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1957-02-14 第26回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十四日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席分科員    主査 坂田 道太君       小川 半次君    川崎 秀二君       周東 英雄君    橋本 龍伍君      山口喜久一郎君    山崎  巖君       山下 春江君    岡本 隆一君       堂森 芳夫君    平田 ヒデ君       柳田 秀一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         建 設 大 臣 南條 徳男君  出席政府委員         厚生政務次官  中垣 國男君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   小熊 孝次君         文部事務官         (初等中等教育         局初等特殊教         育課長)    上野芳太郎君         厚生事務官         (大臣官房参事         官)      黒木 利克君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君     ————————————— 二月十四日  分科員山口喜久一郎君、井堀繁雄君、勝間田清  一君及び島上善五郎辞任につき、その補欠と  して山下春江君、平田ヒデ君、岡本隆一君及び  堂森芳夫君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  分科員山下春江辞任につき、その補欠として  山口喜久一郎君が委員長指名分科員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算文部省厚生省  及び労働省所管昭和三十二年度特別会計予算中  厚生省及び労働省所管     —————————————
  2. 坂田道太

    坂田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  本日は昭和三十二年度一般会計予算中、文部省所管厚生省所管及び労働省所管並びに同特別会計予算中、厚生省所管及び労働省所管についての審査を行います。  質疑を許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森分科員 私は厚生大臣に対しまして二、三の質疑を行いたいと思います。  石橋内閣が成立しまして、総理社会福祉国家を建設するのだ、こういう大きい抱負を述べられました。そして昭和三十二年度の予算におきましても、いろいろと新しい費目を設けられたことに対しまして、私は心から喜ぶものであります。そこで厚生大臣にまずお尋ねいたしたいと思うのでありますが、もちろんいろいろの重要な施策社会保障制度推進のためにおやりになる抱負を持っておられると思いますが、目下日本社会保障推進という立場からいって、どういうような事柄が最も重要であるというふうにお考えになるか、一応お答えを願いたいと存じます。
  4. 神田博

    神田国務大臣 堂森委員お答えいたします。ただいまのお尋ねは、石橋内閣福祉国家を作る、社会保障の充実をうたっておるが、その社会保障をやる方法は、一体どういうところを重点として考えておるのかというような意味にお伺いいたしたのでございます。そういう意味お答え申し上げたいと思います。  政府といたしましては、現下の社会状態に照らしまして、社会保障を充実するということはもとより当然でございまして、この方法は多岐多彩にわたるわけでございますが、三十二年度の予算対象として申し上げますると、そのうちとりわけ重点的に国民保険を実行いたしたい、四ヵ年計画をもって国民保険をやって全国民医療保障一つやり遂げたい。国民生活の中に医療費占むる割合というものは実に膨大なものであるのでございまして、これはどうしても一つ大きく取り上げまして、国民医療費の軽減をはかりたい、こういうことで国民保険を最も大きく打ち出したわけでございます。  そこで、それと関連いたします問題は、国民病といわれておる結核撲滅いたしたい。医療の中に占めておる結核の比重というものは、これまたきわめて大きな割合になっておりますので、この結核撲滅を徹底的にやりたいという意図を持ちまして、十年計画でやる。それについては三十二年度においては、とりあえず早期発見早期治療、また新薬も併用して療治を十分やりたい。あるいはまた輸血であるとか麻酔であるとかいう費用についても政府において全額を負担して、一日も早く結核撲滅に対する手を推し進めていきたい、こういう意図を持ちまして大きく打ち出したわけでございます。そのほかこの線をやるにつきましての方途といたしまして諸般の予算を組んでおることは御承知の通りだと思います。
  5. 堂森芳夫

    堂森分科員 ただいま厚生大臣から御答弁をいただきました。私はもちろん国民保険ということがきわめて重要な施策であることは納得いたすのでありますが、私といたしましては、もう一つ、二つ重要なものを落しておられるのじゃないか、こう考えるわけであります。と申しますのは、厚生省の三十年に調べました基礎調査を見ましても、日本の総人口の中で約九百七十万をこえる人たちが、生活保護法対象にはならないけれども、全く生活保護法対象すれすれのような、きわめて低い生活をしておられる、こういうことが厚生省調査によっても発表されておるのであります。九百七十何万という数字と申しますると、日本の総人口の約十分の一であります。あるいは十分の一をこえるわけでありまして、日本人口の一割が非常に低い生活をしておる。こういうような状態にあることは看過することができないわけであります。この内容を見ますると非常に複雑であります。この九百万をこえる人たちをいろいろ分類いたしてみますると、たとえばおよそ三割くらいは耕地面積が三反歩ぐらいの非常に零細農家人たちである。約三割ぐらいがそれに当る。あるいはまた常用労働者ではあるけれども、賃金が低い、あるいはまた小さい資本で商売をやっておる、あるいはいろんな工業でもようございます、自営業者として働いておる、そういう人たちを含めまして、約六割何分かが低額所得者ボーダーライン階層と申しますか、そういう人たちの中に含まれておる。こういうことも厚生省の白書にも発表されておるのであります。こういうような人たちの中にはもちろん母子世帯というものが含まれております。大体老人世帯母子世帯合せましてボーダーラインのおよそ三割くらいを占めておるのではないか、こういわれておるのであります。また母子世帯及び老人世帯全体の四割は低額所得者ボーダーライン人たちである、こういうような状態であります。こまかいことは申し上げますことを省きますけれども、こういう人たち対策、こういうものは私はきわめて緊急を要するものであると思います。厚生大臣はどのような政策を持ってこうしたボーダーライン人たちに対して対策を立てて参るおつもりでありまするか、その辺を一つ答弁願いたいと思います。
  6. 神田博

    神田国務大臣 ただいま堂森委員のお述べになられました、今日の社会層におけるボーダーラインと称されておる一千万人前後に及ぶといわれたその大衆にどういうような対策を立てておるか。この対策を立てることが一番重要ではないかという御意見は私も全く同感でございまして、厚生省といたしましても政府といたしましても、このボーダーライン層生活をいかにしたら引き上げることが可能か、こういうことに実は非常な勉強をいたしたのでございます。特にこの神武以来の景気といわれておる際でございまして、所得の差がだんだんついてくる際でございます。このボーダーライン層生活向上ということは、これはもう今日の社会情勢においては最も重要なことであると考えまして、十分案を練ったわけでございますが、三十二年度の施策といたしましては、先ほども申し上げましたように、広い意味でいえば皆保険実施によって受益もいたして参りましょうし、それからこの生活保護法基準引き上げをいたしまして、この基準引き上げによってボーダーライン層の何がしかがこの基準引き上げに該当いたしまして国家保護を受ける。また今お述べになられました母子世帯に対する保護の問題、これにつきましては今まで五百円という母一人の加算でありましたが、これを一千円に引き上げる、このことによりましてやはりこれは基準引き上げでございますから、ボーダーライン層に何がしか、これが上っていく。これは今日まででは十万家族といわれたんでございますが、この母子加算を千円に引き上げた結果、新たに五万家族母子加算受益をする。さらに世帯更生資金でございますが、世帯更生資金貸付をすることにいたしたい。世帯更生資金は、従来は狭い意味世帯更生、すなわち何か職業を対象として、それに必要な道具を買うための貸付資金というようなことに考えておったのでありますが、今度はこれを幅を広くして、世帯更生に必要なもっと広い意味資金にしたい。そこで高利かなんかで悩んでおられる、あるいはまた台所を改造したい、何とか主婦の荷を軽くしたい、便利にしたいというような、そういった方面まで対象として貸付範囲を広げたい。これも今まで一億円の予算でありましたのを三億円に増額いたしまして、さらに母子福祉資金の額につきましても、一億四千万従来よりも増額いたしまして、総額では五億九千万という金額に相なっております。さらにボーダーライン層生活の一番困る問題は医療費でございまして、この医療費関係生活困窮者になった例がきわめて多いのでございます。これに対しまして、今度は一つ新たに医療費貸付制度を創設いたしまして、しかも医療費貸付は一定期間償還し得る能力の出るまでは無利子にして貸そう、こういうような計画をもちまして、これも二億円ほど計上いたしたのでございます。さらに母子福祉資金あるいは世帯更生資金医療貸付資金については、政府が三分の二持とう、今まで母子資金世帯更生資金は二分の一しか政府が持っていなかったのでございますが、地方財政関係もございましてこれらの資金が全国的に流れなかった。これを今度は三分の二政府が持つことによりまして、全国の各府県もこれに足並みをそろえて、これらの資金が十分有効に動く、こういうようなことを考えまして、今申し上げましたように、低所得階層に対しましては——もちろん低所得階層からも大きな声で要望されておったのでございまするが、民生委員児童委員あるいは福祉事務所、これらを担当しておる側から非常な大きな声で要望されておったのでございますが、今日までこの実現を見なかった。これを今度の三十二年度の予算におきましては、今申し上げましたように、金額にしまするとまだ足りないというようなことに相なることは想像できまするけれども、三十二年度にとにかくここまでこぎつけた。三十三年、三十四年においてはなおこの結果を見まして、低所得階層に対して、今堂森委員が御心配になられておるような点は、私も同感でありまするから、十分の処置を進めて参りたい、こういう考えでございます。
  7. 堂森芳夫

    堂森分科員 ただいま建設大臣が来ておられまするから、ボーダーライン階層人たち住宅問題がきわめて大きな問題になっておりますので伺いたいと思います。ただいま厚生大臣から御答弁をいただきましたことに対しましては、また後ほどいろいろと質疑を展開して参りたいと思います。ともかく低額所得階層ボーダーライン階層人たちには、総合的ないろいろな対策が必要であると思うわけでございます。その一つとして、やはり住宅問題はきわめて大きな問題であります。本年の予算を見ておりますると、特に住宅問題については、石橋総理もまた池田大蔵大臣も、非常に景気のいいことを言っておられまするが、しかしながら実際来年度の住宅建設計画を見ておりますると、たとえば公営住宅を見ますると、第一種では五千四百戸くらい減っております。それから第二種で約五千戸くらいふえておるわけであります。合計しますると、公営住宅が減って、公庫住宅とか公団の住宅というものがふえている。これは時代の要求と申しまするか、生活に困っておる人たちに対する住宅対策ではなしに、頭金を何十万とか、あるいは相当自分で負担できる人たちに対しては、割合親切な住宅政策であるけれども、今度の公営住宅の減少ということを見ておりますると、これは非常にわれわれとしては大きな不満を持つわけであります。そして私はこう思うのであります。戦前の統計を見ておりますると、大体俸給の一割五分くらいが住宅費であった。戦後のいろいろな統計を見ますると、大体六%くらいしか住宅費には回せない。特に低額所得者では従来の公営住宅家賃すらなかなか困難である、こういうような状態であります。私もいろんなところを歩きますると、公営住宅の従来の第一種、第二種、こういうものよりもさらにもっと安い、たとえば七百円とか千円くらいとかいうような、安い家賃で入ることができるような第三種公営住宅と申しまするか、そういうものを非常に強く要望する声が全国的にあるわけであります。厚生大臣にも後ほどいろいろと御意見を聞きまするが、建設大臣はこういうような声をお聞きになっていないのかどうか。あるいは来年度の予算はこうであるが、今後はそういうことに対して大いに考えていく、あるいは必ずもっと安いものを建てていくというような御意思があるかどうか、承わっておきたいと思うわけであります。
  8. 南條徳男

    南條国務大臣 ただいまの公営住宅に対する御質問でございまするが、お説のように、今年の予算では昨年並みの四万六千戸の公営住宅の数であります。その内訳は、一種よりも二種の方を特に低額所得者のために増加した方がよかろうという考えで、五千四百戸ほど昨年よりもふえております。さような考えで二種の方をふやしておるのでありますが、お話のような、もっと安い家賃住宅を建設する考えはないかというお説につきましては、これも厚生省等におきましては予算折衝のときにそういう考えもあったようでございました。しかし本年の財政計画の面からいいまして、今それを直ちに実施するということは困難ということで、とりあえず低所得者に対しまして第二種で間に合わしてもらおう、これは家賃が大体八坪くらいで千百円くらいで入れるのでありますから、生活保護者でも住宅補助金などがありまして、家賃全額くらいはこれで出るわけでありますし、その程度の人ならば第二種の家賃でも利用できるということを考えまして、今年はそれ以下の家を作らなかったというわけであります。将来はかような点についても十分厚生省とも連絡をとりまして、考える必要があると考えております。
  9. 堂森芳夫

    堂森分科員 けっこうでございます。  ただいま神田厚生大臣から御答弁がございましたが、私は厚生大臣からただいまのような答弁があるだろうということを予想してお聞きしておったわけであります。母子福祉貸付金が一億何千万円かふえた、あるいは医療費貸付制度で二億出したということでありますが、今日九百万もいるといわれておるところの低額所得者人たち、こういうような人たちはどうしても罹病率も高いし、またそういう家庭で育てられる児童は環境が悪いですから、従って知能の発育も悪い。いろいろな問題があるわけであります。来年度の予算を見ておりますと、さっき生活保護法基準を上げた、こうおっしゃっておられますけれども、対象人員といいますか、数はうんと減っておるわけです。そうして従来はおそらく百七十万人ぐらい月々あったのが、今度は百五十万人ぐらいに対象が減る、こういうことで大幅な対象人員の削減が一方では来ておるわけであります。これは数字のからくりで、基準をふやしたからこれはどうだ、こういうふうには私はそのまま受け取れないと思うわけであります。とにかく今日非常に多数の人たち低額所得のもとに暮しておる。そうして戦後一時は割合貧富の差も縮まってきたという傾向もございましたが、今日ではますますこうしたボーダーライン人たち生活は、一般人たち生活向上とは引き離されていく。こういう状態にある人たちに対して、さっき御答弁になったような、あるいは予算書に書いてあるような額のそうした対策というものは、私は全く弥縫策であろう、こう考えて間違いないと思うのであります。そこで今日といたしましては、こういう人たちに対して生活費保障といいますか、あるいは後ほどお尋ねして参りたいと思いますが、年金制度というものを考えていかなければならぬと思うわけでありますが、大臣はいかようにお考えになるのでございましょうか。
  10. 神田博

    神田国務大臣 堂森委員お答えいたします。第一点の年金制度お答えを申し上げる前に、最初に要保護者の頭数が昨年は百七十六万ですか、今年は百五十万台になっておる。基準を上げたのだけれども、対象人員が減っておるじゃないかということでございますが、これはお説の通りでございまして、これはやはり今度の景気がこの方面まで来ておるということを物語っておるのではないかということ、毎月一%くらいずつの割合をもって要保護者が減ってきているのであります。これは私要保護者がどういう数字で動いているかということをいろいろな角度から調べてみたのであります。たとえば健康保険の被保険者人員がどういうような趨勢をたどっているかということを調べてみますと、この方も一%ちょっとくらいずつふえているのでございます。それからまたもう一つ労働省関係失業労働者関係を調べてみますと、やはりそこにも現われているのでございます。だから私の一つ見方を申しますと、今度の景気がだんだん下の方まで浸透して参りまして——しかしその浸透の工合は今申し上げましたように非常に微弱でございます。一体今のようなことを景気が伸びたというような言葉で言い表わしていいかどうか、私も決して適当な言葉だとは思っておりません。しかし一応その現われた趨勢説明意味で申し上げますと、下の方まで浸透してきたのじゃないかという工合考えております。  そこで今三十一年度に百七十六万人あった対象人員が百五十万人に減ったわけでありますが、これがもし実際において増加するようなことがあれば、私ども予算計上額にこだわらないで、実人員にあわせました処置をとる、これは当然のことでございます。予算当局にも了解がついておりますし、また法の上でもそういうことをやる必要があることをいうておるのでございますから、この点は御了解願えるのじゃないかと考えております。  そこで今大事な問題でお尋ねになられたわけでございますが、国民年金制度をどういうふうに考えるか。老齢に伴なってだんだん生活困窮者が出てくる、あるいはまた母子世帯等の特殊な事情によって、生活が困難な方があるわけでございます。ことに年令が非常に伸びてきた、あるいはまた家族制度の崩壊と申しましょうか、社会状態の変遷によって、政府対象として見なければならない関係も出て参ったわけでございまして、政府といたしましては国民年金制度一つほんとうに取り組んでこれを実施する準備をしよう、こういうかたい・強い決心を持ちまして、昭和三十二年度には老齢者に対する年金、それから母子に対する年金をすみやかに実施したい。それについてはいろいろの角度からこれを検討しなくちゃならぬのじゃないかと思うのです。もちろん諸外国の例、また日本のいろいろな事情もあわせて考えなければならないし、財政経済の面からも考えなければならない。そこで三十二年度といたしましては、とりあえずこれを調査し、検討を加えるに必要な経費として一千万円ほど計上いたしまして、五人の学識経験者からなる方々にお願いいたしまして、これを一つ十分検討していただいて成案を作っていただこう、この答申を待ってすみやかな実施の機会をとらえていきたい、こういう熱意を持ちまして年金制度を打ち立てようということに踏み切ったわけでございまして、これは今日までいろいろ御議論はあったわけでございますが、政府がここで踏み切ったということは私は大きな意義があるのではないか。よく保守党ではこうした年金を本気にやるのは一体いつかというような世評がずいぶんきびしくあったわけであります。これを思い切ってやろう、この成案を得たならば実施に移す処置をとろう、こういう真剣に取っ組んだ真意を十分御了解願いたいと思うのであります。
  11. 堂森芳夫

    堂森分科員 ただいま神田厚生大臣から一千万ほどの費用予算に織り組んで、年金制度と取っ組むんだというかたい御決意の表明があったのでありまするが、一体予算書説明に書いてありますように、しからば五人の学識経験者を選んで、いろいろ案を練ってもらうのだという説明でございますが、そうすると厚生省には何も案がないのでございますか。ただ委員を選んでそういう人たちにまかして、その人たちが作ったもので何かやっていく、こういう意味でございましょうか。
  12. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。厚生省といたしましても従来検討して参っておるのでございます。年金制度を作るに当りましても、拠出制にするかあるいは無拠出制にするかということもございまするし、それから諸外国の例を調べたのもございます。いろいろございまするが、これは制度としての恒久立法であり、重大な施策でございますので、いわゆる官僚独善になってはいけない、一つ衆知を集めてりっぱな制度を打ち立てたいという意味におきまして、学識経験者のりっぱな方々の御意見を加えまして、そして福祉国家をやろうという大きな心がまえでやるのでございますから、これは世界の先進国からも日本はなかなかりっぱな制度を打ち立てたというくらいのことをしなければ、今日やる意味はない。そうしたりっぱなことをやるには、厚生省意見あるいは調査、そればかりでなく衆知を集めたものでいくことが世の中を納得させ、また先進国の国々にも日本文化国家としてりっぱな制度を打ち立てる、こういう見方をしてもらうくらいの意気込み実施しようという意味で五人委員一つ選ぼう。こういう趣旨でございます。
  13. 堂森芳夫

    堂森分科員 大臣答弁を聞いておりますると、非常に意気込みは強いのですが、年金制度というような画期的な制度を作るということは、大臣がそうした景気のいいことをおっしゃるほど、私はしかく簡単なものではないと思うのであります。そこで五人の委員を委嘱していろいろ研究してもらうのだ、この選び方にもいろんな問題が起きてくると思うのであります。たとえばどんなふうな、どんな姿で年金制度厚生省としては考えておるのだ、描いているのだ、またそういうことによって委員選び方も変ってくるわけであります。従ってただ漫然と五人の委員を委嘱して厚生省が研究するのだ、こういうだけではわれわれは納得するわけにいかぬのであります。私はあなたの言葉じりをとらえて言っているのではございません。国民が待望しておる国民年金制度を、一日も早く実現するようにして、われわれが協力申し上げて一日も早くそうしたものが生まれればいい、こういう気持でお尋ねするわけでございます。従ってそう政治的な考慮を払われずに、ざっくばらんに一つ答弁を願いたいと思うのであります。  この国民年金制度実施するといたしますと、先ほど大臣がおっしゃいましたが無醵出にするか醵出にするか、これは重大な問題であろうと思うのでありますが、さっき私がお尋ねいたしましたように、日本には九千万の人口のうち九百万余の生活困窮者がおる。保険料醵出といたしますならば、そういう人たちから保険料を徴収することはなかなか私は困難なことではないか、こう思うわけでありますが、大臣はいかがお考えでございましょうか。
  14. 神田博

    神田国務大臣 前段の堂森委員の御心配につきましては、私どもも委員の選定あるいはまたこれの方向をどうするかということ、これは御指摘の通り大きな事柄でございますので、これは謙虚な気持で真剣に考えておりますので、この点一つ御了承願いたいと思います。  それからあとの第二問でございますが、ボーダーライン層に対して醵出制を考えた場合においては、一体どんなようなことで考えておるのか、今日暮らしに追われておる者に醵出させるということは、なかなか至難なことではないかというような意味お尋ねのように承わったのでございますが、これはまことに堂森委員の御指摘の通りでございまして、私どもといたしましては、これを醵出制にする場合におきまして、そういう方面からたくさん望むなんということは毛頭考えておりません。現在国民保険でやっております例をも十分考えまして、これは国民全部の問題でございまするから、そういう点で私は特に大事なことではなかろうかと思っております。ことにまた今日一定年令に達しておる老人階層の問題、さらにもう現実に現われておる母子方々に対する年金の問題は、十分その辺のところは考慮いたしまして、実情に合い、しかもこれが年金として、社会保障として生活がおおらかに保障されておるのだという段階になるような結論にしていきたい。五人委員会にまかせ切りということよりも、五人委員会に十分な資料を提出いたしまして、政府の意のあるところは十分また五人委員会に連絡をとりまして、りっぱな制度を打ち立てたい、こういう考えでございます。
  15. 堂森芳夫

    堂森分科員 くどいようでありますが、大臣は就任早々でございますが、従来厚生省年金制度を作っていくという意味で、いろいろ準備的な操作もあったと思うわけでありますが、無醵出にするかあるいは醵出制にするかというような問題について、従来どのような議論がなされ、またどのような結論、とまでいかなくても、何か話し合い、あるいはディスカッションというふうなことで、どういう方向に向いておるかということもまだ御答弁になることができないのでございましょうか。
  16. 神田博

    神田国務大臣 今までいろいろ議論されたことを申し上げますると、理想としては全国民対象とすることと、そういう場合においては醵出制の国民年金制度の確立ということが当然だと思います。しかし今お述べになられたように、老人だとか母子、さらに身体障害者の問題がございます。こういったハンディキャップのあるものを考えて参りますと、やはりそれらに対しては無醵出制になるということが自然の成り行きだろうと思うのでございます。この点につきましては私どもの考えだけでなしに、今堂森委員からうんちくのある御意見でございますので、委員選定に当ってもいろいろ私どもの参考になる御意見が承われると考えております。そういう御意見を十分尊重いたしまして、りっぱな方々に委嘱できるように、そうしてまたりっぱな結論をいただいて、一日もすみやかにこれを実施して参りたいというのが、今日厚生省あげての希望でございます。  なお専門にわたる問題もございますので、政府委員からこの点答弁いたさせます。
  17. 黒木利克

    ○黒木説明員 今まで厚生省で検討いたしました作業の御報告を申し上げますと、まず諸外国年金の立法例、特にイギリスのビヴァリッジ報告の年金に関するところとアメリカの国民計画委員会の答申がございますが、これには年金のいろいろな考え方あるいは諸外国の例、あるいは実施する場合のいろいろな留意事項の詳細なものがございますから、これらの研究が今一段階ついたところでございます。  それからもう一つの方向として、国内の現在の年金制度の実態、特に国民年金をやるため、例の被用者年金、厚生年金の実態、それから会社でぼつぼつやっております退職年金の実態の調査作業をやっておりまして、近くこれは見当がつくような段取りになっております。  それからもう一つ老齢年金なり未亡人、母子世帯年金なり、廃疾年金をやる場合に、無醵出でやる場合、一体どれくらいの金額ならどれくらいの総額がかかるかという計算、たとえば老齢年金の場合、月に三千円として六十五才以上の全部の老人に支給するとするならば、年に千七百億円になる。二千円の場合には幾らというように、老人の年齢別の給付月額から見た総額の推計、今後十五年間にわたる推算もいたしております。そこで問題は月額の年金額になりますが、この問題をいろいろな角度から、特に生活保護との調整、その他国民経済の角度からいろいろ検討に着手いたしております。老人の関係人口動態統計から数はわかりますが、所得との関係調査がないものですから、今回これは予算通りましたら、四月早々実施したいと思いますが、所得階層別の老齢人口調査をやりたい。そうしませんと無醵出にするか醵出にするか、あるいは無醵出にする場合にどのくらいの対象考えたらいいかということについて、見当がつかぬものですから、そういう調査をやる計画でおります。  それから未亡人、母子世帯につきましても、今までは福祉サービスということで、未亡人の実態調査をやっておりますが、しかし年金をやるための参考にはあまりならないものですから、今度は同じように、生活状態別の未亡人、母子世帯生活の実態を、年金をやる角度から一つ調査をしてみよう、同時に廃疾者のそういう角度からの調査をしてみよう、これはできるならば四月に厚生行政基磯調査をやりますから、その機会に六十万世帯を対象にしてやってみようというので作業の計画をいたしております。その他私の方に厚生科学研究費というのがありますが、これに委託しまして、将来年金をやる場合のいろいろな基磯的な研究をしていただいておりますが、これは近くある程度の結論がまとまると思います。そういうことで来年度早々にはかなりまとまった資料ができますから、そういう材料を年金調査委員に提供して、第一には一体年金対象をどうするか、規模をどうするか、それから計算して無醵出にするか、醵出にするか、積み立てにするか、あるいは賦課方式でいくか、あるいはその切衷案でいくか、あるいは年金を始めるにしても、まず母子年金とか、老齢年金とか、廃疾年金というものからやっていって、あとで統合するのか、あるいは社会保険の二の舞をやらぬように最初から国民年金でやるのか、そういうような順序の検討、そういうことをとりあえずはやっていただこうというような構想で準備をいたしております。
  18. 堂森芳夫

    堂森分科員 いずれにいたしましても、国民年金制度実施いたすとしますならば、膨大な予算を要することは当然であります。また醵出制度とすれば、法律が来年度できたといたしましても、その年から実施するというわけにも参らぬと思います。いろいろな事情から申しまして、私はこう思うわけであります。先刻来申し上げて参りましたような、今日の生活の低い、ボーダーライン階層におる人たち——母子世帯あるいは廃疾者あるいは老人、こういうような人たちを含めまして、これは一日も等閑に付することができない対策であろうと思うわけであります。従って年金制度実施されるということになりますまでには、やはりかなりの準備期間、あるいは醵出年金制度にすれば、必ずまた一定の年限——厚生年金制度もそうでございますが、とにかく一定の年限というものが必要ではないか。従ってそういうような国民年金制度実施されるまでの過渡的な制度として、先ほど来申し上げてきました階層人たちに、何か生活保障といいますか、そういう制度が必要であろと思うわけでございますが、こういう点について、厚生大臣はやっていこうというような御決意があるか、あるいはきよう御説明をいただきましたようなお茶を濁す程度でやっていこう、こういうおつもりであるか、その点を伺っておきたいと思うわけであります。
  19. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。今堂森委員がお述べになられましたように、国民年金制度実施するといたしましても、これは相当期間がかかりますことはおっしゃる通りでございます。私どもも三十二年度には一千万円の予算を計上いたしまして、今までお答え申し上げたような線で急いでこの結論を得たいと考えておりますが、三十二年度中にその結論を得るとは考えておりません。少くとも三十三年度くらいにはこの結論を出してもらいたいという考えでございまして、年金制度は諸般の情勢が進んで参りますれば、三十四年度には一つ具体的な法案を出して実施の初年度にいたしたいというくらいの考えで実はおるのでございますが、それならば、一体その実施までの期間このままにしておくのかという意味お尋ねのように承わったのでございますが、三十二年度においては、将来の母子年金にかわる一つの方向として、実は母子加算という制度をしいたのでございまして、これは決して年金制度考えないでやったわけじゃないのでございまして、国民年金制度を先に考えながら徐々にこれらのことを推し進めて参りたい。今年度の予算は四億五千万円で、これは全年度でございませんが、平年度になると約十億程度に考えて、来年度は十億ということで実は予想しております。三十二年度は四億五千万であるが三十三年度は十億ということで、財政当局とも一応の話はつけまして、その想定のもとで計上したわけであります。それから三十三年度においては、私どもの希望といたしまして、老齢者に対する何らかの予算措置をしたい、こういう考えでおります。年金制度がしかれるまでこれらの制度の先行をなすものとして考えておる、具体的には申しかねるのでございますが、そういうような心がまえを持ちまして年金制度がしかれたらそちらへ変っていくというものを植え付けていきたい、こういう意図でございます。
  20. 堂森芳夫

    堂森分科員 私が申し上げたことは、別にゆっくり準備をして二年ぐらいかかってもいいという意味で申し上げたわけではないのであります。これは当然準備が必要でございますから、従って直ちにあすからという意味ではございませんが、二年でも三年でもかかっていいというわけではないのであります。とにかくそれにしましても準備期間が必要でございますから、従って部分的に困窮しておられる階層、もちろん生活保護法対象者も含んで、こうした特殊な母子世帯あるいは老齢あるいは廃疾者というふうな生活困窮者には、無醵出年金制というものを過渡的のものでもいいからお作りになる意思がないか、こういうふうにお聞きしたわけであります。三十二年度までやってきたことをさらに広げていろいろやっていく、こういうお話でありますが、私は今のような方法では満足することができません。一歩飛躍しまして、一つの過渡的な姿としての無醵出年金制度をぜひとも作ってもらいたい、こういう意思を申し上げたわけであります。
  21. 坂田道太

    坂田主査 よろしゅうございますか。
  22. 堂森芳夫

    堂森分科員 もうけっこうです。
  23. 坂田道太

    坂田主査 柳田秀一君。
  24. 柳田秀一

    ○柳田分科員 厚生大臣に簡単に二、三点だけお伺いしておきます。  第一は、この前輸血、供血、採血あるいはそれのあっせんという問題で、それを規制しあるいは供血者を保護するような立法ができましたが、どうしても生活せんがために自分の血を売っておる、しかもその血を売る人を搾取するようなあっせん業者があって非常に問題になっておりましたが、この法律によってどの程度実績が上ってきたか、その点簡単にお伺いしておきます。
  25. 神田博

    神田国務大臣 今柳田委員お尋ねになりました点は、政府委員から一つ詳細に答弁いたさせます。
  26. 森本潔

    ○森本政府委員 昨年の六月から採血及び供血あっせん業取締法が施行になりましたが、ただいまお話のように、採血行為を厳重に取り締る、それからもう一つは供血あっせん業者を取り締る、この二つの事柄が内容になっております。その規定によりまして法律施行後十月までに従来の供血あっせん業者は届け出をする、そうして手数料につきましては従来まちまちでございましたが、あっせん一割という手数料で、その内容等につきましては知事が審査をする、こういうことであります。現在資料をちょっと手元に持っておりませんが、このあっせん業者の数が全国で約百五十ほどございます。それから一業者の持っております常時あっせんしておる数字でありますが、これは大体百名くらいの数字でございます。法律の施行によりまして業者も自覚をいたしますし。それから供血者も非常にむずかしい規定になったということを承知いたしまして、おおむね法律の趣旨が達成されつつある、かように考えております。
  27. 柳田秀一

    ○柳田分科員 聞くところによりますと、まだまだ自分の生活のために、はなはだしきは一週間に二回、三回、名前を変えたり、あるいは他の業者のところに行ったりして売っておるという事例があるようであります。これは一つ法の趣旨を十分徹底しなければいかぬと思います。  ここで厚生大臣お尋ねしますが、日本もようやくにして原子力の問題が、産業にあるいはそのほか研究に漸次進展してくる情勢になりましたが、従来とも、この原子力問題が起る以前から、放射線を扱っておる人々の間には、これによるところの災害が非常に大きいのですが、今後こういうような放射能等を扱うようなことがさらに多くなってくる。従ってこれに対しては何らか規制と保護の立法が必要だと思うのですが現在まだわが国にそれは施行されておりませんが、やはりこれは早急に解決すべき問題じゃないか。今厚生省ではあるいは立案の御準備中じゃないかと察しますが、今国会にでもそうゆうようなものを法制化される御意思がありますかどうか。
  28. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。ただいま柳田委員から生活困窮者がどうも血を売っておるようだ、これは実に困ったことであり、またゆゆしいことだと私考えます。これは一ついろいろの機会を通じましてそういうことが根絶できるように、ほんとうに生活に困っておるというなら、これはまた他の方法によって相談をして生活の立っていくような道を講じさせなくちゃならぬと思います。気のつかないこと、大へんいいことを教えていただいたわけでありますから、行政面で一つ十分配慮いたしていきたいと思います。  それから第二のお尋ねでございますが、原子力利用が進んで参ると、どうしてもこれに対する除害と申しましょうか、担当者のそれから出る障害についての取締りを厳にしなければならぬことは申すまでもないことでございます。従来X線等においてもこのことがよく論議されておったわけでございまして、原子力時代になろうとする際でございますから、これはどうしても立法措置を講じまして、適当な方途を立てなくちゃならないということは私もよく了承いたしますので、この点につきましても厚生省においては準備をいたしております。しかしこの国会にすぐ間に合うかということになりますと、いろいろ原子力関係まで入れますと、相当まだ資料を整えまして、立法上の課題が必要となって参りますものですから、少し間に合いかねるのではないかと思っておりますが、大事なことでありますので、十分検討いたしまして成案を得次第一つ御審議をお願いしたい、こういうふうに考えております。
  29. 柳田秀一

    ○柳田分科員 前々国会で流産になりまして、今国会でも継続審議になっております健康保険法の一部改正ですが、これはどうですか。厚生大臣は前任者からお引き継ぎになったのですが、一般会計から三十億を厚生保険特別会計へ繰り入れるがための措置としての法案が主でありますか、さらにその法案に便乗して提案理由によると健康保険財政の健全化という言葉がうたわれておりますが、そういうのを従にせられたのか、両方とも同じウェートで出されたのか、どこにねらいがあるのですか。
  30. 神田博

    神田国務大臣 健康保険の問題は前から引き継ぎでございまして、いろいろお尋ねを受けるわけでございますが、ただいま柳田委員お尋ねの点は私ども健康保険法を、全体を通じて改正をする必要がある。その結果ああいう結論を得た、こういうふうに考えておりまして、単に赤字埋めだけで一部改正をしようとする意図ではないのでございまして、もちろんこれは財政の健全化でございまするが、それだけではなく、全体を通じまして健康保険法そのものも整えまして、なお一そうこの機能を充実していきたい、こういう趣旨でございます。
  31. 柳田秀一

    ○柳田分科員 これは持つ意味は非常に大きいと思うのです。健康保険を健全にやっていくのだから、これは日本社会保障、特に政府のいわれる医療保障の中核ですから非常に大事なものです。これはやはり非常に論議は多いと思うのです。これによって今後の日本社会保障の行く道も大体方向づけられるのですから、そうするならば、やはりそれはそれとして健康保険の改正案というものをお出しになる。しかしながら今の特別会計へ一般会計から繰り入れるためには、どうしてもやはり法的の何か裏づけがなければならぬというので、どうしてもこの法案を通してほしい。これは厚生省の前々国会以来の念願ですね。そうなってくると、ここに問題があるので、やはり厚生保険特別会計へ入れるための措置であるならば、その措置だけが社会党の提案のごとく、社会党からも立法を出しまして今継続審議になっておりますが、そういうふうに二つに分けて、三十億の予算措置のためにやる法律案と、健康保険の抜本的な法律案というものは、これは別途に分けてお出しになるのが筋じゃないか。今の大臣のお話のようでありますと、われわれは慎重に健康保険の問題をやって参りますがために、またまた今国会でこれを十分審議して、三十一年度の年度末に間に合わぬというようなときにはどうしますか。三十億が繰り入れられなければ非常に困ってくるが、そういうように非常に矛盾が起ってくると思うのです。本来は分けて考えるべきだと私は考えるのです。そういっても大臣はなかなかその通りとは言わぬと思いますが、本来は分けて考える。そうでなければあなたの方がお困りになる事態がくると思うのです。そこでお考え願いたいのは、社会保障を充実するためには、私は二つの要素があると思うのです。一つ社会保障をやるからには、この前大臣社会保障の根本理念について質問をいたしまして、大臣のメンタルテストをいたしましたが、新任早々にしてはということで私は六十点を差し上げておきましたが、社会保障には何といっても国家社会の責任において貧困と病気あるいは貧困の原因、そういうものを除去するのが、これが近代国家の通念であるとするならば、これは多額な国家社会の金がいると思います。これが第一点。これは金がいるということ。第二点はたといその社会保障を現在の政府のごとく自由主義経済を信奉せられる政府がおやりになるにしても、社会保険社会保障というものはわれわれ個人が住んで社会、国家を営んでおる、その国家を何らかの意味においてコントロールする。生硬な言葉でおかしいと思うのですが、一つ計画社会を作るわけだ。個人が国家を営んで、そうしてそこに計画社会を作ってそうしてその個人が国家の中で住みよい社会を作っていこうという、そういう計画社会なんですね。従っていかに自由主義経済の世の中であっても、社会保障そのものをやっていくためには、これはやはり一つ計画経済の一端に入ってくるわけです。そうなってくると、自由主義社会でありながら、経済においてはそこに規制がされ統制がされる、一種のやはり統制経済、計画経済というものがそこに生まれてくるわけなんです。そういうふうに木に竹を継いだような形になりますが、そこでわれわれ注意をしなければならぬのは、こういう規制といいますか、統制というときに、いつも私たち考えなければならぬのは、戦時中に官僚と軍閥と結託したというあのころの、いわゆる国家総動員法に基くところの計画社会、計画経済、国家統制、その苦々しい体験がわれわれには多いわけなんです。そこで考えなければならぬのは、そういうふうな社会保障をやっていくために一つ計画社会を作るならば、そこに必然に起ってくるところのコントロール、これはあくまでも官僚の一方的な統制じゃなしに、民主主義的な方法で統制していかなければならぬ、そういうふうに思うんです。この二つが、社会保障を今後拡充伸展させていく上の大きな柱だと思うんです。ところが今度の健康保険の改正案を見ますと、この点は私は逆行しておるんじゃないか、三十億の赤字を埋めんがために、それに便乗して、しかもこれは内輪を申して恐縮ですが、大蔵省と厚生省はずいぶん御折衝されたと思いますが、大蔵省の方では、単に三十億を一般会計から特別会計に繰り入れるには、それだけではどうも納得しない。厚生省もそう私は積極的にお出しになったとは思っておらぬのですが、今の法案のもろもろの思想を見ると、非常な官僚統制のあれが濃厚だと思うんです。審査の問題にしても、監査の問題にしても、私は非常に濃厚だと思うんです。現行法でもこれをうまく運用していけば、私はそこにいろいろ起るところの不正は十分規正できると思うんです。そういう意味において、今度の健康保険改正というものは、非常な官僚統制が現われておると思うんですが、大臣はこれをどういうふうにお考えになりますか。
  32. 神田博

    神田国務大臣 前段の柳田委員の御意見でございますが、言葉の言い回しはとにかくといたしまして、今日の国家社会の間におきまして社会保障をしていく、そのこと自体が、これは国家を明るくし社会を明るくするわけでございますから、あなたの考えておられることと私の考えておることとはほとんど変りはない、こういうふうに私、考えております。これはお尋ねにもなかったのですが、私の感想といいますか、気持を申し上げたわけでございます。  そこで、第二の健康保険の一部改正法につきまして、赤字埋めであるならば、政府の二十億助成でほかの方を一緒にやるというのはどうも理屈がおかしいじゃないかというお尋ねでございましたが、これはどうもその点になりますと、いささか所見が違って参りまして、政府といたしましては、あの一部改正法は単なる赤字埋めだけではない、それから政府の金を導入するだけの気持で改正法を出しておるのじゃない。あの一部改正法というものの根底をなすものは、やはりああいったこと・が、政府管掌健康保険においては、現下の情勢としてはとらざるを得ないことである。いろいろ心配されている問題については、運用の面でこれは相当御了解願えるのではないかと、私考えております。  官僚統制でないかというような御意見のようにも承わりましたが、これは自由民主党はいわゆる野性を持った政党でございまして、党の政務調査会で十分練ったことも御承知と思いますので、決して官僚と妥協して作ったというふうには私考えておりません。政府、与党一体となって作った、こういうふうに考えております。ただしかしこの問題のことにつきましていろいろお述べになられましたことは、社労の委員会の内部の問題のようなことがだいぶあるように思いまして、私からお答えすることが適当でないような面が多々あるやに私感じておりますので、私から申し上げますことはこの程度にいたすことにお願いいたしたいと思います。
  33. 柳田秀一

    ○柳田分科員 自由民主党とおっしゃいましたが、その中の一つの自由党の明治二十何年の結党以来の歴史によれば、よい意味でも悪い意味でも、確かにこれは野性のあることは否定しませんが、しかし健康保険法を出されるには、別に自由民主党で議員立法されたわけではないと思う。厚生省の官僚が大蔵省と相談してやったのであって、これについては深追いたしませんが、一部負担なんかでも、前国会に出されたのと今国会に出されたのとは非常に変っておる。初診料百円、考えてみなさい、おかしいですよ。こんなことをするよりあっさりと初診料は幾らというふうにされたらいい。というのはどういうことかといえば、厚生省は従来から、新医療費体系というものでは物と技術と分けてきた、これは根本方針なんだ。初診料というものは完全な技術です。物ではない。だから初診料は幾らというなら筋が通るのです。初診料百円、百円に満たざるときは幾ら。そうなって参りますと、こういうことになってくる。  たとえば、患者が医者の門をたたく従来初診料は四点で四十六円ないし五十円、それから内服薬を受けて注射を受ける、それが百二、三十円なら百工、三十円になるとします。そうすると、初診料が百円ということになって参りますと、その中には技術の初診料というものと、それから今度は注射薬、内服薬という、物が入ってくる。そうすると、百円のところで初診料を切られるわけでしょう。そうなってくると、たとえば神田さんがお医者さんに行くとして、門をたたくと、初診料を払って薬と注射を受ける。最近東京では五十円が初診料、そして二点なら二点で内服薬をもらう、それから注射を受ける、そこのところで百円の線が来ます。ここで注射をどんどん受けておるとすると、注射の途中までは百円のところなんです、それからもう少し残ったところをやると百円を突破する。百円のところまでは患者負担、それから先は保険の負担でしょう、そういうことになりますね。しかもそれが今度は患者の責任において払うのであって、これは保険の責任ではございませんね。そうなりますと、物と技術が完全に混同しておると思いますが、これはいかがですか。
  34. 神田博

    神田国務大臣 今の柳田委員の御所見のようなお考え、私も御意見としておありのことをよく耳にいたしております。これはいろいろ見解の分れることもあろうかと思いますが、今お述べになられましたことも私にはよく了解できるのでございます。  ただ私、この機会に一つ申し上げたいことは、健康保険法の一部改正で、いろいろこの法案をめぐって対立と申しましょうか、いろいろ御意見——いろいろ御意見といっても反対と賛成と二つに分れるわけでございますが、それがどうもあるようでございます。しかし厚生行政におきまして、厚生省と一種の対立と申しましょうが、そこにどうももっと基本的、根本的なことがあるのではないか。これは今いろいろ述べられた一点単価の問題にも触れてくるわけでございますが、この健康保険法の一部改正だけで解決できない問題が残っていてそれに結びつくので、どうもいろいろ議論になるのではないかというふうに考えておりますが、私の考えが間違っておればこれはまた訂正いたしますが、今度の健康保険法の一部改正と、それから厚生行政を進めていって、少くとも国民保険をここ四年間に完遂しようということでございますから、私は厚生省と、それから医師会と申しましょうか、歯科医師会も含めての話でございますが、もっと根本的な調整といいましょうか、協力態勢というものを作って、十分検討して適当な方途を講じて、両者の関係を正常化するということが大きな問題として私はあると思います。これらの点につきましては就任日浅いのでございますが、誠意をもって事態を十分見きわめて正常化したい。これは私のほんとうの信念でございまして、これは与野党とも皆さんの御協力を願わなければ解決できないことでございまして、政府側といたしましても、もうその時期に来ているのじゃないかということもいわれておるのでございまして、これはこの機会をお借りいたしまして御了承を得たいと思っております。
  35. 柳田秀一

    ○柳田分科員 実際のところ厚生省は大蔵省の方に一般会計繰り入れを要請せられた場合に、大蔵省から注文がついた。そういうことで、法案を出されて非常な抵抗にあわれて、また多少修正した案を出された。それが首尾一貫していない。だから物と技術を混同するような結果になってきておる。今大臣から健康保険を円滑に運営するには保険者、被保険者あるいは療養担当者三位一体となって、緊密にやっていかなければいかぬ。こうおっしゃるならば、今全国の歯科医師諸君がこの法案の撤回を叫んでおるが、事実一般会計から繰り入れの法律と、それから健康保険を抜本的に政府で改正しよう、それには三者が一体となって運営を円滑ならしめようということで三者の意見もよく聞いて、別個の法案をお出しになるのが筋であると思っておるのです。悔いを百年に残すよりは、この際一応健康保険を撤回された方がいいのじゃないか、そういう意見も強く出ておる。しかもそれを押し切って厚生大臣の言われるようなことを理想としてやっていこうとしても、こう対立相剋が強くなれば、これはできないのです。御撤回の意思はありますか。
  36. 神田博

    神田国務大臣 撤回の意思はございません。
  37. 柳田秀一

    ○柳田分科員 それじゃ一つ大臣お尋ねしますが、先般私も出たのですが、一月二十六日に東京都城北医師大会というのがあったのです。その席上に法務大臣中村梅吉君が出席しておるのです。その前に申し上げておきますが、これから来賓の御祝辞、ごあいさつをいただきますが、きょうの御祝辞は全部録音にとっております、こういうふうに申しております。その録音にはっきり載っておるので証拠物件はちゃんとありますが、中村法務大臣は健保法改正は、大体これを継続審議にして三十億を引っぱり出すための手段なのであって、このままこれは押し通すつもりはないというような発言をしておるのですが、こういう御発言をしておることを御存じですか。
  38. 神田博

    神田国務大臣 中村法務大臣が城北医師大会に出席して祝辞を述べられたということは聞いております。今柳田委員がお述べになられましたような意味の発言をされたということもうわさに聞いておりますれば、また、いやそうではない、法案の趣旨を述べられておったというようなことも聞いております。実はその辺のところはまだ正確に私は耳にいたしておりませんが、うわさといたしてはお聞きいたしております。
  39. 柳田秀一

    ○柳田分科員 うわさとしては大体おぼろげながら聞いておるということは、おそらくえらいことを言いよったというようなお考えも多少あるのでしょうが、それは録音にとってありますから、何でございましたら録音を持って参りましてあなたの目の前でもう一度お聞かせしてもいいと思います。これは事実であります。これを事実とすれば、あなたどういうふうにこれをお考えになりますか。
  40. 神田博

    神田国務大臣 どうも仮定のことに対する答弁を要求されても、はなはだ恐縮でございますが、実は私は両説を聞いておりますものですから、私といたしますと、その両説の両方に御答弁しなければならぬということになるわけでございますが、ただ一つつけ足しておきますが、私は実はうわさを耳にいたしましたので、中村君に、君はこの間城北医師会に行って、何か健康保険の撤回だか何か、賛成でないというのか何か、原案と違ったようなことを言った記憶はないか、そういう話を聞いておるが、ということを実はお尋ねをいたしました。いやそんなことはない。自分は国会対策委員長をやっておって、あの提出のいきさつを知っておるし、しかも閣議で継続審議をしようということがきまっておるものを、自分として不用意なことを言うた覚えはない。こういうようなことを直接私は聞いております。そこでそういう意味から申し上げても、今柳田委員の、こうだとしたらどうだというようなことに今お答えする時期ではないと思います。
  41. 柳田秀一

    ○柳田分科員 だんだん問うに落ちず語るに落ちて、相当これは問題だというので、わざわざ中村法務大臣にもそういうふうにおっしゃっておるようなニュアンスが出て参りましたが、それじゃ一つ近い機会に、あるいは午後でもよろしゅうございますが、さっそく録音盤を取り寄せますと、はっきり出ますが、よろしゅうございますか。これははっきり申しておるのです。録音盤を取り寄せましょう。そこで私は重大だと思うことは、憲法によっても、内閣は行政権の行使に当っては国会に対して連帯の責任を持つことに相なっておる。国会に対して内閣が連帯の責任を負うのですから、一法務大臣が国会以外の発言だからどうでもよいというような言いのがれが出るかもしれないが、いやしくも一国の国務大臣が発言して、これは国会外の発言だからということで済まされぬと思うのです。いわゆる内閣としては、国務大臣として連帯の責任があり、そういうことは重大問題だと思いますので、あなたは仮定だからと、吉田前総理の故事をならうならば、私は録音盤を持ってきて対決いたします。少くともあなたも大野伴睦の三羽ガラスの一人といわれております。自分は閣僚の一人が出しておる法律案は何とかして通してもらいたいと思っておる。神田博のおる東京都のどまん中でこの法案は三十億を繰り入れるための一つの方便だから通すつもりはないと言われて黙っておりますか。あなたもたんかを切るくらいの用意はあるでしょう。どうですか。
  42. 神田博

    神田国務大臣 私からお尋ねするのはどうかと思うのですが、柳田委員はほんとうにその録音をお聞きになったのですか。
  43. 柳田秀一

    ○柳田分科員 私はその場にいたのです。
  44. 神田博

    神田国務大臣 実は何もかもぶちまけたお話なんでございますが、録音盤は私はちょうだいいたしておりますが、実はまだ聞いておりません。そのときにお持ちになった方——これは医師会の幹部の方でございますが、そこで実はお聞きしたのです。こういううわさを耳にしておるがどうか、こう言ったら、いやそれとは違います、録音盤を持ってきておりますから、聞いてくれませんかといって、厚生大臣室にお持ちになっておりました。それならば聞くまでもないだろうというので、お聞きしておらぬのが今日の実情であります。中村君に、さっき申し上げたようにお尋ねいたしましたところ、自分は国会対策委員長であの問題は一番よく知っておるから、そういう不用意なことは話さないよ、こういうことでございまして、私は法務大臣がよもや法務大臣と衆議院議員と使い分けをなさったとは考えておりませんので、それ以上実はお聞きしなかったのでございますが、柳田さんがそこにおられたとしますれば、また話が幾らか違ってくるように思うのでございますが、私の知っておることは、率直に申し上げると、今申し上げたようなことでございます。
  45. 柳田秀一

    ○柳田分科員 最初はうわさには聞いておる、風のたよりには聞いておるというのが、だんだんしまいには録音盤を自分の方で持っておるということになると、相当あわてられた様が漸次明らかになってきたわけです。なおこれに似たような事件がほかにも二つ、三つあるわけなんです。いずれこれは大きい問題になっておりますので、われわれとしては総理がおいでになりましたら、内閣全体の問題として、不問に付するわけにはいかぬかもしれないということを一本くぎをさして、私の質問を終ります。
  46. 坂田道太

    坂田主査 山下君。
  47. 山下春江

    山下(春)分科員 新進気鋭の神田さんが厚生省大臣につきまして、御就任早々にもかかわらず、非常な御努力によって大へん枝ぶりのよい厚生予算ができ上りましたことを、その関係の中におる者として非常にありがたく思うのです。昨日の社会労働委員会におきまして大臣は、政治が先行して事務はあとから整えればよろしい、それが政党政治なんだと仰せられましたが、ただいまもその御心境でいらっしゃいますか。
  48. 神田博

    神田国務大臣 その心境に変りございません。原則として申し上げたのでございますので、さよう御了承願いたいと思います。
  49. 山下春江

    山下(春)分科員 私は大臣のそういうお心持を基本としてお尋ね申し上げるのでございますが、その前に私は厚生省に長くおりましたが、一向に何もわかりませんので、安田局長にちょっと伺いたいのであります。  今生活保護のワクの中に占めておるウエートは、公的医療扶助の方が、生活扶助よりはるかに上向っておることは、御承知の通りであります。公的医療扶助を受けております、たとえば結核患者等を見ますると、国立病院へ行ってみますると、十年あるいは八年というような長い患者は、その年配を見ますと、二十七、八から三十までという人が多いのでありまして、その人たちは、北海道とかあるいは奈良県とか、そういうところの国立療養所の患者を見てみますと——これは切りかえ後でございます。一室に六人ないし八人の非常に整然としたベッドが並べてありまして、そのベッドの頭の上には、みんな携帯ラジオ等を置いてあります。自宅療養をいたしておりますみじめな患者に比べますれば、殿様のような療養を受けておるのであります。工場に勤めておりました者が公的医療扶助を受けるに至る——御案内のように、一ヵ月一万四、五千円のものを十年というと大へんなことでございますが、その前身を聞いてみますと、どこかの工場に働いておった者でございます。それが公的医療扶助を受けて療養ができるに至る途中の経過を、どういう手続でどういうふうに流れ込むのであるかということを、もし御承知だったら伺いたいと思います。
  50. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 健康保険で運営しておりまして、御承知のように、十年も前のことでございますので、おそらく二年の療養の給付期間だったと思います。そういたしますと、手回しのいい者でありましたならば、切れそうになった場合には、福祉事務所に行きまして、本人が行けなければ人に行ってもらって、そして資力の認定をしてもらえば切りかえられるわけであります。あるいはまた健康保険でやっておりまして、給付期間が切れましてから自費で、貯蓄その他でやっておりまして、そのうちにやれなくなったということで、福祉事務所に連絡いたしまして、そして資力の認定をしてもらって切りかえをする、こういうことであります。
  51. 山下春江

    山下(春)分科員 これは医務局長さんにちょっとお尋ねいたしますが、私の見た現実の中に、一人こういうのがありました。終戦直前に入ったと見えまして、十一年だというのでありますが、これは培養しても何しても結核菌が出ないんだが、十一年大切にして寝させてもらったものですから、外へ出そうと思ってちょっと二、三問出歩くと、かかとに内出血をした。それでその治療をするためにまた寝せざるを得なくなった。こういうことなんでございまして、今の公的医療扶助というものは、非常に丁寧な治療を与えておることは、これを見てもわかるのでございます。そこで私は今の結核というものは全快するという確信に立ってものを考えておるのでありますが、それは結核の種類あるいはその人の体質等いろいろな条件で違うと思うのでありますけれども、大体何年くらいたてば結核というものはなおるものでございましょう。
  52. 小澤龍

    ○小澤政府委員 一ころは、化学療法なり外科療法なりの未熟の時代には、結核患者の入院期間はだんだん延びて参りました。なかんずく国立療養所では延びて参りまして、平均二年を越したのであります。最近は化学療法その他の治療法が非常に進みましのたで、年々短縮されまして、ただいま資料を持ち合せておりませんが、結核療養所におきましても二年以内となっております。しかしながら、これは全体の結核患者の平均でございます。個々の事例からいえば、生涯なおらずして結核で過ごすという人もあると考えます。
  53. 山下春江

    山下(春)分科員 病院の中にそのような形が現われておるようであります。七ケ月くらいで全快いたしまして、少し軽い労働ならば労働に従事できるというグループと、七年、八年、待遇改善等でいろいろ政治運動をなさる方は、必ず医療扶助を受けておられるというようなことが現状であることも御承知だと思います。そこでなぜ私がこういうことをお聞きしたかというと、生活保護法というものは、なるほど非常にみじめな方の最低の生活保障する、憲法二十五条に発足したものに間違いありませんが、今回は政府が一千億の減税をする。その高原的景気の網の目から漏れました低所得階層に対しては、減税の恩典を受けないからというので、非常にあたたかい気持で大臣は、たとえば東京の五人家族基準で申しますれば、六百十九円を上げて、八千八百五十円にしてあげよう。そういたしますと、これは年間大体十万六千二百円になるわけでございますが、これは全額公費でございます。そこでこの全額公費を受けておる者は、八千八百五十円と申しますと、もちろん十分ではございませんけれども、それを受けない階層の、そのすれすれのところに比べれば、これだけを保障し、あるいは結核にかかった場合は今のような治療を受けておるということになれば、私どもは人口の多い日本といたしましては、まあまあというところではなかろうかと考えられますが、大臣は六百十九円上げる、つまり六・五%上げるために十一億五千万円要る、こう言われましたが、その中にそういうものを入れますと、これはちょっと足りなくなるのじゃあるまいかと思われますが、会計課長に伺いますが、私はこれを財政法の違反とはあえて申しませんけれども、良心的にいかがかと思われる金額がこの中のどこに隠れておるのかお聞きしたいのであります。生活保護費は三百六十二億九千四百余万円で、昨年度より二億二千七百余万円ふえたと、私どもちょうだいした資料に出ております。そのほかに神田大臣がかねがね言われた、政治が先行するんだ、われわれは政治を行うんだということで、党の方の非常に強い希望を大臣は受けて立たれて、ガソリン税も片づいた、米の値段も片づいた、地方自治もどうにかという最後の最後までがんばっておとりになった四億五千万円、それは母子加算として必要な経費四億五千万円と書いてございますが、この四億五千万円は生活保護費の中に入っておりましょうか。
  54. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 生活保護費は三百六十二億で推算いたておりますが、大臣から予算説明を申し上げましたように、被保護世帯数が三十一年と比較して減少しますので、金額は減少するはずですが、基準引き上げ並びに母子加算を加えるということで、差引二億二千七百九十三万円増ということでございます。
  55. 山下春江

    山下(春)分科員 そこでこの生活保護費の中へお加えになったことは、私はあえて財政法違反とは申し上げません。申し上げませんけれども、大臣がこれをおとりになるときの気魄は一体どこにおやりになったかということを私は聞きたいのです。予算審議に当って党へ来ての大臣の御説明、私全く同感でありましたが、今申し上げますように、八千八百五十円に上りまして、八千八百五十円というとにかく最低生活基準保障されておる。その人のすぐ隣にむしろ八千八百五十円はないというようなものでも、生活扶助を受けていない家庭がある。ましてや母子家庭というのは二十八年に旧軍人恩給が復活いたしまして、その扶助料をもらっているということが、婦人はそういうことに妙な——いわばセンチメンタルかもしれませんけれども、お父さんがなくなって、その扶助料をもらって子供を育てるのに、生活保護を受けてはならないということのために、八千八百五十円の線に到達しないもので、生活保護を受けておらない階層に対して、十一年間よく働いてきた、それに対する敢闘賞としてやるのだという大臣の御説明を聞いて、ほんとうに私ども腹の中から大臣のものの考え方に共鳴をいたし、非常な期待をかけたわけです。そうしてその敢闘賞はわが党では母子年金というのだということで、この四億五千万円をおとりになったはずでございますが、それを大臣はどういうようにお考えでございますか。
  56. 神田博

    神田国務大臣 三十二年度の予算の折衝に当りまして、いろいろ山下さんにお世話になりましたが、その中で今お述べになりましたように、子供を抱えている、そうして主人を失っている、いわゆる特殊の事情にある母子の問題を特に厚くみたい。しかも今度の三十二年度で母子年金をやろう、もちろん老令年金を含めてでございますが、この年金制度実施までには待ち切れないから、特殊の事情にある母子方々母子加算をやりたい、こういうことで折衝して、四億五千万円、平年度十億という金を納得させたわけでございますが、これは事務当局からさらに詳しく説明いたさせますが、今八千八百五十円とお述べになられましたが、これは母子の世帯であるならば、この上にまた五百円加算になる、このようにお考え願いたいのであります。母子加算生活保護の上にプラスされている、こういうふうに御了解願いたいのであります。
  57. 山下春江

    山下(春)分科員 そんなことはよく了解いたしておりますが、しからば大臣の言われる生活保護を受けてないボーダーラインに対する敢闘賞だという気持は消えてなくなるのか、生活保護と見なしてくれてやるのだ、従ってお前の生活がよくなったらやめるぞという金ではございませんか。
  58. 神田博

    神田国務大臣 あのときの議論の建前でございますが、あのときはこういう推定で議論をしておったと思います。年額収入が十万円を一線応のとして母子加算をしてやる、こういう議論であることは御承知の通りだと思う。そこでこの八千八百五十円を一つの例にとりますと、大体そういうところに参りますものですから、予算の最後の折衝の際に、いろいろ事務的な調査関係のこともございまして、約五万家族になりますか、これが母子加算の増加によって新たに受益するわけであります。従来の世帯にして十万世帯、こういうような数字になりまして、すぐに一つこれを突っ込んでいごうということになりました。資料が十分でなかったものでございますからへ予算の推定がつかなくなりまして、大体党の方では十万円を目安にしてやったからその希望はこれで達せられたのではないかというようなことで、話し合いがついたわけでございます。
  59. 山下春江

    山下(春)分科員 そのように話が党の方とついたといっても、党のどなたと話がついたか知りませんが、党の大部分はそういうことには話は折れ合つておりません。当時私は閣議でこの問題がきまるときの様子を漏れ聞きました。それこそ録音もなければ議事録もなく漏れ聞いたのでありますが、大臣はやはり母子年金ということを主張された。ところがある大臣から年金ということは非常に困難だという議論もありました。年金を無醵出にするか醵出にするか、積立にするか、あるいは厚生年金等の保険のワクの中で行うか、それは非常にむずかしいと思います。しかしながらむずかしいといっても今日現に年金と見立てられるようなものは、公務員はすべてでありますが、恩給法による遺族扶助料あるいは留守家族援護法等、あるいはそのほかの公務員の年金、厚生年金等およそその額は三千円をあとさきしております。従いまして一千円やそこらのものを今かりに打ち出してみましても、将来年金実施されたときに抜き差しならぬぞということでこれを引っ込めたとなれば、日本年金は千円以下ということになりまして、それはかねがね厚生省で皆さんが御議論なさっておる年金というものを、少くともその年金額でもって最低の生活保障されなければ、その足らぬところを生活保護で補なっておるというようなことはナンセンスであります。しかしながらそれともつと匹敵する議論に問題の国民年金、国保の完全実施国民保険の思想があります。昨日の厚生委員会においても、そんな準備不十分な、不用意なものを出してきて、それは宣伝じゃないかという滝井さんか八木さんかの御諸論に対して、大臣は政治が先行するんだと言われた。なるほど不十分な点があるけれども、しかしながらこれはどうしてもやろうという政府の決意を固く打ち出して国民を刺激することによって、早くできることを祈っておるのであって、準備が不十分だが打ち出してこれを行うのだ。この国保の皆保険の問題もあるいは無医地区をどうするか、あるいは五人未満の被用者に対する、いわゆる特別健保のようなものを考えなければ解決しないのではなかろうか、いろいろな議論が百出いたしておりましたが、しかしながら大臣は政治だから皆保険をやるんだと打ち出されております。しかしそこに残された問題は、どうしても救済ができないから本年度は低所得階層に対して医療費貸付をやる。これはわれわれが常日ごろ言っておることであって、特別健保でも考えなければ解決しないのではないかという議論を、とりあえずこれでいこうじゃないかということで打ち出すことになったはずです。それならばこの母子年金四億五千万円を生活保護費の中にほうり込んでしまうということは、役所の方には御責任はありませんけれども、大臣はそういう気持でお取りになった金を、こういうところにほうり込んでしまうことには相当良心的な責任がありますまいか。
  60. 神田博

    神田国務大臣 山下委員の非常な潔癖というか、思いやりのある御発言については大いに敬意を表するのであります。しかしながら私は要保護者に対する考え方、これは私は私なりの考え方を持っております。今日要保護者が相当ございますことは御承知の通りでございますが、これは従来の社会事業的な観念で考えておりません。私ども有機的な考え方からいたしまして、われわれのからだの一部の故障だと考えておりまして、国民経済的であるとかあるいは何かそこに仕方がないからというような気持で考えておるのではないのでございます。ほんとうに国家の一部として、当然十分なさなければならないんだ、しかしそれについては諸般の情勢から制約を受けることは当然でありますけれども、要保護者に対する心構え、考え方というようなものがそこに一つ私はあるのじゃないかと考えるのでございます。この中にぶち込んだとおっしゃられますが、母子の方方は、その中にもその以外の低所得階層もあることは、これは私が申し上げるまでもなく当然御承知のことでございまするが、考え方の相違じゃないかと私は思います。私の考え方は、そういった自分の気持のまま通ずるんじゃないかというふうに考えまして、党が打ち出した年収十万未満の母子方々には全部差し上げたい。これは先ほど申し上げましたように、母子年金に将来変るんだ、今日そこに一つ芽を植え付けたのだ、この芽はやがて巨木になり大木になるんだ、こういう考えで実はおろしたのでありまして、三十二年度としては今申し上げたようなことでございますが、三十三年、三十四年と年を追うに従って、年金制度が生まれるまでには、相当な太り方をする。私、先ほど堂森委員にもお答えいたしましたように、老齢者に対しても、あるいは肢体不自由者の問題もあるわけでございますが、そういった社会的な、経済的な弱者に対して、年金制度を待たず、年金にかわるものを一つ植えつけていきたい、そうしてそれが大きな巨木になることは、先ほど黒木説明員からも説明いたしましたように、とにかくそれまでの間に何らか一つ打ち出していきたい、よい芽を一つまいていきたい、こういう考え処置いたしたわけございまして、決してそうしたから事務がどうとかいうことではなく、私はやはり政治が先行してそういうことにはなった、こういうふうに私なりに考えて割り切っておるわけでございますから、御了承願います。
  61. 山下春江

    山下(春)分科員 どうも大臣近ごろ最初のほんとうに純真な気持のときより、だいぶ気持が濁ってきましたので、どうも困ったもんだと思うのですが……。(笑声)お説のことは私もよくわかるのであります。母子年金という、とにかく母子というものをなぜそう先に取り上げるか、別に身体障害者もあり、あるいは引揚者の老齢生活に困っておられる方もあるし、序列を並べれば一体どれが先かということの序列は、神様でなければ人間ではきまらぬほどのお気の毒な方がたくさんあるわけです。しかしながらその中に一片の愛情が欠けている点は、日本の未亡人というものは大勢子供を抱えておりますが、今でさえ女子の人口が多くて、若い娘でさえ非常な結婚難というときに、ましてやこぶつきで、前に結婚した前歴のある相当の年配になった未亡人が、結婚をするというようなことはほとんど不可能に近い。しかしそれから受ける無形の苦しみというのは男子にはわからないのです。何ぼ大臣が、私の気持が通ずるはずだとおっしゃっても通じないのです。そういうことが非常に気の毒だからこそ、どこの国でも、勝手に結婚したらいいじゃないか、そんなことで悩むことはないじゃないかと言ったって、これはできないのです。これは銭金や法律の上に現われてこないものなんです。そのことをほんとうに深い愛情をその中につぎ込んで考えて下さる気持を信頼して、われわれは母子を序列の一番前に持っていったわけなんです。そこで大臣は、今生活扶助をあげると十万円ということであるから、大体八千八百五十円とすれば十万円になるんだ、こういう仰せでありますけれども、それは少くとも今日まで十一年生活扶助に落ちさえすれば楽に——楽にといってはおかしいのですが、最低の保障があるのをがんばってきた。その人に向って生活保護は一応八千八百五十円という公的扶助がありますから、十分とは言わないけれども、これはまあまあとしておいて、この間生活保護に落ちなかった者に対する政治のあたたかいつっかい棒として、なお一そうがんばりなさいよという千万無量の気持を込めたやり方が、未亡人でありながら今後このままで、あるいはその中の何人かは結婚できるような幸福な人があったとしても、大体はそのまま非常にさびしい人生を送っていく人に対するほんとうの愛情の政治だと思うからこそ、私はこの四億五千万円を生活扶助に落して、生活扶助費のワクの中で、ここに来なさい、あんたそんな強情を張らんでこの列に来なさい、一千円の母子加算をあげます、こういう思想には全く同感いたされないのであります。従いまして今、大臣はそうおっしゃいましたけれども、大臣の気持もおかしいのです。そんなことを今おっしゃるけれども、それは今あなたが厚生省へ行ってだんだんくろうとになったからおっしゃるので、もともとそういうことはお考えになられなかった。その証拠には初め御要求になったときには児童加算となっておる。母子などということは出ておらない。あなたはくろうとにおなりになったから、だんだん説明が上手におなりになったけれども、それはとんでもない話でありまして、私どもは断じて承服いたしません。どうしても大臣がそうだとおっしゃるならば、この四億五千万円の使用待ったと私ども言いたくなって、議員立法を出しまして初志を貫徹いたしたいと思いますが、いかがでございますか。
  62. 神田博

    神田国務大臣 先ほどは私の考え方をほんとうに率直に申し上げたのでございまして、言葉が足らなくて御了解を得られなかったことはまことに遺憾でございます。ただいまこれでは承服できないから母子立法を作るがどうかというお尋ねがあったのでございますが、これはもう議員立法は議員固有の権利でありまして、国会の尊厳のもとにお出しになるのでありますから、私どもはつつしんでその法案が通りましたらその法律に従う、これはいかなる政府も当然のことと思いますが、私もさように考えております。
  63. 山下春江

    山下(春)分科員 まことにありがとうございました。大臣はそもそもこの問題については、そのようなお心持で御発足なさったことだと私は深く信じて疑わないのであります。従いまして諸般の情勢上こうなったけれども、国会がそれを立法するならばこれに協力するという大臣の御言明、まことにありがとうございました。時間も過ぎましたので、いろいろお尋ねいたしたいのでございますが、大臣の御決意を聞いて、私は天に上るほどうれしく思いますので、これで終ります。
  64. 坂田道太

    坂田主査 午前中の会議はこの程度にし、午後一時半より再開いたします。  なお本会議等の関係もあると存じますが、できるだけ定刻に御出席をお願いしておきます。午後は平田君より御質疑を願いたいと思います。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  65. 坂田道太

    坂田主査 休憩前に引き続き会議を続行いたします。平田ヒデ君。
  66. 平田ヒデ

    平田分科員 実は大臣に一番先に、保育所の根本的な改正をはかられるお考えがあるかどうかということをお伺いいたしたいと思ったのですけれども、お見えになっていらっしゃいませんので、児童局長さんにお伺いいたしたいと思います。私、初めて厚生関係の方に出て参りましたので、足らないところはどうか御親切にお答え願いたいと思います。  保育所ができましてから、もうかれこれ十年になります。経済的に恵まれない幼児のためにできた保育所でございますが、この十年間の保育所設置の数などから見まして、社会的にずいぶん寄与していることはだれでも認めているところだと思いますけれども、これに対する世間の声を二つ三つ拾ってみたいと思います。  保育所の補助金が少いために非常に赤字経営で、しかも保育料を払えない幼児を喜ばないふうもあるという一部の非難の声もあるかと思いますと、またこういう声もあるわけでございます。徴収額いわゆる保育料が高過ぎるために保育を必要とする貧困家庭の幼児が入所し得ないということは、保育所をやっておる人は見るに忍びないといって入所させる。入所をさせますと、ほとんど保育費の徴収ができませんから、結局は保育所の負担になるというわけでございまして、保育所はその使命と地域社会におけるところの重要性を深く認識しておるだけに、非常に若しい立場に立っているということが言えると思うのでございます。しかも、ここ二、三年来、保育所の数が非常ににふえているようでございますけれども、なお設置要望の声が大きい。こういうことについて厚生省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  67. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 大きい政策の問題は、あとで政務次官からお答えいただくことといたしまして、制度の状況を先にお語し申し上げた方がよいかと思います。  現在保育所の数は、御承知のように約八千六百ヵ所に及んでおります。これは終戦後非常に急速な勢いをもって増加をいたしたわけでございます。従ってそういうふうに急速に発展をいたしましたために、指導でありますとか、監督でありますとか、その辺のところが十二分に徹底をしていない面もあることは、私ども事実として認めておるわけでございます。  そこで、今お話の点に関連するわけでございますが、第一に保育所の経営につきましては、まず入所させる児童の種類でございますが、これは御承知のように、疾病でありますとか、あるいは労働に出かけるというようなことによりまして、家庭における保育が欠ける、そういう児童を入れるわけでございます。従ってそういう条件に合わない、いわゆる保育に欠けない者につきましては、一応保育所に入れないという建前でございます。この点が、実は現実の姿としてはいささか徹底を欠いている面があることは争えない事実でございまして、今後とも指導監督に力を尽していきたいと思います。  それから経費の問題でございますが、これは一定の標準によりまして、保育料が負担できないというような経済状態の家庭におきましては、これは公けで見る。家庭の経済状態に応じまして、あるいは高く、あるいは低く、保育料に相当する金額を徴収する。そういう仕掛けになっているわけでございます。従いまして、たとえば生活保護を受けている家庭でありますとか、そういったところはもちろんこれは保育料を徴収するというようなことはないわけでございます。そういうことで運営いたしているわけでございますが、何しろ今申し上げましたように、数が非常にたくさんでございまして、しかも急速に発展をいたしましたために指導監督の手が十分に伸びていない。すなわち運営上においてもいろいろな問題点があることは事実でございまして、予算折衝の場合等におきまして、それがいろいろ問題となったことは事実でございますが、これらの点は十分気をつけまして、指導監督の徹底をはかっていきたいと考えている次第でございます。
  68. 平田ヒデ

    平田分科員 ただいまのお話の保育料の基準はどういうふうにしてお定めになっていらっしゃるのでしょうか。保育料が非常に高いという声、それからもう一つは貧困家庭の子供たちを入れるにしても、ただいま御説明のように、いわゆる被生活保護者の家庭の子供は無料でこれを収容している。ところがそのすれすれのいわゆるボーダーライン層の子供たちの入所希望が非常に多いのですけれども、保育料が高過ぎるために、要するにお金が払えないからというので、ほうり出されている子供がずいぶん多いわけでございます。これについては、ただいま局長さんの御説明によると、家庭経済とにらみ合せて徴収しているのだということでございましたけれども、その基準でございますね。全額を納める子供もその中にはいるわけです。無料の子供もいるわけです。百円くらいの子供もいるのじゃないでしょうか。二百円、三百円、六百円というような、非常な段階があるわけでございますね。そういうきめ方でございますけれども、何かそれを通達か何かでお回しになっていらっしゃるかどうか。
  69. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 今お話にありましたように、家庭の経済の状況に応じまして、最低百円から最高おおむね千円ぐらいまで、段階をつけまして徴収をしているようなわけでございます。なお、念のために申し上げておきたいと思いますけれども、公けで負担しますものの割合と申しますか、これにつきましては、法律によって国が八割、県が一割、市町村が一割、すなわち国が、いわば公けで持つ保育料の八割を補助する、そういうような組み立て方になっておるわけでございます。
  70. 平田ヒデ

    平田分科員 この料金のことでございますけれども、ただいまの御説明でちょっと私納得いたしかねますのは、この家庭経済の事情ということだけでは、私いろいろ保育所の経営上の問題がたくさんあると思うのです。たとえばおうちが四、五軒並んでいる、隣のうちの子供はただ、私のうちの子供は二百円、その隣りは四百円、ということになると、どうしてそこに差があるのだということも、これはほんとうに保育所を預っている人たち——私はその中に入ってずっと見て参ったのでございますけれども、こういうところにも、保育所をやっていらっしゃる方の非常な困難が感ぜられるというわけでございます。  それからもう一つは、国が八割、これは私も存じておりますけれども、最近の様子を見ますと、ほんとうに八割が流されておるのでしょうか。この保育所の数は八千六百ヵ所、そして収容児童の数と、それからこの措置児童に対する措置費が、ほんとうに八割完全に流れておるかどうか、その点をお伺いします。
  71. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 隣近所納める金が違うということは、一面からみればなかなかデリケートな問題であることは、私ども地方の実情についてある程度認識をいたしておるものから見ますれば、うなずける点でございますけれども、と思しまして、結局低い収入の人から相当額の保育料をいただくということもどうかと思いますし、相当な収入のある家庭から取らないということも、児童福祉法の建前からいたしまして適当ではございません。やはりどうしても保育料が払えないものにつきましては、十分国なりあるいは公けなりで手当をする。そうでない家庭においては、一つ応分の料金を出していただく。法律としても建前は一応そういうようなことになっております関係上、実際の家庭の経済、すなわち収入支出等をにらみ合せて額をきめて出していただく、そういうようなことにいたしておるわけであります。ただ実際の運営の問題としては、その間、直接にタッチされる当事者の間に、非常に御苦心になっていることはわれわれも十分よく承知をいたしております。  それから、国の補助でございますが、これは八割出しております。
  72. 中垣國男

    ○中垣政府委員 平田先生にお答えいたします。他の委員会に行きます関係上、途中でまことに相済みませんが、児童福祉施設としての保育所の必要性とか、重要性とかいう問題につきましては、平田先生と全く同じ考え方でございます。ただ急速に施設が増加して参りました関係上、設備が十分でないとか、あるいは補導員の質の問題とか、いろいろ問題があると思うのでありますが、こういった問題につきましては、保育行政の充実ということにつきまして、厚生省といたしましては一段と強化して参る考えでございます。
  73. 平田ヒデ

    平田分科員 それじゃもう一つお尋ねいたします。これは私の知っておる、見ておる範囲でございますけれども、幼児をほうっておくよりも見ていただいた方が、ほんとうによい子になってくれていいというわけなんですね。一ぺん保育所に入れても、お金が続かないとついやめさしてしまう家庭もあって、ほんとうにもう少し安い金で、国でこれを見ていただけたらという声が実に大きいのでございます。ところが、行ってみますと、建物は建てた。篤志家があって、自分が一つこれをやってみようというので、何とか建物は建ったけれども、ほとんど雨と風をしのぐだけで、ほんとうに机もなければ、お遊びの道具もない。ブランコはようやく木製のがぶら下っているという調子でありますけれども、子供たちはそこに大ぜいやってくるわけであります。そうすると今度は県の方から検査がございまして、最低基準に合わないというので、むしろ圧迫されておるような、もう立ち行かなくなってしまうというような感じを私は受けております。これではまことに残念だと思うのでございますけれども、大体予算を見ましても、大蔵省の査定で非常に削られておりますが、私はもう少し何とかならないかと思うのでございます。その点についてちょっとお答えを願いたいのであります。
  74. 中垣國男

    ○中垣政府委員 お答えいたします。ただいまおっしゃったように、施設内容等につきましていろいろ県から検査をしてやかましいという点は、ほんとうにそういう点があるかと思うのであります。といいますのは、そういった大事な乳幼児を扱うのでございますから、どうしても一定の基準を設けまして、たとえば保健衛生、公衆衛生といったようなあらゆることを考えまして——そういう基準がないといたしますと、かえって害を加えるようになっても大へんな問題でありますので、この点は、たとえば国としてそれをどういうふうに始末していくか、善処していくか、こういう問題になるだろうと思うのであります。でありますから、やはり予算的には、そういった施設に対しても補助金を出していくような方法をやはり検討して、たくさんの人がこういう機関を必要としておるのでありますから、御要望におこたえしていきたいと思います。
  75. 平田ヒデ

    平田分科員 もう一つ。子供を育てるということ、人間を一人でも育てあげるという大きな責任を母親は持っておるわけでございますけれども、特に生活保護家庭というのは六割が母子家庭であるということを私は聞いておりますが、先ほどどなたかの御質問にもございましたけれども、母子年金というものがこれから四、五年先のことで、今差し当っての間に合わない。けれども、子供というものは毎日々々育って参りまして、子供の時代というものは再び帰ってこない。その間に子供の生活が送られ、そうしていわゆる基本的な憲法の問題等もそれに加味されてくるわけで、これは非常に重大な問題だと思うのです。もちろんそれは親の生活が安定して、親が仕合せになってくれなければ子供も仕合せになれないのはもちろんでございますけれども、この点を考え合せて、片すみに追いやられている子供たちにもう少し明るい生活をさせてあげるような方策を力強くとっていただけないものかと思うのでございます。特に児童局の予算というのは、その名前の通り子供でございまして、何だか一番弱いような感じがします。議員さんの中でもあまり子供の問題をお取り上げになっていらっしゃらないのは、子供が選挙権を持たないからかもしれませんけれども、もう少し強力にこの問題を取り上げて真剣になってお考え願いたいと思うのです。そういう点について、これはからみ合せて、子供には子供の座を与えなくちゃならないと思うのです。これはだんだん大きくなっておとなになる一つの段階では決してありませんで、再び来ない毎日のその日をやはり子供は子供なりに充実してやりたいということを私は真剣に考えておるわけでございますが、圧迫しているのじゃなくて、作っても検査のためにほうり出されているという姿が非常に多うございます。そういう点について政府の御所見を伺いたいと思います。
  76. 中垣國男

    ○中垣政府委員 ただいま仰せになりましたようなそういう収容施設等の関係につきましては、今年度の予算としましては実は昨年よりも相当に拡大されております。先ほど局長から御答弁いたしましたように、たとえば食品の単価がおやつ代というような意味で五円引き上げられたとか、また被服費が今度新しく認められたとか、そういうようなことももちろん十分ではないのでございますが、昨年よりもやはり非常に重要視されている予算の組み方であると思います。  なお、その他の問題につきましても、こういうような児童福祉施設の強化ということにつきましては、政府といたしましても一そう力を入れて参りたいと思います。
  77. 平田ヒデ

    平田分科員 児童局長さんにお尋ねをいたしますけれども、これは私の福島県でございますが、生活扶助の家庭で親からも家庭からも手放されておる子供が、現在四万二千人おります。これは婦人児童課の調査でありますが、この子供たちは当然保育所に入所すべき資格を持っている子供である、こういうふうに見ておられるようでございますけれども、この子供たちは入所できないでいるというのが実情です。これは小学校や義務教育の学校などと違いまして、これだけしか作ってはいけないという基準があるわけでもない、作れば幾らでも作れるという考え方の上に立っておられると思うのですけれども、予算関係で押えられておるのかもしれません。これは福島県だけの例でありますが、こんなに大ぜいの子供がいるのですから、全国的に見たらずいぶん膨大な数に上るだろうと思うのであります。これに対して今度の予算は、今政務次官は努力して取っておるとおっしゃいましたけれども、私にはそうは思えないのです。ほんとうに作ろうと思ったら、理想的な保育所の数字というものはどのくらいになるとお思いになりますか。
  78. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 福島県の数字につきましてはここに実は材料を持っておりませんので、今お話の数字が私の方の考え方と一致するかどうかわかりませんが、ただ考え方といたしまして、生活保護の家庭であれば当然全部保育所に入る、そういうふうにお考えいただくとこれはやはり少し誤解を持つんじゃないかと思うのでございます。理屈を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、保育に欠ける者を入れるわけでありますから、従いまして生活保護を受けておる家庭におきましても、あるいはおじいさんがおる、おばあさんがおるというようなことで、人手がありますとか、そういった関係で必ずしも保育所に入れなければならないということにも、直ちに結びつかないところも理屈としてはあり得るわけでございまして、その辺のことは結局具体的な問題でございますが、そういう点を一つお含みおきいただきたいと思います。  それから今後一体どのくらいあったら十分であるかということにつきましては、実は私どもも前々からいろいろ調査その他の毛段によりまして計画を立てたいということで腐心いたしておるのでございますけれども、実際問題としてこれは保育に欠ける欠けないという認定の問題がございますし、正確にその数字を割り出すことは非常に困難を感じておったことでございます。ただしかし現在八千六百ヵ所と申しましたが、これで十分でないことはだれしも言うまでもないことでございますし、従って今後ともこの増加には努力をして参りたいと思いますが、特に一番初めに申し上げましたように、急速に伸びて参りました関係上、県別に見ますと非常にアンバランスになつておるわけでございます。相当伸びておる県もあるし、そうでないところもある。全般的に見れば、東北地方と九州地方がおくれぎみであるということは事実であります。これらの問題も考えて保育所の整備の問題を努力をして参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  79. 平田ヒデ

    平田分科員 ただいま私が四万二千名と申しましたのは、婦人児童課が昨年の末に調べた数字でございまして、手放されておつて入れてやりたいが、入所できないで困っておる児童の数だけれども、さしあたってぜひ入れなければならないと思う幼児は三千人ほどある、こういうふうに出ておるわけでございます。これには保育所の数が足りないことはもちろんだけれども、要するに補助金が大きいので新設などは思いもよらないのだと、福祉事務所関係ではいつておるとこれは出ておるわけでございます。  それからもう一つは先ほど私ちょっと申し上げましたけれども、国庫の補助八割が安全に出ているとおっしゃいましたが、私はこれはまだ数字を見たわけでございませんけれども、国の補助は保育所がたくさんできたのに予算が不足をしておるので、大体六割ぐらいしか出ていない。それでつい県の方でも自分の方の負担の一割を国のまねをして出し渋っておるとこういう声が聞かれるわけであります。私ちょっと数は忘れましたが、福島で本年は保育所の数が十幾つだったかと思うのですけれども、そこでは年間の赤字の負担額が六十万になっている、こういう事実がございます。こういう点につきましては、これは私まことに不思議だと思うのでございますけれども、そういう事実はございませんですか。
  80. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 保育所の新設の場合におきまする補助金は国が二分の一ということになっております。あとの残りの分の四分の一か四分の二は県が持つ、あとを市町村が持つということになるわけでございますが、いろいろな地方財政関係もございまして、実は私ども率直に申し上げまして、たとえば東北等のごとく比較的保育所の普及率の低いところにおきましてはうんと力を入れて、伸びているところはある段階において多少の足踏みをしてもらっても、東北のそういった方面に伸ばしてやりたい、そういう気持で実はやっているのでありますけれども、なかなかそこが地方財政等との関係もございまして、その趣旨ばかりでも貫けられないという実情もありまして、苦慮をいたしておるのでございますが、今後とも気持としてはそういうことでいきたいと思いますので、地方の方も一つそのつもりで御協力いただければと考えておる次第でございます。  それからいわば措置費の問題でございますが、一番初めに申し上げましたように、公けで負担する分と、それからいわゆる家庭から徴収をする分と両方で結局運営をしていくわけでございますが、一般的に申し上げますと、第一には、一番初めに申し上げましたように、保育に欠ける児童を保育所に入れる、すなわち措置をする、そういうことになっておりますし、またその線を貫かなければならないことは言うまでもないのでございますけれども、現実の問題としては、実情をだんだん調べてみますと、やはりそれに該当しない児童が入っておるところも多々あるのが実情でございまして、その辺は運営の適正を期するという上に、役所の方もそれから実際の保育所の運営に当っておられる方も協力をして、法律にあるがままの姿の保育所に引き直していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。それから家庭から保育料を徴収する面でございますが、これがやはり一般的に申しますとかなりいわば低目にとられておるというのが相当ある実情でございまして、これらはやはり適正に徴収をしていただく、そういうことによって保育所のすっきりした姿というものが確立をするということが、同時に経営がすっきりした姿で堅実になるということだろうと思います。現段階においては率直に申し上げまして、いろいろな観点から保育所の状態というものが必ずしも理屈通りに参っていない面がありますので、金の面でありますとかあるいは行政の面でありますとか、いろいろお互いに、これは行政の立場に立つ方の側からもあるいは実際の運営に当っておられる方からも、あるいは家庭の方からも、意に満たない点があるのははなはだ残念でございますが、これらは一つ国も県もそれから市町村も、実際の運営に当っておられる方々も一緒になって、りっぱな保育所の運営というものを確立されるように今後十分一つ努力をしていきたいと考えておる次第でございます。
  81. 平田ヒデ

    平田分科員 ただいまおっしゃいましたことはよくわかりましたが、もう一つこれは私の地元の方からの陳情でございましたが、毎年々々のことだけれども、十一月以降になると措置費がなかなか来ないというわけでございます。これは私一度聞きまして、それからまた念を押してしばらくたってからもう一ぺん聞いたのです。それはほんとうかといって聞いたのですが、それは事実です、こうおっしゃるのです。そうして年度末になってから共同募金の入る分と一緒に一ぺんにそのお金がやってくるというわけです。その間どうしていらっしゃるのですかと聞きましたら、保母さん方の月給も渡さなくちゃいけないし、どうにも困るので、市町村の方からの立てかえで借金をして払っているような実情で、せめてその期間にきちんきちんと流してもらいたい、こういう声を実は聞きました。この点については私まだずっと流れている過程を知りませんので、その点をお伺いいたしたいと思います。
  82. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 金の支給等について不当におくれている分がありましたならば、これは調べてそういうことがないようにするのが当然でございますので、努力をいたしたいと考えます。ただこれもありていに申し上げまして、私の方、いわゆる国の方としましては、地方の方からそれぞれ資料をとりまして、それに基いて幾ら措置費を流すかという計算をいたしまして流すわけでございますが、その実際の資料と申しますか、これが県によりまして非常に的確に来るところもあるし、そうでないところもあるし、その辺がやはり一つの問題点でございます。平田先生の県がどうであったか、ここで申し上げる必要はないと思いますが、そういった関係で、これはやはり国の金でありますからには、相当しっかりした資料に基いて金額をはじき出すということが当然でございますので、その間この点はどうかあの点はどうかというようなことで重複を重ねている間に多少の日がたつということは免れない面もあるかと存じます。これは運営に当る人たちの御協力、それから県等の協力関係、その辺を打ち立てることに努力をいたしまして、なるべく迅速にいたしたいと思います。十一月以降云々ということは、結局そういったことでだんだん年度のしりにいわば迫ってくるわけでございますので、その辺の調査関係がだんだんお互いに詰まってくるという関係上あるいはそうかもしれませんが、この辺はよく調べましてできるだけ早く金が支給されるように努めたいと思います。
  83. 平田ヒデ

    平田分科員 実はこの保育所の評判が非常によくて、私大都市の方はよく存じませんけれども、いわゆるいなかの方では保育所設置の要望が大へん高いのでございます。これは大へんな繁盛ぶりでございますが、これはどうしてかと申しますと、昨年福島県の方は大へんな水害でございまして、厚生省の方からも大へん御心配をいただきましてありがとうございましたが、そのときに災害地の整理のために、各家庭とも子供が足手まといになっては困るというので、臨時の保育所を作られたのでございました。これが非常な好評でございまして、その後もずっと引き続いてやってもらいたい、保育所というものがこんなにいいものかということをお互いが感じたというわけなのでございますが、これがこの場合には災害地でありますから、季節的なものでございまして、そのままずっと続いてはおりません。けれども地元の要望はなかなか熱心でございます。これはどういうところにあるのかということでございますけれども、幼稚園と違いまして、保育所は朝早くから夕方おそくまでおうちのどなたかお帰りになって迎えに来て下さるまでめんどうを見て下さるものですから、それで非常に保育所に入所したいという子供たちの数が多いのだ、私はそう思っております。そうすると、地元としてはどうしても、あなたのうちは金持ちだから入れられません、こちらは貧しいから入れてあげましょう、そういうことが困難な状態にあると思うのです。私ももしも保育所を経営しているとしたら、やはり入れてやりたくなるのじゃないだろうか。そこは局長さんがおっしゃいましたように、ほんとうにすっきりとその点は割り切らなきゃいけないと思うのですけれども、そこがなかなか指導の困難な点じゃないかと思います。それから幼稚園の性格と保育所の性格というものをしっかりと把握していない点がございます。指導する人はもちろんわかっていらっしゃるのですけれども、入れたい家庭の方々はその点がよくおわかりにならない。むげに断わるとどうも変なことにもなるというわけでございます。大都市には幼稚園の数が非常に多くて、競争して募集して歩いているということを聞きますけれども、いなかの方では私は決ししそうじゃないと思っております。保育所の方がはみ出して入れない子供のために、一つ幼稚園を作ろうというので、私の友だちなんかも一人、自分の御主人の退職金と恩給を合せて今作っておられるようでございます。私もその相談など受けておりますけれども、なかなか基準がやかましいので、お金が非常にたくさんかかるのでございます。このために足踏みしていらっしゃるのですけれども、一応建てると、入れてほしいという声が非常に多くて断わるのに困る。最低基準があるから、何名ということになる、水道も引かなければいけない、手洗い場も作らなければいけない、お昼寝するところもということになると、なかなか大へんだということでございます。文部省の方もお見えになっていらっしゃるようでございますが、幼稚園は文部省の管轄でございます。こういうふうに子供をよく育てたいが、家庭の母親の手では十分にできない。お互いに生活は大へん働かなくちゃならないような状態になってきているのですから、子供を見てほしいと思うけれども、どっちへ行っても締め出されているというような状態でございます。文部省の方は幼稚園と子供との関係をどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか、お聞かせ願いたいと思います。ここにおいでになる方は御存じでしょうけれども、幼稚園と保育所をごっちゃにしていらっしゃる方がずいぶん多いので、厚生省の方もこの点の啓蒙が必要ではないかと思います。私どもよく申して歩いておりますけれども、その点すっきりした姿に持っていくためには必要じゃないかと思います。
  84. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 今お話しになりましたのは、地方の実情として私どももよく理解できるところでございます。保育所は、お話のように保育所の建前がございます。これをやはりすっきりさせることが、保育所本来の責任を果し、保育所本来の姿というものを確立するゆえんになることと思うのでございます。その辺は十分に気をつけて今後指導監督に努めたいと考えます。
  85. 上野芳太郎

    ○上野説明員 幼稚園の関係について御説明いたします。幼稚園は学校教育法の正規の学校体系の第一段階に属しておりまして、幼児の教育機関という性格を持っておるわけであります。大体基準によりまして、教育時間は一日四時間、そういうような立場で幼児教育を行なっております。現在の状況は、全国に六千十三園ございます。入っております幼児は六十五万でございます。最近の状況は、一年間に約七百ないし一千園増加しつつあります。就学率は大体現在二〇%まで達しております。公立の幼稚園につきましてやはり問題があろうかと思うのでありますが、都会地においては幼稚園の大部分が私立幼稚園であります。全国で考えましても、三分の二が私立の幼稚園でありまして、そうして都会地の中心部に集中いたしております。その関係で最近新聞等で見られますように、こういう地域では園児が足りないという問題がございます。しかし小都市、農村等においては幼稚園が少い。歴史的に見ましても、どうしてもこれは大都市から次第に小都市に発展する傾向を持っておりまして、最近急速に小都市なり農村の方に普及する傾向を持っております。そういう関係考えまして、公立の幼稚園につきましては、少い補助金ではございますが、施設設備について補助金を出しております。また市町村合併で古い役場等の遊休施設が出て参りまして、合併の条件として公立の幼稚園を作るという傾向が一部にかなり見られますので、今後におきましても、地方に公立幼稚園が普及する傾向は相当強くあるのではないか。私どももこれを奨励するように、地方の当局と協力いたしまして努力いたしております。
  86. 平田ヒデ

    平田分科員 ただいまの御説明でよくわかりましたけれども、保育料の問題はどうなっておりますか、これは地方によって違っておるのでございましょうか。私不勉強でございまして……。
  87. 上野芳太郎

    ○上野説明員 幼稚園は義務制ではございませんので、保育料はとっております。これは公立と私立、あるいはその設置者によりまして公立でも違っております。大体私どもの現在知っております程度では、公立は月二百円から六百円程度が普通のようであります。私立は八百円から千二、三百円ぐらいの保育料をとっております。
  88. 平田ヒデ

    平田分科員 局長さんにお伺いいたしますが、保育所の方は最高は幾らでございますか、最低と最高を……。
  89. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 これは地域によって違いますが、最高は千二百円と承知いたしております。最低は百円でございます。
  90. 平田ヒデ

    平田分科員 そうすると、千二百円を納めておる子供はどのくらいございますか。
  91. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 これはたとえば百円納めておる者が何人おる、五百円納めておる者が何人おる、そういう調査は実は手持ちございませんが、理屈としてはあり得るわけでございます。
  92. 平田ヒデ

    平田分科員 大蔵省の方で、保育所の方を調査されたことがあるということを聞いておりますけれども、入所児童中の約半数は措置を必要としない子供であるというので、厚生省児童保護費の予算が大へん削られた理由はそこにあるとかいうことを私ちよっと聞いておるのですけれども、大蔵省はどういう調査をなすったのございましょうか。
  93. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 私厚生省でございますので、的確なお答えはあるいはいたしかねるかと思いますが、大蔵省の方でも、この保育所の問題についてはかねがね非常に関心を持つておられまして、保育所の実態について、出先の機関を通じてお調べになったようでございます。その結果の一々については、もちろん大蔵省には大蔵省の考えがあってのことだろうと思いますので承知いたしませんが、その調査の結果、初めに申し上げました、措置をしなければならない児童に該当しない、すなわち保育所にどうしても入れなければならない児童でないものが相当数措置されているやのお話は伺っておりますけれども、その辺のところは、現実に私どもの調査と突き合せて厳密に選択したわけではありませんので、それでどうこうということはいささか早計ではないかと考えておる次第でございます。
  94. 平田ヒデ

    平田分科員 これは厚生省の要求額に対して半額というようなことになっているのですけれども、収入認定とこれに伴う費用の徴収の適正な実施が行われていないために減らしているのだということを聞いているわけなんです。それに対して厚生省と大蔵省と話し合いをしていないというような局長さんの御説明でございましたけれども、厚生省の方では、いわゆる措置を必要としない子供をどれくらいに見ていらっしやいますか。
  95. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 これは実は措置を必要とする、しないという問題を具体的に突き詰めていくということは、なかなか簡単にいかない問題でございますし、従ってそのうちの何割をどうこうするということを簡単に結論を出して、それに基いて予算を組むということにはやはり相当な準備が要る問題だと思うのでございまして、私どもとしましては、大体現状に即して予算を計上して御審議をいただいているつもりでございます。
  96. 平田ヒデ

    平田分科員 ただいま私が伺いましたのは、入所している子供についての調査なんです。大蔵省の方では半数は措置を必要としない児童だ、それから厚生省の側では、これは局長さんに知っておって伺って大へん失礼いたしますけれども、入所児童の約二割だ、こういうふうに見ておるということなんです。こんなに大きな開があるということはまことに不思議だと思うのですけれども、全般的にこれから入所させる子供についてではなくて、現在入所している子供について、そんなに大きな開きがあるはずはないと思うのです。
  97. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 よく御質問の趣旨は理解しているつもりでございます。大蔵省の調査によって、五割云々というお話は私どもは聞いておりませんし、大蔵省からも伺っておりません。従ってそれを基礎にして予算をどうこうしたということはないはずでございます。
  98. 平田ヒデ

    平田分科員 それでは、保母さんだけに限りませんけれども、養護施設の職員の身分に関する問題についてでございますが、月給が採用されたときのそのままで、昇給ということもなく、三年も四年も勤めておってもそのまま、それから手当はこのたびは幾らか出たようでございますけれども、ずっと前から引き続いて勤めていらっしゃる方でも、ほとんどいただいていらっしゃらない。年末手当もなければ、期末手当もなければ、薪炭手当ももちろんない、そして恩給というような身分の保障もない、こういう状態にずっと置かれておったわけでございますけれども、一体このままにしておいていいものかどうか、これは厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  99. 神田博

    神田国務大臣 平田分科員お尋ねお答えいたします。保母の待遇が採用後ちっとも変っておらない、これに対して厚生大臣はどう考えておるかというお尋ねのように承わったのでございますが、私も実はよくそういうお尋ねを聞くのでございますけれども、私の調べたところによりますと、年々幾らかずつは昇給している向きがあるように伺っております。それから今度の予算には二億二千万円ほど、これは実はその方を含めての話でございますが、今平田分科員の言われたようなことがございますので、今後はなお一そう是正をいたしていきたい、こう考えまして、所要の経費を用意したつもりでございます。
  100. 平田ヒデ

    平田分科員 保育所の問題、それから養護施設等もですけれども、特に保育所が国民から要望されているという点は十分お考え下すって、もっと予算を増額していただいて、野放しにされている子供たちをできるだけ収容していただくような措置を講じていただきたいということを要望しておきます。  大蔵省の方が見えたようですが、保育所に入所しておりますいわゆる措置児童について、大蔵省の方で調査をなすったことを聞いております。その収入認定とこれに伴う費用の徴収の適正な実施が行われていない子供というので、その適正でない子供が入所児童の約半数を占めておると認定なすったということを伺っておりますけれども、どういう方法で、どこでそういう調査をなすったかという点をお伺いしたいのです。これはさきにちょっと申しましたけれども、今局長さんの御説明では厚生省の方ではそういうことはあまりよく関知してないとおっしゃいましたけれども、入所児童中の二割くらいは保育所に入れて措置しなければならない児童だと認めない子供もいるということなんでございますが、この理由については私先ほどからいろいろと申し上げましたので別に問題はないのですけれども、その半数という認定についてお伺いしたいと思います。
  101. 小熊孝次

    ○小熊説明員 お答え申し上げます。ただいま先生のおっしゃいましたように、大蔵省といたしましても、保育所の措置の状況につきまして調査をいたしましたわけであります。その結果につきまして、担当の調査をするところがちょっと違いますので、その詳細な数字は今覚えておりませんが、その方法は大蔵省の財務局あるいは財務で調査をいたしたわけでありますが、その結果によりますと、もちろん各保育所、あるいは地方によって違うと思いますが——五割という数字は、私ちょっと記憶にないのでございますが、ある程度措置を要しない児童が措置されておるというような結果が出ておった、こういう報告は聞いた覚えがございます。ただこれは見る人々によっていろいろな見方があるわけでございまして、実際問題として非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、ただある程度保育所というものが、いわば幼稚園化と申しますか、そういう傾向もあるやに聞いておりますので、大蔵省としては、そういう面から一応実施してみたわけでございます。やはりある程度は措置を要しない児童も措置されておる、こういう実情が確かにあるように存じているのであります。正確な数字は今手元に資料がございませんので、申し上げられませんが、以上申しましたような状況でございます。
  102. 平田ヒデ

    平田分科員 それは保育所に行かれて、その措置児童の何か調査したその中でお調べになったのでしょうか。それとも各家庭を訪問されてお調べになったのでしょうか。どんな方法をおとりになったのでしょうか。
  103. 小熊孝次

    ○小熊説明員 まず保育所に参りまして、保育児の名簿がございます。それにつきまして当ると同時に、実地についても調査をしたはずだと思っておるのでございます。
  104. 平田ヒデ

    平田分科員 それは一部分で、全国を代表しておるとは決して思われないのですが、とにかく大ぜいの子供が入っておる。結局それはお金の問題になるわけですけれども、問題は幼児なのでございまして、しかもほとんど経済的に恵まれない家庭の子供たちであるということを中心において、そしてその子供たちの仕合せのためにできるだけ私は善処していただきたいと思います。大へん好景気だといって、それからまた大蔵大臣はつまみ金とかおっしゃいましたが、保育所の方にもこういう子供たちのためにも少々つまんでいただきたいと思うわけであります。ぜひお願いいたします。
  105. 坂田道太

    坂田主査 川崎秀二君。
  106. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 総理大臣の施政方針演説においても、生活環境を整備して明朗快適な国民生活を実現するということを明確に述べられておるわけですが、私は社会保障というものは、非常に広義な面でとっていくと各種の問題があると思うのです。もとよりその中心は医療保障の達成であり、続いては年金制度の整備であるとか、最低生活の保持であるとか、ないしは老幼並びに貧困者に対する対策であるとかいうような問題が、その上層を形成すると思うのです。しかし何と言っても社会保障の高度な国家は、飛行機で到着するとわかるのですが、非常にクリーンな国なのです。清潔な国だということがやはり社会保障の発達してしくところの基底部を構成すると思う。一番底を形成するのは生活環境の整備だと思う。そういう意味で一番大事なのは最近に至って注目されてきておる糞尿、屎尿問題の処理だと思う。これは表現するのに非常にきたないことですから、国政の上で今まであまり論ぜられてこなかった。非常に残念なのです。われわれはかつて閣議の席上でもこの問題こそは将来の日本の、いわゆる保健国家ないしは衛生国家を形成する第一の問題だということを言って参ったのでありますが、屎尿処理あるいは糞尿処理に対する予算が十分でないじゃないか、同時に今後これらの問題について、厚生大臣はどういう構想を持ってわが国を真に東洋随一の衛生国家とするかということに対する根本的な御方針を承わっておきたいと思います。
  107. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの川崎委員文化国家、衛生国家を作るには、屎尿処理がわが国目下の喫緊の問題ではないか、こういうお考え方につきましては、私も全く同感でございます。これは御承知のように長い歴史がございまして、その惰性で今日まで糊塗してきたものと考えております。農業の形態が変り、産業の形態が変って参って、都市集中が特に激しくなって参りまして、この問題はさらにゆるがせにできないような状態になったと考えております。  そこでその処理の構想でございますが、何と言いましても、この事態がかように急になりましたことは御指摘の通りなのであります。特にこの数年間この問題が最も顕著な事例として現われてきたんじゃないかと思います。政府におきましても来年度予算にも計上いたしておるわけでございますが、全国一律に一ぺんにやることはなかなか容易でないのでございまして、まず東京湾の周辺の都市、また大阪湾の周辺の都市を第一に取り上げまして、ここ三年間で海洋投棄をしておる事態、または屎尿詰りをしておる状態を改善いたしたい、終末処理を十分にいたしたい、こういう構想をもちまして、実際の計画にマッチした予算を三年計画の初年度分として計上いたしております。そこで東京湾周辺、大阪湾周辺は、少くともこの三年間においてそうした事態が一新されると考えております。千葉県その他のこの周辺の府県市町村のこうむった非常な打撃というか、不安というか、これは一掃されると考えております。  その他の都市の問題でございますが、これは今年度においても所要の経費を計上いたしましたが、何といたしましても急に一時に起きた事態でございまして、また都市それぞれの特殊性もございますので、これらはまだ十分調査が行きわたってない実情でございます。都市そのもののいろいろの考え方等も参考にいたしまして、しこうしてまたこの処理ということ自体は、その場所を選ぶ問題とも関連いたしまして、なかなか急速に結末をつけるということは至難のような状態のようであります。しかしこの解決そのものについては、もう非常に理事者も苦慮しておる際でございますから、三十二年度においては、私ども掲げました経費によって最善を期しますが、少くとも三十二年度中において、今川崎委員が御指摘になりましたような計画を十分立てたい。とりあえず三十二年度は周辺の都市、全国各中都市の問題を取り上げておりますが、三十二年度中には全都市の問題をよく調査して、その計画を立てさせまして、その立てた計画調査いたしまして、これに対応していくような予算実施化をはかっていきたい、こういうような構想を持っております。いずれにいたしましても、これはもう今日差し迫った大問題だ、そういう感覚のもとに善処していきたい、かように考えております。
  108. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 厚生大臣の感覚というか、認識というか、あるいは方針というか、これらは非常に同感であります。将来の計画についてその信念たるやよし、しかし計画はどうなるか。すなわち三年計画で東京、大阪、この二つの都市の周辺だけでもきれいにしたいということのように承わったが、私は今、去年の九月十三日の厚生省予算原案を立てられるときの糞尿処理の計画なるものを持っておるわけです。そうすると、そのときには二年計画、十二億八千四百五十七万八千円というものを出した。ところが十分にこれが達成をされなくて、今言うような三年計画に変ったのじゃないか、どうですか。
  109. 神田博

    神田国務大臣 今御指摘になりました川崎委員のお説の通りであります。私、先ほど申し上げましたのは、東京大阪二年計画が三年計画になったことは、御指摘の通りでありますが、その他の都市の屎尿処理については、厚生省の調べだけではまだ資料不十分だと私自身考えておりますので、三十二年度には所要の資料を十分精査しまして、そこで十分な認識のもとに抜本的な計画を立てたい、予算化したい、こういう意味お答え申し上げたつもりであります。
  110. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 この問題は、厚生大臣でなくてけっこうですから、環境衛生部長からお答え願いたい。二年計画にしても、三年計画にしても、この東京、大阪、いわゆる大都市周辺だけでも糞尿処理問題を解決したいということで進められておると思うのですが、それが予算上十分な措置が講ぜられなかったために、あるいは三年計画になり、来年になると四年計画になるかもしれぬけれども、とにかくそういうことで行くわけだと私は思う。その計画の要綱みたいなものはありませんか。どういう方針でやるか。たとえば下水道をどんなふうにして整備するとか、あるいは汚水の浄化槽をどういうふうに建設するというプランはありますか。
  111. 楠本正康

    ○楠本説明員 お答えを申し上げます。東京湾、大阪湾の対策につきましては、ただいま大臣から申し上げた通りでございますが、これらの具体的な計画につきましては、おおむねこれらは大都市でございますので、将来の長期計画から申しますと、当然下水道によって処理されるものと考えております。ところが急に今ここで下水道を完備いたしますことは、経費の点から見ましても、また技術的にも困難がございます。ただ将来の下水道計画ができ上っておりますので、これと調整をはかりつつ、現在の下水道終末処理場の機能を高めるために、この拡充を行いますことが第一でございます。拡充を行いました暁に、当然下水道の配管が全部完了しておりませんので、その間は暫定的といたしましてくみ取り屎尿を終末処理場に投入いたすことにいたしたいと考えております。第二は、将来下水道終末処理場が当然できるであろう予定地がございます。その予定地にいまだ配管ができておりませんので、終末処理場ではなく、下水道終末処理場として役立つ屎尿浄化槽をとりあえず作りまして、ここにくみ取り屎尿を投入していく。ただしこれらは下水道ができました暁には、むろんそのまま終末処理場として活用される結果になるわけでございます。なお下水道のみで解決をはかることは困難でありますが、最近数年来私どもが研究いたしておりました、ごみと屎尿とを混和いたしまして、これを機械にかけて急速に堆肥化する設備によって相当量の消化ができます。しかもこれによりまして、都市で困っております塵芥の処理も同時にできます。かような堆肥化施設を設けまして、堆肥の形にして農村に還元をしていきたいというのが第三でございます。これらの方法を総合いたしまして、今後三年間において、これら両湾周辺の都市は、ただいま御指摘のございましたように、全く清掃の届いたきれいな都市にいたしたい、かように考えております。
  112. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 私ちょっと汚物処理のことで調べてみますと、実に話は愉快なんです。あべこべに言えば不愉快なんです。つまり国が汚物処理にどの程度てこ入れしているかということを見るには、清掃施設整備費に対する過年度の地方単独起債承認額を見るとよくわかる。二十七年度をとってみると汚物関係は二千三百万円が承認された。そしてこれは要求額の二・九%であるから、一番きたないところであり、一番低いところであるから、起債も一番低くていいという考え方を大蔵省は持っておるのではないかと思う。ところが外国人が日本に来てあの高い鼻で一番先に感ずるのは便所のくささだ。これを処理しないところが一番先に気がつくのだから、本来の衛生国家あるいは保健国家としての考え方からすれば、当然一番先に変えていかなければならぬ。福祉国家などというようなことを言っても、一番肝心なところが抜けておる。これは声を大にして屎尿処理、糞尿処理を叫ばざるを得ない段階に立ち至ったのではないか。もとより医療保障も大切でありますし、社会保障も中心問題ではありましょうが、今や予算が少しでも楽になったときには、こういう基底問題を一つ洗って、厚生省が力を入れて邁進してもらいたいと思うのです。また平衡交付金の二十七年度の基準財政需要額というものを全国の市町村を通じてとってみますと、一人当りわずか十円なんです。算定数額は七億円にすぎないというようなことで、地方の要求で認められないものの一番あわれなのはこの問題だということが言えると思うのです。従って私は、長期計画を立てるなら国全体の長期計画が必要だということ、これが一つ。もう一つは、神田厚生大臣が明快に言われたように、とりあえず東京・大阪——東京、大阪もまず東京都というものに着目しておいて、これはともかく何といったって東洋のメトロポリスといわれておるのだから、そこがきたなくては、これは私の一番精通しておる問題であるオリンピックの問題にも関係するが、とても今の状態ではオリンピックなんか来るわけはないです。こんなばかなことはないのである。私は昨年、これは少し脱線かもしれませんけれども、昨年中で一番おもしろく感じ、また国辱でもあると思った写真は、アサヒグラフが昨年の十月号かに東京湾上の汚物海上放棄の写真を載せたのであります。これは一面に載ってあの伝馬船でほおっておる。ほおったときにぱっと黄色い糞尿が太平洋の海上一面に流れておる写真、あれはカラー写真で出したならば、もしアサヒグラフが海外に行ったならば日本へ来るものはないですよ。あれはカラー写真でなかったことにおいて救われたけれども、カラー写真であったならば、逆説をいうならば、おそらく世界写真コンクールのナンバー・ワンに当選するものです。私は驚いた。これを厚生大臣がそのままにしておく手はないのであって、新鋭厚生大臣は、少くともこの一年間のブランクを破ってもらいたいと私は思う。ぜひともその点を要望するとともに、東京都とどういう打ち合せを進めて今日やっておるか。起債の額は今後はそんな三%とか五%とかいう数字でなしに認めるように努力するのかどうか、こういう点を承わっておきたいと思います。
  113. 楠本正康

    ○楠本説明員 御指摘のように従来起債充当率にいたしましても、あるいは全体として国のてこ入れが確かにおくれておった分野でございます。これと申しますのは、従来、先ほど大臣からも申し上げましたように、長年の習慣で進んで参りました。しかも一方これらの仕事はもっぱら市町村の責任ということに相なっておりましたために、国のてこ入れが足りなかったことは事実でございます。しかしながらただいまだんだん御指摘のような実情になって参りましたので、この辺で考え方を改めまして、大いにてこ入れもいたし、また全体的の調整もはかりつつ目的を達成したいという考え方だと存じます。なおこの場合東京都につきましては、これまた御指摘のように最も重要な都市でございますので、東京湾、大阪湾の対策の中心でもあるわけでございます。これらの点につきましては来年度におきましてはもちろん補助率はきわめて低く、大部分が起債によらなければならぬ、自己財源によらなければならない関係もございますので、目下大蔵省の理財当局ともいろいろ相談をいたしまして、予定通り事業が完遂されますように、本年は相当大幅な財政的援助が与えられますように折衝いたしております。おそらく自己負担分のうち五〇%以上が起債財源としても認められ、従って相当大幅な資金の援助が行われる見通しでございます。なお私どもといたしましても、三か年間を打ち出した以上は、何としても三か年間で目的を達成しなければならぬ、これらの点につきましては、目下寄り寄り東京都を初め、関係都市と相談いたしておる次第でございます。
  114. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 楠本さんに伺いますが、海洋投棄ということは将来やめますか。
  115. 楠本正康

    ○楠本説明員 これは昨年夏いろいろ海上保安庁等の協力を得てその実態調査をいたしました結果、厚生省といたしましては海上投棄は少くとも東京湾、大阪湾に限らず、内湾におきまする海洋投棄は、これを禁止する方向に進みたい、そのうちでとりあえず東京湾、大阪湾はできるだけ早い機会にこれを禁止するという方針でございます。
  116. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 大体めどとしては三年ですか。
  117. 楠本正康

    ○楠本説明員 これは施設整備等の関係もございまして、三年間だけはごしんぼう願うということでございます。
  118. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 それからおととしからやり始めましたカとハエの駆除ですね。これはかなり民間の協力を得まして非常な成績が上っておると思うのですが、なお中小都市ないしは大都市でもはずれの方は実績が上っておらない。去年予算に計上してあれば相当全国に大きな影響を与えたと思うのですが、去年できなかった。おととしは提唱期で、去年頭を出しながらできなかった。ことしは三千三百万円ですか計上されておることは、非常に大臣御奮闘のたまものだと思うのですが、これだけで十分なのかどうか。もし十分でないとすれば、今後なお計画を継続して、そうしてひとり中小都市以上でなしに、農村全般にわたって計画を推し進めていくものかどうか、こういう点について、これは大臣一つ答弁を願いたいと思います。
  119. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。このカ、ハエの駆除のことにつきましては、今川崎委員お尋ね通り、これはもうどうしても第一に手をつけてやらなければならぬ仕事だと私は考えています。大した金もかかるわけじゃなし、むずかしいものじゃなしと思っております。ただしこれをやることは全国民の自覚と協力のもとでこれはやらなければならない。たくさん金をかけても一時的なものであってはこれは効果が持続しない。これは常時やるべきことだと思います。そこで今年度におきましても三千三百万の予算を計上したわけでございますが、これは一つそういう訓練を兼ねておる国民生活改善運動として国民の自覚を促すとともに協力していただく。同時にまたこれはかけ声だけではいかないわけでございますから、このカ、ハエの発生原因となっておるものについても、いわゆる除害方法一つ助成していこう、塵埃の焼却場を作ってやる場合については若干の補助金をやるとか、あるいはみぞの不完全なものについてはこれらを一つ清掃するような若干の助成をするというような、これはわずかなことで一つ大きな効果を上げるというようなことをねらうと同時に、このカとハエの運動に協力してくれた市町村あるいはその他の団体、こういうものを一つ表彰しよう。一つ大いにほめてそういう気持を全国津々浦々に盛り上らせていきたい、こういうやり方を考えたわけでございます。これは一番簡単なことをいえば、DDTで空からうんとまいてしまえば早いわけでありますが、そういう一時的効果をねらっても、他の耕作物等の関係が出て参りますから、三十二年度には地道かもしれませんが、持続性をねらう。そうしてこの国民の自覚、協力というものに待ってやろう。それに要する経費が大体三千三百万円で所期の第一次目的を達する、こういう考え方で計上したわけでございます。
  120. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 ただいまのお答えでけっこうだと思うのですが、四年ほど前に中国へ旅行した者が、北京は変った、中国の事情は革命政権によって政治、経済ともに非常な変化を見ておるが、その中でいいものがあるとするならば、まず何かといえばカとハエがいなくなったことだ。しかししさいに見ると、北京でもいるそうです。いるそうであるが、とにかくあの戦前は飯を食っておると、まるで甘い菓子にアリが寄るように集まった黒山のようなハエの襲来というものが、北京ではなくなったということだけは間違いがないということを考えてみると、政治のやり方いかんによって、非常に衛生には変化があるということは言えると思うのです。ここ二年間でかなりまた日本の大都市は変化するものと思うのですが、ぜひじみちにこの計画は推し進めていただきたいと思うのです。  さらにお聞きしますが、農村地域とかあるいは海岸地帯あるいは都市の一部などで排水が十分でない、そのために日常生活に非常に支障を来たしておるところがあるわけです。そういうところでは本格的な下水道というものをやるよりは、むしろ簡易な排水路を作ったらどうだというふうに感ずるのですが、これは楠本さんからお答え願ってけっこうであります。
  121. 楠本正康

    ○楠本説明員 まことに御指摘の通りでございまして、都市は下水道を根幹として参りたい。しかしながら農村地帯、あるいは町村地帯というようなところは、なかなか下水道を完備するということは、外国の事例等を見ましても困難であります。これらの点につきましては、やはり実情に即しました排水路、みぞを整備していく方針でございまして、本年、先ほど御指摘の三千三百万円の補助金のうち、その大部分はこれらの地域におきますみぞの整備に充てられる次第でございます。ただこれも大臣からお話がございましたように、単にみぞを作るだけでも、そのみぞが生きて参りませんので、やはりその地元が生活環境の整備に熱意があり、蚊やハエの撲滅にも熱意を示しているところに施設していく。そういたしますれば、それらの施設が真に喜ばれる施設となり、生きた施設となっていくというふうに考えまして、全国的に悪いところはみなやるというようなことは、この際一応避けまして、実効を期して参りたいという所存でございます。
  122. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 糞尿の処理の問題の際に申し上げようと思ったのですが、もとよりこの糞尿処理には、水洗便所の完備、それから下水道の整備ということが欠くべからざる重要な問題であると思うのです。私今思い出したのですけれども、一昨年ニュージーランドに行ったときに、実は一番感心した話は、水洗便所を全国、全家庭にわたってやっている。そして私は自動車で走っておる最中に、ずいぶんいなかの方に行ったときに、社会保障省の次官に質問して、全部水洗便所だというが、あんなに高い山の上にも家があるが、ほんとうかと言ったら、いややっているのだ、というのは、そこにまで鉄管を通して下水道を敷設しておるということを聞いて、これは非常にびっくりした。デンマークであるとか、あるいはスエーデンなどもそれに近いものでしよう。アメリカもそうでしようが、やはりアメリカの奥地に行けばそういう下水まで整備されておるところが若干ないのもあるのです。ニュージランドなどは世界第一の衛生国家と、それだけでも言っていいと思うのですが、私はやはり東京都の——日本人というものは右へならえの性格が相当あるから、東京の旧市内、これに十ヵ年計画で水洗便所を全部つけるということを、むしろ国家が慫慂したらどうかと思うのです。そうすると東京都のほかの地域もこれにならうし、大阪もだんだんこれにならうということになると思う。こういう経済の非常にアップしておるときに、そういうことを厚生省で打ち出して、そして東京都に話をするということが必要だろうと思うのです。三木東京都清掃局長、今もそうですが、あの人の話によると、東京都の全体に実施するのには、今の財政と起債の状況からいくと七十五年かかると言っていました。しかしもうそのおととしのスタンダードとずっと経済状況は変ってきておるのですから、ぜひ東京都内の旧市内だけでもやったらどうか、そうすれば外国人の日本観も変るし、そのことが全国に好影響をもたらす。何かこの長期計画を、指定地域を設けてやることが必要じゃないか。それがこの健全な衛生国家、保健国家を作るじみちなコースであるというふうに私は感ずるのですが、これは厚生大臣と楠本さんと、両方から御感想を承わりたい。
  123. 神田博

    神田国務大臣 ただいま川崎委員の述べられたお考え方は私も全く同感でございます。ことに東京都のごときは、今御指摘になった旧東京市の区域もそうでございますが、これらがいまだにそういった施設がほど遠いということは、まことに遺憾千万だと考えておるのであります。都の財政も最近の景気に見舞われて、非常な好況を呈しておる際でございます。御所見につきましては、まことに同感でございますので、一つ十分話し合いまして、新しい施策を打ち立てたい、こういう所存でございます。  なおこれは私見にわたりますが、私は川崎委員の述べられたことはまことに同感でございまして、ニュージーランドと日本の国情は違いますから、とうてい及ぶべくもないと思いますが、少くとも大衆生活関係のある飲食店とか旅館とかあるいは公共施設、こういうものは今後は必ず水洗便所まで持っていく、それが当然なことだというようなことにするような行政措置をとる段階に、もうすでに来ているのじゃないかという考えを私は持っております。新しい行政のあり方として、今日国民大衆といろいろ密接な関係を持っている商売あるいはまた公共建築物等は当然のことでございますから、そういうところからやっていく、そうすれば、若干余裕のある家庭では当然私はやると思う。現に私の選挙区等は、いろいろこれはございますが、一部の農村で、すでに水洗便所をみずから連合で作っておる。台所改善と同時に……。これはもちろん集約農業をやっておるところでございまして、単作地帯ではございませんけれども、そういう事例ももう農村に出ておる際でございますので、これはなおよく調査してみないとそういう命令措置をとるということは乱暴でございますが、少くとも公衆衛生と関係のある営業あるいは官庁、事務所等は、もう水洗便所まで持っていかなかったら許可しないのだというくらいの行政措置をすべき段階に来ているのじゃないか、こういう感じを持っておったのでございますが、今度厚生省の方を担当するということになったわけですから、なお一そう検討を加えまして、御趣旨によって調査をいたしてみたいと考えます。
  124. 楠本正康

    ○楠本説明員 東京都につきましては、従来も何年計画というような計画がいろいろあったわけでございますが、ただいまのお言葉によりまして、今後もっと具体的に十年なら十年ということで、できる範囲で具体的な計画を、至急相談して作りまして、この点は資料として一そ御批判を願いたいと存じます。また申しおくれましたが、今回党の御心配によりまして、温泉地の入湯税が目的税として使用されることとなりました。これらはあげてこれら清掃関係の事業に使うことによりまして、今後りっぱな観光地、屎尿臭のない観光地がすみやかに生まれてくることを期待いたしておる次第でございます。
  125. 川崎秀二

    ○川崎(秀)分科員 最後に、これらの問題から帰着するところは、厚生省の内部における生活関係の部局を強化する必要があるというふうに私は感ずるのです。おととしの森永ミルク事件、ないしはさかのぼってワクチンの事件、その他衛生関係の事件の突発、環境衛生の重大性などを考えてみますると、厚生省の仕事としては社会保障の見地からこの部面を強化しなければ、とうてい保健国家としての最後の理想を貫徹することはできないというふうに私は感ずるのです。一時あった生活局構想というものがやや後退したように思われるのは、はなはだ残念であって、行政部局の改廃というものは、時代の流れに応じて、経済の発展の度合に応じて大胆にやらなければいかぬ。昨年河野行政管理庁長官は英断をもって各種の改廃をやろうということを言っておったのでありますけれども、内閣の構成、あるいは政党との関係、世論その他の関係において頓挫せざるを得なかった、はなはだ残念であります。しかしその構想と若干違うにしても、ぜひ行政機構の改廃というものは、新たな政治力を結集して行われなければいかぬというふうに感ずるのであります。その際に特に要望されることは、厚生省関係では新しい生活環境の部門を強化して——ただふやすばかりではない。これに対しては、引揚げが終了したということになれば、これらの部門は当然縮小してしかるべきだ。こういう観点から、厚生大臣として将来の行政機構強化について、生活環境部面に対する強化に対する御所見を承われれば幸いであります。これをもって質問は終らしていただきます。
  126. 神田博

    神田国務大臣 ただいま川崎委員が、実際の御経験から、また豊富な政治見識のもとで、厚生省の将来のあり方等について非常な有益な御意見の示唆があったわけでございまして、私も全く同感でございます。今日、内閣も成立早々の際に予算と取り組んだようなことでございまして、いろいろその間施策つきましても、限られた期間でございまして、十分な配意もできなかったことはまことに残念でございますが、いずれ石橋内閣も来年度、三十三年度の予算をまた組むことと考えておりますので、ただいまの御意見は十分検討いたしまして、善処いたしていきたいと思っております。  私はこの機会でございますから、生活局もちろんでありますが、日本の消費生活というものについて、政府としてほんとうに考えて指導機関を作る必要があるのじゃないか、こういうように考えております。通産省とか農林省等、産業の振興をする省の指導はありますが、国民経済の消費というものを合理的、科学的に指導するものを持っていないというようなことで、社会進歩の過程において、国民大衆の生活を扱っておる厚生省が、生活局と同時になお一そう消費の改善によって生活の合理化をしていくというようなことまで含めて考えてみたい、こういうような気持でおりますから、よく調査、研究いたしまして、御趣旨を十分に生かしてみたい、こう考えております。
  127. 坂田道太

    坂田主査 周東英雄君。
  128. 周東英雄

    ○周東分科員 厚生省所管事項、なかんずく社会保障制度等に関しましては、いろいろとお伺いしたい点がありましたのですが、すでに数時間わが党及び社会党の同志諸君から、相当つっ込んだお話がありましたので、私は重複を避けて、残っておりまする問題につき二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  私どもが党議としてもかねがね主張しておりました国民医療保険制度というものについての確立が、このたび政府の方ではっきりとお取り上げになりまして、三十五年目標で全国民保険に加入せしめて、医療を受けることのできない者の一人もないようにする。しかもこれに対して相当国が考えていこうということの確立しましたことは、私どもまことに喜びにたえないことであり、厚生大臣の今年の予算編成に当っての御努力に感謝するものであります。ところが今まで社会党の井堀君等も触れられたと思いますが、このものの完全な遂行には、国家と患者並びに医療に携わる医者というものが三位一体になって、この制度の真髄を理解し、お互いに努力するということでなければならぬと思うのでありますが、今までの質問においてはどうも患者の部門についての質問が多かったようです。私はやや観点を変えまして、お尋ねをしたい。政府の方では三十五年を目途として皆医療保険制度の確立を言っておられますが、何と申しましても、その医療に関して真にまじめにこのことを理決して協力している医者に対する処置を誤ったならば、私は非常にゆゆしい問題が起ると思う。いろいろとこの皆医療保険制度遂行に関して、医療機関について政府予算に組まれておりますが、大体どういう方針で将来医療機関についての処置国民医療保険制度の進捗とともにお考えになっているかということを、まずお伺いいたしたいのであります。
  129. 神田博

    神田国務大臣 ただいま周東委員お尋ねがございました国民保険を四カ年で実施するごとについての一番大事な医療機関のあり方というものについて、今のような状態では心配だ、一体これはどういうように考えるんだという端的な御心配の御質問だと私は伺いました。ちょうどそういうお尋ねがございましたので、私の考え方を露骨に一つ申し述べまして、さらにまた御意見を伺ってみたいと思いますが、どうも厚生省と医師の関係といいましょうか、医療機関の関係が、外から見ておった際にも、必ずしもしっくりいっておらぬ。実ははなはだ心配しておった一人であります。厚生省を担当するに当りましても、私のこの気持を省の会議で実は率直に吐露いたしております。いろいろ内部の事情も聞き、また最近は日本医師会あるいは日本歯科医師会の役員の方々、あるいはまた開業医の末端の方々の御意見等も聞く機会ができておりまして、いろいろこの点について私も苦慮いたしております。結論で申しますと、今周東委員がお述べになられたように、国民医療保障を実行していく上には三位一体にならなければならぬということは、全く同感でございまして、厚生省といたしましても、そういう趣旨で行政をとってきたことは疑いのないところでございますが、その真意が十分徹底されておらないということが、私は一つの今日こういうようになっている憂うべきことじゃないかと思っております。同時にまた医療機関においても、今日の社会の激変下にややもすれば旧来通り考え方を持続しようとするところに一つの摩擦があるのではないか。そこで今度の健保改正に当りまして、それらのことにつきましては十分隔意のない所見の交換をいたしまして、国民保険制度が今後四年間に完全に実施できるように、要するに医療機関を向うに向かせておいて、皆保険実施するようなことはしない。同時にまた医療機関の側でも、国民保険をやるならこれは全部保険医になってもらわなければならぬのであるから、中に入って働いてもらわなければならぬ。だいぶ誤解があるようでございますから十分話し合ってやっていこうではないか。もう一つは、そういう話し合いだけでは事が済まない問題があるように私は考えております。ということは、今いろいろ解決しなければならない問題がここ数年沈滞している。こういうことが一つまたこの問題を刺激しているのではないかという気がするのであります。たとえば一点単価の問題にしましても、二十六年以来据え置きになっておる。その一つの処理方法として、租税制度の上に暫定措置をとっておるというようなことで継ぎ足しの上に処理がせられているというような感じなのであります。これらは一つこの改正を機会に、懸案になっておるあらゆるものを建設的な方向に向けて解決させていきたい。厚生省も被保険者医療機関も全くこれは三位一体となって、国民医療保険制度をほんとうによかった、りっぱなものであったという方向に持っていきたい、実はこういう考え方でありますので御了承願いたいと思います。
  130. 周東英雄

    ○周東分科員 概括的にお話はわかりますが、実は予算上に現われた医療機関に対する処置、これは大体国立病院の施設を整備していくとか、あるいは公的医療機関の整備をしていく、あるいは無医村地区に対しましてやはり国立病院の出張所を設けるとかいうことがずっと出てくる。これは私は将来の問題として一つの行き方であり、これが悪いとは思っているわけではありませんが、なかなか一足飛びに全国に国立病院なり公的機関を設置することは困難だと思います。従って私は町医に対する処置を一体どうするかということとしっかり取り組んでいくことが必要だろうと思うのであります。この点について一つ御所見を伺いたいのでありますが、私はお医者様が今まで通りの夢を追ってはいかぬということは同感であります。しかしあくまでもこれは赤字になって生活しろというわけにもいかぬ。昔から三方一両損という言葉があるが、国家も大きく国民医療保険制度を作ろうとするならば、分担して出すべき金をはっきりきめればよろしい。しこうしてお医者さんもある程度献身的に動いて、そうべらぼうな、要求をしてもなりませんが、その間おのずから立て合っていくような形をとらなければならぬと思う。ことに私が考えますのに、医は仁術と申しますが、少くとも医者が病人を見つけて、これは何ぼくれるから一つ処置をしようとか、こいつは貧乏人だからとかいうことではならないのでありますから、あくまでも医療に関しては、ヒューマニティといいますか、人類愛といいますか、これはぜひなおしてやろうという気持でかかっていくべきであると思うのであります。悪徳医者は別であります。しかし優良なまじめな技術のすぐれた医者であればあるほど、ほんとうに病人に対してなおしてやろうという気持で進んでいるのに対して、あまりむちゃな金銭的なきめ方をして、その結果うまくいかぬので国立病院にしてしまうというようなことでは、ほんとうに国民医療保険が施行されたときに、医者としての協力を望むことはむずかしいのじゃないか。そういう点で一体町医者に対する措置をどう考えておるか。予算的には国立病院の費用だけが出て参りますが、こういう公的医療機関の処置はどうとろうとするのか、一つ政府の御所見を伺いたいと思います。
  131. 神田博

    神田国務大臣 周東委員のお考え方につきましては私も全く同感であります。政府として開業医を一体どういうふうに考えていくか、国立あるいは公立ですべてまかなっていくという一つ意図をもって医療行政を担当していくのかというようなお話でございますが、今の開業医というものが私企業として他の企業と違うことはもちろん今述べられた通りでございます。町医者を認めるということ、もちろんこれは大きな意味のことでありまして、町医者といっても決して小さい私企業だけの意味で申し上げておるのではないのでありますが、私企業として認めていくかどうかということにつきましては、やはり今の町医者というものは認めておいて、そうして町医者のできない部分、町医者に望んでもできないたとえば高度の研究をするとか、あるいは一つの必要によって社会的な幅を持った治療をしなければならないというような面を国立、公立に持っていく。しかしこれはあくまでも私企業であるところの開業医を圧迫するというような前提に立ってはいけないと私は思います。私の考え方は、これは厚生省全体の考え方と考えていただいてけっこうでありまして、今は政党政治でありますが、党においてもやはり同じ考えだと思っております。政府におきましても医療機関の充実をはかる場合に、私企業を圧迫しようというような考えもなければ、また結果において圧迫されるというようなことを意図してやっておるわけではないのでありまして、進歩的な治療をする高度の研究機関もあわせてやって参り、あるいは町医者のできない低所得者階層に対する医療をまかなって参りたい。また開業医を再訓練するために適当な地区を一丸とした基幹病院を作って、そうしてそこで開業医の再訓練をしたり、あるいは開業医の専門化を考えるというようなことで、一方で開業医を認めながら、そこをうまく組み合せていくということが、医療行政の考え方でなければならないと考えるのであります。国営あるいは公立にしてしまって、私企業であるところの開業医を圧迫しようというような考えは毛頭持っておりません。そこでそういう考え方に立って国民保険あるいは政府管掌の国民健康保険、また組合別の健康保険医療行政というものを完璧にして参りたいと考えております。
  132. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま厚生大臣からお答え申し上げました通りに、私といたしましては、私の病院、診療所、公営病院、診療所ともどもに力を合せて仕事を進めて参りたいと考えております。たとえば金融面にいたしましても、個人のお医者さん方には中小企業金融公庫並びに国民金融公庫からの融資等をお願いいたしまして、大体一ヵ年に十五億円程度を見込んでおる次第でございます。その他公的機関といたしましては、ただいま大臣お答えになりました通りに、私的医療機関にいろいろな面における援助の手を差し伸べて、ともどもに日本国民医療をになって参りたいと考えております。
  133. 周東英雄

    ○周東分科員 そこでやはり先ほど大臣がお触れになりました点数の問題とか、あるいは減税の特別措置というようなものに関連いたしますが、ああいう問題についてはやはりここで再検討をなさるべき時期が来ておるのじゃないかと思います。私は決して医者を保護する立場からものを言っているのではなくて、国民医療保険制度というものを完遂するためには、喜んで医者に働かす必要がある、こういう立場から言うのでありますが、点数についても、今大臣の御指摘のようにかなり前からそのままに据え置かれてきておる、ここに多少問題があるのではないか。私は今度の予算の中で、また予算編成に携わつてみて、特に健康保険等の赤字の原因が、結核というものを一緒に入れている、それが長く入院されて治療費が非常に高まるというところに赤の原因があるという話です。それもそうだろうと思います。従って健康保険の中から結核に対する処置は別にしたら赤はないのだという説も出ておるのですが、この説はさておきまして、結核撲滅のために今度の予算では、厚生大臣御存じのように、バスとかあるいはマイシンとかいうような、結核治療に対して最も高価な薬品に対して全額国庫負担ということで予算を組んでいるということも私は非常にけっこうだと思う。このことは結局病気に対して、技術上の問題のみならず医者としてはなおしてあげたいという衝動からすれば、実質的によい薬であれば高価であってもできるだけ使いたいが、点数の方で縛られておると、よほどの神様みたいな人でなければ損をしても使おうという人は出てこない。これは単に医者を責めるだけでなく、そこに無理があるのではないか。ですから喜んで医療に携わらせる、私は根本においては医は仁術なりという気持で医者に働いてもらいたいと思うのですが、現実に高価薬品でこれを使えばなおる、あるいは一本の注射でなく五本やればなおるというときに、点数にひっかかってやれないということはおかしいと思うのです。こういうことに関して、点数等についての再検討をなさるつもりなのかどうか。
  134. 神田博

    神田国務大臣 率直にお答え申し上げますが、そういうことが多年の懸案になっておりまして、今日それが非常に大きな問題になっておることは御指摘の通りでございますので、これは一つぜひ解決しようということで調査を命じております。これは法律による必要はないことでありまして、私の主管事項でございますから、その意図調査を進めておりますので御了承願いたいと思います。
  135. 周東英雄

    ○周東分科員 厚生大臣のお話、非常にけっこうだと思います。その点数の問題を解決すると同時に、私はしろうとですからよくわかりませんが、ほんとうに働かすために、ある程度の点数によらざる点数による限界というものがあるのではないか。一定の場で、弊害のないような形で自由契約といいますか、こうこうこれだけの処置に対しては点数で行くが、ある限界をこえたものについては患者の申し出なり、自由契約で行き得る部分があるのではないか、そういうこともできるのではないかということを、しろうとながらに考えておる。すべてを点数できめた範囲内で処理しようということになると、かりに点数がある程度合理的に解決されても——解決の方法によりますが、問題は残されてくるのではないか。そういう点が、医療という技術とその人の熱意というものと関連しているもについては非常ににむずかしい問題である。一面においては経済的な問題が入ってくる。それに技術というものが入ってくるというときに、皆保険制度を施行したときにすべてを点数制で解決するということのみが、その医療機関を働かせる方法であるのか。私の申し上げることは全くしろうとの考えですけれども、そこに何か新しい考えを取り入れる余地はないのか。こういう点についてお尋ねしたいと思います。
  136. 神田博

    神田国務大臣 ただいま周東委員お尋ねになられましたことは、常識的に、ほんとうに医者にかかる場合の気持を、あるいはまたわが子なり自分の親戚、知友なり、大事な方のかかられる場合の気持を率直に表わしてのお尋ねだと思います。私はそのお気持は十分わかるのであります。先ほど点数の問題を改正するかどうかというお尋ねがありまして、結論的にそれを改正するという建前で調査を命じておる、改正するつもりである、こうお答え申し上げたのでありますが、今のお尋ねは、そういう点数以外の治療を禁じておりますので、それについて医師側から、差額徴収という言葉を使っておるようでありますが、十分の治療をして最善を期したい、その場合に健康保険法で縛られているものを別に差額徴収して認めるかどうか、認めた方がいいのではないかという御趣旨だろうと私は承わったのであります。そこでお答え申し上げるわけでありますが、そういうこともすべて含めて——二十六年にきめた単価自体についても議論があるのであります。それからそのほかに、その後医薬品の価格の変動もございます。新薬も出ておりますし、いろいろな条件が変ってきております。また新しいものも出ております。そういうことをすべて含めまして、とにかく大きく申し上げれば新医療体系と申しますか、そういう今までの紛争といいますか陳情といいますか、彼我の争いといいましょうか見解の相違というか行政事務がおくれてといいますか、いろいろなことを今度は一つ全部洗いざらい取り上げて、そして抜本的な解決をいたしたい。ただいまは何しろ健康保険法を年度内に通していただきたいということが主でございまして、その次には今お尋ねがございましたことを解決いたしたい。これは十分な資料をもちまして——またいろいろ議論もございます。それから方法も一、二にとどまらないようであります。これは先ほど周東委員の述べられたように、国の側に立って、また被保険者の側にも立って、そしてまた医療機関の側にも立って、三万の側に立って善処いたしたい、こういうふうに私考えまして、諸般の調査、準備を命じておる次第でございます。詳細は保険局長から答弁させることにいたします。
  137. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま大臣からお答えのありましたことで、ほとんど要点は尽きておるわけでございまして、私から特につけ加えて申し上げることもないのでございますが、今周東先生から御指摘になりました、注射をもう何本したい、これはもう少し高い薬を使いたいという場合に、使えないようになっていると申しますのは、実はおそらく治療指針の問題ではないかと思います。この治療指針というのは、たとえば結核の治療指針でございますとか、あるいは抗生物質の使用方法でございますとか、そういうふうないろいろの医療の内容につきましての一つ基準を示したものであります。なぜこういうことが必要かと申しますと、現物給付という建前を今とっておりますので、どうしてもそういうことが必要になって参ります。それで、実はこれは学会に諮問をいたしまして、現在の日本医療水準でここというところを学会の答申を得て、それをそのままここに採用いたしておるという格好に相なっておりますので最近また結核の治療指針あるいは抗生物質の使用基準等の拡張もいたしたいというふうに考えております。さようなわけでございまして、一応理屈といたしましては、日本医療の置かれておる水準と申しますか、いわゆる専門家が多数集まって引いた一応の線であるということはいえると思うのでございますが、個々の問題につきましては、いろいろ御指摘のような問題がある場合もあろうかと思います。それで今大臣の仰せになりましたように、差額徴収の問題が出て参るわけでございます。現在差額徴収を認めておりますのは、たとえば入院料というようなはっきりしたもの——入院料と申しましても、部屋代でございまして、一等、二等、三等とある場合に、さようなものを認める。また歯科の面におきましても、金の使用に関連をいたしまして差額徴収の道を開いております。これらを他の部面にも広げていくかどうかということにつきましては、今大臣が仰せになりましたように、非常にいろんな問題がございますので、私ども大臣の御方針を十分受けまして、目下根本的な検討を加えていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  138. 周東英雄

    ○周東分科員 今日は、とにかく国民保険制度という大きな仕事に取り組まれるわけです。またぜひこれは実現させなければならぬと思いますから、そういう面はここで大きく皆保険実施、完成という立場から総合的に一つ考え直してもらいたい、こういうふうに私は思うのです。今のお話で、すべてが改正を前提として研究調査が進められておると聞いて、私はけっこうだと考えます。  もう一点、これに関連してお伺いしたいのは、例の医者に対する二八%の減税に関する特別措置ですね。あの問題についても、実際をいうと、これも結局改正し直す点があるのじゃないか。看護婦一、二人使っておる小さいお医者も、また十人以上使っておるところも同じ標準で処置しておるということも、おかしな話だと思うのであります。この点についての御意見は別によろしゅうございますが、やはり総合一体の立場で、今日政府が党の趣旨を体して踏み出される国民医療保険制度の完遂のために、ぜひその点をお考え願いたい。これは希望を申し上げて終ります。  それに関連いたしまして、健康保険の問題で午前中に柳田君も聞いておりましたが、やはりこれらの点については、私は与党ですからこまかい内輪もわかっておりますし、質問はしませんが、やはり過去の赤字は赤字でそれは補填していいですけれども、この保険についてはあくまで実質的には私は三位一体で、国が持つべきものは持つものというふうにはっきりしなければいかぬと思うのです。そこでこの点についても、一部国庫負担ということを明らかにする必要があると思うのです。これはおそらく国民健康保険、組合管掌健康保険その他各社会保険をあわせて総合一体の面についての改正をお考えになるときは、当然お考えになるものと思いますが、やはり医者に対する処置考えるなら国は思い切って出せばよいし、これはどういう割合になるか知りませんが、治療費の一部国庫負担ということをはっきりしていただくことがいいのじゃないか。わが党及び政府は、やることになっているのだけれども、さっぱり予算ができないので遠慮されておるようだが、それをやろうとする考えがあるのかないのか。私はこの際、与党として聞くのはおかしいが、伺っておきたい。
  139. 神田博

    神田国務大臣 国民保険を実行する場合に、政府管掌保険はもとより、国保しかり、また組合管掌の保険にしても、事柄自体の公共性から考えて、国が相当程度の負担をすることが当然ではないか、遠慮するなという、いわば激励的な御所見のように承わったのでございます。周東委員のただいまの御発言は、私も全く同感でございます。今度の予算編成に当りましても、その趣旨で折衝いたしたわけでございますが、今年度は厚生行政といたしまして、いろいろの面で予算化の必要があったわけでございまするが、一方国家の財政ともにらみ合せまして、しかも国民保険の完遂というものが、この年度を頭として四年間というような計画でございますので、それらの事情もにらみ合せまして、とりあえず三十二年度といたしましては、まあまあこの程度でというようなことにも相なったわけでございまして、御趣旨のところは私どもまことに同感でございますから、これは逐次その線に沿って将来一つ予算化して参りたい、かような考えでおります。また何分いろいろと御配慮を願えることと思いまして、まことにこれは喜んでおる次第でございます。
  140. 周東英雄

    ○周東分科員 次に、国民医療保険制度に関連をしてお尋ねしたいことは、薬の問題であります。ともすると、患者の問題の前にお医者さんの問題が主として出ますが、一番問題になる治療費に関連する大きな問題は、薬価の問題だと思います。私はしろうとでありますからよく知りませんが、治療費の半額近いものは大体薬価だという話も聞いておりますが、この薬価については今日は、割に野放図に放置されているのじゃないかと思います。先ほど厚生大臣は、だんだんと情勢が変ってきて、新薬等もたくさん出てきた、そこで点数問題に関しても総合的に考えなくちゃならぬというお話でありました。私は点数問題についてお考え願うこともけっこうでございますが、新薬というものは、私はしろうとですけれども、どうも見ておりますと、製薬会社というものが盛んに競争して研究し、かつ発見というか発明してくれる、これはけっこうな話でぜひやっていただきたいのですが、それが大体同種類のものであっても、競争の結果、いろいろとスポンサーになってえらい広告費をかけるものだから、どうも高くなりがちのように思います。これはやはりほんとうに国家のためによい医薬が発見されたときには、私はその発見者に対しては相当に報いるがよろしい。あるいは特許になる、その特許、発明品に対する報酬は国家は出していいと思う。しかしそのものがほんとうに公益に必要なものであるならば、これは特許を解除するというか、報いて、それを国が安く使えるような処置が一体講ぜられないのか。そうせぬと、どれがほんとうにいいのやら悪いのやら知りませんが、どんどこどんどこ新薬が発明されていく、それがいろいろ競争して高くなる、その高くなるやつを使わなければならぬということは、これは私は困るのじゃないかと考えます。そういうふうな国家、公益に重大な影響のある新薬等につきましては、それが発明、発見された場合に、それに対して報いることは報いて、何かこれを大きく国家に安く使わせる方法考えるとかいうようなことを考えていただきたい。または、同じ種類、実質を持っている薬の名前がただ変えられて、やはり別々に高く売られているというようなことは、何か統一ある形で製薬行政といいますか、そういう方法が立てられないのか。これをやらぬと三万一両損で、国家、お医者さん、患者がいろいろやっても、薬の方だけは別だというと、治療費の大部分を占める薬の方で私はやはり政策が徹底せぬ、こういうふうに思うのです。この点についてはどういうふうにお考えですか。
  141. 神田博

    神田国務大臣 周東委員のただいまのお尋ねは、これはもう私もよく耳にするところでございまして、そのお尋ねの意のあるところを全く了解できるのでございます。薬が非常に広告費を使うとか、まあ非常に競争が激甚だ、にかかわらず巨額の利益を上げている。半面、医者も損をしていれば、健保も赤字であってそこで国も一つ出さなければならぬ、被保険者も出さなければならぬ。どうも薬だけが九層倍のようで昔と同じじゃないか、もうかっておるから、テレビを見ても新聞を見ても、薬の広告があふれているじゃないかということを耳にいたすのであります。現に医療制度審議会等からも、この広告の過大なことの指摘されまして、一つ過大競争防止をして適正なる価格というものを出して、医療費の節約になるようにしたらどうかというのが出ております。これはお話の通りでございますが、しかし何しろ私の承知しているところによりますと、新薬が多いのでございまして、日本は非常におくれておった。新しい、特に抗生物質と申しますか、新薬がようやく手についてマス・プロに今入ったわけなんで、一つの生産単位が上ってこないとやはり薬の原価が下らない。競争することにより、それから需要を拡大することによって量産をして、初めて薬の原価が下るわけなんです。例のストマイなんか一時非常に高い輸入品であったが、日本で手をつけた。手をつけたときは非常に高かったが、今日では非常な量産の結果下った。量産するということはやはり非常な広告の努力が払われた結果だろうと思うのです。ですから広告が一体過大なのか、それとも広告があったために需要を喚起して、そうして量産ができた、量産の結果原価が安くなって、そうして病気に対する処置もできたのだ、こういうような議論も成り立つわけでございまして、私は今過渡期じゃないかと思うのでございます。周東委員のお話の点は私も同感なんでありますが、それじゃ今これを新薬がどんどん出る際に、競争が過大であってその原価に占める割合が多いからそれは押えるかということになるとこれはやはり需要が増大しなければ原価が下らないというような面もございます。しかし今周東委員の述べられた同じ薬を各社によって名前をかえて競争しているのはむだじゃないか、そういう面でも、それならば数社でやっているものを一社か一社にもっとまとめれば、それだけ量産ができるから、それだけむだがなくなって原価が下るのじゃないか、そういう行政指導を厚生省はやらないのかという御意見のようにも私承わるのでございますが、いずれも伝統を持ち、そうして競争によって今日の成果を上げていると私は思っておりますので、今そういうことを整理して合理化する段階であるか、時期であるかどうかということは、なお一つ調査し、研究してみないと結論は申し上げかねますが、お述べになっておる御所見については、お気持が非常によくわかるのでございまして、私も同感です。一つ今後なお一そう調査研究いたしまして、日本の医薬がますます声価を高めて、そうして良心的であってしかも廉価だ、海外にまで需要を喚起できるようなことまで今考えておるようなわけでございまして、そういうことをも含めまして、今後医療費の節減のできるようにいたしたい、これが今日厚生省考えておる方針でございますが、非常にいい御意見を承わりましたので、十分今後研究いたしたいと思います。詳細は医務局長からまた答弁いたすことにいたします。
  142. 周東英雄

    ○周東分科員 もう一つ国家公益的に非常に必要なよい薬が発明発見された場合における特許発明を補償して国に持って、そうして安く作らせる方法というようなことなんかは考えられないのかということもあわせて伺いたい。
  143. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいま大臣お答えになりました大体その通りの筋でございます。先般来保険財政に関連いたしまして、大体保険の中で医薬費が四分の一以上を占めておる、これについて何か少し引き下げる方法はないかという問題が提起されまして、実は私たちいろいろ検討いたしております。それから衆議院の社労委におきましても、小委員会を開かれまして検討いたしております。結局問題になりますのは、第一に現在の薬価は高いか低いかという問題が一つあると思います、これにつきまして現在まで検討しました結果によりますと、不当に高いという結論は出ないのじゃないだろうかという気がするわけでございます。いろいろな見方がございますが、一つには、たとえば他の生産業あるいは化学工業の企業の経営ぶりから申しますと、その利益率におきまして大体普通程度の利益率しか上げておらない、こういう点が一つ。それから主要医薬につきまして外国の卸価格と日本の卸価格、こういうものを調べてみました。こういう点から見ましても、むしろわが国の方が安いのではないかというような感じがいたします。それから物価指数の伸びでございますが、昭和十年ころからの一般の物価指数の伸びは約三百倍であります。医薬に響いて調べますと、平均が大体百五十倍くらいであります。というような点で、非常に高いあるいはもうけ過ぎるという結論はすぐに一般的には出せないじゃないか。特定のものについてはあるかと思いますが、一般的には出せない、こういう感じがいたします。  それからよく問題になりますのは、広告料でありますが、これがあるがために薬価が高いのではないか、あれをなくすればその分だけ安くなるという議論もございます。これも非常にデリケートな問題でございまして、極端な例を申しますならば、薬ができても広告宣伝をしなければ売れぬ、そうすれば生産量が非常に少い、それで単価が高い。広告料を若干含めましても、それだけ売れれば量産をして値が安い、こういう一般原則がございます。結局広告費によって薬価が高くなるということは一がいには言えないということであります。それからこれはどこの国でもそうでありますが、売上高に対しますところの広告費の占める割合でございますが、大体どこの国におきましても二〇%、三〇%というのが一般でございまして、この辺に他の一般の商品と違いますところの医薬品の特殊性があるように思うのであります。  それから一般の薬価の傾向でございますが、保険の方で使います薬については薬価基準できめております。その傾向を見ましても、平均して毎年五%くらい下っております。それから主要な新薬につきましては、二、三年のうちに半分あるいは三分の一に下っております。これは先ほどお話がありました量産の結果でもあろうかと思いますが、そういうことになっております。従いまして何かの方策を講じたならば今よりも安くなるかどうかということになりますと、実は今のところいい方法考えられません。むしろ感じとしましては、角をためて牛を殺すというような結果が出るのではないかという感じがいたしております。  それから同じ成分あるいは効能を持った新薬が数社で作られている、こういう点はどうかというお話であります。これも一ヵ所で集中生産すれば、大量生産という面で非常にいいのでありますが、また一面から見ますと、数社でこれを作ることによりましてここに競争になりまして、一斉にうんと値が下るという一つの事実がございます。これは程度問題でございますが、一社の独占ということになりますと、他の面で価格の指導あるいは動整をいたす必要があるかと思いますが、やはり技術の競争あるいは価格の競争をさせるためには、同一のものでありましても、数社で作って競争さした方がいいのではないかという感じがいたしております。  それから新しいいい薬ができた場合に特許を持っておる、それを買い上げてやってはどうかというのでございますが、これもいろいろむずかしい点があると思うのでございます。と申しますのは、特許料を国が買い上げた分だけ医薬品の価格も安くなるのじゃないだろうか、こういう意見もありますが、それは結局医薬費について国が補助するといいますが、国庫負担をするということになるのじゃないかと思います。従いましてそういう形で出すのがいいのか、あるいは国民保険になりました場合に一般の給付費のような形で、一般医療費でございますか、そういう形で国が補助するのもどうであろうか、国が出すのでございますから、特定の会社に特許料の支払いにかわるもので出すか、あるいは一般保険の給付費で出すかということになりますと、結果的にはどっちでも同じじゃないかという感じがいたします。その点一応研究問題でございますが、ただいまのところ、保険の給付費等について国が補助するという形をとるならば、そういうことでもいいのではないか、かような考えでございます。
  144. 周東英雄

    ○周東分科員 ちょっと今最後の点は、僕は考えが違うのです。患者に安い給付費をやれば安く済むのじゃないかということは、あるいはそうかもしれませんが、そうじゃなくて、私はそういうようなほんとうによい発明は、国家公益に対してはむしろ、特許を持つがゆえにいつまでも特別に高く売られる、ほかの人はタッチできませんから、そういう類似の製品もできないことにる。そういう問題は国が発明者に対しては褒賞を払っておいて、そうして一般にはずっと国家公益のために安く製造頒布できるようにしたらどうかということです。つまりいやしくも発明者はずっともうけさしておくという意味じゃなくて、そういうことが医薬行政の上にあってもいいのではないか。これはほかの方でもありますけれども、そういう問題については特許制度をしかれて、ある特定の期間、十五年なら十五年は特許があっても、それが済んだら公開しなければならぬというのは、それは特許発明者を保護すると同時に、あとは一般国家公益のために公開さして、医薬品については安く作れるようにする。それはくだらぬ薬ならよけいなことですけれども、ほんとうに重要な発明をされて、ほんとうにいいということになれば、国が発明者を保障して、そうして一般に安く売るということがいいのではないかと思うのです。その点についてはどうですか。
  145. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまの点、私少し間違った理解をしてお答えしたかもしれませんが、一応十分研究してみたいと思います。
  146. 周東英雄

    ○周東分科員 大体私は時間がありませんから略しますが、私どもは少くとも新しき世代に処する道として、福祉国家建設の中核をなす国民健康保険の確立ということについては、多大の関心を持っておるわけであります。その伸び、育成について、私どもに責任があると思うのです。それらについては私がきょうお尋ねした点等については、その一端にすぎぬかと思いますが、あらゆる面に新しくスタートして大きく変らんとするのでありますから、医者に対する処置あるいは国家の財政負担の問題、また進んでは患者負担等の問題について、今までにこだわらずに大きい立場から、総合的に医療保険制度の完遂のために、一つ計画を進められんことを切にお願いをしまして、私の質問を終ります。
  147. 坂田道太

    坂田主査 橋本龍伍君。
  148. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)分科員 私も実はこの医療保障制度実施に関連をして、お医者さんのあり方等について実は要望もし、またお尋ねもしたいと考えておったのでありますが、周東委員から大体お話がありましたので、私の伺おうと思った領分も大体は済んだわけでありますが、それについて補完的に、さらに補足的に私は要望を申し上げ、かつまた御意見を伺っておきたと思うのでございます。  われわれはもうはっきりここで決意をいたしまして、社会保障制度の全面実施、その第一としては、これから四年の間に医療保障制度実施することと、同時になるべく早い機会に国民年金制度実施しようとしておるわけでありますが、これに関しましては十分な準備の要ることでありまして、厚生省におかれてもいろいろお骨折りでありますが、今後ともよほどしっかりやっていただきたいのであります。  話は十分皆さんでおわかりのことでありますが、この医療保障制度実施するに当りましては、これは当然、今日現在ありまするところの健康保険だとか国民健康保険だとかいう制度をできるだけ伸ばしながら、そうして国民健康保険を全面実施をするということをしんにして、医療保障制度の確立をはかろうとやっておるわけであります。ところがもともとがこの制度というものは、発足の時期においては、これはもう恩恵的社会政策として発足をしたものでありまして、従ってこの制度を伸ばし切って、まず第一段階として医療保障の完全実施をやるという点には便宜な点があると同時に、将来さらに集大成をする上において、当然調整をしなければならぬ点があるわけであります。健康保険の問題などは、明瞭にこのスタートの時期においては、一種の会社の厚生施設といったものを政府が援助するような観念で発足いたして参りましたので、今日でもこの制度が国の医療保障制度の一環となるためには、いろいろな問題が起って、今日の健康保険法改正の問題などもそれの悩みが出ておるわけであります。いろいろな面に問題がありますが、医者のあり方という面についてもその通りであります。従来はお医者さんは自由診療であって、そうしてほんとうに技能と徳望とによって信頼のあるお医者さんが繁盛する。そのお医者さんは、自分の考え方である程度負けてやったり、何かいろいろしながらやって参ったというのが、もとであります。ところが当然これは今日までの間に極端に変っている。戦争中までやはり社会保険制度、共済制度といったようなものは、みんな恩恵的社会政策の色彩がありましたが、いくさに負けてから、みんなの所得が落ちてから、急速にこの既存の調度をそういった意味でなしに使うようになって、社会保障制度も急速に発足をしたわけであります。その間において医者のあり方というものについても、非常に大きな変化が来て参ったわけであります。今日の事態においては、すでに社会保険診療の部分が非常に多くなって、自由診療の部分というものは非常に少くなりつつある。その社会保険診療の対価のきめ方というものは、要するに国民の支払うべき総医療費というものは、厚生省のきめた点数だとかなんかというものによって特に上るようなことのないようにして、しかも医者全体に相当の収入を確保するような形で、点数をきめてあるわけであります。しかもその間においては、医者の数に制限もないし、いろいろな問題があるわけであります。近年、点数制の問題、一点単価の問題とか新医療費体系の問題とかいったいろいろな言葉が使われながら、医師会との間にいろいろなトラブルがある。これは明瞭に、つまり当面戦っておる間においては、物価が上ったのに点数を上げないのはいかぬじゃないか、あるいは厚生省はそれに対してもいろいろな理由で説明をなさる。それはそれでいいのですが、大きく流れている底流というものは、そもそもお医者というもののあり方が、昔とずっと違ってきたのだということが本筋であります。今後の問題といたしましては、あと四年の間に国民健康保険制度を全国に実施をいたしますれば、とにかく国が財政支出をして、医療費も安くなるということであれば、これはおそらくいかなる家庭においても全部がこの制度を使うようになるでありましよう。はっきり、四年後にはよほどの例外を除いてはまず自由診療というものはなくなって、そして社会保険診療一本になるということになるわけであります。お医者さんというものはそこでとにかく好むと好まざるとにかかわらず、国のきめた医療保障機構というものの中で働く一つの新しい役割というものを完全に持つようになるわけであります。今日でもお医者さんの側からいろいろな意見が出ておりますが、これはやはり今言ったようにお医者さんのあり方というもの自身が非常に大きく変っているということについての悩みというものが、現実に薬が幾ら上ったの幾ら下げていいじゃないのというような現実のコスト問題なんかと別にあると思うのであります。そこでごく率直に申し上げますが、最近見ておると医師会も厚生省も努力をせられて、その間の関係というものはよほど改善されつつあると思っておるのですが、しかし、とかくその間に率直に申して険悪な空気がないと言えないのであります。これは私は両方で考えてもらわなければならぬと思う。厚生省の方ではとかく医療というものは昔と違うのだ、国の医療保障体系というものがもう完備せざるを得ない状態において、医者というものはその中の一つの役割を果す人として働いてもらわなければならないのだから、こうなるのが当りまえじゃないかといったような気持が、とかくすると働きがちだと私は思う。ところがこれはやはり、いかにそれが今日の理屈として正しくても昔から町や村でも一番の徳望家で一番の名望家という形でやってきたお医者さんというものが、時代の変化を浴びながら、社会的地位が変りつつある一つの悩みというものには、厚生省がもっと気持において親切でなければならぬと私は思っております。医者の方の側でも、こういったやはり時代の移り変りというものを考えながらそれに理解協力をもってやってもらわなければならないので、両方の問題があると私は思うのであります。そこで今後四年間の間にやらなければならない大事な仕事があると私は思う。いよいよこれで自由診療部分というものがなくなって、社会保障診療だけになるならば、やはり医者の収入というものをもう一ぺん厚生省として考えられる必要があると思う。それから今日のようなつまり医者の数にも制限がなければ、開業地域にも制限がない、しかもそう医療費は特に値上げをされないような形で、単価のきめ方で開業した医者の所得をみんな一定基準できめるといったような行き方で、医療担当者が気分的にも非常に満足してうまくいけるものかどうかというような問題もありますし、それから今すでに問題にされておるところの十分技術の内容のいい、信用の高いお医者さんと、学校を出たてのお医者さんとに対する扱い方をもう少し考えろといったようなことも——今とにかく自由診療部分があれば医者も文句を言いながら、患者の方でもいろいろ希望がありながらでも、特別に町へ行ってえらい先生に自由診療で見てもらえばやれるといったような、形がずっと変ってくるとなると、そういう点もあらためて考えなければならぬ。これはよほどうまくやりませんと、医療保障体系というものをほんとうに実施する上において、政府と医師会その他の関係というものがうまくいかないんじゃないかと思って私は心配をしておるわけであります。十分お考えだと思うのだが、これをよほど御配慮願いたい。  そこで私は一つ提言があるのですが、実は今日やっております医療保障委員制度は私自身が提言をいたしたわけであります。というのは、国としては社会保障制度審議会の答申に基く社会保障制度を、医療保障の体系を整備するためにはぜひ実現していかなければならない。それから今言ったそれに関連しての単価のきめ方であるとか、医者のあり方であるとか、いろいろな問題を処理していく、あるいは健康保険だったら、会社の経営だとかいろいろな面の問題を考えて処理していくためには、今日忙しい仕事を持っている厚生省の普通の機構だけではだめなのです。どうしても各方面に顔がきき、そうして学識も深く当りもいい人を選んで、その人に予算と事務スタッフをつけて実施計画というものをほんとうに作ってもらう、同時にそればかりじゃなくて、たださえむずかしい保険者の団体との交渉であるとか、あるいは医者や助産婦の団体との交渉であるとかいうものをやってもらって、問題が円滑にいくように助けてもらうということはいいことじゃないかと思って、実は私は提言をした次第であります。そこで私は今度の予算編成に当って実は遺憾に思いましたのは、医療保障委員予算を三十一年度限りにおいて、三十二年度においてはこれを削ってしまうという大蔵省の意見だというのはいかぬじゃないかというので、話をして、幸いにして継続されることにもなったし、また別に国民年金制度委員も創設をされたので、私はそれはけっこうだと思うのです、しかしこういったふうに予算が削られるというような問題を起したのも、私は一つ厚生省のやり方として少し遺憾だと思っておる、というのは厚生省でどう大蔵省に話されたかしらぬけれども、少くとも医療保障制度というものを完全実施をするために、厚生省として直接いろいろな制度を作ったりすること、あるいはまたそれの実施に関するいろいろな障害を除くということにおいてどれだけの仕事があるか、たとえば国民健康保険実施のために、どういう年次計画をやるとか、それがために予算がどれだけいるとか、あるいは健康保険だとか共済だとか生活保護だとかいうものとの調整を、それから先どうとっていくかという問題、それから全面実施をして自由診療がなくなったときに、医者の収入というものをもう一ぺん見直して新医療費体系といったようなものをどうしのぐか、あるいは薬との関係がどうなるとかといういろいろな問題があると思う、それをただ頭の中で制度を作れるだけでなしに、文句のない実施のできるように医師会に了承してもらうとか、保険者団体に了承してもらうとかいうような実険の仕事もある、こういうふうな仕事を私はほんとうに厚生省が洗い上げて、これは一朝一夕に二月や三月でできることではないのだから、これをあと四年間に年次計画でどれだけ厚生省としてこなしていかなければならぬか、こなす仕事で医療保障委員にやってもらう仕事がどれだけあるかということが、医療保障委員にやらす仕事の計画がはっきりしておって、それが四年後に医療保障の完全実施をするまでの間に、手続が済んでなければならぬという具体計画が非常にはっきりしておれば、予算のたびに削るとか削らぬとかいう問題が起らないと思う。私は今後、今のところは国民健康保険制度を四年後に完全実施をするということで、ただそれだけで問題は済んでしまうかのごとき空気に一般があるけれども、実際はこれから先医師会の問題だとか何とかいうものはますますしげくなってくると私は思うのであります。そういう点を考えて、十分厚生省としては、直接の厚生行政の問題のほかに、厚生省として考えなければならない——世の中が変ってくるのだから、社会問題の処理というものを十分頭におかれて、厚生省プロパーの大臣から事務官僚に至るスタッフでどれだけの仕事ができる、医療保障委員にどれだけ手伝ってもらうということのお考えは私は必要だと思う。ただいま厚生省医療保障委員に選ばれた長沼弘毅君は、御承知のように民間にいる社会学者であり、そしてことに給与関係の問題等に対する大家で、著書も論文も書いておる人たちなんだから、私は直接医療制度考えてもらう以外に、こうした大きな医療保障というものをしんにした、何千万という患者だとか医者だとかいう、この社会問題の始末のつけ方という意味においても、私は格好な人物だと思うし、大いに活用されるのにいい人であるとも思うので、私はそういう点の、つまり計画的考慮を十分やっていただきたい。そして、ことに頭の中で制度をやって、これをやるのが当り前じゃないか、これを聞くのが当り前じゃないかということだけではなしに、受ける人間の問題をできるだけスムーズにやる配慮を十分考えておいていただきたいということを頭において、私は今日医療保障委員に対して、どういう課題を授けておられるのか、そうしてこれから先どんなふうに活用をされるおつもりなのか、これはまた下手に場当りで、その場その場の仕事だけをやるとまた来年の予算で、もう要らないじゃないかということが起るに違いないと私は思う。そういう意味で、医療保障委員に今日どういう課題を授けておられるか、そして今後どういう課題を授けて、これに何をさせるつもりであるかということをお答えを願いたいのと同時に、新たに創設をされた国民年金委員に対しても、これはどれくらいの年数がかかるつもりで、どういう仕事を与えてどういう活用をするつもりか、それを一つ伺っておきたいのであります。
  149. 神田博

    神田国務大臣 橋本委員から、健康保険の、いわゆる政府の打ち出した国民保険実施に当って、心がまえとして該博な御所見をお述べになられましたことは、私といたしましても、これは非常に共鳴するところでございまして、また非常な示唆を含んでおりますので、この御意見につきましては、十分一つ考慮いたしまして善処いたして参りたいと思います。医療保障審議会からは、第一次、第二次勧告もちょうだいいたしておりますし、今後どうあるべきかということにつきましてはまだ私も個々においてもいたしておらぬような実情でございますので、十分今の橋本委員の御所見等も一つ参酌いたしまして、また庁内の衆議も尽しまして、国民保険実施方法を十分なお一そう検討を加えて参りたい、かように考えております。
  150. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)分科員 厚生大臣のお言葉を承わりまして私も非常にうれしく思うのであります。重ねて希望を申し上げておきますが、この問題は、普通一般にただ考えておるよりももっと深い影響を持って、明瞭に世の中の一部がこれで変ってくるわけでありまして、従ってその間における直接厚生行政のいろいろな技術的な面以外に、やはり大きな社会問題といったようなものがいろいろな面で起ってくると思いますので、十分この点をお含み願いたいと同時に、やはりそうした社会的変化を受ける人たちの悩みというようなものについて、あまり厚生省のお役人がいらいらしないで、大きな包容力をもって対処していただきたいと思う。その場合においては、やはり知識はあるようでも、仲人は時の氏神というように、やはり仲に立ってくれる人があるということは非常にけっこうな話だと思うので——大蔵省の予算当局なんか、なかなかわかってくれないかもしれない、そんなものはむだじゃないかというかもしれぬが、今日そういうものが非常に大事な段階にあるのだということは、平素からやはり厚生省が仕事の仕方に対して、将来見通しと計画を立てられて、平素から大蔵省の当局にもそれを理解させ、また大蔵省の当局がわかるように、たとえば医療保障委員にもこういう指令を出してある、これはとうてい一年ではこなせないものだということをわからせるような手はずをするというようなことを、十二分に御手配を願いたいと思うのであります。ただいまの御答弁でまことに私も満足でありまして、この上とも御尽力をお願いしておきます。
  151. 坂田道太

    坂田主査 ほかに質疑の申し出もありませんから、これにて質疑を終了いたしたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 坂田道太

    坂田主査 御異議なしと認めます。これにて昭和三十二年度一般会計予算中、文部省厚生省及び労働省所管、並びに同特別会計予算中、厚生省労働省所管に対する質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。当分科会所管の予算両案に対する討論、採決は、予算総会に譲るべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 坂田道太

    坂田主査 御異議なしと認めます。よってさように決定いたしました。  この際一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位には、連日長時間にわたり、終始熱心に当分科会所管の予算各案の審査に御協力下さいまして、おかげをもちまして本日円満に議事が終了いたしました。ここに各位の御協力に対し衷心より御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会