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1957-03-28 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十八日(木曜日)    午後零時四分開会   —————————————   委員異動 本日委員田中茂穂君及び斎藤昇君辞任 につき、その補欠として小山邦太郎君 及び谷口弥三郎君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            高野 一夫君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            小山邦太郎君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            横山 フク君            吉江 勝保君            木下 友敬君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山下 義信君            竹中 恒夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    厚生省大臣官房    総務課長    牛丸 義留君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省保険局長 高田 正巳君    運輸省船員局長 森  巖夫君   法制局側    法 制 局 長 斎藤 朔郎君   —————————————   本日の会議に付した案件健康保険等の一部を改正する法律案  (山下義信君外四名発議)(第二十  五回国会継続) ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それではこれより社会労働委員会開会いたします。  委員長厚生大臣の不手ぎわのために、委員会開会がおくれてまことに申しわけありません。  まず、委員異動を御報告いたします。  三月二十八日付をもって、斎藤昇君が辞任し、その補欠として谷口弥三郎君が選任されました。   —————————————
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会参第一号)、健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第四号)、船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第五号)、厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第六号)  以上四案を議題といたします。御質疑を願います。
  4. 神田博

    国務大臣神田博君) 内閣委員会が開かれまして、厚生省設置法の一部を改正する法律案議題になっておりまして、今日は採決の日でございまして、どうしても私出席を要求されまして、こちらへ伺うことがおそくなりましてまことに恐縮いたしております。  なお、恐縮いたしておるのにもう一つ御了解お願い申し上げたいのでございますが、予算委員会が今最終の段階でございまして、分科会が始まる直前でございまして、すぐこれからどうしても厚生大臣出席しろと、全部閣僚出席しておるのでございますが、厚生大臣だけが委員会に参りませんので開会ができなくなっておる。そこで私は、当委員会におきましては、連日厚生省所管重大案件健康保険法等の一部を改正する法律案ほか三件を御審議願っておりまして、私どもといたしましては、何よりかえがたい御審議でございますので、こちらにとどまりたいのでございますが、政府全体としまして、三十二年度予算の最後の結末をつける段階になっておりますので、閣僚全部そろって出席するまで議事を開かないという慣例でございますので、まことに恐縮でございますが、一つ皆さん方の御了解を得まして、あちらへ参りまして、また、こちらに戻って参りまして御審議をお願いしたい、かように御了解願いたいと思いますが、よろしく一つ……。
  5. 千葉信

    委員長千葉信君) お聞きのように、時間は大体二十分程度だそうでございますから、御了承願いたいと思います。
  6. 高野一夫

    高野一夫君 私は条文解釈上の疑義についてお尋ねしたいので、保険局長説明を求めたいと思うのでありますが、四十三条の三の医療機関指定の問題であります。この医療機関指定の問題について、病院あるいは個人開業診療所の場合と、いろいろ実情としては違う場合があると思うのでありますが、衆議院においてもすでに付帯決議において、個人単独診療所を開設している場合の指定更新については、特別の手続簡素化をはかられたいというような意思表示決議されております。そこで、この問題については、われわれも一人の保険医師診療所を開設する、こういうような場合に、三年ごと更新について特別に手続が煩瑣にならないように、きわめて簡素な特別の方法行政措置としてとられるかどうか、とってもらいたいということを条件といたしまして、衆議院意思表示もあったことでありますから、すでに当局においては、多少御研究があろうかと思うので、どういうような程度に、どういう方法で、簡素化方法考えておられるか、これを御説明願いたい。
  7. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) この手続の点は、命令で書くということになっておりますので、省令によりまして次のようなことを明確に規定いたしたいというつもりでおります。それはいわゆる個人開業医の場合におきましては、この指定更新希望がある旨を書面で申し入れれば、いろいろな、添付書類とかむずかしいことを要求しないで、ただ自分指定更新希望があるということを書面で申し出られるということだけを手続として決定いたしたいと考えております。  なおまた、その申し出られる時期でございますが、これは相当ゆとりを持って相当な——この期日の参ります相当前でも差しつかえないというふうに規定をいたしたい、かように考えている次第でございます。  さらに、その際に、これは省令の中身でございますが、行政上の措置といたしましては、むしろ保険官署の方から逆に照会——まあ忘れたり何かされるおそれがありますから、照会をして、いかがですかというふうなことにもいたしたい、これは行政上の措置考えておりまして、それらのことにつきましては法律案成立をいたしましたならば、あらためて診療担当者団体と御相談をいたしまして、いかなる行政措置を講ずるかということにつきましては、さらに御希望を承わつて物事考えて参りたい、かように考えております。
  8. 高野一夫

    高野一夫君 よくわかりましたが、こういうことは考えられないものですか、私はそれを逆に考えるわけです。そこで更新をしたいという希望があった場合に、きわめて簡単な手続更新ができたような形をとるというのでなくして、ほったらかしておけば、これはもう更新希望しているのだと、従って、更新したくない人だけは申し出る。私はやめたいと思うなら申し出を取り消してもらわなければならないから申し出る。そこで申し出ない場合は、もうすでに更新希望があるものと考えて、手続省略というような方法考えられないのかどうか。これはどうですか。
  9. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) それは省令規定をいたしまする範囲外のことであろうかと存じます。そこまで参るということになりますると、やはり法文そのものを若干変更なり追加なりをいたしませんと、そういう扱いには法律上ちょっとむずかしい、かように存ずるわけでございます。
  10. 高野一夫

    高野一夫君 よくわかりましたが、そこで先ほどのあなたの、希望を申し出た場合における手続簡素化方法でありますが、この点について、さらにもっと簡略化する方法はないのかどうか。希望を申し出るということ、かりに希望を申し出て、それに対してやはり一応はがきなり文書なりで手続をしなければならないと思いますが、何か格好がなければならないのだと思いますが、そういうようなこともできるだけ簡略化する方法はないものかどうか。
  11. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 先ほどお答えをいたしましたように、その意思がある旨の書面による表示があればこれはもうそれでいいというふうな手続にいたしたいと考えておるわけでございます。さらに、そういう省令の伴う行政措置といたしましては、こちらからいかがでございますかと、もし御希望ならば、まあ別紙に、診療所の所番地、開設者住所氏名というようなものを書いてお送りを願いたいと、こういうふうな行政措置を、これはまだ確定したわけではございませんけれども診療担当者団体と御相談の上でそういうようなことをやったらどうかというふうに考えておるわけでございます。手続といたしましては、これ以上簡素化いたしますることはちょっと不可能かと存じます。
  12. 高野一夫

    高野一夫君 衆議院委員会においても、すでに希望が、決議が出たわけでありますが、われわれとしても、個人開業については、できるだけ簡素化した手続によって更新がなされるように、私はお願いを申し上げておきたいと思います。  続いて私は、これは大臣にもただしたいのでございますが、おいでにならないから、あなたに申し上げたいのだけれども、二重指定という言葉を使われておる。それを私は、二重指定とは絶対にこの改正案はなってないはずだと思う。個人登録、これは自然保険医なりあるいは保険薬剤師なり、保険歯科医師なり、登録は終生有効な登録としてなさなければ、保険診療はできないわけですが、一方は機関指定であって、決して二重指定にはなってない。ところで、二重指定という言葉が平気で使われている。そこで、はなはだしくは、厚生省のあなた方自身が、ともすれば、二重指定の問題はどうこう、二重指定の点はどうこうと、こういうような言葉を使われるやに私はちょいちょいうかがうのであるけれども、この二重指定という言葉、少くとも政府当局の原案を出された方面では、こういう言葉をお使いになっちいけないのじゃないかと私かは思いますが、それはどういうふうにお考えになられますか。
  13. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 高野先生のお述べになりました通りでございます。私どもは二重指定という言葉は使っておらないつもりでございますが、機関指定という言葉は使っておりますが、二重指定という言葉は使っておりません。今仰せ通りでございまして、機関指定、従来の個人指定機関指定に変るということが今回の改正の趣意でございます。個人登録というものは、機関指定一本でいきますと、いろいろ支障が起りますので、これを補完的に個人登録というものを残しておかなければ……、それは先生指摘通りに、二重指定というふうに申すことは誤まりであろうと私も考えております。
  14. 高野一夫

    高野一夫君 この二重指定言葉は、医師会方面においても、そのほか一般の方面におきましても、被保険者階層におきましても盛んに使われておる言葉でありますから、この二重指定なる言葉は、この改正案に関する限りは当らないものであるということについて、特に改正案を出された厚生省政府当局はその徹底に十分一つ留意を願いたい。  引き続いて、四十三条の十五について伺いたいのでありますが、都道府県知事保険医療機関あるいは保険薬局指定を取り消すとか、あるいはまた、登録を取り消すという場合には、その機関代表者開設者あるいは保険医師または保険薬剤師に対して弁明機会を与えなければならないということになっておる。この弁明機会はどういうふうに与えられるのであるか。手続としては書面をもって通知するとなっているけれども、だれに一体弁明をするのであるか。その前の四十三条の十四によりますというと、指定をしたり、登録をしたり、あるいはその指定を取り消したり、登録を取り消す、こういうような場合は、地方社会保険医療協議会に諮問をしてなすということになっておる。しからば、そのあとの取り消される場合の、取り消される側が弁明機会を与えられるのは県庁に対して弁明をするのか、地方社会保険医療協議会において弁明機会を与えられるのか、これはどういうふうに解釈したらいいか、この点を伺いたい。
  15. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 法文そのものは、弁明場所につきましては、何も触れておりません。ただ私どもといたしましては、本人希望されるならば、原則的には、医療協議会の席上において本人弁明をしていただくようにいたしたい、かように考えております。ただこれは従来の実例等もあるのでございまするが、そういう公開の席上で、みんなのおる前で言うことは自分としては好まない、むしろほんとうに県庁あたりいろいろ話をしたい、こういう方もおありのようでございますから、そういう方は別でございますが、原則といたしましては、医療協議会場所で御弁明を願う、あるいはそこへ弁明文書をいただいて、その席で文書を御披露して弁明手続をするというふうなことに運用をいたしたい、かように考えております。
  16. 高野一夫

    高野一夫君 地方社会保険医療協議会というような所で、大ぜいいる所で弁明することをいやがる人もあれば、県庁なんかに行って、頭ごなしにやってけられるから、そういう所で弁明するのはいやだと、こういうような考えをお持ちの方も出てくるだろうと思う。そうすると、原則としてはできるだけ地方社会保険医療協議会において弁明機会を与えたい、こういうふうの厚生省側の御意向のようであるけれども、これは本質的には保険医師あるいは保険薬剤師の側から見まして、私はどこどこで弁明機会を与えてもらいたい、この希望を披瀝して、そして私は県庁でやりたい、あるいは協議会でやりたい、こういう希望によってその場所を決定するということができますか。そうしてもいいという考えをお持ちであるかどうか。
  17. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今御指摘仰せのように、本人の御希望というものを尊重をいたして参りたい、かように考えております。
  18. 高野一夫

    高野一夫君 その点はそれで了承いたしましたが、第四十三条の十について伺いたい。これは検査に関する規定である。それで「保険医療機関ハ保険薬局ニ就キ設備ハ診療録帳簿書類其ノ他ノ物件検査ヲ為サシムルコトヲ得」とこういうふうになっております。ところで、診療録とか帳簿書類その他の物件検査をそういう機関においてなすことは、これは当然かもしれないけれども設備についての検査というのはどういう意味であるか、医療機関設備あるいは薬局設備というものは医療法あるいは薬事法において規定されているものであって、設備に関して検査をする必要があるならば、医療法に基いて、あるいは薬事法に基いてなすべきものじゃないか、この保険医療に関して、なぜこの設備について特別な、保険医療機関としての特別な設備というものが必要であるのかどうか、そういう規定は私は条文を見てもないように思うのですけれども、この医療機関設備について検査をするという意味はどういう意味であるか、この点を一つ説明を願いたい。
  19. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御存じのように、病院等におきましては、給食設備等ございまして、しかもこの完全給食という制度を今運用いたしております。それで、完全給食ということになりますと、三点加算をいたすということであります。それで、完全給食基準というものがございまして、完全給食には設備は清潔でなきゃならぬとかいろいろあれがあるわけでございます。それで、そういうふうに特に加算をして診療報酬を支払うというふうなことに関連する設備もございますので、さようなことを保険の観点から見るということでございまして、病院診療所あるいは薬局の一般的な設備というものは先生指摘通りに、それぞれ医療法なりあるいは薬事法なりというものでこれは監督をされるものでございます。
  20. 高野一夫

    高野一夫君 この設備について、医療法薬事法に関する設備はこの四十三条の十の中に入ってないということが明確にわかれば私の質問はそれでいいわけでありまして、当局の御解釈に私は了承をいたします。
  21. 榊原亨

    榊原亨君 ちょっと関連です。ただいま給食設備のお話がありましたのでありまするが、現在地方における実情を見ますというと、生活保護法による完全給食条件と、並びに健康保険によりますところの完全給食条件、言いかえますならば、施設の基準と申しますか、その判定がまちまちであります。また健康保険そのものにつきましても、各県ごとにおけるところのその基準判定というものはまちまちでありますが、この法律がもし施行されることになりますというと、それらの矛盾と申しますか、不統一な点につきましては、これを改正される意思がありますかどうか、承わりたいと思います。
  22. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 保険関係のこの完全給食設備程度につきまして、各府県間でまちまちである。これのばらつきを統制する意思があるかどうかという御質問につきましては、私どもそういうことに努力をいたしておる次第でございます。従来も努力をいたしておるわけでございますが基準というものが実は非常に抽象的な現行基準になっておりますので、先生指摘のようなうらみがあるいはあるかと存じます。従いまして、この法案が成立をいたしました将来におきましては、先生指摘のような方向にこのばらつきを十分にないようにいたしたい。そのためには、現行基準というようなものにつきましても、再検討したい。かように考えております。
  23. 榊原亨

    榊原亨君 もう一つ、その基準を簡単にされる、基準統一されるという場合には、単に健康保険基準だけでなしに、生活保護法基準についても十分御連絡の上で、統一ある一つ基準を作られることを要望いたしまするが、生活保護法との御連絡はできますかどうかということについても、重ねて承わりたい。
  24. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私の今承知をいたしておりますのは、生活保護法の方は保険完全給食という一つのシステムに乗って生活保護法運用をやつておるように実は承知をいたしておるわけでありますが、別に生活保護法完全給食基準というふうなものを持っておりますかどうか、その点が私ただいま十分承知をいたしておりませんが、もしそうでありますれば、先生指摘のようなことでありますれば、これは生活保護法十分連絡をいたしまして、これらの間にできるだけ統一をいたすようにいたしたいと存じます。
  25. 榊原亨

    榊原亨君 実際の運営に当りますると、地方民生部健康保険課の間のての基準判定ということにつきましても、非常にまちまちであります。また、県境を一つ越しますと、隣りの村とこちらの村とで著しくその判定が違うというようなことが現実の面であるのでありまして、これはぜひとも一つ御調査なり、御統一になるときは、この点を御留意をお願いいたしたい。
  26. 高野一夫

    高野一夫君 私は先般機関指定を取り消し得る場合、それから個人登録を取り消し得る場合の四十三条の十二についての解釈の仕方について質問申し上げたわけでありますが、さらになお、これについてお尋ねをしたい。  そこで、療養給付担当責務というものは、医療機関の場合と保険医師の場合と内容が違うということであるから、それはそれといたしまして、監査を拒否した場合、これは開設者監査を拒否した場合は、医療機関指定を取り消し得る。また一方監査を拒否した場合は保険医登録を取り消し得る。こういうようなふうになっておる。そこでこの監査を拒否するというこの監査内容にも、医療機関の場合と登録してある保険医の場合と事項が違うのであるかどうか。この療養給付担当責務機関個人とにおいて違うから、機関の方の責務を怠った場合は、機関指定を取り消し、個人の場合に課せられたるこの担当責務個人が怠つた場合は個人としての登録を取り消し得ると、このような御説明がこの間あったように思いますが、それは担当責務がおのずから異なって定められておることであるからということでありますから、それはそれとしてわかりますが、監査を拒否した場合にも両方の場合が起る、そうすると、療養給付担当責務が違っているがごとく、機関が拒否した場合の監査保険医が拒否した場合の監査というのにおのずからやはり区別が考えられるかどうか、この辺のことを伺いたいと思います。
  27. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 個人担当規程の方には具体的な診療そのものについてのことを書きたいと考えております。それから機関の方の担当規程につきましては、機関としての守るべきことを書きたい、個々診療そのものについてのことは、これは医師責任でございますので、あるいは薬剤師の調剤のことにつきましては、薬剤師責任でございますので、個への方に書きたい、こういうふうな考え方をいたしておるわけであります。それで、今御指摘監査を拒否した場合という仰せでございますが、法文には監査というようなことでなくして、たとえば「出頭求メラレテニ応ゼズ」、というふうに書いてあるわけであります。それで、その出頭を求められたことが、保険医療機関開設者として出頭を求められたか、あるいはは個々診療行為内容についての、すなわち個人療養担当規程の違反がありはしないかということで、保険医として出頭を求められたか、この二つの場合があるわけでございます。それらの根拠条文はそれぞれ違って参りますので、これは明らかになるわけでございます。従いまして、監査と一口に申しましても、出頭を求めたりあるいはは答弁を求めたりするということにつきまして、開設者としての立場でものをお聞きする場合と、個々医師歯科医師薬剤師という、この診療行為そのものについての問題としてものをお聞きする場合とケースは二つに分れると思う。従いまして、それぞれそれに従いまして機関の方ということになるか、あるいは個人の方ということになるか、これは明らかになるわけでございます。
  28. 高野一夫

    高野一夫君 引き続いて伺いますが、医師診療録を作るという、たしか保存義務があったと思いますが、これは病院診療所に課せられたる義務でありますか、それとも診療に当る医師に課せられたる義務であるか、それを一応伺います。
  29. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 管理者にその義務を持たせたいと考えております。医療機関管理者にその義務を持たしたいと考えております。
  30. 高野一夫

    高野一夫君 医療機関管理者といえば、これは保険医そのものじゃないのですか。もしも診療所病院開設者がしろうとであって、医師資格がない場合に、その人は当然管理者にはなれない、管理者は当然医師資格がなければ管理者じゃない、従って、その医療機関管理者は、当然登録されたる保険医師そのものではないかと思うのでありますがその辺の考え方はどうですか。
  31. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 医療法による管理者ということを私ども考えておるわけでございますが、医師法規定を読んでみますと、「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項診療録に記載しなければならない。前項の診療録であって、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。」こういうことになっております。それでこの医師法規定のように、私どももその保存義務考えておるわけでございます。
  32. 高野一夫

    高野一夫君 その場合の病院管理者というのは何者ですか、これは医師そのものでない人が管理者になり得る場合があるんですか。
  33. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) これも医療法規定によりまして、病院開設者は別でございますが、管理者医師でございます。
  34. 高野一夫

    高野一夫君 そうすると、病院管理者医師であり、その医師診療簿の保管の責務を負わされておる。診療に当る医師自身診療簿に書き込まなければならない義務を負わされておる。特にただいまの御説明によれば、個人開業した診療所においては、なおさら医師そのもの責任になっているように私は思う。そこで、もしもそういうような場合に、診療簿の調査、検査を命ずることができると、こういうふうに——先ほど私がお尋ねした設備検査のところに、診療録ということが書いてある。四十三条の十に設備もしくは診療録、こういうようなことも書いてある。そこで、その診療録検査を拒否するというような場合が病院において起り、あいるは、たった一人で開業して一人で診療に従事しておる診療所において起った場合には、この取り消しの処分は機関指定の取り消し処分になるか、登録の取り消しの処分になるのか、どっちでもいいということになるのか、どういうふうにお考えになりますか。
  35. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 医師法規定を先ほど読んだのでございますが、医師法では二項に「前項の診療録であって、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。」ということになっておりまして、その診療録保存義務というものはだれにあるかということは、二項によってはっきりいたしておるわけです。それで、個人開業の場合におきましては、当然この医師その人が管理者であるわけでございます。従いまして、その人が管理者として行動をする場合もあり、個々診療につきましては、そこの単なる医師として診療に当られるわけでございます。従いまして、診療録保存義務というものは管理者にあるわけでございまするので、従って、保存に関しましては、機関指定の取り消しの問題になってくると存じます。ただし、これは念のため付言しておきますが、正当の理由なき場合でございまして、いつでも直ちに取り消すということではございませんで、これは念のためでございますが、機関の方の問題になって参ると存じます。
  36. 高野一夫

    高野一夫君 局長もう少し伺いますが、個人開業医が単独で開業している場合に、私が言うのは、診療簿の点検あるいは提出を求められた場合に、それを拒否したという場合、そういうことはないでありましょうが、こういう条文がある以上は、条文解釈は明確にしておく必要があるから私は申し上げるのであって、そこでその提出、検査を拒否した場合の責任、それがどこにあるかということを私は聞きたい。保存責任はそれでわかる。診療簿の点検を拒否した場合にどうするか。病院はしばらくやめておきますか。やめておいて、単独の、たとえば、私なら私がたった一人の医者として、たった一人で診療所をやっておる。その場合に、私の所に何だかどうも怪しいかどがあるらしい、何か不正請求でもしているんではないかというようなことがあって、診療簿の提出を求められ、あるいは点検を求められる場合がある。それを私が拒む。開設者であり、管理者であり、かつまた、診療に当る保険医師であるその私が拒む。その場合には、どれを適用しなければならないか。こういう点は、これは医師の場合から考えますというと、一体機関指定を取り消されるのか、登録を取り消される場合に入るのかということは、十分解釈——少くともこういう場合は起らぬと思うけれども解釈だけははっきりしておかぬと、将来に私は疑義を残すといかん、こう思いますので、確かめておきたい。
  37. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 個人開業の場合におきましては、厳密に申しますと、四十三条の十で、保険医療機関に対して報告を求めたり、診療録その他の帳簿書類の提出または提示を命ずることと、それからさらに、その医療機関開設者管理者あるいはそこにおられる保険医保険薬剤師その他の従業者に対して出頭を求めたり、質問をなしたりする権限が与えられておるわけでございます。それでそこを読んでいただきますと、「診療録其ノ他ノ帳簿書類ノ提出若ハ提示ヲ命ジ、」ということは、医療機関に対してなされることになっております。従いまして、今御設問の個人開業医の場合におきましても、そういうふうな診療録等の提示をしなかったということになりますれば、医療機関管理者として提示をしなかったということになるわけでございます。役所の方からは、医療機関管理者に対して提示を求める権限しか法律で与えられておりませんから、従って、そういうことになるわけでありまして、従って、それは医療機関の問題になって参るということになります。
  38. 高野一夫

    高野一夫君 それは逆じゃないですか。それで私は診療簿の作成、保存義務はどこにあるかということを前提として伺ったわけであるが、診療簿の作成、保存義務は、少くとも個人開業医の場合は、管理者たる保険医師にあるわけです。それが、その保険医師がその点検を拒否したという場合に、それは保険医師の問題であって、私は機関の問題ではないと思うんだけれども、にもかかわらず、個人開業診療所の場合は、その診療簿の管理というものは機関開設者とか何とかいう者でなくして、その機関管理者であるその管理者は、イコール保険医師である。その保険医師検査を求める、提出を求める。その保険医師であり、管理者である医師自身がそれを拒否した場合に、医療機関指定の取り消しの方に処分を持っていくという考え方は、私は少しロジックが合わないように思うのですが、まあそういう場合は今後もないと思いますけれども、少くとも私は疑義を持っておるので、明確にしておきたい。
  39. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 同じ人でございましても、管理者の立場で行動をされる場合と、医師として行動をされる場合とあり得るということは、御了解いただけると思います。それで法律に与えられました権限は四十三条の十でございまして、「診療録其ノ他ノ帳簿書類ノ提出若ハ提示ヲ命ジ、」診療録を例にとって申しますと、診療録の提出もしくは提示を命ずるのは、「保険医療機関若ハ保険薬局二対シ」とはっきり書いておるわけでございます。従って、なおそのあとにも「帳簿書類」が出て参りますが、一番最後の方に「保険医療機関ハ保険薬局ニ就キ設備ハ診療録帳簿書類其ノ他ノ物件検査ヲ為サシムルコトヲ得」ということでございまして、あくまでも法が役所に与えておりまする権限というものは、保険医療機関あるいは保険薬局というその機関に対して診療録の提出を命じたり、提示を命じたりするわけでございます。従って、それを拒否された場合におきましては、もちろん正当な理由があれば別でございますが、正当な理由なくこれを拒否をされたというふうなことになりますると、その場合には、その医療機関管理者の立場においてなさったということに相なるわけでございますので、従って、医療機関の問題に相なってくると存じます。
  40. 高野一夫

    高野一夫君 私が今お尋ねしている四十三条の十から十二に関する取り消しの場合の問題の解釈は、限界点に来れば私はきわめて微妙な点がたくさん起ってくると思う。だんだんあなたのお話を伺っておると、聞いておるときはよくわかるのだけれども、いろいろな実際的の問題が起った場合に、当事者——その指定を取り消されるかもしれない、登録を取り消されるかもしれない当事者の方から見れば、一体どっちの場合に該当した違反行為を自分はしておるのだろうということについて、非常な不安といいますか、疑義が持たれるのじゃないか。従って、この解釈については、先般来私伺っておるのだけれども、各保険医師保険歯科医師保険薬剤師に十分周知徹底させるように、場合によっちゃ従来あったような事例でもあげてわかるように解説をお流しにならぬというと、受ける方ではどうもわかりにくい場合が出てきやしないか。と同時に、私は今ここに時間もありませんから、一々詳しい事例はあげませんけれども、もしもそれで司法事件になった場合に、この間のたとえば診療簿の作成、管理、あるいは医療行為、その検査、拒否、こういうようなことが司法事件になった場合には、検察庁あるいは弁護士関係、判事関係の解釈というものに非常な疑義が出てくる場合がありはしないかということを私はおそれるわけです。そこで、それは最高裁の判例ができればわかるわけであるけれども、そこまでいかない間に相当いろいろなことが当局としても、本人としても、悩ましい事案が起らぬとも限らない。これは極力未然に防がなければならない。そこで未然に防ぐためには、私はこの間のやり方の解釈をもっとはっきり実はしておきたいわけなんでありまして、どうもこれについての問題点がたくさんあるのだけれども、複雑になるようだから、聞いておる私の方がわからなくなってしまうのでやめますが、そこでさらに伺いますが、社会保険各法による療養の給付に関して指定を取り消し、登録を取り消し得る場合、こういうようなことは過去の何か事例と申しますか、具体的のどういう問題が過去にあったか、そしてこういうような場合は指定の取り消しに該当すべきものだ、こういうような場合は登録の取り消しに該当すべきものだと、何かはっきりした具体的なわれわれしろうとにわかりやすい例はありませんか。例がなくとも、あなたが予想される場合を考えられての説明でもけっこうです。できるだけわかりやすい御説明一つ願いたい。
  41. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 指定を取り消すというのは、これはもう非常に重大な場合でございまして、従来の例によりましても、監査をいたしますのは、一応疑わしいというものだけに監査要項で限っておるわけでございますが、その監査をいたしました医師、歯科医師薬剤師の中からも指定の取り消しというのは非常に数が少うございまして、あとは注意とか、戒告とかというようなことで大体終っておるのが実際でございます。それで指定の取り消しというのは非常に重大なことでございますので、従来の例でもまず全然架空な請求をいたして、しかもそれが非常にケースが多い、たびたび繰り返されるというふうなものが非常にティピカルな例かと存じておるわけでございます。
  42. 高野一夫

    高野一夫君 しばしば申し上げます通り病院の場合と個人開業の場合とはいろいろなやり方が非常に違ってくるわけです。そこで、実際問題として帳簿の保管にしましても、病院においては事務長とかそういうふうな方面が薬品の管理にしても実際は当っておるわけです。そこで、法律上の責任医師たる管理者にあるけれども、実際大規模なる病院においてのほんとうの責任ある保管の仕事をやっているのは事務長なりになってくるのです。そこで保険管理者たる医師の方では十分な誠意を持って管理しているつもりであるけれども、事務長が実際においては責任を持ってその病院においてやっておる、こういうような場合も出てくる。しかもまた、診療所におきましては全く医師そのものになっておる。開設者管理者保険者、こういう場合になってくるのでありますから、私はこれはもうお尋ねでなくてお願いしておきたいのは、この点に関しての病院の場合と診療所の場合とは具体的によく混同しないように、具体的な開設事例をあげられて、医師薬剤師方面に、薬剤師なら病院はありませんけれども、周知徹底できるように、特に医療機関を通じて、間違いの起らないように、解釈の疑義が起らないように努力していただきたい、それをお願いしておきます。
  43. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私、総理に対する質問を中絶いたしておりましたし、大臣に対する質問もたくさんございます。どうやら大臣がまだ来られぬらしいので、その間に少しく局長条文上の解釈についてお教えを願いたいと思います。私の質問しますることは時間が参ればまた中絶するわけですが、十万の医療担当者が非常な疑念を持ち心配しておった事柄であり、また、六千万の被保険者、関係家族を含めての関係者が非常な疑念としておることでおりまして、もしその疑念が誤解であり、心配が杞憂であるという御答弁をいただければはなはだ仕合せだと思うわけであります。例をあげていろいろ質問する場合もあるかもしれませんから、非常に心配しておることを質問するので、引用があるいは極端な場合あるいはこまか過ぎる点もあるかもしれません。一つ時間の許す範囲において順次御答弁願いたいと思います。  最初に、九条の二について種々お尋ねしたいと思います。九条の二で一番初めの問題点といいますか、われわれが心配いたしております問題は、九条の二で、保険医でない医師が報告の要求をされるあるいは診療録の提示の要求ないし質問に対する問題が掲げられてあるわけでございますが、保険医たることがいやで登録しない医師に、なぜ後段の八十八条の三で過料を科してまで、保険医でない医師義務づけをするかという点について、実は疑念を持つわけなんです。非保険医と患者との診療関係というものは全く保険とは別なものだろうと思います。診療そのものは……。医療費の支給をするときに初めて保険の関係が出てくるのであって、それはあくまでも保険者と被保険者の関係であって、保険医でない医師、歯科医師薬剤師との関連じゃないと思う。にかかわりませず、過料を科してまで報告の義務医師、歯科医師薬剤師に持たすということ、この点が私は協力を求めるという意味合いでならいいのですけれども、過料を科してまでというところに疑点があるわけです。一応その点についてあるいは四十三条の病院診療所の区分によって、いわゆる保険医でない医師ができるからこういう規定をしたのだというふうな御説明をなさるかもしれませんが、その説明はわかるわけですが、いま一つは、保険医が辞退した場合、取り消された場合に、保険医でない者に対して追い打ちをかけられるということがわれわれ疑点になるわけです。そうした点の御解明を願いたいと思います。
  44. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 追い打ちをかけるとか何とかという趣旨では全然ございません。この規定は「保険給付ヲ行フニ付必要アリト認ムルトキハ」ということでございまして、具体的な例をあげますと、たとえば今まで傷病手当金を支給いたしておりました被保険者が、何でも聞くところによると、どこかに行って釣をして遊んでおるそうだというようなあれは、一体傷病手当金は正当に支給すべきものかどうか非常に疑義があるぞということが幾らも起り得るわけであります。例が悪いかもしれませんが、そうすると、その傷病手当金の支給につきまして、これは診断書をいただいておるわけであります。そうすると、もしそれが不当な傷病手当金の支給であった場合には、これは将来にわたって役所としては打ち切らなければなりません。しかしながら、これは医学上の問題でございますので、一応そのお医者様のところに行ってあれはこういうことを聞いておったのでございますが、その病状は、——病気によりましては働かないで釣をしておっ方がいい病気があるかもしれませんが、一体どういうことでございましょうかといって聞きにいくという趣旨の規定でございます。従来の現行法でございますと、九条の二で保険に関係のあるいわゆる保険医の方もそうでない方も一緒くたに、九条の二で全部規定をいたしておりまして、そうしてしかもそれには一万円以下の罰金というものがついておったんです。それではどうも今先生が御指摘のようにおかしいじゃないか、保険に関係のある医業機関と、そうでない医師、歯科医師と同じように扱って、しかもそれに罰金一万円というようなことではおかしいじゃないか、こういうことで今回の改正法では保険に関係のない方々の方は九条の二にいたしまして、そして保険の関係のある機関の方は四十三条の十として分けてある。従いまして、九条の二と四十三条の十とは条文の書き方も非常に違います。たとえば九条の二には、その医療機関の中に入っていって調査をするとか何とかいう権限はございません。しかしながら、四十三条の十の方には実際、ものがある場所について検査をすることがきでるということに書いてございます。おのずから規定の強さというものも区別をいたしました。そういうふうに分けて規定をいたしました。それでしかも四十三条の十の方は、これは保険に関係のある医療機関でございますので、この方は現行法では一万円以下の罰金ということになっておったわけでございますが、今回はそちらの方にはいわゆる罰則はやめまして、いわゆる行政処分だけということにいたしたわけであります。  それから九条の二の方につきましてては、従来の一万円以下の罰金というのを、これではいろいろ医師の履歴というものに傷がつくということで、いわゆるそういうものでないあやまち料という一つの何と申しますか、性格の変ったものに罰則を引き下げた、こういうふうに法律上の整備をしたのでございます。従いまして、もう一度繰り返して申しますと、九条の二というものは、先生仰せのように、保険に直接関係のない医師、歯科医師の立場に対する規定でございますので、規定内容も違いますし、また、それを調べ上げるのだという趣旨のこれは規定ではございませんで、むしろ平たい言葉で申せば、こちらが他の関係で必要がある場合にいろいろ聞きに参る調査権というふうなものとして、私どもは立案をいたしておる次第でございます。
  45. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 表現が九条の二と四十三条の十とは違っておりますが、こういう活字になっておりますと、やはりきびしく感ずるわけです。  そこでその次にお尋ねしたいのは、そういう保険医でない医師、歯科医師薬剤師がかりに協力義務が、これは協力を保険法によってうたうわけですから、協力義務があるとすれば、保険医でないものに保険に協力する義務があるとすれば、保険の法的な性格というのは、一体どういうふうなものであるかということを説明をしていただきたい。
  46. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御質問の趣旨を十分受け取りかねておりますので、恐縮でございますが、もう一度敷衍をして下さい。
  47. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 すべての医師に協力義務があるとするならば、健康保険法によって協力義務保険医でないものにあるということでございますれば、保険法というものはかなり強い性格のものであろうと思うのです。その保険法の法的な性格を一つ説明願いたい。保険医でないものを覊束し得るかという問題なんです。
  48. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) お答えになるかどうか存じませんが、今御説明を申し上げましたように、現行法におきましてもむしろこれよりは強い罰則等もついておりまして、協力義務もあるわけであります。それはおそらく社会保険というものが国の一つの制度であって、これは被保険者である事業主の方から見ますと、強制加入の制度である社会保険であります。これが普通の商業保険でありますれば、そういうことはないわけでございます。従って、強制加入でなしに国の制度ということには相なっておらぬわけでございます。そういう強制加入で法律をもって多数の国民を強制して参るような性格の社会保険でございますので、さような観点から、従来もさような規定があったものであろうと私は考えるわけでございます。
  49. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私の質問のしようが悪かったので、要旨をお取り違いのようでございますが、第一の質問点については私は解明いたしたのであります。  第二の質問点は、職業の自由はもとより認められておるわけです。そういたしまして、おれは保険医はいやだと言っておるにもかかわらず保険法で一応覊束する、制限するという限りは、健康保険法というものは、相当比重からいえば憲法に近いようなものじゃないかという気がするのですが。
  50. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 社会保険というものが今申し上げましたような性格のものでございますので、保険医療関係以外の方に対しましても、そういう性格の社会保険を運営していく上に必要な限度のことにつきましては、一般行政権の発動として、こういう協力を求めるというような規定を置くというふうな考え方はできるものと存ずるのでございます。特別な保険との関係があるものでありますれば、これはその関係を絶つということが主でございます。保険に非協力であれば特別な関係を持っておるものは、その特別な関係を絶ちさえすれば実は済むわけであります。しかしながら、そのほかに保険と特別の関係のない方々であっても、そういう法的な性格をもった社会保険を運営いたすについて最小限度必要な程度のことは、これは一般の行政権の発動という見地から、いわゆる保険者という立場ではなく、別の国の行政権という観点から運営のため必要最小限度の協力を求めるという考え方は当然出てき得るものと存じます。従って、従来の法制におきましても、さような規定があったものと、私は考えておる次第でございます。
  51. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 一応その点は打切りまして、その次の問題は、そうした場合に、医師であるという理由で保険に協力すべきことが行政権の発動によって義務づけられるということになりますと、国民の立場から言うと、今度逆に医師であることは当然保険医であるという権利が私はなければ平仄を失すると思う。そこで、保険医登録の問題について、先日来の局長の御説明によると、保険医登録というものは、医師保険医、まあアクセサリーのようなものであるという御説明でした。それで、一応わかるわけですけれども、まあ権利義務の建前から言いますと、アクセサリーでなくして、保険に協力する義務保険医でない医師にあるということはその医師保険医になる当然権利がある、こういう解釈を下せるわけですけれども、それはいかがでしょうか。
  52. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) まあ権利義務というふうな純粋の法律上の表現になりますと、これは私もあまり自信がございませんが、今仰せのお気持は私もよくわかりますし、また、ごもっともだと存じます。従いまして、今回の改正案では、今の保険医登録というものは、医師でありさえすればどなたでも登録をするという性格の登録というようになっておるわけでございます。お気持の点は十分私もわかるような気がいたします。
  53. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 続いて同じ九条の二項ですが、「前項ノ規定ニ依ル質問又ハ検査ヲ為ス場合ニ於テハ当該職員ハ」いわゆる身分証明を必要としますね。同じく九条の二において、最後の方に同様なことをうたっておるわけなんですが、そのときには「質問」だけに限定しておるわけですね。最初の方は「質問又ハ検査」となっておるのですが、これは先ほどの質問の中の御答弁に含んでおったので了解はつくわけなんですが、一応私はその点に疑念を持ったわけです。保険医でない医師に対しては質問だけで、検査はないのだということで了解した次第でありましたが、この点に疑念を持っておったのであります。  続いて、今回の九条の改正は、事業主に対する検査権の強化と非保険医であるが、医師、歯科医師に対します検査権の強化というものは九条の二にあるわけでありますが、検査権と申しますか、片一方は調査権でありますが、そこで事業主に対する強化の項目として新たに保険料が加えられたわけですね。そして従来は対象は関係者としてばく然としておったのが、今度はっきりと検査対象が事業主としておきながら、質問の場合はまた従来通り「関係者」と広く余裕を持たしておるわけなんですが、これはもちろんこういう変更は、当局としては便利だろうと思うのですが、やはり便利というだけでこういうふうになったのでしょうか、どうでしょうか、お伺いしたいと思います。
  54. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 「事業主ニ対シ文書其ノ他ノ物件ノ提出若ハ提示ヲ命ジ又ハ当該職員ヲシテ関係者ニ対シ質問ヲ為シ」この「関係者」というのは、たとえば工場の労務係とか、そういうふうな方々をさしておるわけでございまして、「文書其ノ他ノ物件ノ提出若ハ提示」は、これは事業主に、その代表者に提示を命じればいいが、「質問」の方はこれは個々の具体的な行為になりますので、工場に参りまして、事業主にも聞てみる、あるいはまた、広く関係者に、勤労係というふうな人にも聞いてみると、いうふうな必要がありますので、かような書き方をいたしたわけでございます。
  55. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 それからこれは局長に御答弁を望む筋合いでないかもわからないのですが、九条に同じく「第一項ノ規定ニ依ル権限ハ犯罪捜査ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」ということがございます。これは最近の立法の傾向として、これはひとり健康保険法だけでなしにあるわけなんですが、随所にあるわけであります。だから健康保険だけにあるからというのであなたをお責めするわけじゃございませんが、しかし、一般論としてもこういうように憲法の三十五条なり、三十八条ないしは刑事訴訟法の三百十一条ですかに抵触する逃げ口上といいますか、こういう言いわけをするということは、結局基本的な人権が憲法で守られておって、行政監督上それは不便だから言いわけをして、憲法で保障されたことを行政法でもって優先というか、強くそれを乗り越えてやるという考え方ですね、その考え方のよしあしと、そういう考えを持ってまで保険というものは取り締らなければならないかということ、これが二点。  それからこれはあなたの答弁では無理なんですが、そういうことを既成事実として積み重ねていって、将来憲法改正のときに基本的人権に一つの既成事実として基本人権というものの解釈が変ってくるという三点を、あなたに求めるわけではございませんが、最初の二点について、この三点の心配があるから私はこの質問をするわけであります。
  56. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) かような行政上の検査規定は憲法で保障されておりまする、たとえば住居の自由でございますとか、いろいろあすこに保障されておりますが、それには実は法律上は関係ないのでございます。憲法の保障しておりますのは刑事手続上の問題を書いているのです。その際にいわゆる令状がなければ踏み込めないというふうな、刑事手続の問題についての規定であると、いうふうに憲法の条文を解するのが通説であるように承知をいたしております。それからこの「犯罪捜査ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」ということは、これは最近の立法例に皆こういうことを書いているのでありまして、これはなくても同じことなんでございます、というのは、この行政権の発動によるこういう検査権というようなものでは、相手が拒否した場合にはそれを実力で排除して、たとえば立ち入ったりなんかすることはできないのでございますから、これはもう行政権の、行政上の検査権に通ずる原則でございます。司法手続におきましても、令状なり何なりを持っておれば、相手が拒否しようがしまいが、実力をもって拒否、反対を排除して入り得る権限が司法手続にはあるわけでございます。ところが、行政検査権では、この点が誤解をされている向きがあるわけでございますが、こう書いてありましたからといって、無理やりに入り込むということはこれはできないわけでございます。これが行政上の検査権の一般的な建前でございます。で、そのことを「犯罪捜査ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」というふうに入念的に、すなわちこの規定は相手が拒否した場合に無理やりに実力をもって押し入ることはできぬのだぞということをはっきりさせるために、入念的に書いたものでございます。さような意味合いでございまして、近ごろの新しい立法例では皆こういうことを書くということが例になっておりますので、ここに書いたわけでございまして、決して言いわけ的に書いたというものではございません。  それから今の御説明で御了解願えますように、こういうようなことを積み重ねていって憲法改正に持ち込むというようなことは、これはもう今の御説明でおわかりをいただきますように、全然さような意思もなければ、また、われわれがそういうことに関連をしてものを考えておるわけでもございません。
  57. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そういう行政上の検査をするときには拒まれれば入ることができないというようなことでしたが、その場合に、公務執行妨害ということにはならないでしょうかということが一つと、それからいま一つお尋ねしたいことは、なるほど犯罪捜査のためではございませんが、質問に答えなかったり、これこれのことをしたらこうこうだということが、あとで四十三条の十二とかその他に取り消しと出てきますから、そうしますと、医師、歯科医師としては犯罪と同様なことを、結果において犯罪で違反があったであろうと同じようにやはり結果的には、ある意味においては、そのことによって機関が取り消しされたりすると、これは死刑の宣告を受けるような、結果的にはですよ、犯罪でないとおっしゃいまするが、結果的にはそういうことになることから懸念いたしますると、この犯罪捜査でないという言いわけがあれば、もう犯罪であれば確証がなければ令状も出ませんし、捜査令状も逮捕令状も出ませんから、この犯罪捜査でないという言いわけがあると、今言ったような、場合によっては、質問に対して答えなくても過料に処せられたり、あるいはまた、九条に限りませんが、四十三条の十でもそうなっております。関連しておりますが、そういうことを懸念いたしますると、この条文はかなり私は神経過敏に考えなければならぬと思うわけです。取り締る方の局長の方はそういうふうにお考えになるかもわかりませんが、この表現はわれわれとしてはかなり深刻に受けるわけです。そうした点についてのいま一応御親切な御解説をいただきたい。
  58. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私どもはこの保険改正保険関係の法規だけについてではございませんで、もう全部の行政上の検査権につきましては、今申し上げましたように、相手方がたとえば提出をしないとか、あるいは報告をしないとかというふうなこと、いわゆる拒否ということにつきましては、それを実力で従わせる権限は行政権にはないわけでございます。そうしてそれがありませんので、それならば断わってしまえば何もできないということになりまするので、その行政上の検査権を担保いたすために、実力では強制はできないけれども、正当の理由なくして断わったならばこれは罰則をかけていく、たとえば過料であるとかあるいは罰金であるとか、そういうふうな罰則をかけて、その行政上の検査権というものが死文になることを防いでおるというのがこれが全般の建前でございます。それで、今回の私ども改正案におきましては、現行法ではそういうふうに罰則によりまして担保をいたしておったわけでございますが、改正案におきましては、特別な関係のある保険指定医療機関につきましては行政処分で事が足りるということで罰則もやめました、ということをまあ先ほど御説明いたしたわけでございます。それでしかし、その指定を取り消されるということになると、それは非常な重大な問題じゃないか、だからそれは重い刑罰を食ったより、より以上にまあ現実の問題としては重大な問題ではないかという仰せでございます。それはその通りでございます。従いまして、私どもといたしましては、これらの取り消しというふうなことにつきましては、これはもう慎重に物事を取り扱って参らねばならぬ、かように考えておりまするし、従来の指定取り消しにつきましても、これは先生もよく御存じのように、監査をいたしましたからといって、その対象者のうちでほんとうに何%かが指定の取り消しという一番重い処置を受けるのでございます。その方針は今後ともさらに一そう慎重にいたすことはありましても、これを軽軽に扱うということはいたさぬつもりでございます。しかしながら、そうかとは申しましても、万人が納得するようなものにつきまして、まあそれほど悪いものにつきましてやはり指定の取り消しというふうな行政官庁側の権限もこれはやはり置いておいていただかなければ、これは何としてもやはり最後の線としまして置いておいていただく必要はございまするので、さような規定も残しておるようなわけでございます。
  59. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 次に、この標準報酬の問題なのですが、先日、局長の御答弁では、標準報酬の等級改正は賃金ベースの上昇等をにらみ合せて合理的に今度はしたのだと、こういうふうな御説明でございましたね。そこで私疑念を持ちますることは、上限の上の方はなるほどおっしゃる通りペースが上って合理的にその受けた報酬に対する率によって払われていく。私の懸念いたしまするのは、一級の三千円のこの方々がお宅の方で出された資料によりますると、十一万何千人というものは昭和三十年でございましたかございます。この方々が一体局長のお説のように、賃金ペースの上昇によってどれほど減ったが、まあおよそでけっこうでございますが、第一にお教えを願いたいと思います。
  60. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 昨年の十月の模様によりますると、今御指摘の該当者が全体の被保険者の二・三%、約十二万人ばかりあったわけでございます。本年のこれは十月の実績でございますが、これは景気がよくなったというようなことを非常に反映しておると思いますけれども、減っておりまして、九万八千人ほどに減っております。パーセンテージで申しますと、一・七%に落ちておりまして非常に減っております。で昨日私が申し上げました数字は——今申し上げましたのは政府管掌だけについての数字でございます。昨日申し上げましたのは、組合管掌も含めて今回の制度の影響を受けるもの全部をも含めてお話をいたしました数字は、その。パーセンテージが一・一五%でございます。
  61. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私は制度の合理化というものには犠牲者があってはいかんと思うのですが、特に一番最低の、生活に困られるような方々が、結果的においては合理化のための犠牲にまでなっておる。この点私は非常に遺憾に思うのですが、なかなか制度の改正にはそううまくいかないとおっしゃればそれまでのことですが、そこで、そういう方々は今回の措置によって、実質的な保険料の値上げが私の計算では、年額ざっと四百円くらいになると思う。この数字が違っておりましたら御訂正願いたいのですが、この等級改正の結果三千円の方々が年額四千円の保険料が値上げになって、なお一部負担がかりに平均二百円くらい被保険者が持つといたしますると、これも計算が違っておりますれば御訂正願いまするが、私の計算でそうなりますると六百円くらい、今度は余分な負担が改正法によりましてかかることになる。これは私は重大な金額だと思う。で特に三千円の方々は独身の方々が多いと思うのですが、独身の被保険者が病気になりますると傷病手当金は四割しか入らない。三千円の四割だから、千二百円の金でもって病院へ入院して一部負担を持つのでございますが、病気するせぬにかかわりませず、年額にして一応健康体でありまして六百円ほど持たなければならぬということは、およそはなはだ、今回の改正案はわれわれから言わせれば改悪なのでございまして、各方面に悪いと思われておりますけれども、被保険者対象の問題点としては、この一級の下級の方々に対する配慮が欠けておるように、今言うようなことで欠けておるように思うのですが、それはそういうことなんでしょうか。
  62. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 先生指摘のように、確かに一級で現在格づけされておりますものが全体を通じてみまして一・一五%あるわけでございますから、先生の御指摘というものは、私どもそのお気持は十分わからないことはないのでございます。ただ昨日も御説明いたしましたように、標準報酬制度というのは、特に医療保険におきましては給付の方がややフラットでございまして、従って昔からこの制度が始まりまして以来、下は若干背伸びをしてもらって上の方はちょっと頭打ちというふうなことで、一定のワクの中にはめて実は運用をして参っておるわけでございます。医療保険の場合には給付がいわゆるフラットだということにも関係があると思いますが、そういうふうなことでやって参っておりまして、過去の標準報酬の等級区分の改訂の際の実績を見ますると、今回のように下一・五%とか一・七%とか、そういう小さい数字ではなかったのでございます。きのうも申し上げましたように、二十四年の五月に三百円という最低を二千円にまで引き上げております。これに該当するものは当時被保険者が少のうございましたが、二十六万七千人程度でございまして、全体の被保険者の八%にも達しておる。それから二十八年の十一月にこの二千円という最低を三千円に上げております。このときには全体の被保険者の二%くらいに当っております。まあこういうふうなわけでございまして、そういうふうなやり方をして参っておるわけでございます。従って、今回の案といたしましても、今私が申し上げましたようなわけで、それらのことと比較をいたしまして、そう無理なやり方ではないというつもりで私どもは原案を御提出申し上げたわけでございますが先生仰せの点もこれは確かにそういう議論も成り立ち得るところもあるということは、私も否定をいたすものではありません。しかしながら、従来の例から申しまして、この点につきましては、社会保険審議会でもいろいろ物価指数とか、従来の標準報酬の等級のきめ方の指数とかいうようなものをいろいろ勘案されて審議をされまして、一応こういう四千円から五万二千円ということに落ちついた、それらの点から参りまして、まずまず無理のないところであろう、こういうふうな考え方当局といたしましてはいたしております。
  63. 千葉信

    委員長千葉信君) 質問の途中でございますが、議事の関係もありますから……。
  64. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 では私質問を途中で打ち切りまして、また適当な機会に御発言をお許し願いたい。
  65. 山下義信

    山下義信君 大へん時間が延びまして、若干空腹も感じておりなして、少し音声が低いかもしれませんが、近いですからどうぞ……。  私が質問申し上げたいと思いますることは、若干の事項があるのでありますが、とりあえず伺いたいと思いますのは、衆議院の修正点につきまして、これは政府与党御一体でありますので、政府から御答弁を願いたいと存ずるのであります。衆議院の修正点は申すまでもなく、社会保険診療報酬支払基金法の一部改正条文を全部削除されたという修正であります。その他関連の事項もございますが、これが主たる修正であります。この問題は関係者が非常に重大視しまして、政府において官僚的ないわゆる審査機構を作られて、医療担当者に対して、不当な審査をするのではないかという非常に重大な問題になりました点であります。これが全部削除されたという修正であります。このことに関しましては、おそらく医療担当者におきましては、少くともこの部分についてはあるいはほっとせられたというような気持があるかわからぬけれども、しかし、私は若干の疑惑を持つのであります。そこで、まず根本的な問題はあとへ回しまして、この修正の条文を拝見いたしますと、二、三不審の点がございますので、多少字句にも関係いたすかもしれませんが、私の不審の点を申し述べますので、御解明を願いたいと思う。  第一点は、この改正条文を見ますというと、非常に複雑でございますので、あるいは私に読み誤まりがあるかもわかりませんが、一応はこういう建前になっていると思う。修正点を分析いたしますというと、基金法の第十三条第二項の修正、それから同じく基金法の第十三条の第三項中の修正、それから一番問題になりまする、すなわちいわゆる官僚審査機構と言われている同じく基金法第十四条第一項の削除であります。全部削除ではありますが、そうなっております。それから同じく基金法第十四条の二、それから同じく基金法第二十三条の二、この数点にわたる削除であります、政府原案を削っておるわけなんです。そこで、私がこの修正点について不審に思いますることは、まず最初の削除ですね、これは削除は政府の原案によりますというと、第十三条の第二項のうちに「若しくは第八十四条の二」「若しくは第四十三条の三」「若しくは第五十九条の四」というものを入れようとする、これを削った。それから同じく第二項中に「若しくは第五十九条の四」「若しくは第六十八条」を入れようとするのを削った。このことは私の了解するところによりますと、生活保護法、身体障害者福祉法、児童福祉法その他関係の法律関係者がこの基金に対して診療報酬の支払いについていろいろ相談をする、そして基金の意見を求めるということが前段なんです。後段は生活保護法関係、身体障害者ないし児童福祉法関係者が、診療報酬の支払い等に関するその事務を基金に委託することができる、こういう条項なんです。こういう条項の中に、「若しくは八十四条の二、」「若しくは四十三条の三」云々を入れましたのは、いわゆる大都市の市長は、知事にかわってこれらの基金と、いわゆる意見を求めたり、あるいは診療報酬支払いの事務を委託したりすることのできるように政府原案はなっておった。それを全部衆議院は削除された。私はこの点につきまして、削除したことが、直ちに各種の法律に抵触するとか違反するとかとは言わない。言わないけれども、せっかく大都市の与えられた権限を、言いかえますというと、入念に、先ほど犯罪の捜査のためと解してはならないというような、入念な規定と言われたが、まことにけっこうです。その入念な規定をしようとする、これは当りまえのことなんです。当然しなくちゃならぬことなんです。それを全部削除したということは、どういうことでありましょうか。それを伺いたいと思う。つまり言いかえますと、法律の建前からいうと、大都市のものが、診療報酬の支払いに関連いたして、基金の意見を聞こうとしても、基金は、大都市の市長に関する限りは、いわゆる指定都市の市長に関する限りは、意見を述べる必要はない。それから大都市の市長、指定都市の市長から、いわゆる支払い金に関する事務を委託されても、何もそれを委託を受けなくてもよいというふうに、まあ法律の表面だけを走りますると、そういうふうにも疑えるのであります。そこで、これを削除されたということは、削除してどれだけのプラスになるか、この法律のこの基金の仕事の上に。およそ修正というものは、原案よりよいことでなくちゃならない。この衆議院の修正によって、現状よりどれだけよくなるという考えで修正されたのかということが私は不審でありますので、まずその点を伺いたいと思います。
  66. 神田博

    国務大臣神田博君) 政府原案の法律案にありました支払基金法の改正を削除した結果、非常に不便ではないかというようなお問いのように伺ったのでございますが、まあ現在のところでも、被保険者が非常に増加いたしておりまして、なかなかこれはまあ大へんな仕事でございます。さらに皆保険一つ推し進めて参ろう、こういうことでございまするから、今の現行制度によりますると、なかなかこれは容易ならないということで、まあ補助員等を置いて、操作して参ったのでございますが、皆保険の関係もあり、複雑になっておりますので、専門の方を置いて、そしてうまく、早く、確実に仕事が流れていくようにという、こうまあ事務的な考え政府の原案を作りまして御審議願ったわけでございますが、御承知のように、政府改正案が大方のだいぶ誤解と申しましょうか、いろいろお気に召さかなった。今度の改正案が、新しい法案になると官僚化するのじゃないか。そこで医療担当の側からみると、非常に不安だというような声でございまして、そういう意図は毛頭ないので、今の制度よりも一歩前進と申しましょうか、一つ便利にしようという考えであったんでありますが、事柄が事柄で、そういう練達堪能の士を、しろうとの中から選ぶことができるかどうかという、本質的なこれは心配もあったわけなんでございますが、そういうわけでございまして、これは衆議院におきまして、まあいろいろの角度からお考えになられて、現行制度を維持したらいいじゃないか、こういうことで削除に相なった、こういうふうに私考えております。現行制度必ずしも行き詰まったわけではないのでございまして、だいぶ長いことやって参ったわけでございますので、もっと早くいく方法というように考えたわけでありますが、今申し上げましたように、そういう制度の表面だけじゃなく、やはり現状のやり方が、長い経験を経てきているので、その方が新しいやり方よりもいいのだと、こういう審議でございまして、そこで修正をみた、こういうふうに私ども承知いたしております。
  67. 山下義信

    山下義信君 私はそういう質問をしておるんじゃないんです。全体は今、大臣のおっしゃったような、その点が中心でありまして、それが削ってある。それを削ることに関連して、ほかのことは皆削ってある。そうしてほかのことが削ってある中の第一点といたしましては、すなわち、本案によりまするというと、修正条項の第一項です。つまり大都市の市長が、生活保護その他のものの医療につきまして、その診療報酬の支払いについて、基金に相談をし、基金の意見を聞き、あるいは基金と契約をするという、都道府県知事の権限等を、指定都市の市長にもやらせようとする改正をあなたの方で企ててありましたのが、皆それが削ってあるのはどういうわけでしょうか。それを削るのは、原案に何か支障があったのでしょうか。これを削った方がいいのでしょうか、こういうことであります。これを削ったのがどういうところがいいのかということです。私はこの問題に関しまして、これは一つ法律論でもありますから、参議院法制局長出席を求めてありまするから、あとで法制局長の見解も明らかにしておいていただきたいと思いますから。
  68. 千葉信

    委員長千葉信君) 承知しました。
  69. 神田博

    国務大臣神田博君) 先ほどお答え申し上げるのを少し落したわけでございますが、政令に定めた市長が、この改正案の削除によって所要の目的が達せられないじゃないかという御心配のようでございましたが、政府といたしましては、まあそこも従来通り方法でやって参りますれば、そういうような支障というようなところまで参らないと考えて、修正に同意いたしたわけでございまして、これは詳細なことは、一つ事務にも関係が深いのでございますので、保険局長からお答えさせたいと思います。
  70. 山下義信

    山下義信君 待って下さい。この政府改正案がなくても、それは従来のいろいろな解釈やら、あるいは従来やり来たっておることであるから、支障なくいけるでしょう。私はこれが削除されたら支障が生ずるだろうと言っておるんじゃない。せっかく指定都市の権限が、他の法律で明記せられてあって、従来そのことが基金法の中には明らかにされていないために、念を入れて明らかにしておこうということは、いい改正なんです。そのいい改正をやめにすることはどういうわけですか。何か大きな理由でもあるんですか。これをやめた方が何かよいことがあるのですか。プラスになるのですかと私は言っているんです。入れておいた方が念が入っていいでしょうと私は言うんです。政府原案の方がいいでしょう、これを削るということは、少くとも他の法律その他によって、大都市、すなわち、指定都市の市長の権限が明記されてあるのに、ほかの字句を拾ってみて、拡大解釈や応用解釈をしなくても、明らかに明記しておいた方がいい、改正政府原案の方がいいめに、これをついでのことに削り落したというのには、何か削った方がよい理由がなくちゃならぬと私は思うのです。それを削った方がよい何か理由があるならば、よい理由を言って下さい。言いわけはおっしゃらなくてもいい。修正の方がよいか、政府原案の改正案の方がいいかということだけおっしゃって下さい。
  71. 神田博

    国務大臣神田博君) 単刀直入にいいか悪いかということのようでありますが、まあ政府といたしましては、院議が前の方に一つ復帰させようということでございまして、特に私どもはまあこれはいいというふうに御審議を願ったわけでございますが、院議で今のままでいいじゃないかというようなことでございますので、そう、前に戻りましても支障があるとも考えないわけでありまして、修正をのんだわけでございます。
  72. 山下義信

    山下義信君 私はその答弁には納得いたしません。そういうことをおっしゃるならば、政府の原案には要らぬことがしてあったということになる。必要のない改正が企てられてあったと、こういうことになるのでありまして、これは困る。よいことはよいことでお残しにならにゃなりません。私はそう思う。この点に関してですね、私は妥当でない。つまりせっかく政府原案は、何と言いますか、正しいものを、この順法精神と言いますか、そういう形の改正を企てられたのに、これはまことにこれが削られれば、地方自治法のせっかくの条文の趣旨にも反するし、その他生活保護法、身体障害者法、それらの関係の法律の中にうたってあることも依然無視されたことになりまして、適当でないと私は思う。この機会に法制局長の御見解を求めておきたいと思います。
  73. 斎藤朔郎

    ○法制局長斎藤朔郎君) ただいま山下委員から御質問になっておりまする基金関係の条文、すなわち政府原案の第二条にございました内容につきましては、ただいま山下委員からも御説明になりました通り、この十四条関係の審査委員でございますか、この関係は純粋の保険行政の政策の問題だと思いますので、法制局。プロパーの問題じゃございませんが、二条関係の冒頭の、基金法第十三条二項、三項関係と、それから二十三条の二、これは今第一の問題じゃございません……。
  74. 山下義信

    山下義信君 あとのことは、あとで聞きますから。十三条二項……。
  75. 斎藤朔郎

    ○法制局長斎藤朔郎君) はあ。その十三条の二の問題は、これは純粋に法制上の問題でございます。十三条二項、三項の関係は、ただいま委員から詳細御説明になりました通りでございまして、すなわち、診療報酬の決定をする際に、都道府県知事から基金の方に意見を求める。それで基金の方はそれに応じて意見を述べる、また、三項の契約の申し込みがあれば、それについて契約をする、要するに、問いをする者と、それから答える者との関係で、卑近なたとえで申しましたら、ボールを投げる方と、ボールを受ける方の関係を規定してございまして、普通の場合は、都道府県知事から問いを出せば、基金はそれに応じて答えなければならない。都道府県知事の投げたボールは基金は受けなければならない。指定医師についてはどうかと申しますと、指定医師の出した問い、指定医師の投げたボールは、やはり基金は受けなければならない、こういう法律関係にならざるを得ない。また、実際上はそういう状態で動いているのだと思いますが、法制上のこのあり方を見ますと、問う方の、投げる方の関係は、生活保護法関係また、地方自治法関係の法令で非常に整備されてございますが、受ける方の側につきましては、この基金法十三条が指定都市の特例を設けましたときに何らいじられておりませんので、その点で平仄が合っていないということは、これは確かに言えると思います。それが動くか、動かぬかの問題でなくて、法制上整備していないということは、これはもう言わざるを得ないと思うのでありまして、法制の整備という観点から考えましたならば、この改正原案の修正があった方がベターだというように、法制局としては考えております。
  76. 山下義信

    山下義信君 私はただいまの質問は、政府原案の支持なんであります。修正案の方が悪いというのですね。つまり衆議院の修正は行き過ぎなんで、私ども第二院としては、チェック・アンド・バランスで行き過ぎは是正しなくちゃならぬ、さように考える。これはただいま法制局長のお述べになりましたように、法制上の建前としては、私はこの修正は妥当でないと思う。  第二点は、第十四条の二が削られてある。これはいわゆるその官制の審査委員を置こうということでありますから、前の第十四条の一は、その審査委員によって、審査の機関を設けようということでありますから、つまり審査委員を置こうというのが第十四条の二です。この審査委員の設置の規定が削られたということは、すなわち基金には審査委員を置かないということになるのでありましょうか。この削除された衆議院の修正によりましてですね、審査委員というものはどうなるのか、どういうことになるのか。
  77. 神田博

    国務大臣神田博君) 現行通りになるわけなんであります。
  78. 山下義信

    山下義信君 すなわち、審査委員というのは、基金にはなくなるのでありますか、どうなるのでありますか。
  79. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私からお答えをさせていただきます。現行通りに、審査委員というものは現行法の規定によっておりまする審査委員がそのまま残るのでございます。
  80. 山下義信

    山下義信君 私はこの際、政府がこういう改正案をお出しになろうというときには、そういう点はもっと今後明確にしていただきたい。この健康保険改正案によりましてですよ、いわゆる問題の官僚独善の審査委員が新たに設置せられる、こういう規定に解されるのです。第十四条の二はですね。これが衆議院の修正によって、すなわち削除されて、審査委員というものがなくなるのかと思えばですね、今高田保険局長の言われるように、現在の基金法の中には審査委員というものがある。およそ審査委員という制度を新たに設けようとするならば、新たに設けようと言わんばかりの政府原案になっている。それを削除せられるというと、そういう審査委員は置かぬことになるのかと思うと、審査委員というものは現行の基金法の中にあるのです。こういう法律の書き方というものは、非常に、よしあしは別として、誤解を生みやすい。で、私はこの基金法の建前も、これはわれわれが実は疎漏であった。われわれが基金法を作るときに、審議が入念でなくって、結局われわれの責任になるのであるが、この基金法の中を見ると、いわゆる審査会の委員というものと、審査委員というものとが非常にわかりにくいものになっておる。現行法で残る審査委員というものは、審査会の委員ですか。あるいは別に、審査会の委員よりは別に、審査委員というものがおるのですか。つまり私の質問は、いわゆるこのたびの問題の、新たに置こうという審査委員と、基金法の中に、あなたがおっしゃるような、これは削っても残るという審査委員と、それから基金法の中に定められておる審査会の委員というものと、この三者はどうなるのですか。どれが消えて、どれが残るのですか。これを明確にしていただきたい。
  81. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御質問の趣旨は私にもわかりました。現行法では基金に審査委員会を設ける。そうして審査委員会委員はこれこれということになっております。それで、審査委員委員というものを今私は審査委員が残るというふうに申し上げたのは、その審査委員会委員が残るわけでございます。それから改正法の十四条の二で規定をいたそうといたしました審査委員というものは、これは従来の審査委員会委員と違いまして、基金の職員としての委員でございます。それはこの規定の削除によりまして設置されないことになります。それからもう一つ、三つという御指摘がございましたのは、私の推察でございますが、現在審査委員会委員というものが、定数を法律で制限されておりまするので、非常に請求書の多い都道府県におきましては、なかなかそれだけの人数では処理ができませんので、基金の職員としての審査補助員というものを置いております。これは現在すでにそういうものを置いておるわけでございまして、これは今回の修正によりましても残るわけでございます。従いまして、残るのは審査委員会委員と、それから今のこの基金の職員である補助員と、この二つが残ります。
  82. 山下義信

    山下義信君 私は補助員のことは聞いていないのでありますが、それは残そうと残すまいと御自由でありますが、私は同じ審査委員という名称が性格を異にしたものであって、そして同じ名前をお使いになって、そしてこの改正案では問題の審査委員を新たに置くこととする。これはいかぬといって大へん反対が強くて、これは削ってやめることにした、やめることにしたらおらぬのかと思うと、基金の方には審査委員というのが第十四条の五に明らかに審査委員という固有名詞で書かれてある。そんならすべて審査委員と称するのかと思えば、審査会の委員だという、ちゃんと審査会の委員というこれまた明らかな字句が使って、それでそれが数カ所に使われてある、そして審査委員というものがあるのです。そこで法律の上では審査会の委員と、基金法の中には現在審査委員というものがあって、新たなる性格のものが今回設置しようと企てられてそれを削ったのです。削ったからなくなるかと思うと、ちゃんと現在審査委員がおると、こういうことなんです。そこで私は、これは基金法の中で、条文を整理しなければならぬ。そういう私がもし誤解するならば、誤解を招きやすいような字句は、基金法の方が不備であるが、もう一つ私が疑いを持つのは、おそらく政府はやかましいから、今度の問題のこの機構の審査委員はやめる、やめるがなんぞ考えるでしょう。これだけ削除されて、これだけ削られて、これをやめにせられて、あなた方がのこのことまかり下ろうはずはない。何かかわりを考えているじゃろう、私はそう思う。何か考えている、どうしてもその疑いを受ける、現在の審査機構が不備である不合理である、また、不十分である、これでは徹底できない、何か十分に審査機構を整備しなくちゃならぬ、であるから、こういうやり方がやめになったらば、何かこれにかわる対策というものをお考えになっておられなければならぬはずだと、私はこう思う。そこで幸いなことには、基金法のここで死んでもちゃんとかわりが生きたのがあるから、これを十分、この審査委員というのをあるいは増員するなりあるいは使うなり、幸いそういう名称があるから十分にここで殺されてもちゃんとかたきの討てるように、いいあんばいに基金法の不備でそういう名称の職員が置けることになっているのを活用するのじゃないか、こういう一つの私は推測を生むので、何か基金法の今回の審査機構が削除され、やめになったことについて、何らかの代案を考えているか、考えていないかということを一つここで明確にしておいていただきたい。
  83. 神田博

    国務大臣神田博君) この改正案修正を、私どもそのまま受け入れまして現行通りやっていこうと、それ以外のことは考えておりませんので、さよう申し上げておきたいと思います。
  84. 山下義信

    山下義信君 私は先日、大臣は信用しろとおっしゃったんですから、これは信用しましょうと言ったんですから信用しましょう。じゃが、何にも、こういう政府の審査機構を強化するということがもしやめになったらば、何らかこれにかわる次善のことを考えなきゃならぬということで、それすらも考えておりませんということになりますと、私への御答弁はよろしゅうございますが、それで通らないところが起きて参りゃしませんかと、私はこう思う。厚生省のある公文書の中には、今健康保険改正案が国会で非常に審議せられておるが、あるいはこれが審議未了に終るかもわからぬ。昨年のことです。第二十四回の。そうすると、政府が完全な審査機構を作ろうと思ったが、その企てもやめにゃならぬかもしれぬ、もしさような事態が生じた時分には、これにかわるべきものをわれわれ考えようとしておりますということを公文書の中に述べたことはございませんか。この席で、私への御答弁は、何も考えておらぬというので済みます。私も信用いたします、大臣の言明でありますから。しかし、厚生省のある公文書の中には、今回の改正法案がもし実行が見ることができなかったらば、これにかわるべき何らかの対策をわれわれは、厚生省としては考えるつもりでおりますということが、公文書の中に私はあると思うのでございますが、そういう点につきましての疑点をはらしておいていただきたい、こう思う。私は政府弁明機会をここで一つお与え申し上げる。
  85. 神田博

    国務大臣神田博君) これは政府といたしましては、この御審議願った原案がよろしいということでこれは御審議願ったわけでございますが、衆議院の場合ですね、衆議院でわれわれの考え方がまだ機が熟さないというか、現行のままでよいというか、とにかくいずれにいたしましても現行の制度に復帰をさせられたわけでございます。そこでそういう場合に、それにさからって、なお新しいことを考えるかということは、これは私、立法府に対する行政府としてのこれは——当然これはそういうことはやってはいかぬという立法府の意思を十分尊重して、そうして行政府というものは法の秩序を立てて運用しなければならないんだという意味で、現行の制度のままで参りますと、こういうことをお答え申し上げたわけでございます。ただいま承わりますと、何か厚生省から各地方に、この法案の通らない際に、何か一つかわるようなことを考えるといような通牒が出ているというように承わったのでございまするが、そのことは私は承知いたしておりません。政府委員からお答えさせまして、これはもしそうだとすれば、私のただいまお答え申し上げていることと違ったことになりまするから、これは私の責任において、私が今申し上げた方針によってこれは善処して参りたいと思います。ただしかし、将来この現行制度が行き詰まると申しましょうか、なおかわる方法がいいというような機運が熟して参りまして、そこであらためて国会にまたこの法案の御審議を願うというようなことは、これはまた、別問題でございまして、そういうこともただいまの段階では考えておらぬという意味をあわせてお答え申し上げた次第ですから御了承を願います。今の通牒の問題は政府委員から必要とあればお答え申し上げさせます。
  86. 山下義信

    山下義信君 私はこういう公文書の発表はまだ慎重な態度をとります。ここへ持ってきておりますが、しかし、字句だけは申しておきましょう、あなたの方の厚生省の公文書を。「現在の審査機構そのものにも欠陥があるため、審査に限界が来ている点も考えられるので、各層利益代表の集りで構成している現機構を改め、公益代表のみによる専任審査員を配した審査会に改めるように、先般改正法案において企図したところであるが、審査未了となったので、更に同機構改正について考慮したい所存である。」こういう厚生省の所見が出ております。それで今大臣の言明は何らかわるべきものは考えないということでありますから、ただいまの言明を信用します。しかし、私は何らか、かわる対策を考えなくちゃいかぬと言っているのではない、審査機構が不十分ならばこういう考え方はいけないけれども、きわめて民主的な妥当な、何へも納得するような、十分な審査能率の上るような機構を考えることは当然のことです、していただかなくてはなりません。これは当りまえのことです。何もお医者さんの機嫌をとるために、審査は何もしないでやると、そういうことを私どもは主張いたさない。十分やるべきところはやる、その考え方がどうか納得のいくような体制をお考えにならなければならぬ、こういうことであります。今の厚生省の公文書の中の一句は申し述べておきまして、御所見があれば伺います。
  87. 神田博

    国務大臣神田博君) 今、山下委員のお述べになりましたことは、私も全く同感でございまして、そういうふうに一つこれは考えるべきものであるというふうに考えております。そこで、厚生省の通牒の問題でございますが、これは一つ適当な機会に……、私はよく知らないことだから……。
  88. 山下義信

    山下義信君 私が審査委員というのはここで殺されてあっても、基金でその職員を置くことができるような疑いを持つような法文の不備があるので、そういう疑惑があってはならないと、こういうことを申し上げた。こういう質問は少しく何と申しますか、芸がこまか過ぎますのでよしますが、基金がこのたび改正案によりまして審査委員が置かれる、かりに不幸にしてこの法案が通って置かれることになったらば、そのときの必要な予算というものが基金に計上されてあるわけです。私は三十一年度の基金の予算から見ますと、これが審査委員だろうと思う。この法案が通ったときの新たなる審査委員だろうと思う。およそ千三百二十何名かの審査委員を置く、それらの必要な費用がおよそ二億九百三万九千円基金に計上されてある、この金はどうします。これをやめたら置こうとした必要な審査委員に関係するこの経費はどうします。何かに使いますか。これはやめますか。今私が三十一年度の予算の中で申し上げた金額ですが、おそらく三十二年度の基金の予算にもあろうと思います。せっかく計上したのは惜しいじゃありませんか、何かに使えると思うのですが、どういう御所存でございましょうか。
  89. 神田博

    国務大臣神田博君) 法案の改正を意図して計上した予算でございますから、法案がその目的を達しなかったということできまりますれば、それは執行残ということになりまして、他に流用するとか、何かまた考えるということは考えるべきじゃないと思います。
  90. 山下義信

    山下義信君 こまかいことをお尋ねして恐縮でありますが、関連して、私はその辺はうといのでありますが、基金の審査の手数料は、必要な経費を基礎にして委託された件数をそれで除して、審査の手数料というものをきめる、今一件当り幾らの審査の手数料を取っているか知らぬが、言いかえますと、基金の業務上の必要な経費、そういうものに変化が生じてきますると、自然審査の一件当りの手数料の単価にも若干の影響があるのではないかと思いますが、ありますか、ありませんか。
  91. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 基金のただいまの手数料は一件当り十二円ということに相なっております。これで基金の業務全体がまかなわれておるわけでございます。もし改正法のような制度に相なりまして、基金の職員である審査委員を増すということになりますと、そこに費用がかかりますので、一件当り一円上げまして十三円という標準で私ども考えております。これらは政府管掌は政府管掌が払い、組合は組合が払うということになるわけでございます。それで、その経費というものは、これは山下先生御存じのように、毎年度予算政府管掌におきましては医療給付費の中に入って計上されておるわけでございます。ところが、今回衆議院で十二円でよろしいというような修正を受けましたので、従って十二円しか払わないということ、先ほど山下先生が御指摘になりました基金の二億でございましたか、それらはおそらく各保険者からの一円増しを全部集めると、そういうことになるのだろうと思います。従いまして、政府管掌は払いませんし、他の保険者も払いませんから、十二円だけ従来通り払うということになりますので、基金のさような予算法律改正を予定しての予算でございますので、その予算は更正をされるべきものと私ども考えております。  さらに、先ほどの山下先生の御質問で、ちょっと事態を明らかにいたしておきたいと存じますのは、先ほどお読み上げになりましたこの文章は、私どもお読み上げになりましたのでわかりましたが、これは行政管理庁から審査事務を適正にやるようにという指摘を受けましたそれに対する回答でございまして、「更に同機構改正について考慮したい所存である。」というのは、これは臨時国会前の文書でございますから、私どもといたしましては、同様な法律改正案を国会に提案いたしたい所存であるということをいった意味でございまして、今日の修正に関連した文章ではございませんことを明らかにいたしておきたいと存じます。
  92. 山下義信

    山下義信君 政府にいい弁明機会をお与えしたのですから、お礼を言ってもらわなければなりません。私はこの際、政府改正案に関する関係の資料について、これだけ重大な基金法の改正をしようとするのに、基金に関する関係資料が添付されていないことは不親切だと思う。従いまして、私は基金に対して、本案審議の際に十分にわれわれいっかは検討したいと考えておったのですが、本日はその点には触れませんが、この機会に資料を要求いたしますから、次の基金に関する資料を御提出を願いたい。基金の定款、基金の役員の氏名及び就任の年月日、現在の基金の職員の数、最近一カ年における基金の職員の退職者、新規採用者、特に毎月に分けましてその統計をお示し願いたい。三十一年度基金の予算、三十二年度の同じく基金の予算、なお最近の一カ年における審査状況、ことに審査の要求に対しまする減点の審査状況、なおこの基金は厚生大臣の監督下にあることは法の明記するところで、どのような業務監督をいかなる方法でなされたか、最近の基金の業務監督の状況、以上を資料として御提出を願いたい。ことにこの改正案によって審査委員を新たに設置しようとすることが予定されてあるために何かそういうような候補者をあらかじめ採用するがごときことをなされたことがあるか、いわゆる審査委員に採用するというために、他の形で新規採用でもされているようなことがありますかどうかという点を資料で明らかにしておいていただきたいと思います。私のこの基金の改正点に関しまするこの機会における最後の質問は、第二十三条の二の改正が削られてある、これは第二十三条の二は、この基金の職員がその審査その他の業務上において知り得た医師もしくは歯科医師に関する秘密を他に漏洩してはならぬという規定、これに反しますると罰則があることは言うまでもない。しかるに、政府のいう改正原案は、ここに薬剤師を入れようとなされたのである。しかるに、今回の衆議院の修正によってはこれを全部削られてある。そうすると、私の不審に思うのは読み方が悪いのかしらぬが、薬剤師に関する限りは、その基金の職員が秘密を漏らしても何ら差しつかえがないことになる、私はそう思う。これは少しく衆議院の御修正は行き過ぎではないか、もっとも衆議院の方の社会部長は野澤君でありますから、これは薬剤師の秘密はいくら漏らしてもいいと、こういうお考えであるかもしれませんが、ここに尊敬する高野委員がおいでになるのでありますが、こういう修正で薬剤師に関する限りはどのような秘密を基金の職員が漏らしても一向差しつかえないというお考えでは私はないと思う。こういうわけでこういう削除をされたか、また、政府はこれにどうして同意をされたか、こういう点を明解にしていただきたいと思います。
  93. 神田博

    国務大臣神田博君) これはどうも私もはなはだ残念に思っておりますが、今までのところ、薬剤師が別段この業務上の秘密に関して秘密を暴露したと申しましょうか、守らなかったというようなこともございませんので、おそらく今度の改正につきましても、今までもそういう必要がないから、今度もこの程度にしておいたらどうか、将来考えることは別だがというような意味のように実は想像いたしておったのでございますが、山下委員からそれはあった方がいいのじゃないかということでございますが、これは政府の方としてはあった方がいいということでやったわけでございますが、また修正になって支障がないかと言われますと、今までは支障がなかったから将来支障がないようにという意味改正したということで、すぐこれをやらなかったということに御了解を願いたいと思います。
  94. 山下義信

    山下義信君 私が以上の質疑によりまして、衆議院の修正点につきましては少し行き過ぎではないかと思われる節がある。法制上の建前からいきましても妥当でない点があり、ただいま指摘しましたような点につきましては、ことに最後の点につきましては、基金の職員が職務上医師並びに歯科医師に関して知り得た秘密を漏らしてはならぬという、そのことに対して漏らした者には処罰をするという、その規定薬剤師だけが必要がないからといって、政府原案から削除されるということは私は納得しがたい。これらの衆議院の修正点につきましては、若干われわれ参議院側として考慮しなければならない節があると思いますので、私はこの際、委員長にこれらの衆議院の修正点をも含めまして、この原案に対する修正個所が他にあるかどうかというような諸点にも及んで、適当な小委員会でもお作りなさるか、あるいは理事会等で御検討なさるか、適当な御処置をお取り計らい願いたいということを提案いたしまして、この基金の修正案の衆議院の修正部分につきまする質疑は、この程度にとどめておきたいと思います。
  95. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいま山下委員の方からお話のございました、衆議院の修正部分を含めて問題となっております。基金の審査会の問題、あるいはその問題をどう処理するか等の点について、小委員会もしくは理事会で検討という御提案がありましたが、小委員会を設けることの可否を含めて理事会で御協議願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 千葉信

    委員長千葉信君) それではさよう決定いたします。
  97. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連して。この報酬支払基金法の一部改正のことにつきまして先般衆議院の野澤議員からいろいろ御説明をいただきまして、そのとき、私はかなり衆議院審議につきまして批判がましいことを言って、言い過ぎるというので榊原委員から取消しを命じられたのであります。しかしながら、あのときに、野灘議員は確かにこの基金法の一部改正について十分な審議をしていないということを告白しておられる、そうして現にこういう証拠があるではないですか。で私は、ここで先般榊原委員のあの削除ということ、——もちろんその中で不穏当と思った点は削除していただきましたけれども、なお、あえて榊原委員のあのときの御意見について不満の意を表して、やはりわれわれ参議院側としては慎重審議しなければならないということを、ここであえてもう一度申し述べたいと思います。
  98. 千葉信

    委員長千葉信君) 今の御質問では答弁の必要もないようでございます。  暫時休憩いたします。    午後二時二十七分休憩    —————・—————    午後四時二十六分開会
  99. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、報告をいたします。山下委員からの要求のありました小委員会設置につきましては、委員長理事打合会において協議の結果、小委員会はこれを設置せず、適当な時間に委員会を休憩して、委員長理事において検討することに決定いたしましたから御報告いたします。  質疑を続行いたします。
  100. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 昨日、大臣に対しまして、皆保険の支柱なるべきところの国民保険に対しまして、いかなる国民保険内容をもとといたしましての皆保険をはかるべきかということを御質問申し上げたのであります。  国民保険というものは、申し上げるまでもなく、市町村を単位としておりまするところの地域保険であるがために、その地方の特有ないろいろな事情や、あるいは地方自治体財政の混乱などがそのまま事業に反映されるおそれがあるものでありまして、財政状態のよい町村の国民保険は発展しますけれども、悪いところの国民保険はふるわないという状態でありまして、現在におきまして、二十九年度の国保組合の約四割が赤字経営であった、赤字財政であったというような状態であるのでありまして、そういう意味合いにおきまして、われわれが問題としますところのものは、その保険料賦課の方法につきましての、いわゆる厚生省におきましていろいろとこれに対しましてあるいは所得割が五十とか、平等割が三十とか、均等割が十とかいうような指示をいたしておりますものの、その内容というものは、市町村の財政状態によって非常にまちまちなのであります。よいところはいいように経費が、比率が定められておるものの、悪いところは非常にその低額所得者ともいうべき人々に対しまして過重の負担をなしておるような状態のところもあるのであります。ことに国民保険保険料は、健康保険の場合のように、所得から源泉徴収されるものではなくて、一たび本人のふところに入った、そのふところの中から出されるというような、そのような点も問題があるのではないかと思われるものでありまして、給付につきまして、その町村の財政のよしあしによりまして、給付範囲あるいは内容等にいろいろの制限が加えられておるものでありまして、不振な保険者ほどすなわち財政の苦悩が多いために、その医療内容が制限されてしわ寄せが起きておるというような状態であります。二十九年の一月における調査によりますと、四千七百三十九の保険組合のうち、全然制限を受けておらないところのものは約百三十七、すなわち約三%にすぎないような状態であるのでありまして、初診料あるいは往診料を認めないもの、またはストマイとかあるいはオーレオマイシン等の抗生物質を制限しておるようなもの、あるいはまた、入院の食事すら認めない所もあるような、非常な差があるのでありまして、その医療費につきましても、たとえば国民保険の被保険者が給付を受けるところの医療費を一〇〇%としますと、保険料と一部負担金と合せまして、全国平均で六九・八%といわれておるのでありまして、政府の指導通り予算を立ててみますと、広島では八〇・三%、名古屋では八六%になるのでありまして、このように、被保険者の負担というものが八〇%以上の多額ということは、大都市の被保険者に低額所得層が非常に多いことを考えなければならないんじゃないかと思われます。それで、一部負担金の割合を引き上げまして七害にしなければならぬというようなことを先日の公述人の中にも言われましたけれども、かようなことにする場合において、被保険者の負担を非常に重くするんじゃないか。そういうことに対しまして、果して今後、国民保険の普及というものがどうなるのか、非常に疑わしいものになりまして、厚生省といたしましても相当な啓蒙指導ということを行わなければならぬじゃないか、かく考えるものであります。皆さん方におかれまして、あるいは厚生省といたしまして、大臣におきまして、いかなる内容の国保をお考えになって皆保険一つの支柱となすお考えか、この点についてお伺いしたいと思います。
  101. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま松澤委員のお述べになられました国保財政の窮乏と申しましょうか、その母体である市町村財政の窮乏が深刻であるのでございまして、自然国保がその影響を受けているということでございまして、御心配いただくことは、全くこれはごもっともなことでございまして、われわれ政府側といたしましても非常に憂慮にたえない、心配しておる次第でございます。そこで、それらの事情もありながら、なお政府におきまして、国民皆保険をこの四年間に完成いたしたいということは、社会保障の最も大事なものが医療保障である、全国民の約三分の一近くがこの恩典に恵まれておらない。そこで、どうしてもこれらの方々を一つのワクと申しましょうか、国保の中に抱いて、医療保障の法律の前に平等である、政府の恩恵の平等であるというところを一つ示したいというので国民皆保険に踏み切ったのでございます。しかしながら、これはもう大上段に踏み切ったのでございまするが、その内容を分析いたしますれば、今お話しのように、各市町村の財政状態によって、非常に被保険者に対する医療給付の問題も違ってきておるさらにまた、問題になっております五人未満の零細企業者等の点をどういうふうにするか、これを国保に抱いていくのか、あるいは第二種健保を作ってやっていくのか。これはまあいろいろやり方を今検討いたしておりまするが、この扱い方をきめることによって、政府の負担する、いわゆる国庫が負担する気がまえと申しましょうか、心がまえを一つはっきりしなければならないわけなんです。そういういろいろのむずかしい問題、政府が財政支出をしなければならない問題、これは承知の上で踏み切ったわけでございまして、踏み切ったからには、四カ年間で、いろいろの事情はあるのだが、これを踏み越えてやっていきたい。三十二年度におきましては五百万人を増加する対象として所要の経費を計上したわけでございまするが、これは前々からそれだけの心がまえではその成果を上げることは至難でないかという御注意をいただいておるわけでございまして、われわれ政府側といたしましては、この計画に基いた所要の成果というものをどうしても上げたい、全力をあげて三十二年度は成果をおさめたい、さらにいろいろな法律上の問題、財政上の問題を解決しながら三十五年度を目途として医療保障制度というものを一応まとめてみたい。それについては、町村財政もようやく好転のきざしが見えております。再建整備法も年とともに働いて参りまして、今度の地方財政におきましても自然増収が七百億ある。あるいは国の財政も今度の追加予算で百億ふやすというようなことでいろいろ財政措置は講じて参っておりますので、この三十二年度を地ならしとして三十三年度以降三十五年度までにいろいろの手を打ちながら解決していきたい。各市町村によってばらばらになっている医療給付の問題もできるだけこの期間を通じまして一定の割合まで持っていきたい。こういう考えでございます。
  102. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 大臣のおっしゃったように、ただいわゆる健康保険というものを今拡大していく、そうして社会保険をおやりになるというそのことについては、これは抽象的な問題であって、簡単だと思いますが、実際的になりますと、非常に種々の問題を持っておるところの現在の国民保険というものが、さような簡単にできるべきものじゃない。一つのことにいたしましても、たとえば先ほど申しました給付の内客におきましても、初診料あるいはまた、往診料、それらのものは患者負担、あるいはまた、入院においてすら負担しないというようなかような場合において、非常な問題点が多いと私は考えるものですが、ただ大いにそれらの点をよく承知してそうして乗り越えてやるというその心組みはわかりますけれども、実際問題については、財政的にも相当お考えにならなければならぬ点も多々あるのじゃないかと思いますが、それらについて、もう少し具体的に承わっておきます。
  103. 神田博

    国務大臣神田博君) 御心配をいただいておりますことは、お気持は私どもよくわかるのでございまして、御心配であり、同時に、御鞭撻だというふうに実は伺っておるわけでございます。これはまあたとえ話が当るか当らぬか別といたしまして、政府一つの方針をきめて困難のあることを承知でやるというのでございまするから、その公約の手前でも一つこれはやらんならん。いわんや、その公約を、国民の医療保障というものをすべての国民に一つ平等に与えたい、それが政府の任務なんだ、義務なんだというふうに考えてのことでございますから、その困難はどうしても乗り越えていかなければならない。その乗り越えていく方法としては、今の市町村では、いろいろ財政上の都合で条例等できめておりますのを、将来あるいは法律でもって一定にしていく、給付もバランスのとれたような、どこに行っても同じようなやり方もあると思います。しかし、その根本は町村財政が苦しいからそういうことになっておるということであれば、その町村財政の根本を政府が助成をして、肩がわりをしていかなければ、幾ら法律で調整してもこれはできないと思う。でございますから、そういうところにはそういうことまでしてやるという心がまえのもとで発足したのであって、内閣もできた早々でございますから、これだけのことはやるとお約束をしても、そのやり方は逐次日を追うて明らかになっていくと、こういう意味で私はお答えを申し上げておるわけでございます。たとえば、弾丸道路を作る、東京から大阪まで弾丸道路を作ると言って公約しても、ほんとうにその道路を作るのには予算化の問題とか、あるいは用地の買収とか、いろいろ測量から始まって道路の完成まで時間がかかる。みんなやってからこれで弾丸道路を作るだというふうにやるのではないので、弾丸道路を作るのだという一つの公約をして、それを一つ完成するということで、年次計画なり段取りなりを進めるのと同じように、今度の国民皆保険の問題にいたしましてもこれは朝野の要望であるのでありまして、この際、政府としては重要施策として踏み切った以上については、今御指摘のようないろいろ困難な問題はございます。この困難な問題も承知して踏み切ったわけでございますから、今後できるだけすみやかに予算化するものは予算化しよう、制度化するものは制度化しよう、そうして三十五年度までには完成いたしたい、御支援を願いたい、こういう意味でございます。
  104. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 私は、国民保険が相当な赤字に苦しむということの一つの原因というものは、いわゆる市町村というような市であるならばいざしらず、村のごとき非常な小さい単位の、いわゆる被保険者の少いものを単位として構成されているということも一つの大きな理由じゃないか、かように考えておるものですが、それにつきまして、府県単位とかそういう意味に拡大するお考えがあるかどうか、その点について伺いたいと思います。
  105. 神田博

    国務大臣神田博君) これは松澤さんのおっしゃられたように、今の市町村はだいぶ合併して、財政的基礎もできてきておりまして、一応単位基礎団体を地域団体というようなことになっておりますが、国保の性質から言って、できるだけやはり大きなものであった方がこれは成果をあげ得ると私もそう考えております。しかし、だからと言って、直ちにそれでは府県単位にしてしまうかどうかということになりますると、今の段階ではそこまで踏み切るということは実は考えておりません。しかし、数市町村単位というようなことは現にその例もございますので、これはやはりこのケース、ケースによって考えなければならないのではないだろうか、それから先にいっては今松澤委員のお述べになられたような、少くとも府県単位にやるべきものであるというふうに私は考えております。
  106. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 保険の給付がまちまちであるという、そのことにつきましても、要するところは、受診率に非常に影響があるということをお考えになっておられるかどうか。たとえば初診料を負担しないとか、あるいはまた、往診料を負担しないというものと負担するものとの、そういう区分によって受診率が非常に差がある。そういうことに対しまして、いわゆる赤字財政であるならば、受診率が低い方がいいというようなお考えになっているかどうか。これも仕方がないというようなお考えかどうか、そういう点を……。
  107. 神田博

    国務大臣神田博君) 松澤委員の御指摘のような例のがあると私も承知いたしております。そこで、それならばそれをどうするかということになりますと、やはりいろいろな事情でそうなっていると考えておりますので、内容の問題になりますので、できれば政府委員から一つ答弁さしたいと思いますので、御了承願います。
  108. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今、松澤先生指摘のように、現在の国保のやり方は療養の給付の範囲なり、それから給付率なり、そういうふうなものを皆市町村の条例で定めるように自治的にまかしているわけであります。従って、その関係で御指摘のようないろいろなばらつきがあるわけでございます。これは先ほど大臣がお答えいたしましたように、将来は一つ統一した何と申しますか、最低線というようなものはきめて参りたい、かように考えているわけでございますが、その給付内容の相違によりまして受診率に影響があることはこれは当然でございます。御指摘のような事実はございます。私どもとしましては、やはりこの給付内容はできるだけ引き上げて参りましてそうして受診率も従ってそれに応じて高くなるという結果になるかと存じますが、給付内容の引き上げというものを目標に、いろいろものを考えているわけでございます。
  109. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 今の受診率の低下ということにつきまして関連があるので、今回の健康保険法の改正がいわゆる一部の負担を多くしたということにつきましても非常に受診率が低下するのじゃないか、そういう意味におきまして大臣は受診率が低下しないという確信がおありなのかどうか、その点、関連があるのでちょっとお伺いしたいと思います。
  110. 神田博

    国務大臣神田博君) 国保の場合の問題は御承知のように、給付内容がだいぶ違っておりますから、今の受診率の問題等もお述べになったような例があろうかと思いますが、それと今の健康保険法のこの改正案に盛られている患者負担の問題を比較されましての御意見のように承わったのでございますが、私どもこれはまあいろいろ意見が違うとおしかりを受けるかもしれませんが、やはりある程度患者負担をしていただくということが健康保険——これはもちろん高かったら非常に趣旨に反するのでございますから、私もそういう考えで申し上げるわけではございませんが、少額の患者負担をしていくということは、これは制度的に考えて、まあ味のあるところといいましょうか、かえって親しみを一部においては増ということにも相なろうかというようなふうにも考えております。しかし、それが今までの何といいましょうか、地方々々の実情等によりまして、今でも現に初診料なんか取っていないのにこれが上げられるとまた取るわけにもいかないし、取ればどうも評判が悪くなるというか、取りにくいというか、いろいろ困るのだというようなお話を聞きますと、どうもわれわれの考えていることがまだ通っておらぬというような感じを持つわけでございますが、それは別といたしまして、今の御審議をお願いしているような程度でありますなら、一部の方には非常にこれはお気の毒になって参るのであって、そういう方には何か救済策があればこれは考えて参りたいと思います。全体としては、一つこの程度のことはお認め願った方がいいんではないだろうか、こういうような考え方で御審議を願っている、こういうことでございます。
  111. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 話は少しそれるかもしれませんが、健康保険法の今度の一部負担程度では、やはり受診率にはそう影響はないのじゃないかというお考えなのかどうか、もう少しはっきり……。
  112. 神田博

    国務大臣神田博君) そういう意味で実は申し上げたようなわけでございます。
  113. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 なお、国保の方に戻りまして、国保の問題となる点は、二重加入の問題があると思いますが、(高野一夫君「国保は議題になってない」と述ぶ)
  114. 千葉信

    委員長千葉信君) 御静粛に願います。私語を禁じます。
  115. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 その二重加入の問題についてどうお考えになっておるか。すなわち二重加入の問題になりますと、国保の単一の加入者とその比較をいたしますと、やはり受診率というものに相当影響がある。いわゆるこれが、すなわち健康保険と関係あるから申し上げるので、二重加入ということをお知りにならなければ、議題と関係ないというふうにおっしゃるかもしれませんが、健康保険法には非常に私は関係あるという意味において今お聞きしておるのです。
  116. 神田博

    国務大臣神田博君) この二重加入の問題、これは私はいい制度じゃないと思っております。そこで、将来法律改正等があったときに十分検討いたしまして、できるだけはずしていきたいと、こういう意向でございます。
  117. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 二重加入は将来はずすというふうに言われますけれども、現在は、やはり二重加入を認めておる場合においては、どういう処置を講じましてこれをなくすようなことにいたしますか。
  118. 神田博

    国務大臣神田博君) 政府委員から一つそこを、事務的になりますので、答えさせたいと思います。
  119. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私ども、昨年からであったと存じますが、二重加入は一時過去において厚生省は奨励をしたときもあるのだそうでございますが、いろいろ検討の結果、どうも二重加入は今後国民全般の保険というふうなことを考えた場合に、むしろ避くべきじゃないか、こういうふうな結論にもなりましたし、昨年から、新しく国保ができまする場合にに、二重加入は認めないという方針をとっております。  それから従来二重加入しております者につきましても、これは強制ではございませんけれども、できるだけこれをはずしていくように、市町村でも、はずさしてもらいたいという希望の市町村が相当ございまするので、それらで話し合いの上でそういう措置のできるところははずしていくようにという、これはもうほんとうの指導方針でございますが、そういうふうなことで行政運用いたしております。
  120. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 今、二重加入の問題について承わったのですが、私は、いわゆる二重加入をなすような場合は、非常な低額所得者に多いじゃないかとも考えられるので、その点につきまして、国保というものと、この生活保護法というものの関係も、私は非常に重大な問題じゃないかと考えます。現在の国保の中に、ちょうど国民保険法の第八条の九と十一があるのでありますが、この法律があるために、非常に生活保護法の適用を受ける場合にじゃまになるといいますか、すなわち、一部負担をやれない者は免除することができるという規定なんです、今のところ。そうなりますと、生活保護法が適用することができない、こういうふうな非常な不利な状態になることになりますが、そのような点につきまして、どういう工合にお考えになっておるか、是正するというようなお考えを持っておるかどうか。
  121. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 現在、国保、これは大体生舌保護法の被保護者は国保からどけておるというのが一般のやり方のように私は承知をいたしております。そういたしませんと、いろいろな保険料の問題等もございますので、そういう扱いをいたしておると心得ております。
  122. 山下義信

    山下義信君 関連して。松澤君の発言と私の発言が実はお互いに中断されつつ、交互に質問順位と、こういうことになっておるわけなんでありまして、私が松澤委員の御発言が済みましたあとで質疑をさせていただくことになっておるのでありますが、たまたま国保の問題が出ましたので、関連してこの際伺っておきたいと思う。  先ほど高野委員から、国保は議題になっておらぬとおっしゃいましたけれども、これは高野委員の何かお感取り違いじゃないかと思う。健康保険改正問題は、言うまでもなく、健康保険そのものの問題でもありますが、要するところ、その本質は政府の大方針とする、ただいま厚生大臣がるるお述べになりましたように、また、しばしばお述べになりましたように、現内閣の一大政策でもある国民健康保険というものと密接不可分の問題でございますので、従って、国保でありましょうと、何でありましょうと、医療保障に関する問題は、この健康保険審議と切り離して審議することはできないのでありまして、その点は私どもといたしましては、あらゆる医療保障に関係する問題は取り上げて審議いたさなくちゃならぬと、かように考えております。  ただいま松澤委員から国民健康保険の問題が出ましたので、この際、私は厚生大臣にお伺いいたしたいと思いますのは、国民健康保険法の改正案というものは、従来この第二十六国会に御提出の御方針であったやに承わっておるのでありますが、今日いまだに御提案を見ないのでありますが、果してこの国会に国民健康保険改正法案をお出しになりますのか、あるいはこの国会にはお出しになりませんのでありますか、どういう御方針でありますか、承わりたいのであります。言うまでもなく、政府の皆保険の御方針の、しかも本年度からその実行にお入りになった中核は国保であります。この御政策を御推進なさるにつきましたは、松澤委員が言及されましたように、その裏づけとなりまする制度、すなわち、国保の内容というものが整備してこなければならぬことは言うまでもありません。先ほどるるお述べになりました事柄は、みな国民健康保険法の改正案に関係のあるお話でございまして、こういう心がまえが、こうも考えておる、ああも考えておると仰せになりまするその御方針は、これが具体的に国保の改正案となって現われなければ、ただお考えであり、そういうお心持ちであるというのにとどまるのでありまして、今や一方におきましては、あなた方のおっしゃいまする四カ年皆保険の計画の第一年度を踏み出しておるという際に、その裏づけになりまする具体的な国保の改正案がいまだ国会に提出を見ざるということは、私はこれはせっかくのお話でございますけれども政府の御方針が言行一致せざるかのごとくに感じられるのでございます。この際、国保の改正案を御提出になりますかどうか、政府の明確な御方針を承わっておきたいと思います。
  123. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま山下委員のお述べになられましたこと、これはもう実にもっともなことでございまして、政府といたしましては国民皆保険を踏み切ったのでございまして、できるだけ一つその内容の具体性というものを持ちたい、こういう意図をもちまして、国民保険法の改正案をこの国会に提案いたしたいという意図をもちましてずっと検討を加えて参ったのでございますが、昨夜までの状況によりまして、どうも今の段階では、これからまとめて国会に御審議を願うというにはむずかしいという大体の結論に昨夜達したようなわけでございまして、これはもうまことに残念でございますが、しかし、それは国民皆保険を完遂するためになお一そうこの国保の改正に十分検討を加えて、そうしてりっぱなものを出したい、裏づけのあるものを出したい、この次の国会に御審議を願うその際には、りっぱな裏づけをしたものをもって御審議を願う、こういうような意図でございまして、さよう御了承願いたいと思います。
  124. 山下義信

    山下義信君 率直に御答弁をいただいたのでありますが、今国会に御提出をお見合わせになるということは自他ともまことに遺憾に存じます。この国保の改正につきましては、私は超党派的にぜひその実現を望みたいと考えておる一人でございまして、かねて政府当局におかれまして、改正案の要綱と言いますか、骨子と言いますか、大体の御構想をちらほら漏れ承わりまするときに、大体その御方向につきましては私ども陰ながら賛意を表しておる。ぜひその実現に期待いたしておりましたものでありましたが、さぞかし国保関係者としてはこれは失望されるだろうと思う。ことに本年を第一年次として都市におきましても、あるいは町村におきましても、政府の御方針に沿って開設を実施せんとし、あるいは近くまた、その準備に着手せんといたしております都市、町村も多数あるのであります。現行のままでありましては、政府の期待のごとき果してそれらの拡張ができるかどうか、非常に心配にたえない点もあるわけでありますが、どういうわけで、どういう点に支障があり、御検討の熟さないところがあり、あるいは同意の得られないところがある、たとえて申しますと、財務当局でありますか、あるいは自治庁当局でありますか、あるいはその他調節のまだつかざる点が、どういう点がありましてなお御検討を要する点が生じたのでありますか。この際、関係者が実は国保の改正案を望んでおります。ほとんどこれは何と申しますか、国内一致して望んでおるのでありますから、非常に失望するわけでもございまするので、大体政府におかれましては、どういう御構想で改正案をお考えになっておったか、それがどこに支障を来たしたかという点について、願わくばこの席を通じまして、国保の関係者並びにあるいは、国保の実施を予想いたしておりまする地方関係者等が疑惑を持たないように、できるだけ率直に一つお示しを願いたいと思うのでございます。
  125. 神田博

    国務大臣神田博君) これは山下委員のお尋ねになられますことも、これはごもっともでありまして、私もそれらの事情は十分御納得いくように御説明申し上げたいのでございますが、実はただいま率直に申しまして、タベおそくいろいろ内輪の協議がありまして、この段階ではどうも間に合わないという見通しを実は私が立てたわけでありまして、実はまだ閣議に諮っていないのであります。はなはだぶしつけなことをお答えしたわけでありますが、明日は閣議で御了解をいただこうと思っておるのでございますが、そこでしからば、こういう経緯で出そうと思っておったことが出ないかということでございまするが、これは非常にいろいろ関連している問題もございまするので、いずれ適当な機会十分一つこれはもうどうしてもお聞き願いたいことでございまするし、御支援もちょうだいしなければ、これはりっぱな法案にならぬわけでございますから、そう遠くない期間に十分に資料を整えまして、そうして御報告と申しましょうか、御了解を得たい、こういうふうにに存じますので、さよう一つ御了承を願いたいと思います。
  126. 山下義信

    山下義信君 私は大臣の率直な、ただいまの状態を御説明いただきましたので、くどく追及しょうとは考えておりません。しかし、この国会に提出をお見合せになりましたのは、いわゆる国会の諸情勢とにらみ合せて審議の都合上お見合せになりましたのか、あるいは国保の改正案を提出するということに関連いたしまして、いろいろ財政上の調節のつかざる点等もありましたり、あるいは内容に重大な変更を加えるような事態が起きまして、再考慮になっておいでになりますのか、という点だけはお示し願いたいと思うのであります。
  127. 神田博

    国務大臣神田博君) これはもうごもっともなお尋ねでございますが、いろいろ改正案審議して参っているうちに、率直なお話でございますが、だんだん欲目が出て参りまして、できるだけりっぱなものにしたい、こういう初一念と申しましょうか……。そこでそういうものをやりまするのには、やはり法律の裏づけとなります事務的な資料が十分整う見通しがつかなくなって参りました。そこで、事務的に実はむずかしい、こういう見通しをつけたわけでございます。財政上の裏づけの問題も、これはもとより重要でございます。それからまた、自治庁、その他関係方面との折衝の問題もきわめて重要でございまするが、それと同時に、それよりも事務上の今、申し上げた御審議を願う資料を十分集めるということにどうも日が足らないのじゃないだろうか、こういうことがタベの最後の相談の番の結論でございまして、そのままつ閣議に報告して、御了解を得たい。また、これは了解を得たら進んで私の方から社労の委員会に御報告申し上げ、御了解得たいと思っておりましたのですが、あと先きになりました。お尋ねがございましたので、ほかのことと違いますので、率直にお答え申し上げまして、御了承得たい、こういうことでございます。
  128. 山下義信

    山下義信君 この点は、私は関連質問でございますから、この程度にとどめておきまして、私の質問の順番が参りましたときに、ただいまの大臣の御答弁以外のことにつきまして、差しつかえない程度で、質問を保留さしていただきます。
  129. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 ただいま山下委員の申されたように、私としましても、国民保険法は非常に重要な問題点が多いと思うのです。ことに皆保険に進むときに、支柱となる国民保険が推進するためには、これが最も先決の問題じゃなかったかと思う。これはただいま大臣がおっしゃった通り、欲を出して今度の国民健康保険法もりっぱなものにしてお出しになった方がよかったのじゃないかと思う。そのことに関しまして、国民健康保険法の改正には欲がなかったということに対しまして、私は非常に残念に思うのですが、それはそれといたしまして、私は国民保険の問題につきまして、一般会計の方から繰り入れるというこの問題、これは非常に市町村財政が窮迫している今日において、今後国民保険を推進するための一つの非常な障害になるのじゃないかと思う。そういう意味において、大臣としては、一般会計から繰り入れなくても済むようなことをお考えになっているかどうか。これは全部繰り入れているものばかりじゃありませんが繰り入れているものも相当あるのですが、おわかりになりますか。
  130. 神田博

    国務大臣神田博君) 前段の国民保険改正案について、まあ慎重に最善を期している。それに比して、この健康保険法の改正も、そういう心がまえにおいてするべきものであったという御注意と申しましょうか、御要望と申しましょうか、お尋ねを得たわけでございますが、これはたびたび申し上げますように、今まで申し上げたことで一つ御了解願うことといたしまして、そういうことがいろいろ私ども申し上げる御参考と言いましょうか、御意見を承わりまして、今度の国保についても十分考え直したということで御了解願いたいと思います。  それからあとの方のお問いに対しましては、政府委員から一つお答えさせたいと思いますので、御了解願いたいと思います。
  131. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 市町村の一般会計から国保の特別会計に繰り入れる問題は、今松澤先生指摘のように、非常に大きな問題でございます。それで一般的な議論をいたしますれば、これはそれぞれの市町村の自治にまかせられておる範囲でございますので、特にどうこうという中央から強制をいたすわけには参らぬわけでございますが、しかし、これに関連をいたしまして、いろいろ従来問題が起きておりますので、さらに新しく私ども法律案を立案いたす際には、かような点につきましてはある程度の割り切り方をしなければいかぬということで、実は地方自治庁ともいろいろ数次にわたって話し合いをいたしております。ただいま到達をいたしておりまする両方の考え方といたしましては、費目の種類によりましては、当然一般会計で盛ってしかるべき経費があるわけでございます。例をあげて申しますると、保健婦の費用でございますとか、あるいは直営診療所の費用等につきましては、市町村の国保の施設ということになっておりますけれども、住民全般が恩典を受ける費目でございまするので、そういうふうな性格のものと、そうでないものと分けて、そうして区画整理を一つやろうじゃないかというふうなことに話し合いをいたしておるわけでございます。いわゆる医療給付費の方で単年度に赤字を出したから、すぐ一般会計からカバーするというふうな考え方は、これは私どもの立場といたしましては、それもやってもらいたいところでございますけれども、しかし、地方財政の観点からいたしますると、そういうこともどうであるかという意見も十分ございまするので、医療給付費というものは原則としては国保の会計で、保険料でとっていく、これと国庫補助金とでまかなっていくというくらいの考え方をいたしていったらどうだろうか、こういうふうな大体割り切り方を両省の間で話し合いをいたしておる現段階でございます。
  132. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 今の一般会計からの繰り入れについても、非常にお考えになっておるというお話ですが、赤字財政に苦しんでおるその国民保険組合を育成するためには、ただいまの国庫負担が二割である、これを三割にしても、これを育成して、そうして皆保険の確固たる地盤を作るというようなお考えがおありかどうか、大臣にお尋ねします。
  133. 神田博

    国務大臣神田博君) 政府は声を大にして国民皆保険を公約をしておるわけでございまして、しかも四カ年でこれを完成したい、こう言っております。しかもこれを実際に行う使命を持っておるのは、市町村でございまして、市町村の財政不如意は最近はだいぶ好転してきておりますものの、財政出になかなかよくないことはお述べになられた通りでございまして、そこで医療給付の率を上げようということになりますれば、相当思い切った国庫の助成というものが必要であることは申すまでもないと思います。われわれといたしましては、この国保の全面的な円満な施行をしたい。それから皆保険の実をあげていこうということになりますと、政府においてもこれはよほど腹を締めてかかることは申すまでもないことでございまして、この成果をあけるための財政支出は当然これはしなければならない、また、すべきものであると考えております。ただしかし、その場合、一体何割まで、いつまでにするかということになりますと、これは十分検討いたしまして、政府の公約した最終の期間においては、そういうことが、目的が達成できるようにいたしたい、こういう考えでございます。
  134. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 大臣もいろいろお忙しいでしょうし、他の人の御質問もあると思いますので、私はまたこの次にいたしたいと思いますが、一点だけなおお聞きしたいのは、ただいまの国民保険のあの審査の点につきまして基金の方におまかせする、御依頼するというようなお考えがあるかどうか、局長でもよろしゅうございます。
  135. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 一般の社会保険でやっております支払い基金にやらせるかどうかということですか。
  136. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 そういう考えを持っておるかどうかということです。
  137. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) この点は現在御承知のように、県が審査をいたしましたり、あるいは国保の連合会で審査の事務をいたしたりいたしておりますが、たしか社会保険の支払い基金を利用しておりますのは秋田市一カ所であったと記憶いたしております。大体国保の方は、現在の支払い基金の審査機構を利用していくということは、やはり現状のように、それぞれの地方々々にまかせて判断をさせていったらどうか、特に支払い基金に全部の国保の審査を統一するのだというふうな画一的な考え方は、私ども今持っておりません。
  138. 山下義信

    山下義信君 先ほどの国保の改正案の提出をお見合せになりましたことに関連いたしまして、そういたしますと、私どもの受ける印象としましては、いわゆる皆保険の四カ年計画というものに非常に影響を来たす、支障を来たすように考えます。言いかえますと、新たなる国保の強化をするこの改正案が見合せられたということをただいまそれとなくおっしゃいましたけれども改正しようとする主要眼目の、いわゆる皆保険を推進していくとして、絶対必要な諸条件内容が、いろいろ政府部内において話し合いがつきかねて、そうしてここに見合せざるを得なくなったように、伺うのですが、言いかえますると、そのことは、裏から申しますというと、皆保険を遂行していく、四カ年計画の第一歩を踏み出す初年度におきまして非常に障害になってくるということを杞憂せざるを得ないのであります。そういう点につきまして、今後どういうふうにこの国保の拡張といいますか、皆保険の第一次計画といいますか、これを予定通りに遂行していく、実現していくということが、果して現在の国保の制度このままで所期のごとき成果、目的をあげ得るというお見通しがあるのでございましょうか。一面から申しますと、新たなる関係方面の要望に沿って国保を強化する改正案を企図せられて、それを基本として、国保の拡張設置に、関係の都市、町村を勧誘せられる普及宣伝、その他の費用を計上して勇ましくスタートを切られましたこの御計画というものが非常に大きく後退するというか、転換するというか、計画の上に大挫折を来たすのではないかと考えられるのでありますが、その点につきまして、厚生大臣としての御所見はいかがでございましょうか。
  139. 神田博

    国務大臣神田博君) 国民皆保険の実施の問題で、山下委員からも非常に御協力していただく御発言を前々からちょうだいいたしまして、実際これは感銘している次第でございます。今お述べになられました国保の法律改正を一応見合せようということは、これはまあ何と言いましょうか、最初に政府が国民皆保険を打ち出しまして、今年度に所要の経費を計上した、たとえば事務費のごときも六十八円から八十五円に引き上げた、また、今年度五百万人という被保険者の医療給付の費用もまた計上いたしまして、しかもこの国保の宣伝普及費といいましょうか、二千四百万円を計上いたしまして、そして四カ年をもって完成する第一年度として発足したわけでございまして、そこでなお一そう一つ国民健康保険法の一部改正をやって強力に推進したい、事務当局考えでは法律一つ調整までしてもというような、これは意気込みであったのでございますが、これはまあ私は異見が少しあったわけでございます。ということは、いきなり法律で調整するというようなやり方はどうであろうか、法律で調整する前に政府はやらなければならぬのだ、打つべきものがあるはずだ、たとえば今日国保の普及がおくれていることは、先ほど来、るる述べられておるように、市町村の財政窮乏が原因なんだから、このもとを洗って財政窮乏の全部を政府がカバーできなくても国民健康保険一つ完全実施する分だけはよく算定してみてやるというだけの親心がなければこれはできない。それからもう一つは、五人未満の零細企業者の問題をどうするかということをはっきりこれは割り切っていきませんと、これに対する所要の経費というものを見きわめて、そしてこれをどういうふうにして政府が手を打つかということをきめませんと、これは画龍点睛を欠く、一番大事なところを触れないでそして法律だけでこれを先行して調整ということになると、どうも私は政府のやることは信用がないということになりはしないだろうか、こういうことが実は非常に議論の焦点になってくるのでありまして、私どもといたしましては、国民皆保険を四カ年間に完成するためには、まず政府部内として市町村が実際にこれはもうやれるということを明示しなければならない。それでもなおかつやらないという市町村がございますならば、これは法律で命令をもって処置してもやらせる、こういうような考え方をすべきものではないだろうかというようなこと等がいろいろ論議された結果、法律の準備をいろいろいたしては参ったのでございまするが、そういった基本的なことも考えが出て参りまして、今度改正してまたその調整する分だけ残しておいて、また一つ加えるのだというよりも、行政指導を十分にして、政府の意のあるところを一つ啓蒙宣伝して、また、町村の困っていることを一つわれわれが解決しよう、国民の保険だけはやれるように一つ持っていこう、行政指導を先にやっていってあとで法律指導をやった方がいいのではないか、こういう基本的な問題等もいろいろ議論がございまして、そしてまた、これを今申し上げましたように、次に法律の御審議を願うといたしますと、諸般の資料も完備しなければなりませんが、その大事な資料の入手がどうも間に合わないのではないかというような見通しもつきましたものですから、拙速主義よりも、今申し上げましたように国保の強力な推進を一ついたしますが、法律改正の方は拙速主義をとらないで少しおくれるが、おくれるといっても次の国会にはぜひお願いしなければならないことでございますので、そういう意味合いをもちまして、どうもこの際無理な提案をして御審議に迷惑をかけるよりも、諸般の準備を完了して、それまでにわれわれも行政指導を十分にいたしまして、そして御審議願った方がよろしいのではないか、こういう気持をもちまして、タベおそく、実はこれでは御審議を願っても資料はそろわぬので、継続審査というようなことにでもなりまして、御迷惑をかけても申しわけございませんし、いろいろな法案の立案そのものについても、立案する前にいろいろ御意見もお聞きする、また、こちらの意見も御聴取を願う、こういう実はいろいろ深い配慮に基きまして見合せようと、明日の閣議で御了解を得ることになっております。私の素直な気持でありますから、そういう意味で、実はそういうようなことになっていることをお答え申し上げておきたいと思います。御了解を願いたいと思います。
  140. 山下義信

    山下義信君 大臣の率直な御答弁で這般の事情は若干了承いたしました。私は実は昨日来の他の委員との質疑応答の間に御答弁を聞いておりまして、若干奇異の感を持っておったのですが、それは五人未満の加入の問題について、政府の方針では、実ははっきりまだきまっていないということをおっしゃった。これは私は少し妙だと思いまして、実は昨年の第二十四国会におきまして、この問題の基本的なお考えを承わったときも、健保に入れるか、国保に入れるかという問題については、大体政府としては国保にこれを吸収する方針だと、こういうように御答弁があったわけです。重要な問題は八項目ほど伺ったのです。神田厚生大臣においては、先日来五人未満の加入問題については方針がきまっておらない、こういうことをおっしゃったので、先日来実は五人未満の加入の問題について調査ということをおっしゃっておられるが、本日はいろいろ調査関係にも関連して伺おうと思ったのですが今の国保改正法案を再考慮なさいまする一つの問題としても、それらの五人未満を国保に吸収したときはあらためて計算の仕直しもしなければならない。いろいろそれについての諸制度についても、また再検討しなくちゃならないというようなふうにお話しを承わったのでありまするが、やはりそれらも一つの問題点に相なったのでございましょうか。
  141. 神田博

    国務大臣神田博君) 実はむろんそれも大事な問題でございますので、議論の焦点になったのでございます。ただ五人未満の問題につきましては、これは今山下委員のお話のような経過もございまするし、また、医療保障委員会ですか、そちらの答申にも第二種健保を作れという御意見もあり、また、閣内にも池田大蔵大臣のように国保に入れたらどうか、こういうような意見を出されておるのも、それは御承知通りでございます。私はどちらかといいますと、実は五人未満の零細企業につきましては、もともと関心といいましょうか、興味といいましょうか非常に身近にこれはよく承知をいたしておりまして、そしてどっちへ入れることが、これはもう一番被保険者として一体受益するか、それからもう一つは、行政事務としてどういうことが一番月々の事務が捕捉できるか、このことを実はいろいろ今考えておりまして、どちらにきめるか、実はまだ苦慮いたしているわけでございまするが、実体は私の出身地だけでなく、全国のこういった零細企業の実体というものを相当二十数年来見て回っておりますので、その実態を承知いたしておるので、実は迷っておるのかもしれませんが、何とかこれらの一つ零細な従業員、経営者を政府の医療保障の厚い方に持っていきたい。それで実態をよく事務上それがレールに乗れるようにしたい。そうすると、一体どれが一番いいのか、他に迷惑を及ぼさないではっきりした線で乗せていきたい。一体合理的な効果的なものはどれがいいのかということについて、実は私自身がまだ割り切ってこれが国のためにも、被保険者のためにも、また、これを対象としているこの医療機関においてもやりやすいのだということについての幾つかの案を見てはおりまするが、その中のどれがいいかということについてきめかねておる。で、それらを一つそう長い期間をかけないでいろいろ一つそれぞれ諮るべき機関にも諮りましてきめたい。そこで一つこの国保の改正というものを考えてみたい。そうでありませんと、零細企業は地域的に集中しておりまして、それは全国的にもどこにもこれは分散されておりまするが、多くは地域的にこれは集中性を持っております。これをもし扱いを誤まりますると、非常なガンといいましょうか、非常にこれはやりにくい問題が出ると思います。そういうこと等をも考えておること、それから先ほど申し上げましたように、国保を皆保険に持っていくということになりますと、最後はやはり命令規定が必要だと考えております。その命令規定を初めから出すことは一体どうであろうか、行政指導の完璧をはかって命令規定をやはりそのあとで出した方がいいんじゃないだろうか、行政指導を一つ先にやり、こういったことを考えながら、それからまあ諸般の事務的な数字等の資料の十分なものが集まりかねるというようなことも勘案いたしまして、この際無理しない方がよろしいのではないか、こういったすなおな気持でございまして、別にそれ以上の政治的事情等からどうこうということで提案を見合せようというのじゃございませんので、今申し上げた気持でございますことを一つ御了承願いたいと思います。
  142. 山下義信

    山下義信君 わかりました。お話はいろいろと御配慮のようであります。五人未満の話が出ましたからこの際ついでに聞くのでありますが、実は五人未満の事業所従業員は、すでに既設の国保に加入しているものが相当あるのじゃないかと思うのです。相当あるだろうと思う。それからさらに、今年の第一次の国保の拡張設置をやる。しかも都市が過半数を占めておる。あなた方の御計画では、予算書では五百万人に対する、いろいろ準備の補助等も積算がされております。医療給付の二割補助の予算ももとより五百万人増の計算、しかし一方、厚生省の方の四カ年計画には、第一年次に八百何十万ですか、どういうところにそういう食い違いが出ておるのか知りませんが、予算書によっては五百万人の拡張、しかもその中には十幾つか、それ以上の都市が約三百万ほどの人口を吸収することになっている。この中でも五人未満が私は今年度開設しようとする国保に吸収されるものもあるだろうと思う。そういう点に対する既設の国保に入っている五人未満の従業員、それから今年第一次の拡張される新設国保の市町村の五人未満、そういう点につきましては、すでに既設の国保に加入しているものには数字がありましょうし、今年の第一年次の拡張国保につきましては、およその見通しというものがあるのじゃないかと思いますが、その辺の数字はどうなっておりますか。
  143. 神田博

    国務大臣神田博君) 数字のことは政府委員からお答えさせたいと思いますが、その前段の五人未満の零細企業者がすでに国保に入って扱われておるだろうということと、今度の五百万のこの予算計上の中に、都市の含んでおる中に五人未満が相当入っているではないか、それは一応入っていたとするならば、もし第二種健保ができたらば抜くかどうかというようなお尋ねのように承わりましたので、その点一つお答え申し上げたいと思います。入っておるかどうか、入れるかどうかということについては、おそらくこれは入っておるだろうと私も考えております。それだけ除いておるとは思いません。それから今年度の五百万の計算の中の都市の際にもこれは一応は入れて計算されておると思っております。しかし、第二種健保を作るということになりますれば、これは当然その中から抜けて出るような仕組みをしたいと、こう考えております。
  144. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 数字の御質問でございますが、五人未満の零細事業所の数字というものは、実は全国的な調査推計も先ほど申し上げましたように、われわれとしては初めてやってあれだけの程度のものをつかんだわけであります。これが各市町村にどういうふうにばらまかれているかという数字は実はつかんでおりません。大へん申しわけない次第でございますが、今日の国保の中に、五人未満の零細事業所に雇用されているものが今日の国保の被保険者の中にどれだけあるか、今後来年度普及をいたすこの市町村の国保対象人口というのはっかんでおりまするけれども、その中に五人未満の従業者がどれくらいいるかとか、これらの点につきましては、今さような調査資料を持ち合せておりません。
  145. 山下義信

    山下義信君 五人未満の調査の問題が出ましたからこの機会に伺いますが、昨日お示しになりました数字の御報告は、一部の抽出調査をなさって、それから全国的な推計をなされた、今年秋ごろまでにやってみよう、把握してみようとおっしゃるのでございます。しかもその中に、従来の調査が四項目でありましたかありまして、しかも医療保障に最も必要な点の実態調査については十分でない点もあったようでありますが、どういうふうな調査をなさろうとなさるのでありましょうか。また、重ねて伺いますが、いつごろ調査が完了するお見込みであるか、また、その調査に関係する費用等はどういうふうになっておりますかという点を伺っておきたいと思います。
  146. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 昨日でございましたか、申し上げました調査は、三十年の十二月三十一日という時期における静態的な調査でございます。それでこれは……。
  147. 山下義信

    山下義信君 それは厚生省が三十一年十月付で御発表になりました数字ですね。
  148. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) さようでございます。
  149. 山下義信

    山下義信君 続いて御答弁を願います。
  150. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) それで結局これは年度としましてはむしろ三十年度にやったということでございまして、その後いろいろな角度からこの統計をとりまして調査室で発表いたしましたのは、今の先生指摘の時期でございます。それで三十一年度にも実はこれとやや類似の調査を繰り返して、もう少し規模を大きくしてやっておるわけでございます。これの結果が出ますのが調査自体はもう完了いたしておりまして、これを集計解析中でございますが、われわれが役に立つような資料としてこれを利用できるまでにまとめ上げられるには、いましばらくの時日を要するかと思います。
  151. 山下義信

    山下義信君 調査費は予算にあったのですね。
  152. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) これはこういう費目が抜き出してはございませんが、御存じの医療保障関係の調査費といたしまして、官房にたしか本年度八百万円か九百万円か省一本で計上いたしております。その中の費用で実施をいたしたはずでございます。
  153. 山下義信

    山下義信君 五人未満の問題につきましては、衆議院におかれて相当御論議もありましたようでありますし、昨日本下委員がきわめてユーモアのある質問をいたしました。わが党といたしましても五人未満の加入の問題につきましては、政策に基きまして国会に提案をしておる点もございまして、ここで重ねて私から質疑応答をすることの煩を実は避けたいと思うのでありますから、省略いたしますが、先ほどの国保の拡張の問題でありますが、いろいろ御答弁の中に示唆される点がありまして、重ねてその点を確かめなくても私にわかりました。わかったのでありますが、今のその強制か、また、強制しなくても自然に喜んで開設のできるようにあらかじめ行政的な手を打って、しかる後に無理のないようにしてあるいは必要な段階になれば強制しようか、この問題はまあ多年の懸案でありまして、要するところ、鶏が先か卵が先かどうも強制しなければとてもこれは皆保険の実現は不可能であろうとも見えますし、今、大臣の再考するとおっしゃった無理な強制をしてあとから手直しをしなければならぬようなことでなしに、先に開設し得る可能な地盤を先に作ってやっておいて、そしてスムーズにやった方がいいというこれは全く、この両説は従来から大きな課題であります。適当なときに踏み切ってもらわなければ、諸情勢を見ましても、とうてい皆保険ということに大きく一歩を進めることは不可能でおろう。ただし、その強制ということにつきましても言うまでもなく、裏づけがなくちゃならぬ、ぜひその裏づけがほしいこういうことで、その裏づけを求めますためには、あらゆる面におきましてそれに見合うところの諸施策を中に盛り込んでいかなければならぬということで、結局因果々々でぐるぐる回るわけでありますが、要するところ、結論としては相当な財政的な裏づけ援助をやらなくちゃならない、こういうことだけはこれはもう厳然たる事実であります。そこで、本年第一年次としてやろうとすれば、たとえば私の郷里は広島でありますが、広島市の当局のお勧めによりまして、この四月一日から開設するということで市会が最近に議決をしており、勇み立ってやろうとしており、医師会もできるだけ協力しようというので、他地方に見るような対立はしないように、政府の政策に順応してやろうとしておる。しかしながら、政府がいかなる財政援助をしてくれるのであろう、どういう程度にあと押しをしてくれるのだろうかという点につきましては、暗中模索でありまして、非常な危惧を一面には持っているわけです。政府においては、直ちに三割補助の実現は、今回の予算におきましても御努力になりましたが、しかし、直ちに実現ということにはいかないので、補助率は二割にとどまったのでありまして、しかしながら、ほかの手を打って、たとえばわれわれが漏れ承わるところによりますと、国保の調整交付金といいますか、そういう制度を考えてでも何とか裏づけをしてやろうといろいろ御心配に相なったようであります。従って将来それらの点についてはどういうふうに、バックアップをしてやろうという御方針があるのでありましょうかという点を一つ大臣の御所信を承わっておきたいと思う。
  154. 神田博

    国務大臣神田博君) お尋ね、ごもっともなことでございまして、まあ今回三十二年度の予算におきましては、事務費一人当りの単価六十八円を八十五円まで引き上げたということ、これはだいぶ市町村の方でお喜びになっておられるようでございます。しかし、これはなお私どもといたしましては、これに満足するものではございません。この三十一年度の市町村の国保の決算を一つ十分検討いたしまして、大蔵、厚生の両省が共同調査をいたしまして、三十三年度以降には一つ適正事務費の一人当りの単価というものを出したい。それは今よりもっとよくなるというふうに考えてそういう案を一つ示すことができるだろうと思っております。夏中には共同調査をやろうと、こういう計画が両省の打ち合せ事項になっております。  それからこの今の一番大事な給付率の、この医療補助が三割を要求しておって二割にとどまってしまった。これでございますが、これも大蔵省といたしまして三割が多いと、二割がいいのだということで了承したわけではないのでございまして、この問題も一つ十分考えながら相談しようじゃないか。まあ一応大きく踏み切ったのであるから、いろいろこの三十二年度は啓蒙宣伝費を、ことにまあ市町村財政もだいぶ今年はやはりこの神武景気も影響しておりまするし、それのみか、国保に対する市町村民の熱意というものが非常に盛り上っておりまして、この気持というものを市町村当局が押えるということはなかなかこれは至難なことだと考えております。問題は国保経済の、当該市町村の国保経済の適正規模というものはどういうところかということを把握することが一番大事じゃなかろうかと思っております。こういう実態調査も一つ今年は身を入れまして皆保険にいくべく、しかも四カ年でやろうという第一年度目でございますから、機運醸成と実態調査ということに一つ主力を置きまして、そうして三十三、三十四、三十五年度という三年度で完全実施という、こういう構想で参りたいと、こういう気持でございます。
  155. 山下義信

    山下義信君 政治はいつも厚生大臣が言われるように生きものですから、諸情勢に従いまして心境の御変化、また、いろいろな御施策の御変更はこれは私どももうなずけます。国保の問題は関連して伺いましたので、しかも国民皆保険に重大な問題でありますから、私は国保の改正案の御提出がないのを見て不思議に思いましたのでお尋ねしたのでありますが、できるだけわれわれこの点は衆議院の御説明のあの問題になりましたように、国民皆保険ということは超党派的に賛成するところでございます。できるだけ予定の計画が私は円滑に遂行することを、推進することを祈念して大臣努力の期待しておきますが、安くできるようになるかわかりませんね、よけいの費用をかけずに安くできるようになるかもわかりませんね、計画の御変更によりまして、政治は生きものですからね、いろいろな御改革が、日が延びるほど安くつくようになるかもしれません。ただ一つこの点も御研究にはなっているでありましょう。私ども現在の国保に対する医療給付の補助、いわゆる補助、国庫負担、この条文審議いたしますときに、条文はおかしいのでありまして、二割を下らざる、こんな法律を作ったことがないというのは、当院におきましても、ことに緑風会の田村委員はこの表現はおかしい、おかしいというので話題になったのでありますが、結局二割を下らざるということでありますから、済んでみなければわからぬということで、今回の補正もそういうことで、あとで計算してみると足らぬということになる。ほんとうは先にこれが補助が出るようになると、あるいは少くとも同時にこれが出るようになると非常によろしいようで、こういう点につきましては、将来改正されるというような御意図があるのでありましょうか、その点はいかがでしょう。
  156. 神田博

    国務大臣神田博君) 今のこれも山下委員のお述べになりました通りでございまして、大体予算は概算払いを先にやっておるのでございます。そこで三十年度が今追加補正でお願いしたということは、三十年度の計上額が足らなかった、不足であったということです。見込みが少かった、そこでかように今度の補正でお願いしたようなわけでございまして、三十二年度もできるだけ早く概算払いをいたしまして、市町村の国保の運営に困らないようにいたしたい。また、今の計画以上に国保の加入がふえまして、もし足らないというのでございますれば、予備費なり、あるいは補正なりでできるだけ早く処置いたしたい、かように考えております。
  157. 山下義信

    山下義信君 つい話がはずみましたが、補助金の交付の仕方が今のような奨励方式といいますか、優勝劣敗方式といいますか、あれが実に矛盾がありまして、すぐれたものにやはりやるのはおかしいので、劣悪のものに補助するのが当りまえのように思います。あの補助の三方式四方式といいますか、これはある段階がきますというと、そんなような方法でなしに、もっと平等のような補助方式にならなければならぬと思うのでありますが、そういう点につきましての御検討はどういうふうになっておりましょうか。
  158. 神田博

    国務大臣神田博君) ごもっともでございまして、今までの実績を勘案いたしまして、今年も先般改正いたしました。できるだけ山下委員のおっしゃったような私ども気持でございますので、そういうようなふうにもっていきたいと考えております。
  159. 山下義信

    山下義信君 私がお尋ね申し上げませんのに、先にやっておいでになりましたらもう言うことはない。それをおっしゃれば尋ねんのでしたけれども、いずれしかし、それは法制化の問題はどこかに出てくるのでございましょうが、行政措置でなさるのか、やはり法律的に明確にそういう点も将来の改正のときには御検討願わなければならぬかもわからぬ。  私は国保のところで足どまりをしておりましたが、この機会に、政府の医療保障に対しまする基本的な御方針でありますね、これを一つ率直に明確にお願いしておきたい。これは皆保険を進めておいでになる上におきまして、具体的には国保を広げよう、具体的には健保をしよう、また、五人未満のをどうしよう、その他の関係の各種の医療保障制度をどうしようというのがありましょう。しかしながら、それを一貫して貫く国の基本方針、すなわち、いかなる性格の医療保障制度にしていこうかというところの基本的な御方針がなくちゃ私はたらぬと思う。現在そういうことがはっきりしていない。先般総理の御出席のときに質疑いたしましたとき、その一端に触れたのでありますが、現在の御方針は、私はその点が非常にあいまいだと思うのです。そういう点がいかなる性格をもった医療保障制度にして、わが国の医療保障制度を作っていくかということのその性格の基本方針が定まりませんというと、どの制度をどのようにいじくりましても、結局無方針といいますか、非常にあいまいな方針でいくのでありますから、制度の面に混乱が起きてくる。たとえばですね、私の質問を明確にいたしますために、あわせて政府の御方針を明確に承わりたいために申し上げるのでありますが、たとえば問題になっておりますこの健康保険をつかまえてみましてもですね、これは古くから言われている点でもありますが、つまり監督と保険の経営実務というものが混乱されておる。監督行政といわゆる保険経営というものが混同しておるということをよく昔から言うのでありますが、そのことを裏から申しますというと、いろいろな言葉を使いますが、官僚統制があそこに出てきた、ああいうところが官僚統制だ、あれが官僚独善だというようなことを言いますることはですね、これは一つの監督行政の面、それから一面においてこの健康保険改正の中でもいろいろ要求せられている面は、これはいわゆる保険経営の上からくるあなた方の要望の要請される改正の問題、言いかえれば、保険数理に基いてこうなくてはならぬという保険経営者側としての提起せられる問題がある。そのしょっちゅう混乱している、混同している一つの中に、保険制度の中に、そういう二者の性格というものが含まれておる。それで私はそういう点が、国の医療保障制度に対するその性格の上における基本的な方針というものが非常にあいまいになってくる、こういう感じがするのです。たとえば具体的に申し上げましたならば、医療国営、医療国営という一つ言葉をつかまえてみますと、これは最近はだれとなしに、だれとなしというよりは、だれもかれも何となくこれをタブー、医療国営ということを避ける。医療国営という言葉が出ますと、すぐイギリス式の医療国営はやらぬのだという、こういう医療国営という言葉が出ますというと、これをなるべく誤解をされないように忌避しようとする。しかしながら、医療について国が経営に当る、国が主体性をもってやるということは、すなわち医療国営なんです。その方式がイギリス式であろうと、日本式であろうと、中共式であろうと、何式であろうと、医療保障の経営について国が責任をもつ、責任をもつだけじゃなくて、国自体がその医療保障の経営に当っておる、運営に当っておるということは一〇〇%それでなくても、三〇%、四〇%はすなわち医療国営方式を採用しておるということが言えるのであります。大臣をつかまえて、政府は医療国営をやる腹かというと、すぐ大臣はそれを忌避されまして、断じて、とんでもない、そういうようなことは毛頭考えておらぬと、こうおっしゃるのでありますが、何ぞはからん、日本の医療保障制度と政府との関係を見ますというと、医療国営という言葉が悪ければ、少くとも医療保障、医療公営方針をもっておるということは年々歳々方針が、性格が強くなってきておる、このいうことを私は感ずるのであります。そこで、将来日本の医療保障制度の性格というもの、基本的な方針というものが、政府においてはどういう方針を持っておられるかということを私は明確にしていただきたいと、こう思うのです。
  160. 神田博

    国務大臣神田博君) 山下委員の御所見を承わっておりますると、大へんこれは稗益するわけでございますが、政府が医療行政というものをどういうふうに一体推進していくのかと、こういうことがお尋ねの根本だろうと私考えるのでありまして、政府の今考えていることを一つ申し上げまして、また何かと一つ教えていただきたいと思いますが、私どもは、これはざっくばらんに申し上げますれば、これは政府考えというよりは、私の考えの方にちょっと触れることになるかもしれませんので、いや、お前の考えは用がない、政府考えを言えということでありますれば、まあそれまででございますが、まあほんとうに国民の医療というものを高水準に持っていこうということにすれば、これはもう全部地ならしして、政府管掌だ、組合管掌だとか、もういろいろ行政官庁なりあるいはその他の共済会だというようなものを、もうさらっと一本にしてやれれば、これはもう一番、何と申しましょうか、保険制度を打ち立てて、国民皆保険で、みんな法の前に平等なりっぱなこれは医療保障制度ができるという一つ考え方もできると思います。しかし、今日ここまで参りましたことは、やはりそれぞれ皆歴史のあることであり、この歴史もまた尊重しなければならないことは、これはもう申し上げるまでもないことでありまして、そこで、その限られた範囲で政府が国民医療を法の前に平等として、そうして国民ひとしくこの恩恵を受けるようにする。そのためには一体どうしたらいいかということが、これは大事なことと考えます。そこで、医療保障をするということは、これはまあ皆保険に持っていく仕方はそこできまったわけでございます。問題は、政府がその高水準に持っていくのに、どの程度一体財政措置をするか、財政負担をするかということだと思います。これもできるだけしようということでございますから、これはかすに若干の時日をもっていたしますれば、私は相当の成果があがると思います。そこで、これをそれならば担当していただくのは、これはもう医療機関でございますから、医療機関のあり方をどうするかということだろうと思う。医療機関も国立があり、あるいは県立があり、市立があり、あるいは町村営があり、あるいはまた、組合立その他公益法人等がございますと同時に、私企業としての民間の診療機関、お医者さん方がおありのわけです。それで政府は、どうこれを一体考えているかといいますれば、今の姿をそのまま保険医療機関として平等に一つ見て参りたい。私企業も今以上に保険医療機関として重大な使命のあるところから、これを尊重して参りたい、こういう基本的な考えをもちまして、むしろ今後はこの私企業である医療機関の育成強化と申しましょうか、国立あるいは公立等がむしろ乱立して私企業に食い込むことを、ある程度これは押える段階にきているのではないだろうか。それからこの医療機関の都市集中の弊を一つ押えるようにいたしたい。無医村もなくしたいし、それからまた、僻地の方に医療機関のないことも、これはあるように一つ行政指導をいたしたい。国立、公立、私企業、相ともどもに国民の医療を一つ担当していただいて、ともに一つ栄えていただくといいましょうか、国民が安心して生命の治療を託する、こういうことを念願しております。だから、言いかえますれば、政府の医療行政といたしましては、現在のあるべき姿をなお一そう改善していただいて、しかも設備の近代化もいたしてもらう、国民が安心して医療に信頼を持ってもらう、こういうような方向に参りたいと、まあこういうことを基本的な考えといたしております。
  161. 山下義信

    山下義信君 私が昨年くどくどしくいろいろなことをお尋ねしましたので、同じことは避けたいと思います。私も老齢でありまして、あるいは今夕もはかられませんので、私の質疑は、実は遺言のつもりなんです。(笑声)いつかもわかりませんから、これは質疑でなしに、質疑というよりは、私は自分の所信を大臣に申し上げて、遺言のつもりで残したいという実は気持でおるのです。この間うちから健康保険のいろいろなことを調べて、相当疲労こんぱいいたしております。それで、まあそういうつもりで、昨年申し上げたことは言わないつもりです。それで今の大臣の、わが国の医療保障制度の性格、基本方針いかんということについての御所信は、結論的に申し上げますというと、現状維持論、こういうことです。これは現状維持論であり、同時に、いわゆる公営主義か民営主義か、国営とは私はいいませんが、公営主義か民営主義か、こういうことになれば、できるだけ公営方針の方へいくということは、これは考慮して、医療機関でいうならば、私企業の民間医療機関をフルに活用する、これは言ったんです。医療保障制度のごく一部分をつかまえていえばこういう方針である。これは言いかえれば、現状維持論、これをいわゆる社会保障制度審議会の今回勧告をしておるのは現状維持論、そうしてその冒頭にイギリスの国営主義を誹謗して、衆議院を誹謗したより以上に英国の国営医療保障制度を、社会保障制度審議会は非難しておる。あたかもそれに類するがごとき主義政策を持っておるものは云々ということで、暗にわれわれを誹謗する、社会党はイギリスの国営医療をやろうとは考えておりません。私どもの政策は、国費中心主義という言葉で表現しておりますが、その社会保障制度審議会の諸君の議論は、現状維持論、これは理論がない。何ゆえに現状維持をするかといえば、仕方がないから、直しようがないから、まあ現状でいくより手がないというのがあの諸君の勧告である。なぜそういう勧告を出すかというと、一人は組合連合会の会長、一人は共済組合の理事長、ですからその現状維持論にみんななってしまう。これは結局八百長で、お互いにそれぞれの立場で、その点は現状維持に利害が共通するから現状維持論、私はそんなことを言っておりても、日々おのずからだれがそうさせるのか、これはわからぬ。いわゆる大東亜戦争はだれが火をつけたかわからぬと同じように、だれがその方向へ進みつつあるか、何者が進みつつあるか、牽引力はどこにあるかわからぬ。それが意識的に牽引しつつあるのか、無意識的に自然にわが国の政治の諸情勢でそういうように推進しつつあるのかわかりませんけれども、振り返って見ると、だんだんわが国の医療保障制度も、次第に国費中心主義に進みつつある、次第に国営的な方向に進みつつあるということだけは、振り返って見ると、いなむことはできません。その医療保障制度の上に、非常にいわゆる国が経営上の立場を持っている。いろいろな面を、私がこう自分で、一人でですね、こう自分でメモをしてみるというと、いわゆる医療保障体系におきましてはですよ、このわれわれが論議している健康保険は、政府管掌だ。政府が経営している。そうして監督強化をし、政府が経営者であるという立場に立って、いろいろ保険医制についてもしばしば手をつけようとする。それからその他の日雇い保険政府が経営をしてやるのだ。それから生活保護の医療扶助制庭も、政府がこれをやるのだ。国民健康保険政府がうしろにおって、自主機関は市町村であるけれども、公営です。いわゆる国民皆保険でいこうとする。国民保険、この医療保障も公営です。その他共済組合、その他多々ある。そうしてそれらの事務費は全部国費から出る。すなわち、この体系は公営主義にあらずして何ぞやです。非常にその公営の面が強いのであります。そうして医療機関は年々歳々、同僚諸君が指摘されましたように、公的医療機関は続々として増設されていくのであります。私企業を尊重するとおっしゃったけれども、民間医療機関を圧迫すること実に日に増して深刻である。こういう方針をとっておいでになる。そうして病気の治療そのものに関しまするというと、結核対策というものは今日これは国営です。国営の結核対策をしておいでになるのであります。そういうことを考えてみますると、たとえば医療制度にいくというと、医薬分業、これはあなた、強制的医薬分業制度です。その強制的医薬分業制度を、骨が抜かれてはおってもです、要するところ、少くとも形態は強制的医薬分業。その強制的医薬分業というものを基盤にして、新医療費体系を作ろうとするので、その方向へ政府法律をもってこれを引っぱっていくのである。そういうことを考えますと、たとえば無医村対策ですよ。無医村対策でも、民間の医療機関を無医村に持っていこうという御計画ではないのです。予算を見ても、何を見ても、いわゆる国立病院の出張所を作ろう、みなそういうので、無医村にも公的医療機関を配置しよう、だんだんそういうものを拾い上げてみますというと、わが国の医療保障制度全般が、その医療保障制度の体系から言うても、医療制度から言うても、医療機関の制度をとって参りましても、私は非常にその公営主義のところがだんだん、だんだんその部面が広まって参りまして、わが国の医療保障制度の少くとも七〇%は、経費においても、制度においても、法律においても、国が動かしている。国が経営している。国がうしろにおってやらしているという面が逐次拡大されつつあるということを、私は事実において現状分析してみますと、そうなるのだ。そういう方向に進まぬのであるということならば、国民皆保険の性格、すなわち、わが国の医療保障制度の性格というものは大転換をしてこなくちゃならぬ。回れ右をしなければならぬ。回れ右をするのか、このままの態勢を進めていくのかということの基本方針が定まらなければですよ、健康保険改正一つするにいたしましても、政府の方針で定めていくというものは動かすべからざるものである。保険数理に基くところのいろいろの金銭的な問題は、これは日々、年々動かしてもよろしいものである。しかるに今回の健康保険改正案でも、そのときの情勢によって動かしてもよろしいものはあくまでも固守なさる。動かすべからざる政府の方針のようなものはすぐに全面削除だと言うて動かしなさる。でありまするから、一つ改正案をお出しになるのでも、その改正案に対する政府の御態度でも、始終どこが動くのか、動かすべからざるものを動かし、動かしてよろしいものを確固不動にこれを固守なさるというように、すべての方針が私は支離滅裂であると思う。おそらく私は岸内閣が近く新政策をお出しになるということです。私は先日伺おうと思うたが、ついに機会を逸しましたが、その政策の中に何をお出しになるか知りませんが、私のひそかに推測するところでは、おそらく岸総理は、時来たらば医療国営を打ち出すと、私は確信しておる。確信しております。もし厚生大臣は、そういう医療公営の方針には進まぬのだ、おれは民営主義だという御方針なれば、総理大臣との方針がどこかで相反するときがくるのじゃないかと思うのです。私は先日総理の面前で、久しぶりで有能なような、有能らしいような厚生大臣をお迎えしたと、(笑声)保証をつけておきました。私どもは率直に申し上げますというと、失礼でありまするけれども、国会は閣僚諸公を採点いたします。この公けの席上で、久しぶりで有能らしい厚生大臣を迎えた、(笑声)ということの保証をつけておきました。そうしたら総理は、いや、これから厚生大臣とよく協議をいたしまして、ということでございますから、おそらく続いて閣僚の地位においでになると思いますが、(笑声)しかし、総理の御方針と非常に食い違うようなことになりますと、私はこれはせっかく私どもが御推薦申し上げておるのでありまして、これは私はそういう点におきましては、一定の基本的な方針をおきめになりまして、将来のわが国の政治の方向とにらみ合せられまして、この医療保障制度の性格の基本方針というものは、お進め願わなきゃならぬと考えるのでありますが、大へん長広舌を弄しましたが、これは遺言でございますからね。(笑声)ですから一つ厚生大臣の御所信を承わりまして、できるだけ現在の方針をお進め願いまして、民間の機関を御利用なさいますることはお説の通りでございますが、国の責任制というものを憲法の明記に従いまして、私は十分一つ強力に御推進を願いたいと、これは希望でございますが、重ねて御所信を承わりたい。
  162. 神田博

    国務大臣神田博君) 山下委員の該博な御所見を承わりまして、これはまあ非常に私だけでなく、たくさんの方々もお聞きでございますので、感銘を新たにされただろうと思います。  そこで問題は、この岸内閣も、これはまあ与党も含めてでございますが医療国営にだんだん持っていくのじゃないか、こういうような御所見のように承わったのでございますが、私どもはこの社会保険の公営をするといいましょうか、まあそこで社会保険が、公営で、国がやっておるから、これに医療機関として指定を受けたものが即国営になるというふうには考えておらないのでございまして、やはりこれは私企業としてわれわれは育成強化していきたい。また、医療機関の方々も、自分の御商売として御熱心にお仕事に励んでいただきたい、こういうことなんです。自由経済と申しましても、やはりこれは十九世紀の自由経済と、今日の自由経済とは、やはり一年々々、日に月にこれはやはり進化して参るのでございまして、たとえば食糧の管理をやる、農家から米を買い付ける、農家の自由販売というものは禁止している、こういうことをやりましても、政府が農業を国営にしているとか、あるいは国民も農業を、もう国家行政の、国営の形態に入ったというように考えておらないと同様に、国がこの国民皆保険を断行して、保険行政を強化して参りまして、そして国民の医療保障を徹底していく、しかし、これを診療の面から、担当される医療機関、お医者さんの方々が自分の独自の自由営業として、そして、御競争なさる、御研究なさる、御努力なさる、こういうふうに考えておりまして、まあその点これは山下さんの、おれの遺言だぞということでございますので、何でもこうお聞きして御同意申し上げることが、これはもう私もそうしたいと思うのでございますが、どうもこればっかりは少しどうも逆らうようなことになりまして恐縮ですが、私ども考えはそういう考えであると、これは岸総理もそういう考えであることは間違いなく、総理、閣僚の私の考え方一つだというふうに考えております。しかし、今山下委員のお述べになられました、今後の医療行政のあり方と申しましょうか、考え方といたしましては、私どもも十分——これはその所見のなかなかお高いところを十分一つ学びたいと、こういうふうに考えております。
  163. 千葉信

    委員長千葉信君) 日程の都合上、暫時休憩いたします。    午後六時二十一分休憩    —————・—————    午後九時十八分開会
  164. 千葉信

    委員長千葉信君) それではこれから社会労働委員会を再開いたします。  委員異動を報告いたします。三月二十八日付をもって、田中茂穂君が辞任し、その補欠として、小山邦太郎君が選任されました。   —————————————
  165. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き質疑を行います。御質疑願います。
  166. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 引き続きまして、局長さんに少し法文解釈、疑義についてお尋ね申し上げたいと思います。四十三条の四に、今回新しく保険医療機関並びに保険薬局等に関しまして、これに対する命令と申しまするか、出たわけであります。最初にお尋ね申したいのは「第四十三条ノ六第一項ノ規定二依ル命令」というのはどういう命令でありましたでしょうか、一応再確認させていただきたいのでお聞きするわけであります。担当規程といってもいろいろございますが、「第四十三条ノ六第一項ノ規定ニ依ル命令」ということになっておりますが、これはどういうことでしょうか。
  167. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 四十三条の三でございましょうか、先生質問の点は。
  168. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 四十三条の四なんですが、医療機関の問題です。四十三条の四の二行目にございまする「第四十三条ノ六第一項ノ規定ニ依ル命令」ですが、この命令の内容を実は知りたいのですが。
  169. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 四十三条の四の第一項は、保険医診療または調剤に当られるときの担当規程並びに機関担当規程、両方がここに根拠が規定されておるわけでございます。それでその内容がどういうものであるかということにつきましての御質問のように存じますが、大体大まかに申し上げますと、現行療養担当規程というものがございますが、これはただいまは保険医指定ということになっておりますので、従って医療機関としての担当規程というものも、あるいは診療内容についての担当規程というようなものもみな一緒に規定されております。従いまして、現行担当規程機関個人保険医との二つに分けるというふうに大体お考えをいただけばよろしいのでございます。例をあげて申し上げますと、個人の方の担当規程といたしましては、懇切丁寧に診療をやりなければならぬとかあるいは特殊療法等をやたらにやってはならぬということが今日書いてございますが、診療行為、調剤行為そのものについてのことを保険医の、すなわち個人担当規程の方で書きたいと存じております。それから医療機関の方の担当規程といたしましては、たとえば被保険者証を持って診療をお願いに参ったものを拒否してはいけないとかあるいは差額徴収というようなことをしていただいてはいけないとか、それから診療録はこいうふうなものを備えつけて置いていただきたいとか、例をあげて申しますと、そういうふうな種類のものでございます。
  170. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 同じく同じ個所で片一方では「命令ノ定ムル所ニ依リ診療又ハ調剤ニ当ラシムル」こうお書きになっておいて、その次に「外命令ノ定ムル所ニ依リ療養ノ給付ヲ担当スベシ」と、この「療養ノ給付」というものと、四十三条の六第一項の「診療又ハ調剤」と、こう二つ出ておるわけなのですか、「療養ノ給付」というのはもちろん切り離しているので、療養費の範囲と違うと思いますが、こういうふうにお分けになりました意味はどういうわけなのでしょうか。
  171. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 療養の給付の範囲は、第四十三条にここに明確に法律上の意義が規定してございます。これらのことを含むわけでございます。それから診療、調剤というふうなことは、個々診療行為、調剤行為を事実行為としてとらえまして、それをさしておるわけでございます。
  172. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そういたしますると、この「療養ノ給付ヲ担当スベシ」ということの具体的内容なんですが、今おっしゃった四十三条によってこれを表わしておるということになりますと、患者から往診を求められた場合における往診というものが療養の給付の中にやはり入ることになるのでしょうか、その点をお伺いしたい。
  173. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 往診というようなことも療養の給付の中には入ります。ただこの往診、いわゆる医師の応招義務というのは、これは医療法でございましたか医師法でございましたか、そちらの方に規定があるわけでございます。
  174. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 その場合に応招の義務なんですが、医療機関開設者医師でない場合があるわけなんですが、医師でない者に応招の義務を負わすということについての御説明をいただきたいと思います。
  175. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 医師でない者には応招の義務というものはございません。応招の義務、すなわち診療を求められた場合にそれに応ずる義務というのは医師法規定がございまして、それは医師という職責に問いました、職業にくっついている義務でございます。
  176. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ところが、この医療機関に命令をもって「療養ノ給付ヲ担当スベシ」という字句によって、端的に考えますと、その開設者があたかも応招の義務があるがごとき表現になるわけですね。これはもちろん医師法違反でございますよ。違反でございますが、この表現ではそういうようなことに考えられる場合がありまするので、御質問申し上げたのです。
  177. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 保険医療機関は「命令ノ定ムル所ニ依リ療養ノ給付ヲ担当スベシ」、こういう規定によりましてその指定医療機関療養の給付を担当する義務が発生するわけでございます。医師という身分に伴いまする応招の義務というものは、これは医師というものに伴っているわけでございますから、保険診療とか何とかいうことでなくて、もう医療そのものについて診察を求められれば、正当の理由なくしてこれを断わることができないという、医師としての本来の義務でございます。
  178. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 今の御説明ですと、医師に対しての御説明でありまするが、私の聞いておるのは、無資格開設者療養の給付の義務仰せつけられておる。療養の給付の中に、やはり往診というものは療養の給付であるとするならば、医師法に触れるような無資格の人に義務づけるということは、片一方の法律によって義務づけられないことが、命令によって規定するということはおかしいのじゃないかという意味合いを含んでの質問なんです。
  179. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 医療機関という一つ機関にその療養の給付を担当していただく義務があるわけでございますが、それがなぜあるかと申しますと、四十三条の四でそれが義務づけられるわけでございます。ただいま御指摘の四十三条の四で義務づけられるわけでございます。それは医療機関としての義務でございまして、その代表者開設者でございますので、その開設者は、自分の勤務医師なり何なりによりまして、その療養の給付を担当するということの義務をこの規定で負うわけでございます。で、非医師開設者でありますれば、そういうことになるわけでございますが、その人がかりに医師でありますれば、こういう規定がなくても、医師という身分によりまして、別に医師法ですでにそういうあれを負っておられるわけでございます。で、これは保険の関係の規定でございますので、一般の診療義務を負わせるわけには参りませんけれども保険との特別な契約関係にある医療機関、すなわちその代表者開設者に対して保険診療をお願いする義務というものを設けまするには、この保険規定でそこに根拠を作ったわけでございます。
  180. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 明瞭によく了解できたわけでございまするが、結局こうなんですね。医師そのもの保険医であろうがなかろうが、応招の義務がある。無資格開設者療養の給付の義務があるから、雇用しておるか——とにかく医師をして往診さすところまでの義務を負うわけですね。そう解釈すればいいわけですね。——よくわかりました。  続いて、これは先日ちょっとお伺いして、局長の答弁を得て、なるほどという点もあるのですが、なお不安なのでお聞きするわけですが、これは局長一つの社会通念なり、常識でもって判断をしてもらいたいということなんですが、その診療が命令の定むるところによるべきことについて注意し監督するということは、どこまでが開設者責任になるのか、個々診療行為についての責任はないとおっしゃいましたが、もちろん個々診療行為について責任を負うわけにはいかない。どういうことをしておけば責任が回避をされるか、免責のことになるかということについては、まあ常識的な判断に待つという御答弁でございましたが、もとよりそう思うわけなんですけれども、やはり医師、歯科医師諸君にこういう点の疑点を聞かれた場合に、ただそういうわれわれの説明ではやはり徹底を欠くと思います。具体的に四十三条六の項目だとか、つまり担当規程だとか、あるいは命令によって、あるいは出された指示だとか、そういうもの並びに最初に四十三条の十二のようなこういう取り消しのようなもの、こういう条項はいけないのだからということを、子供でないのだから、一回だけ注意しておけば、まあ関係者は別ですが、医者の方は一回だけ注意をしておけばいいのか、やはりときどき言わなければいけないのかということなんですがね。これは一回しておけば、医者である限りはわかるはずなんですが、それとも一回じゃいけないという意味なんでしょうか、具体的にどうなんでしょうか。もとよりあらためていろいろな指示が出ました場合には、そのつどやるわけですが……。
  181. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 社会通念上の見地から判断すべきものと思いますが、今御設例のような問題につきましては、毎日々々療養担当規程を守れよという御訓示をなさるようなことも必要はございませんし、また、何年に一回、一ぺんとにかく言っておけば永久にいいんだぞというような、しゃくし定木なことも申せないかと思います。しかし、その開設者の、普通の開設者の何といいますか、いろいろ任務といいますか、役割りというものは、おのずからきまって参るわけでございますから、まあともかくまじめに一つ療養担当規程に従って診療をしてくれと仰せになり、しかもその開設者のいろいろな言動から、たびたび仰せにならなくても、そういう御意思であるということが勤務の従業員の方々にわかるようなことでございますれば、それで十分であろうと考えられます。
  182. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 次に、四十三条の五の保険医登録の問題なんですが、相当論議を尽されておりまするのですが、なおこの論議の中に含まれてない点だけをお聞きしたいと思います。国民皆保険の実施を政府が今、公約しておられる。そういたしますると、国民皆保険になりまするというと、医師の免許というものは、同時に保険診療もできるという資格につながることの保証がないと、医師免許の実態がなくなると思うのですが、先般来仰せのように、医師であるということは、もうほとんど保険医であるという御解釈のようですが、それはそうでなければならぬと思うのです。もう一つわれわれの方から言いますると、保険医であることが——休憩前に申しましたように、権利であるというくらいのとろまでに強い定心感といいますか、何か持たないと、この登録制について無条件で賛成できかねるという気持がするのですが、一応そういうような気持なり、解釈でいいでしょうか。
  183. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 四十三条の五の第二項という規定によりまして、医師であって、しかも登録をしてもらいたいという御希望のある方は、どなたでも登録をいたすべきものであるということが、この規定によりまして、法律上にも明確になっている、こういう性格のものでございます。従いまして、権利だという、法律上の権利という概念は相当コンリートなものでございますので、さようなやかましい意味での権利ということであるかどうかということになりますると、これは若干疑問があると思いますけれども、だれでも登録自分希望すればしてもらえるのだという意味におきましては、今かりに先生が権利という言葉を平たい言葉でお使いになったといたしますれば、さようなことであろうかと存じます。  さらに、ここでちょっと付言をしておきますが、国民皆保険ということに相なりまするけれども、国民健康保険の方の関係は、御承知のように、今日の制度では保険医という制度ではございません。これは御存じのように、療養担当者という制度で、いわゆる狭義の社会保険保険医の制度というものではございません。従いまして、そこに別の一つの制度があるわけでございます。そのことは事のついでに御参考までに付言をいたしておきます。
  184. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 今の最後の説明、非常に御親切の説明なんですが、そういたしますると、いわゆる現行保険と、皆保険になった場合の保険と、二本建になるのだからという意味なんですか。その点どうなんでしょうか。
  185. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 皆保険というのは、結局国民全部を保険の網の中に入れていこうということでございます。それでその保険といたしましては、被用者保険と国民健康保険という二つの大筋になるわけでございます。被用者保険の方はこの保険医というこの制度が全部にかぶさって参るわけでございます。国民健康保険の方は現行の制度におきましては、また、この法律改正になりましても、この法律指定医療機関とか、それから保険医登録というふうなことは、国民健康保険療養を担当していただく関係には、これは適用されません。国民健康保険は別に国民健康保険法でその関係を書いておりますので、そちらの方は別の建前になっておりますということでございます。
  186. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 同じく四十三条の五の末端ですが、「前二項ニ規定スルモノノ外保険医保険薬剤師登録ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」というこの命令は四十三条の十四の意味でしょうか、あるいは新たにお作りになる意味ですか。
  187. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御指摘の命令はただどこへ出して下さいとか、あて先とか、それから書類の形式とか、そういうふうな手続の問題を定めるというその命令でございまして、四十三条の十四とは全然別の問題でございます。
  188. 坂本昭

    ○坂本昭君 議事進行。大臣出席が大へんおそいのですが、竹中委員大臣に御質問がおありのようですし、私も朝から待っておりますので、大へんおそいようなので、委員長においてすみやかに出席下さるようにお取り計らいを願いたいのであります。
  189. 千葉信

    委員長千葉信君) 坂本君に申し上げます。間もなくお見えになるはずでございます。竹中君に発言を許しております。
  190. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 では許された発言を大臣に向けていいのでしょうか。私発言を求める瞬間には局長あてであったのですが、大臣質問をいたしたいと思うのですけれども——では大臣に三、四御質問を申し上げたいと思います。  一番初めに、私は総理への質問の途中で、総理が他の委員会に御出席のためにただいま質問が中座いたしております。総理がおいででなければ、いずれあらためて私質問したいとかように思っておるわけなんですが、一応この機会に総理にお聞きいたすことについて、当該大臣からも御見解を拝聴したいと思うわけであります。それは実は厚生大臣にはもう一、二このことは申し上げているわけなんですが、健康保険改正について国民の世論をよく聞いたという点なんですが、国民の世論をよく聞いたという場合に、賛成意見が果してどの程度あったかという問題なんです。ただ意見を聞いて、意見が賛成であろうが、反対であろうが、とにかく聞けばいいのだということでなくして、やはり国民の意向を把握するということでなければ世論を聞いたことにならないと思うのですが、ただ側近の方々の迎合的な意見ないしは、まあ厚生大臣としては両医師会等関係団体に数回にわたって非常に質問をなすって意見を聞いていただいたわけなんですが、一応そういうことを承知しておらない医療担当者といたしましては、やはり世論の聞きょうがどうもへんぱではないか、たとえて申しますと、被保険者とその家族というものは国民の三分の二以上であります。つまり国民の大多数の意向というものは、被保険者の意向が国民的世論と解釈して一向差しつかえないと思う。ところが、被保険者の意向というものはこれは申すまでもなく、今回の改正案に対しましては絶対反対の意向を有しておられることは御承知通りです。また、医療担当者も御同様でございまして、日本医師会の幹部の総退陣を初めとして保険医大会というように、いろいろと医療担当者の反対の様子は先刻御承知通りです。  そこで私は、今日特に申し上げたいことは、公聴会におきまして先般保険者代表のこの改正案に対する御意見を私は熱心に拝聴しました。そのときの御意見も、保険者代表、健保連合会の理事の御意見も必ずしもこの健保改正案について全幅的な支持なり、賛成を表明してあられるわけではない。と申しますことは、この中に盛られておりまする国庫負担のあり方に一つきまして、相当な御異議があられたように私拝見しております。あるいはまた、根本対策としての結核問題につきましても、どうもこれでは欠くるところが多い、そういうようなことで一向に今回の改正案は根本策でないというように、保険者は当然賛成の立場にあられるであろうと思っていたのに反し、保険者はそういう意味合で必ずしも賛成でない。あるいは学識経験者としても、先般山下先生なり、坂本先生からいろいろ話がありましたような、いわゆる七人委員会のメンバーあるいは医療保障委員会のメンバーというような、御用学者と申し上げてはあるいは語弊があるかもわかりませんが、要するに、厚生省と非常に関係の深い学者の一部の間でもこの間の公聴会で一部負担につきましては、必ずしも今の原案の考え方による一部負担には賛成できない。これが赤字充足であったり、あるいは給付内のことであるならば賛成できないのであって、一部負担は給付外的な考えであるということならば賛成できる、こういうようなことで、保険関係の被保険者、あるいは医療担当者、あるいは保険者並びに学識経験者等の御意向が大体においてこの学者あたりの意向においても全幅的な賛成じゃないということになっております。そういたしますと、賛成者は立案当局の方々、ないしは従来からこの問題に関連しておられる関係の議員の方々であって、これは先日松澤委員もおっしゃったように、事実自民党の中でも困った問題だというようなことをわれわれにお漏らしになられるような点があるくらいなことなんです。こういうようなところを総合いたしますると、国民の世論を聞いて、世論を把握してのこれは原案であるとは私は断じがたいのでございます。そこで、総理もおっしゃいましたし、厚生大臣もこの原案を強行する意図はもとよりない。謙虚な気持で虚心たんかいに改めるべきは改めてもいいんだ。一つ参議院の方において慎重に審議をして、そうして改むべきは改めていいんだというような御意見があられたのを私ははっきり記憶いたしておるわけでございまするが、そのお言葉はきわめて重大なお言葉でございまして、真に論議を十二分に尽さすのだという建前でいまだにおいでになられるのか、相当この法律の性格からいいまして、この年度末を控えまして一つのある曲りかどに来ているわけなんです。ある曲りかどに来ていることによって、せっかく民主的な政治をしようという総理なり厚生大臣の御意向が、曲りかどにあることによってゆがめられるという懸念があるといたしますならば、私ははなはだ遺憾に思うわけなんですが、その点についての御所見を承わりたい。
  191. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまいろいろとお伺いをいたしたのでございます。特に非常に反対が強い、そこで、こういう非常に反対の強いものを特に慎重審議する必要があるというような御意見、あるいはまた、総理、私からこの案につきましては、一つ非常ないろいろ議論のある法律案でもあるし、二十二国会以来の懸案の重大法案でありますので、十分一つ尽すべきところをお尽し願いたい。政府といたしましても、これは両院の最高の権威におかれて最善の方途を尽されることは望ましいことである、こういうことを申し上げたことは、もう今お述べになった通りでございまして、私どもといたしましてその慎重さに決して変りがあろうはずはございません。ただしかし、この機会にただいまもお述べになりましたように、この年度末を控えてこの法案の実質上のねらいがあるのでございまして、健康保険財政の健全化なり、あるいは健康保険の合理化等を考えまして、政府といたしましては御審議は慎重にお願いいたしたいが、しかし、本案の成立を一日も早く期待をしておるのだと、こういうことをたびたび申し上げておるわけでございまして、参議院の社労の委員の各位は、先般来ずっと私政府側といたし、質疑応答等を承わっておりますと、これはもう聞きしにまさるといいましょうか、相当以上に練達堪能のお歴々ばかりでございまして、もう皆様方の今までの御審議には、私といたしまして全く教えられるところがあり、また、敬意を表しておる次第でございまして、ずいぶんと御審議を長時間にわたってお願いしておるとこういうような感じを持っております。(「まだまだ」「まだ質問申し上げておりませんよ」と呼ぶ者あり)
  192. 千葉信

    委員長千葉信君) 私語を禁じます。
  193. 神田博

    国務大臣神田博君) 心から私はほんとうのことを申し上げておるのでございまして、どうかそういうふうに御了承を願いたい。
  194. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 では次の問題に移りまするが、医療担当者が非常なふんまんを感じて、御承知のような状態になっておりますのはなぜかということについての御認識が御当局にあられるか、取り締る側からみて何でもないと思われることが取り締られる側からみると、非常に重大に感じることがございます。で衆議院付帯決議にございまするように、いろいろと誤解があるから解明の必要もございます。また、厚生大臣が絶えず言われるよに、わかってもらえるところまで話をしたいという気持もそれはわからぬことはない。で今かりにこの法律が実施されたらどういう心境でどういう立場に医者が追い込まれるか、並びに被保険者がどういう経済的な圧迫を受け、あるいは精神的なみじめさを感じるかという点について、私少くとも過去数年間厚生省監査に立ち会いまして全国をずっと回っております。で気の毒な被保険者のそういう立場の気持もよくわかるわけであります。  そこで私、ここで二つに分けまして、医者が実施されたらどういうふうになるんだということを申し上げ、この申し上げることによって、ああそうかと、それではこの原案に対してはこの点は少し当局としても考えなきゃならぬ、かりに参議院で修正意見が出た場合には、ああそうかという御理解をいただくという意味合いで申し上げてみたいと思うわけでございます。それはどういうことかと申しまするというと、もとより今日の医療が、従来の医療でなくして保険医療に連なっていくわけなんです。そういたしますると、保険医療というものが十万の医師、歯科医師は唯一の生活の手段であるわけです。ここにいろいろな改正案に盛られましたことを考え合せまするというと、唯一の生活の手段であるこの保険医療というものが、従来からの考えからいきますというと、医者にとっては全く一種の医業革命と申しますか、もとより、国としてもこれだけの皆保険にもっていくというのは大きな制度上の革命でございまするが、医者にとりましても私的生活あるいは医業の革命であるというような感じを持つわけであります。そこで第一にどういう気持に追い込まれるかと申しますというと、自分の職場が三年に区切られることなんです。これはもう先刻来相当に議論がありました。私も最初に申し上げましたように、杞憂であって、心配は杞憂であったのだということであれば幸いということを前置きにして局長にお聞きしたのですが、だいぶ杞憂であるという気もいたします。いたしまするが、少くとも自分の職場に三年の期間をきめられるということは、これは非常に精神的な圧迫、不安を個人開業医の人あたりは感じるわけです。こうしたことによって、しかも三年の契約更改というものが、最近の御当局説明なり、あるいは考え方によりますると非常に民主的になっておりまするが、一応この活字だけ見まするというと、そういうような御親切な配慮が決して今全国におる医療担当者に徹底しておるとは考えられない。非常に峻厳なもののように考えられるわけです。自分の職場に任期があって、その三年の契約更改を考えた場合に、その契約更改については期間の取り消しのことは、十二条でこれこれこういう悪いことをしたら取り消しさすということがございまするが、契約更新に対しましてはそうはっきりしたことがないわけです。そうすると、この前、衆議院の野澤委員の御説明がここでありましたように、三年目に、何となく地方の県の当該係員が、あの保険医は気にいらないから、あの顔つきが虫が好かぬからというようなことで裁量し得るように感じるわけです、この活字の上からは。こういうことで全く小心翼々として地方の小吏の鼻息をうかがっているというようなことになることは、従来の医師の今までの社会的な立場、自分自身の自尊心、あるいは仁術だということによるところの襟度を非常にこれは傷つけられるということは、当局保険を皆保険としてやっていくという場合に、心から医者の協力を得るのには、こういう精神的な面では絶対にそういう感じを持たせないような配慮が要ると思う。私ここではなはだ申しにくいことでございまするが、率直に申し上げたいと思うのですが、なるほどそういうことをしなければいけない場合も、多数の医者の中にはあるかもわかりません。で、いろいろ統計を私ここに持っておりまするが、昭和二十九年の医療担当者九万五千人、ざっと十万の中で、不正のあった者は六百四、五十人なんです。ところが、医者を取締ろうとする取締りの官吏、これは厚生省という意味じゃございません。厚生省ではそういう方はあなたの部下には一人もいないと思いまするが、国全体の官吏という立場から考えまするというと、ある法務次官が述懐されるのに、三年の自分の法務次官としておる間に、二万数千件の汚職があったということが、実は私ここに持っておりまするが、パンフレットにまあ出ておるわけなんです。三年に二万数千件というと、千日に二万数千件ですから、全国の官吏の中で、一日に必ず二十数件平均汚職があったということになる。これは大小の違いはありまするが、そういう取締られる官吏にそういう率の不正があって、医者は十万人に対して、一カ年を通じて六百五十人しかない。また、先般予算委員会でしたかどこかで問題になったように、自衛隊が六十何人かに一人の不正事件があった、こういうことになってきますというと、取締られる方は、かなりきつい、憲法をこえたような取締りがある。じゃ、一体取締りをする官吏に対しては、これくらいの、こういう何十倍という比率によるところのそういう不心得な者があるにかかわらず、官吏服務紀律の中に、医者の立入権のようなひどい監督をするような規定が一体おるかという問題であります。特に私は考えたいことは、かりに官吏の中にそういう事案が発生した場合においても、官吏は不利益処分を受けた場合には、文書をもってその理由書の交付を請求し、人事院の委員会に提訴して、相当の期間は俸給をもらっておられるわけであります。もう医師、歯科医師の場合はそうじゃない。こういうような点で相当医療担当者は、今回の改正案によりまするというと、非常にそういう面からも侮辱を感ずるという気持から全国の医師諸君がふんまんしておるんじゃないかとまあ想像できるわけであります。そういう点につきまして、一体この改正をする方が、ほんとうに保険行政のためにいいのか悪いのかという疑念を私は持つわけであります。特にいま一つ法律が実施された場合において、国民皆保険になりますと、より一そうですが、先日来、事務の簡素化を怠っておりますが、事務量は非常にふえて参る。そうなりまするというと、現在、月のうち五日間くらいは請求書書きに医師諸君は追われているわけでありますが、皆保険になりますというと、大臣がおっしゃるように、よっぽど簡素化してもらいませんと、十日間くらい事務にかかってしまって、二十日しか診療ができないということになる。そういうような点を考えてきますと、いかに医者というものが精神的な圧迫を受け、不得手な事務量をふやされ、しかもその上にです、その上に、将来は待遇の改善をお約束願っておりまするが、現在の経済的な悪条件というようなことを考え合わせますと、全くみじめな状態になるわけです。どうかこの改正案の中で、そういうことが少しでも修正できるというような時間的な考え方からして、ある場合においては虚心たんかいに、当局としてはそれは困るのだというようなことではなくして、医師の立場を十二分に御理解していただけたらという点をお聞きしたいわけであります。
  195. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまの竹中委員の非常にまあ御心配されておりますお気持につきましては、この委員会審議を通じまして、十分私といたしましても了承ができるわけでございます。そこで、再々お答え申し上げておりますように、機関指定をするの必要はるる申し上げたのでございますが、三年の期間を限って、そうして三年たてば非常なむずかしい手続をする、あるいはまあそのためにめんどうくさいというようなことの御心配のようでございまするが、これはむしろ私どもの方で、もっと思い切った考え方をすれば、あるいはよかったのかもしれませんが、まあできるだけ一つ簡素化をして、御迷惑をかけないでいこうという考え方であったのでありまするから、あるいはその三年間、三年目に指定を受けたいという人でも、黙っておればもう指定を受けたいという希望を表したのだというようなくらい思い切った考え方をとればよかったのかもしれません。しかし、役所の方のくそまじめさが、一つ申請をしてもらおうというようなことに、まあ書いたと思いますが、いずれにいたしましても、そうした御心配をかけた——大へん御心配に相なっておるようでございますので、この機会をかりまして、そういう考え方でないので、淡々とした気持でございまして、ただまあどうしても何といいますか、指定をすることができない事情がある、こういう方々につきましては、たびたびお答え申し上げているように、医師の、この医師会の協議会一つ議決を得ていただいて、そちらの御承認が条件となって、そして指定をしない、あるいは指定を取り消す、こういうような考え方でございます。そうでありまするから、いろいろ手続上の問題は、一つできるだけ簡素化するような方法をいたして参りますれば、この二重指定の問題は御了解を得るのじゃないか、こういうふうに考えております。  それからまた、今十万人からあるこの保険医等につきまして、年に六百数十件からの、ということになりますれば、千分の六くらいのこれはお間違いというようなことになるわけでございまして、千に六というような非常に少い数字でございます。それをねらうために全部に御迷惑をかけるような法律の仕組になっているということは、これはまあ御非難されますると、まことにこれは恐縮なんでございまして、ただ法律の前に平等にというような考え方をいたしますとそういうことになるわけでございまするが、しかし、今私が申し上げておりますように、何といたしましても、健康保険の被保険者及び家族を合せますると、一千三百万人、こう言われておるわけでございます。一千三百万人分方々の生命を守ってもらうわけでございまして、保険医の御協力がなくてはどうしてもその成果というものは期待できないわけでございますから、厚生省といたしまして、保険医に対する考え方というものは、今まで、もし手落ちといいましょうか、はなはだその礼を欠くようなことがあったといたしまするならば、これは非常なあやまちといいましょうか、間違いであると私考えます。今後はそういうことのないような配慮を十分いたしまして、喜んで一つ御支援御協力していただく、そうしてわが国の医療の高度水準を保つということに御努力願いたい、こういうことが厚生省一丸の念願であり、また、政府一体のこれは念願である、こういうふうに御了解願いたいのでございます。
  196. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 次に、被保険者の問題を申し上げたいのですが、先ほど私が六千万人の関係者と申し上げましたのは、もとより政府所管の被保険者及び家族だけでなくして、組合あるいは直接関係ございませんが一国保とかいわゆる医療保険全部を含めたものですから、そのように御了承願いたい。  それで次は、被保険者の問題なんですが、もう御承知のように、三年前に料率が引き上げられて、あの当時の金で、たしか三十四、工億円という保険料率が増額されておるわけなんです。この増額された三十五億円というものはその後もとより料率が上ったのですから、ずっと繰り越して毎年増額された分はやはりそのまま保険料が払われております。そこへもって参りまして今度一部負担という経済負担が出てきた。まあ最初二十三億五千万円であったものが少し下って十二億になっておりますが、一部負担がきめられて、この一部負担を課することによって受診率が抑制されるということを考え、あるいは少々痛くても自分でがまんしなければならぬというような、痛い、苦しい目にあわすことになるわけです。そこへもってきて、被扶養者の制限、あるいは継続受給資格の制約ないしは標準報酬の等級改訂等相当大きな経済負担が私はあると思う。そこへもって参りまして、監査が行われることによって、非常に被保険者自身が萎縮するわけです。これは御想像していだだけると思うのですが、女の被保険者やら、比較的年寄りの被保険者は、県庁のお役人に一回調べられますというと、非常に恐怖心を感ずるわけです。親切に監査していただいても感じるのですが、若い心ない末端の監査あたりは、そうことごとく懇切丁寧ににやるわけではございません。最近ある話でありますが、ある府県であった実例ですが、これは局長に聞きたいと思うのですが、監査というものは就業の場所でやるべきだと思うのですが、勤務場所で、一堂に被保険者を呼び出して聞かせる、やられたことがあるのですが、そういうふうになりますと、非常に被保険者というものは微妙な感じを持つわけです。私はそういう点を考え合せまして、なるほどこの前、大臣が一両三万泣きとかいう大岡裁判のお話をされましたが、三者共泣きは、もう被保険者は三年前から三十五億の増額で泣いておるわけです。医者ももう二十六年以来低単価を泣き続けており、もう涙も出ない、泣いてもらうのは保険者である国家である、こういうようなことになってくるわけなんです。こういうように被保険者がまことに追い込められた形になって参るわけですが、こういった点についての御配慮もいま少し、この改正案に私は盛り込んでいただくということがよかったんじゃないか、それが民主的じゃなかったか。もとよりいろいろな経済条件なりいろいろなことがあられるでしょうが、われわれがここで審議するには、そういう感じを持ちまするので、今率直に意見を申し上げてお尋ねするわけです。
  197. 神田博

    国務大臣神田博君) 竹中委員の今お述べになられました一部負担をすることによって、受診率が低下するのではないか、こういう御心配をなすっておられるようでございますが、これはそうなるともならぬとも、私どもといたしましては、はっきりした見通しを立てにくいのでございますが、もしそうした感じを与えるといたしましても、それは一時的で、そう長くそういうようなことになるかどうかということにつきましては、私もいささか疑問を持つのでございます。ただし、専門家の竹中さんがはっきりとそうおっしゃるのでございまするから、これはまあ相当根拠があるというふうに私考えるのでございまするが、問題は、この一部負担の額が変えられるものであるかどうかということが基本的なことと考えます。そこで、たとえ初診が百円であろうとあるいはまた、入院料が一日三十円であろうと、これは非常にお困りになる方が中にはおるであろうということも、これは私ないということは申し上げません。しかし、今日健康保険の平均標準賃金も月一万二千円というようなとこまで参っておりますので、全部がそういうようなふうになっておるというふうにも考えられないわけでございまして、その辺の線をどこにしくことが一番いいかというような程度論にもなるのじゃないか、こう思うのでございます。それからどうしてもお気の毒でここまでだという方々に対する何か免除の方法をうまくとるようなことができるかどうかということ、それからまあ入院の費用についても、これは先ほどお述べになられましたように、結核対策というものを打ち立てる必要のあることは、これはもうしばしば皆さん方お述べになっておられまするし、私どもといたしましても、国民病といわれておるこの結核対策に思い切った一つ措置を講じたいということは、これはもう同感でございまして、何か一つここで結核対策というものを打ち立てたいという、政府側のはっきりした意向もこれは固まりつつあるわけでございますから、そういうことを考えますと、今の入院患者に対して一日三十円ずつを三カ月も続いて取ることが、この場合健康保険としていいかどうかというような程度問題が私は出てくるのじゃないかと思う。結核というものは、外へ出してしまえば、そう普通の場合において三カ月も入るというようなことはこれは考えられないと、これは特殊の場合の問題だと思いますが、とにかくそういうこの部分々々の程度論ということになりますと、これは御議論はあろうかと思うのでございます。そこでこの御審議中しばしば申し上げておるように、政府も、これは鳩山内閣の当時から、二十二国会からの懸案であって、そして参議院におきましても、二回も、これはまあ流産と申しましょうか、審議未了になっておる、二十五国会において提案になったまま継続審議になって、そこで石橋内閣となり、今日岸内閣になっておるわけでございまして、われわれはこの政党内閣の一貫性という考え方から一つこれを踏襲して御審議をお願いしょう。全く謙虚な気持で一つ両院の十分な御審議で、最もいいところを一つお取りになっていただこうということでございまして、いろいろ御審議を願っているわけでございまして、しばしば長時間お述べしておるような実情でございますので、以上で一つ御了承願いたいと思います。
  198. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 今、一部負担について大臣の所信がうかがわれたわけなんですが、私は今質問しておりまするので討論は差しで控えたいと思いますが、一部負担については、医療保険の本質からして、相当私反論の資料は持っておるわけです。だけれども、きょうは大臣お忙しくておそくなっております。(「質問は幾らでもあるんだ」と呼ぶ者あり)いろいろ質問いたしまするが、その一部負担について今の御所見中で、どの程度に線を引いたらいいかということなんですが、私先ほどの昼の会議で大臣おられなかったので、重ねて同じことを申し上げてほかの委員に御迷惑なんですが、一級の被保険者が、三千円の方が独身者である場合に千二百円しか傷病手当が入らない。そうして毎日三十円ずつ、九百円の一部負担を入院料に払うというようなことは、大臣一体御存じでしょうか。それがわかっておれば、どの程度に線を引くかということになってくるときに、大いに関係すると思うんです。現在三千円以下の人が先ほど局長に聞きますると、十一万八千人が九万何ぼに減ったそうですが、しかし、あの十万人に近い気の毒な医療券の最も必要な階層が、病気になったときには千二百円の収入の中で九百円の入院料が要るのです。こういう点はやはり法律の前に平等であると言いながら、むしろそういう人にはそういう人なりの負担をさすことの方が公平であり、正しい政治だと思うのです。今一応この程度で百円ぐらいはという御意見でしたが、私は必ずしも一律に五百四十万人の政府管掌の被保険者だけ一律に考えてみましても百円が妥当だとは思いません。特に百円というものは、三千円の人の百円の負担率と、五万、六万の所得のある方の負担の率というものは大いに違うんです。こうした点はもっともっとこの改正案をしさいに検討していただきまして、療養費の一部を負担するのだという限りは、保険料はなるほど料率が同じであっても、集金のあり方によって変っておるのだから一応いいじゃないかという議論も成り立ちまするが、しかし同時にそういうごく下のことを考えまするというと、まあ五、六級以下の方に対しては格別の私は配慮があってしかるべきだろうと感じるわけでございます。こうした点は今一部負担についてのお話がございましたので、あわせて私はそういう立場から質問を申し上げるわけでございます。  それからもう一つ質問点は、一体一部負担上いうものは療養費の一部負担である。療養費というものは、これは保険者が払うべき建前であると、国民保険では御承知のように、保険者が払っておるわけであります。ところが、この改正案では、その最終の支払い義務保険者、政府がのがれ得るように、この改正案によって被保険者は命令が定めるところによってこの一部負担を払えという義務づけをしておる。われわれ一般の医療担当者にはその差額だけしか請求できないのだぞという二つの裏表のまあピッチャー、キャッチャーの法律を作って、そうして中間におる非常に手間のかかることを保険者はしないでいいようになっている。これでは、一部負担を支払う能力のある人とない人とあるわけですが、ない人に対して、前々国会で山下先生が相当質問しておられまするが、能力のある人とない人に対して医者がお断わりしていいか悪いかという問題も出てくるわけなんですが、相当そういう同じような面に一部負担だけつかまえましても、ずいぶん質問点があるわけなんです。今お伺いしました一部負担の質問が、果してあくまで正しいかどうかという点と、そういう気の毒な人に対しては特別な配慮が考えられないものかどうか。それから最終の支払いが事務的な面倒さを避けて医療担当者に取れ、取らなくても保険者は知らぬぞと、しかも取らなければ一応担当規程では処罰されるというきつい規則がある。取らなければ処罰される。負担能力のない人には医者は仁術の立場からこれは強要できない。再びその人が来た場合に、この前もらっておらないのだからと言って断わっても、今度能力があるかないかわからぬ。非常にこういう点が一部負担のあることによって、従来も一部負担はございましたが、こういうように額が上って参りますと、よけいそういう問題点が大きくクローズ・アップされて参りまして、非常な煩雑さを感ずるわけです。そうした点も一つ、それでもしんぼうしろとおっしゃるのか、そういう点もお聞きしたい。
  199. 神田博

    国務大臣神田博君) まあ一部負担についてのいろいろの面から不合理ではないか、不便ではないかというお尋ねでございましたが、これはまあこの健康保険財政が十分であれば、一部負担の問題はかけなくてもいいじゃないかという議論も、これは十分私どもも了承できるのでございます。ただ政府がいわゆる財政負担をしていくというようなことになりますと、どうしてもこの国民保険との権衡の問題もあります。それからまだ医療保障を受けておらない三千万に上る国民との関係におきましても、これは法の前で平等だという考え方を一応やっぱり持ってくると思います。そこで私どもといたしまして、一部負担はこれはもうできるだけ少い方がけっこうでございますが、今日の保険の財政については、この程度はごしんほうしていただいたらどうであろうかと、こういうことで御審議願っておるわけでございまして、これは非常に最善の方法だというようなすっきりした線だけでお願い申しておるわけではないのでございます。被保険者同士の負担の均衡の問題、それからまた国家財政の、いわゆる税金からくる国家財政の資金を投入していくのだから、その間の他の保険の関係におるいわゆる被保険者等の、あるいは保険者等の負担の均衡の問題。それからまだ医療保障を受けていない国民との均衡の問題というような総合的な考えのもとで、この程度一つどうであろうか、お願いいたしたいというようなことで御審議願っておるわけでございまして、最良、最善だからこれで一つどうしてもやってくれと、こういうわけではないのでございまして、その辺のところは一つ御了承願いたいと思うのでございます。  なお、今お述べになられましたように、診療機関として取り立て上非常に不便でもあればやりにくいというようなことがございまして、しかし、そのあとで、これは今でもやっておるのだが、今よりふえるのだからやりにくいと、こういうことでございます。これも想像できるのでございまするが、これもまあ全部でなく、その中の該当の、相当部分だと、こう考えておりますが、いろいろそういうことも予想して立法したわけでございまして、御審議の御意見いろいろ承わりまして、皆さんというか、竹中さんのお気持はよくわかるんでございますが、何か名案でもございまして、お教えいただきますれば、またお答えいたしたいと思います。
  200. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 これは局長にお伺いしますが、十八年——十九年に保険が強制でやるようになりましたね。そして二十二年になりましてこの一部負担というものは任意制、任意一部負担制になったのですが、なぜ強制が任意に変ったか。一年後にこれが廃止された。こういう経緯があるわけなんですが、十八年に実施したものが、強制実施したものが今度は二年たって任意制になって廃止されたということは、これは局長のその資料に書いてあるわけなんだが、そういう経緯があったんですが、その理由はどういうわけで、一部負担制が法律上いかぬということで廃止されたのか、あるいは財政上の理由で黒字になったから廃止されたのか、よくわからないので、その間の事情を一応承わりたいと思います。
  201. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 古いことでございますので、私もその当時の事情は詳細には承知をいたしておらないのでございますが、十八年に設けられました一部負担というものは、これはそこに、資料にもございますように、「薬剤の支給一日一剤五銭、注射一回十銭、処置一回または一歯五銭、充填一歯十銭、」その他ずっと続いておりますように、こういうふうなことを、「入院一日三十銭」というふうに、こうたくさんありまして、皆金額が違っておって非常にめんどうくさがったので、私はおそらくそういうことで、昭和十九年の初診料相当額の一部負担に変ったものであろう、かように私は考える次第でございます。
  202. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 それから一部負担の支払いをしなかった場合に、その被保険者を何か法律で制裁するようなことにこれではなっておらぬようですが、それはどういうことなんですか。
  203. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 被保険者の制裁ということは罰則を食わしたり、あるいはどうこうということは実はないのでございますが、被保険者に対する制裁と申しますれば、まずこの保険給付をしないというふうなことが一応考えられるのでございますが、これは医療保険の性格から申しまして、そのことは非常にまあ被保険者自身にとりましては、生命に関する問題にもなりまするので、事柄の性格上、さようなことは従来からも規定がございませんし、また、改正法におきましても、従来のところを踏襲いたしておるような次第でございます。
  204. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そこなんです。それで未払いができてくるわけなんで、義務として支払いを法律で命じておきながら、被保険者が義務を果さなくてもこれはそのまま、医療担当者、医療機関義務を果さない場合には大きな制裁罰則がある、私は被保険者を罰するという意味じゃないのですが、やはり療養費の一部であるならば絶対に払わなきゃならない、能力のない場合は医者との話し合いで、医者は決してぼるようなことはございませんが、一般論としては、法律で定められたものを払わない場合には、今局長がおっしゃったように、果して給付が停止できるかという問題、これができれば保険医の届出によって、あるいはそういう保険証に何らかのマークを入れることがあるでしょうが、実際問題としては今のところではそういうことはない、もう全部医者のしわ寄せでして、この前の国会で問題になったように、一部負担の未徴収額は相当大きい。そういたしますると、そういう点について被保険者を罰するという意味ではなくて、何らかの法律的に課せられた義務を履行しなければならないようなことの措置はあってしかるべきじゃないか、こういう気持を持つのですが、何かそういうことについてのお考えは将来ないものでしょうか。
  205. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) これは二十四国会のときにも御質問がありましたことでございますが、被保険者が、当然この支払う能力が十分ある人が、自分はその一部負担なんか金を出すのはいやなんだから、おれは主義としても出さぬ主義なんだというようなことで、医師診療を求めた場合におきましては、これは医師法のいわゆる応招の義務というものが、料金を払わないんだと、おれはあるのだけれども払わないのだということと同じでございまして、さような際におきましては、それを医師がお拒みになりましても、これは私は見ませんというふうにお拒みになりましても、医師法の応招の義務違反にはならないと解釈されておるのでございます。  それで、保険診療というものは、一般の医師法による診療と別個なものがあるわけではないのでございまして、この診療というものがあって、その実態があって、そこに保険がかぶさっていくという関係がございますので、さような際におきましては、診療を断わられてもこれは医師法の違反にはならないというような解釈になっておりまするから、従って、保険診療もそこにはないということになり得るわけなんでございます。まあこれは非常にむずかしい、ややこしい法律論を出しましたが、そういうふうなわれわれの解釈でございますが、なお、これらの点につきましては、今竹中委員からの御指摘もごもっともでございますので、私どもといたしましては、保険の立場からも将来検討を加えて参りたいと存じております。
  206. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 今の局長の御答弁は、払う能力がある人が払わない場合に医者が断わってもいいという御説明ですが、私の質問したのはそうでなくて、払う能力のあるなしということもありますが、医者が断わらなくてもいいような、まあ義務を果さなければ、今度はほかの医者へ行って見てもらえないんだ。同じ医者に行くに限らないわけですからね。だから、もう保険の法規に照らし合せて、当然持つべき一部負担という義務を果さないあんたは、保険では給付はできないんだという、一応ですよ、というような措置がなければ、医者に断われと言われることは、保険者としてあまり虫のいい話でして、医者は断わりにくいんです。今、腹が痛い、熱が高いと言っておるのに、断わりにくいんです。そういうことでなくして、医者に行こうというときに、おれは一部負担を払っていない、義務を果していないということによって、自発的にできるようなものでなければ、医者に断われ、よう断わらんだったらしんぼうしておれと、それではしわ寄せがますます医者にくる。一体保険給付というもののあのむずかしい命令によって定められた義務というものは、保険者がわれわれ保険医なり医療機関に課するわけですから、本来から言えば、療養費というものは、保険者が責任を持つべきものだと思う。ただ持って回ったような法律解釈で、払わなくてもいいような考え方自体が私としては不満なんです。おそらく全国の医師、歯科医師の不満がそこにあると思う。一部負担はかりにあるといたしましても、事務的に煩瑣であり、人情の上から言うて断わりにくい。医者は今まではそういうものをずっと犠牲を払ってきた。これは、皆保険になると、そういう犠牲をいつまでも払っておれなくなるわけですから、そういう配慮は将来考えてほしいし、また、この改正案に対して何か取り入れる簡単な方法があれば取り入れることを私らはしたいんですが、そういうことがないか、お聞きしたいんです。医者が断わることを予測しての御答弁では困るんです。
  207. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 将来の問題といたしまして十分研究をさしていただきたいと存じます。
  208. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は、初めて大臣に御質問申し上げるのであります。この間からしばしば大臣の御説明を承わりまして、だいぶ大臣の御決意のほどが明らかになって参りました。いろいろと国民皆保険を実施するについて熱意を希望を持っておられるそのお気持は、なるほど十分にわかります。ただ、いろいろと表現が、大上段にかぶってとか、あるいは思い切って踏み切るのだとか、あるいは場合によると、全体を見て一つ批判していただきたいとか、比較的あいまいな具体性のない御決意のほどがうかがわれます。国民皆保険ということにつきましては、私たちも賛成であります。ただ、この間の公聴会においても、また、きょうも論議せられましたが、私たちは国民皆保険の問題について、国民医療の問題について、国費中心主義的な医療の社会化、これが社会党の考えでございます。どうかその点医療国営と——むしろ医療国営をやろうとしているのは皆さん方じゃないかと思うのです。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)先ほど山下委員から岸、内閣は医療国営をやろうとしているのじゃないか。ところが、厚生大臣からは、そうじゃない。(「違う」と呼ぶ者あり)厚生大臣は確かに否定されましたよ。
  209. 千葉信

    委員長千葉信君) 私語を禁じます。
  210. 坂本昭

    ○坂本昭君 しかし、今のこの保険制度、ことに、この改正案の本質、これは、まさに医療国営をやろうとしていることにほかならないと思うのです。だから、先ほど厚生大臣がそれを否定なされたということは、まことに賢明であったと思うのです。で、私たちの立場を一応明らかにしておきたいと思うのですけれども、ただ、大臣が繰り返して言われる熱意ですな、熱意については、われわれが非難するだけじゃありません。われわれが批判するだけでもありません。この間も大臣はラジオ放送をなさっております。何かきょうも、先ほどラジオで放送されて、もうこの法案は撤回するとかいうデマが飛んでおるそうでございますが、これはどうもあまりあてになりませんから信じませんが、この間のラジオ放送を作家の田宮虎彦、おの人が批判しています。大臣は御存じかどうか知りませんが、大臣はまことにいい気持になって抱負を述ておられる。いい気持ということは、それにつけ加えて、その大臣の放送のあとさきに骨関節結核の子供たちの放送があり、それから結核療養所のグループの放送があったらしい、それらを聞いてくると、大臣の抱負と現実とがあまりかけ離れ過ぎておる、だからあまりいい気持になり過ぎているのじゃないか、そういう批判を田宮虎彦がしているのです。私も同じことを実は非常に懸念するのであります。ただ幸いにして、先ほど政府が国民保険法の改正をしようと思って準備しておったけれども、タベ夜中まで考えてついに思いとどまった、その理由はどういう点かというと、市町村が実際困っていることをとにかく解決しなければいかぬ、まず行政指導を先にやり、それから次に法律を作らなければいけない、これはまことに賢明だと思うのであります。私は今回のこの法律改正についても同じことがいえると思う。まず行政指導を、この行政指導の問題については、この間も公聴会のときに健康保険の連合会の理事がはっきりこう言っておりましたよ。この厚生省保険指導の中に多くの誤謬があるということを言っておりました。私はあとで実はその点を具体的に説明してもらおうかと思って待っておったのですが、時間がなくてよく質問できませんでした。しかし、こういう点が一番大事じゃないかと思うのです。それで実はこれから少し私お話を聞いていただきたいと思います。まだこれからとにくか大事な審議をするのですからそんなにおあわてになる必要はないと思います。ゆっくり夜中までやろうと思います。(「ゆっくりやってくれ、あしたの朝まで」と呼ぶ者あり)それで私きょうは幾つかのうちのごく一部しかお尋ねすることができないと思うのです。まず最初に、今日特に竹中委員からるるとして今度の法律の性格について、特に警察的なにおいが強いというようなことを申されましたが、そこで私はちょっと振り返ってみたいのです。厚生省ができたのは、今から大体二十年ほど前と思うのです。大臣が何代目の大臣になられるか私よく存じませんけれども、二十年前、厚生省のできる前、そのころ厚生行政というものはどういうものかというと、これは内務行政でありまして、極端な言葉で言えば警察行政であったわけです。だから警察署長が全部のいろいろな衛生上のことを指導しておりました。ところがその後、御承知通り、初代の厚生大臣は小泉親彦軍医中将閣下でございました。警察署長の厚生行政から今度は軍医中将閣下の厚生行政に変ってきたのです。それから今日のきわめて民主的なおおらかな神田厚生大臣の時代に変ってきた。これは私は一つの日本の社会の発展である。この間「檜山節考」という有名なベスト・セラーの本が出ました。あれは過去の日本のことで、今日では大分県では老齢年金制度を県で作っております。国でやる前に県で作っておる。私はこれでいいと思う。県や村でどんどんやっていって大きな力になったら、今度は国が老齢年金制度を全般的に実施する。これがほんとうの厚生行政だと思う。おまわりさんが上からおいこらといってやるのじゃなく、そういう行き方をする。そういう時代だと思う。たとえば老齢年金問題は岡山県の村にもあります。この間、前におられる小山委員と一緒に熊野川水系ダムの調査に行きましたが、あの北山川の上にある村で、老齢年金制度をやっておる。私は非常な驚きを感じました。こういうふうに次第々々に変ってきておる過程の中で、ただ一つわれわれがはっきりつかまなくちゃいかぬことは、この初代の厚生大臣の小泉閣下のときのねらいはどこにあったかというと、国民のいわゆる体格等位、あのころは体位向上といっておりましたが、体格等位の向上、これにねらいがあったわけです。それで徴兵検査をやって甲乙丙丁というふうにきめまして、一番悪い丁種合格の人をすぐに入院さして治療したかというとそうじゃない。ただ甲乙丙丁ときめておいてあとはほったらかしておいた。こういうところに昔の軍医中将閣下の厚生行政の本質があった。しかし、そういうことによって日本の医学というものは進んできているのです。たとえば徴兵検査の間接撮影、これなどは日本の仙台の古賀博士がこれを発見された。私は、過去のことはくさしますけれども、今日に至る過程において果してきたところの仕事、特にその中で厚生当局が果された仕事を私は非常に高く買いたいのです。私は実はそのことについて、これからるる一つ証明をしようと思います。  厚生省がいかにいい仕事をしたか、われわれ今日はまだ多くの不満足な点がある。今、大臣が大きく国民皆保険の旗じるしを掲げて三段飛びをやろうとしている。ところが足元のスプリング・ボードはくずれている。うっかり飛び上ったら大臣足をくじくかもしれない。私たちはそれをおそれているのですから、まず足元をよく見ていただきたい。  それからまた、特に今後の厚生行政の本質は繰り返して申しますけれども、理解とそれから納得と協力であるということ、私はその点を……、だいぶ時間が迫っているようですから、理解と納得と協力を、今のようた厚生省の歴史の過程の中において新しいわれわれの待望する神田大臣は果していただけるかどうか、そのことをまず一つお伺いしておきたいと思うのです。
  211. 神田博

    国務大臣神田博君) 民主政治の確立、特に厚生行政等については理解と協力、納得の線によって初めて達せられるのであるが、そこで厚生大臣はその点についてどういうふうに考えておるかというお尋ねでありますが、私も全く同感でございます。今後ますます一つそういうような精神にのっとって、厚生省一丸となって大衆の納得と協力を調和していただくような線で推し進めていきたいと思います。
  212. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでは今のような御決意を大臣が持っておられることに対して、私も深甚なる敬意を表し、国民の健康と仕合せを守るためには、これはもう確かに与党と野党の区別はないと思います。相ともにお互いの持っている知恵とそれから努力を傾倒して私たちも御協力申し上げる、そのことをすず申し上げておきたいと思います。  そこで、一つ過去をふり返って、あまり古い過去ではありませんが、厚生行政の中にそういう軍国主義的な内応があったということ、これは私よほど気をつけていただかなくちゃいけないと思うのです。再びまた、昔の警察行政に返るようなことは絶対にしてはいけない、たとえ自信があっても、一歩一歩下から盛り上る力で積み上げていかなければならない。日本の、今度も一番問題になりましたが結核の問題、この結核の問題で一番日本で大事な役割を果してきたのは傷庚軍人療養所であります。ちょうど終戦当時三十六カ所ぐらいありました。当時のベッドが二万八千、その後これは例の医療団と合併されて、昭和二十三年には三万五千程度のベッドになっております。そうしてその当時の日本の結核のベット五万三千の過半数を占めております。これが傷痍軍人療養所から国立結核療養所になって厚生省が直接管理をしてそうして今まで育ててきたところの日本の結核行政の中心です。これもだから当然今回のこういう国民皆保険ということを検討されるならば、結核が一番大きい問題というならば、一体日本の今の結核療養所がどういうふうに運営されているか、そういう足元をよくつかんでいただかないと大きな誤まりを犯すだろう。現在国立の結核療養所は大体七万近くベッドがあります。二十四万床のうち七万床ですから、まあ三〇%ぐらいでしょう。けれども、これは日本だけじゃなくて、世界のいわば結核の指導的な役割を果す、これは厚生省がやってきたのです。これはもう大臣は十分自慢にしていただいていい。かつて浪子さんの悲劇などありましたけれども、今日はもうそういう悲劇はないのです。浪子さんも外科療法でもやれば、一年くらいすればまた自由な家庭生活ができます。そういうことを、厚生行政の実績をあげてきたということをまず十分認識して、その点で今後の行政をぜひ打ち出していただきたい。私は厚生行政をほめますと一緒に、これから逐次厚生行政の欠陥を私は指摘していきたい。その点で十分、新しい大臣として、いい点もあるけれども悪い短所もある、その短所についてはこれを十分的確に把握して、これを直していく御決意を一つ簡単にお伺いいたしたいと思います。
  213. 神田博

    国務大臣神田博君) 坂本委員のただいま述べられました、厚生省のおい立ちからまた功罪と申しますか、長所、短所等についてのいろいろな、特に御縁故な委員でございまして、何も知り尽しての御発言でございますので、非常に敬意を表すとともに、大へんいいことをこういう機会にお聞きできて、ありがたく思っております。十分一つ留意いたして厚生行政伸展の心がまえといたしておきたいと思っております。
  214. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 厚生大臣にお伺いしたいのですが、これも実は先般総理の質問の途中で、総理は、法律的なことは専門家がおるから、法制局長官に聞いてくれと、こういうことで長官の説明を聞いておる途中で、総理は退席された。私、これは総理に当然聞くべき重大な問題と思うのですが、あわせて所管大臣としても私は責任があると思うのです。重ねて厚生大臣にお聞きするわけなんですが、いわゆる蒸し返すようですが、この健康保険改正案の上程の手続に当り、欠けるところがあるということを総理にお聞きしたときに、その大綱の変化の有無は見解の相違だと、だから総理自身としては大綱に変化はないと思う、従って、医療審議会にはかけなくてもいい、懇談の形でやってそれでいいんだと、決して懇談を諮問に変えたのじゃなくて、懇談でいいんだという御答弁がございまして、そうしてあとで専門的な法律上の御説明があったわけです。それに対して私は、重ねて総理にお聞きしようと思っておったら退席なされたわけですが、総理にかわって御答弁願いたい。その際に、私が、大綱について変化の有無は見解の相違だとおっしゃるが、見解の相違というのにはあまりに大きな変化があって、これが変化がないのだと、大した変化はないのだと仰せられるならば、これは強弁しておるのだと私は思うわけなんです。それはどういうことかと申しますというと、この参議院の社会労働委員会調査室からいただきました健康保険法等の一部を改正する法律案改正要点の新旧対照表をごらんになったらはっきりわかるわけなんですが、もう七、八カ所、十カ所に近い修正が衆議院でされて、審議会に諮問なさった内容衆議院で修正されたのを比べると十カ所違っておるわけです。と申し上げますることは、まず第一に、検査権の種類が変ってきております。九条の二によるところの検査権の種類が変って参りまして、検査を行う場所が事業所とはっきり今度は明示されておるわけであります。そうして同じく九条で、毎々申し上げまするように、立ち入り権の条項が全然削除されております。それからその次は、検査権の行為についても大きな変革があるわけなんです。で、四十三条の十で、設備検査ということは、今度は簡単に設備じゃなしに、ひっくるめて施設そのものを検査ができるというふうに、非常に広範に権限が変ってきておる。なお十でも同様に立入り権の条項が削除されておる。あるいはまた、医療機関指定期間が二年が三年になったということも、延びたのだからいいんじゃないかということは、これは医療担当者のおっしゃる言葉でありまして、もう社会保険審議会においては二年が三年になったということは、これは大きな変革である、一年も違うということを……。あるいはまた、取り消し条項の中にも、四十三条の十二で立ち入り権が削除されておる。また、八十八条の三において、局長が言われるように、罰金が過料に変っておる。こういうようなことはすべて衆議院で二十四国会で修正されたわけです。これは諮問なさったときの、諮問の答申がここにございまするが、諮問なさったときの内容と諮問が違うわけなんです。特にいま一つ、これは大きな経済的な問題ですが、一部負担については大きな変革があるわけです。局長は、これは、A、B、C三案を当時から諮問した、そのうちの一つだとおっしゃいますが、私の調べが間違っておらないとしますれば、A、B、Cのどれにも入らない、諮問しておらない一つの初診料が今回出ておるわけです。ですから、こういう点からいきまして、当然私は大綱については変化があったと断ぜざるを得ない。これがどうしても変化がなかったのだということでありますると、私はこの国民の保険をよくしようというこの美しい法律一つの汚点を残す、少くとも大綱について変化はあったに違いないが、しかし、趣旨において変りなかったのがということの方がすなおであって、大綱には変化はないのであって、趣旨も変りはないんだ、こういうような強弁をなさるということでありますると、はなはだ私はこの法律が制定されましたあとも尾を引く、何らかの問題が残るという感じがいたしますが、果してあくまでこれはそれだけの種類の変化があったが、しかし、それは大綱の大きな変化でないとおっしゃるならば、私はこの前申し上げたように、立ち入り権の条項は健保をこえてこの法律案でもってしようとした行為が、健保に屈服、という表現は悪いんですが、健保に従ってその規定の範囲内でやるというように立ち入り権の条項が三カ所も削除されている。これだけ見ましても大綱には変化があったと思う。だから率直に、大綱になるほど相当な変化があったのだが、しかし、趣旨が大きく変ったのじゃないから、趣旨が変らないんだから、その点は一つそういうように御解釈願いたいと言われるのであれば、すなおに私は受け取り得るのですが、どうしても大綱に変化がないと言われると、私は総理に最後までその問題については究明をしたいと思う。その点について厚生大臣の御所見を承わりたいと思います。
  215. 神田博

    国務大臣神田博君) この問題はもっぱら私は法律論だと考えております。もちろんこれは純粋の法律論だけで解しないで、政治的な考慮を十分払って結論を下した、こういうふうに考えておりまするが、また、提案された鳩山内閣の解釈も、それから石橋内閣が継続審議をしようと言った際に考えたこの法律解釈の結論も、それから今日の岸内閣におきましても、一貫した考え方をもっていたしておりまして、大綱において変っておらないから変化がない、諮問をする要はないということのはっきりした解釈をとっております。これは解釈の相違でございますが、これが一貫性をとっているということは、決して政党内閣の持続性だということだけで申し上げているのではない。政府の法制局長官がずっと変っておらないところを考えても、これまた同一人でございますから、その解釈が一貫性をとっているということは、強弁しているのじゃないということも御了解願えるのじゃないかということを考えておりますが、そこで問題はいろいろ御論議されたわけでございまして、先般も山下委員から、政府のそういう解釈であれば、これは見解の相違であるが、こういうものはやはり社会保障制度審議会にかけた方がいいじゃないか、こういうようなことでございますので、そういう御趣旨でございますならば、政府といたしましても、今後はできるだけ一つそういう大綱であるかないかというような場合に、あまり法律論にこだわらないで、こうした社会保障制度に関することはできるだけ社会保障制度審議会に諮問をいたしましょう。そういう一つ御要望に沿いましよう、こういうお答えを申し上げておるわけでございまして、さよう御了承願いたいと思います。
  216. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 率直に将来に対しまする心がまえを聞かしていただきましたので、私この点は了解いたしたいと思います。  続けて、話は一部負担に戻るわけなんですが、この一部負担につきまして今まで論議されておりまするが、ここで私はっきりと承わりたいことは、一部負担を課す場合今まで論議されておりまするが、ここで私はっきりと承わりたいことは、一部負担を課す場合に、外来の患者には初診料だけにかける。A、B、C案はそれぞれ再診料あるいは注射、投薬、処方せん交付、歯科の補綴等を行なった場合に、それぞれやはり患者の療養費の一部に課す、こういうふうになって、入院は入院の期間において最初は六カ月、最後は三カ月になっておりますが、とにかくその期間はかけるということで、療養費の一部の負担の仕方が一応そういう意味では公平であったのですが、今度は通院の患者はとにかく一回百円払えばそれでいい、入院の場合は三月間は日々三十円払うのだ、こういうことになって参りますのですが、その際に、この入院の三十円というものは、通院患者でも相当額の療養費が要ることは往々にしてあるわけです。それから療養費の額によって入院患者が多いから持たすという考え方で、療養費の額によっての考え方に出発しておられるのか、あるいは先般のお説のように、入院患者は米代としてこれは当然持たすべき性質のものだというような意味合いで、入院患者から三十円をとるというような考え方であられるかということが一つと、それからその次の問題は、米代でないといたしまするというと、入院する患者というものは、病状が重いと一応きまっておるのですが、通院患者よりも病状が重くて、従って労働力の一段と低下しておるもののみが、こういうふうに持たなければならぬということになっておるわけです。米代だろうという説明も一応は通るような感じがするわけでありますが、今申し上げましたように、この考え方療養費の額によってしたのか、あるいは入院という特別のことをすることに対しては米代を払わせるのだという意味でなされたのか、その考え方の出発点を聞きたい。
  217. 神田博

    国務大臣神田博君) 入院の際に一日三十円を三カ月とる。これは一体その治療代であるか、食事代であるか、あるいはこの二つを込めたものであるか、どちらであるか、このように伺いました。なおまた、金額が米代というような金額に似ておるというわけでございまして、米代と解していいかというようなお尋ねのように承わったのでございますが、これをこういうふうにいたしましたのは、入院の治療代あるいは食事代を一切込めて、そのうちから三十円を一つ支払ってもらいたい、こういうことでございます。
  218. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そうしますと、入院というものはもちろん療養の一部であり、食事代も療養費の一部であるということになるわけですが、そうすると完全給食をする病院に入院した人と、そうでない病院に入院した人との不公平というものが起きてくるんじゃないかと思いますが、それはどういうような御説明になるのでしょうか。あるいは私の認識不足かもわかりませんが、その点をお聞きしたい。
  219. 神田博

    国務大臣神田博君) 真正面から給食のあるところとないところで三十円同じに払うことは不公平じゃないかというお尋ねのようでございますが、その面から見ると、そういうことになりますが、厚生省の方の考え方からいえば、給食することが建前なのであって、給食しないということが変則なんだ。そうして入院患者は自分が入院するところを選ぶ権利があるわけでございまして、そこで選択の自由というふうに考えたわけでございますが、これはしかし、はなはだ意を尽さないんじゃないかという御意見でございますれば別でございますが、まあ一応今申し上げたような趣旨で、一切込みでというようなふうに考えておるのでございます。
  220. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 敷衍して局長からもうちょっとその点を説明していただけませんか。
  221. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 入院一日三十円と申しますのは、今大臣がお答えになりましたように、それが米代であるとかあるいは何代である、たとえば初診料相当額である、そういうような趣旨ではございません。その日にかかった療養費に要する費用全体のうちから三十円お支払いをいただく、こういう趣旨で私は物を考えておるわけでございます。そういたしますと、非常に高くかかる場合と、低くかかる場合があって不公平ではないかという仰せでございますが、それは高い治療を受ける人と、低い治療を受ける人とがあるもが不公平ということと同じであります。そこは被保険者の選択の自由があるわけでございますから、さように御了承を願います。
  222. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 次にお聞きしたいのですが、これは大臣ではちょっと何ですから、局長にお聞きしますが、初診料の額が百円の相当額、この歯科におきましては百円未満の場合のケースの方が、実は多いのです、私どもの調べでは、そうしますと、ここで問題になるのは。甲地、乙地の計算の仕方も大体百円ということで、甲地の場合は都合がいいが、乙地では不便さがあると同時に、歯科においては甲地、乙地も来る患者の半分程度は百円以下である。そうすると、歯科に療養費の一部を持たすということなんですが、場合によっては、普通歯が痛いといって来る場合もこれまた多い。一回きりという場合がある。政府がお調べになるとよくわかりますが、これまたかなり多いケースです。そうすると、一部負担は療養費の一部負担であるにかかわりませず、しかも半数の人ないし四〇%くらいの人は療養費の全額を払わなければならないことになる。保険料を払っておいて、これはほかの人にゆくのですから、歯科だけの保険料ではありません。保険料を払っておいて、歯科の治療を受ける場合に四〇%前後の被保険者は全額療養費を持たなければならないというような、歯科と一般との間の不公平な一部負担にこれまたなってくる。これは非常におかしい現象でありまして、歯科に関する限りは療養費の負担のあり方はもっと低いところであることの方が私は合理的であり、公平だろうと思う。もとより歯科におきましても義歯を入れる場合に四千円、五千円の療養費が要ることもございますが、数の頻度の上からいきますと、一回治療というのが非常に多いのです。特に子供などははっきりそういうことは考えられるのです。こうした点で非常に私一律の百円ということは先ほど申しましたように、一級低額所得者の百円と、高級所得者の百円との不公平があるということと、歯科と一般との場合、あるいは一般でも眼科と耳鼻科と違うでしょう。違うでしょうが、極端なのは歯科なんです。歯痛がとまればすぐ来ぬということがあるのですが、これに対して、何らかの考え方を変えるということの方が私は正しいと思うのですが、いやそれはそうでないのであるという根拠があれば、その根拠をお教え願いたい。これはそれからの質問大臣にするわけなんですが、なるほどわかったと、そういうようなことであるならば、歯科の処置に関しては、この際特別に今ここで何らかの修正的な意見があれば考慮してみようという、すなおな気持でおられるのか、やはりいやそうでないんだ、これはどうしても大部分が百円以下でも百円一応取るのだというようなお考えなのか、御両所からこの点についてそれぞれの御答弁をいただきたい。
  223. 神田博

    国務大臣神田博君) もう一度……。
  224. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 初診料について私は質問点が二点ございまして、さっき質問したときにお答えなかったのですが、初診料の百円というものはですね、低額所得者と高額所得者が同じに百円を払うということについては非常な影響力があるのではないか、違う影響力があるんじゃないか、五万、十万の部課長、社長級が百円負担するということはこれはきわめて容易だが、三千円の一級の人から百円取るということはこれは酷である。そういうように不公平な点があるが、それはやむを得ぬということなのか。それについては一つ考慮しようということがあられるかどうかということが一つと、それからいま一つお聞きしたいことは、これは少しこまかかったので、大臣ではなくて局長の見解を聞き、その根拠を聞きまして、そしてそれの善後策を今度は大臣に聞くわけなんですが、歯科の治療は非常に簡単に済む場合が多い。で実際に百円以下の患者が四〇%以上です。ほとんど半数は初診の日に支払う金は四点、二点と足した六点、あるいは三点の七点と甲地、乙地どちらを考えましても百円以下です。そういう患者が百人来れば四十人あるのです。でこれは歯科としては、非常におつりを出す場合も困るでしょうが。そういう意味でなしに、ふだん保険料をかけておきながら、歯医者に行った場合は全額を負担することになる。七点で済むのですから。一回きりしか来ぬ患者が往々にしてある。歯の痛みがとまればもう来ない。ですからそういうことを考えますれば、歯科の特殊性を考えますというと、内科、外科、一般一律に百円ということは、もう現実に七十円、八十円のケースが四〇%もあるのがわかっておりながら百円にしなければならなかった、その根拠ですね、そうしなければ、立法上工合が悪いとか何かそこに理由があると思う。まさかめんどうだから一本にしたのだということはおっしゃらないと思う。その一本にした根拠は局長に聞きたいし、それから、なるほどそういうことかということがわかったということで、何かこれに対して適当な考え方をしようじゃないか、というのは、これは政治的な配慮ですから、そういう配慮ができるか、あるいはする意思がおありになるかと、そういう事情はわかったから一つ考えてみようじゃないかという点は大臣からお聞きをしたい、こういうことです。
  225. 神田博

    国務大臣神田博君) 被保険者の、いわゆる患者の収入によって初診料の区分をする方がいいように思うがどうかというように承わったんでございますが、これはそこまで私どもといたしましては考えておりません。それから歯科の特異性からいって、この初診料が百円に満たない場合が多いのだと思う。しかもそれは一回きりでなおる。そこで歯科は一般の内科等と違って、一つこれを戻す必要があるのじゃないかという御意見のようでありますが、この点につきましては保険局長から答弁いたさせたいと思います。
  226. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 歯科におきましては百円に満たない場合が相当あると思う、第一回の診察について満たない場合が相当あるということは私ども承知をいたしております。それで竹中先生のおっしゃるお気持は十分わかるのでございますが、さようなことで、もし公平をその観点から期そうといたしますると、定率一部負担全体の医療費の何割、あるいは何%というのが一番公平なわけでございます。ところが、これにはこれのまた欠点がございます。一部負担のやり方としましては、あるいは初診料を一部負担する、薬剤を一部負担すると、ある限られた部分についての一部負担の考え方もあります。それから今回私どもが御提案申し上げておるような、百円まではとにかく払ってくれという仕切りといいますか、百円まではとにかく払ってもらいたいというやり方もあるわけでございます。それぞれみな長所があり短所があるわけでございます。それで私どもは今回のような一部負担というものを、いわゆる百円という定額の一部負担というものを考えたわけでございます。それで被保険者の方から申しますと不公平といいますけれども、被保険者の立場から申せば、一般の医者にかかることになるか、歯科にかかることになるか、これは被保険者としましては危険率といいますか、かかる場合は可能性というものは別にそう違ったわけのものではございません。従いまして、被保険者の側からみれば、そう別に非常な不公平があるというふうなものでもあるまいかと存じます。    〔高野一夫君「議事進行について」と述ぶ〕(「質問があいまいなんだ」「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり)    〔竹中恒夫君「委員長発言を求めます」と述ぶ〕
  227. 千葉信

    委員長千葉信君) 竹中君に発言を許します。(「動議が出ている」と呼ぶ者あり)    〔高野一夫君「ただいまの案件の質疑は」、と述ぶ、その他発言する者多し〕
  228. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  229. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。  本日はこれをもって散会いたします。    午後十一時十七分散会