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国務大臣(
岸信介君) 中国において未帰還者とか消息不明の人々の
状況をできるだけ早く明確にし、また祖国に帰る意思を持っている人はできるだけ早くこれを祖国に迎えるということは、これはあらゆる面から当然
政府としてやらなければならない私はことであると思います。ただ御承知の
通り、この中国との間においては正常なる国交が回復をいたしておりません。また従って当然義務的に中国側においてそういうものを調べる義務があるとか、われわれはそれを要求する権利があるというような性質のものではないということは言うを待ちません。この点は十分に私
ども考えておるわけでありますが、しかし中国におけるその未帰還者の消息を明らかにし、またこれを内地に帰れるようにするためには、中国
政府の好意ある協力なくしてはとうていできないことであります。そこで従来この国交は正常化しておりませんが、事はそういう人道的な性質のものでありますから、ジュネーブの
両国の総領事を通じてある程度の交渉をいたして今日に至っておるのでありますが、まことにくつを隔ててかゆきをかくような何であって、留守家族の人々の意に沿わないことも言うを待たないし、
政府としてもそれで事足れりとは
考えられない。非常な緊切な私は問題であろうと思う。それでどうそれじゃこれを取り運んで
目的を達するかということにつきましては、何といっても中国の側の
政府の好意ある協力を得なければこれはできないことであって、従って今日ただ
政府の代表として何か出して、今までの
日本政府として中国側の協力を求めるというようなやり方では私なかなかいかぬと思うのです。一方は人道的の
立場から直接にこうしてやったからこうしてくれい、というような性質のものではございませんけれ
ども、中国人の
日本国内におけるところの遺骨等を丁重に送り返す、人道的な
見地から送り返すということにより、これが中国側の人々にもやはり人道的な
立場からこういう問題を
考える
一つの私は素地のできる何であって、当然われわれはやらなければならぬことでありますけれ
ども、それをやることが、こういう問題を
解決するには好意ある中国側の協力を求める一助ともなることだと私は思います。そういう
意味においてこの遺骨送還の問題については、
政府としてもできるだけこれに協力もし、援助すべきことは援助する。あるいは今後は、
政府の
責任において日赤をして丁重にやらせるというような
方法も
考えなければならぬと思いますが、いずれにしても、その
方法についてはさらに具体的に考究していかなければならない。そこで、中国へ今度
国会の方から代表が送られる。この資格とかあるいは性質というようなものについては、いろいろな
国会の側においても御
意見があるようです。私はこう思うのです。衆議院では御承知の
通り長い間引き揚げに関する特別
委員会ができておりまして、この問題について詳細に
調査もし、あらゆる
努力もしてきておられるのであります。そうしてこっちの留守家族の人々の
気持も最もよくいろいろな事情がわかっておるし、それからこの問題の実際実現上の上においてどういう困難があり、どういう点をさらに解明していかなければならぬかというような点についても、過去ほとんど十年近くこの問題を扱ってきておられるので、従ってそれを扱っておられる人がこの問題について行って、そうして事情をよく話をして、そして中国側においてさらに好意ある協力をもってやってやろうという
気持を
一つ作ってもらう。そうして、必要があれば、私は今後この問題は、なかなか議員団が行かれましても、数日の間に
解決するという問題でもなければ、また中国側の好意ある協力があるとしましても、中国側だけに、あらゆる好意に甘えて、一切の
調査のいろいろな困難をかけるということも適当でないと思うのです。だから、向うの
気持で、
日本のその方の仕事に従来携わっておる専門家なりあるいは役人等を受け入れて、それに
調査をさせ、自分の方で
政府も好意ある協力をして、そうして急速にその問題を明らかにしようというような態勢ができれば、私はさらに進んで、たとえ国交が正常化していなくても、必要によっては、またそれが適当であるという場合においては、そういう専門的の官吏をしばらく向うに置いて、そして向う側の
政府の協力を得て、できるだけ早く
調査するということも、望ましい
方法だと思うのです。しかしいずれにしましても、一応その素地ができることが、そういうことが決して権利として、中国
政府は人道上こういう義務があるというような、おっかぶさっていくべき問題じゃありませんから、そういう点を作る上において、そういう長い間この問題を扱ってきておられる議員の方から、そういう人が行かれるということについては、私は望ましいことであり、行かれたらそういう下地を作ってもらいたいということをお願いしているわけです。
それから、どういう形で何人出し、どうするかということは、こればまた
国会の方の問題でありますから、いろいろ当該
委員なり、あるいは議運なり、その他でもって今話がされておるこういう状態でございます。