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1957-10-11 第26回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十月十一日(金曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————   委員異動 九月二十一日委員坂本昭君及び森中守 義君辞任につき、その補欠として片岡 文重君及び藤原道子君を議長において 指名した。 十月九日委員藤原道子君及び片岡文重辞任につき、その補欠として松永忠 二君及び赤松常子君を議長において指 名した。 十月十日委員山下義信辞任につき、 その補欠として片岡文重君を議長にお いて指名した。 本日委員松永忠二辞任につき、その 補欠として大矢正君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            山本 經勝君    委員            紅露 みつ君            榊原  亨君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            西岡 ハル君            横山 フク君            大矢  正君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            松永 忠二君            田村 文吉君            中山 福藏君            竹中 恒夫君   説明員    総務総務副長    官       藤原 節夫君    調達庁長官   上村健太郎君    自治庁行政局公    務員課長    今枝 信雄君    労働政務次官  二階堂 進君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (静岡市における市当局市職員組  合との間の紛争問題に関する件)  (近江絹糸紡績株式会社紛争に関  する件)  (労働行政に関する件)  (駐留軍の撤退に伴う労務者の失業  対策に関する件)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまより社会労働委員会を開きます。  委員異動を報告いたします。  九月二十一日付をもって坂本昭君及び森中守義君が辞任され、その補欠として、片岡文重君及び藤原道子君が選任されました。  十月九日付をもって藤原道子君及び片岡文重君が辞任され、その補欠として、松永忠二君及び赤松常子君が選任されました。  十月十日付をもって山下義信君が辞仕され、その補欠として片岡文重君が選任されました。
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 労働情勢に関する調査の一環として、一般労働情勢に関する件を議題といたします。本件に関しましては、二階堂政務次官亀井労政局長辻法規課長今枝公務員課長がお見えになっております。御質疑を願います。
  4. 松永忠二

    松永忠二君 この前の委員会のときに、静岡市職の問題について調査をしていただきたいということをお願いしてあるのですが、この問題について自治庁の方から来ておりますか。
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 自治庁今枝公務員課長が向うを出発しておりますので、もうおっつけここにお見えになると思います。
  6. 松永忠二

    松永忠二君 来る前に一つ労働省の方にお聞きしたいことがあるのです。この前のときには、まあはっきりしておらなかったので、この点について見解を聞かなかったわけでありますが、静岡市職労連の中には、水道労組と、高等学校の教職員組合と、それから市の職員組合とがあるわけでありまして、水道労組については、御承知のように、地方公営企業労働関係法適用されておるわけであります。そこで、水道労組について八月の十六日に、課長の監視のもとに、市職労連を脱退するようにということで、水道労組の大会においてそういうことが行われた。それからまた、水道労組と市の間に労働協約ができていて、人事に関する協約については、配置転換等発令前の十日前に通知をするということが労働協約には出ておるわけです。そういう労働協約があるにかかわらず、水道労組の海野副委員長、それから矢辺執行委員酒井中央執行委員というのが役員の改選に立候補中であるにかかわらず、記置転換労働協約に基かずして、何らの通知もなしに配置転換が行われたわけであります。これは明らかに労組法にいう不当労働行為であるというふうに考えられるわけでありますが、その点について、こういうふうな事実からすれば、不当労働行為であるというふうに断定して差しつかえないと思うのですが、それについての見解一つお聞きしたい。
  7. 亀井光

    説明員亀井光君) ただいま御質問趣旨で、まあ労働協約の中で十日前に人事関係につきましては、本人に内報しまして発令をするという規定があるという御趣旨でございますが、私そういう内容協約があるのかどうか存じませんので、この問題だけにつきましてのお答えはできないのでございますが、今のお話の中で、もしかりにそういうことが事実であって、そうしてそういう行為が行われたならばどうかという御質問でございます。これも具体的には、地方労働委員会によりまして審問の過程において、事実認定を十分した上においてその決定がなされると思うのでありまして、私としては、今お話の事実だけで結論を申し上げるということには参らないかと思います。
  8. 松永忠二

    松永忠二君 それはそうだと思うわけでありますが、従って、まあ今後これが事実であるかどうか御調査もいただかなければできないわけでありますが、私の申し上げたことが事実であるとすれば、やはりこれは当然不当労働行為に該当するというふろに私は解釈するわけでありますが、その解釈は誤まりはないわけでありますか。
  9. 亀井光

    説明員亀井光君) 今申し上げましたように、その事実だけでは、たとえば役員立候補中であるといろ事実だけでは、どういうことがよってきたところのそういう動機になった、あるいはその時期がどういう時期であるか、いろいろ事実認定の問題がもう少しそこに明らかにされた後でなければ結論が出せないと思うのであります。従いまして、問題が地労委にかかりましたならば、おそらくそういうこまかい事実認定がなされました上で決定がなされるというふうに私は考えておりまして、私といたしましては、今お話の事実だけでは私としての結論は申し上げかねるわけであります。
  10. 松永忠二

    松永忠二君 もう少し……。それじゃ次のことですが、これは労組法に基て使用者が違反した旨を申し出るということになって初めてそういうことが行われると思うわけでありますが、使用者が当該の労働組合に申し出て、そうして労働組合不当労働行為であるということの申し立てをした場合には、労組法における第二十七条の適用が行われるというふうに考えて誤まりはないのでありますか。
  11. 亀井光

    説明員亀井光君) 使用者の申し出というのがどういう事実でございますか、私今のお話だけでは明確でございませんが、そういう明らかな使用者意思表示がなされ、あるいはその意思表示に基く行動がなされ、労組法第七条に違反するような行為がなされた場合には、本人地労委に対して申し出るという形であろうと思いますが、今のお話のことだけでは、ちょっと私判断しかねるわけであります。
  12. 松永忠二

    松永忠二君 私の申していることは、使用者はそういうふうなことを不当労働行為であるという判断のもとに、その所属する水道労組の方に申し立てをして、そうして水道労組の方からその異議申し立てをするということは、そういうことによってこれが発動できるものであるかどうかということです。
  13. 亀井光

    説明員亀井光君) もちろんこの静岡の市の水道労働組合は、地方公営企業労働関係法適用を受けましてその中では不当労働行為その他につきましては、労組法の準用でそのまま不当労働行為制度というものの保護が受けられる立場であります。従いまして、この労働組合組合員が、かりに労組法第七条の規定に掲げておりまするような不当な差別待遇を受けました際におきましては、組合の名において不当労働行為申し立てができることは当然でございます。
  14. 松永忠二

    松永忠二君 そこで、なお、不当労働行為が行われるというようなときには、当然不当労働行為を受けたものは、相当精神的にも打撃を受けているし、事実そういうところへ配置転換等させられているというところから、そうされたもの自身申し立てをするというようなことは非常に困難な状態になるという判断がされるわけであります。そういう場合に、今の労働法法律によると、とにかくその該当したものが申し立てをしない限り、かりに水道労組がこれを取り上げようとしてもこれはできないということになっているわけなんです。そういうふうなことを考えてみましたときに、やはりその点私の申し上げたところは違っているかどうか、その辺をちょっと先にお聞きしたいわけです。
  15. 亀井光

    説明員亀井光君) その点につきましては、学説もいろいろあるようでございますが、不利益を受けました本人が、何ら保護救済の手続をとる必要がないという意思が明確にある場合に、第三者が果して不当労働行為申し立てができるかどうかということにつきましては、いろいろ議論の分れているところでございまして、私らとしましては、やはり労組法建前があくまで個人権利保護という建前をとっておりますので、本人のそういう意思が、保護を受けないという意思が明確な場合におきましては、これを救済する何らの利益がないというふうに理解をいたしているわけであります。
  16. 松永忠二

    松永忠二君 その点が特にお聞きをしたいところなんですが、本人申し立てをしないという場合においては、この労組法の発効が行われないということについて、実際のところ、たとえば相当圧力を受けて配置転換したもの、不当労働行為をしたものが、かりにそういうことを申し立てればなお一そうその圧力を受けてくるということは、これは考えられることだと思うわけです。そういう場合に、明らかに不当労働行為が行われたということになれば、第三者であろうが、あるいは他の機関が積極的にこの問題について関与をして、そうして不当労働行為の行われたものに対する保護を加えていくというのが、実は対等の立場に立つ立場であろうと思うわけですが、私たちはそういう面からいうと、やはり本人申し立てが条件になっているというところに問題がありはしないか、こういう点についてこのやり方が正しいというふうに考えるのか、あるいはこういう点についてやはり問題があるというふうに考えられておられるのか、その点をお聞きしたいわけでございます。
  17. 亀井光

    説明員亀井光君) 不当労働行為申し立てはその保護救済を受けるべき本人ももちろん申し立てられることは申すまでもありませんが、一般的にその所属する組合本人意思を代理しまして申し立てすることもできる。ただ組合並びに利害関係のある第三者申し立てにつきましては、先ほども申し上げましたように、あくまでも本人保護を受けたいという意思が明確である、本人が何らか保護を受けることについて強い意思のない場合に果してできるかどうかというところに今のお話問題点があろうかと思います。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろの学説もございます。見解もございます。すなわち、不当労働行為制度個人救済であるか、あるいは団体救済であるかという問題になるわけでございます。かりに団体救済が認められるとなれば、本人意思にかかわらず、組合みずからが不当労働行為申し立てができるという見解結論がなってくると思いますが、われわれとしましては、団体救済というものはやはり本人保護救済前提でありますので、労組法労調法建前から申しまして、そこにはなお若干の問題があるのじゃなかろうかということを申し上げたのです。
  18. 松永忠二

    松永忠二君 たとえば静岡市職の場合について、市の水道労組について考えてみると、実は不当労働行為を受けた本人申し立てるということは、申し立てればなお一そう不利になるという状態の中から申し立て意思が十分出てこない。そこでまた、それじゃ水道労組自身がその意を受けてやっていくということについて可能かどうかというと、そういう点についても実は理事者の方から相当圧力があって、労組自身がこれを取り上げかねるという状態が起っている。こういうようなこと自体を考えてみたときに、本人が取り上げられないから、あるいはその所属する労組がそれを取り上げられないから不当労働行為が公然と行われていても何らこれに関与もできなければ、あるいはそれを他の刑法のように警察権がこれに介入してどんどん取り調べるという状態におかれていないという、こういう現在の法律下においては明らかに不当労働行為が行われている事実があるとしても、これを所属する労組が取り上げ、本人が取り上げない限り、そのまま放置されるという状態にあるのが現実であろうと思うわけなんです。私たちは明らかにこういう場合には、第三者なり、あるいはその他の地労委というものが積極的にこの不当労働行為調査し、審査し、そうしてその労働者を守るという方向にいってこそ、初めて公平な保護が行われると考えるわけなんです。こういう点についてどういうお考えを持っておられるのか、今後そういう点についてやはり検討するという必要があるというふうにお考えなのかどうか、その点をお伺いしたいわけです。
  19. 亀井光

    説明員亀井光君) 労組法の二十七条にこの不当労働行為申し立てのことが書いてございますが、その中にはだれが申し立てるのか、権限を持っておるのかということが法律的に実は明確にされないのでございます。従いまして、先ほど申し上げましたように、個人救済であるか、団体救済であるかということで議論が分れてきておると思います。お話の、御意見趣旨はわれわれも同感を感ずるところもございます。ただ第三者ということになりますると、全然関係のない第三者が果してそういう申し立てができるかということは別にいたしまして、少くともその所属する労働組合申し立て得るかどうかということにつきましては、われわれとしても立法上の問題もございまするが、さらに検討いたしてみたいと考えております。
  20. 松永忠二

    松永忠二君 もう少しはっきりその辺をお聞かせをいただきたいのですが、第三者申し立てができるというようにしていくことによって、あるいはこれが救われるという場合もある。あるいはまた、地労委というものが積極的に不当労働行為が行われているという事実を認定した場合には、積極的に申し立てがなくても不当労働行為についての調査をすることができるという方向にいって初めて公平の保護が行われる。私は今法の解釈を、第二十七条が申し立て第三者にできるかどうかということを聞いているわけじゃありません。要するに、第三者申し立てをするという方向にいくというような考え方、そしてまた、地労委というようなものが、現実不当労働行為を積極的に調査して、そしてその不当労働行為の行われることを防いでいくというような方向考えていってこそ、初めてやはり労働者保護の面からいって正しい考え方ではなかろうか。こういう点についての見解を聞いているのです。
  21. 亀井光

    説明員亀井光君) 私は先ほど現行法解釈上の問題を主として御説明し、それに関する意見を申し述べたのでありますが、立法上の問題、あるいは行政措置の問題、今後の問題につきましては、いろいろ御意見のあるところも私どもとして非常に了解できるわけでございます。従いまして、そういう点につきましては、さらに今後検討をいたしたいというふうに考えております。
  22. 松永忠二

    松永忠二君 なお一点、労働省の方に見解をお聞きしたいのでありますが、これはこの前のときにも少し申し上げたのでありますが、地方公務員法に基く使用者の方、つまり理事者の方が、労働組合結成というような問題について介入をする。そしてまた、組合の運営について介入してくる。そしてまた、組合の新しい結成についても干渉してくる。そして新しい組合が登録したか、とないか別として、その第二組合とも考えられる新しい自分たちの作った組合と交渉して、賃金体系なども実施するというようなことが、事実行われている。そういう場合でも、現実にはどういうことが行われるかというと、そういうことをやった使用者理事者の方には何らの制裁規定もない。ところが片方、公務員の方はどうであるかというと、争議権やその他、非常に制限を受けている。しかも地公法の第三十七条に抵触すれば個人は解雇される。これをそそのかしたとか、あるいは企てたとかという名前のもとに、その職員団体幹部処罰され、しかもこれには刑法上の処罰もくっついているという状態です。そういうふうに、それに関係している職員団体個人にも、また、その幹部に対しても処罰規定がきちんとしている。しかも不当労働行為と類似する行為現実地方公務員法の中で理事者の手によって行われている事実がはっきりしていたとしても、これの異議申し立てしたところが、ただその不利益処分が撤回されるだけであって、事実上何らそれを行なったものは処罰を受けない、拘束を受けないというような状態にあるわけです。これについてはどういうふうにお考えになるのでございますか。
  23. 亀井光

    説明員亀井光君) 地方公務員法もしかり、また、国家公務員法も同様でございますが、この法で認めております団結権の問題は、労組法上の団結権建前が違っているわけであります。従いまして、国家公務員法におきましても、地方公務員法におきましても、それを労働組合として認めるという立場法律はとっていない。あくまでも職員団体という形をとっているわけであります。もっと端的にいえば、あるいは親睦団体的なものというふうなものを、法の制定当時は期待したのかもしれません。そういう法の制定趣旨から申しまして、不当労働行為制度というものが認められていないというのが、国家公務員法並びに地方公務員法に通じまする制度上の本質だと私は思います。従いまして、今のお話のようなことは、国家公務員なり地方公務員労組法一般民間労働組合と同じようなそういう団結権まで法が今後期待するかどうかという問題にかかってくるのではないかと思います。
  24. 松永忠二

    松永忠二君 その点は職員団体だからその労組法に基く不当労働行為のような状態にまで保護が及ぶかどうかという点について少し問題があるということでございますが、憲法の上において団体交渉権であるとか、あるいは団結権とか罷業権というものが憲法によって認められているわけであります。これは別に何も労働組合であるから、職員団体であるから認められないという制限は何らないわけであります。そういう前提に立って考えてみたならば、やはりその団体交渉権罷業権あるいは団結権というような意味からそれを完全に守るという立場からいうならば非常に不均衡があると考えなければいけないわけであります。
  25. 亀井光

    説明員亀井光君) 国家公務員にいたしましても、地方公務員にいたしましても、憲法の二十八条そのまま団結権にかかってくるかどうか若干問題がある。われわれはまあ一応そういう解釈をとるのでありますが、若干問題があるようでございます。かりにそれはそれといたしまして、国家公務員にいたしましても、地方公務員にいたしましても、全体の奉仕者としてそこに勤むべき特殊の勤務の状態、あるいは特殊の身分関係というものを持っておりまして、民間労働者と違う特殊な地位を持っているわけであります。従いまして、憲法二十八条が憲法十二条なり十三条なりの公共の福祉によってある程度の制約を受けるという考え方からいたしますると、そういう面における国家公務員なり地方公務員というものの制約がおのずから出てくるのではないかというふうにわれわれは考えておるわけであります。
  26. 松永忠二

    松永忠二君 その点はもう少し、もう一ぺんお尋ねをしたいわけなんですが、私たちは今お話のような労組法自身がどの程度地方公務員適用できるかという問題については、おっしゃる通り程度の差があるというふうに考えるわけです。ただしかし、たとえばその職員団体個人あるいは職員団体自身制裁を受けるというような状態と同じような状態のもとに、やはり法にきめられたところの団結権とか、あるいは職員団体加入結成するということについての自由を侵害する理事者があれば、当然その法の制裁とか処罰規定も行われていなければ、自由にそれでは職員団体加入結成行動が、加入結成の自由というものが侵害されてもなおかつ法的には何らそれに関与することができない状態に置かれているということは正しいかどうかという点をお聞きしたいわけであります。
  27. 亀井光

    説明員亀井光君) 私としましては、現行法上の建前から申しまして、先ほど申し上げましたように、国家公務員なり地方公務員民間労働者と違う特殊な地位を持っておる、特殊な義務を持っておるということからいたしまして、その団結権に対しましてある程度の制約と申しますか、労組法第七条のような保護がそこまで徹底して行われていないという現行法建前でありますが、これは根本的に国家公務員法なり地方公務員法の立て方を変えなければ、現在では無理であるというふうに考えております。
  28. 松永忠二

    松永忠二君 立て方を変えなければできないということについては、立て方を変えるということが妥当であると考えるのか、今の立て方が正しいとお考えになるのかということになると思うわけなんです。
  29. 亀井光

    説明員亀井光君) その判断は私一人だけではなかなか御答弁ができかねる大きな政府全体の問題でございまして、われわれとしては事務的にまあいろいろ検討はいたしておりますが、まだ結論は得ていないというところでございます。
  30. 松永忠二

    松永忠二君 まあ個人的には申し上げられないし、検討はしているけれども、全体の問題であるというような御答弁になりましたので、ややまあ少しはわかるわけでございますが、この点についてやはりはっきりわれわれは検討し、具体的に今後改めてゆく方向にいかなければいけないのじゃないか、現実理事者が自由に、先ほど話した不当労働行為としてのそれに対する利益を得ているかどうかということよりも、不利益処分とか何とかそういう問題についても、法的にはこれは公平委員会なり何なりに訴えてゆくだけの道が開かれていると、そういう保護規定保護されている規定地方公務員法の中にもある、その保護されている権利を侵害してもなおかつ侵害したものが処罰を受けないということになれば、明らかに不公平であるということが言えるわけですが、自後少し自治庁の方からお話を聞いた上で、こういう状態の中でなおかつどういうふうにお考えになるかということを後ほどお聞きしたいわけであります。  自治庁公務員課長が来ておるそうでございますので、この前、調査をいただいた事項について簡単に、つ結果を御報告いただきたいと思うわけでございます。
  31. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 静岡市の紛争事件につきまして調査をいたしました内容のうち、先般の委員会で御指摘のございました脱退届用紙を配付した点、並びに前の職員組合の副執行委員長等消防職員への配置がえの問題、それから消防団員の動員の問題、この三点につきまして調査の結果を御報告を申し上げたいと思います。  まず第一点の組合脱退届用紙を配付した点でございますが、この点につきましては、組合脱退届用紙を配付いたしましたのは職員組合中央委員の方が各課を回って職場代表に渡しておるようでございます。結局職員組合中央委員各課課長ないしは係長にその課の分を一括して用紙を配っておるという事実でございます。その点につきましては、市の理事者側はその事実については何ら関知していない、こういう申し立てでございます。組合側と申しますか、前の組合側の意向では、中央委員用紙を配付したことについては理事者側の方の指導によるものだとこういうふうに見解が分れておるのでございまして、組合中央委員が配付した事実については、両者の確認は一致いたしておりますが、その前提と申しますか、その動機は、一方は理事者側がやらせたと言い、理事者側では全然関知をしていない、そういうふうに見解が分れておりますので、私どもといたしましては、それ以上立ち入ってその事実を突きとめるということは事実上困難でございますので、結局配ったという事実のみを確認をして参ったようなわけでございます。  それから第二点の消防職員配置がえをいたした事実でございますが、この点につきましては、消防職員のうち従来当時五名の欠員が生じておったわけでございまして若干日付の違いがございますが、結局五名の配置がえをいたしました中で、前の職員組合の副執行委員長それから書記長、執行委員この三名の関係者がそれぞれ消防職員配置がえになっておるのでございます。この点につきましては、市の方の申し立てによりますと、消防職員側に五名の欠員があり、その五名を埋めた中に三名が入っておったわけですが、それぞれ配置転換をする際には、給与等の点についても若干の考慮を加えて配置をしており、一般の市の人事行政のワク内の問題であって、決して特別の不利益な処分をするような考えではない、こういうことでございますが、しかし、この点につきましては、配置転換になりましたうち、ただいま申し上げた三名から公平委員会に対しまして、不利益処分の審査請求の手続きをする考えである、こういうふうにそれぞれ本人から事情を聴取いたしたのでございます。近くその不利益処分の審査請求の手続がなされるものだと考えております。そうなりますと、この点につきまして、今直ちにこれが不利益処分であるかどうかという点につきましては、実は独立機関でございます公平委員会の審査が始まる段階でもございますので、私どもといたしましては、この点について不利益であるかどうかという見解を申し上げる点は差し控えさしていただきたい、かように考えるわけでございます。  第三点の消防団員が動員されたという点でございますが、この点につきましては、去る七月の五日に、実は職員団体、並びに職員団体の応援の外部の労働組合員等と、それから市長並びに副議長が外出をする際に、庁舎の付近でいざこざがございましてその点が新聞紙上に写真入り等で報道された関係で、心配をした市民が相当数市庁に、市役所にやって参った、その中に約二十名程度の消防団の団服を着用をした者が入っておったということでありまして、その点につきましては、市としてはもちろん消防団を動員をした事実もないようでございます。ただ私どもの受けた感じといたしましては、そういう際に、市民が心配をして市役所に集まったということでございますが、消防団員がそういう際に団服を着用してそういう場所に出かけることについては、非常に誤解を招くものでありまして、何ら他意はなかったにしましても、そういうふうな誤解を招くような行動については、将来十分に慎しんでもらわなければならないというふうな感じを持っておるのでございます。先般御指摘の点につきまして、ごくかいつまんで調査の結果を御報告申し上げました。
  32. 松永忠二

    松永忠二君 今のお話の点で二、三お聞きをしたいわけですが、脱退届の問題でありますが、脱退届中央委員の手によって各課長を通じて分けられた。そのことについては理事者の方は関知しないという、また、組合の方では、これは理事者がそういうふうにやったのだということで、実際のところ、印刷した脱退届が配られた事実は認めるけれども、だれがやったかわからぬという今の御説明であったわけです。しかし、これは市が関知をしていないということを言っておるけれども、現実脱退届が印刷物で作られて、課長を通じて分けられて、しかもそれが古い組合脱退届を印刷して分けるわけもないし、新しい組合はまだできないで、準備委員会の段階にあってその会計簿等にも何らその印刷した事実もないということがはっきりしている以上、だれが一体刷って、そうしてこれを与えたのかということを調査しなければ、実際問題として調査にはならないと思うわけです。ここが一番大切なところであり、それを明確にしていかなければできないと思うわけですが、その点はどうなのか。  それからもう一つは、不利益な取扱いを受けたということで、消防本部に五名の欠員があったので、そこへやったということでありますが、こういうことは御承知なのかどうか、消防本部が要求したのは火消しを要求したのだ、ところが実際は海野、成島、清水という、この話の出ている役員は、いずれも何ら専門的なこれらの技術を持っていない人であるのに、現場の仕事をやらなければいけない消防士長というところに実際にやられておる、消防にも消防事務吏員というものがあるわけです。消防事務吏員にはさせないで、現実に現場の出張所の責任者として、専門的技術を必要とするところへ渡しておるということなんです。昇給はしたというけれども、これは初任級が市役所より高いのでありますから、この昇給させるというのは、改訂するのは当然な措置なんです。別に優遇措置では何らないわけです。それからその中には、新しい組合について、選挙管理委員が水増しをしたということを言った山崎という女の人が、消防士長に任命されておる、そうして、あともう一名の消防士というのは配置転換で来ているので、五名の欠員は実は火消しの欠員であるのにもかかわらず、火消しは一名もなしに、事務をやる者が、現場の特殊な専門的な技術を必要とする消防士長として全部やられておるし、しかもこれは非組合員であるという場所であるということなんであります。こういう事実は御承知なのかどうかという事柄でありまして、この点については、今お話通り公平委員会へ提訴されていることであるので、この点については、いずれ審査が出てくるので、特に見解をどうこうということはお聞きしないわけでありますが、そういう事実が明確であるということ、もう一点、消防団員の動員について、あなたは、心配したので二十名という者が団服を着て来たというお話であるけれども、明らかに組合の報告をお読みになったときに、成島という人はそういう証言をしていないと思う。事実そうでないことについては、出て来た消防団というのは、東豊田地区の消防団である。その団長が市会議員の杉山という人に、前日市役所前に動員してほしいという話があったけれども、まことに因ったことだ、こういうおもしろくないという事実をはっきり言っているという事実も証言されているのじゃないか、そういう中で、心配したから二十名が団服を着て出て来たのだということについては、あなたはそのまま聞いておいでになったのか、この点を明白に、反対側の方にこういう証言もあるが、それとはどういう関係があるのかということを、お尋ねになったのかどうか、その点をお答えをいただきたいと思うわけであります。
  33. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 第一点の組合脱退届用紙の配付でございますが、これはただいま申し上げたように、中央委員の方が用紙を、各課課長なり係長なりに配付をしたという事実は、理事者側組合側も、その事実は認めているのでございます。現実にその用紙もあるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、その用紙がどういう経路で印刷され、どこがその費用を負担し、どういう経路ででき上ったものかということについては、現在としてはどうしてもそれ以上立ち入って、実は調査をする手掛りと申しますか、そういうものがございませんので、その事実のみは両者も確認し、私どもも確認いたしたのでございます。それ以上の点につきましては、ちょつと私どもの調査では、そこまで立ち入って調査ができなかったわけでございます。  それから第二点の、消防団職員配置がえの点につきましては、ただいまお話のあった通りでございます。そういう事実でございます。その点につきましては、私どももさように承知いたしておるのでございます。ただこれ自体の問題についての判断は、ただいま申し上げますように、公平委員会の審査、不利益処分の審査請求の手続が取り行われますので、その結果を待ちたいと、こういうふうに考えております。  それから消防団員の動員の点でございますが、この当時、実はただいま申し上げた以外に、いろいろと自治協力委員が、たえず市庁舎に出入りをしておったようでございまして、御案内の通り、自治協力委員は、それぞれのいわば町内会長に当るような人を、市の非常勤嘱託といったような格好でいろいろの市の広報連絡事務の手伝いを願っておるような人でございますが、そういう人たち消防団員とともども何度も出入りをいたしておるのであります。ただ私どもが確認をいたしました点では、市の方から特に消防団の動員というふうなことをいたしてはいないようでございました。この点につきましては、若干両者において争いはあるかと思いますが、ただ結果的には制服を着用した者が市庁舎に入って来て、しかも相当時間市庁舎の一部で待機をしておったというふうな事実はあるわけでございます。そういう点につきましては、説明者の別に他意はなかったのだという説明ではございますが、消防団の性格からいたしましてきわめて誤解を招くような措置であるので、今後そういうことは絶対にないようにしてもらいたいというふうな感じを持っておるわけでございます。
  34. 松永忠二

    松永忠二君 最後の、その消防団の動員については、さっき話しましたように具体的に杉山という市会議員の人の名前も出て、そうして団長が要請をされたということを言われている、証言をしているというふうに私ども聞いておる、成島という人が……。また、事実そういうこともはっきり私たちも聞いているわけです。今の御説明では待機をしていたというお話が出てきているわけですから、ただ先ほど御説明のように、心配になったから団服を着て出てきたということではないと思う。これについてはやはり具体的に本人の名前が上っている以上、特にこの問題については将来いろいろ問題も起ることであるので明確にしなければいけない点だと私は思うわけです。これを明確になお一そうどういうわけでなさらなかったのか。あるいは知る方法がないのか。具体的に明確になると思うわけでありますが、この点いかがですか。
  35. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 市会議員の方からいろいろお話のあったようなことは、先般の地方行政委員会でも話が出ておったことは私も実は承知をいたしておるのであります。ただ消防団の動員というようなものは成規の手続によるものでございます。そういうふうに事実上市会議員の方からお話があったからどうだというふうな性格のものではないのじゃないかというふうに考えます、実はその市会議員なりその相手方の団長であったと思います。団長の方には、特別にその人については調査をいたしておりません。市側からこれを動員したかどうか、あるいは動員の要請をしたかどうかという点について調査をいたしたのでございます。
  36. 松永忠二

    松永忠二君 その点は特に私は遺憾でありますが、先ほどお話のように、動員は正式に要請しなかったならば出てこないはずなんだが、現実にそういうふうな書類等がないにもかかわらず、多数の者が待機して出ていたというところが私は問題になるところだと思うわけなんです。そういう点を明確にしなければ、結局動員をしていないと言い、また、動員をした事実が証拠的に文書に残っていないにかかわらず、二十名というお話であるけれども、これは人の数についてはいろいろ疑義があるでしょうが、もう少し多数の方が、しかもたまたま消防団服を着たのではなくて、それだけのそろった人が消防団の服を着て待機していたということであれば、やはりこの点について、これは要請されたという証言もあるのだから、事実その辺御調査をなさるとするならば、はっきり両者と話し合いをして調べられるということが必要じゃなかろうか。ただしかし、そういうことが御専門でもないわけでありますので、その点について不十分な調査であったという点についてはやむを得ないと思う点もあるわけですが、そこで第二の脱退届の最初の問題については調査困難である。その次の消防団員の問題についても実は十分な調査もできない。不利益処分についてはその通りだけれども、これは審査をしているというようなお話であった。そこでなお新しい組合結成について水増し投票ということが行われたことについては何か御見解によると、これは組合のことだというお話のようであったようでありますから、選挙管理委員会が白紙投票を有効投票と認めてこれを組合員の投票として決定をし、選管の委員長も明確にそういう方法で白紙のものを賛成投票として、有効投票にしたという事実も証言しておるわけであります。こういうことについては御調査をなさったのかどうか、お聞きをしたいわけなんです。
  37. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 新しい組合の規約承認の投票が行われたのは八月の三十日でございますが、その際に投票の結果、発表されました内容は有権者数が千二百十二名、投票数八百三十六、有効投票八百二十四、賛成六百五十二、反対百七十二、無効十二ということで実は発表になったわけでございます。この限りにおいては当然問題はなかったのでございますが、その後この投票の内容についていろいろと疑義があるということが実は新聞紙上に載ったわけでございます。その新聞紙上に載ったことがきっかけになりまして、いろいろと内部で問題が起りましてその結果いろいろと再調査をした結果、実際の投票は、投票になったものとは若干違っておりまして、有権者数の千二百十二は同様でございますが、投票の結果は八百三十六人、そのうち承認が五百七十三、白票が七十九、反対が百七十二、無効十二ということが実際の投票であったわけでございます。結局白票の七十九票を賛成投票として実は発表になったわけでございます。その発表になった経過をいろいろと調査をいたしましたところ、投票管理委員会におきましてこの白票の取扱いをどうするかということで二時間程度にわたっていろいろと議論が行われました結果、従来もそういうふうに取り扱った前例があるから、これを賛成投票とみなして差しつかえがないであろうという結論が出たわけでございます。その結果、白票投票を賛成投票に入れまして、一番初めに申し上げましたような結果が公表をされたのでございます。その後、そういう事実がわかりましたので、いろいろと組合員の間で問題になった結果、各職場ごとに、そういう決定をいたしました投票管理委員会の取扱いを承認するかどうかということで、いろいろと各職場ごとの集会を開きました結果、投票管理委員会の取扱いを承認するという結論を出しておるのでございます。このことにつきましては、私どもといたしまして白票投票を賛成投票に入れたという事実については若干問題があろうかと、実はかように考えておるわけでございます。
  38. 松永忠二

    松永忠二君 その点については、この前、その事実が事実であれば藤井行政局長の話では、これは登録の資格なし、その後の職場会議で直接秘密投票をしない限り、これは正式なものとして見ることはできないという話があったので、その点は明確になっているわけです。ただ、今白票を有効投票としたという事実は、前の労組役員はそういうことはないと言っているし、新しいのはあると言っているわけです。事実また選挙管理委員会がそういうことをしたということを言った山崎という人が実は消防士長に配置転換をさせられているわけなんです。そうしてその後、選管の委員長が明らかにそういうことを明言している、そういうような事実もあるわけです。そこで一体こういうふうに組合結成についても相当手が加わり、実はこの新組合結成を有効とするか、有効としないかというときには、その場に現実に市役所の公室長が出てきてその選挙管理委員と打ち合せをしているという事実等も聞いているわけです。また、脱退届のときにはその票数を公室長の方へ逐次報告をしているという事実もあるわけです。こういうことを考えてみたときに、こういうことが行われていても何らそれに対して先ほどの話ではないが、申し立てがない。申し立てがなければ人事委員会公平委員会も積極的にこれを取り上げないという状態が出てきているわけなのです。そこで、私がお聞きしたいことは、人事委員会公平委員会の条文の中には、御承知のように第八条のところに「人事行政に関する事項について調査し、」という言葉が出ておる、八条の第一項に。そうしてまた、この第四項には「人事行政の運営に関し、任命権者に勧告すること。」ということも出ておる。公平委員会の方には「職員に対する不利益な処分を審査し、及び必要な措置を執ること」というようなことが出ておるので、私はこういうことは、こういう条文から考えるならば、広い意味の人事行政という意味から積極的に人事委員会調査をし、あるいは公平委員会がこれについて調査をし、また審査をするということは、許されていることであるというふうに解釈をするわけでありますが、その点は、どうなのでありますか。
  39. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 実は静岡市には人事委員会が設置されておりません。公平委員会でございます。公平委員会の事柄の権限の性質から申しまして、実はみずから公平委員会が積極的に問題を取り上げて審査するということはございませんので、審査請求があって初めてそれの内容調査をやり、審査の結果を出す、こういうふうな建前になっておるわけでございます。
  40. 松永忠二

    松永忠二君 そういうふうな状態にあるということは望ましいとお考えになるのかどうか、その点を一つお聞きしたいわけであります。
  41. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 公平委員会の性格から一般的に申し上げますと、そういうふうに救済機関でございますので、救済の申請があって、それから動くということで、何ら差しつかえはなかろうかと、かように思うわけでございます。今回の場合につきましては、若干事案が違っておりますので、ただいまのような投票の結果云々ということになりますと、これはむしろ人事委員会なりあるいは公平委員会とか、そういう機関において審査する性質のものとは若干性質が違うのじゃないか、かように思うわけでございます。
  42. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、人事委員会が置かれている場合にはこういうことを積極的に人事委員会調査をし、また、広い意味のあの人事行政という立場からこれをまあ勧告をし、措置をするということはこれはでき得るというように解釈をしておるのか、できないと思うのですか、その点はいかがですか。
  43. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 人事委員会人事行政に関して調査をし、それに必要な勧告をなすということは、具体的な事件についていろいろございますが、一般的には人事行政の基本的な方針でございますとか、基本的な運営等について調査をし、勧告をするということを考えておるわけでございまして個々の事案、たとえばここに転勤をされたとかあるいは昇級されたとかあるいは降格されたとか、降任されたとかいうようなことについて、特に個々の問題を調査するということを使命にいたしておるものではないように考えておるわけでございます。
  44. 松永忠二

    松永忠二君 で、そうすると、結局公平委員会についてもこれは提訴しなければこれを審査するということはないし、人事委員会が置かれていてもこういう問題については特殊なものであって、人事委員会は基本的な人事行政に対する問題についてやるということになると、一体そういうふうな地方公務員法というのは果して一体妥当なものかどうかということになると思うのです。で、私なんかこれが作られた当時いろいろの話を聞くと、理事者側というものはこういう不当行為というものは全然しないものだという前提のもとに作られたのだというようなことを聞いているわけでありますが、まさかまあそうでもなかろうと思うのでありますが、こういうことを考えてみた場合に、やはりこの地公法の例の第五十六条であるとか、あるいはこの五十二条であるとかというものについては、その条文の書き方等も非常に明確でない。加入や運営というものについて、加入をしては悪いということもはっきりは出さないし、また、それが守られているという分も、非常にばくとしておる状態である。先ほどから話が出てきた通り、こういう状態がかりに今お話のように事実であるとし、事実であり、なおこれに疑問があるとしても、調査をしようとしてもわれわれでは調査はできないし、そこまでは入り込めないというし、それではだれが一体調査をし、だれが一体この事実をはっきりしていくことができるかということになってくると、こういうことについて明確でない。しかも職員団体結成、加入、運営の自由というものを侵害した理事者に対しては、積極的に何らの処置をするという条項も出されていないという事実については、やはり不備がある、不十分であるとお考えになっておるのか。やはりこの法律で十分だとお考えになりておるのか。その辺はどういうふうな御見解を持っておられるのでありますか。
  45. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 職員団体に関連いたしまして、理事者職員団体との関係等について、現在の地方公務員法労働組合法とはかなり法規の立て方が違っておるのでございます。その点につきまして、現在の法律上不備があるかどうかという点につきましては、これは考え方の問題かと思うわけでございます。その点いずれがよいか悪いかについては、相当大きな問題でございます。その点は別といたしましても、私どもの考えを率直に申し上げますと、現在の地方公務員法のもとで地方団体人事行政なりあるいは職員団体の運用というものが十分やれないというふうな規定にはなっておらないと実は考えておるのでございます。ただ法律そのものが地方公務員法全体について言えることでございますが、基本的な法律であると同時に、原則をうたうのみ、あるいはワクを作るのみであって、その具体的な運営は個々の団体の条例とかあるいは人事委員会規則等にゆだねておる面が多分にございます。そういう点ではかなりあいまいと言われればあいまいな点もあるわけでございますが、私どもといたしましては、現行の地方公務員法を正しく運営をしていただけるならば、御指摘のような点は御心配なく運営できるものではないか。かように考えておるわけでございます。
  46. 松永忠二

    松永忠二君 あなたは今最後でおっしゃった現行の法律を正しく実施をしてもらえば、こういうことはないというお話でありますけれども、現行の法律が行われて、正しくても正しくなくても、実施されても、それを法的に何らその処置できないということになれば、これを正しく行えばこういうことはあり得ないということがあるわけなんです。あってもなおかつ法的には何らの措置ができないということになれば、これを正しく行えばこういうことはないといっても、この通り行なっていても、しかもなおかつ何ら現在市職でこういう問題が行われても、それを阻止する方法がないとすれば、この法では正しく行えない場合もあるということは言えると思うわけです。正しく行えない場合がこういうふうにあっても、なおかつ何らそれを措置できないというようなことになるわけでありますから、今のおしまいに言ったことは違うんじゃありませんか。これがあればこういう事実はあり得ない。正しく行えばあり得ないと言うけれども。
  47. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 御指摘の点は、地方公務員法では、理事者側不当労働行為というものがないではないか。こういうふうに先ほど伺ったわけであります。その点につきましては、私どもの気持を率直に申し上げますと、地方公務員法における職員団体労働組合法における労働組合の性格というものは違うものだということを建前にして作られた法律でございますので、そういう点につきましては、理事者側不当労働行為と、労組法にいう不当労働行為に該当するものはないわけでございますが、特にそういうふうなものを作らなくても市職員団体の運用なり、あるいはそういう職員団体の活動等については、現行の法規のワク内でも十分な成果があげられるのではないかと、こういうことを期待をいたしておるのでございます。そういう意味で地方公務員法に定められた趣旨に沿って人事行政をやっていただければ、職員団体等においても十分な成果があけられるのではないか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  48. 松永忠二

    松永忠二君 もう一、二点で終りたいと思うのですが、先ほど私不当労働行為というようなことを非常に強く言ったので、それにこだわって、私の話がこだわっておるのか、受け取る方がこだわっておられるのか、不当労働行為とは別に職員団体の組織という、地公法の五十二条の職員団体加入結成ということについては、職員団体加入結成するということの自由という、つまり地方公務員として認められた権利を完全に実施をしていこうとしたときに、それを阻害するということが行われても、阻害した者に対する処罰規定がないということについてはどうかということを聞いておるわけなんです。そういうことを聞いておるのです。不当労働行為で、労組法では労働者処罰されるけれども、不当労働行為労働者のことであって、職員団体のことには直ちに適用はできないというのはおっしゃる通りです。しかし、私たちは精神は憲法にきめられたもので、それは職員団体でも労働者としてのそういう権利も持ち得ると思うわけですが、その点はおくとして、まず職員団体の一員として認められておる法的な五十二条であるとか、不利益処分の問題等についての権利、守られておる権利、そういう権利を侵すことができるという場合でも、なおかつそれを侵した者に対する処罰規定、処分、それを制約するということもはっきりしていないということについて、それでいいかということなんです。
  49. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 職員団体結成、あるいは加入脱退等の自由、これを保障することについて、かりに理事者側がこれをこの職員権利を侵害した場合にそれを保障する規定がないではないか、こういう点でございます。その点は違法であれば不当労働行為という問題があるわけですが、地方公務員法の場合にはその考えを採用しないで、五十六条でもって不利益取扱いの禁止ということでやっております。不利益取扱いの禁止という五十六条で保障いたしまして、なおかつそれでもって不利益取扱いの禁止をした場合には、不利益処分の審査請求という問題が起ってこようかと思うのであります。そういう意味では、職員団結権の保障は、労働組合法とは違って、若干間接的ではございます。しかしながら、そういう間接的ではございますが、やはり一応の保障ということがあるわけでございます。その点が若干違うわけでございましていずれの方法をとるかということについては、いろいろ問題があろうかと思いますが、私どもの考えでは、現在の間接的な保障でも十分やれるのではないか、こういう考えを持っておるわけであります。
  50. 松永忠二

    松永忠二君 私の申し上げておるのは、個人権利を保障されているということを言っているのじゃなくて、そういうことをやったその当事者、理事者の方をどうするのだということを言っているのですよ。そういうことをさせられた者については確かに不利益の、第五十六条のとれはできる。しかし、それも申し立てなければだめだということについては問題があると私たちは思っているわけです。これは本人が保障されているのだが、そういうことを保障されるようなことをあえてやる理事者の方はどうするのかということを聞いておる。理事者の方はそういうことをやってそれが本人に害が及んだときに、本人がただ保障が取り消されたという、保障されて不利益が取り除かれたという事実だけは本人に残ってくる。それをやった者は、加害者については、何らそれをやってはいけないとか、どうこうしてはいけないということがないのじゃないか。そういうことについてやはり法的に十分しておく必要がありゃせぬかということを申し上げておる。
  51. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) その点は先ほど私が申し上げましたのは、法の精神として法の規定としてはそういうふうなことをさせないというための罰則規定なり何なりがあることが一番確実だということになろうかと思うのでございますが、私どもの考えからいたしますと、公務員法の規定からいたしまして、当然やるべきでないというふうに定められておる事柄を、人事機関である理事者側がそういうことをやるというのは、法の精神を十分に御理解のない結果起ってくることでございます。それで、この地方公務員法趣旨を十分にくんで、運用していただければ、そういうものはなくて運営ができるのではないか、こういうふうに考えて申し上げたわけでございます。
  52. 松永忠二

    松永忠二君 その点について一つ労働次官に、どういうふうな御見解を持たれるのでありますか、法が正しく行われていればそういうことはないと思うのだが、なおかつ、事実そういうことが行われて、正しく解釈しないものだからそういうことをやっているのだ、しかし、そういうことをやっても処罰はなかなかされない。しかもなおかつ、先ほど出てきている点は二点あるわけです。一つは、不利益があっても申し立てなければだめだ、不利益を受けるような場合には本人申し立てることが非常に困難であるし、その所属する組合申し立てることも困難な場合、第三者が自発的に出てきてこれを調査して、その行動を取り締っていくということが非常に望ましいことじゃないか。もう一つは、その理事者によって被害された者は、法律によってこれを保障はできるけれども、そういう法の精神を十分に理解しないで法を実施をしているそのものについて一体法規制をする必要がありはせぬかということについて、そういうことにこそ初めて労使の関係が対等にもなるし、まことによき労使の慣行も樹立されると思うわけです。その点はどうなのでございますか。今後また、そういう点について検討を加えていく御用意があるのかどうか。
  53. 二階堂進

    説明員二階堂進君) まあ、地方公務員の問題については所管外であろうかと思いますが、いろいろ松永さんの御意見は傾聴すべきものがあるように考えます。一般論としてはそういうことはあまり望ましくないというふうに私は考えます。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 具体的に静岡市の理事者が勝手に組合を動かし、いろいろの暴言を吐いたり、そして市長の命令によって組合をつぶしていく。先ほどからお話を聞いていると、公務員課長ですか、その運営のよろしきを得ればそんなことがないのだということで、五十六条では不利益な取扱いをしちやいかぬということは明確になっている。この条文からいっても、間違った行為というものはやはり是正されなければならぬというのが社会の仕組みだと私は思うのです。この法律のこまかしい条文があるなしの議論じゃなしに、そういう生きた社会における間違った行為というものは是正していかなければいかぬというのが私は根本の問題だと思うのです。だから労組法では、個人保護まで、五条のただし書きで規定するように、不当労働行為の取扱いというものが一切できている、これは法文にないから、そんなものには手がつかぬというような格好ではなしに、具体的にやった行為というものが明らかになったら、私は是正する方法というのは、やはり自治庁が直接おやりになる、大きくは、労働関係全般として、労働省が、私は労働者保護立場から、この問題はもっと積極的でなければならぬ。先ほどからお話しを聞いていると、どうも、憲法にありますけれども、法律にありませんから、その方はちょいとというような格好で、どうも理解ができない。その点は、どうその間違った行為に対して是正しようとしておられるのか、その根本的な話しを、少し労働省自治庁から聞かしていただきたいと思うんです。それでないと、これはあるとかないとかいう論議を聞いていても、これは社会の仕組みなんですから、間違ったことは直していく、これが社会の仕組みなんです。正常な運営といいますか、正常な運営とはいかなるものか、ちょっと聞かしていただきたい。
  55. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 特に静岡紛争に関してお話しがございましたので、この点について、自治庁の従来とつてきました態度を申し上げてみたいと思います。私どもといたしましては、直接市長なり、あるいは職員団体に対して、それぞれの指示をいたすということは、まあできない建前になっておりますが、今回の問題につきましては、相当まあ事の内容のことは一応差しおきましても、世間の注目を集めております事件でございましてその点で、早くから両方の職員団体側にも理事者側にも、円満な解決をはかるようにということを強く要望いたしまして、そのための技術的な点についても、実は助言をいたしたような経過もあったわけでございます。しかしながら、実際問題といたしまして、そういうことで早期に、円満に解決を見ないで実は今日まで至ったわけで、その点非常に遺憾に存ずる次第でございます。ただ、個々のいろいろな具体的なケースを検討いたしてみますと、すぐ直ちに地方公務員法違反である、そういう法律違反であるという事実は的確に現われないものでございまして、率直に申し上げますと、かなり行き過ぎな点が多々見受けられますので、そういう点については、個々の問題として行き過ぎではなかろうかという程度の注意なり助言なりをいたして参ったような次第でございまして、これを直接自治庁において行政の手段を講ずるということについては、今のところ、法規の建前もさようになっておりませんし、あるいは地方自治の建前から申しまして、これを直接的に実は矯正する道がございませんので、そういう点については、いろいろと私どもも実は非常に遺憾なことだと思う点がございますので、あるいは、なお重ねて一般的に、そういう点につきましては、将来にわたってさようなことのないような注意は喚起をいたしてみたい、かように考えておるわけでございます。
  56. 亀井光

    説明員亀井光君) これは今自治庁の方からお話しがございましたように、こういう事実は決して私ども望ましいことではないと思います。従いまして、今自治庁からの御答弁がございましたような注意なり、事前の予防というふうな措置をわれわれとしては強く期待をいたしておる次第であります。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこでですね、最後は法の建前がそうだからということにあなたの公務員課長お話しもそうなるわけです。幾らか助言やサゼッションをしたけれども、間違っているという事実だけは認めておる、けれども、手のつけようがない。私は国会は法律を作る所ですけれども、法の具体的な運営というものは、やはり行政府がおやりになるのが建前だと思う。間違ったことを行政府としてはっきり確認しておりながら、それが是正できないという御答弁だけでは私はいかんと思う。問題は、だから間違ったことが起きるなら、それを是正する。たとえば手続的に法を改正するという手続は、われわれが言わなくとも、行政府の皆さん方が、そういう法律を国会に作ってもらいたいと言うて出られてこそ私は至当な道じゃないか、法律が不備だから、間違ったことということが自分らも明確にわかっておりながら、どうにもいたし方ありません、そういう私は立場というものはないと思うんです。もっと世の中の悪い仕組みを直していこうというところに私は行政府の役割があると思う。これは国会で論議をしてきめるのですから、われわれもそういうものを是正しなければいけませんけれども、皆さん方が、間違っているけれども、いたし方ありませんといってここで答弁されて私は済む問題じゃないと思う。この静岡の問題は、ここで静岡の問題としてこういう状態になりましたけれども、他のあらゆる所にこのような問題が起きるために、今後注意とか何とかをしたいとおっしゃいますけれども、実際問題としてその注意をされても起きるから、こういう問題が起きたら、どうして手をつけるんですか。つけようがないといって、きょうとまた同じ答弁になるわけじゃないですか。事実は間違いで、よい行為じゃない、悪い行為ということを自認しておきながら、それを根本的に是正しようという態度というものがなくては、私は根本的に皆さん方の行政府としての役割を、どういう工合にしてお果しになるか、それをさっきから開いておって、どうも私は理解ができない。だから何としても今後こういうことが起きないような処置というものは、あらゆる角度から私はおやりになるということが第一。それから法の不備というなら、その法の不備はこうしなければいかぬということを、積極的に皆さん方が国会に、むしろ私らが言うより先に国会にお出しになって、不備な点を改正してもらいたいということにお出になるのが建前じゃなかろうかと、私はそう思うんですが、よりわれわれよりか積極的に、より緻密に、そうして実態をおつかみになっている行政府でございます。私はそういう建前でなければいかぬと思うんです。こういう市長が指揮棒を振って組合をぶつつぶす、最後はぶつつぶしたんですけれども、それまでの経過というものをずっと私も聞いてみますと、まるで組合というものは社会の害悪であるごとき言動をされて、そうして組合をずっとぶつつぶす処置を講じてきて、そうして最後にぶつつぶした。こういうことは、どうも私たちとしては納得がいかないんです。だから法の不備の点を積極的に直しますという工合に、また、直すように国会にそういうことをまあ一つよろしく頼むし、こういう点とこういう点は一つ検討してもらいたいというようなお気持はどうなんですか、ないんですか。
  58. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) ただいま御指摘の点につきましては、実は先ほども申し上げましたように、現行の法律に不備があったためにそういう事態が起ったんだとは必ずしも言い切れないのではないかと思うわけでございます。この地方公務員法を正しく運用していただければ、そういう問題はむしろ起らないということが普通の状態では実はないかと思うのでございまして、現に今日まで地方公務員法施行後、今回のような問題は、きわめてまれな事件でございまして、しかも今回の問題の経緯はいろいろとございますが、実は個々のケースで、直接法律違反ということが明確になるということには実はなっておりませんので、われわれが率直に申しまして、かなり行き過ぎておるんじゃないかというふうな感じを持ちまして、そういう点については、個々に実は助言をし、注意もしたのでございますが、結果そういうことになりました。そのことは、必ずしも法律の不備から生じたということだとは言い切れないわけでございまして、そういう点につきましては、なお違った角度から、いろいろと地方自治全体の問題との関連においても、なお検討をしていかなければならないんじゃないか、かような感じをただいま持っておるわけでございます。
  59. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもだんだんわからなくなってきたんだが、正常な形での結局行政指導が足りなかったということですか。行政指導が足らなくて、こういう正常な形、普通な形では起きない、結局いえば、その行政指導が足りなかったからこうなったんだ、なってしまったことはよいことでないということがはっきりしていながら、なってしまったことについては手が触れられない、見ているんだ、ざっくばらんにいえば、見のがしだということじゃこれはどうなんだ。これはどうなんですか。法の不備じゃないと言われるなら行政指導が足らなかった、こういうわけですね。じゃ行政指導が足らなくて云々という話で、実際にやってしまったことについて処置することはなおできないじゃないか。結局、法の不備ということになるのですか。今の話もうちょつとはっきりして下さい。
  60. 今枝信雄

    説明員今枝信雄君) 御指摘になりましたように、行政上の指導にも十分行き届かなかったという点は、私ども率直に反省をいたしているわけでございます。ただ地方公務員法が——先ほど申し上げましたように、地方公務員法法律建前が、全体としてすべてのものをここで規定をしてしまうというふうな立て方をいたしておりませんので、やはり国家的に統制をすべき事柄と、それから地方自治体との自律的な判断というものとのニュアンスがあるわけであります。しかも今回の問題は、労組法地方公務員法との差異が、かなり積極的にと申しますか、はっきりと出ているような事件でございますので、そういう点を考えてみますと、一がいに、地方公務員法がそういうふうな建前をとっていることがいいか悪いかということになりますので、私どもといたしましては、行政指導が十分であり、なおかつ、それぞれの法を運用される方が、良識をもって運用されるならば、そういう弊害は救済されるのではなかろうか。どうしてもそういうふうな行政指導なり、あるいは法律の運用者の良識に期待しがたいということであれば、また考え直さなければならないが、現在の段階では行政指導なり、あるいは良識ある運用によって十分なる成果をあげ得るのではなかろうかというふうな程度に考えているわけであります。
  61. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも結局何をつかんでいいかわからぬことになってしまうので、あなたのお話を聞いていると、行政指導も足らなかった、そこまではよくわかる。で、結局法の不備ではないと思う、正常な運営をやってもらえばこういうことは起きない、行政指導がもっと積極的であった方がよかったに違いない。しかし、事実問題としては事実こういう問題が起きている。行為が起きて、皆さん方も好ましくないということははっきり言っているのです。それじゃそのものに対してどう是正するかという是正策というものは何もないとおっしゃるわけじゃないですか、今。そうでしょう。こういうことでは、私はあなたのお話を聞いていてもわからぬのです。だからもっと——それはきょうこの問題だけであまり長く時間をとりますといけませんから、この辺で私は打ち切りますけれども、一つの今後の問題もありますから、この次の委員会に、明確に一つ自治庁のお考えを示していただきたい。  それから労働省立場からも、そういう点については明確に——五十六条に不利益取扱いのこの条文があるわけです。この条文がありながら、理事者のやった行為は、あなたのおっしゃる点から言えば、法を正常にやっていけば間違いがないというのです。行政指導が足らなかったかもわからぬとおっしゃいましたけれども、事実行為が起きているものに対して是正する処置というものはないのですよ。それは今日の法律でやりますというならやってもらいたい。正常な法の運用をやれるならやってもらいたい。どういうことでおやりになるか。法文上でやれないというのならば、どういう法改正が必要なのかということを、この事実の間違った行為を是正するということが根本なんですから、この間違った行為を是正するというところにピントを合して、一つこの次のわれわれ委員会で、この問題はもっと研究したい。もっと研究をして、こういう間違いが世の中に起きないように、われわれも労働委員会の役割として果したいと思いますから、この次の委員会にはぜひはっきりした皆さん方のお考え方を、一つここで明示していただきたいと思います。それから労働省一つお願いしたい。
  62. 松永忠二

    松永忠二君 今のことでいいわけですがね。その自治庁の方へも特にお願いしたいのは、行き過ぎたことができないように、法的に何かしなきゃできないと思う、行き過ぎたものがあるというお話だったが、行き過ぎたことができないような法的な整備というものはあり得ると思うのです。その点を一つはっきりと見解をまとめておいていただきたい。  それからなお、労働省の方は、水道労組の問題については、明白に私たち不当労働行為が出ていると思う。この点について事実認定がしっかりしておらないからというお話でありましたが、事実認定一つしっかりしていただきたいということを要望しておくわけであります。
  63. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  速記を落して。    〔速記中止〕
  65. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して下さい。  休憩いたします。    午後零時二十六分休憩    —————・—————    午後一時五十五分開会
  66. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  委員異動を報告いたします。十月十一日付をもって松永忠二君が辞任され、その補欠として大矢正君が選任されました。
  67. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 近江絹糸紡績株式会社紛争に関する件を議題といたします。まず当局よりただいままでの経過の御説明をお願いいたします。
  68. 亀井光

    説明員亀井光君) 近江絹糸の争議の概況につきまして御説明を申したいと思います。この会社は御承知の通り、去る昭和二十九年の大争議以来、企業再建のために三菱銀行を幹事銀行としまする協調融資銀行団が結成されまして、この会社の再建が進められていたのでございます。その間、一部の株主から金融機関が経営を行なっているのは独占禁止法違反であるとして、昨年の十一月公正取引委員会に三菱銀行の不当企業支配排除という申し立てを行なったのでございます。これに対しまして、同委員会から本年の五月二十二日に至りまして水野、神前正副社長は退陣することという、そのほか二、三の条項を付しました勧告が出されたわけでございます。この勧告を受けまして、水野社長及び神前副社長を含む重役陣が一斉に退陣をいたしまして、六月二十九日の株主総会で新たに山内社長以下会社の重役陣が決定されたのでございます。で、このような新経営者陣に対しまして、三菱銀行を初めとする銀行団は、現在の経営陣では信用ができないという趣旨から、生産に必要な資金の融資を拒否したのでございます。そのために同会社は原綿の購入もできず、八月七日に彦根、大垣、富士宮の三工場で操業の停止が起ったのでございます。次々と原綿の不足から操業の停止が行われて参ったのでございます。この事態の悪化に伴いまして山内社長は、杉大阪商工会議所会頭にあっせんを依頼をしたのでございますが、その後あっせんの過程において山内社長は辞任をいたしております。で、杉大阪商工会議所会頭は山内社長のあっせん依頼を受けましてあっせんに乗り出したのでございまするが、九月十六日に至りましてついにあっせんは不調となって打ち切られたのでございます。  これらの情勢のもとにおきまして、労働組合は、九月四日中労委に次の四つの事項をあっせん事項としてあっせんの申請を行なったのでございます。一つは、休業の場合において一〇〇%の給与を保証すること、二つは、解雇の反対、三つは、工場の分割反対、四つは、現重役陣というこの四つのあっせん事項に基きましてあっせんの申請をいたしたのでございます。また、そのうちに九月二十四日になりまして、会社は九月分の賃金の半額支給を組合側に通告いたしました。その通告を受けた組合側はこれを不満としまして、九月二十五日は午前零時から各工場で出荷説得行為——出荷の拒否でございますが、それから本社、営業所におきましては業務の拒否の無期限ストに入ったのでございます。現益におきましての操業状態は大体全体で二割弱でございまして、紡績工場におきましてはほとんど全面停止になっておりまして、スフ紡関係の一部並びに加古川工場の化繊関係の業務が一部動いておるのでございます。  九月二十六日に中労委におけるあっせんの委員会が開かれました席上、会社側から生産の今後の計画、あるいは会社再建の計画としまして能率の悪い長浜、岸和田両工場を閉鎖する、で、二番目は企業縮小に伴いまして約千三百人の人員整理を行うという再建の案を骨子としましてあっせん委員にあっせんを依頼をしたのでございますが、このことは会社みずからのやるべきことであるということで、中労委としましては中労委の舞台で労使の団体交渉をこの問題について行なってはどうかということを勧告いたしました。労使それを受けまして団体交渉が中労委において行われたのでございまするが、この問題はその後二十八日に第一回の団体交渉が行われましたが、進展をしなかったのでございます。その間、近江絹糸におきましては、組合は十月二日に大阪市の中央公会堂におきまして決起大会を開催をいたしております。また、十月八日に至りまして近江絹糸の労組は中間を開きまして、このような事態に立ち至ったのは、経営者・銀行団の責任であって両者の責任を追及し、生活を守るための戦いを進めるという基本的な態度を確認しまして具体的な方針として、一つは銀行団に社会的責任を追及し、融資の再開を要請する、二つには無能力者である夏川一派の退陣を要求する、三つには石田労相及び中労委にあっせんの促進を要請する、四つは全繊に生活資金を要請するというふうな決議を行なっておるのでございます。また、九日には組合員労働省、大蔵省を訪れ、それぞれ争議の早期解決を要望いたしております。こういう事態におきまして中労委におきましては、引き続きあっせんが継続されておるのでございます。労働省としましても、この問題が労使関係の問題として今後大きく発展をしていくおそれもございますので、労働大臣といたしましても、この問題の解決につきまして何らかの措置をとりたいということで、目下その方法を検討をいたしておる段階でございます。  以上でございます。
  69. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 質疑を願います。
  70. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の御報告によって大体の輪郭はわかるのですが、実は問題の焦点というものがはっきりと浮んでいないような気がいたします。それで中労委で現在、以前にも一度やられた事件ですが、現在中労委におけるあっせんの段階ですね。どういう点が問題になっており、どういうふうに運営されておるかという状況が、局長の方におわかりになっておるなら御説明をいただきたい。
  71. 亀井光

    説明員亀井光君) ただいまの中労委のあっせんの現状は、会社から提案されました会社の再建方策を中心としてあっせんが進められているように聞いております。
  72. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは多少無理かもわかりませんが、労政局長は御承知のように、中労委の長いこと事務局長をなすっておるので、実際の運営状況はわかっていると思うのです。ですから、おわかりになっている範囲、つまりそういう荒筋でなくて、問題点となってどういうふうにあっせんが進められんとしておるか、そういう状況がわからないとさつぱり争議の解決に関する段階が見当がつかない、こういうことではないかと思うのです。それでこれはもし本日御説明願えないならば、次回にでも中労委の方から直接中労委の局長やあるいは会長の山田席を願って状況をお聞かせ願うということにいたさなければならぬと思うのですが、ただ、ここで先ほどお話しになりました公正取引委員会が、三菱銀行の融資条件について独占禁止法違反であるということで融資を押えたという点なんですが、そういう内容局長の方におわかりなんでしょうか。
  73. 亀井光

    説明員亀井光君) 公取の勧告はそういう意味じゃなくして、まあ現在の水野、神前両正副社長の退陣ということを主体とした勧告でございまして、その後、融資団でありまする三菱銀行その他が、新経営者に対する不信感から融資ができないというふうな態度をとっておるのでございます。
  74. 山本經勝

    ○山本經勝君 労働省として、労働大臣のあっせんの要望に対してはどういう態度をおとりになっているのですか。
  75. 亀井光

    説明員亀井光君) われわれとしましては、問題が中労委に提出されておりますので、でき得るならば、労調法建前から申しましても、中労委の舞台におきまして円満な解決がはかられることが望ましいのでございますが、しかし、今回の近江絹糸の問題は、単なる経済闘争という以外のものを含んでおりまするだけに、労働大臣といたしましても、中労委のあっせんの促進という一つの面と、かねてもう一つそういう経済問題を離れての問題についての何らかの解決の糸口を見つけ出したいということで、現在努力をいたしておる次第でございます。
  76. 山本經勝

    ○山本經勝君 新聞の記事によりますと、会社側の方としては、労組が経営に介入して闘争を行なっているために、対外的信用を失ったというようなことを言っておるといわれているのですが、そういうこともあるんですか。
  77. 亀井光

    説明員亀井光君) 現在の段階は、今申し上げましたように、具体的なあっせんの段階に入るというまでには至っていないのでございます。もちろんそういう段階がかりに至ったといたしましても、労働大臣が直接その労使の中に介入するということが適当であるかどうかということは別問題だと思うのでございまして、現在は労働大臣としまして、どなたがこの中に入ってあっせんをした場合に最も適当であるかという点においてもっぱらいろいろな各方面の意見の調整をしておるという段階でございます。
  78. 山本經勝

    ○山本經勝君 私申し上げているのは、つまり経営者側の主張として、労組が経営に介入したような闘争をやっているということが社会的な信用を失墜しておるからだめだ、こういうようなことを言っておるといわれているんですが、こういうことが、もっとこの問題が、近江絹糸の問題は前にいろいろ長い紛争を続け、しかも大争議をやって世論の批判を受けた争議なんです。その原因となったものは、やはり夏川社長を中心とするあの経営の指導者の責任だったと私断言してもはばからぬと思うのですが、そういう意味において、しかもその後再建の過程にあって、資金の問題等について、公取委員会等の勧告を受けるような事態を持っておりながら、経営者が自分の陣営にある不都合や、あるいは機構上の不備や、運営上の不行き届きをたなに上げてやっておるならば、勢い争議はやはり本質的な経営のあり方、こういう問題に私は発展していくと思うのですよ。これは単に近江絹糸だけの問題じゃなくて、多くの中小企業の中にはざらにあることです。あるいはその他の産業の中にも、現在でも争議があって、それはせんじ詰めていくと、こういう経営の能力のないものがただもうけるだけを目的にしてやっておるところに問題があると思うのですが、しかもこの近江絹糸というのは、すでに世上一般に十分論議をされ、そうして批判をされた存在なんです。ですから、そういう点については、労働省としてはどうお考えになるのですか。
  79. 亀井光

    説明員亀井光君) 問題が、現在労働組合が言っておりますように、現在の経営者の退陣が見られなければ、果して再建ができないのかどうかということを含めまして、目下各方面の意見を聞いておる次第でございまして、まだ労働省としまして、そういう問題に具体的に介入するといいますか、説得するといいますか、そういう時期にはまだ至っていないのでございます。
  80. 山本經勝

    ○山本經勝君 そういう時期に至っていないと言われますが、争議は現に進行中だろうと思うのですよ。あんまりゆっくりしておっちゃどうにもならぬと思うのですね。その多数の、問題になる総数六千ですか、六千名に帰休という制度を押しつけて、休まして賃金払わぬでしょう。それからまた、千四百名はさしあたり首切る。その他ほとんど大部分が休業や営業停止をやろうとしてやっておる。ですから、これほどの多数の者が生存権にかかっているのですから、私はそう労働省としてゆっくりかまえておられるような事態ではないと思う。これは通商産業省とも関係があると思うのですが、そういう方面との連繋を保って、すみやかに何らかの手を打たんければならぬということだと私は考えます。ですから、そういう視野に立って、労働省としては動かれておるとも思うのですが、そこでもう少し積極的な争議解決への努力をなさらにやならぬと思う。そこら辺について、二階堂次官にお伺いをしておきたいんですが、どういうふうにお考えになるか。
  81. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 先ほど労政局長からお話し申し上げました通りに、この事態が長引くことは、労働組合の方に対しましても非常に不幸なことであるという考えに立ちまして、何とかこの問題を早く解決するようにすべきであるという考えで、労働大臣も個別的にいろんな方に会われまして、この解決策を見出すべく努力をしておられるところでありますし、さらにまた、先日の閣議におきましてもこの問題が取り上げられておるのでありまして、私ども労働省としましても、この問題をいつまでも長引かせるというようなことは好ましくないと、こう考えまして、大臣も積極的に努力をいたしておられる最中であると考えております。
  82. 山本經勝

    ○山本經勝君 非常に抽象的なお話ですが、いろいろ、最近、労働省では、労働運動に対して大へん勇ましい表現をなすっておる。この種の、いわゆる経営者が無能で、しかも悪らつで、そうして企業の運営指導を誤まって、そうして大量の解雇を出すという基本的な人権につながる問題、あるいは労働条件の切り下げ等による被害を働く大ぜいの人々に転嫁するような事態を労働省としてはいま少し積極的に取り上げてやるのが、労働省設置法の基本精神だと思うんですが、そういう点、私はただいまの次官のお話ではきわめて不満足なんですよ、率直に申し上げて。大臣がおいでにならないから、どうしてもこれは次官の方から御解明をいただかなければ納得できぬ点なんですが、一体どうやろうとお考えになるか。この種の責任の所在が私は非常にはっきりしておると思う。しかも、夏川社長を中心とする近江絹糸の今までのやり方は、先ほども申し上げたように、すでに世論の批判を受けて、退陣をするところまで行って、また、のこのこ動いておる。これに対する退陣の最後の要求、こういう姿があっていいのかということなんです。ですから、労働省としては、しっかりと腹を据えておいでにならぬというと、労働者に対する攻勢のことなら経営者に協力なさっておるけれども、この事件のような、顕著な経営者の怠慢と言いますか、無能と言いますか、そういうものに対しては、さっぱり積極性を欠いておる、こういうふうに見ざるを得ぬと思うんですが、次官の方の、もう一度責任のある御解明をいただいておかぬと、今後の事態の収拾に困ると思うんです。どうでしょう。
  83. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 先ほどもお話し申し上げました通りに、大臣とされましても、このまま事態を放置することは好ましくないと、こういうような考え方で、何らかあっせんを引き受けてくれる方を積極的に求めて相談をしておられる段階であると考えております。さらにまた、先日の閣議におきましても、これらの問題が非常に重大になりつつあるということを労働大臣からも報告されまして、これらの解決は、単に労働省一省だけで解決のできる問題でもないので、関係各省とも緊密な連絡をして、相談をして解決に当りたい、こういうことを申されておるようでありますので、決してこの事態を傍観しておるというようなことではないと考えております。
  84. 山本經勝

    ○山本經勝君 今のお話を承わっていると、事態を放置してはおらない。それは放置しておくわけには参りません。放置しておくわけには参らない。ですから、取り上げたと言われるが、どういう形でどういうふうに進めようとなさっておられるのか、その腹がまえがなければ、これはなまやさしい問題じゃないんです、率直に申し上げて。ですから、少くともこの場合、もし新しくこれに対して必要であれば、労働省はあっせん者を求めておると言われるが、適当な人々を集めて、人材を集めて、あっせん委員会なり何なり作ってそこで経営のあり方そのものに根本的にメスを入れるぐらいの勇気がなかったら、あるいは通産省を動員しても、協力を求めても、そこまでいかなければ、この種の問題は絶えない。しかも、これはすでに何べんも申し上げるように、世論の批判を受けた経営者である。こういう姿が日本の企業の中には、今申し上げたように、重ねて申し上げますけれども、幾多あるのですよ。それでいて最終的には労働者の責任に押しつけられて、その被害を労働者がかぶっているようでは、浮び上らない。そのことを申し上げておる。そこら辺は、少くとも大臣と一心同体になって動かれるであろう次官は、これは当然お考えになっていることである。大臣がおられないから大臣はこうなさろうとしておりますというようなことじゃなくて、自分としてもこう考えておるという点を言えそうなものだと思うのですが、どうでしょうか。
  85. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 大臣がおられませんので、具体的にどういうような腹がまえで具体的にどういうような話し合いを進めておるかということについて私から申し上げることができないのでありまするが、私はこういう事態をいつまでも放置しておくということは好ましいことでないと思うのであります、特にまた、この問題は、先ほどもお話がありました通りに、非常に複雑な様相を持っておる事件でございますので、この事件の解決には相当な時間もかかると思っております。また、経営者の方にも非常な責任がある問題であろうかと考えますので、これらの経営に対する問題につきましても相当慎重に検討をいたして解決すべきものではなかろうかと考えております。
  86. 山本經勝

    ○山本經勝君 大臣もおいでになりませんし、ただいまの御答弁では、全く納得いかない。局長さんの方の事務的な御報告についても、きわめて不備なものです。労働委員会があっせんをやっておるということは、私どもも聞いてもおるし、あらためて聞かんでも済む。ところが、中身のあっせんのその状態がどうなっておるか、どういうふうな進行状況であるというような内容がわからない。ですから、次のこの委員会には、中央労働委員会の会長もしくは事務局長、あるいはあっせんに参加なさっているあっせん委員の皆さん、それらの代表者でけっこうですが、あっせん委員会委員長なり適当なしかるべき責任の持てる人に来ていただいて説明を願わなければならぬと思う。この一点は、委員長、要望です。それからいま一つは、この問題についてこの委員会から正式に調査員を派遣するようにしていただきたい。それで、本日は、大臣もおいでにならぬし、また、申し上げるように、あっせんに関する直接関与した委員の方々も出ていただいておりませんような実情ですから、これ以上質疑を続けても仕方ないと思う。一応この質疑は打ち切って、この要望を委員長の方からお諮り願って、この委員会で十分立ち入った調査をし、そうして自後の対策を確定する、こういうことにお願いがしたいのです。
  87. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 要望の点は、さように取り計らいたいと思いますが、あとの、本委員会が事件の調査のために出張するという点につきましては、後ほど理事会でも開きまして十分御懇談申し上げたいと、さように思っております。  ほかにございませんか。
  88. 中山福藏

    ○中山福藏君 今、次官、局長お話は、私承わっておったのでありますが、大体争議に関する内容の分析というものができておるかどうかですね。その内容というものを分析してその一つ一つについての政府の対策というものを私は次に示していただきたいと、こう思います。その点、一つ委員長から要望していただきたいと、こうお願いしておきます。
  89. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいま中山委員の要望は、労働省の方において整備して報告を願いたいと思います。  それから、ただいま労政局長の説明にもありましたように、この近江絹糸の争議に関しましては、これは、その後の事態は、争議でないものであるように私は承わっております。これは、組合が賃金を要求するとか、あるいは作業を減らすとか、そういうような要求でなくて、局長から言われましたように、会社自体の銀行とのあつれきのための労働者が犠牲になって給料ももらえないというような結果になっておるように私は聞いております。そういたしますと、今までの争議と非常に形が変っておる。そうなるならば、労働省のあり方としては、今まではかりに労働組合が争議をやって会社がつぶれるような場合には仮借なき意見を発表されておったのでございます。そういたしますと、そういう争議の傾向でなくて会社の幹部のいろいろなあつれきによって、あるいは銀行側との摩擦によって金融が閉ざされて、そのあおりを食って数千名の労働者が生活におびえる。こういうことになってくるならば、労働省としても今までとられておる一貫した考え方から相当意思発表が国民に対してなされるものだと、私はかように思っておりますので、そういう点も含めて労働省には強く要請を申し上げたい、かように思っております。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この問題は今委員長の発言にありましたように、非常に普通の争議とは違った要素を持っておる。だから私は、やはり何と言っても労働省と通産省との関係というものがもっともっと緊密になってこの問題に対処するというところまでいかなければならぬと思うのです。ところが、そういう問題については、どうも各方面の意見を聞いて、どこがよいということを今大臣はやっているんだということだけではちょっと納得ができないのですがね、実際問題として。だから、私はやはりその時期、時間によって対策を立てる段階というものが変化してくることも、これは争議の状態から見て経営の問題ですからわかります。わかりますけれども、それじゃ労働省立場から、たとえば千何百人の首切り、六千人の帰休、工場が二〇%しか動いていないというこの現実が明らかになって、一万近くの従業員のほとんどが不安な状態に置かれておるということが続いているわけです。だから私は、今も中山さんから争議の内容の分析という問題を明らかにせなければいかぬのじゃないかというお話がありました。私はだから通産省との関係において、どういう工合にしたらよいかというやっぱり方針が私は労働省自身におありだと思うのです。それは時期や時間によってその他の対策が多少は変更されるにしても、このような形の争議というものはどういうことをしなければいかぬとか、通産省に対してはどうする、今の一万近くの非常に困難な状態に置かれておる労働者に対してはどういう工合に処置をするか、こういう問題がもっと積極的に労働行政の中から出てこないと、世の中は、私は納得しないと思うのです。そういう問題が残念ながら一つもきょうは触れられていないのですね。だからそういう構想を練るというか、私はもっと積極面を労働行政の面に出してもらわなければ、私はどうも納得がいかぬのですよ。それで、十分に調査いたしますと、十分に努力いたしますという段階というものは毎日々々続いている。しかし、具体的には九千幾ら、一万近くの労働者が困難な状態に追い込まれている、不安な状態に置かれておるということは一日も早く処理しなければならない問題がここにあるわけでありますから、私はもっと、今までやってこられた中で、積極的な面を少し御説明を願いたいと思うのです。そうでなければ、私ら質問をいたしましても、どうもその現状はこう流れていますというだけでは承知できない。その点もう少し説明していただけませんか。
  91. 亀井光

    説明員亀井光君) お話の中で、関係各省との連絡の話が出ましたのですが、この問題の関係省と申しますれば、直接的には通産省、大蔵省だと思います。この両省に対しては、われわれは今緊密な連絡をとっておるわけでございます。具体的な内容としましては、通産省関係は原綿の問題、原綿に対する業者からの債権が二十数億あるわけであります。これをどう処理するかという問題が実はあるのでありますが、それから機織り業者からの債権、これも数千万円あるわけであります。こういう債権の処理をどうするかという問題と、原綿の新規の割当をどうするかという問題、こういう問題が通産省の関係にある。こういう点につきましても、われわれは相談は緊密に連絡をとりつつやっておるわけです。大蔵省関係は、銀行関係の関連におきまして大蔵省とも接触をしておるわけであります。ただきょうの段階では、先ほど申し上げましたように、具体的な対策と言いますか、具体的な結論としては、まだ結論を得ていないということを申し上げたのです。それから一方では、先ほど政務次官からもお話ございましたように、これは労働大臣が直ちに労使の中に入りまして、あるいは関係者の中に入りましてやることよりも、やはり二十九年の争議のときのように、民間人が中に入りましてこの問題を処理することが適当ではないかという観点もございますので、そういうことも含めまして各方面の意向を打診をしているというふうに私は申し上げた次第であります。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、この前は何でしたか、大阪の銀行の何とかという頭取でしたか……。
  93. 亀井光

    説明員亀井光君) 杉さん……。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だいぶ努力されたようですが、しかし、組合関係としては中労委に何らかの処置、労務関係のあっせん申請がきて、中労委としてもそれと取り組んでおられる。だから、裏の方でどういう方策がされようとも、これは労働者保護を求めるのは、やはり法律に基いて保護の手が求められてくるわけなんですから、そこらあたりはやはり何といっても中労委のあっせんというものが、労働者の生活、労働条件ということでは先行していくわけなんです。だから、そういう問題の積極的な面からの労働行政があり、それからもう一つは今おっしゃったように、たとえば原綿の処置、割当、銀行との金融の処置、それからまた、あわせて私はこのような十大紡ではありませんけれども、十大紡に匹敵する大企業だと思うのです、一万人から抱えている。そういうものに対する政府が金融の処置をどうするかというような問題、あわせて私はやはり労働者の面からいえば、労働者保護するという建前からそういう方策が行われなければならぬ。もう一面からいえば、やはり社会の公器としての公共的な役割をどう生かしていくかという問題が出てこなければならぬ。こういう面からもっともっと私はやはり積極性というものを、今少しお話しになりましたけれども、そういうものが私は出てこなければこの争議は解決しない。だから、ここで今までの経過をまあきょうは一応聞いただけなんですが、しかし、先ほど山本委員からの要望もあり、中山委員からの要望がございましたが、私はやはり争議ですからね、今後の生活の問題とつながっているということを十分に頭に入れて、それから二十九年のあの大争議、人権争議と言われたあの争議の経過というものは、単に国内問題ばかりでないと思うのです。私はやはり国際的な労働機関ILOなんかにもこの問題が重要な問題として取上げられている人権争議、そういうものとの関係というものもあって、会社があえいできているということからすれば、国の経済全体の中における、特に繊維工業の十大紡に匹敵する大工場を、私は今のような状態の中で役員のあつれきやその他によって、置いて傍観していくというのはちょっと私は社会的に許されない問題じゃないかと思う。そこらあたりを私はもっと労働行政立場から、労働省としては積極的に今日までのつながりの問題とあわせて処置をするということでなければ、単に財産権云々とか、経営権云々だけで個人にまかせておくというようなスケールのものでは私はないと思う。もうこの近江絹糸というものは、もっと大きな社会的意義を持っているものだという工合に一つ御認識いただいてやってもらいたいと思うのです。その点はきょうは大臣おいでになりませんから、これ以上私は申し上げませんけれども、そういうやはり今までの問題と現実の問題を把握して、十分に処置をしていただきたいということを私は特に申し上げておきたい
  95. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ほかにございませんか。——本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
  97. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、労働行政に関する件を議題といたします。質疑を願います。
  98. 大矢正

    大矢正君 私は、労働行政についての質問を二、三行いたいと思うのでありますが、その前に大臣がおられたならばまことに幸いでありましたが、不幸にして大臣が出席をできないということでありますので、政務次官に見解を承わっておきたいと思うのでありますが、それはどうも最近の労働省の行う労働行政というものを見ておりますと、かりに労使間で紛争が起きた場合には、それをすみやかに解決をする、ないしはまた、そういうものを予防をするという本来の労働省の任務が変えられて、逆に労働争議というものを起そうとするような方向に、最近の労働省の行政というものは改められたのかどうかということを実は承わってみたいと思うのであります。  第一の点は、実はこれは非常におとなげない話をするようでまことに恐縮でありますが、十月の九日付の読売新聞を読みましたところが、この中に石田労働大臣が話した内容としてこういうことが載っております。それは西独から帰ってきた、西ドイツから帰ってきた労働者は総評が大きらいになったという、こういう見出しで石田労働大臣は閣議でもって、西ドイツに行ってきた労働者諸君はみんな総評に対して非常に批判的になってきているという実はお話をみずからが新聞に発表されたのか、あるいは新聞に発表してもらえるようなすきを与えたのか、そのいずれかで私はあろうかと思うのでありますが、こういう内容が出ております。もちろんこれは正式に記事として石田労働大臣が提供したわけではありませんから、こういうものを一々国会で取り上げることは非常にこれはナンセンスであるかもわかりませんが、かりに、こういうことが新聞の記事に出た場合に、一体今の労働大臣と労働組合幹部との間における話し合いであるとか、あるいはよい労使の慣行というものが労働大臣の説明によって生まれてくるかどうかということにつきまして実は私多くの疑点を持った次第であります。なぜ一体石田労働大臣はこういうことを言わなければならぬのか、あるいは、こういうことを新聞に書かれるようなことをするのかということについて、できるならば大臣に私はじきじき質問をいたしたかったところでありまするが、どうも大臣が出られないということでありますので、次官でけっこうでございまするから、労働省はすべてこういうように挑発的と言いましょうか、けんかを売る方の方向労働省のこれからの労働行政というものが改められたのかどうか、この点、政務次官の見解を承わっておきたいと思います。
  99. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 労働大臣が閣議で、西ドイツから帰ってきた方々は総評はみなきらいになってきておるというようなことを言われたということでございますが、私はそういうことを言われたかどうか全然存じておりませんし、また、その新聞記事も見ておりませんが、おそらく私は何かの誤解であろうかと考えております。  なおまた、もう一点のお尋ねでありますが、どうも労働行政、石田労働行政は挑発的に労働行政を変えてきているのでないか、そういうふうに変えたのかどうかというふうなお尋ねでありますが、決してそういうような考えは持っておりません。
  100. 大矢正

    大矢正君 私も先ほど申し上げましたように、こういう問題はおとなげありませんから、取り上げて執拗に次官の説明を求めるというような気持もございませんが、ただ一国の大臣ともあろうお方が、新聞にこういうようなことを書かれるようなすきを与え、そうしてこの新聞を口実として、かりに悪くいけば、これを口実として労働争議が逆に起きるようなことがないように、あなたから労働大臣によろしく私は申しておいていただきたいと思います。  次に第二点として、これまた同様な立場において御見解を承わっておきたいのでありまするが、今月の二日に炭鉱労働組合の行なったいわゆる争議に対して、ストライキに対しまして、政府はこのストライキはどうも好ましくないストライキであるので、いかぬという談話を発表されているようでありますが、これは一体いかような趣旨のもとにこういう談話を発表されたのでありますか。これも次官に御答弁をいただきたいと思います。
  101. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 十月の二日、労働大臣談話として、杵島炭鉱の争議についての声明を出したことは御承知の通りでありますが、これを出しましたのは、こういう杵島炭鉱の争議に関連いたしまして、組合の方が同情ストを行うということは、非常に国民経済の上から考えてみましても好ましいことではないし、また、杵島炭鉱だけの内部の問題でもありますので、一日も早く経営者と組合とが平和的に話し合って解決に当ることが至当であろう、そうすることが好ましいことであるというような趣旨をもった声明であると私は理解いたしております。決して挑発で争議を長引かせるようなことを意図したものではないと考えております。
  102. 大矢正

    大矢正君 あなたは争議を長引かせる目的のもとにこういう談話を発表されたものではないという説明をされておりましてできるならば、こういう争議をやめてもらうような方向へいきたいという御趣旨でありましたが、私はその趣旨とするところは私も同様に思いますが、従来まで、よく労使の間で問題が起きた場合には警告あるいはすみやかに解決をしてもらいたいという程度で話がなされておりますが、今度の労働大臣の談話は明らかに断定をしております。これは労組法上の労働組合の正当な争議行為とは認められないとはっきり断定しているわけであります。そうすると、従来までのように、労使それぞれ話し合いをして解決しなさいということは、ちょつと方向が違ってきているのじゃないかと思うのであります。そうなって参りますと、当然先ほど私が申し上げましたように、解決の方向に努力をするのじゃなくて、一つ方向圧力を加えるという結果しか、断定をする言葉の中からは生まれてこないと思うのでありますが、政務次官はどのようにお考えでありますか。
  103. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 労政局長から答弁させます。
  104. 亀井光

    説明員亀井光君) お話のように、民間の労使関係における紛争につきましては、すでに政府としましては介入しないという建前を従来も堅持しております。今回はそういう意味の趣旨でこの声明が出されたのではないのでございまして、先月の三十日に炭労の指令に基きまして、いわゆる同情ストといわれるものが大手十三社に対しまして行われたのでございまするが、そういうことに対しまして、われわれとしましては、労働法解釈上、それは必ずしも、適当なと言いますか、正当な争議行為ではないという法律解釈をいたしておるわけでございます。従って、第二波として三日にさらに再び行われようとしている際におきましては、われわれとしては、できるだけ事態の平和的な解決を望むのだ、しかしながら、もしそういう争議がかりに行われるとすれば、それは労組法上の保護を受けない争議行為であるということもあわせまして、あの声明になったのでございまして、先ほど来政務次官からお答えをいたしておりまするように、決してこれによって一方的に介入をして弾圧するという趣旨のものではないのであります。
  105. 大矢正

    大矢正君 先ほどの政務次官の御答弁の中に、こういう同情ストライキというものはこの際やめてもらいたいという趣旨があるのですが、同情ストライキというのはどういうことなのですか、お聞かせ願いたい。
  106. 亀井光

    説明員亀井光君) 同情ストということは何ら法律的に取り扱われている言葉では実はないのであります。俗に言われておりますので、私もいわゆるという言葉をつけまして先ほども申し上げたのでございます。いわゆる同情ストライキというものの本質は非常に範囲の広いものから狭いものまでいろいろ種類があろうかと思います。たとえば一つの産業の大企業において労使間の紛争がある場合に、他の産業の労働組合がその支援をいたすために、その他の経営者に対しましてストライキを行うというふうなこと、すなわち、労働者の広く社会連帯と言いますか、連携を強めるという趣旨で、当該労使間には主張の不一致がないにもかかわらず、そういう視点あるいは労働者全体の地位を向上させるというふうな目的、こういうふうなことで、当該労使間に何らの主張の対立がないのにもかかわらず、争議を行うという場合をわれわれとしてはいわゆる同情ストというふうに解釈しております。
  107. 大矢正

    大矢正君 今同情ストライキというものに対する御説明をいただいたのでありますが、私も今まで法律をいろいろ検討してみましても、同情ストライキというものはこういうものだという法律的な解明というものは一つもない、私もそう思っております。そこで次官ではなくて、局長に私は質問をしたいのでありますが、支援ストライキというストライキの方法もあるということをよく世上一般では言っておりますが、あなたはこの支援ストというストライキがあるとお考えになっておられるか、それからありとすれば、その支援ストライキというものは一体どういうものであるか、その点非常に労働問題には長年携って、いろいろ労働問題の説明をされるお立場にありますので、この点私は承わっておきたいと思います。
  108. 亀井光

    説明員亀井光君) いわゆる支援ストというものの内容がどういうものであるかということ、これはいろいろ人によって広く解し、あるいは狭く解する人もあるわけであります。一がいに言えないのであります。これをいわゆる同情ストと同じものであるというふうに解する向きもあるようでございます。まあわれわれとしまして、この支援ストの定義をどう申し上げていいかということをここでは必ずしも明確にできないのでございますが、大体考え方の基礎は、先ほど御説明しましたいわゆる同情ストというものに若干似通ったものが、相通ずるものがあるのではないかという程度しか私としてはお答えできないのであります。
  109. 大矢正

    大矢正君 それじゃ今までの日本の労働運動の過去の歴史の中に、あなたが言われる同情スト、それからそういうふうな同類の争議行為が今まであったかどうか、その点、質問をいたします。
  110. 亀井光

    説明員亀井光君) 正確に申しますと、ことしの夏、京の上炭鉱におきまして炭労がやりましたあれが新聞紙上で話題になりまして、私どもその問題の法律解釈につきましては何らはっきりしたものを社会的にお示しはしなかったのでございますが、新聞紙上ではそういう問題が出ました。それからかって近江絹糸が二十九年の争議の際に、これは海員組合の方で出荷を阻止するというふうなことのために同情ストを行うというふうなことを決定をしたことがございます。そういうことでございまして、私も寡聞にしまして、同情ストの先例がどういう数でどういう形で行われたかということは実は知らないのでございます。私の記憶にありまするのはそういう程度でございます。
  111. 大矢正

    大矢正君 それでは話が飛躍をするかもしれませんが、国際的な労働運動の今日までの状況、それから国際的な労組法の現在の状況から推しまして、こういう属ストというものに対しまして、国際的にはどういう一体傾向にあるか、あなたから説明を聞きたいと思います。
  112. 亀井光

    説明員亀井光君) 国際的に申しますると、各国の法制で明確にこれが違法であるとか不当であるとかいうふうな規定をしたのは、かつてイギリスにございましたが、これは労働党内閣ができますと同時にその条項は除外されております七それ以外には私らとしては法制的には見つからないのであります。これに対しまする各国の学者を含めましての見解は賛否両論あるようでございます。特に外国の場合におきましては、日本のように企業別組合ではございませんで、産業別組合でございます。超企業別組合でございます。従って、その団体交渉におきましても、超企業別組合幹部と、それに関連いたしまする経営者の団体のと言いますか、グループの代表者の間で団体交渉が行われ、協約が結ばれたというようなことで、外国で行われます同情ストの正当か、不当かという問題と、日本の、企業別組合を主体とします日本の現在の実態において行われまするいわゆる同情ストの正当か不当かという問題とは若干問題が違うんじゃないかと思います。
  113. 大矢正

    大矢正君 最近の労働問題に対する労働省の態度について、よく世上一般では、非常に石田労働大臣は労働行政について自信を持ってやっておられるようだという話をしておりますが、労働省のあなた方も相当自信を持たれたようでありまして国際的にもあまり例がない、法律の上においても同情ストライキなどというものについて具体的な規定がないのにもかかわらず、あなたは行政解釈の上でこういうものはもう違法行為なんだと言ってきめつけていけるだけのりっぱな自信があるようでありますからしてなかなか私も、大臣のあるところ、下におられる皆さんも非常に自信を持ったものだと思って驚いておるわけでありますが、私が新聞その他で知り得た範囲によりますと、今度炭鉱労働組合が行なった争議が同情ストと言われるものであり、従って、この行為は違法であるという立場から、その違法であるという根拠は労組法だけでなくて労調法の第六条でいういわゆる当事者間において労使関係の問題がないのだという立場、この立場だけが俗にいう、炭労争議というものは違法な争議行為なんだという断定づけをしておられるようでありますが、そのように私は解釈してよろしゅうございますか。
  114. 亀井光

    説明員亀井光君) 私はそういうふうなことは考えていないのでありまして、今度のいわゆる同情ストは、これは労組法または労調法も含まれますが、労働法全体の法の考え方というものから出るものと考えるのであります。労働法考え方はことさら申し上げるまでもなく、労働関係におきまする主張が当該労使間において不一致がきた場合におきましてその主張を貫徹するために争議行為というものが行われる、これは現在の労働法建前であります。従いまして、その前提としましては、当該労使間に主張の不一致があるということが必要でありましょうし、その当該労使間の主張の不一致が団体交渉等においてどの程度満たされていったかという第二の問題がございましょう。第三の点におきましては、そういう問題を処理する処分権を経営者が持っておるか、また、組合が持っておるかという問題もまた労働法上の問題として取り上げられるのではないか、これらのいろいろな観点、条件を私らが検討いたしまするならば、今回のいわゆる同情ストは、これらの要件に合致しないのだという結論が見出されたわけでございます。
  115. 大矢正

    大矢正君 あなたの言うように、合致しない争議行為であるという場合に、それでは一体経営者は労働組合に対してどういうことが行われても、あえてそのことについて抗議ができないという結果になるでありましょうか。もっと具体的にいけば、いわゆるこの考え方でいくと、炭労のストライキというものは、これはもう法律から離れたストライキであるという立場が出てくる。そうなって参りますと、この争議というものが法律に違反をした争議行為だという立場においてそういう判断が生まれてくるのであるか、あるいは労組法にいうところの、単に保護をされないという立場だけが生まれてくるのであるか、この二点についての解明をあなたに行なってもらいたいと思うのでありますが、ちょつと回りくどく言いましたので、もう一回念のために申し上げておきたいのですが、これは労働組合法にいうところの不当労働行為に関連をいたしまして、保護をされないという立場だけ生まれてくるのか、そうじゃなくて、明らかにこれはすべての法律に違反をしておる、単にそれは労調法労組法にとどまらずして、それは憲法の精神にももとるものだという立場においてあなた方が判断されているのか、この二つのうちのいずれであるか明らかにしていただきたいと思います。
  116. 亀井光

    説明員亀井光君) 私が先ほど労組法を含めての労働法関係から、争議行為につきましての三つの条件を申し上げました。従って、これらの条件を満たさない争議行為は、労組法保護を受けられない争議行為であるというふうにわれわれは解釈をいたしております。従いまして、労組法で免責をしておりまする条項の適用を受けないという趣旨でございます。
  117. 大矢正

    大矢正君 だから私はもう一回念を押すのですが、あなたの言っておられることは、労組法にいわゆる抵触をするということは、同時に憲法の二十八条で保障された団体行動権も、これは団体行動権というものにも入らない争議行為であるという解釈をされるのですか、あなたは。
  118. 亀井光

    説明員亀井光君) 憲法二十八条の団体行動権というものには、私は含まれるものだと思います。ただそれが法律の条項によりまして、それぞれ制約を受けておりますることは御承知の通りでございまして、あるいは保護を受けておる面もありますが、それで今度の問題につきましては、先ほど申しまするように、労組法上の保護を受けない争議行為であるということを申し上げた次第でございます。
  119. 大矢正

    大矢正君 これは参考のために伺っておきたいと思うのでありますが、先ほど近江絹糸の問題が出ましたが、たとえばああいうように近江絹糸のような争議が勃発をし、そして封建的な労働政策と戦うために、その対象となる一つ労働者労働組合だけが争議行為を行うのでなくて、これを支援するために、かりに全部の労働組合が、規模は別としても抗議のストライキを行なった場合にも、あなたの言われるように同情ストライキであり、その争議行為というものは違法であるという解釈が生まれてくるのでありますか。
  120. 亀井光

    説明員亀井光君) 私は違法とは申しておりません。労組法上の保護を受けない正当な争議行為ではないと申し上げておる。従って、今おあげになりました例から申しますと、われわれのいういわゆる労働法上の保護を受けない争議行為であるというふうに解釈いたします。
  121. 大矢正

    大矢正君 あなたの言われるように、労組法保護を受けないということになりますと、いろいろ考えられる面では、経営者が解雇の通告をよこしても、それを不当労働行為として訴えることができないという面も出て参りましょうし、あるいは経営者が労働組合に損害賠償を請求するという問題も出てくるでありましょうし、また、もっとさかのぼれば刑事上の問題も起きてくるかもしれませんが、そういう数々の点がありますが、あなたは想像をされて、想定をされて、どういうものが一体起きてくるというように考えておられるのか。
  122. 亀井光

    説明員亀井光君) どういうものが起ってくるかという御質問に対して、ちょっとお答えをしかねるのでありますが、今おあげになりました事柄は、労組法上の保護を受けない争議行為に伴ってゆきまするいろいろな現象だと私は考えております。
  123. 大矢正

    大矢正君 そうすると、私が今申し上げました解雇、損害賠償、あるいは刑事上の問題というものは、あなたの言われる、あなたの解釈されている範囲内においても起ってくる事象でありますね。そうなって参りますと、これは政務次官に一応お伺いをしておきたいと思うのでありますが、今度の問題を契機として解雇の問題や、賠償の問題が起った方がよろしいとお考えになっておられるのかどうか、あるいはそういうものがない方が好ましいとお考えになっておられるのか、その点を承ってみたいと思います。
  124. 二階堂進

    説明員二階堂進君) そういう事態が起らない方が好ましいと考えております。
  125. 大矢正

    大矢正君 そうでありますと、こういう事態が起らない方が好ましいということでありますれば、なぜああいう談話を断定的に発表されるのか、私はどうも不審なんであります。ほんとうに明確な態度をもって臨もうとすれば、あなたの御存じのように、最終的には、たとえそれが労働問題であっても「裁判所が判決を下すのが正しいんでありましょうし、そういう立場が出てから労働省が、これは何と申しましょうか、俗にいう保護を受けられない争議行為になり、ひいてはそれが違法行為ともなるんだという断定をしても決しておそくないと思うのでありますが、なぜ早まって労使間の問題が解決をするかどうかというせとぎわにああいう談話を発表されるのか、そういう政治的な立場についての見解を承わってみたい。
  126. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 平和的に早く争議が解決することが望ましいと、こういうことを考えて声明を出したつもりでおります。
  127. 大矢正

    大矢正君 その問題はまたそれじゃあるとから触れさしていただきたいと思うのでありますが、政府がああいう談話を発表して、断定的な態度を表明いたしました以降、私新聞を読んでおりますと、東京新聞、あるいは朝日新聞等におきまして学者の意見というものが発表されております。十月三日の朝日新聞によりますと、一橋大学の吾妻教授が申しておりますのには、どうもこれは労働組合の負けらしい、ということはこの争議行為というものは法律保護をされない争議行為らしいという実は表明をされております。しかし、最後につけられている言葉はどういう言葉かと言えば、違法かどうかは最終的には裁判所が判断するべきことで、政府が法律上の見解からだけで割り切ってこのような警告を出すことにはどうも私としても疑問があるという言葉をつけ加えられております。それからまた、慶応大学の峯村教授は、これは何も違法行為ではないし、保護されないんだということはないということを言っておりますが、これは抜きますが、とにもかくにも学者自身がやはり疑問があるけれども、しかし、それかと言って、これをすぐ違法行為であるとか、あるいは不当労働行為として訴えることができない争議行為だという断定をした言葉というものは、今まで使っているところはどこもありません。  それから私の調べた範囲内におきましては、東京裁判所の、いわゆる判事の方々の集めた内容におきましても、一般的には違法ということは言い得るでありましょうけれども、しかし、それは内容を十二分に検討してみないと、一がいにこれは保護されない争議行為であるとか、あるいは違法行為であるという判定をすることはできないんだということを裁判所の判事も明らかに表明をいたしております。  このように考えて参りますと、どうも政府のやられることが先へ先へと進むだけでありまして、内容的には何ら意味のないものであるという感じが私は実はするのでありますが、この点についての御見解を承わってみたいと思います。
  128. 亀井光

    説明員亀井光君) 新聞紙上の論説その他学者の御意見等申されましたが、一方今回の炭労のストライキがいわゆる同情ストであるという見解を持っておられる学者もございます。これらのことは私らが法律解釈する際には一つの参考といたしまして、いろいろまた判例も最高裁の判例は別にして、各地裁、高裁等の判例につきましても、同様の立場でいろいろ検討を加えましてわれわれとしていかなる解釈が適当であるかという解釈を下して参るわけでございます。お話の中に、論説の中でございましたか、これらのことは裁判所において解釈というものは決定されるべきであるという御意見がございました。これはもちろん裁判所に訴訟として提起されました場合に、最終的な判断を下されることは裁判所であることは言うまでもございません。しかしながら、われわれは法を実施する責任を持っておるのでございます。従いまして、その法が制定の精神に従って運用されておるか、あるいは順守されておるかということにつきましては、われわれは責任と義務を持つわけでございます。従いまして、法律の行政解釈というのは、それぞれの実施を担当いたしまする所管大臣が権限を持っておるわけであります。従って、今回のこの大臣の談話もそういう趣旨で労働大臣の行政解釈というものとあわせまして、争議が平和的に早期に解決されることを念願する趣旨で両方から出されたものでありまして、私としましては、先ほどお読みになりました新聞の論説あるいは学者の御意見等もございまするが、われわれとしてはこういう解釈をとっておるということを申し上げたのでございます。
  129. 大矢正

    大矢正君 あなたの話を承わりますと、労調法労組法というものが制定された当初からこういう同情ストに似たような争議行為というものは保護をされない争議行為であり、違法行為なんだということが論議をされて、明確に盛り込まれておるというような言葉を言われるように私は聞えてならないのでありますが、もしそういうことであるならば、実際的にこの労調法制定された当時の第六条の解釈として、この制定趣旨というものは同情ストライキは一切いけないのだという立場においてこの法律の第六条を作ったのだという根拠はありますか。
  130. 亀井光

    説明員亀井光君) 先ほど申し上げましたのは、一般論を申し上げたわけでございます。同情ストにつきまして法の精神がどうだということを申し上げたわけじゃないのです。一般的な裁判所の解釈と行政解釈というものの意義を私は申し上げたのでございます。今の趣旨法律規定というものがすべての具体的な事案々々につきまして網羅的に規定をいたしますることは、これは不可能のことでございます。従いまして、法律としましてはその精神、あるいは基本的な事項につきまして規定をいたし、あとは具体的の事例事例の場合にそれぞれ判断をしていくというのがわれわれの慣行でございます。従いまして、同情ストというものが新しい形におきまして出て参ります。それが労働法に照らしてどういう争議であるかということを判断することはわれわれの当然の責任だと考えます。
  131. 大矢正

    大矢正君 念のために言っておきますが、あなたの解釈もこれは法律制定当時から同情ストライキという争議行為というものは、これは明らかに違行法為なんだという前提の上に立ってこの法律が作られたものじゃなくて、第六条が作られたものじゃなくて、こういう条文があってあとで同情ストライキというものが起きてきたから、これはどうも六条に引っかかりくさいという立場においてあなた方は判断されておるでしょう。法律を作る当時から同情ストライキというものは違法の行為であるし、だめなんだということを前提として法律ができておるものじゃないと私は思うのですが、どうですか。
  132. 亀井光

    説明員亀井光君) その通りでございまして、ただいま申し上げましたように、争議の形態というものはいろいろ新しい形で出てきておりまするが、それぞれその争議行為というものが法律上みてどう判断されるかということが行政解釈になってくるわけであります。
  133. 大矢正

    大矢正君 私は念のために申しておきたいと思うのでありますが、第六条というものは、これは争議行為というものに対する法律的な用語の説明でありまして、決してこれは同情ストライキであるとか、あるいは支援ストライキであるとかいう争議行為内容を規制した条文で私はないと思います。おそらくあなたもそう言われると思う。そうであるとするならば、この第六条をよりどころにして損害賠償の請求権があるとか、あるいはまた、首切りが行われても決して違法行為でないのだというような結論というものは生まれてこないというふうに私は考えられるわけであります。もしそういう考え方を引き出そうとするならば、裁判所へもっていってはっきりとした判決をもらった上においてそういう方向を出すべきであって、何ら裁判所において具体的な判例も出ないうちに、行政的の解釈としてあなた方が断定的の言葉を使われて、態度を表明されることについては、どうも納得いかないのでありますが、もう一回あなたの御見解を承わりたい。
  134. 亀井光

    説明員亀井光君) 今回の炭労のいわゆる同情ストに対しまして、われわれの見解がきめられましたのは、先ほど来申し上げておりますように、労組法の一条の精神から出ているわけでございます。また、裁判所の判決の関係の御意見がございましたのですが、再度繰り返して申しますならば、われわれは労組法労調法を施行する責任を持っているわけでございます。そういう建前から申しますると、この法律が法に定められておりまするところに従って運営されていくことを、われわれとして見守っていく義務があるわけでございます。そういう意味で行政解釈というものが出されるわけであります。行政解釈はそういう趣旨でございましてこれは裁判所の判決を拘束するものでは、私はないと思います。裁判所は裁判所の独自の判断で判決というものが決定されていくものと、私は考えます。
  135. 大矢正

    大矢正君 あなた方がこれは違法行為であるという断定をされたので、経営者は非常に喜んでさっそく損害賠償を請求しようというような動きが出ていることは御存じの通りであります。そこでかりに経営者が損害賠償の訴訟を起したと仮定いたしますれば、労働組合は当然黙っていないと思います。そんなばかなことはない、もちろん法廷で白黒をつけると思いますが、それだけにとどまらずして、労使の間に紛争が別な形で起き上ってくると思います。この中にはストライキも含まれると思います。こうなって参りますと、単に当時該当いたしました杵島炭鉱という一つの小さな炭鉱の労使の問題ではなくして、一たん訴訟という問題になりますると、これは全部の労働者、全部の経営者に関係することでありますから、争議が拡大することは、これは私が申し上げるまでもなく、あなたはおわかりだと思います。それからいま一つ、かりに首を切ってみても、それは不当労働行為にならないという判断をあなた方は出されておられますから、経営者がかりに首切りを通告した場合には、これまた争議が私は巻き起ると思います。このようにして争議が巻き起った場合に、炭鉱の労働組合が具体的にストライキを起した場合、このストライキというものは違法でありますか、それとも合法であるか、あなたの見解を承わっておきたい。
  136. 亀井光

    説明員亀井光君) 裁判所に損害賠償をしたからストライキをするということは、裁判所自体において労働組合は争えばいいことでございましてそういう問題だけで争議をするということにつきましては、若干私は疑義があろうと思います。
  137. 大矢正

    大矢正君 それじゃ首切りの場合はどうですか。
  138. 亀井光

    説明員亀井光君) 解雇の場合におきましては、これは労働条件、その他解雇に当るわけでありますから、これはあるいはそういうものを主体にした争議行為労組法上認められた争議行為になるかもしれない。しかし、私としてはここで断定するにつきましては、もう少し検討させていただきたいと思います。
  139. 大矢正

    大矢正君 それはあなたはそういうことを検討させてもらいたいということを言いますけれども、どうも労働組合はおそろしくてストライキができない。あなた方はこれはこういう解釈だ、これはこういう解釈だとばんばんとやられると、単に民間労働組合だけでなくして、おそらく藤田委員が公労協の問題を言うかもしれませんが、職場大会もいけない、何もいけないと、みなやるものですから、今の労働組合は何を一体基準にして、何を一体教本にしてストをやるかというと、労働省が出した通達や、談話を基準にして、それを基礎にして労働運動をやる以外に、今の労働組合は労働争議行為を起すことができない。それなのにそれをただそういう教本を出すあなた方が解釈ができないというのじゃおかしいじゃありませんか。それからもっと具体的に言えば、そもそも首切りが出て争議行為が起った原因というものは、それは杵島争議において行なった炭労の非合法ストというものが原因であるとすれば、一般的に解釈していけば、それでは首切りに対抗して行う炭鉱労働組合の争議行為も違法行為じゃないかという解釈がすぐ生まれてくるのではないかと思いますが、あなたは慎重に考えるというのですが、その辺はどうですか。
  140. 亀井光

    説明員亀井光君) それは具体的にはどの範囲のものが解雇されるかという事実が発生しなければ、その争議と同情ストとの関連性というものがはっきり断定できないのではないかと思います。
  141. 大矢正

    大矢正君 わかりました。それでは最後に一つ承わっておきたいのですが、これは思い過しかもわかりませんけれども、政府がああいう談話を発表する。そして発表するということはとりもなおさず経営者に損害賠償の請求をしなさいという示唆ではないかもしれませんけれども、することも決してこれは間違いじゃございませんというあなた方は発表をされているのでありますからして、かりに解釈すれば損害賠償を請求するための裏づけをあなた方が行なったと同様な解釈が私は生まれてくると思います。そこで炭鉱の経営者が損害賠償の訴訟をかりに起した、また、労働組合はそれはおかしいといって新たな角度からこれまた訴訟を起した将来において、このたびの争議行為というものはこれは違法行為ではないという裁判所の判決が出た場合に、あなたは政府として責任を負いますか。損害賠償の責任、労働組合の裁判における一切の責任をあなたは帯働省として負いますか、どうですか。
  142. 亀井光

    説明員亀井光君) 裁判所におきまする判決、最高裁の判決であろうと思いますが、これにつきましては政府としましてもこれを尊重していくことは当然なことだと思いますが、責任問題になりますと国家賠償法の第一条にございまするように、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を」云々ということがありますが、われわれはこの条項に当らないと思います。また、前提といたしまして裁判所におきましてもわれわれの解釈がくつがえされることがないというふうにわれわれは理解をいたします。
  143. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと私から一間だけ質問をしておきたいと思いますが、労働省の今回発表したのは当事者に対する発表でございますか、国民に対する発表でございますか、お伺いいたします。
  144. 亀井光

    説明員亀井光君) これは他の労使を含めまして全体に発表したというふうにお取りいただいてけっこうだと思います。
  145. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは法的な根拠でそういうことを言っておられると思うので、政治的に御質問申し上げますが、先ほどの近江絹糸等の場合は私が申し上げましたように、これは労使の紛争ではなくしてそうして資本家と経営者の紛争であってあれだけの損害を与えておる。こういうものに対しては労働省はどういう発表の仕方をなさろうとお考えになっておられますか。
  146. 亀井光

    説明員亀井光君) 近江絹糸の問題は、労使間の紛争とあわせまして、今お話のように経営者と他の関係との問題等も含みまして非常に複雑な争議になっておるわけでございますが、しかし、決してその中から労使関係というものの紛争がないというふうにわれわれは理解をいたしておりません。労使関係の面につきましてはもっぱら中労委において今先ほど申し上げましたように、ごあっせんが継続しておりまするし、その他の面につきましては労働大臣が目下その解決に努力をしているものでございまして、今直ちにこの問題につきまして声明を発表する云々の問題は考えていないと思います。
  147. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 大臣がおられませんからそれ以上追求できませんが、ああいう場合に当事者に対しては当事者にちゃんとその通告を労働省は出しておられる。そうしておいて今度は相手側にそのことが不当なものであれば不当である。あるいは妥当なものであるならば妥当であるということを双方が新聞等にも訴えて世論に訴えておる。そういう場合に、労働省が一方的にそういう声明を出された場合に、その紛争の最中にいずれが非常な損を受け、非常な得を受けるかという問題については御解釈は十分できた上で御発表になったものと思いますが、そうでございますか。
  148. 亀井光

    説明員亀井光君) われわれはこれの影響の利害得失を考えてこの解釈を公表したのではございません。あくまでも今度の炭労のいわゆる同情ストというものに対する法律解釈をわれわれは明確にしたのでございまして、従いまして、他の労働組合あたりが同じような行為を繰り返さないことを念願したいと、かねて先ほど来申し上げましたように、杵島炭鉱の争議が平和的に解決されることを念願いたしまして声明を出したわけでございます。
  149. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は本日は、労働行政に関する質疑を行うというのでわざわざ参ったのでございますが、ところが大臣がお見えにならない。だから政府の最高方針というものを身を入れて聞くことができない。次官や局長さんでは責任が持てないと思う、これだけ大きな問題は。御承知の通り、国が小さくて人間が多くて労働争議というものは将来の国家の運命を左右する大きな要素を持っていると私は考えている。ところが、声明を出しながら大臣の出席できないとは、委員として非常に不満である。ややもするというと、日本にはポリティシャンはあってもステーツマンがない。いわゆる詭弁を弄するところの政治家はあっても国士というものがない。ポリティシャンというものが右往左往している。この大事な委員会に出席できないということは委員として非常に不満に存じます。これは私は緑風会という立場にありましてそう思う。石田労働大臣のように、若い将来性ある政治家はこの委員会があるということは十数日前からわかっている。この大きな問題を実際ひっさげられて、なるほど議会はただいま本会議も何もありませんけれども、今日のような場合には落ちついてこれは御相談できると私は考えておる。でこの席に堂々と出て単なる局長や次官にすべての答弁をまかせるのではなくして、みずから私は労働行政の最高方針というものをお示し願いたい、かように考えております。どうか次官や局長もおられますから、私はもう少し高いところから一つ御相談を申し上げてみたいと思いましたけれども、本日は御遠慮申し上げておきますから、大臣にその旨をお伝え願いたいと思います。これは大きな問題だから、この点ぜひとも一言お伝え置き願いたいと思います。
  150. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 中山委員の御発言はもっともだと思いますしこれは当局にも警告だと思いますし、委員長に対しても警告だと思いますから、私から一言申し上げますと、ただいま御発言の通り考え方委員会を持ったわけでございます。ところが、本日になりまして不幸にして労働大臣が病気のために閣議にも出席できない、こういう通告がありましたので、他の用件であったならばいかなる問題も差しおいて本委員会に出席願うつもりでございましたが、これは病気のことでございますので、人道的な立場から今日はお休み下さることを了解いたしました次第でございます。各委員は大臣に質問をするつもりで相当な勉強をしておりますし、大臣の発言に対しまして相当な疑義を持っております。しかし、大臣のおいでにならないというのでその一端をただいま質問いたしておる次第でございますので、御了解を願いたいと思います。
  151. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 趣旨はよく大臣にもお伝えをいたします。
  152. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私も今の中山さんや委員長の発言がありましたように、今一番重要な問題は労働行政の問題、たとえば特にその中で要するに雇用問題について質問をしたい、ところが大臣がおいでにならない。  で私は次官と局長にこれに関連していま少しお尋ねをしておきたいと思います。これはあす委員会がこのため開かれるわけではございませんので、問題はこの前の雇用の関係について政府は予算上、本年度雇用の失業対策費を昨年よりか二万も減らされて、そうしてむろん予算も減らされたわけです。そこで、投資の面からいくと二兆円に上る投資があって、それが私たちの納得しない状態で経済混乱、経済回転の悪さから、投融資の停止、四千億からの停止ということになってきて、この面から失業者がどういう工合に出てくるか、われわれの想像では出てくる。だからその失業対策をどうするかということを私は質問した。ところが、今直ちにお答えすることはできませんということでありました。ところが、どうでございましょうか、われわれが委員会をやりましたあと、すぐ九月の十二日に、これは何ですか、関東の経営者協会の席に、祝辞に行かれたのか、ごあいさつに行かれたのか、私は知りさせんけれども、新聞の見出しを見ても百万の失業者が出る、ドッジラインを超す失業者にもなるのだ、こういうことを労働大臣の口から言っておられるわけです。本年の暮れから来年にかけて百万以上の失業者が出るということを、労働大臣自身の口から言っておられる、これは新聞が伝えております。そうすると、私はこの前の、この労働大臣のあいさつのときに、今日からの政府の経済政策を立てるには、労働問題を中心に政府の経済政策を立てるのだという工合に大みえを切られた。ところが、片方でこの失業者がこのように出るということを言われて三十三年度の予算編成についての御方針も出てきております。そこで、今予算編成の一番大事なときなんです。失業対策、要するに貧困者の生活救済、こういう形のものをどういう工合にお考えになっておるかということを、これは大臣に聞きたかった、ところが、大臣がお見えになりませんから、非常に残念ながら、私は次官が代理してお答え願える、こういう希望を持っておるわけです。まず第一にそれから聞かしていただきたい。
  153. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 雇用の問題は今藤田さんが申されました通り、非常に重要な問題でありますが、昭和三十三年度以降の経済五カ年計画を樹立する場合にも、雇用の問題を中心にして計画を進めつつあると私は考えておりますが、また、一面御指摘になりました通りに、最近の金融の引き締め等による影響というものも相当出てくるのではないかと私ども考えております。従いまして、政府は一面におきましては雇用の増大、あるいは完全雇用を目標として政策を立てるのだということを言いながら、一面においては金融引き締め等によって失業者がふえてきておるのではないか、この矛盾をどういうふうに解決するのかということは、私どもも非常に心配をいたしておる点でございますが、積極的に貿易の振興を行い、さらにまた、産業への融資等を行いまして、あふれて参りまする失業者を吸収するということに努力をいたさなければならぬと考えております。
  154. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それは一般論として努力をいたしますということはけっこうでございますけれども、片一方においては、労働大臣の言明をそのまま見ましても、暮れには三十万からの失業者がある、来年の学卒が三十何万で、ドッジラインより、百万を超える、こういうことを言っておられる。抽象的にそういうことだけでは、僕らはなかなか納得ができないんですよ。だから今度の予算には、どういうつもりで、この出るということをはっきり労働省が言っておられるのだから、どういう対策をとるということを私は言ってもらいたい、次官どうですか。
  155. 二階堂進

    説明員二階堂進君) これは総合的な施策をやはり行なって、失業対策というものを強力に立てなければならぬと考えておりますが、私から具体的に今大臣のお考えになっておることを申し上げることはできませんので、この点については大臣から直接お聞きを願いたいと思います。
  156. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃお気の毒ですから、その点はやめますけれども、私は意見として申し上げたいのは、労働者保護の、少くとも国家の経済政策を、労働保護というものを中心にやると言って大みえをきられた労働大臣が、総合的には私は政府の経済政策の中にそれが生きてこなければならぬと思うのです。そうすると、あなた方の直接の担当ではないかわかりませんけれども、今日における物価の値上げ問題、たとえば米を筆頭とする値上げの問題は、やはり労働者の生活に、私は窮屈な思いをさしていると思うのです。これもやはり、労働者ばかりとは限られませんけれども、総合的にそういう形の問題が、労働大臣がここでみえを切ったものが、経済政策の中で生きてくるとしたら、重要な問題だと思っております。しかし、きょうは大臣がおいでになりませんから、この問題には触れまいと思います。  そこで私はお聞きしたいのですが、雇用の問題で、たとえば日本はILOに入っております。正式理事国になっているわけです。日本は今日のように、単に名目的な失業者が今六十万が百万を超えるという、これは重要な失業者の問題です。合せて潜在失業者が、それはどこに水準を置くかによって、潜在失業者の数字も変って参りますけれども、たくさんの潜在失業者を抱えているということは、一般常識なんでございます。日本の今日の就業の形態、たとえば科学や機械の発達によって生まれてきた機械化、オートメーション化から出てくる問題を、一つ取り上げて見ましても、十人の労働者が五人でいけるようになる、十のものを、十人の労働者で作っておったものを、五人で十のものが作れるようになるという工合、もっと極端に一言えば三人で十のものが作れるようになるというふうに、今日の生産設備は近代化している。そこで、その状態から労働者がほうり出されていくという現実の問題が今日あるわけです。そこにはどういう問題が起きてくるかというと、全体の失業者の問題とあわせて、個々の企業を見ましても、そういう近代化の中から、たとえば首を切られないにしたって、補充をしないという工合にして、労働者という者の数が減っていく、結局失業者がふえていくわけです。そこで私たち考えますならば、このままの状態にほって置けば、失業者はふえるばかり、労働者の生活は困難になるばかり、これに尽きると思うのです。そこで、たとえば今日の九千万の国民、特に働く者の身体や病弱を守って、少しでもやはり福祉国家への道を進めていくというお気持があるかどうかという問題につながっている、これは社会保障関係ですから、厚生省の担当だとお言いになるかもわかりません。しかし、労働時間を短縮して、就労の機会を与える、こういう問題についてどうお考えであるか、まずその一点から聞いてみたいと思います。
  157. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 私からお答えするのはどうかと思いますが、今藤田先生のお話のように、今後の情勢といたしまして、新規労働力が毎年ここ当分は相当数の増加を示している、さらにまた御指摘のように、日本の場合には、西洋のように数字に表われた完全失業者のみでは解決できない、その裏に隠れたいわゆる不完全就業者の問題もあわせて解決しながら、さらにはまた、産業の進歩によりまする、今の近代化によりますところの、その面からくるところの雇用の総体的な減少という問題があるわけでございまして、これに対しましては、現在御承知と存じますが、これらの要素を頭に入れまして、経済企画庁を中心に長期経済計画というものを現在策定中でございます。その間における雇用の政策の一つの問題として当然時間短縮の問題をどう扱うかという問題が当然生起してくる問題であろうと考えるわけでありまして、特に非常な長時間労働等が行われておる、忙しくなれば雇用の増大という形ではなくて、非常に長時間労働という形で行われているというような形は、少くとも雇用情勢が悪くなった場合には長時間労働を一方において行いながら、一方においては整理を行うといったようなことをしてはいかがかと存ずるのでありましてやはり雇用の問題と時間短縮の問題は密接な関係があろうかと思います。今後の情勢によってそうした問題も十分検討していかなければならぬ。さらにまた、オートメーションの進展というようなことになりますと、当然こういう点については考えていかなければならぬ問題であろうと思います。
  158. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は局長にお尋ねしたいのです。昨年度は政府投資と民間投資と合せて二兆からの投資もくろみがされて、まあ四千億から提出されましたけれども、その二兆からの投資もくろみの中で失業者が二万減るという算段を立てられた。そこで学卒やその他の自然増の問題もありますけれども、自然増の問題はこれは経済回転の中に織り込まれると思いますけれども、あれだけの投資で二万くらいしか失業者を救済する手が講じられなかった今日の日本において、今日から来年度の予算をお組みになる労働省が、政府の予算をお組みになるのに、労働省としては昨年のようなことはとてもできないと日本の経済から一応見通しになれば、そこには積極的な要するに失業対策というものが今日から準備されなければ、私は予算のべースに乗ってこないと思う。だからそういう腹ごしらえはどこにあるのかということを一つお聞かせ願いたい。
  159. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今お話の中に、投資で、財政投融資で二万しかふえないというようなことでございましたが、来年度われわれの労働省といたしましては、要するに、こうした財政投融資の雇用効果ということを非常に問題にしておるわけでございまして、今回の長期経済計画の中におきましてもできるだけこの雇用効果の高いものを選んでいくというような要請をいたしておるわけでございまして、当然来年度予算等の場合にもそうした方向に持っていきたいというふうに努力いたしております。
  160. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで今の時間短縮の問題に入るのですけれども、ILOで四十時間労働制というものをきめていますね、あれについて一般的なこの近代産業、近代企業と言いますか、そういうところを別にして、そこにはどういう工合に時間短縮をお考えになっているか、それどころか、長時間労働というのは中小企業その他で数十万件の違反があるという問題があるわけですけれども、こういう問題についてどういう工合にお考えになっているか、そこもちょっと聞かしておいていただきたいと思います。
  161. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 労働時間短縮の問題につきましては、大局的に見まして漸次そのような方向に進むことが最も望ましいことであると考えております。中小企業におきましては、現在お話のように、まだ長時間労働のところも多数見受けられるのでありまするが、これは現在の日本の産業構造の特殊性に基く面も非常に多いのであります。従いまして、われわれといたしましては、先日臨時労働基準法調査会の答申の線にもありました通り、重点的に段階的に順を追うて基準法の精神にのっとって是正を求めていく、この方針で進んで参りたいと思っております。
  162. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 基準法の違反の問題は重大な問題ですから、もっと積極的に私はやってもらいたいと思うのですが、一般的に機械化、オートメーション化による時間短縮の問題というのは国際共通の問題だと私は思うのですね。だから、この時間短縮の問題が出ると、政府とは言いませんけれども、一生懸命になって資本家が時間短縮に反対しておられるということにわれわれは見受けるわけです。そうすれば時間短縮は雇用の問題と関係があって重要な問題で段階的にやっていくというけれども、現実の問題とは大分かけ離れているようなことをお答えになると思うのですが、その点どうですかね、もう少し……。
  163. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいま職業安定局長からのお答えにもありましたように、現在企画庁を中心にいたしましてこれらの労働時間の問題、それから長期的な雇用計画の問題をいかに調整していくかという点につきまして目下検討を進めておるところでございまして、この長期経済計画の一環としても雇用と時間の問題を織り込んで解決して参りたいと思っております。
  164. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも大臣がおられないから私はこの問題はこのくらいでやめますけれども、もう少し私は失業対策の問題、それから雇用政策の問題、それからここで大みえを切られる労働の問題を中心に経済を立て直すという問題と、ここで皆さん方がおきめになって大臣が言われているのだと、私はそう理解をするわけなんですが、そういう建前でやっていかれるのに、どうもこういう形で現実われわれが予想していたようなことが現われてくる。その面だけはしゃあしゃあと機会を得ておっしゃるのだけれども、ここへ来ると一生懸命やります、そんなことはありません、やりますということになるわけですけれども、その点は労働行政立場からほんとうに皆さん方は、局長さん以下の方々は純粋に労働者保護、完全雇用その他の問題でお取り組みになるのだから、その点はもっと深刻に考えていただきたいということをお願いしておきたいのです。私より以上に専門的によくお知りだと思うのです。しかし、この論議になるとどうも抽象的な御答弁をされて、それで社会的にはこういう問題がぽんぽんと出てくることじゃこれは心外なんですよ。われわれはなかなか理解できない。だからこの点は一つ今度は大臣に十分にこの問題について私らが理解いくまで話をしてもらいたいと思っておりますから、そういう点も含んでおいていただきたいと思います。次の問題に入るのですけれども、時間がもうありませんので……。
  165. 中山福藏

    ○中山福藏君 ちょつと安定局長にお尋ねいたします。  高碕企画庁長官が経済計画を、完全雇用の線を打ち出されてから相当二、三年になりますが、雇用の上昇率はどういうふうな比率になっておりますか、ちょつとお知らせ下さい。
  166. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 最近数カ年の就業者の伸びを見て参りますと、昭和二十九年におきまして四千万、昭和三十年におきまして四千百五十万、三十一年におきましては四千二百二十八万、三十二年におきまして七月ごろには四千四百万というようなことになっておりまして、約四%ないし五%程度の伸びを示しております。
  167. 中山福藏

    ○中山福藏君 その就職率で完全雇用が政府のもくろんでおりまする年数の間はでき上りますか。大体どうですかお見込みは。だいぶ少いようですからね。
  168. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) これは私から御答弁するのはいかがかと思いますが、前のいわゆる五カ年計画が経済の一様なこの一年の伸びによりまして、直ちに実はすぐ目標にほとんど接近してしまって、あるいは突破したというような、各指標がそういうような状態になりましたもので、それで新しく最近の年を基準にいたしまして新しい長期計画、昭和三十七年度を最終年度とする計画が現在策定せられておるわけでございます。その場合に雇用の問題として最も重要な問題は、先ほどもちょっと申し上げましたようにかじのとり方はいろいろあると思いますが、単に完全失業者ばかりでなくて、不完全就業者の条件をあげていく問題、これもあわせて考えにゃいけませんし、同時にまた、毎年新しい労働力として八十万ないし九十万の人間が新しく労働市場に出てくる。ここ当分はこれがそれだけずつ増大してくるということで非常な圧力となって現われるのでございまして、その際におきまして、五カ年後においてどの程度までの目標を達成し得るか、あるいは現実にこれが現在の基盤に立ってどの程度まで吸収し得るかということが現在問題になっておるわけでございます。第一次の完全雇用というものが理想の状態でございますが、第一次の三十七年度においてどの程度の目標を置いて吸収していくか、完全失業者並びに新しい新規労働力並びに不完全就業の可及的解消ということの限度、これは現在経済審議会において審議せられておる問題であります。
  169. 中山福藏

    ○中山福藏君 御承知の通り、ドイツ、アメリカ、カナダなんかはほとんど人力が足らぬですね。労働力が非常に不足しておる。ドイツなんかはまあ大へんな不足ですね。ところが、土地の広さと人間の割合とから考えてみまするとね、どうもやはり一方は政治が貧困だということになるように私は日本とこれらの国とを比較するときに考えておるのであります。向うは非常に労働力が足らずに、ことにアメリカのごときは土曜、日曜は休みですね、そしてオートメーション化というものが非常に進んでいる。しかるに労働力が足らぬ。その原因が那辺にあるか。しかし、これに反して日本のあり余った人間というものは就職できないのはどういうところに原因があるかというようなことについて相当考えになり、並びにこれに対するところのもしお考えになった労働対策というものが講ぜられておるかどうか、単に企画庁の連中にまかしておいていいものかどうか。労働省においてそういうことは御研究になっておるかどうかというようなことを一つ簡単に御答弁を願いたい。
  170. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 日本は欧米等と違いまして先生も御承知と思いますが、日本の雇用構造というものが非常に外国と違った特殊性があるわけでございまして、これはまあ今さら私から申し上げるまでもないことであります。日本の雇用問題を考える場合にも当然この特質の上に立った考え方でなければいけないので、単にまあ西欧の通りの格好でやっていくというわけには参らないかと思います。当然その点は私ども別に経済企画庁にまかせきりということじゃございませんので、労働省といたしまして、そうしたものを経済政策全般の中にそうした雇用の問題の特殊性を生かして経済政策が進められていくように労働省としては要求している、こういう状況でございます。
  171. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はどうもその、言うことはやすいけれども行うはなかなかむずかしいので、今まで私は参議院に参りましてからまあ六、七年になりまするが、どうもその間に念仏は聞いても一向極楽往生できぬというような実際感じを受けている。だから国民はこれではやり切れぬというようなことを考えさせられるわけですが、そこでそんなことを言っておってもしようがありませんから、こういうことを私ども尋ねてみたい。機械文明というものはまあ非常に人類に福祉をもたらすものだということは御承知の通りであります。しこうしてその最大要素は機械の発明です。発明というものは一方においては、その発明の行動に応じて、失業者が多数に出る、発明をするということは失業者が出るということをまず第一に頭に置いておかなければならぬと思う。だからこの発明に対する失業の数を一応予定して、これに対する失業対策というものを、この発明特許局と連絡をとって、必ずこれは準備しておく必要があると思うのです。これからますますそうなると思うのです。原子力の時代になりますと、だから、事前にすべてのちゃんと救済方針というものを立てて、ちゃんと救いの網を張っておくということは、これは必要だと思うのですね。だから将来を見通す力を持つでいるということが、行政には一番必要だと思う。見通しのない目先だけの失業対策はだめだと思うのですね。だから将来は特許局というものを非常に頭の中にお入れになって発明に対して何人失業するか、一つのブルドーザーに対して、私はこの前、肥後熊川の電力開発会社を見に行ったときに、このブルドーザー一台で一日に何人失業するかということを聞きましたところが、これは三百人の力を持っているから、三百人という労働者は要らないというのです。ところが、三百人ということに対する救済対策というものは考えておるかというと、何も考えていない。こういうことなんです。だからこういう発明に対する失業者を救済するという方針を立ててもらいたいと私どもは考えておるのですが、そういう点についてはどういうふうに御研究になっておるのですか、それは研究されておりますかどうか、一つお答えを願いたいと思います。
  172. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 個々の発明の場合もございましょうし、いろいろな近ごろ生産設備の改善その他によりまして、生産性の向上ということによりまして、実際には相対的には人がそれほど要らないというようなことになって参るわけであります。そうした生産性の向上が雇用に及ぼす影響がどうかというような点につきましては、労働省におきましても統計調査部等で毎年調査をし、研究いたしておるところでありまして、ただこの場合におきまして、生産性の向上によりまして、これが経済の発展に寄与し、経済の拡大に寄与する。従って、まあその面に新たなる雇用を吸収していくという部面も出てくるわけでございます。しかしながら、短期的にはそこに失業者が出て参る場合もあり得るのでございまして、これらにつきましてはそれぞれの対策を現在失業保険その他の制度がございますが、その程度のいわゆる摩擦的失業として済むような形に持っていくのが理想かと考えまするが、先生の今の御意見のように、発明その他の生産手段のいろいろな改善ということによりまする影響、従いまして、雇用に及ぼしまする影響というものはわれわれももっと深く研究して参りたいと思います。
  173. 中山福藏

    ○中山福藏君 それでけっこうです。まあ仕方がない。
  174. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  176. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、駐留軍の撤退に伴う労働者の失業対策に関する件を議題といたします。質疑を願います。
  177. 山本經勝

    ○山本經勝君 大へん時間がございませんので、簡単に御質問申し上げたいと思います。で調達庁の方もお見えになっておると思いますが、お答え願う方にもお願いしておきたいのですが、なるべく簡単に要点をおっしゃっていただきませんと、非常に時間がかかる。それでまず新聞で見ますというと、特需等対策連絡協議会ですか、閣内に作られております機関でも一応検討がなされて、そうして去る先月の二十四日には閣議決定もなさっておる。それから同時にまた、自民党の方でもそれに対する対策を発表になっておる、こういう状況ですが、ただこの中で問題になる多くの点がございますが、ただそこでこの前から、組合からも要求が出て、しかるべく考慮を払うものであるというお話をいただいて私も期待をしておったのですが、今度の離職者七万人に対する一人当て五万円の特別支給金の給付の問題、その他財政的な裏づけをした具体的な措置を講じてほしい、こういうことをこの前から要請をいたしております。ところが、その点については、この閣議決定の中では何ら見るべきものがありませんし、その後の動きにいたしましても非常に不活発、従って御承知のように、すでに駐留軍関係労務者はストライキに入っております。さらに明日、明後日にかけまして全国大会が持たれて、そこでさらに今後の戦う方針がきまろうとしております。ですから、こういう状態で、直接所管の調達庁としてはきわめて重大な問題であろうと私は思う。ところが、一向対策は会議また会議で進行しない。それにしびれを切らして業を煮やして労働者はストライキをやる、こういう状態に対してまず第一点御説明いただきたいのは、特需等連絡協議会並びに閣議決定の中でどういうお考えの上に立って基本的な方向をお考えになっておるのか。  それから要求になっておる五万円については、特別支給金の問題については考慮をするというお話であったのですが、遺憾ながら考慮された形勢がない、そういう点はどうなっておるのか。これをなるべく簡明にお答え願いたいのですが、まず調達庁の方からお話を願って、そうしてその次に特需等対策連絡協議会の方の経過、閣議の経過、こういうものを御説明いただきたい。
  178. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 新聞で御承知の通り、特需等対策連絡協議会におきまして五万円の点を除きまして、その他の点につきましては比較的詳細に閣議決定になった次第であります。その内容は大体御承知でございますので簡単に申し上げますが、まず第一に、私どもの考えは離職をされる方々が再び就職をされるということに努力する。また、転職等ができません方に対して、自発的に仕事をされるという方に対しましては資金その他許可、認可等につきまして、あらゆる便宜を講じまして御援助するということを中心にいたしております。なお、就職あるいは転職等の方々の便宜のために、労働省におきましては職業補導を拡充していただくとか、あるいは私どもの方におきましても、基地内におきまして職業補導を認めてもらうとかいうような方法をいたしております。  資金の点につきましては、一応大蔵省で七億程度の国民金融公庫の貸し出し余裕と申しますか、そういうものを予定いたしておりますが、しかし、これも限度をおいたわけでございませんで、これが超過いたしました場合にはなお超過してもけっこうであるというようなことであります。  国有財産その他につきましても、大きな産業の誘致あるいは企業組合等に対する払い下げ、貸し下げというようなことについても便宜をおはかりしたいというように考えております。  最後に、五万円の問題でございますが、私どもといたしましては、あくまでもやはり調達庁が労務の管理者であり、また、使用者側であるという立場に立ちまして、前からこの問題を対策の会議あるいは大蔵省当局等にも持ち出しておったのであります。私どもの持ち出しました根拠は、組合側でも話をしておられますが、一つの根拠は、今回の離職者の方々が政府の直接の雇用員であるという点、従って、一般の失業者と違うということ、もう一つの点は、終戦以来非常にこれらの方々が苦労をされまして、特に外国人の基地の中に入って苦労されたということ、この二つの点を取り上げまして私どもは五万円の点を持ち出しておったのであります。しかしながら、財政当局あるいは政府関係におきましては、政府の雇用員であるという理由によってであるならば、大体公務員と同等でいいのではないかという議論であります。公務員との比較をいたしますると、退職金におきまして勤続年数が三年六カ月くらいの程度の人で、公務員に対して一〇三%、五年の勤続年数になりますると一六七%、勤続年数が十年になりますると一七八%というように、国家公務員に比較いたしまして悪くはない。従って、一方、国家公務員には一時恩給等の恩典がありますが、他面、駐留軍の労務者におきましては失業手当というものがある。彼此勘案いたしますと、政府の直接雇用員であるという点においては、国家公務員に比較して退職金その他について劣るものでないということを言われるのであります。また、第二の点にいたしますると、これはなるほど駐留軍労務者の方々は御苦労になったけれども、第二の点については、いわゆる厚生省的の立場から考えていくべきである。そうしますと、他に幾多の敗戦による犠牲者の方々がおられる。また、国策の変更による犠牲者も多数おられる。こういう方々に対して、特に今度のような特別措置をとっておらない。しかもそれらの方々に対して特別の支給金というものが出ておるのもありまするけれども、比較いたしまして今回の離職者の方々とのつり合い、権衡ということを考えなければならない。従って、現在のところ、私どもは対策会議等で最終的の結論は出しておるわけではございませんが、現在の論拠をもちましては非常にむずかしいということであります。従いまして、私どもまだ要求を引き下げておるわけではございませんが、しかし、見通しとしましては非常に困難であるということを申し上げざるを得ないと思うのであります。
  179. 山本經勝

    ○山本經勝君 内閣官房長官はお見えになっていないので、総務部長さんがお見えになっておれば、ちょつと特需等対策連絡協議会の模様を一つお話し願いたいと思います。
  180. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 対策の内容につきましては、ただいま調達庁長官から申されたごとで大体要領は尽きていると思いますが、そういうような内容に従いまして、これは閣議決定をしてそのまま決定のし放しでは何にもならぬということで、これがそれぞれ進行し、実を結んでいくようにということで、中央地方それぞれ進めております。具体的なことは、お問いがあれば申しますが、予算の裏づけであるとか、それぞれの指令、通達等をやりまして、これにきめられた内容が、それぞれ効果をあげるような処置を引き紡ぎやっておる次第であります。なお、そういうことに対しまして、事務的に一つ能率をあけるように、また、絶えずだれか見ておる者がなければならぬということで、特に今回は特需等対策連絡協議会の下部機構といたしまして、離職者対策本部というものを設け、専任の職員配置いたしまして、関係各方面、また、離職者の側の方とも連絡をとりまして、遺漏なきを期して進めておるような次第であります。
  181. 山本經勝

    ○山本經勝君 そういたしますと、前回もこの委員会でいろいろ御質問を申し上げ、あわせて御要望も申し上げておったんですが、そうすると、今までにできたのは、いわゆる特需等連絡協議会の中か外か知りませんが、そこに離職者対策本部ができたというのですが、そのほかには、やはりできたというものはない。先ほどから伺っていると、問題は、機構をいじくってみたり、いろいろなさってはおりますが、さっぱりぴんとくる対策の中心にはなっておりません。私が伺っているのは、もう少し具体的な予算の裏づけのある問題は金なんですから、第一、五万の問題にしても、この間、前回のときに申し上げた、たとえば防衛分担金の削減がなされるであろう、当然なされるであろう。また、最近の新聞を見ましても、そういう流れに向いている。ですからそこらから浮び上るであろう予算もあれば、三十二年度の予算の中でも余っておる、こういうことになってくると思うんです。ですから、そういう金を結局振り向けて、直接労務者の安心して今後の職業の転換ができ、あるいはまた、新しい職にありつけるという具体策が講じられることこそ望ましいのではないか、たとえばそういうような離職者対策本部を作りましたと言われても、その離職者対策本部が、今から何をやろうとしているのか、そんなものができただけでは何も私は効果があがってこないと思う。問題は、具体的な予算の裏づけはどうなさったのか、閣議で決定になった中には、たとえば関係府県の、多く駐留軍労務者を抱え、あるいは離職者を抱えておる府県に対しては、特別交付税を回すというようなお話しもあるようです。そうしますと、そういうような具体的なことをここではお話し願わなければいかぬ。何べんやっても水かけ論の抽象論、こういうことでは事態は収まらないと思います。しかも日米行政協定によって、いつも言うように、日本の国民が責任を負っている。そうすると、そこにも一つの問題が残ってくる、そこで、もう少しきびきびとした対策が着々実行に移されていかなければならぬ。実行した中では、離職者対策本部ができたというに尽きると思うんです。たとえば都道府県にある従来の離職者対策本部に金がないから金を回しなさいという要望が出ている。こういうところへは、具体的には金を回すことになったのですか、ならぬのですか。
  182. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) ただいまおっしゃるような点を進めておるわけでありまして、離職者対策としては、この閣議決定になりました事項を進めるというのがその内容でありまして、今おっしゃいましたように、地方の対策本部に活動費を回すとか、あるいは補導所を新しく設け、これに何千という人間を収容して職業補導を行うということを具体的に進めておるわけであります。今おっしゃいましたこの予算の裏づけにつきましても、ごく最近に閣議の決定を見る予定で進んでおります。それからこの離職者の行います事業に対する便宜、免許可等につきましても、それぞれ関係の会議等を開いて指示し、また、それぞれの業界に対しましても要望し、これらと折衝いたしまして、大体受け入れ態勢を整えておるという段階であります。
  183. 山本經勝

    ○山本經勝君 もう一点伺っておきたいのは、労働省関係でありますが、前回のこの委員会で、駐留軍の撤退あるいは移駐等に伴なって、いわゆる不要な施設が生まれる、土地が生まれる、そうした国有財産に編入されるところの施設あるいは土地等を、離職者に対する有効利用をはかろうということで、労働大臣は、すでに知事に話しておるがということでありましたけれども、話したのではまだるっこしいし、実際に地方で問題の取扱いに困るから、具体的に文書による通牒を出してもらいたいと申し上げたら、そのようにいたします、二重というか、屋上屋を重ねます、こういうことでありました。その出された通牒はどういう内容であるか、ここで御発表願っておきたい、あるいは文書にして委員に配付を願いたい。
  184. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 通達は出したと思っておりますが、その具体的内容については、局長から申し上げます。
  185. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) この前、大臣からお話し申し上げました各都道府県知事に対する通達につきましては、全般の問題でもございますので、総務長官の方から、九月三十日にその旨のことが出されまして、追いかけまして職業安定局長名をもって、さらに詳細な内容につきまして、労働省関係のことにつきましては通達をいたしたわけでございますが、先ほど総務副長官からお話がありましたように、あるいは産業誘致計画にいたしましても、都道府県離職対策本部におきまして、その総合的、具体的対策を立てると同時に、副長官からお話のありました対策推進本部、これが直接それの相談に当り、推進に努力する、こういうふうな建前になっております。
  186. 山本經勝

    ○山本經勝君 続いて、労働省に伺っておきたいんですが、労働省としては、常に駐留軍労務者がストライキをやっております、あるいはさらに強力な統一闘争をやろうというようなことを聞いたんですが、この争議は見送りなんですか。次官からお答え願っておきたいんですが。
  187. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 安定局長から答弁させます。
  188. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 実はほとんど毎日のように私は駐留軍組合の方々とも会っておりまして、お話もいたしておるわけでございまして、現在一番私どもに対して要望されておりますのは、実は転換のための職業補導施設の問題でございます。そこで、われわれといたしましては、現在までのところ、職業補導施設に入っておりますのは、千二、三百人くらいおるのでございますが、これを大幅に拡張いたしたい。しかも従来の補導所だけでは、地理的関係その他でも、利用不可能な所もありますので、臨時の補導所も作っていくということで、約四千四、五百人程度の補導、これは全体の現在の補導所でいえば、二割くらいの率に当るわけでございますが、その程度のものをこの年度内に吸収できるということで、現在計画を進めておりまして、一両日中にその予算の裏づけができるというふうになっておるような状況でございまして、その点につきましては組合等にも連絡をとっておりますが、東京都等におきましても、すでに十月一日には、一番要望の差しあたりのあれといたしまして、百人程度入所せしめておるというような状況であります。
  189. 山本經勝

    ○山本經勝君 次に、続いてお伺いしておきたいんですが、大体府層別に見ますとどういう数字になるか、これは調達庁の方にも、後に資料で要求をしておきたいんですが、府県別の今度の離職者が全国で六万六千と、駐留軍関係の三千何がしを含めまして、約七万人が対象になる。その七万人の離職者の中で、関係府県別の数と、それからもう一つ駐留軍の撤退もしくは移駐に伴って不要の施設となって返還された、あるいは返還される土地、建物、あるいはそこにある施設、こういったものの実態が明らかでない。ですから少くともこの間も労働大臣に対しまして質問申しまして、その他要望も申し上げたわけでありますが、結局駐留軍労務者の行き場としては、このところ職業のあっせんだの、補導だのと言ってみても、しょせんは彌縫策にすぎないかと思うのです。そこで、何らか新しい方法と言えば、やはり呉の例もありますし、これら返還される国有財産の有効利用ということが一番手っ取り早い。しかもこれは地方の産業にも大きな影響を与えるのであるから、そこのところに重点が根本問題としてあると思うのです。ですから、そういうものをこの委員会としてはやはりこの委員会として取り上げて参る。ですから、これらに対する審査を進めるためについて必要な資料もない。で、今申し上げたような資料、特に撤退に伴う返還施設の規模、構造、それからその帰属、たとえば国有であるか、あるいは地方公共団体のであるのか、公有であるのか、あるいは私有であるのか、あるいはまた、施設等がいろいろな機械や機具や施設があったのですが、それは一応軍のものですから、売却をしていると聞いているのですが、それは調達庁に一応返って、何か通産省の方に売却をされるか、払い下げられるという話も聞いております。だとすると、そういう具体的な資料がなければ、国がやっている政策が適切なものであるかどうかがわからない。地方公共団体に対しましても、それに対する具体的な指示がよしあっても、どうなるかということが……私福岡で聞いてみますと、出先の調達局も困っている。あるいは国有財産を管理しております財務局にしましても、どうしていいのかわからない。あるいはまた、当該市、あるいは県にしても、見当がつかぬ状態にあると思うのです。企画室等で一応それの有効利用について企画をやりつつある。ところが、それが一向進まぬものですから、こういう紛争が起ろうとしている。しかもそれは国がやはりその責任において処理しなければならぬ自分の雇用労働者の争議なのですから、労働省としては直接これは手がけていかなければならぬ問題だろうと思う。私は局長でなくて、次官の方から、このことについてはどういうふうに対処したいというお考えが一応おありと思いますから、伺っておきたい。
  190. 二階堂進

    説明員二階堂進君) この前、労働大臣も説明された通りに、国有財産の返還等、あるいはまた、工場誘致等を行なって離職者の対策を強力に推進したい。そのためにはやはり府県でそれぞれの具体的な転換対策とか、あるいは国有財産等の使用対策というものをば中央の方に出していただきたい、それによって、それぞれ各官庁とも連絡をとって、金融的な措置なり、あるいは返還等についての措置等をやりたい、こういうふうなことを御発言になっているように記憶いたしておりますが、そういう計画をば、具体的に——地元にそれぞれ特殊な事情もあるだろうと思っておりますから、その地元の方から具体的な計画を出されるのが先決である。それに基いて適当な措置を行いたい、こういうことを発言されていると記憶いたしておりますが、その通りに推進するつもりでおります。
  191. 山本經勝

    ○山本經勝君 いや、労働政務次官に伺っているのはそうじゃない。現に争議になろうとしている、大規模な全国争議になろうとしている。そのままでいいのですかということを伺っているのです。すると、おさめるためにはどうしなければならぬかということが労働省の問題ではないかと思うのですよ。その基本問題である雇用関係を結んでいる調達庁は、そういう事態なり、あるいは国全体、あるいは政府全体の責任において、アメリカとの、いい悪いは別問題として、一応行政協定なる協定がある。それによってやっているのですから、その国際関係も私は生まれると思うのですが、そういう状態に対処する十分な対策がどうも一向に進行しない。進行しないところにこの争議が起っておると、私は観察するのですが、そうしますと、争議をさしあたりおさめる方法が必要だろうと思う。およそこの委員会で論議されていることが、あすの大会に私は反映するであろうと思う。するとその結果が、あるいは争議の全面的な統一行動、統一ストライキは避けられない事態になるかもしれない。そうしますと、非常に私はこれは追い詰められた形になってくると思う。ですから、そういう状態に対処する労働省なり、あるいは調達庁なりの腹がまえ、あるいは対策というものがすでに立てられておらないというと、混乱が起るのではありませんかと申し上げている。そこら辺を一つ御回答願っておいていただきたい。それはしようがないのですよ。ストライキをやっているのですから、見送りになるということなんですか。それをとめるためには、あの要求が何らかの形で満たされなきゃならぬというのが必要だと思う。なかんずくこの問題は大きな問題でしょうが、一応閣議決定も見ているのですから、これはおよそどういうふうにして、いつ推進ができて、具体的な成果をあげることができるのかということになってくると思う。
  192. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) あした、あさって、大会が開かれるわけでございますが、私どもといたしましては、この閣議決定になりました離職者の対策につきまして、今総務副長官からお話申し上げました通り、具体的に各項目を取り上げ、また、各県とも、あるいは離職者の方々とも連絡を取りながら、個々の問題について推進をして参りたい。でありまするから、第一には、やはり離職された方々が就職をされる、再就職をされるということ、これは労働省の方におかれまして、各個人個人について職業安定所がやっていかれる、あるいは私どもの方におきましては、各県々々、あるいは各基地各基地ごとの個々の事情を伺いまして、そうして個々の件について各省に主張すべきものは各省に要請をいたし、解決をはかっていこうという考えでございます。
  193. 山本經勝

    ○山本經勝君 解決をはかろうという心持がないとは私は申し上げていない。ただ起る事態が切迫しているのですよ。それに対処する政府の態度があまりにもなまぬるいから——なまぬるっこいのでこういう事態がますます紛糾するのではないか。そのことが政府自身の責任でもあるのじゃありませんかということを伺っている。ですから、もう少し具体的な進み方、たとえばこの予算等についてお考えがあろうと思う。あるいは特別交付税によって府県に対してまかなうということについても、一応予算がなければ……、それはばく然と要るものはやりましょうということなんですか。そうじゃないのですか。そこら辺の見当がついてこないと、今後の離職者対策なるものは中身がない、いわゆる空理空論になってしまうということを私は申し上げている。どうなんですか。
  194. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 予算につきましては、先般来大蔵省と折衝を続けて参りまして、労働省、調達庁、あるいは自治庁になりまするか、きわめて最近の機会、最近の日に、予備費の支出の額の決定がなされる予定でございます。額につきましての最終決定は、来週早々に行われるのじゃないかと思っております。
  195. 山本經勝

    ○山本經勝君 その額は大体わかっているのですか。ここでその額をえらい秘密にしておって、取っときにせんならん理由もないと思うのです。やはりおよそ何ぼくらい要求しているのだという話をちょっとしていただかないと、そういうような具体的なやつが出ないと、事態が紛糾する一方なんですよ。それを私は申し上げたい。ですから、少くとも予算を要求されるのには、何ぼか金が要るから出してくれと、こういう話ではないと思う。およそこれくらいの金が要るのだ、たとえば職業補導にはこれ、あるいはまた、この企業の育成、つまり離職者の企業組合等を作るについての、それを育成するというわけですが、別に金融のワクも必要であります。それに振り向ける金はおよそこういうものであろうというような、大体のおよそこまかな具体案ができておらなきゃならぬと思う。それを言ってもらわぬことには、大ざっぱな話で、さっぱり中身がないということを申し上げているのです。どうですか。そこら辺もう少し突っ込んだ話をしてもらわなければ……。
  196. 上村健太郎

    説明員上村健太郎君) 調達庁に関しまする限りは、基地内の職業補導の費用を要求いたしております。しかし、詳細の最後の額につきましては、大蔵省となお相当意見の違いがございます。労働省関係の予算の御折衝も伺っておりまするが、しかし、これも大蔵省と最後の決定の段階まで至っておりませんので、私どもと労働省、あるいは自治庁と合計いたしましてどの程度の単位になりまするか、ちょっと今のところ申し上げかねると思うのであります。
  197. 山本經勝

    ○山本經勝君 特需等対策連絡協議会の方はどうなっているんですか、今のようなたとえばお話では、全くでたらめなんです。いいかげんなことを言っておられるとしか受け取れぬ。しかも需要の計がこれこれであるという線は、私は出ておるはずなんですよ。そうすると、それを大蔵省に要求し、それを実現するためには私どもも協力してもいいわけなんです。月曜の日に私どもは回ろうと思う。実際にそこまで考えておる。私どもをむしろあなたたちは敵のごとく考えておられやせんか、いやしくも労働委員会委員は、やはり労働問題については真剣に考えている。ですから、今のようないいかげんなごまかしじゃなくて、およそこういう予算を要求なさっておる、このくらい必要であるという額が出ておるはずなんです。それがなかったら大蔵省と何を話せますか。
  198. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) やはり私が申し上げてもおしかりをこうむるかもしれませんが、私は実は詳細な数字は承知しておりませんが、労働省並びに調達庁から大蔵省に要求をしておりまして、今まあ非常にデリケートな最後の折衝の段階に来ているので、実はここで公開と申しますか、ここの席で幾ら幾ら要求して大蔵省がぐずぐず言っておるということを労働省も調達庁もちょつと申し上げかねるだろうと思います。これはしかし、後ほどでもお話し合いを願えればけっこうだと思いますが、大体は職業補導所に関する補助を出してくれということを言うておるのであります。これもまあ従来の補助の率はございますが、今回は特別に高率の補助をしてくれということを言うておられるはずであります。それから地方の対策本部に対しても、これは建前としては、そういう地方の対策本部に国が補助をするとか、今回の仕事を委託するという形は異例であるということが大蔵省の解釈のようでありますが、しかし、今回は特別であるから、これは一つ見てもらいたいという要求を今強くしているところであります。  それから企業育成についての金融につきましては、先ほど調達庁長官からもお話しがございましたが、大体政府関係の金融機関でできるだけめんどうを見る、それについて一応調達庁ではじいたところでは七億くらいという金額が出ておりまして、大蔵省でもその程度のことを了承している。ただし、これは別にそこでワクを設けるわけじゃない。具体的に必要であり、しかも融資できるというものであればそのワクを超過することもあり得るというふうな話し合いをしているわけでありまして、今折衝中の数字については後ほどお聞き取り願いたいと思います。
  199. 山本經勝

    ○山本經勝君 労働省の方で要求されているのは、どうもけじめのない話ですが、労働省としてはどういう……。
  200. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今副長官からお話しになりましたように、実はこの委員会が終りますとまた私は大蔵省に交渉に行って、今詰めている真最中でございますので、特にその問題点は、今副長官からお話しになりましたように、実は補助率をどうみるかというような問題に詰まってきておりますが、先ほど申し上げましたように、計画といたしましては、約全体のワクが四千人を補導していく、こういうことでございます。新たにやっていくというものでございます。それで、その内容といたしましては、現在の既設の補導所に吸収していく分としては、それはそのために特にあけているわけでございます。これが約千六百でございます。それから定員をふやしまして入れる分が六百七十五人、それから新たに今度は夜間補導ないしは昼間の臨時の補導所を作っていく、これに対して千二百二十、そのほかに調達庁関係で基地内と連絡をとりまして、そのうちの一部は、このほかに五百程度を基地内でやっていただくというような計画で大蔵省と話をいたしております。
  201. 山本經勝

    ○山本經勝君 時間がないからもう一、二点だけ御質問いたしますが、この新聞の記事を見ますと、自民党の駐留軍労務者失業対策特別委員会というのがある、そこで発表しているのでは、たとえば自立更生の施策として七億円の予算を組もうと言っている、あるいは関係府県に対する財政援助として特別交付税を回そうというように具体的に言っているのですが、与党、つまり政府の与党である自民党でもそういう具体的な案を考えている。ところが、直接管理をしておられる政府当局ではそれが言えない。どうもよりあいまいであったり、これは全くおかしい、どうですか、その点、総額について大よそどれくらいのものを要求する予算の総額、そうしてどういう規模において支出されるべきであるという考え方も私はあると思うんですが、それはどうしても言えないのですか。
  202. 二階堂進

    説明員二階堂進君) 先ほどからの藤原副長官も申されましたように、今折衝中でありますし、また、この委員会で公けにお話し申し上げるのもどうかと思いますので、あとでちょつと御懇談申し上げてみたいと思いますが、御了承願いたいと思います。
  203. 山本經勝

    ○山本經勝君 それじゃその点一応了承いたしまして、あとで一つお伺いいたしたいと思います。  それからもう一点は、先ほど申し上げました資料の要求と関連するのですが、具体的な計画を関係府県で組み立てるということが要請をされている、この間の大臣のお話しのように、具体的な離職者就職対策を、たとえば国有の財産の有効利用等を含めて企画をして、それを持ってきなさい、それを持ってきたら考えますよと言われたのですが、それは素手では私はできぬと思う。相当にいわゆる国の投融資を用意をするか、あるいは企業誘致等についても必要な、呉の例を引いても企業を誘致するために工業用水を引っぱった、これは国がなさったんでしょう。そうすると、そういうものに金が要るんです。そこに問題があるんです。およそこれくらいの金はこれこれに振り向ける、新聞を見ますというと、防衛分担金の削除をして、それを引き当てるということも言われているんですが、防衛分担金の交渉は今からという。いつごろ片づくかわからぬ。来年の二、三月ごろになるのじゃないかと私は思うが、それほど長くかからぬにしても急速の間に合わない。そうすると、そういう状態で引っぱり引っぱり延ばされたのでは、無限に離職をしていく人たちの不安なり生活問題が起ってくる。しかもそれが少数でない、七万人、それにまた、特需等の問題であとで藤田さんが質問をするようでありますが、その問題もあわせて考えるというと、これはきわめて重要な問題です。十万になんなんとする失業対策の緊急問題であると思うのですが、そこで、これは二階堂政務次官の方で一応考えている具体的な構想の筋だけでもきょうお聞かせを願いたいと思います。何らかの方法で駐留軍労務者のストライキというものもとめなければならぬ、しかし、こういう形では不満はますます爆発する一方だ、それはストライキ、ストライキでよろしいのだというお考えならいいですが、それはやはり先ほどから申し上げますように、重大な問題を惹起する心配があるからよろしく政府当局としてはお考えになる必要があろうということを申し上げておるのです。
  204. 二階堂進

    説明員二階堂進君) これはお説の通り、非常に急を要する問題であることは、申し上げるまでもないのでありまして、ただこの対策につきましては、閣議決定になりました具体的な要綱を、一面におきましては急速に、関係を持っております各省とも協力をいたしまして実施していくということが一つであろうかと思っております。また、一方におきましては、先ほどお述べになりましたような具体的な対策の裏づけ、金融等の裏づけも大蔵省等とも強力に一つ折衝をして、具体的な解決をはかることに努力をしていくよりほかに道がないと思っておりますが、これらの具体的な措置については大臣からも詳細にはまだ承わっておりませんので、はなはだ申しわけございませんが、ここではっきり私から申し上げることはできないわけでございます。
  205. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 特需の問題について少しお聞きしたいのです。この相模工業が千四百六十八人ですか、日本製鋼の赤羽工場が千四百四十五人、それから日本飛行機の立川工場ですか、これが二百五人、この整理が九月にこれは出ておるわけですけれども、こういう工合にして特需の労働者が、順次整理をされていって、片方ではふえているところもあるわけですね。ことしの初めだったと思いますが、昭和飛行機工場のやはりこういう首切りがあって、ほかの方でふえておる、その合同委員会で、要するに関係する委員会で調整ができないのかどうかという問題がこの前問題になりましてそこでまあ問題が起きてくるのは、たとえばこの駐留軍労務者の身分の保障、特需労働者の身分の保障という問題が起きてくるわけですね。今の特需労働者のたとえば退職金の点一つを取り上げてみても、駐留軍とはだいぶ幅があるから低い、こういう問題があります。もっと深く入っていきますと、整理のときに雇用関係で予告手当を出す、その予告手当の経費がないから、その他の手当を削減して予告手当を出す、こういうことになっているということを聞くわけです。そうすると、軍の施設の中で働いている人たち自身は、駐留軍労務者と同じような環境、参条件で働いているが、待遇は違う、そうして整理のときにも問題が起きる、こういうことで、この前、労働大臣にお尋ねをしたときは、特需の労働者の問題は重要な問題だからできるだけ積極的にやるのだということを言っておられましたが、一体そこのところはどういうふうに御処置をなされるのか。たとえば失業対策問題も重要な問題として出て参ります。しそういう点この前、大臣は、これは重要な間髪だから積極的にやられるということのお話でありましたから、ちょっとお聞かせを願いたい。関連して特需労働者の特需契約その他の関連について副長官の方からお話を願いたい。
  206. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今お話のございました相模工業の大量解雇並びに日本製鋼の赤羽工場のことにつきましては、御指摘のような数字が、相模工業におきましては、十月十五日、それから鉄鋼の赤羽につきましても大量整理になっておるのであります。この特需の一方におきましては、藤田さん御指摘になりましたように、他方においてはふえておる、さようなところもございますので、この特需契約の根本的なあり方につきましては、相当検討を要すべき点であろうと思います。さしあたり私どもの所管いたします相模工業の整理の問題につきましては、現在こういう措置をとっておるわけでございます。  九月にあの整理が発表されましてから、組合自体としては整理反対闘争をやっておりましたけれども、組合とも話し合いをいろいろいたしまして九月三十日以降、会社の中に職業相談所を開設いたしまして職員五名を派遣いたしまして、現在職業相談の実施中でございます。十月一日以降、会社並びに安定所、組合三者で毎週一回の情報交換会を行いますと同時に、九月以来神奈川県その他におきまするところの雇用主、事業主の懇談会を開催いたしまして、求人の開拓中でございます。現在大体千人程度の求人になる見込みでございます。特に相模工業の方につきましては、非常に技術の優秀な人が多いものですから、馬力をかければ相当程度のあっせんが可能かと思うのでありますが、職業別に見ますと、千四百人程度のうち、九百人が神奈川の人で、東京が約四百人、その他山梨、埼玉がおりますが、現在におきましては、職業相談と求人の開拓を実施中ということでございます。私どもは全般的な特需会社の整理者につきましても、私は、先般の閣議決定で、当然駐留軍の労務者と同様に処置するということになっておりますので、あわせてそういう対策を講じていきたいと考えております。
  207. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 特需関係の労務者が、直接の駐留軍労務者に比べて解雇等の場合に非常に条件が悪いというお気の毒な立場にあることは事実でありまして、このことにつきましては、何分労務条件が日本側の軍需会社当局との間の契約になっておる、また、会社と米軍との間の契約になっており、間接になっておる関係で非常に予告手当等が出されないというような実情になっておるわけでありますから、これを会社と米軍との間の契約の際に、勧告に、予告手当等を含むような契約をするということをかねがね要望もあり、当然なことであるということで、昨年この日米合同委員会でこの問題を取り上げまして、予告手当を含むような契約をするようにという勧告を合同委員会の名前において出したわけであります。その勧告通りいっておればこういうことは起らぬわけでありますが、これはまあ米軍の方のことでありますけれども、勧告通りに契約に際して、その予告手当を含んだ単価を認めておる所もあるし、認めていない相手方、米軍の取扱いと言いますか、これは陸軍、海軍、空軍によって違うのかもしれませんが、勧告通りやっていないところがある。それが相当多い。それがまあ今回の相模の場合あるいは赤羽日鋼に出ておるのじゃないかと思います。これは一つぜひこの勧告を尊重して実施してもらいたいということで、最近相模工業の問題が起きましてからも合同委員会でこの話を持ち出しまして、さらにこれを要求をしておるわけであります。まだそれでも不十分であるということで、いろいろ組合の方からも要望がございまして、私どもももっともだと思いますので、これがほんとうにその実現を見るようにもっと推進したいと考えまして、特需等連絡会議でも取り上げて推進の方策について、実は明日にでも相談しようかという予定にしております。
  208. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、予告の問題は勧告通りにさすように早急にやるということですね。特需委員会でも取り上げてやる。そういう工合に理解してよろしゅうございますね。これは実現の問題はどうですか。
  209. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) これは特需連絡会議においても努力しますし、日本政府として、外務省としても非常に力を入れてやっておるのでありますが、ただその実現の可能性ということになりますと、米軍のことであり、どうしても勧告を聞かない場合にどうするかというふうになるわけなんで、まあだんだんと強い要望は出しておりますが、はっきりここで可能性は大丈夫だということも、今の段階ではちょっと申し上げかねる次第でありますが、できるだけの努力をするということを申し上げておきます。
  210. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もしもその不安のあった場合には、契約は米軍、会社、労働者ですから、会社が責任を持ってその処置をするということではどうですか。
  211. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) これは会社と組合との関係になろうと思いますが、会社が力がある場合は、これは会社においてもできるだけの負担はすべきだと思いますけれども、多くの場合どうもその点がどうかと、まあこれはケースによっていろいろ違うと思いますが、会社にそれだけの余力のないのもある。ほんとうにその労務賃の歩合を取っておるだけのような会社もあるようであります。一律には申されぬと思います。しかし、会社としても、できるだけの努力をするのは当然だと思います。
  212. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 会社も利益を受けてそれをやっているんだから、こういう場合には雇用関係に会社と労働者があるわけですね。まあ関連して米軍ですけれども、直接には会社に雇われているというのでありますから、会社がやはり責任を持ってやらすようにこれは政府としては、まあ米軍に予算を組ますということが第一でありますけれども、どうしてもいけない場合には、そういう工合に、会社に責任を持たして処置をするという工合に一つやってもらいたいと思う。  それから第二の問題は、退職金の問題ですね。特需委員会ですか、今百田さんの言われた特需委員会で、駐留軍労務者と同等に扱う、駐留軍労務者と同等の待遇をするということは、その退職金の問題も含んでいるのですか。
  213. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) 退職金の問題ではなくして、離職対策としては、対策全般としましては、先般決定しましたこれをそのまま特需労働者にも適用する、こういう意味で申し上げたのであります。
  214. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大体、ではその退職金を同等に扱うというまあ要求をして交渉されているようですけれども、なかなかはかどっていないんだが、そういう問題についてはどうですか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  215. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) これもしかしすぐ日本政府がとかあるいは連絡会議で労働省が——退職金そのものを同等にということは、要するに差額を埋めるということだろうと思いますが、これはちょつと直ちには連絡はつかないんじゃないかと思います。先ほど、会社が直接の相手方であるから会社になるべく責任を持たせるという行き方がいいんじゃないかというお話がございましたが、実は私どもも、そのこともありますし、また、これはその退職金あるいは予告手当の問題のみならず、その会社がさらに民需に転換して離職者を収容できる行き方はないか、そういうことについてはできるだけ連絡会議でもお手伝いをしようということで、会社の方を呼んで事情を聞くことにしております。しかし、会社にそれだけの力があるかないかということも問題でありますから、今ここで私からどうこう申されませんが、できるだけ事情を聞いて一つうまくいくように指導したいと思っております。
  216. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今駐留軍労務者の更生資金の関係の問題が出ていますね、この関係については、先ほどお話がありましたけれども、駐留軍労務者とこういう関係については、特需労働者の今度の整理の方々も同じように扱われるわけですね。
  217. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) そうです。
  218. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 たとえば更生資金その他の一切の問題は、失業対策とあわせてこの問題を同等に扱う、こういう工合に確認していいわけですね、そうすると、問題として残るのは、予告手当の問題は今そういう工合にして積極的におやりになる、それから更生資金その他の問題については同等にお扱いになる、残るのは退職金の問題、これが一つ残るわけですね。それからもう一つはやっぱり特需に対する発注のコントロールの問題が残るわけです。だから、そのためにこっちをふやしてこっちは首切るというようなことでは、やっぱりこの前からこれは問題になっているんだが、適切な機関として日米合同委員会、そこらでその問題の処理というものはどうなんですか、できないんですか。
  219. 藤原節夫

    説明員藤原節夫君) これはもう確かにそれは大きな問題でありますし、特需連絡会議なんというものも、むしろそういうことで初め出発したんだろうと思うのでございますが、まあそこは通産省あたりでもできるだけ努力しておるわけでありますけれども、従来からこれにつきましては、合同委員会の下部機関の調達調整委員会というものでまあやっておるわけであります。これに対して再三申し入れもしておる、さらに今後もそういうような特需の調整という点についても、さらに一そう効果あらしめるように進めていきたいと思っております。
  220. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この特需の今の最後の問題はいつもここで問題になるわけですからね、コントロールという問題は。だからこれはほんとうに政府もいろいろその発注の品物が違ったりする場合は、これは特殊技能ですからすぐこっちというわけには——設備から変えていかなければなりませんから、それはできませんけれども、同じような要するに品物を発注、修理——たとえば自動車の修理のような場合、同じ修理の条件でちょつと離れたところで、向うのものとこっちのものとによって首切りの問題が起きるというのは——これはこの委員会私はあんまり長くは経験ありませんけれども、昭和飛行機のときにこの問題は深刻な問題としてわれわれは考えておった。だからぜひこの問題は努力をしていただきたいと思うんです。それからまあ退職金の問題についてもですね、やはり同じ式で、同じ環境の中で働いている人が、片方は退職金が安い、片方は、ということじゃあそれはなかなか労働者としては納得せない問題ですから、これは何といっても利益をあげている会社もあるわけですから、会社が私は労働者との契約については責任をもって労働者の要求を満たすように、むしろ駐留軍、軍の方へですよ、軍の方に私は強硬に会社が交渉して労働者を守っていくと、少くともこの駐留軍労務者の何まで守っていくという工合に、政府の方で会社の方にそういう指導をされることが第一じゃないか、まあこういう工合に特に感じますので、この点特に希望を、要望を強く申し上げておきます。
  221. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会