○山本(勝)
分科員 とにかく事実はお認めになっておるのだと思いますが、実はある税務署長から
——これは若い税務署長でなしに、老練な税務署長で、その後税務署長がかわってどこかに出世していかれましたけれ
ども、その税務署長が、私にこんこんと陳情された。陳情という
言葉はおかしいけれ
ども、何とか農村の相続税を変えるように努力してもらえないか。今言ったように、実際
財産税ですから、所得があってもなくても、おやじが長年わずろうて薬代を払って、ようやくどうにかしのいできたところに死なれた、それで相続をするということになったら、金は一文もなくても払わなければならぬ。しかも、それをどうにも困るからというので、合法的でありましょうが、法律
通り何人かに分けたことに形を整えてやってもらえばのがれられる。それ以外に方法がない。正直にやれば確かにどうにもならぬ。しかも署長の話では、農村の相続税の税収なんというのは、ごくわずかだというのです。その当時三十億ばかりでしたが、その中で、大きな相続
財産の場合と、小さな農村の場合とどのくらいの
割合になるかということは、なかなかわからぬそうですけれ
ども、しかし実際農村の場合などは、ごくわずかなんです。それが、そういう
矛盾があって非常に困るから、何とかしてくれという陳情を受けた。税務署長から、この法律はやめてくれないかという陳情を受けるなんというのは、私の経験ではそれ一つですよ。先般、私は自分の選挙区で部落の座談会をだいぶ続けてやってみたところが、いろいろな注文が出ました。ところが、相続税の問題の不平は少しも出なかったので、私がちょっと出してみたところ、どこへ行っても痛切に何とかしてくれという。なぜ私が尋ねるまで出ないかというと、これは結局所得税とかほかの税金のように、一ぺんにみんなにかかってこないが、一人々々は泣いている。必ず一代に一ぺんはくるのですけれ
ども、しかし一ぺんにこないということと、毎年くることでないものですから、一人一人泣いている。それで、大きな声にはなっていないけれ
ども、一たびそれにちょっと声をかけてみれば、みんな何とかしてくれということを言っておる
実情であって、これは、税務署長が言うくらいですから、国税庁の長官も
大蔵省関係もよく御存じだろうと思う。ことに、先ほど言ったような分割して相続する場合と、正直に実際分割してないのだからというので、一括して相続する場合との間の不公平があるだけではなしに、これは個人的に申しましたけれ
ども、たとえば河川の引き堤問題で、われわれの方でも非常に問題になっておるのですが、あちこちで起った現象は、十五万とか二十万とかで話が落ちついて、たんぼを買収して、その直後に相続するという者が、ある村で二人できてきた。一方は買収された方の相続、一方は買収されないものの相続と、二つ近所でできてきた。ところが、一方買収された方は、反
当り十五万円に買収されたのですから、再評価税がかかってきたのでありますけれ
ども、十五万に査定するよりそれは仕方がない。ところが一方は相続されていないものですから、従来の基準で三万何千円で相続した、それで
財産程度は同じであって、大へんな税額の差ができたというので、とうとう越ヶ谷の裁判所まで問題を持ち出して、何とか救済したいけれ
どもというような問題が現実に起ったのです。おそらくよそでもそういう問題は起るのだと思いますが、だんだんとこの査定の価格を実質的に高めてきて、実際の価格相当にすれば、それはそういう
矛盾は起らぬでしょう。起らぬかわりに、現在のごとき三万円や、先ほど言った五万円ですらも、なおかつおやじに死なれたそのとたんに、今度は泣きつらにハチのようなそれだけの苦しみをなめなければならぬ。実際は家業であって、相続人としては、親が病気になれば親を養う薬代も出すということは、
日本人として
当りまえだということでやっておるのであって、薬代をこれだけ出したのだからといって、それを一々計算しておいて、それは何も相続したのじゃないというので引いたりするというようなことは、実際できるものじゃない。ですから、事実上家業としてあるにかかわらず、しかもその家業は、たんぼの自由売買もできないし、一種の家産的なものであるということを認め、自作農創設その他でそういう
方針をとっておりながら、その営業
財産であるたんぼから、畑から、牛から、馬から、牛小屋から、農具から庭木までことごとく評価して、それに対して二十万以下は一割かける、二十万以上は一割五分かける、もちろん五十万円という基礎控除はありますけれ
ども、今日の五十万円などというものは、そういう田畑を安く評価しておっても、農機具とかいろんなそういうものを入れたらすぐ突破してしまう。そこで一体、この間の税制改正のときに、この五十万円の基礎控除を上げるという話は出なかったのかどうか、それを一つ伺いたい。