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1957-04-11 第26回国会 衆議院 文教委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十一日(木曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 赤城 宗徳君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君    理事 米田 吉盛君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    清瀬 一郎君       永山 忠則君    山口 好一君       小牧 次生君    櫻井 奎夫君       辻原 弘市君    野原  覺君       平田 ヒデ君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         文部政務次官  稻葉  修君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文化財保護委員         会委員長    河井 彌八君         文化財保護委員         会事務局長   岡田 孝平君  委員外出席者         専  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 四月十日  小学校の家庭科教育振興に関する請願(坂田道  太君紹介)(第二七四二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  社会教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第三六号)  文化財保護に関する件     ―――――――――――――
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  この際、昨日及び本日の理事会におきまして協議決定いたしました事項についてお諮りいたします。南極地域観測に関し、来たる四月十七日の本委員会関係者参考人として招致し、南極地域観測に関する実情を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお参考人の人選その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  5. 長谷川保

    長谷川委員長 次に文化財保護委員会委員長河井彌八君より文化財保護に関し発言を求められております。これを許します。河井文化財保護委員長
  6. 河井彌八

    河井政府委員 昨年の十二月十三日の本委員会に出頭いたしまして、東大寺の旧境内現状変更の問題につきましてお尋ねをいただいたのであります。その当時、私はまだ文化財保護委員会委員長になったばかりでありまして、実際何も承知いたしておりませんでした。従いまして、できるだけ調査を急ぎまするとともに、私自身奈良に参りましてその現地視察いたしまして、そうしてかように長きにわたっておりまする難問をできるだけ早く解決いたしたいということを申し上げまして御了解を得まして、そうして今日に至ったわけであります。私といたしましては、もっと早くこのことを処理しなければ相済まぬと考えておりましたが、それから後に病気をやりましたり、あるいはま予算の編成などということで、だいぶんひどい問題に会いまして、つい延びてしまったのであります。はなはだおくれまして申しわけがないのでありますが、私は去る二月十五日に現地に参りまして視察をいたしました。それから二月の二十六日に文化財専門審議会史跡部会を開催いたしまして、そうして答申を得たのであります。次に三月の一日に運輸建設宮内庁文化財保護委員会の四者の会談をいたしまして、この事柄についての経過報告と、それから今後の処理について相談をいたしまして、結論を得たのであります。それから三月の二日に文化財保護委員会の会を開きまして、そこでは専門審議会史跡部会決定いたしました専門審議会答申を認めまして、そうして条件付でもって許可しようということに相なったのであります。その条件というのはどういうことであるかと申しますと、すでに委員長のお手元にこの間差し上げてはおきましたが、一応ここにその書類がありますから、ここではっきり読みます。三月三十日に出した決定書でありまして、「昭和三十年一月二五日付で申請史跡東大寺境内現状変更許可申請書事項変更願道路の一部設計変更)を文化財保護法昭和二五年法律第二一四号)第八〇条に基く現状変更許可申請とみなし、下記の条件を付し同条第一項の規定により許可する。本許可に伴い昭和二九年六月二六日付地文記第三一七号の指令で許可した道路設置のうち、奈良市雑司町二九四の甲及び二九四の乙から始まり同二一九の一、二一九の二、二一二の三、二一五の甲、二一五の乙を経て、同二一二に至る部分については、その許可を取り消す。」、これはダブるわけでありますから、その許可を取り消すということであります。「なお、昭和二九年六月二六日付地文記第三七号の現状変更許可条件並びに本条件を履行しなかったときは、昭和二九年六月二六日付地文記第三一七号で指令した許可及び本許可を取り消すことがあるものとする。」、こういうので、これから申します条件を付して、日本肥鉄土開発株式会社社長鍵田という者に通知を出したのであります。その条件といたしましては、「一、設計変更に係る自動車道は、その取付部分(正倉院東北隅)から少くとも二〇〇メートルの間は、できるだけ速かに完全に舗装すること。二、前項の舗装完成までは、完全な散水を行い、防塵の実を挙げること。三、本道路沿い防塵に役立つ植樹等を行うこと。四、設計変更に係る自動車道取付部に新設した暗渠及びその上流排水溝の閉幕を防止する措置を講ずること。五、以上諸条件の実施に関しては、すべて奈良教育委員会指示に従うこと。六、その他、史跡保存に関する事項については奈良教育委員会指示に従うこと。」、この六つ条件を付しまして、そして許可をいたしたのであります。  このことにつきましては、いろいろ問題がたくさんありました。まず第一に申し述べたいのは、正倉院御物宝物に関する影響、これはきわめて重大であります。委員諸君が非常に御心配下さっておられます事柄も、ひっきょうこれが一番重要な事柄であると了解いたしております。これにつきましては、文化財保護委員会の直接の管理事項ではござりませんから、何といいますか、意見を述べることはできると思いますが、しかしみずからこれを管理するというような方法をとることはできません。けれども、あの正倉院及びその御物につきまして、塵埃なりあるいは有害なガスとでも申しましょうか、その有害なガスが、いかに正倉院並びに御物に影響するかという点につきましては、これは非常に精密な試験をいたしておるのでございます。精密な試験をいたしましたのは、文化財保護委員会のやったことばかりでなしに、正倉院におきましては、すでに昭和二十六年ごろからこのことの研究をして、そうしてそれぞれ対策を立てておられるのであります。そういうときにあそこの正倉院に接近いたしまして、北側と西側に道路を開設する、許可するということになったのはどういうことになるかという問題であります。そこでいろいろ検討いたしましたが、空気のよごれる問題、あるいはよごれた空気がどういうふうに品物に影響するかという問題、また建物自身に対してもそうでありますが、そういった問題についてはまだ十分なる結論が出ておりません。従いまして、それは今後引き続いて科学的に研究をいたしておるのであります。しかながら今までわかりました結論から申しますると、まずあの内部に収蔵されておるところの国宝的の大切なお宝物というものは、それは結局蔵の中に収蔵する方法、その方法がよろしきを得るならば、従来とほとんど大差はないであろうという結論が出ております。これは宮内庁において、ずいぶん苦労をして取り扱われておるのでありますが、その点はまだ今後の研究もありまするけれども、しかしながら大体においてひどい悪影響はこれまでは起っておらない。またその方法ならばよかろうというような結論が、宮内庁との打合せにおいても出ておるわけであります。  それから次は肥鉄土運搬します、その運搬と兼ねまして開きました観光道路、あの肥鉄土採取の場所から上にのぼった所の地はだがひどく荒れて痛痛しくなっておりまするあの道路状態、これをいかにして回復するかという問題であります。ことに、この間行ってみ談ずると、遺憾ながらそこに、許可された道路でありまするけれども、その道路の曲りかどが五カ所くらいあったと思いますが、その五カ所くらいで会社肥鉄土を取っておる。これは直ちにわかりましたので、委員会といたしましてはこれを禁止させまして、そしてそれを整地させるということにいたしたのでありまするが、その整地をするということについて相当疑問があると思いますが、結局ひどく食い込んだ所、それはつまり乗り切りをいたしまして、表面の整理をして緩斜面にして、そうしてそこにしがらみを組んで、一方は土砂の崩壊を防ぎ、そうして一方はそこに適当な植樹等をいたしまして土地を安定させる。従って景観を害しないようにするということになっておるのであります。そういう点が一つ。大体そういうことで、ただいま申しましたような六つ条件実行いたしましたならば、正倉院に対して最善の安全な方法がとられるであろうということを考えたのであります。  それで実はこういうことをやりますにつきまして、はなはだ遺憾に考えますのは、こんなに長い間にわたってどうして問題が解決しないかというような点であります。これも、こういうことを申すのははなはだ心苦しいのでありますけれども、やはり道路について申しますれば建設省、それからあすこに観光道路といいますか、観光バスを通すとかいうことにつきましては運輸省等との関係がありまして、遺憾な話でありますが、文化財保護委員会というより、むしろそういう方面申請を先に出しまして、そうして大体そちらでよかろうというようなことが出て、それがだんだん進行しておるのであります。われわれの立場からいたしましては、それは実に遺憾千万でありますが、やはりこれは各官庁はおのおのその職責を持って、その職責に基いて行政処分を行いまする場合において起った現象と見なければならぬのであります。もう一方申しますると、委員会と、委員会出先機関であるところの奈良教育委員会との連繋なども、どうも十分にいっておりません。あるいはまた奈良県知事との関係などにしましても、これはこの史跡管理団体でありまするが、どうもうまくいっておらぬというようなことなども、あとから出まするけれども、そういう事実がある。従いまして、どうしてもうまくいかない。結局時がおくれる。それからだんだん既成事実のごときものができてくる。どうもそういうような状態でありまするから、だんだん文化財保護というものの理想から申しますと離れるかもしれませんけれども、今日におきましては、現状視察いたしました結果といたしましても、どうもこの条件を履行していくのほかないだろうということに考えたのであります。しこうしてその決定をいたしますにつきましては、これらの条件につきまして、文化財専門審議会もそれを認め、さらに運輸建設宮内庁等ともよく相談をいたしまして、そうしてかような結論を得たのであります。従いまして私といたしましては、もうそう延ばすことはできないのでありますから、さきに申しましたように三月三十日をもちまして、ただいまのような決定をいたして、そうして会社はもちろん、他の官庁、たとえば運輸建設省宮内庁、あるいは奈良県知事及び奈良県教育委員会等に通知いたしまして、そうしてこの条件の履行ができるように、勧告をするように頼むということをいたしたのであります。これで果して理想通りにこの問題が解決されるかどうか知りませんけれども会社社長を呼び出しまして、そうして強く要望を述べ、会社営利主義に片寄らないで、真にこの日本の大切な文化財保護に力を尽すように、このことを強く要求いたしたのであります。そういうわけでありまするが、むしろ問題は、私としては今後にある、すなわち万一条件を履行しなかったような場合にはどうするかというようなことも考えておるわけであります。これまでは、こういう条件にきまったから、これをどうするかということをよく相談をしまして、彼らも誠意を持ちまして何回も――誠意がなかった事実もありまするが、それだけ一そう厳重に誠意を要求いたしまして、この実行を期しておるわけなんであります。  大体私の申し上げますことはその程度であります。何日にどうというようなことにつきましては、書面がありますから、書面によってでもお答えするほかありませんが、どうか私は皆さん方から、ほんとうに各方面の有益な御意見を伺いたいと思います。そうしてこれから私どもがこの問題を処理していくばかりでなしに、その他の問題に臨みましても、正しい道を勇気を持って貫いていけるような、一つ御鞭撻、御指示を切にお願いしたいのでございます。どうぞ一つよろしくお願いいたします。
  7. 長谷川保

    長谷川委員長 ただいまの河井文化財保護委員会委員長報告に対し、質疑の通告があります。これを許します。野原覺君。
  8. 野原覺

    野原委員 二、三お尋ねをしたいと思います。まず質問の第一点は、六つ条件を付して許可をした、こういうことでございますが、その六つ条件には期限はないのかということです。まずそれからお尋ねいたします。
  9. 河井彌八

    河井政府委員 ただいま申し上げましたのですが、道路舗装等につきましても、できるだけすみやかにというようなことになっております。それからその他の条件につきましては、いつまでにやれというよりは、すべて即時実行に移せ、こういう意味考えております。
  10. 野原覺

    野原委員 私は、やはりこの条件は相当問題だろうと思うのです。そこで、なお重ねてお尋ねしたいことは、この条件は今出てきた問題じゃないのです。これは事務局長も御承知のように、ずいぶん前からこの条件は出されておる。そうしてこの条件条件となって、いろいろ会社側文化財保護委員会との間に話し合いがなされてきておったはずです。これは一体、この条件を出されてから今日までどのくらいの期間がたっておるのか、それをお尋ねしたい。
  11. 岡田孝平

    岡田政府委員 先ほどのお尋ねの、条件期限があるかということでございますが、道路舗装、新設、つまり路線変更部分道路舗装につきましては、これは建設省舗装係がございまして、ただいま会社からその手続をさせております。運輸建設省に対しましては、すみやかに審査をいたして舗装許可をするようにということを申し出ておりますその運輸省建設省舗装許可があり。次第、その舗装の工事に着工いたしまして、私どもといたしましては五月末日までにその舗装を完了するようにということを別途に会社に通知いたしました。それからその他の植樹とか、撒水の条件でありますが、これはもう即時にやるようにということでございますので、特に期限は書いてございません。それから今度の許可は、これは路線変更部分についてだけの許可でございまして、その路線変更部分の四百メートルにつきまして、先ほど委員長から申しました六つ条件をつけたわけでございます。この前の二十九年の六月のときの認可にもやはり同じような条件がございますが、当初の路線部分でございます。別途の条件をつけております。また別途の認可である、かようなことになっております。
  12. 野原覺

    野原委員 そこで文化財保護委員長お尋ねしたいのでありますが、この条件を履行しない場合はあなたの方はどうなさるのですか。この若草山の件は問題が起ってから今まで四、五年経過しておるわけなんです。私は条件を履行しない場合にどういう決断をあなたは持っていらっしゃるかお聞きしたいのです。これは舗装は五月末ということですが、五月末までに舗装を完了しなければまたずるずるで認めていかれるのかどうか、これは河井さんは責任のある地位にいらっしゃるのですから一つ十分お考えになって御回答願いたい。
  13. 河井彌八

    河井政府委員 ただいま舗装関係についてもお話がありましたが、こちらが指示しましたその期限が実施せられるものと了解いたしております。もしそれができなかった場合におきましては さらにもう一段の、今度は法規によって与えられております。手段をとる、そのほかはない、かように考えております。
  14. 野原覺

    野原委員 その六条件誠意をもって履行しなければ法規によって処断する決意がある、これは具体的にどういうことですか。法規によってどういう処断をなさるということですか。
  15. 河井彌八

    河井政府委員 ただいまちょっと言葉が足りなかったかもしれませんが、これまでの許可を取り消すことがあるかもしれないというようなことを条件に付帯して通告してありますから、そういう場合も考え得られるのであります。
  16. 野原覺

    野原委員 私はその点どうも明確でないと思う。法規によって処断すると言われますが、その許可を取り消すといっても、あなたの方はなかなかやりはしません。五月三十一日まで舗装しなかったからといって、この許可を取り消すようなことは、今日までの文化財保護委員会実績から見てこれはようやらぬと思う。これは河井さんは責任を持ってやらせますか、お尋ねします。
  17. 河井彌八

    河井政府委員 過去のことについてはちょっとお答えができません。しかし私はこれが実行できるものと期待してその決意を持っておるわけであります。
  18. 野原覺

    野原委員 その決意に対しては私は敬意を表したいと思う。今度こそは河井さんとしてはやはりこれだけの条件を付して、相当問題のあったことでございますから、その条件を履行しない場合は、ただいま申されました決意でそれを実行に移して、文化財保護のための実績を上げていただきたいのであります。それでその点はけっこうだろうと思いますが、そこで次にお尋ねしたいことは、史跡無断現状変更をしておりますね、これに対してはどう対処なさいますか。
  19. 河井彌八

    河井政府委員 これまでしばしば会社を呼び出しまして、あるいはまた奈良県の教育委員会を通じまして、それらのことにつきましてはたびたび厳重な警告をいたしております。それにつきまして会社といたしましてはその都度、はなはだ申し訳ない、こちらの指示通りに従うのだということで、そういう意味のわび状を出しております。従いまして初めに作りました道路のごときはその一部分、たとえば東大寺の東側を交通する道路のごときは、これは絶対に許さないということで、それも委員会指示通りになっているのであります。どうも過去のことを申しますと、会社側の背信の行為もあります。それからまたこれはひとり文化財保護委員会ばかりでなしに、ほかの官庁との関係どもありましてなかなかうまくいかなかったのです。しかし私はこう考えます。この問題が起りましてから以後、少くとも今後におきましては、そういうことは起らないであろうというように考えるのであります。それだけお答えいたします。
  20. 野原覺

    野原委員 河井委員長は過去の経過をもちろん十分お調べなさっているとは思いますが、史跡無断現状変更した個所はどこだという御認識に立っていらっしゃいますか。私はその点の御認識が失礼ながら薄いのじゃないかと思うのですが、どういうところが無断現状変更だとあなたはお考えになっておられますか、お聞きしたいのです。
  21. 河井彌八

    河井政府委員 さきにちょっと触れましたが、東大寺境内地の下の部分といいますか、東の部分道路を作ったというようなことなどは、これは最も重大な点であると思います。それからさらに肥鉄土運搬を兼ねての観光道路新著葉山の上に登っていく道路の両側において、屈曲地点からいわゆる肥鉄土なるものを相当量採掘したというような事実などは、史跡変更無断でやった最も不都合な事柄であった、かように考えます。
  22. 野原覺

    野原委員 これは河井委員長承知のように、史跡地現状変更をする場合には文化財保護委員会許可を得なければなりません。あなたの方の許可を得ないで、無断史跡地の境界内で肥鉄土を掘り出す、こういうことは私は文化財保護法の重大な違反だと思うのです。だから、私がここで申し上げたいことは、東大寺のあそこの道路のこともございますけれども文化財保護委員会が何も知らないうちに、無断史跡地が荒らされている、こういうようなやり方に対してはどう対処なさるのか。これは六つ条件とは別問題だと私は思う。さっきの六条件というのは許可をする道路についての六条件なんです。史跡地無断現状変更した、こういうことに対してはこれは別個の問題です。これは文化財保護法というのがあるのですから別個立場考えなければならない。どう対処なさいますか。この点はまだ結論が出ていないなら出ていないでよろしいのですが、この問題をお尋ねしたい。
  23. 河井彌八

    河井政府委員 野原委員のおっしゃるその通りだと考えますが、文化財保護の上におきまして、委員会がみずから現場におるわけでもありませんし、結局府県の教育委員会監督にたよっておるというようなわけであります。しかしそれならばどうかといえば、なお今後もそういうことの起らないように一そう監督を厳重にするというようなことはしなければならない、かように考えます。それから今後ああいう同様な文化財侵害行為、不法なことをいたしまするならば、それに対しましてはあらためて強い手段がとられ得る、こういうことを考えておるわけであります。
  24. 野原覺

    野原委員 それは大へんだと思うのです。これはよくお聞き願いたいのです。そういった既成事実を作れば承認されるのだ。無断現状変更をしてもあなたの方は会社に対してはこれを結果においては承認したわけです。そうすると今度史跡――日本にはたくさん史跡がございますよ。たとえば若草山史跡を例にとってもよろしい。また今度ある者がこれを無断現状変更した。それに対してあなたの方で厳然たる態度をとるといっても、肥鉄土会社には承認しておいて、こっちの会社は承認をしないということになると、承認されないこの会社承知しないんです。だからしてここの問題は私はよほど慎重に考えてその態度を御決定を願わなければ、史跡地保存ということは不可能になる。文化財保護法はあってなきがごとし、この点を私どもは今日までこの委員会で問題にしてきたのです。私は会社には利害も何もないのです。会社を処罰することを私は決して欲しません。しかしながら国が文化財保護法を作っておるのです。この保護法のねらいというものは、あなた方の今のやり方からいけば完全に減殺されるのです。そうでしょう。史跡地が五カ所も無断、こわされたのです。しかも若草山のあの名商い山はだを五カ所も無断でくわで掘りとった。それは私も視察に行きました。自民党からも一緒に行って現状に驚いたのです。これは明らかに史跡地内です。文化財保護委員会お尋ねしたら、前の高橋委員長岡田事務局長も私から質問されるまで知らなかったのです。答弁に困ったのです。そういうことが結果的に承認されておるようなことでは、どしどし史跡地は破壊されますよ。破壊されて、あなた方がそれはいかぬといっても、奈良県の肥鉄土会社に君は認めておるじゃないか、こう出てきたときに一体法の尊厳というものはどこにある。だからこの問題は私ははっきり聞きたい。これを許すのか、許すならあなたは文化財保護法をどう考える。こんなものを許すのですか。法を破壊してもいいのですか、お聞きしたい。
  25. 河井彌八

    河井政府委員 町原委員の御意見全く同感であります。文化財保護のためには強い態度をもって臨まなければならぬということは申すまでもありません。今お話のように、今度の許可をした結果、あの肥鉄土道路のわきからとったという違法行為、それをどうするかと言われますが、それにつきましてはもうすでに原状回復とまではいかないかもしれませんけれども、十分な盛土をいたしまして、そこに植樹等をいたしまして、そこで旧観を保持しようということにするほかはなかろうというように考えます。しかしながら一たびこの肥鉄土会社にこういう甘い処置をとったからほかのところでもどしどしやるぞというような違法行為が出まするならば、それは私といたしましてはどうしても認めることはできないので、今後の処置といたしましては強い態度をもって臨むほかはない、かように私は考えております。
  26. 野原覺

    野原委員 あなたには強い態度をもって臨む資格はないです。違法行為をこの会社にだけ認めておって、その他の者に対しては強い態度をもって臨むとは何たることだと感情的に承知しませんよ。それはそうでしょう。奈良肥鉄土会社は破壊しても承認されるのだ。もちろん原状回復の義務というものは破壊したものにはあるのです。これは別なんです。山はだを荒してそうして国が史跡として指定したところのものを勝手に荒した場合には、その荒したところをもとに戻さなければならぬ義務があります。その義務とは別個に、何らかの法的処断をしておかないとみせしめにならないのです。文化財保護法というものは、決してこれは刑事罰とは違うのです。予防的な法律なんです。文化財保護法は、文化財保護するために予防立法としてこれは国がきめておるのですから、何らかの法的処置、私はそれが科料でもいい、あるいはどういう形になってもよろしい、あるいは始末書になってもよろしい。何らかの法律の上に基いた処断をしておかなければ、他の者が荒してきたときに、あなたが厳然たる処置をとるとわめいてみてもだめなんですよ。これはみせしめになりませんよ。これはやかましくなります。お互いに自分が生きていくためには、それは史跡でありましょうとも、あるいはくわを入れなければならぬところがある。自分のたんぼでありながら耕すことができない状態に置かれている。困った百姓さんはそこへ田を作る。しかしこれは法律史跡だといって許さない。その場合におれの所有地だからといってやった。あなたの方は厳然たる処置をとるといっても、これはとれなくなりますよ。だからして何らか法律に照らしたところの措置をお考えにならなければ、私はこの既成事実を承認するというこれは悪い例を残す、こう思うのです。これはよくおわかりいただけると思うのです。だからその点について再度御考慮をわずらわしたい、こう考えます、これは御所見を承わりたいのです。
  27. 河井彌八

    河井政府委員 少くとも本件におきましては、私はあらゆる方面と協議を遂げました結果をここに申し上げたのであります。それでただいま野原委員のおっしゃいましたきわめて適切な御意見文化財保護するためにとるべき手段としてお示しになりましたことは法規にもちゃんと書いてありまして、結局罰則の適用ということにもなると思います。そういう場合もあり得るということは考えております。
  28. 野原覺

    野原委員 だからしてその問題はさっきの六条件とは別個にお考え願う、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  29. 河井彌八

    河井政府委員 よろしいです。
  30. 野原覺

    野原委員 よろしいということでありますから、いずれその法的措置については問題が残されておるわけです。これはあとでまたお尋ねする機会もあろうかと思う。これは早くその法的措置をとらなければ、現に私ども若草山視察に行ったときに、委員長もごらんでしょう、バスの駐車場が若草山のふもとにできておりました。あれなんかも大へん問題があるのです。これは私はそのときに驚いた。これはどうしたのかといって、なんだあの会社がやるのだからやれるんだ、こううそぶいておるのです。その駐市場を作った人は……。そういうことになると、これはどうにもなりませんから、このような法的措置というものを、これは機を失せずにお立てになる方が望ましい。法的措置をとられるということでございまするから、その点は期待しておきます。  第三点は、建設委員会運輸委員会がすでに許可をしておったので、自分として、文化財保護委員会としては非常にこの点が困った。私はそれは事実だろうと思うのです。私ども建設大臣、運輸大臣をここに呼んで実はこの点を究明したいとまで考えていましたが、その点はついに果せなかったけれども建設委員会運輸委員会許可するにしても、重要文化財とか、史跡現状変更についてはあなたの方が権限を持っているのですから、何と許可してもだめなんです。これは第八十条に明記しております。「史跡名勝天然記念物に関しその現状変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、委員会許可を受けなければならない。」委員会が最高の権限を持っているのです。だから建設委員会運輸委員会が、よしんば道路許可し、バスの運行を許可いたしましても、問題はないのです。あなたの方ができないと言えばこれはできないのです。だからして、この点についてもやはり厳然たる決意をもって臨んでいただかなければならぬと思います。御所見を承わりたい。
  31. 河井彌八

    河井政府委員 ただいま野原委員のおっしゃった通り文化財保護委員会が最後のすべての決定権は持つのであります。しかしながら現実の取扱いといたしましては、行政各官庁が、道路建設なりあるいはバスの運転なりということについてそれぞれ権限を持っておりまするので、文化財委員会が知らないと言ってはどうかと思いますが、まだ気がつかないうちにどしどしそういう行政処置が実施されておったのであります。非常にこれは遺憾なことでありますが、そういう事実なんであります。従いましてそれじゃ文化財保護委員会がすべてそれを否認し去るかどうか、こういう問題――けれどもそれはたとえばバスの道路にいたしましても、あの若草山の上から下へバスをあの会社がつけようという計画でなしに、他の者がやる場合もあるのでありましょう、というようなときに、文化財保護立場から、これがどれだけの程度に許さるべきかということは別の立場から検討もさるべきものであります。そういうようなことなどもある、かように考えるのでありまするから、第一には各関係官庁に対しまして厳重な抗議を申し入れ、またその事実の取扱いにつきましては、この会社は不誠意であったことはとにかくといたしまして、ああいう場合において文化財を根本的にこわしてしまうのでない限りにおきましては、やはりその道路建設あるいはそのバスの運転すらも認めてよかろうというようなことに、文化財委員会のこれまでの取扱いはなっておったと考えるのであります。あるいは経済上あるいは観光上あるいはその他いろいろな大きな国の必要に応じての施策から、文化財に指定してある区域内といえども、やはりそれはある程度のことは認めなければならないというような現状でありまするから、これはどうもやむを得ない、こういうように考えます。そういうような立場を守っておるつもりであります。
  32. 野原覺

    野原委員 これは、時間もありませんし、ほかに案件もありまするから終りたいと思うのですが、道路許可に伴う六つ条件につきましては、期限までに履行しないときは文化財委員長としては重大な決意を持っておる、こういうことでありまするから、この点は私は期待をいたします。これはぜひその重大なる決意を持って臨んでいただきたい。それから第二点の史跡の破壊、無断史跡地内を破壊した、こういうことに対しては別個立場で法に照して処断する、こういうことでございまるから、これも期待をいたします。この二つの点に私は重大な期待をかける、もしあなたのただいまこの委員会でなしたこの回答が現実に履行されないときにはあなたの責任を私どもは追及する。これははっきり確約は守っていただきたいのです。文化財保護の重大な職責河井委員長は立っていらっしゃるのですから、私どもは特に特定の者を処断するとか、罰するとかいうことでなしに、やはり予防立法は予防立法としての効果というものを存分に発揮させる意味からも、ほんとうにそれは情において忍びないところがありましても、処断すべきものは処断しなければならぬのであります。このことを私は期待して質問を終りたいと思います。
  33. 平田ヒデ

    ○平田委員 関連して。先ほどの委員長の御説明に、二月の二十六日に専門審議会史跡部会答申がなされているようでありますが、この答申を資料として御提出をお願いいたしたいと思います。  それからもう一点でございますが、三月の一日に運輸建設宮内庁、それから文化財委、四者会議の際の議事録がございましたら、あるいはその他の会議の内容でもってはっきりしたものがございましたら、それも資料として御提出をお願いいたしたいと思います。
  34. 河井彌八

    河井政府委員 承知しました。
  35. 岡田孝平

    岡田政府委員 専門審議会答申はございますから、これは一つ差し上げたいと思いますが、運輸建設宮内庁と私ども、四者の会談の議事録というものはございません。しかしその会議の内容がわかるようなものは書きまして提出をしたいと思います。     ―――――――――――――
  36. 長谷川保

    長谷川委員長 社会教育法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。野原覺君。
  37. 野原覺

    野原委員 文部大臣にお尋ねします。この社会教育法の改正が出されたのは、ことし予算の面に日本体育協会に対して一千万円計上してございます、そのことと大きな関連があることは、提案の説明の中にもくみ取れるのであります。そこでお尋ねをいたしたい第一点は、日本体育協会は、社会教育関係団体であると思いますが、その辺の御見解を承わりたいのです。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日本体育協会は社会教育法にいわゆる社会教育関係団体であると考えております。
  39. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、日本体育協会というものは、第一には公けの支配に属しない団体であり、第二には社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とする団体である。このように、この二つの内容をもって考えられると思いますが、お考えはいかがですか。
  40. 福田繁

    ○福田政府委員 御説の通りでございます。
  41. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、先般高村委員がお尋ねいたしました憲法第八十九条との関連が出てくるのであります。私も稲田局長の御答弁をお聞きしておりまして、もっともな点があるようにも考えたのでございますが、しかし御承知のようにこの憲法が制定されるときにも、八十九条については非常に意見が出ておる。その後国会において、たとえば社会福祉事業法による更生団体等々の問題が予算化されるときにも非常に問題になったと考えておるわけであります。従って私はもう少し突っ込んで文部省の見解というものをたださなければ、国会として、この委員会として、このような憲法上の疑義があると判断されるものを通すわけには参らぬと私どもは思う。だからして、憲法上の疑義だけは明確にしたいと思うのでございますが、まずその第一点は、第八十九条を読んでみますと、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」とある。従って公金その他の公けの財産は、今回のこの社会教育法の一部改正と照し合せて申し上げるならば、公けの支配に属しない教育の事業に対しこれを支出し、またはその利用に供してはならない、こういうことになろうかと思うのであります。そこでこの公けの支配に属しない教育とはいかなる教育をさすとお考えになっておりますか。公けの支配に属しない教育、それについての文部省の見解をまず私はお聞きしたいのであります。
  42. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまの御質問の憲法八十九条の公けの支配という問題でございますが、これにつきましては、単に文部省だけでなしに、法制局等におきましても政府としての公けの支配についての解釈は一定しておるわけでございます。それによりますと、公けの支配という言葉でございますが、これは事実上ある事業に対しまして、国または地方公共団体が決定的な支配力を持つ場合には、その事業は公けの支配に属する、こういうように解釈しております。従ってこの決定的な支配ということを言いかえますと、その事業なり団体に対しまして、その構成あるいは人事内容、財政等について分けの機関が具体的に発言し、または指導勧奨することのできる特別な関係にある事業を公けの支配に属する事業、かように解釈いたしております。
  43. 野原覺

    野原委員 なかなか含みのある御解釈のようです。それは一福田局長の御見解にあらず、文部省の見解にあらずして、政府の見解でございますか。岸内閣という現政府の統一した憲法上の見解であるか、まずその点をお開きしたいと思います。文部大臣にお尋ねします。
  44. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題について、岸内閣としてこれを決定したというようなものではございません。従来からの政府の解釈でございます。
  45. 野原覺

    野原委員 そうなると、従来からの政府の解釈――従来からの政府はいろいろございまして、どの政府か、どうもつかみようがない。そのことはちょっと御答弁は御無理だろうと思うが、私は、公けの支配に属する私的事業についての明確な見解を打ち立てなければ、この社会教育法の二部改正に対する憲法八十九条の限界についての判断というものは生まれないと思うのです。そこでもう一辺お聞きしたいのですが、公けの支配というが、公けとは福田局長も申したように国家であり、地方公共団体をさすでしょう。支配という言葉ですね。これはあなたは公けの支配に徹底すればということを先ほど言われた。徹底した公けの支配ということを解釈すれば、これはもちろん国が当然補助金を出す云々ということはできるでありましょうが、一体分けの支配とは――国家並びに地方公共団体とその私的事業とのつながりの度合をどうお考えになるか。公けの支配――公けが何を支配するかというと、いわゆる私的事業なんです。この療法八十九条は、私的事業の自主性をそこなってはならない。信仰の自由というのは宗教の団体にある。だから宗教とか学術、技芸、そういった私的事業の自主性を国がそこなうということは、民主主義の憲法から見て考えられないというので、この八十九条が生まれてきておるのです。そこで私的事業と公けのつながりの関係、私的事業を公けが支配するというが、その支配の度合、それをどこまでこの公けの支配は指摘するのでしょうか。
  46. 福田繁

    ○福田政府委員 公の支配に属するか属さないかというつながりの問題でございますが、これは国または地方公共団体等の行政権の作用として、そういう私的な事業に支配を及ぼすという場合は、法律の根拠に基いてそうい場合もございます。また必ずしも法律の根拠に基かなくても、事実上のそういった支配を及ぼすような状態にある場合には、公けの支配に属するということはあり得ると思います。
  47. 野原覺

    野原委員 具体的に例をあげてお聞きしますが、たとえば私立学校です。私立学校は、公けの支配に属する事業でございますか、公けの支配に属しない事業でございますか。お聞きしたい。
  48. 福田繁

    ○福田政府委員 私立学校につきましては、私立学校法の成定当時におきまして、この憲法の八十九条との関係におきましては、私立学校はいわゆる学校法人という建前において、法人に対する公けの規制というものが私立学校法の中にいろいろ定められております。従って民法の公益法人とは違った一つの特殊法人として国会の御審議によってできたものでございます。従ってこの私立学校法に基くところの私立学校は公けの支配に属する事業である、こういうような解釈をとっております。
  49. 野原覺

    野原委員 だから公けの支配に属する事業だから、私立学校に補助金を出しても憲法上違反にならない。それは筋のある解釈なんです。ところが一体私立学校というものは、どこまで国が支配しているとお考えですか。私立学校というものをこしらえた私立学校法のねらいというものは、私立学校の自主性というものは考えているのです。ここに米田学長がいらっしゃる。神奈川大学という私立大学の学長さんだ。これは東京大学とは、教育の方針においても違うんです。だから度合いが問題になるでしょう。あなたは私立学校は公けの支配に属するんだと言うけれども、私立学校事業の経営管理について、全面的に国家が支配しておりますか。あなたは先ほど公けの支配を徹底したならばというようなことを言われる。徹底的に公けの支配というものを考えていかなければならぬという片一方で、私立学校は公けの支配に属するんだと言われる。これは国が全面的に支配しておりません。地方公共団体が全面的に支配しておりません。さあ限界が問題になるでしょう。そこのところをもう一ぺん明確に承りたい。文部大臣からもお聞きしたい。
  50. 福田繁

    ○福田政府委員 御承知のように私立学校につきましては、私立学校法の中に、私立学校の自主性を認めると同時に、他方また私立学校の公共性というものを認める意味の条文がございます。従ってその自主性と公共性の調和をどこに見出すかということが、私立学校法の構成の根幹をなしていると考えます。従って私立学校を設置しますところの学校法人につきましては、一定の法的に規制された監督規定というものがございます。それからまた私立学校自体につきましては、学校の教育課程なりその他いろいろな面におきまして、私立学校を規制しておりますところの他の法律によっていろいろな規制がございます。従って民法の財団法人で経営しますところの事業以上に私立学校は法的な規制を受けている、こういうような解釈をとりまして、従って私立学校法におきますところの私立学校は公けの支配に属する事業だ、かように解釈しているのでございます。
  51. 野原覺

    野原委員 どうもあいまいです。失礼な言い分ですけれども。あなたは公けの支配に属するというその考え方を、公共性ということで言い現わしている。公共性という言葉には、言葉自体非常に問題がある。含みの多い言葉なんです。公共性とは具体的に何か。民法の公益法人は公益性を持っておらぬのか、持っているのです。公益性を持っているから民法上の公益法人にしてある。ところが民法上の公益法人というものは、あなたの先ほどのお説によりますと、公けの支配に属しない事業なんです。明確じゃないのです。そういうあいまいな文部当局の考え方で、私はこの法案を通すわけにいかぬ。聞くところによれば、理事会が本日上げることになったそうですけれども一体公けの支配に属するか属せぬかということに対して明確な見解もわれわれに示さないで、国会を通すわけにいかぬ。私は断じて了解できない。だからこれはもう少し徹底した解釈を出していただきたい。民法上の公益法人は、それじゃ公けの支配に属するのか属せぬのか、大臣にお聞きしたい。今局長の御答弁によれば公共性でいくのだ、私立学校は公共性があるから公けの支配に属するのだ、こう言うけれども、公益法人は公共性を持っておる。公共性を持っておるから公益法人という法律が出てきたのじゃないですか。その点をもう少しお述べいただきたい。くどいようですけれどもお尋ねします。
  52. 福田繁

    ○福田政府委員 私の言葉が足りませんと思いますが、民法のいわゆる公益法人の事業そのものでは、現在の憲法の解釈からいいまして、その公益法人の行います事業が直ちに公けの支配に属する事業だというようには解釈はいたしてないのであります。私立学校法におきますところの私立学校の聖業と申しますのは、先ほど申し上げましたように私立学校を経営します学校法人に対しましては、いろいろ私立学校法の規定の上から規制された規定があります。設立からあるいはその法人の管理から、そういったいろいろな規定がございますが、そのほかに私立学校自体につきましては、これは学校教育法その他におきましても教科課程なりあるいはその教員の免許資格なり、いろいろな制約がございますので、そういった事業を行いますところの私立学校自体は公けの支配に属する事業だ、かように解釈しているわけでございます。
  53. 野原覺

    野原委員 どうもあいまいです。そこで方面を変えてお聞きしますが、日本体育協会はそれでは公けの支配に属する仕事をしておるのですか、公けの支配に属しない仕事をしておるのですか、日本体育協会はどっちなんです。これをお尋ねします。
  54. 福田繁

    ○福田政府委員 日本体育協会の仕事は公けの支配に属していないと思います。
  55. 野原覺

    野原委員 公けの支配に属しない、体育、スポーツ、運動競投とかいうものは体育という教育の一面を持っておる。日本体育協会は公けの支配に属しない教育事業の一面を受け持っておるんですよ。文部大臣これをお認めになりますか。
  56. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど申しましたように、社会教育法にいわゆる社会教育に関係のある団体、かように私ども考えております。
  57. 野原覺

    野原委員 私がお聞きしておるのは、公けの支配に属しない教育事業を日本体育協会はやっておると考えておるのです。これは今の御答弁で当然御承認だろうと思う。もう一度念のために、議論を発展する上に必要ですからお聞きしておきたいのです。
  58. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 野原君の仰せになることが私にははっきりわからぬところがあるのですが、聞き違えておりましたら一つお直し願いたいと思うのですが、教育という言葉の意味であります。憲法八十九条にいういわゆる教育の事業というものと、それから社会教育法にいう社会教育ないしは社会教育関係の事業というものとの間には範囲の違いがあると思うのです。この日本体育協会のやっております事業は社会教育法にいわゆる社会教育に関係ある事業をやっておるわけでありますが、私どもは憲法にいわゆる教育の事業とは考えておらないのであります。
  59. 野原覺

    野原委員 異なことを承わるものです。憲法八十九条の教育とは教育基本法でいう教育と違うということは私もわかる気がする。これは教育基本法の第七条に書いてありますが、それには社会教育と書いてある。それがそっくりこの憲法八十九条の教育の概念の中に入るかどうかということについては、これはいささか疑義がなしとしない。たとえば第七条の社会教育は家庭教育が入っておりますから、そこまで八十九条の教育が考えておるとは思われません。しかしながら憲法八十九条の教育とは単に学校教育だけではありますまい。文部大臣いかがですか、その点を明確にお聞きしたい。
  60. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 仰せの通り単に学校教育だけではないと思っております。
  61. 野原覺

    野原委員 そういたしますと、学校教育以外の教育が八十九条の教育の中でどのように考えられてくるのでしょうか。社会教育というものはどこまで八十九条の教育は指摘するのか、お聞きしたい。
  62. 福田繁

    ○福田政府委員 八十九条の教育の事業につきましてはこの前も御説明申し上げたところでございますが、この八十九条の教育の事業と申しますのは、学校またはこれに類似した施設によって特定の範囲の受講者に対して継続的に行うところの教育をさすというのが通説でございます。従ってこの特定の範囲の受講者に対して継続的に教育を行うという場合におきましては、すなわち言いかえますと、その被教育者の精神的あるいは肉体的な育成をはかる一つの目標というものを持って、その目標に対しまして計画的に教育する者が達成するようにその事業を行うというのがこの八十九条の教育の事業だ、こういうように解釈しております。従って学校の場合もございますし、そうでなく学校以外の場所でそういう事業が行われますと、この憲法八十九条にいう教育の事業だ、こういうふうに解釈されます。
  63. 野原覺

    野原委員 あなたが今おっしゃったことは、これは憲法上の通説だということを言われた。今あなたが憲法上の学説から持ってきている以上、私も憲法上の学説で対抗せざるを得ないが、一体通説とは憲法学者のだれが言っているのですか。あなたが言われた学校またはこれに類似した施設によって特定の範囲の受講者に対して継続的積極的に行う教育が教育事業だ、これは一体そんな説を言うのは今日の日本憲法学者のどなたでしょうか、お名前を後学のためにお教え願いたい。
  64. 福田繁

    ○福田政府委員 通説とは申し上げましたのですが、これは法制局が従来とっておる見解でございまして、学者の中にもそういった、たとえば註解日本国憲法などにおいてはさような解釈をとっております。これはいろいろの人が書かれたと思いますけれども、たとえば兼子一さん、ああいう学者はそういう見解をとっております。
  65. 野原覺

    野原委員 じゃあそうおっしゃって下さい。註解日本国憲法の下巻にそういうことが書いてあったとおっしゃってくれたらはっきりする。憲法上の通説と、こうおどしますからね。どうもわれわれ国会議員というものはつまらぬと思って、よくお役人さんは上からのしかかってくる。しかしそうはいきませんよ、これは、憲法上の通説というのではなしに註解日本国憲法という本に書いてあるだけなんです。註解日本国憲法という本はだれが書いた、著者のない本でしょう、これは。著者はどなたになっておりますか、註解日本国憲法の著者は福田さんどなたになっておるかお聞きしたい。
  66. 福田繁

    ○福田政府委員 註解日本国憲法は共同研究者によって出されておりまして、十数人の人々の名前があがっております。
  67. 野原覺

    野原委員 名前はお聞きしなくてもけっこうです。それが今日憲法上の学者であるかないか、失礼ですけれども憲法上の権威ある学者と今日いわれる人々が十数人名をあげておるかいないか、これは御賢明な福田さんがお考えになればわかる。たとえば東大の宮沢博士あるいは佐藤功教授、そういう権威ある今日の憲法上の学者というものは、註解日本国憲法のような解釈を断じてとっておりませんよ。あなたが憲法上の通説だとこう言われる限りは、あなたはこの点について憲法上の学説を相当あさられたと思う。それはどうなっておりましたか、お聞きします。憲法上の学説はどうなっておりましたか。私はこの問題を明らかにしなければ、委員長、この審議はできないのです。憲法上の疑義というものが不明確のまま上げるわけにいかぬのです。だから憲法上の学説はどうなっておるか、通説と言われる限りはこれをお教え願いたい。
  68. 福田繁

    ○福田政府委員 私もいろいろ憲法学者の著書を読んだのでございますが、大体そういう解釈をいたしておると思っております。先ほども申しましたように、従来、昭和二十四年ごろから政府部内におきましては、八十九条の教育事業につきましてそういった解釈を持っております。
  69. 野原覺

    野原委員 実は私もちょっとばかり勉強してきました。この前高村委員が御質問されて、あなたが答弁されたことを私承わっておって、非常に疑問に思う個所があったものですから、正直に申し上げますと、念のためににわか勉強をしてきたのです。宮沢さんは明快に教育の事業に対する見解を書いております。日本国憲法、七百四十二ページに書いております。これは福田さんもお読みになったと思う。これによれば、教育の事業は学校教育の事業に限るものではないということを断言されております。文部大臣も、先ほど憲法第八十九条の教育とは何かというところで、必ずしも学校教育に限るとは申されていないのです。なおかつ福田さんも、学校またはこれに類した施設によって云々、受講者に対して云々というのですから、学校教育だけをさしているわけではないのです。学校またはこれに類した施設によって特定の範囲の受講者に対して継続的、積極的というているのでありますけれども、この抽象的な文言というものは具体的にはどういうことになるのですか。小学校、中学校というものも教育、大学も教育、私立学校も教育とはっきりしてきますけれども、学校に類した施設とは何をさすのか。受講者に対して継続的、積極的に行う教育とは、どこからどこまでが継続的で積極的かということになってくると、これは実に複雑な問題を含んでくる。日本体育協会というものは、公けの支配に属しない社会教育事業をやっている。体育というのは社会教育である。日本体育協会のやっている内容である社会教育というものは憲法八十九条の教育の中に入ります。憲法八十九条の教育というのは学級教育だけをあげていない、社会教育が入るわけですから、この体育協会がやっている教育事業も八十九条の中に入ってくる。そうなると補助金は出せない。私は個人的には体育協会に補助金を何とかしてやることには反対じゃありません、よくわかります。わかりますけれども、憲法が不備にしろ、疑義があるから、出せないのですよ。日本体育協会が「公の支配に属しない」社会教育事業を行う限りにおいて、政府から出しましたこの社会教育法の一部改正には憲法上の疑義があります。疑義がないと文部大臣がお考えならば御解明願いたい。私は決していやがらせで言っているのではない、たとい一人といえども疑義が解明されない限り――憲法上の疑義ですからね、法律上の疑義じゃないのだから、これは通すわけにいかぬ。その疑義を明快に一つお示し願いたい。
  70. 高村坂彦

    ○高村委員 議事進行について。今憲法上の疑義が出ているわけでありますが、私がこの前に質問しましたときには、政府の見解では、憲法に違反でないという答弁があり、私もそう考えている。ところが今野原委員がそういうことを言われるから、政府の見解を明らかにする意味で、法制局長官に来てもらいまして一つ明らかにしてもらったらどうかと思います。
  71. 長谷川保

    長谷川委員長 今法制局長官を呼んでおりますから、参りましたら関連で御質問願います。
  72. 野原覺

    野原委員 法制局長官に来ていただくことはけっこうです。法制局長官がおいでになってからお尋ねしてみましょう。これで疑義が解明されれば、理事会でお約束しているのですから協力しますが、それで解明ができなければ、委員長、これは協力できません。だから場合によっては、この委員会が済んでから理事会を開いていただいて、憲法上の疑義をこの際究明する。たとえば今後社会事業福祉法によるいろいろな更生団体に対する補助金などが出てくる。憲法八十九条は前の国会でも他の委員会で二、三問題があった。しかも憲法上の疑義というものは文教委員会が担当すべき場でもあるような気もする。いい機会ですから私は徹底的に掘り下げてみましょう。どうでもこれは検討してみる。ですから今の高村さんの議事進行には反対はしませんけれども、自民党も御検討いただき、社会党も検討して、この次に、場合によっては参考人あるいは証人ということになるかわかりませんが、学者にも来ていただいて八十九条に対する明快な見解を下さなければ、林法制局長官は憲法の神様ではないのです、単なる政府の御用的な役割を勤めている官吏ですから、この方が何と答弁しても私どもがだめだということになりますと疑義が解明されない。私は学者に来ていただいて、ここに清瀬さんもいらっしゃいますから、清瀬さんなどにも見解をお聞きして、私どもも臨むべきじゃないかと思うのです。これは議事進行です。
  73. 長谷川保

    長谷川委員長 野原君に申し上げます。ただいまの野原君の御発言はもっともなことと思いますから、委員会終了後理事会を開きまして、この問題の処理をいたしたいと存じます。
  74. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 専門家の法制局長官が参りましてお答えをすると思いますから、内容的にはその方からお聞き願います。ただわれわれといたしましては、憲法違反であるという考えのもとにこんな法律を出したものではなく、憲法に違反しないという前提のもとにこれを出しているわけでございますから、その点は御了承願いたいと思います。
  75. 野原覺

    野原委員 憲法に違反するという考えで法案を出される政府はどこにもないのです。私もその通りだと思う。そういうことが問題じゃなく、政府としてはこれが憲法に合致した法案だと考えて出されておりますけれども、なお私どもとしては問題があるからお聞きしているのです。実際解明が必要だ。文部大臣がこんなものを出したからその責任がどうこうというところに発展させる意図は毛頭ないのです。この点は国会として解明だけすればいい、こういうわけです。
  76. 長谷川保

    長谷川委員長 暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ――――◇―――――    午後零時五十八分開議
  77. 長谷川保

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を再開し、質疑を続行いたします。野原覺君。
  78. 野原覺

    野原委員 法制局長官がお見えになりましたから、もうすでに文部当局から非公式的にお聞きかと思いますが、憲法第八十九条の見解が、社会教育法の一部改正の法案審議に伴って実は問題が生じておるわけであります。憲法八十九条の「公の支配に属しない」教育事業とは何かということです。「公の支配に属しない」とは何か、同時に八十九条の規定する教育事業、これは私的教育事業をさしております。「公の支配」ですから、公けの事業に入らない私的教育事業とは一体どういう内容をいうのかということが解明されなければ、この社会教育法の一部改正について私ども態度決定することすらも困難になるというので、文部当局にただしたわけです。そのただした結果、いろいろ私の見解と食い違うところもございましたので、自民党の高村委員の議事進行の動議によって、あなたが内閣の最高権威者ですか、法制局長官に来ていただいてお聞きしよう、こういうことになったわけです。
  79. 林修三

    ○林(修)政府委員 今度のこの社会教育法の一部を改正する法律案で、附則にこの規定を入れます場合においても、今御質問ございましたが、憲法八十九条との関係はわれわれも十分考えたわけでございます。そこで、憲法八十九条の「公の支配に属しない」ということと、「教育」ということの二つの意味について御質問でございますが、まず最初に教育の事業とは何かということについて私どもの見解をお答え申し上げたいと存じます。  この問題につきましては、実は法制局といたしまして、過去何回か関係の行政機関から御質問がございまして、実は公式にもお答えした、私ども公的な文書も出しております。そういうところで、大体の私どもの見解はきまっておるわけでございますが、簡単に申し上げますと 結局教育の事業というのは、人の精神的または肉体的な育成ということを目ざして、人を教え導くことを目的とする事業である、そういう意味におきまして、そこには教育をする者と教育される者とが両方なくちゃならぬ、これが両方なくては教育事業とは言えない。それで教育をする者の方から申しまして、教育される者に対して精神的あるいは肉体的な向上と申しますか、育成をはかるということを目的としてやる、そうして教え導く、そういうことが教育の事業ということになるのであろうと思います。  そこで、この法案で言っておりますような全国的あるいは国際的な競技を開く、運動競技をやるというようなことは、あるいは社会教育とは言えるかもしれませんが、憲法八十九条で言っている教育事業ということには入らない、かように考えていいのではないかと考えておるわけであります。つまり普通、社会教育法で言っております社会という観念は、憲法で言っております教育の事業というものに比べればやや広い観念である、従いまして普通社会教育と言われておりますことの中でも、憲法八十九条で言う教育の事業というものに当らないものが存在する、かように考えるわけであります。  それからもう一つの、「公の支配に属しない」という問題でございますが、これも実はこれまで解釈上あるいは立法上いろいろ議論が何回かあった点でございます。特に私立学校法が――あれは昭和二十四年でございましたか、できるときにも、非常に立法に当りましてわれわれ議論したところでございます。これにつきましても、私ども一応公式な見解も今まで出しております。結局その事業に対する構成とか人事とかあるいは財政問題等について、公けの機関――国あるいは地方団体等の機関からある程度の発言指導あるいは干渉ができる、そういうような態勢が整っておる、法的に整備されている、そういうものが公けの支配に属するということであろうと思います。従いまして、そういうような制度になっておらない全く私的で経営できるというようなものは、公けの支配に属しない、こういうことになるであろうと思います。従いまして単に補助金をもらうというようなことだけでは、これは公けの支配に属するということにはならないということになります。やはりそういうことを契機として、財政とかいうふうなことについてある程度の法的に指導ができる、あるいは干渉ができるということになれば、あるいは公けの支配ということが言えるかもしれませんが、そうでなければ公けの支配に属しない、こう言っていいであろうと考えるわけであります。
  80. 野原覺

    野原委員 「公の支配」ということと「教育」ということについての法制局長官としての見解ですが、法案は内閣が提出するわけでありますから、もとよりあなたはこの法案を提出するに当って法制面の検討はされたことでもありましょうし、またされるのが至当でもございましょう。そこでその見解をお述べになったのですが、あなたがただいまお述べになったことによって、なお私はまた疑義を生じてきた。というのは、教育とは精神的肉体的育成を目ざして教え導くことだ、こういうことを言われる。そうすると日本体育協会というのは、教育を担当しておるかおらないかという問題です。日本体育協会は社会教育をやはり担当しておるのです。肉体的育成を目ざして日本体育協会は教え導いておるのです。それはそうですよ。社会教育でないとはあなたはおっしゃらぬはずです、社会教育法に書いてあるのだから。日本体育協会は社会教育関係団体である。そして社会教育法の第二条を見ますと、「この法律で「社会教育」とは、学校教育法に基き、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動をいう。」とあって、社会教育の定義が社会教育法の第二条で出されておりますから、日本体育協会は社会教育関係団体であり、そして第二条の定義に該当する仕事をしておればこそ、それを受けて社会教育法の第十条に社会教育関係団体の定義がある、そして第十三条は、そういう団体に対しては補助金を与えてはならぬ、こうあるものだから、これを当分の間適用しないという附則をつけるのが、今度の改正法のねらいです。  そこで、やはり体育協会は社会教育を担当しておる、これは否定できません。その担当しておる社会教育は、あなたの教育の定義から見れば、肉体的育成を目ざし教え導くということで、これは日本体育協会のいわゆる運動競技のスポーツマン・シップと切り離すことはできない、ほんとにその肉体の練成と切り離してはやっていないのですよ。これは第二条で体育及びレクリエーションまで入っておる。そうなると憲法の「公」に該当しないというあなた方の見解は、やはり私はどうしても了解できないのだが、そこのところはどう考えるか。
  81. 林修三

    ○林(修)政府委員 体育協会の仕事が、私が先ほど申しました教育というものに当るか当らないかということにつきましては、私としてはこの定款を児、あるいは今までの事業を見て、当らないというふうに考えておるわけでございますが、なおこの点の詳しいことは文部当局からお答え願う方が適当だろうと思います。  ただ、今仰せられました社会教育法の第二条でいう社会教育という観念は、憲法でいう教育というものよりは多少広いと私どもは思うわけであります。それはこの第二条でもいっておりますが、特に体育とかレクリエーションの活動を含むというようなことは、本来の教育活動と、条文の体裁上見ておらないわけであります。つまり特にここでは体育とかレクリエーションとかいうものは社会教育活動というものに含ませるのだ、こういっておるわけです。そういう意味から申しましても、実は体育というものを本来ここでいう教育とは見ておらない、社会教育法でも見ておらない。またそういうことを離れましても、憲法の目から見まして、教育事業というものでいきます教える者と教えられる者とあって、あるいは肉体的、知的な育成をやるということから申しますと、いわゆる普通の競技会を開くということはそういうものにはやはり当らないのではないか、そう考えてしかるべきものではないかと私は考えるのです。
  82. 野原覺

    野原委員 憲法八十九条の教育は、社会教育も包含すると思いますか包含しないと思いますか。
  83. 林修三

    ○林(修)政府委員 もちろん憲法八十九条の教育とは、学校教育のみでなくて、ある意味において通信教育もあるいは社会教育も含むと思います。しかしいわゆる社会教育法で言っている社会教育全部を含むとは考えていないのであります。
  84. 野原覺

    野原委員 その点が問題です。その点に問題があればこそ、社会教育法の第二条が生まれたのです。体育及びレクリエーションの活動を含むんだ、体育及びレクリエーションということが問題になってくるのです。社会教育では常に問題になったものだから、特にここは「組織的な教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む。)をいう。」こうしてある。だからこの法律の第二条にその規定がある限り、憲法第八十九条の教育に、体育及びレクリエーション活動を担当しておる体育協会は当然入りますよ。これが入らないという見解は成り立たない。非常にこれはあなた方もあいまいでしょう。あなたも首をかしげておるが、そう言われてみればそうかなという……。だからこの問題は非常に微妙な問題です。かつて問題になったこともありますし、八十九条の条文がこのままである限りにおいて、今後もまたこれが起るのです。いい機会ですから、私は先ほど申し上げましたように、この法案のねらっておること自体には反対ではありませんから、もちろん賢明な灘尾文部大臣に協力は十分いたすつもりでございますけれども、この疑義解明だけの機会をやはりこの審議に伴ってお持ち下さるように参考人の喚問その他十分国会としても究明しなければならぬ、特に社会党はそのことを痛感いたしますから、委員長に要求いたします。
  85. 長谷川保

    長谷川委員長 ただいまの野原君の御要望に対しましては十分その理由があると思いますから、後刻理事会を開きまして、理事会において決定をいたしたいと存じます。
  86. 高村坂彦

    ○高村委員 議事進行に関して……。理事会を開くと言われますけれども、今野原委員の質問に対する法制局長官の、政府の見解を述べられたことで、大体解明されたと私は思うのです。(「納得がいかぬよ。」と呼ぶ者あり)今納得がいかぬとおっしゃるけれども……(「高村さん自身も憲法を改正しようということを言っておるし、理事会で話をするのだから、このまま休憩して……」と呼ぶ者あり)休憩しても、今後質疑を続けてそれでもまだ一人が納得しないということによって、この法案がいつまでもということになると困ると思うので、私ども大体納得しておるわけなのですが……。
  87. 長谷川保

    長谷川委員長 高村君に申し上げますが、すぐ理事会を開いてお話し合いをして、今後の方針をきめたいと思います。  では暫時休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十分開議
  88. 長谷川保

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、理事会において協議決定いたしました事項についてお諮りいたします。  本委員会におきまして審査を進めております社会教育法の一部を改正する法律案につきましては、解釈上の疑義がありますので、憲法学者をその参考人として招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお参考人よりの意見の聴取は、次回の委員会で行うこととし、委員会の開会、人選その他の手続につきましては委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認めさよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十一分散会