○春日一幸君 私は、日本
社会党を代表いたしまして石橋
内閣の施政
方針に対し、この際、主として
中小企業問題と
税制政策を中心といたしまして特に重要なる当面の諸政策について、ここに
政府の
所見をたださんとするものであります。(
拍手)
〔
議長退席、副
議長着席〕
まず、質問の第一は、
政府は、
中小企業と大企業との
関係について、この際何らかの
調整を行うの必要を認めないか、この問題についてお伺いをいたしたいのであります。
ここに、
わが国における資本主義
経済の
発展が、いつしか独占資本を形成し、この独占資本によって市場の独占と独占価格が強行されて、これが
中小企業への重圧となり、しこうして、
中小企業の
経済分野がますます狭められておるのであります。現に、紡績、化繊の巨大資本が続々として縫裁工業の分野に進出して被服、下着類の大量生産を行い、その他、大資本が続々と第二次加工、第三次加工の生産を開始する等、大企業の
中小企業産業分野への進出は、今や各
産業をおおって、いよいよ辛らつなる
傾向を示しつつあると思われるのであります。(
拍手)かかる事態をこのままにして放任すれば、大資本の重圧のもと、やがて
中小企業は存立し得なくなることは必然であります。
このとき、この
産業からはみ出た
中小企業の行方は、一体どこでありましょうか。今や、登録失業者は七十万を数え、潜在失業者は五百万を数えておるのであります。かかる情勢のもとにおいてなお大企業に対し奔放、無拘束なる
経済活動を許し、その成り行きを資本主義のする優勝劣敗の帰趨にゆだねて顧みないとするならば、それは
中小企業から来たる失業群がいよいは加速度に増大することを容認するものであって事態はまことに重大であります。これは、ただ単に
中小企業問題たるにとどまらず、実におそるべき労働問題であり、憂うべき
社会問題であり、さらには、やがて深刻なる政治問題にまで
発展するのおそれがあるが、
政府はこれに対していかなる
対策を講ぜんとするのであるか。
わが党は、かかる資本主義
経済のする弱肉強食的貧らん性に対しては、この際これを適度に制御するは、必要にして欠くべからざる
措置と
考えるのである。(
拍手)よって、この際、一定の条件のもとに、
中小企業に適正なりと判断される業種は、これを原則として
中小企業の
産業として法定し、もって
国民の総員がひとしく
わが国経済に参画し得るの体制を確立すべきものと
考えるが、
政府は、今
国会においてこの種の立法を行うの用意があるかどうか。岸首相臨時代理より、これらの諸点に関し、その
対策について御答弁を願いたいのであります。(
拍手)
次に、
政府は、
中小企業の協同組織に対し、この際、団体交渉、団体協約を内容とする団結権を付与し、さらに、一定の条件のもとに協同組合が
調整行為をも行い得るよう、必要なる立法を行うの用意はないか、この問題についてお伺いをいたします。すなわち、
現行協同組合法は、敗戦
経済の混乱の渦中に立法されたもので、もはや、
わが国経済の現状に合致したものとは言いがたいと思われるのである。ここに、自由
経済の進展は、おのずからその競争を激化せしめ、さらに、
中小企業の持つ弱き者の習性が、いつしかこの競争を、
経済ベースを離れて過当競争にかり立て、これが今日の
中小企業窮乏の一大要因となっておるのである。わが党は、かかる不健全なる過当競争を防止して、
中小企業の
経済活動を常に公正なる
経済ベースに立たしめるため、この際
中小企業等協同組合法を根本的に整理し、もって新しく法の制定を必要と
考えるが、これについて
政府の
対策はいかに進められておるか、水田通産
大臣より御答弁を願いたいのであります。(
拍手)
次に、この際、この本
会議の議場を通じて特に
政府の責任においてその
方針を明らかにしていただきたいことがある。それは、官公需品の調達に当っては、その一定の部分を
中小企業に発注するという、これはさきに自民党の発表した公約についてであります。これは、
中小企業振興審議会も、その
答申の中においてその必要性を強調しておるところであるが、
政府は、今次
国会において、その公表せる政策を
実現するために所要の立法を行うの意思があるか。
わが党の調査によれば、
昭和三十二年度の物件費の総額は
政府一般会計物件費並びに府県市町村の
一般会計、
特別会計物件費、さらに三公社、五現業のそれを総計すれば、優に一兆円になんなんとする膨大な額に上るのである。このらち、なかんずく、その一割を
中小企業に発注することを規制するとしても、ここに年間実に一千億の有効需要が新く
中小企業のために
確保されるのである。
わが国における官公需品の発注はもっぱら大企業に集中し、
中小企業はそのうち外に置かれて顧みられてはいないのであるから、かかる偏向は最もすみやかに
是正されるべきである。
わが党は、すでに数年来、この政策を掲げて強く
政府に迫り、常にその実施を
要求してきたところであるが、今回これが自民党の政策に加えられたことは、全国の
中小企業者のために、まことに同慶にたえないところである。そこで、
政府がこの政策の実施のために準備せる法律案はいかなる内容のものであるか。しこうして、その法案はいつごろこの
国会に提出し得る予定であるのか。水田通産
大臣は、かつて党の政調会長であられたのであるから、かたがた、一貫せるその責任において、この際明確なる御答弁を願いたいのであります。(
拍手)
次に、
中小企業対策費について質問する。すなわち、本年度
予算案に示されたる
中小企業関係対策費はあまりに軽少であって、これでは、その問題の
一つをも
解決することはできがたいと思われるのであります。たとえば、
中小企業組織法を
一つ取り上げてみてもこれはその共同組織に対し新しく各種の機能を付与せんとするものであるから、それは、一万五千四百の工業協同組合、一万七千九百の商業協同組合に対し、それぞれ根本的な変革をもたらさんとするものでありまた、さきに
中小企業振興審議会の
答申せる
中小企業振興助成法、小売商振興法、いずれも
産業分野の全域にまたがって
相当の大改革を必要とするものである。
政府は、かかる大政策が国家の
財政的支持なくして所期の効果を上げ得ると
考えておるのであるか。
ここに三十二年度
予算案を見るに、一兆一千三百億の膨大なる総ワクの中に占める
中小企業関係予算は実に十九億円であって
予算総額に占める
中小企業対策費は実に。二%に満たないのである。さらに専門的
検討を加えれば、この十九億のうち、なかんずく十億は、信用保険
特別会計の基金として固定するものであるから、これを除けば、
中小企業のための総合政策費はわずかに九億一千三百万であって昨年度のそれに比較すれば、わずか一億円の増にとどまっておるのである。これが石橋
内閣のいう
中小企業振興
対策の正体であり、その中身である。(
拍手)いうならば、これは、表題にぎょうぎょうしく特大文字を掲げて宣伝し、中のページには鉛筆の落書きを書き散らした書籍を販売するようなものであってあまりに悪質な欺瞞政策ではないか。
中小企業者を愚弄するの最もはなはだしきものであると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)一体、
政府は、
中小企業振興審議会の
答申せるこれら一連の諸政策を
実現するために、国家
財政による
負担と援助をどのように
措置する
考えであるか、これらの諸点に関し、この際、岸首相臨時代理より責任ある御答弁を願いたいと思うのであります。(
拍手)
私は、この際、これら一連の
中小企業関係の諸政策を論ずるに当って、特に岸首相臨時代理の良心に訴えて強調したいことがある。すなわち、貴下は、
昭和十五年七月より同十九年七月に至る満四カ年間、
戦争内閣の枢機に参画されました。この間、貴下は、商工
大臣として、
わが国産業経済を意のままに変造し、破壊し、また統御されたのである。すなわち、企業許可令をもって
事業を制限し、次いで企業
整備令によってその転廃業を号令し、この間、いわゆる物動
計画と、さまざまな統制令を公布して、一切の
物資の生産と配給と価格について権力統制を強行したが、やがて敗戦とともに、貴下の能事はここに全く終ったかに見えたのである。しこうしてここに十三年を経過して貴下は、はからずも再びこの政権に帰り来たった。
国民の心情、わけても全国の中小
商工業者の感慨がどのようなものであるかは、今ここで私の論ぜんとするところではない。ただ、私が本日ここに貴下の経歴をことさらにあげて特に強調せんとするところは、貴下は、あの四カ年にわたる、すさまじいばかりの経験を、この
機会にこそ厳粛に反芻、吟味されて、今後の施策に当って、ごうまつといえども、あやまつところをなからしめよということである。
仄聞すれば、
政府と与党とその同調者の間で
検討中のその
中小企業組織法案には、その
調整機能の効率を
確保するためとあって権力
調整と強制加入の条項がしきりに論じられておるということである。国家の権力をもって臨めば、
中小企業を左右するがごときはまさに意のままではあろうが、その結果がまたいかにおそるべきものであったかは、これは貴下の最も豊富なるうんちくの存するところである。(
拍手)願わくば、政治に民主主義を尊重されるべきと同様に、また
経済の分野においても特に民主主義体制が最高度に
確保されるように、しこうして、その法律案がみだりに権力を伴うことのないように、これら法案に対し、特に貴下の良心に訴えて、ここに善処を要望しておくものであります。(
拍手)
次は、
金融政策について、問題を特に
中小企業に局限して質問をいたします。
政府は、この際、銀行法を改正して系列融資、集中融資の悪偏向を
是正するの
措置を講ずるの意思はないか。現に、財閥銀行は、その財閥系統の企業に、また、それに続く大銀行は、いずれも特定の企業に密着し、特に重役陣の交流を行うなど、かくて、これらの銀行は、それらの特定企業の資金調達のための窓口機関に堕し去っておるといっても過言ではない。
金融の公共性は有名無実で、預金者の安全をこれで
確保しておるとは言いがたいでありましょう。米国における連邦準備法にならって、銀行が自己資本の一定割合を越えて同一企業に集中融資のできないように法を改正して、もって
金融機関本来の使命、性格を明文化し、進んでその資金を広く
中小企業の域にまで、より多く均霑せしめるの
措置をとるべきではないか。(
拍手)これに対する
大蔵大臣の御
見解を伺いたい。
次に伺いたいことは、
政府は、
中小企業金融公庫と
国民金融公庫に対し、商工中金のそれと同様に、この際
金融債を発行するの機能を付与し、もって民間資金をもあわせて導入し得るの道を開いて、その資金量の増大をはかるの意思はないか。現在、これら両公庫の資金の需要は日とともに増大し、限られた
財政資金のみをもってしては、とうていその需要を満たし得ない
状況にある。
中小企業の
金融は何ら緩和されてはいないので、かかる方策を講じて政策融資を大幅に増大するは必要にして欠くべからざるの
措置と
考える。しこうして、
政府関係中小企業金融機関の金利を低下せしめるため、この際、
一般会計からする利子補給の方途を講ずるの意思はないか。ここに
一般市中金利が低下の
傾向にあり、かつは、
国際水準に比べても、その
実現が強く叫ばれておるとき、
中小企業金融が特に国家のために必要なる政策
金融であるならば、造船利子補給の前例に徴しても、今こそ英断をもつてこれを
実現すべきときでありましょう。大蔵、通産両
大臣の
見解をここにあわせてお伺いする。(
拍手)
次は、今回の
税制改革において、あの非難ごうごうたる租税特別
措置法の大部のものが存続されたことについて質問する。ここに東京電力株式会社の三十年度下期の決算について
検討するならば、その課税さるべき所得金額三十一億六千四百万円に対し、特別
措置による減免された所得額は実に二十三億四千万円となり、かくて、この特別減免
措置による減免税額は九億三千万円であって実際の納税額はわずかに三億三千万円となり、実に、この実効税率は、その所得額に対して一〇%程度のものとなるのであります。(
拍手)このような、税法上の、しさいありげな仕組みによって、大企業、大資本は、ひとしくその恩恵をほしいままにむさぼっておるのであります。
昭和三十年春の主税局の調査によれば、資本金一億円以上の法人に対する実効税率は僅々二六・一%であると報告しております。
中小企業法人に課せられておる四〇%のそれと比較して、これが資本主義政策の本性かと、いよいよあきれ返るばかりであります。(
拍手)
わが党の調査によれば、この租税減免特別
措置により法人に対し減免されておる総額は年間九百八十五億であって、かくて、
昭和二十五年度より三十年度に至るその免税所得、準備金、引当金の累計額は実に四千八百二億六千二百万円の巨額に達しておるのである。大企業はいよいよ太って独占資本の城郭を築き、一方、
中小企業は相も変らずその日暮しで、たん病気でもわずらうことなら、何の
補償も
貯蓄もないままに、そのまま極貧の中に転落せざるを得ないのであります。いかに鉄面皮、無神経な保守政権でも、これではあまりに極悪非道な
税制であるといわざるを得ないのであります。ことに、勤労者に対しては、一時間の残業手当をものがさず捕捉して税を課し、さらに夜業の夜食代まで賃金に換算して追求するが、ここに銀行の預金利子所得には一年定期以上はまるきり無税で、配当所得は、標準世帯で百十七万五千円までは、これまた一銭の税金もかけないのである。これは、資本蓄積の名のもとに、資産所得はこれをほとんど無税にして賃金所得と
事業所得に対して一切のしわを寄せたものである。特に、今回の改正によって、
社会保障に加入し得ない
中小企業者のための一万五千の概算控除の特例を廃したことは、最も陰険なる仕打ではないか。
そもそも、徴税行政の基本的なあり方は所得のある者に課税をなし、担税力の強き者から漸次これを弱きに及んで低める方式のものでなければなりません。(
拍手)しかるに、保守政権のそれは、全くその逆で、石橋
内閣は、今回の改正によってその逆のものを、一そう醜く、いびつにしたのである。
政府は、資本の蓄積は金持と大企業にだけ必要であって、勤労者と
中小企業者は、いつまでも、すかんぴんであってもかまわぬというのか、(
拍手)この際、
政府は、すでに
達成された大企業におけるその資本蓄積の
実情に徴し、さらには、大資本をおおう全面的好況のこの好機をとらえて、今こそ、年間一千億になんなんとするこの租税特別
措置法に対し、全面的斧鉞を加うるの意思はないか。改正の意思ありとするならば、その時期と
構想はいかん。
池田大蔵大臣より責任ある御答弁を願いたいのであります。(
拍手)
なお、この
機会に、特に低額所得者に対して実質的な
減税を行うためには、遠くわが党案のそれに及ばずといえども、せめては総理府
統計局の勤労者家計調査による標準家庭の最低
生活費二十九万一千円までを非課税にするために、この際さらに基礎控除、扶養控除を引き上げる意思はないか、あわせて御答弁を願いたい。(
拍手)
さらに、
物品税についてお伺いいたします。もとをただせば、これは北支事変特別税としてスタートされたものであり、その後、
戦争政策の必要のために、さらにこれを拡大、加重したものである。これは歴然たる戦時立法であります。
戦争経済の外面よりつまみ上げられた七十数品目の業種だけに、十二カ年を経過した今日において、なお年間実に三百億円になんなんとする特別の荷物を縛りつけて、そのまま捨てておくということは、決して妥当なことではないのでありましょう。わけても
中小企業者、零細業者は、この税を商品に転嫁し得ないので、これもまた当該
中小企業窮乏の一大要因となっております。不当にして不公正なる重圧にあえぐ全国の
物品税関係者十五万の切実なる要望にこたえて
政府は、この際、この
物品税を全面的に廃止するの意思はないか。特に、本年度は、税の
自然増収二千億が
期待されておる。まさに英断を下すの絶好の
機会であります。(
拍手)
池田大蔵大臣より、この点について明確なる御答弁を願いたいのであります。
次は、今回の
税制改正をめぐる諸問題について
大蔵大臣にお伺いをいたしたいのであります。
第一にただしたいことは、
政府は今回の
税制改定をもって一千億の
減税なりと豪語しておるが、これを
予算書について見れば、三十一年度の租税収入八千二百六十億に比べて、三十二年度のそれは明らかに九千四百六十億と、逆に本年度は一千二百億の大増税となっておる。このことは徴税行政上最も警戒を要する内容を含むのであります。(
拍手)もとより、
政府は……(「徴税と増税は違う」と呼ぶ者あり)一郎平君、よく聞いて下さい。(「景気がいいのだ」と呼ぶ者あり)もとより、
政府は、
国民所得が増大するので、
制度で減らしても実質はふえるのだと、ただいま草野君御発言のような言葉があるであろうが、重税と金詰まりにあえぐ勤労者、
中小企業者は、断じてかかる気休めに耳をかすものではありません。
巷間、大げさに、神武以来の好況という。ここに明らかにいたしたいことは、最近における商業手形の不渡りの累増に示された
中小企業の困窮の
実情についてであります。すなわち、東京手形交換所の記録をもってすれば、その不渡り件数は、三十年十月は月間四万七千六百六十八件のものが、三十一年十月においては五万三千百三十一件となって、五千四百六十三件の増、三十年十一月は四万七千六百六十一件のものが、三十一年十一月は五万二百七十七件となって、二千六百十六件の増、しかして、三十年十二月は四万八千二百七十八件のものが、三十一年十二月は五万二千三百八十件となって、実に四千百二件の増となっておる。この計数は、
中小企業の経理内容が何ら好転せざるのみか、いよいよ窮乏の度を加えておることの実証であるが、
政府はこの事態をいかに
考えるか。いうならば、この租税収入の千二百億の大
増徴案こそは、実に大企業の
繁栄を類推していわゆる神武景気に無
関係な中小
商工業者、低額所得者にその
負担を加えんとするものであって苛斂誅求まさにおそるべき事態が予想されるのである。(
拍手)
この際特に申し述べるが、ここに申告
所得税においては、「お知らせ」と称し、税務署は、その納税申告に先手を打って、年々所得額の天下り的な通告を行なっておるのである。かくて、今回の税法の改正は、基礎控除、扶養控除、その他税率の修正等によって形式上の
減税となるのである。この減収分は、しょせんは、神武景気の一律の概念をめくらめっぽうに押し通して、大幅の水増しの「お知らせ」を強行することなくしては、この税収
予算額を充足することはできないのである。(
拍手)また、青色申告と法人税に対する調査と摘発が、この
方針によって、しんらつの度を加えるであろうことは、これは本日の各朝刊紙が筆をそろえてこれを報道しておったところである。ここに特に
大蔵大臣に伺っておきたいことは、今回の税法改正が不明確なる
国民所得の
増加なるものを基礎として案世されたものであるだけに、かつは、
わが国経済は好況の気配を示して流動してはおるが、前述のごとく不渡り手形累増の
傾向に徴しても、一律に好況などとは断じ得ないのである。よって本年度の申告
所得税の「お知らせ」は、この種の水増し通告を断じてなさざるよう、また、青色申告、法人税の査定に当っても決して過酷にわたらざるよう、
政府は、この際、末端徴税機関に対し、厳重なる通達を発するの必要があると思うが、
大臣にその用意ありやなしや、特に責任ある御答弁を願いたいのであります。(
拍手)
次に、
政府の今回の行政
措置によって国税とは別に新しく
増徴されるものは、国鉄運賃値上げ三百七十億、住民税の引き上げ百四十八億、時限爆弾として今は秘められてはあるが、
消費米価の値上げ百四十億、たばこ専売の増収五十五億など、これが実に七百数十億の巨額に上るのである。かくのごとくにして、神武景気のあほだら経に乏しき大衆がうつろな目を奪われているその陰で、平年度に比べて千二百億の国税の
増徴と、公社、公団
関係七百五十億の値上げの工作がすでにかくのごとくに完了してしまったのである。これでは、
国民負担を軽減し、民生の安定をはかるなどとは、いかに駄ぼらとしても、言えた筋合いではないじゃないか、(
拍手)
政府は、これが
国民に対し新しく加わる
負担とは
考えないのであるか。また、ガソリン税、地方道路税、軽油引取税の値上げは計百八十八億である。これは運賃の値上げを伴い、そのまま
物価の値上りとなることは最も明白にしてこれは
経済の必然の示すところである。
一昨日、鈴木委員長が、
政府の施策は
財政インフレを来たすの危険ありとの警告的質問を発したのに対し、岸、池田の両
大臣は、そのような必配はありませんと、おくめんもなく答弁したが、およそ、自民党
政府の
経済見通しほど、ずさんで、でたらめなものはないんじゃないか。(
拍手)現に、昨年初めに発表した
昭和三十一年度の
経済計画と、その後の
実績はどうであるか。辛うじてその
見通しと
実績が近似したのは、総人口、労働人口、就業者総数等の変動の少いものだけで、最も肝心な、民間資本形成における著しい過小評価、鉱工業生産水準や個人
消費支出の
見通しは決定的に相違して、まるでめちゃめちゃではないか。(
拍手)特に、昨年九月、
政府が
税制調査会に提示した
税制改正の基礎となる資料のうち、三十二年度の国税の
自然増収見込み額は現に一千億であったはずである。これが、二、三カ月を経過するや、たちまち二千億の増収見込みに置きかえられた。これまた百パーセントの見込み違いである。かくて、
税制調査会は、一千億の増収見込みで見当違いの改正案を
答申し、
政府は、これに対し、まことに強行な二千億の増収見込みで本年度の
予算を組んでおるのである。まるで児戯にひとしい、単なる数字のたわむれといってもこれは過言ではないであろう。(
拍手)このように、その
見通しの
実績がずさんきわまるものであったればこそ、
国民は、増税と値上げに心痛し、かつ、イフレの来襲におそれをなしておるのであります。
政府は、これでも、運賃値上げ、ガソリン税の
増徴が
物価の値上りの原因とはならぬと断言できるのであるか、さらにまた、三十二年度二千億の国税増収の
見通しには誤まりはないか、この際、
池田大蔵大臣より、その
理由を示して、責任ある御答弁を願いたいのであります。(
拍手)
最後に、結語として
大蔵大臣に申し述べる。貴下は、かつて、
大蔵大臣としてドッジ氏の指令に盲従し、ついでシャウプの勧告に叩頭した。時移って情勢は変ったとはいえ、今貴下の歩んでおられる方角は、しょせんは、いずれも、かつてのそれの逆である。この際特に指摘しておきたいことは、−貴下の
財政方針はそのときどきの権力者の意向にくしくも合致してしまうということである。(拍−手)ドツジ氏が指令すれば超緊縮の策をとり、石橋氏が権力の座にすわれば拡大
均衡の
方針を選ぶ。かくてこの
政府の
財政政策は、随所に、理論の撞着、政策の背反、いうならば、木と竹をつないだ、もろい弱点を、あまりにも多く露出しておるのである。昨日、貴下は、わが党の河野さんの質問に、
経済は生きものだからその都度
実情に即して施策すると答えたが、少くとも、
大蔵大臣なるものが、本院の
財政政策のベテランに対してかかる中学生の公式論をまねてのがれを打つべきではないであろう。わが党は、ここ三日間にわたって、衆参両院におて、国家の盛衰と
国民の
生活の明暗に直結する重大なる疑義について質問した。万一われらの憂えるがごとき破綻を生ずることあらば、もとより、貴下のその罪は万死に値する。(
拍手)願わくば、われらが質問の
趣旨についてさらに
検討されて、いたずらに面子にこだわらす、今後の施策においてさらに万遺憾なきを期せられるように、特に注意を喚起いたしまして、私の質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇〕