○高橋(禎)委員 その点はやや危ない橋を渡るような感じがしないでもないのですが、
一つ間違いのない
方法をおとりにならないといかぬと思うので、申し上げておきます。
それから、
最高裁判所の
事務総長がおいでになりましたから、やはり先ほどの
猪俣委員の
質問に関連をし、そうして、私はこの前の
委員会で法務
大臣にはその点をお伺いし要望もいたしたのでありますが、なお要望をし、かつお尋ねをしたいと思うのであります。
第一には、実は、
最高裁判所に対しては、気持の上ではいささかお気の毒な感じもしないわけじゃないのですけれ
ども、今度の問題は、
最高裁判所の
機構改革の問題として、その
機構改革が
論議されるようになったのは、
国民的要求としては、
上告の門戸を開放しなければならぬということと、それから、いま
一つは、
訴訟の促進という、おもにこの二つの
理由から出ておるわけです。そこで、この
法案によりますと、別な
裁判所を作るというのですから、
最高裁判所の門戸は狭められたと申し上げても過言ではないと思うのです。
国民の気持はそうじゃないのです。現在の
最高裁判所の
制度のもとにおいて
上告の道を開けというのが要求なのです。
最高裁判所側として、そういう要求を
国民が持っておるというふうにお考えになるのかならないのか、ここのところをはっきりお伺いしたいわけなのです。
国民の方では、
最高裁判所で
一つもっと門戸を開放してどしどし
裁判をしてもらいたいと思っておったら、そういうところから出発した
最高裁判所の
機構改革が、今までよりはさらに門戸を閉ざされた結果になることは、この
国民の要求に沿わないのじゃないか、そこをどうお考えになるか、こういうことです。
それから、その次の
訴訟の促進ということには、いろいろの条件をそろえないといかぬと思うのです。単に
機構改革をやっただけではだめである。申し上げるまでもなく、その
機構のもとでその
地位にある人が一生懸命働かなければだめなのです。
最高裁判所の今までの
裁判官の仕事のしぶりというものは一体どういう程度であるか、これをやはり知らないと、この
法案の審議は
ほんとうにはできないと思うのです。ただ、
最高の
地位にあって、はたからそうやかましく言われないし、
立法、司法、
行政で、司法は
独立しておるのだといって、国会で
論議するについても、ほかのものとはやや異なった面がある。もちろん、行
政府がこれを
監督するというような立場には置かれない。こういう
独立をした司法
機関のもとにおいて、しかも
最高の立場にある者が一生懸命働いておるのであろうかどうであろうかということをはっきりしておかないといかないわけです。この前、法務
大臣に対して、
最高裁判所のそういうことを
一つ調査して
委員会へ考課表のようなもの、仕事のしぶりについて
一つ御報告を願うように話したのですが、法務
大臣は、そういうことは
最高裁判所に対してやややりにくいようなお言葉もありましたから、
最高裁判所としては、堂々と、われわれは今日までこれだけの仕事をやっておるのだということを
一つここにはっきりしていただきたい。これをまずお願いをいたしておきます。
それから、お尋ねしたいのは、今度の
最高裁判所の
機構改革によって、これは
猪俣委員も先ほど心配され、そうして私も非常に心配をしておるところなのですが、
訴訟はかえって
遅延するのじゃないか。法務
大臣は、
訴訟は
遅延しないという見通しを持っておる、こうおっしゃいましたけれ
ども、どうも私
ども見通上が違うのです。と申しますのは、今度の案によりますと、
上告事件は、普通の争いについては、
最高裁判所小法廷に
上告の申し立てをする、そうして、その
裁判が終れば、これを
確定させる、これに対して異議の申し立てができるようになっておるのです。異議の申し立てをあまりしないのじゃないかという
意見のようですが、私は、そうではなくて、ほとんど異議の申し立てをするのじゃないかという
見解を持っておる。と申しますのは、
最高裁判所に異議の申し立てをすれば、
最高裁判所は刑の執行を停止するなりあるいはその他の必要なる措置をとることができる、こういう
規定がありますが、おそらく、
確定はしたというものの、まだ
憲法の問題が
最高裁判所に係属をしておるのだから、やはり
相当刑の執行を停止されるようになるだろうと思う。もしそれをしないと、行刑の面で大へんなことが起ると私は思うのです。ですから、強い要求があるのですから、
最高裁判所は刑の執行を停止する。そういうことになると、やはり、こういう
人間の考えは正しいかどうかはわかりませんけれ
ども、とにかく
最高裁判所へ
一つ異議の申し立てをして、そうしてそれが決定をするまでは刑の執行を延ばしてもらおうというような
趣旨で、これからは
下級裁判所においても
最高裁判所においても
憲法問題が非常に取り上げられるようになると思う。ところが、それは実際には
憲法違反という
結論は出ないかもしれませんけれ
ども、確かにやると思う。これも
国民の
感情からすれば無理からぬことだと思うのです。そういうことになりますと、どうでしょう。事務的にお考え下さっても、一ぺん記録を見なければなりませんでしょう。異議の申し立てをしたら、記録を見なければ、刑の執行を停止していいか悪いか、その他必要な措置をとっていいか悪いか、わからないはずです。もしも記録を見ないままそうやるなんということだったら、これは無責任きわまることだ。そうすると、
相当数の者が異議の申し立てをして、
最高裁判所では調査官の数が減るのだそうですが、大へんなことになると思う。その記録を一々ごらんになって、執行停止をするかどうか、その他必要な措置を講ずるかどうかを決定して、それからまた本案の
裁判をやるということになり、二重手間ですよ。そういうことになったら、今よりは
憲法問題に関連しての異議の申し立てによって
裁判所に係属する数は多くなり、
最高裁判所の手数が、二回やることになるのですから、これまた倍になってしまう。そういうことになって一体
訴訟の促進ということができるかどうか。今よりはもっとおくれてくるのではないか。しかも、ものによれば
最高裁判所小法廷は
最高裁判所の管轄だといって移送することができる、
最高裁判所はまた、その書類を調べてみたところが、これは
最高裁判所小法廷の管轄だといってそれを逆送することができることになっておる。これをまじめに取り扱って書類を一々調べてやっておるということになると、今までより大へんではないか。
事件はふえて、
最高裁判所は、ただ
裁判官の数が少くなってこじんまりとしてきた、そしてこれが天下第一流の人物が集まっておる
最高の場所だ、こういうような気持だけは一応するかもしれませんけれ
ども、
国民の要望する
上告の門戸を閉ざして、そして今までよりはもっと
訴訟の
遅延を来たすということになったら、これこそ大へんなんです。大体
最高裁判所機構改革という問題の出発点の
理由となっておるものを全然満たし得ない逆なことになるということを非常におそれておるわけです。それについて
一つの
所見を伺っておきたいと思います。