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1957-02-12 第26回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十二日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席分科員    主査 坂田 道太君       小川 半次君    川崎 秀二君       周東 英雄君    八田 貞義君       野田 卯一君   山口喜久一郎君       山崎  巖君    井堀 繁雄君       勝間田清一君    島上善五郎君       滝井 義高君    辻原 弘市君       柳田 秀一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   小熊 孝次君         厚生事務官         (引揚援護局未         帰還調査部長) 吉田 元久君     ————————————— 二月十二日  分科員山口喜久一郎君及び島上善五郎辞任に  つき、その補欠として八田貞義君及び滝井義高  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員八田貞義君及び滝井義高辞任につき、  その補欠として山口喜次一郎君及び島上善五郎  君が委員長指名分科員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算厚生省所管  昭和三十二年度特別会計予算厚生省所管     —————————————
  2. 坂田道太

    坂田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  本日は、昭和三十二年度一般会計予算並びに昭和三十二年度特別会計予算中、厚生省所管の審査に入ります。提案の説明を求めます。神田厚生大臣
  3. 神田博

    神田国務大臣 昭和三十二年度厚生省所管予定経費要求額概要について、御説明申し上げます。  昭和三十二年度厚生省所管一般会計予算要求額は一千百十四億六千二百十二万二千円でありまして、これを昭和三十一年度予算九百三億一千七百万円に比較いたしますと、百十一億四千五百十二万二千円の増加となっております。  次に、右予算のうち特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一は、医療保障制度確立に必要な経費であります。  一、現在国民のうち約三千万人が疾病保険対象となっていない状況にかんがみ、昭和三十五年度目標として国民保険実現をはかることとし、三十二年度におきましては、特に大都市を含む市部に重点をおきまして、国民健康保険普及に力を注ぎ、新たに通年五百万人の被保険者増加をはかり、前年度の三千万人と合せて、被保険者数を三千五百万人に推算いたしました。  これに伴い国民健康保険の助成に算する経費は、療養給付費の二割に相当する金額八十六億七千九百万円、事務費補助金二十九億七千五百万円、直営診療所建設費補助金三億円、被保険者画期的増加をはかるために新たに計上しました普及促進費補助金二千三百余万円、及びその他の経費を合せて、合計百二十一億八千五百余万円となり、前年度に比較して三十三億六千五百余万円の大幅な増加と相なっております。なお、事務費の一人当り単価につきましては、実績等を勘案し、前年度単価六十八円六十銭を八十五円に引き上げて積算いたしております。  二、次に、健康保険につきましては、最近その財政に若干好転のきざしがうかがわれるとは申しますものの、いまだ楽観の域には達せず、目下継続審議をお願いいたしております関係諸法律の成立と相待って前年度と同じく、一般会計より三十億円を給付費財源として繰り入れを受け、保険財政再建整備をはかることといたしております。船員保険疾病部門につきましても、健康保険と同じく、一億円を一般会計より繰り入れることといたしております。  また、日雇い健康保険につきましては、昨年八月給付内容改善充実をはかった結果、給付費増高はきわめて著しく、多額の赤字が予想されますので、三十二年度においては、国庫負担率を従来の一割から一割五分に引き上げ、前年度より四億三千二百余万円増加した六億五千五百余万円を計上いたしました。  三、次に、医療保障制度確立には不可欠の条件であります医療機関整備拡充に必要な経費であります。  まず国立病院施設整備改善のため十二億七千四百余万円を国立病院特別会計繰り入れ、六カ年計画をもって実施いたして参りました第一次基幹病院整備を三十二年度において完了し、新たに第二次基幹病院整備に一部着工いたしますとともに、その他の老朽不良施設改善をはかることといたしております。  次に公的医療機関整備でありますが、前年度に引き続き、都道府県単位医療サービス基幹となるべき病院整備を行うほか、僻遠の地で経済的に民間診療所の開設を期待できない無医地区国立病院六カ所、公的病院二十カ所の出張診療所を開設せしめ、新たにその運営費赤字に対しても補助を行うこととし、右に必要な経費四千五百万円を計上いたしております。  次に、精神病床は、現在入院治療を必要とする患者に比して病床が過少な実情にありますので、引き続いて三千三百床を整備拡充するため二億三千四百余万円を、また、伝染病院隔離席床一千床の整備に必要な経費九千六百余万円をそれぞれ計上いたしております。  四、次は、原爆被爆者医療等に要する経費であります。  原子爆弾による被爆者については、そのおかれている健康上の特別の状態にかんがみ、また人道上の見地からも、国が健康診断医療等を行うことにより、その健康の保持、向上をはかるべきものと考えられますので、健康診断を行うための費用として七千余万円、医療費として一億円余、その他の経費を加えて、合計一億七千三百余万円を計上し、昨年度に比較して一億四千七百余万円の増加となっております。  第二は、結核対策強化に必要な経費であります。  結核は年々その死亡数が著しく減少しているにもかかわらず、今日なお多数の結核患者が存在し、国民生活に重大な脅威を与えている実情にありますが、一方、治療薬品治療方法のめざましい発達進歩により、早期に発見し適切なる治療を行えば短期間に治癒可能の疾病となって参りましたので、三十二年度におきましては、全額公費負担健康診断予防接種を徹底的に行うこととし、そのために要する経費六億八千百余円を計上いたすとともに、医療費についても、結核治療指針の改正に伴なう主剤併用の採用、並びに手術の際における輸血、麻酔等公費負担対象としてその範囲を拡大する等の措置を講じ、十六億四千余万円を計上いたしております。  結核病床整備はかなりの進歩を見ているのでありますが、地域的にはなお偏在不足している地方もありますので、一千床の増床予定し、五千二百余万円を計上いたしております。  右のほか国立結核療養所百八十一カ所の経営のための経費百十六億三千余万円を加え、百四十九億八千余万円と相なり、前年度に比較しまして十四億二千九百余万円の増加となっておるのであります。  次に保健所については、新設五カ所の整備X線機械等の購入、職員給与改善等に要する経費のほか、新たに医師充足対策の一環として、修学資金貸与制度を設ける等の措置を講じ、前年度より二億六百余万円を増加し、二十一億七千四百余万円を計上いたしております。  第三は、環境衛生対策の推進に要する経費であります。  最近における屎尿農村需要の激減と、都市人口膨張等に起因して、余剰屎尿処理が全国的に困難性を加え、国民生活環境が次第に汚染され、このまま放置し得ない状態となって参りましたので、まず人口の最も密集しております東京湾、大阪湾周辺都市については三カ年計画をもって、屎尿海洋投棄を禁止して、陸上処理を行うこととし、そのために要する清掃施設下水終末処理施設整備費として、三億四千五百万円を、また一般都市清掃施設下水終処理施設整備として三億四千万円、合計六億八千五百万円を計上いたしております。  次に、明るく健康な生活環境を作るため、蚊とハエのいない実践運動を前年度に引き続き強力に推進いたしたい所存でありますが、このため蚊とハエの駆除に好成績をあげた市町村に対して、その効果を持続せしめるため、みぞの改善整備簡易ごみ焼却炉等恒久施設整備補助として三千三百余万円を計上しております。  次に、水道施設整備については農山漁村に対し、簡易水道普及をはかって伝染病発生予防生活改善に資するため、前年度より一億六千万円を増加し十億円を計上いたしております。  以上環境衛生対策に必要な経費合計は十七億二千百余万円に上り、前年度の八億九千二百余万円に比し八億二千九百余万円増加となっております。  第四は、生活保護に必要な経費であります。  最近におけるわが国経済の著しい伸長発展の結果、国民消費水準も大幅な上昇を来たして参りましたので、去る昭和二十九年一月改訂されたままになっておりました保護基準を、六・五%引き上げ、扶助内容向上をはかることといたしました。これに要する経費は十一億五千万円で、これを東京都の標準五人世帯の額で申し上げますと、現行の生活扶助月額八千二百三十三円が八千八百五十円となり、六百十九円の増加となっております。  また母子世帯に対しては、母子年金を含む本格的な国民年金制度創設までの暫定措置として、現在実施いたしております、生活保護母子加算月額五百円を一千円に引き上げ支給することといたし、これに要する経費四億五千万円を計上しております。しかしながら経済好転の結果、逐年著しい増加を来たしていました扶助人員が、漸次減少の傾向にありますので、生活保護費総額では三百六十二億九千四百余万円となり、昨年度に比し二億二千七百余万円の増となっております。  第五は、児童保護に必要な経費であります。  まず措置費につきましては、施設増加に伴う収容児童増加を見込みますとともに、収容児童に対して新たに一日五円の間食費被服費を若干引き上げることとしたほか、これら施設に勤務する職員給与改善を行うこととし、六十一億八千五百余万円を計上いたしております。  次に身体障害児福祉をはかるため実施して参りました育成医療につきましては、その実施成果に照らして、さらに一そうこれを助成促進することとし、従前の実施人員の約二倍を見込み、補装具支給等に要する経費と合せて、身体障害児援護のため一億三千四百余万円を計上いたしております。  次に児童福祉施設につきましても、昨年度に引き続き整備拡充する予定でありまして、これに要する経費四億円を計上するほか、今年新たに繁忙期における農漁村の乳幼児のため、季節保育所一万カ所を設置することといたしております。  さらにまた児童福祉行政関係者の長年の念願でありました重度の精神薄弱児を収容する国立施設を新設いたすことといたしましたほか、新たに児童福祉行政の機構の強化のため、各都道府県全額国費指導職員百八名を設置することといたしたのであります。  以上児童保護福祉に要する経費は総計七十億四千八百余万円で、昨年度に比して六億一千六百余万円の増加となっております。  第六は、母子及び低所得階層等対策に必要な経費であります。  母子及び老令者福祉の根本的な解決策として、国民年金制度確立は焦眉の緊要事でありますが、昭和三十二年度においてはとりあえず臨時厚生省学識経験者からなる五人の委員を置いて、その具体的方策調査企画を願うことといたしておるのでありまして、その設置並びに資料調査等のために必要な経費として、一千余万円を計上いたしております。  母子対策といたしましては、暫定策としてさきに申し上げました生活保護母子加算を増額して支給いたすこととしたほか、従来行なって参りました母子福祉資金貸付金に対する補助率を、地方財政の現状にかんがみ、二分の一から三分の二に引き上げる等の処置を講じて前年より一億四千万円を増加して五億九千万円を計上しております。  次に、いわゆるボーダーラインの低所得階層に対しては、その自立更生を促進するため、世帯更生資金貸付金として、昨年度より二億円を増加し三億円、新たに医療費負担に悩む人々のために医療費貸付金制度を創設し、これに要する経費として二億円、合計五億円を計上いたしました。これらの制度に対しては、母子福祉資金と同様、地方財政の現況にかんがみ、補助率を三分の二に引き上げる等の処置を講じ、本貸付制度が有効適切に効果を発揮できるよう配意いたしたのであります。  第七は、婦人保護その他社会福祉の増進に必要な経費であります。  売春防止法の施行に伴い、これら転落婦人保護更生対策強化するため、本年度に引き続き婦人相談所夫設置の三十八県に新設いたすとともに、新たにその更生のための保護施設三十九カ所の設置婦人相談員相談所職員増員等合計三億七百余万円を計上いたしているのであります。次に身体障害者保護更生のため、更生医療実施補装具支給に必要な経費として三億七千五百余万円を、庶民階層金融機関として重要な意義岳持つ公益質屋整備のため二千五百余万円を、民間社会福祉施設整備充実を促進助成するため社会福祉事業振興会に対し、さらに追加出資を行うため、一億円等を計上いたしております。  さらにまた身体障害者福祉法でその設置を義務づけられておりながら今日まで実現を見なかった国立ろうあ者更生施設を新設して、これらの人々の再訓練、社会復帰のために貢献することといたしております。  第八は、引揚者等戦争犠牲者援護に必要な経費であります。  昨年秋締結された日ソ間の国交回復により、終戦以来の懸案であったソ連地区よりの引き揚げも一応完了したとはいいながら、いまだソ連中共地区等には生死不明の末帰還者六万一千余人が存在いたしておりますので、今後ともこれら未帰還者調査究明に一段の努力をいたすとともに、三十二年度には引揚予定者を約二千五百人と推算し、これに要する経費七千三百余万円を計上しております。  次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法に基く遺族年金及び障害年金支給に必要な経費として、五十七億七千百余万円が計上され、前年度に比し二十一億七千七百余万円の増加となっておりますが、この大半は従来恩給局より移しかえたものを当初から厚生省予算に計上したために増加したものであります。  また未帰還者留守家族援護法に基く留守家族手当障害一時金及び療養費支給等のため十三億八千四百余万円が計上され、前年度に比し若干減少しておりますのは引揚げ調査究明等の進捗による対象人員減少によるものであります。また海外戦没者のうち遺族に引き渡すことができない遺骨を納めるため、新たに無名戦没者の墓を建立することとし、これに要する経費を五千万円計上いたしております。  最後に、受胎調節運動につきましては、前年に引き続き推進いたしますとともに、その地方第一線指導機関たる実地指導員に対する手当を五百円から一千円に引き上げ、これに要する経費一千百余万円を計上するのほか、国立公園国定公園施設整備のため直接国が行う施設整備費五千万円、新たに二分の一の施設整備費補助金五千万円を計上し、その他保健衛生費社会福祉等の各費目についてもそれぞれ所要経費を計上いたしております。  以上昭和三十二年度厚生省所管一般会計予算について、その概要を御説明申し上げたのでありますが、次に昭和三十二年度厚生省所管特別会計予算の大要について御説明申し上げます。  まず第一は、厚生保険特別会計についてであります。  さきに申し述べましたように、一般会計より健康保険給付費財源繰り入れ三十億円、日雇い健康保険給付費財源として一割五分の国庫負担額六億五千五百余万円を見込みまして、健康勘定におきましては、歳入歳出とも六百七十二億七千七百九十一万一千円、日雇い健康勘定におきましては、歳入歳出とも四十六億五百三十八万八千円、年金勘定におきましては、歳入五百三十一億四千四百五十七万三千円、歳出百十一億五千七百三十五万二千円、業務勘定におきましては、歳入歳出とも三十七億九千八百八十万円をそれぞれ計上いたしております。  第二は、船員保険特別会計についてでありますが、さきに申し述べましたように、大体健康保険と同様の措置をとることといたしておるのでありまして、これに要する経費といたしまして歳入五十七億六百六十三万五千円、歳出四十五億一千五百六十二万一千円を計上いたしております。  第三は、国立病院特別会計についてであります。さきに述べましたように、国立病院施設改善のため所要財源一般会計より繰り入れするのほか、三億円の国庫債務負担行為を計上いたしております。また新たにアレルギー疾患リウマチ等治療センターをそれぞれ若干個所制備する予定であります。右に要する経費として、歳入歳出とも八十七億二千六百三十六万六千円を計上いたしておるのであります。  最後に、アヘン特別会計についてであります。本年度アヘン買い入れ予定量は輸入三十七トン、国内産三トンでありまして、一方製薬原料としての売り渡しは四十トンを予定いたしております。右に要する経費として、歳入歳出とも二億二百九十六万二千円を計上いたしております。  以上昭和三十二年度厚生省所管一般会計及び各特別会計予算につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案成立につきましては格別のお力添えをお願い申し上げる次第であります。
  4. 坂田道太

    坂田主査 これより質疑に入ります。井堀繁雄君。
  5. 井堀繁雄

    井堀分科員 ただいま厚生省予算内容を伺いましたが、さき石橋内閣創立と同時に、総理国民五つの誓いを立てられておりますが、まことに適切な誓いであると思う。その誓いの中でも私ども国民としていろいろな疑いを持っておるのでありますが、とりわけ五つの誓いのうちその四つに、三十二年度における予算国民保険を目途とするという強い表明をいたして、もちろん福祉国家を指向して社会保障制度確立するという意味のことを大胆に述べて、さらにまた本会議における岸臨時総理施政方針内容におきましても、これを裏づける強い発言が行われておるのであります。私どもはこの誓いや施政方針によって表明されておりまする社会保障制度確立するという強い内閣意思表示につきましては、非常に大きな関心を持つとともに、このことはいうまでもなく他の政策に優先して具体化されなければならぬ性格のものであると思います。こういう意味で、この内閣厚生行政は全体の性格を表明する重大なポストになるのではないかと思う。こういう意味で私は具体的に順次お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まずこの予算説明を伺い、今配付されました内容を検討いたしつつあるのでありますが、一体国民保険と言われますが、現在各種の社会保険がそれぞれの分野に施行されておるのでありまして、これについては各方面からいろいろと批判も行われ、またこれに対する改革を具体的に表明されているものが数多いのであります。ここにわれわれの質問をいたしたい一点は、国民保険を意図いたしまする予算としては、あまりにも貧弱ではないかという感じが強くいたします。たとえば今あなたの御説明によりますると、社会保険から漏れておりまする約四十万の人々を、三年の間に保険に吸収しようとおっしゃるのでありますが、初年度に含まれている予算内容から拝見いたしまして、また三年の間にどういう段階と手段によってこれを確保するかということが予算の中である程度明らかでないと、金額内容をわれわれ知ることがむずかしい。額は小さくとも、それが将来三年の間にこれを完成できる内容厚生行政の中で考えておるならば、これは別であります、こういう意味お尋ねをいたします。  そこで私どもの見まするのには、まず第一に社会保険の問題を論ずる場合には、一応識者の間では一つの結論に近いものが出ております。それは社会保険の中核をなすものは、歴史的に見ても、経験の上から見ても、実績から判断いたしましても、健康保険の問題だということが論議されておるわけであります。私は前回もこのことを要望し督励をいたしておいたのでありますが、まだ明確になってきません。それはここにも指摘されておりまするが、健康保険ワクの中に当然優先して入れられなければならない五人未満の小人数を雇用しておりまする事業場労働者が全然これからはずされているということは、健康保険にとっては致命的な欠陥であります。この問題を初年度において解決できる内容を持たなければ、三年間のうちに国民保険などといったところで、国民は納得しがたいと思う。昨年われわれは資料要求をたびたびいたしましたが、その資料すら準備がなかったようであります。ようやく昨年聞くところによりますと、十月、十一月にかけて実態調査厚生省がおやりになった、その結果が明らかにされておるようであります。この内容を拝見いたしますと、私は三年のうちに皆保険をやるなどといったところで、この問題を本年度予算の中に解決する、健康保険ワクの中にこれを吸収できるという初年度の具体的な成案を持たなければ、それはもうあとの四十万の人を社会保険の中で救うなどということは、大それたものの言い方だと私どもは見ておるのです。この点に対して厚生大臣としては確固たる方針をお持ちになっておるかどうかを一つ伺いたいと思います。
  6. 神田博

    神田国務大臣 ただいま井堀委員から、政府国民保険の四カ年達成ということを目標として打ち出しておるが、一体この大きな問題を解決するには、今日五人未満事業場社会保険が適用されていない、この問題を解決しない限りにおいては、そういうことは達成できないじゃないかというような意味に、御質問を承わったのでありますが、これは今お述べになりましたように、従来からもなかなか議論のあったところのようでございます。健康保険として五人未満事業場に対して、これを政府管掌保険に入れるか、あるいは他の方法によるか、国民保険としてこれを育成していくか、このことにつきまして基本的な議論が分れておることは御承知の通りでございます。厚生省といたしましても、この点につきましては重々調査もいたしておりますれば、また審議会等の意見も徴しておるのでございますが、実はこれを一体どちらにするかという成案は、まだ今のところ出ておらないのでございます。しかしながら、これをどうするかということは、私はそう長い時間をかける段階ではないと思います。そこで五人未満事業場を第二種健康保険として発足させるか、今の健康保険法を改正してそこに入れていくか、あるいは国民健康保険に持っていくかという三つの行き方だと思いますが、この問題を解決して皆保険をするという考え方も、一つ考え方だと私は考えております。しかし政府といたしましては、今年度はまず一つ大きな手として、未保険者の三千万を対象として、国民保険を二つ大きく打ち出していこう。そこでこの五人未満事業場に対する健康保険の適用については、市町村によっていろいろ実情が異なると思います。ということは当該市町村において零細企業の占める率が非常に多いか少いかということによって違うと思います。零細企業が非常にたくさんあるという場合は、問題が非常に出て参りますが、そうでない市町村でございまして、なお皆保険実施されておらない、対象となっておるのがたくさんあるのでございます。そういう点も考えながら、今年度におきましては、一応一つワクとして皆保険を推し進めて参りたい、こういう考え方をいたしまして、予算措置等もして参ったわけでございます。
  7. 井堀繁雄

    井堀分科員 はなはだ失礼な言い方一ですが、論議を能率的に進めるために率直に申し上げます。まだよくおのみ込みになっていないような感じがいたしますので、事務当局から補足していただいてもけっこうであります。私のお尋ねしておるのは、国民保険ということになると、国民保険に五人未満事業場労働者を吸収するということは、くろうとの間では通らないのであります。それは何といっても健康保険に吸収していくというのが、だれが考えても当りまえのことであります。でありますから、健康保険に今の五人未満事業場労働者を吸収する道をここで明らかにしなければいけません。こういう方法で吸収していくということが予算説明の中に加えられなければならぬ。今あなたのおっしゃるところによると、零細事業場実態調査の結果によって、市町村それぞれ配分は違うでしょう、また動くものです。ですけれども、そのことは政府管掌健康保険としては覚悟の前なんです。ですから、これを吸収するという具体的な措置がなければ、国民保険などといって、これをまた国民保険の中に持ち込むに至ってはナンセンスもはなはだしいことになりますから、当然健康保険の中に入れるべきである。  この点ではっきりもう一ぺん……。あなたのお考えのように、もし零細事業場労働者国民保険に吸収するということになると、また大きな問題になる。これはまた議論にもなると思いますが、それはまあ議論の外だと思う。同一ケースの労働者は、特に零細企業労働者健康保険からはずして国民保険に持っていくなどということは、識者の間では今までに試験済みの議論だと私は思う。ですから健康保険の中に零細企業労働者をすみやかに吸収していくということは、もう何人が考えても異論のないところであります。こういう点に対する方法一つ伺っておきます。
  8. 高田正巳

    高田(正)政府委員 五人未満の零細事業場に従業をいたしております被用者をどういうふうに保険の網にかぶせて参るかということにつきましては、今大臣がお答えになった通りでございますが、若干補足いたしますと、大臣がお答えになりましたように、これを現在の政府管掌健康保険の中に入れていくという方法、あるいは社会保障制度審議会等でお考えになっておりますように、新しい被用者保険一つ制度を設けていくという方法、それから国民健康保険の中にこれを事業主と一緒に包括をして参るという方法の三つのものが一応考えられると思うのであります。それで理屈といたしましては、被用者でありますから、被用者の保険の中に入れていくというのが筋じゃないかということは、一応考えられるわけであります。しかし、さきに私どもが調査をいたしまして、大体の実態を一応推定できる程度のものをつかんでおります資料から申しましても、ただ、さような理屈から、たとえば現在の政府管掌健康保険の中にこれを入れて参ったならば、どういうことになるかということを考えてみますと、実施上の問題といたしましては、  これは十分検討を要する問題であろうかと思うのでございます。従いまして被用者保険の中に入れていけという議論と、いやそうじゃない、国民健康保険ワクの中でこれを解決しなければなかなか解決のできるものじゃないという有力な意見と、これは確かに二つありまして、それらにつきましては、ただいま大臣が仰せになりましたように、私どもといたしましては、目下医療保障委員の御検討もいただいておりますので、さような御結論を待って態度を決定いたしたい、かように考えておるわけでございます。なお、その前提といたしまして、一応調査をいたしてみましたけれども、まだどうもこの調査では十分な確信が持てない、さらにもう一歩突き進んだ調査をも本年度にいたす予定で取りかかっておるような次第でございます。かようなわけ合いで、この問題は井堀先生仰せのように、現在の健康保険ワクの中に入れていくのが、もうきまり切った結論な、んだというわけには参らない、実施いたしていく立場に立ちまする者としては、どうしてこれらの方々を現実に保険の恩典に浴せしめるかということを、実施上の問題として検討して参らなければならぬかと存じます。従いまして、さような観点で、ただいま大臣が仰せになりましたように、厚生省といたしましては、さらにつき進んだ検討を加えておるような次第でございます。
  9. 井堀繁雄

    井堀分科員 今非常に大事な点だと思いますが、もしこの保険を、今事務当局のおっしゃられるように健康保険にするか、全く新しい制度を考えるか、あるいは国民保険に糾合するかという問題は、私はひとり医療保険の問題だけではない、これは雇用制度に重大な影響をもたらすことなのです。たとえば五人未満という線を引くといたしましても、あるときには十人使い、あるときは五人未満になるということは、日本の遠き将来まで、やはり雇用労働者の数の異動というものはあり得ると考えます。その前提になるものが異なれば別ですが、今いう医療保険というものを統合して、その統合されたものに立ってものを判断するというなら別であります。しかし今日の健康保険法というものは、医療保険としてだけではなくて、労働行政の中に強い働きをしておることは見落すことができぬわけです。ことに構成の基本的な要素になりまする保険料は、雇い主の半ば負担になり、労働者の賃金の中から負担するというこの建前を改めない限りにおいては、これはただ観念論で国民保険にくっつけるということは、私はとほうもない議論だと思う。そういう意味でお聞きしておる。それから新しい考え方というのはわからぬわけではありません。今日の保険財源の非常に苦しい時代において、調査の結果に現われておりまするように、零細事業場の賃金実態階級及び階層を見ますと、非常に格差がひどい。そういう低額所得者を多く抱え込んでやる場合には、保険の経営からいえば当然赤字を倍加してくるであろう危険は、今日の場合にあるわけです。だからといって、低額所得者を健康保険からはずして、見送るということであっては、国民保険などというスローガンを掲げた政治家としては恥をかく。ここを伺っておるわけなんです。私は新しい保険を提唱している意見も聞かないわけではありません。それは、そういう低額所得者を今の健康保険の中に持ち込むと、健康保険全体の体制に悪影響があるから、これには特別の国庫負担というものを手厚くするとか、あるいは段階的に何かの道を講じてこれに盛り込もうという二つの意見があるようですが、冠は前者を支持します。だから、もう今日はそういうことを専門家の意見を求めるということならば、私は国民保険などということは少々時期を誤まっておると思う。いいものを下にならしてしまうならだれでもできますけれども、やはり保険の本質、社会保障制度を施行する、高いところに国民生活を引き上げようという前提の上に立っての考えであることには間違いない。こういう意味で私は何も五つの誓いにけちをつけたり、あるいは政府の意図しておりますることに対してとやかくくちばしを入れようというのではない。真実を聞きたいのです。できないことは、正直にできない、できるなら、こういう方法でやるということを明らかにしませんと、国会におけるわれわれが与野党の共通の議論を政策の上に求めようとしても、作為があってはならないと思う。そういう意味お尋ねしておりますから、一つこの問題についてはっきり大臣のお答えをいただいておきたい。
  10. 神田博

    神田国務大臣 井堀委員社会保険に対する非常な御熱意に対しまして、私もこれは非常に敬意を表するのであります、が、五人未満の事業所に対する実態の考え方と申しましょうか、日本の五人未満の事業所というものは、これはどちらかというと大体零細企業者なんです。しかも第二次、第三次産業と申しましょうか、いわばほとんどこれは加工業であり、家内工業であり、そこで賃金の格差というものは非常な差がある。特に日本の今日の賃金差が今日議論されているわけでありますが、原料高の製品安と申しましょうか、基本産業においては非常に賃金の高水準か確保されているのであるが、そのしりがずっと零細企業にきていると思う。家内企業であって、この企業自体をどうするかということ、が、政府においても、また与野党においても、中小企業対策、零細企業対策という大きな声を上げているので、なかなかこれは解決し得ない現状だろうと思う。そこでこれをこのままの状態において政府管掌健康保険に持っていくということになりますと、私は零細企業の企業そのものを脅かしてしまうだろうと思う。ということは、そういう事務をとることができるような状態になっている事業所というものはきわめて少いんじゃないかと思うのです。そこでそういう実態のものを一体政府管掌の方に持っていこうということはなかなか至難だ。ということは、いろいろの事情はありますが、これ一つでもむずかしいと考えられると思う。それからもう一つは、今お述べになりました社会保険が——これはお言葉を返すようでありますが、事業主だけの負担でないことは、現行制度においても、将来においても——今回折半しておりますが、これは当然だろうと私は思うのです。そこでそういうような意味から考えましても、今日の五人未満の零細事業場においてこのままの保険形態で持っていくということは困難だ。そこで一応それはそのままにしてほっておくという意味ではないのでございますが、国民健康保険の方に事業主と一緒に入っていくならば、これも一つの解決方法ではないか。しかし根本的なことを解決する目安をつけるにはまだ若干の日が要る、こういう意味でお答え申し上げているわけなんでございます。健康保険の中でやっていこうということはできない問題じゃないか、だからやるとすれば、第二種保険でも作って特別にやる、その場合には、今の健康保険制度とも違ったもので考えていかなければできないんじゃないかと私は思うのです。今の零細企業そのまま、今の保険制度そのままに事務をやらせていく、労使とも保険事務を今のようなやり方でとっていくということは、実際においては、行われないんじゃないか、それならば、この問題を解決しないで皆保険を進めるということは時期尚早でないかというお尋ねでありますが、しかしそういう考え方一つ考え方ではありましょうけれども、私どもといたしましては、そこが残っているから、皆保険を進めるということはやめるというよりも、今日の段階ではやはり国民保険を進めていくということが、国民に対する政府処置としては当然な、親切なやり方なんだ、こういうふうに考えてこういう計画を立てた次第なんでございます。
  11. 井堀繁雄

    井堀分科員 私は何もこれを踏み切らなければ国民保険ができないというほど露骨な言い方はいたしておりません。しかしもっとすなおにものを考えて、できるところからやっていくというふうに考えて、あなたより私の方がよほどじみちに具体的に考えているつもりなんです。私はどうしても健康保険のこの問題を踏み切らなければ、国民保険をどなたがお考えになっても、それはもう従来の保険制度というものを御破算にして、全く一本の統一のものにしてしまうという強いやり方ならば別であります。そういう点はどこにも現われておりません。これは社会保険だけではやれることではないので、全体の政策の中で取り上げなければならない大仕事ですが、そういう点はどこにも、あなたの方の五カ年計画の中にも、長期計画の中にもうかがえない。ですから、そういう点をのり越えて具体的に私はお尋ねしておる。今あなたが御指摘になったように、五人未満事業場というものはおよそ零細企業である。だから保険料の負担にたえ得るかどうかという大問題があるということは私も認める。しかし調査の結果に現われておりますように、これに雇用されておる労働者の数を一つお考えいただきたい。あなたの方の調査対象になった数字だけでも七百九十九万九千五十人という数字が出ておる。今次基準法適用事業の労働者の数に比較してごらんなさい。驚くべき多数に上るじゃないか。そこで政府は雇い主の立場も考えなければなりませんが、それよりも大事なことは、被保険者対象になるべき雇用労働者、これは歴史的にお考え願えばすぐわかるように、工場法から健康保険法に切りかえるときにも議論があったくらいです。こういう歴史は全然無視できぬわけでありますから、雇用政策の中で健康保険というものが大きな役割をしておるというこの事実——飛躍すれば別です。だから雇い主の負担している健康保険料は一らないで、国民保険のような形に置きかえるというならば、その具体的な案を示さなければならぬ。そんなことは少くとも現在ではだれも考えていない。だから雇い主の負担能力が細いからということで、そのもとに雇用されておる労働者が他の労働者より低い、いな社会任限の保護を受けないでいいという議論は成り立たぬ。労働者にとってはやはり同じ労働力を奉仕しておる、職場が不幸にして零細事業場であった、何も求めていっておるわけではない。日本の雇用条件の悪い中で、だから中小企業の労働者はそれはもう仕方がないのだという議論が別にあるなら、日本の法律は事業場のいかんによって扱いを別にすることは許されぬはずである。この矛盾を解決しないで、いきなり社会保障制度要求国民保険にあるからといって、すぐできるかのごときことを言うことは国民をまどわすことになると思う。そういう意味厚生大臣としては、この機会に、まず当面しておる健康保険の被保険者の当然対象になるべき雇用労働者で、八百万に近い人々がこぼれておる、またそれにつながる家族が全然恩典に浴してない、この問題を、あなたがおっしゃられるように、新しい保険を考えるならば、その原案を法律に出さなければならぬと私は思う。その御用意があるかどうかを一つ伺いたいと思います。
  12. 神田博

    神田国務大臣 先ほどからお答え申し上げておるわけでありますが、五人未満の事業主に対して新しい健康保険法を考えているかどうかということについては、私もそういう具体的なことはまだ考えておりません。どうするかということは今後の考えであるということをお答えしております。
  13. 井堀繁雄

    井堀分科員 まことに残念でございますが、国民保険に対する私どもの疑いはますます大きくなることを非常に残念に思うわけであります。こればかり議論しておりましてもらちのあかぬことでありますが、一つ言っておきたいことは、健康保険法の改正についてはもう何回も国会で論議して、私どもも参加して参っておるわけであります。この問題に対しては、大臣によって答弁の仕方が多少違いますが、あなた方と同じ党を構成しておられる大臣の中で、名前を申し上げませんけれども、今の零細事業場労働者を吸収するということは当然そうしなければいかぬ、その通りであるという全く共鳴された答弁をなさっておるのです。それは正しい考え方に立てばそうなるだろうと思う。時間がありませんから、ここで論議はいたしませんけれども、もしそれを別にするというなら、それよりすぐれたものを出さなければならぬわけです。すぐれないまでも、零細事業場労働者に対しては、五人以上使っている事業場に働いている労働者にはあるけれども、四人になったらもらえないということでは、法律は国民の前に平等でないことをみずから暴露しているわけですから、この点からいっても政治家としては早く解決しなければならぬ重大な義務が課せられてくるわけです。この点はもう立場の相違や何かによって異なってくるものではないと思う。ただやるのに困難がある。その困難は何かというと、政府管掌健康保険そのものが赤字を持っておるからできないという答弁はわかる。その赤字をどう解決するかということは、これはまた議論があっていい。だから、もしそれとこれとを混同しておるとすれば非常な誤りである。ですから、このことはよけいなことのようですが、国民保険といったら、まず健康保険の根本的な欠点をどう解決するか、私は何も健康保険に入れろということにこだわるわけではありませんが、それだけは、低額所得者の事業場というものが、日本の場合においては零細事業場として現存して将来長く続くでしょう。しかしこのままでいいか悪いかは、別の制度で考えなければならぬ問題でありますけれども、そこに働いている労働者だけが賃金が安くていいというはずはない。賃金が安いからこそ社会保障をやって他の面でめんどうを見ていくのが政治のあり方ですが、その説からいくと、逆です。労働者の責に帰せない日本の経済構造や政治的な政策の貧困からきておる結果とすれば、できるだけ他の方法、すなわち厚生行政の中で見ていくというのが——順序からいえば、まず大きな事業場労働者よりは低額所得にしいたげられておる労働者のために、こういう社会保険というものを率先して適用してあげる、そういう意味では、私は特別ワクの新しい保険制度を考えるということが正しい、その場合には、ここにその原案が提出されてこなければならぬということを言っておる。これはお答えがないとすればやむを得ませんが……。
  14. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私どもが三十年十二月末現在で調査をいたしました一応の調査によりますと、常時四人以下の常任の常雇の従業員をかかえておる事業場の数は、大体七十万程度と推定いたしております。そこに働いております常雇の従業員というのは、百三十四万五千、その被扶養者が七十三万三千、そういう数字になっておりまして、その事業場の個人事業主も家族従業員も、それから事業場が法人団体でありますれば、そこの役員も、それから先ほど申し上げました常雇の従業員も、さらに臨時日雇いで雇われております人たちも、全部寄せましても二百四十二万五千という推定の数字に相なっております。御参考までに申し上げておきます。  なお私ども、現在の政府管掌健康保険に、これらの零細事業の従業員を包括していくということが不適当であるというふうには考えておらないのであります。しかもそれが、政府管掌健康保険財政が非常に圧迫されるからという、ただそういう観点からのみものを考えておるわけではないのでございまして、井堀先生仰せのように財政問題でありますれば、どうせこういう零細事業の、賃金の低い人たちの保険をやるといたしますれば、何らかの形で国が相当な額を援助しなければなりません。それはどこでどういう形で出しましょうとも同じでございますので、その点について顧慮いたしておるわけではないので、むしろただいま申し上げましたように、事業場の数が七十万近くもある。現在の政府管掌事業場の数は二十五万程度でございます。それが事業場の数からいきまして三倍程度ふえてくる。しかも現在の健康保険のシステムで申しますと、先ほど大臣が仰せになりましたように、いろんな事務というか義務が事業主にかかってくる。一人や二人雇っている事業主が、現在の健康保険のいろいろな届出とかなんとかいうようなことにとてもたえられるような態勢でもない。役所の方から申しましても、二十五万の事業場をかかえてあっぷあっぷしておるところへ、さらに三倍くらいの事業場がふえてきて、これをどういうふうに把握して参るかというふうなこと、あるいはこの調査でも若干その片りんが現われておりますが、これらの零細事業場というのは、なくなってみたり、あるいはまた生まれてみたり、非常に移動性が強いのでございます。さらにそこに働いておる従業員の雇用の形態あるいは賃金の支払い形態というふうなものも、これはまだ十分にきわめておりませんけれども、非常に千差万別であるわけでございます。そういうふうな実体のものでありますから、それをただ理屈から、被用者であるから政府管掌健康保険に包括していけばいいじゃないかということで、簡単に私どもとしては踏み切り得ない。理屈から申しますと、そういうふうにすることが一つ考えられるわけでございますので、何とかしてさような方向でものを考えていきたいという気持は持っておりますけれども、どうしたら一体そういうことができるかということについていろいを私どもとしては研究をいたして参りましたところが、とても今のままでは自信がない。もう少し実態をきわめてみなければ、一体この報酬のきめ方なりあるいは保険料の徴収の仕方なりというものが、現在の健康保険のやり方で果してできるかどうかというふうな点について、確信が持てない段階にあるわけでございます。  なお、零細事業場の四人以下のものが、現在の健康保険の仲間に入ってくることを法律が全然拒否しておる建前にはなっておりません。任意包括制度というのがございまして、そこの従業員と事業主が、現在の健康保険に入れてくれと言って参れば、入れてやるという道は開かれておるのでございます。しかしこれは、現在ある程度入っておりますけれども、そう多数、全体をカバーするほどの制度の活用には相なっておりませんが、片方ではさような、一応例外的な弾力性のある法律的な建前にもなっておりますので、それらをもどう考えあわせていくかということで、この問題については、いま少し私どもの検討する余裕を与えていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  15. 井堀繁雄

    井堀分科員 そういうように早く言って下されば、あるいは議論せぬでもよかったのであります。健康保険の中でも零細事業場は実際捕捉しがたい、だから早くやらなければならぬのだけどもやれないのだ、こうおっしゃって下さればよくわかる。健康保険でさえそういう問題がある。ましてや一般の人たちを保険の中で抱くということになりますと——それが今の国民健康保険のいき方で、健康保険をくずしていくなら別ですよ。しかしだれが考えても、健康保険社会保障制度の背骨のような役割を現在果していることは否定できぬのですから、それを弱めるようなことをしたら、社会保障制度をぶちこわすのと同じような結果になるわけです。そうだとすれば、健康保険の問題については、もっとはっきりした線を出すべきだという立場が一応正しいと私ども思っておるわけなんです。その点同じような考え方の上に立ってのお話だった。ですから、零細企業を今政府管掌の中に入れてしまおう。事務費が膨大になりましたり、あるいは移動が激しいために、経営上思わざるところに経費を食うという障害をわれわれは否定するわけじゃないのです。そういう困難なものであるということをわれわれは承知しておるわけです。困難だから、そのもとに——ただいま統計の問題で、数字を読みそこなって申し上げて失礼しましたが、厚生省の調査になりました百四十八万六千人のこの労働者、これを把握するためにもかなり苦労したようです。事業場がたえず移動するということもよくわかります。しかし、これは日本の現実のきびしい姿なんです。これが日本の産業を動かしている。ですから、今の健康保険はある意味においてはかたわなんです。だから、一番経験と基礎を持っておる健康保険それ自身が、こういうものを解決できない悩みを持っておるときに、何かすぐに国民保険、全部が医療保険によって救われるような言い方をすることは、私は政治家としてはとらぬところではないか、この点が非常に大事だと思って厚生大臣のお答えを願ったわけです。これはまた、健康保険の問題で論議することといたしますが、しかし私があくまで主張しておきたいと思うことは、他の場合には国民のすべてに平等の恩典を与えろという建前をくずさない政策を掲げておるのです。たとえ数が雇用労働者の一割八分か二割ぐらいにしかならぬにしても、そのものだけはこの保護からはずすんだということは、健康保険だけなんです。労働基準法の中では、たとい一人でも雇用しておれば、その法律のもとに保護も受ければ、規制もされてきておるわけです。だから、一体そういう行政のばらばらなんということは、これは政治としては最も早くやめなければならぬのであって、これは非常に大きな問題だと思いまして、私はお尋ねを申し上げたのですが、大体結論がやや明らかになりましたので、別の機会に譲るといたしまして、もう一つ変った角度からお尋ねをいたしたい。  今度年金制度について初めて調査の予算をおきめになったことは、確かに一つ進歩だと思う。しかし、ここでもまた同様の一つの迷いを国民に与えておる。それは年金制度は、これによりますと、国民年金を意図しておるようであります。私どもは、福祉国家、文化国家などという場合、年金制度を持たぬような福祉国家、文化国家などありはしないと思う。そういう意味で、私は非常に進歩的な考え方が芽を出したと思って、全く共鳴をしておるわけです。しかしその年金制度を、一体調査するといいながら——調査といってもいろいろありましょうけれども、少くとも今総理の誓いの中に現れておるものの国民の受け取り方、それからさきの本会議で行われた臨時総理代理の施政方針の中でも、何か今にでも年金制度実施されるような感じを与えておる。だから国民年金の制度をお考えになって、それを調査されるというのですから、調査けっこう。しかし、どういうものを指向して調査されるかということによって、私はこの予算の認め方に対して、むだになる金かもしれない、あるいは非常に意義を持つ金かもしれない、額を判断する上に質を知りたいと思うので、お尋ねをいたします。そこで私は、年金制度は、ちょうど健康保険国民保険と関連を持つ上に今二つの重大なものが出てきておると思う。思想の上でも問題がありますが、制度の上でも非常に変ってくると思います。一つは、厚生年金が、あなたの方の所管で、いろいろな歴史の変遷を経てきておりますけれども、私は年金制度の場合には、厚生年金保険というものが大きな役割を持つであろうことは何人も否定されぬと思う。これはあなたのおかかえになっている——前会この問題で私も関係いたしましたが、厚生年金保険の改正案が前国会から継続審議で出てきておる。この中にはそういうものがどこにも出ていない。調査をするというからには、今ある制度と次にくるものとの動きというものが出てこなければならぬはずなんですが、この点について何ら触れていない。まあ新しく出されるかもしれませんが、しかし私は、この厚生年金というものはさっき言ったように健康保険国民健康保険関係のようなもので、雇用政策の中に営まれている社会保険、それがもとになって国民全体によい結果をもたらすようになることが望ましい姿なんです。ですからこの問題をどう年金保険に近づけていくかということをお考えになっていなければならぬはずです。この点が一つ。  それからもう一つ、ついでに言っておきますが、最近旧軍人恩給それから文官恩給の問題が復活してきておる。この恩給という思想と年金という思想、まあ言葉の上から受ける印象からいえば、恩給というのは非常に封建的な表現です。やはり国民年金といったような感じが民主的な感じをよく現わしていると思う。だからこの恩給制度と年金制度関係というものは非常に関係が深い。どんどん今なしくずしに旧軍人恩給の問題をいろんな陳情や訴えによって動かしてきておる。私も陳情をたくさん受けておるのでありますが、今のような、ああいう恩給制度の復活の仕方というものはだらしなくて、そうして何らかの目的を達するということよりも、そのこと自身不公平を露骨に政府が表明していくようなやり方になる。一例をとってみますと、軍人恩給でも、たとえば金鶏勲章に対する年金や恩給があったのです。あの中でも、当然戦争責任の一半を負わなければならぬ指導的な役割を演じた人人と、全くはがき一本で引っぱり出されて、また中には日露戦争当時の者もおって、もう死にかかっておる、それが生活手段をぽんと取り上げられて困っておる非常に気の毒な人、といって面子があるものだから生活保護法も遠慮しているというような、まことにひどいアンバランスができ上っておる。こういうような無定見な恩給制度の復活などというものは、弊害はあっても、私はその持つよい意味というものはチェックされておると思う。そこに年金制度が出てきたものと理解すべきではないか。この点に対する政府の基本的なお考え方一つ伺っておきたい。
  16. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。今のお尋ねの前に、先ほどの国民保険について、政府の唱えておる皆保険は皆保険ではないじゃないかという御批判がありましたが、一言政府の立場から申し上げておきたいと思います。これは見解の相違となれば別でありますが、政府は三十二年度から三十五年度までの四カ年計画で皆保険をやろう、こういうことですから、一部のものが三十二年度に漏れておっても、それだからやらないのだという誤解を起されてははなはだ困るのです。三十五年度まで国民保険をやろう、そこで今あなたの御心配になっておられる五人未満事業場に対しましても、これは十分考えながら皆保険を打ち出しておりますので、この点は御了承願いたいと思います。  それからただいまお尋ねございました年金制度を今度は一つ調査をしよう、老齢者の年金、また母子家庭に対する母子年金の二本建の厚生年金を一つ考えていきたいということで、調査費を一千万円ほど三十二年度予算に計上したわけでございますが、これはただいま井堀委員からもお述べになられましたように、福祉国家を建設するには年金制度確立ということは当然なことでございまして、これを石橋内閣が組閣早々取り上げて解決の糸口を示したということは、私はこの石橋内閣の社会保障に対する力の入れ方、熱意というものがいかに高いものであるかということを示したものであると思います。そこでそれならばそれをどういう方法でやるのかということなのでございますが、私ども今考えておりますのは、この予算説明にも申し上げましたように、学識経験者の方あるいは専門的知識を持っておられる方々を五人ほど選びまして、この五人の方でいわゆる五人委員会を作りまして、そこで内外の調査もしていただきますれば、また日本の国情、またこれはその裏づけとなるのは結局日本の経済力でございますから、財政上の問題についても一つ十分検討していただく。そこでこれは拙速主義を取らないで、十分調査をしていただきたい。少くとも私どもが今考えておることを率直に申し上げますれば、三十二年度、三十三年度の二カ年くらいは当然この調査に要する期間であろう、こういうふうに考えております。そこでその際においていろいろ内容をなすものでございますが、今日やっております厚生年金の問題も一つの研究の課題になりましょう。また軍人恩給、文官恩給等も一つの課題とはなりましょうが、しかしこの年金調査をしていただく五人委員会におきましては、それと見合ったことにはなろうと思いますが、そこまで統合整理をしようという意味で五人委員を作るのではないのでございまして、老齢者、それから母子という二つの点にしぼって年金制度実施方法一つ研究していただく、その答申を待って政府がさらによく検討いたしまして、成案を得次第国会に出して御審議を願いたい、こういう考え方なのでございます。
  17. 井堀繁雄

    井堀分科員 私は買いかぶっておりました。年金制度をりっぱなものをお考えかと思ったら、そういうお考えであれば格別心配はいたしません。しかし国民はどうも何か福祉国家という看板をあげて、年金制度をすぐやるというものだから、それは何も今すぐできるとは国民は思しません。多少経過措置を必要とするものですし、それは理解していると思う。しかし芽の出るものか、ほんの申しわけのものかということは、これは非常に大事なことです。どうも申しわけのような気がいたしておる者もあるだろうし、また私どもはぜひやってもらいたいという熱に燃えているものですから、少しほれ過ぎた感じです。しかし学者に御依頼になることもけっこうですけれども、御依頼になる方が、やはり意思を持たないで御依頼になるという場合もあるでしょうけれども、こういう場合はやはりはっきり予算を出すのですから、こうこうした国民年金制度というものを考えてもらえぬかというぐらいのことは、私は予算につけて出すべきものだ、こう思っていたのです。しかし今あなたの御説明で、一部の母子や、特別に限られた人のための年金をまずやってみよう、それならばそう大した問題はないようです。  それからちょっと前に戻りますけれども、五人未満事業場の問題は、あなたとは初めてお目にかかるのですけれども、私ども厚生省の中では何回か議論してきているものですから、五人未満の零細事業場労働者健康保険が適用できぬようなことでは、それは医療保険国民全体に適用するといってもいい方向にはならぬ、それはできるでしょう。やり方はいろいろあるでしょうけれども、あなたの方もおっしゃられたように、福祉国家を先に出しているのですから、社会保障とこう言っているのですから、福祉国家、社会保障というからには前進の姿を示す、テンポがのろいかスピードがあるか、これはいろいろな条件によって左右されるでしょうけれども、しかし後退することは絶対いけません。そういう点で私はただしたのです。これはまたあとで議論する機会がたくさんあると思います。  なおきょう午前中何か滝井さんの方から御質問があるそうですが、私は全体の予算関係してまだ一つ二つぜひただしておきたいことがありますので、午前中にもうちょっと聞きたいのです。  それは、この予算の中で消費生活協同組合貸付金を、わずかではありますけれども減額している。この問題は私はこういうところにあると思う。生活協同組合の問題はいろいろ問題になると思う。従来の生活協同組合法それ自身については、われわれももっと日本の諸条件に適合したものに改めたいという考えを持っておるのです。今日の法律によってもちろん満足はしているものではないのです。しかしこれを改正しない限りにおいては、現在のものに対する厚生行政の中では相当重きを置く一つの行政ではないか。と申しますのは、先ほども健康保険や年金制度の際にもお考えになられるように、非常に低額所得者が多くて、しかもそれが日本経済の大事なところにふんばっている。日本の社会構成の中で非常に重要な役割をみな担当しておる。この問題はやはり厚生行政としては一番力を入れなければならぬところだと思う。そこで一方賃金給与が引き上げられない限りにおいては、いろいろな厚生行政の面があると思うのですけれども、その中で一番大事なのは生活の合理化と申しますが、日本人の生活にはもっと大きく改善を要すべきものがある。しかし民主主義の筋を通す以上においては、国民の自主的な意思に待つことがやはり一番賢明なことである。しかもそれはこういう近代国家における複雑な社会構成を作っているときには、組織の中にそういう私的な期待をかけるということ以外に、いずれの先進国においても方法がないものとされておる。日本のいろいろな民主的な諸制度というものが成長を遂げておりますけれども、一番早く、しかも重要な成長を期待しなければならぬものは、消費者生活の中の組織ではないか。法律は悪くても、そういう組織がどんどんできてくることを助けることはできるのですから、これはすぐ小売商人との摩擦をよく問題にいたしますが、それはその持つ本質が悪いのではなく、やり方が悪いからだと思う。生活協同組合は何かすぐに小売商人と競争するような立場の仕事のみを考える。もちろん生活必需物資の供給も大きな任務ではありますけれども、日本的なものがあると思う。ヨーロッパあるいは先進国の例をそのまま日本に持ってこなくてもいい。特にロッチデールの思想が世界的な一つの指導精神になっておりますけれども、あの中にもやはり日本的に消化していくべき型がたくさんあると思う。今当面している問題の中では、住宅の問題などはこの組織で成功している例がたくさんある。いなそのことが日本的なものじゃないかとすら私どもは考える。これは分科会が向うで出られませんでしたが、昨年の予算分科会で建設大臣にお尋ねしたのです。政府の今やっております住宅政策の、直接的な財政措置予算措置を講じているものの中で、住宅公団にいたしましても、住宅営団にいたしましても、金融公庫にいたしましても、それぞれ特徴があります。しかし今度の五十万戸を予定している中に、やはり民間の建設に多くを期待しておることは、私はいい意味にとりたいと思う。責任を回避しているとは言いません。しかしその民間の建設を促進するというからには、やはり政府自身が政策的なものとの結びつきを持っていなければ、無責任きわまるというか、けしからん話だ。そういう意味ではせっかくこういう生活協同組合のような制度があってあなたの所管になっておる。なぜ住宅公団や営団のようなああいう組織ばかりにこだわるのだろう。私が説明するまでもなく、今日すぐれた文化国家を作りあげている北欧の三カ国にいたしましても、スイスにいたしましても、コーペルによって住宅の八割ないし十割はいろいろ大きな改善がなされ、偉大な成功が遂げられている。特に日本のように低額所得者の多いとごりで住宅公団を作っても、高額所得者は入れるけれども、低額所得者は入れません。ですから、どこが重要度が高いかということを考えてみると、高いこころはあと回しになっている。だかり同じ苦しい財政の中で、税の中から貝担するのでありますから、必要度の高いところへ金が流れていくという予算の扱い方をしてもらわなければ、われわれは困るのです。こういう点からいえば、私は生活協同組合の持つ任務というものは非常に大きいと思う。何も小売商人と競合するような生活物資の小売をするというようなことのみをやらさなくても、住宅建設でありますとか、あるいは相互共済事業や、さっき健康保険の運営などに悩んでおられるようでありますが、やはり国民の協力を待って——抽象的ではいけません、組織的な協力を期待する。生協が全面的に成長を遂げていきますならば、私は保険制度に対してはやはり偉大なバックになってくると思う。たとえば共済制度をやらせようとしておりましょう。私は共済制度のようなものをどんどん奨励されていかれることによって——国民全体に重きを持ったそういうものに対してはみな補助金を削ってきているわけです。だからこの意図がどこにあるかということは、福祉国家でやることはぶちこわしのような感じを私は率直に受ける。その具体的なものは金額にしてはわずかでありますけれども、こういうものは増額するとか、こういうものが予算の上にどんどん出てくるようにならなければ、福祉国家なんということは縁が遠い話ではないか。こう非常に目につくものですから、この前川崎さんの場合もただしたのだけれども、不得要領の答弁で、あなたは大へん勉強しているようですから、いいお答えをいただきたいと思います。
  18. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの井堀委員の御所見につきましては、私もまことに共鳴するのであります。実際わが国の国民生活の上においていろいろむだのありますもの、また組織の力によって改善強化のできるもの、またそうしなければならないものが多々あるにつきましても、全くお説の通りでございます。政府といたしましては、もちろん今お述べになりましたようなことにつきましては直感てございますか、予算面に現われましたことにつきましては、政府委員から答弁させることにいたします。
  19. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 御指摘のように、消費生活協同組合に出す金が一千二百万円から一千万円になっておりますので、二百万円の減でございます。これは実は実績によりましたことで、せっかくこういう貸付金制度がございますけれども、なかなか貸付がむずかしいような事態がございましたので、大体このくらいのところで間に合うのではないか、と申しますのは、国で一千万円出しますと、府県で半額持たなければならぬという問題が一つあります。それからもう一つは、こういうふうな対象になるものが地域の生協でなくて、主として職域に多くあります。職域の方は自分の方で何とかなるというものがございますような事情がございまして、二百万円減額いたしたのであります。そのほか消費生活協同組合のやり方につきましていろいろお述べいただきましたことにつきましては、全く同感でございまして、そういったごとをやって参りたいと思っております。しかし今お話しになりましたような、たとえばロッチデールの原則で実は市価主義というのをとっておりますけれども、日本のように小売商の非常に多いところで、ただ市価主義といいましても、割り戻しだけをあとでするということでは、実はなかなか組合員が入ってこない。また同時に住宅その他いろいろの事業もございまするが、どっちかというと、出資はしないで利益だけ得たいということで、精神的なつながりというものがないのです。そういうところからやはり啓発していかなければならないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  20. 井堀繁雄

    井堀分科員 消費組合のことにつきましては、今お答えにありましたように、国民性もありましょう。いろいろそういうものがあるからこそなお必要なんです。今の答弁でよくわかるように、社会局の中に一課あるようだけれども、あまりほかの課に比較いたしまして力の入らぬ課のようです。一例をあげますと、私も一、二相談を受けた。住宅建設のために厚生年金の還元融資をあなたの方でやるわけなんですが、ところがあの規定の中で、大体雇い主が債務負担を負うことになっている。あれはいいことだと思う。その中にこういう規定がある。会社もしくはそういう事業を委託する法人というのがあるわけなんですが、その法人というのは、事業会社が代理会社を作ってそれをやらせるという意味らしい。ところがその場合に生活協同組合も法人じゃないかと伺ったら、社会局自身が信用しないという態度でしょう。それをお認めにならない、お力を入れないという事実にぶつかっているのだということを私は体験しておる。これは一事が万事なんです。こういうことでは、福祉国家を推進する行政庁の厚生省としては、大きな欠点が随所に現われてきている感じが強くいたしまして、この機会に厚生大臣の所感を伺っておるのです。果して石橋内閣が額面通り社会福祉をお考えになっているか、厚生省一つ二つを突っついてみればわかると思いまして、三つばかり問題を出して所感をお尋ねしたところが、いずれも不満足な答弁で、これでは福祉国家は少し御遠慮いただかなければ国民に迷いを与える、こういう感じを強くいたします。なおまた午後に時間をいただいて、もう少し具体的な御質問を申し上げることとして、滝井君とかわります。
  21. 坂田道太

  22. 滝井義高

    滝井分科員 昨日社会労働委員会で国民保険について質問をいたしましたが、どうも絵に描いたもちであることがだんだんわかってきた。きょうはもう少し時間をいただきまして、予算上の問題を一、二尋ねさしていただきたいと思います。  その前に、政府は戦争犠牲というものに対して一体これを社会保障でいくのか、それともそれぞれの戦争犠牲者の団体が国会なり政府に陳情をかけると、その陳情の力に応じて個々ばらばらに行き当りばったりの政策を出していくのか。いわゆる戦争犠牲に対する政府の根本的な態度、政府は一体戦争犠牲に対して総合的に検討して、そしてこういう態度でいくという基本的な方針でも持っておるのか。持っておられればそれを説明していただきたいし、持ってなければ、こういう態度で今までやってきたということを、一つ説明願いたいと思います。
  23. 神田博

    神田国務大臣 ただいま滝井委員の戦争犠牲に対する政府方針といいますか、とるであろうとする所見を一つ述べろということでございますが、戦争犠牲の救済と申しましょうか、処置あるいは処遇につきましては、今までやって参りましたことは御承知の通りでございまして、今後残っている問題をどうするかということであろうかと思います。そこで今政府として最も苦慮しておりますのは、海外同胞引揚者の海外に置いてきた財産を補償しろ’いう要請が、ここ十一年間ずっと熱心に続けられて参りましたことは、御承知の通りでございます。先般の施政方針の演説にもございましたように、これは在外問題等に関する審議会がございまして、その審議会から答申が内閣に出されております。この問題はその答申の線に沿って政府は誠意をもって善処しよう、解決しよう、こういうことになっておりまして、先般予算委員会でも御説明申し上げましたように、すでに国債利子も十億円入れておる。それから所要事務費も若干計上いたしております。さらにまた交付を必要とする面に対しまして、金融公庫から交付公債を担保とする貸し出しの方途も講じまして、二十億円ほどワクをつけておる、こういうことであります。そこで結局答申の線に沿って大体交付公債で片づけようということなんでございますが、その総額については今検討しておりますから、そう遠からず結論が出る見込みでございます。この結論が出ましたら、これらに関する必要な法案を御審議願いたい、こう考えております。その際には、いろいろ学徒動員であるとか、開拓者の犠牲者等の問題も、この在外補償の問題に関連いたしまして、ここで一つ解決いたしたい、こういう考えでございます。その他のことにつきましては、軍人遺家族等からいろいろ要請が出ておりますことは御承知でございましょが、これは検討中でございまして、まだ具体的にどうこうということをやっておらないのでございます。なお農地の点についても、御承知のように要望があるようでございまするが、今のところこれらについては具体的な考えはいたしておりません。今申し上げた在外同胞の引揚者の処遇の問題、それに関連いたしまして開拓者とかあるいは学徒動員等の問題を、この国会に解決いたしたい、こういうふうに考えております。  それからちょっと申しおくれましたが、何か団体の要請によって政府は態度をきめるのかという意味お尋ねであったのでございますが、もちろんこれは諸般の情勢を検討する際にその声を十分聞きまするが、この決定はあくまで政府が自主性を持って、そして公正至当と認める線で決定いたすことは申すまでもないことでございます。総理の演説にもございましたように、一部の利益のためには決して政治はやらない、こうしっかり考えておりますので、この点も御了承願いたいと思います。
  24. 滝井義高

    滝井分科員 今大臣はきわめて各論的にお述べになった。私は実は政府の基本的な方針を尋ねた。今の答弁では、在外財産は十一年来海外引揚者の諸君から強い要望がある、そこで公正妥当に判断をして、利子を十億計上し、あるいは国民金融公庫二十億をやっておるんだ、あるいは農地の問題は手をつけておらぬが、考究中であるとおっしゃっておられるが、それについては物差しがなくちゃいかぬと思う。総合的に見て戦争犠牲というものは、戦後十二年たって、もう戦後ではないといわれる現段階においても、なお問題が残っておるという。この残っておる問題を、今後基本的にはどういう方針で、どういうものさしをもって処理していくのか。すなわち社会保障という見地に立っていくのか。それとも今回政府がとろうとしておる在外財産の問題のように、給与金という一時金のようなものをやって打ち切っていく方針なのか。この戦争犠牲に対する政府の基本的な方針というものをどういう方向に持っていくかということをお尋ねしておるのです。
  25. 神田博

    神田国務大臣 基本的な考え方といたしましては、今申し上げたこと以外は、社会保障でいこうという考え方でございます。  なお農地の問題について研究中だということをお話しになりましたようですが、私は研究中とは申しておりませんので、農地のことについての声はある、しかし政府においてはこれを取り上げるということを今考えておらないということを申し上げたのでございまして、誤解ないようにお願いいたしたいと存じます。  もう一ぺん簡単に申し上げますると、戦争犠牲は、大戦争のことでございますから、どこどこまでもあとを引くだろうと思います。従ってそうなかなかきれいさっぱりと——これは見方、考え方にもよろうかと思いまするが、そういう議論は残ると思います。政府といたしましては、少くとも三十一年度にはみんな解決したい。そしてあとのことは、それがもしあるとすれば、社会保障でいきたい。こういうはっきりした考え方で諸般の問題と取っ組んでおります。
  26. 滝井義高

    滝井分科員 きわめて明確になりました。そうしますと、大体政府の戦争犠牲に対する今後の基本的な態度は、一応在外財産問題を最後の打ち切りとして、それ以降は戦争犠牲に対しては、社会保障をもってやっていく、こういうきわめて明快な御答弁があったので、そう了承しておきます。  そこで次に、いよいよ戦争犠牲が集中的に現われてくるのは、生活保護の問題でございます。それでこの生活保護の問題についてお尋ねをいたしたいのでございますが、それは今年度予算を見ると、予算の額は二億二千八百万円ばかり増強いたしておりますが、実は人員が減らされております。最近の状態をずっと推移を見てみますと、一昨年までの生活保護の人員というものは、大体百九十万を前後しております。ところが昨年になりますと、これが百七十万になり、今年は一挙に百五十万に引き下げておる。この理論的な根拠をお尋ねしたいと思う。大蔵省は、これは実績でございます、昨年あたりの実績がそうなっておりますから、実績でも今年は百五十万そこそこで十分であると言う。そういう実績だというお言葉をお使いになって、われわれは説明を聞いたことがある。そこで百五十万人で、予算額にして十五億四千百万円ばかりを減らしておるわけ、なんですが、保護費を十一億五千四百万円ばかり、六・五%を引き上げておるが、この人員を減らした理論的な根拠を御説明願いたい。
  27. 神田博

    神田国務大臣 政府委員の答弁の前に一言私から申し上げます。要保護者の人数が減ったということについてよくお尋ねがあるのでございますが、これは何といいますか、経済界の好転が私は主たるものだと考えております。大体毎月一%くらいずつ減っておるようでございます。そこでこれは要保護者だけを調べると一%でございますが、たまたま失業者の減るのを見ても、やっぱり一%くらい減っておる。日雇い労務者の関係も、やっぱりそういうことになっております。それから同時に、健康保険の方の被保険者の数を調べてみますと、ちょうど一%くらいずつ増加しておる。こういうような工合で、私はこの数字を検討いたしまして、詳細なことは政府委員から答弁させますが、主として経済界の好転によって、今申し上げたようなすべての数が一%くらいずつ、あるものは漸減をしていき、あるものは増加の足取りをとっている。こういう一般的の趨勢からきたのじゃないか、こういうふうに考えております。
  28. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 今滝井委員のおっしゃいました、百九十万が百七十万に減ったということでございますが、これは生活保護を受けております者全部の数字でございますから、生活扶助を受けております者と、それから医療扶助、教育扶助、住宅扶助、そういった各種の扶助を受けております、ダブっておらない者を全部計上したわけであります。それによりますとこの予算を組みました数字、もとになっております数字は、一番新しい数字で申しますと、一昨年の十一月が百九十二万二千四百八十人でございまして、三十一年が百七十二万千九百五十八人でありますから、二十万人減っておるのであります。しかしながら、こちらで百五十万人、百五十万人と申しております数字は、そのうちで生活扶助だけの数字を申しておるわけでございますから、そこで二十万人ばかりの差があるわけであります。今年の数字を百五十万九百五十八人と申しております旧けれども、今の他の種類の扶助を入れまして百七十一万何がしになるわけであります。そこで百五十万の数字の算出の根拠を申し上げますと、昭和三十一年十月の実績が百五十三万八千人ばかり、これが生活扶助でございます。これが過去の実績を基礎にいたしますと、大体一%ずつ減っておるのでありまして、かりに一万五千人ずつ減るといたしまして、今年の一月までは一万五千人ずつ減っていく計算をいたしたのであります。そうして二月、三月はもう減らないという計算にいたしますと、三月の末が百四十九万三千何がしの数字が出てくるわけであります。それに対しまして昭和三十二年度人口増の伸びなど見まして、年間一%の増を見たわけであります。これが百五十万人の数字になったわけであります。それでございますから、この数字は、私生活保護の仕事をやって参りまして考えますと、三十二年度にもいろいろと低所得の階層に対する対策、あるいはまた国民健康保険普及がございますし、いろいろないい条件が出ておりますので、三十二年にも減っていくんじゃないかと思うのであります。その減を全然見てありませんから、この数字で大体まかなえるというふうに考えておるわけでございます。
  29. 滝井義高

    滝井分科員 なるほど表面的に見れば、私はそういうことが言えると思う。しかし実際に厚生省が大蔵省に予算要求した額は、生活保護は四百四十億であったはずです。四百四十億のときの積算の基礎をお示し願いたい。
  30. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 最初出しました四百四十億というのは、実は児童加算でありますとか、あるいは期末の手当でありますとか、各種の基準の引き上げの内容があったわけでございまして、そういうようなものがそれだけの膨大な額になりましたが、その後八月以降にどんどん減って参りましたので、一番最近の実績を申し上げますならば、人員につきましてはこの程度で足りる、こういうふうに考えております。
  31. 滝井義高

    滝井分科員 四百四十億の基礎ははっきりしないようでございますが、実は今の数字は私はきわめて作為的な、作られた数字のニュアンスが非常に強いと思う。たとえば生活保護費の中で一番多く金を食っておるものは、医療扶助費です。これが昭和三十一年は百八十七億であったのが、三十二年は百八十六億と減ってきておる。今過去の医療扶助の実績を見ると、三十年ころは月二十億前後要っておった。人数は三十九万から四十万を往来しておった。三十一年度になりますと、人数はなるほど二、三万くらい減りました。しかし三十七万を往来しておる。昨年の一月、二月ころは三十七万前後、こういう実態を見ると、人数は大体同じなんだが、非常に額を締めてきているということがわかるわけであります。しからばそれだけ生活補助対象者に病人が減ってきたか。そうじゃない。たとえばこういう通達をあなたの方は出している。東京都民生局長通達によると、生活保護患者の都外入院制限というようなことで、たとえば東京の生活保護患者は千葉県の結核療養所に入ることができない、あるいは千葉県から東京の療養所に入っておった人は、最近は千葉県に返されておる。療養所は千葉県の海岸のような空気のいいところに作るのが常識なんですが、そうするとほこりの多い東京に住んでおる結核患者は、千葉県に行って入院するのが当然なんで、東京の患者が千葉県に行くのはまかりならぬということになれば、東京には入るところがない。そういうむちゃなことをやって減らしているのです。こういう実態を私は見のがすことはできない。こういうことになれば幾らでも減ります。現在日本の経済が伸びて、なるほど雇用というものも伸びております。ところが雇用は伸びておるけれども、雇用の実態を把握してごらんなさい。雇用の実態を見てみますと、日本の農業や非農業の自営業種で年収八万円未満だと生活保護にかかりますよ。東京あたりだと標準五人世帯では、一級で八千二百三十三円六十三銭ですから、これはかかりますよ。それから同時に雇用者で月収八千円未満が非常に多い。この業種で年収が八万円未満、雇用者が月収八千円未満の人は、昭和二十九年では七百七十九万人あった。三十年では七百九十一万人になった。ところが三十一年には九百三十五万人に増加をした。これを具体的に言うと、雇用者が増加してきておることを意味します。ところが実態は、完全雇用の姿できておる労働者諸君の労働の就業状態というものを見ると、就業状態はきわめて悪化してきている。どういう形で悪化旧してきているかといえば、一時間から十九時間しか働かない者と、われわれのいわゆる標準週間労働時間である一日八時間かける六、四十八時間働くという四十八時間層というものがふえていない。一週間に一時間から十九時間働く層と、六十時間以上働く層がふえてきているということなんです。これは雇用状態はふえておるけれども、結局低賃金で月収八千円以下の層が多くなってきておることを意味する。すなわち日本の生産年令人口に対する労働力人口といいますか、労働力稼率が非常に高くなってきておる。個々の状態を見るとちっとも賃金は上っていない。生活状態改善されていないことを意味する。そういう状態の中で生活保護の者だけがどんどん減るということは絶対考えられない。あなた方が四百四十億を出したときには、なるほど児童加算その他があったでしょう。そこにはそれを出すだけの数字があったはずです。ことし三百六十億を認められたが、四百四十億との間には八十億の違いがある。まさか児童加算その他で八十億減るはずがない。当然それだけの人員があったはずです。これを正直に、科学的に私が内閣の労働統計調査その他で調べてみても、日本の雇用状態は絶対によくなっておりません。いわゆる年収八万円あるいは月収八千円以下の層がふえておるわけであって、実態がよくなっていないことは、はっきりしてきておるわけです。従ってあなたが四百四十億を出したときの生活保護対象人員というものをここで一つ明確にしてもらいたいと思う。これは何も大蔵省に遠慮する必要はない。厚生省が四百四十億を出したときの基礎、こういう工合に厚生省は見ておったということを明確にしてもらいたいと思う。私は昨日高田保険局長に、実行するせぬは別にして、厚生省が掲げている国民保険の場合に実現する数について聞きました。これはとてもあの通りに大蔵省は認めてくれるとは思いません。今年度も認めなかった。あなたの方の生活保護の実態は、こういう実態であるということはわかるはずです。労働省の失業対策事業の要求は昨年に比べて二万三千人も減っている。——あなたの方が四百四十億を要求したときの実態を一つ正直に言ってもらいたい。
  32. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 医療扶助も、やはり先ほど申し上げましたと同じような理由で、減っていると思いますけれども、本年度は昨年に比べまして、医療扶助は約一億ばかり実は増加になったのであります。それは昨年は医療扶助額として出ておりますものを、あとで十億というものが差引計算で引いてございますので、そのうちの三億円ばかりというものは、ここに掲げてありますところの昨年の医療扶助額よりは減った実態である。そういうふうに見ると本年は一億ばかりふえております。いろいろ医療扶助についてお話がございますけれども、医療扶助が減りました原因を見ますと、入院が特に減っているわけでもないのです。入院外でしかも単給が非常に減っているということ、単給が減っていると同時に平均も減っている。これはやはり入院外程度の医療費負担できるような人がふえた、こういうように見なければならぬと思うのであります。従って例の東京都の問題でございますけれども、別に今私どもの方でこういうようなことを申したからということで、入院できないようなことはあり得ないのではないかと考えております。この考え方というのは別に通知を出したわけでもないのでございまして、昨年の六月ごろでございましたか、課長会議を開いたときに従来からありますことをいろいろ口頭で指示したことが実体でございますから、これも生活保護の医療扶助としては従来もとってきた制度でございます。と申しますのは、生活扶助を受けます場合には、一番もよりの医療機関にかかるというのが原則でございます。それは一つには移送費がかかりますし、あるいはまた生活保護を受けます場合には、絶えずケース・ワーカーが保護を受けている者と接触しなければならない、そういった便利の問題があります。あるいはまた医療機関に対する監査の問題がございますので、従来の原則をただそこで強調したというだけでございます。そういうことが実情でございます。  それから四百四十億の内訳というのは、私今ここに資料を持っておりませんから、またあとで調べて申し上げたいと思いますが、児童手当とかあるいは学童に服を買ってやるとかいうような費用がおもであるというふうに私は考えております。
  33. 神田博

    神田国務大臣 先ほどの戦争犠牲者に対する処遇の問題ですが、戦争犠牲の扱いを政府はどういうような方針で、基本的に一般的に考えておるかというお尋ねがございまして、私は厚生省関係については年度内に大体片づけたいという考えでおります。  もっと具体的に言いますと、これは申すまでもないこととは思いますが、在外引揚者の処遇の問題を解決するに当りましては、先ほど申し上げましたように、審議会の答申の線を尊重して解決するのでありますが、その解決するに当って他に影響のあるような解決はとらない、こういう考え方でおるということ、それから農林省はどう考えておるか、私、農地の関係のものは実はまだはっきりしたことを聞いておらないのでございまして、政府方針として、一般論としてはこの年度内にみんな解決しよう、こういう気持を申し上げたのであります。農地その他のことでなおあるとすれば他の担当大臣がどうお考えになっておられるか、あるいはこれを閣議でどう取り扱うかということを混同して申し上げやしないかと思いまして、今具体的に申し上げたわけでございます。厚生省としては今年度内に政府がみんな解決しようという方針の通りにやっていける、こういう考え方を率直に申し上げて、他の閣僚も戦争の跡始末というものは、なるたけすみやかに、誠意をもってやろう、年度内に片づけて、来年度からはまた戦争の跡始末、々々々というようなことでいろいろやらないようにしようじやないかということがございましたので、そういう意味で申し上げたのでございまして、他の省は本年度内にそれがうまくいくかどうか、これは相手のあることでございますから、よその分まであるいは申し上げたのではないかという気がいたしましたので、そういうことでございますれば誤解を招くおそれもございますので、厚生省関係においては、という前提で申し上げておるのでございます。他の方はまた他の機会に、一つ他の担当大臣なりあるいは総理臨時代理などにお尋ね願いたいと思います。
  34. 滝井義高

    滝井分科員 とにかく政府としては社会保障でやるという基本方針さえはっきりしてもらっておけば、あとのことはきょう聞かなくてもけっこうです。  そこで四百四十億円出したという数字については、いずれ資料として出していただきたいと思います。  それから東京都民生局の通達というものは、これは単なる話であって、その通りにやらなくてもいいんだ、今までそういう慣例があったので、しておった、こういうふうにおっしゃいました。一つそういうようにわれわれは今後天下に表明して参ります。しかし実態は、最近東京都に来ておった患者は全部千葉県に帰らされておる、あるいは千葉県におった者は東京都に帰らされておるという実情がある。そのためにそれぞれの病院は相当の混乱をいたしております。そしてある人が千葉県のその係の方に連絡したら、その係の者と連絡した病院とがけんかをした実例さえある。従ってこういうことのないように、それは今までやっておったことをなるべく守ってくれという通達じゃない、今まで通りでよろしいんだ、こういうふうに通達をやり直してもらいたい。そういうこと、ができますか。
  35. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 私先ほど申し上げましたのは、これは単なる慣例であるから、やってもらわなくてもいいということを申し上げたのではなくて、事実はごうであるということを申し上げたのであります。生活保護はやはり最低生活を保障するということでございますので、病院につきましても、そういったような原則は当てはまるわけでございまして、私が先ほどから申し上げましたような理由によりまして、できるだけ近い病院なり診療所に見てもらうというのが原則なんです。家族が一々見舞に行こうといたしましても、遠いところまで旅費を使っていかなければならぬということになりますと、生活保護の原則ではそれだけの余裕はないはずなんです。そういうことから見ましても、あるいはまた保護の実態をつかむということから申しましても、あるいはああいう世帯援護、指導するというような建前から申しましても、やはり地元の医療機関に見てもらうというのが生活保護の原則である、こういうことを実は申したわけでございます。だから地理的に見まして非常に近接しておって、むしろ自分の属しておる行政地域の病院に行く方が不便であるということもございましょう。そういうときには例外を認めるということを申しておるわけであります。
  36. 滝井義高

    滝井分科員 そういう工合にして、生活保護患者の諸君なりあるいは扶助者を締め上げていくところに、数字が減少してくる原因があるんです。実は大へんなことを見たのです。それはこの生活保護というものが親代々、親譲りになる傾向が出てき始めたということです。どうしてそういうことになってきたかというと、現在の日雇い労働者諸君の実態を大臣お調べになると、日雇い労働者というのは、あれは今まで失業保険が切れた場合にあすこに行って、臨時に次のさらによりよい職業をみつけるまでの一つ段階だとわれわれは思っておった。ところがあれはもう一つの固定の職業になってきた。それと同じ傾向が生活保護の家庭に出て参りました。先日私は一人の婦人に会ったところが、私は私のお父さんも生活保護を受けて私を育ててくれました。私はどうしても生活保護からのがれたいと思いましたけれども、逃がれることができない。なぜならば、私は子供のときからちょっぴりした栄養で育てられたので労働ができません。従って私はやはり生活保護を受けております。ところが私の子供だけは生活保護を受ける人間にしたくないと私は一生懸命に努力しておるけれども、何せ標準世帯八千円そこそこしかもらえないので栄養がとれません、だから私の子供も少し雨か何か降ったり、あるいは炎天のときに学校にやろうとすると、すぐかぜをひいたり病気になる。従って私の子供もおそらく国の御厄介になる生活保護者にならなければならないであろうと思います、こういうことなんです。それでだんだん調べてみると、その婦人は血を売っておるのです。もう八千円では食えないというので血を売っておる。お父さんも生活保護、その子供も生活保護、そうしてその孫もまた生活保護、こういう状態がすでに日本に出てき始めているということです。これは大問題です。なぜそういうことになるかというと、昨年は、たとえば自由労務者が年末手当として六日分もらいますと、その六日分を生活保護費の中から差し引いてしまう、そういう冷酷無情のことをやっておる。あるいは家庭で内職をしますと、内職した分だけを政府生活保護費の中から差し引く。だからもとのもくあみなんです。八千円もらっておったら、八千円以上は一歩も出られない。そこになんぼかのたくわえをして、そうしてより上の段階に伸び上ろうとする足場を政府は絶えず除外をしていっておる。従って生活保護の家庭は、依然として生活保護一つの家系となって続くという状態が出てきておる。先般小選挙区制を論議するときに、これは名前を出したら語弊がありますが、ある県の公聴会に行きましたところが、その県の代表が出てきて、小選挙区制をやったら私のところでは代議士稼業ができます。おじいさんも代議士、お父さんも代議士、そしてその息子も代議士ということになると言われたのですが、これと同じ状態です。そういう状態生活保護の中に出てきて、おじいさんから孫まで生活保護を受けるということになる。そうするとその家庭は栄養状態が悪い、だから過激な労働ができない。過激な労働ができないということになると、何か知能的な労働につかなければならない。ところが学問をするだけの——高等学校以上はだめなんです。いわゆる義務教育を受けるだけなんです。こういうわけで、もう民族の中にそういう劣悪な層というものが親代々続いていく状態が日本の生活保護の中に出てきておる。だから生活保護法は当然再検討しなければならない段階にきておる。生活保護の百九十万の諸君が、何らかの形の上に一歩のし上っていく制度を、現在の日本の生活保護の中に課せない限りにおいては、もう生活保護を受けた家庭は、受けることが習慣になってくる。それはどうしてかというと、働いて得た賃金を幾分かそこに残しております。三百円かそこらを残しておる。ところが小さい子供が中学校を卒業しまして働きに出る。そうしますと、三百円か六百円か、いわゆる勤労控除の形で家庭に残してくれて、あとは生活保護費の中から差し引かれてしまうので、その子供が働きに行かなくなって、不良少年になってしまう。青少年の不良化防止の見地からいっても、生活保護の家庭の中で子供が働きに出たときには、もっと残してやらなければならない。ところがそういうことが行われていないから、生活保護の家庭は、永遠に生活保護からのがれることができないという実態を作っておる。そういう実態を作っておりながら、予算の面で減らしていくということになれば、その人たちには自殺をしいるということになるのです。あるいはもっと悪いヒロポン中毒になったり、麻薬の密売をやったり、あるいは古金拾いをやったりするようになる。基地の実態を見てごらんなさい。農地を取り上げたために、入ってはいけないところまで入って古金、砲弾の破片を拾わなければ食っていけないという状態ができておる。それと同じです。大臣どうですか。そういう実態が現実に日本に出てき始めておりますが、この際生活保護のあり方について、根本的に検討を加える意思があるかないか、これを一つ承わりたい。
  37. 神田博

    神田国務大臣 滝井委員のただいまお尋ねになりましたことは、私も厚生大臣就任以来よく耳にしておりまして、いろいろ調査もすれば研究も続けております課題でございます。ただし、と言って、それなら一体生活保護の基準を作って、今お述べになりましたように、他の収入があった場合にどの程度まで認めるかという線の引き方ですが、これはなかなかその引き方によってはまた他の新しい弊害が起る、これまた考えなくてはならぬというような問題もあろうかと思うのであります。政治的にも事務的にも十分検討いたしたい、こういう考えをもちまして今大きな課題といたしております。  それから今お述べになりました生活保護を親が受け、子が受け、また孫が受けるというような例があるということをお述べになられましたが、あるいはそういうことももうそろそろ現われてきているかもしれません。しかしこの生活保護制度は戦後に設けた制度でございまして、まだ十年未満の歴史しかないわけでございまして、まだ親も子も孫もというところまでは私はいっていないのじゃないかと思うのであります。滝井委員の一番の御心配は、明年度生活保護費の見積りが、今の予算に計上しておるものでは足らないのじゃないか、そこが心配なんだ、そこでもし足らなかった場合には一体どうするのかという御心配でございますならば、これは保護費は義務費でございますから、予算を使い切ってしまいますれば、予備費から持ってくる。他の流用をいたしましても、これは事欠くことのないように十分にして参る、こういう了解になっておりますので、この点は御了承願いたいと思います。
  38. 滝井義高

    滝井分科員 保護費が義務費であるから予備費から回す、こう簡単に大臣はおっしゃいますけれども、なかなかそうはいかないのが実情なんです。末端行政にいってみますと、これは血の出るような切り方をしておる。実は私ここに医療扶助の書類を持ってきています。一人の生活保護患者がやってきますと、この複雑怪奇な書類を医者が全部やらなければならぬ。これは大へんです。まずどういうことになるかというと、これは大臣に一ぺんここで私は説明しておきたいと思います。病気になりますと、たとえば母子家庭、お母さん一人、子供一人だとします。それでお母さんが病気になると医療券を持ってこなければ医者にかかれないのです。そういう場合に一体だれが取りに行くかというのです。母子家庭はだれも取りに来手がいないのです。だからそのときには、たとえば子供でも医者に使いに行って往診に来てくれ、こういうことが普通ならできる。ところが今の制度は、まず福祉事務所に行って初診券というものをもらってこなければだめなんです。そしてもらってきて、今度はそれを医者のうちに持っていきますと初めて見るわけなんです。見たら、それで注射なんかしてはいけない。まだ施薬、してはいけないのです。まずこの初診券の半分にその症状を書いて、そして治療の期間を書いて、治療の見積額を書いてそして記名捺印をして、今度は医者の方の控えを医者のうちに取って、これを患者にやる。患者は市役所なり福祉事務所にまた行きます。そして今度はこの医療券というものをもらってくるのです。そうするとこの医療券で初めて医者は治療することができる。それが一週間の治療期間の見積りをしておって、これが十日になると、今度は延長願というものをやる。延長願というものをまた市役所に持っていって三日間延長いたします、この許可を得なければ治療することはできない。もう急病人は死んでしまう。そしてこれが月末になりましてその患者がさらに来月に越すと、今度は医療の継続の意見書というものが要るのです。大体収入が月八千円以下の貧しい人たち、学問的にいってもそんなに学問もない。ところがこのむずかしい書類を二回も三回も、たった一日か二日医者にかかる場合でも、結核で長期にかかる場合でも全部これが要るのです。そうしますと、福祉事務所のお役人さんの前に二度も三度も打って頭を下げなければこれだけの手続は終らない。そしてその一切の手続は、今度は治療をやる医者のところに全部かかってきます。実に大へんです。結核になると、これどころではないのです。この一つ一つの書類を見て下さい。この複雑怪奇なる書類を全部書かなければならぬ。こんな仕事をやらせるので、もう患者は行きません。間単なのは、もうやめた、先生書かなくてもいいから一つ自費でかかりましょう、自費でかかったって金がないのですから医者の負担になる。これが実態なんです。そうしてこのほかに医有は健康保険の複雑怪奇な事務を負わされておるので、今の医者というのは事務屋です。技術者じゃない、科学者じゃない、事務屋です。これが日本の医療の実態であり、そしてそれが生活保護の医療扶助の実態なんです。これは大へんな点です。だからこういう事務的なことをやらしておけば医療扶助は減ります。しかも千葉県の者が東京に行くことはできぬという医療の選択の自由を制限していくとするなら、もはや福祉国家とかあるいは貧しい人のためには憲法二十五条で最低生活を保障しておるなどというのはナンセンスです。こういう実態のもとでは医療扶助の減ることも当然なのです。そこで今医療扶助が減るということは、結句生活保護費の三百六十五億が減るということを意味する。医療扶助が百八十億食っているのですから。そういう場合には予備費で組みますと大臣簡単に言いますが、なかなかそうはいきません。それなら大臣にお尋ねしますが、もし米価の値上げをするというような場合、たとえば政府原案の通り、現在の百九円の米価が百十七円五十銭になって、八円五十銭上げるとすれば、生活保護は少くとも四十億上げなければならぬ。もし米価が何らかの形で一般会計から食管の特別会計繰り入れられずに、われわれの負担になるというような場合は、これについては政府は責任をもって措置をしてくれるでしょうか。これも今からわれわれは心配なのです。どうですか、その点責任をもって補正予算にでも組んで措置をするという御言明をいただいておきたいと思います。
  39. 神田博

    神田国務大臣 滝井委員にお答えをいたします。要保護者が病気になった際に、現行制度ではまことに複雑多岐な様式行為を経なければならない。これは実は私もしばしば聞いておりますが、全く何とかもっと簡単な方法はないか、何といってもこれはやはり国民の税金から取ることでございますから、全然跡形もなしでやっていいかどうかという、そこが踏み切れるかどうかということは、私まだ多少の疑問を持っております。しかし今のような非常に複雑なままで続けていくということはどうかという疑問を持っております。これらの点につきましては、就任日も浅いことでありますので、まだ成案も持っておりませんが、十分検討をいたしたい、こういうふうに考えております。  それから米価は今度の審議会の答申によってきまるわけでございますが、もしその答申が米価の値上げをする、そうして二重米価にしないで一本でいくという際の要保護者に対する値上げの分は、もちろん補正では見るのだろうというように私伺ったのでございますが、これはその通りでございます。先般の米価値上げに際しましても、要保護者の手当につきましては、その分は見る、むしろその分にプラス・アルファぐらい一つ見ようじゃないか、こういうことでございまして、それは私どもの方といたしましてもこの前からそういう考えでおります。ただ今お述べになりました、その場合の金額が今滝井委員からのお話ですと数十億要るようなお話でございましたが、私どもそのときに調べた数字によりますと、現在の目標でいきますと三億四・五千万円というような金額でございました。これはそろばん上の計数でございますが、それをそのまま計上するか、それにプラス・アルファどのくらいするかということは、今議論しておる最中でございます。とにかく米価の値上りについてはこれを見るという方針政府の側できまっておりまして、厚生大臣としてはこの際であるから政府が値上げによってネコババをする趣旨で上げるんじゃないから、下の方にはこの際社会保障費をもっと増すということで、米価の値上り以上にもっとプラス・アルファを出した方がいいのではないかということを私強く主張いたしまして、多くの同僚諸公の同意も得ております。そういう議論がこの間の公務員の増俸が六・二%であったのを特に強く主張いたしまして、〇・三%、六・五%に引き上げた理由にもなっておるわけであります。これは見るということにお考え願いたいと思います。
  40. 滝井義高

    滝井分科員 生活保護費を、米価が決定した場合に、その引き上げが行われれば見るということですが、ぜひそうしていただきたいと思います。そういう言明があれば保護者の諸君は安心ができると思います。  次に母子加算の拡充四億五千万円の問題ですが、今までの母子加算五百円のものを千円に上げるということになれば、今までいわゆるボーダー・ラインにあった母子家庭の層の中から、生活保護の中に入ってくる層が出てくると思うのです。その数は一体どのくらいになるか、これを一つお教え願いたい。
  41. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 基準の引き上げとそれから母子加算が同時に入ってくるわけでありますけれども母子加算だけで見ますと、これは資料が不確かでございますので、いろいろ資料をとってきて推算をいたしまして、約五万世帯だろう、こういうふうな数字を実は出したわけでございます。
  42. 滝井義高

    滝井分科員 私があと聞こうと思ったことを局長さんが言われましたが、基準の引き上げによって重なった場合はどのくらいですか。
  43. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 基準の引き上げと重なりますと六万世帯くらいであります。
  44. 滝井義高

    滝井分科員 大体母子家庭は七十万くらいあると思いますが、七十万世帯の大体四割程度は低額所得層だというのが一般の通説だと思うのです。そうしますと、現在生活保護対象母子家庭は大体どのくらいあるのですか。
  45. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 大体十万そこそこです。
  46. 滝井義高

    滝井分科員 七十万世帯で現在十万、今度新しく母子加算と基準の引き上げで重なるものが六万というと、十五、六万ということになるわけですね。そうしますと、これは大臣の説明にもあったと記憶いたしておりますが、母子加算というものは、将来母子年金の足場として、それにかわるものとして、母子年金をやりたいのだが、今度は母子加算でやったんだ、こういうことです。その説明はどうもちょっととってきてくっつけたような感じがするのです。七十万世帯の諸君にそのくらいの金を補助してやるというならいいけれども、わずかに今までやっておったものに六万くらいをふやして、十六万くらいの人に割ってやるというなら、今の生活保護費そのものがきわめて少くて、最低生活をやるのにも——これは生活実態調査をやっておるとしても、あの調査は学者の意見によれば、きわめて科学的な装いをした非科学的な調査だという烙印を押されているのですよ。その科学的な装いをした非科学的な調査で、わずかに六万ふえて十六万にやる。それが将来やる母子年金の足場だというようなことは、私はちょっとおかしいと思うのです。
  47. 神田博

    神田国務大臣 これは考え方の問題ですから私からお答え申し上げます。母子加算制度を新しく予算に取り入れた、この考え方は、母子年金というものを今度調査費をとりましてへ恒久的な考え方を練るわけでございまして、それまでは待ち遠しいから、ここで一つ手始めにテスト・ケースと申しましょうか、とにかくそういう先を見込んだあたたかい考え方だ。今の制度にただプラス・アルファした、くっつけたのだあるいは乗っけたのだというようなそういう消極的な考えでやりますと、もうそれで一応何といいますか、今までの懸案の一部が解決したというふうに考えられるのですが、そうではなくこれは頭を出したんだ。頭を出したんであって、この金は将来非常に大きく太るのだ、今種をまいたんだ、そこでこれはやがて巨木になる、大木になるのだこういう考え方を持ちまして母子加算というものに踏み切った、こういうふうにお考え願いたいのでございます。
  48. 滝井義高

    滝井分科員 年金問題は私も少し専門的にやっておりますのでいずれこれはゆっくり議論さしてもらうことにして、一つ種をまいたその種が巨木になることを望んでおきます。  次に時間がないそうですから一つだけお尋ねしてやめますが、それはかって私が強く提唱をして昭和三十年から入れられた結核患者の居宅隔離室の問題でございます。これは三十年に二千五百八十七万六千円、三十一年度に千六百八十七万円ばかり計上をされて、そうして三十年度に二千三百戸、三十一年度に千五百戸ほどやられた、それで会計課長の説明では、これは普及したからことしはやめたんだ、こういうことでございました。これはたった二年間しかやっていないですよ。そうして普及したからやめた、これは厚生省は低額所得層の住宅対策を打ち出しておりまして、私はそれができればこれはある程度やめてもよろしいと考えておりました。ところがいわゆる低額所得層の住宅対策、厚生省の言う第三種住宅、家賃が少くとも月に五百円程度の住宅が、低額所得層十万の住宅として不足だといわれております、が、これらの諸君に対する住宅対策というものは何もないのです。今言った第二種住宅に入ろうとすれば、公営住宅だって千二、三百円出さなければ入れない。そうしますと当然こういうものがやっぱり今大臣の言ったように一つの種になるのです。これを厚生省はわずかに三千八百戸ぐらいできたからといって、普及したなんというのはおかしいと思う。現在結核患者は入院を要する者が百三十七万おるし、あるいは治療を要する者は二百九十二万もおるのです。なるほど療養所はあいております。これは金がないから入れない、入れないからあいておるのです。ところがこれをやめてしまうというのはおかしいと思う。昨日岡本君も言っておりましたが、今後あなた方は国民全部に健康診断をやり、予防接種をやっていってどんどん患者を見つけてくる、そうしますとやはりこの居宅隔離室というものを作ってやる方が親心だと思う。これこそ厚生行政が朝令暮改であったということを天下に示したものであると思う。私はこれはどうも住宅も取り切れなかった、そうして居宅隔離室も取り切れなかったというならば、厚生省の低額所得層に対する住の問題、住居の問題というものに全くゼロだということになってしまう。これはどうしてなくしたのか、普及したからなくしたって言っても、たった三千八百戸ぐらいできて普及したなんていうことは絶対言わせられぬと思うのです。川崎厚生大臣のときにせっかく実現をしたこの予算——ただその坪数が少かったので、多分一坪半ぐらいで坪数が少かったので、われわれはむしろこれは三坪か四坪ぐらいにしなければいかぬということを主張したのです。これは移動式のものではなかったかとも記憶しているのですが、どうしてやめられたんですか伺いたい。
  49. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御指摘の居宅隔離室の問題でございますが、これは考え方としまして先ほど滝井先生から御指摘になりましたような考え方で貸し付ける、そうして周囲の環境上非常に密集した居宅に住んでいる人たちに対してあき地がある場合に貸すということで、三十年、三十一年と実施したわけでございます。実際問題といたしますと地方財政上の問題もございましてなかなか地方がこれを十分に消化し切れないという面もあったのでございまして、一応本年度はほかの対策もございますので、これを見送って、そうして今後地方財政状況ともにらみ合せてその対策の復活も考えたい、こういうふうに考えているわけであります。
  50. 滝井義高

    滝井分科員 なかなかどうも公衆衛生局長は弱腰でだめです。そういうことでは、日本の結核の撲滅ということは日暮れて道なお遠しだと思う。もう少し大臣とともにあなたにがんばってもらわなければいかぬと思うのです。これでは予防で幾ら患者を見つけても、見つけてやるだけです。依然として日本の結核というものはやはりなくならぬという感じがするのです。一つ大いにこの点は復活をして、それができなければ、低額所得の住宅を作るということに、方針でも転換をする。各局が割拠するのではなくて、公衆衛生局でとれなかったならば、公衆衛生局が応援して社会局の低額住宅をとる、こういう方向に出てもらいたいことを要望して私の質問を終らしていただきます。
  51. 坂田道太

    坂田主査 午前中の会議はこれにて打ち切り、午後二時より再開いたします。    午後一時一分休憩      ————◇—————    午後二時十八分開議
  52. 坂田道太

    坂田主査 これより予算委員会第二分科会を再開いたします。  厚生省所管について質疑を続行いしたます。井堀君。
  53. 井堀繁雄

    井堀分科員 今回の予算の中で人口対策費に配慮をしておる点については敬意を表したい。従来の厚生省内における人口問題に対する調査の件については、わが国でも最もすぐれた資料を提供されて、この点でもわれわれ敬意を表しておるわけですが、惜しむらくは日本の人口問題の調査については、日本の人口構成の内容に対する調査がまことに浅いうらみがあると思う。今度はそういう点に対して相当配慮を加えたものではないか、また加えるべきものではないかというわれわれの考えもあるわけですが、この点について予算を多少増加しておる。これはどういう点に力を入れようとされておるか、具体的に一つ説明願いたい。
  54. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 人口問題研究所の経費の増の内訳でございますが、一般研究費のほかに、今回は特に第三次出産力調査の調査費を、金額ははっきりしたことは実は忘れましたが、計上いたしたのが、今回新規の経費として認められた中身であります。その他は一般経費といたしまして適当なるテーマを別途また作りまして、人口問題研究所としてはこれの研究に当るというふうな段取りであります。
  55. 井堀繁雄

    井堀分科員 私お尋ねいたしたいと思いますのは、この予算の中で説明を加えられておるようでありますが、たとえばこの説明の中で(1)(2)にあげられております受胎調節の関係費については、日本の過剰人口に悩む諸般の事情からいって、この問題に自然重点が置かれてくるのは当然だと思うのです。しかしここで従来の考え方について今日の場合多少変更を必要とするのではないか。というのは、人口調節は土地のいろいろな背景によって多少異なってくるわけです。戦時中の生めよふやせよに比べますと、あまり極端だと思いますけれども、最近の調節には行き過ぎがあるのではないか。真の調節の目的を逸脱したうらみが顕著だと思う。これは厚生省のこの種の予算の使い方に私は重大な関係を持ってくると思う。私にして言わせますならば、人口調節の必要は、優生学的にものを考える必要はまだないと思いますけれども、もっと平面的な政治政策の上から判断して、いろいろな角度から言いますと、私どもの痛感いたしておりますのは、必要なところに十分その徹底が行われないで比較的不必要なところにから回りしておるのではないか。具体的に申しますと、ここにもあげてあるようですが、大体昔から貧乏人の子だくさんといわれるが、そういう人々に対しては正常な調節の手段、方法というものが——ただヒントを与えればおのずからそういう問題を処理できるほどの知識を持っている人々は別だと思う。大体低額所得で生活苦に呻吟している人々には、こういう問題に対しては、ほんとうに手をとって上げるような指導の仕方でないと、合理的な産児調節はできない。極端な例をとりますと、産児調節というものは受胎を直ちに調節するという形ならいいけれども、行き過ぎて最近は堕胎の傾向が現われている。一方は医師法で禁止せられていても公然たる一つの行為になっておる。ひどいのになりますと、医者もそう道徳の高い人ばかりがおるわけではありませんし、特に今日お医者さんも生活が容易でないようでありますから、かなり営業の上にもいろいろな影響を与えて、聞くにたえぬ悲劇が随所にあるわけです。これに対して厚生省もかなり努力はしておるようでありますが、この予算の中でその点は一体どのように配慮されておりますか。
  56. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 予算の数字の点だけ一つ説明申し上げておきたいと思いますが、今お話のように、受胎調節の普及対象としまして、井堀先生のおっしゃったような点が対象になることは当然だと思いますが、このこと自体が非常にデリケートな問題でもありまして、内訳の(3)のところに優生保護相談所費としまして七百七十九万円の増と相なっておりますが、これは全く新規の費目でございまして、その内訳は、具体的な指導をやるということの経費でありまして、その指導用の器具費と指導員の報酬等、各地域社会・職域社会に応じて行うという経費を今回計上いたしたのでございます。
  57. 井堀繁雄

    井堀分科員 生活困窮者の受胎調節費をどうして増額してないのですか。二番目のこれは前年度と同額であります。これは一番増額を必要とする対象になるのではないですか。
  58. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 二番目の中身は、受胎調節の指導の対象人々、すなわち生活保護の適用者に対してはその器具、薬品を与え、またボーダー・ラインの人に対しては非常に低廉な価格をもつて与えるというような内訳でありまして、材料代だけでありますので、一応前年度と同額に押えましたのでさようになっておる次第でございます。
  59. 井堀繁雄

    井堀分科員 大臣にお尋ねいたしますが、今の事務当局の説明で明らかなように、大体前年と格別変った方針でないことは数字が説明しております。この産児調節ということは、一つにはもっと積極的な政策が要求されるが、しかし内容についてはもっと吟味しなければならない事態がある。こういうものに対しては厚生行政の中でどのように御判断になって対策をお立てになっておりますか。
  60. 神田博

    神田国務大臣 人口問題に関する井堀さんのお尋ねでございますが、今日いろいろお述べになられたことについて私もいきさか耳にいたしておりますので、その実態については統計的にも十分資料を検討してみたいと考えておりますが、この受胎調節についての産婆の手当がふえたことは、従来からこの種の手当が非常に低額であって、これを担当しておる助産婦に御迷惑をかけておるというような問題がございましたし、それからこの助産婦のやっております今の受胎調節に関しても、低額所得者、要保護者等に対する指導において十分に手が届いておらないので、これらに対してもっと親切にして十分手の届くような指導をしてもらいたいという意味で、今まで少なかったのを増額しょう、こういうような気持の現われであります。
  61. 井堀繁雄

    井堀分科員 やはり今は人口政策の一つの転換期ではないかと思うのです。そこでお尋ねしておきたいと思いますのは、あらゆる政策に基本的な一つの条件を投げておるあなたの方の人口問題研究所から出される資料というものは、これが将来どういうカーブを描くかということは重大なことです。しかも日本の場合は、経済再建にいたしましても長期計画をやはり必要とする。その場合に、一体人口のカーブはどうなってくるかということは非常に重要だと思うのです。それをただ自然にまかしておくということであれば、私は今まで使われている資料というものは誤まりだと思う。相当やはり受胎調節などをやり、一方ではそういう指導を行うという前提で、大体昭和三十二年ころからカーブがずっとゆるんでくる。すでにそういう傾向がある。これは他の政策にも出てくるのでありますが、また私どもの扱っております労働問題の基本的な条件の上に取り上げられてきておるわけです。これは今のところは、乳幼児の死亡率が減り、あるいは結核その他の対策で非常に悪い病気で倒れていく者等がある程度克服されてきておるというよい面が反映してきておると思うのです。しかしまた反面には、極端な胎児の堕胎というような問題は、非常に大きく数字の上に影響してきている。しかしこれをこのままにしておけば——あのカーブは正しいかもしれない。しかしこのままにほっておくということは、私は別の大きな弊害があると思う。人口を調節することのためにシカを追う者山を見ないというが、そういう点で人口政策に対する考え方というものは、いろいろな角度や議論はあると思いますけれども一つもう転換をしなければならぬと思うのです。終戦後、あの若しい食糧事情の中で、経済の混乱している中で、引揚者のたくさんいるところで、あらゆる悪条件の中であれば、多少その手段は拙劣であっても、何とか人口を調整しようという社会的な要請というものは、私は余儀ないと思う。しかし安定期に入ってきた今日において、その惰性の上に人口政策を持ち続けるということは、全く無政府的なやり方だというそしりを受けても仕方がないと思う。これに対して的確なあなた方の方針がお示しいただけるものということを私ども期待しておったわけですが、ございませんければ、仕方がないですけれども、もしおありであればこの点を伺いたい。
  62. 神田博

    神田国務大臣 今の井堀委員人口問題に対する考え方につきましては、私も実は同じような考え方を持っております。しかしこれを今直ちに、それならば何か一つ結論をしぼってみて、転換を具体的にどういうふうにするかというようなことになるというまでには、まだ突きとめてはおりませんが、今まで進んできたあり方で今後も続けていくということは、もうこれは一つ考え直さなければならない時期じゃないか。それをやるには、中絶方法等もできるだけ避けようという方針であることは、御承知の通りだろうと思いますが、いずれにいたしましても、もう少し統計を明らかにした上で、調査の上で方針を立てたい、こう考えております。
  63. 井堀繁雄

    井堀分科員 私の考え方にある程度御同調のようでありますから、多くを申し上げませんが、そうしますと、今の調査書の予算構成でいきますと、旧態依然たる仕事しかできないのじゃないか。今まで私どものちょうだいしている資料でも、あれはただ人口の増減を過去の実績に照らして——あるいはそれぞれの資料に基く推計については、相当の信びょう力を評価しておりますけれども、しかしあの資料だけでは、今日の長期計画のため人口の調査資料としてはあまりにも貧弱である。私はこういうものに対する予算を組んでこなければ、私の主張に御共鳴いただいても、これは政治にはならぬと思う。そういう点でお尋ねしたわけですけれども、いずれも抽象的にはみな賛成であっても、仕事はしないということにもなりそうでありますから、まあ、これはこのくらいにいたしておきましよう。  次に飛びますが、結核対策については、これは健康保険法の改正の際にもかなり突っ込んだ討議をいたしておりますから、結論のみを出してお尋ねをいたしたいと思います。健康保険の中から何とか結核対策の費用をそちらの方に置きかえたらどうかという苦しまぎれの意見でもありましょうが、また一つにはああいう長期の治療を必要とする国民病ともいうべきものについては、一方には結核対策として大上段に振りかぶった政策を予算の中にも大きく出しているわけです。この問題はこの際いずれかに徹底を期すべき政策の一つであると思うのです。たとえば健康保険で療養期間が切れた場合に、当然長期療養を要するのは最初からわかり切ったことでありますのに、その場合の切りかえが、今のところでは保険行政の中ではほとんどめんどうを見られないという実態は、あまりにも明確であります。それが今度は生活保護法やその他の医療救護の手を経て治療を継続しようということに大体ならなければならぬ。なぜかといいますと、健康保険にしましても、保険の給付が打ち切られるときは、大体もうその家庭の生活というものは徹底的にしいたげられてもう余力を失った時期に切りかえを行わなければならぬというのが一般の傾向なんです。ですからこういう点から考えても、結核に対する治療というものは、健康保険結核療養との関係は同じ所管で行われるのでありますから、もっとこれを有機的になすべきではないか。まあこれは一つ段階的な処置であります。そういう点についても、この予算を拝見いたしますと一向新味が出ておりません。もしおありであればこの点について伺いたい。
  64. 山口正義

    山口(正)政府委員 結核の医療につきましては、ただいま井堀先生御指摘の通りでございまして、現在年額六百億に上ると推定せられます結核医療費、それがそれぞれの部門において、あるいは一般国民生活、あるいは社会保険経済、あるいは生活保護費に大きな重圧を加えているということは、御指摘の通りでございます。従って社会保険健康保険の中から結核だけを特別に取り出して別に考えてはどうかという意見も、しばしば出ているのでございます。現在のところでは、結核予防法による公費負担制度、それから社会保険各法による相互扶助制度、あるいは生活保護法による扶助制度を総合的に運用して医療費をまかなっているわけでございます。その間にもっと有機的につながりを持たせるようにという御指摘ごもっともでございます。私ども結核行政について所管している者といたしましては、その点従来も気をつけていたつもりでありますが、今後できるだけ御趣旨の点に沿って進みたいと考えております。
  65. 井堀繁雄

    井堀分科員 保険局長はどう考えておりますか。
  66. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま井堀先生御指摘になりましたように、また公衆衛生局長からお答え申し上げましたように、結核治療費というものが今日の保険財政の相当な負担になっておるということにつきましては、全くさようでございます。それでこれを保険財政の外に置くという考え方もいろいろあるわけでありますが、今さようなことにいたしますと、それにつきまして一応推定されまする六百億というものの処理について別途に考えなければならぬということにも相なりまするので、厚生省といたしましては無差別平等に行われる結核予防法の線をできるだけ強化をしていくということをいたしますと同時に、片一方におきましては保険財政の問題は保険財政の問題として処理をしていく、かような考え方で目下のところものを考え、またさような観点から予算措置もいたしておるのであります。
  67. 井堀繁雄

    井堀分科員 今両局長の御答弁によるといずれも矛盾に悩みつつあることは私どもも想像できる。これを有機化すと抽象的にいえば何でもないのでありますが、この点は被保険者患者の立場から切々たる訴えがあるわけです。私は何も結核の専門家でありませんけれども、私どものごく近い人々の訴えをそのまま受け取っておるわけですから、私自身は経験ありませんけれども、大体結核患者というものは精神的に非常に鋭くなっている。もう保険が切れる、あとどうしようかという切りかえの直前の心理状態というものは、実にはたから見てもたえられないということはよくわかる。治療の中には、やはり精神的な影響というものをかなり多く療養上の条件として考えなければならぬ。そういうことから、何も大きな予算が要るわけでもありませんし、保険と、今言う結核対策の中における受け継ぎというものも、もっとそういう心理的な苦痛から救う道があるのじゃないか。そういう点に対する工夫が足りないのではないか。これはしろうと考えかもしれませんが、こういう点についてはむしろ専門家よりはわれわれのようなずぶのしろうとの方が存外的確な見通しを立てるものがあるのじゃないかという一つの例じゃないか。厚生大臣がしろうとという意味じゃございませんけれども、むしろこういう専門家の上に立って全体の行政を扱おうとする立場からいえば、そういう問題に対する適切な処置を今講ずべき一番大事なときじゃないかと思いますが、何かお考えになっておりますか。
  68. 神田博

    神田国務大臣 今、井堀委員のお述べになりました事例を引用しての御意見、実は私も全く同じ考えでございます。これはもうそういう事例を私も相当知っておりますので、何かこれは一つ特別な研究をいたしたい、処置をいたしたいという考えは、今も深い気持でおるわけでございますが、御承知のように就任日も浅かった関係もありまして、そこまで手が伸びなかったのでございます。これは患者の精神的な問題と、微妙なこともございます。一つ今後十分時間をかりまして検討いたしたい、かように考えております。
  69. 井堀繁雄

    井堀分科員 これは私自身も何もそういうものに対して知識あるわけじゃありませんけれども、しかし事柄は、一例をとっただけでありますけれども結核患者に対する健康保険ないしはその他の社会保険、それと今ここで言っております一本の結核対策、この関係をもう少し工夫するものがほしいのですが、その点に対する何か新しい、神田厚政と言いますか、そういうものを大きく期待いたしまして、あなたの任期中に何か出していただきたい。できれば幸いだと存じます。結核の問題につきましては、大へん新しい医療技術や新薬などによって長足の進歩はしていると思いますけれども、ここはやはり一段と行政的に力を注ぐべき大きな問題であると思います。そういう意味で話題だけを投げておきたいと思います。  次にお尋ねをいたそうと思いますのは、先ほど滝井委員からもちょっと触れておりましたが、生活保護法に関係する点で非常に多くの陳情を私どもは受けるのです。これはあまり具体的なものになりますと、時間をいたずらにとると思いますから、私の考えを多分に入れてお尋ねをいたします。  生活保護法の実施面でありますが、地方福祉事務所を担当しております人々の努力に対しては敬意を表しております。しかしどうも今の地方自治の現状からいいますと、そういうことを望む方が苛酷であるといえばそれまでなのですが、もっと生活保護法の精神を行政の末端に生かして使う、何も今働いております人がずぼらだというわけでもないし、また不親切だということも当らぬと思うのですが、私どもの触れた幾つかの事例からいいますと、存外生活保護法というものに対して徹し切らないものがある。これは今日の公務員制度の中にもいろいろな配慮が必要かもしれませんが、一方では公務員の制度に大きく革命を来たしておるし、またこれは何も昔の封建的な恩恵制度ではありませんが、憲法がだてや酔狂で、すべての国民に健康で文化的な生活を保障するということは、単なる理想ではないと私は思う。その理想はこういう問題に対する一つの思想を与えておる。これに対する考え方がやはり欠けておるのじゃないか。それは上の行うところ下習うと言いますから、まずこの面で神田厚相の政治方式と言いますか、あなたをテストするわけではありませんけれども、この点についはてあなたも長らく政治生活をお続けになっておりますから、実際いろいろ例をあげるときりがありませんけれども、ちょっとその考え方が正しく戻れば今言う生活保護法の基本精神を理解し、憲法とつながる問題に対するところにいくと、私は私なりに結論を与えておるのです。これはわが党が政権を取ればすぐこの問題をやってみせるという確信を持っておる。保守党にそういうことを要求する方が無理だという向きもありますけれども、私は変った観点を持つ。こういう社会政策的なものを多分に含むものを保守政党こそが積極的に、熱心に、そうして具体的によく成果をあげるということでなければ、二大政党を意味する保守革新の政策上の広場など出てこぬと思う。私どもがやれば、これは性格的に社会主義を施行する政党であるので、組織のメンバーも異なりますから、必然的な性格の強きが出てくる。こういう点で資本主義的な背景を持ち、保守的な傾向を持つ——それはいずれの先進国における実例を見てもそうだ。日本の保守党は残念ながら今まで私はこういう問題を提起して、私も経験は浅いのでありますけれども、その中で正確な御答弁を得られませんでした。今度あなたからこの問題について一つ保守党の代表的な、特に今回は石橋内閣五つの誓いの中で大きく国民に訴えておるところでありますから、ここら辺に一つ真価を発揮したらいかがなものであろうか。それができなければ、国会の正常な運営をやろうといったって、政策の具体的な点について類似性のないものが、ボスどもが集まって話し合ったって、それは話し合いに終る。だから今ここはいい広場だと思いますから、もし時間があればこれは一日でも二日でも私はやりたい、材料を持っております。それは立場が違うとか見解が違うというようなものではないと思う。この点に対するあなたの、私はあなたのために発言の機会をきょうは与えたいと思います。
  70. 神田博

    神田国務大臣 井堀委員の御質問は非常に大事な点だと思います。私もお答えを申し上げるとともに、所信をこの機会に発表できますことは、まことに喜びにたえないのであります。公務員が忠実にその職務を遂行するということは当然なことでございまして、よく官紀の弛緩ということをいわれておる際でございますので、特にこの石橋内閣が清潔政治をしたい、政府自体がまず一つえりを正すような政治をやろう、下これにならうような政治をしたいということを念願といたしておりますので、しかも今お述べになりましたように、国民の最低生活を守る重要行政を担当しております福祉事務所に勤務する職員等のごときは、特に愛情を持った、ほんとうに懇切な取扱いをして、いやしくもこの制度の適用から漏れるような人が一人でもあってはならない、親切にしかも迅速に事に当るということの必要であることは、これは全くその通りでございまして、福祉事務所の今までのやり方をどうこうということは、これはよく御承知のようでございますから私から申し上げませんが、その趣旨を徹底させたい、こういう意図をもちまして、この月はな早々都の局長を初め、それから都道府県の民生部長、局長の会議を本省で各二日間ずつ行いまして、これらの点につきましても万遺憾のないようにしてもらいたいということを、十分訓示をいたしておりますので、おそらく今ごろは各都道府県におきまして、この新内閣の趣旨を、各福祉事務所長会議等を開かれまして、十分徹底させつつあることと考えております。これは単なる一度や二度の会議とかあるいは訓示で事足れりとする事態ではございませんので、これは常時今申し上げたような趣旨を徹底するようになお一そう一つ留意して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  71. 井堀繁雄

    井堀分科員 短時間に抱負経綸を語れと言う方が無理かもしれぬと思いますけれども、こういう機会に具体的な発言をなされることが大切だと思って申し上げておるのであります。たとえば今あなたから抽象的にはそう変った意見が出ようとは思いませんけれども、具体的になるとかなり変ってくるのじゃないか。これはごく卑近な例ですが、同じこの分科会で明日扱うだろうと思いますが、日雇い労働者のための待遇の改善をわれわれは微力ながら努力してきておるわけであります。たとえて申し上げますと、公務員に対しては、わずかであるけれども、年末に何がしかの生活補給のための手当が出される。日雇い労働者についてもというわけで、だんだんやってきておるわけですが、わずか三日や五日分の、ほんのもち代、ことに日雇い労働の場合には、地下たびだとか作業衣だとか、そういうときでなければ買えないような、結局もち代にしてあげたいと思うものが、そういうものに変ってしまうような実態なんですね。ところが一方ではそういう人は多く生活保護を受けております。そうすると、一方でせっかくわずかの増額をしても、直ちに生活保護法に基いて紋切り型の解釈をして——これは法律解釈ですから、きびしく解釈すれば、特別の収入ですから、それを加算すれば生活保護の線からはずされる者が出てくる。こういうのは一つのよき例だと思う。このことは、私たちが労働省を責めれば、それは厚生行政で役所が違う。話し合いをしたらどうかということになると、この話し合いについてはなかなか明確な答弁がもらえない。私はこんな情ない行政はないと思う。こんなことは大臣同士で話し合って——さっきも申し上げるように、そんなワクの狭い法律ではありません。やはり法律を生かして運営する。限界はもちろんございますが、限界はここだということをきびしく引いて行うべきではないかと思う。特にあなたの時代に入るわけです。一方でわれわれがせっかく手当を増額して上げても何にもならない。こういうものに対するあなたの一つのお考えを承わりたい。
  72. 神田博

    神田国務大臣 今井堀委員からお述べになりましたことは、午前中滝井委員からお述べになった問題とほとんど同じと考えております。これに対して私もお答え申し上げたのでありますが、考え方として私もその気持はよく了承できるのでございます。今までのやり方は、御承知のように低賃金の労働者の収入に対して無差別平等の原則だというような理屈をつけて、一つの線をアップしたものをみんな引いているという考え方なのですが、これを愛情のある政治をしようということで、それならば一体どこまでの線を引こうかということがむしろ問題なのではないかと思うのです。これをもうどうしてもやらないのだという考え方はむしろ薄いのだと思うのです。けれどもそれを認めた場合の、それからよってくるいい面がたくさんあることは了承できるのでございますが、それをやったがために生ずる弊害もまたなきにしもあらずで、それをどういうふうに防ごうかということがむしろ大きな問題なのではないかと思う。立ち上らせるために何か一つ意欲を与えよう、勤労意欲なりまた向上する意欲を持たせようということはどなたでもお考えになっておられるだろうと思うが、そのために生ずる弊害と申しますか、保護というものを固定収入の一つにして、何かそこへ最低のプラスをして満足するような気持になっては困るというようなことをあわせ考えておるわけでございますが、これは、私は予算の問題というよりも、もっと大きな社会状態なり国民精神なりの問題、いろいろ物心両面から見たもっと大きな問題があるのではないかと思っております。午前中もお答え申し上げたように、これは気持としては私も同感なのでございますが、これをやる場合に、いろいろ今申し上げたような諸般の関連してくるものがございますので、そういうものを一体どういうふうに理論づけ、また実際に解決していくかということの方がむしろ大きいのではないかと思っておりますので、十分検討してみたいと思っております。
  73. 井堀繁雄

    井堀分科員 さっきあなたの御答弁を伺って重ねて聞いたというのは、こういう問題ではっきりするといいと思ったのです。それは弊害はもちろん何をやってもあるので、だからその弊害は何かということをわれわれはやはり話し合ってみることが大事なことじゃないか。もちろん弊害があってもやれというような極論をするわけではない。その弊害とは一体何かということを話し合ってみる必要があると思ったから、重ねてお尋ねをしておるのであります。
  74. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 今の生活保護法における収入の差し引きの問題というのは、生活保護法ができましたときから、実は議論になっておるのでございまして、日雇い労働者の問題でもそういう問題が起りますし、それから遺族援護法ができますときには、遺族扶助料でありますとか、一時金でありますとか、未亡人の問題が論ぜられますときには、未亡人内職収入の問題、あるいはまた高等学校に行かせないのはけしからぬじゃないかという問題も起りますし、いろいろ論ぜられておるのでございますけれども、今大臣がお話になりましたように、とにかく生活保護法というのは、国のいろいろな施策が講ぜられまして、それで救われないところのものを、救われない程度において見ていくという制度で、どういう人に対しましても、とにかく国は最低生活というものは一律に無差別平等に保障するというところに、公的扶助制度の意義があるわけでございます。これはもちろん井堀先生よく御承知の通りでございますが、たとえば日雇い労務者のことでございますけれども、日雇い労務者が年末手当に六日分、あるいは夏ごろお盆の手当に三日分もらったときに、それを全然差し引かないといたしますと、たとえば六千円の生活基準で扶助されておる者に対しまして、千八百円なら千八百円入ってきた場合に、それを差し引かなければ、その人は十二月には七千八百円の生活を保障されたということになるわけであります。そういたしますと、六千円で他に全然入らない世帯が相当あるわけであります。同時にまた日雇い労務者というものが、自分の賃金で生活が保障できないというところに問題があるのでありますけれども、その種の低賃金労働というものは日本にはたくさんある。家内労働でありますとか、その他の労働でも、食うに足りない低賃金の労働職種というものはたくさんある。そういうものは一体どうするのかということ、がありますものですから、できるだけこれは理屈がつくようにしなければいかぬというので、日雇いの場合も、もらった中で、これが特殊な労働に従事しておりますために、被服その他については相当かかるだろうというようなことで、理屈のつく限りは控除します。しかしそれを全然引かないということになりますと、自分のむすこやあるいはおやじを戦争にやって、そうしてその犠牲になったのに、それも差し引くとはけしからぬじゃないかという議論の方が、実は先に出てきます。そういう点が非常にむずかしい点であるということを大臣が言われたことと思うのであります。
  75. 井堀繁雄

    井堀分科員 ごもっともなことだと思うのです。私はやはりすべて国の行うこういうものは平等でなければならぬ。これをこわしてはならぬということは絶対だと思うのです。その点を曲げて主張しようということは全然考えていないことを、まず先に明らかにしておきたいと思います。  ただ、ここで申し上げておきたいと思いますのは、先ほど私は健康保険のときに、被保険者に当然適用すべき零細事業場労働者の問題については、あなた方は一致してその不平等を強調されました。余儀ない理由をあげられました。その理由はあまりにも私は無意味な理由だと思う。今度は逆に公平を主張される。こういう二つのものを私はここに取り上げて同日にお尋ねをしてきたわけです。だから、ここにもっと政治というものの——まあ事務当局にそういうことを迫ることは無理だと思いますから、大臣に、実は政策上の問題でやや具体的だと思ったから、出してきたわけです。これははっきりしておる。一体こういう厚生行政をやる場合に、私はもっとはっきり言いたことですけれども、法律と実際とのあらゆるところにくずれ、がある。第一、今この例をとったのはなぜか。生活保護法で六千円なら六千円の線を引くというけれども、その線が今言うようにくずせないというほどの自信のある資料に基いておるかどうか。それでさっき一番先に福祉事務所における扱い方を聞いたわけです。あるものは、どうかと思うというようなものに対する生活保護は、厳密に調べてあげていけば違法に類する扶助をしておるかもしれない、あるいは気がついて取りやめたという例もあろう。あるものは、当然だれが考えてもその恩典に浴すべきものでありながら、多くの人たちが見捨てられておるということは、私は数字をここに持って論議すれば直ちに結論が出る、反駁できませんよ。それで私は人口問題をさっきお尋ねした。厚生省の所管ですよ。私は開き直って議論をすれば、一体ボーダー・ラインはこれでいいか。六千円以下の低額所得者がどういう階層に、どういう配分になっておるかということは、人口調査の中で出てこなければならぬ。私どもはごくわずかの諸外国の例しか知りませんけれども、一応先進国といわれる国々における統計資料というものは、その程度のもののないところはありませんよ。こういう点に私は厚生省の中におけるアンバランスというもの、が一みずから答えてみずから縛らなければならぬようなものがたくさんあります。私はその欠点をついてどうこういうのじゃありません。もっと厚生行政というものについては——従来、いけませんや、どうもどの内閣厚生省というものには、大臣も陪食大臣なんか持ってきたきらいがある。今度はそうではなさそうである。今度はなかなか政治力のある方をおすえになったし、また国民に向って五つの誓いをお立てになったのですから、その誓いをみずから破るようなことでは、天人ともに許さぬことになるわけですから、この点は私は非常に期待をかけておるのです。しかしその期待を裏切られてはひどいですよ。この点のポストにあなたがおつきになっておるわけですから、抽象論ではいけませんから、一番議論のわかり切ったものを出したわけです。ですから、私をして言わせれば、日雇い労働者の問題についてはこうしてやれ、ごうすべきだということをぴしっと言うべきだと思う。そうせぬで、事務当局に相談をしたり、ひどいのになると、いや、ぼくはいいと思うのだけれども、事務当局がどうもというようなことは、これは政治ではありません。まあ、あなたに関してはそういうことはございますまいが、きょうはその点をはっきり一々例をあげてやっていたのでは切りがございませんから、一例をあげて、こういうものに対する判断を聞いておる。だから、政治ですから、法律を曲げるような極端なことをしてはいけませんけれども、生きものですから、ことに厚生行政というのは、さっき冒頭に申し上げたように、自由主義経済を推進していく限りにおきましては、これは弱肉強食の弊害が片方に出てきます。それですからこそ、厚生行政というものは活発にならなければならぬ。こういう点で問題はここに来ているわけですから、ほかの役所のように紋切り型の——法務省や検察庁が法律をあまり幅を広く解釈しては困る、この方はむやみと伸ばして、肝心のあなた方のところで、伸び尺を最初から与えられておるところで、それを縮尺に使うようなやり方をしておるというのも、私は今日の矛盾の姿じゃないかと思う。これを改めませんと、保守党は進歩的な保守党になれませんよ。政策の政党ではなくなる。こういう点で一つ両党が議会の正常な運営をする第一歩として、神田厚生大臣にこういう点にふん切る勇敢な態度をお示しいただごうと思ってお聞きしたわけです。一つ所信をちょっと伺って、この問題はまた具体的に出てきますから、一つ一つをもって迫ることにいたしましょう。
  76. 神田博

    神田国務大臣 井堀委員からいろいろ御所見を承わりました。それはわれわれ全く同感でございまして、石橋内閣発足に当りまして、五つの誓いの中に社会保障の充実、すなわち福祉国家を目ざして社会保障の充実ということを大きく公約いたしましたのも、今、井堀委員のお述べになられた趣旨もそこにあることは十分御了解願えると思います。私どもこれは党といたしましても今後社会保障についてはうんと進歩的な施策を一つ講じて参りたい、厚生行政については今日までは日本の国情がやむを得なかった、しかし今後はもうわが国の国情からして十分やっていくだけの方途を講じなければならないということで実は熱心に政府も党も一体になっておりまするし、厚生省に職を奉ずる官吏の諸君もその気持になっておると私は信じております。厚生行政も、これはほんとうの厚生行政というのは私は日本においては戦後からだと思います。しかも今度はほんとうに、いわゆる厚生行政というものはこの三十二年度から踏み切ったのではないかと思うのです。厚生行政を新しく踏み切った最初の年でございまして、これを最低として日本の国力を勘案した、ほんとうに住みやすい生活の暮しやすい国民生活に持っていきたい、そういうことを一つ建前として今後厚生関係のあらゆる施策を一つ立案をし、また実施に移して参りたいと考えております。今いろいろ例を引かれたことは私どもも同感の点がきわめて多いのでございまして、それらの点につきましても十分一つ善処して参りたいと思います。  日雇い労働者一つの例が出たのでございますが、今度の基準引き上げにつきましても、先ほど申し上げましたように保護者の基準と同時に官公吏の給料が六・二%であったものを、これを同じ基準でいくということは当を失するではないかという、非常な議論の結果と申しましょうか、折衝の結果六・三に持ってきております。将来米の価格の一本化でもすれば、それはまたそれとして十分一つ見ていこうではないか、それはもう当然のことだというふうに考えております。それから日雇い労働者疾病手当等についても、今年度実現を見ることができなかったことはまことに残念でありますが、来年度は必ずやるという大蔵当局との話も大臣同士でつけております。そういうわけで、一つ一つ今までのやり足らない点につきまして十分やっていきたい、さらに新しいことも考えながら、国民生活の安定、生活の向上ということを母体として進めて参りたい、こういう所存であります。
  77. 井堀繁雄

    井堀分科員 大胆なお約束をいただきましたので、大きく期待して参りたいと思っております。今後厚生行政については具体的な要請が私どもたくさんございます。その節あなたのきょうのお約束がだんだん実行されることを願ってやみません。そこで今の関係した事項で、厚生行政関係しておりますことに限ったわけではありませんけれども、特にそういう感じを強くいたしますのは日本の公務員の生活態度といいますか、そういうものに対するもう少し深い思いやりが必要ではないか、まあこれは日本の特殊現象だと言えばそれだけですけれども地方に参ると農家の子弟などは同じ苦しきの中でも、食事情については粗末なものでも腹一っぱい食べられる、住宅についても、お粗末ではあるけれども雨露しのぐには困らない。ところが都市に独立しておる人ときたら、全く生活の基礎を持っていないといったような人々が、非常に薄給で、同じような給料です。それは報酬、賃金というものが労働の対価であるという考え方からすれば別ですけれども、まだ賃金給与の問題についてはノーマルな状態になっていないことはあまりにも顕著な事実だと思います。こういう問題の解決を一方に促進し、そうしてやはり公務員としての国民に対するサービスを徹底してもらう、こういうやり方をしていかなければなかなか効果があがるものではないことは、あまりにも常識的なことですけれども、こういう問題をまず厚生省が率先しておやりになったらどうか。そこで私どものところに来ておるいろいろな陳情をここで披露申し上げてお尋ねするということは、他の質問者にも迷惑を与えあなたもあまり小さな問題に、繁雑にたえぬと思いますので……。一番問題になりますのはさっき国立病院などや民間の医療施設などの従業者の中で、医療関係の従業員というものは諸外国のいずれに比べましてもあまりに労働条件がよくないと思う、これを急速に解決する道をはかってあげなければ、たとえば私どものところに来ておる陳情でも国立病院の例をとったら一番いいと思いますが、医療の方は別として、も医療計画というものは、入院患者の場合におきましては、食生活というものは重要な治療の要素なのです、これは陳情だけではいけませんから二、三見せてもらいましたが、ちょっとしろうとが見てもわかりますことは、予算単価の上でばかりわれわれは皆さんの説明を聞き、またその点で攻めてきたきらいがあるようでありますが、行ってみると同じカロリーを生み出す量的な条件は整っていても、調理の工夫だとか、もっとこまかくなるけれども残飯がかなり出ている、ですからほんとうに胃袋に入って栄養化されるものと予算との間の距離というものは、非常にあるということは一見してわかる、こういうことはささいなことだとお思いかもしれません。こういうところに存外私は改善の余地があるのじゃないか、この点についてあなたは一つ厚生省に案をかけてもらいたいと思う、私は労働運動者ですから特にそういう考え方を強くいたすのかもしれません。労働組合といえば強過ぎるかもしれませんが、公務員の職員組合、組織があるわけです。個々の人格は制度や法律の上でも今日十分認められておる、また制度や法律の上で組織も認めているにかかわらず、その組織に対する交流といいますか有機性といいますか、そういうものが全く欠けておると思う、それが今のような結果を生むのではないかという私なりの結論を下したのですけれども、あなたの所見はいかがでしょうか、この点を伺ってみたいと思います。
  78. 神田博

    神田国務大臣 今、井堀委員の述べられましたいろいろの例でございますが、一番全体のことを申し上げますと、日本人の食生活というものは、一部においては非常な飽食といいますか、美食をやっておる、一部においては満腹主義でやっておる、あるいは今述べられた病院その他大事なところでは、そのいずれにも至っていない、軽食というのですか、もう少し病人なら、やはり食生活が病気をなおす、生理的にも精神的にも大きな関係があることはお述べになる通りでございますから、これは十分考えていかなければならないことは当然だと思います。私も厚生省へ参りまして、いろいろ病院の食事の話も聞いておりますが、いろいろ伺っておりまして改善の余地があると、私はこれは聞き学問でございますが、感じております。それならばどういう手を打つかということになるわけでございますが、これは事務当局も今年あたりから改めたいという腹案もあるようでございます。予算の上でも考えようということになっておりますが、私もみずから国立病院の食事等も実際に視察しまして、ほんとうに今やっておることが、病気療養生活としての食生活がどういうものであるかということを、自分みずからも調べたいという熱意を持っております。何といいましても、病気をなおすということは、これは治療、さらに入院しておるわけでございますから、日々の食事が大きな要素になることは当然でございまして、どの程度にそれならばやるかということは、多少時日をかけなければなりませんが、今のままではいけないということは事務当局でも説明しておるのでございますから、これをどう改めるか、どの程度までするかということについて十分研究いたしまして、井堀委員の述べられたところまでいくかどうかは申しかねますが、私は私なりの考えをもちまして、十分善処いたしたい、こういうふうに考えております。  それからもう一つ、労働組合と職員組合の問題でございますが、これは私ちょっと大事なポイントを聞き漏らしたのでございますが、もう一度伺わせていただきましてお答えさせていただきたいと思います。
  79. 井堀繁雄

    井堀分科員 以上のお答えであなたのお考えがわかったわけですが、労働組合は言うまでもなく近代的な一つの所産です。特に私どもの党でありますならば説明を要しないことなんですが、保守党の政権を形作っているときに、厚生行政をおあずかりになっている政党の国務大臣というものに対する特別の私の要求であるかもしれない。というのは、ずっと見ればいろいろな弊害があると思います。今のように、特に厚生行政というものは、いわば人生の中で落伍しておるとか、あるいは一番悲境に立っておる面に接触する機会が多いわけです。それでさっき病院の例をとったのですが、たとえば食事のようなものでも、私たちが役所に行って注意しようとすれば、これだけのカロリーがあって、これだけのものというものをちゃんと用意しております。それは栄養士がついてやっておられます。行ってみればわかるのです。しかし残飯が二割出ればそれだけ減るのだから、画一的なものではないわけです。人間の嗜好というようなものもぜいたくと解すべきではなくて、日本の食生活の改善の必要はあなたもお認めのようですが、にわかにできるものではない。こういう問題を、上からごうしなさい、あるいはこうすべきものだということで、厚生行政というものが意のままに操作できるものでないという考え方があるわけです。だからそれは一線に立っている人の自発的な行為に期待することが非常に大きい。それは今まで諸外国の例を見ましても、私はこの間見てきましたが、成功しているものに二つの形があります。一つは宗教団体がやっている。これは従業員が一つの信仰を持っておる。人道主義的な強い信仰を持っておりますから、神に使えるような気持で、そういう弱者のために奉仕するというものがあるわけなんです。しかし日本の現状においてそういうものを期待することは、これは部分的にはできるけれども、全体としては、あるいは政治としては考えられぬことです。そこで第二の成功している例としては、行政の運営の中における職員の組織的な人格を高く買っておる。こういう言葉はよくみな使いますけれども、労働組合だと賃上げやストライキのための武器ではあっても、それがすべての要素だというふうに見えたり、あるいははき違えておるかもしれません。そうではなく、私はこういう公務員という言葉は、文字通り、特に国の仕事に奉仕するということは明文上明らかになっておるが、実際はまだかなりの距離があると思う。この点は、まあこう申しては何ですけれども、社会党のような性格内閣でありますならば、是正の道は他にある。保守党の場合は、対立をするという反面があるわけなんです。こういう点について具体的なものを持たないと、いつでも分配問題を争う民間の組織とは異なりまして、民間の場合ならお互いに利益をあげて、営別事業ですからその分け前で相争うということはありますけれども、公務員の場合は予算の中に盛り込まれてくる国民の税やその他の負担によるものなんですから、そのかわりそこには対立がないはずなんです、ベース・アップされれば、上の者も下の者も、ストライキをやった者でもやらない者でも、同様にもらえる性質のものですから、それがやはりそういう行為を繰り返さなければ一向に待遇改善に手を染められないというやり方をしておれば、やらなければ食えないから、やらなければ損だということになる。ここにも問題があると思いますけれども、ここまでいきますと話が少し横へそれていきますが、ただ厚生行政の一線にある人が、民間の労働団体が雇い主との間に分配問題を争うような形を仕向けてはいかぬじゃないか。これは労働組合の方にも責任があるかもしれませんよ。しかしあなたは非常に進歩的な御意見をお持ちになり、かなり深い理解を持っておいでになるから、そういう希望を述べても実現できるだろうと思っておるわけですが、一例をあげてみますと、たとえば病院の看護婦は切々と訴えるわけです。これはこの前社会労働委員会でさんざん問題になったわけなんですが、完全看護だといいながら、全体的にいえば予算やその他の一つの筋があるでしょう、うなずけるものがあっても、実際的にはまるで病院の手から治療をもぎ取るようなむごたらしい結果が随所に起きるわけです。それを画一的なもので割り切ってこたえてしまうというのが実情だと思う。それではいけないのじゃないか。それは何ぼいいものを与えてみても、その末端に接触する人がさっき言うように信仰を持っている人であればそんなことを言わなくてもやりますが、そうじゃないのだから、そうじゃないとするならば、個人の人格を尊重するだけではやっていけませんよ。今日の厚生行政は事業も広く接触面が広いのですから、その場合には、大臣と末端の福祉事務所の窓口にいる人との間に、人間的なつながりはできません。しかし組織的な有機化ということにあるわけです。これに成功しているところは、大体福祉行政はうまく行っておる。そうでないところは、どんなにいい法律を作ってもから回りしておる。その典型的なものが日本の厚生行政だと、私はいろいろな事実を突きつけて断言しておる。しかし攻撃することが何もわれわれの役目ではございません。そういう悪い事実をよくすることが少しでもできることが望ましいのでありますから、こういう点について、今すぐここで答弁せえということで、せっかちな考えでお尋ねしておるのじゃありませんが、これはあなたがやっていくことが一番妥当なことだと考えますので、この点に対するあなたのお考えを承わりたいと思います。
  80. 神田博

    神田国務大臣 井堀委員から、今の社会保障のやり方についていろいろ外国の例等を述べられまして、なかなかうんちくを傾けられたことを伺いました。私も社会事業を宗教団体がやって成果をあげていることについては承知いたしております。また今お述べになりました厚生関係の今までの成果につきましての御批判は、私は一つ謙虚な気持で御意見として承わりまして、今後の私の厚生行政として進めていく有力な参考にして参りたい、こう考えております。その面といたしまして、たとえばこれを国立病院に例をとるなら、病院の管理をしている側と、それから今お述べになられたような職員組合といいますか、こういう面とがしつくりいかなくてはほんとうの病院経営にならないわけです。今食事の例もとられたわけでありますが、この食事のごときは特に愛情を持って作ったものでなければ栄養にならぬわけです。病院をお預かりして、もし管理の責任を持っている方とその内部に勤務している一連の方々との間にうまくいかないようなことがありますれば、これは重大なことでなければならないと思うのであります。さようなことは過去はよく存じませんが、今後そういうことがないように、もしあるところがありますれば、これは十分両者の話し合いで是正させまして、そうして病院本来の成果を上げて参りたい。厚生行政というものは、何といっても先ほどから井堀委員が述べられたように、愛情を持ってしなければとうていできないと思う。愛情と勇気がなければこれはできないと思うのです。それは私の信条といたしておりますので、御意見は十分に留意いたしまして善処いたしたい、成果を上げてみたいと考えております。ただこれら社会保障、社会事業は、社会党が天下をとればうまくいくのだ、お前の方はうまくいかないのじゃないかという御心配があるようでございますが、この点についての所見は、私の方はまた私なりに、むしろ保守党が今後相当長期にわたって政権をとっていかぬと国民大衆が迷惑するのではないかというくらいの意気込みでやっておりますことも念頭に置いていただきたい、かように考えておるわけであります。
  81. 井堀繁雄

    井堀分科員 非常にけっこうな抱負を伺って私も意を強くしておるのでございますが、今後のことに属するのでありますから、あなたの今お答えいただいたことが着々と実行に移されることをほんとうに私も念願しております。御協力を申し上げることはわれわれの任務でございますから……。  これで私の質問を終るわけでありますが、もう一つ例をあげて申しますと、やはり一番気の毒な人たちの仕事をしておられる福祉関係人々の訴えが、いろいろ出てきているのです。たとえば、今度あなた方は予算化されておりますが、私のところへ六つばかりの希望条件を並べてこられて、一つ一つ切々たるものがあります。孤児に対するおやつをもう少し何とかならぬかとか、あるいは孤児収容所などで、世間の児童と同じように入学の支度や遠足くらいはさせて上げたいとか、それから子供の親がわりになって働いている保母さんたちが、全くみなし児と同じようなみじめな生活をしている者もあるわけであります。それから保育所の方も見て来ましたけれども、かなり荒廃したものもあります。あるいはまた今度新たに予算に盛っておるようですけれども季節保育所というものが自発的に農村の有志などで作られておるようなものもありまして、今度これを全体的にする方がいいというような声も出てきているわけであります。これはもちろん陳情の形で厚生省の方に参るわけでありますが、これは受け取り方については同じことなんです。おやつを一日五円見積ったから五円上げればいいというものではない。それでたとい五円のお金でもあなたのおっしゃるように愛のこもったもの、誠意のこもったものというものは、また貨幣では言い表わせない大きな光を放つものである。それが五円を十円にしても行政措置を誤まれば、まるで頭をなぐられておじぎしなければならぬような感じに受け取ることもあり得る。こういったような陳情が参りまして、私の方からあなた方の方に取り次いでも、どうも私どもの取次方が下手なのか、そういうことももちろんあるだろうと思いますが、厚生行政への響きがどうもすなおにせぬといううらみを私自身が感じておる。今後におきましてももちろんそれぞれの団体から陳情や意見の具申があると思いますので、こういう点についても十分の御留意をいただいて、厚生行政が正常化されることをお願いしておきたいと思います。  最後に、社会党と自民党との政策上の問題について相争う場合の問題点というものはおのずから明らかだと思うのでありますが、みそもくそも一緒にしないようにお願いしたいと思います。厚生省も他の省といろいろ関連もあろうかと思いますが、もっと野党側の主張を大胆率直に取り入れてやっていただきたい。先ほど来申し上げておりますことは今初めて言っておることではないのです。川崎さんも見えておりますが、やりますと言って約束しておきながらまたぞろ同じようなものを出してくる。やれなければやれない、こういうわけでやれないということをはっきり言われたらよい。どうもあなたも川崎さんと同じでんで大へんすなおに受け入れておりますが、ぜひ一つそれが具体化されることを望んでおきます。どうもこの予算の中では出て参りませんね。だから補正予算もまた出てくるでしょうから、そのときに大いに政治力を発揮して実行に移されることを希望いたしまして、一応私の質問はこれで終ります。
  82. 神田博

    神田国務大臣 井堀委員から全く愛情のこもった御要望といいましょうか陳情のお取次を承わったのでありますが、これは政府といいますか厚生省に、関係団体また熱心な皆様方からずいぶん長年にわたって陳情があったことでございまして、私も暮れの二十八日でありますか、就任間もなく実はこうした社会事業の視察に都内を回りまして、間食費の五円の貫徹とか、あるいは入学、遠足等の場合の仕度代、それから保母の待遇改善というようなことも直接現場でお聞きいたしまして、全く切々たる思いをいたしたのであります。今度の予算におきましても、これは御要望の通りと申しますと議論の余地もありますが、間食費は五円を計上いたしました。その予算総額は九千万円ほどになります。それから入学や遠足とまではいかないのでありますが、衣料費を一つ増額しようということで五千万円ほどつけてあります。それから保母さんの待遇改善費といたしまして二億二千万円、これは一兆一千億の予算額から見れば微々たるものかもしれませんが、長年の間要望されましたことを今度一応ここで踏み切ったということになろうと思います。しかし先ほど申し上げましたように、福祉国家を作り社会保障をうんとやるのだということは一つ三十二年からやっていこうという頭でありますから、私は今後は一そう努力して参りたいと思っております。川崎厚生大臣がおりましたらもっと早くできたことと考えておりますが、いろいろな都合で延びたわけでありますが、これは一応話し合いがついた、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  83. 坂田道太

  84. 八田貞義

    八田分科員 大臣にお尋ねいたします。大臣は先ほど、厚生行政は今年からというようなお言葉があったようですが、厚生行政として重点施策は一体どういういう点を考えておられるか、厚生行政の中の重点についてお尋ねいたしたい。
  85. 神田博

    神田国務大臣 八田委員厚生行政の重点いかんというお尋ねでございますが、これは私は実はよく御質問を聞くのでございますが、私も実は厚生省に参りまして以来、厚生行政の重点は何かということでいろいろ研究いたしたのでございます。しかしこれはほんとうに腹を割って申し上げますと、今日の社会状態において、日本の現実の姿として、これが厚生行政のきめ手だというような、重点と申しますか、あまりにも多過ぎると申しますか、一品にこれがきめ手だ、だからこれに手をつければ重点施策だというようなことは、見方、考え方にもよろうかと思いますが、なかなかむずかしいのじゃないかと思うのです。どうしてもこれは総合的に厚生行政としてのバランスのとれた、一貫性を持ったものでなければならないのじゃないかというようなふうに考えられるわけでございます。しかししいてこの三十二年度に項を出した、特に力を入れているものは一体何かということでありますならば、やはりこれは国民保険に踏み切ったということが、この内閣として厚生行政の重点的な施策ではないか。医療の充実をはかるために国民保険というものをとにかく四カ年で完成しよう、それと見合いながら結核対策も講じていく、あるいはまたその他の諸施策を講じていく、また低額所得者等については、御承知のように、世帯貸付制度を拡充したり、あるいは病気の医療貸付制度を創設したり、さらに現下の社会状態から考えて、要保護者の基準の改訂をするとか、母子加算をするというような一連の線につながれるわけでございますが、ほんとうに重点だということならば、やはり国民保険に踏み切ったことが一番大きな眼目になるのではないか、こういうふうに考えております。
  86. 八田貞義

    八田分科員 そこで国民保険の問題でございますが、それに入る前に大臣にお伺いしたいのです。先ほども社会保障という言葉が出ております。一体社会保障というのはどういうことを言うのか。私は日本に社会保障の体系というものはできていないと思う。いわゆる政策の持ち寄りでありまして、日本には学問的な根拠を持った社会保障体系というものはできておらぬのです。勝手きままな解釈がされてきておるのでありますが、一体大臣は社会保障というものをどういうふうにお考えになっておられるか。一つ社会保障の定義という問題からお伺いしたいと思います。
  87. 神田博

    神田国務大臣 どうも八田先生から大へん開き直ったむずかしい御質問を伺いまして、大臣の試験を受けるような感じでございますが、私は日本の社会保障が外国と違っている点も承知いたしております。しかし日本にはやはり日本の国情と見合った社会保障を持つてきたと考えております。そこで、それならば一体社会保障というのはどういうことなんだかということになりますと、これは学説にはいろいろあるでございましょう。しかし私ども厚生行政を担当した場合の社会保障ということの、中心と申しますか、心棒と申しますかは、とにかくきびしい今日の経済下におきまして、そうした国家の社会活動が、貧富の差といいますか、いろいろな放置できないような問題が出てきている、この放置できないような問題、いわゆる弱者の生活を保障しよう、進んでこれを引き上げていかなければならない、それからまたそこへ転落するようなことを防がなければならない、そういうようなことで、新しい憲法でいわれている国民生活の最低を保障していく、その最低を順次引き上げていくということになると思いますが、そういうような考えを持ちながら、この目的を完遂する諸般の施策を行なっていくということが社会保障だ、こういうふうに私は考えております。
  88. 八田貞義

    八田分科員 それでは、大蔵省の方も来ておられると思いますが……。
  89. 坂田道太

    坂田主査 八田君、大蔵省は来ていないのですけれども……。
  90. 八田貞義

    八田分科員 それでは大蔵省の役人が来るまで大臣に……。  大臣の今お述べになった社会保障というのは、一般にいわゆる通念となっている社会保障ということでありますが、ただ問題は、社会保障という言葉は、これは日本では戦後できた言葉なんです。英米でも新しい言葉なんです。日本の新憲法の中には社会保障、社会福祉、公衆衛生、この三本になっているわけです。今大臣の御答弁になったのはこれを全部ごつちやにされている。ところが憲法には明らかに、福祉国家を作るためには社会保障、社会福祉、公衆衛生という三本柱でなければならぬということを明示してあるのです。従って社会保障という憲法に書かれた意味は、今おっしゃったような意味ではないはずです。そこで憲法に規定された社会保障というものは一体どこからできたかということなんです。これはアメリカの社会保障法を訳した言葉と私は解釈します。ソーシャル・セキュリティ・アクトというアメリカの法律からとった言葉だと思う。そこで大臣は社会保障法というアメリカの法律の内容を御存じになっているかどうか、これをちょっとお知らせ願いたい。大臣もしも御答弁になれなかったならば、保険局長からでも社会保障法の内容についてお知らせを願いたい。
  91. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私も二十四年かなんかに一度向うへ行ったことがありますので、そのときにそういう法律があり、それから内容も若干聞いたことがあるのでございますが、大へん不勉強でただいますっかり忘れておりまして、私の印象では、日本の厚生行政で申せば、むしろ社会局の系統に近いような仕事の内容が盛られておったように記憶いたしております。この程席しか素養がございませんごとをまことに……。
  92. 八田貞義

    八田分科員 私はこの問題について、長くぶら下って討論みたいなことをやりたくないのですが、ただ日本人というものは言葉の意味を勝手に解釈して、勝手なことを言うのが非常に多いのであります。しかし憲法に規定された社会保障とか社会福祉とか公衆衝生という、このはっきりとした概念をつかんでおかなければならぬと思うのであります。ところが今日は社会保障といえば社会福祉も含まれておる、公衆衛生も含まれておるということが、この厚生省予算の中に出てきておる、こういうことではほんとうの意味厚生行政というのは正しく進んでいかないと思う。言葉の混乱からいろいろ複雑な問題を提起して、一本の正しい厚生行政の姿が出てこない、これを私は憂うるものであります。今日になってソーシャル・セキュリティという言葉を社会保障と訳したということについて、私は非常に間違いであったと思う。ほんとうをいうならばソーシャル・セキュリティというのは、社会安全とか社会安寧と訳すべきなんです。というのは、アメリカの社会保障法の内容を知るなら、これは社会安寧であります。だからこの点、が問題なんですというのは、これは社会保障と訳すことによって、インシュアランス、普通の保証とごっちゃになる。耳から入ってくる日本の言葉は、セキリュティという保障とインシュアランスという保証とごっちゃにして頭の中に入ってくる。これによって今日のいろいろな新聞紙上あるいは雑誌に表われる社会保障に対する解説的なもののいろいろな混乱が起ってきておると思うのです。  そこで私は大臣に重ねてお尋ねしますが、社会福祉という、いわゆるソーシャル・ウェルフェアという訳の内容、これについて一つお伺いいたしたい。
  93. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 私もそういうことはあまりよく存じません、が、今まで社会保障という言葉が使われております場合には、日本の憲法ができましたころの社会保障という、ここに書いてある言葉よりは、よほど広い意味に使われておるのが現在の常識じゃないかと思っております。そこで、たとえば社会福祉の中でも、生活保護法というのは、これは公的扶助の制度でありますけれども、こういうものはやはり社会保障の中に入るという考え方社会福祉という場合には、それをも含めてさらに広い意味の、児童福祉でありますとか、あるいは一般国民の生活困窮に対する対策であるとか、そういったものを含めたものを社会福祉、こういうふうにいっておるようであります。
  94. 八田貞義

    八田委員 今の答弁でも私は非常に混乱があると思う。社会福祉、ソーシャル・ウェルフェアを今日の厚生省では援護とか更生とかに対する処置と考えておるようなんです。ところがソーシャル・ウェルフェアというのは便益ですから、全部に対して生活の上に福祉を与えるように国家が保障する、国家が責任を持つのが社会福祉の根本なんです。そこでさらに、憲法の中にある公衆衛生というのは一体どういうことをいったのかということを一つ公衆衛生局長から御答弁願いたいと思います。
  95. 山口正義

    山口(正)政府委員 公衆衛生の定義はいろいろあると思います。学者によって違うと思いますが、やはり組織的な社会活動によって疾病予防をやる、あるいは生命の延長をはかるというのが公衆衛生、それを行政に移していくというのが公衆衛生行政であると思います。現在厚生省でやっております中では、疾病予防、あるいは環境衛生というようなことが公衆衛生の仕事であるというふうに存じております。
  96. 八田貞義

    八田分科員 局長は非常に機械的に御答弁になったようでありますが、私はやはり厚生行政の基本というものは公衆衛生だ、公衆衛生の中にすべてが包含される、社会保障、社会福祉——私は今まで公衆衛生学を勉強して参りましたが、公衆衛生学という中には全部これを含めて学界ではやっておるわけです。学界の考えと行政の考えとが全くうらはらになっておったのでは、厚生行政というものは正しくできないと思う。学界の意見を尊重して厚生行政を科学的にやっていくという場合に、学界と非常に違った観念でやっていくというのは私は非常な間違いだと思う。この点大臣は、公衆衛生こそ厚生行政の基本をなすものである、一番大きな柱をなすものというふうにお考えになって公衆衛生に一段の力を尽されることが、いわゆる福祉国家を作る根本になっていくわけであります。そんなことを一々申し上げておりますと時間がなくなりますのでこれくらいにいたしますが、ただ大臣の今度の説明の中に医療保障という言葉を使っておる。医療保障ということは最近の言葉です。一体医療保障という言葉はどこから出たのですか、この点一つお知らせを願いたい。医療保障という言葉をはっきり使っておる、しからば医療保障ということはどういうことを言うのか。
  97. 神田博

    神田国務大臣 医療保障という言葉は新しい言葉のようだが、一体どういう意味で使ったかというお尋ねのように承わったのであります。私ども医療保障という言葉を用いましたことは、国民保険を進めて参りまして、国民の医療を政府が関与したい、国民の医療万般について政府が関与したい、すなわちそれを保障していきたい。これはイギリスのやり方とは少し違うのでありますが、国民保険を進めて参る、今の健康保険を含めての話でございますが、国民の医療を政府が関与していく、こういう意味に考えて医療保障という言葉を使ったわけなんであります。
  98. 八田貞義

    八田分科員 医療保障の言葉の説明がちょっと足らぬと思うのであります。それでは医療保障の根幹となるものについてちょっと御説明願いたい。
  99. 神田博

    神田国務大臣 医療保障のねらいは、やはり今申し上げたように、保険でいく、こうお考えを願いたいと思います。
  100. 八田貞義

    八田分科員 社会保険でいこうというお言葉であります。ところが今日の社会保険というものは、大臣も御承知のように、医療給付だけなんです。予防給付が入っていない。私は医療保障というのは予防給付も入れたものでなければならぬと思う。今日の社会保険というものは予防給付がないのです。医療給付しかない。それが医療保障の内容であると言われたのでは非常な間違いでございます。この点もう一度御答弁願いたいと思います。
  101. 神田博

    神田国務大臣 お説の通り、医療保障という言葉を使って保険でいくと申し上げても、政府が三十二年度で全部保障しておるわけではないのでございます。ただしかしこれは結核予防法の関係になりますが、今度は結核対策につきましては、早期診断、早期治療というような、やはり政府が無料でやるという制度も開いておりますし、すでに生活保護関係においては、これに該当する要保護者については医療を保障しておる。このやり方についてはいろいろ繁雑で煩瑣で十分でないという、きょう午前中からの御意見もございましたが、これはもちろん今後検討いたしますが、方向としては医療保障をずっと推し広げていく、こういう考え方であります。
  102. 八田貞義

    八田分科員 医療保障の根幹をなすものは、私はこういうふうに三本に考えておるわけであります。一つはパブリック・アシスタント、公的扶助、一つ社会保険、もう一つは公衆衛生の問題に入ってくると思うのであります。医療保障の根幹をなすその三つについて考えてみますると、公的扶助にいたしましても、社会保障にいたしましても、特定の個人に対する給付なんです。この点われわれは考えていかなければならぬと思うのです。公衆衛生は特定の個人に対するものではございません。例をあげて申しますと、道路とか港湾とか不可欠の措置費として税金の中から出しているものなんです。  ここで私は問題としなければならぬのは、今日の健康保険赤字問題です。大臣はすでに厚生省内に設置されました医療保障審議会ですか、これからの答申をごらんになったと思うのであります。ところがこの答申を見てわれわれは非常に異様に感じていることがたくさんあるのです。一体どうして赤字が出てくるのであろうかという問題についていろいろと書かれておりまするけれども、結局は運営が悪いのだ、こういうふうに言っておられます。私は健康保険赤字は運営よりも機構の問題にあるというふうに考えておるわけなんです。今日社会保険対象となるものは、保険料を納めておって、給付の形において権利として与えられるわけでございます。ところが今日の一般のいろいろな論調を拝見いたしておりますると、健康保険赤字は、今の審議会の答申のように運営が悪いのだ。厚生省の中に保険局があって、経営も監督も一本化しておる、これは非常に悪い、分離すべきだ、運営さえうまくいくならば赤字は解消するというような意見が圧倒的であります。さらにまた健康保険に対して国庫負担を一割にすべきだあるいは二割にすべきだという意見が書かれております。しかし私が先ほど申しましたように、保険料を納めておいて、給付として与えられるわけです。ですからこの点、特定の個人に対してどんどん国民の税金を入れていいか、こういう問題が起ってくるわけであります。この点につきまして、大臣は今度の健康保険赤字について、国庫負担を一体どれくらいやるのが至当であると思われるか。もちろん今度は三十億円だけしか国庫補助は出て参りませんが、しかし当初においては予算請求をされたはずであります。一体どれくらいを至当と考えてお出しになったか、その点ちょっとお知らせ願いたい。
  103. 神田博

    神田国務大臣 八田分科員から健康保険行政の運用の点に関しまして貴重な御意見を伺ったわけでございますが、これは参考としてよく尊重してやりたいと思います。  第二の点は、今度の国会に継続審議になって参りました健康保険法の一部改正の中に、三十億を入れるようにし、これを予算に組んであるわけでありまするが、これは赤字の補給という意味だけで私は考えておらないのでございます。なおこの健康保険法の改正に関することでございますが、一体政府がどの程度健康保険補助を出すべきか、たとえば保険総額の何割というような金でやるべきか、あるいは一定の額でいくかということについては、これは考え方によっていろいろ議論はあろうかと思いますが、私ども政府健康保険の重要性からやはり一定の補助をするのが当然である。赤字であるから補助をする、黒字になったら入れないのだというような、そういった財政上の意味だけでなく、事業自体に政府がやはりある程度の助成をすることが必要じゃないか。そこでそれならば一体幾ら期待したかといいますれば、三十年度においては三十億円を計上し、それから三十二年度においてもやはり三十億円を私ども希望いたしました。その通り予算処置ができております。
  104. 八田貞義

    八田分科員 大蔵省の人がお見えになっておるようですから、ちょっとお尋ねしたいのですが、先ほど社会保障という問題について話があったんですが、大蔵省の予算説明では、社会保障関係費として、憲法に規定された社会保障の概念とは全くかけ離れたものが、社会保障関係費の中に入っておる、大蔵省は社会保障というものは一体どういうふうにお考えになっておるか。
  105. 小熊孝次

    ○小熊説明員 社会保障という概念につきましては、これは非常にむずかしい問題だと思いますが、われわれといたしましてはつまり予算の科目におきまして、ここに列挙しておりますような事項につきまして社会保障ということで従来取り扱ってきておるわけでございます。要約いたしますと、貧困、それから廃疾とか、疾病とか、そういうものに対しまして国が財政的な考慮を払って、そうしてその対策を講ずる、こういうような趣意に基きまして、そういう事項につきまして従来社会保障関係費、こういうふうに考えておるわけでございます。
  106. 八田貞義

    八田分科員 その中に遺族及び留守家族援護費というものがある。これは社会保障費ですか。
  107. 小熊孝次

    ○小熊説明員 遺族及び留守家族援護費でございますが、遺族につきましてもあるいは留守家族につきましても、その家庭におきますところの最も支柱となる方々がなくなったりあるいは帰還できない、こういうことで残された母子が主となりますが、そういう方々に対して給付金を出す、こういうことになるわけでございます。形は給付金でございますが、実質的にはそういう面が大部分でございますので、そういう意味で社会保障関係費の中に含めて従来から計上してあるわけでございます。
  108. 八田貞義

    八田分科員 あなたの今の御答弁のように、社会保障というものが非常に広く解釈されておるのです。ところが憲法の第二十五条にはそのような意味合いを含んでいないのです。憲法二十五条は御承知のように、社会福祉と社会保障と公衆衛生、こういうことをはっきり分けて書いてあるのですね。ところがこれを大蔵省がいつの間にか勝手に拡大解釈して、社会保障関係費としてしまった。私はこういった遺族及び留守家族援護費というものは社会保障の中に入れるべきじゃない、むしろこれは国家保障の中に入れるべきだと思う。社会保障関係費というものについて今あなたの御説明になったのは、どうして環境衛生費を社会保障関係費から除いてこの二十番に出してきたか。
  109. 小熊孝次

    ○小熊説明員 その点は先生のおっしゃる通り、広い意味の社会保障、微視的に社会保障を目的とする経費でございましても、この社会保障関係費の中には入っておらないものもございます。たとえば文教関係経費でございますが、ボーダーライン対策といたしまして準要保護児童に対しまして給食費を見たりあるいは教科書を給付したりする、これは実質的に申しますれば社会保障でありますが、そういうものは実は社会保障関係費の中には入っておらないというような実情になっておりまして、確かにその点は先生のおっしやるように、社会保障費が全部予算に計上されております。社会保障費が全部ここに網羅されておるということではないと思います。そういう点におきまして文教という面から見れば、確かに文教の経費でありますが、一面社会保障的な要素もある。こういう両方にまたがるような要素がございますので、その辺のところはこれは主計局の一つの案といたしまして、便宜こういうような並べ方をいたしておる次第でございますから、これは学問的に完全に何々が社会保障費であり、他は社会保障費でないと言うのも語弊があるかと存じますが、便宜予算の理解に便ならしめるという関係で、こういうような書き方をしておるわけでございます。従いまして失業対策費、この中には公共事業の臨時就労対策事業というものが入っておるわけでありまして、そういうようないろいろな入り組みがある点は事実上やむを得ない点がある、このように考えている次第であります。
  110. 八田貞義

    八田分科員 社会保障関係費というふうにおやりになるのなら、はっきりとして分類をされてお出しになるのが私は当然と思うのです。遺族及び留守家族援護費というのは、私は当然社会保障費の中から除いて、旧軍人遺族等恩給費として、やはり二つ並べてけっこうですよ。これを軍人恩給費から除いて社会保障費に入れられたという意味が私には非常にふに落ちない点がある。さらにまたこの社会保障関係費の中に失業対策費も含めてきておる。失業対策を社会保障によってやろうとするときには、対象はどういう人を対象にして失業対策をやろうというお考えからこういう予算を組んで社会保障関係の中に入れてこられたかどうか。私の考えているのは、社会保障という中に失業対策費を入れておくならば、これは老人とか婦人などの労働能力が低い人を社会保障的に救ってやろうという考えならばいいですよ。ところがこれは失業対策費としてはそんなものではないのですね。そういう人もひっくるめて、他の労働力のある人も入れてあるわけです。これは大蔵省が勝手に社会保障というものを拡大解釈して失業対策費も含めた、私は非常に内容的に問題があると思うのです。今後はこういった分類の仕方については、やはり学問的な科学的な根拠に立って分類していただくことが、われわれ予算を審議する場合に非常に都合がいいのです。これでは一々、これはどうしてここへ入れたのだろうとかなんとかということを私が聞いていかなければならないということになると非常に時間がたってしまう。こういったあやふやなものだけを集めて社会保障というふうに言われたのでは、憲法第二十五条に規定された社会保障というものの概念とは違ってくる。この点を非常に私遺憾とするものであります。  そこで社会保障関係費が昨年度は千百三十四億円、今度は千二百二十六億円であります。今の遺族及び留守家族援護費七十億円を社会保障関係から除いてしまうわけです。この中で一番大きなウエートを占めておるものは、生活保護費とそれから失業対策費ですね。それが一番大きいのですよ。これが社会保障関係費の六割を占めておる。あとの四割が厚生行政の重点に使うというようなことになってくるわけです。内容を見ると、非常に社会保障関係費がふえたようになっておるけれども、結局失業対策費と生活保護費だけをふやしてきたのだ。これが六割。あとの四割を社会保障関係に使うのだ、こういうわけですが、社会保障関係の中でもいろいろとこの分けられた問題については議論が出てくるわけです。どうか今後は社会保障関係費というふうにするならばはっきりと、何だか内容のあいまいな失業対策費までも含めて、いかにも社会保障費が増したようにされることには、私はここで御注意を申し上げておきたいと思います。大蔵省にこういったことをはっきり申し上げておかないと、次の予算のときに厚生行政のための大切な金がとれませんから御注意を申し上げておきます。  そこで大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、今度は健康保険赤字に対して三十億の予算をとられたわけですが、当初予算につきましては私聞き漏らしましたが、初めの要求額はどれくらいだったのでしょうか。
  111. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 こまかいやつは全然なんでありますが、全部で千五百億であります。
  112. 八田貞義

  113. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私どもは当初大体医療給付費の一割程度の金額要求いたしたわけでございます。四十数億であったと記憶をいたしております。
  114. 八田貞義

    八田分科員 その一割程度というのは、何か根拠があって、一割程度ということをお出しになっておるのですか。
  115. 高田正巳

    高田(正)政府委員 根拠という御質問意味が私十分よくつかめないのでありますが、私どもといたしましては、一応三十二年度の収支の見通しを私どもなりに立ててみまして、そうしてそれらに対する対策をどう考えるかというふうなことを考えたのでございます。その際にこの政府管掌健康保険にある一つの基準をもって、この健康保険制度の発達を意図するために、国がある程度の基準をもって責任を明らかにするというふうなことを私どもは希望をいたしておるのであります。さような意味合いにおきまして来年の収支の見通しその他等も勘案をいたしまして、私どもといたしましては、一割程度の補助をしてもらいたいという当初の希望を持ったわけでございます。これは私どもの希望でございまして、当初の要求でございました。その後いろいろと折衝の経緯を経まして、御審議を願っているような三十億ということに相なったわけであります。
  116. 八田貞義

    八田分科員 大蔵省の方にお伺いしたいのですが、今厚生省保険局長は一割程度の要求額を出しておるわけなのです。それを三十億に削られた御見解というものについてお知らせ願いたい。
  117. 小熊孝次

    ○小熊説明員 政府管掌健保に対しまして、国庫から三十億を繰り入れることにいたしたわけでございますが、厚生省の方からは、ただいまお話のございましたように、一割の国庫負担要求があったわけであります。われわれといたしましては、広く疾病保険というものに対しますところの国庫の助成のあり方という点を考えますと、まだ保険の未加入の者が三千万人近くもおる、こういうような段階におきましては、比較的給付水準も高いところの健保に対しまして、その健全化という要素はあるにいたしましても、それに対してこの際直ちに一割の国庫負担をするということは不当ではないか、われわれとしてはむしろ国民保険という線を推し進めまして、そうして国民がすべて医療保険の適用を受ける、こういう段階におきまして、あらためて国庫としてはどの程度の財政的な援助をしていくかということについてさらに再検討をするというのが筋ではないか、もちろん法律といたしましては、三十億とか、そういう金額は明示してございません。事業の執行に要する費用の一部を補助する、こういう規定になっておりますから、それが三十億がいいかどうかという問題はございますが、三十一年度も三十億入れておりますし、健康保険財政というものが、三十二年度におきましてもまだ相当膨大な赤字を出す、こういうような段階におきまして、さらに健全化をはかるという意味におきまして三十億を計上した、こういうことにいたしたわけであります。  なお失礼でございますが、先ほど先生のおっしゃいました社会保障費の関係でございますが、ちょっと補足させていただきたいと思います。社会保障費の中で生活保護と失業対策が大部分を占めておってほかの社会保障費は伸びておらぬじゃないか、大体そういう趣旨のお話がございましたが、この予算説明にもございますように、生活保護費の伸びというものはわずか二億でございます。それから失業対策は逆に三億七千五百万円減っておるわけですから、今度の増加した相当部分は生活保護と失業対策以外の面で十分その配慮をしてある、こういうことが言えるわけであります。厚生省関係で申しますと、少くとも前年度に比べまして百十一億もふえているわけでありまして、大蔵省といたしましても社会保障の見地から相当重点的に予算的な配慮をした、こういう点につきましては自信を持って言える、このように考えている次第であります。その点どうぞ御了承願いたいと思います。
  118. 八田貞義

    八田分科員 今生活保護費も失業対策費も減額したとおっしゃいましたけれども、昨年度は六割二分から六割三分を占めておった。本年度は六割弱ですね。だから私はあまり開きがないと見ておるのです。数字にしてみれば大した伸びはない、二分程度です。そこでただいま政府管掌健康保険に対して一割を要求したけれども、大蔵省の方では社会保険全体と見て健全化をはかるために給付のアンバランスというものを考えてみなければならぬ、そのために健康保険赤字は予想しても三十億円にとどめたのだ、未適用者あるいは国民保険という間口を広げるために、一応三十億にとどめて、他の方に回そうという考えになったのだ、こういうふうに私了解するのですが、その点は間違いございませんか。
  119. 小熊孝次

    ○小熊説明員 私が申し上げましたのは、政府管掌健康保険につきまして、この際直ちに一割の国庫補助をするということは、他の社会保険とのバランス上、直ちに実行することは妥当でない。まず保険の適用を受けていない者に保険の適用を受けさせるのが先決問題ではないかということが第一点でございます。  それから、先ほどちょっとその点はっきり申し上げませんで、あるいは誤解があったかと思いますが、政府管掌健康保険につきましては、三十二年度においても引き続き相当な赤字が出る予定でございます。いずれにしても政府管掌健康保険社会保険における一つの中核的な保険でございますので、これの健全化をはかるということが社会保険全般の健全化をはかり、あるいは社会保険の今後を進めていくという意味におきましても、重要な問題でございますので、引き続いて三十億を入れることにいたしました、こういう趣旨でございます。
  120. 八田貞義

    八田分科員 今の御答弁の中で、健康保険赤字は出るともうお考えになっての三十億円ですね。そういたしますと、大蔵省はこの政府管掌健康保険赤字の原因につきましてどういうふうにお考えになっておられましょうか。この赤字がどうして出てくるのだ、この点について一つ赤字は出るのだということを今はっきり言われたのですが、三十億円では赤字は当然考えられる。三十億円程度の国庫補助では赤字は当然出てくることが考えられる、こういうふうにおっしゃったのですが、しからば一体どうしてその赤字は出てくるかということにつきまして、運営の面にあるのか、あるいは機構の面にあるか、この点について大蔵省の御見解をはっきりとお知らせ願いたい。
  121. 小熊孝次

    ○小熊説明員 ただいま申しましたのは、国庫から三十億繰り入れてなおかつ赤字があると、こう申し上げたのではないでございまして、政府管掌健康保険の対策といたしましては、標準報酬の引き上げ、一部負担実施保険給付の制限、さらに国家の補助助成ということによって、放置しておけば生ずるであろうところの赤字が解決いたします。将来の健康保険の健全化をはかることができる、こういう意味合におきまして、三十億を入れた、こういう趣旨でございます。なおその政府管掌健康保険赤字が、放置して対策を講じなければ生ずる、この原因は何であるか、こういう問題でございますが、それはまず第一には、やはりその政府管掌健康保険給付費の水準と、それからその収入面でありますところの保険料の格差というものが一番大きな原因をなしておる、このように考えております。
  122. 八田貞義

    八田分科員 大臣、今の答弁をお聞きになっておられたと思うのですが、この政府管掌保険赤字というものは、今お話になったように、一つの機構の問題にあると私は考えておるのであります。運営ばかりでもってこの健康保険赤字は克服できない。機構の問題だ。大きな原因は機構の面にある。そこでこの機構の面から考えてみて、いろいろとここで申し上げるのは時間の関係上はばかりますが、一体これをどうしてやっていくんだ、この赤字が出ないように、機構改革は一体どういうようにしていくのか、そのためにこの科学的な分析検討というものは七人委員会の報告に書いてあるのです。需要、供給の面から赤字が出るのだというような観点から、これの科学的な分析を加えているのです。この科学的な分析によりますると、こういうことが考えられてくるわけであります。またどうして健康保険赤字になってくるか、この原因としてはまず二つに分けて考えなければならぬ。一つは、医療需要を示す受診率の上昇は適正なのに、保険料収入が不当に低いのか、これが第一点だと思う。第二点は、保険料収入は適正なのに、受診率が不当に高過ぎるか。この二つの観点から七人委員会の報告の統計分析を見てみますると、健康保険普及すればするほど受診率は上昇してくるのだ。急速な上昇というものは早いカーブの上昇でありますが、これは家族の歯科医療を除けば結核である、こういうことがいわれておるわけであります。ところが注目する点は、この上昇速度がずっと下ってきているのです。受診率の上昇速度が最近は下ってきて、なおかつ赤字が出るのだということになってきますと、保険料が安過ぎるのだということになってくるのです。ところがこの保険料をもう少し上げてみたらどうだということが問題になって参りますが、これは今の政府管掌の事業形態を考えれば、もう保険料は限界点に達したわけなんです。  そこで今日医師会とかあるいは歯科医師会などから、いろいろな健康保険赤字問題について、一割負担をしろとか、あるいは二割負担をしろというような強い要求が出てきておりますが、これはこういった問題を考える場合に、いつでも組合管掌の健康保険政府管掌健康保険とを比較しまして、その優劣を論じ合っておるわけです。それにただいま大蔵省から答弁のあった他の社会保険に入っていない人々、あるいは国民健康保険の給付の問題、これの比較対照はやっておらぬわけです。それがもしも一割とか二割というものを健康保険に入れていくならば、未適用者が一体どのような考えでこれを了解するかということが問題になってくるわけなんです。われわれは、社会保険というものは国庫負担をふやせばいいんだというような考えこそ、社会保障の後退であると思う。限度がある。施療保険に追い込むものである。クランケンカッセという言葉がドイツにはありますけれども、これは施療保険です。ですから私は社労委員会においてこの問題について時間をかけまして、さらに大臣との間に社会保障の理念並びに社会保険の理念、こういったものについて話し合いたいと思うのでありまするが、これから社会保険を健全に育成していくためには、施療保険に追い込むような後退策はとるべきじゃない、こういうように私は考えております。この点大臣はいかがでしょうか。
  123. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私も寡聞でよく存じておらぬのでありますが、ただいまお引きになりましたクラソケンカッセでございますか、これは何か地域的な保険金庫というようなもの、——組合でございますか、組合の保険フアンドをさす、言ってみれば保険というような性格のものだと私ども聞いております。八田先生の御質問の御趣旨を十分に私まだ了解いたしかねておるのでございますが、どういう御趣旨であるか、いま一度御質疑願いたいと思います。
  124. 八田貞義

    八田分科員 国庫補助を医師会、歯科医師会の方は非常に要求してきておる。一割とか二割とかいう要求をしてきておる。ところが国の方では出せない。そこに社会保険というものは一体どういうものだということに対して、社会保険の理念というものがはっきり確立されていない。特定個人を対象とした社会保険に対して赤字になったらどんどん国庫補助を入れるのだということになったら、これは施療保険になってしまうと言っておるのです。いわゆるクラソケンカッセという施療保険になってしまう。こういうふうに申し上げたのでありまして、質問の要点は、一割という当初要求するものが妥当なものであるかどうかについて、今日時間の関係で御答弁は要求しませんが、十分と研究しておいていただきたい。こういうことであります。すなわち一割国庫補助について根拠となるものをはっきりつかんでもらいたい。そうしませんと、大蔵省との間にいつでもはっきりしないもやもやとしたものがあって、当初一割四十二億円ばかり要求しておいて、それが三十二億に削られた、これは予算を折衝する場合に、われわれも一緒に折衝するわけなんですが、非常に削られてみれば愉快ではない。ですから私は厚生省の方が一割負担を出してきたならば、それに根拠となるものが十分になければならぬ。科学的な根拠の上に立っての一割負担要求でなければならぬ。またそうあるものだと信じましてわれわれはやってきたのです。ところが大蔵省の見解ではこれがまた違って、国民保険という間口を広げる、こういうようなことになってきて、そこの間に非常に意見の食い違いがある。だから私は厚生省で一割国庫負担を目ざすならば、科定的な根拠をしっかりつかんでおいてもらいたい、こういう意見であります。
  125. 高田正巳

    高田(正)政府委員 八田先生よく御存じでございますように、社会保険審議会も、それからかって社会保障制度審議会も二割負担ということを一応意見として出しておりますが、その二割ということも、——また私どもが今回予算を当初一割ということで要求いたしましたその一割ということにも、八田先生の理論的根拠という要請がどういう意味でございますか、簡単にこれが一割でなければならぬとか、二割でなければならぬとかいう根拠は、なかなか求めがたいと思います。それらの審議会におかれましても、さようなことで申しておられるのではないか、私ども要求をいたしますところは、今日国民健康保険が御存じのように、療養給付二割の国庫補助をいたしております。さような観点をも勘案をし、他の社会保険のあり方とも彼此考え合せまして政府管掌健康保険というものに対しては、その中小企業的なものであるというふうな観点から私どもは一割というふうな程度の一つの線を引いて、それが財政的にきちっとつじつまが合うとかなんとか、ある年度財政収支の見通しから一割がきちっとはまるとかはまらないとかいうようなことでなしに、国がその程度の責任を明らかにするという意味補助をして参りたい、こういうふうな私どもの気持であります。従いましてその理論的根拠という仰せでございまするが、その算術的な一つの根拠というものはなかなかこれはむずかしいものと私は考えております。
  126. 八田貞義

    八田分科員 時間がないので先を急ぎますが、ただ保険局長に一言言っておきたいことは、あなたは算術的な計算はできない、算術的な計算からは出しにくい、こう言われるのですが、赤字がこれだけある、それで一割やればこれだけの赤字になる、あとの足りない分は患者一部負担をやればいいのだというような計算をして出してこられたに違いないのです。私はそういうような計算の仕方でなしに——それこそほんとうの算術的な計算です。そうじゃなくて社会保険というものは一体どうなのか、社会保険の理念というものはどういうことなのか、社会保険の理念の確立をまず出してきてから、一割という線を出すなら私は正しいと思うのです。そうでなく、ただ一割という線を引いたことに対して、一体正しいかどうかということは社会保険の理念がなければだめなんです。その一割という出した線の根拠を私は追及したいのですが、これはまた社労委員会で質問をいたすことにしまして、政府管掌健康保険は短期保険ですね。ところが長期保険と短期保険とが社会保険の中にあるのですが、一体どういうことを短期、長期として区別したのですか、これについて保険局長一つ教えてもらいたい。
  127. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その年の保険料収入でその年の給付をやっていく、いわゆる短かい期間の収支の見合いを考えていくということが短期保険であり、長期保険というのは長い間積み立てていきまして将来の給付が起ってくるというふうな場合のように、非常に長期にわたって保険数理を考えていくということであろうかと思います。
  128. 八田貞義

    八田分科員 それならどうして結核は二年間の給付をやっておるか。結核に対して三年間の療養給付をやってますね。短期保険でやるべき健康保険がどうして三年間の給付をやるんですか。
  129. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私の申し上げましたのは、短期保険といえども一年給付を打ち切るというふうな意味で申し上げたのではないのでございまして、結核に給付を三年いたしたといたしましても、その年の給付に要する費用というものは、その年の収入との見合いでものを考えていく、そういうふうな観点に立っての計算をいたしていくというふうな意味合いで申し上げたのであります。
  130. 八田貞義

    八田分科員 結核をどうして三年療養給付にしたか。
  131. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この結核の療養給付期間をたしか二年を三年に二十八年当時でございましたか、二十九年でございましたか、延ばしたのでありますが、それは結核という病気の性格から申しまして、二年では不十分である、かような観点から引き延ばしたものと私は承知をいたしております。
  132. 八田貞義

    八田分科員 この問題ももっと掘り下げたいんですけれども、時間がないようですからまた時間を与えて下さいまして、あとの質問は保留させていただきまして、一応きょうはこれで終ります。
  133. 辻原弘市

    ○辻原分科員 時間がないようですので、二、三の問題に限定して質問をいたします。  最初に、先刻井堀委員からもお話がありましたが、結核療養所あるいは国立案所の給食費の問題でありますが、予算面を見ますと、前年度内容においては同額に据え置かれております。私の聞いている範囲では、大体結核療養所において九十六円十銭、それから一般国立病院においては九十四円十銭、こういう数字になっているようでありますが、これは私が申し上げるまでもなく、実情を見れば、先刻また大臣も申されておりましたように、ともかく病人は何といいましても薬餌による療養よりも、やはりそれ自身の抵抗力をつけるという意味において、食餌療法というものの効果、価値というものは、これはきわめて大きいのであります。そういう面から考えて、私は特に先般も某結核療養所をじかに見せていただいたのでありますが、患者に対する食事というものはちょっと寒心にたえないものがあります。大体常識的にいいましても、百円未満経費でもって今日結核という非常に栄養をとらなければならぬような病人に対する食事が果して可能であるかどうかという点は、おそらく厚生省におかれても、これは科学的に計算されるとその数字は出てこないと思います。従って私は本年はこれはおそらく増額が期待されるものと思っておったのでありますが、予算面ではそれが実現いたしておりません。聞くところによれば、厚生省としては大蔵省に要求されたようでありますが、認められていないようでありますけれども、大体どの程度の額が妥当なりとして要求せられたか。またちょうど大蔵省の主計官が見えているようでありますから、大蔵省はいかなる見解で、これはその程度で足りるといってけ飛ばしたのか、この両者のお考えを一つ承わっておきたい。
  134. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立病院、療養所における患者のまかない材料費は、この数年据え置きになっております。これに対しまして大都市におきます公立、私設等の病院におきましては、最近若干まかない材料費が上って参りました。従いまして両者の間に不均衡が生じたわけであります。それによりまして患者の方からもぜひまかない費を上げてほしいといって参ったのであります。また私どもも上げなければならないかとも考えたのでございます。しかしながらよくよく反省してみますと、先ほど井堀委員の御指摘になりました通りに残飯が多いのであります。いかにまかない材料費を上げましても、患者の食い残しが多いようであってはこれは決して栄養になるものではございません。これに対しまして従来国立病院なり療養所におきますところのわれわれの努力が足りなかったということを痛切に反省せられたのでございます。そこでこの二、三年来特に患者給食についてわれわれの力を集中いたしたのでございます。第一は、購入方法を合理的に改善することによりまして、一円当りのカロリーの高い、栄養価の高いものを入手する方法につきまして、特段の工夫をいたして参りました。第二は、給食に関するいろいろな設備につきましてかなり予算をつぎ込みまして、これを改善いたしました。そして調理方法に工夫する、あるいは複数献立と申しまして、二、三種類の献立を作りまして患者の好むものを支給する、こういう方法をとって参ったのでございます。その結果といたしまして、先ほど井堀先生の御指摘のように軒並み大体二割強の残飯量のあったものが現在では一割前後に低下して参っております。つまり購入方法改善によりまして購入価格が安くなったことのほかに・吸収するそのもの自体につきまして、平均して一割程度の改善が見られたのでございます。しかし国立病院、療養所の個々につきまして精査いたしますると、この方面において非常に成績を上げまして、わずかに五%程度の残飯率を保持するところと、なお依然として十分に改善されていないところがあるのでございます。国立療養所について申し上げますと、この予算案に出ております通り、大体経営支出に対しまして診療所の収入は七割程度でございまして、三割程度は一般財政から助けてもらっているというのが現状でございます。そこでわれわれは努力いたしましてもっと実績を上げてそうして残飯量を減らしていく。完全に集団給食でございますから、残飯量をゼロにすることはできないと思いますけれども、一〇%以上はないという実績を上げて、その実績に基きまして一般財政からさらに応分の援助を仰ぎまして、給食費をその上において捻出するように努めていきたい、かように考え、まして、各方面からもその御要望が非常に強かったのでありますが、さしあたり来年度は本年度と同様のまかない単価でお願いいたした、さような状態になっておりますことを御了承願いたいと思います。
  135. 小熊孝次

    ○小熊説明員 国立結核療養所の食事の材料費でございますが、辻原委員もおっしゃる通り、この点につきましては、ただいま医務局長からもお話がございましたように、従来から結核療養所におきましていろいろ研究を積みまして、調理技術の改善をやりまして、さらに最近は残飯の量を少くいたしますと同時に、多種献立を採用いたしまして、鋭意その内容の充実に努めておる次第でありますが、三十二年度は本年度と同様の単価で一応やっていただく、このように考えましてさような予算を計上したわけでございます。
  136. 辻原弘市

    ○辻原分科員 残飯が出ないようになって、大体患者全体に給食がまんべんなく行われるということは当面の理想でありましょう。ただしかし問題はそれだけではいけないと思うので、残飯がなくなるための一つ考え方としては、量よりも質的内容を高めていって、患者々々に適合した趣向に富んだものをあてがっていくということに切りかえていかなくては、残飯が完全になくなるという食餌療法の形は生まれてこないと私は思う。そういう意味で今御両人のお話を承わってみましても、一応当面の給食しているものを十分に患者に消化させるというところに目的が置かれているようでありますが、私はその問題が一応解消したならば、当然いま一つ質的内容を高めるための措置が講ぜられなければならぬと思う。大体両三年来相当その点で言われたことは私もわかっておりますが、そうしますと来年あたりは当然もう少し突っ込んだ研究も行なって、いわゆる患者食というものを加味した栄養価に富んだものに内容を改めていく。これは従来程度の単価ではちょっとまかない切れないが、そういう点において来年度の考えとしては積極的なものを持っておられるかどうか、一つ率直におっしゃっておいていただきたい。
  137. 小澤龍

    ○小澤政府委員 来年度におきましても、先ほど申し上げましたような趣旨の徹底をはかりまして、現在の給食費のまかないそれ自体の効率を一そう高めることに努力して参りたいと考えております。しかしながら、ただいまお話がありました通り、現在のまかない費でいつまでも捨ておいて適当であるかどうかということになりますと、これはある程度実績が上りましたならば、将来適当な時期にはまかない材料費を値上げしていくように努力すべきであるという点におきましては、私も同様の考えを持っております。これは近い将来の問題として、私どもは現段階においては現状の改善ということに努力して参りたいと考えております。
  138. 辻原弘市

    ○辻原分科員 詳しく実情を申し上げる時間がなくて残念でありますが、端的に申しまして残飯が出る原因ははっきりしておる。要するにうまくないからです。食事が場合によれば普通人以下の一これはカロリーの面を申すのではありません。主食にしたって、これは医学的に見ればよいのかもしれませんが、ちょっと見ると相当黒い主食で、しかもたき方を見ても病人にはいかがかと思われるような相当かたい主食が食膳に供されておる。しかもその使っておる食器なんかを見ましても、かつてわれわれが軍隊で経験したあのアルミのものを使っている。そういうカロリーとかいうような内容的なものももちろんありますが、やはり食膳に供されるものの体裁とか食事それ自体の環境とか、いろいろなものを総合して、患者の食欲をそそるように、そういうところに十分意を用いなければ、理屈の上で内容を高めるといったってなかなか実行ができないと思います。先刻井堀さんからもそういう話がありましたのでくどくは申しませんが、患者特に結核患者に対する食餌療法という面では、医学的にやかましくいわれておるわけでありますから、ましてや国が管理する国立療養所において、われわれしろうとの健康な者の目から見ていかがかと思われるようなものであっては、とうてい結核対策にはなりませんから、この点は一つ大臣もよくお考えいただいて積極的な内容改善に努められることを要望いたしておきます。  次に端折って申し上げますが、今度の予算の中で未帰還者援護費が若干盛られておりますが、その内容を見ますと、これは対ソ国交回復に基くソ連の抑留者の帰還に備えての経費であるやに見受けられるのであります。ところが先般ミンドロ島からも四名の予期せざる帰還者があったわけでありまして、私は直接本人にも会いましていろいろ現地の実情をも聞きましたが、その後いろいろ私も情報を集めましたところ、現在帰還することはおそらくないであろうと考えられておるような人が、南方の諸地域にはまだ生存しておるというふうな情報もあるわけであります。厚生省では過般、最近そういうところから引き揚げられてきた人々を呼んで実情を聴取されているようでありますが、ここで私の申し上げるのは、かりにそれが人員が少くても、最も重要な人命に関する問題でもありますし、放置しておけない問題でもあろうかと思いますので、これらに対してはやはり継続して調査を実行するということと、その調査においてある程度まだ実在するということが判明したならば、その引揚者に対する援護策をすみやかに講ずべきである。遺骨収集あるいは今度予算にも出ております引き取り人のない戦没者に対してお墓を設けられるような心組み、まことにけっこうだと思います。しかしこれらは多少時間が経過いたしましてもすでに人命には関係のないことであります。それ以前に生きておる人を引き揚げさせるということが大切であります。ソビエトやあるいは中国等からの引揚者の問題については、かなり政府でもまた世間でもやかましくいわれておりますが、南方その他に点在していて調査さえ精密にやればかなりの数が把握できるというようなところの調査を、私は一つ積極的にお進めいただきたいと思いますが、何か具体策がおありになるかどうか。  さらに参考につけ加えますと、聞けば調査もやりたい、引き揚げの援護を講じたいけれども、結局はその金がないために行けない、こういう話も聞くのでありますが、そういう実情にあるのかどうか。もしそういうことで、かなりわかっておって金がないために厳密な調査も行えない、こういうことでありますれば、われわれとしても積極的にそれらの経費を認めていかなければならないと思いますが、それはどういう実情になっておりますか、一つお伺いをいたしたい。それと、ソ連の方は本年度引き揚げ予定が二千五百何名と出ておりますが、南方諸地域等において、これは不正確でもけっこうでありますが、生存しておると予想されるような数が今日どの程度あるのか、こういう点も厚生省の方で若干の調べがついておれば一つお示し願いたい。
  139. 神田博

    神田国務大臣 ただいま辻原委員の未帰還者に対する処置お尋ねでございますが、これはまことに御同感でございまして、政府といたしましてはこの未帰還者の一人でも残留者がありますならば、いかような手段方法を講じても帰還せしめたい、こういう熱意をもちまして資料収集その他最善の方法をとりつつ苦慮しておる次第でございます。今回ソ連との国交回復を機会に当方から大使館設置に伴いまして、この引き揚げ事務を担当する要員を厚生省から一人外務省を通じて派遣しようというようなこともかねて言っておりまして、すでにこれは了解済みのような実情でございます。さらにまた南方諸地域につきましては、それぞれの在外公館を通じましてできるだけ最善の方法をとりたい、こういう熱意をもちましてそれぞれ手がかりその他を収集いたしておりますが、何しろ広大な地域であり、時間もたっておりますので、これらがどの程度まで及んでいるか、実に憂慮にたえないことでございますが、今後もできるだけ適当な方法を発見いたしまして、その方法を直ちにとってもって調査を継続し、また帰還の方途については最善の方法をとって参りたい、こういう決意でございます。詳細につきましては政府委員から答弁させます。
  140. 吉田元久

    ○吉田説明員 ただいま御質問のありました南方地域の状況の調査を担当しております者としてお答えいたします。昨年帰って参りましたミンドロ島からの生存者でございますが、これらに類する生存者があるのではないかという情報は比島地域、他の島々あるいは本島にも従来からあるのでございます。しかしながらこの情報は土民がそういうことを言うておるというようなきわめて不確実な情報でございます。しかしながら昨年ミンドロ島から生存者が帰還いたしましたような事例もございますので、これらの情報をもう一度現地について大使館で再確認をしてもらう、生存者がおるのかおらないのかというような点を、もう一度現地に調査をしてもらうように、今処置をいたしております。またルパング島は先年二名の生存者がおりまして、投降勧告を政府職員並びに親族が参りまして実施をいたしましたにかかわらず、遂に救出することができませんで、比島側の情報によりますと、今日もなお生存しておる模様でありますので、現在いかにしてこれらの方々を救い出すかということについて検討をしております。以上は比島の状況でございます。  全地域にわたりまして現在生存をしております数は約四百名でございます。この四百名の大部分はすでに現地において生活をしておる者でございまして、中には一部現地に居住する居住証明書を取得して内地に帰還する意思がないのではないかという方も多うございますので、これも在外公館を通じまして本人の帰国の意思の有無を昨年末以来調査中でございます。
  141. 辻原弘市

    ○辻原分科員 いろいろ申し上げたいのでありますが、在外公館にまかしておいて果して現在ある手ずるをもって情報の入っているような地域の生存者を、ほんとうに調査できるかどうかというような点ですね。私どもいろいろな方面から若干疑わしいのじゃないかという意見を聞くわけなんです。もちろんそれは正規の方法でありますから、そういうことでひとまずやって、さらに情報がかなり確実になれば直接そういう任務を帯びた人々を派遣して、くまなく現地の調査をさせるというような手もおいおい必要になってくるのじゃないかと私は予測するわけです。というのはルパング、ミンドロ、ここらの話を聞きましても、実際の端緒となったのは、在外公館がその情報を入手してどうこうというよりも、土民との関係にあったように私ども聞いております。土民がその情報を伝え、そうしてここに生存しているのではないか、それを間接的に在外公館が知ったというような受動的なもので、、積極的に調査を進めていって突き当ったというようなことでない。その点おそらくフィリピン等の在外公館でも人員その他の関係経費等の関係で、内地で考えるようにあの地方はそんななまやさしいところではないのですから、ちょっと私は自信が持ちにくいのじゃないかと思う。何かこれは一方法として、さらに帰還者を現地に派遣して連絡をつけきせるというようなことも方法であろうと思います。そういったより積極的な手も一つお考えなすって、在外公館の調査に協力させるということもあわせお考えを願っておきたいと思います。ルパング島も、これは私が知っているんです。一時自殺をしたとか伝えられておりましたが、その後的確にこれも生存しているという情報がある。従ってこれの救出等も急を要すると思う。従ってただ在外公館に通り一ぺんの調査でおまかせしておいたのでは、その生命が危ぶまれるのではないか。そういう意味合いからも何か一つ積極的な手を打っていただきたい、こういうふうに要望いたしておきます。  それから次に、これは先ほどからだんだん御質問がありましたのでくどくはお尋ねいたしませんが、国民年金制度の問題でありますが、五人の委員会を作ってぼちぼちやろう、こういうお話で私どもがっかりしたのでありますが、しかし一面考えてみますと、なかなか言うべくして年金制度というものはむずかしい、実際簡単には参らない問題であろうと思いますけれども、しかし思想の立て方としては何らか一つの構想というものをやはりこの際持つべきであると私は思うのです。一体これは当初やるのに、まず第一段階としてはかなり年令を上げて無醵出制でやるか、年令は通例各国でやられているような程度のものにして醵出制でやるか、いろいろな方法があろうかと思いますが、少くもまず緒につけるための具体的構想ぐらいは厚生当局としても持って、そうして審議会にその意を諮られるのが、やはり先刻の委員の話もありましたように、順当であろうと思う。そうでないとこれは国民に道を作ってやるといいながら、いつの日にこういうものができるのかという非常な疑問を与える。そういう意味から、これは御答弁は要りませんが、ともかく早く具体的な構想を固めてお示しを願いたい。  それからいま一つ、これは大蔵省、それから厚生省にもお尋ねをいたしておきますが、たしか私の記憶によりますれば、戦時中に養老年金の何かの金が国にあったように思います。その金はその後どういうものに使用されたかということを寡聞にして私は知らないのでありますが、現在そういうものが厚生省にあるか、大蔵省にあるか、この点をお伺いしておきたい。あればどのくらいの額があるか。それは会計経理上どういう処理をしているか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  142. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 寡聞にしてよく存じておりませんので、後ほど調べまして、ありますれば申し上げたいと思います。
  143. 辻原弘市

    ○辻原分科員 参考にちょっと申し上げておきます。私も的確には記憶がないのですが、あるいは厚生省の所管でなしに、大蔵省に所管しているかもしれません。これを一つお調べを願いたいと思います。  最後に一、二点、私の感じている厚生問題について申し上げて、大臣の御所見を一つ伺いたいのであります。それは、ことしの予算の中にも傷病者に対する援護費が盛り込まれておりますが、これは例年大体似たり寄ったりのものです。ところが、この傷病者が社会的に象徴されているのは、あの白衣の姿だと思うのです。以前新聞等にもきわめて冷淡な言葉をちょいちょい投書などで見かけたのであります。もちろん社会的に見た場合、汽車の中で白衣の姿で演説をぶたれて、零細な金額の募金を、考えようによれば強要されるというようなことは、愉快なことではないかもしれません。しかしそれ以前に、やはりこれらの人もそれを好きこのんでやっているのじゃないと思うのです。結局は戦争による被害、戦争によって身に受けたその災害によってやむを得ず街頭、車中にその姿をさらしているのだと思うのです。われわれが小さい時分に、日露戦争の廃兵という名で呼ばれた方々が、地方を回って、はりや糸を売っておられた姿を思い起すのでありますが、例年この傷病者対策というものをやかましく言い、また社会的に見てああいった白衣の募金の姿を眼前にさらすようなことをやめようじゃないかということは強く叫ばれながら、依然としてその更生援護対策というものは進んでいないと見えて、いつまでたっても問題自体は解決していないと思うのです。どこに一体その原因があるかということを大臣にこの際お尋ねしたいのと、積極的に何か更生援護の対策を進める御意思をお持ちになっているか。もっとあたたかい目であの傷病者を見る必要があると思います。そういう点で一つ承わっておきたいと思う。
  144. 神田博

    神田国務大臣 ただいま辻原委員から、傷病者が列車等に姿を現わしまして現にやっておられる行動というものはどうも好ましくない、政府においてああいうものをやめさせる対策をとる必要があるのじゃないかというようなお尋ねでございまして、私も大へんごもっともだと思っております。前に傷病者に恩給を与える際に、ああいうことをやらないということで措置をとったように私は承わっておるのでございます。私も絶えず東海道線に乗っておりますので、始終見受けますので、この話を実はよく出すのでございますが、どうも私の聞いたのによりますと、一体ほんとうに傷病者がやっているのかどうか、身分の疑わしい者が相当多いのだということを聞いております。第一白衣を着るというのは入院恵山者なんでございまして、入院愚考がああいうことをしている例は、国立病院その他のお医者さんのお話を聞きますと、ないというのです。だからいっかこれは新聞にもよく出た問題でございますが——もちろんこれは白衣の人が傷病者でないんだということを言い切るわけではございませんが、どうも疑わしいものが相当あるのだということが一つ、それからもう一つは、安易な同情になれて職業的にやっている者が出ている。だからむしろこれは取り締るというと語弊がありますが、個々の問題についてもっとあたたかく相談をして解決をするようなことをすることが、この問題の解決の一つ方法じゃないか。白衣を着ていることはおかしいいということを言っているわけなんです。入院患者が一体そこらを歩いているはずがないというのです。それから恩給で大体やっていけるということになっているのだから、意識的に職業化しているのだ、これを一つ、取り締ったらどうかという議論も多いようです。しかしい、すれにしても現実の姿というものは、当人にとってもせっぱ詰まった問題でありましょうし、また旅行者にとっても、これはただいまお話のように御迷惑なことだと思うのであります。最近だんだん減って参ったようには私聞いておりますが、なお一そうこれらの問題を鉄道、運輸省とも相談いたしまして、個々のケースごとに、ほんとうに生活に困窮しているのかどうか、いろいろ御事情があろうかと思いますので、この事情を一つ解決するような方途を講ずるように方法をとりたいと思います。これは全国的に見ると私は相当の数じゃないかと思っております。こういうことが戦後十一年もたってあるということは、これはやられる方にしても、受ける方にしても好ましくないことでございまするから、御趣旨はよく私は同感でございまして、一つ十分取り締るというような考え方でなしに、今申し上げたようなことでこの問題を解決しよう、あたたかい気持をもってこれに善処していく、こういうように考えております。
  145. 坂田道太

    坂田主査 その問題に関連しまして、ちょっと私から厚生大臣あるいは主管の局長にお尋ねしたいと思います。それは傷痍軍人ではございませんけれども、戦争中に学徒動員で動員をされて、それによってなくなられたり、あるいは手足をもぎ取られたりした方々に対して、何らの補償もなされておらないのではないかというふうに承知をいたしておるのでございますが、もしそうでなかったらそうでないというような実情、あるいはこれに対して何らかの処置を今後とりたいというお考えがもし大臣にございましたら、この際明らかにしていただきたいと思います。
  146. 神田博

    神田国務大臣 ただいま委員長からの御質問は、私も実は心を痛めている問題でございまして、動員学徒、徴用二等につきまして、これは軍の工廠等に行っております者については、幾らか処遇をしたようでございますが、民間工場等に入った方々に対しては何らの措置も施されてないのが今日の実情でございます。私は、この問題は今回おそくなっておりまするが、例の在外財産の問題を解決しよう、海外同胞者の引き揚げた方々に対する処遇を一つここで解決したい、こういうことに考えておりますので、この際に、今の動員学徒、それから徴用工、さらに開拓民が、まだ何らの措置も受けておらないようでございますから、この方々を一つ含めまして今度の海外同胞引揚者の処遇をする際に、あわせてこの問題を解決いたしたい、こういうことで今調査を進めております。
  147. 辻原弘市

    ○辻原分科員 ただいま主査の方から触れられた問題等は重要な問題で、すみやかにお話のように御解決いただきたいと思います。なお詳しく見て参れば、類似の犠牲者が相当数あると思うのです。たとえば防護団などの自衛組織で空襲の際に防火に努めた、あるいは救出に努めた、こういう半公務的な形において出動していった人で、その公務の途上においてなくなられた人も相当おるわけであります。こういうような形の人々も、今の話の動員学徒あるいは開拓団、こういう方々とはやや性質を異にいたしますけれども、しかし同様の種類のものであろうと思いますので、あわせて御検討を願っておきたいと思います。
  148. 神田博

    神田国務大臣 今の防護団の活動中における傷害あるいは死亡等につきましては、戦時惨禍とうような扱いをされておるようでございます。ただ監視所と申しましょうか、直接戦闘要員でないというような国内のそういう方々については、今辻原分科員の述べられたようなことがまだ残っておるようでございます。今回はそういう点も同時に調査を進めまして、すみやかな処遇の解決をいたしたい、かように考えております。
  149. 辻原弘市

    ○辻原分科員 最後に一点お伺いしておきますが、予算の中に、ことしは新しく精神薄弱児について、その度合いの重い者に対して国立施設を設けられるように書いてありますが、この種の精神薄弱あるいは肢体不自由児ないしは完全にそういう範疇には入らないけれども、完全な禁治産あるいは完全な精神異常ではないけれども、ともかく自宅におってはとても家族は手に負えない、あるいは社会的に迷惑をかける、こういう者で少年法の適用の範囲にある者はまだよいといたしましても、たとえば十九才や二十才、この程度のところに年令がいった場合は、これに対する社会の保護機関、矯正機関が今日ないのであります。そういう点について、少年に対する保護に準じて、かなり青少年に対する保護の強化という面も考慮していただきたいと思うのですが、何か思い当られているような点が厚生省あたりにおありになりますならば、一つお答えを願いたいと思います。
  150. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 おとなの精薄と肢体不自由者につきましては、実は社会局の方の所管でございまして、肢体不自由者の方は身体障害者として身体障害者福祉法対象になり、またいろいろ補装具でありますとか、更生医療でありますとか、あるいは府県ごとに置いてありますところの保護更正の施設がございますので、そういうところに収容して保護するようになっておるわけであります。それから精神薄弱者につきましては、精神薄弱者としての特別の施設はございませんけれども、実は保護施設の中に救護施設というのがありまして、もし生活に不自由をしております者でありましたならば、そこに入れて保護をする、こういうようなやり方になっております。ただ身体障害者の中に——これはからだの方の障害だけでございますが、そういう精神的な障害の方を規定いたしまして、身体障害者として取り扱ってない関係上、身体障害者福祉法としての取扱いにおいて欠けておる点があることは事実であります。
  151. 辻原弘市

    ○辻原分科員 ちょっと私の質問がはっきりしなかったようであります。私の申し上げたいのは、少年児童に対しては少年法等の関係あるいはここに盛られておるような福祉対策でもって肢体不自由の関係も、精神薄弱の関係も一応整っておるわけであります。十分ではありませんけれども、ともかく機関としては存在しておるわけであります。ところが今の社会情勢から見ますと、少年という域から脱して、青年に移る段階において——私は肢体不自由の関係を言うのではありませんが、率直に申しまして精神的な面でかなりいろいろなケースのものがあって、それが社会悪をかもしておるのです。私も最近そういう事例にぶつかって困ったことがあるのですが、どうもしようがないのです。いろいろ研究してみましたけれども、一応おとなの範疇に入っておりますから、これは、感化院に入れてもらうわけにいかぬ。五体は健全であって、知能指数は五〇%しかないけれども、とにかく気違いということは言えない。ところが元来人間並みの頭を持っていないのですから、何をしでかすかわからない。家庭のみならず近隣でも手を焼いていて、処置がない。警察に相談してみたけれども、何も悪いことをしないのにどうするわけにもいかぬ。盲学校に相談しても、もう盲学校を卒業したから、どうするわけにもいかぬ。こういう問題にぶつかってみても、社会施設といいますけれども、なかなかうまくいっていないという。私はごく卑近な具体的な問題を申し上げたわけであります。だからそういう一つの柔軟性のある福祉対策というものもやはり何かお考えになる必要があるのじゃないか。機宜に適した方法が講じられないと、存外しゃくし定木で、いろいろの形の中になかなかぎごちない面があって、完全な対策が行われないということの一例を御参考に申し上げたのであって、肢体不自由の関係こま施設はありますけれども、そういう点については実際存在していながら、何らこれに社会的な保護を加えるというようなことができていない、一つ御研究をわずらわしておきたいと思います。いろいろ申し上げたいこともありますが、他の機会に譲ります。
  152. 坂田道太

    坂田主査 これにて厚生省所管に対する質疑は一応終了いたしました。明日は労働省所管に対する質疑に入りたいと存じます。なお質疑の通告、資料要求等はできるだけ早く私までお申し出をお願いいたします。  本日はこれにて散会し、あすは午前十時より開会いたします。    午後五時二十七分散会