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1957-07-09 第26回国会 衆議院 文教委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年七月九日(火曜日)     午前十一時十五分開議   出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 赤城 宗徳君 理事 高村 坂彦君    理事 竹尾  弌君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       徳安 實藏君    永山 忠則君       山口 好一君    木下  哲君       櫻井 奎夫君    高津 正道君       辻原 弘市君    野原  覺君       平田 ヒデ君    小林 信一君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局保健課長)  塚田 治作君         文部事務官           (初等中等教育         局教科書課長) 安達 健二君         文部事務官         (社会教育局芸         術課長)    宇野 俊郎君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (薬務局細菌製         剤課長)    高部 益男君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 五月十九日 委員松岡松平辞任につき、その補 欠として永山忠則君が議長指名で  委員に選任された。 同月二十一日 委員永山忠則辞任にっき、その補 欠として遠藤三郎君が議長指名で  委員に選任された。 同日 委員遠藤三郎辞任につき、その補 欠として永山忠則君が議長指名委員に選任された。 六月十四日 委員小牧次生辞任につき、その補 欠として上林與市郎君が議長指名委員に選任された。 七月九日 委員並木芳雄君、上林與市郎君及び 鈴木義男辞任につき、その補欠と して徳安實藏君、下川儀太郎君及び 辻原弘市君が議長指名委員に選 任された。     ————————————— 五月十八日 一、国立及び公立義務教育学校    の児童及び生徒災害補償に関    する法律案山崎始男君外六名    提出、第二十四回国会衆法第八    号)  二、市町村立学校職員給与負担法及    び地方教育行政組織及び運営    に関する法律の一部を改正する    法律案平田ヒデ君外二名提出、    衆法第一八号)  三、公立学校施設費国庫負担法の一    部を改正する法律案櫻井奎夫    君外三名提出衆法第二二号)  四、教育、学術、文化及び宗教に関す    る件 の閉会中審査を本委員会に付託され た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件 教科書問題に関する件 児童生徒流感対策に関する件     —————————————
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  文教行政に関し調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原委員 ちょうど何やら内閣改造とかいうことで、非常に与党の方ではごたごたされておるわけでありますが、きょうは大臣の御出席が願えなかったことを大へん遺憾に思います。従いまして、政策的な問題は山積をいたしておりまするが、これは近く責任のある答弁ができる態勢が政府の方に整いましてからやることにいたしまして、きょうは主として事務当局に問題を提起いたしまして伺いたいと思います。  最初に教科書の問題について伺いたいと思います。すでに明年度教科書採択について七月一日から展示会が始まっております。例年の例を見ましても、われわれは教科書採択は、展示会を通して公正に、現に教科書を使用する教職員がこれを採択すべきである、こういう立場でとの展示会を重視して参ったのでありますが、その過程に、これは企業として許されておる教科書会社が、従来しばしばこの展示会をいわばたな上げにいたしまして、それぞれ教科書宣伝にこれ努めている傾向があったのであります。同時にまたその教科書宣伝過程においては、不公正ないわゆる教科書販売供給、こういうことが行われておったことも事実でございまして、かつて行政監察委員会、あるいは教科書法案の審議に当ってこのことは当委員会においても種々論議せられたところでありますが、その後公正取引委員会警告文部省指導、こういうものによりまして若干表面的には影をひそめたようではありますが、しかしそういった不公正に類するような取引行為が全然根絶したというのは当らないのでありまして、考えようによりますと、なお巧妙な、悪質なそういった方法によって教科書供給が行われているのではないかというふうなことも予想にかたくないのであります。従って私はそれらの問題について例をあげて文部当局考え、今後の指導についての確固たる方針を承わっておきたいと思います。  今申し上げましたごとく、表面的にはなくなったが、影をひそめたその裏面的なやり方においてはいろいろな巧妙な方法が行われているということを申しましたが、一例を言いますと、今まで最もこの教科書供給販売についてとかく問題を起しがちだというふうに考えられて参りましたのは、駐在員制度であります。文教当局は、この駐在員制度についてはなくしていきたいという考え方を持って指導に当られたようでありますが、私どもの見るところでは、今日必ずしもこの駐在員制度が合理的に改善せられたとは考えられないのであります。一体駐在員制度現状はどうなっておるのか、この点を承わっておきます。
  4. 内藤誉三郎

    内藤説明員 教科書採択につきまして、私どもは絶えず公正に採択されるように希望いたしておるのであります。こういう意味で常設の展示場を昨年度来開設いたしまして、常時教科書センターにおいて教科書研究を進めていき、お話のように七月一日から十日間、これは法定の展示会が開催せられておるわけでありまして、全国六百カ所の教科書センター及び約二千に及ぶところの臨時分館中心教科書研究が進められて、その十日以後に教科書採択が行われることになっておるのであります。ことで御指摘のように不公正な取引が行われてはなりませんので、昨年の暮れに公正取引委員会が、教科書につきましては金銭、物品の贈与とかあるいは供応、その他他の教科書会社を中傷、誹謗する、こういうような点を特殊指定をいたしまして、取引の公正を期したわけでありますが、なおお話のように現実にはいろいろと問題があることを私どもも承知しておるのであります。その問題の一つの大きな問題として、ただいま駐在員制度を御指摘になったのですが、駐在員につきましての現状はほとんど各社とも置いておるようでございます。初めは大きな会社が大体置いておったようでございますが、最近はだいぶ駐在員を置く会社がふえて参った。また駐在員を置くことによって、それだけ実績が上っているようにも伺っておるのであります。こういう点で私どもとしては駐在員を全廃するという方針教科書協会の方にも申し入れをいたしておるのであります。最近になりまして教科書会社から成り立っておる懇話会では、文部省方針には全面的に協力するように方向だけは打ち出されたように聞いておるのであります。ただいろいろとこれを具体化するにつきましての問題について、業者と文部省側との十分な協議は遂げておりませんけれども、大勢として駐在員を廃止する方向研究を進めていただいておるのであります。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 文部省駐在員についての認識は、私と同様である点ははっきりいたしました。しかし現況はだんだん大きな会社駐在員制度をなくしつつあって、逆に小さい会社駐在員を置きつつあるという把握が少し私は踏み込み方が足らぬのじゃないかと思います。それはたとえば従来置いておったような駐在員という形じゃなくして、きわめて目に見えない、しかし駐在員に本来会社が負わしておったような仕事を形の違う組織体においてやっておるような事例が間々見受けられる。そういうものがもうすでに駐在員でなくなったという認識をしておったならば、これはとんでもない誤まりだ。例を申し上げますと、最近各種の教育研究所というものが、これがいろいろな団体あるいは政府研究機関等中心にして作られております。中には特定のそういった営利会社が作っておる研究所もある。ここに私は一つの本を持っておりますが、これは「学校教育研究所年報」とあります。この代表者を見ますると、川口芳太郎氏、——川口芳太郎氏はかつて監察委員会においても種々証言をなさったが、図書印刷株式会社社長であります。この中を私はずっと読んでみましたが、書かれておることは実にりっぱであります。しかもこの研究所目的は何ら会社営利行為とは関係がない、全然別だと強調されておる。そのこともけっこうであります。しかし一体この研究所は、どういうようなメンバーを中心にしてこの研究活動が行われておるかということを、詳細に検討いたしましたら、疑問が幾つもある。まず全国評議員というものを置いてある、百四十七名の評議員をそれぞれ地方に配置をいたしまして、そうして研究所研究活動をやるとこういうのです。一体地方においてどういう人が評議員になっておるかということをいろいろ調べてみますと、必ずしも会社企業経営とは全然関係がないということは言い得ない点がある。そういたしますと、この種の研究組織というものがやっておったことは、教育的にもちろんプラスでありましょうが、しかし別だとは言いつつも、やはり根は一つであるとしたならば、純粋な意味においてこれは教育研究活動のための研究所であるとは即断できない面がある、こういった事実を所管局長は御存じであるかどうかこれを伺っておきたい。
  6. 内藤誉三郎

    内藤説明員 私は何も大会社の方が減ったという意味に申し上げたのではないのでありまして、この点誤解のないようにしていただきたいのですが、当初は大体会社駐在員を置いた、最近は大会社でない中小の教科書会社も置くようになった傾向が見受けられる、こういうふうに申し上げたわけであります。各会社ともますます駐在員というものを強化して参るような形勢にございましたので、文部省といたしましては、教科書会社全体に対しまして駐在員制度を全廃してほしいという強い希望を申し上げて、これに対して教科書会社の方で御検討され、その結果文部省方針を原則的には承認された、こういう意味でございます。  それから今お尋ねの各教科書会社研究所を作っておるが、これをよく知っておるかというお話でありますが、そのことも聞いております。なお研究所以外にも教員研修会あるいは講習会等で、直接には教科書採択とは関係ないのでございますけれども、そういう意味のものもありまして、いろいろ手の込んだ宣伝方法が行われておることも十分承知しております。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 承知しておるということであるが、あと研修会、それから講習会、こういうような手の込んだものもある。ところがそれについては本年の文部省教科書採択に当っての指導には明確に現われておる、そういう行為はしてはならない。それから、これは公取にもあとから伺いますが、そのことについては不公正な行為として公取からも警告が発せられておる。ところが今言ったような研究所組織は新しい問題である。一つ全国的な組織体を構成して、わかりやすく言えば、駐在員にかわる組織体というふうにも考えられるようなものが表面に出てきたというのは、おそらく私は最近であろうと思う。今あなたも知っておるということでありましたから、これらについては一体どういうふうに文部省としては懇切に御指導なさるおつもりであるか、その点を一つ承わりたい。
  8. 内藤誉三郎

    内藤説明員 いろいろその実体が違うと思います。私ども一つの問題として検討いたしておりますのは、全国組織研究会でございます。この全国組織研究会でこれが編集もし採択を強制するようになると、これは少し行き過ぎだと思っておるのであります。いわゆる共同研究によってこれを編集採択を強要するようなことがあることは、これは私どもとして厳に慎しみたい。しかし今お尋ね研究所やり方でございますが、これが明らかにそういうような一つ組織となって教科書採択悪影響を及ぼすような事態がありますならば、これは私どもとして厳に取り締っていきたいと考えております。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 ちょっと今最後のところが聞き取れなかったのでありますが、全国的な研究会ないしは講習会、こういったものについての、純粋なものはもちろんこれは奨励すべきだと思いますが、いわゆる採択、それから販売供給に重大な関連を及ぼすといったようなものについては、これは文部省指導され、そしていわゆる展示会の直前までは、あるいは展示会の七月一ぱいですか、それまではそういうものは行わないようにというような指導が行われた、そのことはけっこうであります。それでなしに今問題にしているのは研究所の問題であります。こういうような新しい全国的な組織を持って、研究所研究活動と称して、そうして全国的に影響を及ぼすような行為、これを駐在員にかわってどしどし各会社がやり始めたならば、幾ら駐在員の問題を相当の決意を持って禁止いたしましても、何もならぬと思う。従ってこういう新しい一つの仕組みというものに文部省としても認識を持たなければならぬと私は申し上げる。しかし御答弁は知っておりますということと、全国的研究会については云々ということだけでありまして、この点についての文部省の判断というものはまだお伺いができないのですが、一体どういうふうにお考えでございましょうか。
  10. 内藤誉三郎

    内藤説明員 ただいま申し上げましたように、全国的な研究会でこれが編集もいたし採択を強要するようなことがありますれば、これは非常に教育上重大な問題でありますので、十分取り締りたい。今お尋ね研究所がそういう性格を持っているとは私ども考えていないのです。ですがその研究所組織なり活動教科書採択悪影響のあるような方法でありますならば、この点につきましては十分注意し、指導いたしたいと考えております。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 この研究所がそういうものとは全然違うとあなたは今はっきり言われた。何を根拠に全然違うということを言われたのですか。どういう意味影響を及ぼす研究所ではないというふうにあなたは結論づけられたのか、その具体的根拠一つ示していただきましょう。
  12. 内藤誉三郎

    内藤説明員 私結論づけてはいないのです。この点あなたが誤解していらっしゃるのじゃないかと思うのですが、この研究所研究本来の使命を達成するなら私ども差しっかえない、こう申したのであって、この研究所あるいはそれに類似する研究所教科書採択悪影響のあるような組織なり活動、この両面にわたって私どもも十分検討いたしまして、もし教科書採択悪影響のある宣伝行為をしていると認めた場合には、文部省としてはこれを看過するつもりはございません。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 そういうふうに言えば了解いたしますが、参考に申し上げておきましょう。先ほども申し上げましたように、研究所の概要として、営業活動とは厳密な一線を画しておるということを強調しておる。それならば私はどこが主催をして研究活動をやってもそれは御自由ですし、やっていただかなくてはならぬと思うのです。しかし誤解を生むのです。こういうような年報がどんどん出て、載せられておるものは特定会社教科書ばかり、しかもその主催者教科書会社代表者、しかも先刻言った全国においての百四十七名の評議員なんです。百四十七名全都は当っておりません。従ってこれも私が結論を申し上げることは早急であります。しかしおおよそこれを見た範囲の目的から見て推察せられることは、百四十七名全国評議員を置いて、そうしてその評議員がいかなる活動をやるかということは、これは常識をもって判断いたしますと、賢明な内藤局長もほぼおわかりだと思います。駐在員制度はなくなったものの、それがそっくりこういうような形におい、吸収されたとするならば、これは駐位員制度はなくしたといっても全く有名無実であるということを私は申し上げるのであります。それが純粋な研究活動をおやりいただく分には、これは文部省もどんどん協力していってもらいたいと思います。だからそういう形に指導をされることが適切であって、誤解を生むようなこういう研究組織あるいは研究所というものが所々に乱立してくるようなことでは、あなた方は今何のために指導をやっているのかというそしりを受けてもやむを得ない、これが一例であります。いま一つ例を申し上げましょう。これも取扱い上からいえば非常にデリケートな問題であります。しかしそのデリケートなすれすれの線をねらっていろいろやっておるのでありますから、そういう問題をとらえなければ事が明確にならぬ。たとえば各企業会社編集会議というのを催します。これはいろいろあると思います。私よりも所管のあなた方の方が詳しいと思いますが、その編集会議に、文部省は知りませんが、地方行政指導に当るそれぞれの責任者特定教科書会社教科書編集タッチをしている。そうしてある場合においては報酬を受けておる。一つの例を申し上げてみますと、これは会社名を申し上げるのははばかりますが、某社の主催によりまして、去る五月八日に近畿東海地区、六月二日に九州四国中国地区、こういう形においてそれぞれ編集会議なるものが催されておる。その編集会議出席者をそれぞれあれしてみますと、それぞれ当該地区指導主事、それから教育課長——これは他に迷惑を及ぼしてはいけませんから、はっきり申し上げましょう。まず近畿東海地区には大阪府の指導主事、京都からは市の指導主事教育課長、滋賀県においては指導主事、こういった人々がこれに出席をいたしまして、その編集タッチをしております。同様六日二日の会合においても、高知県の指導主事、熊本県の指導主事、こういった方々がそれぞれ編集タッチをせられておるのであります。私は何様が教科書編集をおやりになることもけっこうであると思います。しかしながら事採択関係のある——これは文部省がしばしば強調しておるところであります。また常識的にも、その職務にある者がその職務によって影響を及ぼされる行為——これは選挙運動考えれば一番よくわかります。警察官が選挙運動をやることを禁止しておるのはなぜか、権限を持って至大な影響があるからです。教科書については、少くともあなた方の御見解によれば、これは教育委員会相当量権限がある。その教育委員会の中で実務に携わる者はだれかといえば、学校教育法その他施行規則をひもとくまでもない、そういう方々が、直接にあるいは間接に、特定教科書編集タッチせられるということは、教育行政の、教科書の公正なる販売供給、この面に照らして一体どういうことかということについて、私は文部省見解を承わりたい。
  14. 内藤誉三郎

    内藤説明員 教育行政、特に教科書採択等関係があり、これを指導する職員が、いやしくも一営利会社編集会議出席することは、私は適当でないと考えております。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 適当でないということになれば、それは今後どういうふうな形に指導されるおつもりか。
  16. 内藤誉三郎

    内藤説明員 今後はそういう指導主事、あるいは指導課長、あるいは学校教育課長なり、教科書採択関連のある事務に携わる者が、教科書会社編集会議その他宣伝活動には従事しないように指導するつもりでおります。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 こういうことは、私は常識の部類に属すると思います。あえて公開の席上で申し上げましたのは、そういうような風潮が全国にびまんをいたしますると、幾ら文部省が当委員会教科書行政に美辞麗句を並べましても、あなた方が先般通した新教育法指導監督については何ら実行されていないということの証左なんです。そこであえて一言申し上げて、教科書行政がその行政を正さなければならぬとするならば、そういう指導監督の側にも重大な誤謬があり、重大な責任があるということを私は申し上げておる。これはそれぞれあえて指導主事教育課長と申し上げましたが、この種のことは、物事をむずかしく言えば、当然これは法律にも若干触れるきらいがある。地方公務員法を見れば、それぞれ当該公務員は許可を得なければ、いかなる営利企業にもタッチできないわけなんです。そういうような開き直ったものの言い方でなくとも、私はあえて教科書行政教育行政の正当なることを願って本日は申し上げるのでありますから、これについて早急にそういった形については是正、指導されることが必要だと思うのです。
  18. 野原覺

    野原委員 関連して。内藤局長お尋ねしますが、あなたは今までは指導してきたのですか、きていないのですか。これから指導する、これは当然のことなんだ。ところが今日まではどうだったか。今までは指導したけれども、依然として教育委員会諸君が聞かないというのか、あなたが指導をサボってきたのですか、どうなんです、そこをはっきりしてもらいたい。
  19. 内藤誉三郎

    内藤説明員 私どもはそういうことはかねがね注意して参ったので、私はただいま辻原委員からそういう事実を聞いて実はびっくりしたわけです。私どもとしてはまさかそういうことはあろうと思っていなかったわけです。そういう事実がありますならば、もちろん厳重に注意するつもりでおります。今後そういうことのないように十分指導を徹底いたします。こういう意味です。
  20. 野原覺

    野原委員 従来から注意をして参ったのに、このたびは聞かれていないということであれば、これからあなたが注意してもまた聞かれないであろうということも、およそ考えられるのです。これはあなたの威令は事教育界に関してはさっぱり行われていないのだ。僕はそういう皮肉は申し上げたくないけれども、そういうことも考えられるので、そういう場合の責任は、これは教育委員会にあることはもちろんですが、一体どういうことになるのですか。そういう場合には指導主事教科書のそういう面にタッチしては相成らぬということは、これは常識でもわかるわけですけれども、その点をあなたが注意したにもかかわらず聞かないわけですね。何回言っても聞かない。そういう場合の責任処断方法というものは僕はあろうと思うのです。教員学級定数の問題で何回要求しても聞かないから、集会を持ったら、文部省教育委員会を呼んで行政処分を勧告されるわけなんです。事官僚の亜流というか、流れをくむ者に対しては、きわめてゆるやかなんです。教員組合とその流れに関する限りにおいてはきわめて峻厳なんです。だからそのことを一つはっきりしてもらいたい。私は峻厳なら峻厳で行くべきだと思う。そういう場合は法規上はどういうことになるのか、これを明確に伺いたいと思います。
  21. 内藤誉三郎

    内藤説明員 このことは、法規公務員としてあるべき行為ではないと思うのです。特定営利会社編集会議その他宣伝行為公務員が従事してならぬことは、これは法の命ずるところでありまして、当然のことでございます。これについて、ただいま辻原委員からの御指摘のような事実があるかどうか、私の方も調査してみたいと思います。もしかりにそういうことがあるなら、これは厳重に注意をいたしたい。かねがね私どもとしては、教科書採択関係のある者がこういうものに従事してはならぬと指導して参っております。それについて本人の弁明も聞かなければならぬし、またとられた教育委員会の措置も聞かなければならぬし、まず私どもは実態を調査してみたいと思っております。  それから教員に対して峻厳であって、行政を行う者に対しては甘いという御批判もありましたけれども、私どもはむしろ行政を行う者にこそ峻厳でなければならぬと思います。教員諸君に臨む以上に、教育行政にある者に対しては峻厳なる態度で臨みたいと思っております。
  22. 野原覺

    野原委員 関連ですから、簡単に終りますけれども、一番最後の点は、あなたは言葉の上だけでなしに、やはり実践の面でお示しを願いたいと思うのです。教科書採択権というものは、これは今日の法規では私は教師にあると思う。学校採択権があると思う。これは一体どういうことになるのですか、教育委員会採択権があるのですか、それとも教師にあるのですか、その辺が一体どういうことになるのか、局長見解をお伺いしたい。
  23. 内藤誉三郎

    内藤説明員 教科書採択権限は、教育委員会にあるわけでございます。
  24. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、事はめんどうなんですわ。これは徹底的に論争しなければなりません。そういう考え方であなたが指導してきておるから、行政者に対しては事教科書の問題に関する限りきわめてゆるやかである。私の見解によれば、教育委員会というものは採択事務を行うにすぎないと私は考えておる。ところが採択権が教育委員会にあるのだということですが、私ども教育委員会採択事務しかない、こういう見解を持っておる。これは重ねてお尋ねしておきます。
  25. 内藤誉三郎

    内藤説明員 採択権限教育委員会にあると私どもは解釈しておるのであります。と申しますのは、教育行政権限というものは、教育委員会が持つか、それをある一部を校長に分担させるかでございまして、教職員自体に採択権限があるとは考えておりません。
  26. 野原覺

    野原委員 この問題は重要でございますから、なお文部省側は十分慎重に研究をされるとともに、私は明日も文教委員会がございますので、この問題について徹底的に究明したいと思う。ただいまの事は教科書問題に関する根本の見解の分れ目だと思いますから、これはあしたうんと勉強してきてもらいたい。
  27. 辻原弘市

    辻原委員 問題は根本問題にも触れてくると私も思っておる。あなたが新教育委員会法の二十三条ですかの職務権限をたてにとってそのことを言われていると思う。しかもまたそれについて最近地方の各教育委員会に通達を発せられたということも聞いておる。そういたしますと、今起きておるような問題は、私は非常に重要な問題になってくると思う。これがわれわれの見解のように、教職員採択権があるという見解文部省が持するならば、今言ったような問題は道義上追究せられる問題である。しかし教育委員会があくまでも教科書採択権があるということになれば、これは単に道義上の問題だけではなくなってくる。あなた方が常に一蓮托生で教科書行政をやっておられるそういった人々の重大な一身上の問題にも私はかかわると思う。これは私は多くを申し上げませんが、地方庁のみならず、かりに文部省にもこの種の問題があったとするならば、これは私はあなた方の指導される教科講行政が徹底をせられないという、そういったところに起因するのじゃないかと実は考える。その意味においてまず教科書行政の公正を期するその筋は、指導に当る指導官がより公正な頭を持つことが必要だと思う。今言っているのは私は供給の面だけを言っているのでありますが、さらにだんだんと検定といった問題にも問題が触れて参ると思うのでありますけれども、そういう点について行う者が公正でなければ、いくらそれを教科書会社に押しつけてみても不可能であります。そういう点からこれについては私は個人をどうこうというのじゃありません。行政の筋をただすということ、そのことをこの問題については申し上げておきたいと思う。しかしながらあなたはすぐ事実を知らないので調査をいたして参ります、しかしあとは野となれ山となれというようなことである。この間も高津さんが質問をいたしました件についても、速記録を後目調査しまして明確に御報告申し上げますということだったが一向に御報告が出ておらない。これはあとでその御報告を承わることにいたしますが、今の問題も調査をして報告するということです。しかしそういうことはもうあなた方が今駐在員をなくするということが原則であるということを発表されておる。しからば一体いかなる状態においてその供給がなされているかという実態の調査がなければならないと私は思う。しかしそういうことが表面化すれば直ちに通達だ、何とかいえば通達だといって通達を出すのですが、どうもそのやり方がおもしろくありません。一つの例を言いますと、六月二日文部省から通達を出しております。その内容は時間の関係で省きますが、やろうとしていることは、要するにそういったようないろいろな不公平なこと等については、これを文部省に内報せよ、内報せよということはこっそり知らせ、こっそり知らせということは、これはかつての日本の役所で言えば特高警察がやったことなんです。役所が表向きでやることはこれは内報ではありません。公式の文書でそれを提示するならよろしい。そういうようなニュアンスをにおわせて教科書行政をやるところに、ますます教科書という問題が陰にこもる。そうして問題がとんだところに発展して、検定教科書はいけないから一つしぼってみようじゃないかという愚論が天下を横行する原因になる。今もあなたは早急に調べてということをおっしゃいました。その調べ方について私は一言があるからあえてこの通達の問題を今申し上げたのでありますから、一体あの通達の真意はどういうことなんですか。やはり内緒でこそっと知らせて、それぞれ情報をあなた方がすわっていて握る、こういうおつもりでその通達を出されたのですか、それについてお尋ねしたい。
  28. 内藤誉三郎

    内藤説明員 六月二日の通達の内報という意味は決してこっそりとるという意味ではございません。これはたしか教科書課長の名で出したと思っておりますので、課長としては、職務局長が当然公文書は出すのが普通であります。ですから課長名でありますから、内報と言っておるだけのことでありまして、別に何ら他意はないのでありまして、正々堂々と御報告をいただきたい、こういう意味でありまして、決して特高警察のようなやり方をやる意思は毛頭ありません。
  29. 辻原弘市

    辻原委員 そういう意思はなかったというけれども、内報といえば受ける方は内報です。内報ということは、こっそりやらない内報というものはない。そういうことならかくかくの報告を求めるというのでよろしい。あえて内報とやったところに、今、内藤さんはうまいことを言われたけれども、しかしその真意は結局できるだけネタをわれわれのところに一つ持ってこい、ざっくばらんに言えばこういうことなんです。しかし私はそれは見過せない。あなたは先ほど言われたように、昨年の十二月二十日に教科書それ自体が特殊指定を受けた。特殊指定を受けた理由は一体何かというと、それは公正なる競争によって、公正なる活動によって展示会を通して教科書採択をする。こういう本来の教科書行政にするために他社を誹謗したり、他を傷つけたり、そういうような卑劣な行為によって販売競争を行ってはならないという趣旨なんです。だからそのままこれを第三者が受け取る場合は、結局文部省があえて公取特殊指定の三号ですか、これに違反しても差しつかえない、違反するような行為を慫慂すると曲解されてもいたしかたない。だからそういったような一つやり方教科書行政ではとっていただきたくない。それらの事実を、あなた方がそれぞれ地方に出張する場合もあるであろうし、いろいろな機会にそういう情報も得られるであろう。そうして起きた問題については迅速に、しかも一つ勇敢にこれを処理するという態度があるならば類似行為というものはない。そういう意味でこのような内報式情報収集方法というものはこれは一つ考えなおしてもらいたい。これはあえて教科書会社のどろ試合に文部省が介入してどろ試合に持ち込んで行くということを私はおそれるがためにこれは親切でもって申し上げる。次にもう一つあなた方の指導において気に食わぬのがあります。それは昨年まではなかった。しかしことしのあなた方の採択における一つ指導方針の一中に共同採択という言葉が入っておる。裏を返せばできるだけ教科書を統一して採択すべし、そういう指導方針が一本入っておる。これはかって教科書法案の際にわれわれは非常に激しい論争を起しました。だから政策の問題であるといえばそれまででありますけれども、一体先ほど私が提起したように、指導主事が知らぬ間にそういうような形にはまっておる。私はこれらの人々があえて知っておって、そういうことをやるのではなかろうと善意に解釈しております。知らず知らずのうちにそういうような販売組織の一翼をになうような形に追い込まれてきておる。何がゆえに企業体である教科書会社がそういう層をねらうようになったかということをつらつら考えて見ると、結局そのことの原因は文部省指導方針にある。これはこの前もわが党の高津委員指摘したように、下関における統一採択あるいは名古屋においてもそういうことがあると言われておりますが、こういつたような地域において統一した採択が、特定会社教科書ばかり採択が行われるというような事例は、これは言うまでもなく、教科書がしぼられて、そうして地域において限定された形において採択される方式がそこに教育ボスを作り、あるいは権限を持つ者が二、三動けば教科書を一色にするというような傾向をはらんでおる。従ってわれわれは教科書行政の本来のあり方、検定行政の本来のあり方に正すためには、こういった地域的にしほったやり方教科書を故意に展示会以前にしぼるやり方、あるいは展示会後において、それをそれぞれ使う教職員、職場を度外視して特定教科書にしぼっていくというやり方が問題の種を引き起すということを非常に心配している。また現にそういうことが起りつつあるわけです。こういう指導方針についてはあなたはどういうふうに考えられるか。
  30. 内藤誉三郎

    内藤説明員 最初の点の内報という言葉の点で誤解を招いたようでございますが、文部省といたしましては、言葉のいかんにかかわらず公文書でございますので、そういう秘密の意図は毛頭ございませんし、そういう考え方もございません。  それから第二のお尋ねでございますが、従来全国で約八割程度のところが共同選定をいたしております。これは各地域の状況等から、なるべくその地域は同じような教科書を使っていきたいという御希望、あるいは転校その他の便宜もあるかとも思うのですが、大体地域々々に一つの意識が統一されていると思う。こういう意味から大体郡市単位程度に固まっておるわけです。これは全国で約八割程度が共同選定をいたしておりますので、私どももこの行き方が正しいと思っております。ですからそういう意味指導をしたにすぎないのでございまして、それを強制する意思では毛頭ございません。この点は御了承いただきたいと思います。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 指導方針を流しておいて、強制する意思はございませんということは、これは私はむずかしい支那の言葉で申しますと、どういう言葉になりますか、ちょっと思い当らぬのでございますが、どうもあなたの言うことをまっとうには受けられません。共同選定の形におやりなさいという指導をやって、しかしそれは強制する意思はございませんでは、どうも首尾一貫いたしません。ですからあなた方がおやりになりたいのは、共同選定、地域的統一採択、これなんです。しかしかつての金港堂事件というのも、県一本にしぼられたそういう採択方法があの事件を引き起した。昭和の今日において、再び金港堂事件が起きないとは断言できません。それはたまたま内藤さんが今日そういう所管の地位におられまするから、おそらく私は大丈夫だと思いますけれども、しかしながら、そういった危険な採択方式をとる過程においては必ず問題をはらんでくる。そういうような点から、この統一共同採択というようなやり方については、あなたが最後に言われたように、これは強制してはならぬと思います。そういうことを強制するのじゃなくして、やはり展示会を強化するという形で、そして地域の自主的な方法によって採択を進めていく。現に私は、本年非常に強化されましたこの展示会のセンター、こういうものが従来と違った形において活用されていることを知りました。父兄も非常に関心を持っております。そして学校の先生方も努力をして、父兄にも教科書を見せる、われわれもこれを強化しよう、こういうことで、今日のシステムではなかなか全部を短かい期間で見ることは不可能でありますけれども、これは技術的にあるいは制度的に検討を加えていけばもっと活用する道がある。しかしそれを骨抜きにするような共同採択を並行して指導するということは誤まりであります。ですからあくまで展示会中心にしてやるという採択方法を厳守する意思があるかどうか、これを内藤さんに承わっておく。
  32. 内藤誉三郎

    内藤説明員 展示会中心採択をしていくという点には変りないのでございます。業者の公正なる宣伝活動と申しますか、趣旨の徹底と申しますか、これは私どもはできるだけ助長していきたい。この考え方は私どもとしては、常設の展示場中心教科書研究をして、各業者の十分な宣伝活動はこれを十分受け入れていきたい、ただし不公正な宣伝活動については十分取り締らなければならない、こういう考えを持っております。だから今お話の共同選定というのは、現実に大体その地域の者が各学校ばらばらに採択することは非常に不便も不自由も多いので、大体全国の八割程度が共同採択をしておる、こういう実情でございますので、文部省としては行政指導としてはこの方法が適当であるというふうに考えておるのでありますが、なお地域の実情によってはそれぞれ別個になさるところもあると思います。ですから私どもとしてはこれを強制する意思はない、こういう意味でございまして、この点と展示会中心採択とは決して矛盾しないと考えております。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 採択方法採択権等の根本問題はいずれ後日伺いますが、最近私は新聞その他で知ったのでありますけれども、例のこの前わが党の高津委員が問題を取り上げた白表紙事件というのがあります。この白表紙事件というのは非常に事は複雑で、白表紙問題自体がいろいろ問題にされた。ところがその白表紙事件に関連をして、他社を誹謗中傷したということで特定会社が告発をされている事件があります。この事実は文部省は知っておりますか。
  34. 内藤誉三郎

    内藤説明員 概要を聞いております。
  35. 辻原弘市

    辻原委員 それで文部省はどういうような処置をなさっておられるのですか。
  36. 内藤誉三郎

    内藤説明員 これは公取に告発するという話でございますが、いずれ公取の方のお考えもあるでしょうし、しばらく事態を見守ってみたいと思っております。
  37. 辻原弘市

    辻原委員 それからもう一つ、これも高津委員がこの前指摘いたしました東京、広島の教育大学の付属小学校、この団体による教科書編集、これは独禁法違反ではないか、こういうふうに言われているのでありますが、この件はこの前あなたが正確に調査をしてお答えをいたしますということになっておるのです。速記録を読みますと、「私どももまだ調査しておりませんが、お話のように問題がございますようなら、さっそく調査いたしたいと思っております。」となっております。
  38. 内藤誉三郎

    内藤説明員 この前私が申し上げたのは、東京と広島の教育大学の付属小学校の先生方が教科書を発行しておる。これを高津委員が独禁法違反じゃないかと思う、というのは、東京、広島の教育大学の付属といえば天下に名立たるものであって、これが発行すれば非常に影響力が大きいから独禁法違反であるというお話があったわけです。それで、そういうことはありません。たとえば東京大学の先生なりあるいは原子力の湯川先生が書かれたからといって、これは独禁法違反にならぬと同じ意味で、教育大学の付属の先生がお書きになったからといって独禁法違反でない、こういうふうに私申し上げたつもりであります。  それからもう一つは、山口県のある教育委員の方が、某図書会社からお金をもらってその採択に便宜をはかったという事実があるかというお尋ねがあったのであります。それは私よく知りませんから、調査して御報告いたしましょう。——どもの調査の結果ではそういう事実がないというふうに聞いております。
  39. 辻原弘市

    辻原委員 前段の広島の問題については、独禁法の違反ではないと、あなたは前にもそういうふうに高津さんにお答えなさったということでございますし、今もそのことをはっきり言われました。これはそれぞれ公取関係もありまするので、今あなたとその問題のやりとりは避けましょう。  それから下関地区の問題についても、そういう事実は調査の結果なかったというお話です。これもそういうことでとどめておきたいと思います。  いずれにいたしましても、ともかくこの種の問題が、文部省が知る知らぬにかかわらず、地方的話題になって非常におもしろくない風潮をかもしておるわけなんです。そういうような根源を突きとめて——現われてきた現象を一々文部省が追いかけておったんじゃ、これは奔命これ疲れると思います。そういう過酷なことは申しません。そこで根本は何か。先ほど私がここに言いましたように、一つにはやはり駐在員制度が、単に駐在員という従来のような形でなくして、いろいろな形に変貌しておるという認識を十分深めて、それについての的確な指導を行うこと。それからもう一つは、あなたは全国的に八割云々といわれておりまするが、要するに統一採択、統一採択へと追い込んでいく、そういう傾向が結局、あったかなかったかは知りません。あったかなかったかは、私は自分で直接調べたのではありませんから知りませんが、要するに下関地区等においていわれるようなああいうこと。現実にしかし教科書はかなりまとまって採択されておるということなんですから、問題をかもす原因は統一採択ということにある。だからそういうことを無理して今日推し進めるということは、私はますますいろいろな問題を引き起してくるということを予想しますから、これについてはあなた方の指導方針とされても御検討を願っておきたいと思います。  次に、教科書問題、時間もありませんので少し端折りたいと思いますが、私どもの念願は、競争することによってよりよい教科書を作り上げる。そうして敏速に的確に学校に使われるように、子供の手に渡るようにいたしたい。しかも安く手に渡らせたい、こういうことのほか他意はないのであります。そういうことの趣旨から申しますると、一面不公正な形で行われることは、せっかくよい教科書ができても、それが片隅に宣伝というものによって追い込まれる。それを防がなければならぬということで今まで申し上げた。いま一つの問題は、やはりいいものを作ってもらうためには、企業体それ自体も健全になっていかなければならない。こういうものを作って、やれ展示会にたくさんの献本を出す、やれいろいろな諸掛り、いろいろな費用がかかっていく、こういうことであしたの日につぶれるような会社では困る。ですから良心的な企業体が、少くとも健全に教科書を作って供給していただくようなシステムを考えなくちゃいかぬ。これは今までとかく教科書問題といいますると、今私が例にあげましたようなこういうような問題があるのじゃないかという、いわばあまり芳ばしからぬ問題を指摘すれば、非常に多かったのでありますが、私は一面、これを厳正に教科書会社に要求すると同時に、いま一つ教科書会社が健全に教科書を作り得るような、そういう一つの形に持っていく必要があると思います。そのことは、一つはもちろん価格の問題でありましょう。昨年価格を一割引き下げた。これはまあ国民の世論にもこたえたのでしょう。教科書をできるだけ安くできないかということで、文部省指導の表われがそういうことになったと思います。しかし一割がどういうふうに企業体に影響を及ぼすかということも、これは今日引き下げた後において文部省としても親切に検討してやる必要がある。それから当時われわれはいろいろ要望しておきました。たとえば郵送料の問題。エログロ雑誌でも三種の認可がおりておるのに、教科書がそれをとり得ないということ、これはだれが考えても理解できない。鉄道運賃の上に何らの特典がない。何か今度少しばかり特典があったようでありますが、ほんの鼻くそであります。教科書会社指導の中にそういうような一つ企業経営の分析をおやりになったことがおありでありますか。教科書会社企業経営について、文部省が定めた一割を引き下げた最高価格に見合って一体どういうふうな経営が行われておるか、宣伝費にどのくらいかかっておるか、一体輸送費がどれくらいかかっておるか、編集費にどれくらい使われておるか、そういうような、一つのモデル・システムというようなものを頭に描かれて検討されたことがありますか、承わっておきたいと思います。
  40. 内藤誉三郎

    内藤説明員 教科書会社の健全な発達を願っておることは私どもも同様でございまして、やはり教科書会社が健全でないとよい教科書が出ないと思います。こういう点から、教科書の、特に定価の問題につきまして、また原価の計算の仕方について、教科書会社の経営の状況に対しては絶えず私ども注意を向けて、分析もし検討もし続けておるわけでございます。  なおただいま御指摘の鉄道運賃でありますけれども教科書センターと分館及び臨時分館に送致する小中学校教科書見本本につきましては、これは運賃の値下げをようやく国鉄と話をつけたわけでございます。
  41. 辻原弘市

    辻原委員 あともっと聞けると思ったのですが、それだけしかおっしゃらなかったので……。そのことは非常に御苦労でございました。しかし問題は、展示会と、それから分館に送るだけのもので、教科書の価格に影響を及ぼすような価格低廉が期せられるとは思えない。それぞれ各子供の手に渡るまでの郵送あるいは鉄道運賃というものは、——私は今日の鉄道運賃あるいは郵送料にしても、いろいろ公共性の必要からランクづけをされ、保護政策が加えられていると思います。教科書などというものは、何といっても広く大衆のだれもが使用しだれもが負担をしていかねばならぬものですから、これこそ公共性の尤たるものである。それが今日においてもなおかつ展示会センター及びその分館くらいしか低減の範囲が及ばぬということはどうしても解せない。これは鉄道運賃に非常に大きな影響を与えるかというと、私はそう大きな部分を占めるわけではないと思います。こんなものはせいぜい年に一回か二回です。それと、一体郵送料の方は、どうなりましたか。少くとも一般の雑誌類と同じ程度の保護政策が加えられておるか。
  42. 内藤誉三郎

    内藤説明員 ただいま学校に送る分はほとんどが貨物便でございますので、貨車扱いは非常に安くなっておるのであります。問題は個々にバラ本で送る本が問題になっておるので、ほとんどないのでございます。四月一日には全部使いますので、そこで残っておった教科書センターとかあるいは臨時分館、そういうものに対するものをこのたび対象にしたわけでございます。それ以外のものはほとんどすでに対象になっておるわけでございます。貨車便で、これは特別二十一級の扱いになっております。  郵送運賃の話が出ましたけれども、郵送運賃は、教科書はしておりません。
  43. 辻原弘市

    辻原委員 郵送運賃は、しておりませんとおっしゃいましたけれども、郵送する分は全然皆無ですか、そうじゃないでしょう。これはしばしば問題になっておるのです。全然郵送しないということが前提ならいいのですけれども、全然しないのじゃないのです。現にあるのです。これは貨車の二十一級扱いと言われましたけれども、それとても他の品目に比較してみて決して教科書が特別に優遇せられるということはない。普通の営利行為のものと大体同程度の優先的取扱いを受けたということです。
  44. 内藤誉三郎

    内藤説明員 それは非常に違います。貸車の特別二十一級の扱いというのは非常な便宜をはかっておるのです。ですから普通の商品とは全然違います。この点は、国鉄の方も従来から小中学校教科書には非常に便宜をはかっておるわけです。ところがバラ本の分は困りまして、これは定価にも影響いたしますし、教科書のセンター、及び臨時分館二千数百に上りますので、この分の割引をこのたびお願いしたわけであります。お話のように、郵送が皆無とは申しませんけれども、郵送で送るような場合はほとんどないというのが実情でございます。
  45. 辻原弘市

    辻原委員 内藤さんと私の認識が違うので、あなたがそう思い込んでおられるから申しませんけれども、郵送についての三種扱いくらいは教科書についてあっていいのじゃないか。それはもちろん大卸、供給所、それから卸の段階にはないかもわかりません。しかしながらたとえば転入学とかいろんな場合に郵送はあり得るのです。かつて転入学の不便を来たさないようにということが非常に問題になった。それも全体から見れば三%じゃないかという議論もあったのですけれども、そういうことも供給として非常に大事な仕事であるというので、これについてはかなり的確な指導をなさったと私は思うのです。それに結びつけて郵送という問題も考慮しなければならぬのです。全部郵送じゃもちろんございません。ございませんけれども、そういう場合の便宜——、なぜその取扱いを一般の雑誌と同じようにして悪いのかという逆論から、当然そうすべきじゃないかという議論が出たのです。それを実現すべきじゃないか。こういうことです。それから二十一級扱いが従来からあったというお話でありますが、従来からではなかったのです。これはいつごろからあったのですか。
  46. 安達健二

    ○安達説明員 二十一級になりましたのは、従来の国定教科書時代からの沿革でございます。従ってその割引はずっと安くなっておるわけなのでございます。
  47. 辻原弘市

    辻原委員 私もいろいろ調べてみたのですが、輸送料のコストというものは原価に非常にに大きくはね返っておるわけです。多い場合には大体三割から四割、そういうような例があるのです。実際の営業費、そういうものの三割ぐらいは輸送費に食われている例があるのです。それで今まで鉄道運賃についてもう一段とその政策が加えられるならば、教科書の最高価格をさらに考慮していくことができるんじゃないかという議論がある。そういう意味で今までの二十一級扱いで非常に満足だということではないと私は思うのです。運輸省との折衝が非常にむずかしいことは私も存じております。なかなか譲らぬという話も聞きました。やっとセンターと分館だけは、文部省の非常な熱意で成功されたということで、それは先ほど非常に労を多としておいたわけですけれども、もう一つ全体的な輸送費の問題について考慮してもらいたいと思います。いろいろまだ申し上げたいことがありますが、時間もございませんので、以上にとどめておきたいと思います。
  48. 長谷川保

    長谷川委員長 辻原君に申し上げますが、先ほど御要求の公正取引委員会の調整課長が出席することになっておりますから、できたら午後でもやっていただきたいと思います。
  49. 内藤誉三郎

    内藤説明員 ただいまお話の輸送料の原価に占める地位でございますけれども、私どもの調査では、大体一割、あるいは一割をちょっと越した程度でございまして、三割というお話がありましたが、とてもそんな地位は占めておりません。せいぜい一割か一割強でございます。一つの問題としては用紙の問題があると思います。用紙をできるだけ安くする手はないかどうか。もう一つの問題としては、ページ数ごとにやっておりますので、ページ数の多い本が高くついておるという状況でございます。ページ数の制限をもう少ししたらどうか。もう少し内容を精選する必要があるのではなかろうかと考えております。要するに安くてよい本の出るように私どもも最善の努力をするつもりであります。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 私が頭でえて勝手に描いた数字ではありませんので、これは申し上げておきますが、営業費の中に占める割合からいたしますと、ほぼ用紙が一で運賃が二、その他のいわゆる給与雑件というものがその次に位しておるような分析を見たのです。これは後日資料をお目にかけてもいいと思いますが、あなた方の手元に出す資料は違うかもわかりません。  それともう一つ申し上げておきたいと思うのですが、われわれもこの教科書問題を数年来いろいろな角度から検討して、低廉にするために、これこそ統一的に何か安くする方法はないものかということも考えたのですけれども、やはり特色を生かすためには、そういうものをちょうど戦争直後にやったように、ザラ紙でやるという形では特色が生かされない。しかも用紙についてはそれぞれ嗜好もあるだろうということで、これを統一的にして安くするということは、別な意味において教科書を良質なものにするということには沿っていかないじゃないかという懸念が一つ生れましたので、きょうはその問題を申し上げなかったのでありますが、しかしそれを克服して安くできる方法があれば、一つ賢明な文部省においてこれをおやり願えれば非常にけっこうだと思います。そうして教科書が将来無償配付に至るまでの過渡的な取扱いとして、非常に安く子供に、また父兄の軽い負担になることができたならば、これに越したことはないと思いますので、あくまでもそういう意味合いにおいて、まだ問題が残っておりますから、積極的に価格低廉の方にも努力をしてもらいたいと思います。  以上で教科書の問題を終ります。
  51. 長谷川保

  52. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 去る六日芝中学校において教師になぐり殺されたという、まことに悲しい、しかも珍しい事件が起きました。これは子供を持った父兄の非常に不安な問題でありまして、一度文部省からその真相を御報告願いたいと思います。
  53. 内藤誉三郎

    内藤説明員 吉田教師が生徒をなぐって、それが死に至らしめたということは、私ども教育界にとってまことに残念なことでございまして、今後こういうことのないように十分指導をして参りたいと考えております。ちょうど吉田教師がB組の担任で、B組の指導をしておったときに、廊下越しにドアを開けて二、三の者がその様子を見た。初めに他のクラスの生徒がドアを開けまして、何やらひやかし半分に言うたようでございます。最後に残ったのがこの殺された少年でございまして、この少年がちょっとドアを開けてすぐ締めたそうでございますが、そのあと教師が追っかけていきまして、廊下の踊り場のところまで追いかけていって、その壁に押しつけて足払いを食わせて倒した。どこの打ち方が悪かったのかよくわかりませんですが、子供が頭が痛いと言って水飲み場まで歩いていった。教師は別に異常を発見しないで、そのままB組のクラスに戻って——これはちょうど終業時間を約十五分くらい過ぎておったようでございまして、ほかの生徒が廊下でがやがややっておったわけです。そのまま吉田教師Bクラスに戻りまして、生徒に訓示をしておったようでございます。その後この生徒は水飲み揚がら戻りまして、どうも工合が悪いというので、生徒の控室で倒れてしまった。以後病院にすぐ運んだのですが、遂に意識を回復しなかった。この少年は非常に平素おとなしいまじめな生徒でございまして、成績もよく非常に惜しまれておるのであります。ただ体質が非常にきゃしゃであったとも聞いております。校医の診断によると、非常に丈夫な人だったらこの程度の衝撃では死ななかっただろう、体質が比較的きゃしゃであったというために、あるいは打ち所が悪かったかとも思うのでございますけれども、いずれにいたしましてもこの少年が再び息を吹き返すことなくなくなってしまったということは、私ども返す返すも遺憾に思い、悲しく思っておるのでございます。
  54. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 これは直接の責任学校及び教育委員会にあると思いますが、学校教育法の十一条には、生徒には体刑を下すことをしてはならぬという禁止事項があります。そこで何といってもこれは直接の責任文部省にあるのでありまして、先日もどこかの女学生が、何かものがなくなったということで、ズロースまでぬがして調べたというようなこともあるわけであって、そういうようなどうも行き過ぎがあるように思っておりますが、これは直接文部省が一々全国学校を監督するわけではないのだけれども、何といっても文部省指導、助言、監督ということが必要だと思うのです。こういう点に対して初中局長はどういうような対策がおありになるのか、ここで一つはっきり御答弁願いたいと思います。
  55. 内藤誉三郎

    内藤説明員 ただいま御指摘のように、学校教育法十一条にも、生徒に訓戒を与えるのは差しつかえないけれども、体罰を課してはならない、特に暴力をふるうことは厳重に禁止しておるのであります。私どもはこの面につきまして教師の徳性と申しますか、人格陶冶の面において、今後さらに一そう教員養成の面でも検討しなければならぬかと考えておるのであります。児童生徒に道徳教育を説く前に、教師みずからが範をたれなければならぬと思うのでございまして、こういう点、今後これを契機に教育界から暴力が絶滅されるように、私どもも最善の努力をいたしたいと考えております。どうも私どもとしても一般に昨今の社会的な風潮の影響も多少あるかと思いますけれども学校みずからが今後十分この点を注意していただくように、何らかの指導をいたしたいと考えます。
  56. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 内藤初中局長の報告によりますと、この子供が非常に弱かったというようなこともある。また打ち所が悪いということもあり、これはいろいろ悪い条件が重なってこういう大事に至ったのだと思いますが、何といっても事人命に関することであり、しかもこの人のお父さんは新聞記者に、教権があまり絶対過ぎる、文部省にも監督も追及してやるというようなことを言っておられるので、実は親の身になってみれば、こういうことは実に泣いても泣ききれぬようなことであろうかと思います。若い教職員の方もおられるので、そのときの人間の感情でございますから、そのときにはまさか初めから殺す意思ではなかったと思いますけれども、結果として非常にこういう不幸が起ったということは返す返すも残念でございます。特に私たちが非常に心配いたしますのは、たびたびこういうような事件は起きないとは思いますけれども、しかし子供を学校に預けられない。親としては自分の子供の行っている学校に絶大な信頼を持っておりますから、こういうようなことになっては学校に子供を預けられないという不安が起きるように考えます。こういう点について、これは珍しい事件ではありますけれども、今後どういうような対策を講ぜられて、こういうことの絶滅を期するお考えがあるかということを、一応文部当局にお伺いしたいと思います。
  57. 内藤誉三郎

    内藤説明員 一つは社会風潮にそういうきざしがあることも私否定できないと思うのですが、学校教育の面において人間形成、人格陶冶の面においてさらに徹底するような道徳教育の振興をはかりたいと思う。これは教師も生徒も一緒でございます。特に生徒の面におきまして、徳性の涵養につきまして教育内容の改善に当っては最善の努力を払いたいと思っております。なお子供を扱うところの教員養成の面におきましても、ただいま文部省では中央教育審議会に諮問いたしておりますので、その教員養成の仕方、方法の点にりきましても十分検討されると思いますので、教師も生徒も一体となって学校から暴力を追放するように、一そう人格陶冶に向って人間形成に遺憾なきように指導して参りたいと考えております。
  58. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に要望しておきますが、私たちもやはり子供を持っており、自分の最愛の、たった一人のような子供がこういうような不幸にあったらどうなるだろうというようなことを考えると、やはり心さみしくなるわけでございます。私は文部省だけが責任を負えというようなことは申しませんが、こういう事件は、これが災害のようなものなら別でございますけれども、人間のやることでございます。私は父兄の気持を思いますと、実に気の毒にたえないわけでございます。どうか一つこれを契機として、災いを転じて福となすように今後こういうようなことのないように文部当局も十分に監督指導されんことを一言お願いしておくわけでございます。
  59. 長谷川保

    長谷川委員長 この点は委員長からも特に文部当局にお願いしておきます。私もちょいちょい全国を歩きまして、全国的にこういう傾向があるようです。体罰をしている傾向が強いようです。特に文部当局にこれを注意するようにお願いいたします。     —————————————
  60. 長谷川保

    長谷川委員長 この際お諮りいたします。第二十六回国会以来、本委員会において調査を進めております新潟大学におけるツツガ虫病原虫の人体注射問題に関し、桂重鴻君、田中ハル君、平光吾一君及び島野武君の四名を参考人として来たる十一日の本委員会に招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお参考人招致の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。  午前の会議はこの程度とし、午後は一時半より再開いたします。  休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ————◇—————    午後二時十七分開議
  62. 長谷川保

    長谷川委員長 午前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河野正君。
  63. 河野正

    ○河野(正)委員 御承知のように、本年の五月中旬ごろから、以来今日まで、北は北海道から南は九州の果てまで、四十六都道府県全般にわたりまして集団発生をいたしました例の流感の問題につきまして、若干の質疑を申し上げ、今後の対策、方針等につきまして所信を明確にしていただきたい、かように存ずるのでございます。  御承知のように、今日までニカ月に余りまして流感が全国津々浦々に蔓延して参ったのでございますが、推定いたしまするところによりますと、すでに患者の総数は百万を突破したともいわれておりまするし、なおまた、集団的に欠席校となりましたのは二千校を突破しているのではなかろうかというふうに推定が行われているのでございます。もちろん、こういった流感がなるほど生命には比較的危険も少いし、あるいはまた罹病いたしましても短時間に治癒するというようなことでございますけれども、こういったことが社会的に、ことに集団生活をいたします学童生徒を擁しますところの学校当局に、非常に大きな損失と申しますか、ある意味におきましては学力の低下等の問題もあると思いますが、そういったきわめて大きな損失をもたらしておりますことは、これは否定するわけには参らないと思うわけでございます。ところが一部の間におきましては、この流感がだんだん終息に近づきつつあるというような観測も行われているわけでございますけれども、しかしながら私どもが今日までその推移をながめて参りますと、必ずしも終息に近づいているというふうな情勢ではないのでございます。従いまして、こういった問題に対します今後の対策というものはきわめて重要な問題でございますので、まず今日まで当局が捕捉せられております実情につきまして御報告をお願い申し上げ、その後、そういった御報告に基きましてさらに質疑を重ねて参りたい、かように存ずる次第であります。
  64. 内藤誉三郎

    内藤説明員 私どもで六月二十七日までに集めた情報によりますと、全国で休校したものが二千三百四十四校、千年閉鎖したものが二百十七校、学級閉鎖したものが三千九十一校、推定患者数が九十八万二千人、しかしこれは六月二十七日までの状況でございますので、おそらく御指摘のように百万を突破しているのではなかろうかと思っております。これに対しまして文部省といたしましては、厚生省と十分な連絡をとりながら、できるだけ処置の適正に努めて参ったのであります。今後こういう事態がなるべく蔓延しないように努力をしておるわけでございますけれども、なかなかさようにも参りませんで、実は弱っておるところでございます。ただ学校で休校する場合の基準でございますが、大体私どもの協議した結果では、四日くらいを基準にして休校さしておるのであります。もちろんそれぞれ現地の状況によっていろいろと事情が違いますので、これは学校長の判断にまかしております。学校長が校医と十分協議いたしまして、どの程度の処置をするかということは、これは現地の校長に一任しておるという状況でございます。都道府県教育委員会からいろいろと適切な指導のあることはもちろんでございます。現状としてはそういうことでございます。
  65. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大体私どもが推測いたしますような状態の御報告がなされて参ったわけでございますが、ところが私どもが現地の実情にタッチいたして参りますと、今日まで当局がとって参られました対策というものは、きわめて消極的なうらみがないでもないわけでございます。従いまして、私どもが一番心配いたしますのは、そういった消極的な態度というものが、さらに今後蔓延をだんだんと強化していくということになるということでありまして、そういたしますと、今日の態度につきましては大いに反省を求めなければならぬと思うわけでございます。先ほど御報告いただきましたように、実におびただしい欠席校が出て参っておりますし、なおまた推定患者というものも累次累増の傾向にあるわけでございます。なるほど東京都下におきましては、休校指令を発します以前におきましていろいろの処置あるいは映画鑑賞会あるいは集会の禁止、あるいは未発生地区への修学旅行の取りやめというような、いろいろの、そういった休校という一つの所置がとられます以前におけるいろいろな具体的な対策というものが立てられてはおるわけでありますけれども、しかしながら全国的にこの姿をながめて参りますと、必ずしも適切な指導が行われたというふうには考えて参るわけには参らぬと思うのでございます。  そこでさらにお尋ね申し上げておきたいと思いますことは、今後こういった流感に対しましていろいろと処置も行わなければならぬと思うわけでございますが、しかしながら私は、今日までとって参られました対策につきましては、先ほど申し上げますように、必ずしも適切妥当なものであるかどうかということにつきましては多少疑問があるのではなかろうかというふうに考えて参っておるわけであります。そこで今後どういった処置をおとりになろうとしておるのか、その辺の事情を一つ率直にお聞かせ願いたいと思います。
  66. 内藤誉三郎

    内藤説明員 ただいま河野委員の御指摘のように、私どもも今回の流感の措置に対して十全であったとは考えておりません。この点は十分反省いたしまして、今後の事態に対処しまして最も適切な方策について、ただいま厚生省と文部省で審議会を設けて検討しております。文部省側でも十分この問題も検討するような態勢になっておりますので、厚生省の御意見も十分承わって、また学識経験者の意見も伺いまして、今後の対策につきまして万全を期するようにいたしたいと考えております。
  67. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま文部省当局におきましては厚生省とも十分打ち合せた結果、今後の対策を協議して参りたいというような御報告であったわけでございますが、そこで私若干厚生省当局にお尋ねを申し上げたいと考えております。と申しますのは、今日までこの流感をめぐりましていろいろな論争が行われて参っております。なるほど学界におきましていろいろ論争があるということは、必ずしも否定する問題ではないのでございますが、しかしながらややもいたしますと、そういった論争というものが現地におきますいろいろな機関に対しまして、非常に混乱を生ぜしめておるというような傾向がないでもないのでございます。その一例でございますけれども、たとえば神奈川県におきまして横浜医大の学長が、今日蔓延いたし、猛威をふるっておりますところの流感というものが、ことしの秋あるいは冬におきましてさらに蔓延するという一つの仮定に基きまして、そうして先ほど文部省からも御報告がございましたように、今日大体四日間くらいの休校が適当であろうというふうな指示が行われたということでありますが、この休校を行うことの是非につきまして、いわゆる休校は行わない方が免疫学上から申してかえっていいんだというふうな声明が行われておるという事実もございます。もちろん科学者的な立場から考えて参りまして、もし今後再び流感が蔓延するという機会があるといたしますならば、むしろ今日非常に軽微な流感に罹患をいたしまして、一つの自然免疫を作っておいた方がいいというようなことは、私もなるほど理論的には全面的に否定するものではないのでございますけれども、しかしながらもともとことしの秋から冬にかけまして流感が起ってくるであろうということは仮定の事実でございます。今日むしろ文部省当局におきましても、大体四日間くらいの休校が妥当であろうというふうな一つの通達に対しまして、そういった仮定の事実を前提といたしまして水をかけるような声明が行われたという事実でございます。先ほども申し上げましたように、仮定の事実に基きまして休校をやらずに自然感染をやった方がいいというふうなことは、人道的な立場から、あるいはまた現実的にながめて参りまして、こういった休校をしないことによってさらに蔓延する、さらに蔓延することによって社会的に非常に大きい影響をもたらす、損失をもたらすということになりますならば、少くともことしの秋から冬にかけますところの再流行ということは仮定の事実でございますために、人道的な立場からながめて参りましてもきわめて適切でないというふうに私ども考えて参るわけでございます。ところがさらに一点私どもが注目しなければならぬことは、国立予防衛生研究所の小鳥博士が、この休校しない方がいいというような横浜医大の学長の声明に対しまして、支持の表明をなされておるという事実でございます。私どもが現地におきましていろいろと訴えを受けましたことは、先ほど文部省当局からも、現地の実情もあるので、休校するがいいか、あるいはどういう対策をとるのがいいかということについては、現地の校長に一任をしておきたいというようなお話があったのでございますが、一任を受けました現地の機関は、今日いろいろ学説等が表明されまして、それがために非常に混乱を生じておるというのが実情のようでございます。そういった実情のもとで、たとい理論的にはそうあろうとも、現実の問題として適切を欠くような声明を出し、あるいはまたそういった声明に対しまして、国の機関でございます衛生研究所長が支持を表明するというふうなことにつきましては、私はむしろ軽挙のそしりを免れないというふうに考えるわけでございますが、その点に対しまする当局の御方針を承わりまして、現地におきまする混乱を防止して参りたい、かように考えるわけでございます。率直に一つ御所見を承わらせていただきたいと思います。
  68. 山口正義

    山口説明員 今回のインフルエンザの学校における流行の状況は、先ほど文部省から御報告があった通りでございまして、非常に多数の学校が休校のやむなきに至ったということでございますが、これらに対する対策といたしましては、今回の流行が五月の十日ごろから東京地方に多く発生いたしましたことに始まっておるのでございますが、詳しく調べますと、その前からも出ていたようでございます。いずれにいたしましても、流行が始まると同時に、私どもの方は文部省と連絡をとりながら、学校に対する対策をいろいろ御相談をしながら手を打って参ったわけでございます。それにつきまして、先ほど河野先生から、不徹底の点が多かったという御指摘を受けたのでございましたが、私どもの方では、再三文部省からも来ていただき、また私どもの方からも電話その他によって連絡をして対策を進めて参ったわけでございます。今後の問題におきましても、先ほど文都省からお答えになりましたように、緊密に連絡をしながらやって参りたいと存じておりまして、具体的には厚生省に伝染病予防調査会というものを設けてございますが、その中にインフルエンザ特別部会を設けまして、先月の二十一日と二十八日、これは今後の対策についての問題でございますが、協議をいたしまして、さらに今月の十二日と十八日に会議を持つ予定にいたしているわけでございます。先ほど御指摘の、ことしの秋の流行を見越してかかった方がいいという学者の発言があって、それに対して各地方では非常に混乱を来たしているという御指摘があったのでございます。この問題につきましては、私どもも、ああいう新聞記事が出ましてから、たびたび御指摘を受けているわけでございます。横浜医大の学長の高木先生の御意見が発表され、また小島衛生研究所長と共同で声明書を出されたというようなことが新聞に出まして、非常に事が重大だというふうに考えたわけでございますが、私直接その後高木学長、あるいは小島所長にお会いをいたしまして、そうしてその真意をお尋ねしたのでありますが、その新聞に出ました声明書というようなものは別に出しておられないということでございました。ただ、ただいま河野先生からも御指摘がございましたように、理論的には軽微の感染によって免疫が得られる、そういうことが考えられるということは、高木先生も小島先生も考えてはおられるようでございます。しかしながら、それを実際に行政に移します場合に、そういう論拠に立って、かかった方がいいというふうに積極的に考えることは当を得ないことであるというふうに、お二人とも言っておられるわけでございまして、高木先生は、特にあのときの状態で学校全体を休ませる必要があるかどうかということに疑問を持っておる、学級閉鎖ということで逐次進んでいったらどうだろうというような考えを持っていられたわけであります。文部省から先ほどお答えがございましたように、大体四日間くらい休校期間をきめて休校さした方がいいだろうというように、期間までもきめて通達が出ましたのはその後の問題でございます。関係の学者の方々も、決して行政的にそういうふうにやった方がいいということは考えていないというような釈明もございまして、御指摘のように秋に流行するかどうかということにつきましては、私どもの方で開いております伝染病予防調査会におきましては、大部分の方々が、大体ことしの秋から冬にかけて流行する可能性が多いということはおっしゃっているのでございますが、それも仮定の問題でございます。また、たとい軽い免疫を得られるにいたしましても、それから、たとい二日間、三日間という短期間でございましても、相当の高熱を出します関係から、かかるということが全然影響のないという問題でもございません。これは私ども行政当局といたしましては、文部省も厚生省も、あるいは各地方庁もともに、何とかして罹患をしないような方策を講ずる、そのために必要とあらば、学校においては学級閉鎖なり休校というような措置をとっていただくことが必要であるというふうに考えております。そういうことが問題になりましたことは私ども承知をいたしておりますし、また先月の十日に参議院の社会労働委員会においても、小島先生が初めややそういう発言をされまして問題になったのでございますが、小島先生がはっきりそれを取り消しておられますので、その点今後は、地方に混乱を起させないように、文部省と連絡をとって指導して参りたい、そういうふうに考えます。
  69. 河野正

    ○河野(正)委員 局長答弁によりまして、私ども納得することにやぶさかではないのでございます。ところが地方に参りますと、やはりいろいろ行政当局の通達と申しますか指示と申しますか、そういうことも重要視いたしますけれども、ことに先ほど文部省局長からも御報告ございましたように、現地の校長に一任する、あるいはまた現地の校長というものは校医に一任するというふうな形をとって参りますと、どうしても校医は、医者という立場から、学者の声明なり科学者の所見というものに対しまして非常に重大な関心を持つわけでございます。そこで、私が先ほど申し上げました横浜医大学長の声明というものは、必ずしもそうでなかったということで納得もするわけでございますけれども、しかしながら今日までそういったことが新聞に堂々と取り上げられ、あるいはまたそういった声明に対しまして、国の機関でございます小島博士が支持の表明をされるというようなことは、きわめて重大な問題である。しかも最近大阪医大の研究発表によりますと、今度の場合は免疫率が非常に低い。しかも免疫期間も非常に短かいものであって、これは世にいろいろ言われておるけれども、一度かかった人が再び繰り返して感染をしておる事実が——これは統計的な結果からでございますけれども、これを明らかに示しておるというような研究もあるわけでございます。そういたしますと、先ほどの横浜医大の学長の——まあ声明ではないかもしれませんけれども、意見なり、あるいはまたそれを支持すると表明されました国立予防研究所の小島博士の表明などというものは、私はきわめて重大な影響力を持ったというふうに御指摘申し上げなければならぬと考えております。そこでただいま局長の御説によりますと、小島博士は参議院の社会労働委員会において、そういった表明をされた、あるいはまたそれを否定するようなこともおっしゃったということでございますけれども、私どもが今日まで現地をながめて参りましたり、あるいは医師会の総会等に出席してみたりいたしますと、こういった新聞の取り上げました事実を非常に重視して、今日までいろいろとその対策に腐心をしておるようでございます。と申し上げますのは、先ほど申し上げますように、文部省当局の、大体四日くらいの休校をした方がよかろうという通達があったにもかかわらず、一方において休校をしない方がよろしいという——しかも科学者の立場からは、どうしても科学者の意見というものを重視する傾向がございますし、私ども科学者としてはそういったことでなければならぬということも考えます。ここに非常に大きな悩みがございますし、私ども今日いろいろ各地を回りますと、その悩みというものが切々と訴えられて参っております。そこでいろいろ新聞の発表の仕方にも問題があったと思いますけれども、しかしながらあの新聞記事というものが、非常に大きな影響を与えておるということは事実でございますから、やはりこういった事実に対しまして、厚生省当局も何らかの処置を打っていただかなければ、ただ国会の席上でそうではなかったのだ、誤まりだったというふうな御表明がございましても、しかしながら皆さんはやはり新聞記事に基いていろいろ御苦心をなさっておりますので、そういった点に対しまする何らかの処置というものが必要ではなかろうかというふうに考えるのでございますが、その点いかがでございますか。
  70. 山口正義

    山口説明員 河野先生の御心配の点ごもっともだと存じます。そのために私どもの方にもしばしば問い合せがあるわけでございます。新聞記事の出方が先ほど申し上げましたように、必ずしも高木学長その他の方々の御意思の通りの出方ではございませんので、よけい多くの御心配をかけているのかと思うのでございます。それに対しまして、厚生省としてどういうふうな措置をとるかというお話でございますが、近く先ほど申し上げました伝染病予防調査会インフルエンザ専門部会の答申か得られると思うのでございます。これは最終的な答申ではなしに、今後なお今回の流行によりまして、どういうふうな病源体の侵襲状況と申しますか、免疫が各地に起っているかということも調べてもらうことになっておりますので、その結果に基いて、またさらに続いての答申が出てくると思うのでございますが、とりあえず近く第一次の答申を出していただくということになっておりますので、それに基きまして、その機会にそれを全国に流します際に、御指摘のような点を特に注意を加えて指示をするようにしたい、そういうふうに考えております。
  71. 河野正

    ○河野(正)委員 今後いろいろ文部省もあるいはまた厚生省もこの流感に対しまする強力な対策を立てていただかなければならぬということは当然のことでございますけれども、しかしながら厚生省当局の非常に大きな御協力がなければ、今後文部省が強力な対策を立てようといたしましても不可能なことでございます。そこで私ども厚生省当局に期待することが非常に大きいのでございますので、さらに一、二私どもが心配いたしまする点につきまして、若干の御質疑をいたしまして、御所見を明確にお願いいたしておきたいと思います。  それは先ほど山口局長からも御報告がございましたように、今後の問題につきましては、伝染病予防調査会の中のインフルエンザ専門部会におきましていろいろと審議が行われ、協議が行われ、そうして今後答申がされるということでございますけれども、いかにりっぱな答申が行われたといたしましても、それを裏づけするところの対策が立てられなければ、結局絵にかいたもちに帰するわけでございます。そこで今後厚生省の非常な御協力をいただかなければならぬ立場からお尋ねを申し上げたいと思うわけでございますが、大体昨年度から厚生省の持っておりましたところの手持ちワクチン、もちろん今度のは新しい型でございますから、今までのワクチンは今度の流感に対しましては大した効果がなかったというようなことでもあるわけでございますけれども、今までのところでは、昨年来の手持ちがもうすでにゼロになっておる。しかもまた本年度の計画によりますと、大体百十一万人を対象として計画が行われておるというようなことでございます。しかしながら先ほど文部省の初中局長からも御報告がございましたように、すでに推定患者は百万を突破しておるというような数字も述べられておりますし、私どもむしろ今日現地等の実情をながめてみますと、もう二百万を突破しておるのではなかろうかというふうにも考えるわけでございます。そういたしますと、今後そういった百十一万人を対象とするようなワクチンで事足りるものかどうか、この点に対しまして私どもまず第一の心配を持つわけでございます。こういうことで果して万全の措置であると私どもが喜んで受け入れられるかどうかということにつきましては、非常な大きな疑問があるわけでございます。しかも私どもがなお心配をいたしますことは、たとい百十一万人のワクチンと申し上げましても、しかもそのワクチンというものが大体今日の推定によりますと、十一月でなければ完成しないというようなことも、私ども仄聞いたしておるわけでございます。数量の面から申し上げましても非常に心配がございますし、なおまだ今日何ら終息の状態が見受けられない。次々と猛威を振っておるというような実情の中で、この新種のワクチンの製造が十一月でなければ完成されないというようなことは、私どもが今日まで持ちました危惧をさらに一そう大きなものにすると思うわけでございます。それに対しまして完全な対策というものを今後打たれようというふうに計画されておりますのかどうか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  72. 山口正義

    山口説明員 インフルエンザ対策といたしまして、ワクチンにだけたよれないということは、専門の河野先生御存じだと思います。しかしながら現在特異的な対策といたしましては、このワクチンが考えられるわけでございます。従いまして私どもできるだけ今日の流行から考えまして、できるだけたくさんのワクチンを用意いたしまして、そうして必要と思われるところに事前に予防接種していくのが最も正しい方法だと思うのでございます。しかしながら御承知のように、インフルエンザのワクチンは他のワクチンと違いまして、その製造に非常に手数がかかりますし、また一々受精卵を使いますために、製造の日数だけでなしに、やはり数量にもある程度の制約が加えられてくるわけでございます。私ども厚生省におきましても、この方面を担当いたしておりまする薬務局と連絡をとりまして、その対策の一つの手段として、今回の流行を見ました新しい型のヴィールスを加えましたワクチンを、現在の考えられる能力で最大限作ってもらうということを話し合ったわけでございまして、一応それに基いて予算も計上し、そうして大蔵省に予備費の要求を現在やっておるわけでございます。それによりますと、ただいま河野先生から御指摘のございましたように、一人に〇・五CCを注射するといたしますと、六百五十リッター現在最大限に作り得るということでございますので、〇・五CCを打つといたしますと、百三十万人分ということになるわけでございます。それもただいま御指摘のように、決して一ぺんにでき上ってしまうわけではございませんので、新しいヴィールスを使って仕込みを始めておりますので、従来のやり方を、これはワクチンによってまたいろいろな事故が起っては困りますから、十分な検定をいたし、安全なものを作らなければならないのでございますが、それを最大限度に急いでやりまして、十月中に、リッターで申しまして、百三十三、十一月中に二百十五、十二月中に百十五、一月中に百五、二月中に八十五、というようなことで一応六百五十三リッターを二月末までに、ということでございます。そとでこれをどういうふうに使えば最も有効に使えるかということでございますが、これは先ほど申し上げました伝染病予防調査会の専門家の方々の御意見をも伺いまして、今回の流行状況と流行しなかった地区というようなところをにらみ合せまして、事前に叢状発生——草むらのように発生して参ります叢状発生を押えようというようなことで、臨時の予防接種を実施して、とにかくできるだけの手を打っていきたい、そういうふうに考えているわけでございます。これで万全かとおっしゃいますと、そのワクチンの量から考えまして、なかなかそれで絶対ということは残念ながら申し上げかねるわけでございますけれども、しかし私どもの現在作り得ます最大の能力をあげて、それだけのものを作って、そしてそれを最も有効に事前に接種して、叢状発生を防ぎたい、そういうふうに考えているわけでございます。よく外国でもすでにワクチンが作られているはずだから、それを輸人しようというような御意見も伺うのでございますが、この点は外国のワクチンの製造状況とよくにらみ合せまして、また日本と同じような検定を行なってやっておるかどうかというようなこともよく確かめた上でございませんと、予防接種をいたしましたために副作用等を起しても、これはまたいけないと思いますが、その点も薬務局とよく連絡をとりながら、必要によってはそういうものを輸入するということも考えなければならぬかと思いますが、これは十分慎重に考えてやって参りたい、そういうふうに考えております。
  73. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま局長から御説明がございましたように、いろいろと御苦心いただきまして、製造の手数、あるいは日数におきますところの困難を克服していただいておるということにつきましては感謝申し上げるわけでございます。しかしながら私どもやはり人道的な立場からながめて参りましても、あるいはまた社会的な損失こいう立場からながめて参りましても、やはりこの流感対策に対しまして独力な手を打つことによって、できるだけ防止をしていくということがきわめて適切な態度であるというふうに考えまするがゆえに、さらに一、二お尋ねを申し上げまして、私どももそういった問題につきましてきわめて真摯なる御協力をいたさなければならぬというふうに考えるわけでございます。と申し上げますのは、なるほど山口局長からも御報告がございましたように、来年の二月末までに六百五十リットルのワクチンができるということでございますけれども、それにつましても一つの段階がございますし、なおまた先ほどの話ではございませんけれども、この秋、冬におきましては再流行ということも考えられるというようなことでございまするので、この問題につきましてはきわめて適切な措置が行われなければならぬというふうに考えるわけでございます。そこで、なるほど百三十万のワクチンが二月末までにできるということでございますけれども、先ほどから申し上げますようにすでに二百万を突破しておろうというふうな実情でございまするから、少くともそれに見合うだけの数量というものが、一応機械的ではございますけれども必要だということは、これは否定するわけには参らぬと考えます。そこで一応今日の流行の一つ現状からながめまして、それに相応するだけのワクチンを作らなければならないということはただいまも申し上げました通りでございまするし、またそれが多過ぎましても、不必要になりますれば、それはもちろん不必要だということは結果的にはかえって喜ばしい現象でありますから、あえて私はむだになったというふうには考えるわけには参らないというふうにも考えるわけでございます。  それからなお時期の問題でございますけれども、もちろんそれは先ほど局長からもお話がございましたように、検定の問題その他で実情も明白でございませんから、私どもここでいきなり即断を許しませんけれども、私どもの承わるところによりますと、今度の流行というものは世界的な流行であるというふうにも言われておりまするし、すでに諸外国におきましては、この世界的な流行に即応して新種のワクチンの製造にそれぞれ着手をし、しかも英米におきましては大体七月末にはこのワクチンの需要を満たすだけの完成を行うというようなことも私ども承わっておるわけでございます。ところが先ほど局長の御報告によりますと、いろいろ御苦心はいただいたと思うわけでございますけれども、数量におきましても問題がございますし、時間的にながめて参りましても、早いところで十一月でありますし、おそいところでは二月末というようなことで、時間的にながめて参りましても私ども局長のお言葉を必ずしも手放しで喜んで参るというわけには参らないと思うわけでございます。そこでそういった点について諸外国の実情等もながめて参りまして、しかも今日厚生省当局のとっておられまする処置につきまして適正を欠く点がないのかどうか、この点に対しましても一つ明確に御報告を願っておきたいと思います。
  74. 山口正義

    山口説明員 外国での英米におきます製造状況につきましての製造方法と申しますか、あるいはその検定につきましては、こちらと比較してみないと申し上げられないわけでございますが、私どもの方に入っております情報によりますと、英米で大量に七月末までにできるというのは誤報であった、少量なら少しやられるということが入ってきておるわけでございます。それで私どもの方も現在のインフルエンザの製造の一応国で定めた基準がありまして、それによりますと、今考えておりますのよりも先ほど十月末と申し上げましたのよりもさらに二カ月長くかかるわけでございますが、それは最後の段階におきまして慎重を期しますために製造業者自体において自家検定をいたします。それに二カ月かかるわけであります。それが済みましてから従来のやり方でございますと国家検定を二カ月やるわけでございます。今度はそれを自家検定と国家検定を同時にやります。そういたしますとその間に少しむだができるわけでございます。自家検定で落ちるべきものも国家検定でやらなければならないからむだができて参りますけれども、それによって二カ月の時間の節約をしよう、そうしてできるだけ早く作くるようにしたいというわけでございます。その前の段階からいたしまして、こまかく製造過程がございますが、節約をいたしますと、ワクチンの性質そのものに差が起って参りまして、あるいは安全度に危惧の念を抱くというようなことになって参る心配もございますので、それは避けなければならないと存じまして、最後の二カ月、今まで連続でやっておりましたものを同時にやるということによって少しでも早く間に合わせたい。それでもやっと十月中ということでございますので、例年の流行状況からみますと大体十一月から十二月にかけて流行して参ります。昨年は少し早く十月中旬から流行いたしました。ことしも専門家の方々の御意見でございますと、やはり十一月から十二月にかけて、いわゆる普通の感冒のはやる時期にまた流行してくるのではないかということを言われておりますが、私どもも、ただいま河野先生から御指摘がございましたように、このワクチンのでき上ります時期につきましては非常に焦慮しているわけでございますが、私ども考えられます最短の距離で、しかも安全なものを作る。それから先ほど申し上げるのを落しましたが、事前の予防接種というものは学童を中心にして実施して参りたい、一応私ども数の上では学童だけを考えてやって参りたい、そういうふうに考えているわけでございます。なお外国の製造状況を時々刻々私どもの方で入手いたしまして、先ほど申し上げましたように、効果があり、しかも安全なものが入手できる可能性がございますれば、その際は特別な手を打たなければならない、そういうふうに考えております。
  75. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま局長が仰せられましたように、効果、安全ということがきわめて重要でございますから、もちろん時期を早めるということは必要でございますけれども、必ずしも時期ばかりをいろいろ論難するわけには参らないと思います。従いまして、今後ともそういった点につきましては、効果、安全、それから迅速というようなことにつきましても一格段の御健闘をお祈り申し上げておきたいと思  それからさらに私どもお尋ね申し上げておきたいと思います点は、先ほど山口局長からも御説明ございましたように、流感の対策というものはワクチンがすべてではないわけでございます。そこでワクチンももちろん必要でございますけれども、この流感の予防対策につきましては、そのほかいろいろやらなければならぬ、手を打たなければならぬ点がたくさんございます。ところが私どもの仄聞するところによりますと、厚生省の予算の中には、ワクチン製造費は計上されておりますけれども、その他の防疫費というもの、たとえば指導もございましょうし、あるいは流感に対します一つ宣伝等もございましょうし、いろいろあると思いますが、そういった点に対します予算というものが考慮されておらないというようなことも耳にいたしているわけでございます。そういたしますと、これは山口局長からも御説明ございましたように、流感対策というものは、ワクチンを柱といたしまして、そうして宣伝あるいはまた指導、そういったものを総合しての対策でなければならぬと思うわけでございます。ところが単に予算面におきましてワクチンだけに限られるといたしますならば、私はこの流感対策というものは必ずしも完璧を期したものというふうに申し上げるわけには参らないと思うわけでございますが、この辺に対します事情がどうなっており、またそういう点に対します隘路をどういうふうに打開していかれるというふうに考えておられますか、その辺も重ねて明らかにしていただきたいと思います。
  76. 山口正義

    山口説明員 従来の流感対策の際の血清検査をいたしますとか、あるいはそのほかのいろいろな処置に要します費用につきましては、これは伝染病予防法に指定されておる疾病ではございませんけれども、伝染病予防法に準じていろいろ費用を出すというふうなことが行われているわけでございます。今後の対策におきましては、特にただいま御指摘のように、ワクチンだけにたよることでなしに、またワクチンだけにたよりますと間違いを起す心配もございますので、広報宣伝なり、事前の教育なり、あるいはそのほかの調査というようなこともやらなければならないわけでございます。それに必要な費用につきましては、現在私どもの方で概算をいたしまして、そうして大蔵省に予備費として要求したい。そういうような折衝を大蔵省といたしまして、その経費の支出については大蔵省と話し合った上で予備費を出してもらうか、あるいはその他の方法によるか、いずれにいたしましても特別な予算措置を講じて今後の対策をやっていきたい、そういうふうに考えております。
  77. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまいろいろと御説明を承わったわけでございますが、今後ともそういった点に対しまする強力な推進をお願い申し上げておきたいと思います。いずれにいたしましても、この秋あるいは冬におきましては再流行というものが予想されるわけでございますので、私どもはこういった一つの流行を教訓といたしまして、今後こういった点に誤まりのないよう一に、政府並びに各地方団体というものが一体となりまして、その強力な対策に当るべきではなかろうかという考え方を強く持つものでございます。  そこで今度は文部省当局に最後お尋ね申し上げておきたいと思いますることは、いろいろ厚生省当局からも今後の具体的な対策がるる申し述べられて参りました。なお今日までの大まかな方針につきましては、先ほど初中局長からも申し述べられたのでありますれけども、私ども先ほど申し上げましたように、現地に参りましていろいろ切々たる悩みを訴えられることがあります。それは一応休校するならば四日間くらいがよかろうというような基準が通達されておりますることは、御承知の通りでございます。なおまた現地の校長にそういった処置につきまして一任されておりますことも、先ほど御報告の通りでございます。しかしながら実際にそれを運用して参ろうとする場合には、学力の低下、あるいはまた給食の事情等もございまして、なかなか苦心をなさっているのが実情でございます。そこでもちろん全国的な実情というものが各地によりまして違っておりますから、画一的な方針を示されるということもなかなか困難な実情だろうと思いますけれども、少くとも濃厚地におきましては、ある程度の強力な方針というものを示される方が、私はこういった問題を適切に取り扱って参りますために適当なことではなかろうかというふうな考え方を強く持つわけでございます。具体的に申し上げますならば、もう夏休みも近いことでございますから、今日から四日間の休校、そうして休校が明けて参りますとやはり流行というものが終息しておらないということで、一日、二日学校をやりましてまた四日間の休校をする。ちょうど追われるような格好で休校々々というような手を打っておるところもございます。そういったところは、やはり先ほど申し上げましたように、学力の低下というような問題もございますし、また給食ということについてもいろいろ準備もございますので、いろいろ苦心のほどもございます。そこで具体的に申し上げますならば、もうあとわずかで夏休みでございますので、そういった濃厚地帯におきましては、夏休みを繰り上げて実施するということも一つの具体的な対策ではなかろうかというふうにも考えて参るわけでございますが、そういった具体的な方針というものを今後お示しになる御決意があるのかどのか。このことは現地におきます切実な訴えでございますので、そういった現地における実情というものを十分お聞き取り願って、これは時間も要することでございますから、私はすみやかに御処置を願わなければならぬと思います。これは一例でございますけれども流感対策に対しまして強力な具体的な方針というものをすみやかにお立てになるかどうかという点につきましての御所見を一つ承わっておきまして、私の質問を終りたい、こういうように考えます。
  78. 内藤誉三郎

    内藤説明員 ただいま河野委員からお話りょうに、私どもも今回の流感対策が必ずしも十全ではなかったと考えておりまして、厚生省とも十分協議いたしまして専門の部会で検討を続けて一いるわけでございます。今後の処置に一つきましてはこの協議会でも十分お諮りした上できめて参りたい。ただ現実には御指摘のように、現場といたしましては、学力の低下をしないように、しかも流感の予防という点に十全を期するようにという点で非常なジレンマに陥っていると私ども考えます。そこで個々の事情がいろいろ違いますので、ある一定の基準で縛るととは非常に困難だろうと思います。幾つかの事例に対処して、それぞれの適切な方策があるかないかという問題でございますので、河野委員お話も含めて協議会で十分協議していただいた上で、私どもの適切な措置を講じたいと考えます。
  79. 長谷川保

    長谷川委員長 高津正道君。
  80. 高津正道

    ○高津委員 文教委員会で過去六、七年の間、芸術院のやっておる日展の問題については全然取り扱われていないのでありますが、芸術院そのものについても、またその日展についても、いろいろ十分文教委員会としても見ていなければならない問題があると思いますので、ウェットというか、エレガントな世界へらんぼうな言葉であちこちお尋ねをしますから、お答えを願いたいと思います。  どうも芸術家を何さん、何氏というのもむずかしいから敬語を省略して入りますが、日展は戦後十カ年の間だけを限って見ても、不思議なほど評判が悪いのであります。新聞の美術部の記者も美術評論家も決してよくは批評をしないのであります。世論は、日展に対しては不評の二字あるいは不人気の三字に尽きておるかのようであります。美術を担当しておる行政官庁たる文部省は、この現象を気がついておるのかどうか。そして気がついておるのならば、どのような点がそう不評であり不人気であるとお考えであるか、まずこの点から入ります。
  81. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 高津先生からお話のように、日展についていろいろ批評のあることは御承知の通りでありますが、先生もおっしゃいましたように、これは芸術院が日展運営会と共同主催で行なっております展覧会でございまして、御承知のように文部省が直接行なっておる展覧会ではございません。芸術院にまかせまして、芸術院の方で行なっておる展覧会であるわけでございます。日展に対する批評、いろいろ見方はあると思いますけれども、芸術院としてはこの展覧会の意義を認めて現在まで開催を継続しておる、こういう事情であります。
  82. 高津正道

    ○高津委員 文部省が直接はやっていない、芸術院にまかせてやらしておる、現段階においてはその意味はあると思っておる、これだけのお答えでありますが、この芸術院百名の中の五十名が、書道から、工芸から、彫刻から、日本画から、洋画、そういうもので埋めておりますが、その芸術部門の方面についていえば、横山大観氏は前にここを去られ、そうして洋画壇における大御所のような梅原龍三郎氏もまた辞任され、川端龍子はその会員にはむろん入れない。だれだって実力を認めており、この人が適当と思う林武も入れていない。こういうような人が新たに入らねばならないし、入っているいい人は、安んじてそこにおれるようなところでなければならないと思うのですが、梅原龍三郎が辞任した、それを最近承認したということでありますが、ああいうような画伯に対しては、何回も何回もその引きとめを講ずべきであろうとわれわれは思うが、芸術院あるいは日展の問題に関しておる点もあるでありましょうから、日展運営会の主事をやっている宇野芸術課長はどういうようにその問題について行動をされたのか、それらの経過を承わりたい。
  83. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 経過をお話し申し上げます。梅原会員が院長に対して辞意をお漏らしになりましたので、院長は極力それを慰留されましたのですが、梅原会員は、一身上の御都合によってあとの生涯を全力をあげて制作に打ち込みたいから、なるべく身軽に解放してほしい、こういう意味でぜひ辞意を認めてほしい、こういうお話でございました。手続といたしましては、辞意がありますと、これを芸術院の総会に諮ってその承認をまず経なければならない手続が第一段にあるわけであります。その以前に院長としてぜひ梅原会員に翻意していただきたいということでありましたが、非常に辞意がかたいものでありますから、やむを得ず去る五月の総会に院長からその趣きを諮られたのであります。総会といたしましてもぜひ梅原会員にとどまってほしいという決議でございました。それに基きまして、重ねて院長、部長から梅原会員に御再考を願ったのでありますが、当初のような理由でぜひ認めてほしいということでありまして、どうしてもその辞意を動かすことができないというふうに院長も認められたわけでございます。それで院長としてはそう認められましたので、総会にかわる書面総会の形をとりましてその旨を全会員に諮られたのであります。その結果会員からもその事情やむを得ないということに対しての御意見がありませんでしたので、そこで芸術院としては梅原会員の辞意を認めることはやむを得ないということになりまして、院長から文部大臣にお取り次ぎしたわけであります。これは申すまでもなく、非常に芸術院としても残念なことでありますので、文部省としても社会局長から大臣の御意向を伝えて重ねて御考慮を願ったのでありますけれども、同じような理由でどうしても御翻意が願えませんでしたので、やむを得なく梅原会員の辞意を認めた、こういう経過でございます。
  84. 高津正道

    ○高津委員 書面総会の結果、多数決で芸術院としてはそういう答申を文部大臣にして、そうしてそれがきまった、こういう話であります。そしてまた梅原氏のやめられる理由は一身上の都合であり、芸術に専念するためである、こう表で言われておるが、お書きになったものを見れば、新たに会員しなる人が猛烈な運動をして、その訪問だけでも大へんなことである、一々ああいう美術行政の面に携っておっては芸道に専念できない。そういう裏があるわけでありまして、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  85. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 芸術院の会員の選考等につきまして、そういうことがあるといたしましたら、それは芸術院としても好ましくないことでありまして、そういうことはなるべくない方がもとよりよろしいことと考えます。
  86. 高津正道

    ○高津委員 院賞をもらっても、あるいは会員になり得ても、三べんぐらい——いわば立候補したような形のとき、それからいよいよ明日きまるという直前の運動、そしてきまったらお札参りというように、三回ぐらい回るような運動があるというその事実を担当の宇野課長は御存じですか。
  87. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 私、そういうことは具体的には存じておりません。
  88. 高津正道

    ○高津委員 日展招待をきめる権限もそこに持っておるし、審査員を選ぶのもそこであるし、院賞をきめるのも会員をきめるのもそこでやるのであるから、非常な権限があるわけであります。しかもそれらの特権的なことは布野の中にはほとんど及ばないのであって、しかも院賞一つについていえば、日展で院賞をもらったということになれば、その人の作品は三倍も五倍もの市場価値が上ってくる。これは画壇本画商も美術批評家も一様に認めておる事実であります。そしてまた院賞をもらうことが将来芸術院の会員になる登龍門というか、必須条件のような慣習がおのずからでき上っておるのでありまして、院賞の価値というものは非常に高いことになっております。院賞の授与ということは、そうであればあるほど公平でなければならぬと思います。こういう意見があった、こういう意見があった、表決はとうである、そういうようなことを発表する意図はありませんか。それを伺いたいと思います。
  89. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 ただいま先生のお話で、芸術院が行います院賞の授与あるいは会員の選考、それから日展の審査員をきめますこととは別になっておりますので、そのことをちょっと申し上げさしていただきます。芸術院の方で行いますのは、会員の欠員を生じました場合の補充と毎年の芸術院賞を贈りますこと、この二つにつきましては芸術院に毎年会員の候補者の選考委員会、あるいは院賞に関する授賞の選考委員会、この二つの選考委員会を、年度初めの総会であらかじめ会員の中から選挙によって構成いたします。そして授賞の場合にも会員補充の場合にも、まず最初に会員が——芸術院は御承知のように第一部、第二部、第三部に分れておりまして、一部が美術関係、二部が文芸関係、三部が芸能関係、こういう三部門に分れております。各部につきまして欠員がありました場合には、その部門の会員からまず適当と思われる候補者を推薦されます。それで集まった候補者をそれぞれの選考委員会において検討いたしまして、ある数にしぼるわけでございます。しぼられたその候補者につきまして、今度は各部の会員が投票をいたします。そこで過半数を得られたものを会員になる資格者、あるいは芸術院賞の受賞者とする、こういう仕組になっております。  日展の方の場合は全く別になっておりまして、日展運営会という、芸術院とは別な、いわば芸術院の中の第一部、美術関係の会員のほとんど全部の方が自発的に結成されている会があるわけであります。その会が展覧会の実質的な運営を行うのでありますが、その中で三年を任期として理事を選んでおります。その理事会が大体日展の実質的な運営の仕事を行なっております。それで、ただいまお話のありましたたとえば日展の場合の審査員につきましては、その理事会で審査員の原案を立てまして、運営会には総会がございますが、運営会の総会の議を経まして、毎年の審査員を定める、こういう仕組になっております。ですから、芸術院の方の会員補充あるいは院賞の選考ということと日展とは、機構上は全く別になっております。ただ先生からお話がありましたように、メンバーは同じ五十人のメンバーになるわけでありますから、共通する点が出て参りますが、機構としては全く別のものとなっております。  それからあとの方で御注意のありました、たとえば院賞を受けられると、それがやがて芸術院の会員になる前提であるというようなこと、そういう事情は、優秀な作家でありますと、おのずからそういうことも起ってくるものと考えられます。この点は、私も昔のことは存じませんけれども、昔の場合でもやはり何回か賞を受けられたような優秀な作家が、芸術院の会員になられたのではないかと思います。
  90. 高津正道

    ○高津委員 そういう文学方面でなく、今扱っている芸術の方面では、師弟関係が非常にものをいって、工芸でも彫刻でも洋画でも、みなそれぞれボスができ上っている。だれ知らぬ者もない。日本画では福田平八郎、京都の方で中村岳陵、山口逢春、洋画で張り合っておるのが石井柏亭と辻永、彫刻ではただ一人朝倉文夫、工芸では高村豊周、こんなふうに非常な権力者が存在して、それが院賞などをきめることに大いに力をふるう。しかも子弟関係、情実がそれにからむので、力のある人に必ずしもいくとは限らない。院賞をきめる方法や院賞を取った者が会員に進む順序というか手続は、今課長の御説明の通りだと思いますけれども、そういうことが情実によって行われるというところに問題があるのです。たとえば十二億七千六百万円の予算で来年アジア競技大会を行う、それからまた将来はオリンピックの大会が日本にくるというので、神宮外苑に今国立競技場が建設されている最中でありますが、ここに山崎覚太郎なる作家があって、メルボルンへ行ってきたので、その関係が非常にわかっておる。そこに彫刻家の手をわずらわす仕事がずいぶんあるんだ、予算も大きいことだし、というその場合に山崎覚太郎の発言は非常に大きいというので、欠員を補充する場合に、第四分科すなわち美術工芸でありますが、それをそういうことの専門家である第三分科の彫塑の方の朝倉文夫ににおわせたところが、その子分の同じく第三分科の吉田三郎を動かして、容易に会員にはなれないのに、一週間ほどの間にばたばたと山崎覚太郎がそれになった。こういうようなこともほとんど天下公知の事実ではないか、それに対してごうごうたる非難が上っておるのではないか、このように私は考えるのでありますが、それは一向聞いておらぬ、こういうことでしょうか。
  91. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 私そういう詳しいことは存じません。
  92. 高津正道

    ○高津委員 そういう詳しいことは存じませんと言われるが、詳しくなくても、あなたの聞かれた部分だけをここで隠さずにそれだけは言っていただきたいと思います。
  93. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 今私が詳しく存じませんと申し上げましたのは、山崎先生がメルボルンにおいでになったことは承知しておりましたから、その意味でそういうふうに申し上げたわけであります。
  94. 高津正道

    ○高津委員 それではそういうお答えでありますから、今も申す通り授賞の場合その他において子弟関係が非常にものを言い、情実関係がからむ。こういう実情であれば、一生懸命芸道に励んでも、それら今あげたようなボスににらまれれば自分は院賞にもありつけないし審査員にもなれないし、ということになるので、勉強の方をおろそかにしても親分に、それらのボスに取り入ることに秘術を尽すというのがやはりどうも芸術家も陥る人情の自然だと思うのであります。これは日本の美術に非常に悪い影響をもたらす、こう考えます。そうして美術工芸というものが盛んになれば産業工芸というものも盛んになるのだし、観光政策の立場から見ても、あるいは日本の海外紹介という意味から申しましても、非常に大きな影響を持つのでありますから、美術の世界が今のように封建性に包まれているような状態では国としても非常に損をすると私は考えるのでありますが、文部当局はこれについてはどうお考えでしょうか。
  95. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 私の一存で申し上げますれば、おっしゃる通りそういうような特殊事情がなくて、芸術院が正しく運営されるようであるべきだと考えます。そういうふうに芸術院の運営を正しくされるのが一番よろしいと考えます。
  96. 高津正道

    ○高津委員 お答えが非常に抽象的でありますから、もう一つまた具体的にお尋ねいたします。近くソ連に持っていく日本工芸美術展の問題についてであります。日ソ国交回復の結果、民間文化交流のために昨年六月日本から文化芸術使節団が参りましたが、その際使節団の一人加藤唐九郎氏とソ連側のミハイロフ文化相との間に話し合いが行われて、現代日本の工芸美術を主目的とし、民芸、伝統工芸、産業工芸等を広範に包含した大展覧会を持っていくことになっていることはもちろん課長の御存じの通りであります。このソ連行き現代日本工芸展は、ソ連が一億円買い上げるという点と、美術による最初の大きい民間文化交流のテスト・ケースだという点で、美術界のみならず広く識者の注目しているところであります。しかるにそれが先月六日間東京のデパートで内示的な展覧会が開かれましたが、それには何ゆえか大丸、高島屋が売れ残りになっている多数の手持ちの反物や工芸品を持ち込んで、その中には龍村の鯉文帯地のごとく、高島屋呉服部の荷札がついたままであって問題を起しさえしたという事件もありました。また堂本印象の花びんが堂本氏の承諾を得ないままで審査会場に持ち込まれて、堂本氏を非常に憤慨させたという事件もありました。その花びんは数年前発表された当時勅使河原蒼風氏に買い取られて、現在同氏の所有物になっているものであります。ところで三越、松炭屋などのデパートが全く除外されて、大丸、高島屋の手持品が非常に優遇されて多数加えられたのには、審査員となった美術工芸作家でありまた芸術院会員である岩田藤七氏が強引な策動をしてそういう結果をもたらしたのであります。また堂本印象の花びんの所有者である勅使河原蒼風氏と岩田藤七氏とは、岩田ガラス株式会社のガラス花器を大量に消費してもらっているとい経済関係があり、そうして高島屋、大丸は岩田ガラスの展覧会をいつもやり、大量の取次販売をしている経済関係があるのでありまして、とのような岩田ガラスの実力者が大いに審査員として動いた結果、大切な文化交流にこのような特定のデパートの売れ残り品をはめ込むようなことになったと美術雑誌はその真相を包み隠さず書き立てておるのであります。岩田氏のこのような行動の結果は、国際信義にもとるし、わが国の名誉をきずつけるし、大きい問題だと思います。文部省はこの事実を知っておられるのかどうか、またどういう対策を講じられるのか、この二点についての御意見を承わりたい。私は灘尾大臣や福田社会局長からもお伺いしたいのでありますが、本日は御出席がありませんので、宇野課長の御意見を承わりたいのであります。
  97. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 今先生からお話のございましたソ連行きの工芸展覧会のことは、これは御承知のように全然政府の手とは別に行われておりますことで、私ども直接には何も関係いたしておらないのでございます。それから今具体的に個人のお名前をあげてお話のございました点は、私ども先生のおっしゃいましたように通信新聞等に記事として出ておりますそのままを読んで承知いたしております。私の立場としては、ただいまそれに対して事務局としてはどうこうというようなことは考えておらないわけでございます。
  98. 高津正道

    ○高津委員 岩田藤七氏と勅使河原蒼風氏とは、自分のガラス製品を全国何万人の会員を持つ勅使河原蒼風氏のところで使ってもらえれば非常に便利である、そんなようなことをちゃんとそろばんに入れて、最近も勅使河原芸風氏、岩田藤七氏の二人の展覧会をデパートで開いておりますが、この勅使河原氏を何らかの方法で会員に入れようとして運動しておることは隠れもない事実であります。しかしそれよりも、文部省は日教組対策については必要以上に力を入れ、そうしてまたすぐに次官通牒を出したり、あるいは教育委員をたくさん呼んでいろいろ入れ知恵をしたり肝胆を砕いている事実を私はよく存じておりますが、この展覧会は文部省が直接に扱っているものでないから、これはどっちへどう向いていこうと関係がない、われわれの所管ではありません、こう言うのですが、だれが世話をするのですか。そういうような日本の国の恥にもなれば、信用にもかかわり、国際信義の問題でもあることが、こういうようにゆがむという場合にこれをどうもしないのですか、それじゃ一口にいって、日本は非常に損をすることになりますが、そういう場合にどの役所がお世話をするのですか。国会議員が個人で行っても困るだろうし、やはり行政の担当省が関係せねばなるまい。日展関係の人が行って取りきめてきているのであるし、日展運営委員会理事をやって大いに幅をきかしている人がそれをやっている。そして日展運営委員会事務所はどこにあるかといえば社会教育局にある。そして芸術課の中で仕事はみなやっている。しかしそれらは自分は関係がない、こう言うのですか、そこのところはどんなものでしょう。
  99. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 私がただいま関係がないと申し上げました意味はこれに限りませず、いろいろ国際的な文化交流の事業がございます場合に、民間で行われる場合には、文部省が直接関与しない場合がしばしばございます。そういう意味で申し上げたのでございまして、そういう場合に主催者の方から文部省に後援してほしいという御希望がある場合がございます。そのような場合に文部省として一種のつながりを持つこともあるのでございますけれども、ただいまのソ連行きの展覧会については、そういうお話もございませんものですから、そういう意味も含めまして、つながりがないというふうに申し上げたわけでございます。  それから今度のソ連に参ります工芸展覧会は、私どもの承知しております限りでは、工芸各分野の方がおられるようでありますし、それからたしか谷川徹三先生も御関係だったと思いますし、特に日展だけに特別につながりがある展覧会というふうには考えておらないわけであります。
  100. 高津正道

    ○高津委員 向うから言ってくる場合には乗り出すが、関与しない場合もいろいろあるというお答えであるが、相撲協会が非常に封建色に包まれていて、中堅以下の力士諸君が非常に困っているという場合に、ちっとも関与しないことを文部省は続けてきたが、言ってこないからといっても関連は十分あるのでありますから、その場合には何らか出かけていくべきじゃないですか、そこはどんなものでしょう。
  101. 宇野俊郎

    ○宇野説明員 先ほど私が申し上げましたことで、私どもがこういう文化関係の事業に対して非常に冷淡であるというふうにお考えいただきましたならば、そういうつもりで申し上げたのではないのでありまして、文部省といたしましては、文化関係のことについては国内に限らず、国際的な場合にも、私ども仕事を担当しております者としては、少くともできるだけお役に立つことはしたいという気持は十分持っております。
  102. 高津正道

    ○高津委員 もう四時になりますから、それでは明日に質問を続けさせてもらいます。
  103. 長谷川保

    長谷川委員長 本日はこの程度とし、次会は明十日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。    午後三時五十分散会