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1957-03-23 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十三日(土曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            高野 一夫君            榊原  亨君            山本 經勝君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            田中 茂穂君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            横山 フク君            吉江 勝保君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            坂本  昭君            山下 義信君            竹中 恒夫君   衆議院議員            大橋 武夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    厚生省保険局長 高田 正巳君    厚生省医務局長 小澤  龍君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(山下義信君外四名発議)(第二  十五回国会継続) ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五国会参第一号)、健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五国会閣法第四号)、船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五国会閣法第五号)、厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五国会閣法第六号)、以上四案を議題といたします。前回に引き続き質疑を願います。
  3. 山下義信

    山下義信君 私は衆議院付帯決議につきまして、その趣旨を明確にいたしたいという質疑をさせていただいております。四項目の決議のうち、特に第三項につきまして昨日お伺いをいたしたのであります。私が質疑をいたしまするにつきまして用語をきめておきたいと思いますので、実は単価引き上げということは単価それだけの問題ではないのでありまして、関係いたしまする診療報酬制度諸般の点にもとより関連があるのでありますが、要するところ、医師に対する報酬引き上げよう、医師収入を増加させよう、こういう意味でございますので、それらの意味を込めまして単価引き上げ、こういう言葉を使いたいと思いますので、御了承願いたいと思うのであります。  私の本日の質問は、二十のとびらのような質問のいたし方はしないつもりであります。本日はせっかくのウイーク・エンドの日をこうして委員会をお開きになったのでありますから、有効適切にこの時間を使わせていただきまして、率直に質問者の手のうちのカードをきょうは皆開き出しまして伺いたいと思いますので、明確な御答弁がいただきたいと思うのであります。  私が衆議院並びに政府当局の御方針を明確にしていただきたいと思います点は、三点実はあったのであります。  第一点は、単価引き上げに関する政府当局の御方針がやや明確を欠くきらいがあり、かつまた、事務当局に関連しての御説明にも、大臣との御所信との間に食い違いがありはしないかという点をお尋ねいたしたのでございますが、これは昨日明確になりました。単価引き上げをやるのだ、その方針厚生省としては調査立案に着手するのだということが明確になりましたので、これは昨日の御答弁を了といたした次第であります。  そこで、本日は御方針は明確になりましたが、果して単価引き上げということが実現性があるかどうかということにつきまして伺いたいと思うのであります。私は率直に申し上げまして、その実現性に多大な疑問を持つ一人であります。従いまして、実現可能性が非常に疑わしいということになりますと、付帯決議の第三項というものも、これもきわめて信頼性が乏しいということになりますので、その実現可能性について、一つ私の疑念を晴らしていただきたい、こういうことであります。それでなぜ実現可能性疑いを持つかということを申し上げますから、一つできるだけ具体的に、簡潔にお答えを願いたいと思います。その疑いを持つゆえんのものは、一つには新医療費体系を完成されて、その上に立って単価引き上げということをなさるのか、現行制度の上で引き上げをなさるというのでありますか、その点が明瞭でございませんのであります。言うまでもなく、新医療費体系というものは、物と技術分離しようとする基本的考え方でありますから、そういう新医療費体系ができてから、単価引き上げをしようとするのか、現行制度でやろうとするのかという点が私には明らかでございません。それで、新医療費体系の上に立ってやるというならば、この作業はいつごろ仕上がる見込みであるか、その予定をお示し願いたい。私はこの作業はきわめて前途遼遠であると考えますが、意外に早く完結いたしますものかどうか明らかでございませんので、お示し願いたい。新医療費体系の上でやるということになりますると、言うまでもなく、単価引き上げとは、すなわち、技術料適正評価ということになるわけでありますので、これはそういうことになりますというと、問題は技術のウエートをどうするかということになりまして、俗に一般的に了解されておりまする単価引き上げということとは若干その性格が異になってくるように考えられます。すなわち換言いたしますれば、点数をどうきめるかということになるわけでありまするので、この現行制度の上に立つのか、新医療費体系の上に立つのかという点につきましてお示しを願いたいのであります。私の質問点を敷衍する必要はないと思うのでのありますが、技術料適正評価という観点に立つということになりますれば、それは即全医師収入増ということにはならぬのでありまして、言うまでもなく、技術を主とする医師収入増にはなるのであります。技術を主といたしまする医師に対しましては有利な建前になるのでありますが、全医師収入増という考え方にはならぬ、おそらく当局単価引き上げのお考えは、全医師収入増を企図される建前考えられますが、その点はいかがでございましょうか。厚生大臣の今日までのお言葉を伺いますと、両院にまたがってのお言葉を伺いますと、何か現行制度の上に立ってやるのだというような御意図のようにも伺われる節がある。現行制度の上に立って単価引き上げをやるということになれば、現行制度はすでにきわめて不合理な制度であるということはもう天下周知でございます。その上に立っておるということであれば多々ますます不合理性を強めるというだけになるのでありまして、いささか筋が通らないような気持もいたしますが、しかし、現行制度の上に立ってやるということであるならば、暫定的な単価引き上げはできましょう。従いまして、当局単価引き上げというのは暫定的な単価引き上げをやるというお考えでありますか。それともこの際、根本的に諸般制度を改めると同時にやるというお考えでありますか。二者いずれでありますか、こういう点につきまして、私は疑念を持ちます。まず、この点を御明確に願いたい、かように考えるものであります。
  4. 神田博

    国務大臣神田博君) その三の付帯決議に関連いたしまして、政府側のやろうとする考え方山下委員から今詳細にわたるお尋ねでありますが、私ども考え方といたしましては、今の不合理であることを率直に認めまして直したい、医療側の、お医者さんの方の要望を入れまして、そしてこれはもちろん被保険者の方にも国家財政にも影響があることでございますから、それをにらみ合せてのことになろうと思いますが、この不合理性を率直に認めて、そしてできれば抜本的な一つ改正をしたい、こういう考えでございます。決して暫定的にというような意図は今は持っておらないのでございまして、そこで今の制度をそのままにしてやろうというようなふうにもこだわっておりません。今の制度は、一応制度として見合って、他にかわる適当な方法があればそれは一つ採用していこう、こういう気持でございます。  それから新医療費体系との関係でございまするが、これはばらばらでなく、同時に解決いたしたいという考え方でございまして、調査を急がせておる次第でございます。しかし、なかなかお述べになられましたようにむずかしい問題でございます。しかし、むずかしいからなかなか困難だろうということについては、もうお説の通りでございまするが、不合理である、直さなければならぬということはこのまま放置できないという段階と私は考えておりますので、どんな困難があっても一つやり抜きたいというような強い意思のもとに調査を命じておるわけでございます。ことに先般の税制調査会等におきましても、医師の経費の控除等につきましても、税制調査会等からこれは廃止するべきものであるという答申がございまして、大蔵省からもどうするかというような態度決定に迫られまして、これは今申し上げました今の一点単価関係がございますので、これは間に合わないので認めてくれというような暫定申し入れというようなことに相なっておる事情もございますので、どうしてもこれはどの観点から見ても改めなければならない段階に来ておりますので、そういう周囲の事情から考えても、これ以上放置できないのだ、そこで十分検討は加えますが、非常に急がなければならない事情がある、解決しなければならない事情があるのだ。で少々無理なことがあってもやり抜いていきたい。しかし、最後決定につきましては、あくまで世間の納得のいくように厚生省独自の考えで、官僚独善とかいうような、そういった批評のないようにしていきたい。こういう考えでございます。詳細につきましては、政府委員から答弁させます。
  5. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) いわゆる新医療費体系に基く点数表改正のことが、どの程度進捗しているかというふうな御質問も含まれておったのでございまするが、あの点数表改正御存じのように、三十年の十二月に中央医療協議会に諮問をいたしまして、三十一年の十一月まで三十二回の会を重ねて御審議を願っております。その間御存じのように、医薬制度の変革が、いわゆる医薬分業というようなものが実施の時期に到達いたしましたので、それに暫定的に応ずる暫定案というようなものもこの間において、同じ審議会から御答申をいただいております。それで、三十一年の十一月までずっと総会を引き続きなさって御検討を願っておったのでありますが、いろいろその御審議の過程におきまして、こういう部分がより専門的な知識を持っておる人に御検討を願うべきであると、その御検討の上に立って一つ中央医療協議会として判断を下したい。こういうふうな点がだんだんとしぼられて参りまして数点出て参りました。でその結果、専門委員を約四十名弱御委嘱をいたしまして、四つの部門に分れてそれぞれ御検討をいただいております。三十一年の十一月の中旬に、第一回の専門委員のお集まりがございまして、自来本年にかけまして、四つ部会とも各部会によって若干の回数の相違はございまするけれども、大体総じて十数回御会合になりまして、これは実に専門的な御検討をいただいておるのでございます。それで今日までのところ、まだ正式な専門委員会意見の御報告中央医療協議会に対する御報告というものは出て参っておりません。しかしながら、相当御審議進捗をいたしておるやに伺っております。これがいつごろ——このままにしておきますと、いつごろ結論が出るかという予想でございますが、これはなかなかこちらで予想を立てることは非常にむずかしいのでございますけれども、しかし、今の模様でございますれば、そういつまでも御検討を専門的にいただくというようなことはないだろう、近い将来におきまして、それぞれの部会によって若干時期のズレはあると思いますけれども、御検討の結果を中央医療協議会の方にお報告を願えるものであろう。かように私ども予想をし、医療協議会の方でもさような期待をお持ちになっておるような次第でございます。大臣の御答弁で大体つきておりますので、さような御質問の一部につきましてだけ御報告申し上げておきます。
  6. 山下義信

    山下義信君 中医療協議会の経過の一端は承わりましたが、さて現在の進行状況から判断して、いつごろ新医療費体系結論といいますか、答申といいますか、そういう結果が得られるであろうかという時期的な見通については御答弁がないので、私はその点が非常に重大だと思いますので、およその見通しでもよろしゅうございますが、およそまだ二年かかりそうなとか、あるいは三年かかりそうなとか、今年一ぱいには済みそうなとか、あるいは今年の夏ごろには大体の結論が得られそうなとかという、現在の御検討作業段階から、およその御予想がつかぬはずはないと思うので、その辺のお見込みはどうであろうか伺いたいと思います。
  7. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 一年も二年もというようなことはないと存じます。これは私の予想でございまするので、あるいは違うかもしれませんけれども、大体もう二、三カ月いたしますれば大体の方向が打ち出せるのではないか、おくれましても、数カ月ということで、方向づけは出て参るものと、かように考えるのでございます。それで、最終的な結論といたしましては、これは先生方のよく御承知のように、あの問題で、物の考え方につきましては、大かたの御賛同を得ておるわけでございますが、技術適正評価と申しますか、結果的には現行医療費ワクの外に出るかどうか、ワク内操作でいくか、ワクの外に出るかどうかという点が、結局あの問題の根本的な一つ問題点であるわけでございます。私ども従来のあの考え方につきましては、現在の切りかえの時期におきましては、その報酬支払い方式を変更いたしましても、医療費の増減に影響のないようにしようということが、基本的な態度でございます。従いまして、その問題が非常に大きな係争の点になっておりますので、ここらが、物事考え方が、若干でも変って参りますならば、あるいは案外早く最終的な結論も出て参る、かように私自身は予想を持っておるような次第でございます。
  8. 山下義信

    山下義信君 単価引き上げを決意するということになれば、ただ現在の単価の上に立っての点数の配分ということ、すなわち、医療費の総ワクのいかんということにつきましては、ただいま局長の言われましたように、非常にこの点が難点であって、作業進捗の大きなそれは障害でありましたでしょう。しかし、単価引き上げをやるということになりますれば、医療費の全体のワクはどこかに消し飛んでしまいまして、一つ作業の大きな進捗になるという局長の御説明でわかりました。私が考えるよりは、意外に新医療費体系作業は進む、少くとも六、七月ごろには、大体中央医療協議会結論も出るだろう、こういうお見通しであろう、かように承わってよろしいのでありますね。
  9. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 六、七月ごろという見当で間違いないかという仰せでございますが、私はそういうふうに日限を限って、こういう責任のある席でお答えをすることは、非常にこれは慎しみたいと存じます。私の見当では、早ければあと二三カ月程度、もう少しかかるようであれば数カ月というふうな程度で、すなわち、先生仰せになりましたもう一年も二年も三年もというようなことでは、とうていございませんでしょう。まあ大体夏から秋にかけまして、物事見通しがつくのではあるまいか、ただ最後に残る問題としては、ワクの問題がございますので、これに相当な期間を必要とする場合が考えられる、しかし、その点において、先ほど申し上げましたように、その点の踏み切りがつくならば、案外最後の最終的な結論というものも、比較的早く出て参るのではないか、こういうふうな予想をいたしておるわけであります。
  10. 山下義信

    山下義信君 私が一年も二年も三年もかかろうかというのは、ユーモアで言うたのでありまして、それに引っかかってもらうと困ります。技術適正評価ということはわかるのでありますが、新医療費体系におきましては、いわゆる物と技術との分離が主でありますから、一体単価引き上げに関連いたしまして、厚生大臣の御方針といたしましては、現行制度の上に立って暫定的に引き上げをやるのでなくして、引き上げと同時に、診療報酬の根本的な再検討、その上に立ってやる考えだ、こういう御所信であります。しからば、従来診療報酬支払い方式につきまして、幾多議論が今日まで重ねられまして、健康保険制度の上における非常な大課題、大宿題なのであります。現在の点数単価相乗積がいいかどうかということにつきましては、もう各方面においていろいろと批判が今日まで加えられてきた、つまり換言いたしますれば、現在の制度でありまするならば、ただ単なる技術の尊重というだけでありましては・一部分の改善にしかならぬのでありまして、言うまでもなく、日数が長くかかればかかるほど得になるとか、あるいは治療がよくできようができまいが、治療成績には、何ら報酬には関係知ないとか、あるいは、名医も凡医も同じように評価されているとか、これは技術の再評価、再検討の中で、一つ解決されましょうが、そういうふうな合理性診療報酬制度の中に取り入れる方針検討されまするか。たとえば何といいますか、点数方式概算払制度とでもいいますか、一件当りの定額制を入れるといいますか、そういうような新しい考え方を加味せられるという方針で再検討をお進めになりますか。どういう御方針でおいでになりますか。
  11. 神田博

    国務大臣神田博君) 何といいますか、ただいまお述べになられましたような新しいことを取り入れていきたいという気持作業を進めるということも言っておるのでありますが、詳しいことは政府委員からお答えさせます。
  12. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) この問題は非常にめんどうなむずかしい問題でございまするので、私ども今、どういう方向にいくか、これをもう少し作業なり研究なりを進めませんと、ちょっと見当がつかないわけでございますが、また同時に、先般の委員会野澤先生から、与党でもかような問題についての特別委員会をもお作りになるということでございます。それらの御意見をもこれは私どもとして十分拝聴いたしまして物事方向をきめなければならぬということに相なると思いますので、従って、どういう方向に参るか、これはちょっと今から申し上げまするのは、はなはだ何と申しますか、先走り過ぎるというふうな気もいたしまするけれども、御質問でございまするので、私主管の局長といたしまして、今私ども考えておりまするようなことについての一端を申し述べてみたいと存じます。  今、先生指摘の現在の診療報酬支払方式、いわゆる点数単価方式というものにつきましては、これは非常な長所もございまするけれども、また、欠点もいろいろ指摘されておるわけでございます。その他にたとえば今例におあげになりましたような、点数定額払いというような考え方もできまするし、あるいはもう少し徹底して参れば、イギリスがとっておるやに申しておりまする人頭登録人頭請負といいますか、そういうふうな形のものもあるわけでございます。それで現行制度欠点指摘はされておりまするけれども、何しろ長い間この制度でやって参ったわけでございまして、しかも現行制度欠点指摘されるその声は高いのでございますが、しからば、こういう方法でやったらばいいじゃないかという徹底的な代案というものについての御意見はこれは非常にまちまちでございまして、なかなか出て参りません。従いまして、私どもといたしましては、先ほどお話に出ましたいわゆる新医療費体系考え方というものは、現行点数単価方式の中でこの物と技術とをできるだけ分離をいたしまして、そうしてこの技術部面を尊重したような診療報酬支払方式にしようということでございます。従って、この現行点数単価方式の中であの程度改正はぜひとも必要である。支払方式検討をいたしまする場合には、ああいう考え方まではどうしてもいかなければ、現在の点数単価方式の上にのっかってただ単価を上げるというだけではこれは非常に不合理である、あの程度改正はやらなければいけないということは大体私ども予想いたしておるわけでございます。これももう少し研究をいたして参りませんと、結論的なことは申し上げられませんけれども、おそらくそういうことに相なるであろうという予想をいたしております。しかし、さらに進んで、点数定額とか、あるいはその他のやり方、いわゆる点数単価方式から全然離れたやり方をやるかどうかということにつきましては、これはなかなかそう簡単に私は参らないのではないか。試みにある限られたる部面でやってみるというようなことは、これは幾ら考えられるわけでございますけれども、しかし、それでもって全部をおおってしまうようなことにいたすには相当な長い実験と申しますか、研究と申しますか、そういうふうなものも必要ではあるまいか。従って、そこまでいくには相当時日を要するのではあるまいかと予想をいたしておるわけでございます。しかし、最初に申し上げましたように、これもあくまでもただいまの私ども考え方でございまして、研究の末、あるいは各方面の御意見をも聞いてやって参りたいと存じまするので、いろいろな方面からいろいろな御意見が出て、それらの御意見で、大勢としてそちらの方に参った方がいいというふうな御意見が強いというようなことになりますれば、これはまた、話は別でございますけれども、私のただいま予想をいたしておりまする点は、以上申し上げたような心持でございます。
  13. 山下義信

    山下義信君 この問題は、この問題自体が非常に重大な問題でございますから、私が単価引き上げに関連いたしまして非常に深い関係のある制度でありますから言及したのでありますが、これ以上深く質疑を重ねようとは思いません。ただこの際、申し上げておきたいことは、この診療報酬支払方式がはっきりと基本方針がきまらなければ、これは国民皆保険という大きな線で進めていく上におきましても、非常に大きなこれが関係を持つのです。医者の方にいろいろな弊害が現在の方式ではあることは言うまでもないことでありますが、被保険者の方にとりまして非常に不都合だということは、治療費幾らかかったということがわからない。これが大きな弊害です。自分の受けた治療費が、それは保険で払ってもらうのですけれども、一体何点ということが幾ら治療費がかかったということがすぐ目の前にわからぬということが非常に大きな弊害です。従ってこれは一部負担を百円にするといえば、百円というものは自分の受ける治療費の総額のどういう金額に該当するのだということがわからぬというところに問題がある。私はある程度定額方式を新制度に入れることが必要なんだ、被保険者がどれだけの治療費がかかったかということがわからぬということがあろうはずがないのでありまして、それを明確にさせるという診療報酬方式というものをぜひ考えなければならぬと考えておる一人でありますが、きょうはこの点は大きな問題でございますから、それ自体あらためて検討する機会に譲るといたします。  次に、この際伺っておきたいと思いますのは、実は現在の医療制度を、すなわち、医師制度というものをそのままにしておいて、その報酬引き上げ考えるということも実は十分でないのでありますが、その中の一部分といたしまして、医師制度のいわゆる専門医制度というものは当局はどういうふうに考えておられるのでありますか、方針としてはどうなっておるのでありますか、この際承わっておきたいと思います。
  14. 神田博

    国務大臣神田博君) 専門医制度をどういうふうに考えておるかというお尋ねでございましたが、これはなかなか重大なことでございまして、厚生省といたしましては検討を加えている際でございますので、政府委員から専門的に答弁させたいと思います。
  15. 小澤龍

    政府委員(小澤龍君) 御承知のごとくに、欧米諸国におきましては専門医制度がありまして、かなりよく運営されておる、医療向上に役立っておるものでございまして、わが国におきましても専門医制度の必要性を叫ぶ人もおりましたので、一昨年でございましたか、厚生省におきましては、厚生科学研究費によりまして学者に委嘱いたしまして、専門医制度を制定した方がいいかどうか、制定するとすれば、どういう内容がしかるべきであるかということを研究していただいたのでございます。その結果は昨年早々にまとまりましたので、それを医学会その他に示しまして御意見を問うたのでございます。その結果、大多数の方は、趣旨として専門医制度を作ることに賛成である。しかし、そのやり方についてはなお慎重に研究すべき余地があると思うので、厚生省としては慎重にこれを検討をして、これを実施する場合においては万遺憾なきを期していただきたいという声が強かったのであります。そこで、私どもといたしましては、明年、三十二年度に専門医制度検討に関する委員会を作りまして、各界の学識経験者に委嘱いたしまして、さらにこれを検討していただいて、その結果結論を得たならば、その結論に基いて専門医制度を実施していきたい、かように考えておる次第でございます。
  16. 山下義信

    山下義信君 私は少しく単価引き上げ実現可能性があるかないかにつきまして、もう少し中身に入って伺いたいと思います。当局医師収入増をはかるという場合の考え方として、昭和二十六年のいわゆる暫定単価、現在の現行単価、これをきめたその昭和二十六年を基準として単価引き上げ考え方針か、あるいは現在の時点を基準として医師収入をはかっていこうという考え方か、基本的にはその引き上げの何と言いますか、基準をどこからとって考えていくという方針であるか、これは大体の基本方針でありますから、当局考え方をお示し願いたいと思います。
  17. 神田博

    国務大臣神田博君) 私といたしましては、なるたけ近いところにめどを置きまして、そしてそれを基準として直したい、こういうふうに考えております。
  18. 山下義信

    山下義信君 私は医師収入増考えまするときに、基本的の考え方が二つある。一つは今お尋ね申し上げましたように、昭和二十六年のときにきめたのですから、そのときの事情と現在の事情とを彼此勘案して、一つ引き上げ方針見当をきめていくということとですね、これは今のお答えで、いや二十六年の当時の事情にはこだわらないで現在の状態からさらにプラス・アルファを考えていくということで作業を進めていく。いま一つは、医師収入増の実質的な引き上げ方針をきめるについて医師全体の収入増になる考え方でいくか、保険診療部分について収入増になるようにいくかという点が、私は一つ作業の目安になりはしないかと思うのです。換言いたしますと、きょうは回りくどいことを言わぬ約束でありましたから、換言いたしますると、医師の医療の実態が非常に大きな変化をしている、言うまでもなく、言いかえますると、自由診療という部分が非常に少くなってきた。少くなってきたということは、保険診療よりは、多額の収入になる自由診療という部分が少くなってきたということは、それだけ医師収入減になってきているという事実。この自由診療費の減少による全体の収入減を、保険診療の収入によってカバーして、なおそれ以上の収入増になるようなこの診療報酬引き上げという考え方、それを持つが持たないかという点は、私はこの単価引き上げ実現する上においての基準的な基本的な考え方として、重大な考え方であると私は思う。その点は当局はどういう方針をお持ちになるか。
  19. 神田博

    国務大臣神田博君) 厚生省考えますことは、医療全体という意味と申しましょうか、私どものとりあえず作業の課題になりますのは、保険診療それから生活保護の関係ですね。この方面の分について作業をする、こういうことでございますので、一般の方はそこで対象とするという気持は今のところないわけでございますが、詳細のことは政府委員からお答えいたさせます。
  20. 山下義信

    山下義信君 私の尋ね方が少しく不十分でありました。私のお尋ねいたしましたことは、医師収入増をはかる。すなわち言いかえますと、単価引き上げをどの程度やろうか。こういたしましたときに、いろいろ考えられる要素の中には、医師の最近の収入状態、医療の経営状態をにらみ合せまして、そうして医師の現在の収入からプラス・アルファをしようとした場合に医師収入を分析いたしますと、自由診療の収入保険診療の収入とがある。その現在の医師収入の水準というものが、どういう姿にあるかという中には、自由診療の部分が非常に少くなってきているという要素がある。従って、医師収入全体の水準を考えて、全部の水準からこの収入増をはかろうという考え方と、その自由診療が少くなったという部分については、健康保険においては責任がないのだ。その自由診療の収入減も加えて、つまり言えば、収入減をカバーした上に、なおプラス・アルファをしようという考え方を、単価引き上げの要素の中に考え作業検討されるか、そういう点は考慮されないで保険診療の収入の部分に関してのみ考えて、単価引き上げの目安の一つにするか、どういう方針をお持ちになるかと、こういう点を尋ねているのです。
  21. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御存じのように、現在すでに自由診療というものの範囲は、非常に狭くなっておりまして、それからさらに、山下先生はただいま自由診療の方が保険診療あるいは社会医療といいますか、これにならっておりまする社会医療の診療費よりは相当高いのだという前提でお話をいただいておりますが、もちろん高い部面もこれはありますけれども、大体この保険なり、社会医療の診療費に近づいてきておる医療機関によりましては、全然同じでやっておるという医療機関が相当あるわけでございまして、従って、全体的には近づいておるという実は状況でございます。それで私どものただいまの考え方といたしましては、保険並びにこれに大体準じておりまする社会医療と申しますか、そういうふうなものについての収入増と言いますか、待遇改善と言いますか、さようなことを考えて参るのが主眼でございます。ただその際に、今先生指摘の、自由診療でどれだけその収入が減ってきたか、自由診療の範囲が狭くなるためにどれだけ減ってくるかというふうなことをも、かりにそういう的確な資料でもつかみ得ますれば、これは保険診療の社会診療の方でどの程度上げるかということの場合の参考の一つの資料とは相なるかと存じますけれども、あくまでもねらいは、この保険をはじめ、社会医療の面からの収入増ということを頭に置いて考えてもらいたい、かように存じております。
  22. 山下義信

    山下義信君 わかりました。私も質問のピッチを上げましょう、あとは簡単です。租税特別措置法は現行のまま据え置いて単価引き上げをやるということで、政府の方はそういうお打ち合せでもできておりましょうか御方針は。
  23. 神田博

    国務大臣神田博君) この問題はかね合いになると思います。と申しますことは、税制調査会では廃止するようにという決議でございまして、私の方に相談があったわけでございます、大蔵省から。そこでこれは現行単価不合理性から出た問題であって、現行単価がどの程度まで一体合理化されるか、その状況によってこれはお考え願わなければならない、とりおえず今の制度そのものを存置してもらいたい。なお、現行単価一つきめる際に、そのきめ方によっていろいろ御相談いたしたい、こういうことが、私と大蔵大臣との了解事項になっております。
  24. 山下義信

    山下義信君 わかりました。単価引き上げと租税特別措置法を存続するか、廃止するかということは密接不可分の関係であるということ、私どももそうであろうと思います。従って、この両者のかね合いは、単価引き上げに関連して、再び大きな問題として関係者から浮び上ってくるだろうということを私も予想いたします。  次に、私実現可能性について疑問に思いますことは、この単価引き上げにつきましては、おそらく各方面で私は異常な反対があるだろうと思う。すでに健康保険連合会におきましても反対の決議をしておる。おそらく国保を実施いたしまする市町村もやすやすとこの単価引き上げには同意しないだろうと思います。たちまち国保の財政に響きわたって参るのでございますから、容易ならぬ問題である。一般国民も健康保険単価引き上げと同時に、国民の医療費につきましても至大な関係があるであります。とても牛乳の値上げや、とうふの値上げや、ふろ銭の値上げどころのさたではない。米の値上げ、運賃の値上げ以上におそらくこれは全国民がやすやすと単価の値上げに賛同するかどうか。今日ここでは平静に議論をしておる、ここでは健康保険一つの解決の重大な問題として非常にイージー・ゴーイングしておりますけれども、このことが一たび具体的に私は国民の前に出て参りまするというと、これはなかなか容易にやすやすと実現ができるとは考えられない。かつまた、厚生省が諮問機関といたしておる七人委員会その他におきましても、いかにして医療費の圧縮をするお考えかということは、いろいろと当局にも建言をしておる。やすやすと私はこれは実現し得ない、世論の賛同は得られないように杞憂いたすのでありまするが、その党に対しまする当局のお見通しと言いますか、御見解はどういうふうに考えておられるのでありますか。
  25. 神田博

    国務大臣神田博君) この実現のきわめて困難な事情は、今山下委員のお述べになられた通りと私も考えております。しかし、その困難とか事情を乗り越えて公正の処置をとらなければならないのだという段階に入っていると、私はこう考えております。これはいろいろ具体的の例等は、時間もございませんから申し上げませんが、私どもといたしましては、そういう考え方を持ちまして、世論にも率直に、結論が出た場合にはそうしなければならない事情を詳細に、具体的に訴えまして、正しい世論というものが一つ出るような処置を一つしよう、こういう考えであります。
  26. 山下義信

    山下義信君 厚生大臣の、反対を乗り切って理解をしてもらって、あくまで実現するという御方針でありまするから、その点はわかりました。  さて、私の一番最後質問でございますが、そこで当局単価値上げの方針はきまった。その単価値上げは、すなわち、新しい診療報酬制度の改訂の上に立って、まず全部の解決をとは言わないけれども、ある程度の改善を加えた制度の上で単価引き上げをするという御方針並びにその実現性につきましては若干私の疑念は晴れました。そういうお考えならば、これは幾ら引き上げができることでありましょう。  実は伺いたいのは、この単価引き上げはいつごろ実現をなさるお見通しであろうか。また、どの程度引き上げられるというお考えであろうかという点が実は伺いたい。そういうことを伺うというと、それは作業をしてみなければわからない、結論を待ってから検討を加えると、おそらくおっしやるに相違ない。しかし、これはどちらからでもできる。いろいろな作業をやってみて、検討を加えてみて、一案、二案、三案と出てきてみて、政治的な考慮を払って十三円にしてみるか、十五円にしてみるか、二十円にしてみるかというこの上げ方をきめるということも言えるのです。そのかわり、作業やり方によっては、結論の出方によってはどうなるやらわからぬ。また、一面から言いますると、先に大局的な判断をして、すなわちこれ政策です、大局的な判断をして多年議論し尽しきたっているのでございますから、まず、大局的には十三円でいこう。一円上げよう、二円上げよう、まず、大体この辺でいくから、この範囲内で作業をしようという作業方針をあらかじめ示せば、そろばんや立案や、それのまた説明はどのようにでもつくのであります。ほんとうにやるという腹があるならば、まず、大体に目安を立てて、これはいつごろからやる、どのくらいやるということが私はこれだけの大きな問題であるならば、まず、基本的に腹をきめて、そうして具体的な立案をすべきであるとも言えるのだ、実は承わりたいのはここなんだ、大体でもどういうふうに引き上げをするのか、どの程度されるのだろうか、いつごろされるのだろうかということが実は伺いたい。それをおっしゃれば、単価引き上げということはなるほどやるのだ、なるほど当てにしてもよいわ、なるほど衆議院のこの付帯決議はこれは実現可能性があるわとも言えるのである。実は伺いたいのです、それをおっしゃらなければ——、その大体の御見当もお示しが実は願えぬということになりますというと、単価引き上げには大へん私はその実現可能性に疑問を持つのであります。しかし、私ども質問する側でありますが、質問者も多少はエチケットを持たねばなりませんから、無理なことをお尋ねするということは、尼さんに髪を結えというようなものでありまして、それは無理であります。無理でありますが、われわれのその実現に疑惑を持つ者に向っては、何らかこの疑念を晴らす具体的な御答弁がいただきたいと思うのであります。これは最終でよろしい、私の質疑の一番あとでよろしゅうございます。お示しが願えるならば、一番あとでよろしゅございます。その前に伺いたと思いますことは、実は一部負担との関係であります。これは私がこの決議の第三項、すなわち、単価引き上げに関連して明らかにさせていただきたいという三点の中の最後の一点であります。これは下世話には、うわさには一部負担に賛成せい、お医者さんもそんなに一部負担に反対することはない、一部負担に賛成するならば、保険財政が黒字になれば、あなた方の支払いも報酬も上げてあげるのですから、被保険者からとる一部負担の改悪は、そのまま医者報酬引き上げになるのだから、何も一部負担にお医者さんが反対するというのはおかしいじゃないかという説得は、これは昔から説得といいますか、その説が流布されておる。まあこれはわしらの出す一部負担は、これはみんな医者報酬引き上げの方に回されるのだ、保険財政が黒字になりさえすれば、いつでも医者診療報酬引き上げてあげるのだからというようなことを、世間ではうわさもいたしておるのであります。そういううわさもあるのです。そういう説が流布されたこともあるのです。私どもは困る。こういう説、こういう考え方、これは非常に私どもは困る。そういうことがあろうはずはありませんけれども保険財政がプラスになれば、一番初めにすることは、一部負担の廃止です。一部負担の軽減か、少くとも廃止です。一部負担をますます重くかけておいて、そうして黒字になれば、それが一番先にお医者さんの報酬引き上げに回るというようなことでは、私は筋が非常に立たぬと思う。それで私はこの単価引き上げの財源の論議をしようとも思いません。衆議院の方では、非常に緻密に御論議になっております。どれだけ実現ができるか、どれだけかかるから、なかなか至難で云々というようなことは、これはもう衆議院の方で御論議になっておりますから、こてで私は繰り返そうとは思いません。しかし、単価引き上げの幅というものは、およそ限界がある。だれが考えても限界がある。たとえば、今三十一年度の三十億というものが、これがかりに単価引き上げの方に回るとすれば、五十銭ぐらいは上げることができる。あるいはいろいろにあとでそれにつけ加えて財源をお考えになりますれば、一円ぐらいの引き上げは今でもできます。私はこの一部負担と単価引き上げとの相関関係というものにつきまして、非常にこの関係を明確にいたしておく必要があると、かように私は考える。それで結局、その問題と単価引き上げの大体の限度といいますか、御予想、御方針といいますか、そういう点について、一つ総括的に最後の御答弁をいただいておきたいと思います。
  27. 神田博

    国務大臣神田博君) 一部負担が、即、単価引上げに関連があるかということについては、私どもは関連があるというふうに考えておりません。ということは、この法案が提案された事情から考えましても、政府が一点単価改正しようということを方針として作業を始めました時期の異なっておることから考えましても、それは関連がなかったというふうに、これは明瞭に御了解を得ることができると思います。そこで、問題は医師の待遇改善の問題でございますが、これは何と言いましょうか、私も就任浅いのでございますが、公立の病院も、あるいはまた、市立の病院でございますとか、なお、また、財団法人等の日赤であるとか、公益法人の営んでおりまする医療機関も、皆経営難で困っておるわけでございます。町の医療機関もその例に漏れず、非常にあえいでおる。ただ税制上の特例によって、ようやくまあ息をついておるというような実情だとするならば、これはどうしても正常な状態にするということは、私は当然のことだと、こういうふうに考えておるのでございます。そこで問題は、山下委員の御指摘になりましたように、一体どの程度の待遇改善をそれならば政府はするのか、いつからしかもこれをやるのかということであろうと思います。この問題につきまして、どの程度でやるかということになりますると、一応の財政上のめどをつけまして、お述べになられたように、これだけの財源をもってやるというようなことがはっきりいたしておりますれば、これはまあそれがその程度でいいか悪いかは議論があると思いまするが、御説明申し上げることができるのでございますが、事は、さようなどこまでというよりも、それ以上に私は深刻なものがあるんじゃないだろうか。そこで私は衆議院でもお答え申し上げ、また当委員会にもしばしばお答え申し上げましたように、まず、一つ医療機関として正常の、いわゆる経営としてあるべき姿に置くには、どの程度に一体すべきものであるか。それからまた、今の一点単価をそのままずるずる引き上げても、先ほど山下委員が御指摘になられましたような、新医療費体系との問題もございまするし、また、お医者さんの技術という問題を評価して参りませんと、これは医術の低下という問題にまたなって参ります。そういうことをとつおいつ研究いたしまして、十分これは一つ検討いたしまして、医療機関としての経営のあるべき姿を一つ出してもらって、それでどの程度上げるかということを、官僚独善にならず、政府の独走にならず、これは与党においても調査会を作って、その方針一つ政府と一体となって出そうと、こういっておられまするし、まあ衆議院におきましては、野党の方々も、あげてそういう態度についてはわれわれも協力にやぶさかではない、一つ十分検討されて相談をされるならば、真剣になって応援する、こういうような御声援もちょうだいいたしておりますので、厚生省といたしましては、一つ作業をすみやかに完結いたして、短期間のうちに実行いたしたい。政府の方は、これもしばしば申し上げますように、大蔵大臣も総理も、また全閣僚も、一つこの機会にわれわれの責任において、最もすみやかに公正妥当な案を実施するように、一つ諸般の方途を講ずるようにと、こういうことになっておりますので、これはこの程度一つ御信用して、いただくというと、話が少し進み過ぎるかもしれませんが、御了承願ってと、こう考える次第でございます。
  28. 山下義信

    山下義信君 私の付帯決議、なかんずく第三項に関しまする政府並びに衆議院決議をなさいました、決議を付せられました御趣旨を明確にするという質疑は、そろそろこの辺で幕にいたしたいと思います。しかし、こういうことの証文はです、具体性がありませんというと、すなわち信憑性がございません。それで、非常に大きい問題と考えましたので、なかなか容易に実現不可能という私の疑念を少しでも薄らげたいと考えまして、両日にわたりまして伺いました。若干は晴れました。若干は晴れましたが、しかし、まだこれで明確になったとは言えません。最後に、厚生大臣は信用を要請されました。若干の信用はいたしましょう。実はもっと伺いたいと思いまするが、信用をするようにと言われますというと、もうこれ以上のことはございません。信用の反対は陳謝であります。陳謝をしたものを追及するわけには参りません。信用せよと言われましたので、これ以上のことはございません。  ただ幕切れに、私が政府並びに衆議院関係者の方の御意向を承わりたいと思いますことは、一部負担と単価引き上げというものは、これは実に私は重大な関係があると思う赤字だから一部負担をさせるのだ、それで単価引き上げをするのだ。多々ますます、まあかりにほかから金を持ってこぬ限りにおいては、保険財政は赤字になる。赤字になれば、一部負担をかけるのだ。せっかく一部負担を払い込めば、それが医師報酬引き上げとなってくるのだという悪循環をされるということになりますと、これは困る。被保険者は不利になり、医療担当者は有利になる。こういう関係でありましては困るのでありまして、この関係を解決しておかなければなりません。一部負担と単価引き上げ一つには、法律——私は今一部負担について触れようとは思いません。これは付帯決議を議論しているのでありますから、まだ法案の内容には入っておらないのでありますが、単価引き上げに私は有利だ。このたびの健康保険法の問題では、この一部負担の増額と、単価引き上げという問題は、一つには法律一つには法律外、この関係がある。この二つの関係をどうします。一つは解決する、一つは解決しない。一つは笑わして、一つは泣かしておく。それはおかしい。泣き笑いになりますよ。笑声これはおかる勘平のように、道行きならば話はわかりますよ。(笑声)しかし、久松は徒歩で行け、お染は船じゃ、こう泣き別れるというのでは、これは幕が引けません。大臣は先だって東横ホールにおいでになりましたときに……大へん歌舞伎の御趣味、私も同好の一人でありますが、私はやはりこれはおかる勘平の道行き、めでたしめでたしにならぬ限りには、これは一方は泣かしておいて、一方は笑わしておいてと、そういうことは、私はよほど考慮しなくちゃならない、こういうふうに考えるのでありますが、大臣の御所見、並びに大橋衆議院議員の御所見はどうでありますか。これは非常に重大でありますので、お答え願います。
  29. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま山下委員のお述べになられたお気持は、私も十分同感でございます。ただ何と言いましょうか、診療報酬等につきましては、できればこれはもう新薬の追加とか、あるいはまた、薬の値段の変動とか、いろいろ事情がございますので、できるだけそういう場合に急いで——というとこれは言葉がどうか知りませんが、有事即応の作業ができるというふうにいたしておくべきものじゃないか、こういうようなふうに考えますと、片一方は法律できめる、これはまあ負担のことでございますから、当然でございまするが、診療報酬は、このかかったものに対して、一つ技術料と申しましょうか、経営費と申しましょうか、これは支払いの関係でございますから、これを法律で一々きめていくということになりますると、いかがであろう、こういうことを私は心配いたすのでございます。おそらくそういうことが微妙な点がございますので、それぞれの委員会等の専門委員会にお諮りして、そして実情に沿うた医療費というものが出てくると思っております。山下委員のお考え方につきましては、私全く同感でございますが、ただこれを運用と申しましょうか、実施していくということになりますると、やはりどうも弾力性を持たせた方が行政上便利じゃないだろうか、被保険者にも有利じゃないか、こういうようなふうにも考えられますので、これはなお一つ検討させていただきたいと思います。
  30. 大橋武夫

    衆議院議員(大橋武夫君) 山下さんの御質問に対してお答えいたしまするが、衆議院におきまする審議を通じまして、政府から得ました答弁によりまするというと、今回の法案に盛られておりまする一部負担、国庫補助、これらのいわゆる新規財源と申しまするか、この新規財源は、ただ当面する赤字を補てんする程度にとどまっておるのでございまして、それ以上、診療報酬引き上げ等に回る部分は全然入っておらぬということでございます。従いまして、この法案に関する限り、一部負担と診療報酬引き上げとの関連性という問題は入ってくる余地がないと、こういうふうに判断をいたしたわけでございます。従いまして、衆議院といたしましては、この診療報酬引き上げの問題ということは、これは将来の問題である、しかしながら、急施を要する問題であると存じましたので、付帯決議の第三項において、将来の希望として強く政府に要望いたした次第でございます。
  31. 山下義信

    山下義信君 私が最後に幕切れに申し上げましたことが、おくみ取りが願えなかったようでありますが、しかし、あるいはおわかりになっておられまして、御所見が回避されたのかもわかりません。私たちは診療報酬引き上げをするような健康保険の運営状況、経営状態というものが、ここにそういう情勢を変えようとしておる。現在の三十億、現在の一部負担の財政負担の効果がどうあろうと、これは今大橋委員がお示しの通りであります。しかし、将来の財源が、いずれかが新規に考えられ、医療担当者の報酬引き上げられよう、それが今ここで予測されていこう、その実現が確実であると御立証をいただいた。そういう情勢になって参りましたときに、私どもが被保険者に一部負担をここで課して、これをあくまでも強行しようとすることは、非常に平仄が合わぬではないか。何となしに割り切れぬ感じがあるではないか。保険財政が非常に窮迫しておる、しからば、すなわち従来の政府の御方針が三方損でいこうじゃないか、政府も損をしていこうじゃないか、医療担当者にも犠牲を求めようじゃないか、被保険者もしんぼうしようではないか、この原則、原理のもとにこの当面する健康保険の状態を打開していこうじゃやないかという御方針でずっときた。しかるに今日の段階におきましては、その医療担当者に対する報酬引き上げようとする。犠牲どころではなくしてその待遇を改善しようとする方向のその段階に、被保険者の一部負担を依然としてこれを固守していくという考え方は、これは私は非常に不合理であると同時に、だれも納得のしがたいような処置でありまして、従って、衆議院の方の御修正、私は修正点には触れません。しかし、関連しての付帯決議のどこを押しましても、この一部負担と医療担当者単価引き上げ、待遇改善というこの医療担当者側への御処置というものがバランスがとれていない。従って、この両者の関係を仲よく、おかる、勘平のごとくめでたい道行きになさるか、久松とお染のようにばらばらにこれを引ききいて、お前はお前、そちらはそちらというような泣き別れになさるということが、政治的に何らかの御考慮が必要ではないかと私は考える。そういう点を伺ったのでございまして、重ねて御所見がありますればお伺いをします。
  32. 大橋武夫

    衆議院議員(大橋武夫君) 山下委員のお述べになりました御趣旨はよくわかるのでございまするが、私ども審議の過程を通じまして、医師の待遇改善ということは、これは差し迫って必要であるということを一つの事実として認識をいたしたのでございます。また、一部負担につきましては、今日の保険経済から考えまして、一部負担を多少増額いたしますることが保険制度の合理化の上からいってやむを得ない、こういうふうに考えましたので、それぞれについてそれぞれの理由をもってかような決定をいたした次第でございます。
  33. 山下義信

    山下義信君 他の質問は保留いたしまして、私の付帯決議の第三項に関する質疑は一応この程度にいたしておきます。
  34. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連質問。ただいま付帯決議第三項、医療担当者の待遇改善の問題についてかなり詳細に述べられました。もちろんただいまの大臣及び厚生当局の御説明は、この付帯決議の背景をなすものとしてきわめて重大であると思うのです。ただその間にあって、大臣の御説明が医療の実態をつかむために非常に大臣が努力と誠意を尽しておられるというその点は私たちも感激をもってお聞きいたしました。しかしながら、どうも具体的な大臣の御答弁はきわめて私は不親切だと思うのであります。与党の中に新しい調査委員会を作ったとか、あるいは当局に命じてあるとか、そういうことであって、この御答弁の内容が不親切であるということを私ははなはだ遺憾といたします。  ところで、私のお聞きしたいのは、大臣よりもきょう衆議院社会労働委員会から野澤さんのかわりにお見えになられた大橋委員に実はお聞きいたしたいのでありまするが、その中で、一番最初に、付帯決議の中の点数の点、これは先ほど局長が相当説明されましたので私は省きます。そのかわり、先ほどのお話では、早ければ二、三カ月以内に専門家によって点数検討が作られる、その資料をできるだけ早い時期に提出していただきたい。今までにできているところの点数に関する資料を一つ提出していただきたい。これについてはもう大橋委員には御質問いたしません。  ただ次に、この単価を含む問題の財政的な基礎について、かなり審議がされておるのでありますが、衆議院社会労働委員会における結論的な御意見、それを端的に一つ説明願いたいと思います。
  35. 大橋武夫

    衆議院議員(大橋武夫君) この点につきましては、衆議院委員会におきましては、今回の法案の審議を通じまして、さきに申し述べましたごとく、この法案の中身から、従って、この法案を基礎としてできておりまする現在の収支の予算の中からは、この引き上げの財源は出てこないということが明らかになったわけでございます。そこで、衆議院といたしましては、国庫補助の点についていろいろ質問をいたしたのでございまするが、政府といたしましては、国庫補助については特にこれは厚生当局の、事務当局としての意見で、政府の一致の見解にはまだなっておらないのでございますが、でき得ればこの医療費の一割程度の国庫補助を要求するようにいたしたいというような趣旨の御説明がございました。しかし、この点につきましても、確固たる理論的な基礎というような点については、政府の答弁は十分委員を納得するに至りませんでしたので、委員会質疑の過程を通じまして、政府に対しまして、健康保険医療費のいかなる部分に対して、いかなる割合をもって国庫補助をするということが理論上必要であるか、この理論づけについて十分な検討を今後にお願いをいたしたようなわけでございます。  それから財源の点につきましては、そのほかには大して質疑を通じて明らかにいたした点はございませんが、とにかく現在の診療報酬引き上げということについては、これはこのままではいかぬ。従って、政府として国庫補助の引き上げについてはそういうことでございましたが、そのほか種々な財源を十分に研究した上で、具体案を至急に作ってもらいたい、これがこの決議の趣旨でございます。
  36. 坂本昭

    ○坂本昭君 次に診療報酬支払い方式を再検討するということが決議に載っておりますが、その支払い方式について、衆議院社会労働委員会におきましては、どういう審議をなされたのか。例をあげますと、先ほど山下委員からもちょっと話が出ておりましたが、それから局長から説明がありましたが、現在の出来高方式によるか、あるいは人頭式のイギリス的なやり方にしたがいいか、そういった支払い方式一ついて審議がありましたか。いかがですか。
  37. 大橋武夫

    衆議院議員(大橋武夫君) この点については特別な質疑は行われませんでした。要するに、単価点数を含めまして、医療報酬全体について再検討する、従ってまた、その財源についての研究も含めて、すみやかに医師の待遇改善を実現してもらいたいというのが結論であったわけでございます。
  38. 坂本昭

    ○坂本昭君 少しくどいようでございますけれども、またあとでこれは問題になりますが、支払い基金制度、これについての検討は、速記録を見たところではないようですけれども衆議院委員会ではいかがでございましたか、審議されましたか。
  39. 大橋武夫

    衆議院議員(大橋武夫君) 支払い基金の検討という御質問意味がよく把握できませんが、支払い基金における請求書の審査手続については相当質疑がございまして、この点は修正案となって実を結んだのでございますが、現在の支払い基金制度というものを根本的に批判するとか、あるいはこれについて再検討するというような意見はあまりありませんでした。
  40. 坂本昭

    ○坂本昭君 次に最後の、この医療担当者の待遇改善のことにつきまして三つほどお伺いいたしたい。まず、医療担当者の現在におけるところの経済的な状態、それをどういうふうに一体御判断に皆さんの委員会ではなさりましたか、これが一つ。  それから次には、医師、歯科医師、薬剤師を含むこの医療担当者の待遇というものは、どういうふうにされるべきであるか、いかにあるべきかということについて審議をなさったかということが第二点。  それから最後に、待遇改善の具体的な方策、これは先ほどから山下委員もたびたび指摘されましたが、単価の問題や点数の問題や税の問題や、あるいは資金の融資の問題、いろいろの問題がありますが、簡潔にどういうふうに論ぜられたか、その三つの点を簡単でようございます。審議の内容について御説明いただきたい。
  41. 大橋武夫

    衆議院議員(大橋武夫君) 御承知の通り、この健康保険法の改正案はすでに三度目の通常国会になっておるのでございまして、衆議院社会労働委員会といたしましては、ほとんど同じ構成委員によりまして、この三回の審議が行われております。従って、この付帯決議として出またところの今回の結論につきましては、ひとり今国会におるけ審議の結果ばかりでなく、従前からの審議をも通じて明らかにされた結論がここに出ておると思うのでございます。従って、今回の国会の審議において今御質問のような事柄がきわめて明瞭に論議はあまりされなかったようでございますが、しかし、従来の国会等における問題におきましては、まず現在の医師の経済状態というものは、戦前における医師の経済状態からみるというと、著しく低下いたしておるのではないか、ことに社会保険その他医師に対する社会的な使命というものが重大になっておる際に、この待遇について、むろん昔通りということはなかなかどの階層についても期待できないでございましょうが、少くとも安んじて子弟を後継者として教育する程度の経済状態は維持しなければならぬものではなかろうか、まあこういうような点が前国会等においては論議された次第でございます。  それから待遇はいかにあるべきかという点でございますが、この点についても明瞭な論議はございませんが、大体論議を通じての気持といたしましては、普通、医者としての社会的使命にふさわしい生活をなし、また、その子弟に業を継がせるだけの教育ができるように、そういうような程度のところを考えて待遇改善の必要が述べられた次第でございます。  それから具体的方策等につきましては、主として単価引き上げを含みますところの診療報酬の問題が論議せられたのでございます。
  42. 坂本昭

    ○坂本昭君 ただいま大橋委員の御説明によりますと、もう三度目の審議で、十分尽されているというんですけれども、実は私去年参議院に出て参りましたもので、新たでございまして、私はまだ十分審議を尽していないんです。それからまた、こういうふうな新しい考えを持った人間が出てくるということが、やはり三度であろうと四度であろうと、やはり慎重な審議をやらなくちゃいけないという私は大事な要素だと思うのです。ですから皆さんの方で、もう三度目で十分審議を尽しているからというようなことでは、これは重大な私は誤まりだと思う。(「衆議院のことを説明しているんだ」と呼ぶ者あり)どうかその点、誤解のないようにしていただきたいと思います。
  43. 大橋武夫

    衆議院議員(大橋武夫君) これは答弁ではございませんので、弁明させていただきますが、私の申し上げましたのは、衆議院における審議の状態を御質問がございました。従いまして、私は本来ならば今国会の決議について説明するのでございまするから、本国会における審議を申し上げるべきでございましたが、しかし、不幸にして今国会においては、お答えにふさわしいような点について、特別な議論がなかったように記憶いたしております。しかし、衆議院社会労働委員会の構成員は、先ほど申し上げましたように、過去三回の、今度を入れまして三回の通常国会で同一の議案を続けてやっておりますので、関係者の気持の中には、今までの質疑等が皆記憶に残っておりますので、その結論として今回の決議ができた、こういうことを申し上げましたのでございまして、これで審議が十分とか不十分とか、参議院の御審議について申し上げたわけではございませんので、一つ御了承を願います。
  44. 千葉信

    委員長千葉信君) 本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時七分散会