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1957-04-30 第26回国会 参議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月三十日(火曜日)    午前十時十九分開会   —————————————   委員異動 四月二十二日委員加藤シヅエ辞任に つき、その補欠として赤松常子君を議 長において指名した。 四月二十五日委員赤松常子辞任につ き、その補欠として加藤シヅエ君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            曾祢  益君            梶原 茂嘉君    委員            黒川 武雄君            杉原 荒太君            津島 壽一君            永野  護君            野村吉三郎君            海野 三朗君            加藤シヅエ君            竹中 勝男君            森 元治郎君            吉田 法晴君            石黒 忠篤君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    防衛庁防衛局長 林  一夫君    外務政務次官  井上 清一君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省経済局次    長       佐藤 健輔君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省情報文化    局長      近藤 晋一君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   塩崎  潤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百二十四年八月二十五日にブラ  ッセルで署名された船荷証券に関す  るある規則統一のための国際条約  の批准について承認を求めるの件  (内閣送付予備審査) ○日本国エジプトとの間の文化協定  の批准について承認を求めるの件  (内閣送付予備審査) ○千九百五十三年十月一日にロンドン  で署名のため開放された国際砂糖協  定を改正する議定書受諾について  承認を求めるの件(内閣送付予備  審査) ○日本国イランとの間の文化協定の  批准について承認を求めるの件(内  閣送付、予備審査) ○日本国ノールウェーとの間の通商  航海条約批准について承認を求め  るの件(内閣提出) ○連合審査会開会の件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件) ○所得に対する租税に関する二重課税  の回避及び脱税防止のための日本  国とアメリカ合衆国との間の条約の  補足議定書締結について承認を求  めるの件(内閣提出)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまから外務委員会開会いたします。  まず委員異動について報告いたします。去る二十二日に加藤シヅエ君が委員辞任せられ、その補欠として赤松常子君が委員になられ、二十五日に赤松君が委員辞任せられまして加藤シヅエ君が補欠となりました。   —————————————
  3. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、千九百二十四年八月二十五日にブラッセル署名された船荷証券に関するある規則統一のための国際条約批准について承認を求めるの件、日本国エジプトとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、千九百五十三年十月一日にロンドン署名のため開放された国際砂糖協定改正する議定書受諾について承認を求めるの件、日本国イランとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、以上四件を一括して議題に供します。まず政府より提案理由説明を聴取いたします。
  4. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいま議題となりました、千九百二十四年八月二十五日にブラッセル署名された船荷証券に関するある規則統一のための国際条約批准について承認を求めるの件、につきまして提案理由を御説明いたします。  十九世紀以来の海上運送事業発展に伴い、運送人荷主の利害の衝突を国際的に解決する必要が生じたので、第一次大戦後、海上運送における運送人責任統一的に規律する国際条約起草準備が開始され、数回の国際会議を重ねた結果、千九百二十四年ブラッセルでこの条約が作成されたのであります。  戦前、海運について一流国でありましたわが国は、前記の条約交渉に当初から参加し、千九百二十五年にこれに署名を了したのでありますが、その批准のためにはわが国海商法改正等の問題についての検討を必要とし、そのらち第二次大戦となり、ついに批准は実現しないまま今日に至ったのであります。  この条約は、海上運送に伴う運送人責任を明確にすることにより、一方においては荷主の保護、他方においては海上運送企業の円滑な発展を促進しようとするものであります。わが国がこの条約批准を行えば、わが国海運業が、取引の実情に即さない現行商法のもとにおいて過大な責任を負担させられる危険が解消し、戦後再び昔日の地位を取りもどしつつあるわが国海運事業の安定した発展に寄与するものと考えるのであります。  なお、わが国署名の際にベルギー外務大臣にあてた書簡をもちまして、船長その他運送人の使用人の航海上の過失に基いて生じた損害についての運送人責任を免除する条約、第四条2aの規定受諾、及び内国沿岸貿易条約規定を適用することを留保したのでありますが、批准の際には、内国沿岸貿易に関する留保は存置しますが、第四条2aの規定に対する留保は撤回し、また、第九条第一項の貨幣単位に関する条項は、現状に即しませんので新たにその適用を留保することといたします。  よって、政府はこの条約批准について御承認を求める次第であります。右の事情を了承せられ、御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、日本国エジプトとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、につきまして提案理由説明いたします。  昭和三十一年三月、エジプト政府からわが方に対して文化協定締結したい旨の申入があり、先方はその後の交渉におきましてもきわめて熱意のあるところを示しましたので、ほどなく案文について意見一致をみるに至ったのでありますが、同年夏スエズ問題の突発により一時署名を延期するのやむなきに至りました。その後、本年二月にエジプト側より早急に署名を行いたい旨の申し入れがあり、わが方といたしましても、エジプトとの友好親善を図る上に本協定締結が有意義であると考えられますので、去る三月二十日カイロにおいて在エジプト土田大使とA・ファッターフ・ハサン・エジプト外務大臣との間で本協定署名調印を行なった次第であります。本協定は、戦後わが国締結いたしましたフランスイタリアメキシコタイとの文化協定又は今期国会においてすでに御承認を得ましたドイツインドとの文化協定内容的におおむね同様のものでありまして、両国間の文化交流のための諸種便宜供与文化活動奨励学者学生交換等について規定したものであり、この協定実施により、エジプトとの文化関係を通じて両国民の間の相互理解が一そう深められ、両国親善関係増進に資するところ少くないものと期待されます。  よって、ここに本協定批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに本件につき御承認あらんことを希望いたします。  次に、千九百五十三年十月一日にロンドで署名のため開放された国際砂糖協定改正する議定書受諾について承認を求めるの件、につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は千九百五十四年に国際砂糖協定に参加して以来、砂糖輸入国の立場から国際市場における砂糖需給計画の策定に積極的に参加してきたのであります。同協定有効期間五カ年でありますが、発効後三年目の千九百五十六年に改正を行うこととなっておりましたので、国際連合主催による協定改正のための砂糖会議が客年五月にニュー・ヨークで、さらに同年十月にジュネーヴで開催され、わが国も代表を出席せしめたところ、同会議は十一月二日本件議定書を採択いたしました。  この議定書による改正の結果、わが国が受ける利益のおもなものは、協定に基く輸出国輸出割当量が増加すること、輸出割当量を調整する価格点の水準が引き下げられること、及びわが国投票数の増加に伴い砂糖理事会におけるわが国発言力が強化することであります。  政府におきましては、右の利点を考慮し、客年十二月十一日にこの議定書署名いたしました。また、この議定書第四条1の規定によりますと、議定書受諾期限は一応本年一月一日となっておりますが、同日までに受諾を行うことのできない国は、本年七月一日までに議定書受諾するよう努力する旨の通告をあらかじめ英国政府に行っておき、その後七月一日までに正式の受諾を行えばよいこととなっておりますので、この規定により、政府は、客年十二月二十四日に右の通告を行なっております。  よって、この際は、この議定書の受諮について御承認を求める次第であります。  右の事情を了察せられ、御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  次に、日本国イランとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定につきましては、昨年末在京イラン大使館を通じて協定締結方申し入れがあり、自来東京において交渉を続けて参りましたところ、案文について双方意見一致を見ましたので、去る四月十六日東京において岸外務大臣とホセイン・ゴズ・ナカイ駐日イラン大使との間でこの協定署名調印を行なった次第であります。  この協定内容は、従来わが国締結いたしましたフランスイタリアメキシコタイとの文化協定、または全国会におきましてすでに御承認を得ましたドイツインドとの文化協定等とおおむね同様のものでありまして、両国間の文化交流のための諸種便宜供与文化活動奨励学者学生交換等について規定したものであり、この協定締結によりイランとの文化関係を通じて両国民の間の相互理解が一層深められ、両国の間の親善関係増進に資するところ少くないものと期待されます。  よって、ここに本協定批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに本件につき御承認あらんことを希望いたします。   —————————————
  5. 笹森順造

    委員長笹森順造君) これらの案件についての質疑は後日に譲りたいと思います。
  6. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、日本国ノールウェーとの間の通商航海条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  ただいま政府側から井上政務次官高橋条約局長佐藤経済局次長が出席しております。
  7. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 二、三点簡単に御質問したいんでありますが、ノールウェー以外、たとえば英国との間、その他の国との通商航海条約交渉状況ですね、これはどういうふうになってるかお伺いしたい。
  8. 佐藤健輔

    政府委員佐藤健輔君) お答え申し上げます。戦後におきまして通商航海条約締結されましたのは、御承知通り日米通商航海条約だけでございます。幸いにノールウェーのこの条約が御承認願えれば、それが第二番目になるわけでございます。このほかに、御質問の現在の通商航海条約交渉状況でございますが、ノールウェーを除きましてただいま十三カ国と交渉中でございます。南米が六カ国、そのほか英国イタリアフランスユーゴイランインド、セイロンと、こういうふうになっております。実はわれわれといたしましては諸国間との経済関係の安定をいたしたいために、これらの条約締結を取り急いでおりますが、何分内容が非常に広範にわたりますために、今のところまだノールウェー以外に早急に締結が予想されるものはごく少いのでございますが、ただいま申し上げましたうちで、イタリアユーゴ等につきましてはだんだん交渉の幅も狭まってきておりますので、割合に近いうちに締結できるのではないかと、こう考えております。御質問英国につきましては、その内容はただいま交渉中でございますので、ここに御披露いたすのもどうかと思いますが、すでに第一回の意見交換をやりまして、目下第二回目の詳細な交渉を開始すべく準備中でございます。大体簡単でございますが。
  9. 永野護

    永野護君 ちょっと関連して。ただいまの梶原委員からの御質問に対して御答弁があったのでありますが、フィリピンビルマとの通商航海条約交渉状態については何も御説明がなかったのでありますが、御案内のようにフィリピンにもビルマにも当時の日本の常識からいうと非常に奮発した賠償を払った。それは通商航海条約を早くこしらえて、大いに両国との経済上の関係を親密にすることができるであろうという予測のもとに大いに奮発して払ったわけです。ところが現実の問題としますと、あの通商航海条約ができないために、せっかくの賠償支払いに伴う経済提携をやろうと思いましても、非常な支障を来たしておることは御承知通りだろうと思います。ほかの国は、これはたとえが悪いですけれども、特に犠牲を払っていないのに、片一方では入場料を支払って芝居が見られないというような感じがする点がありますから、この賠償を払った国は、実は賠償協定ができるとそれの一種の執行機関みたいなものだから、通商航海条約はどの国とも大切でありますけれども、特にこの両国との通商航海条約は一日も早いことを希望するわけであります。今この両国関係について少しも御説明がなかったから、それをお伺いするわけなのです。
  10. 佐藤健輔

    政府委員佐藤健輔君) 御指摘通りビルマフィリピンにつきましてはわれわれといたしましても、ほかの諸国にまして早く作りたいと考えておった次第でございまして、ことにビルマにつきましては賠償交渉が始まる前、すでに四年ほど前だったと記憶いたしますが、一つ草案を提案いたしましてぜひやりたいと、こういうことを申し出ておったのでございますが、ビルマ側のいろいろな事情、ことに向う経済体制があまり整えられておりません関係上、普通われわれが言います通商航海条約につきましては、向うで非常に締結をちゅうちょしておる、つまり向う体制が整いませんために、はっきりした条約締結が困難であると、こういう状況にありますために話が進んでおらないわけでございます。  それからフィリピンの方でございますが、それも先生御指摘のように、ぜひともわれわれといたしましては賠償に伴ってすぐ向う交渉したい、また原則的にはそれを向うが了承しましたために、昨年末だったと記憶いたしますが、こちらから草案を出して向う検討を重ねておったわけでございますが、少しその条文が広範に過ぎましたために、先方としてはもう少し簡単なものを作りたいと、こういう意向のようでございます。従いまして今後この交渉がそのまま進みますか、もし進まないならば、貿易その他賠償に非常に関連した部分だけでも引き抜きまして、別に簡単なものを早急に取り結び、そのあとで全般的な話を時間をかけてするのも一案かと、こういうふうに考えておりますが、まだ向うの方で日本の案に対する最後的な意向を決定しておりませんので、もう少し状況を見たいと考えております。
  11. 永野護

    永野護君 御趣意のほどはよくわかりましたが、御承知通りフィリピンでは今年の十一月は大統領選挙が始まって、内閣の今のような人事の構成がいつまで続くかということか非常に不安の点もあるのであります。御承知通り今のネリラヌーサコンビはもうベスト・メンバーであって、日本との交渉にこれ以上のメンバーはあり得ないと思うのでありますから、どうか、御趣意はよくわかりますけれども、このネリラヌーサコンビのある間に、ぜひ通商航海条約締結するということを目途にしてお進みが願いたいと思います。繰り返して言うようですけれども、通商航海条約にそんなに手間取るなら、あの賠償協定もあんなに急いであんなに犠牲を払うこともないので、通商航海条約締結されて、日本フィリピンとの間の非常ないろいろな両方利益が得られるということを目標にして、あの賠償協定を結んだのでありますから、せっかくの今までの努力が画龍点睛を欠くような、現に非常な不便を受けておることは御承知通りだろうと思います。一日も早く締結されることをお願いいたします。
  12. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 北欧関係で特別の関税同盟といいますか、そういう特殊の状況があるのでしょうか。
  13. 佐藤健輔

    政府委員佐藤健輔君) ちょっと御趣旨がよくわからなかったのでありますが、もう一度恐縮でございますが。
  14. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 この内容を見ますると、たとえばデンマークフィンランドアイスランドスエーデン等に対して何か特別の利益を与える云々のことが書いてあるのでありますけれども、その他にもそれに類したような条項がある。何か北欧中心一つ関税その他の点で特別な協定といいますか、そういうものがあるのかどうか、こういうことであります。
  15. 佐藤健輔

    政府委員佐藤健輔君) この条文には、北欧三カ国及びアイスランドに与えた特恵は除外する、こういうふうに書いてございますが、ただし条件といたしましては、ガットそれからIMF、そういう国際機関による両方権利義務をそこなうものではない、こういうふうに、議定書の六項だと思いますが、「条約中の最恵国待遇規定は、ノールウェーデンマークフィンランドアイスランド及びスウェーデンに対してのみ与えているか、又は与えることがある特別の利益については、適用しない。」と、こういうふうになっておりますが、さらに議定書の七項におきまして、「条約のいかなる規定も、いずれか一方の締約国関税及び貿易に関する一般協定国際通貨基金協定又はそれらを修正し若しくは補足する多数国間の協定締約国として有する」権利義務をそこなうものではない、従いまして、関税貿易につきましては、もし関税同盟または自由貿易地帯を作りましても、それはガット規定を順守しなければならない、こうなっておりますので、一般ガット規定によって律せられる、こうなるわけであります。  そのほかの問題で現在ノールウェーがどういうものをこういう国にやっているかという点につきましては、これはいろいろ調査をいたしましたし、向うの方にも連絡いたしましたが、その一番大きなものは入国の問題でございます。こういう国境が続いておりますために、入国については何らの制限なく入国または出国ができる。またノールウェースエーデンとの関係から、鉄鉱山については、普通外国人には許可しないことになっておりますが、これが特別の許可を与えられておること、こういうふうに日本にとりましては、非常に関係の薄い事項についてのみでございましたので、これは北欧四カ国の非常な伝統的な政策であるといいますので、これは一応のみまして、貿易関税部分についてはガット規定によるというふうな留保をつけた次第でございます。
  16. 海野三朗

    海野三朗君 先ほどビルマの話がちょっと出ましたが、ビルマ賠償関係を結んで以後、日本農機具センターなんかを向うに設けるということ、ビルマとの関係は、条約だけは結んでしまったが、実際伴なって着々賠償の方もうまくいっているのですか、どうなんですか。
  17. 井上清一

    政府委員井上清一君) ビルマとの賠償に関しましては、先般も申し上げたと思いますが、当初すべり出しは円滑を欠いたこともございましたが、その後実施細目計画通り円滑に進捗いたしております。
  18. 海野三朗

    海野三朗君 計画通りとおっしゃるけれども、あの農機具センター向うに設けるということ、あるいはすでにこちらで決定しておってからぐずぐず二、三年を経過した、それはビルマに対する出先機関交渉がまずいのじゃないか、あのときに久留島氏を国会に呼んで状況の話を聞いたところが、ビルマの方では万事日本の言う通りにこれを受け入れるという態度であった、という報告に接しているのです。ところがあのセンターを設けるということがきまってからぐずぐずやっている。あるいは外交の方ではうまくやってもそれに伴わぬじゃないか、日本態度が。どうなんですかその辺、この前再三伺ったけれども、一つも私ははっきりした納得のいく回答に接しておりません。
  19. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいまの問題につきましては、所管が通産省関係でございますので、先般も通産省からお答え申し上げたわけでございます。よく一つ通産省側と打ち合せまして、調査の上お答え申し上げたいと思います。
  20. 海野三朗

    海野三朗君 それではこの問題は午後にでもいたしまして、この問題は私これで保留しておきます。
  21. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本件に関してほかに御発言ございませんか。……別に御発言もございませんようでありますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。……別に御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。日本国ノールウェーとの間の通商航海条約批准について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  24. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 全会一致でございます。よって本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の製作その他自後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。  それから、報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、本件承認することに賛成された方は、順次御署名願います。   多数意見者署名     永野  護  杉原 荒太     野村吉三郎  黒川武雄     津島 壽一  梶原 茂嘉     石黒 忠篤  海野 三朗     森 元治郎  加藤シヅエ     佐野  廣  曾祢  益     吉田 法晴   —————————————
  26. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次にお諮りいたします。先日農林水産委員会から、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約批准について承認を求めるの件に関し、連合審査開会申し入れがございましたが、来たる五月八日にこれを開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  28. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約補足議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件について質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  29. 吉田法晴

    吉田法晴君 この条約の適用される日本側借款実績等については、委員会から資料をもらっているのでありますが、日米双方における課税の対象になるべき実際について、特にアメリカ側実情について御説明を願いたいと思います。
  30. 井上清一

    政府委員井上清一君) 日本輸出入銀行アメリカに対する投資というのは現在ございませんで、従って、わが輸出入銀行が取得する利子について、本条約において現在のところ免除されるというケースはございません。現在、アメリカのワシントンの輸出入銀行からの借款実績でございますが、これは、関西電力、九州電力、及び中部電力にそれぞれございまして、三十二年度中の支払利子額の予定は、関西電力において十六万ドル、それから九州電力において七万五千ドル、中部電力において同じく七万五千ドルということに相なっております。
  31. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、これは、相互の二重課税回避並びに脱税防止というけれども、実際は日本側だけで、アメリカに対しては、こちらからの借款の供与等もないし、適用がない、こういうことですね。実質は一方的だ、こういうことじゃないですか。
  32. 井上清一

    政府委員井上清一君) 現在においてはそうでございますが、将来かくすることによりまして、両国間の経済交流の一そうの緊密化をはかっていきたいということでございます。
  33. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ちょっと補足さしていただきますが、実は、御承知通りわが国所得税法及び法人税法におきましては、日本輸出入銀行を非課税法人と規定いたしまして、かつ、相手国におきまして、その日本輸出入銀行を非課税とするならば、相手国の同じような銀行の日本における投資活動を非課税にするというふうな、日本の国内法におきまして、すでにこのような相互主義に基く免税をやっていいという規定があるわけでございます。従いまして、これは、本来ならばその法律に基きまして、アメリカ側がもし相互主義でやるということを約束します場合は、アメリカ輸出入銀行に対して、法律の適用によりまして、免税をするということが本来できるはずのように今までの仕組みはなっておる次第でございます。しかしながら、アメリカ側としましても、このような約束をするのには、やはり条約の形式が必要である。これは、アメリカ側の国内手続上必要であるそうでございまして、そこで、そういう場合のために、ここに一つ条約の形式にした1条約と申しますか、このような議定書の形式にしたわけでございます。しかも、御承知通りアメリカ輸出入銀行でございますが、これは、日本輸出入銀行と同じように、資本金が十億ドルでございますが、全部政府出資の銀行でございますし、その総裁、副総裁及び三人の理事も、いずれも政府側からの任命の手続を経て任命される、いわば一つの国家機関と申しますか、それに近いような性格を持っているというふうなことも考えまして、相互の免税の措置をとるのが適当ではないかというふうに考える次第でございます。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 この条約なりあるいは税法について、相互主義をとっているけれども、実際には一方的だ、こういうことだと思うのでありますが、たとえば、井上政務次官は、日本輸出入銀行からアメリカ借款を供与すれば、それについて向うでも租税は課さない、こういうことでありますけれども、それでは実際に、近い将来において、日本側から向う借款を供与するような可能性があるのですか。おそらくなかろうと思う。それから、所得税法なりあるいは法人税法の話がございましたが、これはアメリカ人——自然人なり法人についてもですが、日本側で税金を課しているわけです。ところが、向うでもこれは税金を課さない建前になるかと思うのでありますけれども、実際はどうなんですか。やはり実質は一方的になりがちなのではないか。これは、関税定率の場合においてもそうでありますけれども、この間ここで通過いたしました関税に関する条約に伴いまして、日本側では自由貿易主義をとる。そこで、あくまでその点について関税を課さない云々ということでございましたが、向うでは、繊維品についても、あるいは合板等についても輸入制限をする、これは実際です。ですから、二重課税回避及び脱税防止のための条約と申しても、実際は一方的になっているのじゃないか、あるいは近い将来にわたっても、事態は同様ではないか、こういうことが考えられる。もう少しアメリカ側の実際と、それから近い将来にわたってどういう工合になるか、同じような見通しだと思うが、御説明を詳細に願います。
  35. 井上清一

    政府委員井上清一君) 日本輸出入銀行が近い将来においてアメリカに対しての投資が非常に増加するということは、ちょっと現在の状態からは考えられないと思うのであります。ですが、この議定書承認によりまして、アメリカわが国に対する投資の促進ということには非常に役立つということは、これはもう私たちも、はっきり申し上げていいと思います。だからといって、必ずしもこの条約というものは、アメリカの方にばかり恩恵があって、わが国に対して利益がないのじゃないかというような私は結論にはならぬのじゃないか、かように思います。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 補足説明には、所得税あるいは法人税のお話もございましたが、この輸出入銀行からの借款については、井上さんから今説明がございましたが、アメリカ側での税法の対象になります所得なり、あるいは課税実情について御説明を願いたいと思います。
  37. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの御質問のあれは、アメリカ輸出入銀行日本における投資状況でございましょうか。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、現在日本側から、日本輸出入銀行からアメリカに対する借款の可能性は事実上なかろうという話もございましたから、それに関連をしますけれども、課税問題は現実には起る可能性がないわけです。その他の、日本アメリカにおける所得、自然人あるいは法人等の税法の適用の実際を承わりたいと思います。
  39. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その点につきましては、実は詳しい資料を今持っておりません次第でございますが、この所得に対する補足議定書の本体たる、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約、あの条約に従って、相互に免税または課税をやっている状況であります。ちょっと現在、日本アメリカにおいてどの程度の課税及び免税を受けているか、その実際につきましては、後ほど資料をもって、またお答え申し上げます。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、現在のアメリカ側から日本に供与せられました借款、その支払い利子額等については、先ほど御説明がございましたが、将来に可能な借款あるいはその課税実施の見通し等については。
  41. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その点につきましても、後ほどあわせて資料を御一緒に……。
  42. 笹森順造

    委員長笹森順造君) お諮りいたします。本件に関する質疑は後刻に譲ります。   —————————————
  43. 笹森順造

    委員長笹森順造君) これより国際情勢等に関する調査議題といたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それでは、これより国際情勢等に関する調査議題といたします。  質疑の方は順次御発言を願います。
  45. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、総理大臣に対して若干御質問いたしたいと思います。総理大臣は、国会が終了いたしますと、まず東南アジア数カ国、それから続いて米国を訪問なさるというようなことを承わっております。それで私は、東南アジアの国々を御訪問なさるにしても、あるいは米国を御訪問なさるにいたしましても、まず日本としては、一番近いお隣の韓国との問題をどうするかということにつきまして、長い間御当局も非常な御苦心をなさって、会談をなさっておいでになったようでございますが、ただいまのところ、何か一応行き詰っている、これを打開しなければならないというところに到達しているというふうに伺っておりますので、今こそ総理大臣として、この日韓の問題をどんなふうに打開したらいいかという、そのはっきりした御所信を表明していただくのに一番いい機会だと思うのでございます。それにつきまして、去る三月の二十九日から四月の八日まで、フィリピンのバギオにおきましてMRAが主催いたしましたアジアMRA会議というのが開かれまして、これは、総理大臣も、かつてMRAが日本に芝居を持って参りましたときに、それをごらんになったり、あるいはちょうど今から一年前に、MRAの創始者のブックマン博士が国会を訪問されたとき、お会いになっていらっしゃるので、御記憶があると存じますが、MRAの主催の会議におきまして、二十七九国の人々が集まりまして、ここでは、非常に精神的な面の国民外交というようなことを求められたのでございます。日本からも二十人の人が出席いたしまして、国会からは星島二郎代議士、そうして野党として私がここに出ておりました。また韓国からは、五名の方が出ておられたようであります。アジアのほかの国々からも、それぞれ指導的立場の方が来られましたけれども、私どもとしては、特にこの会議を通じて、日本と韓国とが、和解がどのようにしてできるかということにつきまして、たくさんの時間をもっていろいろ努力いたしました。その結果といたしまして、初めて韓国の方々と私ども日本人とが気持を打ち開いて話合いができるというような空気を作ったことが非常な成功であったと思うのでございます。ここでは、あくまでもお互いにほんとうに信頼のできるような、そういう関係を作ろうということに努力をいたしました。そうして、かけ引きというようなことは一切放擲して、お互いに人間としてほんとうのことを言い合い、お互いの信頼感を作るということに努力いたしました。その結果が大へんによかったものでございますから、ここに、四月十五日付のアメリカの国会議事録に、前外交委員長のセネター・ワイリー、この人がたくさんの紙面を費しまして、議事録にこのバギオの国民外交のありさまを詳しく報告していらっしゃいます。そうしてその中で、ワイリー上院議員が申されますには、今までにないように、ほんとうにお互いに信頼感を打ち立てるようなやり方をするということは、これは非常に新しいやり方で、成功であった。アメリカとしても、これをほんとうに学ばなくちゃいけない。今までアメリカは、お金でもってものを買うというようなことを考えていたけれども、お金では買えないところのものをほんとうに精神的に買うというような、精神的なものを打ち立てるという、こういう外交をアメリカも今にして学ばなくちゃならないのだということを、この国会議事録に書いていらっしゃるというようなことで、大へんにアメリカでもこれを高く評価されているということをお耳に入れておきたいと思います。ここへ韓国の方たちで出席されましたのは、自由党の国民議院外務委員長尹城淳さんとおっしゃる方です。この方は、とにかく国会の外務委員長ですから、この方のお気持がどういうふうに動くかということは、韓国のやはり外交方針に大へんな大きな影響があると思います。それから、この方と、無所属のような政友会という名前の党に属していらっしゃる鄭濬さんという方もこられました。そうしてこの二人は国会議員でございましたが、そのほかに、朴賢淑夫人と申しますか、この方は韓国の無住所長官、韓国解放後の初めて婦人として閣僚になられた方で、この方の発言というものは、やはり李承晩大統領などに大きな影響を与えるところの地位にいらっしゃる方です。それから学校の校長さんとか、学生の代表というような方がおいでになりましたので、いわば各層の代表の方なんです。で、この方たちと星島代議士と私どもがいろいろの機会にお話し合いをいたしましたときに、私どもが知りましたことは、やはり私ども日本人として三十数年にわたって韓国を、まあ日本の立場から言えば、合併をしていたという言葉で申しますけれども、それは合併というような対等な立場のものではなくて、何といっても日本が韓国を支配していたというようなことからくる長年の感情のいろいろうっせきしたものがあるのであって、そういうものに対して、私たちが日本人としてほんとうによく知らなかったのじゃないかと思います。これは、立場をかえまして、日本が敗戦後占領された今の沖縄の問題なんかございまして、ほかの国民から支配を受けるというようなことがどんなものであるかということを、日本人も敗戦後少し学んだように思うのでございますが、韓国の方にしてみれば、三十数年にわたって日本人に支配されたというようなことに基因するところのいろいろな感情のもつれ、これに対して私たち日本人がどれだけ理解しているかという、そこから問題を解きほぐしていかなければならないと思うのでございます。ことに、日本にはあまり伝わっておりませんけれども、たとえば朴婦人というような方は非常に教養の高いりっぱな御婦人でございますが、この方の御主人になる方なんかも、韓国の独立運動のために長年日本の官憲には抵抗を続けてこられた方です。で、この方が日本の官憲のためにどういうひどい扱いをお受けになったか。長い十八年以上も監獄の生活を続けられまして、今はもうお宅に帰っておられますけれども、体は全部不具者のようになってしまったというような、そういう方でございますから、そういう方たちは一朝一夕に日本人と融和な感じを持つことができないというようなことも、ほんとうに理解できると思います。これはお一人、二人のことじゃなくて、たくさんの方がやっぱりこういう感情を持っていらっしゃる。それで、私どもはそういう向うの方の立場というものを十分尊重して、気持を分って、そうしてお互いにほんとうに対等な立場に立って、この日韓の融和をはかろうというところから解きほぐして参りませんことには、いろいろの法律上の解釈とか何々の権利をどうするとかというようなことにいきなり飛び込みましても、お互いの信頼感というもののないところに外交というものはあり得ないということをつくづく感じたわけでございます。幸い星島代議士も私も、日本が韓国に対してやってきたところのたくさんのあやまちに対しては、率直に謝罪をいたしております。で、このことで非常に向うの方のお気持もよくなられまして、私どもがそういうことを率直に申しましてから、韓国の方たちがまるで見違えるようなほがらかな表情をもって私たちに話をして下さるようになったのです。で、今までは韓国の方は私どもに対して決して日本語を使われないのです。日本の大学を卒業して日本語で十分に話をなさっても、私たちに対しては英語で話をされるということにまず問題があったわけです。今度はほんとうに対等な、感情の融和ができるようになりましてからは、もう率直に日本語で話をして下さるということにもなったのでございます。  それで、あまり時間がないのでたくさんのことを申し上げられないので残念でございますが、私どもは日本に帰りましたら、与党の方も野党の方も、とにかく日韓の会談の行き詰まりを打開しなければならないということでは、ほんとうに超党派的な、国家的な見地から努力をしようということを誓って参りました。そうしてそのいろいろ問題がございますけれども、今、日韓の会談で一番デッド・ロックになっておりますのは、いわゆる久保田発言、それから韓国における日本人の財産の請求権、この二つが一番何かデッド・ロックになっているように伺いました。このことにつきまして、私どもは日本に帰りましたら、国会においてあらゆる努力をいたしますということを誓って参ったのでございます。それで、私どもがそういうことを誓ったということを、この外務委員長の尹さんと申しますか、この方が去る四月の十六日に向う国会報告されました。このバギオの会議で、日本の与野党の国会議員が、日韓会談の行き詰まりの打開に対して、誠心誠意努力することを誓ったということを報告していらっしゃいますのが新聞に出ております。それで、私どももこの約束というものを必ず果さなければならない責任がございますので、今日総理大臣に御質問申し上げるわけなのでございます。  それで、この四月の十六日に尹外務委員長と野党の鄭さんという方が国会発言されていらっしゃいます。このUP電報を見ますと、日本の新聞にUP電報が出ておりますが、京城四月二十四日に出ましたUP電報によりますと、李承晩大統領が、UP通信に日韓問題に関する声明書を寄せられまして、国際共産主義の脅威に対抗するために、日韓両国はできるだけ早い機会に国交を正常化しなければならないということを述べられた。日本政府当局が日韓交渉への道を引続き妨げたり、新たなる障害を持ち出したりする理由があるとは思われないというような、こんなような発言を李承晩大統領がなさったということを、UP電報で知りました。そういたしますと、時間的に、おそらくバギオ大会に出られました五人の方が、国会やあらゆる所で、日本人も今度は誠意をもって日韓会談の打開に努力をするということを、この方たちの口からおっしゃって下さって、それが大統領の耳にも入ったために、大統領としては初めてこういうような気持に動いたというようなことを新聞紙上でおっしゃったのではないかというように、私は察しているわけでございます。  従いまして、岸総理大臣におかれましても、この外務委員会を通じて、この李承晩大統領にも、ほんとうに日本の誠意のあるということを、韓国の一般の方々にもわかるような、誠意ある御発言をきっとして下さると私は信じて、今日御質問申し上げるわけでございます。  具体的には、私は二つの点を伺いたいのでございます。それは先ほども申し上げましたように、韓国の方といろいろ話をしてみますと、久保田発言というのが大へんにどうも韓国の方の感じを害しているようでございます。久保田発言内容がどういうものであったかということのこまかいことは、私は別に速記録を読んでおりませんのでわかりませんけれども、とにかく久保田発言なるものは、日本人が韓国人に対して非常に優越感を持っているというような印象を与えたものだろうと思いまして、これは単なる久保田さんという個人の発言と見るよりも、日本人の多くの者がそういうような優越感をもって韓国に対しているというようなことに考えられますので、この久保田発言を通じての日本の韓国に対する優越感というものに対して、これは撤回すべきものではないかと私は考えますので、その点をまず最初に御答弁をお願い申し上げます。
  46. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 日韓の国交正常化の問題につきまして、今加藤委員のお話になりましたこと、私一々同感でございます。私、外務大臣になりましてから、韓国の代表の金公使にもしばしば会見をいたしました。その際に、私は過去において日韓会談なるものが数回行われたけれども、そのつどむずかしい問題に逢着して行き悩みになっておる。こういう状態であることは、両国のためにそれは非常に悲しむべきことであって、両国の歴史的な関係からいい、地理的な関係からいい、また経済的なお互いの国を繁栄さす上からいって、この両国がこういう状態にあることは、私は非常に悲しむべきことだ、何とかして自分が外務大臣になったのだから、これを解決したい。それには、自分は従来の日韓会談がどういうことで行き詰まっているかということを検討してみると、それはおのおのの国の、それぞれの言い分があると思う。しかし、私は日本に関する限り、従来の主張にとらわれずに、将来長く両国がほんとうの友好関係を結び、そうして国交が正常化された後においても長く友好関係が続くようなその基礎を作る意味において、私は従来の主張をことごとく変えるとは申さないけれども、従来の主張にとらわれずに、一つほんとうに現実に即して、しかも公正な立場から、とらわれずに、謙虚な気持で一つ話をして、この問題を解決したいと思うという私の気持を述べたのでありますが、その考え方は今日も少しも変っておりませんし、それからそういうことをやるのについて、従来条約の解釈であるとか、いろいろな法律解釈でなくして、今、加藤委員のお話のように、精神的な基礎ができないというと、お互いにお互いが信頼をし合い、お互いの誠意を、少くとも疑わないという気持にならない。それには、まずわれわれの方からそういう態度を示さなければならないという考えでおります。今、具体的の御質問のありました久保田発言につきましても、すでに金公使を通じて私の考えは述べておるのでありますが、久保田発言なるものは、実はもちろん政府を代表しての正式の発言ではなかったのであります。その経緯につきましては、多少行き違いもあったようでありますが、いずれにしても、私はこの久保田発言政府の意思を代表して言っているものでもないし、これをその意味において取り消すという、撤回するということについては、政府としてもやぶさかでないということを、はっきり申しております。今、加藤委員のお話のように、久保田発言政府の正式の発言でないとしても、さらに日本国民の感情を、何かその中に盛り込んだ一つの優越感を示している言葉のように韓国側に響いておるということは、非常に残念でございます。従って、私は率直にこれは撤回するということを、政府としてはっきり言うことが、両国の将来の正式の会談をスムーズにやっていく上において適当であるという考えでおりますから、そういう私の意向をすでに述べてありますが、さらにこの国会を通じて明らかにいたしておきます。
  47. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ただいまの総理大臣の御発言は、この日韓の会談を進める方法としては、もう日本がむしろ積極的に、先手を打って、今までのいきさつというようなもののよくなかったものを、これをどんどん取り消すものは取り消す、打開するものは打開するというように、積極的に、信頼のもとに進めるというそういう御態度は、まことにけっこうだと思いまして、私も非常に共鳴いたします。そういう御態度でもって進めていただいたら、ほんとうに韓国の方たちも気持を開いて、非常にスムーズにやっていただけると思っておりますが、もう一つの問題は、日本側の財産の請求権の主張でございます。これも総理が申されましたように、いろいろ戦時国際法の問題その他の問題でいろいろ法律の解釈もおありになるのだろうと思いますけれども、大体日本が敗戦によって、サンフランシスコ条約締結によって、今四つの島及びそれに付属したところの小さい島々ということになったことを、日本は了承しておりますので、やはりこの財産権主張の問題も、この際は非常に日本側が積極的な意思を総理大臣が御発表下さることが非常に望ましいと思うのでございます。これは、個々の方々にしてみれば、あちらに何十年もおられて大へんなたくさんの財産を持たれ、自分が手がけて開拓をなさったものや何かを、何のこともなく放棄をするというようなことは、非常にお困りになるという感情もあるだろうと思いますけれども、これは国内の問題として政府が善処していただくべき問題で、韓国に何か日本人がいつまでも何か請求するというようなその態度、あるいはその気持というものが、やはり大きな暗礁になっておりますので、この財産権の請求という問題につきましても、この機会に総理大臣のはっきりした御所見を伺いたいと思います。
  48. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 財産権問題は、実はこれの解釈につきまして、過去の会談においては、日韓両国の法律解釈が正面で食い違っておったのであります。それが日韓会談を行き詰まらせた一つの理由にもなっております。そういう問題でありますので、私はこの問題を処理するのに当って、従来われわれがとっておった法律解釈に私は拘泥しない。問題を現実的な基礎において、さっき申しました両国のほんとうの友好関係を将来に作り上げるという見地から、この問題を一つ取り扱おうということを、私は考えております。従いまして、今日なおこの問題につきましては法律的な——もちろん私ども政府でなにしておりますから全然法律を無視し、法律解釈を無視するというわけには参りませんけれども従来の私もどの法律解釈を堅持して、もしも動かないということであれば、結果はきわめて明瞭であります。また、行き詰まることは明らかであります。でありますが、私はそこで、従来のわれわれの主張しておったことに拘泥しない。それよりも、現実に即して、公正な見地から両国の長き友好関係を作り上げることが必要であるという見地をとってこの問題を処理しよう、こう考えております。
  49. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この日韓会談の前には、まだまだたくさんのこまかい問題、大きな問題が横たわっておりますので、これを一つ一つ打開していただきますには大へんな骨が折れることだろうと思います。そのまず最初に、今、総理大臣が表明されましたような、ほんとうに積極的に日本が打開するために、謙虚な気持であくまで本誠意をもって当っていこうという、そのお態度があちらに通じますならば、むずかしいあとに残っております数々の問題も、必らず打開ができると私は信じておりますし、今後ともまたたくさんの日本人が誠意をもってこの問題を妥結するために努力を積み重ねて参りたい。そこで、政府に、さらに韓国の方々の信頼を得るような態度及び方法をもって、交渉をぜひ妥結して下さるようにお願いをいたしまして、私の質問を終ります。
  50. 津島壽一

    津島壽一君 私は、去る四月二十二日に日本社会党の訪中使節団と中共の政府当局との間で合議されて発表されましたいわゆる共同声明と申しますか、共同コミュニケと申しますか、その中に現われた問題の中で、特に重要であると思う問題について、政府として所信をここで表明願いたい、こう思う次第でございます。問題は非常に多いのでありますが、時間の関係もございますので、これを簡略にいたしまして、まず第一に日中国交の正常化の問題、これは非常に重大だろうと思います。第二は、関連して対中共貿易の問題。また第三は、いずれも関連を持っており、また非常に重要でありますが、台湾との関係の問題第四は、いわゆる集団安全保障の問題。最後に時間がございましたら第二次アジア・アフリカ会議に関連した問題。この四つにしぼりたいと思うのであります。  私は、なるべく簡略にして私見をまじえないで質問をいたしたいと思うのでございますが、これらの問題については、すでに本国会開会以来本会議あるいは種々の委員会において、岸総理大臣または岸外務大臣としてその所見をお示しになり、また質疑応答の中でその御見解は十分承知しておるつもりでございます。でございまするけれども、あるいはこれと重複いたしましても、この際、私は政府としてはこういった共同声明が内外に及ぼす影響は相当重大であり、また、今後わが国の世論の動向にも影響するところがあり、いわんや諸外国の中でも台湾の中華民国政府に対するいろいろな問題もまた十分にこれは検討して、政府の所信をこの際明確に、率直にここで御表明になることが、わが国の外交方針を今後推進していく上に非常に必要なことだろうと思うのでございます。ことに総理は、最近にアメリカにおいでになり、またその前にアジア諸国を訪問の予定もあられるようであります。そのうちには台湾も含んでおるということを承わっておりまするから、こういった機会に、政府の所信を従来よりも一そう明確にするということは、私は最も時宜を得たものであって、たまたまこの共同声明の発表は、まあ政府にとりまして最もいい機会を与えたと、こういうふうに私は思っておるのでありますから、繰り返すようでありますが、もうすでにその問題は答えておるとか、あるいはイエスとかノーという簡単なる表現でなくて、もっと国民が十分に理解し、内外を通じて政府の所信が十分納得のいくような意味においてのお答えを願えれば、はなはだ仕合せであると思うのでございます。  そこで、本問題に入るわけでございますが、第一の中共との国交正常化という問題、これは政府におかれてもまだ国交の調整されていない国、未回復の国等々と国交調整ないし回復をはかるということは、従来の大きな方針である。ただ、これが実行の段階になりますというと、すなわち具体的の場合になるというと、あるいは諸般の情勢を考え、またその他の国際条約あるいは国際関係を考慮して、その時期、段・階、あるいは順序等については慎重な考慮をすべきであるということは当然のことだと思うのです。そういった観点から申しまして、今回の共同コミュニケと申しますか、声明に現われたところのこの表現を見ますというと、これは御承知でありまするから全文を読む必要もないかと思いますが、この共同声明に現われたるところの日中国交回復正常化という問題については、中共側においても、また同様使節団においても、現在の諸情勢にかんがみて、日本と中華人民共和国との間、政府間において、すみやかに、正式に、かつ全面的に国交を回復すべき段階にきたと認めると、こういうことを言っておるのであります。これは相当私は飛躍した考え方じゃないかと思うのでございまするが、この点につきまして、岸総理大臣としてこういったような段階に達したと、こうお認めになっておるのであるか、また日本国民はそう考えても合理性があり、適当であるというような考え方であるか、まず、こういった基本的な問題についてはっきりした一つの御答弁をお願いしたいと思います。
  51. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今回の社会党の諸君の訪中親善団の共同声明、またその一行が帰ってこられまして、私は淺沼団長以下の人々に親しく会いまして、その御意見も聞いたのでありますが、これらを通じて、今、津島委員の御質問のありましたように、日中国交正常化の段階にすでにきておるから、政府としてはすみやかにその処置をとるべきであると、この共同声明の趣旨はそうなっておりますが、訪中団の帰ってこられてからの御意見を聞きますというと、根本はそうであるけれども、それに進んでいくのに一挙に、直ちにこの国交を正常化するということもなかなかむずかしい点もあるだろうから、いわゆる積み重ね方式によって国交を正常化する方向に進んでいくべきだというふうな補足説明もあったのであります。私どもこの政府としての考えにつきましては、すでに国会を通じてしばしば申しておるのでありますが、中共と日本との関係は、今日においては、貿易関係増進するということについては、積極的に考えるべきであるけれども、まだ国交を正常化し、これを承認して、正常なる外交関係を開くという段階にはきておらないということを、私どもはっきり申しておるのであります。その理由としましては、言うまでもなく、私どもは昨年末国際連合に加盟して、そうして国際連合の一員として、国際連合を中心に、世界の平和を増進することにわれわれとしては全力をあげていきたいということを申しておりますが、今日、中共は未だ国連に加盟も認められておりませんし、代表権がないのみならず、かつてこの国連として、中共をいわゆる侵略国として国連の意思を決定したことが、まだ撤回をされておらないというような事態でございます。これが中共を取り巻くところの一つ国際情勢であると思います。なお、日本といたしましては、特にこの台湾との関係が、非常な重大なことになると思いますが、言うまでもなく、日華基本条約によりまして、台湾中華民国のこの政府との間に、正常なる国交をわれわれは持っており、お互いが国連の一員として友好関係を進めるということになっておりますし、われわれは国際信義の上からこれを尊重しなければならぬこと、言うをまたないのであります。しこうしてこの共同声明に現われておるように、ただ単に台湾の問題を、中国のいわゆる内政問題として、この台湾を含んだ中国全体を、正当なる政府として、これとの間に国交を今開くとか、あるいはこれを承認していくという段階でないことは、私はきわめて明瞭であると思います。もちろん今申すように、貿易関係においてわれわれが増進しようとか……あるいは今のような状態にいつまでも放任しておくことが決して望ましい状態であるということは私ども考えておりませんけれども、しかし、今日の段階において、もう中共との間に、これを承認し、これとの間に全面的の国交を回復すべき段階であると、こういう社会党のこの訪中国の諸君のあの声明に現われておるようなことは、私どもは現在の段階においては、まだその段階にきておらないという従来の所信を少しも変える気持は持っておりません。従って、政府としましては、今まで私が議会を通じて申し上げておるように、中共との間においては、貿易関係を積極的に増進することについては大いに考慮しなければならぬけれども、まだ外交関係を開くとか、あるいはこれとの間に国交を正常化するという段階にはきておらないという所信でございます。
  52. 津島壽一

    津島壽一君 ただいまの答弁十分了承いたしましたが、御答弁の中に、淺沼団長は、総理との会談において、積み重ね方式ということを考えておるというような言葉がございましたが、第二の貿易の問題に関連して、積み重ね方式ということについてお伺いしたいのです。おそらくこの積み重ね方式という言葉は出ておりませんが、中日の民間の諸協定をすみやかに政府間の協定発展させるべきであると、こういうことが声明の中にうたわれております。これを解釈すれば、その中で最も大きいものは、貿易関係の今いろいろ取りきめがあり、また第四次の協定も作ろうと、こういったものもおもなものであろうと察せられる。そこで、貿易の促進ということは、また文化の交流ということは、かりに国交が正常化しないでも、中共との間には十分これに措置を講じていくべきだ、こういうのが従来の方針であり、また、今後もそうあるべきだと思いますので、この積み重ね方式の一つとしての日中間の貿易協定、こういうものを民間の協定から、今後、この共同声明に示唆されているように、政府間の協定に移すような考え方がおありでありましょうか。また同時に、問題が簡単でありまするから、付け加えて一つ御答弁願いたいのは、私は、政府は最近非常に中日の貿易関係について一生懸命やっておられるように見受けるのでございますが、その具体的な例は、いわゆる対中共貿易の制限というものを緩和し、あるものは撤廃するといったような問題でございます。これについて、すでに他の委員会等において、この現状についての御報告があったかもわかりませんが、この機会に、あらためて対中共貿易の制限緩和のこの対外交渉なり、あるいはアメリカとの間の交渉の現状がどうなっておるかということも、あわせて一つここでお示し願いたい、こう思う次第でございます。
  53. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 貿易増進するという問題に関して、今、津島委員の御質問になりました二つの点が大きく問題になると思います。一つは、この貿易に関する取りきめを民間のレベルではなくて、政府間のレベルにおいて話し合いをし、協定をすべきであるという、そこまで進めるべきだという考えが一つと、それからもう一つは、この共産国に対するいわゆるココム、チンコムのこの制限において、特に中共に対するいわゆるチャイナ・デェファレンシャルの問題を少くとも第一段の目標として緩和して、そしてヨーロッパ、ソ連あるいは東欧の共産国に対する並みにすべきだという考え、この二つがあるわけでありますが、前者につきましては、いわゆる第三次民間協定がこの五月に一応期限が切れますので、第四次の協定を民間においてすることが、民間団体において一応話し合いがされております。私どもは、今日の段階において、先ほど申しました根本的な考えから、なおこの貿易協定政府間のレベルに持ち上げていくことが適当でないと、民間のレベルにおいてやるということが適当であると、こう考えておりまして、いわゆる第四次協定が取り結ばれることを私どもは望んでおります。  それから第二の、輸出制限の問題につきましては、かねて日本としては、一番対中共輸出について厳格な態度を持っておりまするアメリカ政府に対して、これが緩和方について、従来もずっと日本の要望を申し入れし、アメリカ側の考慮を求めてきたのでありますが、この四月にアイゼンハワーが新聞記者会談においてその方針を述べ、さらに最近におきまして、アメリカ側から一つの提案が、日本及びその他この取りきめに参加しておりまする西欧諸国に対してなされたものがあるのであります。それは、従来のこの対中共貿易の制限を相当程度に緩和するところの提案が行われておる。アメリカは、実は、ことしの正月に日本を初め、これに参加しておる国々に対して、さらに制限を強化するという意向について、これらの国々の内意を打診して参りましたが、その際に、日本としては強くその制限を強化することに反対して、これの緩和、チャイナ・デェファレンシャルをなくするという従来の主張を強く返事をいたしておいたのでありますが、アメリカがそういうふうに態度を変えて、むしろこれを緩和するという態度に出てきた理由につきましては、いろいろのことが想像されておりますけれども、明確ではありませんが、このアメリカの提案は、パリにおけるところのチンコムの会議において、取り上げて審議されると思います。その際、さらにフランスは、全面的にこれよりもなお緩和するところの、チャイナ・デェファレンシャルをなくする提案をいたしております。それは、日本の従来の主張と一致しておる提案をフランスもしております。これがあわせてパリにおける加盟国の会議にかけられると思うのであります。それで、そういう意味におきまして、アメリカがそういうふうに態度が変って緩和しておりますけれども、これを詳細に検討してみますと、なお日本が主張し、日本が要望しておるところとは相当な開きがありますので、私どもとしては、パリの会議において、従来主張しておりますチャイナ・デェファレンシャルをなくするという、むしろフランスの提案と歩調を一にして、そういう方向に進んで参りたい、かように考えております。
  54. 津島壽一

    津島壽一君 それでは次に、この台湾の関係の問題について質問したいと思いますが、この共同声明を拝見いたしますと、非常に端的に台湾の地位が、中共との関係が、示されておるわけであります。もう申し上げるまでもないのですが、二つの中国というものの存在は認めない、これは、台湾問題はもう中国の内政問題である、こういったような端的な表現をしている。同時に、国連における代表権の問題にも触れておるようでございます。これは、日本と中華民国との友好条約の立場からいっても、非常に重大な問題であろうと思う。また、対日平和条約、サンフランシスコ条約体制に非常に背馳しておる意見であると思うのです。同時に、現在の台湾の地位は非常に微妙なところにあるということは申し上げるまでもないのです。この共同声明の中以外において、使節団と先方政府当局側とのいろいろ会談の情報は、すでに第三次合作工作が進行しておる、この見通しは非常に明るくて成功するだろうといったような情報がひんぴんとして来ておるわけです。これは台湾における中華民国政府にとっても、あるいはまたその国民にとっても非常な反響を呼び、不安の念にかられておるというのが実情であろうと思うのです。この点について、岸総理大臣、外務大臣は、どういった御所見を持っておられるか、単純に、これは意見が背馳しておるものであるという簡単なことでなくて、私は、台湾の中華民国に対する政府の今後の方針なり、いろいろの問題について、御考慮になっておるところをはっきりして、積極的に解明するということでなければ、非常に私は国内世論の将来に悪い影響があるのじゃなかろうかと思うのです。これは、国共合作ということは、終局において望ましいことであるということには異議はございませんが、現状というものを考えてどうかという問題でございます。私は端的に申しましてここまで言いたくなかったのでありますが、この外務大臣の外交演説を拝聴したのですが、英米その他ソビエトその他の諸国に対する問題を具体的に論ぜられたのは当然でありましょうが、共産圏諸国についても相当の演説をされておるわけでありますが、台湾ということには全然触れておらなかった。まあそれはどういう意図でありますか、それはそんたくの限りではございませんが、こういった機会に、一つ台湾へもおいでになるということでありますから、共同声明を契機として、所信をお伺いしたいのであります。承わるところによると、中華民国、いわゆる台湾との関係においては、日本との間に懸案が相当あるように伺っているのであります。これは、長く処理されないであるように思うのであります。こういうことも、今の韓国の問題同様に、すっきりとした形で早く処理していただく、そうして両国の友好関係というものを、いわゆる単純な基本的の方針にとどまらず、実際の外交の上において現わしていくということに努力されてはどうか。承わるところによると、これも情報で、私は真偽のほどは知らないのですが、台湾と日本との間において、台湾米の輸入ということについて、ある一定の数量が約束されておりながら、それが実行されないで、かえって中共からの米の輸入をみたといったようなケースも承わっているのでありますが、こういったことは、事は微細のようであるけれども、やや政府が台湾の地位を阻害する、言葉は言い過ぎかもわかりませんが、しかし、やや関心を持たないというような、こういう印象を受ける。私は、東南アジアの経済外交あるいは経済提携という問題については、常に目をインドネシアあるいはフィリピンインドその他の方面に遠く向けて、最も近い台湾について、比較的閑却するような傾向がないであろうかということを疑っているのであります。ここに永野委員もおられますが、地下資源その他の資源につき、非常な豊富なる物を持ち、そうしてこれが開発の計画も持っているにもかかわらず、今日まで、ほとんどこの面については力を入れていないというような事実だと承わっているのであります。でありますから、今の基本的な台湾と中共との関係の問題ということからさらに一歩を進めて、台湾政府との関係において、政府は今後どういうふうな方針、施策を講じられるつもりであるか、これを一つお伺いしておきたいと思うのであります。
  55. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 台湾の、この中華民国政府との間には、津島委員もよく御承知通り日本との間に友好条約ができておりまして、お互いに正式の使節を派遣し、友好関係にあり、同時に、国際連合におきましても、有力なメンバーとして協力しているわけでございます。従って、日本としては、私は、この正常にできている両国の友好関係というものに対して、十分の信頼と、そうして国際的な義務を果していくということが、日本の外交方針の基調として、いわゆる国際の一員としての信義の上からいって、私は当然であると思います。この意味におきまして、もちろん、いわゆるこの両者の合作工作なるものがどういうふうに進行するか、あるいはどういうふうになるかということにつきましては、これは、われわれの何ら干渉すべき事柄でもなし、その結果については、これを尊重していくことは当然でありましょうけれども、しかし、われわれが正当に認め、正当なる条約関係にあって、各種の外交関係を作っているところの国に対して、友好親善の立場から、互いにその政府を尊重し、それに対して十分なわれわれが友好関係を深めていくということは、当然やらなければならぬことであると私は信じております。従いまして、この台湾の、中華民国政府との間にいろいろ懸案もございます。これらの問題も、もちろん解決をしていかなければならぬと思いますが、今具体的の一番の問題は、今おあげになりました台湾米の輸入ということが貿易上の問題であり、同時に、それの解決を遷延しているということは、両国の国交の上からいっても、望ましくない結果を来たしていることも事実であると思います。台湾米を最初われわれが予定しておっただけ入れなかったということは、日本の非常な豊作であったというその後の事実に基く日本側の内部の事情でございます。また、中共側から米を入れたということは、昨年度のなお米作の状況のわからない以前に入れた米でありまして、必ずしも台湾から入れずに中共から入れたという、その方へ置きかえたというような操作があったわけではないのでありますけれども、しかし、結果からいって、そういうふうな結果になっているために、両国の間の貿易関係並びに友好関係に支障を来たしていることは、これは事実であります。従って、私は、この問題につきましても、なお誠意をもって一つ解決するように努力をいたしておりますが、いずれにしても、今申しましたような立場から、この中華民国政府に対しましては、われわれは正常なる国交を持ち、友好関係にある国として、十分にこれを尊重し、これとの間の友好関係を進めていくことに今後とも努力をいたしたい、こういう考えであります。
  56. 津島壽一

    津島壽一君 最後に、簡単にお伺いいたしますが、いわゆる集団安全保障の問題、アジアの諸国を含め、英、米、ソ、これについても共同コミュニケが出ているのであります。もう一つは、このアジア・アフリカ会議を早期に開催すべきである、これが有意義であるといったような結論が出ております。この前者の集団安全保障の問題は、これは日米安全保障問題とも関連性を持つ非常に重大な問題であります。これについては、もうすでにたびたび、政府の方のいろいろの所見はわかっているのでありますが、あらためて聞くわけでございます。アジア・アフリカ会議の第二回目の会議については、これは、今日の中近東その他の国際情勢が、直ちにこの会議を開いて果して有意義なる会議になるかどうかということについては、非常に検討を要すると思うのでございますが、この二つの問題に対する政府の御所見を伺いたいわけなんです。簡単でもいいのですが、どうぞ。
  57. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) いわゆる日、中、米、ソを入れた四カ国のこの安全保障体制を作ったらいいじゃないかという、この考え方につきましては、今の国際情勢からいって、そういうことができるようであれば、国際連合の姿も全然違っているだろう。世界の情勢も違っているだろう。従いまして、現在の段階において、そういうことはとうてい私はでき得ない状態であると思うのであります。また、このアジア・アフリカ会議の第二回目の会議を早く開けということに対する考えは、これはもちろん、これの加盟国の意向を聞かなければ、中共だけと日本だけできめるわけにはもちろんいかぬ問題であります。今御指摘のありましたように、アジア・アフリカ全体を見ますというと、スエズ問題や、あるいは中近東のいろいろな問題の起っている今日、非常に微妙な状況にあると思います。そういう際に、これを開くということが果して可能であるか、もしくは有意義であるかどうかということは、よほど検討をしてみないというと、直ちに、これがいいからすぐやるんだ、こういうふうに即断することはできない情勢だと思います。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 三点にわたって御質問申し上げたいと思いましたが、時間がございませんので、沖縄問題だとか、あるいは日、中関係について、岸総理兼外相が相当後退されたような発言をせられましたが、それらの点については、同僚議員の質疑あるいは他の機会に譲ることにいたしまして、日韓問題について、特に相互釈放と援護問題だけについてお尋ねいたしておきたいと思うのであります。  先般この委員会から、山口、福岡、長崎三県の関係者及び大村収容所について正式に調査をいたして参りましたのですが、三県の関係者のみならず、西日本国民が相互釈放については、渡米前にあるいは東南アジアに出かける前に片づけたい、こういう岸総理兼外相の言明を期待した、今度こそは実現をするのではないか、この四月のうちに実現しなければ、月は越しても解決して参りたいと、こう申しておったのであります。大村収容所の韓国側あるいは朝鮮人民共和国に籍を持ち、帰りたいという者、その双方の被収容者を、日韓交渉の問題とは切り離して、人道問題として直ちに釈放せられたい、相互釈放を実現せらるべきである、こういうことを申しておりました。本交渉との関連があった段階もございましたけれども、相互釈放の話し合いの内容は、ほとんど相互了解に近い、そして踏み切るかどうかということはむしろ政府部内にあったように私どもも了解し、あるいは関係者も感じて参っております。そこで、この際相互釈放を直ちに実現せられる方針であるかどうか、その点を明確に承わりたいと思います。  それから、時間がございませんから、あわせてお尋ねをいたしますが、日本側において認めなかった李ライン問題に関連して抑留された、あるいは拿捕された、最近のごときは、ほとんど李ライン外において拿捕された、あるいは一本釣り等の小さい船も拿捕されておるのであります。従って、この抑留の原因は、当事者には責任はもちろんございません。しかるに援護については、その保険なり、保険のないものについては生活程度の援護をなされて参りましたが、根拠のない抑留については、もっと政府が援護の手を差し伸べるべきである、それから半年ごとに、陳情に当って援護金が出されて参りましたけれども、せめて月々支払ってもらいたい、抑留者のために、無理をして一万円前後の金品を送っておって、そうして抑留者の生活あるいは栄養失調にならないように、あるいはなけなしの金を出し合って、慰労に当っておるのでありますが、この前のときに、考慮するという御答弁がありましたけれども、具体的にこの際、援護について強化をする御方針はないかどうか、あわせてこの二つを御明確に一つ御答弁を願いたいと思います。
  59. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 日韓の相互釈放の問願につきましては、昨年末以来ずっと交渉をいたして参ったのでありますが、その両方の釈放ということにつきましては、これもなかなか難点があったのでありますけれども、一応の話が大体ついておるところには来ております。しかし同時に、その同時釈放をやりますためには、日韓の間に正式会談を、釈放した後において一カ月以内に再開するということが一つの条件になっておるわけであります。そうして日韓会談においては、どういう問題をこの議題としてやるかということについても、両方で話があるわけでありまして、それらの問題を、再開した後において、再び過去にわれわれが逢着したような行き詰まりを生ぜしめないためには、そのおもなものについて、大体の心持というものを一致せしめておく必要がある。これは、両者がそういう考えのもとに、先ほどお話がありました久保田発言の問題であるとか、財産権の問題であるとかいうものも、その重要なものの一つでございますが、それらについては、大体先ほど私が加藤委員の御質問に対してお答え申し上げたように、当方の考えを述べたために、それらに対することは、韓国側は大体了承しております。なおむずかしい問題としては、李ラインの問題がございます。しかしこれは、正式会談においてやるのであって、この際は、これを認めるとか、あるいは認めないとかいうようなことをここでやったんでは、それこそなかなか話は、それだけでもってつかないことになりますから、両方ともその問題については、将来の言質を与えることのないような状態で、この問題は正式会談に移そう、その場合にいろいろな研究をするということにして、その問題に触れないようにまあする大体つもりでおります、この何としては。まあそういうようないろいろな問題につきまして、正式会談に臨んだ場合の両方の側の大体の心持というものを一致せしめておく必要があるわけでありまして、それらのことについて、なかなかこれは、従来非常にむずかしかった問題を含んでおるわけですから、両国の間において、十分両国政府の間に問い合せをしたり、打ち合せをする必要もあり、また、字句の点におきましても、非常に微妙な点もございますので、ごく簡単な字句の問題ではありますけれども、両方でこだわっている点もございますので、今最終段階に来ておらないわけであります。しかし、最近金公使が向うへ帰って、韓国側の政府とも打ち合せをしてきて、こちらへ参っておりますので、なお従来のように、中川アジア局長と金公使との間に、なるべく急いで最後の話の妥結のところへ持ってくるように努力をいたしております。私としては、今申すように、この問題は非常に長い問題であり、かつ人道上の問題であり、今吉田委員のお話のように、留守家族の、こちらの人々の事情を聞きましても、一日も遷延してはならぬから、なるべく早く相互釈放は実現するように、この上とも努力するつもりであります。  それから、抑留漁夫の援護につきましては、できるだけこれは考慮するということを申して、それに対する施策を講じてきておりますが、まだ留守家族の人々の実情から見まして、不十分な点もあるように考えますので、十分に実情なりあるいはこれらの人々の要求なりというものを検討いたしまして、政府としては、援護に遺憾なきを期したい考えでございます。
  60. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 吉田君も私も、汽車の時間を急いでおりますので、今のに関連したことを一つと、もう一つのことをお尋ねいたします。  実は、佐野委員、それから吉田委員、私三人が先般山口県、福岡県、長崎県の調査に参りました。一千名近くの拿捕されておる漁民の留守家族の代表並びに船主の代表と懇談いたしました。実に彼らの希望しておることは、相互釈放を一日も早くやってほしいということです。これはもう、声涙ともに下るといいますか、ある場合は怒気を含み、ある場合は絶望的な表情までして訴えて参りました。昨年末陳情団が参りましたときに、年内に、クリスマスまでには大体釈放ができるからという政府の言明を信頼して、われわれ陳情団は帰ってきた。今度岸総理が行かれるまでには、ぜひとも相互釈放だけは実現してほしいということを、実に真剣な、われわれがほんとうに興奮するような雰囲気をもって彼らが陳情いたしましたことを総理はお考えをいただいて、決意をしていただきたいと思います。相互釈放の問題については。これは私の希望なんです。  それからもう一つの点は、日中国交の正常化の問題について、政治的に国交回復という段階ではないという岸総理の御意見については、私ども政府の立場を私は了解をできるというふうに考えておりますが、しかしこれが日中両国国交の正常化の退歩というふうに私は受け取りたくないのです。どこまでも岸総理は積み重ね方式をもって漸次両国の国交の調整に努力するという決意を持っておられると私は信じております。それで経済だとか文化だとかその他人道的な問題については、どこまでもこれは積極的に政府は積み上げて行く、こういう前提のもとにお尋ねするのでありますが、この第七次遺骨送還には下関から五月十二日の興安丸で四百体の遺骨を持って北京に参ります。すでに人員の名簿も提出してございます。与党の大谷瑩潤氏、あるいは私も参加するかもしれません。で、それにつきまして向うは、先日の社会党の親善使節団に対して、国会が中国にある未帰還者の調査団としてこれを派遣するについては、向うは必ずしもこれを受け入れるという態勢でない、しかしながら国会並びに政府が親善の意味をもって人を送られるならば、喜んでこれを迎えたいという意向を伝えて持って帰っております。その中に、もし親善の意味で人道的な立場から、政府政府の役人を北京に派遣されても、喜んでこれにお会いしよう、そうして未帰還者の調査という問題についても話し合いをしようと向うは言っておるということを、親善使節団が帰って私どもに報告いたしました。そこでお尋ねしたいのですけれども、総理は、あるいは外務大臣としての岸大臣は、今度遺骨を送還のため奉持団を編成しまして北京に参りますが、むろん私どもは十分岸総理の人道的な気持、中国人の遺骨を丁重にこれを発掘しそうして送り返すという誠意を私どもは向うに伝えるつもりでございます。しかしながら、同時にできたら政府がどなたかをこの奉持団の中に参加させられてはどうかと思うのです。この点についてのお考えを伺いたい。それからこの人道的な問題については政府として今後責任を負う、あるいはいろいろな団体を通してこれをやらすということについて、この前も御答弁せられておるのでありますが、今度は第七次の送還をせられるのについて下関で慰霊祭をやります。それからそこから丁重に興安丸に積んで北京まで行くわけですが、これについて政府が何らかの形で、花輪を供えるとか、国内及び国外の遺骨の輸送について丁重に扱うようにお考えを願いたいと思いますが、なるたけ具体的に、遺骨送還について政府責任を持つというその気持を具体的に、どのように第七次送還に現わしていただいているかをお伺いをいたしたい。できれば政府の方からどなたか一緒に行ってもらいたいと思います。これだけのことをお尋ねいたします。
  61. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 下関で慰霊祭をとり行う、これは私はできるだけ丁重にそういうことをされることは非常に望ましいことである、また政府としましても、そういう場合に適当な方法で花輪を提供するとか、その他適当な方法において慰霊祭というものを丁重かつ真実のこもった形においてされるように御協力することについては、私は異存はございません。ただ今お話になりましたこれを送還する場合に、だれか政府の職員を一緒に同行せしめて、その意思をはっきりさせたらいいじゃないかというお考えも、私は一つのお考えだとただいま拝聴したわけでございますが、従来の私どもの考えておるなんでは、そこまでは実は考えておらなかったのであります。一つ研究はいたしてみたいと思います。私はあくまでこういう人道的な立場における両国の気持、われわれ民間のみならず政府が考えておるところのこういう気持は、十分にこれを向う側に真実のこもった形において表明するということは、私は望ましいと思います。ただ単に外交関係がないから一切役人は出さないというふうな形式的な考えには、私はとらわれないつもりでおりますが、全然今までそういうことを考えておりませんでしたから、一つ十分検討をいたしてみたいと思います。
  62. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 一つ言い落しましたのですが、それで私ども、もし北京まで参りますれば、結局向うの紅十字会と接触し、政府とも接触するわけでありますが、その際紅十字会が、日本の皆さんが丁重に中国人の遺骨をこうやって送還して下さることに対して、お礼に使節団を日本に出したいと、この前岸総理にもそのことをお尋ねしましたのですが、これを私どもは、それではお迎えしますということを今度は返事しなければならないことになると思うのですが、それで私どもはぜひこの日本に皆さんが来て下さることについては、あたたかくお迎えするということを申したいのです。その点についてこの前総理は、政府も心からこれはお迎えしたいと思うという御答弁があったのですが、もう一度これを確認して参りたいと思います。これはなかなかデリケートなことでして、もう一度総理のこの公けの場合の御答弁を願って、それを持って私ども伺いたいと思っております。
  63. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中国の紅十字会の代表団のこちらへの入国の許可についての何と言いますか、申請書を正式にいただいておりますから、私はこの書類で目的その他のなにがはっきりするならば、入国を許可すべきものだと考えております。ただこの紅十字会の代表が来られた場合において、日本側においてどういうふうにこれをもてなすとか、あるいはどういうふうに処遇するとかいうような問題になりますれば、これは一つ十分お打合せを願った上でないと実際は、私はできるだけの好意をもってそういう人道的な立場のなにはいたしたいというふうに考えるのでありますから、いろいろな事務的の問題もございましょうから、その点はなにといたしまして、こちらへ来られる場合において入国を許可するという、いわゆるそういう意味においてお迎えするということについては、従来お答えしておる通りでございます。
  64. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  65. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それでは速記を始めて下さい。
  66. 曾禰益

    曾祢益君 ちょっと議事進行について。まだ森君の御質問通告もありまして、梶原さんもあります。私のもあるのですが、実はただいま同僚の津島委員から非常に重要な御質問があって、これに対してまたきわめて重要な政府の御答弁があったのです。私は尊敬する津島委員の遺憾ながら意見と異にする点が多いのです。従ってこの問題は、つまり日中国交等の問題については、もちろん政府が所信を表明されることは非常にけっこうだと思います。ただその場合に相当十分な、これはわが国会においては残念ながらフリーな討論という形はあまりとっておりませんが、少くなくとも慣例に従って、野党からも十分な質問の時間をあらかじめ打ち合せて、政府が積極的に本会議、あるいは委員会等で発言をせられるのもけっこうであります。ただ何となしにきょうのこの時間で、このまま時間切れに終ってしまうと、いかにも社会党の基本的な主張がただ何といいまするか、一方的に攻撃されたような形で終ってしまうということは事の性質上おもしろくない。従いまして、まだ時間があるんですから、同僚委員の御質問をやっていただいたあと、私も質問通告しておるのですから、本格的にこの問題について質問の時間を与えていただきたい。総理のお時間の都合ができなければ、このままで、委員会のこの形におけるこの内容についてしり切れトンボみたいな形は非常にまずい。これは委員長においてもお考え願って、どうしてもきょう都合ができなければ次の機会に野党に対しても十分な質問の時間を与えていただく、そうしてこの問題をもう一ぺん堂々と委員会を通じ、あるいは本会議を通じ与野党の意見を明らかにする、それだけの時間をとった私はディスカッションにすべきだと思う。その点について委員長並びに総理のお考えをあらかじめ承わっておいて、どうしても時間が都合ができなければその点をはっきりきめていただいて、そうして議事進行していただかないと私の方としては非常に不満です。
  67. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  68. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。
  69. 森元治郎

    ○森元治郎君 簡単に御質問申し上げます。核兵器と憲法に関する政府統一的見解、この一点を伺います。核兵器が日本に導入されるということは、憲法の関係あるいは国の世論、海外の世論などから見て大へんな大きな問題になると思います。みすみすこれを容認してしまったならば、一部には核兵器の一部は通常兵器だというような議論も出てきた今日、われわれは看過することができないし、外務委員会としてもこの点を将来のためにはっきりと伺いたいと思います。総理の方は従来通り憲法解釈上核兵器は持てないのだと、ところが防衛庁長官は、政府が発表した統一見解にきわめて近いような発言で、全部が違憲だとは思わないと言っております。そうして統一見解の内容ははなはだあいまいで、「多分に攻撃的な性質を持つもののようである。そうとすれば」というふうに逃げております。また「わが国が自ら持つことは」と言って、アメリカ軍が持つならばわれわれの知ったこっちゃないというような逃げ道があるように感ぜられるのですが、総理の見解の方をわれわれはとった方が正しいのでしょうか。統一的見解の再統一が必要じゃないかと思うので伺います。  それからもう一点は、国際的取りきめのできるまでは、核兵器による報復力だけが侵略に対する現在唯一の防衛手段であることは、不幸ながら明白だというのが原水爆を持っておる国の大体の一致した見解のようでありまするが、総理のこれに対するお考え、二つをお伺いします。
  70. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 実はその核兵器という言葉で示されておるところのものが、どの範囲のどういうものであるかということについてのいろいろの見解が違うのじゃないかと思うのです。森委員も御承知通り、われわれはやはり防衛を完備していく上から申しますと、いわゆる自衛の範囲内においては科学の進歩、すなわち装備の上につきましても、できるだけ科学的な研究も進めていって有効な装備を持たなければならぬことは、これは言うを待たないのであります。ただわれわれはあくまでも自衛のために、憲法の上からいうと自衛権というものになにであって、従って他を攻撃するという性格のものではないと思うのです。しかしなかなかそういう兵器そのものを、攻撃用の兵器と防御用の兵器というように分けられるかどうかというようなことにつきましても、これは議論がございまして、またいわゆる戦略的な兵器と戦術的な兵器というような考え方も、これもされておるような感じでありまして、従いましていわゆるわれわれがこの原水爆を中心としておるような兵器に対して、そういうものを持たない、のみならずわれわれの憲法の自衛権の意味からいって、そういうものを持つということが憲法上妥当でないというようなことは、これは私どもはっきり考えておかなければならぬことであります。しかし今申すように、私どもにもよくわからないのでありますが、研究してみると、いわゆる核兵器と称せられるところのものはいろいろななにがあり、そうして誘導兵器というようなものも、ある意味からいうと核兵器じゃないかというふうな議論も出てきておるようであります。そういうようなことから申しますと、いわゆるとにかく核兵器と名がつけば、すべてこれは憲法違反だという議論も、これはずいぶん実際のなにから言うと行き過ぎじゃないか。同時にわれわれはこの兵器についても自衛権の範囲というものを逸脱してはならぬ、これは憲法の精神だということも明瞭でございます。そういう意味からいろいろ研究された結果、いわゆる統一した何として、防衛長官が申しましたことは私もそれが正しいだろうというふうに思っております。
  71. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、総理がかねがね国会でおっしゃられたことからだいぶ後退されて、自衛権の範囲内の有効な手段、しかも兵器の科学的進歩の段階から見て、核兵器の一部はどうも持てそうだ、攻撃はしないのだと、そういうのは兵器発達の常識だというようにお認めになったようですが、おそろしいことは、この兵器というものはどんなおそろしいものでも、だんだん進歩すれば通常兵器化する傾向にあるのです。ですからこの際画然とした態度を示さないために、私は日本が各自衛隊ともいろいろな形の核兵器を持つようになると、こういうふうに思うのですが、この点もう一度お伺いします。
  72. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今申し上げますように、私どもすでにアメリカから誘導兵器の供与を求めて研究をしております。しかしこれがいろいろ議論があるようですが、この今、日本が研究をしておるところの誘導兵器というものは、これはやはり攻撃の兵器であるというふうな議論も一部にあるようですが、そういう意味において、いわゆるあるいは核兵器、核兵器と申しますけれども、その実際のものを十分検討してみない、観念として核兵器というものは一切いけないのだ。核兵器という名がつけば、いかに防御的な性質を持ってるものでもいけないのだ。こうすることはこの日本の自衛の装備を科学的進歩からとめてしまって、そうしていわばこれはちょうど兵器が発達してきたのに、いつまでも竹やりで装備しているのが、それが防衛の何だというわけにはいかぬと思うのです。しかし私どもが強い原水爆の実験の何に反対をし、それからこのいわゆる核兵器ということを申しますと、この原水爆を中心としてこのもろもろの兵器というような一つの観念でみますと、それが日本に自衛の名においてそういう装備をするということは、これは私はあくまでも間違っておるということについては明確であると思いますけれども、今申しましたように、ただいま兵器の発達とともに、いわゆる核兵器と称せられるあの中に、純粋の防御、防衛の目的を果すという意味からいうと、そういうものを、装備をしなければならない。それがいろんな点から批判して核兵器というような範疇に入るのだ、従ってそれはもういけないのだ。こういうように解釈するということは、兵器の発達の現状からいって私は適当じゃなかろう。こう思います。
  73. 森元治郎

    ○森元治郎君 こまかいことは総理にお尋ねしませんが、非常に重大な問題でございまするから、総理もどなたかに教えられたとみえて、だいぶいろいろ知っておられるようですが、もっと一つ勉強してやっていただかないと大へんなことになると思います。これで私は打ち切ります。
  74. 海野三朗

    海野三朗君 まず初めに委員長の釈明を求めます。何ゆえに、私が関連質問があります、と言った際に……委員長は耳が遠いのですか、まずそれからお伺いしなければならない。私は先ほどから遺骨送還について関連質問と言っておる。委員長の釈明を求めます。耳が遠いならばやむを得ません。
  75. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 聞えませんでした。ただいま発言を許します。御質問を願います。
  76. 海野三朗

    海野三朗君 委員長、先に私が言っておるのになぜ私に関連質問をお許しにならなかったのですか。
  77. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 聞えませんでしたから、今発言を許しますから御発言を願います。
  78. 海野三朗

    海野三朗君 私は遺骨送還について、この前、慰霊会の方に対して、外務省がもう少しこういうものを手伝ったらどうだろうということを申し上げました。その際次官からも御答弁がございましたが、はっきりした御答弁をしておらない。外務大臣のおられるところではっきりしたことをお伺いしたい。遺骨を取り集めるのに自分自身でやっておるのですよ、国民が。それを今度は向うに送還するときには、まことにけっこうであるからと言って、船にただ乗せてやるということでは私はすまないのじゃないか。慰霊会の方に対しても外務省が誠意を示さなければならないのじゃないかということを、この前御質問した。それに対して、はっきりした御答弁を得ていないのであります。
  79. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私は、従来大谷さんや竹中さん等のやっておられる、遺骨の発掘をしてこれを丁重に中国に送り返すという問題に関しましては、私が自民党の幹事長をいたしております時から、それに対して十分ではもちろんございませんけれども御協力を申し上げできるだけそのことが立派に行われるということは、人道的な見地から実に立派な仕事であるから、できるだけ自分たちも御協力したいという気持を申し述べまして今日まで参っておりました。政府当局となりましてからもこの気持でおります。ただ具体的にどういうふうな形においてそれをするがいいか、あるいは慰霊会等におきましても、今お話の通り経費その他において非常につらい立場にあるということにつきましても、私もある程度その事情も知っております。従って従来は党とかあるいは民間の一つの団体として、できるだけそういう点についても一つ御協力申し上げるという考えでありましたが、さらにまだ私、正式にはそういうことは承わっておりませんけれども、この何に対し政府の仕事としてこれを取り上げてやるかどうかという問題に関しては、私は従来聞いておるところは、政府としての仕事にはしないけれども、しかし政府としてもできるだけの御協力をし、それに立派に仕事が成果をあげるように御協力申し上げるという方針につきましては、政府としてはやはり一層考えるべきものであり、具体的にああしていただきたいこうしてくれろという、いろいろな具体的の申し出でがありましたならば、十分気持としては今申し上げたような気持において御検討申し上げて、協力をするということにしたいと思います。
  80. 曾禰益

    曾祢益君 最後に一点だけ。先ほど来、重要な日中問題、原子兵器とまだ中途であるか知れませんが、まだ質疑が十分なされていないけれども、この次の外務委員会で私からも質問したいと思います。最後に非常に違った問題ですが、これは詳しいことは御質問する時間がございません、二十七日の東京の朝刊紙に出ておりました、日本海外移住振興会社の経理がでたらめである、この問題について非常にわれわれもこの委員会において、この会社を作るに当って大いに協力もした一人として、非常に関心と責任を感じております。従いましてこういうような経理のふしだら、ことに外務省の方までがこれに加わっておるような報道がございます。きわめて重大なことでありますとともに、付帯決議がありますように、この経理のでたらめのほかに、本来の目的である特に農業移民というものに重点を置かるべき施策がなされる、そのための外資の導入であり振興会社の設立である、こういうふうになっておるはずであります。その事業の内容も必ずしも本来の趣旨に沿っておらないように聞いておるのです。この問題について次の機会に十分に質問もし、また釈明をしていただきたいと思いまするが、この際何らかの外務大臣において発言をされる御意思があったならばこの点伺っておきたい。これで終ります。
  81. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 詳しくはさらに詳細に十分な時間をもってやりたいと思います。移住会社の問題につきまして新聞にああいう記事が出ましたので、早速いろいろな事情を取り調べておりますが、今日まで私のところに判明しておる何でありましては、事実においては新聞の記事はよほど事実と違っておるようであります。今日の何で、移住会社の経理が非常に新聞に書かれておるようなでたらめの経理をやっておる事実は、取り調べた点ではそういう事実はございません。なおその他についてははっきりしたことを申し上げたいと思います。それから移民会社の目的につきましては、今お話の通り、付帯決議の趣旨がその移民会社の運営の上で重要視せられなければならぬことは言うを待ちません。しかしいろんな諸外国の事情によって、そればかりというわけにはいかない事情も私はあると思うのです。また、いろんな企業的な進出についても、移住会社として協力すべき部面も少くないと思います。十分そういうことにつきましては、さらに時間をかけまして、詳細に御報告いたしたいと思います。
  82. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 午前の審議はこの程度とし、午後は一時半から再開いたします。  これにて暫時休憩いたします。    午後零時四十一分休憩    —————・—————    午後二時八分開会
  83. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 休憩前に引き続き、これより委員会を再開いたします。  まず防衛問題に関し森委員から質疑のお申し出がございますので、これを許します。ただいま小瀧防衛庁長官が見えておられます。
  84. 森元治郎

    ○森元治郎君 あとのことがありますから、もっぱらお尋ねする方に重点を置いて申し上げます。小瀧防衛庁長官は核兵器というものを、どんな種類でもよろしゅうございますが、見たことがございますか。
  85. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 私はその実物を見たことはございません。
  86. 森元治郎

    ○森元治郎君 核兵器と憲法に関する政府統一的見解が大へんあいまいであったので、けさ総理にお伺いしましたところ、どうも総理は長官の方の御意見統一されて近寄っているように、はなはだおもしろい結果になったようですが、政府統一的見解の中にある内容は、何か将来核兵器を持つための準備のように解されるのですが、どういうものでございましょう。
  87. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 先ほど私に御質問ありましたが、核兵器を見たことはないということを申し上げました。この核兵器の実体というものは、近年非常に進歩したようでありまするけれども、私どもの聞くところでは相当攻撃的な要素を持っているようでありますので、ただいま御指摘のような見解を披瀝した次第でございます。それでは将来持とうとしておるかという御質問でございますが、私どもの考え方はすでに再三国会で申し述べておる通りでございます。それはただ単に憲法の解釈問題だけでなくして、国民感情から申しましても、そういう種類の今国民の非常にきらっておるものを持ってくるということは、かえって防衛意識を薄弱ならしめるというような逆効果があるでありましょうから、そういう点からみましても、政府としてはそういう申し出があっても断わる、絶対に許さない、こういうことをはっきりと申し上げているわけであります。またいずれ質問になると思いまするから、私は作戦的な立場から考えてもそういうものを持つ意向をもっているものではないということを申し上げておきたいのであります。こうした地域にそうした攻撃の目標となるようなものを、まして十分の反撃力を持たないでそういうものを持つということは、作戦上有利であるかどうかということについては、私どもは否定的な見解を持っているものでありまして、そうした意味において政府として持ち込むという意図を持っているものではありません。
  88. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、統一見解にあるように核兵器は多分に攻撃的性質を持つもののようである、そうとすれば、というのは非常に仮定的な言い回しでありまするが、ただいま御答弁になったような趣旨と解してよろしいのでありますか。
  89. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) ただいま言ったような趣旨、とおっしゃる意味がはっきりいたしませんが、私はその前段を受けて、そうとするならばと申しましたのは、こういうようにわれわれの方では見ておるし、実体がそうであるところから、こういうものは私どもの始終申し上げておるところの、自衛のために必要な最小限度の力というものを持っておるものである、というように解せられるので、その意味においてこれまで発表いたしましたような見解を申し上げた次第であります。
  90. 森元治郎

    ○森元治郎君 それでは、防御的とかあるいは攻撃的とかいうことの判断はなかなかむずかしい、と長官も二十五口には御答弁になりましたが、そういう目安というものは一体どういうところにあるか、それはレーンジによってきめるのもそれも一法であろうと思うし、あるいは政策できめるのか、どんなような目安をつけられるか、それを伺っておきたい。
  91. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 政策というのはポリシーですか。
  92. 森元治郎

    ○森元治郎君 ポリシーです。
  93. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 政策ではなくして実際に即して、その当時におけるいろんな武器の性能等を考えてやらなければならないものと考えます。政策的な問題ではございません。レーンジ、距離ということも確かに大きな問題でありましょう。さらに例をとればだ私どもといたしましては、必要最小限度の自衛力を持とうとしておるのでありますから、かりにある武器が戦法でTNTの何千に匹敵する、というような非常に大きな威力をもって、大量殺戮の機器として使われるという場合ば、たとえ距離が少いにいたしましても、それが自衛の最小限度以上に出るおそれもあると考えられますので、そうした面をいろんな角度から研究いたさなければならないものだろうと考えております。
  94. 森元治郎

    ○森元治郎君 こまかい点ですが、ちょっと伺いたいのは、レーンジの場合二百マイルというようなのもありますが、最近去年の暮あたりイギリスのチャタム・ハウスのパンフレットなんか見れば、五マイルから千マイルくらいまでが非常に近距離というレーンジに入っておるようですが、長官は防御的という場合にほどの辺の距離をいい、あるいは具体的な兵器の名前というならば、たとえばコルポラン、レッドストンというようなものを使った場合、どの辺でありますか。
  95. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 御指摘になったような書物に発表された見解は私も読んだことがございます。戦術と戦略の相違を距離的に申しておるものもございます。便宜上そういうふうに申しておるものもありますが、私はこれは必ず二百マイルであるとかあるいは千マイル以上であるとか、どうこう言うのではなくて、今御指摘になった防御とか攻撃とかという面を離れまして、少くとも私どもの考えなければならぬ限界というものは、最小限度の自衛力という点から考えなければならないものでありますからして、それは結局そのときの武器の性能、侵略があったとしてその際に使われる武器の性能によることと思います。非常にスピードの早いものであるならば、日本の上空から離れた所でキャッチしなければ自衛の目的を達成し得ない。そういう場合には相当な距離が要るでありましょうし、もしそのスピードがあまり大したものでないということになれば、日本の近くにおいてもこれをキャッチすることができるということになりますので、私はただ距離だけを引っ張り出して二百マイルが限界であるとか、あるいは三十マイルが限界であるというようには考えてない次第であります。今御指摘になりました誘導弾などにつきましては、私どもは先般国会で御披露申し上げましたような誘導弾、すなわち五十キロから八十キロ程度以内のものは、これは攻撃的な武器、あるいは戦略的な武器というふうに考えるものではない、そうしたものは今後の武器の発達にもかんがみまして、大いに研究しておく必要がある。それはうまく研究、開発できましたならば、日本として装備して差しつかえないというような見解を持っておりますために、米国あたりに昨年の一月要請したような次第でございます。
  96. 森元治郎

    ○森元治郎君 核兵器の取扱いですが、これを誘導弾などにくっつける、装着の訓練、これはやってもいいのか、あるいは日本の自衛隊はやるつもりか。NATOの例なんかでは、フランスあたりに現物をアメリカは供与しませんが、戦術的に核兵器にくっつけるようなことは教えるようですが、日本は核兵器は現在持たないけれども、新しい国防会議に出す防衛計画によると、誘導弾の新兵器の研究、開発ということをうたっておりますので、現物は持たないが、現物をつける訓練その他はどういうふうにするつもりですか。
  97. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 政府の政策はすでに申し述べた通りでございますが、核兵器は使わないという考えでありますから、そういうものをつけて使用するという考えではございません。新兵器の研究、開発をするという言葉をかりに使ったといたしますならば、それは誘導弾のようなものを研究しようというのでありまして、それに使われます爆薬のようなものは、在来兵器に使われたものを考えておるわけであります。
  98. 森元治郎

    ○森元治郎君 傾向として伺いたいのですが、世界の核兵器を持っておる国々、これから持とうとする西ドイツなどの一般的な専門家の意見を総合すると、核兵器による報復力が侵略阻止のただ一つの防衛手段であるというようなことを言っておりますが、この傾向は、ことに西ドイツで、国内の反撃を食らいながらアデナウアー政府が持とうとする。二日から始まるNATOの理事会でも、核兵器を採用するかどうかというようなことが問題になっている折から、長官の御見解を伺いたいと思います。
  99. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) ヨーロッパではそういう話し合いが行われるようでありますが、いろいろそれぞれの国の見解も報道せられておりますが、日本とヨーロッパとはその立場と申しまするか、国民感情、いろいろな点で相違もございまするので、私どもは核兵器を使うということは考えておらないのであります。ただしかし核兵器による被害というようなものに対して、対処する方策は考慮しなければならないと思いまするので、そうした面の研究はいたしたいと考えております。しかしそういうことをしたら今の近代戦においては役に立たぬ自衛隊になるのではないか、国民の税で養われる自衛隊が、そういうことではだめではないかというおしかりを森さんから受けるかもしれませんが、私どもの大体のこうした場合に対処する構想といたしましては、森さんの方では御異論もあるかもしれませんが、日本だけではとうていそういうことに全面的に対処することはできない。かりに不幸にして核兵器も使われるような地方的な紛争と申しまするか、侵略が行われるというような場合がございましたならば、その際にはわれわれは結局日本の防衛のために存在するところの集団安全の機構に頼らざるを得ないと思うのであります。しかりとすればそのような反撃をどうしても加えなければならないという際には、日本を基地にしなければならない、そうしなければ絶対にそうした場合に対処し得ないように即断するのは、少し行き過ぎた考え方ではないか、こうした考え方で進んでおるのであります。
  100. 森元治郎

    ○森元治郎君 これから国防会議で決定すると言われる六カ年計画の案なんですが、いわゆる千三百機、十二万四千トン、十八万名と、三十五年までに一体達成できるのか、質的増強というようなことを言っておりますので、これはおくれることになりはしないかということが一つ。それから長期の防衛計画だと言っております、そして日米共同防衛、合同方針の中にあって自主的防衛体制を確立すると言っておりますが、共同防衛というような場合には何よりもお互いの心がよく通じ合って具体的にこれを裏づけるものがなければならないのが常識であります。安保条約にはこの点何の根拠となるものがありません。これではおそらく統合幕僚部でも図上演習だってできないのじゃないか、こういうふうに思うのです。これでは憲法違反の疑いを起して、そしてたくさん金を使いながらただ員数だけをそろえたというようなことになりはしないかと思うのですが、いかがでありましょうか。
  101. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) まず第一の点は、質的な面に重点を置けば従来の防衛庁の試案が、結局少し時期的に達成の時期を延ばさざるを得なくなるのではないか、こういう御質問だと思いますが、私どもは必ずしも従来の防衛庁の試案に固執しておるものではございませんし、かつまたわれわれの方は現在資料等を国防会議の事務局の方に出し、また幹事会などでも討議しておりますけれども、それは最終的に決定いたしますのは国防会議でございまするから、今御指摘のような点について一体どうなるかということをはっきり申し上げることはできない次第でございます。しかしここできわめてざっくばらんに森さんに申し上げまして、質的増強ということはこれはいろいろな意味に解されるのでしょうが、まあ装備をよくするとかあるいは新しい趣向をこらしたような装備をする、というような点も一つだろうと思います。がしかし何といたしましても日本の工業水準を考え、また日本の従来の基礎の薄弱な点などを考えますると、研究程度はできましても、それを実際の装備としてその方面に相当費用も使って、これを来るべき三年なり四年のうちに実践的な面に移すということは、相当困難だろうと思いますが、私は質的な点に重点を置くからということで、特にそうした考え方に重大なる変化が起きるような、それがために質的の完成は非常におそくなるということも一がいには言えないと思います。  それから自主的体制を整えるというか、アメリカ側とお互いに意思の疎通をはかってやらなければ不可能ではないかというふうなことが第二点だったと思いますが、なるほど安保条約は必ずしも満足なものではないということは、総理が再三申し上げておる通りであります。しかしあの条約そのものの書きぶりが不完全にしろ何にしろ、とにかく日本に十分な自衛力がないので、この日本の防衛に寄与するというために一つのなにがこちらにおるわけでございますので、始終そうした法律問題を離れまして情報の交換をする。このことは日本の自衛のためにも必要なことでありますので、そうした措置はアメリカから決して指示を受けるというわけでなしに、実際問題としてこれをとってゆく、そして日本の自主的な体制を整えるというように、そして日本日本の立場からこうした防衛計画を検討するように、これまで努力して参ったつもりでございます。
  102. 森元治郎

    ○森元治郎君 あと一つこの際、古くて新しい問題なんですが、政府は口を開けば安全保障体制と言います。特に軍事的安全保障というような場合には国を守り通す、生き抜くことだろうと思うのですが、長官の前任者などは、日本の自衛隊というのは侵略の第一撃に耐えるのだと、それでアメリカの来援のあるまで二月、三月持ちこたえればいいのだということを国会で答弁なされておるが、しかし日本はなくなってしまったら、アメリカほおかげで生き残ったということでは、それでは日本は目も当てられないと思います。ごく最近の新聞の報道では、最近NATOで演習をやってブラック・ライオンというのですか、核兵器を使った想定でやったところが、西ドイツの主要な都市は壊滅してしまったという結果が出たので、西ドイツの軍人などは驚いて原爆持ち込み反対というような騒ぎをしておるというのですが、この点について安保体制と日米関係について伺いたいと思います。
  103. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) この場合を想定いたしますならば、結局日米両国利害の一致した点が多いのでありまして、結局この自由陣営の一角でもくずれるということになれば、全般の安全を害するわけでありますので、そういうことにならないことを想定し得るわけであります。しかしながら今おっしゃったようなことが全然ないということ、また戦争がどういう形態で起るかということにもよるのでありまして、一がいには申し上げかねるのでありますが、この意味においても日本としてはできるだけ日本の国力も考えて、自分でやってゆく体制をとらなければならないと思うのです。ただその際に地方的な侵略があったということだけであればいいが、そうでなしに大きな紛争ということになれば、結局第一次的の防衛と申しまするか、いつまでも日本だけで大きな力はないのでありますから、そうした際については、先ほども申し上げましたように、結局相互で助け合うという措置によって、日本の防衛を全うするしか手はないわけでありまして、そういう意味において、私どもは、できるだけ日本の力で日本を守る体制を整えて、他にたよる面を少くしていくということに努力したいと考えておる次第でございます。
  104. 森元治郎

    ○森元治郎君 終りに、この一点だけ伺いますが、おそらくアメリカの軍部では、日本から撤退する、日本を手放すということはないと思うのですが、軍部以外の、まあ国務省あたりでは、あるいはどうも日本に長く駐留するのは工合が悪いから、沖縄、小笠原は除いて、その他からひいてしまおうじゃないかというような意見もあるやに聞くのですが、長官いかがですか、ちょっとお伺いしたい。
  105. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 国防と外交は、一体をなして進まなければならないものでありまして、アメリカが今、根本的に国防省と国務省の方と、そうした基本的な意見の違いがあろうということは、私は承知いたしておりません。ただしかし、ものの取扱いぶり、またこの措置の前あとというようなことについては、それぞれ重点の置き方によって違ってくるわけでございまするから、防衛関係の当局が特に軍事的な面から必要であるということを主張いたしましても、それを漸進的に行う、あるいはその国の国民感情というようなものを考えてやらなかったら、結局最終的には、軍事的面においてもその目的を達成し得ないというような場合がございます。私は、この意味において、おそらく国務省と国防省の方において、随時意見が戦わされ、そしてそれが適当なところに調整せられるという努力が行われておるだろうとは存じます。私ども日本政府においても、同様なことであります。
  106. 海野三朗

    海野三朗君 私は、小滝長官にお伺いしたいのでありますが、海上自衛隊とか、それから保安庁とか、あれは一体何をしているのであるか。日本は、李ラインとか何とかいって、漁船がみな拿捕されていくのを安閑として見ておるのであるか。それを未然に防ぐということこそ、争いを未然に防ぐということこそ、その海上自衛隊の任務じゃないかと思うのですが、この点はどうなんですか。
  107. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) この前も海野さんから御質問があったかと思うのでありますが、御承知のように、自衛隊法にも、また防衛庁設置法の中にも、海上の警備、海上で人命とか財産が侵された場合に、これに対して総理大臣の指揮によって、防衛庁長官が海上の部隊を出動させるということは可能なわけであります。しかしそれは、法規的にでき得るということでありまして、私どもといたしましては、国防を全うし、日本が平和的に発展していくのには、できるだけそうしたことからだんだん紛争が大きくなって、好ましくない事態をさらに拡大するというようなことになっては困りまするしするから、非常に交渉に時間をとりまして、関係者に非常な迷惑をかけておることは遺憾でありますが、何といたしましても、平和外交で、できるだけそういう実力行使ということをしないで、こうした日韓の間の問題を解決しようとして努力しておるわけであります。しかしその際に、どうしてもそういうことはできないというので、それは自衛行為と、侵略に対する自衛隊の発動ということでなしに、海上にある部隊がそうした人命、財産を保護するための一つの措置として行動をとるということは可能でございまするので、それは、その時の情勢によって判断せられるべきものでございます。ただいまのところは、そういうことをするということは、かえっておもしろくない結果をもたらすという意味から、これまで隠忍自重して韓国との交渉を続けておる、こういう次第でございます。
  108. 海野三朗

    海野三朗君 私は、小滝長官の答弁がどうしても納得いかないのは、そういう際に未然に防ぐということこそ、つまり軍隊がその剣を用いないで、これを未然に防ぐということが必要なのであると私は思うのですが、海上自衛隊というものがある以上は、何も鉄砲を撃てというのではないのですよ。けんかをしろというのではないけれども、漁船がむざむざ拿捕されていくのを、どこ吹く風かという態度でおられるということは、海上自衛隊としての任務を忘れたものであると私は思う。これは無用の長物になりはせぬかと思っております。ある意味で、抵抗力のない漁船が拿捕されていくというときに、海上自衛隊がおって、ここは線がこうなんだということくらい、親身をもってもう少し……。拿捕されていくのをむざむざ見ておって、のほほんとしておっては、私は小滝長官のむしろその点を疑うのですよ。国防々々と言ったって、何が国防ですか。けんかを吹っかけてこられたときに、初めて自衛軍を発動するのですか。これは、漁船がむざむざ引っぱっていかれるのを、それを防止するというような方向、つまり剣を用いずして未然に防ぐということが自衛隊の任務じゃないかと私は思うのですが、どうなんですか、そこなんですよ。
  109. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 私どもも、李承晩ラインの問題には、重大なる関心を持っておるものでございまして、ただいま海野さんから非常な激励を賜わりまして、(笑声)もしそういうことができるなら、もしそれが決して悪い結果をもたらさないというようなことになれば、それは何も、海上自衛隊を惜しんで使わないで、とって置くというような問題ではございません。ただ、こういう措置は、第一次的には運輸省の管轄下にございます海上保安庁がそうした保護措置をとることになっております。それが足りない場合には、また必要があれば、保安庁の船舶というものは自衛隊の指揮のもとにおいてするようになっておりまするが、今、海野さんのおっしゃるような措置をとりますことが、かりに国際的には何も問題が起らないといたしましても、未然に防ぐためには、あの方面へ相当な艦船をくぎづけにしておかなければならないだろうと思います。なかなか部隊の訓練もできない。そうしてあすこでただ無為に……無為にではない、財産、生命を守ることにはなりまするけれども、そこに長い間置かなければならない。それでもう済んだと思って帰ってきても、またそういうことを繰り返す意思を持ちましたならば、日本の自衛隊の艦船が引き揚げた際には、また出てきて、どういうようなことをするかわからぬということになりますから、私どもといたしましては、根本にさかのぼって、そういうような紛争の起らない措置を外交的な手段によってとりたい、こういう希望のもとに進んできたわけであります。
  110. 海野三朗

    海野三朗君 私は、その点について、もう一ぺん考え直してみていただかなければならぬのじゃないか。千人以上の漁夫が拉致されておる。それをのほほんと見ておるということは、私はどうもはなはだ心もとない。それを未然に防いでやるということこそあなたの任務じゃないかと私は思うのです。私は、その点についてのあなたの御信念を伺いたいのです。これは理屈じゃないのです。わが同胞がいわれなくしてただ引きずって行かれるというそのありさまを考えるときに、防衛庁長官として、てん然としておられないのじゃないかと思うのです。しかも、向うに反抗しているわけじゃないのです。漁夫ですよ。それがむざむざ引きずって行かれて、千人以上の漁夫が引っ張っていかれておる。そういうことに対して、あなた方がのほほんとしておられるかどうかという、私はあなたの御信念を伺いたい。あなたはそれでいいと思うか、それを伺いたい。けんかをしろというのじゃないのです。未然に拉致されることを防ぐ。
  111. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 海野さんのお気持はよくわかるのでございまして、こういう措置をとりまするときには、ただ防衛庁長官だけで決定すべきものではなく、その点は、法律にもはっきり出ておりますから、内閣として決意をしなければならないことでございますので、海野さんの仰せの点は十分念頭に置きまして、今後対処していきたいと考えます。
  112. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 防衛庁長官に対する御質疑はほかに、この機会にございませんでしょうか。   —————————————
  113. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それでは次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約補足議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件について御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  114. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私、ワシントン輸出入銀行の機能をよく知らないのですけれども、今回の免税になる対象の利子は、ワシントン輸出入銀行が直接わが方の電力会社その他に投資した場合ですか。それとも間接に、アメリカ等の他の商社なり機関にワシントン輸出入銀行から貸し付けたその融資額がこっちへ投資されておるという場合も含むのですか。その点を一つ……。
  115. 井上清一

    政府委員井上清一君) これは、間接じゃなしに、じかに貸し付けたのでございます。
  116. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうしますと、わが方の輸出入銀行ですね。日本輸出入銀行が直接アメリカ人なりアメリカに融資をするという場合は、その建前上同じじゃないのじゃないでしょうか。一応何か中間の機関に貸しまして、それが投資する場合が普通じゃないかと思うのですけれども……。言いかえますると、そういうお話ですと、日本輸出入銀行向うのワシントン銀行との機能に相違があるのでしょうか。その点を一つ……。
  117. 井上清一

    政府委員井上清一君) 日本輸出入銀行が直接貸付することができるわけでございます。日本の投資会社に、今度の改正いたしましたのは、直接貸しじゃなしに、間接に貸すことができる。日本の海外投資会社に日本輸出入銀行が貸付することができるということが今度の国会輸出入銀行法の改正で出ておるわけでございまして、本則といたしましては、じかに貸し付けるのが建前になっておると思います。
  118. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 日本輸出入銀行は、わが方の商社なり会社に貸付するのがこれはまあ正当であって、直接投資をするのはむしろ、もしその道があれば、例外的じゃないかと思いますがね。
  119. 井上清一

    政府委員井上清一君) 日本輸出入銀行法の第十八条の三号にございまして、「設備等の本邦からの輸入及びこれに伴ってなされる本邦法人又は本邦人からの技術の受入を促進するため、外国政府、外国の政府機関、外国の地方公共団体、外国銀行又は外国商社に対して、外国為替の管理に関する法令の規定に従い資金を貸し付けること。」ということが日本輸出入銀行の目的を達成するための業務の中にございます。
  120. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうすると、結局この条約によって免税されるのは、両方とも直接投資の場合に限ると、こう理解していいわけですね。
  121. 井上清一

    政府委員井上清一君) さようでございます。
  122. 津島壽一

    津島壽一君 この補足議定書ですが、前に一回質問あったかもしれませんけれども、きわめて簡単なことで、あるいは重複だったら重複だったと、こういうことを申していただきたいと思います。  大体二重課税回避脱税防止がこの条約——日本政府としては、これはたとえばアメリカ合衆国との場合ですが、まあ双方の実利的なことを言うのはどうかと思いまするが、この例によりましても、条約の建前として、先方輸出入銀行所得に対する免税ということになるのですか。こちらのまた輸出入銀行が合衆国に対しての投資に対する利子所得の免税ということで、建前は非常に相互的になっているのですが、しかし、実質的に見ると、今の日本輸出入銀行法を制定した事情からいっても、また市場の実際からいっても、おそらく日本輸出入銀行が合衆国の商社、政府その他に長期的の借款をするというような機会はほとんどないだろう。もしそういった余裕があれば、東南アジア地方において、もっとその資金を投資すべき必要性が多いと思うのですね。従って、この協定の建前は、相互的の観を呈しておりまするけれども、実態的にはこれは片務的なんです。これは悪いというのではないのです。それは、外資導入をしようとする促進の手段としてこういうことができる。万一他日、日本輸出入銀行アメリカに金を貸すといったような余裕ができた場合に備えての条件を備えておこうという、その配意はわかるのです。しかし、実際的には片務的なものだということは免がれないと思う。そこで、これを悪いというのではありませんが、二重課税の問題は、むしろこの前もスエーデン等関係がございました。これは、形を整えるという意味においては意義があったと思うのですけれども、実際的に見て、東南アジア諸国とか、アジア諸国の密接なる関係のある国、これらの国は外資導入を期待している。日本の協力を求めている国なんですね。また日本としても、これらに出した場合に、相互的という言葉がまた実質的に当らぬかもしれませんけれども、必要性のあるのは、これらの諸国との二重課税防止であるのですね。ところが今日までまだ、寡聞でありまするが、アジア諸国との間の二重課税防止協定というものが実行されたということを聞かないのですね。それで、やさしい方から、また片務的であるべき方面においては、こういった問題がまとまりやすいから、まとめていくということではどうも、何というか、十分でないという感想を得られるのですね。でありまするから、一つ今、東南アジア諸国その他の国との間に、フランスとはずっと前に、船舶の所得に関するものを私たちおったときにやったのですが、一体どういうふうになっておりますか。インドの場合は非常に多いですね。それはどういうふうに交渉されており、現状としてはどうであるか。一つその点と、また、たまたまこういうような例外的な協定が追加されるという機会にその説明を、これはあったらしいですよ。しかしもしなかったら、その点を一つ、現在の状況、今後の方針を一つ説明願いたいと思います。
  123. 井上清一

    政府委員井上清一君) 御質問の前段につきましては、まことに私ども同感に存じますが、実際的には日本輸出入銀行からアメリカに投資するということも、ほとんど現在の段階では考えられないことだと私どもは思います。結局アメリカの資金の内地への導入、それの投資の促進と日米間の経済交流の促進ということに役立つわけでございまして、そういう意味から申しますと、やはり片務的と言っても私どもはいいんじゃないかと思う、実質的にはさように思います。  で、東南アジアとの関係でございますが、お説のように東南アジア諸国との間の二重課税防止ということは、私ども必要に存じますが、現在のところ、東南アジアの諸国とこうした条約を結んでおります事例はございません。また、交渉も現在のところはございません。いろいろこれについては理由があると思いますが、何と申しましても東南アジア諸国におきまするところの税制が、まだやはり確立してないといってはこれはあるいは言い過ぎかもしれませんが、そうした点にもこうした協定を作ることについての障害があるのではないかというふうにも考えられるのでございますが、今後、通商航海条約を結んでいかなければ相ならぬわけでございますので、これらと並行いたしましてこうした点にも留意いたしまして、できるだけ一つ二重課税防止ということに対する協定を進めますと同時に、経済交流の緊密化をはかるようにいたさなければ相ならぬと、かように考える次第であります。
  124. 津島壽一

    津島壽一君 今のお話の中に、東南アジア諸国との間においては、税制も整っておらぬと、こういうお話ですが、これは私は十分知らないから、これは大蔵省の役人きょうおりますのでお聞きしたいのですが、たとえばわが国向うにプラント輸出をするとか、企業を直接やるとか、わが国の法人、個人も含めてですが、その場合に、おもな国、インドとかインドネシア、フィリピンビルマのごときもあるようですが、それらの国の所得課税、外人に対しての所得課税ですが、外人というのは法人ですが、そういうのは、どういう制度に現状はなっておりましょうか、そういう制度がないということになれば、この二重課税の問題は起らぬという事情で、この交渉ないしまたそういった協定というか、そういうものの必要が現状においてないということで、交渉しておらぬということは、これは当然のこととなるのですが、どういうふうになっておりましょうか。その事実を簡単に御説明願いたいと思います。
  125. 塩崎潤

    説明員(塩崎潤君) お答え申し上げます。まずさきに御質問ございましたところの日米の二重条約につきましてちょっと補足的に御説明申し上げたいと思います。実質的には津島先生のおっしゃる通り、たしかに片務的な点がございます。ただ、御承知のように日本輸出入銀行もそうでございますが、アメリカ輸出入銀行も全額政府出資の機関でございまして、いわば国民の税金から出ている政府機関でございます。慣例といたしまして全額政府の出資であり、税金から出ております機関の所得に対しまして税金をかけるのは、果してどうだろうかという点もございます。日本所得税法では、そういう機関に対しまして他国が所得税を免除するならばこちらも免除するという法律がすでにございまして、そんなような趣旨から、この際、あらためて二重課税防止の点も、片務的には見えますけれども、建前から見まして、税金はかけない方がよかろうというつもりで、こういう協定を結んだ次第であります。補足的に御説明申し上げます。  次に東南アジア諸国との二重課税の問題でございます。先ほど外務政務次官からもお話がございましたように、日本の税制ほど確立されてはおりませんけれども、先ほど御質問のありました内地の企業が外国に対しまして投資し、それから生じますところの所得に対しましては、最近におきましては大体法人税がかかっておるような状況でございます。それから船舶についての所得に対しましては、外国も所得税をかけ、その所得税がネットの所得に対しまして課税ができないような場合には、グロスで課税いたしまして、あとで清算するような事例もございますが、そのために、わが国の企業も二重課税防止条約を作ってくれという要望もございまして、そういう関係で私どもも研究し、ときどき申し入れておる場合もございますが、何分その他の個人に対しまする所得税、それから法人の課税も、日本ほどまだ税制といたしまして確立しない点もございますので、必ずしも直ちに条約を結んでいくことが、日本の全体の、その企業に対しましては別でございまするけれども、全体の利益になるかどうか、このあたり、なお詳細に検討してみなければいかぬ、まあ船舶所得あたりにつきましては、フィリピンあるいはインドネシア、インドにいたしましても、船舶を持っておりません関係上、日本条約を結ぶことがなかなか困難な状況にございます。しかし、日本に対しまして投資もございませんので、そのあたりから、必ずしもなかなかうまく交渉ができるかどうか疑問でございます。なお、それらを考えまして、全般的に検討いたしまして、今後交渉を持ちたい、かように考えております。
  126. 津島壽一

    津島壽一君 今の御答弁の中にあったのですが、本案の場合、輸出入銀行相互の免除という場合は、政府が全額出資した機関であるから、原則的にいうと、そういうものはなるべくおのおのの国で所得税を課さないようにする。そういった原則的なものから現われた一つの事例である、こういう御趣旨のように承わったのですが、それならば、そういった抽象的な文句が現在の条約になければ、原則をはっきりした方がいいじゃないか。たとえばこれは起るかどうかわかりませんよ、日本輸出入銀行の場合もそういう事例であると思うのです。たとえば専売公社のたばこですね、これは葉タバコは向うから輸入している。しかし製品においては日本のたばこはほかの国にもどんどん出し得る生産というかを持っておるわけですね。専売公社は政府の全額出資のものであって、これをもし向うのたばこ会社に売るとして、これが向うで売却したものは向う所得税なり法人の課税と申しますか、そういったものの対象になり得るかどうか、もしこれがなり得るとすれば、これはやはり向うのたばこ業者は大体商社でございましょう、個人でございましょう、そういう場合を考えると、単に向う輸出入銀行に、こちらに対する、借款に対する利子の所得税の免除ということだけで見合ったものを出すにとどめず、もっと広範な原則によってものをきめていくということも考えられるわけですね。これは、ほかの例にもあるかもわからぬと思うのですが、政府出資の関係からいえば、いわゆる政府機関の出資だという意味からは、それならなぜ開発銀行の場合なんか、かかるのか、日本開発銀行、これは向うにはないのです、世界開発銀行であって、国際機関ですから、合衆国のものじゃないのですね、そういう原則を認められるならば、これは将来起り得るだろうという場合を想像するならば、そういった原則によってカバーするということの方が、あまり露骨に普遍化の約束ということが正面に出ないと思う。その点はどうお考えになりますか。
  127. 塩崎潤

    説明員(塩崎潤君) おっしゃる点私どももさように考えます。全額政府出資機関に対して免除するということはどうか、こういうことを申し込んだこともございます。ただいま津島先生のおっしゃる通り……。ただ、向うにこれに相当する機関がある場合は、また具体的にきめたいという話もございまして、全く輸出入銀行とは、ともに類似の機関でございます、性格的にも似ておるから、この点だけは開発銀行の話もございまして、私どもも折衝の過程におきましてはこういうことも持ち出しましたのでございますが、おっしゃる通り向うにもございませんものでございまするから、具体的に今後全額政府出資の機関について免除するということは、相互に類似のものがあればということに約束ができ上ったわけであります。と申しますのは、合衆国の輸出入銀行につきましても、向うは内国税はかからないことになっておりますので、こちらで税金をかけますと、かけましたところの税金を向うで控除することもできない、こんなような技術的な点もございまして、そんなような関係から、どうしてもともに免除するという必要性も出てきたと私ども考えております。ただ専売公社になりますと、向うには類似の企業もございませんし、そういう企業は、向うといたしましては民間企業でやるのが原則であるということで、おそらく対象には今後ともならないと思います。しかもまあ公的にきめないと、向うの立場といたしましては、他国との条約にも影響する、こういうふうな話もございまして、かようにきめたわけでございます。
  128. 津島壽一

    津島壽一君 まだありますけれども、これで打ち切ります。
  129. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ほかに御発言ございませんか。
  130. 杉原荒太

    杉原荒太君 私、一つの点だけお尋ねしたいのですが、むしろ午前中に質問した方がよかったことなんですが、お許し願いたいと思います。それは、ノールウェーとの条約の際、不動産の取得有について、相互主義のもとに最恵国待遇を保障する規定を入れてあったのですが、あれは単にノールウェーとの関係だけじゃなく、今後の東南アジア等との通商条約の際の一つの範例というような意味においても意義があるからというようなことを、政府説明の理由にもあったのですが、それだからなお質問したいのですが、相互主義というのが入っておれば、あれは単に最恵国待遇じゃなくて国民待遇も加えて、国民待遇プラス最恵国待遇としておいた方が有利だと思うのです。そうしてまた日本側としましては、少くとも日本の国内法制からすればそうして一向差しつかえない。これはむしろノールウェーとのことはそれでいいけれども、あとの東南アジアとの関係があるから私質問する機会を持ちたいと思ってお尋ねするわけですが、これは何か一応こっちから出したけれども、向うでけったというようなことがあったのですか。それから、ことに将来東南アジアとの関係で、やはり国民待遇ということを入れておいた方がいいだろうと思います。どういうふうなお考えか、ちょっと恐縮だけれども、その点お伺いしたい。
  131. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答え申し上げます。やはり一般的に申し上げまして、やはり不動産、すなわち土地の所有なんかが一番大きな問題になるかと思いますが、土地所有ということは、大体現在までの一般通商航海条約の慣行としましては、これは外国人にその土地所有を許すか許さぬかということが、従来までもいろいろ問題になったことがあることは御承知通りでございます。従いましてこれは動産の場合は内国民待遇を与えるが、不動産の場合は相互主義のもとに最恵国待遇を与えるということが、大体の従来の一般的な通商航海条約の慣例でもあるんじゃないか、このように考えております。しかも、日本の国内法におきましても、御承知通り外国人土地法の規定がございまして、これも相互主義のもとに土地所有を許すというふうになっておりますのでございますが、やはり相互主義のもとに最恵国待遇を与えるということになった次第でございます。
  132. 杉原荒太

    杉原荒太君 長く時間を費して恐縮でありますが、今のは日本の場合は外国人土地法にああいうふうにあるから、日本国民待遇を与えてもいいんです。向う向うの法制で困るというならともかくとして、日本の方からそこを言う理由は一つもない。
  133. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 大体土地所有の問題でございますから、やはり相互主義に基いて最恵国待遇を与えるというのが、大体一般の慣行になっておる。今までのやり方としてはそういうやり方できたんだというふうに解しておるのでございますが、そうして動産の点は多少そこのところが従来のやり方と異なっておるんじゃないかと考えております。
  134. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 他に御発言もございませんようでありますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。……別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約補足議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  137. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 全会一致でございます。よって本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、本件承認することに賛成された方は、順次御署名願います。   多数意見者署名     永野  護  杉原 荒太     海野 三朗  野村吉三郎     津島 壽一  梶原 茂嘉     森 元治郎  佐野  廣     曾祢  益
  139. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  140. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を起して下さい。本日は、これにて散会いたします。    午後三時七分散会