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1957-05-07 第26回国会 参議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月七日(火曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            曾祢  益君    委員            黒川 武雄君            杉原 荒太君            津島 壽一君            永野  護君            海野 三朗君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            竹中 勝男君            森 元治郎君            石黒 忠篤君   政府委員    外務政務次官  井上 清一君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省情報文化    局長      近藤 晋一君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    法務省民事局参    事官      吉田  昂君    外務参事官   藤崎 万里君    大蔵省為替局管    理課長     宮城 恭一君    通商産業省企業    局賠償室長   谷敷  寛君    運輸省海運局総    務課長     吉田 俊朗君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○南西諸島在住者等に関する在外公館  等借入金整理準備審査会法特例法案  (内閣送付予備審査) ○千九百二十四年八月二十五日にブラ  ッセルで署名された船荷証券に関す  るある規則統一のための国際条約  の批准について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査の件(国際  情勢に関する件)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  南西諸島在住者等に関する在外公館等借入金整理準備審査会法特例法案議題といたします。まず政府から提案理由説明を聴取いたします。
  3. 井上清一

    政府委員井上清一君) 在外公館等借入金整理準備審査会法特例法案提案理由及び内容説明いたします。まず提案理由説明いたします。この特例法案沖縄に在住していたため、審査会法第五条第一項に規定する借入金確認請求する権利を行使する機会が与えられなかった者に対し、当該借入金確認請求することができるようにしようとするものであります。  その第一の理由は、審査会法日本がいまだ占領下にあった昭和二十四年に立法されたもので、当時の特殊事情から、同法第一条に規定する借入金提供者でも、沖縄等日本行政権の及ぶ範囲以外の地域に引上げた者については、借入金提供の事実の有無、その者の戸籍関係等調査することもできず、実際上救済の方法がなかったのであります。そのため請求の手続をきめた当時の政令中においても、何ら沖縄等に在住していた該当者を救済する手当がなされていなかった次第であります。  第二には、本邦内地在住当該借入金提供者については、審査会法公布施行後今日まで前後三回にわたる法律改正により、確認請求期限昭和三十年十二月三十一日まで延長し、今日まで約二十一万六千件の確認請求書を受理し、処理してきました結果、現在においては未処理件数約二千件を残すのみで、大体本年度内には一応の処理が完結する予定になっております。  第三には、その後公布施行された法律では、たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法昭和二十七年四月公布)や、目下国会において審議中の引揚者給付金等支給法案等も、沖縄在住者をも救済するよう立法される機運となったのであります。  以上第一から第三までの理由で、審査会法についても、沖縄に在住していたため、当該借入金確認請求する権利を行使する機会が与えられなかった者について、確認請求期限を延長する特例法を制定して救済することとしたい次第であります。  次に、この特例法案内容について簡単に説明します。第一に、本特例法は、沖縄に在住していたため確認請求ができなかった者及びその者の相続人を救済する趣旨であります。次には、沖縄に在住していた者でも、この特例法施行後百五十日の期限経過後は請求権を失うこと、及び審査会法第四条の審査会審査権限等がこの特例法案にも及ぶことを規定したものであります。  以上をもちましてこの特例法案提案理由及び内容の概要の説明を終ります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御採決あらんことをお願いいたします。
  4. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本法案質疑は次回に譲りたいと存じます。
  5. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、千九百二十四年八月二十五日にブラッセル署名された船荷証券に関するある規則統一のための国際条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。質疑に入ります前に、政府当局から補足説明を求めます。
  6. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) この条約成立経緯についてまず申し上げます。  欧米における海上運送は十九世紀初頭から急速に発展しましたが、それに伴いまして海上運送に関する免責約款が著しく発達し、複雑となったのであります。当初荷主の方は、免責約款が少いよりも運送賃の方が安いことを望んでおりました。そのために船主は競って免責約款を拡張しまして、船主に不利な判決があるごとく免責約款を付加し、最後には不当な約款の拡張のため、船主が何らの責任をも負わないと同様な状態となりました。その結果荷主側の不満もようやく増大し、免責約款禁止の声が高まり、それが世界的な世論となって、まず荷主の方が多いアメリカ合衆国及び英国の属領が、免責約款禁止立法をしたのであります。しかし船主の方が多い英本国では冷淡であったのであります。しかるに第一次世界大戦後、英本国属領諸国との政治的融和をはかるため、免責約款禁止立法の必要を感じるに至りまして、その準備に着手いたしました。しかしこの種の立法は一国のみでやっても自国の不利益をこうむることとなりますので、条約によって世界的統一法を実現するため、一九二一年に関係国会議が行われ、その結果一九二四年に至りブラッセルでこの条約が作成され、一九三一年に効力を生じたのであります。  次にこの条約に対するわが国態度でありますが、わが国は一九二五年に署名を行いました。しかしわが国海商法改正等の問題について慎重な検討の必要がありましたので、当時の司法省法制審議会でこの条約検討いたしましたところ、海上運送に関する商法規定はこの条約によるべき旨の結論に達したのでありますが、その立法化は戦争のため中断されましたため、今日まで条約批准は実現されなかったのであります。  次にこの条約の採否に関する各界意見を申し上げます。まず海運業界でありますが、海運業界では、この条約批准することを切望しております。その理由はこの条約成立経緯からも明らかでありますように、条約は、荷主利益保護のために免責約款を制限する、ということを主眼にしておったわけでありますが、わが国に関しましては、現行商法規定欧米とは逆に船主にむしろ過酷になっておりますので、この条約への加入は荷主保護よりも、むしろ船主側利益になるという事情がある次第であります。  第二に、わが商法に理解のない外国人を相手とする取引にあっては、条約と異なる商法に準拠して取引するよりも、条約同一内容商法に準拠して取引する方が便利であるため、国際的海上運送にあっては、わが国業者日本商法によることなく、条約または条約を採用する外国法に準拠して契約を締結し、免責約款を設けているのであります。しかるに条約により認められる免責約款が、日本商法によれば無効と解されるおそれがあるため、わが国海運業者国際競争不利益立場にあった次第であります。  次に貿易業界の方は、船主責任を軽減すること自体は歓迎すべきことでもないのでありますが、諸外国海運業者の負う責任以上の責任を、わが国海運業者に要求し、この条約批准に反対するというような意向はないのであります。のみならずこの条約は必ずしも荷主に不利な面ばかりとは限らず、有利な面もあるのでありまして、たとえば船荷証券については、わが商法に準拠するものよりも条約に準拠するものの方が、外国の信用を得やすく取引上便利である、という事情もある次第であります。  なおこの条約批准と同時に、海商法改正を行いますため、今国会国際海上物品運送法案が提出されております。この法律案につきましては、東京商工会議所が一昨年末、海運業貿易業保険業等各界代表者学識経験者を加えて条約を詳細に検討し、各界意見の一致をもってその要望を法務大臣に提出した経緯があります。  以上御説明申し上げました通り、この条約批准は、わが国海運業界のみならず、広く通商振興の上において有意義なことであると考えられる次第でございます。
  7. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本件関係する政府当局出席者井上政務次官藤崎条約局外務参事官のほかに、法務省吉田参事官運輸省海運局吉田総務課長が見えております。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  8. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 ただいまの御説明の、海商法改正の実質を持った法案が本国会に提出してあるということでありますが、それの審議はどういうふうになっておりましょうか。
  9. 吉田昂

    説明員吉田昂君) ただいま衆議院法務委員会審議中でございます。きょう中くらいに終るかと思います。
  10. 杉原荒太

    杉原荒太君 今この条約批准している国はどこの国ですか。
  11. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) この条約当事国は現在二十一カ国でございます。ベルギー、スペイン、イギリス、ハンガリー、モナコ、ポルトガル、ポーランド、フランス、アメリカ、ルーマニア、デンマーク、ノールウェイ、スエーデン、イタリア、ドイツ、フィンランド、エジプト、スイス、オーストラリア、トルコ、オランダ以上の諸国でございます。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その当時国、今おあげになった当時国のうちに、東欧諸国が入っておるのですが、これらは共産圏諸国になったのちには、やはりこれを継続して入っておるのかどうか。それ以外の共産圏諸国は、この問題に対してはどういうふうになっておるのか、その辺の事情一つ
  13. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) すでに入っておる東欧諸国はそのまま継続いたしております。現在入っていない国がこの条約に対してどういう態度をとろうとしておるのかということは承知いたしておりません。
  14. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 承知いたしておりませんじゃちょっと何だが、もしあれならば、少し調べて別の機会でもいいですから御報告願いたい。どういう態度をとろうとしておるか。
  15. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) 承知いたしました。
  16. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 ただいま伺いました、目下衆議院審議中の法務関係海商法改正法案が可決されれば、この本件と並んで海運業関係取引実情に即さない現商法の下において、過大な責任を負担させられるという説明にもありますこの危険が、商法上も整理されるのでありますか、どういうことになるのでありますか。
  17. 吉田昂

    説明員吉田昂君) ただいま提案されておりまする法律案は、国際海上物品運送法案といいますが、この国際海上物品運送法案と申しますのは、この条約商法との関係調整することを目的として立案しましたものでありますが、この条約規定によりまして商法規定は修正をされて、その間の調整がとれて行くことになっておるのであります。
  18. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 そういたしますと、国際間の海商法責任規定改正ということになるのでありますが、国内規定としての海商法責任の点は、ここに説明にありますような、過大な責任を負担させておるという現状に止めておいてよいのでありますか。
  19. 吉田昂

    説明員吉田昂君) おっしゃいますように、たしかに運送人責任につきまして不均衡を生じておるというわけでございますが、従って早晩商法改正をいたしまして国内関係につきましても運送人責任の軽減ということを考えなければならないわけでございますが、この条約はただ運送人責任を軽減するということだけを定めておるわけではございませんので、そのままこれを国内法に移すことができないように考えられるのであります。たとえば条約の四条五項でございますが、運送人責任運送品の滅失、損害について一包または一単位につき百スターリング・ポンドを限度とするということになっております。この一包または一単位につき百スターリング・ポンドという金額が適当であるかどうか、国内関係においてもこの金額で適当であるかどうかということについては、なお一層検討を要するというように考えるのであります。  またこの条約につきましては、内航路については適用を留保しておりますから、内航船に関する限りにおきましては、もっと十分なる検討を要するのではないか。現在におきましてはその検討がまだ十分できておりませんので、取りあえず外航船についてだけ国際物品運送法というものを作ったわけなんであります。
  20. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 そういたしますと、国内関係におきましても、海商法責任の点については何らか改正をしなければならぬ、という必要はお認めになっておるのですか。
  21. 吉田昂

    説明員吉田昂君) やはりこの条約の線に従って改正する必要があるということは考えております。
  22. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 了解いたしました。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この問題ですが、もし必要があるとするのならば、この批准と関連して、単に消極的に留保するだけでなく、改正なり何なり積極的にされてしかるべきだと思うのだが、それをやれないというのはどういうところに問題があってやれないのか、あるいは単に怠慢のためにそういう準備ができていないのか、その辺はどういう事情になっておりますか。
  24. 吉田昂

    説明員吉田昂君) 外国航路内国航路とでは企業の規模が違っておりますから、同じ法律なり条約なりで規制するというわけに参らないかと思うのであります。従って内国航路につきましては、この条約にこれを適用するわけに参りませんので、これに特例を作って行かなければならないという関係になるだろうと思います。そこでその特例も合せて同時にこの際作りますれば、それが最もよいかと思うのでありますが、内国航路も含めて考えるということになりますと、商法自体改正になって参りますので、これは今急にというわけに参らない。ところが外航船に関する限りにおきましては、できるだけ早くこの条約批准する必要がございますので取りあえずこの条約批准から先にやった次第であります。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると商法改正その他はその部分に関してだけ、部分的に改正をするというようなことは不可能で、もっと全般的な改正のときに一緒についでにやるというような態度をとられるのか、どうなんですか。その辺は部分的な改正なり何なり簡単にできそうに思うが。
  26. 吉田昂

    説明員吉田昂君) 部分的の改正にしますか、全体の改正にするかという点についてはまだ十分考えておりませんが、ともかくも条約の線に沿って早く商法改正しなければならないというようなことは考えております。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 早くやらなければならない必要だけは考えておられるのですか。
  28. 吉田昂

    説明員吉田昂君) 法制審議会におきまして、商法全般改正問題をやっておりますので、この問題を最初に取り上げた次第でございますが、とりあえず外航船についてだけ特別法を作るということをまず結論として出したわけでございます。あと部分は引き続いて検討しようということになっております。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると内国沿岸貿易については、そういう船主が過大な責任を負担されるというような危険は今のところないというお考えなのか、その危険はあるがまだ準備ができていないのでやらないというのか。あるいは商法改正のやり方として、もっと全般的な広範な改正をやるときでなければ、少々の不利は、そういう過大な責任を負担されるというような危険はあっても、それは見送らざるを得ないという事情にあるのか、その辺はどうなんですか。もっとはっきり御答弁を願いたい。
  30. 吉田昂

    説明員吉田昂君) 内航関係実情をいま少しく調査しなければならないと考えておりますが、この条約英米法体系に属しておりますので、ドイツ法系日本商法とはなかなかうまく  マッチしない点が多いのでございます。海商法のうちで、この運送関係法律が中心をなすようなものでありますから、この点を改正して参りますと、海商編全般にどうしても手をつけなければならないような状況なので、ですからやはり海商編全般改正としてもっていくのが適当じゃないかと考えておるわけでございます。この条約批准しますと、日本商法との間に非常にうまくいかない点が多いのでございますが、そのために特別法を作ったわけでございまして、この特別法によって日本商法との調整をとっていくのが非常に困難なことであったわけでございます。
  31. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の質疑応答を聞いておって、私はちょっとはっきりせぬ点がありますが、特別法内容を見ていないから的確には指摘しにくいが、条約批准する、それに伴って国内法、その形式特別法という形式で作る。それにしても現行海商法、ことに海上運送に関する部分などは、これは条約内容を取り入れた特別法に関する部分に関する限りは、やはり現行の何は改正されるのじゃないですか。法的の効果はそうなるんじゃないですか。何か現在の海商法をそのままにしておるというふうにとれるが、そこが私はちょっとわからない。そうじゃないんですか、どうなんですか。
  32. 吉田昂

    説明員吉田昂君) 形式上の商法というものはそのまま原則法として残る。これは特別法になりますから、法律内容それ自体改正されるということになります。
  33. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、それで一応の不都合はその措置で解消される、というふうに考えておいていいのですか、国内的に。
  34. 吉田昂

    説明員吉田昂君) その通りでございます。
  35. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それからこの条約批准を行えば、現行商法規定のもとにおいて、わが国船主が過大な責任を負担させられる危険は解消するというふうになっておりますが、現にこの批准を行わなかったために、船主が過大な責任を負担された事実はあるのかどうか、事実があればどういうふうな事実がこれまであったのか。特に戦後最近数年間においての実情を少し御説明願いたい。
  36. 吉田俊朗

    説明員吉田俊朗君) わが国海運業の今までの実情を申し上げますと、大体この条約通り約款に従って運送を行なっておったのでありまして、それに法的な裏づけをしていただくということに、運送人としては期待を持っているわけであります。今までどういう不利益をこうむったことが実例としてありますかと申しますと、わが国商法規定によりますと、先ほど来申し上げました通り運送人が非常な不利な立場に置かれておりますので、最近外国荷主方面におきまして、わが国商法運送人責任というものに着目いたしまして、いろいろなクレームを持ち込んできているというような実例もありますし、それからわが国商法内容外国荷主にわからないために、日本運送人運送契約をするについて、若干不要を感ずるような面もございまして、その点にわが国海運業者が若干不利な立場に立っていたということが言えると思います。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その国内法をたてにとって、不利な過大な責任を負担させられたという実例、その他最近どうなっておるのですか。実際にあったのか、ただそういう危険が感ぜられるというだけなのか。その辺の事情をもっと具体的に。
  38. 吉田俊朗

    説明員吉田俊朗君) こまかい実例をここに持ち合せておりませんけれども、ロンドンにおける港湾争議等の場合に、実際にこのクレームが参ったことは事実上ございます。もし、詳しい資料はあとで……
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 少しその辺の実情を調べて、あとで御報告願います。
  40. 津島壽一

    津島壽一君 これは昭和の初期に署名された条約なのですが、それが今ごろになって、三十年もたって批准する、こういうのですが、その間の事情も御説明があったようですが、まだほかに日本政府がこういったような国際条約署名して、戦前あるいは戦後にそのままになっておるようなほかの条約協定があるのでしょうか。他に事例がこれというようなものですね、そうしてまた同時にそれに関連して、すでに戦前署名したその条約協定が、今日でもなおこれを批准して実施するということが望ましいか、適当であるかというものが残っておるか、署名したけれどもそれは現在の時代にはもう全然無視していいのだ、というようなものもあるかもわからぬと思いますが、第一の問題はこれに類したような条約協定がありゃ、またその中でなお検討中であるというような意味で異議のあるようなものがあるのですか、ちょっとそのところの事例をお聞きしたいのです。
  41. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) この国際海事司法関係係でもまだ二、三ございます。一つ船舶所有者責任制度に関する条約、一九二四年に作成されてやはり一九三一年に発効しております。わが国署名しておりますけれども、批准はまだしておりません。それから海上先取特権及び抵当権に関する条約、これも同様でございます。こういうものは逐次検討をいたしまして、批准をするかどうかの結論を得たいと考えておるものでございます。
  42. 津島壽一

    津島壽一君 今の批准するかどうか検討の余地ありというようなものがなおあれば、その件名だけでも一つ調査の上委員会に提出するように、委員長から一つお話し願いたいと思います。
  43. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいま津島委員からの御要求の件は、取扱いを求めます。
  44. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) 承知いたしました。
  45. 津島壽一

    津島壽一君 もう一つ、直接これに関連ないのですが、この協定を見ましてもこの留保条項というものが非常に多いのです、この書類によってみたところが。それで留保条項一つ残しておくということが考えられるのですが、この留保条項というものの法的の効力、ほかの国がいろいろのところで、こういう場合はこれを適用しないのだというようなことを書いて署名し、またこれが実行に移っておると思うのですが、それをどういうふうにごらんになるのですか。留保することをただ署名し、あるいはこれを批准する国がその署名のときに書けば、効力ですかが、加盟国あるいは締約国にあるのですか、ないのですか。それはどういうふうに御解釈になっておりますか、ちょっと伺いたい。
  46. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) この条約そのものの実体には影響がないわけでございますけれども、その国との留保を行なった当該国と他の締約国との問に限りましては、その留保は生きているわけでございます。
  47. 津島壽一

    津島壽一君 この条約を十分読むひまもなかったのですが、この条約自体の中に、そういったような留保した場合には、その当該国との関係においては、その留保条項は有効であるという規定でもあったのでありますか。そういうことなしに、本来多数国間の条約においては、そういう留保条項はその国に対しては、ほかの締約国というか、加盟国を拘束するのだというような国際法上の原則がありますか。その条約を十分見ておるひまもなかったのですか、そこのところを一つ説明願いたいと思うのです。
  48. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) この条約には留保に関する規定がございません。さっき申し上げましたことは、一般国際法上の原則としてそうであるという工合に御了承願いたいと思います。
  49. 津島壽一

    津島壽一君 その問題について一応御検討願いたいと思うのです。それは対日平和条約の第十四条、賠償条項、サンフランシスコにおいては、インドネシアの代表スバルヂョ氏、またはフィリピン代表ロムロ氏は、調印に当ってそこに留保しておる文字を書き入れて調印しておる。それはどういうことか。現金賠償をもらえない、サービス賠償ではいかぬ、こういう意味から留保を書いた。多分署名あとに書いてあると思う。これはだいぶ前ですから、記憶が間違っているかもしれぬ。  そこで、フィリピンなりが自分の国はこの署名に当って留保を付したのである、従って、日本はそれを認めよ、こういうのが先方の意見であったのです。しかし当時の外務省当局としての解釈は、一方的に留保しても、これを全加盟国留保を認めたという決定がなければ対抗要件にならぬのである。従って、あくまでも日本はこの留保を認めないで、十四条のサービス賠償ということでやるのだといって、そこに意見の相違があったのです。しかし、ただいまのような御解釈があれば、対日平和条約国際間の多数国条約ですが、フィリピンは、十四条というものは自分は留保しているのだから、フィリピンに対しては日本は対抗できないのだというようなことを述べた場合に、ただいまの御答弁であれば、日本政府としては、現物現金賠償を認めるというのが法的な国際法上の原則だということになれば、非常に立場は弱いと思うのです。もちろん一国だけが留保して署名したのを、加盟国全部がその留保を認めるという決議があれば、これは認めます。この解釈の問題は、ここで最終結論を得たいとは思いませんが、一つ十分御検討になってどういうふうに解釈すべきか、という政府の法的の見解をお示し願いたいと思うのです。本条約審議に当って、あまり留保があるものですから、これに関連してそういう法的の解釈を伺ったわけです。あるいは私の見解が間違っているかもわからぬのですが、次回まででもいいからそこのところは御研究の上で正式に御答弁をお願いしたいと思います。
  50. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) サンフランシスコ平和条約では、どの国も正式の留保ということはやっておりません。つまり、私どもが国際法上の一つの要式行為としての留保という意味でございます。ただ、会議の際に代表がいろいろステートメントをやった中に、そういう意向は表明されております。そういう意向がどういうような国際法上の効力を持つかという点につきましては、今、津島委員の御指摘になりましたように、複雑なむずかしい問題がありますので、よく研究した上でまたお答えいたします。
  51. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の留保条項に関連して、第九条の第一項の貨幣単位に関する条項は現状に即さないから、その適用を新たに留保する予定だというふうに言っておられますが、これはどういう意味でこの現状に即さないとお考えになっているのか、これを留保した場合には、さらに日本としては貨幣単位の問題はどういうふうな扱いになるのか、その辺を御説明願いたい。
  52. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) 第九条第一項は「この条約における貨幣単位は、金価値を了解される」むね規定しております。条約において貨幣単位が言及されるのは、第四条5の運送人の損害賠償責任の限度額だけでありますが、この限度額たる百ポンドは、この条約の作成された一九二四年当時の金ポンドによる百ポンドを意味するということとなって、これは現在の邦貨に換算しますと約三十万円に相当することになります。しかしながらこの条約が作成されましてから三十年余の歳月を経過しております。その間にポンド自体の切り下げが二回にわたって行われております。各国における取扱いは統一を欠いておりまして、それぞれの国内法条約に定める百金ポンドをはるかに下回る法定賠償額を規定しているのが実情でございます。従ってこの規定に関連して不必要な疑義を生ぜしめて無益な紛争の因とするよりは、このゴールド・クローズの適用を留保して、わが国に関する限りは、現在の百ポンドを基準として責任限度額を十万円と定め取引の安定をはかるべきである、かように考えておる次第であります。なお昨年この条約に加入しましたオランダも以上のことと国様の理由に基きましてこの規定留保しております。
  53. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この条約に参加しても分担金支払いの義務はないということが書いてありますが、これはどういう事情になっているのですか。分担金は全然どこの国もないのか、あるいは若干の国はあるが日本だけその義務がないのか、それはどういう事情によるのか。
  54. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) どこの国も分担金を払うことになっておりませんです。
  55. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本件についての質疑は本日はこの程度といたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  57. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、千九百四十六年十二月二日にワシントンで署名された国際捕鯨取締条約の議定書の批准について承認を求めるの件、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約批准について承認を求めるの件、以上二件を一括して議題といたします。両件について御質疑のおありの方は順次御発言願います。ただいま外務省関係の係官のほかに、水産庁から木田海洋第一課長が出席しております。……両件についての質疑は次回に引き続きいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  59. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、海野委員から過般来為替問題とビルマの通商問題について御質疑の申し出がありますので、この際これを許します。政府側の出席者としては、大蔵省の為替管理課長宮城恭一君、通産省の企業局賠償室長谷敷寛君が出席しております。
  60. 海野三朗

    ○海野三朗君 この前私は外国に旅行する者の為替割当について質問をいたしましたが、その後資料もいろいろ拝見いたしました。結局するところ、私が申し上げますのは、規則一片で大蔵省がやっておる。向うから招待された者は金が要らないのだという見地から、三週間を通じてたった三十ドルきりしか割り当てていない。こういう割当て方ではならないのではないか。もう少し親切というものがなくちゃならない。そういうふうに私は考える。たとえば飛行機が故障して立つことができないで向うに滞在しなければならないときには、もう自費で滞在しなければならない。そういうことに実際私たちが直面してきたのであります。で、非常に困ってきたのでありますが、当時行きましたのは、自民党もおりましたし社会党もおりました。与党の人はあまり激しくその不平を述べることができない情勢にあるようでありまするが、私はそういうことに関係なしに、もう少し大蔵省が為替を割り当てるについては親切がなければならないのじゃないかと思いまするので、そのことについての為替局としての御所信を承わりたい。従って事務当局の御答弁と、並びにこれに対する政務次官のはっきりした御答弁をお伺いいたしたい。
  61. 宮城恭一

    説明員(宮城恭一君) まことに先生の渡米されました際には、向うのアメリカの国際協力局が滞在費一切を保証するということでございましたので、今までの経緯によりまして着後雑費として三十ドル割当ていたしました点は間違いございません。いろいろ事情を伺いまして、非常にそれではお困りになられたという点もわかりまして、まことに遺憾に存ずる次第でございます。われわれといたしましてはパート・ギャランティーと申しておりまして、滞在費は向うが持ち交通費はこちらで持って行くというのは、パート・ギャランティーと申しておりました。この事務は日銀に窓口を委任しております。さっそく日銀には、こういう公的なパート・ギャランティーにつきまして向うで困難が予想される場合には、親切にその事情をあらかじめ聞くようにさせまして、困難が予想される場合には、あらかじめ予備費的なものを携行を願いまして、使わなければまた返していただくというようなことをさっそく実行するよういたしております。親切心がないとおっしゃいましたにつきましては、確かにしゃくし定木にやっておりましたことを深く反省いたしまして、今後そのような御不便をさせるようなことがないように努力いたしたいと考えております。
  62. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいま外貨割当ての問題について御質問がございました。外貨の節用につきましては政府としてきわめて意を用いておりますところでございますが、節約のあまり、いろいろ実情に沿わないような点もあったかと思います。ただいま大蔵省からも説明がございましたが、今後十分に実情に合うように、しかも節約ができるように、十分それらの点を勘案いたしまして、十分一つ節約並びに実情に合うという両面の調和をはかったやり方を政府として研究してやっていきたいと、かように考えております。
  63. 海野三朗

    ○海野三朗君 ただいまのことは了承いたしました。次いでビルマとの賠償問題につきまして、条約だけはりっぱにここでいつでも承認するという形になっておりますが、実際上はビルマに対してのこの賠償はどういうふうな状態でありますか、滞りなく進んでおりますか。またこの農機具のセンターを向うに設けるというので、通産省が予算をとったはずである。ところがその予算をとってからこれを実行するまでに相当の期間を経た。これが何ゆえに引っかかりがあってそういうふうにおくれたのであるか、内地の出品をする業者は大阪にまで品物を運んで、船の方でストップを食ってばく大なる倉敷料をとられたと言って悲鳴をあげておりましたが、通産省の方としてはどういうところにその引っかかりがあってこれはできなかったのであるか、その辺の事情を承わりたい。
  64. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) ビルマに対する賠償は本協定が先にできまして実施細目は政府間で合議することになっておったわけでありますが、この実施細目の決定に手間取りましたために、だいぶんスタートがおくれまして、軌道に乗りましたのはようやく昨年初めからでございます。しかしその後は大体順調に進捗いたしておりまして、この一年半ばかりの間に年平均額七十二億円相当のものが実施に移されております。
  65. 海野三朗

    ○海野三朗君 それと農機具センターの方は通産省から。
  66. 谷敷寛

    説明員谷敷寛君) 本日賠償の御質問があるということで参りましたが、農業センターの方は所管が違いますので、私にはちょっと説明できかねます。
  67. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは政府間の協定を結んでから、どういうところに引っかかりがあってぐずぐずしておったのでありますか。その辺を承わりたい。
  68. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) 賠償の実施のやり方としましてはまずビルマの方に日本政府が自分で物を調達し、役務を調達して、日本政府責任で納めるというやり方と、ビルマ政府日本の業者と直接契約しまして、日本政府としてはその契約に基く支払いだけをする、という二つのやり方に大きく分けて考えられるわけでございます。このビルマ側に直接日本の業者に契約させるという点については、初めから日本とビルマとの間に意見が一致したのでありますが、その際にビルマの方は自分の方に年額七十二億円全部まずすぱっと渡してもらいたい。自分が勝手に契約する、この金を使うということにしたいという主張をしたのであります。それに対しまして日本の方としては、そんな年度当初に全額渡すようなことはできない。あなたが契約してその契約に基く支払いが必要になったらその期日前に必要な金額だけを払ってあげましょうということで、だいぶん長い間論争しておったのであります。結局全然ビルマ側に金を渡さないわけでもない。しかし全額渡すのじゃないというような妥協の方式ができまして、妥協のやり方として、日本政府とビルマ政府の間に一つクッションを設けて、これを賠償勘定というものを日本外国為替銀行に設置させる。この賠償勘定はただいまビルマ政府の名義のものではありますが、日本政府は所要の支払いを賠償勘定に対して行う。この賠償勘定からの支払いは、ビルマが勝手にはできなくて、すでに日本政府が認証しておる賠償契約に基く支払いだけをやる、そういうことで妥協ができました。しかしそこに至るまでに相当期間を要したわけであります。  それからもう一つはどういうような生産物、役務をビルマに供与するかという点については、やはりビルマ政府日本政府の間の合意によることにいたしておりますが、具体的にはそれを各年度ごとの実施計画という形で合意するわけであります。しかしビルマ政府の方でこの実施計画の原案を作成するのに非常に手間取りまして、まあ不慣れな仕事であったせいもありますでしょうが、この実施計画の決定がおくれたということも、賠償の実施が始るまでに日数がかかったという一つの原因でございます。
  69. 海野三朗

    ○海野三朗君 大体お話はわかりましたが、私が先年ビルマに行きましたときに、稲垣使節団長も行っておりました。そうしていろいろ向うの状況を探ってみますと、ビルマに駐屯しておった日本軍の子供が、全国で約三万人もおるという状態でありましたので、向うは非常に親日の気分が濃厚であり、従って私は賠償というようなものは努めて親切に向うにしてやらなければいけないのじゃないか。御承知のように、イギリスの品物もぼつぼつ入ってきておるのでありますが、こういうことについては日本がなるべく率先して、早く賠償の方に進んで日本の品物を向うにやるということが、将来日本の輸出貿易にも関係するからして、なるべく出ししぶらないようにして、努めてこちらで好意ある態度でもって臨んでもらいたい。こういうように私は思うのでありますが、これは延期すれば延期しただけ、それは日本の得になるでありましょう。やるやると言っててなるべく延ばした方が得になるでありましょうが、大局的見地から考えると決してそれは将来において日本のためになるのではなく、努めてこちらから親切に賠償を支払ってやるということが、日本の将来貿易に対しても非常に関係があると思うのでありますが、その辺に対しては政府当局はどういう御所信でいらっしゃるか。
  70. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) 方針といたしましては御意見通りに私どももいたしたいと考えております。ただ個々の事例で若干合意ができるのに手間どったことがあるのも事実でございます。例を申し上げますとたとえば硫安、これは肥料需給計画というもので年度ごとにきまるのだそうでございますが、その硫安が日本の輸出が非常に好調の間はワクが使い果されておって、どうしても賠償にやれないということで、向うからの申し入れを断わったことがございます。これはまだ正式に提案されない段階で断わってしまったのですが、それからたとえば繊維製品のようなものはこれは日本のビルマに対する輸出の相当大きな部分を占めておるわけであります。日本政府としましては、やはり賠償は賠償、貿易は貿易である程度の影響があることはやむを得ませんことでありましょうがなるべくならば貿易に対する影響を少くしてもらいたいということで、従来からビルマに日本から輸出しておったようなものは方針として賠償に繰り入れないようにしてもらいたい、そういう趣旨で向うもそういう点は方針としては了承しておる。ただビルマの外貨事情が悪化しておるために、まあ筋はそうだけれども、これは一つ何とかしてくれないかというようなことがまま消費材についてあるわけでありまして、そういうものは個々に具体的な事情を考慮して、できる限りビルマ側が賠償を取ってありがたいという気になるように問題の解決をはかっておるわけでありまして、新聞等ではよく問題が先鋭化された形で出るようでありますけれども、実際にビルマの東京に参っておる使節団の方では、日本政府の協力ぶりに対して感謝しておるという実情でございます。
  71. 海野三朗

    ○海野三朗君 それではただいまのは了承いたしますが、あとの問題は次回に譲りたいと思います。本日はこれで。
  72. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今のことに関連して。今賠償の問題で実施計画というようなことのお話があったんでございますが、それはビルマだけに実施計画というのはそういうようなことをなさっていらっしゃるのですか。ほかの国に賠償を払う場合にもやはり実施計画を作って、それに基いて支払っていくというようなふうな方法をおとりになるのでございますか。
  73. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) 現在日本が生産物役務の賠償をやっておりますのは、ビルマ、フィリピンだけでございますが、フィリピンに対しても実施計画を作ってそれに基いてやっております。
  74. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 賠償を支払いました場合にフィリピンにしてもビルマにしても、日本が非常に建築物その他に戦争によって破壊をしてきたというような所に対しては、まあ日本の国民の願いとしては、なるべくなら日本から払われた賠償によってそういうような破壊されたものがまた復活するか、あるいは新しくそこの国に何か恩恵があるようなよい建造物ができるとか、何か形に残って、そこの国の人たちが日本に対する、戦争に対する悪い感情が、今度はその支払われた賠償によってむしろよい感情を日本に対して持ってくれるように使われることが、われわれの希望じゃないかと思うのでございますが、そういうような点について賠償を支払われるときに一々具体的なこまかい注意を払ってやっていらっしゃるのでございましょうか、どうなんでございましょうか。
  75. 藤崎万里

    説明員藤崎万里君) 御趣旨まことにごもっともでございまして、そういうふうに実施計画を作るようにいたしております。先ほど消費材を出したくないという一般的の方針を申し上げました際に、これが貿易を食うことになるからだという理由だけを申しましたけれども、実は今、加藤委員が御指摘になりましたように、やはり賠償が飲んだり食ったりで消えてなくなってしまうのでは日本としても残念だ。何か大きなモニュメントが残るということが、やはり長い間にわたって日本の賠償の効果を上げるゆえんじゃないかという考慮もあるわけでございます。実際に賠償計画を作ります場合にも、その項目の立て方をプロジェクト方式と申しておりますが、特にここに発電所を建てるからその所要資材、機械としてこういうものが要る、こういうプロジェクト・べーシスで設置計画を立てるようにということで、ビルマに対しましてもフィリピンに対しましてもやって参っている次第でございます。
  76. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この問フィリピンに参りましたとき、朝海前大使からもそういうようなお話を伺いまして、ある種の品物はむしろ日本人があまり希望しないような、まあ跡形もなく消えてしまうような使い方をされているというようなこともちょっと承わりましたので、私は日本国民が大へんな負担をしょって賠償を払って参りますのは、国民がそういうこまかいことはわからないわけでございますけれども、やはりフィリピンやビルマに対して大きな関心を持っているわけでございますから、どうかそれが今おっしゃったプロジェクト・システムですか、そういうようなことで跡形もなく消えてしまうようなやり方でなく、何かほんとうにモニュメントになって残って、そこの国民にほんとうに喜ばれるような方法で支払っていらっしゃるよう、今後十分な注意を払っていただきたいということを希望しておきます。
  77. 海野三朗

    ○海野三朗君 今のにちょっと関連して。私ビルマに参っていろいろ調べてきたのでありますが、化粧石けんの工場さえもないんです。全部イギリス品です。それを使いたがらないんです、向うの方は。——種の反英ですね、そうして日本人からすべてをやってもらいたいという気分がすぐにくみ取れるのです。ヤシの油から化粧石けんも作ることができるのであるけれども、その技術を知らないというようなのでありまして、工場と名のつくような工場はまずほとんど目ぼしい工場はないようでありました。従って、今お話の何か向うに残るようなものに対して、十分親切をもって啓蒙しながらこの賠償を支払っていくという態度も、私は希望いたしておく次第でございます。
  78. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 佐野委員から、日韓関係による日本漁民の抑留者に対する見舞金に関する件について、質疑の申し出がありますので、この際これを許します。ただいま中川アジア局長も出席しております。
  79. 佐野廣

    ○佐野廣君 先般当委員会から山口、福岡、長崎の韓国に抑留されております漁民の状況それから大村収容所の実情等を調査に派遣されて参りましたので、二、三質問をいたしましてその結びをつけておきたいと思います。  当委員会でもしばしば論議されましたところに基きまして、この金公使が最近お帰りになりまして、その後の交渉の結果がどうなっておりますか。私の一応確かな情報として聞いておりますところでは、いわゆる岸総理渡米前においての早期相互釈放ということが実現されそうな明るい見通しでございますが、こういったふうに了解いたしてよろしゅうございましょうか、一応承わりたいと思います。
  80. 中川融

    政府委員(中川融君) 日韓交渉のその後の模様でございますが、これは私と金公使と数回その後折衝いたしまして、主として現在釜山に抑留されている日本人漁夫、大村に抑留されております韓国人を相互に釈放するという問題、またそれに引続きまして、一定の時期をおきまして日韓会談を再開する、そうして諸般の懸案を抜本的に解決するというそういう方式につきまして、文書を交換しようということになり、その文書の字句等につきまして打ち合せを行なっておるのでありますが、これはもうほとんど打ち合せも完了に近いのでございます。一カ所まだ字句の点につきまして、日本側としてはこうしたいという点につきまして向うに申し入れまして、韓国側はそれに対して今検討中であるというのが現段階でございます。向うからの対案が出次第それについて話し合いを行いまして、妥結ができますれば、先方と当方との間の準備は大体でき上るとかように考えておるのでございます。従いまして、総理がアメリカに行かれる前にこの問題は解決するという目途をもって、交渉を進めておる次第でございます。
  81. 佐野廣

    ○佐野廣君 大へん明るい見通しでございまして、私どももそれに十分の期待をかけておりますので、この上とも一つ御尽力をお願いしたいと思います。  それでもう一つ相互釈放の問題と同時に、抑留されております漁夫の家族に対しまして、また船舶に対しましての補償、救済、こういう問題が先般の実情調査に参りました際にも強調されておったのでありますが、これに対しましての見舞金の支出の状況あるいはその方法、こういう点について承わっておきたいと思います。
  82. 中川融

    政府委員(中川融君) 留守家族に対します見舞金の支出につきましては、これは従来一定の方式がきまっておるわけではございませんが、大体現実問題といたしましては、三カ月ごとくらいに月一万円くらいの割合で、留守家族に対しまして、見舞金を、これは農林省が主管でございますが、支出してきておるのでございます。これはできるだけ抑留を早く解消したいということから、別に一定の形式をきめることはしていないのでございますが、事実上はさような結果になっておるのでありまして、最近の支払いといたしましては、昨年末現在でたしか見舞金を支給をしておるのでございますが、その後この問題の解決が長引いておりますので、本年三月末現在くらいでもう一回見舞金を出す必要があるということで、農林省が今この方の手配を進めておると承知しております。もちろんこれだけでは十分の援護はできないわけでございますが、そういうことを今後もやっていきたい。  なお船舶につきましては、大体は船舶の保険制度がございますので、その保険制度に基きまして救済が行われておるのでございますが、保険に入っていない船舶も例外的にはあるのでございまして、そういう点につきましては、水産庁が主として融資その他の方法で、いろいろ援助、あっせんを試みておるところでございます。  なお、船員自体の家族につきましても、その本俸に相当するものは、船員保険などによりましてこれはある程度の救済が行われておる、かように承知いたしております。
  83. 佐野廣

    ○佐野廣君 それで、この見舞金はアッパー・リミットと申しますか、最高六カ月というふうに聞きましたが、そういうふうなものがありますか。
  84. 中川融

    政府委員(中川融君) それはおそらく、船員保険の給付金の関係の最高限か何かが六カ月間となっているというのがあるかと思います。これは詳細に私は存じませんが、見舞金自体についてはさような制限はないのでございます。
  85. 佐野廣

    ○佐野廣君 そうしますと、これは何か法律の定めるものによる適用、こういうふうなものではなくて、水産庁の方で適宜の措置としてお取り扱いになっておる、こういうことでございますか。
  86. 中川融

    政府委員(中川融君) その通りでございます。行政上の便宜措置として、見舞金を事実上出しておるということになっておるわけでございます。
  87. 佐野廣

    ○佐野廣君 それで実情調査いたしますと、御承知のように近海漁業などが非常に多い関係がありまして、零細漁民が多いのであります。それでその訴えられますことはきわめて切々たるものが感ぜられますのと、いま一つ、各地で言われましたが、どうも政府は、北洋漁業の方は非常に大ものを派遣したりして力を入れているが、西日本の方は軽視しておるんじゃないか、零細漁民を軽視しておるんじゃないかというおしかりをずいぶん受けて参りました。で私どもはそういうことはないということを、いろいろ私どもの知っておる範囲で了解を求め説明をして参りましたが、この零細漁民が非常に多い。一本釣りのようなものもあるというふうな状況は、皆さん御承知の通りと思いますので、この救済の方法も金額の増額もお願いをすべきものじゃないかと思いましたし、あるいは支給の方法にしましても、毎月でも支給するというふうにしてあげないと、非常に困られる状況があるんじゃないかと、こういうふうに私どもは見て参ったのでありまして、この金額の増額の考えあるいは支給の方法についても、今申しましたように月々支給するというふうな方法、こういうふうな点についてお考えを願いたいと思いますが政府の方ではどういうふうにお考えになっておりますか、承わりたいと思います。
  88. 中川融

    政府委員(中川融君) 御指摘の通り、今までの見舞金制度では金額から申しましても十分でなく、またこれが恒久的な制度としてできておるわけでもございませんので、毎月必ず一定額が支給されるというふうにはなっておりません。その二点につきましても正しく御指摘のような欠陥があるのでございます。われわれとしては、日本の漁夫が不当に抑留されておるというふうな事態が一日も早く解消する、ということを主眼といたしまして処しております関係上、政府全体としまして、こういう制度を恒久化するということがおくれている実情にあるのでございますが、御指摘の通り、いかにもそれらの欠陥は、われわれの方から見ましても、何とかもう少し是正すべき余地があるんじゃないかと考えておりますので、水産庁当局と十分連絡しまして、できるだけの措置を今後研究していきたいと、かように考えております。
  89. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 前回の委員会におきまして、明八日に農林水産委員会と連合審査会を開会することを決定いたしたのでありますが、都合によりまして明後九日午前十時に開会いたしたいと思いますので、御了承願います。次回は来る九日農林水産委員会との連合審査会散会後に開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後零時十九分散会