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1957-03-12 第26回国会 衆議院 法務委員会 第13号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十二年三月十二日(火曜日) 午前十一時六分
開議
出席委員
委員長
三田村武夫
君
理事
福井
盛太
君
理事
横井 太郎君
理事
猪俣 浩三君
世耕
弘一君 高橋 禎一君 馬場 元治君 花村 四郎君 古島 義英君 松永 東君 山口 好一君 横川 重次君 神近 市子君
田中幾三郎
君 志賀 義雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣
中村
梅吉君
出席政府委員
検 事 (
大臣官房調査
課長
) 位
野木益雄
君
委員外
の
出席者
刑 事 (
最高裁判所事
務総長
) 五鬼上堅磐君 判 事 (
最高裁判所事
務総局総務局
長) 関根 小郷君 判 事 (
最高裁判所事
務総局総務局総
務課長
) 海部
安昌
君 判 事 (
最高裁判所事
務総局人事局
長) 鈴木 忠一君 専 門 員 小木 貞一君
—————————————
三月八日
委員小松幹
君辞任につき、その補欠として西村 彰一君が議長の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
三月八日
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第八九号) の
審査
を本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第八九号)
—————————————
三田村武夫
1
○
三田
村
委員長
これより
法務委員会
を開会いたします。
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
とし、
政府当局
より
提案理由
の
説明
を聴取することといたします。
中村法務大臣
。
中村梅吉
2
○
中村国務大臣
ただいま
議題
となりました
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
について、その
趣旨
を御
説明
します。 御
承知
の
通り
、
日本国憲法
の施行とともに、
わが国
の
司法制度
は、旧
憲法時代
とは異なりまして、新しい構想のもとに発足いたしたのであります。特に、
最高裁判所
は、
違憲審査
を行う
権限
を有する
終審裁判所
とされましたばかりでなく、
訴訟手続
その他に関する規則の制定及び
下級裁判所
の
裁判官
の
指名
というような重要な
権限
をも与えられ、旧大審院とはこれらの点において著しく趣きを異にいたしているのでありまして、その重大な職責にかんがみ、
最高裁判所
は、識見の高い
法律
の素養のある十五人の
裁判官
をもって
構成
されることになったのであります。
最高裁判所
のこのような性格及び
構成
にかんがみ、その取り扱う
上告事件
の
範囲
をいかにするかという問題は、すでにその発足当時から存在しておったのでありますが、まず、
刑事訴訟
につきましては、
昭和
二十四年から施行されました新
刑事訴訟法
によりまして、
訴訟手続
に
根本的改正
が加えられ、第一審における
公判中心主義
の徹底、
控訴審
の
事後審化
とともに、
上告理由
の
範囲
は、
憲法違反
、
判例抵触等
の重要な
事項
に限定されまして、これによって、
刑事訴訟
に関する
最高裁判所
の
裁判権
の
範囲
については、一応の調整が行われたのであります。また、
民事訴訟
につきましても、
昭和
二十五年に至り、
有効期間
の定めある
臨時立法
として、
最高裁判所
における
民事上告事件
の
審判
の
特例
に関する
法律
、いわゆる
民事上告特例法
が成立いたし、さらに、十九国会において
民事訴訟法
の
改正
が行われ、
上告理由
の
範囲
を
憲法違反
、
判例抵触
及び
法令
の
解釈
に関する重要な
事項
に限定されることになったのであります。 しかしながら、このような
上告制限
の
措置
にもかかわらず、
最高裁判所
における
取扱い事件
の件数は年々増加の一途をたどるとともに、その
裁判官
の
負担
は著しく過重となり、
昭和
二十六年末には
未済事件数
がついに七千件を突破するに至ったのでありまして、現在の
最高裁判所
の
機構
をもっていたしましては、ますます増大する
事件
の
負担
に耐えることが困難ではないかと考えられるに至ったのであります。また、一方、右に述べましたような
上告制限
の
方向
に対しまして、
在野法曹方面
を
中心
として批判的な
意見
が次第に強く唱えられて参りました。すなわち、従来のわが
司法制度
においては、長く
一般法令違反
が
上告理由
として認められてきたのでありますが、これを
制限
して
憲法違反
、
判例抵触等
を
上告理由
として認めるのみでは、
個々
の
事件
における
当事者
の
救済
に不十分であり、このような
制度
は
わが国
の実情に適しないものであるというのであります。このようなことから、
最高裁判所
の
機構
及び
上告制度
の
改善
の問題が早急に解決を要する問題として、盛んに論議されるようになりましたことは、御
承知
の
通り
であります。
政府
といたしましては、前に申し述べましたいわゆる
民事上告特例法
が
有効期間
の定めある
臨時立法
として成立いたしました
関係
もあって、すでに
昭和
二十六年以降、
法制審議会
におきまして、
民事訴訟法
及び
刑事訴訟法
の問題の一環として、この
上告制度改善等
の問題につき研究を進めておりましたが、右に申しましたような情勢を考慮し、
昭和
二十八年二月、
法制審議会
に対しまして、新たに
裁判所
の
制度
を
改善
する必要があるかどうか、あるとすればその要綱を示されたい旨の
諮問
を発したのであります。
法制審議会
におきましては、この
諮問
に基きまして、新たに
司法制度部会
を設け、
最高裁判所
の
機構
の問題を
中心
として
調査審議
を進めたのでありますが、当初は
裁判所側
、
在野法曹側
を
中心
に相当な
意見
の
相違点
があったのであります。しかしながら、この問題についての
審議
を促進するため、
昭和
二十九年八月、新たに
司法制度部会
、
民事訴訟法部会
及び
刑事法部会
から選出された小
委員
をもって
構成
する
上訴制度
に関する
合同小委員会
を設け、
最高裁判所
の
機構
及び
刑事事件
の
上告理由範囲
の問題を
中心
として鋭意
審議
を進めて参りましたところ、回数を重ねるに従いまして、次第に多数の
委員
の
賛成
を得られるような
方向
が明らかになり、昨年三月には
右合同小委員会
としての案が決定され、その後右三
部会
においてこの案が
審議
承認されました。次いで昨年五月八日
法制審議会
の総会において
出席委員
二十一人のうち二十人の
賛成
により
答申案
の決議が行われ、同会より
最高裁判所
の
機構
及び
上告制度
に関する
立法措置
について適切な
答申
がなされたのであります。そこで、
政府
は、これに基き慎重に立案いたしました結果、ここにこの
法律案
を提出する運びに至った次第でございます。 次に、この
法律案
の要点につきまして簡単に御
説明
申し上げたいと思います。 この
法律案
は、
裁判所法
及び
刑事訴訟法
の各一部
改正
を
内容
とするものでありまして、その骨子は、
上告事件等
の
審理
の
円滑化
をはかるため、
憲法違反
、
判例変更等
の重要な
事件
について
審判
する
最高裁判所
の
裁判官
を減員するとともに、別に
最高裁判所
に
最高裁判所小法廷
を置き、
刑事訴訟
についての
上告理由
の
範囲
を拡張して、
個々
の
事件
における
当事者
の
救済
を全うしようとするものであります。
改正点
のうち特に重要と思われる数点についてその概略を申し上げますと、まず第一に、
最高裁判所
の
構成
でありますが、現在の
最高裁判所
は、
最高裁判所長官
及び
最高裁判所判事
十四人をもって
構成
され、
憲法事件
その他の
重要事件
につきましては、
全員
の
裁判官
の
合議体
である大
法廷
で
審理
、
裁判
をするとともに、その他の
一般上告事件
につきましては、この十五人か三人以上の
員数
の
裁判官
の
合議体
である小
法廷
に分れて
審理
、
裁判
をすることになっておりますが、このような現在の
構成
では、一つの
合議体
として
重要事件
を
処理
するためにはむしろ
裁判官
の数が多きに失し、また、その他の
一般上告事件
の
処理
のためには小
法廷
の数が少きに過ぎるのみならず、
裁判官
が大
法廷
及び小
法廷
の双方の
事件
の
審判
に追われて、その能率か阻害されているように思われますので、これを改め、ます、
最高裁判所
は、
憲法違反
、
判例変更等
の
重要事件
のみを取り扱うことにいたしますとともに、その取り扱う
事項
の
重要性
にかんがみ、さらに
裁判
の
合議
を全からしめ、
審理
を円滑ならしめることを期するため、
最高裁判所長官
及び
最高裁判所判事
八人でこれを
構成
するものとし、その
全員
の
裁判官
の
合議体
で
審理
、
裁判
することにいたしました。また、一方、
一般上告事件
につきましては、現在の
最高裁判所
の
構成
では、
事件
の
処理
が遅延の傾向に陥りやすく、また、
裁判官
の
負担
が著しく加重となっている点を考慮し、かつ、後に述べますように、
刑事
の
上告理由
の
範囲
を拡張することにより
一般上告事件
を
処理
するための
負担
が増大するものと予想されることに伴いまして、その
審理
の
円滑化
をはかるため、別に
最高裁判所小法廷首席判事
六人及び
最高裁判所小法廷判事
二十四人で
構成
する
最高裁判所小法廷
を
最高裁判所
に付属して
設置
し、この小
法廷
は、三人以上の
員数
の
裁判官
の
合議体
で
審理
、
裁判
することにいたしました。 第二に、
上告理由
の
範囲
は、
民事
につきましては、現に
憲法違反
のほか
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令違反
を
上告理由
の
範囲
といたしておりますので、
現行法
のまま
改正
を加えておりませんが、
刑事
につきましては、
上告審
における
個々
の
事件
の
当事者
の
救済
を徹底させる等の見地から、現在の
刑事訴訟手続
の構造及び
上告審
の
負担等
の点をも考慮しつつ、その
上告理由
の
範囲
を拡張することにし、
憲法違反
及び
判例抵触
のほか、
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令
の
違反
があって原
判決
を破棄しなければ著しく正義に反することをも
上告
の
理由
とすることにいたしました。
上告
の窓口を
民事事件
と均衡のとれるような
措置
を講じた次第であります。 第三に、
事件
の
審判
につきましては、
最高裁判所小法廷
は、
原則
として
上告
その他につき
最高裁判所
と
同一
の
裁判権
を有し、
事件
はまず小
法廷
で
審理
することといたしますが、
憲法
問題について
判断
をする場合及び従来の
判例
を変更する場合におきましては、
最高裁判所
において
裁判
をさせることが適当と考えられますので、
事件
を
最高裁判所
に移させることとし、
最高裁判所
は、
原則
として小
法廷
から移されたこれらの
重要事件
について
審判
することにいたしました。また、小
法廷
の
裁判
に対しましては、
憲法違反
を
理由
とするときに限り、特に
最高裁判所
に
異議
の
申し立て
をすることができることにいたしました。 第四に、
最高裁判所長官
及び
最高裁判所判事
は、
憲法
にいう
最高裁判所
の
裁判官
としてその
任命
を
国民審査
に付する点につきましては、もとより従来
通り
でありますが、
内閣
がその
指名
または
任命
を行うについては、一そう慎重を期するようにするため、
裁判官
、検察官、弁護士及び
学識経験者
で組織する
裁判官任命諮問審議会
に
諮問
すべきものといたしました。また、
最高裁判所小法廷
の
裁判官
の
任命方法
、
任命資格等
は、
高等裁判所長官等
と同様といたしましたが、その
地位
の
重要性
にかんがみまして、特にそのうち小
法廷首席判事
の任免は天皇が認証するものといたしました。 以上が
裁判所法
の一部を
改正
する
法律案
の
趣旨
でございます。何とぞ御
審議
のほどをよろしくお願い申し上げます。
三田村武夫
3
○
三田
村
委員長
大臣
は参議院の
予算委員会
で質問があるそうですから、退席されてよろしゅうございますか。——ではどうぞ。 次に
補足説明
を求めます。
法務省位野木調査課長
。
位野木益雄
4
○位
野木政府委員
便宜法案
の条項に従いまして
補足説明
を申し上げます。あとで書面で差し上げたいと思いますが、まず
裁判所法
の
改正
の部分について御
説明
いたします。 まず、第一条の、
目次
の
改正
でございますが、第二編及び第三編の
目次
を
改正
いたしております。
現行法
は、第二編の
編名
が「
最高裁判所
」というふうになっておりまして、その第二編の中に
最高裁判所
のことを
規定
し、第三編の
編名
が「
下級裁判所
」となっておりまして、その編の中に
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
及び
簡易裁判所
に関する
事項
を
規定
いたしております。
改正案
は、後に述べますように、
下級裁判所
の
一種
といたしまして
最高裁判所小法廷
というものを置くことにいたしておりますので、
最高裁判所小法廷
に関する
事項
が、
最高裁判所
に置かれる
関係
上、第二編の中に
規定
されることになるわけでありますが、第二編及び第三編の
編名
を、それぞれその
内容
を一致さすために、第二編の
偏名
を「
最高裁判所
及び
最高裁判所小法廷
」、第三編の
偏名
を「
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
及び
簡易裁判所
」というふうに改めようとするものであります。 それから、第二条についてでありますが、これは新たに
下級裁判所
の
一種
として、
最高裁判所小法廷
という
裁判所
を設けることを定めたのであります。
現行法
の第二条の第一項は御
承知
のように
下級裁判所
の
種類
について
規定
しておりますが、
最高裁判所小法廷
を
設置
することに伴いまして、条文の
体裁
を改めまして、本項を
裁判所
の
種類
に関する
規定
といたしたのであります。すなわち、
裁判所
の
種類
といたしましては、すでに
憲法
上
規定
されておる
最高裁判所
のほかに、
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
及び
簡易裁判所
が本項の
規定
によって
設置
されますことは従来の
通り
でありますが、これらの
裁判所
のほかに新たに
最高裁判所小法廷
という
裁判所
を
設置
することにしたのであります。この
最高裁判所小法廷
という
裁判所
は、
憲法
第七十六条にいう
下級裁判所
の
一種
ではありますが、後に述べますように、
事件
の
処理
上また
司法行政
上、
最高裁判所
ときわめて密接なる
関係
を持っておりますので、特にこれを
最高裁判所
に付属して設けることにいたしております。 第二項でありますが、「
下級裁判所
の
設立
、
廃止
及び
管轄区域
は、別に
法律
でこれを定める。」というふうな字句になっておりますが、これを「
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
及び
簡易裁判所
の
設立
、
廃止
及び
管轄区域
は、別に
法律
でこれを定める。」ということにしようとするものでありまして、これは、
最高裁判所小法廷
というものが
下級裁判所
のうちに加わったのでありますけれども、これについては、性質上その
管轄区域
は全国に及ぶというものでありますから別に
法律
でこれらのことをきめる必要がないので、このように
改正
をいたしたのであります。 それから、次に第五条の
改正
であります。これは、
裁判所
の
官名
の
種類
を追加したのと、
最高裁判所
の
裁判官
を減員することにしたのと、二つのことについて
規定
いたしてあります。
現行法
の第五条第二項は
下級裁判所
の
裁判官
に関する
規定
でございますが、
最高裁判所小法廷
の
設置
に伴いまして、新たにこれを
構成
する
裁判官
といたしまして
最高裁判所小法廷首席判事
及び
最高裁判所小法廷判事
という二
種類
の
裁判官
を設けることにいたしました。 それから、
現行法
第五条第三項は
裁判官
の
員数
に関する
規定
でございまして、
最高裁判所
の
判事
の
員数
を十四人ということに定めておりますが、これを
改正
いたしまして、
最高裁判所
における
審理
の
円滑化
をはかるために、
最高裁判所
の
判事
の
員数
を八人に減ずることにいたしたのであります。それからまた、小
法廷
の
首席判事
及び小
法廷
の
判事
は、いずれも
下級裁判所
の
裁判官
ではありますが、その占める
地位
のきわめて重要であるということにかんがみまして、この
員数
を特に
裁判所法
の中で
規定
することにいたしまして、
首席判事
の方は六人、それから
法廷判事
の方は二十四人にすることを定めております。その他の
下級裁判所
の
裁判官
につきましては別の
法律
できめることにいたしたのは
現行法
の
通り
であります。 次に、第二編の
編名
でありますが、この
改正
につきましては先ほど
目次
のところで申し上げた
通り
であります。 それから、第六条、第七条、第八条の
見出し
を改めております。これは、
現行法
は第二編で
最高裁判所
に関する
事項
のみを
規定
しておりますので、
見出し
のところで特に
最高裁判所
ということを断わっておりませんが、今度は第二編の中で
最高裁判所
のほかに
最高裁判所小法廷
に関する
事項
を
規定
することにいたしましたので、六条、七条、八条は
最高裁判所
についてのことを
規定
しておるという
趣旨
を明らかにするために、それぞれこのように
見出し
を改めようというのであります。 それから、第八条の二の
規定
を新設いたしましたが、これは小
法廷
の
設置
の仕方及びその
構成
について
規定
いたしたのであります。小
法廷
は
下級裁判所
の
一種
でございますから、これを
最高裁判所
の
機構
から全く独立した
別個
の
裁判所
として
設置
いたしまして、
別個
の
長官
、
別個
の
事務局等
を置く、そういうふうな全く別の
裁判所
として
設置
するというやり方も考えられるのでありますが、小
法廷
は
事件
の
処理
上
最高裁判所
と
密接不可分
の
関係
にありますので、これを
最高裁判所
に付属して
設置
することにいたしました。そうして、その
司法行政事務
は、特別のものを除きまして、小
法廷
みずから行うことなく、
最高裁判所
に取り扱わせることにいたしております、これは後に述べます。そうして、
長官
、
事務局等
は別に置かないことにいたしたのであります。 第八条の二の第二項は、国法上の
裁判所
としての小
法廷
が、小
法廷首席判事
六人及び小
法廷判事
二十四人で
構成
されることを定めたものであります。これは、
裁判所法
の他の
規定
、すなわち十五条、二十三条等で
最高裁判所
、
地方裁判所等
について
規定
されている
規定
の
体裁
にならった
規定
のいたし方をいたしております。 第八条の三の新設がありますが、これは小
法廷
の
権限
について
規定
しております。 まず、第一項は、
上告事件
の
審判
を初めといたしまして、
最高裁判所
が第七条及び第八条の
規定
によって
裁判権
を持っておる
事項
につきましては、
原則
として小
法廷
も
最高裁判所
と同様の
裁判権
を有することにいたしております。ただ、小
法廷
が
裁判権
を有するのを適当でないとして
最高裁判所
の特に定める
事項
、たとえば
裁判官
に対する
分限事件
、
人事官
の
弾劾事件等
が予想されるのでありますが、そういうふうな
事件
はこの例外とすることにいたしておるのであります。小
法廷
は、そのほか、
裁判所法
によりまして、小
法廷
の
裁判
に対して
異議
の
申し立て
があった場合に、
原裁判
の
執行停止等
の処分を命ずる
権限
を認められております。これは後に出て参りますが、そういうような
権限
を別に持っておりますし、また、一定の
範囲
内の
司法行政事務
を行う
権限
が認められております。これも後に出て参りますが、そういうふうに、この
法律
で別に定める
権限
を持っておりますほかに、他の
法律
において特に定める
権限
も持つわけです。この他の
法令
において定める
権限
というのは、たとえば、
刑事事件
につきまして、小
法廷
がした
裁判
に対して
異議
の
申し立て
があった場合における
原裁判所
としての刑の
執行
の
停止
または
原裁判
の
執行
の
停止
、これもこの
刑事訴訟法
の
改正
によりまして今度その
趣旨
の
規定
が加えられることになっておるのでありますが、こういうふうな他の
法律
で
規定
される
権限
、特に定める
権限
というものも持ち得ることになる。これらは小
法廷固有
の
権限
というふうに申して差しつかえないのであります。これが第二項の
規定
でございます。 それから、次に、小
法廷
は
憲法判断等
を必要とする
事件
につきましても抽象的には
裁判権
を今申しましたように持っておることになるわけでありますが、しかしながら、
憲法
問題について
判断
を要する場合、あるいは従来の
最高裁判所
または小
法廷
の
判例
を変更しようとする場合等におきましては、みずから
裁判
せずに、直ちにこれを
最高裁判所
の方に移しまして
最高裁判所
の
審判
を受けさせるのが適当というふうに考えられますので、これらの場合には小
法廷
は
裁判
をすることができないことにいたしたのであります。その場合を第三項に列挙いたしております。ここに列挙いたしました一、二、三の
事項
は、いずれも現在の
最高裁判所
の小
法廷
、これは別の
裁判所
でなくて
最高裁判所
の中の
裁判機関
としての形態だと考えておりますが、この現在の小
法廷
において
裁判
をすることができない場合、すなわち大
法廷
に
事件
を移す場合とほぼ同様でございます。そのほか
最高裁判所
が定める場合におきましても同様に小
法廷
は
裁判
をすることができないことといたしておりますが、この
最高裁判所
が定める場合といたしましては、
憲法
その他の
法令
の
解釈適用
について特に重要な
事項
を含むものと認められる場合、すなわち
法令
の
解釈
に関する特に重要な
事項
、こういうふうなものが
最高裁判所
によって
規定
されることが予想されるわけであります。以上の場合には小
法廷
はみずから
裁判
をすることができないので、その
事件
を大
法廷
に移すことになるのであります。これらの場合を通じまして、小
法廷
は抽象的には
最高裁判所
と競合して
事件
についての
裁判権
を有しておるのでありますが、その
裁判権
の
行使
が制約されることになるわけでありまして、この
関係
は、
選択刑
として罰金が定められておる罪に当る
事件等
を
審判
する場合の
簡易裁判所
の
科刑権
の
制限
、すなわち
現行裁判所法
三十三条の二項、三項にその定めがありますが、この場合の
考え方
と同じような
考え方
をとっておる次第でございます。 それから、次に第九条の
改正
であります。これは、
最高裁判所
か
審理
及び
裁判
をする場合の
裁判機関
としての
態様
を改めますとともに、新たに小
法廷
が
審理
及び
裁判
をする場合の
裁判機関
としての
態様
について
規定
したのであります。すなわち、
現行法
の第九条第一項及び第二項は、
最高裁判所
が
審理
及び
裁判
をする場合の
裁判機関
の
態様
としての大
法廷
及び小
法廷
について
規定
しておりますが、
改正案
における小
法廷
は
最高裁判所
とは全く
別個
の
裁判所
でありますので、この新しい
関係
に応じまして
本条
を
規定
いたしたのであります。 まず、
改正案
による第九条第一項といたしまして、
最高裁判所
が
審理
及び
裁判
をする場合には、その取り扱う
事項
の
重要性
にかんがみまして、すべて
最高裁判所
の
長官
及び
最高裁判所
の
判事全員
、すなわち九人の
裁判官
の
合議体
で
審理
及び
裁判
をするというふうにいたしたのであります。この場合の
合議体
を
便宜
大
法廷
と呼ぶことにいたしております。従って、
現行法
における小
法廷
のように、一部の
裁判官
からなる
合議体
で
審判
をするという方式は認めないことになるわけであります。
改正案
の第九条第二項は、小
法廷
が
審理
及び
裁判
をする場合の
裁判機関
としての
態様
について
規定
いたしております。小
法廷
は三人以上の
員数
の
裁判官
の
合議体
で
審理
及び
裁判
をするということに
規定
いたしておます。各
合議体
の
裁判官
の
員数
につきましては、現在の小
法廷
の例にならいまして、
法律
では単に三人以上とのみ定めることにいたしまして、その具体的の
員数
は
最高裁判所
が定めることにいたしたのであります。 次に、第十条の
改正
であります。
本条
の
改正
は、
現行
の小
法廷
を
廃止
いたしまして、独立の
裁判所
として新たに小
法廷
を新設することに伴いまして、従来の
最高裁判所
の大
法廷
と小
法廷
の間の
事務
の
分配等
に関する
規定
を改めまして、小
法廷
と大
法廷
すなわち
最高裁判所
との間の
事件処理
上の
関係
を新たに
規定
するとともに、小
法廷
の
裁判
に対する不服の
申し立て
について
規定
したものであります。 まず、小
法廷
は、
原則
として大
法廷
と
同一
の
裁判権
を持っておりますことは先ほど申し上げましたが、第八条の三の第三項の場合、すなわち小
法廷
で
裁判
をすることができない場合は、その
裁判権
の
行使
が
制限
されて
裁判
ができないことになりますので、
事件
を大
法廷
に移すべきものといたしたのであります。
改正案
の第一項はこの
趣旨
の
規定
であります。なお、小
法廷
が先ほど申し上げました
固有
の権利としての
裁判権
を
行使
する場合があるわけでありますが、この場合にも、第八条の三の第三項に該当する場合には、
事件
を大
法廷
に移すということになるわけであります。この場合の大
法廷
の
裁判権
は、
事件
を移されたことによって発生するということになるわけでありまして、この
関係
は、
現行
の
民事訴訟法
の三十一条の二、すなわち
簡易裁判所
がその
管轄
に属する
事件
を裁量によって
地方裁判所
に移送した場合の
法律
関係
と同じように考えておる次第であります。 しかし、
原則
として、
最高裁判所
が
裁判権
を有する
事項
につきましては小
法廷
もまたこれと競合して
裁判権
を有しておりますので、
上告事件
その他第八条の三の第一項の
規定
によって大
法廷
及び小
法廷
の双方がともに
裁判権
を有する
事項
につきましては、両者のうちいずれがこれを取り扱うかということについて
規定
を設ける必要があるわけでありまして、第二項はこの点に関して
規定
したものであります。このような
事件
はまず小
法廷
において
審理
をする、そうして大
法廷
は
事件
が小
法廷
から移された場合に初めて現実に
裁判権
を
行使
するということにいたしたのであります。ただ、
最高裁判所
が規則でもって大
法廷
のみが
裁判権
を有して小
法廷
には
裁判権
がないということにすることがあるわけであります。これは先ほど御
説明
いたしましたが、そういうふうな場合については大
法廷
が初めから
事件
の
審理
に当ることは申すまでもございません。 次に、第十条の第三項でありますが、小
法廷
が、第八条の三の第三項の場合に当るものとして、すなわちみずから
裁判
をすることができない場合に当るものとして
事件
を大
法廷
に移した場合においても、大
法廷
で
審理
いたしました結果、当時者の主張が実は
憲法違反
の問題じゃない、従って
事件
の
処理
につき
憲法
適否の
判断
を必要としないということが認められた場合、こういうふうな場合には小
法廷
において
裁判
をすることができるわけでありますから、小
法廷
において
裁判
をすることができる場合に該当するものと認めたときには、大
法廷
は、本来これは小
法廷
が
審判
できた場合であるということで、
事件
を再び小
法廷
に移しまして、小廷法でさらに
審理
、
裁判
をさせることができることを認めるというふうにいたしたのが第三項であります。 第四項は、小
法廷
は
一種
の
下級裁判所
でありますから、
憲法
第八十一条、すなわち、
最高裁判所
は違憲
判断
についての最
終審裁判所
であるといっておりますが、その
規定
との
関係
上、その
裁判
の
憲法
適否の問題につきましては大
法廷
の最終的
判断
の機会を与える必要がある。そこで、第四項におきまして、「他の
法律
の
規定
により不服の申立をすることができる
裁判
を除いて、小
法廷
の
裁判
に対しては、その
裁判
に
憲法
の
解釈
の誤があることその他
憲法
の
違反
があることを
理由
とするときに限り、大
法廷
に
異議
の申立をすることができる。」ということにいたしました。しかし、
裁判
に
憲法
の
解釈
の誤りがあるという場合には、これは本来小
法廷
は
事件
を大
法廷
に移す建前でありますから、このような事例は実際上はあまりないわけと考えるのであります。その他
憲法
の
違反
があるときということがありますが、それは小
法廷
の
裁判
の手続が公開手続に
違反
したというようなことが考えられますが、こういうようなことも実際上はきわめてまれだろうということが考えられます。「他の
法律
の
規定
により不服の申立をすることができる
裁判
」とありますが、その意味は、
刑事訴訟
事件
につきましては、小
法廷
で行われた
裁判
に対して
刑事訴訟法
中に新たに
異議
についての
規定
を設けることになっておりますが、ここに他の
法律
の
規定
により
異議
の
申し立て
をすることができる
裁判
とはこのような
裁判
をいうのであります。 また、
裁判
の遅延による正義の実現の遷延を極力防止しなければならないということと、小
法廷
の
裁判
には今申し上げましたように
憲法違反
があるというふうな事例はきわめてまれであろうということが考えられますこと等を考慮いたしまして、
民事訴訟
の特別
上告
の例にならいまして、
異議
の
申し立て
は、
裁判
の確定を妨げまたはその
執行
を
停止
する効力を有しないことといたしました。ただ、事案によりましては、大
法廷
または小
法廷
は、
最高裁判所
の定めるところによって
裁判
の
執行
を
停止
し、またはその他必要な処分を命じ得ることといたしまして、
当事者
の権利保護に遺憾なからしめるようにいたしたのであります。第五項がこの
趣旨
であります。 第六項でございますが、第一項の
規定
によって小
法廷
から大
法廷
に
事件
を移し、または第三項の
規定
によって再び大
法廷
から小
法廷
に
事件
を移すという場合には、これは必ずしも訴訟法に定めるような厳格な移送手続による必要もないと考えられます。むしろさらに簡易迅速なものとすることが適当であると考えられますので、これらの手続の詳細については
最高裁判所
の定めるところによるものといたしております。また、右に申しました
異議
の
申し立て
及び
裁判
等に関する手続等につきましても、同様
最高裁判所
の規則で定めることにいたしました。これが第六項であります。 次に、第十一条の
規定
でございますが、これは、各
裁判官
の
意見
の表示を必要とするのは、
最高裁判所
の
裁判
、すなわち大
法廷
で
裁判
をした場合に限られることになっております。これは、小
法廷
の
裁判官
としましては、
国民審査
もございませんし、下級
裁判官
でございますので、特にほかの
下級裁判所
の場合と区別する必要はないと考えたからであります。 次に、十一条の二の
規定
を新しく設けましたが、この
規定
を設けましたのは、小
法廷
の
裁判官
の職務の代行を認めようとするものであります。
高等裁判所
、
地方裁判所
、
家庭裁判所
及び
簡易裁判所
の
裁判官
につきましては、
現行法
によって
裁判官
の職務の代行が認められております。これは、差し迫った必要がある場合においては他の
裁判所
の
裁判官
にある特定
裁判所
の
裁判官
の職務を行わせることができるというような
趣旨
の
規定
であります。十九条、二十八条、三十一条の五、三十六条等でありますが、小
法廷
におきましても、
裁判
事務
の輻湊等の場合が考えられますので、その
裁判
事務
の取扱い上差し迫った必要がある場合においては、
最高裁判所
は小
法廷判事
の職務を
高等裁判所
の
判事
に代行させることができるようにしたのであります。これは、
高等裁判所
の
判事
の資格等は小
法廷
の
判事
と同じでありまして、このようにいたしたのであります。 それから、十二条の
改正
でありますが、これは
最高裁判所
に置かれることになる小
法廷
の
司法行政事務
について
規定
したものであります。第二項の
改正
は、
最高裁判所長官
及び
最高裁判所判事
の
全員
で組織する
最高裁判所
の
裁判官
会議と、後に述べます小
法廷
の
裁判官
の会議との区別を明らかにするための字句の整理でありますが、その次に新しく加えました二項の
規定
は、小
法廷
の
司法行政事務
のうち直接
裁判
事務
に密接な
関係
を有するもの、すなわち小
法廷
における
裁判
事務
の分配、
裁判官
の配置及び
裁判官
に支障があるときの代理順序は小
法廷
みずから定めることとするのが適当でありますから、第三項の
規定
によりまして、これらの
事項
は
最高裁判所
の定めるその他の
事項
とともに小
法廷
の
裁判官
の会議で自主的にきめることといたしました。しかし、小
法廷
が、前に述べましたように
事件
の
処理
上
最高裁判所
と
密接不可分
の
関係
にある点にかんがみまして、小
法廷
に関する
司法行政事務
のうち、第三項に掲げるもの以外のものは、
原則
として
最高裁判所
がその
司法行政事務
として
処理
するということにいたしまして、
司法行政事務
の
関係
では
最高裁判所
に従属しているという
関係
になるわけであります。 次に、第三編の
編名
改正
でありますが、これは
目次
の
改正
のところで御
説明
した
通り
であります。 三十九条の
改正
、これは、
最高裁判所長官
の
指名
または
最高裁判所判事
の
任命
につきまして、
内閣
の
諮問
機関として
裁判官任命諮問審議会
を
設置
しようという
趣旨
であります。
裁判所法
制定の当初は、御
承知
のように
裁判官
任命
諮問
委員会
の
制度
がございました。この
委員会
はその後
昭和
二十三年の一月から
廃止
されまして現在に至っておるのでありますが、
内閣
が
最高裁判所長官
の
指名
または
最高裁判所判事
の
任命
を行うにつきましては、その人選について一そう慎重を期するようにする必要がございますので、
裁判官任命諮問審議会
の
意見
を聞くべきものとするのが相当であると考えられますので、このようにしたのであります。この
審議
会は
内閣
に置きまして、
裁判官
、検察官、弁護士及び学識経験のある者のうちから
任命
される
委員
で組織するものといたしております。その詳細につきましては、前例にならいまして政令で定めることにいたしております。 第四十条でございますが、これは、小
法廷
の
首席判事
及び小
法廷判事
につきましても、他の
下級裁判所
の
裁判官
と同様に
憲法
第八十条に従った
任命
方式をとる、すなわち、
最高裁判所
の
指名
した者の名簿によって
内閣
でこれを
任命
する、そしてその任期は十年とすることにいたしました。そのほか、特に小
法廷
主席
判事
については、その
地位
の
重要性
にかんがみまして、最高裁所
判事
及び
高等裁判所
長官
と同様その任免を天皇が認証することにいたしたのであります。 四十一条の
改正
でございますが、これは
最高裁判所
の
裁判官
の減員並びに小
法廷
自席
判事
及び小
法廷判事
の新設に伴う
改正
でありまして、
現行法
第四十一条は、
最高裁判所
裁判官
十五人のうち、一定の
法律
専門職に在職の経歴を必要とする者の数を少くとも十人というふうに定めておりますが、今度この
最高裁判所
裁判官
を
長官
を入れて九人ということに減員いたしますことに応じまして、現在と同じ比率で、この一定の
法律
専門職に在職の経歴を必要とする
裁判官
の数を少くとも六人ということにいたしたのであります。また、その在職年数の計算につきましては、小
法廷
主席
判事
または小
法廷判事
の在職を
高等裁判所
長官
、
判事
等の在職と
同一
に取り扱うことにいたしましたほか、必要な字句の整理を行なっております。 次に、四十二条の
改正
でありますが、これは、小
法廷首席判事
及び小
法廷判事
の
任命
資格を
高等裁判所
長官
及び
判事
の
任命
資格と
同一
にいたしましたほかは、四十一条の
改正
に伴う字句の整理を行なったのであります。 四十四条でございますが、これは、小
法廷首席判事
及び小
法廷判事
の職にあった者につきましても、
高等裁判所
長官
、
判事
等の職にあった者と同様、
簡易裁判所
判事
に
任命
することができるようにしたほか、字句の整理を行なったのであります。 四十七条でございますが、これは、
下級裁判所
の
裁判官
のうち
最高裁判所
がその職を補することになるのは、小
法廷首席判事
及び小
法廷判事
以外の
裁判官
、すなわち
高等裁判所
長官
、
判事
、
判事
補及び
簡易裁判所
判事
に限られるということを明らかにしたのであります。すなわち、小
法廷首席判事
及び小
法廷判事
については補職の必要はないから、このようにいたしたのであります。 それから、第五十条でございますが、これは、小
法廷首席判事
及び小
法廷判事
の定年を、
高等裁判所長官等
と同様、年令六十五年に達したときというふうにいたしたのであります。 第五十四条の
改正
でございますが、これは、
最高裁判所判事
の
員数
が八人と定められることに伴いまして、
最高裁判所判事
秘書官の人数を八人ということにしたのであります。 次に、第五十七条の
改正
でありますが、これは小
法廷
にも
裁判所
調査官を置くようにしたのであります。
現行
の第五十七条第一項では、「
最高裁判所
及び各
高等裁判所
に
裁判所
調査官を置く。」というふうに
規定
いたしておりますが、これとの均衡上、また実際上も、小
法廷
において
判例
の索引、外国立法例、文献の調査その他
裁判官
の補助的
事務
を行うということは必要であると考えられますので、小
法廷
にも
裁判所
調査官を置き得ることにしたので、あります。 七十七条、これは小
法廷
の
裁判
の場合の評決につきましても
最高裁判所
は特別の定めをなし得るようにしたのであります。小
法廷
は前に申し上げましたように
最高裁判所
の定める三人以上の人数の
裁判官
で
審理
及び
裁判
をすることになっておりますので、場合によっては偶数の
裁判官
で
裁判
をすることも考えられますから、
最高裁判所
の
裁判
の場合と同様に、
最高裁判所
が特別の定めをする余地を認める必要があると思われるのであります。 以上が
裁判所法
の
改正
の
関係
でございますが、次に、第二条、すなわち
刑事訴訟法
の
改正
の条文について申し上げます。 まず、三百七十条の
改正
でございまますが、三百七十条の第一項は上訴費用の補償決定をする
裁判所
を定めておるのであります。このたび小
法廷
が
上告
裁判所
となったことに伴いまして、小
法廷
が補償決定をするということが考えられるのであります。そこで、従来上訴
裁判所
たる
最高裁判所
または
高等裁判所
が補償決定をするという
趣旨
になっておったのでございますが、これを単に「
裁判所
」というふうにいたしまして、小
法廷
がこれに含まれるという
趣旨
を明らかにしたのであります。 それから、第三百八十五条第二項及び第三百八十六条第二項、この二つの条文は、
高等裁判所
の控訴棄却決定につきまして
規定
いたしておりますし、また、第四百三条の第三項は
高等裁判所
の公訴棄却決定について
規定
いたしておるのでありますが、いずれもそれは
高等裁判所
でそういうふうな決定があった場合にはその
高等裁判所
に
異議
の
申し立て
をすることができるというふうになっておるのであります。ところが、従来は、四百十四条の
規定
によりまして、これらの
規定
が
上告審
における同じような
種類
の決定にも準用せられるものと
解釈
されておったのであります。しかし、後に述べますように、四百十五条及び四百二十八条の二という
規定
が
改正
ないし新設されることになりますので、小
法廷
のした決定に対しましては
最高裁判所
に
異議
の
申し立て
をすることができるようになったわけであります。そういたしますと、
上告審
におきましてはもはやこの三百八十五条第二項、三百八十六条第二一項及び四百三条第二項の準用によって
異議
を認めるという必要がないものと思われますので、これらの
規定
を削除することにしたのであります。しかし、
高等裁判所
がしたこれらの決定に対しましては従前
通り
異議
の
申し立て
を許す
規定
が要りますので、後に申し述べます四百二十八条の
改正
によりましてこれを認める
趣旨
を明らかにいたしております。 次に、四百五条の
改正
であります。四百五条の第二号及び第三号の
改正
は、「
最高裁判所
」の下に「又は
最高裁判所小法廷
」を加えようというのでありますが、これの
趣旨
は、
憲法
問題を含む
事件
とかあるいは
判例
変更を必要とする
事件等
を除きまして
原則
として最終の
法律
審となる小
法廷
、すなわち、小
法廷
というのはそういう
憲法
問題、
判例変更等
を除きまして最終の
法律
審というふうになるわけであります。そういうふうな小
法廷
の果す重要な役割にかんがみまして、その
判例
にも
最高裁判所
の
判例
に準じた権威を認めまして、これに
違反
する
高等裁判所
の
判決
に対しては常に
上告
することができるようにしようという
趣旨
であります。 次に、
本条
に第二項を加えますが、これは、
刑事訴訟法
における
上告理由
の
範囲
を拡張いたしまして、
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令
の
違反
があって原
判決
を破棄しなければ著しく正義に反することを
理由
とするときにも
上告
を認めようとする
趣旨
でありまして、この
法律
の中でも最も重要な
改正点
の一つであります。
現行法
は、御
承知
のように、
上告
の
理由
を
憲法違反
及び
判例
違反
に
制限
をいたしまして、一般の
法令違反
を
理由
とする
上告
を認めていないのでありまして、
高等裁判所
が一般の
法令
の
解釈
または適用を誤まった場合にも、これに対して
当事者
が権利として
救済
を求めることは許されないわけであります。もちろん、
上告事件
処理
の実情におきましては、
最高裁判所
は、第四百六条の
事件
受理の
制度
及び第四百十一条のいわゆる職種破棄の
制度
を活用いたしまして、
法令
の
解釈
の統一と
個々
の
事件
における
当事者
の
救済
とをはかってきたのでありますが、これらの
制度
はいずれも
最高裁判所
の良識に基く裁量にその運用がゆだねられておるものでありまして、
当事者
といたしましては、適正な裁量が行われるかどうかということについて不安がないわけではないのであります。
上告制度
が
法令
解釈
の統一を重要な目的とすることは当然でございますが、一面、国民の権利、人権に直接
影響
する
刑事
裁判
におきましては、
個々
の
事件
における
当事者
の
救済
という要請も無視することはできないのでありまして、
現行法
制定以来
上告
申し立て
の
理由
を拡張すべきであるという
意見
が一部に強く主張されておりますのも、また
最高裁判所
が前に申しましたように四百六条、四百十一条等の
制度
を活用してきたのも、
刑事
裁判
のこのような性格に基くものと思われます。そうだといたしますれば、
上告審
における一般の
法令違反
の
審査
を
最高裁判所
の裁量にゆだねてしまうよりも、これを
上告
裁判所
の義務とすることによって、
個々
の
事件
における
当事者
の
救済
を十分にいたしまして、
裁判
の公正に対する保障を一そう強化するのが相当であると考えられるので、
本条
に第二項を加えましたのもこの
趣旨
に基くものであります。 ところで、この一般の
法令違反
を
上告理由
に加えるといたしましても、その
範囲
をいかに定めるかは問題でございます。たとえば、いろいろの場合が考えられるわけでありまして、すべての
法令違反
を
上告理由
にする、あるいは
判決
に
影響
を及ぼすべき
法令違反
を
上告理由
とする、あるいは
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令違反
を
上告理由
とするといういろいろな場合が考えられるわけでありますが、ここではこれらの事由を直ちにとってもって
上告理由
とすることはいたさなかったのであります。その
理由
は、これらを
上告理由
といたしますと、
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令違反
というのはすでに御
承知
のように控訴
理由
となっておるのであります。三百七十九条及び三百八十条等の
控訴審
の
規定
等との均衡から見まして、これは適当でないというふうに考えられますばかりでなく、
上告審
の
負担
をあまりに過重とするというおそれもございますので、そういう点を考慮いたしまして、
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令
の
違反
があって原
判決
を破棄しなければ著しく正義に反することを新たに
上告理由
として認めることにいたしたのであります。ここに「原
判決
を破棄しなければ著しく正義に反する」という字句がございますが、この
趣旨
は、すでに御
承知
のように、
改正
前の現在の四百十一条に同じような字句がございます。例の職権破棄の
制度
、この条文についてすでに多くの
判例
が出ておりますので、大体の意味は明らかにされておるのでありますが、結局、
当事者
の権利
関係
に実質的な
影響
を及ぼすような場合はそういう場合に当るというふうに考えております。たとえば、有罪か無罪かの結論を逆にする、あるいは刑期に変動を生ずるというような
法令違反
があれば、これはもちろん
上告理由
になるわけでありますが、ただ単に、たとえば刑法十四条の適用を示すことを忘れる——十四条というのは刑期を加重しても二十年をこえないというふうな
趣旨
のものでありますが、これの適用を示すことを忘れるというような場合、こういう場合にも今までの
控訴審
では
判決
に
影響
を及ぼすことの明らかな
法令違反
に該当するという
判決
例がある。ですから、あとの正義に反するということを加えないと、それも
上告理由
になるということになるわけであります。そういう場合とか、あるいは、放火
事件
につきまして刑法第十九条の適用を誤まりまして、無価値に近いマッチ一個を誤まって没収したというような場合、こういうふうな場合等にはこれを事由として
上告理由
とすることができないというふうになると考えられるのであります。 それから、四百十条でありますか、これは、四百五条の第二項の新設によりまして
上告理由
が拡張されたことと相待ちまして、
上告審
における原
判決
の破棄の事由を整備したものであります。 四百十一条でございますが、これは、
上告
裁判所
が職権によって原
判決
を破棄することができる場合を
本条
は定めておりますが、
本条
第一号の事由が前に申し上げましたように、新たに四百五条第二項に
上告理由
としてつけ加えられることになりましたので、その第一号を削除することにしたわけであります。 次に、第四百十五条でございますが、これは
最高裁判所小法廷
のした
判決
及び
上告
を棄却した決定に対する
最高裁判所
への
異議
について
規定
したものであります。
裁判所法
の
改正
によって設けられることになりました小
法廷
が
下級裁判所
である以上、その
裁判
の
憲法
適否の問題につきましてはさらに
最高裁判所
による最終的な
判断
の機会を与えることが
憲法
上の要請であると考えられますので、小
法廷
の
裁判
に対しまして
憲法違反
があることを
理由
として
最高裁判所
に
異議
の
申し立て
をすることを認めたのであります。
本条
は、四百二十八条の二、これは後に述べますが、それの新設の
規定
とともに、
改正
後の
裁判所法
第十条——さきに申し上げましたが、この第十条の第四項、第五項などと
趣旨
を同じくする
規定
でありまして、特にこれを
刑事訴訟法
中に
裁判所法
とは別に
規定
を設けることにいたしましたのは、
刑事訴訟法
が人権に直接の
関係
を持っておるという性質にかんがみまして、
異議
に関する
事項
をすべて
最高裁判所
規則の定めるところにゆだねるということにはいたさなくて、一定の
事項
は
法律
によって
規定
するのが適当であると考えられたからであります。
本条
の第一項は、小
法廷
のした
判決
及び
上告
を棄却する決定に対し、四百五条第一項第一号に
規定
する事由があることを
理由
として
最高裁判所
に
異議
の
申し立て
をすることを認めております。
上告
を棄却する決定は不適法な
上告
の
申し立て
を棄却する決定でありまして、
事件
の
内容
を
審査
した上でなされるものではないのでありますが、これによって
事件
を終結せしめるという点では
判決
に類似いたしておりますので、ここにこれを加えた次第であります。四百五条第一項第一号に
規定
する事由、すなわち、
憲法
の
違反
があること、または
憲法
の
解釈
に誤まりがあることと申しますのは、
改正
後の
裁判所法
第十条第四項に出ております
憲法
の
解釈
の誤まりがあることその他
憲法
の
違反
があることというのと同じ意味でありまして、本項の
規定
によりまして
異議
の
申し立て
をすることができる
裁判
は
裁判所法
の第十条第四項、これは
改正
後の条文でありますが、それにいわゆる「他の
法律
の
規定
により不服の申立をすることができる
裁判
を除いて」云々というその
裁判
に該当するわけであります。 第二項は、第三項とともに、
異議
の
申し立て
と小
法廷
の
裁判
の効力との
関係
を
規定
したものであります。まず、第二項の本文は、
異議
の
申し立て
があっても
判決
の確定が妨げられない、また
裁判
の
執行
が
停止
されないことを
規定
いたしております。従いまして、小
法廷
が有罪または無罪の
判決
をいたしますれば、その
判決
は直ちに確定いたします。また、小
法廷
が
上告
棄却の
判決
または決定をいたしますれば、有罪または無罪の第一、二審の
判決
が直ちにここで確定することになるわけであります。これによって、刑の
執行
を初めとして、
判決
、決定のあらゆる効果が発生するわけでございます。このようにいたしましたのは、前に
裁判所法
第十条において述べましたように、
裁判
の遅延により上訴
事件
の遷延を極力防止しなければならないということと、小
法廷
の
裁判
に
憲法違反
があるような事例はきわめてまれであるということが予想されること等を考慮いたしたためであります。ただ、確定
判決
の効力のうちでも、最も重要でございます刑の
執行
につきましては、
執行
停止
の必要のある場合も考えられますので、本項のただし書きによりまして、
最高裁判所
または小
法廷
の決定で、
異議
についての
裁判
があるまで刑の
執行
を
停止
し得ることを定めますとともに、その場合には、上訴権回復の請求があった場合の
刑事訴訟法
第三百六十五条の
規定
の例にならいまして、勾留状を発することができることにしたのであります。 第三項は、小
法廷
の
裁判
によって確定する
判決
が死刑の
判決
である場合には、その
重要性
にかんがみまして、
異議
の
申し立て
があれば、これについての
裁判
があるまで当然に刑の
執行
が
停止
されるということにしたのであります。 第四項は、
異議
についての
裁判
においては、不利益変更禁止の
原則
が適用されまして、小
法廷
のした有罪もしくは無罪の
判決
、または小
法廷
のした
上告
棄却の
判決
もしくは決定によって確定した第一、二
審判
決より被告人に不利益な
裁判
をすることはできないことを明らかにしたのであります。検察官が
異議
の
申し立て
をした場合にもこの
規定
が適用されることになるわけでありまして、この点は特色があるわけであります。第二項におきまして、小
法廷
の
裁判
によって被告人の有罪または無罪を確定させることにいたしましたので、非常
上告
や再審の場合と同じく、もはや被告人の不利益には変更しないことにしたのであります。 第五項は、
異議
に関する手続については、この
法律
、すなわち
刑事訴訟法
に別の
規定
があるものを除きまして
最高裁判所
の規則の定めるところによるということを定めたのでありまして、
改正
後の、
裁判所法
第十条第六項後段の
規定
と同じ
趣旨
であります。 最後に、
現行法
の第四百十五条は、四百十六条から四百十八条までの
規定
とともに、
上告
裁判所
のした
判決
に対する、いわゆる
判決
訂正の
制度
を定めておりますが、小
法廷
の、
判決
に対しましては、前に申し上げましたように、四百十五条の
規定
によりまして
最高裁判所
に
異議
の
申し立て
ができることになっておりますし、また
判決
訂正の
制度
は従来から
裁判
の威信及び
事件
迅速
処理
の観点から種々の批判がなされておったのでありますが、その運用の実績に徴しましても、特にその
制度
の必要性があるということも考えられませんので、これを
廃止
することにいたしたのであります。 次に、四百十六条から四百十八条までの
規定
でありますが、これを削除いたしておりますが、これは今申し上げましたように、
判決
訂正に関する条項であって、四百十六条及び十七条はこの
判決
訂正の
制度
の
廃止
とともに不必要となったのであります。また、四百十八条の方は、
上告
裁判所
の
判決
が言い渡しとともに確定するということは、
改正
後の四百十五条の第二項に
規定
してございますので、これも不用となったので
廃止
しようというわけであります。 四百二十八条でございますが、これは、さきに三百八十五条第二項、三百八十六条第二項、四百三条第二項の削除について申し上げましたところですでに
説明
いたしてありまするが、
高等裁判所
がしました控訴棄却または公訴棄却の決定に対する
異議
の
申し立て
に関する
規定
がなくなりますので、第二項に後段を加えまして、それらの決定に対しては従来
通り
異議
の
申し立て
をすることができる
趣旨
を明らかにいたしますとともに、第三項の字句を整理したのであります。 四百二十八条の二でございますが、これは、
改正
後の四百十五条に
規定
する小
法廷
のした
判決
及び
上告
棄却の決定を除きまして、小
法廷
のしたすべての決定に対して
憲法違反
を
理由
として
最高裁判所
に
異議
の
申し立て
をすることができることに定めたもので、四百十五条と同
趣旨
の
規定
でございます。ただ
本条
に言う小
法廷
の決定の中にはいろいろの性質のものが含まれておりますので、第四百十五条の場合のように単に刑の
執行
の
停止
ということではなくて、
裁判
の
執行
の
停止
というふうになっております。 次に、四百三十三条の
規定
でございますが、この
改正
は、四百五条の
改正
による字句の整理であります。 それから、四百五十三条の二の
規定
を新設いたしております。これは、
改正
後の第四百十五条の
規定
によります
異議
の
申し立て
を棄却した
最高裁判所
の
判決
に対しましても、
上告
を棄却する
判決
に対する場合と同じように、再審の
申し立て
を認めようとする
趣旨
でございます。なお、
最高裁判所
が小
法廷
の
判決
を破棄した上でした有罪の
判決
に対しましては、四百三十五条の
現行
の再審の
規定
によりまして再審の
申し立て
が許されるということは、申すまでもないところであります。 最後に、四百七十五条の
規定
でございますが、これは、法務
大臣
が死刑の
執行
を
判決
確定後六ヵ月以内に命じなければならないが、この死刑の
執行
を命ずべき期間、これが一定の場合に延長されるとなっておりますが、この延長される場合といたしまして、新たに設けられました四百十五条による
異議
の
申し立て
があった場合を付加したわけであります。 以上簡単でございますが条文別の
説明
を終ります。
三田村武夫
5
○
三田
村
委員長
以上で
補足説明
は終りました。 本
法律案
に対する質疑は次回に譲ることといたします。
古島義英
6
○古島
委員
この法案はきわめて重大でありまして、
最高裁判所
の
機構
を変えるものであります。そこで、
最高裁判所
の
機構
を変えるのに、
最高裁判所
のだれが責任を負われるか。事
務総長
がおいでになっておるが、事
務総長
で答えられないところはだれが
説明
するのですか。その
説明
のために責任のある人が
審議
のときには来てもらわなければならぬ。練達堪能な事
務総長
ですから、一切法案のことについても
説明
ができましょうが、
最高裁判所
の四百五条、四百十一条というような重大な問題があるのでありますが、これはその局に当っている人が出てこなければだれも
説明
できません。ぜひ
長官
なり何なり出てもらうように御尽力をお願いいたします。
三田村武夫
7
○
三田
村
委員長
古島君に申し上げます。御
意見
の
通り
、本法案は非常に重要でありますから、どのように取り扱うか、
法務委員会
散会後
理事
会あるいは御出席の
委員
全員
まじえましての
審議
の進行についての御懇談をいたしたいと思います。了承願います。 本日はこの程度にとどめ散会いたします。次会は公報でお知らせいたします。 午後零時三十一分散会