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政府委員(
小林與三次君) 私より、自治庁が所管いたしております部面につきましての概要の御
報告を申し上げたいと思います。
福岡県における本件の問題は、結局われわれの立場から申しますというと、県の公金の
管理、保管というものについて誤りがあったかなかったか、本件については、それがどういう形でどう処理されたか、そういうところが自治といたしましての問題の重点であり、まあ全部であると言ってもよろしいのでございます。
福岡県におきましては、従来歳計現金の保管方法につきましては、原則は金庫銀行に預け入れているのでございますが、場合によりましては、金庫銀行以外の銀行に預託いたしておるのでございます。その実際の扱いは、御
承知の
通り、現金の出納、保管の全
責任は特別職である出納長の
責任であり、権利であり、義務である絶対権限になっているのでございますが、出納長におきまして、公金の出納、保管上支障がない場合におきましては、金庫銀行以外に預託する扱いがございまして、その場合には知事部局と協議をいたしまして、その了承を得て、相手方の銀行なりその金額なりというものをきめる扱いにいたしておるのであります。この扱いは、これは全国各地方団体ともやっておりまして、自治庁もそういう方針を示しておるのでございます。
そこで、問題の本件の場合は、
昭和三十年の十二月に一億円の金を、県に
福岡県庁信用組合という職員の相互共助のための組合がございまして、その組合に預託されたのでございます。その際の預託の目的がもう
一つ、
福岡県に住宅協会という独立の法人がございます。この
福岡県の住宅協会と申しますのは、県の住宅政策の一環といたしまして、自己資金のない住宅困窮者に対して住宅を建設供給するということを組合の主たる目的といたしておるのでございます。その住宅協会が
昭和二十五年以来設立されておりまして、一方におきまして住宅金融公庫から資金を借り入れ、頭金に相当する部分は県の補助金を得まして住宅建設をやって参っておったのでございます。その住宅協会が住宅建設のための資金を必要とする。こういうことで住宅協会から資金預託の注文があったのでございまして、それが建築部長を経由して知事部局に要請があったのでございます。そこで従来からこの住宅協会に対しましては、県の公金の
管理上余裕があります場合におきましては、その住宅政策を円滑に運転させるために預託を行なっておったのでございますが、これは金融機関でございませんので、直接預託するわけにはいかない。そこで先ほど申しましたこの県庁の信用組合を経由して、ここに資金を流すという扱いをずっと前からやっておったのでございます。本件の場合にも従来の扱いに準じまして一時資金の融通を受けたい。こういうことで問題が起ったのでございます。そこでその当時の住宅協会の必要性なり県の住宅政策の建前から
考えまして、一億円の預託が必要であろう。こういう判断で県の
執行部局、知事4
承認をいたしまして、出納長の手元から県庁の信用組合に対して一億円が預託されたというのが事実でございます。ところが預託をされたのでございますが、実際においては県の住宅協会に金が入っていないというのが事実なのでございます。そこでその入っていない金が信用組合からどこにどう流れたかと、そういう流れたことによってその間にいかなる問題が起ったかというようなことが、本件の刑事事犯として検察当局が調べておられる問題になってくるのでございます。
自治庁といたしましては、この預託が、住宅協会に対する住宅建設資金として預託するということが
一体いいのか悪いのか、そういう問題が
一つと、預託すると言いながら、その目的
通り預託されていない。そこに
一つの問題があるのでございまして、それは事実でありまして、公金の預託というものは預託制度そのものは、私は、行政の目的上、公金の
管理上支障がない限りは、これは当然行われていいのでございますが、こういう預託の趣旨が達成していない事実があるということは、これは非常にわれわれといたしましても遺憾な事件だと存じておるのでございます。
そこで、しからばその預託された金がその後
一体どうなっているか。
昭和三十年十二月に預託されたのでございます。それによって県自体にいかなる損失が与えられておるか。その金がかりに回収不能になっておりまして、県の公金に穴があいておるとすれば、これはまた大きな問題でございまするが、その金はその後
昭和三十一年の二月、三月に入りまして信用組合から県に戻っておりまして、県庁といたしましては、公金上現在におきましてはつじつまがあっておる。こういうのが事実でございます。ただそれに関連しまして、その後信用組合から金が県の方に戻っておるが、
昭和三十一年の三月ごろに別途金額が
福岡の相互銀行と、それから西
日本の相互銀行に金が流れていっておるじゃないか。その金がそのまままた問題になっておる第一相互に流れて入って、そこで資金繰り回しで焦げついておるじゃないかということが
一つの新しい問題点に、これはなっておるのでございます。これにつきましては、その実情もわれわれの方で一応調べたのでございまして、最近に至りまして
福岡相互銀行とそれから西
日本相互銀行に合計九千万円の金が預託されておるのも、これは事実でございます。しかしながら、これは三カ月の定期になって預託されておるのでございまして、三カ月といえばまあ六月まででございますが、六月には当然これは回収するということになっておりまして、この回収はもちろん
福岡相互銀行と西
日本相互銀行、この信用上にも、そこから
考えましても、何ら心配のない問題だろうと存じておるのでございます。それからまた従来ともこの両相互銀行に対しましては、中小企業金融等の立場からしばしば預託が行われておるのでございまして、そのことを特別に批判するというわけにもいくまい。それといわゆる第一相互との間において牽連
関係ありやなしやという、いろいろな議論がございますが、われわれといたしましては、特別に牽連
関係があるという実証を握っておるわけじゃないのでございます。要するにその金が問題なく回収されて、県の公金の
管理として問題がないということの確証だけを握っておる次第でございます。
それで、もう
一つの問題は、この県庁の信用組合に対して
一体そういう一億円もの預託というものが行われた、そのことが
一体まあいいのか悪いのか、こういう問題が実はこれは
一つございます。これにつきましては、この県の信用組合は大正十一年に設立せられておりまして、そうして県庁職員の相互共助と申しますか、共済
関係の活動を営んできておるのでございまして、これにつきましては、職員の厚生の立場で、県としてでもできるだけの援助、
協力をやろうと、こういうのが従来からのしきたりになっておるのでございます。盆、暮とか、年末等の資金が必要なようなときには、それぞれ順次、公金にゆとりがあれば預託をいたしておる。その他信用組合は脆弱な組合でございますので、運転資金等につきまして支障がある場合におきましては、公金に余裕がある限りは、この信用組合を通しまして運転をいたしておりまして、そうして信用組合の
運営を円滑ならしめて参っておったのでございます。そこで、本件の場合におきましても、一億円などという多額の金を信用組合にという問題があるのでございますが、これはまあいいか悪いか別問題といたしまして、従来から県に、いわゆる何と申しますか、この公金だけでなしに、例の雑部金と申しまして、これはまあ今はもちろんそういう問題ございませんが、かつて国のまあ補助金などが出た場合におきまして、なかなか補助金がおくれるものだから使いきれない。こういうようなときに、一応受け取った形にして
工事執行の場合にこれを業者に支払う、こういうのを雑部金
経理としてやっておったことがあるのであります。これはすべての団体がやむを得ずやっておりたのでございまして、現在はもちろんそういう弊風はございません。要するにそういう金もゆとりがあれば信用組合に預託いたしまして、そうして信用組合の運転を合理的ならしめる。そういう金は、今日におきましては補助金適正化法その他の
関係でもうきちんといたしまして、その元もないということもありまして、この金額が預託されるということは、まあそのことがほんとうにその目的達成で行われておれば、必ずしも全くでたらめだということも言えないのじゃないかというふうな見方もできるわけなのでございます。
いずれにしろ、そういうものを通じて本件の問題が起ったのでございまして、われわれといたしましては、そうした預託の目的が公正に行われなかったということは、はなはだ遺憾な事件である。自治庁といたしましても、
一体そもそもこういう公金の預託方法が正しいのか正しくないのか、これは
国会の各
委員会におきましても、いろいろ議論になっておるのであります。で、御案内でございましょうが、従来地方自治法の
関係におきましては、金庫銀行にすべての公金を、出納だけでなしに、保管も全部まかすべきものとされておったのでございますが、
一つの金庫銀行だけで全部の公共団体の金が集中的に積み重ねられるということは、いろいろ地方の行政上支障がある。それからまたいろいろ県の中小企業対策とか、あるいは労働者に対する金融対一策とか、その他各種の行政目的を達するために、もし公金にゆとりがあったら、それが活用する道もあってもいいじゃないか、その間に不確実とか不安定とかいうことがあっちゃいけませんが、そういうことで、現在の法律の建前では金庫銀行以外の金融機関に対しても預託の道が実は開かれておるのでございます。そこで、そもそもそういう道を開いておるところに、こういう問題が起り得る発端があるのじゃないか、そこの元を正すべきじゃないかというふうな実は議論も
一つあるのでございます。
われわれといたしまして、本件は非常に遺憾な事件でございますが、この預託方法自体というものを、
一体根本的にそれならばもうそういうものをみんなやめてしまって、金庫銀行に集中した方がいいのかどうか。集中するとなれば、またあんまり集中し過ぎて動きがつかぬという問題もある。しからばそうでなければ、むしろ
予算等ではっきりきめて預託をすべきじゃないか。現に県の場合にも、
予算に計上した預託金というものが相当ございまして、そこで運転しておる実情でもあるのでございます。しかしこの
予算というものになれば、一年間継続的に動かさなければならないのならば
予算に載せることができるが、ほんとうに短期で、臨時応急に資金を活用させるという必要も行政上これはあり得るわけでございまして、全部が全部そうやるということにもまたそこに問題がある。そうなれば、そういうものをコントロールするためにはどういう方式をとるか。いろいろな条件を
考えたり、手続を
考えたりして、何かそこに指導をやるべきじゃないか。制度の改正までいくか、しからずんば運用の方法をもう少し合理化するか、そういうような問題につきまして、これは検討すべき問題があろうと存じまして、早速全地方団体につきまして、こういう公金の
管理保管の
状況等の資料を集めて、その
状況を見まして、誤まりのないような対策を講ぜなくてはならないと、こういうふうに存じておるのでございます。
大体この問題につきまする自治庁として
考えなくてはならない問題点を、以上御
報告申し上げる次第でございます。