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1957-02-06 第26回国会 衆議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月六日(水曜日)     —————————————  議事日程 第五号   昭和三十二年二月六日    午後一時開議 一 国務大臣演説に対する質疑                 (前会の続)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  永年在職議員犬養健君に対し、院議をもつてそ  の功労表彰することとし、表彰文はこれを議  長に一任するの件(議長発議)  ガナ国独立式典に参列する特派大使任命につき  外務公務員法第八条第三項の規定により議決を  求めるの件  国務大臣演説に対する質疑                  (前会の続)    午後三時七分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————  永年在職議員犬養健君に対し、院議をもつてその功労表彰することとし、表彰文はこれを議長に一任するの件(議長発議
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。本院議員として在職二十五年に達せられました犬養健君に対し、先例により院議をもってその功労表彰することとし、表彰文議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  ここに議長の手元において起草いたしました文案があります。これを朗読いたします。  職員犬養健衆議院議員ニ当選スルコト十回在職二十五年ニ及ヒニ憲政ノ為ニ尽シ民意伸張ニ努ム衆議院ハ君カ永年ノ功労ヲ多トシ特ニ院議以テヲ表彰ス   (拍手)  この贈呈方議長において取り計らいます。  この際犬養健君から発言を求められております。これを許します。犬養健君。   (犬養健登壇
  5. 犬養健

    犬養健君 三品ごあいさつを申し述べます。  不肖私が二十五年間本院議員として在職しておりましたゆえをもちまして、ただいま院議をもって御丁重な表彰の御決議をいただきまして、まことに身に余る光栄でございまして感激のほかはございません。  顧みまするに、昭和五年初めて本院議員当選の栄をにないまして以来、国会にありまして特に貢献いたしたこともなく、ただ平凡に席を汚して参りましたにかかわらず、この間、終始、同僚諸賢の懇篤なる御鞭撻を受けましたことは、私の衷心より感謝いたすところでございます。この二十五年の間には、わが国会も幾たびか激しい試練にあい、時には存立の危機に直面いたしたこともありました。しかしながら、そのたびに、われわれの先輩が、不抜の信念と勇気とをもって、時には生命をもって国会の伝統を維持し、民意代表の尊厳を守られたのであります。(拍手)このことに思いをいたしますと、私は、後輩の議員として、おのれの不敏を恥じ、さらに新たなる決意を持って国会の名誉ある使命達成のために奉仕いたし、議院制度に対する国民の信頼に報いたい所存でございます。(拍手)何とぞ将来にわたる同僚諸賢の相変らざる御指導をお願い申し上げます。  ここに、簡単ながら、つつしんで感謝の意を表し、ごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————  ガナ国独立式典に参列する特派大使任命につき外務公務員法第八条第三項の規定により議決を求めるの件
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、ガナ国独立式典に参列するための特派大使に本院議員小島徹三君を任命するため、外務公務員法第八条第三項の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出通り決するに御異議ありませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑             (前会の続)
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。野田卯一君。   〔野田卯一登壇
  9. 野田卯一

    野田卯一君 私は、自由民主党を代表いたしまして財政経済等の諸問題につき政府所信をたださんとするものであります。  第一の問題は、税制改革の問題であります。政府が三十二年度において平年度千二百五十億円に上る所得税大幅減税を断行されることは、わが国税制史上空前の英断ともいうべきものでありまして、国民とともに敬意を表するところであります。(拍手)第三次吉田内閣以来、しばしば大幅減税を行なったのでありますが、過去の減税は、物価の値上りによる税収の自然増収をその財源とした面もあるに比べまして今回の減税は、安定した経済拡大の上における自然増収財源としておるものでありまして、その質において異なるものがあり、過去の減税よりもそう高く評価さるべきものであると信ずるのであります。(拍手)  私は、この際、税制改革に関しまして、二、三の点につき政府見解をただしたいと思うのであります。  その一つは、直接税と間接税との均衡についてであります。一般的には、わが国税制は直接税が重きに過ぎ、間接税が比較的軽いから、間接税増徴して直接税を軽減すべきであるとの説が行われているのであります。臨時税制調査会政府に対してなしました答申も、そのような趣旨によって、物品税等新設増徴答申されておるのでありますが、私はこのような考え方に必ずしも同調できないものであります。現在の税制は、全般的に見まして、戦前よりも相当負担の重いことは事実でありまして、財政の余力のある限り、これを総体的に軽減する必要のあることは申すまでもございません。しかしながら、その場合において、比較的負担の重いといわれておる直接税を優先的に軽減することによって間接税とのつり合いをとるということが最も実際的な方法でありまして、逆に、間接税を積極的に新設増徴することによりまして均衡をとるという考え方は、観念的に過ぎ、実際的でないと思うのであります。むしろ、今回のような所得税大幅減税を行う場合には、この減税の恩典に浴しない低所得者階層税負担を軽減する方法といたしまして、大衆的消費物資に対する間接税を軽減する方が社会政策的に見て望ましいと思うのであります。例をあぐれば、下級酒類に対する酒税の軽減のごときでありまた、あるいは、大衆たばこ供給が円満を欠いて、高級たばこを吸うことを余儀なくされております一般国民諸君に対し、大衆たばこ供給を潤沢にする措置を講ずる等の配意であります。なお、ここで私が政府にただしておきたいことは、政府は、近い将来、物品税増徴、あるいは売上税新設のごとき、間接税大幅増徴をはかる考えがあるかどうかという点であります。  お伺いしたい第二の点は、今回の減税が、国税、地方税を通じまして、産業政策、特に中小企業政策上、どのような配意がなされておるかという点であります。もちろん、所得税大幅減税によりまして、中小企業者に大きな恩恵が与えられることは疑いのないところでありますが、反面、概算所得控除制度が廃止せられ、その負担を過重せしめている点もありまして、中小企業の経営の安定の上からは、さらに、個人企業に限らず、中小法人についても税制上の政策的考慮が必要と思われるのであります。これらの点にどのような配意が払われているか、産業全般及び中小企業につきまして、この機会に明らかにしていただきたいと思うのであります。  お尋ねいたしたい第三の点は、減税インフレとの関係であります。減税インフレを誘発するというおそれがある。これはイギリスにおきましても、アメリカにおきましても、議論のはなはだ多いところでございます。池田大蔵大臣も、就任当初、減税インフレを招くという見地から、大幅減税には消極的であったかのごとく伝えられておりましたが、後には、未曾有の思い切った減税を断行することに決意されました。この心境の変化と申しますか、伝えられるところの態度の豹変は、いかなるお考えに基くものか、相当の根拠のあることと思いまするが、お伺いいたしておきたいのであります。  また、減税によって国民の手に残されます一千余億円の金は、これがどの方向に流れるか、すなわち、貯蓄に何ほど回るか、また、消費にどの程度向うか、どう見ておられますか。もしこれが多く消費に向うとすれば、現在すでに台頭しております消費景気に油を注ぎ、消費物資輸入増大を余儀なくいたしまして、国際収支に悪影響を及ぼすことと相なるのであります。貯蓄に回り策した場合においても、その購蓄が、金融機関等によって、わが国経済隘路打開のため、あるいは有用なる新規産業の育成のために使用される場合は問題はございませんが、これが不急不要なる事業や、単なる消費産業に投ぜられます場合は、減税の結果が健全なる国民経済建設を阻害することと相なるのであります。これに対する大蔵大臣のおおよその腹がまえは、財政演説においてもうかがえるところでございますが、具体的にいかに対処される考えであるかをお伺いいたしたいのであります。  第二にただしたい点は、社会保障その他の社会政策であります。三十二年度予算案が、国民生活の面における社会的不均衡是正のために飛躍的に経費の拡充をはかっていることは、まさに画期的と言ってよろしく、全く御同慶にたえないところであります。ただ、そのうちには、母子年金養老年金制度のように、単に準備費だけを計上したものもあり、また、医療保険等は将来にわたって実現を期しているのでありまして、社会保障制度の総合的な整備拡充は今後に残されておるのであります。また、これには必然に莫大なる経費を要することは申すまでもございません。一定の限りある財源のもとにおいて、できるだけ効率的に社会保障制度を充実しようとすれば、現行制度に根本的な再検討を加えるとともに、必要な制度は新たに整備をいたし、これに必要なる財源は必ず確保すべきものと存ずるのであります。  そこで、私が特にお尋ねしたい第一点は、医療国民保険実現の具体的な計画はどうなっているかということと、政府管掌健康保険組合管掌健康保険国民健康保険等をどのように改善していくかということであります。将来とも現行の各種の健康保険制度を存続して、それに必要な改善を加えていく方針をとるのであるか、あるいは、百尺竿頭一歩を進めて、これが統合再編成をなし、さらに共済制度生活保護法医療扶助等をも統合一体化いたしまして、国民全体に対する医療保障制度を確立する考えを持っておられますか、所見を承わりたいのであります。  第二の点は、母子年金制度老齢年金制度の大体の構想と実施時期の見通しについてであります。もちろん、これは詳細なる調査研究を経た上でなければ具体的な案は得られないことと存じまするが、現在の財政状況からいたしまして、実現をいたし得る限度というものについては大体の見通しがあると思われますので、これを承わりたいと思うのであります。なお、さらに将来これらを統合いたしまして、国民全体に対する国民年金制度を確立する構想を持っておられますか、お伺いいたしたいのであります。  第三の点は、現在各省に分れております社会保障行政の一元化、簡素化についてでございます。この問題は、行政機構簡素化の問題でもありますけれども、福祉国家建設を目ざす以上、その行政機構を一元的に統合強化することが必要と考えられるのでありますが、政府所見を承りたいのであります。  最後に申し上げたいことは、戦争犠牲者についてであります。戦死者傷病者引揚者、粗地主等戦争犠牲者に対する従来の処遇は、財政上の理由もありまして、必ずしも公正妥当なものではなかったのであります。特に戦約軍人の遺族に対する処遇は、公務で死亡した文官の遺族に比しまして、はるかに劣っておるのでありまして、まことに不公正と申さねばなりません。また、戦争に倒れました動員学徒徴用工員等に対しても、ほとんど国家補償措置が講ぜられておらないのでございます。わが党におきましては、本問題を重大視いたしまして去る一月二十八日、この不均衡是正のために、すみやかに必要な措置を講ずることを決定し、政府にも申し入れてあるのであります。また、海外引揚者に対する在外財産の補償問題は、岸総理大臣代理も、施政方針演説におきまして、在外財産問題審議会答申を尊重して処理する旨の言明をせられておるのであります。これらの問題は、特に最近のように財政事情が好転して参りますと、関係者要求は日増しに強烈となり、現に旧軍人遺族引揚者、旧地主等の団体がそれぞれ熱烈な運動を展開していますことは御承知通りでございます、これらの人たち要求に対しましては、もはや、従来のように、国の財政上の都合だけを理由としてこれを拒否するわけにはいかないのでありまして政府はすみやかにこれらの戦争犠牲者に対する明確な態度方針を決定しなければならないものと思うのであります。この点につきまして政府のお考えを、並びに、在外財産問題については特に処理方法具体的内容を、この際承わりたいと存ずるものであります。  なお、沖繩の問題につきまして二、三質問をいたしたいと存じます。沖繩小笠原の返還につきましては、沖繩小笠原同胞を含む全国民の要望として、従来よりしばしば国会においても決議のなされておるところであります。ことに、先般の国際連合加盟に当っては、沖繩小笠原の問題についても何らか解決への前進を見るのではないかとの期待を持っておったのであります。しかしながら、今日まで何らの徴候も見えませんのは、国民に対し、いたく失望を与えており、まことに遺憾であります、今後、政府は、さらに一段の決意をもって本問題の解決努力されることを強く要望するとともに、今日までの経過について説明をお願いいたしたいのであります。  沖繩における軍用土地の問題につきましては、わが党において重大なる関心を持っており、沖繩問題特別委員会においては、これが対策につき慎重に検討を行い、その都度、政府に対し、その見解を伝え、政府の決断を促して参ったのであります。その後一、二の点では若干の改善を見てはおりますが、なお幾多の困難な問題を残しておるのであります。また、平和条約発効前の軍用土地に対する補償の問題についても、種々検討の結果、これを対米交渉によって解決することをきめたのであります。これとともに、土地を接収された人々生活がきわめて困窮しておる実情にかんがみ、相当額見舞金を出す方針を決定しておりますが、本件に関する政府所信を伺いたいのであります。  次に、沖繩における戦没者遺家族並びに傷癖者等に対する援護について伺います。御承知通り沖繩は今次戦争の第一線となり、幾多の同胞が死傷いたしており、一般に遺族の島といわれておるところであります。これらの戦争犠牲者処遇については、政府においてもすでに努力をしていることと思いまするが、なお本土の各都道府県のそれに比べ不十分であり、沖繩防衛のために一命をささげられました民間の人々の処置のごとき、ほとんど手がつけられておらないのであります。われわれはすみやかにその援護措置を行う必要があると存じまするが、これに対する政府具体的方策を御説明願いたいと存じます。  第三にお伺いしたい点は、経済計画及び国土開発保全に関連する問題であります。第一次鳩山内閣以来、長期経済計画構想を取り上げ、予測を中心とする長期計画を立てましてこれを経済政策一つの目じるしとして参ったのであります。過去二カ年の実験の結果は、予測実績との間に大きな開きがありましてこの点に関する限り、必ずしも満足すべき結果となってはおりません。しかしながら、予測実績の食い違ったところに反省と検討を加え、そこに必要にしてかつ妥当な経済政策が生まれるわけでありまして、この趣旨においては大きな意義があるものと存じます。  わが国の、今後、特に三十一年度から三十二年度にかけての経済上の絶対至上の課題は、一つには物価と通貨の安定の基調を持続すること、一つには経済発展の険路を克服して均衡ある拡大発展確保することであります。このためには、資金の蓄積、投資の調整、財政金融との一体的調和物資需給均衡確保不急設備の抑制などの措置を、適時、適切に、また総合的に実行することが必要となるものと信ずるものであります。金融が独善に陥り、財政が独走し、さらには産業が私利の追求のみに走るようなことになっては、とうてい均衡ある経済発展期待できないのであります。経済政策総合性統一性確保いたしまして、長期計画のもとに経済均衡ある拡大発展を保障するためには、それに相応する強力な総合的経済推進機構が必要と信ずるものでありますが、政府の御見解を承わりたいのであります。  また、金融財政との総合調整及び産業金融との調和確保見地から、日本銀行制度及びその他の金融制度の全般について事検討を要すると思われますが、具体的構想があれば承わりたいと存ずるのであります。  次に申し上げたいのは公共投資についてであります。世上では、ややもすれば、公共事業は非能率で、むだな事業あるいは不要不急事業のように誤解している面も少くないのでありまするが、公共事業国土開発保全産業基盤確保等を目的とするものでありまして、いわば国の経済発展の基礎を作るきわめて重要なる事業でございます。財政炉、その大きな役割といたしまして、公共事業を年々拡大していくことは当然でありまして三十二年度予算案にも、道路を初め、治山治水、港湾、食糧増産等公共事業費の拡大されましたことは、われわれも喜びとするところであります。しかしながら、現在のわが国経済におけるいわゆる隘路として指摘されています電力や輸送力が、いずれも主として公共投資によるものであり、それがこれまで財政上の理由等によりまして縛られ、十分でなかったことが、今日の結果を招いている大きな原因であるのにかんがみ、われわれは公共投資につき今後さらに一段と力をいたすべきものと考えるのでございますが、政府見解を承わりたいのであります。  公共事業に関連をいたしまして申し上げたいのは、北海道、東北、首都圏等に関する総合開発であります。国際間におきましても、御承知のごとく、今や後進地域に対する開発の問題が世界の発展と繁栄のために大きく取り上げられ、わが国もこれに協力をいたしておるのであります。国内後進地域である北海道東北地方開発も取り上げられ、わが国の繁栄のための不可欠の要件として、最大級努力をなすべきものと考えるのであります。また、首都の過度の膨張を防ぎ、その秩序と品位のある整備をはかることも、また緊要事であります。しかしながら、従来の実情は、政府開発努力は概して低調でありまして、関係国民をして失望せしめておるのであります。われわれは、政府に対しまして、この低調を打破し、責任を持って開発整備実現する決意を求めるものであります。関係大臣の御所見を承わりたいのであります。  また、三十二年度に、われわれが多年要望しておりました多目的ダム土地改良のための特別会計が設けられましたことは、喜びにたえないところであります。しかしながら、これに反し、災害復旧に関する予算的措置の貧弱なことにつきましては、遺憾の意を表せざるを得ないのであります。三十年、三十一年の両年は、災害のきわめて少い年でございました。こういうときこそ、過去の災害復旧におけるいわば借金とも申すべきものを一掃する絶好の機会であると考えるのであります。しかしながら、予算案によれば、二十五年度災害までは完了いたしまするが、まだ二十六年災や二十七年災等の古きものすら片づかないのであります。災害発生後六年も七年も経過してもなお復旧が完了しないということは、何としても健全なる財政運営であるとは申し得ないのでございます。(拍手政府はこの点についていかに考えられるか。また、古き災害復旧事業残事業一掃のため何らか特別の措置をとられる考えはないか、昭和三十一年度自然増収の一部をもって災害復旧資金的なものを設ける等の方法も考慮せられるのでありまするか、御意見をお尋ねいたしたいと存じます。  第四に質問したい点は、食糧政策及び農山漁村対策についてであります。率直に申し上げまして、従来の政府食糧政策がやや明確を欠くきらいがあったため、農民にまつの不安を与えていたことは、否定できないところであります。具体的に申し上げますれば、食糧国内自給を表面には強調しながら、これを裏づけする予算的措置が不十分であったり、また、三十年度の異常な豊作や国際的農産物過翼の傾向が一般的に食糧増産べの関心を薄らがせた傾きもありまして政府が果して真剣に食糧増産計画を遂行する意思があるかどうかを疑わしめたようであります。私は、たとい国際的に食糧が過剰の傾向にあっても、わが国農業特殊性国際収支関係からして、食糧は可能の最大限度自給度を引き上げるべきものであると確信をするものであります。三十二年度予算案を見まするに、政府食糧増産に対しまして前年度より数歩前進した措置を講じ特に大規模干拓工事等遂行のために特別会計を設けられましたことは意を強うするに足るところであります。しかしながら、この予算の増額をもっていたしましても、政府経済五カ年計画に予定されておる食糧増産目標の達成は容易でないように思われるのでありますが、政府食糧増産年次計画はどのようになっているのか、具体的内容を承わりたいのであります。  次にお伺いいたしたいのは農山漁村対策であります。今や、わが国農山漁村危機に見舞われんとしております。戦争中及び戦後間もなくは、食糧その他物資の不足のために、農山漁村は比較的に潤っておったのでありますが、国内における商工業の復興、海外における農産物生産過剰等の影響を受けまして農山漁村は今日においては次第に疲弊をいたし、後退せんとしておるのであります。これを統計について見まするに、昭和二十五年と昭和三十一年とを比較いたしまして、国民所得においては、国民全般では六〇%の増加になっておるのに対しまして農村におきましては一四%の増、生産指数は、他の産業におきましては一六七%の増加となっておりますのに対しまして農業におきましてはわずかに五%、労働生産性は、鉱工業におきましては一〇二%増に対しまして農業におきましては二七%の増であります。消費水準は、都市四三%増に対し、農村は一七%増となっておるのであります。従ってこの状況を放置いたし、思い切った振興策をとらない場合は、わが国農山漁村の没落、困窮は必至であると考えられるのであります。三十年、三十一年の豊作続きによってこの重大なる事態がぼかされておりまするが、われわれは冷静、真剣にこの問題を考えねはならないと思うのであります。(拍手総理大臣代理及び農林大臣は、これに対しいかにお考えになっており、また、いかに対処されんとするか、お伺いをいたしたいのであります。  第五にお伺いいたしたいのは、青少年対策と労働問題についてであります。政府は、わが国の将来をになう青少年に大きな期待をかけ、施政演説においても、その自覚と決意を促しておるのでありますが、現実の事実を冷静に判断しまするに、このような政府の念願を裏切る事実の多いことを憂えざるを得ないのであります。特に私どもの痛心にたえないところは、最近における青少年犯罪増加傾向であります。昨年の一月から九月までの統計について見ましても、青少年犯罪全体の件数が増加しておるばかりでなく、粗暴化の程度が激しくなっており、性的関係風俗犯増加しておる。また性関係に原因する殺人事件が多くなつておることが特徴となっておるのであります。なお、このように犯罪を犯すまでには至っておらない不良化青少年増加も、また想像にかたくないところであります。このような傾向は、社会の健全なる発達の上からも決して軽視することを許されない深刻な問題であります。青少年問題のためには政府種々努力を払われつつあることは承知をいたしておるのでありますが、一そう総合的にしてかつ徹底いたしました対策の確立を期待してやまないのであります。その根本は、何ゆえにこのような憂うべき傾向が生まれたのであるか、その原因について深い探究を試み、根源にさかのぼって対策を立てることと信ずるのであります。私の感ずるところを申し上げますなれば、青少年指導の根本は、前途に対する希望を持たせ、民族に対する責任を自覚させることにあると思うのであります。青少年諸君の特質は、現在よりも将来に生きることであります。彼らの情熱を将来の建設発展に傾けさせることができるような環境を築きあげることが何よりの対策と信ずるのであります。(拍手政府方針も根本はここにあるものと思われ、三十二年度予算案を見ましても、青年活動を中核とする農山漁村建設の助長、開発建設青年隊の充実、海外移住の促進等にその片鱗を見ることができるのであります。しかしながら、総体的に見て、まだ実験的な段階という程度にすぎないのでありまして、その本格的な拡充は今後の問題に残されておるのであります。私は、政府がすみやかにこれらの事業の本格的、総体的な大計画を樹立し、青年の力によって国土の保全、開発産業建設を大々的に実現いたしまするような具体的なる実行計画に着手されんことを切望するものであります。これについての政府所信を伺いたいのであります。  青少年に希望を与えるための施策は、また教育や生活環境の面においても不断に多面的な努力を必要とするものであります。中にも、特に重視しなければならないのは、勤労青少年に対する教育施設の拡充ということでありまするが、これについての政府の御見解を承わりたいと思います。  なお、青少年指導の根本は、将来に希望を与え、自覚を促すことでありますが、他面、青少年不良化防止のための予防的対策の必要なことは申すまでもありません。この点に関し特にお聞きしたいことは映画対策であります。不健全な映画が青少年不良化の大きな原因となっておるということは、世上においてもよくいわれておるところでありまして、これについて政府はどのような考えを持っておられますか、お聞きをいたしたいのであります。  労働問題につきまして簡単に申し上げまするが、最近の経済上の非常な好調に伴いまして、雇用も増大をいたし、勤労者の生活も著しく安定し、その上、所得税大幅減税実現をいたしますので、勤労者の実質賃金はいよいよ向上することとなり、同慶にたえないところであります。このような情勢の変化によって、三十二年度の失業対策費は、その対象人員が前年度に比べ二万三千人を減少しておりまするが、果してこの程度の失業対策で十分であるかどうか、多少の疑問なきを得ないのであります。政府の三十二年度の経済計画大綱によりましても、年間の完全失業者は六十万人を見込んでおりますので、三十一年度の実績見込みと同数となっておるのであります。現在のような経済の好調のときにこそ完全失業者の数をできるだけ減らすことが望ましく、それがために、また、総理大臣が述べられましたように、完全雇用の増大に政策の中心を置くという趣旨にも徹底をしていただきたいのであります。  なお、生産性の向上についてでありますが、わが国が激しい国際経済競争に勝って経済発展を続けていくためには、生産性の向上に最大の努力を傾けなければならないことは自明の理であります。ことに、欧米先進国が着々として技術の革新をなし遂げ、新たなる産業革命を成就せんとしつつあるときに、わが国が生産性の向上にいささかでも怠慢であるならば、遠からずして国際経済競争に落伍するであろうことは、火を見るよりも明らかであります。しかるに、はなはだ遺憾なことには、総評傘下の労働組合がこの生産性向上運動に反対していることであります。私は、これを不可解に思うのであります。わが国の労働組合は世界に類のないほど手厚い立法によって優遇されておるのでありますが、それは、労働者の正当な権利を擁護し、労働組合の健全な発達を期待したからであります。(拍手)労働者の独善や横暴を許す趣旨のものでは絶対ないのであります。生産性向上に対する総評のこのような理由なき反抗に対しまして、政府はいかなる見解対策を持っておられますか、お伺いいたしたいのであります。  これをもって私の質問は終りたいと思います。(拍手)   (国務大臣岸信介君登壇
  10. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。きわめて広範にわたる御質問でありましたので、それぞれ関係大臣から答弁をすることに、いたしますが、私は、そのうちの一、二点、沖繩問題についてお答えします。  沖繩小笠原の施政権の返還につきましては、国民の一致した強い要望でありまして、従来も、しばしば、アメリカ側に、この点に対してわが方の要望を申し入れております。現在のところでは、アメリカは、極東の情勢から、いまだ戦略的な意味でこれを日本に返還するに至っておりませんけれども、国民のこの強い要望を必ず実現するために、私はあらゆる機会をとらえて努力したいと考えます。(拍手)  土地問題に関しましては、いわゆる四原則というものが沖繩住民の強い悲願であります。これをアメリカ側に実現せしむるように従来も努力して参っておりますが、その一部は解決いたしておりますけれども、全部はこれが貫徹されておりません。なお、この問題につきましても、引き続いて住民の要望を達成するように努力したいと思います。(拍手)  講和発効前の土地補償問題につきましては、法律上、外交上、いろいろな問題がございまして、まだ解決をいたしませんけれども、実際住民の現状にかんがみましてその他遺族の問題や引揚者の問題等、住民の現況は非常に困った形にありますので、われわれは、これを早急に解決する意味において、見舞金を出そうという考え検討をいたしております。  それから、食糧管理制度の合理化の問題に関しましては、われわれは現在の食糧管理制度の運営を合理化するという必要を考えまして、その具体的方法につきましては、内閣に設ける特別委員会の審議に待って善処したいと考えております。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇
  11. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 野田君の御質問にお答えいたします。  今回の減税措置につきましては、御説の通り、従来のそれとは質的に非常に違っております。また、直接税と間接税の比率の問題につきましても、全く野田君と同感でございます。私は、今回、税制調査会におきまして、原糸課税、その他物品税拡充を取りやめましたのも、野田君の説と同じ気持でやっておるのであります。なお、物品税売上税につきましては、今後の創設、拡充は、私は今のところは消極的でございます。  たばこにつきまして、高いたばこが売れないから安いたばこをとめておるのではないかというお話がございましたが、決してそうではございません。最近におきまして、安いたばこが非常によく売れるのでございます。しかも、原料の葉タバコは、いいものばかりでできておるのでございます。このアンバランスを早急に是正いたしまして、そういう声の起らないように努力してみたいと思います。(拍手)  第二の御質問の、中小企業に対しまする租税措置でございまするが、法人税の減税によりまして、中小企業にもその好影響が参ります。また、法人税につきましても三十五の税率を百万円までの所得に伸ばして参ります。また、個人事業税あるいは法人事業税等、地方税においても軽減をなすほか、今回、第四次の資産再評価を中小企業方面に認めまして、負担の合理化をはかろうといたしておるのであります。  第三の御質問の、減税インフレに通ずるものではないか、そういう説を池田は言っておったが、それをやめて大減税をした心境の変化いかんというのでございます。お話にもありましたように、減税インフレに通ずるということは、一つの有力な説でございます。私は、就任早々、今の日本の消費状況その他を検討してみました。しかるところ、最近の国民所得増加にかかわらず、貯蓄が非常に伸びております。また、消費状況が非常に安定した傾向を持っておるのであります。また、一方、消費財の生産は相当伸びてきております。私は、今回の税制改正におきまして、税制調査会の答申のごとく、全部の預金に一割課税することをやめて、長期預貯金の奨励政策を持続し、また、長期資金吸収のために、生命保険料の所得控除をふやすことによって、今後とも貯蓄を奨励していくならば、減税をしても何らインフレを起さないという確信ができましたので、やったのであります。(拍手)いろいろな説は私としては考えます。いろいろな学説、いろいろな状態は考えて、いろいろ検討した上に、今回の決断を下したのでございます。  第四に、桂会保障関係の御質問がございました。そのうちで、特に私から申し上げておきたいと思うことは、国民健康保険あるいは健康保険組合管掌健康保険を一緒にしてやっていく気持はないかというお話でございますが、これはいい御意見でございまして、今後取り上げていかなければならぬ重大問題と考えてお冷ます。  その次には公共事業の問題でございまするが、お説の通り公共事業は最も重要なわれわれの施策でございますので、今回におきましても相当予算の増額をいたし、国土総合開発の線に基きまして、北海道東北、あるいは離島、首都建設等の事業もふやしましたし、また、特に今年は住宅公団の方に土地造成の経費を見ておる等、あらゆる方面から公共事業の推進をはかっておるのであります。  最後に金融問題でありますが、財政金融の一体化につきましては、財政演説で申し上げた通りでございます。私は財政均衡ははかって参りましたが、金融の健全ということが必要でございますので、ただいま金融制度調査会に諮問いたしまして、いろいろな金融制度の改正を準備しております。そのらち、おもなるものは、支払準備金制度の創設、あるいは預金者保護のために特定の銀行に対して預金保証基金を設けるとか、あるいは経営の管理につきまして監督権の強化等、いろいろな面から今後金融の健全化をはかろうとしておるのであります。(拍手)   〔国務大臣神田博君登壇
  12. 神田博

    国務大臣(神田博君) 野田議員のお尋ねにお答え申し上げます。  国民健康保険健康保険等を一緒にしたらどうかという御意見が第一にございました。これは、ただいま大蔵大臣からも答弁がございましたが、十分研究していきたいと存じております。ただ、政府といたしましては、国民皆保険をこの四カ年間に実施いたしたい。すなわち、昭和三十二年度から三十五年度までに完了したい。三十二年度には五百六十二万人を対象とし、三十三年度には七百九万人、三十四年度には約五百三十一万、昭和三十五年には六百七十万、こういう計画に基きまして国民皆保険を達成いたしたい、かように考えております。そこで、これを達成いたしますには、国民医療の保障を充実しなければならないのでございまして、医療機関の整備達成したい。そこで、公的医療機関及び国民健康保険の直営診療施設の整備をしなければならない。これにつきましては、国庫の補助、起債、厚生年金の還元融資等の方法によりまして、これを充実整備する所存でございます。なお、現在医療機会を与えられておらない僻地に対しまして、基幹となるべき病院を指定いたしまして、出張診療所を設置いたしたい、この補助費を計上いたしております。それから、今日、医師は現在絶対数においては不足してはいないのでありますが、地域によりまして需給状態の不均衡が起っておりまして、特に僻地についてこれが著しいものがありますれば、これを改善したい。待遇の改善等もいたしまして、基幹となるべき病院から医師を派遣する等の措置を取り計らいたい。なお、保健所に勤務する医師が不足しておるのでございまして、これにつきましては、奨学資金の貸与制度を新たに設ける等の方法によりまして、この充足をはかりたいと考えております。  次に、母子年金、養老年金の大体の構想と実施の時期、見通し等について、ということでございます。この母子年金及び養老年金等につきましては、醵出制とするか、無醵出制とするか、醵出制とする場合、その資格、期間の問題、また、無醵出制とする場合、その財源の問題等、種々困難な問題が伏在しておりますので、昭和三十二年度以降、年金制度調査委員を委嘱し、その具体的構想、その実施の時期等について検討を進めて参りたいと存じております。特に、その時期につきましては、可及的すみやかに目途を得るよう努力をいたす所存でございます。  なお、年金制度につきましては、母子年金及び養老年金それぞれ単独で創設するか、将来これらを一本に統合していこうか、この構想でございますが、当初から老齢、死亡及び廃疾等を事故として、それぞれに対応する給付を行う包括的国民年金制度を創設しようという構想と、以上二つの構想があり得るわけでありまして、そのいずれを選択するかということもすみやかに検討を行いたい、かように存じております。  次は、現在各省に行われている社会保障行政の一元化をするか、あるいは簡素化の必要があるのではないかとのお尋ねでございました。これは大へんごもっともなことでございまして、各種の勧告においても述べられておるのでございますが、現行の各制度がそれぞれその特質と特殊性もありまして、早急にこれを整理統合するには問題もありますので、なお関係方面とも十分検討いたしたい、かように考えております。  次は在外財産の処理問題についてでありますが、この問題は、在外財産問題審議会答申を尊重いたしまして、一定の基準に従って給付金を支給いたしたい、かように考えまして、目下具体案を検討中であります。しかし、この件につきましては、すでに本年度予算におきましても、所要の事務費、あるいは公債利子、さらに公債発行後これを担保として、国民金融公庫より二十億円ほど借り入れができるように、これも公庫に予定いたしておりますので、着々準備をいたしておる次第であります。  次は、動員学徒徴用工員等に対してほとんど国家補償が講ぜられていない、このことでございますが、動員学徒徴用工員等は、軍人軍属のように国と直接の身分関係がなかったものでありますので、戦傷病者戦没者遺族援護法においては、これらの者を軍人軍属と区別しておる次第であります。御質問の趣旨は、これらの者に対し、もっと国家補償を厚くせよというように言っておられるのでございますので、この点につきましては、今後、他の戦争犠牲者処遇ともにらみ合せまして慎重に検討いたしたい、かように考えております。  次は、沖繩における遺族、戦傷病者等の援護が本土に比して薄いということでございます。沖繩遺族等に対する援護については、法律には別段本土の場合と区別はされておりませんが、ただ、距離的に遠いと申しましょうか、そこで業務が少しおくれておるようでございますから、これは今後鋭意促進して、これらの完了を一日も早くいたしたい、かように考えております。  次は、不健全な映画が青少年の不良化の原因となっておる、青年に対して前途に対する希望を与え、自覚を促し、環境をよくすることに努力したらどうかという御意見のようでございました。映画につきましては、まず第一に業界の自粛を促進する。これについては、昨年末、映画倫理規程管理委員会の改組がされまして、今後その活動に期待をしておる次第でございます。厚生省といたしましては、中央及び地方の児童福祉審議会によります映画の推薦及び勧告の機能を十分活用するとともに、児童映画その他の民間活動をも強化いたしまして、両々相待って、青少年が不適当な映画の影響を受けないよう努力して参りたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣南條徳男君登壇
  13. 南條徳男

    国務大臣(南條徳男君) ただいまの御質問に対しましてお答えいたします。  まず、過年度災害の問題でございますが、お説のように、二十六年度ないし二十九年度までの間の過年度災害が非常に多額に上っておりまして、これはまことに従来問題であつたのであります。国家財政関係から、なかなか解決がおくれておりましたが、幸い三十年、三十一年が災害が少かった等の関係もありまして、三十一年度におきましては二百三十六億余円、三十二年度におきまして二百億余円以上の計上をいたしてありますので、大体残余は二割五、六分になっております関係から、三十三年度においては全部これが完済がつく見込みだと考えておりますので、先ほどお説のありました、三十一年度の剰余金等でこれに対する基金制度を設けたらどうかという御意見につきましては、とくと大蔵省とも相談をいたしまして考慮いたしたいと考えます。  東北開発の問題につきましてお答えいたしますが、東北開発の問題は、まことに国家の必要に応じた重大なことでありますので、これに対する振興政策は従来とも進めておるのであります。特に明年度の予算におきましては、河川改修等の総合計画をいたしまして、特にこれらの大きな河川におきまするダム計画、あるいはこれについての調査費等も計上いたしておるのであります。公共事業費に特に重きを置きまして従来、東北興業会社が東北開発の一役を買っておりましたのでありますが、このたび、東北開発に重点を置くために、この会社をして公共的な事業をもあわせ行わせることといたしまして、これに対する予算を本年度に約二十五億計上いたしておる次第であります。これによってこの会社を強化いたしまして、この東北開発の御期待に沿いたいと考えております。なお、民間資金等についての産業資金の不足もありますので、明年度の予算において四十五億の融資を考えておるような次第であります。  首都圏の整備の問題につきまして御質問がありましたが、これは、先ほど大蔵大臣からも御答弁がありました通り、明年度の予算相当これに対する予算を計上しております。詳細は委員会等において御説明申し上げたいと思うのであります。  以上でございます。(拍手)   〔国務大臣川村松助君登壇
  14. 川村松助

    国務大臣(川村松助君) 野田議員の御発言に対しまして、一言お答えいたします。  野田議員の言われるように、確かに、東北北海道開発に対しましては、きわめて低調であることを遺憾に存じております。幸いに、三十二年度の予算審議に当りましては、政府東北北海道に対しましては特に優先的に考慮を払おうという申し合せのもとに審議が進められまして不十分ながら、従来の数字から見ますと相当額増額になっておりまするので、この機会に大いに衆知を集めまして善戦敢闘、野田さんの御心配を一掃したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)   〔国務大臣井出一太郎君登壇
  15. 井出一太郎

    国務大臣(井出一太郎君) 簡潔にお答えを申し上げます。  御質問の第一点は、食糧増産の問題でございます。国際農業の重圧を受けておる日本の農業が非常に困難であるということも御指摘ございましたが、まことに同感でございます。そこで、食糧自給度確保しなければならない、こういう仰せでございました。それがための計画性を示せという御質問だったと思います。政府の自立経済五カ年計画におきましては、五カ年間の食糧増産費として米に換算いたしまして千百十二万石ということになっておるのでございます。この中で、農地の拡張、改良による増産分は約六百八十八万石でございます。三十二年度予算要求によりますと、約百十一万石の増産が可能となるわけであります。従って、三十二年度以降引き続き適切な予算措置を講じ、技術の向上、事業施行の効率化をはかりますれば、おおむね五カ年計画の増産量が達成できる、かように考えておるのであります。(拍手)  第二点の御質問は、農林水産業の所得水準あるいは生産性が他産業に比べて低い、こういうことを御指摘に相なりまして、農林水産業対策の強化拡充はどうか、こういうことだったと存じます。最近におけるわが国経済の各分野における発展はまことに目ざましいものがあるのでありますが、農林水産業は、それ自体非常にテンポがおそい、あるいは自然を相手として営まれるというようなことでございまして、他の産業部門と均衡を保ちながら発展さしていくということは相当に困難でございます。しかし、私どもとしましては、この均衡を保つことを目途にいたしまして、農政全般に再検討を加えて、その施策の徹底を期する所存でございますそれがためには、農林水産業の生産基盤を強化する、そうして生産性の向上をはかりますることと、さらに農業所得の増大、農業経営の安定を重点といたしまして、明年度の農林予算及び施策を最も重点的に効率的に施行いたして参りたいと思う次第でございます。  なおまた、青少年対策についてお触れになりましたが、新農山漁村建設計画の一環といたしまして、特に農村の青年諸君をこの推進者あるいは担当者ということで期待をいたしまして、その面の予算をも相当に用意いたしておるつもりでございます。  以上、お答えを申し上げます。(拍手)   〔国務大臣宇田耕一君登壇
  16. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) お答えいたします。  国土総合開発計画につきましては、急速を必要とするものは、国土総合開発法等に基きまして、昭和二十六年以来十九地区を指定しております。そらして、十七地区につきましては、すでに計画を立てて実施中であります。  長期の経済計画に食い違いが起るから、現実とうまく合わしていくために、総合的な経済行政機構を新たに考える必要はないかという御質問でありますが、長期の経済計画は、国際情勢の激しい変化とか、あるいは天候による作柄の良好等によって是正をする必要が起っております。従って、五カ年計画を新たに策定するための作業を始めております。しかし、それがために経済企画庁以外に新たな機構を作る必要はないと考えております。(拍手)   〔国務大臣松浦周太郎君登壇
  17. 松浦周太郎

    国務大臣(松浦周太郎君) 野田議員にお答えいたします。  失業対策費が昨年まり減っておるが、これで大丈夫かといろお問いでございますが、最近は、経済の好況を反映いたしまして、雇用情勢は緩和し、完全失業者の数は減少いたしております。大体五十一万ないし五十二万の程度でございます。いわゆる日雇い労働者の登録数も最近は増加いたしておりません。民間事業に就労する者が多くなりましたので、失業対策事業に就労する人員は大体二十二、三万であろうと存じております。来年度の失業対策事業費は本年度よりやや減少いたしましたが、一日平均の吸収人員は二十二万五千人を予定いたしておりますので、来年度における経済規模の拡大による民間求人の増加や、公共事業及び財政投融資の大幅拡大による雇用量の増大等を総合的に勘案いたしまするならば、来年度の失業対策は万遺憾なきを期することができると思っております。(拍手)  御質問の第二点は、生産性向上に対する労働組合の態度についてであります。私は、生産性向上はわが国経済発展の上に必要欠くべからざるものであると確信いたしております。(拍子)これなくしては日本経済発展はないのであります。労働者の賃金を上げることはできなくなるのでありますこの趣旨を理解して、生産性向上運動に協力的態度をとっておる有力なる労働組合もありますが、また、御指摘のごとく、総評がこれに反対の態度をとっておりますことは、まことに遺憾であります。現在、いずれの国におきましても、生産性向上に積極的に反対する労働組合はほとんどありません。総評でも生産性向上の真意と必要性を理解し、その態度是正されることを心から願っておるものでございます。(拍手政府といたしましては、今後広く熱意を持って啓蒙普及に努めるつもりであります。特に中小企業における生産性向上に重点を置いて参りたいと思っておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣中村梅吉君登壇
  18. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 青少年犯罪に関する野田君の御質問にお答えいたします。  御指摘の通り青少年犯罪について世界各国悩みを持っておりますことは同様でありますが、ことに、わが国は、敗戦というできごとによって、戦後激動する生活環境の中に成長いたしました現在の青少年犯罪、これは非常に意を用いて対処しなければならない事柄であると思います。よって来たる原因はいろいろございますので、ここに詳しく述べますことを省略さしていただきたいと思いますが、ただ、現在、青少年犯罪のうちで、年少少年とわれわれ俗に申しておりますが、満十八才未満の少年の場合と、年長少年といわれておる満十八才をこえた少年……、(「それは青年だよ」と呼ぶ者あり)満二十才まで少年でございます。そういう段階に分れまして、いろいろ状況が違うのでございます。今申しました年少少年に関する犯罪につきましては、保護、矯正、補導等によりまして、おおむね更生の目的を果しつつあるのでございます。特に今病気であるとか、あるいは能力的に普通人でないような者は別でありますが、大体普通の者につきましては、保護、矯正の方法によりましてその目的を果しつつありますが、どうも年長少年といわれておる者、あるいは満二十才をこえました青年、この時期にある者につきましては、なかなか矯正困難な現状で、法務省といたしましても、この保護、矯正につきましては特段の意を用いまして、御趣意に沿うように今後ともそらの努力をいたしたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇
  19. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 青少年対策に関する貴重な御意見を拝聴いたしたのであります。全面的に私同感の意を表したいと存じます。  なお、私は、この際勤労青少年に対する教育施設についてお答え申し上げたいと存じます。  勤労青少年に対しまする教育施設といたしましては、御承知通りに、高等学校の定時制教育あるいは通信教育の振興をはかり、同時に、また、社会教育の面におきまして、青年学級の整備充実をはかって参り、さらにまた、社会教育の面といたしまして、青少年の諸団体の活動を助長して参る、かような方針をとって参っておるのであります。この方針につきましては、今後も持続して参りたいと考えておりますが、何さま、今日までの状態では、決して十分とは申されません。御質問の御趣意に沿いまして、この方面について格段の努力を続けて参りたいと考えております。(拍手)  また、青少年の映画に関する問題。近年、好ましからざる映画が続出いたしまして、世人のまゆをひそめしめておりましたことは、御承知通りであります。文部省といたしましては、かような風潮にかんがみまして、業界に対する自粛を要望いたしたのであります。社会教育審議会あるいは青少年問題審議会等におきましては、何らかの法的措置を講じては、かような御意見もあるのでございますが、法的措置を講ずることにつきましては、なお慎重に検討を要すると思います。業界におきましては、新しく組織を設けて自粛の態勢を整えておりますので、しばらくその成り行きを見守って参りたいと考えております。また、地方の教育委員会等とも連絡いたしまして実情については十分注意をして参りたいと考えております。さらにまた、有料映画を推薦いたしまするとか、また買い上げ頒布を行いますとか、相当効果をあげておりますので、この方面につきましては引き続いて努力を続けて参りたいと考えております。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 春日一幸君。   〔春日一幸君登壇
  21. 春日一幸

    ○春日一幸君 私は、日本社会党を代表いたしまして石橋内閣の施政方針に対し、この際、主として中小企業問題と税制政策を中心といたしまして特に重要なる当面の諸政策について、ここに政府所見をたださんとするものであります。(拍手)   〔議長退席、副議長着席〕  まず、質問の第一は、政府は、中小企業と大企業との関係について、この際何らかの調整を行うの必要を認めないか、この問題についてお伺いをいたしたいのであります。  ここに、わが国における資本主義経済発展が、いつしか独占資本を形成し、この独占資本によって市場の独占と独占価格が強行されて、これが中小企業への重圧となり、しこうして、中小企業経済分野がますます狭められておるのであります。現に、紡績、化繊の巨大資本が続々として縫裁工業の分野に進出して被服、下着類の大量生産を行い、その他、大資本が続々と第二次加工、第三次加工の生産を開始する等、大企業の中小企業産業分野への進出は、今や各産業をおおって、いよいよ辛らつなる傾向を示しつつあると思われるのであります。(拍手)かかる事態をこのままにして放任すれば、大資本の重圧のもと、やがて中小企業は存立し得なくなることは必然であります。  このとき、この産業からはみ出た中小企業の行方は、一体どこでありましょうか。今や、登録失業者は七十万を数え、潜在失業者は五百万を数えておるのであります。かかる情勢のもとにおいてなお大企業に対し奔放、無拘束なる経済活動を許し、その成り行きを資本主義のする優勝劣敗の帰趨にゆだねて顧みないとするならば、それは中小企業から来たる失業群がいよいは加速度に増大することを容認するものであって事態はまことに重大であります。これは、ただ単に中小企業問題たるにとどまらず、実におそるべき労働問題であり、憂うべき社会問題であり、さらには、やがて深刻なる政治問題にまで発展するのおそれがあるが、政府はこれに対していかなる対策を講ぜんとするのであるか。  わが党は、かかる資本主義経済のする弱肉強食的貧らん性に対しては、この際これを適度に制御するは、必要にして欠くべからざる措置考えるのである。(拍手)よって、この際、一定の条件のもとに、中小企業に適正なりと判断される業種は、これを原則として中小企業産業として法定し、もって国民の総員がひとしくわが国経済に参画し得るの体制を確立すべきものと考えるが、政府は、今国会においてこの種の立法を行うの用意があるかどうか。岸首相臨時代理より、これらの諸点に関し、その対策について御答弁を願いたいのであります。(拍手)  次に、政府は、中小企業の協同組織に対し、この際、団体交渉、団体協約を内容とする団結権を付与し、さらに、一定の条件のもとに協同組合が調整行為をも行い得るよう、必要なる立法を行うの用意はないか、この問題についてお伺いをいたします。すなわち、現行協同組合法は、敗戦経済の混乱の渦中に立法されたもので、もはや、わが国経済の現状に合致したものとは言いがたいと思われるのである。ここに、自由経済の進展は、おのずからその競争を激化せしめ、さらに、中小企業の持つ弱き者の習性が、いつしかこの競争を、経済ベースを離れて過当競争にかり立て、これが今日の中小企業窮乏の一大要因となっておるのである。わが党は、かかる不健全なる過当競争を防止して、中小企業経済活動を常に公正なる経済ベースに立たしめるため、この際中小企業等協同組合法を根本的に整理し、もって新しく法の制定を必要と考えるが、これについて政府対策はいかに進められておるか、水田通産大臣より御答弁を願いたいのであります。(拍手)  次に、この際、この本会議の議場を通じて特に政府の責任においてその方針を明らかにしていただきたいことがある。それは、官公需品の調達に当っては、その一定の部分を中小企業に発注するという、これはさきに自民党の発表した公約についてであります。これは、中小企業振興審議会も、その答申の中においてその必要性を強調しておるところであるが、政府は、今次国会において、その公表せる政策を実現するために所要の立法を行うの意思があるか。  わが党の調査によれば、昭和三十二年度の物件費の総額は政府一般会計物件費並びに府県市町村の一般会計、特別会計物件費、さらに三公社、五現業のそれを総計すれば、優に一兆円になんなんとする膨大な額に上るのである。このらち、なかんずく、その一割を中小企業に発注することを規制するとしても、ここに年間実に一千億の有効需要が新く中小企業のために確保されるのである。わが国における官公需品の発注はもっぱら大企業に集中し、中小企業はそのうち外に置かれて顧みられてはいないのであるから、かかる偏向は最もすみやかに是正されるべきである。  わが党は、すでに数年来、この政策を掲げて強く政府に迫り、常にその実施を要求してきたところであるが、今回これが自民党の政策に加えられたことは、全国の中小企業者のために、まことに同慶にたえないところである。そこで、政府がこの政策の実施のために準備せる法律案はいかなる内容のものであるか。しこうして、その法案はいつごろこの国会に提出し得る予定であるのか。水田通産大臣は、かつて党の政調会長であられたのであるから、かたがた、一貫せるその責任において、この際明確なる御答弁を願いたいのであります。(拍手)  次に、中小企業対策費について質問する。すなわち、本年度予算案に示されたる中小企業関係対策費はあまりに軽少であって、これでは、その問題の一つをも解決することはできがたいと思われるのであります。たとえば、中小企業組織法を一つ取り上げてみてもこれはその共同組織に対し新しく各種の機能を付与せんとするものであるから、それは、一万五千四百の工業協同組合、一万七千九百の商業協同組合に対し、それぞれ根本的な変革をもたらさんとするものでありまた、さきに中小企業振興審議会の答申せる中小企業振興助成法、小売商振興法、いずれも産業分野の全域にまたがって相当の大改革を必要とするものである。政府は、かかる大政策が国家の財政的支持なくして所期の効果を上げ得ると考えておるのであるか。  ここに三十二年度予算案を見るに、一兆一千三百億の膨大なる総ワクの中に占める中小企業関係予算は実に十九億円であって予算総額に占める中小企業対策費は実に。二%に満たないのである。さらに専門的検討を加えれば、この十九億のうち、なかんずく十億は、信用保険特別会計の基金として固定するものであるから、これを除けば、中小企業のための総合政策費はわずかに九億一千三百万であって昨年度のそれに比較すれば、わずか一億円の増にとどまっておるのである。これが石橋内閣のいう中小企業振興対策の正体であり、その中身である。(拍手)いうならば、これは、表題にぎょうぎょうしく特大文字を掲げて宣伝し、中のページには鉛筆の落書きを書き散らした書籍を販売するようなものであってあまりに悪質な欺瞞政策ではないか。中小企業者を愚弄するの最もはなはだしきものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)一体、政府は、中小企業振興審議会の答申せるこれら一連の諸政策を実現するために、国家財政による負担と援助をどのように措置する考えであるか、これらの諸点に関し、この際、岸首相臨時代理より責任ある御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)  私は、この際、これら一連の中小企業関係の諸政策を論ずるに当って、特に岸首相臨時代理の良心に訴えて強調したいことがある。すなわち、貴下は、昭和十五年七月より同十九年七月に至る満四カ年間、戦争内閣の枢機に参画されました。この間、貴下は、商工大臣として、わが国産業経済を意のままに変造し、破壊し、また統御されたのである。すなわち、企業許可令をもって事業を制限し、次いで企業整備令によってその転廃業を号令し、この間、いわゆる物動計画と、さまざまな統制令を公布して、一切の物資の生産と配給と価格について権力統制を強行したが、やがて敗戦とともに、貴下の能事はここに全く終ったかに見えたのである。しこうしてここに十三年を経過して貴下は、はからずも再びこの政権に帰り来たった。国民の心情、わけても全国の中小商工業者の感慨がどのようなものであるかは、今ここで私の論ぜんとするところではない。ただ、私が本日ここに貴下の経歴をことさらにあげて特に強調せんとするところは、貴下は、あの四カ年にわたる、すさまじいばかりの経験を、この機会にこそ厳粛に反芻、吟味されて、今後の施策に当って、ごうまつといえども、あやまつところをなからしめよということである。  仄聞すれば、政府と与党とその同調者の間で検討中のその中小企業組織法案には、その調整機能の効率を確保するためとあって権力調整と強制加入の条項がしきりに論じられておるということである。国家の権力をもって臨めば、中小企業を左右するがごときはまさに意のままではあろうが、その結果がまたいかにおそるべきものであったかは、これは貴下の最も豊富なるうんちくの存するところである。(拍手)願わくば、政治に民主主義を尊重されるべきと同様に、また経済の分野においても特に民主主義体制が最高度に確保されるように、しこうして、その法律案がみだりに権力を伴うことのないように、これら法案に対し、特に貴下の良心に訴えて、ここに善処を要望しておくものであります。(拍手)  次は、金融政策について、問題を特に中小企業に局限して質問をいたします。政府は、この際、銀行法を改正して系列融資、集中融資の悪偏向を是正するの措置を講ずるの意思はないか。現に、財閥銀行は、その財閥系統の企業に、また、それに続く大銀行は、いずれも特定の企業に密着し、特に重役陣の交流を行うなど、かくて、これらの銀行は、それらの特定企業の資金調達のための窓口機関に堕し去っておるといっても過言ではない。金融の公共性は有名無実で、預金者の安全をこれで確保しておるとは言いがたいでありましょう。米国における連邦準備法にならって、銀行が自己資本の一定割合を越えて同一企業に集中融資のできないように法を改正して、もって金融機関本来の使命、性格を明文化し、進んでその資金を広く中小企業の域にまで、より多く均霑せしめるの措置をとるべきではないか。(拍手)これに対する大蔵大臣の御見解を伺いたい。  次に伺いたいことは、政府は、中小企業金融公庫と国民金融公庫に対し、商工中金のそれと同様に、この際金融債を発行するの機能を付与し、もって民間資金をもあわせて導入し得るの道を開いて、その資金量の増大をはかるの意思はないか。現在、これら両公庫の資金の需要は日とともに増大し、限られた財政資金のみをもってしては、とうていその需要を満たし得ない状況にある。中小企業金融は何ら緩和されてはいないので、かかる方策を講じて政策融資を大幅に増大するは必要にして欠くべからざるの措置考える。しこうして、政府関係中小企業金融機関の金利を低下せしめるため、この際、一般会計からする利子補給の方途を講ずるの意思はないか。ここに一般市中金利が低下の傾向にあり、かつは、国際水準に比べても、その実現が強く叫ばれておるとき、中小企業金融が特に国家のために必要なる政策金融であるならば、造船利子補給の前例に徴しても、今こそ英断をもつてこれを実現すべきときでありましょう。大蔵、通産両大臣見解をここにあわせてお伺いする。(拍手)  次は、今回の税制改革において、あの非難ごうごうたる租税特別措置法の大部のものが存続されたことについて質問する。ここに東京電力株式会社の三十年度下期の決算について検討するならば、その課税さるべき所得金額三十一億六千四百万円に対し、特別措置による減免された所得額は実に二十三億四千万円となり、かくて、この特別減免措置による減免税額は九億三千万円であって実際の納税額はわずかに三億三千万円となり、実に、この実効税率は、その所得額に対して一〇%程度のものとなるのであります。(拍手)このような、税法上の、しさいありげな仕組みによって、大企業、大資本は、ひとしくその恩恵をほしいままにむさぼっておるのであります。昭和三十年春の主税局の調査によれば、資本金一億円以上の法人に対する実効税率は僅々二六・一%であると報告しております。中小企業法人に課せられておる四〇%のそれと比較して、これが資本主義政策の本性かと、いよいよあきれ返るばかりであります。(拍手)  わが党の調査によれば、この租税減免特別措置により法人に対し減免されておる総額は年間九百八十五億であって、かくて、昭和二十五年度より三十年度に至るその免税所得、準備金、引当金の累計額は実に四千八百二億六千二百万円の巨額に達しておるのである。大企業はいよいよ太って独占資本の城郭を築き、一方、中小企業は相も変らずその日暮しで、たん病気でもわずらうことなら、何の補償貯蓄もないままに、そのまま極貧の中に転落せざるを得ないのであります。いかに鉄面皮、無神経な保守政権でも、これではあまりに極悪非道な税制であるといわざるを得ないのであります。ことに、勤労者に対しては、一時間の残業手当をものがさず捕捉して税を課し、さらに夜業の夜食代まで賃金に換算して追求するが、ここに銀行の預金利子所得には一年定期以上はまるきり無税で、配当所得は、標準世帯で百十七万五千円までは、これまた一銭の税金もかけないのである。これは、資本蓄積の名のもとに、資産所得はこれをほとんど無税にして賃金所得と事業所得に対して一切のしわを寄せたものである。特に、今回の改正によって、社会保障に加入し得ない中小企業者のための一万五千の概算控除の特例を廃したことは、最も陰険なる仕打ではないか。  そもそも、徴税行政の基本的なあり方は所得のある者に課税をなし、担税力の強き者から漸次これを弱きに及んで低める方式のものでなければなりません。(拍手)しかるに、保守政権のそれは、全くその逆で、石橋内閣は、今回の改正によってその逆のものを、一そう醜く、いびつにしたのである。政府は、資本の蓄積は金持と大企業にだけ必要であって、勤労者と中小企業者は、いつまでも、すかんぴんであってもかまわぬというのか、(拍手)この際、政府は、すでに達成された大企業におけるその資本蓄積の実情に徴し、さらには、大資本をおおう全面的好況のこの好機をとらえて、今こそ、年間一千億になんなんとするこの租税特別措置法に対し、全面的斧鉞を加うるの意思はないか。改正の意思ありとするならば、その時期と構想はいかん。池田大蔵大臣より責任ある御答弁を願いたいのであります。(拍手)  なお、この機会に、特に低額所得者に対して実質的な減税を行うためには、遠くわが党案のそれに及ばずといえども、せめては総理府統計局の勤労者家計調査による標準家庭の最低生活費二十九万一千円までを非課税にするために、この際さらに基礎控除、扶養控除を引き上げる意思はないか、あわせて御答弁を願いたい。(拍手)  さらに、物品税についてお伺いいたします。もとをただせば、これは北支事変特別税としてスタートされたものであり、その後、戦争政策の必要のために、さらにこれを拡大、加重したものである。これは歴然たる戦時立法であります。戦争経済の外面よりつまみ上げられた七十数品目の業種だけに、十二カ年を経過した今日において、なお年間実に三百億円になんなんとする特別の荷物を縛りつけて、そのまま捨てておくということは、決して妥当なことではないのでありましょう。わけても中小企業者、零細業者は、この税を商品に転嫁し得ないので、これもまた当該中小企業窮乏の一大要因となっております。不当にして不公正なる重圧にあえぐ全国の物品税関係者十五万の切実なる要望にこたえて政府は、この際、この物品税を全面的に廃止するの意思はないか。特に、本年度は、税の自然増収二千億が期待されておる。まさに英断を下すの絶好の機会であります。(拍手池田大蔵大臣より、この点について明確なる御答弁を願いたいのであります。  次は、今回の税制改正をめぐる諸問題について大蔵大臣にお伺いをいたしたいのであります。  第一にただしたいことは、政府は今回の税制改定をもって一千億の減税なりと豪語しておるが、これを予算書について見れば、三十一年度の租税収入八千二百六十億に比べて、三十二年度のそれは明らかに九千四百六十億と、逆に本年度は一千二百億の大増税となっておる。このことは徴税行政上最も警戒を要する内容を含むのであります。(拍手)もとより、政府は……(「徴税と増税は違う」と呼ぶ者あり)一郎平君、よく聞いて下さい。(「景気がいいのだ」と呼ぶ者あり)もとより、政府は、国民所得が増大するので、制度で減らしても実質はふえるのだと、ただいま草野君御発言のような言葉があるであろうが、重税と金詰まりにあえぐ勤労者、中小企業者は、断じてかかる気休めに耳をかすものではありません。  巷間、大げさに、神武以来の好況という。ここに明らかにいたしたいことは、最近における商業手形の不渡りの累増に示された中小企業の困窮の実情についてであります。すなわち、東京手形交換所の記録をもってすれば、その不渡り件数は、三十年十月は月間四万七千六百六十八件のものが、三十一年十月においては五万三千百三十一件となって、五千四百六十三件の増、三十年十一月は四万七千六百六十一件のものが、三十一年十一月は五万二百七十七件となって、二千六百十六件の増、しかして、三十年十二月は四万八千二百七十八件のものが、三十一年十二月は五万二千三百八十件となって、実に四千百二件の増となっておる。この計数は、中小企業の経理内容が何ら好転せざるのみか、いよいよ窮乏の度を加えておることの実証であるが、政府はこの事態をいかに考えるか。いうならば、この租税収入の千二百億の大増徴案こそは、実に大企業の繁栄を類推していわゆる神武景気に無関係な中小商工業者、低額所得者にその負担を加えんとするものであって苛斂誅求まさにおそるべき事態が予想されるのである。(拍手)  この際特に申し述べるが、ここに申告所得税においては、「お知らせ」と称し、税務署は、その納税申告に先手を打って、年々所得額の天下り的な通告を行なっておるのである。かくて、今回の税法の改正は、基礎控除、扶養控除、その他税率の修正等によって形式上の減税となるのである。この減収分は、しょせんは、神武景気の一律の概念をめくらめっぽうに押し通して、大幅の水増しの「お知らせ」を強行することなくしては、この税収予算額を充足することはできないのである。(拍手)また、青色申告と法人税に対する調査と摘発が、この方針によって、しんらつの度を加えるであろうことは、これは本日の各朝刊紙が筆をそろえてこれを報道しておったところである。ここに特に大蔵大臣に伺っておきたいことは、今回の税法改正が不明確なる国民所得増加なるものを基礎として案世されたものであるだけに、かつは、わが国経済は好況の気配を示して流動してはおるが、前述のごとく不渡り手形累増の傾向に徴しても、一律に好況などとは断じ得ないのである。よって本年度の申告所得税の「お知らせ」は、この種の水増し通告を断じてなさざるよう、また、青色申告、法人税の査定に当っても決して過酷にわたらざるよう、政府は、この際、末端徴税機関に対し、厳重なる通達を発するの必要があると思うが、大臣にその用意ありやなしや、特に責任ある御答弁を願いたいのであります。(拍手)  次に、政府の今回の行政措置によって国税とは別に新しく増徴されるものは、国鉄運賃値上げ三百七十億、住民税の引き上げ百四十八億、時限爆弾として今は秘められてはあるが、消費米価の値上げ百四十億、たばこ専売の増収五十五億など、これが実に七百数十億の巨額に上るのである。かくのごとくにして、神武景気のあほだら経に乏しき大衆がうつろな目を奪われているその陰で、平年度に比べて千二百億の国税の増徴と、公社、公団関係七百五十億の値上げの工作がすでにかくのごとくに完了してしまったのである。これでは、国民負担を軽減し、民生の安定をはかるなどとは、いかに駄ぼらとしても、言えた筋合いではないじゃないか、(拍手政府は、これが国民に対し新しく加わる負担とは考えないのであるか。また、ガソリン税、地方道路税、軽油引取税の値上げは計百八十八億である。これは運賃の値上げを伴い、そのまま物価の値上りとなることは最も明白にしてこれは経済の必然の示すところである。  一昨日、鈴木委員長が、政府の施策は財政インフレを来たすの危険ありとの警告的質問を発したのに対し、岸、池田の両大臣は、そのような必配はありませんと、おくめんもなく答弁したが、およそ、自民党政府経済見通しほど、ずさんで、でたらめなものはないんじゃないか。(拍手)現に、昨年初めに発表した昭和三十一年度の経済計画と、その後の実績はどうであるか。辛うじてその見通し実績が近似したのは、総人口、労働人口、就業者総数等の変動の少いものだけで、最も肝心な、民間資本形成における著しい過小評価、鉱工業生産水準や個人消費支出の見通しは決定的に相違して、まるでめちゃめちゃではないか。(拍手)特に、昨年九月、政府税制調査会に提示した税制改正の基礎となる資料のうち、三十二年度の国税の自然増収見込み額は現に一千億であったはずである。これが、二、三カ月を経過するや、たちまち二千億の増収見込みに置きかえられた。これまた百パーセントの見込み違いである。かくて、税制調査会は、一千億の増収見込みで見当違いの改正案を答申し、政府は、これに対し、まことに強行な二千億の増収見込みで本年度の予算を組んでおるのである。まるで児戯にひとしい、単なる数字のたわむれといってもこれは過言ではないであろう。(拍手)このように、その見通し実績がずさんきわまるものであったればこそ、国民は、増税と値上げに心痛し、かつ、イフレの来襲におそれをなしておるのであります。政府は、これでも、運賃値上げ、ガソリン税の増徴物価の値上りの原因とはならぬと断言できるのであるか、さらにまた、三十二年度二千億の国税増収の見通しには誤まりはないか、この際、池田大蔵大臣より、その理由を示して、責任ある御答弁を願いたいのであります。(拍手)  最後に、結語として大蔵大臣に申し述べる。貴下は、かつて、大蔵大臣としてドッジ氏の指令に盲従し、ついでシャウプの勧告に叩頭した。時移って情勢は変ったとはいえ、今貴下の歩んでおられる方角は、しょせんは、いずれも、かつてのそれの逆である。この際特に指摘しておきたいことは、−貴下の財政方針はそのときどきの権力者の意向にくしくも合致してしまうということである。(拍−手)ドツジ氏が指令すれば超緊縮の策をとり、石橋氏が権力の座にすわれば拡大均衡方針を選ぶ。かくてこの政府財政政策は、随所に、理論の撞着、政策の背反、いうならば、木と竹をつないだ、もろい弱点を、あまりにも多く露出しておるのである。昨日、貴下は、わが党の河野さんの質問に、経済は生きものだからその都度実情に即して施策すると答えたが、少くとも、大蔵大臣なるものが、本院の財政政策のベテランに対してかかる中学生の公式論をまねてのがれを打つべきではないであろう。わが党は、ここ三日間にわたって、衆参両院におて、国家の盛衰と国民生活の明暗に直結する重大なる疑義について質問した。万一われらの憂えるがごとき破綻を生ずることあらば、もとより、貴下のその罪は万死に値する。(拍手)願わくば、われらが質問の趣旨についてさらに検討されて、いたずらに面子にこだわらす、今後の施策においてさらに万遺憾なきを期せられるように、特に注意を喚起いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)  〔国務大臣岸信介君登壇
  22. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  中小企業問題が日本におきましては特殊の重要性を持っておりますことは、春日君の御指摘の通りであります。産業上から見ましても、その生産高、取扱い高、従業者の数等、全体の上から申しましても、非常な大きな部分を占めておる輸出産業の上においても、きわめて重要なものであることは言うを待ちません。しかも、その経営なり、あるいは経済力が弱いために、また、近代化されておらないために、好景気が及ぶこともおくれますし、いろいろな意味におきまして 一面においては社会問題を引き起すということもお説の通りであります。従いまして、これに対する強力な対策を立てることが最も必要であり、その根本は、第は組織の強化である。こう数が非常に多くて力が弱い。どうしてもこれを組織していく。これは、過去において重要物産同業組合や、あるいは工業組合、輸出組合、商業組合等の組合制度によって組織を行なったのでありますが、戦後は協同組合によって行われておりますけれども、その組織が弱いというところに非常な欠陥があるのでありまして、これを強化していかなければならぬ。そこで、中小企業振興審議会の答申に基いて、政府としては、これの組織を強化することに格段の力をいたすとともに、あるいは金融の面において、また租税の面におきまして、われわれは、これに対する対策を立てるとともに、同時に、設備の近代化や、あるいは技術の向上に対する指導を強化していきたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇
  23. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 春日さんの御質問にお答え申し上げます。  銀行の貸し出しにつきましての系列化についての御質問でございまするが、これは銀行は銀行として独自の立場でやっております。われわれは、監督の面から、それが経済界によくなければ、これを是正することは考えておるのであります。  なお、国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫に対して金融債の発行を認める気はないか。この点につきましては、私は、一昨年来検討しておりましたが、ただいまのところ政府資金も相当ございますので、今はその必要を感じておりません。商工中金におきましては商工債券を出しておりまするが、こういうことから考え、また、今の金融情勢から、国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫が債券を出しても、消化にある程度困難ではないかと思いますので、早急にこれを実行する気はございませんが、今後の問題として検討いたしたいと思います。  なお、金利の低下につきましては、先般お話し申し上げましたごとく、商工中金につきましては、他の金融公庫よりも非常に高いので、一割五厘というのを一割以内に引き下げるようやっております。  また、租税措置法についてのお話でございましたが、復興途上における、再建途上におけるわが国経済立て直しのために、いろいろな措置を講じておりました。しかし、この問題も、税制調査会の意見を聞き、御承知通りに、平年度において二百数十億円の増税を企図いたしておるのであります。  なお、個人の概算控除の問題でございまするが、今回の所得税減税機会に、また、住民税、法人税、あるいは個人、法人事業税等の軽減にかんがみまして、これを租税の合理化の上からやめたのであります。  物品税の撤廃につきましては、御意見は承わっておきまするが、売上税等の関係もございますし、また、直接税、間接税の問題もございますので、ただいまのところ、直ちに撤廃するという考えは持っておりません。  次に、租税に関して苛斂誅求があってはならないというお話、まことにもっともでございます。絶対にこれを避けなければいかぬということを確言いたします。  次に、千二百億円の増税と申されまするが、この問題は、給与所得につきましても、四月になったら増税か減税かおわかりになると考えます。(拍手)  増収の点につきましては、千九百億の収入は確かか、こういうお話でございまするが、昨日申し上げたような関係で確かに入ります。私は、企画庁の調査のみならず、個々の会社につきまして、また、大きい納税者については個々について調査した上でございますから、あらゆる方面から検討を加えましてこの収入は確保できることを、ここに断言いたします。  なお、財政掌理についての考え方。占領下においてはアメリカ進駐軍の意見を聞き、今は石橋総理の意見を聞き、こういうことでございまするが、皆さん、あの占領下におきまして、アメリカから年に数千億円の援助をもらって日本の経済があのような状態のときの財政政策と、今ほとんど自立できるような経済状態になったとき、同じ財政方針をやったならば、あなた方からしかられるのであります。(拍手)私は、先ほど申し上げましたごとく、世界の情勢、わが国実情を見ながらやっていくのが生きた財政政策と考えるのであります。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  24. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 春日さんの質問にお答えいたします。  まず第一に、中小企業の組織化に関しまして、現行法の改正か、もしくは新立法を行う意思はないかという御質問でございましたが、その意思は大いにございます。ただいまのところ、政府考えておりますところは、現行事業協同組合、あるいは信用協同組合、企業組合、これはそれぞれ存続させてさらにこれを強化改善するということをする一方、すべての業種にわたって中小企業に、共同事業調整事業、この二つの仕事を同時に行うことができるような新しい商工業組合の結成を許す、そして、それに強い権限を与える、そういう道を開きたいという考えを持っております。そうするためには、この際中小企業組織法とでもいうべき基本法をここで新たに作る、そうして、従来の中小企業等協同組合法とか、あるいは中小企業安定法という、この二つの法律は廃止したい、こういう考えで、新立法措置につきましても、ただいま準備中でございます。  その次は、大企業と中小企業産業分野の分担を合理的に適正に調整する必要はないかという御意見でございましたが、これは全く同感でございます。で、それをするためには、今申しましたような法律を十分に活用するだけでいいのか、あるいは中小企業振興助成法というようなもので規制する必要があるか、その点は目下検討中でございます。  それから、官公需の調達について、一定割合を中小企業に発注したらどうか。この御意見も同感でございます。今、私どもの考えとしましては、できたら立法でやりたい。その措置を研究中でございますが、技術的にこの問題は非常にむずかしい問題がございますので、今、関係各省の間で意見の調整中でございます。(拍手
  25. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 川上貫一君。   〔川上貫一君登壇
  26. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は、小会派を代表して、主として総理に対して二、三の質問をいたします。  石橋内閣は、組閣以来、自主独立を唱えられております。また、平和を口にしておられます。これは、その限りにおいて、まことにけっこうであります。しかし、日本の自主独立という、こういう問題は、第一にアメリカ軍の撤退、第二に軍事基地の撤去、第三に沖繩の完全復帰という、少くともこの三つの問題を解決せずして、ただ口で自主独立ということを云々するのは、私はから念仏だと思う。  そこで、第一に私が質問したいのは沖繩の問題であります。もちろん、日本は、サンフランシスコ条約で、アメリカが沖繩を信託統治に付する、これを国連に提案する権利を認めております。また、沖繩の信託統治が実現するまで立法、司法、行政の権利をアメリカにまかせる。これもこうなっておることは事実であります。しかし、問題は、アメリカは今日沖繩を信託統治にする意思はないのであります。さらに、日本の政府は、これを喜んでおるといわれる。そういう工合でありますから、去る一月、アイゼンハワー大統領は、議会べの教書で、沖繩の永久占領を明言しております。  そこで、お聞きしたい。このことは、一体、サンフランシスコ条約とどういう関係になることでしょう。さらにまた、国連憲章には、国連加盟国に対する信託統治は無効であることを明確にうたってあるのである。従って国連に加盟した日本の領土を信託統治にすることはできますまい。してみれば、信託統治を前提としたアメリカの沖繩占領は、今日、現在では明らかに国連憲章違反であります。(拍手)明瞭に占領の継続であります。一体、政府は、このようなアメリカの無法占領に今後どういう方針で臨まれるつもりでありますか。岸首相代理の先ほどの答弁では要領を得ません。この問題は、単に沖繩に対するわずかばかりの見舞金ぐらいでごまかせる問題じゃありません。まず、この点を伺いたい。  第二に、政府は、これを国連に提訴する意思がありますかどうか。また、今後一国もしくは数国が沖繩の問題を国連の議題とした時分に、政府はこれを支持する意思がありますかどうか。これはひとり沖繩同胞関係する問題だけではありません。日本の自主独立にとってまことに重大な問題であると思いますから、私はこの席で首相の明確な答弁を伺っておきたいのであります。(拍手)  私の質問の第二点は、軍事基地の問題であります。御承知のように、日本は、安全保障条約、行政協定によって無期限、無制限にアメリカの軍事基地になっておる。事実上、永久占領の状態になっております。思うに、国民の一切の困難と不幸の根本は、私はこの一点にあると断言してはばならない。(拍手)しかるに、石橋内閣は、現在、基地問題、すなわち五カ所の基地問題もこれを取り上げる努力をしておられますか。そもそも、この基地拡張は、端的に言うてアメリカの原爆基地を作り上げる。現に、アイゼンハワー大統領は、新聞記者の会見で、今日の小型原子兵器は通常兵器の一部だと、はっきり言うておるのです。今日、アメリカが原子兵器を日本に持ってくることは、まるで自由自在です。おそらく、日本政府の手の届くところではありますまい。してみれば、日本は、国民の知らない間に、アメリカの原子戦争の完全な基地になっておるのです。(拍手)それをさらに拡張するという。これが砂川の問題、これが伊丹基地の問題であります。これこそ、アメリカの原子戦争の準備にますます国土を提供することで遜ります。ソヴィエト同盟や中国に対する原子攻撃の基地を政府自身が作っておる。これをどう思いますか。  しかるに、政府は、この深刻な問題について施政方針の中で、ただの一言でも触れておりますか。触れておりません。そればかりか、今回アメリカが日本に原子部隊を配置するという問題について多くの議員から質問があった。社会党の河野議員のごときは、まことに詳細にこれを質問しておる。それに対して岸首相代理の答弁は、あれは何でありますか。私は、これは全くの言いのがれであって非常に国民に対して不親切であるということを断言せざるを得ない。(拍手)  私は、時間の関係で、あまりたくさんのことは言えません。しかし、たった一つだけ私は指摘しておきたい。それはタス通信の報道であります。こう言うておる。「ソ連の人民は日本の人民に最も親しい感情を抱いておるけれども、アメリカ帝国主義者が、彼の計画を実行してある種の兵器で攻撃してくれば、同じ種類の兵器で反撃するであろう。」その次が大事なのです。「この責任はアメリカの政府にあると同時に、自分の領土をアメリカの踏み台に提供した政府自身の責任でもあることを忘れるな」と書いてある。(拍手)総理は、これについてどういうお考えがありますか。  これは軽々しい問題ではありません。大戦中には二へんまで原爆を食うておる国民です。水爆の実験によって、おそるべき被害と恐怖にさらされておる国民であります。この国民が一番おそれておるのは、この一点なんです。もし、政府にして、ほんとうに国民の心配を心配とされ、国民のおそれを政府自身のおそれとされるならば、何ゆえに、はっきりと、アメリカのこのような要求があった場合には、これを拒否します、ということが、ここで言えないのでありますか。(拍手)岸首相代理の答弁は、国民は納得しちゃおりません。国民を納得させない答弁は、幾らこの壇上で大言壮語しても、日本の国民にとっては無用な答弁であるということを、私ははっきり言いたい。(拍手)私は、各党各派を代表する代表質問の最後でありますから、あらためて、政府が基地拡張を取りやめること、必ず強要してくるであろうアメリカの原子部隊の配置に対しては、日本政府としては誓ってこれを拒否するということを、ここで国民の前に明らかにされることを岸首相代理に要求します。(拍手)  最後に、私は、もう一つ政府がいよいよますますアメリカヘの従属を深めようとしておる一点についてだけ質問したい。聞くところによれば、石橋首相と岸外相は、アメリカに十億ドルの借款を求めるこの計画をしてはおりませんか。一体、政府はアメリカの対日政策をどのようなものと考えておられるか知りませんが、アメリカをごらんなさい。一方では日本に対するどうかつ、一方では懐柔、一方では軍事力、一方では経済によって、がんじがらめに締めつけながら、日本をアメリカの戦争政策の召使にすること、これがアメリカの対日基本政策ではありませんか。しかるに、今回またまた十億ドルという大きな金を頼み込んで、いよいよ経済的な従属を深めようとしておる。一体、政府は、この莫大な借金に何を担保にされますか。担保なくして貸せますか、かつて、吉田内閣ば何をしました。たった四千万ドルの火力借款に、この国会議事堂を初め、いなかの小学校に至るまで、ことごとく担保に入れたではありませんか。(拍手この十億ドルには担保が要ります。おそらく、日本の基幹産業政府は担保にするつもりでありましょう。これだけではありません。(「何を言っておるか」と呼ぶ者あり)私のこの質問は、必ず、近い将来において、いかに重大な質問であったかということが明らかになりましょう。そればかりではない。この担保に、原子部隊を受け入れること、沖繩の永久占領を承認すること、中国と国交を回復しないということ、逆に、蒋介石や李承晩とともにアメリカの軍事同盟に参加するということを引出物にする用意でありましょう。そのほかに担保がありますか。担保があれば、これを担保にすると、はっきり言っていただきたい。私は、この問題について、ここで最後に政府のはっきりした答弁を求めますが、答弁のいかんによっては、その他の機会においてこの重大な問題は徹底的に質問するつもりであります。  願わくは、この席で国民に納得できるような答弁を岸首相代理にお願いして私の質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣岸信介君登壇
  27. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 沖繩の問題につきましては、施政権の回復につきまして今日までアメリカ政府とも交渉をいたしておりますし、今後もこれを続けていくつもりでおります。  国連憲章七十八条の解釈につきましては、川上君が誤解されておるのじゃないかと思いますが、これは領土の一部についていっておるのではなくして、国全体の問題に関する規定でありまして日本が加盟いたしましても、日本の領土の一部をどうするかという問題は、この七十八条の問題ではないのであります。  最後の、十億ドルの借款の問題は、全然かくのごとき事実はございません。(拍手
  28. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  29. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十二分散会      ————◇—————