運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-02-12 第26回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十二日(火曜日)    午前十時三十三分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       今井  耕君    重政 誠之君       楢橋  渡君    三浦 一雄君       今澄  勇君    川俣 清音君       栗原 俊夫君    永井勝次郎君       西村 榮一君  出席国務大臣         通商産業大臣  水田三喜男君         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         経済企画政務次         官       井村 徳二君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   酒井 俊彦君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房会計課         長)      塚本  茂君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 榮一君         総理府事務官         (経済企画庁計         画部長)    大來佐武郎君         総理府事務官         (経済企画庁開         発部長)    植田 俊雄君         総理府事務官         (経済企画庁調         査部長)    淺野 義光君         通商産業政務次         官       長谷川四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     川崎 立太君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企画局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (軽工業局長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  森  誓夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  讃岐 喜八君         通商産業事務官         (公益事務局         長)      岩武 照彦君         特許庁長官   井上 尚一君         中小企業庁長官 川上 為治君         工業技術院長  黒川 眞武君  分科員外出席者         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    奥宮 正典君         専  門  員 岡村 清英君     ————————————— 二月十二日  分科員小平忠辞任につき、その補欠として栗  原俊夫君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員栗原俊夫辞任につき、その補欠として  小平忠君が委員長指名分科員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算経済企画庁及び  通商産業省所管  昭和三十二年度特別会計予算通商産業省所管     —————————————
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は、まず昨日に引き続き、昭和三十二年度一般会計予算及び同特別会計予算中、通商産業省所管について質疑を継続いたします。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井分科員 最初にお尋ねいたしたいのは、大臣は、昨日アメリカから目下来日中のフェアレス一行ダーデン博士に会いまして、中共貿易及び鉄くず等輸入についていろいろ懇談されたということで、時節柄適切な交渉であったと思うのでありますが、この機会中共貿易についてどういうような話し合いをし、どういうような印象を受けられたか、それから鉄くず等についての輸入について、どういう見通しを得られたか。これらについて詳しく御説明を願いたいと思います。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、きのうフェアレス氏が日本に見えまして、各省大臣と順々に会見するということになりましたが、ちょうどいい機会だと思いましたので、この中共貿易の問題についてこちらから触れましたが、私の触れた趣旨は、何か中共貿易促進するとか推進すると日本政府が言うと、これが関係国へのすぐに非協力の態度の表明のように最近受け取られがちで、これは非常に困るので、この際十分日本に来たときを機にして理解して行ってもらいたいという意味で、いろいろ触れたのでございますが、結局ソビエトに対するいろいろな制限中国に対する制限が今違っている。歩調を一つにそろえていない。これはなかなかむずかしいことであって、日本の今までの地理的、歴史的な関係を言うと、中国に対して国民感情としては最も親しみを持っているのだ。ソビエトに対しては、今までの関係からそうでない。にもかかわらず、そっちへの輸出という問題は緩和されておって、一方に対して制限がきついということは、なかなか政府として関係者に納得させるに困っておるのだという問題と、それから日本は今後とも関係国に対して十分協力する。また現に今まで協力してきたんだ。しかし最近の中国事情を見るというと、いわゆる禁輸物資だけが向うで必要だというのじゃなくて、非常に消費物資日本に求めるという傾向も出てきたので、その範囲において貿易を伸ばそうとするのならば、その範囲でももっと伸びるのだ。だから現状で見ると、日本貿易全体量の二%前後の貿易をやっておることが問題になるようでは、これは問題にならぬので、今までの事情から見ても、日本の全貿易の一〇%くらいまで中国に対して拡大されるなんということは、日本にとっては自然な姿なので・そこらあたりまでわれわれが貿易を伸ばそうというようなことについて気にしてもらっちゃ困るというような、いろいろな事情説明したということでございます。  それからくず鉄の問題につきましては、去年よりもどうしても二割以上多く日本が買わないというと、今年の鉄の計画がうまくいかないようになっております。私ども計画では、御承知のように今年は国内で一割くらいは去年よりは増産する。それからどうしても足らないと思われる数量は、百二十万トン前後までは輸入するという方針に基いて、今年の鉄の計画ができておりますので、この増産計画を達成するというためには、スクラップを今年は相当買わなけりゃならぬということになっていますが、これが今非常にむずかしい問題で、米国方面には(輸出をある程度制限するという意向も現われているというふうに聞いておりますので、私どもはこの計画が狂うと大へんだということから、いつまでも鉄くずを、向うに永久に依存しようとは思わないので、高炉転炉を作って、なるたけスクラップを使わないでいく方針を、ここ二、三年の間にわれわれはとるんだから、ことしと来年だけが日本にとって一番困るので、ことし、来年だけは一つぜひめんどうを見てくれ、そのかわり三年以降、再来年ごろからは漸次鉄くずの需要を少くして、アメリカへばかり依存するということをやめるんだから、こういう了解を得て、向うへ行ってもその事情了解して一つ御配慮を願いたい、こういう要望をしたということでございます。
  5. 永井勝次郎

    永井分科員 石橋内閣成立に当って国民に公約したものの一つには、日中貿易促進する、こういうことがあると思うのであります。今日日中貿易促進いたしますためには、現実にはココムなりチンコムなり、こういった関係ワクを破っていく努力、そうしてまた、そのワクを破るためには、これを制限している、ことにこの壁となっておる国際的ないろいろな関係、ことにアメリカとの関係を調整し、理解を深める以外には現実には促進することができないと思うのであります。ただいまの大臣お話を伺うと、ただこちらから説明をした、こういうだけで、十分な話し合いをしたという段階までには至っておらないようでありますが、きのうの会談を第一回として、今後滞日中にどういうスケジュールで、さらに接触を持たれる予定であるのか、そうしてまた、この機会日中貿易促進するという国民への公約及び内閣の大きな約束を遂行するために、どのような具体的な努力を払われる予定であるか。そうしてこの交渉を通して、日中貿易促進する、促進するといって、かけ声だけではいけないので、具体的にはこういうことをやる予定になっておるか、どういう方法を通して促進するような諸条件を整備する、こういうような考えであるのか、これを一つ承わりたい。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 きのうのフェアレス委員会はそっちの問題を取り扱う人たちじゃございませんので、これは国際援助の問題を扱っておる人たちですから、そこと折衝するのは筋違いで、この一行の滞在中、この問題について二度折衝するというような考えは持っておりませんが、ただこれから米国へ帰って、アジア全般援助ということについて大きい発言権を持っておる人たちですから、参考の意味で私どもが述べたので、私どものねらいは、やはり禁止についてこれを緩和させるとか、あるいは特認でいろいろ片づけていくというようなことを当然と考えておりますが、それをきのうあの人たちに出す必要はないので、全体として日本中国との貿易はまだ非常に足らないので、もう四、五倍伸びたってちっともおかしくないんだという印象を与えておくことが必要だと思いましたので、もっぱらそういう趣旨できのうは説明しておいただけですが、実際に中共貿易を伸ばそうという仕事は、米国のほかの方面との話し合いとか、各国へまた了解を求める努力は外交を通じてやる考えでおります。さしあたりかけ声だけではいけませんので、中共貿易を具体的に進めるためには、まず第一に今の決済方式、それから個別バーターという貿易方式を変更しなければ具体的に伸びないだろうと思います。やはり総合バーター方式へ持っていくとか、あるいは為替銀行間にコルレス関係を設定するとか、こういうようなことをやらないと、今のままでは貿易は伸びないと思います。と申しますのは、今まで日本で買う方が非常に多かったから差しつかえはないのですが、今度はそれに対応して売らなければならない。そうしますと今の為替方式ではこれ以上日本が売る方法がないというような、現実的にいろいろな障害にぶつかっておりますので、ことしの五月三日までに今の協定を改正するということになっておりますから、その間において民間同士でこの話し合いをしてもらって、そこらを改善した第四次協定を作ってもらう。これについては政府側からもいろいろ援助をするというようなことで、まずその点の改善を先にやろう。それからそれに基いて禁止についての緩和の努力とか、あるいは特認の今の形をもっと活発にやっていくとかいうような必要な措置を順次考えたい、こういう方針でおります。
  7. 永井勝次郎

    永井分科員 貿易の問題については、後刻西村氏が貿易一般についていろいろ御質問なさるそうでありますから、私はこれに深く触れないのでありますが、きのう参りました一行が、中共貿易その他の関係セクションでないということは知っております。しかしアメリカにおける経済界の重要なメンバーでありますから、ことに大統領の民間部門というような、いろいろな重要な地位にある方々でありますから、影響力は大きい。直接任務でないだけにプライベートにいろいろ話し合いができる、向うも気楽にいろいろな話し合いを雑談的にできる立場にあるわけでありますから、こういう機会に十分納得させて、そうしてそれらの人人が幾らかでも積極的に国内影響力を与えるような能動的な活動ができるような刺激を与えるということにはいい機会である、こう思うのであります。そういうような意味において、ただ一ぺんの陳情をした、ポストでないから、そういうセクションでないから、話はこの程度でけっこうなんだというような非常に熱意のないやり方ではいけないのではないか、こう思うのであります。  そこで今大臣は、日中貿易については民間団体折衝に待って、そうしてこれを援助していくという非常に消極的な立場で、問題の促進ということは民間の方の独走にまかせておいて、でき上った一つの形を取り上げて政府がやっていく。これが日中貿易促進だ、そういう方式でいくというならば、これはまた別でありますが、ほんとう国民に公約した日中貿易促進するというならば、現在の日中貿易障害になっておるいろいろな条件というものを、もう少し積極的に政府が解決して、そうしてこういうワクを与えて、このワクの上に立って民間団体中共折衝せよ、こういう条件を与えなければ、無条件でまあお前よろしくやってくれ、こういうようなことでは、日中貿易促進にはなりません。今問題になっておるのは決済の問題でありましょうし、代表部の問題でありましょうし、こういう民間では解決できないいろいろな問題を持っておって、第四次協定をうまくやってこいといってもやれるものではありません。もしやれる方式があるならば、どういう方式でやれるのだということをお答え願いたいのですが、これはやれるものじゃないと思う。だから決済方式をどうするのか、それから代表部交換をどういうふうに扱うのか、こういう条件を与えられて、そういうものを持って民間代表部折衝していくところに、第四次協定を円滑に運ぶことができますし、またこれは拡大の方向に持っていくことができると思う。そういうことについて大臣はどういうふうに対処されるか、承わりたい。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 今申しましたように、まだ第四次の協定を結ぶまでに若干ひまがございますので、民間いわゆる三団体というものとも政府側で十分相談する。そうしてそれについて今おっしゃられるように、どういう指導をするか。今国交はないのですから、どうしても民間ベースでいろいろな交渉をしてもらわなければならぬ。政府うしろにおっていろいろ便宜を与えるという立場しか現在はとれないと思いますが、ではどういう便宜を与えるかというような問題については、新しい協定のできるまでに関係閣僚会議を開く。そうして通商代表部の問題とか、そのほか向うほんとう専門家が行って市場調査をやはりしなければ、日本輸出計画というものも完全に立たぬと思いますし、そういうものに対してどういう対策をとるかというような方針は、それまで関係閣僚で相談するということになっておりますので、近くそういう問題を相談してわれわれの方針をはっきりときめたいと思っております。
  9. 永井勝次郎

    永井分科員 重ねて伺いますが、五月何日から第四次協定話し合いをするか、きちっと日時がきまってここから新しい話になるのだ、こういうような区別はないと思う。今の段階でいろいろ向うとの接触の間にだんだん話を積み上げていって、そうして第四次協定前提条件を整備しながら第四次協定を結ぶ、こういうことになるのだろうと思う。その話の過程の中で、現在問題になっておる問題について何も具体的な話を提起できないで、それはわからないのだ、それはうちに帰って国と相談して、こういうような子供の使いのような話で、向うへ行くのはただ市場調査だというようなことでは問題にならぬと思うのです。そう大したむずかしい問題でない。ずっと何年か前からしぼられてきて、両国の間に国交がなくて、そうして貿易促進しなければならない、ことに日本だけが独占市場として中共市場を持っているわけではないので、もちろんイギリスもフランスもどんどん現在突っ込んできておる事情は御承知の通りである。そういうような中で国際市場競争場裡に大きく転換しようとする市場を対象として現在いろいろ折衝を持つためには、できるだけ早くそういう問題が具体的に話し合いができていく基礎条件というものを、持っていかなければならぬと思うのであります。  そこで伺いたいのでありますが、大臣アメリカとの話し合いで、単にココムあるいはチンコム禁止品だけでなしに、一般中共住民消費物資等相当注文があるのだし、そっちの方へ相当伸ばせるからというような非常に安易なものの考え方をしておるようでありますが、一体政府中共市場についてどういうふうに現在押えているのか。あるいは新しい第二次五カ年計画というようなものの具体的な内容を検討されておるのかどうか。そういう第二次五カ年計画の中に、日本はどういう地位まで高めるために突っ込むことが可能であるか、そういうことを突っ込むためには、両国の間にいろいろな条件のちぐはぐになっておるものをマッチさせていかなければならないが、こういうような基礎的なものを一体どの程度に具体的につかんでいて、そうして今後こういうふうにしたらいい、ああいうふうにしたらいいという構想を持っていられるのかどうか。何もめくらめっぽうで、ただ日中貿易促進するのだ、そしてこれから各省大臣の間で話し合いをするのだというような、こんな堂々めぐりや、から念仏を言っていたのでは、具体的には一歩も前進するものではないと思うのです。一体どの程度に具体的に向う市場というものを診断して、どういうような態度でいけば、特殊な条件にある中共市場というもの、それから国柄というようなものと提携して、日本の商品を向うに突っ込んでいけるのかという具体的な構想、これはどうするという具体的な問題は別としまして、どの程度現状を把握しているのかということについて聞きたいと思います。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 こっちはあまり安易に考えておりません。相当安易ではないと考えていますので、具体的にこれを伸ばそうとするというと、御承知のようにまだまだいろんな障害を持っているときですから、私は第一段としてそういう問題に触れないで、中共貿易日本の全貿易に占める比率を、このくらいまでいっても普通の姿だ、しかも消費物資とかそういう平和物資取引においても、日本はもっと伸びられるのだから、その範囲でわれわれは努力するのだというようなことを言っておくことが、まずこの次から具体的な策を立てて進む一つ前提だ、こういうふうにむしろ政治的な発言であって、内容はそう安易には私ども考えておりません。それについては日本からも調査団を出して、ほんとう調査をして計画を立てるというプログラムを今考えておりますので、それによっていろいろ善処したいと考えて、この問題については日本一カ国の問題ではないのですから、いろいろ何をどうする、向う建設計画日本はどういうふうな形で協力したいとかいうような具体的な発言は、ちょっとここでは控えておきたいと思っています。
  11. 永井勝次郎

    永井分科員 こっちで一方的に、通産大臣やあるいは日本のそれぞれのこれに関係ある各省大臣が頭の中で構想を練っていても、これはから回りで、それから何も現状を把握できない。こうありたい、ああありたいという願望だけで、もちを絵にかいているようなもので問題にならぬと思う。現在日中貿易において問題になりますのは、政府の方で確たる決済問題はどうするのだ、通商代表部交換はどうするのだというような、一つ取り上げても問題がしぼられてくるこの問題に対してどうするという考えもない、はっきりした答えも出ていない、それからたとえばココム特認の問題、チンコム特認の問題、あるいは消費見本市向うに開くとしても、その出品の品目の問題、そういうことにすらとことんまでいかなければ、この話は少しも解決しない。それでどろなわ式にものをやる、そうするとボロが出る、こういうことの繰り返しをやっている。ですからそういう問題を持たないで、民間の人が個々ばらばら——政府思想統一ができていないで、民間思想統一をしろといってもできるものではない。ばらばらな考えを持っているものが、みなばらばらな形で現に向うへ乗り込んでいって、そうして個々折衝においていろいろなことを話し合う。そういうことでは、いたずらに日中貿易の今後の正常な発展の上にマイナスにこそなれ、プラスになる条件というものはあまり今出てこない。みな確なる何ものも持たないで、無責任な折衝を揣摩臆測してやっておる。それを取り上げて、あれはこうだこれはこうだといって、国内へ帰ってくると水をかけるような、ブレーキをかけるようなことをしている。そこでやはり今後政府がみずから表面に立たないで日中貿易折衝をするというのならば、民間にまかせるならば民間にまかせるで、やはり一つ計画を持たなければいけない、指導力を持たなければ、これは円滑に運ぶものではない。どの団体で主としてどういうふうにやらせるのか、市場調査はどういうふうな計画でやらせるのか。それからたとえばこちらからどういうような希望をしましても、向うは互恵平等で、そうして互恵平等のワクをはずれたものは応じないでしょう。日本の都合のいいようなことだけではできない、そういう問題をどういうふうに考えているのか。あるいは第四次協定以後における日中貿易の今後の障害は、問題は日本側にあるのでなくて——日本側にももちろんあるが、いろいろな実際の取引の面においては中共側にも問題はある。たとえば日本からいろいろなものを、プラント輸出をする、何を輸出する、こういう輸出品目日本の方にはたくさん持っておる。しかし中共から日本輸入するというものについては、鉄鉱であるとか石炭であるとか、あるいは塩であるとか、こういう問題はいいが、米であるとか大豆であるとかいうような問題になれば、そんなに大量に輸入はできない。そうすると、ほんとうに互恵平等の立場で、バーター的な形で貿易するというならば、鉄鉱輸入量石炭輸入量、塩の輸入量というものは、日本輸出の量を規制する、決定する、こういう条件になってくる。たとえば鉄鉱にしてもあるいは石炭にいたしましても、スポットで買ってくるならば問題がないのですが、向うだってどうなるかわからないのに、これに売り応じるということはできない。従って鉄なら鉄、石炭なら石炭というものについては、日本長期契約においてどれだけ買うのだという態度を示さない限り、向う石炭増産態勢鉄鉱増産態勢というものには入っていけない。そういう今後長期にわたるいろいろな問題があるので、口先だけの取引決済で問題を片づけるというような、そんななまやさしい問題ではないと思う。そういう問題について、大臣は今後具体的に第四次から発展させるんだというのですが、民間折衝をどういうふうにするのか、そしてどういうような団体にどういうふうにやらせて、向うに行く民間団体にはどういう指導を与えるのか、一体どういうワクを入れてやるのか、それから今後の第四次協定以後における長期貿易契約その他についてはどういうふうなことを——いろいろ考えているというのですから、現在は具体的でなくてもいいのですが、そういう構想一つ伺いたい。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 今度の四次協定については、そういう点につきまして十分こちらも計画を持ち、はっきりした指導をするつもりでおります。貿易代表交換についても、この問題がありますし、決済方式についても問題があって、政府側態度がきまらぬために、これが行き悩んでおるという問題はございます。今度の協定までにはこういう問題を、われわれは内部ではっきり解決して、一つ指導をして今までの障害を除くというつもりで現在おりますので、近くそういう方向にだんだんに実現していくだろうと思っております。
  13. 永井勝次郎

    永井分科員 この問題はあと西村氏が引き取っていろいろお話がありましょうから、私はこの問題はこの程度にいたしておきますが、ほんとう日中貿易促進しようというなら、もっと積極的に向う現状を把握して、こちらもそれに対処して、単に貿易コマーシャルベースでいくのだ、両国の政治的な問題や何か一切関係ぼないのだ、こういって現実にいたずらに目をおおっても、問題は発展しませんから、向う政治情勢なり五カ年計画なり、もう少し真剣に向うの問題をつかんで、そしてこちらがそれに政治的に触れないでコマーシャル・ベースで発展できる限界というものを、ちゃんとある程度診断し分析すればわかるわけですから、それに発展するにはどうしたらいいかという具体的な構想をすみやかに確立して、そしてイギリスやフランスや西ドイツや東欧諸国の中共市場への進出におくれをとらないように不断の努力を願っておきたいと思います。  次に三十二年度の財政及び産業投融資の拡大によって、物資の需給が相当飛躍的な数字になってくるだろうと予想される。政府は一応需給計画というものを出しておりますが、これは今言ったように単に中共貿易のから構想、から念仏という程度のものではないか。もう少し具体性を持っておるのか。何かプラス・アルファーの水増しなり仮定なり、こういうものが相当に含まれていて確実な数字としてわれわれは受け取ることができないものがたくさんあるわけであります。でありますから、二、三これらの点について伺いたいと思うのでありますが、石炭について大臣はどのように考えておられるのか。本年度は大体五千三百万トン内外を必要とするのでありますけれども、実際はもっと伸びる。油の関係その他との見合いにおいては、相当伸びるのではないか、こういうふうにも予想されます。それでことしはまだ国内における大手は増産態勢に入っておりません。今一生懸命で中小炭鉱が増産に応じておるという状況でありますけれども、大手の方は少し気迷い状態で、今後どうなるかといういろいろな問題を含めて、まだ増産態勢をとっておらない。従ってことし来年あたりはある程度粘結炭の輸入だけでなしに、一般炭の輸入も見込まなければならないのではないかというふうに思われるのであります。石炭の需給計画及びその実施の衝に当る通産大臣としては、実態をどのように押えておるか。そして国内における大手及び中小炭鉱及び輸入の問題について、どんな構想を具体的に持っていらっしゃるか、率直にお聞かせ願いたい。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 こまかい問題は事務当局から御説明いたしたいと思いますが、大ざっぱに申しまして一応ことしは何とか国内炭だけでやりたいという考えから、いろいろな計画をしましたが、実際問題では普通炭でさえ少し足りない、数十万トンくらいは輸入しなければいけないだろうという計画で、全所要量を大体四千九百万トンくらいとして、そして来年度べ二百万トンまではいきませんが、それだけの貯炭を持って年を越すというような計画で、電力の使うものや何かは一応は計算して、それから現状から見てこの辺までの増産はできるという見込みでやりましたところが、やはり数十万トンの一般炭を輸入する覚悟を持たなければいけないじゃないかというところで、需給計画を立てているという状態でございます。
  15. 永井勝次郎

    永井分科員 一般炭はどこから輸入する予定ですか。
  16. 讃岐喜八

    ○讃岐政府委員 昭和三十二年度、一般炭で大体百万トン輸入する必要があるであろうということで見通しておりますが、輸入のソースにつきましては、確実にはまだつかめておりません。しかし大体において樺太炭及び中共炭を輸入するほかはないのじゃないかということで、目下研究を進めております。
  17. 永井勝次郎

    永井分科員 中共炭と樺太炭の内訳ですが、樺太から大体どのくらい、中共からどのくらい……。
  18. 讃岐喜八

    ○讃岐政府委員 ただいまも申し上げました通り、ソースについて確実な見通しは持っておらないのでございます。しかし大体どうなるかというようなお話になりますと、ただいまでは約二、三十万トンのオファーが樺太から参っております。これは数量だけでございまして、これにについて将来なお話し合いを進めなければならぬじゃないか。なお本年度の緊急輸入といたしまして、中共炭が、これは十万トン未満でございますが、入ってくる予定になっております。こういう関係から申しまして、その残額は中共に期待するのが最もいいのではないかというふうに考えられますが、ほかにソースといたしましては、台湾炭もございますし、なおインド、豪州等にもソースがあるわけでございます。
  19. 永井勝次郎

    永井分科員 石炭の問題は、たとえば台湾から、樺太から、あるいは中共からと、まあ台湾からはそう大した期待はできないでしょうが、そういうふうにそのときどきの状況に応じて臨時的な計画をやっていたのでは、石炭の問題はこれから相当重要になって参りますから、そんな小手先のことでは始末がつかなくなるであろう。三十二年度においても少くも火力発電においては一千二百万トン内外は要るのではないか。そうして今後設備しておる火力発電が漸次動き出して参りますと、ここ当分年々火力発電だけでも三百万トン内外の増加を示していくのではないか。そういたしますと、今後石炭政策は、国内においてはどの程度の増産をしていくか、それから輸入先はどういうふうにすべきか、こういう長期計画が確立しませんと、これらの基本となる国のエネルギー源の問題を、台湾からだ、ソ連からだというふうな小手先なことをやって一時を糊塗しているのではいけないと思うのでありますが、これに対して大臣は、どういう見通しを持ち、それから国内における対策をどうしていくのか。それから、海外からの輸入については長期安定の対策を確立しなければいけないが、それに対してどういう計画を持って臨もうとしておるのか、承わりたい。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 火力発電などは、今のところ一千万トンくらいを予想しておりますが、それ以上の需要がございますので、これは重油でやるというふうに、石炭と石油の関係を十分調節する。なおかっそれでも先ほど申しましたように、百万トンくらい足りないだろうというので、その買い先きの対策は今言った通りまだ十分ではございませんが、今後具体的な交渉をやる、また将来この傾向がずっと続くものとするなら、海外から買うための計画というものを特に持たなければなりませんが、できるだけ石炭国内の増産でやりたい。今までのところでは、来年五千二百万トンの内地炭というものを期待しているのですが、この計画を作ったときはこうですが、最近産業界そのほかからいろいろな意見が出まして、どうもこの計画では、石炭はもっと足らなくなるのではないかという意見が非常に強くなってきましたので、さしあたりの問題としては国内炭の生産を、もう少し上げるという方針をとつて、その対策をしようと考えております。
  21. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣の言われる、国内における増産々々ということは非常にいいのでありますが、言葉で言えば増産で始末はつくのです。それから数字で上げれば、五千二百万トンの生産を五千三百万トンにする、五千四百万トンにする、ちょっと書き変えればできるのです。しかしこれを実際の現場で消化するということになれば、御承知のように石炭なんというものは、生産についてはそう弾力性がない、機械化をするといったって、それらに急に間に合うものじゃない。人をどんどん入れるといっても、不況のときは首切りをしなければならないでしょうし、あるいは坑内夫その他増産するための坑内の態勢を整えるためには相当の時間を要する。そうしてやって、すぐまた余ってきた、また縮めなければならぬ、伸びたり縮んだりということで、大手はなかなか増産態勢には入れない。そういうことで現在まだ大手は増産態勢には入っておちないという現状です。そのときに増産々々と大臣は言うのですが、一体どのようにして増産態勢を推進するのか、具体的な計画一つ聞きたい。  やはり問題は需給の問題だと思うのです。国内における大きな需要者は電力会社でありますから、電力会社が長期にわたる契約をして、安心して石炭が増産できるような条件を整備しなければ、幾らここで大臣が増産々々と言ったって、縮んだときは、その損害は政府が補償してやるというような裏づけでもあれば別ですが、できるものではない。電力の方はやはり渇水時期あるいは豊水時期によって消費量が相当大幅に動くというような関係もあって、都合が悪くなってくると長期契約ということを申し出るが、非常に苦しんでいるときには、ぼんぼんはねたというようなことで、その関係も円滑にいっていないと思われるのですが、国内の増産を強力に推進しますための条件というものは、一体何と何を考えているのか、そして増産態勢に飛び込むための隘路となっているそれらの諸条件について、一つ一つこの問題はこうするのだというふうに、一つ明確にお答えを願いたい。
  22. 讃岐喜八

    ○讃岐政府委員 技術的な問題でありますから、私からお答え申し上げます。  まず増産態勢に対する業界の意向の問題でございますが、お話の通り中小炭鉱は現在増産に非常に努力していることは御承知の通りであります。しかし大手炭鉱におきましても、最近特に増産の気がまえが出て参りました。たとえば来年度の出炭計画につきまして、今のところ一応五千二百万トンと見通しておりますが、五千三百万トン大丈夫だ、こういうふうに申し出ております。これは非公式な話でございまして、通産省といたしましてこれをまだ取り上げるところまでは参っておりませんが、ともかく増産に業界が踏み切っているということは確かなことであります。  なお今後の増産をどういうふうにやっていくのかということでございます。御承知のように石炭関係には合理化法がございまして、今後も合理化の基調をくずすことなく大いにその方向努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございますが、これは業界においてもそのことを十分了承いたしておりまして、今後増産をやって参ります場合に、合理化の線をくずしてまでもやろうというようなことはないというふうに考えておる次第でございます。  きて増産についてのネックの問題でございますが、現在のところネックと申しますと、何と言っても第一には坑木の問題でございます。その次には鉄鋼資材の問題でございます。坑木につきましては御存じの通り非常にパルプ原木との競合がございまして、入手がきわめて困難でございます。その上に価格の問題、最近では一年間に約二倍に上るというようなことでございまして、非常に炭鉱側では苦労いたしておりますので、これは内部におきましてパルプとできるだけ競合しないように原木の輸入等を考えるということで、相談を進めておるような次第でございます。  次に鉄鋼資材でございますが、これも御承知と思いますが、鉄鋼資材は主として今日まで鉄道の古レールを活用いたしまして坑内の坑ワクに使っておるわけでございますが、鉄道からの古レールが非常に出にくくなりましたことと、また炭鉱以外にお使いになる部門も非常にふえて参りましたので、炭鉱としては入手に非常に困りております。そういうわけで国鉄に対してこれの確保方について協力をお願いしております。製鉄所よりの鋼材の入手につきましても、目下重工業当局と交渉中でございまして、非常に同情的な扱いを受けておりまして、何とか形がつくのではないかというふうに考えております。  なお増産して参りまして、いよいよ問題になるのは輸送の問題でございます。これは国鉄とは常に連絡を密にいたしておりますが、国鉄といたしましては、かりに五千三百万トン出た場合にどうなるかというような議論がありまして、これは三十二年度の問題といたしましては、増産よりもむしろ輸送がネックになるおそれはないかというふうに見ております。  なお将来の大増産でございますが、御承知のように現状の炭鉱におきましては、今後どれだけ増産するかと申しましても、限度のあることでございます。老朽炭鉱は次第に条件が悪くなって参りまして、合理化を進めましても一定の時期には終掘という場合もあるわけでございます。そこで将来の大需要に対しましては新しい炭田を開発する。これは北海道なりあるいは海底の炭田なり大いに開発に努力して参りたい。そこで理想的な設計で最も合理化された形で開発して参りますと、日本の炭鉱全体としての合理化がさらに進むのではないかということで、そういう方面にも大いに期待している次第でございます。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 今おっしゃられたような増産を安心してやれる態勢をやはり大口需要者側で作るということが必要だと私ども考えまして、この間九電力の社長を全部集めまして、炭業界からこういう不満がある、ふだんは大手筋からちっとも買わないで中小炭鉱の値をたたいて買う、そっちから六割買って大手筋は四割しか買っていない、しかもその四割でも去年みたいな豊水期になるというと、あの契約はやめだといって、勝手に契約を破棄して買わないというようなことを電力会社がやるのなら、いざ石炭に困ったというときには、中小炭鉱から見ていうと、ふだん値をたたかれておって急に今になって出せ出せなんて、そう勝手なことはできないからと言いますし、大手筋から言いますと、ふだん勝手な契約をやって要らなくなればすぐ契約を破棄するようなことをやられて、困ったときには出せなんて言われても、そうはいかぬというようなことで、炭鉱界に非常にそういう点の不満があるからみな気をつけてくれ、渇水期に備えるために、豊水期であろうと一定の量は必ず買うというような態勢を、電力会社もとるべきだということを私どもから申しまして、電力会社もみなそういう点があったかもしれぬし、それはさっそく直すというようなことで全部引き取ったというようなこともございますので、そういう点については今後私どもの方でも十分指導して、安心して増産の態勢をとれるような措置は今もうすでにやっているつもりであります。
  24. 永井勝次郎

    永井分科員 ちょっと議事進行について委員長にお尋ねするのですが、私はまだ石炭、電力、鉄鋼、こういう問題についてお聞きし、さらに中小企業の問題について大ざっぱに触れておきたい。聞くところによると、きょう午前中で通産関係は終る、そういうことになると、西村氏はまだ貿易の問題について、それから栗原氏は電力その他について質問が相当残っているわけですが、やはり午前中で通産関係は終って、次の議事に入るということなんですか。あるいは理事の話し合いによって残った質疑を午後も継続することになるのか。それによって質問の内容を変えなければいかぬのですが………。
  25. 大橋武夫

    大橋主査 お答えいたします。午後は実は経済企画庁所管について質疑をしたい、こういうことにいたしておりますので、大体きょう午前中にできれば通産関係の部分を終りたいと思っております。それと午後は参議院で商工委員会があるそうでありまして、大臣の御都合もつきかねる場合もあろうかと思いますし、はっきり午前ときまったわけでもありませんが、大体午前中と認められる程度範囲で一応終了したい、かように考えております。
  26. 永井勝次郎

    永井分科員 それでは石炭の問題について最後に一点だけ聞いておきたいと思いますが、石炭については合理化法案が現在進行しております。合理化法案というのは、いうまでもなく、合理化という名によって中小の非能率なところを整備するという案である。ところが今事務当局に聞くと、合理化態は最近の石炭増産というものは、整理対象になっている中小の炭鉱がどんどん手をつけて増産態勢に入って、中小炭鉱がぐっとふくれてきている。これは整理対象になっていたところです。大手の方は模様を見るということで、まだ増産態勢に入っていない。これからそろそろ入ろうというところです。そういたしますと、合理化態勢をくずさないなんて口先で言ったって、実際は逆なことをやっているんじゃないかと思う。もう一つは、ここに長谷川政務次官がいられるから、あとで一つ通産政務次官としての責任ある立場で御答弁を願いたいと思いますが、たとえば重油と石炭の競合の問題についても、政府は無責任にそのとき、そのとき、重油を使うな、今度は石炭をうんと使えとかいって、石炭が余ってきたときには重油のかまをつけているところをみんな転換さした。これは簡単に燃料をかえただけではいけないので、設備をかえなければいけないのにどんどんかえさした。長谷川君などはまっ向から、そんなばかなことはあるかと言って、こちらの側にいたときにはがんばったが、今度政務次官になってどうやるのか、一つ感想を聞きたい。  そういうふうに今度はまた石炭を重油に切りかえる、実に勝手な、無責任な指導をやっておる。行政はもっと国民から信頼されるような、責任ある態度を持って、長期の展望を持たなければ、目先々々の、一年先はわからないんだというような無責任なことであっては問題にならないと思うのです。重油になれば一カロリー大体一円四十銭くらいになるのでありますが、石炭の場合は一カロリー当り一円くらいで、重油に転換すればまた設備もかえなければいけませんし、一カロリー当りの単価が高くなってくる。またそういうことで重油に転換いたしましても、これは相当いろいろな価格騰貴の原因になってくるし、先ほど来事務当局からのお話のように、これから石炭を増産するためには、坑木の問題、鉄鋼の問題、輸送の問題、こういう関係、それから輸入をするということになれば、現在船運賃が相当に高くなっておる。USMCに対して現在プラス幾らになっておりますか、プラス八十、九十くらいになっているんじゃないか、あるいはもっと、百くらいにはなっているんじゃないかと思われるのですが、そういうようなことで、これはやはり相当物価の騰貴になってくると思うのです。ですから、合理化をやりながら今度は合理化と反対のことをやる、重油を使うな、石炭を使えといっていて、今度はまた重油にかわるというようなことをやっておる、もう支離滅裂といっていい状態である。そうして物価は騰貴しない、こう言いながら、実際において国内の増産をするについても物価騰貴の原因になる、それから重油に転換するにしても物価騰貴の原因になる、あるいは輸入を増強するについても、船運賃その他の関係でこれは物価騰貴の原因になる、こういう関係をことしの予算とそれからいろいろな産業計画、経済計画の中で、こういう物価騰貴を刺激するいろいろな条件というものを、通産大臣はどういうふうに考えられておるのか。これらはみな一つの生産過程において従来の価格の中に吸収されるものというふうに考えられておるのかどうか、もっと石炭に関して触れたいことがありますが、この一点だけをお伺いいたします。
  27. 水田三喜男

    水田国務大臣 生産拡大を均衡をとってやれれば物価は上らないことになるし、均衡拡大ができないで、どこか均衡が破れるということが物価を上げる大きい原因になりますので、いわゆる拡大の隘路と思われるものを解決することが、物価を上げないためのまず第一の手段である、こういう考えから鉄、石炭、石油、輸送、電力、こういう問題の解決のために御承知のような財政投融資もするし、あらゆる手段をとってこれを解決する。そうすればそう物価を上げなくて済むだろう、こういう考えから今の個々の対策をやっておるわけですが、若干その間物資の値上りがありましても、量を詰まらさなければほんとうの物価高、それによって全産業のコスト高なんていうものは起さないで済む。問題は必要需要量をどう満たすかという対策ができるならそう心配しなくてもいい、こういう方針で今の場合、鉄、石炭、電力に対する一応の方針を立ててこれからやろうというのですから、その点で日本の致命的な物価高を起すというようなことは、一応今度の計画の見通しではなかろう。私はこう考えております。
  28. 永井勝次郎

    永井分科員 致命的な物価騰貴ということになれば、どの辺の線が致命的な物価騰貴か、これは吟味しなければなりませんが、その問題は今時間がありませんから、なお後刻これらの問題については論議したいと思いますが、少くも石炭、電力、鉄鋼、油、こういった基礎産業の面において物価が騰貴してくれば、全体の物価に影響するということは、水田通産大臣も百もご承知のことであります。それを物価騰貴というものの上に致命的にくっつけて、そうしてこれが致命的でないといえば、どの線が致命的なのか、これは後刻吟味したいと思いますが、とにかく今言った、ずっと簡単に調べた範囲においても、物価騰貴で石炭が上ってくるということは言えると思うのであります。  次に時間がありませんから今お聞きしたいのは、電力の問題であります。これは東北の方から電力料金を二割方上げてくれという申請が出ておると思うのですが、どうであるか、これが一点、それから先年電力料金を値上げいたしました場合に当時の通産大臣、今の石橋総理大臣は、とりあえず当面は三割以上値上げをしないという頭打ち価格をきめて、そうしてその間に税金の面、あるいは金融の面、あらゆるいろいろな施策をして、電力料金の実質的な値上げにならないような措置をする。それまで現在の料金は時限を置いて暫定価格としてこれを処置する、こういうふうなお話であって、その後どのようにこの電力料金の頭打ち価格の中で生産原価が引き合うように措置するという努力をなされたか。そうして今後東北を中心にいたしまして値上げが行われ、さらに深夜の料金であるとか、あるいは大口の特殊電力であるとか、こういうものを一斉にワクをはずして値上げをする態勢にあると思うのでありますが、これに対してはどういうふうに対処されるのか、電力の需給関係及び価格関係の一般について、時間がありませんから、一つ総括的に大臣から要点に触れて明確に御答弁をお願いしたいと思います。
  29. 水田三喜男

    水田国務大臣 東北、北陸の方は太る程度値上げをしなければいけないというような事情を、今非公式に口頭では聞いておりますが、まだ正式に申請になっては出てきておりません。なるたけ値上げをしなくて済むようにというので、いろいろ考えておりますが、今度の税制改革を見ましても、税制でも考慮するからというので押えてあったのですが、今度の税制の改革で臨時特例を解くというために、電力会社へ税金がかかってくるという問題もございますし、地方税法の改正でもいろいろ電力会社のことは考えようと思いましたが、電力会社だけにいろいろな特例を作るということがなかなかむずかしいので、そういう面でも税制の面で電力会社に特別の便宜をはかるということができなくなりましたので、特殊な地方の値上げを拒むことはむずかしいだろうと考えています。今の三割の頭打ちの問題ですが、これもなかなか大きい問題で、これも押えておいて料金値上げを押えるということもむずかしいのですが、しかしこれは産業界にも非常に重大な影響がございますので、これからいろいろ電力会社とも折衝いたしますが、今私の考えとしましては、卑俗な言葉ですが、二度あることは三度で、二回これをやったからもう一回ぐらいがまんしてもらって対策を立てたいという個人的な考えでおりますが、まだ方針はきまっていません。それから東北、北陸については、ほかの地域からことしの電力増産分を回してやるとか、いろんなことをして、そうしてぎりぎりどうなるか、どのぐらいの要望を認めてやらなければいかぬかというような問題は、今後ゆっくり検討してから、最後のわれわれの考え方をきめたいと思っているのですが、まだ正式に申請書になっては出てきていないところでございます。
  30. 永井勝次郎

    永井分科員 電力需給の点も……。
  31. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 需給の方は私から申し上げた方がいいと思います。今大臣から大要申し上げましたように、実は電気の方の事情は三十二年度が一番苦しくなる、なかんずく東北と北陸電力管内は一番窮屈になるような状況でございます。そこで最近特に産業の伸びの著しい両地方に、何とかして電気を回そうじゃないかということでいろいろ苦心しまして、あちらこちらの老朽火力を動員いたしまして融通をやりました結果、両地域とも何とか格好がつくという程度まで行きそうであります。その結果今大臣が申し上げましたように、融通料金の原価が高くなりますので、その結果をかぶって、やはり両地域ともある程度の料金値上げはやむを得ないかというふうな論が生じておるのであります。具体的な数字は、まだ申請書が出ておりませんし、われわれの方で目下もっぱら専門的に検討中でございます。まだ私も結果を聞いていないような状況でございますが、ある程度供給力がふえます結果、やはり料金原価の高騰はやむを得ないものだというふうに見ております。
  32. 永井勝次郎

    永井分科員 三割頭打ちの料金問題について、極力値上げをしないようにいろいろな措置をする、こう公約してきたのであります。ただ、してみたがだめであったという子供の答弁のようなことを、われわれ議員は期待しておるのではなくて、あらゆる努力をしてみるということは、努力すれば値上げをしなくてもその中で処置できるのだという具体的な構想があり、その自信があって公約されたことと思うのです。ところが二年、三年たってから、やってみたがだめであった、値上げはやむを得ない、こういう結果の報告だけなら、私は非常に無責任でないかと思うのです。それじゃ具体的に一体どういう努力——税の問題は今ちょっと聞いたのですが、これは今までは特例法によって三十一年度の場合を見ますと、電力会社は普通の所得に対して二八%内外より税を納めていない。七割以上の特例法による特典を受けて、なおかっこれではやり切れないのだということになっておる。しかも渇水準備金は二百億から社内に留保して積み立てておる。そうして配当はどんどんやっておる、こういうようなことでだめだったんだというような簡単な答弁では、われわれ納得できないのですが、この点について一つ伺いたい。具体的にどういう努力をされたのかということが一つ、それから努力をしたといっても要点に触れた電力政策というものをどういうふうにするのか、公共性を持つということを言いながらこの公共性を持たせるためにどういうことを基本的にしなければならないかという問題にも何にも触れていない、それから現在のような九分割をしておきますと、電力料金の地域差が出てくることは当然であります。東京や大阪こういうところは家庭用電灯でいいますと、東京、大阪ですと一本の電柱について八軒ぐらいの需要者に配電することができる。東北なんかへ行くと二、三戸ぐらいより配電できない。そういたしますと、家庭用電力の料金にしたって東北の方が高くなって、こちらの方がうんと利益である、同じ料金でいくならば東京、大阪はますますよくなって、東北とか北海道とか四国とか、こういうところはますます不利になっていくということは明らかです。そうしてもし家庭用電力はそのままにしておいて、いまいった動力用電力というものの価格をいじくっていくということになれば、これは地域的な電力料金の価格差というものが出てきて、産業の立地条件だって地域的に制約されてしまう。今までは東北なんかは安いのですか、今後火力がどんどん出てきて、そうして電力料金が高くなっていくということになれば、いろいろな条件から見て、東北なんかで電力を多く使うところの企業というものは成り立たなくなってくる。東京、大阪にますます集中するという態勢ができてくると思う。これを全国に一つプールしてやれば、これは現在の料金の中で十分私は価格を上げないで吸収していけると思う。そうして電力の料金の条件で企業の立地条件が制約を受けるというような片寄ったものではなくて、総合的な立場からそれぞれの地域に企業というものが起り得る条件が出てくるのではないか、こう思うのです。そういう基本的な問題にはちっとも手を触れないで、ただ税金をどうするか、金融をどうするかという小手先のことをやっておるから、だめであったという単なる子供の答弁のような答弁よりできない結果になるのではないか、こう思うのです。たとえば価格の問題からいたしましても、石炭の分野で見ると、やはり物価が上ってくる大きな条件というものはここから出てくる。電力料金の問題一つ取り上げても、ここでもまた物価がどんどん上ってくる条件というものが、ここに一つ提起されておる。鉄鋼の面を取り上げれば、鉄鋼の面でもこれは物価騰貴をする条件が出てきます。今年は鉄鋼は、大臣が言っておるよりももっと相当輸入量をふやさなければ、国内のこの刺激された需要には応じられないのではないかとこう思うのです。ところがアメリカから輸入するといたしますと、一トンについてFOBでは九ドルぐらいですけれども、船運賃がうんと上っておりますから、こちらへ持って参りますと三十四ドルから三十五ドルぐらいのものにはなるのではないか、船運賃で二十何ドルというような、多額な船運賃を出して輸入しなければならぬということになる。そういうように輸入のものが高くなってくれば、建値はどうあろうと市中価格というものはどんどん上って、そうしてさらに輸入量がふえればふえるほど、国内の生産価格を値上げさせるところの刺激剤になって、ずっと石炭、電力、鉄鋼というものがぐんと、ごとしは値上りするのではないか、こう思うのです。そういうような主要な因子であります電力料金の問題、電力政策の問題でありますから、一つそういうものを含みながら物価全体の問題を展望しながら、ただいま申し上げました電力料金及び電力政策に対する基本的な態度、そして今まで値上げしないために、具体的にどういうことを努めたけれども、それがだめであったなら、だめであったということを一つ正確に承わらないと、ただ子供の答弁のようなことで、われわれは了承するわけにはいかぬと思うのです。
  33. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 水田大臣御就任前のことでございますから、私から経過を申し上げます。  税の問題につきましては、石橋大臣のとき以来、地方税につきましては、固定資産税の税率の引き下げ並びにその税率の固定化、つまり現在は標準課税ということで、上下に幅のあるような課税ができるようになっておりますが、これを固定し、かつその税率を低下してもらう。それから事業税が現存裸課税、つまり売り上げに対して一・五%というふうな裸課税になっておりますが、ほかの業種のものは所得課税になっておりますので、結果からいいますと、外形課税の方が負担の率が高くなっております。これを一般の業種のように、収益課税に改めてくれということを申し入れておりまするが、なかなか実現しなかった。国税につきましては、積極的な減免税の問題も若干ありましたが、むしろ現行の特別措置の延長存続という点に重点を置きまして、その内容は例の増資免税という制度がございますが、これの存続及び法人税法第六条の重要物産の免税規定、この二つの制度を存続してもらうようにということを申し入れておりましたが、これもいろいろな関係でなかなかうまく参りません。今お話を聞きますれば、何か電力会社は収益がありながら、非常に免税の恩典に浴しているというようなお話でございました。御指摘のような率になっておる会社はわずか二つしかないわけでございます。これは結局何も電力会社がもうけて税金を納めないからけしからぬということじゃなくて、その内部留保に回っておりますものが、結局全体の建設資金のコストを安くしております。  御承知のように現在電力関係で最も事業収益のいいところは、資金コストがおそらく四分以下の金を使っておる。電力のような資本の回転率のおそい企業におきましては、資金コストが一分違いますと、電力料金のコストが約一割近く違います。そういうような関係がございますので、税の減免は、そういうふうに資金コストの低下を通じまして、料金原価を引き下げるというふうな重要な役目を負っておりますので、私たちは税の問題を特に電力についてだけでも、何とかならぬかというふうに努力したわけでございますが、遺憾ながらあまり実現いたしませんのでございます。  それから三割頭打ちという問題はよく言われておりますが、これはおそら電灯料金の三割頭打ちの問題であろうと思います。ほかにも頭打ちがございますが、電灯料金のお話だろうと思いますので申し上げますが、これは御承知のように、一昨々年でございましたか、料金改正のときに夏料金を一本にいたしました。その結果四月一日以降の電灯料金が上る。しかもその上り方がひどくなっては急激な変化を与えるということで、三割以内にとどめるということで頭打ちの制度を、実は無理な行政措置として——供給規定に実は違反しております。違反することを役所から頼んで特例ということをやっておったわけでございます。これはその後実態をいろいろ調べてみますと、どうも中流というと言葉は悪いですが、ある程度電灯の灯数並びに量の多い世帯が、その恩恵をこうむっているようであります。大体七灯ぐらいから上を使っておるところが、その頭打ち制度の恩恵を受けて、月に五十円とか七十円とか百円とかいうふうな料金割引を受けておるというのが実情のようでございます。しかもそれも全国の各会社ではございません。この範囲も比較的東の会社に限られておるというふうな状況でございます。これをどういたしますか、先ほど大臣から御説明いたしましたように、石橋大臣のときのお話では、税の軽減等も措置するから、一つがまんしてくれというふうなことで、できた制度でございます。今度の税制改正では積極的に電力会社の税負担が増加いたしますので、果してうまくそういうふうな特例措置ができますかどうか。われわれも実は何とかして税の方を、もう少し特例を設けていただいて、あわせて電灯料金の三割頭打ちも存続できないものかというふうなことを苦慮しておるわけでございます。  それから値上げの問題で、何かいろいろ工業の立地の問題と関係お話があったようでございますが、これはわれわれの考えるところと、若干事情が違っておるのでございまして、現在東北並びに北陸地域の電力の方の料金が他の地域、特に隣接地域である東京あるいは関西、中部と比べまして安いということは、御指摘の通りでございます。その両地域にあります産業の特に最近の伸張ぶりの著しいのを見ておりますと、これは結局電気も相当消費いたしますが、同時にその両地域にある資源を、現場で利用しておるという産業が多いのであります。電気銑でありますとか、あるいはカーバイドでありますとかいうふうなものが多いわけであります。こういうものは結局ひとり電気が安いというだけでなくて、原料も近くにある。工業の立地のファクターは、御承知のように原料に引かれる産業もございますし、あるいはマーケットに引かれる産業もございますし、あるいはレーバーに引かれる産業もありますし、いろいろありますが、両地域に栄えておりますものは、むしろ原料に引かれ、かつその原料の加工に多大の電気を必要としておる産業に多いわけでございます。裏からいいますれば、そういう産業がかりに東京や関西地区に戻りますれば、利益が非常に少い。今度料金改訂をいたそうかと思っておりますが、この範囲もおそらくは両地域の隣接地域の料金よりも上げるというわけにはなかなか参らぬだろうと思っておりますので、結局その地域にあった産業の利益がほかの地域に比べて若干減る。ある意味では地ならしができるということになるのではないかと思っております。  地域差のお話もございましたが、地域差の方は、その結果、全国一本にはもちろん参りませんが、大体縮まる方向にあるというふうに御了解願いたいと思います。  それから電灯料金のコスト等のお話もございましたが、これは今御指摘のように北海道や東北では現在も電灯料金は産業の動力用よりも、ほかの地域に比べてやや高い。裏からいいますれば、今度料金を改訂いたしましても、電灯の方はそう上げるわけに参らぬだろうというふうなことになるわけでございますので、この辺は、電灯については需用密度が低いところでございますから、原価を若干割るようなことになるのじゃないかと思っておりますが、そういうようなことで、今後はむしろ地域差は、御指摘がありましたように、縮まる方向にあるものだというふうに考えております。工業の方の立地も、むしろ電力の条件は、料金の面よりも豊富にあるかどうかということになるかと思っております。原料のあるところに、運賃とのかね合いでそういうふうな工業が生まれるものだというふうに考えております。
  34. 永井勝次郎

    永井分科員 時間が十二時になっております。私はまだ鉄鋼や中小企業や産業投融資、そういう問題について触れたいと思うのですが、きょうは時間がありませんから、残余の質問はこれで留保しておきたいと思いますが、電力の問題について基本的な政策ですから、大臣から伺っておきたいと思います。今岩武局長からは、電力料金の地域差はだんだん縮まっていく方向にある、こういうお話ですが、私はその逆であると考えております。なぜかならば、電力料金は御承知のように原価主義です。原価主義で計算していくならば、需用のうんと多いところ、一つの施設でそこに大きな需用者がたくさん集まっているところ——ことに今電力料金の内容を見ますれば、家庭の電力がうんともうかるのです。そうして大口の動力電力というのは割合特別な割引きをしてやっておりますから、原価計算からいえばコストを割っておるのじゃないか。そうして家庭の電灯でもうけたものを、大企業の動力の方に地ならししている。こういうような内容の構成になっている。東北や北陸が今まで電力料金が低かったというのは、水力発電所をたくさん持っていた、そういう関係で割合に安い原価で供給ができた。ところが需用が増して、水力では間に合わないから、今度は火力をどんどんと作ってきた。そのために原価のコストが高くなって、電力料金を上げなければならない、こういう状態になってきているのが現在であります。そうしますと、原価主義でいくならば、需用が多いところが安くなって需用の少いところが高くなっていくということは当りまえです。相手は営利会社です。国の方の法律で原価主義だということを明確にうたっておいて、原価はあるだろうけれども、政策上お前のところはコストを割っても安くせいというような不合理なことは、一時的にはとにかくとして、永続するものではありません。そして今火力発電がどんどん進む、あるいは水力発電がどんどん進む、こういうことになりますと、そういう関係から電力料金は上がるべき要因がたくさんありますし、原価主義でいくならば、子供の計算で見たって地域差が出てきて、あまり大きな企業や、人口の少いような地域の原価が高くなってくることは明らかな事実です。そういう地域差がうんと出てきている。しかもその地域差をなくするために、九分割したときには、水火調整金といって、九つの電力の料金差をできるだけなくするために調整金を取って、これを地ならししていたのですが、この調整金は今なくなっているでしょう。調整金もなければ、原価主義という一つ条件を置いておいて、地域差が出ない、これが縮まっていく方向にあるなんて、とんでもない間違いだ、こう思います。そういうような面から地域差が出てくれば、やはり電力量を多く使う企業の立地条件というものは、原料その他いろいろな条件がありましょうけれども、そういう面で電力料金が安いからといって、東北にできた企業というものは成り立たなくなる。成り立たなくなるというより、不利な条件に追い込まれてくる、こういうことが言えると思うのです。これはまあとにかくとして、将来は日本の電力というものは、無制限に発電力を増していくということはできないと思う。これは水力の関係もあるが、火力の関係においては、石炭の生産量が電力発電の方にどのくらい回るか、回し得るかという量によって火力発電の限界が来ると思う。でありますから、政府はそういう限界を展望しながら、原子力によるところの発電ということを大きく打ち出しているのは、そういうところに原因がある。ところが原子力の発電というものはアメリカでは二、三日前にはようやく五千キロワット・アワーの発電をやって、これの単価が一キロワットあたり十八円につくということを発表しております。イギリスの方は何か原価が三円だというようなことを言っておりますが、イギリスの方は原子兵器を作る過程において発電をしようというのですから、これは原価のかぶせ方で、弾薬の方に多く生産コストをかぶせれば発電コストは安くなってくる。しかし日本のように発電オンリーでいく場合には、相当高いコストになってくると思う。そうすると、電力料金というものは安い方向にいくのではなくして、かえって高い方向に向っていく条件がある。従って電力というものは、石炭その他の何とも見合って、電力行政、電力政策というものを、どういう性格でどういう方向へ持っていかなければならないかということを今にして打ち出さないと、大へんなことになるのではないかと思われるわけです。従って現在の段階において、水田通産大臣は電力政策というものを基本的にどういうふうに考えているか、どういう方向に持っていくべきであるかというふうな見解がありますならば、この機会に承わっておきたいと存じます。  これだけに私の質問は終りまして、あと中小企業や鉄鋼その他諸物価が、この三十二年度の予算を遂行していく上において、あるいは産業投融資を注ぎ込んでいく上において、ここ一、二年の期間においていかに物価が騰貴してくるかといういろいろな因子をいろいろな角度からここへ上げて、物価が上らないというなら、上らない理由を明確に約束してもらう。運賃が上っても吸収できるんだ、あるいは油の税金が上ってもこれは生産力の中に吸収できるんだ、鉄鋼が上っても、石炭が上っても、電力料金が上っても、これはみな吸収できるんだというような・手品使いのようなうまい手があるならば、その忍術的な経済政策を一つ具体的に説明をしてもらいたい。そうでなければ、単に物価が上らないんだと言ったから、そうですかといって無ぞうさに本年度の予算を通すわけにはまかり相ならぬと私は考えているので、残余の質問については私は留保いたしたいと存じます。今の電力政策について、一つ大臣の基本的態度を承わりたい。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 基本的態度と申しましても、結局必要電力をどう供給するか、この問題を解決するのが政府として一番重要なことだと思いますので、将来電力需用がどう伸びるかという見方には、いろいろあるかもしれませんが、今政府で立てている一応三十六年度までに八百五十万キロなら八百五十万キロ、これだけの電力をどう起すかというところに努力を集中するよりほか仕方がないと存じますので、今年度におきましても、九電力の使う発電の工事費は、水力、火力両方入れて二千二百億円、電源開発が使うのが四百五十億円前後、地方の公共団体が使う金が百五十億前後、合せて二千八百億円くらいの金を今年工事にぶち込むという予定になっておりますが、この金融を円滑にやらせて、今年度一年に二百万キロの開発に着手させるとかいうような、一応今までの需給計画に従った発電を強力にやるというのが、私どもとしては電力問題に対する根本的な態度だろうと考えて、その措置を今やっているというところでございます。
  36. 永井勝次郎

    永井分科員 電力の需要があるから、それに見合う発電を増強していくというのは、これはわかる。わかるのだが、そうやればやるほど電力料金は上りますよ。それから地域差はどんどん出てきますよ。これをどうするのか。料金を上げないで、そうして物価騰貴を来たさないで、そういうことをやると約束しておるのですから……。それはそれだけの何千億という金をつぎ込んでいけば電力料金は上ってきますよ。原価主義ですから上ってきます。それが上ってくればだんだん地域差は出てきますよ。それを一体どうするのか、そこが政策なんです。必要なだけふやすということならばかでもできる。金は何ぼかかってもいいというならばかでもできます。そういうばかでもできることを聞いておるのじゃない。相当むずかしい問題だから、どういうふうに対処するかということを聞いておるのです。
  37. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはまあ将来のそういう動向に対しては十分善処するよりほか仕方がないと思います。
  38. 大橋武夫

  39. 西村榮一

    西村(榮)分科員 私はこの間予算の説明を承わって、通産省の産業計画輸出入のバランスを見るとどうもふに落ちない。たとえば輸出は一三%ふやして二十八億ドル、輸入は一〇%ふやして三十二億ドルでとどめる、こう書いてあります。これがどうしても実はふに落ちないのです。この間あえてあなたには聞かなかったのですけれども、きょうは傍聴の方も少数だから、(笑声)ざっくばらんのお話を承わりたい。どうも先につじつまを合せるためにこの数字を合わしたのではないか。私はそれを責めるわけじゃないけれども、そうすると、下半期日本の経済は曲りかどに来るのですね。一体これに対してどうするかということは、輸出入のバランスと物価の問題、両面から考えて、野党と言わず、政府と言わず対策を、腹がまえをする必要がある。そうすると、その前提になる輸出入がどうも僕にはふに落ちないのですが、一つ説明を願います。
  40. 水田三喜男

    水田国務大臣 あの国際収入の見通しがあまりきれいにとんとんということのために、いろいろ御不安を持たれたり何かすると思いますが、私どもの見方では、そう細工したものではなくて、けっこう去年の輸出輸入の状態から推して、国別、品物別にある程度やはり見通しを積み上げて数字を作っているということは事実でございます。まあ正直な話をしますと、事務的にいろいろ計算してみますと二十七億六・七千万ドルは、大体今の調子で貿易を伸ばしていったらいけるだろうという数字が出ておるのです。ところが今までこれが当った例が一つもございません。必ずこの見通しははずれる。なぜはずれるかと申しますと、国際経済の好調がこうなるということが見通せませんし、また日本の産業拡大がこう急速にいくということが、なかなか見通せなかったわけです。なぜかと申しますと、国際問題には、予想する場合にいろいろな前提条件があるのです。もし日英の協定がうまくいったらこうなるだろう、もしいかなかったらこれはいかぬという見方のときに大体用心して——そう万事うまくいくという予想の上に立ったら狂いが来るから相当用心して、これはなかなか改善されないだろう、豪州の問題はこうだろう、インドネシアに対してはこうだろう、インドはこうだろうという国別や商品別の見方をするときには、今までの専門家及び事務当局というのは、相当辛く見るのが普通ですから、今まで見た予想というものはみな低くて、事実はそれ以上に伸びていたということが、この何年かの実情でございますので、今度の予想で見ましても、二十七億六、七千万ドルまでは大体いくだろうという予想の中にも、相当辛い見方が入っています。私どもは、今貿易即外交というので、外交を活発にして、こちらがいろいろな解決に積極的に出てくれるなら当然ことしはこれ以上伸びることが予想される、それで、この見方で実は私自身は二十九億ドルくらい伸ばすつもりで、今度は二十八億ドルという予想をとっておりますが、二十八億ドルを一千万ドル切ったら私はすぐやめるからといって事務当局へかけしてあるくらいで、われわれの努力によって二十八億ドル以上十分伸ばせる確信を、大体今のところ持っています。  一方輸入の方はどうかという問題ですが、去年の二月までは二十九年度の資林の食いつぶしを埋めるのに結果として相当の輸入をしておったという数字になっておりますが、去年の三月からは、とにかく使用量よりも輸入の方がいろいろの統計から見ても多い。そうして今日までの蓄積は、これは計算の問題ですが、いろいろな専門家がいろいろな計算をしておりますが、みなの意見を総合してみまして、四億六千万ドルから五億前後までの主要原材料の蓄積というものが今できておる、これは事実だと思います。そういった現実の使用量と輸入量の違いがそれだけ去年一年に出ておって、これだけは今日本に資材の蓄積になっておる、こういう事実を無視して、今後日本輸入の予想を立てますと、鉄は輸入しなければいかぬ、石炭もそう、石油もそう、これだけは去年より日本の産業拡大に見合った輸入増が必要だというものを一応計算してみますと、実際のところは三十二億ドルよりも少し多く買わなければいかぬという数字が出るのですが、これは、二十九年度のときの主要原材料の手持ちと同じに見て計算しますと、三十二億ドルでは日本の産業拡大に見合う輸入としては足りないという数字は確かに事務的にはじいても出てくると思います。ところが果してそこまでの輸入があるかと申しますと、今持っておる手持ちの材料がほんとうに活用されるということになりますと、それ以上現実的には買わなくても済むだろう、しかしこちらが押えるというのじゃなくて、必要な原材料はどんどん入れるのだという政策を今とっていますが、入れるのだといっても異常な、今まででは一番多い手持ちを持っているときですから、必要なものはどんどん買ってよろしいといっても、大体のところその辺でとまるだろうという見方もあまり狂っていないのではないか。そうしますと、偶然に、ユーザンスの繰り延べや何かを考慮してみますと、ことしの国際収支はやはりとんとんくらいになると見て間違いないじやなかろうかというのであって、あんまり細工したんじゃなくて、輸入の実際の予想と輸出の予想で、その辺に落ちつくと見るのがいいんじゃないか。というのは、最初いろいろ意見がございましたが、各省間に最後にはその見方が一致したということで、そう不当な見方でもないので、私は実際ことしやってみたら、困難きはたくさんありますが二十八億ドル以上輸出が出てくるかもしれませんし、あるいはまたそれに見合って輸入がもっとふえるかも——これは今までとにかく業界でも専門家でも当った人は一つもないのですから、いばったことは言えないのですが、大体ことしの国際収支の見方は、あの程度でまあ常識的ではなかろうかと考えているわけです。
  41. 西村榮一

    西村(榮)分科員 輸入量が去年の予想より一〇%増しと見積られているのは、やはりその通りですか。
  42. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体一〇%増しです。
  43. 西村榮一

    西村(榮)分科員 あなたが今御答弁になった四億、五億ドルの手持ちというものは、私はこれは今の日本の産業規模の最低限だと思います。これを食うわけにはいきません。そこで私はあなたの答弁の中に苦しいところもよくわかります。苦しいからこそ長らく御説明なすった。苦しい点は私はよくわかりますが、私の心配するところは、ことしの生産規模は政府の原案によると一二・五%ふやす、こう言っております。輸入は一〇%ふやして、輸出は一三%ふやすと言っております。ところが私はその貿易計画に対していいか悪いかという議論をする前に、もっと大切なことは日本輸出を伸ばし、同時に日本の産業の底固めをするための必要なものは、何と言っても通貨の安全性を確保しなければいけない。これは貿易のつじつまを合せねばならぬ。そうするとあなたはいろいろ今御説明になりましたけれども、あなたの御説明の根底が狂っているということは、すでに昨年度だけが輸入量が三十二億二千八百万ドルです。これからいくとあなたの方の政府の統計によると、一〇%ふやすということになると、これはすでに統計からいっても、政府貿易計画からいっても、実績からいっても、三億五千万ドルほどの赤が出てくる。数字を積み重ねると言われたが、数字の積み重ねは実績で積み重ねねばいかぬ。すでに三億五・六千万ドル政府計画からいくと赤が出る。あなたがしりをとんとんにしたのは偶然であって無理にしたのじゃない、こうおっしゃるのだが、政府計画からいくと、くどく言うけれども昨年度は三十二億二千八百万ドル、これが一〇%ふえれば三億ドル。現に、それは去年の話ですが、ことしの一月になってがぜんとして輸入はふえております。去年の一月の輸入は二億一千八百万ドルでありましたが、ことしは三億二千八百万ドルです。それに対しまして輸出は去年は一億四千九百万ドルでありましたが、ことしは一億六千九百万ドルで、伸びは去年の約六〇%しか伸びておりません。しかるに輸入の方はといいますと、輸入の超過した分は去年よりも一四〇%超過している。これは一月です。もちろん季節によって違いますけれども、この数字を見ますと、貿易の国際収支の面においてがく然たるものを私は発見するのです。そこで私は政府が提出された予算案の中に四つの欠点があると思う。欠点が一つ指摘された。こまかいことですが、在外資産の返還で池田君はとうとう——あれは初めからすなおに、いや十億円は計上したのだけれども、それは引揚者に対する一つの政治の真心を計上しただけであって、これから計算しまして財政と引揚者のお気持とを見合って万全の措置を講ずる、とりあえず財政法違反か何か知りませんが、苦しい人の立場を尊重して、これは政治の真心を計上したと答弁されればよかった。理屈を言うて通そうとするから、これは一ぺんとっちめておかなければならぬというのでこらしめられた。だから陳謝文を読まなければならぬ。そこで第二の穴はここにある。そこで私は予算委員会の派手なところでやらずに、あなたと私は年来の友人ですから、静かに心境を聞いてみようと思った。結局数字において穴があった。そこで答弁が困難なら答弁なさらなくてもいいのですが、それならそういう数字のもとにおいて、日本の将来の輸出計画はどうするかということなんです、私の言うのは。国際収支をこの現実に直面してどうバランスしていくか。もうおやめなきい。在庫品が四億、五億とあるからこれで食えるのだというようなことは日本の産業界を押える。それから輸出の問題についても、あなたは二十八億が一千万ドル切れればおれはやめる、と悲壮な決意はごけっこうですけれども、そう悲壮がらずに冷静に善処した方がいいと思う。すると問題は、輸出がどれだけ伸びるか伸びないかということはいろいろ国際関係によって違いますが、現実においては輸入がこれだけ伸びざるを得ない。そうすると政府の国際収支はどう見積っても、輸出予定通り伸びても三億五千万赤字が出る。私は二十九年のあのデフレ恐慌の大きな惨害は、国際収支のアンバランスから来たということを考えてみますと、一体これはどう善処されるか、このことなんです。
  44. 水田三喜男

    水田国務大臣 今御指摘になった数字は、通関ベースの数字を取られたために食い違いが起ったと思うのですが、為替ベースで大体輸出が二十八億ドル、輸入が三十二億ドルで、あとは特需、一般貿易外の収支というものを入れ込んで大体とんとんになる。こういう見通しでございますが、さっき手持ち原材料は最低だと言われたようですが、私どもはそう見ておりません。金融関係者から見た今の日本の手持もというものは、ここらがもう日本として限度だ、これ以上の手持ちを持つということは金融上大きい問題で、金利の負担も非常に大きくなるので、輸入の原材料を手持ちする限度は、大体この辺じゃないかという見方が正しいのじゃないか。そうしますと今後の輸入がことしの一月以降のような調子でいくというようなことはそう考えられませんし、年間を通じた大体の見通しということになりますと、通関ベースで三十八億ドルくらいの輸入、為替ベースで見て三十二億ドル程度輸入というようなところで、これは実際においてある程度その辺でまかなえるのじゃないかというのが私どもの気持なんです。
  45. 西村榮一

    西村(榮)分科員 それはそれとしてまたあとで質問することにしますが、輸出を伸ばすには、日本は物価高によってだんだん打つべき手がなくなっているのじゃないかと思う。二十八億一千万ドルとかなり自信がおありのようでありましたけれども、いろいろな政治上の変化は別といたしまして、数字だけ見ると、日本の物価は、政府の統計によると、生産財において昨年の上昇が一二%、金属関係において二二%、機械、建築材料では一二%、消費財が四・七%で、平均して一一%と計算されておるのですが、特にここで問題になるのは生産財の一二%の上昇です。それから金属の二二%、機械の一二%の上昇です。一体これで昨年度よりも一二%見積られるところの輸出の伸びが期待できるか、これはあなたの方が、そこに優秀な局長連中もおられるから御存じでしょうけれどもアメリカの物価は昨年度は三%しか上っておりません。イギリスの物価も三%、西独、フランスは一%です。世界の平均で一・五%しか生産財は上っていない。しかるに日本は、生産財は去年一二%上っているのです。政府は物価高を抑制するとしばしば声明されておるし、それを党として押し通されているのです。物価はすでに上っている。この物価が上っている現実に直面して、輸出をどう伸ばしていくか。政治的な要素からいえば、スエズ運河の再開があるでしょう。私はこの間申し上げましたように、ヨーロッパ共同市場が完成いたしますならば、あそこでは大体四%の生産コストを引き下げる労働、通貨共通にいたしまして、関税を撤廃して、そこだけ馬力をかけてきている。同時にアメリカも相当の馬力をかけてきている。この問題は別といたしまして、数字に表われている物価によると、全世界平均して一・五%であるが、日本は生産財が一二%上っておる。これを克服しなければ、輸出というものは予定通りは困難じゃないか、今年かりに偶然の機会からそれが可能であっても、真摯なる努力なくしては日本の永久的市場の安定化というものにはならない。当面政府の施策としては、偶然は当てにしないで、このハンディキャップをどう埋めていくかということが経済施策の重点じゃないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 確かに今年かりに惰性で若干輸出が伸びることがあっても、将来、対策としては、これはもう日本輸出についての致命的な欠陥となることははっきりしておりますので、そういう意味からも私どもは、やはりここで設備の近代化とか、産業の合理化とか、それから国内のそういう物価を下げるために、いろいろな道路・港湾・そのほかいわゆる産業基盤というものを、ここで強固にするというこの政策に全力をあげてやらなければいかぬだろう、そうして国際競争力というものをつけることを、国内政治としてやることが必要だと存じますし、その方向へ通産省としてはいろいろの努力をするというので、今度の予算においてもそういう点に今までと相当違っていろいろな費用を計上しておるという状態でございますが、これは当然これから本格的、基本的な輸出対策としてやらなければならぬと思っています。
  47. 西村榮一

    西村(榮)分科員 今生産の合理化というお話がありましたが、私はその問題はいずれ締めくくりのときにして、一応御見解だけを承わっておきたい。ただ生産の合理化という話がありましたけれども、一言申し上げておきたいことは、大産業は企業の合理化は一応峠へ来ております。増資も峠に来ております。あとの残るものは中小企業の近代化です。これに対して政府は投融資はふやされたけれども、近代化政策としては八億円しか見込んでない。この点については政府の施策の大きな欠点というのはどこにあるか。これはあなたを責めるわけではない。私が反省を促したいと思いますことは、輸入をふやして日本の物価は引き下げるということに重点を置いておられるのですが、それでは国際収支のつじつまが合わない。そこで資本主義のもとでも価格対策というものは打ち立てるべきではないか、これは先進各国の資本主義もやっておるのですから、日本がやれないはずはない、こう思いますが、しかし詳しいことはあと回しにして締めくくりのときに申し上げたい。今インフレーションの起きるか起きないかということについてはいろいろ議論があります。そんなにおそるべきではないと池田さんは楽観しておられるし、日本の学界においても賛否両論です。しかしながら私は今インフレーションをおそれるかおそれないかということじやなしに、日本の今の産業水準、産業上の性格というものがどこに来ておるかということを、一つ通産当局としては考えていただきたい。ということは、申すまでもなく、景気が上昇するには三つの段階がある。一つは今までの既存の設備を利用して、在庫品も豊富にあって、そこべ輸出が伸びていって景気がよくなる、これは御承知の通り価格数量景気です。それから第二は、今度は遊んでおった設備も動かして、新らしい設備を拡張しなければならぬ、新しい品物を作るために原材料を輸入しなければならぬ。これは三十一年度の価格数量景気に若干のプラスされた価格景気じゃないか。第三期においてはそれでは足らないから投資が増大していく、投資が増大するから所得が増大する。そうすると今度は消費の方に回っていく。そこで三つの悪循環によってインフレーションというものの要因が吹き出してくる要素を持ってきます。ことしは非常に危険なのは第三期に直面しておる。まだ今からでもおそくはない。私の憂えるのは、この三期に直面した中にあって、インフレーションをどう押えていくかというところの政治が必要じゃないか。これは私があなたにお尋ねしたい、決して私はあなたと討論しようと思うのではない。日本の経済外交問題が今ちょっとつまずいたら、これは大へんなことができるから、何とかしてインフレーションを押えて、通貨の安定をはかって、輸出や伸ばしていかなければならぬ。その輸出の伸びに従って日本の経済を拡大していかなければならぬ。そのためには、非常に用心しなければならぬとともに、経済を調整する意味において非常な弾力性をもって進まなければならぬ。有能な政治こそが今経済政策に必要である。従ってその第三期に直面した日本の産業を、どう扱っていくかということが大切だと思います。
  48. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもうお説の通りだと思います。しかし去年一年に見られた異常な投資需要の旺盛というようなものは、いろいろの角度から見ますと、まだ過剰施設になるような需要ではなかったと大体私ども考えています。あれによって従来の陳腐化したいろいろな施設が近代化し、合理化していくということはまた日本として当然必要なことですが、その段階にぶつかったために去年あれだけの投資需要が出たのだ、従ってこれによって過剰施設が日本にできたというのではなくて、思い切って日本の設備を近代化し、合理化したのだと私どもは思っていますが、この傾向はまだ今年も私どもは続くと思っております。そうすればそれを今の段階で拒むかどうかと申しますと、将来の先ほど言ったような国際競争力というものをここで培養するというためには、この投資需要にはある程度応ずる、そして相当金がかかってもこれをやらせる、そのための必要資材は、ここで日本は相当外貨があるのですから、これを用心するためにそういう資材の輸入をとめるというのではなくて、国内産業の合理化というための必要な資材は、やはり相当勇敢に入れてやるということを今年もやるべきだ、これをやっておくことが将来の日本の国際競争力を培養するもとで、今怠れる時期ではないという考えから、私どもは用心し過ぎた結果、この投資の需要を押えようという考えは今持っていません。そうしますとそれだけ金を使ってやるのに対応して、物資がそれだけ間に合うか間に合わぬかというところに、このインフレの危険性というものが出てくるのだと思いますので、大体そういう需要に見合った物資の計画も作る、そして増産はやりますが、それで足らないものはやはり輸入でやる。今ここで輸入をとめるというようなことになったら、これは産業の隘路ですから、そうすればいろいろな物資の値が上ってくる、そうして国内の物価を上げるということになりますし、国内の物価が上る見通しになれば、今持っている原材料が輸出用に回らなくて、国内用の需要に転化していくという危険性が非常にありますので、これをおそれる意味からも、私どもは今の手持ちの外貨を十分活用して、必要なものは入れるという態度によって、今心配されているような国内のインフレというものの危険性が相当救われるのじゃないか、そういう方針で、用心はいたしますが、今仰せになっている需要に対してはあまり抑制しないで、この際日本産業の大きい革新をやってしまう方がいいのだ、こういう方針で今年の通産行政はやってみたい、こう考えております。
  49. 西村榮一

    西村(榮)分科員 これは理屈ではありませんから聞いていていただきたいのですが、今あなたのおっしゃった手持ち外貨を利用して、原材料の輸入が少しふえてもさしっかえないので、これは思い切ってやった方がいい、こういうお話です。私は、その前提にはやはり国際景気の動向が先が明るくないと、よほどそれに対して確信を持たないと冒険だと思うのです。それはいろいろ議論になりますから別として、そこで私があなたにお伺いしたいのは、今の金融上は金融繁忙と申しますか、少し引き締めぎみと申しますか、これは一体どういう現象から来たのですか。
  50. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の考えでは、輸入が非常に多かったということが今の金融に大きい影響をしているのだと思っております。去年の三月までは日銀のオーバー・ローン、があの通りあったのですが、四月までにあのオーバー・ローンが解消してしまった、この金融緩漫状態が出てきましたので、それから輸入意欲というものが起って、現在のように輸入がどんどん進んで、おそらく四億ドル以上の手持ちがあるだろうということになりますと、これが金融界には相当大きい影響を及ぼしておりますので、この事実を見ないで、金融が締ったから、ここでこれ以上の金の需要というものをとめなければならぬという危険信号を日本銀行が出すとするならば、これは日本銀行が事態の認識を誤っているので、輸入のために金融が詰まっているというものを、日本の産業のためにそれだけは別個に扱う処置をとるというのでしたら、金融の面においてそう危険というものを強調しなくてもいいのであって、この輸入が必要だ、しかもこれだけ手持ちした以上は、これだけ金融に響いてくるのだというところの分析が、少し金融当局に私は足らぬのじゃないかと思っているのですが、一番大きい影響を与えているというのは、やはりこれだけの輸入原材料を日本で持ち込んでいるごとだろうと思っています。
  51. 西村榮一

    西村(榮)分科員 私も大体あなたと同じ見方です。ただ違うのはそれをそのままほっといていいということにはならないのです。御存じの通り昨年一ぱいの貸し出しの増加は、増加額だけで八千六百九十九億円ですから、これは前年度の三倍になっております。これはほとんど設備投資です。そこで私は、先ほどの問題に戻るのですが、かく大きく拡大されたる設備を消化するだけの海外の市場というものが、どう見合っているかというところにおいて、その対策を進めなければならないし、またそれに刺激を与えるということもあるだろうと思いますが、私は昨年の貸し出しが三倍にふえて、ほとんど設備投資であったという、その設備を吸収するだけの市場というものは今日発見できないのです。そこで私はあなたから先ほど来非常に積極的な意見を聞いたのですが、私は金融資本の立場に立って、通貨の安定のみに産業を観察することは誤りだと思うのです。しかしながら通貨の安全性のためにも、私はある程度まで慎重な態度を産業政策がとることも必要だと思う。そこでそういう諸般の事情を観察して、今日とるべき政治の大きな要諦は先ほども申し上げましたように、去年のように景気がよく見通しが間違ったらいいのです、しかし政治はその逆を考えておかなければいかぬのじゃないか、逆のときに一体どうするかということなのです。そこで私はあなたに要点だけをお尋ねするのですが、今輸入が多いから金融が逼迫してくるということ、この傾向はますます増大していくのです。輸入増からくる金融の逼迫というものはますます増大してくる。それから一面残念ながら下半期において、かりに二十八億ドルに輸出が伸びたといたしましても、今の生産設備とは見合わないのです。昨年増大された生産設備と輸入量とはマッチしない。生産設備と輸入量との調和がとれないといたしまするならば、ここに輸出が二十八億ドルにかりに伸びたとしても、それからくる輸入代金で国内の金融逼迫をまかなうだけには調整はとれぬ、こういうことになると下半期は一面金融難からくるデフレ的傾向、一面物価高からくるインフレ的傾向の二つのはさみ撃ちに、日本の経済と国民生活があわねばならぬ危険性を持つのじゃないか、それに対して一体どういうようにして対処するかということが、今日考えておかなければならぬ重要な点ではないかと思うのです。いかがでしょうか。
  52. 水田三喜男

    水田国務大臣 確かにそうだと思います。
  53. 大橋武夫

    大橋主査 それでは栗原君の御質問も相当時間を要するようでございますから、一応午前の会議はこの程度にとどめます。午後は二時半より再開いたしまして、経済企画庁所管に対する審議に入りたいと思います。なお通商産業省所管に対する質疑は一応終了いたしたわけでございますが、残余の質疑につきましては、後日あらためてこれとにいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時三十六分開議
  54. 大橋武夫

    大橋主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算経済企画庁所管について説明を求めます。宇田経済企画庁長官。
  55. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 昭和三十二年度経済企画庁予算について御説明申し上げます。  ただいま議題となっております経済企画庁の予算案について、歳出予算の要求総額は九億四千二百八十三万二千円でありましてこれを前年度の予算額九億五千六百五十八万三千円に比較いたしますと、一千三百七十五万一千円の減額となっております。  次に経費の内訳を申し上げます。  第一に、経済企画庁の項では、要求額は二億四千五百七十三万円でありまして、前年度二億五千五百五十四万二千円に比較いたしますと、九百八十一万二千円の減額となっております。この減額となったおもな理由は、前年度に比較し、国富調査に要する経費が三千六百八十五万一千円減額となったためであります。  この要求経費の内容を御説明申し上げますと、人件費一億七千五十五万五千円と事務費七千五百十七万五千円であります。この事務費は一般庁務の運営経費並びに次に申し上げる内容のものであります。  一、わが国経済に関する長期計画及び年度計画の策定、国際経済協力の推進、基本的経済政策の企画立案並びに経済審議会の運営に要する経費が六百八十二万九千円であります。  二、わが国内外の経済の動きを的確に把握し、また必要な統計指標を作成する等経済動向の調査分析に必要な経費が一千八百十七万五千円であります。この経費には、定期的な月報類、経済白書・国民所得年次報告書等の印刷に要する経費が含まれておるのであります。また、海外諸国における経済事情調査を充実するために、この経費は前年度に比し若干増額計上しております。  三、国富調査については、前年度で調査表の作成は完了いたしましたので、本年度はこれを取りまとめて報告書を作成公表するために要する経費が六百九十三万二千円であります。  四、経済施策を立てますには、将来の景気の動向をできるだけ的確に把握することが必要であります。このため、これに関する指数を作成するほか、企業経営、投資、消費等の動向について科学的な調査を行うこととし、これに必要な経費が一千七十四万五千円であります。  第二に、国土開発調査費の項では、要求額は一千五百九十七万四千円でありまして、前年度二千一百六十七万六千円に比較いたしますと、五百七十万二千円の減額となっております。  この経費は、国土総合開発法・電源開発促進法、特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法、離島振興法等の各法律に基きまして、それぞれ災害の防除と生産力の発展を促進せしめるための諸施策を樹立するために要する経費及び国土総合開発審議会、電源開発調整審議会、特殊土壌地帯対策審議会、離島振興対策審議会の運営に要する経費であります。  なお東北地方については、資源の総合的開発と産業立地の適正化を促進して、その発展をはかるため諸方策を早急に樹立する必要がありますので、このため東北開発審議会を設けますとともに、事務費とあわせ、新たに四百万円を要求しております。  第三に土地調査費の項では、要求額は一億八千一百十二万八千円でありまして、前年度一億七千九百三十六万五千円に比較いたしますと、一百七十六万三千円の増額となっております。その内容を申し上げますと、基準点測量におきましては、四等三角点の新設点数を一千百九十点と予定し、これに要する経費として四千二百二十二万四千円、国土調査法の規定によって、地方公共団体土地改良区等が地籍調査を行いますときの補助金として一億三千万円、土地分類調査と水調査についての委託調査費として五百四十万円となっております。  第四に、国土総合開発事業の調査費の項で五億円を要求いたしております。国土総合開発法に基く特定地域及び調査地域並びに東北地方における開発事業は、各省各庁によってそれぞれ別々に実施されるため、密接な関連のある開発事業の進捗状況に不均衡を来たし、または調査の相互間に重複や不統一を生じて、総合的な効果が発揮せられない場合があります。このような場合に経済企画庁がこれを調整いたしまして、総合開発の効果を上げようとするものであります。  以上で経済企画庁の予算説明を終りますが、なお御質問に応じて詳細御説明を申し上げたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願いいたします。
  56. 大橋武夫

    大橋主査 これより質疑を行います。質疑の通告がありますから順次これを許します。川俣清音君。
  57. 川俣清音

    ○川俣分科員 宇田長官にお尋ねします。三十二年度の国民所得の問題についてお尋ねいたしたいのですが、もちろんこれは分配国民所得です。この中で農業所得として占める割合は、どの程度になっておるというお見込みでございますか、その点をお伺いしたいと思います。
  58. 小出榮一

    ○小出政府委員 私からお答えいたします。ただいまの御質問は三十二年度の経済計画の基礎になっておりまする分配国民所得の中で、農業の所得の構成と申しますか、その割合がどのくらいかというお話でございます。御承知のように分配国民所得の中で動労所得なり営業所得なり個人業主所得なりいろいろございますが、この中で個人業主所得の中の農林水産業、これが総額におきまして一兆二千百億というふうに概算をいたしております。これは農業、林業、水産業合せました農林水産業全部でございまして、その中の農業だけを取り上げて申しますれば、一兆百二十億というふうに一応概算いたしております。
  59. 川俣清音

    ○川俣分科員 それではさらに尋ねます。昨年より上昇しておるという説明がなされたのですが、これらの農業所得もまた上昇するというお見込みでできておりますかどうか、その点お伺いします。
  60. 小出榮一

    ○小出政府委員 三十二年度計画の際に御説明申し上げました分配国民所得なり、農林水産生産水準の御説明の際に、農林水産業全体の生産水準といたしましては、総合指数におきまして〇・四%だけ上昇するというように御説明申し上げました。これは農業、林業、水産業全体を総合いたしました数字でございまして、農業につきましては、御承知のように分配国民所得を計算いたしまする際には、どうしても平年作を一応前提とせざるを得ないわけでございます。従いまして今年度の米の実収高約六千九百万石に対しまして、いわゆる平年作の計画数値といたしましては六千七百万石余というふうに計算されますので、米作に対する収穫の見込み等を初めといたしまして、全体といたしましては、農業の分配国民所得の見込みといたしましては、今年度の実績見込みが約一兆三百億と考えておりますけれども、先ほど申し上げましたように、来年度につきましては一兆百二十億と、農業だけ見ますればやや減少する、こういうふうに計算いたしております。
  61. 川俣清音

    ○川俣分科員 昨日通産大臣にお尋ねをした答弁によりますると、農村の購買力は昨年よりも上昇するのである、こういう答弁があった。特に肥料におきましても、農薬におきましても、農機具におきましても、農村の購買力は伸びる、従って日本の工業生産が伸びるのだ、こういう御説明でございましたが、所得が減少してもなお伸びるというような見解を、企画庁長官は考えておられるのでございますか、この点を一つ長官から御答弁を願います。
  62. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 お答えいたします。米の収入は十一月以降、三十二年度は三十一年度よりずれもあります。その後は本年の作柄によって変ってくると思います。
  63. 川俣清音

    ○川俣分科員 工業生産、たとえば肥料、農機具、農薬等の生産が伸びる計画だということを通産省は説明しておられます。そうすると、あなたの方から言うとこれは架空の伸びだ、こういう説明になるのですか。
  64. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 お答えいたします。鉱工業生産の場合の伸びは、天候等の関係に影響されずに伸びていく指数の根拠があります。それからただいまの米は、平年作の場合とそれから一昨年のような非常な作柄の良好な場合と比較すると、そこに農家の収入の伸びというものが変って参ります。それで三十二年度の農家の収入について、伸びの率の一番影響するのは米の作柄と自分たちは見ております。従って三十二年度の農家の収入は、今年の天候によって非常に伸びが変るもの、こういうふうに思っております。
  65. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうするとあなたの説明によると、この分配国民所得の中の農業所得というものは天候に非常に支配されるものであるから、確定的な分配国民所得ということは言いかねる、こう一応見てよろしい、こういうことになりますか。それが一点。もう一つは、通産大臣は化学工業の大宗をなすところの肥料、これなども三十年、三十一年の伸びから見て、三十二年も同様な伸びを見せるものであるということで計画をしておる。あるいは農薬等は農民所得の割合よりむしろ天候に支配されるものであります。従いましてこれらの農薬の伸びなどもすべて政府の施策でなくて天候による、こういうことになってくる。肥料だけは農民所得に非常に関係してくるものですので、所得が平年作だという見込みであっても、なお肥料は伸びるのだという計算の基礎はどこから出てくるか。通産大臣は生産も伸びるし、従って肥料購買力が増してきて、肥料の生産の伸びを示してくる、こういう説明であったわけです。あるいは農機具も同様であります。秋の農機具の大宗をなすところの脱穀機にいたしましても、すべての農機具は米の生産と非常に密接不可分なものが多いわけです。ことに大農機具になりますと、生産と非常に関連してくるものであります。これらの伸びもいずれも不確定要素の上に立った伸びだ、こういうふうに見てよろしいのかどうか、もし見てならないあなたの方の基礎があるなら、その基礎をお示し願いたい。
  66. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 この私の方の数字は、大体平年作を基準として、そうして出してある数字であります。
  67. 川俣清音

    ○川俣分科員 いや、平年作ということで、農民所得が伸びなければ、購買力は伸びないと見るべきじゃないか、こう聞いているのです。
  68. 小出榮一

    ○小出政府委員 ちょっと補足してお答えいたします。分配国民所得と農業の生産の関係に関連いたしまして、生産の水準といたしましては、先ほどお答えいたしましたように、やはり計画数値としては平年作を前提とせざるを得ない。従いまして平年作というのは、先ほどお答え申し上げましたように、約六千七百万石余りということになるのであります。実際の農家の所得というものは、結局今年度の——昨年度もそうでございましたが、今年度も相当の豊作であったという、そうい一うような収入のずれが来年度に対して相当入ってくるわけでございまして、それらを考え合せまして、分配国民所得を計算しておるわけでございます。そこで来年度の農家の農業生産に必要な肥料でありますとかあるいは農業用の薬品というような、農家が自分の生産に用いまする各種の資材につきましての見積りでございまするが、これはそれぞれの各農家の生産計画なり、あるいは政府の食糧の増産施策というものによって、やはり計画としては相当ふえるというふうに考えます。従いまして農家のそれらの生産計画なりあるいは政府の増産施策というものを一応ベースにいたしまして、農業者の生産に必要な肥料なり農薬なりの生産資材の需要量というものを想定いたしまして、それに見合いまする農業用の薬品なり肥料の生産量というものを、鉱工業生産の面におきましてその内訳として計算した、こういうふうな関係になっております。しかしながら、実際の生産されまする農作物の収穫高はどうかということになりますると、それは申すまでもなく、天候によって相当支配される面がある、こういうふうな趣旨考えておるのであります。
  69. 川俣清音

    ○川俣分科員 あなたはほんとうにそんなことを考えて今答弁されたのですか。答弁だけを考えてやられたのですか。平年作を見る場合の基準はこれは了とします。過去の実績等から割り出して平年作というものを割り出すのですから、これは異論のないところです。六千七百万石を適当とするかどうかということは別問題として、平年作と一応の基礎を置くことは異論がない。しかし政府の施策がこれに相待ってようやく平年作だ、こういう建前であろうと思うのです。もしも施策が十分であれば、これを上回るならば上回るという計算ができなければならない。それからもう一つは、これは三十一年度よりも三十二年度の耕地面積、作付面積がふえるかふえないかという問題もございます。一応大体前年の通り、こう見て平年作をきめるというそのデーターの出し方については、あえて異論は言わない。問題は国民所得の中で占める農業所得と並びに農家の消費水準が上るという見方をとっておられるのかどうかということなんです。この農村の購買力が上昇すると見るか見ないかによって、日本の工業力の上昇率も考えていかなければならないのではないか、こういうことなんです。工業生産は上っても購買力はない、こういう見方はおかしいではないか、こういうことなんです。これは春植えるものもありましょうし、秋の植付もありましょうし、その他果樹、園芸等全般にわたりますと、やはり農業所得というものが一つの基準にならなければ、一定の基準を見出さなければ、購買力が上るか上らないかということは、人為的に判断できないと思う。そこで農村の消費水準が上るんだ、購買力が上昇するんだ、こういう見方をとって工業生産の上昇率を示しておられるわけです。通産省は明らかに農業消費水準は上るし、購買力は上昇するという基礎の上に立っての上昇カーブを描いておられる。あなたの方は上らないということでおるならば、工業生産が上昇するということが言えないはずじゃないか、長官どうなんです。
  70. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 農家の生産計画に対する政府の増産施策を見ておりますと、それによってふえるという見込みをもって、農薬とかあるいは農機具等については、そういうふうな農家の例年の技術的な水準の向上等もあって、その他の施策が効果を表わしていくもの、そしてそれに見合って農薬あるいは農機具等の購買力は増すであろう・こういうふうな考え方です。(「所得がないのに購買力が上るはずはない」と呼ぶ者あり)所得の増というのは、先ほども政府委員から申し上げましたように、本年度の収入の三十二年度への繰り越しももちろんある、こういうふうに考えております。
  71. 川俣清音

    ○川俣分科員 三十二年度で世の中が終るのであれば、繰り越しがあるということが言えるかもしらぬ。三十二年度の繰り越しは三十三年度へ繰り越されるのです。農業所得というものは大体そういうことです。従って三十一年度だけの繰り越しを見て、そして三十二年度は三十三年度への繰り越しがないのだという説明は、ほんとう説明されているのですかと私は聞いたのです。こんなことを聞く必要はないけれども、三十一年度からの繰り越しは、三十二年度もまた三十三年度に繰り越されると思うのです。三十二年の繰り越しと三十一年の繰り越しの間に非常に大きな相違があれば、これは別問題です。大体平年作と見るからには、三十一年度の豊作といえども、そう大きなものじゃないのですから、三十一年度の繰り越しは非常に大きくて、三十二年度から三十三年度の繰り越しは、あなたの言う通り大体とんとんと見るのが普通の見方なんですよ。非常に物価に大きな変動があれば、これは別問題ですが、なければ大体とんとんと見るのが普通の見方なんです。だからそんな三十一年度の繰り越しがありますなんていうのは、三十二年度の繰り越しがやはり三十三年度に行くのですから、これは問題にならないですよ。  そこで問題は、もう少しわかりやすく言うならば、通産大臣は生産量が上らなくても、価格が上昇するから購買力は落ちないであろう、こういう説明も一応している。そこで問題はどうなるかというと、一体価格政策であれば、これは政府のやり得ることなんです。ところが天候に対してはいかに石橋内閣といえども、天候を支配されるだけの力は持っていない。農業所得というものは、農村の購買力というものは、天候に非常に大きく支配される。今日ではある程度天候を回復する力を持っておるといえども、天候に非常に大きく支配される。そういう天候に大きく支配される農業所得であるし、しかも農村人口というのは非常に大きいのである。この購買力というものは、日本の工業生産の上昇の上に非常に大きな影響をもたらすものではないか、こう聞いておるのですが、その点だけです。
  72. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 農家の所得が日本国内需要の非常に大きな半面を持っておることは全然おっしゃる通りであります。日本国内向けの農業関係の諸工業というものは、特に農村の作柄の状況によってその購買力が非常に影響を受ける、それが工業に及ぼす影響というものは大きい、これは全然あなたのお説の通りであります。
  73. 川俣清音

    ○川俣分科員 そういたしますと、そういう危険をはらんだ計画の上にあなた方が立っているということをあなた方はお認めになっている。肥料のごときは、作柄が悪いとその購買力がすぐ落ちてくる。夏ごろになりますと、秋肥の購買力がぐんと落ちてくることは御承知の通りなんです。在庫がふえて参りますと生産を落して参ります。従って年間の上昇率を少し高く見過ぎてはいませんか、こういうことなんです。特に化学工業の大宗をなすものは肥料工業なんです。今日では肥料生産をやめて他に生産を変更するだけの合理化がまだ行き届いておりません。これは転換ができればいいが、転換ができない今日の化学工業の中において、需要がとまりますならば生産がとまることは明らかです。  そこで、肥料は昨年よりも上昇するということは、あるいは農機具の購買力の上昇に伴って生産が上昇するということは、平年作と見込んだならば、天候に支配されて、平年作をとらなくても、それだけの農民所得を与えるような施策ができておるというのなら、あなたの説明は成り立つのです。全く天候の支配するところだというのならば、この見積りは架空の見積りだということになる。工業生産も架空の見積りだということになる。お天気次第の見積りだということになる。工業の上昇率もお天気次第だ。生産が伸びなかった場合においては、単価を上げて平年作と同じような所得を取らせる方策があるのだ、従って昨年と同じくらいな購買力は出ます、こういう説明ならばわかるのです。天候に支配されます、それだったらこの基礎があいまいでないか、こういうことになるんです。どっちなんです。どっちでもいいからはっきり返事をして下さい。
  74. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいまの肥料の面におきましては、日本の農家の作柄を対象として製造計画を立てておるわけではない、特に東南アジアないし中共等の昨年の輸出の状況を見てみても、肥料の生産増加の分は国内でのみまかなうという数字ではないと見ております。たとえば肥料の面をとって、生産増加の面をどういうふうに考えるのだということですと、これはただいま申し上げたようなことになると思います。
  75. 川俣清音

    ○川俣分科員 宇田長官、大体日本国内の肥料の需要高、外国に行く肥料はどのくらいか、国内の何パーセントであるかということを御存じであれば、そういうことは出てこない。もちろんそれも重要な要素であることは認めますけれども、窒素分にして二百四十万トンのうち、外国へ出るものは三、四十万トン、多いときで五十万トンなんです。五十万トン相手に日本の肥料工業が成り立ってはいません。もしも日本の購買力が落ちまして五十万トン作るために、現在の設備をもってするならば、今の外国行きの肥料は、三倍か四倍にしなければ生産が継続できない。それは明らかな事実です。私はそんなことをあなたに説明する要はないのですよ。そこで聞いている基礎は、平年作と見込んでおるのだから、もしも平年作とれなければ、それに見合うような政府の施策があるのだ、従って購買力は平年作と同じような購買力が出てくるのだ、こう言われるのかどうかと聞いている。全く天候によるのだというならば、これは別問題です。
  76. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 農家の所得は、農業所得によるものが、われわれは約七〇%という計算を持っております。そしてそれ以外の所得が約三〇%、こういうふうに大体計算の基礎を踏んでおります。そうして支出の面におきましても、生産資材に対する消費と、家計に関する消費と貯蓄、こういうふうに分けています。それで三十一年度は、この中で貯蓄傾向は昨年は非常に増しております。従ってそういうものが新しい農業所得外の三〇%も考え、そして手持ちの預金残等も考え合せて、必ずしもこれがあなたのおっしやるように消費が非常に悪化するとは考えられない、こういう立場に立っております。
  77. 川俣清音

    ○川俣分科員 ちょっと専門でないところへ来ると、だんだん答弁が苦しくなるようですから、別に転換いたします。  次に国土開発についてお尋ねいたしたいと思います。国土開発の基本をどこに置いておられるかということが第一の質問であります。  第二は、今日の電源開発が流水ダム、貯水ダム等の傾向の中に、流水ダムをだんだん避けつつありますが、何ゆえに一体避けなければならないというふうにお考えになっておるのか、この点二つをあわせてお尋ねいたします。
  78. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 第一の御質問に対しては、資源の総合開発を目的とするというのが、われわれの目的の重要な点であります。  第二の御質問の点は、やはりピークに対する調節は、貯水池をもってピークをアジャストするのがよろしい、そういう目的をもって、そういうダム方式を推進しております。
  79. 川俣清音

    ○川俣分科員 どういうことを考えておっしゃったのか、わからないのですが、国土開発は資源開発だということは、それはその通りですが、一体どういう資源を開発されようとしておるのかということなんです。国土開発は資源開発だといったって、どこに重点を置いておられるのかということを聞いておるのです。  第二の問題は、これは流水をとめてやるのも貯水するのです。川をせきとめて貯水してやるのを流水ダムと普通にいうし、それから普通山間部の水を集めてやるのを貯水ダムといわれておるのです。この上流の川をせきとめてやるのをだんだん避けてこられておるのはどういう理由か、こう聞いておるのです。
  80. 植田俊雄

    ○植田政府委員 国土総合開発は、一言にして申しますれば資源の総合開発でございますが、資源と申しましても、第一次産業の資源になります農林水産関係もございますし、鉱工業の方も、これも資源はやはり土地から出るものでございますので、鉱工業の資源もございます。両方合せまして、しかもどれに特に重点を置くという意味ではございませんで、総合的に開発して参るということを心がけているわけであります。  なお貯水池ダムの方が最近重要視されまして、水路式発電がとかく軽視される傾向がございますが、これは第一の問題といたしまして、水路式の発電は自然流量に影響されるものが多いわけでありまして、大きな発電所を設けましても、その効率が豊水量に引き当てたものとしますれば、渇水量には非常に効果が薄いことにもなります。そういう意味から申しまして、貯水池にいたしました方が、その流域に降ります雨をできるだけ多く活用できるということに相なるわけでありますので・最近は特に先ほど大臣からお答え申し上げましたピークをよけいとる、こういう意味から申しましても貯水池が多いわけであります。しかしながらただいま川俣委員の御意見にもあるかと存ずるわけでございますが、電源の地点は相当制約せられておりますので、キロワットをかせぐというばかりでなく、場合によってはキロワット・アワーを多くとるために、水路式の発電も貯水池のダムとあわせて当然考究さるべきものと考えている次第でございます。
  81. 川俣清音

    ○川俣分科員 どうも答弁になっていないのです。国土開発は総合開発である、もちろんそうなんです。しかし今国の不足な財政の中において一体重点をどこに置いてやるのか、全部一緒にできるならあなたの説明でいいんです。不足な金を有効に使おうというからには、何かの重点がなければならぬはずじゃないか。三十二年度で全部の国土開発をやられるならば、あなたの御説明で十分です。そうじゃないでしょう。そこでどういうふうに重点を置いてやられようとしているか、こうお尋ねをしている。  第二の問題は、佐久間ダムは、あれは何ですか。あれは流水ダムでしょう。あなたは水路式といいながら、川をせきとめてやるダムの作り方と、川に至る前の貯水ダム、普通はこう二つにわけている。私の聞いているところとあなた方の見解と違うでありましょうが、いずれも二つに問題があるのです。おのおの特長と欠点とを持っている。そこでそれを明らかにしたいためにお尋ねしておるわけです。
  82. 植田俊雄

    ○植田政府委員 国の開発の方針によりまして総合開発の予算のつけ方等も変ってくるわけでございまして、わが国といたしましては、どの産業にだけ重点を置いて現在の開発計画を進めるという時期ではないと思うのでございまして、総合的にあらゆる分野にわたって、予算の許す範囲におきまして開発を進めて参るべきものと考えております。ただこの開発に当りまして、やはり地方の特性がございまして、どういった地方におきましては鉱工業を中心とする、また地方によりましてはそういった開発の見通しが画然といたします前におきましては第一次産業を中心とする、こういうふうに地域的にも若干のウエードの差が出てくるのじゃないかと考えるわけでございます。  第二の点は、私の先ほどお答え申し上げましたことが、あるいは十分御理解願えなかったかと存ずるのでございますが、私どもといたしましては、佐久間ダムのようなものは貯水池ダムと心得ておりまして、これもどこからを川にとるかという違いでございまするけれども、その点ただいますぐに確実なお答えができませんので、また御質問がございますれば調べましてお答え申し上げます。
  83. 川俣清音

    ○川俣分科員 前段の総合開発につきましては、土地改良事業あるいは干拓事業等を考えましても、すでに政府が着手してからまだ未完成のものがたくさんあるわけです。干拓にしては、なお残された既設のもので十八年くらいを要するだろう、灌漑排水にいたしましても十三年を要するというようなものが非常に多いわけです。地方的にみな食い荒しているというのが今非難の的になっておる。そこで総合開発という名前を打ち出しておりながら、今日ではみな食い荒しになっておるのです。三十二年度の予算で全部やれるなら問題はない。あれもやります、これもやりますと経済効果の比較的上らないものもやらなければならないことは、日本の国土のような狭いところでは当然です。けれども、上らないなら上らないなりに、一般経費でもってこれはやるのだ、上らなくてもやるのだ、これならまた別ですよ。あるところでは経済効果が上らないからやらない、あるところは上らなくてもやる、あるところは上ってもやらない、こういうようなことで方針がないのじゃないか、こうお聞きしておる。だから何を重点にあなた方は計画をされようとしておるのか。一体計画自体がないのではないか。あるならば企画庁としては、事務当局としてはこれこれが最優先してやるべきではないかという案がなければならぬはずだ。これを政治家がいろいろと引きずり回して、五位が一位に上ることもあり得ると思います。現在あるようですから、あり得ると思いますが、しかしながら事務当局としては一つの案がなけばならぬじゃないか。だから何を重点にしておやりになろうとしておるか、案があるのかないのか、案がなければないと、かぶとを脱がれれば、あえてこれ以上は聞かないわけです。ただ自然開発、どこもみな自然開発だ、どこもみな国土総合開発だと言うが、何かしら企画庁としては、こことここが重点である、これだけは向う十年間に達成したい、二十年間の間にはこことここだけはやりたいという案があるのではないか、あればお示し願いたい。
  84. 植田俊雄

    ○植田政府委員 最近公共事業が、予算が分散せられて総花的に施行せられるというような非難が各方面にあることも承知いたしております。御承知の通りこの公共事業の実施主体はそれぞれの所管の官庁でございまして、川俣委員も御存じでございましょうが、おそらくここに所管の官庁の者を連れて参りまして、お前の方の仕事は総花になっているかということをお尋ねになりましたら、おそらく各省は総花的にやってないというような答弁をいたすだろうと思うのでございます。この辺各官庁とも総花にならないようにいろいろ工夫はいたしておることと存じますが、間々効率の上げ方のおくれておるもののあることも私ども承知いたしております。ただ現在の企画庁の開発部で持っております権限といたしましては、そういった事業の個所づけを一々統制する機能を持っておらないわけでございます。現在は、先ほど御説明申し上げました調整費によりまして、このアンバランスによりまして事業効率が落ちるものを若干でも防いでいっているという程度にとどまっておるわけでございます。
  85. 川俣清音

    ○川俣分科員 あなたのところは、やはり総合企画をするところです。従って国民所得がどうだとか、貿易がどうだとか、工業の伸びがどうだとかというような一定の目安をつけておられるわけです。そういう観点から、総合開発についても案がなければならぬはずです。実施官庁はいろいろ地元との関係や政界との関係があって、曲ることも、現に当該官庁が認めておる。それはあり得る。しかし企画庁が、宇田長官が出たから高知県は多くしなければならぬということはないはずだと思います。(笑声)実施官庁ではないのだから、企画官庁なのだから、そこでそれらの実施官庁よりも超然とした案がなければならぬはずではないかと私は聞いておる。そういう企画を持たないで、一体国民所得がどうなるの、工業生産が上昇するの、しないの、あるいは貿易が伸びるの、伸びないのといったところで、今のままだと実施官庁が持っておるデータを、ただ集めてきて説明するだけだ。方針がないということになるが、そういうことでおやりになるつもりなのか、それとも一つの企画を立てたものを忠実に実行するかどうかは別にして、案がある、こういうことなのかどうかということを聞いておる。
  86. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 経済企画庁としては、もちろん計画を持たなければならぬはずであります。ただ今までの自立六カ年計画といいますか、それによって得た計画は、大体ただいまの国情には合わないということで、実をいうと全部改訂を計画いたしておりますす。従って国土計画等についても、実際はその作業は八月でないと終らないという内容である。それで各官庁の中で、東北開発とか、あるいは十七地区のそれぞれの地方の開発計画とか、あるいは道路計画とか、いろいろありますが、それについての的確な数字と企画は、実は八、九月ごろでないと、この経済企画庁の作業が終らないという形になっております。
  87. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうしますと、企画庁というのは、今のところ計画を持っていないから、自分の計画に基いた工業上昇率でもなければ、国民の購買七あるいは国民の所得もこれは計画さわたものは全くなくて、無計画のものを、過去の実績をとって将来を査定した、まことに内容のないものだ、こういうふうに理解すれば、あえて質問する必要がなくなってくる。それなら質問の要はない。こういう計画に基いて農林水産はここまで上昇をさせる計画があるのだ、あるいは総合開発についてはどのくらいの計画を持つておるから、どのくらいの上昇率だ、工業生産はどのくらいの計画を持って上昇させるのだ、これならわかるけれども計画は八月でなければできませんというならば、これはもう予算の基礎になつておりますすべてのデータは、これは過去のものを想定して一応腰だめだ、こういうふうに理解すれば、あえて質問の要がなくなりますから、私は、その点の質問はこれでやめておきます。  次に電源開発の問題ですが、これは昨日も通産大臣に聞いたのですけれども、なお宇田長官に聞いておきたい。現在までにできております電源開発、水力発電の電源地におけるダムの効率というものは非常に低下しておることは御存じだと思う。すでに七カ所くらいは全然効率が低下しておるので使用いたしておらないところがあるわけなんです。これらもしかしすでに膨大な資本を投ぜられておりますためにいまだ償却が終っておりません。そのためこれらがコストの中に重要な要素として入っておりますことは企画庁で十分お認めのところであろうと思います。そうして参りますると、こういう需要者が負担すべからざるものと申しますか、企画のあやまちと申しますか、設計のずさんな結果起ってきたものまでもコストの中へ入れて、消費者に負担させなければならないとお考えになっておりますかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  88. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 ただいまの御質問の点、具体的な地点についてどういう地点を取り上げておいでになるかちょっとわかりませんが、地点によりましてはいろいろ予期しない費用がかかるような例が二、三出ておりますことは確かでございます。やはり水力の工事の場合には自然が相手でございまして、ある場合などでも川を掘ってみて初めて地盤に相当な欠陥があるということがわかるというような点がありまして、予想よりも経費がかさむということ、しかしこれを全部コストに入れなければ、またそれの経費の負担がどこから出るかというようなことで、ある程度この水力開発の場合には見通しが幾分狂うということは、電源開発の性質上やむを得ないのではないかと存じます。
  89. 川俣清音

    ○川俣分科員 やむを得ないとあなた方が認定できるものとできないものとがある。一つの例を言うと、木曽の上流にあります濁川のところにあります発電所、あれはおそらく停止しているでしょう、今移しておりますでしょう。これはたしか戦後できたんですから七年ぐらいより使ってない。あの濁川の土砂の流出の激しいところべ持っていって貯水池ダムを作りましても、堆積して埋まることは明瞭ですよ。土砂どめも何にもしないで、ダムが土砂どめの効果をなしておるだけですから堆積して埋まることは明瞭なんです。その欠陥をも消費者が負わなければならないというのは、コスト主義をとるとは言いながらおかしいじゃないか、こう聞いておるのです。それよりも問題はだれの一体これは責任なんです。国が責任を負って水源地を培養するのが本来なのか、あるいは計画をする電源会社がかかることの起きないように予防することが責務なのか、どっちか、これを宇田さんにお聞きしたい。
  90. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 それはこの事業主体の責任になるのが本分じゃないかと思います。ただその地区々々によって、必ずしもこれは総括して申し上げるわけにいかないとも思いますけれども……。
  91. 川俣清音

    ○川俣分科員 電源会社が責任だということで、その責任を会社の重役なりが負うならいいです。会社の責任だからというて、コストに盛られて消費者が負担しなければならないということになったらこれは大へんな話です。そこで通産大臣はそれは国がやるべきだ、こういう説明なんですね。当然水源地は国が公共事業費をつぎ込んで培養してやるべきだ、こういうのですが、宇田さん、どっちだと思いますか。
  92. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 水源涵養のような場合には、大体普通は多目的ダムで農業の関係、治水の関係あるいは電気の関係で費用を振り分けて分担しておりますので、そのうちの水源涵養分は大体国の受け持つ分になるのじゃないかと思いますが、これも場所によっていろいろでございまして、電力会社の開発した地点が、たまたま電力を目的として開発しておりますけれども、同時に水源涵養に役立つというような場合もございます。この場合には費用と責任は一応電力会社が負ったような形になっていると思います。
  93. 川俣清音

    ○川俣分科員 それならばこれは通産省でないから、実施官庁でないから。しかしいやしくも計画をする場合には責任はどっちなんだというようなことを考えて企画を立てなければならないと思う。責任の所在が明らかでない。ただ責任を負わされるものは一般消費者なんです。需用者なんです。これでは非常に無責任だと思う。せっかく国の多大な経費をかけて作ったものが、有効に働かないものを作らしたということは政府の責任であることはもちろんでありますが、その責任を消費者に負わせねばならないということは無責任だと思う。どこか責任を明らかにしておかなければならないと思う。水源地を培養するというのは、これは国が進んでやらなければならぬ。ところが今日の治山治水というものは必ずしも他の公共事業のように、電源会社に優先的に水源地を培養さしてはおらない。公共のためということと電源水源ともにある場合ももちろんあります。別々の場合も多い。そうするとこうした水源の涵養と申しますか、水源地の培養は一体国がやるのか、電源会社がやるのか。自分の事業の基本であります水源地を会社がやるべきなのか、あるいは国がやるべきなのか、明確にしておかないといけないと思うのです。そこで将来これをどうされようという立場ですか。
  94. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 それはいろいろの場合があって、必ずしも一元でこうするということはなかなかできないのじゃないかと思います。たとえば水の取り方によって、それが水力電気に多分に持っていかれる場合、あるいは雨量の分量によって、むしろ砂防あるいは下流地方の農家に対する目的ダムの性格をたくさんに帯びる場合、いろいろの場合によって必ずしも一元にいかぬのじゃないかと思います。最近国土開発の中において水の分配の計画だけを見てみましても、全然今まで送電することのできなかった地区に新しい発電所ができて、その水は、ほとんど下流地方に、関係のない方向に流れる関係で、それによって起る障害というものは、国よりもむしろ発電をする会社自体の大部分の責任じゃないかと思われる点もあります。従って事件々々によって必ずしも一がいにいかないのじゃないか。しかし包括的に見て消費者大衆にかけるべきものじゃない、むしろ政府の責任において大部分は処理すべきものじゃないか、こういうふうに考えます。
  95. 川俣清音

    ○川俣分科員 まだ要をつかんでおられないのですが、大体多目的ダムのようなものは、他の公共のために優先して治山治水が講ぜられておる、予算の裏づけもなされておるというのが多いようです。しかし単なる電源開発と申しましても電源ばかりでない、電源が主であるような場合は、その上流地帯における砂防並びに治山対策は非常におくれていることも事実で明らかです。そこで私はお尋ねしておる。これは会社が負う責任だといたしまするならば、今あなたのおっしやるように、これは消費者へ転稼すべきじやない。ところが通産省でも、あなた方でも、電力コストを計算する場合においては、これらは投資としていつもコストの中に入れておられます。私どもは除くべきだというのに対して、あなた方は入れておられる。今宇田さんは、それは当然会社が負担すべきだというならば、また消費者にかけるべきでないというならば、将来のコスト計算から除くという御意思であるというふうに理解しまして、私の質問はその点はやめておきます。私ども多年言うておってもなかなか実行できなかった。どうしてもこれはコストに入れてしまうおそれがある。入れるべきでないという長官からの言明ですから、これはことに東北の電力を値上げしょうというときに、これをコストから除くということになりますと、通産省の値上げがとまらなければならぬ要素を含んでおりますから、非常にいい説をお聞きしたことにいたしまして、これ以上は聞かないことにいたします。
  96. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 今お話の点はいろいろのケースがございますので、個々のケースについて当るべき問題だと思いますから、その点ちょっと御了解を得たいと思います。
  97. 川俣清音

    ○川俣分科員 私四十七カ所のケース全部持っております。そこであなたと議論したくはない。新しい佐久間ダムでもすでに三メートルぐらい堆積があるということになっておる。その堆積が三メートルぐらいで下が平坦になってちょうどいい工合になったかどうかということは技術的にわかりませんが、すでに三メートル程度の堆積が出ているわけであります。これはそれ以上進行して参りますと、効用率というものはぐんと下ってくるわけです。これはコストにも非常に影響してくる問題です。東北ではすでに山が荒れておりますために、三六%よりダム効率のないところもあるわけです。これは投資量に対してやはり償却していく、資本と見ていくでしょう、そう見ると見ないではコストがだいぶ違って参ります。それよりも有効でない部分は会社の負担だ、有効の分だけが需用者が負担するということになりますと、コストがだいぶ違ってくるわけです。一つ一つ違うから、一つ一つ計算してけっこうです。全部計算していただければ、今まで全部をコストに入れておったのをコストから除くことになりますと、有効ダムの部分だけをコストに入れるということになりますから、だいぶ違って参りますことが明らかです。個々についてでけっこうです。個々についてコストに入れないということでありますから、非常にけっこうなことですから、将来東北電力の値上げの問題のときにはこれを引用することを御了承願って、次の質問に移りたいと思います。
  98. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 それは所管が通産省でありますから、われわれは国務大臣としての配慮は当然いたしますけれども、ただいまここで委員のおっしゃるような方向にこれを承認するというような立場の者でもないし、またそういうことをおっしゃっても、その点だけは私はお約束いたしかねる、そう申し上げておきます。
  99. 川俣清音

    ○川俣分科員 それはあなたが言明を取り消されるわけじゃないんでしょう。取り消されるわけじゃないんだから、少くとも宇田大臣考え方はこうだったということだけはいいんでしょう。今さらここで取り消すのはみっともないです。その程度にしておきましよう。
  100. 大橋武夫

  101. 永井勝次郎

    永井分科員 簡単な質問ですから、二、三お聞きしておきたいと思います。  予算審議に当りまして、国民の総所得が幾らあるか、その分配がどうなっておるか、それからいろいろな経済指数や経済の伸びや貿易や、こういうようないろいろな統計の資料が、この予算の適否なりあるいはこれが運用されていく上において、どういう見通しを持つかという基礎になってくるのでありますが、そういうような論議がずっと続けられておるのですが、一体企画庁では、それほど権威ある資料の提出者として、自信を持ってこういう資料をお出しになっておるのかどうか、そしてまたその資料が、そういう基礎になるようなシステムと基礎を持って、純粋に、いろいろなものに影響されないで統計は統計として正確なものを出すというような権威のある数字なのかどうかということを、一つ確かめておきたいと思います。
  102. 小出榮一

    ○小出政府委員 お答えいたします。経済企画庁の経済計画と予算との関連その他につきましての御質問でございますが、予算委員会におきましても御説明申し上げましたように、年度別の経済計画を作成いたしますに当りましては、まず生産、貿易、物価あるいは国際収支、雇用という各種の指標につきまして、それぞれの所管官庁、つまり生産でありますれば通産省あるいは農林省、貿易につきましては通産省、大蔵省その他の国際収支に関連する各官庁、雇用問題につきましては労働省というふうに、それぞれ各官庁から具体的に精密なる資料の提供を求めまして、昨年来関係各省の間に累次にわたりまして審議を重ねました。特に大蔵省とは密接なる連絡を常時保ちまして作成しておるものでございます。従いまして、結局最初の各省から出て参ります基礎的なデータなり指数というものが基礎になっておりまして、そこに一番正確を期さなければならぬ、その上に積み上げられたものである、こういうことでございます。従いまして予算編成との関連におきまして経済計画の持っております意味は、まず予算を作成いたします場合の前提条件となります内外の経済情勢を分析するに必要な資料、これをこの経済計画において提供するということが一つ意味でございます。また同時に予算において盛られております各種の具体的施策、この具体的施策を実行いたしました結果の来年度の経済のそれぞれの指標、どういうふうな姿になるであろうかということを一応見通しましたものが、主要経済指標に現われております総合的な指標でございます。従いまして、ある意味においては予算の前提でもあり、また予算を実施いたしました場合の結果でもある、こういうものが三十二年度の経済計画の性格でございます。  なおこの際、先ほど川俣先生から長期計画との関連についての御質問がございましたので、あわせてお答えをしておきたいと思いまするが、先ほど大臣からお答えになりましたように、現在長期計画の改訂作業の準備に入っておりまして、これは大臣からお話のありましたように今年の八月ごろになりませんと、大体の全貌はわからないと思います。しかしながら三十二年度の経済計画は時間的の関係もありまして、それに当然先行して作られたわけでございますが、この長期計画との関連におきましては、先般来大臣からお話がございましたように、国民経済の成長率、この現在の長期計画におきましての成長率がやや低いということから、大体七ないし八%ぐらいを目安にして勘案するということが一つと、それから長期計画の目標は当然完全雇用なりあるいは国民生活水準の向上という点にあることは、もうどういう計画でありましても変らないということを頭に置きまして、そういうような長期計画の目標のもとにとりあえず三十二年度の経済計画を作った、こういうふうな関係になっております。
  103. 永井勝次郎

    永井分科員 こういう統計はどういうふうにしてできてきたかという生まれ方の説明としては、それは了承するわけです。しかしこの数字を基礎にしているんなものの企画を立てていくのだということになると、この数字が果して適当かどうか、信憑性のある数字かどうかということについてはいろいろ疑義があるわけです。たとえば各省からいろんな統計を集めてきて、企画庁はただそれを計算してこうなりますと、割り算をしたり足し算をしたり引き算をして、算術の計算は間違いありません、こういう数字を出してくるのはけっこうでありますが、それがいろんな担税力となり国民の総所得の案となり、あるいは貿易の数字となるというようなことで、そういう数字を基礎にしてこれはこうなんだということになると、私はいろいろ問題があると思う。なぜ問題があるかといえば、企画庁は保守党であれ社会党であれ、まあ社会党になればこういうずさんな数字や計画は立てないのですが、保守党でも一応企画という名前のもとにこうやっている。そういう重要な基礎になる企画庁の予算の総計が一体どうかといえば十億に足りない予算です。そして数字をみんなから集めてくるというだけで、たとえば今年の予算にしても、石橋内閣が生まれる前、鳩山内閣のもとにおける一萬田大蔵大臣のときには、来年度予算の作業に当りましては大体予算規模というものを一兆七百億程度に押えて、そしてそれは負担力や国民の総所得やそういうところからいろいろ割り出して、そしてこのくらいが適当だというものを出した。石橋内閣になったら、とたんにぐるっとひっくり返って、総所得も何もいろんな数字か狂ってくる。各省にいたしましても、今年は予算をもう少しこういう方面にふやさなければならぬということになれば、そういう数字を出してくるでしょうし、そういう数字を基礎にして集計して計算してこうだといってやるということになれば、間違いを土台にしていろんなことが大きく間違ってくる、こういう原因になると思うのです。そこで一旦そういう数字がまとまったらこれは動かざる数字である、統計である、こういうことでおやりになるのか、予算の規模をこれだけふやすんだが、これに合せてうまく作業をやってくれということで何回も作業をやり直すのか。毎年同じことですが、そういうことをしょっちゅう予算にあわせて、そのときどきの情勢にあわせて数字を動かしているというようなことがないのかどうか。それならば企画庁なんというものはあってもなくても、かえって信憑性のあるような権威のあるような顔をしてこういうことをやることは間違いだと思いますが、そういう点はどうなんですか。正直なところをはっきりとお示し願いたい。
  104. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 申し上げます。今までの自立六カ年計画、それから最近の五カ年計画は、国民経済の伸びを雇用の面から希望数字を出すという方法をとっておりませんでした。石橋内閣になって、昨年、一昨年来の経済の伸びから判断して、現在の雇用量を増すためには、どうしても国民所得の伸びを七ないし八の間に持っていかなければならない、そういう基本の数字をとることが国民生活を圧迫せずに、そして均衡のとれた拡大量である、そういう基本線に立って、まず十カ年の年間計画を立てなければならない。そうするときに初めてそこに完全雇用といいますか、現在の労働力人口の消化は可能である、こういうふうな基本線を持ってとりあえず作業の改訂に入って基本の数字の整理に今取りかかっております。ところがただいま御指摘のように各省の内部においてはそれぞれ事情によって数字が必ずしも信感性のない点があります。それでその数字の整理をするために・いろいろな部門でわれわれが十分な調査研究のできる組織のない点がたくさんあるということもわかっております。従って一挙にこれをその線に持っていくということもなかなか困難でありましょうが、とりあえず三十二年度の大蔵省との話し合いをした場合には、ただいま申し上げました七ないし八の線を国民所得の伸びの線に持っていって、それを基本としてこの予算の数字を整理する、そういうことはいたしました。それで事務的には相当の回数交渉をしたのであります。しかしなおこの国際経済とか景気の見直しとか、海外経済の実情等については非常に材料が不足でありまして、その点につきましてはどうしても新たな予算を求めて、そうして信徳性の高いものにしていかなければならないと思って、今度は予算をわれわれの役所としての予算としては新たに要求したというような経過になっております。
  105. 永井勝次郎

    永井分科員 われわれは国会におけるいろいろな論議が、たとえば朝野両党が対立していろいろな意見が分れてくるという場合、いづれの党の意見が正しいかという客観的な批判の尺度というものが厳としてなければならぬということ、そういうものの基礎になるのがやはり統計なりこういういろいろな資料だと思います。現在ある金画庁というのは数字を計算して資料らしいものを提供する資料提出省というだけであって、資料をほんとう調査して統計を出していくというような、それほどの役所にはなっておらない、でありますから、与党の方でもあるいは野党の方でも、こうやって一応数字のこういう統計を大体基準にして論議をいたしましても、こんなものは大した権威も持たないで、信びようしないで論議をしていますから、いろいろな意見が、見通しを非常に甘く見たり、非常に辛く見たり、いろいろなものが出てくるのだ、それで何ぼ論議しても平行線で相交わることはない、どっちが正しいかという基礎となる、それを判断する資料がないわけです。ですから毎年同じことを繰り返して、企画庁は毎年各省から数字を集めて、いいかげんな数字を計算するだけだ。こういうことをやっていれば、私は権威がないし、つまらないと思う。ですからもう少し企画庁は、宇田さんが大臣になってお入りになった以上は、こういう問題を一つ出していただきたい、こう申す次第であります。  それから今度いろいろ東北等の計画をお立てになっているようでありますが、こういうことは北海道の開発あるいは東北地方の振興というふうに地域ブロック的にだんだん全国に押し及ぼそう、こういうふうな計画でもあって、それの手始めとしてこういう地域的な重点施策というものをおやりになっているのかどうか。この北海道あるいは東北地方の開発というものに対する性格を一つ明らかにしていただきたい。
  106. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 各地区の開発というものは非常に重要な案件でありますが、ただ総合的に国全部の国土開発をしていく計画を持つべしという先ほどの御意見は私は正しい御意見で、そうなければならぬと思います。しかし地区別に経済事情が非常に違っておりますし、それからまた経済環境というものが非常な相違があります。それからまた国がたとえば北海道のように特別にそれに対して人口問題等の新しい期待を持つ場合にそれに合わすべくこれをどう開発するかという特殊な案件が盛り上って参っております。従ってどの地区をどういうふうにして開発するかということは、現在の行政単位だけでこれを考えることができない。一つの新しい経済単位を考えなければならないという問題もあります。従ってただいま東北地区の開発、あるいは北海道地区の開発ということが論題になって参りますのは、従来の行政地区単位の一つの開発行政といいますか、そういう行政が行き詰まってきて、そうして新しい時代に合う、経済活動にふさわしい行政区画を考えなければならぬところへきておる、こういうふうに私は考えます。従って今後北海道または東北地区というふうな数県以上の単位をもって開発しなければならぬというふうな風潮は、おそらく日本全国的にそういう風潮になっていくのではないかと思われます。通信とか交通とか輸送とかの関係が非常に速度が高まってくるに従って、どうしてもそういう傾向が全国的に起るものではないかと思っております。それでありますから先ほども部長から申し上げたのですが、他の地区においてもやはりそういう傾向は避け得られないのではないか。それでそれをどういうふりに国費をうまく計画的にそれに投じていって、そうして所期の目的を達するかということが、新しい三十三年以後の五カ年計画の中にはっきりと取り上げていかなければならぬ重要な問題だ、こう考えております。
  107. 永井勝次郎

    永井分科員 これは単に東北地方ということにとどまるのでなくて、順次地域的なブロック開発という経済圏というものを大体指定して、そういうような活動をやっていく手初めだ、こういうふうに了承したのであります。そういたしますと、やがては行政機構の改革、道州制という問題に発展していかなければならぬものでありましょうし、いろいろそこには問題があると思いますが、それはそれといたしまして、そういう東北地方開発というようなことに、国が手を染めていくということについて、今の政府は一体どれだけの自信とどれだけの資料を整備してこの問題に取り組んでいるのか。ただ現象的にあっちこっちが都合悪くなってきた、だからこういうふうにしたらいいだろうというだけの見通しでやっているのか、もっとちゃんと根を基礎におろして、そうしてこうしたらいいのだということで画期的な一つのブロック経済地域開発というような課題と取り組んでおやりになっているのか、その本質的な内容を御説明願いたい。
  108. 植田俊雄

    ○植田政府委員 東北開発の問題でございますが、実は御承知の通り昭和三十年度と三十一年度に経済企画庁に一千万円の調査費の計上をいただきました。この資料に基きまして、完全とは申せませんけれども、相当の資料を整えましてそれをスタートといたしまして、東北地方の開発計画を立てたわけでございます。申すまでもなく開発計画は単に公共事業の設備計画ばかりでなく、経済計画でもございますので、経済との関連をつけた開発計画ということになりますと、一年、二年の調査だけではあるいは完全でないかと思うわけでございまして、東北開発は三十二年度が初年度でございますが、先ほど大臣から申し上げましたように、東北開発審議会というものも設置することになっておりますので、この計画はできるだけ年を追いまして整備いたして参りたいと存じておるわけでございます。  次に政府はどういう覚悟でこの仕事に取り組んだかという問題でございますが、最近の経済の拡大に伴いまして、資源の開発がきわめて重要になって参ったわけでございます。御承知の通り数字をあげて御説明をするまでもなかろうかと思いますが、東北地方は地下資源の最も多い地方でございますし、また第一次産業の資源にいたしましても全国有数の地域でございますので、東北開発に現在力を注ぐことが、わが国の国力の拡大に資するゆえんであろうというわけでございます。この点は昨年の五月の二十八日、衆議院で御決議になりました線にも沿っておるわけでございますので、その線に沿ってただいま経済企画庁を中心といたしまして、各省と連合をいたしまして、開発の実施に当ることにいたしておるわけでございます。なお東北地方の問題は必ず他の地方の開発とも関連するわけでございますので、御承知の通り国土総合開発には全国の開発計画を立てることになっておりまして、八つのブロックに分けることになっておりますが、その一つが東北でございます。他のブロック、地域につきましても同様な問題が起るかと思うのでございます。まず東北を手がけまして、逐次他の地方の地元の要望等も参酌いたしまして、逐次地域的な開発計画を進めて参りたいと思っているわけでございます。
  109. 永井勝次郎

    永井分科員 東北地方の開発は一千万円の調査費をもらって、それで手初めにするのだ、聞いて驚くほかはないのであります。それから、これから東北地方を手初めにして各地大いにやっていく、こういうのですが、一体元徳やなんかの程度の予算の範囲で、そうして今の企画庁の陣容で、一体——ただ作文をしてやるのならこれはできるかもしれないけれどもほんとうに資源調査もやる、あるいは第二次、第三次のいろいろな産業をそこに起していく、あるいは地域的な配置をしていく、いろいろなことをほんとうに基礎的にやるというたら、これはもうそんなことをこんな議会で一千万円の調査費で、それを基礎にして東北地方の開発をやるのだといったなら、これは笑いものになるだろうと思うのです。日本は国土は小さいけれども、ずっと亜寒帯から亜熱帯まであって、そうしていろいろな気象条件や、土地の条件、自然条件がいろいろ違う。こういうことの資源調査という面を一つ見ても、そういう調査の基礎的なものを持っていない。土地に対する調査ができているかというと、その土壌に対する調査もできていない。それからたとえば森林なら、これだけやかましくなっている森林の資源がどのくらいあるかという問題にいたしましても、面積もまあ腰だめ見当でいっている、蓄積も見当で、ただ成長率が幾らだからこうだという計算だけをやっている。そういう基礎を持たないで、計画らしいもので、そうして口の先だけでは効果をあげてどうでこうで、こう言ったって、こんなものは実態と全然合ってこない。だからやりかけては失敗し、やりかけては失敗し、繰り返し、繰り返しばかの一つ覚えで同じところを堂々回りをやっている。私はやはりほんとうにこれから日本が狭い国土の中で、少い資源の中で大いに発展していく、国際情勢のいろいろな中で経済的に優位な地歩を固めていって、あり余っている人口を、この中で生活の向上をはかっていくというには、ほんとうに科学的な基礎に立ったいろいろなことをやるのでなければ、これはもう今までのようなことの繰り返しをやっていたのでは問題ではないと思う。一昨年私たちソ連に参りまして、いろいろな点で視察もし、いろいろな勉強もしてきましたが、一番われわれが感銘を受けたのは、やはり向うの政治の柱は、人間改造、自然改造、こういう二つの柱にしぼって、人間改造の基礎は教育だということで、教育にうんと力を入れております。それから自然改造の基礎は資源の研究、調査だ、こういうことで、あの広い国土を何十年もかかって国土調査をやり、資源調査をやり、そういう一つのきちっとした基礎を持っております。そうしてその上に立って、地域的ないろいろな資源研究をやっておる。思い切った金を入れて、技術者を養成しております。でありますから、そういう基礎があるから、東北地方ならば東北地方の開発だということになれば、その土台の上に立って、東北地方の地域開発の計画を現地に行ってやればいいのです。何十人という専門家が行って、あらゆる角度から平素整えておる資料を持っていって、その地域開発計画というものをそこに樹立する、その樹立によって、予算をつけて順次やっていく、そしてやっていく過程において、間違いがあればそれを修正していく。そうすれば、どこが間違ってどこがいけないのだということが、やっていく過程においてすぐ出てきます。こういうことをやらないで幾らやっても、どこで間違ってどこで失敗して、どうしてやればよいのかという意見が何にも出てこない。北海道の開拓をやっても、凶作になればみんな天候のせいにしてしまって、人間のせいにはしない。自分の自己反省はしない。そして幾ら言っても、何十年たっても、ここまでは積み上げた、しかし予算がなくてこれ以上はいかないのだということではなくて、同じことを繰り返していく。こんなばかなことをやっているのは大へんなことだと思うのです。そういうことについて、宇田大臣は、そういう基礎をもっていろいろなことをこれからやらなければならない企画庁という重要なものを持っていて、いいかげんな資料の数字の計算だけやってこれで満足して、九億の予算で、日本のいろいろな地域開発はこれでけっこうです、一千万円の調査費で、これでけっこうだといって出発するのかどうか。これは政策的な問題で、事務当局は計算する方ですかち、一つ高邁な見識を宇田大臣からお聞きしたい。
  110. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 今のお説のように、大体企画庁の予算というものは非常に少いので、これでもってただいまお話の問題点の解決だけに投じても、予算はなかなか追いつかないだろうと思います。ただ、たとえば北海道開発につきましても、来年から東北の開発とあわせて、金融面とか、あるいは民間に対する新しい、たとえば東北興業会社の増資等を通じて行う施策とか、いろいろなことが始まります。始まりますけれども、それは実は企画庁の企画というよりも、所管関係から申しますと、政府の別の機関の所管に属することもあります。そういうわけで、私の方の役所の計画の中でこれを全部まとめて企画していくということは、なかなか困難な行政環境の中におりますから、私は企画庁本来の企画だけにまず自分たちが専念をして、そして国の計画のみを立案するよう努力するだけでも、現在のこの予算ではなかなか手一ぱいだというふうに思っております。北海道開発あるいは東北開発等は、日本の経済環境の飛躍に従って、当然昔の行政体では経済体として一独立体にはならないでしょうから、そういうふうに経済体系も大きくなっていくのはやむを得ないと思います。その反面、たとえば東京でありますとか、大阪でありますとか、非常に人口が偏在することによって、逆に地方の経済体がアンバランスを起すのをいかにして防ぐかという、これは基本の、人口動態と申しますか、人口の移動状態等について対策を考えなければならぬ、こういうように思われます。その対策を考える場合に、果して数県単位がいいのか、あるいは中には、百万人目単位がいいという人もありますし、いろいろの意見は承わっております。しかし、従来の、たとえば東北地方あるいは北海道地方、あるいは近畿地方と申しますように、地理的環境あるいは従来の工業なり商業の立地の条件等から、自然な一つの連関体系がありますから、それを無視せずに、そうしてその環境の中で一つの、ただいま申し上げました人口問題、あるいは経済の伸びに合うところの経済体系を進めるというようなことを考えていくのが適当ではないか、こういうように考えております。従ってそういうことは一経済企画庁の任務の範囲外に出ることもずいぶんありますから、やはりわれわれがあっせんの中心になりまして、政府全体の問題として総合あんばいをしていかなければならぬ、こういうように思っております。
  111. 永井勝次郎

    永井分科員 ただ企画を立てる、あるいは統計を作るということにとどまるならば、そうしてまた一千万円の調査費でこれから東北地方の開発を出発するのだ、これからいろいろなことをやっていくのだ、こういうのなちわかるのですが、一千万円の調査費ですぐ開発に飛び込んでしまう。そうして金融面で何百億という金をつぎ込んで仕事がもう始まってしまう。そういう基礎がありませんから、どういう仕事がどういうことでということがなくて、それぞれの地域の、たとえば北海道の開発の例をいえば、公庫が生まれる。そうすると、おれの顔で何億貸せるということで、何かそれに計画があって、それに金融がついていくというならいいけれども、そういう計画も何もないところに公庫という金融機関ができて、ここに何百億という金を貸すということになると、そういう代議士や、その地方のボスがみんな集まって、さあ今度金が出るからこういうことを計画せいということで、各工場を回って、お前のところは金は要らぬか、幾ら出すぞということになってしまう。これでは経済効率の高い産業活動というものがその地域に起るのではなくして、出した金がみんなあっちこっちの食いものになってしまう結果になるのです。だから、そういうことを繰り返してはだめだというのです。大臣はそういうもので補って、こうやるのだと言われるが、そういうものがあるからなお悪いのです。私はこれ以上申し上げませんが、そういういろいろな基礎資料を備えて、一つの科学的な、あるいは技術の基礎によったしっかりした政治というものを打ち立てていく。しっかりした政治を打ち立てれば、今のようなでたらめはできなくなるのですから、今の内閣に要求するのは無理だと思うのですが、私はそうやらなければ、民族は救われないと思うので、いやでもいろいろなことをやっていかなければならぬ、こう思うのです。ただ東北開発については、そういうことがありますから、一つ十分慎重にやっていただきたい、こういうことだけを希望しておきます。
  112. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいまのお話はよくわかりましたから、そういう線に沿ってなおよく研究いたします。
  113. 大橋武夫

    大橋主査 三浦一雄君。
  114. 三浦一雄

    ○三浦分科員 だんだん時間も迫りましたし、企画庁に対するいろいろ基本的な質疑も行われたのでありますが、私は特に経済企画庁の使命にかんがみまして、われわれ与党の立場からも一、二お考えを願いたいという点を中心にお尋ねしたいと思います。予算の編成期に当りましても、また政治の場にありましても、よく言われることは、国庫大臣としての大蔵大臣の予算編成につきまして、ポリシーがない、政策と予算の策定がマッチしないということが、日ごろ論議されていることは言うまでもありません。従いまして行政機構の編成につきましても、あるいは内閣に予算局を設けるという説さえ出てくるゆえんであります。しこうして企画庁はこの間にありまして、総理大臣の最高のプレーンとして政策面を担当せられることになっているのですが、今川俣清音君もしくは永井委員等からも御質問がありました通り、相当痛烈な批判を受けている。もとよりわれわれとは立場を異にするのでありますから、相当ひどいこともおっしゃるのは無理からぬことではありますけれども、相当やはりいい点に触れておる。しかしながら私は計画の大綱等に出ております計数そのものを何も効果がないとか、同時にまたずさんきわまるものだというふうには理解しておりません。ただ企画庁の方々が何か自信がないような態度をとっておられる。これはつまり現在の企画庁を象徴するものではないかと私は遺憾に思うのです。すなわち農業所得等につきましても、いろいろの経過はありますけれども、これに伴ういろいろな施策が伴ってなおかつ〇・四%に上るというふうに出ていると思うのです。しかもこれが基礎づけられる資料花お持ちになっているはずです。ただことしは予算委員会等からやかましい要求がないから出てこないだけで、それだけのことを日ごろ研さん努力していながら、それを勇敢に打ち出せないというのじゃ困る。一つ十分に納得するように活発にやっていただきたいということを、事務の刷新の上から要望しておきます。  第二の問題でありますが、この予算を見ますと、大体今言う通り、各同僚の委員から言われる通り、十億足らずの金である。しかも各項目を見ますと、予算がいずれも減っておる。総額ではわずか千三百万円程度でございますけれども減らされており、しこうして新しい問題が一つもない。われわれは予算委員としまして、何も増額を要請するものではありませんし、金高が多ければいいということは決して申しません。けれども積極性が出ていない。先ほど国土総合開発に関する質疑等もありましたが、企画庁が総合開発の基本的な政策は立てられたのであって、そしてこれを強く推進するという一つの動機は、やはり企画庁が研究調査もしくは推進力にならなければならぬと思うのです。各本数地区にわたって国土総合開発は、これは必ずや推進せられざる原因であるとか、あるいはいろいろな欠陥が露呈しているに違いない。それらは積極的に勇敢に政策を示唆し、あるいは各省を督励するとかしていくのでなければ、効果は上げ得ないと私は思う。企画庁にはことしも五億円程度の調整費があるのですが、これらは企画庁の人たちの勇敢な施策じゃなくて、むしろ議員側から示唆されて計上された経過を持っている。しかもことしは依然五億円程度でとどまっておる。もとより企画庁でございまして、実施官庁でないのですから、実施予算を持てとは申しませんけれども、これらの経緯をずっと見ましても、私はその政策の立案企画におきましても何か消極的で、そして各省からただこづき回されているような感がしてならぬのでありますが、いやしくも各省から派遣されておる一流の優秀な人物がそろっている立場にある以上は、内閣の先達として、そして国土の総合開発なりあるいは政策の推進に十全を尽すというのが、現在の企画庁の使命でなければならぬと思うのでございます。われわれの期待しておる宇田長官には、今後企画庁の運営上、あるいは企画立案についても、あるいはこれに伴う予算の編成等につきましても、われわれは与党の立場でございますけれども一つ勇敢に率直にお進み願いたいと思うのですが、その所信を承わらせていただきたいと思います。
  115. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいま三浦委員から御指摘がありましたが、経済企画庁の予算面に現われました数字は、昨年よりもむしろ引っ込むということであって、それはただいま御指摘の捕り、経済企画の推進の上において金とバランスのとれた以上の計画が打ち出せるかどうかという点について御心配の点は、よく私も体しまして、それを注意していきたいと思います。しかし経済計画そのものにつきましては、派手にこれをどうこう、みえの非常にいい方向にものを持っていくということではなくして、やはり日本の経済が転換に達しておって、しかも昨年と一昨年とに現われた経済傾向から見て、本年度ないし来年この二、三年の間というものは、果してこれが自分たちの希望する方向に国運が向いていくかどうか、また現在非常に謳歌されておるところの繁栄部門がどれくらいわれわれの国力によって維持されるかどうか、これは非常に慎重を要するものと思われます。従って現在の五カ年計画の推移の過程をとってみますと、現在の計画では私はだめだと思います。どうしても新しい計画を策定せざるを得ない、むしろ国の世論の中に私どもはおる。従って先ほど永井さんあるいはそれぞれの委員の方から御指摘のあった点も、要は国の伸びが伸び過ぎることによって逆転するおそれのある場合に対して、君は十分反省があるかどうか、果してその全部の計画に対してそれだけの配慮があるかどうかという点が、非常に重要な点であって、それをいろいろの専門の角度から批判していただいておる、こういうふうに思います。それで新しい五カ年計画をどうしても立てなければならぬ。そうしてその五カ年計画の立て方は、何といっても国民の全部をそれぞれその性格に応じて働く場に配列し得るという態勢を進めなければならぬ。そういう線に沿って自分たちは経済を見直していきますが、新しい五カ年計画はわれわれは自分たちの考え方でいきますと、先ほど永井さんが御指摘になつ一たように、ソビエトのような計画方針をとることはなかなか困難だと私どもは思っておりますから、そういたしますと、企業心を刺激しながら、そうして国民の非常な忍耐を希望しながら、計画を推進するということになるのが結論でありますから、そういう意味昭和三十三年から三十七年までの計画は、とりあえず八月までに作業を終りたい。しかし五年間に盛り得るものは非常に一部分のものであって、内容が非常に広範で、深い。たとえば先ほどの国土開発の問題、あるいは電源開発等に関する基本的な問題の解決になりますと、五年ではとうてい一単位として考え得ないものがたくさんある。従ってこの五年間はやはり長期の国の施策を割り切るための基本の第一年度であるというふうにも考える点がたくさんある。そういう意味経済企画庁は私が就任してまだ日が浅いものですから、十二分の連絡協調——それぞれのエキスパートはおりますけれども、その諸君の能力を出し切れないようなところにおるのは、はなはだ相済まぬ、残念だ、こう考えておりますけれども、ただいま申し上げましたような新しい国を作っていくための新しい計画、そうして理想は、やはりそれぞれ完全に能力に応じた企業の体系の中に国民が入っていくことのできるような配慮をすみやかにするような、しかも国民経済を不安に陥れずしてその線に到達するような企画、立案をいたしたいと考えております。そういう意味で今直ちにそれを皆さんに差し上げることのできないのは残念でありますけれども、三十二年の予算を立てるときには、その前提のもとに大蔵省と相談をしたい。どうぞ御了承を願います。
  116. 三浦一雄

    ○三浦分科員 この経済計画を変えなければならないということは、もう高碕長官以来の懸案であります。その際高碕長官も国会に相当説明しておられる。今のあなたの御説明の様子とは、ややニュアンスにおいて違うようでありますが、それを承継しているものとわれわれは了解します。そうじゃないと、変なものになりますから、そのことをよく頭においでおいでいただきたい。その際長期的なことと同時に、各項目についても相当緻密な案を作るというのが宿題であります。どうぞ経済企画庁の俊英の人たちが力を出し切って、りっぱなものを作るように希望しておきます。同時に三十二年度の経済計画の大綱につきましては、これは良心的な案だと考えます。従ってこれがどうなるかは将来の歴史的な問題になるでしょうから、そういう意味でわれわれはこれを支持しておるのでありますが、要は経済企画庁が持っている使命を十分にこの際見直して、もっと積極的にその政治的使命を達成せられることを念願して、どうぞ御健闘を祈って、私の質問を終ります。
  117. 大橋武夫

  118. 西村榮一

    西村(榮)分科員 僕は簡単に申しますが、ちょっと速記をとめて下さい。
  119. 大橋武夫

    大橋主査 御希望によりまして速記をとめます。   〔速記中止〕
  120. 大橋武夫

    大橋主査 それでは速記を始めて下さい。  これにて経済企画庁所管に対する質疑は、一応終了いたしました。  明日は午前十時より開会し、農林省所管に対する審査に入ることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会