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1957-02-27 第26回国会 衆議院 本会議 第13号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十二年二月二十七日(水曜日)
━━━━━━━━━━━━━
議事日程
第十号
昭和
三十二年二月二十七日 午後一時
開議
一
国務大臣
の
演説
————————————— 第一
議員請暇
の件
━━━━━━━━━━━━━
○本日の
会議
に付した案件
日程
第一
議員請暇
の件
岸内閣総理大臣
の
所信
についての
演説
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
午後一時八分
開議
益谷秀次
1
○
議長
(
益谷秀次
君) これより
会議
を開きます。
————◇—————
日程
第一
議員請暇
の件
益谷秀次
2
○
議長
(
益谷秀次
君)
日程
第一につきお諮りいたします。
議員本名武
君より、
スカンジナビア航空会社北極圏航路開設記念飛行参加
及び欧米の
政治経済事情等視察
のため、本日から三月二十七日まで二十九日間
請暇
の申し出があります。これを許可するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
益谷秀次
3
○
議長
(
益谷秀次
君) 御
異議
なしと認めます。よって許可するに決しました。
————◇—————
益谷秀次
4
○
議長
(
益谷秀次
君) 御
異議
なしと認めます。よって許可するに決しました。
国務大臣
の
演説
益谷秀次
5
○
議長
(
益谷秀次
君)
内閣総理大臣
から
所信
について
発言
を求められております。これを許します。
内閣総理大臣岸信介
君。 〔
国務大臣岸信介
君
登壇
〕
岸信介
6
○
国務大臣
(
岸信介
君) 私は、去る二月四日、
内閣総理大臣臨時代理
としてこの壇上におきまして、
石橋内閣
の
施政
の
方針
を申し述べたのでありますが、当時
病気静養
中でありました
石橋
前
首相
は、今回、その
政治的信念
に従われまして
辞意
を
表明
されたのであります。その結果、はからずも、不肖私が、
国会
の
指名
により、
内閣総理大臣
の重責をになうことになりました。(
拍手
) 私は、その
責任
の重かつ大なることを痛感するものであります。しかし、
指名
を受けました以上、私としては全力を尽してこの大任に当るかたい覚悟と
決意
を有するものであります。(
拍手
) 新
内閣
におきましては、
石橋内閣
の
施政
の
方針
を継承するものであります。ことに、
昭和
三十二年度
予算案
につきましては、
政府
は、これを引き継ぎ、
責任
をもってその実施に当りたいと
考え
ております。(
拍手
)この
予算案
が
国民経済
と
国民生活
に重大な影響を持つものであることに
思い
をいたされ、引き続き
審議
を継続し、一日もすみやかに
成立
するよう御協力あらんことをお願いいたします。(
拍手
) 私は、また、
石橋
前
首相
と同じく、何よりもまず
国会運営
の
正常化
に寄与したいと存ずるのであります。(
拍手
)各党間においてできるだけ多く話し合いの場を作り、もって
国会
の
運営
を
民主主義
の
原則
に従って円滑に行うことは、
国会
に対する
国民
の信頼を高めるゆえんでありまして、また、
国民
がひとしく期待するところであります。(
拍手
) 今や、
わが国
は、
経済自立
の
基盤
を整え、また、
国際連合
に加入して、その
国際的役割
に重きを加え、ここに新
日本
を建設し、世界の平和に寄与する
歴史的段階
に立つに至ったのであります。今こそ、
国民
は、
民族的団結
を固め、自信と希望をもって立ち上るべきであります。(
拍手
)とりわけ、私は、
わが国
の将来をになう
青年諸君
が、真に
国家建設
の理想に燃え、純真な情熱を傾けてその使命を達成されるよう、切に奮起を望みたいのであります。(
拍手
)また、私は、
国民
の福祉と繁栄をはかるとともに、
政治
に清新はつらつとした機運を作り上げたいと思うものであります。(
拍手
) 私は、
国民大衆
の
理解
と
納得
の上に立つ
政治
こそ
民主政治
の正しい姿であると信じますがゆえに、常に
国民大衆
と相携えて
民族
の発展と世界平和への貢献を期したいと念願してやまないものであります。(
拍手
) ここに、
所信
を申し述べて各位の御支援をお願いする次第であります。
————◇—————
益谷秀次
7
○
議長
(
益谷秀次
君) この際暫時
休憩
いたします。 午後一時十四分
休憩
————◇—————
午後二時十二分
開議
益谷秀次
8
○
議長
(
益谷秀次
君)
休憩
前に引き続き
会議
を開きます。
————◇—————
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
益谷秀次
9
○
議長
(
益谷秀次
君) これより
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
に入ります。
淺沼稻次郎
君。 〔
淺沼稻次郎
君
登壇
〕
淺沼稻次郎
10
○
淺沼稻次郎
君 私は、
日本社会党
を代表いたしまして
岸内閣総理大臣
に対し、その
所信
の
表明
の
演説
に
関連
をいたしまして、
わが国憲政
の
運用
に関し、その
基本
的な問題並びに
外交
の
方針
に関しまして
質問
を行わんとするものであります。(
拍手
) しかし、先ほど、
岸内閣総理大臣
から、
総理大臣
としての
所信表明
の
演説
を
伺い
ましたが、その間四分であります。あまりに簡略であります。景色が全然出ておりません。
岸総理大臣
の
主導性
が何ら現われておらないのであります。ちょうど総
辞職
せる
石橋内閣
に埋没をした形でありまして、はなはだ私は遺憾しごくに
考え
ます。そこで、私は、
質疑応答
を通じまして、
岸内閣
の
性格
を明らかにして参りたいと思うのであります。冒頭に申し上げますが、
答弁
のいかんによりましては再
質問
を許してもらいたいということを、あらかじめお願いしておきます。(
拍手
)
岸内閣
は
石橋内閣
を受けて
成立
したのであります。
石橋内閣
は昨年十二月
成立
したのでありまするが、
石橋総理
が
病気
のために
国会
に出席することができず、
岸外務大臣
が
総理大臣臨時代理
に任命されまして、
国会
の
運営
並びに
政務執行
に当ってきたのであります。しかるに、
病気
が
予定通り回復
を見ず、去る二十二日、
医師団
の
精密検査
の結果、二カ月の
静養
を要するという診断の結果が出るに及び、
石橋
前
総理
は、時の
総理大臣臨時代理岸信介
君並びに
自由民主党幹事長三木武夫
君に書簡を送り、その中で、「私は、新
内閣
の首班として、最も重要なる
予算審議
に一日も出席できないことが明らかになった以上、
首相
として進退を決すべきだと
考え
ました。私の
政治的良心
に従うほかはない。また、万一にも政局の不安が私の
長期欠席
のため生ずることがありましては、これ全く不本意とするところであります。私の
総裁
としてまた
首相
としての念願と
決意
は、
自由民主党
にありましては融和と派閥の解消であり、
国会
におきましては
国会
の
正常化
であります。私の
長期欠席
がこの二大
目的
をかえって阻害することになりましては、私の耐え得るところではありません。どうか私の意のあるところをおくみ取り下さい」といって、その
辞意
を
表明
されました。
自己
の
発言
、
公約
に
責任
を持つ
政治家
として当然なことでありまするが、しかし、その
態度
はりっぱであります。(
拍手
)ある意味においては、
辞職
をもって
国会
の
正常化
と
政党
のあり方を説いたと言っても
過言
ではありません。 そこで、私は、まず
石橋
前
総理
が身をもって警告した
国会
の
正常化
、この問題に
関連
をいたしまして
質問
をしたいと存ずるものであります。(
拍手
) また、このことは、
岸総理大臣
がその
所信
の中において明らかにしておるところであります。 第一は、
政権移動
の
ルール
でございます。それは、
国会運営
の
正常化
は
政権
の
移動
の
ルール
の確立から始められなければなりません。(
拍手
)
岸総理
の
所信表明
の
演説
におけるがごとく、
民主政治
の正しき姿は、
国民大衆
の
理解
と
納得
の上に行われなければなりません。しかるに、
政権
の
移動
が、
たらい回し
というがごとき
不明朗——国民
の
納得
と了解が得られなくして、
国会
の
運営
にのみ協力を求めるということは非常な無理があるということを、私は申し上げなければなりません。(
拍手
)
政権
の
移動
は、総
選挙
を通じて、
国民
の意思によって行うことが当然であります。
日本憲法
の
主権在民
の大
原則
は、
日本国民
が、みずから
政治
を行わんとして、みずから
政府
を作り上げるところにあります。そうして、その行為は、投票、
選挙
を通じ、
議会
を通じて行われるのであります。この
原則
は、
朝野
両党いずれも侵してはなりません。これを侵せば一
党独裁
を招来する結果になるのであります。しかるに、
岸内閣
は、
昭和
三十年二月総
選挙
のあと
成立
せる第二次
鳩山内閣
、第三次
鳩山内閣
、
石橋内閣
、
岸内閣
と、四たびの
政変
の結果生まれた
内閣
であります。その間、一昨年の十月十三日、
日本社会党
はその統一を完成いたしました。これに応ずるがごとく
保守合同
が行われ、
自由民主党
が生まれたのであります。三十年二月総
選挙
の際は、
日本民主党
は、
鳩山総裁
のもとに独自の
政策
を掲げ、
自由党
は、
緒方総裁
のもとに、これまた独自の
政策
を掲げて戦ったのであります。その後
政権維持
のために
保守合同
を行い、総
選挙
の結果を人為的に変えたのであります。(
拍手
)
政権
は、
日本民主党
から
自由民主党
へと、そのよって立つ
基盤
が変更されたのであります。すなわち、
衆議院
を解散して信を
国民
に問うのはこのときであったと私は思うのであります。しかるに、
政権
は
日本民主党
から
自由民主党
へと
たらい回し
をされ、
民主主義
の
ルール
はじゅうりんされたのであります。第三次
鳩山内閣
の総
辞職
は、表面は
鳩山総理
の
病気
のゆえをもって
総裁引退
と言っておりまするが、これは明らかに
政策
の
行き詰まり
であります。すなわち、
鳩山総裁
が
政策
の
行き詰まり
と
自由民主党総裁
としての
統率力
を失った結果といわなければなりません。(
拍手
)従って、二大
政党
の
現実
にかんがみ、
政権
は当然
社会党
に引き渡し、
社会党内閣
を
選挙管理内閣
として
衆議院
を解散し、
政権
の
移動
を行うことが、
政権移動
の
ルール
であるべきであったと思うのであります。(
拍手
)ところが、
保守政権
は
鳩山内閣
から
石橋内閣
へと
たらい回し
をいたしました。しかし、
石橋
前
総理
は、
政権
の
移動
は総
選挙
を通じて行うという
原則
は認められ、総
選挙
は自分の
精神的用意
ができてからやると
言明
をされ、本年一月の初め、
三木幹事長
、
石田官房長官
も、これに応ずるがごとく、解散近しと思わしめるがごとき談話を発表されました。その後、二月四日の本
会議
におけるわが党の
鈴木委員長
の
質問
に対して当時の
岸総理大臣臨時代理
は、答えて、「私は
政権
の
移動
は必ずしも総
選挙
をやらなければならないという
原則
に拘泥するものではありません」と、
政権移動
の
ルール
を否定したような
答弁
を行なっておるのであります。これは重大なる問題でありまして、ここに
岸総理大臣
の
憲法軽視
の姿が現われておると言っても
過言
ではないと思うのであります。(
拍手
)
選挙
の結果を勝手に変え、
政策
が行き詰まっても、また、
政府
並びに
与党
に事故が起きても、一党の中において
政権
を
たらい回し
してやることは、一党の
独裁
べの道であります。また、三たび
政権
の
たらい回し
というその
基本
の中には
保守独裁
の姿が現われておるということをわれわれは
考え
て、まことに憂慮にたえません。そこで、
岸内閣総理大臣
は
政権移動
の
ルール
についてどう
考え
ておるか、お
伺い
をしたい。また、
岸内閣
は、
石橋内閣
の
閣僚
はそのまま、
予算案
、
法律案
はそのまま受け継いでおるのでありますが、これは明らかに
政権たらい回し
の
世論
に対する煙幕を張った作戦であると言っても断じて
過言
ではないと思うのであります。(
拍手
)そこで、私は、あらためて信を
国民
に問うために
衆議院
を解散し、新たなる
国会
の構成、新たなる
政権
のもとに
国会運営
の
正常化
を確立すべきであると
考え
ますが、まずこの点についてお
伺い
をしたいと思うのであります。(
拍手
) 第二は、
現実
の
国会運営
の問題であります。
現実
に
国会運営
を円滑にするということは、
朝野
両党が
共通
の
広場
を持つことであると
思い
ます。また、
国会
の
審議
に対し
政府
が
干渉
をしないということであります。
共通
の
広場
とは何であるかといえば、
朝野
両党が
日本
の
憲法
を
お互い
に守るということであり、
議会主義
に徹することでなければならないと思うのであります。(
拍手
)もちろん、
民主主義
の
原則
に従わなければならない。
少数
が多数の決定に従い、多数は
少数
の
意見
を尊重するということが
民主主義
の
原則
である。この
民主主義
の
原則
は尊重されなければなりません。しかるに、従来の
国会運営
の
混乱
はどこからきておるかと申し上げますならば、これは
お互い
が
反省
をしなければならぬ点でありまするが、第二十四
国会
におけるがごとく、
憲法改正
とか小
選挙
区制といったような国の
基本法
、国の
組織法
、
議会制度
の根本に触れた
法案
を、
反対党
の
理解
なくして多数の力をもって押しつけようとしたところに問題があるということを指摘しなければなりません。(
拍手
)多数の力で、
共通
の
広場
、
わが国憲政
の
運用
の
基本
を変えようとしたところに問題があったと思うのであります。また、
国会
における
混乱
の
原因
の多くは、多数の力をもって強引に
少数
の
意見
を押えて
議会運営
をしようとしたところにあったことも指摘しなければなりません。(
拍手
)しかも、私がここで声を大にして申し上げておかなければならぬことは、昨年、二十四
国会
において、
参議院
に
警官
が導入をされました。
参議院
の本
会議
は、警察官がその周囲を包囲して、議場にも
警官
を動員いたしまして、
権力
を背景に議決が行われたのであります。これはもはや
議会政治
の姿ではありません。これは、
権力政治
であり、フアッショへの移行であると言っても、断じて
過言
ではないのであります。(
拍手
)これらの点について、
お互い
は大いに
反省
をされなければならぬと思うのであります。しかも、私は、あえて
議会
の
混乱
の
原因
を
与党
のみに負わせようとは
考え
ておりません。われわれも
反省
すべきものは
反省
をして参らなければならぬと思うのであります。しかし、
国会運営
の
責任
は、
議長
を持ち、
運営委員長
を持ち、多数の
議員
を持つ
与党
それ
自体
に大きな
責任
があるということは、看過してはならないと思うのであります。(
拍手
)そこで、
岸総理
は
国会運営
についていかなる
考え
を具体的に持っておるか。すなわち、
国会運営
の
正常化
と言っておるのでありまするが、
民主主義
の
原則
に従いまして、そうして、
国会運営
をどういう工合にやったら一番いいのであるかということを、よく私はこの
会議
を通じてその
態度
を明らかにしていただきたいと思うのであります。 第三に、第二の
質問
に
関連
をいたしましてお
伺い
したいのは、
日本国憲法
に関する
岸総理
の
考え方
であります。
日本国憲法
は、
わが国
の
基本法
であり、
組織法
であります。
わが国国家活動
の源泉であります。朝にあると野にあるとを問わず、
憲法
を守るという
立場
で、
わが国憲政
の
運用
をして参らなければならぬと思うのであります。
憲法
第九十九条には、「天皇または摂政及び
国務大臣
、
国会議員
、裁判官その他公務員は、この
憲法
を尊重し擁護しなければならない」と明確に規定をしております。ところが、
岸総理
は、
在野時代
には、
憲法改正
の急先鋒でありました。すなわち、かつての
自由党
の
憲法調査会長
、さらに第二十三
国会
には、
鳩山内閣
に、
与党幹事長
として三大
公約
の
一つ
として
憲法改正
を
公約
せしめ、第二十四
国会
には、
憲法調査会法案
、小
選挙
区
法案等
、これが通過のために、
与党幹事長
としてその陣頭に立って戦われたのであります。しかしながら、
選挙法案
は
世論
の前に
審議未了
となり、また、昨年の
参議院選挙
の結果は、
社会党
を
中心
とする
革新勢力
が
参議院
において三分の一を占め、現に
衆議院
においてはわれわれの
勢力
は三分の一を持っておるのでありますから、
憲法改正
は事実上不可能になったのであります。そこで、私は、
岸総理大臣
が、
憲法
の
重大性
に
思い
を寄せられ、
憲法改正
の意図を中止し、
憲法
の
条章
に基き
憲法
を守る
立場
をとられ、
憲法調査会
のごときは廃止をすべきだと思うのでありまするが、これに対する所見を伺っておきたいと思うのであります。(
拍手
)また、
憲法
の重大なる
条章
の
一つ
に、
政府
は
国民
に
責任
を負うということを明確にしております。また、
政党
並びに
政治家
にとって最も必要なことは、その
発言
、声明、
行動
、
公約
について
責任
をとることであります。また、
内閣
が
国民
に対して
責任
を忘れるような結果になりまするならば、
民主主義
の
原則
は崩壊するという結果を招来いたします。今、私は、この席上で
岸総理大臣
の
戦争責任
を追及しょうとはいたしません。しかしながら、
国民大衆
の中に、また
政府与党
の内部でさえも、
岸総理
は、
東条内閣
の
閣僚
であり、大
東亜戦争宣戦布告
の
署名者
であり、
官僚統制
の
実践者
として
中小企業者
からその
企業
を収奪して大資本に奉仕した者である、こういう
考え
が
国民
の中には相当浸透しております。(
拍手
)加えて、戦後、
憲法改正
、再軍備の主張を持ってその先頭に立たれておりましたから、
岸内閣
の出現は
わが国
に力の
政治
を再来するのではなかろうかという心配を持っておるのであります。従いまして、私は、この
民主主義
への危険に対する
国民
の危惧を
岸総理大臣
はいかように弁明されるか、ここにおいて伺っておきたいと存ずるものであります。(
拍手
)すなわち、
内閣
の
責任制
、
政治家
としての
自己
の
信念
、
自己
の
行動
、
公約
、これに対していかなる
信念
を持っておるか、お
伺い
をしたいと存ずるものであります。 第四にお
伺い
したいのは、
岸内閣
の
性格
であります。
岸内閣
は、
石橋内閣
の跡を受けてでき上った
内閣
でありまするが、
閣僚
は新たに
石井光次郎
君を加えただけであります。全部
閣僚
は居残り、
予算案
及び
法律案
はそのまま引き継ぐのだといっておるのであります。すなわち、
石橋内閣
の
遺産
を引き継ぐ
石橋遺産内閣
とも称すべきものであると私は思うのであります。岸さんは、
総理大臣
になられましたけれども、
自由民主党
の
総裁
ではございません。一時といえども、
総理
と
総裁
の
分離
の形が現われたのであります。
鳩山
第三次
内閣
の来期に、岸さんは
総理
と
総裁
の
分離
ということを言われたことがございます。しかしながら、
政党政治
で
考え
なければならぬことは、言うまでもなく、
政党政治
は
責任政治
であり、
責任政治
には
政党
の
主管者
がだれであるかということが一番大切な問題であると私は思うのであります。(
拍手
)これを不明確にしておることは、
政党政治
の将来のために
一つ
の汚点を残すものであると言っても
過言
ではございません。そこで、私は、完全なる
政党内閣
として整備を終るのはいつであるかということを伺っておきたいと思うのであります。 次に、
昭和
二十九年十二月第一次
鳩山内閣
ができて以来現在に至るまでの
政変
を
考え
てみまするならば、すべて
暫定政権
であります。すなわち、
吉田内閣
の跡を受けてでき上った
鳩山
第一次
政権
は、
選挙
をやるまでの
暫定政権
であります。しかも、その次にできた第二次
鳩山内閣
は、百八十五名の
少数
をもって
政権
を作ったのでありましてこれまた過半数を持たざる
暫定政権
であったのであります。
自由民主党
ができ上りましても、
総裁
がきまるまで、さらに加えて、
日ソ交渉
が
成立
をするまでの
暫定政権
であったと思うのであります。
石橋内閣
の手によって、あるいは長く続くのではなかろうかと存じたのでありますが、中道において
石橋総理
が倒れて、これまた
暫定政権
に終らざるを得ませんでした。今、岸さんの
総理大臣
としての
演説
を
伺い
ますと、
岸内閣
も、結果においては、
予算案
が
成立
するまでの
暫定政権
ということに私はなろうかと存ずるのであります。これは非常に問題でありまして、
保守政党側
において大いに
責任
を持たなければならぬと思うのであります。すなわち、二年三カ月の間に
保守政党
間において五回も
政変
が行われるということは、
保守政党
それ
自体動揺
の姿をよく現わしておるものと言っても
過言
ではないと私は思うのであります。(
拍手
)しかし、
岸内閣
は、
自由民主党政権
といい、
石橋内閣
の
延長内閣
といっておりまするが、
岸総理
は
自由民主党
の
総裁
を兼務しておるわけでありませんから、完全なる
自由民主党内閣
とは言えないと思うのであります。しかも、岸、
石橋両氏
は、ともに
総裁
を争ったのであり、しかも、政見必ずしも一致をしておりません。
外交政策
のごときは二重
外交
が指摘されておりまして、さきの
石橋内閣
は、
自由民主党政権
であるといっても、党内の
支持勢力
の関係からいって、
一つ
の
勢力
から他の
勢力
へ移ったのであり、明らかに
政権
の
移動
であり、
岸内閣
の
成立
によって、この
勢力
はまた再び変らんとしておるのであって、この実際から申し上げまするならば、形は同じであるけれども、実体は変った
政権
であるということを、私はいわなければならぬと思うのであります。(
拍手
)
総理大臣
がかわれば、同じ
政党
の
政策
が変らなくても、
総理大臣
の
考え方
、判断によって重点の置きどころ、序列、実行の方法が異なることは当然であると私は思うのであります。従って、
岸総理
は、当然、
岸構想
を発表し、
石橋内閣
によって提出された
予算案
はこれを一度撤回をして、
岸構想
によりまするところの
予算大綱
を示し、それに基いて
施政方針
の
演説
をやり、また、われわれが、われわれの
政策
を掲げて
質疑応答
をして、ここで
与党
と
反対党
の
立場
を明らかにして
議会
を解散して
国民世論
に問うのが
岸内閣
のとるべき
任務
であったと思うのでありますが、この
任務
をとらざるところはどこにあったかということを、私はお聞きしたいのであります。 そこで、この際、私は、
岸総理大臣
は、
石橋内閣
の提出をいたしましたところの
予算案
を撤回いたしまして、そして、新たに
岸構想
によるところの、いな、
岸総理大臣
が
主導性
を持った
予算案
を出して
国民
に問うという
考え
はないか、 この際あらためてお
伺い
をしておきたいと思うのであります。(
拍手
)ことに、
議会
の
慣例
から申し上げましても、従来の
慣例
において、
予算審議
中に
内閣
がかわった場合においては、一たん出した
予算案
を撤回いたしまして出し直しをしておるというのが
慣例
でもあると私どもは心得ておるのであります。 さらに、第五点として、最後にお
伺い
をしたいことは、
外交方針
に関する
総理大臣
の
考え方
、
構想
であります。
岸総理
は、
総理大臣就任
後の
記者会見
において、
アメリカ
に行きたいと
言明
をされております。
石橋内閣
の
外務大臣
としては、
アジア
、
アフリカ
の地域を訪問したいと言い、今また、
総理大臣
になったから、
石橋
さんがやらんとしておりました
アメリカ
に行くということも、私は当然であろうと思うので。ありますが、何の
目的
をもって、いっ行かれるか、これを明らかにせられたいと思うのであります。 私は最近の
国際状況
の中に見るのでありますが、
自由主義国家群
の
責任者
がそれぞれワシントンをたずねております。また、
共産主義国家群
の
代表者
がそれぞれモスクワをたずねております。ちょうど、
徳川時代
における、江戸を
中心
とした
参観交代
が
国際的分野
において行われるような気がするのであります。(
拍手
)もし何らの
目的
を持たず
日本
の
総理大臣
が
アメリカ
を訪問することは、一種の私は屈辱であろうと存ずるのであります。(
拍手
、
発言
する者多し)
国民
がこれを許しません。
日本外交
は、
日ソ交渉
の
成立
、
国際連合
への
加盟承認
、さらにポーランド、チェコとの
国交回復等
、われらの主張してきた
通り
、
全面講和
へと進みつつあるのであります。かくて、
日本
は東四両
陣営
にまたがって生存することになったのであります。
わが国外交
は、中国との
国交回復
、
アジア
、
アフリカ諸国
との
提携強化
とともに、東西両
陣営
へかけ橋をやるべき
段階
にきておろうと思うのであります。(
拍手
)そこで、私は、そういうような情勢の中に、
お互い日本人
はいま一度あらためて
日本
の
独立
の姿をながめてみる必要があろうと思うのであります。 先ほど、
岸総理
は
民族団結
を説きました。その
民族団結
を説いた
岸総理
に、一
日本人
として、もう一ぺん
祖国日本
の姿をながめていただきたいと私は思うのであります。(
拍手
)
日本
の
独立
は、砂川におけるがごとく、
アメリカ
が
基地拡大
のために
日本人同士
が血を流さなければならぬという
矛盾
を含んだ
独立
であります。群馬の
相馬ケ原
の事件におけるがごとく、
アメリカ兵
のために
農婦
が射殺されるという
矛盾
を含んだ
独立
であります。特に第二次
鳩山内閣
の
閣僚
は経験をしておるはずでありますが、
防衛分担金制度
によって、
日本
との
交渉
が
成立
をしなければ
日本
の
予算
は組めないということになっておる。
鳩山内閣
は
防衛分担金
の減額を行なったが、その要求では、相手方から倍額の
防衛費
の
拡大
を要求され、飛行場の五つの
拡大
を要求されておるのであります。(
拍手
)明らかに
防衛分担金制度
の中には
アメリカ
が
日本干渉
の余地を残しておるということを知らなければなりません。(
拍手
)すなわち、その結果、今や
日本
の現状を
考え
てみまするならば、軍事基地の拡張も、
日本
の自衛隊も、全く
アメリカ
の原水爆新戦略体制の一環に入れられて、これに即応せしめられ、一歩誤まれば、
アメリカ
の防衛戦略のために、
日本国民
全体はその最前線の役割を果すような危険にさらされておるのであります。(
拍手
)この問題は深刻に
考え
なければなりません。すなわち、これはどこからくるかと申し上げまするならば、日米安全保障条約、行政協定というような不平等条約からきておることを知らなければなりません。 さらに、
日本国民
は沖繩に目を向ける必要があろうと思うのであります。沖繩は、平和条約第三条に基き、
アメリカ
の信託統治になることになっておるのでありまするが、現在
アメリカ
の軍政下にあるのであります。しかも、その大半は
アメリカ
の軍事基地化せんとし、しかも、
アメリカ
は、その借地料を一括払いによって永久に使用権を確立せんとしておるのであります。八十万
民族
は、われわれの同胞は、他
民族
の軍政下にあるということを忘れてはなりません。(
拍手
)この沖繩を解放し、さらに加えで不平等条約の改正をやることが、現在
日本外交
に与えられた大きな使命なりと私は断ぜざるを得ないのであります。しかも、十二月末、沖繩人民党の瀬長亀次郎君が沖繩市長に当選をしました。しかるに、
アメリカ
側において五一%の株を持っておる琉球銀行は、那覇市の預金を凍結して、那覇市の事業を不能に陥れておるので為ります。この財政的圧迫を加え、また、最近は人民党を非合法化して、地下に追いやろうとしております。また、過日瀬長市長がこの実情を
日本
に訴えんとしたときに、
アメリカ
軍においては、この渡航を禁止しておるのであります。しかも、われわれが知らなければならぬことは、
選挙
によって当然なる手続を踏んだものに対して、かくのごとき圧迫が
民主主義
の名において行われておるという事実を、われわれは知らなければなりません。(
拍手
) しかも、東京は
日本
の首都でありますが、この東京都下にある小笠原諸島、硫黄島も
アメリカ
の占領下にあるのであります。たしか一昨年と
思い
ますが、米系
日本人
は帰ることができました。しかし、純粋
日本人
は帰ることはできないのであります。沖繩、小笠原、硫黄島、千島も
日本
固有の領土であり、これらの領土を
日本
に引き入れるために闘うことが、私は当然
政府
に与えられたる
任務
であろうと思うのであります。 また、次善の策として
考え
られることは、
アメリカ
との
交渉
において。沖繩における施
政権
の回復、さらに、小笠原におきましては、
日本人
の帰島ということが具体的に
考え
られてしかるべしと思うのでありますが、これに対する
政府
の
考え方
を伺っておきたいと思うのであります。(
拍手
) しかも、これらの問題は、先ほど申し上げました
通り
、対日平和条約の
矛盾
、日米安全保障条約、行政協定、MSA援助協定といったような不平等条約が災いをしておるのであります。従って、現在の
段階
においては、これら不平等条約に対しては再検討を加え、また、これを改廃に持っていくことが、
政府
外交
の行き方ではないかと私は
考え
るのであります。ここで、
政府
、
岸総理大臣
の
日本人
的な
答弁
を私は要求したいと存ずるのであります。(
拍手
) さらに、いま一点
伺い
たいのは、
日本外交
の路線であります。従来
日本
の
外交
の失敗はどこにあったかと申し上げまするならば、明治の年代においては、遠くイギリスと結んで、イギリスの先兵的役割を東洋においては勤め、大東亜戦争中、いな、第二次世界戦争中においては、遠く西欧のドイツ、イタリアと結んで、そうして軍事同盟を結ぶことによって、近き
アジア
に帝国主義的発展を行わんとしたところに、
日本外交
の失敗があろうと私は思うのであります。(
拍手
)加えて、今また、
日本
の
保守政権
は、遠き
アメリカ
と結ぶことにまって、
アメリカ
の
アジア
侵略の媒介体の役割をやっておるということは、これは私はいなむことのできない事実であろうと思うのであります。(
拍手
)今や、
日本
の
外交
路線というものは、
アメリカ
に対するわれわれの屈辱的な
立場
を修正しつつある。中共の承認、加えて、東南
アジア
諸国、
アジア
・
アフリカ諸国
との間において提携を強化することが、新たなる
日本
の
外交
路線でなければならぬと私は思うのでありまするが、これに対しまするところの
岸総理大臣
のお
考え
を承わりたいと思うのであります。(
拍手
) これで私の一段の
質問
は終りまするが、
答弁
のいかんによっては、重ねて申し上げるようでありますが、もう一へん壇上に上るということだけは御了承願いたいと
思い
ます。あるいは二度になるかもしれません。(
拍手
) 〔
国務大臣岸信介
君
登壇
〕
岸信介
11
○
国務大臣
(
岸信介
君) お答えをいたします。 第一点は、
政権移動
の
ルール
に関する御
質問
と
考え
ます。私は、
一つ
の
内閣
が辞任して、あとの
内閣
ができた場合におきまして、そのときの実質的な意義を十分に
考え
なければならぬ、ただ形式的に、そういう場合には、いつでも総
選挙
に問うてやれということは、あまりにも形式にとらわれ、実情に即さないものである、(
拍手
)今回の場合のごとく、単に
石橋
前
首相
が
病気
のゆえをもちまして、しかも、その次の
首相
に
指名
された者が
石橋内閣
の
閣僚
であるというような場合におきまして、私は総
選挙
をして民意に問うということは適当でないと、かように
考え
ております。(
拍手
)
国会
の
運営
の
正常化
の問題につきましては、私がかつて
自由民主党
の幹事長をいたしておりました当時、御
質問
されました淺沼君ともずいぶん話し合って、
国会
の
運営
を
正常化
しようと努力をいたしてきたことは、よく御承知の
通り
であります。私は、今日二木
政党
の対立しておる状況のもとにおきましては、与野党とも
責任
をもって
国会
の
運営
の
正常化
に当らなければならぬと
思い
ます。そうして、両党とも、
民主主義
政治
を守るという見地を同じくして、これを認識し合って、話し合いをしていくことが最も大事であると、かように
考え
ます。(
拍手
)
憲法
に対する私の
考え
をお聞きになりましたが、私は個人として
憲法改正
論を抱いております。しかし、
憲法
が国の大本であり、これを改正するということは非常に重大な問題であることは、御指摘の
通り
であります。二十四
国会
におきまして、
憲法調査会
を設けて、
憲法
に
関連
するあらゆる問題を検討して
憲法
に対する国論を定めていこうという趣旨のもとに、
国会
におきまして
憲法調査会
法というものが
成立
したことは御承知の
通り
でありまして、私は、やはり、この法律——
国会
の意思に従って、この
憲法調査会
を組織し、動かして参りたい、その本来の
目的
を達するようにしたい、かように
考え
ております。(
拍手
) 第四に、戦時中における私の
責任
について言及をされました。私は、この前も
国会
におきまして、臨時代理として申し上げましたように、当時のことにつきましては十分
反省
をいたし、今日におきましては、
民主主義
政治家
として、
国民大衆
とともに
日本
の建設に当りたい念願で一ぱいであります。(
拍手
) 第五に、
岸内閣
の
性格
について御
質問
でありましたが、私は
所信
の中で明らかにしておりますごとく、
岸内閣
の
施政
の
方針
は、
石橋内閣
の
施政
の
方針
を継承するものであり、従って、この意味におきましては、あるいは
岸内閣
が
石橋内閣
の延長と申しても差しつかえなかろう、かように
考え
ております。(
拍手
)
予算案
の撤回につきましては、御議論もありましたが、私どもは、十分法律及び先例を調べまして、撤回する意思は持ちません。 第七に、
外交
問題についての御
質問
でありましたが、私が
アメリカ
をたずねるということを
記者会見
で申したことについてお話がありました。私は、今日の国際情勢から見ますると、あるいは
日本
の
立場
から言えば、東南
アジア
や、あるいは西欧諸国、あるいは国交が回復した後におきましてはソビエト等との間におきましても、できるだけ、
責任
のある
政治家
が、時間の許す限り、また向うの都合のつく限り、これを互いに訪問し合うということは必要である、かような見地に立っております。(
拍手
)いつ訪米するかということは、まだきまっておりませんし、
目的
といたしましては、今、淺沼君は、いかにもここに
参観交代
するような意味ではないかというようなお話でありましたが、私は絶対にそういう
考え
ではありません。あくまでも自主
独立
の
立場
において——日米間に、いろいろと御指摘になりました諸問題があることは、私もよく承知しております。こういうような懸案を解決し、再調整するという必要に基いて、私は訪米いたしたいと
考え
ております。(
拍手
)
益谷秀次
12
○
議長
(
益谷秀次
君) 淺沼君から再
質疑
の申し出がありますから、これを許します。
淺沼稻次郎
君。 〔
淺沼稻次郎
君
登壇
〕
淺沼稻次郎
13
○
淺沼稻次郎
君 ただいま
岸総理大臣
の
答弁
を伺ったのでありますが、まだ私の
質問
に対して完全なる
答弁
といえない点があります。この点を私はもう一度明白にしていただき、これが明白にならなければ、もう一ぺんだけ再
登壇
を私は許していただきたいと思うのであります。 第一には解散の問題でありまするが、解散は、私どもは、この際、
岸内閣
というものは、新しい
構想
の上に、
岸構想
を加えて
予算大綱
を出して、そうして、ここで
朝野
両党論議を尽した結果、その相違点を明らかにして解散をすべきではないかということを伺ったのでありまして、この点を明白にしていただきたいと思うのであります。 さらに第二点は、
日本
の
外交
路線の変更について何ら言及をしておりません。参勤交代のつもりで行くのではないと、こういっておりますが、
国民
にその
目的
を明白にしていくということにならなければ、
国民
は迷わざるを得ないのであります。従って、行くとならば、いかなる
目的
をもって、かくのごとく自主
独立
の
立場
は表現されておるのだということを、
総理大臣
は少くとも明らかにしなければなりません。(
拍手
)この点を私はお聞きしなければならぬと思うのであります。 さらに、
石橋内閣
そのものを引き継ぐのだと言われましたが、この
所信
演説
の中に
石橋内閣
と異なるものがございます。それは何であるかと言えば、
岸総理
の説かれましたものの中に、
民族
の団結ということを説いております。(「当りまえだ」と呼び(その他
発言
する者多し)これは、当りまえといっても、
石橋内閣
の
方針
にはなかったことであります。戦時中の
閣僚
でありました
岸総理
が
民族
の団結を説くということは、何だかその言葉の中に戦時的においがするということを指摘しなければなりません。(
拍手
)先ほども私が申し上げましたが、
日本
の
民族
は、団結せんとしても、不平等条約のために
民族
が団結することができない実情にあるということを知ってもらわなければなりません。(
拍手
)すなわち、
岸総理
は、この
民族
の団結を説く前に、
日本
民族
の置かれておる不平等性をいかにして撤去するかということを言わなければならぬはずであります。(
拍手
)こう思うのでありまして、その点について私はお
伺い
をしておきたいと思うのであります。 さらに、この
所信表明
の最後のところに、「私は
国民大衆
の
理解
と
納得
の上に立つ
政治
こそ
民主政治
の正しい姿である」と言っております。これは、裏を返せば、
世論
の上に立つ
政治
をやるということであろうと私は思うのであります。そこで、今、
岸内閣
に対する
世論
はどこにあるかということを、
岸総理大臣
は明確に察知しなければならないはずだと思うのであります。どの新聞も、その社説において論議しておるのは、ほんとうなら、
岸総理
はまず
総裁
になり、
総裁
から
総理
になり、
自己
の色を出して
議会
を解散するのが当然であるが、それは第二の問題として、まず当面なさなければならない仕事は
予算
を通すことであるといっておるのであります。しかも、第二には、
予算
が通ったら解散をしろといっておるのであります。すなわち、このことは、まさに天下の
世論
であるといっても
過言
でありません。(
拍手
)従って、
世論
政治
に従うというなら、
予算
が通ったら解散の意思があるかどうかということを、私はここで明確にしておいていただきたいと思うのであります。(
拍手
)
政治
は口頭禅ではありません。身をもって自分に与えられたものに率直な回答を与え、
行動
もまたこれに沿って参らなければならぬと思うのであります。 以上の点につきまして御
答弁
を求めて、都合によってはもう一ぺん立ちまするが、御了承を願います。(
拍手
) 〔
国務大臣岸信介
君
登壇
〕
岸信介
14
○
国務大臣
(
岸信介
君) 重ねてお答えを申し上げます。 解散についての御
質問
でありますが、私は、先ほど申し上げました理由によりまして、今日解散する意思は持っておりません。また、
予算
につきましては、私が
所信
の中に明らかにしておるように、われわれは、これを引き継いで、これを実施したい
方針
でおります。従って、
成立
したら解散するというような
考え
を持っておりません。(
拍手
)
外交
路線の問題につきましては、自主
独立
の
立場
から、
わが国
の主張をあくまでも実現していくというのが
外交
の
基本
であることは言うを待ちませんが、同時に、私がしばしば申し上げました
通り
、われわれは、自由を愛好する国々と手を握って、そして世界平和を作り上げるというのが
日本
の大きな
外交
の路線であると、私は信じております。この意味におきまして、あるいは、われわれが、
アジア
における諸国と、さらに緊密なる提携によって、その自由とその
独立
を完成することに協力することは、当然であると
考え
ております。(
拍手
)
民族団結
の問題につきましても、今私が申し上げましたように、あくまでも
日本
の自由と自主
独立
の
立場
を堅持して、これを実現する上において支障となるものはこれを是正していくということがこの際必要である、かように思っております。(
拍手
)
益谷秀次
15
○
議長
(
益谷秀次
君) これにて
国務大臣
の
演説
に対する
質疑
は終了いたしました。
————◇—————
益谷秀次
16
○
議長
(
益谷秀次
君) この際暫時
休憩
いたします。 午後二時五十九分
休憩
————◇—————
〔
休憩
後は
会議
を開くに至らなかった〕
————◇—————
出席
国務大臣
内閣総理大臣
外務大臣
岸 信介君 法務大臣 中村 梅吉君 大蔵大臣 池田 勇人君 文部大臣 灘尾 弘吉君 厚生大臣 神田 博君 農林大臣 井出一太郎君 通商産業大臣 水田三喜男君 運輸大臣 宮澤 胤勇君 労働大臣 松浦周太郎君 建設大臣 南條 徳男君
国務大臣
石井光次郎
君
国務大臣
宇田 耕一君
国務大臣
大久保留次郎君
国務大臣
川村 松助君
国務大臣
小滝 彬君
国務大臣
田中伊三次君 出席
政府
委員
内閣
官房長官 石田 博英君 法制局長官 林 修三君
————◇—————