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1957-03-14 第26回国会 衆議院 文教委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十四日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 竹尾  弌君 理事 米田 吉盛君    理事 河野  正君 理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    北村徳太郎君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       千葉 三郎君    塚原 俊郎君       並木 芳雄君    牧野 良三君       山口 好一君    木下  哲君       小牧 次生君    櫻井 奎夫君       高津 正道君    平田 ヒデ君       山崎 始男君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君  委員外出席者         厚 生 技 官         (公衆衛生局精         神衛生課長)  大橋 六郎君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 三月十四日  委員鈴木義男君辞任につき、その補欠として山  崎始男君が議長の指名で委員に選任された。 同日  赤城宗徳君が理事に補欠当選した。     ————————————— 三月十三日  大学における単一学部制度実施に関する請願(  受田新吉君紹介)(第二〇七三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  就学困難な児童のための教科用図書給与に対  する国の補助に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第九号)  学校給食法の一部を改正する法律案内閣提出  第二三号)  視聴覚教育教育人事権及び学術に関する件     —————————————
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  まず就学困難な児童のための教科用図書給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案及び学校給食法の一部を改正する法律案一括議題とし、審査を進めます。  質疑通告があります。これを許します。高村坂彦君
  3. 高村坂彦

    高村委員 学校給食法の一部を改正する法律案につきまして若干のお尋ねをいたしたいと存じます。  過ぐる第二十四国会におきまして、学校給食法の一部を改正する法律によりまして、市町村がこれらの児童給食費の二分の一以上を援助した場合には、国が予算範囲内でその所要経費の二分の一を補助する制度が設けられたのでありますが、今回またこの改正によりまして、その範囲義務教育である中学校にも及ぼそうというわけで、この点はわれわれ賛成でございますが、一体準要保護児童というものは、今日全体の児童あるいは生徒の中でどのくらいになっておりますか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  4. 小林行雄

    小林(行)政府委員 一昨年学校給食実施状況につきまして、全国的な調査を指定、当局として実施したのでございますが、その当時の状況で大体全学校給食対象児童の四%程度の者が準要保護児童に該当するというふうに考えられたのでございます。数字で申しますと、大体二十二、三万程度の者が準要保護児童に該当するというふうに考えられたのであります。
  5. 高村坂彦

    高村委員 大体四%が準要保護児童に該当するというお話でございましたが、先般の法律改正によりまして、小学校の方は一体どのくらいその中で予算措置がされて、法律に基いて学校給食によってそういった児童が救済を受けたか、その数字がおわかりでございましたらお示しを願いたいと思います。
  6. 小林行雄

    小林(行)政府委員 三十一年度の準要保護児童に対する予算は四千九百万円であったわけであります。これは年間の学校給食費を通算いたしますと大体二千八百円でございますので、その二分の一の千四百円で割りますと三万五千人分の予算ということになるわけでございます。ただしこの三万五千人と申しますのは、この二千八百円の給食費全額国から設置者に対して補助するという計算をした数字でございまして、実際市町村児童に対して補助いたします場合には、全額補助するものもございますけれども、多くのものが二分の一以上ということになっておりますので、中には二分の一の補助というものもございます。従ってその数字が延びてくるわけでございまして、実際の実施状況は五万一千五百という数字になっております。そのうち全額補助したものが一万一千、半額以上を補助したものが四万五百、こういう数字になっております。
  7. 高村坂彦

    高村委員 そういたしますと、本年度予算措置によりまして若干予算もふえておりますが、さらに対象の準要保護児童中学校に拡大されましたので、その方もふえてくるわけでありますが、そうするといわゆる準要保護児童に対するこうした恩典に浴する者のパーセンテージというものは、かえって減るようになりはしませんか。その点はどうでございますか。
  8. 小林行雄

    小林(行)政府委員 三十二年度予算では昨年の四千九百万円に対しまして一億三十一万という数字になっております。これを計算いたしますと小中学校あわせて七万人という数字になりまして、大体小中学校の本年度給食実施児童生徒の一・〇五%であります。これは昨年は〇・六%という数字でございますので、約〇・五%上昇しておる、もちろん完全ではございませんけれども、昨年に比べればかなり対象児童の数もふえる計算になっておるわけでございます。
  9. 高村坂彦

    高村委員 せっかくこういった対象が拡大されて参りましたのですが、理想としましては、われわれは、準要保護児童全般に対してこの恩典に浴するようにしていただきたいと思います。予算の全体のワクとの関係で直ちにはそれができなかったことだと思いますが、なるべく近い将来におきましそ、せっかくこうした法律も作るわけでありますから、これが全般に及ぶように一つ予算措置の御努力をお願いしたい。特にこれをお願いしましてこの法案についての私の質疑を終りたいと思います。  次に就学困難な児童のための教科用図書給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案について若干のお尋ねをいたしいと思います。これも結局範囲中学校に拡大されたことに相なるのでございますが、就学困難なる者というのはどういう定義、範囲になっているのですか、御説明をいただきたいのです。
  10. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 生活保護法対象になるものを除きまして大体それに準ずる程度のものを準要保護児童といたしたのでございます。
  11. 高村坂彦

    高村委員 そういたしますと、この準要保護児童という点につきましては、給食の場合と教科書の場合とは同一の範囲のもの、かように考えてよろしゅうございますか。
  12. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  13. 高村坂彦

    高村委員 この点につきましても、おそらく私は予算措置全般に及んでおらぬのではないかと思いますが、その点は全体の準要保護児童に対しまして、教科書のこの法律によって恩典に浴しますものがどのくらいのパーセンテージになっておりますか、それをお示し願いたい。
  14. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 前年度小学校児童の一・七%本年度小学校を一・九%に引き上げました。同様の措置中学校にもそのまま延長したわけでございます。準要保護児童対象は、先ほど管理局長から申しあげましたように、一応四%といたしておりますので、ほぼ半分程度がこの措置によって救われることになるわけでございます。
  15. 高村坂彦

    高村委員 この法案につきましても、先ほど申し上げましたと同様に、一つなるべくすみやかなる機会におきまして全般に及ぶように御努力をお願いいたしたい、これをもちまして私の質問を終ります。
  16. 小牧次生

    小牧委員 ちょっとただいまの高村委員質問に関連してお伺いいたします。学校給食の場合は、先ほどの質問応答で準要保護児童給食費補助をやる。それと同じ準要保護児童対象にして、教科書の就学困難な児童に対する給与ということで今御説明があったわけでありますが、すでに御承知通り小学校については準要保護児童教科書給与ということがなされて、今回これが中学校の方にも拡大される、その趣旨にはただいまの質問応答通り賛成をいたすのでありますが、ここでちょっとお伺いしたいのは、若干私はその対象について考え方を異にしておるのであります。と申しますのは、すでに御承知通り教科書については憲法の保障するところによりまして、義務制にはこれは無償給与されなければならない、こういう建前になっておりますから、なるほど生活に困り、就学が困難だというような人々をとりあえず対象にするということは、これはあるいは方法論としてやむを得ないかもしれませんが、政府としては、文部省としては、給食の場合と教科書の場合とを全く同様な考え方をもって立法に当っておられるのかどうか、まずこの点を内藤さんにお伺いしてみたいと思います。
  17. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 給食の場合と同様な考えでございます。
  18. 小牧次生

    小牧委員 そうなりますと、今私が質問の中にも若干入れました義務制に対する児童教科書無償ということについてはどういうお考えでございますか。
  19. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいまお尋ね憲法の話が出ましたけれども憲法に「義務教育は、これを無償とする。」という規定がございますが、これを受けまして、教育基本法には授業料を徴収しないというふうに解釈しておるのでありまして、お話のように教科書まで無償という意味には私どもは了解してないのでございます。
  20. 小牧次生

    小牧委員 そうなると見解の相違というようなことになりますが、そういたしますと、今の御答弁では、たとえば教科書の場合では全体の大体一・九%くらいで、大体準要保護児童の半分近い人数を対象にしておる、こういうようなお話でございましたが、給食の場合でもまだやはり教科書の場合と同じような割合でやられるということになりまして、年々少しずつ適用範囲を拡大するということになると、これはほとんど給食の場合と並行してこれはおやりになるお考えでございますか、教科書の場合の増額されるというような場合、それを一つお伺いしてみたいと思います。
  21. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 大体今までのところ給食教科妻は同じような歩調でございますけれども教科書の率の方が給食よりは率が高率になっておるのでございます。しかし原則としては同じような歩調で、前年度も本年度も増額をいたしたのであります。
  22. 小牧次生

    小牧委員 そうなると、まだ準要保護児童でもこの恩典に浴しない人々が相当残っておるわけですが、政府としては、文部省としては、大体いつごろをめどにそういった人々が全部給与を受けるようになる計画をもってこういった法案改正に当っておられるのか、最後にこれをお伺いしてみたいと思います。
  23. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 生活保護法適用を受けておるものが、大体このほかに三・五%ないし四%くらいございます。ですから生活保護法の方に準要保護児童というものが想定されておりますので、私どもの見通しでは四%程度ということになっておりますが、これももう少し詳細に限度というものを検討してみなければならぬかと思うのであります。そこで本年度に約二%でございますが、実施した後に、なおかつどの程度のものが救われなければならぬかということを検討いたしまして、早急に準要保護児童の対策に遺憾のないようにいたしたいと考えております。     —————————————
  24. 長谷川保

    長谷川委員長 次に文教行政について質疑を行います。質疑通告がありますので順次これを許します。櫻井奎夫君
  25. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私は去る三月二日日本弁護士連合会から法務省文部省及び厚生省等善処方要望いたしましたところの、新潟大学医学部種内科精神病患者に対するツツガムシ人体実験について、関係各省考え方を御質疑申し上げたいと思うのであります。三月三日の各新聞は、これは地元の新聞は申すに及ばず朝日、毎日、読売等が一斉にこの記事を大きく取り扱っておるのであります。その内容は、新潟大学医学部梓内科、これは桂重鴻博士でありますが、これがツツガムシ病治療研究のため、昭和二十八年から三十年にかけて、私立新潟精神病院入院中の患者百四十九名に対しまして、ツツガムシの病原菌の注射をし、このうちの八人の患者皮膚を切除した、この傷跡が三年以上たった今日でもなお消えず、これは明らかに医師法を無視して人体実験を行なったもので、人権侵犯はもちろん、傷害罪を構成するおそれがある、このような趣旨であります。しかもこのような実験は、ひとり桂内科だけでなく、他の研究室でも行われていると推定されるので、将来再びこのようなことがないようにという警告を発して、各関係方面にこの善処方要望したという記事でございます。これを要しまするに、三年間にわたりまして、百四十九名という多人数の患者にこのような処置が行われておったということ、弁護士会の方の見解は、ツツガムシ病治療法研究のため精神病患者を利用してこの実験に当ったという考え方のようでありますし、また大学当局の方は、これは精神病治療するための治療法として、発熱療法を行なったという見解に立っておるようでありまして、両者の見解は必ずしも一致していない。ここにこのような問題が出てくるわけでありますが、このような弁護士会善処方要望厚生省文部省法務省は受けられたかどうか。この要望に対してどのような処置を今日とっておられるか。一応政府の御処置を承わりたい。
  26. 緒方信一

    緒方政府委員 日本弁護士連合会会長の名前をもちまして、文部大臣あてに、今お話のございました問題につきまして、関係方面に対して十分今後注意をするように警告し善処を求められたい、こういう要望が出ております。これに基きまして、文部省といたしましては、新潟大学に対しまして、関係者を呼んでこの実情を聴取いたしました。しかしなおこれは非常に複雑な問題でございますので、十分に調査をする必要がございますが、なお現在調査中の段階でございます。さような処置を今とりつつある状態でございます。ただまだ結論といたしまして、これが大学の、何と申しますか、治療あるいは研究という範囲を逸脱しておるかどうかということにつきましては、私どもとしましてはまだよくつかんでいません。今日としましてはそういう状況であります。
  27. 小澤龍

    小澤政府委員 厚生省におきましても、三月一日付の日本弁護士連合会からの要望書を本月上旬入手いたしました。実は新聞にこの事実が報導されるまで、そのようなことが行われておったことを知らなかったのでありますが、直ちに新潟県に指示いたしまして、実情を目下調査中でございます。ことに弁護士会側におきましては、実験的意図のもとにやった、病院側におきましては、治療目的でやった、こう主張しておりますので、客観的にいかなる意図のもとに行われたかという点につきまして、特に精細な材料を得るために、新潟県庁に対しまして調査を要求中でございます。
  28. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 法務省におきましても、弁護士連合会要望書を受け取っております。この問題は人権侵犯である、こういうふうな結論弁護士会から出されておるのでございますが、この医者治療行為人権の問題は非常に微妙な点がございますので、法務省におきましても、特に人権擁護局におきまして、慎重に事件の真相調査しておるわけでございます。まだ結論は出ておりませんが、非常に重大な問題でございますので、できるだけすみやかに結論を出したいと思っております。
  29. 櫻井奎夫

    櫻井委員 文部省厚生省並び法務省等、いずれもこの弁護士会要望に従って事実を調査中のようでありますが、文部省では新潟大学関係者を呼んで調査中、こういうことでありますが、新潟大学のだれをお呼びになりましたか。
  30. 緒方信一

    緒方政府委員 一応病院責任者であります病院長と、それから桂内科助手であります勝田助手から話を聞きました。
  31. 櫻井奎夫

    櫻井委員 病院長は、この精神病院病院長ですか。
  32. 緒方信一

    緒方政府委員 新潟大学大学病院長でございます。
  33. 櫻井奎夫

    櫻井委員 この百四十九名の患者は、私立新潟精神病院と申しまして、大学関係のない、別個の財団法人病院に収容されておる患者であります。従ってもう少し事実を厳密に調査なさるとするならば、当然この精神病院責任者を呼んで調査される必要があると思う。そこで私立新潟精神病院の小島副院長は、確かにこのツツガムシ病源菌精神病患者注射した事実を認めておるのであります。もしも病院側の言うように、これが治療法としてこの百四十九名の患者病源体注射されたとするならば、これはやはり患者でございますから、その注射の事実が患者カルテの上に明瞭に記載されておらねばならないと思う。そういう点は御調査になっておるかどうか。
  34. 緒方信一

    緒方政府委員 私ども文部省の方の調べによりますと、新潟精神病院カルテには、この病源菌接種したということは記載はなくて、温度表記載……(櫻井委員「何に」と呼ぶ)体温表でございます。それからこの診療を担当いたしました新潟大学医学部桂内科の方に記録はとってある、かように話を聞いております。
  35. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これは私は非常に重大なことだと思う。このツツガムシ病源菌注射したという事実が、カルテ記載されていないで、ただ体温だけを記録した、こういうことになりますと、これは私は明らかに医師法に抵触すると思うのでありますが、厚生省医務局長の御見解はいかがでありますか。
  36. 小澤龍

    小澤政府委員 医師法におきましては、「医師は、診療したときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録記載しなければならない。」と規定してございます。ただしこれにつきまして、前項の診療録であって病院または診療所医師のした診療に関するものは、その病院または診療所で保管しなければならない。しかしながら、その他の者が当該病院または診療所におもむいて診療した場合におきましては、当該医師がその診療録を五年間保存しなければならない。こう規定がしてございます。従いまして、精神病治療ツツガムシ病原体接種したということが、いずれが主体になって行なったかということによりまして、診療録をいずれが記載し、いずれが保管しなければならないかということがきまってくるわけであります。目下この事情につきましても、県当局に指示いたしまして、調査中でございます。
  37. 櫻井奎夫

    櫻井委員 その医師法につきましては、ここに専門の河野委員がおられますので、さらに追及があると思うのでありますが、私どもしろうと考えからみましても、その当該患者を預っておる病院患者カルテにそういうものが一切記録されていないということ、ただ体温だけを記録しておるということは、これは明らかに実験に使ったのではないか、こういう疑惑が生ずるのは当然だと思う。これは重大な手落ちであって、一体百四十九名中の何名に対してこのツツガムシ病原体注射をやったのか、全部に対して行なったのかどうか、その点は明瞭ですか。
  38. 緒方信一

    緒方政府委員 新潟精神病院入院患者は、問題になっております二十七年から三十一年までの間でありますが、大体平均毎年常に四百八十名前後だということになっております。そのうち治療を受けましたのは二十七年に二十一名、二十八年に九十三名、二十九年に十八名、三十年に十二名、三十一年に五名、これは延べ数でございますが、全部で百四十九名、かようになっております。
  39. 櫻井奎夫

    櫻井委員 なおこのほかに、八名の患者皮膚を切り取ったということが言われておるのでありますが、この事実について調査してあるかどうか。
  40. 緒方信一

    緒方政府委員 私の方の調査では、十一名の患者に対しまして、接種をいたしました部分の皮膚の切除を行なったそうです。これは特に接種局所反応が非常に強い者に対しまして、治療のために行なった、かようなことになっております。
  41. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これは特にその反応の著しい者について皮膚を切り取ったこと、これが医学的にどういう目的のもとになされたのか、これはまた河野さんの方の質問もあると思うのですが、いずれにいたしましてもそのような切開手術をするというような場合は、これは本人承諾を要するか、あるいは正常な意識のない精神病患者にそういう手術をする場合は、その両親あるいは父兄、そういう近親者事前承諾を必要とするのが当然常識だと考えられるわけでありますが、そういう手続をして手術を施行したのかどうか、そういう点はいかがですか。調査になっておりますか。
  42. 緒方信一

    緒方政府委員 これは大学側の話によりますと、全然生命には危険がない、あるいはまた患者の方に非常に経済的な負担をたくさんかけるというほどでもない、かような観点のもとに、そういう治療でありますから、一応承諾を得るということは必要ないということで、これは患者精神病患者であるという関係もございまして、承諾はとってないということでございます。
  43. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そういう点にこの問題が今日非常に大きくクローズ・アップされておる原因があると思う、たとえ生命に異状がないからといって、人の身体に傷あとを残すような手術を、しかも医者がやる場合、何の承諾もなく、医術上最善の方法であるからというふうに理由は幾らでも立つと思う、そういうことを精神病患者にのみ実施していくということが、明らかに前のカルテにも記載されてないという事実、こういうものと関連いたしまして、やはり精神病患者であるがゆえにこれを一種の人間以下のものとして、モルモットかなんかと同じような、もちろんそういう考えはなかったかもしれませんけれども、少くとも普通の人間の取扱い以下にこういう意識的な——無意識かわかりませんが、そういうことを犯しておる、こういうことを外部の者が考えるのは当然であります。たとえば正常な判断力を持たない精神病患者であろうとも、基本的人権は平等であるはずでございます。こういうことが平然と今日文部省管轄下にあるところの国立大学において行われておるというところに世論が非常に大きく反発をしておる大きな原因がある、こういうふうに私は考えるのでありますが、このように医師の単独の判断で何ら本人なり近親者承諾なく、あとに残るような手術をやる、こういうことが何ら法的に抵触しないものかどうか、人権擁護局長の御見解を承わっておきます。
  44. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 その点は非常に重大な問題と思うのでありますが、本件におきまして皮膚をとったその目的がほんとうの治療行為であるのか、あるいは単に医学上の実験あるいは研究のためのみになされたかどうかということ、そこに問題があると思うのでありますが、それがまだ現在の調査段階でははっきりしておりませんので、その点の真相を確かめた上、それが人道上の問題に反するかどうか考えてみたいと思っております。
  45. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これは正常な意識を持っていない精神病患者ですから、こういうものに手術なり何なりやるときには、その近親者事前了解というものはどうしても必要だと思うのですが、そういう事前了解も得ないでこういう手術をした場合に、明らかに人権を侵害した傷害罪というようなものに抵触しないかどうか、私はその見解をお伺いしておるのです。
  46. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 医者治療行為というものと、またその手術が、結局人の身体を傷つける場合が多いのでございます。今までも本人承諾のない治療行為傷害罪関係は非常に微妙な点があると思うのでございますが、手術あとにそういう傷害あとが残るような結果を生じました場合に、常にこれが治療を受けます者の人権の侵害と申しますか、あるいは傷害罪になるかどうか。これは非常に微妙な点があって、私ども今ここで具体的のケースでないと何とも御返事ができないような気がするのであります。
  47. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これはきわめて明瞭な具体的なケースがここに出てきておるではありませんか。この具体的なケースについて私は聞いておる。これは、相手は精神病患者で、おのれの判断ができない人、そういう人に対して手術をするとかなんとかいうことであれば、これは当然その最も近しい肉親か何か、そういう人の事前の承諾が要ることは当然だと思う。そういう事前了解も得ないで、治療に最善の方法であるからといって医者が勝手なことをやっていいかどうか問題です。これは医学的に言えば、最上の治療法であるというような医学上の見解も成り立つでありましょう。しかしそれにしても最上の医術を施すにしても、当然正常な人であれば、本人のからだを傷つけるのですから、本人承諾を得るのでありましょうが、これは正常な人間でないのだから、少くとも近親者承諾を事前に得ることが当然の理だと思うのでありますが、その点はいかがですか。具体的なケースについて私は聞いておるのです。
  48. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 その点もう少し研究させていただきたいと思います。
  49. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これは微妙な点であることはわかりますけれども研究中々々々というのでは一向らちがあかない。しかもこれは非常に大きな問題として全国的に取り上げられておる。私はこのことは新潟大学だけの問題ではないと思う。こういうことで全国各地の研究所といいますか、そういうようなところでこれに類似した行為が行われておるのではないか。もしそういう事実があるとしたならば、これは非常に大きな人権の問題に関連いたします。特に大学というような最高の真理を究明する学府において、そのようなことが行われておることは放置するわけには参らない。こういう点については、厚生省なり文部省なりあるいは人権擁護局なりは、もう少しはっきりした明瞭な態度を持っていただかないと、医療と傷害罪程度は微妙で言われないとかなんとか言っておったのでは、これは一時を糊塗するだけであるので、私ははっきりした態度をこの際各当局に御要望申し上げたい。厚生省の医務局におかれましてもすみやかに厳重な調査をなさって、そのような行為がもしも人権を侵害するというようなことでありますならば、こういうことは即刻やめていただきたい。なお専門的な見地については、私の質問に続いて河野委員から質問があると思いますので、私の質問はこれで終了いたします。
  50. 長谷川保

  51. 河野正

    河野(正)委員 たまたま新潟医大におきます精精病患者人体実験という問額が出て参りましたから、私もこの際さらに突っ込んでいろいろ御質疑をいたしまして、御所感を明らかにしていただきたいと思います。  私は、この問題が非常に大きな要素を持っております点は、何と申し上げましても一つ研究の限界だと考えております。研究法律との限界がどこにあるかという問題だと考えておりますが、ここで私どもが重視しなければならない問題は、やはり今日の研究というものが、私どももそういった道に携わってきた一人でございますが、一つ研究で最終的な結論に到達するまでの間におきましては、やはり実験という段階を踏んで参ることは当然のことだと思います。そこでこの研究という限界を非常に重視しなければならぬことは当然でございますが、さればといって人権がじゅうりんされるということであってはならないと考えております。その点につきまして若干御質疑を申し上げたいと思うのでございますが、こういったいろいろな事態が社会的に大きく取り上げられることによって、今後国民は医療に対します一つの不安を非常に抱いて参ります。こういったことも問題でございますし、またこの研究の限界が極端に制約されますと、やはり研究が退歩する。研究が萎縮してしまうというような問題も起ってこようかとも考えております。さらにまた、こういった問題を私どもが早急に具体的に善処しないと、医療に携わる者が萎縮をいたしまして、自由な医療と申しますか、伸び伸びした医療と申しますか、能率的な医療がなかなか困難になる、こういったいろいろな影響があるわけでございますから、従って私は、ただいま櫻井委員からもいろいろ御指摘がございましたが、そういった観点から櫻井委員もこの問題の真相を究明されたと考えております。そういった大局的な立場から、まず大臣はいかが御所見を持っておられますか、明らかにしていただきたいと思います。
  52. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 診療研究との限界というものはなかなかむずかしい点があると考えております。ことに大学病院等におきます診療は、あるいは語弊があるかもしれませんが、全体的に考えますればやはり医学の研究ということに役立たなければならぬはずのものと心得ておるわけであります。実際今後診療するに当りまして、それが単なる研究のための行為であるということになりますと、これは放置できない問題だと思います。やはり今までいろいろ十分研究の結果、これならばよろしかろうという段階に達したものでなければ、人間に向ってやるべきことではないと私は考えるのであります。今度のこの問題については、事が専門に属しますので、私の何とも判断しかねる問題でありますが、事の真相につきましては十分究明いたしまして、将来あやまちを繰り返さないように善処して参りたいと考えております。
  53. 河野正

    河野(正)委員 そういう研究というものは慎重にやるべきであるということについては私も全く御同感でございます。そこでさらにお尋ね申し上げておきしたいと思うのでありますが、この事件が起りましたのは、先ほど櫻井委員からも御指摘がございましたように、昭和二十八年から三十一年にかけて、実に四年間にわたって行われた実験でございます。しかもまた弁護士会からこの問題が提起されまして、すでに二週間以上経過いたしております。そのように時間的にも相当経過いたしておりますが、今日なお調査中々々々ということでこの問題が明らかにされないということは、私は全く遺憾であるというふうに考えるわけでございますが、もちろん遺憾であるということでは済みませんし、また今日までいろいろこういった事態が発生いたしますと、ややともすれば当局調査調査中ということで時間をかせがれて、その間に冷却期間がきていつの間にかほったらかされるというような傾向がなきにしもあらずであるというのが、今日までの実情でありましたから、少くともこの機会においては、今日まで調査されました中間報告を明らかにしていただくことを要望いたします。
  54. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいまの御質問については、先ほどお話がございましたように、もしもこれが限界を越えることになりますれば、実際いわれるごとくこれが人体実験ということになりますれば、人権じゅうりんということになります。しかしながら一面これが許される研究範囲であるということでありますれば、いたずらに遷延いたしまして真相がはっきりしないことには研究の意欲を阻害することになりますので、これはいずれにいたしましても、お話通りなるべくすみやかに事態をはっきりさせなければならぬと私ども思っております。ただ先ほど申しましたように、事柄が非常に専門的なことでもありますし、限界ということは非常にむずかしいものでございますので、私どもとしましては十分慎重に材料を収集しておるというところでございます。いろいろ弁護士連合会から指摘されました点等につきましては、一応それに対しまする病院側説明を聞いており参ます。ただそれをここでずっと申し上げることが、今の御質問の御趣旨であったかどうかはっきりいたしませんけれども、一応それを申し上げることはできます。一応簡単に概略を申し上げますと、事実といたしましては先ほどお話通り昭和二十七年から三十一年にわたりまして新潟大学の医学部の桂内科新潟精神病院長と協議の結果、精神病院におきましてその適用患者に対してツツガムシ発熱療法を実施することになりまして、桂内科におきまして従来県内の自然感染患者等に対しまして実施して参りまして、十分成績を上げておりますツツガムシ病療法を用いて実施したということでございます。人数等につきましては先ほど申し上げました通りでございます。それからこのツツガムシの病原菌を用います発病治療というのもは、新潟大学説明によりますと、これ精神病患者に対しましていろいろございます施療法のうちの一種として十分認められておるものであり、精神病院側におきましても、もしできればやりたいという考えがある。桂内科におきましては先ほど申しましたように 県内における自然感染患者に対しましての施療方法等も十分確立しておりまするし、あるいは動物実験等も十分経まして確信を持っておりますので、それを用いて、発熱療法精神病治療と合せて行なった、かような説明に相なっております。  あとの、先ほども問題になりました皮膚の切除でございますが、これは大学側説明によりますと、切除いたしますと瘢痕がやはり残りますので、なるべく瘢痕が目立たないように十分注意してやった。特に注射部位も目立たないところを選んで、内ももを選んだということでございます。しかしこれは患者によりましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、その反応の度合いが違うので、非常に強い反応を示した特定の者、百四十九名のうち十一名でございますけれども、これに対しましては一センチ平方、深さ三ミリの皮膚を切除いたしました。これはかいようが起ることを防ぐために、なるべく少くするためにこれを行なった、かような説明でございます。現在この患者状況を見ますと、うち一名はちょっとひどい傷が残っておるそうでございますけれども、これは説明によりますと、その患者あとでひっかいたために傷あとが相当残った、かような説明でございます。これはあくまで治療して潰瘍を防ぐためである。それからなおツツガムシの自然感染等の場合におきましても、皮膚を切除して治療するということは従来も行われておったという説明でございます。それからこの治療を行いました期間において死亡者が九名出ておりますが、これは発熱療法との関係はないという説明でございます。つまり発熱療法と申しますのは、熱のある期間は一週間から十日くらいであって、通常高熱は三日か四日くらいでございます。特に抗生物質等の投与によりまして、ツツガムシ病そのものはすみやかになおすことができることになっておる。ところがその死亡というのは、その接種後一番早いもので四ヵ月後に死亡した人が一人おります。これの原因はいずれも肺結核、肺炎、それからその持っております病気そのもの、麻痺性発作ですか、その病気、それから自殺した者が一人おります。全部で九名ございますけれども、いずれも併合症あるいは自殺等で死んだのであって、発熱療法のためではない。今、申しますように接種いたしました後四ヵ月が一番近いのであります。あとはいずれもそれよりも経過したときにおいて、そういう事故が起った、こういうことでございますので、死亡そのものと発熱療法とは因果関係はないという説明でございます。大体問題点として指摘されておりますおもなことにつきましての説明は以上の通りでございます。  なお詳しい点につきましては、先ほど冒頭に申し上げましたように十分調査をさらに精密にいたしたいと考えております。従来の説明によりますと、私どもといたしましては、言われるごとく人体実験ということではないじゃないか、ツツガムシ療法の従来の方法を十分研究をいたしまして、その療法を用いて、あわせて精神病患者発熱療法を行なった、かような説明に現在までの調べにおきましては相なっておりますことを申し上げておきたいと思います。
  55. 河野正

    河野(正)委員 もともとこの委員会は社会労働委員会でございませんから突っ込んで申し上げたいと思いませんけれども、しかしながらこの学問が、事、人命に影響する問題でありますから、そういう建前から私は二、三さらに質問を続けて参りたいと思いますが、限界の問題ではございますけれども、いずれにいたしましても研究というものが生命に連なる問題でございますから、その点につきましては私はきわめて慎重を期さなければならないと考えております。  そこでこれは一つ厚生当局お尋ね申し上げたいと思うのですが、それでは今度の治療責任者は一体どこにあったのか、あるいは国にあったのか——国と申しますと新潟大学のことでございますが、そこにあったのか、あるいは新潟精神病院にあったのか、いずれに責任の所在があったのか、その辺を一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  56. 小澤龍

    小澤政府委員 先ほども申し上げましたように、精神病治療の全体は精神病院にあることは間違いはないのであります。しかしながらその治療方法一つといたしましてツツガムシ病を接種するということにつきまして、精神病院大学側が折半して担当したのか、あるいは精神病院が主となって大学は技術的援助をやったのか、あるいは大学が主となって精神病院がこれに協力したのか、その辺の程度が大へんむずかしい問題でございまして、これは同時に研究のためにやったか、あるいは治療のためにやったかということを判断する一つの手がかりとなる問題であります。これらの点については調査をしてみませんと、いずれが主体であったかということはこの際申し上げられないと存ずるのであります。
  57. 河野正

    河野(正)委員 私ども経験によりますと、普通一般精神病院に収容されておる患者の大部分の治療費というものは公費患者が多いと思うのであります。そこで今度行われました百四十九名の患者はどういうふうな給付の対象となっておったか、その辺を明らかにしておいていただきたいと思います。
  58. 小澤龍

    小澤政府委員 百四十九名の患者の延べ内訳は、措置患者が四十名、生活保護法患者が九十名、国民健康保険の患者が十二名、健康保険の患者が九名でございます。
  59. 河野正

    河野(正)委員 さっきからいろいろ論議されておる過程で承わって参りますと、研究というよりもむしろ治療が重点であるというふうな当局の御説明が多かったと思います。それではこの治療費は一体どこが負担しておるのか、この辺を一つ明らかにしていただきたい。
  60. 小澤龍

    小澤政府委員 ただいままでわれわれの知った事実によりますと、ツツガムシ接種した、これに関する一切の費用は病院側患者側も、ないしは生活保護法、健康保険等の——つまり健康保険であれば保険者でございますが、これらが負担しておらぬ、一切大学の奉仕のもとに行われた、かように聞いております。
  61. 河野正

    河野(正)委員 ただいまの御発言は厚生省といたしましてはきわめて重大でございます。と申し上げますのは、いやしくも健康保険なりその他生活保護なり、公費の患者診療した件について、カルテ記載がない。しかも治療しておきながら、治療費に対する責任を貫徹しないということは、健康保険法等に関します法律違反であることは明らかであります。その点お認めになりますか。
  62. 小澤龍

    小澤政府委員 もちろん入院料その他の一般の医療費はそれぞれ負担しているに違いないと考えます。ただそれ以外に、ツツガムシ接種したその事柄についての治療費については、大学側が負担している、患者側においては負担しなかった、かように聞いておるのであります。
  63. 河野正

    河野(正)委員 ただいまのお答えを承わりますと、厚生省といたしましては全く無責任きわまりないと思う。一般の開業医に対しましてはそういったことが非常に厳格に強要されておる。しかもただいまいろいろ御答弁を聞いて明らかになりましたことは、これは研究よりむしろ治療が重点であるということになりますならば、治療というものが病院で行われております以上は、当然病院がそれぞれの公費に対します治療費というものを請求すべきだ、もしそうでないといたしますならば、これは健康保険法等に対する法律違反だということは明らかでございます。さように確認してよろしゅうございますか。
  64. 小澤龍

    小澤政府委員 私は大学側の経費負担については詳しく存じておりませんが、大学におかれましては、治療目的でございましょうけれども、当然研究治療といったような経費があるのではないか、そういう経費でやったかあるいは他の方法でおやりになりましたか、そういう点は私はつまびらかに知っておりませんけれども、その程度に聞いておる次第でございます。
  65. 河野正

    河野(正)委員 そういうふうな答弁を承わって参りますと、やはりこの事件は治療というよりもむしろ実験だという結論になってくるわけです。そこで私は今のようないろいろな質疑を重ねておるわけですけれども、ただいまの厚生省当局の御答弁を承わって参りますと、やはりこの問題の結論というものは、実験であったというふうな結論になりますが、もしそうでないとするならば、私が理解するように、納得するような答弁をここでしていただきたい。
  66. 小澤龍

    小澤政府委員 経費分担の点もいろいろございますが、従来とも医者診療した場合、いろいろな事情によって、必ずしも全額本人から取り立てるとかなんとかいうことではなくて、お医者さんが本人の立場も考えて負担する場合も再々ございます。これは実際あるわけであります。ただいま御指摘の点は、まだ治療目的であったか実験目的でやったかということを判定する段階に達していないのでございます。これは病院側説明を聞いただけでは事柄がなかなかわからないと思います。今の問題を含めまして患者の病状なりその他の治療法等の関連で、その他いろいろ客観的事実をたくさんつかみまして、そうして冷静に客観的に判断いたして、初めてこれが実験のために行われたか、研究のために行われたか、治療のために行われたか、あるいはその目的は半々であったか、どっちがどうだということが判断できるのでありまして、単に表面に現われた、ないしは病院その他の人々の陳述だけでもって、われわれがただいまにわかに判定を下すことは困難ではないか。さよな具体的事実、どちらを意図してやられたかということを判定するに足るような事実を目下収集中なのであります。
  67. 河野正

    河野(正)委員 私が質問いたしております点は、客観的にこの問題を判断いたしますと、いろいろな考え方が成り立つわけです。そこで具体的に判断する一つの材料として、私はさっきのような点を取り上げたわけです。そこであなたが仰せられますように、なるほど自由診療の場合には治療費がかさばるとか、この治療研究団に半々、折半してもらいたい、あるいは大学が持とうというようなことはあり得るわけです。しかしさっきの診療されました患者の内容を見て参りましてもほとんど公費なんです。社会保険、国民保険、あるいは医療給付、あるいは首長の措置患者というようなすべて公費の患者なんです。公費の患者に対しましては、もし治療であるならば当然その治療費を請求するということが健康保険法に定められた内容であります。そこでその治療費を要求しないということは、とりもなおさず実験だということに結論されるがどうだということを言っておる。あなたは一般診療患者等を対象にしておっしゃいますが、この診療されました患者の内容をごらんになればわかりますように、ほとんど公費なんです。公費の場合、治療した場合にはその治療費についてすべて請求しなければならぬという義務がある。その義務を怠っておりますことは、とりもなおさず実験だという結論になりますけれども、どうだ、こういうように私は指摘しておるわけであります。
  68. 小澤龍

    小澤政府委員 御承知のごとく健康保険等における医療費の支払いは、いろいろな治療方法をわが国の学者が研究して、相当成果をあげて、それから学会等に諮問いたしまして、これは適正であるという結論をいただきましてから、いわゆる医療基準の中にこれを加えまして診療報酬請求の対象となるわけであります。その事務手続の段階に至る手前におきましては、大部分のお医者さんが、あるいは学会が、確かにこれは有効であると認定いたしましても、その事務手続が終るまでは医療費としての諸求はできないのであります。その間のギャップはいろいろな関係におきまして埋める場合もあり得ると存ずるのであります。
  69. 河野正

    河野(正)委員 そういたしますとまた一つ矛盾があらためて生まれてくると思います。と申しますのは、さっき文部省当局からの御説明によりましても、厚生省当局の御説明によりましても、もうこの治療法というものは安全である、非常に危険性がないのだ、大丈夫だ、最上の治療である、そこでこういう治療をやったのだということです。それはこういう実情でやったのだからひいては実験じゃない、こういう御説明の仕方だと思う。ところが今申しますように、健康保険でも医療給付でも、いわゆる生活保護法の医療救護でも、請求してはならないという実情にあるのがこのツツガムシ治療法なんです。さっきおっしゃった、これは最上の治療であるということは、万人が認めた治療ということなのであります。ところが一方におきまして社会保険におきましては認めていない。その認めてないものを、さっきの御答弁によりますと、万人の認めたことである、最上の治療であるからこれは実験ではないのだ、こういうことなんです。その間には明らかに矛盾があります。そういう矛盾は、言葉を変えて申しますならば、やはり実験に通ずるように私は考えるわけですが、その点いかがですか。
  70. 小澤龍

    小澤政府委員 保険医療等につきましては、医療指針に基く医療がつまり保険医療費の支払い対象になるわけであります。先ほど申し上げましたように、それが手続上直ちに支払うという段階に至りませんものについては、それ以外の治療方法も、医師がこれを行おうとする場合におきましては、医師の全責任において行い得ると考えます。ただ社会保険医療ではない。従って社会保険に医療費を請求することはできない、かように考えるのであります。  それからただいまの御質問に関連してでありますが、私どもはそれ以外のいろいろ客観的なたくさんの事実をつかみまして、われわれがこれを実験でやったか、治療目的でやったかということを判断する以外に、これが治療として認められるか、あるいは実験として容認されるか、いずれの結論が出るか知りませんけれども、そういったことにつきましての学問的背景あるいはその基盤というものをにらみ合わせて、これまた判断しなければならないかとも存じます。私どもといたしましてはそういう各種の事実を把握いたしまして、しかる後に厚生省におきますところの精神衛生審議会等々に諮問をいたしまして、これらの点を厳正に判断いたし善処していきたい、かように考てておる次第でございます。
  71. 河野正

    河野(正)委員 いろんな角度から眺めなければこの問題の結論が出てこぬということは、われわれわかるわけです。しかし今日、社会保険医療におきましても治療の基準としては認められないということでございますから、この百四十九名の中に社会保険の一つのワク内で治療しなければならぬ者が、少くとも生活保護法の九十名、あるいはまた健保の九名ですか、こういった百名に及びまするたくさんの患者がおられるわけです。そこで私どもといたしましては、いやしくも健保なり生活保護法適用を受けておる患者ですから、これは当然社会保険で規定された治療等に準じて治療を行なっていくというのが建前でなければならぬと思うわけです。社会保険でありあるいは生活保護法であり措置患者である者を、いわゆる公費であるからそういった社会保険でも認めない治療をやっていいのだということには、私は相ならぬと思うのです。最上の治療であるならば、自由診療の、自分でお金を出す人に対して、りっぱな治療でございますけれども、社会保険で認めて下さいませんから、一つお金を出すから治療して下さいませんか、こういった話し合いの結果であるならばこれは了解がつくのです。それを今言ったように全部公費の患者を引っ張り出しまして、それに対してやったということは、これは実験のにおいというものを消すことができないというふうに思うわけでございます。ここは社会労働委員会ではございませんから、私は執拗に質問を繰り返したくはないと思いますけれども、しかしながらやはり事人命に関する研究でございますから、この点は明らかにしておいた方がよかろうと考えまして、一つ結論的な御答弁を厚生省当局からお願いしておきたいと思います。
  72. 小澤龍

    小澤政府委員 ただいままで承わったところによりますと、この病院入院患者はほとんど全部社会保険なり生活保護法なり措置患者でございまして、自費患者は一、二名しかないということを聞いております。従いまして、この病院において実施する限りにおきましては、自費患者が非常に少かった。なお、その事実であるかどうかということは今調査を命じておりますが、さように聞いておるわけでございます。
  73. 河野正

    河野(正)委員 そういうことを言われるので、私は重ねて質問しなければならなくなるのです。たまたまその病院がそうであったからいたし方なかった、そういうことは必ずしも論拠にならぬのです。それならば、もっと自由診療の多い病院のところに行ってやった方がいいと思うのです。そういうようにわざわざ問題を起すような答弁をされるから、私は質問を重ねていくのです。たまたまその病院が公費が多かったから、そういうことなら新潟病院でなくとも、自由診療の多いところでやればいいわけです。あなた方は、この実験治療だというふうにことさらに擁護されておるという感じを受けますから、私はくどくやりたくありませんけれどもやらざるを得ないのです。  それならば、私はさらにもう一点お尋ね申し上げます。それでは百四十九名を足かけ約四年間にわたって研究をやられたわけですから、それについてどういう成果が現われたか発表していただきたい。
  74. 小澤龍

    小澤政府委員 他の治療法と比較いたしまして、どの程度の成果があったかなかったかということにつきましては、個々のケースにつきまして詳細報告するように、県の衛生部の方に指示してございます。
  75. 河野正

    河野(正)委員 そういうことをおっしゃるから私はまた追及しなければならぬ。さっき大挙局長は、ツツガムシが危険でないということは、高熱が出ましても十日以内しか持続しないのだ、こういうお話でした。そうでしょう。ところが麻痺性痴呆いわゆるパラリーゼに対しては、発熱する場合大体三十九度程度で十数回熱が出ないと効果がないと言われておる、これは学問的な定説なんです。そうしますと、さっきとにかく医療的調査をしなければならぬとおっしゃいましたけれども、学問的な立場、学問的な定説から言いますと、あまり効果がないということなんです。大体三十九度程度の熱が十数回出なければ効果がないということは学問上の定説なんです。さっき危険がない、危険がないということを強調する余り、熱があまり出ないのだ、こうおっしゃっているでしょう。そうすれば、新潟県の県庁で調査せぬでも、効果がないということは明らかに出ているわけです。これはどうですか。
  76. 小澤龍

    小澤政府委員 河野委員は専門家でいらっしゃいますので、御高説は承わらなければならぬと思いますが、なお私どもといたしましては調査の必要上、その点につきまして病院側としては効果があった者が相当ある、こう言っておりますので、具体的に調べたいと存じております。
  77. 河野正

    河野(正)委員 その病院側の一方的な見解ばかり聞いて、そういうことをあなたは擁護することばかりおっしゃるから、私どももいろいろしつこく追求しなければならぬのです。私どもの意見は私どもの意見で十分聞き、現地の意見は現地の意見で聞き、第三者の専門的な立場の人の意見を十分聞いて、それで結論を出すというならばけっこうですけれども、しきりにあなたは私ども質問に対して、病院側あるいは大学側の立場に立ってのみの答弁をされるから、私どもはいろいろ追及したくなるのです。ですから、そういう態度を改めて、要するに学問的な、中立的な立場の人の意見も十分聞こうし、あるいは私どもの意見も十分聞こうし、そういう立場に立って最終的な結論を出して、今後社会に不安を起させあるいは患者に不安を起させあるいは人権擁護というようなことに誤解を招かないように、こういう努力をすることがあなた方の責任だ、そういう建設的な意見を私は言っているわけです。それをことさらにあなたは大学当局あるいは病院当局の立場を擁護するのみの答弁に努力をされるからそういうことになるわけです。私どもは何も病院をいじめたりあるいは桂教授をとやかく言っているわけではありません。そういう不安を起させることは今後の研究の発展の上におきましても非常に大きな制約を与えますし、また国民大衆というものが医療を受ける場合に非常に大きな不安を持ってもいけないので、そういう建設的な立場で私はこの問題について論議しているのですから、このように御理解願いたいと思うし、さような御理解の上に立ってこれについて善処していただきたいと思います。  それから、あまり長くなりますから最後に大臣にお尋ねしておきたいと思いますが、それはやはりこういった問題は、私は、大学研究費の額が非常に僅少だ、そこでおのずから人体実験をしなければならぬというような欠陥が生まれてくる可能性もありはせぬかと心配している。大臣も今日まで科学技術の振興ということに力点を置いてきておられるのでありますから、私どもはその点については非常に敬意を表しておりますが、こういった点があるいはこういう不祥事件を惹起する原因であるといたしますならば、私は非常に遺憾だと考えます。そこで、こういった問題の起りました時期を一つの契機として、今後とも科学技術と申しますか、研究と申しますか、そういった方面に対しまして十分努力していただきたい、それに対する大臣の御所感を承わっておきまして、私の質問を終りたいと思います。
  78. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来の質問を拝聴しておったのでありますが、大学局長のお答えも、これは現地側の説明を御披露申し上げているにとどまっていると思うのであります。また厚生省の方の御答弁も、十分客観的に調査する、こういうことを言っておられるわけでありまして、決してほかに意図あっての御答弁じゃない、私はさように考えますので、その点は御了承願いたいと思います。  それから今のお尋ねでございますが、そういうふうなことから妙な無理が大学病院で行われておるというふうなことでありましては遺憾でありますので、御注意の点は十分頭に入れまして今後善処いたしたいと考えます。
  79. 平田ヒデ

    ○平田委員 関連して。ただいままでの御質問を承わっておりましてふと思いついた質問なんでございますけれども精神病に対する発熱療法としてマラリアの療法がございますね。そのマラリアの療法の問題については、別に何かこういうきょう御質問になったような問題が起った例はございませんでしょうか。
  80. 小澤龍

    小澤政府委員 実は私は精神病の方は専門でないもんでございまして、詳しいことは存じませんが、私が学生時代に習ったことでは、マラリア療法は進行性麻痺なんという精神病に対しまして特効的効果があるということで、日本でも各地において盛んに行われておったということを聞いております。ただ最近は梅毒性の精神病が減ってきたという話を聞いております。それからマラリアの種が十分に手に入らない、マラリア療法は種が種切れになりましてやりにくくなってきたという話も聞いておりますが、本問題に関するような困った問題、世間の批判を浴びるような問題は日本では今日までは聞いておりません。
  81. 長谷川保

    長谷川委員長 平田君に申し上げますが、大橋精神衛生課長説明員として来ております。ですから必要があれば大橋説明員から詳しく説明さしてもよろしゅうございます。
  82. 平田ヒデ

    ○平田委員 どなたかおわかりになる方から答えていただければいいわけです。
  83. 大橋六郎

    ○大橋説明員 私精神衛生課長の大橋でございますが、ただいま小澤局長からお話しいただきました点とそう違いないお答えしかできないと思います。しかしながら繰り返して申し上げますが、現在マラリア療法というものには、精神障害者の治療がちゃんと適応症として載ってございます。適応症と申しますか、梅毒性疾患はマラリアの発熱療法によって治療するのだ、治療してもよろしい、また治療するのが定説であるということになっております。
  84. 平田ヒデ

    ○平田委員 私台北におりましたときに、これは脳梅毒の方なんですけれども、四十五、六才の方がマラリア療法をされて、幸いにしておなおりになったんです。今も健在でいらっしゃるのですけれども、そのマラリアの病原体は一度入りますとなかなか血液の中からとれない。体力が弱った場合に出るんだそうでございまして、ときどきそのマラリアで苦しんでいらっしゃるというのですが、これは別に医学界の問題にはなっていないのでございますか。
  85. 大橋六郎

    ○大橋説明員 ただいまおっしゃいましたことはまことにごもっともなことでございます。そういう事実も実際はあるのでございます。その点がやはりマラリア療法というもののまた一つの短所でもないかというふうに考えておるのでございます。
  86. 平田ヒデ

    ○平田委員 この病原体を取り除くための研究はなされていないのですか、むずかしいのでございますか。
  87. 大橋六郎

    ○大橋説明員 従来でも現在でも、マラリアの病原体接種しまして、それによって発熱を起したものに対する治療法は確立をしております。ただこれがからだがあとで弱ったためにまた再発するという例も、わずかな例だと思いまするが聞いております。絶対的に完全な治療だとは申し上げられないと思いますけれども、しかしながら現在の段階におきましては、発熱療法としてマラリア療法は梅毒性疾患には優秀な治療であるというふうにわれわれは解しております。
  88. 平田ヒデ

    ○平田委員 これは変な話なのですが、この方が脳梅毒でマラリア療法が大へんよくきいたというので、品行方正学術優等と思われるような殿方が続々血液検査にいらしたということを聞いておりますが、これは早く治療すればなおるのでございましょうか。脳梅毒は出ないのに五十くらいになると盛んに出るということを、これはことに私女性の立場ですから——内心苦しんでいらっしゃる方もいらっしゃるのです。女性の中には、そういうことがあったら、早く治療して、マラリア療法なんかでなおっても今度はマラリアで苦しむというようなことのないようこということは、奥さんたちのひそかに持っている非常な心配なのでございますけれども、こういう点はどうなのでございましょうか。
  89. 小澤龍

    小澤政府委員 梅毒は早期に発見いたしまして徹底的に治療しますれば、不幸な脳梅毒に至らずして根治せしめることができるということが今日の学説になっております。
  90. 河野正

    河野(正)委員 先ほどに引き続きまして若干お尋ねを申し上げたいと思います。  視覚教育が教育に対しましていかに重大な影響を及ぼすかということは、これは言を待たない事実でございます。そこで昨日から教育テレビの問題がいろいろと当委員会におきましても論議されたのは御承知通りでございます。それに関連いたしまして私御質問申し上げたいと思いますことは、最近市中で上映されております「白い山脈」という記録映画がございます。映画が及ぼします影響は、先ほど申し上げましたようにきわめて重大でございます。これは私も見せていただきましたが、まことに残念なことには、私どもはああいった生物学的な知識がございませんので、やはりあの映画を見ますと、あれが正しいものであるという認識に実は立っておったのでございます。ところが福岡に参りましたところが、どうもあれはうそらしいという話を聞きました。新聞には動物生態を誤まっておるというようなことで、日本哺乳動物学会でございますか、抗議が出たということであります。ところがその抗議に対しまする文部省当局の態度というものが、どうも不明確なような、私どもの納得のいかぬような態度でございますが、まずこういった問題に対しまする御所見を伺っておきまして、さらに納得できなければ二、三質疑を繰り返して参りたいと思います。
  91. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいま映画の問題について、特に「白い山脈」につきましての御質問でございますが、これはちょっと経過を申し上げますと、先週の土曜日の九日でございますが、日本哺乳動物学会の会員の方々がお集まりになりまして、たまたま「白い山脈」についての座談会というような形でいろいろお話が出たそうでございます。そのときの話では、この映画が一般の社会の人たちに対しまして自然の描写あるいは動物に対する関心を持たせるという意味においては、非常に稗益するところが多い映画ではあるけれども、学問的にいろいろしさいに検討いたしますと、理科教育の面として学校の理科教育に使うには、これはいろいろ誤まった考えを与えるといけない、こういうような点から、理科教育に利用させる場合には特に注意してほしいというようないろいろな個所を発見したわけでございます。従ってこの日本動物学会の会長の黒田長礼さんから三月九日の日付をもちまして——実は一昨日なのでございますが、一昨日会長の名前でもって、この映画は一般の社会に対して稗益するところ多大と考えるけれども、動物学的に検討しますと誤まりがあると見受けられる。従って理科教育に利用させる点については特に御配慮を願いたい。こういうような要望書をお出しになったわけでございます。この要望書が参ります前に、実は私は新聞で見ましたので、会長の黒田さんにお会いいたしましていろいろただしたのでございますが、そのときも、要するに一般の劇映画としては非常にすぐれたものである。しかしながら純学問的に申すと、今申し上げたように生態に若干の間違いと思われるような点もあるから、その点は学校の子供に理科教材として利用させる場合には注意してほしい、こういうようなお話でございました。従って文部省といたしましては、そういう点を十分承わりまして、それに対して善処したいと考えたのでございます。従って新聞にそういう記事が出ましたので、私どもとしましては、地力の学校などに与える影響もいろいろあろうかと思いまして、とりあえず審査の衝に当りました分科審議会の委員の有志に集まっていただきまして、そういった点をいろいろ検討いたしたのでございます。しかしながら、この映画は最初から教材映画として文部省で特選したのではございません。これをちょっと申し上げますと、文部省では映画の審査をいたします場合に、いろいろ区分けをいたしております。一つは教材映画として選定をするというもの、そのほかに二番目には短編劇映画、こういうものを選定いたしております。三番目にいたしておりますのが、一般の劇映画、そういう三つに種類を分けまして、映画の審査をやっておりますので、一般教材映画と銘打つ以上は、内容を非常に正確にしなければならない。その場合におきまして、この映画が非常に日本アルプスの自然の風景を写し、また動物の生態を相当社会一般の人に知らせるという意味において、教養面において非常にりっぱなものである。しかもアメリカでできましたディズニーの自然の驚異シリーズ、あれに近いような、映画の撮影技術として日本としては非常にすぐれたものであるという点から、これは一般に稗益するところが多大であるということから特選にいたした。従ってそういう立場をはっきりさせる必要がある、こういう考えから、この哺乳動物学会の御意見に対しまして、もし明確な間違いがあれば映画会社もそれを直すにやぶさかではない、こう言っておりますし、文部省としても間違ったところは虚心たんかいに直すべきだと考えております。従って、そういったことを映画会社にも申し入れました。従って一般劇映画として少年向け、それから成人向け、家庭向け、三つの用途を指定して特選をいたしたわけであります。従って現在のところ、そういった申し入れがございましたが、一般に利用する場合の注意等については十分考慮していきたい、こういうような文部省としての選定の趣旨、それから今後の取扱い方についての一応の態度を明確にする、こういうような方法をとったのでございます。
  92. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長から御説明がございましたように、特選に至りました過程の事情はよくわかることでございますけれども、しかし及ぼす影響というものは別な方向にいっておると私は思うのであります。と申しますのは、もちろん劇映画として特選としたので、そこでフィクション等についてはやむを得ないというような御見解のようでございますけれども、しかしやはり営業成績を上げるためには、記録映画として宣伝した方が——私ども実は記録映画として宣伝されるものですから、一つそういう動物の生態も勉強してみようじゃないかということで、つられて行ったわけでございますけれども、これが一般大衆の心理であると思うのです。そこで営業成績を上げるためには、そういった大衆の心理をつかみまして、記録映画と教育映画と、教材として当局は認めていないにいたしましても、理科学的に見て、あたかも正しいものだというような印象を与えるような宣伝をして、やはりこの映画を上映しておると思うのです。私どもまことに残念でございますけれども、そういった考え方で見せていただいたわけでございます。そういった及ぼす影響というものは、私は非常に大きいというふうに考えなければなりませんので、この際もし誤まりがあるならば、ただ指摘するというようなことでなくて、正しいものは正しいものとして改める。あるいは教材でないなら教材でないといたしまして、やはり劇映画として宣伝させるというふうな態度というものは、私は必要ではなかろうかというふうに考えるわけです。  それから時間がありませんから、一緒に御質問申し上げておきたいと思いますが、たとえば、今後は注意するというような御所見も出ておるわけでございますけれども、これは失言したとか、うそを言ったということについては、今後注意すればいいわけです。ところが、こういう映画は注意するといいながら、誤まった映画が次々に上映されておるわけです。しかも教育委員会等を通じ、あるいは製作者を通じて、訂正させるなら訂正させるということでございますけれども、言っておる間にも上映されていて誤まった印象を与えるとすれば、そういった誤まった印象を国民に植えつけておるわけです。そういう誤まった点なり、あるいは誤謬というものは、発見されましたならば、私はすみやかにこれに対して対処をする必要があると思う。これは教育に及ぼす影響が非常に大きいですから、その点について、この話題が出ましたのを契機として、すみやかに対処されるかどうか、この点私どもは非常に関心を持っておりますので、ここでやはりはっきりした御答弁を聞いておきたいと思います。
  93. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまのお話は非常に重要な点でございます。私ども映画を選定いたしまして、その映画を選定した趣旨なり、あるいはこの映画がどういつた方面に向くか、たとえば少年向け、成人向け、あるいは一般家庭に向くというような、その用途を指定しまして、選定のたびに教育委員会に流しております。従って従来の例から申しますと、そういった点では誤解はないと考えておりますけれども、特に今度の補乳動物学会の御指摘のような点で、明瞭なとり違いがあれば、これは今からでも直せる部面もございます。解説等も会社では直すと言っております。しかしながら哺乳動物学会でおっしゃっている点と、会社側の見解と若干食い違っている点もございまして、それはいろいろ映画の撮影の技術の問題に関連するかも存じませんが、そういった点で現在検討しております。従って、たとえば一例をあげますと、アオサギをゴイサギと解説しているというような点がございますれば、これは明瞭な間違いでございますから、それを回収して録音を直す、こういうように会社側は申しております。私どももそういった点はすみやかに是正させたいと考えます。
  94. 河野正

    河野(正)委員 最後に一つ要望とあわせてお尋ね申し上げておきたいと思います。それは映画会社もやはり企業でございますから、さっき御説明がございましたように、見解の相違ということが、出ましたあとで起って参りますと、やはり企業でございます以上は、いろいろ損失も多いと思うのです。そこでこういった問題は、文部省の中にも教育映画審議会ですか、そういうような機関もあるそうでございますから、そういった中に、こういった、問題につきましては専門家を入れるなり、そういった機構改革をやっていただきまして、そういった問題が事後にいろいろ問題にならないようにいたしますれば、国民も迷惑しないし、また企業の方も迷惑しないということでございますので、教材でなくても、やや教材に近いというような劇映画につきましては、そういった審議会等にも専門家を入れる等の機構改革をやっていただいて、そうして事後のいろいろな問題を起さないようにやっていただいた方がお互いに非常に好都合じゃないかというふうに考えるわけでございますが、その辺の機構改革について、最後に大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  95. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今度の「白い山脈」を私は実はまだ見ておらないのでございますが、こういう問題の起りましたことを契機として、やはり選定については特に注意をしなくてはならぬ。かりに劇映画といいましても、内容が今度のような場合につきましては、よほど科学的に間違いのないものをやらなくてはならぬということは、これは当然のことだと考えますので、そういう意味におきましては、十分注意して参りたいと考えております。  審議会の機構改革の問題でございますが、必要によってはそれもやってよろしいと思いますし、またそのつど問題の作によって専門家の意見を聞くというようなことも考えたらよろしいのじゃないかと考えます。
  96. 坂田道太

    ○坂田委員 関連。今の問題に関連して、社会教育局長としては地方に何らか誤まりは誤まりであるというような指示をされたのですか。私はこういう問題は影響するところが相当大きいと思うのです。しかしながら一応ああいう映画が出て、現に上映をされておる。日々影響を与えておるとするならば、学校の先生あたりが生徒を連れて見せて帰ってきてから、実はああいう点は学問的に間違っておるのだという個々の点をあげられることが、かえって逆に教育的効果を上げるのじゃないか、具体的な間違った点がはっきり子供に認識されるというような点も、私は指導上あり得ると思うのです。従いまして、適切なる指導をやるならば、災いを転じて福となすということができるのじゃないかと思うのですが、この際一つ文部大臣として何らかそういう措置をやられたのか、あるいはやられるおつもりがあるのか、大臣あるいは局長からでもけっこうでございますから、お答えを願いたいと思います。
  97. 福田繁

    ○福田政府委員 お答えいたしますが、実はこの問題が起きましてから、私どもいろいろ検討いたしました。先ほど申し上げましたように、会社側もいろいろ言い分がございまして、また会社側としても製作の過程におきましては学者に相当相談をしておるようです。従って一つの場面をとらえましても、見方によって多少違う点もあるようでございます。従ってまだ地方に対してこの点が間違いだということは示しておりません。もし明瞭な間違いがございますれば、至急その点は改めたいと思います。
  98. 長谷川保

    長谷川委員長 木下哲君。
  99. 木下哲

    ○木下委員 時間の関係でごく小刻みにいたしませんで、結論を伺いますので、大臣からお答えを願いたいと思います。また私どものお願いに対して御意見があったら、御遠慮なくお漏らしを願いたいと思うのであります。二、三件伺います。  まず最初は、学徒動員の件でありますが、戦争中に一億一心、撃ちてしやまんということで、高等学校、大学の学生が動員されたのであります。たまたま国内で爆撃を受け、焼夷弾を受けて死んだ、あるいは大けがをした者が相当数あると思うのです。お調べになっておると思いますが、これらの学徒動員で死んだ者に対しては、それ相当な慰謝料を払っておるかどうか。これが職業軍人などに比べましてどのような比であるか。また現在大へんなけがをして、両足両手もなくなったようなものがどのくらいの数生きておって、年金的にどんな保護を受けておるかということについて伺いたいのであります。
  100. 緒方信一

    緒方政府委員 第一段の御質問の学徒動員によって死亡、傷害等の事故に対しましてどういう援護が行われておるかという点でございますが、御承知のように戦傷病者戦没者遺族等援護法の三十四条第五項に基きまして、弔慰金三万円が支給されております。ただ、ただいま御質問の内に、軍人等に対する割合はどうかということでございますが、旧軍人軍属に対しましては五万円でございます。  それからなおどれくらいそういう該当の人がおるかという話でございますが、これは現在といたしましては非常に調査がむずかしい問題でございますけれども、今の法律ができますときに、昭和二十六年でございますが、文部省調査した結果が一応ございます。ただあらかじめ申し上げておきますけれども、そのとき学校の制度等も変りました関係もございまして、この調査が果してこの通りであるか、落ちがないかということにつきましてはちょっと問題があると思いますけれども、一応そのときに調査いたしました数を申し上げますと、学徒動員で空襲や艦砲射撃等によって死亡あるいは負傷した者というものが、死亡者で九千二百七十七名、それから障害者は八百一名、それから傷病者千九百十八名、合計いたしまして一万一千九百九十六名、こういう数が出ております。  なおほかに原爆によるものという調査がございますけれども、これは学校の学生生徒におきまして、死亡が六千七百八十六、それからほかに負傷が四十一名というような数が出ておりますけれども、合計いたしまして六千八百二十七。特にこの原爆の調査におきましては、中学校以下の生徒につきましては含まれておりません。従いまして、今御質問趣旨にお答え申し上げるような計数ではないと存じますけれども、一応昭和二十六年に調査した計数だけを申し上げた次第であります。
  101. 木下哲

    ○木下委員 数の少しくらい違うことはいいのですが、大けがをして現在生き残っておる方々に対して、年金的にどういう保護をされておるか。
  102. 緒方信一

    緒方政府委員 学徒動員関係で死亡いたしたものにつきましての遺族に対する弔慰金につきまして、先ほど申し上げました通り、障害者に対します年金あるいは一時金というものは、学徒動員関係ではございません。
  103. 木下哲

    ○木下委員 私が一番最後的に意見として申し上げて大臣にお考えを願いたい大事なことは、今の答弁のことなのであります。あるいは大臣もお目にかかったではないかと思いますが、両手をなくした青年が、顔は大けがをしておる、父親はすでにない、母親一人であるいは便所に行く世話から一切をしている。おそらくこの母親は終生その子供のために尽して余生を送るかと思いますが、私考えますのに母親にとってもちろんこの子供が死ねば自分も一緒に死んでいくくらいな気持だと思う。逆に言えばこのおっかさんがなければ子供は死ぬだろう、私はまのあたりそれを知っておるのでありますが、こういう学徒動員、あの何にもわからないものを、ただ撃ちてしやまんで連れていかれて、大けがをして、現在そういう不仕合せな目にあっておる。しかもそれが今承わりますと、数としてはごくわずかなものである。何か仕事のできる者はすることもいいでしょうけれども、このわずかな数に対して学徒動員でこれだけの目にあっておる者に対して、文部大臣が何にも保護をなさっておらないということについてはまことに遺憾でありますが、これに対して大臣いかようにお考えになりますか。
  104. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は私一個といたしましては、従来から実は心配しておりました問題の一つでございます。今日まで障害者に対して特別な措置がとられておらないということは私も実は残念に存じておるものであります。しかしこれを全面的に実施するということになりますと、いろいろまた他に関係する面もあろうかと思うのでありますが、相当財政上の困難も予想されるわけでございまして、私といたしましては関係当局とも十分協議いたしまして、何とかその方向に向って進みたいというような考えをいたしております。
  105. 木下哲

    ○木下委員 大臣はこの問題についてまことに遺憾に思っておったというお答えで、さだめしそうおっしゃるだろうと思っておりましたが、そのできない重大な原因としてはほかの振り合いもあるし、また予算的な裏づけがないということをおっしゃいましたが、その予算的なことについて、たとえば先ほどの人数の御発表によりますと、ごくわずかなものである、予算的な裏づけがないということになれば、私に言わせれば軍備費を削ればいいじゃないか、半年もたてばスクラップになるような軍艦を買う費用を少ししんぼうしてそっちに回せばすぐできるじゃないか。これは水かけ論になるわけでありますが、大臣からそれほど前々からお気になさっておったことであるというお話を承わって、そしてすなおにその御意見に安心いたしましてお願いすることは、予算の裏づけこれこれとおっしゃらずに、ぜひとも一日も早くこのかわいそうなけがをした学徒に対して、あるいは一カ所か何カ所かに収容することもいいと思うのであります。十人か二十人に一人の看護婦をつける費用など幾らも要らぬことだと私は考えます。ということは、全部の人数の制限がきまっておることなのでありますから、大臣この点御答弁でよく考慮しようということでなくて、私にしいて遠慮なく言わせるならば、ぜひとも一つ努力をしてそのことは実現するようにやるとまでのお答えをちょうだいいたしたいように思うのであります。
  106. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 もちろん気持の上におきましては木下さんと別に変らないと私は思っております。私としてはこの場合といたしまして十分関係当局と協議して善処したい、こういうふうなお答えにとどめておきたいと思います。
  107. 櫻井奎夫

    櫻井委員 実は今の問題に関連いたしまして、私は海外同胞引揚特別委員会関係しておるものでありますが、あの特別委員会でただいまこの戦争犠牲者の今までの取扱いの不均衡を是正するという意味から、恩給法、留守家族援護法等々に関する法律案の大きな改訂をもくろんでおり、今着々研究中なのでありますが、与党の方でもそのことが相当進んでおると思うのであります。その中に今木下委員から発言のありました学徒動員のための戦争犠牲者というようなものも文部当局として強硬にぜひ一つバック・アップをしていただければ、私どもの方としても非常に好都合かと思いますので、一言申し上げてぜひ大臣の御尽力を賜わりたいことをお願い申し上げておきます。
  108. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題のみならず戦争関係で解決しなければならぬ問題がまだ残っておると私は考えております。さような問題につきまして政府全体といたしまして十分努力しなければならぬというふうに思っております。御質問趣旨につきましては私といたしましては極力努力いたしたいと考えております。
  109. 木下哲

    ○木下委員 ただいまの御答弁で、残念でありますけれども、すなおにちょうだいいたしまして、次に進みますが、今櫻井先生からのお話で気がついたことを一言だけつけ加えますが、職業軍人であるということで朝鮮に派遣されておった、飛行機は一回も見なかったというようなことでも、恩給の年限に換算されるときには非常に長くこれを用いられるというようなことがずいぶんある。そういうようなことから比べまして、ぜひ一つ先ほどの学徒動員の件もおはからい願いたい。  次に参りますが、小学校中学校に養護教員を置く、これはすでに十年前に出ております法律でありますが、現在九州などではいろいろ地方財政の窮迫ということにしわ寄せをいたしまして、今までありました学級数、十学級ある学校には一人置くというようなことが、整理の対象に養護教員の先生方がなって、十五学級あるところから置くというようなことで、法律がすでに制定されて以来十年にもなるのに、現状ではだんだん減っていくようなことになっている。この養護教員の先生を置かれることによって、どんなプラスがあるかというようなことは今さら申し上げません。わかったからこそできた法律なのでありますが、それが十年たちます。ただ付帯決議に、字句は違いますかしりませんが、意味としてはしばらくの間これを猶予することを得るとかなんとかついておるそうでありますが、常識からしてしばらくということについては、この件についてはまず二、三年で十分足りると思うのでありますが、その二、三年が十年もたつということで急いで置かなければならぬという理由の一つにもなる。ただその付帯の字句が、しばらくの猶予ということが、当時私の調べました範囲では、養護の資格を持つ先生方の勉強なさる期間がなかった。言いかえれば、いいものであるからすぐ置くとしても人数が足りないということで猶予したということを覚えておるのでありますが、現在では一等看護婦の免状を持っておる人は十分それでいいということからうかがいますと、当然これを文部省としては各学校に配置するようになさらなければならないと考えますが、大臣いかがでございますか。
  110. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいまの養護教員のことでございますが、これは学校教育法によりましてお話のように必置になっております。しかし付則におきまして当分の間置かないことができる、かような規定でございます。そこでお尋ねの件でございますが、ただいまのところ全国で約八千五百人ほどの養護教員がおるわけでございます。各県の事情がまちまちでございまして、あるいは十学級以上のところ、あるいは十五学級以上のところ、あるいは千人以上の学校に置くとかいうようなことで、いろいろと各県が努力をしておるわけでございます。しかし何分にも地方財政が非常に窮屈でございまして、一般の教職員の定員を削られるというような状況もございますので、養護教員だけをふやすということがなかなか困難でございます。そこで文部省といたしましてはある程度の基準をきめまして、そこまではぜひ置くように——もちろん理想的には全学校に置きたいのでございますけれども、当分の措置といたしまして適正な学級には必ず一人置くように、こういう指導をしておるわけでございます。
  111. 木下哲

    ○木下委員 今のお話ですと、必置的に法律ではきまっておる。しばらくの猶予ということについて、たまたま付帯決議があるからということで、当然置かなければならないと考えながら、それがあるから、法の逃げ道があるということだけで、お気持としては全部置きたいと考えておるけれども置けないのか、それともその決議があるから置かなくてもいいとお考えなのか、いかがでありますか。
  112. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 もちろんその法の通りに置きたいのでございます。ただいろいろ財政上の問題あるいは先ほどのお話の資格の点等を考えまして、付則において置かないことができるように認めておるのであります。ですから私どもとしてはできるだけ置くように努力をし、勧奨もしておるのであります。ただ、今お話の点はたしか佐賀県の例だと思うのでございますけれども、多少佐賀県は全国の平均よりもいいという点で問題があるようでございます。
  113. 木下哲

    ○木下委員 大体私の調べた範囲では全国的に見て五〇%くらい置かれておるということなのですが、間違いありませんか。
  114. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 まだ五〇%にはいっていないと思います。総数で八千五百でございます。
  115. 木下哲

    ○木下委員 そうしますとまだ半分にもいっておらないということについて私は、法でもきまっておることだし、置いたところと置かないところを結果的に見まして、トラホームの検査から便の検査から、いろいろな場合に非常にいいということを申し上げまして、すみやかにこれを実現してくれということをお願いするわけであります。そういたしますと、またさっきのスクラップの話に結論としてはなるわけでございますけれども、重ねて文部省としては予算予算がということをおっしゃらないで、一つ子供のために熱意をもって、これの実現方をお願い申し上げる次第でございます。  次にせんだって大臣は本委員会の最初の日に、抱負の一端としてお話しの中に、体育を非常に重く考える、また社会体育を通じて、いろいろな面で貢献していきたいというお話しを承わりまして、まことに心ひそかに喜んだ者の一人でありますが、その現実の現われとして、社会体育振興費として二千万円の予算が計上されておりますが、これを何か各県にわたりましてどういう方向でお使いになるというような具体的な案がおありになるかどうか、承わりたい。
  116. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいま御質問の点は、三十二年度予算に二千万円計上しております地方スポーツ指導組織の確立という経費に関してだと考えますが、これにつきましては、大体のねらいは、一般の地域社会におきますところの国民のスポーツを普及していこうというのが主眼でございまして、そのために各地域々々にその中心となっていくような指導委員を設置して、その指導委員を中心にいたしましてスポーツの普及をはかっていきたい、こういうような事柄がねらいになっております。従いまして、そういった趣旨で現在いろいろ計画はいたしておりますけれども、具体的に各県に幾らの金額を補助するとか、そういった点はまだ全然決定いたしておりません。
  117. 木下哲

    ○木下委員 指導委員をお選びになって振興させるということですが、二千万円の分配については五十に割ったところが一県四十万円ということなので、なによりはある方がいいのですが、芽を出したということについてはうれしく思います。しかし今のお話しの指導委員を作られて、ただ早い強い者を作るというのでなくて、りっぱにスポーツを理解した、スポーツを振興させるという指導委員を作っておやりになったときに、ないよりはある方がいいですが、四十万というのではあまりに額が少い、かように考えますが、これも結論はお答えがなくてもわかったことになりますが、ぜひ一つもう少しおふやしになるように、大臣せっかく抱負の一端としておありになることなのですから、御努力を願いたいと思います。その御努力を願いたいと思いますということについて、いかがでありますか。
  118. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ないよりはましだというお言葉でございますが、その通りでございます。私もこれで決して十分とは考えておりませんが、御承知のように最近スポーツ振興の審議会もできたことでございます。近くこれが開会をみると思いますが、十分にこのスポーツ振興に対する方策も検討いたしまして、次の機会におきましては、もう少し気のきいた予算を出して御審議を仰ぎたいと考えております。
  119. 木下哲

    ○木下委員 これでその件についての質問を終りますが、重ねて私のお願いとして申し上げることは、指導委員をお選びになるときに、ただあれが強いから速いからということでなくて、ほんとうにスポーツを理解した、りっぱな人格の方を指導委員にお選びになるということに、もちろんお気づきとは思いますが、一つ御留意を願いたいということをお願い申しまして、この件を終ります。  最後にローマ字教育のことでございますが、ローマ字教育、これにつきましては、私は結論的にいいますと、非常に大衆性のあることでありますし、簡略である。読んでも書いても速い。非常に簡単に覚えやすい。むずかしい漢字をやるよりも楽だというようなことで、私ども考え方としては、基本的に非常に大衆的であるということで賛成するものでございますが、これについて終戦以来とってこられた処置が、これも九州の言葉でふたぬるいのです。文部省は全くやっとお役目の程度でどうやらこうやら越してきた。いわんやこの三月からの審議会に何か諮問したとかしないとかいうようなことで、なお下火になるということが私の調査ではあるわけであります。この点について文部省はこのローマ字教育をもっとやるのかやらぬのか、今までで十分と心得ておるのか。またローマ字教育をやることがプラスと考えておるか、マイナスと考えておるかということについて、これは大臣御自身の御意見を承わりたい。
  120. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ローマ字教育ということについて、木下さんの仰せになりましたことがどの程度のことを考えていらっしゃるのか、実は私にはよくわからぬのでありますが、日本の文字をローマ字に皆直すというふうな御趣旨であるといたしますならば、にわかに賛成するわけには私は参らぬと思います。しかし適当な程度のローマ字教育をやっていくということについては、これは必要だと考えております。専門的なことはよくわかりませんけれども、決してこれをつぶすとか何とかいうような考え方はいたしておりません。
  121. 木下哲

    ○木下委員 ここに執行部に対して議員側の聞くところでありますから、私がそっちから聞かれましても答えませんが、大体今まで小学校でやっておりますローマ字教育は、場合によると非常に熱意のある先生がある。ところが時間をくれないとかいろいろなことで、しかも近ごろはブレーきを文部省の方でかけてきそうだと言っておる。たとえば隣の中国の例を考えましても、読み書きということに至っては、非常にスピードが従来のものでは落ちるということで、今漢字を一切廃止しようとかかっておる。あるいは毛筆をやって楽しむこともけっこうだと思いますが、しかし今の内閣の方針かどうか知りませんが、ローマ字に対して現在よりも下火にするようブレーキをかけるというような様子がありそうだということを耳にします。この点についてはブレーキはかけるのかかけぬのか、今よりももう少しやってもいいとお考えになるのか、その点を一つ
  122. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在がどの程度であるかということにつきましては、私は十分な知識を持っておらぬのであります。従って詳細なことは政府委員からお聞き取りを願いたいと思いますが、私どもとしましては、別段ローマ字を教えるということを圧迫しようというような考えは毛頭持っておりません。
  123. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 現在小学校でローマ字をやっておりますのは国語教育の一環として、国語教育を理解し、向上させるという趣旨から、ローマ字を試験的に課しておるわけであります。ですからこの試験の結果を十分尊重いたしたいという考え方から、今いろいろな問題を検討はしておりますけれども、大臣のお話しのように、これをやめてしまうというようなことをまだきめたこともございませんし、考えたこともございません。
  124. 木下哲

    ○木下委員 これを圧迫する御意思もないということなんで、進める御意思があるということには一向とれないわけでありまして、残念なのでありますが、私は今よりも少くとももっと奨励していいのじゃないかと考えておりますが、これをおやりになるときに、結局戦争に負けて向うのサゼッションでこういうものがきた、文部省としてはもうきょうがあしたになればいい、変ったことはやりたくないということなのか。これは非常にいいことだとお思いになっておるのか。あまり強い考えはないが、強いものから言われたからしようがないからやるというのですか、その点いかがですか。
  125. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 そういうような考えは持っておりません。私どもは今までやったローマ字教育がどういう効果を上げてきたのかという実際の検討をしないで、これについて今後の方向をきめるわけにいかぬと思います。ただ占領当時やられたからそれで仕方がないからやるとか、そういう意味ではないのであります。国語教育の向上発展のためにぜひ必要があるという意見と、そうではない意見も片方にあるわけでありまして、そういう点を調査検討をいたした上で態度をきめなければならぬだろうと思います。
  126. 木下哲

    ○木下委員 最後に一つ。ただいまの、調査して効果があるかないかということは、当然それはお調べにならなければわからぬでしょうが、今まで、過去十年にやったようなことでは、そう大した効果が上るはずがありません。今言った過去の十年というものは、そういうことからいえば一の力を出して百を望むような話で、できるわけがないのであります。この点について、主観の違いで、やれということも、やるなということもあるでしょう。しかしながら、これは私考えますのに、当然非常にいいことであるから、今よりももっともっとこれを研究して、時間をとり——この点については、文部省としては気がねをしたり変ったことはやるまいというようなことでないと今伺いまして、安心したのですが、一つその点について大いに御研究をなさって、奨励する方向に御指導願いたいということをお願い申し上げまして、終ります。
  127. 長谷川保

  128. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 時間がございませんので、ただ一点だけお尋ねをいたします。過日の委員会で、私は教育の中立性の問題に関連して、実は岡山県に起りましたケースを三件取り上げてお尋ねしたのでありますが、その後、二月の二十日でございましたか、高津委員に対して、文部当局より、その現地調査をした結果の御報告がございました。時間の関係で、特に私は最後の、岡山県議会議長が現在の自民党の代議士の現役の某秘書を総務課長に推薦をした、そしていま一人は、現役の自民党の某代議士の元秘書を教育次長に推薦をした、この人事の介入の件だけに、きょうお尋ねいたします焦点をしぼるのでありますが、この問題に対して文部当局の方で調査をしたその結果の報告として、大体その事実があったことを文部当局は認めていらっしゃる。そして行き過ぎであるというような御答弁も、速記録を見ますと載っておるのであります。ただ、この内藤局長の御答弁の中に、私は非常に重要なる問題を一点はらんでおると思うのであります。それはあなたとすれば県議会の立場をかばった御発言かと存じますが、行き過ぎは認めておる。しかしその問題の程度を見なければはっきりわからぬというような客観的な意味と、いま一つは、推薦ならばいい、強要であってはいけない、こういう、強要という言葉に対する推薦という言葉をあなたは使っていらっしゃる。これを素読みにいたしますと、何でもない言葉のようでございますが、これは私は非常に重大なる発言だと思うのであります。推薦ならいい、この一言なんですね。私はきょうお尋ねをいたしまする時間の関係で、この推薦の問題だけにしぼりたいのでありますが、果して推薦ならばかまわないのですかどうですか。私はあらためてこの点を、文部大臣並びに御答弁された内藤局長お尋ねしたい。
  129. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 岡山県で人事について推薦があったということは、この前に申し上げた通りであります。いかなる人が推薦されるのも、私はけっこうでございます。これを採る採らぬは任命権者の権限の問題であります。推薦される方には一向制約がないと思います。
  130. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そういう答弁だから世間のものは誤解を起すのです。といいますことは、県会議長が個人として教育委員会へ持っていって、こういう適任者があるからお願いをするということならば、私は、人間生活一つのあり方としてあり得ると、肯定します。ところがこの推薦という言葉を使っていらっしゃる。ここに私は問題があると言いたい。あなたのような言葉を吐かれると、しかも文教の最高責任の府の方が吐かれますと、ややもいたしますと全国の末端の——これはひとり岡山県ばかりじゃございませんが、聞いた人間は、それならば、村の議会で、議会の名において推薦をした村の教育委員会の人事に向って——しかもこの問題なんかは平の教員を入れるとか入れないとかいう問題じゃございません。総務課長、教育次長、これは少くとも首脳部です。執行機関としての首脳部のはずなんです。そういうような人事に対して、推薦ならばいいという言葉が吐かれるということは、ややもいたしますと、あまり詳しいことを知らない人が聞きますと、推薦ということしか聞かないのです。また推薦ならばかまわぬということを、まともに解釈しかねないのです。県の教育委員会の人事の推薦をし得る——推薦という以上は、少くとも一つの公的な団体の意思表示という印象を与えるおそれがあると私は思うのであります。そういうことがもし可能ならば、おそらくおそるべき現象が出てくると思うのですが、あなたはそうお考えになりませんか。
  131. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 推薦とお願いと、私は言葉のニュアンスの相違だと思うのですけれども、議長が個人の資格で何がしを適任者だから採ってほしいという御要望があったと思うのです。これはお願いでもあり、ある意味では推薦だと、こういう意味に申し上げておるわけです。法規上の内申権とかなんとかいうものとは全然違うと思うのです。
  132. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私は、質問のときいつも時間がありませんから、詳しいことを言うておりませんが、本件のごときは、岡山県議会の自民党の議員総会にかけてやっておるのですよ。そこまで詳しく私は申しておりませんが、問題の内容というものは公的なんです。この質問の内容は、その一つの表面に浮んだ問題を取り上げてあなたにお尋ねした場合に、推薦ならばいいんだというような印象を与えておるということなんです。個人の資格においてお願いをするということなら、今申し上げておりますように、人間生活の慣習の上から言うて、そういうことはあり得ることなんで、私も肯定しているのです。しかし、実際はそうじゃないんです。詳しくは申しません。私は言うことが本来の筋じゃないんですから……。要は、教育委員会に対する人事権というものは委員会自体が持っておるのであって、他の何人も容喙すべからざるものだという、このはっきりとした筋道というものがあなたの御答弁の中には立っていないわけです。そうして言葉のあやでもって推薦ならいいんだというような印象を与えておるのです。それを私は言うている。現にこの問題は、私が二月の中旬に質問をしたが、そのときの御答弁、同時に、この二月二十日に高津委員質問をして、あなたが推薦ならば云々と言われた、この推薦という言葉がもとになって、岡山県の教育委員長がこれまた県議会の議長をかばった発言を公的な席でやっている。あれは推薦なんだ、強要されたのではないのだ、こう言うている。実態は強要なんですよ。実際はのこのこ議長が教育委員会まで出向いて行って、実は僕個人の知っているこういう人間が適任者におるので、どうぞお願いしますと呼びつけて言うたのではないですか。そういう内容を申し上げますと時間がかかりますから申しませんが、要は、あなたが推薦ならいいのだと言った言葉が新聞にぱっと出た。そうしたらそれをそのままうのみにして県の教育委員長が、あれは推薦なんだと公的な席で言うておる。そうしますと、新聞を読んだ何も知らない一般国民には、推薦ならいいのだ、いわゆる教育の人事の問題に対して、推薦ならば村の議会がやろうが県の議会がやろうがかまわぬのだという印象を強く実際には与えておると思う。だから私は問題がここにあると思う。あなたは個人としてお願いをするということを高津委員に対する御答弁の中で言うておられるのだか、その点をはっきりしてもらいたいのです。速記録を見ますと、あなたのお気持とするところが私にはわかるような気がするのですが、読んでみますと、「これはそのときの状況によると思うのですが、議長が職権を乱用するようなことがあれば、これは慎しんでいただきたいと思うのですが、ただ推薦をするというのは、どなたでもあり得ることだと思います。本件については、議長は多少執拗に食い下ったそうですが、結局教育委員会判断を了とせられて採用しなかったということであります。」私はあなたをよう知っておりますから、善意に解釈して、こんなばかな答弁をされないだろうと思っておりますが、どうも役人というものはものをはっきりおっしゃらない。いいことはいい、悪いことは悪いと言われない。こういう答弁に対して今のようなとんでもない実態が末端には起きているのです。それだから、推薦ならいいのだという印象がある以上は、これはおそらく文部当局の責任ある答弁でしょうから、今も言いますような全国の末端の都道府県の議会において、今後推薦という形式でもって人事介入をやられるおそれがなきにしもあらずということをおそれる。現に今私が言いましたように、岡山県教育委員長があれは推薦なんだからかまわぬじゃないかということを言うておるのです。県の教育委員長ですからそれくらいの頭しか持っていない。だから私はあらためて本日あなたに御訂正願いたい。今私が言いましたように、要するに教育の中立性の立場から人事権に介入することはもとより悪い。個人でお願いするというならともかくも、何人といえどもこの人事権には介入する権利がないのだというはっきりした御訂正を願いたいのです。この点どうです。
  133. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 岡山県の場合に人事権に介入した事実は私はないと思います。というのは、そういう推薦という言葉が悪ければお願いでもけっこうだと思いますが、お願いしたけれども教育委員会は独自の判断において適当でないと判断してこれを拒否したものであります。だから人事の介入はないと思います。
  134. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうなるとまた大きな問題になります。そういたしますと、教育委員会が拒否したから——私はあまり詳しいことは申したくないのでありますが、自民党の現役代議士の秘書、いま一人は元秘書、県議会の議長はもとより自民党の党籍のある議長ですが、この人がこの二人を推薦したということで、今のあなたの御答弁では、それを採用しておらないのだから人事権介入の事実はないと言われるのだが、これは重大なる問題です。そういたしますと、人のものをどろぼうして、金を取って、返したら罪はないのですか。私がお尋ねをしているのは、教育の中立性保持という立場からお尋ねしているので、そういうふうな採用するとかしないとかいうことは問題外なんです。法的な立場からいいましても、人事に発言力を持つはずのない者が推薦をしたという、あるいは強要したという、このこと自体を私は問題にしているのです。それを今のあなたの発言では、結果においてそれを採用しておらないのだからこれは介入の事実はないのだと言われるが、それでいいのですか。これはとんでもないことです。きょうの今の問答を通じて、あなたの考え方が非常に重大な問題を含んでいるということを私は知ったわけだが、まさかそんなばかなことはないでしょう。それなら、人のものを盗んでも返したら罪はないのですか。一体これはどうなんですか。
  135. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 私は、議長は教育委員会にお願いをされた、そのお願いについて検討した結果、適当でないという判断のもとに教育委員会は採用しなかった、こういう事実を申し上げたのであります。
  136. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 速記録をあとでお調べ下さい。さっきの答弁では、人事権介入の事実はないとあなたは言われた。そういうふうな推薦にせよお願いにせよ言うたけれども結論的においては、教育委員会が採用しなかったのだから人事権介入の事実はないと言われた。そうでしょう。今のあなたの答弁は違うが、はっきりして下さい。しかもあなたは、前の高津委員に対する返答において——岡山県教育委員会に関する質問に対して事実のいかんを調査すると言った、その報告に基いた高津委員質問に対して、二月二十日に返答されているのは、教育委員会に聞き合せたところがそういう事実があったということは認めていらっしゃる。そうでしょう。もっとはっきりとあなたの答弁を整理してもらわないと、ややもすると国民に非常な誤解を与えますよ。
  137. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 あなたからお話がありまして、その結果を調べたところ、自民党の県会議長が某代議士の秘書を委員会の職員にすると言った事実があるかどうかというお尋ねでございましたから、その事実がありますと申し上げたのです。  それから、人事に対して、どなたがどういう御意見をお持ちになるのも御自由だと私どもは思います。ですが、職権を乱用し、不当な強制や圧力を加えることは好ましくないということはこの前も申し上げた通りでございますが、本件について不当な干渉があったとは私ども考えていないのです。ですから、不当な介入とは考えておりませんので、この点を御了承願いたいと思います。
  138. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 どうもあなたの答弁はおかしいですね。そうすると、不当な介入という問題の内容はどういうものですか。
  139. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 それは、たとえばこの議案を通すためにはどうしてもこの人を採れとか、あるいは予算を出すからこの人間を採れとか、そういうような職権を乱用したようなことになると、これはちょっと問題だと思うのでございます。ただ、今のお話は、議長が某氏を教育委員会の事務局に採ってほしいと要望した、その御要望に対して、教育委員会は適当でないと判断したのでお断わりした、お断わりしたけれども、なおしつこくこれを追及されていくということになりますと、これは私も人事に関する不当な介入だと思います。しかし本件は、議長は教育委員会の態度を了とされて、十分御了解されておるのです。不当な介入とは考えておりません。
  140. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうすると、結局あなたの論は結果論になる。採用しておったならば不当なことになる。教育委員会が良識において採用しなかったから不当な介入にならない、こう言われる。幸いに形に出なかった、要するに採用しなかったから不当な介入の事実はない、こう言われるのですね。
  141. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 これは要するに任命権者の自由な判断を拘束したかどうかということだと思うのです。本件に関しては、任命権者の自由なる採用の余地なり判断を拘束しなかったと私は認定するのです。
  142. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 岡山県の教育委員会で私は調べているのですが、文部省の方から電話で聞いておられるのです。その返答で、その事実があったということをこの前の報告で言っておられる。今あなたが逃げようと思って次々に言われるから、私は言わぬでもいいことを言わなければならぬのですが、内容ははっきりしているのです。それならもっと詳しく申しましょうか。(「もういい、言わなくていい」と呼ぶ者あり)私は時間がないからあまり言いたくないのですけれども、あなたが推薦という言葉を使われておることによって非常な誤解を与えて、誤まった判断をしているのです。推薦ならいいんだという気持を与えているのです。この問題だけをしぼって、おそらくあなたとすれば、推薦というのはどなたでもあり得ることだと思いますという言葉が、私とすれば個人のお願いと推薦とを間違えているのじゃないかという印象を持っているのです。ところが聞いている人はそうじゃない、それが今の不当な介入の問題に話が入っていっておるならば、実際をいえば私は幾らでも種はあるのです、内容は明らかに不当な介入なんです。それなら私はもっと調査を要求しますよ。私はなんぼでも反証があるんだから、あなたがそう言われるんなら、不当な介入か不当な介入でないか、文部省はもっと調査して下さい。私はまた次の委員会で尋ねますから……。
  143. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 ただいまの推薦という私の言葉が行き過ぎでしたら、お願いでけっこうです。
  144. 長谷川保

    長谷川委員長 山崎委員に申し上げますが、本会議が開会されたベルが鳴りましたので、質疑は簡潔に願います。
  145. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それでは最後の締めくくりをいたします。あなたの今のお言葉では、お願いならいいということですね。
  146. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 推薦という言葉が誤解を受けるんでしたらお願いでけっこうですというのです。
  147. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 要するに個人の立場においてお願いするというのですね。そう訂正されたのですね。
  148. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 そうです。
  149. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そして教育人事に関しては何人といえども介入する法的権限のある者はないのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  150. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  151. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 では、この問題はまだまだお尋ねしたいことがあるのですが、一応これで終ります。     —————————————
  152. 長谷川保

    長谷川委員長 この際お諮りいたします。理事でありました赤城宗徳君が去る十一日委員を辞任され、同日再び委員に選任されました。  つきましては、理事の補欠選挙を行わなければなりませんが、先例により委員長においてその補欠を指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 長谷川保

    長谷川委員長 御異議なしと認め、理事赤城宗徳君を指名いたします。  本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。    午後一時十四分散会