○森(誓)
政府委員 水産用の
A重油の
価格について、最近の
動向と、それから
スエズ紛争以後、
原価的にどういうふうにその要素が変っておるかということについて申し上げたいと存じます。
A重油の
末端価格につきましては、現在われわれが
ほんとうに信頼し得るという
資料がないことは非常に遺憾でございます。
石油連盟とかあるいは
石油の
販売業者の実は
調査がございますが、これは
相当利害関係のある
業者の作るものでございますから、ある
程度色目で見られることも仕方がないというような欠陥もあると思います。そういう意味で、私の方でまあ一応信用できると思いますのは、
日銀の
卸売物価と、それから
経済企画庁の
外郭機関として
経済調査会というのがございますが、ここの
調査が大体
経済企画庁が作ります
物価指数の
基礎になっておるのでございます。まあこの
二つの
調査が、一応われわれはどなたにも
お話申し上げて御信頼できるものではないかと思っておりますが、それについて最近の
A重油の
価格の
動向を見てみますと、これは
日銀の
東京におきます
卸売物価でございます。従って、
末端の小売りの
段階のものというのではございませんが、それによって見ますと、
A重油の
価格は、大体
昭和三十年の平均が一キロリットル一万三千二百円ということになっております。自来三十一年の八月まで一万三千二百円でずっときております。それが九月から十、十一と一万三千百円で、百円ばかり下っておりますが、それから
あと、特に三十二年の一月に一万三千八百円ということになっております。二月も一万三千八百円であります。それによって見ますと、
昭和三十年ごろと比べますと、一キロリットル
当り六百円の
値上り、それから
中東事変前と比べますと、七百円の
値上りということになるわけであります。なお昨年の九月以降百円ほど下りましたのは、
A重油の
AA制を実施した影響で、非常に
需給の調整がうまくいくようになりましたために値下りをしたのだと
考えております。それから
経済調査会の方の
調査によりますと、これは
A重油(陸上のもの)についての
調査でございますが、
東京について見ますと、三十年の二月が一キロリットル一万五千円、それから三十一年九月が一万四千円、三十二年の二月は一万六千円というようなことで、
日銀の
調査と、
場所は
東京周辺ということで同じでありますが、若干
数字が違っておりますけれ
ども、
経済調査会の方は、
ドラム詰めの手数料を五百円含んでおります。これを差し引いて比較しなければいけませんが、そういたしてみますと、三十年の二月の
経済調査会の
調査による
東京の
大口需要家渡しの
価格は、一万五千五百円と
いうことになります。こういうふうに
調査機関が
二つの違った
資料を出されておりますので、われわれとしてもどれが正確なものであるかということを容易に判定いたしがたいのでありますが、しかし
中東事変後の
価格と
事変前の
価格を比べますと、大体七百円ないし千五百円、その
程度の
値上りがあるということは、
大勢として言えると思うのであります。
なおただいま申し上げました
価格は、すべて
京浜地方の
価格でございまして、これが
九州とかあるいは
北海道のような、
精製所から非常に遠距離にある
場所につきましては、
運賃等の
増高もありまして、これよりも
相当高いものになっているということは、念のために申し上げておきたいと思います。
このようにして、
事変前後の
大口需要家の
価格が、大体七百円ないし千五一百円くらい上っているのは正しいかどうかということでございますが、それでは
原価の
構成が
事変前と今日とどう違っているかということを申し上げたいと思うのであります。
原価のこまかい
構成につきましては、われわれはそう
法律の
根拠に基いて詳細な
資料をとる権限もございませんし、また
精製業者の
事情によっていろいろ違っていると思いますので、あまりこまかく掘り下げなくて、ただ
輸入原油から
精製するものにつきましては、その
輸入原油の
運賃が大体どのくらい上っておるかということ、それから
製品のままで
輸入する
重油につきましては、向うの
価格を
運賃がどのくらい違っておるかということについてだけ申し上げてみたいと思うのであります。
原油で持ってきて
国内で
精製する分の
運賃の
値上り分だけについて見ますと、
昭和三十年ごろの
運賃は
USMCマイナス三五という非常に低いところにありましたが、三十二年の三月は平均して
プラス三二・八ということで差引七〇%近く差があるわけであります。三十年の数を
基礎にして絶対数でいいますと、
マイナス三五でありますから六五と見ていいわけですが、六五の
指数のものが一三三くらいになったわけでありますので、
運賃だけから言うと倍以上のものになっておるわけであります。これを
原油一キロリットル
当りの
運賃の
値上り分に直し、さらにそれを
A重油にどれだけふりかけてくればよろしいかという計算をしてみますと、
国内精製の
重油一キロリットル
当り千二、三百円くらい
運賃の
値上りが響くということが出て参ります。
それから
製品のままで
輸入する
重油につきましては、
FOB価格が非常に上っております。大体二六、七%くらい
FOB価格自体で上っておるわけでありますが、それを一キロリットル
当りに直してみますと二千円以上の
値上りになります。それから
運賃も、
中東紛争以前は
マイナス三三という
数字でございますが、それが三月は
プラス三五というわけで、これも倍以上になっており、その
運賃の
値上り分が千七、八百円くらいになるかと思います。ですから、
輸入の
A重油は一キロリットル
当り四千円くらい
FOB価格とレートの
値上りだけで昨年の九月ごろよりも上っておるということになるわけであります。
この
製品のままで
輸入される分と
国内で
精製される分と
二つが総合されて
国内価格を形成するわけでありますが、三月の
状況ですとこれが大体五分、五分に総合されておるわけであります。そういたしますと、一キロリットル
当り二千数百円くらいは
コストが上っておるということになると思います。そういうわけで、
中東事変以来、
一般の
A重油の市価は確かに上っておるのでございますが、ただいま申し上げましたごとく、
日銀の
卸売物価調査あるいは
経済調査会の
大口需要家に対する
販売価格等から見まして、七百円ないし、千五百円というくらいの
上昇になっております。
他方コストの
上昇は二千数百円ということになっておりますので、われわれとしては、
A重油につきましては、
精製業あるいは
元売業がこの
中東事変に籍口して不当な
利益をむさぼっているということは言えないのではないかと
考えるのであります。しかし、以上は
国内の
精製業者、
元売業者全体を平均しての
数字でありまして、個々の場合にはまたいろいろ違ったものが生まれてくると思います。たとえば、
会社によって
輸入重油を非常にたくさん取り扱って
国内精製の分を少量しか扱っていないところは、これよりもっと高い
価格で売らなければならないでしょうし、また
輸入重油はあまり扱わないで
国内精製のものをたくさん扱っている
業者もございます。そういうところはそれよりもっと低い
価格で取り扱ってもよいというようなことが言えるわけでありますが、一応
大勢としてはただいま申し上げた
通りでございます。