運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-05-18 第26回国会 衆議院 文教委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十八日(土曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君    理事 米田 吉盛君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       大坪 保雄君    簡牛 凡夫君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       塚原 俊郎君    並木 芳雄君       山口 好一君    木下  哲君       櫻井 奎夫君    高津 正道君       辻原 弘市君    野原  覺君       平田 ヒデ君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君  委員外出席者         議     員 山崎 始男君         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (調査局宗務課         長)      近藤 春文君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 五月十六日  委員辻政信辞任につき、その補欠として根本  龍太郎君が議長指名で選任された。 同月十七日  委員永山忠則君、塚原俊郎君及び大西正道君辞  任につき、その補欠として松岡松平君、遠藤三  郎君及び木下哲君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月十八日  委員遠藤三郎君、北村徳太郎君、小牧次生君及  び辻原弘市君辞任につき、その補欠として塚原  俊郎君、大坪保雄君、稻村隆一君及び鈴木義男  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稻村隆一君及び大坪保雄辞任につき、そ  の補欠として小牧次生君及び北村徳太郎君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 五月十七日  学校教育法等の一部を改正する法律案(矢嶋三  義君外三名提出参法第一五号)(予)  公立盲学校及び聾学校幼稚部及び高等部の  整備に関する特別措置法案安部清美君外三名  提出参法第一六号)(予)  盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に  関する法律の一部を改正する法律案安部清美  君外三名提出参法第一七号)(予)  へき地教育振興法の一部を改正する法律案(松  澤靖介君外三名提出参法第一八号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  閉会審査に関する件  国立及び公立義務教育学校児童及び生徒  の災害補償に関する法律案山崎始男君外六名  提出、第二十四回国会衆法第八号)  市町村立学校職員給与負担法及び地方教育行政  の組織及び運営に関する  法律の一部を改正する法律案平田ヒデ君外二  名提出衆法第一八号)  公立学校施設費国庫負担法の一部を改正する法  律案櫻井奎夫君外三名提出衆法第二二号)  学校教育に関する件  佐賀県の教育問題に関する件   請 願  一 義務教育費全額国庫負担に関する請願(八   田貞義紹介)(第八八号)  二 児童生徒災害補償法制定に関する請願(   加藤鐐五郎紹介)(第八九号)  三 学校保健法制定に関する請願加藤鐐五郎君   紹介)(第九〇号)  四 教育財政の確立に関する請願加藤鐐五郎   君紹介)(第九一号)  五 教育反動化反対に関する請願松本七郎   君紹介)(第九二号)  六 高等学校危険校舎改築等に関する請願(   古井喜實紹介)(第二四〇号)  七 中学校屋内運動場建設費国庫補助増額に関   する請願徳田與吉郎紹介)(第二四一   号)  八 岡山大学工学部設置請願亀山孝一君   紹介)(第三五二号)  九 特異性行為の排除に関する請願加賀田進   君紹介)(第三五四号)  一〇 学校事務職員身分保障に関する請願(   五島虎雄紹介)(第三五五号)  一一 学校周囲建築物用途制限等に関する   請願池田清志紹介)(第四六八号)  一二 公立大学整備促進に関する請願鈴木   周次郎君紹介)(第四六九号)  一三 義務教育費全額国庫負担に関する請願(   粟山博紹介)(第四七〇号)  一四 同(鈴木直人紹介)(第四七一号)  一五 高等学校定時制教育及び通信教育に対   する国庫補助請願加藤精三紹介)(第   六二〇号)  一六 義務教育費全額国庫負担に関する請願(   山下春江紹介)(第六三五号)  一七 学校事務職員身分保障に関する請願(   田中武夫紹介)(第七四三号)  一八 高等学校危険校舎改築等に関する請願   (足鹿覺紹介)(第八〇九号)  一九 中学校雨天体操場建設補助金に関する請   願(徳田與吉郎紹介)(第九三三号)  二〇 学校給食法の一部改正等に関する請願(   加藤鐐五郎紹介)(第九三四号)  二一 大学院育英関係費増額に関する請願(伊   藤卯四郎紹介)(第一六七八号)  二二 西太良中学校屋内体操場建築費国庫補   助に関する請願小牧次生紹介)(第一八   〇五号)  二三 義務教育学校教科書無償配付に関する   請願北山愛郎紹介)(第一九〇八号)  二四 大学に毒ける単一学部制度実施に関する   請願受田新吉紹介)(第二〇九三号)  二五 大学における単一学部制度実施に関する   請願受田新吉紹介)(第二一九一号)  二六 へき地教育振興法の一部改正に関する請   願(池田清志紹介)(第二三〇七号)  二七 大学における単一学部制度実施に関する   請願受田新吉紹介)(第二三〇八号)  二八 川内町中学校統合建築費国庫補助に関す   る請願關谷勝利紹介)(第二三〇九号)  二九 大学における単一学部制度実施に関する   請願吉川兼光紹介)(第二四三八号)  三〇 同外五件(受田新吉紹介)(第二四七   一号)  三一 羽田沿岸地区公立小中学校防音設備に   関する請願松岡駒吉紹介)(第二五一五   号)  三二 学校教育科目の補正に関する請願原健   三郎紹介)(第二六五五号)  三三 学級児童定員適正化に関する請願(原   健三郎紹介)(第二六五六号)  三四 小学校家庭科教育振興に関する請願(   坂田道太紹介)(第二七四二号)  三五 大学における単一学部制度実施に関する   請願世耕弘一紹介)(第二七九二号)  三六 同(受田新吉紹介)(第二八七六号)  三七 特殊教育振興促進に関する請願外二件   (小牧次生紹介)(第三〇六八号)  三八 同(永山忠則紹介)(第三一一一号)  三九 学校統合に伴う施設費国庫負担に関する   請願永山忠則紹介)(第三一一〇号)  四〇 へき地教育振興予算増額等   に関する請願池田清志紹介)(第三一七   一号)  四一 義務教育学校屋内体操場建設費国庫補   助に関する請願徳田與吉郎紹介)(第三   一七二号)  四二 粟島商船学校復活に関する請願大平正   芳君紹介)(第三一七三号)  四三 宗第二十四号内務文部次官通牒再発行   等に関する請願野依秀市君外七名紹介)(   第三二一六号)  四四 横川小学校移転及び校舎改築に関する請   願(池田清志紹介)(第三二二二号)  四五 柔道振興に関する請願長谷川四郎君紹   介)(第三二二三号)  四六 同(楢橋渡紹介)(第三二二四号)     —————————————
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  まず開会中審査に関する件についてお諮りいたします。昨年十二月二十日に召集されました第二十六回国会も本日をもって百五十日間にわたる会期を終了する次第でございますが、委員会国会法第四十七条第二項の規定によりまして、議院より付託されました案件について閉会中もなお審査することができることになっております。当委員会といたしましては国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案市町村立学校職員給与負担法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案公立学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案教育、学術、文化及び宗教に関する件、以上の案件につきまして議長に対し閉会審査の申し入れをいたしたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  4. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、閉会審査承認を得ましたならば法律施行状況及び文教行政等に関し実地調査を行いたいと存じます。つきましては委員派遣について衆議院規則の定めるところにより議長に対して承認方を申請いたしたいと存まじす。派遣委員の数、その人選、期間及び派遣地等につきましては委員長理事にお諮りの上決定することとし、その手続等委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。櫻井奎夫君
  7. 櫻井奎夫

    櫻井委員 ただいま議題となっておりまする国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案について二、三の点を提案者質問をいたします。この法律は、近年義務教育学校のいろいろな災害が相次いで起きておりますとき、何ら国家としてその補償制度がない。このような現下の状況にかんがみまして、このような趣旨法律提案なさったことはまことに時宜に適したものである、私どもはそういう趣旨から、本法律案について全面的な賛意を表するわけでありますが、なお二、三の点、特にこまかい点にわたって質問をいたしたいと思うのであります。  第一条の目的というところの「この法律は、国立及び公立義務教育学校児童又は生徒当該義務教育学校管理下において受けた災害に対する補償を迅速かつ公正に行うことを目的とする。」この中の「義務教育学校管理下において受けた災害、」この管理下というのがどのような限界を持つものであるか。たとえば具体的に申しますと、生徒登校する、あるいは下校をする、こういうときにかりに災害を受けたとした場合、これはこの法律対象になるのかどうか、学校管理下に入っておるのかどうか。それからもう一つ、これは大体この法律趣旨から明瞭とは思うのでありますが、念のために第二点として、義務制学校における就学旅行期間中に児童生徒が受けた災害に対してどのような考え方を持っておるか、この二点についてお伺いいたします。
  8. 山崎始男

    山崎始男君 お答えいたします。大体この法律提案いたしました基本的な立場というものは、申し上げるまでもありません、憲法第二十六条の第二項にございますいわゆる父兄というものは義務教育に従わなければならない義務を持っている。同時に国家といたしましてはそれに対しては無償の原則というものをうたっておる。その立場から今日のわが国の義務教育学校の一千七百万に近い児童生徒というものがいろいろの義務を遂行する過程において起りました災害に関してはほうりっぱなしになっておる、放任されている。これではいけないではないか。国が責任一つも負ってないじゃないかというような考え方からこの法律が出ております。従いましてただいまお尋ねのまず第一点の登校下校、これは当然お尋ね櫻井さんのお気持のように、ほんとうはこの法律に該当いたしまする管理下という言葉の中の必要な要素なんであります。端的に申しますれば、朝子供学校へ出る、そうして授業が済んだら自宅へ帰っていくというこの間が当然学校管理下という言葉内容でなければならぬと私は思うのであります。しかしながら初めてこういう法律提案いたしますあらゆる財政上の見地から考えてみましても、登校下校を入れるということは、災害発生の率というものが非常に多くなってくる——多くなっても法律提案いたしました趣旨から言えば当然入れなければならないのでありますが、そこにいろいろと考えてみましたが、御承知のごとくまあ中学校くらいになれば、同じ義務教育でも、子供自身災害発生率に対して比較的自分自身でブレーキをかける、自制をする年令に達しておりますが、小学校一年とか二年とかいうような低学年になりますと、学校の帰りの途中で、まっすぐ父兄のもとへ帰っていけばいいのでありますが、あるいは途中で川へ魚をとりに入ったとか、あるいは帰りがけの山で松の木へ上って云々したとかいうようなことがまず予想できるのであります。その場合に果してこれが学校管理下という一つワクの中へ入れることが妥当であるかどうかというような事柄も考えられますので、この法律提案いたしました本来の気持には沿わないのでありますが、登校下校というものは一応除外をいたしておるのでございます。ただし、どう申しますか、かりに担任の先生が明日は一つこの部落の人は何々さんを班長として一緒にそろっておいでなさい、あるいはきょう帰りがけに、何々さんを班長としてこういうところにお寺がありますから、そこを回って、そして十分よく見て自分の家へお帰りなさいとか、たとえて申しますればそのような指示をかりに与えたというようなことも、集団生活でありますから当然考えられるのであります。そういう場合には当然学校管理下というこの法律ワクの中に入れて、そういう場合の災害補償は国が責任を持つという考え方でございます。従って今お尋ねのように、春秋の修学旅行とかいうものは、これはもう申し上げるまでもございません。これは当然直接学校管理下のもとにあるという解釈をいたしておるのであります。不十分かもしれませんが、大体そういう考え方でこの管理下という解釈をお考えいただきたいのであります。
  9. 櫻井奎夫

    櫻井委員 大体の御趣旨はわかりましたが、そうすると学校の指導によってなされる登校下校、たとえば特定の指示があって、何か行事とかなんとかいうようなことで一定の指示に基いた登校下校はこの中に含む、そういうことでありますと、それ以外の場合は、学校始業ベルが鳴って、それから放課になる、いわゆる学校の中における生徒管理状況のもとにおける災害対象としておる、こういうふうに理解してよろしいか。
  10. 山崎始男

    山崎始男君 大体制限をどこにきめるかというこまかいことは政令その他に譲りまして、審査委員会というものも当然設けることにいたしておりますから、そこらが当時の客観情勢を分析判断いたしまして、果してこれが管理下であるかどうかということをきめていただくことになると思うのであります。従って始業時間のベルが鳴って、そして終業ベルが鳴るまでという解釈をするか、学校の校庭におる間は始業時間であろうと、終業の後であろうと、それも管理下に入れるかというような非常にデリケートな限界という問題が起ってくるのでありますが、そういう問題はそのつどそのつど御判定を願う機関の御判断に譲らなければ仕方がないのじゃないかというふうに解釈しておるのであります。
  11. 櫻井奎夫

    櫻井委員 国立及び公立義務教育学校ということでありますが、同じ義務教育である限り、私は広く私立学校を入れるのがこの法の建前から当然だと思うのです。憲法にもあります通り、義務教育は本来無償でなければならぬものであり、これを国が管理責任を持ち、あるいは地方公共団体管理責任を持つといなとにかかわらず、この義務教育においてはいやしくも公私の区別があってはならない。同じ義務教育を受けておる児童生徒災害を受けた場合は、これはひとしく取り扱うのが日本国憲法の精神でもあろうと思いますが、なぜ私立学校対象にしなかったのか、その点を提案者にこの際明瞭にしておいていただきたい。
  12. 山崎始男

    山崎始男君 まことにごもっともな御質問でございまして、先ほどの登校下校も入れるべきであるという考え方と、今櫻井さんがお尋ねになった私立学校をなぜ除外しておるか、憲法の二十六条の規定立場からいえば、当然私立学校も入れるべきじゃないかというお考えも、私は共通したものの考え方だろう、私自身も実はそれが好ましいと思っておるのであります。しかしながら先ほどの登校下校除外いたしましたと同じように、まず内容は不十分でありましても、財政負担の多い折柄でございますから、なるべく金額を減らしたいという気持、いま一つは、大体私立学校というものは、申し上げるまでもございませんが、これは国立公立と違いまして、あくまで私学当局自主性ということを尊重しなければならない。そうして私立学校はおのおの自主性に基く特色を発揮した学校経営をやるところに私学の妙味がある、こういう立場から考えてみますと、私立学校の中には義務教育の段階でありましても、たとえて申しますと、授業料をとっておるところもあるのであります。この授業料をとっておるということを考えてみますと、いわゆる義務教育無償であるというこの憲法二十六条の、いわば国民としての権利を放棄しておられる。納得ずく授業料を払っておる。とる方はいわゆる私学運営の自主的な立場から授業料をお出しなさいと言っておる。出す方はその憲法二十六条の国民権利を放棄しておる、こういうようなことが考えられるのではないか。従いまして、総体的な金額を多少でも少くする、そうして一応満足ながらこの法律を産みたいという気持と、いま一つは、根本的な考えでありますが、そういう私立学校というものは今申しましたような権利を放棄しておる。また半面からいいますと、私立学校自体特色を生かすために、そういう経営をやっておるというのが現状なんでありますから、一応この際は私立学校だけは除外をいたしまして、そうして法律ができましたあとでまたいずれ法律改正その他によって当然将来は私立学校をこの中へ包含をしていただくというふうにやっていきたい、かような考え方から一応私立学校除外いたしたのでございます。
  13. 櫻井奎夫

    櫻井委員 最後に一点だけ。大体御提案趣旨はよくわかりましたが、本案施行に要する経費として、約一億二千万円程度が見積ってあるわけですが、今の御説明によりまして、まだ詳細はこれは今後の政令等にゆだねなくちゃならぬ点が多々あるのでありますが、このこまかい点については質疑応答を省略いたしまして、大体どういうふうなものでこの一億二千万円を必要とするのか、構想を承わりたいのであります。
  14. 山崎始男

    山崎始男君 大体概算一億二千万ということを書いてございますが、今のお尋ねはそれの積算基礎だと思うのであります。実は一億二千万という金額は、正直なところを申しますと的確な確実な見込みと申し上げますよりも、かなり大ざっぱな見込み方をいたしておるのであります。と申しますことは、全国災害統計というものが文部省にもないのであります。実は私自身も、昨年文部当局にもこの問題は当文教委員会においてお尋ねをいたしたのでありますが、文部省自体にもこれがないのであります。私の方でいろいろ調査いたしましたが、今から四年ほど前から島根県を発祥の地といたしまして、共済組合的な災害補償制度というものが、あるいはPTAを中心にし、あるいはその他の民主団体中心にして、起っております。鳥取あるいは岡山県の一部、広島県の一部あるいは和歌山県あるいは滋賀県というふうに全国へ年を追うて広がってきておることは、御承知だと思うのでありますが、確実な統計というものがございませんので、私の方で不完全ではございますが、そういうところの過去の統計をいろいろ出しまして、算定をいたしたのでございます。その算定の大まかな基準を申し上げますと、大体全国児童生徒数の総数を一千七百万人と見ております。そしてその災害発生率というものを六五%と見ておるのであります。それから災害件数概算というものが、大体一年間十一万件起るだろうという数字を出したのであります。それから今までのそういう共済制度実施をいたしております実績から出しまして、療養補償経費というものを一件当り千円平均に見たのであります。それから遺族補償というものを大体一年間に百十件見たのでございます。このようにいたしまして、この法文にもございますが、補償種類というものを療養補償遺族補償打ち切り補償障害補償等に分類をいたしております。このおのおのの補償種類、項目につきましては、労働基準局のいわゆる過去の統計、要するにおとなの場合ですね。それから災害件数おとな子供でありますから、そこに起ってくる件数というものが何%か違ってきます。それを多少減じましてこの一億二千万円という数字基礎をまず大まかに出したのでございます。そして労働基準局の過去の統計というものは、大体二十七、八、九年の三カ年の統計を参考にいたしまして出しました。今申しますようなそういうふうな基本的な推定数字というものの上に立って、そしてまず療養補償は先ほど申しましたように、一件当り千円、遺族補償は二十万円、それから葬祭補償が一万二千円、打ち切り補償費は二十四万円、障害補償費は八万円、こういうふうな一つのたてりを作りました。それからまた二十万円の遺族補償費数字的根拠は何かといわれますと、これも労働基準局の方の——かりに十五才の子供が万一事故があった場合には、一日二百円の日当を基本にして、日にちの算定を元にいたしまして算出をいたしたのでございます。以上のような数字基本にいたしまして、発生をするであろう予想件数というものをかけまして、大体一億二千万円弱という数字が出て参ったのであります。もし必要でありますれば、積算の明細をプリントにいたしまして後刻お渡しいたしますが、大体大まかに申しますると、ただいま申し上げましたような考え方からこの一億二千万円という数字を出した次第でございます。
  15. 長谷川保

    長谷川委員長 次に市町村立学校職員給与負担法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案議題とし審査を進めます。質疑を許します。河野正君。
  16. 河野正

    河野(正)委員 ただいま議題となりました市町村立学校職員給与負担法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案につきまして提案者に対し若干の質疑を行いたいと思うわけでございます。  第一にお尋ね申し上げたいと思いまする点は、御承知のように五大市における定時制高校と全日制高校におきましては、いろいろ給与等につきまして不合理な点が多々あるわけでございます。そこでまず提案者お尋ねいたしたいと思いまする点は、一体五大市におきまする定時制高校定員というものがどのような状態になっておるか、私後ほどそういった点につきまして若干の不合理を御指摘いたしたいと思いますので、まずどの程度定員になっておりまするか、その辺の事情をお尋ね申し上げたいと思います。
  17. 平田ヒデ

    平田委員 お答えいたします。このたび提案いたしました法律案の第一条の趣旨は、神戸、大阪、京都、名古屋、横浜の指定都市定時制高校教職員給与府県費支弁であることは教育上非常な支障を認めますので、市支弁に切りかえるというのであります。  その第一点といたしましては、市町村立学校教職員給与負担法第二条は、昭和二十六年の三月三十一日施行されまして、全国市町村立高等学校定時制教員給与府県費負担にすることによりまして、身分保障給与の改善を目途としたものでございます。しかしながら五大市のように府県と同等もしくはそれ以上の行財政規模を持っておりまする自治団体におきましては、他の市町村と異なりまして、ちなみにこのことは第二十四国会において成立いたしました地方教育行政組織及び運営に関する法律第五十八条、地方自治法第二百五十二条の十九等に照らしても明らかでございますが、本法の成立によりまして、同一市町村市立定時制高等学校と全日制高等学校教員との間に、定員給与、退職金等に格差を生ずる結果となり、いわゆる新教育委員会法の意図せる身分保障給与改善は逆の効果を生ずるようになったわけでございます。  そこでお尋ね定員はどうなっているかという点でございますけれども、高等学校の教職員の定員基準は設置基準に明らかでございますけれども、今日地方財政貧困のために甲号表の適用はもちろん、乙号表の適用すら困難に立ち至っております。文部省御当局におかれましてはもちろん、高等学校教育を憂うる者はひとしく定員基準により法律に定められた定員の確保を願っておるのでございます。今日五大市高等学校の全日制は、設置基準の趣旨と都市教育における高等学校教育の重要性の認識に立って乙号基準を確保いたしております。けれども定時制の場合は府県定員が押えられ、不均衡を来たしておるというのが実情でございます。  なお商工都市として五大市立の定時制高等学校は実業学校が多数を占め、実業教育施設は幸いに産振法等によって充実化の道を歩みつつありますけれども、全日制、定時制の共用でございまして、一応管理権は全日制にございます。従って全日制の教員を非常勤講師として定時制教育に当ってもらう必要が大になっておる実情でございますでけれども、定員の中で当然非常勤講師の採用も実情を無視して押えられております。今回教委法の改正によりまして、明確に定員府県条例に基くことになりまして、いよいよ困難に立ち至る、ということが予想されているというのが実情でございます。
  18. 河野正

    河野(正)委員 ただいま提案者からいろいろ御説明をいただいたわけでございますが、提案者の御説明いただいておりますように、定時制高校と全日制高校におきましては、いわゆる県費と市費というようなことから端を発しまして、非常に給与における不合理が今日まで生じておったわけであります。その後そういった給与がどのように改善されておるのか、そういった実情について若干の御説明を伺いたいと思います。
  19. 平田ヒデ

    平田委員 給与はどのように改善されておるかという御質問でございますけれども、五大都市の行財政規模は、特市問題が起っておりますように府県並みでございますけれども、市民の生活水準に比較しまして公務員の給与も歴史的に考慮され、一般職はもちろん教育職員等につきましても財政面より考慮される優遇措置がとられてきたのであります。従って五大市高等学校全日制教職員に比較しますと、府県費職員になった定時制教職員は、給与決定が不当に押えられ、校舎を同じくする全日制、定時制教職員の間で夜間勤務という勤務条件の悪い定時制教職員の待遇が悪くなり、非常な不満や人事交流、新規採用等にも悪影響を与えておるのでございまして、五大市立定時制高等学校教職員の給与は改善されるどころか、むしろこれは改悪されたとさえ思われる実情でございます。
  20. 河野正

    河野(正)委員 事、教育というものは非常に重大な問題でございます。そこで教育は重大であるということはいろいろ条件があると思うわけでございますが、やはり人事の交流によって、りっぱな教職員を補充することによって一つ教育の進歩発展ということを考えていかなければならないと思うわけでございますけれども、しかしながらただいま提案者から御指摘がありましたように、同じ校舎のもとで一方におきましては県費、一方においては市費というようなことで、一つの屋根のもとで同じような教鞭をとりながら、給与が非常に不合理であるというようなことで、人事交流の問題がうまくいくかどうか、うまくいかないとするならば、このことは教育に非常に大きな影響をもたらすわけでございますから、私ども非常に重大な問題として取り扱わなければならないと思うわけでございます。  そこで提案者に対しましてお伺い申し上げたいと思いますことは、今日までそういった人事交流の面がどのように行われておったか、あるいはまたそういった問題が一つの隘路にぶつかっておりはしなかったかというようなことを私ども心配するわけでございますので、その点に対しまする提案者の御説明を伺っておきたいと思います。
  21. 平田ヒデ

    平田委員 高等学校の定時制課程は、全日制とともにほとんどすべて校舎を同じくし、定時制独立校もございますけれども、兼務高校の場合が多く、従って五大市高等学校の場合も管理職の校長はもちろん、教職員につきましても全日制、定時制の間に絶えず人事交流が考えられ、また実施されてきたわけでございます。けれども、その間に、全日制、定時制教職員が、市費、それから府県費であるために、退職金あるいは退隠料とも異動とともに打ち切られてしまいまして不利となりますために、行き詰まりつつあるというのが実情でございます。今日、多数の教員が、その不合理に実は非常に困惑しておられるという実情でございます。このたび、地方自治法の改正によりまして、府県費職員と市町村職員の退隠料の継続が努力規定となりましたことは一応前進ではございますけれども、五大市の場合、歴史的に府県職員と退隠料規定も異にし、それが継続は非常な困難に立ち至っているのが実情でございます。また退職金問題も未解決でございまして、このことは、今日までの不利はもちろん、今後の人事交流のはかり知れない阻害となることは明確であると考えられるわけでございます。
  22. 河野正

    河野(正)委員 さらにお尋ね申し上げておきたいと思いますことは、それはどの行政についても言えることだと思うわけでございますけれども、この定時制高校あるいは全日制高校の場合においても明らかでございますように、一つの二重行政という立場がとられておるわけでございます。しかしながら、教育の一貫した行政ということは、教育の進歩発展のためにきわめて重要な点だと思うわけでございますけれども、ただいままでいろいろ論議いたして参りましたように、私どもの理想と相反しまして二重行政という形がとられて参りましたことは、私どもも非常に遺憾といたす点でございます。  そこで、この問題に対する最後の御質疑を行いたいと思うわけでございますが、それではそういった私どもの理想に反するような二重行政というものがいかに今日まで改善されて参ったか、このことは、将来に対しましてもきわめて重要でございますから、その点に対する提案者の御説明を伺っておきたいと思います。
  23. 平田ヒデ

    平田委員 現在、五大市教育委員会事務局が府県並みの行政規模能力を持っていることは、今回の教育委員会法の改正法で認められましたが、法定委任が、任免、給与の決定、休職懲戒、研修等でありまして、任免、給与の決定等はそれぞれの府県条件で決定され、また予算の上からも、定時制教職員の人事上の諸事項が、そのつど従来のように府県教育委員会の制約を受けることは明らかでございます。ただいま申されました二重行政の弊は何ら改善されませず、また定時制におきますところの事務職員、実習助手等の給与は市費でございまして、毎月、府県費職員と市費職員との給与事務をそれぞれ別々に取り扱わなければならない等、実情は事務の合理化よりもはるかに隔たっております。これらの点からも、五大市のような行財政能力を有する場合、高等学校教育の行政は一元化されることが望ましく、これによって行政上の合理化が達成されると思うわけでございます。市町村立学校職員給与負担法第二条によりまして、五大市高等学校定時制教職員が府県費になったために起った諸問題の検討に見られますように、五大市におきましては他の市町村と一応これを区別して、市費支弁に復元することが直ちに負担法の精神を生かし、加えて大商工都市としての働く青少年を対象とする定時制教育を振興きせるゆえんであると考えられるわけでございます。
  24. 河野正

    河野(正)委員 ただいままでいろいろ五大市におきます定時制高校あるいは全日制高校におきまして、いろいろな不合理な点を御指摘申し上げ、提案者に対し御説明を求めて参ったわけでございますが、今日まで教育の発展、進歩、あるいはまた円滑なる能率的な運営、そういったものを阻害して参ったにつきましては、いろいろな原因、隘路というものがあったものと考えるわけであります。たまたま提案者がそういった点に目をとどめられまして、今度そのような不合理を解消することによって、今後教育の能率的な発展を企図していこうというような点に御留意いただきましたことを、私ども心から敬意を表したいと思うわけであります。  さらに私は二、三の点について御質問を申し上げたいと思うわけでございます。その第一点は、この提案されました法案の中に示されております幼稚園の点についてでございます。この点について、まず私はいろいろ御質問を申し上げてみたいと思うわけでございますが、法案の趣旨から申し上げまして、第一に提案者に御説明を願いたいと思います点は、今度幼稚園の円滑なる運営ということで法案が上程されましたことを、私ども心から喜びとするわけでございます。そういった点から私どもがお尋ね申し上げておきたいと思いますことは、今日の幼稚園の教員の給与というものが一体どのような実態であるのか。まずこの点をお伺い申し上げまして、さらにそういった点を中心として二、三御質疑を申し上げて参りたいと考えます。
  25. 平田ヒデ

    平田委員 公立幼稚園の教員の給与の実態についてでございますが、公立幼稚園の教員の給与につきましては、国立の幼稚園の教員は、給与法によりまして、義務教育学校の教員とひとしい給与を認められておりますけれども、市町村の場合にありましては、市町村の財政規模の大小によりまして同一県内の同一学歴の教員相互におきましても異なっております。また一般的に義務教育学校と比較いたしました場合、初任給においてはすでに二号低く、昇給昇格も不完全でありますために、その差は年数を経るに従ってさらに大きくなり、はなはだしいところでは日給のところさえもございます。その一例を申し上げますと、岩手県の例でございますけれども、十一年勤務の小学校教員は平均いたしまして一万七千円でございますが、岩手県の幼稚園の教員の給与は八千百円でございます。同じ資格で同じ勤務年数で十一年たちますと、八千九百円というこんな大きな差が出て参るわけであります。もともと幼稚園は学校教育法体系の一環として学校教育法に明記され、教育職員免許法におきましても、義務教育の職員と同様な資格を要請されているにもかかわらず、国は幼稚園の教員の給与に関しては何らの補助を行うこともなく、また市町村立学校職員給与負担法も適用されてはおらないのでございます。
  26. 河野正

    河野(正)委員 ただいま幼稚園の現状におきます給与の実態というものが御説明されたわけでございますが、私ども考えて参りますに、今後日本の文化水準がだんだん向上して参りますと、幼稚園の教育という問題も私は非常に大きな重要な要素となって参るものと信ずるわけであります。そこでそういった幼稚園の教育の充実をはかっていくということになりますと、幼稚園の教師の給与の不合理あるいはでこぼこと申しますか、それを是正し、あるいは給与水準の向上、そういった点によって幼稚園教員の質を充実させていくということが、きわめて重要な問題ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。たまたま提案者がそういったことに着眼されまして、その不合理あるいはまたきわめて水準の低い給与を改善していこうというような御考慮に対しましては、深甚の敬意を払って参りたいと思うわけでございます。  さらに私どもお尋ね申し上げておきたいと思います点は、そういった幼稚園の教員数というものが大体全国的にどのような数字であるのか、この点はいろいろ今後の施設の改善あるいはまた内容の改善といったような点につきましても重要な関連がございますので、その点に対します御説明をちょっと伺っておきたいと思います。
  27. 平田ヒデ

    平田委員 幼稚園の教員数はただいまの調査では七千二百人でございます。
  28. 河野正

    河野(正)委員 さらにお伺い申し上げておきたいと思いますことは、ただいま提案者から幼稚園教員の数の実態あるいは給与の実態等につきまして私ども非常に有益な御説明を伺ったわけでございますが、それでは大体そういった幼稚園の運営費の現状あるいはまた幼稚園の予算の概要というものがどういう状態に置かれておるものか、その辺の事情を最後に御説明を伺っておきたいと思います。
  29. 平田ヒデ

    平田委員 今度の提出いたしました法律案のこれは最も大事な点でございますが、幼稚園給与府県負担にした場合にどれくらいの予算が必要かという御質問でございますが、その予算の概算は九百六十九万九千八百七十五円でございます。その内容を少し詳しく申し上げてみたいと思いますが、幼稚園の教員の平均給与は一万三千二百八十二円でございます。教員数がただいま申し上げましたように七千二百人でございます。そこに期末、勤勉手当、それに本俸というものを加えますと、どれだけの概算になるかとしますと、十三億七千七百余万円という数になります。法律案にもございますように、幼稚園教員の給与を二分の一府県の負担とし、五大市を除くことになっておりますので、五大市給与費、諸手当一億八千九百余万円を差し引きますと、そうしてしかもこれが半額県費負担でございますから、五億九千三百六十四余万円ということになるわけでございます。御承知のように幼稚園は地方財政計画におきまして、その他の教育費の中で種別補正で園児一人当りの単価がきめられております。三十二年度は園児一人当りの単価が二千四百二十一円となっております。そういたしますと、園児一人当り二千四百二十一円の単価に、園児数大体二十四万一千二百人おりますから、それをかけますと、基準財政需要額となるわけでございます。で、教員給与の半額五億九千三百六十四万余円からすなわち幼稚園の基準財政需要額五億八千二百九十四万余円を引きますと、新らしく必要とする財源、先ほど申し上げました九百六十九万九千八百七十五円ということになるわけでございます。  人格形成期にあります大切な幼児時代を預かって、献身的に働いておって下さる幼稚園の先生方の、切実にして、しかも国家予算にいたしますればまことにささやかな願いなのでございまして、しかも交付金の次第では県の負担は不要とも考えられますので、私はこの際この法案が皆さんの御賛同を得て通過いたしますれば、これは国家百年の計という意味から見ましても、非常な仕合せであると思っておるわけでございます。  また幼稚園の経営費の現状等についても今お尋ねがあったと思うのですけれども、今幼稚園の保育料は平均一人一カ月五百五十円でございます。入園料は四百円でございます。これだけ徴収しておるわけでございますけれども、これらの費用は幼稚園の運営費の三・五%にすぎないわけでございます。あとの九六・五%というのはほとんど父兄の寄付によってまかなわれているわけでございます。  諸外国の例をちょっと申し上げてみたいのでございますが、イギリスなどにおきましては、幼稚園の教員の給与は全部国の定めた給与表に基いて支払われておりまして、給与体系は小学校教員のそれと同一になっております。またアメリカの給与体系は、やはりこれも小学校の教員のものと同一なものが適用されております。こういうわけでございまして、日本ではちっとも国がかまってくれていないというわけでございまして、しかもこのたび、この提案理由の説明の中にも申し上げておきましたけれども、危険校舎、二重保育あるいは日曜保育、巡回保育等が跡を断ちませんし、設備につきましても施設基準以下のところが七三%もあります不正常な状態の中で、これらの幼児の教育が行われておるのでありまして、職員の給与二分の一を県負担にして市町村の負担を軽くして、市町村は施設や設備に重点を置くようにしたいというのが、このたびの提案の重大な理由でございます。なお人事の交流を円滑にして幼稚園教育の充実振興等をはかるためにも、ぜひともこの法案は皆さんの御賛同を受けたいと思う次第でございます。     —————————————
  30. 長谷川保

    長谷川委員長 次に公立学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。木下徹君。
  31. 木下哲

    木下委員 提案者にお伺いいたしますが、お変えになる趣旨また最後的なお気持はよくわかりますし、その点につきましては全面的な賛成をいたしたいと思うのでありますが、二点だけお伺いを申し上げたいのであります。  その第一点は、従来の不正常授業解消促進臨時措置法というものといかなる理由によって一本になされたのか。第二点は五カ年にわたりまして解消するものとしたときに、平均一年間六億程度の増加をお見込みになっておりますが、この算定基礎はいかようなものであるかをお伺い申し上げたい。
  32. 櫻井奎夫

    櫻井委員 質問の第一点でございますが、御承知の通り今日の日本の義務制学校において非常に不正常な授業が行われておりますし、坪数あるいは生徒定員数という点において基準を下回ったすし詰め教育等が行われておるわけであります。これは義務制の建前からすみやかに解消してりっぱな教育が行われなければならないというのがこの法律提案した理由でございますが、この不正常な事態を解消するために、ただいま御指摘になりましたように二つの法律があるわけです。一方は公立小学校の不正常授業解消促進臨時措置法であります。この法律によりますと、対象となる小学校の不正常授業を解消するために国が予算の範囲内でその経費の一部を補助することができるということになっておりまして、この提案理由にも書いておきました通り、今日地方財政が非常に逼迫しておる折柄、残りの三分の二というものを地方の負担にするということにいたしますと、いつまでもこの不正常授業というものが解消できない、そういう建前に立ち、一方この国庫負担法においては公立学校の年限の延長に伴って二分の一を国庫負担を明記しておるわけでありまして、従って私どもこの小学校の不正常授業は非常に地方自治体に負担をしいておる。そのために不正常授業がいつまでも解消されないのであるから、これをいわゆる義務的な国庫の負担にする。二分の一を負担にするという法律が幸い一方にありますから、そっちの方にこれを発展さしていって、すっきりした形で日本の義務制学校の不正常授業を一日も早く解消させよう、こういう趣旨に基いてこの法律提案されたわけであります。それが第一点でございます。  次に、第二点の年間六億円の積算基礎でございますが、これは非常にこまかになりますので、あとで詳細な資料をもって差し上げたいと思います。ここで説明をいしてもよろしゅうございますが、非常に数字がこまかでございますので、ただこのような観点で二分の一の国庫負担とした場合に大体どのくらいの費用が必要であるかと申しますと、小学校で大体十七億九千七百四十四万円、それから中学校で十億三千万円、盲ろう学校で一千六百万円の経費が必要なのであります。ところがこれは最低の基準によって、小学校の場合は不足教室数に最低の〇・九坪をかけまして、それを五十人にして算定した最低基準であります。中学校の場合は不足坪数に基準坪数一・〇八をかけまして五十人の生徒数によって算定した費用であります。盲ろう学校も最低基準によりて算定をいたしました。ところでこの二十八億四千三百七十四万円でありますが、現行の法律によって小学校不正常授業解消整備費補助金は実際三十二年度五億九千万円出ておるわけです。それから先ほど申しました義務教育年限延長に伴う建設費負担金が十五億七千七百万円本年度の予算に計上されております。これは屋内運動場を含んでおります。それから特殊学校施設整備費補助金として盲ろう学校に対して九千六百七十二万円が計上されております。以上の五億と十五億七千万円と九千六百七十二万円を寄せました二十二億六千四百六十四万円というのは三十二年度の予算の中においても施行されておるわけであります。従って私どもの算定いたしました二十八億四千三百万円から現在この二つの法律によって行われておる費用を差し引きますと五億九千万円というものが出てくるわけであります。この五億九千万円、約六億でありますが、六億の金があるとするならば日本の義務制学校における不正常な授業が解消できる、すし詰め教育も解消できる、こういう基礎に立って計算をいたしたわけでありまして、なおこまかい基礎はプリント等によってお手元に届けるようにしたいと思うのであります。
  33. 木下哲

    木下委員 御説明でよくわかりましたが、重ねてお願いを申し上げておきますのは、その詳細にわたりますプリントをぜひちょうだいしたいと思います。     —————————————
  34. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、これより請願審査に入ります。本日の請願日程第一、義務教育費全額国庫負担に関する請願より日程第四六、柔道振興に関する請願に至る四十六件を一括議題とし、審査に入ります。  まず請願審査委員長坂田道太君より小委員会審査の結果を御報告願います。坂田道太君。
  35. 坂田道太

    坂田委員 一昨日の請願審査委員会における請願審査の結果について御報告いたします。  本日の請願日程中、日程第一から四、六、七、一〇から一二、二三、二六、三一、三三、三四、三七から四一、四五及び四六の各請願はいずれも採択の上内閣に送付すべきものと決し、次に日程第五、八、九、二二、二四、二五、二七から三〇、三二、三五、三六、四二、四四の各請願はいずれもその採否の決定を保留すべきものと協議決定いたしました。  なお日程第四三、宗第二十四号内務文部次官通牒再発行等に関する請願につきましては、なお意見がございますので、委員会において文部当局に対する質疑の後その採否を決定すべきものと協議決定いたしました次第でございます。  以上御報告申し上げます。
  36. 長谷川保

    長谷川委員長 以上で請願審査委員長の報告は終りました。  それではまず日程第四三を除く残余の請願についてお諮りいたします。本日の請願日程第一より第四六に至る請願のうち日程第四三を除き小委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  それでは日程四三、宗第二十四号内務文部次官通牒再発行等に関する請願について審査を進めます。坂田道太君より文部当局に対する質疑の通告があります。これを許します。坂田道太君。
  38. 坂田道太

    坂田委員 ただいま議題になりました宗第二十四号内務文部次官通牒再発行もしくは確認方に関する請願につきまして文部当局の意見を承わっておきたいと存ずる次第であります。  その内容は、新憲法の制定によって政教の分離がはっきりと打ち出されたわけでございますが、昭和二十二年の法律第五十三号の社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律が施行されまして、これによって当時地方公共団体に対し、宗第二十四号内務文部次官通牒が発せられたわけでございます。ところがこの仙台市の問題に関しまして請願者はその通達が県からは市当局に通達があったにもかかわらず、われわれ国民に対してはその通知漏れになっておる。従って自分たちの当然取得すべき権利を喪失した、そういうような趣旨であるわけでございますが、国または地方公共団体の所有地を寺院、神社等に無償で払い下げた問題で、明治以来無償で寺院、神社等に貸し付けられておった国有地などは、元来社寺などが長年使用しておったのでございまして、制度的にはその所有権が必ずしも明確ではなかったという理由で、それらの土地を明治初年に無償で国有ないし公有にいたしたものでございます。従いましてこれらの土地は、社寺が無償で引き続き使用しておったのが通例になっておりますが、真の所有権の所在についての論争が、自来昭和の時代まで、社寺と国または公共団体との間に絶えなかったことは、皆様方御承知の通りだと思うのでありますが、その後先ほど申しましたように新憲法が施行せられました際、第八十九条の国、地方公共団体と宗教団体との関係の中で、これらの土地の沿革的意義が初めて確認をせられ、それに基いて昭和二十二年法律第五十三号をもちまして、国有地については無償または特に安い価格で払い下げるということにきまったわけでございます。  一方、これらの国有地と沿革的意義を同じくする地方公共団体の所有の土地につきましては、同様の措置をするようとの通達が、その当時文部次官と内務次官との共同で発せられておりますことは、御承知かと思うのであります。それにつきまして一体この通達というものが、地方公共団体に対しまして拘束力を持つものかどうか、あるいはそのときの事情等がわかっておりましたならば、この際明らかにしておいていただきたいと思う次第であります。
  39. 近藤春文

    ○近藤説明員 社寺等に無償で貸し付けてある財産の処分に関する法律が出ましたのは、新憲法が公布になりまする時期に関連いたしまして、それまでの国あるいは地方公共団体と社寺との関連というものを政教分離というものの線によって切る、それから同時にその背後には神道指令がございまして、すみやかに新憲法の精神に即応した態勢に移行するという建前から、この法律が出たわけでございます。それと関連いたしまして、宗教団体が使用しておる地方公共団体の財産の処分に関しまして、ただいまお話がございましたように、内務、文部両次官通牒をもちまして、国と同じように地方公共団体においても措置をするようにという通牒を出したわけでございます。その当時におきましてこれが出まして、その通牒の中には、その申請に関しましては一年以内に申請をする、一年以内に申請を出したものにつきまして無償譲渡すべきか、あるいは半額譲渡すべきか、あるいはまた随意契約によって売り払うか、こういうことに関しまして境内地処分審査会というものがございまして、審査会において決定する、こういうことが行われたわけでございます。この精神を内務、文部両次官通牒をもちまして、都道府県知事に流したわけであります。当時の占領下の事情もありまして、すみやかに新憲法の精神に即応していくということから、毎月その処分につきましては、都道府県を通じましてその処分の状態報告を求めまして司令部へそれを報告する、こういう形をとって参ったのでございます。  この通達によりまして、国並びに地方公共団体が宗教団体に無償貸与しておるこの関連を明確に切るという線はすみやかに行われたものと考えております。ただその場合に、ここで無償譲渡または半額の対象となっておりますものの範囲がきまっておりまして、宗教団体の宗教活動に固有のもの、こういうように売り払いの範囲または譲渡の範囲が決定されております。  ただいまの仙台の問題は墓地の関連の問題と承知いたしておりますが、墓地に関しましては境内地処分審査会でいろいろ問題になりまして、当時、参考人の意見を聞く等の方法によって相当研究された結果、境内地の内部にあります墓地につきましては、この法律並びに通牒の対象として考える、境内外墓地はこれを除く、こういうことになっておるわけでございます。従って仙台の問題に関しましては、それが境内外墓地である場合には法律並びに通牒の範囲外の問題となるわけでございまして、この通牒というものが出されたその墓地というものをどう考えるかという別の問題になると思います。  それから墓地そのものの所有権の問題でございます。ただいまお話がございましたように、所有権が明白でなくていろいろ論争もあるということは承知いたしておりますが、明治六年、七年、八年の地租改正によりまして官有地と民有地とをはっきり分ける、そのときに人民共有墓地として、仙台の問題になっております場所が取り上げられておりまして、その後ずっと部落から町村合併——町村が仙台市に編入されます過程においてそのまま移向しており、現在におきましても、その過程において一応所有権というものは仙台市が持っておるということで、問題は管理の問題に関連しておるというように伺っております。従って直接法律七十八号並びに五十三号、それから内務文部両次官通達そのものの問題と若干関連はありますけれども、実は墓地の管理の問題としてこれが取り上げられているのではないか、こういうような感じを持っておるわけでございます。
  40. 坂田道太

    坂田委員 今大体の事情はわかったのでありますが、通達の対象に境内内部の墓地等が含まれる、こういう御答弁でございまして、仙台市の場合はそれが境内の墓地であるか、あるいは境内以外の墓地であるか、その辺の事実の有無についてはまだ調査中だという御答弁だった。そこでお伺いいたしたいのですが、もし境内内の墓地であって、いわば通達の対象となり得るものであった場合、あの通達というものはある程度拘束力があるのかないのか。ないようなことを通達で出されるということは、私はあるまいと了解するのですが、そういうふうに了解していいのかどうか、非常にデリケートな問題ですけれども、そのデリケートなところを御答弁願いたい。
  41. 近藤春文

    ○近藤説明員 通達が出されましたのが、占領下という特別な条件下において行われましたものでございまして、すぐ処置をするという建前から一年以内という制約をつけたわけであります。従いましてその後新憲法が施行されまして、その効力が発生いたしました後において、その後の社会情勢の推移等によりまして、この通達そのものが生きているかどうかということは、なお検討の余地があるのじゃないかと思っております。それから時期を限りまして一年以内ということを限定いたしておりますことが、当時の経過的な法律として考えます場合に、時限法的な意味をやっぱり持つのではないかということを考えますと、政教分離という根本的な精神は憲法の八十九条に明らかになっておりますが、それからすぐその通達が生きてくるというように持っていくことは飛躍があるのではないか、こういうような考え方で、これにつきましては十分検討をしなければならぬのじゃないかと考えております。
  42. 坂田道太

    坂田委員 今の御答弁で、実は私はっきりわからないわけなんですが、これは仙台市の社寺の問題ではありますけれども、しかし国民の側からいった場合は、いわばそのような法律が出、そしてそれに基いて通達が出て、それが国あるいは地方公共団体の手続上の過失によって本人に通達が行かなかった。この行かなかったことについても、行ったか行かなかったかという法律上の問題はあると思いますけれども、行かなかった場合において、国民の側には何らの手落ちもない、過失がないのに、国民が持っておる権利地方公共団体あるいは国の手落ちによって、手続の不備によって喪失されるということは、これは私は非常に重大な問題だと考えるわけで、実はこの問題をお聞きしておるわけなんです。そこでもしそういうような国あるいは地方公共団体の手続上のことによって国民権利が喪失をするということであるならば、これらに対する損害賠償なり、あるいは法律なりをもってこれを救済しなければならない。そういうのがわれわれ議員に課せられた使命であるというように私たちは思うわけです。それで今のお話の中に、一年の制約というお話があった。その一年の制約がある。しかしその間にそういう手続をとらなかったからもうだめなんだということは、国民の側からいうと、そういうような通達がきておったかきておらなかったかということはわからないわけなんで、そこを私は国民の側に立って言っておるわけなんであります。その辺のところをどういうふうに政府はお考えになっておるか、参事官からも御答弁いただきたいと思います。
  43. 齋藤正

    ○斎藤説明員 御質問の点でございますが、国が所有しております同様の財産に関する問題でありますれば、お話のように法律が出ておるわけでありますので、一年以内に手続をしなければその権利を失っておるわけであります。その後争訟になって続いておるのは別でございますが。ただいまお話のように、これが地方公共団体と社寺等の間の関係の土地につきましては、通牒によって地方公共団体が処理しておるということから出てきた問題であると思います。ただ一面社寺側の考え方としては、当時であったならばかりに譲与または売り払いの対象になっておったということであれば、現在でも、もし公共団体の方の側の過失でそういったことが起ったとすれば、現在でも同じことをやられてしかるべきじゃないか、こういう御質問趣旨だろうと思いますけれども、そこはなかなかむずかしいところだろうと思います。この通牒が出ましたあとすぐ憲法が施行になりまして、憲法自体によりまして、土地の貸与等の関係は本来断ち切れるものでないものを、国の場合は法律をもって一年の猶予期間をもって処理したという関係になっておるのでありまして、現在の時点に立って見た場合に、すべてその当時の事情と同じように処理すべきかどうかということは、一つの問題であると思います。さらに具体的な事件に関しましては、当該の土地が果して当時の譲渡または売り拡いの対象となるべき性質のものであるかどうか、さらに通牒等の処理の状況がどうなっておったか、いろいろ検討すべき問題がございますので、文部省といたしましては、この点に対しまして陳情等もきておりますので、さらに財産の処分ということになりますれば、現在の段階ではいろいろな制約があるわけでありますので、慎重に考慮したいと思います。
  44. 坂田道太

    坂田委員 ただいまの参事官のお話で大体了承いたしました。ただこれが形式上、たとえば国が無償で社寺等に対してはやってはならないという新憲法の建前からいって、それを無償でやっておらないという場合、それは事実問題としてやっておらないということになれば、憲法違反のおそれもあるんじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  45. 齋藤正

    ○斎藤説明員 憲法の関係は国または地方公共団体の財産を、宗教上の組織または団体の使用に供することを禁止するわけでございます。それを早く断ち切るために一年の手続の猶予を認めて早急に分離する。その分離する方法といたしまして、先生がおっしゃいましたように、明治初年におけるいろいろ土地の所有権に関する経緯もあるので、法律または通達の内容のような臨時の措置をきめたわけであります。
  46. 坂田道太

    坂田委員 そこで問題になるのは、大部分のものは、今御答弁になったことで憲法上の疑義がなかったわけです。この問題に関しては形式としては依然として違反の問題があり得ると思いますが、いかがでございますか。
  47. 齋藤正

    ○斎藤説明員 その点がききの市有墓地という標題にもありますように、市有の墓地でございますれば、憲法にはもちろん違反しないと思いますが、その点、墓地のあり方の実態についての問題があるのでございますから、この点について検討してみる必要があると思います。
  48. 長谷川保

    長谷川委員長 本請願に対する質疑はこれにて終了いたしました。  お諮りいたします。本請願は採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  ただいま議決いたしました請願に関する報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  なお本委員会に参考のために送付されました陳情書は全部で四十件でございます。念のために御報告申し上げておきます。     —————————————
  51. 長谷川保

    長谷川委員長 この際児童生徒災害に対する予防と補償に関する件について発言を求められております。これを許します。河野正君。
  52. 河野正

    河野(正)委員 この際児童生健の災害に対する予防と補償に関する件について決議案を提出いたします。  まずその案文を朗読いたします。     児童生徒災害に対する予防と補償に関する決議   義務教育学校児童生徒が次の時代の担当者として、極めて重要な意義を有するものなる点にかんがみ、その教育の責務を負う国及び地方公共団体は、児童生徒の身心の保護育成について、不断の配意をなし、その災害を未然に防止するはもちろん、万一、学校管理教育活動中に、不慮の災害を起した場合においては、これに対して急速に適正な補償が行われる必要がある。政府はすみやかに、これがために所要の措置を講ずべきである。   右決議する。  以上であります。  本決議案の趣旨はすでに案文の中に尽きておると存じますので、省略させていただきますが、何とぞ皆様の御賛成をお願いいたします。
  53. 長谷川保

    長谷川委員長 ただいまの河野正君の御提案についてお諮りいたします。河野提案児童生徒災害に対する予防と補償に関する件を委員会の決議として議長に報告し、政府当局に参考送付いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  55. 長谷川保

    長谷川委員長 次に文教行政に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。高津正道君。
  56. 高津正道

    ○高津委員 私は、四月二十七日の当委員会文部省の教科書行政について質問をいたしましたが、その際内藤初中局長、安達教科書課長の御説明を承わりました。しかしそれが納得されないので、質問を保留しておいたのであります。その間急いであげるべき法案や緊急な諸問題の審議が続けられ、本日やっと教科書行政に関する質疑の時間をいただいて、委員長理事委員各位に感謝しながら若干の点を簡明に質問をいたします。  第一点は、先般当委員会において東京教育大学教育図書研究会は、その所有する株をすでに処分した。すなわち学図に引き取ってもらったと言われ、また広島大学学校図書研究会の方は目下その手続中であると御答弁になりました。そこでお尋ねいたしますが、学図がその株を引き取った一株当りの値段は幾らであったでありましょうか。また広島大学の処分はその後どうなっているのでありましょうか。
  57. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ただいま学校図書の株を引き取った、その額は幾らであるかというお尋ねでありますが、この点については当時の株価状況も調べなければならぬし、また幾らで引き取ったのか、その金額に対しましても、一ぺん関係者から事情をお聞きしたいと思いますので、適当な機会に報告させていただきたいと思っております。  それから広島大学の方につきましては、目下手続中でございますので、引き取ったということについては、私まだ報告を受けておりません。
  58. 高津正道

    ○高津委員 去る四月二十七日に、目下手続中であるといわれ、今日までに二十日間たっているのでありますが、まだ報告も来ないということですが、あなたは督促はされていないのですか。
  59. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ただいまの株券の処分、特に広島大学の分については、私の方から広島大学に照会はいたしたのでございますけれども、まだ報告が参っておりませんので、手続中としか報告がございません。御質問の点もありますから、早急に処理するように努力いたします。
  60. 高津正道

    ○高津委員 東京教育大学の研究会の持株処分は、大株主であるということが悪い、そういう理由で自発的にやったのでありましょうか。または文部省がそのような意味あるいはその他の意味で指示をなさった結果でありましょうか。
  61. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 これは自発的に処分したのであります。
  62. 高津正道

    ○高津委員 次に、文部省はなぜかくのごとく一会社の教科書だけに莫大な利益を与えるような組織団体を、文部省の直轄学校である国立大学付属小学校に置くことを長年黙認してこられたのでありましょうか。
  63. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 これは著作権の問題とも関連する問題でございまして、大学の先生方が教科書に自由に執筆されるわけであります。このことを私どもとやかく言っているわけでもございませんし、この団体が今のところ改組されまして、学校とは一応別個な団体になっているわけでございます。理事長及び会長等は、必ずしも学校の関係者ではないわけでございまして、この団体が著作権を事実上持っているという格好になっておりますので、集団著作が現に行われております、これもいかぬというわけには参らぬと思うのであります。別に独占禁止とか何とかいうわけではございませんので、個人が相集まって一つの団体を作って、この団体に著作権が帰属しておる、こういう実情でございますので、これを禁止する法律は別にないと思うのでございます。
  64. 高津正道

    ○高津委員 今のところ改組して学校とは別になっておる。また個人が集まって、それは執筆者の団体を作っておるのである、こういうお答えでありますが、今のところ改組というのは、いつごろの時期をきしておりますか。いつごろからのことですか。
  65. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 昨年以来そういう措置をとっております。
  66. 高津正道

    ○高津委員 現に昨年まで、学図は東京教育大と広島大学の両方の付属小学校自分の会社の社員おのおの一名を常駐させて、教官連中を全国に宣伝講師として派遣する連絡をしていたということをわれわれは聞いておるのであります。こんなことが放置されておいて、そして公平な教科書行政ということが言えるでありましょうか。
  67. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 私そういう事実は聞いておりませんが、おそらく、教科書はどういう趣旨でできたか、この教科書の特色を、趣旨を、大いに宣伝するこのことは私差しつかえないと思うのでございます。ですから、著者が自分の教科書の特色を適当な機会に述べるということは、別に私どもとしてはこれを差しとめているわけではございません。
  68. 高津正道

    ○高津委員 長い間、学図から中田俊造という人が東京教育大のその団体に入っておった。このような事実もあるのでありますから、私はよく調査される必要があると思います。  次に、文部省は、そういうような法人を作って一出版社の商略に踊った教官を処分し——今もまたそのカムフラージュをしておりますが、またその出版社に対しても厳重警告すべきではないかと思いますが、これに対していかがにお考えでしょうか。
  69. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 教官が教科書の執筆をしたということで、あるいはそれが団体を作って著作権を団体にしたということの理由によって教官を処分するわけには参らぬと思うのであります。それから、これに対して学校図書の方に違法な措置があれば別でございますけれども、そうでない限りにおきまして、この点から学図に厳重な注意をするというわけにも参らぬと思うのでございます。
  70. 高津正道

    ○高津委員 これら二つの団体の受け取った印税は、毎年多いときには二千万円、そして少いときは八百万円というときもあるという御答弁を前回されたのでありますが、私は膨大な額だと思うのでありますが、どのように使われたか、詳細に調査されたことがあるのでしょうか。
  71. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 大体私どもの聞いておるところでは、八百万ないし一千万が多いときだそうです。その金の大部分は、教育研究に使っておるし、あるいは編集の経費等に充て、最後に残った分が各人に分配されるわけで、関係者が非常に多いのでございまして、一人当りの額にしますと、比較的少いということを伺っておるのであります。大部分の経費は、教育研究あるいは編集諸費、こういうふうに聞いておるのであります。
  72. 高津正道

    ○高津委員 この発行会社のかかる行為は、公正取引法第二条第七項、第三号、第四号、第五号及び同第十九条に明らかに違反していると信じますが、文部省はかくのごとき教科書の正常取引を乱す根源になっている両大学の財団法人を解散するお考えはないか。ちなみに、ちょうどその法律をお持ちになっていないかもしれないから読んでみますと、第二条第七項は、「この法律において不公正な取引方法とは、左の各号の一に該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。」と書いてあって、「三不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。」「四相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること。」「五自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」この五について申しますと、他社の持たざる有利な地位を取得して自己の販売政策を行なったと私には見えるので、これに違反すると思えるのであります。そうして第十九条は、不公正な取引方法の禁止というところでありますが、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」となっておるのであります。このように見られる手段が教科書について講ぜられておるのでありますが、ちっとも差しつかえないと、こうやはり言い続けられるのでありましょうか。
  73. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ただいまおあげになりました理由から不公正な取引であるというふうに私どもは考えていません。と申しますのは、昨年十二月の二十日に、公正取引委員会は、教科書に関する特殊指定をしております。その特殊指定の内容は、金銭物品等の競争、こういうことによって教科書を有利に採択きせる、これは公正委員会が特殊指定をしておるのであります。それから他社の中傷、こういうものが該当するのでありまして、本件につきましては直接不公正取引の対象になっていないのであります。ただ東京と広島のかつての高等師範だと非常に教育界に権威があるから、これだけで採択をしておるわけじゃございませんので、これによって公正取引とは関係ございませんので、私どもは従って解散をきせる意思はございませんが、しかしながら高津委員のお話しのように、世に疑惑を招くような点がありますれば、十分注意をするつもりでおります。
  74. 辻原弘市

    辻原委員 今の問題に関連してちょっと伺っておきたいのでありまするが、かつて教科書の編集、出版、販売、採択等の問題につきましては、当時行政監察委員会が設置されました折に、これを議題としてかなり精細にわたっていろいろ論究をいたしております。当時やはり問題になりましたことは、出版の事業と、販売の事業と、それから採択、これの関係が一本になることは非常に好ましくないという点が非常に問題になったわけであります。そういう点からあらためて伺っておきたいのでありますが、今この広島大学それから東京の教育大学、これは大学と言っておりますが、誤まりのないようにしていただきたいと思いますが、誤解があるといけないと思いますが、私どもの聞いておる範囲は、これはそれぞれ広島それから東京教育大学の付属小学校の方々の執筆にかかる団体だ、こういうふうに伺っておりますので、大学といえば直接大学の教授に問題があるように聞えますが、この点は誤解のないようにしておいた方がいいと思います。そこでそれぞれの付属の先生方が執筆をされて、そうしてその教科書の研究ということを中心にして団体を組織されているということは、これは間違っていない事実だと思います。そこで問題になるのは、付属小学校ないしは中学校、ともども教科書に対する採択者とは私は申しませんが、採択に関係があると思います。そこでその採択に関係のある方々が執筆をされた教科書について研究会を催すということは、事実上は影響をもたらすのではないかというところに疑問と疑惑が生まれてくると思います。そういった関係が、いわゆる公正取引委員会かつて警告を発しております。この警告の内容はもちろん直接そのことについて警告を出しているのではないと思いますけれども、しかしそれらを含めてやはり問題になっておったのであります。  そこで伺っておきたい中心点は、採択に関係のあるものが編集及びそれから事実上の販売に影響を与える行為というものは、これは不公正な取引ないしは教科書行政として好ましいあり方ではないという一般的な考え方があるわけでありますから、文部省はこの点については一体どういうふうに判断をされておるのか。先ほどから高津委員の御質問を伺っておりますと、この付属小学校の問題は、特別に当該団体なりあるいはそれと関連を持つ会社に警告を発する必要はない、こう断定をせられておるのでありますが、その断定をせられておるということから考えますと、何らそこに不公正な関係がないというふうに受け取るわけでありますが、さように受け取ってよろしいものかどうか、この点について文部省の態度を一つ伺いたいと思います。
  75. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 私が申し上げましたのは、法令に違反しない限り警告を発する必要がない、こういう意味でございまして、今のところ現在の段階において世の疑惑を招くようなことがありますれば、私どもは適切なる措置を講ずる、こういう意味を申したわけであります。それから今の一般的な方針といたしまして、お尋ねの件は採択関係者が採択に影響を与えるような行為、これは私の方は差し控えさしたいというのであります。これはどういう場合をさすかと申しますと、むしろ駐在員なんです。つまりかつて教職員であったり、校長であったり、教員委員であったという、この人たちが駐在員となって顔をきかせて不当に採択をきせる、採択の公正を害する、こういうようなことになることを私どもはおそれまして、この駐在員制度につきましては、可及的すみやかに全廃するようにということを申しておるわけであります。  それからいま一つ問題点は、今お話のようなケースでありますが、ただ東京と広島、これだけが関係しておるのでございますので、これは採択にはその学校にいってはお話の通りある。その他の関係についてはないわけでございますので、今取引の公正なる採択を阻害するとは私ども考えていないのでございます。むしろ問題なのは理科教育研究会とか、こういうようなことで全国的に組織した団体は、採択の関係者が編集をいたしますと、結果においてこの採択の公正を害するということはあるわけでございます。しかし今の場合は東京教育大学の一部であって、これが採択に影響があるとは私どもは考えていないのであります。
  76. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、今上げられた点は、一つはかつて採択に関係あったいわば採択に影響を及ぼす方方が駐在員となった場合は公正な採択あるいは公正な取引を阻害する。これはかつての監察委員会でも大よその意見として文部省に示してあると思います。従ってこのことは問題がないと思います。そこで全国的な組織における団体の中に所属している人たちが執筆者となっている場合は影響があると言うが、これは小さい規模の団体であっても性質は同じではないかと私は思います。小さい規模の場合、たとえば広島とか東京とかないしは九州なら九州を中心としたようなものという場合は、影響の度合いは違いますけれども性質は同じではないか。もし全国的な団体の方々が執筆したものが採択に影響を及ぼすのだということであるならば、かりに地域的な問題であってもそれはやはり影響があると見るのが常識だと思うのであります。度合いは違うかもしれませんが、しかし場合によっては度合いも変らぬ場合があり得ると思うのです。その団体が地方団体であっても及ぼす影響は、たとえば東京教育大学付属小学校となれば、これは全国的なものかもわかりません、あるいは広島大学付属小学校といえばこれもやはり全国的な影響を持つかもわかりません。従ってそのことを区別するにはいきさか私は無理があるのではないかと思います。しかしきょうはこの点について材料を持っておりませんので伺っておきます。  そこで大体において内藤さんの言われたことは、不公正取引の概念に入るのは昨年十二月の公正取引委員会が特別指定をした範囲、その中における駐在員の役割で、その他のことについてはいわばその範疇には入らない、こういう考え方だと思うのですが、私が特にこのことを申し上げたのは、かつてこういう議論があったのです。それは教員組合とか学校生活協同組合、これらが教科書の編集にも関係し、ないしはワーク・ブックの編集もやった。ところが教員組合それ自体採択に関係を持つ教員の団体ではないか、あるいは学校生活協同組合も同じ組織ではないか、従ってこれらの編集をした者は当然採択に影響がある、こういうことで、これは好ましからざる一つのあり方だというのでかなりの論議がありました。それに対する反論もいろいろ行われましたけれども、今の文部省の態度からいたしますと、これはいわゆる不公正な取引の範疇に入らぬというように受け取れるわけなんですが、さように受け取って差しつかえないかどうか。
  77. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ちょっと私御質問の意味が理解いたしかねたのですが、もし間違っておりましたら再度御質問願いたいと思います。大体公正取引委員会規定するところの特殊指定の概念にはこの問題は入らない。私どもは教育行政上先ほど申しましたような集団的な著作と申しますか、全国的な組織を持ったようなもの、すなわち採択関係者の組織的利用の問題については、これは私どもも慎重に検討しているわけでありますが、これが採択に重大な影響を与えることは好ましくないと考えます。もう一つは先ほど申しましたように、駐在員が顔をきかしてこれによって採択の公正を害するということも私どもとしては教育上好ましくない、こういう考え方で今検討しておるわけであります。今教員組合あるいは生活協同組合、こういうものが対象になるかどうかというお尋ねでございますが、その実態をもう少し究明してみないと、私ども結論が出しにくいかと思いますが、要は、採択関係者の組織的利用によって採択の公正を害するかどうかという点において判断をしないと、結論は出せないと思っております。
  78. 辻原弘市

    辻原委員 私も実は当時監察委員会でも今内藤さんが最後に言われたような議論をしたことを記憶しておるのでございます。と申しますのは、採択関係者が作った団体がある。その団体が教科書の編集にタッチしておるというのが即、不公正な形、教育上好ましからざるものだと即断をすることは非常に早計であるというふうな議論をいたしました。われわれもその当時監察委員会として精密な調査をやっております。その場合にいろいろな団体がありました。しかしそれぞれの団体を精査いたしました結果、われわれの把握したところでは、当時直接的に採択に非常な悪影響を与えるということは見当らなかった。そして教育上別な面において貢献をしている団体もありました。従ってそれらについての判別というものは慎重に扱わなければならぬという見解をわれわれも持っておったのであります。従って先ほど付属小学校の問題があった場合に、あなたが、不公正な、取引に影響を与えておる団体であると即断せられなかった、そういうものではないと明言せられた限り、その点についてはやはり全体を通じて筋を通す必要があると私は考えます。そういう意味合いにおいて、個々の、この点については影響がない、この点については影響があるという議論をすれば、これは非常に主観がまじるという印象を受けるのです。だから付属小学校の問題は、単に不公正だという問題以外に、いろいろな点が疑問とせられているようでありますけれども、それ自体教育目的をもって、教育の純粋な研究団体であるということならば、これはあながち責めるには当らないのであります。しかしその成り立ちが特定会社と結びつき、または特定会社の恩恵を受けて、その一つの宣伝販売の出先機関的な役割をしているということであれば、これは重大な問題だと思います。従ってそれらの詳細な材料について、われわれもかなり疑問な点を持っておりますが、あなたの方で後刻さらに調査をせられて答弁せられるということでありますので、それは次のときに譲りまして、一応現段階においては採択関係者それから編集、それから会社、こういうものがかりに幾ばくの関係があっても、それ自体は不公正取引だと即断できない、範疇は主として駐在員の問題であるという言明を本日は承わっておくということにいたしておきたいと思います。
  79. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 駐在員の問題につきましては、先ほど申し上げました通りでございます。  それから今の集団著作と申しますか、採択関係者の組織的な利用、この点につきましては、十分実態を調査しないと私の方も結論を下しにくいと思う。それが公正なる採択に影響があったかなかったか、こういう事実の問題になると思います。私どもは公正なる採択ができることを期待しております。ただ、今東京と広島の問題は、自分学校だけにそういうものを使う——けしからぬではないかというお尋ねでありますが、これは全体の採択に非常な悪影響を及ぼすということとはちょっとずれるのではなかろうか。しかしいかなる場合におきましても公正なる採択を阻害することは差しとめたいと考えておるのであります。  それからもしその団体がお話のように特定な会社の宣伝機関になったりあるいは特定な会社の手足のようなことになるということですと、これはちょっと問題だと考えておりますが、そういうことはないと私は考えております。
  80. 高津正道

    ○高津委員 山口県は日教組の行き方を誤まれりとして敵視するところの日教団連が育成されておる地域として、教育社会から最近非常に注目を浴びている県であります。そこでは教育に関していろいろ問題があります。一つの事実は、下関豊浦地区では今問題になっております学校図書株式会社の小学校関係の全教科が三年きめつけ的に全部採用され、またそれに継続して三年相当広い地区に独占的に採用されておる。中学の教材もそれが非常に濃厚である。こういう一つの事実がございます。  もう一つ教育界の最有力者が存在いたします。それはこの前の前、県教育委員の選挙に立って次点で落選をした河内春次という人ですが、二回教委の候補に立ってまた次点で落ちて、参議院議員の安部キミ子氏が当選されたあと、補欠で繰り上げになった人であります。その後教育委員会法のあのような改正によりましてすぐにそれが、任命された人で、普通ならば日教組が支持するのであるが、その人間を支持しないために、校長連や一部の人がやっきになってそれを推した非常な有力者であります。政治力のある人であります。これを御調査になりましたかどうか。われわれから見れば何か不公正なことがあると思う。それはまた常識だと思うのであります。防長新聞などは非常に詳細にそのことを書いておりますが、人のいわゆる固有名詞を使うことは差しつかえがありますので、ここでは名前はあげませんけれども、このような事実を調査されたかということであります。
  81. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 私どももまだ調査しておりませんが、お話のように問題がございますようなら、さっそく調査いたしたいと思っております。
  82. 長谷川保

    長谷川委員長 午前の会議はこの程度とし、この際暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後四時十九分開議
  83. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため、その指名により理事の私が委員長の職務を代行いたします。  文教行政に関する質疑を続行いたします。野原覚君。
  84. 野原覺

    ○野原委員 御承知のように、国会もきょうで閉会になるようでございますから、私は佐賀県教組の問題につきまして、簡単に御答弁が残された点について確かめておきたいと思うのであります。  まず第一は、検察庁当局、井本さんになろうかと思いまするが、警察からもそれから検察側からも、いまだに参考人を何名引致して調べたかという御答弁がないのであります。いつも調査中だ、こういうことであるようでございますが、聞くところによりますと、いまだに各学校の先生が、きょうは二人、あしたは三人、こういうような調べ方をされている。そのことのために、ほんとうに大した犯罪行為でもないのに、教壇に落ちつくこともできない、まことに私は遺憾なことだと思うのであります。一体どういう方針で参考人をそういう調べ方をされておるのか、参考人は今日までに何名調べられれのか、承わりたいのであります。
  85. 井本臺吉

    ○井本政府委員 警察の方の参考人を調べた数はちょっとわかりませんが、おそらく六、七百人ぐらいになっているのではないかと考えます。検察庁の方で調べました数は、五月十一日現在で全部で二百九名になっております。これは五月十一日の現在でありまして、完全に捜査を終了するまでには、いま少しく数がふえる見込みでございます。いずれも教職についておられる方々だと思いますが、さような方を取り調べますのは、私どもといたしましても、いろいろ学校の仕事などに影響がありますので、できるだけ少い数で早く完結するように申し伝えてあるわけでございまするが、御承知の通り地方公務員法三十七条の事犯は、なかなか法律違反としてはむずかしい事件でございまして、関係者も相当多いということで、かように長くかかっておるわけでございますけれども、この上ともなるべく参考人の方々には御迷惑にならないように、早く捜査を切り上げるように申し伝えてあるので、間もなく調べも終了するものであるというように考えております。
  86. 野原覺

    ○野原委員 参考人の調査は警察側で六百名ないし七百名だ、しかも検察局としても相当な数の参考人を調べられておる、こういうことになって参りますと、その参考人を調べる方針ですが、そういう膨大な数を調べなければこの種の捜査というものが不可能であるという理由はどこにあるのか。私はしろうとでございまするから、こういう訴訟問題については詳しくは存じませんけれども、われわれしろうとが考えても、事件の真相というものが、今日一カ月に至ってなお参考人を次々と喚問しなければならないくらい複雑多岐であるとは思われないのであります。何と考えても、教職員組合に対するいやがらせと申しまするか、大きな心理的な弾圧、こういう不純なものがあるように感知されてならないのでありますが、その点についての御所見があれば承わっておきたいのであります。
  87. 井本臺吉

    ○井本政府委員 組合や学校の方々に御迷惑になるということは十分承知しておるわけであり、なるべく参考人の数も少くして調べたいということに努力はしておるわけでございますが、御承知の通り元来地方公務員法三十七条の事犯というのは、同盟罷業、怠業その他の争議行為というものになっておりまして、多数の関係者があるわけでございます。さような違法行為をあおり、そそのかしたことが一応犯罪の容疑になっておりますので、どの程度の方がどの程度にあおり、そそのかされたのか、そしてそのあおり、そそのかされたことによってどの程度違法行為をする気持になって——われわれの方から見ておりますと、佐賀の大会などに参加するに至った経路が法律違反であるというように考えておりますので、その間の事情をいろいろ調べますので多数の数が出て参ったわけでございますけれども、もう調べを始めましてから相当期間もたちますし、迅速に結末をつけるように申し伝えてありますから、もうそう御迷惑をかけることもなかろうと私は考えます。なおきょう御質問がありましたことは現地にも伝えまして、なるべく早く結着をつけるようにいたしたいと考えております。
  88. 野原覺

    ○野原委員 私はどうも納得できないのであります。地方公務員法第三十七条の内容というものは、なるほど教唆、扇動あるいは共謀等々でありますから、拘置をされた被疑者と目されておる者の行動についてそれを確実に確かめる必要があるからこういうことになっておるのだ、こう申しますけれども、実はもう事件が起ってから三カ月以上、検挙されてからで、四月二十四日でございますからもう一カ月に近い。しかも事件があったのは二月の十四、十五、十六日、そして検挙するに当っては慎重に考慮をし、ある程度のいわゆる捜査の裏づけ等もあって、これは有罪だという確証を持ったから、四月二十四日検挙したのだ、こういうこと等から思いあわせてみましても、実は納得ができないのであります。そこですみやかにということでありますから、この段階では私からすみやかにやることを重ねて要望するにとどめておかねばならぬかとは思いますけれども、単なる犯罪者でなしに、教職員諸君、しかも毎日子供を教えている諸君——これは佐賀県教組の全教職員が三、三、四で参加をしておるわけで、その八十何%が三割、三割、四割の中に該当しておると申しまするから、総計五千七百名だ。きのうは隣の教室、きょうは僕が警察に呼ばれるのじゃなかろうか、こういうような捜査の仕方というものは、私は全く了解に苦しむのであります。しかしなお私の方でも、幸い閉会になりますれば、佐賀に直接参りましてこの問題を調べてみたい。その上で検察庁の責任、あるいは警察側の捜査の状況等について、私どもは申し上げることがあれば申し上げてみたい、このように考えるわけであります。  そこで次にお尋ねをしておきたいことは、人事委員会に対して、地方公務員法の定めるところに従って不利益処分の提訴をいたしておることは、刑事局長も御承知の通りでございますが、いまだに人事委員会が開会をされていないのであります。これが開会をされない原因は、検察庁がその書類を押収したということにあるわけであることは、人事委員会の事務局長が私どもの党の調査団に答弁をしておるのであります。一体その書類なるものは、どういう書類であって、何日間検察庁にそれが押収されておったか。何月何日に返されたのか、返されていないのか、その点を御答弁願いたいのであります。
  89. 井本臺吉

    ○井本政府委員 電文は簡略であまりはっきりしませんのですが、五月十二日付の現地からの電報によりますと、押収中の県教育長が、各学校長から報告を求めていた三、三、四割の休暇闘争における運営阻害等についての報告書については請求があったので、五月八日に県庁の教職員誤あてに仮還付をしておる、こういう電報が来ておりますので、関係の書類は五月の八日に県庁の方へ返しておるのではないかというように考えております。
  90. 野原覺

    ○野原委員 その書類を押収したのは何日でしたか。
  91. 井本臺吉

    ○井本政府委員 押収目録が、実はまだこっちに参っておりませんので、押収目録と対照いたしませんと、何月何日、どこで押収した書類であるかということは、ちょっと今のところ申しかねますが、しばらく日時をかしていただきますれば、調査可能でございますので、何か適当の機会に御報告申し上げたいと考えます。
  92. 野原覺

    ○野原委員 不利益なる処分を受けた場合には、そういう行政処分に対しては、審査の請求を人事委員会にする。これは公務員の権利であります。その権利行使を不可能にしたのは書類が押収されたからであると、佐賀県の人事委員会は申しておりますが、このことはどのようにお考えになりますか。
  93. 井本臺吉

    ○井本政府委員 佐賀県の当局の方が何とおっしゃるかわかりませんが、われわれの方といたし示しても、犯罪の関係証拠物を取り調べなければならぬ責務がありますので、その責務を果さなければならぬと存じます。しかしながらそれを関係者の方に、なるべく御迷惑にならぬようにいたさなければならぬことは当然でありますので、私どもといたしましても、可及的すみやかにこれを調べまして、五月の八日で少しおくれましたけれども、一応仮還付しておるというような状況でございますから、この程度のことは、調べの過程から生ずるやむを得ざる御迷惑だったというように考えます。
  94. 野原覺

    ○野原委員 御迷惑にならないようにという御答弁ですが、一体これはだれが一番御迷惑をするとお考えになっておりますか。
  95. 井本臺吉

    ○井本政府委員 結局不利益処分の変更を申請された方々、あるいはそれを裁決する方々、関係当局者は、いずれも関係の書類がなければ職務行便ができないというように考えますので、関係者いずれも御迷惑になるというように考えます。
  96. 野原覺

    ○野原委員 私の聞くところによると、実は四月十日に不利益処分の請求をいたしておるのです。そうして四月十七日に佐賀県の人事委員会はこれを受理することを決定しておるのであります。それから五月八日でございますから、不利益処分の請求をしてから一カ月間書類の押収されておりますために、今日五月十八日に至りましても、なお人事委員会は公務員の当然の権利要求に基く審議すらも開かれていない。私はこれは大へんなことだと思う。これは非常な人権無視の行為じゃないか。地方公務員法の定むるところに従って、行政処分は可能でありますから、佐賀県教育委員会が停職処分にした、一カ月から六カ月した、当然できます。その内容批判は別として、これは可能です。問題があれば、したらいいでしょう。しかし一カ月から六カ月の停職処分を受けた教員諸君は、不利益処分の訴えが可能でありまして、いわゆる仲裁的な立場に立って人事委員会がこれを審議する、だから人事委員会はすみやかに審議されなければならぬのであります。人事委員会はすみやかに審議したいと言っておる。ところが、人事委員会の事務局長の言によりますと、検察庁が書類を返さない。県教育委員会が応訴の準備に整えておった、この被疑者に関する書類というものを押収してしまって返さない。五月八日まで返していない。ストップなんです。私はいかに犯罪捜査のためとはいいながら、このようなやり方というものは、あなた方の検察庁、警察の非常な権利の乱用でないか、職権の乱用じゃないか。犯罪捜査の権限があるから、おれはやるのだというけれども、片一方では法律に基いて権利行使として、不利益処分の訴えができる、それすらも不可能にしてやるということは、これは可能でしょうか、可能であるにしても、これは乱用ではないか、このように思うのであります。  人権擁護局長さんにお伺いをいたしますが、このことに対して、あなたとしてはどういうお考えをお持ちになるでしょうか。
  97. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 一般的に犯罪捜査に関連しまして書類の押収されるその結果、押収された者が相当迷惑をする場合があるのであります。本件の具体的な事例におきまして、どういう関係の書類であるか、私もはっきりいたしません。これが果して人権侵害の問題になるか、すなわちその関係書類の押収のために、不利益処分に対する人事委員会の審議ができないという点につきまして、私もう少し事態をよく確かめまして検討してみたいと思っております。
  98. 野原覺

    ○野原委員 これはぜひ御検討をわずらわしたいと思うのであります。  そこで刑事局長お尋ねをいたしすますが、同じ佐賀県に起ったできごとで、佐賀県の高等学校の教職員組合が、佐賀県教職員組合と同じような趣旨で実は大会を開いておることを御承知でありますかどうか。御承知であるならば、佐賀県高等学校教職員組合の持った要求貫徹大会なるものは、内容の上において佐賀県教職員組合の持たれた二月十四、十五、十六日の大会と本質的に一体どういう相違があるとお考えになっておるのか、その辺を承わっておきたいと思います。
  99. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私どもが報告を見ておりますと、たしか二月六日に高等学校の先生方が大会をやっておられるようでございますが、その大会におきましては、早退でございますか、早く学校を退きますのにつきまして、校長先生の御承認を得て早退をいたしまして、会合を持っておるというように聞いておりますから、さような事態では、地方公務員法の三十七条には触れない。従って本件の問題の事案とは性質が少し違っておるのではないかというふうに考えております。
  100. 野原覺

    ○野原委員 そういたしますと、地方公務員法の三十七条違反というものは、校長が認めるということが条件になる。校長が認めれば、早退、休暇というものは、どれだけとってもかまわない、そういうふうにはっきり割り切った考え方で今日臨んでおられるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  101. 井本臺吉

    ○井本政府委員 もちろん地方教育委員会もしくはその職務の補助者と申しますか、校長先生が御承認になれば、承認権者の承認があったということで、有給休暇も合法的に与えられたのであると私ども考えまするので、さような場合には、本件のような罷業行為というか、職場放棄というようなことにはならないと考えます。
  102. 野原覺

    ○野原委員 校長が認めたから問題じゃないのだ、片一方は校長が認めていないのに休暇をとったから問題がある、つまり休暇とか早退というような、その人が学校を休んだ内容でなくて、これを認めるか認めなかったかということに問題がある、こういう解釈をとっておるようでありますが、それじゃお尋ねいたしますが、佐賀県教組の場合は県の教育委員会が校長に対して、そのような休暇を認めてはならぬと事前に勧告をしております。しかし高等学校の場合には何らの勧告もしていないのです。その教育委員会というものが、事前に片一方には勧告して、片一方には勧告をしない、そういうやり方は私は片手落ちのように思うのです。早退にしろ休暇にしろ、高等学校の場合も相当多数のものが大会を開いておりまするし、学校運営に支障がないように、もし支障がある場合にはそのような早退を与えてはならぬというくらいの勧告があってしかるべきでありますが、それをしていない。このやり方というものは、どう考えても不公平なものと思うのでありますが、井本さんはどうお考えになるか、お聞きしておきたいと思います。
  103. 井本臺吉

    ○井本政府委員 高等学校の先生方の大会の情勢につきまして、私簡単な報告しか受けておりませんので、比較対照することはちょっと困難でございまするが、本件の問題の二月十四日、十五日、十六日の三、三、四割の賜暇の問題につきましては、承認権者でありまする教育委員会なり、また教育委員会とともにその補助者として承認をする権利のある校長さんが、休暇を与えないとはっきり申されておるにかかわらず、有給休暇は当然とれるべきものだというのでお休みになったという点が、問題になるわけでございまして、教育委員会の方から校長さんに、はっきりそういうものにつきまして、いろんな問題があるから、特殊な例外のものを除いて、原則として休暇を与えることの承認をしてはならぬという注意をすることも、あながち不都合な注意の仕方であるとは私は考えてはおりません。
  104. 野原覺

    ○野原委員 校長が認めたら問題がないとすれば、六割休暇をとる、八割早退をとるという場合に、校長が認めれば何ら問題はない、校長が認めさえすれば、教育委員会が干渉しない場合、三日休んでも、一週間全員の休暇にしても問題はない、そういう考えですね。お聞きしておきたいと思います。
  105. 井本臺吉

    ○井本政府委員 同じ承認するにいたしましても、何というか、われわれの方では権利の乱用というような言葉をよく使いますけれども、おのずから事態によりまして、承認を与えるべきものかどうかということの判断は、また別途にあると思います。承認を与えてもよし与えなくてもよしという事案で、校長さんの判断によって、この程度のものであれば学校の業務の正常な運営に差しつかえないということでお認めになりました分には、承認がございますれば問題になりませんが、さればといって、お話のように学校全体がストライキをやるのに、校長さんが承認すれば同盟罷業も犯罪にならぬというほど、それほどの承認の威力があるものとは私は考えてはおりません。
  106. 野原覺

    ○野原委員 そういうところがあいまいなんですね。この程度ならば問題がないのだという、その程度とはどこら辺に考えたらいのか。結局それも校長の主観でしょう。一割五分であって、校長が問題がないと言えば問題がないのです。あるいは五分であっても、問題があるとすれば問題があるのです。一体この程度、この程度と言うけれども、どの程度が問題なのか。私はこれは校長の主観だと思う。主観的に校長が認めたら問題ない、こう言うならばはっきりわかる。そういうところが実にあいまいなんですね。あなた方はその被疑者として多数の者を検挙して調べておりますけれども、そういう法に対する考え方というものは実にあいまいもことしておる。どういうところに基準を置いて、校長が認める場合の、問題のあるなしの程度というものを考うべきであるか、もう一ぺんお聞きをしておきい。
  107. 井本臺吉

    ○井本政府委員 釈迦に説法でございますが、法律問題では常に正当なるとかゆえなくとかいうあいまいな言葉が使ってございまして、どの程度になれば不法になるか、正当と不法の境目になりますと、非常に微妙な点がございます。その判断は結局健全なる社会常識できめるよりほかに仕方がないのでありまして、その境目をとらえて、片方が合法であるから、片方が非合法なのはおかしいじゃないかということが往々にしてありますけれども、極端なるものを比較いたしますれば、これは一目瞭然でありまして、本件のような場合には私は極端なるものであるというように考えております。またお尋ねのような、校長さんが承認をすれば、三日休もうが一週間休もうが、そういうことは問題にならぬのじゃないかということにつきましては、それは校長さんの承認が合法的な承認とは私は考えていないので、さような問題につきましては、やはり場合によっては地方公務員法三十七条の問題が起きるというように考えます。
  108. 野原覺

    ○野原委員 校長が認めなかったのに休暇をとったということだけが問題であって、有給休暇そのものが違法行為ではない、こういう考え方にやはり到達されましたか。当初検察当局の考えとしては、校長が認めることも一つの要素であるけれども、有給休暇自体にもこれは違法行為の点を考慮しなければならぬのではないか、こういうことでありましたが、有給休暇自体、早退自体、それから休むこと自体は問題がない、形式的に校長が認めるか認めないかが問題だ、今日そういう考えにはっきり到達されておるとすれば、私はその点についての質問はやめますが、そこのところはどうなんですか。
  109. 井本臺吉

    ○井本政府委員 一定の年限勤務すれば、一定の期間の有給休暇がもらえるということは、労働基準法にも書いてあることでございますが、ただし学校業務の正常なる運営に差しつかえる場合には、他のときに与えることができるということになっておりまして、無条件に有給休暇がとれるというふうには考えていないのでございます。本件は有給休暇に名をかりた職場放棄である、結局有給休暇ではない、本質はやはりこれは同盟罷業であるというように私は考えておりますので、結局三十七条違反になるというような見解を持っているわけでございます。ただしこれは私どもの考え方でございますから、まだ裁判になるかどうかわかりませんが、結局最後の結論は、やはり裁判所がきめていただくということになるかと思いますが、私どもの見解はきような見解を持っております。
  110. 野原覺

    ○野原委員 そういう見解は何回となく私どもも聞いております。なおまた私どものこの三十七条に対する見解、争議行為とは一体どういうことなのか、正常な事業の運営を阻害したとはどういうことなのかは、何回となくこの委員会でも私どもの意見も申しておるのであります。従ってこの点については結局むし返しになりますからやめますけれども、あなた方がこの被疑者の取調べに当って、深夜の取調べをされておる。このことはどう考えてもやはり刑事訴訟法上の拷問に該当するのではないか。そうなると自白の証拠能力というようなことになってくるのじゃないか、こういう見解を私どもは持っておるわけです。この前はあなたから時間についてのかなり詳しい報告もあったわけでございますが、先般報告したことは再度御調査になったと思いますけれども、先般報告した通りであったかどうか、これはなおお聞きしておきたいと思います。
  111. 井本臺吉

    ○井本政府委員 たしかこの委員会で御報告申し上げたと存じますが、八人の方に対して一番短かいのが四十分、それから五十二分、五十五分、一時間、一時間十分、一時間十五分、一番長いのが一時間五十七分というのがございますが、かような短かきは四十分、長いのは一時間五十七分、大体一時間前後で八人の方を取り調べております。この点は佐賀の方とも連絡いたしまして、詳細に取調べをいたしましたので、この時間は間違いないというように考えます。
  112. 野原覺

    ○野原委員 そこで人権擁護局長にお伺いいたしますが、なおこの前の委員会では具体的に真相をつかんでいないので意見を述べることは差し控えたい、こういうお話であったのでございますが、今日深夜取調べのあの実情に対して、人権擁護局としてはどういう御所見をお持ちになっていらっしゃるか、お聞きしておきたいと思います。
  113. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 この間の文教委員会におきまして、先ほどの件を調べよというお話でございました。それでさっそく福岡の本局の方へ調査を依頼したのであります。まだいわゆる深夜の取調べを受けました被疑者の方の調査ができておりませんが、検察庁の関係者の説明だけがわかっております。それによりますと、深夜の取調べをした理由というのは、いわゆる事件について自白ないしは係官が求めるような答弁を強要するために深夜取り調べたという事実ではなく、ただ従来の供述を調書にするためにやむを得ず、いわゆる先ほどおっしゃいました時間において取調べをした、こういうふうな説明になっております。しかしこれは取り調べました検察庁の方の言い分でございます。まだ被疑者の方の取調べができておりませんので、まだ私として果してこれが拷問なのかどうか結論づけることはできません。ただ私の考えでは、拷問というのは結局自白を強要するためにとる手段であります。ただ従来供述しておりますのを調書化する、こういうことは拷問ではないと私は考えるのであります。ただ深夜あるいは午前零時から三時ごろまで起して調書をとったということは、私はまことに遺憾だと思いますが、拷問というまでにはいかないのじゃないかと考えておりますけれども、まだ被疑者の方の取調べができませんので、結論的なことは今申し上げられないのであります。
  114. 野原覺

    ○野原委員 ごもっともな御意見だと思うのです。被疑者の方の意見をまだ伺っていないから正確に申すことはできないということは、私は非常に妥当な御意見だろうと思うのです。そこでお尋ねをいたしますが、佐賀県教組の場合には、昇給昇格、つまり月給を上げることですね。この月給を上げるということは、実は法律規定をされておって、昇給をする。昇給するために最近の給与内容というものは格がございまして、昇格をする。何等級から何等級に上るのですが、そういうふうに昇給昇格がなされていないのです。昇給昇格は法律義務づけられておるのです。六カ月たったら幾ら上る、一年たったら幾ら上る、これは当然上らなければならない。これがおよそ財政困難を理由になされていないわけですね。つまり為政者が法律を守っていないということですね。これは公務員の権利、広くいえば人権にも抵触しようかと思うのですが、この点ついてどうお考えになりますか。
  115. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 大へんむずかしい問題であります。法律によって一定年限たてば昇給しまた昇格するという規定がある、ところが県の財政難を理由としてそれが実現できない、これは人権問題じゃないかという御質問を受けたわけですが、今ここですぐ実際にその結論をつけることはできかねますが、果して県の財政難が昇給昇格に影響しておるかどうか、それを口実にして法律できめられた昇給昇格を行わない、これは確かに問題だと思いますが人権侵害になるかどうか、もう少し研究さしていただかないと今すぐ御答弁はいたしかねます。
  116. 野原覺

    ○野原委員 先ほど石井警察庁長官はお見えでございませんでしたが、あなたの方は相当膨大な人を参考人として次から次と呼び出しておるらしい。何百人となっておるようでございますが、これは私は調査を御依頼申し上げておりますので、お調べだろうと思う。どのくらい引っぱり出して調べておりますか、お伺いします。
  117. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま御指摘になりました、当委員会におきまして再三御督促を受けた御報告がおくれましたことはまことに恐縮に存じております。やっと現地から報告が参りましたので、この機会に御報告申し上げます。佐賀県警察本部におきまして今回の事件の関係参考人としましていろいろ事情をお聞き取りいたしましたものは八百二十九人おります。この八百二十九人の内訳でございますが、校長先生が二百二名、校長先生以外の先生方が六百七名、その他二十名、こういうことに相なっております。詳細かつ正確な数字を報告するようにというふうに私の方から要求しておりましたので、調査に時間を要しまして、今日までおくれましたことを非常に恐縮に存じておりますが、今申し上げましたような数字になっております。
  118. 野原覺

    ○野原委員 その参考人の呼び出し、調査というのは時間的にいえば一体いつごろやられておるのか。昼やられておるのか、夜やられておるのか。児童授業との関係はどういうことになっておるのか。それからこれを呼び出す場合には、教育委員会なり校長なり、いわゆる学校教育の監督権限を持ったそういう機関に対して御連絡をされて呼び出していらっしゃるのかどうか。そのへんを承わりたいと思います。
  119. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 本件の実際取扱いにつきましては、現地警察としましては最も慎重な配慮のもとにやっておるわけでございます。この点は私どもの方からもかねがね十分注意を喚起いたしておいたのでございます。取調べの場所におきましても、時間にいたしましても、できるだけ参考人の方の御都合を伺って、御希望の場所に、かつ御希望の時間においでを願う、こういう慎重なる配慮をいたしてやっておったようでございます。その点はそういう方針にのっとってやりましたので、大多数の方に御不満のないような結果になったように承知いたしておるのであります。校長さんの代表の方々が佐賀県警察本部長のところに参られまして、今回の警察の参考人に対する取調べの態度は非常に丁寧、親切であったということで感謝の意を表されておるということも報告に接しておるのでございます。
  120. 野原覺

    ○野原委員 事は相当な人権侵害もあったようでありますし、なお法律に対する考え方というものも、実は私どもとしては理解に苦しむ点もかなりあるわけであります。いずれこういう問題は、事ここに至りましては、法廷に出て黒白を明らかにする以外になかろうかと思うのですけれども、ただ取り返しのつかないことは、佐賀県の教育子供教育、日本の教育というものに対して、少なからざる痛手を与えているのではないか。警察がこの四月二十四日以来検察当局と一緒になって学校の捜査をいたしました場合にも、この前も申し上げておりますが、生徒授業に全然影響がなかったということはないようであります。これは警察当局もお認めになったようであります。影響がないように努力をしたとは申しておりますけれども、事実影響がその後相当出ている。子供教育に、子供の心理に、相当大きな影響を与えている点は否定できないのであります。そういう点で私どもは非常に遺憾な点もありますから、今日まで取り上げてきたのでありますけれども、いずれこれは私どももなお調査をいたしまして、法廷におきまして佐賀県の教組、被疑者といたしましても、黒白を争うことになろうと思いますが、本日は私としてはこの程度で終りたいと実は考えておりますが、委員長に要望したいことは、文部大臣がお見えになりましたならば、なおこの問題ついては文部大臣に実は確めておきたい点がありますので、お取り上げを願いたいと思います。大体以上で終ります。
  121. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員長代理 速記をやめて。   〔速記中止〕
  122. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員長代理 速記を始めて。  灘尾文部大臣が参議院文教委員会に出席いたしておりまして、本委員会に出席いたしかねるとのことでございますので、本問題に関する質疑は他日に行うことといたします。  これにて散会いたします。     午後五時十三分散会