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1957-03-28 第26回国会 衆議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十八日(木曜日)    午前十一時一分開議  出席委員    委員長 三田村武夫君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君    理事 菊地養之輔君       犬養  健君    小島 徹三君       小林かなえ君    林   博君       山口 好一君    横川 重次君       佐竹 晴記君    坂本 泰良君       田中幾三郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      五鬼上竪磐君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所法等の一部を改正する法律案内閣提  出第八九号)     —————————————
  2. 三田村武夫

    三田委員長 これより法務委員会を開会いたします。  この際中村法務大臣より発言を求められております。これを許します。中村法務大臣
  3. 中村梅吉

    中村国務大臣 実は、今朝の朝日新聞に報道されました記事に関連いたしまして私の立場として釈明いたしておきたいと思い、発言を求めた次第でございます。  朝日新聞記事によりますと、二十七日午後、豊島椎名町五丁目の西村甲子蔵という人の葬儀に私の花輪が出ておった、——この西村甲子蔵という人は、新聞記事によると、博徒幸平一家の子分で、何か博徒仲間の争いから起った事件で殺された人間のようであります。そういう葬儀法務大臣たる私の花輪が出たことは非常に穏やかでない、こういう趣旨新聞記事でございます。実は、昨晩、豊島区の弁護士会の会合がございまして、私もその席へ出るためにちょうどそこへ参りましたら、朝日新聞の記者が来ておりまして、入口で、聞きたいことがあるということでありました。話すところもありませんから、車の中へ入りまして、何用であるかをこちらから聞きましたら、きょう椎名町五丁目にこういう葬式があったのを知っておるという話でありました。私は、全然知りませんでしたので、そういうことは毛頭知らないが、何のことだと言いましたら、それは博徒けんかで死んだ人の葬儀であって、そういうところへ法務大臣花輪が出ておったのを知って非常に不思議に思ったからお尋ねするんだ、こういうことでありました。私は、全然関知しておりませんし、幸平一家とか、あるいはこういう博徒仲間交際を持っておる者はただの一人もございません。思い当る節もございませんので、その旨を答えて表に出ました。秘書官もそこへ来ておりましたから、秘書官を呼んで、君は知っておるかと聞いたところが、秘書官花輪が出たことを知っておるようであります。なお、その後実情を確かめてみましたら、この椎名町五丁目の町内に白石というかじ屋がおりまして、この人は私どもとは長い間の交際があるのであります。この人が、町内のお葬式へぜひ一つ花輪を出してほしいということを、再三再四にわたり、私の秘書官でない方の人、留守番をしている若い内川という者のところへ電話をかけてきたそうであります。その結果、秘書官もそれを伝え聞いて、やむを得ないからしかるべく取り計らうようにという返事をしたのだということが明確になりました。従いまして、私といたしましては、こういう博徒仲間葬儀、ことにけんかで起きた被害者葬儀に私の名前の花輪が出ておるというような、弔意を表する、そういうものが出ておったということは、われわれ、かねてから暴力の取締りについては大いにその徹底方を期すべく決意も持っておりますし、またあらゆる機会にそういうことを申しております立場から、まことに不穏当なできごとで、この点非常に恐縮をいたしております。私としては全然周知しません。全然つき合いもございませんし、知り会いも全然ないのでございますが、町内におります白石いう人の数回にわたる督促で、長い間の関係もありますし、知っている間でありますから、断わり切れないで、しかるべき取り計らい方を家の留守番をしております内川が回答をいたした結果生じたことでございます。なお、この新聞にもどこにかありますが、板橋におります横山英一という人からも一回電話があったそうですが、横山という人には、一回でありましたから、そういうことはできないと答えておったのでございます。何か、この新聞によりますと、横山からの依頼によってというようなことがあったような気がいたしますが、これとは直接の関係が事実上はないようでございます。  さような次第で、ことに国会における法務委員として法務行政に深い御関心を持っておる方々には非常な御心配をおかけしたわけですが、事の次第はさようでございますので、何とぞ御了承下さいますようお願い申し上げます。
  4. 三田村武夫

    三田委員長 ただいまの法務大臣発言、了承するに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三田村武夫

    三田委員長 それでは、了承することにいたします。     —————————————
  6. 三田村武夫

    三田委員長 それでは、裁判所法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  発言の通告がありますので、順次これを許します。横井太郎君。
  7. 横井太郎

    横井委員 私は、この委員会には法律専門家がたくさんおいでになり、私ほか一、二名くらいの方が法律専門家でないので、そういう立場で御質問申し上げますから、どうかそのつもりでお教えを願いたいと思います。  この改正法案を見ますと、最高裁機構改革に重点を置いておられるようでございます。その理由は、先般も御説明がありました通りに、最高裁には事件が非常に停滞しておるのだ、従って最高裁機構改革をするというのでございますが、この事件渋滞している原因はまだほかにもあるのではないか、こういうように見えるのでございます。たとえば、最高裁司法行政権を持っておられるとか、下級裁判所あり方について非常に改正すべき点があるのではないかというようなことなのでございますが、その点は、どうでありましょうか。これで事件渋滞というものが一切解消されるものなのか、ほかにも改正しなければならぬのだが、当面においてこういうことをやるのだという意味なのでありましょうか。その点を承わりたい。
  8. 中村梅吉

    中村国務大臣 御指摘通り最高裁のみならず、事件がなめらかに処理されない傾向は確かにあると思います。従いまして、昨日提案趣旨説明を申しました特例判事補高等裁判所における左陪席としての任用の道等を開きまして、練達の、相当多年の経験を持った高等裁判所陪席をいたしております判事を一審におろしまして一審の強化をはかる、こういうような措置も並行して実は進めておる次第でございますが、なお、一審の強化及び訴訟迅速化につきましては、目下法制審議会におきましてあらゆる角度から検討をいたしておりますので、それらの成案を得つつ、全体にわたりましてわれわれといたしましては改善の道をはかりたい、かように考えておる次第でございます。特に、最高裁判所におきましては、最高裁判所設置以来非常にたくさんの事件が停滞をするようになりました。これは、事実上、上告の総件数から見ましても、裁判官の人数から言いましても、処理困難な実情にありますことは、大体ごらんの通りでございますので、長年、各方面におきまして最高裁判所機構改革はすみやかに何とか解決しなければならないということでいろいろ論議をされて参りまして、ようやく法制審議会答申もありまして、一つ結論を得ましたので、われわれといたしましては、いろいろ議論の余地はある問題でございますけれども法制審議会で長年にわたってこれまた学識経験の士が集ってあらゆる角度から検討した結果この結論に落ちついて、ほとんど全員の賛成によって答申が行われましたから、これが最も最善の案であると考えまして、今回提案をいたし、御審議を願っておるような次第でございますから、最高裁判所機構を改めまして上告審における裁判迅速化または適正な判決を得ることのできるような制度に改めるということと、他にも今後逐次御指摘のような問題についてはなお一そう検討を進めまして、解決をはかっていきたいと考えております。
  9. 横井太郎

    横井委員 大体の御意見は了承いたしますが、最高裁判所が、司法権本来の権限と申しましょうか、そういうものを持っておると同時に、行政権というものを持っておいでになる。要するに、司法行政の両面を持っておいでになるというので、この点が、二兎を追うと申しますか、非常に事件解決のことが渋滞しておるということも出てくるのじゃないかと思うのでございます。  そこで、一つお尋ねしたいことは、日本三権分立である。従って、憲法三権分立ということがはっきりうたってございますが、裁判所法によりますと、最高裁司法司法行政の二つの面を持っておると書いてございます。その司法行政権というものは一体憲法の、どこにその根源を持っておるかということを一つお伺いしたい。
  10. 中村梅吉

    中村国務大臣 結局、司法独立をはかるということのためには、裁判関係した司法行政もやはり裁判所トップ機関である最高裁判所がそれを行使するということでありませんと、司法独立の精神が貫けないというところから出発しておると思うのであります。条章としては、そうでなければならないという明記はないように思いますが、しかしながら、本質論として、一般行政官庁裁判に関する司法行政にまでタッチすることになりますと、司法独立を侵す結果になって参ります。そこで、最高裁判所司法に関する行政の権能を与えておるものである、かように考えます。
  11. 横井太郎

    横井委員 それも一応わかるのでございますが、この司法行政というのは、一体どの面まで範囲があるのか、その内容でございます。ことに、実際面から言って、予算編成権まで持っておいでになるようでございますが、司法行政の面をどの程度まで解釈してよろしいか、その内容一つ説明願いたい。
  12. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 司法行政裁判所に属しておるという憲法一つの根拠として、七十七条のルール制定権がございますが、これによって、裁判所内部規律、あるいは訴訟に関する手続等を定めることになっております。そのほかに、裁判官リストを作って内閣に出すというようなことも、これは司法行政権の一種だろうと思います。かようなことは大体憲法から出てくるのでありますが、一般司法行政は、裁判所法にございまして、大体人事経理というようなものが司法行政のおもなるものであります。かように考えております。
  13. 横井太郎

    横井委員 一般の簡単な人事とか経理とかいうものはともかくとして、予算編成についてはどういう御解釈でございますか。すべて裁判所に関する予算編成等については実際おやりになっておるようでございますが、その点はどうか。ことに、裁判所から出てくる予算は、裁判官会議にかけて出てくるものかどうか。その点を一つ承わりたい。
  14. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 裁判所予算をどこで取り扱うかということについては、裁判所法制定される当時の法制審議会でもかなり議論のあった問題でありますが、結局、当時の法制審議会においては、裁判所に属させてよいのではないかというようなことになりまして、司法行政裁判官会議で行うという建前から、最高裁判所裁判官会議にかけられたものを政府に対して要求しておる、こういう手続になっております。
  15. 横井太郎

    横井委員 そうしますと、最高裁判所というところは司法行政の面でずいぶん広範なる行政権を取り扱っておいでになるように承わるのでございます。たとえば、人事権とか、法規制定、それから予算編成、これは相当繁雑だと思うのでございます。そうなりますと、その結果、本来の裁判事務というものに影響を及ぼしはせぬか。非常な多忙の面が出てくると思いますが、それがひいては裁判事務渋滞、こういうことになりはしないかということを非常に考えるのでございますが、その点はどうでございましょうか。
  16. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 司法行政事務最高裁判所で持っておるために非常に裁判に影響するのではないか、——なるほど、最高裁判所制が設立された当時は、いろいろなこまかい規則制定とか、いろいろな内部規則とか、あるいは訴訟規則とかいうもので、かなりそういう方面に手を取られた時代もございましたが、しかし、だんだんとそういうことが落ちついて参りまして、最近は司法行政のための裁判官会議というものが非常に少くなって、大体、二十九年度において、最高裁判所における裁判官会議は四十四回、これも、一日かかってするのではなくて、大体十時から十二時まで、あるいは一時から三時までくらいの間でしておるのであります。そのために裁判事務の遅延を来たしておるとは、現在はそうは考えてないのであります。ことに、二十六年か七年あたりから、常置委員会というものを作って、各小法廷から一人ずつ出ていただいて、普通の人事裁判官の任命とか、リストを作るとかいうようなことは常置委員会でやることにしておりますし、予算の点も、これはなるほど表に出てくると非常に数学的に大へんですが、実際は最高裁判所事務総長において予算案を作成しまして、これを裁判官会議にかけて御了承を得て政府に出しておるということで、予算の点で裁判官に非常に裁判事務が遅延するほどのお手数はわずらわしていないと思います。
  17. 横井太郎

    横井委員 なるほど、法の制定当時には忙しかったと思うのでございますが、それでは実際の裁判所に関する行政面でうまくいっているかというと、どうも、私ども外部から見ておるところでは、必ずしもうまくいってないように見受けるのでございます。たとえば、予算の取り方とか、裁判所あり方とか等を見ますと、どうも、裁判所予算を取るのが下手なのか、それとも大蔵省あたりがそういうことに一向気をつけてくれないのか、——見るところでは、非常に冷遇されておるというのか、働きがないというのか知りませんが、どうもぴんと来ないのです。たとえば、なるほど最高裁判所はああいう宮殿のようなりっぱな建物でございますが、地方へ参りますと、おんぼろさんぼろの裁判所がある。二階の床の落ちそうなところもあるし、ことに関西のごときところは実に情ない姿です。そういうような状態でございますが、これは、何と申しましょうか、予算編成事務を扱う人、この人がどうも不なれな点もあるようなのでございますが、これはどうですか。私はいつも考えるのだが、これは、ひとり最高裁のみならず、地方裁判所でも、事務局長とか何とかという人に判事さんが相当多いようでございますが、肝心の判事さんが事務をおやりになる。その人々に聞くと、どうもこういうものは不得手でございましてということを露骨に言う人もあるのでございます。  そこで、お尋ねするのですが、今最高裁行政事務にタッチしておる判事さんの数、高裁の判事さんの数、それから地裁判事さんの数、これを一つ聞かしていただきたいと思います。
  18. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 裁判官行政事務に携わっておるという御意見でございますが、実際の数字は、判事資格を有する者が最高裁では大体二十名と申し上げて間違いないと思います。それから、高等裁判所事務局長というのを置いております。これは、判事判事補たる資格のある者を一名、これは全国で八名でございます。地方裁判所家庭裁判所では、判事を実は局長とかそういう地位には使っておりません。
  19. 横井太郎

    横井委員 そうすると、合計二十八名。裁判に専念すべき大事な判事さんを行政事務に二十八名も使っておいでになる。しかも、この方々は相当な優秀な方々だと思うのでございますが、本来の仕事をやらずに、こういうところへ使って、しかも、判事さんが第一線に足らぬから下級裁判所はまずいのだというようなことを聞くのだが、どうもこの点がおかしいと思うのでございます。やはり、もちもち屋がいいのではないかと思います。従って、行政面のことは、全部が全部とは申しませんけれども、やはり、もちもち屋にやらせるような、機構と申しましょうか、制度と言った方がよいかと思いますが、昔の大審院当時の行き方がいいのではないかというようにも考えるのでございますがその点はいかがでございましょう。これは一つ法務大臣と両方からお答えを願いたいと思います。
  20. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 おっしゃる通り行政事務は普通の一般事務官に扱わせるいうことが理想なんでございますが、しかし、裁判所の中の人事等の面から見まして、どうしても裁判官出身の者でなければできないような事務が相当たくさんございます。いろいろな資料を集めて全国裁判所に流す、あるいは通達を出すというような場合、どうしても事務官ではなかなかまかない切れないようなところがございまして、そのためにやむなく判事をもってやっております。その他、たとえば、最高裁判所においてはルールの原案を作らなければならぬ。これはどうしても一般事務官ではできない。そういうようなことで、私どもとしては、きわめて遠慮しながら二十名、判事資格のある者二十名というのは、全国判事から見ましてそんなに多くないのではないか、最小限と言っていいのではないか、かように考えておるのであります。
  21. 中村梅吉

    中村国務大臣 司法行政事務関係裁判官資格を持った人を当てているという点は、今五鬼上事務総長から申し上げたように、裁判所側としては、できるだけそれをしぼって、注意してやっておられることと思いますが、なお、この点は、運用によって解決のできる問題で、御趣意の点はまことにごもっともな次第も多いと思いますのでわれわれといたしましては、裁判所側と協議をいたしまして、できるだけ御趣意に沿うような方向に進んでもらうように、一そう努力をいたしたいと思います。ただ、ただいま事務総長からお話しのように、確かに、ルール制定起案等、その他司法行政事務については、やはり裁判官としての経験を十分に持っている人でないと処理し得ない部分も相当あろうかと思いますから、この点は今後われわれとしても十分注意はいたしますが、御了承願っておきたいと思います。
  22. 横井太郎

    横井委員 それでは裁判官責任の問題について一つお伺いをいたしたいと思います。なるほど最高裁には裁判権司法行政権とがあるのでございますが、そこで、司法行政の面は憲法にもございます通りに、裁判官はその良心に従って独立してその職権を行う云々とか、あるいは身分保障がされておるとかいうので、司法関係においてはなるほど身分保障がされておりますが、司法行政の面において、司法行政権を行使する上においてその場合の責任というものは裁判官にあるのかないのか。司法行政を行使した場合、たとえば、最高裁判所長官もしくは最高裁判所会議において決定したことが、司法行政の面においてそれに過失があるとか違法があるような場合において、その責任はとるのかとらぬのか、こういう点をを一つ承わりたい。
  23. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 御承知の通り裁判所法で、司法行政裁判官会議においてやるということに定められてありまして、大体会議体司法行政を処理していく建前になっております。もし過失があったというような場合においては、裁判官分限法によって、あるいは懲戒過料とかいうような制裁を受ける場合も内部的には相当の数ございます。これは裁判によってやはりきめられるのでありますけれども分限申し立ては、司法行政としてやはり裁判官会議においてやっております。そのほか、長官所長というのが大体裁判官会議を総括するということに裁判所法でなっております。この総括するということは、やはり、所長長官等においても、一般裁判官よりもむしろある程度の責任があるのじゃないか。従って、下級裁判所事務処理規則などにおいては、長官所長はその職員注意を促すことができるというような規定もあります。
  24. 横井太郎

    横井委員 そういたしますと、今まで地方裁判所等におきまして行政事務の上において手落ちがあった等の場合において、その責任を問われた実例がありますか。ありましたら、一つ、どんなことで問われておるか。それは司法の問題ではない。司法行政の面において過失があったとか違法があったとか等において処罰を受けた人があるかないか、それを一つ承わりたい。
  25. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 資料を持っておりませんので、ちょっとここで正確な数字は申し上げられないのですが、相当たくさんございます。たとえば、判事してあまり好ましからざる行為をしたというような者に対しては、分限申し立てをして過料処分にするというようなことは相当内部ではございます。それからまた、職員不正行為に対しては、その監督者懲戒をしておるというような例もございます。
  26. 横井太郎

    横井委員 それじゃ実例一つお聞きしますが、これは相当問題になったんだろうから取り上げておると思うのですが、もしおわかりになればここでお答えを願いたいと思うのです。昭和三十年度の決算報告書会計検査院から出ておるのでございます。その中を見ますと、水戸の地裁土浦支部外支部裁判所支部においてそれぞれ使い込みをやったという事件がここに出ておるのでございますが、不正行為の額が千百二十二万円、こういうような問題のとき、これは相当会計検査院も取り上げておるのでございますが、この場合に、本人はもとよりでごさいましょうが、その上級と申しましょうか、地裁裁判長その他において何か処分を受けられたんですか。実際の問題について承わりたいと思います。
  27. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 ただいまちょっと正確な記憶がありませんが、たしか、今指摘されたのに対しては、その監督者に対して減俸とかいうふうな行政処分をいたしております。また、中には、監督裁判所たる高等裁判所あるいは地方裁判所等において、その分限委員会においてまだ調査しておるのもございますが、調査が完了して、たとえば事務局長監督責任があると認定したものに対しては、あるいは減俸、その他戒告とかいうような行政上の処分はいたしております。
  28. 横井太郎

    横井委員 それで大体その一面はわかりましたが、どうも、私どもの受ける感じ、もしくは新聞等において、行政において裁判官処罰を受けたとか責任をとらされたとかいうのはあまり出ぬものだし、裁判官というものは責任は全然ないのかなと見られるような節もありますので、あえて質問を申し上げたわけでございます。  そこで、次に承わりたいのは、国会最高裁との関係についてであります。  その前に、日本三権分立でございますが、ここに、内閣行政権を持つとか、裁判所司法権を持つとか、国会立法権を持つとか書いてございます。ことに、国会だけは国権最高機関ということをうたってありますが、この最高機関というのは、独立はしておるのだが、その中で一番最高のものであるということはどうろう意味であるか、それを承わりたいと思います。
  29. 野木新一

    野木政府委員 憲法四十一条に、御指摘のように、「国会は、国権最高機関であって、国の唯一立法機関である。」というように書いてありますが、憲法の他のいろいろの条章を見てみますと、たとえば、国会制定した法律であっても、最高裁判所違憲審査の結果、その事件関係でこれを効力を認めぬということもあったりいたしまして、四十一条で国憲の最高機関であると書いてあっても、これは、全然他に制約されない全く唯一最高機関というように強く読めるかと申しますと、憲法のただいま指摘されましたような条章で、必ずしもそうではないのであります。従いまして、この意味といたしましては、国会は、国の機関である、法律を作る権限を持っておるという意味を強調する意味で、国会国権最高機関である、こういうふうに解すべきではないかと存ずる次第であります。
  30. 横井太郎

    横井委員 そうしますと、やはり憲法におきまして、三権分立である、おのおのが独立しておるのだ、——その中で、内閣だけは総理大臣初め国務大臣はこの国会へ来ましていろいろ答弁もし、説明もしなければならぬということが憲法にもうたってありまして、司法関係だけは全然うたってありませんが、これはどういう意味でしょうか。これは一つ法制局の方から承わりたい。
  31. 野木新一

    野木政府委員 御承知のように、国会内閣との関係におきましては、憲法はいわゆる議院内閣制度というのをとっておりまして、国会内閣との関係は非常に密接になっておるのであります。しかしながら、裁判所につきましては、これはそういうようなつながりはありませんので、ただ、国会で指名した内閣総理大臣、その内閣総理大臣が首班となって構成する内閣、その内閣裁判官を任命する、そういうような関係でつながりを持たしておるわけであります。すなわち、議院内閣制において内閣国会とか密接に結びついておる、そういうような関係は規定しておりませんで、やはり、裁判権内閣とは独立し、国会で作った法律に従って裁判権を行使する、そういう関係で規定しておるものではないかと思います。
  32. 横井太郎

    横井委員 そこで、先ほど私が申しました通りに、司法の方は、憲法上には、国会へ来ていろいろ答弁をしたりあるいは説明をしたりする責任はないのでございましょうか。かつてここへ最高裁長官が来られて説明もしくは答弁せられたことはないように見受けるのでございますが、これは憲法上もそういうようにうたっておらぬから行かぬでもよいというのかどうかということなんです。ことに司法行政権とか予算編成とかいろいろなことがあるのでございますが、こういう説明にはおいでになってしかるべきだ、こう考えるのです。これは、私、今までのいきさつもあまり知りませんが、こちらから呼んでも来られぬのかどうかわかりませんが、一向に顔を見たことがございませんので、その間のいきさつを一つ説明願いたいと思います。
  33. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 むろん裁判所といえども司法行政を持っておる以上は、国会に対して御質疑に答える、説明するということは、義務があると思います。その意味において、国会法の七十二条の二項に、「最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。」、こういう規定がございまして、この規定の建前から言うと、実は、長官またはその指定する代理者が、こういうことを御説明申し上げたいということを申し出て、そうして、委員会の御許可があって、説明する、こういう建前になっておりますけれども、従来の例としましては、私ども実際の司法行政に当っておる最高裁判所事務当局は、常に委員会等の御要求があれば出てきて御説明申し上げております。ただ、長官が出てきた例はございませんが別段長官は出ないというわけでもございません。
  34. 横井太郎

    横井委員 出ないというわけでもないというお言葉でございますが、それでは、今後委員会等で要求した場合には出てきていただけますか。ここで一つはっきり御答弁をいただきたいと思います。
  35. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 これは、先日猪俣委員の御質疑に対してもお答えいたしましたように、ことにこういう最高裁判所機構改革というような非常に大きな問題については、長官も出席して、そうしていろいろ御説明申し上げることがいいだろうと私ども信じております。
  36. 横井太郎

    横井委員 この問題についての最後に、一つ法務大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、最高裁判所司法行政を扱うということがいいか悪いかという問題について、この問題は将来は当然問題にすべきものである、かように考えるのでございます。それから、もう一つ、現在のままであるとするならば、この行政権は、やはり大審院時代のように、別にそういう司法行政を担当する国務大臣というようなものがあってしかるべきじゃないか、たとえば事務総長の上にそういうものがあってしかるべきじゃないか、それが一つの問題点になるのじゃないか、こういうように考えるのでございますが、法務大臣の御所見を一つ承わりたいと思います。
  37. 中村梅吉

    中村国務大臣 御指摘の点は非常に重要な問題でございますから、十分に今後慎重に検討すべき事項であると考えます。なお、憲法の七十七条の精神によりましても、裁判所のこういう規則制定権、内部規律等に関する規則制定権の規定が憲法に明記されておりますから、この精神から言いましても、司法行政事務最高裁判所が中心に処理すべきことになっておるので、この憲法が現存する限り、現状が私は正しいと思うのであります。ただ、司法行政事務の運び方につきましては、裁判所法等の改正によりまして、なおその運び方の改善の道はあると思います。何さま、日本憲法制定されまして、最高裁判所が設置をされ、全く日本では従来なかった新しい制度を取り入れておりますので、今日までの経験に照らして改善すべき部分もあろうかと思いますから、これらは十分私どもといたしましては御趣意に沿って検討して参りたいと考えます。
  38. 横井太郎

    横井委員 これに関連した問題で五鬼上事務総長にお尋ねいたします。最近大阪で裁判官が賃上げ運動を始められたということを新聞で見たのであります。俸給の値上げを裁判官会議でもって決議をせられて、その運動を始められたように記事で見るのでございますが、これについて何かお聞きになっておりますか。と申しますのは、私は、必ずしも裁判官は冷飯を食っておれという意味ではございませんが、その内容を知りたいのであります。
  39. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 これは、私ども新聞で承知しただけで、まだどうという報告はございませんが、裁判官の待遇が実質的に非常によくないというようなところから、おそらくこれは裁判官会議で決議したものではなかろうかと思いますが、裁判官の集まりにおいて、そういう問題で最高裁の方に一つ善処してくれというようなことを言ってくる場合が、所長長官を通じてたびたびございます。おそらく今回のあの新聞記事もそういう程度のものではないかと私どもは信じております。
  40. 横井太郎

    横井委員 この問題につきましても、昔の司法省当時においては、その俸給の面でも、司法行政が一本であって、取扱いが一本であった。従って、裁判官一般官吏と同じように扱われておったから、比較的俸給もよかったが、このごろは別な扱いである。だからして、こういうように冷飯を食うのだから昔のような一本の大審院時代のようにしてもらいたいというような郷愁を覚えたような新聞記事を読んだのでありますが、裁判官自身がそういうことを言っておられるというこれは、私が先ほど法務大臣に御質問申し上げましたことを裁判官自身も言っておられるように新聞記事を読んだので、御質問申し上げるわけでございますが、その点はお聞きになっておいでになりますか。
  41. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 この裁判官の報酬に関しましては、最初法案制定の当時、いろいろと法務委員会において御論議を願い、その結論として、裁判官の報酬は一般行政官の俸給より高くなければならぬ、一般行政官よりか水準を上げなければならぬ、——と申しますのは、非常に長い勤続年限を裁判官は、まあ大体検察官も同様でございますが、持っておる、そういう者に対しては一般行政職による俸給表ではいけない、別にそれよりも高く上回った報酬をやらなければいけない、また憲法にも裁判官は相当額の報酬を受けるというような文句がございますので、さようなわけで、あの報酬法案制定当時は、行政官よりむしろ優位にあったと思います。ところが、その後において、行政官の方では管理職手当とかいろいろな実質的の給与みたいなものがつけられましたが、裁判官は、検察官も同様ですが、そういうものがついてございません。従って、実質的の収入手取りから申しますと、行政官の上の方が裁判官の上の方よりずっとよくなっているという現状なのでございます。まあ、別に法案としてこの給与改訂の法案も出てございますし、そのときにいろいろ資料を提出いたしますが、そのような実情であります。従って、おそらく、各地の裁判官においても、自分たちの報酬というものに対して相当関心を持たれて、また、行政官と比較して、そういうことについていろいろ話し合いをするというようなことは、それはございます。
  42. 横井太郎

    横井委員 今私が大阪の例を申しましたのは、結局、裁判官の間にも、司法行政の面においてはやはり行政にたんのうな人によって扱ってもらった方がいいという声が出ておるのじゃないか、こういうことを私新聞で見たので、あえて御質問申し上げるわけでございますが、どうかその点は一つ下の方の意見も十分お調べを願いたいと思います。現在の制度をこのままで行くことがいいのか、それとも、昔のような、ああいったような大審院当時の行政面というあり方の方がいいのか、このことを一つ検討願いたいと思います。  それから、裁判官の権威の問題で一つ二つお尋ねをいたしたいのでございますが、裁判所法の第十一条に、裁判官意見の表一本の問題がございます。これに関しまして、最近、チャタレイ夫人の裁判、この判決の結果についていろいろと論評を下しておるのでございます。そこで、全裁判官裁判官会議でもって一致をした判決ではありましたけれども、中には判事さんが相当鋭い批判をあちこちで書いておられる。これでは裁判官の権威を失墜するのではないかという批判もあるのでございますが、これは実は最高裁長官おいでになったらお尋ねしたいと思いますが、とりあえず一つ五鬼上さんの御感想を承わりたいと思います。
  43. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 この最高裁判所裁判官については、少数意見を表示するという制度がございます。これは、国民審査を受くる裁判官立場として、どういう意見を持っておるかということが国民によく知られるということから考えられた規定だろうと思います。従って、多数意見に対して反対の少数意見も、いろいろこの法理論を構成していく上から非常に鋭どい少数意見がしばしば出ることはございます。
  44. 横井太郎

    横井委員 それは、むしろ、法律上も、意見表示をしなければならぬと書いてございますので、法律上からは当然あり得ることと思います。ところが、この前の三鷹事件の判決に対しましては、八対七というような、ただ一人の多数でもってああいう判決が下ったのでございますが、その場合に、裁判官の一人が、すぐあくる日堂々と新聞意見を発表しておられる。こういうことはどんなものでございましょうか。控訴審及び上告両方が一ぺんも公判を開かずにおいて、そうして、その判決に対して、それぞれ意見を発表する。少数意見いうものが発表されるこれはよろしいのでございますが、外部に、ことに新聞紙上に堂々と反対意見が述べられるということは、その被告はもちろんのこと、国民一般もどうも割り切れぬ気持になるのでございますが、これが一体、裁判官の権威の上において、裁判の権威の上においてどういうことになりましょうか。これも私最高裁長官に承わりたいのでございますが、とりあえず一つ五鬼上事務総長の御意見を承わりたいと思います。
  45. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 三鷹事件の判決が七対八だとおっしゃるのですが、数からいくとそういうことになりますけれども、その多数意見に対して、ある部分は賛成をし、ある部分は反対をしているというように、部分的に反対をしているのであって、結論的にはあれは七対八ではございませんけれども、世間では大体七対八と言っております。いろいろ意見の相違があって、ある裁判官は多数意見に合致し、またある裁判官は、多数意見に合致しても、またある部分について反対意見を持たれるというようなわけで、数は七対八というようなことになっておりますが、結論が七対八で現われたのじゃないと、あの判決を読みますと、私はそう見ていいのじゃないかと思います。  その次に、裁判官が関与した事件について意見を発表するということは、従来、裁判官というものはすべて裁判によって自分の意見を発表するということで、裁判官意見は判決以外にはないというように考えられておったのでありますが、たまたま新聞にその事件に関与した裁判官がある意見を発表された、こういう事案はございます。ございますが、結局、裁判官としては合議の秘密というものがございまして、この合議の秘密は守らなければならぬのでございますが、それ以上に意見を発表したからといって、それが違法というようなことは言えないじゃないか。しかし、妥当でないということは、私どもも大体そう考えております。
  46. 横井太郎

    横井委員 こういうような天下の耳目を聳動したような事件こそ、私は、国会においていろいろと質疑応答をやられて、国会を通して国民に徹底せしめる方がいいじゃないかと思うのでございますが、この点はいずれまたほかの委員から御質問があると思いますけれども、どうか一つ——まあ、法城だと申しますが、ああいうような法城に裁判官は閉じこもらずに、一つここへ出てきていただいて、今おっしゃるようなことより、もっと詳しいことを御説明にあずかりたいと思います。これは希望しておきます。  それから、この改正法の内容についてですが、小法廷の首席というものが六人でございますが、六人ということは何か意味があるのかどうかということです。それから、小法廷でいろいろ会議をされるでしょうが、その場合において、だれが議長になるのか、ということです。小法廷でもいろいろ外部との折衝もあると思いますが、そういう場合には、その小法廷の一番首脳部と申しましょうか、それは一体、だれがやるのでございますか、その点を一つ承わりたいのであります。
  47. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 六人の首席判事と申しますのは、小法廷の裁判をする場合の単位、すなわち、合議体の数を六と想定いたしておりますのでそれに従って首席判事の数をきめたのであります。  それから、代表者のことでありますが、これは、最高裁に付属して設置されておりますので、正式の代表は最高裁判所長官ということになると考えております。ただ、事実上小法廷を代表して、たとえば裁判官会議を開くような場合には、最高裁判所の指定する首席判事がこれに当るというようなことを規則で定めるのを例としております。
  48. 横井太郎

    横井委員 どうもはっきりしないのでございますが、小法廷というのは純然たる独立のものではなく大法廷に付置するということでございますから小法廷における司法行政面というようなものはないのかどうか。それから、小法廷においていろいろ問題が起った場合の責任は一体だれがとるのか。これはどういうことなんでございましょうか。
  49. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 小法廷というのは、司法行政事務独立して行わない、なるべく最高裁判所に行わせるようにした方が合理的であるという考え方から、この法案では、裁判官の配置と最小限度のものは、小法廷の司法行政事務として残しますが、それ以外のものは最高裁判所にやらせるという建前にいたしておるわけです。そういう見地から、小法廷自体の事務はなるべく独立して行わせないというふうにいたしております。
  50. 横井太郎

    横井委員 どうもはっきりしないのですが、それでは一つ具体的な問題で聞きます。今の最高裁でもって事務がとれない、あるいは裁判官もふえるし法廷が狭くなるということで、小法廷だけ独立するような、たとえば建築物で言えば独立の家屋に移るような場合があり得ると思います。そこで、小法廷は大法廷につけておいた方が便利だとおっしゃるのだが、今言ったように独立せられる場合においては、つけておくことが不便になると思うのです。便宜のために小法廷は大法廷に付置するんだというようなことにはどうも受け取りにくいのですが、その点はどうなんですか。
  51. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 事件処理上、最高裁判所と小法廷は非常に密接に協力しなければならないので、場所なんかも一緒にするのが好ましいと考えております。どうしても必要である場合には、最高裁判所の措置である程度の司法行政事務を行い得るようにいたしておりますが、さしあたりはそういうことは好ましくないと思います。
  52. 横井太郎

    横井委員 どうもわからぬ。それから、この前猪俣委員の質問で、この法案が通れば昭和三十三年に六人最高裁の人がやめなければならぬと言ったきに、経過法規を作ってやるのだというようなお話がございましたが、それはいつ御提出になるかいうことと、もうじき定年になる人があるかどうかということを承わりたい。もう一つ、一体最高裁裁判耳は全部この案に賛成でございますか、その点をちょっと承わりたい。
  53. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 裁判所法の施行に伴う経過措置の法案は次の通常国会提案いたしたいと考えております。
  54. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 定年によって裁判官が減せられるというのは、ちょうど三十三年の六月に三人定年がございます。三十五年にまた二人抜けます。  それから、この案に対して最高裁判事は全部賛成したかというお尋ねですが、裁判官会議で多数の意見によってきめるので、裁判と違って少数意見というようなものはございません。行政事務ですから、多数がこの案によって実施しようということになれば、裁判所としては賛成だ、かように申し上げてよいと思います。個人としては御意見のおる方もありまして、いろいろ論文を発表されている方もありますし、反対だという人が現在でございますが、政府案が示されたときに、裁判官会議によって、この案に賛成することになったのであります。
  55. 横井太郎

    横井委員 それでは、さらに一問だけ御質問申し上げます。実は、これもこの前池田委員から出たことでございますが、国民審査の問題でございます。その際、法務大臣は、お職掌柄、これも必要だという御答弁でございましたが、法務大臣としてそうおっしゃるのは当りまえだと思います。しかしながら、実際問題として、この国民審査ということがきわめて意義のあるものだと思っておいでになる方はなかろうと思うのであります。憲法では国民審査をやることになっておりますが、実際にやってみると、何にも知らぬというのがほとんど大多数だろうと思うのでございます。裁判官を知っている人が国民の中に何人あるかと言わなければならぬと思うのであります。しかしながら、何にも書かなければこれは信任したことになるし、知っておってうっかり書くと、これが不信任になる。ここに小林先生がお見えになるが、小林先生の友人の話を拝借すると、小林さん、あんたと同じ姓の人に私は投票してきましたよと言っておったそうでございますが、投票したのはどういうことかというと、結局xを書いてきたことになる。xを書いてくれば不信任になるのですから、どうも笑えぬナンセンスだと思うのでございます。ことに、最近全国選管から配られた本を見ますと、xのしるしのほかに〇や△を書いたものが二百七十二万あったということを書いておるのです。別な記号を書けば無効にきまっているのですが、二百七十二万もあるというのは大へんな数字だと思うのでございます。全くこういう点から見ましても無意味なものだし、経費の面から見てもきわめて莫大なる金がかかるのでございます。そこで、法務大臣としては、憲法九十九条の規定によってこれは尊重すべきだとおっしゃるのだが、本心は必ずしもそうでなかろうと思うのでございます。そこで申し上げたいのは、こういう問題があるから憲法は改正しなければならぬ、憲法は改正するときには当然取り上げらるべき問題である、かように考えるのでありますが大臣の御所見を一つ承わりたいのであります。
  56. 中村梅吉

    中村国務大臣 確かに、現状の衆議院議員の総選挙の際に行われまする国民審査の投票が非常に意味が薄いような状況にありますことは、御指摘通りだと思います。従いまして、憲法調査会等において憲法の再検討をいたしまする場合には、これは最も重要な検討すべき項目の一つになる事項であろう、かように私どもも考えます。しかしながら、憲法条章がかような明文を設けておりまする以上は、やはり国民審査は行わなければなりません。また、全然他の面から考えますと無意義なものでもない。同時に、下級裁判所裁判官についての憲法八十条の規定等を照らし合せて考えますと、下級裁判所裁判官は十年ごとに任期を更新いたします。ところが、最高裁判所裁判官には任期の更新の規定が憲法にもございません。従いまして、下級裁判所裁判官の任期の更新が法律でなくして憲法の八十条によって明記されておるところから見ますると、もし国民審査意味がないから変えるべきであるということに憲法調査会等で再検討いたしまする場合には、この八十条の下級裁判所裁判官の任期更新との関連等を持って参りますから、従って、七十九条第二項の国民審査の規定をもし変えるならば他のまた新たなる構想がここに置きかえられなければならない、こういう筋合いになってこようかと思います。従いまして、われわれといたしましては、現行憲法にございまする以上はあくまでこの条章を順守して参る必要がございますが、憲法を再検討する場合には検討の重要な項目の一つであろうかと私自身も考えております。
  57. 横井太郎

    横井委員 今大臣がおっしゃった通りに、これは当然憲法を改正すべきときには取り上げらるべき場合でございます。何しろ終戦後のどさくさでできた憲法で、各所にこういう問題がありますので、それはすべて是正さるべき問題である、かように考えるわけでございます。  そこで、最後に一点承わりたいと思います。憲法が改正されるまではいたし方ないといたしましても、現在の国民審査あり方としてはどうも実情に即さないのでございます。これは、たとい小法廷ができましても、将来は九名の国民審査はいたさなければならぬのですが、憲法が改正されなくても、現在においても、これを実施するとすれば、今の段階においてはもう少し何か工夫はなかろうかと思うのでございます。たとえば、あのxしるしをやるのがいいのか悪いのか、あるいは裁判官というものをもう少し知らせなければ何にもわからぬのです。わからずに、先ほど言った通りに、何も書かなければ、全部信任したことになるのですが、このあり方というものは何か工夫はないものか、あるいはこれでいいというのか、この点をもう一ぺん承わりたいと思います。
  58. 中村梅吉

    中村国務大臣 憲法は格別国民、審査に関する投票の方法まで規定をいたしておりませんから、これについては今後なお十分研究する余地はあろうかと考えております。
  59. 小島徹三

    ○小島委員 関連して伺いたい。先ほど、五鬼上事務総長のお話の中に、少数意見を持った判事新聞等で発表することは、違法ではない、だろうが妥当だとは思えないとおっしゃったのですが、妥当でないということはどういうことを意味するのですか。
  60. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 つまり、具体的に言えば、道義的にああいう意見は出さない方がいいのではないか、こういうことを考えたのであります。
  61. 小島徹三

    ○小島委員 私がこの問題が非常に重大だと思うのは道義的に出さない方がよいということは、裁判官に対して絶対信頼を持ちたい、また、裁判官が国民の信頼を得るということは必要なことであって、いやしくもそういうことによってこれを傷つけるようなことは妥当でないということだろうと思います。そういうことをした判事に対して今まで懲戒なり、戒告なりの何らかの処置をとられたことがあるのですか。
  62. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 あの新聞の発表については、具体的に懲戒とか、そういうことはいたしておりません。
  63. 小島徹三

    ○小島委員 そういうことに対して一つ裁判所の方にお願いしておきたいことは、私が非常に疑問に思っておりますのは、裁判官会議というものが裁判官監督しておる形になっておりますが、これは同僚同士ですから、同僚に対してかれこれすることはみんな遠慮されるのであります。ここに私は重大な問題があると思う。常識で考えて妥当でないことをする判事は、果して判事資格があるかどうかということを疑いたくなるのです。弁護士の場合におきましても、従来ならば、弁護士として秘密にしなければならぬと思われるようなことを堂々と新聞に発表して、自分の名前を出すという例がしばしばあって、私たち多少ひんしゅくしておるのでありますけれども、これは弁護士ですからやむを得ないといたしましても、判事がそういう妥当でないと考えられることをすることは、裁判官としてはそれこそほんとうに資格を欠くのではないか。そういうことは裁判官の権威を傷つけることになると思います。これは、少数意見だが、こういう意見も聞く必要があるということは、われわれに言えることであって、一般国民としてはそういうことはよくわかりませんから、少数の裁判官の中から、あんな判決は間違った判決だなんて言われると、裁判の権威というものは薄らぐと思います。そういうことは日本裁判の権威をだんだん失っていくもとになると考えでおりますが、そういうことに対して何らかの処置をおとりになるということをお考えになったことはないのですか。
  64. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 内部的には、あの問題についてはいろいろ裁判官の合同とかそういうところで問題にいたしまして、結局お互いに十分反省しようじゃないかということは申し合せました。しかし、法律上の分限手続とかいうことはいたしておりません。
  65. 小島徹三

    ○小島委員 私は、そういう点については裁判所当局に十分注意していただきたい。私はたまたま裁判官訴追委員会の委員をいたしておりますが、そこには、判事の訴追請求というか、陳情とかいうものがたくさん参ります。中には、もちろん、そういうことを言ってくる人間にとんでもない間違いだというのがたくさんあります。しかし、よく調べてみると、判事の行動において、判事としての妥当性を欠く者がたくさんあるのです。そういう者が判事の権威を弱めてしまい、ひいては判決に対して国民がこれを疑うということになると思いますから、常識で考えて妥当でないという判事がおるということならば、そういう者に対してしかるべき何らかの処置をとることを真剣に考えてもらわないと、私たちは訴追委員会の委員をいたしておりまして、社会党の諸君からも、古屋君がおられればはっきりわかりますが、非常に強硬に、こんな者は判事として資格がないんだと言われることがたくさんあるのです。常識的に考えて、確かにこんな者を判事にされたんではかなわないと思うことがありますが、訴追の結果は、御承知のように、結論としては罷免するかしないか、この二つに一つというようなきびしい規定であるがために、われわれは戒告とか忠告というような手段はとれないから、やむを得ず、まあそこまではしないでおこうじゃないかということで話をつけたことが相当ございますから、そういう妥当でない、戒告を要するという判事に対しては、しかるべき適当なる方法を講ずるということを真剣に考えてもらわないと、私たちは、裁判所法最高裁判所機構改革についても、このままでこれを通そうというような意思は毛頭ございません。私個人といたしましては、そういうことについてもっとしっかりした監督権——判事監督ということについて最高裁判所責任をとって下さるということでなければ、幾ら機構改革しても何にもならぬという感じがいたしますので、その点は一つ十分——私も五鬼上さんとは長いつき合いでございますから、私の気持は想像願えると思いますが、一つ十分お願いしたいと思います。
  66. 横井太郎

    横井委員 もう一つだけ、ちょっと忘れましたので、尋ねておきたいと思うのですが、この間浦和の管内で川口簡裁の高井という判事が罷免になりましたが、この人の行政上の監督というものはだれがやるんでしょうか。それから、その監督者に対する責任というものはないのかあるのか、あるとすればどういう責任をとられたか、その点を一つ承わりたい。
  67. 五鬼上竪磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 最終の監督権は司法行政最高裁判所にありますが、あの場合には、浦和地方裁判所裁判官会議が第一に監督責任があります。目下、東京の高等裁判所において、分限委員会というものを設けてあれに対する司法行政上の処分監督責任について調査いたしております。結論はまだ出ておりませんので、私どもその結論を待っておる次第であります。
  68. 三田村武夫

    三田委員長 本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。    午後零時二十三分散会