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1957-02-14 第26回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十四日(木曜日)    午前十時三十二分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       今井  耕君    重政 誠之君       楢橋  渡君    三浦 一雄君       井上 良二君    今澄  勇君       春日 一幸君    川俣 清音君       栗原 俊夫君    滝井 義高君       永井勝次郎君    横路 節雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 井出一太郎君         通商産業大臣  水田三喜男君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  小川清四郎君         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         農林事務官         (振興局長)  大坪 藤市君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         農林事務官         (蚕糸局長)  須賀 賢二君         食糧庁長官   小倉 武一君         林野庁長官   石谷 憲男君         水産庁次長   奧原日出男君         通商産業政務次         官       長谷川四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     川崎 立太君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (軽工業局長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  森  誓夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  讃岐 喜八君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      岩武 照彦君         中小企業庁長官 川上 為治君         工業技術院長  黒川 眞武君  分科員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会審査部第一審         査長)    三代川敏三郎君         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  藤巻 吉生君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君     ————————————— 二月十四日  分科員井上良二君及び横路節雄辞任につき、その補欠として今澄勇君及び春日一幸君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員春日一幸君及び今澄勇辞任につき、その補欠として滝井義高君及び横路節雄君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員滝井義高辞任につき、その  補欠として井上良二君が委員長の指  名で分科員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算経済  企画庁、農林省及び通商産業各所  管  昭和三十二年度特別会計予算農林  省及び通商産業省所管     —————————————
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は、まず昭和三十二年度一般会計及び同特別会計予算中、通商産業省所管を議題とし、質疑を継続いたします。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井分科員 中小企業の問題については春日君から一括質問をすることになりましたので、私は省略をいたしますが、鉄鋼の問題と対米綿製品輸出の問題の二つについて、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。  いろいろな建設事業相当に強力に推進されるが、これに対する鉄鋼生産が伴っていない、こういうことで建値はあっても市中価格やみ価格で非常に高くなっておりますし、物量的に見ましても相当不足を来たす、こういうふうに考えるのでありますが、政府鉄鋼資材手当についてどういうような需給計画を持っておられるか、それから価格についてはどういう対策を持っておられるか、一括答弁を願いたいと思います。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 鉄鋼につきましては、ことしの需給見通しを立てるときに、大体国の予算の中で公共事業に使う鉄鋼数量と、それから民間で使う数量も単なる推定ではなくて、相当業界希望数字というものをとって検討した結果、去年の需要量はおととしに比べて四割以上という膨大な需要増でありましたが、ことしはそう需要はなくて、伸びは昨年の半分程度で済むだろう、こういう一応の推定から、それをどう確保するかという方針を立てたのでございます。大体内地で生産を一割増すためには原料の問題があって、鉄鉱石スクラップの確保の問題が伴ってきますが、これについてもやや鉄鉱石見通しは立っているし、スクラップの問題は去年よりは二割以上必要だという計算になりますので、これを確保するのが今一番大きい問題で、これについて私どもは非常に心配し、昨日、ほんとうの見通しをつけるために、業界の代表とそれから政府側からも役人がついて米国へこの交渉に行っておる。これによって大体の見通しが立つと私どもは思いますが、国内生産を一割伸ばすこの対策は、大体今のところ可能だと思っています。そうしますと、それによってまだ不足する数量が大体百二十万トンぐらい、これをことしは輸入に仰ぐ、こういう方針を立てていますが、これがもし可能であるということになりますれば、大体鉄鋼需給は一応均衡を得るので、去年の十月以前のような問題は起さないだろうという見通しを今持っております。そうしますと、値段も当然落ちついてきますし、昨年の十月まではああいう事情で建値を三度も変えましたが、ことしはその見通しから見て大体建値も変えなくてやっていけるだろう、こういう見通しでございます。むろんそれにはいろいろな政府側指導、施策というものが必要と思われますので、今御指摘のような建値市中価格の違いを調整するために、今国会鉄鋼需給安定法案の御審議を願って、そういう点の万全を期したい。そうすれば大体鉄鋼需給バランスを害するということは避けられるし、価格も今程度以上高騰させなくても済む。現に十月以降は下っておりますので、この程度値段を維持していくことができるのじゃないか、こういう見通しでございます。
  5. 永井勝次郎

    永井分科員 今船運賃相当上っております。アメリカー日本間は従来一トン十ドル内外船運賃であったわけでありますが、最近では倍以上に上っております。くず鉄の輸入あるいは製品輸入あるいは国内における鉄鋼価格値上り等から見て、中共その他から鉄鉱石を入れるにいたしましても、相当値上りをしておるのじゃないか、それでは今後鉄鋼生産コスト相当上ってくる情勢にあるのではないかと思うのでありますが、その点についてはどのような見通しを持っておられますか。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 ある程度値上りは避けられないだろうと思っていますが、去年の値上りなどと比べたらことしの値上りはごくわずかだ、多くても六%前後の値上りではないか、そうすれば全体の物価への響きというものは、これはもう問題にならないので、その点若干の値上りはあるかもしれないと思っておりますが、そう大きい影響を与えるものにはならないだろう、そういう考えです。
  7. 永井勝次郎

    永井分科員 とにかく今の計画からいたしましても、予定国内生産を一割伸ばす、百二十万トンを輸入する、こういう計画需給バランスがとられているわけです。そうしてその配分はどうしても重点的な配分になっていくだろう、そういたしますと、市中における中小企業関係鉄鋼資材手当というものは非常に窮屈になってくる、場合によっては生産をとめなければならないという時期がくるかもしれない。タイムリーに全部これが入ってくればいいのでありますが、そうでないと時間的なズレで遊ばなければならないという事態がきまして、こういう需給が窮屈な中で操作されるということになると、重点的な大企業やそうした方面はいいが、中小企業関係においては相当にこれは心配状態になってくると思うのですが、その点についての配慮はどういうふうに考えておるか。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 鋼材のあっせん機関を作ったりいろんなことをして中小企業との調整はとっておりますが、千五十万トンなら千五十万トン大体需要があるという今の政府で立てている数字見方を、私は就任しましてからきつく見ているのか甘く見ているのか、この根拠事務当局から聞いて検討してみましたが、この見方相当余裕がある、あまりこちらから手を加えてそんなに要らないだろうというのじゃなくて、各業界希望、このくらいはどうしても今年度需要があるというような希望数字をそのままとって、ゆとりを持った見通しを立てているという状況でございますので、実際においてはこれだけの需要を見越して対策を立てておくのなら、ことしは去年のようなことはなくて、相当需給のそういう問題ではあまり支障なくやれるんじゃないかと思っております。こまかい数字の問題がございましたら局長から申し上げます。
  9. 永井勝次郎

    永井分科員 世界で鉄の生産が始まってから、鋼の総生産額が六十億トンあると言われておる。その鉄が生産されてから七、八十年、その間の鋼の生産が六十億トン、そのうち三分の一の二十億トンは戦後の消費である。だんだん重工業化し、企業の実態が進んで参りまして、非常な圧力に耐えるもの、非常な高温に耐えるもの、こういうようなことで、鋼の需要というものは飛躍的にどんどん伸びていく方向でありますから、今までのように、たとえば千葉に製鉄所を作るということに対して、国柄需要に対して過剰になるというようなことでこれを抑えてきた、そのように、日本産業指導の任に当る通産省が、とにかくこういうような世界の大勢であるにもかかわらず、ただ目先だけのことで処置をして、少し変ってくると飛び上るようにびっくりしてまたなにするというような、科学的な基礎に立った一つの見当なり何なりを持たないで、出たとこ勝負でやっておるという結果が、今日、さあ需要が増してきたという場合に、大量に輸入しなければ一切の生産態勢を軌道に乗せていくことができないという事態になるわけでありますから、この点については十分に一つ今後はっきりとした見通しを持っていただきたいと思います。手近なところをいいましても、重油と石炭関係、あるいは硫黄の国内生産の問題、そういう問題一つ取り上げても、その辺にころがっているわけです。そういう点については、多年党にあって政調の会長をやっておられた水田通産大臣でありますから、一つそういう点ははっきりとした見通しで今後努力していただきたいと思います。  次に、綿紡でありますが、繊維合理化法案を通しましたのが昨年であります。それがどういうような推移にあるか、現在でも登録されたものが綿紡九百二十二万錘ぐらいはあるのではないか。これを少くも本年度においては六百八十万錘ぐらいには縮めなければいけないのじゃないか、もっともっと縮めなければ斜陽産業としての綿紡というものは相当困難な事態になるのではないかと思うのでありますが、この合理化あるいは整理政策というものがどういうふうに推移し、これに今後どういうふうに対処しようとしておるのか。この点が一点。  それから対米輸出の問題については、小室局長が思ったよりは相当強腰でがんばって、いろいろ国際間にも問題を起したというような事態もあって、相当がんばられたようでありますが、結果的にはあまり期待が持てないのではないか。今年のところはまあまあというところでアメリカの方でも押えているようでありますが、やはり下から突き上げてくる態勢というものは相当強い。この綿製品の対米輸出の今までの交渉経過及び今後の見通し、その見通しの上に立ったわが国の対策というようなものを一括して御答弁を願いたいと思います。
  10. 小室恒夫

    小室政府委員 数字問題等もありますので、私から御答弁申し上げます。  繊維工業設備臨時措置法に基きまして昨年の十月一日に綿紡績設備登録を実施いたしましたが、九百二万錘という計算になっております。一昨年繊維産業総合対策審議会という通産大臣諮問機関において計算をいたしました節には、当時八百万錘ありました綿紡績錘数のうちで百二十万錘が過剰ではないかという一応の推算をいたしたのでありますが、まあいわゆる神武以来の好況ということで内需綿製品についても昨年になりますと非常にふえて参りましたので、輸出も一昨年に比べて累増するというようなことでございまして、昨年の前半には綿糸価格が非常に高騰したような事態もありまして、従来やっておりました綿紡操短を撤廃して、フル生産にいたしました結果、昨年の綿紡生産する糸の数量最高月産二十四万俵に近い数字まで出ておりまして、一昨年六百八十万錘が適正ではないかという計算をしたときとだいぶ情勢が変って参りまして、まあいわば綿紡についてはだいぶ拡大均衡に近いような形が実現して参りまして、最近法律に基く審議会で、綿紡設備はどの程度が適当であろうかということを計算いたす作業をいたしております。業界の方から出た数字としては、八百四十万錘ぐらいが適当ではなかろうか、こういう数字紡績業界の方から出ておるような工合でございます。私どもはその推算根拠等を逐一検討して参らなければならぬと思っておりますが、いずれにしても一昨年の審議会計算した六百八十万錘が適正だというようなことではない、もう少し大きな数字になると思いますので、かりに業界案の八百四十万錘を今の九百万錘強の現状と比べますと、あまり過剰設備はないという計算になりますが、これは好況の時代において計算しておることでもありますので、長期的に見てどの辺が適切であるかということは、さらに検討を重ねたいと思っております。最近までのところ特に綿糸価格が下っておるということもありませんし、そうかといってばかに上っていることもありません。大体安定した状況でございます。本年の輸出見通し内需見通しは、昨年に比べてそれほど悪くございません。輸出の方も若干ではあるけれども増加するのではないかと、綿製品については考えております。  それから対米交渉でありますが、これも大臣就任前に実際上大部分交渉が行われた経緯もありますので、私から申し上げますが、確かに私ども相当努力いたしましたが、最後にでき上った成果がどこからも御満足いただくようなことにならなかったことは残念に思っております。しかしながら、アメリカ側との話し合いの結果できました本年の綿製品輸出規制内容と申しますものは、総ワクについては一昨年の実績というところに基礎を置いて、一次製品、二次製品合計いたしまして一億三千五百万ヤール、しかも当方の希望が通って、いわゆる二次製品布帛製品とかメリヤス製品ワクの方は、そのうち一億二千二百万ヤールというような換算の量になっておりまして、綿布よりも多いという形になっております。この辺については大体私どもとしては満足すべき結果であったように思うのであります。ただ個別に、ベッチンあるいはギンガムというようなものの輸出数量については、アメリカ側業界の反撃というか、反対運動が非常に強く、私どもの主張が十分貫徹できなかった、そのために中小企業の多いこれらの生産の部門に、相当の打撃を与えたということは非常に遺憾に思っております。なおその後ベッチン輸入関税引き上げを大統領は拒否し、またギンガム輸入関税引き上げの案を関税委員会では却下し、審議を打ち切りました。また最近では州法の、問題になったジョージアの繊維品標示法というようなものも上院で否決するというようなことで、実際上向うが道義的に約束しておりますところのアメリカ側輸入制限運動輸入制限をなくすということについては確実に効果をおさめているように思うのであります。はなはだ簡単でありますが、一言お答え申し上げます。
  11. 永井勝次郎

    永井分科員 なおこれらの問題については、いずれ商工委員会なり何なり、別の機会十分内容について質問することにしまして、本日は時間がありませんからこれだけにしておきます。  もう一つ最後にお尋ねしたいのは、これも大臣はおわかりでないと思いますから、通商局長にお尋ねしますが、ハッカ輸出の問題です。今国内ハッカ生産年間百万斤内外であります。ハッカのことを質問してわかりますか。
  12. 松尾金藏

    松尾政府委員 はなはだ申しわけありませんが、どうもハッカそのもののことはあまり勉強しておりませんので……。
  13. 永井勝次郎

    永井分科員 それでは商工委員会でやることにしますが、一つこの予算の中で大臣考えてもらいたいと思うのは、ハッカというものは百万斤内外年間生産がある、そのうち国内消費は大体二十五万あるいは三十万前後であります。これはもうずっと通常な状態で、多くもならなければ減りもしない。その差額は大体全部輸出に向けられる。これはほかの輸出と違いまして、ほとんど日本の特産的なもので日本の特産というのも何ですが、国内生産して、輸出したものはまるまる日本手取りになるわけで、この輸出総額年間三十億ないし四十億内外というような多額な輸出総額になっているわけです。これで今競合しているのがブラジルなり中共というところであります。これらの国々は、戦前は日本製品がほとんど世界を席巻したのですが、戦時中にブラジルなり中共日本にとってかわって、戦後日本世界市場を回復するために努力しておるわけです。日本製品の進出を押えるために、ブラジルやなんかは非常な国の助成のもとに、日本製品を阻止することをやっておる。ところが日本ではこれの輸出に対して何らの助成、何らの援助を与えない。ほったらかしにしておる。これが零細業者の努力で今やっておるわけですが、脳分は主としてアメリカに、それから油分は主としてヨーロッパの方に向けておるわけです。これはただ民間でやっておるのですから、製品にして早く処分してしまわなければ、手持ちして値上りを待つとか何とかいうことがなかなかできない。大体その時期が八月である。でありますから、世界の相場をする投機的な商品にも使われておるわけですから、世界では、日本では八月にはもう大体手持ちを売らなければならないのだということを見通して、八月まではたたいて買っておる。そうして八月が過ぎてから、世界市場はぐっと上ってくる。上ってきて向うから引き合いのきたときにはもう日本では手持ちしてないで、全部売り払っておるから、上ったときには指をくわえて見ていなければならぬ、こういうような状態です。ですからこれを農林省通産省がもっと話し合いをして、まるまる三十億から四十億の手取りになるこの特殊な輸出品でありますから、何か政府機関でこれの余ったやつは手持ちしておいて、これは絶対に腐るものでもなければ、何することもない。時間の経過を見ますと必ずこれはもうかる商売でありますから、そういうような一つ機関を作って、輸出の面においてダンピングであるとか何とかいう心配がなく、そういうそしりを受けないで、買い取って、この一年間に上ったら、それに売り応ずるというような措置をすることだけによって、なお相当額の有利な条件を確保することができるのではないか、こう思うのでありますが、おわかりでないということでありますから、これだけ申し上げまして、一つ御研究を願いたい。これに対して、大臣は、できればこの予算の中に組まれておる予算の操作においてやる方法はないかどうか、それから米の食管会計その他の問題について、三十二年度の補正予算を提出するというような状況にあるということでありますが、そういうような時期には、これらの問題を何とか措置する考えがあるかどうか、一つ御所見を承わっておきたいと、こう思います。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 私もそういう問題は初めて聞きまして、今まで党におるときあまり陳情を受けたこともございませんでしたが、そういう問題があるとすれば、これは農林当局と私の方で相談して、対策を研究いたします。
  15. 大橋武夫

    大橋主査 よろしゅうございますか。それでは春日一幸君。
  16. 春日一幸

    春日分科員 私は主として中小企業組織強化に関する問題についてお伺いをいたしたいと思います。この問題につきましては、先般本会議において、私の質問に答えられたことでありますが、本会議の性質上、具体性を帯びておりませんので、この機会に明確にかつ具体的に御答弁を願って、政府方針を明らかにしておいていただきたいと存ずるのであります。戦後日本経済が、独占禁止法を基調といたしまして、公正かつ自由なる競争という立場に立っておりまして、これが次第に過当競争になって、そうして中小企業相互間に共倒れの傾向を生んでおります。従ってそれが著しく過当競争に陥らないよう、事前かつ予防的措置として、常時何らかの調整を加えていくべきである、こういう意見がだんだんと高まって参りまして、またそのことなくしては、中小企業の安定ははかり得ない、こういう立場から、昨年は中小企業安定審議会においても、答申を政府に発したと思うのであります。その立場に立って、政府中小企業等組織法とかいう法律を、今回それらの問題を解決するために今次国会に提出する、こういう予定であるかに承わっておるのであります。しかしながら、国会が始まりましてからすでに二ヵ月を経過しておりますが、いまだその運びに至っておりません。これは政府の責任において、いつごろそういう法律案を出すのであるか、あるいはまた出さないのであるか。さらに加えて、この法律案内容、大体の要綱でけっこうでありますから、すでに御決定になったものがあれば、この際承わっておきたい。
  17. 水田三喜男

    水田国務大臣 先般本会議で申し上げました通り、今国会にその組織法案を提出するつもりで、今準備を急いでおります。大体今の見通しを申しますと、公取委員会との問題が、まだ政府部内において調整すべき点が残っておることと、御承知のように、政府立法事前与党側にも相談するという慣例になっていますので、今相談をかけておって、その審議相当進んでいるという状態でございますので、早ければ三月四、五日ごろまでに提出の運びになれるんじゃないか。大体今のところそういう見通し作業を進めておるところでございます。この法案の大体の要綱につきましては、中小企業庁長官から御説明いたさせます。
  18. 川上為治

    川上政府委員 今大臣からお話がありましたように、現在いろいろまだ検討をいたしておりますが、大体の骨子としましては、中小企業安定審議会におきましていろいろ要望されました事項を骨格として考えております。  第一点は、いわゆる現在は協同組合調整組合二つがあるわけでございますけれども調整組合において経済的な事業をどうしてもやる必要がありはしないかというような要望もありますので、調整組合で同時に、必要がありますれば、経済的な協同事業を行わせるというのが一点であります。それから現在の調整組合におきましては、生産者だけ、しかも政令によりまして指定された業種だけでございますけれども、この際どうしてもある程度商業者も認めるべきじゃないかというような意見も非常に強くありますので、この際生産者だけではなくて、やはり商業者も入れるべきじゃないかという点が第二点であります。第三点は、現在の大企業あるいはその他の取引先の関係におきまして、いろいろ問題がありますので、業界の要望としまして、組合において、その取引先なりあるいはまた大企業に対しまして、協同的な交渉ができるような措置をとってもらいたいというような意見も非常に強くありますので、いわゆる団体交渉権と申しますか、そういう意味の条文を作りたいというふうに考えております。それから第四点は、現在アウトサイダーに対しましては、調整組合におきましては調整命令というのが出ることになっておりまして、また現実に出ておる組合もあるわけでありますが、やはり強制加入をさして、その内部において調整をはかるということがいいんではないか。たとえば経費分担の問題におきましても、あるいは検査をするというような問題におきましても、あるいは輸出貿易等におきましては非常に変動が激しくありますので、それに対応いたしますためには、どうしてもやはり組合の中にアウトサイダーを加入させておいた方がいいんじゃないかというような問題もありますので、これにつきましても相当条件をしぼりまして強制加入の制度をやはり作った方がいいんじゃないかというような点、これが第四点であります。大体この四つの点が中心になりましてこの法律を作りたいと考えております。なお現在協同純合法あるいは安定法というような法律があるわけですが、これをこの際一本にまとめて、いわゆる中小企業組織法といいますか、そういう形において法律を作っていきたいというふうに考えております。
  19. 春日一幸

    春日分科員 巷間伝えられておるところによりますと、この法律案政府提案の形で提案することを避けて、議員立法で出すというような説も伝えられておるわけです。これらの法律案中小企業の安定とその振興のために必要欠くべからずという立場において審議会も答申をし、政府もそれを採択しておるわけでありますが、大臣の決意はこれを政府提案で出すのであるか、それとも責任を避けて議員立法の形で出すのであるか、この際その決意を承わっておきたい。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 この法律中小企業の組織化についての基本法ともいうべきものであるという点と、それから政府がこの問題解決のために審議会を作って、その審議会の答申を政府自身が受けておるのですから、これに基いて立法する以上、当然政府立法が適当である、こういうふうに考えて、私は今のところ政府提案でこの法律を出したいと考えております。
  21. 春日一幸

    春日分科員 そういたしますと、ただい、大臣御発言の通り、それは中小企業の基本法とも言うべき重大な立法である。そうすれば、これは全国の商業協同組合、工業協同組合、実に三万数千の組織に対して重大な影響を与えて参る法律であると思うのであります。当然これに対しては相当予算措置が必要であると私は考えます。さらに私はこの法律政府案の内容をもとよりつまびらかに知りませんけれども、苦情が発生したり何かする場合は、当然それに伴うて処理機関等も新しく設置することが必要でありましょう。そうすれば当然政府提案で出すからには、その法律を実施するに必要な予算が必要であると思うのであるが、予算措置予算面に何ら講じられていない。これはどういうふうにこれを実施して参られるのであるか、この際伺っておきたい。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府提案の予定を立てております以上、当然予算考えなければならぬだろうということで、省内でも一ぺん検討しましたが、この立法について特別の予算措置をとらなくても今のところはいいということでございまして、予算措置はとっておりません。
  23. 春日一幸

    春日分科員 団体交渉、それから調整事業、こういうような機能を持っていないところの協同組織ですら、協同組合ですら、御承知の通り、その組合の運営を円滑ならしめるためには、昨年度の予算においては三千万円、三十二年度においては三千五百万円、これだけの補助を必要といたしておるわけであります。それでなければ協同組織の円滑な運営ができないとされておる。いわんや今日新しく団体交渉、団体協約、さらにまた調整事業価格の協定、生産数量の制限等の重大な機能をこれらの協同組織が持つに至るわけなんです。こういう協同組織に対して、国がそういう法律を作って何らかの助成も財政措置も行わない。そんなことでこの協同組織が新しく出発できると考えておるのでありますか。この点を一つこだわらずに、必要であるならば後日補正をもって措置を講ずるとか、何らかの措置をとるのでなければ、こんな大きなわが国経済の重大変革をもたらすような立法措置をして、一銭も予算措置を講じないというばかなことがありますか。私はもう一ぺん大臣から政治的な配慮を加えた御答弁を願いたいと思います。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 今御指摘のような予算措置は、今の組合に対してあるのですから、これは法律が通れば、その予算のやり繰りができるということと、それでなおかつどうしても不足するというときには、予備費その他のものもございますから、特別にこうという予算を盛らなくてもやっていけるというような話でございましたので、このための予定予算をとっておかなかったということで、大体やっていけると思います。
  25. 春日一幸

    春日分科員 新しい法律で当然強制加入あるいはその他の調整命令等が発せられて参りますれば、それに服従する者と服従せざる者も服従を要求する者との間において、やはりこれは国が調停しなければならない。しかもそれが今回何万という協同組織を対象にするところの調停を行うということになりますと、私どもの常識をもってそんたくすれば、あたかも労働組合法に基いて設置されております地方の労働委員会のそれと同じように、それぞれの苦情処理機関を作らなければならぬ。それに対しても私は相当予算を必要とすると考えるのでありますけれども、これは最初の法律でありますし、政府見通しも十分に立っていないようでありますし、法律案自体がまだ成案されていないということでありますから、私はこの際この問題は深くは論じません。どうか虚心たんかいに、せっかくそういうような画期的な経済立法を行いまする限りは、これらの組織が円滑にあやまつところなく運営のできるように、十分なる予算措置を講ぜられることを強く要望いたします。なお予備費があるからと言われておりますけれども、わずかばかりの予備費でもってこういう法律が実施できるとは私は考えません。必要に応じて臨機の処置をとられることを強く要望いたしまして次の質問に移ります。  もう一つ、明らかにしておいてもらわなければなりませんのは、先般の本会議で明確になっておりませんでしたので、この際さらに明確に大臣の所信を伺っておきたいのでありますが、例の官公需品を中小企業に発注せしめるための法的措置、これは大臣がかつて政調会長であられたころ、自民党の政策として天下に公約されました。今日大臣がみずからその責任の地位に立たれたのでありますから、今回当然その法的措置を講ぜられて、その実施をされることと私は期待をいたしておりますが、これまたそれぞれ会計法あるいは財政法その他必要な法的措置が必要でありましょう。今日いまだその立法がいついかなる形で本院に提出されるか明らかになっておりませんので、この際明確にこれらの法的措置をいつ講ぜられるのか伺っておきたいと思います。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 立法措置については、この間お答え申しました通り検討中でございます。と申しますのは、技術的にこれはむずかしい問題でございまして、物資の調達責任者から言わせますと、官庁としては、いかにいい品物を安く買うかという方針で物資の調達をするのが担当者の任務だ。そういうところへ持ってきて、ただ社会政策的な意味の購買方法を加味しろということで、場合によっては若干物が悪くなったり値段が高くなったり、あるいは調達がおくれたりしても、中小企業を助けるのだというふうに、そういう政策的のものをこの調達担当者に負わせるということは、なかなかむずかしい問題を起すというようなことで、根本論について異論を唱えておる官庁も現在ある。それから、そうでなくて話し合いによって一定量の発注をやるということに自分たちは協力するというところもありますし、今官庁内の意見調整をやっておる、こういう段階でございますので、なるべく早くこの意見調整を終って何らかの措置をとりたいと考えております。
  27. 春日一幸

    春日分科員 非常に困難であると言われておりますが、このことは水田さんが政調会長であられたころ、当然その困難性についても御検討があってしかるべき問題であると思うのであります。そういう検討の上に立ってなおかつ自民党の中小企業政策としてかつて天下に公約せられた事柄でありますから、これはあらゆる困難を乗り越えて実施される当然の責任があると思います。  なお申し上げたいのでありますが、アメリカの国防省の予算決算会計令みたいなものには、国防省総予算の一割以上のものを中小企業に発注しなければならぬという規定のあることは、これは当然大臣も御調査になっていると思います。アメリカのようなああいうところでも、そういうことが可能なのであります。やればやっていけるのであります。また現実にわが国における官公需品の発注においても、当然中小企業において弁じ得るものが幾多ある。そういうものは予算の総ワクの中の一定割合を中小企業に発注し、その中小企業に対する官公需品の発注を通じて有効需要を確保していくということは政策目的にもかなったことでありますから、これは一つ当然やっていただきたいと思います。現在の官公需品の発注が主として大企業に片寄っており、これがまた相当巨額に上っておるというこの現実からいろいろと分析判断いたしますれば、これが公正な措置であると考えますから、せっかく検討中でありますれば、これこそは予算措置を伴わないで実施ができ、そうして中小企業振興政策として効果を上げ得ると考えますから、これは一つ大臣の責任においてすみやかに関係官庁間の意見調整をせられて所要の法的措置を講じていただくことを強く要望いたしておきます。  それから次に、中小企業金融問題についてお伺いいたしたいのであります。現在中小企業金融というものが何ら好転していないことは、もういろいろな資料で十分立証せられておるところでありまして全国の各手形交換所の手形不渡り件数というものは、不況時代の三十年度のそれよりも神武景気といわれた三十一年度の方が多い。これは中小企業金融というものが何ら緩和されていないで、一そう窮乏の度合いを加えておるものが多いということを表明しておるのであります。そこであなたの所管であります政府関係中小企業金融機関についてこの際何らかの措置を講じなければならぬと私は考えるのでありますが、その具体的の方途といたしましては、まず資金量をふやすこと、それから金利を低下せしめること、これであろうと考えます。政府関係金融機関の国民金融公庫、商工組合中央金庫、中小企業金融公庫、これらの資金量をふやすことのために大臣はいかなる抱負をお持ちになっておるか、この際一つ伺っておきたいと存ずるわけであります。  御承知ではありましょうが、国民金融公庫は申し込みの四分の一しか応諾できない、中小企業金融公庫またしかりであります。商工中金におきましては事情またおのずから別でありましょうが、そういうような情勢下にあるのでありまして、一方中小企業の金融というものは非常に困っておる。この政策金融の資金量増大のための大臣方針はどういう方向に進んでおるか、この際御答弁願いたい。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 中小企業の金融の状態を見ますと、政府機関の金融よりも最近は一般市中銀行の中小企業への貸し出しというものが非常に増大しまして、三十一年度を見ますと三十年度よりも千五百億円以上中小企業部門べの貸し出しがふえたというようなことになって、相当金融は中小企業に対しては緩和している方向だと私は考えています。むしろ政府関係中小企業金融機関べの資金量をふやすことの方が足らなかった、こういうふうに考えておりますので、本年度はまず運用額をふやすということに力を入れまして、この間御説明したかと思いますが、国民金融公庫、中小企業金融公庫、この二つだけでも昨年よりは二百七十億前後の資金量をふやすということをやっております。  それから金利の点でございますが、中小企業金融公庫の金利に比べて商工中央金庫の方が非常に利子が高い。これを今平均一割五分くらいのものを一割以下に下げたいという考えから、今度政府が十五億出資する、それから二十億預金部に債券を引き受けさせる、それから現在二十七億円くらいの預託がございますが、これを大体今年度引き揚げないというような話し合いのもとに、金利の引き下げをはかりまして、大体九分九厘前後、平均一割を切るところまでの措置をしておる。さらに中小企業につきましてはやはり信用保証制度を拡大してめんどうを見ることが非常に有効だという結論から、全国五十二の信用保証協会に対して政府は貸付金を行なって、保証能力を拡大させる、これによって中小企業が非常に助かって参りますので、この資金を十億今度の予算で盛って、百億以上保証能力を拡大していくという方針をとるというふうな、一連のことによって、中小企業への資金量というものは、昨年に比べて今回は相当大幅にふやしてあると考えています。
  29. 春日一幸

    春日分科員 今大臣は三十一年度に中小企業金融が手数百億ふえておるから云々という説がありました。なるほどその実数はそれだけふえてはおりますが、それが当然のものであるか、その程度で十分であるかどうかということについては、やはり別個な判断を願っておかなければならぬと思います。かつてのそれがはなはだしく不当に低かったということが逐次緩和されつつあるというにとどまるのでありまして、これは何ら満足すべき指数とは言えないのであります。私がいろいろと調査したところによりますと、うしろに川上長官がおられますから、時間がありませんので詳細な数量は申しませんけれども、製造品出荷額についていえば、中小企業の比重が五三%、輸出についても六〇%、それだけ中小企業生産によって弁ぜられておる。にもかかわらず金融は今あなたの言われたふえた数字を加えても、一般市中銀行のそれを加えても、わが国における総貸出額、これは三十一年九月に調査したものでありますが、四兆五千四百億の中で、中小企業向けのものが二兆二千億、これは四〇%に満たない。雇用壁から、生産量から、わが国産業構造の中において五〇%以上、あるいは六〇%近く、中小企業がそれだけの生産を行い、それだけの役割を果しておるのに、金融の面においては総貸出量の四〇%未満ということは、市中銀行も政府関係金融機関も一切を含めてなおかつ資金量が不当に少いということを証明しておるものであります。だからこそ中小企業が金詰まりで困っておるのだ、従ってその結果が不渡りの件数の累増になって現われておるのだ、このことをよくお考えになって、しかし当面市中金融機関に対しては早急に唐突な指令も出されないであろうから、この間の政策的措置としてはやはり政府関係金融機関の資金量をできるだけ増大するの措置をはからなければならぬ、こういうところに私は帰着してくると思うのであります。その場合にはどうしたらいいかということになりますと、これは百億や二百億の政府資金を出したところで、なかなか問題の解決点にはならない。現に中小企業に対する貸し出し残が二兆二千億もあるところで百億ふえたって二百億ふえたって大して問題の解決ははかり得ない、これは少くとも一挙に数百億、私たちの考えでは五百億ないし七百億程度の政策金融、資金源がこの際政府において準備されるならば、私は相当緩和に役立つと考えるのであります。だからそういう方途を考えるという場合に、財政資金は枯渇しておって十分ではないから、別途の方法で講じていかなければならぬ、そこでいろいろと検討して参りますと、結局この商工中金のそれと同じように、国民金融公庫とそれから中小企業金融公庫に金融債を発行せしめるの機能を付与して、民間資金を導入していくような方法を講ずる、そうすれば商工中金の政府財政投融資はわずかのものであっても、七百億近いところの資金量が確保できておるのでありますから、すなわち金融債を発行することによって資金量を増強して確保し得る前例がここに成功しておるのでありますから、私は国民金融公庫と少くとも中小企業金融公庫に金融債を発行せしめて、民間資金を導入せしめ、その道を開いてよってもってその資金量の充足をはかっていく、私はこれは法律を直せばやっていけることだと思うのです。私はこの際大臣が一大勇断をもってこういう道を開くことのために措置をとられる意思はないか、伺っておきたいと思うのであります。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは政府部内でも一応考えた問題でございますが、まだ結論が出ておりません。市中の金融情勢に応じていろいろ考えなければならぬ問題でございまして、まだ大蔵省当局の検討がそこまで行っておりませんで結論が出ておりませんが、それよりもさしあたり私ども考えていますのは、中小企業が困っておるのはやはり長期資金であってしかも用途を一々吟味して金を貸すというような今の貸し方では非常に因るので、用途は問わない、一定の物件があったら、それによって黙って金を貸すという機関があれば、これによって中小企業が助かる面が非常に多いと感じまして、不動産銀行を作るべきだということを二、三年前から主張して、ようやくこれが実現することになり、今年の四月から店開きをすることになりました。これについては政府も出資いたしますし、民間市中銀行もみな出資するというような形で四月から出発いたしますが、ここに政府の財政資金も出してやるし、必要ならばこの機関に金融債の発行を許すというような処置をとって、ここの資金量を広げていくという方が筋が通っていやしないかというので、今私どもはその方を考えているところでして、国民金融公庫に金融債を発行させたらいいかどうかという方はなかなか問題がございまして、まだ検討が進んでおりません。
  31. 春日一幸

    春日分科員 不動産金融の問題でありますが、これはそういう要望もあり、そういう機能も果し得るかと考えますけれども、これは御承知の通りわずか十七億、政府限りで三十億、四十億、五十億では焼け石に水で効果は薄く、役には立たない。将来どう発展するかは後日のことです。私は今当面の問題を説いております。そこで政府関係中小企業金融機関の所管が今大蔵、通産大臣になっておるといえども中小企業行政がこの通産省所管でありまする限り、これは大蔵省の方を説得する役は通産大臣みずから当られなければならぬと思う。特にこの際私は御記憶を喚起いたしたいのでありまするが、一昨年でありまするか、一萬田大蔵大臣のときに、予算委員会でわが党の久保田君が査問するに答えて、これら両公庫に金融債を発行せしめるの措置について、これは賛成である、さっそく実施したいと思うのでそれを検討するという答弁がありました。私どもは多年の要望が達せられたごとく考えて次の機会に大蔵委員会でこれまたさらに具体的にその実施を迫ったのでありまするが、こつ然としてその態度が豹変されまして、今大臣答弁のごとくさらに慎重を要するというような逆戻りをいたしまして、自来じんぜん今日に至っております。こういうわけでありますから、私が申し上げたいのは、金融行政のベテランである一萬田氏にいたしましても、一瞬は金融債を発行せしめるにあらざれば、この両公庫の資金量を充足するの道はないと考えたほどのものであります。自来いろいろな問題がいかに錯綜しておるかは存じませんけれども、こういうなせばなし得ることが今日までなし得ない。ときには市中消化がどうであろうこうであろうということをいわれておりますけれども、現在その預金がだんだんとふえておりますときに、行政指導よろしきを得れば五百億や七百億の政府関係の金融機関の金融債が消化できないというはずはございません。これは予算外に千数百億の公団関係の財政資金を一般市中資金によっておる等から考えましてそれだけの金融債を引き受けさせ消化させるということは私は易々たるものがあると思う。そういう意味でこの際水田通産大臣が長らく中小企業の問題を含めて経済政策については深いうんちくをお持ちになっておるから、この際大蔵大臣と深く折衝されて、これは財政資金を全然必要としないでこの中小企業金融問題の解決がはかり得るのでありますから、この際金融債を発行せしめることのための一つの踏み切りをしていただきたい。この点はいずれ通産委員会等においてさらに問題を明らかにし、具体的例証をあげて御決意を促すつもりでありますけれども、特に一つお願いをいたしたいと存じております。  時間がありませんのでもう一つだけお願いをいたしたいと思いますが、燃料対策についてお伺いをいたします。現在スエズの事件から御承知の通り原油キロ当りの価格が著しく暴騰いたしまして、昨年十二月七千五百円であったものが一月は八千円、二月には一万円、本日の新聞によりますると政府はそれに対して値段引き上げることをストップせしめることのために行政措置を何か講じたようではありますけれども、そういうような末梢的な措置ではなく、やはり根本的な措置政府の燃料対策に誤まりはないか。この際抜本梗塞的に一つこの問題については検討すべきときではないかと考えられるのであります。と申しますのは、戦前におきましては石油業法によりまして取扱い業者は一定量の備蓄の義務を負わされておりました。従いましてこういうような不測の事故によって原油が入って来ないような場合は、それを放出したり適当な措置によりまして、たちまちにしてこういうような暴騰を来たすことのないように、そうして生産関係業者の生産コストについては一定の安定の措置が講じ得るのスペースが残されておりました。ところが今日それぞれの原油あるいは石油関係業者等が何ら一定量の備蓄を義務づけられていないために、従って輸入がとまれば、手持ちはわずかなものであるから、たちまちにして消耗して、需給バランスからたちまち値段の高騰を来たしております。こういう事態はすみやかに通産当局において何らかの対策を談じなければならぬと思うが、今回の実に苦々しい経験にかんがみて政府においては当然何らかの対策が立てられていると思うが、戦前の措置とにらみ合せてこの際どういう施策をとっているか、大臣の御見解を伺いたい。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 ただいまのところは一月から三月までの石油の入手についてはほとんど百パーセントの手配済みであって心配ない。それから四月から六月までの措置についてもほとんど九割の措置がとられていまして大体ことしの六月ごろまでの石油の量を確保するということについてはただいまのところ心配ない。ただ船賃が上るために石油の値段が上るという問題をおそれているだけでございますが、取りあえず石油製品値段を上げないということについては、きょう新聞に出ましたように、昨日事務当局の方が精製会社といろいろな話し合いをつけたというようになっていますので、根本対策と申しますと、さしあたり量を確保することが必要でございまして、これに対する対策は今のところ大体ことしの六月ごろまでは心配ないというところまで行っておりますので、あとの後半期の対策をこれから私どもがやれば、大体童から来るそういう問題はことし防げるのじゃないか、そうして政府の行政措置でなるたけ値段を上げなくて済む方法がそれるのじゃないかと考えているのであります。
  33. 水田三喜男

    ○水田分科員 私の申し上げるのは、経済問題はすべて量と質と価格でありまして高い値段を出せば稀少物資が買えることはあたりまえのことです。私の申し上げるのは、今回はそういうようなことで大した致命的な事柄にはならないで、スエズの問題がああいう工合に解決はいたしましたが、それでそういうような範囲においての問題の処理も可能ではある。しかしこれがかりにあそこから第三次世界大戦でも勃発して来れば、もっぱら原料を海外に依存をしておりまするわが国経済は、たちまちに大混乱に陥ることは必然であります。私の申し上げるのは、そういうような事態が起きても半長期的にそれに対して対応策を自主的に講じ得るの措置をわが国自体として講じておかなければならぬのじゃないか、こういうことを申し上げているのです。戦前においては石油取扱い業者は石油業法によって一定量を備蓄しなければならぬという義務条項があった。ところが今日それがない。こういうことについても検討を加えるのに必要がないか。さらに一歩進んで具体的なことを申し上げるならば、いっそこの際踏み切って公団あるいは公社の関係でもって相当量を政府が備蓄して、そうしてその品薄になったりあるいは運賃が上ったり何かした場合に、手持ちの燃料を放出することによって値段調整数量調整とでも申しますか、その生産コストに重大なる影響を与える燃料価格調整をはかっていく、こういうような必要をお認めにならないか。この点について政府は当然検討したはすだが、検討しておるとするならば、現在その検討されておるところはどの程度のものであるか、この際伺っておきたいのであります。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 その必要は十分認めまして、今当局でこれは検討中でございます。もし今までの詳しい経過があれでしたら……。
  35. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 ただいま大臣が申し上げましたごとく、備蓄の問題につきましては、われわれの事務当局検討をいたしておりまして、まだ確定的な結論を大臣まで申し上げておりませんので、私から従来の経過を申し上げたいと存じます。  日本の現在の原油の貯備能力は三十二日分、現在の操業量を基礎にしていいますとその程度ございます。しかもタンクの能力がそうでございますので、実際その事業を運営していく場合には油の出し入れがありますので、ふだんに貯備し得る量というものはさらにそれを下回っておそらく二十四、五日程度が正常の姿ではあるまいかというふうに考えられます。しかしこの姿は大体日本だけではなく、まず世界の一般の場合にそうでありまして第二次大戦後は、石油企業将来の不安をあまり考えないで、企業の負担を軽くするという意味でそういうふうに貯備の量を少くしてやるということできたのでございますが、ただただいまお話のありましたごとく、フランス等におきましては石油業法によりまして三ヵ月というものの貯備の義務を課しておるということはございますが、全般的に見まして、第二次大戦後の世界の精製業の趨勢は、そういうふうに貯備をなるべく少くしていくという姿であったのであります。日本もそういう格好でやってきたのでございますが、今回のスエズ紛争によりまして原油の供給途絶という心配をしなければならないようになって、それを痛切に感じるようになったのでありまして、われわれとしてもこの際に大いに貯備の能力をふやし、現実にまた貯備能力を持つという態勢を至急とるべきであるというふうに考えております。ところでこれを実行するためにはどういう手かあるかと申しますと、石油業法によりまして戦前にやっておりましたごとく、精製業者に何ヶ月かの貯油の義務を課すということも一番はっきりしたやり方でございますが、これをやった場合には、それによって精製業者の負担の増加した部分は国家が補償しなければならないということになると思います。そうしますと、財政支出を相当かさませるという結果か起るわけでございます。  もう一つ、それでは財政負担を加重しない何かの方法はないかと申しますると、現在政府は原油の割当権を持っておりまして、それによって精製業者をある程度ひっぱっていくという力、行政指導の力を持っておるわけでございますが、この際原油の貯備をやる精製業者に対しては、その割当上、何らかのメリットを与えるということによって、精製業者をして貯備の競争をさせるといいますか、自発的に貯備に積極的に進んでいくという機運を作っていくということも考えられるのでございます。これは財政支出を一文も必要としない貯備のやり方でございますが、それらのそういう行き方も果して的確な運用ができるので、あるかどうか。こういう点についてはまだ明確な結論が出ておりません。ただいまのところそういう二つの方法について検討をいたしておりますが、いずれその結論が出次第、何らかの必要な立法あるいは行政の措置をとりたいと考えております。
  36. 春日一幸

    春日分科員 戦後十ヵ年におきまするわが国の燃料関係輸入業者の利益というものは膨大なものになっております。おそらく私は、ちょっと指数は忘れましたか、流動資産は五百億ないし六百億に達しておると考えられるわけであります。独占価格によって膨大な利潤をおさめたこれらの業者に対して自分の商品であるものを備蓄させるために国家財政の補償を必要とするかのようなことは、私は考えられません。幸いにわが国は輸入管理になっておるわけでありまするから、現在外国からの輸入生産設備を対象として輸入割当が行われておるような手法を踏襲して、その備蓄量を対象として輸入の許可を与えるとか、いろいろな方式によって財政支出を伴わないでなおかつ所要の量を備蓄せしめるの方策も私はあると思うのです。また必要ならば財政資金を投入してもやむを得ないではありましょうが、いずれにしても現在のような状態であって、ちょっと問題が起きればたちまちに値段が上ってくる。すると量が確保できるかどうかもわかりもしない。こういうような不安な状態日本経済が捨て置かれるということは、危険この上もないと断ぜざるを得ません。こういう立場から、私は燃料対策といたしまして、この際石油関係、重油関係は、三ヵ月が適当であるか五ヵ月が適当であるか、フランスだってでたらめをやっておるわけではないでありましょうから、海外に燃料を依存する国の燃料対策等を十分に一つ検討されましてこの政府における苦い経験にかんがみまして必要なる施策の万全を期せられんことを強く要望いたしまして私の質問を終ります。
  37. 大橋武夫

    大橋主査 栗原俊夫君。
  38. 栗原俊夫

    ○栗原分科員 私は大臣に電力関係需給問題、それから今後の開発の見通しについて簡単にお尋ねをしたいと思います。一昨日永井委員からいろいろ電力関係についてはお話があったわけでありますが、非常に好況が伝えられておる中で、ネックが三つある、鉄鋼であり輸送であり発電である、こういうことがいわれておるわけであります。そこで電力需用に対して設備として当面どのくらいな不足を来たしておるか、まず伺いたいと思います。
  39. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 御質問の趣旨がよくわかりませんが、設備の不足と申しますのは、われわれといたしましては、夏季においては、通常の状態であればあまりないように思います。冬におきましてむしろ設備の不足が多いように考えられます。それからいろいろな不測の事故あるいはサイクル調整等の余裕を考えますと、全体にしますと約五、六%程度は不足かと思います。変易においてもその程度見た方が電力の運営上は適当かと思っております。
  40. 栗原俊夫

    ○栗原分科員 設備のキロワットでなくて、電力量はキロワット・アワーで計算するのでございましょうが、だいぶ電力が不足しておる。しかし今後これをどうやって補給していくかについて非常に政府も意を用いて、近年にない莫大な資金を今回投入される、こういうわけでありますが、電力の中にもいろいろな供給の方法がある。水力、火力、特に最近は原子発電というような問題が起ってきておりますが、その見通しとしてこの不足電力を補給していくのに今後どこへ主眼を置いてやっていかれる考えであるか、この点を伺いたいと存じます。
  41. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 先ほどのお尋ねと関連いたしますが、将来の電力需用を考えますと、どうしても今から電源の開発を進めていかなければならないという意味におきまして、昨年の暮れ電源開発計画を改訂いたしたわけでありますが、これにつきましては、大体三十五年度あたりの需用を目標といたしまして、この四ヵ年間に約六百万キロをこえます七百万キロ程度のものを完成いたしたいと思っております。その内訳は水力が約四割、火力が約六割になっております。もう少し長い期間をとって考えますと、今後の燃料事情からいたしますれば、火力のうちで、当然原子力というものが相当なウエートを占めてくるだろうと思うのであります。火力発電の燃料対策といたしまして、原子力を燃料といたします発電を、今後長期にわたります計画のうちに織り込みたいと思って一おります。
  42. 栗原俊夫

    ○栗原分科員 今後水力にはおのずから限度があるわけでありますが、火力発電の一種として、原子力発電というものが具体的に問題になってきた今日、水力の方はやはり工業用水あるいは飲料水というようなことも考えられて、発電地点においては、ただ単に水力発電ということだけでなしに、多目的のダムというようなことにいろいろ構想が進んでおるようでありますが、今後残された工業用水、あるいは飲料用水、農業用水、こうしたものを確保するということを考慮に入れた今後の日本の水力発電の見込み量は、どのくらいに押えておるのでございますか。
  43. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 水力といたしまして、発電に利用し得るものが幾らあるかということにつきましては、目下御承知のように発電水力の調査を全国にわたってやっております。明治時代から始めまして現在が第4回目でございます。三回目までのものにつきましては、大体日本の包蔵水力は二千万キロというふうに考えられております。現在の第四回の水力調査は本年度末をもって完了いたします予定でありますが、大体の値としましては、約三千二百万キロ程度の包蔵水力が利用されるのじゃないかと思っております。そのうち現在、御承知のように水力は約八百万キロ強でございますので、まだ相当残っておりますが、ただこれは今もお話になりましたような、発電としましては落差、つまり位置のエネルギーを利用するわけでありまするが、ほかに水量として考えられる、あるいは工業用水というふうに水そのものを使ってしまう状態もございます。またいろいろな地形の関係から、あるいは社会的な事情から、残っております包蔵水力がそのまま利用されるというわけに参りませんで、三千二百万キロのうちで、どの程度今後利用されますか、一つは開発技術の進歩にもよりますし、もう一つは社会情勢と申しますか、その他のたとえば観光でありますとか、あるいは風致の保存でありますとか、あるいは湛水池の水没保障でありますとかいうふうな、他方のいろいろな社会情勢ともからみあって参るかと思っております。またいろいろな電力料金の原価の推移とも関係いたします。今後十年、ないし二十年たって、だんだん電力料金が上って参りますれば、それに合うように、現在引き合わない地点も開発できるようになって参りますので、的確に幾らできるかわかりませんが、われわれとしましては、できるだけ——残されておる唯一の資源あるいは循環資源でございまして、滅亡するものではございませんので水力の方も決して火力に劣らず、重点を置いていないというわけではございません。
  44. 栗原俊夫

    ○栗原分科員 電力の問題は金融などと違いまして、簡単に政策をきめたというようなことでどうにもならぬものだと思う。仕事を始めてなかなか長年月かかることでありますから、電力の供給の問題等については十分長期の計画を立て、しかも需用の増高に見合って、落ちのない施策を進めていただきたいと存じます。  なお巷間いろいろそうしたことが伝えられておるのですが、駐留軍関係でかなり膨大な電力を使い、しかもこれが非常に安価に使われておる。こうしたことが一般需用に対してなかなか影響があろうというようなことをいわれておりますが、この際これを明らかにしておきたいと思うので、どんな事情になっておりますか、説明を願いたいと思います。
  45. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 駐留軍の需用は、一時、講和条約発効前には相当数量に上っておったようでありますが、現在では大体五億キロワット・アワー程度であるように思います。正確な数字をちょっと今持ち合せておりませんが、大体その見当であります。そうしますと、日本の全体の消費電力量が五百億キロワット・アワーをこしております。一%程度にはならない程度だと存じます。  それから料金も、これは行政協定の方の関係もありまして、日本の官庁需用と同じような扱いをするようなことになっておりますが、私の方で認可しております各電力会社の料金の供給規定によりましてとっております。特に割引いておるわけでもございません。
  46. 栗原俊夫

    ○栗原分科員 これは少しく地元のことになるので申しわけないのですが、長谷川政務次官にちょっとお尋ねしたいのですが、御存じの群馬県営の多目的ダムの一つに加わった発電である赤谷川の問題ですが、建設省の設計のずさんといいますか、見込みの違いといいますか、せっかくでき上ったダムが漏水した。そこで水がためられぬというので、この補強に八億ばかり補強の予算を加えておるわけですが、たまたまその補強のために電力の負担分が増高してきた。こうした場合の電力料金の問題ですが、一昨日永井委員からも電力は原価主義だ、こういうようなことを言っているのですが、これらの見通しについてお答えを願いたいと思うのです。
  47. 長谷川四郎

    ○長谷川政府委員 赤谷川の件は、技術の調査の不十分な点がありまして、その結果八億というような膨大な予算が追加されたわけでございます。従って電力が非常に高く、なってきた。それで今買電契約しようという点について、の大きな価格の相違がきている、こういうことで、それを何とかそろばんのとれるような価格で、つまり東電の力へ売ってもらいたいのだというようなお話があります。しかし一方は、御承知であるかどうか知りませんけれども、山田川といいますか、吾妻郡の発電を起しまして、大体これで一万六千キロくらい起る。そういたしますと、価格が今度は大体二円六十五銭ぐらいであがるから、それとのバランスをとって、それでちょうど買電契約にもマッチする。結論として県の方は損がいかないようになるから、その方をもう一つ本年度起さしてもらいたい、こういうようなことを受けております。しかし御承知のように公営電力の予算は、本年は百五十億でございましたが、起債の継続で大体百四十億くらいのものが食われていってしまう。そうすると余りが大体十億くらいになってしまうわけでございます。その十億になってしまう中に昨年は八件許可をしたわけですが、本年、今すでにもう十五件くらいの要求が各県からありますので、この十億以下の手持ちしかない起債のワクで果して満足を与えることができるかどうかというように心配をしておるのでございますが、いずれにいたしましても、これらの点につきましては、五月になってからでないとはっきりした御返事が申し上げられませんが、そういうような特殊な事情もあります。果してその条件が出るのであれば、私はしかりだと考えております。ただこれは通産省だけできめるわけに参らないので、建設省、自治庁、通産省、この三省で話し合って逐次条件の最もよいところから選ぶということになっておりますが、その最もよい条件の中に加われば、本年度はその目的の第一歩を踏み出すことができるのではないか、こういうふうに考えております。
  48. 栗原俊夫

    ○栗原分科員 不測のことから負担分がふえ、そして建設費が上り、従ってコストが上る。これを県営として、公営として何とかペイするようにするために十分配慮を願う——できれば山田川の方にも新たなるものを作らして、十分ペイするようにしたいと考えております。こういうお話でございますが、そう理解してよろしゅうございますか。  いま一点だけ簡単にお願いします。予算の中に、化学肥料の輸出のためにバンコックへ新たに施設を設けて化学肥料の輸出に大いに張り切るんだ、こういうことになっておりますが、たまたま国内の肥料関係で異常な事態が起っておるのです。それは石灰窒素が非常に窮迫をしておる。よく調べてみると、その途中の状態、すなわちカーバイドの段階において、値段が石灰窒素に持っていくよりもはるかに有利であるということで、どうも石灰窒素の方の生産が少い、こういうことらしいのです。実際において、農村においては期待しておる石灰窒素が入ってこないので、非常に混迷に陥っているのですが、これに対する政府考え方と対策、こうしたものについて一つ御説明を願いたいと思います。
  49. 齋藤正年

    ○齋藤政府委員 最近、特に年末から年始にかけましての渇水で、御存じのようにカーバイドの生産相当減産いたしました。従って石灰窒素も当初の予定の五十三万トンの計画の達成が困難になって参りました。何分この五十三万トンの計画のときには、御存じのように本年度の電力の計画はある程度の豊水を見込んで計画しておりましたもので、若干の減産を来たすことは免れがたいのでございますが、しかし年末年始の余剰電力でありますとか、あるいは今度の消費規正を特別に緩和するというような措置もとって参りましたし、またカーバイドの一般向けの出荷をある程度抑制いたしまして石灰窒素をできるだけ増産させるように処置をとっておりまして、年末から年始ごろには相当減る、四十五、六万トン程度にまで減るんじゃないかということで消費者の方々が心配になられたようでありますけれども、これらの対策もございますし、幸い若干豊水になってきたような状況もございまして、ことしの計画の五十三万トンの一割減ぐらいのところでとどめられるんじゃないかというふうにわれわれは考えております。そういたしますと、昨年度の生産が五十二万トン程度でありましたので、昨年度に比べまして四万トンくらいの減産になりますけれども、同時に同じ無酸根肥料としての尿素が非常に増産になっておりますから、ある程度尿素に転換される需要もあると思われますので、非常に大きな需給の混乱はないのではなかろうかと思っております。  それから先ほどお話がありました肥料の輸出の振興でございますが、石灰窒素は、少くとも本肥料年度につきましては、輸出計画しておるようなことは全然ございません。今われわれが考えておりますのは、主として硫安、尿素と過燐酸の輸出考えたいということで、あの予算は計上してある次第でございます。
  50. 栗原俊夫

    ○栗原分科員 お話を聞いてある程度わかるわけでありますが、実情は、原料としてのカーバイドが石灰窒素に持ち込むよりも値がいいというので流れるということが憂えられている。一方には石灰窒素になったものが品が足らぬというようなことで、値上りを楽しみながら抱き込んでいるという実態もあるやに聞いております。もしもそういう事態があるとするならば、政府の方で徹底的にそういうことを糾明して、ほんとうにルートの上に流れるように徹底的な施策を講じていただきたいと思います。時間がございませんので、以上で終ります。
  51. 大橋武夫

  52. 今澄勇

    今澄分科員 私は、時間がありませんから、化学産業と防衛産業についてお伺いをしておきたいと思います。  その第一は、技術の進歩によって、通産大臣御承知のように、アンモニア系化学工業は格段な様相を呈してきました。そこで日本においても天然ガスその他の利用による化学が三分の一にも下ろうか。そういうことになると、結局設備その他は老朽化して使いものにならぬ。どうしてもこの際革命的な新しい設備の増加ということが必要になるが、こういう化学工業界の技術の進歩に伴う通産省としての国際的な競争に対する保護育成策、並びに設備投資その他に対する見通しについてお考えを伺いたい。
  53. 齋藤正年

    ○齋藤政府委員 化学工業全般につきましての技術の進歩に対する対策というふうな問題は、ちょっと大き過ぎて実はお答えしにくいのでございますが、今お話のございましたアンモニア工業につきましては、お話のように最近アンモニアの炭素源といたしまして、石炭の、あるいはコークスのかわりに石油を使う、あるいは天然ガスを使うということが、世界的に流行——と言うとちょっと語弊がございますが、そういう傾向になってきておりまして、われわれも肥料の価格を引き下げるという国策に基きまして、その方の転換に努力をしている次第でございます。ただ石油につきましては、御存じのように大部分の国が輸入に依存しております。また石油の価格は、世界的に見ましてあまり大した変動がございません。一方石炭は、御存じのように日本石炭価格はヨーロッパ諸国に比べて高いということが、日本の化学工業の非常な弱点であるというふうに従来考えられておったわけでございますので、これが油に転換いたしますれば、むしろ競争上は有利になるというふうにわれわれは考えております。油に転換するために特別の保護措置を講ずる必要があるというふうには考えておらない次第であります。
  54. 今澄勇

    今澄分科員 私はこれらの国際的な競争場裡に立つ化学工業、特にアンモニア系工業に対しては、政府設備投資その他すべてのものに当って強力なる支援を与える必要があると思うのです。それでラクタム、その他繊維産業が次々と多角的にふえましたが、これらの保護、助成と将来の副産物等の処理について一貫した方針を持つ必要があると思いますが、局長さんでけっこうですから、それについてお答えを願いたいと思います。
  55. 齋藤正年

    ○齋藤政府委員 今お話のありました、たとえばナイロンというふうなものが使われるようになりますと、実は繊維工業の特にナイロンのようなものは価格が高い、いわばコストの負担力が強い需要が出て参りますと、肥料のような、国策として価格を引き下げる要請を持っております物資につきましては、それだけコストを負担してくれるところがふえるわけでありますから、その方はむしろ多々ますます弁ずるというふうに考えるべきだ。御存じのように、特に肥料工業は装置工業でございますから、操業度が上昇する、あるいは生産規模が大きくなるということは、そのままコストの低下になるわけでありますから、これは非常に歓迎すべきもので、できるだけこういったアンモニア系の入った合成樹脂あるいは合成繊維が拡張されることをわれわれとしては希望し、また助成もしたいというふうに考えておるわけであります。  それから、肥料のコストを引き下げるために助成をしなければならぬということは、もちろん当然でございまして、現在でも肥料会社の合理化等につきましては、開銀融資のあっせんもやっております。それからまた、先ほどお話いたしましたように、来年度の予算には肥料の輸出のために——最近国際的に肥料の輸出競争が激しくなって参りまして、東南ア市場でも従来のようなセラーズ・マーケットの状態から、だんだんバイヤーズ・マーケットの状態に変るんじゃないだろうかということで、それに備えて一千百万円のサービス・センターのための補助金を計上してある次第でございます。来年度は初年度でございますので、半年分程度でございますが、再来年度は平年度になりますので、さらにまた若干ふえるというふうに考えております。
  56. 今澄勇

    今澄分科員 そう言われるけれども、今のような状態ではもう売れるのは尿素くらいなもので、硫安なんかよそに安いストックがたくさんあって、あなたも知っておるように売ればしない。だから今のあなたの答弁のように、もうラクタムその他副次産業、化学繊維ができればできるほどいいのだ、片方は八千万融資したとか、よそへちょっとしたサービス・センターを置いたくらいのことではどうにもならぬと思う。私は弱小肥料メーカーはこのままでいくと倒れるのじゃないかと思うのですが、そういう自然淘汰をして、肥料メーカーの競争力がないのがつぶれるときには、通産省は放任して見ておるわけですか。
  57. 齋藤正年

    ○齋藤政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、東南ア市場でも若干セラーズ・マーケットの状態から転換しつつあることは事実でございますが、これは中共あるいは東南アというような地域を考えますと、潜在的な肥料の需要量は、硫安に換算いたしまして、数百万トンある。生産量を差し引いたいわば輸入需要でございますが、三百万トンとか、五百万トンとか、あるいは人によりましては、まだその倍にもなる、中共だけでも二千万トンくらいはあるのだという考え方もございまして、これは今後の輸出の努力次第によっては、現在日本の硫安の生産能力は現在三百五、六十万トンくらいに来ていると思いますが、そのうち二百二、三十万トンくらいが内需でございますから、それを除いた百二、三十万トンくらいのものは十分出せる。今の合理化工事が全部完成いたしますと、四百万トンくらいになりますから、輸出量としては百五、六十万トン、場合によっては二百万トン弱くらいのものを輸出しなければならないようになるかと思われますが、少くとも東南アにおきまして硫安の輸出能力のありますのは、当分の間日本以外にはございませんし、しかもあと競争するとしますれば、アメリカなりヨーロッパなりの国で、運賃の面だけから見ましても、これは市況にもよりますけれども、現状では十ドルないし二十ドルくらいは有利なのでありますから、今お話のように早急に企業整備をしなければならぬというふうには、われわれは全然考えておらない次第でございます。
  58. 今澄勇

    今澄分科員 やはり農村関係の皆さんは肥料の値下げを要求されるのは当然だろうと思うのです。ですから、政府としては化学工業、特にアンモニア系工業の将来について一つの目安と、それから輸出についての見通しを立てる、それで国内的な値段の切り下げについても目標を持たなければいかぬと思うのです。今のところは、私はどうも計画的な方途が非常に薄いように思うのです。だからこの間中共へ肥料使節団が行ったけれども、そのときに約束して帰ったのは尿素くらいで、あとの硫安などは、イギリスにも、アメリカにも、日本より五ドルも六ドルも安いのがあって、全然太刀打ちできぬという状態で、私は今の情勢では、こういう科学の進歩、技術の進歩による値下りとストックの増加によるダンピングの国際的競争場裡にあって、当然小さな肥料会社は倒れはしないかと実は心配をしているのです。それは倒れてもしようがないという方針ならばやむを得ぬのだけれども、これらを含めて将来政府国内的な値段も下げ、輸出競争場裡に合うようにするためには、相当設備資金をこれに導入して、化学工業特に肥料工業の基礎を固めていく。そしてこれが副次産業として化繊その他に多く転換をしておりますが、そういうものについても将来の需給と見合って指導していくという一貫した方針をこの際打ち立てなければならぬ大事なときであると思うので、通産大臣のこれに対する御意見一つ聞いて質問をやめます。
  59. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはごもっともだと思いますので、そのように一つ研究をしたいと思います。
  60. 今澄勇

    今澄分科員 次に、防衛産業についてですが、この間局長からF86並びにT33を日本の航空機会社で製造しているという報告を受けたので、大臣がお見えになってから聞こうと思っていたのですが、通産大臣日本における防衛産業についてどういう基本的な指導方針を持っているか、防衛庁が量より質である、人員増加よりも兵器の発達であると言っているのだから、日本の防衛庁が発注する機械もふえるだろう、アメリカの注文する特需関係の兵器の発注もある。さらに今度はアメリカから仕入れた誘導兵器その他を分解して、これもやはり日本の防衛関係産業に発注する、船の方の注文もふえる、こうなると、防衛産業は非常に重大な要素を帯びてくるのだが、通産大臣のこれに対する基本的な方針をまずお伺いしておきたいと思います。
  61. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本の防衛産業は、今まで特需依存でやって参りましたが、この特需はだんだんに減っていく傾向が見えるのと反比例して、防衛庁関係需要というものが現にふえてきているという状態でございますが、防衛力を日本で持っている以上、この防衛力を維持するために必要な軍事生産というものは、やはり自国の産業に負うべきものである。武器弾薬そのほかを外国から支給されるというような情勢を続けていることは、結局日本の防衛力を外国の従属的な防衛力にしてしまう、傭兵化してしまうというおそれもありますので、自分を守る力はやはり自分で育てるという方向にいくべきだと思う。そうしますと、これから防衛産業の育成というものをどうしても計画的にやらなければならぬだろうと思っています。今まで国防会議というものもなかったのですが、ようやくできまして、あそこでこの防衛力について、同時にそれに伴う防衛産業というものについての計画を立てるということになっておりますので、そこで、そういう長期計画を立てて、これに即応した防衛産業の育成策というものをこれから真剣にやっていこうと私ども考えておりますので、さしあたり防衛庁で使う練習用の飛行機とか何とかいうものをまず日本の手で作っていくというために、アメリカとのいろいろな技術提携をやる。すでにその踏み出しはしておりますし、また今度の予算にもあります通り、銃砲弾にしましても、今まで向うの特需で興っておった工場も、この特需が減ったためにその工場をつぶしてしまわなければならぬ。これは将来日本の自衛隊が使うものを日本で自給するのだという方針を持つ以上は、せっかくの設備をそのままつぶしてしまうわけには参りませんので、これを維持していくという、とりあえずの方法を私どもはとりたいと考えてその措置をとっておりますが、将来計画的に日本の防衛産業をもっと伸ばしていく、そして自分で必要な品物だけは自分で作るという態勢までもっていきたいと考えています。
  62. 今澄勇

    今澄分科員 その基本的な方針について、防衛庁当局と打ち合せをされたことはありますか。
  63. 水田三喜男

    水田国務大臣 防衛庁当局とは打ち合せをしております。今度の予算折衝を中心としてもそういう問題がいろいろ議題になりましたが、こういう問題はもう少し計画的にやっていきたい、それで発足まぎわでまだ国防会議がそこまで手が届かぬが、至急そういう問題にまで触れてわれわれが計画を立てるから、その線に沿って本格的なものをやろうというので、防衛庁で作りたがっているいろいろなものを、本年度国内で作るということもやめさせたものもありますし、踏み切らせたものもあるということで、打ち合せは始終しております。
  64. 今澄勇

    今澄分科員 今度国会には出さなかったがMWDP、アメリカ日本との相互武器開発協定に伴なって、九つの種類を防衛庁側がアメリカに要望して、その中でアメリカが三つ指定をして、戦車その他よかろうと言ってきたのだが、これに伴う秘密保護法等の問題があって、今その法案を防衛庁は用意はしておるが、何せ防衛庁長官はかわったばかりで、何もまだわからぬから、この国会には出さぬらしいが、こういったように最近防衛庁の中で研究したもの、これらについて通産省としては、そういった兵器を今の日本の重工業、これらの産業に割り当てるとすると、作り得る水準にあるのかどうか。もう一つは、オネストジョンその他今度七種類の誘導弾を日本に受け入れるが、これらの製造能力と技術水準について通産大臣は大体見通しがあるかどうか。どういう打ち合せになったか、一つお答え願いたいと思います。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだそういう能力は現在ない。順を追って計画的にこれを育成するのでなければむずかしいというので、どうしても防衛産業については育成の計画というものが今必要になっておるのであります。これを至急われわれは政府部内で立てたいと考えております。
  66. 今澄勇

    今澄分科員 担当の局長さんに伺いますが、今日本の防衛関係アメリカの注文、それから防衛庁の注文、その他全部合わして大体三十一年度においては年間幾らぐらい、これが日本の総産業計画の中における。パーセンテージはどのくらいであるかという点について、具体的にちょっと局長さんから御説明願いたいと思います。
  67. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 兵器の日本生産の始まりましたのは昭和二十七年の四月でございます。それから兵器関係の特需としましては、四百八十億円発注がなされております、昨年の十一月までで。これに対して出荷された額が四百五十四億円。そのうち大部分は銃砲弾でございます。それが過去四年半の注文でございます。それから航空機関係は、昭和二十八年以来年々二十五億円程度生産をされ、三十一年度は三十一億円程度生産であります。従いまして、従来はさっき大臣からお話がありましたように、兵器関係は特需にもつぱら依存しておりまして、今後は主として防衛庁の需要になると存じます。ところが防衛庁の需要は、昨年の十二月まででまだ十六億円という程度でありまして、今年度三十二億円。どのくらいの数字になるかは今計算しておりますが、おそらく二十億円をこえる程度になるんじゃないだろうかと存じます。まだ兵器関係は非常に微々たるものであります。従いまして日本の全生産額と比べますと、全産業に占めるパーセンテージはごく微々たるものであります。
  68. 今澄勇

    今澄分科員 そこで私は通産大臣に伺いたい。これまで米軍が発注した兵器については、MSA秘密保護法というMSA供与兵器に関する秘密を守る法律がついておるが、この関係法律日本の兵器産業の会社に適用せられたことがあるかどうか。  それからもう一つは、今後防衛庁側が新しい兵器を日本の会社へ作らせるについて、それの秘密を保護する意味において、通産省側においては秘密を守る何らかの対策を必要と考えておるか、そういうものは必要としないと思っておるか、この問題について大臣の御答弁を願っておきたい。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 今後必要が出てくると思っております。
  70. 今澄勇

    今澄分科員 今後必要が出てくるということは、これらの軍需産業について秘密保護の何らかの立法措置を必要とする、こういう意味ですね。  それから局長さんにそのあとで答えていただきたい。従来MSAの秘密保護法がこれらの軍需工業に適用になった場合があるかないか、なければないとおっしゃっていただけばそれでいいです。
  71. 水田三喜男

    水田国務大臣 今後立法措置が必要になるだろうと私ども考えていますが、いろいろこの検討を目下しておる最中でありまして、いずれにしても今国会にどうこうということは天体ない。それはないということを一応はみんなで検討しましたが、今後は出てくると思います。
  72. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 正確に実は調べてございませんでお答えできませんが、私の感じでは今までなかったと思います。
  73. 今澄勇

    今澄分科員 時間がありませんからもう一つだけ最後通産大臣に伺います。一番大事な点は、戦争前においても日本の軍需産業というのは利益をほしいままにして、そうして国家の権力のもとに国の防衛の名をかりてその利潤を独占したことは、もう私が説くまでもありません。今ここでアメリカの特需その他のものがだんだん減る。日本の工業が、今度スエズの再開を機会に逆転したときに、これらの防衛産業がだんだん発達して、将来防衛産業というものがまた大きな力を占めるに至る場合には、この利潤が独占されるということはまことにけしからぬ話だと思う。そこで今のうちから、これらの国家が発注する防衛関係の注文については、アメリカにおいてもイギリスにおいても、その利潤率は押えられておる。日本ではこれは野放しでずっと戦前からやっておるが、今後は社会公平の観念に立って、防衛産業というものの利潤について、政府が一定の利潤にこれを制限するというものの考え方、方針が将来おありになるかどうか、この点についてお答えを願って質問を終ります。
  74. 水田三喜男

    水田国務大臣 防衛産業の育成については、相当国の援助というようなものがやはり必要になってくるだろうと私ども考えています。従ってそういうふうにして育成するという計画を持つ以上は、そこから不当な利益を出させないといういろいろな規制も同時にあわせ考えなければならないだろう。そういう方向に育成することになるだろうと考えております。
  75. 大橋武夫

  76. 滝井義高

    滝井分科員 少しじみな問題でございますが、実は最近通産省の方で工業地帯の整備が問題になっておりますが、日本産業は現在四大重化学工業地帯を中心にして展開されておるわけなんです。ところがこの四大工業地帯をある程度整備しなければもはや日本産業の伸びというものは一定の限界に達しておる、われわれはそういう見方をしておる。おそらくそういう見方に立って通産省なり経済企画庁は、これらの四大工業地帯を中心にして整備をはかろうとしておるのだと思うのです。そうしますと、その四大工業地帯を整備するに当ってそれらの地帯には過大な人口が密集してきておる。当然工業が発展をして、技術革新が行われ、いわゆる生産性の向上が行われてくるようになれば、そこに住んでおる人間というものに非常に大きな、目に見えない被害というものが及んでくるわけです。通産省は工業地帯の整備に当って、現在の日本の工業やあるいは手工業が人間に及ぼす影響について何かその防止策というものを考えておるのかどうか、この点を一つお聞きしたいのです。
  77. 徳永久次

    ○徳永政府委員 ただいまのお尋ねは非常にむずかしい問題でございまして、御承知の首都圏整備法というのがございます。これは東京、神奈川を中心としました日本の政治、文化、産業の中心地が将来もっと発展していくであろうというようなことから、こういう地帯の産業と文化の調整と申しますか、広く全体の地域的な調整をはかる必要があるだろうということで検討を重ねておるわけであります。大きな目的といたしまして、今後産業中心に発展さす場所を定めると同時に、反面に住民の清潔な生活環境を確保するという地帯をどう整備するかというような問題を一つの大きなテーマにいたしております。この仕事はまだ始まりましたばかりでございまして、外国にも若干この種の事例もありますわけで、今政府部内で内閣を中心といたしまして——昨年できまして、実行が今からなされつつあるというのが現状でございます。今お尋ねのございました四大工業地帯について私どもがどう考えておるかということでございますが、もちろんこれらの地帯につきましても産業が間接に住民の生活環境にいろいろな影響を及ぼすということもあろうかと思いますけれども、しかし大きくは生産中心の場所とそれから住居中心の場所というものを分けて考えていく、そういうあり方の方がより大きな意味で日本経済文化の発展に役立つのではないだろうかという感じを持っておるわけで、私ども本年度から四大工業地帯の整備に手をつけましたけれども、これはまだいろはでございまして、今まで生産条件そのものがあまりに放置され過ぎておった、それをどう合理化し、改善していくかというようなことをまず手初めに手がけたというのがただいまの段階でございます。
  78. 滝井義高

    滝井分科員 私は実は問題を集中的に表現をするために四大工業地帯の問題をお聞きしたのですが、その点についてはどうもきわめて抽象的で、生産中心の場所と住居中心の場所に分けていきたいということでございますが、これは日本のような土地が狭く、人口が四つの島にひしめき合っておる現状では、これは理想案であって、なかなかできないというのが現状なんです。従ってこの狭い土地の中に九千万の人間がひしめき合っておる現段階でものを考えていくとすれば、やはりおのずからそういう理想案ではなかなか問題の解決ができないと思うのです。そこで四大工業地帯にしぼって問題を提起しましたが、具体的な御答弁がなかなかできかねるような、今から研究するというようなことで、現実に問題が起っておるので間に合いそうもありませんので、少し問題の方角を変えて質問したいと思います。  現在御存じの通り、炭鉱地帯における鉱害については臨鉱法なり特鉱法というものができて、鉱害の賠償をやっておるわけです。今度おそらく通産省が出していただくであろう臨鉱法の改正によって、今までは公共あるいは公用の建物からさらに一般家屋のかさ上げといいますか、土盛りといいますか、そういうものまでやって、家屋のある程度の補償をするというところで、七千万円ちょっとこえる金を計上してくれておったと思うのです。そういうものが一つございます。それからいま一つは、最近のはやりのいわゆる原子力の問題が出て参ります。科学技術庁はいち早く原子力の科学の進歩による原子炉その他ができることによって、当然原子炉ができれば、それに近接する住民はそこから出るところの灰あるいは廃液等に対して、非常に大きな、目に見えない被害が国民にしのび寄ってくるだろうということで、いち早くこの原子力の障害防止法というものを出そうとしておる。お宅の方も、工業技術院あたりでは、その原子力の障害を防止するための測量器ですか、そういうものも多分工業技術院の経費の中に千七百九十万円で放射線障害防止のための放射線計測器の基準及び精度を確保するに必要な経費というような、こういう配慮をしております。それからいま一つは、これはやはり鉱工業地帯に非常に多いのですが、いわゆる工業用水を地下から吸い上げる、そうしますと、地下水をくみ上げるために、そこに脱水現象というものが起ってきて、原因不明と多く言われておるのですが、原因不明の地盤沈下が起ってくる。これははっきり地下水をくみ上げたために地盤が沈下したというようなことはわかる。ところがそうでなくてたとえば東京の海岸の埋め立て地というものは、どこで工業用水を地下からくみ上げたから地盤が沈下したかわからない。しかしこういうものについても、多分またお宅の予算にもあったと思いますが、三十一年に工業用水法というものができて、そうして地盤の沈下に対して、これは工業用水でやったのだということがわかれば、地方公共団体が、もうそれ以上地下水をくみ上げるな、こういうある程度制限を設けて、そのかわりに、別に地方公共団体に国が補助を出して、そうしてそこに工業用水の施設をしてやる、こういう予算が多分三億百万くらいお宅の予算にあったと思うのです。こういうように、とにかくそれらのものを一括していえば、鉱業法のいわゆる無過失賠償責任ですか、そういうような形で、とにかく賠償というか、国の金を、われわれの税金をつぎ込んで補助する形が出てきておるということなんです。  ところがそれらのものを総合して、日本経済の伸展に寄与するために国はこういうような、総称して公害と申しますか、こういうものについて、国が一貫して基本的にこういう態度をとるという必要があるかないかということです。私は今予算書をずっと繰ってみると、原子炉の障害からいわゆる石炭鉱業の鉱害、それから今言った工業用水、こういうものが予算である程度見えるのです。一体そういうものに対する国の基本的な方針というものがどこにあるのか、ばらばらにやっていくのか、そういう基本方針一つ大臣にお尋ねしたいと思うのです。
  79. 水田三喜男

    水田国務大臣 今までそういう特別の基本方針というものはありませんでしたが、こういうふうに問題になるたびごとに、その解決策として今おっしゃられたような問題が出てきて一つ一つ解決してきているのですが、今後起り得る問題、また現に問題になっておるのは化学工場などから出る廃液が海をよごす、これについての損害を補償してもらいたい、この予防措置を講じてもらいたいという問題と、それから中小企業の密集地帯においては、これは大企業ではないのですから、自分でそういうものを処理する能力がないために、いろいろ国民生活に迷惑をかけておるという問題が出ておりますので、これは地方の公共団体が何かの措置をしよう、そういう場合には国が一定のめんどうを見てやらなければいかぬじゃないかというような問題が今新たに次々に出てきております。全体の方針としましては、そういうものについて国が今後どういう責任をもってやっていくかという統一した方針を立てる必要があると思いますが、今までのところは、問題が起ってくるに従ってその処理方法を考えてきたというふうに、ばらばらにやってきたというのが実情だと思います。
  80. 滝井義高

    滝井分科員 まあばらばらにやることをお認めになりました。実は私はやはり昨日第二分科会でも問題にした。内閣の態度として、たとえば戦争被害というものについて、政府はもう戦後ではないといわれる十二年もたった現在、どういう方針で臨むのか。たとえば在外財産の問題が出てくると、その在外財産に対して態度をきめる、その次には、今度は地主の土地の問題が出てくると、土地の問題に対してはどうするか、あるいは戦災家屋に対してはどうするか、大体こういうものが出てきたときに、一つ一つそのときにやっていくのか、基本的に何か方針を持っているのか、こういう質問をしたが、これがないのです。だんだん押し進めていきましたところが、もう在外財産問題を最後にして、政府あるいは自民党としては、戦争被害についてはあとは一切社会保障でやります、こういう答弁をされた。ところが自民党の委員の諸君の中からノーノーと声があって、ある委員が大臣のところに行った。そうすると大臣は、滝井さん今の私の発言は及ぶところがどうも大きい。農地や何かは私の所管じゃございません、私の方針は実は厚生行政に関するところだけを限って答弁をしたのでありますから御了承下さいといって、結局自分の答弁を否定されるようなことになってしまった。大体内閣は戦争被害に対してどういう方針で臨んでいくか、社会保障でやるのか、それとももう大幅なわれわれの税金で、どんどん国債みたいなものを出していく方針をとっていくのか、そういう一貫した基本方針というものがなくちゃいかぬ、ところがこれもない。今のように通産省はどんどん輸出を振興させる、日本経済を発展させるためには輸出をやらなければならぬでしょうが、輸出振興をやるには日本の化学工業を発展させなければならぬ。そうすると今度はそこに住んでいる人間に及んでくる影響については出たとこ勝負だというのは、あまりにも一貫性がないし総合性がないと言えると思う。そうしてこれは今大臣ないと言ったが、今後やはり総合的にやってもらわなければならぬと思いますが、そういう方針でいけますかどうか。今後は工業の発展によって、これは当然非常に広範になります。人間ばかりではなくて農業や水産業その他に非常に及ぼしてきますが、それらのものを総合的に検討して、一貫した施策というものを石橋内閣としてはとっていく方針であるかどうか。その点きのうのように言われてひっくり返ることのないように、一つ明白な方針をお示し願いたいと思います。
  81. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは一貫した方針をとっていくべきであろうと思います。
  82. 滝井義高

    滝井分科員 一貫した方針をとっていくべきであろうと思うということでありますが、それでは今度はもう少し具体的に入ってみたい。  実は二十四国会で私は厚生省に向って、鉱害防止法というものを出すべきであるということで、具体的にいろいろな問題を提起いたしまして質問をいたしました。厚生省は、次の通常国会には必ず出しますという言明をしてくれた。そこで今度出すであろうことを期待して、鉱害防止法というものを出すということであったが、どうするのだと言ったら、これまた大臣が実は答弁ができない。事務当局から私はまだ聞いておりません。こういうことだった。ではこの次聞いて答弁をしてくれ、こういうことを言っておった。ところが問題のその鉱害を起す本家本元の所管は通産省なんです。そこでこれは当然厚生省と通産省が話し合っていかなければならぬ問題だと思うのです。厚生省は出すということを二十四国会で言明をしておるのですが、大臣の方のお考えはどうなんですか。
  83. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう法律を出しても、結局いろいろな鉱害に対する基準というものがはっきり出てこない限りは実施できない。煙突の煙がどの程度にどういうふうになった場合に害を及ぼすか、またそれをどういうふうに国が防がせる処置をするかという、非常にむずかしい基準についての研究がないと実効がないというようなことから、水の汚染、そういう問題についても、今それを一つのテーマにして通産省の中で技術院で研究しておるというような段階でございますので、そういうものがもう少し進めばこの立法というところまでいけると思いますが、今のところでは、法律を作るのは簡単ですが、その実効を得るような自信が現在こちらにまだないという程度でございますので、今のところわれわれの方からこの立法を打ち出すというような考えのところまで行っておりません。
  84. 滝井義高

    滝井分科員 実は大臣も御存じのように、放射線の被害というものが、これはなかなか科学的に探究しにくい。現在日本の放射線は、クリスマス島における実験、あるいはビキニの実験、あるいはソビエトにも実験が行われておると、この二つの山の暗い谷間の日本は、お互いのやった実験の灰がどんどんやってくる。そうするとこれは日本に作っておる原子炉から飛び上った放射能の灰でわれわれが被害を受けたのか、あるいはイギリスやアメリカやソビエトの実験のために受けたというのか、その限界はなかなかむずかしい。むずかしくてもあえて原子力問題が問題になると、いち早く総理府はこれを取り上げて立法化しておる。こういう経過、あるいはさいぜんの地下水の問題にしてもそうです。その地盤の沈下というものが地下水をくみ上げたためのものであるかどうかということの明確な科学的な把握は困難な場合が多い。多いけれどもあえてやっておるのです。今大臣は水の問題をおとりになりました。たとえば化学工場から出る廃液が海に流れ込む、あるいは川にどんどん流れていく。そうするとそこの漁業権を侵害する、あるいはノリ、貝類等沿岸の漁業に被害を与える、こういう点がありますが、そういうむずかしい問題まで一挙にやろうということはなかなかむずかしいと思うのです。そこでわかっておるものからある程度やっていく必要があると思う。それは煙のように、セメント工場から煙が出る。たとえばナシの花が咲いている、そうするとこのナシの花の雌しべと雄しべの非常に微妙な関係で結実をしてくるのに、そのセメント工場からどんどん灰が降って雌しべ雄しべにその泥がつくと、雌しべ雄しべの花粉が固まって結実ができない、こういう問題があるわけなんです。こういう問題は一々科学的に分析していってその結論を下すということはなかなか一挙にはできないと思うのです。そこで私はまず簡単なもので言えば、たとえば豆炭の煙、あるいは製鉄の炉を作る耐火煉瓦の原料で石炭のボタを焼いて出る、私の方の言葉ではシャモットといいますが、そういう煙を、工場が野放しにやられておる、町のまん中でやっておるために、その煙というものは付近の人家にずっと入っていって非常な被害を与えている。ところがこれは何ら法的な規制がありません。各都道府県はこれらの規制をするために条例を作ってやっておりますけれども法律上の根拠を持たない条例というものは非常に弱いのです。そういう何か卑近なできやすい面からまず鉱害防止法というものを作って、そうしてだんだんそういう大きなむずかしいものについては研究をやっていく、こういう具体的な過程をとることの方がいいんじゃないかと見ておるのです。現在すでに厚生省の意向を聞いてみると、ある程度法案の準備というものは完了しておるようである。ところがあなたの方との話し合いがうまくいかないために、特に今大臣の指摘をされておる水の問題でひっかかってなかなかうまくいかないらしい。私もそういう水の問題はどけてもかまわないと思う。あるいは大臣の言うように煙の問題は非常に広汎に及ぶというなら、そういう問題は除外してもかまわないと思う。まずお互いに話し合えるところ、科学的に基準のきめ得るものからまずやるということが必要じゃないかと思うのですが、そういう点でこの問題を一つ具体的に厚生省と話し合いになるという意向があるのかどうか、きわめて問題を具体的にしぼっていきましょう、そういう点の意向を一つ聞きたい。
  85. 徳永久次

    ○徳永政府委員 今までのこの問題に対しまする政府部内の話し合い、連絡なり問題点を申し上げまして御参考に資したいと思います。  ただいまお話のように、厚生省からいわゆる鉱害を防止するために何らかの法律を作る必要があるんじゃないかというお話は前々から実は受けておりました。ただ先ほど大臣がお答えになりましたように、厚生省は産業のいろいろな発展がその近くに住んでおる住民に害を与えておるということだけを実は強調しておられますが、そのことは私らは必ずしも否定するわけではないわけです。ただだからといって害を及ぼすようなことを全部とめてしまえというようなのが端的にいいますと結論でございます。それを単純に考えますれば工場をとめてしまえば人間に害を及ぼさなくなる。それでは人間の生活の根拠がなくなるということにもなりますので、そう簡単にできないわけです。最近になりましても厚生省の方から鉱害防止のために廃水の問題が非常にむずかしそうだ。むずかしそうだから廃水の問題はさておいて煙の問題をどうこうしようじゃないか、あるいは騒音の問題をどうこうしようじゃないかというようなことで、ある法律的なものをお作りになって相談をごく最近受けたのでございますが、これも従来と同じでございまして、どういう基準でどう取り扱いをやっていくのかというかんじんかなめのところは全然ブランクでございます。といいますことは、一口にいいますと、どうも害を与えているから押えるようにしたいという気持の表現でございまして、極端に申し上げますれば、法律的に見ますれば、私どもは実体的には法律の体をなしていないのじゃないかと思うわけであります。これはただ私らは厚生省を責めるわけにも参りませんので、その問題につきまして実質的に社会的にほどほどな対策、適当な対策というものはどういうことであろうかということにつきまして、通産省も実は目下のところ具体的な結論的な案というものは何も持っていないというのが現状でございます。しかし問題は非常にあるということは認めますわけで、私ども通産省内にございます産業合理化審議会にもこの問題を研究してもらったことがあるわけでございます。そこでいろいろな内容的には結論まで出ないわけでございますが、とくとこの問題を処理する前提条件というものをもっと科学的に具体的に緻密に調査をして、それからこの問題にとっかかるということにしてもらいたい。しかしとっかかってもらって、どうかする必要は大いにあるというのが一口に言うた結論でございますが、内容的に申しますと、いろいろな鉱害を及ぼしておる実態というものを、政府全体といたしましてまだ総合的な調査も何もしていないというのが現状でございます。それをとくとした上でなければ対策考えられないということが言えようかと思うのでございます。また先ほど来申し上げまするいろいろな基準につきまして、何ら具体的適用の可能性、生産をとめないでできるのかどうなのかというような限度は、どの辺に考えることが妥当であるかどうかという、そういう調査も何もなされていない。これも政府内で当然やらなければならぬ仕事だろうと考えております。またそういうものを処理しまする技術的な研究と申しますか、これもある程度通産省といたしましても、この種の問題の技術を鉱工業技術の研究テーマとしての重要な項目とはいたしておりまするが、それが全般的に熟してないということ、従いましてどの限度のものを産業界に普及徹底さすことが妥当であるかということもまだ十分固まっていない。これも今後の大きな研究問題であろうと思うわけでございます。また補償の仕方につきましても、現在は害を及ぼしました場合には、加害者と被害者との間におきまする金銭賠償というのが民法の原則でございまして、それによりまして従来ある程度のことがなされておることは御承知の通りでございますが、これを一歩進めて鉱業法でやっておりますような無過失損害賠償的なことに考えることが妥当であるかどうか。あるいはまたその方法はやられないとしましても、補償を適正に合理的に行わしめるために政府が何らかの指導と申しますか、あるいは調停と申しますか、いろいろなその種の方法が考えられると思いますが、そういう問題をどういうふうに考えたらいいかというふうな問題も、政府部内といたしまして研究しなければならない大きな問題でございます。かれこれ問題がたくさんございまして、私ども政府内連絡を密にしながら、まず法案を作るということよりも、法案を作り得る素地を、実体を固めるといいますか、その問題にそういう態度でもって実質的なこの問題の解決のための前進できることを考える。それが何より大切なことではないだろうかというふうに考えて、通産省はそんなつもりで関係省と接触もいたしておりますわけでございます。関係省も厚生省ばかりでございませんで、建設省がありましたり、その他の役所がございまして、その点まだ農林省もございますし、円滑に進んでいないのでございますが、通産省としましては、今申し上げましたいろいろのむずかしい問題がございますので、むずかしい問題はこの問題を解きほぐす前提になる実態的な調査研究、それを固める、これにとっかかるということを各省共同でやろうではないかという態度で臨んでおります。
  86. 滝井義高

    滝井分科員 これで終ります。どうも今のように項目的にたくさんあげられると、これは日暮れて道遠しという感を受けるのですね。日々被害を受けている。そして実態は、たとえばセメント工場から煙が出ます。先ほど話したナシの花あるいは野菜類に及ぶと、野菜が売れない。灰がたくさん降ってくるから一生懸命やっても一級品として売れない。それらのものは無過失損害賠償責任、いわゆる賠償の形では出していないのです。セメント業者というものはどういう形で出しているかというと、それぞれの部落に一年に一回ずつ、三万円とか五万円とか見舞金の形で出しているのが現実です。従って多くのところは出しておることは確実なんです。出さなければ農民がそのセメント工場に押しかけていく。だから出している。従って現実はそういう実態が慣行的に行われてきつつある。そこでこれは速急にできやすいものから研究する。これは私見ると、あなた方のことしの予算の中にそういう研究費というものは出ておりません。おそらくやるとすれば、やはりこういうものは二千万、三千万の予算を計上してやらなければとてもできません。だからこれは一つ来年はそういうものを計上してやっていただく、できるものから一つ速急に調査してやっていただきたいと思いますが、そういうできるものからやるのに通産省としてはどの程度の期間がかかるお見通しですか。
  87. 徳永久次

    ○徳永政府委員 できるものからというお話しでございますが、実は先ほど御質疑のございました工業用水道の設置助成の問題を、実はそんなつもりで手がけたわけであります。それから本年度は新しい問題といたしましては、これは私の方の予算にはついておりませんが、建設省の予算の中に主として繊維工業の密集しておりまする地帯、それも中小企業者が大部分の場所におきまして、その事業から排泄しまするいろんな汚水が漁業その他に害を及ぼすというようなこともございまして、その事態を改善するという意味におきまして、事業者にももちろん除害施設をさせるわけでございますけれども、それがばらばらでは何ら意味をなしませんので、まとめて仕事をさせるというような意味も含めまして、それに相手が中小企業者でございますので、国からある程度の施設に対する補助金を出すという形で、特別都市水利施設事業費というような形のものでございますが、三千万円計上いたしまして、非常に顕著に目につく四ヵ地点を選びまして、この排水の除害施設というものをやらせるというようなことをいたしておりますが、大企業と被害者との関係におきましては、今お話のように因果関係が非常に明白であれば補償金の形で出す、因果関係の不明確な場合には見舞金というような形で出しておるのが実情でございます。これを社会全般としまして、どういうふうな調整の仕方をしたらいいかというのが問題で、この問題は非常にむずかしいわけでございますが、むずかしいながら目について、常識的にこれより手がないじゃないか、そしてまたしたら効果がありそうだということを手がけようということで、地盤沈下していきまする工業用水の問題、あるいは染色地帯における中小企業密集地帯の排水処理の問題等も手がけております。気持はお話しのようなつもりでおりますけれども、直接工業法のように、産業そのものにある施設上の責任を課すという点になりますると、まだそこに先ほど来申し上げましたように実態的な調査ができておりませんものですから、すぐそれを手がけていたしますというふうにはいたしかねる。しかし全体の研究問題であるということは十分考えておるということであります。
  88. 滝井義高

    滝井分科員 もう少しこれは通産省の方で研究してもらって、それから予算等も——これは相当研究費が要ると思いますから、それらのものを、——ことしはないならいいですよ。来年度は大臣にお願いして相当大幅にとっていただいて、やはりこれは速急に対策関係各省と協議をして立てていただくことを要望して、一応質問を終ります。
  89. 大橋武夫

    大橋主査 川俣清音君。
  90. 川俣清音

    ○川俣分科員 大臣に二点だけお尋ねしておきます。工業の上昇について相当に自信を持っておられるようですが、三十一年度の上昇率をもって三十二年度を推しはかることは、非常に困難ではないかと思われる点を指摘したい。どういう見解を持っておられるか。ソーダ工業と肥料工業との原料をめぐっての競合、競争が行われておりまして、手当について相当困難を来たしております。あるいは硫酸をめぐっての繊維工業と化学工業との間における争奪戦が始まっておる。これらの加工工業の伸びが期待されるのは、その原科でありまするものの手当が十分でなければ、発展は期せられないのではないか、予想の生産量を確保できないのではないかと思うのですが、この点見通しを持っておられますか、お伺いしたい。
  91. 水田三喜男

    水田国務大臣 硫酸とかカーバイトとか、こういうものがいろいろな関連産業の拡大のネックになるだろうという点は十分検討いたしまして、発展を不均衡にさせたら、一番皆さんが心配される物価の問題を起しますので、そこらは一応勘案しまして、総合的にこの辺という、去年ほどは行きませんが、ことしの伸びはもう絶対値が大きくなっておるのですから、一二%前後という想定を持っておるのでありまして、その想定を出すまでには一応そういう問題も検討してございます。
  92. 川俣清音

    ○川俣分科員 検討されたけれども期待量が得られないというのが、現状ではないかと思うのです。もう一歩進めて、それでは硫酸の基礎になりまする硫黄鉱山の状態を見ましても、これは大へんな問題のようであります。柵原であるとかあるいは松尾のような高品位のものは別ですけれども日本の硫黄鉱山はかなり低品位のものが非常に多い。低品位のものは何によって一番打撃を受けるかというと、輸送です。鉄道運賃の値上りによりまして、これらの低品位のものが円滑に供給できないということが起ってくることは明らかであります。高品位でありまするならば、輸送の値上りが大して響きはいたしませんけれども、低品位のものは非常に大きな打撃を受けるわけです。そうすると、鉄道運賃の値上げというものを、あなた方は計算されていないのではないか。この原料のもとのさらにもとであるところの、ことに硫酸などは、今年度の見通しは、あなた方はそう甘くは見ておられないはずでありますが、その原料でありまする硫黄になりますると、松尾や何かに期待するならば別でありますけれども、それだけではとうてい所要量を得られないことは明らかであります。かなり低品位のものを集めて今ようやく間に合せておるような状態ですから、運賃の値上りが非常に大きなネックになるということを計算に入れておりますかどうか、おそらく入れてないのではないかと思います。入れてなければ運賃に対してどういうような態度をおとりになるつもりか、伺いたい。
  93. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 私からお答え申し上げたいと思います。最近硫酸を使います化学工業が非常に伸びたために、硫黄なり硫化鉱なりの需給が全体として逼迫しておるということは、これは否定できない事実であると思います。しかしながら、日本の鉱業におきましては、一番豊富に埋蔵量を持っておりますのはサルファ系統の鉱物でありまして、長い目で見まするならば、これを輸入しなければ需要を満たすことはできないというようなことはないと思っておりますが、最近の伸びが非常に急なために、たとえば硫黄のごときは、若干輸入をしたという事例はございますが、硫化鉱の場合には、まだそういうころまでいっておりません。  そこで、先ほどのお話でありますが、運賃の改正がさしわたっての問題となって、近い将来の硫黄の需給に混乱が起るのではないかという御心配でございますが、この点は、なるほどそういうような事実も、若干考えられないことはないと思います。しかし、今後われわれは、運賃の各商品別の分担をきめる場合に、できるだけそういう鉱物の遠距離からの輸送については、負担がかからないようにお願いしていこう、こういう方針で運輸省と交渉していこうというふうに考えておるわけでございます。
  94. 川俣清音

    ○川俣分科員 私が指摘するまでもなく、日本のサルファ鉱業は、埋蔵量において決して不足でないことは明らかです。しかし何といいましても、低品位であることはいなめない事実です。硫化鉱にいたしましても、非常な低品位であるわけであります。ほとんど土砂を運んでおるというほどの、サルファでないものを多く運んでいるというほどの低品位であるわけですから、従ってコスト高になることは、しろうとが見ても計算ができることなんです。これがコスト高に影響しないということは、考えられないことです。長距離だけの問題ではないのです。もう三年なり五年なりたって、鉱山が開発されるならば、鉱山において、あるいは製練の方法によりまして、あるいは選鉱の方法によりましてコストを下げていくということも可能になっていくでしょう。ことしあたり選鉱場を作っても、ことしには間に合いませんよ。これが大きなネックになっていることを、あなた方は、あまりはっきり言うと大きな影響を与えると思って控えておるのでしょうけれども、工業の硫酸を必要とする方は、そんな、あなたのように控え目ではとても見通しがつかない。通産省がどんなに確保してあげますといっても、あなた方が運んでやるのではない。おそらくこの硫化鉱のごときは、銅鉱山と相伴って出てくるでしょうが、銅の値段にももちろん影響して支配されるのでありましょう。銅が非常に高くなれば、あるいは硫化鉱の方は損をしても出すということはあり得ると思います。しかしながら、何といっても輸送がネックになって山元に貯蔵されて、工業の方に彼立つような輸送は行われまいと思う。そうしますと、ここに大きなネックがあるとすれば、今工業のうちで一番不足な、問題になっております硫酸銅の生産が上らなければ、期待されるような第二次工業がうまくいかないことは明瞭ですよ。大臣どうなんですか。これは事務当局の問題ではない。値上げに賛成された、あるいはされようとする大臣が、これは自信を持っていなければならないはずです。自分の所管に非常に影響する問題を、やすやすと承諾されるわけはないと思います。
  95. 水田三喜男

    水田国務大臣 この運賃の値上げにつきましては、われわれの関係物資についても相当検討いたしました。セメントとか石炭というようなものが、一番価格の中で占める運賃の比率が大きいのですが、それでも一応この程度の値上げならば何とかやっていけるだろう。そのほかの物資につきましては、価格の中に占める運賃というものは非常に少いので、運賃の若干の値上げが、日本の卸売物価の全体に響く響き方というようなものも〇・二とか、そういうような程度なら大体心配ない。むしろそれよりも、今輸送力が増強されないためにくる値上りとか、あるいは拡大の不均衡化というものの方がおそろしいのだ、やはり政府も金融措置をすると同時に、自己資金を相当持たして、そうしてこの際輸送問題を解決させる、貨車の数量もふやす、いろいろなことをやって、物資の停滞を起さないという方がここのところ急務だというような、いろいろなことから考えて、運賃の値上げを私どもは認めたわけですが、認めたわりに、今おっしゃられるような輸送の停滞とかいうようなものの一掃については、極力やって、そういう事態が、物価の値上りというような事態を起さないようにするつもりでおります。
  96. 川俣清音

    ○川俣分科員 あなたの方で影響がない、少いという自信を持っておられまするならば問題ございません。しかし、事務当局の方は、あなた以上に現実的には憂えておられることもこれは明らかです。事務当局の憂えておることを政治的に解決をしなければならないのが、通産大臣であると思うのです。ただ一方に運賃の値上げを妥協してきて自分の最も生産を願っておりまする、責任を持っておりまする方向に大きなブレーキになるようなことをやすやすとやられるなら、これは別の大臣なら別です。じきにあなたの計画生産に非常に影響することですよ。影響があることは明瞭なんですよ。これがセメントとかいうようなことになりますと、会社も大きいし、あるいは社内保留もありましょうから、ある程度耐え得るでありましょう。しかしながらこれはみんな小山なんです。大きい山もありますけれども、小山からたくさん集めていかなければならぬ。そうすると、運賃の値上りというものが、低品位のものには非常に大きなネックになるのです。今の硫酸工業は、これらのものを集荷できなければ行き詰まってしまうのです。硫酸工業が山へ買い出しにいくというようなことにはおそらくいきますまい。今の硫酸工業は、むしろ価格の高騰を期待しておるのですから、無理に集荷するというようなことはやっておりませんよ。そうなって参りますと、品不足の上の単価高になりまして、ここから大きな破綻がくることは、計算であまりにも明瞭なんですよ。これに対して何も手を打たないで、いや予算の通るまでにはこれだけの生産増強がありますといっても、これは基礎がないのですよ。この点もう一度お尋ねしたいと思います。
  97. 水田三喜男

    水田国務大臣 今申しましたように、私どもは運賃の若干の値上りよりも、輸送が円滑にいかぬ方を今年度は特におそれて、こういう措置をとったのでありますから、運賃の値上りによって今言うような大きい影響があるものは、局長が申しましたように、その点の特別の扱いというようなものについては、運輸省と相談しますし、そうでない方については、われわれも運賃値上げを認めた以上は、輸送が停滞するというようなことだけはないように、そういう問題がもし起れば、個々の問題としてすぐにその対策は立てるということで、支障のないようにやっていくつもりで、値段よりもそっちの方を私どもはおそれておったのですから、その状態がないように万全を期したいと思います。
  98. 川俣清音

    ○川俣分科員 もう一つだけ。輸送力を増大できる見通しというものは、これは来年あるいは再来年なんですよ。ことしの岡に合うような強化はできないのです。あなたの方は今年の計画でしょう。ことしの計画に影響がないかと聞いておる。将来輸送が強化されれば、あなたの言われるような問題は解決するでありましょう。鉄道運賃を上げても、輸送力を強化するには、ことしのうちには間に合わない。ことしの末期になれば、あるいは緒につくでありましょう。ところがあなたの問題は、ことしの生産でしょう。来年、再来年の生産を聞いておるのではありません。ことしのあなたの計画を聞いておる。ことしの計画に対して大きな影響はないか、こういうことなんです。輸送力が強化されれば、来年、再来年強化されるでしょう。これは、あれだけの金を使っていこうとするならば、できないということはないでしょう。それは期待してもいいでしょう。しかし、ことしのものにはならないのです。硫化鉱を運ぶにも、あるいは硫黄を運ぶにも、ことしの役には立たない。ここで、あなたをとっちめたってしょうがない。時間がないから、また別な日に本委員会でやることにしますけれども、ほんとうに何かしらぬけれども、内閣成立早々で不安の中に計画を立てられたようなことになると、これは一つの大きな影響を持ちまして、石橋内閣の薄命が、こういうところから崩壊する危険が多分にあるということだけは、答弁は要らぬから、閣議において十分考えられて、別な委員会において十分答弁できるようにしていただきたいと思います。
  99. 大橋武夫

    大橋主査 これにて通商産業省所管に対する質疑を終了することにいたします。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は二時十分より再開して、農林省所管に対する残余の質疑を継続することにいたします。  暫時休憩いたします。    午後一時二十二分休憩      ————◇—————
  100. 大橋武夫

    大橋主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省所管についての質疑を継続いたします。  なお最初に御了解を願っておきたいと存じますが、農林大臣は渉外事務のため、午後四時に退席したいと申しておられますから、大臣に対する質疑はなるべくそれまでにお済ましいただきたいと存じます。川俣清音君。
  101. 川俣清音

    ○川俣分科員 本来でありますれば、食糧問題について昨日に続いて質疑をいたしたいのでありますが、他の委員との関係もありますので、これを後に回しまして、一時間ばかり他の問題でお尋ねしたいと思います。  今度農林省一つの、画期的なと申しますか重要施策として、従来の土地改良事業の方途を変更いたしまして、特別会計でこれをやろうという案を立てられたようであります。これを予算折衝から見ますと、最初大蔵省は特別会計の設置に対しては強力に反対いたしておりましたために、最後まで予算決定がおくれておったようでありますが、大蔵省は一体どういう理由で一般会計でやらなければならない、特別会計に反対だという意思を持っておったのか、また特別会計でやらなければならないという根拠はどこにあるのか、大臣から答弁を願い、補足は所管の局長から願いたい。
  102. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 今回新しい施策といたしまして特定土地改良特別会計の設置を見たわけでございますが、これは川俣委員も御承知のように、従来土地改良事業の進度というものが非常におくれがちでございました。国家資本を投下いたしました資本効率等の問題からいたしましても、いたずらに長期に延引いたしまする場合には、本来の効果の上らないことは御承知の通りでありまして、この進度をさらに高める、こういうところに一つのねらいがあろうかと思うのでございます。さらに事業の分量等につきましても、一般会計から繰り出す分と融資の分とを合せまする場合には、これによって事業量の拡大ということをも、はかり得るというあたりに目安を置きまして、この措置に出た次第でございます。大蔵当局がどのような見解を持っておったかということは、私のあまり関知せざるところでございまして、大蔵大臣との協議の間においては別段そのようなことは感じられなかったわけであります。
  103. 川俣清音

    ○川俣分科員 大蔵当局の意向がどうであったかわからない、こういうことではこれは済まされない。なぜかというと特別会計を設けるという、抽象的には最終の段階に至って政治的解決をしたようでありますけれども、まだ末端については未解決の問題がたくさん残っているほどに、この問題は最終的に決定しているとはまだ言いかねる部分があるだろうと思う。そこでどういう反対があったのか、それに対して向うの見解はこうだけれども、われわれの見解はこうだ、従ってこういう方向で行くのだ、これならば了解がつくと思うのです。ところが相手の反対理由もはっきりしない。自分はこれでやらなければならないという理由も今の説明じゃ十分じゃない、有力な反対があったのです。われわれもその有力な反対理由については全然その根拠なしとは見ないのでありまして、やはりなかなか理由があったと私どもは見ておる。しかしそれを克服して特別会計をやるからにはそれだけの——反対を押し切ってやるからには、やはりそれだけの根拠を持たなければこれまたぐらついていくであろうと思う。その継続性を疑わざるを得ない。そこでどうしてもこれは明確にしていかないと、にわかに賛成できないということになるわけです。そこでこの見解を聞いている。決して非難攻撃するために聞いているのじゃないのです。あやふやな根拠でやりますと、将来また一年か二年でやめるというような結果も出てこないとは限らない。そこでどういう理由で大蔵省は最後までがんばって反対をして、それをどうして克服していったか、この点が明確にならないと、この進捗度が非常にあやふやなことになりますので、あえてお聞きしている理由はここにあるのです。
  104. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 大蔵省の見解につきましては、先ほど申し上げた通りでありまして、あるいはその折衝の過程をよりよく農地局長あたりが承知をしておるかもしれませんので、今局長を呼んでおりますから、しばらく御猶予を願います。
  105. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは局長から聞くことも一つですけれども、大蔵大臣とあなたの間において最後的にきめたもので、一体どういう理由で特別会計をやらなければならなかったということで、あの大蔵大臣を克服したのか、克服した理由と反対の理由を明らかにしないと、これはほんとうに心細いですよ。心細い理由はあとでも申し上げますけれども、まあ私からいろいろお尋ねする前に、あなたの所見と一体どういうところで大蔵大臣は反対しておったのか、あなたは一体どうしてこれは特別会計をやらなければならないと決意されたか。ただ漫然と井出農林大臣ともあろう方が主張されたことは私は見えない。やはり画期的な施策でありまするから、大きな理由がなければならないと思います。
  106. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 これは大蔵省側が反対をしたとか、あるいはそれを私どもの方で克服をしたとかいうのではなくしてやはりその必要性が問題に対する見解の一致点を見た、こういうふうに御了承を得たいと思います。
  107. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは大蔵当局が個人的な見解として反対しておったのではないと思う。三十年度の予算編成方針に対しても、三十一年度の予算編成方針においてもこれは明らかにしておる点で、反対しておるのです。従って従来の三十年度にとって参りました方針、三十一年度にとって参りました方針をやめて放擲して、これに賛成するからには賛成の理由もあったであろうけれども、反対の理由がにわかに消えたとは察せられない。まだまだ反対の鋭鋒が事務当局の方に残っておるのであろうということが想像されぬわけはないのです。そうすると有力な反対があるということは、特別会計に対する将来の制約が思いやられるわけなんです。そこでどういうふうに克服したか、それは全く鎮撫したのだ、この点の証明がないというと、今度の予算審議する上にこれは重要な事項ですから、非常に悪いようですけれども、あえてお聞きするのです。どうぞ一つ……。
  108. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 この土地改良事業の根幹でありますところの国営土地改良事業に対しまして、特に資金調達の円滑化をはかる、あるいはこれは早期に完成をする、こういう大目的のためにおのずから意見が一致したのでありまして、私としては川俣委員の御指摘になるような御懸念はなかろう、こういうふうに存じておるのであります。
  109. 川俣清音

    ○川俣分科員 それでは私の方から大蔵省の反対の根拠なるものを一応示さなければならない。二つあるようです。一つは今日の会計を非常に複雑ならしめるような特別会計、または公社、公団等は設けないという大蔵省の省議がある。これは省議だそうです。従ってこれは有力なものと見なければなりません。非公式な見解でなくて、省議でそうきめた。それは事務的な問題でありましょうが、これが一つ。  もう一つ予算を食い荒しておって、どれもこれもみな中途半端になっておるのであるからして、既設の事業の完成を第一に、はからなければならないという方針で、三十年度も三十一年度も新規要求を押えて、旧来の事業を遂行する。この妨げになるようなものは認めないという方針をきめておるようであります。そうすると、これらのものをみな克服して、この特別会計というものができ上ったものでありますかどうか、この点をお尋ねしておきたい。私はもう一つ理由があると思いますが、大蔵省はその点を述べておりません。私が主張するのでありますから、これは抜きますが、少くとも大蔵省のこの二点だけに対してどう克服されたか、この点をお伺いいたします。
  110. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 今お示しの二つ考え方でございますが、これは公団とか特別会計とかをやたらに乱設しては相ならぬ。あるいはすでに手をつけた仕事が、円滑に推進しておらぬにもかかわらず、さらに手を広げることはいかがなものか、こういう御批判はあろうかと思います。これが大蔵省の部内で一つの鉄則のようになっておったかどうかということは、私は存じませんが、そういう欠陥なり弊害なりは現在もあるでございましょう。けれども、それにも増して、先ほど来申し上げておる事情がより優先したといいましょうか、この大目的が克服したといわれれば克服したゆえんになるだろうと思います。
  111. 川俣清音

    ○川俣分科員 井出さんにまことに気の毒な質問をするのですが、あなたが先般予算総会において、食管特別会計も、別に特別会計を設けてもすっきりさせることが必要ではないかと言われたことが、だんだんと影が薄れてきておりますことも、これは大蔵当局の意向が反映しておると思う。それは特別会計の乱立を阻止しようという予算編成方針を、今度の予算閣議の前において、前提条件として大蔵省から打ち出されておるはずであります。乱立を避けようということだけで、一つも設けては悪いということにはなっておらぬでしょうが、乱立を避けようということになっておると思う。従いまして、その中において、これをあえてとられたのでありますから、その勇敢さというものは決して認めないわけではないのです。しかしこれをほんとうに克服していないと、ただ名目上のものは獲得したけれども、実行にまた齟齬を来たすのではないか、その意味でお尋ねしておる。決して私は悪口を言う意味じゃないのです。井出さんは一年か二年で、いずれにしてもそう長くは——まあ二年やっておられるでしょうが、そう数年とはわたらないだろう。そうすると、あなたのときに手をつけていって、またはほかの人がやめる事態が起きてくる。そうなると、一体何のためにこういう長期計画のものを一時的にもてあそんだかという非難が必ず起ると思うのです。そこでお聞きしておるのです。そこで、おそらくあなたも前の人のことを非難をする立場にあるでしょうし、あなたのやられたことも非難される結果になるであろうと思うので、私はここに念を押しておるゆえんです。これは以前の内閣からやっております計画から見ますと、国営灌漑排水事業の三十一年度における進捗歩合を見ると、三十一年末における継続事業は、内地、北海道を入れて七十五区になる。現在あなたが計画されておる規模で参りますと、なお十年を要するわけであります。それから国営干拓事業になりますと、三十一年度末における継続地区は二十八地区であってその進捗率は四八%であります。これが完成には十三年何ヵ月ということになりましょう。それから代行干拓になりますと、五十六地区でありますけれども、すでに十数年経過しておる。長いのになると十七年になります。それでいながら、まだその進捗率は五九%。十数年前に必ず五ヵ年計画で進捗してみせますということで予算を組んだものが、だんだん予算が削られていって他に用いられていって総体の代行干拓事業にしましても、あるいは国営灌漑排水事業にいたしましても、だんだん予算が分割されていって、経済効果が上っていない。では、初めから経済効果の上らないことをやったのかといえば、当時の計画は十分経済効果の上るように予算を組み、継続費的な予算を支出して五年なりあるいは七年なりで完成してみせますということで予算が組まれておる。今ではこれは十五年かからなければ経済効果が上らない。これは国費が一つの乱費のような形になって、非難、攻撃がここにも加わってきておる。そうすると、あなたの方で立てられた特別会計もまたこれが五年になり七年なりで進捗度を高めるというのですけれども、初めから進捗度を高めないなどという計画を組まれたことはないのです。過去の提案の場合においては、すみやかに工事を完了して経済効率を上げるのでありますというりっぱな答弁になっておるのです。ところがこれを農民の側から見、国会の側から見ますと、一つもそれが実行されていない現状です。そこで特別会計をやられるというからには、それだけの理由がなければならぬはずだと思う。それがあなたの説明では、どうもまだ十分理解しかねるわけです。まだ十分理解できかねるところは、また本委員会で大蔵大臣と並べてお聞きすることになりましょうが、あそこで言わないでも、ここでトレーニングのつもりで御答弁願いたいのであります。
  112. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 お答えいたしたいと思います。特定土地改良工事特別会計を作る理由につきまして、また現状の各種土地改良につきまして工事が着工後完成までおくれ過ぎておるじゃないか。あわせて特別会計をなぜ設置するかという御質問だと思いますが、終戦後農林省はあるいは緊急開拓あるいは食糧増産計画等を立てまして、また最近は政府全体として経済自立五ヵ年計画、修正しまして六ヵ年計画等を目標計画として立てる一方、毎年予算の編成がございましたが、農業を含めて、農業からの要求も入れました現実の最近の年々の食糧増産費、その中の灌漑排水、干拓その他におきましては、二十五、六年、七年において若干の歳出の増がございましたけれども、三十一年度の予算で御審議がありましたように、積極的な食糧増産費は二百四十九億でございました。三十二年度におきましても、国費の支出としましては二百七十億でございます。これを過去数ヵ年について見ましても、これがやはり現実の日本の国力であった。見方によりますれば、財政の編成の仕方、農業政策のやり方だろう、こういうことにもなるかと思います。結果において私どもに与えられておりまする事業費を含めまする食糧増産費は、右ようの予算であるわけでございます。従いまして根幹的な農林省の土地改良事業、国営の灌漑排水事業について見ますると、全継続地域について見ましても、継続年数は平均すれば五年くらいやっておる。今後残事業としましては、十年くらいかかるわけであります。干拓に至りますると、三十一年度の予算のついておる状況からしますると、過去において平均しまして五年くらいの仕事をいたしまして、今後は十二ヵ年を要するような実情であるわけであります。従いまして、特に残事業がたくさん残っておりまして、最近の予算のついた事情からいたしましては、やるべき事業が長くかかる傾向が多い。こういうものにつきまして一方は国家的な食糧増産のために、また農業者のために、ともになるべく早く計画的に事業を完成することが必要だと考えるのでございます。そこで国営の灌漑排水事業の歳入歳出を特に取り上げて別途経理しやすい新規のものにつきましてまた干拓事業は代行を含めまして国費負担でやっておりましたので、この二者を比べまして、残年量の多いもの、歳入歳出の経理を別途に経理しやすいものをとらえて、これに地元負担のがまんできるというものを借入金として事業費にあてるように入れまして、事業量を一年間においてやり得るものを増しまして、その結果として、あるものは五年、大体において七年において今後完成していこう、計画的に完成をはかろう、こういうふうに考えた次第でございます。
  113. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは地方へ行って、よくわからない農民に訓示するならば、それはそれでごまかされるだろうと思う。しかし大蔵省の反対の理由がどこにあったかという説明には一つもならないのです。これからのは経済効果を上げるんだ、従来のやつは経済効果が上らなくたっていいのだ、こういうことの説明になってしまうのです。大蔵省はおそらくそういうところに問題を起しておったであろうということを私が指摘したのです。国の予算を使うからには、いつの時代だって必ず経済効果ということを大蔵省が非常にやかましく言っているわけだ。農林省は、経済効果よりも、農業政策を打ち出して、経済効果が上らないでも、これは農業政策としてとらなければならないということを主張してきただろうと思う。大蔵省はいつでも、これだけの国費を使うからには、これだけの経済効果が上らなければ予算はつけぬぞということで、あなた方が徹夜で予算折衝をしておられる。ほんとうかうそか別にしても、これだけの経済効果が上りますという説明をつけて、予算というものは事務的にでき上っているはずなんだ。従来のものは経済効果が上らなくたっていいんだ、これからの分だけ上ればいいんだということになると、農林省の従来持っておりました態度と全く違ってくる。従来のものは経済効果が上らないでも、やりっぱなしにやったやつは何代か前の大臣の責任だ、何代か前の局長の責任だ、こう言っては済まされない。国費を使い、一般農民は負担をしている、あるいは県が負担をする、団体が負担をして今日にきているんだ。すみやかなる経済効果というものを国も期待し、農民も期待し、地力の団体も期待しつつあるわけだ。どうも今の説明だと、前のやつは経済効果が上らないんだから、それはそのままで、新しい分だけはやりますというのでは、いかにも無責任だと思う。だからどこに反対があったのかということをはっきりきわめておきませんと、また同じ轍を踏む。それで私は聞いている。どうも局長答弁じゃ十分でない。大臣の責任をもって答弁したらどうです。
  114. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 ちょっと御質問を逸しておりまして、大へん失礼をいたしました。特別会計を作りますものは、基幹的な工事で、借入金を投入いたしまして事業量を増す方向において事業費が拡大するもの、その前提におきましては、国費はぜひもっとたくさん食糧増産費に要求したいのですが、国の財政上少くとも過去数ヵ年の実勢から見ますと、その増加がそれほど多くは期待できない。しかしわれわれは予算の編成その他の仕方によりましては、政策としては組みようによって変るべきものと思いますが、そういうことで特別会計の借入金投入の方法によりますと、効果のあるものを一つとらえ、また歳入歳出の経理を別途にいたしまして、特別会計に取りやすいというものを一応まず灌漑排水と干拓から始めよう。しかし干拓は大体過去の継続分もみな入れ得るだろうということで、入れることにしておりました。しかし大蔵省が特別会計設置になぜ反対しおったかという点と、特別会計以外の、従来必要だとして着工、継続しているものを早く仕上げなければならぬということの二点については、お答えを申し上げませんでしたので、それについて申し上げますと、大蔵省がどういうわけで土地改良特別会計そのもの——御提案申しました特別会計でも、そのものに反対しておったかということは、全部の理由につきましては大蔵省しかわかりませんけれども、第一には今回の予算を編成するに当りましては、特別会計とか公団公社というようなものを一つも認めたくないという、予算編成上の大蔵省限りの方針を持っておったようであります。  第二には、私どもが提案をいたしました特別会計は、一般会計からの繰り入れをする額が相当多いから、歳入の中で一般会計の繰り入れが多い。かたがた歳出と歳入が、一般会計を除いた場合でもほぼバランスをとるような特別会計なら別だが、おそらくそういう特別会計の性質を持たないのじゃないだろうかという研究——断定ではありませんでしたが、そういう研究をされておったので、反対というより研究をされておったため、結論を出すのが非常におそくなったのだと思うのであります。  第三点につきましては、もともとこの土地改良特別会計を設置する範囲は、国営工事の灌排事業と干拓についてわれわれも提案をしたのでありますが、さらにそのほかの事業としてはどうであろうかということも研究の対象として、これを設置する価値があるのかどうか、設置をしたらどうなるかの研究が長引いたと思います。  第四点としましては、われわれの原案の打ち出しが五年ないし八年ということで、私は最後に七年で計画的に完成するようにして事業を持っていきたい、しかも新規事業もどんどん採択できるようにしたい、こういうことで提案をいたしました。そういたしますと、将来にわたりましての借入金の割合と国庫からの一般会計の繰り入れの割合は折衝中でありますが、かりにきまるといたしますと、そこで早期完成ということが出る反面、一般会計繰り入れの額もおのずから目安が立つと思うのであります。それは確定的にきめるわけではございません。年々の予算折衝できめるわけでございますが、何となく特別会計ができない場合よりは、一つの目安の制約ができる点もあると思われるのであります。この点について好ましいか好ましくないか。これも断定でありません、研究を長くなさっておったと思うのです。そこを御理解ある先生方の世論的な御意見も反映し、また両大臣の御折衝もございまして、事務的な案を骨子にいたされまして、設置することにきまったのでございまして、きまるまでは研究が長引いたことであろうと私は考えておりますが、研究が長引いたもとのおもなことをしいて取り上げますれば、大蔵省はそういう意見を漏らしておったのであります。
  115. 川俣清音

    ○川俣分科員 それはとんでもない答弁ですよ。ことしから反対したのじゃない、去年の予算折衝のときにも農林省から提案があって、これを大蔵省が拒否して終った事実がある。にわかに反対したのじゃないのです。もしも大蔵当局が今農林省の説明するような理由だけで断わったとすればけしからぬことなんです。反対の根拠もなく、いたずらに引き延ばすために、公的な考えでなく私的な考えをもって予算審議を延ばしたなどということになると、これは重大なことだと思う。農林省の言い分は、大蔵省がしっかりした案もないのに、個人的な見解でただ引き延ばしておった、こういうような見解に受け取れるのです。私は理由がなくて反対したとは思いませんから、予算総会において農林省の見解と大蔵省の見解を明らかにしなければならぬ。つまらぬ理由、私的な見解で延ばしたとは私は見ない。おそらく理由があったと思うのです。農林省はその理由を知らなかった、十分理解しないでおった。これなら別問題です。これはもう農林省からは聞きません。農林省の見解は、大蔵省のものは理由がなかった。個人的な見解くらいなもので研究も十分でなくて、いたずらに反対したというように受け取れる説明なんですよ。ところが三十年度に出された国の予算書から見ても、前から見ましても、そういう主張を持っていたことを明らかにいたしておきます。これは農林省から無理に聞きません。もっともっと資料でちゃんと明らかに反対している理由もあるのです。だからあなた方は反対を克服したのではないのですよ。なぜこういう反対があるかということ、こういう理由のためにこれを克服したのだというなら私はわかるのです。すべてが解決したんだということになるのです。だけれども相手の反対理由もわからないで、自分の主張だけが通ったという安受け合いをすることは危ないと思う。従ってこれはいずれ別な機会にこの点を明瞭にしていきたいと思います。  もう一つお聞きしたい。実はこれは大蔵省のいるところでお聞きする方が適切かとも思いますが、あそこで農林省をいじめたくないので、幾分でも遠慮をしておくことが必要ではないか。そこで従来農地局なり農林省がとって参りましたのは、一番経済効果の上らないものを先にやってきたつもりなのか、やはり経済効果の上る適切なものから手をつけてきたという見解を持っておられますか、この点をお聞きしたい。一番むだなところから手をつけてきて、だんだん効果の上るものに変ってきた、こういう考え方をしておられますか。予算の作成上やはり順位というものは、経済効果が上るもの——経済効果と言ったって、これは主観的なものであろうと思いまするけれども、農業政策からいえば、一体経済効果ということを問題にすることはおかしいと見える点もなきにしもあらずです。しかし今までの大蔵省との折衝の限りにおきましては、大体経済効果の高いものから順次やっていったという説明になっておるのだが、今説明を聞くと、そういうことではなしに、効果の上らないものもみな一緒にやってきた。これからやるものは非常に経済効果の上るものだけをやるのだ、こういう説明にも聞こえるのだが、農林大臣はどのような見解を持っておられますか。
  116. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 川俣さんはただいま経済効果オンリーの考え方が一方にある、他方において農業政策を重視して経済性というものを、むしろ第二義的に扱うという立場がある。この二つをお示しになっておるのですが、われわれといたしましてはそのいずれをもやはり勘案いたしまして、そして選択をいたし、基準を設定して参った、こういうことに御理解をいただきたいと思います。
  117. 川俣清音

    ○川俣分科員 井出農林大臣は、年来からの主張だとすればそう言わざるを得ないと思いますから、われわれはその態度は認める。従来必ずしもそうであったかということは別問題です。そこで今あなたの見解だといたしますと、必ずしも経済効果ばかりをねらわないで、農業政策上という立場を十分勘案しながらやるんだ、直接の眼前の経済効果よりももっと広範な農業政策の上からこれを勘案して、経済効果をそれとあわせてやるんだ、こういう御答弁です。私は答弁としては実にりっぱな答弁だと思ってそれは敬服に値するものだと思う。その点は何ら見解の相違はない。ところがその見解と今度とられたのとは違うようなんです。もしもそういう施策でやっておるとすれば、過去のものは経済効果よりも農業政策上やってきたんだ、それが未完成なんだ。局長経済効果ということだけ考え答弁をされた、大臣は農業政策上と言われた。そうすると手をつけた農業政策がまだ残量が残されておるのに新しくやる、古いやつはあと回しだという理由にはならないのじゃないですか。どうもそこのところおかしいです。これは何と言っても農業政策上完成しなければならないのです。新規が出れば出るほど古いものは残されていくのが現状の予算規模なんです。そこで古いやつはこれでだんだん残余年数が延びていくという傾向にある。特に農業政策からいきまして重要視される農林省としては、そこに大蔵省と私は見解が違っていなければならぬはずだと思っている。一方は経済効果を早めるために新規要求は認めないという、あなたの方は古いやつもなお完成度を高めていき、新しい政策を盛っていかなければならないという二つ意見の対立はあったとは見ますけれども、古いものは共同でしていくのだなんということが後退しているということは考えられないのですが、考えてよろしいですか。
  118. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 川俣委員はことさらにその二つを区分して、農業政策の面に一方づいて農林省立場はなければならぬというような御主張だと思いますが、私は従来の土地改良全般に対しましても、これは今よりもテンポを下げるということであってはならない。これは従来通りの以前の線を維持しつつ、さらに新しい面については地元にも相当な負担なりをしていただくのでありますから、これはこれでよりテンポを早める部分ができるのだ、従来の上にプラス・アルファがつくのだ、こういうふうに御了解をいただいたらばいかがかと思っております。
  119. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうじゃないんですよ、大蔵省の経済効果ということだけをいいますると新規をなるべくやめていこうということが一つと、特別会計のような複雑なものをやらないで既存のものをすべからく完成しよう、こういう主張であろうかと思う。経済効果から論じてもそうだし、農林省のように農業政策からいってもこれとは一致しなければならないはずであったのではないか、そういう点で一致したとすれば了承できない一わけではない、こう言っておるだけです。あなたは大蔵省の主張というものはあまり強く認識されていないようです。だからこれはまた別な機会に譲りますが、簡単にこれは特別会計ができたとは見ないのです、そう思うと言うとこれは危ないですよ。それで経済効果ということになりますと、これは何と言っても既存の手をつけたものを完成するということが、日本の国全体としての経済効果は高いです。これは否定できない。この点でもしも農林省と大蔵省の見解が違うとすれば、これは大蔵大臣と二人並べて聞かなければならぬことになりますからこれも抜きます。私の見解は既存のものを早くやる方が経済効果は早いと思う。しかし新規のものについては、これもまた取り上げていかなければならないという問題があるとすれば問題が起ってくるだろう。しかしながら既存の問題を度外視して考えるというわけにいかぬのじゃないか、併行して考えるというよりも、やはり既存のものは既存のものとして解決していく、この目安がついたからこれから新規のやつも出発してもよろしいと、こう割り切ったんではなさそうなんです。古いやつは何年度にできるという見通しがかなりついた、従って新規もこれから始めても、決して古い既存のものの効果を阻害せずに、新しいものに手をつけていく事態に入った、そこまで予算規模が大きくなった、というなら別ですけれども、そうじゃない。今までの説明によると、既存のものは経済効果がだんだん落ちていってもやむを得ない、これから経済効果の高いものだけをねらってやるのだ、こうなるというと既存のものは経済効果の上らないものを手をつけた、これからやるものは経済効果の高いものを百手をつけるのだ、こうなりますと既存のものに手をつけたのはみな失敗だった、経済効果の上らないものからやっていったんだ、これはまことに相済みませんでした、とこう謝罪しているようにも聞える。これはだらしのないことだと思う。既存のものは完成する年度というものを決して縮小していない。縮小もしないで新しいものに手をつけるということは食い荒しになる。新しいからありがたいなんと思ったら、とんだ間違いな結果が起るのじゃないか。初年度の予算はついても二年度三年度においては一体つけていくかいかないかわからないようなやり方では、無責任だといわざるを得ない。既存のものに対する完成の熱意もなしに、新しいものだけはやりますというわけにはいかないと思う。この点どうですか。
  120. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 先ほど私の説明が悪いために再質問が出ましたこともあると思いますが、申し上げました趣旨は、特別会計という制度でやれば比較的やりやすいので、まず大蔵省と話がつくところでやろうとしたことでございまして、特別会計に入れない分、また過去からの継続分で残年量が相当多い分につきまして、より残年量を多くしたり予算をつけなかったり、また新規というものを特別会計で取り上げて継続は一般にほうっておこう、こういう趣旨ではなしに、私どもは大蔵省と話し合いをいたしているのであります。ただ総体的に見まして食糧増産費が積極増産対策費としましては、一般会計負担においては、本年度は昨年度より二十一億増にとどまっております。特別会計に繰り入れました事業一般会計繰り入れ分が七億増に、その中でなっております。従いまして残余の特別会計でない従来のやり方でやっております分が、三十一年度よりは十四億六千万円ばかり増になっておりまして、そのくらいの増では少な過ぎて残年量が短縮しないではないか、仕方が少いじゃないか。また特別会計の計画的な早期完成よりはすでに継続しているやつでありながら、短縮度、早期完成度が薄いではないか、とこう御批判を願いますと、傾向としてはその通りでございます。遺憾ながらより以上の名案を出せませんで、また予算増額、これに伴います継続事業の早期完成度合いを、ただいま申し上げました予算の増加程度しかできなかったという点において、御意見をいただくわけでありますが、私ども農林大臣の御方針に従いまして川俣先生のおっしゃる方向には近づいておる、そういうふうに見ていただきたいとお願いを申し上げます。しかし過去の継続、言いかえますと、すでに着工を始めたものは不経済な仕事を失敗的に採択したのではないか、こうおっしゃったことは、私の特別会計設置のあるいは大蔵省の意見についてのお答えが悪かったからきたことだと思いますが、それは必ずしもそうではございませんで、終戦後の食糧対策の内閣の方針に従いまして、その後今年に至るまで、年々予算ワクの変化はございましたけれども、全国的な食糧増産をはかる、また中央地方にもこれを分散いたしまして効果が上るようにする。それから個々の事業採択につきましても、これは相当しさいに検討を加えまして特に三十年度以降は、国家的な、農業的な考えと同時に、その中に経済効果を考えるようにいたしまして、コストとベネフィットとの比が一応一以上になるようなものを採択しよう、すなわちこれを適格なものとして考える、こういうふうに資金の効果をねらってそれを採択いたしましてその後予算がつきましたものの中で——去年でもそうですが、特に三十一年度からは工事促進の意味において、一般会計以外の分において、継続分においてどういうふうにしようかということも考えまして、効果が早く上りますもの、完成期に近づいておりますもの、部分効果が上るようなもの、他事業関係があるもの、たとえば多目的ダムとかそういうようなものと関係があるもの、なお地方庁その他地元の希望を取り入れまして、その希望の順位を尊重しまして、そこで重点的に従来ついた予算よりは、たくさんの予算をつけて早く完成するようにしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  121. 川俣清音

    ○川俣分科員 要するに、いろいろ苦心の結果、既存の事業もできるだけ早く完成したい、こういう熱意を持っている、やるかやらないかは別にして、それは捨ててはいない、大臣、こう了解してよろしゅうございますか。
  122. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 けっこうでございます。
  123. 川俣清音

    ○川俣分科員 そこでお尋ねしたいのですが、一体特別会計の特徴はどこにあるのですか。どこに非常に重点を置いて特別会計というものが設けられておりますか。
  124. 大橋武夫

    大橋主査 安田政府委員、特に答弁は簡潔にお願いいたします。
  125. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 特別会計は、事業費を増すことに念を置きまして、一方一般会計繰り入れについても、従来の土地改良予算のつき方も一つ参考にいたしまして、地元負担の可能限度等も考えまして、地元負担に見合いますものは資金運用部資金を、この特別会計に繰り入れることによりましてそれを事業費にする。従いまして従来国費だけで事業をやりましたものを、そして地元負担は事業完成後これを徴収することにいたしましたものだけを、先に事業ができる金を余分に、地元負担に見合って取り入れまして事業を促進したい、そういう経理をする必要があるから特別会計を設置する。しからば特別会計を設置するには、どのくらいの目安が要るかということがございますから、五年くらいで計算をしてあるものもございますが、おおむね七年をもってこれを完成する。予算書も七年をもって計算するようにして、次年度以降年々の予算折衝はございますが、そういう性質を持っておる、そういう前提で制度を始めたということが設置の理由であります。
  126. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは答弁になっていないのです。大体の説明はおそらくこういうことを言おうとしたのであろうと思う。既存のものよりもすみやかに完成するのであるから、それだけ地元の利益がふえるであろうから、そこで負担の問題についても別個に考えていこう、こういうことだろうと思う。そうすると、ここに既存のものを早めていかなければならない義務を負っておる。おくれておるのはこれは政府の責任であります。早くやるからといって、特別にお前負担をせいということは、過去の責任を負わないで、これから早くやるのだからお前負担せいということだ。今までやらなかったのはこれは地元の責任じゃないので、政府の責任でおくれておるのです。自分の責任をたなに上げておいて、あれはおくれておる。お前たちに非常に迷惑をかけた、その迷惑から見ると今度はよいのだから、お前たち負担せいというのは理由にならないと思う。これが一つ。  それからもう一つは特別会計をやるといっておりますが、たとえば干拓のような場合は一体農地法に基いて払い下げ形式をとるのか。あるいは負担金をとるからには一体どういう交付をするという形をとるのか。交付に対する負担、こういうふうになるのか。こういう点ではすこぶるあいまいなのです。おそらくまだ案がないと思うのですが、あなた方に案がありますなら、示してもらいたい。だから特別会計はやるのだときめたものの、まだほんとうの、腰がきまっていないのだと思う。それほど勇敢にやるからには具体的に全部でき上っておらなければならないと思う。一体農地法などは改正する用意があるのですか。または土地改良事業についての法制化をするという考え方で、一体今度の特別会計を設けたのか。特別会計が先で、あとで障害が起きた場合に農地法や土地改良事業についての法制化をしようというのか。大臣、どっちが先ですか。
  127. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 目下鋭意検討中でございまして、これは土地改良特別会計法案も準備しておりますから、それまでに取りそろえて申し上げることにいたします。
  128. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうすると、大臣、これは今度の予算の上に大きなウエートを占めておる、特に農林省予算の上では大きなウエートを占めておる、これは法律を出すのか出さぬのかと聞いておりますが、まだ予算委員会では明確なものが出てこない。この特別法というものは大いにやるのだと言ったけれども、まだ足固めがないわけです。そうすると、この予算というものは空になるおそれがあるわけです。予算を提出するからにはそれの裏づけになるような立法措置計画がなければならぬ。立法措置がなければ予算をとっても運行できないのです。特別会計でなければ運行できますが、特別会計になりますと運行できない。運行できない予算をとったってこれは何もならないと思う。
  129. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その点はただいま申し上げましたように、当然予算を伴う法律でございますから、所定の期間に御審議がいただけるように提出の手はずを進めております。
  130. 川俣清音

    ○川俣分科員 私はここで留保しておきます。
  131. 大橋武夫

    大橋主査 農林大臣より昨日の横路君の質疑に対する答弁に関連して特に発言を求められておりますので、この際これを許します。井出国務大臣
  132. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 昨日の横路さんの御質問に対する答弁中、なおあとで明確にお答えいたしたいというように申し上げた点がございますので、この際補足をして申し上げたいと思います。  それは食管会計の赤字処理の問題でございますが、ここに速記録の写しを取り寄せてみたのであります。御質問の途中でありますが、「三十一年度の赤字百六十一億ですか、これも合せて三十年度の赤字と同様に三十二年度の補正でやるわけですね。」こういう御質問がございました。これに対して私から、「これも大体そのように御理解いただいてよろしいと思います。」こう答えております。これはいずれにしましても過去の赤字の補てんをしなければならない、こういう考え方のもとにこのようなお答えをしたわけでございますが、このあとでもう一度私はこういうふうにお答えをしておるのであります。「その点はあるいは私の表現が非常に問題を割り切ったようにおとりかと思いますが、先ほど来申し上げます特別調査会の議を待ってということに相なりまするので、その際従来の食管の赤字のあり方というような問題の検討もありましょうから、三十年、三十一年の赤字をそのままに繰り越したという次第に相なっております。従いまして、これはいずれかの機会にはこの処理をしなければなるまい、こういう考え方のもとに今私申し上げましたような次第でありまして、この点はなお財政当局とも十分に打ち合せをいたしました上で申し上げたい、このように御了承を願います。」こういうお答えをしておるわけであります。そこでその点をこの際明確にしておいた方がよろしいと思いますから以下申し上げますが、食管会計の赤字処理の問題につきましては、三十年度において約三十四億、三十一年度に約百六十一億円の数字が出ておるわけでございます。このうち三十年度の分については確定をしておりますが、三十一年度分は決算をいたしますのが七月と思いますので、実はまだ未確定の数字でございます。それからもし特別調査会の結論で消費価格に手をつけるというような事態が生じますならば、この数字も動いて参る次第でございまして、この際は昨日申し上げましたところのお尋ねに対して大体そのように御理解をいただきたいと思います。これは一応取り消させていただきまして、あらためて特別調査会の結論を待ってこれを善処することにいたしたい、このようにこの際訂正をいたしますことを御了承願います。
  133. 横路節雄

    横路分科員 今の農林大臣のお話ですが、実はきのう私同僚の井上委員の質問に対する農林大臣答弁をここで長らく聞いておったわけです。そのときに農林大臣の御答弁は、三十年度、三十一年度の赤字については一般会計から繰り入れます。こういうようにはっきり答弁されている。この点ははっきりしているのです。ですから私はこの点につきまして、あとでわずかな時間でございましたが、そういうように御答弁がございましたから、それならば三十年度、三十一年度については三十二年度の補正でおやりになるのですか。私の考えからすれば、三十年度の赤字については三十一年度の補正でなさるのが至当だと思う。それを三十年度、三十一年度を合せて三十二年度の補正でやるということについてはいかがかと思う、こういうふうに私聞いているのです。従ってその一般会計から繰り入れをするという方針については、三十年度、三十一年度の食管の赤字については、一般会計から繰り入れをするという政府方針には変りはない、今の御答弁でも変りはないと私は思うのですが、その点はいかがなんですか。
  134. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 この点は、一般会計から補てんをするという方向は、私も大体そういうように考えられますが、これを今三十一年度でどう、三十二年度でどうということは、明確に申し上げる段階でございませんので、特別調査会の結論に待ちました上で善処をいたす。いずれにせよ、これは既往において生じた赤字でございますから、これを今後の消費価格がかぶるとかいうようなことはあり得べからざることであろう、こういうふうに御了承をいただいたらけっこうと思います。
  135. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、今の大臣の御答弁からすると、やはりきのう私がお尋ねしたように、また私がお尋ねをして私もそういうように確認しているように、三十年度、三十一年度の赤字については一般会計から繰り入れをする。それはこれからの消費者米価によってそれを補てんするものではない。ただし三十一年度の補正でやるか、三十二年度の補正でやるか等については、それはきょうのところでははっきりした答弁はないが、しかし一般会計から繰り入れをするということと、三十二年度で食管の赤字に関する調査会で消費者米価をかりに値上げをしたとしても、三十年度、三十一年度のそれを補てんするものではないという点だけは確認できるわけですね。
  136. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 今日の段階は、これを三十一年度にどう、三十二年度にどうということはまだ明確にいたしがたいのでございますが、これらの既往の赤字につきましては、これを消費価格調整するというようなことはしない。これはよろしゅうございます。そしてここで特別調査会の結論の出るのを待ちまして善処したい、こういうふうに申し上げます。
  137. 横路節雄

    横路分科員 私は農林大臣の大蔵大臣とのいろいろな関係答弁においてつらい立場はわかるわけなんです。しかしこの問題は特別調査会の答申を待ってと言いますが、それはきのうも私から食糧庁の長官にお尋ねしたように、かりに政府考えているように、一升八円五十銭値上げしても、内地米の二重価格の赤字百七十三億のうち百三十三億しか埋まらない。なお四十億それでも足りないわけです。それを外麦の差の益金の百三十億で埋めてもなお九億足りないものについては、きのう農林大臣からお話がありましたように、資料その他の問題で十分その制度を検討して赤字がないようにしよう、そのことなのです。そのことが食管に関する調査、これからの赤字をどうするか、三十二年度予定されている赤字をどうするか、三十三年度の赤字は絶対に出さないようにするのにはどうするかということなのですから、従って三十年、三十一年度の一般会計から繰り入れるという基本方針農林大臣が明らかにした以上は、調査会の仕事ではないのです。これは調査会の仕事は三十二年度の赤字をどうするか、三十三年度の赤字をどうするか、食管の特別会計はどうするかという問題であって、今までの赤字については政府の責任においてなさる以外にない、そうなれば、やることとしては三十一年度の補正でやるのか、三十二年度の補正でやるのか、それとも毎年十億ずつこれから七年間か八年間やるのか、こういうことしかないと思う。従って三十年度三十一年度の赤字については当然政府の責任において、一般会計からどういう形かで繰り入れ始末をするということには変りはないわけですね。その点はっきりしていただきたい。
  138. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 おっしゃるように、これは政府の責任において、処理すべきものと思います。そこで特別調査会に御検討を願うために、三十年、三十一年、これらの実績もあわせて実施を治たい、こういうふうに考えておるの竹あります。いずれにせよ、その機関お諮りをしました上で、政府においては今おっしゃるような方向においてこれを善処する、こういうように一つ御了承おきを願います。
  139. 横路節雄

    横路分科員 これは言葉の問題ではないと思います。それはここでかりにあいまいな言葉で、私どもが不満ながらこれで終えるとしましても、十五、十六日の補正で問題になるのですし、二十日以降の三十二年度の本予算でまた問題になるのですから、かえって私はきょうの分科会で、もう少しこの点を糾明してはっきりさした方がいいと思うのです。  私が大臣にお尋ねしているのは、私も長いこと聞きたくないのですが、問題は三十年度の赤字三十四億、三十一年度の予定されている赤字百六十一億、この点についてであります。これはもう政府の責任で処置しなければならない、どうしますかと言ったってそれ以外にないのです。ですから、一般会計から繰り入れをする、その繰り入れをするについては三十一年度でやるか三十二年度でやるか、三ヵ年計画でやるか、五ヵ年計画でやるかわからぬが、しかしとにかく一般会計から繰り入れをする、しかもそのことについては政府の責任でやる、これは調査会の答申を待つこととは別です。答申を待つことは三十二年度の赤字のことなのです。そうして三十三年度においてどうやったら赤字ができないかということはこの調査会でやるべきことで、問題はきのうも私がお聞きして大臣みずから御答弁されているように、二つに分れている。ですから、私は三十二年庭の方は今聞かない、三十年度と三十一年度だけ聞いているのですから、その点は一般会計から繰り入れをする、そのことについては政府の責任でやる、このごとくらいはここではっきり御答弁いただかなければ、そのことまで調査会に逃げられたのでは、それはちょっと了承しかねるわけです。ですからそのことをはっきりしていただきたい。
  140. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その点は御承知のように、三十年、三十一年の赤字をやはり繰り越して予算を作成をいたしております。それらも決して食管の健全化、合理化に無関係なことではございませんので、あわせてこれを特別調査会において議論される問題になるのではなかろうか、こういうふうに存じておりますので、今日のところではとにかく特別調査会の結果を待って、これは政府の責任において善処をする、こういうことに御了解おきを願いたい。
  141. 横路節雄

    横路分科員 今のお話は、前のお話にありました一般会計から繰り入れをするということについての方針は変りはないわけですね。大臣答弁では三十年度、三十一年度の赤字についてはまた問題をもとに戻すようですが善処するというのだが、どういうように善処するのか。もう一ぺんもとに戻りますが、一般会計から繰り入れすることは間違いないのですね。
  142. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その点は財政当局とも十分に話し合う必要もございますので、その上に申し上げるとして今日のところは今申し上げておるように御了解願います。
  143. 横路節雄

    横路分科員 はっきりしていただきたいのです。私が今重ねてあなたに御答弁を求めたから……。
  144. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 ではこういうふうに御了解を願います。
  145. 横路節雄

    横路分科員 さっきあなたは一般会計でやりますと言っておる、また元へ戻って、またそれが取り消しをされては何にもならないわけです。それは大蔵大臣との間でつらい立場もわかりますよ。しかしきのうも答弁され、きょうもここで一般会計から繰り入れするとなったのだから、なった以上はその方針で貫いていただかなければ、それが三十一年度でやるか、三十二年度でやるか、何ヵ年計画でやるかはいろいろまた予算の本委員会でやりましょうが、その点ははっきりしておいていただきたい。
  146. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その点は農林大臣としてはこれを政府の責任において一般会計から処理してしかるべきもの、こういうふうな希望と期待を持っておる、ただし先ほど来申し上げるように、これは財政当局との語し合いもございますから、きょうのところはその程度に御了承おき願いたい。
  147. 横路節雄

    横路分科員 それでは農林大臣にお尋ねしますが、あなたは希望と期待を持っておるというが、一般会計から入らなければどうするのですか、何かそのほかにさらに八円五十銭を倍額の十七円に値上げをしてそれをもとべ埋めるというのですか、何ぼ何でもそういうことはできないでしょう、希望と期待よりは、農林当局としては一般会計の繰り入れ以外ないのではないですか。だから農林当局としてはその方針で行くなら行くというように、はっきりなすった方が私は筋が通ると思う、希望と期待などといったって、それはちょっと大臣答弁にならぬですよ、その点ははっきりおっしゃってください。
  148. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 農林当局としては、そのようにいたしたい、こう考えております。
  149. 横路節雄

    横路分科員 食糧庁の長官にお尋ねしますが、三十二年度で八円五十銭の値上げをするという場合においては、予定されておる三十一年度の赤字百六十一億についてはこれは動きますか。百六十一億については動くか動かないか、もしも動くとすればどれくらいの金額が動くのか、そういう数字について、調査会に示す以上は、当然どうしてくださいなどということがあるはずがないのですから、八円五十銭値上げする場合においてはどうなるか、三十二年度についてはきのう御答弁がありましたが、今大臣から三十一年度についてはまだあとのこともあるというのだから、八円五十銭値上げすればどれだけ金額が動くのですか。——なければないでいいのですよ。
  150. 小倉武一

    ○小倉政府委員 これは上げる時期によって違って参ります。
  151. 横路節雄

    横路分科員 私は三十一年度の分を聞いておるのですよ、三上上年度の赤字ですよ、三十一年度の予定されておる百六十一億については、これは八円五十銭上げた場合には動くのか動かないのかというのです、動かないなら動かないでいいのです。
  152. 小倉武一

    ○小倉政府委員 それは上げる時期によって違って参ります。
  153. 横路節雄

    横路分科員 それは上げる時期によってどういうように違うのですか、三十一年度の予定されておる百六十一億については、上げる時期によって数字が違うというならば、どういうように数字が違うのか、ここでお示し願いたい、分科会なんだからそういうことを示さなければ、分科会の意味をなさぬのだから、お示しになって下さい。
  154. 小倉武一

    ○小倉政府委員 違って参りますのは、ことしの三月末に持っております。来年度に持ち越しになります米、これが翌年度に値上げをするということを決定いたしておりますれば、在庫評価がその分だけ変って参るわけです。従いまして、値上げをどの程度にするかということによりまして評価が変ってくる、それが一つであります。もう一つは値上げの時期によりまして三月末に持っておる米も、ずっとあとで値上げになってくれば一たとえば今の価格でいくということであれば、四月、五月に売る価格は、今の価格で評価しなければいかぬ。かりに六月に上げるということであれば、六月以後配給になる分の価格は、評価を高くできる、そういった関係で違って参ります。
  155. 横路節雄

    横路分科員 あなたの方も数字をはじいてやっておるから、私らも聞いておるわけです。それならば四月一日から八円五十銭値上げ、こうなったら三十一年度予定されている百六十一億の赤字は幾ら減るのですか。
  156. 小倉武一

    ○小倉政府委員 約半分くらいになります。
  157. 横路節雄

    横路分科員 大蔵省の主計官にちょっとお尋ねしたいのだが、四月一日から八円五十銭値上げすれば、昭和三十一年度に予定されている百六十一億の食管の赤字は、半分の八十億で済みますか。
  158. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答えいたします。大体そういう計算になっております。
  159. 横路節雄

    横路分科員 それでは食糧庁長官に伺いたい。どれだけの数量でそうなるのか、数字を示して下さい。百六十一億の赤字の予定が、四月一日から上げれば三十一年度の赤字は八十億で済むという。その八十億が減ってくる根拠を示して下さい。八円五十銭の配給米はなんぼあるかを知っているじゃないですか。
  160. 小倉武一

    ○小倉政府委員 この三月末に在庫する米の量のうち、基本配給に回す量に考えられる分、これがほぼそれに相当するわけでございます。その数字を申し上げます。基本配給に予定をしてありますのは百九十六万トンであります。この百九十六万トンは申すまでもなく、今の基本配給価格で一二月末に評価されるものでございますので、これが希望配給額と同じで、四月一日からやることを仮定しますれば、この分だけは三月末の在庫がそれだけ高く評価できることになりまして評価益が出てくる。その評価益は、三十一年度の損益に響いて参る、こういうことになると思います。
  161. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、今のお話は基本配給の百九十六万トンについて、一升当り八円五十銭を上げれば八十億埋まるというわけですか。そういうことになりますか。
  162. 小倉武一

    ○小倉政府委員 百万はないので、九十六万トンです。
  163. 横路節雄

    横路分科員 今のあなたの数字はどっちなんですか。最初は百九十六万トンと聞いたが、あとは百九十六万トン。百万トン違うとだいぶ違うのですが、どちらですか。ちょっと石数に直してもらった方が計算が早い。私もすぐ暗算でやりますから、石数に直してもらいたい。一升八円五十銭の計算が石数でどれだけになるか、もう少し丹念にやって下さい。
  164. 小倉武一

    ○小倉政府委員 計算したものを持っておりませんので、今計算してから申し上げることにいたします。
  165. 横路節雄

    横路分科員 それでは食糧庁長官、丹念に計算してから発表してもらいたい。  農林大臣にお尋ねします。今のお話でまた新しい問題が出た。今まであなたの方は食管の赤字は三十年度三十四億、三十一年度百六十一億、合計百九十五億、それに昭和三十二年度の赤字、それがこの八円五十銭値上げが一応できないための百四十二億、これがあなたの方で公表した数字で、おそらく予算委員会でもそう答弁しておる。今食糧庁の長官は八円五十銭値上げすると、三十一年度の赤字も八十億になるんだ。これは今まで予算委員会で一ぺんもそういう数字については明らかにされていない。そうするとあなたの方では、八円五十銭上げるということは、結局三十二年度の赤字百四十二億と三十一年度の赤字のうち八十億と合計二百二十二億が穴埋めになるということですか。どういうことなんですか。
  166. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 在庫の評価がどこへ響いて参るかと申しますと、三十二年度の損益ではなくして——三十二年度の百四十二億というは、大体こうお考え下さればいいんです。昭和三十二年の産米、これから生ずるものであります。そこで三十一年産米の手持ちは、これはその評価を変更した時期によって、響き方がそれぞれ違うわけでございます。これを今三月末日で押えますと、これは長官の言いましたように、八十億くらい響く。これがだんだん月が進んで参りまして一ヵ月におよそ十億くらいずつの見当で——値上げの時期が一ヵ月ずれれば、十億くらい減って参る。在庫評価は三十二年度の損益でなく、三十一年度に現われてくる、こういうふうに御理解いただけばわかりやすいと思います。
  167. 横路節雄

    横路分科員 それでは今食糧庁長官からこまかな計算したものを御発表いただけばいいのですが、これでは三十二年度の三十四億については確定してるわけですな。これはどうですか。この問題は当然十五、十六の二日間にわたって三十一年度の補正でやるんだが、第二次補正ということになるのですか。もしもやるならば私は三十一年度の第二次補正でやるべきだと思う。そうでなければ明日やる三十一年度の第一次補正の中で、時間があるのですから、当然組みかえをやってやるべきだと思う。三十一年度については値上げの時期によって一ヵ月十億ずつ数が動くというならば、それはその通りとわれわれは承わってよろしいのですが、三十年度については三十四億で動かないのです。この点は一般会計から繰り入れるのであるから、それ以外に方法がないじゃないか、これは当然あすからの補正予算における総括質問で問題になりますが、農林大臣としてはどうなさいますか。
  168. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 これはあなたの昨日の御質問にも出た問題でございます。そのとき私は御意見のことは十分に承わりますと、こういう御返事をしたと記憶しておるのでございますが、これもさっきの問題と関連をいたしまして、今ここで明確にはお答えいたしかねますが、きのうお答えしたと同じように、この問題につきましては、私の方も十分考えてみる余地がある、こういうことに御了解を願います。
  169. 横路節雄

    横路分科員 そうする農林大臣考えてみる余地があるということは、私に賛成したということになりますか。そういうことは十分考慮されるということですね。やらなければ何もならないのです、三十年度の赤字ですからね。大蔵当局としては、三十年度の赤字なんですから、三十一年度の補正で始末をしたい、そういうお考えなんでございましょう。
  170. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 これは横路さんに昨日申し上げたと同じように御了承いただきます。
  171. 横路節雄

    横路分科員 どうも農林大臣のお話は、昨日私に答弁したというが、結局三十一年度の補正でやらなければこの問題は三十二年度の補正以外にないですね。だからそれはどちらかでやるわけですね。その点もう一ぺんお尋ねしておきます。
  172. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 いずれにせよ政府の責任において処理しなければならぬ性質のものである、こう御了解いただきます。
  173. 井上良二

    井上分科員 ただいま横路君と農林大臣の応答を聞いておりますと、全く無責任きわまる答弁ですね。そういう無責任な答弁予算審議上ゆゆしき問題ですよ。現実に三十年度は三十四億の赤字がさらに精算の結果出てきたでしょう。これは特別調査会の議を経るまでもないことです。政府の責任で処理しなければならぬ。これは今予算審議しておる最中でありますから、三十一年度の補正予算に当然これは出さなければならない。どういうわけで三十一年度の補正予算にこれが出せないのです。政府みずからこれを処理しなければならない責任があるのに、しかも補正予算を出しておるのに、何ゆえに三十一年度補正に出さぬのか。どこでやろうというのか。この予算審議中に、どういう形でこれをやろうというのですか。三十一年度の分につきましては、ただいまいろいろ議論がありますけれども、一応特別調査会の議を経るということによって、数字が多少かわるということも予想されますけれども、この三十年度の三十四億の分については確定数です。そうすれば、これは補正予算に組まなければどうにもならぬ問題です。三十一年度第一次の補正に組まずにどこでこれを組もうというのですか。それを明確にして下さい。
  174. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 御意見のほどは十分承わりましたので、善処いたします。
  175. 井上良二

    井上分科員 善処いたしますと言うだけでは、あしたから補正予算審議しなければならぬでしょう、そうすると、あなたの方が善処されるまで、われわれ社会党の方としましては、私の方の審議も善処します。それはやむを得ないのです。そういう政府の態度なら、補正予算政府が具体的に善処されるまでは、われわれの方もやむを得ずこれに対して善処する、こう言わざるを得ない。この点は明確にしてもらいたい。これは一般会計関係ある問題ですから、これが雑談に出ておりますように、特別会計だけで操作ができて、そこで穴埋めができる問題なら、これはまた問題が別ですけれども一般会計関係のある問題として農林大臣が説明されておる以上は、当然その措置政府みずからやらなければならぬのにかかわらず、やらずに善処しますと言うのなら、善処するまで待っておらなければならぬ。私どもこれを考えまして本日岸臨時総理大臣代理に申し入れをしてあります。岸氏もあなたと相談をして善処すると言っておりますから、そこでわれわれの方も政府予算編成に対する善処のやり方をじっと見ておりますが、それと同時に、私は昨日申し上げました通り、三十一年度の赤字、三十二年度に予想される赤字、このいずれもが予算編成上きわめて重大な要素になる問題でありますから、これを具体的に答申を出してもらって、閣議決定の上で、少くとも本予算審議中に政府が正式にこの赤字処理の態度をきめていただきませんと、私の方はこの予算を成立さすわけには参らない。審議ができない、予算の基本的数字が狂うてきますから。この点もあわせてお含みを願いたい。  同時にこの際もう一応伺いますが、百六十一億というこの三十一年度の赤字、これは腰だめの赤字ですか。さらに精算をしますと、三十年度と同じようにもう少し総額はふえますのか、それともまた米価値上げなどの問題を持ち出しておりますけれども、減りますのか、そこらの見通しはどうです。
  176. 小倉武一

    ○小倉政府委員 これは見込みでございまするので、若干の増減ということはやむを得ないことだと思います。
  177. 井上良二

    井上分科員 若干の増減はわれわれも認めましょう。認めましょうが、三十年度の予算のように、御存じの通り三十年度は百六十七億赤字と称して、それで補正予算を組まして、百億インベントリーで帳消しにしておいて、六十七億一般会計から繰り込んだ。これをわれわれ当時の予算審議としましては、三十年度は赤字は解消されたものと考えておった。ところがきのう説明を伺うと、その後精算した結果は三十四億赤字がまだあったのだ、こうきよった。そうなってくると、一億や二億、三億のことなら、それは多少ずれもあろう、いろいろな関係もありましょうから出るのはあたりまえでありましょうけれども、三十四億というようなべらぼうな赤字がわずか二月、三月の精算によって出てくるということは——補正予算後における赤字というようなものは、よほど緊急異常な事態がそこに発生しない限り、やむにやまれぬ大きな事態が発生しない限り起るような金額ではないのですよ。たとえば早場米奨励金がよけい出過ぎたのであるとか、あるいは予想外に供出が出たために異常な買付をしたとか、あるいは予想以上に外麦なり外米が入ってきたというようなこと。これは食糧会計としては全部四月以前に行なった行為であります。それが四月以降七月に至って三十四億も新しく赤字が予想されるような事態は、緊急やむを得ない事態による赤字とは見られないのです。そういうことから考えてみて、いろいろと言うていますけれども、ちょっとあとから言うかしらんと思ったら、また赤字がふえた、また次の国会に頼もう、こうこられたのでは食管会計予算というものは、何とまあ御都合主義にできているなあと見られますよ。そこで私はこれを伺っておるわけですが、そういうことは全然ないでしょうね。
  178. 小倉武一

    ○小倉政府委員 これは昨日も申し上げました通り、三十年度につきましては大へん見込みを違えましてはなはだ申しわけなかったのでございますが、三十一年度の見込みについてはそれほど大きな見込み違いはおそらく生じないだろうと思っております。ただ、申すまでもなく、一つは外国食糧の価格がどうなるか、船賃がどうなるか、われわれにもなかなか予測しがたい条件で変ってくることもありますし、また国内事情で申しましても、希望配給がどの程度売れるかということについても、なかなか予測がつかないのでございます。そういうものの動き方によって金利、倉敷がかかりましたり、あるいは希望配給が減りますれば、売買損益の売買益の方が減ってくるということで動く可能性はやはり相当ある。しかし三十年ほどの大きな狂いは生じないというふうに考えておる次第であります。
  179. 井上良二

    井上分科員 この際大臣に確かめておきたいのですが、御承知の通り私ども常識上、かりに本予算審議中に政府が態度をきめまして、三十二年度消費者米価を予定しております金額に値上げをいたすことを決定いたしましても、衆参両院の審議経過から今の状態考えますと、予算の通過はおそらく三月一ぱいかかりましょう。そうしますと、当然四月一日から消費者米価を値上げするということは事実上不可能であります。これはもうはっきりしている。そこで全体の在庫なり、あるいはまた卸商との関係の諸般の手続を完了いたしますまでの間には、事実上相当の時間的な余裕を見なければできないのです。大体会計の終末の月であります七月一日くらいから実施するならば、かりに値上げを決定しましても無理はないということが言われはせぬかとわれわれは想定するのです。だからわれわれがこの赤字に非常に予算化を要求したことで農林大臣が非常に戸惑って、これが新しい米価の値上げに関連することになって赤字が非常に変ってくるというお話とは、だいぶん事態は違うと私は見ているのです。今小倉長官がお話のように、実際上三十一年度に予想される百六十一億の赤字が、四月一日の値上げによって半額に減るということになりますと、これはなかなか容易ならぬ問題でございますから、やはり慎重に調査会の結論を待つということの関連で考えられますけれども、現実に配給操作その他諸般の調査を完了していよいよ実施するというのには、少くとも一月や二月の余裕を見なければ実施は困難であります。私は今までそういう経験をしてきておりますから、そういう事実から考えてみて四月一日から値上げが実行されるとは考えられない。またどんなに勉強しても五月一日からはやり得ない。そこでどうしてもこれをやろうとするには七月以降になるではないか、下手をすると九月以降になるではないかということが考えられる。もっと合理的にいきますならば、新米穀年度ということになりはせぬかということがいわれるのです。ですから三十一年度百六十一億の赤字も、やはりこの際明確に処理の方針をおきめになって、三十年度の赤字と一緒に処理をするということの方が、国会審議を待つ政府当局としては妥当ではないか、こう私ども考えるのであります。これに対して農林大臣は一体どうお考えになりますか。
  180. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 三十一年度の赤字につきましては、ただいま小倉長官からも御説明申し上げておりますように、まだ可変要素といいますか、変動し得る余地というものがございますので、それを見きわめました上に処理をした方がよろしかろう、こういうふうに思います。
  181. 井上良二

    井上分科員 農林大臣は農政のエキスパートといわれておるのだけれども数字の方についてはどうもいかぬね。というのは、御承知の通り、百六十一億という数字はこの年度にこれだけ予定したでしょう。だからそれの処理をすなおに考えたらよいのであって、四月以降になればこれが非常に減るという見通しについてあなたに自信がありますか。自信があるならばよい。ところが減るという見通しが私には立たぬ。そうなりますと、かりにふえるということがあるかもわからぬということも予想されますけれども、その場合は精算すればよい、精算してみなければわかりません。それだからあなたの意見をかりに無理に通そうとすれば、精算月である七月の末にならぬとはっきりしたことがわからぬということになりましょう。実際はそれまで国会を開いて待っておるというわけにいかぬぜ。そんなのんきなことを考えて、はっきり数字が出るまでは処置の方法なしということで、あなたがお考えになっておるなら、七月まで国会を延ばしていただかなければならぬことになるが、そんなことは事実上不可能です。そこで予算でございますから、およその見当をつけて国会の承認を得て、自後の処置は自後の処置としてまた新しく考えていくということが、あなた方責任当局としては果さなければならぬ義務じゃないかと思います。それをえらいかたいような話をしておるけれども計算的になってしまって実際どうにもならぬ。あなたとしては、国会が済んでしまうし、あとはまたゆっくり考えたらよいわ、そのうちに石橋内閣も倒れておれはかわっておるわと思っておるかもしれぬけれども、われわれ国民を代表する者としてはそうは行きませんよ。やはり最初から公表しております通り、百六十一億については少くとも三十年度の赤字と一緒にしまして、一般会計なら一般会計から補てんするという方針をおとりになった方が、国会審議をすなおに持っていくことになりはせぬか。これも大臣のおっしゃるように、特別調査会の結論を持つまでは何ともいかぬのだということになれば、なるほど私どもは特別調査会を早くやってもらいたい。早く政府の米価決定に対する態度をきめて、この赤字に対する補てんの方針をきめてもらわぬと、一般会計予算もあわせて成立さすことが非常に困難な事態になってくるということを、この際明確に申し上げておきたいと思います。
  182. 小倉武一

    ○小倉政府委員 先ほど数字を間違えまして失礼いたしました。本年の三月末の持ち越しの米で、来会計年度になりまして、基本配給に回す予定をいたしておりますのは約百四十六万トンでございます。これは精米でございますが、玄米石数に換算いたしますと、約一千万石になります。これの希望配給と基本配給の差額は石当り八百十九円、八百円余りです。一千万石に八百円かけまして、約八十億あまりという見当で先ほどのようなことを申し上げたのであります。
  183. 横路節雄

    横路委員 私は一つだけ申し上げておきますが、あなたは、四月から一升八円五十銭上るのではないか、そこでたくさん持ち越した方が赤字が帳消しになってよさそうだというので、できるだけ在庫品を多くして持ち越していくという方法で赤字を幾分か解消することもあり得るわけだが、今のあなたのお話の、基本配給の百四十六万トンというのは、現実には国民はいわゆる内地米の配給というのは非常に少いのです。あなたの方では調査会の結論を待って値上げの点についてはきめるようですが、そのために在庫品をよけいにして、赤字のときに、在庫品がよけいであったために赤字の帳じりの方ができるだけ少くなるというような、国民生活に悪い影響を来たすような、そういうやり方だけはぜひ避けていただきたいということを申し上げて終ります。  ただ農林大臣に申し上げますが、きょうはわざわざごていねいにきのうの答弁について補足説明がありましたが、やっぱり回り回ってきのう御答弁がございましたように、三十、三十一年度の赤字については一般会計で繰り入れをするということが、農林当局方針だということをあらためて確認をいたしました。これはもうきまったんだから、一応分科会質問はこれで終ることにしたいと思います。
  184. 大橋武夫

    大橋主査 三浦一雄君。
  185. 三浦一雄

    ○三浦分科員 私は農林当局に対しまして一、二お伺いしたい。問題は、今度の三十二年度の予算に寒冷地農業振興対策費を計上されてございます。実は今年度七月に、予算委員会におきましては、国政調査のもとに、同僚の西村直己君、社会党の方々も一緒に北海道の視察に行って参ったのであります。たまたま七月の末でございましたが、北見あるいは根室、釧路等に参りましたところ、惨たんたる状況でございました。政府は年来寒冷地等の対策は講じておりますけれども、見たところその施策の徹底しないことは、本年のあの北海道の大冷害に徴しましても明らかなところであります。なかんずく私の感じましたことは、たとえば北見の国に行って視察したときにもございましたが、ほとんど近代の科学的な調査研究の機構が整備しておらない。その仕事の方も進んでおらないということを痛感して参ったのであります。この説明を見ますと、あとの方に寒冷地試験研究の強化等の措置を講ずること、ところありますが、この内容、ことに北海道、東北等についていかなる施策をしておられるか、このことの御説明をお願いしたいと思います。
  186. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 北海道等寒冷地地帯につきましては、昨年も相当ひどい冷害を受けたのでございまするが、昨年に限りませず二十八年、二十九年等もこれまた非常な冷害を受けたのでございます。つきましては政府といたしましても、昨年の冷害にかんがみまして来年度におきましては寒冷地に対しまする農業振興についての総合的な対策を樹立するということで進んだのでございます。これにつきましていわゆる寒冷地の試験研究につきましては、基本的な試験研究といたしまして、いわゆる対冷性の強い米の品種改善あるいは大豆その他の基本的な試験研究につきまして北海道の国営農事試験場及び道営の試験場、東北、北陸の国営試験場並びに県営の試験場におきまして、基本的な研究をやっておるのでございまして、これにつきまして年々国立試験場におきましては相当の金額を充当いたしておるのでございます。しかしさらにこの寒冷地における農業試験場の内容を充実いたしまするために、北海道につきましては、最も冷害に強いテンサイ糖につきまして、これが増産をはかりまするために、北海道のテンサイ試験場の支場を増加することにいたしておるのであります。同時に東北につきましても青森、岩手、福島、宮城四県のほか、秋田県につきましても本年度よりさらに東北、北陸向きのテンサイの試験研究を行うことにいたしております。これについてはもちろん相当の時日を要しまするが、昨年度予備的に試験研究を行いましたのを、本年度はさらにこれを充実いたしまして、試験研究を相当大幅にかつ広範なる地域にわたりまして実行して参りたい、かように考えておるのでございます。なお大豆等についても試験場の試験研究の内容を拡充して、試験場の充実をはかって参りまして、基本的な試験研究をさらに増強いたしますと同時に、東北、北海道、北陸向けのテンサイ並びに大豆等の試験研究につきまして、大幅に内容の充実をはかって参りたい、かように考えておるのであります。
  187. 三浦一雄

    ○三浦分科員 今大坪局長から御説明がありましたように、大幅に試験研究機関を拡充したい、こうおっしゃいますが、農林省の試験研究機関にどの程度予算を計上してございますか、具体的な計数でお聞きいたしたい。それからただいま御説明がありましたけれども、その程度の説明では、私はお聞きしなくても大体了承しておりますから、私の持ち時間も短いですから簡明率直にお答えを願いたい。
  188. 大橋武夫

    大橋主査 答弁は特に簡潔にお願いいたします。
  189. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 テンサイの試験研究につきましては、昨年は百万円程度のものを企画庁の予算に計上いたしておりますが、本年はこれを農林省予算にしていただきまして、金額にいたしましては二百五十万円程度だったかと思うのでございます。同時にこれは補助金でございまするが、国立試験場の北海道のテンサイ糖、冷害地向けの試験研究といたしまして、これは技術会議の中に総括して予算を組んでありますが、大体四千万円程度のものは北海道の国立の試験研究の内容の充実費に充当するものと予定をいたしております。
  190. 三浦一雄

    ○三浦分科員 昨年北海道へ参りましたときには、国立試験場にも行ってみました。ただいま若干の御説明かありました通り、稲作の試験その他につきましても周到な説明を得て参りました。けれども研究の実情を見ますと、いまだ根本的な研究はなかなか進んでおらぬということを印象深く感じて参ったのであります。たとえば北見の試験地に参りましても今テンサイ糖のことだけをおっしゃいましたけれども、その他のものについてはほとんど見るべきものがないといってもよろしい。寒冷地の農業はテンサイ糖の試験研究さえしていればいいというような認識ではないでしょうけれども、もっと総合的なものにしなければならぬと思うのです。ことに北見、根室、釧路、そのほか太平洋側、これは特殊な地帯であることは申すまでもございません。そして試験研究機関の消長につきましても幾変遷があることも私は承知いたしております。たとえば岩手県の厨川の試験地のごときも、これは主たる目的は、その当初は寒冷地に対する畑作の種子の研究であるとかあるいは耕種改善であるとか、そういうようなものについて徹底的な試験研究をするという目途でお作りになったのだろうと推測するのでございますが、これらにつきましてあわててわずか二百五十万円程度のテンサイ糖の試験研究を秋田あたりにやるとか、あるいは岩手にやるとかいうことでは寒地農業地帯の農業政策を推進したとは思えぬのであります。願わくばもっと総合的に気象上のことなり、さらに地質のことなり、あるいは今の品種のことなり、もっと徹底した政策を推進していただきたいと思うのでございますが、今後のお見通しはいかがでございましょうか。特にわれわれは昨年のあの北海道の冷害が、七月の最も夏の気温の高かるべきときにおいてすでにあわれな姿を見て参った者からいいますと、容易ならざることだと思うのです。寒冷地の農業につきましては、私は現地に行ったことはございませんけれども、ソ連の農業にいたせ、同時にまた北ヨーロッパにせよ、さらにまたカナダ等にいたしましても、これはやはり寒冷地帯であります。これらはとってもって範にするに足ると思う。やはり北海道の開発のごとき、同時にまた今提唱されております東北の開発のごとき、これらにほんとうにメスを入れて基礎的なことをするのでなければ、私は農家の経済の安定もできないし、農業経営の安定もできないと思うのですが、今後なおそれらについて総合的に、気象上の問題あるいは地質の問題あるいは耕種改善、品種の改良等、もっと雄渾な試験研究を取り進めてもらいたいと思うのでございますが、これに対する御当局の所見を伺わせていただきたい、大臣はお見えになりませんから、一つ八木さんからお願いしたいと思う。
  191. 八木一郎

    ○八木政府委員 親しく寒冷地のあの痛ましい農業の実態を御調査になり、その結果として御指摘になりましたただいまの具体的な、雄渾なその方針につきましては、農林当局といたしましても、つとに問題の起るたびに、検討をしてきた問題であります。昨年たまたまあの惨害に当面いたしまして、せめて寒冷地帯の振興のために基礎的な要素となるものをつかみましてこれが振興の方策は、一口に申せばやはりこの地帯が単作経営であるところにかんがみまして、水田の二毛化とか、畑作の高度利用とか、ないしは自然の条件に合った耕種改善、品種改良等、総合的な角度から手を入れなければならぬ、深く確信を持ってこの面に力をいたそうと考えまして技術会議には特に、予算的にはわずかでありますけれども、課題としては基礎的な問題を整理いたしまして御意思に沿うように、さらに一段と力をいたしたいと思います。
  192. 三浦一雄

    ○三浦分科員 なおこの問題は、やがて永井さんからもお尋ねがあるそうでございますから、私は次に進みます。このたびの着眼は、畑作経営の合理化と畑地土壌の維持培養をはかるということから考えてきておる。家畜を導入し、さらに畑地の経営改善をするということで、トラクター・センターを設置していこう、こういうことでございますが、私は日本の畑地の農業に来たるべき一つの大きな時点を画するものとして賛意を表するものであります。これに関しましてただ単に寒冷地の農業対策ばかりでなくて、日本全体の畑地の農業問題が、やはり一つの転機に来ているのじゃないか、すなわち現在でもすでに食管会計でも、いろいろ論議されました通り、澱粉を買い上げるあるいはその他テンサイ糖であるとか、あるいは畑作のものの処理を生産過剰といいますか、そういうようなことで政府の買い上げをもってこれはわずかに維持しておるというふうになっておる。いつまでもこういうような形態を持続し得るものかどうかということに疑問を持っておるわけであります。すなわち西南地方におきましても、単に従来カンショを作ればいいのだということで作ったら、今度はカンショの澱粉を買い上げるということでは、かりにこの買い上げもしくは安定施策について改善しますにつきましても基本的なものは片づかない、そうしますと、一この畑作そのものを一体農業経営の面から、あるいは農家経済の面から見直さなければならぬように思うのですが、その際に畑地の改良そのものが関連してくるのですけれども、これはやはり畑地の経営改善にトラクター・センターを拡充していく、そうして同時に畑地の交通整理といいますか、土地区画といいますか、それを取り上げていってそうして畑地そのものを基本的に改良していく、そうしてその上に輪作形態等も取り入れて改善していくということが、日本の畑作農業の将来から当然考えられなければならぬと思うのですが、これらに対する将来の見通しと今後の施策の方向はどういうものでございましょうか。
  193. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 畑地の問題につきましては、ただいまお話になりましたように、わが国の畑地は水田に比べまして非常に生産力が低い状態にあるのでございます。これを改善いたしますためには、まず深耕をするということと、もう一つは有機質の肥料を多量に投入いたしまして、それによって土壌の条件をよくするということが、最も的確な方法であろうと思うのであります。従いまして畑地振興という意味からいたしましても、北海道並びに寒冷地帯につきましては、ただいまお話のありましたように、五十五台のホイール・トラクターを国有によりまして導入いたしまして、その土壌の深耕と、それに伴います有機質肥料の投入をいたしまして、畑地の深耕をはかって参りたいと思うのでございますが、寒冷地帯以外の府県におきましても大体試験的に十一県分相当のホイール・トラクターを、これは国有ではなしに都道府県に対しまする半額の補助ということで、従来の特殊土壌地帯に対しまする常農用ではなしに、普通のトラクター以外のホイール。トラクターを特に導入いたしまして、深耕をはかって参りたい。もちろんこれは内地におきましては半ば試験的でございますので、その成果を見まして、今後さらにそういうものが的確な効果をあげるということに確信を持ち得ますれば、大量的に今後増加をはかって参りたい、かように考えております。
  194. 三浦一雄

    ○三浦分科員 この寒冷地帯に対するトラクター六十四セットの貸付をやるということになるのですが、貸付料が高いのではこれは問題になるわけでありまして、われわれはロシヤのトラクター。センターのかつての経験をいろ  いろ教わったのでありますが、ロシヤは猛烈な貸付料をとって、それを他の産業の原資に充てたという経過もあるのですが、農業政策としてこれをとられてはやり切れない、同時にトラクターそのものは外国製品ではないのでしょうが、その貸付の主体、それから貸付方針、特に農民の負担等についての御考慮はいかがでありますか。
  195. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 トラクターの中に二種類ありまして、ホイール・トラクターはテンサイ糖の分の五台を含めて、五十五台分ございますが、内地にはこれに該当する生産がございませんので、全部外国の製品でございます。もちろんこれにつきましては耕種用の各般の付属機具がそろって五十五台分、こういうことに相なっておるのでございます。なお普通のトラクター、これは開墾用でありますとか、あるいは深土耕用でありますという十一台分は、これは内国産のものが相当これに入ってくると思いますが、これはいわゆる開墾用並びに深土耕用のトラクターでございまして、五十五台分はいわゆる営農用のホイール・トラクターでございます。これはもちろん国で購入いたしまして、これを北海道に貸付をする、かような格好に相なって参るのでございまして、貸付でございまするから、相手方の利用者よりその利用料をいただくことは申すまでもないことでございますが、ただいまお話がありましたように、特にこれは北海道におきまする寒冷地対策として実施するのでございますから、農家の負担をできるだけ軽減するような方策で実行して参りたい、かように思う次第でございます。
  196. 三浦一雄

    ○三浦分科員 一番先に伺ってあります通り、乳牛を導入する、つまり酪農業をもって寒冷地帯の農業経営の基礎にしようという着眼でありましょうが、この場合、乳牛はいわゆるジャージーでございますか、それともホルスタインの優秀なものも入りますか。
  197. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 寒冷地対策に関しまして従来やっておりました施策のほかに、三十二年度から特に新しく畜産の方でやりたいと思っておりますのは、国有貸付による家畜を農家群に貸付いたしまして、畜産を振興さしていきたいという考え方でございますが、この場合乳牛と和牛を考えております。今のところ乳牛約三千頭、和牛二千頭という計画であります。その際の乳牛はホルスタインでございます。従来から入れておりまするいろいろなジャージー等の導入という形式は、これは従来通りの方式でやっていきますので、寒冷地帯では、ジャージーの導入とホルスタインの貸付と、こういうふうにいたしたいと思っております。
  198. 三浦一雄

    ○三浦分科員 大体乳牛の三千頭はホルスタインを主としてやるというふうに了承していいのですね。これは寒冷地帯の実情から見ますと、いい種牛のないことは当局の御承知の通りであり、これに非常な期待を持っておるわけでございます。この地帯はいずれもかつては馬産地の有力なところであったのですが、転換をして参った。そこで能力の高いものをほしいというのが必然の趨勢であります。実行上はその点に留意せられて、優秀な種牡牛等も十分一つ考え願いたいという希望を付して次に進みます。  そこでちょうど畜産局長がお立ちになったのですが、先年来、寒冷地のみならず、日本の農業経営を酪農形態にだんだん進めていくということで、政府は酪農の政策を進めて参ったのでありますが、私は今日特にお伺いしたいのは、酪農振興法の適用と、同時にまたこれの一翼をになうところの、酪農の分担をいたしますいわゆる酪乳業と申しますか、それとの牽連について一つお尋ねしたいと思います、私はどうも農林委員等をいたしておりません関係上、最近のこれらの詳しい事情はよくわかりませんけれども、一定の地区を指定せられて、そこの酪農を振興する、同時にそこに中心工場を設置して、乳の処理をするということに大要は帰すると思いますが、ここに至りますまでの歴史的ないろいろな事実があること、もうよくおわかりのことでございますが、われわれが過去のことを顧みて遺憾に思うことは、一面において酪農の振興が進められたにかかわりませず、いわゆる農業協同組合の系統による一つ態勢といいますか、機構が整備できなかった。それが伸び得なかった。そうして今日では牛を飼うものは農家、しかし乳を処理しこれを販売しこれを裏づけていくものは、むしろ商業主義による一つの酪乳業の会社等になっているということであります。これはどうも遺憾でございますけれども、そういう趨勢になって参る。これはもういたし方ないと思うのでございますが、いわゆる集約酪農として地区に指定されることになりますと、そこに一つの中心工場を選定しなければならない。これは一体数個予定しておりますものですか、あるいはある段階においては一個予定していくことが好ましいことだとお考えになっておるか、これらについての大体の基本的な方針を、一つ御説明願いたいと思うのであります。
  199. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御存じのように、集約酪農地域の指定ということは、二十九年に定められた酪農振興法によって行なっておるわけでございます。すでに三十年及び三十一年というふうに経過いたしまして、大体全国で五十六の指定地域があるわけでありますが、この酪振法の目的といたしております集酪地域の指定は、法律にありますように、大体酪農に対しまする後進的な地域で、その地域が、農業の発達をはかるために酪農の振興が必要であると認められる地域、またその地域が、農地の利用状況、あるいは工場を持ちます場合におけるいろいろな施設基準に合いますような地域、そういうような地域を考えておるわけであります。それでまず集約をいたしまして、乳をしぼれるように牛を入れなければらないのでありますが、少くも五千頭程度の乳牛の飼料の八割程度まで自給し得る地域を考えておるわけであります。それでそのようにいたしまして、この計画で五百頭の乳牛が入りますと、大体工場の処理能力といたしまして、少くとも百五十石程度の乳が集まることに相なるわけでございます。少くとも百五十石程度の処理がございませんと、現在の外国等の例から見まして、工場における処理、加工の経費が割高になります。大量に集めて大量に処分し得る近代的なものをやる必要がある。そういう考え方になっておるわけです。さらに集乳をいたします場合に、各農家からその中心的な工場への距離、これらもやはり考え合せまして地域を指定しておるわけであります。それでこれらの条件から考えてみまして、今まで指定いたしましたところの状況考えてみますと、この地域五千頭にはもちろん及びませんが、すでにある程度牛が飼われておるし、可能性がもちろんある、また小さい工場等がぼつぼつ行われておるというような地帯になっておるわけであります。それらの中でこの法律考えておりますような百五十石の工場ということになりまする、やはり結論的に百五十石工場が二つできるということにはちょっと相ならないことになって参るかと思います。どうしましても、その中の主要な工場を早く近代化さすということになりますと、百五十石程度のものに行くために、その中の中心的な工場をきめなければならない、こういうことに相なって参ります。もちろんそのことはほかの施設その他を否定するわけではございませんが、その中に百五十石程度のものが集め得る工場というものは、どういうふうにやるのだということが、振興計画の中にきめられておるということが、認定をいたす場合の一つの条件になっております。
  200. 三浦一雄

    ○三浦分科員 その事情はよくわかりました。しかし沿革的に見ますと、五千頭の乳牛を収容し、これを順調に育て上げるということはなかなか容易ならざることだと思います。同時にまた、不幸にして酪農に関する農林省の政策が幾多の変遷を経て参りました。ことに戦時を通じ戦後にわたりまして、ある意味では相当沈滞した時代もあるのでございますから、急に日本の食糧事情が変って参り、粉食奨励であるとか、あるいはまたそういう見地から酪農製品に対する要請が強くなって、一面農業経営も、先ほど来御説明のあったような経緯から、強く酪農の振興を取り上げて参って、そして今のようなことに発展してきたのですけれども、その過程におきましては相当困難な事情があり・当該の地方はいわばうき目にあってきたわけでございますから、大体そういうふうな方針で進むとしますと、一応一地区一つの工場ということに考えて、その他の一工場以外の設備はあえて否定しない、これはもっともだろうと思います。ところがこの運用の過程におきまして、しばしば問題になるのは、競争に立つものの相剋摩擦であります。一々全国のいろいろな事例はとりませんが、一つわれわれの心配にたえないのは、一面においていわゆる独禁法がこの問題とからんできておるという事情が出て参る。そこできょうは公取の政府委員にも来ていただいておるわけでございますが、この双方の調整が法制上とれておらぬですね。これは立法の過誤である、あるいはその必要はないとしたのか存じませんが、両者の間に調整がとれておらぬと思うのですが、酪農推進の上にその法制上の調整がとれておらぬという点については一向支障ないかどうか。民間側の方を見ますと、ある程度調整がとられなければ相当困難な事態を来たすと思うのでございますが、当局のお考えはいかがでございますか。まず畜産局長の御意見を伺いたい。
  201. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 酪農振興法と公取の関係についての御質問でございますが、これは酪農振興法の方から申しまして、特にその間にお互いに矛盾摩擦があるというふうには私たち考えておりません。ただ先ほど申し上げましたように、中心工場というものをきめます場合に、従来そのところにありますあるいは新しく入って参りましたような、それぞれの乳業者同士の間にいろいろと競争があることは当然のことかと思いますが、その結果いろいろな問題の生ずることもあろうかと思います。しかしそれは酪振法自体とそれらの公取関係法律との問題ではないように考えております。酪振法で期待いたしておりますのは、中心工場の問題にしぼって考えてみますと、結局酪農振興計画というものを作りまして、その中にどういうような集乳のやり方をやり、中心工場はどういうふうに考えるのだということになるわけでありますが、それらの計画自体は、この法律できめておりますように、その地域の市町村長あるいは協同組合及び連合会等の長の意見及びその地域で乳業をやっております諸君の意見を知事として聞きまして、さよういたしましてきめました振興計画というものを付して農林省に持って参る、かような順序に相なっております。もちろんこの振興計画自体を変更いたします場合にも、同様の手順を経まして持って参ります。そういうような形をとりまして持って参りますので、乳の集荷その他——従来の北海道その他の事件がありましたように、乳の集荷その他におきまして、公取関係法律に違反するかどうかというような議論があったと思いますけれども、少しその間の法律のあれが違っておるのではないか、かように見ております。
  202. 三浦一雄

    ○三浦分科員 畜産局長の酪農振興法の方針としてはさようなことで、言うことはよくわかります。しかし事実打ち込んでいきますと、なかなかそういう御期待と希望には沿わないことになることが現に起きておる。すなわちまず設備関係でございますが、これも千差万別でございますけれども、農協のような単協が持っておるような——これは現に農林省が承認して、農林中央公庫等から融資をいたしまして、そして簡易な処理場を作らせるというようなこともあります。しかもこれをやります場合にも、酪農振興法の行き方とは違ったように思われる節も、事例としてないではないのであります。しかし現実の問題としては酪農地帯にそういうことがあり、いわゆる単協でもって簡易な処理場を作る、やや大きいのもある、こういうようなことになっていきますから、おのずからそこに問題が出て参るのでございますが、ことに先ほども指摘いたしました通り、かつての酪農の進め方につきまして、一時、戦時中の農業団体の再編成上帰着したのでありますけれども、全国農業会等が接収して持っていったようなことがあるわけであります。そういうようなものは今度は全販連に経営される。ところが全販連は米の買い方、売り方、そういうものに忙しいために、ほとんど顧みることなくして放置されたということも、酪農地帯ではあり得たのであります。これらの問題がちゃんと整理されずには次の段階に進めない。そうしますと、いきおい今度入りますものとの関係を、その当該地方の実情に即するがごとく再編成していかなければならぬ。その場合においても所定の手続きはとっておると推測されるのでありますが、それらをだんだん進めて参る。ところが結果は設備の七割も八割も占めておる。そうして設備においては独占的な位置を持ったということになります。そうしますと、そこまでは畜産局では調整はできぬといいますか、しないといいますか、そういうような関係から手はつけておらぬ。できてきたところを見ますと、今度はそういうふうな独占禁止法の違反になるような種類の事態が現に出てきておるわけでありますから、やはり酪振法の問題と、農村における独占禁止法との調整は、一つの課題として解決せらるべきものであると思うのですが、自分の考え方ではそこまで必要はないというふうなお考えですから、これ以上争ってもしようのないことでございますが、酪農振興の将来のためには予想される一つの大きい問題ですから、十分にお考え願い、むしろ法律上の調整をするか、あるいは何らかの調整の方法をとっていただいて、一地元の関係の者、乳を買う者が追従に迷うことのないように御研究を願いたいという強い希望を付しておきます。  次に公取の関係の方でございますが局長おいでですか。——公取の方にお伺いしたいことは、公取では審査を開始するに当ってはいろんな動機、縁由によってされると思うのですが、いろいろの調査の過程におきまして、いろんなことを公取の意見なりとして発表しておる。これはわれわれはあまりけっこうなことじゃないと思うんですが、中間的な事件処理の過程においてPRをやってよろしい、こういうふうなお考えでございますか。その点お伺いしたいと思います。
  203. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。公取といたしましては、審査段階に入るか入らないかといういわゆる予備審査の段階におきましては、きわめて言動をつつしんでおりまして、特に新聞の種になるような事件等につきましては、一同非常に警戒をいたしまして、なるべく新聞に対する発表等においては事の真相が歪曲されて報道されることのないように、非常に慎重にものを申しておる次第でございます。特にPRのために先ばしった宣伝をするようなことは、今までやっておりません。
  204. 三浦一雄

    ○三浦分科員 PRはしないけれども、事件の処理過程において事前意見の発表をしておるということは、お認めなさいますね。事件の調査の過程において、その所見を発表しておられるということは、お認めになるわけでございますね。
  205. 小川清四郎

    ○小川政府委員 たとえば一例をあげますと、当該審査官に、その過程において質問などがありました場合には、原則といたしましては、目下調査中であるから内容については言えないというふうに申すのが普通でございます。
  206. 三浦一雄

    ○三浦分科員 われわれの受ける印象では、当該の事務官等がはっきりした項目をあげて、その意見を発表しておられる。そうしますといかにも——いろいろ事情を聞きますと、そんな不公正なことはしていないとおっしゃいますけれども、その発表をしていることは具体的であって、相当結論づけられておることを発表しているために、当該地方に非常に大きな衝動を起しておることは、われわれとしては看過できない。公取には公取の使命があるのですから、何もそこまで制限せいとは申しませんけれども、私は不謹慎じゃないかと思う。具体的に意見を言っているのですから。それから同時に公取の関係の人に接着した過程におきましては、その意見を出す前に、関係のところへ連絡して、いろいろ意見を述べたということを聞いておるのであります。その意見を述べたということの意味は、独占禁止法の違反だとせられることによっての当該の地方に重大な影響の出てくることを考えての措置だろうと思うのですが、これはいかなる理由によりますか。あるいは公取としましては、審査の過程にありましても、関係庁と連絡をとっているのでございますか。その趣旨はどういうところにございますか。
  207. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいまの御質問によりますと、新聞等の発表以外に、関係官庁を含めまして関係の向きに何らかの意見を表明しておるというふうに受け取っておりますが、委員会並びに公取事務局といたしましては、この点につきましてはすでに十年間もやっておりますので、各人が当然のこととして、そういう誤解を与えるような意見の表明ということにつきましてしゃべるのは穏当でないというふうに考えておりますので、もし具体的にそういう事実がございますようでしたら御注意をいただきまして、今後そういうことのないようにいたしたいというふうに考えております。
  208. 三浦一雄

    ○三浦分科員 私は事実をなくするというよりも、必要に応じて各庁関係の向きと連絡なさるというならば、その趣旨を徹底さしてもらいたい、こう思うからであります。すでに調査にいた人は具体的な事例をあげて、その意見の開陳をしておる。さらに関係の各庁、はっきり言いますと畜産局等にも御連絡があったはずであります。それから同時に当該の県にもあったようでありますが、私は具体的な事件は申しませんが、そういうようなことがあります。そうしますと独占禁止法の違反であるかどうか。公取としては裁判的な機能でやっておるのですから、それを言いますと、われわれはいわゆる裁判的な機関でございますからそういうものにはタッチしないと、こういう本義に立ちかえる。ところが実際やっているのは、途中で調べた過程ではああだこうだという意見を言うておる。そうして相当な影響力を与えておる。同時にまた関係の向きに対しましても、公取ではこういう実情だと見ておるということを言うておる。独禁法を援用するに当りまして、当該の一つはこう言っているのです。自分たちの方は事業主が独禁法違反という正しからざる道を歩むことを矯正すればよいのだ、そういう趣旨を言うておられる。そうしますと正しからざる道、すなわちこれは一つの行政に関連することですから、あるいは設備の統合にいたしましても、あるいはいろいろな仕組みにしましても、これは行政の一環なんです、ところがその間に全然触れておらないのみならず、事実はそれについてもいろいろな意見を言うておるのです。事前にそれだけの話がし得るならば、農林当局にはっきりその対策を指示するなり、あるいは当該の地方長官等にするという方が、むしろ親切なやり方じゃないかと思うのでございますが、それはいかがでございますかというと、いやわれわれの方は審査機関ですからと、こうひっ込んでしまう。これじゃどうも同じ公取の審査機関として、われわれは検察当局のようなものですといわれるが、検察事務に当りましても、そうただ単にへ理屈を言わずに、裁判とは違うのですから、この間に一つ連絡というものがあり得ると思う。かような事態に際しましては、もう一歩進んで、むしろ関係庁の間に調整をとり、そうしてこの問題がむしろ正しかるべき方向に行くということに一歩進めないかどうか、進むべきが当然だと思うのですが、その態度はいかがでございますか。
  209. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいま私、御質問の趣旨を多少勘違いしておりまして、おわびを申し上げますが、たとえば酪農振興法関係の審査事件というふうな問題が起りました場合に、監督官庁であります農林省と私どもの方で話し合いをすると申しますか、独禁法の問題について意見を申し上げると申しますか、失礼かもしれませんが御注意を申し上げる、そういうことにつきましては、われわれといたしましては従前からむしろ積極的にやっておるのでございまして、どういうふうにお聞き及びか知りませんが、審査部の担当官の方は畜産局の方へ十分にお話をして、数回にわたって御連絡申し上げている、こういうことでございます。
  210. 三浦一雄

    ○三浦分科員 私は最初に、この酪農振興法の進め方につきましては、こういうような類似ケースがたくさん出てくると思うゆえに、これは一つ独禁法の適用との関係において、法律的に両者の間で調整してもらいたいということを希望しておきます。  第二段は、具体的な場合に、やはり公取といえども一つの行政機関でございますし、行政の円滑ならざる運用は期待せられないだろうと思う。ことにこれらの重大な国策として進めていかれる問題について、いやしくも当業者の不信の声が起ったり、信頼しないということでは、はなはだ困るのでありますから、むしろ進んで一つ関係当局に対しては、いわゆる正しからざる道を歩ませない、正しい道を歩ませるということにあるならば、ただ単に法規の末に拘泥せず、もっと建設的な措置をとられることを希望します。かつまた検査等においでになります場合に、これは具体的な例をあげろと言われるならばあげますが、きょうはやめておきますけれども、検査の過程におきまして、重大な影響を及ぼすべき言動等はお慎しみを願いたい。そうしてやはり一地区でありましても関係者は数千人に及び、農家の農業経営にとっては重大なことでございますから、そういうようなことの生じないように期待いたします。これを要するに、酪農振興法の伸展の過程におきましては、類似ケースは多々あると私は思う。聞くところによると、八ケ岳の地区の場合においても、若干そういうような類似のことがあった。また現に青森県においても起きておる。なお他にこれを進める場合にも同じようなケースがないと限らぬのであります。その場合に、片方は自分の方の領域においては何も支障がないということでおりましても、片方の方から今のような問題が起きてくると、競争の激化の結果さようなことがあり得るのでありますから、むしろ当局とせられては法律上の調整からお考えを願いたい。  第三段には、いやしくも集約酪農地域等の指定があり、くさぐざの経済的政策を講ずる場合に、一片の法令によってそれらの重大な利害のある問題を混乱させないように、畜産局長にも期待を申し上げ、同時に公取の方におきましても運用上重大な過誤を起さないように希望いたしまして、これに関する質疑を終ります。
  211. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 ただいま酪農振興法の集約地帯の指定に関しまして、公取の方とも十分連絡をとってあやまちなきを期するという御意見、まことにその通りに存じます。これは酪農地域を指定いたします場合、あるいは酪農地域を指定しました以後におきまして、あるいは酪農地域を指定せずに、現在の酪農関係の収入競争の激甚というような問題等におきまして、公取の方の研究上の問題として、いろいろ問題が起き得る状況にあるかと思います。と申しますのは、何も地域の指定をいたしたからどうこうというわけではなく、その以前の乳業の問題におきまして、いろいろ問題が乳業競争の問題として起きております。しかし今御指摘になりましたような八ケ岳の場合、これは地域を指定しました以後に起きておる問題であろうかと思います。それからもう一点御指摘になりました青森県のいわゆる三戸、八戸地区の集配地区の指定、これはたまたま地区を指定いたします文書等が出て参り、県においてそういうような意向が出て参っておりました過程におきまして、公取の方の現地調査が行われた事情になっております。これらの問題におきましては公取は公取としての御意向もございますが、これは私たちの方からむしろ積極的に公取の関係のところに御連絡をいたしまして、また公取の方からも御連絡があって参っております。ただこれはそれぞれの情報によりまして、あとでそういう事実があるかないか、またそのような決定が果して公取違反になるかどうかというような問題の最終的な決定は、これは私たちの方ではございません。ただそういうような調査があったという事実、このことに関しましては私たちも重大な関心を寄せ、それに対して酪農地域の指定をいたすのについて、どのような態度をとるべきかということも、行政当局としても慎重に検討いたしたつもりでおります。その結果といたしまして、私たちは問題の青森の地区につきましてもこれを集酪地域として決定いたすのは妥当であるという結論に達しております。個々の事例に関しましてこれを徹底的に究明いたし、あるいはそれを公取法の建前から見まして、どうこうするということは、これはちょっと農林省の方の決定すべき問題ではないかと存じますが、それはそれといたしましてのまたケースが出てくるかと思います。
  212. 三浦一雄

    ○三浦分科員 これはその指定があるから問題が起きてくるのです。それから何も指定しないところだと両者でやっているものですから、指定しますと、いわゆる中心工場のものは、これは独占排他的にそこに集中すべきものだという制度ではないけれども、事実単位農協等がその組織により、あるいは共同の行為によって進むということになると、ともすればその形態が一面においては独占禁止に違反するがごとき観を呈する、そこで問題が起きるということは申すまでもありません。何も指定しないところには、こんな問題は起きておらぬ。それですからその間の問題こそ調整を要するということで、あなたの方の関係では私どもの業者が独占禁止にしていようがいまいがわれ関せず焉だというけれども、そうは参らぬ。これによって関係の者が、どうなるかということで一つの不安感を持っておる。その関係者の安定なくしてこの事業を推進するということがいえないことは、これは申し上げるまでもございません。そういう意味で私は考慮すべき一つの問題だと思う。せっかく酪農を振興する、そしてジャージーなり、さらにまたホルスタインなり逐次ふやして参る。しかしながらその中心工場の運命が別の措置において左右される、あるいはおそらくその業務ができないということになると、またやりかえなければならない。そんな煩はとうてい農村の関係者としてたえるものではないのです。その利害関係者並びに当業者の信頼感等がなくなる。同時に経済的にも重大な影響を及ぼすべきことが明らかであるから、われわれは事前にさようなことがないようにやはり調整が必要だと考えるがゆえにそれを要望するのでございます。私これ以上は畜産局長と別に論議するいとまはございませんから、とくとお考えを願って、八木さんお聞き及びの通りでありまして、今後拡大すればするほどこの問題は起きることと思いますから、一つよくお考えを願いたいという希望を付して私は農林省に対するお尋ねをこれで終ります。ありがとうございました。
  213. 川俣清音

    ○川俣分科員 先ほどの質問に続いてお尋ねいたしたいのでありますが、先ほどの質問に対して、目下特別会計に伴うところの法律を用意しておるという答弁が一方からあり、一方からはまだその段階に至っていないという答弁二つ出ております。どっちがほんとうなのですか。
  214. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 ちょっとおくれて来まして、そういう二つ答弁があったことを存じませんでしたが、農林大臣が言われました通り、特定土地改良工事特別会計法をできるだけ早く国会の御審議をいただくように、大蔵省と相談いたしたいと思います。
  215. 川俣清音

    ○川俣分科員 できるだけ早くというのは、いつごろを目途にしておるのですか。
  216. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 目安といたしましては、今月十六日を目途として成案を得たいということで進めております。若干の異動があるかもしれませんが、そういう努力をいたしております。
  217. 川俣清音

    ○川俣分科員 二月の十六日というと、きょうは十四日ですから、あさってですね。そうすると、まだこれは実施に対する具体案がきまっていない、こういうのはどういうわけですか。十六日に最後確定しようということになりましたならば、もう大体意向がきまっていなければならぬ。きまっていないと答弁したり、十六日にはできますなんて、どっちがほんとうなのですか。  同時に大蔵省にちょっと聞いておきますが、さっきあなたがおられたのを私気がつかなかったので、あなたの代弁をしたようなことを私はだいぶ言ったのですが、一体特別会計についてはかなり熟して成案を得る段階になっておるのかどうか。私どもはまだその段階に至っていないように察するのです。なかなかあなたの方ではそう簡単には応じていないように察するのですが、この点も進行上の関係がありますからあわせて二人から答弁願いたい。
  218. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 先ほど申し上げましたのは、十六日目標で努力しておりまして、その後少し進んでおりませんということを申し上げたわけであります。目下の見通しでは、大蔵省との意見の差があるところも確かにありますので、大蔵省の方にも御協力を願いまして、余裕を若干見て安全を期しますと、二十六日には政府の案がきまるようにと、まことに恐縮でございますが存じておるわけてあります。
  219. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。ただいま農地局長から御答弁がございました通り、私ども大蔵省におきましても、ただいま私どもの局の法規課長の手元におきまして、農林省にも御相談申し上げて成案を得つつある最中でございます。予定より若干おくれておりますけれども、できるだけすみやかに提案いたす所存でございます。
  220. 川俣清音

    ○川俣分科員 今農地局長並びに主計官から、なるべく早くと、こういうことでありますから、もう問題は大体しぼられておる、こう見てよろしいだろうと思います。しぼられていなければ、これから協議することが多ければ、なるべく早くなんというようなことは言えないはずなんです。大体の成案の見通しがあるから、すみやかにという言葉が出てくるのだと思う。大体協議の点がしぼられておると思う。そういたしますと、具体的に一つ聞きますけれども、一体新しい干拓のような場合における方策は、いわゆる農地法に基くような方法でいかれるのか、あるいは別個の方式でいかれるのか、いろいろあると思うが、どっちの方向でいっておられるのか、このくらいは明らかにできるだろう。とんでもないようなことは考えていないと思う。
  221. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 御質問の中に、方策とおっしゃいましたことがよくわかりませんが、地元負担か、売り渡し値段かということじゃないかと思いますが、そうでございますか。
  222. 川俣清音

    ○川俣分科員 違うのです。造成農地の処分の方法は、従来の法律の範囲内でいく場合と、その他のことが考えられるだろう、どっちをとっていくのかと聞いている。
  223. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 干拓地の造成は国営と代行とありまして、特別会計で経理をいたしております。そうして農地事務局が府県に工事の実施を代行させてやったこともございます。
  224. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうすると、農地造成ですが、何のために干拓するのですか。
  225. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 御承知のように、農林省で取り扱って参ります干拓地を行うのでございますから、目的は農地または農地になるべき素地でございます。ただし干拓を行います場所でありますとか、農地にして農家を創設したり、農家の経営用地に使っていただきますために、必要関係が多い場合は、農地以外の用に供せられることがあとでできる場合もあると思いますが、簡単にその割合等を言うわけにいきませんけれども、過半が農地用でない場合には農林省で扱うものではありません。農林省が運営をいたしたいと思っております土地改良特別会計で取り扱っておるもの、及び一般会計で扱いますものはそういうふうに考えております。
  226. 川俣清音

    ○川俣分科員 そういたしますと、多くの場合、農林省計画するところの干拓は農地造成の建前からやるのであるということがわかった。そういたしますと、農地処分を行うことになる。この農地処分に対して、何か従来と変った考え方があるのですか。変った考え方があるということで特別法を作るのですか。
  227. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 変った考えがあるといえばありますが、ないとは必ずしも言い切れないと思います。ただし農地法の改正を考えたりすることはしないようにと思っております。
  228. 川俣清音

    ○川俣分科員 別な角度から一つ聞きます。今のこともまた続いて聞きますけれども、大蔵省と意見の一致を見ないでおる点はどこにあるのですか。
  229. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 内容もあれば、法律の条文の書き方も、いろいろあります。
  230. 川俣清音

    ○川俣分科員 大綱でいいです。
  231. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 目下の段階では、過去から継続して工事を行なっております干拓地の処分に応じまして地元負担をしてもらうような場合などがおもであります。
  232. 川俣清音

    ○川俣分科員 大蔵省はどうなんです。問題が片づかないという点はどこにあると思いますか。小さな文章とか何とかはどうでもいい、大きな問題でいい。すみやかにというのですから、問題点は大分しぼられていると思います。
  233. 大村筆雄

    ○大村説明員 私ども予算を組みますにつきましては、大体考え方が一致しております。この特別会計法という法律を作るに当りまして、技術的な問題がありますので、この点が相当慎重に扱っている点だろうと存じます。
  234. 川俣清音

    ○川俣分科員 単なる技術的な点だけと見てよろしゅうございますか。事、他の農政上の大きな変更を来たすようなことはない、ごく事務的なことだと了解してよろしいですか。
  235. 大村筆雄

    ○大村説明員 御質問のような、大きな農業政策上の変更を来たすような点についての意見の不一致はないというように了解しております。
  236. 川俣清音

    ○川俣分科員 農地局長どうですか、単なる特別会計法というような……。
  237. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 私の立場農林省農地局長として申し上げておりますので、まだその意見がどうまとまるかは今後の問題で、すみやかに解決したいと思いますが、農林省意見は、事の軽重、大小ということの考え方は人によっていろいろあろうと思いますけれども、農政上の問題がないわけではないと思います。
  238. 川俣清音

    ○川俣分科員 何だかさっぱりわからない。いやしくも既存の法律に抵触するようなことになれば、これは農政上に大きな影響のあるものと見なければなりません。既存の法律に対する例外規定を設けるようなことも、また大きな農政上の変更であることは一般の常識であります。簡単にこうだといえば、こんな遠回しに聞かないのです。無理やり遠回しに聞かせているんだから、遠回しにこちらも聞かざるを得ない。そのつもりで言っていただきたいのです。大蔵事務当局は、農政に大きな変化を及ぼさないというのだからして、既存の法律に対する例外規定など設けない、あるいは既存の法律に抵触するようなことは考えない。特別会計というワク内におけるごく事務的な問題だということになるという答弁だった。ところが先ほどから聞いておりますと、農地処分をする場合に別な角度でやるような答弁もなされている。そうなりますと、農地法から、他の土地改良事業法におきましても、農林省全体のいろいろな補助率にも、及ぼすような問題、農政全般にも及ぼすような問題を含んでいる。答弁がしにくいでしょう。そういう問題を含んでいるためにおそらく簡単に答弁ができないのではないかとだんだん邪推もするのだが、一体どうなんです。
  239. 大村筆雄

    ○大村説明員 先ほど私が答弁いたしましたのは、大きな農業政策の根本的な問題についての意見の不一致はないというふうに申し上げた次第であります。
  240. 川俣清音

    ○川俣分科員 私はそういうふうに聞いているんじゃないんですよ。今問題になっている点は、農政上に非常に大きな変更のあるような点が問題になっているのかどうかと聞いたのです。それをあなたは特別会計というものを新しく作るためのごく事務的な問題であると言う。特別会計を作るときにはいろんな事務的な問題が起ってきますから、これは農政上の関係でなくても、あるいは建設行政の関係でなくても、会計整備の問題でいろいろ事務的な問題があります。そういう問題が農政全般に及ぼすような問題で意見の一致を見ないのか、こう聞いているのです。
  241. 大村筆雄

    ○大村説明員 ただいま御質問のような点につきましては、もうすでに予算は提出しておるわけでございますから、予算上すでにきめなければならぬ点はきわめて予算は出ている次第であります。
  242. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうすると予算を提出するからにはある程度大本はきまり、少くとも世間に発表していい段階にまで協議が整って出されたのか。それが常識だと思う。この常識をもって判断してよろしいのですかどうか。局長一つ……。
  243. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 内閣から国会に提出されております予算書に関します限りは一致しております。
  244. 川俣清音

    ○川俣分科員 それではまだ内容がきまらないというのはどういうわけですか。陣容がきまらない予算というものはないんですよ。こういう計画に基いてこれだけの予算ができた。主計官など農林省の小さな川とか小さなたんぼ、五反歩か六反歩のたんぼまでどこにつけるというようなことを検討しなければ、いいの悪いのとずいぶんやかましく言っているじゃありませんか。そういう末端の、まかしておいていいようなことまでいろいろ検討しなければ全体の予算が組めないということでだいぶやかましいじゃないですか。徹夜までやっているじゃないですか。なかなか大づかみなことはやっておりませんよ。つまみ金はこの間の引揚者の問題くらいなもので、あとは相当末端に至るまで細目にわたって予算ができている。そうなるとこれはどうなるのです。新しい造成した分に対する農地処分など一体どうなるのですか。
  245. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 土地改良特別会計法という条文を付した手続的、事務的なものはまだ国会に提出するわけに至っておりませんが、農政上に重要な影響があるかどうかというような点は、あることもあるし、また人の考えもあります。農地処分につきましては、この特別会計の発足後この特別会計で扱いましたものは、建設工事費の地元負担を、入植者と申しますか、干拓地に入っていただく農家のお方に持っていただこうと思っております。
  246. 川俣清音

    ○川俣分科員 それはおかしいじゃないですか。既墾地の土地改良であれば、所有者がきまっておって、それに対する負担行為というようなことも全然考えられなくはありません。これについても一つの適法行為でなければならぬことはもちろんでありますけれども考えられないことはない。しかしこれは農地を新しく造成するんですよ。農林省としては予算の上からいって米価は将来どの程度の見込みになる、まだ負担者がきまらないのですよ。地元負担なんてどこから出てくるか、国の所有あるいは水利権を持っておるとかいうものはありますけれども、架空なものに負担行為は発生できませんよ。架空なものを相手にして負担行為なんて考えられませんよ。架空なものに負担させるという考え方なのか、国が作った造成地を農地処分をするという考え方なのかということを聞いているのです。これは農政上大きな問題なんですよ。それで聞いているのです。初めからそう言わないと、あとになってから農政上大きな問題があるのではないかというと、またひっかけたと言うから、私はなるべくひっかけないようにまっすぐに聞いているのだから、はっきり答弁して下さい。
  247. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 土地改良法の改正も要ると思うのであります。それを研究中であります。これもできるだけすみやかに歩調をそろえて出るように検討をいたしております。干拓地は新しい造成地であるから、でき上ってから入る素地でありますけれども——でき上ってから入る人に負担を課すことはけしからぬじゃないかという御意見だと思いますが、私もそういう見方があると思います。ただこの特別会計においては予算書に書いてありますように、その干拓地の事業費の二割借入金の利息、これは預金部資金でありますが、これは都道府県と農民の地元に負担をしてもらうのが、農地法等との関係も今までよりはっきりさせて、農地法に支障を来たさないのじゃないかと考えておるわけであります。また負担はおかしいじゃないかという意見もありますが、現行の土地改良法におきましても、干拓地につきまして幾らとはまだ書いてありませんが、法規をもちまして負担させることがある、そういうふうに書いてありますから、一応現行法との関係考えまして負担でもいいのじゃないかと思っているわけです。
  248. 川俣清音

    ○川俣分科員 できるだけ議論は避けますが、しかし機械開墾でも、これは開墾全体に対する負担じゃないのです。付属設備に対する負担行為はある。土地の造成に関する負担行為というものはないですよ。だから農地法全体に影響する問題なんです。私はその方向が決して悪いとかいいとか議論しているのではないのですよ。あなた方から聞いてよければ賛成しよう、悪ければ反対しようと思って聞いているので、まだいいとか悪いとか意思表示をしていない。またきょうの委員会は意思表示をする委員会でもなく、意見を発表する機関でもない。あなた方がどういう意図でやろうとしているのか、それで予算が出てきているのだが、適切な予算配分であるかどうかということを求めようとしておる。方向をきめないで予算だけ出したのでは無責任だと思うので聞いているのだ。そこで機械開墾のようなときにも、これは負担行為というものは付属設備に対する負担行為です。この負担につきましてもいろいろ議論が今までなされたところです。一体道路などは当然開拓地としてつけてしかるべきものではないか。今まではあれは付属設備であるということで、かつての開墾地には道路に対しては補助助成もなかったくらいです。農地の造成ということを国家的見地から行なった場合において、それを一体どう処分していくのか、処分の方法がわからないで干拓いたしますといったってだめじゃないですか。やり方が適切でなければ、むだな予算は削除しなければならぬ。適切であれば初めてこれを認めることになる。この予算が不足なときに、おもしろ半分に造成されてはたまるものではない。果して国の経済効果と、そこに入ってくるところの農民の採算が合うか合わないか、いろいろ検討されていかなければならぬ。干拓だって一反歩四十万円もかかるところもあり、あるいは十万円そこそこのものもある。これは土地会社みたいに、商売人みたいにやるものじゃない。今まで特別会計でやらずに国の税金でやったということはどういうことかというと、農業政策上必要であるから、個々の農民に売り渡すものといえども全体の国民経済の上に非常に大きな影響を与えるから、いわゆる一般会計であえてこの事業を遂行してきたと思うのです。従って今度やられる特別会計もその趣旨でやられるのか、商売気でやられるのかという根本的な問題がある。商売気でやられるなら国があえてやる必要はない。税金を持ち出したりする必要はない。今までは犠牲を払ったが、今度は国の犠牲を払いたくないということになると、これは農政の大きな転換ですよ。そういうことになりますならば、今後の農地に関する補助助成についても、またそういう考え方が出てこないとは限らない。これはあなた方の土地行政に対する一歩退却という考え方なんですか、どっちなんです。一歩退却というなら別問題です。新機軸を開くというのだから、これは新しい転換でなければならぬ。後退ではないと思う。ところが実際は後退ですよ。今までよりも速度を早めるのだから、効果を上げるのだから早く負担をせよ、こういうのでしょう。これは灌漑排水のような場合はそうでしょう。一応譲歩するということも言えないことはない。自分たちが生産手段に使っております土地が、早く土地改良が行われるのであるから負担が多くてもいいじゃないかということは、一応言えないことはない。しかし新しいものが早くできたからそれらの人が早く負担せねばならぬということは、どこから出るのですか。早く土地ができたところへ入れるから早くできた効果を負担せよというのはどこから出てくるのです。それではおそくできたものは負担がおそくてもいいのか、そんなことにはならない。今まで土地改良をやっておってこんなにおくらしたという責任を痛感しなければならぬ。ほんとうからいうと、むしろ逆に今までおくらした分については、国の責任として弁償金くらい出して、これからの負担は一切やめました、こう考えてそれをゼロに見ていくなら別だ。特別会計だから従来よりもよくいくのだと言っても、従来の怠慢は当りまえだ、今度は早くやるのだから出せ、そんなべらぼうな行政はないと思う。今までおくれたことに対して陳謝しなければならぬ。責任を負わなければならぬ。それよりも今度は早いのだと言ったって、やらねばならぬことで国家予算を使っておるでしょう。その出し方が悪かったために効率が上っておらぬじゃないですか。効率が上らない責任はだれにあるのですか。農民でもなければ地方の団体でもないでしょう。これは全く予算編成をやりましたものの責任なんです。だから大蔵省は方々に食い散らかされたのでは困るからということでやっていたのだと思う。だから前よりも今度は速度が早まったのだからと言ったって、やるのが当りまえなことなんです。早くやるのだから多く出せというようなことはとんでもない話ですよ。当りまえのことをやって当りまえでないと考えるごときは、これは農政に対する冒涜ですよ。そう思わぬですか。
  249. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 干拓地の処分に意見がないとか、きまってないじゃないかということに対しましては、さっきお答え申し上げました通りに、目下成案過程ですみやかに法律案も出す予定でありますが、予算案を御審議いただくように提出しました以上、予算案に関連しては決定をいたしております。ただ一案といたしまして、なお研究してもよいという点があると思います。それは従来の干拓のやり方とその処分の仕方で、これは素地で個々の入植の方に売り渡しをしておったと思います。ざっと達観して申し上げますと、一反歩一万二千円前後だと思います。これと開拓地その他機械開墾の地との御比較がございましたが、機械開墾その他山の僻地における開墾は素地を買った値段で売りましてこれを農地として熟畑、熟田にするために補助事業として開墾整地費その他を出しておるわけでありまして、干拓地、開拓地とも補助事業をやっておるわけであります。そこで干拓地のことについて申しますと、これは国家的必要により新しい土地を造成するのでありますが、これが完了後は入植者にその私有権を与えるわけでございます。そこで事の性質上土地改良よりは干拓の方が国費がかかり貴重な税金を使うわけであります。開拓地も開拓道路等はそう負担もかからないだろうが、個人の所有権になりますところは、そのように補助事業も行いたいと思っておるわけであります。これを価格でとるか、地元負担等の建設事業費の負担でとるかという概念の整理は、農政上の問題としてかなり大きなものを含んでおると思います。そこで今般は特別会計に入れて工事の進捗をはかりますものは、地元負担と割り切った方が一番農地法上無難であると思いますが、一万二千円を売り渡し価格といたしまして、その中で建設費の協力をお願いするという方法もあると思います。法律案を提案する前に、あるいは予算案を御審議いただいて通過させていただきましたあとは、この二つ考えの中のどれかということがはっきりすると思います。
  250. 川俣清音

    ○川俣分科員 どっちですか。
  251. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 予算案を提出いたしましたのは地元負担としております。  それから地元負担は、干拓地については入植する農家が先にないから、土地改良と違いまして地元負担をさせるのはおかしいじゃないかということにつきましては、私は素地で入植する方で、あとで熟田にしていただく方については、私有権を与える考えでございますから、約束がちゃんと合意的につきますればいいのではないか。県もまた負担をすべきではないかと思います。急速度といいますか、早く仕上るから負担が多くていいじゃないかということは、大蔵省の係官が申されたかもしれませんけれども、(川俣分科員予算書にそう出ている、説明になっている」と呼ぶ)従来予算編成をするものが、現状の進度で進んでおるということは、私どもも工事期間が間延びしまして、予算も足りなくてまことに申訳ないと思いますが、昭和二十七年以降ずっと予算を見ましても、二十八年でありましたか、七年でありましたか、そのときの一年を除いて、この広い意味の土地改良費はことし初めて多いと思います。なお足りないことはもちろんであります。それがお互いに一生県命努力して、国会の御審議も願いましたが、そこできまったというのは、日本の国力を総合的に判断してそうであった、採択したい、しかしなお改善を要したい、なお予算編成上今後考えたいということで、いろいろ工夫をこらして今回特別会計の予算の御審議を願っておりますように——全部一度には解決しませんので、できる限り改善工夫をこらしまして、今後も努力をするつもりでございます。
  252. 川俣清音

    ○川俣分科員 だんだん時間もおそくなったからそう責め上げるつもりもないが、あなたは、ほんとうに正直なことを言ったら、農地処分をするというと農地法に抵触するおそれがあるから、農地法に抵触しない方法として負担金をかけるのだと言うが、ところがどっちからいっても、農民からいえば同じことなんだ、経済的には同じことなんだ。ただ農地法の趣旨から行きまするならば、それはその法律を免れるためにやっていることであるけれども、農民からいえばどっちから行っても同じことなんだ。だからそこで問題なんですよ。ひいて起ってくる問題は、それは単に造成されたある個所の問題ばかりではないのです。そういう負担行為ということを考えていくようになりますと、将来の土地改良事業全体に及ぼすところの国の負担と、地元負担の割合に影響してくる問題なんです。また農地として、従来農地が安かったのだ、こういう判断にもなって参ります。農地としての評価が安いのだといったことになってきますと、今日の自作農創設をした意味が根本的に崩壊されてきます。農業生産というものは、採算に合わないのだという建前をとっておる。米価決定に当りましても麦価決定に当りましても、必ずしも採算主義をとれないでおる。農産物価格決定についても利潤というものがなかなか算定できないでおるのです。利潤がないものでありながらも、なお国家的要請に基いて食糧増産をしなければならないということを強要されておるわけです。そういう中においての農地処分でありまするから、農地法はその点を農民生活の安定ということで農地処分をすることにしておるわけなんです。今日地主制度というものが強権によって崩壊いたしましたのも、そういう観点からなんです。これが造成費用だけ負担をかけてもいいというような考え方になりましたならば、日本の農地制度というものは崩壊しますよ。これは恐ろしき結果になります。しかし今まであまりよ過ぎたのではないかということで、灌漑を幾らか見ようという程度であれば、これは農政の根本には大した影響がないと思う。しかし度が過ぎるといいますと、度が過ぎなくても、幾らかでも方向が大蔵省的に、少しでも補助金を減らしていきたいとか、予算の効率とか言いながら一番効率を上げていないのが大蔵省の予算の組み方なんですよ。一番効率をやかましく言いながら、効率を上げてないのが大蔵省の予算の組み方なんです。実績が示しております。効率が上るような予算書を組みましたと、組むときは言いますけれども、組んだ結果については、あまり方々に予算をつけ過ぎて食い荒されてしまった、こういう批判を下しておるではありませんか。やるべき仕事をやらないで、食い荒されたというのが大蔵省の考え方なんです。またそれと同じような轍を踏むから早く効率を上げるなんといったって、特別会計だから早くできます——一般会計だって早くやっていいはずだ。特別会計だから早くやれるという理由のものではないのです。これは一般会計からも借り入れをしなければならぬ、融資も受けなければならぬでしょう。やはり一般会計ワク内に陰に陽に縛られるものです。だから早くやれます——いつだって早くやれないなんて言ったことはないでしょう。だから、経済効果が早く上るのだから、上れば国の利益であって、入植者の利益ではないのですよ。失業している者が早く職についたというならば利益だといえるけれども、これは失業対策も講じているくらいですし、早くやることが政治であって、早く就職ができたからお前は月給を安くしてやるなんということはない。これは同じことですよ。当然負うべき負担を避けておって、延ばして、渋滞させて、事業の渋滞の責任を負わないで、今度だけ早くやるから、経済効果が上るのだから高くやれというのは机上論ですよ。早く干拓ができれば、国の経済の上にプラスするだけです。個人の経済の上にプラスするものなんて直接出てきませんよ。そうじゃないですか。どうです。早く干拓できても個人経済の上にプラスにはならない、国の経済の上にはプラスになる。これは明らかです。そうすると国家的目的のために早くやるのでしょう。それなら国が負担をしていってもいいじゃないですか。おれが早くやってやるから地元負担をさせるなんてどこから出てくるのですか。それはこじつけですよ。
  253. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 川俣先生の御意見は、ある意味では私は非常に同意いたしますが、何と申しましても、個人所有権に引き渡すような事業につきまして国家的、公共的事業であります場合に、全額国費負担でやってみるか、最後までそうしてみるか、どれだけ受益する人にまたは受益するような付近の地元に負担をかけてみるかというのは、事業の種類によりまして、またその時代によりまして多少の差があると思います。公共性があるものはおのずから公共性が多くて、公共性の軽いものは、補助事業でありましても、それより低位に国費が負担されるというのが、一つの系列だと思います。そこで問題は、一つは農地法等に関係しますが、私が先ほど申し上げましたのは、先生とちょっと意見が違いまして、農地法に抵触するとは思っておりません。農地法の今の類型を、この問題で悪用する力を多くする傾向は避けた方がいい。ぜひ避けるべきだという意味で、そういう関係があると申し上げたのであります。  それからもう一つは、土地改良事業の他の一般会計とおっしゃいましたが、従来のやり方におきまする一般会計の負担の問題ですとか、工事を完了するまでの期間の問題ですとか、予算のつけ方の問題ですとか、土地改良区の方々の決議などをする関係等いろいろ関係がありますが、特別会計で取り上げます以外のものは、従来より悪くなくて、従来の負担がその場合従来通りで行われる場合に負担が増さないことというのが方針でございます。しかもあとの議論の一部でありますが、各種重点的なものは一般会計に移したものも、予算編成の過程ではいろいろ意見がありますが、成り立った予算の範囲内では、またその予算編成の中身の一つとしましては、早期完成を従来より一歩進めよう、全部十分に片づかぬところがあるからだんだんと考えて努力してその方向に進もう、そういうふうに思っておるわけであります。
  254. 川俣清音

    ○川俣分科員 なるべく議論はやめて、それでは農地法に抵触しないなら農地処分でやったらいいのです。農地法というものは日本の農地の基本法ですから、基本法を実行すればいいのです。別に策を弄する必要はない。りっぱな基本法があるのですから、基本法に基いて処分をすればいいのです。従って基本法をはずれたようなことをやるような法案を出されても、なかなかこの国会では容易に通るまいということを考えるから私は議論しておる。  それからもう一つちょっと聞いておきますが、造成した土地は素地と負担行為と二つ加えていくのだ、こういうようになるのですね。素地は処分をし、その上に負担行為を加える、こういう説明のようにも聞えるし、負担行為として負担をさせて、農地処分じゃなくて負担行為をさせる。負担金を納めれば農地処分をする、こういうことですか。何かあなたのやつは非常にあいまいなんです。素地は農地処分をし、それに負担行為を加えるというようにも聞えまするし、負担行為が伴なわなければ、全部負担をしなければお前には農地として配分をしない、こういうようにも聞えるのです。これは非常な大きな問題ですが、どっちなんです。
  255. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 干拓地は国有財産でございますから、もちろん農地処分をいたします。それを素地で従来処分をしまして、素地の対価を一万二千円くらいとしてとっておった、こう申し上げた。ところがそれは熟田ではないのであるから、三、四年もかかりまして付帯工事を行いましたり、整地を行いましたり、その他いろいろありましょうが、そういう事業は補助事業として従来も行なっておりますということを申し上げたのであります。今回私が特別会計に関しまして申し上げましたのは、当然第一処分をいたします。私有権に移すわけです。私有権に移すときには負担として負担をいただいてから処分をする。そういうふうにするのがいいじゃないかと思っておるわけです。しかしその処分をするのは素地でございまして、そのほかに干拓地のそういう処分の方法でありますから、土地がどういう姿で処分されるかは従来通りと考えておりまして、熟田にいたしますには、さらに整地とか付帯工事とかをやらなくちゃいかぬ。その場合には補助事業の公庫融資をいたしますと申し上げたのでございますが、ちょっと意思の疎通がなかったのでございます。
  256. 川俣清音

    ○川俣分科員 そういたしますと素地として農地処分をし、その上に従来の補助事業として団体または県営でやった分について、その分の負担行為を行わせる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  257. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 補助事業の方について申し上げました付帯工事、整地作業、そういうことについては、原則として県営ということを考えてはおりません。融資も個人に行くわけであります。団体営のときは、規模に応じて団体営になるのでありますが、それであっても適用していいと思います。また先生の御出身地のような秋田県の八郎潟では、何しろ大きい事業で大きい工事ですから、これは県営でそういうことをやる場合もあると思います。
  258. 川俣清音

    ○川俣分科員 あなたは県営事業、いわゆる補助事業として国が補助する事業——補助事業というのには二つある。国が補助していく県営事業とか、国営でやりまして、それに付帯をするところのいわゆる補助金の補助でなくて、国営に付帯した付帯工事、県営分であるとか団体分に対して国が補助いたしていく、その補助のかわりに国営でやるのであるからして、補助の分は国営でやるけれども、地元負担の分を地元負担させる、こういうふうに説明されたのですか。それならわからぬわけはないのです。そうでないように言うから議論しておるのです。
  259. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 国営事業であるか、府県営その他の事業であるか、これが全額国費の負担でやる事業であるか、補助でやる事業であるか、これは私が申し上げるまでもなく先生御存じの通りになっておりまして、事業主体のところに第一点があります。あとは全額国費の場合は国費負担、それから特別会計では新しい負担、補助事業は補助金として事業費の何割かを出す、五割なら五割出す。私が先ほど申し上げましたのは、素地を作るまでが国営でありまして、その事業経理は特別会計でやりたい。従って特別会計で国が事業主体になってやりますものは素地造成までである。そこで国営土地改良にもありますように、国営事業であるが地元負担がある。その上に、同一の土地でありますがこれを熟田化する作業がありますが、これは補助事業で従来もやっておるし、従来のようにやつていくつもりであるということを申し上げたのであります。
  260. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうすると従来やって参りました国営干拓にいたしましても、国営灌漑排水にいたしましても、基本のところは国営でやり、その末端の方は県営または団体営でやる、それに対しては国が補助する、こうやってきたところの部分を国が全部やるのであるから負担行為をしろ、それなら話がわかるのです。全部国がやってきたものが、今度は負担行為をつけるとなると問題だ、こう言っておるのです。
  261. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 その点は従来のやり方をするのでありまして、川俣先生は私が申し上げましたのを、補助事業をつけ加えるというふうにお聞きとりになったかもしれませんが、従来とも熟田化、整地の作業については補助事業が加わっておるのでありまして、その点においては新旧の差はございません。
  262. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは一つ清野君が説明した方が適切のようだ。局長は聞いて説明しているが、一体ほんとうのところは、国営の部分にもなお負担をか一けるというのですか。従来団体営でやったところ——団体営のところは全部国が持ったのじゃないからして、補助の分は従来通り国が持つけれども、団体で持ったところまたは個人で持ったところ、組合員が持ったところは団体営というと結局個人の負担行為ですが、そこは一つ負担行為として、国が全部やるけれども、その部分についてのみ負担行為が発生する、こういう意味ですか。
  263. 清野保

    ○清野説明員 特別会計の場合の干拓事業につきましては、今局長が説明いたしました通りに、国営の建設工事、いわゆる基本工事の部分につきましては、その干拓地に将来入植を予想されますところの人たちから分担金をとりまして、その分担金に対して建設工事中は当然利子がつきます。かくのごとくしまして建設工事が終りますと、そこへ入植をいたします人たちは、おそらく開拓協同組合を組織いたしまして、さらにそこで干拓の付帯工事あるいは整地作業をいたします。かくしてすべての工事が終りますと、熟田化する、大体こういうふうになりまして、建設工事の負担を除きましては、その他の干拓付帯工事の補助事業、整地作業は、従来から干拓には補助がございませんので、そういう制度は前と同じであります。
  264. 川俣清音

    ○川俣分科員 どうもまだはっきりしないのですが、ほうとうの腹は従来国営でやっておった分も負担をかけよう、こういうことなんでしょう。
  265. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 違いますよ、そうじゃないのです。先生の誤解ですよ。
  266. 川俣清音

    ○川俣分科員 誤解なら誤解だという点をはっきりしてもらわぬと……。
  267. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 素地造成というところまでについては負担を持っていただきたいということでございます。その他のところは両人におきまして申し上げました通りで、先生の現状の御理解も違えば、新旧の差がないということを申し上げたのを、差があるだろうと御理解願ったのも間違いであります。
  268. 川俣清音

    ○川俣分科員 それはあなたの方が間違いなんですよ。今まで国営事業というものは、どんなにかかっても国営の部分については農地が高くなる——あるところは非常に国営の経費がかかったからといって、農地を高く処分してはいないのです。根本的に違うのですよ。それを、あらためて幾らか経費のかかった分を負担させようということが、ほんとうの腹でしょうと聞いているのです。そうでないと言うなら、農地法で適当なんです。農地法というのは、どれだけ農地の造成費がかかろうとかかるまいと、そんなことは問題でないのですから。農地法の建前は、コストなんて問題じゃないのです。自作農創設のために必要な農地を作り上げることが目的なんです。従って、どのくらい経費がかかるとかかからないとかいうことは問題でない。今度のやつは、経費がかかるから、経費のかかった分は幾らか負担させよう、こういうことでしょう。それでは農地法に抵触するから、農地処分で行かないで、負担行為で行こう、こう逃げようというんでしょう。けれども、それは逃げようたって逃げ切れるものじゃない。あなたが逃げようというんなら逃げてもいいけれども、すぐつかまえられます。どうせ法律を出した場合つかまえられるんだから、今から覚悟して——それなら、どのくらい負担させるのか、明瞭に言って下さい。
  269. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 素地も農地であり熟田も農地であるという考えで、まず言いますと、素地については地元負担をお願いしたいと言っておるわけであります。その素地造成までの干拓事業費の二割を負担していただきたい。特別会計におきましては、その事業費の中に借入金も使いますから、その利息を負担していただく。それから負担金につきましては、一挙に払えるものじゃありませんので、農家のことも考え、各種の土地改良関係の金利も考えまして、かつ借入金の原資の金利も考えまして、そうしてこの金利を付した総額を負担していただきたい、こういうことであります。
  270. 川俣清音

    ○川俣分科員 素地というのは農地処分するんでしょう。農地処分をするのかと聞いておる。農地処分になると、その負担をかけるとかかけないというのはおかしいことになる。農地処分は一定の基準があって処分する。コスト主義で農地処分することになっていません。その上に負担させる、こういうことだ。そうしたら農地処分じゃないのですね。負担行為が伴って農地処分するということになると、これは農地法ではできない。たとえば農地を買った人がいろいろな事情があって次に売買する場合に、いろいろな施設を加えたということで問題が出てくる。これは大へんな問題が起きてくる。国ならばよろしい、個人ならばその負担行為は認めない——いろいろな問題が生じてきます。大へんな問題なんです。それはあなたが簡単にごまかそうと思ってもできないことなんです。二割がいいか悪いかという問題はもちろんありますよ。のがれようと思ってものがれられないのだから、その点は十分考えていかないと、この特別会計なるものが一体ほんとうに日本の農政上必要なのか必要でないのか。農地造成ということで一時的に予算を使って、あとでは収拾のつかない結果になる。だれからも頼まれたのじゃない。国の計画でやるわけでしょう。特定の人に依頼を受けて国がやるのじゃないでしょう。個々の農民、特定の人に頼まれて農地造成、干拓をやるんじゃないですよ。国の必要、農地の拡大ということを国の方針としてとった結果、干拓事業というものが行われるので、特定の人から頼まれて政府が農地造成をやるのじゃないですよ。従って入植者というものについても、今後選考するのですよ。従って負担行為がつくなんということはおかしいことなんです。おかしいといっても、あなた方やろうというのですからね。一つやるならやるでおやりになっても、その法律は通らないということを念頭において、この予算がむだになるということを覚悟してやられるなら、これは別問題です。そういう点で大蔵省と話し合いがつくわけはないのです。もし話し合いがついても、日本の既存の基本法を犯してやるなんというおこがましいことは、今日のような国会状態ではなかなか重要法案が出し切れないときに、基本法を侵すようなやり方は、おそらくできないであろうと思うが、それも覚悟しておられるかどうか、その点だけ聞いて、あとの質問を打ち切ります。
  271. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 特定の人に頼まれて干拓するのではありませんが、干拓したらいいではないかというような地元の要望もあるのでございまして、国が適当だと思うところを干拓するのであります。入植者は別途希望をもとにして選考して入っていただくのですが、そのときに選考基準として地元負担をお願いするようにしたらどうだろうか、それから干拓で地元負担をするのは、国営干拓、代行干拓で国の事業であるから、負担はおかしいのではないかという点は、土地改良法という現行法がそれを規定しておりますから、それで適法だと思います。農地法その他につきましてなるべく逃げようという気はございません。ごまかそうという気もございません。負担については御意見がございましょうが、このくらいが適当かつやむを得ないだろう、こういうことになっております。農地法の改正を要しないと思います。
  272. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは見解の相違になりますから、あらためて予算総会において議論することにいたします。  もう一つ政務次官、官房長に聞いておきたいのですが、農村に潜在失業者と見るべき者、あるいは不完全就業者という者が非常に多いのですが、それに対する統計が十分出ておりません。いろいろ見解の相違もあるようです。学者間にもあります。先般大蔵省の国税局で調べますと、一反歩当りの必要経費の中に要する人員というものから割り出して参りますと、今の農村の人の半分くらいでもやっておるという計算になっておる。それ以上の者は税務署は認めないというのです。必要経費は認めないというのですから、失業者と見なければならぬでしょう。そういう計算です。そうすると非常に大きな失業者がおるということになる。しかしこれも大蔵省流に、税金を高く取るために必要経費をできるだけ少くして、所得をふやすためから来たのであるから、無理に失業者を作ったのだ。大蔵省の計算から言うと、失業者でない者まで無理に失業者と見ようというのですから、無理な見方でしょう。これで行きますと千四百万ぐらいという大へんな数字になります。石橋内閣がいわゆる完全雇用などと言っておりますけれども、都市の完全雇用の対象としては計算されておるようですけれども、農村の潜在失業者に対する対策は全然考えられておりません。またデータもない。そこでこういう農村における潜在失業者がどのくらいあるかということをつかまないで、都市の失業者あるいは不完全就業者だけを目標にしては政策は立たないと思います。せっかく統計調査部もあるのでありますし、これは重要な農業政策になって参ると思いますから、どのくらいあるかという調査だけはやられたらどうですか。次に出てきた結果においてどういう対策をとられるかは別問題にしても、日本の政策の重要な案件に対して調査くらいはする用意があってしかるべきではないかと思うが、この点についてはどうですか。
  273. 八木一郎

    ○八木政府委員 潜在失業者とは何ぞやという、そのこと自体は非常にむずかしいと思います。農業に従事しているかいないかという現実をとらえてみる場合、農業として生活しておるか、ただ農村に生存しておるかということで、ずいぶん分れて参ると思います。お説の通り重大な国民経済の基幹をなす問題でございますから、私も大いに勉強し、資料を集めて調査いたします。本日ただいまここでどういうふうに、というものは持っておりませんけれども、その必要は同感でございますから、できるだけ貴意に沿うように調査いたします。
  274. 川俣清音

    ○川俣分科員 幸いにあなたのところには統計調査部という一つ機関を持っておられる。これで正確なものをつかめないにしても、大体の対策がつかめる程度の資料は、今の陣容をもってしてできないことはないと思う。ただ少し定員のワクが足りなさ過ぎるきらいがあります。それはもうちょっとふやしていかなければならないと思うのですが、これらを十分活用する素地が今ではできておるのです。これから新しく作るのではなくして、すでにできておるこの機構を、もう少し充実するならばできるのですから、これを五年計画なりでおやりになるようにできないものかどうか、こういうことなんです。出てからでないと対策が立たないということについては、私もあなたの立場はわかる。しかし重要な基礎資料であるから、調査にかかるということだけはここで明言できるのではないかと思うのです。それほど大した経費はかけなくても済むのです。
  275. 八木一郎

    ○八木政府委員 重要なことであるし、ぜひ取りかかりたいという意欲は、あなた以上に持っております。しかし技術的にどれほどの経費がかかるか、時期、方法等については、さらに検討しないと即答はしかねると思いますから、御了承願いたいと思います。
  276. 川俣清音

    ○川俣分科員 統計調査部は前の野田部長のときからできておるのです。これは一年だけやるというのではだめなんです。五年計画でやらなければならないと思うのですが、そう経費をかけなくてもやり得るのです。私の想定では、年々相当の定員のワクがふえて機構が充実されまするならば、直接の費用はおそらくそうかからないで済むと思うのです。何と言いましても、まだその陣容の整備が足りないので、それを整備しなければなりませんが、この機構をちょっと拡大いたしますれば、直接そのものだけのほかに、いろいろな資料をとっておるのですから、それに関連して出てくる結果ですから、そう特別に経費をかけなくても済む。あなたの驚かれるような経費ではないのですから、今ここで大体の計画の発表はできると思うのです。本表であれば、農林省は思い切って、この際補正予算も出るときでありますから、一つ三百万とか四百万とか補正予算を組んでも大したことはない。自然増収が少し大きいのですから、そういう基本調査の資料を出されましても、あえて不思議ではないと思うので、この点一つ要望しておきます。  それから最後食糧庁長官にちょっと聞いておきます。横路委員の質問に対して三十一年度の赤字が百六十一億出る、こういうことだが、この内容には内地米及び準内地米としての赤字がどの程度含まれておるか、これが一つ。  それから従来はなるべく前年度分は持ち越さないで、ロスが生ずるようなもの、あるいは腐りの生ずるようなおそれのあるものはすみやかに処分をするという建前をとってきたはずであります。また買付につきましても、前年度の米は大体八月一ぱいで買い取りを済ませるというようなことをして、古米の持ち越しをできるだけ防いできたはずなんです。そこで古米というものは、本来であれば来々年度に持ち越さないようにすることが管理上の責務でもあると思う。それをあえて持ち越すわけでありますが、この三十年度産米の持ち越しが百四十六万トンということですが、三十年度は豊作であるとはいいながら、これは管理上から行きますると、三十一年度産米をすでに食い始めておって、相当量配給に回しておるはずなんです。従いましてこういう古米の方を先に配給することが管理上必要であるにもかかわらず、あえて持ち越しをするのは一体どういうことか、この二点でけっこうです。これ以上は議論はしません。
  277. 小倉武一

    ○小倉政府委員 三十一年度の持ち越しの内地米等の内訳でございまするが、内地米は約二百億でございます。外国米が約二億……。
  278. 川俣清音

    ○川俣分科員 百四十二万トンのうち……。
  279. 小倉武一

    ○小倉政府委員 百四十二万トンのお話は、先ほど横路委員の御質問に答えました百四十六万トンのことだと思いますが、これはこの三月、会計年度の持ち越しを申し上げましたので、古米、三十年度産米の持ち越しは、もうほとんどなかろうと思います。
  280. 川俣清音

    ○川俣分科員 三十一年度は。
  281. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ほとんど全部昨年産、三十一年産米というように御承知願いたいと思います。今で言えば新米でございます。三十年産米はこの三月ごろまで地方によってはございます。四月になれば全国的にほとんど古米はなくなる、一部残りますけれども……。
  282. 川俣清音

    ○川俣分科員 会計年度で言ったのですか。
  283. 小倉武一

    ○小倉政府委員 会計年度の持ち越しを申し上げたのであります。
  284. 川俣清音

    ○川俣分科員 その中で一番最初の、百六十一億の赤字の中の準内地米の分はどのくらいあるか。
  285. 小倉武一

    ○小倉政府委員 内地米の損が約二百億でございまして、そのほか……。
  286. 川俣清音

    ○川俣分科員 百六十一億の内訳ですよ。
  287. 小倉武一

    ○小倉政府委員 百六十一億の中に、大きく申しますと、大部分損ばかりでございますが、外麦が百三十億程度益がございます。そこでその内地米、内麦、農産物等の損が消えまして、なお残るのが百六十一億、こういう計算になっております。
  288. 大橋武夫

    大橋主査 これにて農林省所管に対する質疑を終了することにいたします。従いまして昭和三十二年度一般会計予算中、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管並びに昭和三十二年度特別会計予算中、農林省及び通商産業省所管に対する質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。本分科会所管の予算両案に対する討論採決は、先例によりまして予算委員会に譲ることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 大橋武夫

    大橋主査 御異議なしと認め、さように決定いたします。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。分科員各位の御協力によりまして、円満に議事を進行することができましたことを感謝いたします。とともに厚くお礼を申し上げます。  これをもって第三分科会を散会いたします。   午後六時三十六分散会