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1957-02-28 第26回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十八日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 三田村武夫君    理事 椎名  隆君 理事 福井 盛太君    理事 横井 太郎君 理事 菊地養之輔君       小林かなえ君    世耕 弘一君       高橋 禎一君    林   博君       古島 義英君    松永  東君       山口 好一君    横川 重次君       神近 市子君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  村上 朝一君  委員外出席者         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  滞納処分強制執行等との手続調整に関する  法律案内閣提出第三五号)     —————————————
  2. 三田村武夫

    三田委員長 これより法務委員会を開会いたします。  昨日に引き続き、滞納処分強制執行等との手続調整に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。椎名隆君。
  3. 椎名隆

    椎名(隆)委員 昨日に引き続いて二、三質問したいと思います。  大蔵省提出参考資料の「国税徴収法規準用法令調」を見ましても、八十に近い諸法規が私債権に優先して徴収し得ることになっておることは御承知であろうと思います。一体国税地方税その他諸種の公課等滞納処分間の優先順位調整はどうなっているのでございましょうか。本法が従来の公権優先主義を少しでも是正している点については好感を持って迎えられるのでありますが、この順位について、よくわかりませんので、お教えを願いたいと思います。
  4. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 御指摘のように、七十七に及ぶ多数の法律の中で、国税滞納処分の例によるという規定を設けております租税公課があるのでございます。それらの法律におきまして、それぞれ順位国税に次ぐあるいは地方税に次ぐというような規定が設けられておりますけれども、国税に次ぐ公課相互の間の順位はどうなるかというような問題は必ずしも明確になっていないのでございます。これらの点につきましては、先般来大蔵省に設けられております租税徴収制度調査会でも問題になりましたが、各種の租税公課順位を何らかの機会にもっと明確にすべきであるという要望が出まして、内閣法制局の方で目下検討中のように聞いております。
  5. 椎名隆

    椎名(隆)委員 そうすると、今まで滞納処分によって競売した売得金に対して、配当等に当って何か問題が起ったことはないのですか。
  6. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 国税徴収法の第二条におきまして、滞納処分をやりました租税なり公課についてはいわゆる先取権主義をとりまして、これを優先的にとるということになっておりますが、そのほかの租税公課交付要求をいたすわけであります。交付要求の際に順位が問題になった例はあるかと存じますが、私ども詳細のことは承知いたしておりません。ただ、国税庁におきましてそういう場合の相互順位等について詳細な通達を出しまして、それによって処理しておるように承知しております。
  7. 椎名隆

    椎名(隆)委員 強制執行を受けるとかあるいは滞納処分を受ける人の立場になってみると、非常に大きな問題であります。執行吏相当教育も受けまた経験もあることになっておりますが、地方自治体あたり徴税吏員のそういう資格のある者はきわめて少い。一体地方自治体あたり徴税吏員がどんな資格でどんな教育を受けてどんな組織のもとで差し押え競売等をやっておるか、御存じですか。
  8. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 市町村等徴税吏員がいかなる素養を持ち、どういう資格を持った人たちが当っているかということにつきましては、私ども詳細承知しておりませんけれども、組織的な訓練を経た人たちばかりではないように仄聞いたしております。これら多数の市町村公共団体等におきましてそれぞれ滞納処分の例によって租税公課徴収するということについて、もしそれらの公共団体等にそれぞれ徴税専門家を配置しなければならぬということになりますと、相当経費も要ることでございましょうし、なかなか専門家ばかりも得がたいというような事情も考えられますので、これを国税滞納処分の例によって徴収する執行機関を一元化してはどうかというような意見も出ておりまして、ただいま関係当局の方で研究中のように伺っております。
  9. 椎名隆

    椎名(隆)委員 公祖公課徴収行政権警察権に匹敵すべき非常に強力なものを持っておるものであります。また、受ける人の立場に立ってみると非常に同情しなければならない事情相当あると思う。これに対しては、行き過ぎ等がある、あるいは権利乱用等があっては、私は困ると思う。こういうものを一元化するにはある程度までの経費のかかることは私は仕方がないと思う。それについて何か立法措置でも講ずるような意思はございませんか。
  10. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 所管外のことでございますので、詳細な御返事はいたしかねるのでございますが、先ほど申し上げました租税徴収制度調査会におきまして、立法措置を講じてでも執行機関というものを一元化するということの可否については目下検討中のように承知いたしております。
  11. 椎名隆

    椎名(隆)委員 さらに、第九条の強制執行続行申し立てでございますが、裁判所相当だと認めたときには許すことになっておるし、これを申請があって決定した場合においては不服の申し立てができない。勢い、強制執行続行は、一ぺん強制執行したならば必ず強制執行続行をするということが一つの条件になってくるだろうと私は思う。その場合において、裁判所相当と認めるときには許さなければならないことになっておる。その相当と認めるということが第九条の中にもありますが相当だと認めるその判断の基準がどこにあるか、これを具体的に一つお教え願いたいと思います。
  12. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 昨日逐条説明の際にも申し上げましたように、差し押え物を換価いたしましても滞納処分による差し押えにかかる租税その他の公課及び滞納処分手続費用等弁済して残りはないと考えられる場合、あるいは滞納処分が特に遅延しておるわけではなく、近く進行することが明らかであるような場合、あるいはまた適当な見積り価額が付されている物件について買い受け希望者がないために公売が延びておるというような場合には、強制執行の方を続行いたしましても債権者にとって有利な結果になるとは考えられないのでありまして、かような場合には続行相当としないものと考えられるのであります。また、国税徴収法によりますと、「滞納処分執行ニ因リ滞納者ノ事業ノ継続ヲ著シク阻害スル虞アリ且其執行猶予ガニ其執行ヲ為ス場合ニ比シ其滞納ニ係ル国税及滞納処分費徴収有利ナリト認ムルトキハ政府ハ二箇年以内ノ期間限リ当該国税及滞納処分費ノ全部又ハ一部ノ滞納処分執行猶予スルコトヲ得」というような規定もございまして、今直ちに公売してしまったのでは税金を全部徴収することはむずかしいが、ここ一、二年待ってやれば全部徴収できるというような場合には、滞納処分によって差し押えたまま、公売等手続をやらずに猶予することができることになっておるわけであります。かような場合におきましては、一般債権者にとりましても、今直ちに強制執行続行するよりは、これを猶予すると申しますか待ってやる方が有利な場合であろうと考えますので、この条文に該当するような状況でございますれば、続行相当としない場合であろうと考えるのであります。ただ、かような規定が従来とかく悪用されまして、必ずしもこの条項に該当しない場合にかかわらず差し押えをしたまま滞納処分の方が進行せずに長らくほうっておかれる、そのために債権執行ができないということが、今回御審議を願っておりますような立案を要望されるに至った理由であろうと思うのであります。
  13. 椎名隆

    椎名(隆)委員 滞納処分競売を二年間猶予することができるというのはつまり滞納処分に関する規定であって、この強制執行に対してもその規定が準用せられますか。
  14. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 ただいま御指摘規定滞納処分についての規定でございますが、こういう規定の正しい適用によって滞納処分の方が遅延しておる、長く進行しないというような場合には、これを直ちに強制執行の方を続行することが相当かどうかという判断をするにつきましては、相当でないと判断されることになる、かような趣旨で申し上げたのであります。
  15. 椎名隆

    椎名(隆)委員 最初滞納処分を受けていて、それから強制執行されて、強制執行続行申請があって、その決定があると滞納処分より先行する。そうすると、最初になした滞納処分が、さらにあとからなした強制執行続行申請があり決定があったとするならば、それに負けちゃ大へんだというので、最初滞納処分をした行政官庁がさらに続行申請ができますか。
  16. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 滞納処分が先行する場合に、それを強制執行手続に移す場合は、第九条の強制執行続行決定によるわけであります。逆に、強制執行が先にありまして、それを滞納処分手続に移行する場合は、滞納処分続行承認決定を受けるということになっております。この続行決定滞納処分続行承認決定とが繰り返し行われて、強制執行に移ったり滞納処分に移ったりするというようなことも形式的には可能な条文になっておりまするのでありますが、その場合に再び滞納処分に移るのが相当と認められるような状況があれば、本来強制執行続行決定を適用することは相当でない場合でありまして、続行決定そのものが行われないだろうと思われます。また、強制執行続行相当と認めて続行決定がありました事案について、その後滞納処分続行承認を求められましても、裁判所滞納処分続行相当と認めない場合が多かろうと思いますので、事実上強制執行手続滞納処分手続の間を行ったり来たりするということは起らないであろうと考えております。
  17. 椎名隆

    椎名(隆)委員 事実上は起らないだろうと思うけれども、形式的には、この法律趣旨から言えば滞納処分続行ができる。強制執行続行もできる。そうすると、続行々々の競争になってくる。ひとり苦しむのは債務者だけである。どうも、強制執行続行滞納処分続行とが実際的にはできないであろうと言うが、形式的にはできるということになっていると、お互いにイタチごっこ競争みたいなことになると考えるのですが、そこのところを何とかうまく調整することは考えられませんか。
  18. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 強制執行続行決定が行われた事件については再び滞納処分続行承認決定はできないとかいう規定を設けますれば、ただいま御指摘のような繰り返しが起る心配はないわけでありますが、事情によりまして、必ずしも一たん強制執行に移ったあとそれを滞納処分に戻すことが不当な場合ばかりでもないかと思うのであります。たとえば、滞納処分から強制執行に移りました後に債権者債務者が通謀いたしまして、強制執行を故意に引き延ばしておるというような事情あとになって現われますれば、また収税官吏の方で滞納処分続行承認を求めるということも考えられるのであります。かような場合に、一たん強制執行に移した場合は滞納処分に戻すことはできないということを法律の上で規定しておく必要はなかろう、かように考えた次第であります。
  19. 三田村武夫

  20. 古島義英

    古島委員 本法を設ける必要が私は一向了解できないのであります。債権者便宜にならず、債務者保護にもならず、ただ取扱いの便宜のためにやるというだけであって、一向に本法を設ける必要が見出されないのでありますが、どういうところがねらいでありますか。
  21. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 従来、滞納処分が先に行われますと、一般の私債権者滞納処分による差し押え解除を待って強制執行を始めるほかはないのでありますけれども、その目的たる財産滞納処分によって差し押えられたまま長い期間放置されるということが少くないのでありまして、そういうことがありますと、その間強制執行または競売による権利実行ができないばかりでなく、滞納処分による差し押え解除されました後、債権者の知らない間にその財産が他に譲渡されるということがありますと、もはやその財産に対して私債権執行することができなくなるのであります。かような意味から申しまして、少くとも私債権実行を迅速的確にし、債権者権利保護に一歩を進める効果があると考えるのであります。また、強制執行または競売手続が先に行われました場合に、租税その他の公課は原則として売得金から優先的に交付を受けることができますので、この点では租税その他の公課は私債権に比べまして有利な地位にあるのでございますけれども、強制執行目的たる財産の換価を見ないで終了したような場合には、すぐに滞納処分による差し押えをしないと、財産の譲渡によって租税徴収ができなくなるというようなことも考えられるわけであります。かように、一般債権者にとりましても、また徴税機関立場におきましても、かような重複して差し押えができるということが望ましいのでありまして、さような趣旨でこの法律案が立案されたわけであります。
  22. 古島義英

    古島委員 そういたしますと、債権者債権保護するというのが主たる目的であると承わるのであります。民事訴訟法で二重競売が禁止される、そこで、禁止されているがために差し押えもできないので、結局債権者債権取り立てることができないから、取り立てを容易ならしめるために本法を設けるように聞えるのです。もしそうであるならば、民事訴訟法の六百四十五条の二重競売を許さないという法条の改正によってその目的は貫徹することができるんじゃないでしょうか。
  23. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 民事訴訟の六百四十五条は民事訴訟法による執行相互関係でありまして、つまり、私債権によって強制執行が行われている財産に対してさらに私債権による差し押えができないという規定でございます。もっとも、その場合に、競売申立書執行記録に添付することによりまして、配当要求効力を生じますばかりでなく、先に開始されました競売手続が取り消しになりますと、執行記録に添付せられました競売申し立てについて開始決定があったという効力を生ずることになっておりまして、私債権相互の間の執行につきましてはかような調整規定がすでに設けられているわけでございます、この法律案で考えておりますのは、民事訴訟法による強制執行手続国税徴収法による滞納処分手続との間の調整でございまして、民事訴訟法自体に設けるよりは別に法律を立案する方が適当であろうと考えた次第でございます。
  24. 古島義英

    古島委員 その点は民事訴訟法相互関係だということはわかっておりますが、その六百四十五条の改正をいたし、一方、国税徴収法から言えば、三十条に特に国税滞納分取り立て残りがあれば供託規定があるように覚えております。供託規定がある以上は、一部が残ったならばその部分は他の債権者のために供託することができるとあるのでありますから、国税徴収法でも債権をそのまま無視するわけではないのであります。そして片方の六百四十五条の改正をいたせば、——これは改正をせぬでもよいという説もある。学説は二派に分れておるようでありますが、国税滞納処分差し押えを受けた物品に対してまたさらに差し押えができるという。この方は学説が分れておりますから、いずれをとってもよろしいのでありますが、学説がそういうふうに分れるようなことにしないためにも、この六百四十五条に改正を加えれば、それで全般目的を達することができるのじゃないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  25. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 古島委員の御指摘のように、民事訴訟法国税徴収法とそれぞれ改正することによって両者手続の橋渡しと申しますか調整をはかることももとより可能だと考えますが、もう一つ方法として、民事訴訟法国税徴収法との両者にまたがる事柄でありますので、別に一つ法律にした方がわかりいいのではないかという考えで、この形で立案いたしたのでございます。
  26. 古島義英

    古島委員 どうもこのごろの役人は、法律でもよけいこしらえなくんば自分の名が通らないというようなことで、むやみに法律をこしらえておる。私は今は法律の整理をせねばならぬ時期だと存じております。しかも、国税徴収法によりますと、とうていしろうとにはわからないようなことが書いてあるのであります。御承知でもありましょうが、あの三十一条の規定でございます。三十一条の規定によると、もし税務署の発した処分に向って異議があるならば再調査請求をしろ、しかも一カ月以内にやれという。その決定に対してまた異議があれば今度は国税庁長官なりあるいは国税局長なり税関長なり、これらに向って審査請求をしろという。審査請求をして、それに何か不服があるならば訴訟を起すことができるとある。しかも訴訟を起す時期については非常に議論があるので、何らの決定をしないで六カ月過ぎた、あるいは再審査請求をしたけれども三カ月たって取り戻せないような損害を受くるおそれがあるという場合には訴訟が出せるという。ところが、そういうふうな難解のことをしろうとに知れといっても、これは実際にはできゃしません。しかも、最後には、同じ条文のしりの方でありますが、何でもかまわぬから再調査申し出をいたしてそれから九カ月たってしまったならば訴訟というものは一切できないぞと書いてある。しかもその九カ月は不変期間だというのであります。こうなりますと、六カ月初めたって訴えが出せる、しかも六カ月たつ間に、三カ月でもいいが回復することのできない損害があるならば訴えが出せる、こういうことをやっておりますと、六カ月待っておって税務署に交渉をいたす、交渉している間に税務署はいろいろな手を使います。あるいは書面を出せ、何かの証拠になるものがあったら出せと言う。そういうものを出そうというので調査いたしておると、その間に一カ月や二カ月過ぎてしまう。一カ月、二カ月過ぎてしまうと、今度は、書類を出したと仮定いたしますと、その書類を預かっておって、そのうちにこっちから通知をやるから出てこいと、こうやります。出ていったときにはもう九カ月になんなんとするときであります。そこで、折衝している間にもう九カ月たって、十日か十五口も日を余すという場合には、お前の方で文句言うのならば裁判所訴えたらよかろう、こう出る。ところが、それから今度弁護士なんぞに相談いたして出そうというので計画いたしますと、もう九ヵ月過ぎてしまう。そこで訴訟は出せない。それを税務署の連中は知っておりますから、ことさらにそこまで引っぱってくる。そうしてこれはどうしても異議申し立てあるいは訴訟の出せないようにしむけてしまう。こういうふうなことがあるから、この法律をこしらえるよりは先にこの国税徴収法の三十一条等を改正をいたして、民衆に大体のけじめがついて、そうしてどういうふうにやればいいかということが周知できるような方法をとることがほんとうに親切なやり方ではないか。この三十一条にさらに手をつけずに、こういうふうな法律を出しても一向に私は用をなさぬと思うが、いかがでありますか。
  27. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 国税徴収法がきわめて古い法律でございまして、わかりにくい規定も多うございますし、時勢に即しないという非難を受けておる規定もございます。大蔵省におきましても国税徴収法の全面的な改正を計画いたしまして、大蔵大臣諮問機関として設けられました租税徴収制度調査会に諮問されまして、一昨年あたりから国税徴収法全般にわたりまして検討を進めておるわけでございます。国税徴収法全面改正が終った後に初めて強制執行滞納処分調整を考えるべきだという点につきましては、私どもといたしましては、国税徴収法改正の有無にかかわらず、すでに多年在野法曹その他から強く要望されております。この両者調整の方を切り離して先にやる方が適当であろう、かように考えたわけであります。
  28. 古島義英

    古島委員 一般強制執行にいたしましても、別にこれを禁止する、つまり国税滞納処分差し押えられたものをさらに差し押えを禁止するという条項は別にないわけです。禁止することはないのだから、解釈のやりようによっては差し押えができるわけです。しかもそのことを大体前提にしてこしらえたのが国税徴収法の三十条だと思うのであります。三十条には債権者のために供託をすることまで書いてあるのでありますから、どの債権者かが債権取り立て申し出るということを前提にして、金の残った分を供託するという規定がある。そうすれば、二重差し押えができないという法律禁止規定はなく、しかもそれの疑いを起すのが先ほど申した六百四十五条だというならば、これに一部修正を加え、そうして国税徴収法の三十条の規定を生かすやり方において、あなた方の企図いたしておる本法案の目標を全部達すると私は思うのでありますが、いかがでありますか。
  29. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 御指摘になりました国税徴収法三十条に、債権者または滞納者交付すべき金銭はこれを供託することができるという条文がございますが、この債権者交付すべき金銭とありますのは、この二十八条に、売却したる物件質権抵当権目的物であるときは、その代金からまず滞納処分費及び税金を控除し、次に債務額にみつるまで債権者交付するという規定がございまして、これを受けておる条文なのでございます。従いまして、質権者抵当権者には三十条によって残余金交付されますけれども、一般債権者滞納処分手続において配当要求をするというようなことは認められておりませんので、抵当権者質権者交付した残余があれば、それはそのまま滞納音に返されてしまうということになります。なるほど、三重差し押えができないという規定民事訴訟法にも国税徴収法にもないのでございますけれども、すでに明治三十年ごろから三重の差し押えはできないという解釈一般に行われて、おりまして、最近になりまして一、二下級裁判所差し押えができるという判決をした例もございますけれども、まだ最高裁判所判例を得るに至っておりません。むしろ大審院時代には二軍差し押えはできないということが判例になっておったようであります。従いまして、少くとも疑義がございますのみならず、二重差し押えがかりにできるといたしましても、相互残余金交付するとか、あるいは手続促進のために他の手続に移すというようなことは、特別の立法を待たなければできないのでございまして、差し押えた状態のまま他の先行する差し押え解除になったときに動き出すという程度のことは解釈でまかなえるかと思いますが、それ以上のことは立法が必要じゃないか、かように考えます。
  30. 古島義英

    古島委員 そこで私は改正だけでいくという意見が出るのであります。お答えのように、質権であるとか抵当権であるとかいうものがわかっておるならば、それには供託をして弁済に充てる、こうなっている。そうすると、今度は債権申し出をした者にはやはり供託をする、弁済をする、交付する、こうやれば何でもない。そこで、国税滞納処分差し押えを受けたことがわかれば、それに債権を有する者は配当申し出をするとかあるいは債権の届出をするとか、その程度でいいのではないか。質権抵当権がわかっておるから交付をする、金は供託する。わかっておればやはり交付する、金はこれを供託するということになれば三十条も生きて参ります。そうして、一方に国税滞納処分から言っても二重の差し押えは禁止してないし、また民事訴訟強制執行編によっても何ら二重差し押えは禁止してない。そこで、六百四十五条の一部改正をいたして、配当要求ができるような形にすれば、一向に差しつかえない。二重競売を許さぬということは常識でわかる。二重競売の問題ではない。二重差し押えを許すか許さぬかという問題。ほんとうにそれが確定した債権であり、また疑うに足らない、つまり何らの疑いのない裁判所の債務名義を持っているような債権であれば、届け出しだけでいいんじゃないか。そうすれば、わずかの二、三の法条を改正すればその目的を達するのであります。また、あなたの方の出したこの法案によりましても、ずいぶんややこしいのであります。四条もしくは十三条は動産、不動産に分れているだけでありますが、この規定から見ましても、すでに一方が差し押え解除した後でなくんば片方はできないということになっている。それで、一方が解除した後に競売手続をし売却をするということになれば、これも同様な意味であります。二重競売はしないがとにかく債権申し出をするという程度であります。この四条と十三条の精神から言えば、別にあらためてこういう単行法を設ける必要はさらにないと存じますが、いかがでありましょうか。
  31. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 国税徴収法改正いたしまして、一般債権者債権申し出を認め、それに対する配当もやるということになりますと、民事訴訟法裁判所がやっております配当期日における手続債権調査及び債権確定の手続等を収税官吏がやることになるのでありまして、果してそれが適当であるかどうかという問題もあろうかと存じます。のみならず、かりに国税徴収法民事訴訟法をそれぞれ改正いたしましても、相当複雑な規定が必要になって参ると思われますので、むしろ滞納処分民事訴訟法による強制執行との関連のある点だけについて独立法として作っていただく方がわかりいいのではないか、かように考えた次第でございます。
  32. 古島義英

    古島委員 どうも私には、頭が悪いせいか知らぬが、一向納得ができない。それならば、あなた方のこの法案についても、片方が解除をいたさなければその強制執行による売却だとかあるいはまた滞納処分による売却だとか、これができないというような法条を設けるということ、そのことはきわめて変な話であります。同時に競売ができるのなら別であるが、片方が解除されなければ競売ができないということを書いている以上は、同じくこの片方の国税徴収法なりあるいはこの民事訴訟法規定なりを改正して同様の目的を達する、——別にこういうふうなあらためての法律を設ける必要はさらにないように私は考えます。同時に、このことを設けたがために非常な弊害があると思うのであります。たとえて言えば、銀行の預金は、もちろん銀行の債務でありますから払い出すのは当然であります。ところが、一人が払い出しを請求したらばほかの預金者にも全部これを通知をして差し押えをさせるというようなことにすれば、いわゆる取付騒ぎが起る。この取付と同様なことになるのであります。国税滞納処分差し押えを受けた、そうすると今度はほかの債権者がわっと一ぺんに寄ってくる。こういうことになると、どんな人であっても、事業を手広くやっておる人はこれでつぶされてしまう。銀行の取付騒ぎと同様の結果になるから、利益がなくて弊害が多い法律だと私は考える。しかも、一部の法律改正でなくてこういう独立の法律を出したがためにその弊害が起るということになればゆゆしきことでありますから、どうかお考えになったらどうかと思う。
  33. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 滞納処分による差し押えが行われると非常に多くの債権者から強制執行を受けるようなことはないかという点でございますが、強制執行をいたしますためには、申すまでもなく債務名義が必要なわけでありまして、債務名義を持った債権者は何時でも強制執行ができるわけであります。従来は滞納処分によって差し押えられておった財産については二重の差し押えはできないために差し控えておった債権者が、この法律ができましたために差し押えをやるということは起るかと存じます。ただ、債務名義を持った債権者は、滞納処分目的になった財産以外にも、財産があれば、それに対して強制執行ができるわけでありまして、特にかような調整の措置が法律によって講じられたからと申しましても、債務者の取付騒ぎのような弊害が起きるというふうには考えておりません。
  34. 三田村武夫

    三田委員長 古島君に申し上げますが、今の古島委員の御質疑の内容は、ひとり法務省民事局の立案者の立場だけでなくて、お話の通り国税庁、同時に自治庁関係地方税関係にも非常に深い関係がありますので、大蔵省国税当局、それから自治庁の地方税関係の責任者も当委員会に出席していただいて、十分御審議願いたいと存じます。それで、法務大臣が御出席になりましたが、古島さん、大臣はいつでも来るそうですが、どういたしますか。
  35. 古島義英

    古島委員 それでは、きょうはあとへ留保しておきます。
  36. 三田村武夫

    三田委員長 それでは、本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時三十一分散会