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1957-04-22 第26回国会 参議院 社会労働・法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十二日(月曜日)    午前十一時三十四分開会   —————————————  委員氏名   社会労働委員    委員長     千葉  信君    理事      榊原  亨君    理事      高野 一夫君    理事      山本 經勝君    理事      早川 愼一君            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            小滝  彬君            鈴木 万平君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            横山 フク君            片岡 文重君            久保  等君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   法務委員    委員長     山本 米治君    理事      雨森 常夫君    理事      一松 定吉君    理事      棚橋 小虎君            青山 正一君            井上 知治君            大谷 瑩潤君            小林 武治君            郡  祐一君            西郷吉之助君            田中 啓一君            吉野 信次君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            河合 義一君            小酒井義男君            後藤 文夫君            宮城タマヨ君            辻  武寿君   —————————————  出席者は左の通り。   社会労働委員    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            山本 經勝君    委員            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            谷口弥三郎君            横山 フク君            片岡 文重君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            山下 義信君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   法務委員    委員長     山本 米治君    理事            雨森 常夫君            棚橋 小虎君    委員            大谷 瑩潤君            加藤シヅエ君            河合 義一君            宮城タマヨ君            後藤 文夫君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○旅館業法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————    〔社会労働委員長千葉信委員長席に着く〕
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) これより社会労働法務連合審査会を開会いたします。前例によりまして、私が連合審査会委員長の職を勤めさせていただきます。  旅館業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。
  4. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 本案の改正のねらいの一つは、旅館業によって善良風俗が害されることがないように、必要な規制を加えるということにあるのでありますが、その風俗取締りのために警察権の活用ということを考慮しないのはどういうわけであるか。かような取締り措置をするためには、すなわち、善良風俗を維持するというその目的を達成するためには、やはり警察権取締りということがなければ、その目的を達せられないと思うのでありますが、この措置の講じてないのはどういわけか。
  5. 神田博

    国務大臣神田博君) 旅館業法の今 回の改正につきまして、旅館業によって善良風俗が害されないようにしたい、こういう趣旨立法を進めて参ったわけでございますが、警察権をなぜ一つ介入させないかというお尋ねのようでございまして、警察権介入させるかどうかということにつきましては、いろいろ実は議論もございまして、法務省、あるいは警察関係ともいろいろお打ち合せいたしたわけでございますが、この旅館業法の中に警察権取締りを入れるということは少し行過ぎになりはしないだろうか、こういうような考え方にまとまりまして、他の方から取締りをするが、この法としてはこういった権力的なことを、警察権の権力的なことをやらないで、厚生省関係、府県の方の関係一つやつて参りたいと、こういうように思ったわけでございます。
  6. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 警察による取締りということはできるだけこれは避けたいというお考えはごもっともだと思うのでありますが、しかし、善良風俗が害されることを防止するということが目的である以上、ただその構造とか設備とか、そういうようなことだけでもって、果してそういう目的が達せられるかどうか。善良風俗を害されなようにするという目的がすでにある以上は、やはりそれを最も有効にそういう効果をねらうことができるようになくちゃならないと思うのですが、単に構造施設をこういうふうにしろという命令だけでもって、そういう規定だけで目的が達せられるというふうにお考えになっておりますか、どうか、その点を……。
  7. 神田博

    国務大臣神田博君) お尋ねの御趣旨はごもっともなんでありますが、旅館業取締り警察権が入って参りますると、これはなかなかむずかしいことでございまして、その判断の対象となることがむずかしいことでございまして、一応今この改正案にもございますように、施設等の面を一つ重く見て、その方でそういうような善良風俗が害されないようにやって参りたい。疑わしいというようなことで、すぐ警察権が入って参りますと、むしろ善良関係が、間々何と言いましょうか、萎縮すると言いましょうか、不当に取り締られるおそれがあるというようなことを考えますと、そういう取締りの問題は、もちろんこれは他のことで取り締らなければならないことは当然でございますが、旅館業法そのものでやって参りますると、かえって弊害考えられるのではないだろうか、こういうような意見がだいぶ強くなって参りまして、旅館業法としては、一つ施設の面で十分考えて参りたい、そういうことがあれば営業取り消しをする、そういうような行政措置の罰則で一ついったらどうだろうか。善良宿泊者がおびえてしまうというようなことがあってはならない。また、間々取締りが間違って行われたり、あるいは他の意図をもってこの旅館業法のそういう規定を運用されると、解釈のしよう、運用のしようによっては、むしろ善良風俗がそのことによってはなはだ乱されはしないだろうか、こういうような議論もございまして、一応この中には警察権介入はしない方がよろしい、こういう政府部内の一致した意見でありまして、一応こういう結論になったわけであります。
  8. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 戦前などやはり警察臨検というようなことをやって、ずいぶん弊害もその間にはないこともなかったと思うのでありますが、しかし、戦前風俗というような点から申しますれば、今日に比べればはるかに健全であったと思うのでありますが、今日の一般のこういう方面風俗の何と言いますか、乱れておることは戦前と比較にならないようになっておる。それであるにもかかわらず、警察権というものの介入を全然やめてしまって、そうして果してこの立法目的が、単にこれだけでもって達せられるというふうにお考えになりますかどうか、その点を一つ確信のほどをお伺いしたいと思います。
  9. 神田博

    国務大臣神田博君) お尋ねもっともでございまして、これで十分な確信があるかと、こう言われますと、いささかじくじたることもこれはあるわけでございますが、特に臨検警察権介入しなかったということは、ただいま申し上げましたように、旅館業法にそういう規定を入れることによっていろいろの臨検等に利用される、過去においていろいろ弊害のあったことは、今棚橋先生もお述べになられたようなことでございまして、これは別に警察権を疑うとか何とかいうことではございませんが、いろいろなことで、過去に苦しい経験がございまして、警察側といたしましても、そういうようなことについて、今一応一つこの旅館業法改正で見守ってみようじゃないか。まあ私ども厚生当局といたしましても、今野放しになっておるのを、一つこの程度で監視をしていこうじゃないか。業者にとって一番痛いことは、営業取り消しが一番痛いことでございます。それからまた、擬装転業等につきましてもこれで一つ取り締っていく。ことにそういった風俗犯を犯した者については旅館業としての許可を与えない、こういうような、とにかく死活問題と言うべき許可等についての制限を厳重にいたしておりますので、そういう面で一応取り締っていきたい。これを十分に業者徹底させることによって、業者は自粛するのではないだろうか。むしろこの事態を徹底させ、認識させるというような面に努力することが第一段階ではないか。それでもまだどうしても取締りの必要があるというような際には、さらにまた、将来の事情に基いてもう一度改正するなら改正しようということにいたしたらどうだろうか。今日の段階では、あくまでも自主的に一つ旅館業の自粛をやらして参りたい。それを犯すような者があれば、峻厳なる取締りと言いますか、取消しをもって臨んでいこう、それを徹底さすように今回はしていこうじゃないか、こんなふうに考えております。御了承願いたいと思うのであります。
  10. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 ただいまの御答弁は十分に満足ではございませんけれども、この点は後ほどいたしまして、今度は、これはどなたにお尋ねしたらいいか、適当に御答弁を願いたいと思います。  営業許可の面の規定でありますが、従来の売春業者転向と申しますか、一つの擬装的な転向をだんだんとして、旅館営業許可を申請してきた場合に、この法案に一応のっとってやってきた場合には、それが許可されるのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  11. 山口正義

    政府委員山口正義君) 御指摘の点は、今回の改正案におきまして旅館業許可と申しますのは、施設的な面、それからその利用についての双方の面から規定いたしましたことと、それから場所の規制が一部加わっておりますということ、それに営業者申請者人的要素というものが入っているわけでございますが、その場合に、その人的要素につきましては、これは第三条の二項に種々書いてございます——三カ条ばかり書いてございますが、それに該当する場合には、やはり許可をするということになると存じております。
  12. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 たとえば十軒、二十軒とあるところの従来遊郭みたいなところが、集合して旅館転業してきたというような場合に、これは表向きの看板は旅館というようなことであるけれども、依然として一般の感じからいけば、旅館と認めることができないというふうに考えられるのであります。そういう際にこれを分散させて、ちょうど公衆浴場といろものが一定の距離がなければ許可がならないような工合に、そういうふうに分散させるというようなことをお考えではありませんですか、その点伺いたい。
  13. 山口正義

    政府委員山口正義君) 指導としては、できるだけそういうふうなことが可能な場合はやっていただいた方がいいと思うのでありますが、しかし、先ほど棚橋さんから御指摘がございましたように、ただ従来の営業がそうであったからということだけで営業許可しないというふうなことはできないのじゃないかと存じます。その後の営業状況によりまして規制を加えるということはできるのでございます。最初から、そういう規制をまつこうからしていくというようなことは、なかなかむずかしいのじゃないかと思いますが、できるだけ御指摘のような点が可能な場合に指導をしていくのがいいのじゃないかと思います。
  14. 山下義信

    山下義信君 今の従来の赤線業者旅館業転業するということは、この旅館法改正法律案に関連して重大な問題の一つであると思うのです。社会労働委員会でも当然この点については審議を重ねなければならぬのでありまして、今日まで社会労働委員会でも若干の言及はあった。今棚橋委員からこの点の質疑が出ましたから、関連して、この際政府の、赤線業者旅館業転業しようとする者に対する指導と言いますか、それに関しての政府の基本的御方針というものを、一つ明確にしておいていただきたい。  また、どういう計画を大体持っておられるかということも明らかにしていただきたいです。これは厚生省当局としては、その御方針をお示し願わなきゃならぬ。この旅館業法は、そういう業者が正常な旅館業転業しようというものを阻止する法案ではないと思うのです。そういう業者旅館業法によって、そして正常な旅館業のごとく許可を受けて、しかる後に、依然として従来の業態を続けようとするものには、規制を試みることが法案内容になっておりまするけれども成規の手続によって、良心的に転業をしようとするものを阻止する法案ではない。従ってこの改正案によりまして、将来を大いに戒めると同時に、でき得るだけ正常な旅館業等転業する、これは政府としても適当な指導をせらるべきだろうと思う。そういう業者がどのくらいあるかということも、当然推測というか、ある程度は調査というか、把握していられなきゃならぬと思うのです。従いまして、政府におきましては、全般的にどういう見通しを持っておられるか、あるいは指導をしようとする方針であるかという点も一つ示しを願いたい。  関連して、その方面取締り行政に当っておられる警察行政当局からも、それに対しての御方針、お見通しというようなものもお示しを願いたい。あるいはそういう希望のある業者を集めて、適当に指示されるのか、言いかえれば、指導されるのか、積極的にどういう方針をとられるのか、自然にそれらの業者が個々に動くのにまかせておられるのか、あるいは一定の時期においては、それらの正しい転業を適正に指導しようとする何らかの具体的な御方針があるのかというような点について、この際、明確にお示しを願いたいと思う。
  15. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまの山下委員お尋ねになりましたことは、これはごもっともなことでございまして、政府といたしましても、その方針につきましては目下苦慮いたしておるようなわけでございまして、ただいまのところ、まだ十分な成案を得るまでには至っておらないのでございます。関係各省とよく協議いたしまして、できるだけ早く一つ成案を得まして、政府として十分な指導をしたい、かように考えておりますが、ただいまのところ、今御要望された点につきましては、お答え申し上げるまでの材料が熟しておらない、こういうふうにお考え願いたいのでございます。
  16. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御質問要点は、あの売春関係事業をやっている人たちのことのようでございますが、売春関係事業をやっている方々等につきましては、御案内のごとく、売春防止法が、刑罰規定といたしまして、来年の四月一日から施行になります。われわれ刑罰法令を管理する責任を持っておる者といたしましては、来年の四月一日から厳正にしていこうと、こういう立場をもちろんとっております。この来年四月一日までの間におきましては、現行法におきまして、たとえば児童福祉法違反あるいは職業安定法違反とか、勅令号違反とか、こういったような現行法令等規定がございますので、現行法規定に基きまして、関係犯罪を行なったものにつきましても規制を加えて参る、こういう点につきまして、警察としては努力いたしておるのであります。御質問要点は、取締りはそれでいいけれども、その関係業者転廃業するものについて、指導の点はどうであるかという点でございますが、この点については、厚生大臣からお聞きになった通りでありますけれども、そういった転廃業指導というような事柄を、権力機関である警察がやることは適当でございませんので、いろいろ中央におきましては、内閣中心にいたしまして、関係各省が協力して工夫なさっていらっしゃいます。地方におきましては、知事等中心になられまして、いろいろな更生の面、あらゆる面をいろいろな角度から御検討願って、関係業者に一日も早く正しい事業をやっていただく、こういう方向に向いていただくように、あるいは協議会を作りあるいは売春防止本部といったようなものを、知事さんがお作りになって、いろいろ御努力中でございますので、そういった点も承わっておりますが、警察といたしましては、直接関係事業に対して、これはこういう事業になさいということを、権力機関警察が言うことは適当でございませんので、そういった地方におきましては、知事さん、中央におきましては、内閣中心とする関係各省庁が連絡をいたしまして、そういった点について工夫をしている、努力をしている、こういう点はよく承わっております。
  17. 山下義信

    山下義信君 売春防止法が、刑罰規定の実施について、一カ年の猶予期間を設けたゆえんのものは、その期間の間に特殊婦人はもとより、それらに関連するところの業者等が、適当に善処するために、猶予期間が設けられてあるのでありますから、従いまして、それらの対象がどの方面転廃業してゆくか、善処してゆくかということは、当然売春対策の大きな問題点でありまして、それに対する対策というものが、考えられていなくちゃならぬということは当然であります。それが考えられてないということは、これは私どもといたしまして納得しがたい。それで警察権を持っておられる警察庁方面が、いろいろそれに対しての指導をする、あるいは助言をするということは適当でないという刑事部長のお話でありましたが、あるいはそうかもわからぬ。警察行政関係者は別として、少くともこれらの人たちが転ずるであろうという方面一つは、旅館業であることは申すまでもないのであります。また、警察行政関係者としては、風俗営業の特殊の一つ営業種類がある。この方面へもあるいは転ずる人があるであろうということは予想にかたくない。従って、その方面業種について、転業してくるだろうという予想のもとに、一つ方針というものがなくちゃならぬ。できるだけ転業させるようにするのか、ほうっておくのか、また、転業するについても、できるだけ従来の業種からこれを断ち切って、ほんとうに百八十度の転換をするように、できるだけの助言というか、勧告というか、勧奨というものをすべきであるという、基本的な心がまえはこれはできていなくちゃならぬと思う。具体的にはそういう転業を希望する業者がどのくらいあるかという、この実情を把握した上でなければ、あるいは具体的なことはできぬかもわからぬけれども、少くとも旅館業法改正をしようとすると同時に、むしろ売春防止法が成立したその直後から、あるいはまた、同時に、そういうことの基本的な方針考えられていなくちゃならぬと思うのでありますが、具体的な計画、数字的な計画等々は、あるいは具体的な施策の細部にわたってのお考えは、今後御考究に相なるとしても、基本的な御方針としては、できるだけそういう業者が依然として旅館業を擬装して、そういう業態を続けようとするような過失には陥らないように、あらかじめこの種の旅館業をつかさどっている厚生当局としては、私は基本的な方針というものはお考えがなくちゃならぬと、こう思うのです。具体的な御計画はこれからお立てになるかもわかりませんが、厚生大臣としては、基本的にはどんなふうなお考えでありましょうか。私はむしろ積極的に、やはり売春問題と密接な関係のある厚生省とされましても、積極的に私は業者に十分啓蒙指導されまして、ことに旅館業法改正点なんぞは十分その意のあるところを示されまして、正しい転業がなされるように私は積極的に御指導相なるべきが至当ではないかと思うのでありますが、大臣の御所信を伺っておきたいと思います。
  18. 神田博

    国務大臣神田博君) 山下委員お尋ねでございますが、その前に、この政府売春防止法の公布後どういうような方針でやっておるかということをもう少し詳しくお答え申し上げたいと思います。昨年の十二月十七日でございますか、これはまあ鳩山内閣の時分でありますが、事務次官会議の申し合せというのがございまして、この売春防止法趣旨普及徹底をいたしまして、人権の尊重、性道徳高揚等によって純潔教育徹底をはかりたい、さらに未然防止措置強化をし、保護更生強化をしよう、こういうことを申し述べております。ことにこの婦人相談所及び婦人相談員の設置というようなことも申し合せました。まあこの点につきましては、この三十二年度予算に十分とは言えませんが、所要の予算額ができまして、人員の、今要員を整備中でございます。それから婦人少年室の機能の整備とか、あるいは関係機関との活動強化、それから関係業者転廃業促進ということに一つ力を入れていきたい。さらに取締り適正化をやろう、それから犯罪後の更生保護措置強化をはかる、さらに政府部内の連絡強化をしたい、これは中央関係各省庁相互間の連絡には、内閣総理大臣官房審議室がこれに当りまして一そうの緊密化をはかる、こういう申し合せでございます。また、この措置につきましては、地方公共団体の各機関及び国の司法関係出先機関相互連絡強化する、そして売春防止活動地方における推進体として、都道府県にも売春防止対策本部というものを作ると、こういう申し合せでございまして、この申し合せに基きまして、売春防止法の円滑な施行を期するための行政措置というものが各都道府県知事あてに、やはり十二月の、これはまあ石橋内閣になってからでございますが、三十一年十二月二十七日付をもちまして内閣官房副長官、警察庁自治庁各次長、法務、大蔵、文部、厚生通商産業労働、建設の各事務次官から各都道府県知事あてに、この広範な内容を持った対策を明示いたしておりまして、その後寄り寄り協議をいたして参りまして、ただいま山下委員のお述べになりましたように、関係業者のいわゆる転廃業促進をはかりたい、そしてその中で正常な旅館業にかわるというような者も現在若干は出ております。現在のような雰囲気の中で旅館業にかわるというよりも、適当な地を見つけて、そして正常な旅館業としてりっぱな更生をしたいというような者も出てきております。そこで大半の問題、今やっております現在の状態を正常化した旅館指導して、すぐできるかどうかということにつきましては、これはまあなかなか容易じゃないと考えておりますが、いずれにいたしましても、今やっておることは、これはまことによろしくないことでございますが、売春防止法完全施行に伴いまして、業者が路頭に迷う、そこまで放置するということは、これは政府としても手のないことでございまして、十分一つ指導をして、何らかの補導転業措置を講ぜしめたい、こういうことで寄り寄り協議をいたしておりますが、先ほどもお答え申し上げましたように、具体的にまだ各関係省庁間においての結論が出ておらないのでございます。ただいま厚生省としては、この旅館業法の一部改正に伴って、すみやかに一つそういう指導をやったらどうかということでございますが、これは旅館業と申しましても、その当該土地において需要との見合いが問題になって参りまして、あまりたくさん旅館業ができても、みんなが共倒れの問題にも相なりますし、現在の業者を何らかの訓練によって、新しい、風俗的にも心配のないような旅館業になることができますれば、これに越したことはないのでございまして、十分厚生省といたしましても、この辺の事情を一つ勘案いたしまして一適当に指導するということは、これは当然のことと存じております。いろいろ大きな問題がございまして、厚生省一省だけの力ではなかなかこれは容易じゃないことは御案内の通りでございますので、よく政府部内でさらにまとめまして、適当な方法をとって参りたい、かように考える次第でございます。
  19. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 厚生大臣にちょっとお伺いしたいのでございます。それは赤線地帯、青線地帯は形だけでもなくならなければならないのでございますが、ここに重大な問題は、今、日本全国に白線地帯というものができておりますし、広がりつつございますが、厚生大臣は、その調査はできていらっしゃいますでしょうか。厚生省において調査ができておりますかどうかをお伺いします。
  20. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま宮城委員お尋ねでございますが、赤線地域、青線地域は今日どこにあるかということについては、大体常識的にあり場所がはっきりしておるのでございますが、今の白線というようなことでございますが、最近の言葉になっておりますが、それを厚生省はどの程度調査しておるかというお尋ねでございますれば、まだそこまでは調査が手が届いてない、こういうふうにお答え申し上げるより仕方がないのではないか、今実は政府委員に聞いたのでございますが、白線地域と白線営業といいますか、そこまでの調査は進んでないと、こういうふうなことでございます。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは伺いますが、旅館業法の一部改正ということは、これは厚生大臣の含みといたしましては、売春防止法とにらみ合せてこれを立法なさったのでございましょうか、どうでございましょうか。
  22. 神田博

    国務大臣神田博君) 売春防止法と直接の関係ということまでには、私ども実は考えているかいないかということになりますと、はなはだこれはデリケートなお答えになりますが、直接関係があるとは考えておりませんが、しかし、最近の旅館業の一部が風俗的にどうもいかがわしい、善良風俗がそこなわれているおそれがある、こういうような声が非常に強いのでございまして、しかも売春防止法完全施行もここ一カ年というような非常に短かい期間になっておりますので、この際、旅館業をして正常なあり方にしたいと、こういうような考え方で本法の改正考えたと、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは重ねてお伺いいたしますが、第一条にございます「取締」という言葉、それからまたこの「旅館業によって善良風俗が害されることがないように」とございますが、この善良風俗という厚生省のまあこの言葉の内容をちょっと説明していただきたい、取締り善良風俗
  24. 山口正義

    政府委員山口正義君) 善良風俗という言葉をどういうふうに解釈しているかというお尋ねでございますが、この善良風俗と申しますのは、現在もいろんな法律に使われておりまして、民法第九十条にもございますし、風俗営業取締法の中にもございますが、私どもやはりそれと同じような意味でこれを使っているのでございまして、社会の一般的道徳観念を申すのでございますが、時代とともにいろいろ変遷するのでございますので、具体的に内容を列記するということはなかなかむずかしいのではないかと存ずるのでございまして、主として例をあげれば、人倫に反する場合とか、あるいは犯罪その他不正行為を勧めるような正義の観念に反するようなことをする場合とか、あるいは芸娼妓契約のごとく、個人の自由を極度に制限する場合などがこれに入るのかと、そういうふうに考えるわけでございます。従いまして、その場合々々でこれは解釈はいろいろ変ってくるわけでございますが、解釈と申しますか、扱い方がいろいろ変ってくるのではないかというふうに考えるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現在民法などに使っております善良風俗という意味と同じような解釈で参りたい、かように考えております。
  25. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは非常に消極的な考え方でこれを解釈してよろしゅうございますね。  それでは重ねて大臣にお伺いしたいのでございますが、先ほど申しました白線地帯というのは、大臣は初めてそういう言葉をお聞きでございましょうか。もし初めてお聞きならば説明申し上げましょうか、いかがでしょう。(笑声)
  26. 神田博

    国務大臣神田博君) どうもうっか りしておりまして、聞いたことあるようなないようなおぼろげでございましたものですから、実は政府委員にも開いたわけでございまして、しかし今の質疑の間を通じまして、大体おぼろげながらわかったような気もするのでございますが、どうもかすみを通してというような感じでございます。(笑声)
  27. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その白線地帯というのは、ボスを中心にしろうとが、つまり若い娘もおりますし、その中には昼間職業を持っておる者もおりましょうし、また、未亡人もあり、それから有夫の、夫を持っておりまする生活にあえいでおる婦人もあります。いろいろな種類のしろうとがボスを中心に秘密の組織を作りまして、電話一本で金もうけをするというしろうとをもって組織しておるという意味合いで白線地帯いう言葉が今、はやっております。そこでこの旅館業法の一部改正ということは非常に私は重要なことで重大だと存じておりますることは、その白線世帯の一番の中心をなしておりまするものは今日の旅館でございます。それが今度業者転廃業となって旅館あるいは下宿、ことにその転業しますときに、女を宿屋の女中とし、下宿屋の女中として、女とともに転業しておりますようなところは、これは最もインチキ旅館としてその白線地帯の中心をなすものでございますから、これは大へんな問題が起るのではないかと心配いたしております。そこでいろいろな問題をお伺いしたいのでございますが、この第三条に厚生省の「政令で定める基準に適合しないと認める」云々と書いてございますが、この厚生省の政令の基準というものはいかがなものでございましょうか、一つ
  28. 山口正義

    政府委員山口正義君) この政令の内容につきましては、先般も社会労働委員会から御要求がございまして、資料として提出することになっておりますが、事柄の大よその内容といたしましては、構造設備を定めます基準でございますので、部屋数とか、あるいは大体の部屋の大きさの問題とか、あるいは換気設備とか、暖房設備あるいは便所の設備、浴室の設備というようなことを政令で定めたいと存じております。また、その第三条二項の後段にございまするように、学校の周囲の環境におきましては、特別な構造をやはり考えなければならないというふうに考えますので、そういう点もこの政令で定めたいと、そういうふうに考えております。
  29. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではまだこの基準というものができ上っておりませんのでございますか、今日、今はいかがでございますか。
  30. 山口正義

    政府委員山口正義君) 一応の案を私どもの方で作っているわけでございますが、関係各省とまだ最終的には決定いたしておりません。政令でございますので、関係各省と折衝しなければならないのでございますが、一応私どもの方の原案はできておるわけでございます。
  31. 雨森常夫

    雨森常夫君 関連して、ちょっと。  今御答弁をちょっと聞いておりますというと、学校の百メートル以内の場所ですか、一応……学校付近のものと一般の地域のものと違うような、その基準が違うようにおとりになるように今お話しなんですが、その違いはたとえばどういうふうな……。
  32. 山口正義

    政府委員山口正義君) 一応私どもの方で考えました点は、たとえば学校の教室から客室が見えるような場所であるとか、見えるような構造とか、あるいは先般も千駄ケ谷で問題になりました、学校の正門から直接芸者が出入りします際に、その場所の構造が、お客の出入りとかいろいろなことが直接見えるような場合には、ある程度のこれは最終的には決定いたしておりませんけれども、遮蔽を作らせるというふうなことが考えられるのではないかというふうな特別なことでございます。
  33. 雨森常夫

    雨森常夫君 今の善良風俗が侵されるというようなことにはならないように思うのですが……。たとえば、入り口が非常にあいまいな感じを受けるようなことを予想してのお話のように聞えるのでありますが……。
  34. 山口正義

    政府委員山口正義君) 善良風俗と申しましても、先ほど宮城先生の御質問にお答え申し上げました際に、まあ学童がしょっちゅう出入りするというような、場所的なことを考えての善良風俗という特別なことも考えなければならないのではないかというふうに、一般の場所と、それからそういう学校付近というような場合に、善良風俗ということがおのずからやはりある程度かわってくるのではないかというふうに考えまして、そういうふうな学校周辺の旅館につきましては構造上特別なことを考えるのがいいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  35. 雨森常夫

    雨森常夫君 非常にくどいようですが、そこのところはわかりかねるのですが……。一般の地域のところと学校の近くの旅館とは同じことだろうと思うのです。旅館として営業している、その玄関から出入りする。普通の旅人であれば、出入りすることが別に児童の教育上おもしろくないというようなことは考えられないのですが、どういうふうなお考えですか。
  36. 山口正義

    政府委員山口正義君) 出入りだけの、出入りを申し上げましたので、大へん御疑問になっているようでございますが、私ども先ほど考えましたのは、最初一応出入り関係、これは千駄ケ谷の先般の問題から考えまして、一応そういうことを考えたのでございますが、主としてその構造設備等から考えますのは、教室との関係というようなことで、教室から客室あるいはホール等が直接見おろされるというようなことのないような設備にしなければならないというふうに考えているわけでございまして、校門の、学校の正面に旅館業のつまり旅館の出入り口があるということ、直接それをすぐいけないというふうにするかどうかというようなことにつきましては、なお問題が残されている、こういうふうに考えておる次第でございます。
  37. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私もそのことを伺おうと思っておりましたが、お話を伺いますというと、旅館というものがもう前提として何かよろしくない場所のように聞えましたのでございますが、つまり教室から宿屋の部屋が見えてはいけないというようなお言葉があったかと思っておりますけれども旅館はやっぱり正しいわが家の延長で、旅人に提供するものでございますから、それを畿ら教室から部屋が見えようと、入口が見えようと、学校の門の前にあろうと、それは私は問題ではないと思っておりますのでございますが、その辺の説明が私もまだ納得いきません。悪いところ、不潔なところというお考えがあるのじゃないか。そうしてそれを黙認しようとなさっておるのじゃないかというように聞えますけれども、いかがですか。
  38. 神田博

    国務大臣神田博君) 今の宮城委員お尋ねでございますが、旅館は、これはもうお説にもございましたように、まずわが家の延長であって、あすの活動の源泉地になってもらわなければならぬわけでございまして、そうした意味で旅館をほんとうにまあ正常な経営をしてもらい、また、正常のものである、そういう考え方でこの旅館業法が発足しているわけでございますが、最近一部においてややどうもそういった考え方から逸脱した社会風潮の思い面も出てきている。そこでそれらを一つ取り締りたい。こういうことがこの法のねらいなのでございます。  それから今山口政府委員から、教育上支障があってはいけないから、まあ部屋等の見おろしがきかないように遮蔽したい、あるいは入口等においても、看板等のあまりけばけばしたものを避けようという意味の答えを申し上げたのでございまして、少し言葉が足りなかったのではないかと思います。りっぱな旅館業でございましても、これは学校の授業中に、どうかして来客もあって、そこで昼間一ぱい飲んでいるというようなこと。これは旅館でございますから、お昼なんかあるいはあることが私は予想されるのではないかと思います。そういうことを政府委員が、学校から見た場合に教育上、いかに旅館業としては普通のことをやつておったにしてもどうであろうか、こ ういう意味で、できるだけ私生活にわたるような面は生徒の目につかない方がいいのではなかろうか、そういう意味でお答え申し上げたと思います。要するに、旅館のあり方というものは、これは社会がこういうような経済的なまた文化的なみんなが快適な旅行をしようというようなことになりますと、ますますその重要度が増してくるわけでございますから、旅館業が健全な企業として十分一つ快適な旅行ができるように発展してもらいたいことは国民の皆大きな念願である。しかし、それを逸脱したものあるいはまた、今申し上げたような旅館でございましても、授業中にそうしたことが見えるというような場合には、児童には、お客があったからやっておるというようには考えないで、また、これは正常な旅用であれば、こんなことを申し上げなくても、旅館自体が遮蔽することが普通でございますが、そういうことがないようにしたいという意味でお答えした、こういうふうに御了承願いたいのであります。
  39. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 旅館の部屋で昼間にお客をすることを子供に見せてはいかがかとおっしゃるほど政府が潔癖に考えて下さることは私は大へんありがたいのでございます。けれども、そういう気持から、そういう政府の態度から今日の全国の宿屋をごらんになりますというと、一部分にはという大臣は先ほどお言葉をお使いになりましたが、不潔な業をいたしておるものも一部でしょうか、あるいは半分でしょうか、もっとあるのでございましょうか、私どももっともっと今日は実に許すべからざる業態を続けておりますことを条じております。実情を私どもも相当調査しております。  そこで私は大臣に伺いたいのは、一番初めに伺いました取締りということ、そういう許すべからざる業者に対下る取締りは一体どうして行なっていらっしゃいますかという点でございます。
  40. 神田博

    国務大臣神田博君) この旅館法の建前といたしまして、善良風俗がそこなわれるようなことのないように、必要な規整を加えようということでございまして、衛生取締りをやっておったのでございますが、さらにそういった問題につきましても、規制を加えていこい、こういったことがこの旅館業法改正のねらいでございまして、先ほどもお答え申し上げたように、善良風俗がそこなわれるような経営をやれば、それは当然他の戒めとして営業取り消しをする、こういうことを考えているわけでございまして、今宮城委員から非常にたくさん、旅館業の中で不都合な経営をされておるものが多いということでございますが、これは、まあ私も別に旅館業のことを知っているような知らないような、私の知識はどの程度であるかということも、これは問題になるのでございますが、そうたくさん善良風俗が害されておるというふうには考えられないのじゃないだろうか。これはまあ見方のことでございますから、ここで御議論申し上げる意思はないのでございますが、大体そういういかがわしいというような旅館は、ある程度マークされておるのじゃないだろうか、まあこんなような私は考えも幾らかあるわけでございまして、しかし一今宮城委員のお述べになられましたように、非常に旅館業というものはそういうものが多いのだ、そこを一つ何とかしろということになりますと、また、これは話が違ってくるわけでございまするが、今日の世相が、とにかくこれは考えさせられることは仰せの通りでございまして、その心配につきましては、私も人後に落ちないのでございまするが、何としても、旅館業は社会活動のやはり必要な役割を持っておるわけでございまするから、これを正常な商売に一つ導いて参りたい、十分業者にそういう心がまえを納得させまして、もしそれがいけないというなら、一つそういうのはそういう商売をすることに向かない人なんだから、やめていただく、これが私は一番強い態度じゃないか。生活のほんとうの本拠が壊滅するわけでございますから、旅館業者といたしましても、そういうわずかないかがわしいことによって、全部の商売を失うようなことがあっては、これは大へんでございますから、大部分の人は、私はまじめな商売をやっていただけるのじゃないか。しかし、もう初めからそういうおおそれた考えを持ってやっているものは、これはもうびしびし一つ今申し上げたような規制を加えていいのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  41. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その旅館業者に教育をして、正しい道を歩ませようとしているという、その教育の方法というのは、どういう方法をやっていらっしゃるのでございましょうか。それからまた、その教育が行き届かない場合には、仕方がないから、取り締るというような内容でございましたが、警察や検察の手を借らないで、一体どういう取締りができておりましょうか。これは理屈の取りかわしでなくて、私は実際問題を一つ披瀝し合って考えてみたいと思うのでございますが、その点いかがでございましょうか。つまり、教育の面と取締りの面との実際を一つ厚生省の立場でおっしゃっていただきたい。
  42. 山口正義

    政府委員山口正義君) 先ほどから、大臣からお答えになりました点について、重ねてのお尋ねでございますが、教育の面と申しまして、現在までの、現行法におきましては、公衆衛生上の立場からいろいろの取締りをいたしているわけでございまして、そういう面につきましては、特別な教育と申しますか、私どもの方で、厚生省で集めてどうこうというようなことはいたしておりませんが、現在旅館組合というものがございまして、それを通じていろいろ指導をいたしておりますし、また、現場におきましては、保健所におきまして、必要に応じて関係業者を集めては指導するということをやっているわけでございます。今回の改正によりまして、いろいろ善良なる風俗が害されることがないように、必要な規制を加えていくわけでございますが、先ほど山下先生からも御指摘がございましたように、今回の旅館業法改正に基きまして、旅館業者に対して、いろいろな指導を当然やっていかなければならないと存ずるわけでございまするが、そのやり方につきましては、従来公衆衛生の面についてやっておりました点に、さらに加えて、風俗関係の問題についても指導をやっていかなければならない。これはやはり組合等を通じ、あるいは現場において保健所が主となってやるということでございます。それで、その今後の規制のやり方でございますが、それにつきましては、この改正案にもございますように、主として施設関係あるいは利用関係の方の基準に合わないような場合には、それぞれの処置をするということ、それから第八条にございますように、他の風俗関係の法律に違反した、そうして罰を加えられたというような場合に、先ほど大臣からもたびたびお答え申し上げましたように、営業許可取り消しをする、あるいは営業停止をするというような規制を加えて処置を講じて参りたい、そういう考えでおります。
  43. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 旅館業というものが、私は一部にはいかがわしい業者もあるが、これは社会的な施設として、私は大事な一つ営業であると思うのですが、それがいかがわしいものであるというふうに考えられている原因としましては、一つは、いわゆる引っぱり込みというような、言葉はよろしくありませんが、そういったような旅館以外のものが一方にはある。もう一つの大きな原因は、旅館が料理屋その他の風俗営業を兼業しているということが、私は旅館というものを非常に堕落さしている一つの原因であると思うのです。それで、旅館と料理屋その他の風俗営業とを兼業させるということは、私は好ましくないことで、禁止していくべきものじゃないかと、こういうふうに思うわけです。ということは、この料理屋との兼業というようなことが、やはり旅館を非常に善良風俗という点から考えておもしろくないものにしているということが一つでありましょうが、一般の旅客が旅館に泊った場合に、料理屋と兼業しているために、一般の旅客は非常に迷惑を感じるわけなんです。夜十二時までも一時までも飲んで、大ぜいの人が騒いでいる。こちらは休養したいと思っているのに、ことにいなかなんぞに行きますというと、非常にそういうことが多い。それからまた、そういう料理屋やその他の風俗営業と兼業するということによって、私は旅館業の発達というものが非常に阻害されているのじゃないか。ということは、旅人を泊めて少しばかりの宿料を払ってもらうよりは、料理屋をやったりして芸者なんかを上げて騒ぐ方がぼろいもうけがあるのでありますから、勢い旅館業者としてもその方に力が入って、旅館としての設備をよくして、いい宿屋にするというようなことが自然におろそかになっている。これはやはり旅館業の発達の上からやって、料理屋なんかの兼業ということは、禁止していかなければならないのじゃないかと、こう思うわけですが、今後、風紀維持、売春防止という見地からして、旅館業と料理店その他の風俗営業との兼業ということは、当局はどういうふうにお考えになっておりますか、大体のそれに対する方針をお聞きしたいと思います。
  44. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま棚橋委員お尋ねになりましたことは、非常に大事なことでございまして、私どももこの旅館業法改正に当りましては、その点もいろいろ対象として、実はあらゆる角度から検討を加えたわけでございます。旅館業と料理業の兼業というものが、もし避けられるならば、避けられて、両方これは健全企業としてりっぱな営業が成り立っていくということであれば、非常にけつこうでございますが、どうもその点につきまして、今棚橋委員のお述べになられたように、料理業をやっておるから旅館業が成り立つのだというような面もございましょうし、それからまた、旅館業が成り立っておるから料理業もできるのだ、料理業というものが要らないということになれば、これは話は別でございますが、地方片々によりましては、これはこういった都会の地域でありますれば、いろいろ経営の仕方もあろうかと思いますが、在等に参りますると、そういうものが二つに分かれて、両方独立した商売が成り立たないというような面も出て参りますので、私ども考え方としては、できるだけ旅館業旅館業、それから料理業は料理業に分けたいという考えにつきましては、棚橋委員のお述べになられたことはその通り私も考えますが、今の実情ですぐそういうことをやるかといいますと、ただいま申し述べたような事情等もございましてなかなかむずかしいのじゃないだろうか。ことに最近の中都市における旅館業を見ておりますると、料理屋であったものが、戦後戦災等によって旅館が壊滅してしまった。地方庁から、たって旅館を経営しろというよう慫慂を受けて両方をやっておるというような面も相当あるようでございまして、理屈だけで割り切って両方を分離させるということがしにくかった。将来の考え方としては、別々にやっていきたいという考えを持っておりますが、地方片々等の事情もございますので、今すぐそういうことをやっていくについては、営業の一方の取り消しということになるか、返上ということになるか、経営の、そうした場合どうなるというようなこともにらみ合わせなければならぬ問題になって参りますので、今度の旅館業法改正については取り上げなかった、こういうふうなわけであります。
  45. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 いろいろ今までの習慣ということもあり、業者の維持の上からいっても、すぐそいつを分離しろということはちょっと困難な点もあろうかと思いますが、しかし、今日地方の小さな町なんかに行って、旅館は一軒か二軒しかない、料理屋としてもそうないというところではよんどころないといたしましても、中都市以上のところに行けば、これは私今日二つに分けて十分に成り立っていくものだというふうに考えておりますが、そこに当局として、この二つを一緒にさせなければなかなか両者とも営業として成立していかぬというようなお考え一つの混乱があると思う。これをはっきりした考えで、だんだんとこいつを二つに分けていくという考えになられないというと、善良なる風俗を維持する、こういう点からいってもなかなかうまくはいかないだろうと思いますし、それからまた、今日の旅館というものが、こういうふうに旅行とか、観光とかいうことが発達して参りますと、やはり旅館としてのしっかりした旅館を作っていくことが大事だと思いますので、そういう点からもこれは分けなければならぬ問題である。これを当局が頭をはっきりさせられることによって私はこの点がよほどよくなっていくのじゃないかと思いますが、今すぐこれができないといたしましても、そういう方向に向って進められていくように私は希望する次第でございます。
  46. 山下義信

    山下義信君 大体の論議は、私は社会労働委員会でやらしていただくつもりでございますが、連合審査会ですから、法務委員の諸君の御意見を承わるのを主体といたしたいと思いますが、今棚橋委員から御指摘のありました料理屋と旅館との兼業の問題ですね。この席で承わっておきたいと思うのは、両者の営業許可申請の関係はどうするつもりであるかということを一つ伺いたい。それは料理屋の方の、風俗営業許可申請は、言うまでもなく、これは都道府県知事に出し、公安委員会というようなものの手を経て、そこが許可権を握っている、こういう形なんですね。旅館業の方は、本法によりましていろいろな規制があって営業の申請をするのですね。両者の関係は、この営業許可をするに際してどういうふうに検討するかということを一つ伺いたい。この旅館業者の申請は、料理業を兼業するのであるということは、旅館業許可するときにそのことがわかるのですか、わからぬのですか。また、旅館業の申請をする者は、料理業の許可を受けているのだということを知るのでしょうか、知らぬのでしょうか。両者どういうふうに——当然営業そのものにも許可の前後はありますが、こう一方の許可を受けているということを、一方が許可するときにそれを知るか、知らないか、考慮するか、どうするか。従って、旅館業のいろいろ設備そり他の基準も、また、風俗営業の方の設備等の基準もあるのです。両者の基準は必ずしも同一じゃないと思うのです。違うのです。それで両方を兼業しているのです。これは建前からいえば料理を行う場所、設備、それから旅館を営む場所、設備、別の基準でもいいわけであるが、実情は混同して共用しているのです。こういう事態は、旅館業からいえばかりに狭いところは許さぬといっても、料理業の方は狭いままで営業許可されている。晩にはそこへ蒲団をしいて人を泊めるということになれば旅館業の違反です。いろいろの影響は棚橋委員の御指摘通りですが、実際において料理、旅館業を兼業している許可の点においても、設備基準等においても、両者の関係が全く行政的に打ち合せができるものか、できないものか、どういうふうにその辺は扱おうといろ考えであるかということは、旅館業許可に関連して明確にしておく必要がある。私は少くとも料理業を兼業するという旅館申請者に対しては、十分に設備基準とあるいは利用させる基準、ことに風俗関係の配慮については、今後私は旅館、料理業の兼業者に対する旅館業許可の面においては、厚生省所管の面においては、十分に調査した上で、検討した上で許可をすべきであって、軽々にいたしてはならぬと考えるのです。基本的な行政方針としては、この際お示しを願っておく方がいいのじゃないかと思います。
  47. 山口正義

    政府委員山口正義君) 現在は旅館業法許可の場合には、省令に基きましてその書式がきまっているわけでございますが、現在のところでは、旅館業許可風俗営業関係とは別々に行われておりまして、その間に直接な関連性と申しますか、あるいは一々参照してどうこうというようなことは行われていないのが実情でございます。しかしながら、ただいま御指摘のように、今後この改正されます旅館業法施行して参るというような場合には、特に第八条に風俗営業関係の方の条文も入っているわけでございますので、旅館業許可をするという場合に、届出の際にそういう事項を参照できるような措置を講じて参らなければならないのではないか、そういうふうに考えております。
  48. 山下義信

    山下義信君 今第八条の御指摘がありましたが、これは風俗営業取締法の違反の犯罪がいわゆる確定した、そういう罪を犯した者についての許可の配慮がある。それは罪が確定したということは、裁判その他もう周知のごとく、常識でわかるごとく、そういう罪を犯した者に対して許可の際に考慮するという規定なんですが、私はそれだけでは不十分でありますから、この際希望しておきますことは、旅館業法の中における一つの私どもが隔靴掻痒の感を持っております点は、風俗営業取締法によって行政処分を受けた者についても考慮しなくちゃならぬと私は思う。風俗営業取締法によって処罰を受けた者ということはいわゆる犯罪を犯して、しかもその罪が決定をした者についての許可申請者の資格についての規制なんでありますが、私は法律にはなくても、不十分ならば修正したらいいということになるけれども、それはまあ別として、やはり風俗営業取締法に基く行政処分を受けたような者が旅館営業許可の申請をしたときには不許可にする、該当事項はなくても、私は行政の運営からいたしまして、十分許可については慎重に考慮をするということを、この際立法意思で明確にしておくことが、この両者兼業の業態について善良風俗を維持するという目的については必要な心がまえじゃないかと思うのです。厚生大臣の御所見を伺っておきたい。
  49. 神田博

    国務大臣神田博君) 今の山下委員の御所見は私も同感でございますので、そういった方向に一つ扱うことにいたして参りたいと思います。
  50. 雨森常夫

    雨森常夫君 先ほど関連質問で御質問申し上げたのといささか関連することなんでありますが、この第三条にも、都府県知事許可の申請を受けた場合に三つの条件があって、一つは、施設の構造設備が政令で定める基準に合っていること、第二番目は設置場所が公衆衛生上適当でなければならぬこと、第三番目には、後段にある三つの人的要素に合致していなければいかぬということ、三つあるわけでありますが、これを満たしておればその申請は大体許可されるということになっております。そのあとに、当該学校の清純な教育環境が著しく害されるおそれがあると認められるときには許可してはいけない、こうなっておりますから、これを見ますというと、学校の回り百メートル以内のところは非常に厳重になっておる、前の一般の地域においてはそれほどでないのだという感じを受けるわけなんです。これは来年の四月からの売春防止法取締りの場合に、この両地域の取締りの仕方が変るようなことがあってはならないと思うのでありますが、この二つ、今私が申し上げるような点についてのお考えを承わりたい、どういうお考えになっておるか。
  51. 山口正義

    政府委員山口正義君) その点は先ほども私が申し上げましたし、また、大臣もお答えになりましたのでございますが、設備構造の基準を定めます際に、学校の周囲、学校環境、教育環境の場合には、一般の設備構造の基準に若干のプラスをして規制をしたいという考えでございます。
  52. 雨森常夫

    雨森常夫君 これに関連して、新たに教育委員会なりあるいは学校長なり、それぞれに意見を聞いて府県知事許可をするしないをきめるのだ、こうなっておりますから、教育委員会なりあるいは学校長なりが考えることが、これはこの前の三つの条件には合っておるけれども、どうもあやしい、こういうことであれば、おそらく許可しない方がよろしいという意見が出るであろう、だからこの場合は、百メーター以内の場合は非常に完全に救われるような気もするのですが、一般の地域においてはそういう方法が何ら何もないわけなんですから、するすると許可になる、こういうふうに考えられないのですか。
  53. 山口正義

    政府委員山口正義君) 御指摘のように第三条の第三項に、都道府県知事許可をする場合に、教育委員会等の意見を求めなければならないというふうになっているわけでございます。これは先ほど申し上げました付加的な特別の基準に合致していないのに、許可をしようとする場合には意見を聞かなければなりません。合致しておっても、合致しておる場合にも念のために聞くということでございますが、それでは都道府県知事許可権と申しますが、許可の権限が教育委員会によって非常に左右されるのではないかということも考えられるのでございますが、しかしながら、あくまでこれは真正面から申しますれば、許可の権限は都道府県知事にあるのでございまして、一応許可をしようという、そういう特殊の環境で許可をしようというときに、教育委員会の意見を徴するということでございますので、あくまで、最後まで教育委員会の意見によって左右されるということはないのでございますが、しかし、そこは両者が十分に話し合いまして、いわゆる善良風俗が害せられないように処置をしていこうということでございますので、設備構造が一応政令で定めました基準に合致しておりますれば、そう極端なことは起り得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  54. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この法律の付則のところからちょっと伺いたいと思いますが、「公布の日から施行する。」そうしてそのあとに「第三条第一項の規定によりホテル営業旅館営業、簡易宿所営業又は下宿営業許可を受けたものとみなす。」と、こういうところがあるのでございますが、これは今までやっていたものはみんな一応この新しい法律が施行されましても許可を得たものとみなすということになるわけだと思いますが、そうなりますと、今まで温泉マークなどでいかがわしいような風評を立てていたような営業者も、そのまま許可されるということになるのでございますか。
  55. 神田博

    国務大臣神田博君) 一応そういうことになります。
  56. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 一応そういうことになるということになりますと、今この売春防止法施行によりまして、今までのいわゆる売春の業者転業が、旅館業転業するものが非常に多いというようなことが新聞の、地方の状態の報告にも出ておるのでございます。それで、つまり旅館業という名のもとに、そういうようないかがわしいと思われるようなものも入ってくるし、今までいかがわしいことをやっていたものもそのまま営業を続ける、こういうことになって参りますと、さっき厚生大臣が申されました、ほんとうに旅館業目的をその通り実行している業者と、そうしていかがわしいようなことをやっている業者との割合というものが、いかがわしい方のパーセンテージが非常に多くなってくるというような心配を厚生大臣はお持ちになるでしょうか。
  57. 神田博

    国務大臣神田博君) 今の前段の方でございますが、この擬装転業の方々ですね、御心配になっておるのは……。これは私も非常に心配しておる問題でございますが、営業許可をとっておるのかどうかということが一つございますね。本法施行までの間にそう早く、手回しよく改正前の旅館業許可をとるというふうにも考えられないのでございますが、なかなか府県におきまして相当時間がかかる仕事でございますから、ですからこれから新しくなろうという場合には、先ほど来申し上げましたように、そういうことについては十分見通しをつけなければと、こういうことを申し上げておるわけでございまして、まあその点はどの程度になるか、ここでははっきりわからぬのでございますが、そう数はないのではないか、こう私考えておるわけでございます。  それからもう一つ、たとえば千駄ケ谷等の問題になりましたああした旅館許可を受けておったものが全部この法案によって、改正法によって旅館業、が認められるのじゃないか、そこで正常な旅館業よりもああいったのが数にして多いのではないかというお尋ねでございましたが、それは先ほどもお答え申し上げたのでございますが、五万八千からの大体業者になっておりますか、そのうちにそうしたものはどの程度ありますか、それだけを調べたのがございませんので、ここでどの程度その中に含んでいるかということになりますとお答えしかねるのでございますが、どうも割合が多いのか少いのか、どの程度になるかというと、ちょっとお答えしかねるわけでございます。
  58. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それではそういうようなことを数的に御答弁願うということは、まだ御準備もないようなことで伺えないのでございますけれども大臣地方へ旅行なんかなさった場合に、たとえば戦争前ならば由緒ある格式高い旅館として、ほんとうの旅館業そのものの営業だけをやっていたものが、今日はそれではなかなかやっていかれないというようなことをいって、やはり風俗上いかがわしいような営業も一緒にやっているというような事実をごらんになったような御経験はございませんか。
  59. 神田博

    国務大臣神田博君) 私は大体ホテルに泊ることが多いのでございますか、しかし、旅行の先々によっては、今御指摘のような日本旅館に泊ることがございますが、昔より、昔よりというか、戦前より今の旅館業をやっている旅館に宴会といいましょうか、料理業の方がなかなかにぎやかだという感じは私持っております。
  60. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今の厚生大臣旅館業視察というわけではございませんけれども、ちょっとごらんになって、もうそのくらいのことは私ども旅行しても非常に目につくことなんでございますけれども大臣はあまりそういうところ目につけていらっしゃらないようなお話で、非常に不思議に思うのでございます。そのことは、これは人の見方ですからそれ以上申し上げませんけれども、こういうふうに風俗上いかがわしいような営業旅館業者がするようになったというような、その原因はどういうところにあるとお思いでございますか。それをどういうふうにごらんになっていらっしゃるのでしょうか、大臣は。
  61. 神田博

    国務大臣神田博君) それはまあいろいろ事情があることと思いますが、原因はそこで一つというような、ここで一つというようなことだけではないと思っております。たとえば昔より、昔というか戦前より今日の方が旅行者の数が非常に多くなっているということも、これは見のがせないことだと思います。さらにまた、経済が盛んになってきておりますから、そういった会合が多いというようなこと、それから戦前より戦後の方が庶民が現金を持つようになってきておりますから、そういった方面の消費がやはり盛んになっておるのじゃないだろうか。それからさらにまた、御指摘もございましたように、風俗関係戦前より今日においては相当露骨になってきておる、そういった面からもやはり風俗営業が盛んになっておるのではないか、こんなふうに考えております。いろいろ他にまだそういった盛んになっておる事情はあろうかと思いますが、私は大体そんなところがまあ要約いたしまして大きい原因じゃないだろうか、こんなふうに考えております。
  62. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 旅館業が盛んになるということの原因について伺ったのではなくて、旅館業をやっているものの中に、そういうような風俗上いかがわしいようなことをやることが非常に多くなったという、その原因がどこにあるかということを今伺ったのでございますが、その御答弁は少しはずれていたように思いますけれども、それはそれ以上伺わなくてもよろしゅうございます。  それからもう一つ伺いたいことは、この法案の第五条の「営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。」と、こういうところがあるのでございますね。それで、この法律の目的は、風俗旅館業善良なる風俗にもとるようなことがこれ以上ふえないようにということが目的なわけでございますね。そういたしますと、このほかに、たとえばまあ慣れた方が見ればもう一目瞭然わかることじゃないかと思いますいわゆる売春を業としているような婦人の連れ込みというような場合には、これは今新しい法律によってそういうことを取り締ろうとしていることなんですから、その連れ込みとわかるような場合にでも、これでは旅館業者はお断わりをすることができないということになるのじゃないでございましょうか。つまり目的を達してないということになるのじゃないでしょうか。
  63. 神田博

    国務大臣神田博君) この第五条の規定でございますが、大体この旅館業というものは、旅行者等の住宅の延長として泊めることを商売としているわけでありますから、お泊りをしたいという方には拒んではいけない。まあ非常に公けの性質も入っている。好きな人は泊めるが、嫌いな人は泊めない。そういうことがあってはならない。こういうことを建前にしておりまして、そこで、今加藤さんのお尋ねになりました御心配になりますことは、そういうことでは風俗を乱す行為をするおそれがあると認められた場合でも泊めなければならないか、こういうことになりますので、これは拒んでいいのだ。風俗を乱す行為をするおそれがあるということはどういうことかと言えば、始終何と言いますか、いろいろ変ったのを連れ込んで来るというような場合もありましょうし、それからまた、一見どうもこれはその両者の関係が正常でない、いつもそういうように見られるような具体的なおそれがあるのだというような場合、これは拒みなさいという規定なんでございまして、ここで一つそうした宿屋が営業である、断われない、商売の弱味につけ込まれるということのないように、一つ勇気をもって、他人の迷惑になることでございますので、善良風俗が破壊されることでございますから、これは拒みなさい、こういう意味で、一つこの規定を設けたわけでございまして、私どもから言わせると、相当強い運用をしてもらいたい、こういう趣旨でございます。
  64. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういう方が来てお金を払ってくれることをむしろ歓迎しているような業者もたくさんあると見られるときに、そういうことを拒みなさいというような、大臣がそういうようなお考えをお持ちになって、それがほんとうに実行されると大臣は思っていらっしゃるのでございますか。
  65. 神田博

    国務大臣神田博君) これは私は、そういうことをまじめに実行している旅館のあることも承知いたしておるのでございまして、このごろだいぶ乱れておりますので、はなはだこれは遺憾だと、こう考えておるわけでございまして、今後もこういうことにつきましては、業者指導と申しましょうか、旅館組合等を十分一つ指導いたしまして、そういうことのないようにしていきたい。さらに先ほど宮城委員ですか、お述べになりましたように、業者みずからそういうことを目的として電話か何かでそういう取り持ちをするというようなことがありますれば、まことに不都合千万と言わなければならぬのでありまして、そろいうものはびしびし一つ規制をしていただく、こういう考えでございます。
  66. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私の申し上げることは、少し厳格に過ぎるかもしれませんけれども、今大臣のお言葉の中で、正常でないと思われるようなものは断わるべきであるというお考えである。それからさっき山口政府委員のお言葉の中にも、人倫の道を乱すようなものはいけないというような方針ということのお言葉があったのでございます。で、そのことはまた、ほかの言葉で言えば、つまり夫婦でない者が一つの部屋に宿泊するということは、これは人倫の道を乱すことであって、これはよくないことだと思うのでございますが、夫婦でない者が一つの部屋に宿泊することが簡単にお断わりできるような方法があると思うのでございますが、大臣はそういうことをお考えになったことがございましょうか。
  67. 神田博

    国務大臣神田博君) これは男女関係の正常なあり方ということの意味でございまして、そうでないものを泊めない方法が、何かいい方法があるか、知っておるかというようなお尋ねに承わつたのでございますが、どうでしょうかな、宿屋をやっておるということは客商売でございますから、むしろ宿屋の番頭さんなり帳づけと言いましょうか、客を扱っておる方が一番よくお客さんの、きょうはどういうお客さんだか、どういうお連れさんだかということがおわかりになると思うのです。旅館組合の指導等によりまして、そういうことが、みんなが一つ協力していただけば—これは一軒だけまじめになってもやぼなことでございまして、むしろまじめな人がばかを見たというようなことに相なるおそれもあろうかと思うのであります。しかし、みんながまじめに私どもの町を一つきれいなものにしようじゃないか、旅行者に一つ快適な部屋を提供しよう、みんな一度泊っていただいたら、あそこへ旅行することが非常にうれしい、愉快だこいうような気持を持って、行こうじゃないかというようなことを、もう一つ出発点として業者の訓練を推進いたしますれば、私は今日のような、とうとうとした忌まわしいこともだんだんこれは直っていくのじゃないか。私は日本の国民が今日、まあ戦後非常に虚脱されて間違ったと言いまししょうか、いろいろ軽薄なところに踏み込んだといたしましても、これは一時国民か誤まっておるのだ、ですから、みんな一つこの際、生活の改善をすると同時に、自分たちの行いについても反省して、そうしてこの国の健全な繁栄をはかろうというようなことがすべてに徹底して参りますれば、戦前に劣らないりっぱな私は道義の確立ということができる、また、それは政治家が率先してやらなければならない、そういう助勢を一つやるべきであるという、こういう考えを持ちまして、この旅館業法改正に当ったわけでございまして、法案通りますれば、そういう心がまえを持って一つ旅館業について推進して参りたい、こういう決意でございます。
  68. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今一番私どもの問題にいたしておりますのは、業者転業のときに、普通宿屋かホテルを経営する。それから下宿屋、そういう場合にそれを許可するかしないかということの一つの標準に、その手伝いの、まあ言ってみれば、女中はだれかということを審査する一つの条件にしていただいたらよほど違やしないかと思うのでございますが、つまり、今業者は女を連れて、女とともに転業しようとしているのでございます。これが実情なんでございます。その女とともにということは、女の前借を踏み倒されては業者は困るので、よく申しますが、多いのは十五万円ぐらい、それから少いのでも五万円くらいは前借があるそうでございますが、これは業者がはっきり言っておりますから間違いないと思います。そういうものを踏み倒されましては、業者はたまらないというようなことで、まあできるだけ女とぐるになってやりたい、それはつまり看板の塗りかえという私結果にならないかと心配しております。そこで、どうしても、宿屋やホテル、下宿屋には手伝いの女中は必要でございますが、それを一つ問題にしていただくようなことを厚生省でお考えになるようなお考えはございませんでしょうか、どうですか、その点いかがでございましょう。
  69. 神田博

    国務大臣神田博君) 今の宮城委員の御心配になられますことは、もう私どもも同じこれは心配の種でございます。もちろん中には非常に業者もまじめな、本心にかえり、また、かかえられていますと言いましょうか、そういった関係におった女子もまじめな気持で、本当に両者生まれ変ったような気持で、これから新しい仕事をやろうというような考えをお持ちになっている。少し例外の方もあると聞いてはおりまするが、大体においてそういう心配があるということは、常識の一致したことと思います。そこで、私がたびたび申し上げますように、そういう甘い考えを持って転業なさる、宿屋に転業する、いわゆる擬装転業だという言葉を使っているのはそこなのでございまして、そういうことは一つ十分調査いたしまして、売春法の完全実施、そういったこの性道徳の頽廃、国民の非常な醜い道徳の低下するようなことを防止したいという考えでございますが、ただ、今のそういう業者と、今の仕事をなすっておられる婦女子が一緒に転業することを防止するというようなことを、法律で一体有権的にされることができるかどうか、書いた方がいいかどうかということについては、私非常な疑問を持っているわけでございます。しかし、先ほども申しましたように、甘い考えを持って擬装転業するというようなおそれのある者につきましては、これは県等とも十分通牒等によって連絡してもらいまして、そういうことについては、十分警戒をする、そういうことのないように措置したい、こういうふうに考えております。
  70. 千葉信

    委員長千葉信君) 御質疑もないようでありますから、社会労働法務委員連合審査会は終了いたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。よって連合審査会は、これにて終了することに決定いたしました。散会いたします。    午後一時十七分散会