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1957-02-13 第26回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十三日(水曜日)     午前十時二十四分開議  出席分科員    主査 松本 瀧藏君       植木庚子郎君    太田 正孝君       北村徳太郎君    須磨彌吉郎君       船田  中君    古井 喜實君       山本 勝市君    北山 愛郎君       田中 武夫君    田原 春次君       古屋 貞雄君    矢尾喜三郎君    兼務 川崎 秀二君 兼務 井堀 繁雄君    兼務 島上善五郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 田中伊三次君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         人事院事務官         (事務総局管理         局長)     丸尾  毅君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房会計課長) 土屋  昇君         総理府事務官         (国防会議事務         局長)     廣岡 謙二君         総理府事務官         (皇室経済主         管)      高尾 亮一君         警  視  長         (警察庁長官官         房長)     坂井 時忠君         警  視  長         (警察庁長官官         房会計課長)  後藤田正晴君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         国家消防本部長 鈴木 琢二君         調達庁長官   今井  久君         調達庁次長   丸山  佶君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     松本 豊馬君         自治政務次官  加藤 精三君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      藤井 貞夫君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      小林與三次君         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奥野 誠亮君         防衛政務次官  高橋  等君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (教育局長事務         取扱)     都村新次郎君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   相澤 英之君     ————————————— 二月十三日  分科員河野密君及び古屋貞雄君辞任につき、そ  の補欠として田中武夫北び北山愛郎君が委員  長の指名で分科員に選任された。 同日  第二分科員川崎秀二君、井堀繁雄君及び島上善  五郎君が本分科員兼務となった。     —————————————  昭和三十二年度一般会計予算内閣及び経済企  画庁を除く総理府所管  昭和三十二年度特別会計予算総理府所管     —————————————
  2. 松本瀧藏

    松本主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十二年度一般会計予算内閣及び経済企画庁を除く総理府所管昭和三十二年度特別会計予算総理府所管を議題といたします。  質疑の通告がありますので順次これを許します。井堀繁雄君。
  3. 井堀繁雄

    井堀分科員 自治庁並び法務省関係予算と関連して一、二ただしてみたいと思います。  さきに石橋総理就任と同時に五つの誓いをお立てになっておりますが、まことにけっこうなことだと思います。その五つの誓いの中で、その二つに政界官界綱紀粛正と信賞必罰を厳にすることを強く述べられております。ごもっともなことだと思うわけであります。そこでわれわれはこれが言うことはきわめて容易でありますけれども、過去何回かこういう誓いに似た強い表明がなされたにもかかわらず、依然として官界政界における忌まわしい事件が跡を断たない、非常に実行のむずかしいことでありますが、それだけにこの誓いは国民にとっては相当強く響いておるものと信じます。そこで私ども今日の日本政治の姿をながめますのに、何といいましても日本政治議会政治の上に運営されておるのであるし、ことに二大政党中心とする議会政治理想に近づくために、だんだん努力して成果を上げつつあると見ていいと思います。こういうときだけに、この誓いの言葉については、与野党を問わず国民に対してはもちろんのこと、われわれ自身としてもよほどきびしい自粛自戒をしなければならぬと思っております。  そこで議会政治建前政党政治建前からいたしますと、官界粛正をやる前に、まず政党なり、議会なりに対する問題があると思う。議会政治選挙を通じて基礎がつちかわれるのでありますから、まず第一に選挙が公正でしかも適正な方法を通じて行われなければならぬことは申すまでもありません。この関係憲法にも法律にもきわめて明確になっておりまするように、高い理想と強い現実を要求しております。  そこでお尋ねいたしたいと思いますのは、所管自治庁でございますので、まず第一に選挙を公正、適正に行いますためには、選挙制度の確立がいつも問題になります。次にはその機構制度がいかによくできていましても、運営を誤まりますと意味をなさなくなるわけでありますから、その機構運営の問題が出てくるわけであります。そこで一、二お尋ねを順次していくつもりでありますが、まず第一に自治庁長官はその所管におすわりになりまして、しかもこの内閣の最も重要な誓いの一つをあなたは実行に移されるわけでありますから、この選挙に対するそれぞれお考えが、こざろうと思うのですが、それを具体的に伺って、私もまた具体的なお尋ねをいたしたい。
  4. 田中伊三次

    田中国務大臣 お尋ねはまことにごもっともな熱意のある御意見と拝聴いたしまして、まことに恐縮に存じます。石橋内閣はお言葉をいただきました通り、まず官界粛正については、内閣それ自体政府それ自体が大いに反省をしていきたいという心持で、まず改めるべきはおのれであるという意味の強い、一般から申しますと少し強過ぎるほどの発言をいたしたわけで、その通りの信条で、まず内閣、続いてそれぞれの所管政府をという意味で、自粛の念に燃えておるわけでございます。さらに一般政界粛正ということは、まことにおこがましい話なんでありますが、これを何とか実行するためには、ただいまのお言葉通り選挙をでき得る限り公正に行うという基本問題を解決していくように努力しなければならないということに到達をいたしまして、新年度から特に力を入れたいと思いますことは、選挙の基本問題である常時啓発に力を入れて参りたいということであります。常時啓発に関する希望は、衆参両院委員会を通じてもしばしば議決をいただいておりまして、御意向は承わっておったのでありますが、今日までの政府予算的な措置といたしましてこれを予算の上に現わすことができなかったことはまことに遺憾であります。そこで新年度におきましては、政府は一億円——金額は少し足らないのでございますが、一億円の金額予算に計上をいたしまして、これを常時啓発に使おう。使う方向は各都道府県にこの経費委託をいたしまして、常時啓発をやらせる、そうしてこの経費のほかにもう一つ地方交付税を通じまして渡す従来出しております経費が一億円ございますので、これを合せて全国年間を通じまして二億円の経費を傾けて常時啓発選挙宣伝努力をいたしたいという事柄であるのであります。  そして具体的に常時啓発ということはどんなことをやろうという考えであるかというお言葉が次にあろうかと思いますので、この際に一言申し上げますと、農村地方に常時啓発をいたしますと申しましても、これにはなかなか時間的な限界もございまして思うように参りませんが、極力農村ひまな、農閑期と申しますか、そういう農村ひまのある時期をねらいまして、ここで地域別に、あるいは青年会であるとか、あるいは熱心な婦人会であるとか、ことに婦人会等啓発の力を入れて参りたい。同時に経費の許します限り、各農村には選挙啓発に値するような映画も持って参りたい。それからローカル・ラジオ等を通じましてもその啓発努力をしていきたい。あるいは講演会をやる、あるいは座談会をやる、特に青年団婦人会等との話し合い等の懇談的な会合に力を入れまして、順次青年層、特に婦人層に対しては選挙に関しての御理解をいただきますように力を入れて参りたい。こういう心持で常時啓発に関する経費を一億、一般啓発に関する経費を一億、合計一億の経費を傾けまして相当に効果を上げ得るのではないかと考えておるわけであります。  なお常時啓発費が一億ということになりました一つの含みでございますが、とにかく初年度においてはこういうことにしよう、平年度以降においては極力この金額については、政府としては考えなくてはならないということに了解の事項もございまして、将来はこれにうんと力を入れていきたいという心持を持っておるわけでございます。
  5. 井堀繁雄

    井堀分科員 選挙の適正を期しますためには、今お答えになりました、また法律の規定の中できびしく宣言しておりますように、常時啓蒙宣伝仕事はもちろんでありますが、いつも選挙特別委員会論議中心をなしておりますし、地方選管あたりの要求も強いのでありますけれども、今お伺いますと、そのための予算措置としては格別新しいものがないようであります。地方交付金を通じて出されるものについては、あとで具体的な事例をあげて一つ考えを伺うつもりでありますが、特に一億の予算をお組みになったという御発言でございますが、これはどういうふうにお使いになるのか、部長の方からでもけっこうでありますからちょっとお伺いしておきたい。
  6. 田中伊三次

    田中国務大臣 大体各地方委託をする経費として一億を見ておるわけであります。そこで有権者と申しますか、有権者人口と申しますか、そういうものに比例をいたしまして、大体その金額を各地方に割り当てまして、常時啓発をやりたい、こういう考え方を持っておるわけでありますが、やり方の詳細は事務当局より御説明をいたさせます。
  7. 兼子秀夫

    兼子政府委員 お答えいたします。常時啓発費につきましては、ただいま大臣からお答えいたしました通り明年度予算に一億円を委託費として計上いたしてございますが、このやり方につきましては、目下実際の配分計画を立案中でございますが、大体の考え方におきましては、出版物等は、府県でまとめて刷った方が合理的なものは府県で刷らせることにいたしまして、都道府県市町村配分額はほぼ同額程度にいたしたい、かように考えております。御承知の通り、今までの地方財政計画に入っております啓発費の財源一億円の配分計画は、府県有権者一人当り八十銭で市町村が一円二十銭でございますので、総額の計算におきましては、府県が四千万円、市町村が六千万円、四分六に相なっておりますが、今回の常時啓発費におきましては、大体のめどといたしましては、実際の仕事の遂行上、府県の方にややウエートをよけいかけたいと考えております。  それからどのような仕事をするのかという問題でございますが、これは今までの啓発の仕方を検討いたしまして、政治をよくする。選挙をよくするということにいたしますには、どうしても有権者の自発的な意識と申しますか、考える力を養っていただく以外にないのじゃないか、自発的にものを判断する力を養う、そういう趣旨からいたしまして、この一両三年来やっておりまして相当成果の上っております話し合い運動と申しますが、小さなグループで個々に各人発言する、選挙の問題に限ったことではなく、社会的問題につきましても各人意見を言う機会を与える、そういう指導をしていくことによりまして、政治に対する考え方責任感も強くなりましょうし、ひいては選挙に対する義務というものがおのずから身についてくるのではないか、このような考え方のもとに、話し合い運動に重点を置きまして、それに対します講師の養成の費用、それから都市におきましては、それ以外に政治講座と申しますか、政治思想政治常識講座を設けまして、青年学級婦人学級にあわせましてそういう講座を設けて、都市の普及をはかりたいと思っております。それ以外に講演会座談会等を開催いたしますことは従来と同様でございます。
  8. 井堀繁雄

    井堀分科員 常時啓蒙周知運動というのは、法律にも具体的に羅列して自治庁長官並びに地方選管にこうあるべきことを命じておるわけなのです。今あなたの御説明によりますと、その一部をおやりになるということでありますが、一億の金で全国——法律の規定している一つを取り上げても相当容易でないと思う。私はある意味において法律はあまり理想に走り過ぎて現実と遊離しているうらみもないではないと思いますが、しかしそれは現実がおくれていて法律が妥当な位置にある、こういうふうに私は見ておる。特に私がこの機会にこの問題をきびしく追及いたしますのは、いかに綱紀粛正官紀粛正を唱えてみても、今日のような選挙のあり方では、決してそういう結果は求められぬという、かなり悲観的な前提が私にはあるのです。これは私にあるだけでなく、ことに注意をいたさなければならぬ点は、法律もこういう点を留意してこういう強いことを命じておるものと思うのです。日本の過去の長い歴史は、何といっても封建的な思想が非常に強いし、ことに全体主義考え方というものは、、そう一朝一夕に払拭できるものではないことも覚悟しなければならぬと思う。こういう問題を積極的に打破して、そうして民主主義的な芽を出すということは、私は選挙運動を公正に行うための基本的なものじゃないか。であるからこそ、第六条にはそのことを明文化し、また憲法もこのことを宣言しておるわけであります。ところが肝心な選挙事務に対する責任行政庁である自治庁は、前回から私ども何回となくこのことを警告し、次の予算には必ずもっと積極的な内容を盛り込んだ予算が出ることを要望しておいた。今伺いますと、これは一億ばかりの金を全国選管にどういう配分をするかということ自体にわれわれは疑問を持つほど少額なのです。私は金額少いから運動が進まないという極論をするものではない。また逆にあまり少額なものというのは、結果から見ますとむだ金になる。石橋内閣国民に誓いを立て、神に誓おうというのでありますから、先ほども申し上げますようなそういうスローガンだけを掲げて、しかも今度は国民石橋内閣に対して、この問題は相当期待しておると思う。ここは自治庁長官、非常に大事な点です。この点については適当な予算措置ができないとするなら、ば、金の出し方はいろいろあると思いますが、ただここで選挙を公正にやりますというだけなら、これは何もここでお尋ねしなくてもわかり切ったごとです。もっとこういう点に対する具体的な施策というものがあってしかるべきだと思うのです。前国会は御案内の通り、小選挙区法をめぐっての論議ではありますけれども、焦点はそこにあったのではあっても、やはりお互いに公正な選挙を行うための論議が、全体をながめますと一番大きな課題であった。あれほど大騒ぎをし、あれほど長時間をかけての論議で、かなり世論もこれに集約されて公正な選挙期待したに違いない。ところが綱紀粛正官紀粛正を高く掲げておる内閣は、今の選挙やり方でいいというなら別です、これはそうでないことは、今までの論議の中で尽されておる。ことに交付金の中からやるということは、この前も言っておりましたが、私は現在の地方財政の枯渇しているところで、あれこれ注文をつけたって、かなり委任事務などで強制される内容仕事が相当あります。しかしこういう常時啓蒙宣伝なんというものは、報告書にどうするというわけでなく、事務的にどう結論を問われるわけではないのですから、やってもやらないでもわからぬのです。いや実際やってないのです。地方選管などに行きまして、そういうことをわれわれ質問いたしますと、どうにもやれませんという実情をさらけ出されれば、返す言葉がない。このことは、私はこの内閣にとっては重大なやはり一つの政策として取り上げられたのである限りにおいては、もっと具体的なものでなければ、二億でも、長官、話になりません。あなたの政治力を疑われることになる。この問題についてはいずれ総理が出席されたら、わが党からも綱紀粛正の問題についてはお尋ねになると思いますけれども、そのときに結局抽象論を繰り返したって意味はないのですから、こういう点に対するもう一度あなたのお考えを重ねて伺っておきたい。
  9. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほども申し上げますように、一億の予算でお前はどの程度仕事ができると思っておるかと御指摘になりますと、返す言葉がないのであります。これは申しわけないと思います。何年も何年も常時啓発経費については予算化しろという御要望が国会を通じてあったにもかかわらず、まことに申しわけないことでありますがこれが実行できなかった。ありのままを申し上げますと、今年は最低一億を下らざる常時啓発予算、柱の分だけで二億を下らざる金を出せ、それを出せなければ看板をおろせということで強く私は主張いたしまして、石橋総理もこれには協力を与えられたわけでございますが、まあ一億でがまんをしてくれ、そしてそれでやってみて次年度以降においては大いに考えよう、そして交付税から回る一億を加える二億でがまんしてやってみてくれ。それで私もその情勢を聞きますや、これはやむを得なかろう、今年はとにかく足がかりを作って、独立の柱を新設することであるから一つ二億でがまんをして、極力これを有効適切に運営して、予算的には少いが、このように効果が上ったというように苦心をして、具体的に実行をしてみようということで、選挙部長にもこのことを命じまして、金は少いのだが全力を尽そうじゃないかということで、実はこの予算をきめます前後に、全国選管代表者にたびたび私の方にお越しをいただきまして、実は金の出しようがないので、最後的にこの一億を出す以外に道はない、少い金であるけれども、本年は初めてであるから力を入れてくれ、そして経費を極力効率的に使うことによって、次の年度においてはさらに苦心をするということを誓いまして、渋々ながら非常に明るい気持になって、それでは経費の多寡にかかわらず、そういうお気持ならばがまんをいたしましょうということで了承を得まして、これでおさめたというような内面の事情がある。これは申し上げることではないのでありますが、あまり真剣にこのことを御心配をいただきますのでつい申し上げたわけでありますが、次年度以降においてはさらに予算の計数の上にも熱意を傾けまして、御意向に沿う努力をしたいと思います。もう一つには、新年度は非常に金額少いがこれでしっかり効果が上るように大いに努力して効果を上げて参りたい、こう考えております。
  10. 井堀繁雄

    井堀分科員 この問題につきましては、自治庁長官も非常に責任を感じておいでになるようでありますから、その責任にある程度期待をいたしたいと思います。私は何もここで議論を好むわけではありません。問題は、これはもうわれわれ政治家の共通した責任でもありますから申し上げておくのでありますが、しかしできないというのであれば、これまた別な機会に別な立場でまた議論になると思いますから、一応とめておきたいと思います。  次は、常時啓蒙と並んで重要なことは、せっかく民主的な政治制度を生み出すための選挙管理委員会機構であります。私は形は一応民主的なものだと思うのです。それからこれを運営されている人々の涙ぐましい努力と、その人格にはある程度敬意を表しておるわけであります。しかしこれはまあ欲を言えば切りがないことでありますけれども選挙民政治常識を向上することと並んで重要なことは、この選挙管理委員会の機能が活発にかつ正しく行われなければならぬわけでありますが、遺憾ながらうまくいっておりません。しかし最初からすぐ——民主主義というものは経験主義だという人もあるくらいですから、戦後十一年とはいうものの、民主主義を育てるためには、日本のように封建主義、全体主義の強い中でやっていると思えば、また考え方もあると思いますけれども、それにしても成果がぬるい、というよりは、むしろ後退を始めてきておるのではないかという疑いさえ持つ。これはまあ選管自身の問題もありますし、この機構に対する行政的な、また財政的な裏打ちが当然なければならぬわけですが、第一には、これが独立していく予算的な措置がないということです。たまたま地方を回りまして訴えられることは、選管委員に対して日当制を、実費弁償主義でしょうが、とっておる。しかしこれは笑い話のようでありますが、実際は名誉職——名誉職けっこうです。けっこうでありますが、もっと国民生活全体がヨーロッパやアメリカのような水準に達しておるときに、名誉職らしい期待をしていいと思う。私は大体に選管関係を持つような有識者には、そう必ずしも物質的に恵まれている人ばかりを選ぶわけにはいかぬ。またそういうことにこだわることは、人選を狭くすることにもなります。こういう時期にはある程度選管人件費はもちろんのこと、活動に必要な最小限度予算を与えなければいけない。これは啓蒙宣伝経費と同じように、国の予算の中で考えるべきである。責任は重大な責任を負わせて、これを遇する経済的な裏打ちは何もしていない。県庁や市役所の片すみにあって、しかもその人事兼務だ。委員名誉職だ。ここから公正な選挙運動期待されるはずはありません。この問題は官紀綱紀粛正を強く叫ぶ内閣におきましては、この裏打ちがなければならぬと思いますが、これに対する長官のお考え一つ承わりたいと思います。
  11. 田中伊三次

    田中国務大臣 選管予算的措置内容を拝見いたしますと、従来はお説の通りへん冷遇の感があったようであります。しかし行なってくれております仕事は、非常に大事な仕事をしておるということを私も考えるわけでございます。このたびの常時啓発の際にも、私の考えましたことは、常時啓発に関する経費をくれよという熱心なお話はありましたが、自分たち処遇をどうしてくれという話がこれらの人々から一言もなかったので、それで私は非常にこのことに感激をいたしまして、あなた方の処遇についてはあなた方は一言も御発言にならぬ、しかしこの啓発経費は必要であるというふうに仰せになるこの態度に対しては、腹から敬意を表するというふうに懇談をいたしました。そういう気持から、実はこの啓発費予算をきめますときも、事前に代表者をお招きいたしまして、申しわけないがこういうことなんだ、あなた方の処遇の問題についてもいろいろ苦心をして考えてみたが、本年はこれができそうになかったというような話を、割ってこれらの人々の御人口に応じて私は申し上げまして、了解をいただいたようなわけであります。ただそういうようなことを申しておれませんので、次の年度からは、非常に大事な仕事をしてくれております選挙管理委員構成メンバーに対する処遇の問題、その機構の問題については、お言葉に従いましてしっかり検討をし直そうと考えております。
  12. 井堀繁雄

    井堀分科員 真摯な態度で御検討なされるということに対して、これまた私どもとしては言いたいことはありますが、一応あなたの誠意に待つことにいたしまして、またの機会を得たいと思っております。  次に問題になりますのは、せっかく啓蒙宣伝、またいい選挙管理機構運営されましても、やはり競争であります。選挙は勝負を争うのでありますから、その争う者の行き過ぎやあやまちというものは往々にありがちなもので、そこでそれを弱点を牽制するために、いいことではありませんが、取締りが当然問題になってくるわけであります。今まで選挙取締りの行き過ぎや、あるいは不徹底に対する事例はもう枚挙にいとまがないのであります。私はあまり選挙取締りを行なって公明な選挙期待するというやり方には全く反対なのです。そういう意味で第一と第二の問題に強い期待をかけておる。しかし今申し上げるように、どういう事情にしてもそういうことの実現が困難な現状においては、次善の策、三善の策かもしれないが、選挙違反を公然と見送るような手ぬるい取締りをやっても、これは大きな弊害が起る。それからむやみやたらと人を見ればどろぼうのように、選挙を争う者を裏からばかりながめるようなやり方では、選挙は暗くなります。こういう点では非常にむずかしい事柄の一つではありましょうけれども、この点については私は一般の刑事行政をやっておる立場でこの問題を扱うということ自体に非常に矛盾を感ずるのであります。法の建前が異なるのであります。しかしこういう点に対してはいろいろ問題が具体的に出てきておるようであります。この点については自治庁選挙部長の今言うような立場から、取締り当局との間の、また地方選管との関係というものは、あまり密接になり過ぎてもいけませんが、といってもあまり連絡が欠けておりましては、取締りの公正を欠くことがあまりに常識的なのです。こういう点に対して何か選挙取締りに対して、選管並びに自治庁の方で打ち合せをするなり、新しい方針でもお考えになっておるのですか。この点はやはり綱紀粛正に対する具体的な一つ内容でなければならぬ。まずこの点に対する自治庁長官の御意見を伺いたい。並びに、きょうは法務大臣が見えておりませんが、法務省の見解等を伺っておきたいと思います。
  13. 田中伊三次

    田中国務大臣 これは非常に大事な問題でございますが、具体的に申し上げてみますと、選挙違反と疑われるものが、そういう疑惑が起った場合の取扱いが、具体的に非常に大事ではなかろうかと思います。ともすると与党と野党に分れまして、選挙をいたしておりますと、ある事件については非常に確定的でないにかかわらず、関係官がその捜査の内容を外に漏らす、選挙のまつ最中にそれが新聞、ラジオ等で報道されて、いかにも何事かあるかのごとくに見える。これが選挙の投票に非常に重大な悪影響を及ぼすようなことも、しばしばあるわけでございます。それを現実選挙終了後調べてみたら、何事もなかった、追及すべきほどの大きな問題ではなかったという場合でも、もうこれは取り返すことのできない選挙の不公正というものがそこに起ってくるわけでございます。ことに二大政党が対立をいたしまして公正な選挙をやっていこうという場面になったときに、こういうふうに選挙違反の内容ということが事前に新聞その他に漏れて、やかましく言論界でうわさになるというようなことは、非常に大事な選挙の公正を害するようなことになるのではないか。ことにそれは野党の場合に多くて、与党の場合には隠されがちだ。こういうような過去の事例においてありがちな事柄が起りますならは、二大政党の対立という理想のもとにおける選挙というものは、非常に不公正になってくる。こういうことを私も実は非常に案じておるわけでございます。しかし、同時にまた一方の考えカをしてみますと、選挙の具体的な悪質の違反があったにもかかわらず、こに当落がきめられる。そしてすっかり選挙が済んで、投票が終った後に、これが問題化するというような場合を眉えてみますと、この点についても、こういう悪質な運動者に対して票が集まるといったようなことになってしまっては、これまたぬぐうことのできばい一つの弊害が生ずるのではないかごいうふうに考えます。これは今御質側のお言葉の中にもありましたように、選挙取締りの面でありますが、これくらいむずかしい問題はないのではなかろうかというふうに考えるのでありますが、具体的に選挙運動の最中に起った事案について、これを発表し、新聞に書く、そういう時期は一体どの時期を選ぶべきものか、どの時期まではこれを極祕に扱うべきものであるかというような問題につきましては、その起りました事案の悪質の程度にもよることでございますので、私の考え方といたしましては、選挙の指導をいたします私の方の自治庁側と、これを取締りをしていただきます国家警察の側との間に、公式に、できれば常時一つの申し合せの機関といたしまして法律を作ってまでやろうという考えはございませんが、常設をされた、双方から出る一つの協議の機関を設けまして、連絡を密にして、こういう選挙の最中に起りました事案の取扱いというものにつきましては、厳正に扱っていく。わかりやすくいいますと、具体的な選挙における取締り本部といったようなものに対しましては、私の方からも人を出しまして、よく協議を整えて、行き過ぎのないような基準を設けまして、事案の取締りに当っていく。そういうことがいいのではなかろうかと考えておるわけでありますが、目下この点は選挙部長にも命じまして、適当なる対策について取締り当局との間に懇談を遂げようじゃないかということを申しておるような事情でございます。そういう方向に向って、行き過ぎのないように、また至らざるところのないように、取締り当局とは十分に協議を整えてやっていきたいと思っております。
  14. 井堀繁雄

    井堀分科員 時間が許せば、この問題についてはもっといろいろお尋ねをしたいと思いますが、そこでやや具体的にお尋ねをいたしますが、二大政党と申しながらも、あるものは諸外国に比べて非常に進んだ姿になっている。しかし全体的に見ますと、民主主義の訓練が不十分でありますし、取締り官庁などと選挙管理委員会というものとの密着がない。一方は古い伝統と経験の中に一つの線ができている。選挙管理委員会のごとく全く根のないところへ高い理想を持ち込んだものでありますから、この点では木に竹を継いだというような形容詞が適当だと思うのです。ですからやはり日本的な現実に即した調整を講じなければ、二つの機構の調整、有機性というものは生まれてこないと思う。この点実際問題に照らして私どもは非常に不合理を感じているわけです。この点何かいいお考えでもあって、政界官界綱紀粛正されるというからには、この辺には相当具体的なものをお持ちになっているのではないかと思ってお尋ねしたわけであります。遺憾ながらまだそこまでいっていないようであります。この点についてはまた一つの別な誓いで、国会の正常な運営の誓いの中に入れているようであります。二大政党というものは、国会の中だけにおいて運営されるものではないのであります。特に選挙の場合には、二大政党になります腸骨には、激しい対立と摩擦を起すことは必至であります。でありますから、選挙の過程において、議会に現われてくる政党勢力の以前に調整というものか行われなければ、でき上ったものに対して期待をかけるというのは私はナンセンスだと思う。この石橋内閣の誓いの中の二つの問題を解決する一つのかぎは、二大政党を前提としての選挙をどう民主的なものにするかということになってくる。私はここには相当予算を注ぎ込んでみっちりおやりになっているもの——実はあの誓いをそういう、ふうに国民は受け取っていると思う。しかしあなたをそうむやみに責めましても何ですが、ここの大事な点を解決しなければ、信賞必罰を厳にするといったところで、一体結果ばかりを見て、裁判所は私は困るだろと思う。  こういう問題について、ここで最も新しい一つの事例がございますので、私はこの事例についてお伺いした方がよくはないかと思う。ただいま東京の川一つ隣の川口市で市長の改選が行われております。十七日が投票日であります。この選挙について事前運動の疑いがあるというので、ある中央の新聞が大きく取り上げた事件でございます。これは法務省の方には、新聞を取り寄せて検討してもらいたいということを前に申し込んでおきましたので、検討がついているだろうと思う。大きな見出しで、「市費による事前運動」と書き出してあります。「観劇、温泉に招待、川口市長自治協力会役員らを」三百四十名、帝国劇場と、さらに千葉県の温泉に慰安旅行をいたしております。そのことをこの新聞に書いてあるわけであります。この記事をごらんになりましたかしら。(田中国務大臣「はい」と呼ぶ)ごらんになっておれば説明は略しますが、この内容はいろいろ今申し上げた問題のなぞを解く一つの問題があると思う。この記事の内容によりますと、現在立候補しておりますのは、二大政党の姿を如実に現わして、自民党の公認候補と社会党の公認候補の一騎打ちであります。そこで私がこういうことを立場を対立して言うことはどうかと思いますが、この際白紙で私は申し上げますから、あなたの・方もそのおつもりで一つ御検討をいただこうと思う。この自民党の公認候補の人も、この旅行に一緒に行かれている。それからこの事務長をやっておられる人が、この当時の市長です。そうして市長が市費で行ったということになりますと、選挙の告示は七日に行われておりますけれども、これは二十九日のできごとで、あまりにも接近しております。私どもの判断するところによれば、自治協力会に対して市長が感謝の意を表明するということは、いろいろな方法があると思います。時期もあると思う。その時期がいかにも市長選挙の直前に行われ、そして予定されている候補者がその自治協力会の会長だ。そして、その事務長になることがあらかじめわかっておる人がこういうことをやったということは、御本人がどういう意思であるにかかわらず、市民から見れば公然たる事前運動だ。中に語られておる一端が出ておりますけれども、これに参加した自治協力会の会長あるいは副会長の人々は、公然たる事前運動だ、こう理解して連れていかれておる。ここに選挙法による事前運動の違反の疑いが一つある。  次は、先ほど来私があなたに要請をいたし、あなたもはっきり言明をなさっておいでになるように、選挙管理委員会はこういうものに対しては常時指導啓蒙しなければならぬ立場にあるにかかわらず、その選挙管理委員会委員長がこれに一緒に入っている。そしてその席で選挙管理委員長があいさつをしている。そのあいさつの内容は私は人ずてで聞いたのですから、責任あることは申し上げかねます。悪意じゃないと思いますけれども選挙管理委員会の性格それ自身を冒涜するような立場であることが一つ。  一つは自治協力会の問題がございます。私は自治協力会に対しては一つ意見を持っている。終戦後占領軍の施策に伴って戦時中に設けられた町内会の組織を解体させられた。しかしそのやり方はとにかくとして、一つ意味があると思う。市なり町なりの自治体が、昔の町内会のように、天下り式にそういう組織を強制さして、それを市の行政の下部機構のように扱うということは、健全な自治体の発展と、市民の自治的な成長をはばむことは申すまでもありません。そういうやり方民主主義政治的な理念をはき違えした行為であることは間違いない。この自治協力会は、あらかじめ次の選挙のために作られたという向きがありますが、私は何もそこまで憶測をしなくてもいいと思います。現職の市長が市費をもってそういう組織を奨励をし、あるいは行政力をもつて作るということになると、幾らでもできます。こういう問題が一つあります。  もう一つの問題は選管の立場というもの——選管委員長は私もよく知っておる人でありますが、善良な方であります。そういう人たちがこういう会合に出ていく。注意を与え、阻止しなければならぬ人がついていくというところに、今日の選管の実態があると思う。私は責める前に、義務を感じますから、予算措置などについてあなた方を追及しているわけであります。この新聞をお読みになっておると思いますが、以上の点に対する御見解をお伺いいたしたい。
  15. 田中伊三次

    田中国務大臣 今お示しの新聞に現われておる事案の内容でございますが、特に選管委員長たる立場にある者がそういうところに出てあいさつを  し、それが事前運動と認められるという前提に立っての話でありますが、そういう事前運動とまぎらわしい行動に参加しておるような事態があるといたしますと、これはまことに重大な事柄  そこで自治庁としての立場から申し上げますと、選管責任者がそういう席に出ておった、同時にまたそういう席に違反に問われる事前運動、事前買収としての判断を加えられるような内容を持っておったということに調査の結果なりまする場合におきましては、これは容易ならざる事態であると考えるわけであります。その新聞を拝見いたして以来、内容の詳細な事柄がわかり次第私の手元に情報をちょうだいをするようになっております。私自身が取締りをするわけではございませんが、選管責任者がこれに関係をしているので、その制度運営については深い反省の資料となるものだと考えますので、国警、それから法務の検察官という関係から資料が手に入り次第、一私もこの問題については慎重に検討を加えまして、かくのごとき事態が諸所で発生をする余地のないように措置をいたしたい。事案が果してそういう内容か、この新聞の記事のままの内容であるかどうかということを、私がここで言明をする段階に至っておりませんが、事態を明確にいたしました上で、私の方のとるべき態度については何物にもこだわらず、遠慮をせず、びしびし所見を明確にいたしまして、措置をする考えでございます。
  16. 井堀繁雄

    井堀分科員 選管委員長がこれに加わった1委員長個人の考え方というものは、そう深いものはなかったと好意的に見たいと私は思うのです。ただ冒頭に申し上げましたように、選挙管理委員会のような公明選挙を実現するためのせっかくの唯一の機関が、そういうようにくずれてしまっているという姿をあまりにも露骨に現わしていると思う。自治庁責任は重大だと思うのです。前任者の責任ではありましょうけれども行政庁といたしましては、こんなばかげたことは普通の常識では判断できません。こういう問題につきまして、先ほど私が予算措置が中途半端になりはせぬかという心配をいたしましたのも、実態をよく承知いたしているからであります。これは川口に限ったわけではありません。大体市町村選挙管理委員会というものは、まるで今日では市長の諮問機関みたいなものです。諮問機関ならばまだ体裁のいい方で、全く下部機構になり下っている。唯々諾々として市長の言う通りに行動するようになりますると、市長が公選の場合におきましては、おそるべき結果に相なるのでありまして、これは日本議会政治あるいは自治体の根底を破壊する一つの現われだと思う。この点については一つ早急に事実を御調査なさって——事実は何もむずかしいことではない。この会合に出たか出ぬかということだけできまる。こういう点については一つ厳重に御調査なさいまして、その結果について一つ正確な御返答をいただきたいと思う。それによってまた伺いたいと思います。  次に、法務省の井本刑事局長がおいでのようでありますから、刑事局長に伺っておきたいと思います。  裁判所は、起訴されてもかなり時間がずれてからこういう問題が出てくるわけでしょう。ですからそのときにはもう実感がないのです。選挙というものは時間的なものによって非常にウェートが違ってくるわけであります。ここにいい例がありますから申し上げます。これが事前運動であるかないかということを裁判所が最後に裁断を下すわけですが、これが事前運動であったと断定が下されて有罪となっても、それは将来のみせしめになるかもしれません。こういう選挙というものは妙な関係があるわけであります。だから私は信賞必罰という言葉はだれでも使いますけれども、信賞必罰は要するに日本の今の機構では裁判所が行う。はっきり結論を出す。しかしその結論と実際とがいかにも遊離したものだということはすぐおわかりだと思う。その前に問題は選挙管理委員会と、法律でいいますならば検察庁の行動が問題になってくるわけなのです。だから今言うように選挙管理委員会は全く無能力になっている事実がここに現われておる。こういう場合には検察庁がその働きも一緒にせねばならぬということになる。この点に対するあなたが部下を指揮されるいろいろなお考え方があろうと思います。この具体的な事実について一つ全般的なお考えを述べていただきたいと思います。
  17. 井本臺吉

    ○井本政府委員 お答えいたします。選挙事犯の取締りにつきましては、全般的に申し上げますれば、私ども厳正公平、不偏不党、適正な処理を期すというふうに申し上げるよりほかいたし方がないのでございますが、確かにお話の通り事犯の検挙を迅速的確にやって、信賞必罰の実を現わさなければならないということは当然でございます。ただ何と申しましても事前運動の検挙というようなことになりますと、立証上の問題が非常に困難でございます。その当該の違反行為がどの選挙のどの候補者を対象にした行為であるかということが簡単に確定しがたいのでございます。川口のこの問題の市長の選挙におきましては、一応の憶測は市長の選挙が二月十七日に施行される、その約半月あまり前の一月二十九日にその立候補する市長の候補者を含めての饗応行為に似たようなことがあったようなわけでございますから、すぐそれで確定するじゃないかというようなお考えも当然あるでございましょうけれども、またその考え方によりましては高石市長の次の総選挙の事前運動であるというような説をなす者もございます。また自民党全般の党勢拡張のためにやった行為ではないかというように見る説もございます。またさらにそれは何らそういうことには関係がないので、単に自治に協力した方々の慰労であるというような見方もあるわけでございます。従ってわれわれといたしましては、その間の結論を出すのに非常に苦慮するので、ございますが、抽象的に申し上げますれば、とにかく悪質のものにつきましては迅速的確に検挙いたしまして、その検挙の効果を上げたいというように考えているわけでございます。選挙に関しましてはわれわれの直接の地元の地方検察庁の検事正が検挙の指揮をとっておるわけでございますが、これがお話の通り非常にむずかしいのでございまして、検事正の手腕は選挙違反の検挙によっておよそ価値づけられるというくらいにいわれておるのでございます。検事正自身といたしましても、どの程度でいかように検挙をして最も的確に粛正の実を上げるかということにつきましては、非常に苦慮をすると同時に熱心に努力しておるというようなわけでございます。さような状況で、この事犯につきましても今すぐどうということは申し上げかねますが、すみやかに検討いたしまして最も適切な処置をいたしたいというように考えております。
  18. 井堀繁雄

    井堀分科員 井本刑事局長にもう一度伺いますが、あなたが信賞必罰についてはっきりした考え方をお持ちになっていることは今の答弁でわかりましたが、必罰というからには、これは第七条にも規定しておるように、検察官と都道府県の公安委員会選挙管理委員会と全く表裏一体の形において取締りに対しては公正——公正ということはですよ、あいまいだからわからぬというようなことを言っていることは公正のうちに入らない。そこでその専門的な事柄につい私はどうこう言おうとしているのじゃありません。先ほど来だんだんと自治庁長官にただしたことは、あなたはお立ち合いでお聞きの通りなのです。今日の日本選挙管理機構というものは一応理想的な姿を装うておるけれども内容は全く不十分なのです。残念ながら今日検察庁なり地方の公安委員会の御協力を願わなければ、選挙の公正が保てないということは、法律もここに規定しているわけです。事実もこれは認められている。あなたは今何かこれに対する三つの想一定をなさったようであります。高石市長の次の立候補のための事前運動かもわからぬし、あるいは今度の候補者のためにやったかもわからぬ、あるいは最後には、ここに市長が弁解をしているように、自治功労者に対する単なる慰労の意味だったかもしれない、こういう三つの想定を下しております。想定の下し方はいろいろあると思いますよ。これは二十九日に行われている。告示は七日なのです。現役市長がいつやめるかということは、七日に選挙が行われる告示をするということは二十九日のときにはわかっている。それから最後にあなたが想定を下しました単なる一−まあ私どもも善意に物事をみな解釈していきたいと思いますが、自治協力会の会員の慰労のためだとするならば、何も選挙告示の一週間前に差し迫ってやらなくても、選挙が終ってからだって決してその機会を失うわけでもないし、またその効果も減殺されるわけでもない。ことさらに一週間前を選んで、しかも三百四十人の大量の人を、そこへは管理委員長が入りあるいは候補者が入ってですよ。こういうものが調査しなければわからぬとか、あるいはいろいろ心配されるからというような検察官の考え方で、一体選挙の取締りができましょうか。現行犯というけれども選挙の場合の現行犯というのは、それなら個別訪問などは、  一人に一人ついて歩くなんということはできるわけのものでもありますまいし、今日ほかの防犯などの運動にいたしましても、国民全体の協力を待たなければ、その目的を達することができないのが民主的な刑事行政だと思う。ましてや選挙のようなものは、先ほど来言っております選挙法が断言しているように、国民政治常識の向上を一方に待とう、そうして選挙管理委員会、取締り、こういう段階を明らかにしての法律なのでありますから。あなたが言うように選挙はもう終りますよ、十七日には。それで公正を期するなどということは、少々責任を回避した答弁だと思う。もう一ぺんこの点に対して、はっきりした御答弁をいただきたい。これはもうこの問題に関することではなくして、今後われわれが選挙法を論議するときに、この問題をはっきりけじめをつけなければならぬ。
  19. 井本臺吉

    ○井本政府委員 この会合は、私どもが調査しておりますところによりますれば、すでに昨年の十月ごろから計画されているようでございます。また三百何人かの中にはいわゆる同じ党派の方ばかりでもないようでございます。そしてまた犯罪行為というものは御承知の通り夜陰ひそかにとかあるいは隠れてやるのが常態でございまして、悪質の選挙違反などは、原則で申しますと、ひそかに金を供与するとか、個別訪問などにいたしましても、そうっと回って歩くというのが典型的な犯罪行為でありまして、公然とやっているものにつきましては、考え方によりましては、公然とやるからなお悪いではないかという考えも立ちますけれども、一面から見ますと、これに関係したものは何らかの期するところがあるというがあるいは善意であるというか、さような点もありまして、お話のようにそう簡単にこれが選挙法の二百三十九条もしくは二百二十一条の違反行為であるというようには断定できないのでございます。さようなわけで、ございまして、おしかりを受けることはまことにごもっともな点もあり、また考えようによりましては李下に冠を正さずということもございますので、かような時期にかような会合を催すということの当否は、別の面からも検討されようするというまでの決心はつかないので、その結論を出すために至急に調査を進めて、妥当な結論を出したいと考えておる次第であります。
  20. 井堀繁雄

    井堀分科員 私はあなたをそう責めようとは思いませんが、あなた自身に矛盾があると私は思うのです。今御答弁の中で、この三百四十人のうちみんな同じ党員じゃないということを言っておりますが、それは自民党の党員だけを連れていったのなら問題ありません、あるいは社会党の党員だけを社会党が連れていったのならそれは問題が一ないけれども、党員以外の者が入って一おるから問題なのです。とぼけてはい一けませんよ。それからこれは何も自民党の党員じゃありませんよ。さっきも言っておるように、自治協力会の会員が問題になっているのです。もしそういうことをして自治協力会というようなものをかりに今後どんどん作るようなことになりますと、これは市長などできますよ。その町内にそういう団体を作らして、選挙前になったら市費なり、あるいは町費をもって、どんどんそういうところに招待したら、ぞうさなく選挙は意のままになりますよ。さらにそれを大きく、知事などになりますと、知事が市町村長を使って、特に今の交付金制度なんかからいたしますと、地方の自治に対しては相当の地位についており、やはり行政力を持っておるのですから、これがそういう下部組織を作って思うように選挙に使われたらどうにもなったものではない。この点はよほど考えなければいかぬ問題です。私は検挙せよと言っているのではありません。検挙するかしないかはあなた方の意思によって、やったらいいでしょう。しかし取締りを厳重にするというからには、こういう問題に対しては、あなたに伺う前にさっき自治庁長官に私伺ったのですが、ほんとうを言えば、あなたの方から自治庁の方に連絡があってこういう問題が出たんだ、しかも肝心な選挙管理の総元締めの管理委員長がこれに入っておるとい一うことについては一体どうしたものであろうかという、そのことだけでも問題になるじゃありませんか。それではもう一ぺん具体的に伺いますが、これに参加したという事実をあなたは管理委員長をお呼びになってお聞きになりましたことがありますか、あるいはこちらから、そういうことをお聞きになって回答を得たことがありますか、あるいはそういうものに類する取調べなどをおやりになったことがありますか。そういうことでございますから、その事実について、どういう形でお取調べになっているか、そのことをちょっとお伺いいたしたい。
  21. 井本臺吉

    ○井本政府委員 われわれといたしましては、現地の埼玉県の浦和の地方検察庁の検事正が下部機構で、ございますので、浦和検察庁から報告を求めて先ほどの御答弁を申し上げた次第でございます。ただいまの選挙管理関係の方は具体的に調べたかどうかということは、まだ報告を受けておりませんので、明確なお答えはできかねます。
  22. 井堀繁雄

    井堀分科員 されてないのですか。
  23. 井本臺吉

    ○井本政府委員 多分そう思います。
  24. 松本瀧藏

    松本主査 田中国務大臣から発言を求められておりますから……。
  25. 田中伊三次

    田中国務大臣 刑事局長から御答弁をいたしました点は、起訴するかしな  いか、かりに起訴した場合において、公判廷においてその起訴の内容が維持できるかどうかという気持に立ってのお答えであろうかと思います。むろん役所の性質上刑事局長がこういう問題を捜査中に答弁をするということになりますと、捜査の秘密で申し上げられませんというか、今申し上げておるようなお話をいたしますか、それ以外に答弁の道がないのじゃないか。役所の建前上そうであろう、こう考えるわけであります。非常に大事な示唆をいただいたものと考えるので、私の方からここでお約束をして申し上げたいと思う点は、一体この選挙がいつあるかということがお説の通り明確で、その寸前にそういう席に管理委員長が出ておる、そうしてもっと大事なことには当−時の市長であったものが事務長という立場に立って選挙関係するという決意が当時すでにできておって、そしてそういう席に出ておるのではないか、こういうことが新聞で見るところによりますと、公式に役所から連絡があったわけではございませんが、想像ができるわけでございます。そういう想像ができますときに、そういう立場に立っておる人がそういう席に出るということ自体深く反省をしなければ、かりにこんなことが平然と行われるということだったら、選挙の公正運動もへちまもあったものではない、こう私は考えるわけで、特に発言を求めるわけでありますが、一体選挙の公明運動選挙の公正を期するための国民運動というものをいたします上に、先ほどから熱心に御質問いただいておるわけでありますが、これを実現していこうと考えるならば、前後の事情からその関係者がもっと反省をして自粛をする、その行動が起訴になるかならぬか、公判になるかならぬか、有罪になるかならぬか、そんなことはどうでもいい、選挙の公正を害する結果になりはせぬかということに反省が徹底をしていく必要がある。そういうことを徹底していきますためには、この仕事は私の方の役所の仕事でございますが、これを一つ徹底的に具体的な事例を調べ、同時にこの川口市の本件の問題と類似事件がどの程度に行われておるかという最近の事情というものもあわせて調査をいたしまして、これを啓発選挙の反省という方向の材料として用いまして全国に徹底して参る、災いを転じて幸いにする方向に向って努力することをお答え申し上げます。
  26. 井堀繁雄

    井堀分科員 自治庁長官の誠意ある態度を私はそのまま買いたいと思う。しかし井本刑事局長には言っておきたいと思います。こういうようなものが犯罪になるかならぬかは別として、調査ができてないというようなことはうかつ千万だ。そういうことでは厳正公正を欠くのです。この点についてはきょうは法務大臣一つ出ていただいて、もう一つ大事な点をお聞きしたがった。それは今度の市長の選挙と同時に行われまする五人の市会議員の補欠選挙なのです。この五人の補欠選挙は皆さんも御存じだと思いますが、前の市長の選挙のときに選挙違反を犯して最高裁の決定で失脚した方なのです。その補欠選挙なのです。そうしてこの候補者の中には、失脚したにもかかわらず、時たまたま国連加盟の恩赦で資格が復活したというので、その人が再び立候補しておる。それからこの選挙違反の内容はあなたもよく知っておられると思う。かなり露骨なものなんです。この旅行は公然とやっておるから——大体犯罪というものは隠れてやるものだとあなたが善意に考えておることは私も否定しない。一般にそう考えられておる。ところがこの五人の人が選挙違反してひっかかった内容は御存じのはずです。こういうようなことが公然と行われたからということによって、犯罪行為を構成する条件が何か阻却されるようなお考え方は生まれてこないはずです。いみじくも四年前の市長の選挙のときに、これは高石さんの方の側ではなしに、名前は申し上げませんけれども、その候補者のために買収行為をやって、あるいは供応を公然とやって、実に派手なものです。さすがに検察局も目をおおうことのできない、公然とかかる露骨なことをやっているのです。さしも法廷でい一ろいろと弁護いたしましたけれども、一弁護かなわず、五人の人はともに公一民権停止です。あま執行猶予になっておりましたけれども……。きょうはぼくはその点について法務大臣に伺うつもりなのです。信賞必罰をやかましく言う内閣が、この前の恩赦について実はきょう聞こうと思ったが、法務大臣がいらっしゃいませんから、国務大臣でおありの自治庁長官に御答弁をいただいてもいいと思うのです。これはこの前、恩赦の出る前にこういう問題については、特に選挙違反の犯罪に関連する人々が恩赦の対象になるということは、世論からも非常なひんしゅくを買ったわけである。こういう問題については、国会には公職選挙の特別委員会が設置されておるわけです。この委員会ぐらいにはその報告をしてもいいのじゃないか。その報告を当時の牧野法務大臣にわれわれは要求いたしたのにもかかわらず、とうとう出てこないで、政務次官が出てこられてお茶を濁したという事実がある。そのときに、われわれはあらかじめ予見できたことだ。裁判所のことを私はよく知りませんけれども、要するに前科を刑の裁定の際に問題にしていることは、古今を通じて一つの常識になっております。前科があるかないかということによって非常な違いが出てくる。選挙違反などというものは、特にそういう場合には、一体この地方はどういう選挙がふだん行われているか、もう私は多くを述べぬでも、この事例でわかるように、選挙管理委員長がこういうところへ入っていくような状態のところですから、事態も想像がつくでしょう。そういうときにたよりになるものは一体何ですか。司法権じゃないですか。その司法権と表裏一体の形で動かなければならぬ刑事行政というものが、こんなざまで一体どうなるかということは1私が関係者でなければもっと強いことが言えるのでありますが、不幸にして私がこの土地の者でありますために、多くを述べることを遠慮いたしておりますけれども、私は何も人を憎んでおるのではありません。東京の近郊にこういう選挙が公然と行われて四年前にやったことをまたやるのです。私は刑事罰が妥当な罰だとは考えません。要するに民主主義の一番強い罰は、やはり世論と高い道徳からくる罰でなければならぬのです。そのことは前から述べておるところでおわかりの通りなのです。やはりそういう感覚とそういう考え方というものか、刑事行政の中に現われてこなければ、六法全書だけでやってもらえばいいのです。機械的な労務でいいわけであります。この点はまことに残念しごくでありまして、私はこの質問をこういう結論に持ってくるつもりではなかった。せっかく田中自治庁長官が誠意を持ってお答えになっておりますから、できるだけその誠意を買って、できたことを、私は罰をもって臨むということよりは、こういう事態を払拭するためには、お互いに重大責任があることを痛感するからであります。長官がこれを一つのあれにして、全国的なものを調査なされるという誠意は非常にけっこうだと思う。私は信賞必罰の基準というものが、どこに置かれているかということがよくわかりました。いずれ総理大臣が御出席になるでありましょうが、国民に誓い、神に誓ったあの誓いの内容については、かくのごときものであることを明らかにされましたから、その上に立って次の委員会で私は質問を試みるつもりでおります。そのときにはぜひ田中長官は立ち会われて、御証言を願おうと思っております。  以上で私の質問を終りたいと思いますが、最後に一つだけ、今言うようにこの前の国連加盟によって恩赦を受けた人は、それはもちろん法律的、形式的にいえば恩赦ですから、前科が解消することは当りまえですが、事実は消えません。しかも前期の市長選挙のときに選挙違反を犯した者が今度の選挙のときにまた出るというのはどういうわけであるか。これは今後の政治の基本的な問題になると思うのです。こういうものに対する政府の判断を伺っておきたい。それから恩赦を下した政府責任は重大です。前の政府でしょうけれども、しかし同じ政党内閣ですから、これに対する田中長官の御見解だけを伺って私の質問を一応次の一般質問に譲りたいと思います。
  27. 田中伊三次

    田中国務大臣 恩赦の対象になった人が、さらに出馬をする、こういうことも全国にはずいぶんあろうかと存じます。しかしこの恩赦の制度というものが、大赦であります場合においては、根こそぎ犯罪はなかったことと同様になり、判決のあったものについては、その判決はなかりしことと同様な結果を来たす。制度それ自体がそういう制度であります。従ってこの選挙を大赦の対象にしたという結果は、勢い免れた者がまたここに出てくるという事態は当然あり得ることであろうかと思います。そこで根本的な考え方といたしましては、一体この選挙違反などという大事な犯罪について、恩赦の取扱いをするときに、頭から根こそぎゼロとなる、大赦の対象とすることがよいか悪いかという問題があるのではないか。もっと具体的に申し上げますと、選挙違反などという大事な犯罪につきましては犯罪を大事なと言うのはおかしいのでありますが、あなたの御心配いただくような影響するところが重大な意味において慎重を要するものという意味でありますが、そういう慎重なる取扱いを要する犯罪を対象とする場合においては、選挙違反のうち、これこれ、これこれのものについてはこういう扱いをするという内訳が、ここに行われてよいのではないか。従来までの大赦の先例というものを私は調べてよく存じておりますが、そういう区分けはないのであります。こういう犯罪をということになると、その犯罪は、質のよいものも、悪いものも、わかりやすくいえば、買収犯であっても、形式犯であっても同様にして一律一体に決してしまう。そこで、恩赦の対象になった者がまた出てきて、また似たようなことをやっておるということになりましては、選挙の常時啓発も、それから選挙粛正もできはしないのです。そこで私の役所の立場から申しますと、今までできたことはいたし方がありませんが、今後に行われる一恩赦については、恩赦の対象にいかような者が選ぶかということ、恩赦制度運営というものにつきましては、自治庁からも人が出たい。それから取締りの警察当局からも人が出る、各関係官庁から人が出まして、ここに一つの厳格な法律的審議機関を設け、法律に基礎を持った審議機関を設けまして、そうしてそれぞれ影響するところ、重大なことをよく具体的にそこに述べ合う一つの機関を作りまして、これによって恩赦をいかに扱うか、大赦の内容かくのことし、特赦の内容はかくのことし、減刑、復権はこの程度ということをここに慎重にきめていくようにしてはどのようなものか。ただいまは閣議事項となっておりますので、閣議で方針をきめまして、政令でこれをやってしまうという簡単な方法でできるようになっておりますが、これは慎重論がいい。これは法務当局もそう考えておるものと思います。慎重論がいい、こう考えますので、その方向に向って私も態度をとっていきたい。そうすれば御心配をいただくようなことも、ある程度減少していくのではなかろうかと思うわけであります。
  28. 井堀繁雄

    井堀分科員 どうも長い間ありがとうございました。  それで最後にあなたを通じて申し上げておきたい。以上申し上げたような関係は、行政がばらばら、たという証拠を一つ現わしておる。ことに官紀綱紀粛正は、今の場合は過渡期ですから、理想の姿に成長しようとするためには、やはり取締りも厳正公平の選挙に介入せざるを得ない。もっとこういう点についても御留意をいただきたい。それから特に恩赦、大赦の問題については、あなたははっきり御答弁なさったようでありますが、石橋さんは前閣僚でもございますし、当然その責任を分たなくちゃならぬと思う。それが今度綱紀粛正を大上段に振りかぶった以上、こういう過去の問題については徹底的に事実を洗って、そのための解決に対する結論というものを具体的に国民の前に明らかにする、そのことなくしては、綱紀粛正なんて言ってはいけない。国民はきっと許さない。こういう点を厳重にお伝えをいただいて、これは次の一般質問の機会総理にただしますから御連絡をしていただきたい。以上申し上げまして私の質問を終りたいと思います。
  29. 松本瀧藏

    松本主査 ちょっとお諮りしたいと思います。理事会の申し合せによりまして分科会の日程がきめられておりますので、できますれば本日中に内閣及び総理府所管の質疑を終えたいと思います。なおあと五人質疑の通告者がございますので、時間の制限はなるたけ加えないようにしたいと思いますが、御協力のほどをお願い申し上げます。
  30. 島上善五郎

    ○島上分科員 ただいま同僚議員井堀君から詳細な御質問がありましたが、多少それに関連する問題から入って、二、三御質問したいと思います。  今御質問中にも、具体的な事実があげられました。これは川口市の地方選挙に限ってのことでありますが、もちろん一地方選挙といえども、そのような悪質行為とみなされることが横行しておるということは、直ちに他の選挙にも影響するところでありまして、これは今御答弁にもありましたように、厳重にかつ敏速に取調べを願って、今後の他の選挙の戒めにもしていただきたい。実は石橋内閣が誕生直後、石田官房長官あるいは三木幹事長それから石橋総理大臣の談話にもあったかと思いますが、解散説が相当発表された。この解散問題については、実は他の機会に突っ込んで質問したいと思いますので、それはここでは特に伺いませんが、そのような解散という談話が発表されましたために、今衆議院の選挙を争おうとする人々は、遠からず選挙があるものとの想定のもとに、各種の準備運動をしておる。その準備運動も、もちろん法律で許されておる一般政治活動とみなされるものは大いにやってけっこうでありますけれども、かなり露骨な、悪質な事前運動全国至るところで行われておる。これはおそらく長官のお耳にも入っておるかと思いまするし、新聞等もごらんになったかと思います。この新聞の事例は  一々あげませんけれども、実に極端なものがあります。国会でせっかく自粛の申し合せと申しますか、虚礼廃止の申し合せをしまして、年賀状を出さぬとか、年末年始の虚礼をやめようといって、それはある程度実があがっておりますけれども、わざわざ、国会の申し合せがありますから父の名前では年賀状が出せませんと言って、むすこの名前で年賀状を出しておる。そういうのがある。これはちゃんと事例があがっております。それから自分の経営している会社とか旅館の名前の入ったものを配ったり、折詰を配ったり、お年玉と称して三千円、五千円をかなり広範にばらまいたり、枚挙にいとまがないほどそういうような運動が行われておる。これは今言ったように、近く解散するということとも関連しておりますが、一つには例の昨年の国連特赦によって、選挙違反が全部免訴になった。盛大な祝賀会をやって、その人たちがまたぞろ事前運動に動き出しておる、こういう例もある。さらに近いうちにまた皇太子が御結婚されると恩赦があるだろう、こういうことを予想しておる。だから、もしこのままいきますならば、この次の選挙は実におそるべき状態になるのではないかと私は心配する。もしそういうことになりましたならば、これは民主主義の土台が腐ってしまう。これに対してどういう防止策をお持ちであるか、どういう対策をお持ちであるかを、まずお伺いしたい。
  31. 田中伊三次

    田中国務大臣 恩赦制度の運用というものが慎重を欠く場合には、今お説のような事柄が起ってくるおそれがあろうかと存じます。そうすると前の内閣でやった先ごろの恩赦は慎重を欠いたのか、こういうことになりますが、これは慎重を欠いたとは申し上げませんが、一般論をいたしますと、恩赦制度の慎重を欠くということは、軽々しくこれをやるということは、選挙は何かあれば無罪だ、しかも根こそぎになるんだ、こういうことになりますことによって、これはもう常時啓発もやれないし、選挙の公明運動もぺしゃんこになるのです。これは今は簡単にお話をいただきましたが、私はこれは身にしむものがある。そこで選挙の指導をいたします、ことに常時啓発効果を上げていきたいと考える私の立場からいたしますと、恩赦は厳格にやってもらいたい。そういう意味から、先ほどお答えをいたしましたような、官庁関係では関係を持っておりますあらゆる役所から人を出し、さらに民間からは学識経験者等も加えて、慎重な、前後を考え運営によって恩赦の活用をしていく。恩赦ということによって罪が消えること、判決が消えてなくなること、起訴をする国家の起訴権がなくなるということは非常にけっこうなことでありますが、どうも軽く扱う結果は、そういううらみがないとも言えませんので、その点につきましては、将来恩赦の運営に十分な力を加えて慎重な態度をとっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。これと同様のことでございまして、解散などということを簡単に責任ある者が口にいたしますことも同時に困る。今のお説にありましたように、さあ解散だということを言われると、どうも刑事当局、法務当局にも取締りの対象とはならないが、しかしこれは犯罪を犯した以上に非常に不都合を生ずる。さあ解散になるということで、直ちにその運動を起す、運動を起す方も迷惑であります。また運動をされることによって影響される現職の者も非常な迷惑をするということになります。解散のごときも軽卒に責任のある者が口にすることがないように、現に戒めようじやないか、この戒めができなければ、誓いの立場の上からも現内閣は都合が悪いではないかということが、相互に一まあこれは非公式でございますが、かわされまして、いかなる事情がありましても、解散といったようなことは簡単には言明をしないことにしようということの基本的態度がきまっておるわけでございますから、今後におきましては、そういう点は十分慎重にやっていかなければならぬ。具体的に解散するか、しないかといったような問題は、決意をした瞬間に解散をすべきである、決意以前に解散を云々するということはなすべきではないと思います。私は内閣の一員として、自治庁長官であると同時に、国務大臣の末席を汚しておる者でありますから、そうでなければならぬものと信念を持っておりますので、今後は内閣においては、そういう態度を徹底していくということを、ここで私がお誓いを申し上げて間違いはないと思います。
  32. 島上善五郎

    ○島上分科員 解散問題をここで質問しようという目的ではないから、これはあとで石田長官石橋総理大臣がおいでになったときに伺うつもりですが、しかし解散問題については、かなりはっきりと言っておるのです。石田長官のごときは、四月解散、五月選挙が筋である、こういうことを言っておる。私ども石橋内閣が施政方針演説をやった冒頭に解散するというのが妥当だと思いますけれども、それはともかくとして、はっきりそういうことを言っている。その後新聞の報ずるところによれば、自民党の内部にあるいは閣僚の中にこれに対する議論があって、しばらくこういう問題は言わないことにしよう、こう申し合せたそうで、それ以後は言っておりませんけれども、しかし一ぺん言ったこの事実は消えないのです。筋である、こうかなり確信を持って言っている。私はこれはいっその瞬間に決意をされるにしましても、いつ解散されるかということはこれはわかりませんが、しかし総選挙がそう遠くないということは、これは一般の見るところです。事前運動、準備運動がさっき私が指摘したようにやられている、盛んに行われている。盛んに行われておりますけれども、たとえばこの新聞にもありますが、何とか時局演説会であるとか、報告演説会であるとかいったようなことは、これは何ら法の精神にも抵触する事前運動ではありません。一般政治活動ですから、差しつかえないと思いますが、今新聞の記事で一、二指摘いたしましたように、お年玉と称して三千円ないし五千円包んで歩いたり、折詰を配ったり、Aの候補者が一升持っていくと、Bの候補者は二升持っていく、Cの候補者は三升持っていく。この新聞にこういう皮肉なことが書いてある。この状態で解散が秋まで延びたら、からだも金も続かなくなってしまう。そこでAの候補者、Bの候補者、Cの候補者の参謀格が集まって、解散も少し遠のいたようだから、しばらく休戦しようじやないか、こういう話をした。こういうような例もある。これは私は方々にあると思うのです。前会だと思いますが、国会選挙法改正の際に、そういうような悪質事前運動一つ防止するための法的措置を研究しようじゃないかというので、出ました結論が百九十九条の二項に、「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)は、当該選挙に関し、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、寄附をしてはならない。」その寄附とは、「通常一般の社交の程度を超える寄附は、当該選挙に関しする寄附とみなす。」こういったような法律改正をしたわけです。ところがせっかくよい意図を持っておるこの改正の法文が、事実上は死文にひとしいのです。何ら生きていない。そしてこういったような事実が全国に横行しておる。  私はここで取締りの衝にある責任者に伺いたいのですが、こういうような明らかに法の定めたところに反すると思われるような、悪質事前運動が横行しておりますのに、これに対して何らかの、取締りをしておるか。取締りをしておる事例があったら伺いたいと思います。
  33. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 お尋ねの事前運動、特に百九十九条の二、寄附の禁止制限の違反の取締り状況でございますが、私ども取締り当局といたしましては、すべて犯罪は証拠に基いて立証いたさなければなりませんので、証拠に基く捜査を常時各地方の警察においてやっております。たしか寄付違反の制限禁止も、今数字は記憶しておりませんがやっておるのでありまして御質問の要点は証拠に基いて立証される、こういった禁止違反のほかに、やや社会的にまぎらわしい、こういった事件が相当あるようにうかがえるのであります。こういった点はただいま国務大臣からも話されましたように、何と申しましても啓蒙関係者の自粛、こういう点によって問題の解決をだんだんはかって参りませんと、所期の効果が達成できない面もありますので、こういった点は関係の向きと十分いつも連絡しておるのでありますが、捜査当局といたしましては、何と申しましても証拠に基いてやっておりますので、皆さんのお考えからいえば非常に少い、こういう結果になろうかと思いますが、そういう点も御了承いただきまして、私どもといたしましては、犯罪としてなり得るものにつきましては、いろいろ苦心はしておりますが、苦心いたしまして、だんだん全国でやっておる次第でございます。
  34. 島上善五郎

    ○島上分科員 私の今承知するいろいろな悪質事前運動の現況にかんがみても、啓蒙運動ももちろん大いにやらなければならぬと思いますが、同時に取締りももっとびしびしやってもらわなければならぬ。もちろんこれは事実に基いてやらなければなりませんし、一般政治活動の面にまで、そういう取締りの手が及ぶが、こときは厳に避けなければなりませんけれども、公職の候補者になろうとする者は、立候補しなければなかなかはっきりと断定できませんのでむずかしいと思いますが、現に公職の地位にある者においても、そういうような明白に悪質事前運動と思われるような行為が横行しておるのですから、この点に対しては、ほんとうに正しいりっぱな選挙をやるという意味において、もっと取調べなり、取締りなり厳格にしていただきたいということを強く希望いたします。同時にこの点については、今引例しました法律の改正が若干あいまい、あるいは手ぬるいのではないかという感じがありますので、法の改正も必要ではないか。さらにまた先ほど御答弁もありましたが、恩赦については、私ども昨年の恩赦の際もああいうふうに一律にしないで、形式違反等はいいとしましても、買収供応というような最も悪質なものについては、考え直す必要があるのではないか、こういう意見を持っておりましたが、長官の御答弁によりますと、今後恩赦等については審議機関を設けて、各方面の意見を十分に聞いて慎重に扱いたいという御答弁だったので、それに期待をしておりますが、私は今後は悪質違反は恩赦から除外する、このくらいの決意を表明していただきませんと、今後の選挙は、皇太子の御結婚の恩赦を予想して非常にひどい状態になるのではないかとほんとに心配するのです。この点に対する長官の御所見をもう一度伺っておきたい。
  35. 田中伊三次

    田中国務大臣 恩赦の運営は、審議会でも作って行き過ぎのないよう、また及ばざるところのないようにして参りたいという心境は、さきに申し上げた通りでございますが、特に具体的問題として、選挙の違反中悪質のものについては、これを恩赦の対象とせないという問題につきましては、お説ごもっともであると考えますので、運営の面においてこういう種類のものについては、将来恩赦からは除外する方向に努力をして参りたいと存じます。  それからもう一つ先ほど言葉の中で百九十九条の二をもっと強化すべきであるとの御意見がございましたが、私も賛成で、就任当初より選挙法に関する関係において決意をいたしておりますことは、この法律の条文が死文化しておるように見えますが、この条文は非常にいい条文でございます。ただこの条文に抵触する場合において、厳罰に処すべしとの法律の明文が足らないものでございますから、罰則を強化しないで今日このままにしてお一きますと、ただいま中川刑事部長から御説明をいただきました程度の御努力を警察がなされる以外に道がない、こういうことになりますので、これはもっと警察が高度の取締りをすることができますように、百九十九条の二の条文につきましては厳罰の方向にこれを強化して参りたい。だれが今後立候補するかはその町の常識でわかっておるのであります。わかっております候補者の身辺についてそれがいかなる寄付行為をしておるか、寄付の張簿にどんな名前が載っておるか、神社に行けばどういう立て札があるかということは、これは捜査をすることはあまりむずかしいことではないのでありまして、特定の少数人について行われる取締りの努力でありますから、これは可能のことと考えます。要は取締りの罰則強化ということの実が上りますと、警察はその力の強さに応じまして努力を強化して参ることと存じますので、そういう方向に向って強化をして参りたいと思います。
  36. 島上善五郎

    ○島上分科員 ぜひただいまの御答弁にあるように積極的に御努力を願いたい。私ども法律の改正については委員会において進めたいと存じております。  次に、ほかの問題でございますが、現行選挙法中選挙区の別表特にその人口の基準がはなはだしいアンバランスを生じておるということは、昨年の選挙法改正の際にも資料として私ども承知しておりますし、改正の際に同時に定員改正をも行おうとした事実に徴して明らかであります。現在のものは昭和二十一年四月の調査を基礎として人口と議員定数とが定められておる。以来十一年になっております。戦後の十一年は普通の場合の十一年とは違いまして、非常にはなはだしい異動があった。疎開した者が帰ってくる、あるいは外地から帰ってくる。今日のアンバランスは実に極端なものがある。府県別のアンバランスを一、二申しますが、たとえば宮城県と栃木県を比較いたしますると、栃木県の方が宮城県よりも人口が十八万人少い。それで議員定数が一人多い。それから鹿児島県と長野県を比較いたしますると、長野県の方が二万三千人ほど少い。そして議員の定数が二人多い。静岡県と新潟県を比較いたしますると、新潟県の方が約十八万人少くて、議員の定数が一人多い。これはほんの二、三の例であって、こういう例はたくさんあります。私は昨年九月の調査の結果はまだ承知しておりませんが、昨年の二月二十五日総理府統計局の人口調査によるものを見ますると、これも府県別ですが、たとえば東京は二十九万七千について一人の割合、それから鳥取は十五万三千について一人の割合というふうに・ほぼ半分なんです。これをさらに選挙区別について見ますと、もっと極端です。選挙区別のは人口がまだ調べられておりませんが、有権者で割り出しても結局同じことですが、有権者で割り出しますと、たとえば東京一区のごときは二十万二千について一人の割合、大分県のごときは九万二千について一人の割合、半分以下です。こういうアンバランスがたくさんある。御承知のように選挙法にはこの人口のアンバランスの是正について「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」こうなっておる。とっくに更正しなければならぬのでございますが、今日までおくれておる。更正しなければならぬ時期にきておると思いますが、これについては自治庁長官はどのようにお考えになっておりますか。
  37. 田中伊三次

    田中国務大臣 現在の人口から申しますと、今お説に現われておりますような不均衡が生じておることは事実でございます。これを概観いたしますと、大体七県はふえるところがあるわけでございます。はなはだしいところは、東京は十五名ふえる。それから大阪は五名ふえる。北海道は三名、神奈川県二名ふえるわけでございます。それ以外の一名ずつふえるところは相当数に及んでおるという事情であると同時に、今度は逆に減少をするのが、栃木、群馬、福島その他二十五県にわたって出て参ります。以上申し上げた点は府県別に見た情勢でございますが、お説のごとく選挙区別にながめてみましても、はなはだしい不均衡が目立っております。そこでこの法律の絶対命令ではございませんが、まあ訓示規定とは見られるわけでございます。五年ごとには直近の調査に基いて改正しろという命令が法律にございますので、この法律の御趣旨に沿いましてこの問題はすみやかに解決すべきもの——直近の調査は出ておるわけでございます。一昨年の調査によりまして昨年は結論が出ております。これに基いてすみやかに誠意を持ってやろうと思えば直ちにできる情勢になっておるわけでございますから、これに着手をして、この改正案を国会に出したいということが私の結論でございます。しからばなぜそういう直近の調査もできておるにかかわらずぐずぐずして時期を明確にしないか、いつ出すかということをなぜ一体言明しないのかという問題になろうかと存じますからあらかじめ申し上げるのでありますが、最近御承知の通り選挙区制の根本問題について、二大政党対立の理想の実現ができたということの実情にもかんがみまして、いろいろ熱心な御意見が両党の間にも繰り返されておる。また世間さんも大へんやかましく御心配をいただいておるということで、選挙区制の根本問題に関していささか方針を決しかねる点もございます。これは今お読み上げをいただきました選挙区というものを考えてみると、選挙区で数の減るところも出てくる、ふえるところも出てくるという重大な事態でございますから、選挙区制をいかに扱うかという根本問題がやや決しかねておることになっておりますので、これともにらみ合せまして、このたび法律の命ずるところによりましてこの改正を行なっていきたい、こう考えておるわけでございます。大へんざつぱな答弁で恐縮でございますが、近く決意をいたしまして具体的な意思の表明をしていきたい、こういうふうに考えております。
  38. 島上善五郎

    ○島上分科員 この改正をしようとしますと、今御答弁にもありましたが、かなり広範な区割りの変更になろうと年のようにいわゆる小選挙区制にしようという意見もあるわけですが、そのようにしようとすればなおさら問題が非常に大きくなるわけであります。かりに現在の選挙区制を維持するとしましても、減るところもふえるところも全部区割りと定員を変えなければならぬ、こういうことになるわけでありまして、さらに今言った選挙制度もしくは選挙制度の根本に検討を加えるとなりますと、これは非常に大きな問題だ。私はそう簡単に結論を出すことは至難な問題だと思う。至難な問題であるばかりではなく、これは党の消長にも非常に大きな関係を持っておりますので、このような問題はかりに根本に検討を加えるにしても、あるいは現在のいわゆる中選挙区制を維持して、さしあたってそのアンバランスを是正するということにいたしましても、このような問題は党利党略を越えて、検討しなければならぬ問題だと思う。昨年の小選挙区制の際には、党利党略、ゲリマンダーという批判なり非難なりが非常に上った。あなたの方にはあなた  の方の御意見があろうけれども、少くともそういう批判や非難があったことは事実です。そういうことにかんがみまして、この区割りの変更あるいは根本的な検討については、今言ったように党利党略を越えて、いかにして日本の民主政治を発展せしむるか、いかにして二大政党を健全に発展せしめるかという、そういう高い見地から検討さるべきものだ、こう考えておりますが、これに対する長官の御所見を伺いたいと思います。
  39. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説の通りの態度でやって参りたいと存じます。選挙、区制の改正をめぐる諸情勢にもよく反省を加えまして、この問題は両党の間の高いところでよく基本的な問題の打ち合せもやっていただき、その結論を私の方におろしていただきまして、その技術立法面は私の方で手落ちのないようにやっていきたい、お説の通りに円満裏にこの問題の解決点を見出すように話し合いをできるだけしていきたい、こういう心持でございます。
  40. 島上善五郎

    ○島上分科員 私もこういう問題はまず両党で虚心たんかいに話し合うということが大前提でなければならぬ。そうして大まかな線で話し合いのついたところをさらに具体的に検討する、こういうふうに進めていくべきものではなかろうかと存じます。そこでたとえば区割りをどうするといったような問題は、一々のこまかいことについて両党が話し合いをするということは事実上はできないことだと思うのです。そういう問題になりましたならば、公正な第三者に諮問をしてあるいは検討をゆだねるというような方法を講ぜられるのが一番いいのではないかと、こう考えますが、それについて考えられることは、内閣の諮問機関として選挙制度調査会というものがあって今日でも法的にはまだあるはずなのです。内閣設置法の中に選挙制度調査会ということがきまっておりまするし、選挙制度調査会令というものもまだ生きておるはずであります。それなのに今日選挙制度調査会というものは事実においては存在していない。これをどのようになさるお考えであるか伺いたい。
  41. 田中伊三次

    田中国務大臣 制度的にはあるわけでございますが、活動をしておらないことはお説の通りになっております。明春からは正式にこの寝ておる制度を起しまして、これを活用していきたい、こういう心持ちでございます。本年中にはできるだけ慎重を期しまして、改正の準備その他いろいろ用意をしていきたい、大体申し上げますと、そういう心組みでございます。
  42. 島上善五郎

    ○島上分科員 明年とおっしゃいますが、実は選挙制度調査会は制度的にはあるが委員の任期が去年のうちに切れてそのままになっているのです。これは制度的にあるということも何ら意味をなさない。どの問題をどこから検討するにいたしましても、これは非常に大きな問題ですから、何も人口のアンバランスをすぐ解決する、あるいは区割りの根本問題をすぐ検討するということを私は要求しているわけではございませんけれども、相当時間をかけなければならぬ問題だけに、少くともそのような活動は即刻開始すべきものではないか、委員の任期が切れて半年もほおっておくということは、これは前内閣がしたことですけれども法律無視の行為だと思います。法律違反とは言えないまでも、法律を無視しておる。私はこのような法律がありまする以上、このような制度がありまする以上、これをまず活用するということを考えるべきではないかと思います。そこでただいまの御答弁では、来年度からということでございましたが、今までの選挙制度調査会は、その委員の委嘱からあるいは運営から見まして、必ずしも公正妥当なものではないという気がするのです。ただいま御答弁の趣百から申しますれば、そのような機関はほんとうにどなたが考えても公正妥当な、運営の面においても、委員の人選の面においても、そういうものでなければならないと考える。私は実は前の選挙制度調査会の委員で、内部の事有についても他の人よりは多少知っておるつもりですが、あらかじめ政府が忌図する結論を導き出すために、委員をそういう意図のもとに委嘱したのではないかと疑われる節が非常に多い。建営についてもそういう運営の仕方であった。運営についてもほんとうに公平な運営をするということに留意されはければ、せっかくの選挙制度調査会が一党一派の党利党略に利用されてしまう、あるいはそういう批判を受けるごいうおそれがありますので、ぜひこれは今言ったように、公正妥当な人選、運営に十分気をつけていただきたい。この点に対する御所見を伺いたいと思います。田中国務大臣 超党派的という言葉川、この場合にぴったり当てはまるかしうか案ずるわけでございますが、とにかく中立的な、超党派的な立場の、りっぱな人材を人選することに、私みずからが十分慎重な態度で、苦心をしていきたいと存じます。それからやがてでき上ります人選を改めましたこの調査会の運営につきましては、これも事務当局にまかすような態度をとらないで、私みずからがこれにタッチをいたしまして、その運営には万全を期して、御期待に沿いたいと思っております。
  43. 島上善五郎

    ○島上分科員 このことについてもう一点だけ伺っておきたいのですが、昨年太田長官が新聞談話で発表したように記憶しておりますが、選挙制度調査会には、今後委員を委嘱する際に、政党の代表は入れない、あるいは議員は入れない、こういう発表をした。しかし選挙制度調査会は発足の当時から各党の代表が適当数入っております。選挙制度のごときは、政党にとっては非常に大きな関係があるし、それだけに政党は関心も持っており、研究もしておるわけですから、こういうものの中に政党の代表を入れないということは、私は政党否定であり、政党の自殺だと思うのです。むしろ政党の代表を何人入れるかということは別問題といたしまして、適当数入れて——今まで入れたことによってその運営が支障を来たしたという事実もないわけです。昨年度の小選挙区制の答申の際には、多少議論はありましたけれども、あの程度の大きな問題の際に議論があるのは当然であって、だから今後は政党の代表はこりこりであって、入れないというがごときは、政党みずからの自己台定だと思う。私はそれに対する長官のお考えを承わっておきたい。
  44. 田中伊三次

    田中国務大臣 政党の代表を入れるか入れぬかという問題でございますが、私は当然政党の代表はお入りをいただかなければならぬものと考えます。その理由は、ほかの法律案ではございません。選挙法律案でございますから、調査会が考えております構想、内容というものが、具体的な立法をいたします場合と、そりがすっかり合わなければならぬ。その調査会の結論は極力尊重するという法律建前に立つわけでございますから、突拍子もないものが、しろうとばかり出てきて、超党派的で、第三者ばかりが出てきて、中立的な人の頭で考えたことで実際の選挙を行うという立場から立法をする場合の参考資料にならないようなものが出てきました場合には、大へん迷惑をするわけでございます。そういう具体的な現実面の諮問をする調査機関でございますから、その現実の立法をする立場に立つ両党の代表がしっかりこれにお入りをいただくという態度は、私はどうしても欠かすことのできない態度であると考えますので、両兄の代表者には適当数必ずお入りをいただく、そうして慎重審議をして、でき上ったものは、ほぼ立法の基礎とするに足る、そりの合うたものになるよりに持っていきたい、こういう考えでおります。
  45. 松本瀧藏

    松本主査 午前の質疑はこの程度にいたしまして、午後一時十五分に再開することにいたします。暫時休憩いたします。   午後零時三十六分休憩      ————◇—————   午後一時三十四分開議
  46. 松本瀧藏

    松本主査 ただいまより開会いたしふす。午前に引き続き質疑を続けます。北山愛郎君。
  47. 北山愛郎

    北山分科員 私は主として地方財政につきまして、地方財政と国の一般会計等との関連においてお伺いをしたいのでありますが、きょうは大蔵省側が見えておりませんので、自治庁の側にあらかじめいろいろな点をただしておいて、あとでいずれ機会を改めて大蔵省にお伺いをしたいと思います。  まず最初に自治庁長官にお伺いしますが、停年制の問題であります。停年制の法案、すなわち地方公務員法の一部改正法案は、前々国会からの継続審査になっておるわけであります。私どもは、現在退職後における老令者の生活の保障の制度が確立をされておらない、あるいは法案そのものが不備でありまして、基準となる年令についても、地方団体の条例できめ得るような格好になっておる、こういうようないろいろな点からいたしまして、現在審査中の地方公務員法一部改正には反対をして参ったのであります。ところが最近田中自治庁長官は、地方公務員法の一部改正、この停年制の問題につきまして、異論を持っておられる、またこれを表明されておるというようにお伺いをしておるのでありますから、この際停年制を含む地方公務員法の改正案につきまして、自治庁長官の御見解を承わりたいと思います。
  48. 田中伊三次

    田中国務大臣 御承知の通り、停年制に関する法案は継続審査中となっております。そこで問題は、内閣がかわっておりますので、この継続審査となっておりますものを維持して、国会で御審議を願うことにするかどうかという問題でございますが、この根本的態度は、まだ正式に決定をしていないわけでございます。これは、予算の大体の見通しがつきました上で、各般の法案についてその態度をきめるのでありますが、形式的には、継続審査となっておりますので、そのままという形をとっておるわけであります。  それから、何か私が停年制の問題について、この法案の内容に疑念を持っておるかのように世間の一部で思われておるようでありますが、ありのままに申し上げますと、私は、個人といたしましては、停年制に疑問を持っておるのであります。それはどういうことかと申しますと、何十何才をもって停年とするというふうに一律にこれを定めて参りますことは、大きなワクを法律できめまして、こまかい問題についてはこれを条例に譲るという建前ではありますけれども、何にしても、その条例自体では個々をきめるわけにいかないので、一定の年令をその地方々々で押えてきめなければならぬことになると存じますが、そういうことをいたします場合には、実際退職される立場に立つ人々の立場を考えてみると、実情に沿わない気の毒な結果を来たすよりなことがあるのではないか。たとえば五十五才ときめた場合でも、五十五了でも、子供がおそく生まれて、まだ教育をしなければならぬ、義務教育に直かれておる子供もあるだろう、またお嫁ざんにいかなければならぬお嬢さんもいらっしゃるだろう、また長期孝食を尽さなければならない尊属もおいでになることもある、そういう家庭の又の毒な事情があるにかかわらず、停年制を設けまして、何十何才をもって日になるのだということに、制度とししそういうものを地方公務員に押しつけていくことは、私は情においてまことに忍び得ざるものがある。こういう意味から、停年制を一律一体に条例にまかすとしても、そういうことをきめることは感心しないということが、私の個人的に持っております信念と申し上げたいのであります。  そこで、どうしてそれがいけないかと申しますと、そう無理をしなくてもやれるのではないか。現在再建団体というものが赤字をかかえておるという理由だけで、人事の問題につきましては、いわゆる常識的に新陳代謝の方法をとっておる。事情の許せる方には退職を願う。そして退職金につきましては、できるだけこれを考えることにして新しい人を入れる。人数は減らないのでありますけれども、給与の単価がだんだんと下ってくる。これは、地方公務員の給与が国家公務員の給与に比べいささか単価高だといわれる現状から見まして、この意味における新陳代謝を人事の上で行いますことは、至難でございます。これがうまくいかずに行き詰まっておるかと申しますと、法律はないのでございますが、今日地方庁のなみなみならぬ御苦心によりまして、全国的にはなかなかうまくいっておる。新陳代謝は、何年には何名、何年には何百何十名というふうに予定をいたしまして、赤字解消の一環として苦心しておるわけであります。これは法律はございませんが、この退職関係は比較的うまくいって、新陳代謝は効を奏しておるという実情であります。これは、最近おおうことのできない実情であります。そういう実情のもとにおいて考えてみると、何も停年制などを設けて窮屈なことをせぬでもいいではないかということになりますので、私は、この制度はあまり感心をせない制度であると個人としては考えております。個人の意見をこの席で申し上げることは、はなはだ恐縮なんでありますが、その個人の私の持っております意見内閣に表明をいたしまして、この法案の取扱いをいかにするかという段階には、現在は至っていないわけでございます。現在は、今私が申し上げました事柄は、私の胸の中に持っておる信念ということにとどまっておるわけでございます。これを、今継続審査中の具体的な法案に当てはめてどう取扱いをするかという問題につきましては、私の一存できまるものでもございませんが、これをまたお諮りをして政府意見としてその扱いをきめるところには至っておりません。
  49. 北山愛郎

    北山分科員 大体大臣の御意見は、われわれもよく了解されるわけでありまして、私どもが、従来前々国会から一貫してこの法案に反対してきたのは、やはり大臣の今申された、いわゆる個人的な御意見と同じような趣旨でございます。何しろあの法案には、いろいろ抽象的な基準というものがありますけれども、何年を停年にするか、五十五にするか、あるいは六十にするか、こういうことは条例事項でございましてかりに新潟県の知事のように四十五才できめましても、必ずしも違法ではないというような解釈が生まれてくるわけであります。そういう点について、非常に危険なものを感ずるのです。地方団体の中には、普通の良識でもってやられる団体もありますけれども、やはり相当な行き過ぎをやる団体もありますから、そこでそのような点を心配いたしまして、法律事項としてやるならば、法律の中に、もっと具体的な基準というものを設けなければならぬのではないか、こういう点についても、おそらく大臣は同意見であろうかと思います。また現在でも各府県等で、この停年制がなくても、やはり話し合いでもって同じような目的を達しておるということは、大臣御指摘の通りであります。その他にも、今の日本の公務員の年齢構成の実態というのは、戦争という大きな断層がございましたから、年令はもうやめなければならぬ年令に達しておるけれども、勤続年限からいえば、まだ十年そこそこだということで、恩給もつかない、ろくな退職金ももらえないというような公務員も相当数あるわけであります。そういういろいろな事情を考えますならば、私どもは、このような制度を新陳代謝の制度としてやはり将来は考究すべきであるけれども、現状においては、生活保障等の制度が確立をしなければ、今は通すべきでないというふうな見解であります。大体同じような考え方であろうと思います。そういたしますと、大臣の個人的な御意見と言われましたけれども、この委員会の公けの席上で申されたことは、やはり大臣としての御意見、こういうふうに考えられます。従って、今後閣議等におきまして、今のような消極的な御意見でもって、この公務員法の一部改正案というものをどうするかということについて、そういう態度でお進みになるというふうに了解していいかどうか、この点を確認しておきます。
  50. 田中伊三次

    田中国務大臣 この席は、いやしくも分科会の席でありますので、個人の意見は言う意図はなかったのであります。なかったが、私個人の意見を在野時代からしゃべっておることもございます。それをとらえて御質問がございますので、個人の意見内容はかくの通り、ただしこれは、まだ政府意見としてこれをマッチするところの段階には至っておらぬということを、お答えを申し上げたのでございますが、個人の人格と国務大臣の人格と二重の人格を持っておるわけなのでございますが、私個人がそういう信念を持っておるわけでございますから、近く私の見解を表明をいたしまして、これを政府意見とするように、表向きの決定のできますように努力をしたいと思います。
  51. 北山愛郎

    北山分科員 停年制の問題はその程度にいたしまして、次に三十二年度の財政計画でありますが、まだいろいろな不確定要素があって決定されておらない。この見通しを大体承わっておきたいのであります。三十一年度に比べて、どの程度の財政需要というものがふえるのであるか、あるいは歳入がふえるのであるか、この三十二年度の地財計画の大体の輪廊というものを伺っておきたい。またその地財計画はどういうわけでまだできないのであるか、またいつごろになればそれがはっきりするかという点について、お答えを願いたいのであります。
  52. 田中伊三次

    田中国務大臣 申しわけのない手おくれでございますが、何分組閣ができましたのが十二月二十三日という、最近の内閣では異例の時期に組閣をしたという事情でございます。そういう事情から、二つの要因で地方財政計画がまだ明確にここで言明をいたしかねる事情になっております。一つは、委員会でも申し上げたことでございますが、私の責任でやっております、地方税法の改正法案がもう少しかたまりかねるところがある。これが確としてかたまりませんと、地方の税収のめどがはっきりしないことが一つ、それからもう一つは、国の支出金でございます。内容は補助金、交付金というような国の支出金の全体の具体的な計数が、まだ完全に整理ができていない。それができますと、国の支出金を受ける立場からは、地方財政の収入ということになりまして、収入の規模に変化を来たすわけでございますが、そういう二つの要因が明確になる。大体できておりますが、明確になりかねておりますような事情で、地方財政計画を私が皆様に申し上げる段階にきていないわけでございます。いささか例年よりはおくれております。この点がまことにおわびにたえないわけでございます。そこで、明確にならないことをしゃべりますことはどうかと思うわけでございますが、大体の私の見ておりますめどは、歳入歳出ともに数百億円、七、八百億円に最高はなろうかと存じますが、七百ないし八百億円が昨年と比べまして増になる。こういう規模において詳細なる財政計画を立てていきたい、結果はそういうことになろうかと存じます。
  53. 北山愛郎

    北山分科員 新年度の敗政需要の増というものは、はっきりわかっておるものもあるわけでありますが、今のお話の点以外に、不明確な動き得る数字があるんじゃないかと思います。まず第一に、給与費及び恩給費の増においては、前の自治庁の試案によりますと、百六十四億の増、公債費については百六十六億、あるいは給与の改訂の関係は百七十九億、こういうようになっておるわけであります。これらの数字が大体それでいいかどうか、それからもう一つは、三十年度地方財政の決算の数字、その資料を最近いただきましたが、そういうものによりますと、非常に地方では例の赤字を解消するために、財政規模を圧縮して節約をいたしておる。人員の整理も、ここ三年ばかりの間に四万あるいは五万ぐらいの整理をしておるようでありますし、また当然やるべき昇給昇格をストップをしておる、またいろいろな建設的な事業を取りやめておる。その事業の圧縮だけでも四百六十億ぐらいに達するといわれておるわけであります。これは自治庁地方財政白書の中でも、いわゆる赤字のために、地方団体が行政水準の低下を来しておる、こういう報告がなされておるわけであります。従いまして、この点を是正するために、三十年度においてはっきりしておるような事業の圧縮ということからくる行政水準の低下を、三十二年度で補うような措置をどの程度に考えておるか。たとえば道路や橋の維持、補修、あるいは学校の改築であるとか、下水や汚物処理の施設等々の事業費というものをどの程度に財政計画の上で見ているか、これを一つお伺いいたしたい。財政部長でもよろしゅうございます。
  54. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 今大臣からお話がありましたように、正確な数字はまだきまっておりませんが、給与費の問題とか恩給費の問題は、大体おあけになったような数字です。正確には多少違いますが、御見当はそういうことかと存じております。  それから行政水準を確保するために財政計画上どれだけ見るか、こういう問題でございまして、これはわれわれ明年度の財政計画を作る場合においても、最大の問題にしておったのでございます。当初考えておりましたように交付税は伸びませんし、公債費の対策もどうも思うようにいっておりませんので、そうした部分がだいぶ引っ込んで参。ております。これは最終的に数字の詰め合せをせぬといけませんが、最小限度百二、三十億は、ぜひ新しい経費として財政計画上見たい、その半分が大体道路、橋梁等の維持修繕関係、それからその半分が都市的な施設として財政計画上計上いたしたい、こういう考え方で計数を整理いたしております。結局これらの数字は、最終的に税なりその他の経費を確定いたしまして、いわばそこへ最後にみんな持っていく、こういう格好でできるだけその経費を確保いたしたい、こういうふうに存じております。
  55. 田中伊三次

    田中国務大臣 ただいまのお尋ねの中で、大事なことがございますから、一言お答えをあわせて申し上げます。  それは、事業は圧縮して縮かんだ運営をやっておる、これは白書に出ておりますように事実であります。ことに大事なのは、赤字の再建団体の事業量というものを概括いたしますと、これは実に窮屈な、最低行政水準の縦持もできかねるような事柄を、苦心をいたしまして泣きながら収支を償わしておる、赤字の解消に努力をしておる、こういう事情でございます。来年度は、相当金額に及ぶ地方自体の増収も的確にあるものと私は見ております。それから国から地方自治体に送りまする財源も、いささかゆとりを生じている時期でございますので、赤字再建の団体といえども、最低水準の行政を維持するために必要なる申請があります場合においては、再建計画に対してある程度の緩和の措置を構じまして、再建計画の変更には許可を与えていきたい。これが新しい、今度の私が就任以来の行き方でございますが、そういう方針をとって参りたい。ちょっと具体的に申し上げてみますと、道路を見ると、その地方が担当しております。道路がせんべいのようにくしゃくしゃになっておるこういうような場合に、この道路を最小限度修復する程度の経費は支出をして、修復はやらすべきものだ。また橋がかかっております。人間が通るには差しつかえはないけれども、荷物を積んだ重量運搬は許されぬから、ほかの橋に回ってくれというような意味の高札を揚げて、荷物を積んだ車が橋を通ることを禁じておるような橋が全国に何百本かございます。こういうことでは、地方財政の最低水準の行政をやっておるとは言えません。今まではやむを得なかったのでありますが、来年度のような、多少の増収が考えられ、国の支出金においてもいささかゆとりがあります時期におきましては、こういうものは、再建計画を変更せしめてでも一つ実行せしめたい、こういう気持で来年度は見ていこうと考えております。
  56. 北山愛郎

    北山分科員 今の地方のいろいろな建設事業を考えるという点につきまして、財政部長から百二十億ないし百三十億というお話でありますが、これは自治庁としても、当初は二百七十億ぐらいを考えておったようでありまして、しかも今申し上げた通り地方財政白書等の数字から見まして、非常に地方の行政水準が下っておるというような実態から考えるならば、この金額の減少というものは非常に私ども遺憾に思うわけであります。自治庁としても、自分の出した財政白書に適応しないような対策しか考えておらない。きわめて残念に思います。  次に、いろいろな生活保護、失業対策、あるいは義務教育の関係、住宅対策等に伴う地方負担は大体どのくらいになるか。これは大ざっぱなところはおわかりになっておると思うのです。もうすでに政府一般会計の予算がありますから、それに応じた地方負担の増加というものはどの程度になっておるか。四百億とすれば、大体半分の二百億というように私どもは見当をつけておるわけですが、どの程度になるか、大ざっぱなところをお答え願いたいと思います。
  57. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 国庫補助関係を伴う経費の増減は、これは純増減を申し上げますと、大体百億近くではないかと存じております。今北山委員のおっしゃいましたのは、全事業費の問題だろうと思いますが、去年との比較の上におきまして、その近くの数字が純増になるのではないか、こういうふうに考えております。
  58. 北山愛郎

    北山分科員 財政計画については、またいずれお伺いをしますが、これは歳入との関係ももちろんあるわけであります。歳入について、今大臣からお話しのように、相当な地方税の増徴を見込まれるというのですが、来年度における地方税の自然増というものは、伝えちれるところによりますと、自治庁と大蔵省が相談をして、六百九十四億というふうに見込んだということであります。その内容も、各種の税目にわたっておりますが、特に固定資産税を百五十六億も自然増を見込んでおるというのは、私どもにはち、一つと解せないところがあるわけです。というのは、法人事業税なり法人税割というような、いわゆる所得の伸びからくるものは、あるいは経済活動の結果として出てくるものかもしれないけれども、しかし固定資産税というのは、ことしの一月一日現在の財産についてやるものですから、それほど急激にふえるとは思えない。現在でも償却資産に対する固定資産税というものは、三十一年度でたしか百五十億くらいだと思うのです。ですから、家屋などもずいぶんふえたといっても、家屋についてはどの程度になっておるか。今までの分が、三十一年度が四百億くらいと思いますが、こういうような絶対的な数字からいっても、一カ年の間に百五十六億もふえる固定資産税を見込むというのは、少し無理ではないか、ちょっとそういう印象がするのですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  59. 田中伊三次

    田中国務大臣 新年度における地方自体の増収というものは、参議院の本会議でも、衆議院の本会議でも、予算委員会でも、そんなにないのではないかという意味の御質問が大体の動向のようでございますから、この機会にこれを明確にして、その積算の基礎もここで申し上げて、私たちのやっておることでございますから、無理のあるところがあれば、これに反省を加えて、その結果を財政計画の上に表わす・ようにするには、まだ時間の余裕もございまので、これを申し上げてみたいと思います。  今お尋ねの固定資産税でございますが、これは大体百六十億前後を見込んでおります。百六十五億と仰せになりましたが、もう少し下をいっておる。そこで申し上げるまでもなく、この固定資産税は、固定資産税に準じております国鉄、電電公社、専売、この三公社の国に対する納付金というものも含めた金額になりますので、百大十億内外を見ておるのでございます。それからさらに電気ガス税というものも、ところどころによってこれを見ますると、大へん少い金額のように見えますが、現在までの消費をいたしました実績から考えてみると、ことしはやはり四十億円内外は、電気ガス税においても増収があるものと見ております。  それから事業税でございますが、この事業税は個人事業税、法人事業税といたしまして、個人事業税においてはごくわずか、十五億の増収、それから法人事業税においては二百四十億円内外の増収、合せて二百五十五億の増収というふうに正確に計算をしておるつもりでございます。  それからさらに住民税でございますが、この住民税は、総じて百七十二億内外の増収があるものと考えております。その内訳は百十億円、これが法人税割の増収となる。あとの六十二億円は所得割の増収となる。合せて百七十二億円内外の増収がある。そのほかに諸税の増収といたしまして七十二億円内外を考えております。これを合算いたしますと、今仰せをいただきましたのとほぼ同数でございますが、六百九十九億円内外、これを七百億内外の収入と申しておるのでありまして、大蔵省が無理にこういうことを言うのだろうとお考えが各所にあるようでござ  いますが、これは、私が立ち会いまして、大蔵大臣とよく懇談を逐げ、無理のない積算の基礎を持ったもので、自治庁自体も、これならば無理のない増収であろう、こう考えておりますもので、大蔵大臣が押しつけて参りました数字ではないわけでございます。その積算の基礎の詳細はお尋ねがございますれば、後に税務部長から詳細な情報をさせます。
  60. 北山愛郎

    北山分科員 私どもが伺っておるのは、この自然増につきまして、大蔵省が初めは一千億ぐらい、それから自治庁の方は四百億台でもって折衝というか、話し合いをしたのだ、それがだんだん歩み寄ってきて今の六百九十何億になったといふうに聞いておるのです。ただいまのように、六百九十何億は大蔵省の押しつけではない、それが妥当な数字であると言われるならば、なぜ一体自治庁は、初め四百億からスタートしたか。私は、やはりその辺はおかしいのじゃないかと思うのです。でたらめな少い数字を出して、そうしてあとになってその六百何十億の方が正しい数字だというようなことはおかしいのじゃないかと思うのです。この点、また繰り返しになりますが……。
  61. 田中伊三次

    田中国務大臣 この点は、包み隠さずに赤裸々に申し上げておきますが、私が自治庁を担当する大臣に就任をいたしまして日がないもので、ことに愚鈍でありますから、数字を明白に頭の中で操作ができなかったのでありますが、最初の予算閣議というものがありましたときに、自治庁にはすごい増収があるじゃないか、すごい増収があるのに交付税を引き上げるなどということは、もってのほかだと言わんばかりの主張がございました。それに対して、初めて増収とは何事だということを申しましたときの私の論拠の基礎は、詳細申し上げたのですが、結論はそのときは六百三十億、これは閣議の記録にも出ております。うそは言いません。六百三十億を下るものとは考えないが、六百三十億を出る計数は、大蔵省が何と言ったって、そんな大きな増収はない、こういうことを主張したわけであります。大蔵省の方は、どこからお聞きになりましたのか、今あなたが仰せになるように、千億近い収入があるという御説でありました。閣議の内容は、ここで言うべきものじゃございませんが、これはありのままに申し上げておきたいと思います。そこで大体長い時間でございますが、討論をいたしました結果、結論は、自治庁の事務と大蔵省の事務とが積算の基礎を持ち寄って集計をしてみて、そうしてくろうと同士できめた数字でどこに決着が出るかということをきめようじゃないかということに円満に話が落ちつきまして、両大臣の激論は引っ込めた。その結果、両方から選手を出しまして、専門家がずっとその基礎を持って十日近くも続いて時間をかけてやりました結果、私の言い分にも数十億円の間違いがあった。六百三十億を下らぬと言ったのが、当時は六百八十九億円という数字でまとまった。それから大蔵省の方も、千億円近いといったのが六百八十九億円までおりて参りまして、これなら納得がいくということになった。それが、増収が幾らか上りまして六百九十九億円となりましたのは、その後のこまかい計数をはじき出して整理をいたしました結果、結論として六百九十九億になったのであります。そういう事情でございますので、一口に申しますと、六百三十億と私が勘どころで押えた数字が六百八十九億円という数字に修正をされたということ以外には、大きな変化は実際にないのであります。
  62. 北山愛郎

    北山分科員 この自然増の各種目につきましては、いずれあとで地方行政の方でもお伺いをしたいと思いますが、ただ一つだけ、この固定資産税の百五十六億ですが、これだけはこの際伺っておきたい。
  63. 奥野誠亮

    奥野政府委員 今大臣からも御説明のありましたように、固定資産税の増収部分の三分の一は、昨年来始めました三公社課税、三十一年度は、初年度として二分の一に負担を緩和しておったわけであります。それが三十二年度から本来の負担になりますために、四十六億円増加して参ります。残りのうちで、やはり一番増加の多いのは償却資産に対します固定資産税でありまして、六十六億九千九百万円というふうに見込んでおります。近来、企業の設備投資が急増いたして参っております。企業の設備投資の急増が償却資産に対する固定資産税にはね返って参っておるわけでありまして、この設備増を算定いたしました基礎は、法人企業統計におきまして、固定資産がどれだけ増大してきているか、この増大して参りました価額を基礎にして算定しておるわけでありますが、それが年間におきまして七千三十九億円になっておるわけであります。その中には家屋の分もございますので、従来の実績からいたしまして、その部分を二九%に押えております。残りの償却資産課税を受けまする部分が五千三百四十六億円、これを基礎にしてこの数字をはじいたわけであります。  もう一つ増加の著しいのは家屋でございます。家屋も近来新築がかなり急激にふえて参っておるわけでございまして、この部分は建築着工統計、これの三十年九月から三十一年八月までにどれだけ伸びているか。この数字を基礎にして算定したわけでありまして、この数字が九百九十万六千坪になって、おるわけであります。こういうようなものを基礎にしながら収入を見込んで参っておるわけであります。
  64. 北山愛郎

    北山分科員 これはいずれにしましても、地方税の自然増の見積りというのは、国税と同じような問題でありまして、国税のいわゆる千九百二十二億の増収というもの自体が、やはり私どもから見るならば、そこにいろいろ問題があるんじゃないか。それが問題があるとするならば、やはり地方税の増収についても、疑問点は残るわけであります。  そこで、この際これに関連をいたしまして、最近における地方財政計画上の税収見積りというものがどういう傾向をたどっているかということを指摘したいのですが、昭和三十年度の決算を見ますと、たしか三千九百幾らでしたか、その数字は、実績と地方財政計画とがほとんど一致しているわけです。従って、財政計画が非常に正しくなったということで喜ぶべきかもしれません。しかし昭和二十八年九年ですか、その当時は、この地方財政計画の数字よりも、実績の方が約三百億くらい上回っておった。財政計画をそれだけ低目に見ておる。ということは、その三百億が、地方財政の歳出の実態と、この財政計画が低目に見ておる歳出とのクッションになっておったわけです。ところが三十年度の決算を見ると、そのクッションがもうほとんどなくなっておる。ということは、この数年来地方財政計画上の税収見積りというものをきつく見て、大幅に見ていくために、そのクッションがなくなりつつあるということです。そういう傾向がありとするならば、この三十一年度の実績はどうなるかまだわかりませんが、このように自然増というものを大幅に一ぱいに見ていくということは、非常に危険ではないか。しかし歳出の面、いわゆる地方財政の需要面においても、十分に実態に合うような見積りをするならば、それは差しつかえないでしょう。しかし、歳入面においては、今お話したように、自治庁の案でも、いろいろな建設事業について、初めは二百七十億見ておったものを、半分くらいに圧縮してしまったり、あるいはいろいろ歳八面から歳出の方を圧縮されて、それが実態に合わなくなつてきておる。そういうことは、地方財政の弾力性を失わせるものだ、こういうふうに私ども考えて、この自然増収を大きく見るという点については、非常な農を掌るのですが、これについて大臣はどのようにお考えですか。
  65. 田中伊三次

    田中国務大臣 財政計画のやり方いかんによっては、事業の圧縮ということもあるし、いろいろ不都合が生ずるではないかという御意見ですが、お説の通りであると存じます。そこで、これは御説明的に申し上げることははなはだ恐縮なんでありますが、一体地方財政計画というものが行政の上にもたらす効果というものを考えてみると、いわば大体の大まかなねらいという意味以外に大きな意味はない。間もなく私の手で、地方財政計画の計数をそれぞれまとめ上げまして、委員会には詳細に御報告を申し上げる考えでございますが、かりにこれができ上りました暁といえども、実際に施行をいたして参ります結果、ゆるめるべき点があったらゆるめるべきもの、また支出を認めて財政計画の変更を許すべきものがあれば、これを許すべきもの、こういう立場に立ちまして、これにあまりこだわらないように、地方行財政を明るい方向に持っていくために努力をして参りたいと考えております。
  66. 北山愛郎

    北山分科員 財政計画の問題は、大体その程度にしまして、次に三十一年度の補正予算についてお伺いします。今度配付されました昭和三十一年度の  一般会計及び特別会計の予算補正、これを伺いますと、地方交付税につきましては、現在の地方交付税法で定めておりますところによって、法人税及び所得税の伸びが本年度四百億ある。そのうち二五%というものを交付税及び譲与税の特別会計の方へ振り込んで、特別会計の方では、それを本年度の歳入とし、かつ本年度の歳出として百億円というものを計上しておる。こういうふうなことでございますから、この百億円というのは、本年度内に三十一年度分として、地方団体に今の法律の規定に従って配付すべきものではないか、かように考えるのですが、そう考えてよろしゅうございますか。
  67. 松本瀧藏

    松本主査 ちょっと御注意しますが、本分科会は、昭和三十二年度予算の分科の問題について今やっておりますので、補正の問題はまた後日にいたしますから、なるべく簡潔に……。
  68. 田中伊三次

    田中国務大臣 お尋ねがございましたので、後に詳細に申し上げることにして、概略だけをお答え申し上げておきたいと存じます。この百億の補正の金の使い方でございますが、このうち十六億円内外のものは、昨年の年末に〇・一五の手当アップ分で、この財源が地方に渡してございませんので、これをこのために使いたいと存じております。それから残る八十四億のうちの八億円、これは減額調整をいたしましたのを、補正の財源が参りますと、これを復活しなければなりませんので、その復活分として八億円を使いたい。そうすると残るところは七十六億円ということになりますが、この七十六億円を、大体次のように使っていきたいと考えるのであります。それは交付税として使うわけでありますが、この給与費関係地方債が百四十七億円、この年度末の三月三十一日を見通しますと、九十七億内外に減りますが、これの来年度分の償還分が二十億円ございます。これを償還していきたい。それから残る問題は、もう一点ございますのは、一般普通の公共事業費、それから中小学校の学校建設費、それからもう一つ大事な失業対策費、この三種類のための公債が二千六百三十億円内外でございます。この分の、来年度分の償還しなければならない利息分として百五十五億円を必要とする状況でありますので、大体この百五十五億円の半額相当分を国から補給をする方針をとるということであります。問題は、お尋ねに関連をして一番大事なところでありますが、どういう形でこれを使うのかということでありますが、先ほど一言申し上げましたように、交付税の使い方と同じ使い方で、交付税の中においてこれを使っていきたい。それをいたしますには、法律を必要といたします。ただいまお説のございましたように、ことし予算に組まれたものは、三十二年度でなしに、三十一年度年度内において使ってしまわなければならないというのが補正予算の趣日となっております。これを本年使わないで来年度に使うためには、繰り越しのための特例法を必要といたしますので、交付金交付税法の特例法を、近く準備完了次第、予算と並行して国会に提出をして御審議をいただきたい、こう考えております。この法律ができますと、ことし使う金が来年使えるということになるわけでございます。しこうして、さてそれを使うという段階に来ましたときに、今私がしゃべりました給与費関係の二十億、それから公共事業関係の百五十五億の利息の分を償還するにいたしましても、そこに償還の要因がないことになりますので、交付税法の附則を改正いたしまして、新たなる単位費用を別に設定をいたしまして、返えせるがごとくに設定をいたしまして、これに基きまして償還をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  69. 北山愛郎

    北山分科員 そうしますと、本年度の特別会計の補正分というもののうちの八十六億は、明らかに三十二年度でお使いになる。そういう法律をお作りなる、こういうわけなんですか。そういたしますと、予算そのものも変えなければならぬじゃないかと思うのです。なぜかなれば、いわゆる繰り越しというのは、特別会計法では認められておるわけです、明許しなくても。ところがはっきりこれだけは繰り越しをして使うんだということになれば、予算そのものも変えていかなければならぬじゃないか。そうでないと、予算法律とは矛盾することになるんじゃないか。自然に繰り越す場合には、支出残ができて繰り越す場合も出てくるでありましょう、しかし明らかにこの分だけ取り上げて、三十二年度で使うということを法律としてお出しになるならば、当然予算そのものと矛盾しないように、予算もまた再補正をしなければならぬじゃないか。こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  70. 田中伊三次

    田中国務大臣 三十一年度の本予算には、この数字は無関係なこととなっております。そこで新しく補正を編成いたしまして、補正予算を提出する、こういう手続をいたしておりますので、補正予算自体でこれをやっていくということで、本予算との関係が起らないのではないか。補正予算自体国会に出ておるわけでありますから、この補正予算の審議をしていただけば、やれるのではなかろうか。ただこの百億の金を使う場合に、百億のうちの十六億はことし使うわけです。八十四億のうちで八億を減しまして、七十六億を使うということになりますので、七十六億分の使い方については、先ほど申し上げたように、別個に独立の特例法案を出して、特例法案で御審議を願う。それでは、一体法律を作って予算を変更するのか、こういうお言葉が次に出てくるのではないかと思いますが、政府は、これはできるとの見解に立ちまして、独立の特例法を設けて、予算と衝突しないように持っていきたい、技術面の話でございますが、そういう考え方でございます。
  71. 北山愛郎

    北山分科員 しかし特別会計補正、これは本年度の歳出として百億円上っておるのですから、特例法ができれば、それに伴って予算そのもののそういう項目に変えていかなければならぬのじゃないか。私どもはその点非常に疑問に思うのです。なお結果として起ることはどういうことかといえば、地方交付税法にはっきり書いてあるいわゆる二五%、昭和三十一年度について、は、その百億分を当然二五%のうちとして受け取るべきものなんです。それを来年へ移すというのですから、それだけ率が減ったことに結果としてなると思うんですが、いかがですか。
  72. 田中伊三次

    田中国務大臣 一つの筋の通ったお考え方であろうと存じます。ことし使うべきものを使わないで来年使うというのですから、ことしの分は減ったことになります。  それからもう一つ考え方は、ことし使わないのでありますから、ことし使わないものは、合理的な考え方からいいますと、来年は使えないで、一年おいて再来年の会計年度において使うことが財政法上の建前になるわけであります。それを再来年使わないで、この考え方から言うと、逆に一年繰り上げて来年使うんだ、こういうことにも、一つの筋の通った観察といたしましては、観察ができるわけであります。今のお尋ねの問題で非常に大事な点であると考えますことは、一体百億なら百億、このうち必要なる経費を引いて、七十六億なら七十六億という私の申します金が、それだけ穴があくわけです。本年度にしてもお説の通り穴があく。また使わない建前にいたして、三十三年度に使うものといたしましても、三十三年度に使うべきものを繰り上げて使うのですから、三十三年度からいうと穴があく。その穴を一体どうするかという考えが、一つ重大問題として残っておるのではないかと思います。そこで、この問題は非常に重要な問題でもありますし、その当該年度になってみて、その当該年度において見通し得る税収というものも考えてみなければならない。また当該年度に至る情勢から、その地方財政の行いますところの全体としての総括的な事業量というものも観察をしてみた上で、その不足分を補う必要があるものならば、あらためて補う手続をとりたい。必要のないものであるならば、そのままいくということもないともいえない。そういうことで、現在の予算折衝の段階においては、私と池田大蔵大臣との間の懇談の際の内々の話といたしましては、これをどの年度において埋めるとも埋めないとも、いずれも具体的には協定は成立をしていないわけでございます。未確定のままで、埋めなければならぬ状態がきたときの情勢を勘案した上で、どの程度これを埋めるか、あるいは埋めないかということをきめていくよりほかに道はたかろう。あくまでもこの百億円の補正予算によるところの国税三税の収入というもののうち七十六億をこの方向に使うということは、前例のないことでありまして、あくまでも三十二年度に限り、この年度に限る臨時応急の措置として、やむを得ずこれをやらしていただきたいという考え方であります。
  73. 北山愛郎

    北山分科員 いかような理屈をつけても、結果としては、地方交付税法の原則である国税三税の一定率を地方にやるんだ。その率は、現在のところ地方交付税法の第六条ですかによって百分の二十五である。そうして、それは必ずしも地方財政収入と需要との差にぴったり合致しない場合もある。そう十五やるんだという原則をぶちこわした。今年は八十六億削って——八十六億といえば一%ちょっとでありますが、今年は百分の二十五じゃなくて、百分の二十三ポイント幾らというような程度に切り下げたんだということだけははっきりしていると思いますが、どうですか。
  74. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説の通りになると思います。
  75. 北山愛郎

    北山分科員 その百億は、今年地方団体としては必要のない金である、だから来年度に回すんだ、こういうお考えですか。
  76. 田中伊三次

    田中国務大臣 むずかしい御質問でおそれ入りますが、これは、地方団体には本年は百億は要らぬ金なんだという建前ではないのでありますが、しかしながら、今年使うよりは、公債費の消化という大事な第一年度をやるための財源として、これを来年度に繰り越して使うことが適当ではないかと思う性質の金である、こういうふうに考えております。
  77. 北山愛郎

    北山分科員 そうしますと、ただいまのお話のようであれば、ことしの分から繰り越す八十六億は、来年度においては公債費に引き当てる、地方債の元利償還分の一部に引き当てるという  御説明であります。そうすると、われわれが主張してきた公債費対策というものは、実はほんとうはできておらないのじゃないか。ただ、ことしもらうべかりしものを来年に回して、それを公債費の元利償還に対応するものだとして両様に使っているのであって、今までの公債費の元利補給をすると言うてきた自治庁建前は、何ら貫かれておらない、こういうふうにに言わざるを得ないのですが、それでいいんですか。
  78. 田中伊三次

    田中国務大臣 このたびの補正予算が通過をいたしまして措置をいたしますと、二つの点で遺憾の点があるわけであります。第一の遺憾の点は、今あなたが仰せになりました点であります。それから第二の遺憾の点は、交付税として扱うんだ、こう申します。従って交付税関係のない、交付税をいかなる理由によってもちょうだいのできない不交付団体、裕福な自治体というものには無関係に、この措置が、  一年限りとはいいながら行われるという点が、第二のまことに遺憾な点でございます。それで、二つの遺憾な点があるならば、なぜ一体遺憾なことをわれわれはやるのかという御意向が出てこようかと思います。遺憾なことではございますが、地方が重圧を感じて苦しみ抜いておる地方公債費という問題を、とにもかくにも予算上の手続によって、これを第二年度地方に迷惑をかけないで国が補給をしてやるという、こういう実質を備えております処理のいたし方、永年にわたってできなかったことであります。とにかく予算の財源については遺憾な点がある。また払う相手方については、金持ちにはやらないで、貧乏人しかやらないんだから、この点も遺憾があるけれども、やらないでほうっておくよりは、来年度に力を入れてこれをやって、再来年度の二年度目からは、この遺憾な二点を除きまして、予算上別建の柱を建てて、予算実行として、独立の法律の実施としてこれをやっていく、こういう考え方に移行していく覚悟をきめております方が、やらないよりはよほどまさるものがあるのではなかろうか、こういう考え方で、私は賛成をしておるわけであります。
  79. 北山愛郎

    北山分科員 大蔵省からは来ておりますか。あとで大蔵省関係はお伺いしたいと思いますが、今のに関連しますから。大蔵省の方では、今のような自治庁長官意見、要するにことしから繰り越す八十六億、これは公債費分としてやるんだ、こういうことにに大蔵省も了解しておるわけですか。
  80. 相澤英之

    ○相澤説明員 補正に組みました百億円の使途につきましては、当初私どもといたしましては、三十一年度交付税であるから、これは当然三十一年度内におきまして交付すべきものではなかろうか、その使途につきましては、先ほど自治庁長官からお話がありました通り、まず本年度の普通交付税の減額調整分の八億円を交付する。次に〇・一五の期末手当の増額分相当額、これを特別に交付する。自余は公債費の元本償還ないしは元利償還の一部に充当するごとく特別交付税等で交付すべきではなかろうか、こういう考え方を事務的には持っておったわけでございますが、予算折衝の際の種々の経緯等もございますし、また来年度の公債費対策といたしましてさような使途に充当することも、これは理由あることと存じておりまして、その一部七十六億、つまり八億円と十六億円を除いた七十六億円を来年度に繰り越すことができるというような法律を設けて、そのような使途に充てるということにつきましては、大体自治庁の見解に同意をいたしたわけでございます。
  81. 北山愛郎

    北山分科員 今のやり方は、やはり財政法の原則と抵触するんじゃないかというような御意見で、初めは事務的にそういう御見解だったように承わるんですが、要するに、その年度予算として計上し、歳出としてあげたものは、原則としてその年度に払い出すべきものだ、しかし、たまたま予算の執行上自然発生的にやむを得ず繰り越されるものがあるのだということを、繰り越しの場合として規定してる。また従って、あらかじめ繰り越しの明許として認めている場合もある。しかし、それは初めから翌年度で使うんだということを想定してるんじゃなくて、その年度の歳出ならば、その年度内にこれを支出する、執行するということを規定している。ただ、例外的にいろいろな事情で執行できない時分には繰り越せるということであって、初めから三十一年度なら三十一年度で歳出としてきまったのを、特例法で来年度に繰り越すというようなことは、財政法上の原則をみだるものじゃないか、また地方交付税法からいきましても、百分の二十五と原則がきまってるものを、みだすものじゃないか、こういうわれわれの見解ですが、一体大蔵省としては、最初の事務的なお考えはそういう見解じゃなかったのですか。
  82. 相澤英之

    ○相澤説明員 地方交付税法の六条の一項に、主税の百分の二十五をもって地方交付税とするという規定があります。六条二項には、毎年度地方交付税として交付すべき金額は、この百分の二十五に前年度以前の年度において交付しない額を加算し、またやり過ぎの分は減額して、これをもって総額とするというような規定がございます。そこで交付税法の規定に従いまして、三秋の増収四百億の百分の二十五の百億は、三十一年度の補正予算に計上したわけでございまして、一般会計及び特別会計の歳入歳出とも同額を組んでおります。従いまして、私どもの事務的な見解といたしましては、これは原則としましては、当該年度において、つまり三十一年度内に交付すべきものである、しかしながら地方交付税法の解釈といたしましましても、全部その年度内に予算に計上した総額をそっくりそのまま交付しなければならぬというふうに読めるかどうか、この点については問題があるのでございまして、たとえば地方交付税法の十五条の規定に、特別交付税の額についての規定がございます。この規定も、災害その他の事情によりまして、歳入に欠陥が生じたり、あるいは歳出に特別な需要があった、そういうことを勘案しまして、総理府令でできるようになっております。従いまして、そのような事情を勘案しまして、特別交付税等で配付しましてなお残りがあった場合には、支出残額といたしまして、交付税及び譲与税配付金特別会計法の十五条の規定にりよまして当該年度の支出残額になるその支出残額は、翌年度に繰り越して使用することができる、こういう規定があることにかんかみましても、ある部分の配付の残は、全然これは考えられないということはないというふうに解釈をしておったわけであります。従いまして、そういうふうに三十一年度に計上いたしました交付税の一部についで、これを事実上使用しないで翌年度に繰り越して使用することも考え得るところであろう。従いまして、そういうような方法でもこの問題は解決できるのではないかというふうな考えを持っておったわけでございます。しかしながら、何分七十数億円というような金額を繰り越すことにつきましては、単に行政官庁の処置だけによることはいかがかというような解釈もありますし、その辺のことを勘案いたしまして、三十一年度交付税の一部につきまして、これを翌年度交付税にあわせて交付することができる、こういったような表現の法律をもちまして、国会の御承認を得てやる方がしかるべきではないか、そういうふうな結論になったわけでございます。
  83. 松本瀧藏

    松本主査 北山分科員にちょっとお諮りしますが、まだ二名質疑の通告者がございますので、一つ簡潔にお願いします。
  84. 北山愛郎

    北山分科員 それじゃ簡単にやりますが、そうしますと、いろいろ疑問がありますけれども、また別に譲りまして、大蔵省としてもその繰り越した七十六億は、地方の公債費のいわゆる財政需要の増として認めておるということだけは、私は確かじゃないかと思う。そうすれば、将来やはり地方交付税法上、財政需要として公債費負担というものを、三十三年度以降においても見ていくのだということについても了承していると考えていいと思うのですが、この点はいかがですか。
  85. 相澤英之

    ○相澤説明員 私どもの見解といたしましては、公債費の問題につきましては、毎年度地方財政計画を策定するに際しまして、その元利償還の全額を歳出に見ておるわけでございます。そこで歳出に見て、しかも歳入とバランスしている。従いまして、この公債費の対策といたしましては、交付税配分の方法で解決すべきではなかろうかというのが、われわれの考えであったわけでございます。そこで、三十一年度からのこのような一部の繰り越しということを前提にしないでも、三十二年度に計上いたしました地方交付税配分の問題としても、そういうような公債費の配分方法を考えることができるというふうに思っておったわけでございますが、財源の関係もございまして、三十一年度の繰り越し分の一部をもって、三十二年度にそういう措置をとるというふうになっておるわけであります。
  86. 北山愛郎

    北山分科員 この問題もいろいろまだ疑問が残るわけであります。それは地方交付税法においても、やはり地方財政計画の上で、その財政需要の収支の関係から不足が非常に多くなるという場合であれば、交付税の総額そのものも率も変えるという原則になっておりますから、ただいまのように、毎年百数十億も公債費がふえるというような事態においては、ただ算定上の単位費用としてそれを見込むのではなくて、やはり地方交付税の率そのものとしても考えなければならぬ、これは当然だと思う。  それからいろいろございますが、一つこの際自治庁長官に伺っておきますが、消防施設税について大臣はどのようにお考えですか。
  87. 田中伊三次

    田中国務大臣 この消防施設の問題でございますが、これは勢い新しく合併いたしました合併新市町村を、消防の観点からいかに育成するかということとも切っても切れない関係があると思います。そこで、新しい市町村ができました場合に、役場の統合とか、学校の統合とかいう大事なことに続いて、大切なものは消防の統合でございます。ただそこに道路の関係、橋梁の関係等がございまして、統合いたしましても、いざ鎌倉というときに、直近コースで消防自動車が飛び込んでいくような道路が四通八達しておりませんと、なかなか消防の整備ということは困難で、向いに火事が起っておるのに道路がない、橋がないというところから、何里の道を回って火事場に及ぶというような事態が起っては大へんで、ございます。そういう意味から、新市町村の育成費ということを盛り込んでおる中にも、今言ったような現実の場面に即して消防が自由なる活躍ができるように、主として道路及び橋梁というものを頭に置きまして、ここに消防の施設を強化していきたい、単に統合をして消防力を弱めるということがあっては相ならぬ、統合をして消防力が強化するごとくに経費をかけて持っていきたい、こういう考え方で、ございますので、一万の数から三千三百に減少をいたします新合併市町村を育成する上から、この消防の強化ということには予算の及ぶ限りの力を尽して参りたいと考えます。
  88. 北山愛郎

    北山分科員 私の伺っているのは、一昨年ですか、地方制度調査会の答申案の中にも入っておる消防施設税の設定について、長官はどのように考えるか、昨年は、たしか大蔵省の反対によってこれができなくなったわけであります。ことしはと思っておりましたが、これも出ておらないようでありますけれども、今この市町村の消防の一番大きな溢路は、消防財源の問題なんです。消防を近代化するにしても、あるいは消火のいろいろな施設を拡充するにしても、これはやはり相当な財源を与えなければならない。ところが、現在の消防に関して国家財政が考えているのは、例の消防施設の強化促進の補助金わずか三億か、そんなものなんです。そしてまた、地方団体の消防施設に対する起債のワクもきわめて少い。こういうことで、消防財源が非常に窮屈なのであります。そこでこれに対応して、自治庁としては、非公式ではあったが、その消防施設税というプランを作っておるわけなんです。つまり火災保険会社から保険料の千分の一あるいは千分の三くらいのものを税金としてとって、これをを市町村の消防費として配分をするという構想であります。私どもは、これは非常に中途半端だとは思いますが、ないよりはましだということがいえる。そういう点からして、消防財源を拡充し、今もお話があったような、消防の施設を充実するという財源として一つの方法だろうと思う。これをなぜおやりにならぬか、その点についての見解を聞きたい。
  89. 田中伊三次

    田中国務大臣 大へんありがたいお言葉で、恐縮に存じますが、地方制度調査会の第二次答申以来、この問題が正規の答申の内容の中にも盛り上ってきております。消防施設を強化するための目的税の新設をなぜしないかというお言葉でございますが、実は、地方制度調査会においてもそういう答申があり、これを内閣総理大臣が受けまして、私の方の役所をあげて、これはぜひ実現をしたいという熱願をこちらは持っておったわけでございますが、御承知の通り、大蔵省内に同じ地方税を会がございまして、この大蔵関係の調査会の方で感心をしないという結論を出したのでございます。しかしながら、直接関係の深い、実情に詳しい地方制度調査会の方で出した結論に従って、あくまでもこの目的税は作っていきたい。御承知の通り、何も一般大衆が迷惑をする税負担となることでもないわけでございまして、保険会社相手のことでございますから、これを一つあくまでもやっていきたい、こういう考え方になっておりますが、大蔵省の調査会の方である反対を、そのままむげに押し切ってやるということにも参りませんので、目下この点につきましてどう調整をするか、調整の結果は、必ずやって、お言葉のごとくに、消防施設の強化をやりたい。こういう決心でおりますので、結論の出次第、時を得て御報告を申し上げることといたします。
  90. 北山愛郎

    北山分科員 消防施設税の問題も、自治庁としてはいろいろ御心配のようでありますが、やはり消防財源が一消防施設税もそうでありますが、一般的に金を出せないでおるということは、今国家消防本部というものが国家公務委員会のもとにあって、いわばまま子扱いになっておるからというふうにも考えられるわけであります。もしも消防本部を自治庁の中に移して、非常に積極的な自治庁長官のもとに置いてやっていったならば、あるいは消防財源がもっともっとふえるのじゃないか、消防の拡充のためにもいいのじゃないかと思うのですが、国家消防本部を自治庁の中に移すという点については、どのような見解を持っておられるか。
  91. 田中伊三次

    田中国務大臣 重ねて恐縮に存じますが、この問題は、行政管理庁の見解も聞かなければならぬことでございますけれども、近く内政省設置法案というものにも関連をいたしまして——これは、御承知の通り継続審査となっておりますが、この継続審査の扱いをいかに扱うかという態度をきめたいと考えておりますが、これをあくまでも推進して、内政省が実現をするという前提に立って、この態度をきめます際には、首都圏整備委員会、それから渉外関係といったようなものとともに、建設省、自治庁を含めまして、今お言葉をいただきましたような消防関係の事務監督一切を、この新しくできる内政省に含めまして、強力な活動を行わしめるように努力をしたいと考えております。ただし、これは一自治庁長官だけの考え方では実現をいたしません。この根本問題を定めますのは、行政官理庁が、ございますので、この行政管理庁がそういう方向に内政省設置法案を推進するという態度をきめる際に、なおかつその法案の内容において、こういう重要なものを新内政省に織り込んでくれるように私努力していきたい、こう考える次第であります。
  92. 北山愛郎

    北山分科員 最後に一点だけ。従来累積した地方債の元利償還についても問題がありますが、特に地方制度調査会では、今後借りる分についての地方債の利率を六分以下に引き下げろ、あるいは償還年限を延伸しろ、こういうような答申になっておるわけであります。この点については政府側の見解がまだきまっておらぬようでありますが、どういうようになっておるか。地方債の負担はやはり利子が高い、ということでありまして、戦争前、昭和の初めごろは、地方債の利子は四分二厘、それからずっと下って三分二厘まで下ったわけです。昭和二十三年ごろまでは三分二厘という安い利子でありましたから、こういうものが多少ふえても、それほど地方財政を圧迫しなかった。ところが、その後どんどん上ってきて、高いときには九分くらいまで上った。このごろで六分五厘ということになっておりますが、これを四分とか五分とかに引き下げができないものかどうか、この点について政府内の話し合いはどのようになっておるか。  それから償還年限につきましても、昨昭和三十一年度暫定的な償還年限の延伸をやったようでありますが、今後もそういうことをおやりになる考えであるか、この点を明らかにしていただきたいのであります。
  93. 田中伊三次

    田中国務大臣 償還期限の期間の延伸を今後も引き続いてやるか、一部やったことは・御承知の通りでありますが、今後もこれを引き続いてやるかと  いうお言葉でございますが、これは実情を見まして、一律一体にはいきますまいが、その公債の性格をよく種類別にながめまして、極力延伸をしていくことに努力をして参りたいと思います。  それから第二の利息の引き下げという点でございますが、これは、今例をおあ、げいただきましたが、どうもこれは、やはり現在における民間の利率の状況、それから現在における日銀の利率の状況、公定歩合、それから現在におけるところのいわゆる公募債と称せられるものの利率の状況というもの、そうした現段階における各種の利率というものを勘案いたませんと、答えは出ないわけでありますが、いずれにしても、私の申し上げる結論は、この利率はお言葉のごとくに引き下げていきたい。引き下げる限度は、まだ政府の全体の統一した意見となってはおりませんが、自治庁側の、所管役所の意見といたしましては、少くとも六分五厘は六分に下げろ、これくらい下げなければ下げたことにならぬというほどの強い意見で私も極言しておるわけでありますが、大蔵省の方は、そんなに下げないで、何か中間的なところで話がつかぬかという意見が非公式にあるようでありますが、まだまとまるところまでいっていない。自治庁意見といたしましては、六分程度にまで思い切って引き下げたいという考え方でありますが、まとめて政府意見として申し上げる段階にまできておりません。
  94. 松本瀧藏

  95. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は、防衛庁長官に一、二お伺いしたいと思います。自衛隊ないしは自衛隊員が、公務の執行中に一般市民に与えた損害、これに対する損害賠償といいますか、補償の問題について若干お伺いしたいと思います。本年度予算によりますと、十八項目に賠償償還及び払い戻し金として一億五百六万二千円上っておるが、これが財源になるのですか。
  96. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 その通りでございます。
  97. 田中武夫

    田中(武)分科員 最近復古調といいますか、こういう波に乗ったとでも申すのかと思いますが、自衛隊が一般市民に損害を与えた場合に、いわゆる旧軍隊の食い逃げ、あるいは切り捨てごめん、こういったような傾向が自衛隊に現われつつあると思うのですが、そういう点について、あとで具体的な事実をあげてお伺いしたいと思いますけれども、まずこの予算を一億幾ら上げたのは、どういうような観点からですか。たとえば、どれほどの件数を予定せられ、その場合にどういう方法でどうだというような計算をせられたと思いますが、その計算の基礎を示していただきたいと思います。
  98. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 従来の実績にかんがみましてこれを計上したのでありますが、詳細のことは、経理局長から調べさせて答弁いたさせたいと思います。
  99. 北島武雄

    ○北島政府委員 損害賠償関係経費につきましては、ただいま御指摘の通りの数字が上っておりますが、この積算の内訳といたしましては、陸上自衛隊関係におきまして、車両の事故の賠償のために約二千三百万円、漁業補償のために約千七百万円、合せて四千万円、それから海上自衛隊におきまして、漁業の補償関係で二千万円、航空自衛隊におきまして漁業補償その他一般補償を合せまして四千五百万円ということになっております。
  100. 田中武夫

    田中(武)分科員 それは去年に比べてどういうようになっておりますか。
  101. 北島武雄

    ○北島政府委員 昭和三十一年度は一億二千八百七十万六千円でございます。
  102. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうすると、去年より減ったわけですね。
  103. 北島武雄

    ○北島政府委員 さようでございます。これは、支出の実績が減少いたしておりますので、これにかんがみまして積算の基礎が変ったわけぞあります。
  104. 田中武夫

    田中(武)分科員 支出の実績、によってことしは減るだろう、こういうことで減らされたということはなんですが、実際問題としてはほんとうの補償が行われていないというようなことを聞いておるわけです。と申しますのは、こうういう事故を起した場合に、直ちに隊員は帰隊と同時に報告することになっておると思うのです。ところがこれを報告すると、自分の成績に関係する、こういうようなところから、なるべくならばそういうことの起らないように個人的に処理している、こういう面もあったと思う。私の聞いておるのには、これはだいぶ前の話なんですが、たとえば牛をひいてけがさせたとか殺したとかいう場合、これを報告すれば成績に関係するから、私たちが金を若干出し合って何とかしますからというようなことで、そう言われると、一般地方民は純朴といいますか、かっての軍隊のことも連想いたしまして、それじゃまあというようなことで、内々のうちに満ましたというような例が多々あるように聞いております。最近私が関連いたしました事件でありますが、具体的に申し上げてみたいと思います。  これは、昨年の九月の二十何日かと思いますが、兵庫県の青野ケ原付近、正確に申しまして、兵庫県加東郡滝野町に所属する県道において起った事故です。これは第三管区ですか、福知山駐屯部隊所属の車両が姫路に向けて走っていたのに対して、県道で自転車で通行している人と触れ合って倒れた。そして人事不省になり、肋骨を六本折ったという事故が起きた。ところが、たまたまそこにはだれも見ていた人がいなかった。本人は人事不省になっておる。それを直ちに付近の青野ケ原国立病院の療養所へかかえ込んで、そのまま帰ったらしいのです。その後隊員が個人的に一、二回見舞いに来たと聞いておりますが、駐屯部隊の方から、公式なものは何もなかった。そこで、相当地元では問題化いたしまして、警察の方といたしましても、そのとき調べただろうと思いますが、本人は人事不省であって、しかも肋骨が六本も折れておったというようなことで、その後人事不省が回復しても、尋問なんかできないというような状態だった。従って、自衛隊員の運転しておった人の口述が基本となって進められた。そういうことで、これは刑法上の問題にもならなかったようであります。しかしながら、地元で相当問題がやかましくなったので、年末ころに、三カ月もたってからようやく法務課長とかいう人が見えて、何かいろいろ話をしたらしい。その間に、自衛隊としては何か実地の調査といいますか、検証といいますか、そういうことも隊内としてせられたようであります。ところが、これは自衛隊として補償に値する問題じゃないという結論になった。けれども気の毒であるというので、年末にボーナスを隊員がもらったときに、若干出し合ってカンパして、それで金一封を包んでで持ってきて、これで示談の解決をしてもらいたい、こういうような話がありまして、今年の一月十一日でしたか、私も実はその示談をするときに立ち会ってくれということで、立ち会ったわけでありますが、結局隊員から集めたお金で、五万円ばかりだったと思いますが、これを持ってきた。隊として調べたところが、これは補償に値するものじゃないけれども、気の毒なのでこうするという話だったので、その関係者は、当時相当憤慨しておりましたが、これは、そういう自衛隊員の醵出による金だ、こういう気持を十分にくんで、一応話し合いができて示談になったのであります。私は、一応示談になった問題を今ここで蒸し返そうとは考えていないわけでありますが、もしほんとうに自衛隊として責任がないものならば、みんなが金を集めて持ってきたということは、何だかどうもふに落ちないわけであります。もらった方としても、他人が金を集めて持ってきたものを見舞金としてもらったということで、ありがたいような気持もあると同時に、一面何だか割り切れないような気持を持っておる。こういうような事故が起ったわけでありますが、正式に何か報告でも聞いておられるでしょうか。
  105. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま御質問のございました、昨年九月の滝野町の車両の事故でありますが、この件につきまして、第三管区において調べましたところ、当時事故のありました現場は、幅員四メートルの県道でありまして、若干坂道になっております。そのところを、負傷された方が自転車でもって上の方から相当のスピードでおりてこられました。一方自衛隊の方は、四分の三トン・トラックによって上って参ったわけであります。スピードにおきまして約十五キロでありましたが、別方に自転車が相当のスピードでおりてくるのを認めましたので、左側に寄りますとともに、スピードを十キロ以内に落してすれ違いました。ところが、すれ違ったときに一これは推測でありますが、負傷された方が、坂道を相当なスピードでおりてこられまして、前方から自動車が来たので、それを避けるために急ブレーキをおかけになって、そのときよろめいて車両のそばに転倒された、こういうふうに自衛隊側では調査いたしております。ところで損害の賠償の問題につきましては、自動車の運行にかかる人身に対する補償の問題につきましては、これは、当時の車両の運行は、国家の公権力に基くものとは一応考えられませんので、国家賠償法の関係ではなくて、もしあるとすれば、自動車損害賠償保障法に基く補償責任が国にあるわけであります。ただその当時の事情といたしまして、自衛隊側の自動車が自転車六ぶつかったというふうには、調査ししも出て参りませんでした。その当時社警察署におきましては、一応これを検察庁に送検いたしまして、社検察庁支部におきまして事実を調査いたしました結果、犯罪の容疑がないということで、不起訴になっております。自衛隊側といたしましては、法律に基く損害賠償はできないのじゃないかというような結論になったようであります。ただ何分にも坂道ですれ違いまして、自衛隊の自動車をよけようとしたために急ブレーキをかけようとしたことは事実でありますので、隊員の諸君が、年末の助け合い運動といたしまして募集いたしましたものの中から、五万円をお見舞金として差し上げようじゃないかということで、お見舞金を差し上げたようでございます。
  106. 田中武夫

    田中(武)分科員 私の聞いておるのも、今後告されたような経過です。ただここで問題なのは、先ほど申しましたように、だれも見ていなかったということ、本人は人事不省であった。しかもその人事不省がさめて後も、二、三カ月は取り調べることができないような重態であった、その間にいろいろな調査も進められた。ここで私そのことを問題にしようとしているのじゃないのです。そういう事実であったということです。そのとき、私は自衛隊の方に聞いたのですが、今自動車損害賠償保障法の適用云々、こういうことがあったですね。自衛隊の事故には、自動車損害賠償保障法の適用はない、国家賠償法でやられるのだ、こういうことであったわけです。それで国家賠償法第一条によると、「故意又は重大な過失」云々こういうことになっておるわけです。もちろん本人が故意でやったということは言わないと思います。そうすると、客観的な情勢から、重大な過失があったかどうかということを見ることになると思うのです。そのときに、一方的に調査が進められる、あるいは警察の方の捜査が進められるということになれば、重大な過失があったかどうかということの判定はむずかしいと思う。一面、これは民法上の問題として、近代的な大工場とか、こういった複雑な経済機構のもとにあっては、重大な過失または故意に基かない場合でも賠償しなければならないという、いわゆる無過失責任論も出てくると思う。今日何十台かの自動車を連ねて通っておる自衛隊が、たまたま事故を起すというときには、重大な過失もしくは故意でなくても、往々にして事故があり得ると思う。そういうような場合には、どういうふうにお考えになっておるか。いわゆる無過失責任といいますか、こういうような点についても、ある程度の責任を感じ、賠償するということがなければ、昔の軍隊の切り捨てごめんのような結果と同じことが起きるのじゃないか、こういうふうに思うのです。
  107. 北島武雄

    ○北島政府委員 何らかの関係において自衛隊と関係があって、その点において事故があった場合において、自衛隊としてはできるだけ補償はいたしたいつもりでございますが、何分にもやはり法規の命ずるところによって予算は執行しなければならぬわけでございますので、現在法規で規定されております、たとえば損害賠償については、民法第七百十五条、あるいは国家賠償法一条、二条、あるいは自動車損害賠償保障法等の規定に基かないと、自衛隊といたしましては、これを賠償するということはどうもいたしかねるのでございます。
  108. 田中武夫

    田中(武)分科員 自動車損害賠償保障法というのですか、これは自衛隊の事故については適用がないのだというようなことを当時言っておったのですが、それはどうなんです。国家賠償法によってやられるので、そういう規定がないので出さないのだというのですか。
  109. 北島武雄

    ○北島政府委員 自動車損害賠償保障法の適用はございます。ただ国につきましては、保険はかけないだけの話でございまして、自動車損害賠償保障法の責任はあるわけでございます。
  110. 田中武夫

    田中(武)分科員 そのときにちょっと私考えたのですが、警察の意見も、これをかりに、民間の場合に同じ事故があったとしたらどうか、こう署長に聞いた場合、これは今の保障法の適用はあるでしょう、こういう話であった。そうすると、事が自衛隊だった場合、いわゆる国家機関であった場合にはその適用がない。そういうことなら、災害を受けた方は、相手が民間であるのと、国家機関であるのとによって補償が変ってくるという結果になるのですが、この点どうでしょう。それから当時私会いました法務課長の話では、ともかく法律に規定がない、あるいは予算関係上、事情はよくわかるがどうにもできないのだ、こういうことを漏らしておる。できますなら、ば、法の改正をしてもらうならば、われわれとしても仕事がしやすいのだ、こういうようなことも言っておりました、が、今言われたように、民法あるいは国家賠償法の故意または百重大な過失、これ以外には、絶対にどういう事故が起ろうとも補償の義務はないのだ、責任は負わないの、た、こういうようにあくまでお考えになるのでしょうか。たとえば昨年の十一月に結ばれたアメリカと日本との特殊核物質に関する協定、あれによると、重大なる過失及び故意以外の場合にも責任を負うような規定がはっきり・とうたわれております。また現在の民法の通説としても、いわゆる無過失責任ということ、今まで故意または重大なる過失以外には賠償責任はないのだということであるならば、この複雑な経済機構の中にあって、いろいろと一般の人の生命財産を守るためには法は不備であるということから、いわゆる現在無過失責任責任なくして賠償責任があるということは、民法上の通説になっておると思う。先ほど申しましたように、何十台の自動車を連ねて演習をやっておられるのか、示威運動をやっておられるのか知りませんが、どんどん通っておられます。われわれもよくそれを目撃しますが、ああいうときに、たまたま一台か二台の自動車が来た場合に、これは自衛隊側の方にのみあるいは重大な過失がなくても、一方は驚いたといいますか、あるいは面くらって、たまたま接触して事故を起すということもあろうと思う。こういう点については、当然責任を感ずべきじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  111. 北島武雄

    ○北島政府委員 なかなかむずかしい問題でございまして、お説の通りに、無過失損害賠償責任という範囲は次第に大きくなりつつあります。ただ法的に考えましても、駐留軍が与えた損失に対しましては、これは一種の無過失損害賠償責任かと思われるものも法規にはございます。それから自衛隊法百五条で、訓練のために漁船の操業の制限または禁止をする、こういう場合に、適法な行為でも損失の補償をする、こういう規定があるわけであります。ただ一般的に、無過失であっても損害賠償をするという法理論はまだ確立されていないかと私は存ずるのであります。現在の法規のもとにおきましては、ただいま御指摘のありました事故については、これはどうも無過失損害賠償責任として、自衛隊で正式に補償するというところまではちょっといかないのではないか、こういうように考えておるわけであります。
  112. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは、一般の民間の起した事故と、自衛隊の起した自動車事故、これは全然補償関係において、は差別はない、こういうようにおっしゃられるわけですか。
  113. 北島武雄

    ○北島政府委員 自動車の運行によって人身に傷害を与えた、こういう場合につきましては、両者ひとしくともに損害を受けた方は補てんを受けるわけです。ただ一般の民間の場合におきましては、これは保険制度による。国の場合におきましては、保険によりませんで国庫の歳出による、こういうことになるのであります。ただいま御指摘のありましたような事故につきましても、自動車の運行によって相手方が損失を受けたということでなければ、保険としても支払えない問題であろうかと存じます。
  114. 田中武夫

    田中(武)分科員 もう一応話がついたことですから、この問題について、私は何も申し上げておるわけじゃないのですが、ただ私が不審に思うのは、そのときたまたま警察関係の人が、同じような状態で民間の場合はどうか、いやこれは適用はあります、こう答えたことと、もう一つは、いわゆる助け合い運動か何かで隊員が持ち寄った金によって、ともかくその問題を示談という格好で片づけたという点、この点に何らか割り切れない感じを持つわけです。  もう一つ、そのときにいろいろと話し合いました第三管区の法務課長さんだったですか、この人の話では、いろいろとこんな問題があるんだが、法律に縛られておるために気の毒な状態である、何とかしてあげたいのだができないというようなことを仰せられておったので、若干この点に触れてみたわけです。話題をかえたいと思うのですが、それで同じような損害を与えた場合、それは公務に基かないが、一面こちから見た場合は公務であると思われる場合、こういうような場合にはいかがでしょうか。
  115. 北島武雄

    ○北島政府委員 自動車損害賠償保障法に基く補償の場合につ・きましては、職務執行中であろうとなかろうと、とにかく国は責任を負わなければならぬことになっております。ただ、これが国家賠償法になりますと、公権力の行使に当って、故意または過失によって損害を与えたということでなければならぬということになっております。
  116. 田中武夫

    田中(武)分科員 たとえば民事の場合、表見代理といいますか、代理人であるとこちらが思ったが、実際の代理人でなかった場合、受けた損害はその本人にというようなあれがありますね。それと同じように、被害を受けた側から見れば、自衛隊員であるということを信用して、制服制帽を信用したために起きた事故、ところが、それが実際は公務執行でなく、あるいはそれが一つの犯罪であったかもわからなにそういうよう場合にはいかがでしょうか。たとえば二月十日ですか、北海道の千歳町で、自衛隊員がロケット弾か何かを三発か売りにきて事故を起して、その古物商がけがをした、こういうような事件があったのですが、古物商の方は、自衛隊の車に乗って自衛隊の制服制帽をつけて持ってきた、こういうことによって、自衛隊である、あるいは自衛隊員であるということで信用して何か取引をした。そのときにたまたま事故が起きた。こういうようなことによって起きた損害はどういうことになりますか。
  117. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま例示されました事件だけについて考えますと、この場合は、民法七百十五条でいけるかと申しますと、この仕事の執行に当って商人に損害を与えたのではございませんし、使用者であるところの国は、損害賠償責任なしと考えます。いわんや、これは公権力の行使に当ってのできごとではございませんので、国家賠償法の適用もない、こういうふうに考えております。
  118. 田中武夫

    田中(武)分科員 今砲弾売りについての話題を出しましたので、これに関連してお伺いしたいのですが、ああいうふうに砲弾を売りにいくということは、しょっちゅうやっているんですか。あれは、合法的に持ち出して売りにいったものか、非合法的に持ち出して売りにいったものであるか。もしそれを合法的に持ち出し、たとえばスクラップを処分するというようなときには、その入金はどういうふうに処理されているのか。予算面ではどういうような項目で処理するのですか。
  119. 北島武雄

    ○北島政府委員 国が廃品を処分いたしました場合においては、雑収入の雑入へ入ることになっております。そこで、ただいまちょっとお話がございましたように、かりにあとの廃品を処理する任務を負わされまして、その任務の遂行の途中においてもし故意または過失によって損害を与えたということになりますと、あるいは民法第七百十五条の適用があろうかと考えております。
  120. 田中武夫

    田中(武)分科員 京都の福知山の近くに長田野という演習地がございますが、あの付近では、自衛隊員の野荒しといいますか、農作物を荒らされて困るということをちょいちょい聞くのですか、そういうような問題についても——これはもちろん個人の行為でしょう。しかし、そういうことで、やはり自衛隊という看板のもとに一般に損害を与えておるような場合があると思うのです。また行軍中に、昔の軍隊なら民家で炊事をしてもらったり、弁当をこしらえてもらったり何かして、そのまま行ってしまった。いわゆる軍隊の食い逃げが行われておったのですが、今日の自衛隊では、そういうような場合はどういうようにしておられますか。行軍中に民家を借りて炊事をするような場合。
  121. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま例示のございました演習中に民家を借りて炊事などをする、こういう場合につきましては演習雑費から借上料、あるいは補償金を出しております。
  122. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは、今の野荒しの問題にしても、たまたま死ぬとかなんとかいった事故なら別ですが、大したことでもないちょっとした事故のようなときには、いわゆる昔の軍隊と比べて、地方の人は純朴ですから、昔の軍隊なら、まあこんなにされても何も言えなかったんだというような気持で、少々無理があっても、泣き寝入りというか、あきらめているという事態がたくさんあるように思うのですが、今一、二あげた例も、そういうことに関連していると思う。先ほどの牛をひいたというようなことでも、結局隊へ持って帰れば、自分が処罰を受けます。だから、われわれが持ち寄った小づかい銭ですが、これで何とかしてくれというようなことで処理したというような例もあるわけです。そこで、自衛隊としては、こういうような場合に対する補償について万全の措置を試しておられる、あるいはそういう態勢ができているとはっきり言えるのですか。
  123. 北島武雄

    ○北島政府委員 いろいろな例示が、ございましたが、自衛隊といたしましては、少くとも公務の執行に当りまして国民の方に損害を与えた場合におきましては、法規に従いまして十分なる補償をいたすつもりでございます。
  124. 田中武夫

    田中(武)分科員 建前は、法律的にはそうなっていると思います。実際の運営において、今言ったようなことによって内分で済ましてくれと頼んで回ったり、あるいはまた聞く方も、軍隊のことを考えて、まあまあというよりなことで済んでいる例も多々あると思うのです。従って、そういうことは十分一つ調査をして、遺憾のないようにやっていただきたいと思います。二月六日に陸上自衛隊の隊員が行軍で二名死んだということについては、これは大きな別の問題として、たとえば昨日も本会議で受田議員から質問がありましたので、そういうことについては問題は別、といたしますが、こういうことで死んだ人に対する遺家族についての補償といいますか、遺族年金、そういうことについてはどういうような処置になりますか。
  125. 北島武雄

    ○北島政府委員 公務の遂行に当りまして隊員が死亡したというような場合につきましては、公務災害補償法に基きまして、遺族に所定の補償を支払うことになっております。詳細につきましては、担当の人事局長からお答え申し上げます。
  126. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいま経理局長が述べましたごとく、国家公務員災害補償法の通用を受けるわけでありまして、それによりまして、遺族補償として千日分、それから葬祭補償として六十日分、そのほかに国家公務員の退職手当暫定措法によります退職手当、さらに公務による場合におきましては、恩給法による遺族年金を受けるということに相なっております。
  127. 田中武夫

    田中(武)分科員 この場合、今おっしゃった法でやるならば、たとえば本人の若干の不注意によって公務死した場合、こういうような場合と同じような扱いになると思いますが、いかがでしよう。
  128. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お尋ねの点につきましては、公務による災害であるかどうかということにつきまして認定をいたすわけでございます。あらゆる事情を考慮いたしまして認定をいたしまして、公務と決定をすれば、今申し上げましたような手続になるということでございます。
  129. 田中武夫

    田中(武)分科員 この問題につきましては、きのうの本会議の答弁においても、長官から若干の説明があったようですがわれわれはあれは、納得できかねる点があるのですが、青竹でなぐったとか、くつでけったとかいうような、隊員の心理を抑圧して強行軍にかり立てて遂に倒れたという、こういう事故と、普通の場合の仕事をしておって倒れたというのと、公務という点においては同じだ、こういうふうにおっしゃるわけですか。
  130. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今申し上げましたのは、隊員に事故がありました場合に、公務によってその事故が生じたのかどうかということを、それぞれ担当の機関において十分に検討いたしました上で、公務かどうかの認定をするということでございます。
  131. 田中武夫

    田中(武)分科員 それではこの場合、もちろんまだ調査中だとか、あるいは調査の結果はということでお逃げになるかと思いますが、これは、内閣委員会等でもっと真相の究明をやられると思いますが、いわれているように、青竹でぶったとか、あるいはくつでもって追い立てたというようなことによって死んだ、これは当然公務死ということになると思う。その場合、こういうことで片方は処置する。それではそういうことをした人——そういうことはなかったと言われると思いますが、その場合に、かりにそういうことをやった上官だとかについては、いわゆる一般の刑法による罰則は受けるのですか、どうでしょうか。
  132. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいまお尋ねになりました事件につきましては、私の方でも目下厳重に、慎重に調査をしておる段階でございまして、結論を申し上げるまでには至らないのでございます。しかし、もしかりに暴行等のことがございますれば、内部における懲戒事犯として処理いたしますことは当然でございますが、一般刑法の適用を免れるものではないと思います。
  133. 田中武夫

    田中(武)分科員 この際、ついでに長官にちょっとお伺いしておきたいのです。きのうの本会議では、この点十分な答弁がなかったのでお伺いいたしますが、今後この真相究明に当りまして、いわゆる隊員の中から、そういう事実があったことに対して証言に立つとか、あるいは参考人として私は申し出る、こういうような、空気もあるようですが、これに対して、そういうことを押えるようなことは、長官としてはなさらないでしょうね。
  134. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 押えるようなことというのは、隊員に対して、出席するなというような指示を与えるという御趣旨でございましょうか。
  135. 田中武夫

    田中(武)分科員 そういう場合もあると思いますが、そういうはっきりしたことでなく、何らか職制を通じて圧迫していく。そういうことは、新聞にも言っていますが、そういう事実があった、私は証言しよう、こういうことに対して、いろいろ職制上の手をもって押えていく、あるいはそのような空気の中にある隊員に対しては、いわゆる職制上の圧迫を加えていく、あるいはそういうことをやれば、将来これに対して圧力を加える、こういうことを私は言っているわけです。
  136. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 そういう考えは毛頭ございません。
  137. 田中武夫

    田中(武)分科員 ちょっと話題を変えたいと思いますが、これもあるいはもうだれかが質問したかもわからぬのですが、誘導弾を持ち込むとか、あるいは要請したとか、こういうようなことがいろいろと論議になっております。これについては、私は賛成するものではないのですが、かりにこれを受け入れた場合、これについていろいろな施設とか関係があると思いますが、そういうものに対する予算は、計上してあるのですか。それとも予算の計上もしていないのに、ああいうものを貸してくれというような要請をせられたのですか。
  138. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 本年度予算には、三億数千万円がスイスのエリコンからこちらへ輸入しますものの研究用の費用として計上してあるはずでございます。最近問題になっております何種類かの最新の兵器につきましては、何分もっと具体的な交渉を要する次第でございまして、現に新聞にはいろいろ出ておりますけれども、はっきりそれではこれを渡そうということはきまっておるわけでもない。そういう詳細なきまりがないときに、ただ概括的な予算を出すことはできません。どれだけの費用がかかるか、いよいよ入ってくるという見通しがはっきりいたしましたならば、予算にも今後計上いたしまして、皆様の御賛成を得るようにわれわれとしても努力いたしたいと考えております。
  139. 田中武夫

    田中(武)分科員 何種類かのいわゆる誘導弾は、日本から貸与を申し出たかのように伝えられております。それからF86ジェット機五十四機、新鋭戦車、これはアメリカから貸与しよう、こういうように伝えられておるわけですが、こういうものを含めて、そういうものを受け入れるについての予算措置、あるいはそれを受け入れた場合に、使用するに足るだけの技術が日本にあるのか、こういう点はいかがでしょうか。
  140. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先方と交渉してみない限り、どういうものが来るかもわかりませんので、予算措置については、先ほど申し上げた通りであります。受け入れ態勢につきましても、もちろん技術者が不十分であるという点もありますけれども、大体日本側がどういうものを研究しようとしておるかを先方も知らなければ、決定もし得ないという関係もありますので、要請いたした次第でございます。ただし、今問題になっておりますのは研究用のものでございまして、それでなしに、飛行機等で直ちにこちらで使用いたしまするものは、特にそうした必要はない。ただ操縦士が必要である、そういう場合には、もちろんその訓練はいたすのでありまして、その準備はできておるわけでございます。技術者の面、あるいはそれを受け入れるための施設というような点につきましては、先ほどから申し上げておりますように、特に最新のものについては、具体的にきまった上さらに詳細を検討する。しかしその準備は、現に昭和二十九年から進めておるというのが実情でございます。
  141. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうしますと、この予算には、それを受け入れるのに対して施設費等は含まれていない、こういうことなんですね。
  142. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 その通りでございます。
  143. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは予算面からするならば、そういうものは受け入れることはできない、こういうことになりますか。
  144. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先ほどから問題になっております種類のものは、研究開発用のものでありますから、さらに開発する施設というようなものは、将来もっと広げるかもしれませんけれども、とりあえずの研究は、そう膨大な費用が要るわけではございませんので、今の施設で研究は直ちに開始できる次第でございます。
  145. 田中武夫

    田中(武)分科員 しかし何種類かの誘導弾だとか、あるいはF86ジェット機五十何機だとか、こういうようなものを受けるならば、これを受けるための施設が必要ではないのですか、それに対する予算がなければ受け入れたってしょうがないのではないですか。
  146. 増原恵吉

    ○増原政府委員 かわりましてお答えをいたしたいと思います。誘導弾関係は、ただいま長官から答えましたように、研究用としてもらいたいということを申し出たわけでございます。これは、初めは二十九年度からいわゆる紙の上の調査から始めたのでございますが、本年度、来年度にわたりましては、スイスからエリコンという誘導弾を買う予算を認められまして、すでに契約を了しております。今年中には実物も入ってくるわけであります。これを、分解なり何なりして研究をする費用は持っておるわけであります。アメリカから、今年度はとうてい来る見込みはありませんが、三十二年度中にいろいろ受け入れ態勢その他が整いまして、向うの了解を得ることができて、若干のものをくれるとなりますれば、これをばらすなり何なりして研究をいたします経費は、現在予定をいたしております経費であるものはできる。十−分なことは、三十三年度にまたお金をいただかなければならないようになりまするが、相当のことはできるということでございます。  それから飛行機の方は、これは向うがくれるということになりますれば、現在はF86のFというのを使っておるということは、御承知の通りであります。これのいわゆる全天候の飛行機の型ということでありまして、これはわが方に受け入れをする用意を三十二年度においては整えることに相なってお−りますので、受け入れてやれるという見込みでありますが、現在のところは、まだ今申されましたF86のDというのは、供与をされるかどうかの見通しはついておらないという状態でございます。  戦車につきましては、これはやはり研究開発用に向うとしてくれるというわけでございます。これはすでに予算をいただいて、二台の戦車を試作して、こちらで今実験中で、ございます。これと関連をして研究の資料に供するということでありまして、十分受け入れる用意を持っておるわけでございます。
  147. 田中武夫

    田中(武)分科員 誘導弾については、これをばらして研究するということですが、そうすると、研究費として予算の中に入っているわけですか。
  148. 増原恵吉

    ○増原政府委員 向うからもらうべきものを、そのものずばりの研究費としての計算は、長官が申しましたように、三十二年度には実はしてございません。しかしエリコンを買い、これを研究開発するための経費は、三十二年度にお願いをしてある、それをもって  一部は行い得るというふうに申し上げたわけでございます。そのものずばりは計上をいたしておらないわけでございます。
  149. 松本瀧藏

  150. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 予算分科会でありますので、分科会らしい質問をあとでいたしたいのでありますけれども、なかなか政党も忙しくなりますと、防衛長官に直接お目にかかりまして意見をかわす機会がない。幸いにしまして、今日予算分科会の席上、防衛計画についてあなたのお考えを聞いてみたいと思うのであります。決して意地悪い質問などはいたしませんから、率直にお答えを願いたいと思います。  これは少し大きい問題であります。大きい問題というのは、先般予算委員会の第四回目の会合で今澄委員から、国防計画ないしは最近における新兵器の輸入等につきましてかなり精細な質問がありました。速記録を拝見しまして、最近における防衛上の諸問題について、自衛軍創設に対して反対の立場にある社会党側から、きわめて精細にやられたことと思うのであります。私は基本的な立場が違いますから、最近世論調査にも現われておるように、自衛軍は必要である、本格的な再軍備には国民は賛成しておらぬ——まあ、将来どういう傾向になっていくかは知りませんが、その世論の大勢と同じ考え方に立って私は質問をしようと思っておるのでございます。  そこで第一に伺いたいことは、一昨年杉原防衛長官の辞職問題まで起して波乱重畳をきわめた国防会議は、昨年の国会で成立をしたわけです。従って自由民主党としては、党の運命をかけて作ったる国防会議がその後いかなる進捗を示しておるかということについては、まじめな党員としては関心を持たざるを得ない。その後一体どのくらい開かれたものか、承わっておきたいと思うのであります。
  151. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 ただいま川崎さんから自民党の立場からのお話が、ございましたが、私ども大体今世論調査の示すと同じような考え方を持っておるものでございますので、その趣旨の答弁をいたしたつもりでございます。自衛力を持つということは、これは最小の防衛の措置をするということは、これは憲法にも許されたところでありますが、それが攻撃的な性格のものに走るというようなことのないように、そしてその限度においてはまだまだわれわれのすべきことがたくさんあるという趣旨を申し述べたのでございます。この意味におきまして、せっかく皆様の御努力によってできました国防会議は、日本の防衛政策を確立いたします上に重要な機関でございますので、これは今後十分活用されていかなければならないと考えております。これまでのところ二回開催せられたのでありますが、私が就任いたしましてからはまだ開催の運びに至っておりません。何分あの法律ができまして以来、内閣もかわりましたりいろいろの関係で、まだ国防の大綱についてのはっきりとした結論は国防会議の方にも出ておりませんので、とりあえず三十二年度予算については国防会議にも諮ったのでありますが、今後さらにもっと国防の大方針について国防会議の方で検討していただかなければならぬと思いますので、せっかくそうしたことを準備いたしておる次第であります。
  152. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 あなたが防衛長官になってからは、まだ一回も開かれませんね。
  153. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 私、就任いたしますと、もう国会が始まりまして、毎日引っぱり出されておるような状況でありますので、まだ一度も開いておりません。
  154. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこで、これは内閣総理大臣は今御病気中でございますけれども、国防のことはきわめて重大であります。ことに誘導弾の問題を惹起しておる折柄ですから一国会が忙しいといってもこれらの問題に対処して、ことにわれわれがこれから申し上げる長期の計画に関連しても、やはりお開きになった方がいいのじゃないかということを御要望申し上げておきます。これはイニシアチブはだれがとるかということになれば、やはり小滝さんがとる以外にはだれもとり手がなかろうというふうに感ずるのでありますから、別にこれ以上は御質問はいたしませんけれども、ぜひ国防会議を開いて、今後の防衛計画ないしは当面の重大問題というものに対処する必要があるというふうに、私はまず感ずるのであります。  次にお伺いしたい点は、三年前には木村防衛庁長官予算委員会の花形であった。なぜ花形であったかというと、経済六カ年計画ないしは五カ年計画というものに付随をして、防衛六カ年計画ないしは五カ年計画というものができなければ、日本予算あるいは財政規模というものも見当がつかぬのだというので、熾烈な論争が国会で行われたのであります。その後杉原長官のときもそうであった。しかるに昨年来、やや防衛問題に対するまじめな論議というものが国会から影をひそめてきたのは、もとよりジュネーヴ会議以来、世界情勢がやや緩和した傾向にもよることでありましょう。ないしは昨年の参議院選挙において自民党が三分の二を制することができなかったごとから、当分自衛軍の創設すら困難ではないか。今日の自衛隊を実際上は自衛軍と認定してもよいとは私も思うけれども、しかし軍という言葉を使うこと自身、大衆の中において、とにかく憲法との関係もあるから、三分の二以上を占めない以上は、前進ができないということが支配的な空気になってきて、防衛問題は一時財政はもとより政治中心問題から去ったかのごとき感を与えておった。しかし私はそうは思わない。やはり自主的防衛の必要というものは、昨年ヨーロッパで起ったハンガリー事件のとうとい教訓がわれわれに教えておる通りであって、軍備を持たざるものがいかに他国の侵略のままじゅうりんをされるかという悲劇的なシーンがわれわれの前に展開してきたわけであります。従って最近国内における世論も、自衛軍というものに対しては、これはあくまでも持つべきであるということの世論が大勢を制するに至って、七一%という高い数字が出てきたと私は考える。そういう意味合いを持つと、防衛計画というものは、平時においても常に次の段階の戦略体制を考えておるアメリカの計画に深い連関を持たなければなりませんけれども、いつもアメリカ側から刺激的な要素を注入されて騒ぐような態勢ではいかぬと私は思う。むしろ日本の自主的な防衛は、どの線に限度を置いて今日日本を守り得るのかということに対する防衛庁長官自身の計画が第一のプランであって、アメリカの国防省の極東関係の係官の頭の中に描いておる防衛思想というものが最初の白紙の上に載って、それが輸入をされて、その強制によって進められるものであってはならぬ。これは規模の問題その他についてはいろいろ議論がありますけれども、とにかく自主的な防衛体制、国力に相応しての、経済情勢に即応しての防衛計画というものをあなたが立てなければいかぬ。防衛庁長官は何べんもかわっておって、実際にそういう準備もないかもしれませんけれども、今後はあなたが立てなければならぬ。また常に防衛庁長官がかわっても、次長は六代も五代もかわらぬ。増原次長こそは日本の防衛に対する責任者の一人であろうと思っておるのであります。従って自主的な防衛計画を今後立てていくのかどうかということについてのあなたの基本的な信念をまず伺ってみたいと思う。
  155. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 申し上げるまでもなく、今回崎さんがおっしゃいましたような点は私も全く同感でありまして、その点はこれまでも強調して参ったつもりでございます。共同の目的を持っております以上、もちろん共同防衛の立場に立つ米国との連絡も必要でありましょうが、日本日本の立場で考えなければならぬ。本年度予算をごらんになりましても、その片りんが賢明な川崎さんにはうかがわれることだろうと思いますが、お説の通り、私どもが自分の国の守りをする以上、まずわれわれが国を守らなかったならば、世界の情勢いかんによっては友邦の協力というものもどれだけ期待ができるかわからないという事態も起らないとも限らない。しかも日本の近辺を見ますと、いろいろかけ声はありましても、決して日本海の向うにある飛行機の数が減ったという情報もなければ、非常な軍縮が行われたというわけでもない。しかもややともすれば日本で軽視しがちであるところの韓国であるとか、あるいは台湾あたりでも、一応の守りをするだけの実力を持っておりますから、こうした情勢を考えまして日本としての自主的な体制を立てていかなければならぬ。それは実は現在の状況では不満足であり、またこれが計画もいろいろ立てておられたようでありますが、日本の実力に応じた防衛と申しましても、今お話しになりました経済六カ年計画、これも実は実際の経済規模が拡大しておるというような事情もございますので、これらをよく勘案いたしまして、これまでの計画も立て直さなければならない、一応持っておりました試案というものを立て直さなければならないと私は考えますので、今の御激励の言葉通り、増原君のようなヴェテランもおりますので、私はよく協力いたしましてその趣旨を徹底さしていきたいと考えております。
  156. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 基本方針につきましての御信念は確かに承わりました。そこでこれは少し分析をして御質問を申し上げるわけですが、今防衛庁としては、もとより安保条約というものは一時的なものだと考えておられると思うのです。安保条約を今改廃するかどうかということについては、先般岸外務大臣が答弁された通り、目下その考えはない。しかし将来日本からアメリカ軍を撤退させる、あるいは日本の自主防衛というものを完成する、そういうことについての防衛庁としての考え方は、一体どの辺にめどを置いておるものか、それを承わりたい。
  157. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 日本側から見て安保条約にいろいろ不満足な点があることは御指摘の通りでありまして、この点は国際情勢並びに日本の実力の増進というものとにらみ合せまして、もっと日本の望ましい形のものにしなければならないと考えております。しかしながら今日本がみづから守るというような言葉をおっしゃいましたが、われわれはもちろん一時的には守らなければならないが、何としても集団安全保障の機構というものが必要でありまして、近代戦と申しますか、この兵器の発達した際、こうした情勢下において日本だけで守れるわけではありませんから、国連がそうした面に実力を持つというようなときがこない限りは、やはり日本と同じ立場にある国との連係関係というものを考えなければならぬ。しかしその関係を調整する時期はいつであるかということは、これはもちろん先ほど御指摘の国防会議にもはからなければならない問題でありまして、今後それに対して防衛庁としていろいろ検討していかなければならぬ。単に国防だけをシングル・アウトとして考えるというようなことでなくして、防衛産業をどうするか、あるいは東南アジアとの関係考えて、単なる自衛隊の規模でなしに、もっと大きな意味合いにおいて広義の国防というものについての計画を十分樹立いたしまして、同時に今お話のアメリカとの関係というものに慎重な態度で臨みたいと思うわけでありまして、それではい  つごろやるかということは明言するだけの自信を今私は持っておらない次第でありまして、その点を御了承を願います。
  158. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 集団安全保障機構の必要なことは私も同感であります。日本だけでは守り切れるものではないと思います。しかしそのことは、日本に国際連合の軍隊の形でおるアメリカ軍にいつまでもおってくれということが日本人の願いであるということではないと私は思う。従って日本の国内からアメリカの軍隊が撤退をするということは、日本の陸海空の力というものがふえてきて、とりあえず緊急不正なる侵入に対しては日本を守り得るという状態に立ち至ったときだろうと思う。そういうめどはどのくらいに置いておるか、こういうことであります。
  159. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 御承知のように、これまで防衛庁としては一応防衛五カ年計画の試案も持っておって、それは三十五年に終了するということになっております。しかしそれでもって直ちに日本だけの陸海空の部隊で平時の守りを全うし得るかどうかわからない。しかし同時にアメリカの安保条約の基礎における駐留というものは望ましいものではないのであって、これはやはりその基礎を変えまして、あるいはイギリスとか、あるいは近くでいえば韓国もその一つでありますが、そういう基礎の上において、もし日本の自衛力だけではやれないところがあれば、そういう部隊の駐留というものも認めなければならない。私はその意味において今の御発言は、最終的にただ日本の陸海空で日本の自衛力を一応満たしていくという段階にまでは、まだ早急にいけないのではないかということ憂えております。しかし、今後の情勢いかんにもよりますけれども先ほど申しましたような計画を早く進めていけば、それだけ早くそうしたわれわれの希望する改訂の段階にも達すると思いますので、一日も早くそうした事態となるように今後努力していきたいと考えております。
  160. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 私もアメリカの、今日日本に駐留しておる陸海空の兵力が全部引き揚げるのにはかなりの時間がかかると思っておる。あなたは割合のんきな御答弁をしておるけれども、しかしアメリカの方でもこの問題はまじめに考え出してきておる証拠があると思うのです。昨年、一昨年にわたってアメリカの在日陸軍兵力というものは漸次縮減してきておる。先般今澄君がここで出した問題は、アメリカの騎兵師団が引き揚げるのではないかということ、それに伴って今度アメリカ側は原子力部隊であるとかあるいは新しい兵器を日本の自衛軍に貸して、これに肩がわりをさせるという形で質問を出しましたから、その方にばかり集中されておったが、私はアメリカの陸軍が撤退をする時期は非常に早いのではないかと思う。騎兵師団と、う名前で代表されておるけれども、実はアメリカの陸軍です。アメリカの陸軍をまず撤退せしめようというのが実は私の論なんです。というのは、今日国内においていろいろな摩擦があり、あるいは刺激的な行為があるというのは、主として各地にばらまかれておる陸軍との衝突、アメリカの空軍が撤退するという時期は一番おそいと思うけれども、これはまずあなたに設問しますけれども、一体アメリカの軍隊がどういう種類のものから引き揚げていくかということもお含みを願って、今年の会計年度においてアメリカ陸軍は撤退するのじゃなかろうか、むしろ撤退を要求してしかるべきではないかというふうに私は思っておるのです。そういうことについて、私よりもあなたの方がニュースを正確にキャッチをせられておるから、まず第一段階としてアメリカの陸軍が撤退をするということについての可能性はどうですか。
  161. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 第一騎兵師団のことがときどき問題になりますが、これまでもすでに漸減いたしております。今後もさらに減っていくだろうと思いますけれども何分陸におきましてもいろいろ特殊な部隊もありますので、本年中に全部撤退するというようなことは期待し得ないのではなかろうか。もちろんこれはわれわれの方の努力いかんにもよりますけれども、向うはなるほど一日も早く撤退したい、日本に来ていていろいろの問題を起して、かえって反米的な気持を引き起すもとを作るというようなことは好ましくないし、あのアメリカの軍事予算から見ましても、でき得べくんばそういたしたいという気持は、平素から米軍側も申し述べておりますけれども、本年全部のものが撤退するということは、少し期待が尚早ではなかろうかと考えております。
  162. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それはアメリカの陸軍にも陸軍として付属しておる特殊な機構があると思うのです、しかしこれは海軍側に転属さしてもしかるべきものであるし、あるいは空軍と密接な関係のあるものに変えてもいいのです。私は小滝さんが今反米感情と言われたけれども、むしろアメリカの兵隊が長く日本におることが、日本人をして自主的防衛の念もわかせないし、同時にいつまでも隷属国家である——軍備を他国の手にゆだねておいて、そうして経済だけがよくなったからといって、それで私は完全な独立国家と申すことはできないと思う。私はむしろこの際ヤンキー・ゴー・ホームなどということは保守党側がやるべきことだと思う。決して社会党が言うものではない、社会党はヤンキー・ゴー・ホームといっても防衛の実も示さないでそういうことを言っておるのですから、これくらい矛盾しておることはない。だから彼らは本心から叫ぶことはできない。ハンガリーにおける最近の事例を見ても、ほんとうにソビエト軍を撤退させたいというのは、彼らもまた自主的防衛の力を持ちたいという二つの要求がかち合ってこそ非常に尊敬すべき事態だと私は思っておるのです。そういう点にしてみれば自衛力の充実計画というものと並行して、まず第一段階ではアメリカ陸軍は本年度中に、アメリカ陸軍付随しておって日本のためにどうしても必要なるものは他の軍に転属をさせても、アメリカのアーミーだけは引き揚げる、こういう交渉がむしろ自主的防衛の確立をしようというあなたの線から出てこなければならぬ計画ではないかというように感ずるのです。これは非常に熱を入れて申し上げるけれども、そういう考え方についてあなたはどうでしょう。
  163. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 米国としては、要請しなくても、日本でこれだけで十分であるという体制を整えれば喜んで出ていくわけでありますから、私はそれを裏から申しまして、日本の方の国力に応じたところの自衛力の漸増という方面を実行することによって、アメリカの少くとも陸軍が全部撤退するということを期待いたしたいと考えております。
  164. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 増原君でけっこうですが、今の陸上自衛隊の兵力というものはきっちり幾らですか。十七万千九百十七人……。
  165. 増原恵吉

    ○増原政府委員 いわゆるせびろの者を入れてそういう数ですが、若干の欠員がございます。
  166. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それで日本の自衛をするに足るところの陸上自衛兵力というものは、十八万五千でいいというのが今までの政府の見解ですか。増原政府委員 一応従来防衛庁で立てております試案というものは、陸上自衛隊は制服が十八万、若干のせびろ、私服が入ります。これで十単位、六つの管区隊と四つの混成団というものを作る、これで当面一応の陸上の備えをつけたいというのが一応の試案で一ございます。
  167. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そうすると全体として幾らですか。
  168. 増原恵吉

    ○増原政府委員 制服十八万に私服は明確ではありません。約二万程度合せて二十万ちょっと欠けると思います。
  169. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そうすると今割合いいところまで来ていますね。
  170. 増原恵吉

    ○増原政府委員 いいところに来ています。
  171. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 だから私はアメリカ陸軍の撤退というのは向うと意見が一致すれば可能だと思う。それが意見が一致をしないで、向うは三十何万出せ、あるいは二十三万出せというから問題になっているのと違いますか。
  172. 増原恵吉

    ○増原政府委員 現在防衛庁の試案として考えております制服十八万に若干の私服と、十単位のものを作るということは、日本として自主的に考えまして、一応陸の守り、海室を一緒に考え、また必要に応じ共同防衛の立場で米国その他の援助を得るという前提でありますけれども、一応の陸の備えをなし得るものというふうに考えておるわけであります。しかし先ほど長官からお答えしましたように、どこで積極的に、特に米陸軍の撤退を要求するかということは、いろいろな状況を考え合せる必要がございまして、これは最高のところで慎重にお考えの上で決定を願わなければならぬと思います。
  173. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこで、野党ではないのですからそう追及もしませんけれども、この間今澄君の出した問題は相当重要な要素を含んでおると思うのです。つまりアメリカでも暴露記事で非常に有名なヘンスレーという記者、それからもう一人何とかいう非常に有名な記者がおりますけれども、これが抜いたものとして、一月二十三日にアメリカ国防省と記者団が会見をして、陸軍は二個師団の削減をする、そのかわりに全世界六カ所に原子力の支援部隊を設けて、部隊の再編化、機動化というものを国防省がやることをきめた。それに伴ってどういう再編をするかといえば、現在ドイツに五個師団、韓国に二個師団、日本に陸軍一個師団、そういう編成であるけれども、このうちどこを引き抜こうかということに対して、アメリカ国内でもいろいろ論議をした結果、韓国、西ドイツから今軍隊を引き揚げるということは適当でないという結論から、どうしても日本の騎兵第一師団というものをアメリカ側としては引き揚げさせたいということになって、そのかわりには原子力部隊を派遣するとかなんとかいうこともあるのですけれども、それは岸さんが受け入れないと言ったのだから受け入れない。そうすると向うが騎兵第一師団を引き揚げさせたいという気持を持っておるときに、これと符節を合わすような措置日本としてはむしろ自主的に進めていくということが当面の課題だと思うのです。それができなかったのは、今度あるいはもう一万名増員するという計画が実現できなくて、今日の日本の経済安定、国民生活水準の引き上げということの方が重大だ、私もまたそう思うのですけれども、そういうことでなったのかもしれないが、その間の事情はよくわからぬけれども、とにかくアメリカ陸軍の撤退ということが一つの大きな日程に上ってきたというふうに私は感じておるのです。こういう角度の質問というものは今日まで出ておりませんから特に取り上げたわけで、騎兵第一師団の引き揚げということは、つまり占領以来その主力であったアメリカ陸軍がついに日本から撤退をするということで、しこうして日本に対する緊急不正な侵入があった場合には、もちろん攻めてくるのは海と空から攻めてくるわけですから、海と空の部面はアメリカが受け持つ、国内治安及びかりに沿岸にたどりついたときには、一応日本の自衛隊が当面の侵略を防ぐということに計画が当然変ってくると思うし、そういうものとやはり符節を合せるような計画が必要であると思う。兵員が一万名足らなければ、それに伴って兵器の充実ないしは設備の改善ということで補っていく政策をやってでも、早くアメリカ軍を撤退させるということが、独立の性格を持ち得る原因だと思っておるのです。これはすでに増原君などは常に勉強をされていることで、私がここで言っていることもおかしいように感ぜられるかもしれぬ、しれないけれども、こういう角度の質問がないものですから、ことに私は防衛庁長官に今後自主的防衛の1決して経済を圧迫するような防衛計画を拡張してはならぬけれども、着実に前進をして防衛の限界線というものをきめてもらいたいということを御要望することにとどめて質問には入りません。  そこで先ほどちょっと聞いておって非常に奇妙に思ったのは、新兵器の注文をしておいて、それに対する設備の費用というものは考えていない、これは少しおかしいのじゃないでしょうか。さっき田中君はあと聞かなかったけれども、どういうものだろう、もう少し明白に答えて下さい。
  174. 増原恵吉

    ○増原政府委員 新兵器といういわゆる誘導弾の観念で申しますと、二十九年度から始めましたが、三十一年度、三十二年度になりますと相当の経費を持ち、すではスイスのエリコンという誘導弾が到着をするという段階でありまして、これはエリコンが来ない前から始めておるわけですが、自分だけでやるのではやはりテンポがおそい、いいものができにくいということでエリコンを買ってもらうことにし、さらにそれ以上の材料を得るために米国に要請をしたということでありますので、これを三十二年度中に米国から受け入れることが可能になれば、これをばらしていろいろ機構を調べ、わが方の研究のせめて有用な資料にするという意味の利用はできるわけです。それでアメリカから来るナイキなり何なりそのものを研究するための予算という形では、すなわちそのものずばりとしては予算を組んでいませんが、誘導弾を研究する予算は組んである。そのもらったものを有用な資料として活用することは可能であるというふうに申し上げたわけでございます。
  175. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 えらく説明がうまくできていますけれども、来た場合にやはり相当な施設が要るわけでしょう。それを備え付けるのには、それをまた有効に射撃してそしてテストをするためには、かなりな施設が要るわけじゃないですか。それは今度のあなたの全体の研究費で足りますか。
  176. 増原恵吉

    ○増原政府委員 たとえばナイキをきちっと備え付けるというためには相当と申しますか、若干の経費を要します。しかしもらった最初は、単にそれを格納して置いておくという程度であれば特別の経費は要らない、最初の段階はこれをばらして研究の資料にする。今から受け入れの話をいろいろ進めましても、三カ月や四カ月ではなかなか来るということは期待できません。先ほど長官も申しましたように、まだはっきりと上げましょうと言うてきておる段階ではないのでありまして、日本の方で秘密を防護する措置などが適当である、あるいはこれをどういうふうに研究し、どういう形で利用していくかという計画が適当なものができれば好意的に考えましょうというふうな段階でございます。これが参りますれば、第一の段階としてこれをいろいろ分解なり何なりして、その機能なり操作なりを勉強するということで、それには大した施設なり経費はかからない。しかし今年度中に受け入れることが可能になれば、三十三年度くらいになりますと、やはり相当の経費をお願いをして、これをきちっと備え付けて、さらにいろいろ進んだ研究をやる、そのためには経費をお願いするということに当然なってくると思います。
  177. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 まだ聞きたい点もあるのだけれどもそのくらいでやめておきます。  もう二つばかり伺いたい点は、防衛庁の経費というものはいつも繰り越しがあるわけです。これはまあ前の陸軍、海軍の性格とも似ているわけですから、多少の繰り越しがあるということは認めざを得ないと思うのです。弁解の基礎もいろいろ洗ってみても、私それを大半は認めていいのじゃないかというふうに考えておるのです。しかしことしからこれがだんだん締められて、池田大蔵大臣の方針もあったでしょう、来年にはどうしてもこの繰り越しがないようにしたいということで、予算の方針も組み込まれておると思うけれども、それで十分やっていけるものかどうか、それを一つ確信を持って答えてもらいたいと思います。
  178. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 御指摘のようにこれまで相当額の、二百億幾らの繰越金が出まして、われわれの方といたしましては非常に残念に思いまして、こういうことのないようにしたいという考えから、今年度予算は御通覧下さいますとわかりますように、従来繰り越しの非常に多かったアイテムを国庫債務負担行為の方へ回しております。器材費あるいは艦船建造費あるいは施設整備費というようなものは、なかなか民間の業者と話しても話し合いがつかないとか、あるいはまた設計が思ったよりおくれたとか、テストをしてみたら多少変更もしなければならぬというようなことで、どうも決算を見たときに工合が悪い。そこで今年は今申しました三つのアイテムで七十数億を国庫債務負担行為の方へ回しております。そうしてさらにまた必ずできるジェット機の製造費もその中へ含めますると、百二十数億というものが国庫債務負担行為の方に回されたという格好になっておりますので、必要なものはその方面でもってやっていって、そうしていわゆる繰り越しというようなものはこれまでよりもずっと少くしよう。そうしてその仕組みになっておりますので、本年度からは従来に比べますればよほど改善するだろうと考えます。何分ものの性質上繰り越しが他の省に比べまして多く出るだろうということは、残念ながら認めざるを得ないのでありますけれども、その点においては支障のないようにいたしたいと考えております。
  179. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 防衛庁の経理並びに防衛庁予算の使い方というものについては、主として従来の決算委員会で、また会計検査院等で指摘をするところがあって、国民には非常にでたらめな予算の使い方だという印象しか残っておらぬ。それを一掃するには、新防衛庁長官がよほど綱紀官紀を振粛して、石橋内閣の第二の綱領というか、宣言の通りにやるべき義務があると思うのです。その一番履行しなければならぬのが防衛庁じゃないかとさえいわれておるのでありますから、新防衛庁長官も、また高橋政務次官も、公私の生活にきわめて厳格な人であるから、ぜひともそのことは達していただきたい。私は特に要望しておきたいと思うのです。  経理局長来ておられますが、昨年一年で、今数字を出せといっても困難かもしれませんけれども、民間商人と経理官との調達に関する不祥事件というものは、かなり起っておるように聞いておるのです。これを部内ではどういうふうに処理をされておるか。
  180. 北島武雄

    ○北島政府委員 人事担当の人事局長から……。
  181. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 御承知のごとく、昨年の春に中古ニンジンの問題で国会で非常に防衛庁の調達が論議されました。当時の船田長官が全指揮下に対して厳重な注意を発せられたのであります。ただその後におきましても若干の、今正確な数字は記憶しておりませんけれども、業者との関係におきまして涜職のような事件が若干あったと思います。これらにつきましてはそれぞれ厳重なる処分をいたしておりまして、今後かかることのないようにとくに注意はいたしておるつもりであります。
  182. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 私は実はそういう事件の最近の事実もだいぶ知っておるのですが、今のお言葉を信じてあまりここで申し上げない。ただ非常に重大な問題もあるようです。そこで私が見聞した一つの材料を申し上げると、具体的な材料ではないですよ。材料ではないが、こういう傾向があるのですね。各省の役人もずいぶん出入りの商人あるいは業者から陳情を受けて、今晩席を設けたから来てくれということだと、これは上役の関係あるいは政党の有力な代議士の関係などになるとやむを得ず行ってみるようです。しかし大蔵省であるとか、あるいはその他の役所では、非常に厳粛に、最初の陳情などのごときはすぐとっかかるなということが、一つの不文律みたいになっていて、よほど信用のある相手でないとそういう席へ行かない。これは全然行かないにこしたことはないと私は思うのです。ところがわれわれが最近だいぶ洗ってみると、防衛庁の役人は二つ返事で行くそうだ。これは相当的確な材料を持っております。ずっとおとといから洗ってみた。驚いたけれども、与党の委員であるからあまり追及しない。追及しないが、これは一つ防衛庁長官、この席上を通じて厳に申し上げておきますから、あなたが部下にそのことを達して下さい。それは政党に出入りするいろいろな連中、それから新聞記者・あらゆる方から聞いてきたのです。二、三の者がそう言うものだから聞いてみると、防衛庁関係が一番ひどいと言う。それは去年どこかの新聞に自衛隊の仕事どもうかる商売はない、こういうことを書かれておったことを思い合せると、むべなるかなと私は思ったが、とかくそういう傾向がずっとびまんしておるというようなことは、あなた方最高幹部にとっては、はなはだ残念なことだろうと思うので、どうかそういうことのないように、今後厳粛なる官紀綱紀の振粛を防衛庁に特にお願いしておく次第であります。  最後に、これは一地域の小さい問題で、私などがこういうことを申し上げるのも恐縮でありますが、過去四年ほど片づかない問題があるのであります。それは、調達庁の関係にもなりましょうけれども、三重県の阿山郡大山田村というところに笠取山という山があってそこに米軍のレーダー基地が昭和二十七年ころから開設をされておるそうであります。その当時米軍のレーダー基地を受け入れるか入れないかということは、現地でも非常に論議のあったところです。しかし私は自衛力の必要ということを認めておるものだから、現地の人々にも十分納得をさせてレーダー基地を受け入れることに協力をして、中には極左翼の者もずいぶんおるわけですから、反対運動のあったのを押えて、円満裏にこれを推進させてきた。しかるに具体的な折衝のことについては、私も繁忙な身なものですから、こまかいことまで知らなかった。ところが当時三重県知事と住民との間に、ことに大山田村の村長との間に取りかわされた約束、つまり米軍の基地を受け入れるかわりには、笠取山から伊賀上野に通ずる道路を開発するこれが一つ。もう一つは近畿日本の沿線である阿保というところに通ずる道路を開発してもらって、そうしてその交通を整備をし、地方の住民にあまり迷惑をかけない形で設定をしてもらいたいということで判こをついておるそうであります。ところがその約束条件というものは履行されないで今日に至っておる。非常に遺憾なことだと思っておるのです。私は、今までもこのことについては、私的には何回も折衝はしておりますけれども、最後の円満なる妥結のためには、やはりこういうところへ持ち出して、きっちりと話をしておかなければならぬ。それでなければ全国各地に基地反対運動、ことに空軍の基地については熾烈な反対運動がある。これはレーダーの基地というと、やや飛行機の基地と違って被害がそう大きく及ばないものであるから、多少妥協的な機運もあるわけです。そのことを御存じなのかどうか。私は経過も十分申し述べて今後の善処をお願いをいたしたいからここでただ一言だけ申し上げたわけでありますが、どなたかお知りの方がありましたら明白に答弁をしていただきたい。
  183. 今井久

    ○今井政府委員 ただいまの川崎さんの御質疑に対してお答え申し上げます。笠取山のレーダー基地の問題につきまして、数年にわたりましていろいろ問題が片づきませんで今日に至りましたことは、私といたしましてはまことに遺憾に存ずる次第でございます。その問いろいろ地元と御折衝下され、いろいろ御尽力をわずらわしておりましたことをここに感謝いたす次第でございます。この笠取山にレーダー基地が設けられるにつきましては、たしか二十九年か三十年ごろだと思いますが、当時レーダー基地が設定せられるにつきまして調達庁、今の地元の村、それから三重県が入りまして話し合いが行われました。提供に同意する条件として、調達庁といたしましては阿保から榊原の方に参ります道路をやってもらいたい。そのかわりに三重県としましては先ほど御指摘のありました近畿日本鉄道の阿保の駅の方に行く方の道路についてはこれを実行するというような話し合いで当時提供が同意されました。そして参ったのでございますが、最近に至りまして、三重県におきましては知事がかわられるとか、あるいはまた町村合併によりましてその村の幹部の方々がかわられるとかいうような事情もあったのではないかと存じますが、その阿保に行きます道路につきまして、三重県においてこれは実行できないというようなことにつきまして、地元の方々から陳情があった次第でございます。私どもといたしましては、先ほど申し上げました榊原の方に行きます道路につきましては、当時のお約束に基きまして五千万円有余の金を投じましてこれが改修をいたした次第でございます。また軍といたしましてもそれにつけ加えまして相当な金を出しまして道路の改修に当っておる次第でございます。なおまたこの道路の改修等につきまして調達庁といたしましてやりますのには、御承知の、ごとくに防衛支出金の経費をもちましてこれに充てるような次第でございますので、やはり米軍がこれを使用するという道路につきましてこれをやるという建前になっておるような次第でございます。地元の陳情もございますので、今のお話のありました分岐点からさらに伊賀上野の方へ行きます道路につきましては、本年度におきまして二千三百万円の経費をつけましてこれを実行いたしたような次第でございます。さらに来年度のことにつきましては、でき得る限りの努力をいたしたいというふうに考えておる次第で、ございます。今の御指摘のありました三重県で負担すべきものが行われないということにつきましては、先般来御陳情もありましたので、三重県当局等にも話をしまして、前の約束を一つ絶対に守っていただきたいということで実はいろいろ折衝をいたしまして、でき得る限りその実現を期したいというふうに考えておる次第でございます。
  184. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それじゃちょっと……。今の御答弁は経過としては非常に明白でございます。非常に明白であり、あなたの言われることには全部筋が通っておりますので、私としては反論すべきものが実はないのです。私の言おうとしておることと、あなたの言われておることは当っておるのであって、間に立っておる三重県当局の考え方が、知事がかわったために非常にそごを起しておるわけです。すなわち前の三重県知事はその二本の道路、つまり榊原へ行く道路と、しこうして防保に行く道路、両方のものを防衛庁において引き受けさすように努力をする、そうしてこのことを取りまとめるのだということで住民側を納得させておるわけです。そうして中央へ上ってきての話し合いはどういう結末であったかというと、譲歩をしたのでしょう、結局近畿日本の方へ行く道路については、三重県当局でやるということにすり変えておる。問題がすり変っておったが、民衆としてはそれではとてもおさまるわけではないのであって、今ごろになって騒ぎが再燃をしたというのが実相であります。従ってあなたの立場としては、その当時の約束としてはその通り実行しておるのだからということで、私は防衛庁側に非はないと思っております。これははっきり申し上げておきます。しかしそのことは、現地の民衆の意思が十分中央まで通ったということは言えないのであって、一番迷惑をしておるのは、米軍が来て毎日のように十トン、二十トンという大きな自動車が通る。それが昔の県道をじゅうりんをして、そうしてちょっと雨が降ればもう子供は学校にも通うことができないというような、非常な惨状を呈しておるのです。ですから今日では一しかも米軍は、一時は榊原へ行く方を使うと言っておったやつを・あべこべに伊賀上野へ行く道路ばかり使っておる。毎日のように大きな貨車が通るものであるから、子供にも迷惑をかけるし、非常な怨嗟の的になっておるわけです。これを解消しないと、やはり非常な反米感情というものが起るわけですから、今日の事態に立ってあなた方は解決する必要がある。そこで私が申し上げておるのは、往年の約束である近畿日本へ行く道をさらに防衛庁の経費をもつて支出をしてもらいたいということ、伊賀上野へ行く線についてさらに強力な措置を願いたい、こういうことであります。今後ともにその点は、十分に私がここで申したことがおわかり願って善処するということでありますれば、もはやそれ以上何ら申し上げることはないのでありますが、最後にその点だけを伺って質問を終りたいと思います。
  185. 今井久

    ○今井政府委員 お答え申し上げます。いろいろいきさつが違いましたために、地元の方々に非常な御迷惑をかけておるということは御指摘の通りだと思います。先ほど申し上げました通りに防衛支出金の支出もございますし、当時の約束といたしましては伊賀上野の方へ出ます道路につきましても、三重県においてこれを実行するという約束でありましたけれども、私どもといたしましても現に米軍がこの道路は相当使用しておりますので、私どもの方でこれをできる限り実行いたしまして地元の御要望におこたえしたい、こういうふうに考えまして、先ほど申しました通りに、本年度におきまして二千三百万の予算を計上しております。また来年度以降におきましても、できるだけ誠意を示して実行いたしたいと考えております。  なお、先ほどお話のございましたもう一つの道路につきましては、防衛支出金の性質等もございます、現在米軍の使用状況等もございますので、それらの点もよく考えまして、また三重県当局ともさらにこの点よく折衝いたしまして善処いたしたい、このように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  186. 松本瀧藏

    松本主査 他に質疑の通告がありませんので、これをもって内閣及び経済企画庁を除く総理府所管に対する質疑は一応終了いたしました。明日は午前十時より開会し、大蔵省所管の審査をいたしたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会