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1957-04-18 第26回国会 参議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十八日(木曜日)    午前十時二十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            梶原 茂嘉君    委員            鹿島守之助君            黒川 武雄君            杉原 荒太君            津島 壽一君            永野  護君            野村吉三郎君            海野 三朗君            竹中 勝男君            森 元治郎君            吉田 法晴君            石黒 忠篤君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    外務政務次官  井上 清一君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務参事官   法眼 晋作君    外務参事官   服部 五郎君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省経済局次    長       佐藤 健輔君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際協力    局長      宮崎  章君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    大蔵大臣官房財    務調査官    大島 寛一君    通商産業省通商    局次長     樋詰 誠明君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国チェッコスロヴァキア共和  国との間の国交回復に関する議定書  の批准について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○日本国ポーランド人民共和国との  間の国交回復に関する協定批准に  ついて承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件) ○関税及び貿易に関する一般協定の改  正に関する諸議定書受諾について  承認を求めるの件(内閣提出) ○貿易協力機関に関する協定受諾に  ついて承認を求めるの件(内閣提  出)   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまから外務委員会を開きます。  まず、日本国チェッコスロヴァキア共和国との間の国交回復に関する議定書批准について承認を求めるの件、日本国ポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定批准について承認を求めるの件、以上二件を一括して議題といたします。前回に引き続き御質疑を願います。…別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  3. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。…別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。日本国チェッコスロヴァキア共和国との間の国交回復に関する議定書批准について承認を求めるの件、日本国ポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定批准について承認を求めるの件、以上二件を一括して問題に供します。両件をそれぞれ承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  5. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 全会一致でございます。よって両件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  それから報告者には多数意見書署名を付することになっておりますから、両件を承認することに賛成された方は順次御署名願います。   多数意見者署名    佐野  廣  梶原 茂嘉    黒川 武雄  津島 壽一    永野  護  野村吉三郎    海野 三朗  竹中 勝男    森 元治郎  吉田 法晴    石黒 忠篤
  7. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 続いて、国際情勢等に関する調査議題といたします。
  8. 永野護

    永野護君 核兵器実験禁止につきまして、当参議院ではすでに三回にわたってその趣意国連に申し述べてある次第であります。ところがその後第十一回の国連総会カナダノルウエーと共同して登録制提案を行なったと了承しておるのであります。ところが日本実験禁止要請をしておいて、その後登録制提案をしたというようなことなので、その内容がよくわかりませんために、国内においてもいろいろな意見もあるようであります。また国際的にもソ連はその登録制反対している、米英ソ連賛成前提として賛成するというようなまちまちの意見も伝えられておるのでありまして、日本国民といたしましては一体どういうことを登録制で意図しておられるのか。その内容目的というようなことについて判断に迷っておる次第でありますが、この点について、政府当局の御説明あるいはその取扱い方のその後の経過というようなことについて、御意見をお伺いしたいと思います。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核兵器実験禁止の問題は、御質問にもありましたように、すでに国会におきましても幾たびか議決をされ、日本国民一致した強い意見として、この実験を行なっておる米英ソに対して、その反省を求めておるわけでありまして、また同時に、これに関する国際的な世論を起すことに、われわれはあらゆる努力を今日まで続けてきておるのであります。ところが実験国際的の関係を見ますと、この米英ソ核兵器を持っておる国は、いろいろな説明や理由は別といたしまして、実際これの実験中止禁止するところの意向を持っておらない。もしくは現実にこれの実験を続けておるのでありますから、いろいろな声明等趣旨は、いかにも禁止あるいはこれをやめるような方向に進むようなことを言っておりますけれども、実際上はいずれもやめないというのが現状だろうと思います。そうしてこの実験事前通告される場合もあるし、事前通告をされずにどんどん行われておるというのもまた実情であります。しこうしてこれを実際上実験するかどうかということを、正確に探知できるかどうかという問題に関しましても、いろいろある程度のことは、現在のなににおきましてもわかりますけれども、しかしほんとうに正確にこれが探知できるかどうかということについても、まだ各国意見一致しておらないというような実情にあるわけであります。そういう際に、われわれが禁止方向、これの実験をやめるという方向に持っていくのにはどうしたらいいか。ただこれの実験をやめろやめろということを声を大にいたしましても、実際はそれが解決方向に向いておらない。そこで今言ったような探知の問題にも関連して、むしろ禁止への一歩として、この実験をやるということを事前に明らかにして、そうしてこれに対しての事実というものをはっきりさせるということが、まず禁止問題を現実に実現せしめる一つ段階としての方法であるという考えのもとに、実はカナダノルウエーとともに、日本国連にいわゆる実験事前登録して、そうしてはっきりさせる。そうしてこれに対しての処置考えることの余裕とまた時日を持つように事前登録して、それに対する処置考えようという意味において、登録制を実は提案したのであります。目的は言うまでもなく、実験禁止するという目的を達成せしめるのに、現在の段階国際連合等の空気全体を察して一つ解決への一歩として踏み出す方法として、登録制というものを実は提案したわけであります。
  10. 永野護

    永野護君 ただいま総理の御説明によりますと、そうすると登録制要請というものは、ソ連の言いますように、実験を肯定しておるという前提のもとじゃなくて、最初の、全面的核兵器実験禁止を実現するその第一歩としておやりになったのであって、この二つの提案には矛盾はないと了承していいわけでございますか。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問通りに、われわれはあくまでも実験禁止目標としてそれの一歩である、決して、登録制提案したことは、ソ連の言うように実験禁止というものを合法化し、これを承認するという前提に立っているものではないのであります。
  12. 永野護

    永野護君 さらに新聞の伝えるところによりますと、ロンドンにおける軍縮小委員会に対して何か日本政府から意見書が出ているというようなことを聞くのでありますが、これは一体どういう趣意意見書をお出しになったのでありましょうか。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、われわれ国際連合提案しました登録制の問題、これらはもとは軍縮小委員会において、ロンドンにおいてこれを審議するということになって、今審議されておるのでありますが、これに対して、日本は小委員会構成メンバーでないわけでありますから、そこで軍縮委員会から日本側見解を求めて参りましたので、これに対して、日本意見書を出したわけであります。私は適当な機会にこの意見書を発表するようにいたしたいと思いますが、その趣旨はまず第一に、国連科学委員会をして、もしくは国連内に新たな委員会を設置して、核爆発実験探知可能であるかどうかをまず検討せしめ、探知可能であるという結論の場合は、国連総会または安全保障理事会の勧告によって、すべての核爆発実験禁止せられるものとする、探知不可能という結論の場合は、国際的探知機構を設置し、探知方法を改善強化して、探知を可能ならしめようとする。この点が第一点であります。この点は、現在、先ほどちょっと申し上げましたように、探知できるかどうかということは、各国意見が必ずしも一致をいたしておらない。そうしてこの探知問題が、核爆発実験禁止に関する国際的合意ができない一つのガンとなっていることを考慮して、まずこの問題を取り上げて解決をはかろうとするものであります。  次に、探知機構が整備されて、すべての核爆発実験探知可能となるまでの間は、関係国国連に対して登録しなければ核爆発実験を行い得ないということとし、また前記の委員会は、登録された核爆発実験を検討して、実験実施国領域外人体その他にはなはだしい影響を及ぼすおそれありと認めたときは、その旨を国連総会または安全保障理事会に報告して、総会または安保理事会右報告に基いて、実験中止を勧告し得るというふうにしようとするものであります。この点は、領域外人体その他にはなはだしい影響があると認められる核爆発実験は、国連の議場で各国批判の対象となり、結局中止されるようにするということをねらっておるのであります。  これを要するに、この見解は、単に登録制度実施をもって事足れりとするものではなく、探知問題の面からも、また人体その他に対する影響の面からも、核爆発実験禁止ないし中止を実現せしめんとする趣旨をさらに明瞭ならしめた意味において、政府見解をこの小委員会に出しておるのであります。
  14. 永野護

    永野護君 今の点はよくわかりましたが、この問題と直接に関係はないのですけれども、この機会一言総理の御意見を承わりたいのは、今度総理アメリカへ行かれますが、いろいろ先方と御折衝になると思うのでありますが、その総理アメリカ行きに対して、国民期待と申しますか、一体どういう趣意で行かれるかというようなことについて、いろんな意見があるのでありますけれども、私どもその意見の中に、日本の国の実情について非常に甘い考えを持って、それを基礎として総理訪米の効果を云々することをよく聞くのであります。つまり、一口に言いますと、神武以来の好景気というので、日本経済は自立ができているのだ、もうすでに、十分な経済上の基盤を作り上げておって、その上に何かアメリカと交渉でもされるんじゃないかというような議論があるのであります。私ども経済に多少の知識を持っておる者から言いますと、日本経済というのは、そんなのんきな状態じゃない、それだからアメリカに行ってとくと交渉しなけりゃならぬ、こう考えているのでありますが、国民に赤裸々な日本経済実情をもう少しよく説明し訴えて、そうして先方に交渉される必要があるんじゃないかと思うのでありますが、その点に関する総理の御見解を聞きたいと思います。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の今回の訪米目的は、しばしば国会委員会等でも、全体的な問題としては私もお答えしているのでありますが、私は、日本の今日までの経済復興、もしくはいろんな意味におけるところの社会的基盤ができ上ったということの大きな力として、国民の非常な努力がその原動力であるということはもちろんでありますが、同時に、アメリカとの間に緊密な提携関係を持っておったということが、これを非常に助けておったことは、これはいなむことのできない事実であると思います。しこうして日本の社会的また経済的の各分野における状況は、とにかく終戦後の状況と比べてみまして、格段の安定ができつつあるのでありますけれども、しかしその前途を考えてみて、決してこれでもって、この非常な大きな人口を擁して、資源少い所において、しかも福祉国家目標をもってわれわれが完全雇用を達成しようとする、この大目的考えてみますると、私はまだまだうんと国民努力しなければならぬし、また、日米の間の協力関係につきましても、なお一そうこれを強化していかなけりゃならぬ点が多々あると思うのです。  こういう見地から、日本アメリカとの真の正しい形における協力関係、これは言うまでもなく、日本占領下にあった当時とは違って、完全なる独立国として、さらにわれわれが独立を完成し、自主独立立場から日本民族の運命というものを切り開いていく、またその基礎を固めていかなければならないことは言うを待たないのでありますから、そういう意味における日米の正常なる真の提携というものは、両国の間における完全なる理解と、相互信頼というものが基礎であると私は信じております。そういう理解信頼を築き上げるためには、両国首脳部の間において率直に腹を打ちあけて、世界情勢の分析やまた国際情勢の見通しや、また日米関係基本的な考え方について話し合っていくことが必要である。こういう見地に立って、そういう話し合いを今回はいたしたい。もちろん日米の間におきましては、大きなこの目標においては、ともに自由主義国立場を持っており、あらゆる方法で自由を守るという立場を堅持しておるわけでありますけれども、そういう点においては一致しておるわけであります。しかし同時にいろいろな日米関係においても望ましくないような、また解決をしなければならぬような懸案も私はあることもいなめないと思う。しかしこれらのものを具体的に今回私は解決するためという意味ではなくして、その基本になるところの考え方について、両方が隔意のない理解とそうして相互信頼関係というものを深めるということで、それができ上るならば、個々の問題の懸案等の将来の解決というものは自然にその線に沿ってできるのであります。そういう基本的な問題についての話し合いを私はこの際したいというのが大きな私のねらいでございます。
  16. 永野護

    永野護君 総理のお気持は非常によくわかるのです。私もそういう努力をすることが絶対に必要だと考えておりますけれども日本国民の多数の間には目先の、いわゆる神武以来の好景気というようなことによって、理屈からいいますならば、いくさに負けて台湾を失い満州、樺太、朝鮮を失って、いわゆるナチュラル・ソースの大きな部分を失って、反対人口ばかりふえて、それで戦争前よりも生活水準が向上するなんというようなことは、これは理屈から考えてみたら、当然その不合理性がわかるはずでありますけれども日本国民の大多数はその不合理性不安定性反省することがほとんどなくて目先繁栄にただ酔っておるような実情じゃないかと思います。こういう今の神武以来の好景気というものがほんとうにはっきりした繁栄であるのならば、実は総理がわざわざあいさつに行かれるのも、そのウエートは非常に軽いと見なければならぬのであります。でありますからせっかく総理が行かれるときに、アメリカに対していろいろな釈明をせられることは、あるいは将来のいろいろ隔意のない打ち合せをされることは、非常に必要なことだと思うのでありますけれども、それが必要だという日本の国情を日本国民に訴えられることが足りないのじゃないかという気がするのであります。だから参勤交代というようなふざけた非難すらあったのでありまして、私はこの点をもう少し日本国民に、日本の今の経済がいかに不安定なものであるか、そうしてそれを安定化するためには、一そうの努力が要るということを何らかの形で訴えられる必要があるように思うのでありますけれども、これに対する総理の御見解を承わりたい。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 永野委員お話のように私どもも、日本経済的基盤というものは決して非常に強固なものであり、根の深いものであると考えることはできぬと思います。従いましてそういうこの日本経済の実態、また日本の国力といいますか、国の資源関係であるとか、いろいろな点における実相というものを国民に十分知らせるということは、もちろん政府としてやらなければならぬことであると思います。またそういう意味において、あるいは私がかねて唱えておる経済外交というような点に関しましても、その基本はやはり何といっても日本経済基盤というものを強化する道としてこれを唱えておるわけでありますから、そういうことの前提となる日本実情については十分に国民に知らせることが必要であると思います。
  18. 竹中勝男

    竹中勝男君 私は、今朝零時にマクミラン英国首相岸総理にあてて送られたところの書簡、返書、また岸総理マクミラン総理に対して松下特使に託された書簡を、非常に注意深く大きな期待をもってラジオ放送を聞き、今朝の新聞を読みました次第であります。岸総理書簡が、原水爆実験禁止を心から被爆国民総理として英国に訴え、世界に訴えておられるこの真摯な書簡内容については、私は心からこれに敬意を表し、賛意を表しておるものであります。ところがせっかく岸総理の熱意のある原水爆実験禁止の熱望にもかかわらず、マクミラン総理書簡は依然として自由主義諸国の防衛のために原水爆実験は必要である。日本国民気持は自分はよくわかるし、国会の決議もよく知っておるけれども、しかしこの実験をとめることはできない。そのかわり日本カナダ諸国国連提案しておる登録制賛成する。登録制日本が支持することを望む、という返事の趣旨であります。  そこで永野議員からも質問があったわけでありますが、実験禁止核兵器の廃棄ということを日本はどこどこまでも主張しておる国なのであります。国民がそれを死にもの狂いで世界に訴えておる現状であります。禁止登録制というものは、やはり根本的に矛盾あるものがあると私は考えざるを得ないのであります。原水爆実験をやっておれば結局世界の人間が死滅するおそれがある。新潟や高知に降っておる雨が七十八万カウントも放射能を含んでおる。日本は雨が降らずに水道が出なくなったり、農作物が枯れたりしておるが、そのほしいところの雨が今度は逆に日本人の生命を縮めるというようなことにもなる。この原水爆実験一つの、人類を苦しめるところの、殺すところのものである。殺人が悪いということははっきりしておる。これは禁止しなければならない。しかしながらこれを登録制にするということは、冷静に考えてみても殺人をまず登録する、登録すれば殺人はやってもよい、すなわち殺人をこれはやはり合法化するということになる危険がはっきり理論的にも実際的にもある。登録制ということのために核実験が行われるというのであれば、これは禁止とは非常に遠い逆の方向に行くんじゃないかと私ども考えておるわけでありますが、禁止のための登録ということに一つ矛盾があると私は考えますが、総理のお考えを伺いたい。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答えを申し上げましたように、私ども国際現状を見ますると、登録といいますか、事前通告しておる場合におきましては、世界的な世論も非常に高揚され、また何といっても今度のマクミランの回答については、私は非常に不満を感じておるのでありますが、しかし少くともイギリスに対して非常な反省を促し、従って実験をやるということに対しては、あらゆる面からの抗議なり、あらゆる非常な反対が巻き起っておる。それを押し切ってやらなければならぬというところには、私は少くともイギリス政府首悩部も、マクミランも、その良心と申しますか心の中では、非常な一つ責任を感じておると思うのです。こういうことは少くとも今回のなにを禁止させることができなかったとしても、イギリスが今後やるところのことに対して非常な道義的の責任を少くとも与えたことは事実であろう。ところが全然無警告、無届けで、通告もあるいは何にも知らせずにどんどんやっておる国においては、最近においてソ連が行なっておる回数等につきましても、伝えられるところによると、わずか短かい期間の間に数回も繰り返してやられておる。そうしてこれらの国においては何らの反省とか、それに対するなにが行われておらないというような事態から見ますと、少くとも事前責任ある、もしくは国際連合とかそういうような国際的な世論の中心であるところに、もし登録するということになれば、それに対する批判というものは事前に非常に起ってきて、少くともその実験をする国に非常な反省を与えて、その回数制限するとかあるいはやり方について方法考えるとかいうことをさせる一つの引っかかりができると思う。一挙に禁止ができれば望ましいことであって、私はあくまでもそれをやりたいと思いますけれども国際実情はそこまでいっておらぬ。そうすれば少くとも登録して、事前にそのことを世界の人々にはっきりさせて、これに対する各方面からの批判あるいは意見というものが出て、その国に反省を求めしめるようなことをすれば、少くとも回数というものが非常に少くなっていく。そうして従って核実験によるところの人類がこうむるべき被害なり、惨害というものを減殺するところのものがある、私はかように考えます。従いましてあるいは理論的に言えば今お話のように、とにかく登録するということは、一応登録してそうしてそれが一定の条件がかなえられればやってもよろしいということになるのだから、理論的に言えば禁止ということとは矛盾するじゃないかという論理上の矛盾については、必ずしも私は否定をいたしません。しかしほんとうに真劍に禁止というものを何とかしてやり、禁止ができないとするならば、少くとも回数を減らして、それから及ぼすところの被害というものを、できるだけ最小限度にとどめるという努力をするという意味において、決して登録制というものは、無制限にやってもよろしい、登録さえすれば幾らでもやってよろしいというような意味で私どもはこれを提案しておるものでない、こう思っております。
  20. 竹中勝男

    竹中勝男君 時間の制限が非常にありますために、詳しく御質問申し上げられないのは残念でございます。従って簡単に御質問申し上げ、そうして簡明なお答えをお願いしておるわけでございますが、ただいま総理お話によりまして、私ども総理特使を送り、また日本国民が全国民をあげて、この実験禁止に立ち上っておるということは、英国並びにその他の国々にやはり原水爆実験に対して道義的な反省を与えておるということを私は認める。そうしてそれゆえにこそわれわれはさらにこれを継続し、さらに大きな熱意をもってやらなければならないという決意を持っておるものであります。  そこでお尋ね申し上げますけれども、御賛同を得られると思いますけれども、先般原水爆協議会及び国民会議原水爆禁止に関する東京アピールというものを世界に発表いたしました。これも原水爆実験することに対して三国が協定してほしい、話し合いをしてほしい。少くとも話し合いをしている間は実験禁止してほしいというアピールでありますが、総理はこれをやはり支援いただけるものと私どもは信じ、また総理にもこのことにつきましては数回お目にかかって了解を得ております。これが一つ。  それでこの八月には東京におきまして全世界国民が集まる。これはもうアメリカも、英国も、ソ連も、その他の国々も参加いたすことにすでに連絡がついております。これは全く超イデオロギー、非政治的な、全世界の平和を愛好し、原水爆の危険を痛感している国民たちの、世界世論に訴える会合であります。これをぜひ成功させたいと私ども考えておりますが、政府におかれても十分これについては御支援、御賛同をいただきたいと思っております。広島、長崎において昨年、一昨年と大会が開かれております。そのときばやはり総理がメッセージをそれぞれ送っておられますが、今度は首都東京において、世界注視のさなかに世界大会を開くのでありますから、これは実に日本国民の熱望を世界に向って訴え、日本国民的使命を世界に徹底する一つの重要な機会であると思いますので、ぜひ総理に御協力、御支援をお願いしたいと思います。また国民使節を各国に送りまして、ことに原水爆を保有している三国に国民使節という形で原水爆協議会が送って、三国の方と十分ゆっくり話し合いをして日本人の気持を訴えたいと思っておりますが、これについても総理の御賛同、政府の御支援を得たいと思っておりますが、一言総理から。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今竹中委員お話になりましたいろいろな催しにつきましては、私はその趣旨におきましては全然同感でございます。この原水爆の問題は、政府ができるだけの努力をいたすとともに、国民もまた世界人類に訴える。またこれが国際的の一つ世論の興起によって、各国反省と道義的良心によって禁止されるということが、私は最も望ましいことだと思いますから、そういう趣旨のいろいろの催しに対しましては、政府としてもできるだけの御援助をいたす考えでございます。
  22. 竹中勝男

    竹中勝男君 もう一つの問題、中国における日本人の未帰還者調査の問題に関連しての御質問を申し上げます。これは、詳しことはすでに何回もここで私も政府も発言しておられますので繰り返しません。未帰還者調査のために国会が議員団を派遣するという件が問題になっております。これはやはり私としては非常に慎重を要する点でありますからして、この前井上次官に対して、もし国会が議員を派遣するということであるならば、これは衆議院だけの問題でないから参議院も考える、両院の問題にしてこれは考えなければならないことであるということについて、その通りだという御返事を得ておりますので、政府考えは大体そういうように考えております。これにつきましても、私はこれができる、できないということ、また妥当、妥当でないということは今問題外におきまして、こういう日本人の未帰還者の調査に対しては、やはりこれは人道的な問題でありますからして、十分人道的な立場から、こちらにおけるところの中国人の未帰還者、中国人の行方不明者とか死亡者の調査、あるいは遺骨があれば遺骨を送還する、こういうことを尽してかからなければならない。これもたびたび申していることでございますが、今度第七次の遺骨送還を、約四百体の中国人の遺骨を、最近の興安丸あるいはその他の日本から出す船によって送ろうといたしておりますが、政府は中国人の殉難者に対して、政府責任において誠意をもってこれを丁重に送り返すという趣旨に従って、第七次送還に対して政府の可能な御援助をいただきたいと思っておりますが、この点につきまして総理の、政府のお考えを伺いたい。  また未帰還者調査一つの重要な契機となる問題があります。それは中国紅十字会は、日本の団体、日本国民が丁重に中国人の遺骨を中国にまで送り返したことに対して、感謝の使節団を日本にこの夏よこしたいということで、私どもはよりよりそれについて協議をいたしております。で、これは向うが感謝に来られるのでありますから、この際にやはり自然な形において、未帰還者の調査の問題も話し合う機会ができてくると私ども考えておりますので、政府はこういう感謝使節団に対して、これをあたたかく心から迎えるという気持を示していただきたいと思うのでありますが、総理大臣並びに厚生大臣に一言御返事をいただきまして、私の質問を終ります。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中国人の遺骨送還につきましては、従来慰霊会と申しましたか、で、十分なお力を用いておられて、これは人道的な立場から当然やるべきことであると同時に、私はけっこうなことであり、従いましてその遺骨送還については政府としてもできるだけの協力や援助をいたすべきものである、かように考えております。また中共から、今日まで送還した遺骨またこれから送還しようとする遺骨に対して、感謝の気持を表明するというような使節団がこちらに来られるということは、その趣旨において私はけっこうなことだと考えます。ただこの今まで行われたことも、これは民間の団体が骨を折ってやられたことでありますし、それに対する感謝といたしまして、やはり民間の使節として来られるということが建前であろうと考えます。しかし事はこういう問題は、言うまでもなく人道的な見地からすべてが行われるものと考えるべきことであって、その人道的見地に立ついろいろな行為に対しましては、政府としても好意ある気持をもって処置すべきである、かように考えております。
  24. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま総理のお述べになりました通りでありまして、私どもその趣旨に従って善処して参りたい、こういうふうに考えております。
  25. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連して。
  26. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 簡単にお願いいたします。次の方がきまっておりますから。
  27. 吉田法晴

    吉田法晴君 遺骨送還に対しまして、日本にあります中国人の遺骨の送還については、政府としても民間でやられてきた遺骨送還の運動をできるだけまあ援助したいと、こういうふうな御答弁がございました。それから中国にあります日本人の遺骨、それから未帰還者の問題についても人道的な問題だから、これについても理解ある支援をしたいと、こういうようなお話でございますが、近く未帰還者の調査について国会から行かれる、これについて初め政府からやりたい、こういうお話でした。従って国会から参りますとしても、政府の意向も背後にやっぱりあってこれは行かれることであると思う。  そこで今の点に関連してもう少し外務大臣としてはっきりお願いいたしておきたいとも思うのであります。というのは、未帰還者の全部を中国側に責任ありとして調査を要求せられ、あるいは日華事変によって中国に迷惑をかけたという点について、政府であろうとあるいは国会代表であろうと遺憾の意を表せずして、そうして調査を依頼するという態度では、これはビルマにおける交渉のごとく円滑に進まないと思う。そこで国会の代表であろうとも、政府としてもこの心がまえをここではっきり言明を願わなければならぬと思うのですが、日華事変については迷惑をかけたという謝罪の意味も含め、そうしてかって中国にあった人について、これは中国の責任でないところもあるかもしれぬけれども、従ってこれはいわば頼んで、依頼をして、いわばこちらからお願いをして調査を願う、あるいは調査に協力をする。こういうことでなければならぬと思いますし、それから従来ございました中国人の遺骨送還についても、これは政府としても当然やるべきことだ。その点については相互関係ではございませんけれども、民間でやっておられることは人道的な立場からやられることだからいいことだということ以上に、三団体でやって参りました遺骨送還なりあるいは引き揚げというものについて、政府としてもこれはその発展の方向として協力をする、こういうことでなければ、私は国会代表がおいでになりましても、うまくいかぬのじゃなかろうかと思いますので、その点についての外務大臣の心がまえをもう少しはっきりここで御言明を願いたいと思います。
  28. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中国において未帰還者とか消息不明の人々の状況をできるだけ早く明確にし、また祖国に帰る意思を持っている人はできるだけ早くこれを祖国に迎えるということは、これはあらゆる面から当然政府としてやらなければならない私はことであると思います。ただ御承知の通り、この中国との間においては正常なる国交が回復をいたしておりません。また従って当然義務的に中国側においてそういうものを調べる義務があるとか、われわれはそれを要求する権利があるというような性質のものではないということは言うを待ちません。この点は十分に私ども考えておるわけでありますが、しかし中国におけるその未帰還者の消息を明らかにし、またこれを内地に帰れるようにするためには、中国政府の好意ある協力なくしてはとうていできないことであります。そこで従来この国交は正常化しておりませんが、事はそういう人道的な性質のものでありますから、ジュネーブの両国の総領事を通じてある程度の交渉をいたして今日に至っておるのでありますが、まことにくつを隔ててかゆきをかくような何であって、留守家族の人々の意に沿わないことも言うを待たないし、政府としてもそれで事足れりとは考えられない。非常な緊切な私は問題であろうと思う。それでどうそれじゃこれを取り運んで目的を達するかということにつきましては、何といっても中国の側の政府の好意ある協力を得なければこれはできないことであって、従って今日ただ政府の代表として何か出して、今までの日本政府として中国側の協力を求めるというようなやり方では私なかなかいかぬと思うのです。一方は人道的の立場から直接にこうしてやったからこうしてくれい、というような性質のものではございませんけれども、中国人の日本国内におけるところの遺骨等を丁重に送り返す、人道的な見地から送り返すということにより、これが中国側の人々にもやはり人道的な立場からこういう問題を考え一つの私は素地のできる何であって、当然われわれはやらなければならぬことでありますけれども、それをやることが、こういう問題を解決するには好意ある中国側の協力を求める一助ともなることだと私は思います。そういう意味においてこの遺骨送還の問題については、政府としてもできるだけこれに協力もし、援助すべきことは援助する。あるいは今後は、政府責任において日赤をして丁重にやらせるというような方法考えなければならぬと思いますが、いずれにしても、その方法についてはさらに具体的に考究していかなければならない。そこで、中国へ今度国会の方から代表が送られる。この資格とかあるいは性質というようなものについては、いろいろな国会の側においても御意見があるようです。私はこう思うのです。衆議院では御承知の通り長い間引き揚げに関する特別委員会ができておりまして、この問題について詳細に調査もし、あらゆる努力もしてきておられるのであります。そうしてこっちの留守家族の人々の気持も最もよくいろいろな事情がわかっておるし、それからこの問題の実際実現上の上においてどういう困難があり、どういう点をさらに解明していかなければならぬかというような点についても、過去ほとんど十年近くこの問題を扱ってきておられるので、従ってそれを扱っておられる人がこの問題について行って、そうして事情をよく話をして、そして中国側においてさらに好意ある協力をもってやってやろうという気持一つ作ってもらう。そうして、必要があれば、私は今後この問題は、なかなか議員団が行かれましても、数日の間に解決するという問題でもなければ、また中国側の好意ある協力があるとしましても、中国側だけに、あらゆる好意に甘えて、一切の調査のいろいろな困難をかけるということも適当でないと思うのです。だから、向うの気持で、日本のその方の仕事に従来携わっておる専門家なりあるいは役人等を受け入れて、それに調査をさせ、自分の方で政府も好意ある協力をして、そうして急速にその問題を明らかにしようというような態勢ができれば、私はさらに進んで、たとえ国交が正常化していなくても、必要によっては、またそれが適当であるという場合においては、そういう専門的の官吏をしばらく向うに置いて、そして向う側の政府の協力を得て、できるだけ早く調査するということも、望ましい方法だと思うのです。しかしいずれにしましても、一応その素地ができることが、そういうことが決して権利として、中国政府は人道上こういう義務があるというような、おっかぶさっていくべき問題じゃありませんから、そういう点を作る上において、そういう長い間この問題を扱ってきておられる議員の方から、そういう人が行かれるということについては、私は望ましいことであり、行かれたらそういう下地を作ってもらいたいということをお願いしているわけです。  それから、どういう形で何人出し、どうするかということは、こればまた国会の方の問題でありますから、いろいろ当該委員なり、あるいは議運なり、その他でもって今話がされておるこういう状態でございます。
  29. 吉田法晴

    吉田法晴君 要望だけ申し上げておきますが、たとえば遺骨送還が民間で行われてきた。これを中国側で非常に高く評価をして、そうして感謝をしておるということが、今度の国会の代表が行かれたとして、向うでジュネーブ会議以上に評価されるかいなかの分れ目だろうと思う。そうすると、遺骨送還というものについても、従来政府から日赤を通じて協力を願っておりますけれども、もう少し政府としても協力援助の方法もあろうかと思う。それから代表が行かれるについても、おそらくこれは、私の用で行くということではなくて、公用旅券になると思うのですが、その旅券の取扱いについて、あるいは紅十字会代表の受け入れの問題についても、あるいは里帰りの問題についても、今までのように日本に入国するについてどうこうという問題が起らないように、あるいは里帰りの待遇についても、こちらの滞在費とかあるいは帰りの旅費等はみないとかいう話もありますけれども、その点等についても、もう少し政府としても、進歩と申しますか、積極的に援助されるということが必要だろうと思います。その点は今の答弁から当然出てくる今後の措置だと私は思いますので、その点を要望して質問を終ります。
  30. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 ただいま総理から、ロンドン軍縮小委員会政府から提出されました文書についてお話がございましたのでありますが、私はこれをよく拝見しまして、ゆっくりとまた御意見を伺いたいと思いますが、本日は時間が少いようでありますから簡単に申し上げておきます。  政府当局として、原水爆実験禁止の問題について、それの大目的と実現の具体的段取りとについての御苦心はよくわかります。わかりますが、総理も否定をされないという、原水爆実験禁止登録制との間については矛盾のあるということは、理論上外務大臣もお認めになっておりますから、私はそれをあえて追及はいたしません。けれども政府のとられる原水爆禁止に関しましての高い、非常に広い人道的見地からの主張が、ややもすると弱められる危険がしばしばあるということを、特に注意して御行動を願いたいのであります。  今回の軍縮小委員会に提出せられたる文書をちょっと拝見いたしましても、そこに、専門の委員会において「人体及びその環境その他に及ぼす影響を検討する」ということになっておりますが、その次の三項には「当該国領域外人体及びその環境」ということになっておりまして、領域内の人体というようなことについては自業自得で、訴えるのに自由を持っていないようなある国のごときにおきましては、その国の国民人体関係が深くあっても、それは自業自得だというようなにおいがここにしておることは、これは私はいかがと思うのであります。水爆、原爆というものの実験が重なりますと、人類の将来については非常におそろしい結果になるので、いかんともしがたくなるのだということが今日言われておるのでありまして、これは人類及びその将来についての大きな問題であるから、それを取り上げてわれわれは抗議をしておるのであります。そこでこの文句の中に「当該国領域外の」というような文字がありましたり、あるいは「甚しい影響を及ぼし」、「中止することを適当と認めるときは、」といったようなことが書いてあるというと、高い人道的見地からの、また科学に基いた強い主張というものが、人類一般及びその将来というものについて主張しているということが、私は弱まるおそれがあることを遺憾と思うのであります。私の考えについて外務大臣の深甚な御注意をお願いをいたしまして、私は私の質問を終りたいと思います。お答えはいただなくともよろしゅうございます。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもがこの原爆の実験禁止を唱えておることは、今石黒委員お話通り高い人道的の見地から私どもはあくまでも主張し、これを世界に訴えておるのであります。ところが現実の問題として、今度は政府一つの行政上の機関としてこれを扱っていく上から申しますと、いろんな制約かある、実際問題として実際的に有効的な解状をしていこうというような見地から、実はその登録制という、理論的にいえば何か不徹底な、もしくは禁止矛盾しておるじゃないか、というような御批判を受けるところの制度の提案、というようなことになってきておるのであります。この今御指摘の点におきましても、実際世界各国実情を見ますと、おれの国のことにいろいろくちばしを出すことは内政干渉だ、というようなことを言うておる国が実際現実にあるのです。従って国際機構として取り上げて一つの何か制度とするということになれば、国内的の内政には干渉しない、国際的の問題として扱うというような、これは実際問題としてそういうことが出ると思う。理論的に申しまするならば、あくまでも石黒委員のおっしゃる通りでありますが、実際れわわれが取り上げて一つの機構とし、一つの制度としてやるということになりますと、実際問題の今言うように内政干渉の問題だというようなことを理由に、この全部を非難するというような国が現実にあるという実情を頭において、これは実は考え提案をしておるわけでありまして、そういう点につきましては、しかしそれが石黒委員のおっしゃるように日本の主張を弱めるとか、日本の本来の主張の趣旨と何か反するというようなことのないようには十分注意しなけれなならないと存じますが、そういう点もあることを一つ御了承おき願いたいと思います。
  32. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 私は冒頭に、外務大臣の実際に対する御苦心は了とする、ということを申し上げておるのであります。しかし実際に事を運行するに際しまして、本来の主張の精神を強く主張するのに妨げになるおそれが多分にありますから、外務大臣においてそれを十分心していただきたいということを申し上げる次第であります。
  33. 佐野廣

    佐野廣君 日韓の関係について二、三お尋ねしたいのであります。先般岸総理が御就任の際に金公使がお祝辞を述べにいった際に、韓国政府も日韓問題の早期解決ということついては、非常に熱望しておるというふうな記事もありまして、私どももこの交渉が早期に解決することを希望しておったのでありますが、その後に三月の中旬ごろになりまして、日本人の漁夫に四十七人も四月から十ヵ月ですか、懲役の判決が下されたというふうな記事も見えておりますのですが、こういうようなことをみますと、早期解決を熱望しておるといいながら、もちろん日本はそうでありましょうが、この交渉が非常に明るいものであるかどういうものであるか。ことに李ラインの問題、財産請求権の問題等も国民は非常に注目しておるのでありますが、そういう意味において、この日韓交渉の現段階と将来に対する総理の見通しを、この際承わっておきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日韓の問題は長いこと懸案であり、特に昨年来この釜山に抑留されておる漁民を、即時釈放して日本へ帰してもらいたいという強い要望を中心に、両国の間に話が進められまして今日に至っておるわけでありますが、私が外務大臣に就任をいたしましてから、この問題については一応釜山のこの漁民を釈放する、抑留されているものを釈放するということを中心に話をいたしまして、それに対して韓国側としては、日本の大村収容所に収容されておる韓国人の即時釈放を一つの条件として、その問題の折衝をしたのであります。ところがこれにつきましてはいろいろ国内的にいっても法律的な困難もあったのでありますが、大体において私はその点は国内のなにを解決して、向うも無条件で釈放するし、わが方も無条件に大村収容所から釈放する。ところがもう一つ韓国側としては、これを釈放すれば、次いで全面的な日韓会談を再開するという問題、また再開される日韓会談においてはこういうことが問題になるという、その議題の問題等についての一つの条件といいますか、釈放するについてはこういうことが取り決められなきゃならぬということになりまして、その問題をいろいろと検討をしたのであります。それでそのなににつきましては内容的にいいますと、いろいろな従来日韓会談を停頓せしめた幾多の問題があるわけでありまして、それらの問題についての、たとえば久保田発言の取り消しの問題であるとか、あるいは韓国におけるところの財産権の問題であるとかいろいろあるわけでありますが、それらの問題についてもだんだんと両方で話し合いをいたしまして大体の見通しをつけ、一番むずかしい問題は言うまでもなく李ラインの将来の問題であります。しかしこういう問題を、一切現在の段階においてすべてこの両方で満足するような見通しをつけるということは、これはとうていできない問題であって、正式の日韓会談が再開されて、そこで両方で討議していかなければ、なかなか今日の問題の解決点に達することは困難である。  そこで私としてはとにかく問題の釜山に抑留されておる漁民を早く帰すということは、留守家族の人々の非常な熱望であるのみならず、これもさっきの問題と同じような一種の人道的な立場から、これをなにすべきものであって、この抑留されておるという事実をそのままにしておいて、日韓の間の各種の問題の話をするということは、国民感情もとうてい許さない。そこでとにかく将来の見通しとしては、会談が再開すれば必ず明るい両方の満足するような合意に達するという見通しまでつけようとすると、いつまでも実は釈放問題が解決しない。その間においてどの辺で見切りをつけてこの問題の一応の解決、すなわち漁民の釈放と、それから日韓会談を再開するということを始めるか、という見通しをつけなきゃならぬ状態まできておると思います。  そこで過般来こちらの代表である金公使が韓国に帰りまして昨夜こっちへ帰任したようです。まだそれのなにがわかりませんけれども、まあ今までの交渉の過程でみますると、従来の話なんか議題にならず、また向うの条件にもなかった新しいものがちょいちょいと飛び出してくる。交渉過程でそういうことをわれわれは体験しておるわけです。そこでさらに金公使が本国政府と打ち合して、従来われわれの方で大体の打ち合せなり合議の点がさらに動いて、また新しいなにが出てくるということになると、なかなかこれはまた話がむずかしくなる。しかし大体話して、打ち合しておった程度で韓国政府も大体その線でやろうということになれば、急速に今の漁民の釈放とそれから日韓会談の再開ということが始まるだろうと思います。いずれにしても金公使が帰って参りましたので、近くその様子を連絡した上において決定したい、こう思っております。
  35. 佐野廣

    佐野廣君 そこでちょうど日ソ国交の正常化の際にも見られたのですが、たとえば李ラインを認めるとか、こればちょっとあり得ないと思うのですけれども、あるいは財産請求権の問題と何か抑留者を釈放して早く帰してもらいたいという国民感情なり漁業方面の強い要望にこたえて、これの取引といいますか何かで、この抑留者を早く帰そうということのために何か打って、そういうふうなものがちょうど領土問題にあったような、そういうふうな何かお考え総理の方にございませんか。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 別にこれの問題で取引をしたり、それから帰すために譲るべからざるものを譲るとか、あるいは当然解決しなければならぬものを未解決にするとかいう考えは持っておりません。しかし何といっても、抑留者のこれは非常に長く、もうわれわれ日本人から考えれば理由なく長く拘留されておるということ自体が、国民に与えておるいろんな感情から申しましても、今申したような特に譲ってはならぬこと、あるいは取引してはならぬことまでも譲り、取引して、この問題を解決するという意思はございませんけれども、しかしできるだけ早くこれを解決したいというのが私の念願でございます。
  37. 佐野廣

    佐野廣君 それでその抑留されております船舶というか、まあ財産でございますね、そういうものに対する補償、それからあるいは留守家族に対する慰めの点、そういうふうな点について最近抑留者が総理のところに盛んに陳情しておりましたのですが、何かお答えがあっただろうと思うのですけれども、そういうふうな点についての政府としてのお考えは現段階だとどういうふうになっておりますか。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その点は従来も農林省の主管のもとにできるだけ実情を調べて、政府としても救援の方法は講じてきております。また将来も講じなければならぬ、かように考えております。
  39. 佐野廣

    佐野廣君 岸総理は近く訪米なさるのでありますが、こういうふうに韓国との問題が全く膠着状態といいますか、一方的行為に打つ手がないような格好になっておるわけでありますが、そうすると第三者の介入なりあるいは仲介ということが、あるいは一つの光明を見出すことになるのじゃないかとも思うのですが、岸総理もどこか衆議院でおっしゃっておったようでありますが、今回の訪米に当ってはアメリカの仲介、そういうふうなものを何か要請なさる、こういうお考えはございませんでしょうか。
  40. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういう考えは持っておりません。私は衆議院の委員会において質問に対して、私の訪米前に何とか解決をしたいという意思は表明いたしておりますけれども、また今までの経過を見まして、何かむずかしい条件が出てくれば別ですけれども、さっき私が申し上げたように、金公使が今度帰ってきて従来の韓国の態度がもしも変らないとすれば、第三国のあっせんを現段階において求めなければならぬというような事態ではないと思います。
  41. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ちょっと関連して。ただいまの佐野委員の御質問に関連いたしまして、一点だけお尋ねいたしますが、日韓の関係というものは、大局から見てもこれは非常に重要な関係にあるわけなんですが、それにもかかわらず、そうしてまた歴代の内閣が非常に努力しておったにもかかわらず、一向に打開の道が見出されぬ。これはその打開の方法、アプローチの仕方として、実際上まずできるところからというアプローチの仕方だったと思う。それもわかりますけれども、しかし一つは先ほど総理訪米問題に関連しておっしゃった、つまります基本的な関係について具体的の問題を解決する。もう一つその根底となる点について両国の首脳がよく話し合う。こういうアプローチの仕方は、これはひとり日米関係だけでなく、ことに日本が遠い将来をおもんぱかっても、友好の関係を開いていかなければならぬ国との間には、しなければならぬことだろうと思う。そこで日韓の関係についてもそういうふうなアプローチの仕方、方法というものを頭に置いて一つ考えてみられる考えはないか。時期等これは具体的なことはいろいろありましょうが、そういうふうな着想をもって日韓の関係の打開ということをお考えになる意思はないか、その辺のことについて総理のお考えを伺っておきたい。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話通り、日韓の関係というものは、私は韓国側の代表にも話をしたことでもありますが、いわば私はそのほかの国とは違って兄弟みたいな、歴史的からいってもまた地理的にいっても、また民族的にいっても、いわば兄弟のような関係にあって、これが今日のような状況にあるということは、これは両国の非常な不幸であるのみならず、極東全体の一つの安定にも非常な支障を来たしておる。従ってこれを解決するについては、私は十分従来の行きがかりに一つとらわれずに、現実に即して、また将来のことに対してほんとうの友好関係ができるということを頭に置いて、公正な解決一つなにしようじゃないか。それから両国で今まで数回の会談で主張したということも、それを全部放棄するということではないけれども、それに拘泥して両方がいつまでもやっておれば、これはとうてい解決できないのだから、そういうつもりで一つ話をしようじゃないかということを申したわけであります。また実際兄弟げんかというようなものは、一たびほどければ、これは何といったって他人じゃないのですから非常に緊密にいきますが、またある意味からいえば他人間の争いよりも深刻な場合もあるし、解状のしにくい事情もある。そういうことがやはり韓国との間にあると思います。特に御承知の通り、今の李承晩大統領の過去の先生の経歴及び思想からいって、非常に日本との関係が緊密にいき得ない状況にあり、今直ちに首脳者がこういう少くとも話し合う点においては、好意があって話し合おうという気持が両方にないとなかなかこれはできない。従って今すぐ首脳部が話をするということは、私は考えておりませんけれども、しかしそれについてそういう今後の正式の会談を開くならば、また開くようになってくるというと、よほど両国気持といいますか、ほどけてくるわけでありまして、その段階においては今お話のようなことも考える必要があろう。またそういう意味において他の民間等におきましても、いろいろそういう結ぼれをほどくような動きも現実に私ども承知いたしております。いずれにしてももう少し、その今、杉原さんの言われるアプローチをするもう一つ前のアプローチが、必要なような今日現状じゃないかと思っております。しかしいずれにしましてもこの日韓の関係というものは、先ほど申したような心組みで、ぜひともこれは日韓恒久の友好関係を作り上げるという、それでなければいかぬという考えに基いて、あらゆる面からもう少し努力をしていきたいと思っております。
  43. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 予定の時間も過ぎ、衆議院から総理の出席を求めておりますが、森君から先ほど来質疑通告がありますので、簡単にお願いいたします。
  44. 森元治郎

    ○森元治郎君 できれば二つ伺いたいと思います。時間もないので整頓をします。また幸い総理大臣も頭が非常によろしくて記憶力がよろしいようですから、質問を並べますからどうぞ一つお願いをいたします。  一つは、先ほど石黒委員のことにも関連するのですが、石黒さんさっぱり、御自分の質問に対する総理からの御答弁、思うつぼにはまらないので御不満のようですが、私も同様であって、政府原水爆問題に対する態度が思いつきである。たとえば今までは実験禁止かと思うと、国連へ行ったらば登録制が強く出てくる、そうするとまた今度は人道上の見地からアメリカにあるいはソ連に申し込む、またきょうはこの探知方法ということを考え出してやっておりますが、もはや今日の段階はそういうような思いつきではなくて、一つ大きな構想をはっきり作る段階だと思います。外務省あたりをしりをたたいてこまごまと小利口な案を作っているようですが、まとまった案を作るべき段階ではないかと思います。第一点です。  第二点はマクミラン総理大臣との書簡に関連しますが、アメリカイギリス世論を無視して実験を続けるならば、アジア諸国はその気持に反してやむを得ず中立的立場をとるようになることをおそれると松下特使が申されましたが、これは総理大臣の書簡の中には入っておらないけれども、かようなことは総理と打ち合せのあったものかどうか。そうしておっかけてマクミラン首相は「日本または他のアジア諸国が中立的立場をとるということは不合理であることに貴大臣が同意されるものと確信いたします。」とこういうふうに言っておりますが、一体同意されるのかどうか。ただ人道上といううたい文句ではもう弱いので、こういうふうにもしやるならば中立的立場をとるぞというぐらいのおどかしと申しますか、下品な言葉で言えばおどかしですが、こういうようなことがなくては、かような大問題を推進できないと思います。  それから第三点は、マクミラン首相は、今日世界の平和は英米両国が侵略に対して強力な阻止兵器を持っていることに依存していると考えますと、こういうふうに言っております。一体かようなことを承認されますか。私たちは今日世界の平和は核兵器だけで平和が保たれているのではなくして、米ソ両陣営あるいは全世界人類が戦争はしたくないという気持、何とかこれを阻止しなければならぬという気持が、おのおのの政府を主張させて持ってきたものだと思います。この点はイギリスに向ってお返しを願いたいと思う。この文書は、今日イギリスが平和でおられるのは、アメリカから強力な原水爆兵器の援助があるから依存してやっていけるのだということならわかりますが、かようなことは少しイギリスはずうずうし過ぎると思います。この三点をまず伺いたい。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 原水爆実験禁止の問題につきましては、私は終始一貫人道的見地からこれの禁止を強く各国に要望し、また世界世論をこのために盛り上げて、その道義的な立場から、各国がこれを制限禁止する方向にいくことを、私は強く主張を一貫していたしておるのであります。ただ現実の、その理想なりわれわれの信念を到達せしむるためにとるべき手段としては、あらゆる手段を、実行的な有効的な手段をとっていくという考えのもとに進んで来ております。決して、私は先ほどから申し上げておるように、この登録制の問題が私ども実験禁止考え矛盾し、またこれと相反するものであるとは思っておらないのでありまして、従って今、森委員の言われるように、政府は何か思いつきでその場その場で線香花火みたいにやっておるのじゃないかというふうな御批判は、私はわれわれの考えの御批判としては当らないものだと思います。あくまでも今後も有効な実際的な、ただ理論的にはもうはっきりしておる問題でありますが、実際問題としてこれを実現する、あくまでもわれわれの理想を実現するというのにつきましては、いろんな実際的な有効の手段を考えなけりゃなりません。そういう意味においていろいろと努力をいたしておるわけであります。  それから次に、マクミラン首相と松下特使との会談の内容につきましては、もちろん松下特使がいろいろ考えて話をせられたことは、一々私がことごとく一言一句打ち合せをしたというわけではございません。今御指摘になりましたような点についてあらかじめ打ち合せがあったわけではございません。  またマクミラン首相の書簡のうちにおきまして、私は決してマクミラン首相の言っておることを一々もっともだとして引き下る、首肯する考えはございません。今御指摘になりましたような点でありますが、私はあくまでも日本立場としては自由主義の国、自由を愛好する国としての立場、自由民主主義の立場を堅持しておりまして、今、国の方針として中立的立場をとる考えはございませんし、外交のその場の手段、言葉は悪いかもしれませんが、はったりか何かでこうだぞというような方法をとっていくということは、私自身の外交政策としては望ましい方法ではないと考えております。しかしそうだからといってマクミランの言っておることに私が承服するというのじゃなしに、今の日本立場としてのまた外交のやり方としての根本は、これは岸外務大臣として一貫しての考えでございますから、さよう御了承願いたいと思います。  それからマクミラン書簡のほとんど貫いておることは、要するに自由主義国核兵器の優越性を持っておることが、世界平和を維持しておる一つの、一つと言いますか、むしろそれが平和を維持するところの、唯一の手段であるような見解というものは、これは英米が特にそういうことを言うのでありますけれども、その理論そのものには決して承服をいたしません。むしろ森委員の言われるような点が、あるいは非常に必要な大きな動力であり、またそういう見地に立って世界平和が維持されていかなければならぬ、こう思っております。しかし現実の問題からいってとにかく、これは過去においてもそうでありましたけれども、まだいわゆる力のバランスというものが平和維持の一つの力であるという考え方が、すべての国の人々の頭から抜け去っておらないという事実は、これは現実の事実としてわれわれも否定できない、こう思っております。
  46. 森元治郎

    ○森元治郎君 総理の御答弁については文句がありますが、時間がありませんからやめますけれども原水爆問題は国境をこえた問題でありまするから、英米の方の顔色をうかがわないで、正しいと思うことば堂々と国際機関においても系統的に一つ主張されることを希望して次の問題に移ります。  次は、今新聞で大きく取り扱っている中共への輸出禁止の緩和の問題でありまするが、これは世界世論でもあり自由国家群の結束を乱さないための配慮もあり、こういうことをアイゼンハワー大統領が記者会見で言われたようですが、わが党年来の主張とも合致するので非常にうれしいと同時に、政府は従来お隣りの中共に対しては何か背を向けることが、大へん対米協力だというような様子が見られたのは、私は非常に不見識であったと思います。問題がアメリカの方から提起されて参りましたが、これに対する日本政府の態度は一体根本的にどういうふうに受け取ってやろうとされるのか。従来は中共との貿易も大したことないのだということが慣用句となっておりましたが、アメリカ側から逆にこういうことを言われた。日本にそうお金の援助もできないし、かといって日本品をたくさん入れるには国内の業者がいろいろ文句を言って、高い関税をかけなければならぬというような事態であるから、日本を生かすためには一つ中共と取引をさせたいと向うが言われたのですが、どういう御用意があるのかどうか。  それから中共貿易の緩和をしてやる、しかしずるずると許すのではなくて、お前の方が仲良くなり過ぎて、中共承認だとか国連加盟などに乗り出してこられちゃ困るのだ、アメリカとその点は協力してくれるだろうねと念を押されたときには何と答えるか。  もう一つは、今北京に行っている社会党の使節団が周恩来首相と会談をした中に、中ソ同盟条約の軍事的性格を文化的、経済的性格に変える、こういうことを言っております。これに対して日本政府筋の意向、おそらく外務省あたりの記者会見の談話かと思いまするが、それにはまず中ソ同盟をやめることが友好のしるしだと言っております。そこで中ソ同盟をかりにやめるというようなことがあった場合に、一体安保条約をどうお考えになるか、安保条約は何も中ソを目標としたとは書いてないから、これは関係ないのだ、こうおっしゃるのかどうか、三つの点を伺います。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 順序は違うかもしれませんが、第一中共との間の貿易の増進につきましては、私ども終始一貫これを拡大していく、それについてはココム、チンコムのこの制限というものが支障をきたしておる、従ってこれを緩和しなければいかぬ、緩和するようにということは政府は一貫してアメリカと従来も交渉して参っておるところであります。すでに本年の初めに非公式に、各これに加わっておるところの加盟国の意向を米国が打診してきたのでありますが、この制限を強化することことについてどう思うか、というような打診があったのに対してましても、日本政府としてはそんな強化をするのじゃない、われわれはあくまでも緩和をする方向にいかなければならぬということを強く答えておるのでありまして、従って今回のアメリカのまだ意図も、新聞等でありまして、はっきりしたことはわかりませんけれども、決してわれわれが従来反対しておってアメリカの方から言われたということじゃなしに、われわれはアメリカにもうしつっこくそのことを要求してきておるのが実情でございます。  それからこの中共に対する関係におきましては、私は従来国会においてもはっきり申し上げておりますが、現在の段階において日本政府は中共と国交を正常化し、これを承認する意思、政治的な関係を作る、外交的な関係を作る意思はないということを申しております。この点については社会党のお考えと違うのでありますけれども、私どもそういう見解をとっております。従いまして今アメリカからそういうことを念を押されたらどう答えるか、というような御質問でありましたけれども、私はアメリカから念を押されたからどうだとかいうことじゃなしに、われわれの立場からまだそれを承認すべき段階でないという信念に立っておりますから、その信念を明らかにすることはございましても、決してアメリカに念を押されたからどうだというような卑屈な考えで申しておるのじゃない、ということを御了承願いたいと思います。  それから中ソ同盟条約についての社会党の諸君と周恩来首相との間の会談として、これを改めて軍事的な面を除いて文化的、経済的なものにするということが伝えられておりますが、はたしてそのことがそういうふうな通りに実現ができるかどうかということについては、まだそれだけの会談をもって直ちにそれが実現したものだとしてわれわれは考えるわけにはいかぬと思います。私は決してそれを疑うとかあるいはその誠意を全然ないものとして、架空なものとして考えるわけじゃありませんけれども国際的な問題でございますから、やはり現実の問題としてそれが実現されるということでないと、これが確かな問題として考えるわけにいかぬと思います。  また安保条約の問題と今の中ソ同盟条約の問題との関連でございますが、私はこれは必然的の関連とは考えておりません。しかし別個の見地から日米共同防衛という体制がいいのか悪いのかという考え方は、これはいろいろな点から検討もする必要がありましょうし、また議論もすべき問題だと思いますが、それが変ったから直ちに安保条約を廃止するとか、この共同防衛体制をすぐ変えなければならぬ、こういうふうに一足飛びに考えることは適当でないとかように思っております。(「さっきの答弁と違うぞ」と呼ぶ者あり)
  48. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 本日の委員会で審査されました原水爆禁止に関する件について、津島委員から資料の提出を政府に求められております。すなわち松下特使の携行した岸総理の英首相あて書簡、同じく右に対する英首相の回答、これを政府において提出せられるよう委員長から望んでおきます。  なお岸総理は衆議院の都合で退席なさいますが、ほかの政府委員が残っておりますから、引き続き会議を継続したいと思います。
  49. 海野三朗

    海野三朗君 私は簡単でありますから、ちょっと岸外務大臣に。
  50. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 何分くらいです。
  51. 海野三朗

    海野三朗君 五分かそこそこです。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) だいぶおくれまして、向うの方がやかましいのでございますが。
  53. 海野三朗

    海野三朗君 今まで外務委員会を再三開いておっても、政務次官の御答弁だけでは私は納得できない、そこで岸総理の御出席を求めておって今まで待っていたわけでありますが、あまり時間長くかかりません。
  54. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それじゃ五分だけでよろしゅうございますか。…それでは五分だけ総理においでを願います。
  55. 海野三朗

    海野三朗君 原子力関係でありますが、過日インドではあの地方の各国に案内をいたしまして、原子力の会議をいろいろやっておるのです。ところがこれに対しましてなぜ日本にも言って来ないのかということを言いましたときに、向うでは日本アメリカの方にばかり向いておるからと言って笑っておった。こういうことでは私はいけないと思うのですが、日本が敗戦をいたしまして独立国家が二十二もできておる。それで東南アジアの国々はみなこの日本に対してはありがたいと思っておるのです、やっぱり結局は。それでどうしてもこの東南アジアの諸国は、日本が自然とリーダーになっていかなければならないのじゃないか。この際にこの原子力の問題についてはアメリカイギリスカナダあたりとだけ協定を結んで、他国に呼びかけないということは私は非常に不利益であると思うのです。国連におきましても東南アジア等の二十七カ国、これに共産圏を入れれば約過半数をこえるのであって、それらは日本が上手にさえやっていきましたならば、この東南アジアの方面のいわゆるこのリーダーになることができるのじゃないか、国連においても。事、原子力の問題、小さいようでありますけれども、決してこれは小さくないのですよ。それでありますからこの原子力についてはやはり日本が中心になってアジアのセンターになるくらいの意気を持っていかなければいけないのじゃないか、こう思うのです。これが第一点。  それから過日の委員会においても私が申し述べましたが、あの仏陀二千五百年の祝賀に当って、インドが無償土地を提供するから、そこをこのインドに来る日本の参拝者のポイントにしたらどうだというような話がありました。そういう申し入れに対しては、私は宗教上からこの東南アジアの国は、どうしてもがっちりしていく必要があるのじゃないか、こういうふうに思います。これが原水爆禁止、そういう方面に非常に効果があると思うのですが、宗教的な心のつながり、これを見逃してはいけないと思うのでありますが、総理並びに外務大臣としてのあなたの御所見を、はっきりしたところをお伺いいたしたい。それで総理は実に明晰な頭をお持ちになっておられると思っておるのでありますから、その辺ははっきり一つ御答弁をいただきたい。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 原子力の利用問題に関しまして、日本といたしましても非常におくれておりますけれども、これを平和的利用に何しなければならぬということで、いろいろこの方面の先進国との間に協定を結び、また日本のその機運を進めていくという努力をいたしておりますが、同時にさらに東南アジア諸国その他の国々におきましても、原子力の利用問題についての機運がいろいろな方面から起っておることも今お話通りでありまして、それに対して日本が少くともこの東洋、アジアにおける一つの中心となって、将来この原子力の平和利用を促進していくというような方向に進んでいくことは、これは非常に私は望ましいことであると思います。  それからもう一つ仏陀誕生二千五百年の年に当っておるという意味におきまして、いろいろな催しもございますので、その根底である仏教を通じてさらに親善を深め、国際的のいろいろな活動に資していくということは私も非常に望ましいことだと思います。従来この東南アジアの諸国は仏教において同じ信仰を持っておるにかかわらず、そういう点がいろいろな点においてネグレクトされておったようなきらいが私はあると思うのであります。私はちょうど釈尊の降誕二千五百年というような機会に、さらにこれらの諸国との間に宗教的な理解協力ということが進められていくことは非常に望ましい、かように考えております。
  57. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいま岸総理大臣が退席されましたが、なおここに井上政務次官、高橋条約局長、佐藤経済局次長、中川アジア局長、河崎国際協力局長、田邊引揚援護局長が出席しております。国際情勢一般に関して御質疑の方は順次御発言を願います。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど岸外務大臣に佐野君、杉原君等から御質問がございましたが、アジア局長が残っておられるそうでありますから関連して二、三お尋ねいたします。  というのは、一週間ほど前にこれは漁業関係者で、韓国抑留者対策本部ですか、こういった名前の組織が西日本にございますが、そういう代表が参りました際に、岸外務大臣は、もうすぐに釈放は実現するのだ、発表できる時期を待っているだけだ、こういうような御答弁をしておられる、これは新聞紙上であります。ところが先ほどのここでの御答弁は必ずしもそうでもない。もういきさつは申し上げるまでもございませんけれども、年末にも、それから二月二十二日に閣議でも、それから数日前には数日前で抑留者の釈放は近く実現するのだ、それから他の問題と関連なしに釈放するという国民の要望は実現する、こう約束してこられた。ところが実際にはその運びに至らぬ、実現に至らぬ。私どももこの外務委員会から近くこの問題について下関、福岡、長崎に参るわけです。私どももこれは参りましたならば国会人として責任を追及されると思うから、きょうは一つざっくばらんにお話を願いたいと思うのですが、あるいは速記をとめる必要があれば速記をとめてもいいと思いますが、実際を一つお話し願いたいと思います。
  59. 中川融

    政府委員(中川融君) 日韓間の交渉の現況につきましては、先ほど岸総理お答えいたしました通りでございます。岸総理が数日前に対策委員会の代表の方々にお会いになられて、その結果についての報道が新聞に出ていたということでございますが、私はその対策本部の方々が総理に会われたそのすぐあとで、実は対策本部の方々に私もお会いしたのであります。私は総理とその方々がお会いになった所にはおりませんでしたが、すぐそのあとでその会った方々からお話を聞きますと、ただいま御指摘になりましたような新聞記事とは、ちょっと様子が違っていたようであります。そのときのお話では岸総理は、お互いの抑留者を釈放する問題は、今までの話し合いから言えば非常に順調に進んでおって、この事態ならば問題ないわけだ、今後引続いて正式会談を開いた場合に、果して順調にそれが進むかどうかということの見通しについて、まだいろいろ問題があるので、その点について今考えているのだ、しかし人道上の問題だから、もちろんできるだけ早く実現するようにしたいというような趣旨を言われたそうであります。従って本日の総理の御答弁と同じ趣旨のことを言われたというふうに私は聞いているのであります。結局交渉の内容もその通りでありまして、お互いに抑留者を釈放する問題については、今までいろいろお互いにこういう条件をつけたい、ああいう条件もつけたいと言っておりましたが、相互に人道上の問題は一日も早く片づけるという趣旨から、そういう条件を落してこの問題についてはもう問題は事実上ないわけであります。しかし今後引続いて日韓会談を再開して、抜本的に問題を片づけようというのが趣旨でありますので、その会談を開いた場合におけるいろいろの問題について、ある程度こういうことを議するというようなことをきめておこうという点で、その点の話も進んでおりますので、そういうことをもかみ合せまして、また会談を開いたあと、一体円滑にいくかどうかということをも考え合せまして、今せっかく考慮中であるというのが現段階でございます。またごく最近の段階におきましては、相手の金公使が一時帰国しておりましたために、話が現実には進んでいないという状況にあったために、こういうただいま総理の言われましたような趣旨で、近く先方の意向をよくさらに確めまして、従来と特に変化がないということであれば、話が急速に進むのではないかと考えます。
  60. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと今の答弁の中にも多少矛盾があるのですが、その他の問題とは関係なしに相互釈放をすることについては異議がないところまできておる。ところが会談を再開して順調にいくように今話し合いをしている。その間に関連がないのならばこれは前からのお話ですが、すぐに釈放したらいいと思うのです。その釈放が実現しないところをみると、会談を再開した後の問題、順調にいくかどうかということについて見通しを得たい、これがひっかかりになってくるわけなんです。どっちなんです。
  61. 中川融

    政府委員(中川融君) 当面の目的は人道上の問題である。特に抑留者を一日も早く釈放するということであります。しかしながら抑留者を釈放いたしましても、すぐその次の日から新しい抑留者が双方で出てくる可能性があるわけでありまして、その問題を片づけるためには、日韓会談を再開いたしまして抜本的にそういう根を断ってしまうということが必要なわけであります。従って今の構想では、抑留者を釈放すると同時に、引き続いてできるだけ早い時期に日韓会談を再開して、根本問題を片づけるということで話が進んでおるわけであります。従って日韓会談の再開ということになった暁において、それがすぐ行き詰まるということでは、またこれではせっかく開いた第四次会談というものがまた決裂するということでは、これはやはりおもしろくないということで、ある程度そこの見通しをつけていきたいという気持から、幾分そういう点について考慮を払っておるわけでありますが、しかしこれにも限度があるわけでありまして、もちろん第一の目的である抑留者の釈放ということに主力を置きつつ、あるところでこれについての踏み切りをするというのが、ただいまの総理の御説明した趣旨であるとわれわれも考えております。
  62. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは踏み切りをするという時期、それから相互釈放の実現する時期について見通しを承わりたい。
  63. 井上清一

    政府委員(井上清一君) 先ほど岸外務大臣から御説明申し上げました通り、岸外務大臣の気持といたしましては、渡米するまでにできるだけ本問題の解決をはかりたいということを先ほども申し上げたのでありますが、そうした心組みで努力をされておるわけであります。
  64. 吉田法晴

    吉田法晴君 中川局長の答弁を横で聞いておられたからおわかりであると思いますが、相互釈放については了解がついておる。ただしかし相互釈放をした翌日から起る問題について、言いかえれば会談の内容の問題、会談の内容の問題について見通しを得たいということでやっておる。相互釈放については実質的な話し合いが済んでおる。しかし会談の内容について見通しを得たいということでやっておるが、しかしそれもある程度の人道上の問題だから見切りをつけて、そして相互釈放を実現したい、こういうことですが、そうするとあなたはその時期はどうですか、こう聞くと、渡米前に片づけたい、あるいは実現したい、こういうことです。そうすると多少含みがありますけれども、渡米前には相互釈放は実現する、かように了解してよろしゅうございますか。
  65. 井上清一

    政府委員(井上清一君) これは一にかかって日韓会談再開後におきまする見通しによることだと私は考えます。もしその見通しが非常にいいということであれば、早い機会相互釈放ということが実現すると思いますし、またそれらの見通しいかんが本問題の重要なかぎになると、かように考える次第でございます。
  66. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは中川局長に重ねて聞きますけれども、会談が順調に進むように見通しを得たいということでございますけれども、それは条件ではないと、人道上の問題だし、相互釈放については覚書はもうできておるから、見通しを得たいがある程度のところで見切りをつけて云々というお話ですから、条件にはなっておらぬと思う。今のあとの井上さんの御答弁は多少条件になっておるようですが、条件になっておるのですか、なっていないのですか。なっていないとすれば渡米前に片づけたいというならば、渡米前に実現したいとこういうことだろうと思うのです。どうですか。
  67. 井上清一

    政府委員(井上清一君) あるいはこの言葉の言い回わし方によりましていろいろ受け取り方が違うわけでございますが、しかし条件というほど強いものでは私はないと思います。しかしこのことが相当まあ重要な問題であるということは事実でございます。
  68. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 関連して。釜山に抑留されておる多数の日本人、これに対するわが方としての保護といいますか、それらの人々の権益の擁護といいますか、そういう点についてどういう措置がとられておるのか、その点をお伺いしたい。
  69. 中川融

    政府委員(中川融君) これらの方々は権益の擁護と申しますか、政府としては実は擁護をしていないというのが現状でございます。これははなはだ遺憾でございますが、ほんとうならばこれらの人は全然根拠なく抑留されておるのでありまして、政府が尽すべき当然の義務からいえば、一日も早くそういう不法の抑留を解除するということを政府が尽すべきでありまして、その意味でせっかく長い期間努力を続けておるにかかわらずまだ実現していない。その意味では、根本的な権利の擁護ということは、遺憾ながら政府の意図にかかわらず実現していないというのが実情でございます。しかしながらここに抑留されておる間におきましても、できるだけその生活状況を緩和したい、不便を少くしてあげたいという趣旨から、これに対する慰問品の差し入れでありますとか、あるいは生活状況の改善でありますとか、こういうことについては、累次韓国側に申し入れまして、あるいは日本が一方的な申し入れだけでは実効が上りませんので、国際赤十字を通じまして国際赤十字代表が行きまして、釜山抑留所を視察するということを昨年はしたのであります。こういうようなことから国際世論も喚起いたしまして、韓国側の反省を求めておるのであります。日本側の代表がいつも行って見ておる、あるいは国際赤十字の代表が常時行って見ておるということはできませんので、こういう監視の目が薄くなりますと、また状況が悪くなるというような事態もあるようでございます。また最近におきましては、政府が入れております慰問品というものも韓国側はその必要なしということで、これをまだ許して参らないという実情もあるのでありまして、韓国側の言い分によりますと、各個人の留守宅から相当に慰問品が届いておるから、特に政府から出す必要はないということを理由にいたしております。こういう点、はなはだまだ遺憾の点があるのでありまして、これは何といっても抜本的に抑留者を釈放するという措置によって片づける以外に、有効な片づけ方はないようにわれわれは見ておる次第でございます。
  70. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私はその抜本的な釈放の問題を言っておるのではないのです。釈放の問題は第一義的なことであると思います。これは言うまでもないことである。しかしながらずいぶんその問題につきましては、先ほど吉田君も言われたように、今にも釈放されるということが相当の正確さをもって外務大臣より発言されながら、相当時間がかかる。まださかのぼりますと古くからの問題です。日本と韓国との間は国交の関係は不幸な関係にありますけれども、向うはわが方に堂々とした在外公館を置いておる。そして日本に在留しておる韓国人に対してはその利害というものを保護している立場をとっている。現実にわが方は人数が少いかもわからないけれども、不法に抑留されておって、それらを先ほどのお話によれば、国際的な赤十字社に一時頼むとかということで糊塗しておる。これは私非常に遺憾だと思うのです。少くとも朝鮮に抑留されておる邦人の正しい保護のために、小さいながら一つ公けなわが方の機関を向うへ暫時置くとかというようなことを、当然考えていいのじゃないかという気がするのですけれども、どうしてそういうことがむずかしいのか。いまだかつてわが方の公けの立場において、どういう状況になっておるか、向うに調査に行ったこともおそらくないであろうと思うのですね。なぜそういうことが行われないのか。向うさんもこっちへこれないならこれは話はわかる。向うさんはちゃんと来ておるのです。なぜこっちから行けないのか。そういう点についての一つ実情をお伺いしたいと思うのです。
  71. 中川融

    政府委員(中川融君) 韓国側の代表部が東京にあって日本政府と折衝し得る地位にあるにもかかわらず、日本側のこれに相応する機関が向うにないということは、まことに片手落ちでありまして、これは非常に不自然な状態であることは梶原委員の御指摘の通りであります。これは日本側が講和条約発効の際に、従来連合軍司令部に対して派遣されておりました各国の代表部を、日本政府に対する代表部に切りかえる場合に、韓国との関係におきましては、国交が回復していない関係上、これをどうするかという問題になったのでありますが、そのとき韓国側の希望もありまして、これはすぐではないけれども将来においては相互主義にするという原則のもとに、韓国側の代表部が引き続き日本に存続することを認めたのであります。従って日本側としては韓国に代表部の設置を要求する当然の権利を持っておるわけであります。これは一昨々年であったと思いますが、約三年前でありますが、第三次日韓会談が決裂いたしました直後、この韓国代表部をどうするかという問題が実は起きたことがあるのでありまして、それ以前からもそういう要求はしたのでありますが、そのときさらにあらためて韓国に日本の代表部を設置することを要求したのであります。それに対しまして韓国側は、遺憾ながら韓国の現状はまだ日本のそういう公館の設置を認めるだけ回復していない。その意味は、第三国に対してはそういう公館を認めるようなもちろん態勢になっておるが、遺憾ながら日本に対してはまだそういう条件になっていない。そういう人たちがいても果して安全を保障することができるかどうか、自分らとしては自信がないということを理由といたしまして、この要求を拒否してきたのであります。これはいわば当然の要求である日本の権利を認めない措置でありますから、われわれとしてはそのとき、日本における韓国代表部を撤去せしめる、ということも考えるべきではないかということで考慮したのでありますが、しかしやはりこういう日韓間、先ほど総理も言われましたように隣国である日韓間が、このような状態にあるということは根本的に好ましくないという事態がありますので、これを打開するためには不自然ではありましても、ここに一方的にある韓国代表部を利用して、これとの間に接触の道をつないでおいて、そうしてこれから漸次ほぐしていくということが、やはり大局的に必要なことではなかろうかという見地から、その韓国代表部の徹底的撤去を求める措置はこれを実施しなかったのであります。その後いろいろ経緯はございますが、その後も日本側の代表部設置の要求は、機会あるごとに続けておるのでありますが、韓国側はとにかくこれは会談を再開して、根本的に問題を片づければすぐにでも正式な外交機関が開かれるのであるから、その方針でいこうではないかということで、いまだ日本側の公館設置を認めるに至っていないのであります。これは単に公館設置のみならず、日本から行く人間も、韓国に入国することも一切認めていないのでありまして、御承知のように国連軍に付属して派遣されておりました日本新聞記者も、先般三名ほど日本に帰してきたような実情でありまして、韓国側の対日感情が非常に依然として悪いということが原因であると言わざるを得ないのであります。こういう状態ははなはだ遺憾で、われわれとしても不本意でございますが、しかしとにかく今の方針を続けまして、できるだけ早い機会に日韓会談を再開して国交回復の措置を一日も早く実現して、この問題を片づけたいと、こう思っているような実情でございます。
  72. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 国交がすみやかに正常化するというか、その基本のことは、これは非常に必要で誰しも異存はない。しかしながらそれまでの過程において非常に不合理なことがあって、むしろその国交の正常化の問題も、どちらかといえば先ほど局長はまあこちら側は向うの代表部を認めて、それを手ずるにしてほぐしていくのだ、というような意味合いのことを言われましたけれども、実は向うからほぐされるような立場日本が置かれている、というような感じを現在受けるのですが、向うに正式な日本の代表部を置くということが、いろいろの関係でこの際困難であるとしても、やはり何かその抑留されておる日本人の実情を随時調査をするとか、そういう程度のことは少くとも私はやらなくちゃならぬと思うのです。  それから岸さんも井上さんも、人道問題を日本はよく口にするのですけれども、口にだけして、人道問題というのは非常に観念的に扱われて、それに伴う具体的な施策というものに欠けておるのが一つの欠陥じゃないかと思うのですね。それはやはり小さいながら具体的な処置というものを外交上、行政上打っていかれるということが必要なように思うのです。これは一応ぜひお考えをお願いしたい。
  73. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ事実だけを明らかにしておきたいと思うのですが、その相互釈放の覚書はもうできているのですね。
  74. 井上清一

    政府委員(井上清一君) いろいろ腹案は持っております。
  75. 吉田法晴

    吉田法晴君 実質的に相互釈放についての話し合いは、ほかのことは別問題ですよ、会談についてのあればこれからやっていくのも多少あるようですけれども相互釈放そのものについては、あるいは大村収容所の収容者の釈放その他、そういうものについては了解に達しメモ程度のものはできておるのじゃありませんか。
  76. 井上清一

    政府委員(井上清一君) 今申し上げましたことは、あくまで両国間でいろいろ話し合いを進めておりまして、案はできておりますけれども、両方が合意して正式にきまったものではございません。
  77. 吉田法晴

    吉田法晴君 わかりました。それではこの会談再開について見通しを得たいという点で、久保田発言を取り消そうということは、これはまあ新聞紙上ですけれども、外務省の方から出まして、それから請求権の問題についても含みのある発言があったことは、これは事実であります。会談再開について金公使が帰られて、それでよろしいということになるかどうかという点もございますが、この多少残っておる点はどの点なんですか。
  78. 井上清一

    政府委員(井上清一君) ただいまお話しになりました久保田発言の取扱いの問題、また財産請求権問題の取扱いに関しましては、両国間において話し合いが進められております。まだそのほかに一、二こまかい点で話し合いの中途のものもございますし、また進んでおるものもございます。それらのものがはっきりきまりますると同時に、先ほども申し上げましたように、会談再開後におきますところの見通しというものが立ちますならば、おそらくこの交渉というものが急速に進展を見るのではないか、かように考えておる次第でございます。
  79. 吉田法晴

    吉田法晴君 中川局長に伺いますが、今の点をもう少し金公使の帰任と関連をして、はっきり御説明を願いたいと思います。
  80. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま井上政務次官の言われました通りでございます。金公使が帰られますと、結局先方の本国とのある程度の打ち合せがやはり今度あったと思われますので、その結果、従来の一応話し合いしておりましたところと、あるいは何か従来から変ったところが新して出ておるかどうか、そういうことが特になければ、従来のやはり考え方、大体話し合ったところによって日韓双方で話をまとめて、この問題を片づけるという見通しが明るくなるわけでございます。これがもし何か新しい問題が加わつておるというようなことがあれば、これはまたその見通しはちょっと中絶するわけでありますが、そこらの点は今後先方と打ち合せてみた上でないと、はっきりした見通しは今のところつきかねますが、われわれの大体予想しておりますところでは、別に新聞報道その他を見ましても、特に新しいいろいろの問題が出てきておるというふうにも考えられませんので、見通しとしては相当近い機会にこの問題がある段階に到達するのではないか、と考えておる次第でございます。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 久保田発言問題、財産請求権問題については、従来の日本政府の態度と申しますか、大体会談に入れるという了解に達しておるかのように了解をするのですが一そういうことでしょうか。  それからもう一つ、金公使が帰られて、最近においては李ライン問題で拿捕をしていないじゃないか、していないという事実を了解願いたい、こういう発言がございました。そういう点から言うと、その点等についても、会談に入って話し合いになるという点もございましょうが、それらの点を含めて、新しい問題がなければ従来の話し合いの範囲内で会談に入れる、相互釈放はその事前に実現をする、かように了解をしてよろしゅうございますか。
  82. 中川融

    政府委員(中川融君) 大体ただいま御指摘のようなことが状況ではないかと思うのであります。日本側といたしましてはいろいろの将来の問題がございますが、これはしかしいずれ会談を開いた上でなければ最終的にはきめ得ないいずれも問題でございますので、ある程度の見通しさえつけば、これはやはり会談に入るということしか方法はないのではないかと思うわけでございますが、従って新聞報道だけでまだ的確な真意は聞いておりませんけれども、従来通り韓国側の態度が変らないとすれば、これはある程度早い時期にこの問題が片づき得るのではないか。片づいて日韓会談を開くという時期がくるのではないか、かように考える次第でございます。
  83. 佐野廣

    佐野廣君 ちょっと関連して。今、相互釈放の腹案ができておるとおっしゃったのですが、前国会でしたか、法務省との間の話し合いがつかないということが当時あったのですが、法務省との間の了解は今度は完全についておるのでしょうか。
  84. 井上清一

    政府委員(井上清一君) お答えいたします。法務省との話し合いというのは完全にできております。その点は御安心願いたいと思います
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその確証、なんと申しますか、私の心証が少し得にくいので最後にお尋ねをしておきたいのは、相互釈放についてもある程度の草案はできておる、金公使との間の話し合いはある程度できておる。それからその他の問題についても、今までのところある程度の会談に入れるという見通しが得られたということで、金公使が帰られたら、おそらく相互釈放は実現しそれから会談に入り得る。こういう自信を表明せらるべきだと思うのですけれども、その自信を表明されぬところを見ると、何かまだ新しい問題が出てくるのではなかろうか、といったような不安を持っておられるのかもわからぬと思うのであります。だから従来の交渉の経過からするならば、あるいは交渉で了解されるところをもってするならば、金公使の、この前のときもこういうことがあったけれども、今回の帰任に当っては相当釈放も近い将来において実現するし、あるいは会談にも入れる、こういうふうに自信を持っておられるのかどうか、そこのところを最後に承わりたい。
  86. 中川融

    政府委員(中川融君) これはあくまでもまだ観測程度でございまして、金公使に直接お会いしていないのでまだはっきり自信を持ってというわけにも参りませんが、観測に間違いがなければ、遠からずこれはある程度の解決がつくのじゃないかと考えております。
  87. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 抑留邦人の釈放の問題が日韓会談に入る先決的な条件、こういうふうに私は理解しているのですが、それでいいでしょうね。言いかえれば、日韓会談において釈放の問題が取り上げられてどうこうするのじゃなくて、日韓会談に入る前には、釈放の問題は前提として解決されておる、こういうふうに私は考えているのですけれども、それでいいのかどうか。
  88. 中川融

    政府委員(中川融君) その通りでございます。人道上の問題から抑留者の釈放ということは、会談に先行する問題でございます。
  89. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど梶原さんから御質問がございまして、抑留されておる者、それから家族の援護の問題についてですが、昨年の年末等についても、それから従来もしばしば問題になりましたときに、近く釈放が実現するからということで、その援護の点あるいは本人の保護、従ってその点は向うでの保護等も十分でないというお話がございましたが、これはもう問題が起ってから言いますと数年になるわけでありますが、一昨々年末あるいは昨年末等から考えてみて、これは本人及び家族に対する援護あるいは船の点等もあれですが、見通しがつくといたしますならば、この点についてもはっきり何といいますか、措置をすべきだ、あるいは立案をすべきだと思うのでありますが、その点についてはどういう工合に考えられ、それから手続を進めておられるのか、そこのところを伺います。
  90. 中川融

    政府委員(中川融君) 留守家族あるいは御本人の援護につきましては、従来必ずしも十分ではないのでございますが、政府におきましては、臨時的にある程度の御見舞のお金を出しており、また本人に対しましては、慰問品を送ることについていろいろ手配その他の手段を講じておったというのが現状でございます。これが臨時的なものでございましたから、定期的に毎月幾らきちんきちんと出すということになっていないのでありますが、現実の事態といたしましては、大体三ヵ月おきぐらいに政府からある程度の援護金を出しておるのであります。一番最近のは昨年末出ておりますが、従ってその後すでに四ヵ月くらい経過いたしておりますので、やはり三月末現在くらいでもう一回援護の措置を講じなければならないということで、目下農林省が主管となりましてその方の手配を進めております。もちろんこれは一日も早く抑留を解決して、そうしてこういう援護の必要がなくなるようにしたいのでありますが、これが続いておる間は、やはりそういう措置が継続されなければならないと思ってそのように措置いたしております。
  91. 吉田法晴

    吉田法晴君 すぐ釈放が実現するということで臨時的になされてきた、あるいは向うでの本人の援護についても不十分であったということを認められたのです。現実に相当長くなって参りまして、特に留守家族の窮状を一々申し上げませんけれども、子供も学校に十分行かれないような状態で生活を続けてきておる。従ってこんなに長くなったら、この援護の方法についてさらに検討を続けて、臨時の今までのものを単に続けるだけだと、こういうことでなしに強化すべき必要は認めておられると思うのですけれども、その強化をし、それから窮状を一そうとにかく何と申しますか、救うべき措置についてはお考えになっておりますか。
  92. 井上清一

    政府委員(井上清一君) 抑留されております方はもちろん、その御家族の窮状というものは、まことにどうも私どもはお気の毒に思う。でき得る限り釈放をはかりたいと私ども考えております。ただいませっかく努力をいたしておりますことは、先ほど来だんだん申し上げた通りであります。ただこの援護の問題につきましては、いろいろこれまでもまあ不十分ながらやっているわけでございますけれども、いろいろ先ほどお話がございましたように、なかなか行き届かない面もずいぶんあり得るわけであります。私どもとしてもできるだけ研究をし、またできるだけ御期待に沿うように今後努力をいたしたいと、かように考えております。
  93. 笹森順造

    委員長笹森順造君) これにて暫時休憩いたします。    午後零時四十四分休憩    —————・—————    午後一時五十九分開会
  94. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  まず、関税及び貿易に関する一般協定の改正に関する諸議定書受諾について承認を求めるの件、貿易協力機関に関する協定受諾について承認を求めるの件、以上二件を一括して議題といたします。  両件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。ただいま政府側から井上政務次官、高橋条約局長、湯川経済局長、服部参事官、樋詰通商局次長、山下税関部長が出席しております。
  95. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今度のガットの関係の改正で、実質上最も重要な改正点といいますか、それはどういうことか、一つ説明願いたいと思います。
  96. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 今度の改正議定書で重要改正事項は約五点ばかりございます。  第一に関税問題につきまして、現在のガット関税譲許の据置期間をば一九五七年十二月三十一日まで延長し、さらにそのあとは三年ごとに自動的に延長することになりましたが、締約国は関税率の一部の修正ないし撤回を希望する場合は、据置期間の終了前に関税税率を再交渉することができる。こういうふうになっております。  それから輸入数量制限の問題というのがございますが、これは協定改正発効後、国際収支上の理由に基いて行われている実際の数量制限を再検討し、その後もこの制限を継続している国と毎年協議すると、こういうことになっております。  その次に第三としては低開発国の特例というのがございますが、低開発国は新規産業保護のために、関税譲許の修正ないし数量制限を行うことが認められていました。従来もこういう規定がございますが、そういう点はもう少し広くできるようになります。  第四点といたしましては輸出補助金の問題でございます。これは農産物につきましては、従来の自国の輸出の分け前をふやさない限り、輸出補助金は認められるということになっておりますが、工業品については一九五五年一月以降輸出の補助金を新設拡大することは認められない。また五七年の十二月までに、輸出補助金の全廃に関して再検討を行うということになっております。  最後にこれは形式的な問題になりますが、貿易協力機関というものがガットとは別個の条約としてできることになりました。ガットの運営ということにそれが当るわけでございます。その機関には総会、執行委員会、こういうものがある。大体こういうようなことがおもなる改正点でございます。
  97. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 先年ガットに加入してから、例の三十五条の関係で英仏等、日本に対して留保があって、それに対してわが方としては、その解除といいますか、についての折衝が行われていたと思うのでありますが、その経過はその後どういうふうになっておりますか。
  98. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 御承知のように日本が一昨年ガットに加盟しましたときに、これは全会一致日本の加盟を承認したわけでございますが、ただそのうちの十四ヵ国が日本に対してガット三十五条を延用する、そういう条件づきで日本の加盟に賛成する、ということになったわけでございます。そこでこれらの国と日本との間にはガット関係の適用はしない。ただそのうちでまた十四ヵ国が大体二つのグループに分れますが、一つはガット関係の適用は法律上の義務としては認めないけれども、事実上、関税等については日本に最恵国待遇を適用しようと、こういっておる。たとえばイギリスとかベネルックスといったような国はそういう待遇をとっております。それに対して複関税をもっておりましてやはり日本に対して関税を課しておる、こういう二つのグループになるわけであります。そこでまあ事実上最恵国待遇を与えておるという国は、差し当りは現実の障害というものは少いわけでございますが、しかしそれにしても日本としては三十五条の延用をば撤回させるためにたえず努力をしております。あらゆる機会をつかまえてやっておるわけでありますが、遺憾ながら今のところこの延用撤回を実際に現実に行った国はまだございません。ただ昨年の秋のガット総会でも非常にいろいろ工作をやりまして、その十四ヵ国のうちでブラジルにつきましては一つの了解といったものが成立しておる。それはブラジルが関税法を改正して新聞税法を制定する、そういうことになっておるのでございます。それができましたときには日本に対する三十五条は撤回する、こういった了解がブラジルとはできております。しかしまあほかの国につきましても、今後大いに努力をしなければならないと思っております。
  99. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 日本立場からみてのガットの効用といいますかその点ですが、先般も若干論議になりました西ヨーロッパにおける欧州共同市場、それから今かかっておりますノルウエーとの通商条約もあるのですが、北欧の一種の関税同盟的なもの、さらに今般のガット改正で、今御説明もありましたように後進国における特別の制度、そういうものを考え合わせますとガット本来の精神というものは、実際上どちらかと言えば客観的な情勢はそれに即応しない、むしろ逆行するような感じさえいだかせるのであります。今後の見通しとしてガットのねらうところが相当に進んで行くものか、あるいは必ずしもそうはいかないのでありて、やはりサービス的な保護的な方向が強化されるといいますか、そういう方向現実は進んで行くというふうに見るべきか。それらの点についての今後の見通しというか、それを一つお伺いしたいと思います。
  100. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) まあガットの規定は、三十数ヵ国のいろいろな事情がそれぞれ錯綜しておりますものをば、とにかく貿易の自由化の方向で、まあ最大公約数をとって一つの線をまとめたというものでございますから、まあいろいろな留保等があることはやむを得ないことでございますが、しかし今これによって世界貿易貿易量からいえば八〇%に当る国々がはいっておりまして、そうしてとにかく一つ貿易の自由化について大きな線を生み出して行く、という意味では非常に意義があると思いますが、今度の改正はそういった自由化の方向についていろいろな面でさらに一歩進んでおる。従って、日本のように貿易の自由化という線で進むことが得策であるという国にとっては、これは非常に意義があると思います。まただんだん今の傾向としては、ガットもそういう方向に向って動いている、ということは申し上げられると思います。
  101. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 理想としては、日本立場からいってそういうことが非常に望ましい。そのことがガットに参加した意義であろうと思うのですが、現実が必ずしもその通り動かない心配は私は残るであろうと思う。今回の後進国に対する特別の条項、あれは日本としても相当関係が今後もあるのではないかと思うのでありますけれども、さしたることがないのか、相当影響を持つものと見るべきか、その点についてはどうですか、見通しをちょっとお尋ねしたい。
  102. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 低開発国の規定がどういうふうに改正されたか、またこの規定をば日本としてはどんなふうに利用できるか、という点がお尋ねの要旨かと思われますが、現行のガットにおいても低開発国に対して産業保護のために輸入制限を行なったり、あるいは関税譲許を撤回するために特別の措置が認められてはおるのでございますが、現在の規定は必ずしも低開発国の状況に適合しないし、また規定上明確でない点もある。そこでそういう点をはっきりさせ、また実情に沿うようにするために、十八条ですか、その規定がかなりな改正をみたわけであります。で、改正規定におきましては、まず低開発国の範疇をば二つに分けております。一つ生活水準が低くかつ経済発展の初期の段階にある国、もう一つ生活水準のことには触れませんで経済が発展段階にある国、こういうふうに二つに分けまして、生活水準が低くかつ経済発展の初期の段階にあるという国は、関税譲許の修正または撤回が容易にできる、また国際収支擁護のため数量制限を行う場合、ゆるやかな条件が適用され、数量制限の協議が毎年でなくて二年ごとでいいということになっております。また産業保護のための数量制限にも特別の便宜が与えられております。こうした範疇に入る国、これは具体的には指定されておらないわけでありますが、大体中南米の大部分の国、日本を除いてその他の大体アジア・アフリカ諸国、ギリシャないしトルコ、こういったような国がそちらの範疇に入るというふうに考えられております。他方、生活水準のことは言わないで経済発展の過程にある国、さっきの第二の範疇にある方の国は、関税譲許の修正及び国際収支擁護のための数量制限に関しては、特別の便宜というものはないのでありますが、新設産業保護のための数量制限というものをば行う道が開かれるようになります。一般の締約国は、これは産業保護のための数量制限を新設することができないことに原則はなっておるのでございますが、経済発展の過程にある国という方の範疇に入る国としては、新設産業保護のためには数量制限を行う道が開かれておる。この方の範疇に入る国、これも具体的にはっきりと指定されてはおりませんが、豪州、ニュージーランド、日本及び若干の欧州の国たとえばイタリーといったような国がその範疇というように考えられております。で、現在日本としてはこの数量制限国際収支擁護のためのものでございますが、将来国際収支の理由がなくなったという後に、そういう場合が来たとしましても、特定の新設産業保護の必要があるような場合には、この第十八条の規定によりまして、それが適当であれば数量制限を行うと、こういうことができます。
  103. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今の二つのグループという後段のケースですけれども、豪州とかニュージーランド等が入るようでありますが、これは何かそのグループに入るか入らないかということは、総会かどっかできめることになるのでありますか、おのずからそういうことが判断されてきまるのですか。
  104. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) まあ大体こういう見通しというように考えられておるわけですが、今までそうはっきりきまったものはございません。ただ将来総会等でそういうことをきめるという機会はあることと思います。
  105. 海野三朗

    海野三朗君 昨今永野議員が台湾から帰ってこられてのお話に、粘結炭、鉄鉱石、これが台湾に相当量あるというお話を私聞いたのでありますが、今日本の鉄鋼の原料、石炭、そういうものが非常に高いために国内で暴騰しておった。その暴騰しておったのを安くするために、関税を免除して鉄鉱石を輸入すると、そうして幾らか安くなったというような状態でありますが、外務省としてはそういう方面の、何と言いましょうか、つまり経済外交の線については、非常に冷淡なように考えられるのでありますが、そういう点についてはどうなんですか。
  106. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 今の日本の産業に必要な原材料、お話の鉄鉱石の入手とか石炭の輸入ということについては、まあできるだけ一生懸命やっておるつもりでありますが、何か特に冷淡なような点がございましたら御指摘願いたいと思います。
  107. 海野三朗

    海野三朗君 通産当局はどうなんですか、通商局の方はどういうお考えでいらっしゃるか。今強粘結炭を遠方のアメリカから運んでくる。鉄鉱石を遠方から運んでくる。そこで原料が高いからして、国内の鋼材の値段が非常に高い。需要と供給がマッチしないのです。そういうときに当って、この台湾の方面からでも石炭及び鉄鉱石を輸入するようにすれば非常に安くつくのだと、そういうことを一体通産省あたりではお考えになっていないのかどうか、そういう御意見一つ通産当局からお伺いいたしたい。
  108. 樋詰誠明

    説明員(樋詰誠明君) 今お話ございました鉄の値段が非常に高いということにつきましては、これは通産省といたしましてもできるだけ供給をたっぷりするということで、極力現在の高い価格を下げたい、そういうふうに考えておりまして、まず鉄鉱石につきましては全世界AA制にいたしております。従いまして、どなたでもどこからでも買える限り持ってきていただいてけっこうだということで、自動承認制にいたしておりますので、これはアメリカからでも台湾からでもどこからでも、鉄鉱石を手に入れ得る限りは入れることにいたしておりまして、また実際問題といたしまして遠い太平洋を渡ってくるより、できるだけ近間の東南アジア諸国でまかなえるものはまかなうということで、フィリピン、マレー等を初め東南アジアにおきまして、鉄鉱石が産出されるという所からは、日本のとれる限りはとってきておるという現状でございます。今後もこの自動承認制を続けるということによりまして、できるだけ日本の需要を充足するという輸入を続けていきたいという、ふうに考えております。  それから粘結炭につきましては、御承知のようにほとんど大部分はアメリカから買っておりまして、従来一五%程度を中共から買っていたわけでございますが、台湾とは、今まで弱粘結炭につきましては台湾に若干生産がございますために、昨年も一応協定に百五十万ドルの目標を掲げたわけでございますが、しかし台湾に供給量が今までのところあまりないということで、百五十万ドルの目標を掲げましたのに対しまして、大体昨年の十二月までに約四十万ドル程度しか入らない。本年に入りましてもできるだけ台湾から石炭の輸入を促進したいということで、粘結炭に限らず一般炭等についてもできるだけとるように努力をしたのでございますが、これはむしろ現在のところ先方の供給量に制約かございまして、なかなか日本の欲するだけの炭が入らないという実情でございます。今後先方の生産力というものが増大することになりまして、日本向けの供給余力が出るということになれば、われわれといたしましてはできるだけ近い地域に安定した供給源を持ちたい。そういうふうに考えておりますので、今先生の御指摘のありましたように、できるだけ台湾あたりのような近い所に安定市場が確保できるというのであれば、その線で進んでいきたい。そういうふうに考えております。
  109. 海野三朗

    海野三朗君 そういうふうにつまり民間の製鉄会社が勝手に契約を結ぶ。それを政府としては承認するというような形では、どうも納得できないのじゃないか。政府がやはりこの鉄鉱石の分布から、つまり値段とかいうふうなものに対しては、相当骨を折ってくれるべきものじゃないかとこう私は思うのですが、通産省としては民間からこれだけの鉄鉱石を輸入したい、あるいは石炭はこれこれ輸入したいというときに、そういうことに対して、ただ単にオーケーを与えるだけがあなた方のお仕事であるか、どうもそこにもう少し通産省としても考えを深くしなければならないのじゃないか。同時に外務省あたりとしても、ただ条約を結ぶことのみが外務省の仕事ではないというふうに私は思うのですが、どうなんでしょうか、そういう点についてのお考えは。経済外交と一口に岸総理大臣は言うけれども、それは政府各省ともほんとうにこの方面に向って協力するのでなくちゃいけないのじゃないか。つまり海上を運んでくる運賃の差によってそれが輸出品にも及んでくるし、それから外貨の問題にも及んでくるし、事、非常に重大だと思うのですが、こういう方面に対してもう少しあなた方のお考えを私は承わっておきたいと、こう思うのです。
  110. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) ごもっともの点でございますが、まあ政府としては民間でできるものはそれで大いに推進してやっていただく。それからまた政府かやはり口をきかなければなかなか進まないといったような問題については、積極的な努力をするということでやっております。たとえばインドのルールケラーの鉄鉱山の開発とかいうようなのは、これはインドと日本アメリカ、この三国の関係でそれを開発するという一つの計画でございます。そういったようなのは、どうしても政府も相当積極的に中に入って推進しないとできません。そういった場合にはできるだけの努力をやっておる次第でございます。
  111. 海野三朗

    海野三朗君 通産省のお考えを伺っておきたい。
  112. 樋詰誠明

    説明員(樋詰誠明君) 先ほど申し上げましたように、一応鉄鉱石のごときものは輸入の面に当りましては一切の制約を廃しまして、自動承認制にいたしておりますが、さらに東南アジア地域あたりからできるだけたくさん入れたいということで、たとえばフィリピン、マレー、インド、ゴアといったような地域に対しましては、日本の業者が現地でいろいろ現地の業者と提携いたしまして鉱山を開発する。開発したものを日本に持ってくるといったような、経済協力といったような面に当りましても、輸出入銀行からの融資を政府としても積極的に応援あっせんするという格好で、できるだけ近間から、できるだけとにかく安く持ってくるということにつきましては、従来も金融面の世話というようなことで努力して参ったつもりでございますが、今後ともさらにそれを一そう強力に進めていって、安定した市場を経済協力等によって確保していきたい。そういうふうに考えております。
  113. 永野護

    永野護君 きょう、通産省から重工業局の方見えておりますか。
  114. 樋詰誠明

    説明員(樋詰誠明君) 至急呼びます。
  115. 永野護

    永野護君 通商局でおわかりになればいいですけれども、今鉄鉱石は自動承認制にしているから、民間で持ってくればいつでも入れてやるというお話なんですけれども、それより以前の問題があるのじゃないかと思うのです。たとえばフィリピンのスリガオが十五億トンあるといわれておる。御承知の通りクローム、ニッケルが入っているから使えないといって今日まで放擲されておるのでありますけれども、これも御承知の通りだと思いますけれどもアメリカでは完成して使っておる。ただその分離をするのに非常に技術的の困難がある。ところがクロームについても日本にパテントがかある。ニッケルもパテントがある。クロームとニッケルを取ってしまえばテーリングに鉄鉱石をとる有利な条件があるのですけれども、その試験には非常に金がかかる。ところがこの分析が可能になってもその利益を受けるのは、御承知のようにこの鉱区はフィリピンの国有鉱区ですから、もうけるのはフィリピンであります。従って日本の民間会社からこのために何億円もの費用を負担するものはありません。こういうようなことから今まで非常にその研究が怠られておった。これは外務省に関係があるのですけれども、こういう問題を、この役務賠償という非常にいいチャンスがあるのですから、そうして重工業局の方ならもちろん十分御承知のラテライトの問題を、この問題とからみ合せて御研究になるのが非常にいいのじゃないかとこう私は思うのです。これができましたらこの鉄鉱石の問題はほとんど解決するといってもいいと思うほど重大な問題です。これは特に湯川さんにこれから非常なお骨折りを願わなければならぬところだと思います。非常に重要な問題だと思います。役務賠償を単なる労働力と考えないで、頭の役務として最も大きなテーマだろうと思います。ですから通商局でお考えのようにちゃんとしたものを入れてくるという以前に、そういう努力をする余地があるのじゃないか。これがどこの国もできるのなら別ですけれども日本にはニッケルとクロームの二つのパテントがあるのです。それから各業者でも細々とみんな研究を続けておりまして、ある程度までの成果は上っておると思います。アメリカでもドイツでも相当の成果は上って、クルップがすでに具体的にオファーしておるのですから、こういう問題を鼻先の日本が手おくれになってドイツのクルップに取られるということになると非常にみっともない。アメリカのラテライトに対する研究は非常に進んでおります。そうしてアメリカの会社がフィリピン政府に対してこれが採掘を去年正式に申し込んだと思いますが、下院は通ったのですけれども、国営ですから上院でレクトにチェックされてその法案は通りませんが、あれが通ってしまいますと五千万ドルの開発ができて、日本の鼻先にある鉄鉱石、クローム資源、ニッケル資源アメリカの傘下に落ちてしまうようなことが起りつつある。全く別の理由でありますけれども、レクトが反対したことによってそれがアメリカの手に落ちないような状態になっておると思いますが、こういうことを、今の持ってくるのを買ってやるという政策より前の問題としてお考えになったらどうか。これはちょうど賠償の問題にからみますからぜひ一つ考え願いたいということが一点。  それから粘結炭は台湾との問題でありますけれども、これもすでに御承知のはずであって、とにかく四千五百万トンから五千五百万トンに及ぶ埋蔵量が新竹、南昌にある。これは確かなんです。りっぱなリポートもきておる。しかも交通の便は非常にいいのであります。新竹の分は鉄道まで五キロしかないし、南昌は二十五キロです。ここから基隆まで百四十キロしかないので非常に立地条件がいいのです。おそらく十ドルくらいアメリカからくる石炭より安くなる。ただこれには昨日私、別な機会に申したのですけれども、台湾に今それだけのまとまった大きな永久的の投資をする安全性ということが非常に疑問だと思うのです。でありますから、私はないと思いますけれども、万一あそこがアメリカが撤退してしまって中共に取られたときに、その跡始末をどうしてやるかというような補償なしにはなかなかふん切りがつかぬと思います。ただいまできておる事業計画の予算によりますと、四百万ドルかけて年五十万トン採掘するということになっております。その四百万ドルのリスクをだれがしようかという問題があります。でありますからこれもできたものを買ってやるという程度でなくて、その前の問題としてお役所がもう少しお考えになる余地があるのじゃないか。さっきの鉄鉱石と違いますから、賠償の問題にからんだりするという余地がありません。ありませんが補償の問題としてそういうことが考え得る道がある。こういうふうに考えます。  鉄鉱石と粘結炭についてちょっと気づいた点を一つ
  116. 井上清一

    政府委員(井上清一君) ただいまの御意見につきましては、政府は十分考えさしていただきたいと思います。各省とも連絡をとりまして検討いたしたいと思います。
  117. 海野三朗

    海野三朗君 先ほど樋詰次長からいろいろお話がありましたが、こういうふうな重要産業について、お役所が民間に引きずられていくようでは私はならないと思うのです。少くとも政府としましては、民間の会社に利益を与えこれを指導していくというだけの意気込みがなくちゃならないと私は思うのですが、そういうことに対しては通産省はいかようにお考えになっておりますか。ただテーブルの上で判を押しておれば通産省の仕事ができるんだというようなお考えではいけないと思いますが、どうなんですか。私はもう少し通産省が積極的にこれを考えて、そうしてこの輸出入の関係なりあるいは外務省を動かすなり、もっていかなければならないのじゃないか。ただテーブルの上でいじったものに判を押させるだけではいけないと思いますが、いかがですか。それだけが通産省の仕事じゃない。
  118. 樋詰誠明

    説明員(樋詰誠明君) 先ほど申し上げましたように、金融面でわれわれとしてできるだけ輸出入銀行から金をつけるというようなことをやっております。また例の海外投資というような制度等を通じまして、最悪の場合にはある程度政府の方で危険をカバーするといったような道を講じてあるわけでありますが、もちろん通産省といたしまして、今のままでこれで十分だというようには考えておりませんし、従来から今、先生のお話のような方法で、もし政府の方でももう少し本腰を入れてやれるという限度においては、これはもう当然そう進んでいくべきだというように考えておりますが、いろいろ国の予算の関係等もございますので、従来からそういう考えで大蔵省と折衝等はいたしておりますが、今後もまたそれでやっていくつもりでございまして、それは最終的な責任を国家かどの程度みるかということで、必ずしも通産省だけで解決するわけには参りませんので、よく関係各省でさらに今後相談いたしまして、今の御指摘のような点にもっていけるような努力を通産省としてはしたいというように考えております。
  119. 海野三朗

    海野三朗君 もう一つ私から樋詰次長に伺いたいのは、セイロンにおける鉄鉱山はイギリス人がもう調査しております。しかしこれには手を触れておりません。この間向うの工業大臣が来たときに私は会っていろいろ話を聞いたのでありますが、まだ手をつけていない。もしセイロンの鉄鉱山に手をつけられるということであれば、この片貿易になっておるセイロンの貿易に対しても非常に都合がいいのじゃないか。日本から売るものは九で向うから持ってくるものは一という片貿易になっておりますので、そういうこととにらみ合せてこの鉄鉱山のあるということが調査上わかっておりますから、そういう方面に一つ調査をお進めになるお考えがありませんか。それを私はお伺いしたい。そうして日本貿易を振興させていく。そうすればゴアから持ってくる必要もなし、もっと近い所のセイロンからこれが得られれば非常に有利じゃないかと思いますが、どういうふうにお考えになっておりますか。次長の御所見を伺いたい。
  120. 樋詰誠明

    説明員(樋詰誠明君) 御指摘のようにセイロンは非常な片貿易になっております。われわれといたしましてはセイロンから買うものがあればできるだけ買いたいという、政府としても非常に強い希望をもっておりますので、実は今御指摘のセイロンのものにつきましてまだここで申し上げる知識をもち合せておりませんが、こういう非常に片貿易に悩んでおります国に、日本といたしまして一番ほしい鉄鉱石があるということであれば、これは政府の方といたしまして、できるだけ海外プラント協会その他いろいろな機関を通じまして調査するというようなことをやりまして、開発ができるものなら日本の手で開発するという方向にもっていくべきであると考えますので、帰りまして至急関係原局に今のお話の点を伝え、開発できるというめどがあるのかどうか検討したいというふうに考えております。
  121. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 他に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。…別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。関税及び貿易に関する一般協定の改正に関する諸議定書受諾について承認を求めるの件、貿易協力機関に関する協定受諾について承認を求めるの件、以上二件を一括して問題に供します。両件をそれぞれ承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  124. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 全会一致でございます。よって両件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  それから報告書には多数意見書署名を付することになっておりますから、両件を承認することに賛成された方は順次御署名願います。   多数意見者署名     佐野  廣  梶原 茂嘉     鹿島守之助  杉原 荒太     津島 壽一  永野  護     野村吉三郎  海野 三朗     森 元治郎  竹中 勝男   —————————————
  126. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、日本国とノールウェーとの間の通商航海条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。  本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  127. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。  ただいま議題となりました、日本国とノールウェーとの間の通商航海条約の批准について承認を求めるの件についての質疑は、次回に継続することとしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。さよう決します。   —————————————
  129. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約の補足議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件について御質疑のおありの方は順次御発言願います。…本件に関する質疑は次回に継続したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。   —————————————
  131. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 次に、国際情勢等調査議題といたします。
  132. 海野三朗

    海野三朗君 私は大蔵省の為替の方についてお伺いしたいのですが、渡航者に対する割当というものについて、この前私らが原子力の調査団で行くとき、三週間全体に対してたった三十ドルか割当がなかった。あれは条文によったと言っておりますが、ただ条文によっただけで割り当てるならば、何も高級なえらい方々がおる必要はないのではないかと思うのです。割当について私ははなはだおもしろくないと思うのでありますが、その辺の一つ御所見をお聞きしたい。三週間アメリカへ招待を受けて行って、行くときにたった三十ドルか割当を受けておらない、一万八百円。それを規則だと言われておる、こういう条文があるからといって、その後その条文の写しを私の手元に送ってみえましたけれども、その条文通りにやるくらいならば給仕だってできるはずだ、何も好んでお歴々がおる必要はない、私だけじゃありません。飛行機で帰ってくるのであるから、途中でどんな故障がないものとも限らぬ、少しも親切がないと私は考えるのです。私はここに資料の提出というものを求めたい。あのときに鹿野彦吉君もあとから追っかけてきましたが、鹿野君に対しては何ぼ外貨の割当をしたか、またあのときには原子力の調査団がたくさん行きまして、あの人たちにはどれだけドルを割り当てたか、あの去年の九月前後における外貨の割当の資料の提出を私は要求いたします。そしてたった三十ドルきり与えないということは、やみドルを買って行けということを政府みずからがやられておる。こういうふうな外貨の割当ということに対しては私は納得できないのです。その前後における渡航者に割り当てたところの外貨は、何のだれそれには何ぼ与えた、何のだれそれには何日間に対してどれだけのドルを割り当てたということの資料の提出を私は要求いたします。
  133. 大島寛一

    説明員(大島寛一君) 御説明いたします。ただいまの御質問の点でございまするが、生産性本部等先方の招きによりまして渡航されました場合に、先方におきまして、アメリカ国内における滞在等の費用は一切負担するということでございまして、わが方で負担しますのは先方に到着しますまでの航空機運賃であると、こういうことでございましたので、従いまして、米国に到着後の外貨の費用につきましては、全部あちら側で受け持つわけでございまするから、ただそう申しましても、到着早々当座の雑費のようなものが何らかの関係で入用の場合もあるいはあるかもしれない、こういう考え方によりまして、三十ドルそういう目的のために許可したわけでございます。従いまして、先方における滞在費その他の費用を一切三週間内三十ドルだけでまかなうという趣旨ではなかったわけでございます。
  134. 海野三朗

    海野三朗君 それはよくわかっておりまするが、幾ら招かれたからといっても手ぶらで行かれるものじゃない。そこを少し考えていただかなければならないと私は思いますね。手ぶらで行けるものじゃない。それから向うに招待されましてもね、支払いが五日か六日目くらいの支払いですよ。ですからその間に何とも困っちゃう。しかもあのときに私ら国会議員は六人行きましたけれども、政務次官の齋藤君も行きましたが、みんな困っちゃった。齋藤君、なぜやかましくいわないのかといったら、どうも私はそれは、困ったものだといって頭をかいている。実に私ら困った。私が質問したいといいますのは、あなた方が外貨を監督しているのならば、もう少し親切があってもいいじゃないかということ、さらにそれを規則がこうでございますからというて、規則通りにやるくらいならば、何も好んであなた方のようなごりっぱな方々にいてもらう必要はない。給仕だってできる、そんなことは規則通りやるくらいなら。もう少し考えてみて、国会議員が六人、それから公務員が六人、十二人で行ったのですが、飛行機の故障によってサンフランシスコに一日よけいにおったし、またハワイにも一日よけいによった。それで私らは困った。ところが困ったときには領事館にでもいけばいいだろうという、この前もお話があったけれども、実に無責任きわまる御返事と申さなければならない。これは金がなくなって飛行機が立たない、夜中ですよ、しかも。さあ困った。旅館に泊れないのですよ、泊れないからして控室にただおって夜を明かしたのです。そういうふうなことがあるので、旅行のときには、それですから、百ドルなり二百ドルなりよけいにやる、ほかのことには使わないでもらいたいといって、これくらい余裕を持たせてやる親切がなくちゃならないだろうと私は思う。それですから、行く人たちはみんな、あるいはやみドルを持って行った人はいいかもしれませんけれども、私らのように正直な者は、それで行けるものだと思っていて、実に困ったのです、ふところがさびしくして。そういう点についてはあなた方はどういうふうに一体お考えになっているか。まるで外貨を割り当てるのは、あなた方のポケット・マネーでも与えられるようなお考えでおられるのじゃないかと私は思う。とんでもない話です。私はそれを言うのです。この前も私はこれを申しましたが、どうも私はあなた方の御答弁が納得いかない。それはどうなんですか。
  135. 大島寛一

    説明員(大島寛一君) ただいまお尋ねの点でございますが、行政官庁といたしまして、できるだけ親切な気持をもってやるべきであるという御趣旨、まことにごもっともでございまして、私どもも平素できるだけの努力はしているつもりでございまするし、また今後もいたさなければならないと考えているわけでございまするが、具体的な場合につきまして三十ドルで足りなかった、非常に不安をお感じになったり、あるいはお困りになったというお話でございまして、親切心が足りないという御意見でございますが、私ども気持といたしましては、また当時におきまする一般の取扱い、また生産性本部で行かれる場合の取扱い等に関しましては、三十ドルで着後早々の所要はお間に合うと、かように考えて措置したことであったわけでございます。なお今後とも取扱いにつきましてなるべく親切にやるという点につきましては、私どもも一そう努力して参りたいと思っているところでございます。
  136. 海野三朗

    海野三朗君 みんな行く人は、やみドルを持っていく人は相当あるでしょう。あなた方の親切がないからそういうようなことをやらせるようになるのです。みんなやみドルを持っていく人があるでしょう。生産性本部から三十人ほどの各会社の社長の人たちがみな行きました。あの人たちに対しては一体どれくらいドルの割当をやっておったのか、あのときは石川君たちと私は一緒です。ほかの人たちは一体何のだれそれにはドルをどれだけ割り当ててやられたのか、その資料を一つ拝見いたしたい。去年の大体九月です。そういうときに、これはドルとばかり限りません。ポンド地域にも同様です。私は同様だと思うのですが、そういう際にはっきり、もう少しあなた方に認識を深めていただかなければいかぬ。まだ外国へおいでになったことはありませんか。
  137. 大島寛一

    説明員(大島寛一君) 私個人のことでございますが、私参りました経験がございます。
  138. 海野三朗

    海野三朗君 それについて私はその資料を一つ拝見いたしたい。どういうふうな割当をしていらっしゃるものであるか。それはこの次まででけっこうでありますから、この次までに資料の提出を要求いたします。そうして、今後ともそういう際にはもう少し親切をもっていただかなければならぬと私は思います。そうでないとやみドルが盛んになって横行して困るのですよ。それでほんとうに困ったのです。サンフランシスコに一晩泊って、今度ハワイでその晩立つはずであったが、飛行機が故障が起りまして、泊れないのです。宿賃見たところが十何ドル。みんなのふところをみんな出してみたところが足りないのです。仕方がないから旅館に泊らないで、旅館のサロンで午前五時まで寝ないで待ったのです。金がないから泊れないから。そういうふうなつらい思いをするというのは、あなた方がもう少し親切をもってくれたならば、そういうことは私はなくて済むのであったと思うのです。その点については十分今後気をつけていただきたい。帰ってくれば、ドルはみんなお返しますよ。持っていたってしょうがないんだから。とにかく外国へ行ったときに金がないほどさびしいことはないのです。ほんとうにふところがさびしいと何とも仕方がない。もう何ともしようがありません。私一人だけではありません。自民党の白川議員も一緒でした。齋藤憲三氏も一緒でした。松村君も一緒であった。六人ともみんな口をそろえて困ったのです。私だけこんなにやかましく言わぬのです。実にひどい目にあったから。これについて質問いたしますのは、これで二回目ですが、私は資料の提出を求めたい。私どもにはそうしてあって、まだ鹿野君もそのときにあとから追っかけてきた。鹿野君にはどれだけ割り当てられたのか、それから三十人の民間団体が行かれました。あれにはどれくらい割り当てられたのか、それを私は資料の提出を求めます。三十人の人たちの泊っている旅館に僕は行って見た。ところがわれわれの泊っている旅館は実に貧弱で、二人で一つの部屋にしか入っていない、お湯がなくてシャワーです、ただし安いから。ところが三十人の人たちはそれこそ大したものだ。まるで王者の旅行ですね。国会議員がまるで小学校の生徒の旅行みたいだといって皆非常に悲観しておったのです。で、私は一応その外貨の割当の資料を拝見いたしたい、私はそれだけでございます。この次までに一つ資料をいただきたい。
  139. 竹中勝男

    竹中勝男君 どうもおくれまして大へん恐縮でございます。どうしても会合に出ましたら説明せんならぬ会合でございまして。  これは調査のお願いなんですけれども原水爆に関する文献なんでございますけれども、これはまためんどうなんですけれども原水爆に関する資料の調査ということで、どうぞ国会図書館あたりに御協力いただいて、主な日本の図書館にあります文献、雑誌の主な論文、そういうものを一つ教えていただきたいと思いますけれども、これは大へん、私の個人だけの希望ではないので、相当原水爆問題を研究しておる団体や機関が調べがつかずにおりますものですから、国会にお願いしてくれということで、私も外務委員としてそれはぜひ手元に持って、今後研究の、早急に解決できる問題じゃありませんから、まず十分文献を調べておきたいと思いまするので、単行本だとか重要な論文だとか、それは日本だけの文献でなくて、外国における重要なものを、調べがつく限りでけっこうでございますから御調査を願いたいと思います。
  140. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまの竹中委員からの御要求がございますので、外務委員会としても専門調査室等もございますので、いかなるものが国会図書館にあるか。あるいはまたこの委員会の審議の必要上、どういうものがすでに、公けにされておるか、知る範囲において委員会としてもこれを取り上げる。なおまた外務省にも連絡をとりまして、われわれが国会図書館あるいは委員会の専門室でできない点で、外務省にさらにこれを加えるものがあればこれも外務省の方に連絡をとってもらう。こういうことに取り計らいたいと思いますから御了承願います。
  141. 竹中勝男

    竹中勝男君 どうもありがとうございます。
  142. 笹森順造

    委員長笹森順造君) それからただいま海野委員からの御要求のことも、これまたその通り関係当局において取り計らうように、海野委員に連絡いたさせるようにいたしますから御了承願います。  次回は来たる三十日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後三時五分散会