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1957-02-28 第26回国会 衆議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十八日(木曜日)     ━━━━━━━━━━━━━ 議事日程 第十一号  昭和三十二年二月二十八日   午後一時開議 第一 衆議院解散要求に関する決  議案(淺沼稻次郎君外三名提出)     (委員会審査省略要求案件)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  日程第一 衆議院解散要求に関する決議案(淺   沼稻次郎君外三名提出)    午後一時十四分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  日程第一 衆議院解散要求に関する決議案淺沼稻次郎君外三名提出)      (委員会審査省略要求案件
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一は提出者より委員会審査省略申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。  日程第一、衆議院解散要求に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。細迫兼光君。   〔細迫兼光登壇
  5. 細迫兼光

    ○細迫兼光君 ここに上程せられました衆議院解散要求決議案について、私は、日本社会党を代表して、その趣旨説明をいたします。(拍手)  まず、主文を朗読いたします。     主 文  政府は、すみやかに衆議院解散すべし。  右決議する。   〔拍手〕  さて、昨日のわが党淺沼書記長質問に答えて、岸総理大臣衆議院解散するの意思なき旨を言明いたしました。われわれは、その態度はあくまで不当であって、許すべからざるものと確信するがゆえに、あえてこの決議案提出して解散断行を追及せんとするものでございます。(拍手)  去る二十五日、岸総理大臣記者会見において次のように述べたと新聞紙は伝えております。すなわち、「政権移動は必ず選挙によって国民意思に従ってやれという意見は、公式論形式論としては正しいと思う。しかし、同じ政党で、首班がかわるとか、あるいは首相病気でやめられ、次の内閣がその延長としてやるという場合に公式論一本でいくのは適当でない」このように述べておられるのであります。これが解散を適当としないという基本的な考え方でございましょう。なるほど、岸内閣成立は前首相病気引退によるものでありました。同じ政党内の政権移動でありました。しかるに、今世論の動向を見まするのに、あるいは即時にといい、あるいは予算成立のあかつきにといい、その時期において多少の異同はありますが、いずれも同じく岸内閣に期待するところは、外交一大転回でもなく、内政の一大刷新でもなく、一に衆議院解散という一事にあるのを一体いかに解釈したらいいのでありましょうか。これは世論岸内閣暫定内閣選挙管理内閣と断定しているからでございます。(拍手)これを、一片形式論なり、一片公式論なりとして、一笑に付し去るつもりでございましょうか。  思うに、一昨年保守合同の上に居すわった鳩山内閣、ここに問題の根源がございます。以来三たびの政権たらい回し、ここに問題の成熟がございます。保守合同のあの際こそ、衆議院解散を断行して、その信を国民に問うべき絶対の義務ある事態でございました。(拍手)何となれば、政権のよって立つところの政党基盤が変ったからでございます。しかるに、鳩山総理これをなさず、石橋総理これを行わず、また岸総理大臣これをなさない。なすべくしてなさざること、ここに三たびを重ねておるのでございます。(拍手世論のこぞって解散要求すること、まことにむべなるかなといわざるを得ないのでございます。(拍手)わが日本社会党解散要求するその声明書におきまして、「政変四たび、たらい回し三たびに及ぶ」と指摘しておるのは、まさにここのところでございます。長きにわたって自由民主党が果すべくして果し得ざりし解散義務を、今日なおほおかむりして免れようとすること、国民はもはや断じて許し得ざる段階に立ち至ったのでございます。(拍手)いわんや、今日の衆議院分野は、いわゆる鳩山ブームもとに行われた総選挙によるものであるにおいておやであります。鳩山総理の、住宅四十万戸建設完全雇用などの公約、空手形が次々に事実によって暴露せられた今日におきまして、現在の自由民主党の二百九十余の議席が民意を正当に反映しておるとは、何人も信ずることができません。(拍手)よろしく、岸総理大臣は、自由民主党が長きにわたって果し得ざりし解散義務を今や断固決済すべきときでございます。(拍手)  岸君が山口中学を卒業したのは大正二年でありました。私が同じ中学を卒業したのは翌大正三年でありました。今、君と、国家運命国民の将来について、その見るところを異にし、相対立はしておりまするが、私の心の底、胸の底では、「岸君おめでとう。国家のため、国民のため、間違いなくやってくれ」とささやくもののあるのを感ずるのであります。(拍手)君は、かつて、「おれは出処進退には筋を通してきたつもりだ」こう述懐したことがございます。筋は通すべきであります。君は「政権移動選挙を通じて」ということを形式論公式論と言ってはおるが、これは原則論と言いかえても異論はありますまい。(拍手原則の前に忠実であるべきであります。筋はこれを通すべきでございます。源清からずして末の清きを求めることはできますまい。国会正常化を叫ぶといえども政権移動民主主義ルール確立をないがしろにして、何の国会正常化であり得ましょうか。(拍手)この際すみやかに衆議院解散を断行すべきであると信ずるものでございます。  これ、この決議案提出したゆえんでございます。(拍手
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより討論に入ります。松田竹千代君。   〔松田竹千代登壇
  7. 松田竹千代

    松田竹千代君 ただいま議題となりました衆議院解散要求決議案に対しまして、私は、自由民主党を代表して、反対趣旨を明らかにいたしたいと思います。  先刻細迫君の本案提出理由とするところを承わりまして、かねてからひそかに畏敬する細迫君でありまするが、私はいささかその理由の薄弱なるに意外の感なきを得なかったのであります。(拍手)近来、国会解散ということをきわめて安易に口にされる方もありまするが、いやしくも、われわれは全国選挙民から選挙せられてきた衆議院議員である。その衆議院解散するということは、きわめて重大なることであります。従って、重大かつ堂々たる理由国民もひとしく「なるほど、もっともである」と納得のできる理由の存せざる限り、衆議院解散は断じて行うべきものではないと私は考えております。  今日、何がゆえにこの現在の衆議院解散しなければならないか、国民は果して解散を望み総選挙を歓迎しておるかどうか、疑いなきを得ないのであります。現在の国民気持は、「岸総理の健康と、そのはつらつたる意欲を政治の上に縦横にふるってもらいたい。現下日本の置かれておるところの困難な国際的地位、困難なる外交国際連合への平和的協力、その他経済の発展、国民生活向上等最大努力を傾けてもらいたい」と思っておるのが、国民の正直なる気持ではなかろうかと思うのであります。(拍手)少くとも、ここしばらくは、安定せる状況のもとに、それぞれの業務に精進していきたいというのが、国民すべての気持であることを確信いたしておるわけであります。さらに、国民の希望するところは、提出せる予算案を一日も早く通過せしめて実施に移してもらいたいと渇望しておることは、おそらく論を待たないところであると考えるのであります。(拍手)淺沼君は、昨日、予算案を通過せしめて後に選挙をやればよいではないかと言われるけれども、その際はなおさら選挙の必要を感じないわけであります。(拍手)  国会解散などよりも、今日国家国民のために最も必要なることは、いかにせば国会運営民主議会ルールに乗せ、その機能を発揮せしめ得るかということであると思います。政党政治の今日では、二大政党が望ましいということで、諸君社会党の方でも、左右両派労農党も入れて大合同を遂げた。われわれの方でもまた……。(「まねをしたんだ」と呼ぶ者あり)なるほどそうです。まねしてよいことは、みなまねするのである。(笑声、拍手)われわれの方でも、自由党、民主党は小異を捨てて大同団結をしたのである。先ほど、細迫君は、大同団結をして保守合同をやったときは解散する時期だと言った。ところが、われわれは選挙の当時に約束をした。合同するということをわれわれは言ったのである。(「約束しない」と呼ぶ者あり)その結果合同はできたのであって、約束を守ったのであるから、何ら解散をする必要はないのである。(拍手)そうして(ここに二大政党は顕現した。  国会の円満なる運営に当っては、私は、与党が、大政党権力に基いて横暴をきわめるということに対しては、これはあくまでも排撃しなければならぬと思っておる一人である。と同時に、少数の野党権力に拮抗していくというその努力は、これねまた尊重しなければならぬと思っておる一人である。しかしながら、国会においては、数の優位ということは、これを尊重しなければ、民主主義の根底が崩壊されるということもまた明らかであります。(拍手)  内閣の更迭に当って、政権たらい回し云々ということをしきりに言われるけれども衆議院に三分の二の基盤を持っておるこの政党において、たらい回しをするのは当りまえの話であって、何ら差しつかえない。(拍手石橋内閣政策をそのまま受け継いだ岸内閣が、与党政策を実現するために、予算案審議途上にある今日、そこに何らの失敗のない限り、内閣野党に引き渡さなければならぬという理由はごうまつもありません。(拍手)  きのうも、わが自由民主党においては、社会党諸君の御希望に応じて、本案審議を休憩して待っておったのであります。しかるに、休憩のまま流会になったことについても、いささか、汁げんの感なきを得なかったのでありますが、これまた相も変らざる予算案審議の引き延ばしに終始する常套手段であると、情なく感じた次第であります。(拍手)また、今日解散要求せられて、もし解散するというようなことに相なりましたならば、社会党諸君は、果してこの国会に過半数の基盤を獲得し得る御自信をお持ちであるかどうか。もしそれもないということでありますならば、同じような分野選挙の結果に現われることに相なりましたならば、いたずらなる総選挙ということになって、人騒がせに終るだけであり、その償いは何をもっていたさんとされるのでありますか。  今日、この院内の現状から考えてみますと、本決議案提出いたしましても、しょせんは否決になるべき運命にあることはきわめて明白であり、その明白なこともあえてなされようとするところに、きわめてその理由、その根拠の薄弱さを見出さざるを得ない。(拍手)むしろ、この解散要求決議案は、裏を返せば、解散回避の好個の手段であるといわれても、何ら仕方がないと思います。  諸君の堂々仰せられるところの、あの英国議会あり方――イーデン前首相は、中近東及びスエズ問題で世論の指弾を受け、政府の失政に対するごうごうたる非難に耐えかねて辞職したが、これにかわるものは、同じ保守党のマクミランが首相となった。それでも、英国社会党は、日本社会党と違って、ほぼ保守党と同じような勢力を持っておるのにかかわらず、たらい回し云々などという声を少しも聞かないのでございます。(拍手日本社会党諸君は、たらい回しをやめて、われわれ野党政権を譲るのが当然だと言われるけれども、今日社会党政権を渡せという声は天下のどこにありましょうか。(拍手)一つも聞えておらぬのであります。先ほど、また、細迫君が解散義務云々ということを申されたけれども、われわれは、これははなはだ了解に苦しむものであります。  以上、きわめて簡単でありますが、何ら今日この国会解散するの理由なしということを申し上げて、これに反対するものでございます。(拍手
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 井上良二君。   〔井上良二登壇
  9. 井上良二

    井上良二君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました衆議院解散要求決議案に対し賛成の意を明らかにせんとするものであります。(拍手)  すでに岸総理所信表明に対するわが党の淺沼氏の質問、及び、ただいま細迫氏から述べられました本決議案趣旨説明によりまして、わが党の主張せんとするところはほぼ明確にされたのでありますが、私は、さらに、民主憲法もと民主政治確立のため、また憲政常道を貫くために、この際衆議院即時解散を断行し、総選挙によって民心一新をはかることこそ何よりも急務であり、世論もまた強くこれを要望していることを、あえてここに指摘しておきたいと思うのであります。(拍手)  ただいま政府与党を代表いたしまして反対討論に立たれました松田竹千代先生の反対討論理由を聞いておりますと、それは、ほうはいとして起っております世論を全く無視した、政府与党の独善的な一方的反対論であり、国会解散をおそれる与党議員の声を代表するものであって、憲政常道を叫ぶ国民大衆の断じて承認する反対論ではありません。(拍手)  総選挙によって民心一新をはかることは何より急務でありまして、私が衆議院解散を主張すべき第一の理由は、ここに、たとい同一の政党基盤とする政権でありましても、内閣首班が交代すれば、当然その施政方針に変化があるのであります。従って、首班がかわりながら前内閣延長であるということは絶対にあり得ないのであります。いうまでもなく、政権移動に当っては、必ず新内閣が新しい施政方針を示して、国民にその信任を求めるのが大原則であります。(拍手)すなわち、主権在民政治あり方は、国民が投票によってみずからの代表を選び、みずからの政権を樹立するという、この動かすべからざる原則に立っているのでありますから、昭和三十年二月の総選挙以来すでに三たびの政変を数え、前後四代の内閣政権の授受を行なっているにもかかわらず・この間総選挙は一度も行われないで、保守党の独善的な解釈から、そのつど政権たらい回しが行われてきましたことは、民主政治の立場からも断じて承服することができません。(拍手)  特に、第羊次鳩山内閣から石橋内閣への交代に当っては、自民党の苛烈なる党内派閥争いのために、鳩山氏の後継者として自他ともに認められておりました岸氏が、わずかに七票の差をもって石橋氏に敗れました結果、鳩山内閣当時は反主流派と呼ばれていた人々が今度は石橋内閣指導権を握ったばかりでなく、政策の上でも、鳩山内閣健全財政を強調してきたのに対して、石橋内閣積極財政を主張し、これに基く諸政策を明らかにしたのであります。かくのごとく、同じ自民党内閣でありながら、その性格は全く一変したのでありますから、われわれは、石橋内閣がその政策、政綱を国民の前に明示し、同時に衆議院解散をすべきことを強く主張したのであります。しかるに、石橋内閣は、組閣と予算編成途上において国民の前に暴露したあの党内派閥抗争がそのまま閣内に持ち込まれて、約半数の閣僚解散反対態度をとっておるそうであって、そのために衆議院の実行し得なかったというのが真相のようでありますが、これこそ石橋内閣最大失敗であったと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)従って、新しくできました岸内閣が、この石橋内閣失敗を率直に認め、また、岸総理がその所信において述べられた通り、政治に清新はつらつとした機運を醸成し、国民理解納得の上に立つ政治こそ民主政治の正しい姿であると信ずるならば、今からでも決しておそくはありません。この際、民主政治の大道に従って、すなおに世論を受け入れて、一日もすみやかに衆議院解散を断行して総選挙を行うべきであります。(拍手)  ところが、昨日、本院におけるわが党の淺沼書記長質問に対し、岸総理は、一方では国民理解納得の上に立つ民主政治あり方を説きながら、世論がすみやかに衆議院解散を要望しておる事実は全く無視して、衆議院解散はいたしませんと答えたが、それでは岸総理の言われる民主政治とは一体どういうものか、判断に苦しむものであります。(拍手)まさか、東条内閣当時の、あの全体主義的な翼賛政治民主政治と混同しておられるものではありますまい。岸総理は、世論に耳を傾ける前に、まず自己地位をゆさぶり攻め立ててくる党内派閥抗争のあらしをどう切り抜けるかということと、解散になれば再び当選がおぼつかないとする哀れな与党議員連反対にあって、あえて世論を抹殺し無視せんとしていることは、断じて私ども許すわけには参りません。(拍手)私は、次期自民党総裁約束される岸さんに、まさかそのようなことはないと思うのでありますが、この誤解を一掃するためにも、岸総理の新たなる決断を求めるものであります。  次に、私が衆議院解散要求をする第二の理由は、明年度予算に関連する問題でありますが、岸内閣は、今回の政変に当り、衆議院解散を当面回避する唯一の理由として、経済の混乱を防ぐためにどうしても明年度予算成立させる必要があるとし、これに協力されたいと要望しているのでありますが、問題はその予算案に盛られている内容であります。石橋内閣が現国会提出した明年度予算案に対しては、すでに、わが党は、それが国民生活の安定と向上を脅かし、金融資本背景とする独占的な巨大資本に奉仕することを目的とした予算案であることを指摘し、これに鋭い批判を加えてきているのであります。しかも、この予算案の骨子とするところは、三十一年度及び明三十二年度に予想される不堅実な自然増収を財源として、平年度約一千億円の減税を行い、さらに約一千億円を産業規模拡大に投下しようという、いわゆる拡大予算でありますが、明年度実施されんとする減税七百二十億円も、決して低額所得者を対象としたものではなく、月収十万円、二十万円という高額所得者減税が中心となったもので、しかも、この減税は、低額所得者にとっては、運賃の値上りによる三百六十五億の増徴を初め、揮発油税等の引き上げによる物価の値上りで全く相殺されるのみか、一たん閣議決定した消費者米価値上げ国民の反撃と党内派閥抗争に攻め上げられるや、これを一時取りやめ、法的に何等の根拠もない食管の特別調査会を設けて、本予算案国会審議を終ったあき巣をねらい、米価値上げを強行せんとしていることは明白であります。(拍手かくのごとく、国民生活を圧迫し、一歩誤まればインフレを引き起そうというこの拡大予算案を、政府与党が一国民経済に重大なる影響ありとの美名のもとに、強引に成立させんとする裏には、この予算案に盛られている産業投資を通じ、来たるべき総選挙を有利に戦える資金と地盤を確保して、これらの準備が整った上で初めて国会解散し、総選挙を行い、もし選挙違反に問われたならば、政治資金規正法にひっかかったならば、また恩赦の赦免によって解散しようという、このような、まことにけっこうな考え方に立って予算案成立を急いでいるのではないかという大きな疑惑の声さえ国民の中に起っているのであります。(拍手、「懲罰」と呼ぶ者あり)岸内閣は、石橋内閣提出した予算案及び諸法案をそのまま引き継ぎ、この予算案法律案に盛られた財政経済政策外交方針もそのまま再確認したのでありますから、国民には、その施政の方向はすでに十分周知されている。従って、この予算成立選挙を有利に導こうというようなこそくな策略を弄せず、進んで社会党政策方針と堂々と対決し、総選挙を通じて国民大衆の厳正なる審判を請うきであると考えます。(拍手)  さて、私は、最後に、岸信介氏個人にではなく、内閣首班たる岸総理大臣に対し率直に申し上げたい。あなたは、総理就任の第一声でも、また、昨日の本議場における所信表明でも、二大政党もと国会運営にはできる限り話し合いの場を作り、両党間のいたずらなる対立紛争を防止したいと言われ、また、民主政治あり方にまで言及されたのでありますが、どうもあなたのこの公約石橋首相の言葉をそのまま借用されたもののような気がするのであります。何となれば、あなたが過去三十有余年歩んでこられました官界、政界における足跡と、同時に、一自由民主党幹事長時代の跡を、静かに顧みていただきたいのであります。あなたの歩んでこられた長い経歴の、一体どこに民主的な行動がありましょうか。(拍手)  遠い昔のことはさておき、あなたは、あの大東亜戦争宣戦布告をした東条軍閥内閣もと官僚統制の総元締めとして、国土をあげての総力戦に国民をかり立てざるを得なかったために、三百余万の同胞は傷つき、倒れ、全国主要都市はことごとく爆撃によって戦火に焼き払われ、一千万人に上る戦災者を出し、さらに、三百五十万の在外同胞は、飢えと寒さにふるえながら、着のみ着のままの姿で引き揚げざるを得なかったのであります。(拍手)しかも、戦後の国内は、住むに家なく、食糧は絶対に不足し、まさに凄惨の極に達したのであります。最愛の夫や子供を失い、もしあの夫や子供が生きておったなら、もしあの家が焼けなかったなら、今あの商売が続けられていたらと、戦争の犠牲になった多くの同胞が今なお涙を流しているのであります。あなたは、あの戦争当時、国民指導的地位にあり、東条英機氏に見込まれて閣僚として臨戦政治に参画されたことも、当時としては、やむなき尽忠報国の至情からなされたのでありましょうが、今、あなたは、日本人として、ひそかにざんげし、後悔されておることと思うのであります。  しかし、多くの国民は(あなたの戦争責任を追及することを超越して、戦いに敗れた祖国の焼け野原に立って、いかに戦争が悲惨な現実を生み出すものであるかを身をもって体験し、再び戦争の起らない平和憲法もと日本を再建するため、この十余年間、働く労働大衆と農民は、低賃金と低米価に甘んじ、黙々として今日まで働き続けて参りました。この国民あげての祖国再建への労苦に報いるがごとく、昨年来、世界的好況の波に乗って、日本経済もどうやら復興して参り、この好景気の上に、昨年末、石橋内閣成立したのでありますが、お気の毒にも石橋氏は病に倒れ、内閣総辞職が断行されますや、今度は岸さんが総理大臣として認証を受け、国政の最高責任者として国民の前に立ち現われたのであります。  そうして、岸総理は、総理大臣として、開口一番、その所信演説において、国民民族的団結を呼びかけ、また、わが国の将来をになう青年に、国家建設の理想に情熱を傾げて奮起せよと言われておりますが、この所信は、表では石橋内閣の人気の衣を借り着しながら、その裏では東条内閣当時の翼賛政治と間違われるような権力的なにおいを強く国民に与えたのであります。(拍手)すなわち、一たび権力の座につくと、自己の力を過信して、国家権力背景とした権力政治を再び行うのではないかと疑われているのであります。(拍手)私どもがこのような疑惑を抱かねばならぬことは、あなたが公職追放中せっかく反省を重ねられ、いよいよこれから民主日本建設に全力を注がんとしておるときだけにまことに遺憾しごくであります。  しかしながら、あなたの戦争遂行責任は決して私どもが率先追及しておるのではありませんから、どうか誤解のないように願いたい。それは、あなた方が昨年暮れに行いました自民党総裁選挙に岸氏が立候補されましたとき、いかに派閥対立の激化による結果の総裁争いとはいえ、現にあなたが率いられておる自由民主党議員の中から、わざわざパンフレットに印刷をいたしまして、院内外にこれを配って、あなたがさも戦争責任者であって、総理としての資格はないようなことをふれ回っております。(拍手)かような与党議員をそのままにしておいて、いかに民族団結を説き、青年の奮起を呼びかけましても、われわれ国民協力を求められても、国民の方では納得できないのであります。(拍手国民は、あなたの行動には常に国家権力の発動がつきまとっておるという感じを今なお受けている。私どもは、岸内閣としては、何よりもまず、この国民疑惑を解くためにも、総選挙によって国民にその信を問うべきであることを確信するものであります。(拍手)  自由民主党諸君も、党内派閥争いのような小異を捨てて、国民世論に静かに耳を傾けられ、民主政治確立を望まれますならば、この際、国民から選ばれた議員であることを十分自覚し、悔いを千載に残さざるよう、どうか党派を越えて本決議案に賛成されんことを望み、解散要求決議案の賛成討論を終る次第であります。(拍手
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの井上君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。   〔参事投票を計算〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長朗読〕  投票総数 三百九十六   可とする者(白票)  百四十五   〔拍手〕   否とする者(青票) 二百五十一   〔拍手
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、衆議院解散要求に関する決議案は否決されました。(拍手)     ―――――――――――――   〔参照〕  淺沼稻次郎君外三名提出衆議院解散要求に関する決議案を可とする議員の氏名       阿部 五郎君    青野 武一君       赤路 友藏君    赤松  勇君       茜ケ久保重光君    淺沼稻次郎君       足鹿  覺君    飛鳥田一雄君       有馬 輝武君    淡谷 悠藏君       井岡 大治君    井谷 正吉君       井手 以誠君    井上 良二君       井堀 繁雄君    伊瀬幸太郎君       伊藤卯四郎君    池田 禎治君       石田 宥全君    石橋 政嗣君       石村 英雄君    石山 權作君       稲富 稜人君    今澄  勇君       今村  等君    受田 新吉君       小川 豊明君    大西 正道君       大矢 省三君    岡  良一君       岡本 隆一君    加賀田 進君       加藤 清二君    風見  章君       春日 一幸君    片島  港君       片山  哲君    勝間田清一君       上林與市郎君    神近 市子君       神田 大作君    川俣 清音君       川村 継義君    河上丈太郎君       河野  正君    木下  哲君       木原津與志君    菊地養之輔君       北山 愛郎君    久保田鶴松君       栗原 俊夫君    小平  忠君       小牧 次生君    小山  亮君       五島 虎雄君    河野  密君       佐々木更三君    佐竹 新市君       佐竹 晴記君    佐藤觀次郎君       坂本 泰良君    櫻井 奎夫君       志村 茂治君    島上善五郎君       下川儀太郎君    杉山元治郎君       鈴木茂三郎君    鈴木 義男君       田中織之進君    田中 武夫君       田中 利勝君    田中 稔男君       田原 春次君    田万 廣文君       多賀谷真稔君    高津 正道君       滝井 義高君    竹谷源太郎君       辻原 弘市君    戸叶 里子君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       中居英太郎君    中崎  敏君       中島  巖君    中村 高一君       中村 時雄君    中村 英男君       永井勝次郎君    成田 知巳君       西村 榮一君    西村 彰一君       西村 力弥君    野原  覺君       芳賀  貢君    長谷川 保君       原   茂君    原   彪君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       平田 ヒデ君    古屋 貞雄君       帆足  計君    穗積 七郎君       細迫 兼光君    細田 綱吉君       前田榮之助君    正木  清君       松井 政吉君    松尾トシ子君       松岡 駒吉君    松平 忠久君       松原喜之次君    松前 重義君       松本 七郎君    三鍋 義三君       三宅 正一君    水谷長三郎君       門司  亮君    森 三樹二君       森島 守人君    森本  靖君       八百板 正君    八木 一男君       八木  昇君    矢尾喜三郎君       安平 鹿一君    柳田 秀一君       山口シヅエ君    山口丈太郎君       山崎 始男君    山下 榮二君       山田 長司君    山花 秀雄君       山本 幸一君    横錢 重吉君       横路 節雄君    横山 利秋君       吉川 兼光君    吉田 賢一君       和田 博雄君    渡辺 惣蔵君       石野 久男君    久保田 豊君       中原 健次君  否とする議員の氏名       阿左美廣治君    相川 勝六君       逢澤  寛君    青木  正君       赤城 宗徳君    赤澤 正道君       秋田 大助君    淺香 忠雄君       足立 篤郎君    芦田  均君       荒舩清十郎君    有馬 英治君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       井出一太郎君    伊東 隆治君       伊藤 郷一君    生田 宏一君       池田 清志君    池田 勇人君       池田正之輔君    石井光次郎君       石坂  繁君    石田 博英君       一萬田尚登君    稻葉  修君       犬養  健君    今井  耕君       今松 治郎君    宇田 耕一君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       臼井 莊一君    内田 常雄君       内海 安吉君    江崎 真澄君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小笠原三九郎君    小川 半次君       小澤佐重喜君    越智  茂君       大久保留次郎君    大倉 三郎君       大島 秀一君    大高  康君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大野 伴睦君    大橋 武夫君       大平 正芳君    大村 清一君       大森 玉木君    太田 正孝君       岡崎 英城君    奧村又十郎君       加藤 精三君    加藤常太郎君       加藤鐐五郎君    鹿野 彦吉君       上林山榮吉君    神田  博君       亀山 孝一君    川崎末五郎君       川野 芳滿君    菅  太郎君       菅野和太郎君    簡牛 凡夫君       木崎 茂男君    木村 俊夫君       木村 文男君    菊池 義郎君       岸  信介君    北  昤吉君       北澤 直吉君    北村徳太郎君       吉川 久衛君    清瀬 一郎君       久野 忠治君    草野一郎平君       楠美 省吾君    倉石 忠雄君       小泉 純也君    小枝 一雄君       小金 義照君    小坂善太郎君       小平 久雄君    小林  郁君       小林  錡君    小山 長規君       河野 一郎君    河野 金昇君       河本 敏夫君    纐纈 彌三君       佐々木秀世君    佐藤 榮作君       佐伯 宗義君    坂田 道太君       櫻内 義雄君    笹本 一雄君       笹山茂太郎君    薩摩 雄次君       志賀健次郎君    椎熊 三郎君       椎名悦三郎君    椎名  隆君       重政 誠之君    篠田 弘作君       島村 一郎君    首藤 新八君       正力松太郎君    白浜 仁吉君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       杉浦 武雄君    助川 良平君       鈴木周次郎君    鈴木 善幸君       鈴木 直人君    薄田 美朝君       砂田 重政君    世耕 弘一君       關谷 勝利君    園田  直君       田口長治郎君    田子 一民君       田中伊三次君    田中 角榮君       田中 龍夫君    田中 久雄君       田中 正巳君    田村  元君       高岡 大輔君    高木 松吉君       高瀬  傳君    高橋 禎一君       高橋  等君    高見 三郎君       竹尾  弌君    千葉 三郎君       中馬 辰猪君    塚田十一郎君       塚原 俊郎君    堤 康次郎君       綱島 正興君    渡海元三郎君       徳田與吉郎君    徳安 實藏君       床次 徳二君    内藤 友明君       中垣 國男君    中川 俊思君       中島 茂喜君    中嶋 太郎君       中曽根康弘君    中村 梅吉君       中村三之丞君    中村庸一郎君       中山 マサ君    永田 亮一君       永山 忠則君    灘尾 弘吉君       夏堀源三郎君    並木 芳雄君       楢橋  渡君    南條 徳男君       二階堂 進君    丹羽 兵助君       西村 直己君    根本龍太郎君       野澤 清人君    野田 卯一君       野田 武夫君    野依 秀市君       橋本登美三郎君    橋本 龍伍君       長谷川四郎君    畠山 鶴吉君       八田 貞義君    花村 四郎君       濱地 文平君    濱野 清吾君       林讓  治君    林   博君       原  捨思君    平野 三郎君       廣瀬 正雄君    福井 順一君       福井 盛太君    福田 赳夫君       福田 篤泰君    福永 一臣君       福永 健司君    藤枝 泉介君       藤本 捨助君    淵上房太郎君       船田  中君    古井 喜實君       古川 丈吉君    古島 義英君       保利  茂君    坊  秀男君       堀内 一雄君    堀川 恭平君       眞崎 勝次君    眞鍋 儀十君       前尾繁三郎君    前田房之助君       牧野 良三君    町村 金五君       松浦周太郎君    松浦 東介君       松岡 松平君    松澤 雄藏君       松田竹千代君    松田 鐵藏君       松永  東君    松野 頼三君       松本 俊一君    松本 瀧藏君       三浦 一雄君    三木 武夫君       三田村武夫君    水田三喜男君       南好  雄君    宮澤 胤勇君       村上  勇君    村松 久義君       粟山  博君    森   清君       森下 國雄君    森山 欽司君       八木 一郎君    山口喜久一郎君       山口 好一君    山崎  巖君       山下 春江君    山手 滿男君       山村新治郎君    山本 勝市君       山本 粂吉君    山本 猛夫君       山本 利壽君    山本 友一君       横井 太郎君    横川 重次君       吉田 重延君    米田 吉盛君       早稻田柳右エ門君    渡邊 良夫君       亘  四郎君          ――――◇―――――
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。    午後二時十六分散会      ――――◇―――――  出席国務大臣     内閣総理大臣     外務大臣        岸  信介君     法務大臣        中村 梅吉君     大蔵大臣        池田 勇人君     文部大臣        灘尾 弘吉君     厚生大臣        神田  博君     農林大臣        井出一太郎君     通商産業大臣      水田三喜男君     運輸大臣        宮澤 胤勇君     労働大臣        松浦周太郎君     建設大臣        南條 徳男君     国務大臣        石井光次郎君     国務大臣        宇田 耕一君     国務大臣       大久保留次郎君     国務大臣        川村 松助君     国務大臣        小滝  彬君     国務大臣        田中伊三次君  出席政府委員     内閣官房長官      石田 博英君      ――――◇―――――