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国務大臣(
岸信介君) 勝間田君の御
質問にお答え申し上げますが、勝間田君の御
質問は、私に対する御
質問よりも、従来の
社会党の主張を強く主張されておりまして、私自身としては、全体として、この
外交政策の根本に関して、われわれ自由民主党と
社会党がかくも
考えを異にしておるということは、
外交上きわめて遺憾と
考えておるものであります。特に指摘されました数点に対して、私の
所信をさらに明らかにいたします。
第一は、今回
インドネシア、
フィリピンを
訪問せずして、
台湾を
訪問することは不可である、日程を変える意思はないかということでありますが、私が先ほどの
所信の
声明のうちにも申しておりますように、さらに、私は、今回
訪問しない
東南アジア諸国に対しましても、なるべく早い時期にこれを
訪問する意図でございます。
インドネシア及び
フィリピンを今回たずねることのできないということは、私も遺憾でありますけれども、日程の
関係上やむを得なかったのでございます。従いまして、私は、今日、日程を再考し、これを変更する意思は持っておりません。
アジアの現状を分析して、
アジアが二分した形になっておるということをお話しになりまして、そのことは非常に遺憾であるという御
意見でございます。私も、全く、
アジアの現状を見まして、そういうふうな二分したような傾向にあることは、
アジアのために非常に遺憾と
考えるものであります。その点におきましては、勝間田君と全然
意見を同じくするものであります。ただ、その原因が、もっぱら
アメリカのこの
東南アジア政策がこれを二分せしめておる唯一の原因であるという判断に対しましては、私は遺憾ながら
意見を異にするものであります。(
拍手)と申しますのは、今日、国際の情勢が、東西両陣営といわれ、
アメリカと
ソ連を中心として
二つの勢力が
対立関係にあることは、私は、
世界の大きな大勢であって、これまた非常に遺憾とするところでありますが、現実であります。しこうして、この両勢力が
アジアにおいても相
対立し、拮抗しておるということは、
世界の現状からきておるものでありまして、これら
東南アジア諸国のうちにおきましては、自由を愛好する国々は、
ソ連からの間接的あるいはいろいろな
意味における侵略をさえ強く唱えております。私は、従って、これをただ
アメリカの
政策が
分裂せしめておるというような判断は、
国際情勢の判断として適当でないと思うものであります。(
拍手)私は、
所信のうちにおいても述べたごとく、
アジア・アフリカ・
グループの間におきましては、
歴史的にも、あるいは思想的にも、地理的にも、きわめて緊密な
関係があり、この間に
アジア人として共通の意識を持ち、共通に
解決しなければならぬ問題を持っておるという点においては、勝間田君と同じ
意見でありまして、それをいかにして
解決する方向に持っていくかということが、われわれ
AAグループに属しておる国々の責務であると同時に、
日本としても最も大きな使命の
一つであると思います。(
拍手)私は、
世界的に見て、東西両陣営の
対立を、国際連合の場において、いかにしてこの
緊張を緩和するかということが、
外交上わが
日本の使命であると同様に、
AAグループと西欧
諸国との間の
対立や、あるいは
AAグループ内におけるところの
分裂の傾向を、いかにして
一つにまとめ、また、これらの
対立している
関係を緩和するかということは、
AAグループの
一員としての
日本の大きな使命であると思うのであります。(
拍手)
次に、日中
国交回復問題についての御
意見でありましたが、これは、過般、
社会党の方々が
中国を親善使節として
訪問されました際に
共同コミュニケが発表され、また、
日本に帰ってこられてから、私も詳細に報告を聞いたのでありますが、私は、この日中
国交回復に関する時期が今である、直ちに
両国の
政府間において
国交回復についての
交渉を始むべきであるという
社会党の諸君のお
考えとは、遺憾ながら
意見を異にするものであります。(
拍手)私どもは、現在はその
段階ではない、現在においては、われわれは、貿易、経済
関係においてはこれが
増進について努力をすべきであるけれども、政治的な
関係において、正常なる
外交関係を復活するとか、あるいは
中共政府を承認するということは、その時期でないということを申しました。これは、勝間田君もお話がありましたように、国際的情勢も
一つの原因であります。
それから、
台湾政府を認めたことは
失敗である、
外交上大
失敗であって、これは単純な
中国の内政問題であるという判断に対しましては、
日本が正式にこれを認め、正式にこれとの間にわれわれは
条約を結び、
友好関係にあり、また、国際連合における有力なるメンバーとして
台湾政府が認められておる現状というものを無視しておる議論であると思います。
最後に、私が
アメリカを
訪問する際に、
安保条約や
行政協定の問題についても御
意見がございました。私は、すでに、この問題につきましては、しばしば私の
所信を
国会において明らかにいたしておりますが、私どもは、
社会党の諸君と違って、
安保条約体制を今日廃棄するという意思は持っておりません。しかしながら、この
条約が締結せられた当時におきましては、御承知の
通り、われわれは
日本において自衛力というものは全然皆無である、また、国際連合にも加盟をいたしておらなかったのであります。しかるに、今日におきまして、われわれは自衛力の漸増に努めて参りまして、とにかく完全に
日本を
日本自体の自衛力でもって防衛することはまだできませんけれども、少くとも
日本の防衛について相当の責任を分担し得る程度の防衛力を持っております。また、国際連合にわれわれは加盟をいたしました。国際連合の
一員としてのいろいろな義務や、また当然なさなければならぬことがございます。これらを
考えてみますと、今日、
安保条約や
行政協定を根本的に再検討して、これを合理的
基礎に置くということは必要であると私は
考えております。ただ、今おあげになりましたが、片務的である、これを双務的に改めるというふうな形式論でこれを論ずるというと、あなたが御指摘になったような
海外派兵の問題が関連してきやしないかというようないろいろな疑惑が出ます。疑心暗鬼が生ずるのであります。私は、そういう
意味において、そんな形式論理ではなくして、これは今申しましたような情勢の変化によるところの合理的な
基礎にこれを置くということが最も適当であると思います。
なお、この問題に関しまして、過日、私が、
国会において、憲法解釈論として、核兵器の問題と自衛権の問題との論議をいたしましたが、それは、詳しいことはすでに明らかになっておりますから、私は詳しくは申しませんけれども、今度の私の
訪米に際して何らかの意図をもってかくのごとき解釈をしたとか、あるいは、
アメリカとの
交渉においてこういうものが
日本に新たに課せられるとかいうようなことは絶対にございませんから、御安心を願いたいと思います。(
拍手)
それから、将来の
日本の
安全保障体制につきまして、
社会党におきましては、現在の
日米安全保障条約体制を廃止して、
日米中ソを含む集団
安全保障体制によって
日本の安全を保障すべきだという御議論をなすっておいでになりますが、これまた、私は、
世界の現状に即さない
一つの空論、と申し上げては、はなはだ御憤慨になるかもしれませんが、
一つの理想論にすぎないと思います。私ども、もしそれができるのであれば、国際連合
自体の現状は、ああいう状況ではないと思うのであります。(
拍手)こういう
意味におきまして、私は、現状においては、
日米安全保障体制を、合理的な
基礎、すなわち、さっき申したような変更により、
日本の
独立完成、自主
独立の
立場から
日米関係を合理化することが必要であると信じておるのであります。(
拍手)