどのくらいの人数になるのですか、あらましでいいんですが、おわかりでしたらお聞かせを願いたい。
  14. 小林毅

    参考人小林毅君) 全国で現在業者の数が大体五万八千軒くらいだと思います。そうしますと、まあ一軒平均ということはできませんけれども、やはり平均いたしましたならば、従業員の数は四、五人じゃないかと思います。そうすれば二十万から二十五、六万、三十万の間ではないか、はっきりした数字はございませんが……。
  15. 山本經勝

    ○山本經勝君 続いてお伺いしたいのですが、私ども聞いたところでは、女中さん、あるいはこうした旅館の従業員の皆さんの給料関係、特にどれくらいな固定給をお出しになっているか、お宅の方の組合傘下の実態でけっこうですが、御参考までに一つお聞かせ願いたい。
  16. 小林毅

    参考人小林毅君) 給料関係が非常に旅館は昔からの慣習がございまして、もちろん料理屋さんとは違いますけれども旅館は昔から大体やっておりますのはチップとか、サービス料とか、そういうものが大きな従業員の収入ということに見込んだ商売でございまして、現在でもそういう考え方で、いろいろな方法でやっております。たとえば宿泊料の一割なら一割を従業員のサービス料としてつけ出しをいたします。つけ出しをいたしまして、それを全部一応これはそこの営業会計の中へ入れまして、それをもとにして従業員の給料をきめるというような方法もございます。それから昔の通りに全然チップだとかサービス料、これをお客さんからいただく、そういうものについては旅館主が手に触れません。全然手に触れないで、従業員のもらうままにまかせてやっておりまして、旅館に住み込みでおりまして、食費だとかういうものをもちろん取らないで、ただその収入としてはそれだけでやつているような形態のところも多少ございますけれども、大体では、一応そのほかに給料を三千とか五千とかいうような工合に、月にサービス料以外に、別に経営者の方から出すというような方法で、折衷的な方法でやっているところもございます。それでございますので、大体旅館の従業員の普通の、中級の旅館の従業員の収入はどのくらいになるかということになりますというと、まあ私ども想像しておりますのには、デパートあたりに勤める婦人の人たちの収入よりもおそらくは多いんじゃないか。大体住み込みでもって、地方と都会地とはいろいろ差別がございます。もちろん非常な差別があると思うのですが、都会地あたりではある程度まで何と言いますか、少くとも一万円から二万円、三万円とか、これは旅館施設の大きさとか、設備の上下によりまして、宿泊料の上下によりまして、そういうようながいろいろ違って参っております。
  17. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますというと、つまりチップと言いますか、サービス料として別に営業会計というあれに、当然宿泊料の中に計算をして、一応何といいますか、業主の方に含めてそれを今度は従業員に給与の一部に引き当てていく、こういうことになるのですか。
  18. 小林毅

    参考人小林毅君) さようでございます。サービス料をつけ出しをいたします場合には、それを全部一応営業会計の中に、もちろん帳簿は別にしております。大がいのところでは帳簿を別に、サービス料の収入を別にいたしまして、それを月末に計算いたしまして、そしてそれをサラリ—の一部に充てるというふうな方法をとっております。
  19. 山下義信

    ○山下義信君 阿部先生にお伺いいたしたいのでありますが、最前この法案の立案について全般的に非常な貴重な御注意をいただきまして、まことに感謝にたえないのですが、御指摘のように、この旅館業法に、風俗営業取締り的な要素を持ち込みますことは非常に危険でもありますし、弊害があるわけでございまして、御指摘の通りでございます。実はその点がこの法案には欠けておるのでありまして、実はないのでありまして、それがためにつまり売春的な、風紀的な営業状態を排除しようという目的に対しましては、この法案も実はざる法的な面がありまして、一部の人たちからはそういう点が物足りないという実は指摘も受けておるような点があるのであります。しかし、先生の仰せになりますように、人権じゅうりんにならないように、また、正常な営業権が妨げられないように、また、将来風俗取締り的な、臨検的なそういう方向にいく危険のないように、われわれとしても十分検討しなくちゃならぬと考えております。私どもはこの際、この法案を審議するにつきまして、現在の日本の旅館業というもののあり方というものを、現状を十分検討いたしまして、反省すべき点は反省し、また、正常な旅館業あり方につきましても、改善すべき点があれば改善し、ただ単に現状を改善するだけでなくて、新しき様式の日本の旅館、あるいはホテルというようなものの経営形態等につきましても、積極的に指導すべきは行政当局に指導させるというふうにして、この種の比較的国民サービスと言いいますか、こういう営業の種類に向いまして、改善すべき点があれば積極的にその点も発見していきたいというような、私ども委員としては心がまえを持っているわけであります。この際、先生方はしよっちゆう旅館を御利用になりまするし、方々御旅行になりましていろいろと御経験あそばしていらっしゃると思うのであります。日本の今日の旅館営業のあじ方等につきまして、改善すべき点があるとしまするならば、旅館の種類も上下ざまざまでありますけれども、中等程度といいますか、一般庶民が利用いたしますような、正常な旅館等を標準にお取り願いまして、大体客扱いでありますとか、その旅館の経営の状態、あるいは料金、あるいは料金の受け取り方、あるいはチップでありますとか、いろいろな従来の習慣等からいたしまして、庶民が手軽くほんとうに便利よく、不安なくして、その旅館に宿泊し得られるような営業方法等々につきまして、先生の御経験から改善すべき点等がございましたならば、この際、一般の旅館の経営指針とでも申しますか、そういう意味一つ全般的に御注意をいただきましたならばありがたいと思うのでございますけれども、御所見いかがでございましょうか。
  20. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) そういう問題については、まだ突然の御質問でよく考えておりませんから、はっきりしたお答えはできないのですが、地方なんかに行ってみますと、ただいま小林さんでしたかお話のあるように、料理業と旅館業が兼業になっているところが多い。そういう点はどうも非常に私も近ごろ年をとってしまって料理の、口の方はあまり用がないのでして、全く旅館本来の方を利用しているのですが、どらも夜おそくまで歌を歌って騒ぐ、どうもそのために非常に休息ができないで迷惑するというようなことが多いのですね。できるなら、あれははっきり分けていただくと大へんいいのですが、そこにやっぱり風紀の問題なんかも関連してくるのじゃないかと思うのですが、だがこれで、温泉地とか、ああいうところじゃ、なかなかそれを分けるということはむずかしいと思うのです。ただ単に、旅館業という名前でありますが、実体はずいぶん変っているのですね。だから、一つ法律でもってワクをこしらえてしまって、それを全部に当てはめるということは、ずいぶん困難でもあるし、無理が起ってくるだろうと思う。  それからわれわれが非常に旅行して歩いて厄介だと思うことは、チップの問題なんです。これは自然従業員の収入にも関係する問題だと思うのですが、旅客として困ることは、どのくらいチップを払っていいかわからぬことがある。出し過ぎてもばかばかしいし、出さなくてもまずいというような気持がある。旅行して一番気を使うことはチップなんです。実際つまらぬことですから、実を言うとこれは私なんぞ、だから自分で自発的に旅行するようなことはめつたない。だれか世話する人がないと、そういうつまらないところで頭を使うことはリクリエーションになりません。チップばかりが悪いというわけじゃないのですが、チップというものは実に厄介な問題だと思う。たとえばチップを全廃というような旅館があるのですが、行われているかどうか。これは旅館ばかり悪いのじゃなしに、客の方も悪いかもしれない。古い習慣で出さなければならぬというので出すということがあるためにくずれるということがあるので、こういう問題もまた、ただ単に旅館だけを責めてもどうにもならぬということもあると思うので、何百年か何千年からやってきた旅館ということなんですが、それを今一がいに改めるということについては、改めることは大へんけっこうなんですが、一つのワクをこしらえちゃってそれに当てはめることは、いろいろな厄介なことが起るだろうと思う。しかし、あえてそれを進んでこの際改革してしまうという決意でなされるなら、それも一つの行き方だろうと思うのですが、そのためにいろいろ摩擦や混乱を起さないために、十分の御考慮を払う必要がある、かように存じておるようなわけでございます。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 阿部さんにお尋ねしたいのですが、先ほどの法目的の変更については私も非常に心配をしておる一人でありまして、当然これは善良風俗を維持するための規制を設けるということになってくれば、風俗事犯として警察が認定していろいろの立ち入りが行われるように考えられますが、こうなって参りますと、はなはだしく仰せのように、臨検制度というものが実際に行使されるようになると私は考えております。まことに、善良風俗を維持するという考え方はこれはいいのですが、行き過ぎてこざるを得ない、つまり風俗事犯であるかどうかということの認定にはどうしてもこれは警察官なりあるいは公安委員会なりが立ち入りをしてくる、こういうことを防いでいかなければならない。このためには、われわれの心配するように、よい風習を維持する、そういう気持をこの法目的に持って、しかも風俗事犯としての対象にならないような表現はないものか。たとえば社会道義の向上のために云々ということになってくれば、特に警察官がこれに立ち入って臨検制度を復活するという線だけは防げるように思うのですが、何かもっとよい適切な表現の方法はないものかどうか、阿部先生にこの点をお尋ねしたいと思います。
  22. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) 私はそこまで実は考えていないのですが、かりに道徳上の問題にしましても、どうも道徳を高めるために法律でもって規制するということは、一体道徳上の問題を法律で作るということはどうかと思うのです。やはり法律の問題にすれば、風紀の方が幾らか何ですが、ただし、その風紀を乱すということの認定が、どらも今の警察官にやらせることが完全かどうかという点が私は不安心があるのですが、どらも善良な男女が旅館に泊っただけで臨検されて、夜中に尋問を受けるなんということはこれは非常な屈辱なんですが、そういうことは私はしばしば起るだろうと思うのです。それがいかにしてそういうことがないようにやり得るかという、多分これは、この原案をこしらえた人の考え方は、この売春婦売春行為が主たる目的だろうと思うのですが、ところが売春そのものがやはりちょっと立ち入らなければ証明できないと思うのですね。ただ普通の売春婦であったもの、現にあるかもしれないが、そういう行為法律的に認めてないのですが、それが自分の好きな男と旅館に泊るということはあり得るが、売春行為をやるだろうという、そういう予感のもとに立ち入って臨検するというようなことが起きますと、やはりこれは一種の人権じゅうりんである、その証明はないのですから。現場を押えた場合に初めてそこで証明ができてくると思うのです。非常に私はむずかしいことだろうと思うのです、これは。そういうことのために、大多数の旅行客が絶えず臨検でも来はしないかという不安にさらされるという危害があるのですね。これは結局は現在の社会の現実の認識できめられることと思うのです。さような人権じゅうりんというような事実が、犠牲を払っても今の時代というものは非常にくさってしまっている、だからこの際、厳しい取締りもやむを得ないという認識ならばこれは一つの行き方だろうと思うのです。それほどじゃないという御認識だと、こういうことはどうかと思うのです。この立法の可否というものは、結局現実の認識いかんによってきめられることじゃないかと思うのです。だから私自身の個人的の考えを言えば、そこまで激しい、その人権をしばしば危害に陥れるというような危険を冒してまでもこういう立法をやる必要があるかいなかというと、まだそこまでいっていやしないのじゃないか。現在の旅館というものは、私どもは地方でもどこでも泊った経験によると、そうそこまできびしい取締りというものをやる必要はないのじゃないかと見ております。それは皆さんの御認定できめられるべきことだと思います。これは私個人だけの考え方でございます。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 なかなかむずかしい問題なので、私どもも結論が出し得ないところですが、何とかして善良風俗を維持はしたいのでありますけれども人権をじゅうりんさしたくないということのためには、この善良風俗を維持するために必要な規制を云々というのが、もっと細部にわたってきめられれば支障がないというふうにお考えになられますか。
  24. 千葉信

    委員長千葉信君) すわったままでけっこうです。
  25. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) いま少し例示的に、コンクリートに具体化した、これこれのことはいかぬというようなことがあったら、多少避けられるかもしれませんが、それはおそらくは私は、そういうことを法律化することは不可能じゃないか、むずかしいと思うのです、実際。
  26. 高田なほ子

    高田なほ子君 小林さんにお尋ねをしたいのですが、私どもはもちろん旅館を悪いものだと思っておりませんし、なければならないものだと考えておりますが、当委員会で問題になっているのは、本来の旅館業に適しないような業態のものがあるから、こういう問題が起ってくるわけですが、ただいま小林さんの属していられる旅館組合に入っている以外の旅館業者というものは、組合が結成されておるものですか。それともそういう不正なものは全然組合などは作られておらないものですか。おたくの方の組合と、いうところの不純な旅館業者との関係というものがどういうふうになっているのかということが一つ。もう一つは、中小旅館が成立していかないという場合もあり得ると思うのです、資金面の点かり。そうい与場合に、今問題になっている、売春防止法の発効前にして資金面の困難な業者に向けて、第三国人などがどんどんと買い入れの手を伸べているような情報を私どもは聞いておりすが、これは明らかに現在の旅館に、小さい、あるいは中くらいの旅館が、営業するのに困難であるというような原因があるのではないだろうかということが一つ。もう一つは、特定地域に旅館がごしゃ、ごしゃと固まっておりますが、ちょうどタバコ屋さんとか、あるいはまた切手を売る場所のように、あまりごちゃごちゃと固まらないような旅館の配置ということがあれば、そこにきびしい競争が防げて、適正な業態が営まれるのではないだろうか、これはしろうと考えでありますから、そういう点についても御意見をわずらわしたい。
  27. 小林毅

    参考人小林毅君) ただいまお尋ねをいただきました一の点でございますけれども、私ども業界は、昔、警察が指導監督をしておりました警察許可でございましたので、各全国都道府県には、ほとんど全部警察署管内でもって組合を結成いたしまして、それがまた、都道府県ごとに連合会を作りまして、そうしてその連合会の上に全国の旅館組合連合会というものができておるわけでございます。そうしてただいまお尋ねの、旅館本来の利用方法でない方法利用される業者だけが、別の組合を結成しておるかというお尋ねでございますけれども、そういうことはございません。みんな、いわゆる鳴森小学校問題でだいぶ新聞に出ました代々木、原宿組合でございましても、私たち東京旅館組合連合の会員の中に入りまして、特別にそういう業態だけが特別の組合を作っておるというところは全国的にございません。それから二のお尋ねでございますけれども旅館業利用方法が、本来の旅館業者としての営業目的よりも違った方法でもって現在は社会的にいろいろ利用されてしまったということが現実でございまして、これは旅館業者が初めから連れ込み専門の旅館をやろうとか、それから何か売春宿をやろうとかいうような考えは初めからどんな業者でもおそらくは毛頭考えておらないわけでございまして、ただ場所柄、場所的に自然と、たとえば今度問題を起しました代々木、原宿というような場所は、ちょうどあすこが新宿と渋谷の中間にありまして、明治神宮というああいう広い外苑を控えておるというような場所柄、閑静であり、便利な場所であり、利用者が非常に多くなったというために、どうも同伴の休憩のお客さんが非常に多くなったという結果、ああいう業態ができてしまったのでございますけれども、今あの地区の業者全体といたしましても、決して自分たちがああいう業態を続け、ああいうように一般の人に利用されることを決して望んではおりませんので、業者自体が何とかしてちゃんとした人を宿泊させるような商売をやりたいという気持は十分持っております。それでございますから、現在ではあすこの近くの旅館などはみんな何とかして普通の旅館利用者に利用してもらうように設備も何も明るく、ほんとうの旅館らしい旅館に改造したいという気持は十分持っておるわけでございます。それですから、そういうようなところのそういうような改造をするには、今後旅館を指導していただくのはけっこうでございますけれども、やはり一応そういうようないろいろな構造設備なり利用方法なりをきめていただく以上は、少くともそこに改造命令というようなものを出さなくちゃいけないような結果になると思いますから、そういうような機会には業者としては非常にそれは資金に豊かな者もございますけれども、大部分というものは、特に小さい、部屋の数の少い業者はそういうような余裕がございませんので、こういうような機会に、旅館業法の中に、そういうような改造命令を都道府県知事が出したような場合には、少くとも一応融資の面も多少めんどらを見てやるというようにしていただければ、これは業者として非常に幸いじゃないかと考えておるような次第でございます。それからこの環境——百メートル以内の問題でございますか……。
  28. 高田なほ子

    高田なほ子君 いいえそうじゃなくて、たとえば新宿とか渋谷とかいうところはごちゃごちゃっと固まっておるでしょう。そうすると競争というものがふえてくるし、ふえてくれば収入が少くなるから、これはどうもよろしくないと考えておっても——かりに考えておってもどんどんどんどんとお客様を吸収するために、このいかがわしい広告も張るでしょうし、またつまらぬものも入れるという、いわゆるこの弱肉強食の社会の中で、悪いと知りつつもそういう業態が営まれてくるのではないか、だからこの旅館業というものが適当な配置が行われれば、そういう不正業態を防ぐことができるのではないかというしろうと考えの私……。
  29. 小林毅

    参考人小林毅君) ただいまお尋ねの点でございますけれども旅館業者がああいうように、こうまとまって非常に業者ができますということは、これはちょうど品物を買いに参りますのに小売商が散っておりますというと、なかなかその小売商が発展しないで、デパートにみんな集まると同じような点もございまして、この団体で、大勢でもって、旅行者の方が旅行するような場合に旅館がまとまっておるということは収容力が十分であると、そしてこれはやはりお説の通り、同じところへ集まりますと自然競争が激しくなりまして、設備だとかサービスとかがお互いに競争するようになりますので、利用する側の方から申しますというと、ああいうような旅館業者が一定の地区に集団するということが非常に便利なわけでございます。ですから環境さえよければ、あすこへ行けば旅館は幾らでもあるんだと、安心して泊れるんだと、サービスも互いに競争してよくなっているし、設備もよくなっているというような工合で、そういうような理由から自然と業者もまたお客さんの需要というような関係考えまして、自然とどうも同じような場所へ同じ業者が集まってくるというような結果になっているのでございますけれども、お話しの通り、現在では私ども旅館業者は五万八千軒、六万軒近くになっております。かなり飽和状態になっているわけでございます。そのために、自然と特に部屋数の少い、小さな旅館などが旅館業者として正しい営業をしていくにはあまりに設備が貧弱である。旅館は幾らも大きいりっぱな、十分設備のある、サービスのいい旅館があるのだ、それだから、そういうところへは皆お客様が集まってしまって、小さい旅館には集まらない。それじゃ生きるために何とか商売方法考えなくちゃいけない、そういうことで自然と悪い意味旅館利用さしてしまうというような結果に陥りやすいのでございますけれども、今後旅館業許可していただくことにつきましても、もちろん今高田先生のお話しの通り、何か適正化法を考えまして、旅館配置について多少不正に利用させないようなことを考えていただくということが必要ではないかと考えているのでございますが、そういう点につきまして、私ども今度旅館業法改正をするというお話しを伺いましたときに、実はそういうことも考えたのでございますけれども、現在環境衛生適正化法というものが今こちらの国会の方に新しく法律を作るようにかけられております。その中に旅館業者も当然入ることになっておりますので、その法律の中で環境衛生同業組合ができますというと、その同業組合が自分たちの組合の仕事の内容について適正化規定を作ることができるようになっておりますので、すでに業態の配置とか、そういうものにつきましても、また、営業方法だとか、そういう点につきましてもある程度までその環境衛生同業組合の適正化規定を設けることによってそういう点を制限していくことができるのじゃないか、こう考えております。
  30. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つだけ、今度酒井さんに伺いたいのですが、先ほども意見の中では、修学旅行の子供の宿泊状況などについては非常に私ども教えられる点があって、勉強しなければならないということを強く考えたわけでございます。お尋ねしたいことは、従業員の側から見まして、渋谷の旅館業組合ではパンパンのようなものを泊めないということを決定されて宿泊を拒否した。その場合に、暴力団とか、ひもつきが旅館業者に対して非常ないやがらせをしたり、脅迫をしたりというような、暴力的行動があった。これに対して非常に旅館業者は困ったが、これと戦ってついに渋谷一帶の旅館業を正業に戻したというお話しを先般に聞いたのですが、あなたが従業員組合の執行委員という角度から、そういう。パンパンを拒否するような旅館が一体あるのかですね。拒否したような場合に、どういうような影響が旅館にきているのか、この際、警察はどういうような態度で臨んでいるのか、これが一つ、もう一つは不必要な規制をして善良なる旅館業者をいじめないようにしてもらいたいというお訴えがありました。その一つの例として、善良な従業員の方までもが巻き添えをくって、五日間も拘置所に入れられたというようなことが言われておりますが、そういう例がかなりあるのではないか、その実態を私どもにもっと詳しく事実をたくさん並べて、どういう一体不当な調べ方というものが行われているのかということが聞きたいのです。それからもう一つは、保健所の監視員が旅館業の正しい運営のためにたびたび伺っているようには法律規制されているわけですが、監視員というものは、一体どういうような格好で調べに行くのか。一説によれば、監視員は監視をする際に相当……一ぱい飲ませてもらわないと、なかなかうるさいことを言うというようなことも一説には聞き及んでいる。こういうような実態ですね。  それからもう一つは、その公安委員などが、あるいは警察官などが犯人逮捕などのような場合に、旅館業者に対していろいろ調べたことがありましょうが、それはどういうふうな順序で、どういう程度に行われているものか、あなたの知っていらっしゃる限りにおいて、不必要な規制を食わないためにも、実態を知りたいのでお尋ねするもけです。
  31. 酒井義雄

    参考人(酒井義雄君) お尋ねの、最初のパンパンと言いますか、売笑婦の問題ですが、普通旅館は、まあたとえば十室部屋があったとまあ仮定した場合に、月に結局まあ場所によれば大体七、八割の宿泊客があるわけですが、月間五、六百人の宿泊客はあるでしょう。数字で、想定ですから。ですから、一度や二度で客の顔を完全に記憶するということは、これはなかなか困難です。服装も変ります。時期によっては、オーバーがあったり、なかったり。ですから、パンパンであるか、ないかという判定はですね、これは実際に容易につかないと思います。また、パンパンも、昨今のパンパンは一見してわかるようでは、すぐおまわりさんに持っていかれちまうから、まあわからないようななりふり、動作をしているわけなんです。従って、旅館の方としても、これはなかなかわかりにくい問題で、まあごく特殊な旅館を除いては、東京全体——まあ東京の場合ですね、全体、私のところでは一級旅館、A級旅館だから、りっぱに営業しているのだといばってみても、そうい弔客が知らぬ間に泊っているというのがおそらく事実でしょう。で、当然ある特定の女性が何回も何回も違った男と来る。それが五回、六回、七回と回数がいわゆる比較的短かい時間に繰り返されるというふうになってくれば、ああこれは商売人だ。まあそういう段階でやっとわかるわけなのですね。ですけれども、これはこれがいわゆる二人で連れ立って、お部屋ございますかと来た場合に、これをまず拒否するということは、ちょっとこれは実際無理な話なんです。ですから、非常に悪質に利用されて、正常な営業に差しつかえが生じたというふうな実態が結局まあ渋谷に起ったから、業者が結束してやったのだろうと思いますが、まあ私たちの立場ならば、もちろんそういうふうにはっきりわかれば、もちろんそれはお断わりしたいのです。けれども、現実は無理であろうということと、あるいはまた、現在いわゆる売笑婦の組織が、いわゆるひもつきというふうな観点がだんだん強くなってくるような傾向らしいので、将来このいわゆる売春のいわゆる宿提供の常習犯というふうなことにならぬように業主が良心的にやろうと思えば、拒否しなければならない。拒否すれば、またそういうことが起るということはあり得るだろうと思います。いわゆる世の中の夜間の実態と言いますか、夜の実態からいけば、十二分に想像されるわけです。そういう圧力が旅館主に加えられる。従業員に加えられるということは、予想されることであって、加えられた場合に非常に迷惑するということと、そして先ほど阿部先生のお話にありましたように、そういう組織なり、あるいはそういうやくざの者たちが、現在の警察の手からいわゆる漏れる実態にある、ちっともそういう者がなくならないというふうな状態から考えて、まあ憂うべき現象であると、私らとしても非常に困るということはお答えできます。  それから女中の検束は、これは上野に一件ございまして、で、やはり問題が問題だけに、ある程度のところまでいったわけです。たとえばまあ新聞の記事になるというような事態までいったので、その後はございませんで、そこに至るまでは四軒の旅館がそういういわゆる売春宿提供の常習犯というのですか、そういう観点で検挙されております。それぞれがまあ弁護士を立てて保釈をされるなり、あるいは一応留置をされて調べられて帰ってくるなり、あるいは十日間の検事拘留を食ったと、これは業主でございます。で、従業員が飛ぱっちりを食っちゃって豚箱に入れられたというのは一つございます。私の方で現在わかっておるのは一件だけでございます。それでその後はそういうふうなことはどういうわけだかなくなっております。もちろんそれに対して必要な手段方法を私たちが講じたせいかもしれません。将来ともそういうことがあっては非常に困ると、私らがいわゆる主人と雇用契約に基いて当然なすべき仕事をして、それによって検束される、留置されると、それに値いするだけの落度なり、あるいは法に反する行為があったならばやむを得ません。そうらじゃなしに、通常のいわゆる従業員としての勤務から生ずる問題で検束されると、いわゆるちり紙がないからちょっと分けてくれ……、これは自分の家なら、おい紙持ってこいとだんながいえば済むことなんです。旅館ならば、女中さん済みませんが、ちり紙下さいといわれたら、それはそうお断わりできません、これはサービスですから出します。もちろんこれは通常旅館主は用意しておりません。ですから、女中がみずからの財布で用意する、それに対して何がしの代金を払らのが当然のことだと思う。そうすると、紙を売ったということが一つの根拠になって、いわゆる売春の、そういうふうな観点の法的根拠がここに生ずるというふうな警察の見解らしいので、そういうことは非常に困るということですね。一般のいわゆる旅行客が荷物を頂けて手ぶらで来ておるのか、正常な御夫婦がいわゆる家屋の関係でお見えになっておるのか、あるいはもう、いわゆる結婚を前提とする相思相愛の仲であって家屋のいわゆる新居のために式が延びておるのか、あるいは商売人であるか、そういう観点はなかなか実際わからぬです。ですから、紙をくれと言われても、いわゆる実態がわからぬから結局サービスをして出さざるを得ない、まあそういうふうな現況でございます。  それから保健所の方は、やはりまあ手が足らないのでしょう、十分回ってこないようですね。ときどきはやはり来ていますけれども、まあ保健所が来たときに一ぱい飲ませなければどうだこうだというようなことはございません。それはまあ別の意味で何があるか、それは私は知りませんが、一応そういうことはまあないです。でも来たときはうるさいですが……。そうして旅館というものは客が来る、帰る、片づける、掃除が終ったころまた来るというふうに、毎日とっくり返しひっくり返ししておるものですから、いわゆる軍隊の場合みたいに、きちんとなっておったように、常時きれいにしておく、見た目に整然としておくという状態にはないわけです。いわゆる実態が清潔であるかないかというような観点でまあ見られておるのだろうと思うのですが、旅館の方にも手落ちはございましょう、もっともっといわゆる食器その他台所の設備、あるいは清潔整頓、これはこういう意味でもっと旅館自身も注意しなければならぬ、保健所の方としても、その点に関してはもっとやかましく回ってもいいというふうに私らは考えております。  それから警察の犯人逮捕の問題ですが、まあ不意に踏み込んできて旅館主の許可なしに部屋に行ってやるというふうなことはございません。どちらかといえば、旅館の方から警察に話をする、いわゆる手配書、人相書にどうも似ているからというふうな点で、旅館主の方から警察に連絡をしてくるというふうに、重大犯人の場合、あるいは手配書等によって感づいた場合、あるいは自殺のおそれありというような場合は、大体旅館の方からの連絡によって警察が来ますから、その点に関していざこざはございません。なお、旅館内で起った犯罪の犯人があがった場合は犯人を連れてきて実地検証と、いますか、裏づけ捜査というのですか、それにきまして、それもやはり旅館主の許可というか、同意を得てやっておりますから、それによって生ずるトラブルというものはないように考えております。その場合に、ここの第六条ですか何かにもあるのですが、結局旅館主の方で整理した宿泊名簿と、うものはそういうときに役に立たないわけですね。やはりどうしても本人が書いた宿帳の方はもう保存しないことになっておるのですから、そういう点も旅館改正の場合に御考慮に入れていただければと思う。ということは、客に書かしてそれにナンバー打って、必要な事項を旅館主が書き込んでカードを整理するという形式にすればいい、それを一定の宿泊名簿に移しかえて、肝心のものを捨ててしまうというような状態なんで、たまたま保存してある店ならば半年前、いや八カ月くらい前だろうと、あっちの包みをひっくり返し、こっちの包みをひっくり返してやっと見つけ出す、それによって一つの根拠を見出すということになっておる。  話は飛びましたが、大体そういう状態で、犯人の逮捕という観点で非常に旅館が迷惑するというようなことは、私の知っておる範囲ではございません。その点は警察もことに相手が経営者であるためか、良心的でございます。
  32. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと今犯人のことを私が聞いたのは、旅館の方から申し出た場合に警察がやってくるというならば、旅館業者でもたえずかわりばんこに男をひっかえ、とっかえ連れてくるような場合には、当然旅館業者の方からしかるべきところに実はこういう状態だからこれをどうかしてほしいとか、保護してほしいということがあってもいいはずですが、今まであなたの知っている限りでは、こういう風俗の問題に関して、特に旅館業者の方から積極的に手を伸べるというような意思または行為というものはございませんでしたか。
  33. 酒井義雄

    参考人(酒井義雄君) 行為については具体例はよく知りませんが、いわゆる旅館主は先ほども私が言いましたように、いわゆる権威と見識を持っておりますから、侵しがたいよらなといったら極端ですが、経営者としてはそういう点は好まないのは当然ですから、やはり利用しやすい店、しにくい店という点で実態は違ってくると思いますが、拒否をしたという例はあまり聞きません。何とならば、営業の売り上げが二重に加算されることであって、業者の希望し、喜ぶところなんですから、いわゆる部屋は仕切って二つに使うことはできないけれども、昼間の休息と夜間の宿泊ということで二重に使えるところが旅館主の望むところですから、業者の心がまえもありましょうが、そういうよくよく極端な例でない限り、旅館主の望むところですから、その点で御賢察願います。
  34. 片岡文重

    ○片岡文重君 時間がないようですから、簡単に小林さんにお伺いしたいのですが、大体旅館業法の一部を改正する考えを持つに至った原因について考えておるところは、みな程度の差はあっても同じだろうと思うのです。風俗問題についての心配はまたこれを是正しよら、矯正しようとすることについても常識ある旅館の経営者はこれは私たちと同じであろうと思う。しかし、これを実際に矯正し、善良風俗にのみしょうということになりますと、これは旅館だけを責めてもいけないし、その旅館の従業員だけの責任でももちろんありませんし、国民の倫理観念が一般に高揚して、たとえそういう施設が提供されてもそれを利用する者がなくなるような道徳水準にまでならなければ、これは多かれ少かれ、この危険はあるものと私たちは考えております。ただ、だからといってこれを放置するわけにはいかない。そこで、こういう旅館業法改正もしてみたらということになったと思うのですが、そういう点で法律改正すると同時に、この不愉快な事態の解消には業者も私たちも、国民全体が協力をして解消するように努力をしていきたい、そのために一番直接的な立場にある旅館業者方々に最も積極的な御努力をわずらわすことが必要じゃないかと思うのですが、そういう観点から一つ、二つ御質問というよりもむしろお考えというか、御決意を伺いたいということになろうかと思うのですが、小林さんが今のお立場東京都の旅館組合連合会の会長でいらっしゃるそうですが、この組合というものの力をもって、健全な旅館業一つ東京都に打ち立てるという御決意をいただくならば、たとえば連れ込み等に対する従業員の態度も、それから個々の経営者の考え方も、一挙に変ることはなくても、徐々に変っていけるのではないだろうか。はなはだ理想的なことを申し上げるようですけれども一つ一つ実際に経営に当っておられる方々が、その日々の経営の具体的な面について、ここはそうしよう、ここはそうしょうということで工夫をしていかれれば、そうしてしかも良心的な経営をしていきたいという業者が大部分で、不純な営業をする者はやむを得ずやっておる者かあるいは不本意ながら引きずられておる者が若干あるだけであるいう先ほどのお話もあったようですから、そういう点からいえば、一人々々の業者が拒否し得ないあるいは良心的な営業を守り得ないということがあっても、組合という組織の力、大ぜいの力をもらてこれを援護していけば、先ほど渋谷のお話もありましたように、相当効果をあげられると思う。そういう点で、組合は何か積極的な努力をしていただくことができないであろうかということが一点です。  それからチップ制度の問題ですが、これは先ほど阿部先生もおっしゃいましたが、確かに私どももこの問題では不愉快な旅行をいたします。これも一つつけ出しにされるなりあるいは何かの方法で手心でなしに、客の気持だけでなしに、組合としてこれを厳守できるような方法一つ考えになっていただけないものだろうか。同時に、これは従業員の収入に関係をしてくることでありますから、この従業員の収入という点については、基準法等のことを考えるまでもなく、当然生活権を擁護してやらなければなりませんので、このチップとか茶代とかいうものの制度を廃止すると同時に、やはり原則としてこれは固定給の制度にすべきではないか、チップとか心づけとかいうようなことは廃止されていくべきじゃなかろうか。健全な旅館の経営をするためには、これは当然そういう制度を廃止して、そうして必要な経費は必要な経費として堂々とお客に請求し得るような制度にし、従業員については、その収入を別な面で給料制度として、月給なり日給なりは別問題にして、とにかく固定して収入だけは確保される状態で、従業員はその本来の仕事をできるようにしてやるべきではないか、こういう点については、どういうふうにお考えになっておられるか。相なるべくはそういうことで一つ組合としてやっていただきたい、こう思うのであります。  それからいま一つは、修学旅行の問題ですが、切り詰めた計画で、次から次へと短かい時間でたくさんな見学をさせようとする先生の希望からすれば、相当無理な計画がなされますから、これをどうこうということは、もちろん旅館業者としてはできないわけですけれども、せめて宿に着いて宿を立たれる間だけは、最も快適な状態にしておくべきである。特に集団中毒の事例も年々少いわけではありません。こういう点について、一体都内の旅館は、どういう程度にこの衛生方面について考えておられるのか、施設を持っておられるのか。特に先ほど酒井さんのお話では、貸ふとん屋からふとんを借りてきている、しかもそれを日光消毒すらしておられないところが多数あるように伺ったのでありますが、こういうことでありますと、私どもは非常に不安な状態で修学旅行をさせなければならぬ。計画の問題については、これは引率する、主宰する学校側の責任でありますけれども、宿泊中における食中毒あるいは伝染性疾患に冒され、菌を持ち帰るというようなことは、これは当然旅館業者の責任でありますから、こういう点については根絶しなければならない。そのために一体どういう措置をとっておられるか。  それからいま一つは、先ほどのお話のように、旅館部屋は大体五つくらいを最低にしてはどうかというお話がありましたが、私は五部屋くらいではむしろ少いのではないか。許可基準となるものは、もっと水準を高めていかなければ健全な経営はできないのではないか。もちろん部屋数が多いということは、それ相当設備も必要ですし、器具も必要になってくるし、維持費もかかってきますから、相当営業費がかさんでくる、間接費が多くなって、経営にはそれだけの困難を来たすことになりますけれども、それだけの施設を持ち、それだけの形態を整えて営業をでき得るような状態でなければ、勢いこの風俗営業等にさ残されるような、流布されるような営業をしなければならぬようなことになるのではないか。そういう点からすれば、やはり経営の基礎、営業の基礎というものをしっかりとさしておく必要があるのではなかろうか、大体以上について御意見を伺いたいと思います。
  35. 小林毅

    参考人小林毅君) ただいまお尋ねをいただきました(1)の問題でございますが、旅館業者旅館本来の目的以外の方法利用されるのを、組合の力によってこれを浄化できないかというお話でございますけれども、私どもも、それはまずでき得べくんば自分たちの力によって、そういうような旅館本来の利用の以外の方法利用されることは防ぎたいと考えております。その点につきまして、私どもはかねがね、先ほども申し上げました環境衛生適正化に関する法律案というのが今衆議院で取り扱われておるそうでありますが、まあ、これが近々のうちにこの国会を通過するというようなお話を伺っております。その法律ができまするというと、組合の結束が非常に強化されまして、そうして私ども営業方法についても、先ほど申し上げました通り、適正化法を作りまして、都道府県知事の認可を受けて、その適正な方法によって業者の方の営業方法を一定の方向に定めていくというようなことが可能になるのではないかと考えております。それですから、そういう法律ができますというと、自然と業界営業方針というものがある程度まで浄化されていくわけでございますが、根本的には先ほど先生のおっしゃった通り、これはやはり何と言いますか、社会一般の徳義心と申しますか、これは結局は根本的には教育なり何なりにたよって、世の中のものの考え方をもう少し浄化さしてもらわないことには、これはどうにもならないことだと考えております。がしかしながら、私どもが現在、……申しおくれましたが、私は東京旅館組合連合会会長と同時に、全国の旅館組合連合会会長をやっておりますので、全国的な点から申し上げたのでございますが、私ども東京旅館組合連合会におきましても、例の鳩森問題が起ってきましたので、その後、業界自体として何とかして自粛して、この社会的な批判をもう少し普通の、いい方向に向けるようにやりたいというような希望でもって、今よりよりその点につきまして、どういう方法でもって各連合会の業者の人たちを一般の方向に向けていくかというようなことを、今いろいろ相談してやっております。それはまあ具体的には急にどうこうりということはできませんけれども場所によって、場所柄上、普通の旅行者の方が宿泊していただくためには、あまりに不便な場所であって、同時に、そちらの方には旅行者の方が行くべき場所でないために、利用される方がほかの方を利用されてしまうというような形になっておりますので、できるだけ組合でもって、そういう不便な場所でも、設備もよく、環境も非常によろしい、そういうところへは、多少、今日は交通の便が非常によくなっておりますので、やり方によっては、一般のお客さんにそちらに行って泊っていただくということができないことはございませんので、いろいろあっせん業者の方とお話して、あっせん業者と送客の協定を結んでもらいまして、そちらの方へお客さんを送って、何とか、そういうような普通の経営の仕方でない利用方法には利用されないようにやって参りたいというふうに考え、今やっております。  それから(2)の問題でございますけれども、これは非常にむずかしい問題でございまして、これは確かに私ども利用いたしましても、やり過ぎてもばかばかしいし、やらなくて変などうもいつも感情を持たれるのもおもしろくないというようなことで、非常にむずかしい問題でございます。ただこれは、一体チップというものは旅館が請求すべき筋合いのものではなくて、要するに、旅館の従業員から格別のサービスをしてもらった、いろいろ世話になったというようなお客さんの感情から、普通の宿泊料のほかに、女中なり、番頭に別に心づけを出すということが、このチップでございまして、別段にそのチップをいただくために旅館の従業員がお客様にサービスするわけではございませんけれども、結局、自然とサービスをよくするというと、お客さんの方で感謝の気持を表わす、その感謝の気持がチップとなって表われるというような形でございますので、これを旅館で五分なり一割にきめてしまうことがいいか悪いかということになりますと、これはまた非常にむずかしい問題でございまして、きめてしまいますというと、お客さんのいろいろなサービスの点においては、従業員はどういうような態度をとっても、お客さんのチップは一割つけ出しでいただけるのだというような気持になられても困りますので、これは理想といたしましても、そういうものは本来宿泊料のほかに一切いただかないのだということに、これはきめてしまえばいいのでございますが、これは昔から長い間やって参りました慣習でございますので、ここで急に廃止するということはなかなか困難だと思います。しかしながら、そういう例はございます。現に長野県で二、三軒そういう方法でやっております。絶対にお客様からサービス料とか、チップはいただきません。宿泊料だけであとはいただかないという方法で非常に繁盛しておる旅館がございます。そういうように、全業者考え一つにまとめてしまうということになりますれば、非常に簡単でございますけれども、長い慣習、また、そこの旅館の経営の設備の大小とか、経営の方法とかいろいろございまして、なかなかこれを単純にきめてしまうということも困難でございますけれども、申し上げました通り環境衛生関係の適正化の法律ができまして旅館同業和合ができますれば、適正化規定も設けまして、そういうような問題についても解決する方法があるんじゃないか。つけ出しの方法でもって——会計に五分なり、一割をつけ出すとか、全然廃止してしまうというようなこともある程度まで適正化法を設けることによりまして解決がつくと考えております。  そうしてこの従業員のチップと給料の関係でございますけれども、もちろん給料をチップの関係に依存させるということは、はなはだ旅館営業の経営として不明瞭でございますので、当然旅館経営としましては、従業員の給料も含めた宿泊料というものの定め方をして、もう少し合理的なはっきりした体制に営業方法をもっていくというのが、これが当然であると考えております。これもまた、近い将来の問題で解決をつけたいと考えております。  それからその次の修学旅行団体の扱いの問題でございますが、これは食中毒とか、それからそういうふうな食事によるいろいろな中毒の問題、その他についての旅館側としての対策でございますけれども、これは各保健所と連絡をとりまして、春秋二期、その春秋二期のほかまた、その中間においてもやりますが、年に三回くらい検便をするとか、健康診断をするとか、従業員の健康診断、もちろん営業に携わりまする主人側も当然でありますが、そういうような健康診断、検便等、あらゆる、いろいろな方法を講じまして、そういうような伝染病の問題とか、それから食中毒の問題、保健所で従業員を集めまして衛生講習会をやるとか、というようなことを講じて、いろいろ食中毒の問題、伝染病の防止といったようなことに対策を講じて実際にやっております。  それから貸ぶとんの問題でございますけれども、これは確かに現在学生団体を扱いますところで貸ぶとんを使っております。これもなかなか収容力の点と関係があるのでございますが、普通のお客さんならば六畳へ一人であるとか、入畳へ一人とか、二人とかという工合で寝具類もそんなに要らないのでございますけれども、修学旅行の団体の学生になりますると、宿泊料が三食食べまして二百五十円、三百円から四、五百円までということになっておりまして、非常に宿泊料の点が低廉であるために収容力をふやすことによって、宿泊料の低廉な点をカバーするというようなことがございますので、自然とそこの旅館設備してございまする寝具類では間に合わないというような場合が多くございますので、当然そういうような場合には、足りない部分をふとん屋から借りて参るということにしております。しかしながら、それについてもちろんカバーなどは貸ぶとん屋の方からつけてくるのが当然でございますけれども、それをこちらで借りました場合に新しいものに変えてつけるというような手数をかければいいんですが、なかなかそこまでいっておりませんので、まあ厳重に考えた場合には、いろいろ衛生上の点から心配な点がなきにしもあらずでございますが、実情といたしましては、今申し上げました通り、貸ぶとんも全部が貸ぶとんではなくて、一部不足分を借りて参る、それについてはもちろん保健所あたりでもよく注意をいたしまして、カバーを変えろとか、いろんな注意は与えられて参っておりますが、しかしながら、その通り十分に注意してやっている業者もありますけれども、そうでない業者もございますので、こういう点は将来の問題として大いに考えなければならないと考えております。  それから客室数の制限でございますけれども、これは確かにお説の通りで、私どもといたしましては、過日の全国の旅館組合連合会の役員会のときに、今度旅館業法改正する案があるそうだから、この機会に、旅館の規格として部屋の数は一体どのくらいにしたらいいだろうかというような問題を出しまして、いろいろ討論したのですが、その結果、少くとも七部屋以上なくちゃいけないんじゃないかということで、実は私どもの全国旅館組合連合会の役員会では旅館最低基準としては六畳くらいの大きさの部屋が七部屋以上。それですから、四十二畳以上なければいけないんじゃないかと、そうでないというと、旅館営業としての正しい営業はできないんじゃないかというようなことから、七部屋以上ということにきめたわけでございますけれども、その後、厚生省の方へ伺いまして、懸案のいろいろの点につきましてお話を伺うと同時に、現在三間、四間、五間というような業者がたくさん現存しておりますので、そういうような点から、全国的な視野から考えた場合には、七部屋というのは時期尚早ではないかと、五部屋くらいでいくべきではないかというようなことをみんな考えたものですから、先ほど五部屋というような基準を出したわけでございますけれども、本来ならば、旅館業として、許可営業として、そうしていろいろこのたび改正をしていただきますような風俗営業の問題についても、普通の旅館としての利用方法旅館を指導していただくというようなお考えでしたら、客室数は少くとも本来ならば七部屋以上でないというと、旅館業法の本来の経営は困難だと考えるわけでございますけれども過渡期でございますので、急にそこまで標準、規格を上げてしまうということは現状にそぐわないような結果になるということを考慮いたしまして、先ほど五部屋くらいということを申し上げた次第であります。
  36. 千葉信

    委員長千葉信君) 午前中、御意見発表を得られました方々に対する質疑は、この程度にしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。それでは午前中の質疑はこの程度にいたします。  参考人方々には長時間にわたりまして、きわめて貴重な御意見を御発表いただきましたことを深く感謝いたします。まことにありがとうございました。  それではこれをもって休憩いたします。    午後零時三十九分休憩    —————・—————    午後一時四十三分開会
  38. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  委員異動を報告します。四月二十三日付をもって、久保等君が辞任し、その補欠として、藤原道子君が選任されました。   —————————————
  39. 千葉信

    委員長千葉信君) 引き続いて、参考人各位から御意見の拝聴を行います。  最初鳩森小学校長、吉川芳次君にお願いいたします。吉川君。
  40. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) 本日は旅館業法の一部を改正する法律案につきましてお召しいただきまして参上いたしました。私に改正旅館業法についてでなく、多分実情がどうであったか、実情がどうであるかということについて参考意見をということと思いまして、それについて申し上げます。  私の学校の地域に旅館、いわゆる何といいましょうかさかさクラゲと言われる旅館ができ初めましたのは昭和二十八年でありました。私現在校に赴任いたしましたのは二十七年でございますが、そのときは学区域内に一軒もなかったのであります。最初できましたうちに参りましたときには、「どういう旅館ですか」とお聞きしましたところが、「これは富山県の寮である」というお話であったのでございます。その後、続々とできまして、現在三十三軒学区域にございます。私の学校の児童は八百でございます。それに比較しましてもいかにたくさん旅館があるかということはおわかりになるであろうと思います。その旅館業態そのものは非常に問題であったわけであります。朝早くから、あるいは昼休み、あるいは夜おそくというように非常に次から次へ客が来まして、いわゆる席の暖まるひまが出なくて、席が暖まっているというような状態がかもし出されているような状態であります。部屋のあくのを廊下のソファで待っているというような状態であったようであります。でありますので、旅館としましては非常に成績がいいわけでして、金をかけても三年たてば元が回収されるとまで言われておった次第でございます。  なお子供の方の面から見ました場合に、らちの二階から裸の状態が見える、あるいはあられもない姿が見える、下からも。おふろに参りましても、おふろに二人がふざけていて、それが片方の年をおふろで聞いている。「あなた幾つですか」というような状態もよくあったわけであります。その他数え上げればそうしたような状態がたくさんにあるわけなんですが、こうした状態は戦後道徳の頽廃、特に性道徳の頽廃がもたらしたものであろうと思います。これはあえて旅館のみが悪いということは言えないと思いますが、これは利用者にもその罪があるわけです。昼休みに自家用車で来て帰るというような状態のものは、これは利用者が悪いのではないかと思う。しかし、それが次から次へというほど来るようになって、資金回収が三年たてばできるというような状態であることは、そのいわゆる休憩客のいかに多いかということが言えるわけでございます。その休憩客そのものにもいろいろの種類があるようです。年令差が非常に大きいということ、男が年をとっていれば女が若い、女が年をとっていれば男が若いというような状態、なお、オーバーを脱いだらセーラー服というようなのもあったようです。そうしたような状態が昨年夏から特にひどくなりまして、それがために、私の学校の地域の父兄が十二月二十一日の父兄大会をもってこの運動を起し始めたのでございます。幸いこの四月一日建設省告示五百三十四号で文教地区に私の学校の地域並びに千駄ケ谷地域百三十五万坪が指定されましたので、今後旅館は建たないことになっているわけです。なお、こうした状態は個人の問題ばかりでなく、家庭の破壊であるということを強く強調したいと思うのであります。そうしたところがあるために、それを利用することによっての家庭の破壊、これも非常に問題にしなくてはならないようなことであろうと思います。で、この春から渋谷区の環境対策協議会におきまして、業者との話し合いによる自粛要項の手交等をいたしたわけでありますが、自粛している姿はやや見られるのでありますが、実態がどうであるかということはまだはっきりわかりません。特に目に余る業者というのは先ほどの組合の問題がございましたが、組合に入っていない業者が非常にひどいのです。これは三国人的な系統の人が組合に入っておらないのです。この旅館業法の一部改正につきまして、学校としまして第四項と第六項になるわけですが、これは渋谷区の三法会議におきましても、これを打ち合せをいたしまして、三法会議には教育委員会が今度入って組織されているようになりました。そしてこの第四項、第六項を強くしていただきたいということを環境対策協議会としても希望する次第でございます。  なお、言葉のことでございますが、この間の環境対策協議会におきましては述べることができるとか、伺うことができるとかいう言葉ではなくして、もっと強い言葉を打ち出していただきたいということを強調いたしたいと思います。  なお、旅館の建つ状態、あちこちにございますが、旅館の建つ状態などにしますと、旅館ではない、最初看板はすき焼と書いてあります。それができ上りまして開店の日になると旅館と看板を変えてしまうというような実情もあるわけです。その後の自粛の程度につきましては先ほど申し上げましたが、今後なお業者に対しまして、全部が悪いとは言えないと思いますけれども、とにかく私の地区のところは善良風俗が害されるというようなこの第一項目のところの一番そうなりやすいところでありますので、この善良風俗を害されることがないように、必要な規制ということを強く打ち出していただきたいことをお願いする次第でございます。なおまた、御質問等あれば——実情につきまして、一応以上申し述べました。
  41. 千葉信

    委員長千葉信君) 御苦労さんでした。   —————————————
  42. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に売春対策国民協議会国会対策委員長本多シズエ君にお願いいたします。
  43. 本多シズエ

    参考人本多シズエ君) 私ども売春対策国民協議会といたしましては、売春防止法通りましたけれども、御承知通り、大へんざる法案でございます。先ほど阿部先生は水も漏らさぬざるだとおっしゃいましたけれども、実際は水の漏るざるなんでございます。そこで、私どもといたしましては、このざるの目を縮める意味におきましても、やはり旅館業法とか、建築基準法とか、飲食業法そのほか、現在ございます性病予防法というようなものを実際完全実施をしてもらいたいということで、いろいろ各省に陳情いたしてきておるわけでございます。ところが、今回こういうふうに私ども考えておりました旅館業法の一部が改正されるということに対しまして、私どもといたしましては非常に喜んでいるわけでございますけれども、ただその今度の法案の改正に私はいろいろな疑義があるということを申し上げたいと思います。しかし、今日売春の実情というものが非常に深刻でございまして、決して何と申しますか黙視することはやはりできない。防止法がありましてもなかなかそれが完全に実施ができないというような状態でございますので、ぜひとも赤線と青線がなくなっても、白線が生まれてきて、擬装転業というようなこともございますし、現実に鳩森の問題などは白線のあり方だろうと思うわけでございますので、何としてもまずこの第一項におきますこれは絶対に大事々条項であろうと私ども考えておるわけでございます。先ほど善良風俗を害されるということで阿部先生もしきりにおっしゃっておられましたけれども、これがもしなかったならば、この旅館業法の一部の改正ということには何らの新しい役割を果せないのじゃないか、しかし、こういうふうに打ち出されておりますけれども、法案を拝見いたしますと、実際にこの問題がどやって解決されるのか、その点で私は非常な不安を感じておるわけでございます。また、旅館業法の第五条が改正されておらないという点もこの第一の問題と関連して非常に私は不徹底じゃないか。しかし、こういう問題点はございますけれども旅館業法がこの際一部改正されることによって、何としても売春の問題をぜひ取り締っていただきたいということで、私どもはこの法案が通過することを心から願っておるわけでございます。しかし、この中で私が非常に残念に考えておりますのは、旅館とそれから飲食店とが兼業されるという問題は、先の厚生省の案におきましては、これも取りやめにするという、改正されるというふうに伺っておりましたけれども、今度の場合はこれが、なぜか取り除かれた。全国五万四千以上の旅館の中で正しい旅館を営んでいらっしゃる旅館はどのくらいおありになるかわかりませんけれども、その温泉マークとか温泉旅館におきましては料理と兼業している場合が多くて、そういう場合にはやはり芸者がそこに出入りする。温泉の場合などは女あんまというような者もそこに出入りいたしておりますが、そういう問題はやはり兼業ということにおいて非常にこれは問題じゃないか、こういうことについて厚生省ならびに厚生大臣がお調べになったことがあるのかどうか、これはぜひともこの場合、これは取り除かれましたけれども、補足するならまたこの次の段階において、ぜひともこの問題は改正していただきたい点と申し上げたいと思うのでございます。  それで私どもといたしましては、この旅館業法改正は、売春防止法を完全に実施する。これとこれの一環としてきめられたものじゃないかと、そういうふうに考えておりましたけれども、提案理由の説明を拝見いたしますと、その中にはなるべくそれには故意に触れないようにしていらっしゃるようでございますし、ただわずかに風俗に関する点において、加味しなければならない社会状態になったので、それに対処するためにこういう社会を作るのだというようなふうなことがかすかな糸でつながって、売春の問題をにおわしておるという程度でいくということを私ども非常に遺憾に考えておりますし、まあ委員会を傍聴いたしますと、神田厚生大臣も、絶対に売春防止法の完全実施とつながったところの旅館業法改正ではないのだというふうなことをはっきりとおっしゃっておりますので、そういう点も私どもこのように長い月日をかかりまして、ようやく売春防止法案を作らせたという、この婦人の闘争の長い歴史を通して勝ち取ったこの防止法が完全に実施できなかったならば、実にこれは意味のないことでありますので、そういうふうな一環としてぜひこれはもう少し強化していただきたい。しかし、現在これがないよりは、やはり制定ざれた方がよろしいのでございますから、今回はこれを通していただきたいとは思いますけれども、今後の問題として、やはりその売春の問題に関連して、私どもはもう少し強化された面がほしいということを希望いたしておるわけでございます。  それから保健所におきましては、旅館関係したところの職員は、わずか一人ということを聞いておりますが、こういう問題に対しまして、どのようにおやり下さるのでございましょうか。私ども防止法が通りまして、四月一日から保護規定が行われておりますし、来年の四月一日からは刑罰規定が施行されることになっておりますけれども、その予算面というものが非常に少いために、婦人相談所も婦人相談員も、まだ四月一日から一斉にすべり出せないというような現状でございます。従ってまた、そういう問題におきまして、開店しても休業というような形が行われる。また、地方財源にその予算がゆだねられておるために、地方におきましては、せっかく義務規定であるにかかわらず、婦人相談所を作らないというようなこともございますので、今度のこの旅館業法改正された場合に、何とかその保健所における旅館を扱う職員の方をもう少しふやすとか、また、そういう面の予算措置というようなことも十分やっていただいて、法をきめるだけが能じゃなくて、法がきまったならばその予算措置というようなものに対しましても、十分な御考慮が願いたい。こはれ完全実施の上においてぜひとも法だけきめることじゃない。実際に運営されることだろうと思いますので、そういう点におきましても、私どもは非常に不安を感じておるわけでございます。まあそういうふうに、いろいろ私どもといたしましては多くの問題があるわけでございますが、この第四条におきます学校周辺百メートルの区域に、もうこういう旅館は、規定に沿わない旅館は置かないというこの四条に対しましては、これは私ども売春国民対策協議会の立場と同時に、私も子供の母親でございますので、PTAの一人といたしましても実に鳩森小学校のお母さんたちがどんなに御苦労なすったかということを痛感しておるわけでございます。  しかもかつて基地の子供たちが米兵とパンパンの売春実態の悪影響を受けまして、非常な純真な子供心というものを傷つけられた大きな問題があったと思います。それと同じ被害を鳩森の子供たちが受けた、そのお母様方のお気持を考えるときに、このたとえ、今日旅館業というものは決してそういうものではないとおっしゃいましても、現在の社会状態におきましてはそんなことでは言いのがれはできない。実際子供の母といたしまして、そのように子供が悪化するということは、この次の時代を考えてもぞっとすることだと思うのです。従って、自分子供だけがかわいいのではなくして、すべての子供を愛さなければならないという今日の時代におき、また、児童憲章におきましても、すべての子供は正しい社会環境の中に育てなければならないと言いながらも、今日の社会状態というものはそういうものを常に配慮しておらないという実情でございます。こういうことはやはり子供だけの問題ではなくて、社会環境ということ、これはやはり売春を禁止しなければならないような今日の日本の社会というものをお考えの中にお入れいただいて、そうして良識によって決して事の解決しない今日の社会あり方道徳の低下している日本の現状を考えましたならば、やはりこうした規定はもう少しきびしく規定しても決して悪くはない、そういうことを規定しないことにおいては、なかなか解決はしないというふうに私ども考えておるわけです。ですから、これでお通しいただくのもけっこうですが、このあとにぜひとももう少しきびしいものを入れていただきたい。それからこの中の言葉におきましても、もう少し強くおっしゃっていただいていいのじゃないか。表現というものがやはり大事だと思いますから、そういう意味ではこの言葉の中のそうした非常にあいまいな点、ことに第七番目におきますところの今まで、過去、業しておりました人たちに対しましては既得権を認めて三年間でございますか、従前の構造設備基準に基いて営業を営むことができるよう規定を設けるというような点がございますが、この法律の施行と同時に、その人たちは規定に合ったものとして認めて存続させるということ、この点におきましても大きな問題があるのじゃないかと思います。というのは、その業者の中に鳩森などの一つの例のように、温泉マークの人たち、そうして白線の状態をやっておる温泉旅館、あるいはアメリカのように今度コール・ガールのシステムを、そういうところを根城としてやっておるというようなことがぽつぽつ起っておりますし、今後業者の転業とつながってそういう問題がどんどん出てくるのじゃないか。私どもは、防止法案のざるの目のあるところをねらって抜け道を考えながら、あくまでも売春を温存しようというところの行き方がはっきりとわかっておりますので、そういう意味からまず旅館法から改正していただき、おいおいこのざるの目を縮めていただこうと考えておりますけれども、そういう点で、今度の旅館法の改正には非常に賛成いたしております。よろしくお願いいたしたいと思います。  以上、そういう点からもう少し今後の改正に対しましては、もっと厳格な点もお考えいただきたい。今日の社会状態というものは、先ほどの人権じゅうりんの問題もございますけれども、あえてそのような犠牲を払ってもやらなければならないほど現実というものは醜いことになっておりますことを御認識いただきたいと考えておるわけでございます。  いずれまた御質問がございましたら、お答えいたします。   —————————————
  44. 千葉信

    委員長千葉信君) 御苦労さんでした。
  45. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に、日本経済新聞論説委員、神田道徳君にお願いいたします。
  46. 神田道徳

    参考人(神田道徳君) ただいま議題になっております旅館業法改正案は、さきに参議院の文教委員会で、鳩森事件関連しまして、学校環境維持に関する特別措置立法を御検討になっておられた、それに関連しておるものだと考えるわけでございますが、参議院が衆議院に先がけまして、非常に子供のために心胆を砕かれておることに対しまして、まず最初に深い敬意を表します。  さて、本改正案についての意見でございますが、私は結論を先に申し上げますと、賛成いたします。理由は三つございます。  第一は、子供たちに対してもっともっと思いやりのある政治、親心のこもったあたたかい政治があってしかるべきだと考えます。その一つの表われが本改正案だからであります。  終戦後十二年たちましたけれども、おとなに対する遊び、また遊び場は非常に多いのでありますが、子供たちに対する遊び並びに遊び場というものは非常に少いのでございます。そのために彼らが悪い遊びもしましょうし、非常に不良化の問題も今日起っております。そこで、別して憲法だとか、あるいは児童憲章を持ち出すまでもなく、とにかく彼らを人間として正しく育て、また、不良化を防止するためには、やはりいい遊び場、いい文化財、そうしてまたいい環境を作ってやることが、これが私はおとなの大きな責任だと確信をいたします。国の宝であり、また、社会の鏡であります少年、少女を、もっとあたたかく育ててやる、寸ってやる、そういう意味で本改正案はその趣旨に沿うものだと思うわけでございます。  第二は、教育学校環境でございますが、これについて二つの意見がございます。どんな悪い環境でも、教育の力によってその悪に対する抵抗力の強い、免疫性のある子供たちを作るのが教育だという意見であります。それに対しまして一方では、いや、もう、とにかく環境を整備してやることが絶対条件なんだという、この二つの意見であります。  教育の力によりまして子供を悪に対して抵抗力のある、免疫性の強い者に仕上げることができまするならば、これはけっこうでございまして、現に東京都内でもそういう例があります。その教育者諸君には私は敬意を表しますけれども、私が今日日本の教育なり、教育者諸君の現状を見ておりまして、まだ私は教育の力だけによってこの子供たちを正しく育てていくことができるかどうかについては、私は大きな疑問なり不安を持っております。まだまだ今日の教師諸君の力では、そこまでは行きつかんのじゃないかという大きな疑問を抱きます。そこで孟母三遷の教えということ、これは、こんなことを申し上げるまでもありませんけれども、やはりいい環境を作ってやって、さらにその上でいい教育の力でもって子供たちを育ててやったならば、非常にすばらしい成果があがるのじゃなかろうか。どうも先生諸君の中にも、民主時代になりましてから、非常に確信というのですか、自信というのですか、そういうものがありませんで、何でも子供たちを自由にさせるのが民主教育だというふうなことをお考えになり、現に実施している例を私は知っておりますけれども、やはり欧米の民主国家における民主教育の実情を見ましても、その中ではやはりきびしい訓練としつけをやっております。ですからいい環境を与えて、さらにその上でいい教育を与えたならば、まあ、いわば鬼に金棒でございまして、りっぱな子供たちが育ち、自然的に社会国家もよくなるのじゃないかというわけでございます。今日の教育は御承知のように、学校、家庭、社会三身一体の協力によるわけでございまして、われわれ社会の者がその義務を果す意味でも本改正案ができると、成立するということは非常に意義のあることだと信じます。  第三番目は、営業の自由と憲法との関係でございます。経済の成長ないし発展は、私は民主主義的な政治体制のもとにおいて一番大きく発展し、拡大するものだと確信をしております。その意味で、企業自由の原則というものは確立されることがいいと思います。思いますけれども、やはりおのずからそこには限度がある、憲法十二条でもはっきりいっておりますが、やはりわれわれ個人の自由なり、権利というものも乱用されてはいかぬのでありまして、公共のためにこれを利用する義務を負う、責任を負うとありますように、やはりそこには公共の福祉ということを大前提にしなくてはいかぬ、二十二条にも、居住なりあるいは移転、営業選択の自由ということが明記してございますが、それでもその中にさえも、公共の福祉に反しない限りという条件がついておるわけでございます。また、本改正案を拝見いたしましても、また、この今までの旅館業法を拝見いたしましても、第一条に「その経営を公共の福祉に適合させることを目的とする。」とありまして、やはりいかに営業自由、企業自由だと申しましても、やはりこの公共の福祉ということを前提にすべきでありまして、この本法にありますことは私は全然同感でありまして、本改正案が施行されますと憲法違反になりやせぬかという、いろいろなうわさを聞いておるわけでございますが、この程度規制立法は決して私は憲法違反にはならぬと考えるわけでございます。  次に、法案の内容でございますが、これについて三つ希望がございます。第一は、第三条の設置制限の項に学校規定がございますが、その中から大学を除くと書いてありますが、これはまあ一体どういうわけだろうかということでございます。大学はすでにもう成年に——りっぱな教育を身につけたものだから大丈夫だというお考えかと思いますけれども、まだ彼らは若いのでございますし、また、われわれの経験に徴しましても、大学の教室の窓から百メートルぐらいのところにさかさクラゲがあっては決して私はいい教育はできぬと考えるわけでございます。従いまして、学校教育法にはちゃんとあそこにたくさんの学校が並べてある、その中から特に大学を中止したのはどういうわけか、第八条の一二に、国立大学の学長は、当該学校の敷地の周囲おおむね百メートル云々と書いてあります。それについて学校教育を進める上で悪いと思ったらば、都道府県知事に意見具申ができる、こう出ておりますが、これはもうもちろん国立大学付属の学校についての意味だろうと思いますが、しかし、ここには別に——、八条二には国立大学学長という点からきておるわけでございますから、それならば私は特にこの学校の中から大学を削除する必要はないのじゃないかという気がいたします。  第二は、周囲おおむね百メートルとございますけれども、果して百メートルぐらいでいいものかどうか、もう学校の窓からちょっとのぞき、また、学校の往復のところで百メートルというと、ほんとうにわずかな距離でございまして、まあこれが健全な旅館があるならばよろしいのでございましょうが、さかさクラゲがそこいらにあったとすると、私はやはり百メートルぐらいではあまり意味をなさないのじゃないか。できるならば三百メートルとか五百メートルとか、さらにこの距離を拡大してみたらどらかというふうに考えます。  第三番目は、第四条で営業施設について現定しておりますけれども、これは内部の施設についていろいろとむずかしい条件をつけておるわけでございますが、私はやはり外部について、つまり広告などについても少し触れていいものじゃなかろうか。ハリでは看板一つ建てますのにも、市役所の許可が要ります。また、最近はだいぶ外国人が来訪して参りますが、それも一口で、何かといえば、日本のこの旅館設備の悪いこと、道路が悪いこと、そしてまたあの醜悪な看板の乱立を指摘しております。最近アメリカの観光客が鎌倉の市長に、街頭放送と商業広告の乱立にがっかりしたという手紙をよこしておりますけれども、やはり、もう今日は宣伝の時代でございまして、やはりそういう外部の規制についても、何か一言触れてもいいのじゃなかろうか。もちろんこれにつきましては政令で現定するように、どうも考えられるのでございますが、政令でなく、この法律の中に一つ、一本筋を通すということも肝要じゃなかろうかという考えでございます。なお、罰則が非常に甘いようにも感じられます。これはまた、刑法とかその他の何か古い法律が、やはり軽いものでございますから、それとの関連でこれをきびしくすることができないという点もおありかと思いますけれども、五千円ぐらいの罰金じゃ商売をしておる者には大したことではございませんので、罰則を少し強化されたらどうかというふうな気もいたします。  最後に、これは私の希望でございますが、ただこういう改正法律を作り、改正しただけでは、私は意味がないと信ずるのでございます。やはりそれを厳重に施行しなければならないわけでございまして、その点についてどういう御配慮があるか、現に保健所などは、環境衛生なり、公衆衛生について指導監督できるというふうになっておりますけれども、この間、発表されました行政管理庁の保健所の監察の結果によりますと、医師のない保健所があるということが出ておりますので、ただこの旅館業法一つだけをやれば、すべてこの社会環境がよくなり、子供たりが正しく守られ、また、旅館設備もよくなり、従ってまた、観光事業にも大きな推進力になると考えたら、私は考えがどうも少し小さいんじゃないか、やはり総合的にやらなければ、しかもみんなが協力してやらなければ意味がないというふうに感ずるわけでございます。その点、私は国会の皆さん方が、国政の監督のお立場にございますし、憲法にもございますように、国政の調査権をお持ちなんでございますから、どうか単にこの法律改正だけでなく、すべてこの総合的に国政を掘進し、また、監視していただきたい。そのために世論がとやかく、どういこうの言うようなことでなく、国会自身がもっと大きな権威と見識と勇気とをお持ちいただきまして、先手片々こ一つりっぱな政治をやっていただきにいというのが私の悲願でございます。  いずれにしましても、売春防止法が施行されまして、もぐり営業があるとか何とかいろいろ言われておるわけでとざいますが、今度の旅館業法改正と、もう一つ国辱ともいうべきこの人身売買、これは絶対に私は根絶をしていただきたいと思っておるわけでございます。日本全体が子供たちにとっていい環境であるような政治を、一つ国会の皆様に心からお願いをする次第であります。  なおまた、社会教育の重要性を一つ考えていただきたいと思うのでございます。もうすでに、本年度予算にいたしましても、今までの予算にいたしましても、日本では教育といいますと、すぐ学校教育に重点を置きがちでございますが、予算書を見ましても、とにかく九割九分九厘までがほとんど学校教育でございますが、いかに社会教育が必要か、子供たちのためにいい環境を作る、いい文化財をやる、それからまた、われわれ自身が明るい楽しい社会を作る、それにはやはり社会教育がこれからはますます重要視されなければならないと確信をするわけでございまして、その意味でいささか釈迦に説法、お門違いなところもございますけれども、本委員会におきまして、さらにさらに、社会教育の重要性につきまして国政をリードしていただくようにお願いをするわけでございます。
  47. 千葉信

    委員長千葉信君) 御苦労様でした。   —————————————
  48. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に、東京都カフエー料理組合連合会会長鈴木明君にお願いいたします。
  49. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 私がカフエー料理組合の代表でございますが、私が意見を今日求められましたのは、私たちは今転業という大きな仕事に取り組んでおります。この転業と旅館業改正に何か関係があるということで私の意見を求められたことと考えておりますので、その点だけで一言申し上げておきたいと思います。  来年の四月までに、私たちは売春防止法に従って転業をいたさなければなりません。そこで今全業者が非常に真剣になって、いかにして転業をしたら、将来の営業と即生活の安定が得られるか、こういうことで苦労をいたしておるのであります。しかし、何にしても一ところに小さくても数十軒、あるいは大きいのは数百軒、それも長い間盛り場的立場をとってきましたので、どの商売に変ったらこの集団しておる業者が新しい営業についていかれるか、従って生活もできるか、こういうことになりますと、きわめて大きな不安と見通しの困難さを持っておるようなわけでございます。しかし、時期は毎日迫りますので、どうあっても転業しなければならないと、こういうことで日夜苦心をして具体策を練っておるわけで、いやでもおうでも来年の四月一日には転業いたすのでありますから、一日も早く転業いたしたいと覚悟をいたしておるわけでございます。そこで、この法律旅館業法改正でありますけれども、世上伝えるところによりますと、私たちがこの転業に旅館利用しようと、こういうふうに考えているやにうわさされておりますけれども、私たちはそういう考えを毛頭持っておりません。よしんば私たちに全部旅館に転業しろと言われても、私たちはとうていそんなことはできません。ただ私がお願い申し上げますことは、地方の状況、その土地の状況とその施設の状態と、そしてその人自身の転業意欲によりましては、やはり旅館にりっぱに転業更生いたしまして将来営業することの方が一番適しておる、そしてまた、土地の要望にもこたえ得るというような所が所によるとございます。こういうような面はぜひ一つ育成して手をかしていただいて、一日も早く転業できるようにお力添えをしてやっていただきたいと、かように考えるわけでありますが、最初いろいろ巷間流布されるところによりますと、この旅館業改正一つ目的の中に、すべて私たち従来の立場から再び悪いことをやるだろうというおそれのあるためにそれから閉め出すのだと、こういうふうにいろいろうわさされておりましたけれども、いただきました原案を見ますと、そういうことは毛頭ありませんので、私たちは正しい立場からぜひとも転業いたしたいと心から念願しておるようなわけでございまして、ただ、将来旅館を悪用して従来のわれわれのようなことをやろうとは毛頭考えておりません。ただ、ひたすら転業と言いましても、ただいまの状態ではすべてを業者の責任にまかされておりまして、業者自体の力だけで転業しろ、こういうような立場に置かれておりますので、その点きわめて遺憾に存じて、何ほど業者が奮闘いたしましても、私たち自身にとりますというと、一身をあげての大きな革命でございます。この革命に懸命に従って生き返ろうとしておるわけでございますから、どうぞ各先生方も、あるいは政府の方々も、われわれの転業に対してぜひともあたたかい御理解と御指導をちょうだいしてこの転業を完成したいと、かように考えておる次第であります。  以上であります。
  50. 千葉信

    委員長千葉信君) 御苦労さんでした。  それでは、ただいままでお述べいただきました各参考人に対して、御質疑のある方は順次発言を願います。
  51. 榊原亨

    ○榊原亨君 吉川先生にお聞きをいたしたいんでありますが、先ほど先生は、先生の学校の地区が文教地区に指定されたから、今後は旅館は建たぬというようなお話をちょっと承わったように記憶しておりますが、それはさようでございますか。
  52. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) そうです。
  53. 榊原亨

    ○榊原亨君 私は東京都のことはよく知らないんでありますが、文教地区に指定されますと、東京都ではもう旅館を建てることができないことになるのでありますか。その点はいかがでありますか。
  54. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) 建築業法の中に、第一種文教地区と第二種文教地区がございますが、第一種文教地区にしましても、第二種文教地区にしましても旅館は建てません、文教地区の中に。
  55. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほどお話しになりまして、先生の地区の周囲におきましては、在来の旅館方々が自粛をしておられる、それ自体はどういう内容かわからぬけれども、表面上はとにかく自粛しておるというようなお話がございましたが、先生はただいまのような状態でございましたならば、先生の学校におきましては教育上差しつかえないと考えておいででございましょうか。その点を承わりたいと思います。
  56. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) 自粛申し入れしましたことは、いろいろございますが、先ほどの日本経済の先生からお話のありましたような、看板の問題、その他いろいろの条件をつけて自粛してもらっているわけですが、あるいはネオンの問題、排水の問題、その他自粛要項に入っているわけですが、その自粛そのものが現在まだそう一月や二月では向うからもできないという旅館業者からの話もございましたが、いわゆる正直な方はどんどんとその看板をはずし、あるいはネオンをかえ、その他やっておりますが、まだいわゆるアベック的な客が相当まだ出入りしております。前よりもずっと少くはなっておりますけれども、そうした状態をやはり子供が見まして、あれはアベックたというようになっておりまして、先はどお話のありました子供教育としましては、悪への抵抗を強めるということを十分やっておるつもりでございますが、それにしましても、そのこと自体だけではどうしようもありませんで、子供の性格的にそういうことに対して非常に内攻的になっておることは事実であると思います。先生の前や、あるいは父母の前ではそうしたことはなかなか申さないのでありますが、友だち同士でささやきますその言葉を聞くときにおいて、そうしたようなことが非常にささやかれるようでございます。で、教育と同じように、こうしたものがいつ芽ばえるかということが私たちの一番心配しておるところで、これからさらに五年なり十年なり先にこうした影響が現われることが一番心配であります。なお、先ほどの御質問の趣旨なんですが、現在においても、もら少し旅館の方にも自粛を徹底してもらわねば、まだ教育の場として環境がよいとは申されません。
  57. 榊原亨

    ○榊原亨君 そこでお聞きをしたいんでございまするが、先生が教育上支障がないとお考えになる環境程度の問題であります。旅館の入口に男女が宿泊しに入るというようなことでも、やはり環境教育の場としては不適当だというようなお考えでありましょうか。大体その旅館のそういうような行為が、その周囲の旅館外の第三者の方に及ぼす影響の程度いかんだろうと思うのでありますが、と申しますのは、御承知通り、第三条がもし実行されることになりまするというと、百メートル以内の土地におきましては、当該学校の清純なる教育環境が著しく侵されるおそれがあると認めるときには許可を与えない。また、それについて、学校の先生が意見を述べられるというようなことになっておる。教育委員会が意見を述べられるというようなことになっておる。従いまして、その尺度というものがはっきりいたしませんと、土地々々によっていろいろな先生方のお考え程度も違ってくるでございましょうし、いろいろ問題が残されると思うのでございまするが、ただいま先生のお考えとされましては、そういうような旅館がもしあるといたしました場合、おそれがあるというのはどれくらいな程度のものであるかというようなことについての具体的な概略のお話を承わりたいと思います。
  58. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) できますれば、そうした旅館が学区域に一軒もないことを希望します。たとえば、お客がその門を入っていく、あるいは、そういう所がありますので、途中でキッスをして歩いてみたり、あるいは、旅館関係がないことかとも思いますが、いわゆる売春婦的な女の子が道におって、中学生がお使いに行っても引っぱるというような状態もあるわけです。あるいは、汚物をまだ捨てるようです。日本人の性格ですから、この前申し上げたんですが、自分が性行為をやったそのものを見せたくないせいですか、ポケットに入れて来て外へ出てそういうものを捨てる。あるいは、その二人がちちくりあって出てくる、あるいは入っていく、というようなこと自体は、教育上非常に影響があると思います。
  59. 榊原亨

    ○榊原亨君 少しく立ち入ったお話でございますが、第三条は、新たに宿屋をいたしたいという希望者がありまして、その希望者が当局に希望を申し出たときに、先生方が、どうも著しく教育環境を乱すおそれがあるということを認めたときには許可をしないということで、すでにありましたもの、あるいは許可を得たものが、今先生がお話しになりましたようなことがあれば、当然これは後段の第八条によって禁止をされるわけでありますが、あらかじめ届け出まして、こういう旅館をしたいと言います場合に、そういうような環境を乱すおそれがあるかどうかということを先生方は御判断になる、その御判断の尺度というものが果してできるかどうかということを私は疑問と思っておるのであります。その点について、善良な者が旅館をしたいと言っておる場合もございましょう。あるいは、その中には悪いものもあるかもしれませんが、そういう者が許可をとります場合に、あらかじめ先生方が御判断ができるかどうかということを私承わりたいと思います。
  60. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) それは、不可能だと思います。
  61. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほど神田さんが百メートルではどうもまだいかん、三百メートル、四百メートル、五百メートル先までいろいろそういうことをしなきゃならぬというようなお話があったのでありますが、吉川先生は、百メートルでいいと考えてございましょうか、その点はいかがなものでありましょうか。
  62. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、理想といたしましては、学区域内にそうした旅館が一軒もないことを望むわけであります。
  63. 榊原亨

    ○榊原亨君 児童の抵抗の問題でございますが、先ほど神田先生は、大学の学生といえども、この抵抗については非常に危険な場合があるというようなお考えであります。先生は、小学校の先生とされまして、学生あるいは生徒が年令が上になればなるほどこれらの悪に対する抵抗は強くなると御判断でございましょうか、同じであるとお考えでございましょうか、その点を承わりたいと思います。
  64. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) これは、社会の経験その他いろいろの経験によりまして悪への抵抗そのものが順次強くはなると思いますが、また、教育によってならねばならないと思います。この抜きました趣旨は、多分先ほど神田先生のお話の通りだろうと思うのでありますが、そうした場合に、自分の責任がとれるという意味ではないかと思いますが、とにかく学問をやり、経験を積みしていく場合に、悪への抵抗は強まらねば教育ではないと考えます。
  65. 高野一夫

    ○高野一夫君 私も吉川先生にちょっと一、二点伺ってみたいと思うのですが、先ほど午前中に参考人に御出席願った阿部さんのお話があったのですが、一体学校の周辺だけ清純な環境地帯にすればそれでいいのか、住宅地の隣にいかがわしい宿がある、それはほっておいて、学校の周囲だけそういう旅館が建たないようにすればそれでいいのか、こういうような御意見があった。そこで、学校の周辺に宿が建っても、先ほどの阿部さんの言葉を借りれば、門の前に旅館があっても、ちゃんとした旅館ならば差しつかえないじゃないか、こういうようなお話。そこで、住宅地の、学校関係のない回りに住んでいる所にいかがわしい宿があるというこのことも、学校の周囲と同様に私やはり家庭教育上困ることだと思います。ところが、この法律でいきますれば、旅館施設利用方法をそういういかがわしい利用の仕方はさせないように今度の法律改正して規制するわけです。それならば、学校の周辺であろうと、周辺を離れた住宅地であろうとを問わず、そういうような変な行為が行われるような宿に対しては適当な処分ができる、こういうことにこの案ではなっていると思うのですがそうすれば、学校の周辺百メートル以内には建てることは許可しないというようなことにしなくても、そういうのは全部やめてしまっても、前に建っても、そうしてそういう制限を置かなくても、全体で取り締るというならば、それでいいのじゃないかと思うのですが、そういう考え方もあると思うのですが、それについてはどういうようなふうにお考えでございますか。
  66. 吉川芳次

    参考人(吉川芳次君) 百メートルといいますというと、私の学区域で申しますと、五、六軒あります、周辺に。そこは大体客などがのぞいて学校の方などを結局見えるところにあるわけです。高田先生等はごらん下さっておるからよくおわかりだと思いますが、一般の住宅地の中にできました場合に、やはりそれも家庭の環境が悪いわけですから、その規制もやはり同じにしてもらわなくちゃならないと思いますが、特に先ほどもほかの先生方からお話がありましたように、特に学校の周辺百メートルということは、ぜひこれを入れていただきたいと思うわけです。
  67. 片岡文重

    ○片岡文重君 鈴木さんに一つ、二つお伺いしたいのですが、先ほど御意見を伺っておりますと、来年の四月まで、つまり三月三十一日までに是が非でも転業しなければならないからということで非常な御苦心をなさっておられる、ただし、旅館転業は考えていないというお話でございました。ところが、私どもが聞いております話では、現在かかえておる女をそのまま連れて旅館に転業をしていくというものもあるように聞いております。すでに何と言いますか、いかがわしい飲み屋に転業をして、たとえばせんだってのある地方紙でしたが、これにはいろいろな符牒で取引をしておる。たとえば銚子一本、ビール一本、おつまみもの、こういうことでいろいろ取引をしておる。これは調べてみると、赤線地帯から転業をしてこられた人である、こういう話も聞いております。しかし、さらによく聞いてみますと、これはその同業の組合員であった者と、なかった者でだいぶ転業の方法や転業先が違っておるようです。今組合に加入しておられる者と、それから非組合員、つまり加盟しておらない者との割合は一体どれくらいになっておるのかということを一つお尋ねしたいのであります。私は旅館転業を考えていないというふうにお聞きしたのですが、転業したいということの御希望のようですから、これは私の聞き違いだと思いますので訂正いたします。  それから転業をするについて、お困りになるのはもちろん転業資金の問題だと考えますが、従来長く営業をしておられた方にしても、あるいはまた、戦後そういう商売に入られた方も相当あるそうです。いずれにせよ、開業に当っての資金は調達できたはずです。特に戦後営業を始められた人たちは、その開業に当っての資金は調達できたはずであります。しかるに、今転業しようとするときにはその転業資金がない、開業のときの資金によって調達した、その現在使用しておる施設も抵当にしようと思えばできるわけであり、担保にもできるわけでありますから、全然開業したときと比べれば、開業のときよりはむしろ困難は少いのじゃないかと思うのですけれども、そういう点どういうふうにお考えになっておられるのか。  それから商工中金とか、国民金融公庫とか、いろいろ庶民の金融については足らぬながらも現在機関があるはずです。そういう機関について、個々の信用をもって融資を受けようとする場合には、信用程度の調査、その他いろいろ困難はありましょうけれども、たとえば組合長としての鈴木さんがこれを裏書きされるとか、あるいは組合として団体でその資金の交渉に当るとか、何らかそこにも私は積極的におやりになれば方法があるのではないかと思うのですけれども、資金調達について困難であるという、その困難を感ぜられますまでにとられた処置、どういう方法を具体的にとっておられるのか、それが一つ。  それからいま一つは、これは非常に御調査が困難だと思いますけれども、鈴木さんの勘でもけっこうですが、一体どういう方面に最も多く転業をしようとなさっておられるか、また、しているか。また、旅館を希望する方が多いのか、あるいはその他の商売に転業される方が多いのか、どういう方面に希望される方が比較的多いのか。できればその割合を二、三にわたってお知らせ願えればなおけっこうだと思います。とりあえずそれだけについてお伺いいたしたいと思います。
  68. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 先に、旅館業に転業するという点を誤解があったようですから先に申し上げておきますが、私たちが旅館業を全部希望しているように一部伝えられておりましたために、私たちは全部が旅館業を希望しているということはないということを申し上げたのであります。ただ所によりますと、数十の部屋を持ち、そうしてまた、主人自身の転業意欲が、りっぱな旅館に転業していきたいというのが地方においてございましたところもございます。こういう方はぜひ一つ旅館業としてりっぱにやっていって、転業してもらいたいというふうに考えているわけでありまして、実情に即して転業をしてもらうように考えております。  それから私の方の業者が飲み屋その他に悪く転業していると、こういうお話でございましたが、私たちの組合員はいわゆる昔の公娼あるいはこれに類似した団体だけが組合員になっております。ただカフエーですと、あるいは地方においてはすでに旅館許可のあるものもあるやに聞いておりますが、大部分は料理関係、カフエー関係これが一番多いようでございます。そうして私たちの組合をやめて、今の仕事をやめて、そういう今御質問がありましたような飲み屋その他で、いわば法律り裏をかいてやっていこうというふうに転業したというのは、一つも私の組貧の中では報告を受けておりません。  それから組合の色分けでございますか、ただいま私たちの方はカフエーとしての協同組合法による協同組合を作っております。御承知のように、入筆も脱会も自由でございます。できるだけ社会に御迷惑をかけない、こういうことでただいままで協同組合によってお互いに相協力してやって参りましたけれども、中には入らないのもございます。たとえば吉原の私の地域におざましても大体類似の同業は約三百軒に近いものがあろうと思います。しかし、そのうちで私の組合に属するものは二百七十軒を欠けております。二百六十数軒だと思いますが、あとは第三国人、あるいは組合にあえて加入しないというような状態でございます。征って、一般に赤線業者といわれて、赤線業者旅館に転じたのじゃないか、鳩森の問題のときにも、赤線業者かあそこに転業してきているというふうに伝わりましたけれども、私の関知しているところでは、私の方の業者からあそこに行って営業している者は一人もございません。そういうようにいろいろ同じような立場に置かれておりますので、いろいろと疑われておりますけれども、私の方から、ただいま申されましたような飲食店その他に振りかわって、従来通りの仕事を続けていくというような形で転業したというのは存じておりません。  それから転業資金の点でございますけれども、御承知のように、焼けたところと焼けないところがございますが、焼けないところは大きな施設を持っております。大都市はほとんど焼けております。焼けた所も、最初は建築法その他がきわめて厳格でありまして、十八坪くらいが限度として許されたわけでございます。その後それぞれ状況の変化によりまして、自力で多少の増築、店舗の改造を徐々にやって参りました。そうして現在のような規模に相なったわけでありまして、そこで大体私たちの業者を自力的に考えますと、半数以上は借金その他を持っておりまして、自己資金というものは相当手薄である、こういうのが実情でございます。そうしてもちろん今直ちにやめてもよろしい、やめられるという業者もあると思います。しかし、これもわずか一割か一割わずかの程度だろうと考えております。そういうような実情でありますので、ここで新しく転業いたしますとしますと、今までの施設相当変えなければならない。それもしかも一ぺんに変えなければならない。そこで相当多少手持ちはありましても、今直ちにこれを新しい業態に変えるとしますと、やはり従来そこまで持ってきた、徐々になし崩して築き上げたものを一ぺんに改造するというようなことになりますが、やはり相当まとまった金が一時に必要になる、こういうふうな状況でございます。  それから借り入れでございますけれども、現在私たちが許されておりまするのは、銀行融資といいましても、ほとんど信用組合、信用金庫、そういうような程度の銀行だけしか融通をいただいておりません。それも大ていは日掛で、半年あるいは一年と日限を切りまして、そうして毎日の上りからそれを返済するということで資本を借りておりますので、ただいまのところは二十万円、三十万円、せいぜい五十万円というような程度で、この際相当の覚悟で転業いたしますと、少くともそれ以上、倍あるいは三倍というような資本が必要だと思います。それには現状の融資程度ではなかなか困難である。そうしてまた、こういうふうな状態になりましたので、こういうふうな銀行関係の方におきましても、私たちの方に対する融資というものは、ただいまのところでは非常に気乗り薄でありまして、なるべく貸さない、むしろ今までの契約を一日も早く上げてしまいたい、そういうふうな傾向も多分にあるような様子でございます。  そこで私たちとしましては、ぜひ新しく、実情に応じて、決して大きなことは申しません、それぞれが転業と申しましても、新しい業種、あるいはその規模、その他によってその数字は違って参りますから、金額の開きは個人によって相当あると思いますけれども、それにいたしましても、大きなことを言って、大きなやつをしたいというような考え方よりも、まず、できるだけ自分の力で、現実的な方面に転業したいとは考えておりますけれども、実情は一般が御存じのように、私たちの自己資金というものはきわめて少いのが多うございます。その点を一つ御考慮願いたい。  それから全国業者の数でございますが、これは私の方の組合に入っているものは全国で一万五千くらいだと思います。そうしてこれがどのような業態に変りたいかということでございますが、この業者の大部分を見ますというと、経営者は中年以上が多うございます。この中年以上の者が何にも経験のない新しい商売にこれからついて、そうして一応生活の目安がついて、努力をすれば細々ながらも営業が成り立って生活が維持されるというような、見通しにつきますと非常に困難でございます。そこで、転業に対する心理的な不安が非常に多うございます。そこで、結局どうしても仕方がなければ完全にカフエー業になる、そうして全然従来のような女から手を切ってしまう、あるいは料理店になる、こういうような希望者が今のところは比較的多かろうと思います。また、所によりますと、全員こぞって新しい転業方法考えているような所もあるようでございます。たとえば転業いたしましても、吉原の例を申し上げますと、数万坪の中に三百軒近いものがございまして、これをどのような面に転業したら営業が成り立つかということになりますと、事実きわめて困難である。それはと申しますのは、今のような商売でありますから、お客相当毎日数千も入って来るわけでありますけれども、こういうものを切ってしまったら、おそらくあそこへはほとんど人が入りません。そこで、もし入らないとすれば、どのような商売に変って店開きをいたしましても、開店休業になるようなおそれも生じてくるようなわけでございます。そこで新しく完全な施設をして、そうしてそこに人を呼ぼう、人によってそれぞれの意欲に応じた転業方法をとっていく、こういうふうにも考えられて、こういう考え方は各自ともいろいろと持っておるようでございますけれども、実情は、たとえば吉原あたりも地主がそれぞれ異なって、おそらく百人、二百人の地主だと思います。そうして三百軒の業者以外にも二百軒の普通の業者がまじっておる、こういうことで、具体的にあそこに新しい施設をどう作ったらいいかということになると、机上で計画は立ちますけれども、実行の手段になりますと、きわめて大きな困難が出てくるようなことで、実はどのような業種になったらいいか今のところ非常に迷っております。その一つの実例としますと、私の方でまずとりあえずバーになってみないか、バーなら女がいなくても簡単に酒も飲んでもらえる。それがどの程度かやってみようというので、最初二、三軒やりました。幸いこれは非常に成績がよかったのであります。それではこれでいけるだろう、こういうので、それにまねて十数軒がばたばたとできましたが、もう十数軒になりますと、中には、これはしまった、投下した改造費も出ないというような状況に置かれておる者も出てくるような次第であります。そこで、どのような業種に変って、どういうふうに転業資金を捻出して、そうしてやっていくかということについては、業者としては非常に困難な立場にある。私がお願いいたしますことは、ただいまのところは、転業が全部業者にまかされて、業者の自発的転業によるようになっておりますけれども、ぜひ私は、私らのこういう転業に対する真摯な気持をお汲み取り下さいまして、転業に対する具体的な一つ措置をとっていただきたい。安心してこれで専業できるのだ、こういうふうにぜひともお願いしたいと考えておるような次第でございます。御質問の趣旨にそれたかもしれませんが、以上お答えいたします。
  69. 高野一夫

    ○高野一夫君 鈴木さんに伺いたいのでありますが、これは私新聞で読んだのか、あるいは人からのうわさ話で聞いたのか記憶がはっきりしていないのですが、せっかく転業したいと、旅館に転業したい、その申請をすると、旅館許可を当局がしぶる、こういうようなことを、新聞だか、話に聞いたかしたような記憶があるのですが、そういうような事実でもあったでしょうか、過去において。
  70. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 東京にはございませんけれども、地方にはそういう事実があったということを聞いております。旅館に転業したいので、それぞれ旅館としての施設を加えまして、許可願いをいたしましたところが、なかなかその許可がおりないという例がございました。それからもう一つは、旅館ではありませんけれども、ある完全な酒場に、近ごろ何といいますか、民謡酒場というのが大へん流行しているようですが、この民謡酒場に転業したいというので、りっぱな、りっぱなと言いましても従来の施設をすっかり改造いたしまして、許可願をいたしました。ところが、従来二階に部屋が四つくらいの施設がありますので、しかし、これは業者にとりますと、それをどう改造するといっても使い道がございませんので、それは一切使わない、ほんとうに民謡酒場としてやっていくんだ、こういうことでお願いしたいのでありますけれども、まあ多少そういうものを利用して悪用するのじゃないか、こういうふうな疑いがあったかどうか知りませんが、なかなかその許可がおりません。こういう実例は多少ございます。
  71. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは旅館業法のことで伺っているわけですから、旅館関係した問題だけで伺いたいのでありますが、その許可をしぶるというようなのは、今のお話のようにまだ転業しても従来の特飲街における営業を延長して別な形でごまかしてやるのだろうという疑いを持たれるか、それとも、その辺の地域が軒並みに旅館になっても困るというのか、あるいは法律にある構造設備施設がなお旅館として不適当である、こういうようなことでしぶっているのかどうか、その点について、一応の例について何かお聞きになったことはありませんか。
  72. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 大きなうちがありまして、部屋が数十ある、こういうようなところは、従来私たちの方としては、その下をカフエーに施設をいたしたり、あるいは料理施設をして営業をしておったわけでありますが、そこで業者としましては、その大きな施設をすっかり区切ってしまって、下は下で別に営業して、上は全部仕切って旅館営業するというふうな考え方のものもあったようでございます。それから全然やめちまって、旅館になろうというので旅館施設をした、こういうのもございますが、そのいずれにしましても、何と言いますか私の聞いたことで果してそれが事実であるかどうかはっきりわかりませんけれども、再びそういう営業をするおそれがあるのじゃないか、あるいはまた、将来の売春法実施ににらみ合せていろいろな考慮がございますか、なかなか許可がもりえない、こういう事実はあるようでございます。
  73. 高田なほ子

    高田なほ子君 鈴木さんにお尋ねいたしますが、今料理店をやっておられて、上の方にたくさん部屋があるものがあるというお話ですが、そういたしますと、今度の旅館業法改正では、料理店と旅館業の兼業もできることには一応なっているのでありますが、大体そういうふうに兼業しでやっていこうという意思の方が大部分なのでしょうか。  それからもう一つは、現在そこに従業していられる婦人方、旅館料理業を営んだ場合に、旅館業の従業員としてそれらの人が残って働くというような、そういうような考えで準備を進めておられるものでしょうか、その点をお伺いしたい。
  74. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) ただいまのような二つの仕事をもって転業しようというふうな考え方は持っておりません。また、そういうふうないわば料理旅館、こういうことをやろうというふうな考え方で転業用意をしているというのも聞いておりません。おそらく、それは先ほど申しましたように、所によりますと、数十の部屋を持っておって、そうしてそれがたとえば観光地であるとか、そうして旅館が必要だ、こういうところではりっぱな旅館業として転業したいという希望者もございますけれども、一般にはそういうことに振りかえていこうというような考え方は持っておりません。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういたしますと、あなたは、カフエー料理組合の連合会長でいられますが、その連合会として当面している問題は、転業という非常に重大な問題なので、連合会として転業に対するいろいろの申し合せ等がございましたら、御披露いただければ大へんけっこうなのですが……。
  76. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 私たちの方の業者は昨年の九月に集まりまして完全転業をすることを申し合せをいたしております。そしてその線に沿って、実は先ほどいろいろありましたように、業者の力にまかせただけでは、なかなか転業というものが円滑にいかなかろうということはるる申し上げた通りであります。そこでぜひ政府でも、一般の社会の方でも、この転業にあたたかく考えていただいて御支持願いたい、こういうふうに考えますと同時に、私たちの組合員には、とかく世の中では法律の目をくぐったような先を見通しした仕事に転業するというふうに見られておるけれども、そういうふうな従来のことに引きずられたような考え方の転業は、この際一切いたさぬ。また、組合員の中に今そういうふうな行き方でいち早く転業しようというふうなことは、全般のまじめな転業に支障を起しますから、そういうことはやらぬでもらいたい。ただし、現状におきましても即座に廃業できる、あるいは独力でも転業できるという力のある人は即刻転業していただきたい、こういうことを指示しております。
  77. 高田なほ子

    高田なほ子君 その場合に、業者の転業は、そんなふうな基本的な方針をお立てになって着々御準備のようでございますが、当面これに付随して今日までそこにおられた従業婦等の方々に対しては、どういうふうな御方針で臨み、現在どういうような方法で更生方面などについて御配慮をなされておるのですか、その点を伺いたい。
  78. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 現在働いております従業婦を、私たちはそのまま連れて転業しようということはきわめて不可能であります。私が申し上げるまでもなく、あの従業婦のやっておる仕事、その立場というものは御承知通りであります。さらに、私たちの転業についてこさせようとしても、あの人たちの目的に沿い得ないことになりますから、従業婦自身もこれを考えていないことだと思います。私たち自身、それを引き連れて転業しようというようなことは考えておりません。  それから女子の転業でございますが、女子の方も、これは女子組合の連合会がありまして、いろいろ検討しているようでございますが、私たち業者立場からは、やはり先ほど申しましたように、転業し得る者、廃業し得る者は、今やめて、直ちに更生のできるような者は即座に一つやめていただきたい。そして新しい生活に入ってもらいたいということを一つの道しるべとして望んでおります。従って、そうかと申しまして、われわれの転業が具体化しまして、いよいよとならばやむを得ず、あの女の方々にすべてやめていただくより仕方ない。かつて終戦後やはり公娼廃止の覚書が出ましたときに、こういうことをいたしました。すべて前借を差し引きまして、そしてぜひそれぞれ帰っていただきたいということを申し渡したことがありましたが、あれは終戦後の特殊の事情で、再び現状のようなことになってしまったのでありますが、今度はそういうようなことは考えられませんので、私たちは転業の際には、この人たちを断わらなければなりません。その断わることにつきましても、一つ先生方に、何分あの従業婦たちは御承知のような気の毒な立場にありますので、心配なく私たちのところをやめて更生の道をたどれますよう御願い申し上げたいと思います。
  79. 山下義信

    ○山下義信君 われわれとしては非常にあなた方の業者並びに従来の婦人の人たちがどういうふうに転業していかれるかということについては非常に大きな関心を持っているわけなんですが、今鈴木さんのお話を承わっておるというと、現在はその具体的な方法、計画等についても名案がないので迷っている、困っているというようなお話でありましたが、案についてもいろいろお考え中で苦慮されておられるのでありましょうが、同時に、先ほど同僚諸君の御質問にお答えになりましたように、資金等につきましても非常に困っておいでになる。そこで何とか政府あたりでもそういう資金のあっせん等について心配してもらいたいというような御希望もあったようでありますが、一体あなたのお組合だけでとってみますと、営業の変更、今後の進路に関連してまた、婦人の更生等に関連して必要な資金等を含めまして、およそどのくらいの転業資金が必要であると考えておいでになりますか。その辺のお見込みはどうですか。
  80. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) その点で、具体的にその数字を出したいと思いまして、今各組合員に調査書を渡して調査中でございますが、これは五月の十日ごろになると大体全部が集まる予定でございます。そしてこれにつきまして、転業資金といいましても、転業する目当て、私は何々業種に転業するというのがはっきりいたしませんと、その基礎算定がなかなか困難になりますので、一応そういうような業者々々の個汝の転業計画と、これに要する所要金額はもちろんであります。さらに、そういう点を考慮いたしまして、全部の業者の固定資産でございます家屋ですとか、あるいは土地というものを調査して書き出すようにいたしております。これによりまして、中には全部一つ買い上げてもらいたい。どれに転業してもこの場所では仕方がない。いっそ買い上げてもらいたい、こういう意見多分にございますので、そういう希望も添えて両方の調査をいたしておりますから、もうしばらくのうちに、大体所要の数字に近いものは出ることと考えております。
  81. 山下義信

    ○山下義信君 今ではまだ大体の予想もつきませんか、総額の金額で。そしてなお、あなた方の方の一つのお見通しが立ちましたら、将来政府にどういうふうな交渉をなさるというお考えでしょうか。まだちっとも政府筋にはそういう希望を表明せられたことはありませんか。多少申し入れをすでに若干しておいでになりますか。何らかその辺のお運びはどういうふうになっておりますか。伺っておきたい。
  82. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 具体的な計数がここで予想にしましても、私自体が一万数千の業者の基礎、家屋構造、その他というものがなかなか予想ができませんので、これを予想しますというと、相当大きな開きが出るおそれがありまするので、今予想と申しましてもなかなか大きな数字で、申し上げかねると思います。  それから政府に対して、あるいはそりほかに対しても、転業に対する御質問でございますが、業者が転業したい、必ず転業しますという申し合せのもとに一生懸命転業の方法考えておりますが、このことにつきましては、二月に田中官房副長官殿初め、各われわれ直接関係ございます役所の方々にわれわれ業者の代表者が数人会いまして、ただいま私が申し上げましたような実情を申し上げまして、業者がはっきりと転業する、どうあっても転業したいというこの意欲のもとに努力しておりますから、さらに業者だけの力ではどうしても困難な面が多々ありますので、ぜひそういう面について御指導を賜わりたいというお願いは申し上げてございます。
  83. 藤原道子

    藤原道子君 私は鈴木さんのお話で安心したのです。新聞の報ずるところによると、転業しようとする人は一、二割で、あとは何とか法をくぐってでも仕事を続けようという人が多いということでございましたが、こぞって転業のために努力しているということを伺いまして、まことにうれしいことだと思います。ぜひそうあってほしいということを期待いたします。  そこで業者のお心がまえはわかりましたけれども、さてそれぞれ働いておいでになる女子従業員に対して、何か更生についての心がまえについて御指導しておいでになる面がおありになりましょうか。さらにまた、従業婦自身が何か更生に備えて努力しておるという面がございましたら、お聞かせ願いたいと思うのでございます。
  84. 鈴木明

    参考人(鈴木明君) 従業員の方も非常に心配をされて、どう更生をしたらよろしいかというので、皆が非常に苦労をしているのが事実であります。それをどのように更生して新しい仕事について、新しい生活の基を立てたらよろしいかということになりますと、これもまた、なかなか困難で、私の見るところでは、こうやっていけばよろしいという大体の目安がつきにくいことで非常に困っているだろうと思っております。  そこで今度は業者の方でございますが、業者の方も来年の四月でございますから、これは従業婦の方にも私たちの立場考え方をよく集めて話しまして、ただいまでも廃業をし、そうして更生できるものは、あるいは家庭に帰りたいものは即座にお帰りになるがよろしい、どうあってもこの商売をいま少し続けなければならないという者は、これもやむを得ないから、その間にはきわめて自粛して迷惑をかけないようにしてやりなさい。そこで女子従業員組合というのが私らと別にございます。こちらの方でいろいろその対策について具体策を練っていろいろお願いもすれば、また、考えているのでございますが、その詳しいことは独自な立場でやっておりますので、現在どのような具体策を転業に対してとっているかはそちらの方でなければ私もはっきりわかりかねます。
  85. 藤原道子

    藤原道子君 売春問題については鈴木さんともずいぶん渡り合ったわけでございますけれども、いかなる法律もとにかくできた法律でございますから、新聞等に報ぜられることのないように、ぜひ一日も早く転業のために御努力願いたいと思います。それをつけ加えさしていただきます。  さらに、私は神田先生にお伺いしたいのでございます。私はお伺いすると同時に、お願いをしたいと思うのです。実は旅館業法の問題でございますから旅館業の方にいろいろお伺いしたければならないのですが、私はずっと休んでおりましたので、きょう初めて出席いたしまして、様子もわからず今まで黙っていたようなわけでございます。先生は男性の立場からどうお考えか、ざっくばらんにお伺いしたいと思うのです。私ども全国を飛び歩くのでございますが、料理屋旅館でなく、普通の旅館にもとより泊るのでございますけれども、そうした場合、旅館に泊りますと、もうらんちき騒ぎなんですね。謹厳な人ほど旅館に泊るとけたをはめすらしいのです。家庭ではよきパパであり、職場においては謹厳な人であるだけ、よけい騒ぐのではなかろうかしらと思うのです。たまげると吏があるのです。また、そういうサービスをしなければ、よき旅館と言われたいというような面もあるやに聞いておりますが、男性の方は御旅行なさいましたときに、そういうサービスがなければ旅館へ泊ったような気持もしないものでございましょうか。(笑声)もしそうだとすればですね、こうした法律改正がございましても、これを取り締りますのが、先生も先ほど御指摘のように、保健所というものは今先生御指摘のように、医師もいない保健所よある。今、日本の政治の面ではこうした保健衛生面の費用が非常に足りないのです。従いまして、足りない予算で、足りない人員で、しかもこの大きな使命を負わされた監視員が、どれだけの効果を上げ得るかということになると非常に心配なのでございます。だから、問題は社会全体がそういう気持にならなければ効果を上げることができない。明治初年にできた立小便してはならないという法律が今日なお公然とこれがなされておるというのが日本の文化の程度なのでございます。だから、旅館へ行ったらけたをはずしてもいいんだというような不文律の今日の日本の現状では、先ほどの鳩森小学校の校長先生もおっしゃいましたように、学校前に一軒も旅館があってはならない、もっともだと思うのでございます。そういう点につきまして、どういうようにお考えでございましょうか。
  86. 神田道徳

    参考人(神田道徳君) なかなかむずかしい問題でございまして、ただどうでございましょうか、旅館へ行って羽を伸ばす、これもまあ旅の恥はかきっ恥というのでございましょか、そういう古い道徳観なり、時代思想が確かに日本にはございます。そこでまあ旅館へ行きますと、謹厳に女中相手に酒を飲むくらいならよろしいのですが、ついまあいろいろと羽を伸ばす、これはさらにさかのぼっていきますと、藤原先生のいつも御主張になっておりますように、結婚がやはりうまくいかないということに私は考えられるのでございまして、大阪の堺市には憲法結婚式というのを、このごろやっておりますけれども、今日不信心な者が教会や神前で結婚式をするのは、神聖で一番厳粛なるべき結婚式を冒涜するものであり、また、非常な自己矛盾なことなんで、やはり近代社会では人権を保護する擁護者は憲法なのだから、憲法二十四条の前で誓い合ってやるべきだ。非常に私はいい実例を拝見して参ったのでございますが、やはりそのように家庭生活がうまく参りますれば、野郎が外に出てもあまりこうやらないで済むのじゃないかと思うのでございますが、まあ旅に出ましたらば、少しは羽を伸ばしてもそう悪いことはございませんので、さらに、それが進展しまして、いろいろな売春問題にひっかかって参りますと何ですが、それは私はこの教養と申しましょうか、良識と申しましょうか、その個人の意思に私はお願いをするよりほかございませんので、それから先ほどから学校の前に旅館があっても何ともないじゃないか、つまり百メートル、こういうワクなんか要らないというお話も出ましたが、結局は私は一つ国会の皆さんがほんとうにいい政治をやっていただく以外には何もない、これは単なる一つの手段でございまして、この法律をいじったからすぐよくなるとは私は決して思っておりません。要するに、この旅館業の問題にしましても、それからそのほか全般の政治というものがよくならない限りは、なかなかよくなりませんので、この終戦以来まあ道義が低下したとか何とかいろいろありましょうけれども、確かにこれも教育の力が及ばないところもございましょうけれども、やはりこういう日本の幾ら神武景気か何か私は知りませんけれども、このざまでは、私は道義の向上も何もないと思うのです。しかし、やはり個人々々にやはり教育の力でこの教養なり良識を高めることは肝心で、今のこう見ておりますと、自分だけまっすぐなことをやっても意味がないじゃないか。もう片山内閣当時から言われておりますように、正直者がばかを見る、まっとうなことをしたって損だという考え方が皆さんにおありなんで、それはやはりそういう国家の体制なり、社会の姿というものを、いびつでない断層のない姿にする。それが私は政治じゃないかと思う。そういう政治をして下されば非常にうまく参ると思いますんで、そういう政治をしていただきますれば、自然に旅をしましても非常に藤原先生のお目にとまらないようないい行動ができるのじゃないかと思うのでございます。
  87. 藤原道子

    藤原道子君 いや、旅行をしてね、夜眠れない思いをしているのはひとり私だけではない。先生方も御体験だろうと思うのです。うるさいと言えば、うるさいなんと言うやつはだれだというような声が聞えるのですね。女中さんが注意をすると。しかも道義が低下したと言うけれども、そういうことをやっておる人は昔の道徳教育を受けた人たちがやっておるのです。こういうわけでございますから、これは家庭がうまくいかないというだけでなくて、結局まじめにしておいでになっても、酒の度が過ぎるとそういう結果になるのじゃないかと私は思うのです。結局外国のホテルへ泊りましても、ホテルで酒を飲んで人に迷惑をかけるという人は一人もいないのでございますね。こういうことを思うと、やはり酒の上だからといって許す日本の社会常識というものがこれはいけないのじゃないかと思うのでございます。  そこで先生にお願いがあるといいますのは、政治はもとより私たち一生懸命真実を傾けてやるつもりでございます。しかし、衆参の議員が七百人まるまってやりましても、九千万の同胞があるわけでございます。これを動かしますのは世論の力でございます。そこで、新聞とラジオが持つ力というものは非常に強いのでございます。私たちも売春問題にいたしましても、何も業者が憎くってやるわけではございません。あの気の毒な女性にぜひ母性として立ち返る。それから家庭を破壊しないように、性病を蔓延しないように、どうか人として歩いていただきたい。業者のお子さんが親の職業を人の前で話すことができない。こういう訴えを聞くたびに、やはり正業についていただきたい。あたたかいきれいな世の中を作りたいというところに、売春問題にしても、旅館業法にしても、私たちはまあ取り組んでおるわけでございますので、どうかそういう意味におきまして御協力をぜひお願いしたいと思いまして、大へん失礼を申し上げました。
  88. 神田道徳

    参考人(神田道徳君) せっかく努力するつもりでございます。まあ私たちも皆さんからだいぶんやっつけられるわけでございまして、自粛自戒しまして、もうほんとうに日本を正しい姿、常に前進する態勢に持っていこうと思って一生懸命でございますが、まだまだ不勉強の点がございますので、せっかくこれから勉強して一つやるつもりでございます。
  89. 千葉信

    委員長千葉信君) 参考人方々に対する質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。参考人方々には長い時間にわたりまして、貴重な御意見の御開陳をいただきましたことを厚くお礼を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時二十九分散会