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1957-02-14 第26回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十四日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席分科員    主査 松本 瀧藏君       植木庚子郎君    太田 正孝君       須磨彌吉郎君    中曽根康弘君       船田  中君    山本 勝市君       田原 春次君    古屋 貞雄君       横山 利秋君   兼務       川崎 秀二君    河野  密君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         外務政務次官  井上 清一君         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 村上  一君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (為替局長)  石田  正君         国税庁長官   渡邊喜久造君  分科員外出席者         総理府事務官         (行政管理庁監         察審議官)   米川 健夫君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      中島 晴雄君         大蔵事務官         (造幣局長)  脇阪  實君         大蔵事務官         (印刷局長)  大槻 義公君         日本国有鉄         道常務理事   小林 重国君         日本国有鉄道参         与         (資材局長)  石井 英一君         国民金融公庫総         裁       櫛田 光男君         住宅金融公庫総         裁       鈴木 敬一君         農林漁業金融公         庫総裁     山添 利作君         中小企業金融公         庫総裁     坂口 芳久君         中小企業金融公         庫総務部長   井染 寿夫君         北海道開発公庫         理事長     松田 令輔君         北海道開発公庫         理事      岡田 包義君         北海道開発公庫         理事      亀井げん建君         日本開発銀行理         事       菅野 義丸君         日本輸出入銀行         理事      加藤 寛一君     ————————————— 二月十四日  分科員北山愛郎君、田中武夫君及び田原春次君  辞任につき、その補欠として古屋貞雄君、井手  以誠君及び横山利秋君が委員長の指名で分科員  に選任された。 同 日  第二分科員川崎秀二君及び第四分科員河野密君  が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算大蔵省所管  昭和三十二年度特別会計予算大蔵省所管  昭和三十二年度政府関係機関予算大蔵省所管     —————————————
  2. 松本瀧藏

    松本主査 予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十二年度一般会計予算昭和三十二年度特別会計予算及び昭和三十二年度政府関係機関予算、右各案中大蔵省所管を議題といたします。  質疑の通告がありますのでこれを許します。田原春次君。
  3. 田原春次

    田原分科員 最初に大蔵省管財局長にお尋ねしたいのですが、国有財産払い下げ等に対しては、払い下げを決定するまでの順序はどういうことになっておるか、これをまずお尋ねいたします。
  4. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。国有財産払い下げにつきましての御質問でございますが、これは国有財産法及び国有財産特別措置法という法律がございまして、それぞれ払い下げにつきましての規定がございます。ただいまの御質問はどういう手続でということでございますから、簡潔に申し上げますと、払い下げをお受けになりたいという方は、所在の財務部あるいは財務局申請書を出します。これは大蔵大臣あて申請書になりますが、この申請書をお出しになりますものにつきまして、まずそれぞれ役所におきまして審査をいたしまして、事案によりましては財務局長から意見を付して大蔵大臣に上申をして参る場合もございます。なお昨年四月以来、私どもは、国有財産管理処分につきましての国会あるいは行政管理庁検査院その他一般世論にかんがみまして、特に国有財産審議会を中央及び各財務局に設置していただくことに閣議決定を見たのであります。この審議会におきまして、重要な財産処分につきましては御審議をわずらわしまして、この意見をも重要な参考として処分をしておるわけでございます。
  5. 田原春次

    田原分科員 国有財産のうち、国鉄財産払い下げ処分については、大蔵省関係はありませんか。
  6. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 国有財産は、私が先ほど申し上げました国有財産法等によります国有財産、それからただいま田原委員がお述べになりました国鉄その他の公社財産というものを含めました国有財産、これが非常に広い意味における国有財産でありまして、理論的にはそういうことが言えるかと思います。しかしながら、先ほどもお答え申し上げましたように、大蔵省におきましてのいわゆる国有財産は、国有財産法に定める国有財産でございまして、この中には国鉄財産は実は入っておりません。大蔵省といたしましては、国鉄に対しましては、もっぱら出資による権利——昭和二十四年でありましたか、日本国有鉄道というものが設立されましたときに、この国有鉄道にその当時の資産に相当するものを国が出資として出しまして、この出資による権利国有財産法上の国有財産でございます。しかしながら、現在日本国有鉄道が持っておられますところのいろいろの財産と申しますものは、国有財産法上の国有財産ではございませんので、この処分につきましては大蔵省は全然その権限がございませんので、もっぱら日本国有鉄道において処理しておられるのであります。
  7. 田原春次

    田原分科員 行政管理庁にお尋ねしたいのですが、今の大蔵省国有財産払い下げ、それから公社国鉄等の所有する国有財産払い下げ等に対して、不当な処分傾向があるといううわさの場合には、行政管理庁は事前にこれを調査するのでありますが、それらの払い下げ等が決定して後に調査するのでありますが、その点をお尋ねしておきたいと思います。
  8. 米川健夫

    米川説明員 お答えいたします。国有財産払い下げに不正があるような疑いの場合には、行管として調査をするかという御質問かと承わったのでありますが、行政管理庁といたしましては、国の行政運営やり方につきまして、広くその実態を監察いたします権限と機能を持っておるわけでございますが、不正のうわさのあるなしにかかわらず、常時計画的に国の行政について監察を行なっております。従いまして、一応は年間ないしは各四半期ごと監察計画を立てまして、計画的に国の行政監察をいたしておるわけでありまして、いろいろな聞き込みその他の突発的な問題について、飛び上ってすぐそれを見にいくという運営の建前にはいたしておりませんが、問題によりましては、そういう重大な事件の起きました場合には、随時機動的に計画予定外行政事務につきましても監察を行うことにいたしております。
  9. 田原春次

    田原分科員 次は国鉄当局にお尋ねしたいと思いますが、これは福岡県の糟屋郡にあります国鉄の所有する志免炭鉱に関することであります。まず資源日報という新聞の二月八日に出ました記事を、お読みになっていることと思いますけれども、一応繰り返してみます。「先鋭化した志免鉱業所払い下げ事件」という見出しであります。要点は、志免鉱業所払い下げに関し、住友石炭鉱業、三井鉱山、三菱鉱業明治鉱業の四社間に払い下げを受けようとする競争が激甚をきわめておる。そうして国鉄上層部とこれら四社との間に政治折衝が行われておる。そのうちの某社は志免鉱業所の現在従業しておる労務者三千四百人をそっくり引き受けるという条件を持ち出しておる。同鉱業所年産五十万トン、採炭能力大体大手筋炭鉱並みである。大手筋炭鉱に比べて坑外夫の賃金がやや国鉄側がよい。それからこれに関して通産省側では、現在では国鉄と四社との交渉程度を見ているというのでありますが、どの程度この話が進んでおるものでありますか、この機会に明らかにしてもらいたいと思います。
  10. 小林重国

    小林説明員 私からお答え申し上げますが、志免鉱業所処置につきましては、一昨年行政管理庁監察されました際に、やはり付帯事業につきましては国鉄から分離した方がいいのではないかという御意見もございましたし、また昨年運輸省に国鉄経営調査会というものが設けられまして、この経営調査会におきましても、国鉄経営合理化につきましていろいろ御審議下さったのでございますが、その結論といたしましても、志免鉱業所譲渡したらどうかというような御意見も出て参っております。われわれといたしましては、そういった意見につきまして十分検討する必要がございますので、これにつきまして検討は進めて参っておりますけれども、まだ結論には到達いたしておらないわけでございます。今新聞記事をお読みいただきましたが、われわれといたしましては、納得できない点もあるのでございます。ただ申請といたしましては、一昨年の暮れから昨年の半ばごろにかけまして数社からそういった譲渡申請が出たことは事実でございますが、まだ処置につきましてはわれわれとして方針をきめておらない実情であります。
  11. 田原春次

    田原分科員 国鉄経営調査会答申書の中には、小林理事も御承知のように、(三)その他の合理化方策のうちの3にこういうふうに出ております。「志免炭坑」「などの付帯事業については、むしろこの際国鉄経営から切り離すべきであると考えるが、種々の困難な点も考えられるので、少くとも縮小の方針をとるとともに、徹底的な合理化を行う必要がある。」この判断のように種々な困難な点というのはどういう点であるかということ。それから徹底的な合理化ということと切り離して払い下げということが果して関係があるものかどうかということも、われわれは納得いきかねるのです、先ほどの御答弁にも合理化問題が出ておったようですが、合理化というのは、国鉄全体の合理化ということのほかに、志免炭鉱自体経営合理化ということもあると思います。もう少し納得いくように説明願いたいと思います。
  12. 小林重国

    小林説明員 経営調査会結論を出されましたのは、譲渡することが原則的に望ましい。しかし徹底的な合理化について努力しろという御指示がございまして、経営合理化につきましてはもちろん国鉄全体の問題もございますが、志免鉱業所経営自体につきましても合理化しなければいかぬということで、昨年は従業員配置転換を行いまして、できるだけ人員を縮小しまして、労務者一人当り能率を高める方策をとったのでございます。その結果、現在は大体九州大手能率にそう劣らない程度に上げることができたわけであります。人員も一時は五千人に達しておりましたが、現在では労務者の数は三千人足らずでございまして、それに管理部門の職務を入れましても三千数百名ということで、能率は上げて参っております。
  13. 田原春次

    田原分科員 今の御答弁と大体同じような数字を私も調べてみたのでありますが、すなわち昭和二十年に大蔵省から引き継いで国鉄に移管された後の状況を見ますと、引き継ぎの際の評価額は約三億円と見られておるのです。それから引き継ぎ当時昭和二十年から二十一年にかけては、大体年産二十万トンから二十一万トンの採掘量であったのです。人員は一ころは五千八百余名にわたっておったのでありますが、昭和三十一年には配置転換等の組合との話し合い等もありまして、およそ三千四百名に縮少されておる。反面石炭出炭量昭和二十二年が二十四万トンくらいだったのが、昭和三十一年は四十九万トン、すなわち概略五十万トンを生産していることになる。人員は縮小され、出炭量はふえておりまして、数字から見ますと合理化あるいは経営はむしろよくなってきておる。昭和三十一年度は大体五千万円から七千万円の黒字になっているとわれわれは見ておるのです。しかるにこの経営調査会の方の答申を見ますと、その後、国鉄部外団体改善措置(七)の中に、次に国鉄付帯事業である志免鉱業所等々は、それぞれ当初は理由のあったものであるが、われわれは検討の結果次の措置をとることが適当であると考える。」それで二、三の付帯事業を申しまして、そのあとに、「志免鉱業所は海軍から引き継いだもので、炭鉱ストライキのときの危機を救った功績や、」——これは果して功績であるかどうか問題でありますが、まあこの言葉を一応受けるとしまして、次は、「炭価交渉に役立ったことは一応認めることにしても、現在その収支赤字であり将来も好転する見込みはないので、石炭事情の好転している現在、国鉄から切り離して売却すべきであるが、これができないならば、国鉄が現物出資して共同経営に移すか、そうでなければ経営を徹底的に合理化し、その方法として民間的経営方式をとるか、坑区を集約するとか、労務者自然減を待つとか、赤字目標をきめて他の事業でカバーするなどの方策を講ずべきである。」こういうふうな意見ですが、これは幾多の矛盾をこの中にはさんでおるのでありまして、最後の言葉から見ましても、赤字目標をきめて他の事業でカバーしよう、現在ある付帯事業を縮小させるということと、他の事業でまたカバーしようというような矛盾が入っておりますし、それからわれわれの調査によると、些少ながらも去年あたり黒字になってきておるのを、現在その収支赤字でありというふうに簡単に断定しておるのは資料不足から来ておると思う、なおまた経営についても、国鉄が現物出資して共同経営に移すか、そうでなければ経営を徹底的に合理化し云々というように、非常に広範かつ混乱した判断でありまして、これに基いてやるというのは矛盾しておると思うのです。最近の傾向は、少くとも重要産業利潤追求生産から公益生産に移すという社会的な流れであります。従来上手下手は別といたしまして、国鉄経営事業でやってきておるのを、最近になって現に些少ながらも黒字であると数字が出ておるにかかわらず、これが赤字なりと断定して、特に民間払い下げようということは、私はそこに不正がないにしても、不当な考え方があると思うのですが、こういう民間側の要求もしくは国鉄経営調査会の軽率な判断に対しては、その軽率をこそ責むべきでありまして、この判断に従って少くとも払い下げに応ずるかのごとき態度をとるのは、国鉄当局としては軽率じゃないかと思うのです。従業員も不安に思いますし、国民のわれわれとしてもおもしろくないと思うのです。こういう私の考え方が不当でございましょうか 国鉄側の御批判を仰ぎたと思います。
  14. 小林重国

    小林説明員 志免鉱業所採算につきましては、われわれといたしましてもできるだけ努力して参ったわけでございます。国鉄経営調査会結論を出されました三十年度状態におきましては、まだ赤字が七千万円くらいあったはずでございます。本年度に入りまして能率も非常に高めて参りましたし、また同時に石炭需給が逼迫いたしまして、炭価が値上りいたしました関係上、現在の見込みでは七千万円か一億円くらいの利益になるのではないかと推定いたしております。しかしながらその採算の計算におきましては、減価償却費が多少民間炭鉱よりも低くなっておるのではないか、民間におきましてはトン当り二百数十円の減価償却費に当っておりますが、志免鉱業所におきましてはトン当り百数十円しか計上しておりません。民間減価償却費と百円くらいの開きがございますので、そういった面も検討いたしまして、採算がどうなるかという点を調べてみる必要がございます。また経営調査会におかれましても譲渡を一応原則といたしておりますが、その他の施策につきましても配慮するように御指示になっておりますので、そういった面もわれわれといたしましては検討を進めておるわけでございます。
  15. 田原春次

    田原分科員 次にこれに関連して別の問題をお尋ねしますが、現在国鉄民間から石炭を燃料として買っております一年間のトン数はどのくらいですか、概算おわかりでしたらお尋ねしたい。
  16. 小林重国

    小林説明員 約五百五十万トンでございます。
  17. 田原春次

    田原分科員 最近電化等が進んでおりますけれども、少くともこの五百五十万トンという数字は、これ以上ふえないとしても、急にゼロとなるものとは思えませんが、どうでございますか。
  18. 小林重国

    小林説明員 国鉄石炭使用量は毎年減って参っておりまして、御承知通り電化が進みますし、またディーゼルカーの運転も行われております関係上、年々消費は減って参っております。大体十万トン台程度ずつ落ちて参っておるというのが実情でございます。しかし来年度見込みといたしまして、今相当輸送が逼迫いたしておりまして、増送を行わなければなりませんので、その面から本年度より多少ふえるかと思っております。しかしわれわれの持っております電化十カ年計画あるいはディーゼルカーの十カ年計画、こういってものを進めて参りますと、十年後あたりには二百万トンくらいでございましたか、その見当まで減少するのではないかというような見通しを持っております。
  19. 田原春次

    田原分科員 いずれにしても志免鉱業所で採掘いたします数量概算五十万トン、これは自分のところの山でありますから、外部からあるいは二百万トンといい、あるいは五百万トンという石炭を買う国鉄としては、志免鉱業所経営にかりに多少の赤字が出たとしても、自家用炭も必要なことであるし、これを保存しておくべきことが、常識上当然ではないかと思うのですが、これは数年前に答申した国鉄経営調査会答申に基いて、にわかに買手がつくや、それと話をするというのは、少し軽率不謹慎じゃないかと思うのですが、あなた御自身はどう考えておられますか、はっきり一つこの際知らしていただきたいと思います。
  20. 小林重国

    小林説明員 われわれといたしましては、経営調査会のああいう結論も出ておりますので、慎重に検討をいたしておるわけでございまして、ただ単に採算だけの問題ではなく、将来の国鉄石炭需給、こういったものも同時ににらみ合せて考えて参らなければならないと存じます。ことに国鉄石炭消費量は、将来二百万トン程度に減ります状態にございますし、また志免石炭の炭質が七割は粉炭でございまして、国鉄消費します石炭は、どちらかと申しますと、塊炭希望いたすわけでございます。それで、志免のは、今申し上げましたように、粉炭割合が非常に高い炭でございますので、志免を持っておりましても、粉炭割合が高いために、総数量からみて品質上まずくなるのじゃないかというような点も、われわれといたしましては検討をいたしておるわけでございまして、採算のみならず、いろいろな面から検討いたしまして結論を出したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  21. 田原春次

    田原分科員 粉炭が多いと言いますけれども鉄道の使っております豆炭などを見れば、これは粉炭から作るのですから、粉炭が多いということ自体が特に志免鉱業所を手放さなければならぬ理由にはならぬと思う。なおこの払い下げの問題が起りますや、各方面のブローカーあるいは利権屋等が非常に暗躍をしておりまして、そこにまたいろいろな不正や不当も予知されるのです。国有財産処理に当って、処理が適当であるかどうかが第一問題であるが、処理するといたしましてもそういう不正不当のうわさの中に処理するということは、国民がますます不安に思う。この際は経営調査会答申答申として尊重するけれども、なお広く一般国民の動向、並びに志免鉱業所に働いておる人々の気持等も尊重して、軽々しく払い下げに応ずるがごとき態度はとらない方がいいと思う。この際はそういう払い下げ交渉等を一切打ち切るという態度に出るべきと思いますが、それに対する御見解はどうですか。
  22. 小林重国

    小林説明員 業界におきましていろいろ問題にいたしておるようでございますが、われわれといたしましては、こういった大きな財産でございますので、この処置につきましては、もちろん十分な検討と慎重を期して処理いたしたいと思います。そういった忌まわしい結果の起らないように、もしも譲渡するといたしましても、そういうような結果の起らないように十分注意して参りたいと思います。
  23. 田原春次

    田原分科員 一応小林常務理事言葉を信じまして、軽々に処置せられないように、国鉄経営調査会はなるほど経営その他の専門家であるかしらぬが、なお国会国民全般の意向を代表する法的機関でございますから、経営調査会だけの意見に左右されることのないように、やはり独自の周到な用意をもって——大体国の経済が公営主義に移りつつあることもお考えになって、この際はこれらの払い下げ運動に応じないように希望しておきます。  次は大蔵省為替局にお尋ねしたいのであります。先般総括質問でもちょっと触れたのでありますが、いろいろありますうちで、為替局に、外国映画日本映画に対する過去一年間の数字並びに今後の見通し等を話していただきたい。
  24. 石田正

    石田(正)政府委員 日本映画の方の数字は私ちょっとここに持っておりませんが、外国映画関係数字だけを申し上げます。昭和三十年度における全体の日本外国映画輸入の本数でございますが、これは百八十本というふうなことでやっておりました。その間におきまして、映画輸入やり方についていろいろと御意見等がございました。昭和三十一年度におきましては、これを九本増しまして百八十九本に増加いたしますと、まず輸出をいたしまして、その輸出ボーナスというのを五本増しまして、従来十本でございましたのを十五本にしたわけでございます。それから優秀映画に対しましてボーナス的追加輸入を認めます分を二本増しまして、六本を八本にいたしたわけでございます。なお基本割当の問題につきましては、小さな映画輸入業者統合をいたしまして、その端数整理等がございました。その関係におきまして、統合を促進する意味におきまして、二本増しました。大体以上申しましたようなことで、本年度は百八十九本ということで実施いたしておる次第でございます。
  25. 田原春次

    田原分科員 昨年の予算委員会で、私は一萬田大蔵大臣にこの点を質問いたしましたところ、外国映画は漸次減っていこう、特にドル支払いの面においては、そのドル支払いを減していくということを言っております。それから数日前の池田大蔵大臣予算委員会における私の質問に対しても同様に漸減方針をとるということですが、今承わりますと、昨年の百八十本をさらに九本ふやしておる。これはわれわれの希望とおよそ逆行しておるのじゃないかと思うのです。私どもの、希望は、なるほど娯楽として外国映画を見ることはいいけれども、高い、血の出るようなドルを使ってまで、あまり感心しない映画をたくさん入れる必要はない。御承知通り百八十本の外国輸入映画のうち八割以上はアメリカから来る映画でありますが、アメリカから輸入される映画のうちのまた八割以上は、ほとんど西部劇なりギャング映画にすぎない。それを見て国民がふるい立って、日本民族の再建に気持が向うというようなことは毛頭ないのです。これに対して五百万ドル近くのドルを年々使うということは、われわれとしては納得できない。またこれらの映画そのものの与えます青少年への悪影響というものは——最近のいろいろな青少年の犯罪はほとんどアメリカ映画の影響を受けておる。そういう意味からいたしましても、入れるならば優秀な映画だけを入れるというなら納得が行きます。優秀な映画を入れる方法としては、まず第一に、あらかじめアメリカから百六十本を入れるというような本数を決めてかからずに、輸入映画の審査会にかける。あるいはドルの面から考えるならば、バーター制で日本映画を買う本数だけ入れるという手もあるわけであります、大蔵省の最近とられておる外国映画輸入方針は、一種のマンネリズムに陥っていると思います。単にドルの操作をちょっと加える程度であります。それでははなはだ不満足であります。この際思い切って従来の輸入映画に対する審査会等において、同じような人間に、特に映画業者を入れてやりますと、一応実情に通ずるようであるが、実は映画業者の不利益になるようなことは決定し得ませんから、はなはだしく実情から背離してくると思います。でありますから、一応委員でも入れかえて、ドルの保有、それから国民文化の向上、健全な娯楽と、並びに日本映画とリンクさせるような新しい観点から再出発するような方針をとられたらどうかという声が、非常に一般の国民の間に起っているわけです。大蔵省としてはドルだけ、為替のことだけを考えているようだけれども、その観点でなくして、せっかく映画を入れるなら、もっと高い広い見地から見られたらどうか。このことは反動的とか保守的とかいう意味でなくして、進歩的な高尚な娯楽としての外国映画は尊重していいと思うのです。アメリカの百六十本だけが優秀である。ソビエトや中国や西ヨーロッパの映画だけがだめであるとはとれないと思います。そういう私ども考え方はどうでありますか。これに対する御批判をいただきたいと思います。
  26. 石田正

    石田(正)政府委員 外国映画の全体の本数をだんだん減らしていく方がいいのではないかということが、まず第一の問題点かと存じます。この点につきましては、大蔵省といたしましては、為替収支の状況を見まして、どういうふうな本数が適当であろうかということを種々考えておるわけでございます。御承知通り昭和二十八、九年の為替の工合が悪くなりましたときに、二百本でありましたところの映画の本数を、大体百六十本に減しましたことは御承知通りだろうと思います。減しましたあと二十九年、三十年というふうな工合に国際収支はだいぶよくなって参ったわけでございます。それに伴いまして、外国映画だけいじめるのはどうか、もっと外国映画をよけい入れたらどうかというような話がたびたびあったのでありますけれども大蔵省といたしましては、お話のような点も考慮いたしまして、ふやさない方針で大体参ったわけでございます。しかるところ、昭和三十一年度におきましては、さらに国際収支がよくなるだろう、よくなるというと語弊がありますが、国際収支の規模が大きくなってくるということで、ここで少し本数の点を考え直したらどうか、三年目でございますので、そういう気持になったわけでございます。その結果、ふやすことについてどういうふうにするかということをいろいろ検討いたしました。いろいろお話がございましたが、三十一年度、本年度映画輸入方針といたしまして変りました大きな点は、二つあるかと思うのであります。一つは従来アメリカ映画とかイギリスの映画というふうな工合に個別的に指定しておりましたものを、先ほど申し上げました百八十九本のうちの基本割当百六十六本につきましては、これを二つに分けまして、一つは百二十二本でございます。これは大体アメリカ映画が従来持っておりました分でございますが、これは必ずしもアメリカ映画だけを輸入するということでなくていいのだ、いわゆるグローバルという割当にいたしまして、もし輸入する人が好むならば、また国内の嗜好がそれを欲するならば、必ずしもアメリカ映画でなくていいのだということをやったわけでございます。それからもう一つ、先ほど申し上げました中で、本数をふやしたのは二つでございます。その一つは優秀映画の本数をふやしたということでございます。この点は、従来優秀映画ボーナスをつけることにしまして、私どもは過去の実績から申しまして、従来アメリカ映画ばかりがいいのではない、ほかの映画もいいのだという声に即応するような形に運営してきておるわけでございます。アメリカ映画でも優秀映画として指定されますけれども、しかしフランスの映画にしましてもイタリーの映画にいたしましても、優秀なものは指定される。そういうものがいいものであるということの見通しがついて参りました。だんだんそういうものを輸入するような方向に入っております。  それからもう一つの輸出ボーナスの方でございますが、このボーナスを十本を十五本にいたしまして五本ふやしたわけであります。輸出ボーナスで入れるものにつきましては、米英仏伊のように従来ある程度割当になってきたもの以外のものを入れる。そういう制限をつけることにいたしまして、それ以外に新しい映画の入ってくる余地をふやす、そういうことでやっているわけでございます。  そういうふうな次第でございまして、われわれといたしましては、三十二年度映画輸入の本数をどういうふうにきめるかという問題につきましては、三十二年度の国際収支の全般の見通しに関連いたしまして、外貨予算をどういうふうに組むかというときにきめることになるわけであります。今のところわれわれは、今やっておりますものを全体としてふやすというふうなことには、これが限度じゃないかと思っておりますが、従来とって参りました考え方及び本年度とりました考え方というのは、こういう点にありますことを御了承願いたいと思うのであります。
  27. 田原春次

    田原分科員 劇映画の問題だけのお答えでありますが、文化映画、科学映画、教育映画、ニュース映画等は、これこそ制限等をせずにどんどん入れて——国を問わず、過去の実績を問わずに入れるべきものであると思いますが、それに対する措置はどうなっているか、伺いたいと思います。
  28. 石田正

    石田(正)政府委員 われわれの方でやっておりますのは、あらかじめ申し上げました通りに、それによりまして外貨支出額がどうなるかということを中心に考えているわけであります。従いまして劇映画につきまして先ほど来申し上げたのでありますが、文化映画、ニュース映画等につきましても、国際収支の状況が許しますればふやしますけれども、それらの点を考えて措置いたしたいと思っております。  なお短篇映画につきましては、御承知通りに文部省の方にお願いいたしまして、特に割当をしないで、文部省の推薦によりましていい映画を十数本入れるということを現在やっております。これは続けて参りたいと思っている次第であります、
  29. 松本瀧藏

    松本主査 河野密君。
  30. 河野密

    河野(密)分科員 ごく簡単に二、三の点を御質問したいと思いますが、最初に造幣局長にお願いします。いろいろ巷間取りざたをされております百円硬貨の発行の問題はどういうふうにきまっておりますか。それから現在の造幣局の特別予算の中に、百円硬貨を発行する予算というのは組まれているのですか組まれていないのでしょうか、これを一つ伺います。
  31. 脇阪實

    脇阪説明員 お答えいたします。現在百円紙幣でありますが、百円硬貨を出すということにつきましては、理財局の方で通貨政策として大蔵省全体がきめるわけでありますが、これは法律を要するわけであります。法律改正がなければできないので、それをしなければならないわけでございます。予算については、来年度予算で五千万枚百円紙幣を銀貨にするというふうに予算が組まれております。
  32. 河野密

    河野(密)分科員 この特別会計の予算は大へんむずかしくてあれなんですが、その予算はどこのところに組み込まれているのでしょうか。
  33. 脇阪實

    脇阪説明員 それは労務費その他に入っているわけでございます。原材料に銀、銅、亜鉛というようなものが、ほかの、たとえば五十円ニッケル貨、十円青銅貨、一円のアルミというものとあわせて組まれておるわけでございます。
  34. 河野密

    河野(密)分科員 もう一つお尋ねしますが、あなたの方では、百円紙幣をなぜ硬貨にするかという理由は、わからないのでしょうね。国民の便益を考えているのか、あるいは百円紙幣の破損度というようなものから考えているのか、どういう理由でやるのかということは、あなたの方の所管じゃないわけでしょうな。
  35. 脇阪實

    脇阪説明員 これは通貨でございますので、たとえば紙幣をどれだけ出すかとか、あるいは補助貨がどれだけ要るかということは、通貨全体、それから今後の通貨の見通しといったようなものを基本としてせられるわけでありまして、やはり理財局で、全体計画によって計画が立てられるものであります。
  36. 河野密

    河野(密)分科員 さっき伺うと、大体この予算の中に組み込まれておるというのですが、この予算の「事業上の製造経費の不足を補うため、補助貨幣回収準備金より受け入れる」という、この中に入っているわけなのですか。
  37. 脇阪實

    脇阪説明員 造幣局は御承知のように独立会計でやっておりまして、貨幣を作り、それを日本銀行へ納め、補助貨幣の回収資金というものがあるわけでございまして、そこから経費を出すことになっておるのであります。受け入れそのものにもむろん関係がありますが、歳出の方の、たとえば原材料費で申しますと十三億四千六百万——その他労務費は労務費で入っているわけでございますが、そこに入っているわけでございます。
  38. 河野密

    河野(密)分科員 そうしますと、五千万枚の百円硬貨に切りかえることがかりに法律できまったとすれば、これはそのほかの借入金とかそういうものは必要なしに、これでまかなえるわけですか。
  39. 脇阪實

    脇阪説明員 独立会計をとっておりますので、もちろん借入金とか、そういうものは関係はないのでございます。
  40. 河野密

    河野(密)分科員 理財局長がお見えになったそうですが、大蔵省で百円硬貨をお出しになるその理由というのは、大体どういうところをねらっているのですか。手持ちの貴金属を活用するという意味であるのか、国民の便益を考えるという意味なのか、あるいは貨幣系列というものを整えるとかいうような意味なのか、そのねらいはどういうところにあるのでしょうか。
  41. 河野通一

    河野政府委員 お答え申し上げます。百円硬貨を出したいということの理由は第一には、現在の諸外国の例、及び日本における戦前の普通の状態における貨幣の組み合せの状況、その他から考えまして、現在ではすでに百円程度のものは硬貨であることが、貨幣の系列とか組み合せという点から見ても、適当であろうという観点に立っております。かたがたそのことによって各方面の便益に資する点が多かろうと思いますし、さらに国民経済全体のコストという点から考えますと、現在の百円の銀行券の印刷のために要する経費、これと、コインを作りました場合の経費、それに耐用年数等を考え合せます場合には、すでに現在においては百円の通貨はコインに改めた方がはるかに経済的だ、こういう点等を兼ね合せて百円硬貨を製造することが適当であろうという結論に到達したわけであります。かたがた、いろいろな意味の銀の使用ということにつきましても、現在いわゆる接収貴金属の問題につきましていろいろな御議論がありますが、それの利用をはかるために銀貨を出すのであるといったような考え方には立っておりません。現在のところでは相当程度の手持ちも政府にございますし、ここ一年、二年の点につきましては、その問題とは関係なくして、百円銀貨の製造をいたして参りますために支障のない程度のストックは持っておりますので、その点は、そのために銀貨を出すということではない、かように御了承いただきたいと思います。
  42. 河野密

    河野(密)分科員 お話によりましても別に決定的なものはないようですが、大蔵省では一体貨幣の系列というものをどういうふうに——今度は五千円札、一万円札もお出しになる計画のようですが、一体貨幣の系列をどういうふうにしていくかという問題はどうも根本的に対策は立っておらないように思うのですが、これはあなたに御質問するあれかどうかわからぬですけれども大蔵省として考えているところがあったら承わりたい。
  43. 河野通一

    河野政府委員 貨幣の系列と申しますか、組み合せの問題は、これは別に絶対不変の原理とかいうものは私はないと思います。やはり出て参りますところは、経験的にどの程度が適当であろうかというところから出て参るのでありますし、また各国の事例及び日本の過去における貨幣価値とその当時の通貨の系列といったようなものの過去の沿革等も考えなければならぬ。そういう点から考えますと、いろいろ御議論はあると思いますが、現在の状況におきましては、私は銀行券の最高の券種が一万円程度であることは何ら差しつかえないのみならず、その程度のものが出ることによって、非常に高額に過ぎる銀行券が出るということには相ならぬと考えております。五千円の問題は、今あります千円と一万円の間にやはり五千円の程度を入れた方がいいのではないかというふうな程度考え方でございまして、これは刻みをどの程度にしていくかという現実的な問題だと思います。むしろ最高の銀行券の券種は一万円程度を出すことが適当でなかろうかということが主眼になったと考えます。  それからコインの方は、先ほど申上ましたように、大体現在の貨幣価値その他諸般の状況から考えまして、百円の程度を最高のコインということにいたすのが適当であろう、かように考えておる次第でございます。  なお、お尋ねの点は、あるいはデノミネーションの問題とか、あるいはインフレーションとの関係がどうなるかという点についてのお尋ねかと思いますが、とりあえず私が今券種として、あるいは通貨の系列として考えております点だけを申し上げたわけであります。
  44. 河野密

    河野(密)分科員 お話のように、デノミネーションの問題についても伺いたいと思ったのですが、これはどうでしょうか。大蔵省としては現在そういうことについても研究なすっていらっしゃるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  45. 河野通一

    河野政府委員 いろいろ内部で検討いたしたことはございますが、現在デノミネーション等のことは全然考えておりません。
  46. 河野密

    河野(密)分科員 今度は造幣局長にちょっと伺いますが、百円硬貨をお出しになるというのですが、その百円硬貨の品位とか、形とか、大きさとかいうものについてはすでにもう検討が済んで、これはできておるのでありましょうか。
  47. 脇阪實

    脇阪説明員 さいぜん申しますように、法律が通るということが先決問題でありまして、まだこうするということは十分きまっておりません。
  48. 河野密

    河野(密)分科員 法律はいつごろお出しになるのでしょうか。
  49. 河野通一

    河野政府委員 この問題につきましては、御案内のように、たとえば紙幣の原料でありますところのミツマタの生産者に対する影響の問題等、いろいろ考慮しなければならぬ問題がございます。こういった問題につきまして事務的には大体結論を得ておりますが、さらに各方面の御意見もいろいろと伺いながら、これらの問題の解決を並行してはかりつつ、できるだけすみやかな機会に所要の法案の御提出をいたしたい、かように考えておるわけでありまして、今のところではまだ時期的にもはっきりしたことは申し上げられませんが、もちろんこの国会中には成立を見たいというつもりで提案の御準備を申し上げたい、かように考えておる次第であります。
  50. 河野密

    河野(密)分科員 先ほどの造幣局長のお話では、五千万枚作るということがこの造幣局の特別会計の予算の中には組み込まれておるというのですが、その貨幣の実際の品位、大きさ、そういうものはかりにどういうふうになっても、この予算はちっとも差しつかえないようにできておるのでありましょうか。
  51. 河野通一

    河野政府委員 予算の上では、具体的に申し上げますと、要するに原料でありますところの銀をどの程度手当をするかという問題が中心になるのであります。これらの点も、大体大きさ及び一個の純銀分をどの程度にいたしますかということは、内部では二案、三案、いろいろ検討いたしております。従いましてその点は違いましても、量目といたしましてはそう大きく違ってくるとは考えられません。従いまして今考えております幾つかの案のどれをもカバーできる程度の銀の手当はできるようにこの予算ではなっておるわけであります。
  52. 河野密

    河野(密)分科員 今度は印刷局長にお尋ね申し上げます。印刷局では、現在五千円札は計画に上っておるかどうか存じませんが、一万円札は印刷しておると思うのですが、どの程度に進んでおるのでありましょうか。
  53. 大槻義公

    ○大槻説明員 お答え申し上げます。一万円札印刷は今年度中におきまして三百六十万枚、こういう製造の予定でございます。なお五千円札は最近製造に着手いたしました。一万円札は三百六十万枚、五千円札は二百五十万枚、こういう製造計画で進んでおります。
  54. 河野密

    河野(密)分科員 印刷局特別会計給与総額算定表というところを一つお開き願いたいのですが、この中に定員と書いて七千五百三十三人とこうなっておりますが、そのほかに、計のところに九十五人九ヵ月とこういうふうに書いてあります。これは私の見た範囲では、造幣局と印刷局に限ってこういう給与の算定を出しておるようでありますが、これはどういう趣旨でこういう予算の組み方をしたのでしょうか。
  55. 大槻義公

    ○大槻説明員 印刷局の現在の定員は七千六百四十一名でありますが、三十二年度の予算におきましてはその定員を九十五名減らす、こういう予算になっております。御質問の予算の説明は、その九十五名分につきましては九ヵ月分の給与を来年度としては見ておる、こういう意味におきましてそのような説明がついておるわけであります。
  56. 河野密

    河野(密)分科員 定員七千六百四十一名を九十五名減らす、そしてそれだけの人間を整理するということですが、これは印刷局の作業量に関係のある今の百円硬貨切りかえその他のことから生ずるものでありますか、それともどういう理由によるのでありますか。
  57. 大槻義公

    ○大槻説明員 削減の理由といたしましては、来年度におきまして設備の改善をはかり、なお能率を向上するということによりまして、九十五名程度の定員を減らしても何ら作業の実行上におきまして支障がない、こういう考えの上に立っておるのでありまして、百円硬貨が来年度において実現するか、その関係において九十五名減らすのだという考えでは全然ございません。
  58. 河野密

    河野(密)分科員 この定員を九十五名減らすということは、大蔵省全体の定員には関係ないのでしょうね。
  59. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 御質問の前段を伺っておりませんでしたので、お答えが違うかもしれないのでありますが、三十一年度末の大蔵省の定員は、一般会計が六万三千百五十四人、特別会計が九千八百五十三人、それが三十二年度末の定員では、一般会計が六万三千二百七十一人、特別会計が九千七百三十三人、差引増減を見ますと、一般会計で百十七人増加いたしまして、特別会計では百二十人減少をいたしております。百二十人減少いたしましたのは、印刷局特別会計におきまして九十五人、造幣局特別会計におきまして二十五人それぞれ減少ということに相なっております。
  60. 河野密

    河野(密)分科員 私の調べたところによりますと、印刷局特別会計の定員の中で、現在相当の欠員があるようですが、一体欠員は何人ありますか。
  61. 大槻義公

    ○大槻説明員 一月末現在におきまして二百九十名ございます。
  62. 河野密

    河野(密)分科員 二百九十名の欠員は、今までの七千六百四十一人の中に入っているわけですね。予算は七千六百四十一人、こういうように現在計上しておるわけですね。
  63. 大槻義公

    ○大槻説明員 そうでございます。
  64. 河野密

    河野(密)分科員 そうすると二百九十人の欠員は、当然三十二年度においては補充なさる、こういう考え方ですか。
  65. 大槻義公

    ○大槻説明員 現在の考え方といたしましては、約四、五十名程度の職員は新年度に採用したいと考えておりますが、それ以上の考えは持っておりません。
  66. 河野密

    河野(密)分科員 二百九十名欠員があって、なおかつ九十五人、人を減らす、そのうちで四十人かりにふやすとしても、やっぱり三百何人現在の定員よりは減る、こういうことになるわけですね。そういう考え方なんですか。
  67. 大槻義公

    ○大槻説明員 かりに二百九十名の欠員で新しい年度を迎え、年度当初に五十人採用しますとすれば、二百四、五十名の欠員をもって年度を始める、そういう考え方でおります。
  68. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 九十五人削りますのは、これは定員法上の定員と申しますか予算上の定員と申しますか、定員を落すわけでございまして、欠員が現に二百何十人ございまして、そのうち四、五十人埋めて、年度末には二百人余りの欠員になるといたしますと、定員が落ちますればむしろ欠員の方が今度減るということになるわけでございまして、現員がさらに減るということではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  69. 河野密

    河野(密)分科員 では主計局長に伺いますが、大蔵省全体として欠員はどのくらいあるのですか。
  70. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 所管ではございませんのではっきりしたことがわからないのでございますが、一番大きな定員を擁しておりまする国税庁関係では四、五百人の欠員でございます。本省関係数字は今至急調べましてお答えいたしますが、大体一%から二%、その辺じゃないかと存じます。
  71. 河野密

    河野(密)分科員 大蔵大臣が見えましたからお尋ねしますが、欠員というものは、欠員をそのまま認めて一種のアローアンスというふうに認めて、予算にゆとりを持たせて編成しておると思うのですが、これはもう一つの慣習で、それは当然のことのようにお考えになっておりますかどうでしょう。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げますが、別にアローアンスという意味ではないのでございます。大体欠員というものは随時やめて参りますので、一定の時をとって参りますと、一、二%あるいは二、三%、ときによっては四%ぐらいもあり得ると思います。大体採用のときを一応きめておるものでございますから、自然減耗の分が欠員として出てくるようになると思います。
  73. 河野密

    河野(密)分科員 私はどうも今のお答えでは納得がいかないのですが、実際において私の調べたところが印刷局特別会計ですから全般を推すのはどうかと思うのですが、これはもう私は間違いないと思うのですけれども、二百九十名の欠員がある。しかし予算は定員通りで組んで出してしまう。この二百九十人の欠員というものは埋められない。大体埋められないということで予算だけは定員通りにやっておる、こういうことはいいのか悪いのか、これは私は非常な問題じゃないかと思うのですが、それだけに予算にゆとりがあるとも言えるし、ベース・アップの問題とかそういうものに対処する場合には非常にいい場合もあるかもしれないが、これは一体予算の建前からどういうことになるのでしょうか。大蔵大臣やっぱりこういう仕組みでもっていいというふうにお考えになっておりますか。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 理想は欠員のないことを理想といたしますが、しかし先ほど申しましたように、病気その他自然退職も数多い中では相当ありますの・で、一定時の欠員はある程度やむを得ないかと思います。それで継続的に欠員がある、そうしてそれを削除してもまかなえるというときには、これは定員がえをすることが当然であると考えております。
  75. 河野密

    河野(密)分科員 そうすれば予算に定員で組んでいる以上は、これは欠員があったときにはすみやかに埋めるというのが本則だ、こういう原則はお認めになるでしょうね。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 その原則は埋めるべきであると考えます。
  77. 河野密

    河野(密)分科員 そうしますと、印刷局長に伺いますが、現在二百九十名の欠員がある。その欠員があって、定員は九十五名減らすとすれば、欠員の数もおのずから減りますが、それを四、五十名程度埋めるのだというふうに言っておられますが、それをみんな埋めないという理由はどういうところにあるのでしょう。
  78. 大槻義公

    ○大槻説明員 これは大臣の御答弁にもございましたが、本来全部埋めるのが建前かと存じますが、実行上必ずしも一度にそのような多量な職員を採用することが困難であるというような事情もありますし、さらに実際問題としては欠員があるために生ずる予算のゆとりというものは、いろいろ職場の現実の問題として、全体の責任者としてはこれを昇給の財源に使うということもございますし、印刷局としては四、五十名程度の補充によってあと定員減がございますから、それを引けば百五十名程度の実際の欠員になりますが、それで作業を進められる、かような考え方になっております。
  79. 河野密

    河野(密)分科員 そうしますと、これは印刷局長に念を押しておきますが、九十五名が減るというのは定員が減るのであって、実際には印刷局では二百九十名の欠員があるのだから、その定員の数を減らせば、現実的に印刷局の現在の従業員の中から九十五名は動くことはない、こういうことですね。
  80. 大槻義公

    ○大槻説明員 考え方はその通りです。
  81. 河野密

    河野(密)分科員 考え方でなく、実際にもその通りでございますね。適当な人がないから埋めないというのだから、現在働いている人は適当なんだから、その人を減らすことはない、こういうことですな。
  82. 大槻義公

    ○大槻説明員 強制してやめてもらう、こういう考え方はとっておりません。ただ通例の場合において、平生でも退職者があるのでございますから、そういう意味で退職があることは当然かと思いますが、定員を九十五名減らすからそのために九十五名にやめてもらうのだ、こういう考え方には立っておりません。
  83. 河野密

    河野(密)分科員 わかりました。私は、定員で予算を組んで、欠員というものを一種のアローアンスという言葉は悪いかもしれぬが、アローアンスとして考えておるということはどうも納得がいかないのです。この点は一つ大蔵大臣もよくお考え願いたいと思います。  長くなりますからやめますが、先ほど大臣がいらっしゃる前に私が質問いたしましたのは、現在の通貨の系列というものを、大蔵省はどう考えておるのだろうか。その通貨の系列を正すというならば、もうこれ以上通貨の動揺が起らぬという国民に一つの安心感を与える必要があると思う。そういう場合にはデノミネーションをやるか何かして、ここで大体通貨は安定したのだ、こういう考え方になってから通貨の系列を正すならば正されるのが至当ではないかと思うのですが、今度大蔵省では百円硬貨を出されるという方針のようでありますが、どうもその間における通貨に対する考え方というものが、便宜主義じゃないかということをさっき伺ったのですが、大臣からお答えがあるならば一つ伺っておきたいと思います。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 通貨の系列は、そのときそのときの経済事情によって考えなければならぬと思います。私はただいまのところデノミネーションということは考えておりません。従いまして今の現状から申しますと、私はいろいろな点から考えまして、最高千円というのでは実態に沿わないじゃないか、一万円、五千円両券が必要であると考えまして準備をいたしております。  それからお話の百円につきましてこれをどうするか、経済の発達によりまして非常にああいう百円程度の需要がふえてきております。これを今まで通り百円札でいくか、あるいは補助的に硬貨を作るかということは、目下検討を加えておるところでございます。
  85. 河野密

    河野(密)分科員 最後に一つガソリン税について、内容はお尋ねしませんが、このガソリン税というものは、一体需要者に転嫁するということを大体目標にしてガソリン税というものをおきめになったのか、それとも業者がその現在の収益の中から納めるのだ、こういう考え方でガソリン税の率をおきめになったのか、この点は一つ大臣からはっきりした御返事を聞いておきたいと思うのです。ガソリン税を物価の方に転嫁する考え方であるのか。それとも業者にゆとりがあるから業者から納めさせるのだ、こういう趣旨なのか。この点だけを承わっておきたい。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 ガソリン税の引き上げによる分は、建前といたしましては需要者に転嫁する建前でございます。
  87. 河野密

    河野(密)分科員 一般国民にですか。消費者にですか。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 消費者にでございます。
  89. 河野密

    河野(密)分科員 それでは物価が上るということ、運賃その他が上るという建前にしておるのですか。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 建前はそういうことです。
  91. 河野密

    河野(密)分科員 終ります。
  92. 松本瀧藏

    松本主査 山本勝市君。
  93. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 だいぶん時間もおそくなっておりますので、簡単にお伺いいたしますが、相続税の問題であります。お伺いいたします私の目的は、今の相続税について——もちろん大きな財産を持っておる者から相続税を取るということは、これはもう当然のことであり、必要なことでありますけれども、小さな、ことに農村の場合、農家が、事実上相続法のいかんにかかわらず、一つの家業として相続をしておるのでありますが、その実情が非常に困っておるという実情でありまして、これを何とか変えなければならぬという考え方を持っておる、そういう前提でいろいろなお伺いをしたいのであります。「昭和三十二年度租税及び印紙収入予算の説明」の十九ページのところに相続税の説明がありますが、三十年度で三十四億の税収を上げておるのを、三十二年度では十億円余り増しまして四十五億七千万円ばかりに相続税の税収を増す予定のようでありますが、その理由に、三十年度に対する三十二年の課税財産価額の騰貴率を財産の種類別課税実績を勘案して、相続税については一七・四%というものが財産価額の騰貴率ということになっておりますが、その騰貴率というのは一体どういう意味か。これは大臣でなくてけっこうなんですが、まずお聞きしたいのです。
  94. 中島晴雄

    ○中島説明員 お答え申します。相続税の課税につきましては、三十年の課税実績をもとにいたしまして、二年間の伸びを見て見通しを立てておるわけでございます。その場合に、三十年の課税財産価額よりも三十二年が、今御指摘がありましたような騰貴率を示すであろう、こういうふうに見たわけでございます。従いまして、これは評価の増ということにもなると思います。
  95. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 価額の騰貴率というのは、その財産相続税をかける、課税対象になる財産の価額が上るというのか、それともこれまでの価額査定のときの標準が低過ぎたから、それを上げるのか。それをまず……。
  96. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 便宜私から御説明申しますが、課税価額といいますのは、課税の対象になる価額でございまして、従って相続財産のボリュームの増、それも一応見込んでおりますし、それから土地の場合におきましては多少——これは将来の値上りという意味ではなくて、過去から現在までにおいて相当の値上りが現実に出ているその分、そういうものも込めまして、結局ボリュームの増と価格の増、それをかけ合せたところをこの課税価額と、こういうふうな一括したところで見込んでおります。
  97. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 その物価が十七・四%上るという、そういう課税対象になる物価が上るというのではないのですか。
  98. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 今申しましたように、土地などにつきましては、土地価格の値上りも入ってはおります。しかし単純に将来の物価値上りを見込んでいるというよりも、むしろ相続財産のボリュームの増ということが中心になりまして、課税価額の増が出ている、こういうふうに御理解願っていいと思います。
  99. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 ボリュームがふえる。——こういうことはないのですか。たとえば農家なら農家について、反当りわれわれの方では三万五千円くらいの増加になっているようですが、実際はいろいろな公用の徴収を行うとか、あるいは道路を作るについて買い上げる場合には、十五万とか二十万とかいうふうに売買されておる。三万五千円というのは安過ぎるからそれを少しずつ上げるというような意味は含んでいないのですか。
  100. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 先ほど申しましたように、土地などにつきましては、今後の値上りを見込むというよりも、過去においてすでに相当の値上りが出ておりますから、その分を見込むということは考えております。従いまして、今御指摘になりました三十一年度と三十二年度の田畑の関係について申しますと、これは一応私の方で標準として持っている数字でございますが、三十一年度の場合におきましては、田につきましては、賃貸価格の三千百倍を一応標準にとっておりましたが、三十二年度におきましては、三千六百倍を標準にする、こういった意味——これは最近の主として土地だと思いますが、そうしたものの値上りというものを反映させる意味の増加、これはお話のように入っております。
  101. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 それでは、こういうことをお認めになりますか。農村の中に、実際はこれまでは反当り三万円とか三万五千円に評価されておりながら、つまり実際の相場よりも安く評価されておっても、なおかつ相続税を一ペんに払える人というものは、われわれの方ではほとんどいないのです。東京付近ですから、比較的富裕なのですけれども、それでも一ぺんに払えないで、分納をさしてもらっている。つまり農村の農家の相続財産を納めるのが、大部分分納で納まっているという事実をお認めになるかどうか。
  102. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 相続税の性格が、これは山本委員よく御承知のように、一応財産税的な性格を持っております。従いまして、所得税のように、ことしの所得が生まれて、その所得の中から払うというものと、性質的に違った面を持っております。しかし納税者としますれば、できれば相続財産処分して税金を納めるということではなしに、所得のうちから納めていきたい、われわれとしましても、できればそういうことになっていただきたい、こういうことからいたしまして、相続税につきましては、その額に応じて延納の制度が認められているわけでございます。従いまして、農家におきましても、無理のいかないような意味におきまして、そう財産処分するのは決して好ましくありませんから、従って、所得のうちから納め得るということを一応の考え方の中に入れまして、延納の制度が利用されている、これはそういうことはあろうと思います。
  103. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 時間がないから、こまかいことは略しますけれども、実際にわずかに二万円とか三万円とかいったような、多くても十万円以内の相続税を、御承知通り財産税であって、所得にかけるのでないものですから、金がなくて分納をさしてもらっておる、延滞利息を払っても、やはり分納さしてもらっておる、それですらもなお困難であるから、昨年でありましたか、一昨年でありましたか、御承知通り、農林省の関係で、相続税を納めるのに困る場合に、田畑を売らなくても何とか納められるようにというので、たしか二十年間の年賦で、年五分という安い金利で相続税を納めるための金を貸し付けるという制度まで作ったことは、御承知だと思います。分納にしてもなおそれだけのことを国家でやらなければ納まらないという実情は、御承知だと思う。農林省の方でそういう制度を作ったことは御承知でしょう。御承知なければ、それは事実そうなんで、お調べ願えばわかる。とにかく相続税を納めるような場合に、田畑を売らないで納めさせるためにということもちゃんと加わって、十五年間の年賦というのを、国会の修正で二十年にして、年五分ということで貸し付ける。従来もあったのですけれども、制度として作ったのです。とにかくそれほど困っておる。具体的な名前はあげませんけれども、ある村では、たくさんの子供に分割して相続した。実際は分割していない。分割したら、自作農を維持していくという国家の政策からいっても、とうてい農業経営として立っていかぬものですから、分割していないけれども、分割したという形式をとって、それは合法的なのですが、そういう形式をとって、相続税というものをほとんど納めていない村もある。そうでなくて、正直にほかの子供、相続人以外のものが権利を放棄して、一括して相続しておるとこもあるのですが、一括して相続をすれば、今申したように、とうてい一度には払い切れないし、分納でもむずかしい、こういう実情はお認めになるかならぬか。
  104. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 現在の制度は、シャウプ改正以来、御承知のように遺産取得税であります。従来日本の相続税は、ずっと長い間遺産税で参りました。従いまして、相続財産が何ほどであるかというところを中心にしましても、課税するか課税しないか、課税する場合に税率が幾らか、これがきまってきたわけです、従って、遺産税の場合であれば、相続人が三人であるか五人であるか、あるいは一人が相続するかということに関係なしに、百万円の遺産があれば百万円、二百万円なら二百万円、現在の相続税の建前は、御承知のように遺産取得税になっております。従いまして、お父さんがなくなられまして、相続財産が二百万円のものがあったとした場合におきまして、一人の人がそれを相続する場合、あるいは三人の人、四人の人が相続する場合と、これでもって税の関係は全然違った形になる、そういうとろから今のようなお話が出てくるのじゃないかというふうに思います。現在のような建前——遺産取得税の建前、これも一つの考え方だとは思いますが、その建前をとっております限りにおきましては、やはり相続財産、個々の相続人がどの程度財産を取得したかということから、五十万の取得があればその中から適用される。従いまして、大体数人の人が相続財産を相続する場合におきましては、あなたは三万五千円と例をおっしゃいましたが、私の方で標準的なものとして考えております平均的な数字は、大体賃貸価格が十七円三十八銭くらいになっておりまして、これを今度の三千六百倍でやりまして反当り六万二千五百円、これが大体全国平均の数字ではないかというふうに思っております。一町歩持っておりまして六十二万五千円、そのほかに家屋とかいろいろなものがあるでございましょう。従いまして、それを何人の方が相続するか。現在の基礎控除は五十万円になっておりますから、数人の方が相続なされば、相続税の問題は起きない。一人で相続する場合になりますと、相続税の問題が起ってくるのじゃないか、かように考えております。
  105. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 今度のは反当り六万二千円、去年のは幾らになっておりますか。
  106. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 昨年は先ほど申しましたように、三千百倍を基準としておりましたから、今の賃貸価格と同じ場合、五万三千八百七十八円ということになっております。
  107. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 とにかく事実はお認めになっておるのだと思いますが、実はある税務署長から——これは若い税務署長でなしに、老練な税務署長で、その後税務署長がかわってどこかに出世していかれましたけれども、その税務署長が、私にこんこんと陳情された。陳情という言葉はおかしいけれども、何とか農村の相続税を変えるように努力してもらえないか。今言ったように、実際財産税ですから、所得があってもなくても、おやじが長年わずろうて薬代を払って、ようやくどうにかしのいできたところに死なれた、それで相続をするということになったら、金は一文もなくても払わなければならぬ。しかも、それをどうにも困るからというので、合法的でありましょうが、法律通り何人かに分けたことに形を整えてやってもらえばのがれられる。それ以外に方法がない。正直にやれば確かにどうにもならぬ。しかも署長の話では、農村の相続税の税収なんというのは、ごくわずかだというのです。その当時三十億ばかりでしたが、その中で、大きな相続財産の場合と、小さな農村の場合とどのくらいの割合になるかということは、なかなかわからぬそうですけれども、しかし実際農村の場合などは、ごくわずかなんです。それが、そういう矛盾があって非常に困るから、何とかしてくれという陳情を受けた。税務署長から、この法律はやめてくれないかという陳情を受けるなんというのは、私の経験ではそれ一つですよ。先般、私は自分の選挙区で部落の座談会をだいぶ続けてやってみたところが、いろいろな注文が出ました。ところが、相続税の問題の不平は少しも出なかったので、私がちょっと出してみたところ、どこへ行っても痛切に何とかしてくれという。なぜ私が尋ねるまで出ないかというと、これは結局所得税とかほかの税金のように、一ぺんにみんなにかかってこないが、一人々々は泣いている。必ず一代に一ぺんはくるのですけれども、しかし一ぺんにこないということと、毎年くることでないものですから、一人一人泣いている。それで、大きな声にはなっていないけれども、一たびそれにちょっと声をかけてみれば、みんな何とかしてくれということを言っておる実情であって、これは、税務署長が言うくらいですから、国税庁の長官も大蔵省関係もよく御存じだろうと思う。ことに、先ほど言ったような分割して相続する場合と、正直に実際分割してないのだからというので、一括して相続する場合との間の不公平があるだけではなしに、これは個人的に申しましたけれども、たとえば河川の引き堤問題で、われわれの方でも非常に問題になっておるのですが、あちこちで起った現象は、十五万とか二十万とかで話が落ちついて、たんぼを買収して、その直後に相続するという者が、ある村で二人できてきた。一方は買収された方の相続、一方は買収されないものの相続と、二つ近所でできてきた。ところが、一方買収された方は、反当り十五万円に買収されたのですから、再評価税がかかってきたのでありますけれども、十五万に査定するよりそれは仕方がない。ところが一方は相続されていないものですから、従来の基準で三万何千円で相続した、それで財産程度は同じであって、大へんな税額の差ができたというので、とうとう越ヶ谷の裁判所まで問題を持ち出して、何とか救済したいけれどもというような問題が現実に起ったのです。おそらくよそでもそういう問題は起るのだと思いますが、だんだんとこの査定の価格を実質的に高めてきて、実際の価格相当にすれば、それはそういう矛盾は起らぬでしょう。起らぬかわりに、現在のごとき三万円や、先ほど言った五万円ですらも、なおかつおやじに死なれたそのとたんに、今度は泣きつらにハチのようなそれだけの苦しみをなめなければならぬ。実際は家業であって、相続人としては、親が病気になれば親を養う薬代も出すということは、日本人として当りまえだということでやっておるのであって、薬代をこれだけ出したのだからといって、それを一々計算しておいて、それは何も相続したのじゃないというので引いたりするというようなことは、実際できるものじゃない。ですから、事実上家業としてあるにかかわらず、しかもその家業は、たんぼの自由売買もできないし、一種の家産的なものであるということを認め、自作農創設その他でそういう方針をとっておりながら、その営業財産であるたんぼから、畑から、牛から、馬から、牛小屋から、農具から庭木までことごとく評価して、それに対して二十万以下は一割かける、二十万以上は一割五分かける、もちろん五十万円という基礎控除はありますけれども、今日の五十万円などというものは、そういう田畑を安く評価しておっても、農機具とかいろんなそういうものを入れたらすぐ突破してしまう。そこで一体、この間の税制改正のときに、この五十万円の基礎控除を上げるという話は出なかったのかどうか、それを一つ伺いたい。
  108. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 相続税の問題につきましては、先ほど申し上げた通り、現行の制度が遺産取得税の格好であって、現在の民法でございますと、結局ある方がなくなられれば、その人の遺産相続人が、黙っていれば分割で相続するわけですね。それで、相続権を放棄しますと、初めて放棄しなかった残った人が相続する。従いまして、相続の権利を放棄しないという一種の不作意のことですが、それを放棄しないでやっていれば、結局分割されたということになりますから、従って、相続税がかかるという問題が起きなくても済む。積極的に放棄するというときにかかってくるということになっておりますために、執行の面におきましては、その放棄があったのかなかったのか、格好の上では、相変らず長男が相続してその田畑を耕しているのだが、一体相続権の放棄があったのかなかったのかという問題が出てくるわけでありまして、執行面といたしまして、そういう放棄ということが表面になかなかはっきり現われにくい。あるいは黙っていれば、相続税はかからぬで済んでしまう。実際放棄していても、表には出ないような姿になっておれば済んでしまう。こんなことが、執行の面におきましてお話のようにいろいろ困難な問題を持っております。税務署長が山本委員にいろいろ意見を申し上げたのも、そうした困難性のゆえではないだろうかと思います。われわれも、そういう点はよくわかっておるのでありまして、一体遺産取得税がいいのか、それとも昔のような遺産税の格好がいいのか、これは相当議論があって、遺産税の格好はどうだろうかという議論も相当持ち出されております。しかし税制調査会でも、一応この問題を取り上げましたが、税制調査会の答申にもたしかあったと思いますが、税制調査会では、ほかの方のさしあたっての所得税とか、そういう問題を中心に時間がたってしまったものですから、相続税の問題は、次回の問題として検討すべきだということになったわけであります。これをまた遺産税の格好に変えるということになりますと、相続税全体の建前の大きな変更になりますし、相続税のような制度は、できればそうたびたび変えるべきでない、あれやこれや考えまして、よほど慎重に結論を出すべきだということから、相続税問題全体を今後の検討に待つ、やはり検討して何かしなければならぬのじゃないかというふうに思われるけれども、とにかく結論が出ないからもう少し考えてくれということで、税制調査会は答申をいたしております。従いまして、今の基礎控除五十万円といったような細部の問題には触れませんで、相続税全体についてやはり検討してみる必要がある、こういった意味答申で終っております。
  109. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 今の相続税に対して非常に疑問があって、何とかこれを根本的に考えていかなければならぬという意向があることはよくわかりましたが、この予算を見ますと、今のままでも困っておるにもかかわらず、なおかつその評価額だけを一・七四%というものを上げておる。これは実際に近づけたことは近づけたのでありましょうが、それにしても上げて、そして基礎控除額は上げてないということになりますと、現在の苦しみがさらに加わるだけであります。これは、早急に現場の税務署長の意向もよく聞かれて、一つ大蔵大臣に考えてもらいたいのですが、相続税の問題は、とにかく一人一人泣いておるから大きな声になっておらないけれども、実際に困っておるので、根本的に検討する意思があるかないか、大臣の考えを聞きたい。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 相続税につきましては、戦前の日本の家族制度に比して、戦後の新しい憲法下における社会事情は非常な変遷がございましたので、これに伴いましての相続税の課税の方法、考え方がよほど違って参りました。しかしまた、経済界の安定いたしますにつれまして、いろいろ問題が起きていることは、先ほど来のお話の通りでございます。何と申しましても、税制も根本的改正をしなければいかぬというので、一昨年来やっておりますが、とりあえず当座の大きい問題として所得税、法人税等に手をつけましたが、今後におきまして残された一つの大きい問題だと思います。従って、私は、戦後の日本実情に沿った課税方法ということに、根本的に一つ考え直してみたいと思います。たとえば家の観念を全然なくしておりますが、実際今の国民感情からいって、なかなかそうもいかない。私もいろいろ友人、知己の間に不幸が起って、そのときの実情なりを聞いてみましたが、必ずしも今の制度がよいとは思えない場合が多いのであります。将来十分検討いたしたいと思います。
  111. 山本勝市

    ○山本(勝)分科員 最後に、私は希望申し上げておきますが、大臣の意向もわかりましたけれども、農業だけでなしに、零細な中小企業者の自転車屋とか、うどん屋とか、そういう者でも、事実はやはり実業として親の仕事を引き継いでおるという実情が多いのであります。その家業として引き継いだ零細業者の営業財産税をかけるというような考え方、営業を続けていくためにぜひ必要なそういう生産用具に対して財産税をかけるということは、一つ考慮を願いたい。この財産税というものは、大きな財産が蓄積されていくと困るから、生活にも仕事にも困らないというふうな程度で、払える者から財産税を取るということはよいでしょうが、家業を継いで、その小さな仕事を維持していくのにぜひとも必要なそういう生産財に対して、所得税でなしに財産に税をかけるということは無理がある。農業においても、自作農創設というものは大体一定の規模に限定されておりますが、それを続けていく場合の農具、家畜に財産税をかけて、相続のとたんに一割なら一割を取ってしまうということはどうかと思う。ですから基礎控除を上げるという方法でもけっこうですし、あるいは今国税庁長官の言われたような、遺産税としてかけることもよいでしょうが、その場合でも、そういう現実にわれわれが保護していかなければならない、一種の家業といったようなものの持続に必要不可欠な生産手段に対して財産税をかけるということは、私はどうしても無理があると思う。やはり財産税というものは、もう少し上の方から取るという考え方で十分に考慮してもらいたいということを、希望申し上げて今日の私の質問を終りますが、ぜひとも一つ早急に考えを進めてもらいたいと思います。
  112. 松本瀧藏

    松本主査 本会議は定刻より始ることになっておりますが、古屋さんから、質問が三十分程度ということでありますので、質疑を継続いたしますが、本会議の劈頭池田大蔵大臣の趣旨説明がございますので、最初に大蔵大臣質問していただくように御協力をお願い申し上げます。古屋貞雄君。
  113. 古屋貞雄

    古屋分科員 それでは、大蔵大臣に最初に御質問いたしたいのでありますが、数年前に問題になりました国有財産払い下げの問題ですが、富士山頂の払い下げの問題であります。当時大蔵省では、十二万坪の中の約四万九千坪くらいを払い下げて、あとは却下しておるわけでありますが、この却下に対します訴願の関係があり、最近名古屋の地方裁判所に、申請人でございました富士宮市の富士山本宮浅間神社の宮司でございまする佐藤東さんが訴訟を起しておるわけです。当時私どもは、富士八合目以上の十二万坪の国有財産というものは、ちょうど皇居前の広場のような、国民の全部の方のリクリエーションの場所とし、また日本の象徴でありまする富士山の問題につきましては、公益上国が管理することが正しいのだということで、この問題について国民から意見を徴され、公聴会を開きました結果も、やはり皇居前広場と同じような処置を政府がすべきだというような議論もございまして進めて参りましたが、その後本問題が再燃いたしまして、今訴訟に係属されておるわけなんですが、この点について大蔵大臣の所見を承わりたいと思いますのは、当時戦争直後に施行されました昭和二十二年の法律第五十三号社寺境内地の払い下げに関する法律でございますが、この法律と、その後新しい憲法が施行されましたが、憲法の八十九条と相矛盾するように私どもは考えておるわけなんです。すなわち前の法律は、無償で払い下げを神社にできるような法律であり、その後の憲法八十九条によりますと、そうした宗教団体に対する補助、あるいは利益の提供ということは禁止されておる。こういう工合の憲法の効力が発生しておりますので、前の法律はポツダム法律として効力がなくなっておるのではないか。従って、憲法の条章に基いてさような払い下げ申請を却下することが正しいのだ、こういうように考えておりますが、大蔵大臣の所見はいかがでしょう。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 従来富士山頂の一部を、地元の浅間神社に多年無償で貸しておりました問題につきましては、譲与いたした事例があるのであります。そこの法律問題につきましては、事務当局より御答弁いたさせます。
  115. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま大臣のお答えになりました点につきまして、法律的な御質問がございましたので、若干補足させていただきます。御指摘のように、社寺等に無償で貸し付けておりました国有地を譲与できるという法律がございまして、これによりまして、富士山頂のうち浅間神社の宗教活動にきわめて重要な部分約五万坪、これは先年譲与をいたしたのでございますが、残りの部分につきましては、ただいま古屋委員からもお話がありましたように、富士山頂の非常に特殊な地域、ことに、ここは国の機関でありまする測候所その他の敷地になっておる部分、あるいは登山路になっておる部分等もございまするし、また国民全体の象徴として非常に特殊な地位を持っているというふうな点もございます。また先年衆議院行政監察特別委員会におきましては、富士山頂は国有に存置すべきであるというような結論に達せられたような次第もございます。これらの点も考慮いたしまして、ただいまお述べの点は、慎重に考えなければならぬと考えておるのであります。なおまたさきの法律と憲法の宗教活動等に関する政府の援助の制限の点でございまするが、この点は、非常にデリケートな点でございますが、大体におきまして、御指摘の無償譲与に関する法律は、従来無償で貸し付けておりました土地は、沿革的に申しまして当該神社、寺院等の境内にかかる土地でございまして、これをいわば元の所有者に返すというような点におきまして、大体において憲法の条章から申しましても、そのところは一つの例外的な考え方が成り立つというふうなのが通説のように心得ております。
  116. 古屋貞雄

    古屋分科員 なお今法律論がありましたから、さらにお尋ねしたいのですが、その今の社寺境内地の払い下げに関する法律の施行に関する勅令が、二十二年の勅令第一九〇号で発布されておりますが、その二条の中に「その他公益上又は森林経営上国において特に必要があると認めるものは、国有として存置し、前条の規定にかかわらず、譲与又は売払をしない」こういう規定がございまして、まさに富士山頂の問題につきましては、それに該当するのです。公益上特に必要がある、日本の象徴である、世界の富士であり、しかも富士といたしましては、日本国民感情から参りましても、あれが私有になったというような感情は許さないことでございまして、さような点から考慮されて、この規定にも該当いたしますので、今後は絶対に払い下げをしないというような解釈をすべきが正しいと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど政府委員よりお答えいたしましたように、先年衆議院の行政監察特別委員会で富士山の山頂は国有とすべしという決議がございました。従いまして、われわれはその決議に沿いまして、ただいまのところこれを特定のものに譲渡する考えは持っておりません。十分に今後いろいろな事情を考えまして検討はいたしますが、ただいまのところはそういう心境でおります。
  118. 古屋貞雄

    古屋分科員 非常に満足な御答弁をいただきましたのですが、なお問題が名古屋の地方裁判所に出訴されておりますので、おそらく政府は応訴すべきだと思いますが、国民の中にも、それに対して補助参加をするという空気もございますので、その点御了承を賜わりたいと思います。なお最後に申し上げたいのは、かようにいろいろと争いが起きて、不確定の状態になっておりますと、国民も非常に不安でありますので、新たに法律を作るべきか、あるいは国有財産法に基きまして、文部省、厚生省への移管がえでもしていただきまして、最後のピリオドを一刻も早く打っていただきたいという国民の要望が強いのでございますが、大蔵大臣のお考えはいかがでしょう。
  119. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま大臣からお述べになりました通りに、この問題は非常に重要でございますし、また大臣がお答えになりましたように、今日のところ、特定のものにこれを譲渡する考えはないという政府の態度でございます。これに対しまして、ただいま古屋委員から、この所管がこれらにつきましての御質問でございますが、これは、政府部内におきまして関係の省等と十分相談をいたしている段階でございます。できるだけ早くこれらの話し合いをつけまして、一般の世間からも安定をしたような状態にいたしたいという考えを持っております。
  120. 古屋貞雄

    古屋分科員 今所管がえについて相談中とのことでありますが、なるべく早く所管がえをしていただきまして、微動もしない状態に置くことを希望いたします。その点につきましての私の質問は終ります。  第二の問題といたしまして、先日問題になりました、引揚者に対する交付公債の発行に関する件、十億円の利子の準備をされておりまして、それに基いて、当委員会におきましては、どのくらいの公債を発行するかということについての御説明がございましたが、問題は、どうも一般戦災者と同じような考え方を持たれておりますので、私ども並びに引揚者の諸君の要望しております要求の理論的理念としては、普通の社会保障制度、あるいは戦災犠牲者と性質を根本から異にするものだというような考え方を持って、これが進められております。従いまして、一般の戦災犠牲者と同じような立場に置かれておるものであるというお考えを大蔵大臣がお持ちあそばせば、この処置に対する態度も相当ぐらついてくるのじゃないかと思いまして、この点大蔵大臣のお考えを承わりたいと思うのです。引揚者の処遇に対しては、一般の戦争犠牲者と区別して考える必要があるのじゃないかと私ども考えておるのですが、大蔵大臣のお考えはいかがでしょうか。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては、重要なものでございますので、古屋さん御承知通り、在外財産問題審議会というものを特に設けまして、各方面の方々の御意見を拝聴いたしたのであります。先般答申が出まして、引揚者はあらゆる生活の基盤をなくされたものでございますから、こういう観点から、政策的に措置しようという結論に相なっておるのであります。いろいろな点を考慮いたしまして、政府としては誠意をもって適当な措置をとるべく、目下鋭意検討中でございます。
  122. 古屋貞雄

    古屋分科員 かような事実はお認めいただけるでしょうか。引揚者の諸君は、一般日本国民の中で、特に二十年の八月十五日の終戦のポツダム宣言受諾の後におきましては、かつては日本の領土であり、あるいは日本国民の安住の地と規定された場所が、当時ポツダム宣言受諾によって根本的に変って参りまして、日本行政保護権、統治権外に置かれておったという事実、従いまして、この引揚者の諸君が、祖国に帰って参りますまでの間、日本の統治権外に置かれ行政保護権の保護を受けてない事実、こういう事実はお認め願えましょうか。
  123. 池田勇人

    池田国務大臣 敗戦後一時的にそういうことがあったことは認めます。
  124. 松本瀧藏

    松本主査 古屋委員にお諮りします。大蔵大臣は本会議の打ち合せ等があるのでありますが、まだ御質問がございましょうか。
  125. 古屋貞雄

    古屋分科員 それではここで打ち切りまして、後刻午後にでも質疑を続けることにいたします。
  126. 松本瀧藏

    松本主査 それでは午後二時に再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  127. 松本瀧藏

    松本主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。古屋貞雄君。
  128. 古屋貞雄

    古屋分科員 そこで大臣にお尋ねしたいのは、本年の予算を拝見しますと、旧軍人恩給は約五十九億ばかりふやすようになられておるのですが、旧軍人恩給の増額をされた考え方と、在外財産問題の処理をいたしまする問題とのいずれが大事であって、いずれが早く処置しなければならぬかということに考えて参りますと、あえて五十九億の増額をいたすことを遠慮していただきましても、やはり在外財産問題に対する処遇というものはすみやかに決定いたすべきだ、かように考えておりますが、大臣の御意向はいかがでしょうか。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 旧軍人遺家族の方々に対しまする本年度の予算の増額は、さきの国会におきまして、法律改正に基きます当然の増でございます。先年の法律改正によりまして、当然それだけふえることに相なりますので、計上いたしたのであります。在外財産の問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、非常に重要な問題でございますので、われわれはいずれが大事ということに区別をしておるわけではございません。いずれも大事なことでございますので、在外財産問題審議会の議を経まして、そしてその答申に基いて政府の態度をきめようといたしておるのであります。昨年暮れ出て参りましたので、それによりまして、目下政府において十分な検討を加えておる際で、これをゆるがせにしておるわけでは決してないのであります。
  130. 古屋貞雄

    古屋分科員 非常に御配慮をいただておりますので、さらに今国会におきまして、ある程度までの具体的な交付公債を御発行になるなら、これに対して明確な御意思を明らかにしていただきたいと思います。実は全国の引揚者団体連合会の諸君が、気違いのようになってここに押しかけてきておるわけです。もちろん大臣のところにも押しかけて参っておると思いますが、非常に心配をされて、昨年の暮れなどには、ハンストにまで入ろうというようなすわり込みまでいたして要求をやっておるわけです。このことは、あまり時間が経過いたしまして、もうこれ以上がまんし切れないということに相なりまして、思わざる不祥事を引き起すような状態にまで相なっておるわけです。この点につきまして明確な御答弁をいただきたい。大体利子に対する予算は計上されておるようでございますが、これに対する具体的な大蔵大臣見通しと申しましょうか、考え方が御答弁願えればけっこうと思いますが、その点を御答弁いただきたいと思います。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しのような引揚者の方々の気持は、十分知っております。ただいまも、本会議が済みましてこちらへ参ります途中で、引揚者の方方の熱心な陳情を受けたような次第でございまして、われわれといたしましても、一日も早く解決いたしたい。私があえて利子を本予算に計上いたしましたのも、われわれの早急にやりたい、解決したいという気持の表われでございます。何日までとここではっきり明言ができませんが、少くとも本国会中には、あるいはでき得れば本委員会で予算を審議していただく間にでもやりたいという気持を持っております。
  132. 古屋貞雄

    古屋分科員 承わりますると、公債発行の額につきまして、与党の考え方と政府のお考えが食い違っておるというようなことを承わっておるのですが、そういう点がおありでございましょうか。そうして、もし食い違っておりましても、両院の議員の決議もございますので、相当思い切った御処断を願いたい、こう考えておるわけなんです。ことに全国の引揚者の諸君は、相当苦しい生活の中から今日までどうにかこうにか生活を続けて参りましたが、今残されておりまする問題は、これだけなのです。しかも非常に窮迫した生活に追い込まれておるわけであります。その点を十分御考慮願いまして、具体的に与党と政府との折り合いのつかない関係につきましては、思い切って増額をされると申しましょうか、特殊な事情に十分な考慮をいただきまして、できるだけの公債の交付を願いたい、こう願えますことが一つ。  それからもう一つは、引き揚げて参りました方たちの中で、自分の家族の生命を、終戦後引き揚げまする間に奪われた者がある。あるいは戦争で戦死したのではございませんけれども、二十年の八月十五日以降、祖国に帰って参りまするまでに、かつての日本の国策の遂行によりまして、原住民族の考え方が非常に圧迫を受けた、非常な無理をされた、それに対する民族的感情の反撃というものがございまして、そのために、言いかえまするならば、国民の代表というような意味でさいなまれ、生命を失った者か相当あるわけです。これらの者に対する処遇というものに対して、政府はどういうようにお考えになっておるか、これをお尋ねをいたしたいと思います。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 審議会答申に基きまして、われわれは、誠意をもってこれが解決策を見出すよう努力いたしておるのであります。従いまして、党と政府とに私は食い違いがない、これは一体でございますから、十分協議を重ねて、適当なところに持っていきたいと考えております。  なお引き揚げ前後におきまする問題につきましては、いろいろ事情を聞きまして、これまた適当な措置を講じたいと考えております。
  134. 古屋貞雄

    古屋分科員 特に私から要望を申し上げたいのは、ただいま私がお尋ねいたしました、終戦後健全なからだを持っておりましたけれども、原住民族その他の者から命を奪われて日本に帰ることができなかった者の遺族がおるわけなんです。この遺族の者たちは、他の戦傷病者その他旧軍人その他の戦争の犠牲になりました方々と同じに、特別な処遇というものを受けておらないわけです。私どもは、少くともこれらの人々の遺家族につきましては、政府は特段なる実情に沿うような生活保障の措置をすみやかに講じていただくことを要望いたす次第でございますが、大蔵大臣、いかがに考えましょうか。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 終戦直後、ことに外地のことでございますので、いろいろの問題があると思うのです。お話しのような点も十分考えまして、適当の措置を講じたいと思います。
  136. 古屋貞雄

    古屋分科員 時間がございませんから、簡単に御質問申し上げるのでありますが、青少年問題についてのことでございます。このことは、総理大臣からも特に青少年問題に関する特別な政策の一つといたしまして、青年の民族自決権の高揚を要望するというような御主張がございました。さような関係がございますので、私一言お尋ねしたいと思うのですが、何と申しましても、祖国の再建というものは次代をになう青年の双肩にかかっておるわけです。しかしながら、現在の青少年のあり方は、御承知通り、敗戦という冷厳な事実の前に、いろいろと不自由な生活の中に織り込まれておりますのみならず、青少年の将来に関する希望と申しましょうか、人生観と申しましょうか、現実の安定感というものを失っておるわけなんです。従って、将来の希望を持たない虚無感にさらされておるというのが、今の青少年の状況だろうと思うのでございますが、一方においては、国民の大多数の生活の安定というものが、戦争前のように回復をいたしておりませんし、さらに孤児並びに家庭の事情上、子供さんの十分なる監督が行われてないという関係から、毎年々々犯罪がふえておるわけです。ことに少年犯罪の数が、昨年と一昨年を比較いたしまするならば、一九%もふえておるという状況なんでございまして、一方では非常に景気がよくて、多少とも国民の生活が安定しつつあるという事実と、半面には、そうした青少年の犯罪がふえているという現象は、まことに遺憾な点でありまして、憂慮にたえないのであります。その点につきまして、努めて現在の政府といたしましてもわれわれ国民といたしましても、そうした不幸な少年を守っていかなくちゃならぬ、さらに善導いたしまして、よりよい国民として、次代をになう完全なりっぱな少年を成長させねばならぬという立場から考えまして、青少年に対する本年度の予算の問題を、私は簡単にお尋ねいたしたいと思うのであります。  まずその前に、青少年に関する処遇問題、これを善導指導いたします関係予算、それと日本の治安維持に関係を持つ、特に思想的な方面の関係を持つ公安調査あたりの予算、これと比較いたしますと「どうも取締りの方面の予算のみが比較的多く盛られておりまして、まずその根本を刈り取らなければならぬ、青少年の保護指導育成という面に関係する予算が、非常に率において少いような気がいたしますが、この両者の関係について、大蔵大臣のお考えを承わりたいと思う。いずれを従とし、いずれに重きを置くべきかというお考えを承わりたいと思う。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 青少年の思想その他の状況につきましては、古屋委員のおっしゃる通り、今後十分力を入れなければならぬ点が多々あるのであります。内閣におきましても、青少年の指導教育につきまして、学校教育以外に特別な方途を講ずべきであるということに意見の一致をいたしたのでございます。しかし、組閣早々でございまして、しかも、こういう問題は一夜作りというわけには参りません。従って、十分検討を加えて、お話しのような点につきまして適切な措置を講じていこう、こういう結論に相なったのでございます。従いまして、今回の予算には、青少年の訓育指導ということにつきましては、まだどういう形でどういうふうにしていこうという結論がついておりませんので、大体文部省、あるいは建設省、その他農林省の方におきましてある程度のものは組んでいるわけでございます。また従来の青少年に関する施設につきましての強化ははかっております。しかし、現状にかんがみまして、特別の応急措置ということにつきましては、検討中であるのであります。あるいはスポーツ審議会とか、いろいろなスポーツ方面からの善導ということもまた大切でございますし、いろいろの点を考えております。片一方、思想取締りの点につきましては、今まで機構ができておりますので、今回は相当の予算をここに盛っているわけでございますが、いずれを大事にするかといえば、それはもとをよくすることが一番でございます。末を直すということは末の問題でございます。もとにつきましては、先ほど申し上げましたようなこの手あの手と申しますか、各方面からいろいろな施策を講じなければならぬ、その総合的な施策につきましては検討中でございますので、今後最も重要な施策といたしましてわれわれは考慮していこう、こういうことで、どちらが大切かといえば、もとを正すことが一番大切でございます。
  138. 古屋貞雄

    古屋分科員 まだまだ総合的な施策が出ておらないということでございまするので、そういうことではまことに私ども遺憾にたえませんので、すみやかに総合的な対策を購じられまして、万全を期せられんことを要望いたしまして、時間がございませんから、私の質問は終ります。
  139. 松本瀧藏

  140. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 国連参加を機会として、外交の局面ははつらつと活動を開始しなければならぬ時期に到達をしておると思うのであります。政務次官が来たばかりでありますから、大蔵省に一ぺん伺っておきたいのでありますが、今回外務省予算を組むに当っては、こういう点を大きく考えて組んだものかどうか。これは大蔵大臣に伺いたいところですが、大蔵政務次官、あるいはそれにかわる人でもいいのですが、外務省の今年の予算はいかなる性格のもとに組んだかお答え願いたい。
  141. 村上一

    ○村上(一)政府委員 お答え申し上げます。本年度の外務予算を編成いたすに当りましては、御承知と思いますが、党の編成方針の御要望の中におきましても、特に経済外交の推進、またこれに関連いたしまして、貿易の振興というような項目が特掲されておりまして、私どもといたしましても、そういった点に十分着目をいたしまして、外務省ともよく御相談の上で、そういった点に相当重点的に経費を配分するという意味で計上したつもりでござまいす。なお、経済外交の推進ということになりますと、予算面では、外務省だけの問題でもございませんので、御承知通り、たとえば通産省あるいは農林省といったような経済担当の各省におきましても、貿易の振興といったような面で、その面の経費を相当増額してあるつもりでございます。
  142. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 外務省予算だけでなしに、通産省ないしはその他の省にもまたがっての経済外交の面の費用というものは、相当党の方針に伴って組んだということですが、資料がありましたら、経済外交に関する費用をどのくらい組んだか、これは一つの非常に注目すべき点であると思うので、大蔵省の方から伺いたい。
  143. 村上一

    ○村上(一)政府委員 ただいま手元に集計したものを持っておりませんので、関係の経費を拾いましてお手元に差し出したいと思います。
  144. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 お手元でなしに、公表していただきたいと思いますけれども、若干の時間が必要ならば、私の質問が約三十分で終りますから、一番最後にお答えを願いたい。どういう集計でどういうふうになるか。決して責めるわけではないのです。そういう点がどういうふうになっておるかということを、やはり国民の前に明らかにしていかなければならぬというふうに考えますので、その点を御調査の上、最後の質問の際にお答えを願いたいと思います。  それから、これは大蔵省でも外務省でもけっこうですが、在外公館の費用、この活動にはしじゅう予算的な制約があって、十分活動ができないということをしばしばわれわれは見聞しておるわけです。従って今度の国連加盟を機にして、これらの点については、重点的な費用というものが組まれなければならぬのですけれども、非常に残念な点が多い。在外公館そのものの経費を今聞くのではなしに、まず最近の諸外国の外務省の費用というものを日本の費用とにおおむねどのくらいの開きがあるか、パーセンテージにしてどのくらいか、一つお答えを願いたいと思う。
  145. 井上清一

    ○井上(清)政府委員 昨年の七月一日で調べたものがございます。それによりますと、わが国の外務省予算は、列国の中でも最下位に近いものでございます。年度は一応省略いたしまして、概数を申し上げますと、アメリカが国の予算と外務省の予算の比率が〇・四二%、それからカナダが一・二%、イギリスが〇・八一%、それからフランスが〇・五一%、ドイツが〇・七四%、イタリアが〇・九九%、オランダが一・五%、日本が〇・六三%、こういう数字に相なっております。
  146. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そうすると、諸外国に比べれば一番最下位である。ことに主要な諸外国に比して最下位であるということは、非常な不名誉な状態だと思う。しかしこれは、まだ国連へ参加しておらないときと国連へ参加した後の環境というものは非常に違うので、まあその点に私は大きく留意してもらいたかったと思うのです。これは、与党の委員からそういう質問をするのは恐縮であるのですが、われわれも予算編成の途上では、ずいぶんこのことを言ったのだが、そのことは今回の千億減税という大方針のために、やや歳出の増というものが犠牲になっておるというような関係から、趣旨が盛り込まれなかったのは非常に残念だと思っておるのです。一説には、岸外務大臣に対する池田蔵相の牽制策だというようなことも伝えられたりなどして、まことに残念な面もあった。しかし、その後党との調整で幾らかは変っておりますけれども、このことは、ぜひとも大蔵省のまじめな官吏の諸君には認識をしていただいて——おそらく今年以後の外交情勢というものは、従来日本が占めておった地位というものと急激な変化がくる。これを一つぜひとも勘案をしてもらって、自後の対策に抜かりのないようにしてもらいたいと思うのです。今パーセンテージを聞いておると、アメリカ日本より幾らか小さいそうです。しかしアメリカは〇・四二%であっても、それは総額において膨大な費用なわけですから、アメリカ予算と比較をせずに、ヨーロッパの諸国、あるいは太平洋に臨む主要諸国の総予算と外務省の費用との線ぐらいまでには、なるべく明年からはいくように一つ御配慮を願いたいと思うのです。  次に、在外公務館の勤務要員というものが非常に少くて——これは外務省に対する質問です。きょうは大蔵省に対する質問であるけれども、この間外務省の分が少し十分でなかったので、関係質問をしておるわけです。在外公館の勤務要員の配置状況が非常に小くて、思う存分の活動ができないということが指摘されておると思うのですが、現在の配置状況というものはどういうようになっておるか、具体的に承わりたいと思います。
  147. 井上清一

    ○井上(清)政府委員 現在の在外公館勤務者の予算定員の配置状況につきましては、こまかい数字を申し上げて恐縮でございますが、十人以上の太使館が十三、総領事館が一、計十四ございます一それから五人以上九人までの公館が、大使館が十六、公使館が三、総領事館が七、合計二十六館でございます。それから四人以下の公館が、大使館二、公使館十九、総領事館十、領事館十二、合計四十三でございまして、大半の公館が、館長以下四人以下であるというようなことでございまして、公館の勤務要員はきわめて少いと申さねばならないと存じます。戦後の世界情勢を見ますると、国際機関、また国際会議がますます重要になってきておりまして、かつ新しく興りました独立国が多く、互いに学識の高い外交使節を交換しようというのが、世界の趨勢になってるようであります。また先ほど川崎分科員からもお話がございましたように、世界経済がいろいろな複雑な国際協力と管理貿易方式とによって行われております事情等を考えますと、私どもは現在のような状態では、決して満足すべき状態であるとは申しかねるのでございますが、少い人員でできるだけの能率を上げて働くようにやりたい、かように考えておるのでございます。しかし、何と申しましても、人をふやしますにつきましては、相当財政負担を伴うことでございますし、現在の状態といたしましては、先ほど申しましたように、不十分ではございますが、できる限り在外勤務者を重点的に配置いたしまして、能率的に働いて参りたい、かように存じております。
  148. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 二つ続けて質問します。第一は、在外公館の手不足のために、在外公館が諸外国の情報を収集をして、貿易にしても政治情勢にしても、その駐留地の的確な判断をしなければならぬというのに対して、今日の費用では私は足りないのではないかということをお尋ね申し上げたい。  それからもう一つは、これは非常に小さい問題でありますが、在外公館の会計処理規程というものがあるが、これは非常に特殊な会計規定というものが要るのではないか。というのは、今の状態では、非常に詳細な報告をしなければならぬので、従って交際費にしても、あるいはその他の活動費にしても、相当に制約されるところがあるのではないか、こういう点で、会計規定というものは変える必要があるのではないか。これは、もちろん大蔵省とも十分打ち合せて断行されなければならぬけれども、外交の弾力性という意味からいうと、現在の法規の通りやっておると、在外公館の職員はこれに忙殺されて、肝心の外交というものは何もできぬ。会計報告書の作成事務に忙殺をされているといううわさをよく聞くのです。  それからもう一つは、脱線ですけれども——あえて脱線というのだけれども、在外公館の諸君が非常に忙殺される原因は、露骨に申して、代議士やその他の諸君が外遊すると、必ず公館の厄介になる、そのために非常な迷惑をかけておるということがしばしばいわれます。多少心得ておる代議士は、それほど迷惑はかけておらぬのですけれども、そういう点では、国会そのものがむしろ自粛しなければならぬ点があるでしょう。代議士だけでなくて、実業家の場合もあろうと思うし、学者の場合もあろうと思うのですが、そういう国内招待に忙殺されておったのでは、外交というものは伸びるわけはないので、これらの問題を総合して政務次官のお答えを承わりたいし、また今の問題に関連して、大蔵省では、会計規定の改正というものに対して何らか考えられておるかどうか、これも承わっておきたいと思うのであります。
  149. 井上清一

    ○井上(清)政府委員 在外公館の費用が少いために、いろいろな外交活動に支障を来たしておるのではないか、あるいはまた経済調査などの費用に不自由を感じて、十分な活動ができておらないじゃないかというような御質問でございましたが、この点は、不十分ではございますけれども、現在活動いたしておりますし、経済調査などは、本年度特に一千万円の費用を計上いたしまして、少いながらもこの費用で十分効果を上げて参りたい、かように考えております。しかし、これでもって十分であるということはございませんので、今後一つできる限り増額に努力いたしたい、かように思っております。  それから会計事務が非常に繁雑で、そのために、少い人員が手をとられておるんじゃないかという御指摘でございました。これはまことに的確な御意見でございまして私どももこの点については、十分考えなければならぬとかねがね思っておったところでございます。現在の会計法では、やはりどうしても繁雑な手数を要することになっておりますので、できますならば、在外公館についての会計処理規定を特別な会計法規でもって律するというふうにできたら、非常にありがたいがなあと私ども考えておりまして、いろいろ研究はさしております。またそのために、たとえば特別な経理方法でやる、そのために監察とか監督とかいう点においては、特に厳重にやってもらうということでやったらどうか、かように思っております。  それからまた、内地からのいろいろな視察団、調査団の方々の案内とか、あるいはまたそういう方々のお世話をすることで仕事が妨げられないかというようなことでございましたが、国内から外国に出られて、何といってもたよりにされるのが在外公館でございます。できるだけのお力添えをするのが、私ども在外公館の当然の責務だとは思いますが、そのために特に業務を阻害されるということは、私はないと思います。しかし、そういう点について、できるだけ御心配願えれば非常にありがたいことだと思います。
  150. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 在外公館の経理手続の問題でございますが、今在外公館の経費が約五十億ございまして、そのうちの半ば以上が人件費ということに相なっておるわけであります。そのほかの庁費その他につきまして、人手も少いところでございますから、できるだけ経理上の負担をかけないようにというお気持は、私どももよくわかるのであります。現在の制度といたしましては、渡し切り費というような制度もございますし、それからまた今度在外公館の方に、四億二千万という割に大きな額を報償費として特掲することにいたしましたので、この報償費を活用していただけば、会計面の煩瑣な経理手続にわずらわされないで、十分御活動いただくというようなこともできるんじゃないかというふうに考えております。会計検査院は、在外公館の検査ができないというようなこともございまして、外務省御自身が責任上非常に厳格に処理せられておるという面もございまして、私どもその点につきましては、非常に敬意を表しておるのでございますが、現状につきましてなお改善の余地があるかどうかにつきましては、なおよく検討いたしたいと存じます。
  151. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それから、これは大蔵省、外務省にも伺いたいのですが、近ごろ招待外交という言葉がはやっておる。そのことが適切であるかどうか知らぬけれども、各国の首脳者あるいは代表者が、この複雑な外交情勢において各国間に生起する諸問題を的確にとらえて、いわゆる会議外交ないしは首脳間の交歓が行われるということは、世界平和を促進する意味で非常な大きな役割だと思うのであります。ことに日本は場面が変ったわけですから、ここで東南アジア、アメリカ、あるいはヨーロッパの関連諸国の首脳者を呼んで、日本の経済復興の状況、しこうして日本政府の今後進まんとする外交政策についても十分腹蔵なき意見の交換を行うということは、肝心なことだと思うのです。オーストラリアのメンジス総理大臣は近く来訪せられるというし、引き続きパキスタンであるとか、アフガニスタンであるとかいうような、東南アジアないしはユーラシアンの諸国の首脳者が日本に来るということを聞いておるのですが、一体この招待外交の費用というものはどこに計上しておるのかよくわからぬ。報償費で出しておるとは思うのですけれども、その額というものは非常に僅少であって、これで果して去年からことしへかけて大きく転換したる国際情勢に即しての招待外交ができるものかどうか、非常に疑わしいのです。そういう点で、外務政務次官並びに大蔵当局の見解を聞いておきたいと思います。
  152. 井上清一

    ○井上(清)政府委員 招待外交についての御意見でございましたが、今日外交の部内におきまして、招待外交ということは非常に重要な部門を占めておると考えておるのでございます。昨年の四月から今日まで、二百数十名の方方を海外からお招きをいたしまして、日本の国情を視察してもらって、日本に対する理解と協力を求めた。これは外交をいたしまする上において非常な効果がございます。岸外務大臣は、外相に就任いたしましてからも、招待外交に非常に力を入れております。三十二年度におきましても、今年度に引き続きまして、こうした方面で活発にやりたい、かように考えておるわけでございます。招待外交の実施に要します経費は、来年度予算には、御説のように費目には計上されておりませんで、報償費をもって支弁をいたすことに相なっておるわけであります。報償費のうち、国内で使いますものが一億二千万円、在外公館において使いますものが四億円。国内において使いますものの中でやりくりをいたしまして、招待外交実施に要しまする経費を出したい、かように考えておるわけでございます。今後毎年恒常的におそらく必要になってくるだろうと思いますので、あるいは今後独自の費目を立てることも適当なんじゃないかというふうにも思います。この点は一つ十分研究しして参りたい、かように思っております。
  153. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 予算編成当時一具体的にどなたを招待するというような予定もございませんでしたので、予算の積算といたしましては特掲はいたしませんが、報償費をもちまして、相当の範囲のことができるんじゃないかと期待いたしております。将来の問題につきましては、十分検討いたしたいと思います。
  154. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 この間岸外務大臣に、オーストラリアのメンジスもいいけれども、一つ局面が変ったんだから、石橋首相がこの夏でもアメリカへ行って、十分な意見の交換をすることはいいじゃないか。しかし日本からお伺いするような形ばかりとってはいかぬ。この際日本側から提案をして、アイゼンハワー大統領が日本に来訪するような提唱をしろ。ということは、アイゼンハワーは、御承知のように数年前に中近東方面を訪問して非常に大きな影響を与えた。アメリカとしては、中近東政策あるいはヨーロッパ政策よりも、むしろ極東政策は、他の国の力を借りない、他の自由主義諸国の力を借りない独壇場であるのですから、もっと重大な要素があるわけです。もし彼がアジア政策に熱心であるならば、当然日本並びに朝鮮その他の極東を訪問しなければならぬわけです。これはこちらから要求してしかるべきだということを私が申し上げたら、まあアイゼンハワーの健康状態もあって、すぐ実現するかどうか疑わしいという消極的なお話であった。しかし、これはぜひ実現したいと思う。その運動をわれわれは表裏を通じて行いたいとさえ実は決意しているわけです。もしアイゼンハワー大統領が日本に来る、あるいは勝間田君の話によると、ネールも来るというようなことが実現した場合には、これだけの費用ではとても足らぬ。どう思いますか。
  155. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 日本に来られる旅費は、もちろん先方で持たれることと存じます。そういたしますと、日本内地での接待費にどのくらいかかるかという問題でございますが、前例につきまして詳しく数字を調べたわけではございませんが、二億といい、四億といい、これは相当な大金でございますので、初めから足らないということもあるまい、できるだけ差し繰って誠意を示すことによって、外交の実をあげていただきたい、さように考えている次第であります。
  156. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そういうような場合には、予備費等の捻出も一つ考えて、これに対応しなければならぬということになるでしょうが、招待外交の費用は、もっと積極的な組み方をしてもらいたいと思うわけです。一つ外務省、並びに大蔵省としては困るかもしれぬが、私はこの間宇田経済企画庁長官が、輸出入問題で数字で非常に困っておられた。いろいろ聞いてみると、困る要素もあるようですが、数字の内容については聞きませんけれども、南方方面において、相当新しい局面が展開されてくるんじゃないか、輸出の増大を見込み得るんじゃないかという一つの基礎は、日本とオーストラリアの通商協定が近く大幅に変えられるんじゃないかという予感をしておるわけです。これは、現に日豪通商協定の取り結びのためにどういう情勢にあるのか、承わっておきたい。
  157. 井上清一

    ○井上(清)政府委員 ただいま日豪通商協定につきましては話し合いの段階に入っておりまして、具体的に申し上げることは、交渉の途中ではいかがかと思いますので、差し控えさせていただきたいと思いますが、できるだけ早い機会において、これが協定の締結を見ることを私ども期待をいたしておるわけであります。
  158. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 日本とオーストラリアは今まで片貿易であった。羊毛を買って、こちらから若干のものを出しておったにすぎないので、パーセンテージからすると、十対二あるいは十対三くらいの割合であったのですが、これが大きく変る可能性があるのですか。たとえばこまかには聞かないけれども輸出の面において非常に改善をされる見込みがあるのかどうか、これだけは承わっておきたい。
  159. 井上清一

    ○井上(清)政府委員 相当この点では改善を見るのではないか。話の次第によっては、豪州側における最恵国待遇を受けるというようなことで、相当情勢が変ってくることを私ども期待をいたしております。
  160. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 大蔵省としても、外貨予算ないしは輸出入貿易の見通しについて、そういう明るい面があるということを織り込み済みでもちろん組んだものと思うけれども、これらの情報については承知をされておるのかどうか。
  161. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 外貨予算の問題は為替局でやっておりますので、私自身直接存じておりませんので、後ほどお答え申し上げます。
  162. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それでは、最後に政務次官に一問だけお尋ねして私の質問を終りたいと思いますが、岸外務大臣は、内政と外交は一体だし、こうして外交演説において、国民外交を樹立すべきことを言っておりまするし、外務省もまた、現在出版物、講演によって国内啓発を行なっておるのですが、もっと映画、テレビあるいはラジオを通じて、多面的かつ積極的な宣伝を行う必要があるのじゃないかということを私は感ずるのです。ことに外国の諸情勢については、外務省が積極的に解明をしたことが、専門的にはありますけれども、一般的にない。もっとマス・コミュニケーションの時代である今日の大きな大衆宣伝活動を利用してどんどんやられたらどうか。そういう意味で、ことしの予算は十分なのかどうかということが私は疑わしいと思う。それらの点について、どういう予算的措置をしたか、将来はどうするかということについてお答えを願いたい。
  163. 井上清一

    ○井上(清)政府委員 岸外務大臣就任以来、外交と内政の一体化ということを掲げておりますのは、御指摘の通りであります。岸外務大臣は、外交と内政は切り離すことができない、内政の裏づけのない外交は無意味だということを、しきりに強調いたしております。しかも、国民世論の背景のない外交というのはいけない。そういう観点から、国内政治、経済、文化各般にわたりまして、民間有識者の見解を聞くために懇談会などを設けたり、また国民外交を可能ならしめますために、政府としては重要外交政策を十分に国民に周知徹底いたしまするために、また国民としても十分に外交問題に関心を持って、そして国際問題に対して正しい認識を持ってもらうことが必要でございますので、あらゆる機会をとらえて、政府として外交政策その他について宣伝啓発に努めておるわけでございます。御指摘のように、新聞、放送、講演、映画あるいはパンフレット、そうした啓発手段を利用いたしまして、政府の外交政策その他国際事情の周知徹底方に努力いたしておりますので、宣伝啓発費といたしましては、そう多額の金は予算にはございませんが、予算の範囲でできるだけやりたいと思いますが、今年度は特に映画の部面に力を入れたいということで、映画の部面の費用が相当認められまして、視覚に訴えて参ります映画の宣伝力が非常に強いのでございますので、こうした面で一つ大いに宣伝啓発に役立たせて参りたいというふうに思っております。この宣伝啓発の仕事は、仕事の大事な割に、また予算をうんと使いましても、なかなか効果が目に見えて上って参りませんが、たゆまざる努力をもって着々と効果を上げて参りますとともに、一つ年を追うて予算の方もふやしていくように努力いたしたいと思っております。
  164. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 この機会に大蔵省に一つだけ伺っておきます。それは、昨日北山委員からも質問があったと思いますが、消防の十カ年計画といいますか、日本に近代的な消防施設を整備するためには、少くとも十カ年で四百億くらいの経費が必要であるということを各方面から聞いておるわけです。ところが、今年の予算的措置を見るとわずかに四億である。しかも去年は魚津その他に大火があって、その損失の総額というものは大へんな額に上っておるわけであります。わずか一億あるいは五千万円を惜しむために失っておる日本の公共施設、民間資産の損害というものは、大へんなものである。従って、もっと積極的な消防施設の近代化について、大蔵省も留意してもらいたいと思います。こういう点で、もっと積極的な施設に対する強化策に対応しての心がまえがあるのかどうか伺っておきたい。
  165. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 消防施設補助金は、ここ数年間支出いたしておりますが、来年度は特に金額も増額いたしまして、ただいまお話がございましたように四億といたしたわけでございます。消防機械を近代化せよという全体の需要から申しますと、金額がわずかであるというお話もよくわかるのでありますが、これは、何も補助したから機械が買えるという面ばかりではないわけでありまして、起債の面等につきましても考えられる問題ではないかと存じます。起債で消防施設を近代化いたしましても、そのリターンは必ずあるわけでありまして、そういう意味から、むしろ補助金は要らぬのじゃないかというようなことも、かつて考えたこともありましたが、しかし、それは消防の重要性にかんがみまして、補助をずっと継続しておるのみならず、ふやしておるわけでありますが、今後は、さらに起債の面につきましてももう少し活用することを、地方団体の方においてもお考えいただきたいと思います。
  166. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 さっきの経済外交の費用の点を伺いたいのですが……。
  167. 村上一

    ○村上(一)政府委員 先ほどのお尋ねでございますが、一般的に申し上げますと、外務省の経費全体がいわゆる経済外交に関係する経費かと思いますが、総括的にいいますと、御承知かと思いますが、一般会計の方では、外務省の三十二年度の総額は八十億でございまして、前年度の六十五億に比較いたしますと、十五億の増加になっております。なおこのほかに移住会社の出資等を加えますと、前年度対比は二十七億の増でございます。総額は九十五億でございます。ただ、今申しました中には、たとえば人件費の増等も入っておりますので、比較的経済外交という意味にやや直接的な経費のおもなものを拾って申し上げますと、外交運営の充実という件名を付しておりますが、これはいわゆる報償費でございます。これは前年度の三億七千八百万が、三十二年度は六億でございます。それからアジア諸国との経済技術協力の関係、これが三十二年度一億五千七百万でございまして、前年度に比較しまして四千万の増額になっております。それから国連関係その他いわゆる国際会議関係が相当増額されまして、前年度の一億八千万が六億七千万程度になっております。移住振興、これも前年度七億一千万が八億二千七百万、一億一千六百万の増額でございます。さらに、モスクワ大使館その他の在外公館の新設を含みます在外公館の増強を総体として見ますと、金額は四十五億四千七百万でありまして、前年度に比較しまして、六億五千七百万の増額というふうになっております。  なお、このほかに通産省におきまして貿易振興の関係、これはジェトロ等でございますが、前年度十億八千万の金額を十二億に増額しております。  なお各省関係で、こまかいものを拾いますと、このほかにもあるかと存じますが、おもな経費を申し上げますと、以上の通りでございます。  なお、これも御承知かと思いますが、別途特別会計で、たとえば輸出保険の改善、あるいは財政投資の面におきまして、輸銀の融資ワクを相当拡大しておるというような点が、貿易振興としまして、現実に相当有効に活用せられるというふうに存じております。
  168. 松本瀧藏

  169. 横山利秋

    横山分科員 政務次官がもうじきお見えになるそうでありますが、お見えになるまで、国税庁長官に少しお伺いをいたしたいのです。私のきょうの質問の骨子となるのは、税及び税に付帯する諸問題が中心であるわけであります。順序が少し逆になるかと思うのでありますが……。  最近ちまたへ行って聞きますと、税務署に対するいろいろな批判があります。たとえば納税貯蓄組合に対しては、ボスが非常に介在をして、それによって適当なことがあるという話があります。青色申告会、あるいは法人会が寄付ばかり集めておるという話があります。また一昨々日でありましたか、税務署の汚職の問題が新聞に出ておったのであります。こういうことは、先年でありましたか、警察に対する寄付は相ならぬということに、国会でも議論があったわけでありますが、どうしたら納税というものが円滑に推進されるであろうか。きょうも私は本会議でその点を大臣にお伺いをいたしたのでありますが、形の上では整っても、実際問題としてはなかなか困難があるようであります。私が第一にお伺いしたいことは、国税庁長官は就任されてもう一年以上にもなろうと思のでありますが、この一年に、あなたは納税の円滑な推進について、今どういう考え方を持っておられるか、概括的でありますが、まずそれからお伺いいたしたい。
  170. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 私、昨年七月国税庁長官を払命いたしまして、ちょうど七カ月ぐらいになります。お話しのように、税の問題は国民のすべての人に影響があり、それだけに、また仕事も非常に多方面にわたっているわけでありまして、いろいろな意味におきまして、われわれの方も、いかにして納税が円滑に行われるかということにつきましては、終始努力して参っておるところであります。われわれの考えておりますところは、一面において、納税者の方々によく納得をして税を納めていただく、一面においては、同時に税法を適正に施行して参りたい、納税者の納得を得ながら、しかも税法を適正に施行していく、こういった、ある意味においては矛盾したようなことに見えるそのこと自身が、やはりどうしても行われていかなければならぬ課題じゃないかというふうに考えております。結局、税務行政のようないわばきわめてじみな仕事は、私は長官が変ったからといって、そう急角度に方向を転換すべきものであるとは思っておりません。坂田前長官、あるいは平田前前長官も同じようなつもりで、何とかし、明るい、民主的な税務行政を施行して参りたいと、一歩々々地固めをしながら努力して参ったように思います。従いまして、いわば戦争直後におけるかなり混乱した時代の税務行政に比べますと、最近はずいぶん落ちついてきた税務行政になったと思います。しかし、われわれのほんとうの理想としております明るい、民主的な税務行政ということを考えて参りますと、もちろんまだまだ幾多の欠陥があります。税務署の汚職の問題などにしましても、われわれとしても非常に恐縮しているわけですが、まだこの跡をなかなか断ちがたいという姿にあります。しかし、われわれの方としてもずいぶん努力して参りまして、たとえば公金の使い込みのような問題も、現在でもまだ全然なくなったとは思いませんが、しかし事務をすみやかに整備していくということになりますと、もし使い込みをしても、すぐその跡が非常に早い期間にわかってしまう。そうすれば、そうしたこともだんだんなくなっていくという問題もございますし、今のお話の法人会、青色申告会という問題。これは、われわれの方は、法人会、青色申告会というものについて、われわれの方があまり突っ込んだ関与の仕方ということは考えておりません。特に税務署がいろいろな意味において協力と申しますか、納税の点について協力を得ていますから、同時に、税務署としても、その方面における協力は惜しまないつもりでおりますが、いわば税務署がそうした会から寄付をもらうとか、あるいは何らかの機会に、そうした人たちにごちそうになるとかいったようなことは厳に戒めて、同時にそうした人たちが、いわばボス的な存在になるというようなことについては、税務署としても重大関心を持って、そういうことのないように努めなければならぬ。一面、大いに精神教育的な面と、そして事務をできるだけ簡素化し、そうしたチェック・アンド・バランスの方法によりまして遺憾な事件のないように、そうした面を合せながら大いに改善して参りたい、かように存じております。
  171. 横山利秋

    横山分科員 あなたは徴収の責任者でありますが、本来徴収の基準となるべき税法に、矛盾と不公平が私は存在しておると思うのです。その矛盾と不公平は、われわれ国会の責任でもありますけれども、まだ私どもの主張の通りにはなっていない。この矛盾と不公平の中に徴収の責任を負わされ、しかも、来年度は千九百億の自然増収があなたの肩へ任務として負わされるのでありますから、私は税務行政の上に非常に問題が大きくあると思うのであります。この間も、二十年も働いておるある税務官吏に会いまして、いろいろと話を聞きますと、こんなことを言うのであります。私の先輩から聞いたのであるけれども、終戦直後、税法を今の通りまともに適用したら、みんな食えなくなる、いやそれどころか暴動が起ったかもしれぬ、こういうことをその先輩は言ったが、今でもその問題は残っておる。税法通り取れと上司は言うけれども、実際問題としてはなかなかむずかしい話だ、こういうことを言うのであります。私はその言葉を聞いて、私ども国会におる者自体としての反省もありますが、根本にさかのぼって、そのこと自体の中に徴収上の問題がやはりひそんでおると思うわけであります。天引きで課税される人と、申告で課税を受ける人と——その申告の中において、実際問題としては、今日の生活なり企業の中から税法通りやれということはむずかしい問題だという、その心理というものを長官はどういうふうにお考えでありましょうか。
  172. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 税法通り施行した場合に非常に大きな摩擦が出る、これは、終戦後数年間の時代においては、確かにそういう事態があったように思います。御承知のように、インフレによりまして貨幣価値がどんどん下っていく、それにもかかわらず、税法の方の基礎控除の引き上げでありますとか、扶養控除の引き上げであるとか、あるいは税率の直し、そういったことはどうしてもそのあとからあとからついていくということで、あの当時においてはやむを得なかったこともあろうと思いますが、そうした事態におきまして、実際の執行に当る税務官吏が非常に大きな矛盾に逢着したということは、私もあり得たと思います。しかし、その後数回にわたる減税によりまして、その点はかなり大きく直されてきたように思います。しかしそれにしましても、累進税率が非常に急角度に累進しているといったような問題からいたしまして、今言ったような点が、まだ今までの税法におきまして、幾つかの点で残っていたんじゃないか、従って、今度の千億減税の場合におきましても、重点をそこに置くというように考えられているように思います。従いまして、私どもとしましては、今度の減税が一つの非常にいい機会でございますので、この機会におきまして、税法と執行とをさらに密着さしていくということを考えるべきであるし、また今度の減税後におきましては、そうすることが、それほど大きな矛盾と無理を感じないで済むんじゃなかろうか、かように考えております。
  173. 横山利秋

    横山分科員 私は、今回政府が提案をされた税法というものは、国民の各階層、たとえば給与所得者とその他、中小法人と大法人、個人と法人、それらに対する不均衡は是正されていないと見るわけなんです。たとえば五十万の所得を持っておる給与所得者と、それから事業所得者、農業所得者、この三つの税法通り適用したら、どの階層が一番税金をたくさん出さなければならぬか、長官はおわかりでありましょうか。勤労者が安いはずであります。ところが、実際の徴収に当った結果としては、勤労者の方がはるかに高いのであります。それは、あなたも御存じないはずはございますまい。このこと自体は、やはり天引き源泉課税と申告との間に生ずる問題であると思いますがいかがでありますか。
  174. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 税法通りに施行された場合を前提にしまして、一応税法は考えられておるわけでありますが、現実の施行において、特に申告納税の場合におきまして、必ずしもすみからすみまで所得が表に出ない場合もあり得ることはあり得ると思います。しかし同時に、われわれとしましては、やはり税法の適正な施行ということをどこまでも指向していくべきである。ただ、そこに先ほども申しましたように、終戦直後のような異常に基礎控除が低い、税率は高いといったような時期になりますと、実際の施行において摩擦のみ多くして、なかなか成果があがらぬという事実があるわけであります。それが最近のようになって参りますと、だいぶ事態は変って参ります。特に今度の減税後ということを考えて参りますと、税法通りの施行がそう無理な課税になるというふうには、私は思っておりません。従いまして、それが充実していくときに、今おっしゃったような源泉の場合と、あるいは事業所得の場合に、そう無理のない負担の均衡を確保できるのではないか、かように考えております。
  175. 横山利秋

    横山分科員 その過程に無理のないことができるのではないかということは、法律改正を意味するのでありますか、行政上の問題でありますか。
  176. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 終戦直後のような、法律自身が非常に高い税負担を要請しております場合においては、施行の面において、現実化するときにいろいろな障害にぶつかる。そこで、税法が必ずしも税法通り施行できないといったような矛盾に入っていくように思います。しかし、最近のような姿にだんだんなって参りまして、特に今度の減税後のような姿になって参りますと、税法が税法通り施行されることに、そうした矛盾、摩擦ということなしに済まし得る。従って、納税者の中には、相当所得を隠したがる人もございますから、いろいろ税務署の方で、ほんとうの姿を見出すことにおいて、今後とも努力は必要であろうと存じますが、所得は確かにこれだけある、しかし、それから出てくる税金を全部徴収したのでは、とてもその商売が立っていかないといったような意味矛盾、そういった終戦直後に考えられたような矛盾は、今度の減税後においては考える必要がなくなってくるのではないか、かように考えております。
  177. 横山利秋

    横山分科員 少し感覚にずれがあるようでありますが、あなたは国税庁長官として、たとえば税金という問題について、高いから取りにくいという感じが強いのか、不公平だから取りにくいという感じが強いのか、あなたは徴収上の責任者として、どちらに重点を置きますか。
  178. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 普通の場合だったら、やはり負担の権衡といいますか、結局乏しさを憂えず、ひとしからざるを憂うといったような気持ですね。税においてもそれが中心になっておると思います。しかし、終戦直後のような姿でありますと、そうしたひとしいとか、ひとしからざるとかいうことを抜きにして、絶対的にその問題にぶつかってくるという時期が一時あったように思います。しかし、それは最近の何回かの減税でもってずいぶん直されてきておると思います。しかし、現在でも、累進税率がかなり急速に累進しておるがゆえに、そういう意味の問題が残されておるというところに、幾つかの矛盾がまだ全然なくなっておると言い切れない問題があろうとは思いますが、しかし今度の減税後のような姿になりますれば、そうした矛盾もなくなってくる。結局、横山委員のお話は、とりあえずのお話だろうと思いますが、源泉の場合とそれから申告の場合、こういうものを比較されているわけでありまして、現在において、源泉課税の場合におきましては、これは大体正確に徴収がされている。申告の場合はどうか、ところが実際の問題として、一番困難性にぶつかりますのは申告納税の分でございます。従って、その面においての考え方としましては、やはり申告納税の中における負担の公平ということも、一つの大きな問題になってくるわけでございますが、やはり今まで申告納税の場合において、いろいろそうした税法通りの施行がかなり困難を感じ、いろいろ矛盾を感じていたという点においては、そこにおける負担の絶対額がかなり高かったということが大きな働きをしていたのではないか、こういうふうに思っております。
  179. 横山利秋

    横山分科員 観点を変えまして、一般の国民は、警察と税務署に行くのはあまりいい気を持っていないようであります。それは、もちろん納める側の立場でありますから、別でありますが、少くとも全国の税務署を歩いてみて、どうも非常に暗いという感じがいたします。建物が古いせいもありましょう、またそういうような気持の問題もありましょうが、税務署へ入った場合の感じを明るくする方法は、どうお考えでありましょうか。これが一つであります。  それからもう一つは、税務職員というのは、やっぱり一つの指揮系統を持っておりますけれども、自分で外へ出かけて行って、自分で一つの事件を、あるいは問題を処理してくるという、独立した一つの大きな責任を持っておるのであります。そういう人々の中で、かりに千人に一人、万人に一人汚職のようなことができましても、あるいはまた税務職員が何ら関知しない政治家の汚職ができましても、国民のすべての目は、税務署のすべての職員に注がれるという事実を、非常に問題だと思わなければなりません。従って、私は、あなたが明年度税務に対する行政上、真に国民の信頼と協力と納得を得る手段について、徴収の責任者としてどんなことをお考えになるか。今まで通りだとおっしゃられれば、それはその通りでありましょう。しかしながら、ここに大きな仕事が課されておるあなたに対して、国家が期待するところは大きいのでありますから、今まで通りで税務にそう変りはないといっても、そこに一つのものの考え方なり、執行上のやり方なりに妙味というものが出なくてはならぬと私は存ずるのであります。いかにして税務職員をして、困難な中にも納税者の納得し得るような努力を期待し得るかいなか。納税者が税務署へやってきて、円滑に事務を処理するような雰囲気を作り上げるにはどうしたらいいかという点について、あなたの所信を伺いたいのです。
  180. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 私は、お話しのように、税務職員の勤めている税務官庁の職場をまず明るくするということが、いろいろな意味において、税務行政を明るくする一つの大きな手がかりといいますか、手段になるのではないかと思っております。その意味におきまして、大体大きく分けて二つ考えております。一つは、職場環境を何とかしてもっと改善して参りたい。第二には、職員の生活環境を改善して参りたい。職場環境を改善することにつきましては、これも、私は大体二つに分けまして、一つは、税務署の施設を改善して参りたい。この点については、横山委員の御指摘になりましたように、税務署の庁舎の中には、ずいぶん古い建物、暗い建物、あるいは終戦後にできて、かなり粗雑な建築であったり、いろいろなことから、最近建てたものは別ですが、かなり施設の悪いものが相当数あります。昨年、一昨年は一兆円予算とか、いろいろな問題にからまりまして、庁費の上でも、五つ六つぐらいしか年間にできませんでした。今度は大分主計局等にも御理解を願いまして、今年度の予算では、大体十三程度の新営のできる予算を組んでいただいております。五百四ありまして、五つや六つですと、百年に一回回ってくるといって笑ったこともありますが、今度は十三程度組んでもらっております。まだまだわれわれの希望する数字からは少うございますが、しかし、従来に比べれば相当の増額をお願いできたんじゃないかと思っております。職場環境の改善については、もう一つ私は、事務の機械化、あるいは簡素化といった面を考えております。税務職員五万人おりまして、戦争前に比べますと、ずいぶん数はふえておりますが、われわれ見て回りまして、実際忙しく働いております。どうしても一面においては、事務を簡素化することが必要であります。同時に、最近会社の方でもずいぶん事務に機械を取り入れております。税務署の事務も、何とかしてこうした機械化の方向に進んでいくべきじゃないだろうか、簡素化の面につきましては、幾つか考えておりますが、特に今度の法律改正でお願いしている問題としましては、たとえば常時使用人十人以下の場合には、源泉徴収の払い込みを三月に一回まとめてすることができるといったような制度を取り入れていただきたいとか、あるいは予定納税の場合におきましても、納税基準額が年間三千円以下の場合には、予定納税を経ないで、確定申告だけで全部片づけていくといったようなこと、その他われわれの通達の中でできますことにつきましては、さらに別にいろいろ考えておりますが、そういった面で簡素化するとともに、機械化の方向で物を考えていきたい。機械化は大体足の機械化、外部事務の機械化と内部事務の機械化と二つに分れますが、その両面において機械を取り入れていきたい。しかし、それも一度にそう飛び上ったことを考えてもものになりませんので、できるものから着実にやっていきたい。この面の庁費の増も、幸い今度の予算には相当額見込まれております。職員の生活環境の改善につきましては、私は二つの点で重点を置きました。一つは職員の給与の問題であります。この点につきましては、人事院の勧告もございまして、政府としてある程度給与の改善がお願いできるようであります。まだまだ改善していただきたいという希望はありますが、各般の事情を考えますと、そうも言えませんし、このベース・アップ及び片方における減税、こういうことを考えますと、大体署長、課長、あるいはそれ以下の点において、手取りとしては一割程度ふえるように思います。さらに生活環境の改善として、第二の問題としましては、住宅の問題があります。職員住宅が非常に払底している。特に税務職員の場合におきましては、転勤が非常に多うございますので、割合に落ちついた、一つの場所に定着している人と違いまして、住宅の関係が非常に不安定でございます。この点は、従来とも管財局におきましても、よく認めてくれまして、税務職員については、特別な配慮をしていただきましたが、公務員住宅の経費が、昨年の十億二千万円に比べまして、大体今年は十五億程度計上してあるはずであります。さらにその中から、税務職員についてのそうした特殊な事情をよく理解していただきまして、相当の割当をもらいたい、こういった面で職員の職場環境、生活環境を改善することによって、とにかく明るい職場を何とかして作りたい、こういったようなことを考えております。本年の予算を通じての具体的な現われとしましては、今いったような点が、大体予算の上に盛られているものと考えていいと思います。
  181. 横山利秋

    横山分科員 概括的にお伺いをしたのでありますが、私の聞くところによれば、これは国税庁の予算ですが、今お話しになった、たとえば税務官署施設整備費を見てみましょうか。三十年度と三十一年度を比べますと五三・四%増、三十一年度と三十二年度とを比べますと、一二・三%の減となっておるわけです。私は、先年及び先々年国税庁の職員が国税庁に対して団体交渉の際にいろいろと問題を起し、その中で一人解雇の通告を受けた事実をも知っておるわけでありますが、あなたはその担当の責任者でありますから、趣きを変えて、次官がおらないのでありますが、主計局にお伺いをしたいわけであります。これは、税務署の職員の結核の罹病率が非常に多いわけであります、この点については、常に労使の間の紛争の焦点となって、前長官も、病院を作るということをお約束になったことがあるそうであります。けれども、これは渡邊さんの時代になっても一向にでき上らずに、診療所か何かですりかえられておるというて、税務職員は怒っておるようでありますが、ほかの大きな官庁は、それぞれの病院を持っておるのであります。先年でございましたか、統計によれば、税務署の職員が、肺病がデスクの仕事としては一番多い。そういう率を持っておって、その中に約束をされたことが、どうして大蔵省としては予算に計上ができないものであるか、それがまず第一点です。  それから今言った、税務の役所の整備費の予算が来年減るのはどういうわけか。それから、今長官が得々とおっしゃったけれども、人事院勧告に加えて昇給、昇格の予算が組まれておるというのでありますが、これも絶えず論争の焦点になっておるようであります。一体、税務職員の昇給は何パーセント見積られておるか、それに関連して長官にお伺いしたいのは、一体昇給はどういう基準で、どれくらいのものが実際に昇給をなされておるか、それは他の官庁と比べて一体どうなのかという点について、お伺いをいたしたいと思います。
  182. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 施設費の関係で先ほど申しました、去年五つの税務署を新営していたのを、ことしは十三の税務署を新営し得るようになった、この経費は建設省の予算に入っております。従いまして、今御指摘になった予算の中にはちょっと面を出していない、これをまず御了承願いたいと思います。  それから減りました施設費の関係、これは確かにございます。しかし別途不動産購入費の方で、大体それと同じ金額がふえているわけでございまして、全体をにらみ合せながら、われわれの方としては予算を組んでいったわけであります。各所修繕費等でもやはり増がございまして、結局施設及び修繕費全体をとりますと、一割一分程度の増加になっております。従って施設費という一つの項目だけでは、御説の通り減が立っております。しかし、この点はやはり全体として施設及び修繕費という一括した大きなところでお考え願っていい問題じゃないかというふうに思っております。  それから税務職員の昇給につきましては、人事院の規則ですか、細則ですか、一応昇給をストップする事例が幾つかきめられております。ストップをするといいますか、昇給させなくてもいいという事例、病気の場合でありますとか、あるいは懲戒があった場合でありますとか、そういったような場合におきまして、昇給をストップをしている事例はございますが、全体としましては、大体一応きめられている期限で昇給がなされております。私としましては、税務職員が非常に忙しい仕事に従事しているわけでございますので、われわれの方で行なっております昇給が、他の官庁に比べて特に割が悪くなっているといっては語弊がありますが、冷遇されているようなことがないようにということを、かねがね心がけておりますし、現在におきまして、税務職員の待遇、昇給が他の官庁よりも悪くなっているというふうには、全然思っておりません。
  183. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 税務職員の結核罹病率の統計につきましては、私もこれを承知いたしております。過去数年来そういう事情も考えまして、各国税局に医務室と申しますか、診療所を整備するようなことも実行して参りましたし、また、たとえばレントゲン・カーみたいなものも大体整備を終っておると思います。  病院のお話がございましたが、確かにそういうお話も数年前にございました。その点につきましては、しかし国税局単位で病院を持つ方がいいのか、それともその他の非現業の官庁職員を対象とした、もう少し広い範囲の病院組織を持つのがいいのか、そこが問題でございまして、私どもといたしましては、病院ということになりますと、やはり対象人員をできるだけ広くして、そのかわり施設もより一そう整備した病院を作ることがいいのではないか、さような観点から非現業共済組合連合会の病院の各地における整備を着着と行なっておるわけでございます。現に東京におきましても虎の門に目下総合病院の建設に着手いたしておりますことは、御承知だろうと存じます。  その他、宿舎の面等につきましても、これは公務員宿舎の配分の問題になるわけでございますが来年度は、公務員の宿舎の予算を前年十億二千万を十五億に増額いたしておりまして、その中で、国税局関係がどの度程割り当てられますか、この点は管財局の方で目下検討中でございますが、全体がふえましたことに伴いまして、当然税務関係の方の宿舎も相当整備せられるのではないかというふうに期待いたしております。  税務署の庁舎の関係につきましては、先ほど長官からお答えいたしました通り、予算の面では、前年度に対しましても倍額を計上いたしまして、勤務環境の改善を特にはかっておりますので、御了承願いたいと思います。
  184. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 私、先ほど答弁を抜かしましたのでつけ加えますが、病院を作るという話は、職員組合の方からの希望としては出て参っておりました。しかし、先ほど主計局長から申しましたように、一つは、これは税務職員の一つの特殊な形態でございますが、各地にかなり散在しておるといったようなこともございまして、国税病院という姿をとるのがいいのかどうかという点については、われわれとしては当時からかなり疑問を持っておりまして、そういう方向に向うべきだということを、国税庁としてきめたことはないように記憶しております。ただ当時からしまして結核患者が非常に多い。これは、われわれも正確にその通り認識しまして、現在までのところ、東京に一病棟、それから長野県の岡谷に一病棟、病棟を作りました。ことしも大阪の枚方に一病棟作りました。私、各地を回りまして、結核患者の点について、さらに病棟を持つ必要ありやいなやということを常に気にして見て参っておりますが、大体各地に散在しておる結核患者の人たちは、共済組合の病棟とか、あるいは国立病院の病棟に相当収容していただいております。それから全体としての最近の発病率も減っております。従いまして、さらに結核関係のために国税庁だけの療養所をふやせという要請は、最近はかなり下回っているといいますか、下火になったといいますか、それほどの緊急性を感じていないようであります。病院はどうかと思いますが、しかしもっと手近な診療所を作るべきではないか。それで、三十一年度末までに、その点につきましてはかなりの整備ができたように思っております。しかし、これも結局国税局に資する程度で、各税務署ということになりますと、人数が散在しておる現在の組織からいたしますと、なかなかそれは困難でありまして、結局共済病院とか、他の施設にお願いせざるを得ないのではないか、かように思っております。
  185. 松本瀧藏

    松本主査 ちょっと主査から説明いたしますが、横山分科員質問は午前中の二番目に順位がきっまておりまして、本会議の都合で、場合によったら中止するかもしれない。あるいは大蔵委員会で質疑をするかもしれないというような話もありましたが、一応保留をいたしまして、午後質疑をされるということがわかりましたので、最後に回ってもらったのでありますが、午前中は、大蔵大臣以下全部本会議まぎわまでそろっておりました。しかし、ようやく政務次官の所在がわかりまして、五分ばかりしたら来るそうでございますから、一つ御協力のほどお願いいたします。
  186. 横山利秋

    横山分科員 それでは政務次官が来るまでに、それに関連する問題をお伺いをいたします。主計局にお伺いをしたいのは、先ほどからの話の税に関する問題ですが、国民は国家及び地方自治体に対して税金を出すと同じような立場で、寄付金というものをやはり出しておるのでありますが、国の政治の予算を見つくろう中で、この寄付金というものを勘定に入れて予算編成が行われているかどうか、それをまずお伺いをいたしたいと思います。
  187. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 国みずから事業をいたしますにつきまして、民間から寄付金を受けることを前提として、その足らすまえを税金でまかなう、さような考え方をいたしてはおりません。当然寄付金を前提とした予算の編成というものはいたしておりませんし
  188. 横山利秋

    横山分科員 それでは、結果的に寄付金が常に集まっておるという事実をどう思いますか。
  189. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 寄付金を民間から多少無理じいにいただきまして庁舎を建てるとかなんとかいうような事実が、過去において相当ございましたが、できるだけそういうことがないようにという方針で、各省におきましても出先を指導いたしておるのでございます。また私どもの方といたしましても、そういう寄付金が、集まることを前提としないでも、庁舎や何かが建つようにという予算を計上いたしておるのでございますが、たまたま地方におきまして、ある官庁の誘致をはかるとか、あるいは地方においてその場所等について希望があるというような場合に、場合によってはいまだ寄付金等を民間が自発的に出されまして、それを受け入れるという例が絶無ではないと存じます。私どもの方といたしましては、できるだけかようなことがないようにということで、各省とも指導し、また予算もそのつもりで編成いたしておりますが、ただいま申し上げましたいろいろな事例がございまして、中にはそういう場合が絶対にないとは言い切れまいと存じます。
  190. 横山利秋

    横山分科員 地方に大学ができる、税務署ができる、あるいはその他の役所ができるときに、必ずあなたの今の答弁と違って寄付金が集められ、それが庁舎の一部になっておるわけです。こういうことを主計局としては、当初勘定に入れぬでも、頭の中に必ずそれが映って計画がされていると私は思うのであります。そうでなければ結果的に必ずそれが決算の上に現われてくる事実というものを、あなたは御存じないはずはない。毎年度の決算の中で寄付金がどのくらいあるか、御存じですか。
  191. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 私どもの予算の積算は、あくまでも予算だけである計画ができるようなことで計画されておるわけでございます。しかし、たとえば学校など、国立学校にも付属小学校等がございますが、そこで、どうもその予算だけでは足りないというようなことから、PTAが寄付を集めてつけ加えた、そういう場合がおそらく御指摘のような場合であろうかと存じますが、私どもの予算上の観点からいけば足りるところを、PTA等でもう少し広くしたいとかなんとかいうような欲が出まして、そういうことに相なっておるのじゃないかと思うわけでございまして、私どもといたしましては、民間に御迷惑をかけるという趣旨では毛頭ございません。  なお寄付金がどのくらい集まっておるか、これはおそらく金で国家に受け入れられてはいないのでありまして、土地なり家なりの現物でおそらく寄贈されておるかと存じますが、私どもの作っております決算面には、従いまして、寄付金の受け入れというような形では出ない場合が多いと思います。どのくらいの金額になっておりますか、ちょっとつまびらかにいたしておりません。
  192. 横山利秋

    横山分科員 私の言う国の定義が、若干広うございましたけれども、国及び地方団体全体として、国家及び地方団体に対する決算面に現われている寄付金及び負担金等を言うのです。あなたは一体調べた数字をもって議論をされておるのか、感覚で議論をされておるのかわからないのでありますが、国家及び地方団体に対する寄付金というのは、実に膨大に毎年々々決算面に現われているのであります。  観点をかえて主税局長にお伺いしたいのは、減税をする、増税をするという場合に一つの基準となりますのは、最低生活費でありましょう。その最低生活費をこえて、少し貯金ができるようになる、こういうことが、この課税最低限の一つの基準でもあろうかと思うわけであります。そういう場合に、計算をされる中で、寄付金というものを題に映じておられるであろうかということをお伺いしたい。本来寄付金というものは、全く自発的任意のものであります。しかし、特に地方公共団体がそうでありますが、行われる寄付金というものはまず割当であります。これは、地方財政法第四条の三で、割当寄付金を禁止するという条項になっておるのでありますが、形を変えて、名前を変えて行われておる寄付金というものは、実に膨大なものがあります。それを、税制の中で計算に入れてお考えでありましょうか、その点をお伺いしたいのであります。
  193. 原純夫

    ○原政府委員 課税最低限を考えます場合に、お話しのように、どの程度の所得の層になったら貯蓄ができるかということは、一つの大きな目安として考えております。そして、ただいまお話しのように、最近では控除もある程度多くなりましたので、現在の課税最低限のところでは、それよりも若干下の階層で貯蓄が始まっておるという状態でございます。その場合に、お話しの寄付金の方はどう見ておるかということは、支出の方に立てまして、それらを差し引いたもので家計に残りが出る、貯蓄ができるという計算をいたしております。
  194. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 私は、もっぱら国の方のことを考えて御答弁いたしておったわけでございまして、国の決算には、学術関係の寄付等で用途指定特別寄付金というようなものがございますが、それ以外に、国がみだりに金銭で寄付を受けることは極力避けるようにいたしておりますので、決算面におそらく上って参ってないと思います。ただお話しのように、地方団体等におきましては、従来相当寄付を受けるというようなことがございまして、たとえば警察等につきましても、しばしば問題になったわけでございますが、さようなことはできるだけ行われないようにということで、かつて警察費につきまして、その分を特に補充をいたしたようなこともあるのであります。私ども方針といたしましては、極力そういうことが行われないようにという方針をもって臨んでおることだけを、重ねてお答え申し上げます。
  195. 横山利秋

    横山分科員 今お話しになった中で、地方における寄付金を数字をあげて見ますと、二十三年度には約百八十億という数字が発表されています。シャウプ勧告は二十四年度でありましたか、四百億と踏んでおるわけであります。二十八年度の地方財政の決算を見ますと、道府県に関しては、寄付金が六十億、分担金、負担金が五十九億、市町村では寄付金が百十五億円、分担金、負担金が三十五億、締めて二百七十億、かりに重複しておる分を引いたといたしましても、二百四十億、その中で寄付金と推定されるものが百二十億と一応決算面から推定できる勘定になっております。けれども、これは地方財政にはっきりと決算をされる寄付金でありまして、そのほかの寄付金というものは、この倍になるのではないか、さらに三倍になるのではないかとさえ推定される。そう考えてみますと、かりにそのほかのものを二倍、三倍として三百六十億としてみますれば、国民一人当りの寄付金は容易ならぬ額に上ってくるわけであります。今回の千億減税が行われていく過程において、そのほかの準税と申しましょうか、寄付金なり分担金なり負担金について一つの制限を加えないと、国民の負担というものは別な形でちっとも軽くならぬということを心配するわけであります。そこで、おそくなっておいでになった政務次官も、事の次第はおわかりでありましょうが、政府はこの機会に、寄付金、分担金、負担金というものについて制限をする気持がないのかどうか、この点をまずお伺いいたしたいのです。  先年来警察費について、国会は、警察というようなものが寄付を仰ぐというようなことは、これはいけないことであるという断定を下しました。それと同じようなことは、大蔵省関係においては、税務署に対する寄付金もこれまた断じてとめなければなりません。たとえ名前が青色申告会であろうと、あるいは法人会というような名前を用いようと、どんな名前を用いようと、税務署に対するものというものはとめなければならぬ。ただ単に税務署ばかりではありません。国家の権力機関に対して、国民から半ば強制的にその寄付金なり分担金なり負担金の提供を要求せられ、ある場所においては、村八分のような状況の中で、これら三百六十億になんなんとする寄付金が提供されるといたしますならば、その見返りの問題ということが、汚職、疑獄の一つの大きな要因となるのではないかと思うのであります。もし主計局長の言うように、国家の予算というものが、それを必要とせずして編成されておると断言せられるならば、国家は、人民に対して何らの迷惑をかけないというきぜんたる態度をもって、寄付金、分担金、負担金についての厳重な制限をなさるべきであると思うが、いかがでありましょうか。
  196. 足立篤郎

    ○足立政府委員 私もいなかに居をかまえておりまして、今横山委員のおっしゃるような寄付等に関しまして、いろいろと弊害があったことを身をもってよく承知いたしております。御主張の点は、全くその通りに私も考えるわけでございます。政府といたしましても、今までもおっしゃるような線でいきますように指導はいたしておるわけでございますし、そういう方針で臨んでおるわけでございます。最近私どもいなかで見ておりますと、一般の意識もだいぶ高揚して参りましたので、かりにそれが公けの事業をやる、たとえば学校を作るので、これだけの分はどうしても町村の財政からはみ出るので、何とか寄付をしてくれというような話がある場合につきましても、やはり町村民がしっくりと納得づくでないと、なかなか前のように、ただこれは役場できめたからみんな無条件で出すんだというような工合にはいかなくなって参っておりますので、一般的にみますと、よほどその点は改善されてきておるのではないかと私個人としては見ております。ただ、今横山委員御指摘のような弊害が、まだまだ全国的には相当あるのじゃないかということを心配いたしておるわけであります。政府といたしましても、おっしゃるような趣旨でいきたいと考えておりますので、今後の行政指導等につきましても、十分注意をして参らなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  197. 横山利秋

    横山分科員 これは政務次官のおっしゃるような、言葉だけの問題では解決を断じていたしません。少くともこれが石橋内閣の一つの政策となり、行政指導となって、しかも政府中央機関みずかちがその決意を固めなければ、とうていこれはできるものではありません。その意味において、政務次官が今端的に率直におっしゃったのでございますけれども、そのおっしゃった言葉だけでなく、その具体的な方法を講じられるべきだと思いますが、その具体的な方法をどうお考えでありますか。
  198. 足立篤郎

    ○足立政府委員 この問題は、実は非常にむずかしい要素を私は持っておると思うのです。お説の通りどもも考えておりますし、政府としても、すでに閣議決定等もして、その方針を樹立して今日に至っておることは、御承知通りでございますが、何と申しますか、ほんとうに町村民が納得づくで出そうというようなものについて、これを絶対に禁止するということも、これはできないわけなんで、そうかといって、お説の通り、本来ならば、かようなかりに強制的な要素を持ったものは認めるべきではないわけでありますから、やはり私は、行政指導方針としてこれを徹底していくということしかないと思うのであります。その末端に徹底する方法について、十分な措置をとらなければならぬと思っておりますが、今ここで、かくかくの方法をとって御期待に沿うということについて、万遺憾なきを期しますという具体的な方法を発表するだけの材料を持っておりません。おっしゃる点は、十分私ども納得できる点でございますので、今後の処置につきましては、部内におきましても十分研究をさせていただきまして、具体的な方法につきまして、いろいろ委員の皆さん方からもお教えをいただく点もあると思います。誠意をもって善処いたしたい、かように考えております。
  199. 横山利秋

    横山分科員 追及をすれば、みんな納得づくで出したものはしようかないじゃないかということをあなたもおっしゃるわけであります。そういう答えに、いつの場合においても最後にはなるのであります、それを乗り越えなければならぬのであります。警察費の問題についても、国会でこれを追及いたしましたならば、警察署長並びに行政機関は全然表におりません。しかし、そのかわり警察に関係した人が、別な角度で名前を変えて、そして寄付をもらっておるわけであります。それは一体何だといえば、きわめて合法的なやり方で、県知事が寄付の主催者をしてはいかぬというならば、今度は県知事でなくして、何のたれがし個人で協力会を作っておるのであります。これまた合法的でありましょう。そういう合法か非合法かという形式論で問題をあげれば、これはあなたがどうお考えになろうが、決してとどまるものではありません。そこのところを乗り越えて、三百六十億にもなんなんと推定されるこの寄付金を、この際一つ政治を清潔にするために、断固としてやるという強い意思があるならば、かきねを乗り越えなければならぬのであります。私がここであえて何回も申しますゆえんのものは、大臣がきょうはどうしても御都合が悪いというので、新任のあなたに強く言うわけでありますが、これは、何としても政府において十分に閣議なり何なりで協議をしていただいて、一千億減税の片すみに、別な角度で国民に半強制的な寄付金なり分担金、あるいは負担金というものがかかっていくであろうという今日までの推移からいって、きぜんたる方針と、きぜんたる方法と、具体的なやり方をこの際とらなければならぬ、こう思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  200. 足立篤郎

    ○足立政府委員 責任ある御答弁は大臣から申し上げなければならないわけでありますが、やむを得ざる所用で大臣外出しておりますので、ただいま横山委員の御説、私も実は全く同感なんでございますから、私も政務次官として、責任をもって大臣に御進言申し上げ、今おっしゃるような線で、あるいは閣議決定等の方法をとる必要があれば、そういう方向に向っていただくように強く進言をして善処いたしたいということを申し上げて、御了解を得たいと思います。
  201. 横山利秋

    横山分科員 それでは、一応この質問はこれで打ち切ることにいたしまして、その結果は、適当な機会に、私の所属いたします大蔵委員会において、政務次官より御報告を承わることにいたしたいと思います。  次の質問は、今千億減税といわれておることの別な角度から、増税が行われようとしておるのであります。その一番問題になるのはガソリン税であります。なぜあれだけ昨年以来騒いでおって、しかも政府で、閣議できまったかどうかわかりませんけれども、六千五百円ないし三千円というふうにきまったかに伝えられておるにかかわらず、国会がこれまで開会されておるにかかわらず、ガソリン税に関する法案、軽油取引税に関する法案は、いつまでたっても出て参りません。一体今どういう経過をたどっておるのか、まずそれを伺いたいと思います。
  202. 原純夫

    ○原政府委員 揮発油税法案並びに地方道路税法案、それから地方の方では軽油取引税が地方税法案に入ったわけでありますが、これらはただいま準備中でございます。
  203. 横山利秋

    横山分科員 私は、その準備中という言葉がどういう意味なのかと聞いておるのであります。新聞では、もうとっくに政府は六千五百円と三千円できまった、こういうふうに伝えておる。それにもかかわらず、国会が開かれてからもうずいぶんになるにもかかわらず、一向法案は姿を見せようとしておらないのであります。一体出すのか出さないのか、何をしておるのか、その間の経緯を聞きたいと思っておるのであります。
  204. 原純夫

    ○原政府委員 本件につきましては、臨時税制調査会の答申の中にも入った事項でございます。その時分からいろいろ議論がございました。特にこれが先般の予算編成の際に、それと表裏する歳入面の一環として取り上げられまして、われわれの部局としての原案は、御承知通り国税、地方税を合せまして八千円でありましたのが、議論の末合計六千五百円というような線に参ったのであります。それで諸般の計数を整理して予算ができておるわけでありますが、何分国、地方を合せまして一万三千円というのに対しまして、相当大きな引き上げの割合になるということから、いろいろ議論がございます。それらの議論をただいま調整しつつ準備をしておるということでございます。
  205. 横山利秋

    横山分科員 閣議ではきまったのですか。
  206. 原純夫

    ○原政府委員 税制改正の要綱というもので、税の関係につきましても、ごく大筋をきめるという段階が一つございます。それから、その次に各税法につきまして、その法律案の要綱、さらに法律案自体というふうにきまって参ります。税制改正要綱は、御存じの通り、閣議ではっきりきまっております。そのあとの法律案要綱、法律案自体というものはまだきまっておりません。
  207. 横山利秋

    横山分科員 私が聞いておるのは、六千五百円、三千円という数字は、閣議できまった数字であるかどうかということをお伺いしておるのであります。
  208. 原純夫

    ○原政府委員 税制改正要綱の中に、揮発油税の項目によりまして、ただいまお話の数字が入って、それできまっております。
  209. 横山利秋

    横山分科員 閣議できまっておりながらかくもおくれておるのは、政府自体の問題でありますか、他に事情があってのことでございますか。
  210. 原純夫

    ○原政府委員 主として議論は党側にございます。党側でいろいろなお調整を要する面が多いということでございます。
  211. 横山利秋

    横山分科員 それではその調整の結果、六千五百円、三千円は下げて出すということもあり得るわけですね。
  212. 原純夫

    ○原政府委員 私どもとしましては、先ほど来申し上げましたように、六千五百円の線で閣議を税制改正要綱の形で御決定願い、予算もそれで組んでおるのでございますから、それで参りたいと思っております。今後どういうふうになるか、これは今後の経過に待ちたいと思います。
  213. 横山利秋

    横山分科員 政務次官に、少しこの点について伺いたいのでありますが、今一千億減税といっておるときに、ガソリン税はたしか今八割の税金でありましたか、それにさらに六千五百円にいたしましても、その上さらに五割課税することになります。まさに仁徳以来の大増税であると私は思っておるわけですが、どうしてもこの機会にガソリン税を上げなければならないという理由を、政府としてはお考えでありましょうか。私の聞きたいというのは、道路が悪いということは、私自身も認めておるわけでありますが、しかし道路を直すについて、どうしてもガソリン税を上げなければならないのか、この一千億減税をする機会に上げなければならないという必然的な理由を、もしも六千五百円が閣議できまっておるといたしましたならばその理由を伺いたいのであります。
  214. 足立篤郎

    ○足立政府委員 非常にむずかしい御質問で、私も実は答弁に窮するわけであります。実は私が政務次官に就任いたしました以前に、その方針がきめられておりまして、当時は私も党側にございまして、いろいろと批判もいたしておったわけでございます。諸般の情勢を考えますと、横山さんのおっしゃらんとする御趣旨もわかるわけでございますが、そのガソリン税を引き上げなければならないという理由につきましては、今までも事務当局から具体的にいろいろ御答弁申し上げておるのではないかと思います。いろいろ理屈はございますが、今おっしゃる通り、大減税をやろうという際にこういう増税をやらなければならない必然性について答えろと言われても、私には実は的確な御答弁はできません。正直に申しまして、これは政策的な見地で、全般の情勢を勘案して、政府として政策的にきめられたものだというふうに私は考えておるわけでございまして、理論的にこれを究明して必要性を説けと言われても、ちょっと苦しむわけでございますが、まあ政策的な見地できめたものだということで御了承願いたいと一思います。
  215. 横山利秋

    横山分科員 私も今理論的なことをあなたに聞こうとは思わないので、その政策的な見地から聞きたかったわけです。その政策的な見地からといいますと、たとえば運賃を値上げしなければならぬ、国鉄が上ると私鉄が上る、そうするとバスも上げなければ格好がつかぬ、こういうような政策が一つ考えられるわけです。それから交通業界、石油業界、あるいは自動車製造業界が少し利益があがり過ぎるからここで何か一発食らわす必要があるということも、政策的な見地でありましょう。しかし私がいろいろ考えてみましても、そのいうところの政策的見地からは、値上げの理由はどうも見出せないようであります。それよりも理論的な見地から議論をすれば、まだその可能性がないではありません。しかし、それはそうであります。それはまた別な角度です。今われわれが国会で、このガソリン税を上ぐべきか上げるべきではないかということは、まさに政治的、政策的見地から論断しなければならぬと思うので、それを実はあなたに聞きたかったわけであります。承わりますれば、与党内においては、おそらくあなたのおっしゃるような政策的見地であろうと思いますけれども、これが、過大な値上げをやるべきでないという観点が盛んに行われ、本日も行われておるそうでありますが、政務次官として、このように閣議できまって、まだ法案は出ておりませんけれども、まことに世間をひっくり返したような騒ぎ、党内もひっくり返ったような騒ぎになっておりますので、このガソリン税について、どういうふうにこれから措置をなさろうとするのか。きわめて抽象的な聞き方で何でありますが、お伺いをいたしたい。
  216. 足立篤郎

    ○足立政府委員 私が政策的な見地と申し上げましたのは、横山委員十分おわかりの通り、ガソリン税をいわば目的税ということにいたして参りました当時からのいきさつがあるわけでございまして、受益者負担という意味合いが非常に強いわけであります。同時にまたガソリンの価格そのものが原価は外国と比べまして大体似たようなものでございますが、諸外国のこれに課している税も相当高いわけでございまして、わが国は諸外国の例と比べまして、結果的には非常に安い価格になっておる。ガソリンは一銭でも安い方がいいということは申すまでもありませんが、今申し上げた受益者になるべく負担をしてもらって、道路整備を急速にやろう、これは大蔵省でもこまかに数字ができておりまして、必要なら事務当局から御答弁申し上げますが、道路の整備によりまして、ガソリン税として失う面よりも道路整備によって利益を受ける面の方が大きいだろうという数字も、実はできるわけでございまして、そういう点いろいろ勘案いたしまして、政策的な見地からこの際踏み切るべきだというふうに考えたわけでございます。その金額の多寡につきましていろいろ議論のあります点は、ただいま御指摘の通りでございますが、政府といたしましては、この際以上申し上げたような点から、値上げにつきましてはやむを得ないというふうに考えておる次第でございます。
  217. 横山利秋

    横山分科員 まだ法案が目の前にもないのに、あまり多くの時間を費すのはいかがかと思いますけれども、お話を承われば、政府としても六千五百円並びに三千円については再検討をなさっておられるようでありますから、一言つけ加えて所見を述べたいと思うわけです。  あなたの言うところの、税金を納めてもその還元利益があるという思想は、これは、ちょうど大学を卒業すれば五万円の収益があるから、お前今一つ三千円よこせというような思想に近いのであります。今日の交通業界に対する税金というものは、ガソリン税、軽油税、自動車税、あるいは先ほどからお話が出た道路負担金等々、十数項目にわたっておりまして、各種業界に対する税金よりも最も多い。それに今税金を課して、道路がよくなればお前たちの利益になるのだからといっても、十ヵ年計画で道路が完全になる前に、学校を卒業する前に、この重税の中で、その業界は疲弊にあえいでしまう、そうして新しく起き上った、新しく設立されたる業界、つまり税金を払わなかった業界がその恩恵を受ける、よその人が恩恵を受けることになる結果になると私は思うのであります。ここで翻って、私は先般来考えておるわけでありますが、社会党がかねがね主張し、かつ聞くところによりますと、新聞にもちょっと伝わったようであります。うそかほんとうか知りませんが、お伺いしたいのは、今日とかくの問題がある自衛隊が、あんな人を殺さぬでも、国家の道路建設に協力をしたらどうだろうか、これは一石二鳥にも三鳥にもなる話でありまして、自衛隊の演習の一つにもなるでありましょう。土木建築作業の一つにもなるでありましょう。国家はまたそれによって非常な利益を受けるのであります。またこれによって納税者も大いなる稗益を受けるわけであります。こういう点について、自衛隊そのもの自体の性格論なりあるいは存廃論については、与野党ともに大いに見解が異なるところでありましょう。政府もまた異なるところでありましょうが、しかし当面、国民に対し親しまれる自衛隊というものをもし政府がお用いになるならば、また千億減税のときに増税をすることを避けたいと思うならば、自衛隊をして道路建設の十年計画に大いなる役割を果せしめることが、最も私は適当ではないかと思うのでありますが、この点いかがでありましょうか。
  218. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 自衛隊の持っておりまする部隊の中で、工作能力のある部隊があります。従来、災害復旧のときなど出動いたしまして、いろいろ御好評もいただいておるわけでございますが、そういう点も考えまして、今後の訓練と両立し得る範囲内におきまして、そういった方面の施設等も整備し、出動についての運営も、できるだけそういうチャンスを多くするような方向で考えていくことは、防衛庁においてもいろいろと計画をいたしておると思います。ただ、これをただいま御指摘のございましたような五ヵ年計画、あるいは十年計画そのもののにない手としてしまうということにつきましては、防衛庁の目的との関係からいたしまして、いろいろ問題もあるわけでございまして、五ヵ年計画、十ヵ年計画のにない手として考えて参りますことにつきましては、ちょっと踏み切れないのでございます。防衛庁の訓練と相両立する限度において、部隊所在地周辺のいろいろな災害復旧であるとかなんとか、そういうときに出動いたすという面につきましては、今後もできるだけ要望にこたえるようにというような気持でおるのでございます。せいぜいその程度でお考えをお願い申し上げたいと思います。
  219. 横山利秋

    横山分科員 その程度の話でありますならば、もうすでに今日まで行われておるわけであります。自衛隊法にあるように、要請があればやりますということになっておる。事実道路の修復も、地方自治体の要請によってやっておる。やっておるけれども、またそれに対する弊害というものも起っておるわけであります。私が言いたいのは、自衛隊法による要請でなくして、国が自衛隊と、それから関係各省との協議によって完全な十年計画のにない手になれ、こういう意味を言うのではありません、しかし少くとも一翼をになって、国家の建設のために自衛隊も参画すべきではないか、こういうことを私は言っておるのです。いわゆる受け身でなくして、積極的にその一翼をになう気持はないのか、こういうことを言っておるのであります。
  220. 足立篤郎

    ○足立政府委員 御説は私もよくわかります。それからお話の中にもございました通り、今地方でこういう工作能力を持った部隊は、町村あたりの委託を受けまして、農道の建設、町村道の建設等に相当大きな役割を果しておることも事実でございます、それは、今主計局長からお答え申し上げました通り、自衛隊の訓練課程に並行してと申しますか、目的に沿う範囲でやっておるわけでございます。これは防衛庁の方の訓練計画というようなものもございますので、私の方の一存でお引き受け申し上げますというお答えは実はできかねますが、御趣旨は、私どももよくわかるわけでございますから、今後の道路整備計画の少くとも一翼をになってもらう、これが自衛隊の訓練にプラスになるものであるならば進んでやってもらうべきだと私どもも考えるわけでございます。政府部内におきまして今後調整をはかり、協議をいたしまして、できるだけ御趣旨に沿うように善処いたしたいと考えます。
  221. 横山利秋

    横山分科員 今ガソリン税の話をしておるのでありましたが、そのガソリン税をとるべきではないという立場と、それから自衛隊そのものについての立場と、私はかね合わして政府に対して要望をいたしたわけであります。  最後にお伺いをいたしたいのは、この目的税を設定をした趣旨について、政務次官は少し触れられましたが、世界各国との比較論については、時間が長くなるからやめますけれども、私の知る範囲では、ガソリン税を目的税といたしておるのは、アメリカのある州だけでございます。あとは道路財源の方に回るようにはしておりますが、目的税として完全にいたしておるのは、アメリカのある州だけでございます。本来この目的税の設定自体国会において大いに議論のあったところであります。しかし、かりに百歩譲って、目的税に設定したからというて、じゃあ道路については、ガソリン税だけで道路は修復すべきものというふうな判断は、まさかなさっていらっしゃるまいと思うのであります。ところが、それにもかかわらず、かつて設定以前に、ないしは設定直後、一般財源から投入されました道路財源というものは、年年歳々これは驚くべき減少を見せておるわけであります。このことは、結局ガソリン税を目的税に設定したところで、総ワクは当時予想したようにふえなかったということになる。だから、目的税の設定として、当時の建設大臣はえらいいばったものでありますが、今、いやわしの意図に反したといって、この間もある業界で演説をせられておる。これは個人の責任でなくして、やはり政府の責任でありましょう。少くとも一般財源がそれと肩を並べて増加をしていくことによって、目的税として多少の増税があって、過去の場合においても、その不満を持つ業界を納得せしめられるものでありましょう。今回五割増加して、そうして私の知るところでは、一般財源をわずか十億でありましたか、四十億でありましたか、増加をされたようでありますけれども、それだけでは、全然議論の余地がないものといわなければなりません。私は、直接のお返事よりも、今検討中であるというガソリン税の最終決定に当って、私がるる申し上げた諸点を、政府において十分に勘案をされるように要請してやまないものであります。石油業界、あるいは輸送業界、あるいはトラック製造業界及びその傘下に働く労働者は、千数百万に及ぶでありましょう。先般聞くところによりますと、政府のこの増税に対して、われわれは今まで陳情をしておったけれども、もう陳情の時期ではない、何か自動車政治連盟を結成して、一千万の労使を糾合して政治活動をやる、こういう宣言を発表いたしております。本来の業務に労使双方相協力して精励すべき人々が、政府のこの誤れる措置によって政治活動に乗り出していくということは、私は決して望ましいことではないと思うのであります。せっかく再検討される機会があるといたしましたならば、百尺竿頭一歩を進めて、この際ガソリン税については見送って、そうして、それに必要な道路整備について新しく一般財源を投入するなり、あるいは自衛隊の協力を待つなり、あらゆる工夫をして、この人々の要請にこたえ、千億減税の立場を貫かれることを要望してやまないのであります。  最後に、今後の法案を、それではいつごろ所管の大蔵委員会に提示されるおつもりであるか、事務的な点だけお伺いをして、私の質問を終ることにいたします。
  222. 原純夫

    ○原政府委員 所得税法案、法人税法案は、すでに提出いたしました。引き続いて印紙税法案、骨ぱい関係の法案、それに揮発油税、地方道路税といったようなものが提案になる運びでありますが、一番おくれると思いますのが租税特別措置法であります。これは、今回見やすくするという意味もかねて、全文改正したいと思っておりますので、これは二十日ころ——二十日少し過ぎるかと思います。その他の法案は、それまでの間に御提案したいと思って鋭意準備をいたしております一ただ一つ、例の中小企業のための資産再評価の件は、だいぶ話がおくれてきまりましたので、この関係だけは、あるいは月を越すことになりはせぬかというふうな見通しでございます。
  223. 松本瀧藏

    松本主査 他に本分科会所管に関する質疑の通告がありませんので、これをもって本分科会所管に対する質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。本分科会所管の予算各案に対する討論採決は、予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 松本瀧藏

    松本主査 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  ではこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会