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片山委員 ただいまの御答弁はまことに不十分であって、
不満でありまするが、この問題については午後勝間田君が
質問を継続されることに譲りまして、私は時間の
関係から結論に入りたいと思います。
インドのネール
首相、さらにはまた中共の周恩来
首相が、中共は
政治的には多少違いまするけれども、いずれにいたしましても、この両国とも偉大なる軍事力を持っておるわけもありません。さらにまた大きな経済力を持っておるわけでもありません。文化が非常に高い、
世界の人類の幸福に貢献する指導的な
立場に立っておるというわけでもありません。しかしながらネール
首相の発言、さらにまた中共周恩来
首相の発言は、
世界的に大きなる影響力を持っております。もちろんこれは地理的、歴史的な環境からくるいろいろの状況はありまするけれども、思うに、何か
一つのよりどころがその背景となっておるに相違ないと思うのであります。ソ連、
アメリカが大きな軍事力と経済力とをもって進んでおりまするに相応いたしまする大きなる
世界的な影響力を持っておりますることを考えてみますると、特にネール
首相を主にして考えてみますると、何かやはり
外交を推進する上において、あるいは国家の運営、運行をしていく点において、ある
一つの高き構想を持っておる。高き理想を持っておる。資本主義か社会主義かというようなイデオロギーの問題の前に、
一つの新しいアイデアを持っておると思われるわけであります。高き理想を持っておると簡単に表現をいたしておきたいと思いまするが、そういうことによって
世界的な発言力、魅力が今日影響力を大きくしているゆえんであろうと思います。あにただに軍事力に依存したり、経済力のみにたよるという時代ではなしに、物質的な背景なくとも大いに発言し得る
情勢になってきておることを考えてみまするならば、わが
日本も、乏しき経済のもとに
戦争で負けましたるこの狭くなっておりまする
日本、人口の過剰な、経済も豊かでないわが
日本は、何によってこれから
国際的な
立場を
世界に理解させていくかと申しまするならば、一に
一つの構想、高き理想を持って進んでいく、人類の平和、
世界の幸福のために
日本がこれから進んでいく、こういう
建前を今日はっきりすることが最も必要と思うのであります。これについて
絶好のうしろだてとなり、背景となり、べースとなりまするものは何であるかというと、私はさらにまた引きまするようでありまするけれども、重ねて申さざるを得ないのでありまするが、これが
憲法第九条であろうと思います。これは大きなる
日本の戦後の平和政策、
平和外交、
日本の国是、
日本の今後における国柄を
表明いたしましたる宣言であろうと信じておるのであります。
元来この
憲法は、第何条々々々と分け過ぎた傾きがありますが、そういう手続上の問題のことをかれこれ言うのではありませんけれども、一貫せる
一つの宣言の文筆と見たいと思います。ことに
前文におきましては、
最初に
民主主義の構想をうたい、後半においては平和の原則をうたっております。人類普遍の原則は
民主主義であり、国家間の
政治道徳は平和である、この構想に立ちまして、第九条によって、
日本の
外交基調を表わし、一切の
国際紛争を解決するに断じて武力は用いない、
戦力はこれを放棄する、交戦権はこれを認めない、徹底的に
話し合い外交をもって
日本の
外交基調とする、こういうことを明らかにいたしておりますのが、この第九条であります。ですから
日本はこれで立っていけばよろしいのであります。ジュネーヴ最高
精神、
話し合い外交、
世界は新しい発見のように、これによって第三次
戦争への突入は防止せられることができた、
話し合いでやっていこう、最高
精神とその当時伝えられましたが、いずくんぞ知らぬ、わが
日本におきましては、十年前にすでに第九条によって、
戦争を放棄する、そうして
国際紛争はいかなる
国際紛争といえども
話し合いで解決していくのであるという、いわゆる
話し合い外交を
世界に宣明をいたしました。先手を打って
話し合い外交を
世界に明らかにいたしておりますのが、この九条であります。これは
世界に向って誇りをもって進んでいくべきであろうと信じます。
世界人類の幸福のために
日本はこれだけの働きをして、戦後目をさまして、ほんとうに新しい国を再建し、よみがえらすための基本といたしましては、
平和外交を推進するものであるということを明らかにいたしておりまするこの九条がありますので、この大きな高き理想をもって立っておりまする九条は、どこまでも生かさなければなりません。そうして
前文の中に書かれております
通り、
国際間の問題は
民主主義によって人類普遍の原則でやっていこう、
国際間においてはあらゆる問題を
政治道徳の普遍性たる
話し合い外交でやっていきましょう、武力を用いず、暴力を用いず、
話し合いで理解を深めてやっていきましょう、信頼と正義によっていきましょう、秩序を重んじてやっていきましょう、りっぱな
日本の
外交基調をここに指示いたしておると思います。
これは変えるべきではない。AAグループに対する
日本の
外交も中共に対する
外交も、一切がっさい
日本はこれを
中心としてやっていくべきであります。必ず
世界はこれを理解するに相違ないと私は信ずるのであります。これはネール
首相の高き理想に相応するものである。もう
一つ言いますならば、平和五原則にも相応するものである。今日
アメリカは、AAグループの若き民族意識に対しまして目をさまそう、その若き意識をどうしても取り上げていかなければならない、力の
外交だけではやっていかれない、こういうことを感じておるに相違ないと思います。やたらな資本主義的な、また防共軍事同盟式なやり方では行き詰っておるのであります。またソ連においても先ほど申しました
通り、東欧問題で悩みあり、ヨーロッパ各国また悩みある際において、この
戦争で一敗血にまみれて、新しき国として船出をしようとするこの
日本は、この
憲法こそは
日本の救いであります。この
大衆の幸福を実現さすために現われたこの
憲法でありまするからして、大きな構想と大きなる理想をこの
憲法の中から取らなくてはなりません。区々たる
防衛問題
——鳥の羽音に驚く平家の落武者のように、がたがたおそれて、敵が入ってくるんじゃなかろうかというようなことを驚いておるような時代ではないと思います。問題がありますならば、もちろんその問題は必ず半年前なり一カ年前からわかるのであります。いずれにいたしましても、突如として攻めてくるとか、押し寄せてくるとかいうような事柄は、もう今日はあり得ません。かりにありといたしましても、それはすべて
国際紛争の一環であります。
紛争なくして、突如として襲撃するというようなことはあり得ざる事柄であります。一切の
国際紛争は武力では解決をしない、こういう
建前でいきまするならば、
防衛問題もそう心配をする必要がない。これは
国民に対して、
政府みずから陣頭に立ちまして、この
国際情勢から
憲法の
精神を教えるべきであります。
憲法制定当時、普及会によってこの
精神を教えていく途中から変ってきたことを、私は非常に遺憾に思うのであります。そういう
意味から申しまして、この九条は、
防衛問題ではなくして、
外交の基調を示しておるものである、あなたが
平和外交をやろうとする、あなたがほんとうに
自主独立の
外交をやっていこうとする、その
外交の基調をここに示しておるものであるから、この
話し合い外交で終始する、
話し合い外交一点張りで
世界に打っていくのである、こういう
信念を持っておるものであることを、
日本は
世界に
表明しなければなりません。そういう
意味から、この
憲法問題は
国内問題より
外交上の重要なる役割をなす問題に移っておるということを私は信ずるのでありますので、その点について、九条に関する
首相の文字的
解釈ではない、
外交問題に対する基調であるという私の
解釈についての
首相のお考えを聞きたいのであります。