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国務大臣(
池田勇人君) いろいろな施策は、これは実態の現象をどう見るかによって変って参ります。これはたとえば下痢しているのだから、その原因が非常にむずかしい病気で下痢しているのか、あるいは一時的の食い過ぎであるのか、いろいろな点を見て処方箋をもらわなければいけません。私は
先ほどもお話のありましたように、千億減税、千億施策ということは、
国民の経済力が非常に伸びてきたのでございます。これはある
程度は
国民にお返ししよう、そしてある
程度は隘路産業を助けていく、そして数年間、地方財政におきましても非常に緊縮しておられるのを、少しもとへ戻して、普通の
状態に返していこうとして言ったのであります。三月の初めに金利を上げましたゆえんのものも、私は大体輸入が三月ぐらいでとまってくるのならばいけるという見通しでいったのであります。従いまして、あのときには、将来の弾力的金融政策をやる元手を、素地をこしらえていく、こういうことで
説明しておりましたが、その素地をこしらえましたから、五月の八日の日には、これはもうこのままでは輸入がふえる一方だからというので措置をしたわけであります。あのときも私は、一時間も早くやった方がいいというので、
予算委員会中で、もうしばらくお待ち下さいと言って、そのときに返事をしたわけで、いろいろな現象を見ながらやってきている。そして五月におきましてあの二厘引き上げをやりました
関係上、五月の上旬、中旬は輸入が非常に減って、二十日間で一億七千万ドル、しかしながら、五月の下旬になって、今度は十日間で一億五千万ドルも輸入する、こういうことになっておりますから、六月の初めにまた次の手を打つと同時に、これは
個々の手ではいかぬということで、総合金融対策をしてやっているのであります。初めからひどい手を打つかどうかという問題につきますと、これはやはりその人の
考え方でございまするが、私は徐々にやっていくのがいいのじゃないか、こういう気持で、様子を見ながらいろいろ手を打っているのであります。しからば
大蔵大臣が、今、
日本の
状態は非常に警戒すべき
状態であるかと申しますと、私はそうは
考えておりません。行き過ぎをがまんして下さるならば、これは健全な
状況でいく。こういうことを申し上げてはどらかと思いまするが、アメリカにおきましても、各国におきましても、大体
日本の経済力というものは相当高く評価しております。従いまして一時的に外貨の不足があるのならば、これは
日本の、長い日で見ていったならば心配する必要はないというので、本日もIMFから一億二千五百万ドルの借り入れがきょう向うで満場一致決議された。そしてまた他の輸出入
銀行に当ってみますると、必要ならば相当
程度の融資はしてもいい、こういうふうな
状態であります。私はいたずらに鬼面人を驚かすようなことが、経済全体の上からいっていいか悪いかということは、よほど
考えなければならぬ問題だと思います。だから、こういうふうに輸入がふえてはいけませんので、いろいろな総合対策をいたします。しかしてまた、政府みずからもそれじゃ少し、険路産業の拡充強化は必要だろうが、しばらく待ってはどうかという意見もありますので、それじゃわれわれもしばらく待って落ちつきを待ちましょう、こう言ってやっております。そうならば実行
予算を組んでやったらどうか、私はそこまでの必要はない、輸入がだんだん落ちて、輸出は幸いに伸びていっておりますので、この
程度の措置でまかないがつくのじゃないか。私は今から四年前に、
昭和二十八年のあの輸入超過の
状況を見まして、一兆円
予算を実は私が言い出した。私はいろいろな点を
考えまして、行き過ぎを押えて、健全な発展の基調を阻害せずにいくのが、今の場合としていいのではないか、こういう
考え方、あくまで消費を節約し、ことに国産品を使ってもらって、輸入品をできるだけ押えるということは、機会あるごとに言っているのであります。だから財政演説におきましても政府は均衡
予算と言っております。民間の方におきましても、蓄積の範囲内で設備の拡張をやってい
ただきたい。金をどんどん借りて、日銀から借りていって
仕事をふやす、
仕事をすればもらかるのだということはよくない。民間におきましても健全金融で、蓄積の範囲内で仕入れをしてもらい、設備を拡張してもらいたいということを私はあのときから言っておるのでありますが、いかんせん、
先ほど申し上げましたように、昨年に比べて四千億円も貸し出し
増加ということが起ってきましたので、この一時的な行き過ぎの現象を押えれば、経済全体としては、私は
国民が地道に伸ばしていくのだという気持になってい
ただければ乗り切れると私はしているのであります。決して楽観ではありません。常に一番心配していろいろな手を
考えているのであります。一がいに
大蔵大臣はすぐ楽観だと、こう言われますが、決して楽観してはいない、努力してこれを切り開いていこう、この決心を言っているのであります。