○
大坪保雄君 私は、ただいま
議題となっております
松浦労働大臣不信任決議案に対して、自由民主党を代表して、絶対
反対の意見を表明せんとするものであります。(
拍手)
ただいま
提出者の
滝井君の述べられた
趣旨弁明を伺っておりますと、いろいろと、もっともらしい
理由があげられておるようでありますが、いやしくも
国務大臣であり一省の
最高責任者である者をその地位から去らしめるごとき
政治上の効果をもたらす
不信任の
理由としては、
一つとして納得のいくものがないのを、まことに遺憾とするものであります。(
拍手)
理由にもならぬ
理由を無理にこじつけて作り上げたという感じであります。
昨年の第二十四
国会においては、
社会党の
諸君の
暴力ざたを初め、
牛歩戦術、
動議戦術とともに、各
国務大臣に対する軒並み
不信任案の
提出という
戦術によって、
議事の正常なる
運営がはなはだしく阻害され、
国民のきびしい
批判を受けたことは、私どもの記憶になお新たなるところであります。(
拍手)今
国会は、これまでのところ、幸いに、さようなこともなく、平穏であったと人も称し、
国会正常化成るかとわれわれも喜んでおったところでありますが、
会期末の今日になって、突如として、それこそ抜き打ち的に
松浦労働大臣の
不信任案が
提出され、さらにまた、新聞紙の伝うるところによれば、次々と他にも
不信任案が用意されているかに聞きますことは、まことに唐突、奇異の感にたえず、その真意の那辺にあるかを疑わざるを得ません。(
拍手)
世上では、
社会党は去る一月の大会で
運動方針を大修正して大きく
左旋回をしたが、それは
総評の
要望書によったのである、その
社会党であるから、
国会らしい正常な
国会運営で全
会期を終ったのでは、
総評のきらう
議会主義的傾向とも見誤まられるおそれがあるし、それに、国鉄など
公労協の
処分反対闘争に対する支援という点からも、
会期末に一波乱起すべしとの
総評の
要望があってのことであろうと見る向きもあります。(
拍手)ただいまの
滝井君の
趣旨弁明を聞いて、ますますその感を深くするのは、私一人ではなかろうと思うのであります。(
拍手)
滝井君は、
労働政策に見るべきものがないというのが
松浦労相に対する
不信任の
理由の
一つであるとされたのでありますが、
諸君も知られる
通り、現代は
政党政治の時代であります。
政党が
政策を掲げて
国民に訴え、
国民の
批判と支持をもって
内閣を組織するのであります。
内閣の
閣僚の一人一人に特別の
政策のある必要はございません。その
政党の
政策を体得しておる者であれば資格は十分であります。わが党の
労働政策は、明らかに
国民に訴えてあります。国内に
産業を興し、
労使の協力によって
生産を増強し、
規模を拡大し、
国民経済を豊かにして、よって
雇用を増大し、すなわち、あらゆる
勤労者に職場を提供し、その
生活を
向上し、福利を増進し、もって平和にして文化的な
生活を享受させることにあるのであります。わが党の
完全雇用と
生活向上を達成するための
経済五カ年
計画策定の
理由と基礎はここにあるのであります。わが
松浦労働大臣は、わが党のこの
経済政策、この
労働政策の
体得者であります。この
基本政策に基いて行う
労働行政が、
総評の気に入らないから、また、
社会党の
諸君の希望に沿わないからといって、
政策がないなどと誹誇することは当らないのみならず、はなはだしく礼を失するものであろうと思うのであります。(
拍手)
滝井君は、
労働政策を明らかにする
予算面の不足があることをあげておるようでありますけれども、
社会党の
諸君が好んで用いる神武以来の景気とかの昨年以来、
完全失業者の数は減っております。失対
事業における
登録人夫の
求職数は減っております。
一般経済界の好況は、これら
求職者に就業の
機会を多く提供しており、また、その今後の見通しも大きいのであります。しかるに、
失業対策事業に吸収する
人員は、建設省の行う
臨時就労対策事業を含めれば、前年より上回っておるのであります。のみならず、本年度の
予算においては、
失業対策事業の
労働賃金を一日平均二十円
引き上げ、また、
失業保険の
給付金額を大幅に
引き上げてあることは、
諸君御
承知の
通りであります。これらは、ことごとく
松浦労働大臣の
努力のたまものでありまして、その
失業対策に関する見識と熱情を表わすものにほかなりません。(
拍手)
滝井君は、さらに、今年の
春闘における
公労協関係の
仲裁裁定について非難めいたことを申しておられますが、これは全く当りません。三
公社、五
現業に対する
労働委員会の
仲裁裁定は、現
内閣は、
最初から言明していたように、
誠意を持ってこれを
実施したのであります。去る四月二十六日の本院の
予算委員会で、
藤林仲裁委員長は、わが党の
小坂善太郎委員の質問に答えて、
政府のやった
措置も勧告を含めて相当
誠意が認められるし、
仲裁をやった者として満足である旨申されておるのであります。
仲裁裁定の
実施については、
社会党の
諸君は
総評の
諸君と一緒になってかれこれ言っておられますが、
仲裁裁定をなした
当事者である
労働委員会の
委員長は満足であると言っておられる。(
拍手)
仲裁裁定が、
裁定を下した
当事者から満足と言われるほど十分に
実施されたのは、
松浦周太郎君が
労働大臣をしておる現
岸内閣において初めてであります。(
拍手)この点を
社会党の
諸君は明らかに認識してもらいたいと思います。しこうして、このことは、
労使関係に良識ある慣行を作ろうという念願から、
松浦労働大臣が、終始、しかも日夜非常なる
努力をされた結果であるのでありまして、よいことはよいこととして、私は、このことは
社会党の
諸君からもほめてもらってよいことだと思っておるのであります。(
拍手)
公労協関係の
労働者は
罷業権を失っているから、これを回復せしめねばならぬと言われるが、
公企業体は、
国民経済、
国民生活にきわめて重大な
関係を持つもので、その
公共性からいってさらにまた
組合の現状からして、きわめて危険なりといわざるを得ません。
総評は、今年も、年中行事の
春季闘争を
実施しました。その結果は、
国民経済上大きな損失をもたらし、
国民に深刻なる迷惑をかけたのであります。そうして、これを成功であったと称しておる。彼らは、
春闘を準備するに当っては、その
戦術目標を、敵に最高の打撃を与えることによって敵より大幅の譲歩を戦いとることに置き、実害ある
戦術行使のみが戦いの有効なる手段たり得るという
立場で戦ったと申しております。この場合の敵とは、これは
国民になるわけであります。(
拍手)また、多くの国鉄
労働者が自発的に職場大会に参加し、ストライキ権は持っていないが、
賃金を上げるためには汽車をとめなければならぬ、実力行使をやらねばならぬという確信を持ったとも称しております。この場合、敵というのは、独占資本、
政府であるから——これは
総評の言っておることですよ、敵というのは。——独占資本、
政府であるから、これと対決するため、彼らの源泉となっている原材料、輸送力を長期的にとめることを
戦術の重点とするそうであります。
公企業体においては、資本は
国民の税金であります。
政府は、民主主義の国家においては
国民の代表であります。すなわち、
総評によれば
国民が敵なのであります。(
拍手)自分
たちの利益のためには
国民に迷惑を及ぼすことを一向に顧みないゆえんが明らかであります。かような
国民生活、公共の福祉よりも自分
たちの利益を重しとする
思想の労働
組合にスト権が与えられた場合の結果は、実に火を見るよりも明らかです。世俗に気違いに刃物と申す
言葉があります。
公労協が労働
組合らしい労働
組合に成長するのが先決問題でしょう。
去る十日、この議場で、
社会党の淺沼書記長は、岸総理に対する質問で、三
公社、五
現業の
労働者の
春闘に関する過日の
処分に対して、これを不当
処分として、「われらの断じて承服できないことであり、
断固反対をするものであります。」と申されておる。私は借問したい。
社会党の
諸君は、ほんとうに心から今度の
処分を不当として
反対されるのでありましょうか。ことしの
春闘における三
公社、五
現業の従業員
たちの
公労法違反の行き過ぎ
行為、特に国鉄労組の実力行使、職場大会と称するストライキでは、
国民は非常な迷惑をこうむっておる。そこで、これに対して
国民がひとしく憤激をいたし、その違反者の
処分は、
法律秩序維持の上からも、
責任追及の点からも、当然としてこれを
期待しておることは、いな、希望しておることは、各新聞紙の例外なき一致の論説や報道から、きわめて明らかなところであります。(
拍手)およそ、文字を知り、ラジオを聞き得る耳を持っておる者であったとき、何人といえども否定することができないでありましょう。すなわち、これが
国民の声なのです。
国民の意思なんです。
社会党は、この厳然たる事実を否認されますか。それとも、ごく一部の労働階級である
総評と同調して、
国民の声を無視して、あえて
国民大衆に敵対されるのでありますか。(
拍手)
私は、また、
社会党の
諸君にあえて推問したい。
諸君は法の秩序をいかにして維持せんとされるのでありますか。
国民が
法律を守ることについてどんなお考えでございますか。
諸君は私どもと一緒に立法の事に参画しておられるはずだ。
国会で制定した
法律は守らるべきものであるということに御異存はなかろうと思う。しかるに、明らかに
国民経済が破られ、
国民生活が害されるような
法律違反がなされ、なお何らの
処分もなされずして済ます、これが繰り返されたとすれば、社会の秩序はどうなるでありましょう。多くを言う必要はないと思います。
滝井君は
公労法を守れと
政府やわが党に言われましたが、この
言葉は、私はそのままこれを
社会党に返上したい。(
拍手)国鉄労働
組合は、去る三月の
春闘において、明らかに
公労法第十七条に違反してストを決行したのです。職務に反して莫大なる損害を
国民に与え、その憤激を買ったのです。
責任を感じないというのは社会の常識に反します。しかるに、それどころか、
処分をすればさらにストをもって対抗するぞとおどかしておる。かようなことは、法治国家では許されない。唯我独尊、ファッショに通ずる
思想であります。
近ごろ、世上に、昔軍閥、今
総評という
言葉がはやっておる。なるほど、今の
総評のあり方は、その膨大なる組織の力を乱用して、傍若無人、横暴の限りを尽しておる。昔、軍閥は、
国民の声を聞かず、
国民の利益を無視する横暴を行なって、ついに国を滅ぼさんといたしました。今、
国民は、
総評がこの軍閥の二の舞いをすることなきかを憂えておるのであります。
社会党の良識が
総評のかような
考え方や行動に反省を促し、これを抑制してくれるものと私ども思っておったのに、あにはからんや、逆にこれを支持して、これとともに戦う
態度をとられるのみか、
労使関係の正常化を念願して八方
努力しておられる
松浦労働大臣をかえって曲解して、
総評のおぼしめしに添わぬからとて、これを
不信任せんとするがごときは、われらの最も不可解とするところで、
断固反対せざるを得ません。(
拍手)
去る三月十一、十二日の
春闘第三波のスト、二十三日の抜き打ちスト、さらに今回の五月十一、十二日の
処分反対の抗議ストによる客車や貨車の運休、遅着はきわめて大量に及んでおります。これが千波万波を生んで、
国民のこうむった害、
国民経済、
国民生活に及ぼした損害は、はなはだしいものがあります。
私どもの非常に不可解なことは、国鉄従業員のかかる違法
行為応援のために現場に出かけられた
社会党の
国会議員が相当あったということであります。(
拍手)
社会党の
諸君が、これら
国民のこうむった被害に対して償いの
方法を考えてみたことがありますか。この考慮なくして、ただ
責任をとるのはいやだ、
処分は
反対だでは、
国民は納得いたしません。いな、
国民を敵とするといわれても仕方がないと思う。さような反省なくして、いたずらに他人を責めるのは、自分の顔のあばたを忘れて他人のえくぼをあざ笑うようなものであります。
滝井君は、さらに佐賀県
教組の
処分問題にも触れられましたが、これは
松浦労働大臣の
責任というのは少し無理でございましょう。(
拍手)
松浦労働大臣の人となりは、
社会党の皆さんも御
承知の
通り、苦学力行、今日の地位を築いた人であります。いわゆる立志伝中の人である。世の常の人と異なり、苦心経営の中にその才幹をみがき、識見を高め、円満なる人格を養った人であります。政界に籍を置くことも長く、自然、
政治家としての経験と見識に富む人であります。しこうして、その人柄は、
社会党の淺沼書記長も、去る十日、この議場で賞揚されたごとく、まじめ性の人であります。
反動性などみじんもない。しかも、愛情深く、情熱を持って事に当る人であります。人間としてこれ以上の徳性はないではありませんか。(
拍手)これを
不信任する
理由は全くない。私が
最初に、この不信案はこじつけの作り事のにおいがすると申したのは、このことであります。
以上、あらゆる角度から、私は
松浦労働大臣を今日
不信任する
理由はごうまつもないことを明らかにいたしました。
社会党の
諸君も良識をもって公正公明に物を判断せられんことを切望して、私の
反対討論を終ります。(
拍手)