運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-30 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月三十日(土曜日)    午後九時四十六分開会   —————————————   委員異動 三月二十九日委員小山邦太郎君及び松 澤靖介辞任につき、その補欠として 近藤鶴代君及び片岡文重君を議長にお いて指名した。 本日委員田村文吉辞任につき、その 補欠として森田義衞君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            高野 一夫君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            近藤 鶴代君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            横山 フク君            吉江 勝保君            片岡 文重君            木下 友敬君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            山下 義信君            森田 義衞君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生大臣官房総    務課長     牛丸 義留君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省保険局長 高田 正巳君    運輸省船員局長 森  嚴夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(山下義信君外四名発議)(第二  十五回国会継続) ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまから社会労働委員会開会いたします。委員異動を報告いたします。三月二十九日付をもって小山邦太郎君、松澤靖介君が辞任し、その補欠として、近藤鶴代君、片岡文重君が選任されました。三月三十日付をもって田村文吉君が辞任され、その補欠として、森田義衞君が選任されました。   —————————————
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) この際、お諮りいたします。三月二十八日の本委員会において、榊原委員から文書をもって提出されました議事進行の動議なるものについての取扱いについて、これから委員長理事において協議するため、暫時休憩いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと存じます。暫時休憩いたします。    午後九時四十分八休憩    ——————————    午後九時五十三分開会委員長千葉信君)休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいまの委員長理事打合会におきまして緊急の質疑が申し込まれておりますので、これより約二十分間、質疑を行うことになりました。  健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会参第一号)健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)  以上、四案を議題といたします。御質疑願います。
  5. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 時間がありませんので、問題点だけを五点ほどお伺いしたいと思います。  私は社会保障制度の問題について、第一点として質問したいと思います。社会保障制度の概念は、その国の病弱や貧困に対して、近代国家においては、個人の責任ではなく、社会責任の中で守っていく精神であって、同時にまた、その社会保障制度施策は慈善や恩恵でないと私は思うのでありますが、大臣の所見を承わりたいと思います。
  6. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまの藤田委員お尋ねでございましたが、考え方は私は同感でございます。さように考えております。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この社会保障制度の問題についてはいろいろ問題を残しておるのでありますけれども、時間がありませんので、深くお問いできないことを残念とするものであります。日本の国が入っておりまするたとえばILOの憲章を見ましても、世界のいずれの国における貧困は、世界のいずれの国においても繁栄の脅威になるので、何としても貧困をなくしていこう、病弱をなくしていこうということは、政府自身もそのILOに参加をされておるその精神が、私は国内政治施策の面で貫かれるべきであると考えるわけであります。今の大臣答弁からいきましてもそう考えるのであります。ところが、政府は、今日の状態神武景気であって二千億以上の自然増収があるうち、一千億の減税、その減税も、高額所得者に多くの金を回して貧困と申しましょうか、低所得者にはあまり潤わない減税措置が講ぜられております。もう一面を見ますると、一千億の投資ということでありまして、今度の健康保険の赤字は、今日三十六億だといおれております。そこで、今の一部負担制限診療を含めて、その中の二十億余りの金を被保険者にかぶせていこうというものの考え方だと理解するわけであります。私はこういうことでは、政府がいつも国民に公約として打ち出しておられる社会保障を行うということとは、非常に食い違ってくるんじゃないか、こういう工合考えるわけであります。で、今回出されました健康保険改悪法案と私らは言いたい、船員保険改悪法案と言いたいのでありまするが、これについて、一部負担をかけるのに、受益者負担である、こういうことで本人負担を増加しておるのであります。これは明らかに社会保障制度の中核となるべき健保のあり方としては、大きい後退であると思うのであります。この点、ここで神田厚生大臣に、厚生省として根本的な態度をお聞きしたいのであります。私は、厚生大臣が、今の社会保障制度根本的な考え方について御発言がありました。でありますから、後世史上に残るように、また、社会保障制度の前進の一エポツクとなるように、私ははっきりと健保制度についての考え方を聞きたいのであります。社会保障制度としての健保が、単なる保険としての健康保険制度なのか、そこらあたりを明確にお答えを願いたいと思います。
  8. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま藤田委員の、政府社会保障制度に対する基本的な考え方を説明しろ、こういうようなお言葉がございました。しかも具体的に、今回御審議願っております健保法案について、被保険者負担の問題に触れられまして、これは非常に悪法だという御批評でございましたが、私どもが率直に申し上げまして、健保関係の被保険者が一千三百万人と称されております。そこで政府医療保障というものは、これは国民九千万を対象として考えなけばならないのでございまして、しかも今日三千万人近い国民医療保障適用を受けていない、こういうよもな事情を考慮いたしまして、健保財政健全化、また、合理化をはかる上から、この際、被保険者同士負担の公平を期す、こういうような意味いも考えまして、そこで一部負担をお願いしよう、まあこういう考えで御審議願ったわけでございます。  社会保障の充実につきましては、さきに石橋内閣、今日岸内閣でございますが、五つの誓いの中の大きな一つの柱になっておりますことは御承知通りでございまして、政府一体といたしまして、今後できるだけ多く社会保障を充実して参りたいと、こういう基本的な考え方でございます。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この一部負担の問題でございますけれども、たとえば入院料について申し上げますれば、政府管掌健保平均報酬が一万二千円であります、政府が予想されているのは。それで病気になれば、傷病手当が六割で七千二百円、大体その辺の見当の傷病手当がもらえることになるのでございます。ところが、生活保護法適用の四人家族の、医療、住宅、食糧扶助等を合わせてみましたものより大体少い状態にあると一つ考える。また、経済的には、最低限度生活をしいられるということになると思うのですが、そこに月九百円の入院費を取っていく、こういうことになるわけであります。でこの関係は、生活関係はどんな工合にお考えになりますか。
  10. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま御指摘になりましたように、平均の、この報酬平均をとらえますと、お述べになりましたような数字になることはその通りでございまして、そういう点を勘案いたしまして、最も安い負担と、こういう意味で一日三十円というようなまあ計算をいたしたわけでございまして、これはしかし、それでも負担し得ないといもような現実の問題につきましては、生活保護適用なり、いろいろ社会……他の方法によって補っていくというような意図があるのでございまして、その点はそういうふうに御了承願いたいと思います。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあその問題については重ねてお尋ねをしたいのでありますが、政府管掌健保労働者平均は、大体二十二人くらいの事業所というものが平均であると認識いたしております。中には入院すれば、その給料がもらえない要するに労働者がほとんであると私は思うのであります。でありますから、傷病手当の六割、七千二百円——たとえば平均を一応見ましても、もっと低い人はたくさんありますけれども、苦しい人はありますけれども平均してみまして、この七千二百円をもらって、その中から入院費を九百円引かなきゃならぬ。引くと六千円くらいになってしまう、こういう具体的な問題が出てくるわけであります。そこで家族交通費や、諸雑費や、その他を引きますと、その本人入院れば、借金しなくてはとてもやっていけないという現象が生まれることと思うのでございます。  そこで、この前の公聴会のときに、この日本社会保障の大家といいますか、そういう方々の御意見を聞いておりますと、あとでわかったのですけれども厚生省の七人委員会メンバーであったと思うのであります。その受益負担としての一部負担賛成意見の中で、病気入院している患者が、テレビや、家を建てる、こういう発言があったわけであります。私はどういうところからそういうような意見が出るのか、はっきりしてもらいたいと言うと、人から聞いたのだから取り消しますというようなことが言われたのであります。私は非常に残念に思うわけなんです。そういうものの考え方をした人が、七人委員会メンバーであり、そして厚生省のいろいろの案の問題に参画してこられたといもことは、われわれは非常に残念なんです。御承知通り、そんな余裕——家が建ったり、テレビが買えるというような人は、おそらくだれが考えてもないと思うのです。  もう一つ私は、先ほどの大臣答弁に関連して申し上げたいのですけれども受益者負担としての一部負担、今公平を期すと言われましたけれども、貧しい、低い給料をもらっておっても健康を保持するということが最大の幸福なんです。これを施策の中で守っていくということが、私は社会保障、またみんなよく守っていくというような政治施策根本としなければならない、福祉国家根本としなければならぬのにかかわらず、その中で、病気になった人が治療費その他によって恩恵を受けるから、その人から金をとらなければバランスがとれぬというようなものの考え方には、私はどうしても納得がいかない。私は、今日のほとんどの人がそう考えている。私は、被保険者ほとんどの人が全部そういうものの感覚で、お互いに健康で幸福な世の中で生きていこうという考え方であろうと思うのです。それがこういうさっきの先生の話、今の大臣の話を聞くと、バランスをとるためにやったということだが、これは実際にそういうことはなかなか納得ができない。だからそこのところあたりをもう少し説明していただきたい。
  12. 神田博

    国務大臣神田博君) 藤田委員のただいまのお尋ねでございますが、何か先般の公聴会で、入院患者が家を建てたり、テレビを買ったりというようなこと、私もちょつとそういう話のあったことを耳にいたしました。さようなことは私も想像し得ないところと考えております。この点の考え方は、藤田委員と私は同じ気持でおると私は考えております。そういうことはないだろうと、あるはずがない、こういうふうに考えております。  それから第二点の、今の患者負担の問題につきましては、私が被保険者同士公平化というような言葉を使って大へん言葉の足らないことを恐縮に存じておりますが、それだけのことではないのでございまして、その前段に申し上げました、政府国民保険をやって、そうしてこの医療保障を全国民に対して相当の割合を持っておるというような前提に立っておりますると、今藤田委員のお話は私もこれは同感でありますが、とにかくまだしかし、保障を全然受けない人間が何千万もある、そうしてまた、その法律によって医療恩恵を浴する方は千三百万、国民保険に加入されている方々は非常に低い医療給付を受けている、そういう大きな意味バランスがとれていない、こういう意味で申し上げたのでありますが、これは私は非常に言葉の足りないことを今明らかにしまして、補ってお答え申し上げますので、御了承いただきたいと思います。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の御答弁では、やはりどうも私は理解できな、不満足でございますけれども、しかし、時間がありませんので、次の問題を質問したいと思うのです。  政府は、政府管掌保険の、要するに低所得者について、生活保護法適用家族社会的にも経済的にも層が違うという工合に言っておられるわけでございます。ところが、こういう点について傍観的な、私らから言えば傍観的な態度と言わざるを得ない。九百七十二万のボーダーラインにすれすれの人はこれから考えましょうという問題、それからもう一つは、この問題を、私は重ねてここで保険と非常に関係がある問題、それからもう一つは、何といったつて社会保障制度という一番最初に大臣が確認されたその考え方からいきますれば私はそのボーダーラインの層の人をどうするか。  もう一つは、これは直接労働省か知りませんけれども社会保障を確立する原則として、最低賃金世界のほとんどの国がやっている最低賃金最低生活保障、今日の憲法二十五条に保障している生活保持という問題は、非常に制限された生活保護法の人ばかりじゃなしに、すれすれのこういう層のこういう問題をどうするかということをどうお考えになっているか、これで私は時間がないから質問を終りますがその点を明確にしていただきたい。
  14. 神田博

    国務大臣神田博君) 今のボーダーライン層経済的余裕を増加するような措置をどうするかというようなこと、最低賃金の問題についてどういうふうに考えているかという二つの点になろうかと思いますが、第一点につきましては、政府におきましても、これはもう何といっても、公共事業であるとかあるいは財政投融資その他産業の振興によって、その循環によって一つ雇用の増大をはかって参りたい。それからまた、非労働力一つ労働力化しないようにこれらを社会保障一つ取り上げて国民生活の安定をいたしたい、こういうふうに私は考えております。そこでそういう前提として、今度の三十二年度の予算も取り扱われ、また、低所得階層に対するいろいろな施策を講じたわけでございますが、御承知通り国力限度がございまして、それらが藤田委員の御納得のいくまでは参らないと、また、私どもといたしましても、今日十分どころか相当額まで来ておるとは考えておりません。ただ繰り返すようでございますが、国力限度というものを考えて漸進的にやっていきたい、しかもまあできるだけ一つ早く達成いたしたい、こういう考え方でございます。これはまあしばしば他の委員会その他においてもお答え申し上げておるところでございます。  なお、最低賃金制の問題でございまするが、これは私はあることがもう当然なことでございまして、今日、日本産業界を中心として考えまして、私はできるだけ早くこれはめどをつけて実施すべきものであると、こう考えております。ただその実施する段階として、しからば、どの程度に持っていくかという、この非常に第一次、第二次、第三次というような、この賃金の格差というようなことも考えまして、どういうふうにするかというような、基本的なこれは考慮もあろうかと思います。政府といたしましても十分これに取つ組んで一つできるだけすみやかに解決したい、こういうことがしばしばお答え申し上げておる通りでございますので、御了承願いたいと思います。
  15. 片岡文重

    片岡文重君 この際、大臣に少しお伺いしておきたいのですけれども、御承知のように、この健康保険法、それから船員保険法厚生年金法等の一部改正につきましては、全国医師歯科医師、それから療養者労働者あげて反対をいたしております。新聞その他の論調を見ましても、低額所得者にこのような負担をかけることが果して現内閣の高らかに掲げておる社会保障精神に一致するだろうか、まさに羊頭を掲げて狗肉を売るというよりも、むしろなでる、なでると言いながら、近寄っていけばひつぱたかれるような政策だ、こういうやり方に対してあげて反対しておる、この世論がほとんど一致して反対をしておるにもかかわらず、民主政治を標榜しなければならぬというこの内閣がこれを強行しようとしておる。しかもこの審議に当って、当参議院の社会労働委員会においては、まだこの改正案の総括的な質問も終らなければ、条文の審査には一分といえども費しておりません。しかもここに多数を擁して無理からこれを押し切らんとされておる。私はこういう態度に対してはふんまんやるかたないものがある。しかもこの改悪される内容について検討すればするほど、今の内閣の掲げておる看板とはおよそ背馳したものです。で、時間がありませんから、船員保険法の問題について二、三私はお尋ねいたします。この船員保険法の一部改正政府提案の理由を、説明を拝見すると、「現行制度の不備を是正するともにその合理化を行うことを目途とするもの」だと、こう書いてあります。しかし、この内容を見れば一体どこにその合理化があるんでしょう。まず、船員が長い間要望しておった標準報酬限度はむしろ健康保険法では引き上げようとするのに、船員保険ではこれを据置になっております。今まで船員保険には一部負担というものは全くなかったはずです。それを今度は新設するのです。任意継続の条件についても、これはまさに漁船とか小さな機船に乗り組んでおる乗組員を見殺しにするような改悪です。こうして一つ一つあげていけば、合理化どころじゃなくて、社会保険精神を全くじゆうりんした改悪であると言わなければなりません。合理化などという言葉はもう詭弁もはなはだしいものであって、まあ大臣がいつ弁証法的な勉強をなさったか知りませんけれども、こういうやり方は、私は国民を欺瞞するもはなはだしいものだと思うのです。一体標準報酬をなぜこのまま据え置かれたのか、たとえばこの据え置くことによって起るたった一つの問題について見ても、同じ会社に雇われておってですね、陸上勤務の者は限度額が五万二千円に引き上げられます。ところが、船に乗っておる者は三万六千円ですか、このまま据え置かれるわけです。そうすると、同じ傷病手当をもらうことを一つ考えてみても、陸上勤務の者は自分の家にいて療養する場合もあるでしょう。海上勤務の場合は、場合によれば、出先の港で病気になってそのままそこにとめ置かれる場合もある。五万二千円と三万六千円との差額はその六割です。さらに大きく響いてくるわけです。この一例をもってしてみても、この標準報酬引上げというものはきわめて不合理です。この点について、大臣はどういうわけでこの引上げ据置されたのか。さらに、この問題については、船員局長は一体この今次の船員保険法——私はもう改正とは言いません。改悪について一体どういうお考えを持っておられるのか、この全般的について、それから標準報酬据置についてどういう考えを持っておられるのか、御両者から御答弁を伺いたいと思います。
  16. 神田博

    国務大臣神田博君) 片岡委員お尋ねでございますが、政府健康保険改悪をやっておるというお説につきましては、しばしばお答え申し上げましたように、さような意図を持ってもちろんやっておるようなことはございませんのみならず、健全化合理化をやっておる。このことはしばしばお答えを申し上げた通りでございまするので、御了承願いたいと思います。  そこで、このあと船員保険の問題でございますが、船員保険は御承知のように、総合社会保険として発足いたしておりまして、陸上労働者労災保険に比べまして非常にまあ手厚い措置を今までして参ったことは御承知通り思います。この今の標準報酬の改訂つきましてなぜもっと上げなかったかというお尋ねにつきましては、私も実は片岡委員のお述べになりましたことはよく了承できるのでございまして、これはこの改正には間に合わなつたのでございますが、お述べになりますお気持につきましては全く同感ございまして、適当な機会一つ、と申しますより、すみやかに検討いたしまして、適当な機会にそういった処置を講じたい、こういう考えでございまので、御了承願いたいと思います。
  17. 森嚴夫

    政府委員森嚴夫君) 船員行政を担当いたしております運輸省といたしましては、船員保険改正によりまして、船員保護が薄くなったりあるいは負担が増すということは極力避けたい所存でございます。しかしながら、船員保険の現状から見まして、その財政健全化し、また、制度合理化するという意味からいきまして、ある程度改正はこの際やむを得ないのではないかというように考えております。特に一部負担制度等につきましては、被保険者であるところの船員に実際に負担になりませんように、この船員保険改正に当りまして新たに規定を設けまして、その保護をはかりますとともに、全国にあります管海官庁あるいは船員労務官というようなものを活用いたしまして、違反がないように指導いたすとともに、取締りをやっていきたいと考えております。なお、厚生当局と十分連絡いたしまして、この趣旨を徹底いたしまして、この運行にあやまちなきを期したいというふうに考えております。  それから標準報酬据置の問題につきましては、ただいま厚生大臣がお述べになりました通りでございまして、この保険による給付を厚くするという意味からいきましても、標準報酬引き上げということは相当研究を要する問題であるのでございますが、何分にも船員保険総合保険であるというような建前からもいろいろ関係がございますので、この辺はなお厚生当局と御相談して善処していきたいというように考えております。
  18. 片岡文重

    片岡文重君 どうも時間がないのでまことに残念ですが、簡単に御質問しますから、一つ詳細にお答えをいただきたいと思います。報酬最高額引き上げることは、般員保険総合保険である関係からだとおっしゃるけれども、これは料率も別々でありまするし、それから船員の収入その他また実際に疾病の場合の傷病手当等考えれば、これは当然少くとも健康保険並みには引き上げなければならないし、むしろ私どもは少くとも七万円程度にはしなけりゃならぬ、こう考えておるのであります。まあしかし、この点については大臣は早い機会にこの引き上げ処置をとるということをお約束をしていただいたようでありますが、そう了承してよろしゅうございますか。
  19. 神田博

    国務大臣神田博君) 非常にむずかしい問題であることは御承知通りでございますが、今お述べになりましたような事情もよく私陳情その他で承知いたしております。片岡委員のお述べになられるお気持同感でございますので、この点については検討を加えて、適当な機会に善処したいと思います。こういう考えでございます。
  20. 高野一夫

    ○高野一夫君 今議事進行発言のお許しを得ましたので申し上げますが、ただいま議題となっておりまする健康保険法等の一部改正案ほか二件についての質疑はこれをもって打ち切って、直ちに討論に入られるように動議を提出いたします。
  21. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  22. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を願います。  ただいまの高野君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入るのでありますが、議事の都合上、健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)以上三案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。谷口委員外一名から、委員長の手元に修正案が提出されておりますので、本修正案を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  それでは谷口委員より修正案の趣旨説明を求めます。
  25. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案の修正案につきまして、緑風会と自由民主党の共同によりまして、ここに提案の理由を説明申し上げます。  政府提案健康保険法等の一部を改正する法律案は、国民多年の要望でありまする国民保険の実現に当り、その一大支柱ともいうべき健康保険制度の基礎的な地固めをなし、これが健全な運営をはかろうとする趣旨に出たものでありまして、その趣旨は了とするところでありますが、改正案の規定中医療担当者の協力を得て、被保険者の福祉を増進する制度本来の建前に照らし、現下の諸情勢のもとにおいては必ずしも適当でないと思われる点が見受けられますので、これを修正することといたしたのであります  すなわち、第一に、政府原案におきましては、標準報酬等級区分の最低三千円を四千円に引き上げるものとしておりますが、四千円未満の被保険者がある程度存在する実情にかんがみまして、これをとりやめ、現行通り三千円に据え置くことといたしたのでございます。  第二には、いわゆる個人開業の機関指定の更新につきましては、その実態に即して手続を簡素化する意味において、指定の期間終了の三カ月前までに別段の申し出のない限り、申請がなくても指定の更新申請があったものとみなすものといたしたのでございます。  第三には、入院の際の一部負担につきましては、入院が長期にわたればわたるほど患者の経済的困難は加重されます実情にありますので、その負担の軽減をはかりますために、期間を一カ月にとどめることにいたしたのでございます。  第四に、施行期日は、それぞれの規定について、実情に応じて修正いたしましたが、特に一部負担改正につきましては、これが円滑に実施されるためには、医療担当者、被保険者の十分な理解と協力が必要であり、また、事務的準備の期間も要しまするので、その施行期日は、その他の規定の実施期日より延期いたしまして、昭和三十二年七月日といたしたのでございます。  船員保険法の一部を改正する法律案につきましては、施行期日をそれぞれの規定について実情に応じて修正いたしますとともに、一部負担の施行期日は、健康保険法等の一部を改正法律案と同様に、昭和三十二年七月一日といたしました。  厚生年令保険法の一部を改正する法律案につきましては、標準報酬の最低を四千円に引き上げる点は取りやめ、現行通り据え置くことといたし、また、施行期日を修正いたした次第でございます。  以上がこの修正案を提案いたしました理由並びに修正の要旨でございます。何とぞ、御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第でございます。
  26. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまの谷口委員ほか一名提出の修正案は、予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三により、内閣に対し意見を述べる機会を与えなければなりません。よって、ただいまの修正案に対し、内閣から意見を聴取いたします。
  27. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまの修正案につきましては、政府といたしまして異存ございません。同意いたします。
  28. 千葉信

    委員長千葉信君) これより原案並びに修正案について討論に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  30. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は、ただいま議題となりました健康保険法等の一部改正案船員保険法の一部改正案厚生年金保険法の一部改正案、以上三案に対しまして、ただいま谷口委員から御提案になりました修正案並びに修正案を除く原案に対しまして、自由民主党を代表して賛成の討論をいたしたいと思います。  これらの三案につきましては、すでに多少の内容、条文は違っておりまするけれども、数国会にわたりまして審議を重ねて参ったのでございまして、その間長時間にわたってこれらの保険根本の問題についても、あるいはまた、改正点についても、非常なる論議が重ねられて参ったわけでございます。そこで、私どもが賛成いたしまするゆえんのものは、まず一部負担の問題でございまするが、この点につきましては、ともすれば一部負担が今回の改正案によりまして初めて新たに設けられたるごとき印象をもって一部負担に対する論議が重ねられるということについては、まことに遺憾に思う次第でございます。一部負担につきましてはすでに現行にあるわけでございまして、ことに公聴会においても話が出ました通りに、昭和二十五年に内閣にありまするところの社会保障制度審議会が、各委員全会一致をもって日本保険制度に、全国民を被保険者にすべきであり、かつまた、一部負担は合理的な制度であるということをきめまして、勧告をいたして今日に至っておるわけでございます。当時と今日とは相当の年月の隔たりはございますけれども、これらの問題の根本的理念におきましては、当時と今日はごうも変るはずはないと考えております。そこで私どもは、この一部負担の問題につきましては、今回の改正案は最近の社会情勢、生活情勢から考えまして最も適当なる改正案であると考えている次第でございます。  なおまた、修正案にありますところの三十円の入院負担を一カ月に縮めまする修正案につきましては、これまた、われわれ参議院におきまして審議いたしました結果からいたしまして、妥当なる修正の点であろうと考えます。  また、標準報酬の最低三千円を残すことにいたしたことも、当委員会における種々各員の御論議の結果からいたしまして、これまた、妥当なる修正意見であると考えます。個人開業の医療機関あるいは保険薬局につきましての指定の問題につきましては、すでに衆議院においてもその手続を簡略化すべきであるという付帯決議がなされたわけでございまするし、当委員会におきまして、谷口委員から提案されましたことは、その線をさらに徹底せしめて、これを条文において改正して、そうして個人開業の医療機関あるいは保険薬局が一たび指定を受けますれば、それはほとんど今後の手続を要せずして指定の継続と同様なる状態になるという修正案に対しましては、私どもまた適当なる修正であろうかと考えます。  一部負担の問題につきまして、健康保険、あるいは船員保険につきましての一部負担の点につきましては、施行期日を七月一日に修正をしたいというこの意見につきましても、準備その他の都合万端考えましたときに、これまた、適当なる実施時期ではなかろうかと思うわけでございます。  そのほか、本改正案におきましては、この給付について厚生大臣あるいは知事の指導と監査を受けることになり、また、医療機関あるいは保険薬局の監査についてその権利を明確化している条文があるわけでございます。この点については、ともすると、医療機関あるいは保険薬局に対する当局あるいは審査委員の監査がきわめて厳重になるのではないかという非常な別な意味の不安を持たれているようでございまするけれども政府当局の説明からいたしますれば、さような懸念がないことを感じますので、この点に関する政府の原案もまた妥当なる監査規定であろうと考えております。  そのほか、登録取り消し、あるいは指定取り消しにつきまして、私も多少条文の解釈上疑義をただしましたが、この点については、私は当局に希望をしておきたいのでございまするが、この辺の解釈に疑義が起らないように、十分医療担当者その他に注意を与えられて、この辺の解釈に将来疑義の起ることのないように一段の努力をなされんことを当局に希望をいたしておきたいと思います。  私はさような意味におきまして、修正案並びに修正案を除いた政府原案について賛成をするものでございまして、時間の都合上、詳細の論議を省きたいと思いますが、さらにここで私は最後に、衆議院における付帯決議もございまするが、これも勘案をいたしまして、さらにまた、当委員会における各党各委員の御論議の結果から判断をいたしまして、どこに私どもとして当局に希望を申し述べておきたいわけでございます。それはすでに当局においても厚生大臣が言明せられたる通りに、現行の一点単価の引き上げの御意思を明らかにされまして、その線についての操作を直ちに始めたい、こういうことを厚生大臣が言明されたわけであります。わが党におきましては、すでにこの意味の特別調査会を設けまして、ここで単価引き上げの方向に向いまして厚生省を督励し、直ちにすみやかにこの問題が適正なる評価をもって解決せられるように努力を惜しむものではないのでございまして、一段と厚生省がこの作業を急がれんことを要望したいのでございます。  なおまた、衆議院の付帯決議もございましたが、政府管掌健康保険関係に対しましてもさらに国庫の負担をなさしむるということについても、われわれ、また、各委員これはおそらく一致した御要望であろうかと考えるのでございまするが、わが党としても、この問題については、すでに十分審議を進めておるつもりでございますが、当局は一段熱心さをもってこの問題の解決に御努力賜わらんことをお願いを申し上げておきたい。  さらに、医師会、歯科医師会、薬剤師協会を法律をもって作るということにつきましては、すでに三年前に参議院のこの社会労働委員会の前身でございまする、一切の前身でございまする厚生委員会において決議をいたし、昨年の通常国会におきましては、衆議院において決議をし、今度の付帯決議におきまして衆議院がまた同様の決議をいたしました。すでに三団体の法制化につきましては、衆参両院とも委員会において三回の決議がなされたのでございます。このことにつきましては、厚生大臣は、この三団体が法制化ができました場合は、たとえば医師会なら医師会に対しまして、現在厚生省がなしているところの社会保険医療あるいはそのほかの医療上の事務的仕事については相当の部分、ある部分をそういう団体に移譲して自主的、民主的運営ができるような団体にすべきであるということを厚生大臣は言明されておるのでございまして、この点についてもわが党といたしましては、この三団体の法制化についてはすでに検討を進めておりますが、当局においては、国会の決議、希望に応じてすみやかにこの問題が解決されるように御努力賜わらんことをお願い申し上げたい。なおまた、現在の健康保険あるいはこれに関連する国民健康保険その他の問題につきましてのいろいろな論議が付随して戦わされたわけでございますけれども政府並びに与党であるわが党においても考えておりまする、四年以内において国民保険制度を実現したい、こういう点につきまして、この国民保険を目標といたしまして、根本的に日本社会保険制度についてのメスを入れて、そうして最も適正なる法律がここに制定せられんことを切望してやまない次第でございます。さような次第でございまして、私どもの現在考えておるところを申し上げ、希望を申し上げまして、谷口委員ほか御一名の提出せられました修正案並びにその修正案を除いたる政府原案に対して、自由民主党は賛成の意を表する次第でございます。
  31. 山下義信

    山下義信君 私はただいま議題になっておりまする三案並びに自由民主克から御提出になりました修正案一括いたしまして、社会党は断固全面的の反対をいたすものでございます。この討論におきまして、まず反対意見を持っておりまするわれわれが発言をいたしたいと存じたのでありますが、賛成されまする討論が先に行われましたので、若干の時間のズレは御了承を願いたいと思います。ただいま高野委員が述べられましたように、まさにこの健康保険法改正は多年の懸案でありました。この改正が企てられまして足かけ三年になります。すなわち、昭和三年の第二十二国会に始まりましてここに五回分国会にわたり今日に至ったのであります。かく数国会に持ち越されました法案もまれでありますが、そのつど内容が改変されたというのも珍しい例であります。しかもしばしば朝令暮改された法案をここにあくまで墨守しようとされる態度もまた奇怪千万、不可解千万でありまして、その無定見、無方針振りと合せて嘲笑にたえざるものがあるのであります。政治は生きものであります。もとよりその通り、ことに経済は変化する、もとよりその通り健康保険制度もまた、そのときの情勢によって変化してよろしい場合もある。私は変化してはならぬというのではない。変化することを責めるのではない。ただあまりにも変化がはなはだしいことを責めざるを得ないのであります。換言すれば、保険行政はもとより自分自身、すなわちわが国の政治経済の情勢の見通しについて全く盲目、無検討であったことを責めざるを得ないのであります。  内容につきましては、御承知通りでありますから申し上げるまでもありませんが、その提案の理由が三たび変化し、初めは赤字対策と言い、次には赤字をかねて制度の水漏れを阻むのであると言い、最後には赤字ということはあまり言わないで、ひたすら国民保険のために合理化をはかるものだと口上を変えたのである。まるでアジサイの花のごとくであります。そのくせ口には保険合理化を叫びながら、政府態度は全く不合理という一言に尽きるのは実に皮肉である。第一に、法案提出につきまして法律に定むる審議会に諮問しなかった不合理、第二には、本法案は従来と変らない案であると強弁する不合理、神田厚生大臣は、鳩山、石橋、岸内閣と三代相承である、政策もそのままである、健保改正案もそのまま踏襲したのである、これはちっと無理な強弁である。もし同じような案であるというならば、一事不再議は民主政治の原則である。第二十四国会の審議未了は、事情はどうであろうと、おごそかなる国民の審判であったのである。しかるに半歳を出でずして同一案を再度提出するということは、全く多数の威力を乱用して、この民主政治の鉄則をじゅうりんするがごとき、国会軽視もはなはだしいと言わざるを得ないのである。不合理もまことにはなはだしい態度であります。政府国民保険という誘惑的なスローガンを掲げて、本年がその四カ年計画の第一次年度であると称し、これを大的に吹聴いたしたのであります。その計画の内容、これの批判はしばらく省略いたしますが、しかるに、いまだその出発さえしない今日、早くも先ほど同僚委員質疑の中にありましたように、羊頭狗肉の欺瞞性を暴露したのである。すなわち、三十二年度予算に何らその裏づけがなされていないということはすでに周知の事実であります。国保に対する国庫の補助が、五百万人増加分として、僅々七億五千五百万円が計上されてあるにすぎない。しかもそれが、大半は人件費に回っているのでありまして、医療費に回るものはわずかに三億三千万円という少額である。あと国民健康保険法改正によって、国あるいは地方財政の援助を裏づけ、三十二年度で実現させるかのようににおわせておったのでありますが、結局これも春の淡雪と消えてしまい、去る二十八日当席において厚生大臣は、国民健康保険法改正法律案は提出を断念したと言明したではありませんか。論よりそれが証拠である。政府国民保険は売女の起請文のごとくまことがない。今、健康保険法改正は、この起請文を額に張ってわれわれ国民に臨んでおりまするが、何人もこれに信を置かないでありましょう。不合理であるというよりは、不都合きわまる一部負担であります。  一部負担のことに言及いたしますが、一部負担というのはどういうことであるか、病気になったら金を出せというのか、平生保険料を払っている、どの程度払っているかと言いますと、所得税免税点の二十六万円の勤労者で申しますと、一カ月八百四十五円、一カ年一万百四十円を払い込んでおるところで大体平均いたしまして、一年に二回くらいお医者さんにかかるのが例でありますが、鼻かぜを引いてお医者さんに見てもらって百五十円の薬をもらおうといたしますと、そのうち百円あらためて金を出せというのであります。一万百四十円の保険料を納めておいて、百五十円の薬をもらうと百円は自分で払わねばならぬというのは、どういうわけでこれが合理的なのでありましょう。歯医者さんとか何とかいうのはおおむねこれに入ります。ばかばかしくてお話になりません。それはお前が一番都合の悪い分の例を引くのだと、こう申されるでありましょう。しかし、制度というのは一部分でも不合理のところがあれば、全体が不合理であります。機械の一部分に故障があってもその機械は不良品であり、不合格品であると同じであります。また、健康保険の病人は受益者であるというが、何が受益者ですか、冗談じゃありません。病人は受難者です。この一部負担は初めは再診の人が十円、投薬、注射の人が三十円、入院は一日三十円で六カ月ということであったのです。これで二十三億五百万円の収入を企てられた。次は再診は十円、次の日から薬をもらわなければ十円、薬をもらえば二十円、入院は三十円で三カ月、これで収入が初めの分に比べますと五億六千万円ほど減収になりますが、なお十八億円の収入をはかろうということにしたのが今回、すなわち、第三回目には初診の際は現行五十円を百円に増額した。これを患者負担ということにしたのでありましてこの分でなおかつ十五億円の増収をもくろんでおるのであります。一体政府が幾ばくの収入をはかろうとしたのかわけがわからぬ。目標というものが全然ない。そんなら赤字赤字というが、赤字はどうなったかと申しますと、去年の初めは六十七億円と一言っておったそれが暮れになりますというと五十億円以下になるということをわれわれが予言をしたが、その通りでありますが、さらに今年に入りますというと、三十億円よりまだ少い、こういう状況になってきた。おそらくただいまの状況から推察いたしますと、将来、しかも近い将来黒字になるということは確信をもってここに断言することができるのであります。そこで、一部負担は赤字のためということはもう義理にも言えなくなった。すなわち、このたびは口上を変えて、制度合理化をはかるんだと言い出したゆえんであります。一部負担合理化のためと言う、ただそれだけでありまして、そんなら合理化とは何だということの説明は少しもしない。説明ができないのです。初めの案と次の案と、今度の案といずれが合理的であるか。これが合理的と言うならば、前の二案は不合理的なんです。前の案が合理的と言うならば今度の案は不合理なんです。こうくるくる変っては説明のできるはずがない。結局何であろうとかんであろうと、どこであろうとかしこで あろうと、幾らでもいい、結局は被保険者から取れるだけ取りさえすればよいという態度である。まことに無責任、かつ乱暴きわまる話である。租税の苛斂誅求と全く同じであります。負担とは一体何だ 人間負担しやすいところはおのずからその場所がきまっておる。負担の負というのは、背中でになうということなんです。担というのは片はだを脱いで肩脱ぎをしてかつぐということなんです。それでこそ負担ということができるのである。首や腰や足の回りに重き荷物を縛りつけられたら、馬でも人間でも一歩も歩けるものではない。グラッドストンは、租税の要訣を説いて、人民の最も負担しやすいところを探しで、重き荷物でもかつぎやすいようにするのが政治家の任務であると喝破せられた。今の政治家はこの逆を行こうとする。その上はついに及ぶべからざるのである。なぜかようなことをするかと申しますと、結局は労使折半を避けて、労働者のみにしわ寄せをして、資本家には涼しい顔をさせる考えであるから、もともと被保険者の一部負担は日経連の発案であって、執拗にその実行を政府に迫ったことに基因するのである。実に政府資本家の陰謀によるものであって、最も弱い、最も収入の低い、しかも最も悲惨なる病人の財布を奪わんとするものであって、極悪非道の所業と言わなければなりません。あるいはまた、乱療抑圧のためという下心があるかもわからぬ、水漏れを防ぐのであると漏らしたこともあります。しかるに、厚生大臣は、この委員会におきまして、一部負担によってどのくらい受診に影響するかということがわからぬという、また、影響はあるまいと思うとも説明いたすのである。どのくらい影響があるかということがわからぬということはまことにむちゃな話で、別に影響はないだろうというに至りましては、まことにむちゃくちゃなことでございます。しろうとというものは何を言うてもこわくないのでありますから、これはまあこれくらい強いものはない。しかし何と言おうと、受診の抑制である、あるいは善意に解すれば、今申したように、乱療の抑圧が本心であるのに間違いありますまい。もしそれ乱療抑圧のためなれば、それはすなわち制度以前の問題なのである。こういう改悪をしない以前になすべき問題がある。それは被保険者の倫理の問題であると私は考える。社会保障の倫理性の問題である。われわれは第二十四国会においてさきの改正案を廃案にしたのである。このおごそかなる国会の意思に対しては関係者は粛然として反省しなければならないと思う。政府も、われわれも、医療担当者も、被保険者も、それぞれの立場において、反省をしなければならないものがある。政府反対者の言に耳を傾け、医療担当者は自粛自戒し、被保険者は自己の保険を愛し、かっこれを守らなければならないのである。その反省の欠除はすなわち、社会保険の倫理性がきわめて低調をきわめているということを露呈しておるのである。朝日新聞はこの点を指摘し、被保険者の場合においては、社会保険を維持するための必要な受診者の道義心を要請し、この道義心なくしては社会保障制度は成立しないと指摘しておるのである。われわれ全くこの点は同感いたすものであります。しからば、社会保障関係者はおのおのの分野において責任をもって社会保障、この場合におきましては社会保険の倫理性を発揮しなければならないのであります。そうすれば、問題は解決するのである。実は倫理高揚運動などというものは、国民経済の不安定時代にはできるものではない。昔から衣食足りて礼節を知ると言っております。神武以来の景気のこの際、すなわち幸いにして罹病率の減少、受診率の減少をみようとするこの際こそ、社会保障倫理の確立、受益者の道義心高揚の絶好の時期である。試みに、今回一部負担によって増収をはかろうとする十五億円のその負担させようとするその十分の一、一億五千万円を投じてこの運動を試みて見よ、優に十倍の効果をあげ、医療費を減少させることができるのである。そのことを忘却してこのことを一部負担によってはかろうとすることは、全く木によって魚を求むるようなものであって、愚の至りであると考えるものであります。かくのごとき改悪案を考えましたのは実は禍根があるのです。それはすなわち、私が審議の過程において申し上げましたように、権威ある企画、根本的の方針が欠除しておるからであります。一体政府社会保障制度について、なかんずく医療保障につきまして基本的性格をいかに考えているのか。試みに民営主義、公営主義、国費中心主義あるいはさらに国営主義、それらの一体いかなる主義によらんとするものであるか。あるいは公私合体主義で行くというなら、その限界をどの程度に置いていこうとするのか。そういう基本方針が全く考えられていないのであります。そもそもスタートから目標がないというのでありますから、いずれに向って走っていくのか見当がつかないのは当りまえのことである。この基本的方針の欠如からくるその右往左往というものは、随所にこれが明瞭に現われておるのであります。そのおもなる点をあげてみますというと、第一は、国庫負担の原則が確立されていない。いな、国庫負担の可否論さえある。健保の義務があり、国の産業への協力のために、結核国策のためにも、国民所得の低額の点からいたしましても、保険料の負担限度にきておるという点からいたしましても、国費を注入するということは当然である。それなくば日本社会保障制度は成立しない、さらに、現在の負担につきましては、その基本方針があいまいである。従って、金額もわずかである。本法の改正案に対する、国庫負担の条文のごときは、きわめてあいまいでありまして、われわれはこれに服することはできないのであります。  無方針の第二は保険制度のあいまいさである。保険医の性格をどうであるというのか。自由診療医をチャーターする主義であるか、強制的に保険診療に参加させようとするのか、公私の性格が不明確なままで、これを規制していこうとするのでありますから、あるいは官僚統制だと言われ、あるいは保険医圧迫だと言って騒がれなければならないことになる。登録は資格認定といい、指定は契約というのであって、別に保険医としての義務も、権利も、協力の義務もない、あるものは監査に対する処分の規定のみである。これ実に保険医圧迫のほかの何ものでもないのであります。指定や契約も、各種の医療保障についても区々である。これは詳細ここで論評は避けますが実にかくのごとき無方針である。ただいま賛成されました高野委員の議論を聞いておりますと、衆議院の付帯決議につきましてこの医療担当者が関係団体の法制化のための望みを託しておられるようでありますが、しかし、私どもいささかその趣旨を異にいたしますが、とにかくよほどの当局の努力がなくば、われわれはこの法制化は困難であろうと観測いたしているのであります。第三のあいまいな点は、五人未満加入の問題であります。六十九万事業所の百五十万従業員、零細企業の低額所得者、すなわち、日の当らないこれらの人々の医療保障は、急務中の急務でありますが、政府は一向これをやろうとはしない、いかなるその方針すらもきめかねているという状態であります。政府もし勇気をふるってやるならば、断の一字をやるならば、立ちどころにこれは解決する問題である。健保が五人以上をカバーしているのは、五人以下を見捨てるという意味じゃない、健康保険法の中に今五人以上しか被保険者と認めないというのは、あながち五人以下を見捨てるという意味じゃない、五人以上という、たった四文字を削りさへすれば、しかもわずかに五十億か七十億これに投ずるというならば、これらの多年の懸案を解決することができるのでありますが、これが無方針のために、きめかねているという状態である。  次に、最も必要で、最も当局が忌避しておりますることは、医療保障体系の整備の問題である。私はあえて統合とは申しませんが、少くともこれを公平統一に整備して、冗費を省いて、そうして能率をあげ、すっきりしたものにしなければならないということは言うまでもない。なお、不統一、不公干、不均衡ぶりははなはだしいものでありますが、これをあえて推進しようという考えがないのであります。また、各種の医療保障体系の保険料のばらばらというものは、もう今日この段階においてはならぬという状況に立ち至っておりますが、さらにこれを強力に、何らかの対策を講じようという考えを持っている。さしあたっては組合管掌の健保をどうするかという問題がある。組合管掌の健康保険の性格も、明確に踏み切っていかなければならぬ段階に来ている。すなわち、労務管理的性格から社会保障的性格への転換である。われわれはもとよりこれに反対するいわれはない。共済相合が国家公務員法の労務管理である健康保険組合のいわゆる相合管掌の健康保険がただ単に労働基準法の労務管理であってはならないのです。労務管理と社会保障とは質が異なっておる、異質である。恩恵と権利は似て非である。異質のものが同じ健康保険法の中に同居しておるということ自体がおかしいのであって、すっきりした形にしなければならぬという点においては異論がないのでありますが、しかしながら、今回、保険局長がこの組合管掌健保に対して通牒を発しておりまするその趣旨には大いに異論の点が、異議があるのであります。他日これは当委員会におきまして問題として、その真意をたださねばならぬということをここに申しておきたいと思うのであります。  さらに、今回の改正案の幾多具体的の点について申し上げたいと思いますが、遺憾ながら時間の点で私も省略せざるを得ませんが、たとえば被扶養者の単位を制限するという。直系尊属と、子供と配偶者、あるいはいろいろな点におきまして制約を加えておる。この三等親の親族に限ったということは、これは一面におきましては、現在の民法の親族と平仄を合わしたという点もあるかもわからぬ。果して当局はそういうような深い考えでこの改正を企てたのか、ただ被扶養者、家族の範囲を縮小して、そうしていわゆる保険給付の額を節約しようと試みたのか、その真意はただすにいとまなしでありますが、もし社会保障全般にわたって従来の雑然たる家族主義を排して、真に社会保障制度の本質である個人主義に立脚するがごとき遠大なる考え方を持っていくというならば大いに検討の価値がありまするが、私はその真意が明らかならずして、今にわかにこの被扶養者の範囲をみだりに制肘いたしますということにつきましては納得しがたい一人でございます。  継続給付の資格が制限されたということにつきましても反対であります。一体資格喪失後の被保険者医療保障をどうしようとするのか。なお、給付の期間が満了したものの医療給付をどうしようとするのか。これらの資格喪失をいたしました者、また、医療保障制度のワクの外にはみ出されざるを得なかった対象者に対しての心あたたまる対策こそ望ましいのに、これに逆行するような本改正案に対しましては、私は反対せざるを得ないのであります。  健康保険根本対策は多くの問題が残されております。なかんずく結核対策がそのままたな上げ放置せられまして、何ぞ、国民保険を進めることができましょう。それらの根本問題はことごとくほおかぶりであります。近年同僚諸君も声をそろえ、健康保険制度根本的対策を解決しなければいけないということを力説せられたにかかわらず、今日なおそれらのことが放置せられてあって、ただ当面何と申しますか、行き当りばったりの改正を企てられたという本案のごとき粗雑な、粗悪な改正に対しましては、私どもは断固反対せざるを得ないのでございます。  本改正案はまことにわが国医療保障を破壊するものでありまして、国民保険の美名のもとにいわゆるレベル・ダウンをはかり、かえって医療保障制度根本的から崩壊し去るものでありまして、わが党といたしましては断じてこれを許容し得ないものでございます。  これに反しまして、わが党の政策は、十分国民の信頼と期待に沿うものであることを信じまして、この席であわせて御披露申し上げたいと思いますが時間の関係でこれまた遺憾ながら省略をいたします。  なお、修正案につきましては、ただ単に千分の一か、万分の一を修正いたしまして、一部に対する緩和策の手段にすぎないのでありまして、あわせてわれわれは全面的にこれに賛成しがたいものでございます。  以上の諸点をもちまして、政府原案並びに修正案に対し、わが社会党は反対の意をここに表明いたすものでございます。    〔委員長退席、理事山本經勝君着席〕
  32. 早川愼一

    ○早川愼一君 私は緑風会の多数の会員の意見を代表いたしまして、ただいま議題になっておりまする健康保険法の一部改正、その他両案に対しまして、修正案に賛成をするとともに、修正案を除く原案に対しまして賛成の意を表するものであります。  先ほどお話のありました通り、この法案は去る二十四国会以来の法案でありまして、その間非常な審議も尽されて参りましたが、今日この三十一年度を終らんとする時期が、保険財政の上におきましても最も重大な時期でありますので、いろいろ議論がありまするけれども、とにかく今日成立させることが最も緊要な問題であろうと思うのであります。  なお、委員会における質疑の応答中には、政府の主張せらるる、いわゆる政策として掲げられておりまする国民保険に踏み切るという御意思のあることは十分これを察知いたしました。しかし、ただいま問題になっている諸点は、その根本の方策につきまして、非常にはっきりしない点があるために、そこに疑点が非常に生まれてくるのでありまして、単に健康保険合理化あるいは財政の確立という点から見まするならば、今日最もこの改正を必要とする時期ではないかと思うのであります。  なお、この法案提出に当りまして、せっかく新内閣国民保険、あるいは社会保障制度の確立ということを大きく取り上げておられるならば、もっと具体的に国民に示さるべきであったと私は思うのであります。この点ははなはだ遺憾とする点でありますが、至急その御意思のあるところを具体的に国民に表示されまして、すべての健康保険を通覧いたしました一つの方策を立てられんことを希望する次第であります。また、医療機関との関係におきまして、今日私ども厚生省の非常に善意あることは信ずるのでありまするが、遺憾ながらこの点がPRと申しますか、徹底を欠いておる、非常に誤解が多いという点を質疑応答の中に明らかにされたのであります。この点は厚生省として、今後この質疑応答に繰り返されました諸点につきまして、すみやかに調査立案せられまして、実行に移されたいことを希望するのであります。それは先ほど高野委員も付言されましたように、たとえば診療報酬の問題でありますとか、あるいは医療機関の指定に関する問題でありますとか、あるいは医療請求の事柄についての簡素化の問題でありますとか、まだまだたくさん問題が残っておるのでありまするから、厚生省におかれては、すみやかにそれらの問題を解決し、あわせて最もこの健康保険に大事な協力機関である医療機関との方面との完全なる了解を得られるように、すみやかにその措置をせられんことを希望するのであります。  以上をもちまして私の賛成意見を終ります。
  33. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私は無所属クラブの多数の諸君を代表いたしましまして、ただいま上程されましたる三法案並びにこれに対する谷口委員からの修正案に対しまして絶対反対の立場におきまして、反対討論をいたしたいと思います。ただはなはだ残念に思いますることは、    〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕 冊間が非常に制約されておりまして、私の思うことが百分の一も言いえないことをはなはだ遺憾に思うのであります。  元来、国民保険ということが今日俎上に上っておりますときに、健康保険のあり方は直ちに国民保険につながるものでありますからして、十二分に討議を必要とするものであり、しかもこの討議に対しましては、質疑において、あるいは討論において余すところなく国民の前に納得のいくということか必要条件であると思うのであります。しかし、諸般の情勢からいたしまして、時間的な制約を受けておりまするのではなはだ遺憾に思うものでございます。従ってただいまは反対の理由を項目的に羅列するよりほかに方法かない、かように存ずるものでございますが、今回の政府の提案の理由は、保険財政根本的な立て直し並びに制反そのものの合理化をはからんとしておられるということは提案理由に明示ごれておるところであります。果してての提案理由の通りがこの改正案の中に織り込まれているかという問題でございます。私はまず第一に、根本的な対策としては結核の問題を忘れて、結核問題を取り上げずしてこの健康保険財政的な根本的立て直し、ないしは制度そのものの合理化というものは絶対にあり得ないと思うのであります。しいて私はこれを考えますならば、政府は結核予防法の財源的な転嫁を健康保険にいまだに求めんとする考え方がこの改正案の中に伏線とし含んでおると私はかように断ぜざるを得ないのであります。第二の問題は、国庫負担の問題でございます。政府は最初、定率国庫負担考えておられたようでございますが、この原案によりまするというと、定額の国庫負担ということに相なっております。医療費がいかほど膨張しようとも、あるいは医療費が縮小せられようとも、定額であるということは、これは監督の立場にある国の責任を明らかにする上においては当然定率であるべきであろうと私は存ずるもりでございます。なお、国庫負担のいろいろな議論かございますが、国庫負担というものは国民の文化生活、すなわちその中に含まれますところの医療水準、文化水準に伴うところの医療水準がおのずから決定するものであろうと私は存じます。すなわち、日進月歩の医学の進展に対しまして、国民の経済所得というものがバランスがとれなければならない。ところが、今日におきましては長足の進歩を医学において示しておるにもかかわりませず、国民の所得はこれについて行けない。なるほど神武景気ということを言われますが、医学の進歩のこのステップと国民の所得の間には大きなギャップがございます。このギャップを真に人命の尊重という見地からいたしまして、この医療水準をそのままに医療保険に取り入れるためには、どうしても国庫が負担しなければこれは解決がつかない問題でございます。この意味合いにおきまして、国庫負担は国の責任を明らかにするという意味合いにおきまして定率でなければならぬと、かように存ずるものでございます。  第三番目に、私がはなはだ遺憾に思いますることは、今回のこの原案を流れておりまするところの思想は、官僚医療統制ということに相なっておると私は存ずるものでございます。たとえて申しまするならば、九条の二ないしは四十三条の十におきまして、検査権の発動に伴って質問の要項がございます。この質問に対しまして私は非常な疑義を持ち、あるいは危惧の念を持っておるのでございます。と申しますことは、質問を当該官吏が被保険者にするという場合に、もし被保険者が記憶違いで間違ったことを申しますならば、虚偽の申請をしたということになる。虚偽の申請をいたしまするというと、一万円以下の罰金だとか過料ということが明示されております。また、医師の方におきましては、同じく質問を受けた場合に誤まった、間違った答弁をしまするならば、同様に局長の言われる過料として一万円以下の過料があるわけです。そういたしますると、検査権が発動いたしまするならば、もし被保険者医師との間に答弁の食い違いがあれば、必ずどちらかが罰せられるということになるわけです。ところが、その罰せられるのが、記憶違いであるというきわめて不明確なことによってこれが処理されるわけなんです。私は試みに厚生大臣にお聞きしたい。大臣は、昨晩の夕食の副食は、おかずは何であったかと今お聞きしたい。即刻に大臣は、タベのおかずは刺身であった、あるいはすき焼であったということが言えるかということを私は疑問に思うわけです。突然にだれに聞きましても、いやタベのおかずは何だったかなというのが当然であろうと思う。その証拠には、東京の日赤病院が先般この問題に関連いたしまして、患者にアンケートを求めました。日赤の病院に来る患者に対して、あなたはどこの病院へ行ったかという質問を発した。当然これは日赤の病院へ行ったという答えが出る。百パーセント、これはさすが間違いなく、私は日赤の病院へ行ったという回答がございました。ところが第二の質問で、あなたは日赤病院に何回通院したかという質問をした。そのアンケートの答えは、四〇%しか正確でなかった。六〇%は間違った答えをしておる。間違った答えが、検査官の認証によっては虚偽になる場合が往々にしてございます。私はそういう実例を適去三カ年間検査に立ち会いまして体験いたしております。六〇%の被保険者は記憶違いでもって、通院回数が違っておる。ところが、それに対して対決するところの医師のカルテを見ましたときに、かりにこれが五回となっておる。患者は三回だったという場合に、検査官はこのカルテを信用するのか、あるいは被保険者の陳述を信用するのか、問題はここにございます。従来は多くの場合は、証拠裁判的に、あるいは医者の人格を尊重して、カルテによって処理されておりました。この点は私非常に、厚生省の英知に対しまして非常に私は感心して参ったのでございまするが、今回のこの法律によりますというと、もう明らかに必ずどちらかを処罰しなければならぬ。不正を発見した場合に、官吏がこれに対して何らかの結論を与えなければならない。非常にこの質問に対しまするところの罰則というものは過酷であるということを思うわけであります。これは何とか考えなければならない。もしこの法律が明日通るといたしまするならば、少くとも運用の上におきましては、十二分なる配慮をしていただきませんというと、今申しましたように、通院は何回したと言ったら、四〇%しか答えが合わない。ではお前は何回手術をしてもらったか。手術をするのですからこれは痛い。痛いから記憶違いがないはずだ。にもかかわりませず、手術の回数が八%しか合うていない。こういうように百。パーセントの答えは、日赤へ行ったということだけなんです。その点を十二分に脳裏に入れていただきまして、この法律通りましたときの運営に当っては、格段の御配慮をいただかなければ、全くこれは、この活字から見まするならば、専制政治であると私は断ぜざるを得ないのでございます。こうした点を特に私はこの機会に強調いたしたいと、かように存ずるわけでございます。  それから今、一部負担の問題が山下委員から述べられました。私も同様な心配を持っておるわけでございます。一体、医療内容の向上拡充と、制度の利用によるところの費用の増大と、これに対応する勤労所得の伸び悩みに伴うところの保険料の頭打ちは、国庫負担が補うということを先ほど申しましたが、同時に、頭打ちによるところのアンバランスを一部負担に求めるがごとき思想がこの中にひそんでおるといたしまするならば、これは絶対に私は慎しまなければならないところであろうと思うのでございます。とりわけ受益者的な解釈をするということは、これはとんでもないことでございます。好んで医者に行く患者はございません。忙しい、あるいは遠方のところ、わざわざ歩いて時間をつぶして行くような患者はございません。医療扶助の本質も、他の社会保険と同様でございまして、ただ医療行為というものが伴うだけであって、明らかに医療保険というものもその被保険者の経済的な生活をカバーするというのが健康保険のあり方だと思う。そういたしますというと、カバーするのだ。経済的な面においてカバーするのがやはり医療保険なんだ、終局の目的は経済的なカバーなんだ。病気をなおしてやるその背後には、経済的なカバーをしてやるということなんです。この経済的なカバーをするにかかわらず、その療養費の一部を負担さす、受益者的な考えから一部負担をさせるなんということは、これは全くナンセンスでございます。私はこういう意味において試みに質問したい。あるいはお前のたとえば飛躍しておるとおっしゃるかもしれませんが、同じことなんです。社会保険で、失業保険の受給者がこれは受益者だからというて失業保険の被保険者から一部負担を取りますか。同じことなんです。ただ手段が、病気をなおすかあるいは病気を通じて経済負担を救ってやる、片一方は、失業によるところの経済負担を救う、考え方は同じなんです。そういたしますというと、大体一部負担ということの考え方がおかしい。その証拠には、先日も申しましたように、この一部負担制度というものは一時設けてみたり、それが廃止されたりあるいは任意制度でやってみて、また廃止されて、今回またこういうように拡大されるというように、一部負担というもののあり方は、保険の本質からいってこれは全く不合理だということを言わざるを得ないと思う。とりわけ歯科におきます特殊性というものがこれに入っておりません。歯科におきましては、初診時には多くの場合七点、初診料と処置の点、そういたしまするというと、甲地で八十七円五十銭、乙地で八十円五十銭なんです。一部負担というのは療養費の一部を負担すべきものであろうと私は思う。ところがそうでない、もう全額負担なんです。だからこの法律の文句を変えられて一部負担というものを全額負担になさる方がいいと思う。全額負担なら保険は要らないはずなんです。しかもその歯科に参ります患者の四〇%は一回きりで帰ってしまう患者なんです。ただ歯の痛みがとまったら帰る患者なんです。それが百円の一部負担ということになりますというと、非常におかしい計算が出てくる。もとより徴収は八十七円五十銭しかできません。できませんが、非常にこういう面におきまして全額負担をさすというところに、私は矛盾があるとかように存ずるわけなんです。  次に、医療報酬金の問題等につきましても私は討論を進めて参りたいと存じますが、時間がないそうでございますので、はなはだ討論がしり切れトンボで遺憾に存じますが、以上をもちまして、私は反対の理由を二、三だけをここに開陳いたしまして、この三案に対しまする反対の意思表示をした次第でございます。
  34. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は国会運営の正常化のために、あえて国民のためには涙をのんで、かかる事態に立ち至りましたことをはなはだ遺憾としつつ、ただいま議題になっておりますところの政府原案並びに谷口委員提出の修正案に対して強い反対の討論をいたすものでございます。時間の関係上、前者の漏れた点を四つだけ指摘いたしたいと思います。  第一は、今回の改正法が、政府管掌、組合管掌並びに船員保険の二千二百九万の人に関係があるのでございますけれども、これはさらに共済組合のみならず、生活保護にも全部通ずるものであり、さらに国民健康保険に加入をしている人々、全部で六千万の国民に直接関係のあるものでございます。そうしてまた、医療担当者十数万に関係のあるものでございます。私は大臣が、これらの人と、医療担当者とも国民とも十分な話し合いをしなかったということ、厚生省が昨年たびたび指摘したところの理解と納得と協力を今回は捨ててしまったということをはなはだ遺憾に存ずるものでございます。法律のこの条文の改正一つ一つにつきまして、一つ残らず反対いたします。たった一つ本日の修正案で出ました四十三条の三、「別段ノ申出ナキトキハ第一項ノ申請アリタルモノト看倣ス」非常に事務の簡素化がここで行われています。こういうような簡素化を今までにしておっていただいたならば、医療担当者はこれほど反対をしなかったでございましょう。しかし、これといいながらこれも機関指定、個人登録の問題は少しも手を触れておりません。はなはだ遺憾とするところであります。私はまず理解と納得と協力のなかったこの改正、これが最も遺憾とする点であることを指摘しました。しかるに大臣は、たびたび国民保険という旗じるしを掲げて、その旗じるしのもとに、金看板のもとにこの改正法をそっと通してしまうような態度をとられました。そして、われわれがその看板はほんとうかといいますと、たとえば竹中委員もただいま指摘されました通り、結核の問題も一つも審議されませんでした。今日、大臣は予防検診に八億八千万円出して徹底的にやると、これなどはわれわれの大きな抱負であると言われました。しかし、現在七百八十九の保健所で五千四百万という予定された人間をほんとうに検診できますか、私ははなはだ疑問だと思うのであります。特に一部負担の問題について、受益者負担だとか、公平な負担だとか、神武景気だから大したことはないと言われましたけれども、今度一日三十円、三カ月を一月に一応減らされました。しかし、患者さんにとっては、この九百円というものは大きな金であります。これはたとえば生活保護入院しておられる方、もちろん健康保険とは違いますけれども、金の値打ちは同じでございます。この生活保護で長期入院しておられる方の生活扶助費というものは今日六百円です。私、大臣こういうことをお聞きになったことがないと思いますから、少しめんどうくさいかもしれませんけれども、その一つ、二つ申し上げてみます。たとえばこの六百円の中にはパンツ代が十円、あるいは補修の布代が四十三円三十三銭、この中にはまた、げたもあります。げたが八十三円、縫い針が三十二円、洗たく石けんが四十円、歯ブラシが七円五十銭、こうずっとこまかく分けて、しめて六百円。この粒々辛苦の六百円が生活保護入院している人たちの生活の扶助費なんですよ。その扶助費の六百円を上回るところの九百円を今度皆さんは一カ月でおとりになろうとしている、この点は、もし大臣がこれをどうしても九百円を負担して、この上大したことはないと言われるならば、どうぞ生活保護入院しておられる方の扶助費をずっと上げていただきたい。そうしなければ、この六百円と九百円のバランスがとれません。私はそういうお考えのもとに行われていることを……
  35. 千葉信

    委員長千葉信君) 傍聴席の発言を禁じます。
  36. 坂本昭

    ○坂本昭君 このたびの計画に対して大きな不満を持つものでございます。大臣はどうも抽象的なことを申し上げましても眠ってしまわれるかもしれませんので、一つ具体的なことで——討論であります。同時に、あと処置していただかなければならない問題、それは今度国民保険ということを言われます。現在ほんとうにほとんど皆保険の村、八二・二%が国民保険に入っておって、この村は岸内閣よりももっと進歩しているんです。二年間に四千九百九十七名の全村を国民保険に全部入れて、そういう岸内閣以上に上回ったところの計画を持っている村が秋田県にあります。そこの村が実際にどういうことをしているのか、この村の国民保険は現在八二%やっていますが、黒字です。二万円の黒字があります。ところが、ここには現在検診をやりまして二十六人のこの結核の患者、これは例の厚生省の実態調査によるところの要医療結核患者でございます。二十六人おります。この中に入院をしなければならない人が十八人、自宅療養でもよろしいという人が八人おります。その入院をしなくちやならない十八人のうちで実際に入院しておる者がたった七名で、自宅で療養しておる者が五名で、医学的に何もしていない者が六名いるのです。これが国民保険を二カ月でやろうと言っている村、現在八二%も国保に入っておる村、じゃなぜこういうように岸内閣よりも先に進んでおる村で、二十六人もの患者さんがおりながらしかも入っておる患者さんといったらごくわずかである、それじゃみんなこれで満足しておるかといえば決して満足しておるのじゃありません。これに対するこまかい分析があります。私はそのこまかいことを除きましてその中の一人の人、入院のできない人、ちょうどその人は一町歩の田を持っておる人ですよ、そうして保険料は年間三千円も出しておる人です。しかもこの人が入院できない、なぜかというと、国保の給付内容が悪いからです。こういうものを私はあとまだ三つ、四つも出したいと思ったのですが、時間の都合もありますから、私は一つだけ今度は高知の例をあげます。高知は、今大臣が言われた予防検診を公費負担でやることをもうおととしからやっておる、高知市が。その高知市が現在その予防検診を昨年度二〇%足らずしかできていないのですよ、そうしてこの高知市では国民健康保険をやろうとしてえらいもんちゃくを起しております。事ほどさように現在の各市町村の財政状態が困雑であるし、また、お医者さんの協力も非常に困難である。私はそういう現実をまず一つつかんでいただきたい。ところが、今度の改正で高野委員は、この保険局の検査、監査は決して検察的でないという説明を聞いて安心をした、だから賛意を表すると言われましたけれども、今日医療担当者がなぜこれほど反対するか、その一番強い反対の理由はあまりにきびしい検査と監査と指導の実情であります。時間がないと言いますけれども、これだけは私はどうしても申し上げて聞いていただかなくちゃならぬ点であります。私は何も保険局の人たち、人間を憎んでいるんではありません、私はただ組織と制度とを憎んでいるんです、これこそまさに警察行政だと思うからであります。たくさんのものが私のところへ一ぱい来一ておりますが、たとえばその一つとして、お医者さんが診察をしておると午前中に検査にやってくる、午前中というと、お医者さんが一番忙しい、そうして取締り的な態度でやってくる、若い栄養士の人がそのために脳貧血を起して倒れたという例を聞いた人があります。もしうそだというならば、私はこの名前を報告してもよろしい、あるいは書類第一主義のために医療が第二になってしまう、こういうようなことを強要されるという訴えが次から次とたくさんあります。たとえば診療後に夜間の手術をしたときの時間の記載がなかったら、これはお前うそだろう、こういう書き方はいかぬ、いかぬだけじゃない、こういうものの支払いをしてやらない、そういった態度でやってくる。あるいは指導に来られた人が、君はどこの大学の出身だと、お前の習い方はずいぶん間の抜けた習い方をしておる、そういう質問的なことを言う、こちらが何か口をいれると、黙っている、こういう態度で終始される、こういった訴えが幾つも幾つもあります。私はその中で残念ながら一つごく新しいことでこういうことを申し上げましょう、かぜで休んでおられたお医者さん、これは全部わかっておりますよ、そこに電話がかかってきて、これは健康保険のある出張所の事務官です、今夜は、まだ飲み足りないから、先般案内された築地の料理屋へ案内しろ、そういう電話がかかってきた、そこでお医者さんは病気で休んでいる、今案内しろといったってとてもできない、そうするというと、今から行くからちょっと一杯構えておけ、そういうようなことを強要しておる。実はあとにまだありますけれども、とどのつまり、この事務官は来て、そうして非番の看護婦まで動員して、彼らの酒の相手をせざるを得なかった、こういう訴えが来ておるのであります。まだありますよ、たとえば事業所に来て、そうしてその人が戦争中にかかった性病、それをみんなの前で質問する。しかもその事業所には、彼のいいなずけがおる、彼が黙秘権を行使してついに最後まで黙ってしまった。けれども、今度の規定でいくと黙秘権も処罰されますよ。私は今ことさらこう いうことを言って、こういう仕事に携わっている方を特に摘発しようというのではありません。けれども、こういう現実がどれほど医療担当者をして憤激させておるかということ、これは高野委員がどれほどおほめになったとしても、あるいはこの間の公述人の方が、善良なる官僚といったああいう表現をしても、大衆は身にしみて感じておるのですよ。この点は忘れてはどうしてもいけないのであります。まだこまかい点に触れますと幾らもありますが、これは一つ勝俣博士もおられますから一つ申し上げたいことは、今後大学病院、国立病院は、この第一項の指定を受けることになりますね。これは大学やあるいは国立の病院、文部大臣厚生大臣までがこの中に全部引つくるめられてしまうことになるのです。私はあまり保険行政が広がり過ぎると思うのですよ。厚生大臣、この点一つ御注意なすっていただきたいですね。厚生行政は幾つかの足がありますよ。公衆衛生の問題、医務局の問題、業務局の問題、社会局の問題 その一本の足だけべらぼうに大きくなることはこれは厚生行政の危機であります。そういう点で、この法律改正法の根本を貫いておるところの趣旨、精神、その点に関して私は絶対反対の意を表するとともに、今後は政府の約束を監視いたしましょう。それからまた、特に保険当局の民主的な法の運営を監視することを皆さんの前にお誓い申し上げまして、私の反対討論を終ります。
  37. 千葉信

    委員長千葉信君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認  めます。   それではこれより健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)について採決に入ります。  まず、討論中にありました谷口君外一名提出の修正案を問題に供します。谷口君外一名提出の修正案に賛成の方  の起立を願います。(「反対」と呼ぶ者あり)    〔賛成者起立〕
  39. 千葉信

    委員長千葉信君) 多数でございます。よって谷口君外一名提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました部分、一を除いた原案全部を問題に供します。原案は内閣提出衆議院送付案でございます。修正部分を除いた原案に賛成の方は起立を願います。(「反対」と呼ぶ者あり)    〔賛成者起立〕
  40. 千葉信

    委員長千葉信君) 多数でございます。よって修正部分を除いた原案は可決されました。以上の結果、本案は多数をもって修正すべきものと議決せられました。   —————————————
  41. 千葉信

    委員長千葉信君) 次に、船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)について採決に入ります。  まず、討論中にありました谷口君外一名提出の修正案を問題に供します。谷口君外一名提出の修正案に賛成の方は起立を願います。(「反対」と呼ぶ者あり)    〔賛成者起立〕
  42. 千葉信

    委員長千葉信君) 多数でございます。よって谷口君外一名提出の修正案は可決されました、  次に、ただいま可決されました部分を除いた原案全部を問題に供します。原案は内閣提出衆議院送付案でございます。修正部分を除いた原案に賛成の方は起立を願います。    〔賛成者起立〕
  43. 千葉信

    委員長千葉信君) 多数でございます。よって修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正すべきものと議決せられました。
  44. 片岡文重

    片岡文重君 私はこの際、船員保険法の一部を改正する法律案に対しまして、次のような付帯決議を付することの動議を提出いたします。    付帯決議案  健康保険の被保険者標準報酬額を引き上げた反面船員保険の被保険者標準報酬を最高三万六千円に据え置き、しかも被保険者の一部負担制度をなすことは、船員保険の療養給付の趣旨から見て、矛盾を感ぜられるから船員保険法については、早急に根本的な改正について検討の必要がある。   右決議する。  すでに理由についてはたくさん申し上げたい点があるのでありますけれども、時間がありませんから、項目的に羅列いたします。船員保険法の赤字が出てくるということは、健康保険法の赤字の原因と同じように、被保険者に結核患者が非常に多く発生しているということであります。しかし、政府は、この結核患者の予防対策を何ら講じておらない、集団検診もやっておらない、こういうことははなはだ遺憾でありますから、こういうことをもし政府が意を改めて集団検診を強行し、そして結核予防にさらに力を入れていくならば、船員保険の赤字はたちまち解消していくことは火を見るより明らかであります。従って、今後一そうこれに注意を払っていただきたい。  それから一部負担の問題につきましても、この赤字さえなくなれば当然やめることを政府考えられると思うのであります。特に一部負担の問題については、陸上勤務と違って、船の寄港先寄港先で診察、初診を受けなければなりません。診察を受けるたびに初診料を払わなければならぬ。こういうことをお考えいただけるならば、やはり少くとも船員保険についての初診料は全廃していただかなければなりません。  さらに、この百円の初診料でありますが、船員が支払って、それを船主がさらにその船員に支払う、つまりこれはどっちからくるかというと、船員法八十九条によって「船員が雇入契約存続中職務外で負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、三箇月の範囲内において、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。」と明確に規定してあります。この規定をのがれるためにそういう煩瑣な処置をとる。しかも零一細な漁民が請求することのできないような苦しい立場に追い込んでおります。こういうやり方ははなはだ遺憾であります。でこの際、一部負担制度については早急にこれは廃止してもらわなければならない。  それから標準報酬については、先ほど大臣がすみやかにその具体的措置を講ずると約束をされたのですから、これまた、可及的すみやかにこの改正を行なっていただきたいということであります。なお、そのほかに問題となる点は、この船員保険法についてもたくさんありますから、この根本的な改正について、ぜひ具体的な検討を加えていただくことをこの際要望するものであります。これが本決議を提出する理由であります。
  45. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまの片岡君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  46. 千葉信

    委員長千葉信君) 全会一致でございます。よって片岡君提出の付帯決議案は、本委員会の決議とすることに決定いたしました。   —————————————
  47. 千葉信

    委員長千葉信君) 次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)の採決に入ります。  まず、討論中にありました谷口君外一名提出の修正案を問題に供します。谷口君外一名提出の修正案に賛成の方は起立を願います。(「反対」と呼ぶ者あり)    〔賛成者起立〕
  48. 千葉信

    委員長千葉信君) 多数でございます。よって谷口君外一名提出の修正案は可決されました。(拍手する者あり、「だれだ手をたたく者は」と呼ぶ者あり)御静粛に……。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。原案は、内閣提出衆議院送付案でございます。修正部分を除いた原案に賛成の方は起立を願います。(「反対」と呼ぶ者あり)    〔賛成者起立〕
  49. 千葉信

    委員長千葉信君) 多数でございます。よって修正部分を除いた原案は可決されたました。以上の結果、本案は、多数をもって修正すべきものと議決されました。  なお、ただいままでに議決されました議案の、本会議における口頭報告の内容議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますので、各案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     吉江 勝保  勝俣  稔     谷口弥三郎  紅露 みつ     横山 フク  榊原  亨     近藤 鶴代  寺本 広作     草葉 隆圓  早川 愼一     森田 義衞  高野 一夫
  51. 千葉信

    委員長千葉信君) 本日はこれをもって散会いたします。    午後十一時五十三分散会