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1957-02-13 第26回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十三日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 長谷川 保君    理事 赤城 宗徳君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君    理事 米田 吉盛君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    永山 忠則君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       塚原 俊郎君    濱野 清吾君       牧野 良三君    木下  哲君       小牧 次生君    高津 正道君       野原  覺君    平田 ヒデ君       山崎 始男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  稻葉  修君         文部事務官         (大臣官房会計         参事官)    天城  勲君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤  正君         専  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 二月十三日  委員櫻井奎夫君辞任につき、その補欠として山  崎始男君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十二日  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一七号) 同月八日  学校周囲建築物用途制限等に関する請願(  池田清志紹介)(第四六八号)  公立大学整備促進に関する請願鈴木周次郎  君紹介)(第四六九号)  義務教育費全額国庫負担に関する請願粟山博  君紹介)(第四七〇号) 同(鈴木直人紹介)(第四七一号) 同月十一日  高等学校定時制教育及び通信教育に対する国  庫補助請願加藤精三紹介)(第六二〇号)  義務教育費全額国庫負担に関する請願山下春  江君紹介)(第六三五号) の審査を本委員会に付託された。 二月十一日  不良映画出版物等制限に関する陳情書  (第一三二号)  就学難児童のための教科書図書無償配布に関  する陳情書  (第一三三号)  学校用地購入等特別措置に関する陳情書  (第一三四号)  義務教育学校における教育政治的中立の確  保に関する臨時措置法の一部改正に関する陳情  書(第一三五号)  義務教育学校施設整備促進に関する陳情書  (第一八八号)  助役の教育長兼任特例延長に関する陳情書  (第一八九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国立及び公立義務教育学校児童及び生徒  の災害補償に関する法律案山崎始男君外六名  提出、第二十四回国会衆法第八号)  就学困難な児童のための教科用図書給与に対  する国の補助に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第九号)  昭和三十二年度文教関係予算に関する件  文教行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 長谷川保

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  まず、国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案議題といたします。その提案理由説明を聴取いたします。山崎始男君。
  3. 山崎始男

    山崎始男君 ただいま議題となりました、国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案につきまして、その提案理由の御説明を申し上げます。  およそ国家隆昌の基盤を教育に置かなければならないことは言うまでもないところでありますが、なかんずく義務教育における約千七百万人の児童生徒のすこやかな成長こそは国民全体の念願でありまして、教育基本法及び児童憲章に明示されておりますように常に留意せねばならぬところであります。  さて、義務教育に関しましては、憲法第二十六条第一項によれば、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定しており、さらにまた、第二項においては、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と規定しておりまして、義務教育について、特にその責務をうたって重視しておるのであります。  しかるに、一昨年来児童生徒災害がひんぴんと報じられておりますのは、先刻御承知のところでありまして、特に一昨年の紫雲丸事件や相模湖事件、三重の水難事故学校給食集団中毒など記憶に新しいものが多くあったのでございます。  楽しい修学旅行や遠足に不安を抱いて行かなければならないことはまことに遺憾なことで、義務教育の諸学校で起きた災害の処置が父母の負担のままに放置されているということは実に忍びないところであり、義務教育趣旨からもまた絶対に見のがすことのできないものだと存ずる次第でございます。  現在、地方公共団体においては、自主的な補償策が共済組合的なものとして全国的に広まりつつあるのでございますが、このことは父兄並びに国民がいかに学校における災害に強い関心を持ち一特にその対策の万全をこいねがっているかを端的に物語っているものだと存ずるのでございます。  従って、このような現状におきまして、これをさらに一歩前進させ、児童生徒災害から守るとともに、不幸にして災害を受けたならば、直ちに迅速かつ公正な補償国家によって行うことが焦眉の急務であると信ずる次第でございます。  この法律案は、かような事情のもとにおきましてぜひとも必要と考えられる災害補償を国に行わせることを目的として立案いたしたものでございまして、その内容を簡単に御説明申し上げますと、第一にこの法律は、義務教育学校管理下災害について、義務教育特殊性に基き、国はこれに対する補償を行う責任を有するのであるという立場に立っているのでございます。この場合、学校管理下とは、義務教育学校児童生徒当該学校教育または、監督もしくは保護を受けている場合をいうのでありますが、具体的には政令に譲っているのであります。  第二に、この法律による災害補償の種類としては、療養補償障害補償葬祭補償遺族補償打ち切り補償考えておりますが、補償は金銭による補償としております。補償金額は、療養補償については、原則として完全に治療するまでの費用を見ることに考えています。遺族補償につきましては、中学校を卒業して勤めに入った労働者が業務上死亡したとき労働基準法で保障されている金額に準ずることといたしました。障害補償等その他の補償につきましても、中学校を卒業して直ちに労働に従事した者が、労働基準法で保障される金額に準じて補償することにいたすよう考えています。  第三には、最初に申し上げましたように補償実施は、国家事務でありまして、文部大臣最終責任者でありますが、公立義務教育学校については、都道府県教育委員会が委任を受けて、その補償実施するものとしておるのであります。  第四に、この法律による補償は、災害を受けた児童生徒社会保険による給付を受けることができる場合には、その給付を受けるべき限度において補償は行わないようにいたしました。  第五に、補償を受ける手続について申し上げますと、公立義務教育学校管理下で、児童または生徒災害を受けたときは、本人またはその遺族が、文部省令で定める補償申請書学校長及び市町村教育委員会を経由して、都道府県教育委員会提出し、委員会政令で定める基準に照らして学校管理下における災害であるかどうか判定を行い、補償金額を決定し、補償をいたすのであります。これに不服の場合は文部大臣審査の請求を行うことができることになるのであります。国立の場合もこれに準じております。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いをいたします。(拍手)     —————————————
  4. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、就学困難な児童のための教科用図書給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。その提案理由説明を聴取いたします。灘尾文部大臣。     —————————————
  5. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回政府から提出いたしました就学困難な児童のための教科用図書給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  現在、経済的な理由により就学困難な事情にある児童につきましては、去る第二十四回国会において成立いたしました、就学困難な児童のための教科用図書給与に対する国の補助に関する法律によりまして、市町村がこれらの児童教科用図書給与した場合には、国が予算範囲内でその所要経費補助する制度が設けられております。  この制度は、教科用図書給与対象小学校児童だけに限定して発足いたしましたが、本来義務教育の円滑な実施を資することがその趣旨でありますから、その対象小学校児童に限らず、中学校生徒にも及ぼすことが適当であることはもとよりであります。  よって、今回この法律の一部を改正いたしまして、教科用図書給与中学校にまで拡大することとした次第であります。  この法律案は、以上の趣旨によりまして、題名および関係条文について、所要の整理を行なったものであります。  以上、この法律案提出いたしました理由及びその内容概略を御説明申し上げました。何とぞ、十分御審議の上、御賛成下さるようお願い申し上げます。     —————————————
  6. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、文教行政について質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 灘尾文部大臣質問するわけでございますが、先日民間学者として長い間努力されました牧野博士がなくなりまして、そのあとで実は文化勲章が授けられまして、これはおそかったとはいえ、決して悪いことでございませんけれども牧野博士が御承知のように長い間民間学者として努力もされ、また文化勲章適任者としてたびたび世上にあがりました。ちょうど昨年も文化勲章候補者として牧野さんがあがったにかかわらず、ついに生きている間に文化勲章がもらえなくて、死んでから文化勲章をもらったというようなことに相なったわけでございます。こういう点について、これは灘尾文部大臣の前の問題でございますけれども、この文化勲章原則として生きている者にやることが原則であって、五代目の菊五郎の問題は、これは文化勲章制度のなかった時代でございますから、あとで追贈されたのでございますが、こういう点について、いろいろ民間においては非難があるわけでございますが、一体文部大臣はどういうようなお考えで今後この問題に対処されるのか、灘尾文部大臣の御説明を願いたいと思います。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文化勲章は御承知通りに、文化の発達に関し勲績卓絶なる者に与える、こういうことに相なっている次第でございます。文部省といたしましては文化勲章受賞者選考委員会を設けまして、各界の権威者委員に委嘱してその選考を進捗して参りました次第でございます。  ただいま牧野博士に対する文化勲章に関連しての御質問でありました。今日までその選考委員会におきまして十分に検討を遂げられて、毎年文化勲章というものは出ておることと存ずる次第でありますが、今後におきましてもこの方式によりまして文化勲章受賞者選考することにいたしたいと考えております。お話通りに、私は文化勲章はできるだけ生前に差し上げるのが本則であろうと考えるのであります。この間の牧野博士に対する文化勲章につきましては、いろいろそこに問題もあったやに伺うのでありますけれども、私といたしましては、あの場合どうしてもこれは差し上げなくてはならぬというような気持がいたしまして、私の責任においてその手続をとったような次第でありますが、もともと、申し上げますまでもなく、生前において差し上げるように……(「もっと大きい声で遠慮なしにやって下さい」と呼ぶ者あり)別に遠慮しているわけではございません。生前において差し上げるようにすることが原則でありますので、この原則はどこまでも維持して参りたいと存じております。なお従来の選考について、あるいは世間におきましても御意見があるかと思うのでありますが、それらの世論につきましては、私どもといたしましても十分留意いたしまして、あやまちのないようにお願いしたいと思っておる次第でございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これはまあ前の大臣のときだし、機会が悪かったと思うのですが、この選考委員なんかにつきましても、どうも官僚的な面があるのじゃないか、今までの経歴学歴だけを重要視して、そうしてせっかくのこの文化勲章のあり方について非常に遺憾の点があるのじゃないかという非難があります。これは国家に功労のあった人とか、あるいはいろいろ経歴というようなものが問題になりますけれども選考委員欠陥があるのじゃないか、少くともこの文化勲章という名前がある限りは、経歴とか学歴じゃなくて、やはり文化に努めた人にこれはやるべきだという意見があります。われわれは選考委員に干渉することはできませんけれども選考委員にまず欠陥があるのじゃないか。それから牧野富太郎博士は、御承知のように世界的な植物学者で、非常に不遇な生活をされておったことは、もうだれ一人否定する人はありません。しかもたびたび選考にあがって、しかも九十三才という年齢で昨年すでに受賞されるかといううわさがございました。ところがわずか三ヵ月か四ヵ月おくれまして、あとで追贈されるというようなことは、せっかくもらえるものを、死んでからもらったのでは効果がないわけであります。こういう点について、これは今までの文部大臣責任ではありますけれども、今後一体どういう方法でこういう欠陥を補う御意思があるかどうか。また選考委員なんかについても、もう少し広く目を開いて、今までのようなかたくなな人でなしに、もう少し国民の常識のあるような人々選考委員に入れて、そうしてせっかくの文化勲章を生かす方途を考えておられるかどうか、もう一ぺんお伺いしたいと思います。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は従来の選考委員に御指摘のような欠陥があったとも、実は考えません。またこれは選考することでありますので、外から見るとまたいろいろ批判も出てくると思いますけれども、もちろん慎重におやりになったことと思うのであります。しかしただいま佐藤君の仰せになりましたようなことは、十分心すべきことと存ずるのであります。将来文化勲章選考に当りましては、さような心持をもって——これは私が選考委員会に干渉するわけに参りません。参りませんけれども、その心持十分頭に置いて制度運用をはかって参りたいと考えております。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 どうもその点がわからぬ点があるのですが、実はわずか三ヵ月のあとで追贈されるということなら、何で生きているうちにやらなかったか。こういう問題が起るのは、遺憾な点があればこそ、そういうことが起るのです。遺憾な点がなければ当然生きておる前に、実は牧野さんは九十三才で、もう死ぬか生きるかということがあったのですから、死ねば何でもやるというわけではないが、あとでやるくらいなら、当然生きておるうちでもやれたと思うのですが、こういう点について、今までの選考がよかったということなら、また改められないということになると思う。そういう点について、灘尾さんは今度初めて文部大臣になられて、今後こういう問題について処理されるわけでありますから、その点の腹を伺いたい。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この間の場合におきましても、私は日にちがあれば選考委員会に一度お諮りしたい、こういうように考えておりましたが、何さまあの場合でございますので、私といたしましては、これはどうしても文化勲章を差し上げるのにふさわしい人だと私は考えまして、その手続を進めたような次第でございます。今後の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、佐藤君の心持は十分わかるような気持もいたしますから、この点を頭に置きまして制度運用をはかって参りたいと考えます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 せっかくのものならば生きておるうちに差し上げて、しかも九十四才になっておる人でございますから、遺族の万も非常に残念に思っておられるわけでございます。この点については今後十分お考えを願いまして、これは文部省管轄でございますから、選考委員を選ぶのは大体文部省の腹でございますので、できるだけ遺憾のないようにお願いしたいと思います。  文化勲章のことはそれくらいにいたしまして、紀元節の問題につきまして二、三点お伺いしたいと思います。だいぶ自民党さんの宣伝もありまして、このごろ紀元節というものがだいぶ問題になっております。私はちょうど昭和二十二年から、文化委員会というものがありまして、そこで委員をやっておりまして、国民祝日ということについていろいろ検討をいたしておりまして、国民祝日という問題につきましては、一応われわれもこの問題についてタッチしたわけでございます。ところが、このごろになってから一般の反動思想に乗って、夢よもう一度という軍国的な空気が非常に強くなってきました。このときに自民党方々中心になられて、それは民間団体も、神社本庁とか、あるいは橿原神宮というようなところが中心になって、もう一度軍国的な色彩を一つ盛り上げようというような、こういう空気があるのであります。こういうときに際しまして、ある学校では教育委員会がやれといっておらぬのに、小学校でそういう紀元節のような式典をやるような場合があったかに聞いておりますが、こういう点について文部大臣は一体どういう御指導をなさっておるか、これを灘尾文部大臣から御説明願いたいと思います。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 学校紀元節関係についてのお尋ねのように伺ったのであります。この問題については格別の指導はいたしておりません。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 直接文部省管轄でなくとも、これは地方には教育委員会がありまして、教育委員会指導しておる点がありますから、一々こまかいことは申し上げませんが、たとえば郷友会なんかが学校の講堂を使って紀元節をやったところがあります。私どもの大山でもそういうことをやっておりますが、そういう点について文部省は、こういう紀元節というような、戦争前にはあったことでありますけれども戦争後は何ら国の祝日でもないのにこういうことをやっておることついて、無関心でおっていいかどうか、こういう点について文部省の腹を一つ伺いたいと思います。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は建国を記念する日を国民が自発的に祝おうということについては、かれこれ申すべきことではないと思うのであります。ただ学校を使って式をやるとか、何か特別の行事をするとかいうような場合におきましては、これは学校教育に妨げのない範囲内においてやるべきものじゃなかろうか、そういうふうに考えております。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 あと同僚議員野原君からも同じような質問があるようでございますから、あまり詳しいことは申し上げませんが、少くともこういう間違えやすいような問題については、今は国の指導でできるような点もありますので、ぜひ一つ間違いのないように、ややもすると年とった人は、昔の紀元節というものに対して盲信的な考えを持っておる人もありますし、また地方学校長ども、相当年とった人々は、何かまだ昔の教育勅語の郷愁を考えたり、また何かそういうことを特定にやろうというような考えも次第に起きてきております。そういう点について、これは文部省としてははっきりとした態度で、こういうことは学校とは関連がないというようなことについて、今後十分指導していただけるかどうか、この点一つお聞きしまして私の質問を終ります。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はこの建国を祝うといいますか、そういうふうな事柄につきましては、あくまでも国民の中の自発的な動きによって行わるべきものと考えております。今日の場合政府として、あるいは文部省として、紀元節を祝えとか祝うなというふうなことを言うつもりはございません。ただ本来学校教育目的とし理想とするところがあるはずであります。これと全く相反するがごとき行き方のものにつきましては、これは好ましくないと申さなければなりませんけれども、そうでない限りにおきましては、あくまでも国民の自発的な考えによってやってしかるべきものと考えております。
  19. 長谷川保

  20. 野原覺

    野原委員 同僚佐藤委員から紀元節につきまして質問をいたしましたので、私はその点について、なお一つ明確に大臣から御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  まず第一点は、紀元節とそれから学校との関係については簡潔な御説明がありましたけれども、二月十一日の紀元節を復活する、こういう動きが新聞の報ずるところでは、自民党では大勢がそういう方向に傾いておる、あるいはまたつい数日前の二月十一日には、右翼の団体を初め神社本庁その他が中心となって、各地でいわゆる紀元節祭という行事が繰り広げられておるわけであります。従って文教責任者でありまする文部大臣としても、二月十一日の紀元節は国の祝日として妥当であるかどうかについて、これは相当お考えであろうと思う。これだけ問題が広がっておる限りにおいては、お考えであろうと私は思うのであります。そこでお尋ねをいたしますが、あなたは文部大臣として、二月十一日の紀元節を復活する、こういうことについては、どういう御所信を持っていらっしゃるかお聞きしたいのであります。
  21. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題につきましては、政府といたしましては別に統一した意思の決定をいたしたことはございません。従ってただいまお答え申し上げますことは、これは私の意見、こういうふうに一つお聞きとりを願います。私はただ今日考えておりますことは、国民が国の紀元を祝うといいますか、そういう日を設けまして、国の紀元なり、あるいは現在なり、あるいは国の将来なりという問題を心に新たにするというようなことは、これはけっこうなことだと思っております。従ってそういう意味合いにおいて、しかるべき日を定めて祝日とするということには、私は反対じゃございません。ただその祝日設定趣旨が一体どこにあるかというようなことになりますと、その趣旨いかんによっては、いろいろ議論も生ずることと思います。先ほど佐藤君は、軍国主義に戻るのだとかいうふうなお話もございましたが、さような意味合いにおいてこの日を設けてやるということには、私は反対でございます。しかしながら、ほんとうに国というものをなしておる以上、国というものをお互いに考えるという日があってよろしいのじゃないか、そういうふうに考えております。
  22. 野原覺

    野原委員 私どもは国を構成する一人でございますから、もとより今日紀元節反対しておる人も、国を憂え、国を考え反対しておることは当然であります。そこで大臣のただいまの御答弁をお聞きいたしますと、紀元を祝うということはけっこうなことだ、紀元を祝うことによって国民の一人であることを自覚し、国の発展を記念する、こういうことはきわめてけっこうなことである。このことは私も大体わからぬではございません。しかしながら、紀元を祝うということは、一体紀元の日をいつにするかということが問題になってくる。これは今日、明治七年からずっと行われて参りました二月十一日という日が、紀元節としてやはり当面の問題となっておるわけでございますから、一つ問題をしぼって、二月十一日という日を紀元節として祝うことは、どう一体お考えになっておるのか、一つ明確におっしゃっていただきたい。
  23. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどお答え申しましたような気持でございますので、私は、この紀元を祝う日は、結局国民の多数の方々のお気持によって決せらるべきものだと考えます。私一個の考えといたしましては、二月十一日で少しも差しつかえないと思います。
  24. 野原覺

    野原委員 あなた一個の考えか、自民党考えか知りませんけれども、聞くところによれば、自民党の中でも、二月十一日という日にはやはり問題があるから、一体いつに建国の祭典を行うか、国民建国を祝うかというその日は、もう少し国民世論を聞くべきではないか、こういう意見自民党方々の中にも相当あるということを私は聞いておるのであります。文部大臣としては、二月十一日の紀元節はきわめてけっこうだ、こう考えておられますが、そういたしますと、二月十一日の紀元節の式典というものを来年度ごろからでも直ちに実施させると、こういうようなお考えは持っていないかどうか、お尋ねしたい。
  25. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、今も申しましたように、必ず二月十一日でなければならぬというふうな考えを持っておるわけじゃございません。先ほど申しましたように、国民方々が、この日が適当だというふうに、多数の方が別の日を適当とお考えになれば、それでおきめになってもけっこうだと思っております。ただ私自身の気持を申し上げますれば、別に二月十一日で差しつかえないじゃないかという意味で申し上げたわけであります。決して固執するとかなんとかいう意味ではございません。同時にこの問題は、いわゆる国民祝日に関する法律というふうなものの中にこの日がさめられまして、いよいよそういうことになれば、来年からはそれでいくということにもなりましょうけれども、そうでない限り、別に来年これを文部大臣としてどうするという考えを持っておりません。
  26. 野原覺

    野原委員 それは当然のことでございますが、祝日というものは、法律国民に対して祝え祝えと強制してみたって、その祝日に対する国民の感激というものがなければ意味がないのであります。従って大臣が、個人としては二月十一日が妥当だと、こう考えてはおるけれども、この日をいつにするかということは、もう少し国民の世論に聞かなければならない。国民の感激に立った祝日であらしめるために、国民の世論に聞かなければならない、こうお考えのように思いまするが、間違いございませんか。
  27. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私としては、そういうふうに考えております。
  28. 野原覺

    野原委員 実は、あなたの方の政党の、三木幹事長から、私の党の書記長の淺沼氏に対して、何とかしてことしの二月十一日から紀元節を復活したいと思う。議員立法として実は提案したいと考えておるから、社会党も賛成してもらえないか、こういうことである。これは事実ですね。社会党の賛成さえあれば、ことしの二月十一日の紀元節から実は復活していこうと、そこまでの腹がまえというものが文部省自体にもあったのかどうか。学校教育責任の立場にある文部省としては、自民党のそういう主張に対しては、どういう見解を持って臨んでこられたのか、お尋ねいたします。
  29. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、私はあくまでも国民の機運がそこに盛り上ってくる、国民多数の考えに従って結論を見出すべきではないかと考えておる次第であります。政府の方から、どうするこうするというような態度をとることは、これは好ましくないと思います。そういうふうな意味合いにおきまして、これを法律に入れるというようなことになりますれば、前の祝日をきめました法律が議員立法でありましたごとく、やはり国会方面において十分御検討の上でおきめを願った方がよろしいのではないか、かように考えておる次第であります。実際の問題といたしましても、この問題について党の方でいろいろ検討しておることは承知しておりますけれども、党と政府との間に、格別この問題についての話し合いはまだやったことはないような状況でございます。
  30. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、これは党と党との話でございますから、いずれまた私どもの方から自民党の方に対して、正式にお尋ねをしなくちゃならぬのでありますが、私どもが受け取ったことは、いやしくも天下の公党であり、与党である自民党責任者から、社会党の責任者に対して話しがあって、そうして何とかまとまるならば、この国会で議決をして、そしてあなたの方さえ賛成するならば二月十一日から紀元節をやりたいのだ。こういうことになると、私は、政党内閣の今日、自民党はつまり石橋内閣の与党でありますから、これは政府と一体となって考えられたものであると、実は受け取っておったのであります。従って自民党からそういう申し入れがある場合に、自民党政府文部省、特に文部大臣意見も聞かないで、三木幹事長は申し入れをしたのかどうか、あなたには何の話もありませんでしたか、もう一ぺんお尋ねいたします。
  31. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 党の方でそういうふうな検討をいたしておることは私も承知いたしております。しかし、格別あらたまって相談は受けたことはございません。私は、この問題はどこまでも党と党の方で十分検討いたしますると同時に、自民党の方で、社会党の方にお話があったようにも聞いておりますが、十分一つお話し合いを遂げていただきたい、かように思っておる次第でございます。
  32. 野原覺

    野原委員 そこで次にお尋ねをいたしたいことは、先ほど文部大臣としては、建国の日をいつにするかということは、国民の世論に問わなければならぬ、こういうことでございますが、一体どういう方法で国民の世論に訴えていこうというお考えでございましょうか。
  33. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題については、政府といたしましては、別に国民の世論に訴えようというような考えも持っておりません。私は、やはり今日の場合、二大政党がここにできておる。自民党並びに社会党、この皆さんの間でよろしいということになれば、これは私は国民の世論を代表しておるものと考えてよいのじゃないかと思っております。
  34. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、重大な国の祝日あるいは国のこういう行事というものが、まあ自民党、社会党が賛成すればよいということでございますから、お聞きいたしますが、社会党が全面的に反対だ、こういうことであれば、二月十一日の紀元節というものは実施しない、こういうお考えですね。
  35. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、私がお答え申し上げるのは必ずしも適当でないと思います。党の方で考えるべき問題であるかと思うのでありますが、私といたしましては、自民党と社会党とほんとうに気持が一致して、そこでこういうものはきめていただきたいと、かように念願いたしております。
  36. 野原覺

    野原委員 非常に重要な教育の問題につきましては、中央教育審議会というものもあって、事、教育に関すること、国民教育に関すること、国民道徳に関すること、そういう大事な制度については、文部大臣の諮問機関も実は設けております。なおまたあなたの前任者の清瀬文部大臣は、臨時教育制度審議会を設けて考えていかなければならぬと言われた。御承知のように、政府にはたくさんの諮問機関があるわけですね。私はこういう問題は単に政党と政党だけで論議すべき範囲にとどめないで、広くやはり学者国民意見というものを、あらゆる機会を通じ、あらゆる方法を講じて考えていかなければ、真に国民の感激のある祝日というものは制定できないと思う。この点はあなたとは意見を異にいたします。形式的には政党というものが国民を代表しておるでしょう。議員が代表しておるでしょう。しかしながらすべての問題について、選挙で選ばれたところの議員が必ずしも世論を代表しておるとは限らない場合も、実質的にはあるわけなんです。だからそういう点についての配慮は、やはり私どもとしては考えていかなければならぬということが一つ。もう一つ自民党は全面的に実施するとかりに党議できまっても、社会党が全面的に反対、社会党は今日二百数十名の衆参両院議員を持っておる、これが反対だということであれば、この反対を通して国民のおよそ何十%の層が反対だということにもなるから、これは慎重に考えなければならぬ、こういうことは一応私は了解いたしましょう。そこで次はあなたに、これは個人的な質問になるが、あなたが個人として紀元節は非常にけっこうだ、こういうことでございますから、もう一ぺん文部大臣の所信ということでもありますのでお聞きをいたしますが、二月十一日という日は、わが国の紀元として、歴史的な事実の上から見て、これを一体あなたはどうお考えになっておられるのか。
  37. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は学者でございませんので、歴史上の学問的のことを申し上げる力はございませんけれども、私の理解するところによりましても、日本の二月十一日というものが、いわゆる歴史上の事実として確実であるかないかということになりますれば、これはわからないと申し上げるより以外ないと思います。ただ長い間これでずっと国の紀元を祝う日をやってきておるわけであります。私自身といたしましては、この日で適当だと思っておりますし、国民の多数の人がこれでいこうじゃないかということになれば、それできめても一向差しつかえないのじゃないかと考えております。
  38. 野原覺

    野原委員 これはわからないということでございますから、あなたに関する限りは二月十一日は架空なんです。ただ明治七年から八十年ばかりやってきたから、幾らか伝統というものもそういうことになっている、そういうことであろうかと思う。そうなりますと、国民がその日にするならばという前提があるのでありますから、大臣としても慎重に御答弁をされておるかと思いますけれども、私どもが心配するのは、かりに二月十一日が紀元節ということになりますと、やはり紀元ということはわが国の建国だ、そうすれば二月十一日はほんとうに国を建てたのかどうか、この疑問が素朴な子供にはわいてくるのです。これを一体どう教育するかという問題がある。これは私ども大臣も同じでございますが、ほんとうに神武天皇が辛酉の正月元日、これを太陽暦に直すと二月十一日だ、大和を平定して橿原ノ宮に御即位になった、第一代の天皇は神武天皇、学校教育で二月十一日に紀元節をとりますと、こういうことに発展してくるのです。そうなりますと、今日社会科で歴史を習っている子供たちは、第一代の神武天皇ということは習っちゃいないのです。これは日本の歴史学界がすべてそういうことになっておる。実はかつて右の有神的な立場をとっておる史学者においてもそうなっておる。ということになりますと、一体子供のそういう面の教育についてもあなたは配慮された上で、二月十一日というあなた自身のお説を立てていらっしゃるのかどうか、お尋ねいたしておきます。
  39. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の考えるところによりますれば、二月十一日というものはいわば伝説の話であろうと考えております。そういう伝説があるということは、これは私は事実だと思います。その意味におきまして、学校教育においても適当に話をしていただくということでよろしいのじゃないか、さように考えております。
  40. 野原覺

    野原委員 つまり大臣としてはこれは伝説なんだ。裏返していえば、これはほんとうじゃないのだ。二月十一日に学校に来て、先生が子供に話すときに、あしたは紀元節、先生、あしたはほんとうに日本の建国の日ですかと聞かれたら、いやあれはほんとうじゃないのだ、伝説なんだ、こう割り切って子供に臨むということですか、お尋ねいたします。
  41. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 これが学問的に間違いのないところだというふうな証明があれば別であります。しかしおそらく今日どなたも、その時代のことははっきりしたことはわからないということであります。ただわれわれ民族の伝説としてこの日がある、従いましてそういう意味で伝説を話していただくということで何も差しつかえない、かように考えております。
  42. 野原覺

    野原委員 この点は今ここで論議いたしましてもいたずらに時間を空費することでありますから、私はこれ以上申し上げません。最後に世論を聞いた上で、それから政党の全面的な話し合いの一致した上でということでありますから、これ以上私は追及いたしませんが、ただ私がここで申し上げておきたいことは、大臣も御承知のように、日本は戦争に負けてから新しい日本憲法が実施をされております。日本憲法は民主憲法ということになっておる。私どもはここで天皇をかつぎ出すことによって——二月十一日を伝説として持ち出しましても、どうしても第一代の神武天皇ということになるのでございますから、これを持ち出すことによって、実はそういったいわゆる天皇主権的な考え教育という方向に持っていかれるのではないかという杞憂が、やはり二月十一日の紀元節復活反対者の中にあるということであります。これは私どもは相当耳を傾けて聞かなければならぬと思う。だからほんとうに日本が文化的な民主主義国家として生成発展していくということであれば、民主主義日本としてふさわしいいわゆる国祝いの日というものを考えてもいいじゃないかということも、これは傾聴しなければならぬかと思う。そういう意味で、私どもの党としても、実は建国の日というものをどう考えるかということは、大きく取り上げて問題にしておるのであります。文部大臣教育責任者でもございますから、単にあなた一個人がどうお考えになりましょうとも、あなたの考えというものは相当影響が大きいのです。あなたの答弁における発言力は、事教育に関してはやはり非常な比重を占めておるわけです。従ってどうか一つ十分慎重にお考えになられて、新聞が報道するように、自民党は二月十一日に最後決定というようなことのないような御配慮をわずらわしたい。これについて大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。
  43. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はこの問題につきましては、自民党におきましても十分慎重に検討していただきたいと思っております。お話の御趣旨につきましては承わっておきます。
  44. 高津正道

    ○高津委員 関連して。ただいま文部大臣紀元節問題に関する御答弁を聞いておりますと、二月十一日に義務教育の諸学校で学業に差しつかえない限り紀元節をやっておっても、そのことは差しつかえないと、こういうお話でございました。戦後民主主義の憲法を定め、民主主義の態勢で日本は進んでおるのでありますが、この二月十一日に学校でもそういう問題が起り、町では旧軍人や神ながらの神社本庁あるいは右翼、そういうようなものが復古調に乗ってやる、こういう時代にそういうことを放任しておいていいような軽い事柄でありましょうか。紀元節の復活ということは大きい問題ですか、小さい問題ですか、これをまず文部大臣に聞きたいと思うのです。
  45. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は決して小さい問題とは思っておりません。ことに紀元節というものの取扱いが国の今日の基本に触れてくるという扱いになって参りますると、これは重要な問題と申さざるを得ないのであります。しかし一面におきまして、国民の自由なる動きというものにかれこれとまた政府が口を入れるべきものでもない、その動きいかん、これが非常に妙な方向に進んでいく、あるいは妙な祝日が設定せられるということになれば、お互いに真剣に考えなければならぬ問題だと思いますが、ただいまのところ私はさようなことをかれこれ政府が干渉する必要はないと思います。
  46. 高津正道

    ○高津委員 この学校における動きといい、街頭における紀元節復活の運動といい、これは民主主義にとってはプラスになるものですか、マイナスになるものですか。
  47. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 個々の場合をとらえてみませんと、一がいに申されぬと思います。が、私は、これをやることによって必ずしも民主主義に害になるとは思っておりません。
  48. 高津正道

    ○高津委員 前の憲法を否定して新しい憲法を制定したのであり、神ながらの思想から出ておる紀元節、二月十一日というものですね、天孫降臨だとかこういう日にそういう運動が街頭で大きく行われ、学校にもそれが浸蝕してきておるということは、これは民主主義にとっては非常にマイナスになることであろう。マイナスになると思える部分はたくさんある。しかしこれが民主主義にプラスになると考えられる理由は全然われわれには見つからないのであります。民主主義に害になって益にはならない。私は、これが民主主義にプラスになるような点があれば、三つでも五つでも大臣からその理由を承わりたいと思います。
  49. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日本の歴史はいろいろな過程を経てここまで参っておるわけであります。私どもは、歴史をもとへ戻すという考えは毛頭ない、さらに将来の発展ということを考えて参らなくてはならぬと思うのであります。従ってこの紀元節というものか、昔通りの、かつてわれわれの子供のときにありましたあの紀元節に戻すということでありますれば、これは問題でありましょう。しかしながら民主主義の時代におきましても、私は国という問題についてはむろん国民全般が常に思いをいたさなければならぬ問題だと考えるのであります。そういう意味におきまして、国の起源を祝う日を設けるということは決して無意味でない、かように考えております。
  50. 高津正道

    ○高津委員 私は最近の世界の動向といい、そしてこういうような動きが日本にこんなに従来よりも格段に強まってくるという傾向を、世界への影響として非常に案じておるのであります。軍隊は「真空地帯」のような猛訓練を始めておる。フィリピンに対しては反省もなく、こと非常に問題になった憲兵の大尉ですか、そんなものを使節団として送り込む、そうして二月十一日をまた復活しようとする運動が起きておる、こういうことは、日本は民主主義、平和主義で立つのではなしに、またもとへ返るのだという印象を与えるので、これは非常に、外国への影響が悪い。物質面でいえば、貿易にも結局支障を来たすようになるのではないか、こうまで考えるのであります。あなたは二月十一日をひどく軽く見られるけれども、外国では、日本の神ながらの道、昔の思想に日本がいよいよ返り出した、こういうふうに見られることは、貿易上にも外交上にも非常に大きい損失があると思うのでありますが、そういう点はないと言われるのでありましょうか。
  51. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の段階におきまして、私はそれほど外国に対して悪影響を与えておるものではないと思います。問題は、この日をどういうふうな趣旨のものとし、どういうふうな祝い方をするかというところに大きな問題があるのではないかと思います。それさえ間違いがなければ、高津君の御心配になるようなことはないと思います。
  52. 高津正道

    ○高津委員 二月十一日に紀元節を設定することは差しつかえない、こう言われるけれども、諸外国の日本研究者が受け取っておる受け取り方、あるいはいろいろな外交官でも評論家でも、日本が二月十一日の、戦後に廃止した旧体制の理念の象徴であるものをまた復活したのだ、同じ日にちを選んで復活した——文部大臣も、それが国民の多くの意向であればちっとも差しつかえないというようなことをここで言っておるくらいに、平気で二月十一日を復活したということになれば、重大なる影響があると思われるが、影響なしと言われる論拠がどうも私にはのみ込めないので、もう一度御見解を承わりたいと思います。
  53. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 諸外国の人のこれに対する見方、これはいろいろございましょう。あるいは高津君の仰せになるような見方をせられる人もあるかもしれない。しかし日本人が占領時代を脱却いたしまして、将来の発展をこれから大いにやっていくのだというふうな場合に、国を思う日を作る、国の起源を祝う日を作ってやっていくということについて、私は変に思う諸外国はないと思います。
  54. 高津正道

    ○高津委員 私の問いにどうも答えられてないと思いますが、二月十一日を紀元節として復活する、そういうことで私は問題にするので、紀元節が新たに設けられることに別に私たちは反対しておるわけではない、二月十一日が問題なのです。もう一つ同じ問題でお尋ねしますが、二大政党対立の時代に社会党がその他の影響下をすべて動員してこれには反対だ、五十と五十——五十の反対ではないが、(笑声)だんだんと伸びていく三十五、三十八というものが全力をあげて反対しておるというのに、多数で国論定まれりとして紀元節を二月十一日で強行するということは、平地に波乱を起すものであり、ここにまた一つ大きな問題を投ずるものである。この内閣の文部行政を見ておると、党内事情にもよるものであろうけれども、大体腹は同じかもしれないが、緩和政策できておる。政府全体の労働行政を見ても、総評に対してどういう意図があるか知らぬが、やはり緩和政策で来ておる、こういうように今のところ受け取っております。しかるところ、それをもし強行するということになれば、その基本線もくずれるであろうし、このことがまた一つ国内に論争点を加えて熾烈になっていく、階級対立がいよいよ激しくなっていくのだと思うのです。あなたは、二大政党の対立の時代に、一方の党が反対するならば、やはりやるべきではない、そういうことは強行すべきではない、こうお考えでしょうか、押し切って熾烈になってもかまわない、こういうお考えでしょうか、これが私の最後の質問です。
  55. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、たびたび申し上げますように、かような問題は国民大多数の機運というものが盛り上って、そうしてみんなでこの日を祝おうじゃないか、こういう空気のもとに設定せらるべきものだと考えるのです。従いましてこの問題につきましては、高津君は非常に二月十一日にこだわっていらっしゃるようでありますが、日にちの問題はともかくといたしまして、皆さんがこれでいこうということになってほしいと思うのです。私ども自民党に籍を置く者といたしましては、社会党の諸君もぜひ御同調願いたい、こういうところでございます。
  56. 長谷川保

    長谷川委員長 関連して田中久雄君。
  57. 田中久雄

    ○田中(久)委員 先ほど来、紀元節問題について大へん御熱心な討議が行われました。これは質問ではありませんが、新聞、ラジオなどに今の質問がそのまま報道せられることは、非常に大きな誤解を生むと思いますので、実は私は提案者の一人になるために準備会に出席しておりますので、社会党の皆さんにも、この機会に御了解を得て、ぜひ全面的御賛同を願いたいと思いますので、われわれの考えの二、三を申し上げて御参考に供したいと思います。  紀元節の二月十一日を国の祭日として復活をするというふうに伝えられておりますが、自由民主党でこの問題を扱っております者は、昔のままの復活を考えておるのではないのであります。すなわち、二月十一日は神武天皇が橿原宮で御即位の式をあげられた日である、ゆえにこの日を祝うのだというのが昔の考えだったと思いますが、私ども考えておりますことは、そういう歴史上にはっきりした裏づけのない日をそのまま建国の日だというのではない。立春の日か何か、その近くに即位の式が行われたことは大体想像せられる。そこで新しい考え方は紀元節ではないのでありまして、建国の記念を祝う日、つまり日本がその当時国ができた、これをお祝いする日、こういう考えに立っていこうというのでございまして、その点は社会党の皆さんの中にも、それならわれわれとしても賛成しようと言われる方は個人的に相当ある。ただ昔の紀元節そのままを復活するということにつきましては、自由民主党の中にも異論が相当ありましたので、この点は昨年来実は再三検討をしまして、建国の記念をする日である、こういう考え方に立っておるのであります。これはきょうの御質問ではありませんが、新聞にしばしば現われておるものを見ますと、紀元節を復活することが軍国主義を復活することである、この点は一般に大へんきつい反対が新聞に現われておりますが、私どもはそうは考えない。かりに昔の紀元節にしましても、明治七年に紀元節が制定せられたが、軍国主義を作るために紀元節を作ったとは私どもは思いません。たまたま七十年の歴史の最後において、紀元節行事がはなやかになった、戦争になったというので、紀元節が非常に被害をこうむっておることは確かであります。明治七年に制定せられたときには日本の建国を祝うたのでありまして、被害者は紀元節であろうと思います。どうぞそういう意味でわれわれは考えますので、紀元節軍国主義の復活である、原水爆である、こういう飛躍した議論が新聞に現われますけれども、ここはやはり日本人としてお互いにそう飛躍し過ぎないで考えていきたいと考えております。それから、たくさんな国の祭日ができておりますけれども、二月十一日ほど国民の間からわき上ってきておる運動はございません。あるいは勤労感謝の日であるとか、成人の日であるとか、いろいろ行事がありますけれども、制定せられて日も浅いことでもありますが、さほど熱狂的に沸いてきてない。ところが別に国から指令したわけでもなし、また何にもきまったわけでもないのに、あちらでもこちらでもわいわいとこの日の行事をやられることは、これはやはり国民の自然にわき上ってくる気持であって、これは党を超越してお互いが取り上げるときが来ているのではないか、かようにわれわれは考えております。なお二月十一日は、大臣も仰せられましたが、これでなければならぬとは自由民主党も実は考えておりません。いろいろ研究をいたしましたら、やはりこの日が妥当らしい、そこで建国記念日としてこれ以外にどうもいい日が見当らないからどうか、こういうことでありますから、どうぞあまりこだわらずに社会党の皆さんは御賛成を願いたいと思います。私、提案者になっておりますので、これだけ誤解を解くために御了解を得ておきます。
  58. 長谷川保

    長谷川委員長 関連して河野正君。
  59. 河野正

    ○河野(正)委員 関連して一言大臣の御所見を承わっておきたいと思います。  ただいまいろいろ紀元節に関しまする論議がかわされたわけでございますが、もちろんこれは紀元節の設定の仕方、あるいは設定いたします根拠というものが、非常に大きな問題になろうと考えております。そこで私どもこれに関連して若干御質問をいたしたいと思うのでございますが、それは御承知のように今日国会で問題になっておる自衛隊の訓練死の問題がございます。これは直接大臣とは関係がございませんけれども、しかし大きく教育という立場から非常に重大な関連があるものと私は考えております。そういう立場から大臣の御所見を承わりたいと思うのでございます。と申しますのは、やはり紀元節におきましてもいろいろその傾向が問題になりましたように、今日この自衛隊の訓練死が問題になっておりますのは、やはり教育の傾向というものが非常に大きな問題になっておると考えております。人権を無視いたしましたかつての軍国主義的な教育というものが、ひいてはあのような訓練となり、さらにあのような不祥事件が惹起されたということでございますので、こういった教育のあり方について大臣がいかがな御所見を持っておられますか。これは教育という広い立場からでございますけれども、今後の問題といたしましてはきわめて重要な問題でございますから、大臣の率直な御所見を承わっておきたいと思います。
  60. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 最近起りました広島県下におけるあの不幸な事件は、まことに残念に考えております。いかなる場合におきましても、人権の尊重、人権の擁護、人命の尊重、これはもう当然のことでございます。もちろん自衛隊のようなものの性質上、訓練をしなければならぬことは当然のことだと存じます。あらゆる艱苦欠乏に耐えるだけの訓練をしていきたい、これも当然の要請だろうと考えますけれども、その基本におきましては、どこまでも人命、人格、これの尊重は貫いて参らなければならぬと考えております。
  61. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま大臣から、教育一つの民主主義と申しますか、人権と申しますか、そういったものを大きく尊重しなければならぬという御答弁をいただきまして、それについては私ども全く同感でございます。そこでさらにもう一点お尋ね申し上げておきたいと考えますことは、紀元節につきましても、先ほどからいろいろ論議がかわされて参りましたように、政府政府の言い分なり、大臣大臣の御見解なり、いろいろあると思います。また私ども社会党としては、社会党の言い分なり見解があるものと考えております。それぞれの立場からいろいろ言い分なり考え方は成り立つと思いますけれども一つ紀元節の問題、あるいは最近起った、ただいま申し上げましたような自衛隊の訓練死の問題、こういったものをそれぞれ横に並べてみますと、私ども一番多く心配いたしまする一つの封建性と申しますか、軍国主義的な傾向と申しますか、一つの流れがとうとうと流れておるというふうな考え方を強く持つわけでございます。こういった今日の教育一つの風潮と申しますか教育の動向と申しますか、一つ教育の傾向とでも申しますか、こういったものに対しまする大臣のお考えを最後に承わっておきたいと思います。
  62. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は全体の傾向といたしまして、ただいま御心配になるようなものはないと思っております。不幸な事件もございましたけれども、それが今おっしゃったような傾向を物語るものというふうに断定を下すのはどうだろうか、かように考えております。いずれにいたしましても、われわれは歴史を元に戻すつもりはございません。将来の発展を期して進んで参らなくちゃならぬ。教育の問題につきましても、今日の社会、今日の国家の状況については、お互いに反省すべき点は反省をしなければならぬ、さような反省から出たいろいろな動きというものはあるかもしれませんが、たびたびお言葉に出ましたようなあるいは軍国主義に戻るとか、あるいは天皇主権制のもとに戻るとかいうようなものの考え方では動いておらないと考えております。
  63. 河野正

    ○河野(正)委員 最後に一つの要望を申し上げておきますが、私どもは今日、先ほどからいろいろ論議しました点というものは、やはりそういった教育が昔に戻される、逆コースと申しますか、そういう傾向をたどるということについていろいろ憂慮する点がございましたので、いろいろ熱心な論議がかわされたというふうに考えておるわけでございますから、そういった国民の要望といいますか、世論につきましては、十分慎重な態度をとっていただきますことを最後に要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  64. 高津正道

    ○高津委員 ただ一点関連して。今尊敬する田中議員のお話を聞いたのでございますが、反共を商売にしておるような建国会というようなものがあり、それらの主催で建国祭というものが戦時中非常に盛んに行われたのであって、紀元節自民党考えない、建国祭、建国記念日を考えているんだ、こう言われるが、同じであります。それから二月十一日が悪いのだとわれわれが言うのに対して、最初われわれは二月十一日を予定してこれがいい、そうはきまったのではない。考えてみれば結局そこに落ちつくので二月十一日となっておるのだ。表に現われたところは依然たる二月十一日であって、それで紀元節を二月十一日でちゃんと復活するのだ、名前は戦時中はやった建国祭にするのだ、いよいよもってあなた方の御意見はちっとも新しい内容はないのでありますから、私は社会党の全員と協議をしておるわけではないけれども、社会党としてはそのような論処に基いた紀元節の復活運動に対しては絶対反対であるということを文部大臣にも聞いてもらいたいし、同僚議員諸君にもこれを耳にとどめていただきたい、こう考えるものであります。
  65. 平田ヒデ

    ○平田委員 関連して大臣にお伺いしますが、ただいまのいわゆる建国を記念する祝日を持とうというふうに自民党の方ではお考えがまとまっておられるようでございますけれども、その建国記念日をどういう形でなさろうとしていらっしゃるのか、知っていらっしゃる限り承わりたいと思います。
  66. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日その日をきめまして、その日をどういうふうにやっていくかというようなことについては、党の方でどういうふうな考え方をしていらっしゃるか、私よく承知をしておりません。
  67. 平田ヒデ

    ○平田委員 国の起源というものは、古ければ古いほど伝説的で真実を離れるわけでございます。それならそれでただ物語りめいたものとして、力み返らないで、むきにならないで祝うというのでしたら、今の進んだ感覚を持っておられる方々もあまり抵抗がないのじゃないか、そんなふうに考えます。  それからもう一つ心配されている点というのは、精神内容まで旧態依然としていわゆる民族伝統の精神を高揚するというのであってはどうかと思うわけでございます。日本民族のほんとうに持っておるところの芸術とか文化、いわゆる伝統の精神が泣くのではないか、そんなふうに考えます。  それからもう一点は、建国記念日を祝う形式が、宮中の儀式にまでこれが再発展して、位階勲等を胸に掲げられたる方々がお並びになって、そうしてのりとまでやって、それが国家主義の衣裳を飾るようなことになっては、これまた前へ進まんとしておる民族にとってはマイナスになってくるのではないか、そういう点を十分お互いに考えなければならない、そんなふうに思っておるわけでございます。大臣はそれはきまっていないとおっしゃいましたけれども、その点どんなふうにお考えになるのでしょうか。個人としてのお考えでもけっこうでございます。
  68. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この祝日と申しますか、建国の記念の日ができました際のこれの扱い方、ただいまお話になりましたような点は十分考慮すべき問題であって、いたずらに国民の今後の考え方等につきまして妙に元へ戻してしまうとか、非常に古い時代にあこがれたような形のものであるべきはずのものではない。将来生々発展すべき国といたしまして、この日をいかに有意義に過ごしていくかという意味合いにおいてこの日は過ごされなくちゃならない、私はさように考えておる次第であります。お気持の点はよくわかりましたけれども、まだ今具体的に、少くとも私といたしましては構想を持っておりません。     —————————————
  69. 長谷川保

    長谷川委員長 次に、昭和三十二年度文教関係予算について質疑の申し出がありますので、これを許します。野原覺君。
  70. 野原覺

    野原委員 紀元節について私どもの方からいろいろ質疑をいたしたわけでありますが、私は文教予算についての質問に入る前に自民党の田中委員から御発言がありましたので、一言いたして、そうして予算に入りたいと思うのであります。  それは二月十一日の建国の記念日を考えておるという場合に、私どもがまず考えておかなければならぬことは、二月十一日という日、つまり紀元節を行なってきた二月十一日が一体どういうような影響を今日の日本に与えておるか。紀元節についての深刻な自己批判、反省、これの上に立って建国の記念日をいつにするかということを考えなければならぬ、こういう態度で私どもは臨んでおるのであります。私どもに言わしめると、同僚議員から言われたように、二月十一日の紀元節というのは八紘一宇の精神にこれが発展しておるのであります。天皇は現人神だという考え方にやはり発展していったのであります。天皇神格というところから八紘一宇、そうして肇国だ、何だということになって、どういうことが現実に日本に及んできたか、こういうことを私ども考えた上で二月十一日を論議しなければならない、これは大体今日識者の一致した意見ではないかと思うのであります。もとより大臣も申されましたが、建国の日というものは過去にあるのじゃございますまい。おそらく過去にあるのじゃない。これは現在における私ども日本国民の生活をどのように充実させるか、日本の国がこれから先どのように発展していくかということにあるわけでございますから、やはり新しい憲法の上に立った建国の日というものを、私どもは新しい角度で論議していくという心がまえが必要ではないか。田中委員に言わしめると、国民は非常に熱狂しておるということでございますが、熱狂しておるのはひとりよがりの年寄りか、頑迷なる保守主義者であります。これはちゃんと新聞が論説に書いておる。そうして熱狂しておるのは右翼反動の連中なんだ。私どもはこういう人々が熱狂しておればおるほど実は心配をする。問題はここにある。このことだけを一言最後に申し上げまして、予算についてまず大臣お尋ねをしたいと思うのであります。  第一点は、義務教育費国庫負担金でございまするが、これは大臣も御承知のように教職員の給与改訂というものを政府考えておるようであります。聞くところによれば、何か人事院勧告を全面的に尊重していく、こういうことだそうでございますが、そうなりますと、その給与改訂というものは、この義務教育費国庫負担金の中に包含されておるのでございまするか。給与改訂を見越した予算であるかどうかお尋ねいたしたいのであります。
  71. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 給与改訂に伴う経費は一般に国家公務員六・二%の財源を見ておりますので、義務教育費国庫負担法の中におきましては約四十五億を見込んでおります。
  72. 野原覺

    野原委員 考えておるということでございますが、それでは次にお尋ねいたしたいのは、これは文部当局も御承知のように、教職員の昇給の問題、昇格の問題というものが、地方財政が非常に苦しいために、これは全面的に実施されるどころか、全く頭打ちの状態にあるわけであります。このことを文部当局は知っておるかどうか。知っておるとすれば、昇給昇格がスムーズにいくために、文部当局はこれまでどのような努力をされてきたのかお示しを願いたいのであります。
  73. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 今お話しのようなことが特に再建団体に起きておるのでありまして、私どももできるだけ再建団体の中におきましても、その他の地方団体におきましても、昇給昇格が円満に実施できるように努力をして参ったのであります。特にただいま文部省といたしましても、標準定数というようなものを考えまして、標準給与というものを検討いたしまして、教職員の給与の適正につきまして検討を進め、自治庁とも折衝しておるところでございます。少くとも来年度の単位費用におきまして、義務教育費につきましても、高等学校の経費につきましても相当改善される見込みでございます。
  74. 野原覺

    野原委員 この問題は実は私どもの知っておる限りにおいては、各県に相当問題が起っておるのです。各府県の教職員組合とそれから府県の教育委員会との間に、これは相当長い年月にわたって問題が起っておることでございまするから、私はここで委員長に要望いたしておきますが、文部当局は昇給昇格が昭和三十年度から三十一年度二カ年間に、各府県では一体どのように実施されてきておるか、昇給昇格の実情を文書にして次回の文教委員会にお出しを願いたい。これは委員長からしかるべくお取り計らわれんことを要求いたしておきます。  次にお尋ねしたいことは、この高等学校の「定時制教育等の振興」のところであります。この内訳を見てみますと、備考のところに(1)「定時制教育設備費補助金」というものがあります。それから(4)には「定時制高等学校施設整備」とございます。これは私ども設備と施設ということは、予算上異なった概念を持っておるのかと思う。一体設備と施設とはどう違うのかお示し願いたい。
  75. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 設備の方は学校の中に備えつける教材教具の類でございます。施設の方は建物の方でございます。
  76. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、施設費の五千万円というのを含んでおりますが、この五千万円という施設の金は現実に出せないことになる心配がありはしないか、高等学校定時制教育及び通信教育振興法という法律の第五条を見ますと、「国は、公立高等学校の設置者が定時制教育又は通信教育の設備について、政令で定める基準にまで高めようとする場合においては、これに要する経費の全部又は一部を」云々と書いてある。施設についてという法文がないのであります。このことは一体どういうことになるのか。私どもは非常に疑問に思うのでお尋ねをしたい。
  77. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 これは新しく本年度入った経費でございまして、予算補助でやるつもりでございます。
  78. 野原覺

    野原委員 そうなりますと、今の法律のもとでは当然には五千万円は支給できない、こういうことになるわけですか。
  79. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 今お話法律ではいたしませんが、これは文教施設の中で建物の予算補助として交付するつもりでおります。別にこの法律には拘束を受けません。
  80. 野原覺

    野原委員 私、聞くところによりますと、文部省は当初定時制高等学校の人件費についても大蔵省に要求をされたそうでありますね。これは大臣お尋ねしますが、一体どういうことであったのか。どういう方針を当初定時制高等学校の先生の人件費について考えてこられておったか、お尋ねをします。
  81. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねの点は、定時制高等学校の職員給与費につきまして四割の国庫補助予算に計上いたしたいと考えた次第であります。金額にいたしまして大体三十二億という数字になっておるのであります。率直に申し上げますと、いろいろ折衝いたしましたけれども、本年度のところは財政の都合上とうとう実現することができなくて、かような状態に相なったわけであります。
  82. 野原覺

    野原委員 私どもはそのことについてきわめて残念に思うのであります。定時制高等学校は勤労青少年のほとんどが入っておるような状態でありまして、定時制高等学校の先生の待遇につきましても、特殊な状況に置かれておるために相当問題があるわけであります。文部省は当初要求をして大蔵省からいれられなかったということでありますが、少くとも義務教育費並みの半額とまではいかなくとも、四割なり三割なりその程度のものは相当がんばってでも確保すべきではないか、私どもは非常に残念に考えております。そこで関連して定時制高等学校お尋ねいたしたいことは、御承知のように定時制教職員は特殊の生活条件にございますから、特別優遇の措置を講ずべきではないか、夜学あるいはその他夜学でない場合にも、定時制高等学校の先生には全日制の高等学校の先生よりも特別な優遇措置を講ずるのが至当ではなかろうか、このように私どもはかねてから考えてきたのでございますが、これに対する文部省の見解を一応承わっておきたいと思うのであります。
  83. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 文部省といたしましては、従来全日制、定時制とも大体同様な待遇をいたしております。ただ特に昼間の先生が夜間に勤める場合には、特殊な場合として超過勤務を支給するような方法をとっております。
  84. 野原覺

    野原委員 そこで大臣お尋ねをいたしますが、あなたはこの前の文教委員会大臣のあいさつの中に、私は文部大臣として知育、徳育並びに体育、この三つに努力をしたいと言われた。教育といえば、知育、徳育、体育なんです。これはきわめて平凡なあいさつだな、何を言っておるかわからぬと思って私は聞いておった。あなたの努力点がどこにあるのか、私どもは把握に苦しみながらあの委員会では拝聴いたしておりました。そこであなたにお尋ねしたいことは一特にあなたが徳育について努力をしたい、こういうことでございますが、具体的に言えば、どういうことをお考えになっていらっしゃるか。文部大臣として徳育に努力するという、あなたの具体的なお考えをお示し願いたいと思います。
  85. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私といたしましては、徳育の問題については、もちろん今後の検討に待たなくちゃならぬものもございます。学校の実際の教育状況がどういうふうになっておるかというようなことにつきましては、十分検討いたしてみたい。その上で学校教育等につきましては、必要な問題については必要な施策を講じていく、こういう考え方でございます。一般的に申しまして、徳育の問題は、特別の施設を講ずるとかなんとかいいますよりも、日々のいろいろな機会をとらえて、道徳というような問題については適切な教育指導を行うべきではないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  86. 野原覺

    野原委員 今後考えていきたい、それからそれは特別なことは考えていないのだ、こういうことになりますと、裏返せば、ただいまのところ何も考えていない。あなたは声を大にして文教委員会で、徳育に私は努力すると言うから、私は相当な自信と抱負を持っていらっしゃると思っておった。具体的には何もない、これから考える、そういうことになりますと、実はお尋ねのしようもないのであります。だから、いずれあなたが早急にお考えになられたら、その上で私ども質問いたしましょう。今聞いてもどうにもならぬ。  ここで私がお聞きしたいことは、徳育にちょっと関連がありますから、お尋ねいたしておきますが、入学試験——今日義務制の中学校では、高等学校の門が狭いために、非常な補習教育が遺憾ながらなされておるのです。それから高等学校においては、大臣よく御承知のように、これまた実に深刻なものです。戦争前の大学入試以上にここ二、三年間というものは非常な激しさを加えてきている。からだを害する。あなたも考えて努力しょうという体育の上から見ても非常な問題です。それから、学校は単に入学試験に及第するための学校教育じゃございません。これは人格を陶冶し、よりりっぱな人間を作る教育でなければならぬ。その学校教育が、入学試験の結果、残念ながら実はほんとうのものが行われていない。こういうことに対して、大臣はどういう御所見を持っておられるか承わりたいのであります。
  87. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 入学試験がいわゆる試験地獄というような状態になっていることは、きわめて心配しなければならぬ問題であります。よく実情を検討いたしまして、何とかその辺のことにつきましては、今後工夫して参りたいと思います。
  88. 野原覺

    野原委員 これも何も考えていらっしゃらないようですが、一つ大臣に要望いたしておきますが、この問題は簡単に解決できる問題ではありません。長い間私どもも問題にして参りましたが、高等学校の数が少く、大学の数が少い。希望者が多いということになれば、いきおい採用する学校としては実力によって判別する以外にない。これは日本の教育界の悲劇なんです。明治、大正、昭和にかけて数十年間の深刻な問題であったと思う。しかしこの問題を私どもは何としても解決しなければ、ほんとうの教育政策は完全に実施されないということを考えるべきであります。文部大臣は諮問機関である中央教育審議会その他広く斯界の権威者意見を参考にされ、これはわが国の国政全般に影響を及ぼして参りますから、抜本的にこの問題を解決するために御努力される決意があるかどうか承わっておきたいのです。
  89. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 きわめて重要な問題と考えますので、今後十分に検討して参りたいと思います。
  90. 野原覺

    野原委員 次にお尋ねしたいことは、教科書法案であります。教科書法案については、この国会に御提出になられますか、なりませんか、いかがですか。
  91. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教科書法案については、文部省といたしましては、案を整えて国会提出したいという考えのもとに進んで参っております。しかしこの問題には、いろいろ議論がございます。党内におきましてもいろいろな意見がありまするので、私といたしましては、ただいま慎重に検討をいたしているところであります。遠からず政府の正式な態度もはっきりすると思います。
  92. 野原覺

    野原委員 目下検討中であって、提出するかしないかを考えているのだということでございますから、これ以上は申し上げませんが、私は灘尾さんとは深いおつき合いはありませんけれども、私ども同僚議員から、非常にまじめな方で、文部大臣としては、けだし保守党の中で最もつつましい人だというふうに聞いておりますから、どうかその辺も慎重にお考えの上、臨まれんことを要望したいと思うのであります。  最後にお尋ねしておきたいことは、宇治の原子炉の問題であります。これは大臣のところにも、大阪初め神戸、淀川の水を飲んでいる六百万ないし九百万という市民の代表が、宇治に原子炉を作られたのでは、風上にとんでもないものを作られることになって、身体の保障すらもできぬではないかという反対陳情が参っていようかと思うのでありますが、一体これはどういうことになるのか、やはり宇治に原子炉を設置するという方針で臨まれるのかどうか、ただいまの段階はどうなっていらっしゃるかお尋ねをいたします。
  93. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文部省といたしましては、関係大学の要望によりまして、大学の利用に供するために関西地区に研究用の原子炉を作ろうという計画を進めて参ったのであります。そのために関係方面と十分連絡もいたしますと同時に、関係大学あるいは日本学術会議原子力委員会、科学技術庁の原子力局というふうな諸機関と協議の上、研究用原子炉設置準備委員会というものを作ったのであります。委員長は湯川先生になっておりますが、その設置準備委員会におきまして原子炉の設置に関する計画、原子炉の型でありますとか、設置場所、管理運営等の方法につきましての審議をお願いしてきたわけでありますが、その委員会で慎重に検討いたしまして、いろいろ条件を考えまして、三十五カ所の候補地の中からただいま世間で問題になっておりますところの宇治に設置することが適当でないかという結論が出たわけであります。それで文部省としましては、これを予定地といたしまして、来年度の予算を組みまして、今度御審議をお願いしているようなわけでございます。しかしこの問題につきましては、今お話もございましたように、いろいろ世間で心配の向きもございます。私どもといたしましても、万一のことがあっては大へんなことでありますので、念には念を入れて参りたいと思います。先ほども申しました設置準備委員会でさらに十分な検討を重ねてもらいたいと思いますし、関係の向きに対しても十分協議をいたしまして、万全であるということでなければ、これは容易に実施すべきものでない。かような意味合いにおきまして、これが設置については慎重の上にも慎重に考えました上で、最終的の結論を得たいと思っているわけであります。ただいまのところは宇治を予定地といたしまして、これを中心としていろいろ検討いたしている次第でございます。
  94. 野原覺

    野原委員 この問題は大臣がよく実情を御承知でございますから、私はこれ以上は申し上げたくもございませんけれども、これはやはり数百万の市民が感情的——感情的と申してはおかしいのですけれども、どんなに安全だと説明しても納得はできないと思います。しかもその裏づけを、阪大の伏見教授を初め原子力の学者たちが、市民の声は妥当だ、こういうふうに学問的な立場から裏づけるに及んでは、これはゆゆしい問題であります。従って慎重に検討中だそうでございますから、御検討いただくとして、関係市民のそういう反対の声の中でこれが強行されるということになれば、十分な原子力の研究に関しても支障を来たすであろう、こう思われまするので、どうか一つ英断をもって御措置あらんことを私は要望いたしておきたいのであります。  最後にもう一点だけお尋ねしたいことは、産業教育の振興についてであります。この産業教育振興法で、産業教育に従事する教員につきましては、何らか特別の手当というものが出されておるのかどうか、出されておるとすればその実情はどうなっているか、お尋ねいたします。
  95. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 産業教育振興法に基きまして産業教育に従事する教員については資格、待遇等について特別な措置を講ずるようにという規定がございまして、私ども多年関係方面に要望をして参り、特に地方財政の関係で自治庁、国家公務員に若干関係がございますので、大蔵省の主計局、それから人事院の関係等がございまして、大体自治庁と大蔵省の方は了解がつきましたのですが、今人事院と折衝中でございまして、できるだけ何らかの形で優遇措置が講ぜられるように努力しております。
  96. 野原覺

    野原委員 これは大へんな問題であります。あなたも知っておるように、産業教育振興法の最終改正があったのが昭和二十七年の八月で、それから足かけ五ヵ年経過しておる。五ヵ年経過しておるのに、この法律予算の上で実施されないということは、大きな文部省の手落ちだと思うのです。灘尾さんは就任されたばかりだからとやかく申しませんけれども、今日まで文部当局は一体何をしてきているのか。第三条の三を読んでみなさい、これにはっきり書いておる。「産業教育に従事する教員の資格、定員及び待遇については、産業教育特殊性に基き、特別の措置が講ぜられなければならない。」と書いております。五年前にこの法律ができて、特別な措置を講じなければならぬと法律が命令しておるにもかかわらず、いまだに人事院あたりでもたもたしておるということは私は了解できません。実に怠慢だと思う。その間の説明をもう一度してもらいたい。
  97. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 人事院がこの問題について非常に苦慮しておりますのは、該当する国家公務員が非常に少いということです。特に実業教育高等学校というのは非常にまれでございまして、二、三あるだけなんです。たとえば東京教育大学の坂戸の定時制高校あるいは愛媛大学の附属農学校、それから教育大学の附属の駒場高等学校、この三校しか該当がないのです。対象人員が非常に少い。そのうち農、工、商、水産に従事しておる者がわずか数人という有様です。そこで人事院としての一つ理由は、むしろこれは地方公務員の問題であって、国家公務員の問題ではないんじゃないかというのが第一点。第二点は特殊勤務の性格から考えて、この程度のものならほかにもたくさんあるんじゃないかという点で、これだけ拾うとほかの方との均衡上困る、こういうことを言っておりまして、実は人事院の会議でも再三これが議論に上っておるわけであります。私どもの方では今御指摘の通り、産業教育振興法の条文に基きまして、こういう特別の措置を講じなければならないということになっておるのだから、何とか至急に措置してほしいということでやっておりますので、今しばらくお待ちいただきたい。人事院としても怠慢ではございません、一生懸命検討して何とか実現できるように努力をしておるところでございます。
  98. 野原覺

    野原委員 一生懸命に検討しておるという言いわけですけれども、当時小学校一年生になった者はもう五年生です。そのころになっても検討中だということになると、どうも私どもにはわからない。あなたに言わせると地方公務員の方だとか何とかかんとか言っておるけれども、これは理由になりません。法律に明らかにこうなっておる以上、この文教関係法律実施する責任文部大臣にある。文部省にある。文部省が行政当局のはずだ。国で定めたこの産業教育振興法という法律を十分実施していないということになれば、それは何といっても文部省責任があるのではないか。これは内藤さんがどう言われようと責任はのがれられない。努力しておるということだそうでございますから、私はこれ以上言いませんが、一体ここ一、二ヵ月で人事院の給与勧告等が出るという見通しがあるのかどうか、その見通しを述べてもらいたい。
  99. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 大体お話のように一、二ヵ月のうちには結論を出すだろうと思います。
  100. 野原覺

    野原委員 私は終りました。
  101. 長谷川保

  102. 山崎始男

    山崎(始)委員 文部大臣お尋ねいたしますが、昨年の六月に御承知のように新しい教育委員会法が非常に混乱のうちに成立をいたしました。その後全国におけるところの教育行政が、新しい教育委員会法によって円滑に行われておるかどうかという問題であります。特に当時われわれも問題にいたしました教育の中立性は、この新しい法律ではむしろ阻害されるのだ、また原案送付権を剥奪いたしております関係上、教育行政と地方財政との調和をはかるという政府の主張でございましたが、むしろわれわれは財政の面において、地方行政の下に教育行政がつくようなことになるおそれがあると申して参ったのであります。そこで新しい教育委員会が成立してまだ日が浅うございますが、大臣の御所見としては、ただいま私が申しましたような立場から見て、今日の日本の教育が円滑に行われておるかどうか、これに対する大臣の御認識のほどを最初にお伺い申し上げたい。
  103. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 言いわけを申すわけではございませんが、私はまだ実情に暗いのであります。あるいは私の申し上げることは認識不足だ、こういうことにもなろうかと思いますが、かような点は今後いろいろな機会に御教示を得たいと思います。  教育委員会が昨年ああいう経過で改組せられまして、今日まで日もたたないことでありますので、今直ちにそれがどうかという判定を下すのはまだ早いのではなかろうか。文部省といたしましては、あの法律改正の趣旨に沿って、正しく教育委員会が動いておるかどうかという点につきましては、十分に実情を把握することに努力しなければならないと思います。と同時に、また御承知のような財政問題が、この教育については大きな問題でございます。財政の面から申しまして、あるいは教育委員会と府県の当局というふうなものとの間に、うまくすらすらものが運んでいないというふうなこともこれはなきにしもあらず、こういうふうに私は考えるのであります。そういう問題につきましては、文部省といたしましてもできるだけ調整には努力しなければならぬ問題ではないかと思っております。ただいますぐにうまくいっているとかいないとかいう断定を下す時期ではなかろうかというふうな感じがいたしておるわけであります。
  104. 山崎始男

    山崎(始)委員 実は六月の初旬に、その法律が通過いたしましたあとで、御承知だと思いますが、新潟県知事が新聞記者と会見をいたしました、そのときにどういうことを言ったかといいますと、新教育法が通過した後においては、自分は自分の教育方針に賛成をしてくれる人間を推薦する、任命をする、これが一点。いま一点は同一市町村においては小中学校の校長は一人でよろしい、一人にするつもりだ、これを言うたのが一点であります。その数日後この県知事は教員の四十五才停年制をしくということで世間をびっくりさせた、これは当時大きく新聞に出ました。このことはまことに気違いざたのようでございましたが、われわれといたしますと、新しい教育委員会法がしかれた後においては、気違いざたのように見えるが、この端的な新潟県知事の教育の方向というものが必ず打ち出されるであろうという予感を、実は私は持っておったのであります。まず最初の一点の、自分の教育行政に賛成をしてくれる人間を推薦するということは、これにも非常に大きな意味が私はあると思う。どういう意味かと申しますると、結局あの法律には同一委員会には二人以上の政党人を委員に送ることはできないのだ、いわゆる非政党化の規定とでも申しますか、そういう規定があったはずであります。なるほど当時の立案者である文部当局は実にうまい表現を使っている、いかにもこの法律というものは教育の中立性を阻害しないのだ、それがためにこういうふうな非政党化の規定まで作ってあるのだ、こう一応見えるのでありますが、実は私たちはこれは全く無意味であると思っている。これは申し上げるまでもございません、今日の地方末端における都道府県知事あるいは市町村会議員というものは、保守党に好意を持っておる人が断然多い。してみまするとやはりこれは人情でありますから、この新潟県知事の自分の教育方針に賛成をしてくれる人を推薦するという言葉自体に、法案そのものの非政党化の規定というものは骨抜きになっている、まずこう見なければ私はいけないと思うのです。また第二点における一市町村において小中学校の校長が一人でよろしいのだ、まことに端的な表現でありまするが、これも多かれ少かれこの方向が出る、すなわちこの言葉というものは、教育は安上りでよろしいのだという意味だ。ところが新しい教育委員会法には原案送付権を剥奪して地方財政と教育財政というものば並行させるのだ、調和を保つのだとまことにりっぱな言葉でありまするが、遺憾ながら力のない教育行政というものはその風下につく方向をたどるであろうという想像をしたのであります。ところが最近各地におきまして私たちが当時心配をしておったこの方向をたどっておる事件があちらこちらと起っておるのであります。それで私は実はきょう一つの例を申し上げて大臣の御所見を承わりたいと思いましたことは、本年は一月の下旬におきまして、岡山県の自由民主党の支部が、県下の小学校中学校の校長七百七十六人に向って五つの問題を提起してアンケートを出して回答を求めている。どういう問題かと申しますると、第一に、愛国心を基礎とする教育をどう考えるか、二番目が、新しい道徳教育はいかにあるべきか、三番目が、職員を監督する地位にある学校長は教組を離脱するのが適当ではないか、四番目が、県教組が総評に加入し、また日本民主教育政治連盟県支部と一体になって選挙運動をすること、労働組合と同じ争議権を背景として行動することをどう考えるか、第五番目が、自民党県連に対する要望、この五つの問題を出して小中学校の校長にあてて発送したのでございます。何でもないような問題でございまするが、一政党の県連がこういうふうなことをやるということ自体は、大臣として好ましいことか好ましくないことか、まずこの点から一つ御所見をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  105. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまお尋ねの事実は私案は承知いたしておりません。ただ政党といたしまして、教育関心の深い問題についてその政策なり方針の立案上参考にするために、関係の方の意見を聞くということは、これはさしつかえないことじゃないかと思っております。
  106. 山崎始男

    山崎(始)委員 おそらくそういう御答弁だろうと思ったのですが、このアンケートは一つの意図が含まれたアンケートだと解釈をしなければならぬと私が思いますのは、純真な無雑な気持で今あなたがおっしゃったような教育上の参考資料にするのだという立場から出されたものではない、なぜならば第三番目の問題に、学校長が教組から離脱するのが適当ではないかという、出した人の主観を入れているのです。これがまず第一。およそただいまあなたがおっしゃるような教育上の参考資料にするということならば、こういう主観が入ったアンケートの出し方というものは私はないと思う。問題が非常に抽象的にわたりやすい問題でございますから、あまり深追いはいたしませんが、大臣も私が申し上げる気持ちは御了承を願えると思う。純真なものならこういうアンケートの出し方はしない、いわゆる語るに落ちておる、ここに出した人間の意図というものが非常に入っておる。私は大臣がそのような御答弁ですので、これ以上この問題で追及はいたしません。抽象論になりますから追及はいたしませんが、全くこれは純真な教育を愛する立場から出たアンケートとは見えない、同時にまたもしそうであるとすると、私は非常にこれは憂慮すべき問題である、かように実は考えておるのであります。  このアンケートの問題はそれといたしまして、今私が申しましたのは一月の中旬でございますが、二月の一日に今度は県議会の議長が、議長の圧力によったかどうか、それは大体見当はついておるのでありますが、事務局長の名前において全国都道府県の議会事務局を通じて、教員組合の中の第二組合の動態について調査を同じこの議会がやっておることがわかったのであります。一体一月の下旬において、先ほど言ったアンケートの回答を求めて、そして二月の初旬において第二組合の発生の経路を全国的に調査をし出したという事柄は、前者の場合は自民党県連、後者の場合は議会事務局長の名においてそれを出している。一体こういうふうな第二組合発生の経路を公的機関であるところの県議会事務局長というものが、少くとも公的立場と考えなければなりませんが、公的機関であるものが教育委員会を差しおいてそういうことをするということに対して、好ましいことか好ましくないことか、この点につきましても大臣の御所見を一つお聞かせ願いたいのであります。
  107. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、この教職員の組合につきましていろいろ関心を持っておる者が、事態がどういうことになっておるか、事実はどうであるかということを調査することは、別にとがめ立てすべきことでないと思っております。
  108. 山崎始男

    山崎(始)委員 これはやはり前者の場合と同じように抽象的な問題で、やはり心証の問題が重点になると思いますので、あなたもおそらくそういう御答弁だろうと私も考えておったわけであります。  しかしながら、それではいま一つお聞きいたしまするが、これもつい最近のことです。県議会の議長が県の教育委員長を呼びつけて、三月の異動期までに県教育長、事務局の総務課長あるいは教育次長、これの後任に二人名前をあげて、これをぜひ入れるようにという指令と申しますか、強制をしておるのであります。その二人の中の一人は、現在国会議員の秘書をやっておる人でございます。それがその中の一人に入っておる。もとよりこれは自民党の国会議員の秘書であります。社会党の国会議員の秘書でないことは、これは申し上げるまでもございません。私はあえて名前を秘します。必要とあらば申し上げてもかまいませんが、名前を秘します。一体こういうふうなアンケートを出し、しかも公的機関であるその事務当局の長の名前において、第二組合発生の経路を調べさしておる。これは明らかに、だれが考えたところで、いわゆる教員組合の組織の分断と申しまするか、それをはかっておる。大体今申し上げました第二段において、校長は教員組合の組合員であることは適当でないと思うがどうであるかと、主観を入れて出しておる。こういう関係考えてみましても、これは明らかに不当労働行為とでも申すことができるんじゃないかと思うような事件ではないかと思います。同時に今私が申し上げました人事権に県議会の議長が介入をしておる、こういう非常に驚くべき事実があるのであります。さすがの、この議長によって同意を与えられたいわば議長の前に出るとひれ伏しているところの教育委員長教育長も、あまりの事柄にいささかあぜんとした、これは当然でありましょう。そうしたところが、そのまた議長がある高等学校の校長を呼んで、お前を学事課長にしてやろうと思うんだが、お前はそのときにはそれを受ける意思があるかどうかということまで、最近聞いております。これも私は証拠を持っておりますが、一体こういう事柄は、前二者の場合はあなたはただいまのような御答弁をされたのでありまするが、こういう事柄は一体好ましいことか好ましくないか、一つ答弁願いたい。
  109. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現実の事態は私は知らぬわけでありますから、そういう現実の、この問題についてどうかとお尋ねになりましても、的確なことは申し上げにくい。ただ今あなたのおっしゃいましたようなお言葉通りの事実があるといたしますならば、これは行き過ぎではないかというふうに思いますけれども、呼びつけたというのと、来てもらったというのとはだいぶ違っております。そういうふうに、事態がどういうことであったか存じませんけれども、人事について干渉するとか、介入するとか、圧制を加えるとか、これはよろしくない。これは当然のことであると思いますけれども、人事についてお頼みするとかお願いするということはあり得ることであります。具体の事実によって判断しなければならぬ問題でありますので、その具体の事実についての御返事は保留させていただきたいと思いますが、私はとにかく県の議長が威力を持って、圧力を持って人事に介入するというふうなことは、好ましからざることであるということは申すまでもないことだと思います。
  110. 山崎始男

    山崎(始)委員 これは時間もございませんからあまり私は申し上げません。やはりこれは一つの例にすぎませんが、ちょうど新潟県知事が端的に言うた、自分に賛成の者を教育委員に推薦をするということ、これはどう言いますか、公選ということを廃止して任命制に切りかえた——しかも今日の任命する人の心がまえというものは、先ほど申し上げましたように十分わかっておりますから、そういうふうな結果から出た一つの適例だと私は考えるのであります。従ってこういう点から見ますと、とうてい教育の中立性なんということは現実においては私は考え得られない。これはたまたま岡山県だけの、こういうふうな極端な例が表面に浮んだからでございますが、こういうケースは全国至るところに今日伏在しておる、かように私は実は見ておるのであります。  次に一点だけ、市町村学校長を一人にするという、極端な安上り教育の方向、やはりこの一つの例として私がお尋ねしたいことは、これもごく最近のことでございますが、原案送付権がなくなった関係上、愛媛県では教員の昇給昇格の条例を作りまして、十月以前すなわち四月、七月の昇給昇格を含むと思いますが、十月以前の昇給昇格は勤務評定によってこれを定めるのだ、十月以降の昇給昇格はから辞令によってやるんだというふうな条例を一応きめてしまったのであります。この点について初中局長はお聞きになっておられますか、どうですか。
  111. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 愛媛県の勤務評定及びその昇給昇格問題については聞いております。
  112. 山崎始男

    山崎(始)委員 これも裏から探ってみますると、県知事の圧力によって——教育委員会がそういうことはしないと言明はしておったのでありますが、県知事のいわゆる圧力によって、とうとうこういうふうな好ましくない、やりたくない条令を作ることに教育委員会が同意している。これが昔の教育委員会でありましたら、原案送付権を持っておりましたから、もとよりこういう事態は起らないであろうと思うのでありますが、こういうことはやはりこの地方財政の赤字、特に再建整備というふうな言葉に口をかりまして、こういうふうなひどい条令ができる可能性が、私は今後多くあるんじゃないかと思う。ごく最近条令化したところの愛媛県の例なんかは、その特異の例だと思うのでありますが、一体こういうことは文部省として見て知らぬ顔をしておられていいものであるかどうか、私は非常な疑問を持つのであります。文部大臣は一体どういうふうにお考えになりますか。
  113. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 ただいまのお話でございますが、愛媛県の場合、教育職員だけじゃございませんので、一般公務員、いわゆる県の職員もやったわけでございまして、同一歩調をとった。しかしこの愛媛県の場合には、御承知通り再建団体になっておりますので、財政上やむを得ない措置だと考えざるを得ないのであります。
  114. 山崎始男

    山崎(始)委員 そうすると、そういうふうなどんなひどい条令を作られても泣き寐入りになる。特に原案送付権を剥奪して、あくまで騒いで地方行政と教育行政との調和をはかるんだといわれた文部当局、特にいわゆる義務教育の機会均等、あるいは教育内容の充実ということを国の責任においてやるんだという、その責任の府である文部当局が、今後いかなる条令を作られても見て見ぬふりをしてほうっておいていいと、今のあなたの御答弁は解釈していいのですか。
  115. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私ども決してそういう考えは持っておりません。国家公務員たる国立学校の教員に準じて、これを基準として条例で定める、こうなっておりますので、国家公務員の基準に該当するかどうかということが問題点でありまして、義務教育の一定の水準を守るところの十分なる用意はいたしておるつもりであります。
  116. 山崎始男

    山崎(始)委員 やはり愛媛県の場合に限りませんが、他の県でも首切り問題というものが、地方財政の問題にからみ合って起きておるのであります。たしか千葉県あたりでも起きておると思うのであります。佐賀県あたりでも起きておると聞いておるのでありますが、御承知のように地方は今日予算の編成期へ入っておりまして、この問題が四月、五月になりますと、もう少しはっきり大きく数学的にも出てくると思うのでありますが、私はこれはゆゆしい問題だと実は考えるのであります。一体文部大臣は、申し上げるまでもありませんが非常に大きな責任がある。今申します義務教育の機会均等、あるいは教育内容の充実、いつも水準を高く維持するように維持するようにというふうな教育に対するお気持を、私はもとより持っていらっしゃると思う。またこれはいわゆる教育基本法にも、あるいはまた日本の国の憲法にもちゃんと規定してある大きな国の責任であります。たまたま私は今愛媛県の例を一つとりましたが、この問題は今後非常に発展する傾向がある。これに対してあのような教育委員会法だけを通過させられたということは、私は非常な片手落ちだと思うのです。なぜならば、こういう方向に向うことは先ほどの新潟県知事の言葉を見てもはっきり当時わかっておったのであります。従って大臣は、地方交付税法の改正あるいは財政法の一部改正をやるとかして、みだりに地方が赤字ということをだしにして教育水準を低下させるようなことを防がなければならなかったと思うのであります。この点に対しては、今後の推移をごらんになってでもよろしゅうございますが、そういうふうな傾向が出たときには、地方財政の赤字に籍口して地方教育費の削減を次々にやっていくというおそれを食いとめるために、財政法の改正あるいは地方交付税法の改正をやるとかするような一つの強力な立法措置を他の方途によっておやりになるお気持があるかどうか。義務教育費の国庫負担法のいわゆる率をもっと上げるとかするような予防措置といいますか、それをおやりになる必要が今後当然起ってくると私は予言をしておくのでありますが、大臣の心がまえをお聞かせ願いたいのであります。
  117. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育の水準を確保しあるいは向上をはかる——低下をはかろうという考えはもちろんだれも持っておらぬと思います。少くとも現状を確保するとか、あるいはこれが向上をはかっていくことは当然のことであります。私の職責といたしましてもこの問題については重大関心を払わなくてはならぬ、これは当りまえのことだと思うのであります。今の事態におきまして各地で教育財政に関連していろいろ問題があるということも私も承知いたしております。なるべくかような事態のないように努力するのもこれまた私の責任であろうと考えております。教育財政の国及び地方を通じての充実ということについてはできるだけの努力を払いたいと考えております。そのために地方交付税法の率を上げるとかあるいは地方財政法をどうするとかいうふうなところまで実は考えておりませんけれども、財源の充実という問題については、国及び地方の財政全体とも関係のある問題でございますけれども、その間において教育財政の充実ということについてはできるだけの努力を今後払って参りたいと考えております。
  118. 山崎始男

    山崎(始)委員 教育委員会法の第三十三条の、当時問題になりましたあのことで一つ新しい事件が起っております。事件といいますより一つの例を申し上げて御警告を発しておきたい。ということは、文部省の方では、教育委員会法が通過しました直後に、教育委員会で作る管理規程の基準といいますか、何か標本みたいなものを文部省は全国に流されておる。当時清瀬文部大臣はたしかわれわれの三十三条についての質問に対して、管理規程というものは地方教育委員が良識をもって基本的に一つ基準をきめればそれでいいのだ、あくまで地方教育委員会の良識に待つのだというふうな答弁をされておるのであります。ところが通過した直後にちゃんといち早く文部省の方から管理基準といいますか、何か標本みたいなものを流されて、それに基いて地方教育委員はいわゆる管理規則というものを作ったようであります。あなた方の方からどういうような基準を流されたか知りませんが、最近千葉県あたりでは学校の先生の生理休暇に対して、今までは生理休暇だということで当然休んでおりましたが、今度新しい教育委員会法がしかれてからは、医師の診断書をとってそれを校長に届け出て許可をとるようにというような管理規則を作っておる。あるいはまた、戦争以前にございましたような、教員は何里以内に居住する者でなければいけないというような居住規定のようなものまで作っておる。私はこういう面は非常な逸脱だと思うであります。この三十三条の解釈に基いて、また当時の大臣の御答弁に基いて作るのは教育委員会の自由でございましょうが、私は非常な逸脱だと思います。こういう点に対して文部事務当局は一体どういうふうにお考えになっておるか。
  119. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 学校を所管するところの教育委員会が、学校の管理運営についての基本的な管理規則のあり方を示すのは当然ではないかと思います。ですから、その内容に行き過ぎがあるかないかという点は問題だろうと思いますが、それを作るのは当然だと思います。
  120. 山崎始男

    山崎(始)委員 年の若い女の先生なんか、月経の休みに一々医者に見てもらいに行く現実問題としてそういうことがありますか。これは、どんな法律でも運用の仕方によって国民に非常に迷惑をかける面がたくさんある一つの例じゃないかと思います。三十にも四十にもなって子供が二人も三人もあるのならよろしいが、大学新卒のほやほやの先生が、月経のときには必ず医者の診断書をもらって教育委員会に持っていかなければ生理休暇がとれない。これなんかは、あなたの立場とすれば十分考えてもらわなければいけない。もう一度御所見をお聞かせ願いたい。
  121. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 ですから、管理規則のあり方の問題なんです。行き過ぎがございますれば、行き過ぎないように指導いたしたいと考えております。
  122. 山崎始男

    山崎(始)委員 それは役人の通り一ぺんの御答弁だと思う。六月の末にこの法律が施行された直後に、ちゃんと管理規定の見本みたいなものをあなたは全国に流されている。一体その流された見本にそういうことまで書いてあるのですか。
  123. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私、当時所管しておりませんでしたけれども、おそらく教育会議あたりで御要望がございまして、どういう管理規則がいいのか、ひな形を相談したのではないかと思う。私の方から正式公文書でそういうことを流した事実はございません。その教育会議の席上でいろいろお話が出て、そのときに指導いたしのではなかろうか。もちろんその中にお話のような、生理休暇について一々診断書をとれというような規定まで含んでいるとは考えておりません。
  124. 山崎始男

    山崎(始)委員 私が今申し上げた問題をよく御研に究なっていただきたい。そういうことまできめるということは、目にあまる事柄だと思うのです。千葉県あたりは一つの県としては大きな県でございましょうが、末端の市町村教育委員会といいますか、むしろ町村というような小さな山間僻地の教育委員会は、御承知のように三人くらいのところがある。その中に教育長というものが、以前の教育委員会法でしたら、一つの任用規定というものがございましたが、今度はない。従ってしろうとでもいいということになる。おまけに教育委員長もおらないよなところが現実にはたくさんあるのであります。この点はあなたお認めになりますかどうか。
  125. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 今度の教育委員会では教育長が専任になっておりますが、たまたま助役の兼務のところは本年三月三十一日まで認めておりますので、そういう場合もあり得ると思います。
  126. 山崎始男

    山崎(始)委員 そうすると、法の示す通り、いわゆる地方公務員の義務として常勤でなければならない。これはもう申し上げるまでもないところと思うのですが、現実には常勤ではございません。小さいところにはおりません。しかも任用規定がないから、しろうとです。その者が管理規則を作って、教材の認定はもとより規則を作り、管下の学校を管理しているということになり、非常な問題を起しているのです。ほとんど常勤していないので、学校の校長先生は仕方がないから村長のところへ行ってみたり、村の議長のところへ相談に行ってみたり、今までの手数より倍も三倍も労力を費されているのが現状です。そういう面から見て、教育の空白というものが実は末端には出ているのです。この問題はいずれまた後日追及いたしますが、こういう面があるということを十分御存じになって指導監督されなければいけない。同時に悪い面が出たならば、いち早くこれを取り除くことを考えていただかないと、あのときの新しい教育委員会法というものは、今の紀元節の問題ではございませんが、与党、野党、国民全体が賛成して円滑に作られたものではない。何といいますか、妙な法律なんです。その点、文教政策、文教行政責任者である文部大臣とされては、もし欠点が出たならば、いち早くこれを除くというお心がまえと熱意を強く御要望申し上げて、時間がございませんから、これで終りたいと思います。
  127. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 ただいま管理規則につきましては、私の方でも実情を調査しておりまして、その制定状況を今集めておりますから、そういう行き過ぎがありますれば、その際十分指導いたし、行き過ぎのないように適切な措置を講じたいと考えております。
  128. 野原覺

    野原委員 先ほど山崎君の質問で重大な点があったので伺いますが、岡山の自民党県連が各学校長に通牒を出したということでございますが、これは相当重要視して検討してもらいたいと思う。何となれば、大臣も御承知のように、教育基本法学校教育法も、教職員の自主性を要望するということで貫かれているわけです。しかも教育に対する党派の影響、党派の支配というものを極度に教育の精神が排斥しております。そういう点からみて、これは問題があるのかないのか検討を要することでございますので、委員長に要望いたしますが、文部当局は至急にこの実情を調査して、できれば来週の文教委員会に文書でもって御報告願いたい。先ほどの昇給、昇格の実施状況について、並びにこの岡山の問題の二点を委員長に要求いたします。
  129. 長谷川保

    長谷川委員長 ただいまの野原委員からの資料の要求に対しまして、この際委員長から文部当局に、すみやかに提出されるよう、要望いたしておきます。
  130. 平田ヒデ

    ○平田委員 山崎委員質問に関連して一言申で上げたいと思います。女子職員の生理休暇のことでございますけれども、お医者さんの診断をというお話がございましたが、私の知っておる限りでは、生理休暇を申し出るというのはほんとうによくよくのことでございまして、大ていはみんながまんをして体操までしておるという実情でございます。いろいろなむずかしい規定をお作りになりますけれども、男子の方はどうも自分の奥さんを標準になさいまして、大へんいけない傾向があります。これはほんとうに御理解がないと思うのですけれども、もう少し自分の娘さんのこともお考えになって、——そういうことは母親がよく知っておりまして、お父さんに一々そういうことを言う娘さんはないと思いますけれども、そういう方がたくさんいらっしゃるのです。ほんとうに困り、そうしてお願いを申し出るという形でおるのでございます。ほんとうにこれは実情でございますから、もう少し女子の職員に対しても、男子の方と同じような取扱いでなく、差別平等がほんとうの平等だと思うのですけれども、どうもそういう傾向がなくなって参りました。  それからこれは福島県の例でございますけれども、産前産後の休暇が当然あるのでありますが、校長先生に気がねをして、お産後早く出て精神状態が変になって自殺をしたとか、こういう実例もございます。これは人権の問題でもございますけれども、そういう点についてはほんとうに教育者としての立場であるならば、もう少し同僚の職員に対しても、あたたかい思いやりと御理解がほしいと思います。そういう点で特に局長さんにこれはお願いいたします。
  131. 長谷川保

    長谷川委員長 本日はこれまでとし、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後一時二分散会