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1957-05-08 第26回国会 衆議院 文教委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月八日(水曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 赤城 宗徳君 理事 高村 坂彦君    理事 竹尾  弌君 理事 米田 吉盛君    理事 河野  正君 理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    北村徳太郎君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       永山 忠則君    並木 芳雄君       牧野 良三君    木下  哲君       小牧 次生君    櫻井 奎夫君       高津 正道君    野原  覺君       平田 ヒデ君    八木  昇君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君        国 務 大 臣 大久保留次郎君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君  委員外出席者         議     員 辻原 弘市君         議     員 門司  亮君         文部事務官         (初等中等教育         局地方課長)  木田  宏君         専  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 四月二十七日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として椎  名悦三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員椎名悦三郎辞任につき、その補欠として  永山忠則君が議長指名委員に選任された。 五月七日  委員八木昇辞任につき、その補欠として鈴木  義男君が議長指名委員に選任された。 五月八日  委員鈴木義男辞任につき、その補欠として八  木昇君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月六日  町村教育会廃止に関する陳情書  (第八四三号)  教育財政確立に関する陳情書外三件  (第  八四四号)  学校環境保全に関する法律制定陳情書  (第八四五号)  同外一件(第  八九六号)  助役の教育長兼務期間削除に関する陳情書  (第八八六  号)  就学困難児童のための教科用図書無償配布に  関する陳情書(第八  九五号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  佐賀県の教育問題に関する件     ―――――――――――――
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  文教行政に関し調査を進めます。佐賀県の教育問題について質疑の通告があります。順次これを許します。野原貴君。
  3. 野原覺

    野原委員 佐賀県の教職員組合が三割、三割、四割の実力行使に訴えた、こういうところから地方公務員法第三十七条の違反、あるいはまた第六十一条四号による逮捕検察権発動もしくは第二十九条による県教育委員会行政処分、これらの問題が起っておりまして、われわれとしては教育上ゆゆしい問題であるというので、いろんな角度から今日まで、この委員会においても関係当局に対して質疑をいたして参ったのであります。なお私ども社会党調査団を派遣いたしまして、現地をしさいに調査をいたしたのであります。ところが警察庁あるいは検察庁のとりました捜査なりあるいは逮捕なり尋問なり、こういう点においてきわめて遺憾な点が多々出てきておるのであります。従って私はそれらの問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、まず最初にお聞きいたしたいことは、その後検察庁あるいは警察当局としては、この問題をどのように取り扱って、現在ではどういう事態になっておるのか、その辺の御説明をお願いしたいと思うのであります。
  4. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 前会、当委員会におきまして、事件取調べの開始された直後であったと思いますが、一応概要を御報告申し上げたと思うのでありますが、その後の経過の概略を申し上げたいと思うのであります。四月二十四日に初めて本件取調べ警察といたしましては開始いたしたわけでございます。当時十二名の方を取調べ対象といたしたのでございますが、そのうち十名の方には、遺憾ながら強制捜査をもって臨まなければならなくなったのであります。残りの二名の方に対しましては、任意捜査をもって臨んだのでございます。その後捜査の進展に伴いまして、本日現在におきましては二名の方が検事勾留になって、引き続き取調べを受けておられるのでございます。これは佐賀関係の方でございます。そのほかに五月三日には、本件関係者としまして、福岡県の前執行委員長と前教宣部長のお二人の方に犯罪の容疑がありといたしまして検挙いたしまして、この二人の方が現在検察庁の方におきまして取調べを進められておる、こういう状況になっておるのであります。
  5. 野原覺

    野原委員 重ねてお尋ねをいたしますが、参考人喚問を何人やっておりますか、お伺いいたします。
  6. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 参考人につきましては詳細な、正確な数字の報告にまだ接しておりませんが、あるいは県内の校長さんなり、あるいはまた各学校先生方なり、そういう方々についていろいろ事情をお聞きしておるという報告に接しておりますが、正確に何人の方に事情をお聞きしたということは、まだ私ども把握いたしておりません。
  7. 野原覺

    野原委員 私どもの党の調査によりますと、三百人を下らない——検事正が二百数十名だということをすでに数日前、調査団に申されておるようであります。三百名を下らないその者が、続々として教壇から参考人として招致、喚問を受けておる、こういうことであります。そこで、もう一点お尋ねしておきたいことは、これらの被疑者並び参考人喚問捜査に当って、先日の文教委員会石井長官は、人権侵害のないように、これは教育者のことでもあるから、われわれとしてはきわめて円滑なる捜査、尋問をしたい、こういうことでございましたが、遺憾ながら人権侵害の事実が至るところに出てきておるのであります。許すことのできない人権侵害の事実が出てきておる。私はその事実をこれから逐次申しまして、当局の御意見をお聞きしたいのでございますけれども、その具体的な事例を申し上げる前に、これらの極端な人権侵害の事実が上っておりますが、この一体責任政府においてはだれがとるのか、公務員を呼び出して非常な人権侵害をやっておる、こういう場合の一体責任はだれが負うのか、まずその点を大久保国務大臣お尋ねいたします。
  8. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 責任問題のお尋ねであります。責任対象といいますか、事件内容といいますか、それについて具体的に調査してみない限りは、今だれが責任をとるということはむずかしいのじゃないか、(「そんなことがあるか」と呼ぶ者あり)事件内容によって、あるいは佐賀県の本部長なり、あるいは知事なり、さらに拡大していくかわかりませんが、なるべくそれは具体的に事例を示してもらいたい。それによってまたお答えをいたします。
  9. 野原覺

    野原委員 具体的な事例を示せということであれば示しますけれども、あなたは今の答弁に、佐賀県の知事なりというような、とんでもないことを言われておりますが、私が尋ねておるのは、被疑者並び参考人喚問捜査上の人権侵害を聞いておるのであります。これは、私は当然その責任というものは、これらの喚問捜査をした係官は言うまでもなく、これを監督する機関は、やはり責任があるものだと思う。この原則すらも大久保さんはお認めにならぬというのか。人権侵害をした具体的なことを言わなければ、あなたの答弁ができないという話でありますけれども人権侵害という点については、その責任の軽重はありましょう。あるいはその責任のとり方はいろいろありましょう。しかしながら、その責任はだれが一体負うべきであるとか、だれに一体責任があるのかという点について、御答弁がないはずはないと私は思う。重ねてお伺いします。
  10. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 私の聞きましたのは、警察のあずかった範囲においての事件か、あるいは警察の手を離れて検察庁においての検事扱いか、これを具体的に言わぬ限りは、断定に苦しむところであります。それを私は言ったのであります。
  11. 野原覺

    野原委員 逐次具体的に申しますが、警察警察権発動による人権侵害は、あなたが負いますか、あなたにあると思いますが、いかがですか。あなたは良識のある方ですから、当然お認めになろうと思う。警察人権侵害については、それではあなたにあると、このように考えてよろしいかどうか、お尋ねします。
  12. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 事件内容によってでありますけれども、第一次としては、県の本部長がその責任をとるべきであると思います。第二次として、もしその事件の性質あるいは範囲の問題によって、本部長の任命に関係いたします国家公安委員会も、その責任の一端を負うべきものであると思います。
  13. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、本部長国家公安委員佐賀県の公安委員だけでとどまるのか。とんでもない御答弁だと思うが、そのように受け取ってよろしいのですか。
  14. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 そりゃ間違いです。国家公安委員というのは一つしかない。その責任は、つまり私の方の責任という意味です。
  15. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、あなたとしては、当然のこととはいいながら、やはりあなたの職責上から、責任の所在ということを明確にされたわけであります。そこで私はお尋ねいたしますが、警察犯罪捜査するに当って、人権侵害をやっていけないことば、憲法の規定するところであり、今日の刑事訴訟法も、その精神の上に組み立てられておることは、公安委員長であるし、国務大臣である大久保さんよく御承知通りであります。ところが、去る何日でございましたか、佐賀県の県警察本部が、被疑者として犯罪捜査の必要があるというので、佐賀県小城町の吉町節、女の先生であります。県教組執行委員をしておるようでございますが、この吉町節さんの宅に、警察から乗り込んでいって、多数参ったようであります。そうしてたまたま吉町さんのお宅の座敷には、お母さん脳溢血で、絶対安静を医者から宣告されて、実は非常に心配すべき状態にあったのであります。その部屋に、県警察諸君が入って参りまして、これをどかせろ、捜査に来たんだ、こう申すものですから、吉町さん並びに周囲におった人々が、これは絶対安静でございます、どかせるわけにはいきません。こう申しましたところが、いや、どかしてもらいたい、こういうようなことでありましたけれども、ついにどかせるところまで至らなかった。ところが、その次にはたんすを引き出しまして、たんすの中にあるいろんな物を引っぱり出して、その辺にあった物を、絶対安静といわれるこの病母のふとんの上に積み重ねた事実がございますが、これらの事実は、これは犯罪捜査とはいいながら、警察としては行き過ぎであるのかないのか、国家公安委員長として、どのような御所見を持っておりますか、まずその点をお伺いしたいのであります。
  16. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 佐賀県の今回の検挙についてでありますが、相当に慎重にやっておるのであります。一体事件の起りました、つまり有給休暇をとるという事件の起りましたのは、二月の中旬であります。十四、十五、十六日の三日間であります。それから検挙しましたのが四月末であります。約二カ月も経過しておるのであります。その間に、この調査については十分慎重にやったつもりであります。しかも佐賀県の委員会の処罰は四月の二日であります。さらにその後も慎重に調査をし、研究をし、資料を集めて、そうしてこちらがやったのは四月の末であります。この間二カ月間というものは、この事件をいかに処理すべきかということに非常に苦慮しておる。一つは、材料の収集に苦慮しておる。一つは、果してこれが法規に適合するかどうかということで苦慮しておる。そうしてやむを得ず、日本の秩序を維持するために、あるいは教育界革正のために、必要やむを得ないという断定を下して、検挙に従事しましたような次第であります。法規についても、相当研究をしたということであります。当地の警察及び検察庁はもちろんのこと、あとで聞きますと、検察庁においては、東京の検察庁にも意見を求めておるのです。有罪に該当するという判断を下したという経過になっておる次第であります。捜査についても、法の解釈についても、また捜査の方法についても、相当に慎重にやったつもりであります。ことに警察官関係者を取り調べるにつきましては、相手が、子供教育する教員なんです。その影響は非常に多い、深刻であるという点も考慮に入れまして、慎重の上に慎重を期して、本人調べる必要があった場合には、決して本人意思に反して無理にやったことがないように、つまり本人希望によって、あるいは学校がひけた後、あるいは休みになった後、あるいは本人希望によっては、そのうちというような工合に、無理のないようにやったはずと私は聞いておる。またこちらもそういう注意を発しておるように聞いておる。ですから、あるいは例外として多少の、今あなたの言われたようなことがあったかもしれぬが、こまかい事件を、私は一々承知をいたしませんけれども、大きな方針としては、今言ったような方針を守って、教員人権を尊重し、教育事業の尊厳を尊重して、十分に注意を払ったつもりであります。
  17. 野原覺

    野原委員 あなたは、私の質問答弁をなさっていないのであります。あなたは、どなたもここで聞かれておるように、具体的な事例を上げろ、こう私に求めますから、私は、具体的な事例をあげたんです。今、絶対安静だというその病気のお母さんの上に、捜査のためとはいいながら、いろんな重いものを、病人のからだの上に乗っけるということは、一体いかがなものでございましょうか。これを聞いておるのです。こういう事実があるとすれば、これは行き過ぎではございませんか。あなたは、例外としては、そういうこともあったかもしれぬという含みのある答弁もありましたが、明確にはお答えになっていない。あなたのお母さんが、絶対安静脳溢血で、そこへ警察官がやってきて、かりにあなたに政治犯があるというような面でやられてみなさい、家族としては、がまんができませんよ。私はその点を聞いておる。こういう場合には、一体行き過ぎであるのかないのかということを聞いておる、いかがですか。
  18. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 ただいまのお話は、私まだ報告に接しておりませんので、さっそく調べて、その真相を突きとめて、御報告なり何なりをいたしたいと思います。
  19. 野原覺

    野原委員 それが事実であるとすれば、行き過ぎとお認めになりませんか。事実であるとすれば、もちろんあなたの方は調べていないということであるが、それはお調べになられることは必要です。しかしそれが事実であるとすればこれは困ったことだという御答弁ぐらいは、日本全体の警察をあずかる国家公安委員長ができないはずはない。それをしないということであれば大へんなことだ。いかがですか、事実であるとすれば、これは問題であるというぐらいな御答弁はできるでしょう。私はその点をお尋ねしておる。
  20. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 あなたの方のお調べは、あなたの方は自信を持ってやったことであるから間違いないと思います。警察はまた警察として考えがあると思うのです。そう時間を長くとりません、さっそく調べますからして、しばらくの間御猶予を願いたいと思います。
  21. 野原覺

    野原委員 調べるということは、やはり問題があるということをお認めになっての上のことだと思う。私どもが具体的な事例を指摘しても、問題がなければ調べる必要がないのです。だからしてこれは問題があるのだ、こういうように私はとれると思う。やはりその点を明確におっしゃっていただきたい。事実とすれば問題があるのか、ないのか、言えないことはないと思う。これは国会の委員会ですから、あなたがことさらに答弁を回避するということであれば、あなたは国務大臣の資格はないことになる。いかがですか、これは。
  22. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 それは調べた後でなければ……。ここで申し上げぬ方が、かえって事件真相を把握する上においてはその方がいいのじゃないか、こう思うのであります。実際知らぬことに向って、あるかないか、いいか悪いかと言ってしまうことは軽率に過ぎる。私は一方、警察官に対する同情の余り、そういう軽率な扱いはしたくないと思います。
  23. 野原覺

    野原委員 それではその点はすみやかに調査をしたいということであるから、調査をされることを私も要求いたしておきます。調査をするということは、これはやはり問題点がある。問題点がないということになると、警察としては重大なことです。だからして私どもは、あなたがすみやかに調査をした上で、これは警察電話であれば、直ちにあと一時間か二時間でできることなんですし、明日、文教委員会もあることでございますから、この問題は重ねて私も明確にしておきたいと思う。  第二にお聞きしたいことは、県の警察が末森俊夫という執行委員逮捕状執行したのであります。ところがその逮捕状執行は街路であった、市場であったようでございますが、そこでその末森君に、組合事務所まで来てくれ、道路のことでもあるからというので、県警教育会館までついて行ったようであります。そこで逮捕状を受け取った末森君がその逮捕状を読もうとしたところが、声を出して読むことはならぬと威圧を加えて、心配した同僚の諸君事務員諸君が、末森さん何ごとですかと寄って来ますと、何だ、横からのぞくな、こういう威圧逮捕状執行に当って加えておる事実が上っておるのであります。そこでそのことを組合側としては問題にいたしまして、その逮捕状執行に来た係官を追及いたしましたところが、まことに申しわけございませんと謝罪をいたしております。聞くところによれば、口頭の謝罪ではいけない、そういう威圧を加えて逮捕状執行するということは、これは許しがたいことでございますから、君はこのことをここで書いてもらいたいと申しましたところが、名を書いて謝罪をして、しかもその署名捺印までしておる事実が上っておりますが、これは明らかに逮捕状執行に当った係官が、みずからの行いというものを率直に反省されておる。この係官のやった行動は、軽率であったとはいいながら、その場でなるほど言われてみると悪かったと、率直に反省したこの態度は、これはすなおに私ども認めてやらなければならぬかと思う。そこで私は、この係官をとやかくは言わない。しかし署名捺印までして謝罪状を書くという事実が上っておるのであるが、このことを一体公安委員長はどのようにお考えなのか、これは明らかに具体的な事例として、やはり人権を侵害したということを本人自身認めておるのだ、このことも私は申し上げておきますが、これは現実に認めておるのです。あなたとしては責任を痛感しませんか。あなたの監督が不行き届きであるということをお認めになりませんか。まずあなたの御所信、御感想を承わりたい。
  24. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 野原さんにはなはだお気の毒でありますが、そういうこまかい事件を一々公安委員長報告がないのです。報告がないのに、ここでそうだこうだと答弁するのは、私はどうかとも考えます。けれども、問題がいやしくもこの文教委員会において公然取り上げられました以上は、これもあなたにはなはだ済みませんけれども、さっそく調査いたします。おそらく私ばかりでなく、私の方の警察の方の関係者も、こういうことになるとは少しも存じていなかったと思います。一つ調べる時間だけ御猶予を願いたい。
  25. 野原覺

    野原委員 あなたはこまかいことと言われるけれども、何がこまかいのです。法を執行するに当って、そういった越権ざたの行為、しかも相手人権を侵害する行為が、何がこまかいか。人権侵害行為を具体的に言えと言うから具体的に私が言うと、こまかいと言う。基本的に私が原則まで言うと、具体的な内容を聞かなければ僕は答弁できない、このような態度は、私は了解できない。何がこまかいのか、問題は人権問題なんだ。そこで私は、あなたが現在知らないということであれば、これはわからないこともないと思う。なるほどそれは石井警察庁長官からもまだその報告に接していない、こういうことであれば、それはなるほどそうかいな、こう思わぬでもございませんけれども、しかしこまかいとは一体何だ。もう一度そのこまかいと言われた理由を御説明願いたい。
  26. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 今ここに警察庁長官も見えられますし、刑事局長も来ておりますので、聞いてみますと、やはり知らないということです。そのくらいのことでありますから私も知らない。(「知らないで済むか」と呼ぶ者あり)まあ聞いて下さい。私どもは事の大小は別として、いやしくもこの委員会の問題になった以上は、さっそく調べをいたします、こういうことをはっきり申し上げます。
  27. 野原覺

    野原委員 率直にそういうように御答弁なさいよ。文教委員会というものは、あなたがなめるように、そう簡単にいきませんよ。あなたは初めて来られたかもしれませんけれども、それはとんでもないことだ。  それで私は第三の問題を指摘しておきます。一体警察犯罪があるとこう思量したからといって、むやみやたらに学校捜査してよいものかどうか、子供授業支障がないかどうか、私は重大な現行犯なら問いませんよ。だれが考えても、三割、三割、四割の実力行使に訴えたというこの事実、実情というものは逃げも隠れもできないことなんだ。これは県下六千の教員がやったのでしょう。しかも、公々然と大会でやったのでしょう。証拠を隠滅する余地もない、こういうものを捜査するのに、いたずらに多数の学校係官を派遣いたしまして、そうしてこの前も私は石井長官質問をいたしましたが、石井さんは、それは子供心理に悪影響を与えてはいけない、授業支障を来たすことがあってはならない、そういう角度でそれはやらしておる、こういうことでございましたが、授業支障を来たさなかったかどうか、このぐらいの報告は、これは長官がとっていないとすれば職務怠慢だ。学校捜査したということは事実上っておる。しかも文教委員会はこれを問題にしておる。私は大久保さんと石井さん御両人お尋ねをいたしますが、佐賀県警本部学校捜査するに当って、断じて授業支障を来たしていない、このように断言できるかどうか、まずこの点を御両人に逐次御答弁願いたい。
  28. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 教育者取調べについて慎重を要するということは、さっきしばしば申し上げました通りでございます。従って学校における取調べも慎重を要するということは、私はよく承知しております。承知しておるばかりでなく、私の方から県に向って懇々と説明をし、説示し、注意を促しておることであります。よってさき申しました通り教員参考人として調べるについては、まず本人意思を尊重して、学校において調べるならば、授業が済んだ後、あるいは自宅においてという希望ならば、自宅に行って調べて、とにもかくにも教員自身の人格を尊重し、影響を及ぼすことのないように十分に気をつけた次第であります。これは冒頭に私が申し上げた通りであります。おそらくこういう考えのもとに、佐賀県の警察官行動をしたと思っております。今どこでありますか、それは具体的にわかりませんですけれども方針としてはそういう方針をとり、注意は十分に徹底さしたつもりであります。
  29. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま御指摘の学校捜査の件でございますが、四月二十四日に学校捜索を確かにいたしたのでございます。これは組合事務所のあります学校は十四校というふうに私ども報告に接しておりまして、しかもただいまお話通り学校授業、また生徒児童に与える心理的影響等考えまして、早朝、生徒児童の登校前に捜索の目的を達する、仕事を完了するようにという目途のもとに、十分慎重なる配慮のもとに行動したというふうに報告に接しておるのであります。ただ立会人の方がおくれたために、若干時間がおそくなったところがございまして、児童生徒の登校後に時間的に若干入ったところもございます。これは全く例外でございまして、九時十分あるいは九時二十分ごろまでかかったところも二カ所あるようでございますが、しかしそれも決して生徒児童の前で、また授業が始まっている教室でどうこうということではなくして、必要な書類を事務室において整理をするために若干手間取った、こういうふうな報告に接しておるのであります。
  30. 野原覺

    野原委員 私がお尋ねしておりますことは、児童の心理に悪影響を与えないようにあなたの方が注意を与えたのかどうかじゃないのです。現実に佐賀県警察学校捜査いたしておりますが、その捜査授業支障を来たしていなかったかどうか、これであります。あなたの御答弁によりますと、御両人とも、特に大久保さんの御答弁は依然としてあいまいでありますが、石井長官はさすがに、失礼ながら具体的に御答弁しておるようにも思うのでありますけれども、やはり例外としては授業支障を来たしたところが一、二あるようだが、これは立会人の関係なんだ。御承知のように公けの建物を捜査するに当っては、立会人が絶対に必要であることは、刑事訴訟法が規定しておる通りであります。しかもその立会人というものは、学校を管理する学校長が、原則としては学校についての責任者でございますから、私ども学校長を立会人としなければならぬという見解を持っておりますけれども、しかし訴訟法上の文面によりますると、必ずしもそれでなくともよさそうであります。これはたとえば管理者の宿直者がおれば、宿直者に捜査令状を手交いたしまして、捜査ができるようにもなっておるのでございまするが、私ども調査によりますと、相当個所九時過ぎて捜査がなされております。これは警察はどういうふうに御承知か知りませんが、学校授業というものは、九時にはもうやっておる。このごろはもう夏時間に近まっておりますから、四月からたいてい八時半に授業開始なんだ。生徒は八時には登校いたしております。そういたしますと、九時過ぎまで学校捜査されておる、警官がたくさん立ち入っておる、そして職員室のあちらこちらをひっくり返しておる、これはやはり、十四カ所全部でなくても、大方の学校の生徒がこれを目撃し、しかもそこにやってきた先生心理にも影響しておるということであれば、ほとんどが授業支障を来たした、こういうことになろうかと思う。授業にほとんど支障を来たさないという答弁はとんでもない御答弁なのであります。八時から捜査を開始したらもう授業支障を来たすことはわかっておるのです。もちろん五分や十分で捜査ができるならば、そのような捜査はすべきものじゃない。いたずらに学校を混乱させるだけの捜査ではないか、このように思うのであります。そこで石井さんにお尋ねをいたしますが、十四校学校捜査したということでございますが、この枚数に間違いはないかどうか。しかも十四校の学校組合事務所だとあなたは申しておりますけれども組合事務所も何もない単なる学校捜査がなされておる。これはあなたの答弁と大きな食い違いになるのですが、これは間違いございませんかどうか、重ねてお聞きします。
  31. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 私が佐賀県警察本部からの報告に接しておるところによりますれば、十四校に間違いないのでございます。なお御指摘でございますから重ねてその点は確かめてみたいと思っております。
  32. 野原覺

    野原委員 文部大臣にお尋ねしますが、あなたは、国家としては学校教育の最高の責任者であります。ところがその学校が、私がただいま指摘いたしましたように、授業支障のあるような捜査佐賀県の県警察から受けたのであります。このことについて文部省はどのような報告に接しておるか、どのような所見を持っておるか、お尋ねいたします。
  33. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の検挙に当りまして、私どもの最も心配をいたしましたことは、事が教育者に関することであり、また児童に影響を及ぼすことの多い問題でありますだけに、十分慎重にやってほしい、かような気持を持っておりますので、先般もお答えいたしたのでありますけれども関係当局に対しましても、なるべくすみやかに取調べを完了してほしい、あるいはまた取扱いは特に慎重を期してほしいということをお願いしたような次第でありますが、さような点からも私の心持は御了承願えるかと思うのであります。このたびの捜査に当りまして、学校の方に支障を来たしたというような報告には、私どもは接しておりません。捜査上の必要があっておやりになることをかれこれ申すわけに参りませんけれども、事柄が事柄でありますので、学校教育支障のないようにやってほしいという心持においては、今日依然として同じことであります。
  34. 野原覺

    野原委員 私は文部大臣の答弁に非常な不満を覚えます。捜査の必要があればかれこれ言うことがないといったような消極的な気持で、失礼ですけれどもあなたは今日の学校教育を守っていけるかどうか。この佐賀県の教育委員会、この行政処分を断行した佐賀県の教育委員会すら、佐賀県警察のとった今回の処置については非常に憤慨をしておるのです。非常な憤りを漏らしておるのです。あまりにもひどい、こう言っておる。それはなぜかと申しますと、学校捜査するに当っては、佐賀県の警察は県の教育委員会へ一言くらい連絡してくれたらどうだ、それが上何らの連絡もない。事学校に関して県民に対して責任を負うのは県の教育委員会です。国では、国の教育委員会がないのでございますから、文部大臣でしょう。公けに対して、国民に対して、県民に対して責任を負わされておるところの教育委員会なり、あるいは行政庁というものは当然のことなんです。いやしくも事学校捜査するならば、なぜ佐賀県の警察は、佐賀県の教育委員会に、電話ででもいいから一音くらい実はこの問題で捜査しなければならないからと、了解を求める必要がなければ連絡くらいしてはどうなんですということを、県の教育委員会は漏らしておるのです。このことを文部大臣ほどのようにお考えになりますか。これも犯罪捜査のためには必要であるから、県警察教育委員会に連絡しなくてもよい、こういうような内務官僚的な御態度であなたが臨まれるとすれば、これは私は重大に考えます。どうお考えになりますか。
  35. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教育委員会としてさような心持を持つということについては、私は無理からぬことと考えるのであります。しかしまた一面におきまして、犯罪捜査上これが必要であるということで、警察がおやりになることについてかれこれ申すのもいかがであろうかと考えております。
  36. 野原覺

    野原委員 それではこのことはもうしばらくして警察当局お尋ねしてからまた重ねて文部大臣の御所見もお聞きしたいと思うのでありますが、大久保さんにお尋ねいたしますが、この福岡県教職員組合の二人を、佐賀県の県警察本部逮捕しておるのであります。これはいろいろ理由があってなさっておると思う。ところがこの福岡県の二人というのは、現実に教壇に立っておるのです。しかも今日まで検察庁なり警察から逮捕、尋問を受けた佐賀県の教育職員のほとんどが、これまた現実に教壇に立っておる人々であります。このように現実に教壇に立って児童生徒を教えておる組合の専従者ではない者を逮捕するに当っては、授業支障を来たすということくらいは、警察は判断がつきそうなものです。逮捕をしたならば授業支障を来たすという判断ができるならば、やはり授業責任を持つとあなた方が考えておるその教育委員会なりそういうようなところに当然連絡をすべきであると思うが、福岡県の両君を逮捕するに当って、福岡県の教育委員会に連絡をして逮捕されたのかどうか、これは大久保さんが答弁できなければ、石井さんにお答え願いたい。
  37. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 事前に連絡をすることが望ましいという考え方も確かにわかるのでありますが、捜査の秘密の保持の上から、それは必ずしも常にできるとは限らないのであります。従いましてやむを得ず事前には御連絡を申し上げなかった。しかし事後にはすみやかに御連絡申し上げた、かように聞いております。(米田委員「それば当然だ」と呼ぶ)
  38. 野原覺

    野原委員 米田さんはかつて警察におられたから、警察のやったことは、あなたがおりました旧憲法時代には特にそうでございましたから、当然だというヤジが出るのはいいでしょう。しかし私ども民主憲法の今日においては、これを当然と見ないのです。私は犯罪捜査の必要を認めますけれども、事教育に関して、教育支障を来たすと判断をされた場合は、教育委員会教育長、こういうものに連絡をしても何ら犯罪捜査の機密を害するものではないと思う。その辺の認識がいささか——やはり昔の軍国主義時代の憲兵がやったような、特高警察的な行き方というものを依然として今日の民主警察の時代にとられておる。公安委員会というものは名ばかりである。現実に下部に行くと、警察当局はこういうことをやっておる。私はこのことをお聞きしておるのです。福岡県の教育委員会教育長は非常に憤慨しておりますが、この事実を御承知ですか。あまりにもひどい、福岡県の教育をこういう混乱状態に追い込んで、何らのあいさつもないとは何事だといって憤慨した談話を福岡県の教育長が発表しておりますが、これを石井さん御承知ですか。お尋ねします。
  39. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 福岡県の教育長さんがどういう談話を発表しておられますか、私承知をいたしておりませんが、先ほどもお答えしました通り、福岡県の関係の方を五月三日に取調べを開始するに当りましては、その直後に教育長さんの方に御連絡を申し上げましたという報告に接しました。
  40. 野原覺

    野原委員 私は事教育に関してはやはり教育長に対して連絡することが至当でないかと考える。あなた方としてはその犯罪捜査のために絶対必要だと言うけれども一体この犯罪とは何でございます。これは犯罪とすれば公々然とした明らかな犯罪なんだ。逃げも隠れもできないことなのです。具体的に言えば今回の場合は証拠隠滅のおそれすらもないのです。それをいたずらにこういうような事態に追い込んだということは、追い込むことによって畏怖観念を教職員の頭の中にたたき込むという行き方を取っておるのではないかという考え方を持たざるを得ないのです。そこでお尋ねをいたしますが、山口警備部長、それから石井さんも、四月二十五日の文教委員会であったと思いますが、私の質問に対してこのように答えておるのです。佐賀県の県警察本部からの報告として、佐賀県の教育委員会行政処分をやった、その行政処分をやったことに対して佐賀県の教職員諸君が反省の色がなかったから逮捕状執行したのだ、こういう報告佐賀県の県警からあった、こういう答弁をなさっておりますが、これは間違いございませんか。佐賀県の県警察本部から教育委員会行政処分に対する反省の色がなかったから逮捕状執行という挙に出ざるを得なかった、こういう報告がほんとうにあったのでございますかどうか、お尋ねします。
  41. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 四月二十五日の当委員会における本事案の説明に当りまして、私自分の発言いたしました表現を正確にすべてを完全には記憶いたしておりませんが、確かに御指摘のようにあるいは反省の色なし云々といったような表現があったかと思います。かりにそうであったとしますならば、私当時のことを振り返って今考えてみますのに、四月二十五日と申しますとちょうど四月二十四日の取調べを開始しました翌日でございます。当時私どもは最もなまなましい事件の第一報に接したのみでございます。詳細正確に私どもまだ実態を把握できない時期にあったわけでございます。佐賀県警察本部からの報告、また佐賀地方検察庁検事正の談話とか、あれこれ一緒に私報告に接しましたので、佐賀県警察本部長がそういう談話を発表したかどうであるかという点は、当時ははっきりは記憶いたしておりませんでした。あれこれ報告を受けましたものを総合しまして、あの時期におきましては、私ども承知している限りにおいて御報告申し上げたと思っておるのでございます。従いましてその中に佐賀県教職員の方々が、今回の事件関係された方々が、行政処分を受けられた後においても反省の色がなかったので云々というような申し上げ方をしたかもしれませんが、今になって考えますならば、私もいろいろな報告を再検討している際にわかったのでございますが、佐賀県地方検察庁検事正の談話に、そういう意味の表現が地元の新聞にあったというふうに承知いたしておるのであります。それはともかくといたしまして、反省の色の有無が検挙するとかしないとかいうことのきめ手といいますか、必要条件ではないということを、この際あらためて申し上げたいと思います。
  42. 長谷川保

    長谷川委員長 この際申し上げますが、大久保国務大臣は所用のため十二時ごろ退出しなければならぬということでございますので、もし大臣に対する質問がございましたら、それを先にしていただきたいと思います。
  43. 野原覺

    野原委員 実は大臣に対する質問ばかりなんですけれども大久保さんの答弁ではきわめて要領を得ませんので、やむを得ず石井長官答弁で実はがまんをしているのです。私はただいま石井さんがお答えになりました点は、御承知のように四月二十五日に私はこう質問したのです。「佐賀県の警察がいかなる理由によって逮捕せられたのか、並びにその逮捕の詳細なる状況、この二点についてまず警察庁長官から御説明をしていただきたい。」こうお尋ねをしたのです。これに対してあなたはどう答えたかといいますと、ずっと前からございまして「地元佐賀県警察本部におきましては、かねがねこの事態のありました以後、これが実情把握に努めて参ったのでございますが、その結果、今申し上げましたような実態がわかりました。なお、その後におきまして、関係教員の方々の態度と申しますか、動向等につきまして十分注視をいたしておったのでございますが、こうした地方公務員法違反の行為があったことに対するその後の反省の色というものが遺憾ながらうかがえない。こういう点にかんがみまして、佐賀県警察といたしましては、これを地方公務員法違反として検挙するという結論に到達したというように、報告に接しておるのであります。」これが石井さんの答弁であります。これがあなただけの答弁であればまだようございますけれども、山口警備部長もこの種の答弁を盛んにやっておるのです。私はこの反省の色がなかったという点で、逮捕状執行したということになると、県教育委員会のやった行政処分を、逮捕ということによってその教員諸君に押しつける。人事委員会の審査すらもできないような事態に追い込むということになって、これはとんでもない国民から非難、攻撃を受けることになるからというので、あなた方が急に答弁方針をお変えになったのではございませんか。御相談の結果、この答弁ではこれはえらいことになるぞというのでお変えになったのじゃないかと私は思う。私は少くとも警察庁長官ともあろう方が、ただいま読み上げたような明確な御答弁を確信をもってなさる限り、これはやはり報告があったのじゃないかと思う。しかしその報告はなかった、これは諸般の状況で検挙直後のことでもあったから、いろいろ私の感違いの点もあったというようなことでございますので、私はこの点では執拗には申し上げませんけれども、いやしくも国会の答弁というものは、もう少し慎重にやっていただきたいのです。これは大久保さん、あなたどうお考えになるか、お聞きでございましたか、慎重にやってもらわないと困るのです。私どもは何のためにこうして速記者諸君に来てもらって議会の速記をしますか。この前言ったことはあれはとんでもないことだったんだ、私から指摘せられるまで黙っていらっしゃる。もしこれがとんでもないことであれば、あなた方の方から進んで正誤を求めなければならぬのです。それをなさらない。私はこの点についてはきわめて遺憾に思います。そこで大久保国務大臣お尋ねをいたしますが、地方公務員法によって行政処分をやることはできます。地方公務員法の二十九条でできるのです。教育委員会が確信をもってやったことなら私はとやかく言わない。教育委員会にその権限があるのですから……。そのやったことに対する批判はあります。私はこのことは何回も申しておる。批判はあっても教育委員会はその権限を行使したのです。ところが行政処分という不利益を受けた教職員は、人事委員会に不利益処分の提訴ができるのです。そこで四月一日に教育委員会行政処分を決定した。四月二日に教育委員会行政処分の発令をいたしました。一カ月から六カ月の停職であります。そこでこの不利益を受けた教員諸君は、やはり法の定むるところに従って、人事委員会に対して不利益処分の応訴をしたのです。審査請求をしたのが四月の十日でございます。一週間たって、佐賀県の人事委員会はこの不利益処分の訴えを受理いたしました。これが四月の十七日であります。そこで受理いたしました人事委員会は、県の教育委員会に対して不利益処分の訴えがあったからこれを審査しなければならない。そこで君の方で行政処分にしたこれこれこれの人間について、その資料を出してもらいたい。人事委員会はこの要求をしたのです。その資料要求がありましたために、教育委員会は準備をいたしておりましたところ、四月の二十四日検挙警察検挙、これは大久保さん、あなたの警察ですよ。あなたが監督する佐賀県の警察検挙いたしまして、四月二十五日には県の教育委員会捜査令状を突きつけて、人事委員会に提出しようとしておる資料までごっそり持っていったのであります。こうなると不利益を受けた教員諸君はどこで一体争うことができるのか。法上争うこともできない弾圧の状態に置いたのが、佐賀県の県警察警察庁ではないか。大久保国務大臣の監督する警察ではないか、このように私は思いまするが、これに対するあなたの御所見を承わりたい。こういうことが許されていいものかどうか、私どもは非常に納得に苦しむのです。あなたは確信がおありだろうと思う。これは当然できるのかどうか、その辺についての御所見を大久保さんからお聞きしたいのであります。
  44. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 だいぶ理屈になってきたようでありますが、御承知通り行政処分と司法処分と二つ、あります。今農林省の問題になっております事件考えましても、農林省の役人は一方においては行政処分を受け、一方においては刑事処分を受ける。ちょうどあれと同じように、佐賀県におきましても、人事委員会の処分したことについて司法処分をすることは、これは理屈としては可能であります。しかしながらやはり教育界革正するという目的は同一でありますから、従ってこの佐賀県教育委員会行政処分というものを十分頭に置いて取扱いをせねばならぬと思います。それからもう一つ先にお話がありました人事委員会に対する請求権ですね、人事委員会に対する申請書の問題でありますが、これはもし警察捜査のためにそういうことが害されたということがあってははなはだ相済まぬと思いますから、この点は何らかの方法を講じて人事委員会に向って適当な措置を講ずる、権利行使ができまするように、これは一つ直さなくちゃならぬと考えております。
  45. 野原覺

    野原委員 何を御答弁になったのかさっぱりわけがわからぬ。私は公務員の処分が行政処分と司法処分と二つあるくらいは知っておりますよ。そんなことは聞いていないんだ。行政処分教育委員会がやった。これもできるでしょう。あるいは犯罪があれば司法処分もできるでしょう。これはできるとしても行政処分を受けたその教職員諸君公務員諸君は不利益処分の訴えができる。その不利益処分の訴えとして人事委員会に審査請求をした。人事委員会の審査を不能にするような状態に警察がやった。このことを聞いておる。これは一体行き過ぎであるのかないのかと聞いておるのですよ、人事委員会に審査請求ができるのだから、人事委員会に審査をやらせるべきなんだ。その書類までひっさらえている。これは佐賀県の教育長を実はわが社会党の調査団がおたずねをしたところが、困ったことですと言っておる、人事委員会が審査できない状態になっておるのだと言っておる、こういうことは行き過ぎじゃございませんか。これでも司法処分が可能だから、犯罪捜査だから、かまわぬとおっしゃいますか、いかがですか。
  46. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 理屈ばって参ったのでありますが、(「何が理屈ばってだ、現実じゃないか」と呼ぶ者あり)法律的に解釈すれば、その書類を押収することは可能であると思います。(「それが理屈だよ」と呼ぶ者あり)しかしさっき申した通り教員が持っておりますところの権利は尊重しなければならないから、なるべくそれを早く返す、あるいはその他の方法によってその権利を害しないようにいたしたいと存じます。
  47. 野原覺

    野原委員 行き過ぎであるというのかないというのか、それを簡単に言って下さい。あなたの確信を言われたらいいのです。
  48. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 法律的には可能であります。
  49. 野原覺

    野原委員 犯罪があると思料した場合には、いかなる証拠物件でもこれを取り上げることば可能でしょう。しかしながら事は、地方公務員法が不利益処分の訴えを定めておるんですよ、同時に刑事訴訟法によって、あなたの方は証拠の収集もできるんですよ、法律的にこれは可能だと断言ができますか。地方公務員法によって不利益処分の訴えができる、だから人事委員会は審査しなくちゃならない。それを不可能な状態にして、何を根拠に法律的に可能だと言うのですか、もっと具体的に説明して下さい。人事委員会の審査はだめになるじゃないか、だめになって不利益処分を受けた公務員諸君は事実上強制処分を押しつけられたことになるじゃないか。法律は不利益処分として訴えることを認めておる、そのために人事委員会を作っておるのだ、その人事委員会の権限行使ができなくなるのだ、これを一体どう説明するのか、法律的に可能だという点をもう少し説明してもらわなければ、私は了解できない。
  50. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 やはり法律の根拠によって、私はできると思っております。一方、それゆえに私は公務員の権利を尊重する意味において、なるべく書類を早く返すという方法をとりたい、かように申しております。(「一カ月も過ぎているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  51. 野原覺

    野原委員 井本刑事局長お尋ねをしますが、井本さん、あなたも政府側でございますから、なるべく政府答弁を混乱させないように、失礼ですけれども御努力なさるかもわからぬ。しかしながら地方公務員法で、御承知のように人事委員会で審査をしなくちゃならぬことになっておる、人事委員会が審査ができないと言っておるのです。審査できない原因は警察庁にある、こう言っておる。私はこの種の書類を押収することは、これは問題だろうと思う。人事委員会の審査に絶対必要な書類を押収してしまう、そうして人事委員会の審査を不可能な状態に置けば、不利益処分を受けた公務員は事実不利益を強制されることになって、何のために人事委員会というものを法が規定したのか、これは無意味になるのですが、この点を刑事局長はどう考えるか。
  52. 井本臺吉

    ○井本政府委員 犯罪捜査の上で証拠を集めるためにさような書類を押収することは、場合によってはやむを得ないと思いますが、一面さような不利益処分を受けました方の不利益変更請求を不可能ならしめるということも非常にお気の毒でございますから、さような書類はなるべく早く、用が済み次第返すべきものであると考えます。
  53. 野原覺

    野原委員 用事が済み次第早く返すべきだ、返さなかったら大へんです。返さなかったら人事委員会はついに権限行使ができない。こうなると大へんでございますから、井本さんが御答弁なさるまでもなく返すことはわかり切っておる。私どもが言うのは、そういうものも持っていく——しかも県の教育委員会から抗議が出ておるんですよ、これは人事委員会から要求されておる、その要求にお答えすることができませんからお返し下さいと、ずいぶん前に抗議が出ておる。これは四月十七日に人事委員会が決定すると直ちに書類を出せと言っておるわけですから、四月の二十五日ですか、今日まで二週間近くたっておる。だから持っていかれるとすぐ抗議を出しておる。それなのにこれを返さないということは——写して返したらいいじゃないか、私は教育委員会にも言いたいのだが、君らにその誠意があれば検察庁に乗り込んでいって写してもらいたい。検察庁も何も現物そのものでなくてもそれを写して、そうか、お前が要る書類ならこれは返そう、そして写しをとっておけば——教育委員会検察庁は官庁同士でありますから、いかに行政庁といえども書類の改ざんその他をやるわけはない、幾らでも方法はあったと思う。それが今日に至るもなお返されていないことは、井本さん、一体どうお考えになりますか。(「大久保大臣に答弁させろ」と呼ぶ者あり)大久保大臣という呼び声が高うございますから、やはり大久保さんの答弁でないと……。大久保さん、どうお考えになるか。やろうと思えば方法は幾らでもある。その点について大臣の御所見を伺いたい。
  54. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 根本の方針はさっき申した通りであります。方法はしかるべき方法で、一々ここでどういう方法をとれ、こういう方法をとれといって指図することもできぬと思います。なるべく早く目的を達するようにするのが主眼であります。
  55. 八木昇

    八木(昇)委員 関連いたしまして、さらにほかの二、三の問題についてお伺いをしたいと思うのですが、大体警察にしても検察庁にしましても、被疑者取調べは、人権擁護の建前から考えましても、どういう配慮をしてどういうふうにやるべきものだとお考えになっておるでしょうか。その点から、一つこれは大臣並びに警察庁長官からお伺いしたいと思います。
  56. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 人権を尊重する点から考えまして、なるべく早く事件を処理して、なるべく早く返すということが原則だろうと思います。
  57. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま大臣からお答えありました通り、できるだけすみやかに捜査目的を達成いたして、お返しするように努めなければならぬことは申すまでもないことであり、またその捜査の過程におきましてもあくまで強制による捜査でなく、科学的合理的な、いわゆる納得のいく捜査のあり方でなければならぬ、かように考えております。
  58. 八木昇

    八木(昇)委員 いつも私、この委員会に出ていると、御答弁はきわめて抽象的にりっぱなことをおっしゃるのですが、実際にその通りには行われておらないのですね。  それで、これは五月四日に勾留理由開示の公判がございましたときに、被疑者がそれぞれ申し立てておるのでございます。私は昼も晩も、一日取り調べられた上に、夜の十二時に起されました、そして一時間くらい調べられた、ある人は夜の十二時にやはり起されて、約三時間調べられた、こう言っておるのですが、そういう事実をお認めでしょうか。
  59. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 御承知のように、逮捕されましてから四十八時間が警察取調べの持ち時間であります。それから検察庁の方、つまり検事の手に移るわけです。検事は二十四時間調べられて、さらにいわゆる強制捜査をする必要があるという場合に検事勾留——裁判官に勾留状発行請求をいたしまして、引き続き必要ならば留置する、こういうことになるわけでございます。最初に担当します警察の四十八時間の取調べの過程におきましては、現地からの報告におきましては、深夜取調べはいたしておりません。
  60. 八木昇

    八木(昇)委員 それではそれは検事取調べにはそういう事実があったことを認めるということでしょうか。
  61. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 検事取調べの段階になりましてからは、私からお答えするのは適当でないので、私は申し上げません。
  62. 井本臺吉

    ○井本政府委員 本件関係被疑者のうちで、その何名かにつきまして、深夜取調べをした事実がございます。それは特殊の事情によるのでございまして、その事情を申し上げますと、御承知通り検事事件の送致を受けてから二十四時間以内に勾留の請求をいたしますと、その勾留請求によりまして判事が勾留状を発布して、直ちに勾留状を執行いたしますれば、通常十日間の調べ期間があるわけでございます。ところがこの件につきましては、最初の十名につきましては勾留請求が却下になりまして、その全部につきまして検事が準抗告の申し立てをいたしたのであります。そしてその準抗告の申し立てと同時に勾留請求却下の停止決定を求めまして、裁判がそれぞれありまして、その十名のうち七名につきましては勾留請求却下の取り消しの決定がありまして、結局勾留状を出まして、ほかの三名はそのまま釈放になったのでございます。さような刑訴法上は非常に珍しいケースでございまして、勾留請求却下の決定の取り消しなどは、裁判所で夜中の午前三時四十分に決定があったのが相当ございます。さような特殊の事情で、このうちの数名につきまして間もなく釈放になるかもしれないというような状況のもとに調べをしたのが多少ございます。これは特殊の事情でありまして、通常の場合にはさようなことはいたさないのでございます。
  63. 八木昇

    八木(昇)委員 そういう特殊の事情とか何とかいうことをおっしゃるのでは、私どもどうしても納得がいかないのでございます。それで検事勾留を請求した十名に対し、十名とも裁判所はその必要なしとして却下したのですね。それならば検察当局は、常識的に考えると当然その裁判所の決定に服すべきであるが、さらにそれに準抗告をしてその決定に不服申し立てをされたというような経過自体、非常に私どもは遺憾に思っておるのであります。しかも、何かそういうことだからというので深夜取調べというものが許されるとお考えでしょうか。それは直接には検察庁の問題にいたしましても、関係の深い警察方面として、担当国務大臣としても一つの御見解があってしかるべきだと思うのですが、両者の方から重ねて御意見を伺いたい。
  64. 井本臺吉

    ○井本政府委員 この勾留請求に対しまして、十名全部にそれぞれ勾留請求却下の決定があったわけでございまするが、そのうちの七名にまで、その勾留請求却下の決定は取り消しになっておるのでございます。さような十名全部に勾留請求却下の決定をしたような裁判官の決定は、私どもから言わせればいかに不当な決定であったかということが言えるわけでありまして、普通の場合においては勾留状が出るはずのものでございます。結局十名のうちで七〇%が後に勾留状が出たわけであります。またさような事例のために、この決定が夜中の三時四十分に七名に対しで出ております。さような事情でこの関係者を一、二夜中に調べをしたということがございますけれども、これは全く特殊の事情でさようなことになったのでございまして、通常はさようなことはしていないのでございます。
  65. 大久保留次郎

    大久保国務大臣 検察庁の方はただいま説明がありましたが、私どもの方の警察といたしましても、深夜の取調べは努めてやらぬようにいたしております。
  66. 八木昇

    八木(昇)委員 それで先ほどの御答弁について、そういう深夜取調べをすることができるような何か法律上の根拠があるのかどうか、お示しを願いたい。
  67. 井本臺吉

    ○井本政府委員 われわれは関係者取調べはなるべく深夜などにはするなという訓示的なことを申し伝えてございますが、さようなものを調べてはいけないという法律上の規定もないわけでございます。従って人権尊重の意味で、なるべく普通の時間に調べをするというのが常道でございますけれども、いろいろな特殊事情によりまして、やむを得ず深夜調べるということもあり得るのでありまして、それは特殊の事情のもとに調べをしたということに御了解を願いたいと思います。
  68. 八木昇

    八木(昇)委員 私はそういうようなことが今後ともなしくずし的に許されていくということになるならば、これは重大な憲法違反の続出だと思うのです。しかも裁判所は身柄勾留の必要なしとして、一度は検事勾留請求を却下しているでしょう。その程度の被疑者に対して、真夜中の十二時から三時間も調べることが許されるというような見解は、私はどうしても納得できないのですが、もう少し何か明瞭に御説明を願いたい。
  69. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先ほど申し上げましたように、勾留請求を却下するのが特殊の例でございまして、かような裁判に対しましては七〇%が取り消しになっているのでありまして、いかにその勾留請求却下の決定が不当な裁判であったかということを私どもは申し上げたいのでございます。従ってかような例が年中あるということは、私どもは解せないのでありまして、普通の事情におきましては、勾留請求をして却下になるというのはごくまれな例でございます。
  70. 八木昇

    八木(昇)委員 それは全くもって私は筋の通らぬ御答弁だと思う。裁判所の決定が不当であると検察庁考えたから深夜取調べをすることが許される、こういう御見解でございますか。
  71. 井本臺吉

    ○井本政府委員 これは御承知通り刑事訴訟法にも、勾留に対する裁判につきましては、それぞれ係官の方でもし不服があれば不服申し立てができるようになっているのでありまして、その裁判官がなした勾留請求却下の決定が、唯一絶対のものではございません。裁判官でも人間でありますから、往々間違った決定をいたします。従ってその決定に対しましては、係の検察官の方で不服であれば不服の申し立てができるので、本件につきましてはその不服の申し立てをしたわけであります。またこの不服の申し立てをいたしまして、その際に勾留請求却下の決定の執行停止の決定を取らなければ、釈放しなければいけないわけであります。その決定に対しまして、佐賀の地方裁判所の裁判官の所属する裁判所で執行の停止決定があったわけでありますから、上級の裁判所におきまして、前の裁判所の裁判官の勾留請求却下の決定が不当であるということは一応認められたわけでございます。さような決定に基きまして勾留を続け、しかもそれが間もなく釈放になるかもしれない状況でございますから、調べをしなければならない検察官といたしましては、与えられた時間をできるだけ使わなければ自分の職責に反するわけでありますから、さようにいたしたものと思います。
  72. 八木昇

    八木(昇)委員 これは不服申し立てをする権利はあるから、従って不服申し立てをして準抗告をされたんで、それは別問題であります。それでその不服申し立ての結果、その後決定取り消しがあったのでございますけれども、だからというて、真夜中の三時まで取り調べるということの合法性の立証にはちっともならぬじゃないですか。それならば必要があるという場合には徹夜で取調べをやったってそれはかまわぬ、こういうような見解に通ずるのですが、そうでございましょうか。
  73. 井本臺吉

    ○井本政府委員 普通の場合にはさようなことは厳禁しておりますが、本件の場合におきましては特殊の例外でございまして、現にこの勾留執行停止決定などは、夜中の二十三時五十五分に決定があります。それから決定取り消しなどは、夜中の三時四十分に決定があったような事情でございます。さような裁判所の決定が夜中にあるというようなこと自体が非常に異例な事態でございまして、かような事情のもとに間もなく釈放になるかもしれないという被疑者を、検事の立場といたしまして、なるべく早く取り調べなければなりませんので、もし釈放になれば、あとは勾留側の調べができませんから、その短かい時間を利用して取調べをしたので、全く例外的な事情で、これをいつもやっておるというようにおとり願わぬように願いたいと思います。
  74. 八木昇

    八木(昇)委員 裁判所の決定が何時になされようと、それとは全然無関係のことであります。そこであくまでも夜中の十二時から三時間も取り調べるというようなこともよろしいという御見解ですか。この見解だけをこの際はっきりしておいていただきたい。
  75. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私ども報告では、三時間も四時間も調べたというようなことは聞いておりません。二、三十分調べたということが報告になっておりますが、私は場合によってはさようなことも許されるというように考えております。
  76. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうような考え方で貫かれておるから、随所にいろいろ無理な取調べが行われておると私は思うのです。  それでもう一点お伺いいたしますが、実はこれも勾留理由開示の公判廷で、丸山という被疑者が申しておったのでございますが、この人は二十四日の朝警察から来た。そうしてこの人は佐賀市の人ですが、いきなり大町という警察署に連れていった。これはその人の住居から四里くらい離れておるところです。そうして取調べを開始した。そこで今自分の身柄は自由であるのか、どうなのかということを聞いたそうです。自分としては家のことその他もあるので、また教員組合やその他にこういう事情になっておるということを連絡するために帰る必要もあったわけでございましょう、これは想像でありますが、そういうようなことで、私の身柄は今自由であるかというようなことを聞いたところが、必ずしも明快なお答えがない。しかも逮捕状は一向に示されておらぬのであります。こういうような事実について、これは警察庁側の方でございましょうか、御承知願っておるかどうか。そしてまたそういうことが許されるとお考えかどうか、これをお答え願いたいと思います。
  77. 長谷川保

    長谷川委員長 ちょっとこの際八木君に申し上げますが、大久保大臣はお帰りになってよろしゅうございましょうか。
  78. 野原覺

    野原委員 八木君の質問中でございますが、私は大久保さんに要求しておきます。あなたが具体的な事例をあげろというのであげたのですけれども、事実を的確に把握してないから、あなたの方ではこれに対する御答弁ができなかった点がたくさんあります。あなた自身お認め通りです。そこでその点をすみやかに調査した上で、あなたの御所信を承わりたい。あなたは佐賀県の県警本部公安委員長責任は率直にお認めになっておりますから、責任があるのかないのか、責任があるとすれば私どもとしては責任をとってもらわなければならぬ。一つこういうこともこの次は腹を固めて御出席になるように要望いたしておきます。
  79. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 丸山さんは任意同行を求めまして大町の警察署に行っていたわけです。そして事情をいろいろお聞きいたしたのでありますが、御本人に対しましては逮捕状執行いたしましたのは二十四日の午後二時半であります。それまでは御本人の同意を得まして任意同行いたしまして、任意捜査をいたしておったのでございます。
  80. 八木昇

    八木(昇)委員 それで実はそれまでの間に本人は何度か意思表示をしておるのでございます。逮捕状を示されたのは御本人も三時近くだったと言っておるのですが、そういうことは許されるのでしょうか。
  81. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 御本人がどうしても任意取調べに応じられないという態度が明確になりますれば、その場合に逮捕状執行せざるを得ないのであります。その辺のことは御本人がどういうことをおっしゃいましたか、もっと明確に自分は任意同行に応じられないということをはっきりおっしゃれば、それはその場において逮捕状執行されたものと思うのであります。あるいは御本人意思表示が明確でなかった点があったのではないか、かように思います。
  82. 八木昇

    八木(昇)委員 その辺は私どもの聞いた事実と非常に異なっておりますが、問題を将来に残すことといたしまして、関連でありますからもう一つだけで一応終りますが、もう一点お伺いしたい点は、実は警察に身柄を勾留されていたときに、弁護士が被疑者に面会に行ったわけです。ところが警察官がどうしても立ち会うわけですね。それで非常に憤慨をして、弁護士の方は一言も話さずに帰ってきておるのですが、こういうことは許されましょうか。
  83. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 弁護士選任の件で確かに被疑者の方と面会をされたときのことだと思います。取締りの関係もございますので、なるべく短時間にお願いしたいということであったというふうに聞いております。
  84. 八木昇

    八木(昇)委員 これは私が聞いて参りましたところでは、鳥栖署だというんですがね。それで立会いをすることは法律上許されておるかどうかということを聞いておるのです。
  85. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 弁護人の方は、立会いなくして勾留中の者と接見をされることができることになっております。
  86. 八木昇

    八木(昇)委員 ところが事実それに違反する行為が行われておるのですが、いかなる責任をとられましょうか。
  87. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 先ほど長官からお答えいたしましたように、目下勾留中で取調べ中のものであります。従ってその接見の場所とか時間とかいうようなことにつきましては、警察側といたしましても希望を申し上げることはあると思います。あまりに長くなりましても、これはまた取調べ支障を来たす場合があります。従いましてそういう場合には、なるべくすみやかに接見をしていただくようにお願いをすることは、やむを得ないことだと思っております。
  88. 八木昇

    八木(昇)委員 私が聞いて参りましたのは、そういうのと事実が違うのでございます。初めから警官立ち会いを主張されるというので憤慨をして、そこでにらみ合いのまま弁護人の方も被疑者の方とは話をせずに遂に引き揚げてこざるを得なかった、こういうふうに事実を聞いておる。もし御調査の結果、事実その通りだとするならば何らかの処置をとられますか。
  89. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 お話通りでありますれば、これは相当重大に考えなければならぬと思いますから、よく事実の真相を明らかにしまして善処したいと思っております。
  90. 野原覺

    野原委員 井本刑事局長お尋ねしますが、あなたは深夜取り調べの点で先ほど午前零時から二十分か二十分くらいだ——それは一体どこから来た報告ですか。
  91. 井本臺吉

    ○井本政府委員 佐賀の地方検察庁から来た報告であります。
  92. 野原覺

    野原委員 そうすると大へんなことになる。午前零時から三時半まで調べておる、早い者は午前零時から一時半ごろ帰っておるし、中には寝ておるのを起されて調べられておる——佐賀の地方検事正の司波さんは午前零時から三時ごろまで調べたことを認めでおる。これはあなたが故意に答弁をごまかすのか。それともそういうごまかしの報告を上司にしておるのか。これは私は検察行政のあり方として問題があると思う。それはどうなんです。そういう報告が確かに来て、あなたが確かに受け取ったとすれば、司波検事正はごまかしの報告を上司にする。それとも正確に報告されておるものを、あなたがここで二、三十分と、われわれが事実を知らぬかと思って言われるとするならば、あなたはでたらめな答弁を国会でやっておる。国会を瞞着するもはなはだしいと思う。いずれにしても責任は重大です。これはどちらですか、私は究明します。
  93. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私、時間は正確に記憶しておりませんが、とにかく勾留請求却下決定の取り消しの裁判をする日に、間もなく釈放になるかもしれないという状況であったので、やむを得ず特殊の事例として深夜に取り調べをした。その時間はたしか二、三十分であったというように記憶しておりますが、あるいはもう少し長くなったかもしれませんが、それが三時間も四時間もということはございません。とにかくもし御必要がございますれば、報告書を午後に取り寄せましてその正確な時間を申し上げたいと存じます。
  94. 野原覺

    野原委員 どうも私から追及されますと三時間ということはない、こう申されるところを見れば、あなたが二、三十分と聞いておることは事実だろうと思う。そういう印象を私どもは受ける。といって二、三十分という正確な報告があったのかというと、どうも確かでないというようなとんでもないことなんです。これは二十分ないし三十分と二時間ないし三時間の深夜取り調べということは、それに対する価値評価は人権侵害の重大な食い違いです。だからして私どもは重要視しますよ。それを二、三十分だと簡単に片づけますけれども、これは三時間だ、午前零時から三時まで調べたということを司波さんは申しておる。だからこそ、このことを的確にお調べになることは私も要求します。けれども、あなたが先ほどああいう答弁をしたことは一体どういう間違いであったかということも、これは重ねて要求する。だからいいかげんに答弁したら私たちは了解しない。これだけ申しておきます。  そこで私は文部大臣にお尋ねするのですが、先般四月の二十五日に、文部省に対して佐賀県の教育委員会から三十七条違反についての指導助言を求めてきていないかということを私が質問したのに対して、内藤初等中等教育局長は、多分それは二月の末ごろではなかったかというような前口上でいろいろ意見を述べられておる。これはその後私ども調査をしてみますと二月の二十二日であります。教育委員長、それから教育長、それから教職員課の課員——これは課長でなしに課員、この三名が文部省にやって参りまして、二月十四日、十五日、十六日の実情報告を行いました。そうしてこれらのことに対しては法律上一体どういう処断をしたらよいのか、地方公務員法についての助言を求めておるのであります。それに対して初等中等教育局の地方課長、それから初等中等教育局長の内藤さん、このお二人は、それは明らかに三十七条違反だということを指導しておる。重ねてお尋ねしますが、間違いないですか。
  95. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の聞いておるところによりますれば、初等中等教育局長に対しまして今度の処分についての意見は求めておらないように聞いております。ただ法律上の解釈その他につきまして意見を聞いたのだろうと思います。
  96. 野原覺

    野原委員 法律上の解釈が処分に関係があるのです。  それでは百歩を譲って文部大臣にお尋ねいたしますが、法律上の解釈について指導助言を求められたから三十七条違反だ、こういう断定をして指導されたのか、お聞きします。
  97. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまお話になりましたことが指導ということであるのかどうか、私これはどうかと思いますけれども意見を求められれば三十七条違反であるという回答をいたしたと私は思っております。
  98. 野原覺

    野原委員 三十七条違反だというあなた方の見解を聞いたものだから——それまで佐賀県の教育委員会は、地方公務員法の二十九条だけで実は行政処分考えておった、ところが文部省の方から三十七条違反だ——大臣としてはこういう公けの場所ですから、自分の下僚がどういう発言をしたか、あなたに正確な報告がないから御答弁ができないかと思いますけれども、私ども各般の情勢からそんたくしてみるのに、実はこの指導に当ったところの諸君が、これは三十七条違反だ、この種の行為教員組合諸君がやって困るから断固やれというような激励、鞭撻もあったやに考えられるふしがたくさんあるのであります。こうなって参りますと、検察庁は——法務大臣が見えていないから井本さんによく聞いてもらいたいが、佐賀の司波検事正は、教育委員会が三十七条違反だという判断をしたから、このことを重要な参考にして、二カ月の期間を置いて実は検挙をやったのだ、こういうことを言っております。そうなって参りますと、これは検察庁としても検察庁独自の考えもあっただろうけれども、たとえば公労協にいたしましても、公務員でこの種の違反事実があった場合には、刑事処分よりも行政処分を先行するということが慣例になっております。地方公務員法の三十七条違反は、これは初めての例なんです。これはいまだにないケースですが、事実これに類する問題が起ったときに、行政処分をやる前に司法処分をやるということはやっていないのです。これは私、法の建前からも当然だろうと思う。監督官庁が処分しないのに、いたずらに検挙をやって司法処分をやるということはすべきではない、これは当然だろうと思う。だから、その意味では、司波検事正は、教育委員会の判断は三十七条違反とある、だからこれを重要な参考として検挙したのだ——ところが教育委員会の三十七条違反というのは一体だれがそそのかしたのか、教唆したのか。教唆したというので六十一条四号で処分しようとしておりますが、佐賀県の教育委員会を教唆したのは文部省なんです。灘尾文部大臣ではないかもしれないが、文部省なんです。これが教唆して、三十七条違反だということでうんとたきつけておいて、検察庁まで出て、今日佐賀県の教育委員会があの泥沼状態に陥っておる。鍋島県知事は泣いておりました。遺憾なことでございます、私は良識のある教員諸君教育委員会が、私が仲立ちをするから話し合いをして、何とかならないものか、教員組合としても反省すべき点は反省して、教育委員会としてもいたずらにこの強権を振りかざして、警察権の介入にのみたよる事態はやめてもらいたい。鍋島県知事は泣いて自分の意見を言っておる。ところが知事以上に教育に最も責任のある文部省が、いたずらに警察権の介入を促進してきておるということは、私は了解できません。これは灘尾さん個人の人格はともかくといたしまして、私はこの種のことをしかも初等中等教育局がこれをやっておる。初等中等教育局がこういう状態に追い込んで、そうして楽屋裏では拍手かっさいしておる。ざまを見ろ、こういうたんかを切るに至っては、一体どこの文部省だ、警察のための文部省か、弾圧のための文部省かと言いたい。きのうの朝日新聞の夕刊の論壇に何と書いてありますか。次のように朝日新聞の論壇は書いておる。「定員過剰の方は、教室をふやし、先生を増員すれば、いますぐにでも改善されよう。それはやらずに、教員の整理をやって、警察の介入まで起している有様では、国や地方公共団体が、子どもの学力低下をどう思っているのかと、心配になるのである。」と書いてあります。  そこで改めてお尋ねいたしまするが、この単位制を改めて教科系統云々ということをまじめに検討されることもけっこうですが、教員の資質の問題を論議するということも大事です。ところが佐賀県のあの実情はどうなのです。二百五十九人の整理、しかも長い間五十人ということを学校教育法で規定されておるにもかかわらず、六十人、七十人もすし詰めにされて、今度の場合また同僚が三百人も首を切られて、佐賀県の教育は非常に悲惨な状態になったから、がまんできなくなって立ち上ってやった行動に対して——規制の足りなかった、おもんばかりの足りなかった点もあるいはあるかもしれない、PTA等の話し合いが十分でなかった点もあるかもしれない、そういう点について今日率直に教員諸君も反省を持ってきておるのです。それを教育委員会教育長と教職員課の主任が来たのをもっけの幸いとして——呼んだのかどうか知りませんが、三十七条違反だ、こう教唆をして、やれやれ。三十七条違反ということになれば、行政処分だけでは終らぬのです。三十七条違反は、六十一条四号によって三年以下の懲役云々に発展することはわかっておりながら、そのような指導の仕方をする文部当局を私は今日信頼するわけにいかぬ。まずこの点について、警察権の介入を促進しておるという私どものこの見解は間違いであるのか。間違いであるとすればどこが間違いなのか。断じて警察権の介入を文部省が促進したのではないと断言できる点があれば、文部大臣から御説明願いたいのであります。
  99. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろお話でございますが、佐賀県のあの事態に対しまして、これが三十七条違反であるという見解を下すのは、私は当然だと考えております。その意見を反映することが佐賀県……(「その通り」、「お前警察じゃないか」と呼び、その他発言する者多く、聴取不能)……あるいは教唆したということを考えるのは、これは教育委員会と文部省との関係というものを……(発言する者多く、聴取不能)
  100. 長谷川保

    長谷川委員長 お静かに願います。
  101. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 意見を求めました場合に、文部省の考えを申し上げるということは、何も教唆でも何でもない、当然なことだと思うのであります。三十七条違反という見解が間違っておるということならば別であります。文部省といたしましてはさような考えのもとに三十七条違反、こう考えてその見解を表明したにすぎないのであります。教唆でも何でもないと私は考えるのであります。またこのことが警察権発動を促進したとかしないとかいうお話でございますが、私どもは決してこれは促進するつもりでさようなことを申したのではない、単なる法律上の解釈を示したにすぎないと考えております。
  102. 野原覺

    野原委員 あなたは文部大臣として、それは自民党出身の方としては当然のことかもしれぬ。私どもは客観的な調査に参りましたが、自由民主党の諸君も一名、二名、五名と逐次実情を見て、各方面を激励し、声明書を発表しておるようであります。検察庁を激励し、警察を激励し、教育委員会断固退くなと鞭撻しておるようであります。そういうところに基盤を置かれる灘尾さんですから、そういう御答弁をなさることもやむを得ない面もあるかもしれない。政党内閣の文部大臣だから……。しかしながら三十七条違反だというあなた方の見解が警察権の介入になったのです。そして検事正の言を借りれば、これが重要な参考、キーポイントになって検挙ということに発展をいたしました。こういうわけであります。そこでこれは単に見解を示しただけだからと言えばそれまでですけれども、今日警察権が介入し、検挙がなされて泥沼状態に佐賀県の教育が置かれておる。心ある者は非常に心配しておる。このことを手をこまねいて事態やむを得ない、ざまを見ろということで高いところからせせら笑っておるのかということを私はお聞きしたい。一体このことに対してどういう処分をもって臨もうとするのか。鍋島知事は何とかしなくてはならぬと言っておる。話し合いをすればできないことはない。処分の問題にしても処分をやるかやらぬかは別にして、それも含めて話し合いをしたらいいじゃないか。おれが中に入るとまで言っておるが、文部省はこの問題をどのように収拾しようとされるのか。事は警察にまかして能事終れり、もう検挙されたわけだから、あとは裁判所がやってくれます、私は何も知りませんということで一切をやろうとするのか、重要な点です。私はこの点についてはあえて追及しようとは思いません。良識のある文部大臣の率直な所見だけを参考のために聞いておきたいのです。
  103. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先般もお答えしたと思うのでありますが、この事件全体を見ました場合に、まことに遺憾なことと思っておるのであります。かような成り行きになりましたことはこの前も申し上げましたが、私は事態やむを得ないと考える。なるべくすみやかに事件が解決することを望んでおります。
  104. 野原覺

    野原委員 質問は午前中はこの程度にされんことを要望いたします。
  105. 八木昇

    八木(昇)委員 関連して。今の三十七条の問題と二十九条の問題について、もう一度文部当局の御見解を確かめておきたいと思うのです。地公法の二十九条には、職員が左の各号の一に該当する場合においては、懲戒処分をすることができる。その第二号に「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」、こうあるわけです。この第二十九条の適用によって処分をした、また処分をすべきものである。もし職務上の義務に違反しまたは怠ったと認める場合は、教育委員会としては当然そうやるべきものだと私ども考えるのですがどうでしょう。
  106. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 佐賀県の行政処分でございますが、二十九条の一号と二号がありまして、一号の方は御承知通り、この法律もしくは云々の規定に違反したで、二号の方がただいまお読みになりました「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」、こうなっておるのでございます。そこで佐賀県の教育委員会といたしましては、三十七条違反として、二十九条の」項を援用したわけでございます。停職処分をしたわけでございます。
  107. 八木昇

    八木(昇)委員 文部大臣の御見解はどうでしょう。
  108. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま政府委員お答えいたしました通りでございます。
  109. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと今のような解釈は、私は当然刑事罰をもたらす結果になってくる、こう考えざるを得ない。何となれば、今度処分をされたところの人たちの教育委員会から出された処分理由は、そういうふうに明らかに書いてある。このことは地方公務員法第三十七条の規定に違反し云々、こういうのが各人全部の処罰理由書になっておる。そうしますと三十七条違反だということであるならば、これは当然刑事罰を伴うものであるから、教育委員会がそういう出過ぎた解釈を下すとするならば、必然的に検察当局もまた動かざるを得ない。こういう結果になるものとあらかじめ予想されるわけですが、そういうお考えのもとにやられた、こう理解していいでしょうか。
  110. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私どもは法律の解釈といたしまして、今回の事態が先ほども申し上げましたようなことになるということを申し上げておるわけでありますが、佐賀県の教育委員会が三十七条違反として処断をいたしましたことが決して出過ぎた考え方とは思っておりません。
  111. 八木昇

    八木(昇)委員 三十七条違反というのは、これを受けて六十一条の刑事罰の適用となる、これは明らかです。しかしながら教育委員会のとる処置としては、単純に二十九条違反として処置すべきものではなかったか、その間に根本的なミスを犯しはしなかったか、こういうことを考えるのですがどうですか、もう一度この際明らかにしていただきたい。
  112. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教育委員会が二十九条の一項ですか、これによりまして行政処分をいたしたことは決してミスを犯したものではないと私は考えます。
  113. 八木昇

    八木(昇)委員 そういう文部省の考え方が、必然的に教育問題に官憲が入ってくることをみずから招来しておることになると私は思う。教育というものは一切の時の権力その他に対して独立であるべきであって、今の二十九条違反として教育委員会行政処分をした場合には、人事委員会に審査を請求して問題の解決をやっていく、こういう本来の法の建前であると思うのですが、そういう点を非常に軽々に処置をしておられることを非常に遺憾に思うわけであります。これらにつきましてはさらに議論をいたしたいと思いますけれども、一応午前中はこれで終ります。
  114. 長谷川保

    長谷川委員長 辻原弘市君から委員外の発言を求められておりますのでこれを許します。
  115. 辻原弘市

    ○辻原弘市君 今の点で後日の参考に、もう少し明らかにしておきたいと思いますが、今八木君が指摘しました通り、この法律の適用に当って三十七条の違反であるということで、教育委員会がとったこの前提として文部省がそれについての指導を行なったという事実、しかる後に教育委員会行政処分としては二十九条の第一項に基いてやったという今の答弁であります。ところがこのやり方は、これは大臣もしばしば言う通り、もし地方公務員法の建前なりあるいは教育という見地に立って行う処分であるとするならば、全くこれは本末転倒の処分であるといわざるを得ない。三十七条違反ということは今八木君が指摘したように、必ずこれは行政罰が伴う。ところが地方公務員法の趣旨は、もし刑事事件として起訴された場合は、当然直ちに二十九条を受けないで、少くとも二十八条によってその刑の定まるのを待って、しかるのちにいかなる行政処分にするかという、そういう立法の趣旨になっておると思う。当然そのことは二十八条の第二項を読めば、刑事事件として起訴された場合は一応これは休職にするという取扱いなんです。これが最も穏当な、いわゆるこの種の事件を取り扱う場合の考え方だと思う。またこういった事件のみならず、いかような破廉恥罪といえども、ひとまず刑事事件の取扱いを待って、そうして諸般の状況を判断して、本人の意に反して降任するかあるいは免職するかということの態度をきめるのが、私は正当な法の運用の建前だと思う。ところがそういうことを飛び越えて直ちに刑事事件として、また刑事罰を予想しつつ、そのことだけでこの処分をやったということは、これは明らかに当初から行政処分が目的でなく、いわゆる刑事事件として刑事罰を期待してやったという以外にこの運用についての解釈のしようがないと私は思う。この点についての大臣の見解をお聞かせ願いたい。
  116. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の教育委員会がいかなる心理状態のもとにやりましたか、それは私存じません。しかしながら明らかに三十七条に違反しておる行為と認定いたしまして、そしてこの二十九条の一項でやったことは何ら差しつかえないと思っております。
  117. 辻原弘市

    ○辻原弘市君 私はそういうような法の運用が間違っておると思う。これは明らかに見解の相違かもわからぬけれども、少くとも地方公務員法という法律の建前によってやったというならば、その法律の趣旨は今言った通りである。あなたの言っているのは、これは三十七条に規定して刑事罰を予想する場合の運用についてやったという解釈を言っているわけです。そういうような見解に立ってやっておるからこそ、あえて初めから警察権の介入を期待し、教育の混乱を顧慮せずに、ますます問題を紛糾させるとわれわれは言っているわけです。何ら差しつかえないというならば二十八条はどういう趣旨のもとに置いておるのか、この点についての文部省の解釈を承わっておきたい。
  118. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 二十八条は、「職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。」こういう分限に関する規定でございまして、この中に刑事事件に関して起訴された場合には、その意に反して休職することができるというのは二項に定められておる。本件は二十九条の懲戒の事犯でありまして、これは三十七条の違反として懲戒処分が規定されたわけでありまして、二十九条一項の規定によって処置をしたわけであります。
  119. 辻原弘市

    ○辻原弘市君 そういう解釈をやっておるから、先ほど言ったように、これは刑事事件を当初から予想して刑事事件として処理しようという文部省の見解が生まれたのです。今あなたが読んだように、この事件が少くとも刑事事一件として起訴されたような場合には、ひとまずそれを本人の意に反した降任もしくは免職という形においてその分限を定め、刑事事件の取扱いが判然としてからそれらのことについての懲戒処分を定めるのが、新しい地方公務員法を定めたときの立法の趣旨なんです。当初からこの地方公務員法によって分限ないしは懲戒ということは絶えずそういう警察権を介入せしめるということを前提としておらない。そこに法の運用を誤まっておるのです。少くともこれが警察がやるならばそれは当然でしょう。しかし文部省なり教育委員会がさような解釈、さような法律の運用根拠をもって、この事件に臨んだというところに根本的な間違いがある。何のために地方公務員法がしかれたか、何のために分限あるいは公務員の保障というのが、この地方公務員法ないしは国家公務員法の中に規定されておるかという趣旨を、もう少しはっきり文部省は読まなければならないということです。私は大臣のそれに対する見解をもう一ぺん承わっておきます。
  120. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 地方公務員法の三十七条は、決して教職員に対する例外認めるものでない。この三十七条に違反する事実ありとして、これに基いて懲戒処分をすることは何ら差しつかえないと思います。
  121. 辻原弘市

    ○辻原弘市君 私の午前中の時間では、押し問応になりますから、この問題は後刻もう少し詳細にいたします。
  122. 長谷川保

    長谷川委員長 午前中の会議はこの程度にし、午後は二時より再開いたします。  これにて休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後二時四十九分開議
  123. 長谷川保

    長谷川委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。小牧次生君。
  124. 小牧次生

    ○小牧委員 この際文部大臣に若干佐賀県の問題についてお伺いいたしたいと思いますが、この問題については午前中同僚委員の間からいろいろ質問があったわけでありまして、私所用のためにおくれて参りまして、あるいは若干重複する点があるかもしれませんが、できるだけ重複しないような点を御質問いたしてみたいと思っております。  私も実は現地の方に参りまして、PTAの皆さんやその他の方にお会いしていろいろ事情をお聞きいたした一人でありますが、この問題に関連いたしまして、福岡県の教職員組合長その他一人でございますか、二人を逮捕して警察の方で調べをしておられる。これは教育委員会に相談しないで警察の方で調べるということについて、福岡県教育委員会自身も、これは行き過ぎであるというような見解を表明しておられるのでございます。われわれはもとより同感でありまして、警察権をもってそういうところまで介入して調べるということについて、文教の責任者としての文部大臣は、一体どういうお考えを持っておられますか、この際お伺いいたしたいと思うのであります。
  125. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 警察権行き過ぎというようなことは厳に慎んでもらわなければならぬことと思います。また警察当局におかれましても、そのつもりをもって指導しておられることと私は存ずるのであります。このたびの福岡県の教組の方に関する問題でありますが、一応われわれといたしましても、県の教育関係の方にお話でもあったらということを考えないわけじゃございませんけれども、しかし捜査の必要上その措置をとるいとまがなかったということでありますれば、これまたやむを得ないことかと存じております。
  126. 小牧次生

    ○小牧委員 現地でいろいろ話を聞いておりますと、前に逮捕された十名でございますか、そのうち今日までに八名は釈放されて、あと二人残してあるということでございますが、この点について警察庁長官にお伺いいたしますが、今お話しの福岡県の二人が逮捕されて取調べを受けておるというので、これに関連があって佐賀県の方も二人は残してある、こういうような話も聞いたのでありますが、いかがですか。
  127. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 佐賀県教組関係者のうち二名が、現在なお勾留取調べを続行されておるということは、午前中お答えいたしましたが、現在取調べ検事の手においてなされておりまして、その取調べが、ただいまお話しの福岡県の本月三日に逮捕になりました二人の取調べとどう関連を持つかについては、私から申し上げることはちょっと差し控えさしていただきます。
  128. 小牧次生

    ○小牧委員 この問題についていろいろ私どもが現地で聞いて参りますと、福岡県の今の問題にも関連があるのではないかということを聞いたのでありますが、それは今回の三・二・四の休暇と申しますか、この問題を警察側の方で参考人その他を呼んでいろいろ調べるときに、教職員組合執行部の指令一本で皆が動いた、こういう点を中心に——私が佐賀でお会いをした相手の方々が警察の方に呼ばれて、あるいは警察の方からたずねて来て調べた場合に、どこからだれがどういうふうにそういう指令を流したかというような方法でいろいろ聞かれた。もっと率直に申し上げますと、検察庁においても、警察においても、ああいった組合のあり方、こういうものをほとんど内容的に御存じないのではないか。いろいろ質問に答えて調べられた方が答弁をすると、ああそうですかというような態度相当見受けられた。休暇をとれということを指令一本で流されたので、皆休暇をとったのだ、こういうふうに考えていろいろ調べている。ところが、実際にはああいう組合というものは、きわめて民主的な方法で大会を開いて、そうして皆の意見を聞いて、それがきまった上で執行委員というものはその決議に基いて、これを指令ということよりもむしろ伝達という方法で末端の方に知らせる。従ってそういうことを考え実行するということは、組合員一人々々自分の意思というものを持ってこれはやるということであって、それを指令一本で動かした、教唆扇動しているのだというふうに考える、同時に今申し上げた福岡県の問題も、何かやはりそういうような今申し上げた指令一本でやるのだということに関連があって、そういう考え方から調べている、こういうことになるとすれば、これは非常に大きな間違いであって、軽率もはなはだしいと言わざるを得ないと私は考えるわけでありますが、この辺のところについて警察庁長官の御意見を伺ってみたいと思います。
  129. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 確かにお話のように、今回の佐賀県の二月十四日ないし十六日にわたってのいわゆる休暇闘争が行われたことにつきまして、いろいろ実情を調べてみますと、教職員の方々がこうした休暇闘争をやることについての可否と申しますか、個々の人の賛否の意見を出され、その結果賛成の方が多数、反対の方が少数であったのでありますが、そうした結果を大会に発表され、執行部の方々がそれに基いて三日間の休暇闘争を実施する指令を出された、こういうことに相なっているのでございます。多数の人の意向が休暇闘争をやるべしという意見であったから、それをただ単に執行部の方は機械的にこれを末端まで伝達しただけであるというようなお話でございますが、問題はそうした休暇をとって闘争をする、その休暇のとり方が問題である。成規の手続によって休暇をとられて、その休暇中に法令に背馳しない行動をおとりになることは御自由でございます。今回の場合、休暇をとることに問題があった、それがいわゆる違法な行為になるのでございます。しかもそれをあおり、そそのかして、三日間のあの休暇闘争をされたという点が、執行部の方々の責任にかかってきたわけでございまして、今回の地方公務員法三十七条、六十一条違反という結果になったことと思っております。
  130. 小牧次生

    ○小牧委員 今の問題については、先日も本日もいろいろ同僚議員の間から質疑がありましたので、われわれの見解の相違ということは明らかであろうと思うのでありますが、この点について私どもが聞くところによりますと、佐賀県の教育委員会においては今度できている新しい教育委員会法の細則に基いて、こういう決定の行われる大会の前日に、校長に休暇を与える権限を認める、しかもこれを口頭でもって相手方の方に伝えておるという話を聞いております。あらかじめそういう措置を講じて休暇を与えない、こういうやり方については、われわれは非常に問題があろうかと思います。ことさらにその前日こういうことを急いでやって口頭で伝える、私はそういったことをあらかじめ予定して作られたそのような細則に効力はないと考えるのでありますが、この措置について文部大臣はどういうお考えでありますか、お伺いをいたします。
  131. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 詳細なことはよく承知いたしませんので、政府委員からお答えいたします。
  132. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 教育委員会がとりました措置は、できるだけ事態がこういうことにならぬように、再三にわたりまして教員組合側にも事態を回避するように勧告して参ったのであります。ところが組合教育委員会の勧告を無視して、ついに十四、十五、十六日の三・三・四の闘争を決行するという事態になりましたので、地教委は業務命令に対する措置を出したわけでありまして、地教委が直接に学校長に業務命令を伝達したわけであります。業務命令を校長が受けて、校長は教員各個人に、今回の休暇に対しては争議行為とみなすから、一斉賜暇は認めないという方針を伝達したのであります。それについて各教員が校長の意に反して休暇をとったという実情でございまして、この措置については私どもは適法であると考えているのであります。
  133. 小牧次生

    ○小牧委員 三十七条の解釈について、先ほど来同僚議員から質問がありましたが、われわれは見解を異にしているわけであります。今申し上げたような措置なりあるいは佐賀県の教育委員会が文部省へ来て、初中教育局長なり地方課長その他といろいろ打ち合せをして、三十七条の解釈について文部省の意見を発表された。これについては文部大臣から先ほど来見解の表明があったのでありますが、それでは一体どういう措置であるならば、具体的に言えば三・三・四というようなものではなくて、例を申し上げますと、二・二とか何かこれと違ったものであるならば、三十七条には該当しないとかいろんなそこに話し合いの上では意見が出たのではないか、私は率直に申し上げてそう思うのであります。それではどういう場合には該当しないとか、何か文部当局としてはお考えがあると思いますからお伺いしてみたいと思います。
  134. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 正常なる学校の運営が阻害されない方法でやればいい、つまり職場大会を開く場合には、学校の勤務時間外におやりになれば三十七条には該当しないと思います。
  135. 小牧次生

    ○小牧委員 この問題についても、ずっと前から許された有給休暇を職員の方々がとって、その反面生徒の授業なり学力の問題その他いろんな点を尊慮して自習の措置を講じてやっている。先ほど警察庁長官でしたか一斉休暇とかいうようなお話がありましたが、決して一斉にそうやっているのではなくて、その実情についてはいろいろ御承知だろうと思うのですが、われわれの見解では決して正常な運営に支障を来たしておらない。全部一人もいなくなって文字通り一斉の休暇であるならば、あとに自習なりその他の措置もしておらないやりっぱなしの無責任なやり方であるならば、いろいろそういう考えも出てくるでありましょうが、そういう点も十分考慮して、そして子供の学力等の問題についても自習その他の措置をもって十分補いのできることまで先生方がやられた、これはもう明らかでありますが、それがどういう程度に正常な授業の運営を妨げたのか、それを一つお伺いいたしたいと思います。
  136. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 つまり学校で、いつも所定の一つ授業計画がございますが、その授業計画が変更を受けたということ、これが正常でない。たとえば午後の授業を打ち切ったとか、あるいは映写会に切りかえたとか、今お話の自習になったとか、あるいは合併授業をしたとか、あるいはその他あげられておりますが、そういうことがすなわち正常でないわけでございます。ですからその正常でない授業の形態が私どもとしては困る。こういう意味でございます。
  137. 小牧次生

    ○小牧委員 三割ということでありますが、これは御承知通り県全体の各学校を含めて正割というようなことであって、個々の学校について、これが直ちに佐賀県の現場でそれだけの支障を来たすというようなことは、これは現実にはないわけなんです。そういう点も十分考えてこれはやったのであって、そういう三割が今おっしゃるようなものであるとするならば、それでは二割はどうなんですか、いかがですか。
  138. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 二割でも、私は正常な運営を阻害すると思います。
  139. 小牧次生

    ○小牧委員 それでは重ねてお伺いいたしますが、一割はいかがですか。
  140. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 一割でも、私ども教員の数がそんなに余裕のある定数じゃございませんので、私は正常な運営を阻害すると考えております。
  141. 小牧次生

    ○小牧委員 そうなってくると、これは非常に根本の問題に触れなければならない。教職員の皆さんといえども、これは働いておる人々であって、そのためにはそれだけの保護の法律もあるわけです。これは従来いろいろ論議されておる通り、そういうような自分に与えられた正当な権利、根拠に基いて、それだけの行動に出るわけであって、これはたまたま私が例を申し上げたわけであって、その割合が今申し上げたような段階を追うて一割とか、二割とかいうことになる場合も、これは合計してみればあるわけです。しかしながらそうなってくると、たまたまそういう割合になる場合に、その先生方はいろいろな自分の事情なりで有給の休暇をとりたいと思ってみても、これはとれないという結果になってくる場合も出てくる。そういうことを果して法が規定しておるかどうか、これは非常に私は大事な問題だと思う。今度の問題はいろいろ見解の相違があって、そこまで今私は論及はいたしませんが、今私があなたにお伺いしておるような問題について、そういうような文部当局がお考えを持っておられるとするならば、これは全然先生方は休養も何もできない。極端に申し上げるとそういう結果に私はなると思うのですが、どうですか。
  142. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 私ども考えでは、職員は年間二十日間の有給休暇をとる権利があるわけでございまして、この権利を行使される場合に、全体の授業が正常な運営を欠かないようにという配慮が必要なわけであります。その限度において校長は適宜教員希望に沿って有給休暇の許可を与えておると思うのであります。ただ今回のように、ある要求貫徹のために一斉に職場を放棄するというような事態ではないと思うのであります。個々の先生の実情に応じて必要な休暇をとり得るし、またとらせなければならぬと思うのであります。
  143. 小牧次生

    ○小牧委員 そういう問題についていろいろ論議すると、これはお互いに相当意見があると思うのですが、いずれにいたしましても私は今回の佐賀県の教育問題についてとられた文部省の態度なり、また警察当局、検察当局のとった態度ははなはだ遺憾にたえないのであります。事が教育の問題であるだけにその及ぼす影響も非常に大きい。現地に行ってみますと佐賀の地元は非常に混乱をいたしております。こういった闘争と申しますか、休暇をとった問題で支障を来たすということよりも、その後における警察権の介入とか、いろいろなこういうような問題等によって引き起された混乱、支障というものの方が、いろいろな意味において非常に大きな影響を与えておると私は判断をいたしております。こういった問題はできるだけ早く円満に解決をしなければならないし、また文部当局におかれても、文部大臣はその最高の責任者でありますから、これは今申し上げたように円満な解決をとらなければならない義務があると私は考えておるのであります。私はPTAの皆さんともお会いいたしましていろいろ御意見を聞いたのであります。その際に、多少われわれとは意見の違った点もありましたが、大きく意見が一致し、口をそろえてわれわれに説明をし、また要望もしておられたのは、何といっても佐賀県の地方財政の窮迫、学力の低下を、その実例をあげて言われました。福岡県との県境においては、高等学校の生徒は続々福岡県の方へ流れていく。また義務教育の面においてもそういう傾向が今相当多いのだ。昔佐賀県は、ここにその県の方もおられるようでありますが、非常に優秀な人材を輩出した。ところが最近はどうもあまり芳ばしくない。これは大へん失礼な話ですが、そのときにPTAの皆さんが言われた言葉を私はここで申し上げておるわけであります。こういう佐賀県の教育事情、水準というものを非常に憂えて、何とかして県や国の力をもってこの水準の向上をやっていただきたい、こういう切なる願いをPTAの皆さんが持っておられる。そのよって来たる原因はいろいろな問題があるでしょう。私どもがただ単に一回や二回現地へ行って聞いてみても、十分把握し得ないほど非常に根の深いいろいろな複雑な問題を包含して、その結果現われて参っておる現象である。こういうようなことで、文部当局におかれてもただ単にこの局面だけを見ないで、その深い根、いろいろな複雑な事情を十分正確に把握して、そして解決に乗り出すという態度でなければ、なかなか根本的には解決し得ないのではないかと思うのであります。こういう財政事情、その他県やあるいは国自体の措置の不足なりあるいは貧困と申しますか、そういうところからこれは生まれて参っておるということを一体文部当局においてはどう把握しておられますか、まず大臣からお伺いしてみたいと思います。
  144. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 佐賀県の財政事情に基因いたしまして、教育行政についていろいろ問題があったということは、私もよく承知いたしております。県の教育委員会にいたしましても、県当局にいたしましても、そのためには一方ならざる心配をいたして参ったと思うのであります。われわれといたしましても、できるだけさようなことにつきましては協力すべき責任があるわけであります。今日まで及ばずながら努力して参ったつもりでおるわけでございます。さような事態のもとに、県の教職員の組合の方々が、非常に不満を持たれたということもわからぬわけではありません。非常に不満を持たれ、そのために熱心な交渉をせられたということも、無理からぬ点もあると思うのであります。さりとて、その不満のあまりに、教職員団体としてとるべからざる行動をとったということは、返す返すも私は遺憾に思っております。私どもは、教職員団体の方が不満を持たれることも、必ずしもこれをけしからぬというわけのものじゃございません。また、合理的な要求は、できるだけこれが実現に協力しなければならぬと思います。けれども、やはりどこまでも法令の範囲内において秩序ある行動をとってもらいたいのであります。今回の場合におきましては、県教育委員会におきましても、県の側におきましても、また関係の向きにおきましても、いろいろ心配をしておるときであります。どうぞその法令に逸脱するようなことはしてくれるなということをやっておった際に、あえてかような行動をとられたということは、まことに残念に思う。もちろん佐賀県の財政事情の改善ということにつきましては、決して簡単な問題とは思いませんけれども、われわれといたしましては、今後ともできるだけ協力いたしたいと考えておるわけであります。
  145. 小牧次生

    ○小牧委員 その問題についてもう一言お伺いしますが、佐賀県の教育委員会の方が上京して、いろいろ文部当局と打合せをされた。その際に三十七条の解釈も言われた。しかしながら、佐賀県は、前から大量のたびたびの教職員の整理をやり、今回も、たしか二百五十九名というような、非常な大量な整理をやろうというようなことから、こういうような問題も引き起しておるわけでありますが、御承知通り佐賀県は再建団体であって、一応政府の再建計画の承認を得なければならぬ。その際に、自治庁としては、こうこうこういうふうにせよというようなことを、佐賀県の知事等にもいろんな話があったであろうと私は思うのでありますが、しかし、先ほども申し上げた通り佐賀県のPTAの方が非常に憂えておられ、準力の低下その他等で他県に流れていく、何とかしてこうした実情を改善しなければならぬ。児童数の割合と学校先生方の割合というものは、各県それぞれどのくらいなければならぬという水準ははっきりしておる。そうでなければ児童の教育は完全を期することはできない。こういう点を考えてみます場合に、佐賀県の教育委員会の方が出てこられて、いろんな相談をせられる。法の解釈について云々ということでございますけれど、それよりも、そういう際には、さかのぼって自治庁等とも十分一つ打合せをして、そういう無理なことをやろということについては、これは財政的には確かに自治庁の方で担当しておるかもわかりませんけれども、事教育の問題であり、しかも先生方をどの程度配置しなければ、佐賀県の教育求準というものを他県並みに維持することができないというような点については、文部当局としては、十分これは研究もし、わかっておられると私は思うのでありますが、そういう点について、今まで初等中等教育局とされては、どういう努力をし研究をされましたか、この機会にお伺いします。
  146. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 お話のように、私どもは、佐賀県の教育水準を低下してはならぬと考えておるのでありまして、佐賀県が再建団体になっておりますが、再建には協力しますけれども教育水準を著しく低下するような再建には、私どもは協力できかねますということを、自治庁にもたびたび申したわけであります。三十一年度に二百五十九名を年間で落すということになっておりましたから、本来なら、二百五十九名を半年間分しか給与予算は見てないのです。ところで、去年の暮れからこの問題が論議されまして、結局のところ、私どもとしては、ともかく教育水準を低下するようなそういう再建というものは、実効が上らない。結局、三十一年度は二百五十九名の予算をまるまる見たわけなんです。これは三十一年度は削減しなかったのであります。これの変更は、本年三月三十一日に自治庁から承認されております。さらに三十二年度の定数として二百五十九名を落すという話が、また別個に出ておるわけです。三十一年度は落さぬけれども、三十二年度で二百五十九名落してくれという話がございましたときにも、これは私どもとしては、佐賀県の意向を聞きまして、佐賀県の教育上弊害がある。こういう話がある。佐賀当局は、知事がこの前お話があったと思いますが、百二十名を復元してほしい、百二十名はどうしても、佐賀教育の水準維持の上から必要であるという、こういう見解でございましたので、この点についても、私どもは自治庁に再三の申し入れもいたしまして、自治庁も、原則的には、この百二十名を戻すということについて了解を与えております。ただ現在のところ、三十二年度の計画変更がまだ地元から上ってきておりませんので、上ってきた場合には、これについてできるだけ考慮する、こういうことを自治庁は約束しておるのであります。
  147. 小牧次生

    ○小牧委員 これは今いろいろ御質問申し上げておる通り、いかにして佐賀県の教育を守るか、こういう点に端を発しておる重大な問題であることは御承知通りである。ところが、私も地方議員の体験をいたしたことがありますが、一つのワク内において、いろいろ交渉し、陳情し、折衝して、教育を守るそのためには、学校先生方の定員、またその裏づけになる財源予算、こういったものがすべて確保されなければ、ほんとうに教育を守ることはできないということで、いろいろ地方において努力をし、交渉するのでありますが、今私が、あなたに質問しておるような、根本的には、文部省なり、あるいは自治庁と、十分そこに緊密な連絡がとられて、そうした地方側の正しい要望というものが満たされない限りは、残念ながら地方側の先生方なり、父兄の方の御希望というものは達成されない。これはもうわかり切ったことなんだ。ところが、なかなかそれが現実には、実際実現できないで、どこの県においても、だんだんだんだんそういった方向に縮小されていく。そうなると、従って教育の面においても、いろんな支障ができてくる。その結果、これを守ろうとする人々は、何とかしてその傾向を食いとめなければならぬという、非常な熱意を持ってこういう問題に取り組まざるを得ない。その方法について、今いろんな問題が起って、ここに見解の相違が戦わされておるわけですが、これはやはり、起った問題は起った問題として、今私が質問申し上げておるようなそういった大局的な観点に立って急速に解決し、そうして将来再びこういうことがないような万全の措置を文部当局自身がなさなければならぬ。でなければ教育を守る人は、どうしても守るためにいろいろな努力をされるわけでありますから、なかなか根本的に解決できないというふうに考えるわけでありますが、この際そういうような問題にまで検察当局なり警察当局が、法の解釈その他によって介入をする、こういうことでは断じて解決できる問題ではない。これは失礼ながら私はそういうふうに申し上げたい。従って現地でいろんな話を聞いてみますと、これは政治的な介入であるとか、あるいはこれはもう明らかに不当な弾圧であるとか、いろんな町の方々の御意見を聞いてみると、率直な意見がたくさん出ておる。教育にまで警察権を持って立ち入らぬでもいいじゃないか、こういうような意見が非常に強いわけでありますから、この際すみやかに事態を収拾する善処方を強く要望いたしたいのであります。この点について文部大臣と警察庁長官の御意見を伺って、私の質問を終りたいと思います。
  148. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育行政の充実をはかって参る、改善していくということは、これはもう当然私どもの努力すべきことであります。今日のわが国の状況がいろいろな事情に制約せられまして、なかなか思う通りに参らない点があることは、遺憾ながら認めざるを得ないのでありますが、しかしそれにもかかわらず、われわれといたしましてはできるだけ目標に、理想に到達すべく努力を重ねていくということは、これは当然のことであります。ひとり佐賀県だけの問題ではございません。全国的な問題といたしまして、文部省といたしましては今後ともに努力をして参るつもりでおります。今回の事件につきましては、私ども前々申し上げまする通りに、この事件全体を考えます場合に、まことに遺憾なことでありますけれども、事ここに至りました以上は、なるべくみんな平静な態度をもって、しかも事件のすみやかなる解決を望む、こういうふうに私は考えておる次第であります。
  149. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 正しい教育の姿の具現、教育行政の充実ということにつきましては、ただいま文部大臣のお答えになった通りでありまして、私ども警察がこれに対してかれこれ関与すべきことでもないので、おこがましいことを申し上げることは差し控えたいと思うのであります。ただ今回のように、警察教育関係の方々に取調べの手を伸ばさなければならぬということは、これは私自身もまことに遺憾なことだと思っております。こうした事態の起ることは決して好ましいことではない。われわれもまた事を好んで、こうした問題に警察として手をつけておるわけでは決してないのでありまして、今後とも法に許された範囲において、教職員の方々が自分の権利を守り、教育の正しい姿具現のために、教育を守るためにいろいろ活動なさることは、これはしごく当然のことでございます。どうか合法のワク内においてりっぱにかつ強力にそうした活動をしていただきたいとさえ思うのであります。どこまでもそれが合法のワク内において、そうした活発な有力な活動がなされますことは、われわれ警察といたしましては、何らこれに介入し、干渉する気持は持っておりません。今後どうかそういう正しい方向において、教職員の方々のあらゆる活動が展開されることを、心から切望いたしておるのであります。
  150. 長谷川保

    長谷川委員長 この際本問題に関し、門司亮君より委員外発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、これを許します。門司亮君。
  152. 門司亮

    ○門司亮君 私、時間もございませんので、簡単に一、二の点だけお伺いいたしたいと思います。それは話がもとに戻るようですが、文部当局が三十七条違反として断定したことについてのいきさつであります。私ども考え方からすれば、三十七条違反に対する処置は当然刑事罰がくっついておりますので、検察当局がこれを断定すべき一つの条項である。教育委員会は行政委員会としての立場から考えて参りますならば、当然行政委員会の権限の範囲に属する処断をすることが、地方行政委員会としての態度であると私は考える。そう考えて参りますと、これはやはり二十九条の二号あたりが大体適用さるべきではないか。この適用が私は文部当局としては当然考えられて、もし意見を求められれば、文部当局が示唆するなり、あるいは指導するなり、助言をするなりということは、この辺でよかったと思うのだが、一体それに対する見解はどうなっておりますか。
  153. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 文部省では去る十二月五日の一斉早退戦術に際しましても、また三月十一日の早退戦術にいたしましても、これは三十七条に該当するおそれがあるから、こういうことを差し控えるようにということを、かねがね私どもは指導して参ったのであります。本件につきましては三、三、四割という、この三十七条にいういわゆる同盟罷業に該当する、こういうふうに私どもは解釈をいたしまして三十七条違反というふうに断定したのであります。
  154. 門司亮

    ○門司亮君 その解釈は誤まりだと私は思う。少くともその三・三・四の実力行使をして現実が現われてくる前に、業務命令違反というものがなければならぬ。当然行政罰に相当するものがなければならぬ。いわゆる業務命令を聞かなかったということがこの問題の一つの段階です。その次の段階が争議行為の段階というふうに文部省が断定するならば断定してもいいかもしれぬ。しかしその断定は、これは検察当局がおのずから六十一条の四号を発動することになってくると私は思う。従って文部省の態度というものは、どこまでも行政官庁としての態度であり、教育委員会が行政委員会でありまする限りにおいては、その自分たちの権限の範囲において、自分たちの権限の範囲を越えたものについてのみ、この懲戒処分をすることは正しいやり方であると私は思う。従って、三十七条をいきなり適用したということは、これはどう考えても法の運営の誤まりだと私は思う。文部大臣はこの法律のできたときのいきさつをよく御承知だと思いますが、権威者はこういうことを言っておる。この種のものについては、やはり行政罰が先だ、これは尊重すべきだ、こういうことを申されております。私はやはり教育委員会の持つ権限というものは、どう考えても二十九条の二号ないし三号の業務命令の違反の行為があった、これについては教育委員会の権限でありますから、これに対して懲戒なり何なりをするということは、これはあるいは差しつかえないかもしれない。しかし三十七条をいきなりここに持ってきたというところに、文部当局の浅薄なものの考え方があると私は思う。ことさらに検察当局をおびき出してこようという意図があったのではないか、それによって文部当局責任をのがれようという意図があったのではないか、どうしても私はそう考えざるを得ない。そこで私の思いつきを聞いておきたいが、一体三十七条の違反行為については、おそらく例の教育委員会は、これについて処断はできないでしょう、刑事罰をくっつけるわけにはいかぬでしょう、刑事罰をくっつけるのは検察庁でしょう。そういたしますと、自分の権限を越えた範囲のものについては、やはりこれを処断することのできる検察当局が出てくるということは、これは自由であります。従って、教育委員会は自分の権限の範囲よりも越えた断定をしておるというところに私はこれの間違いがあると思う。この私の解釈は、法の解釈上違いますか。
  155. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 遺憾ながらその点につきましては、私は門司さんと解釈を異にしておるように思います。三十七条並びに二十九条をよくごらんいただきますれば、三十七条の問題をとらえて懲戒処分をするということは何ら差しつかえないことであります。三十七条は教育委員会の権限外のことだというふうに私ども考えません。
  156. 門司亮

    ○門司亮君 私はその事態が権限外だとは言っていないのであります。教育委員会の持つべき権限というものは業務命令を発することで、それから以上の権限はないはずです。業務命令違反としてこれを取り扱うことは私は教育委員会としては自分の権利と義務との関連性から言うならば当然だと思う。教育委員会が三十七条違反だと断定することに誤まりがあるのではないか。教育委員会教育委員会自身の仕事をすればいいのであって、三十七条違反は三十七条違反として検察当局がちゃんと処断をすべきである。また処断すべき権限を持っている。そのことのためにはこの前の委員会石井警察庁長官も言っております、また佐賀検事正も言っておりますが、このことは計画されたその当時から、あるいは三十七条違反ではないかということを最高検とも相談したと言っている。相談の内容を話すことはできないが、打ち合せはしているとはっきり言っておる。別個の一つの行政権というものが働いておる。教育委員会の持つ行政権というのは、自分たちの権限内に属することのみについては、これは十分私は発動ができると思う。この場合は三十七条の後段に書いてあるからという、そういう曲げた解釈は私は行き過ぎであると思う。当然教育委員会のとるべき手段は、業務命令違反として一応これを行政処分にするということは、あるいはあり得るかもしれない。私はその程度でよかったんじゃないかと思う。三十七条は検察当局がずっと前から相談しているのです。検察当局は検察当局としてこれは見ているのです。地方公務員法全体を、公務員関係の職員、使用者と使用される者との間に、あるいは任命権者と任命される者との間にこれを議論すべきものでは決してなくして、ここにはちゃんと六十一条で検察当局の介入する余地が与えられておる。だから私はどう考えても、大臣は解釈が違うとおっしゃるが、私は自分たちの職責の範囲から言えば、当然自分たちの職責に属する限りの範囲において処断をするということが正しいのであって、それ以上のものはこれはやはり検察当局にゆだねるべきであると解釈する。従ってもしそうでないというならば、二十八条の問題はこれに必ずからんで参ります。二十八条は御承知のように起訴をされた者については休職処分にすることができると書いてある。この場合はどういうことになっておるかというと、これはほとんど提訴はできませんよ。これは分限であって懲戒ではありません。分限になっておる、そうなって参りますと、そこで大臣にはっきり聞きたいんだが、文部当局はそのことを予想して三十七条の解釈をしたのかどうか。刑事罰が必ずくっつくんだ。そうすれば行政罰の上にもう一つこの分限規定が適用されるんだということを予想して、あなた方はこの三十七条を解釈されたのかどうか伺いたい。
  157. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 三十七条にはなるほど刑事罰もついておりますが、必ずしも刑事罰が全部ついておるわけでもございません。ただ三十七条におきましては職員は争議行為をしてはならぬということを規定しておるのであります。職員が争議行為をいたしました場合に、二十九条によって行政処分をするということは、これは教育委員会独自にやれることであると思います。
  158. 門司亮

    ○門司亮君 大臣はそういう解釈をされておりまするが、問題はそういう行為のできた一つの前提条件は、先ほどから申し上げておりまするように業務違反であります。もしこれが業務違反でなかったら争議行為にはならぬのであります。実際上争議行為とひとしいような事態が起って、全部の教員が全部一日休んでしまうということがありましても、教育委員会の認可を受けておればこれは争議行為にはならぬでしょう。結果は一日仕事をしないんですよ。結果は同じことなんです。しかしそれは教育委員会の認可を受けておるから争議行為にはならぬ。何ぼ検察庁でもこれは認可を受けていますから、争議行為であるとは言わぬと思う。認可を受けていないから、これはさっき内藤君も言うようにたとい一割でも争議行為だという。これは労働関係調整法の七条を引っぱり出してきてお話しになっていると思う。しかし、労働関係調整法の七条をここに持ってくるという考え方、こういう教育委員会あるいは文部省としての考え方は私は少し行き過ぎだと思う。どう考えても行き過ぎだと思う。前提となるべきものは、どこまでも認可を受けていないで集まったからけしからぬということがこの争議行為の前提条件なんです。これが前提条件でありまする以上は、その前提条件に立ってこれを一応処断をする。派生して起った問題については、これは検察当局がこれを処断するなら処断する方法があるかもしれない。でありまするので、私が今聞いておりまするように、文部省は、あらかじめ二十八条の分限規定までも、当然これは起ってくる問題だと思いまするが予測されておったかどうかということであります。一方において停職処分を二十九条で受けておいて、そうして三十七条が生きてきて、六十一条の四号がさらに適用されてきておる。その次にくるものは二十八条が出てくる、これは二重の処断であります。一体そういうことを予想して言われておったかどうかということであります。その当時考えられたかどうか、こういうことを伺いたい。
  159. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 二十九条と二十八条は、私どもは別個の問題だと考えております。三十七条の違反ありとして行政処分をする。この場合に私は司法処分を待って行政処分をしなければならぬものとは考えておりません。この方は懲戒処分の問題であります。二十八条は、これとは別の話でございます、かように御了承願います。
  160. 門司亮

    ○門司亮君 二十八条は別だというが関連性がないわけではございますまい。起訴を受けたものは二十八条の適用ができるでしょう。やらなければやらないでも済みます、必ずやらなければならないとは書いてありません。やることができると書いてある。しかしやろうと思えば現実にできるんですよ。しかもその前にこれが人事委員会に提訴されておる。しかもその人事委員会の提訴については、その後審議が進められない状態におかれておる。審議が進められておりませんから、この処分が不当であったかなかったかということの裁定は、一応行政処分範囲においては判明しない。その前にもし検察当局が起訴したらどうなりますか。
  161. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 懲戒処分を行います前に司法処分が行われた。起訴されたということになりますれば、おそらく二十八条が問題になってくるであろうと思います。
  162. 門司亮

    ○門司亮君 この問題にはそこに非常に大きな問題があると思う。一方には公務員の唯一の救済策であります人事委員会に提訴しておる。そうして争議権を持たざる諸君の救済策が講じられておる。この救済策が講じられないで、事のよしあしが十分にわからないで、その前に検察当局が起訴した場合には、二十八条が適用されるということになると、公務員はどうすればいいのです。これはどうにもならぬでしょう。しかもこの事犯は破廉恥罪とは違います。教育委員会には何ら関係のない破廉恥罪その他なら別の問題でありますが、これは当然教育委員会関係のある問題であります。一方において救済措置が講じられようとしておるが、それは検察当局が書類を押収しておるので封じられておる。封じられておる間に、事が白か黒かということが行政処分範囲内においてはわからないうちに、検察当局が起訴する、起訴したことも最終的には裁判を待たなければわかりません。その起訴が正しかったか正しくなかったかということもわからない。無罪になる場合もある。そういうことが私は当然予想さるべきことだと思う。従って文部当局のとるべき態度というものは、どこまでも二十九条の二号ないし三号の、いわゆる業務に違反した行為であるということが一応前提になって、その上で起った事犯というものが争議行為であるという見方を検察庁がすれば、これは検察独自の見方でありまするから、一つの見方でございましょう。そういう三つの段階というものがあるのに、文部省がどうしてそういうばかばかしいことを言ったかということが私にはどうしてもわからないのであります。私は文部省当局はそういうことはわかっておるはずだと思う。ここをこうすればこうなるということで、その次に出てくる問題はこれだということがわかっておるはずである。それならば私は念のために聞いておきまするが、もし人事委員会が——おそらく起訴前に今の状態では佐賀県の人事委員会では、この問題を審査して発表する段階には至らぬだろう。これは書類がありませんからできないといっております。大体目途を五月十八日におくといっております。五月十八日に目途をおくといっておりまするけれども、ただ目途であって、はっきりそれをやるとは言っておりません。そういたしますると、さっき申し上げておりまするように、起訴されたものについては、これは休職処分にすることができるという規定になっておる。もし佐賀県の教育委員会がこれを休職処分にするということになって参りますと、それじゃ一体公務員はどこで救済されるか、この道は文部省がこういう問題をきめられる場合に、司法当局とは別個に私は考えられて、文部省は文部省としてのやはり態度を明確にさるべきであったと考えております。こういう点を一体ほんとうにあなたたちお考えにならなかったのか、もしそういう事犯が起ったら、これはどうされますか。  それからもう一つ聞いておきたいことは、人事委員会のそうした審理が進められておりませんが、この当然の権利である救済規定について人事委員会の審理の進められないことについては、一体だれが責任を負いますか、だれが責任を負えばいいのですか、これは泣き寝入りですか、はっきりしておいて下さい。警察が負うなら警察が負いなさい、文部大臣が負うなら文部大臣が負いなさい、この救済の道がふさがれたということについては、どっちが責任を負うのですか。
  163. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の事件に対しまして、佐賀県教育委員会がどの条項によって行政処分をすべきか、どちらをとるかという問題と法規の解釈とは別個の問題であります。私は、佐賀県の教育委員会報告によりまして文部省が判断いたしましたのは、これは三十七条の争議行為に該当する、かように判断をしてその趣旨の意見の表明をいたしたわけであります。これによって直ちに司法処分があるとかないとか、さようなことまで考えての意見の表明ではないと考えるのであります。また今お話しの人事委員会に関する書類の問題、これはその後の問題となっております。さようなことまで私どもが別に想像をたくましくいたしたことはございません。さような問題につきましてはその問題として、先ほどもお話がございましたが、すみやかにその書類の取扱いについて委員会と検察当局との間において話し合いを進めて、調査に不便のないようになることを私は期待いたしております。
  164. 門司亮

    ○門司亮君 私はなぜそういうことを言うかといいますと、この事件佐賀警察本部長であります成田君もこういうことを言っている。教育委員会が三十七条違反と断定したことは、ずっと調べておった過程からいって、必ずしもこの検挙のすべての原因とは言いませんが、動機にはなっていると言っている。検事正は明らかにこれは教育委員会が三十七条違反と断定いたしましたからには、当然そういう処置がとらるべきであるということが話されておる。そういたしますと、どうしてもこの問題の原因というものは、文部省が軽率にただ起った末梢的の現象のみにとらわれて処断を考えたということに、私は誤まりがあったと思う。よって来たる原因を十分に調査しないで、そうして文部省並びに教育委員会がとるべき態度というものを十分に検討をしないで、直ちに末梢的の現象にとらわれた解釈をしたところに、私は今日の事件の発生があったと思う。そこの点が、私にはどう考えてもこの文部省の態度はわからぬのでありますが、もう一度大臣からその辺はっきり私に聞かして下さいませんか。それから同時に警察の方も、救済の道がふさがれているのでだれがこの責任をとるのか、だれがその道をあけてくれるのか、たたかれた者がたたかれっぱなしではかなわぬから、どういう道を開いてくれるのかということを、一応ここで聞かしておいて下さい。
  165. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来お答え申し上げました通りでありまして、私はこの事件に対して、これを三十七条に該当するものとして処置したことは、何ら差しつかえないと考えております。  なお末梢的な現象をとらえてというお話でございましたが、私は教職員の諸君がいやしくもこの三十七条に触れるような争議行為はやってほしくないのであります。このことは昨年私、就任以来常に申しておることでありまして、教育の場の秩序を守ってもらいたい、これが私どもの念願でございます。これに対しましては、今後ともに私ども努力して参るつもりでおります。さようなことでありますので、これが報告に徴しますれば、三十七条に該当するまことに遺憾なことでありますけれども、われわれはその意見の表明をせざるを得ないのであります。
  166. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど門司委員から、佐賀県の警察本部長の成田君が、今回警察が乗り出したことについては、県教育委員会行政処分があったことが関係があるというふうな意味の御意見であったと思うのでありますが、行政処分と司法処分とは全く別個の立場にあるのでございまして、その行政処分のすでにあったという既成事実に対しまして、現地の捜査当局が何らかの参考にするということは、これはあり得ることかと思うわけであります。つまり成田県警察本部長といたしましては、三十七条の法解釈等につきましても、きわめて慎重な態度をとり相当な時日をかけて研究し、かつ現地の検察当局ともむろん緊密な連絡をとり、またただ単に第一線の自分たちの見解のみによって事を決しては適当ではないという見地から、中央の私どもの方にも法解釈について連絡をとってきた、こういうような慎重さであったのでございまして、それだけに、県の教育委員会が三十七条の違反として行政処分が行われたという事実を目前にしまして、成田君としてはますます三十七条違反についての自信を深めたということはあるいは言えるかと思うのでございます。私どもはそういうふうに観察をいたしておるのでございます。  なお、県教育委員会関係書類を押収したことによりまして、今回の関係者がいわゆる不利益処分として人事委員会に提訴されているが、その後調査が進行しないという点は確かにお気の毒に思っております。これは午前中にもお話が出まして井本刑事局長からもお答えがありましたが、現在は検事捜査の段階にあるのでございますが、できるだけすみやかに捜査を完了しまして、関係書類がお返しできるように、私ども警察の立場からも検察当局にお願いをしたいと思っておるのでございます。  従来、この種の役所関係の書類が事件によって押収された場合には、申し出がありますならばできるだけすみやかにお返しをするという態度をとっておるのでございます。数多い書類の中でどれがその役所で必要であるかということも捜査当局ではわからない場合があるのでございまして、申し出がありますならばできるだけそういう関係書類は、捜査のために必要な部分をなるべく早く活用し、お返しできるように努力するということにいたしておりますが、かりに申し出がなくても、できるだけすみやかに捜査目的を達成するように努力いたしまして、関係書類を全部お返しできるように努力すべきであることは当然でございますので、現在は検事捜査の段階にございますから警察の一存では参りませんが、警察の立場からいたしましても検察庁側にその件につきましては十分お願いしたいと思っております。
  167. 門司亮

    ○門司亮君 私はそんなことを聞いておるのではないのです。救済策が講じられない前に、その審査ができない前に、もし検察庁が起訴するということになれば二十八条の適用をすると、こう言うのだから救済の余地はなくなってくるでしょう。その責任一体だれが負うかということです。これは公務員に与えられた一つの大きな権利ですよ。その権利を封じておいて、気の毒だという言葉だけで片づけられてはかなわぬと私は思う。  それから文部大臣にもう一つ聞いておきたいと思うことは、今のお話では、そういうことのないようにしてもらいたいということがしばしば言われておるように私ども、承わるのでありますが、注意は十分したいということでございます。それは当然注意はされたと思いますが、そうなって参りますと、議論がだんだん発展してきて問題の焦点が非常に大きなことになると私は思うのですが、そうすると、佐賀県の教育の事態というものは、教員諸君がストライキをやろうとやるまいと、怠業しようとしまいと、不正常状態にあることは事実です、何と言われても……。教員教育基本法に定められた、あるいは学校教育法に定められた定数だけはないでしょう。それから学級の編成も非常に詰まっておることは事実でしょう。教育の不正常化という言葉は、教職員の行動よりも、むしろ国の施策の方が教育の正常化を大きく阻害しております。そういうことはちっとも考えないで、教育の正常化を阻害した者は罰するというのなら、文部省を罰した方がいいですよ。文部省の諸君を先に罰せらるべきですよ。だから、そうあなた方のように、ただこういうことをやっておって——私が末梢的だと言ったことが気に入らぬかもしれませんが、私に言わせれば、末梢的な現象ですよ。もとが直っていないのです。定員定額のちゃんとした学級数になっておって、定員が派遣されて、教員の身分は今のように二年も三年も昇給ストップというようなばかばかしいことがなくて、正常な状態に教員が置かれておって、なおかつ違法な行為が行われたなら、これは責めるべき価値があると思う。この場合はそうではないでしょう。従って、文部省がこれをいきなり三十七条違反なりと断定したところに、私は文部省はどう考えても行き過ぎだと思う。そうして、どうしてもやはり文部省としての考え方というものは、二十九条の二号ないし三号の、業務命令に従わなかったというところだけなら、まだ私は多少釈然とするところがあるかもしれない。しかし、どう考えても、今の大臣の答弁はかなり私は不謹慎だと思いますよ。自分たちのやることはやらずにおいて、やったやつがけしからぬというのでは、これはかなわぬ。それで私は念のためにもう一つ最後の答弁を求めておきますが、さっき申し上げましたように、人事委員会の決定が出すことができません。その前にもし起訴でもあれば、二十八条の適用がやればやれるわけです。これについて文部省は、そういうことをやってもいいというお考えか、これはやることは妥当でないというようなお考えであるか、なかなか答弁もしにくいと思いますが、はっきり一つこの際聞かしておいて下さい。
  168. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 問題は、佐賀県教育委員会考えるべき問題であります。文部省がやれとか、やってもいいとか悪いとかいうことを、この段階において申し上げることではないと思うのでありますが、とにかく二十八条の問題になり得るということを私は申し上げておきます。
  169. 門司亮

    ○門司委員 そんなばかなことがありますか。文部省としての見解を聞いておる。処置をするのは佐賀県がやることでしょう。三十七条違反だということは、文部省の方で示唆しているではありませんか。示唆することはしておいて、その責任佐賀県の教育委員会が負うべきだと言って、のほほんとしているという理屈はない。本省としての意見はどうかと私は聞いているのだ。
  170. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本省としての意見と申しますれば、二十八条の適用があり得るということを申し上げるにとどめたいと思うのであります。佐賀県から聞かれても、さように申し上げる以外にないと思います。
  171. 長谷川保

  172. 八木昇

    八木(昇)委員 もう時間が大分たってしまいましたが、実はどうもわからぬ点がありますので、ほんの二、三点だけ御質問いたしたいと思います。というのは、行く先々によりまして、三十七条の解釈が区々まちまちでございます。そこでこの際一つ端的に見解を述べてほしいと思う点が二、三ございます。その点だけお伺いしておきます。まず第一点は三・三・四割の有給休暇をとれ、こういう指令を出したことそれ自体が違法である、こういう解釈を文部省はおとりになっておるのかどうかということが第一点です。そうです、そうでないと、端的に答えて下さい。
  173. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 指令を出したことだけでは、三十七条違反にはならぬと思います。
  174. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは、指令を出したことだけでは三十七条違反にならないという解釈であるとすれば、ではどこが三十七条に違反したことになっておるのか。
  175. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 三・三・四割の指令に基いて、教育委員会がこれは許可しないということでおった有給休暇を、校長の許可なしにとって、三・三・四割の休暇戦術を行なった、この事実が三十七条に違反するわけであります。
  176. 八木昇

    八木(昇)委員 校長の許可なしに、三・三・四割の休暇をとったというその行為が三十七条違反だ、こういうわけですか。
  177. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 指令に基いてです。指令に基いて、教育委員会が許可してはならないと、こういう業務命令を校長に出しております、その校長の許可を得ずに、三・三・四割の有給休暇をとった、この事実が三十七条に違反すると、こういう意味でございます。
  178. 八木昇

    八木(昇)委員 ということは、その指令が出ておっても、校長の許可を得て休暇をとった場合には何ら問題は起らない、こういうことになるわけですね。そういうわけですね。そうだとすれば、許可をとった人は、今度の停職処分を受けておる人の中には御承知通り一名もおりませんね。休職者です。これが処分の対象になっているのはどういうわけでしょうか。端的にお答え願いたい。
  179. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 校長が許可をしたという場合は、今お話がありましたが、教育委員会が許可してはならないと、こういうふうに一般的な指示をしております。その場合に校長が許可したとする、この場合は校長が同罪だと私は思うのです。校長の責任がまた追及さるべき問題だと思います。今のお話は、その校長が許可した場合という意味ですか。
  180. 八木昇

    八木(昇)委員 いやいや、校長が許可をしないのに休暇をとるという行為が違法だと、こうおっしゃるが、休暇をとっておる人が処罰の対象になっているのでなくて、指令を出した執行部の人が処罰の対象になっておる。その執行部それ自体は、元来組合専従で休職だから、休暇をとっておらないわけです。どういうわけかと、こう聞いておるのです。
  181. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 それは三十七条の後段の、「このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」こういう規定に触れたわけでございます。
  182. 八木昇

    八木(昇)委員 そこでこの休暇の指令を出すこと自体は違法ではないとおっしゃる。従って今の第二項の、校長の許可があるないにかかわらず、お前は休暇をとれということを実際に教唆扇動をしたという行為執行部の人がやっておるとするならば、それが違法だと、こういう解釈ですか。
  183. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 さようでございます。
  184. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますると、具体的に、休暇をとれという指令だけしか出ていないのであって、校長が許可をしなくたってお前は休めということを実際に指導したという行為が処罰対象だ、こういうことにしぼられますね、そうですか。
  185. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 三・三・四の休暇をとるようにあおり、そそのかしたという行為が該当するわけです。
  186. 八木昇

    八木(昇)委員 ごまかしては困りますよ。休暇をとるようにあおり、そそのかしたことは問題にはならぬとあなたは言っておる。校長の許可がなくたって休め、こういうあおり、そそのかしをやったことが処罰の対象だ、こう言っておるのでしょう。そうでしょう。
  187. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 休暇をとるということは、私の言っている意味は、校長の許可を得てとれ、こういう意味でございます。
  188. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうわけですね。そうしますとこれは警察庁の御解釈も、先ほど来の御解釈と同じでございましょうか。
  189. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 校長さんの承認を得て有給休暇をもらって大会に参加するように、こういう指令であれば違反にはならないと思います。
  190. 八木昇

    八木(昇)委員 指令そのものはどうなっておりますか。有給休暇をとれという指令ですか。有給休暇とは校長の許可を得て休みをとることをいうと文部省は言っているのです。指令文はどうなっておりますか。
  191. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 指令文は有給休暇をとってと書いてあります。ただ御承知のように教員組合関係では、すでにずっと前から数回にわたりまして有給休暇についての独自の法律上の御見解を持たれ、それを全国の各府県の教員組合関係に伝達をされておられます。その独自の法律上の解釈といいますのは、たとえば統一行動に関する法的見解という中で、年次有給休暇の請求という項目があるのであります。年次有給休暇の請求は、労働基準法第三十九条により当然与えらるべきである。期日の変更は考えられない。違法行為だと断定する根拠はない。争議行為ではない。組合員のとる行動は合法である。従って合法行為が結果的に統一行動になっても、争議行為ではない。こういうような、要するに有給休暇というものは請求すれば当然にとれるものであるという前提のもとに進められております。この解釈が背景になって、先ほどの有給休暇をとって大会に出るようにという指令が出ておるわけです。この法律上の解釈というところが、遺憾ながら私どもの法律上の解釈と違っておる点であります。
  192. 八木昇

    八木(昇)委員 その解釈は何によってとられたのかということが一つと、解釈なんというものは、たとえば労働法にいたしましても、各種の本になって、労働省の解釈と学者が出す解釈、総評あたりが出す解釈といろいろございますので、そういう解釈をいろいろ言ったって、これは警察庁あたりがそういうことを言われるのは私はどうも了解ができないのです。そこで問題は指令文でしょう。そういう解釈を幾ら出そうとも、それを強制したり、やらせたり、強引にしなければそれは問題にならないのであって、要するに指令文そのものに、校長の許可がなくても休むのだ、こういう趣旨の指令、指示、強制というものが行われておるのかどうなのかということを聞いておるのです。
  193. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 この法律解釈は、今日まで日教組がいわゆるいろいろな全国統一行動に関する指令を出されました際に、その中で統一行動に関する法的見解は別紙の通りであるというので、その別紙の中に私が先ほど述べたことが書いてあるわけであります。なお今回の佐賀県の場合におきましても、有給休暇を申請することについて、いろいろと県教組の中央執行委員会から書面が出ております。その書面もこの法律上の解釈にお基きになりまして、いろいろの手続を指示されておるのであります。
  194. 八木昇

    八木(昇)委員 なかなか巧みというか何というか、とらえにくいように言われるから困るので、私は逆の方から聞きますが、教組が出しました三・三・四の有給休暇をとれという指令そのものが違法だとおっしゃるのですか。
  195. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 有給休暇というものは申請をすれば当然にとれるものである、管理責任者の承認を得る必要はないというお考えのもとに、有給休暇をとってという指令が出ておりますならば、これは三十七条違反の容疑が出て参る、かように思います。
  196. 八木昇

    八木(昇)委員 抽象論でなくて、具体的に聞いておるのですが、今度の指令をもとにして佐賀教組が出した指令文をどういうふうに解釈しておられるのかと聞いているのです。今度の佐教組の出した指令文を違法だと思っておられるかというのです。
  197. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 今度の佐教組の指令文自体は、有給休暇をとってということになっておりますが、その有給休暇をとってという有給休暇についての教員組合側の御解釈は、私が先ほど申し述べたような御解釈のように思うのであります。なお臨時大会のときには、教育委員会はこの際全県下が三割、三割、四割というような方法で有給休暇をとられることは認めるわけにいかないという意向が、当時はっきりしておったのであります。この大会におきましては、当時そういう教育委員会の意向があるということがわかっておりますにもかかわらず、あえて一つのお考えのもとに有給休暇をとってこれを行う、また行えという具体的な指令が出ておるのであります。問題は結局有給休暇というものは請求をして承認を受けてとるべき筋合いのものであるか、請求申し出をしさえすればかってに有給休暇がとれるものであるかどうか、その解釈がやはり問題点になって参ると思います。
  198. 野原覺

    野原委員 関連して山口警備部長にお尋ねしますが、三・三・四の有給休暇をとって集会を持てというその指令自体には問題はない。つまり日ごろの日教組の有給休暇に対する解釈に問題がある、このように聞いたのです。これは最も核心に触れる大事な点だから念のためにお聞きしますが、そのように受け取っていいですね。
  199. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 有給休暇をとってという意味が、校長の承認を受けてということでありますならば、その指令そのものは、あおり、そそのかしたという容疑は出て参らないと思うのであります。はっきりその点を指令の中でうたっておられますならば、よろしいと思います。
  200. 野原覺

    野原委員 とんでもない話だ。あなたは労働基準法を知っているか。校長の承認をとって有給休暇をとれ、こういう指令ならば問題はない。こういうことであるけれども有給休暇自体のことで校長の認定云々ということは書く必要も何もない。あなた方の解釈では、有給休暇をとる場合には校長の認定を得なければならない、こう言っておる。このことについて私は今とやかくは言わない。これは労働基準法に定める有給休暇をとれということなんで、労働基準法の条文による有給休暇とは、ただし書をも含めた有給休暇なんですよ。だから、三・三・四の有給休暇をとれということ自体には問題はないはずです。これに問題があるというので警察権発動したのですか、とんでもない。これはもう一ぺん聞きたい。
  201. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 有給休暇をとれという意味が、申し出て校長さんの承認があって正式に有給休暇をとって大会に集まるようにという意味であれば、これは何も問題は出てこない。ただ有給休暇をとってという意味が、今までの組合側でとっておられる解釈のように、有給休暇というものは申し出をしさえすれば勝手にとれるのだ、承認を受ける必要はないのだ、こういう見解、すなわち教育委員会や校長が、きょうは有給休暇を差し上げるわけにはいかないとおっしゃるにもかかわらず、あえて有給休暇をとられて行なってもいいんだというお考えのもとにおやりになる場合には、これは問題になります。なお今回の三十七条違反としてその容疑のもとに取り調べを受けておられる方は、そういう指令を出されましたほかに、十二日ごろから各地の分会に出回られまして、中央から出された指令通りに、完全に三・三・四割の休暇を実施するようにということを説いて回っておられます。この点の行動がやはり三十七条違反の容疑がある、こういうことになるのです。
  202. 野原覺

    野原委員 三・三・四の有給休暇をとれというこの文言のどこからも、校長の承認は問題じゃないとか、校長の認め印なんかどうでもいいということは考えられないじゃないですか。だから、三・三・四の有給休暇をとれという指令自体には問題がないはずなんです。これはあなたも言外にそれを認めていらっしゃるようなんです。ただ問題は、日ごろ日教組が統一行動に対する法的見解というものを出している。だから、日ごろの日教組の有給休暇に対する解釈から、三・三・四の有給休暇をとれというのは、これは校長の承認を得なくてもよいのだ、こういう類推をするから問題が出てくる、こういうことになるのではないかと僕はだめを押している。それはいかがですか。だから、三・三・四の有給休暇をとって集会を持てということが問題であるとすれば、ここに新たなる問題が起ってくる。私は、こういう解釈で警察権発動し、そして新たな弾圧をやっておるとすれば、これはゆゆしいことだと思う。これはもう一度だめを押したい。日ごろの日教組の統一行動に対する法的見解、別紙で示しておるか何か知りませんが、そういうような考え方でやっておるのではなかろうかという類推作用を働かしたために、この指令には問題がある、こういうことになるのじゃないかと思う。いかがですか。
  203. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 佐賀県の教組では、二月十日に指令第五号として一つの指令を出されております。その中において、休暇請求書提出についての補足ということで御見解を示されておる。これは指令の内容であります。その中にも私が先ほど申しましたような点に触れております。年次有給休暇に対する法的見解として、争議行為でないとか、いろいろな問題に触れておられるのであります。この御見解は、教員組合として従前から一貫してとっておられます法的解釈と同じ見地のもとに、出しておられるのであります。
  204. 野原覺

    野原委員 その佐賀県教組の出した指令に対する解釈といいますか内容といいますか、それは正常な授業の運営を阻害してでも年次有給休暇をとれるのだ、こういうような解釈を下しておるのかどうか、これをお聞きしたい。有給休暇は合法行為である、これはその通りなんです。労働基準法が認めたのだから合法行為なんです。しかしながら正常な授業の運営を阻害してでもかまわぬのだという解釈をそこに的確に出しておるのかどうか、その点もあなたに必要なところだけを抽象的に言っておるのだが、一ぺんその文面を読み上げてもらいたい、どうなんです。
  205. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 有給休暇について、そういう御解釈のもとに全県下の先生方がきょうは三割約二千人近い方、明日も二千人近い方、その次は四割というように多数の人が一斉に中央からの指令に基いて有給休暇をとっておやりになるということは、これは学校授業の正常な運営を阻害するものと私どもはそう思っております。
  206. 野原覺

    野原委員 あなたはどうも循環的に話をそらす傾向があります。あなたは人の尋問はどうか知らぬけれども、この質問に対する答弁は常にそらそう、そらそうとしておる、そういうことであればこれは逮捕か監禁かして尋問しなければならぬ、私はそういう人権侵害はやりたくない。(笑声)私の聞いておることは、有給休暇というものはとれるのだ、そこで佐賀県教組が、今あなたはその指令のことを具体的に言われましたから、正常な事業の運営を阻害してでも有給休暇はしゃにむにとれるのだ、こういうようなことを出しているとすれば、これはやはり問題です。しかしそのようなことはよも出しておられますまい。正常な事業の運営を阻害しない限り有給休暇は与えなければならぬのです、労働基準法が明らかに書いておる。だから正常な事業の運営を阻害するか阻害しないかということがやはり問題になってくる。しかし形式的には使用者である教育委員会が認印を押したか押さないかということも、一応その議論をする場合の問題点にはなるでしょう。だからして単に三割、三割、四割の休暇をとったこと自体が問題ではないのであって、三割、三割、四割の休暇をとるのに教育委員会がこれを許可しなかった、許可しないにもかかわらず決行したということが、これはいろいろ批判はあってもやはり議論の対象にはなって参ります。その次に議論の対象になるのは、教育委員会というものは与えなければならぬにもかかわらず、許可しない以上は正常な事業の運営を阻害する客観的な、具体的なものがそこになければならぬ。これは、与えなければならぬと書いておる以上はそういうものがなければならぬ。それがやはり第二の問題点になってくると思う。だから警察当局が三割、三割、四割の休暇をとって会合したことがいかぬのだという、これはとんでもない法的解釈なんです。だからして許可すれば問題ないのです。許可しないところに問題があるのだということであれば、これは一応このことに対する批判はともかくとして私どももわかります。その点はいかがですか。許可をとれなくてもしゃにむに集まれと書いてありますか。僕はそれを読んでみたのだが、書いてないのだがね、書いてありますか。
  207. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 御承知のように県の教育委員会も、校長会等におきましても、今回はそういう有給休暇をとって三・三・四割というような闘争はしないようにと、またそういうことに対しては有給休暇を差し上げるわけにはいかないという意思は、明確にしておられるのであります。それにもかかわらず三・三・四割というようにして休まれたというところに御説のごとく問題があり、われわれはそれは業務の正常な運営を阻害するおそれがあるものとして、三十七条違反の容疑があるということで取り扱っておるのであります。私の説明は以上の通りで、ちっとも間違いはないと思います。
  208. 野原覺

    野原委員 私は関連ですから、これで八木君にお渡ししたいと思いますが、あなたが今答弁しておるように業務命令が問題なんです。そう休まれては困る、だから休んでくれるなというにもかかわらず休んだということが問題なんです。従って三・三・四の有給休暇をとって集会を持てという指令自体が問題ではないのです。しかもその指令の内容をしさいに検討してみましても、校長の許可をとらぬでもよいのだ、そういう業務命令が出てもけ飛ばして集まれということは指令のどこにもないのですよ。だから私どもはそういうような指令を出した者を共謀とかそそのかしたとかいって、そういう者だけくくりつけにするというような行き方は、一体何を根拠にしてやっておるのか理解に苦しむ点がある。しかしこのことは連日私どもが取り上げますし、私は関連ですからそれだけを申し上げて、これで終ります。
  209. 八木昇

    八木(昇)委員 くどいようですがもう一度聞いておきます。要するに前に出した法の解釈その他前後の状況から考えて、三・二・四の休暇をとれという佐賀教組の指令は、校長の許可なくしても休暇をとれというような意味に解釈される、だとするならばそれは違法だ、こういう意味なのでしょうか。ただ単に休暇をとれということ自体、違法ではないという御解釈でしょうか。
  210. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 その会場で同時にお配りになっております先ほど言いました年次有給休暇に対する法的見解の中で、校長との話し合いで休暇がとれるよう努力をするが、話し合いがつかぬ場合は校長の態度いかんにかかわらず請求書を提出して休暇をとれ、こういうことが書いてあります。
  211. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで私が聞いておるのは、再三再四聞いたことですが、ただ単に休暇をとれというような指令は違法ではないかということなのです。
  212. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 こういう法的見解のもとに、有給休暇をとれということでありますならば、問題があると思います。
  213. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで私も考えるのでありますが、佐賀の成田警察本部長も、福岡では校長が全員許可をした、そこで処罰されなかったというのです。実際に福岡の場合は三・三・四の休暇をとれという指令が出た、そうすると校長さんがみんな集まって、困ったことになった、どうするかということで話された結果、みんな同一行動をとって校長としては許可してやろう、こういうことで許可をしたらしい。これは問題にならないということらしいので、休暇を指令すること自体は違法ではないことは明瞭であると思いますが、その点からもそうでございましょうか。
  214. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 もし承認を得なくても休暇をとって大会に集まるようにという指令でありますならば、それはそれのみで三十七条第二項の違反になるおそれがあるのであります。すなわち組合員が第一項の行動を現実にとった場合はもちろんでありますが、そういう行動をとる具体的な危険性があると思われる場合には、三十七条第二項後段の違反が成立する、すなわち法律上の用語で言いますと、これは一つの独立罪であるというのが、私どもの一応とっております法律上の見解であります。
  215. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで警察庁と文部省との間に三十七条の解釈については微妙な差異があることを発見いたしましたが、それはそれといたしまして最後に一点だけ御質問いたしまして終ります。  私ども現地に行っていろいろ聞きますと、関係方面の方の御意見で、争議行為の目的で休暇を請求するということは違法であるかのごとき申しようでされる向きがある。そこで目的というのが問題になるのかということをお伺いしたいのです。たとえばある学校で花見をしたい、きょうは全教員の三割が花見をする、あすは三割、あさっては四割、こういう花見目的のための有給休暇願いを出している。校長がそれを許可しなかった。ところが休んだ。こういうような場合はどういうことになるのでしょうか。結局目的というものが有給休暇の有効性、無効性というものに関係があるのかないのかという点を、文部省、警察庁両者の御見解を承わって、きょうは終ります。
  216. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ただいまのような場合、校長が花見に行く場合に許可しなかった、にもかかわらず行ってしまった。これは職務命令違反の問題が起きてくると思います。従って懲戒の問題が当然起ると思いますが、私どもの解釈としては目的を含めて争議行為かどうかという問題になれば、これは三十七条の問題になる、こういう考え方でございます。
  217. 八木昇

    八木(昇)委員 ちょっとよくわかりませんが、目的を含めて云々という意味をもう少しわかりやすく言って下さい。
  218. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 一定の要求貫徹のために争議行為のような形式で有給休暇をとる、こういうような形の事案が起きた場合には、これは三十七条に該当するという考え方でございます。
  219. 八木昇

    八木(昇)委員 それは一割ででもだめだとさっきはおっしゃいました。そうすると、たとえば自分の部落の花見だというのですが、その部落には二人の学校先生がいる。その学校には全体として二十名先生がいるのですが、その二人の先生が花見であした休みたい、実際には二人が休むことによって学校の運営についてはさしたる支障はないと思われるのに、校長ががんこで、それは許さぬ、こういうことばできるのでしょうか。
  220. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 私はそういうことはないと思います。その場合には校長が……。
  221. 八木昇

    八木(昇)委員 あるとかないとかいうことではなくて、許可しないことができるかということです。
  222. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 それはできます。
  223. 八木昇

    八木(昇)委員 学校の都合といいますか、業務の運営に差しつかえるとか差しつかえないとかいうことについては、一途に校長の判断で、一人といえども休暇を与えないということもできる、こういう御解釈ですね。
  224. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 さようでございます。
  225. 八木昇

    八木(昇)委員 警察庁の方はどうですか。
  226. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 同様でございます。
  227. 八木昇

    八木(昇)委員 私もその通り一応承わっておきます。
  228. 長谷川保

    長谷川委員長 他に質疑の通告がございますが、本日はこの程度とし、明日は午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会いたします。  これにて散会いたします。    午後四時四十分散会