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1957-04-11 第26回国会 参議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十一日(木曜日)    午前十時五十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     笹森 順造君    理事            佐野  廣君            鶴見 祐輔君            梶原 茂嘉君    委員            鹿島守之助君            黒川 武雄君            杉原 荒太君            津島 壽一君            野村吉三郎君            海野 三朗君            加藤シヅエ君            竹中 勝男君            森 元治郎君            石黒 忠篤君   政府委員    外務政務次官  井上 清一君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省アメリカ    局長      千葉  晧君    外務参事官   法眼 晋作君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省経済局次    長       佐藤 健輔君    外務省条約局長 高橋 通敏君    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件) ○委員派遣承認要求の件   —————————————
  2. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず竹中委員から中国残留行方不明者に関し発言を求めておられます。これを許します。政府側からは外務政務次官井上清一君、厚生政務次官中垣國雄君、引揚援護局長田邊繁雄君等が出席しておられます。
  3. 竹中勝男

    竹中勝男君 きょうは実は外務大臣の御出席を期待しておったわけですけれどもおいでになれないようですので、あらためて外務大臣には次のなるべく早い機会日本政府責任のある御答弁を願いたいと思っておるのですが、きょうはまあ予備的に、一応この中国にあるところの未帰還者調査に関する政府の意向、あるいは構想というようなものをまずお伺いいたしたいのですが、一昨日の閣議並びに昨日の衆議院における引揚特別委員会における政府態度につきまして、まずお伺いいたしたいのですが、報道されておるところによりますと、未帰還者調査に関して、国会議員団を派遣してこの問題について折衝の糸口を作る、できれば将来あるいは直ちにか常駐の政府代表向うに派して、この調査をやるというようなそういう報道がなされておりますが、これについて閣議並びに昨日の特別委員会における政府発言の内容、並びに政府が持っておるところの構想をお伺いいたしたいのですが、これは外務大臣にかわって、外務次官から御答弁をいただきたいと思います。
  4. 井上清一

    政府委員井上清一君) お答えを申し上げます。現在中共におきまするこの引き揚げ問題の要点は、以下申し上げるような点であると考えます。  ただいま戦犯として拘禁されております者が約四十四名、このうち数名が最近釈放されまして帰るというような連絡日赤にございまして、これが帰国につきましては、他の帰国者の人数が判明次第配船計画を立てまして、すぐその方をお迎えしたいという考えで、このほかに次に残留者が約六千名ございます。この多くは中国人と結婚をした帰人でありまして、この人たちが一時帰国、いわゆる里帰りをするにつきまして、政府が経費を負担すべしというような問題も起っておるのであります。この件は厚生省の御関係で私から申し上げる筋合いでないと思いますが、厚生省の方でいろいろこれについては御研究のようでございます。そのほかに御質問にございました、つまり状況不明者が約三万人ございます。先般までは約四万人と言われておったのでありますが、その中でその後資料によりまして判明いたしました者約一万名を除きまして、現在は状況不明の者は約三万名ということでございます。なおそのほかに在中共邦人遺骨収拾方につきましては、各方面から御要望があるわけでありまして、これらの諸問題がいわゆる中共地区における引揚問題と総括して申し上げることができるかと思うのでございます。  それでこれらの問題はいずれも人道的な問題であり、わが国といたしましてもできるだけ解決をすみやかにしなければならぬ問題であると考えておるわけでございますが、現在のような中共との国交関係でございまするので、政府といたしましてはこれをジュネーブにおいて、ジュネーブに駐在いたしておりますわが国総領事中共総領事との間に、いろいろこれらの問題について折衝をいたさせておりますることは御承知の通りでございます。それで先般来衆議院引揚対策特別委員会におかれまして、ぜひ今後一つ、こうした諸問題を解決するために、議員方方中共に渡航さして、そうして今の問題の促進をはかると同時に、これらのいろいろな問題についての調査を、中共側連絡の上進めたい、かような御意見であったわけであります。  それで政府といたしましては、今後ともやはり両国政府ジュネーブにおける機関を通じ、これらの問題をさらに一そう促進をいたして参りますることにつきましては、もとよりでございますが、これらの折衝と並行いたしまして議員方々中共に渡航されまして、そうしてこれらの問題を、つまり独自の方法で、またこれらの政府がやっておりまする方法を鞭撻していただく、という意味におきまして国会からおいでいただきまして、これらの促進方をおはかり願うということは、政府としましてまことにけっこうなことである、かように考えておるような次第でございます。先般閣議におきまするところのお話趣旨も、また昨日引揚特別委員会におきまして総理大臣から答弁いたしましたことも、私がただいま申し上げましたような趣旨と存じておる次第でございます。
  5. 竹中勝男

    竹中勝男君 ゼネバにおける両国総領事間で、この未帰還者調査及び引き揚げに関する問題を継続されてやられるということについて、当然であろうと思いますが、これまでの経過について重要な点だけを一つ資料を早急にいただきたい。それを外務省要求いたします。  この議員を派遣するという構想について、もう少し具体的にお伺いいたしたいのですが、どういう目的で、どういう仕事のために議員を派遣されるわけですか。
  6. 笹森順造

    委員長笹森順造君) ちょっと、今の資料要求というのは。
  7. 竹中勝男

    竹中勝男君 田付総領事沈平総領事日本人の未帰還者調査について会談しております、その報告資料です。
  8. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 外務省、よろしゅうございますか。
  9. 中川融

    政府委員中川融君) 承知いたしました。
  10. 井上清一

    政府委員井上清一君) お答えを申し上げます。先ほども申し上げましたように、ジュネーヴにおきまして総領事間の話し合いをいたしておるわけでございますが、厚生省におかれましてただいま調査をされておるのでございますが、状況不明者個人別名簿ということにつきましても、これはやはりジュネーヴ総領事話し合いによってこれの調査の完璧を期するようにしたいとは思いますけれども、何分これらの問題は両国間の非常な協力を要する問題でございまするので、政府がやります以外に国会議員方々がおでかけになりまして、政府のやることに側面的に御援助を願い、応援をしていただくということが、本問題の解決促進する上において非常に有効ではないか。で、これは何も政府代表であるとか、また特使であるとかいうような意味でなしに、国会独自にそうした活動をしていただきますことが、私どもは本問題解決のために非常に有効な手段である。まあかように考える次第であります。
  11. 竹中勝男

    竹中勝男君 国会独自の活動として国会がそれをやる意思があり、国会国会の対策でそういうことが決定されるとすれば、これは実現されると思うのですが、政府のやることに対して側面から国会がこの問題をどういうようにして促進できると思われますか。
  12. 井上清一

    政府委員井上清一君) この引き揚げ問題は人道的な問題であり、かつまたわが国として非常な朝野をあげての関心の的である問題であると、私どもよく一つ国会議員の皆さんによって徹底さしていただいて、向うに渡航されて徹底を願う。そうしてできる限り本問題をすみやかに解決する、という機運を醸成していただくということが、その解決の役に立つ、かように考え、また政府もさように考えておるような次第であります。もし国会でそうした仕事を引き受けていただくということになれば、政府としても非常にけっこうである、こういう趣旨でございます。
  13. 竹中勝男

    竹中勝男君 人道上の問題であるから日本国会中国政府折衝すれば、それが将来の促進に役立つということは私もよくわかり、その趣旨には必ずしも反対するものではないのですが、しかしながら日本国会あるいは日本政府が、人道的に問題を取りつけていこうとされるに当って、中国も同じように、中国人行方不明者日本におるわけでございます。戦争中に捕虜として連れて来られた数万の人の中で、数千の者が行方不明になっております。日本で死んだりあるいは殺されたという風評も向うは信じております。また三万の中国人日本に在留しておる。それに対して、日本政府として、あるいは国会として何か人道的な動きを今までされたのですか。
  14. 井上清一

    政府委員井上清一君) ただいま竹中委員から御質問がございましたように、わが国中国に対しまして、わが国の未引揚者の復員の問題についていろいろ話し合う上において、わが国に来ておりました華人労働者遺骨の問題を一体なおざりにして、そういう要求だけをすべきではないじゃないか、この問題の経過は一体どうなっているか、こういう御意見、まことにごもっともな御意見であると存ずるのであります。  実は戦争中に来日いたしまして、日本でなくなりました華人労務者が約六千人あるので、そのうちの約二千四百柱を、慰霊実行委員会並び日本赤十字社が、中国の紅十字社からの連絡によりまして、両方団体が非常に苦心をいたしまして、まあ送還をされたのであります。しかしまだ三千数百の方方遺骨日本にあるわけであります。その後紅十字社から日赤に対しましていろいろ連絡もあり、日赤としても努めておりますが、政府としても直接この問題を取り扱うということもあるいはどうかと思いますが、政府日赤なりあるいはまた慰霊実行委員会と緊密な連絡をとり、これらの諸団体を活発に動かしまして、今後やはり日本中国に対して要求すると同時に、やはり日本としても尽すべき手段はできるだけ尽してこそ、初めてこうした人道的な問題は円満にいくのではないか。これは御説の通りだと思いますので、今後ともこの方面に努力して参りたいと思います。
  15. 海野三朗

    海野三朗君 今のにちょっと関連して。中共遺骨向うに届けるのに当って、今まで再三分割して送って行っているわけでありますが、その際に政府としてはどれだけ骨を折っておりますか、それをお伺いしたい。向うに送って行くその坊さんたちに対して、私どもは些少であるけれどもお布施を包んで今まで再三やってある。外務省としては人道上の問題であるからと言って、大へんりっぱなことを言いなさるけれども、今まで再三中共遺骨を送って行っておりましたが、その際にどれだけ尽していなさったか、それをお伺いいたしたい。
  16. 井上清一

    政府委員井上清一君) どうも具体的に今これこれということを申し上げるべき何は、そのむずかしく存じますが、船に遺骨をお乗せして、そうしてまたそれを運んで参るということについて、政府としては従来便宜を供与し、そういうふうに協力してきた次第でございます。
  17. 竹中勝男

    竹中勝男君 数についてはまだはっきり六千とか、中国人が少くともきておったのは数万人であった、捕虜としてきておったのは数万人であったと思いますが、それはまあ今直ちに究明する必要はありませんけれども政府として十分理解を持たなければならないことは、日本人中国における行方不明者というのは、当時の戦争並びに日本の侵略といいますか、植民地政策ということのために日本人が進んで向うに行って、そうして戦争をしあるいは事業をやり、その後の行方不明者であって、しかも向う日本人の行方不明になったその時期というものは、現在の中共政府ではない時期なので、それが日本人行方不明者ということの特色の一つ。そうして日本から進んで出かけて行った人の行方不明である。ところが日本における中国人行方不明者は、捕虜として日本に連れてきて、日本で労務の不足を補うために、鉱山だとかあるいは港湾の荷揚げその他、ほとんど全国的にこれを使役して、そしてある者は病気で倒れ、ある者はたとえば花岡のように殺戮され、食糧を与えなかったり、医薬を供せなかったり、こういうことがわかっておるわけなんですね、これは行方不明者といっても両方両方ですけれども、性質がだいぶ違うということをまず前提として、日本の教府は認める必要があると思うのです。でそれに対して民間団体がこれを丁重に探し、そしてすでに三千体ほどの遺骨向うに運んだ、むろん政府厚生省を通し、そうして各種の便宜国交回復前の状態においてはかられたことは私どもは認めております。しかしながらまた無理解であった点もあります。こんなことは処置しないでもいいというような意見も一部にあったことも事実です。これは日赤が当然やるべきことであったかと思うのでありますが、日赤も積極的にはやらなかったので、大谷瑩潤参議院議員委員長とする中国人殉難者慰霊実行委員会というものを作りまして、この手でこれを発掘するようなときには、炭鉱や港湾遺骨が散在しておるものですから、日本労働組合評議会協力を得まして、また資力的な援助も総評から、あるいは仏教界から得まして、すでに六回も送還をしているわけです。第七回の送還もすでに準備がととのっておりまして近く送還されると思いますが、この問題は特にこの際明確に政府責任において、あるいは政府の熱意のある助力によって、政府のすなわち責任においてやるということを表明してほしいのですが、いかがですか。
  18. 井上清一

    政府委員井上清一君) 華人労務者遺骨送還というのは非常に大事なことであり、また今後の日本中国に対しまする引き揚げ関係の問題を円滑ならしめる上からいいましても、大事なことだと思います。で政府としては今後とも十分な協力はしていくつもりでございますが、具体的にどういうふうな協力ということになりますと、ちょっと今ここでお答え申し上げかねるのです。十分調査をさせていただきましてお答えいたしたいと思います。
  19. 竹中勝男

    竹中勝男君 その返事では、大へん井上政務次官を苦しめるようなことになっては気の毒ですけれども、その返事では私はこれは不満足なんです。不満足ということは、それでは国会議員団を派遣しても、この意思は十分疎通できないと私は思います。というのは従来通りやるというのは、従来通りといったって従来やっておられない、従来通りやるというのはあまりやらぬということになるわけでありまして、もっと私の政府要求しておることは、責任ある態度でこれを政府責任においてやるかどうかということを明言していだたきたい。これは厚生省政務次官から、あるいはむしろ直接取扱われるところですから。
  20. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 竹中先生お答えいたします。先ほど外務政務次官からもお答えになりましたのでありますが、この際華人労務者遺骨送還につきましては、従来民間団体であります慰霊実行委員会の御努力によりまして、過去六回の送還をされて参ったことは事実でございます。そこで今後日本政府の手で直接送還するようにしてはどうかというお尋ねにつきましては、この問題は先ほど来、在中共帰還者問題等が、ただいまジュネーブにおきまして、両政府総領事間において話をされておるのでありますが、また一方におきましては、日本人残留者、それから中共にあります邦人遺骨、これらは、すべて関連のある問題といたしまして、このジュネーブにおける話し合いの結果によりましては、日本政府がこれを直接実行におきましても事実上の責任を持ちまして、これを行わなければならないという結果になるかとも思うのでありますが、ただいまそれらの問題につきまして、そういう交渉ともにらみ合せながら、諸般の情勢を考えておるというのが政府の実情でございます。御指摘の点につきましては、私はこれは実際は政府責任においてやるべきことだと思うのでございますけれども、やはり従来外交関係がまだ十分回復をしていなかったのでありますから、そういうときにおきましてはどうしても紅十字会であるとか、あるいは日本赤十字社であるとか、こういうものと、また民間団体たる慰霊実行委員会等の、そういう相互の了解によってやっていただくよりほかに実はなかったと考えておるのであります。しかし国交回復しておりませんけれどもジュネーブにおきまして、一応政府代表機関折衝を開始しておるということは、どこまでも事実でございまして、そういうものの結果が在日華人労務者遺骨の問題に限らず、全般のこれらの問題との関係におきまして何らかの結論が出て参りましたならば、そのときにはこれは当然のことといたしまして、責任を負うとか負わないとかいう問題ではないのでありまして、当然のことといたしまして政府責任でこれらの事業の遂行をいたさなければならないと考えております。そこで現在どうかというお尋ねになりますと、やはりできるだけ厚生省といたしましては、たとえば今度も向うから戦犯の若干の者が釈放になった、なおまた向うにおりますところの邦人引揚者の希望もあるというようなことが、すでにもたらされておりまして、これに対しまして船を配船するとか、その他の所要の措置をとらなければなりませんが、そういったようなこととともにこれらの問題も考えまして、現在としてやはりもしこの第七回目と申しますか、第七回目の遺骨送還については厚生省といたしましては、どこまでも慰霊実行委員会であるとか、あるいは日本赤十字社であるとか、そういうものに対する協力という建前を今回はとらざるを得ないのではないか、かように考えております。
  21. 海野三朗

    海野三朗君 関連して。先ほど井上政務次官からお答えになりましたけれども、どうも一つも要領を得ないので、重ねて私お伺いいたします。今まで六回も遺骨向うに送った、今度も送ろうとしておる。六回もやっています。その際に政府国交回復していないからと言って、政府が何も直接やらなくても、これをやる人たち十分援助してやることが必要じゃないか、政府がみずから手を出さなくても。そうしてまた向うに送る船にしてもそうです。まことにひどいボロ船を割当てている、まるでこじきを送るようなものだ、ああいう態度では私はいけないじゃないか。これは政府が直接やらぬでも、これをやる人たち十分援助をしてあげて、民間のなけなしの金を集めてやるということでなしに、政府がもう少し誠意を示されたらいいのじゃないかと思う。今日までいかなることをなさったか、もう少し私は詳しく厚生政務次官なり井上政務次官にはっきりお伺いいたしたい。政府が直接やらんでもいいのですよ。やる人たち十分援助しなければならぬ、誠意がない。
  22. 井上清一

    政府委員井上清一君) 六回にわたりまして遺骨送還いたしました際には、これは船も興安丸に乗せ、しかも慰霊実行委員会方々を船に乗せるとか、またその他いろいろな便宜供与をやってきたつもりでございます。
  23. 海野三朗

    海野三朗君 その際どのくらいお金を出されたか、船にただ乗せてやっただけでは私はどうもはなはだ冷淡だと思うのですが、どうですか。
  24. 井上清一

    政府委員井上清一君) 金の方は遺憾ながら出しておりません。
  25. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私一つ井上さんにお伺いしたいのですが、かねがねの一つの疑問なんですが、中国にいる民間日本人引き揚げ問題、それから遺骨を帰す問題、これはいずれもお話のように人道上の問題だと思うのですね。私の疑問は、国交が普通の姿じゃないから国としては正式に責任を負い得ない、これは従来の政府態度であったと思うのであります。国交回復しておらなくても、国交が正常な姿でなくても、政府としては当然にこういう人道的な問題については責任を負うべきじゃないか。当然責任を負うべきじゃないか。一体それは国際間の条約といいますか、国際法といいますか、あるいは慣例といいますか、そういうものでそれはできないというふうなことが一体あるのかどうか、私はふに落ちない。当然やはり、あるいは国交回復しておらないけれども中国において在留している日本人が非常な一つの苦境に、人道的な問題に立ったとすれば、これは当然日本の国の責任として働きかける筋合いじゃないか、何かそういう点について、国交回復しておらないという理由で手が出せないのだという国際法上の理由があるのかどうか、これを一つこの機会に御説明を願いたいと思う。当然それは政府としては名実とも責任を負うべきじゃないか、それをチェックする理屈はないのじゃないかと、こういうことであります。
  26. 井上清一

    政府委員井上清一君) 人道上のこれらの重要な問題に関して、中共との国交回復の現在において、政府が一体やっちゃいかぬというその国際法上の根拠があるかと、こういう御趣旨の御質問だったと存じます。国際法上のまあいけないというはっきりした、国際慣行なりあるいはまたそういう国際法もないと思いますが、しかし一般に国交回復の場合におきましては、国の政府が直接交渉するということは、もちろんできるだけ避けるというのが従来の慣行であるようでございます。従いましてまあ直接接触を避けまして、ジュネーヴにおきまする出先において便宜接触をしておるというような、きわめてまあどちらかと申しますと隔靴掻痒の感のあるような折衝ぶりであることは、これは事実でございます。そのほかにこういう国交回復の場合には政府が直接やりませんので、両方赤十字社が従来いろいろやっておるというのが国際的な慣例になっておるようでございます。
  27. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 できるできないの理屈になれば、政務次官お話のように私はでき得ると思う。民間政府の外交的の意味合いで努力するということ、それはまたそれとしていいのでありますが、しかしこういう問題については政府が進んでおやりになって、どこからも文句の来る問題じゃないと思うのですね。私はそう思うのであります。従来の慣例は別としても、こういうふうな慣例がそうそうあろうとは思えない。現にジュネーヴにおいて折衝されておるのは、やはり私は正式の国としての、政府としての折衝であろう思う。そこまで行っておるんですから遠慮される必要ないのだ、一体何に気がねをし、何に遠慮をしてそういう態度をとっておるか、はなはだ不可解千万なことですよ。名実ともに形式においても当然の責任を果されたらどうですか、必要な予算をとっておやりになってはどうですか。一体そのやることがどこに支障があるかということであります。
  28. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 ちょっと、できれば速記をとめていただきたいのです。
  29. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  30. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を起して下さい。
  31. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私は都留証言についてお尋ねをいたしたいと思いますが、今度都留重人氏が上院に喚問されて取調べを受けておられますが、第一に伺いたいことは、外交官としてのイミューニティを持っておる者以外の渡米者は、日本人ですが、何人でも召喚されるのかどうかということです。
  32. 井上清一

    政府委員井上清一君) 治外法権を有せざる限りにおきましては、アメリリ国内法によって召喚を受けました場合には、アメリカ国内におきましては召喚に応ずる義務を生ずると思います。
  33. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 第二に伺いをしたいことは、召喚を拒否した場合にはどういう処分を受けますか。
  34. 井上清一

    政府委員井上清一君) これはアメリカのたしか八十五議会の上院の決議、ならびに一九五〇年のインターナル・セキュリティ・アクト、一九四六年の立法再組織法、これらに基きまして証人として召喚することができるわけでございます、国内手続といたしまして。でこれに応じませんと、アメリカ国内法、それらの法律に基きまして罰則が適用されるわけであります。その罰則は罰金と、たしか禁固、ちょっとこれは不確実でございますが、罰金があったと思います。
  35. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 じゃ後ほどお調べ願って御答弁願いたいと思います。
  36. 井上清一

    政府委員井上清一君) 調べた上でお答えいたします。
  37. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 第三に、召喚に応じた場合に黙秘権を実行した場合には、どういう処分がございますか。
  38. 井上清一

    政府委員井上清一君) これはアメリカ憲法によりまして、黙秘権の行使はできるわけでございます。自分に不利な証言というものに対しましては黙秘することができます。
  39. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 ところが新聞によりますと、黙秘権を実行しましても上院を侮辱したという告発を受けている人があるように伺いますが、そうでございますか。
  40. 井上清一

    政府委員井上清一君) その点は十分私そういう事実を承知いたしておりません。
  41. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 なお一つお調べをいただきたい。
  42. 井上清一

    政府委員井上清一君) 研究をいたします。
  43. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 第四に、日本側も同様に日本におるアメリカ人を召喚することができますか、議会で。
  44. 井上清一

    政府委員井上清一君) 法律上できますと存じます。ただ治外法権を有せざるアメリカ人を国会に国政調査権に基きまして召喚をするということは法律上はできます。
  45. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 そのアメリカ人が召喚に応じなかった場合にはこれを処分することができますか。
  46. 井上清一

    政府委員井上清一君) 罰則を適用することができます。
  47. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 どういう罰則でございますか。
  48. 井上清一

    政府委員井上清一君) これは昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の七条によりまして、「正当の理由がなくて、証人が出頭せず、若しくは要求された書類を提出しないとき又は出頭した証人が宣誓若しくは証言を拒むだときは、一年以下の禁錮又は一万円以下の罰金に処する。」とございます。これが適用されると思います。
  49. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 それではその日本側の処分とアメリカ側の処分と、明確に一つあとで御報告を願いたいと思います。  その次に伺いたいのは、カナダのノーマン大使が自殺をしたことと都留証言とは関係があるとお考えになりますか、ないとお考えになりますか。
  50. 井上清一

    政府委員井上清一君) 私は直接関係があるとは考えておりません。
  51. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 その次にお伺いしたいのは、カナダのピアソン外務大臣がノーマン大使自殺について抗議的な声明を出しております。その内容の正確なものを委員会に提出いただけませんか。
  52. 井上清一

    政府委員井上清一君) 私どもは新聞でただ承知しているだけでございまして、正確なものをまだ手にいたしておりませんが、手に入れ次第当委員会に提出をいたします。
  53. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 日本側でピアソン外務大臣と同じような何らかの抗議をアメリカに対して出しましたか。また将来日本人の渡米に関し同様な事件が起るか否かに関して、アメリカ政府に問い合せなさったことがあるかどうか、いかがでございますか。
  54. 井上清一

    政府委員井上清一君) 都留教授の証言問題につきましては、このたびのような形で同教授が召喚されましたことは、国際儀礼上まことに私ども妥当ではないというふうに考え、また今後渡米いたしまする日本人に対して不安の念を与えるというようなこともあり、また日米間の知的交流のためによき影響をもたらさないというふうに考えましたので、今後同様なことが発生しないように善処方を在米大使館を通じ、今月の三日でございましたが、国務省に対して申し入れをさしたわけでございます。下田公使がこれに当りましたが、国務省当局は当方の申し入れの趣旨を十分了承いたしまして、わが方の申し入れの趣旨に沿って今後措置する、こういう回答がございました。
  55. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 ただいまの交換文書を委員会に提出していただけますか。
  56. 井上清一

    政府委員井上清一君) これはこちらとアメリカ大使館との間の文書がございますけれども、これはまあ私ども国内的な何でございまして、これは文書で下田公使が申し入れたわけではございませんで、口頭で申し入れております。アメリカ大使館とこちらとの文書はございますけれども、これはいろいろ外交上の関係がございまして、これをそのまま提出するというわけにはいかないと存じます。この要点につきましてはただいま申し上げた通りであります。
  57. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 この問題は、都留証言自身に関係するよりもっと広範な意味におきまして、日本人アメリカに渡航する場合にいろいろな問題を発生いたしますから、こちらから申し入れられた言葉通り委員会に報告なさらなくてもけっこうですが、日米間に暗影を残す問題でありますから、可能な範囲において報告を願いたいと思いますが、いかがですか。
  58. 井上清一

    政府委員井上清一君) 私がただいま申し上げました趣旨のことを申し入れ、また回答があったわけでございますので、文書でお答えを申し上げることは御了承願いたいと思います。
  59. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 私はただいまの御説明だけでは、日本人の渡米に関する杞憂を取り除くことができないと思います。何となればただいま一部を拝見しただけでありますが、この委員会における取調べは言葉の違う日本人アメリカ語でお調べになって、そうしてかなり辛らつなお調べであります。事実に基かざる推測を交えての尋問をしておられます。さようなことが今後アメリカに行く日本人のすべてに対してやろうと思えばできることであります。そのようなことは日米間の国交に関して非常な心配な陰影を与えるものでありますから、なるべくそのような疑惑を解かれることが、日本アメリカ両国のためであると私は考えるのでお伺いをするのでありまして、これははっきりと御説明になり発表された方が私は両国のためにいいと思いますが、いかがでございますか。
  60. 井上清一

    政府委員井上清一君) 私どもも全く鶴見先生と感を一にするものでございまして、日米間の親善の上から申しましても、まことに今度のことは遺憾であり、また今後の日米間の文化的な交流の面からもこうしたことがあっては相ならぬ、かような趣旨をもちまして、先ほど申し上げましたような申し入れを、在米大使館下田公使をして国務省に申入れをし、国務省から回答があったわけであります。私どもは国務省が今後こうした事態が生じないように、またこうした場合におきましては十分わが方の申し入れの趣旨を尊重いたしまして、アメリカ政府が措置をするということを申して参っておりまするので、このアメリカ政府の措置を私どもは信頼をいたしておるような次第でございます。
  61. 鶴見祐輔

    鶴見祐輔君 この議事録につきましては、ただいまちょうだいをしたばかりで内容を一部しか拝見をしておりませんから、私はただいま形式的な手続の問題についてお伺いしただけであります。内容についての私の発言は留保いたしまして今日の私の発言は打ち切ります。
  62. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の鶴見委員質問に関連して二点だけ簡単に。第一点は、先ほどお答えになりました、アメリカの国内法上これは可能だということだが、これをさらに日米間の関係として見るときに、それが法的にもそういうことが可能だということが可能だということを言われる根拠をお伺いしたい。それはつまり一般国際法上の原則からしてそう言うのか。あるいは現在の日米の通商航海条約の中に、私この点について、国会における証人尋問について特別規定があったかどうか記憶がないのですが、なければないで、それが今度はないから、すなわち一般国際法上それが向うの国内においてできるというのか。その根拠をお伺いしたいのが第一点。  時間を省略するので一緒に質問しますが、第二点は、今後の措置として日本側からそういう申し入れをされ、アメリカ側からそういう回答があったというが、これを現実に保障するためには、ただ単にそれだけで十分であるか。果してそれが国会をも拘束し得るようなものなのか。それから実際上それを法的にも保障するためにはこの点について、もし現在の日米通商航海条約にそういう点についての国民待遇の規定があったかどうか、私はっきり記憶していないのです。しかしないとすればその点についての特別の取りきめをする意向があるかどうか。この二点をお聞きしたい。
  63. 井上清一

    政府委員井上清一君) 外国人が他の国に滞在いたします場合におきまして、国会に国政調査権に基いて召喚を受けた場合に、証人として出頭しなければならぬ義務があるかどうか、これが国際法の一般原則に基くものであるか、あるいはまた日米間の特別な取りきめによって、こうした義務が発生するのか、こういうお尋ねでございましたが、これは一般国際法の原則に基いて、さような権利が国内法に生じてくる、というふうに私ども解釈をしておるわけでございます。領土主権の作用によりまして、一国に滞在する外国人は治外法権を有せざる限りにおきましては、国内法の適用を受けるわけであります。これはまあ法律論でございます。これがいいとか悪いとかいうようなせんさく、議論については別でございますが、一般法律論としては私はさように解釈することが当然である。かように考えるわけでございます。  で、今度の都留事件に関しまして、アメリカ国務省に対して申し入れましたことは、今度の召喚アメリカ国会によってなされたわけでございまして、これがアメリカ国会を拘束するかどうかという問題は、これはまあアメリカ国内の問題でございますが、私どもアメリカ国会に対して申し入れをするわけにはいきません。アメリカ全体を代表いたします国務省に対しまして、外交的な正式なルートによって、今度の事件についての申し入れをしたわけでございます。国務省から回答がございましたことによりまして、アメリカ一つの外交的な正式なルートを通じての回答と考え、今後は国会におきましてもやはりそうした趣旨で取扱いを受けるものと私どもは信じておるわけでございます。  また今度のこれらの事件にかんがみまして、特別な日米間の取りきめをやる必要があるかどうかという御意見でございますが、現在のところそうした特別取りきめをするという考え方を持っておりません。
  64. 竹中勝男

    竹中勝男君 だいぶ時間も経過いたしましたし、きょうは外務大臣も出ておられませんので、もう一、二点だけ簡単に御質問をいたして終りたいと思いますが、そうして次のできるだけ早い機会に、重要な問題であり緊急を要する点もありますので、私は外務大臣出席をお願いしたいと思っておりますが、先ほど中垣厚生次官から御答弁になりました点をこういうように理解してようございますか。すなわち、人道上の立場から、日本でなくなった、あるいは行方不明になっておるところの中国人についての調査並びに遺骨送還については、政府が今後さらに誠意をもって、政府責任においてこれをやる考えがある。政府責任ということは、政府が直接やるかどうかということはまた別問題としまして、あるいは日赤、あるいは慰霊実行委員会とか団体を通してやる。これは両国国交関係の現状にかんがみて、適当な妥当な方法で、ただし政府はどこまでも誠意をもち、責任をもって人道上のこの問題を解決することに当るという決意を持っておるというふうに解釈してようございますか。
  65. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 竹中先生お答えいたします。先ほどお答えいたしました中に、いま少し明確にしておきたいと思うところがございますので補足説明さしていただきますが、従来中共日本関係は、単にこういう双方の遺骨の問題であるとか、あるいは未帰還同胞の問題であるとか、そういうことだけでなく、文化交流や経済交流等におきましても、この民間団体等で行われてきたことは事実でございますが、今度政府の考え方が、新たに双方の遺骨とか未帰還者とかという問題は、これは人道上の問題であるという見地に立ちまして、政府代表機関たるジュネーブにおける総領事館の話し合いに今日なっておるのであります。そういうような、つまり従来の考え方を一歩進めて参りましたということは、すでに敗戦いたしましてもう十二年にもなっておるのでありますから、これをこのまま放置することができないという、絶対の必要から起きてきておる問題でありまして、この結果がいかようになりましょうとも、ただいまお尋ねのこれらの問題についての政府責任というものは、御指摘通りに何らかの形で政府責任を負うべきものであり、何らかの形で政府はこれに協力していかなければならない、かように考えております。
  66. 竹中勝男

    竹中勝男君 ただいまの点について、私はこれ以上御質問の形をとりません。政府が最も誠意をもって責任を感じながら、遺骨送還、あるいは中国人の行方不明の調査に当る、こういうように了解いたします。  そこで外務次官お尋ねしたいのですが、国会議員を、この未帰還者調査を取りつけるために打診といいますか、そういう点で送るという場合には、これは国会自身が決定することですけれども政府がそれを閣議で了承しておられるわけですからお尋ねしたいのですが、これはただ引揚特別委員会だけの仕事ではないと思います。また衆議院だけの仕事ではないと思います。現に引揚担当の国務大臣をしておられた笹森先生が、今外務委員会委員長をしておられる、あるいは外務委員会自身がこの問題を取り上げてきておる、参議院では。また参議院にはこの特別委員会というものはないのですけれども外務委員会及びかつては社会労働委員会においてこの問題はずっと触れてきております、ある時期には社会労働委員会の中にこの問題に関する小委員会を作りまして、私がその委員長をしておったこともあります。そういう関係でこれはただ衆議院だけにはかるというものではなくして、両院の議員というものを対象にして、対象というが両院の議員というものによって議員団というものは構成さるべきだと思いますが、その点について外務省の御意見はいかがですか。
  67. 井上清一

    政府委員井上清一君) 全く同感でございまして、たまたま衆議院引揚特別委員会におきましてこうした話が出たのがきっかけでございますけれども国会からお出かけを願うということにつきましては、これは衆議院からも参議院からもおいでになっていただく方が、より一そう効果的であると、こう考えております。
  68. 竹中勝男

    竹中勝男君 それに関連することですけれども、これは当然のことだと思いますが、与党野党を通じて国会代表する者、こういう意味に了解してよろしうございますか。
  69. 井上清一

    政府委員井上清一君) 与野党という別なく国会というお立場において、ということで了解をいたしております。
  70. 竹中勝男

    竹中勝男君 それで、先ほど井上政務次官が申されました現状不明者というものは三万人ある、中国関係において。その資料政府においてわかっておられますか。
  71. 中垣國男

    政府委員中垣國男君) 中国における未帰還者名簿はようやくでき上りまして、約三万五千六百余名でございます。すべて内地におきまするところの本籍地、氏名等も明らかになっておりまして、それができ上りました。それを近くジュネーブに送りまして、そうして向うの方で正式に交渉いたします。それで私から御答弁申し上げることではないと思いますが、そういうことの促進に役立つように、与野党こえての国会議員の方の御協力がありますれば、これらの問題の解決が非常に促進される、かように考えております。
  72. 竹中勝男

    竹中勝男君 今、中垣先生の御答弁、大へん私ども明るい見通しがつくというお考えは、もしできれば実にこれは未帰還者遺族、国内問題にしても、将来の日中の関係の調整の上にも、非常に大きな役割を果すと思って、心強く思っております。しかしながら、同時にまた反面には、なかなかむずかしい点もあると考えざるを得ないと思うのです。これはもう私が遺骨を持って参りましたときに、周恩来総理と会いましたときに、未帰還者の問題に触れましたのですが、そうしましたら周総理は、はっきり私に、これは日本がこうやって中国人遺骨をわざわざ丁重に持ってきて下さるのであるからして、中国政府もまた日本人調査というものには乗り出さなければならないと思う。しかしながら実は中国政府にはその資料がないのだ、前の戦争中のことであるから資料はないのだ、それで日本のその資料を提供してもらいたいということを、一昨年の末に私は聞いてきておるのです。ところがどうも日本の現状不明者の調査というものが、どの程度信憑性があるものか、これだけ日本にあるぞといって向うにいわゆる押しつけがましく提供できるものであるかどうかということについては、十分御検討願いたいと思うんです。これは主として国内の問題でして、中国に必ずこれだけ、生きておるか死んでおるか、とにかくおるんだというふうな先方に対する資料の何といいますか渡し方というものは、警戒しなければならないと思いますが、その点について御意見を伺っておきたいと思います。
  73. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 竹中先生の御懸念の点ごもっともと思います。三万五千余名の名簿は、つまり日本の国内で帰還者の証言あるいは現地からの通信によって、その人の最後の消息のあった時期と場所が書いてございます。それはありのままが書いてございます。国内においてわれわれが既得した資料をそのまま、ありのままに書いてあるのでございます。もちろん帰還者の証言等の中には記憶違いというものもあり得ると思います。いわゆるテクニカル・ミステークというものがあるかもしれません。しかしそれは事実は事実なんです、こういう証言をしたということは。これをこのまま向うに出しまして、そうして可能なる限り、この中からわかっておるものについて回答を願いたい。従って少くともこの名簿に載っておる人の中で、現在中国の地域内において生存しておる方についてはわかるんじゃなかろうか、すでに死亡した方々に対しましては、ああいった事情でございますので、必ずしも、ソ連の場合と違って、資料はととのえていない場合が多いと思います。その場合におきましても、日本の軍が管理しておった病院で、死亡者記録というものはそのまま置いて帰った場合も少くございませんし、私どもの方ではどこどこに当時これだけの資料を置いてきたという資料も持っておりますので、これはすでに紅十字会に提出してあるわけであります。従ってすでに死亡した方につきましては、可能な限り、わかり得る限り通告してもらいたい、こういうふうに考えております。先ほどお話にありました通り、未帰還者の事情はソ連の場合と若干、あるいは相当違う点があると思いますので、その点あたりから、向うへの依頼の仕方につきましてはよほど注意して、あるいは納得のいくようにしていかなければならないと、こう思っております。
  74. 竹中勝男

    竹中勝男君 私の質問は次回に譲りたいと思いますが、最後に私は参議院の外務委員会の記録として残したいことは、先ほど海野委員から、一体政府人道上何をしたか、という御質問がありまして、むしろ政府は非常に遠慮がちに、それに対してあまり大したことはしてないように御返事になりましたが、しかしながら私、委員として発言しておきたいことは、政府は相当誠意を持ってやったということを、やはりここではっきり申しておきたいと思う。なぜならば日中の国交回復はしてない現状、ことに蒋介石、台湾政府を承認しておる日本、あるいは複雑な国際関係の中に置かれておる日本、それから日本政府、そういう中において実際にこれの衝に当った厚生省田邊援護局長や、外務省中川アジア局長初め、可能な限りにおいては遺骨送還に対して、人道上最大限度の可能な限りにおいて協力してきたということを、私はこの記録に残して、今後の交渉に、この問題の解決に当りたいと思っております。以上です。
  75. 井上清一

    政府委員井上清一君) 先ほど梶原委員からお尋ねの件で、答弁漏れの件がございますので、この際お答え申し上げたい。引き揚げというような人道上の問題について、国交が未回復でありましても、両国政府間の直接交渉は差しつかえないじゃないか、これはもちろんさようでございます。で、現在ジュネーブでやっております交渉も、さような意味においてやっているわけでございます。ただ、やり方でございますが、やはり国交回復でありましても、その間のいろいろな諸般の事情から、その直接交渉のやり方というものはおのずから出てくるものだと考えておるわけでございまして、現在におきましては中共わが国との政府間の交渉ルートというものは、いろいろな方法があろうかと思いますけれども、まずとりあえずのところはジュネーブにおける接触を一本にいたしまして、そのほかにいろいろな接触を持つということはこの際は避けていきたいと、かような考え方でおるわけでございます。これは一にかかって国際間の諸般の事情を考慮してでの上でございます。  それから竹中委員の御意見でございますが、まことに同感で非常に御理解のある御鞭撻をいただいたわけでございますが、今後この問題については政府といたしましても誠意をもって事に当って、できるだけすみやかに本件の終結をはかって参りたいと、かように思う次第でございます。
  76. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  77. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を起して下さい。
  78. 海野三朗

    海野三朗君 先ほど政務次官からお答えになりましたのは、私率直に申しまして一つも要領を得ないんです。私のお伺いしたのは、あの遺骨送還の際に、具体的にどれだけ政府が骨を折っておるかということを伺いたい。で、事務当局の方で御承知かもしれないから、事務当局の方から詳しい説明を承わりたい。あの船を向うにやる、そのときに何人くらいの人がこっちからついて行って、その際にはその行った人たちに外貨はどれだけ割り当てておるか。またその経費はどれだけ国から援助したのか。一つもしないか。ただ船を出しただけか、それがどうか、その辺のところをもう少し詳細に承わりたい。事務当局でもけっこうですから。
  79. 中川融

    政府委員中川融君) ただいま御質問の点でございますが、これは従来の政府のやっておりました措置といたしましては、先ほど政務次官が御説明いたされました通り、引揚船を利用して遺骨送還に当らしめたということでございます。引揚船は、最初の第一回は引揚船とは別個の船を仕立てまして出したのでありますが、第二回目からは原則として興安丸に遺骨をお乗せしてお送りしたわけであります。その際にどういう人がついて行ったかということでございますが、これは御承知の通り一般華僑の送還につきましては、民間の三団体というものが当りまして、三団体の職員が船に乗って世話して向うに引き渡したのであります。この船につきましては、慰霊実行委員会というものが別にございますが、慰霊実行委員会の方が奉持団というものを組織されまして、奉持団が大体十五人ないし十八人くらい船に乗っていきたいというたっての御希望でございますので、これは奉持団の方々が無料で船に乗っていかれることを政府といたしましてお認めしたわけであります。  外貨の割当というお話もございましたが、この送還船は原則として外貨は一文も要らないということで組織されたのでございます。船に乗っている間は全部政府の費用でまかなうわけでございます。厚生省が諸般の事務に当ったのでございます。私の記憶いたしますところでは、当初厚生省は、慰霊実行委員会方々は正式の意味での華僑の送還の事務に当らないから、この方方から少くとも食費は取るべきだという会計技術上の見地から、そういう意見もあったのでありますが、厚生省としてはこの方々も結局ほかの人たちと同じように別に食費というものは特にお取りしなかったのじゃないか。私はっきり記憶しておりませんが、そういうようなことだったんじゃないかと思います。なお、現地に行かれまして上陸されて後の三、四日、あるいは天津、あるいは北京等に連絡のため滞在するのが例でございますが、この方は大体引き揚げ関係で行かれる方も一緒に全部先方側のいわば接待という格好になっておったと記憶いたします。従ってこの方も外貨は要らないのでございまして、その意味で外貨の割当ということは特になかったわけであります。  以上総括いたしますと、政府としてとりました協力の措置、お世話の措置というものは、結局船を仕立てた船にお乗せするということを政府がお認めして、そうしてなお慰霊実行委員会の方が奉持団を組織してそれに乗っていかれるということも、政府としては御同意した、そういう格好で従来六回この遺骨送還に当っておったというのが実情でございます。
  80. 海野三朗

    海野三朗君 今後もそういう態度でよろしいとお考えになっていらっしゃいますか。どうですか。
  81. 中川融

    政府委員中川融君) この問題につきましては、もう一昨年ごろから従来の慰霊実行委員会がお世話をするという態勢を変えるべきではないかという議論が、これはこの衝に当っておられる民間側の関係者の方々からも御意見が相当強く出ておりまして、御趣旨としてはむしろ政府がいわば実質的な責任に当り、形式としてはたとえば日本赤十字社に委託して遺骨送還に当らしめるという形をとるべきではないかという御意見がありまして、政府も大体その考えに御同意いたしまして、たしか国会方々も中にお立ちになりまして、慰霊実行委員会側と政府及び日赤側といろいろお打ち合せをしてきたわけであります。ところがその際に従来慰霊実行委員会が使われた経費等を、どう跡始末をするかというような問題等もからみまして、なかなか話が合わないままに推移してきたというのが実情でございます。政府としては事の人道上の性質にかんがみまして、これは何とか政府としても直接力を入れてやるべきではないかという考え方に持ってきておるのでありまして、その考え方にはいまだに変りはないわけでありまして、ただいままでの形はこの話がつかないままに便宜従来の形を継続してこの送還に当っておるのであります。できればできるだけ早い機会に円満にこの話し合いをつけまして、政府が実質的に責任を負い、日本赤十字社等が政府からの委託を受けて、送還の事務に当るという格好の態勢に切りかえたいと、かように考えておるのであります。  今この次の第七次の送還は果してその形でできますかどうか、これは時間的な関係もありますので、あるいはむずかしいかとも思います。しかし将来としてはぜひそういう形に切りかえるようにしたいと考えまして、内々政府部内で協議しておる実情でございます。
  82. 海野三朗

    海野三朗君 その慰霊実行委員会にはお金を政府ではお出しになっておりましたか。今までは。
  83. 中川融

    政府委員中川融君) 事の起りから申しますと、これは純然たる民間側の御発議という格好でこの企てが行われたのでありまして、民間の国民的な運動として従来までも行われてきておるのであります。従って、政府慰霊実行委員会に補助の意味で資金をお出しするということはやっていないのでございます。
  84. 海野三朗

    海野三朗君 民間の人がみな金を出しているのでありますから、政府もやっぱり金一封ぐらいは包んでお出しになるのがほんとうじゃないですか。どうなんですか。そこはあまりに私はしゃくし定木ではないかと思うのです。
  85. 中川融

    政府委員中川融君) 政府としても事の人道上の非常に有意義なことでございますので、また現地からの引き揚げあるいは状況調査に非常に役立つ事柄でもございますので、実質的にもできる限りの御援助をしたいと、かように考えておるのであります。  先ほど申し上げました話の中にも、従来の経費につきましてこれをどう始末するかということをちょっと申し上げましたが、その際も政府としてはまだ予算の形ではなかなか大きなことはできませんが、ある程度のことは政府としても負担をしてもいいのじゃないか、かような考えで話を進めてきておったのでございます。
  86. 海野三朗

    海野三朗君 私はそういう際に予算のこともありますからたくさんのことはできないにしましても、みんな慰霊実行委員会人たちはポケット・マネーを出したのです、実際は。私も包んだのです、行く人たちに対して。それくらいのみんな熱意を持っているのであるから、政府としても、たくさんの金ではなくても、やはり金一封くらいお包みになるのが私は常識的なあり方ではないかと思うのです。どうなんでしょうか。政務次官一つお伺いしたい。それは慰霊実行委員会というものではみんなポケット・マネーを出してやっている。そういう際には政府はなんほかでもお包みになるのがほんとうじゃないか。
  87. 井上清一

    政府委員井上清一君) 慰霊実行委員会が非常に多大の犠牲を払って有意義な国家的な仕事をやっていただいておるわけで、それに対しては敬意を払っております。従来どうもそういう団体の御行為に対して甘えておったようなことがありまして、この点は私ども遺憾に存じます。今後いろいろ仕事を切りかえまして、政府側としてもこの問題に対して相当突っ込んで努力をいたさなければならないことに相なろうと思いますが、そういう機会一つできるだけ財政の許す範囲内において、何とか考えていきたいとかように考えております。
  88. 海野三朗

    海野三朗君 外貨の割当については、今アジア局長お話で大体わかりましたが、そういう際に、向うに行ってお客さん扱いをされるということは、どうも私はおかしいのじゃないかと思うのですがね。やはり多少なりとお金は、行く人たちにはなんほか外貨を割り当ててやるのがほんとうじゃないか。向うへ行くのだから向うでごちそうになるからいいという考えはいかんのじゃないか。私はその点について昨年アメリカに行って来ました。その際に、向うからの招待だからといって、外貨を三十ドルきりしか割り当てていない、大蔵省は、三、四週間の滞在に対して。向うでは非常に困ったのです、私は。つまり政府のやり方はやみでやれという態度であって、私は非常にこの点は事重大である。この前の臨時国会では一萬田君は小さいことだと言った。小さくはない。やみドルの問題がその間起っている。実にけしからぬ態度であると私は思う。そういう際にはもう少しお考えになって、親切がそこにあってもいいのではないかと思いますが、どうなんですか。
  89. 井上清一

    政府委員井上清一君) どうも従来外貨が窮屈でありました関係で、いろいろの面でその点が大蔵省では渡航の関係は外貨を詰めておりましたために、いろいろの面に御迷惑をかけておったと思うのです。大蔵省の考え方としましては、遺骨を送ります場合には、船に滞在しておればそういう金もかからぬじゃないかというような考え方でありますけれども、実情をいろいろ伺ってみますと、いろいろなやはりそれだけでもいかぬような面もあるように思いますので、今後一つ大蔵省ともよく相談いたしまして、もし割り当てられる余裕のあるものなら割り当てるように一つ考えていきたい、こう思います。
  90. 海野三朗

    海野三朗君 それで、私は委員長にお願いいたしたいのでありますが、次の委員会のときには大蔵省の為替を扱っておる方の人、それを呼んでいただきたい。私は外貨の関係についてどうもこの前の臨時国会のときから得心がいかないのでありますから、きょうはこれであと質問を打ち切りますけれども、外貨関係について伺いたい。どうか呼んでいただきたい。
  91. 笹森順造

    委員長笹森順造君) さよう取り計らいます。速記を止めて。   〔速記中止
  92. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 速記を始めて下さい。本日審議未了の中国残留行方不明者に関する件、並びに本日審議の予定として公報掲載の諸案件は、次回において引き続き審議することといたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認めます。さよう決します。  なお先ほどお打ち合せの通り、本月下旬、大村韓国人収容所と下関市に委員派遣いたしたいと存じます。派遣要求書についてはこれを委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 笹森順造

    委員長笹森順造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。次回は四月十六日午前十時に開会いたします。本日はこれにて散会いたします。