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1957-03-01 第26回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月一日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 山崎  巖君    理事 江崎 真澄君 理事 川崎 秀二君    理事 河野 金昇君 理事 小坂善太郎君    理事 重政 誠之君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       今井  耕君    植木庚子郎君       宇都宮徳馬君    太田 正孝君       大橋 武夫君    小川 半次君       上林山榮吉君    北村徳太郎君       河本 敏雄君    坂田 道太君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       中曽根康弘君    楢橋  渡君       野田 卯一君    橋本 龍伍君       福田 赳夫君    船田  中君       松本 瀧藏君    三浦 一雄君      山口喜久一郎君    山本 勝市君       井手 以誠君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    片山  哲君       勝間田清一君    河野  密君       小平  忠君    小松  幹君       島上善五郎君    田原 春次君       辻原 弘市君    成田 知巳君       西村 榮一君    森 三樹二君       矢尾喜三郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 井出一太郎君         通商産業大臣  水田三喜男君         運 輸 大 臣 宮澤 胤男君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         建 設 大 臣 南條 徳男君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 宇田 耕一君         国 務 大 臣 川村 松助君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         内閣官房長官  石田 博英君         内閣官房長官 北澤 直吉君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 三月一日  委員古屋貞雄君及び山花秀雄君辞任につき、そ  の補欠として片山哲君及び井堀繁雄君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 山崎巖

    山崎委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度一般会計予算、同特例会計予算及び同政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  川俣清音君より発言を求められております。この際これを許します。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 私は、この際、予算案審議に入る前に、岸新内閣に対し警告を発し、注意を喚起して、新内閣心がまえをただしたいと思うのであります。  その一つは、岸内閣予算案提出に関する事項でございます。一昨日、総理大臣所信表明がありましたが、この表明は、安易な便宜主義的な所信表明であるということで、われわれはこれに対して不満の意を表せざるを得ないのでございます。予算案につきましては、憲法は特に七十三条に規定をいたしまして、予算作成権提案権とを内閣に与えておるのであります。すなわち予算発案権内閣に専属さしておるという義務と責任の上からいって、新内閣はあらためて再提出すべきであると思うのでありますが、しかし、われわれはこれらに対して不満を持つとは言いながら、一応審議に入るわけでありますが、この際、七十三条の一項でありまする憲法及び法律の軽視、無視は、権力の座にある者によって多く犯されるのであります。従って、権力地位を乱用することのないように内閣に規定づけたのが、七十三条の一項であると思うわけであります。このことからいたしましても、予算案提出については、十分慎重でなければならないと思うのであります。  次に、審議内容の問題であります。ここに審議を進めることにつきまして、内閣条件を整える心がまえが必要であろうと思うのであります。予算国会提出するときは、衆議院に先に提出しなければならないのでありまして、しかも衆議院議決が優先することは、憲法の示す原則であります。このことは、すなわち衆議院に十分なる審議期間を与えることを意味するものであることは明らかであります。民主政治のあり方から言いましても、審議対象となる予算案は、不鮮明なものであってはならないと同時に、未熟なものであってもならないと思うのであります。これらの条件をまず整えることが必要であろうと思うのであります。野党協力を求めるからには、みずからもやはり反省しなければならないし、野党審議に十分なる措置を与えることが必要であろうと思うのであります。  その二は、予算審議のうらはらになっておりまする関係法律案提出が、非常におくれておるということであります。七十数件を予定されておりながら、昨日までに提出されておりまするもの四十五件であります。このように予算審議促進を願うところの政府としましては、十分なる用意が足りないうらみをわれわれは持つものであります。  その三は、予算案内容の未熟な事項であります、市外財産補償の問題につきましても、政府与党の間におきまして、いまだに妥結を見ないでおるわけであります。沖縄の土地補償の問題も、まだ明確ではありません。特定土地改良工事等内容につきましても、大蔵省と農林省の間においていまだ意見の一致を見ておりません。特に食管会計赤字の消化の問題につきましては、大蔵当局は、あるいは農林当局も同様でありましょうが、調査会を設けて、その答申を経てから国会審議にのぼせるという態度をとっておりますが、おそらくこの調査会答申は、六月の中ば過ぎなければならないであろうと思います。またこの有力なる調査委員のメンバーの中には、学者的良心真心学識経験者として、政治家の負わなければならない百六十一億の赤字の処理を民間人学者にまかせることは、不当であるという意見も出ております。そうした重荷から離れて、純粋な立場調査委員を命ずるならば応じられるけれども、政治家の負担すべきものを、国会審議対象になるべきものをわれわれに処理させるということは、われわれの良心が許さないと称しておられる有力なる委員諸君もおられます。これらを顧みますと、ここに何らかの妥結をみずからしなければならない問題が存することは明らかであります。特に予算は、毎会計年度において作成されなければならないものであり、毎会計年度制度予算をしてできる限り放漫に失することのないよう、かつ国会による監督に空隙をなからしめることを目的として、毎会計年度制度が生まれておることは明らかであります。予算案国会議決を経ることによりまして、初めて政府は一定の財政作用をなし得るのでありますから、確定された予算国家機構の行為を拘束するし、それは、単なる歳入歳出見積書というべきではないのでありまして、法的規範の一極であるという解釈は、こはは学説であります。従いまして、これらに対する政府の明快な態度が示されない限りにおきましては、審議は渋滞せざるを得ないだろうということを警告いたしたいのであります。さらにわが党におきまして、政府並びに与党にこれらの赤字の解消の問題、給与法の問題等について意見を述べ、共通の広場で解決しようという努力を払っておるつもりであります。これらに対する政府熱意いかんが、この審議に非常に重大な影響をもたらすものであることはお察し願えるはずだと思うわけであります。これらの条件を整えることなしに審議を進めたいという政府の一方的態度は、おそらく国民の大きな批判の的となるであろうということを警告いたしたいのであります。もしも野党協力を求められるならば、これらの諸条件を十分整備せられて、促進に努力するという態度がなければならないと存じますが、これに対する新内閣総理大臣の所見をただしたいのであります。(拍手)
  4. 岸信介

    岸国務大臣 予算案は、われわれに国民から負託されておる任務のうち最も重要な問題であり、また政府としてもきわめて重要に扱わなければならないことは、今川俣委員がおっしゃる通りであります。私どもは、再提出の問題に関しましては、社会党の御意見もありましたけれども、その点においては法律的の解釈を異にいたして、前内閣予算案をそのまま引き継いで御審議願うことにしたのであります。しかし、この御審議を願う上におきまして、今いろいろ御指摘になりましたような諸問題につきまして、まだ十分準備の至っておらないものにつきましては、政府として誠意を持ってこれに対処いたしまして、御審議に支障を来たさないように十分努力いたすつもりでございます。  すでに石橋内閣以来今日まで、最初首相病気のために予算委員会に出席できなくて、私が臨時代理として御説明に当りましたに際しましても、野党にはよく御協力を願って審議を進めていただきましたし、また石橋首相の長期にわたる病気のために、内閣がかわるというような事態もございまして、審議が相当おくれた点もございましたが、政府としては、そういうものを取り返す意味におきましても、今後は誠意を持って善処するつもりでございますから、どうぞ委員諸君におかれましても、格別御協力を願いまして、国民の期待に沿いたい、かように存じております。
  5. 山崎巖

    山崎委員長 それでは、これより質疑を許します。片山哲君。
  6. 片山哲

    片山委員 私は、ここに、岸首相の抱かれております平和に対する信念を聞きたいのであります。  現下世界政治の上で最も重要なる課題は、いかにして平和を達成するか、いかにして戦争を防止するか、これらに関して、責任地位にある首相の明らかなる信念を明示することが課題になってきておると思うのであります。わが国におきましても、戦後は、労働問題でありますとか、社会保障問題でありますとか、あるいは社会政策に関するいろいろなる問題が大きな課題となって出ましたけれども、これらに対する知識と信念なくしては政治を担当することができないとまでいわれたのでありますが、今日においては、いかにして平和を達成するか、いかにして戦争を防止することができるか、こういうことに関して、世界の三十億に近い大衆要望にこたえるというのが、責任政治家の非常に大きな任務でなくてはならないと思うのであります。岸首相首相代理としての演説におきましては、遺憾ながら、これらに関する抱負経綸を聞くことができなかったことをまことに残念に思うのであります。そこで、私は、これらを中心といたしまして首相信念を聞きたいのであります。  特に一昨日の本会議で、淺沼君の質問に対し、首相は、戦時中の自分立場などを考えて、これからは民主主義政治家として全力を尽したい、こういう今後の決意を明らかにされました。これは大へんけっこうであります。しかし、いかにして民主政治家としての立場を明らかにするか。要諦は、民主主義政治家の大きなる任務は平和ということであります。戦時中のこともいろいろと責任を感じられておることと思いますから、この際はよほど思い切った、しかも大衆の納得する平和に対する首相信念を明らかにしないことには、ただ単に民主政治家としてこれから決意を明らかにするというだけでは、わが日本戦争に悩みました勤労大衆は、満足もしないし、納得もできない。私は、そういう意味において、まず最初に、自由陣営だけに協力をする、あるいは単に平和外交をやる、内政と外交との調和をはかっていく、経済外交をやっていくということだけでは説明にならないと思うのであります。今後一切日本戦争の中に巻き込まれない、のみならず、日本戦争をやらない、戦争を放棄しておるという建前を戦後の方針としてわれわれはこれを信奉し、これを日本の幸福なりと考えておるのでありますが、これらに対して、自分もその信念をもって進んでいくのである。断じて戦争をやる渦の中に利用されない、巻き込まれないことを自分信念としておるという点を求めたいのでありますが、これに関して、まず最初首相信念を伺いたいのであります。
  7. 岸信介

    岸国務大臣 昨日、私が戦時中の国務大臣としておったことに対して、自分は厳粛なる反省をしておるということを申し上げましたが、それは、あの戦争が始まったことにつきまして、私自身がその責任の一端を負うておるということを深く省みて、この世の中から戦争を何とかなくするということにつきましては、私自身最も強く反省し、またそういう気持を持っておるのであります。従って、私はその後における私のいろいろな——あるいは巣鴨の拘置所におきまして、あるいは追放中におきまして、あらゆる面から、日本を将来絶対に戦争に巻き込まないようにし、またわれわれの自由を絶対に確保するところの道として、いかに日本が進んでいくべかきということを十分に考えまして、その結論としては、民主政治日本に完成することだ、これが国内においてどうしても完成しない限りにおいては、また戦争に巻き込まれるおそれがあり、また国民の自由が奪われるようなことになってはいかぬという考えのもとに、自来私は、政治家としてこの信念に基いて一貫して行動しておるつもりであります。また特に総理大臣とし、外務大臣として責任地位にあります以上、将来におきましても、国内政治の上に、また国際政治の上に、あらゆる手段を講じて今の信念を実現したい、こう考えております。
  8. 片山哲

    片山委員 ところで、いろいろの危機がわが日本に迫ってきておるのであります。これは、戦争危機のみならず、国際的な紛争の中に巻き込まれたり、あるいはまた利用せられたりする、これらの問題についてこれから伺いたいのであります。  まず第一の危険性は何にあるかと申しますならば、アメリカとの間で結ばれておりますいわゆる不平等条約日本防衛アメリカにたよっておるという事柄が、いろいろの観点から考えますと、巻き込まれる危険性も多分にあるのみならず、考えてみますならば、不合理なる点がいろいろあると思うのであります。これを伺いたいのであります。  そこで、その質問に入りまする前に、前提といたしまして少しく説明を申し上げたいと思います。戦後、わが国には御承知通り一人の兵隊もなく、一つ武器もなかったのでありまするが、長きにわたる吉田内閣のもとに、いわれておりまする戦力なき兵隊ができまするし、続いて鳩山内閣の手で、自衛隊ならばいいということで防衛隊ができておるのであります。そうして、これは軍隊ではないということになっておるのであります。国内関係はそういう状態でありまするが、いま一つは、外国との関係で、わが国軍事基地がたくさんできて、あるいはこれに武器を持ち込んだり、あるいは近代的な原子兵器までも持ち込むということになっておるのであります。われら日本人自身兵器は持たない、兵隊としての勤めはやらない。戦力を持つ持たぬにかかわらず、いわゆる兵隊というものをなくして、平和の日本を建設しようといっておりまする際に、この日本国土自身軍事基地化いたしましたり、あるいはまた兵器を貯蔵する場所になりそうな状態になっておるということを、最初に考えていかなければならないのであります。かようになりますると、戦争放棄平和宣言をして、ただいま岸首相の言われましたような、日本国民要望をこれらの面から達成しようというその平和宣言が全く権威のないこととなり、じゅうりんせられておるというような状態は、実に嘆かわしい状態であります。そこで、国内において軍隊まがいのものを持とうとする、いわゆる再軍備問題は一応あと回しにいたしまして、最初に伺いたいことは、軍事基地化したり、原子兵器を持ち込んだりしてくるその原因たるアメリカとの条約があるからいたし方がないということでは、もう済まされないと思うのであります。われわれは、いたし方がないということそのままであきらめないで、いわゆる不平等条約を改廃して本来の平和的な立場を取り戻さないことには、日本の再建というものは意味がない。今首相が言われました、ほんとうの平和なる楽土にしたい、渦の中に巻き込まれない日本にしようというためには、どうしても日米安全保障条約行政協定は、ともに日本国家基本法たる憲法に違反しておるものである。徴兵令がないだけであって、ものと形からすでに再軍備、軍事基地武器持ち込みというようなことになっておるのでありまするが、この点は明らかに憲法精神に、いな憲法全体に、憲法前文戦争放棄平和宣言をしておるという建前から申しまして、憲法に違反しておるものであるということを言わなければならないのであります。そこで、この条約憲法との関係がいろいろ法理学上問題があることは、もちろん承知いたしております。その優先について、法理的な解釈首相にお尋ねしようとするのではありませんが、これは明らかに戦力に全然かかわりのない平和の国としないで、軍事基地の国とするという点、すなわちかかる軍事化するという条約は、日本を外部からの関係で再軍備するものでありまするゆえに、明らかに憲法に違反しておるものである、こういう点を私は明らかに指摘することができると思うのであります。武器持ち込み軍事基地をたくさんこしらえる、形の上において再軍備するということは、憲法精神に大いに違反しておるのである、戦争放棄平和宣言に反しておるものである、こう私は確信をいたしておるのでありまするが、まずこの点に関しまして、首相の御見解を聞きたいのであります。
  9. 岸信介

    岸国務大臣 日本自衛組織自衛隊の問題に関連して、従来これが憲法違反であるかどうかという論議は、ずいぶんこの国会において戦わされたのでございます。私は、日本の現在の自衛組織というものは、祖国防衛する意味において作られておるものであって、これは憲法に違反しないという解釈をとるのであります。しかして現在ございます安保条約、その他日米共同防衛に関する仕組みというものは、日本自身が完全に祖国防衛する自衛力を持たない現状としては、まことにやむを得ないものであると私は思いますが、もちろん日本自主独立立場から、先ほど来申しましたような平和を実現していく、これには、私からくどくど申し上げるまでもないことでありますが、現在の国際情勢から申しますというと、やはり祖国を自衛する、いかなる不法なる侵略も、あるいは直接間接侵略をわれわれは受けないという態勢に置くことが、国民が安心してそれぞれ生活のできる、平和が保てるということが、現在の国際情勢から見るというとやむを得ない状態である。従って、そういう情勢下にあって、日本自身を平和に、他から侵略せず、されない、直接間接侵略を受けないという立場に置くためには、日本自衛力から申しますというと、私は望ましいことじゃないけれども、日米共同防衛の形において祖国を守る以外に道がない。そこにいろいろの行政協定その他が生まれてきておると思います。しかし、これらのものにつきまして、その制定当時と現在の間には、相当の時日もたっており、情勢も変っておりますから、これらのものについて検討するということは、もちろん考えなければならぬと思いますけれども、現在の状態におきましては、私は、まず日本自身が、自分の力で祖国が安全である、われわれが安堵して生活できるという安心感国民に与えるような自衛組織を持つことが先決問題である、かように考えておるのであります。
  10. 片山哲

    片山委員 現在においては、自衛力を充実するために財政上無理をしたり、あるいは国民の犠牲を多く要求したりするということよりも、その前に、日本国際的な地位日本国際間における立場を有効にし、信用を拡大する仕事がなお多くあることを思うのであります。私は、その意味において、この安保条約などを締結する際に、憲法に違反しておるかどうかを調べなかったり、あるいは憲法に抵触するということについて国民意見を聞いたり、あるいは論議を重ねるということをせずして、きわめて早急に倉皇の間にこれを締結したということは、これはお認めになると思うのです。非常にあわててこの防衛協定をやったのである、間に合せのために一時的にやったものである、期限をつけないでやっておることなどを見ましても逆に裏から見ますると、これは暫定的のものである、当時の間に合せにすぎないものである。これは、吉田全権が向うに行かれまして平和条約を締結いたしまして、平和のために日本立場を明らかにしましたその翌日に、安保条約行政協定の根底でありまする話し合い吉田全権お一人でやられたというような経過から見ましても、まことにそそうなものである。従って、ただ時期を待つというだけではなしに、今これに対しまして手を打つべき絶好のチャンスが来ておると思うのであります。それは何であるかと申しまするならば、国連加入ということであります。国連加入は、単に国際社会の一員として日本国際孤児より免れたということだけではなしに、日本最初から要望いたしておりました通り——日本は何で戦争を放棄してまる腰になって、武器を放棄したか、平和を愛する世界の信義に信頼して、日本の安全と生存を保持しようと決意をしたということを戦後直ちに表明をいたしておるのであります。これはどこに表明をしておるか。憲法前文——当時問題となりました条項でありまするが、前文の中に、日本はそういう意味において、将来国連への参加、国連への加入によって、日本安全保障を受け得る態勢にしていこう、そういう意味のもとにおきまして、ここに率先戦争を放棄するために、みずから武器を捨ててまる腰となって、世界の平和のために貢献しよう、こういうことを明らかにいたしておるのでありまするから、日本安全保障は、先ほど首相の言われましたる自衛問題、防衛問題は、あげて国連安全保障に依存してよろしいという構想のもとに、こまかい協定なり細目は別といたしまして、その基本観念におきましては、国連安全保障を受け得るというもとに進んで参りましたと私は信じておるのであります。そういう意味において、本年国連に参画をいたしましたことを絶好機会といたしまして、ここに思い切って、地域的な集団安全保障を改廃するという挙に出なくてはならぬと思うのであります。世界的に申しまして、御承知通りNATOあり、SEATOあり、バグダッド条約あり、ワルソー条約あり、地域的な集団安全保障は、国連の大きなる国際紛争を解決する話し合い場所としての威力というもの、権威というものを薄めておると思うのであります。自分ら勝手に集まって集団的な保障をして、国連集団安全保障世界的、国際的に行わしむるという権威を高めなくてはならないのにもかかわらず、みんな小さく固まっておりまするということに今日の大きな弊害があることを、戦争を放棄して平和のために率先貢献しようとする日本が、もって範をたれなくてはならないと思うのであります。こういう意味におきまして、ここにどさくさまぎれというと言い過ぎまするけれども、そういう意味において、内容も充実をしていないし、憲法の問題も検討をしていなかった、早々の間に取り結ばれたるいわゆる不平等条約を切りかえまして、国連安全保障を受け得る態勢へと進むのに、国連加入絶好機会であると私は信ずるのであります。そういうことにして日本の道を見出す、日本は平和のために貢献をする、国連中心外交をこれからやっていこうということも、施政方針演説において言われたと思うのでありまするが、国連中心外交をやっていこう、単に西欧自由陣営の仲間入りをするというだけではなしに、ほんとうに今後の外交国連中心外交で、どこにもたよらない、どこにも依存しないで、日本の自由独立のために国連中心外交をやっていこうというその主張の裏づけといたしましては、まさに絶好のチャンス来たれりというわけで、この機会に、きわめて不完全にして不平等であって、早早の間に締結せられました不平等条約の改廃に向って一歩を進めていく、そういう意思を表明するということはまことに必要なことと思うのであります。首相の御所見を伺いたいと思います。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 昨年暮れ国連に加盟をいたしまして、私は、今後日本外交一つの大きな道として、国連中心主義でいくべきだということを申し述べております。しかし、現在の国連情勢は、私から申し上げるまでもなく御承知通りでありまして、平和維持に関する重要な問題等に関して、大国の間に意見が一致せず、あるいはいわゆる東西両陣営の対立というものが、国連内部においてもきわめて露骨にまだある情勢であります。従って、どの国も自分の安全を保障し、また世界の平和を維持するために、国連だけにたよっておっては十分でないという意味において、いろいろな地域的な安全保障の措置が講ぜられておるというのが、実は国際の現状であろうと思うのであります。私は、われわれの理想として、あくまでも国連によってすべての対立というものが緩和され、東西の緊張が緩和され、そうして世界平和が望めるような事態がくることを、日本としても強く望んでおりますし、またわれわれが昨年日ソの間の国交を正常化し、同時に国連に加盟して参りまして、国連内においてこれらの対立緊張を緩和するということが、われわれの使命であるという考えで、今後国連中心主義の外交方針を進めたい、かように考えております。従いまして、今直ちにすべての今までの安全保障に関するやり方を変えて国連中心にまかすということは、国際の現状からはまだ適当ではないと思います。ただ、この日米安全保障条約等の日米共同防衛の問題に関しましては、しばしば申し上げているように、現在の状態においては、まず日本自衛力をある程度高めるということであり、また国際緊張を緩和することを考え、これに対して努力をすることである。また日米の間において、十分にこの世界情勢等についての意見を一致せしめて、そうしてこれを改廃するという方向に進むべきものであって、今直ちにこれらのものの改訂ということを提議するとか、あるいは持ち出すということは適当でない、かように考えているのであります。
  12. 片山哲

    片山委員 その問題についての見解並びに観測、情勢の判断は、意見の相違もありましょうけれども、再考を促さなくてはならない状態だと私は思うのであります。何となれば、御承知のスエズ、ハンガリー問題以後における急激なる歴史の切り変りとでもいうべき大きな変動以来というものは、アメリカも西欧陣営との緊密な関係をゆるめまして、アジア、アフリカ、いわゆるAAグループに対します新しき民族意識の高揚について深い関心を持つようになってきていることは、御承知通りであります。そういう関係から、アジア、アフリカの問題は、今後大きな問題となって参るわけでありまするから、そういう際に、いわゆる古い反共防衛式な考えはもちろんだめでありまするし、また地域的な集団安全保障よりも、AAグループに対しまするアメリカのこういう動き方等を対象といたしまして、日本の考えも検討をしなければならない時期に来ておると思うのであります。  さらにソ連におきましても、ハンガリーの民主化、民族運動を弾圧いたしましたけれども、今後重ねて武力を用いて民族的な民主化運動を弾圧するということの世界に与える悪影響なり、非難なりを考慮いたしまして、いろいろ悩んでおりますることは事実であります。首相も、過般、ハンガリーの大衆に対しまして同情を寄せるということは、人道的な立場に立って、ハンガリー大衆に同情する以外に、民族意識が盛り上ってきております民族民主化運動ということについて、理解をしての言でなくては意味がないと思うのであります。そこでソ連といたしましても、このハンガリーの民族民主化運動を押えておいて、さらに中近東地方のAA民族運動を支援するという矛盾には悩んでおると思うわけであります。そういう悩みがソ連にもあるのでありまするから、やたらにハンガリーの二の舞を方々で行うということは、まず考えられないのみならず、アジアにおいて、−これは東欧においてと違いまして、アジアにおいては、かくのごときことはソ連としてもやり得ざることでありまして、あべこべに中近東におけるソ連のやり方を見まするならば、民族運動を支援するという側に立って、弾圧政策とは全く正反対な構想を持っておることも、これもまた明らかな事実であるわけであります。そういう際でありまするので、東洋において、極東において、果して防衛態勢を強化しなければならないような事実があるかどうか。  少し飛びまして、ヨーロッパの状態を簡単に見てみますると、つまり米ソにはさまれておりまするヨーロッパ、小にしては六カ国、大にしては十五、六カ国、いろいろ悩んでおると思います。悩みたる結果、さきのシューマン・プランなどを変更いたしました共同市場案なども、だんだん現実化して、緒についてきたようでありまするし、またヨーロッパ中立地帯という、戦争を避けて一つの中立地域というものをこしらえていこう、ドイツ統一問題が非常に困難であるという一つの解決策などをも加味いたしまして、線を引こう、大きな、幅の広い線を引いて、そうして戦争を避ける緩衝地帯を置こうなどというような事柄が動きつつあると思うのであります。  今日世界的に申しまして、今まではあるいは反共を中心としたり、あるいは自己防衛のための地域的に固まりましたる各種の集団条約では、もう不安でしようがない、かえってこれは戦争を誘発することになってくるのでありますから、何とかしてこれらを緩和し、別の方途に移っていこうという構想が国際的に出てきておると思うのであります。私は、そういうような意味から、アメリカとの間の防衛協定を考えるべきであろうと思うのであります。特に数カ国が寄り集まったバクダット条約とか、ワルソー条約などと違いまして、一国と一国だけであります。アメリカ日本と一国々々同士の間において防衛協定を結ぶということは、もう国民に与える精神的な悪影響から考えましても、またいろいろの紛議の方から申しましても、いろいろの摩擦——この間の農婦射殺事件でありますとか、砂川の日本人同士相い紛争を重ねなくてはならないというような状態などを考えてみますならば、集団のうちでも最も悪い例であります。集団のうちの最旧式な、最悪の、いろいろな紛争を起す種となります一国々々間の集団防衛というものは、どうしても時宜に合わない。国際情勢から申しまして、これを早く切りかえなくてはならないという意思表示を今にしてやらないことには、時期を逸すると私は思うのであります。首相は議会後渡米をなさるそうであります。渡米の意思ありということでありますが、淺沼君の質問に対して、参勤交代ではないというのですが、何のために一体行かれるのか。せっかくのそういう機会でありますから、この機会をとらえて、国際情勢と相応呼いたしまして、ここに新しい世界の平和達成の一環の中に日本も努力するという意味におきまして、一国々々間の防衛協定を切りかえて、国連中心——これはいろいろの段階があります。もちろん直ちにこれを実現するということについては困難がありますけれども、国民の総力をもちまして、世界外交話し合い場所である、いわゆる話し合いの広場である国連の強化拡大によって、日本安全保障をはかるという理想を持っておるのである、そういう高い構想をもってやるのであるということを表示する絶好機会であろうと思うのであります。いたずらにごきげんとりの旅行はやめてもらって、ほんとうに日本国民が平和を要望し、そして不合理なる、しかも憲法に違反し——三段かまえになるのですが、憲法に違反しておることと、あわてて一時の間に合せに作ったものであるということ、国際情勢にもう合致しない時代おくれのものであること、これらをもってアメリカに対して申し入れをするなり意思表示をするなりして、国民要望を達成するということが首相として大きな仕事でなくてはならないと私は信ずるのであります。これを要望いたしまして——これはしてもらいたいという要望なんですが、それに対する首相意見を聞きたいのであります。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 私の先ほど来申し上げておることで、安保条約及び行政協定に対する私の現在の心境は明瞭になったと思いますが、今私の訪米に関連していろいろお話がございました。訪米ということにつきましては、私はかねて外交演説等においても申し上げております通り、日米の間における諸種の問題を再調整する必要がある、こういうことを前提として自分外交方針を進めていきたい。日米の協調ということを基調とするけれども、あるいは現状をそのままにいつまでも維持するということではなくして、われわれが自主独立立場から、われわれの主張すべきこと、また日米間の私の考えておる協調をむしろ妨げるような幾多の問題が現在ある。これらの問題を適当に日本自主独立立場から調整することが、日本のためにやらなければならぬことであるとともに、日米の間の友好関係を増進する意味からやらなければならぬというのが私の考えの中心でありまして、これらの問題を、もちろん訪米の機会におきましては、私はトップ・レベルで話し合って解決したいという考えのもとに考えておるわけであります。
  14. 片山哲

    片山委員 まことにあいまいなる答弁で、国民は非常に失望すると思うのでありますが、われわれは強くこれに対して反省を求めて、国民の意思、特に平和を愛好する憲法精神にのっとったる日本の進み方をやっていかなければならないという大衆の意思を強く反映せしめるべきであることを要求するものであります。  進んで原水爆の実験問題について質問をいたしたいと思うのであります。わが国の周辺でやられることについての中止の申し入れから、さらに進んで、原水爆の製造、貯蔵等、これらもやめてもらって、これを平和産業に切りかえてもらいたい、そうしてこれを世界の人類の発展のために、幸福のために、世界の平和のために貢献をする原子力たらしめたいということは、すべての人の要望であろうと思うのであります。これを主張するについて、単に人道上からまことにこれは残酷なるものであると、広島、長埼、ビキニ等の例をあげまして、実験台に供せられた日本国民としてこれを要望する、こういうことで国会の決議ともなり、あるいは地方自治団体の多くの要求ともなり、日本国民の悲願ともなって世界的に訴えておるのでありますが、政府もこれに対しては、国民の意思を尊重して大いに努力しなければならないと思うのであります。ところが最近、澤田国連代表に政府から指示した問題について、過般和田君に対する質問の答弁といたしましては、漸次そういうようなことをして、届出制によってこれを制限して、日本国民要望を幾らかでも達成しようとする方法としてであるような意味のお話がございましたが、まことにこれは手ぬるいと思います。届出制は実験を認めることともなりますし、原爆、水爆をやはり戦争の道具にこれを使わしめるということを前提といたしておりますことでありますから、日本国民の悲願、要望は、ちっともこれによっては達成されていないのであります。ですから、もっと強く思い切って、すでにたくさんな署名もできておりますし、世界的に申しましても、十億に余る人々の要求が現われておるのでありますから、それを日本が代弁をして、国連加入の記念といたしまして、強く世界的に要求することもまことに時期がいいと思うのであります。つきましては、私のここで申したいことは、これをするのについて、こういう要求を世界的に訴えるについて、日本は最も適当なる地位に立っている国であるということに自信を持ってもらいたいのであります。それは何であるかと申しますならば、戦争放棄平和宣言をいたしております日本国こそは、国連におきまして原水爆の禁止を叫ぶについて、最も資格の備えております国民であることに強く自信を持ってもらいたいのであります。こういう憲法を持っておりますということが、世界の信用を博するのみならず、みずから実践をいたしておるのであります。人にかたきをしているのではない。もちろん日本は原爆、水爆を持ち得る体制とはなっておりませんけれども、持っております国に対して要求するについても、さらにまた持たざる多くの国々に対して、軍備を整えようとしている国々、あるいは軍縮を要求しております国々に対しまして、みずから、戦力を放棄して、一兵なし、一砲なし、一翼なし、何ら武器を持たざる戦争放棄平和宣言世界表明をいたしておりますこの日本が、全世界に向って原爆、水爆の禁止を叫ぶことができるのである、叫びたいのであるということは、必ず世界の人々の胸を打つ言葉に相違ないと思うのであります。そういう意味から申しまして、ここに原水爆の禁止を国民にかわって叫ぶためには、この憲法は絶対に必要であります。つまりこの憲法を存置して、これを擁護していかなければならない理由は、明らかに出てきておるのであります。原爆、水爆の問題を世界的に取り上げる意味から申しまして、この憲法は実に必要であります。単なる防衛に籍口して、時代おくれなお古をちょうだいいたしましたような、そんな急ごしらえの防衛に頭を突っ込んで、そうして国民のとうとき費用、二千億円近い金を投げ込むよりも、その防衛問題をさらに切りかえまして、世界平和に積極的に努力する一つの事例といたしまして、具体的な問題といたしまして、原爆、水爆禁止問題にこの憲法を背景として進ましめるということが、国民の非常な要望であります。私はそういう意味において、この憲法を変えるという意味は、もはや日本平和外交を推進する意味からもナンセンスになってきておると思うのであります。首相は、さきの首相代理としての演説においても、憲法改正問題には触れておられませんが、これをほおかぶりしてお通りになるおつもりか。あるいは改正問題につきましては、その世界情勢を考えて、これからの憲法擁護問題というものは、国内問題よりも国際的な問題に転換をしておるというところに気がつかれたのでありますか。あるいはまた、国民要望しておりますこの憲法を守るということによって、これに違反した一切の条約を改廃していかなければならない、この憲法精神を生かすために、原爆、水爆の禁止を世界的にアッピールしていくのであるというような意味において、憲法擁護の運動の国際的な使命、役割が新たに出てきたということをお考えになっての構想が——そうありたいと私は念願いたすのでありますが、この憲法改正問題について新たなる使命が出てきたということをお考えの上において、在来の古くさくなっておる防衛問題だけで憲法を変えようという議論は時代おくれなものであるという私の所信につきまして、首相の御意見を伺いたいのであります。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 憲法の問題に関しましては、国内におきましてもいろいろの議論がございます。また政党の間におきましても、私の所属しております自由民主党は、かねて自主憲法を制定すべきものであるという意味において、現行法の改正を考えていろいろ研究調査をして参っております。社会党は、現行憲法を擁護すべしという御議論で対立しておることも、よく御承知通りでございます。しこうしてこういう状態ではいかないので、この問題に関する全面的の検討をすべきものであって、調査検討をするという意味において、去る二十五国会において憲法調査会法が制定を見ておるのであります。私は、この憲法調査会法によって作らるべき調査会には、広くこの憲法を擁護すべしという今片山さんのお話しのような御議論をも十分反映をして、これが検討をさるべきものであり、またわれわれのように、憲法を自主的な立場から改正しようという考えを持っておる者もまたこれに参加して、十分に論議を尽し、各方面から調査して、そうして日本憲法というものを、あるいはその結論として、現行の憲法がよろしいという大多数の意見になれば、そういうことになりましょうし、あるいは、こういう点をこういうふうに改正したがいいということになれば、そういうことに基いた憲法の条章によって国民の意思を聞いて、これをきめるべきものである、こういうふうに考えております。  今片山さんのお話しの原水爆の禁止問題に関しては、これは、国民国会を通じて明確な意思を表示されておりますし、政府も私も、信念として、この新たに発見されたところの原子力というものは平和利用に供す、人類の文化とその繁栄を期するように用いらるべきものであって、これを破壊に用いる、原水爆によって破壊兵器として用いられるということは、あくまでもこれを製造禁止し、またそういうものの使用が禁止される方向にあらゆる努力を傾倒すべきものである。これがためには、国際的世論を強く起して、そうしてこれを持っておる強国に対して、人類の強い世論として、これが禁止されるようにあらゆる機会をとらえて努力をすべきものである、かように考えておりますが、憲法につきましては、今申したような次第でございます。
  16. 片山哲

    片山委員 原爆、水爆の禁止について精神において賛成されておりまするというためには、どうしてもこの憲法が必要であるということをもう一度伺いたいのであります。そうしてこの調査会は、今首相の言われましたような趣旨では、この間通過いたしました調査会法はだめと思うのであります。あれは改正を前提として、しかも発議権のない内閣に置いておるという意味で、われわれはこれを違憲なりとして反対をいたしたのでありますが、いかなる憲法を制定することが日本としていいことであるかというような趣旨によって作られたものではないのであります。ですから、あれはもうやり変えていくべきでありまして、あれはもう何ら魅力を持っていないものと私どもは考えておるのであります。そういう意味で、今言われましたような趣旨ならば、あれを廃棄して別の構想——別にこれはお勧めするわけではありませんが、別の構想でやらないことには、国民的な支持は得られないと思います。重ねて、原爆、水爆の禁止運動を今のように進めるためには、この憲法国民的な背景として世界に訴える意味において、変えないでいくことが必要である、またそれが有効であって、有利であるという点について御所見を聞きたいと思います。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 私は、原水爆の使用禁止の問題は、別に現在の日本憲法を基礎に、またこれを背景にしていかなければ有効にならないというふうには考えておらないのであります。この原水爆の使用禁止もしくは実験禁止等に対するわれわれの主張は、あくまでも人道的立場に立ち、実際これを体験したところの日本人が訴えることが、非常に世界的な国際的な世論を作り上げる上に有効である。憲法というものがなければ、それが有効にならないというふうには考えてはおりません。
  18. 片山哲

    片山委員 そこであなたのお考えになっておりまする憲法改正の一番の重点はどこに置かれておるのでしょうか。いろいろあるでしょう、あるでしょうけれども、一番しぼった点、一番の重点は、どの点が気に食わない、どの点を変えようというのであるか、それを念のために開いておきたいと思います。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 私は、政府責任者としましては、別にどこをどう変えるという考えはもちろん持っておりません。先ほど申しましたように、国会が承認し制定されておるあの権威ある憲法調査会において十分審議されて、その結論を国民に問うというのが正しいのである、私は今日の立場としては、そうお答えするほかはないと思います。
  20. 片山哲

    片山委員 すべては調査会まかせというところと聞かれるのですが、この調査会は、先ほど申しました通りまたわれわれ前から考えておりまする通り、何ら国民的な背景によって作られたものでなく、魅力を持たざるものであって、大きな国民の生命、生存に関する憲法を、これからどういうふうに構想を立てていくかということを検討し調査するのに、適当なる機関でないと私は思うのであります。でありまするからして、これは、このままではだめだということで、改正なり廃止を主張いたしておるのでありますが、この際どうも廃止の意思もなく、そのままやっていこうとするならば、国民から浮いた一つの形式的機関として存在するにすぎないものであるということを断じておきまして、次の質問に移りたいと思います。  そこで、先ほど原水爆の問題について申し上げました通り、これは、憲法を振り回して原水爆の禁止を叫ぶという形式論ではなくして、かかる戦争放棄の、戦争は一切やめてもらいたいということを主張しておりまする国民の熱望を表わすまことによき背景であるとして、世界に訴えるわけでありまするので、この憲法擁護運動は、今日におきましては外交上に与える影響の大きいこと、外交上の問題、平和主義を世界に表わすという平和宣言としての価値が非常に大きく浮び上ってきておることを感じてもらわなければならないと思うのであります。すなわち、今や憲法問題は、国内問題から外交上の問題、世界的な国際的な日本立場を、国連加入機会として世界に表わす宣言文となってきておるのであります。AAグループに対する外交を、一体首相はいかにこれからおやりになるでしょうか。何が最も必要であるかと申しまするならば、日本の信用であります。侵略的な島国根性ではない、出かせぎ根性ではなくして、もっと大きな世界のために貢献する日本日本の勤勉さと技術の優秀さを世界に表わして、そうして資源の開発に貢献してあげたい。世界文化、世界経済、国民大衆の生活の向上に役立たせたい、こういう意味から日本立場を信頼せしむるのによき宣言であります。日本はもう再び侵略をやらないのであるということを言いながら、国内において再軍備をする、国内において防衛に名をかりまして再軍備的な様相をしますることの悪影響を考えてみまするならば、戦争を放棄した平和憲法を擁護して、そうして東南アジア、AAグループに対する外交をこれからやっていくということの重要性を考えてもらわなくてはなりません。よってAAグループに対する外交の基準は、単に経済外交というだけではだめでありまして、——真に日本の信用を拡大して、侵略日本にあらざることを、八紘一宇の日本にあらざることを、すっかり戦前と切りかわっておりまする新たなる日本であるということを、AAグループに理解せしめ、了解せしむる上において必要なる宣言はこれであります。先般バンドンの会議におきましても、日本立場表明いたしました高碕君の演説が非常に好評を博したといわれまするが、演説しっぱなしでそのままになっておりますることは実に遺憾であります。つきましてはその高碕君の演説に続いて、日本はこういうふうに、こういう通りにこの憲法を依然として堅持して、政府もこれに対して深き理解を持ってAAグループに対する外交を推進するのであるということは、非常な効果的なものであることを私は信ずるのであります。これに対する首相のお考えを聞きたいと思います。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 AAグループの国々は、多く最近において政治的独立を獲得した国々でありまして、従いましてこれらの国々には、一方においては非常に民族的な意識が高揚されておる。同時に政治的な独立は一応獲得しましたけれども、それを完成するに必要な経済的な裏づけというものがまだ十分ないというのが、これらの国々のほとんど共通の状態であると私は思います。われわれはこれらの国々に起りつつある、民族の独立と、その自由を獲得し、これを完成しようとしておる気持に対して十分な理解を持って、そうしてこれを完成するに必要な経済的裏づけを作り上げようとしておる努力、すなわちこの面において経済協力をする。あるいは技術の面において、あるいはいろいろな開発の面におきまして、あらゆる面から日本の持っておる力をもってこれに協力をする。そうして一方においては民族の意識が高揚しておる。民族の独立の完成にわれわれがあくまでも謙虚な気持で協力するということが、私の考えておる東南アジアもしくはAAグループに対する経済外交の考え方でございます。今片山さんのお話しのように、われわれはあくまでも平和的にこれらの国々が繁栄していくということに協力するという以外に、われわれは何らの意図を持つものでないということは、もちろんあらゆる機会に明瞭ならしめる必要がある、私はこう思っております。
  22. 片山哲

    片山委員 今首相の言われたような考えを表わすのには、戦争放棄日本の国是をはっきりと示すことがいいということを警告いたしまして、次は中国の問題に移りたいと思います。中国の問題については、午後勝間田君から質問をされることになっておりまするので、私は一点だけであります。  嶋山前内閣がソ連との国交を回復することについて骨を折られたということは、歴史的に残っておりまする効果でありまするが、どうしてもこれからは地理的にも接近をいたしておりまする新しい中国、貿易と文化の交流から、また歴史的にも密接なる関係を今まで重ねておりまする中国をこのままにしておくわけにはいかないと思うのであります。ことに近代的な切りかわりをいたしておりまするいろいろなる面から、ヨーロッパ各国におきましては中国研究熱が非常に旺盛であるということは事実であります。特に中国の文化についての研究が、わが日本が国交回復せざる間、知らざる間、びょうぶが立っておりました間に、ずいぶんヨーロッパに伝わっておるということも顕著な事実であります。そういう際でありまするから、ここに新しく立ち上っておりまする、また躍動しつつありまする中国を、無関心で、あるいは見ざる聞かざるという状態では、日本立場は立ちおくれるのみであることを考えまするので、ぜひあなたの内閣機会において早く中国と国交回復の手を打つことを勧めたいのであります。これは政治上の問題、ことに台湾問題についていろいろと問題のあることは申すまでもありませんけれども、それより大きな問題が横たわっておる際、また日本立場を自主的に考え、経済的に、さらにまた文化的に国際地位などを考えていきまするならば、あなたの内閣ができましたるこの機会に、中国問題についてはまだ時期がきていないとか、これはまだ手を触れない方がいいとか言っておってはだめだと思うのであります。思い切って国交回復の道をつけるために国家として処理をなすべきとき、チャンスがもう来ておると思います。民間団体もいろいろ貿易の問題やら文化の問題についてそれぞれ必要に迫られたる関係から交流をいたしつつある際でありまするので、政府としても拱手傍観しておる時代ではない。思い切ってこれらに対して手を打つべきときがまさに来ておると思うのであります。いかがでしょうか、これに対する御所見を伺いたいと思います。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 中共との関係は、今片山さんもお話しのように、日本としては、これはきわめて深い関心を持っておる事柄でございます。ただ御承知のように、今の国際情勢から見ますると、すでに日本は国府を正式に承認し、これとの間に友好関係を作っております。国連におきましても、ソ連までやはり国府を正統政府として認めて、国連理事国として活動しておることも御承知通りであります。これらの関係から、いまだ国際連合におきましても多数の国は、中共の加入問題、代表権の問題について、これをまだ認める状態にまで行っておりません。従いまして私としては、従来の貿易やあるいは文化の問題、あるいはさらに進んで引揚者の問題等につきましては、相当にこれを進めていく考えでありますが、今お話しのように、この機会にさらに中共を承認することについて明確に意思を表示するとか、あるいはその方向に強く進んでいくとかいう時期ではまだないと私は考えております。
  24. 片山哲

    片山委員 ただいまの御答弁はまことに不十分であって、不満でありまするが、この問題については午後勝間田君が質問を継続されることに譲りまして、私は時間の関係から結論に入りたいと思います。  インドのネール首相、さらにはまた中共の周恩来首相が、中共は政治的には多少違いまするけれども、いずれにいたしましても、この両国とも偉大なる軍事力を持っておるわけもありません。さらにまた大きな経済力を持っておるわけでもありません。文化が非常に高い、世界の人類の幸福に貢献する指導的な立場に立っておるというわけでもありません。しかしながらネール首相の発言、さらにまた中共周恩来首相の発言は、世界的に大きなる影響力を持っております。もちろんこれは地理的、歴史的な環境からくるいろいろの状況はありまするけれども、思うに、何か一つのよりどころがその背景となっておるに相違ないと思うのであります。ソ連、アメリカが大きな軍事力と経済力とをもって進んでおりまするに相応いたしまする大きなる世界的な影響力を持っておりますることを考えてみますると、特にネール首相を主にして考えてみますると、何かやはり外交を推進する上において、あるいは国家の運営、運行をしていく点において、ある一つの高き構想を持っておる。高き理想を持っておる。資本主義か社会主義かというようなイデオロギーの問題の前に、一つの新しいアイデアを持っておると思われるわけであります。高き理想を持っておると簡単に表現をいたしておきたいと思いまするが、そういうことによって世界的な発言力、魅力が今日影響力を大きくしているゆえんであろうと思います。あにただに軍事力に依存したり、経済力のみにたよるという時代ではなしに、物質的な背景なくとも大いに発言し得る情勢になってきておることを考えてみまするならば、わが日本も、乏しき経済のもとに戦争で負けましたるこの狭くなっておりまする日本、人口の過剰な、経済も豊かでないわが日本は、何によってこれから国際的な立場世界に理解させていくかと申しまするならば、一に一つの構想、高き理想を持って進んでいく、人類の平和、世界の幸福のために日本がこれから進んでいく、こういう建前を今日はっきりすることが最も必要と思うのであります。これについて絶好のうしろだてとなり、背景となり、べースとなりまするものは何であるかというと、私はさらにまた引きまするようでありまするけれども、重ねて申さざるを得ないのでありまするが、これが憲法第九条であろうと思います。これは大きなる日本の戦後の平和政策、平和外交日本の国是、日本の今後における国柄を表明いたしましたる宣言であろうと信じておるのであります。  元来この憲法は、第何条々々々と分け過ぎた傾きがありますが、そういう手続上の問題のことをかれこれ言うのではありませんけれども、一貫せる一つの宣言の文筆と見たいと思います。ことに前文におきましては、最初民主主義の構想をうたい、後半においては平和の原則をうたっております。人類普遍の原則は民主主義であり、国家間の政治道徳は平和である、この構想に立ちまして、第九条によって、日本外交基調を表わし、一切の国際紛争を解決するに断じて武力は用いない、戦力はこれを放棄する、交戦権はこれを認めない、徹底的に話し合い外交をもって日本外交基調とする、こういうことを明らかにいたしておりますのが、この第九条であります。ですから日本はこれで立っていけばよろしいのであります。ジュネーヴ最高精神話し合い外交世界は新しい発見のように、これによって第三次戦争への突入は防止せられることができた、話し合いでやっていこう、最高精神とその当時伝えられましたが、いずくんぞ知らぬ、わが日本におきましては、十年前にすでに第九条によって、戦争を放棄する、そうして国際紛争はいかなる国際紛争といえども話し合いで解決していくのであるという、いわゆる話し合い外交世界に宣明をいたしました。先手を打って話し合い外交世界に明らかにいたしておりますのが、この九条であります。これは世界に向って誇りをもって進んでいくべきであろうと信じます。世界人類の幸福のために日本はこれだけの働きをして、戦後目をさまして、ほんとうに新しい国を再建し、よみがえらすための基本といたしましては、平和外交を推進するものであるということを明らかにいたしておりまするこの九条がありますので、この大きな高き理想をもって立っておりまする九条は、どこまでも生かさなければなりません。そうして前文の中に書かれております通り国際間の問題は民主主義によって人類普遍の原則でやっていこう、国際間においてはあらゆる問題を政治道徳の普遍性たる話し合い外交でやっていきましょう、武力を用いず、暴力を用いず、話し合いで理解を深めてやっていきましょう、信頼と正義によっていきましょう、秩序を重んじてやっていきましょう、りっぱな日本外交基調をここに指示いたしておると思います。  これは変えるべきではない。AAグループに対する日本外交も中共に対する外交も、一切がっさい日本はこれを中心としてやっていくべきであります。必ず世界はこれを理解するに相違ないと私は信ずるのであります。これはネール首相の高き理想に相応するものである。もう一つ言いますならば、平和五原則にも相応するものである。今日アメリカは、AAグループの若き民族意識に対しまして目をさまそう、その若き意識をどうしても取り上げていかなければならない、力の外交だけではやっていかれない、こういうことを感じておるに相違ないと思います。やたらな資本主義的な、また防共軍事同盟式なやり方では行き詰っておるのであります。またソ連においても先ほど申しました通り、東欧問題で悩みあり、ヨーロッパ各国また悩みある際において、この戦争で一敗血にまみれて、新しき国として船出をしようとするこの日本は、この憲法こそは日本の救いであります。この大衆の幸福を実現さすために現われたこの憲法でありまするからして、大きな構想と大きなる理想をこの憲法の中から取らなくてはなりません。区々たる防衛問題——鳥の羽音に驚く平家の落武者のように、がたがたおそれて、敵が入ってくるんじゃなかろうかというようなことを驚いておるような時代ではないと思います。問題がありますならば、もちろんその問題は必ず半年前なり一カ年前からわかるのであります。いずれにいたしましても、突如として攻めてくるとか、押し寄せてくるとかいうような事柄は、もう今日はあり得ません。かりにありといたしましても、それはすべて国際紛争の一環であります。紛争なくして、突如として襲撃するというようなことはあり得ざる事柄であります。一切の国際紛争は武力では解決をしない、こういう建前でいきまするならば、防衛問題もそう心配をする必要がない。これは国民に対して、政府みずから陣頭に立ちまして、この国際情勢から憲法精神を教えるべきであります。憲法制定当時、普及会によってこの精神を教えていく途中から変ってきたことを、私は非常に遺憾に思うのであります。そういう意味から申しまして、この九条は、防衛問題ではなくして、外交の基調を示しておるものである、あなたが平和外交をやろうとする、あなたがほんとうに自主独立外交をやっていこうとする、その外交の基調をここに示しておるものであるから、この話し合い外交で終始する、話し合い外交一点張りで世界に打っていくのである、こういう信念を持っておるものであることを、日本世界表明しなければなりません。そういう意味から、この憲法問題は国内問題より外交上の重要なる役割をなす問題に移っておるということを私は信ずるのでありますので、その点について、九条に関する首相の文字的解釈ではない、外交問題に対する基調であるという私の解釈についての首相のお考えを聞きたいのであります。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 現行憲法を貫いておる民主主義、平和主義、また人権を尊重するというような原則は、私自身もあくまでも同様にこれは守るべきものであると思っております。また外交は、あくまでも話し合い外交世界の平和と人類の幸福を増進することに努力すべきであるということも、全然同感であります。憲法九条の問題は、これはいろいろな点があると思います。今お話のように、国際紛争をわれわれは武力をもっては解決の手段とは考えない、国際的の問題は武力を用いることなく、あくまで話し合いでやるということにもその重要な意義があることも、これはお話の通りであります。私は、外交の基調はあくまでも話し合いである、従ってあらゆる場合に率直にわれわれの主張を話し合っていかなければいかぬということを、外交方針におきましても述べておりまして、その点につきましては、私はお話と同じような考えを持っておるということを申し上げておきます。
  26. 片山哲

    片山委員 さように考えていきますると、憲法改正問題はそう急を要する問題ではないのであります。従ってこの憲法国民の大典として十分に守っていく、この国民憲法に対する信頼感と自信、これが日本の再建の根本方式であるということを疑わしめないように、政府みずからやってもらいたいのであります。  そこで一つこまかい問題になりますけれども、本年は憲法制定後十年でありますから、十年を期して国家的な祭典を行うことをお勧めじたいのであります。そして憲法に対する疑惑を一掃する、あるいはまた信頼感を深める、国家あげてこれを記念するということをやってもらわなくてはならない。憲法に対する信頼感が薄らぐときには、とかく国は乱れるものであります。思想も悪化し犯罪も増加いたします。ことに道義廃頽などのことを考えてみまするならば、精神的な弛緩が、この憲法問題をかれこれ言うことによって現われてきたのではなかろうかと思いますので、どうしても道義の高揚、粛正、汚職、疑獄の根本的な芟除等を考えて、緊張した気持で一新していくためには、所信表明で青年に呼びかける演説をせられましたが、国民全体の道義心を振い興し、真に正義を愛し、平和を愛し、民主主義こそは日本政治の根幹であるということを現わすためには、十年を転機といたしまして、ここに政府みずから記念式典を挙行することが必要なことであると私は信ずるのであります。そういう意味から申しまして、十年を機会として首相がこれをやる意志ありやいなや、この問題について伺いたいと思います。(拍手)
  27. 岸信介

    岸国務大臣 憲法の問題につきましては、片山さん自身憲法擁護の非常に強い御主張があると同様に、国内におきましては自主憲法制定の連動が相当強く行われていることも事実であります。私はそういう意味において憲法調査会に対して、憲法擁護論者も、また自主憲法制定論者もすべて入って、公正な立場からその論議を尽して、この問題に関する国民の帰趨をきめることが、日本の現在からいって一番必要である、かように考えまして、実は憲法調査会法の提案の際にも、私は当時幹事長をいたしておりまして、社会党と共同提案にしようということを申し入れたのでありますが、これは私どもの意見が通らずに、自由民主党だけで提案をいたしたなにもあります。その後この調査会を組織するに当っては、社会党の方々もぜひ参画して、日本憲法に対する国民の向うところを帰一せしむるように、国論が二つに分れて対立をしているという状態に置いておくことは非常に遺憾であるということをかねがね考えております。今十年の式典に関する首相意見をおただしになりましたが、私今まで考えておりませんでしたから、検討いたしたいと思います。
  28. 片山哲

    片山委員 もはや時代が変りまして、防衛問題のみに頭を突っ込んでいる時代ではない。危険はどこにあるかというと、国内における思想の問題やら、生活の困難やら、あるいはまた秩序が乱れるということにあるわけでありますから、外敵に対して心配する費用をさいて、国内対策に力を入れて、社会保障なり、あるいはまた思想問題につきましての根幹をよく調べて、官僚的な、独裁的なやり方ではない、新たなる対策を立てるということが、日本において今日必要であります。攻めてくるというような、仮想の敵国も今日ないのであります。問題は、言うまでもなく中東あるいは東欧に集中いたしておるのでありますから、極東の一角において落下傘部隊とか夜襲とか敵前上空とかいうような、そんなことに心配をしておる必要はないのであります。すでに南極探険から、あるいは原子力の時代となって、大きく移り変った今日でありますから、構想を新たにいたしまして、その新しい時代に処する対策を立てることを勧めたいのであります。依然として憲法調査会にたよっておられることは、私の大きな失望であります、こういう意味において、意に話し合い外交世界平和のために進んでいこうとする首相の意志があるならば、この憲法は守るべきであります。同時に、平和愛好者が日本においても非常に多い。そうして原爆、水爆の問題にしても、単に実験のみならず、製造から、貯蔵から、一切を禁止して、これを平和産業へ切りかえようという国民の熱望と悲願がいやが上にも上っておる際でありますから、これらの平和運動を十分理解せられまして、そうしてこの理解をいたします基本といたしましては、やはり第九条が必要である。一たん戦力を放棄して、まる裸となって世界に打ち出したる日本は、このまま引き下ってはいけません。どうしてもわれわれは、第三次戦争防止のために進んでいきたい、断じて戦争によって事を解決するというその誤れる思想を根本的に打ち砕いていくということを、世界に示さなくてはならないと存じます。  以上の希望を申し上げまして、私の質疑はこれで打ち切りたいと思います。
  29. 山崎巖

    山崎委員長 午後一時十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  30. 山崎巖

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします、勝間田清一君。
  31. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、総理大臣は、今度石橋内閣予算をそのまま引き継いで、しかもこの実行については責任を負うという態度を明らかにいたしたのであります。これは一見正しいかのごとくに見えますが、私をもって言わしむれば、まことに遺憾なことであると思うのであります。今日まで社会党は石橋総理の病気にかかわらずこれに協力をいたして審議を続けて参ったのでありますが、石橋内閣予算が幾多の点で欠陥のあることは明白になったわけであります。特に、わが党が今日まで主張したように、食管会計赤字は明白に補正予算で埋めていくべきである、また、在外資産の補償等の問題も、単に十億だけ計上するという態度ではなくて、その具体的な内容を明らかにして国会審議を求むべきである、こういう主張を続けて参ったことは、これは岸総理も十分御理解だと私は思う。しかも、これらの問題が、どちらかといえば党内事情の不一致のためにこれができない、これは今日天下周知の事実であります。また、今度の予算を通じてみましても、財政法上の疑点があるとか、あるいは補正予算を第一次、第二次、場合によっては一十二年度補正予算も作らなければならないという問題もある。また、現在日本のいろいろの世論を聞いてみると、今度の予算にはインフレの懸念があるということもはっきり指摘されておるのであります。こういう問題が未解決のままで、それを引き継いで、しかも実行の責任を負うというのは、私は今日までの国会審議を無視いたしておるとさえ極言できるのではないかと思う。閣議を開いてこれらの問題に対する態度を明らかにして、岸内閣の新たな構想として予算を出してくべきが当然であったのではないか。それを行うことなくして、ここにイージーな道を選ぼうとする岸内閣の無責任態度というものにまず失望せざるを得ないのである。ここで何ゆえにそういう措置をとろうとしなかったのか、私はまず岸さんの責任を追及したいと思うのでありますが、見解を一つ伺わせていただきたいと思う。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 予算を新たに提出し直せという御議論でありますが、実は、御承知のように、今回石橋内閣が総辞職しまして岸内閣になりました経緯というものは、普通の場合と違いまして、ただ単に石橋首相が長期にわたる病気のゆえをもって辞任をされる、しかもこの石橋内閣において提出いたしました予算石橋内閣の閣議において責任をもって決定をした予算案でございます。しかも今回私が指名されまして内閣を組織することになったのでありますが、この閣僚におきましても石橋内閣の閣僚と同様な閣僚で組織をいたしております。私自身石橋内閣時代すでに臨時代理として国会責任を持って、石橋内閣の提案しております予算案その他について全責任を持ってこれが成立に努力をいたして参っておるのであります。こういう事情でございますので、今回の措置としましては、私は石橋内閣においてわれわれが閣僚として責任を持ってきめました予算案をそのまま引き続いて御審議を願って——もちろん御審議の途中でありますから、石橋内閣時代にも御協力によりましていろいろな御審議を得ました。また、この論議を通じ、今後の御審議の終ります前にわれわれとして措置しなければならぬ問題も、今朝川俣委員から御指摘のありました点等もございます。これらの点につきましては、われわれは誠意をもってその不十分な点を補完して参らなければならぬと考えておりますが、いずれにしましても、そういう経緯によりまして岸内閣ができたことを考えますと、石橋内閣時代の予算案をそのまま継承してこれを継続審議をしてもらうことを国会に求めることが決して間違っておらない。かように考えておるわけであります。
  33. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そういう考え方で進められてくる。しかも、あなたはおそらくここで私が指摘したような問題が不十分なままに行われておるというこの事実は認めざるを得ないと思う。しかも、われわれ審議に当る者から言えばぺンディングな問題があまりに多過ぎる。しかも重要な問題がペンディングになって審議が進められるという上においては、早く言えば審議に非常に差しつかえるわけであります、しかも、もしあなたがここでほんとうに謙虚にこの問題を扱っていこうというならば、少くとも今国会における審議を通じて修正すべき点があれば修正に応ずる用意があってしかるべきだと私は思うのだが、あなたはその見解について修正に応ずる用意があるかどうか、この点をお聞きいたしておきたいと思う。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 私どもは、十分、この予算案を出しますにつきましては、各種の問題を検討して、これが最も適当であるという見地に立って提案をいたしておりますが、御審議を通じてもしも多数の方がこれはこういうふうに修正した方がいいという結論が出ますならば、私はそれを受け入れるに決してやぶさかではございません。
  35. 勝間田清一

    ○勝間田委員 第二次補正予算を出すということが新聞に伝えられているのでありますが、池田大蔵大臣は第二次補正予算をお出しになりますか。
  36. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのところ三十一年度中におきまして不足を生ずる見込みのものがかなりあるのであります。軍人恩給とかあるいは義務教育費とか等々ございますので、ただいま、第二次補正予算提出につきまして検討を加えております。
  37. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その第二次補正予算には三十一年度の食管の赤字の百六十一億を含めて出しますか、いかがでございますか。
  38. 池田勇人

    ○池田国務大臣 三十年度の決算の確定をいたしました食管会計赤字三十四億円につきましては提出する考えでおりまするが、三十一年度の赤字につきましては第二次補正予算で組む考えは持っておりません。
  39. 勝間田清一

    ○勝間田委員 三十一年度の食管会計赤字は今度の第一次補正予算には出さないが、しかし赤字のあることは今日明白であるから そうすると、池田大蔵大臣の論理をもっていたしますれば、三十二年度補正予算としてこれを出すつもりであるかどうか。
  40. 池田勇人

    ○池田国務大臣 決算確定いたしまして、その数字を見まして、その場合に適当な処置をいたしたいと思います。
  41. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それは、いわゆる実質上では、三十一年度の赤字を三十三年度の補正予算で出す、こういうことに解釈してよろしゅうございますか。
  42. 池田勇人

    ○池田国務大臣 三十二年度の補正予算に出しますか三十三年度の予算措置をいたしますか、ただいまのところきまっておりません。
  43. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いずれにせよ、ここで三十一年度の食管の赤字は将来三十二年度なり三十二年度なりに補正予算で出すということが明らかになった。そうすると、大蔵大臣の今度出された三十二年度の予算案というのはきわめて不備なものがある、早く言えば明白な根拠に立っての予算の提案でないということがはっきり言えると私は思う。そういう半面から見まして、今度は逆に、三十一年度の自然増収で第一次補正予算を組んで、しかもいわゆる産業投融資会計にこれを繰り入れる等の措置をとる、こういう措置と、明らかに赤字のある食管会計の補正予算を今度組まないという処置と、あなたは一体この矛盾をどう解決されようとするか。
  44. 池田勇人

    ○池田国務大臣 結論から申し上げますと、私は矛盾いたしていないと考えております。まず、食管会計の三十一年度の赤字見込み額につきまして、これをいかに処理するかという問題がございます。もともと、特別会計の赤字につきましては、これは一般会計から補給するとはきまっておりません。しこうして、食管会計赤字につきましては食糧管川狩別会計法の附則第二項によりまして、決算上の赤字は当分のうち一般会計から補てんすることができると書いてあります。決算上の赤字は一般会計から補てんし得ることに規定ができております。従いまして、今川計画しております三十年度の決算上の赤字法律によらなくて当然補正予算で組めるのであります。しかし、あなたのお話のように三十一年度決算確定していない赤出を三十一年度の補正予算で組む場合におきましては特別の法律が必要であるという点から見ますと、特別会計、ことに食管会計赤字につきましては、本則は、附則に規定しておりますごとく決算確定して一般会計から補てんするのが本則でございます。しこうして、お話のように今やるとすれば新たに法律を設けなければならない、こういう点を勘案いたしますと、私は三十一年度の赤字は決算確定をして処置すべきものと考えておるのであります。それは、従来の例からいたしまして、たまたま三十年度で見込みでやったことはございますが、それはまた今回のように赤字が出てまた補てんしなければならぬ、こういう二重の手間に相なっておるのであります。ことに、われわれは、ただいまのところ、食管会計につきまして特別調査会を設けて、その合理化について根本的の検討を今度は加えようとしておる際でございますので、本則によりまして決算確定後いたしたいと思います。しこうして、今申し上げましたごとく、三十一年度の赤字につきましてわれわれは原則としてこれは一般会計から補てんするつもりでございます。消費者価格の上げ下げによって過去の赤字をとやこうする考えて持っておりません。
  45. 勝間田清一

    ○勝間田委員 池田大蔵大臣は、それならば三十一年度の自然増収でなぜ産業投資会計へやったか。私はこういう措置をとるというあなたの根拠がわからない。一方はとる、一方はやらない、この見解をあなたは一つ明快にしていただきたい。
  46. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先の御質問でお答えすることを忘れておりましたが、三十一年度の自然増収を三十二年度の財政投融資に使いますゆえんのものは、御承知通り、三十一年度には例年にない相当の自然増収が出て参りました。しこうして、今の現況から申しますれば、三十二年度におきまして産業上の隘路その他につきまして相当の金を必要とするのでございます。従いまして、財政法第四十四条の規定によりまして、三十一年度の自然増収を、新たに法律を設けて資金を作り、この資金を三十二年度において投資特別会計に繰り入れようとするのでございます。これは、財政の弾力性を持たして、そうしてただいま必要であります産業の基盤を強化する適当な措置と私は考えておるのでございます。
  47. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いろいろ理屈を言われますが、結局は、政府が米価を引き上げてそれで処置できればそういう予算を組みたかったところが、米価を上げて云々するという態度が党内で意見がまとまらなかったから、仕方がないからこういう処置をとる、これがほんとうでしょう。私はあとからつけた理屈はいろいろつけられると思うのでありますが、実際は党内の意見の不一致で予算単価の一番重要である米価の問題をきめることなくしてここで予算を組んでおるというのが私は今日の実情だと思う。こういうのは私はほんとうの予算を組む態度ではないと思うのであります。  一体、在外資産の補償の問題も、今一生懸命で与党内で話をしておるようでありますけれども、一体どういう結論が出るのか、今日これが明らかにならない、この点を明快にしていただきたいと私は思う。
  48. 池田勇人

    ○池田国務大臣 在外財産、ことに引揚者の問題につきましては、御承知通り在外財産問題審議会の答申を得ましたので、その答申の趣旨にのっとりどういう措置をとるか、誠意をもって政府において検討を重ねておるのであります。まだ結論までには至っていないようでございますが、この問題につきましては厚生大臣が主として考慮をめぐらしておられるようであります。一応の断片的の報告は受けておりますが、この問題は厚生大臣からお答えする方が適当だと思いますから、おいでまでしばらくお持ちを願いたいと思います。
  49. 勝間田清一

    ○勝間田委員 厚生大臣がおらないようでありますから、しばらく質問を留保いたしておきたいと思います。   〔「厚生大臣はどうした」と呼び、その他発言する者あり〕
  50. 山崎巖

    山崎委員長 今決算委員会だそうです。すぐ呼びますから……。
  51. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次にお尋ねをいたしてみたいと思うのでありますが、私は、今日までの予算審議を通じて、予算の大きな問題であるインフレになるかならぬかという議論が非常に熾烈なものがあったと思うのであります。しかも、今日本国民は、町に行っても村に行っても、一体インフレになるのかならぬのかということが一番の関心事になっている。本朝の新聞を見ても、山際日銀総裁は大阪に行っているが、その大部分の質問がインフレ懸念に対する問題であることが明白である。私はここでインフレ論争を政府としようとはもはや思わない。それはジャーナリズムの論争的なものであっては国会の密蔵の責任を果せないからであります。要は、こういう具体策をとるから従ってインフレ懸念は解消できるんだ、この政治論というものでなければならぬ、政策論というものでなければならぬと私は思う。そういう意味で、インフレ懸念を解消するに足る政府の具体的な政策というものは一体何なのか、この問題を私は政府に今日附いてみたいと思うのであります。しかも問題を私は三つに分けてお聞きいたしたいと思う。一つは、当面起きているいろいろの金融財政上の逼迫状態に対して、特に三月末に至る、特に第一・四半期と思われるこの部分に対して一体どういう案を持っているのか。第二番目は、三十二年度予算一般の傾向に対して政府はいかなる政策をとるのか。もう一つは、国際経済その他の問題と関連して、もっと長期にわたっての見通しの上に立った財政政策というものの基本をここでただしてみたいと思う。  そこで、まず第一に池田大蔵大臣に一つお尋ねしたいと思うのだが、最近の金融の逼迫状態はきわめて重大なものがあると私は思う。昨晩新聞の報道するところによれば、すでにコールは日歩三銭という状態が出ている。過般の二十七日には特に財政の引き揚げが相当多かったために一挙に二銭九厘何毛かに上っている。このコールの値上りということは一つの大きな現象になっている。これは一つの象徴状態だと思う。反面、日銀の貸し出しを見ておりましても、一月の状態を見ると二百六十一億も実は増大をいたしておるという状況、従って月末の残高は大体一千六百六十億円だといわれている。全国銀行の貸し出し状況を見ましても、一月は百七十二億。昨年の一月は御存じの通り三百五十五億減ったんです。昨年は減ったが、今年の一月はふえた。合計すれば約五百億もそこに大きな食、い違いが出てきている。しかも、その間において、私たちが見ていると、大体六口十億くらいの増資が行われた。その行われた増資も結局回収に回らなかったということも、これは具体的にわれわれは知ることができる。従って、今日までよく池田大蔵大臣が言われておった、物価は横ばいであり、金利は下っており、あるいはオーバー・ローンは解消しておるという状態ではなくて、ここにまたはっきりオーバー・ローンの形が出てきた、こういう状態が今日生まれておることは大蔵大臣も承知されておることと私は思う。しかもその原因を考えてみると財政資金の大きな引き揚げがあるということは大きな問題でございましょう。もう一つは、輸入が非常に多くなった。従って売るための輸出金融というものが相当金融を圧迫しておるということも明かでありましょう。そういう問題を考えてみるときに、この一−三月の金融対策というものは一体どうあってしかるべきなのかということは今後のインフレ対策に非常に重要な示唆を与えるものだと私は思う。そこで、こういった状態に対する、当面の三月末に至るまでの間のインフレ対策を一体どうやるのか、これをこの際あなたは明らかにしていただきたい。
  52. 池田勇人

    ○池田国務大臣 例年と違いまして、この一月から三月までかなりの引き揚げ超過であることはお話の通りでございます。しこうして、その原因も、租税の自然増収並びに輸入超過によります輸出金融等、あるいは昨年に比べまして米の供出が減ったことなどから、散布超過が多くならなかったのでございまして、金融逼迫の原因でございます。ことにまた、詳しく申しますれば、昨年中に非常に投資が盛んに行われた、その余波が今続いておるということも原因の一つでございます。また、もう一つの原因は、各特別会計、たとえば国鉄あるいは電電公社等におきましては、各二百億前後の自然増収がございまして手持ちになっておることも原因であるのであります。  従いまして、こういうものを解消いたしますにつきましては、今御審議願っております予算を早急に通過させていただきまして、三十二年度からどんどん——散布超過とは申しませんが、この正常化を早くするようにすることが第一でございましょう。しこうして、その予算通過までの措置といたしましては、まず、自然増収によってふえました政府の資金を民間に還流することに努めております。たとえば、昨年の末に八十億円の資金運用部資金によりまして金融債を引き受け、また二月に百二十億を出しますし、また三月の四日には百五十億の資金運用部資金によりまして金融の緩和をはかろうとしております。また、三月の中ごろには確定申告によりまして引き揚げ超過が相当ありますので、それに対しましても百数十億を出しまして財政の引き揚げ超過の緩和をいたしたいと考えております。また、金融上の措置といたしましては、預金の増加をはかりますと同時に、貸付もできるだけ健全なものであり、どうしても必要なものからやっていく、そうしてがまんするものはがまんするように貸付を延ばしたい、こういうような気持を持っております。なお、いろいろな点で議論がございますが、高率適用その他につきましては、今後の情勢を見て考えなければならぬかと私は思っておりますが、ただいま大蔵大臣として高率適用等の問題につきましてはまだ結論を見出しておりません。  要は、こういう引き揚げ超過の原因を調べまして、できるだけ財政資金をもって金融調整を行うと同時に、日本銀行をして金融機関と極力協調して貸し出しの抑制に当り、預金の増加をはかることをする、そうして三十二年度の予算が早く通って財政経済が軌道に乗ることを望んでやまないのであります。
  53. 勝間田清一

    ○勝間田委員 財政の引き揚げ超過に処して早く本予算を通してもらいたい、——早く三十二年度予算が通ればこうした状態が緩和されるという一つの役割を持っておることは、私はあなたと同感であります。だからといって、この予算審議がルーズであっていいという理由にはならない。もしそういうことであるならば、第二次補正予算が百二、三十億きまっておりながら——伝えるところによればまだそれはきまっていないんだ。しかも、何だったら本予算が通ってから、参議院の方に向ってから一つ第二次補正予算衆議院に出そうというのが政府の考えのようである。第二次補正予算が少くとも財政上の引き揚げ超過に重要な影響があるとすれば、なぜ第一次と一緒に出さなかったか、なぜ早く措置をしないのか。そういうことをやらないでおいて三十二年度予算を早く通してくれということは、私はおかしいと思う。池田大蔵大臣、どう考えますか。
  54. 池田勇人

    ○池田国務大臣 第二次補正予算につきましては、先ほど申し上げましたように、数字を検討いたしております。また、三十一年度補正予算にいろいろ考えております沖縄の引揚者の問題につきましても、ただいま話題になりました在外財産の問題との関連もございますので、できるだけ早く出したい。しかし、それにつきましても、財政上できるだけのことは、資金の運用部等を使いまして緩和に努めておるのであります。衆議院におきまする三十二年度の一般会計その他の予算が通ってからということは、私は決して考えておりません。できるだけ早く出したいと考えております。
  55. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうなれば、もう少しお尋ねいたしますが、今度の三十二年度予算衆議院において通る以前に第二次補正予算提出するということは確約できますか。
  56. 池田勇人

    ○池田国務大臣 調査中でありますから、確約はできません。なるべく早く出したいと思います。
  57. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは重大なことでありますから、私はこれ以上論議いたしませんが、しかし、第二次補正予算を出さずして三十二年度本予算を通すことはおそらくできないであろうということだけはここで明日に申し上げておきたいと思います。  そういう財政措置を怠っておきながら、財政の引き揚げが二面において行われておって、いやそれで資金運用部資金で八十億あるいは百二十億くらいのいわゆるマーケット・オペレーションをやるからこれで何とかなるだろう、これを一つの有力なてことしておるようだけれども、そういう立場をもっていたしましても、おそらく三月はたとい丘五十億のマーケット・オペレーションがあったって五百五十億くらいの引き揚げ超過になると思っておる.そういう点を考えてみると、決して楽観を許さないと私は思うのだが、経企長官は一体どうなんだ。あなたは三月の財政引き揚げはどのくらいになると思っておるか、この点をはっきり伺ってみたいと思う。
  58. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 三月の引き揚げ超過につきましては、ただいま検討中であります。
  59. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう三月に入ったわけでありますから、引き揚げ超過が一体幾らになるという見通しを立てずして金融財政の措置がとれますか。そういうその日限りの財政政策というものがあるからインフレ懸念になる。私は経企長官の職務怠慢だと思う。池田大蔵大臣はどういうように見積っておられますか。
  60. 池田勇人

    ○池田国務大臣 三月の引き揚げ超過の見込みにつきましては、いろいろなデータがございますが、私はきょうくらいに結論を出したいと思っております。何と申しましても輸入の状況が大きく支配いたします。また、ことに食管の方での外麦の買い入れ等いろいろな点がございますので、今結論は申し上げられませんが、やはり一月、二月と同様相当の引き揚げ超過になると考えております。
  61. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうなると、やはり引き揚げ超過の面がここで明らかになっていないというまことに残念なことでありますが、そういう状態下で一つの金融操作をやろう、こういうわけでありますから、私は一そう別離だと実は思う。そこで、現在政府が行なっておる面で、補正予算もおくれるんだ、三十二年度予算も現在の審議状況からいけば暫定予算を組むか組まないかわからないというような状態に追い込まれておって、金融は逼迫して、コールの値上げはどんどん出、日歩三銭という状態が今出ておる。そこで、処置ができないことは明らかだ。そこで、池田大蔵大臣は、ここでなるべく銀行の引き締めをやるから、あるいはなるべく選択の融資をやるから、こういうことを言われるけれども、なかなかそれではおさまらぬと私は思う。特に最近の金融資金の状態から見てもそうだと私は思う。そこで、従来あなたの行なってきた、いわゆる日銀の市場操作なり、あるいは公定歩合制度なり、こういう問題だけで一体処置ができるかどうかということを私は疑問に思う。それから、もう一つ疑問に思うのは、一体公定歩合をこのままにしておくのか、これを緩和しなければならぬのか。おそらく緩和する方向にあなたは追い込まれると私は思っている。それから、もう一つは、高率制度の緩和もやらざるを得ないという形になるのではないかと私は思う。結局そこに追い込まれるのではないでしょうか。あなたはここを一体どのようにして切り抜けようとされますか。公定歩合及び高率適用について、あなたはどういう考えでこれから臨もうとされるか、この点について私はお伺いしたいと思います。
  62. 池田勇人

    ○池田国務大臣 高率適用の問題は、先ほどもお話し申し上げた通りでございまして、私としては考えてはおりまするが、結論を出しておりません。これは日銀の主として行うことでございます。  コールの高いということは、高率適用にかかるところが多くなりつつあるということでコールが高いのであります。ゆるめるということは、高率適用にかかる場合を少くすることをゆるめるというのでございましょう。  それから、公定歩合の問題についてゆるめるというお尋ねでございますが、公定歩合については、私は今ここでとやこう言う場合でないと思いますが、最近におきまして、御承知通り一昨年から昨年にかけまして各国とも公定歩合の引き上げをいたしております。イギリスやあるいは西ドイツにおきましてはいまだかつてない高金利政策をとっておりますが、昨年の秋ごろから、イギリスもドイツも五分五厘でございましたが、五分に下げております。それから、アメリカの方はやはり三分を堅持いたしております。日本におきまして、今のような状態で公定歩合を上げるか下げるか、あなたはゆるめるということをどっちにおっしゃったのか知りませんが、私は、今問題になるといたしまして、公定歩合を引き下げるということは議論はないと思います。上げるかどうかという問題につきましては、私は、こういう重大なことは、よほど世界情勢、ことに日本の今の金融市場を十分考慮しなければ言えないことだと思っておるのであります。こういう問題は日銀その他各方面の意見等を聞きまして慎重にきめられるべき問題でございます。
  63. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私の言葉が若干不十分であったかもしれませんが、もちろん、私の言うゆるめるということは、いわゆる高率適用をゆるめるかどうか、もう一つは、このままの状態で抑えようとするならば公定歩合を引き上げざるを得なくなるのではないか、そういう状態に私はあると思う。それを一体あなたはどういうように進めていかれようとされるかを私は聞いているわけだが、もちろんあなたは答えがない。答えられないという面も実はあるに違いないけれども、私はそこに問題の限度が出てきていると思う。そこで、このままの状態からいくと、現在の財界の状態から申しますならば、やはりこの問題に対してはある程度この際明確な態度をとっておくことの方が、私はもっと安定条件になると思っている。これを日銀と大蔵省とが相談をしていろいろやっておられるようだけれども、この問題だけはまだ研究しておらぬかのように新聞では発表しておる。その状態がいろいろの思惑となって現われてきておる。だから、あなたはこれに対してどういう厳然たる態度をとっていかれるのか、それをはっきりさせた方がむしろ妥当だと私は思っているのであります。
  64. 池田勇人

    ○池田国務大臣 高率適用の問題につきましては、先ほど申しましたように相当議論がございます。それはなぜかと申しますと、ただいまの高率適用の規定は昨年の金融緩慢のときに設けられたのでございます。従って、金融情勢が変ったから議論があるようでございます。ことにコールが非常に高いのはこれが原因だという議論から来ておるのでございます。しかし、私、寡聞にして、中央銀行の公定割引率を事前に国会その他新聞に発表した例をいまだかつて聞いたことがございません。こういうことは軽々しく言うべき問題でございません。高率適用の分はどこの国でも慎重に検討してぱっと言うだけでございます。前から大蔵大臣やあるいは日銀総裁が議論をして、こうやりますああやりますということは、いまだかつて世界中にないと思います。私は、問題はありましょうが、慎重に検討しなければならぬ、こういうことをお答えするよりほかに答えようがないのでございます。
  65. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もちろん、公定歩合を今ここでどうするかということを聞くのではない。それが破れるかもしれないというところに、問題が限度に来ているのではないかというところに、私の警告があるわけです。しかし、高率適用の問題は私は論外だと思う。その点で、結局、この問題を論議していくと、やはり日銀の信用膨張で解決をしていくという方向に進まざるを得ないのではないかという感じがする。そこで、あなたの言う貯蓄の限度内における貸付という考えが破れていくのではないかということを考える。その蓄積の範囲内における貸付というものが破れずにいくための処置というものに対して、ただ蓄積を期待するとか、ただ何々をするということだけでは、もはやおさまらぬのではないかというのが私の考えなんです。そこが懸念なんです。その懸念の点に対してあなたの答弁がなければ、世間はやはり納得がいかないだろうと私は思う。この見解についてあなたにもう一度お尋ねしたい。
  66. 池田勇人

    ○池田国務大臣 原則は、この前申し上げましたように、貯蓄の範囲内において貸し出しをするという原則によっていくよりほかにございません。それならば貯蓄をいかにして増強するかという問題でございます。まず第一に物価の安定を見ることでございましょう、また、奨励策として税法上その他の措置がございましょう。こういう点を政府としては十分にやっていきたいと思うのであります。しこうして、今投資インフレあるいは投資過剰という声を聞いております。まさしく三十一年度におきましては投資は相当伸びて、従来の、時によって違いますが、昭和二十年とかあるいは二十九年のときは投資が非常に減っておりました。貯蓄、投資が非常に減っておりましたが、三十年は今までにない非常な設備投資であるのであります。私の見通しによりますると、昨年設備投資が相当盛んでありましたから、私は三十二年度におきましては昨年のような設備投資の上昇率はないと見ております。もちろん相当の投資はございましょう。かてて加えまして、最近の消費の状況あるいは貯蓄の状況は非常にいいのでございます。昭和三十一年度におきましても、貯蓄が九千数百億円の予定でございましたが、預金の増加は、それを三千億近く上回って、一兆二千億をこえるんじゃないかというふうな貯蓄の増加でございます。私は、貯蓄の増加と同時に、設備投資を緊要なものにまず限ることにしていけば、大して心配はない、こういう気持でおります。
  67. 勝間田清一

    ○勝間田委員 こういう状態下において、大蔵大臣はもう一つの提案を実はされておる。それは言うまでもなく支払い準備制度の問題をあなたが提案をされておられる。私は、現在のような金融の逼迫せる状態において支払い準備制度を作るということについては、むしろむずかしいと考えておる。むしろ金融の緩慢な時代にこういう制度が設けられておって、そうして金融調整を果す機能というものが漸次発達してくるのが私は実は妥当だと思う。その意味で、あなたが支払い準備制度というものを設けようとするアイデアというものが時期的には若干ズレがあるのではないかと考える。しかし、支払い準備制度というものを設けて、早く言えば、一面においては預金者に対するあるいは金融機関に対する信用を回復すると同時に、今度は金融の調整機能を果していこうというこの制度には私は賛成をいたします。そこでこの機能を、一応あなたが提案されたのだが、一体これをどう進めていかれるかということについて、われわれは重大な疑問を持っておると同時に興味を感じております。聞くところによれば、現在金融制度調査会あたりで相当論議がされたと思うが、しかしこの際に私はその大綱をあなたは明らかにしておく必要があると思う。たとえて申しますならば、第一の点は何かと申しますれば、一体どういうものを対象にされようと考えておられるのか、狭く考えて、日銀の取引銀行を対象にして考えておるのか、あるいは一般普通銀行を対象にして考えておるのか、または、私には一番必要だと思われる相互銀行に対する支払い準備制度というものは、一体どういう構想でいかなければならぬかということもあると私は思う。そこで、どういうものを対象にしてあなたはこの問題を取り扱っていこうとされるのか、まず第一にその点をあなたにお尋ねしたいと思う。
  68. 池田勇人

    ○池田国務大臣 世間では支払い準備金制度と申しておりますが、これは非常に誤解を生むのでございまして、支払い準備金制度というものは、預金の保障という意味はほとんどないのでございます。通貨の調節であります。今お話しの通りに、通貨の調節を主たる目的にいたすのでございます。こういう観点から申しますと、お話しのように、今日本銀行が二千億円こえる貸し出しをしておるときには、すぐ役に立たぬじゃないか、こういうお話はもっともであります。しかしまた緩慢ということもありますので、もしこれが一昨年の暮れにありましたならば、昨年の春の緩慢なときからスタートをし得たと思います。しかし今では、法律を御審議願いまして、直ちにこれはスタートをいたしましても、何パーセントを日銀に預け入れよとは私は言えないと思います。やはりゼロパーセントで進んでいくよりほかないと思います。しこうして、これは通貨調節という意味を主といたしておりますので、これの対象になる銀行は、一般普通銀行であります。それと信託銀行でございます。そうして、また外国の支店で預金業務をやっておるものも、これに加えるつもりでございますが、お話しの相互銀行とかあるいは信用金庫等は、私は通貨調節という範囲になかなか入ってこないのではないか。これはお話しのように預金保障、いわゆる預金者に迷惑をかけないという立場から、預金保障基金制度、こういう預金者に安心を持ってもらうような、各相互銀行あるいは信用金庫等が連合して、互いに責任を分担していこうとする預金保障基金制度というものは、これまた金融制度調査会に付議いたしまして、大体の結論を得ました。で、支払い準備金制度というのは、準備預金という名前に変えたいと思っております。ここには、今の預金の支払い保障という意味ではなしに、通貨調節という意味からの準備預金制度ということで御審議願いたい。また相互銀行あるいは信用金庫の方は、預金保障基金、これは預金者に御安心をいただけるようにということから、一つ制度を設けようといたしておるのであります。
  69. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その準備ができたそうでありますが、本国会にその法律案は提出されますか。
  70. 池田勇人

    ○池田国務大臣 その予定で急いでおります。
  71. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一つは、その準備制度のいわゆる運営主体を一体どこに置こうとされるのか。この点を、私は重要だと思うから聞いておきたい。
  72. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは、金融制度調査会におきまして、かなり議論があったと聞いております。日本銀行の政策委員がやるべきだという議論も相当ありますし、しかし、この準備預金制度は率その他を強制いたします関係上、やはり行政機関がこれを行うという議論もあるのであります。日本の法制といたしましては、いろいろ議論はございますが、日本銀行と大蔵大臣との間できめていきたい。そのときにどういうふうな格好にするか。これは、今最も重要な問題として検討いたしておりますが、日本銀行から大蔵大臣の認可を得るという方向でいったらどうかという案が一つあるのであります。法制局その他業界の方の意見も十分徴しまして、最後の結論を出したいと思っております。
  73. 勝間田清一

    ○勝間田委員 要は、この一−三月の状況を見ておりましても、財政資金の引き揚げは非常に多額に上るだろう。大蔵大臣は、昨年の設備投資が非常に多かったから、ことしは案外さほどの率にはならぬだろう、あるいは重点産業に資金がいくようにチェックもしなければならない、あるいはオペレーションもやらなければならぬというようなことをいろいろ、言われましたが、この一−三月の、特に三月末に至るまでの金融の逼迫の問題を、こういう形で進んでいく限り、私は解決ができないのではないだろうかと実は思うから、現在の池田大蔵大臣の答弁をもっては、とうてい満足ができません。しかし、これをさらに追及することは——もう少し長い目で見た問題と一つ関連させて、私はあなたと議論をしていきたいと思うのであります。すなわち、私はまず今度の予算で一番はっきりしておかなければならぬと思うのは、やはり三十二年度は引き掲げ超過がほんとうだろうと思う。これはいろいろの要素がある。要素があるけれども、またペンディングの要素もあるけれども、一応大蔵省の金融局長が幾らでしたか、三百数十億の払い超になるのだという予算上の単純計算を出された。私は払い超には——一応そういう形は、数字は出るかもしれないけれども、実際上は、やはり三十二年度も引き揚げ超過になるのではないかと実は思う。この点について現在の輸入の状況、設備投資や財政の状況というものを見て、私は従来の見解を改めなければならぬのではないかと思う。経企長官、どうですか。これも研究中ですか。
  74. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 一月また二月の傾向は、従来と違った傾向は現われておりますけれども、必ずしも三十二年度を通じて、われわれが今まで考えておったことを匡正しなければならぬとは考えておりません。
  75. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まあ一月、二月の状態は、どうも今までの問題について少し首をかしげるような状態が出てきたけれども、しかし今のところは、変えるまでのことはないという観測。まあ昨年の経企庁の経済計画は、みごとにはずれましたから、またことしもはずれるのじゃないかと思う。そういう意味で、まことに遺憾に思うけれども、しかしいずれにいたしましても、現在の貿易の状態、民間投資の非常に大きかった点、あるいは今後問題になると私は思うけれども、在庫投資が非常に多かったにかかわらず、三年目のことしも、また在庫投資が相当ふえるのじゃないかという考え方を私は持っておる。いろいろの面を持っておるので、必ずしも三十二年度の財政というものは、決してなまやさしいものではないということだけははっきり言えるのじゃないかと思う。  そこで、一つ通産大臣にお尋ねをいたしたいわけであります。一つの問題は、公共事業費が非常に増大をする、住宅も建てる、何もやる、積極財政をやられる、そういう面から見て、政府財政需要なり、あるいはその他の面から考えてみて、生産の面がこれとミートするかどうか、特に物資の面と金融の面がアジャストするかどうかということが、私たちの一つの大きな関心の対象事だと思う。そこで今日とにかく生産水準は、一応順調な形をとっておるように私は思うけれども、他の物資については、相当の心配のある面が出てきた。  私は、そこで物の面を一つあなたに聞きたい。まず鉄鋼についてでありますけれども、鉄は、従来相当に窮迫しておったが、たとえば輸出機械の確保であるとか、あるいはプールを作って、調整機構を設けて進行したとか、いろいろの操作を行なったり輸入もしたりして、若干とにかく値下りの状態も出てきたけれども、経企の調査を見てみても、大体値下りもとまって、むしろ反発の状態が起きてくるというのが、今日の状況だと私は判断する。そこで、鉄の生産の需給、価格の安定という問題について、通産大臣は一体どういう構想を持っておられるのか、この点をお尋ねをいたしたいと私は思う。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 鉄は、御承知通り、昨年度四割も需要がふえるという状態でございましたので、当初のいろいろ需給の見通しも、政府の見通しも、実際において狂いました。従って昨年の十月までああいう状況を起しましたが、これに対処する策を——緊急輸入をやるとか、あるいは外国に輸出するのを少しとめて、内需用に向けるとか、増産を急ぐとか、いろいろな措置をとって昨年は切り抜けてきましたが、本年度の見通しは、依然として鉄の需要はふえる、従って、国内では約一割の鉄の増産をやるという予定で、この価格の面も一応見通しができておりますが、これは、大体一割の増産は今のところできると思います。それによってもなおかつ足りませんので、百二十万トンくらいことしは鉄を買うという方針をとっておりますので、これが可能であれば、大体鉄の需給は、一応何とかいくんじゃないかと思っております。  ただ問題は、国内でそれだけの増産をするためには、どうしてもくず鉄に相当依存しなければならない。これが、昨年の輸入よりは少くとも二割以上ふえる計算になりますので、いろいろここにむずかしい問題がございますから、ただいま鉄鋼の代表と、政府の方からも米国に行ってこの交渉をしている最中でございますが、これが一応見込みがつけば、大体ことしの鉄の需給は何とかやっていけるんじゃないかと思っております。  最初のお尋ねの公共事業費が非常にふえる。この予算と資材の問題も私どもは非常に心配して、いろいろ計算しましたが、大体ことしの事業費がふえる、これに要する鉄の所要量というようなものも全部織り込んで、ことしの需給見通しを立てておりますので、今のところ、さっき申しましたような点がうまくいきさえすれば、大体大丈夫じゃないか。そうは思っておりますが、しかし日本の鉄の値段というものの上り下りのひどいことは、去年を見てもわかります通りでございまして、これは非常に産業に大きい影響を与えますから、この鉄の生産量とか価格とかいうようなものを調整するために、鉄鋼需給法案というようなものを作って、これに対処する方がいいという考えで、今その法案の準備中でございます。
  77. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで、鉄鋼の需給安定の法案を一つ出すということが、ここで通産大臣から言われたわけですが、これは、需給安定法を作れば、一体価格は現在の価格よりも安定するのか。むしろ逆に上った形になってしまうのが、需要者側から見ても私は相当の関心事だと思う。そう簡単に結論は下せないと思うのですが、この需給安定法を出すというのは、一体どういう構想で出されますか。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 不況カルテルということは、今までいろいろやられておりますが、今度のは少し例外で、いわば好況カルテルといいますか、非常に好況のために、今おっしゃられたような、値段を不当に上げられるという可能性がございますので、こういうものを押えるためのカルテルの結成を届出によって政府が許すというような構想で、とりあえず今考えておりますのは、不況時の対策よりも、こういう需給の逼迫したときの価格の上ることを押える意味のカルテルの結成を考えて、それを中心とした法案を今検討中でございます。
  79. 勝間田清一

    ○勝間田委員 こういう価格を押えるためのカルテルを作るという思想が一体成り立つものか、できるものか、実は私、非常に疑問を持っております。そのくらいなら、価格の統制の公定価格をはっきりきめてやったらいいのであって、私は、この点はかなり問題が多いと思うが、時間も何だから少し急ぎます。  私は、こういうときにやはり必要になってくるのは、不急不要の産業を押えるというくらいの気持がなければ実現できないと思う。しかし、昨年御存じの通り百貨店法ができて、百貨店をむしろ促進してしまったというのが実際の実情になっている。ああいう状態を放置しておいて、一生懸命鉄を押えろ押えろと言ってみたところで、私はできるものではないと思うのだが、そういう意味で、百貨店というような問題については、もうできてしまってから押えるなら、既存の百貨店を保護するようなものだけれども、とにかくそういう不急のものを押えるという形が出てこなければならぬと思うが、通産大臣は一体どう思いますか。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今全国の六百くらいの会社の調査をやりました。ことしどれだけの設備要望を持っておるかという一応の調査はいたしましたが、今のところ、そう不要不急の設備をしようという欲望を持っておるものはきわめて少い。やはりこれは必要だろう、過剰投資にならないほんとうの産業合理化という観点からの、あるいは新規産業の建設というようなことからの投資要望がもう大体でありまして、私どもの見たところでは、不健全なそういう要望というものがことしはあまり出ていないというふうに見ていますので、これに対して特別禁止をするとか、抑制するという措置をとらなくても大体いいんじゃないかと思っています。
  81. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最近輸入が非常に増大をいたしておるわけでありますが、ある意味では輸入の増大も、これが輸出に回っていけば別に心配はないという公式論も成り立つわけです。しかし、現在実際輸入が増大しているにもかかわらず、その輸入がむしろ内需に食われてしまって、そして、やはり輸出用の加工原材料になっていかないという傾向が出てきたのではないかと私は思う。この点は、一体現状はどうなっておりますか。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもが一番心配しているのは、せっかくこれだけの原材料の大きいストックを持っているのですから、これをなるたけ内需に向けないようにしたいというのですが、これを内需に向けないようにするためには、インフレを起してはいかぬ、国内の物価を上げるというと、これは内需に回ってしまいますので、まず物価対策として物価を上げないということが一つ、それから、ここで産業拡大のために必要な原材料の輸入を押えるという政策をとるというと、またここにいろいろな問題が起るということも考えられますので、必要な原材料の輸入を押えるという政策をとるということ、またここにいろいろな問題が起るということも考えられますので、必要な材料はどんどん輸入させる。国際収支の、この間の問題になりました見通しからみましても、私どもは、ここでかせいだ外貨は残さなくてもいいから全部輸出に使うと、政府はこういう方針をとった予算を組んでおりますので、こういう政府態度によって、この現在の原材料を内地用に向けないような方向へこれを追いやることができるのではないかと考えております。結局輸入をあまり不当に抑制しない、必要な拡大に要する資材はどんどん入れるのだということと、物価を上げない、この二つによって内需向けを極力抑えよう、こういう考えであります。
  83. 勝間田清一

    ○勝間田委員 石炭の不足も、現在重要なものの一つであろうと思う。貯炭の状態は、けさの新聞にも伝えられておりましたけれども、ほとんどかすれかすれで、あるいは十日分しかないというようなところも相当あるように私は思う。かと思うと、渇水があって、電気の方は九〇何%ですが、今度の統計を見ると、無理をしてやっておられるが、その中でも、三〇%くらいは火力発電によっておるというような、実は状態なのであります。  それから逆に、今度は薪炭の方を見ると、農林大臣の所管だけれども、ずいぶんまきの方も上ったり、炭の方も上ったりしてきておる。重油の方にかなり転換しようという問題がまた起きて、かまもたいてみたいというような傾向さえあるが、これは、どちらかと言えば、スエズ運河その他の問題もあって十分に思いをなさないというところも実はある。今日までしばしば論ぜられた点だが、依然として解決されていないのは、燃料の総合政策、早く言えばエネルギーの総合政策というものが確立をされていないので、それが現在のこういった積極財政にあおられて、好景気というような様相を呈してきて、そういうものがむしろボットル・ネックになって経済を苦しめておるという状況があるのだから、私は、そういう面を改めるということがむしろ必要ではないかと思う。だから、総合の燃料政策というか、エネルギーの政策というものを一体どうやっていくのか、これを一体どう実行していくのか、一つ通産大臣にお尋ねしてみたいと思う。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 燃料の総合対策というものはどうしても必要でございますので、過般通産省の中にあります産業合理化の審議会に諮問しまして、一応今後二十年間、昭和五十年ごろまでの日本の燃料需要はどういうふうになっていくかという課題を、学者や専門家やあらゆる人たちが参加しまして、計算して、一応できた見通しが現在政府の中にございます。これは、非常に今後の燃料について参考になる統計でございますが、これを一応参考にしまして、電力をどういうふうに開発していくか、その電力の中で、水力と火力の割合をどういうふうに持っていくのが一番合理的かという問題、これと、石炭の比重が軽くなるわけではなくて、この見通しから見ましても、石炭の占める地位というものが、エネルギー源の中では依然として大きい地位を占めますので、この石炭開発をどうやっていくか、今後開発しようとするためには、非常に悪い条件のところの開発をしなければなりませんので、これに伴った地域の総合開発をどう並行させていくかというような対策も、ここから出てくると思います。それから石油を将来どの辺まで使っていったらいいかという、この三つを組み合せた一応総合的な見通しはできておりますので、これに沿って本年度も、電力にいたしましたならば、今までの五カ年計画を去年の暮れにおいて急に直した。それから石炭の増産対策についても、一応今までの計画を変更して直したというふうに、今後長い目で見た見通しによって、現在手直しをしつつあるという状態でございますので、今後、やはりこういう一つの見通しの上に、もっとしっかりした総合対策を立てる必要があると思います。それには、燃料だけの問題ではなくて、国土の開発とか、いろいろ前提的な仕事が重なりますので、ひとり燃料だけではなくて、いわば国土総合の全体計画が必要だと私どもは考えておりますが、そういう方向で今私どもは研究しております。
  85. 勝間田清一

    ○勝間田委員 燃料の総合数字がやがて明らかになることを言われておるのですが、きょうはそれ以上何ですから、これは、一つ委員会に提出していただいて、われわれの参考にさしていただきたいと思う。  それから、私は、先ほど建設の問題をちょっと申し上げたのだけれども、建設資材の関係が、現在の政府のいう住宅政策、あるいはその他の公共事業政策等と木材との関係とか、あるいは、セメントは若干の余力はあると思うけれども、木材やその他の建設資材との関係がつり合っているかいないかということを、私は非常に懸念するのです。特に最近の木材の値上りだとか、本来ならば、一月ぐらいは、おそらく木材は若干山の値段は下るときだ、これは農林大臣は御承知通りと思うけれども、逆に今度は値上りを来たしておるという状況もある。その他の面から見ると、一体今度の予算内容というものと民間の需要というものとをあわせ考えてみて、材木の面に、あるいは建設資材の面に、一体ネックがないかどうかということを心配するわけでありますが、農林大臣の、木材の今後の見通しについてのお考えを聞かしてもらいたい。
  86. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えいたします。御指摘のように、木材価格が最近高騰を告げておることは事実であります。この原因は、一つは工業用材が非常にふえておるということでございます。戦前は、建築材と工業材を比べますと、建築材がはるかに多かった。今日では、パルプ材あるいは坑木、その他の工業用材の方が建築材を上回っておる状況でございます。おそらく三十二年度は、一億五千万ぐらいの用材所要量が見られると思うのでございますが、これに対する国内の林木の資源というものは、なかなか容易でない、今後相当に長い目で先を見ますると、よほどがんばって林木の供給の面に努力をしないと、SOSが近いという感じがいたすのであります。それがためには、林種転換と申しますか、従来のように、長伐期の林木種でなくして、もっと伐川の短かいものを選んでパルプ材等の用途には充てていくべきだ、こう考えます。これは、しかし相当長期にわたる計画に相なると思います。当面の対策といたしましては、やはり国有林というものを、これは非常に厳格な施業案によって施業されておりますけれども、この面をあとう限り増伐量を出すことによって需給面の緩和をはかりたい、輸入という面もございましょう、しかし、これはトレードの関係等で、現在は国際価格の方はまだ国内価格よりも高い、こういう状況でございます。当面は、やはり国有林に解決の面を見出して参りたい、こう考えております。
  87. 勝間田清一

    ○勝間田委員 こういう状態で見てくると、池田大蔵大臣、物の面が相当詰まっておるということは明らかですね。しかも、木材はSOSというような状態があるかもしれないというし、鉄の方も、また百二十万トンも入れなければならぬというし、一側の増産をしなければならぬというし、総合燃料政策の方も、相当実はむずかしい状態になっておるのです。ここで、現在のこの三十二年度の予算をやっていく上において、物の面と財政なり金融なりの面と一体どうアジャストしていくかということが熱心にやられていかないと、あなたの言う、インフレ懸念は何とかなるということには済まされないと私は思う。私は、その意味できょうは煩をいとわずこの点を追及してみたわけですけれども、やはり私は心配が解けない。そこで経企長官、こういう問題に対して、あなたのところは一番責任を重んずるところなんだが、一体どういう措置をとっていかれますか。金融と財政と、それから物との関係を一体どうアジャストされていくのか、講義ではなく、この点についての具体的な案を一つ示して下さい。
  88. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいま仰せられたように、最近の特に輸入の増加ということから、昨年の秋以来の国内の輸出産業、特に需要面が増しているということ、及び国内建設が非常に軌道に乗ってきたという二つの面があることは、御承知通りであります。従って、そういう面が、三十二年度におきましては、新しい輸出の基本の問題を解決すると思っております。特に製造工業その他におきましては、三十二年度におきまして、昨年ほどの伸びはありませんけれども、われわれのところでは、少くとも前年度に比べて七ないし八%の伸びは確実に見得る、こう思っております。それで、われわれはこの輸入の増大によって、この在庫増をただいまだんだん見つつあります。従って、これに伴うところの金融というものは、必ずしも楽観をすべき状況とは思っておりません。しかし、輸出の面におきまして、昨年ほどの伸びはないかもしれません。鈍化はしますけれども、年間を通じて三十二年度において非常な不安を持つことはない、こういうことでございます。
  89. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まことにのんびりしたお考え方です。輸入が案外ある、輸出も鈍化はするかもしれぬがふえるだろう、こういうような見解で済まされているようだけれども、一体こういう状態で経企庁の方では安心していられるのですか、私はそうじやないと思う。この際に、私は岸総理大臣一つ聞きたいと思う。これは、後ほど問題になるが、生活費の問題も、決して楽観は許さないと私は思っている。しかし、何といっても、ここでインフレ懸念を抑制しなければならないし、解消しなければならない、こういう考え方をもっていたしますれば、やはりこの金融や財政や経済の面を総合的に常に行政に表わしていける処置というものがとられていかなければ、私は心配だと思う。通産大臣は通産大臣で、一生懸命で飛んで歩いておる、大蔵大臣は一生懸命で貸出の方を抑えている、経企長官は何とかなるだろうから心配ないと言っておられる。こういう状態で、一体この積極財政の一兆一千三百何十億というもので、膨大な産投会計というものを実行されていくということは、私は不安だ、少くとも世間はそう感じておる。だから私は、こういうものと金融との面その他の面について心配はないというのを、岸総理大臣は、閣内においてはっきりさせていく必要があると思うのだが、これについて、あなたは何かの構想があられますか。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 インフレの問題は、私はやはり各種の方策を総合的に行なっていくことによって、そういう事態を生じないようにしなければならぬと思います。金融の面も、あるいは産業におきましても、農林の問題、あるいは通産省の所管の問題もありましょう。そういう産業政策、またさらに運輸の政策であるとか、あるいは諸種の建設の事業であるとか、すべて総合的にこの予算の執行及び経済政策というものはやっていかなければならぬと思うのであります。従って、そういう総合性を持った政策の実行をどうしてやっていくかという問題につきましては、内閣全体が常に閣議において連絡をとり、また方針をきめてこれを実施するについて、内閣が一体になっていくというところが今後の予算執行の上において最も必要なことであり、従って、私は内閣総理大臣として、そういう観点に立って行政に当りたい、こう思っております。
  91. 勝間田清一

    ○勝間田委員 労働大臣お急ぎのようでありますから、労働大臣に一つお尋ねしておきたいと思うのです。今まで生計費の関係は大して上らないだろうというような形から、非常に賃金は立ちおくれておったけれども、ある意味では、一つの安定材料として使われておった。しかし最近の状態を見ると、そういうことはどうも許されぬような状態になってきた。たとえて申しますれば、経企庁の最近の統計を見ても、蔬菜の値上り、魚などの値上りというものは、単に季節的な値上りということでは済まされない要素が出て参ったように私は思う。何となれば、魚でも、例年の一−三月当時の入荷量よりもはるかにことしの方が入荷量が多いように私は統計で見受けた。蔬菜も、かなり乾燥しておったとはいえども、生産はふえていて、この東京都への入荷は相当ふえておる。それにもかかわらず、五割、六割という非常な値上りを実は来たしておるわけです。私は、こういう状態は単に季節的な値上りという形では解決がつかない問題だと思う。そういう状態を考えてみると、生活の基礎について、必ずしも横ばいとか楽観的だとかいう形では済まされないのであるから、この給与の問題については、私は労働大臣としては積極的にやるべきだと思う。あなたがどう言うかは知らぬけれども、官公吏の給与ベースの問題にいたしましても、実はまことに低調な状態である。なぜ低調かといえば、この前の国会において、給与ベースのアップは年度内に解決をつけるということで、あの決議案が内閣委員会を通った。それを四月一日以降から直そうというような案に今日切りかえられた。一体なぜ年度内においての引き上げができなかったのか。  もう一つ、あなたにお尋ねしたいと私は思うけれども、今あれだけ労働組合の諸君が、あの給与体系じゃ困るのだと、もらう方がはっきりそれを言うておるわけです。たとい金額は同じであっても、給与体系の内容が変れば、労働組合の気持も相当変るということはわかっておる。もっとも金額は、政府の金額で承知しておるというわけじゃないけれども、そこで、給与体系というものは、やはり労働組合の要求も聞いて、それの意に合うようになるべくこれをやっていくということでなければ、私は給与担当大臣としては責任は果せないと思う。この点について、改訂する用意があるかどうか。政府案をどう直す用意があるか。  それからもう一つ、あなたに一活して聞いておきたいと思うのだけれども、何と考えてみても、日雇い労働者の賃金を二十円上げたということは、あなたにしてみてはけちくさいと思う。二百八十二円を今度は三百二円にする。ニコヨンがようやくここまで来た。二十円上げたが、これは言うまでもなく減税の恩恵に浴するわけじゃない。ましてや今言ったように、物価が上れば、直ちにこれはふっ飛んでしまうものだ。しかも宮澤さんは、私鉄運賃なんか上げないとこの前言われたけれども、国鉄の運賃は一割三分上る。私がもし日雇い賃金で、家から出かけて働きにいくという場合、目黒に行くわけでしょう。目黒に行くのに、バスへ乗って五円上って、また電車に乗って十円上って、往復になったら三十円だ。二十円上げてもらったって、もうこれだけの運賃で、帰りには赤字になって返ってくるというのが、二十円の実態でしょう。日雇い賃金はそういう状態にある。これが神武以来の景気だ、こういわれておるわけです。だから私は、日雇い者にしてみれば、こんな景気はこない方がよかったということにならざるを得ないと思う。だから、やはり日雇い者についての給与の改訂という問題は、私はもっと真剣に考えてもらいたいと思うんだが、一体その意思があるのかどうか。池田大蔵大臣に抑えられて三百二円になってしまったというんじゃ、私は理屈に合わないと思う。生計費も上る、生活費も上る、ゆえに正当な生活保障をするんだという、きぜんたる態度で人間の問題を扱ってほしいと私は思う。そういう意味では、日雇い賃金の問題があまりにも私は苛酷だと思うから、これに対する改訂の意志があるかどうか、お尋ねいたします。
  92. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 お答えいたします。最初の物価の問題でありますが、季節的な要素ではないという断定をされているようでありますが、主として蔬菜、魚類の高騰いたしましたものは、季節的な要素である、こう私は思っております。特に十二月以来三カ月も雨が降りませんで、野菜その他に非常に影響を及ぼしました結果が、かような状況であり、また東北、北海道の輸送が不十分であるために、魚はとれておりますけれども、やはり市場に影響いたしまして、ああいうような値上りがあったのであると思っておりますから、今後これらのものが緩和いたしますれば、また気候が直って参りまして、率先になれば、野菜もたくさん出て参りますから、副食物の問題の値上りは、自然に解消するであろう。主食及びみそ、しょうゆ、そういうものは上っておりませんから、やはり大蔵大臣の言っておられますように、物価は横ばいであるという確信の上に立っております。  もう一つ、ついでに申し上げておきますが、昭和二十六年を百といたしますと、三十一年は、賃金は百七十二になっております。物価は同じ二十六年を百にいたしまして、百十八であります。今年と去年との賃金の差は、大体九・二であります。物価の方は〇・五であります。これを実質賃金といたしますならば、百四十五に対して八・六の但上りを賃金はいたしておりますから、物価に合った賃金である、こう確信いたしております。  もう一つは、内閣委員会においてきめたものが実行されておらぬではないかというお尋ねでありますが、これは、一応〇・一五を年末に上げまして、あとの方は、給与体系を改訂するという問題でありますから、これは、やっぱり新年度からやるべきである、こういうふうに考えております。この給与体系を改訂するのに対しまして、なぜ勤労者の言うことを聞かないかということでありますが、個人的には聞いております。けれどもこれは、人事院の勧告におきまして、給与体系を変えるべきであるという勧告に従って、これを尊重いたしたのでございます。  もう一点、お話にありました日雇いの問題でございますが、これは、一定の方針があってやっておるのでありまして、池田大蔵大臣が出さなかったからそれに従ったのではないかというのでありますが、そうばかりではないのです。これは、財政上の問題でありますから、それもないとは言われない。けれども重作業の平均賃金は三百九十円です。軽作業の方は二百五十六円です。これを平均しますと三百三十六円になります。そこで日雇いは、八〇%ないし九〇%にすべきであるという規定がございますから、それに従ったのでありまして、三百三十六円の九〇%は三百二円になっておる、この計数に基いてやったのでございまして、ただ単に、大蔵大臣が頭からいかぬと言ったからではないのであります。御了承願います。
  93. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そういう八割、九割という計算を言うだろうと思ったが、それは同時に二百八十二円についても言えるのであって、幾ら上げたということには変りない。だからそういうことでごまかさないで、わずか二十円だけで申しわけなかったと言うべきだし、申しわけなかったら、大蔵大臣は上ぐべきであって、それが良心態度だと思う。それで神武以来の景気と言われたんでは、おそらく賃金労務者は泣いても泣き切れないだろうと思う。とにかく、すべてがこういう立場予算を組まれておるということだけははっきりしておると思うのであります。  ここで私はやはり将来の問題とも関連するわけでありますから、外交問題で少し国際経済の問題を一括してお尋ねしたいと思います。けさの岸総理の答弁もお聞きいたしましたし、前から実は注目いたしておった問題は、自主的な立場において、自主独立立場において対米関係を調整をする、これが岸外相の新しい構想だと私は見受けておるわけであります。これは非常に重要なことで、世間には、あるいはわれわれが見ても、異なった二つの解釈がある。一つの問題は、対ソ関係が国交回復をしたので、アメリカは若干日本に冷たくなった。そこでアメリカ関係をもう一ぺんもとのよりに戻す、早くいえば親善関係をもっと深める、こういう意味解釈もできるし、あるいはそうでなくて、どうも日本アメリカとの関係には不平等な関係がある、好ましくない関係がある、それを自主独立立場において調整するのだ、こういう意味にも解釈ができるのだが、今後の外交中心は一体どっちに置くのか。私はこれはあなたの答弁いかんによっては非常に、早くいえばごまかしもできるし、今うしろの方で発言があったように、親善をはかりつつ何々ということができるかもしれぬが、そういうことではない。私は今後の外交路線を考えていく上においてどこに心がまえを置いていくのか。その点の御所信をお聞きしたい。
  94. 岸信介

    岸国務大臣 私は、日本の国運を将来開いて参るのに、日米の関係はあくまでも緊密な友好関係を確立しなければならぬという考えに立っておるわけであります。しこうして日米の間に、真に堅実な友好関係を作り上げていくためには、現在の日米関係を詳細に検討してみるというと、私の望んでいるような日米の友好親善の関係を作り上げる上において、支障になっている幾多の問題があると思います。そういう関係ができたのは、長い間占領下にあり、またその後の占領下以来の引き続いての惰性等によるものも少くないと思います。われわれは今や完全なる独立の立場を確保して、これを完成するという立場に置かれておるのであります。あくまでも私は、日本自主独立立場と、また日本民族の要求というものを正当にアメリカをして理解せしめて、これを是正すべきものは是正し、解決すべきものは解決するということこそ、真に日米の関係が将来長きにわたって私の望んでいるような提携もしくは協調というものができ上る、こういう見地から自主的の立場において日米関係を調整したいということを申しておるわけであります。
  95. 勝間田清一

    ○勝間田委員 わかりました。そこで従来の各内閣の答弁と若干違っておると思っておるのは、安保条約行政協定は思わしくないからこれを廃棄していく方向が国民の気持である。これを認めることについては、あなたは昨日の外人記者団との会見でも言われておられるようだし、そういう節が今日見られたので、ここであらためて私はその点だけを確かめておきたいと思うのですが、その考えで進められますか。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 私はしばしば答弁しておるように、この日米安保条約によって日本の安全が保障されておるという今日の状態、また安保条約の今日までの実施の経過にかんがみまして、こういうものがなくなっていくことが日本国民の望みであり、またわれわれもそういう方向に向ってあらゆる努力をしていくべきものである、かように考えます。
  97. 勝間田清一

    ○勝間田委員 安保条約行政協定がなくなるものであるという方向に進めるということを考えていらっしゃる、これは従来の保守党の答弁をもってしまするならば、これで日本の自衛という形を作り出していこうという考え方であったが、これはあなたと私といろいろ議論が分れるのだけれども、一応それは別にしておきます。  そこで、次に問題になるのは個別的なああいった集団安全保障体制は好ましくない、日米安全保障条約は好ましくない、行政協定は好ましくない、この好ましくないものをなくす方向はどういうものか。少くとも大きな支柱がなくなるわけでありますから、なくす方向はどうか。従来見られたのは、NATO及びSEATOの機構はやはり地域的集団安全保障に持っていこうという考え方が強い。ところがけさのあなたのお話からいえば、国連をもっと全体的に見てみたいという考え方もあなたは発言されておった。そこで今後の日本国際関係として考えていく場合においては、地域的な集団安全保障の方式ではない。むしろ他の方向にいかざるを得ないという構想がなければならぬと私は思うのだが、なくして国際的にそれにかわる方向は何か、それをあなたにお尋ねしたい。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 私は国連中心にいくべきものである、こう考えます。
  99. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一つ、私どもは国連中心という場合に、一方の陣営のみの集団安全保障には入らない、あるいはそういうものは好ましくない、むしろ逆に今日世界で言われており、またアジアで考えられておるのは両陣営を含めての平和保障体制を作っていこう。かつてのロカルノ方式もそうであるし、また新しく地域的な平和保障方式もそうであるが、少くともあなたは一方の陣営の集団安全保障体制に入っていくということは好ましくない方向だと考えておると認定してよろしいか。
  100. 岸信介

    岸国務大臣 私は今国連中心にいきたいということを申しました。現在の国際情勢を見ますと、いろいろ地域的の集団安全保障の形式もあります。それには一方自由陣営だけでやっておるものもありますし、また両陣営を網羅している形式の方向にいっているものもあります。いろいろなものがありますけれども、私自身としては国連というものは、あの国連憲章に示されておる崇高なる理想を持って世界の平和を建設するという意図のもとに両陣営とも入っておる、全世界を網羅しておるものであって、私はこれが強化され、これによって世界の安全が保障されるということになれば、初めてそこに世界の平和が実現していくものであるという考えから、これを中心に進んでいくことが最も正しい道だ、かように考えておるわけであります。
  101. 勝間田清一

    ○勝間田委員 対米関係を自主的独立の立場において調整をする、その場合のあなたの答弁はきわめて明快であって、いろいろ考えてみると、ほんとうの意味アメリカ日本とが親書関係を結ぶことに阻害になっておるような状態があるから、そういう阻害しておるものをやはり改めなければ、人間と人間としてのほんとうの愛情がお互いに出てこないのである。私はこの考え方は非常に正しいと実は思う。われわれもまたいたずらに反米であってはならないし、同時にわれわれはきぜんたる、やはり対等の立場を要求することに勇気を失ってはならぬと私は思う。そういう意味で今日考えてみると、一体あなたの外交でどういう点に一番あなたが考えておる点で思わしくない点があられるのか、私はこの点を一つお尋ねをいたしたいと思う。
  102. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がはっきりしなかったのですが、一応——もし私の理解しておることが間違っておれば再質問していただきますが、日米関係において現在ある状態中いかなる点が一番望ましくないかという御質問だと思います。これは私具体的にここに一々のことをあげることを差し控えますが、ずいぶん今日まで論ぜられており、また国民の感情の上から考えまして調整を要する点は私非常にたくさんあると思います。今どれから順序をつけてどうするかということは、具体的に申し上げることを差し控えたいと思います。
  103. 勝間田清一

    ○勝間田委員 外交上の問題でありますから、これ以上要求することはいかがかと思いますので、私も差し控えて御遠慮いたしますけれども、ただ私はそういう調整をする場合においての心がまえというものは重要だと思う。それは何かというと、対米調整をする場合にやはり何といっても基礎を置くのは日本の経済自立であり、日本自身の足に立つということ、その足に立って日本立場をいよいよ拡大をするということだと思う。たとえて申し上げますれば、特需というような問題がなくてもおれはやっていけるのだ、飯は食えるのだ、こういう立場をまず作ることが第一。それからもう一つやはりそれと関連をしてくるのは、お互いに考えてみなければならぬ問題は、アジアにおける日本立場の確立をするということであります。アジアにおける信用を確立をする、アジアにおける日本立場を確立をするということと関連をして、正当な対米関係の調整が可能だと私は思う。早くいえばアジアにおける自分立場をはっきりさせることなのだ。その上で対米調整を漸次行うということが大切だと思うけれども、どうもあなたの考え方に対して懸念に思うのは、むしろアメリカの方に話を進めていって、東南アジアに進んで、最後にアジアに話を進めるというような格好がとられているように思う。私はこれは外交路線としては逆だと思う。そこでどうしてもアジアとの関係を手を結びつつ、日本立場もよくしつつ対米関係を調整するという外交立場が私は正しいと思うのだが、今後の対米調整をするときにどういう心がまえで進むか、この問題についてのあなたの考えを聞かしてもらいたい。
  104. 岸信介

    岸国務大臣 私は私の外交方針を述べる場合に、国会が済んだならば、できるだけ早い機会に東南アジア諸国を歴訪したいという私の考えを申し述べております。これは私自身日本立場日本の将来ということを考えてみて、東南アジア諸国との経済関係その位あらゆる親善関係を取り上げて、今お話のようにアジアにおける日本地位を確立することが、日本の将来のためにも、また日本外交として最も必要なものであるという見地から、そのような発言をいたしたのであります。従って今日といえども私の考えは同様でありまして、もちろんアメリカとの関係の調整にも重点を置かなければなりませんけれども、私自身の考えは、あくまでもアジアにおける日本地位を固めるという意味において東南アジアをまず歴訪したいという私の考えを率直に申し述べたのもそこにあるわけであります。
  105. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたはインドのネール総理に日本に来るようにということを党の代表を通じて話をされたということも私は聞いております。また同時に、今お話の通り、東南アジアを自分は訪問してみたいということを、かつて外務大臣の当時にあなたが漏らされておったことも私は聞いておるわけであります。私はアメリカに渡ることにけちをつけるわけではありませんが、今のあなたの心境であられるならば、当然今までの御発言をそのまま実現されて、そうしてアメリカに行くべきだと私は思う。その順序はきわめて重要だと思う。聞くところによれば、ネール総理は、日本が先に来れば私は日本にぜひ行きたいと言われておることも開いておる。やはり日本が先に行くのが礼儀だと思う。また東南アジア一帯の日本に対する疑惑を解く上においても大切だと思うから、あなたはやはり先に東南アジアを旅行されて、アジアの諸国とも話し合って、そしてアメリカにお渡りになるのが順序だと思うが、あなたはその考えでおられると考えてよろしゅうございますか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  106. 岸信介

    岸国務大臣 外国訪問につきましては、それぞれの国の都合もございますし、私の方の都合もありますので、日程を組む場合にどちらを先にするか、どこへいつ行くかというような問題につきましては、私はまだはっきりきめてはおりませんけれども、趣旨として、あなたの申される、また私が外務大臣としての演説をしたときの趣旨は、気持は同じであろうと思う。ただ旅程等の実際の問題につきましては、今申しますように、彼我両国の都合もあることでありますから、これは十分考えることにいたしたいと思います。
  107. 勝間田清一

    ○勝間田委員 問題点の特に不満に思う点、こういう点は悪いと思う点についてこれ以上追及はいたしませんが、今度は私の考え方を一つ申し上げたいと思う。  私は、一つ防衛分担金の問題だと思う。この前の国会でも私は本会議で申し上げたが、どう考えてみても、あの分担金の削減の一般方式というものを重光さんが結ばれたことは、私は非常な間違いだと思う。内容はすでにあなたも御存じの通りだと思う。いわゆる施設提供費並びに日本防衛庁費の増加額の半分を防衛支出金から引くということであります。本年はそれで四億を引かれておる。この考え方をもって進みますならば、今度の二百九十六億の分担金をゼロにするのには一体何年かかるか。ここに私は非常に矛盾があると思う。日本としては遺憾なところがあると思う。少くともあなたの保守党の考え方をもっていたしましても、施設提供費なり防衛庁費の増加分は、そのまま防衛分担金から削除すべきであるという態度で臨んでいかれるべきだと思う。半額にしたことも第一問題であるし、施設提供費を防衛庁費と同じように扱っていることも問題だと思う。私が計算しますと、二百九十六億円をゼロにするには幾らかかるか、たとえば防衛庁費を百億ふやす、そうすると五十億減る。五十億を結局二百九十六億から引けば、約七年かかる。防衛庁費を百億ふやさなければ防衛分担金は七年かかってもゼロにならないということを意味するわけです。本年のように八億の費用をふやして、その半分の四億を削減するということでやれば幾らかかるかというと、七十六年かかる。こういうもので掌握されておって、これで自衛力の漸増と外国軍隊撤退の交換条件になっているということは、私は言えないと思う。新内閣になって岸さんとしては、まずこの不平等な防衛分担金を正当なものにしなさいということを要求することは当然なことだと思う。一つ岸さんのお考えを聞きたいと思う。
  108. 岸信介

    岸国務大臣 防衛分担金の問題につきましては、これは過去におきまして御承知のようにそのつどいろいろと折衝して、その結果として予算編成についてもいろいろな支障を来たした事実もあります。またこのフォームをどうするかということにつきましても、彼我両国の間に相当長い間先任者において応酬をされてまとまって、今年初めて第一回の結果を見たわけであります。今すぐこれを改訂するかどうかという問題については、私としては、日本自体の長期国防計画すら立っていない現状としては、もう少しこの問題は現状のままに置く方が適当ではないかと思うのです。もちろん今お話のように、非常に長くかかるじゃないかとか、いろいろな両国間の言い分もその点にあると思います。しかしそれにはやはり日本の長期国防計画というものも国防会議において決定される見通しをつけた上で話をするのが私は適当ではないか、こう思っております。
  109. 勝間田清一

    ○勝間田委員 長期の国防計画を立てた上でこの再調整をするというわけでありますが、私はくどいようでありますけれども、施設提供費とか、MSAによる例の将校団の駐留の費用だとかいうものを防衛庁の関係と同じように扱って、あたかも防衛分担金、いわゆる防衛支出金だけが、すなわちアメリカ日本側の負担であるかのごとくに錯覚を起させていることは、私はよくないと思う。少くとも防衛庁費がふえれば、そのまま分担金についても、あるいは将校団の駐留についても、施設提供費についても、やはり減る。こういう区分をはっきりさせて交渉すべきだと思う。それでないと、あなたの言う防衛関係が漸増しさえすれば、アメリカ軍隊は減るのだとか、なくなるとかいうことは一致しない。これは矛盾であると思う。この点特に私は要望いたしておきたいと思うのであります。  それから防衛長官にお尋ねしたいと思うのですけれども、一体あの五百名の将校というものはいつまでいるのですか。
  110. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 もう大分減りまして、三百名ばかりになっております。地方におりました方も五名ばかりで、一名が北海道、四名が他の個所におりますが、他は全部龍土町のところの顧問団の本部におり、漸減の方向に向っておりまして、必要な最小限度のものが残っているだけであります。
  111. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私の了承しているところによると、今度の予算案では例の将校顧問団の費用は前年度と同額だったと思うのですが、そんなに減ったのなら当然減らすべきじゃないですか。そんなにほとんどいないものを計上する必要はないのじゃないですか。
  112. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 昨年に比しまして特に減ったというのでなしに、三百名程度でありまして、これに対する引き当ての費用として六億を見込んでおるだけであります。今後さらに減るということになれば、この点の費用の日本の分担は考え直す余地があると考えております。
  113. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは私は違うと思う。六億ということは——今前年度の予算を手元に持ってきませんでしたが、おそらく同額であったと私は思う。これは一体同額ですか、同額でないのですか。私はほとんど違わなかったと思うのだけれども……。
  114. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 先ほど申し上げましたように、去年と同額でございます。
  115. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは先ほどのお話の通り、もうどんどん減っておるのだというような答弁をされるから、いかにもそういう錯覚を起すけれども、減っているのならば予算をちゃんと減らせばよろしいのであって、そういうものをそのまま残しておくから、こういうものが屈辱的な条件になる。一人減るなら一人減らしなさい。十人減るなら十人返しなさい。それの予算を削りなさい。そういう勇気がないから、こういうものが長居して日本の独立を阻害するのが当りまえになる。だからあなたの今の答弁と予算の提案の内容とは違うと思う。こういうところが、アメリカさんには何も言えないということになる。そういう意味では、あなたに一つ反省を促しておきたいと思う。これをなぜ私が申し上げるかというと、いわゆる防衛支出金は行政協定の二十何号のAの何項なら何項に基いて行なっているのだという。かつては五百八十何億という形が一つあった。ところがアメリカ人がいてもいなくてもその金は出すのです。たとえば、東富士等に行けばアメリカ人がいたかと思えば、いない。どこに行ったかというと、ハンガリー問題が起る前夜に朝鮮に行ってしまった。このように留守になっても防衛分担金は取られるし、沖縄その他に駐留した場合も同じ形をとっている。  次に施設提供費を見ると、年々ふえているでしょう。見てごらんなさい。去年よりことしの方が減っているけれども、去年はおととしよりもふえて、年々増額の傾向になっています。軍隊が撤退することと防衛分担金とは関係ないのです。こういうところを見ると、いかにも駐留のため必要な費用という考え方ではなくて、一つの既得権として分担をさせられておる。何かアメリカの国防費の分担という考え方が強いと思う。私はそういう考え方は今後やめるべきだと思うのだけれども、こういう疑惑に対して一体防衛長官はどう思いますか。
  116. 小滝彬

    ○小滝国務大臣 施設提供費は昨年と同額でございます。今まで提供すべかりしもので残りましたものも、基地関係の補償費などにおいて相当の費用を要するというような点で、百五億というものをMAG、顧問団の費用と一緒に一括して計上しました。今後実際の費用がそれほどかからないということになりましたならば、これはもちろん漸減する次第であります。
  117. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いや、私があなたに聞いていることがなんですけれども、一番注意して総理大臣に申し上げたいのですが、実際に自衛力を漸増していけばアメリカ軍隊は少くなり、防衛費も少くなって、しまいにはアメリカ兵隊がいなくなるのだという錯覚を実は起さしているのです。事実はそうではない.むしろ私をして言わしむるならば、何もその間に関係はない。もしあるならば——、幾らになったら幾ら撤退するか、幾ら日本が増額すれば幾人兵隊を減らすかという契約はないでしょう、早く言えばそこにそういう錯覚を起さしているから、自民党諸君が、おれたちは兵隊をふやせばアメリカ軍はいなくなる——そうじゃなくニュー・ルックでやっている。アメリカの戦略体系でやっている。そういうところを一つはっきりさせていかないと、こういう費用は最終的には削減ができないと思いますから、どうか防衛分担金などという点は明白に早く改訂されることを少くとも保守党はやるべきだと私は考えております。よく民族決起のときというようなことを言われますけれども、民族決起がまた昔のようなことになってしまって、こういう肝心かなめの支柱がどうにもならぬと、やはりほんとうの民族決起にならぬと思う。  それからもう一つの問題は、しばしば国会で決議した点でありますけれども、沖縄の施政権の問題はどう解決しようとするのですか。これは決議でわれわれとしては非常に重要に扱った決議であります、沖縄の施政権を返還するという決議に対して、国会の意思を表明しているのだが、政府はどういうふうにこれをやろうとするのか、この点をお尋ねしたい。
  118. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄の施政権の返還につきましては、国会議決があった際にアメリカ側に日本のこの国会の意思を政府としては通じて、その当時話し合いをしておりました。しかしアメリカはこれに対して、極東における国際情勢が緊張の現在の状態においては、まだ施政権は返さないということではそのままになっております、この問題は平和条約、それ以後における一連の日米関係の諸条約等と同じく、やはり国際情勢というものが非常に大きな一つ対象になっていると考えます。従って大きく言えば、国連に加盟してわれわれが東西の緊張を緩和する、あらゆる対立の状況をなくする方に努力することをわれわれは念願しておりますが、そういう努力にも関連がありますし、アメリカとさらに機会あるごとにこの問題について、われわれ国民の意思に基いて話し合いをする必要があると思います。しかし私はこの施政権につきましては、話し合いによって一括して返すことがむずかしい場合においては、部分的の問題をあるいは返してもらうというような方法もあろうと思います。十分この問題については両国側の首脳者において国際情勢を分析しながら話し合いをする必要がある。また日本国民国民感情なりわれわれのほんとうの要望というものを向う側に強く伝えて、率直な話し合いをしてみる必要がある、こういうふうに考えます。
  119. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次の問題に移りますが、国後、択捉の問題について鳩山内閣はあのような関係で帰って参ったのであります。しかし国後、択捉の領土を返すということは私はなかなかむずかしいと考える。同時に平和条約の締結という問題も実は関連をいたしている。これは未解決のペンディングな問題だと思う。そこでこの問題を一体新内閣はどう今後考えて処理をしていくのか、その方法をやはりこの際当然明らかにすべきだと私は思う。あなたの御所見をお聞かせいただきたい。
  120. 岸信介

    岸国務大臣 私は外交方針演説のうちにおきましても明らかにしましたように、日ソ関係については段階的に処理していきたいということを申しておる。と申しますのは、日ソ国交正常化が共同宣言によってできまして、大使館を交換し、それぞれの大使も任命されまして着任をいたしております。さらに両国の間には特にわが方からの問題としては、ソ連から引き揚げをしたのでありますが、その引き揚げで残っておる人がある、消息不明の者があります。これらの者の調査なり処置というものもできるだけ早く解決をしなければならぬ。また日ソ漁業問題、今やっております漁業委員会におきまして、漁業問題をきめていくという問題、あるいはまた通商条約の問題があります、私は日ソ国交正常化に伴うて、両国が真に友好的な関係を積み重ねていって、そうしてソ連も、日本国内における日本国民のこぞっての要望である領土問題に関しての考え方がどうあるかということをよく理解する、そうして友好関係が深められていくならば、わが方の今まで主張してきておるところのものがどういうところに根ざしておって、どういう強さを持っており、また日ソの将来長きにわたる友好関係の上に、これがいかに重大な問題であるかということが理解されてくる。両方の友好関係が深まっていくということによって、そういうことが理解されていくことが、私はこの難問題を解決するための一つの大事なことである。これにいきなり取り組んで、同じ主張を両方が繰り返してみても、私は過去ロンドン及びモスクワでやった会談を繰り返すにすぎないと思う。しかしそういう基礎ができていくならば、私はこの問題についてよりわれわれの主張に近づいたソ連の理解が得られる、そういうものを作っていこう、こういうふうに考えます。
  121. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最後に中国との問題について御質問をいたしたいと思うのであります。私は中国との国交の回復の問題は、やはり焦眉の重要な問題になってきたことは言うまでもないと思う。ただおそれることは、石橋内閣のもとにおける岸外務大臣の中共外交というものと、岸内閣ができて、岸総理が外務大臣を兼務しておられる中共外交というものは違うのじゃないかという疑点を私は持っておる。かなり石橋さんは積極論であった。岸さんは担当外務大臣意味で慎重論を唱えたかもしれないけれども、私はそうと解釈できない。石橋内閣を踏襲したものはいろいろのものを踏襲したかもしれないけれども、中共外交については踏襲はしていないのじゃないかという考えがいたすのですけれども、私はその点でもしそうでないと言われるなら、一つ積極的な態度をとってほしいと思う。  そこで今後何といっても中共との外交をする場合一番大切なことは、台湾問題をどうするかということであります。そこで日華条約は現に締結されておるけれども、このままの形で中華人民共和国との国交回復というものはなかなかむずかしいことは、あなたも御存じだと私は思う。そこで中国を二つと見るか、一つと見ていくか、この考え方はなかなか重要な問題だと実は思うので、この問題について、中国観についてあなたはどういう態度で今後臨んでいこうとするのか、それを一つあなたに私は聞いてみたい。
  122. 岸信介

    岸国務大臣 御指摘の対中共問題は、日本にとってきわめて重要な問題であると同時に、私は非常に困難な問題を蔵しておると思います。それはただ単に思想的なあるいは政治形態を異にしておるというような簡単な問題じゃございませんで、大きくいえば世界関係国際情勢も私は考慮に入れなければならぬ問題だと思う。また今御指摘になりました国府との関係というものも、われわれは国府との間に日華条約を結んでおり、そしてこれを承認し、これとの間に友好関係を現に持っております。将来も私は日本国際信義からいけば続けていくべきものだ、それを増進すべきものだ、こう考えております。しかるにこの国府の主張と中共の主張とが、領土権の問題については両方が相いれない主張を現在持っております。こういう立場に置かれておるわけであります。しかも中国大陸において中共政府が現実に強力に統治力を持っておる、各種の建設が着着と進んでおるというこの現実を、われわれは無視することもできないのです。従いましてどういうふうにわれわれが今後これに処していくべきかという問題は、一面においては国際情勢の問題を私はやはり重視せざるを得ないのであります、と同時に中共と国府との関係でありますが、それがどういうふうに動いていくかという問題とにらみ合せて処していかなければならぬと思いますが、現在のところにおきましては、とにかく国府とは正常なる友好関係に立っており、従ってこれを増進していく立場をとる。しかも一面中国大陸における現実をわれわれは無視できないということでありまして、今直ちに二つの中国を認めるという、その立場で進むということを断言することも私は適当ではないと思います。しかし同時に、これをどの形において一つに持っていくのだということをまた断ずるのも、今はその時期じゃない、かように考えております。
  123. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ただこういうことは言えると思うのであります。すなわちイギリスの方面からいえば、台湾を国連の信託統治にすべきだという意見がある。アメリカの方の外交筋からいえば、台湾を独立させていきたいという考え方があるし私はこの思想はいずれにしても二つの中国論の転機に立ったものであるし、また二つの中国を作ろうとする考え方であると思う。少くとも日本はそのいずれの考え方にも賛成はできない。中国は一つであるという考え方だけは日本は当然持っていいし、また当然持つことが妥当だと私は思う。だからこの信託統治論や独立論という二つの中国論は日本としては考えられないということだけは、あなたとして答弁をしてほんとうにしかるべきだと思うけれども、どう考えられましょうか。
  124. 岸信介

    岸国務大臣 今私がお答えを申し上げましたように、私は今中国を一つだと断ずることも適当でないと思いますし、必ず二つの中国を認めるのだ、こう結論することもまたその時期ではない、こういう考えであります。
  125. 勝間田清一

    ○勝間田委員 しかしそれは私はおかしいと思う。台湾政権だって蒋介石は中国は一つだと言っておる。周恩来だって中国は一つだと言っておる。ただおれの方が本家だと言っておるにすぎないのであって、それに介入をして、それを二つに分けるような思想というものは内政干渉だと私は思うからこういう問題は国内問題であるという態度だけは少くともとれるのではないでしょうか。
  126. 岸信介

    岸国務大臣 お答えします。先ほどお答え申し上げましたように、私はこの問題は一面、中国の大陸のいわゆる中共政府と国府との関係であり、一面は国際情勢を考える、両者から判断すべきものである、私はこういう立場であります。
  127. 勝間田清一

    ○勝間田委員 百歩譲って、蒋介石政権、台湾の国府と、周恩来あるいは毛沢東等の中華人民共和国とがお互いに話し合って、統一ある中国に進んでもらいたいという希望を、あなた、持つことについては賛成ですか。
  128. 岸信介

    岸国務大臣 私はいずれにしても、この極東に国しており、歴史的、地理的に非常な深い関係のある両国が、ああいう同じ民族で、しかも対立しておるという状態は望ましくないということは、私も同感であります。しかし私の方からさらに進んで、 これを話し合ってすべきものであるとかなんとかということになれば、少し日本立場からいえば行き過ぎではないかと思うのであります。
  129. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一歩譲って、台湾と中国との間を阻害するような外交手段は、少くとも日本はとるべきでない、こういうことは私は言えると思う。どうでしょう。
  130. 岸信介

    岸国務大臣 お答えをいたします。私は、中共と台湾との間を阻害するような外交政策は、とるべきものではないと思います。
  131. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その立場に立って、いろいろ今後問題が出て参るだろうと私は思うのでありますが、やはり当面の問題は、何といっても通商協定を早期に締結していかなければならない。少くとも民間ベースにおいて、この問題は始まっておるわけであります。しかも本月の下旬においては、すでに第四次協定等の話も進めなければならぬというのが、一般民間の立場であります。この問題について実はわれわれは、議会内において自民党の諸君とも、仲よくお互いに話し合っておるわけであります、ただ、この際にどうしても解決つけなければならぬ問題、小さなようで大きいのは、やはり指紋の問題であると私は思う。しかもこの問題は、早く解決をつけるということをこの際にやらないと、私は重大な支障が起ると思う。この前、岸さんにはお目にかかってお話も聞いたが、私は法務大臣にこの際お聞きしたいと思う。一体指紋の問題について、政府が公務に準ずるものとしてこれを扱えば、法務省としてはこれを善処するにやぶさかでないという態度をあなたはとれますか。一つ法務省の御見解を聞きたいと私は思う。
  132. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 お答えいたします。日本政府としては、外国人登録制度によりまして、諸外国の外国人すべて同一に指紋の制度をしいておるわけでございますから、かねがね議論もあるようでございますが、かりに中国の通商機関のようなものが日本国内に設けられた場合に、中国について特別の計らいをするということは、これはとうていできないことであります。もし一国についてのみ特別の取り計らいをするということになりますと、現在の統一ある外国人登録制度というものは遂行できませんから、これだけは私どもとしてはあくまでも貫いて参りたい、かように考えております。  御承知通り外交機関及び公務を帯びて入国することを日本政府が承認する者については、国際慣例に従って、これは各国人に対して同様に指紋をとらない方式できておりますから、問題は、今御指摘がありましたように、もし中国の通商の機関が日本国内に設けられる場合に、これが公けの外交機関として、もしくは公務を帯びての入国として日本政府が認めるかどうかということが、問題だと思うのです。この点につきましては、今国会におきましてかねがね、総理大臣代理であり外務大臣でありました現在の総理大臣からも、民間レベルの機関として入国をしてもらうならば差しつかえなかろうという意見表明されておるようでございます。私どもとしても、あくまで使命は通商でございますから、通商の機関であるならば、あくまで民間レベルの機関として設置されることが、行われるとすれば、望ましいことであります。そうなければならないと思うのであります。従いまして、今御指摘の点につきましては、われわれとしてそういう処置をとるという意図は、現在のところ毛頭ございません。
  133. 勝間田清一

    ○勝間田委員 通産大臣にお尋ねいたしますが、今の法務大臣の答弁でよろしゅうございますか。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 直接私の管轄の問題じゃございませんから、御答弁は御遠慮いたしたいと思います。
  135. 勝間田清一

    ○勝間田委員 通産大臣は、中共貿易の振興について、今日まで非常に大きな期待を持たれ、また発表もいたしておるわけでありますけれども、あなたも御存じの通り、通商関係はあなたの所管です。所管でないという考え方で、居眠りされておったんでは……。(笑声)もう一ぺん、目をさまして、日中の貿易の促進のためには指紋問題というものが、御存じの通り一番重大なネックになっておるのだから、これを法務省は外交官なり公務員なりという処置をとることはできない、こう言われておるのだけれども、そういうことであれば、実際上の処置としては民間の通商代表部の設置はできない、そういうことじゃ通産大臣としては困るだろうと私は思う。あなたとしては、また別の構想があってしかるべきだと思うから、あなたはどうしたいかという一つその見解を聞いてみたい。
  136. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は民間の通商代表部を両方で交換したいと思っております。これがいろいろの問題を解決する一番の方法であると考えていますので、この代表部はなるたけ設置されるように、いろいろなむずかしい問題の解決ができるように努力したいと思います。
  137. 勝間田清一

    ○勝間田委員 外務大臣としての見解を聞いておきたいと思います。
  138. 岸信介

    岸国務大臣 法律解釈は法務大臣が言っておる通りであろうと思うのです。ただ現在民間両者の間において話し合いが行われております。また向う側におきましても、日本の指紋制度の趣旨も十分に了解してもらう必要があろうと思いますしなお、両方の話し合いの結果まとまるものがあるならば、私は十分それを尊重してその問題に処していきたい。私は法律論としては一応法務省の考えをとるものであります。しかし一方、両国の通商の関係を増進したいというのは、われわれの内閣方針でありますし、この問題については、ずいぶん両者の間にまた誤解があるようにも思いますから、十分両当事者の間の話し合いの結果を見て処置したい、かように考えております。
  139. 勝間田清一

    ○勝間田委員 以上若干の点を申し上げたわけでありますが、これ以上は私は総理大臣において賢明な処置を至急とっていただきたいと思う。これはむしろ要望として申し上げておいた方がよろしいと私は思います。  それからチンコムの問題、ココムの問題の緩和等についていろいろ政府は答弁されておるのですけれども、一つどうしても納得の行かない点は、一体パリに日本外交官はチンコム、ココムで幾人行っているのです、ほんとうに本国との間における、あるいは実業家との間における連絡はとれているのでしょうか、私はその点が日本はきわめて不十分じゃないかと思っておりますが、この点一つ事実を明らかにしてほしいと思います。
  140. 岸信介

    岸国務大臣 六人出しておるそうです。この連絡につきましては、あらゆる問題について十分当方と連絡はとっております。
  141. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これを見ると、ココムの担当官はアメリカは三十人、イギリスは二十人、西ドイツは十六名、日本人はわずか四名、今六名という御答弁がありましたけれども、私の方の調査によれば四名、しかもこれはみな居眠り組だと私は聞いておる。本国との連絡はほとんどとれない。こういう状態で一体チンコム、ココムの緩和などはできようはずがない。特認の問題についてもしかりだと思う。私は政府に対して警告を発しておきたいと思うが、一体こういうところにもやはりしっかりしたものをやっておかないと、俊敏なこういう経済界の大きな競争には勝てないと私は思っております。この点を善処することを一つ要望いたしたいと思うのであります。  最後に一つ総理大臣にお願いいたしたいと思います。これはまだ岸総理大臣は総裁でないかもしれませんが、しかしやがて自民党の総裁にもなられる方だと思います。その岸さんが今日まで国会の正常化の問題をいろいろ論議されましたが、その信念を実現される上において、私はきわめて遺憾な点があると思う。それは私個人の問題ではなくて、私の長い間に関連してきた問題だが、あなたの方の政党は、社会党の十数名に対して告訴を出しておるわけです。こういう考え方で、他面においては御存じの通り恩赦、特赦が行われております。決して私はこれを相交換した考え方ではないし、その意味においては厳然と区別をしたいのでありますけれども、真に国会の正常化を行うならば、私はお互いが裸になって、そうしてお互いに政策を論じ合う、そういう態度に早くならない限り、私は実際の解決にはならないと思う。私はあなたにこれ以上申し上げようとは思いませんが、しかしあなたの良識に待ちたいと思うのであります。あなたの善処を要求したいと思う。しかしくれぐれも私は申し上げておきますが、これは私がかつて国会対策委員長をやっておったからこそこれを申し上げたのであります。個人の私の一つ立場上申し上げたのでありますが、これは同時に私自身の真心から申し上げておるのでありまして、いわゆる日本社会党の党とは何らの関係はございません。この点は明確に申し上げておきます。しかし、私が心中願っておることは、そこだということをお考え願って、善処をお願いいたしたいと思いますが、あなたのお考えをこの際聞かせていただければ大へん仕合せかと思うのであります。
  142. 岸信介

    岸国務大臣 国会運営の正常化という問題は、今、勝間田君の言われるように、国会はあくまでも政策を論議するところであり、従って二大政党下におきまして、それぞれ立場を異にし、主張を異にしておりますが、それはあるいは本会議において、あるいは委員会においてわれわれはあくまでもまじめに、真剣に、おのおのの主張を国会を通じて国民の前に明らかにする、そうしてその審議の終った結果は多数決によって事を決していく、しかもこの会議のあらゆる論議を通じて、たとい少数においてそれが成立しなくても、国民がそれに対する批判と判断の正確なものを持ち得るという、りっぱな論議が行われることが必要であると思う。従って国会の運営についてもそういう論議をできるだけ尽す、政府もそういう意味においては非常に真剣に、すべての野党質問等にも答える必要があるし、また与党も常に野党話し合いの場を多くして、国会運営を円滑にすることが必要であると思います。ただ過去において、われわれは非常な遺憾の事態を犯してきております。私は当時幹事長として、ちょうど勝間田君が国会対策委員長としておられた時代に、幾たびか折衝しましたけれども、また国会の運営の正常化のためにお互いに努力しようとしてきましたが、しかし過去においては、われわれの方にも反省すべきことがあり、また野党である社会党の行動にも私は遺憾の点が少くなかったと思う。しかしそれはお互いに反省して改めて、そうして国会をあくまでも今申したような正常化の方向に持っていくことが必要であり、望ましいことであります。しかしながらそうは申しますけれども、その途上において、あるいは議論に熱し、あるいは勢いのおもむくところ、お互いに正常なるルールを踏みはずすというようなことが万一にもある場合は、これは原則として国会みずからがそれを決するということであって、司法権等の介入等は、これは国会権威のために望ましくないことである。それには現在の国会法やその他の法制において、われわれがそういう事態ができたときに両党とも責任をもってわれわれの力でそれを解決し、将来そういうことがないことを国民の前に明らかにし得るような制度を作り上げることが必要であると思います。過去において起っております事件等につきましては、その処理につきましては、お互いが真にそういう反省の上に立つならば、おのずから解決の道がある、かように考えております。(拍手)
  143. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はこれで終ります。
  144. 山崎巖

    山崎委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。   午後四時十九分散会