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説明員(富岡延一君) ただいま辻事務
局長から御説明がありました点をさらに補足いたしまして、現在再
審査中の三件の事件につきましての
内容の概略を御説明申し上げます。
まず、フランス国の要請にかかわりますサンタフェイ号という船舶でございますが、これはインドシナのサイゴンに本店を有するインドシナ傭船会社のもともと所有船舶でございましたが、当時パナマ国籍を有するかどをもって
日本海軍に拿捕されまして、
捕獲審検所の検定の結果、没収の検定を受けた事件でございます。この事件の再
審査の要請が出ましたのは、去る
昭和二十八年の十月の末でございましたんですが、自来仏国側と、ないしは当事件の弁護人でありますザバドー氏との往復何回かにわたります
論議の結果、ただいまこの事件に関連いたしまして、これにつきまして、なおそれ以外に、仏国の海事商法の学者でありますリぺール教授ないしはパナマ国の国際法学者であるアルファロ博士がこれについての
意見書と申しますか、鑑定書と申しますか、いろいろ当時の国際法の立論において、当時の検定者のとっておりました
意見書と相当違った両学者の鑑定書をつけて、ザバド一氏から送ってきているわけであります。その述べております前提となる事実
関係につきましても、若干の食い違った点がございます。また、従いまして、当時の拿捕臨検調書に記載されております事実
関係と相当食い違った証拠の提出も可能だということで、相手国からかような申し出もございますので、ただいま申し上げましたような
経緯にかんがみまして目下その証拠の提出と、それからそれに関連いたしましていろいろこちらから
質問している事項もございますが、その返事を待っているような次第でございます。従いまして、この返事が参りますれば、比較的早期に解決はつくんではないかと思いますけれ
ども、それではいつということは、やはり相手側の主張もございます。で、何分外交機関を通じて往復——そういう
質問をいたしたり、また回答を求めたりいたしておりますので、なかなか国内での
調査なり、捜査のように簡単に参りませんので、時間の点につきましては、はっきり申し上げかねる次第でございます。
それから次にギリシャ
政府からの要請にかかりまするエラト号と、それからバレンタイン号の二つの事件がございまするが、これはもともとギリシャの要請にはかかりまするが、本来中国人が所有していた船舶で、戦時中にギリシャ人のジョンシー・スカラディリスという人に所有権の移転を行いまして、それでギリシャは当時戦争
関係にあるということで、もちろんこの当時ギリシャの戦争
関係にあったかどうかということは、また、国際法上の問題になろうかと思います。再
審査中におきましても問題の点でございまするが、一応戦争
関係を前提としてギリシャ船籍の船を拿捕したわけでございます。ところが、当時は訴願いたしました人は中華民国人でありまして、ギリシャ人の所有は、これは虚偽仮想の所有権移転であるから、その所有権の移転は無効だということで、自分のものだから取り消してくれという訴願をしていたわけでございます。しかしながら原検定におきましては、ギリシャ人の所有、ギリシャ船籍を有するということで、没収はいたしておりません。で、これらの点につきまして、目下ギリシャ
政府の方へ、訴願人の訴願の
理由と異なる根拠に立つものかどうかということについて問いただしております。で、ごく最近でございますが、ギリシャ
政府との間に外交機関を通じて数次往復照会、回答等を求めておりましたのですが、一向はかどりませんので、いろいろ督促いたしまして、ごく最近、昨年の暮れになりまして、これに対して弁護人を相手国はつけまして、最近その弁護士から、それに対する回答が出てくる
段階となっておりまするが、つい先日の模様では、近日中に回答書を出したいと申しておりまするので、これもその回答が出て参りました上で、しさいにそれを
検討いたしまして、あるいはさらにその事実
関係の
調査を必要とするかいなかという点につきまして、従って、これも時間の点につきましては、それは一カ月なり、あるいは二カ月で片づくかということはちょっと申し上げかねますので、まことに不十分な回答でございますが、何分、これも訴訟と同じような事件で、相手から新しい証拠でも出されますれば、これを全然討議しないわけにも参りませんので、ただいまのところは、以上申し上げたような次第でございます。