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1957-09-27 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第56号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月二十七日(金曜日)    午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 田口長治郎君    理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       伊東 岩男君    川村善八郎君       椎名  隆君    内藤 友明君       永山 忠則君    丹羽 兵助君       原  捨思君    松浦 東介君       石山 權作君    井上 良二君       川俣 清音君    楯 兼次郎君       成田 知巳君    西村 力弥君       日野 吉夫君    山田 長司君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   高木 文雄君         農林政務次官  本名  武君         農林事務官         (大臣官房長)         農林事務官   齋藤  誠君         (大臣官房総務         課長)     岡崎 三郎君         農林技官         (農林経済局統         計調査部作物統         計課長)    石川  里君         農林事務官         (振興局長)  永野 正二君         食糧庁長官   小倉 武一君         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      武田 誠三君         農林事務官         (食糧庁総務部         企画課長)   中西 一郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 九月二十七日  委員大石武一君、原捨思君松田鐵藏君、阿部  五郎君、石田宥全君、稻 富稜人君及び久保田  豊君辞任につき、その補欠として内藤友明君、  田中久雄君、伊東岩男君、成田知巳君、井上良  二君、日野吉夫君及び西村力弥君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員田中久雄辞任につき、その補欠として原  捨思君議長指名で委 員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  消費者米価に関する件  農産物価格安定に関する件     —————————————
  2. 小枝一雄

    ○小枝委員長 これより会議を開きます。  農作物価格安定対策の問題について調査を進めます。カンショの出回り期を迎えて、その価格の動向が重大な関心の的になっておりますので、カンショ及びバレイショ価格問題を中心に議事を進めることにいたします。  なお農林大臣は午後出席の予定でありますから、午前はまず事務当局に対する質疑を行い、大臣に対する分は午後に行うことにいたします。  それでは質疑を許します。田口長治郎君。
  3. 田口長治郎

    田口委員 カンショ澱粉につきまして食糧庁長官に御質問いたしたいと思うのでございます。私が申すまでもなく、米作地帯農民は米によって生活しておりますし、イモ作地帯農民イモ作によって生活をしている。かような事情でございますから、カンショ及びカンショからできる澱粉ある、いはバレイショ及バレイショから生産しますところの澱粉政府支持価格がいかように決定するかということにつきましては、非常な関心を持っておるばかりでございませんで、実際にこの種の農民生活に重大な影響を及ぼす次第でございます。そこで私は今年の価格決定される要素につきまして多少お伺いをいたしたいと思うのでございます。今私らのところに配付してありますところの作付面積を見てみますと、三十二年度は約五・六%作付面積が少くなっておる。こういうことで、この作柄につきましては、また配付してあります資料によりますと、大体七%程度カソショについては減産になっておる、こういうような数字が出ておる次第でございます。この両方をかみ合せまして、まだはっきりわからないとは思いまするけれども、今年のカンショ及びバレイショ生産数量はどの程度推定をされておられるのでございますか。まずその生産数量推定数量にもなりましょうし、あるいはバレイショとしては、もう出ておるようでございますけれども、その点を一つ第一点としてお伺いいたしたいのでございます。
  4. 小倉武一

    小倉説明員 カンショ作柄でございますが、九月の作柄は今お話があったかと思いますが、作況指数は一〇五というふうに出て参っております。それは生産量にいたしまして十六億八千七百万貫という程度に見ておるわけであります。  それからバレイショでございますが、これもお話にありましたが、これは推定実収ということで多少統計的な意味合いが違っておるわけでございます。全国で申しますと、八億五千二百万貫、北海道だけとりますと、三億七千六百万貫という数であります。
  5. 田口長治郎

    田口委員 ただいまお話になりましたカンショについては十六億七千万貫、バレイショについては八億五千二百万貫、こういうことでございますが、これを昨年の生産実績と比べてみますと、どういうような数字比較になるのでございますか。その点をはっきりさしていただきたい。
  6. 小倉武一

    小倉説明員 ただいまの数字と昨年の数字との比較でありますが、カンショは昨年十八億八千六百万貫、バレイショは三億一千九百万貫、これは北海道の方の分であります。
  7. 田口長治郎

    田口委員 今の数字から申しますと、今年の生産数量は、バレイショはともかくといたしまして、カンショにおきましては著しく生産が減退をしておる、生産数量が少くなった、こういうことに了承していいと思いますが、それで差しつかえございませんか。
  8. 小倉武一

    小倉説明員 昨年、一昨年は御承知のようにカンショ相当豊作でございましたので、それと比べれば本年は生産数量は落ちるというのが今のところの見込みであります。
  9. 田口長治郎

    田口委員 次に作柄についてお伺いいたしたいと思うのでございますが、この作柄を判定されますのに、実は昨年は十月末の価格決定するその時期におきましても、なお作柄がはっきりしませんために、十一月五日の定時報告を繰り上げさせまして、中間報告資料をとってまでいろいろ資料を集めて十月の末に決定した、こういうような事情もあるのでございますが、今年九月ただいま、この作柄決定するのには、実際に作柄実情がわからないで、推定部分が非常にたくさん加わらなければならないと思うのでございます。昨年の作柄決定のあの事情から申しまして、今年はさような資料がなくとも、一カ月早く今決定ができるのでございます。ここにはっきりと農林省といたしましては、作柄をずっと出しておられるのでございますが、私は昨年の経緯から考えまして、この作柄はどういうことで出されたのかという疑問があるのでございますので、その点を一つ明らかにしていただきたいのでございます。
  10. 小倉武一

    小倉説明員 これは私から申し上げるのは筋違いでございまして、所管が違いますので、その方にお聞き取り願いたいと存じます。私どもは得た結果についての数字についてだけ判断をいたしておるのであります。お話のようにカンショ作柄、米でもそうでありますが、実収といいますか、収穫時以前に予測するわけでありますから、はなはだ困難であります。米でもそうでありますが、ましてイモについてそういうことは事実上不可能に近いむずかしいことだと思うわけであります。しかしそのむずかしいところを押し切って、出たところの数字でもって判断をした方が、農産物価格安定という法律の趣旨を運用するのにより適当であろう、こういう大方の意見に基きまして、不確実な数字だろうけれども、これでやってみようかということでことしは考えておるわけであります。この数字にそもそも自信があるかないかということになりますと、この数字を基礎にして、ただいま価格を云々するということははなはだ困難である、こういうことに相なろうかと存じます。
  11. 田口長治郎

    田口委員 この価格例年通りに十月末に決定するか、一カ月早く決定するかという問題につきましては、従来支持価格発表がおそいために、非常にたたかれて品物を売っておる、こういうような実情からいたしまして、今年一カ月早くこの価格決定されるということは、非常にいいことと思うのでございますが、しかしこの作柄につきましては、今食糧庁長官が御答弁になりましたように、食糧庁としては担当事項ではないようでございますから、これは一つすぐ振興局を呼んでいただいて、この点の答弁ができますようにお手配を願いたいと思うのであります。  それから作柄の問題はあとに残しまして、食糧庁長官に続けて質問いたします。この価格決定される要素といたしましては、ただいま長官が御答弁になりました生産量の問題あるいは作柄の問題、生産量は昨年より著しく減退しておる、こういうことがはっきりした次第でございますが、そのほかに物価関係一つ要素になると思うのでございます。昨年の今ごろと比べまして、日銀での物価指数がどういうように変遷をしておるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  12. 小倉武一

    小倉説明員 今日銀物価指数を持っておりませんから、昨年と比べてどういう指数の変化があるかという数字を申し上げるわけには参りませんけれども、ある程度上っておる。ことに卸売価格は上っておりまして、最近はむしろ相当程度低くなっておりますが、小売物価の方は最近に至るまで上昇をいたしておるという事情にあるわけでございます。
  13. 田口長治郎

    田口委員 日銀物価指数は私の持っておる資料も昨年より本年上っておる。大体私の資料食糧庁のお持ちである資料と一致する次第でございますから、私はこの一般の物価の高低、この要素に関する限りにおきましては、昨年のイモ及び澱粉価格を下げる理由はない、こういうふうに考えるのでございますが、この点につきまして、食糧庁長官は、物価との関係においてイモ価格をどうするかという問題につきましては、私の意見と同様でございますかどうか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  14. 小倉武一

    小倉説明員 もちろんイモ価格澱粉価格をきめます場合に物価がどうなっておるかということはおそらく一つ決定の考慮の要素になると思いますが、その関係はより具体的には支持価格関係の上では農業パリティ上昇率をかけてきめるということで処理をするということでほぼ解決がつくように思っております。それ以外に物価をしんしゃくするということは、これは気持の上といいますか、そういうことはあろうかと思いますが、数字的にはやはりパリティ計算をする、こういうことであろうと存じております。
  15. 田口長治郎

    田口委員 物価につきまして、気持程度ということでございますが、これは物価そのもの農民生活消費生活に直ちに関係することでございますから、生産物農民が売ります場合におきましては、消費物価あるいは農民が使用する生産資材物価というものを考慮した価格が形成されなければ、農民生活としては非常に困る問題でございますから、この物価の問題も一つ御考慮願いたいと思うのでございます。  次に澱粉の今の市況が著しく不況である、あるいは不況でない、こういうことがやはり価格決定に非常に大きな資料になると思うのでございますから、現下におきますところの澱粉市況、このことにつきましで概要をお伺いいたしたいのでございます。
  16. 小倉武一

    小倉説明員 カンショ澱粉で申し上げますが、去年の出回り期におきまして、昨年の十二月ですが、千五百円程度であったろうと思います。一、二月ごろ漸次多少ずつ上って参りまして、五月、六月ごろは千五百八十円程度になっております。七月になりましてさらに上っておりまして、千七百円台、あるいに最近といいますか八月、九月ごろは千八百円台、これは東京の並粉一等一貫当り価格ということで、そういう足取りだと存じます。
  17. 田口長治郎

    田口委員 昨年の支持価格は千五百六十円と思うのでございますが、今長官が御説明になりましたところによりますと、大体におきまして支持価格をはなはだしく上回っておる、こういうような数字のようでございまして、この要素も今年のイモ及び澱粉価格決定には考慮さるべき要素である、こういうふうに考える次第でございますが、長官はその点はどうお考えになりますか。
  18. 小倉武一

    小倉説明員 支持価格より上回っておりますのは何も本年だけに限りませず、昨年は非常な豊作等関係もありますが、いわば澱粉としての端境期になりますから、ある程度支持価格よりは高目であるというのがむしろ正常な姿とも判断すべきではないかというふうに思います。またこういう価格が現出しましたのは政府買い入れ量いかんにもよることでありますので、最近の澱粉価格そのものが当然に今後設定すべき澱粉価格にしんしゃくさるべき重要事項というふうには考えておりません。
  19. 田口長治郎

    田口委員 もし目下の澱粉商況支持価格以下で、どうしても商況が向上しないということになりますと、食糧庁といたしましては澱粉価格がこういうことでどうも上らない、ということが結局売れ行きがない、こういうような判断のもとに、こういう状態であるからもうちょっと安くしなければならぬというような要素に私はなると思うのでございまして、少くともこの価格がこういうような市況を呈しております場合におきましては、その要素だけは全然ない、こういうふうに考えていいと思うのでございます。この市況状態から申しまして売れ行きが非常に悪い、そのために値段がこういうふうに上らないのだということになりますと、それをおそらく要素に取り上げられると思いますが、今の状態におきましてはその要素だけはないということを一つお含みを願っておきたいと思うのでございます。  次に私お伺いいたしますことは、昨年澱粉含有量を二一%というふうに押えられまして、なまイモ等価格決定されたのでございますが、実際に昨年実行をしてみられて、全国的にこの澱粉含有量が二一%程度であったか、その以上であったか、あるいはその以下であったか、こういうことにつきましてお伺いをいたしたいと思うのでございます。
  20. 小倉武一

    小倉説明員 澱粉含有量は非常にむかしい問題でございまして、なかなか的確につかめないのでありますが、私ども調査でありますと、昨年度の澱粉含有量は、全国平均でございますが二一%をちょっとこえておるという状況でございます。もっとも御承知通り地域的な問題がございまして、歩どまり相当程度の開きがあるものでございますので、全国的にならせば、二一というのは昨年の実績としては辛くはなかった、少くともこういうことは言えよう、こう思うのであります。
  21. 田口長治郎

    田口委員 あなたの方の役所発表といたしまして、昨年の全国澱粉含有量は、当初価格決定のときは二一%、こういうような数字を使ったけれども、実際にやった結果は二〇%四か五程度で、予想よりも澱粉量が下回った、こういうような結果が出ておるのでございますが、その点は長官お調べでございますかどうか、重ねてお伺いいたします。
  22. 小倉武一

    小倉説明員 それは調査のやり方はいろいろございますから何とも申し上げかねるのでありますけれども、たとえば澱粉工場加工経費を調べておる若干の工場があります。そういう工場だけの調査があるいはそういうことになっておったのかもしれませんが、私今お話の二〇・五でございましたか、そういう数字については承知しておりません。私が先ほど申し上げましたのは、原価計算といいますか、加工経費調査する工場ということとは関係なしに、全体の加工原料、それからできた製品、こういうことから推定をいたしました歩どまりとして二一というのはむしろ若干ゆとりがあるのじゃないかというふうに考えておったのであります。
  23. 田口長治郎

    田口委員 その点は非常に重大なることでございまして、調査の方法だとかなんだとかそういうことでなしに、農林省から発表をされておるものがそういう数字になっておる。言いかえますと、昨年二一%として見込んだものが、降雨その他によりましてそこまでに達しないで、〇・五%程度下回っておった、この事実をあなたの方の役所から発表してある。私はその発表によりまして今お伺いしておる次第でございまして、調査がどうだとかこうだとかいうそういう問題でなしに、農林省がいろいろ調査をしてそうして公式に全国平均の三十一年度のカンショ澱粉含有量は二〇・五%であった、こういうような発表をしておられるのでございます。この点を長官が、二一%の含有量、これよりも実際は少し多かったろうというような観念でやられると、今年の価格決定にそのことが非常に大きく響くのでございまして、役所発表せられておるその資料に基いて私はお伺いしておるのでございますから、この点はもう一度よく御研究になりまして、たとえば昨年二一%で計算しておられる、これを今年澱粉含有量にもうちょっとゆとりがあったということで、かりに二一・五%というような数字をとられますと、イモ価格その他でおそらく一円五、六十銭程度はそれだけでもすぐ違ってくるのじゃないかしらん、これは非常に重大な問題でございますし、あなたの方の調査も初め見込まれました二一%よりも少くなっておる、こういうようなことでございますし、今年のいろいろな気象状態は昨年よりもなお澱粉含有量が少くなる気象状態であるのでございますから、この点は一つよく御研究下さいまして、昨年見込まれた二一%以上には、澱粉含有量は見込むべき状態ではないということを私は申し上げたいのでございますが、その点を一つよく研究していただきたいのでございます。  それからこの価格決定のもう一つ要素といたしましては、滞貨澱粉のことがあると思うのでございます。当初最近まで四千万貫程度滞貨があったと思うのでございます。そのうちから最近農林省として払い下げておる、売り出しておられるカンショがあると思うのでございますが、最近売り払われた数量と、そうして滞貨総量から売り払われた数量を引いた現在の滞貨数量はどれだけあるか、その点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  24. 小倉武一

    小倉説明員 滞貨でございますが、この九月末の見込みにおきまして、カンショ澱粉で約三千四百四十万程度と存じます。馬澱で五百七十万程度、合せまして四千万貫をちょっとこえます。この春から——春と言いましても、夏と言いました方がいいのでありますが、処分いたしました数量は、主として甘澱でございますが、六百万貫近くに達しよう、こう存じます。
  25. 田口長治郎

    田口委員 ただいまの答弁によりまして、四千万貫程度のものから六百万貫程度処分された。そうすると約三千三、四百万貫だけは滞貨しておる。この滞貨澱粉があるために、イモ及び澱粉価格を下げる、そういうような一つ要素になると思うのでございますが、昨年のカンショなんかの二十四円五十銭というものを決定した場合におきましても、この滞貨澱粉は大よそ半分だけは昨年の生産量の中に入れて計算をされてある、この事情一つと、それからもう一つは、この滞貨澱粉につきましては、どうしてもこのままではいかないから、結晶ブドウ糖工業を育成いたしまして、滞貨澱粉のみならず、今からイモの増産を一そうはかって、この工業が発達するために原料が持続的にずっと供給できる、こういうような処置を講じなければならないということで、その方の研究も進んで、精製ブドウ糖工業を育成する問題につきましては、法律でも急いで作って直ちに始めさせる、こういうようなところまで大体進んでおるのでございますから、この滞貨澱粉のためにイモ及び澱粉価格を著しく圧迫するというようなことにつきましては、あまり考慮する必要がないと思うのでございますが、この点について長官はどうお考えでございましょうか。
  26. 小倉武一

    小倉説明員 滞貨澱粉数量でございますが、六百万貫近くのものを処分いたしました後になお四千万貫残る、大体そういう数字になるわけでございます。四千万貫くらいのものが、この月末の手持ち数量というふうにお聞き取りを願いたいと存じます。  それから滞貨澱粉の問題でございますが、これはむろん一部のものにつきましては、これまでの需要のある面以外にも出すということも考えられまするけれども、それにいたしましてもやはり澱粉としての供給量に立つことは申すまでもないところでございますので、今後価格をきめます場合に、イモ生産見込みと同時に澱粉手持ちということをやはり考慮して供給量というものを見込むのが至当であろうと存じます。  精製ブドウ糖その他の育成のための施策はもちろん考えなくてはなりませんし、推し進めなくてはなりませんけれども、それにいたしましても、供給量としてはそれは別であるというふうに取り扱うわけにはいくまい、こう存じておるのであります。
  27. 田口長治郎

    田口委員 私が申しますことは、昨年の価絡決定に当りましても、昨年の滞貨澱粉の二分の一、いいかえますと、昨年は三千万貫の滞貨である、従ってこの価格決定に、原料として供給されるとして要素になったものは千五百万の滞貨澱粉である。今、長官の御説明によりまして、売り払ったものを差し引いても大体四千万貫程度ある、こういうことでございますから、昨年の方式によりまして、この二分の一を原料供給要素と見ましても、この点については昨年と五百万貫程度しか違いがない。のみならず昨年は、この滞貨澱粉処理につきまして、結晶ブドウ糖工業というものの話がまだそこまで進んでいなかった。この話が、昨年とことしでは機運が全く違いまして、今年直ちにそういう方向に、役所も国会も進もうとしておるわけです。この処分の大きな新しい用途として結晶ブドウ糖の空気がそこまであるのでございますから、滞貨澱粉数量によって、五百万貫だけ昨年よりも多くはなりますけれども、一方結晶ブドウ糖工業が間近に迫っておる。こういう要素考えますと、滞貨澱粉による価格を左右する要素というものは、むしろ私らからいたしますと、この滞貨のものは考慮する必要がない、こういうふうに考えるのでございますが、一歩を譲りましてある程度考慮いたすといたしましても、実際において昨年とほとんど同じ、あるいは昨年以下でないか、こういうふうに考える次第でございます。重ねてこの点について長官のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  28. 小倉武一

    小倉説明員 この点につきましてはいろいろ御見解がおありと存じまするけれども、昨年は一昨年に引き続いて大豊作ということで、手持ち澱粉を全部供給量に立てるということはあまりにも供給を多く見過ぎるという結果になり、ひいてはカンショ価格に重大な影響を及ぼすということで二分の一程度を見込むことにいたしたことは御指摘の通りでございます。本年度は昨年度に比べますと、カンショにつきましては作柄といたしましてある程度減収をしておるということでございまするから手持ち澱粉はむしろ原則的に全部供給に立ててみるというのが私は至当ではないかと考えておる次第であります。
  29. 田口長治郎

    田口委員 今年のイモ生産が昨年に比べまして著しく減っておる、この減っておる部分澱粉換算にいたしますと大体どの程度になりますか、その点をお伺いいたしたいのでございます。
  30. 小倉武一

    小倉説明員 昨年の供給量、まあ生産量ですね、それからどのくらい商品化されて原料にいくかということで換算をしなければなりませんので、その方面から見る計算はちょっとむずかしいと思います。むしろ手持ち澱粉から逆算してイモに直してみるということのほうが的確かと思いますが、まあ商品化率といたしましては五割四、五分でございますから、まず半分、生産量の差額は二億でございますから約一億が商品化される、そのうち、工業用と申しますか原料用にどれくらいいくか、こういうことになりまして、それから計算をしなければなりませんので、試算をいたしてお答えをいたします。
  31. 田口長治郎

    田口委員 昨年の生産総量と今年の十六億七千万貫という減産とを比較した生産数量の減、この中には用途の違ったものもございましょうけれども、主として澱粉になるものが多いのでございますから、この減産による今年の原料供給減と、昨年滞貨しておった三千万貫、今年滞貨しておる四千万貫、これを差し引きましてどういうことになるかということを伺っておるのでございますか、まだ計算をしておられないようでございます。そこで私は今年の滞貨の四千万貫を全部澱粉として市場に供給も放出をされる、これは少し無理でございまして、食糧庁といたしましても、この四千万貫はそういうことで処置してしまうというようなお考えはないと思うのでございます。このものは大部分結晶ブドウ糖原料として供給する、こういうようなお考えであると思うのでございますから、この滞貨澱粉によって、滞貨澱粉があるからといって原料供給量にそれを全部入れて計算をするということは、食糧庁のお考えからいってもまたその差引の問題から申しましてもさようなことはすべきものでない、従って私は今年のカンショあるいはバレイショのなま及び澱粉価格決定につきましてはこの滞貨澱粉ということが、昨年もある程度考慮しておるのでございますから、昨年と比べましてそう大きな要素になるものでない、こういうことを考えておるのでございますが、その点がどうも長官答弁ではっきりしないことを遺憾に考えるのでございます。その点重ねて一つ御所存のあるところをお伺いしておきたいと思います。
  32. 小倉武一

    小倉説明員 お話のように澱粉処理といたしまして、結晶ブドウ糖工業一つの有効な方途であることは、われわれもその通り考えておるわけでございますが、現在の滞貨あるいは将来滞貨になると思われるものなどを考えてみますと、現在の価格ではなかなか処理ができないのでございます。結晶ブドウ糖にいたすならば簡単にはけるというものでもないことも御承知通りでございますので、農産物価格安定の趣旨に照らしまして、やはりある程度供給量の長期的な変化というものは当然に価格形成上繰り入れてしかるべきではないかと存ずるのであります。そういう意味で、ことに本年は昨年あるいは一昨年と比べますと、カンショの方は作柄が落ちておるようでありますし、そういうときに供給量に勝てないということでは、今後の価格形成の方針といたしましてもはなはだ困る事態が生ずるのではないかと存じております。もっとも結局同じ澱粉にはなるわけでございますが、バレイショカンショ作柄が違いまして、バレイショ澱粉につきましては昨年に似たような考え方で、これは供給量に勝てないという考え方をすべきではないかというふうにも思われるのでありますが、カンショについてまでそういうふうにすることは、私どもとしては考えておらないのであります。
  33. 田口長治郎

    田口委員 その点につきましては小倉長官と多少見解を異にするのでありまして、これは後刻よく論議を尽してみなければならぬと思うのでございますけれども、私どもが今までるる申し上げましたように、今年の生産数量が昨年より著しく劣っておる、また滞貨澱粉結晶ブドウ糖の方に向ける、こういうようなこと、及び、昨年もこの要素滞貨澱粉の二分の一だけは供給量として計算の中に入れておる、こういうことから申しまして、昨年以上に滞貨澱粉価格形成に作用を大きくするということはとうてい考えられないのでございます。その点はお互いによく研究をしてみたいと考えるのでございますが、将来イモ価格問題あるいは生産の問題を決定いたしますには、私はどうしても結晶ブドウ糖工業を育成しなければならないと考えておるのでございます。これは御承知通り砂糖の競合物でございまして、私らの考えからいたしますと、国内資源を十分に活用することによって砂糖の輸入を防遏する、外貨の節約ができる、あわせてイモの問題を根本的に解決する、われわれの衛生上からいいますと、砂糖をなめるよりも完全消化をする結晶ブドウ糖を使った方が人体のためにも非常にいい、こういうことを考えるのでございますが、この際私どもが懸念いたしますことは、国策的にそういうことがいいということははっきりとわかっておるのでございますが、現在の砂糖業者、砂糖工業関係から、この代替物を代替させることができないような支障がありはしないかということでございます。この点について食糧庁長官は、現在の砂糖輸入量の第一年度は何%、第二年度は何%を結晶ブドウ糖で置きかえていく、こういうことにつきまして懸念はしておられませんか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  34. 小倉武一

    小倉説明員 砂糖の輸入については私どもより田口先生の方がお詳しいかと思いますが、国内の需要量でどうということももちろんありますけれども、外貨事情でもって価格が変動するという要素が多分にございまして、お話のように、砂糖の輸入量を契約にしまして年度別に若干ずつ減らしていく、そして代替していくというふうな計画的な運用ということは言うべくしてなかなかできないのではないか、こう存じております。のみならず、たとえば結晶ブドウ糖を育成するといいましても、これはお考えのほどがわかりませんから何ではございますけれども、年間どの程度生産されているか、その年間生産されるべき程度の砂糖の輸入量を、たとえ抑制できるといたしたところで、砂糖の価格とブドウ糖の価格との調整がどううまくとれていくかということについても、これはもつとほかに変化する要素が出て参りましょうと思いますので、そういう計画的な運用というものは非常にむずかしいのではないかと思います。私どもといたしましても、もちろんブドウ糖を育成して一部砂糖に代替する、あるいはブドウ糖独自の用途を開拓するという必要性は十分考えておりますし、そういうふうにもつていきたいと思いますが、そうすることによって逆にむしろ砂糖の輸入量を減らしていく、こういったようにただいまのところ考えておりますが、なお御説を拝聴いたしまして、研究と申しますか、よく考えていきたい、こう思っております。
  35. 田口長治郎

    田口委員 これは食糧庁長官に言うのではなしに、むしろ大蔵省に質問しなければならぬと思うのでございますが、砂糖と結晶ブドウ糖価格比較につきましては、私ども研究し、私どもが集めている資料によりますと、大体において砂糖が七十五円、あるいは八十五円の安定帯でおきまっておりますれば、十分にこの結晶ブドウ糖工業というものは育成できる。御承知通り今はほんとうの結晶ブドウ糖は一日に一トン程度生産する、そういう設備で試験的にやっており、それによって生産費を計算しているようなことでございますから、将来これを一日二十トン、あるいは三十トン生産するようなほんとうの工場ができますと、今われわれが計算している生産費というものはまるで違ってくる、安くなる、こういうことが予想されるのでございます。今のわれわれの持っている資料によりましても、大体砂糖が七十五円あるいは八十円程度の場合は、生産価格的に可能であるのでありますが、業者が今結晶ブドウ糖を作る場合、これだけ生産費がかかるのだ、こういうような数字を持ってきますけれども、これはある程度の利益、しかもその幅のわからない利益を加えた数字でございまして、この数字だけにとらわれないように考えなければならないと思うのでございますが、かりに一歩を譲りまして、多少砂糖よりも高くなるというようなことがありましても、外貨の貴重なときでもございますし、国内資源でそれを完全に補える、しかもあわせてイモの問題も解決し、栄養にもそれがいい、こういうことでございますから、この滞貨澱粉を処分される上におきまして、食管会計になるべく赤字を出さないようにというような観念ばかりでなしに、むしろある程度赤字を出しても、これは国内資源の活用によって輸入物資の抑圧をしなければならぬ、こういうような観点でこの問題は考えていただきたいのでございまして、私どもはぜひこの国会にはこの問題を目鼻をつけたい、こういうような熱意を持っております。計算につきましては今申し上げました通りでございますけれども、輸入物資を抑圧するためには、多少これが高くなりましても、国としてはやはり国費を投じて国内資源の活用ということを助長しなければならぬ。これは塩なんかの問題も同じと思うのでございますけれども、どうしてもそういうようなある時期が出てくるのでございますから、さようなこともお考えになって、食管会計に赤字がなるべく出ないように、こういうことばかりで積極的に進むことを阻止するようなそういうお考えをされないようにお願いいたしたいと思います。作柄につきまして私は疑問があるのでありますけれども、今まで長官にいろいろ質問しました生産量の問題だとか、あるいは物価の問題だとか、あるいは澱粉含有量の問題、目下の澱粉市況の問題、そういうようなこと、それから澱粉を新しい用途に持っていく、こういうような観点からいたしまして、私は少くとも昨年に比べましてカンショ及び馬澱価格を下げなければならぬという要素一つもない、こういうふうに考えられるのでございまして、イモ価格は下げ、米の価格は上げる、こういうようなことでは農民のバランスはとれないのでありますから、この点を一つ考えになりまして——今までの質問をいたしました要素では、昨年に比べましてイモ及び澱粉価格を下げる要素一つもない。政治的にも米及びイモとのバランスという点におきまして、さような一方は上げ、一方は下げるというような、そういうことはできない、こういうような考えを持っているのでございますから、今年の価格決定につきましては、以上長官に質問をいたしましたその要素もお考えになりまして、少くとも昨年の価格を下らない、さような処置をぜひとるべきである、とらなければ説明がつかない、こういうふうに考えておるのでございますから、この点だけを要望いたしまして私の質問を一応終る次第であります。
  36. 成田知巳

    成田委員 ちょっと関連質問をさせていただきたいと思います。今田口さんの方からサツマイモ澱粉価格の問題に関連しまして砂糖の輸入問題が出たのですが、これは澱粉ももちろんでございますが、テンサイ糖の関係からいきましても、テンサイ糖の採算がとれるようにする、こういう建前からいきまして、砂糖の輸入について輸入関税の引き上げというものを考慮すべきじゃないか、こういう意見もあり、政府部内でも御検討になっていると思うのですが、この砂糖の輸入関税の引き上げにつきまして政府はどういう御方針を持っていらっしゃるか、政務次官あるいは長官いずれでもけっこうでございますからお答えを願いたいと思います。
  37. 小倉武一

    小倉説明員 テンサイ糖に関連しての砂糖の輸入税につきましての方針でございますが、むろん政府として方針がどうだというふうなことについてまだお答えするほど固まったものはございません。北海道のテンサイ振興の関係考えた場合に、関税である程度処置ができる部面があるのではないか、しかも関税と消費税の取扱い方いかんによりましては国内の糖価もさほど上げないで、消費税、関税を一本にして考えればほとんど影響なしに処理できるという面もありはしないかということで、そういうことを研究したらどうかという段階でございます。
  38. 成田知巳

    成田委員 研究したらどうかという段階だと言われますが、すでに相当研究をなさっておられると思うのです。食糧庁長官の御意見として、その方針は望ましいものであるかどうか、これを一つ答弁願います。
  39. 小倉武一

    小倉説明員 これは消費税と関税の関係をどう考えるか、あるいは関税を多くするということによって、通商関係にどういう影響が及んでくるかというようなことが大きな問題になりますので、私どもそこまで実はまだその方面の見解を聞いておりません。従いまして、そういう観点からどうこうというお答えはできないのでございますが、テンサイ糖の政府買い入れという点から見まして、税金のやり方によって国内糖価がある程度維持できるということでありますれば、ビートの買い上げは実際問題としてあまり発動しなくとも済むような事態になりはしないか。そうすれば、何しろこれは大きな会社でございますから、生産農家とテンサイ工場との間の団体取引なりあるいは特約なりによって、ビートの価格はある程度安定できますし、もちろん制度として買い入れを廃止するというまでは考えておりませんが、制度の裏づけも背後にあって、そうしてなおかっそういうことでいければ、より経済的、より合理的にいけるのではないかということが食糧庁のただいま考えておるところでございます。
  40. 田口長治郎

    田口委員 作況に関連して少し聞きたいと思いますが、統計調査部の方からおいでになっておりますか。
  41. 小枝一雄

    ○小枝委員長 今要求しておるそうですから……。
  42. 田口長治郎

    田口委員 それじゃそれまでにもう少し質問を続けます。  次に、なまイモ価格澱粉価格について御質問申し上げたいのでございます。切りぼしカンショにつきましては、食糧庁で競合輸入物資をある程度押えていただきますと、用途相当開けておりますし、この点につきましては昨年と大体同じ程度価格決定されると思うのでございます。この競合物資、マイロとかなんとかである程度昨年通りに押えていかれるかどうかという問題と、そうして切りぼしカンショ価格の見通しにつきまして長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  43. 小倉武一

    小倉説明員 ただいまのところなまイモ価格の検討をしております段階で、まだ加工段階の問題については実は結論を——結論と申しますと語弊がございますが、見当がつきかねておるのであります。お話のようになま切りぼしについての競合物資との関係については、これまでのようなことで、そのために切りぼしの価格が下るというようなことは避けたい。これは前年通りのようなことで措置をして参りたいと考えております。  それからなま切りぼしの価格でございますが、これはいろいろな関係もあろうかと思います。たとえばイモ価格関係すると思いますが、ただいまのところ大見当はほぼ前年の価格くらいになるのではないかという見当でございまして、数字的な御説明はできる段階でございませんが、そういう検討をいたしておるのであります。
  44. 田口長治郎

    田口委員 一時からの会議がありますから、多少残っておりますけれども、また機会を見まして質問するといたしまして、私の午前中の質問はこれで終っておきます。
  45. 小枝一雄

    ○小枝委員長 伊東岩男君。
  46. 伊東岩男

    伊東(岩)委員 時間がございませんからきわめて簡潔に質問いたします。私はカンショの新価格を幾らで決定するかということを率直に腹を割って聞きたいというこの一点であります。先ほどから田口委員お話、その御答弁をずっと聞いておりましてもう理論的には断じて昨年以上の支持価格決定すべきものだという工合に私は納得いたしております。しかしどうもやはり長官の立場上なかなかはっきりしたことを発言されぬのでありますが、これははっきり発言をしていただきたいと思います。農産物価格安定法の制定の趣旨は説明の要はございません。カンショにいたしましても、これは適正な価格を維持して、そしてカンショ農家の経済を安定するということでございます。そこで過去三カ年の政府決定した買上価格は二十九年が二十八円五十銭、三十年が二十六円、三十一年が二十四円五十銭というようにだんだん下向きになっておるのでございます。このことについては理由もございますけれども、これは価格維持ではないと私は考えるのでございます。ですから私どもが法を制定した趣旨とはだいぶん距離がある。現在のこういう工合に下げたという理由は、農村におけるカンショ農家を保護するということではなしに、ただいまのところは食管を保護するというようなことのように思われる。ですからこういう工合にだんだん下げてくるということになれば、結局は農村省が一生懸命になって奨励をいたしております畑作振興のごときもどうにもならぬことに相なるのでございますが、しかし奨励する農林省の立場とあなた方消化してこれを販売するという立場からいうと、おのずからそこに立場も違いますけれども、私はやはり法の精神をどうしても生かしていかなければならない、こう思います。そういう立場から申しまするならば本年は断して昨年の価格以下にすべきものではない、こう断言したいのでありますが、この点いかがでございますか。
  47. 小倉武一

    小倉説明員 御承知通り農産物価格安定法の趣旨でございますが、これはどちらかと申しますと、需給の面から価格が変動することを防止するのが目的というように私ども考えております。長期的に安定をする、据え置きをするという趣旨でないことは申すまでもないものであります。従いまして年々の需給関係ということは当然反映されてしかるべきであるというふうに思います。もちろんその需給の変動が非常に季節的にそのまま入ってくるというのでは困りますので、その間やはり安定をするという趣旨でありますが、いわばむしろ短期的に変動を防止するということが主眼であるというふうに思うのであります。従いましてイモでありますればやはりイモ供給と需要ということが価格決定の大きな要素になるということは説明をまつまでもないところでありまして、本年度と昨年度というふうにお比べになりますと、昨年度よりは本年度の方が生産量が減っておるというようなことに相なろうかと思いますけれども、昨年と今年の比較だけで価格をきめるということでもございませんので、今年に比較されるべきものは過去の数カ年であるというふうに——政令では三カ年ということになっておりますから、三カ年を基準にしなければならぬわけでございます。それからまた政府手持ちしておる澱粉についても、それは全くないものとして考えるわけにはいかないのでございまして、たといないものとして考えましてもあるものは否定できないわけでございます。そしてときとしてそれがやはり消費市場に出て消化されなければならぬものでございますから、それを全然無視して価格をきめるということは、長期的に見た場合、農産物価格安定法の運用に非常なそごを来たすというふうに実は私考えておるのであります。そういう意味で本年の価格一つ決定を願うというのが私どもの趣旨でございます。
  48. 伊東岩男

    伊東(岩)委員 もちろんお話のように、価格決定は消費と需要の均衡がとれなければならぬということは、その通りでございます。しかし現在の澱粉の市価を千八百円といたしますと、やはりなまカンショ二十八円前後の価値はあると思うのであります。またアルコール原料にいたしまして、たとえばしょうちゅうのごときは専売品でございまして、もう公定価格がはっきりいたしておるのであります。従いまして、現在の公定価格から逆算いたしますと、やはりイモは二十七、八円でしかるべきものだと思うのであります。いわんやことしは昨年よりも収穫が非常に減っておるという点から考えますと、その点は今度の新価格構成に非常に影響がございます。ただ食糧庁としては滞貨澱粉のことをしきりにおっしゃいますけれども、これは滞貨するのが当りまえでございまして滞貨させなければ価格維持はできぬのでございます。こういう点から考えまして、私はやはり昨年以下になるようなことはむろん避けるべきものであると思いますけれども、どうもただいま内輪の話を聞くと、昨年以下にするというふうなことも聞くので、はなはだ遺憾でございますから、私はもうこの席ではっきりおっしゃった方がいいと思います。そう百姓を心配させるのは親心じゃないと私は考えるのでございます。  なお価格発表の時期でございますが、これは十月の末までということになって、昨年もその通りになっておるわけでありますが、そのために非常に取引が混乱いたしまして、十月の初めのときは、九州では十五、六円の取引がずっと続いたのでございます。非常に損をしたのは農家であり、そして支持価格発表された十月の末になると、いよいよ最盛期に入りますので、工場は消化しきれぬからという理屈をつけて買わないといったようなことで、ほんとうにかわいそうなんでございます。この点等も御考慮になって、本年は九月の末ころに発表するという御意思のようでございますが、価格の点とその点をはっきりお答え願います。
  49. 小倉武一

    小倉説明員 最近の澱粉価格が高いということを一つ要素に強くお考えになっておるようなお言葉がございましたし、ほかの御質問の方々も多くそういうことを一つ要素というようにお考えになっておりますが、それは私とるべき見解ではないと存じます。と申しますのは、今の価格はいわば人為的な価格でございまして、需給の実態を現わしていないのであります。一つは端境期でもございますし、一つ政府相当量買い上げて、多少放出しておりますが、放出を抑制いたしております。それらをお考えいただかないと、これが需給の実情をそのまま反映した価格であるというふうにお考えになっていただくことは、ちょっと行き過ぎではないかというふうに思います。もちろん最近程度価格がべらぼうに高い価格であるとは存じません。大体端境期ですから、この程度価格はあり得ることで、これは是認さるべき価格であると思いますけれども、それにしても、だからといって次の澱粉価格ないしカンショ価格が、それに見合ってきめらるべきものであるという意味での価格であるというふうには見られないのではないかと思います。  それから重ねてまた価格についてどの程度のことを考えておるのかということでありますが、これはここにおられます政務次官も、実はゆうべお帰りになったばかりでありまして、十分まだ御相談をいたしておりません。大臣にも、まだ十分御相談をして、お話を承わる時間がございませんので、農林省としてこうだというわけには参りませんが、私どもの大体の感じから申しますと、先ほどいろいろ田口委員からの御質問に基いてお答えしたような諸点から考えまして、カンショは二十三円程度バレイショは十九円程度というふうに実は考えております。しかしこれはまだ農林省としての決定ではございませんし、今ここで御相談したらば、こういうことで考えておる数字でございまして、これにあまりこだわられて御議論をされると困るのでございますけれども、重ねてのお尋ねでありますから、ただいま食糧庁として考えているところをお答えした次第であります。  価格発表は、お話のようにできるだけ早い方がよろしいということで、私どももこの八、九月ごろから、約一月早めるということを、そういう御要望に対して御援助いたしております。目下のところも、そういうことででき得れば今月末——官報の告示等はあるいは来月になるかもしれませんけれども、実質的には今月末をもっておきめ願いたい、こう存じておるのであります。
  50. 伊東岩男

    伊東(岩)委員 やはり食糧庁長官とは意見は非常に相違しております。ことに今発言された二十三円なんていうことを聞いてびっくりしたようなわけです。こんなことを日本の農家が聞いたならば大へんですよ。しかしこれはこういう席でありますから、すぐ全国の農家に伝わると思うのでございます。これは大へんでございますから、覚悟された方がいいと思います。われわれも覚悟して今後の対策をするつもりでございます。今のような考え方でいくと、イモを作る農家の保護ではなくて、結局結論は澱粉工業者の保護ということになると思うのであります。その結果は去年もその通りであります。今まさに全国至るところに新しい澱粉工場ができた理由は、去年相当もうかったからであります。もうかったはずであります。二十四円五十銭で実際は支持価格をやったけれども平均二十円くらいで終っておるのであります。しかもそれを原料とした澱粉は千七、八百円で売れておるのでございますから、これは非常に利益を受けたわけであります。また本年も今やまさに市価が千七、八百円しておるのに、去年よりも安い価格で支持するということになれば、これはますますもって加工業者はもうかるわけでございまして、結局はこの法律によって加工業者保護になるというように私は考えるのでございますから、この点はもう少し食糧庁長官はほんとうの農村の実態に即した考え方に考え直されたらどうでございましょうか。この点あなたの信念を伺いたいと思います。
  51. 小倉武一

    小倉説明員 この価格支持が一体農家の経済にどの程度役立っているかどうか、特に加工業者との関係についていろいろ問題があるという御意見でございますが、これは何しろイモ価格を支持する目的をもって澱粉を買い上げるのでございますから、そこに一つの別な企業が入って参りまして、その間の経済的な影響がどうなっているかという点については、なかなか簡単には把握できない問題でありまして、私どもも若干そこに危惧を実は持っております。しかし澱粉の買い上げの価格、すなわち価格支持がイコールイモ価格支持になるようにということは、私ども多少とも努めているつもりでございます。なおいろいろ御知恵を拝借して、そういうふうに進むべきであると考えております。なおイモ価格の水準といったようなことにつきましては、いろいろ御意見を拝聴しておきめ願うということにいたしたいと思います。
  52. 伊東岩男

    伊東(岩)委員 イモ価格を支持することは、ひとりあなたたちの仕事ではなく、われわれとしても自主的な立場でどうすれば生産されたイモが適正に分配されるかということを考えなければなりません。それには第一は、自主的な立場から農家が共同出荷その他の合理的な方法で無理をせずに出すといったようなことにしなければならぬ。イモの出る時期はごくわずかの間でございまして、長く持てぬのでございますので、この操作を適正にするということは、自主的な立場からやらなければならぬと思います。  いま一つは、やはり新販路の拡大ということが一番大事でございます。それについてはカンショの飼料化ということにもう少し重点を置いて——今や畜産が非常に奨励されて莫大な外国輸入の飼料が入っているのであります。その飼料たるや値段に比して必ずしもいいものではございません。それよりもむしろ内地産のこういったようなカンショを中心した飼料化といったような構想を具体化して、農林省が第一線に立って指導される意思はないのか。  もう一つは先ほどからだんだん議論のあった結晶ブドウ糖の問題でございますが、この工場を普及するということについては、農林省の立場からも大工場を作って滞貨澱粉を消化したらという御希望もあるように承わっているのであります。いま一つは、地方では盛んに農協あたりが中心になってそういったような新しい工夫をこらして、生産されたイモ処理を円滑にやったらといういわゆる精製ブドウ糖、のみならずその他の工場をこしらえて需給関係を円滑にやりたいという希望があるのであります。この点について、特に精製ブドウ糖に対する構想についてもう少しはっきりして——だいぶ御答弁もありましたけれども、もう少しはっきりした結晶ブドウ糖工場設置についての構想を承わっておきたいと思うのであります。
  53. 小倉武一

    小倉説明員 結晶ブドウ糖の育成でございますが、その前にお述べになりましたイモの飼料化の問題につきましては、畜産あるいは畑作ということの関連におきましても、十分研究をしておりますが、推進をしていく価値のある問題と考えております。農林省全体として推進をしていきたいというふうにわれわれも考えております。それからブドウ糖工業につきましては、一つは新規用途の開拓のことになりますので、そういう面に加工業者あるいは消費者に対する啓蒙といいますか、普及ということがどうしても必要でございます。ブドウ糖だけに限る必要は必ずしもないかとは存じますけれども澱粉の新規用途という名前でもって、需要の開拓ということについて来年は多少予算的な措置も構じて、できればやってみたいと存じております。それからブドウ糖工業の育成につきましては、これまた損益の問題を持ち出してはまずいかと思いますが、一つは損益の問題になるわけでございます。これは食糧管理特別会計の損をある程度覚悟しても、ブドウ糖工業の育成ということのために必要があれば一つそういうことも考えてみたいということで、来年度の予算編成にそういう趣旨のこともできれば織り込みたいと存じております。なお一般の資金の問題につきましては、現在のところは開銀の資金について私どもも口添えをしてあっせんをするということでございまして、まだすっかり目鼻がついているわけではありませんが、現在のところ多少有望になっておるように私どもも見込んでおります。なお今後の問題といたしましては、どうも開銀ではベースに乗らないような点も感ぜられますので、これはまたほかの方との関連にもなりますけれども、たとえば農林漁業金融公庫の融資という道も開けるように一つ考えていただいたらどうかといったような点も新しい政策の一環として考えたらどうか、こういったようなことで運びたいと存じておりますが、何しろ新しい製品でございますからどの程度需要があるかということがわかりませんので、年間どの程度のものをさしあたり目標にしまして工場設置ということを考えたらよいか、見当がつきかねているわけでございますが、来年度といたしまして、ただいま考えておりますところは、約一万二千トンくらいのものはごく近い将来に発足できるようにしたらどうかというのが今考えている構想でございます。まだ十分練れた具体性のあるものではございませんが、そういったようなことでかだいま取り運んでおります。
  54. 伊東岩男

    伊東(岩)委員 澱粉の砂糖化ということは、もう試験の段階ではなくして実行の段階になったと信じております。それですでに予算化まで御考慮になっていることはまことに敬意を表します。そこでこの予算については、どういうふうな予算を出されるのか、それはまだ御発表にならないから私はしいて聞きませんが、やはりこれを推進する、指導する経費、あるいは助成する金、あるいは資金の面は、お話通りにいろいろな面で御考慮になればできないことはないと思うのでございます。そこで地方においてもすでに澱粉工業化をやろう、砂糖化をやろうという腹ができておりますので、ここに適正な指導ができて、そうして助成金でもお出しになるということになっていけば、これは必ずものになる、かように思うのでございます。北海道のテンサイ糖にいたしましても、相当な資金を投入して、ただいま輸入砂糖を防止する一環として隆々として進んでおるようでございますから、余っておる澱粉を砂糖化するということによって砂糖の輸入を防止するということで、初めて国際収支改善の一助ともなろうと思うのでございます。  最後に本名政務次官に御注文を申し上げておきますが、あなたは澱粉のことには非常に典型的な権威者でございます。ここで私が申し上げるまでもないことでございますから、どうか食糧庁長官をよく指導して、二十三円とか、二十四円とか言わずに、去年の価格よりもうんと上げる、そうして政務次官としての偉力を十分発揮していただきたいという御注文を申し上げて、私の質問を終ります。
  55. 五十嵐吉藏

    ○五十嵐委員 関連して一点だけ本名政務次官にお尋ねいたします。今食糧庁長官答弁によると、なまイモ価格を下げる、こういうのですけれども、一体どうしてことし値段を下げるのかということなんですが、どうも理由がちっとも納得できない。去年は一昨年の二十六円に対して二十四円五十銭にきめられた、去年は非常に豊作であるということが大きな原因であったわけです。ところがことしはどうかというと減産であるということだけははっきりしておる。一〇七%とは言うけれども、これはまだ未知の数字であって、作付反別が減っておるということだけははっきり出ているのですから、いずれにしても減産であるということは大体の見通しははっきりつくと思うのです。そういうときに値下げをしよう、これはどう考えてもわからない、過去三カ年の数字もさっき出ましたが、二十九年に二十八円五十銭、三十年が二十六円、三十一年が二十四円五十銭、こういう過去三カ年の数字から見ましても、また作柄生産関係からいっても、それから一般の物価関係からいっても、経済事情からいっても、どういう観点から見ても、多少なりとも上げるというならば話がわかります。それを下げるということはこれは全然了承できない、そこで今の内閣が新農林政策を発表した、この骨子は申すまでもなく、畜産の振興と畑作の振興、この二つの大きな柱を打ち立てたわけです。こういう際にイモ価格をほんとうに下げようというようなお考えがあるとすれば、まだあなたは御相談にあずかっていないようですけれども、御相談の場合にはよもや値下げをするというようなことに万が一賛成はされまいと思うけれども、しかし今長官はそういうことを言っておる、そういうことで万一これを下げるというお考えがあったということであれば、この畑作振興という今の新農林政策とこれははっきり矛盾が出てくるんじゃないかと思う。もしそういうことであって、この政策とやることとの間に矛盾が出てくるということであれば、これは容易ならぬ問題だと思うのです。これは当然私は矛盾していると思う。この点に対してあなたは一体どうお考えになっておるか、この一点を一つ承りたい。
  56. 本名武

    ○本名説明員 五十嵐先生御指摘の通り、実は本年の澱粉価格を今月中に決定するということを発表いたしております。従いまして食糧庁に対して事務的な検討をされておりまして、私実は昨夜帰って参りまして、長官が今申した通りにまだ数字の内容を見ておりません。ここに来て初めて聞いたわけでございます。御指摘の通り一応概念的に考えますとその通りでございます。しかし農安法の本質あるいは澱粉の需給関法、将来の見通し等についての見解は先ほど来長官からるる述べられております。農林省といたしましては、その食糧庁考え方と、それから今日まで先生方のいろいろの御意見を尊重いたしまして、農林省の案を今後決定いたしたいと考えております。  それから二十三円が妥当と思うかどうか、バレイショの十九円が適切と思うかどうかという御意見でございますが、これはただいま申し上げましたように、私その数字に対してまだここで私の意見を申し上げる準備ができておりませんので、ここ一両日中にいろいろ検討いたしましてあらためて申し上げたいと思います。
  57. 五十嵐吉藏

    ○五十嵐委員 そうじやないのです。もし下げるとすれば政策と矛盾していやせぬか、こういう点なんです。
  58. 本名武

    ○本名説明員 そこで、政策と矛盾するかどうかという点でございますが、私は価格と政策とはもちろん関連しなければならない問題でありますと同時に、またその政策の推進いかんによっては、あるいは需給上あるいは価格構成上変化を及ぼす結果も考えられると思いますが、いずれにいたしましても、このイモ澱粉価格の問題はここ数日中に決定しなければならないので、早急に一つ検討いたしまして的確な御回答を申し上げたいと思います。  それから先ほど伊東先生に大へん御鞭撻いただきましてありがとうございました。長官の昨年の価格決定当時の意見と今日の意見がだいぶ飛躍いたしております。これはあげて先生方の御指導のたまものであると同時に、私もお話の御趣旨の通り大いに勉強いたしまして、長官とともに御期待に沿うように努力いたします。
  59. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それでは午前中の質疑はこの程度にとどめますが、午後は農林大臣出席いたしますので、質疑も多いかと思いまして、一時三十分から正確に再開することにいたします。  これにて休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後一時五十一分開議
  60. 小枝一雄

    ○小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後はまず消費者米価の問題について調査を進めます。長い間朝野において論議を続けられておりました消費者米価の問題につきまして、先般政府はこれが改訂について決定をし、近く実施の運びとのことでございますので、この際まず政府から今回の改訂の内容及びその決定のいきさつについて、簡潔に御説明を求めることにいたします。
  61. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 消費者米価を改訂することにいたしましたので、そのいきさつ等につきまして御説明を申し上げたいと思います。消費者米価現行は十キログラム七百九十円になっておるのでありますが、十月一日から十キログラム平均八百五十円、こういうふうに改訂する予定であります。  改訂に至りましたいきさつを申し上げますならば、生産者米価の方は昨年石一万円でありましたが、本年度におきましては一万三百二十二円、こういうふうに生産者米価は上ってきたのであります。でありますので、コスト主義を貫きますならば、中間経費あるいは政府の経費を加えますと、十キロ当り八百八十六円余になるのであります。しかしながら食糧管理制度は、生産者には生産費を補償する生産価格決定するということになっておりますし、消費者価格においては家計の安定をそこなわないような価格において消費者価格決定する、こういう建前になっておりますので、コスト主義を貫くというわけには参りません。でありますから生産価格が上ったからといって、そのままコストをつけ加えて原価主義で消費者米価決定する、こういうわけにはいかないのであります。でありますので、生産価格と消費者価格との間に差が常に生じてきておりまして、これが今までは次年度あるいは次々年度の決算帳じりにおいてこの跡始末をしていたのが例であります。それで赤字といいますか、一般会計の政府負担というような建前は、今の食糧管理制度からいえばまぬがれない制度でありますけれども、一般会計の負担、税金による負担というものが非常に多くなるということであっては因るわけであります。二十九年度以降の食管会計の赤字というのはどういうふうに処理してきたか、簡単に申し上げますと、二十九年度以降においても常に内地米では二百億から二百五十億円の損失を生じてきております。これを食糧管理特別会計の価格の繰り越し益や外麦の利益等で補てんしてきたのでありますが、繰り越し益を食いつぶしましたために食管会計は年々赤字を残すようになってきたのであります。この赤字は先ほど申し上げましたように一般会計から決算じりにおいて補ってきたのでありますが、その赤字が非常に多額になってくるということになりますと、食管制度というものはやめて、自由販売にしてコスト主義でいった方がよかろう、こういう議論にも導かれるおそれもあるのであります。しかしながら現在の段階においては、私どもは食糧管理制度というものを置いて、生産者の価格にコストをつけ加えて消費者に売るというコスト主義でいくということは好ましくない、やはり生産者には生産費を補償し、消費者米価は安くという建前は残しておきたい、こういう考えで進めてきておるのでありますが、昨年度におきましてこの赤字が百六十一億に相なっております。本年度も豊作でありますので、二千七百万石を予約しておるのでありますが、申し込みは二千八百九十万石以上になっております。予約買付が多くなればなるほど価格差がありますから、政府の負担といいますか、損失はふえてくるわけであります。本年度の計画から見ましても、米においては二百八十億円の政府負担を余儀なくされざるを得ないような数字になるのであります。昨年と合せますならば四百四十億円の赤字といいますか、結局は一般会計から負担をせざるを得ないような状態になっておるのであります。このまま放置いたしますならば、来年度においては六百億、七百億というようなものを一般会計から負担しなければ跡始末ができない、こういうことになっていますが、一般会計から負担するという制度には実はなっていないのであります。跡始末として一般会計から持つようなことになってきておるのであります。こういうような状態で放置していることは、現在の段階として適当と認めておりますところの食糧管理制度というものをやめてしまうというか、収拾がつかなくなりまして、結局コスト主義でいって、生産者から買ったものに諸費用を加えた価格で消費者に政府が米を売り渡すということにならざるを得ない、そういうことは私といたしましては好ましいことではない、やはり消費者にはできるだけ低い価格政府は払い下げる、配給するというようなことにいたしたい、こう考えてきておるのでありますが、今申し上げましたように政府の負担が非常に多くなり過ぎる、この制度を置くについても限度がある、こういう考え方から、一般会計から従前におきましては決算じりの跡始末として繰り入れといいますか、始末をしておったのでありますが、今般の措置といたしましては一般会計からまずもって繰り入れる、国民の税金において負担すべきものは負担する、消費者においても幾分の負担はしてもらわなければならない、こういうことから、一般会計からの繰り入れと消費者価格の改訂によって食糧管理というものを続けていきたい、こういうふうなことにいたしたのであります。食糧の関係で、米だけから言いますならば、二百八十億円の一般負担を余儀なくされるのでありますが、外麦の利益もあります。そういうことで食糧管理会計の中間経費につきましても、極力この経費の節約に努めた結果、米といたしましては二百四十億円の赤字、こういうことになっておりますので、百億は一般会計から繰り入れて国民の税金においてこの始末をし、あと百四十億については消費者価格の改訂によって食糧管理ということを続けていかざるを得ない、こういう措置をとったのであります。しかしながら、十キロ七百九十円から八百五十円に上げますので、これが家計に及ぼす影響も全然無視することはできないのであります。私どもの調べた統計によりまするならば、この価格の改訂によって、六大都府県においては五人家族で百十七円の負担、それ以外の府県においては九十数円の負担で、家計に及ぼす影響は〇・三八%、こういうことになっておりますが、しかしこれに伴っていろいろ負担も増すことも全然無視することはできないというような考え方から、今度の米の価格決定するにつきましても慎重に考慮をいたしたのであります。それにつきましては、内地米四等米以上のものを基本配給に回すのでありますが、同時に昨年から施行されておりまするところの希望配給、この希望配給が実は基本配給よりも昨年度は値段が高かったのでありますが、今度の措置によりましては、基本配給の米の価格と希望配給の米の価格とは同一価格にいたしたのであります。それからこの影響を全然無視するわけにもいきませんので、選択の自由を与えて安い米を準備すべきであるということで、俗に特用米、こういうふうにいわれておりますが、特用米の制度を設けたのであります。この特用米につきましては三つの種類を用意する。陸稲及び内地の五等米、これは現在の消費者価格が七百九十円でありまするけれども、それよりも安く七百七十円ということでこの特用米を一つ設ける。それから準内地米につきましては、現在七百五十円でありますが、これを七百四十円に引き下げてこれを用意する。普通外米等につきましては、現在の価格と同様にいたしたのであります。こういうふうにいたしまして、配給基本日数においても一日ふやし、あるいは外米の点におきましても一日よけい用意するというような形で、できるだけこの影響を少くするという形で改訂案を作ったのであります。またこの特用米につきまして非常に希望が多いということでありまするならば、それに対して十分まかなえるだけの準備をしようというようなことで、内地米も幸いに豊作の予想でありまするけれども、外貨予算等におきましては、準内地米等の用意もでき得るような措置をこれに伴ってしておるような次第であります。  以上が大体消費者米価改訂のいきさつと改訂の案であります。これだけで一応説明を終ります。
  62. 小枝一雄

    ○小枝委員長 成田知巳君。
  63. 成田知巳

    成田委員 ただいま農林大臣から、今度の消費者米価引き上げの経過及び内容についての御説明伺いましたが、その説明だけでは私たち納得ができないわけです。そこで問題をしぼりまして、二、三お尋ねしてみたいと思いますが、まず最初に米価決定のあり方と申しますか、基本的な考え方についてお尋ねしたいと思います。そのあと具体的な問題についてお尋ねいたします。  御承知のように、先般開かれました米価審議会では、これは自由民主党の諸君も入りまして、満場一致で、政府の諮問に対して反対の答申をして、消費者米価の引き上げは社会経済上から見て妥当じゃない、こういう答申をいたしたわけであります。にもかかわらず政府は今度大幅の引き上げを閣議決定されたのでありますが、この政府の方針に対しまして、すでに大臣も御承知のように、米価審議会の委員といたしましては、その経緯を米価審議会で明らかにしてもらいたい、これが国民を代表した米価審議会の委員としては当然の要求だと思うのです。そうして法律の規定に基きまして、三分の一以上の署名をとりまして、湯河会長もこれは当然だというので、昨日か農林大臣にお会いして、米価審議会の開会要求をいたしたはずでございます。その開会要求に対しまして、大臣から早急に御回答があるはずなんでありますが、私から申し上げるまでもなく、米価決定関係した公的な機関といえば米価審議会以外にはないのです。その米価審議会で、消費者米価の引き上げは妥当じゃない、こういう結論を下したにもかかわらず、政府がその反対の値上げをおやりになるとすれば、当然 米価審議会にその間の経緯を説明して納得を求める義務が政府としてはあると思う、また委員としては当然権利があると思う。赤城さんは岸内閣の中においても最も人柄がよくて、最も筋を通す人で、一番実行力のある人だといわれておりますので、この当然の要求に対しては御善処あると思いますので、その間の農相のお考え方を一つ承わりたいと思います。
  64. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 米価審議会のお話も出ましたが、国民の世論を一番代表するものは、私は、やはり国会であり、国会の中でも当委員会などが一番国民の世論を代表しておるものだ、こういうふうに基本的には考えております。しかし、米価審議会も、お話のように米価の決定につきまして諮問をすることになっております。そうしてまた諮問の結果が今お話のように、私はその当時大臣ではありませんでしたが、その答申案も実は研究いたしたのであります。私のちょっと読み違いであったようでもありますが、「精米の消費者価格の改正は現下の社会経済事情のもとでは適切とは認められないので、さらに慎重に考慮の上食管法第四条の趣旨により消費者の家計安定を旨として検討すべきである。」こういうふうに非常に含みのあるような答申に私も考えましたので、引き上げてはいけないけれども、検討の上で適当と認めたときには一つ考えてみたらどうかというふうに実は幅広く私は受け取っておったのでありますが、いろいろお話を聞きますると、これは反対の趣旨だったのだ、こういうことを聞かされておるわけであります。そこで諮問でありまするから、米価審議会を開いて再諮問をするというわけには参りません。俗に言う一事不再議の原則でありますか、そういうことで、諮問を出すというわけには参りません。あるいはまたこの招集につきましては、私の方からは招集するという気持を持っておらなかったのでありますが、正規の手続をもって会長に招集手続がなされたことを昨日聞きました。それにつきましては私どもも閣議で決定した問題でもありますので、検討の上どういうふうにするか、招集するかしないかということをきめていきたいわけでありますが、今すぐに諮問をするというだけの手続もまだ済ましておりませんので、この席でどうするかという答弁はしばらく猶余していただきたい、こう考えます。
  65. 成田知巳

    成田委員 米価審議会の答申で、社会経済情勢のもとでは価格改訂は適当と認めがたいので、なお慎重に検討すべきである、こういう意味の検討は、検討したら上げてもいいのだ、こういうように解釈しておられたというけれども、これは全く間違いだと思うのです。やはり現在の社会経済情勢下では値上げが適当ではないのだ、従って政府は出直してこいという意味の検討なのです。その点は十分お考え願いたいと思いますが、米審の招集要求について検討すると言われましたが、この検討こそ、ぜひ開いてもらいたいという要求でございますから、そういう意味での検討をなさいまして、少くとも来年一月に政府消費者米価値上げの決定をなさる予定でございますから、その前の、おそくとも今月の三十日までにはぜひとも米価審議会をお開きになって、その間の経緯を一つ説明願いたい。こう希望を申し上げておきます。  それから今度の米審の決定に対する政府の御処置を見ましても、米審の諮問というものは事実上無視されているのです。平然とじゅうりんされているのです。従って米価決定の公的な機関、もちろん決定機関じゃありませんが、政府が米価を決定するときには米審の諮問を経て決定する。その唯一の法的機関である米審の存在さえも無視されるようでしたら、これは私たちはよほど考えてみなければいかぬと思う。そこで大臣にお尋ねするのでありますが、米価の決定というのは国民生活に最も重大な関係があると思うのです。一方国鉄運賃の値上げ、これも国民生活には密接な関係があるのでありますが、この国鉄運賃の値上げについては国会で決議をする、法律改正が必要だとなっておる。運賃値上げ、もちろん重大な問題でありますが、運賃値上げよりもある意味においては国民出店により重大な関係を持っておる米価の問題が、単なる政府の行政措置だけできまるということは全く権衡を失していると思う。それで本政府が米価審議会の意見を尊重するといふならまだわかるのでありますが、米価審議会の意見も無視する、しかも政府の一方的な判断でこの重大な米価問題が決定されるということは、国鉄運賃の例からいっても私はバランスを失していると思うのです。従ってこの米価問題につきましては国会の議決、法律改正、こういうことで米価の問題を慎重に取り扱って、国民の代表である国会の意思によって決定する、こういう方向をとられるのが当然じゃないかと思うのですが、それに対する大臣の御見解を承わりたい。
  66. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 あるいはそうした方が適当かと思いますが、現在の建前からいいますると、一つの米価決定法律があるわけであります。食糧管理法第四条、こういう法律によって家計の安定というものを考慮して政府がきめてもいいというような建前になっておりますので お話のこともごもっともと思いますが、十月一日からやっていくという点につきましては、国会も開のっとって実は改訂をした、こういうことでございますので御了承願います。
  67. 成田知巳

    成田委員 私の申し上げておるのは、今回の米価決定の問題じゃないのです。最初申し上げましたように、米価決定のあり方についての基本的な考え方をお尋ねしているわけなんですが、もちろん食管法で消費者米価については家計の安定、生産者米価については生産費を償う米価、こういうことになっておりますけれども、これは非常に抽象的な規定なんですね。そうして、その判断政府にまかされて、政府は一方的におやりになる。これでは国鉄運賃との比較から申しましても私は妥当じゃないと思うのです。今回の問題を言っているわけじゃない、今後米価決定については当然国会の決議——少くとも国鉄運賃並みには同じ取り扱いをするのが筋として当然じゃないか、今後の方針について、米価決定のあり方についての農林大臣のお考えを承わっているわけです。
  68. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国会で決定するということはよりいいことだと考えております。この点につきましては諸般の事情もありますので私はいいと思いますが、今そういうことにするということを申し上げるのはちと早いかと思いますので、決定する場合にどういうふうに決定するか、すなわち国会の決議によってやるかどうかという問題につきましては検討いたします。私はけっこうなことだと思いますが、私だけでこれはきめるわけにも参りません。御了承願います。
  69. 成田知巳

    成田委員 やはり現在の米価決定方法よりも国会の決議を求めるという方法がよりいいのだ、こういうお考えだが現在自分一人ではきめるわけにいかない、こういう御答弁、これはもっともだと思います。しかし、よりいいことはできるだけ早く実行に移されるように特に要望いたしておきます。  次に具体的な問題についてお尋ねしたいと思いますが、今度の十キロ七百九十円から八百五十円まで引き上げられました数字的な根拠を承わりたい。当局から出されましたこの資料を拝見いたしますと、資料の八ページ、九ページでありますが、家計支出額の推移を中心にして今度の八百五十円という消費者米価を算出されたらしいのでありますが、この八ページに二十九年二月から八月に至るところの平均の家計支出、それから三十一年十一月から三十二年六月までの平均の家計支出、これを出しまして前者を一〇〇とした場合に後者は一一五・九九になっておる。こういう数字的な根拠で今度の消費者米価の引き上げを算出されたらしいのでありますが、ここでお尋ねしたいことは、この家計支出というものは実際の家計支出をお出しになったので、物価水準の動きというものはこの中には考慮されてないと思うのでありますが、いかがでございますか。
  70. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食糧庁長官から答弁いたします。
  71. 小倉武一

    小倉説明員 御質問の御趣旨がよくわかりませんけれども、もちろんこれは物価の上っている分は多少反映しておるわけであります。おそらく物価上昇をリフレクトしたかという御質問かと思いますが、そういう操作はいたしておらないわけであります。
  72. 成田知巳

    成田委員 質問の趣旨がよくわからないと言われたが、答弁の趣旨もちょっとよくわからないのです。今私が申し上げましたのは、八ページの中ごろに二十九年二月が二万一千八百四十四円、家計支出平均で二万二千七十四円だ、それから右の欄で三十一年十一月が二万五千三十九円、平均しまして二万五千六百四円とありますが、これは実際の家計支出の数字をお出しになったのですね。従って物価の変動によるところの物価水準の変動というものはこの数字には加味されてない、物価の動きというものでその数字をモデファイしていない、こういうように考えてしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  73. 小倉武一

    小倉説明員 物価上昇、特に消費者物価の動きはこれに当然反映をしておるわけでございます。それにさらに加えて物価上昇等を加工する必要はないと思います。
  74. 成田知巳

    成田委員 反映していると言いますが、これは総理府の家計調査なんでしょう。現実に家計支出として支出した金額をおあげになっているのじゃないですか。
  75. 小倉武一

    小倉説明員 その通りでございます。
  76. 成田知巳

    成田委員 そこで、この二十九年二月から八月までというのは、御承知のように二十八年の末から政府は非常に急激なデフレ政策をとられまして、どちらかといえば物価は漸減の傾向にあったときなんです。ところが三十一年の十一月からことしの六月までというのは、非常に物価上昇しておったときなんです。そういう関係を全然考慮されないで二十九年二月から八月までのものを分母にして、そして三十一年十一月から六月までのものを分子にして計算をはじかれますと、分子は過大になり分母は過小だということになるのです、実際実計に及ぼす影響から見ましたら。分母が実際より過小であり、分子は実際よりも過大だということになる。従ってそれからはじき出された八百五十円というのは物価水準の動向というものを全然考えていない。実際の家計に及ぼす影響というものは考慮されてない数字だということになるわけです。もう一度言いますと、支出ですから賃金じゃありませんが、名目賃金だけを対象にしまして、そして実質賃金を考えておられないということなんです。しかもその分母の方はデフレのときなんです。分子の方はインフレのときなんです。そうしますと、それから出てくるところの数字というものは過大な数字が出てくる。これは当然じゃないですか。
  77. 小倉武一

    小倉説明員 ちょっとお話の趣旨がわかりかねるのでございますが、現在問題になっております消費者価格を算定いたします場合に、やはり基礎といたしまして家計米価というものをはじきます。その家計米価のベースになりますのは、改訂前の現行価格が一体いつきまったのか、そしてその現行米価がきまりました直後においてどういう家計の状況であったか、それと最近のベースを比べて家計の上昇を見るのが趣旨でございます。そこに何ら作為を加えておるわけでもございませんし、もちろんこの二十九年の状態を、たとえば消費者で見ますと、月別に多少の変動はあると思いますが、二十八年、二十九年、三十年というふうにとってみますと、二十九年から三十年にかけては若干下っては参っております。しかし下っては参っておりますが、結局二十九年の前半と最近時を比べますと、先ほどお触れになりましたが一一五・九九、その程度上昇率を示しているわけでございします。  そういうわけで、この程度上昇をしているわけでございまして、しかもこれはもちろん限度一ぱいにとっているわけではございません、ごくごく控え目の数字でございます。その点で多少の問題はあっても、あまり深くお考えにならなくても御了承願えるのではないかと思っております。
  78. 成田知巳

    成田委員 たとえば分母を簡単にしまして二万二千円、分子を二万五千円とします。この二万二千円のときは物価が下落しておった、二万五千円のときは物価が非常に上昇しているわけです。従って実際の価値は、物価上昇しているときですから二万五千円だけはない、それから分母の方の二万二千円は、実際の価値はこれ以上大きい。従って二万二千円で二万五千円を割るのではなくて、二万二千円を二万三千円にし、二万五千円を二万四千円にしてその間の比率を求めるとすれば、一一五%というものは出ないはずなんです。  これは簡単な数字で申し上げましたが、デフレのときとインフレのときの家計支出の内容というものは違うのです。たとい絶対金額が同じであってもその内容は違う。それを全然考慮されないで、これを基礎にして数字をお出しになったというのは間違いだ、そうお思いになりませんか。
  79. 小倉武一

    小倉説明員 間違いだとは私は思っておりません。家計米価も一種の約束の上でできておるわけでございますから、この現行米価をきめたのは、米価というものは家計の中にどの程度のウエートを占めておったか、かりにそのウェートを同一にした場合に、現在ではどの程度の値上げが可能かという、こういうことだけの判断の材料でありまして、そういうことであれば、このようになると存ずるのであります。
  80. 成田知巳

    成田委員 家計米価というものは法律にはそうなっているかもわかりません。しかしその法律の建前というものは物価の変動はないという建前なんです。今までのように政府の政策の失敗でデフレからインフレ、インフレからまたデフレというように物価に大きな波があった場合には法律の建前というものは通用しません。法律は、物価水準は一定だという前提でやっている、その前提が変っているのだから家計米価ということでその法律通りにおやりになったのでは合理的な数字は出ないということなんです。  そこで、続けてお尋ねします。過去の実績を基準にしておやりになっているというのですが、今後米価は上るんですね。この上る米価というものは過去の実績でおやりになったのですが、今後米価は上る。ところが政府の政策で非常なデフレ政策がとられた、政府自体さえ昭和三十三年度の経済の成長率は三%以下だと言っている。ところが過去の実績、経済の成長率は一〇%以上に考えている。そういう過去の実績を基準にして、大きく経済が動こうとしている、経済の成長率が急激に落ちようとしているときに大幅の消費者米価の引き上げをなさるということは、国民生活に対する非常な圧迫ではないかと思うのですが、これについては大臣の御答弁を承わりたい。
  81. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今、金融の引き締めとか設備の財政投資につきまして制約を加えておりますので、物価は安定するといいますか、下るような傾向にはきておったのですが、最近におきましてはそれもなかなかうまくいかないという実態は、私が申し上げるまでもなく成田委員、御承知通りであります。そこで、この価格の算定につきましても、デフレあるいはインフレ的傾向の基礎において決定しておるから、非常にたよりないのじゃないかというような御意見のようであります。しかしやはり価格決定するにつきましては根拠がないわけにはいきませんので、過去の価格決定後の情勢を見て八百五十円というような価格が出たわけでございます。しからば将来においてこれはどうかということでありますが、将来につきましてはいずれといたしましても、現在の段階におきましては、この程度のことはいたし方ないのじゃないか、こういう見通しのもとに八百五十円という米価を決定しておるわけであります。従って将来これを根拠として諸物価を上げるというような動きに対しましては、極力これを押えまして、現在適当であるという八百五十円が保てるようにしたい、こういうふうに進めておるような次第でございます。
  82. 成田知巳

    成田委員 私がお尋ねしているのは、消費者米価の引き上げが物価騰貴になるかどうか、この問題は後ほど時間があったらお聞きしたいと思いますが、それをお聞きしておるのではないのです。政府が今度作られました消費者米価決定の根拠を見ますと、先ほど申しましたように、デフレとインフレのこういう大きい変動というものを全然考慮されないで、物価水準に変動がないということで数字をはじき出されておる。従ってその数字は根拠がなければいけないといわれましたが、その根拠にならないのです。しかも一歩譲りまして根拠があるとしましても、政府の参考資料を見ますと、過去における経流成長率が一〇%だ、国民所得も大体八%くらいは上回っておる。従ってこれくらいの値上げというものは家計に吸収されるだろう、こういう前提で八百五十円という米価を御決定になったのですが、ところがもう大きな経済の転換期に入りまして、過去一〇%の経済成長率をお考えになっておったけれども政府の三十三年度の経済見通しによりましても、三%以下の経済成長率だということです。一〇%の経済成長率があったから、これで家計に吸収されるだろう、こういう前提でおきめになったのですが、それが三%以下ということになりましたら、消費者米価というのは、これからが国民生活影響するのですから、三%の経済成長率では、これは当然家計に対する重大な影響がある、こう見ざるを得ない。従って過去だけを基準にされないで、将来の経済の見通しというものを十分判断して、消費者米価の値上げというものを決定すべきじゃないか。これは米価審議会の議論の中心でもあったと思います。しかも政府自身が、もう三%以下の経済成長率だ、そうでなければ外貨の危機は克服できないといっておる。こういう三%の経済の成長率で果して今度の消費者米価の値上げというものが家計に吸収できるか、これはできないと判断するのが、小学生の算術です。そのようにお考えになりませんか。
  83. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国民経済の成長率は、御説の通り昨年一〇%で、ことしの方針といたしましては三%ということになっております。しかし消費者の生活水準というものは、依然として上昇しております。こういう状況でありますので、国全体の経済成長率はどうかと思いますが、消費水準においては、私は現状とそう変りなくやっていけるのじゃないか、こういうふうに思いますので、この価格の引き上げについては吸収できる、こういうふうに考えております。
  84. 成田知巳

    成田委員 消費水準が上昇しているというのは今度の生活白書に出ておりますが、これは三十一年度のことです。しかも消費水準というのは時間的なずれがある。従って一〇%の経済成長率のときに企画庁の発表したような消費水準です。従って経済成長率が三%以下に落ちるということになれば、だんだん消費水準も低下せざるを得ない。こういうように私たちは考えなければいかぬと思うのです。そこで今消費水準のお話が出ましたので、お尋ねしたいと思いますが、エンゲル係数関係ですね。国民生活を豊かにするということはエンゲル係数をできるだけ下げるということですね。家計に吸収されるかされないかということは現在の時点を中心にしてお考えになっているのですが、いわゆる人間らしい生活水準というのは、戦前のエンゲル係数は三五から三六だった。戦前より生活がよくなったといわれている今日でも約四六・五%のエンゲル係数です。だから政府当局としては当然戦前のエンゲル係数に下げるという努力をやるべきで、最も悪かったときよりも少しよくなったから消費者米価を上げていいというお考え方は政府はとるべきではない。いわゆる戦前のエンゲル係数まで下げていく、そして正常な生活水準を保障する、こういう建前をおとりになるのが当然だと思う。そういう意味からいきますと、今度の消費者米価の値上げというものは、一歩譲って家計に吸収ざれるとしても、政府のとるべき態度じゃない、このように考えるのですが、いかがですか。
  85. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦前のエンゲル係数はお話通り三十数パーセントでありましたが、戦後非常にエンゲル係数がふえたことも御承知通りであります。これがだんだん減ってきまして、まだこのエンゲル係数が戦前までに行かないというような情勢もありますが、一方米の食費あるいは家計全体に占める地位といいますか米エンゲル係数というようなものを見ますると、非常に減っておるような状態であります。でありまするから、エンゲル係数が少くなることは好ましいことでもあり、そのために努力もしておるのでありますが、先ほどの米価改訂をせざるを得ないような事情から申し上げまするならば、吸収ができる限度においては改訂をするのもやむを得ない、エンゲル係数を低めることには異論もないし、低めたいのでありますが、同時に低まってきておる今日において、家計に吸収できるというような見通しがあるならば改訂をせざるを得ない、こういうことから改訂の措置をとるようになったのであります。
  86. 成田知巳

    成田委員 今のお話では、エンゲル係数を下げることはもちろん考えなければいけないが、先ほど言ったような事情、というのは食管会計の赤字の問題だろうと思いますが、そういう事情である程度消費者米価の値上げもやむを得ない、こういう御意見であります。そこでお尋ねしたいのですが、食管特別会計というものをどのようにお考えになっているかということです。これは一つの企業会計とお考えになっているのですか、それともやはり食管会計を通しまして国民の食生活を保障していく、いわゆる社会保障的なものだとお考えか、どのようにお考えになっておりますか、農林大臣はそのいずれをおとりになりますか。
  87. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これははっきり企業会計か社会福祉制度かというふうに断定するわけには参らぬと思いますが、食糧管理制度というものが、生産者には生産を補償するというようなことにおきまして生産者の農業経営の安定化をはかり、消費者には家庭の経済を阻害しないようにということでありまするから、この制度そのものには社会福祉的な意味があるのでありますが、これをもって社会福祉制度をしているのだというほどに申し上げるのも少し早いかと思いますが、実際においては消費者に一般会計から現在におきましても一石一千円以上の支出をしておりますし、今度の会計におきましても、八百五十円に対しては三十六円以上を国の方で出しております。補助ではありませんが支出しておるという点から見ますならば、ある程度——社会福祉制度ではありませんが、そういう意味も含まれている。だから単にこれは企業採算というような制度ではないし、またそういうことならば自由経済にした方が筋が通ると思います。こういう制度がある以上、生産者にも消費者にも十二分にはいかないが、安定をもたらす、こういうふうな制度にしたいと考えております。
  88. 成田知巳

    成田委員 大臣消費者米価を上げなければ赤字が累積して一般会計からこれを埋めなければいかぬということは、国民の税負担になるのだから消費者に負担してもらう、こういう純然たる財政上の見地でお述べになっておりますが、そういう点で、私たちは食管特別会計のあり方というものは、財政的見地ではなしに、国民生活を安定させるという建前から食管会計というものは考えるべきだと思うのです。しかもよく政府が言われる、今も大臣が言われました赤字が出れば税負担になる。一般会計からの負担ということは、税金として国民が負担することだ、これは避けなければならぬ、だから消費者米価を上げるのだと言われますが、消費者米価を上げるということは、間接税の一番大きなものを上げるようなものです。一般会計から赤字を補てんするということは、これはもちろん税金でしょうが、ある意味においては直接税から入っている金額が相当ある。そうすると現在十分ではありませんが、ある程度の累進税が行われているとすれば、やはり金持ちがたくさん負担して貧乏人がより少く負担する、こういう建前なんです。ところが消費者米価の引き上げというのは、間接税の引き上げなんです。そうすると、金持ちの負担が少くて、貧乏人が多く負担するということになる。税金の見地からいいましてもこれは一般会計から負担するのが当然なんです。ところが表面だけ税金税金といって実質的な間接税の引き上げということを政府は何ら取り上げようとしない。そういうところにごまかしがあると思うのです。従って一般会計から負担する方は税金の負担のあり方としても正しいのだ、このようにお考えになりませんか。
  89. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 直接税でいくか間接税でいくかということは、私から申し上げるまでもなく成田さんは権威者ですからよく御承知だと思うのですが、従来——私がそういうことをあまり言うのもどうかと思いますが、間接税でいくのはいけないのだ、直接税でいくべきだという議論が社会主義的な議論で、非常に強く言われておったようであります。しかしこれも私からそういうことをあまり言うと、知らないくせにということになるかもしれませんが、社会主義国家においても実は私の聞くところにおいては非常に間接税に依存しているというのが世界の情勢のようにも私は聞いておるのであります。これもやはり税をまかなうのにどういうふうな徴収技術あるいは社会福祉制度をやっていくかにつきましての議論が分れるところでありましょうけれども、実は直接税的なものも相当採用されている、またそういうような段階といいますか、直接税も限度にきているので、ある程度は間接税も拡大していかなければならぬというのが動きのようにも考えられるのです。  そこでこの米の問題も、間接的なことになると思いますが、一方において非常に原価を割っておる米の価格であります。生産価格から費用をつけ加えていくと、原価を割っておるようなことでもありますので、この価格の引き上げによって、どちらかといえば一般に生活の苦しい方面の負担があるいはよりかかるかもしれませんが、一面におきましては原価を割ってまで暮しのいい人にまで損をしながら価格を維持していく、今の七百九十円を維持していくというのもどうかと考えるわけであります。そういう諸般の事情を勘案してこのような措置をするのが適当だ。上げない方がもちろんいいでしょうけれども、やむを得ずやるといたしますならば、この措置が適当だ。こういう考えで米価の改訂をした次第であります。
  90. 成田知巳

    成田委員 社会主義国家の税制の問題を論じようとは思いません。ただ間接税というものは、貧富の差があまりなければ国民階層というものは間接税をとることはとりやすい、一方に苛酷は税負担にもならない、こういうことで間接税の増徴ということも考えられると思いますが、日本のように非常に貧富の差のあるところで間接税の形でおやりになれば、やはり金持ちは優遇されて貧乏人はより生活が苦しくなるのは当然だと思うのです。そこで私がお尋ねしているのは、一般会計から税負担でやるべきじゃない、そこで消費者米価を上げる、政府は今までこういう御説明なんですが、今大臣もお認めになったように、消費者米価の引き上げというものは間接税的のものである。そこでどちらがいいかという問題になる。大臣は今金持ちは金をたくさん持っておるのだからそれに安い米を食わす必要はないじゃないかと言われる。これも一つの議論だと思いますが、それは一般会計の税金の取り方で問題の解決はつくのであります。一般会計からの負担、すなわち直接税の形で金持からたくさんとればその問題は解決がつく。そういうことを根拠にして低額所得者に非常な影響があるような間接税的な消費者米価の値上げをやるべきじゃないでしょう。一般会計から二重価格制度によって負担をし、貧乏人に酷であって金持ちに有利であるような間接税的な消費者米価の値上げはやるべきじゃない。一般会計からの負担でやるのが当然じゃありませんか。
  91. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 できるならそれもけっこうだと思いますが、今度の改訂におきましても消費者に全部持ってもらうという考え方でないのは申すまでもありません。今までにおきましても決算じりにおいて一般会計から出しておったのでありますが、この制度を持っていくために、先ほども申しましたように昨年度は百六十一億の赤字、ことしも豊作で米の買い入れがふえればふえるほど、配給をふやそうとすればするほど赤字が多く出てくる、こういう関係で、米だけで二百八十億に心る。六百億でも七百億でも幾らでも一般会計から負担すべきだということには、責任者としてはやり得ないのであります。でありますから税金の方で一般会計から負担すべきものと消費者にしょってもらうものと、こういうふうに分けて価格の改訂をいたすことにしたので、全部を間接税的に消費者に負担してもらうという方針ではないのであります。その辺は一般会計でも負担するということもこれには入っておるということは、私から言わないでも御承知のはずですが、そういう気持でやっておるので、一方で貫こうということではないのであります。
  92. 成田知巳

    成田委員 将来八百億、九百億、そういうものを一般会計で持てない、こう言うのはやはり農家経営の合理化と申しますか、米麦の生産費を引き下げていく政策についての自信がないということなんです。そうとらざるを得ないのです。だから農業政策がよろしきを得れば、現在の二百五十億が八百億になり千億になるということはあり得ない。政府の農業政策の自信のなさを表明しているのではないかと思います。  そこでお尋ねしたいことは、今赤字の問題を非常に言われたのですが、国民が納得していないのは、食管特別会計というものは伏魔殿だ、こういう疑惑を持っているのです。従って消費者米価の値上げの決定をなさる前に、いかにしてその食管会計を合理化するか、これを国民に訴えるべきだと思うのです。これについてはあまり明確な態度をお出しにならないで、ただ赤字だ赤字だ、だから消費者米価を上げる、こういうやり方は順序を転倒していると私は思うのです。そこで、もうすでに政府としましては十月一日に消費者米価の値上げを決定されて実施されるという段階にきているのですから、当然食管会計の合理化についてのはっきりした態度をお持ちだと思います。その点について承われれば幸いと思いますが、いかがでしょう。
  93. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 消費者価格を、私が大臣になる前から閣議で決定しておりましたように十月一日からということになっておりましたので、十月一日にこれをきめるのには、食管会計の内容をはっきりするのには時間的になかなか容易でなかったのであります。しかしながら御指摘のように、食管会計の合理化ということを捨てておるわけではありません。三十三年度の予算の決定前には、この合理化の方面も急速に進めていきたい。たとえば食管会計が伏魔殿というようなことはないのであります。ただ、米でどれくらい損をしているのか、外表でどれくらい利益があるのか、あるいはまた価格安定作物についてはどれくらい政府が支出しているのか、こういう内容等につきまして、われわれははっきりさしておったのでありますが、まだ周知するような形にはいっておらぬかもしれません。しかし、そういうことではいけませんから、食管会計の内容につきましても、部門別にいたしまして、米についてはどういうふうに赤字が出ているか、一般会計の負担というような形が出るか、あるいは外麦等についてはどういうふうに利益をしておるか、あるいは安定農産物についてはどういうふうな計算が出るか、あるいは雑勘定といいますか、そういうものについてはどういうふうに行われておるかというふうなことを、区分して明らかにしようということで、今そのことを進めておるわけであります。それからまた経費の点等につきましても、本年度の予算編成当時におきまして、いろいろな御指摘がありましたから、八億円くらいでしたろうか、これら経費の点においても節約をしてきておりまするし、今度もそういうところにまだメスを入れて、中間経費等の節約できるものは極度に節約していく、こういう方針をとっておるのであります。でありまするから、十月一日の米価改訂には間に合いませんでしたけれども、今後食管会計の内容については、国民の疑惑がありとするならば、それがないようにはっきりさせていきたい、こう考えております。
  94. 成田知巳

    成田委員 そういう点で、やはり順序が逆じゃないかと思うのです。伏魔殿ということはないと言われておりますが、国民はそういう印象を受けておるのです。従ってその食管会計の内容を洗って、こう合理化するのだ、それでもこう赤字になるのだ、従って消費者米価の引き上げはやむを得ないのだ、こういう順序をおとりになるのが当然で、それをまず消費者米価の引き上げをおやりになって、それから合理化ということでは、国民から考えたら食い逃げをやろうとしておるとしか思えないのです。そこでこの合理化の問題について一言お尋ねしたいのですが、調整勘定といいますか、これをお設けになるということをちらほら聞いておるのですが、それについての具体的な構想をお持ちでしたら、お示し願いたいと思います。
  95. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食糧庁長官が、熱意をもってその方をやっていますから、食糧庁長官から答弁いたします。
  96. 小倉武一

    小倉説明員 今研究段階でありまして、まだしかとした案にはなっておりませんからちょっとお答えはしにくいのでございまするが、先ほど大臣がお答えになりましたように、これは特別会計の筋を立てると申しますか、とかくの批判もございまするので、私としてはそうすることが果して最善かどうかは若干疑問はありまするが、大方の世論に従いまして部門別に勘定を分ける。ただいま考えておりまするのは、内地の食糧と輸入食糧、それから支持価格その他の関係農産物等の勘定、そのほかに業務運営全般をつかさどります業務勘定、こういうような四つの勘定にそれぞれ独立勘定を設けたらどうかと考えております。その中でそれぞれ損益の処理というような問題が起ってくるのです。独立勘定にすれば、当然独立に損益処理をするというような建前になるわけでございます。損益の関係については、さらに同じ内地食糧の関係につきましても、内地米と内麦というふうに分けにゃなりませんし、輸入食糧の関係につきましては外米と外麦という関係を分けなくちゃならぬ、あるいは農産物等の勘定についてはさらにえさ関係、テンサイ糖の関係あるいは澱粉等の関係、こういうふうに分けて、損益を明らかにするつもりでございます。この際お尋ねの調整勘定と称せられたものは、果して独立にすべきかどうかの検討を要しますが、ただいまのところ、輸入食糧勘定の中にそういう特別の調整金と申しますか、調整資金を置いたらどうか。そのゆえんは、一つは、食管の損益全体に大きく響きます要素は輸入食糧の価格変動でございます。これはただいままでのところ予算上ある程度の益を見込みまして、これによって内地米、内麦等の損を補てんするという建前になっておりますが、輸入食糧でございますので、これはわれわれの手でどうするというわけにも参りません価格の変動がございますから、その価格の変動がそのまま食管全体の損益、ひいては農産物あるいは米麦等の損益に影響いたしまするので、その影響をある程度遮断をする、そういう意味で一つ輸入食糧の損益を調整する勘定といいますか、基金といったようなものを置いたらどうか。なお目的といたしましては、輸入食糧の損益ばかりではなくして、内地米、内麦等につきましても予算上と実際の運用上の損益が狂って参ります。多少の狂いによって買い入れ価格あるいは売り渡し価格を何するというようなこともいかがかと思われまするので、そういう損益の調整にもまた充てるといったようなことで、そういう勘定といいますか、あるいは基金といったような考え方を取り入れた方が、この際それぞれ独立勘定を設ける際には、食管の健全化といいますか、あるいは筋を立てるといいますか、そういう点からいけばより趣旨に合うのではないかということで、ただいま内々検討いたしておる、こういう段階であります。
  97. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して。今大臣からるる消費者米価の値上げに至った経緯について御説明があったわけでありますが、なかなかよく勉強されておりますのでこれ以上質問することはどうかと思う点があるのでございますけれども、ちょっと大きなところに見落しがあるようでございます。そこでお尋ねをしたい。食品別な赤字というよりも、まあ消費者米価でございますから主として米の問題でお尋ねをしたいと思うが、先ほど大臣は、去年は一万円で買ったがことしは一万三百二十二円五十銭で買うのであるから上げなければならない要素が出てきた、こういう説明がありました。これは私は必ずしもあげ足をとる意味ではないが、そうすると一升について三円二十二銭五厘引き上げなければならないということになって、八円または八円五十銭上げなければならないという理由にはならない。これが一点。そこで、いやそうじゃない、いろいろな赤字が出ておるからこれは上げなければならないという追加の説明だと思う。それでは一体赤字といいまた原価が高くなったとこう言いますけれども、何を基準にして原価が高くなったと言われるのですか。元来食糧管理制度と食糧管理会計とは別建でございます。従って持っている内容、イデオロギーも構想も並行しておるものじゃない。会計制度が変っても本制度が変らなかったり、本制度の改正に伴って会計制度が変らなければならないのに変っていない。これはあとでまた質問いたします。従って食糧管理制度がこわれるからこの際赤字を埋めなければならないのだ、それは食糧管理制度がつぶれるのじゃない、会計制度がこれについていないということでなければならぬ。管理制度というものは主として主食であり、従って主食は今大臣説明したように大体高く買って安く売ろう、こういう法律でありますから、この法律命令に順法精神をもって従えば、損得なしということになる。刑務所が赤字が出たから処罰事務を扱わないというわけじゃない。これはその制度に基いて収容しなければならないと同じように、赤字、黒字の観念がないというのが食糧管理制度の本来です。ただ会計制度は黒字を出そうという制度である。これは認めなければならぬ。管理制度がこわれるから赤字は困るのだという先ほどの御答弁であったけれども、これは少し検討が足りないのじゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  98. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御説の通り、管理制度と食糧管理会計というものは別でありますから、食糧管理会計を特別に置かないでも、管理制度というものは行い得ると思います。しかし現在の状況においては管理制度を行なっていく上において食糧管理特別会計という一つの会計を持っているわけでありますから、食糧管理制度を行なっていくことが食糧管理会計に反映してくるわけです。でありますから、食糧管理会計そのものがむだづかいをしているというようなことでありますれば、これは別個の問題として相当整理をしたり、合理化しなくてはならぬと思います。そこで管理制度を行なっていく上において食糧管理特別会計があるなしにかかわらず、一般会計でやるかどうかということもありましょう。そしてまた食糧管理制度というものを置けば、これは当然ある程度は一般会計から負担するという結論になるわけであります。しかし先ほどから申し上げておるように、そういう制度であるとはいいながら、消費者米価はいつまでも据え置きにすべきものだ、これは動かしてはならないものだ、こういう結論にはいかないと思うのであります。でありますから、食糧管理制度を行なっていく上におきまして、一般会計から、税金からばかりのみその差額を補うということが不適当な幅になった場合には、消費者にある程度負担してもらわなくちゃならぬ、こういうふうに考えているわけであります。  それから冒頭のお話の、生産者米価を一万三百二十二円に上げたからという、それが前提じゃないので、例をコスト主義でとるならば一万三百二十二円という生産者米価であり、自由米価ということでありますならば、それにもろもろの費用を加えて消費者が米を買う。そういう建前からすれば十キロ当り八百八十六円になる。今の費用です。これは川俣委員が大いに整理して、会計制度が非常にまずい、これは昔の会計法規に従っての会計だからという御指摘もこの間ありましたが、こういうことはさらに検討いたしたいと思います。現在のやり方でいきますならば、原価主義をとるならば八百八十六円になるという計算が出るということを申し上げたので、生産者米価が上ったから必ずしも消費者米価を上げなくちゃならぬというようなことには制度上からはいかないと思います。しかしある程度は反映するといいますか、そういうふうにほんとうはどっちかの関係で自動的になっていた方が、実は今度のようなやかましい問題にならないで済むかと思うのですが、これについては検討をしたいと思います。
  99. 川俣清音

    ○川俣委員 コスト主義というのは大体間接統制の場合には考えられることなのです。直接統制になった場合に考えるかどうかということは、これは議論は別にしまして、一体管理制度に重きを置くのか、会計制度に重きを置くのかによって赤字の算出の仕方が変って参ります。会計制度の矛盾ということを実例をもって申しますから、一つ大臣に御答弁いただかなければならぬ。いいですか。今非常に豊作だといっても経費がかかるから赤字になる、凶作でもやはり赤字になる、災害が起きても赤字になる、起きないでも赤字だ、一体どっちに転んでも赤字だという会計制度があるものですか。増産になれば石当りの単価が下るのだというならばこれはわかります。また非常な不作が起きればコストが上るのだということもわかります。豊作であれば保管料が多くかかって、金利が多くかかって赤字がふえる、災害が起きれば特別輸送しなければならぬから輸送費が増大をする、火事が起きて損をすれば赤字だ、どっちに転んでも赤字が大きくなるというのは、どうしたって会計制度自体がおかしいというふうに感じられませんか。これは常識でおかしいですよ。こういう会計の計算の仕方について大臣は一ぺんも疑問を持たれませんか。これは普通の人は非常に大きな疑問を持っておるところなのです、おそらく大臣も疑問を持っておられると思うのですが、いかがですか。
  100. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今のお話が自由経済のもとでありまするならば、豊作であるから価格も下って赤字も少くなる、あるいはまた凶作のときには価格が上ってくるというようなことは当然だと思いますが、今の会計制度を非常に申されますが、会計制度の前提として食糧管理という統制をもって実は行なっておるのであります。そういうことを言うと失礼かもしれませんが、そういうことで統制をすることはある程度自由経済を押えて無理をしているのであります。そういうことからいいますると、豊作あるいは凶作ということに関係なしにこの制度を実行していくことになりますから、それとは無関係に赤字が出るという事柄は今の制度からは出てくるわけです。
  101. 川俣清音

    ○川俣委員 そうすると制度から出るのは会計上から出るのじゃないですね。これは行政的な意味で出てくると思う。これは会計の赤字じゃありません、行政支出ですよ。制度を維持し、制度を伸ばすために必要な経費ということになりますならば、これは赤字という性質のものじゃない、行政費じゃないですか。会計からくれば赤字という表現だ。制度からくれば赤字という表現でなくて行政費です。たとえば集荷収量が多くなればなるほど手数料が上るという。総体は上るにいたしましても石当りは下ってこなければならないと思う、あるいは金利にいたしましても諸経費にいたしましても、 会計からいけば石当りの経費は下ってこなければならぬ。そういう会計をやるんだということになればそうなのです。そうじゃない、食糧管理制度でいくのだという建前でいけば赤字という根拠がなくなってくるのです。たくさんの米が集荷されたけれども、これを月別に少しずつ食わせていくのだ、消費者からいけば、もっと月に多く配給を受けてなるべく保管費用はかけたくない。一体食わせないでおいて保管料をとるというのはおかしい。食わせるための保管料であれば、これはいいかもしれないけれども、わずかしか食わせないでおいて、これは食い延ばすべきだ、見せつけておいて保管料をとるというのはまずいですよ。そのための石当りの保管料の増大ですよ。そうなるとこれは行政費だ、こう見ていかなければならぬ。消費者の負担にかかるべきものでない。消費者からいけば、食わせるべきときにちゃんと食わせてもらう、ことし豊作でたくさん食わせてもらうということであれば、消費者に幾ら負担してもらわなければならぬということであればこれはわかります。しかしながら食わせないで見せびらかしておいて負担をしろじゃ、どうしても納得がいかない。金利にいたしましてもそうです。今の会計制度は間接統制時代よりもむしろ逆行しておるのです。大正十年にできたときの会計制度は、もちろんこれは間接統制でありまするから、当時高橋是清はこう言っておる。二億の金をつぎ込んで六朱——高橋さんは六朱という言葉を使っております。六朱の金を使ってたとえば千二百万円の負債ができても農民の不安を除き、消費者民衆がこれを迎えるならば、損得なんということは考えないでこの制度を実行するつもりだ、こう言っておる。当時三千五百万円をつぎ込んだ。わずか三百二十万石集荷するに三千二百万円をつぎ込んでおる。当時の金ですから大へんな金です。間接統制時代ですらそれだけの損を覚悟してこの制度が始まっておる。しかも食糧証券は、当時は今の食糧証券と違うのです。交付証券でありますから……。これは農民の負担です。現金で渡さないで交付証券を渡したのです。金利割引をして政府の収入になっておりまするが、従って食糧証券を発行して云々というのは、金利負担を当然という意味であろうが、国が政治を行う上において、しかも独立会計であるならば資本金を持たなければならないのに持たせないでおいて、操作上必要な食糧証券を発行したのであるからしてということで、金利をしかも二百四十六円——中間経費のうちで一番最高ですよ。金利負担は年々上っておる。銀行金利は必ずしも上らないのに負担金利は膨大になっていく。中間経費のうち政府経費千七十五円。千七十五円のうち二百四十六円でしょう。もしもこれを半年の金利と見まするならば五分に及ぶ。年間五分というのは大へんな金利です。保管料もまた累年石当り増加いたしまして二百三十七円ということになっておる。これはもう想像のつかない値上りです。これが原価であるから赤字だというのは、原価に対する一体食糧管理制度から見たこれは妥当なものと考えるのか、いや今の会計法規はこうだと考えるのか。従って赤字に対する考え方によりまして年々食糧管理制度並びに会計制度というものは変ってきておるのですから、これは不変なものじゃない。管理制度はやや不変に使われておりまするけれども、会計制度は不変なものじゃない。これを変えるということになりまするならば、原価というものはそうかからないということになる。ただ間接統制時代は一方商人との競争がありまするから、ときには商人との競争が生じまするから一定のコストをとらなければならない。コストはとりまするけれども、ときにはコストを捨てて、消費者の生活安定のために暴騰したときには捨てるということをやっておる。従って食糧管理会計というものは損したこともあればもうけたこともある。損したからといってこの会計法規を直して損しないように変えたのではないのです。そのときの経済情勢に応じて損もすれば得もした。損をすればすぐ消費者にかぶせる、得をすると安くするという制度になっていない。従って赤字が出たから——しかも米の赤字というものは、今申し上げたように初めからかぶせないでいい計算ができるものです。必ずしも食糧証券で、しかも手続が悪くて食糧証券の発行限度を越えて高い金利を払わなければならぬという会計制度でもなければ、食管制度でもない。手続の誤まりのために高い金利を払わなければならないということはどこにもない。大蔵省並びに農林省の事務手続の欠陥のために莫大な金利を払っておる。それが赤字だと言う。これなどは赤字ではない。行政の失敗による損失です。赤字の部類ではない。これは譴責を受けて当然です。これは補いをつけなければならないものです。事務手続の欠陥なんです。それをみな赤字だ、赤字だと言われたのでは、それは赤字の負担をしようといってもし切れませんよ、と私は思うのですが、大臣はどうでしょう。
  102. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 赤字の全部が行政費だとは私は考えておりません。いろいろお話がありましたが、とにかく生産者から買う価格と消費者に売る価格の間に差額があるのですから、その統制をしておるために必要な経費というものは、これは行政費的なものだと思います。しかし行政費で何千億出たから全部まかなえということには、どうもせっかく剴博な御知識でありますが、納得しかねるのであります。  それから金利のお話が出ましたが、金利は非常に高いじゃないか、こういうことでありますが、実はその額はもし必要がありますれば申し上げてもいいのでありますが、無利子の金も相当使っておりますから、金利という点でそう膨大に食糧管理会計に赤字を出しておるというふうには見られません。  保管料等につきましては、それぞれ値上り等もありましょうけれども、これは十二分によく検討してみたいと思います。  それで念のために申し上げておきますが、これも一つ会計制度の点をつかれますといろいろ問題があるかもしれませんが、間接統制の時代、食糧管理制度にならない前には中間経費とかその他は二割八分、二八%になっておったのであります。ところが現在においでは、いろいろ問題も指摘されますけれども、一割五分から一割八分、一五%、一八%、統制になってからの方が実は中間経費や政府経費はパーセンテージが低くなっております。  それから保管料が非常にかかるのではないか、これはやはり今食糧管理制度をしておりますから、ある米を持っていて食べさせないでおいてかかえておるというふうなことを言われてはまことに御迷惑で、昔は地主の倉庫とかあるいは生産者から一年を通じて出荷をしておりましたから、そういう点で保管料も幾分安くついたのでありますが、現在統制をしております関係上、出来秋に一挙に米を買い入れるということでありますから、そうしてまたこれを用意しておくのでありまして、用意しないで食べさせないようなふうに言われると困ります。用意しておりますので、そういうことで保管料も非常にかかるということであります。
  103. 小枝一雄

    ○小枝委員長 川俣君、関連ですから簡潔に願います。
  104. 川俣清音

    ○川俣委員 それは大臣、おかしいですよ。これは教えられ方がうそを教えられた。なぜかというと、考えてごらんなさい。去年と同じ配給をするのに収量が多いということになれば、それだけ保管しておる分が多く、経費がかかるのは当りまえのことだ。去年よりも収量が多ければ多いだけ吐き出したならば、保管料というものは減ってくるわけだ。それをさしているのです。それからもう一つは金利ですが、三十年は石当り百八十三円だったと思う。それが二百四十六円になっている。安い金利を使ったならば安くならなければならないのに、高くなったのはどういうわけか。だから安い金利を使っているということは教えられて、それはその通りだ。ではなぜ一体高い金利を使ったときよりも石当り高くなったのか、この疑問もやはり事務当局に命じて検討しなければならぬ。これは赤字だから、すぐ大臣、しょって閣議へ出てこいと言われたって、そのまま出ていったんではだめです。やはり前と比べて金利が安くなったならば、ただの金を使ったならば、安くなっていなければならぬのに、どうして高くなっているのか。おれは閣議に出られないから、もう少し中で検討せいということを言わなければ、それは大臣、乗せられるだけです。私は赤城農林大臣事務当局に乗せられているということは非常に遺憾なんです。それから一万三百二十二円五十銭と言うならば、これは秋には政府価格が、一等、四等から五等を抜きにしまして、一万三百二十二円五十銭だ、こう言うけれども、これはおそらく手取りが今のやり方で行きますならば、三等から二等の中間——八十九円ということになると中間です。ところが三等はもっともっと多く出る。そうすると早場米は少くなる、一期、二期は少くなる、三等が多くなるということになるならば、これから百四、五十円下ります。下ったならば消費者価格を下げるつもりですか。これが原価だ、こう言われて見積られた一万三百二十二円五十銭よりも政府支払価格が百五十円下ったならば、消費者価格を下げる、こういうことが言えますか、言えないでしょう。この点一つ伺います。
  105. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 原価主義で行きまして一万三百二十二円だから、消費者米価も十キロ八百六十六円ときめておきますならば、生産者の買入価格が下れば消費者価格も下げるという建前でしょうけれども、今十キロ八百六十六円の原価主義で行っておりませんから、八百六十六円というのは家計米価として適当だというのをきめておりますから、買入価格が変動しても消費者価格を変動させるという考えは持っておりません。
  106. 川俣清音

    ○川俣委員 そうすると、生産価格は下っても消費者には恩典がない。一般会計からの繰り入れだけが非常に助かるけれども、消費者には何ら恩典がない。そうすると、幾ら安くなっても消費者には恩典がなくて、一般会計の繰り入れが減るだけだ、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。大臣はそうじゃなくて、消費者も一般会計もともどもに負担するのだ一ともどもということになれば、半分分けしたければならない。そうすれば半分だけ安くならなければならない。私は関連だからそれだけにしておきます。
  107. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 生産価格平均でとっておりますので、それによって消費者価格をさらに改訂するという考えは持っておりません。
  108. 成田知巳

    成田委員 あと一、二点お尋ねしたいのであります。まず配給量の問題についてお尋ねしたいと思いますが、その前に、今年は三年続きの豊作だと言われておりますが、予想収穫高は幾らとお考えになっておりますか。
  109. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この間統計もとりましたので、数字の点において食糧庁長官よりお答えさせます。
  110. 小倉武一

    小倉説明員 予想収穫高というものはまだ出ておりません。八月十五日現在の作況指数でございまして、これによりますと陸稲を入れまして七千六百万石余りでございます。水稲の方は稲ほどではございませんが、しかし平年作よりはやはりよろしいようでございます。その後話によりますと、八月十五日現在でございますからごく最近は別でございますが、ある程度気象条件も比較的よかったということで、場合によれば今後の作況の予想はあるいはそれを上回る、こういつたような行政的な見方のようでございます。
  111. 成田知巳

    成田委員 それから予約買付ですが、これは先ほど大臣の御説明では二千八百九十万石、こういうように聞いたのですが、正確な数字は幾らですか。
  112. 小倉武一

    小倉説明員 正確には二千九百八十五万石と存じました。
  113. 成田知巳

    成田委員 その予約買付二千九百八十五万石の集荷の状況をお尋ねしようと思ったのですが、専門家がお尋ねになるそうですからどうぞ一つ……。
  114. 小枝一雄

    ○小枝委員長 内藤友明君。
  115. 内藤友明

    内藤委員 成田委員からことしの集荷のことでお尋ねになろうとしたのに、関連して私の質問を許していただきまして、恐縮に存じております。  ことしはただいまお話のように三年連続豊作で、いつもの農林大臣は食糧で非常に御苦労なさる。ことに価格、量両面からのいろいろな御苦労があったのでありますが、ことしはこの量の問題については、三年続きの七千六百万石以上だというわけで、まことにどうもいい状態のときに赤城さんが農林大臣におなりになったので、まことにけっこうなことだと思うのであります。ことに農政には非常にうんちくの深いお方でありますので、ことしのこの食糧の問題につきましては、さぞかし農民が非常に喜ぶ数々のことが出てくるだろうと実は期待いたしておるのであります。そこでお尋ねいたしたいのでありますが、関連質問でありますので、率直簡明に結論からお尋ね申し上げたいと思うのであります。  北陸三県の早場米地帯、これは北陸三県だけではないと思うのであります。他にも秋田、あるいは関東にも早場米地帯があろうかと思うのでありますが、この早場米地帯におきまして、今日いろいろな現象が起きておるということは大臣お聞きのことと思います。先般幾日でありましたか、先週の土曜日であったと思うのでありますが、私の富山県におきまして北信五県の農業会議の会長会議を開きました。その前日に北陸四県の農業協同組合中央会の会長会議が開かれました。この両会議におきまして、北信五県のことしの集荷につきましては、いろいろな状況がそれぞれの皆様から御報告になったのであります。石川県、富山県からはことに深刻な話がございました。私は富山県におるものでありますから、富山県の実情一つ申し上げまして、これに対して赤城農林大臣はどういう御処置をなさったかということをお尋ねいたしだいのであります。私の県におきまして新潟県から入りまする最初のところは下新川郡というのでありますが、泊、入善の地域であります。この辺は特に早場米地域で、今日が供出の最盛期であります。ところがどういう風の吹き回しかは存じませんけれども、第一線に働いております米の検査員諸君は、順法闘争と称するものでなかなか昨年までやってくれたようなやり方をしないのであります。飯野という農業協同組合、椚山という農業協同組合、この様子を私も行って見たのでありますが、検査員諸君は、どういうことからそういう数字が出てきたのか知りませんが、一日五百俵検査すればそれでもう終りということでさっさと帰ってしまう。それでこの両組合におきましては、どんどん農家が持ってくるものでありますから、倉庫の前に積むことができない。やむなく五千俵、六千俵のものを学校の子供が遊ぶ体操場に積むという始末でありました。農業協同組合がまことに苦慮いたしておるのであります。なるほどそれは順法闘争もけっこうでございますけれども、何と申しましても農民は、春のさきから、ことにこの早場地帯は冷たい水が当るところでありますけれども、非常な努力をいたしまして、何とか早めにたくさんの量を政府に納めたいというので、新聞には順法闘争でやっておるということを書いてあるかは存じませんけれども、そういう新聞の記事を読むいとまもない農民は、一生懸命に米を調製いたしまして、そうして俵に入れて持っていきますると、それが五時になるとアウト、こういうことに実はなっておるのでありまして、この制度に対して非常に協力をいたしておりまする農民が、一体これはどういうことなんだ、農林省は一体われわれに背中を向けているのかということで、非常にこのごろ問題にいたしておるのであります。先般開かれました四県の中央会長会議におきましても、私どもがいたした北信五県の農業会議の会長会議におきましても、この問題は非常に大きな問題になりまして、それぞれ農林省御当局にいろいろとお頼みに参ったと思うのであります。こういうことにつきましてどういうふうな御処置をなすっておられるのでありますか。いろいろなかけ引きの言葉でなしに、ほんとうの真意のあるところを一言お聞かせいただきたいと思うのであります。
  116. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今お話のような実態も聞いておりまするし、私も地方でそういうことはよくみずから見ておることもあるのであります。まことに遺憾であります。検査員が時期的に非常に忙しいので手が足らぬということもありまするし、あるいは夜にわたって検査をしなくちゃならぬということもあることは承知しております。これにつきまして、農民も非常に協力しておられるにもかかわらず、農民に迷惑を及ぼすということでありましては、検査員を監督いたしておりまする私としてもまことに遺憾でありますので、やはり出荷期には手が足らぬということでありますので、臨時に非常勤職員の増員をはかって、検査に支障のないようにいたしておりますと同時に、これら季節的の非常勤職員を一そう活用して、農民に迷惑がかからぬように措置をしているわけであります。それからまた臨時に非常勤の職員を入れるとともに、他の支所等からも応援をはかって、そうして早場米の出荷に支障のないように措置をいたしております。なおおそくなって検査をするというようなこともありますので、超勤手当とか、職務旅費とか、職員旅費、あるいは宿直手当等につきましても捨てておくわけではなく、これの支給方法について、あるいは出荷の数に応じて措置をするということで、それぞれ措置をしておるのでありますが、なかなか末端にこれが徹底せず、お話のように順法闘争というような形で農民に迷惑をかけるような事態があるといたしまするならばまことに遺憾でありまするが、検査員も相当骨の折れる時期でありますので、十二分に超勤手当等も実は出せるというような形にも——各省ともそうでありますが、なっておりませんが、この点につきましては、大蔵大臣等につきましても私といたしまして財政的な出資方を交渉もしておるわけでありまして、支障のないように措置はとりつつあるのでありますが、まだ遺憾の点があるように拝承いたしますので、さらにこの方法等につきまして万全を期するつもりでおります。
  117. 内藤友明

    内藤委員 もう一つだけお尋ねいたします。実は食糧庁長官から食糧事務所長へあてられまして、三十二年度期末の検査扱いについて指示しておられるのであります。これによりますると「検査受付については、現地の事情に基き必要に応じ原則として既定の勤務時間内」というのは五時であります「の一定時刻を検査受付の締切目標時限として定め、その周知徹底を計ること。」と書いてあるのであります。これは当りまえのことです。そこで実はこの間も検査員諸君に私どもが会って、君たちは農民を向うに回すようなことをやると、大へんなことになるぞと言いますと、いや、それはそうじゃないといってこれを持ってきまして、これは食糧庁長官から事務所長にあてられた手紙だが、これをあなたは読んでみられませ。これにはちゃんと、五時までやって、あとはやるな——あとはやるなとはないけれども、五時までなんだ、こういうのです。こういう当りまえのことを食糧庁長官が言われるゆえんのものは、どこに食糧庁長官の腹があるかということをあなたは考えてみられませ。これはほかでもない。大蔵省から食管会計の赤字だ、赤字だというて責めつけられるものだから、農林省はこの早場米奨励金を出したくないのが腹で、そのようにやれとは書けぬのですから、それで時間内で締め切って、あとはやるなよ、こういうことだから、あなたは私どもを責められるけれども農林省農民に対して背を向けるということなんだ。だからよくこれを読んでみられませ。それはそうじゃないのだと言うけれども、連中は農民にそういう説明をしている。一体こんな当りまえのことを何のためにこういう通知を出されたのか。頭のいい小倉さんが見られたのかどうかちょっとわからぬが、やはり検査員諸君の言われるのはそうかなあとも考えられるので、これは一体どういう意味か、やはり奨励金を出したくないというのでございますか、それを一つお聞かせいただきたいと思うのであります。
  118. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私どもといたしましては、制度のもとにきまったことでありますから、多々ますます弁ずで、奨励金を幾らでも出したい、こう思っているのであります。検査員がそういうことを言われるというのは、どういう検査員が言われたかわかりませんが、検査員も協力して農民が奨励金をたくさん取れるように検査してほしいということだと私は思うので、それを逆な話にしているということ、ことに農民に背を向けて農林省が大蔵省に屈服するというような、そういう宣伝は間違いでございます。絶対にそういうことはない。むしろこれは奨励金が出れば出るほどいいのであります。  それから五時まで受けつけろというようなことですが、それは内藤さんも御承知通り、検査員によっては、受けつけると検査しなくちゃならぬものだから、六時にも七時にもなるころになって、もうだめだというふうに言われる向きも中にはあるのだろうと思うのでありまして、早く受けつけておいて、とにかく検査のできるようにという趣旨で、奨励金を出させないために受付を五時までにしろというのではなくて、逆に奨励金を多く出させるためには、検査を早くしなければならぬから、あまり時間過ぎに受けつけて、きょうはだめだということでなしに、五時までに受けつけて検査ができるように、奨励金がたくさん出るように、こういう趣旨で通牒を出したと私は了解しております。
  119. 内藤友明

    内藤委員 実は私も検査員諸君に会いましていろいろ懇談して、農民が血眼になって脱穀調製して、そうして隣近所のリヤカーを借りて倉庫に運ぶのであるから、それは目方の軽いものであるならば、その処理なんかしゃっしゃっとできますけれども、いよいよ夕方ごろになると殺到いたしまして、さき、さきとあるものでありますから、そう簡単にいくものじゃない。そのことは農林大臣はよく御存じだろうと思うのであります。五時にかけつけましても、ほんとうに受け付けてくれるのが晩の八時になったり九時になったり、ことに期末になるとそういうことが多いのであります。これまでは検査員諸君もよくやってくれました。ほんとうによくやってくれて感謝しておったのでございますが、ことしはどういう風の吹き回しか、うまくいかないのであります。そこでこの間も検査員諸君に、そんなことをして百姓が——ことに富山県の百姓というのは細胞が単純だから、さあとなるとすぐ棒を持って追いかけるぞ、わかっているだろう。それはそうだと言うて、いろいろ話をしますと、こう言う。それは業務命令が出れば、われわれはやります。ただ働きはいたしません。現にこの間の二日続きの休みは、所長は業務命令を出しまして、二十七人のものが出て働いたということでありますが、当然業務命令が出た以上は手当をやらなければいかぬのじゃないかと思うのでありますが、業務命令が出なければやらぬというゆえんのものは、やはり手当をくれということじゃないかと思うのであります。聞いてみますると、よその県は存じませんけれども、私の県では超過勤務手当というのは二時間ばかりだそうであります。二百円くらいだそうであります。二百円で夜おそくまでやるということは実は無理なんでありまして、とにかくこれは真偽はわかりませんけれども、事務所の人に、超勤手当わずか二百円かと聞くと、あれは本俸みたいな形になっておるので、所長が千円で部長が六百円、課長が五百円で、その他大勢が二百円から二百五十円だ、こういうふうなことを聞いたのでありますが、そうするとこれは超過勤務手当という名前だけれども、超過勤務手当じゃないのであります。だから私は仕方がありません、制度がだんだん間違ってきたのだから、いまさらどうにもならぬと思うのでありますが、何かこの際、検査員諸君も一生懸命に協力しておるのでありますから、ことに食糧庁におられる皆様よりも、第一線のものが大事なんでありまして、これが農民に接触しておるので、これのやり方いかんによって食糧庁全体のいろんなことに影響するのでありますから、やはりこれを第一にかわいがって、所長が二百五十円で部長が三百円、検査員が千円もおやりになるということになれば、金額が少くても、さかさになって働くだろうと思いますが、どうもそういうわけにいかぬ。ことに今までだんだん検査員諸君が減ってきまして、この四年ほどの間に私の県では百六十人滅っておるそうであります。行政整理というと、すぐ検査員の方にいってしまう。富山の食糧事務所はちっとも減っておらぬ。おそらく私は本庁の方は減っておらぬと思うのであります。弱いところへみんなしわ寄せをする。それは日本の今までの普通の形なんでありますが、食糧庁だけ別に考えろというのは無理かもしれませんが、どうもそうらしい。だからそこは一つ第一線の農民に接触しているものが大事なんだから、これを大勢にふやして、こちらの方を少くするというふうなことは、赤城先生のときでなくちゃできないことなんでありますが、一つそういう御希望を申し上げまして、ことしの供出に支障のないようにくれぐれもお願い申し上げたいのであります。
  120. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して。大臣に特に御考慮願いたいと思うんですが、三十二年九月の十四日に出された各事務所長あての通牒は、私はこう理解いたしますけれども、私の読み方が悪ければ大臣並びに食糧長官から変えていただきたい。  第一の趣旨は、ますます適正な検査をしよう、これは大見出しであろうと思います。適正な検査をやるということになりますると、これは競争をやりましても、一儀検査になりますと、一分半はかかります。検査に一分半、封印をするのに二十秒か三十秒要します。そうすると、二分かかるといたしますれば一時間に三十俵、十時間働いて三百俵、これが適正検査であると思われる。これは長官大臣もよく知っているでしょう。検査して、一俵々々差しを入れるとすれば、どんなにしたって一分半はかかります。めくら判を押すにしたって一分半はかかる。一分にしたって六十俵、今までは封印は農協の人に手伝わしたりしております。適正な検査ということになると、封印は規則の命ずるところによって検査員がしなければならぬと思う。今までは適正検査じゃなかったということになるだろうと思う。規則通りいけば、公務員の責任を明かにせよという内閣の大方針に従いますならば、封印はみずからしなければならぬということになる。検査をして封印をするには何といったって二分はかかる。十時間働いて三百俵より消化ができないということになるんだと思いますが、この通牒はそういう意味でございますかどうかということが第一点。  二点は、どういうわけか知りませんけれども、検査の便宜のために計画出荷をせよ、こういうわけである。計画出荷というのでありますから、おそらく食糧庁は気象庁よりももっと進んだ天気予報をお持ちになり、それを指示ざれなければ、計画出荷というものはできません。天候に支配されて出荷がいろいろ変動するのでありますから、計画出荷ということを言われるからには、天候を支配されるだけの能力があると自認されなければ、こういう計画出荷なんというのは、どんなに農民を集めたりあるいは関係機関を集めて協力を求めましても、一朝天候が悪ければくずれる。従ってこれは個々の申請に待つような協力を求めることよりも、長期天気予報なりあるいは累年の日本の集荷状況を見て計画をみずから立てる方が責任ある態勢でなければならないと思いますが、逆に農民及び関係者の協力で計画出荷をせよ、天候を越えて——天候を越えるということになりますと、検査の不適格品が出ること明瞭であります。適正な検査、乾燥を十分にしてということになりますと、天候の命ずるままに仕事をせいということになる。乾燥をよくせいということが本質なのか、計画出荷が本質なのか、このいずれかということを聞きたい。計画出荷に力を入れられているのか、乾燥をよくしたロスの少いものを出させようとすることになるのか、どっちにねらいがあってこういう通牒を出されたのか、その点を聞きたい。  第三は、期末検査の取扱いで今内藤さんから説明がなされましたが、期末ですら一定時限を定めてこれを周知徹底させる。ずいぶんよく周知徹底さしたものです。このくらい長官の命令がよく徹底いたしたのは珍しいと思いますけれども長官命によりまして時限内にぜひとも検査をしなければあとは受け付けぬぞという命令が徹底した。この徹底したことが悪いと思っておられるかどうか。この徹底はなるべくしなかった方がよかったと思われるのかどうか。こんなことはあまり徹底されては困る、こういうふうにお考えになっているのかどうか。
  121. 小倉武一

    小倉説明員 今の適正検査の点、それから計画出荷の点、それから期末の受付時間等の問題でございますが、検査を適正にしなければならぬという点は当りまえのことでございますが、そのつど警告すると申しますか、注意を促す必要があるような問題でございますので、そういう点を繰り返し申したわけでございます。  計画出何につきましても、もちろん天候のかげんあるいは作況のかげんで非常に困難なことでございますけれども、そういう事情のもとでも、できるだけ計画的にやるというのが、農家の出荷なり、あるいは検査を受けるなり検査をするなりということからお互いに便利でございますから、事情の許す限りそういうふうに願いたい。他のいかなる犠牲もかまわないでただ計画出荷だけをやれ、こういう趣旨ではございませんのです。  それから時刻の問題でございますが、これは先ほど大臣もお答えになりましたが、そのように私どもは解釈をいたしております。それから命令の周知徹底ということでございますが、これは徹底する方がよろしいのでございます。中にはあるいは徹底しない方がいいような命令もあるかもしれませんが、私どもは必ずしもそういうふうには考えておりません。
  122. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一度お尋ねいたします。あなたの答弁は私の質問に対する答弁になっていない。適正検査をすれば——今まで幾分疎漏もあったから十分検査をせよ、こういうことだとおっしゃったでしょう。確かにそういう点もあった。そしてみずからの責任で、しかも最近公務員の責任制を強調されている折柄であるから、みずからの責任で検査をし封印をせよ、こういうことになりますならば、従来の実績はこんなであるということはお認めでしょう。一体従来のように簡素にやれというのでなくて、もっとしっかりやれということになると、一俵当りの検査時間の分数がふえる。秒数がふえる。いや秒数は急いでやれ、十分やれ、こんなことは人間のできることではない。しかもたくさん詰まって参りますと、これは一人が積んできた場合だと、大体一俵か二俵刺してあとはちょっと刺しただけで右へならえでやっておる。ところがたくさん積まれるとだれのかわからぬという、一々一つ一つ十分検査しなければならない。これはできない。十俵持ってきたとすると一俵刺してみる。これは一番先のやつは十分やる。次はちょっと刺してみて右へならえになる。そう十分見ないでも大体右へならえということにいくのです。ところがたくさん積まれてしまうと時間内にしてあとは受け付けてあとでやれということになりますと、これは一人々々積んでおりません。倉庫はそんなに広くありません。これは大へんな、区別がしにくいことであります。そうするともっと一俵々々というものを正確に見ていかなければなりません。こういう業務命令でしょう。しっかりやれということでしょう。疎漏にやるなということでしょう。疎漏にやるなということになれば時間をかけろということでしょう。勤務時間をかけろ、こういう命令でしょう。したならば、かければ受件数が減る、こういうことでしょう。受件数が減ったならば、去年とことしと比べて申し込み数量並びに天候からきまして、相当数量が上回るということになりまするならば、人間何人配置したらいいかということはこれは小学校の生徒でも計算ができる。食糧庁の手を煩わさぬでもできる。食糧庁があえてこれをやらないということは、これはごまかしておるのです。ごまかして通そうと思ってもこれはできませんよ。適正検査をやれということなのかやるなということなのか。やれということならば相当の勤務時間がかかるということが前提でなければならぬ。まじめにしっかりやれ、遊ぶなということならけっこうですよ。適正検査をやれということは十分検査に熱を入れよ、封印をしろ、おそらく食糧庁のここへ来ておられる人で下手に封印したならば五分か六分かかりますよ。一分や三十秒でやれなんということはできませんよ。今まで農協の連中に手伝わしておったのですよ。農協の連中に手伝わすと——責任制の上から今後は自分で封印せよということでしょう。そういう政府の方針だ。責任の確立をして、みずからの責任で封印せよということですから、これをやるととてもそんなにできません。これは一体どうなさるのです。答弁がなっていないです。  次は、第二の点は計画出荷計画出荷というけれども、天候が支配できますかと聞いておるのです。できるならば計画出荷に応じます。ただ昼になったらこの調べにいくのじゃ——昼に行って計画出荷といっても何をやっていますか。じいさんとかばあさんとか留守番の人に聞いて気休めに書いて、それを集計して計画検査をやる。留守番のじいさん、ばあさんに、野らに出て仕事のできない人に何ぼ出荷しますかと聞いて歩いて、それが計画出荷なんだ、そんなばかな話はない。そんなことに経費をかけるよりはもっと検査の方にかげたらよい。気休めのむだな経費はかけないことですよ。予算がない、予算がないというならば、こんな気休めな当てにならないものをやる必要はないじゃありませんか。しかも百姓はひどく忙しいのに集めて周知徹底だ、ずいぶん迷惑しごくな話なんです。人の迷惑しごくなことが計画だというのです。  第三の、検査の受付については一定時間を検査受付の締め切り目標の時間として定め、その周知徹底をはかるということは、取り消されるのですか。大臣の話だとそういうことはきめていない、できるだけ農民の便宜をはかってやるという趣旨で理解をしている、こういうのでしょう。大臣説明小倉長官説明は違います。この点を一つどちらからでもいいから明確にしていただきたい。
  123. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どうも検査の実態を知っておる川俣さんとしては特にわざわざ曲げておるような気がするのですが、的確検査というのは四等のやつを五等に落したり何かしたりするということがあってはいけない、こういうことだから、なるたけ昼間のうちに検査ができるように一つやって正確な検査をする。それからまた夜になって、よく電気をつけたりちょうちんをつけて検査をする。これは狂います。そういうことがないように的確に検査をする。それからまた実際農民が川俣さんの言うように出荷したものを捨てておいて、そうしてどこに自分の米があるかわからぬようなことはしておりません。実際自分の米だからわきに待っていて、そうして開俵も手伝えばいろいろ手伝う。農協が検査の証票を張るというが、これは順法闘争からいえば自分で張るということになるかもしれませんが、自分で張らなくても自分の監視下において農協の職員が手伝って張っていれば、これも自分で張るのと同じことです。そういう実態で今までやってきておるので、私は的確検査というのはやはり等級を正確にしろ、こういうように理解しておるのです。  計画出荷でありますが、これにつきましても検査員が一日に何百俵急に来て、あしたは少かったというのではいけませんので、やはり調整をとって、きょうはこの倉庫には何俵ぐらい入れるかということをあらかじめ知っておれば検査員の方でもどこの倉庫とどこの倉庫と先に回って、こういうふうな計画で検査が終了する。こういうような出荷について一日は出た、あしたは出ないというようなことでないような調整をしろというような意味に考えておるのであります。  期末検査につきましてもなるべく明るいうちにわかるように検査をするというような意味で通牒を出したと心得ておるのです。これは農民のためでもあり、検査員としても能率的に行えるという趣旨であります。無理に検査員を働かしたり、あるいは無理に農民に迷惑がかかるというような趣旨は全然含んでおりませんので、一つ御了承を願いたいと思います。
  124. 川俣清音

    ○川俣委員 それは大臣違っておる。昼の間に検査をするということになりますと、一人で十時間働いて六百俵。最盛期になりますと一つの倉庫におそらく四千俵、五千俵になる。これは統計上明らかです。そうすると二人で千二百俵です。毎日三千俵四千俵というものをそれは監視はしておりますものの積む場所がなくなってきますから徹夜でいなければできません。農民は徹夜した、検査員は帰る、だんだん累積して置く場所がなくなるというような状態だということで、内藤さんが話をしておる。従って最盛期におきましては昨年、一昨年ごろは一人で千五百か二千三百俵くらい消化しておる。これは農協の人が手伝って、しかも検査員は夜おそくなるというと夕飯をごちそうになり、あるいは諸手当とは申さないにしても、何らかのものをいただいて、そうして送り迎えられるというようなことが往々ある。そういうふうにして、これは悪い意味でなく、いい意味においてそう行われてきたのです。ところが今変にあなたの政府が、めくら判はいけない、こういうのでしょう。自分で押せというのでしょう。めくら判はいけないということは、自分で押さなければいけないということです。いや課長、局長はいかぬ、下の者はめくら判でいいということにはなっていないようです。公務員の綱紀粛正ということで、これは内閣通牒を出しているのだから、みずからの責任で判を押さなければならぬ。人に押さしてはいかぬということになっておる。そうすると大臣おかしいじゃないか。大臣はそのくらいのことはいいだろうというが、一方では内閣から勤務規律だということで、そんなことをやるのはけしからぬとやかましくいわれてきておれば、やはりある程度は守らなければならない。適性検査もやらなければならぬ。昼間やれ、げっこうな話です。昼間やって、そうしておくれた分は全部受け付けられるというので、予備倉庫を非常にたくさん持たれるならば別です。予備倉庫もない、一ぱい一ぱいです。そうでなくて逆に農協の指定業者は、管理人が責任をもって倉庫に先に入れてしまう、そうしてあとから昼間だけゆっくり検査をしてもらうという方法もないわけではない、合法的にある。これをやったらどうかということを私が小倉さんに勧めたら、それをやられたらたまりません。先に倉庫に入れてしまってあとでゆっくり昼間検査をしてみたら十分適正検査ができるのではないか、そのうちに乾燥のいいものも悪いものもわかってくるだろうし、ゆっくり検査したらどうだ。そういうことをやったら大へん厄介になります。あれをやれば厄介だ、これをやれば厄介だ、こういうのです。だから一体どこに方針があるかわからないのです。そこで従来のように農協に奨励金を出しているのだから、それでやってもらいたい。また県には協力費を出している。秋田県のごときは県知事が協力費をもらったやつを半分出して寄付して、それで臨時職員を置いてもらう、こういうことなんです。一ぺん出したものをまた寄付を受けるということはおかしいじゃないか、一体この綱紀粛正の折から、県庁から寄付をもらうのはおかしいじゃないかというけれども従来通りやるなという行政を一方において作られておる。小倉長官は、それは公序良俗に反しないからやったらどうだ。長官としては実にそうやってもらえればありがたいだろうが、政府の方は綱紀粛正だ、いや公務員の責任制の確立だ、こういうことになってくると、ちょっとおそくまで行っておって、大体五時に帰るつもりでおったのが、一つやってくれと頼まれて犠牲的にやった。そうするとそれは業務命令が出ないでやったのだからといって摘発されたら、こっちの方が取り締られる。小倉君だってこれじゃ守れまい。時間以外にやったのは公序良俗に反しないのだからいいのだということは言わないだろう。やはりこれはまずい。せっかく大臣の言ったようにやったのが、今まではよかったのだけれども、これからはだめだということを一般に言わしめておる。だから遵法闘争じゃない。政府の命令に従え従えと百万べん言っておって従わざるを得ないような情勢だから、業務命令が出なければやれないというところに追い込んでしまった。追い込んだからにはその責任を果してやはりできるように業務命令を出すなりして——出せば金がかかるというけれども、金がかかるといったって、県に対する協力費など多いときには二億五千万ですか、元四億くらい出したことがあるのです。農協の協力費だって四億近い金だ。だからそんな遠回しにしないでも、もしもやろうとするならばやれないことはないのです。県が寄付してまでやろうという事態だ。大体予算の組み方が悪い。もし命令を出すようだったら命令を出すような予算の組み方をしたらいい。予算の組み方は別個に組んでおいて、命令は別だなんて、そんなわけにいかないでしょう。やはり予算を組んだ通り命令を出すか、それでなければ命令を出したならばその裏づけをするか、こういう通牒を出したならばその裏づけのものを当てがわなければならぬ。当てがわないでおいて適正検査だなんて、これは適正検査はできませんよ。やるなということと同じことです。六百俵以上やれ、八百俵やれ、千俵やれということは、適正検査はやるなということだ。そうでなければ金庫に収容できない。どこにも収容できません。置き場所がない。持っていったものは五百俵か六百俵、二人で千二百俵、それではとても消化し切れないでしょう。大臣もこれ以上は言うと気の毒だからこの程度にいたしておきますが、これは何とか善処しないと大へんな騒ぎです。農協の責任者は、おそらく受け付けて全部収容してしまったならば、検査不可能な状態だ。これは何かこういう世の中を作ったのだから、作ったからにはやはりその裏づけをして、適正なものをやらせるならやらせる。昼間やるのはけっこうだ。昼間やるなら臨時倉庫を建ててそこに仮収容するというようなことをやらなければ、昼間だけでは検査はとても不可能だ。だからそれでなければ非常勤のやつを、さらに過去に減らした分を急に今やる——一体非常勤が検査するというのも、これもおかしいのです。検査官でも何でもないのです。時間がないので省略するけれども、これは十分やらないと大へんだということを申し上げて、あとは保留をしておきます。
  125. 成田知巳

    成田委員 予約買付から綱紀粛正まで発展してきました。そこで私ごく簡単にあと一、二点お尋ねしたいと思います。今予約買付は二千九百八十五万石と言われたのですが、三十一年度の持ち越し、それから輸入食糧の予定数量、特に輸入食糧は豊作によって相当計画が変るのじゃないかと思いますが、どれだけ減少するか、これを一つお答え願いたいと思います。
  126. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食糧庁長官からお答えいたします。
  127. 小倉武一

    小倉説明員 三十一米穀年度から三十二米穀年度の持ち越しは、古米で六十九万三千トンということであります。それから三十二米穀年度から三十三米穀年度への持ち越し、ことしの十月末から十一月への持ち越し、これが約二十四万九千、二十五万ちょっと足らずでございます。従いまして、持ち越しから申しますと、本米穀年度の当初の持ち越しに比べまして、来米穀年度に持ち越すものは半分以下になっておる、こういうことであります。  もう一つのお尋ねは、三十三米穀年度の輸入食糧の見込みというふうに承知いたしましたが、これは六十万トン余り、今のところ約六十四万トンという計画をいたしております。いわゆる準内地米、普通外米、砕米を入れての数字でございます。
  128. 成田知巳

    成田委員 そうしますと、これだけの数量で今後の配給をおまかないになる、こういうように解釈してよろしゅうございますか。
  129. 小倉武一

    小倉説明員 これに本年産米の買い入れ数量が入るわけであります。それから外米の持ち越しがやはりございます。そういうものでまかなうわけでございます。
  130. 成田知巳

    成田委員 外米の持ち越し数量もお示し願いたいのですが、大体今の御説明によりますと、二千五百万石程度だろうと思うのです。そこで政府のいわゆる満配配給ということが実現できるかどうかという問題なんですが、たとえば特用米、これは月六日ということになっておりますが、特用米に充てられるのは陸稲と五等米のはずですね。これも大体八万トンがせいぜいじゃないか、こういうように私たち聞いております。八万トンということになりますと、六十万石以下ですよ。そうしますと、これは大体一日分の配給数量にしか当らないんで、毎月六日の特用米の配給ということは、事実上数字的に不可能じゃないですか。
  131. 小倉武一

    小倉説明員 特用米のうちお話の陸稲、水稲の五等玄米、こういうものを材料にしたものは、うるちだけを取り出せば約十万トン近くのものが予想されるのではないかというふうに思います。それにしましても、量としましては、日数に直せばお話のようなものに近かろう、こう思います。従いまして、たとえば陸稲だけで特用米を全国民がほしいと言われましても、それはできかねます。なお多少ゆとりがあるとすれば、陸稲のもちなどを——もち加算などが若干つきますけれども、そういうものを入れるということもありますが、そういうものを入れましても、それだけではもちろんできません。準内地米等をやはり考えなければならないと思います。  それからもう一つ問題といたしましては、内地米でもさようでございまするけれども、内地米以上に外米、準内地米等の有効需要がどの程度のものであるかということはなかなか想定が困難でございます。もちろん過去におきまして満配に近いようなことがなかったとは申しませんけれども、これは非常な凶作のときでございまして、昨今はワクと比べて問題にならぬくらいのわずかなものしか受配率がない、こういう状況でございます。従いまして、今から満配に近い状態を予想して手当をするというような現実感を実は持たないのであります。もちろんこれは輸入の関係がございまするから、普通外米でございますれば、相当量の輸入ということができまするけれども、ものによりましてはそう何十万トン急にほしいということになりましても、手当は困難でございますから、われわれとしては国内の需要もさることながら、海外のソースのことも考えまして、今のところできるだけ手当をするということ以上にはなかなかいかないわけでございまして、実施の状況と申しますか、今年の作況の結果等を見まして、また実際上の売れ行きといいますか、受配率などを見まして、その上になお手直しをしていきたい、かように考えております。
  132. 成田知巳

    成田委員 政府が自画自賛されております特用米も、今の御説明では六日の配給というのもほとんど不可能らしい。それから外米十五日と言っておりますが、今の御答弁にもありましたように、配給辞退というものは非常に多いのです。私たちの知っている範囲では大体月一万トンくらいしか外米は配給を受けてない、こういうことになりますと八万石程度なんです。そうすると、政府の今度立てられた計画というものは、今もすでにその片りんが見えましたが、配給辞退ということを前提にしてお立てになっておる。その現われが、今度の消費者米価を四地域に分けまして、消費地は消費者価格が高い、やみ価格に近づけておる、こういうことなんです。従って、これはやみ米に依存した配給計画だと思うのです。そうしてやみ米を前提にして、消費地においては価格を上げなければならぬ。生産地においては配給辞退が多い、そこでやみ米にさや寄せするというような政策をおとりになっておるのではないか。だから食管会計がやみ米に引っぱられておるという感じなんですね。こういう計画で果していいかどうか。結局国民がやみ米に依存しなければいかぬ。最近はやみ米は去年みたいに下落しておりません。これは消費者価格が上るということを前提にしているからです。そうしますと、家計に及ぼす影響は〇・三八だというのですが、やみ米ということを考えますと、結局家計に及ぼす影響は〇・三八ではおさまらない、こういうことにならざるを得ないと思うのですが、政府はやみ米との関係をどうお考になっておるか、これは大臣から一つ答弁願いたい。
  133. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今度の配給につきまして地域差を設けたのは、実態に近からしめるということでやったのであります。もう一つ政府の経費等について運賃その他も消費地には相当かかりますので、そういうことで、昨年採用しました希望配給の制度が適当だということで、地域差を設けたのであります。そこでやみ米に近づかせるということではなくして、価格の改訂によってやみを行うことが少くなるといいますか、やみを売っても実は配給価格等よりも低い——流通面は別としまして、価格の点でやみ米が安くなる、配給価格あるいは生産価格よりも安いということになれば、やみをする理由というものがうせるわけであります。でありまするから、今のお尋ねのように、やみ米の価格に近づけるというよりも、むしろやみ価格というものをなくして、政府に売り渡して配給の面へ乗せた方がいいのじゃないか、こういう考え方であります。
  134. 成田知巳

    成田委員 考え方まことにけっこうでございますが、そうしますと、そういう考え方に基かれまして政府はこういう御方針をおとりになる意思がないかどうか。現在大体七千七百万石ですか、この予想収穫高をお立てになっておる。そうすると、農家の保有米は大体三千六百万石くらいじゃないかと思います。それに第一次の予約が、先ほどお話になりました二千九百八十五万石、そうしますとまだ千二百万石から千三百万石の米が余っておるわけですね。そこでやみをできるだけなくする、こういう御方針だとすれば、第二次予約買付をおやりになるのが当然だと思う。第一次予約と同じような条件で第二次予約をおとりになるのが当然だと思うのですが、そういう御方針があるのかどうか、その点を一つ明確にしていただきたい。
  135. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今のお話のように第二次予約買付をいたしたい、こういうふうに思っております。
  136. 成田知巳

    成田委員 以上で質問は終りましたが、劈頭私お願いかたがた申し上げました米価審議会の開催の件ですが、政府は非常に心配していらっしゃるようですが、それは少しノイローゼぎみだと思います。私どもそんなに問題を荒立てようとは思っておりません。特に消費者米価に限りまして、それ以外の問題では急のことですから、政府資料も十分お集まりにならないと思いますので、問題の消費者米価決定に至る経過、その内容、今後の見通し、こういう問題についてぜひとも米価審議会をお開きになって、米価審議会を通して政府の御方針を天下に明らかにしていただきたい、これを特にお願いいたしておきます。
  137. 小枝一雄

    ○小枝委員長 石山權作君。
  138. 石山權作

    ○石山委員 前の委員会のときはたしか十一日だと考えておりましたが、そのとき私赤城農林大臣に、みんなが食べる米だからこの価格決定に当ってはたくさんの意見を参照することが一番大事なことではないか、こうお聞きしたら、私ほど大臣になってからたくさんの人に会って、いろいろな意見を聞いている人はおそらくないだろうというような説明もありました。しかし私たちが前委員会であなたにたくさんの意見を聞くようにと、こういうふうに要望したあとで、どういう団体に会ったかよく知りませんけれども、第二十九号でございますか、この広報に載っている限りにおいては、主婦連に対して公開状の質問に答えております。それによりますと、食管制度というものは生産者並びに消費者のために設けられた、こういうふうにどっちにもいいことをここに書いているわけですが、それはともあれ、十四日の閣議決定に至るまで、私たちが委員会においてたくさんの世論を聞いて、その結果善処せよ、こういうふうに要望したに対して、大臣やあるいは食糧庁ではどういう手段でどういう人たちとその後お会いになって価格決定をば閣議できめましたか、これを一つお聞きしたいと思います。
  139. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今の主婦連といいますか、主婦の方々にもしばしば会っております。ラジオ等を通じて米を上げなくちゃならぬということも、再々私が放送しておりまするので、これにつきまして、上げられては困るというような陳情、あるいは地方議会の陳情等もずいぶん来ております。また地方の生産者などにおいては、上げた方がいいというふうに言ってきておるものなどもあります。それから食糧対策委員会と申しますか、食対といいますか、こういう人々も全国から集まってきて、こういう人々のお話も聞いております。その他はがき戦術といいますか、はがきによってずいぶんいろいろな意見を言ってきておるのもあります。あるいはまた党の方の意見もありまするし、社会党の方々から社会党の決議あるいは意向といたしまして、代表の方に再三会っておるし、あるいは新聞等を通じて世論の動向も聞いております。
  140. 石山權作

    ○石山委員 赤城農相のお話を聞いていますと、団体の名前その他をはっきり答弁のできる団体は、おおむね消費者米価に対しては反対の態度を表明せられているわけでございますが、ある地方の農協では賛成の人もあるんだ——ある地方の人なんというのは私はおかしいと思います。大体私たちの仄聞するところによれば、それぞれ消費者階級のうちでも一番利害関係のある大きな団体はおおむねこの問題に対しては反対をしているわけでございます。政府はこの閣議決定に当って、いろいろ言分があるだろうと思いますけれども、要は食管赤字をばプラス・マイナス・ゼロまでいかなくても、少しずつ負債をなくしていくんだ、そのことが食管会計制度を存続する大きな理由であるというふうに前々から言われている。きょうも私は赤城農相の答弁の中にそういうことを何回か聞いているようでございますが、もう一ぺん私は確認したいのでございますが、それはその通りでございますか。
  141. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどお話がありましたように、食糧管理制度というものに石山委員は疑問を持っているようでありますが、これは生産者にも消費者にも安定を持たせる制度だというふうに考えておりますので、この制度は維持していきたい、維持していく上において生産者米価と消費者米価との間の開きが非常に多くなってくるのでは、これはこういう必要がないじゃないかというようなことにも陥りやすい、そういうことであっては私としてとるべきことでないと思いますので、制度そのものから今の制度が現状として認めるべきものだ、それについては赤字々々とおっしゃいますけれども、一般会計から、いつでも、どういうふうに多額になっても、これを補てんするといいますか、跡始末をするというようなことも考えなくちゃならぬ、それで通すということも一考を要する、そういう点から考えまして、一般会計からも負担するし、消費者にもある程度の負担はいたし方ないじゃないか、こういうことから米価の改訂ということになったのでありまして、その形式的な赤字を処理して形を整えるということよりも、制度というようなことを考え生産者にも消費者にもこの制度が現状としていいという点から考えますれば、一般会計から跡始末をするという額があまりに多過ぎるということは避けたい、こういう考え方から米価の改訂をしていこう、こういうことにいたしたのであります。
  142. 石山權作

    ○石山委員 そうしますと、私前に農林大臣の諮問機関として設けられた臨時食糧管理調査会、ここから出ている答申書を見てみますと、私の受ける感じとしましては、自由経済に近づけていく——食糧価格数量の調整は行うけれども、自由制度に近づけていくというのが臨時食管調査会の中心をなしているものだというふうに私は考えているわけです。しかし先ごろ米価審議会においては消費者米価の値上げはいかぬ、こういうふうにきつく言われているにもかかわらず、米価審議会と臨時食糧管理調査会の性格からすると、どっちが公的のものかというふうな比較論になってははなはだ何ですけれども、われわれとしてはやはり米価審議会には国民のそれぞれの機関の代表者が入っておって権威のある委員会だ、こう考えている。しかしその審議会のものにはあまり注意を払わないで、むしろ農林大臣の個人的な諮問機関のような態度で打ち出されてきた臨時食糧管理調査会の消費者米価の値上げをば取り上げている、こういうようなやり方を見ますと、今赤城農林大臣が言われている生産者にとっても大切であるし、消費者にとっても大切である食糧管理制度の維持のためにわれわれはやむを得ずこういうような消責者米価を値上げをするということとは大へんに違うのではないか、この制度をぶちこわしそうな意見を中心としている委員会の答申をば採用しているところを見ますと、そして消費者米価の値上げは経済的に見ても消費者全般から見ても好ましくないというふうな意見を持っている米価審議会の再開を要求しても、なかなか遅疑逡巡して再開に応じない。こういうことを見ますと、どうしても私は今回の消費者米価の値上げは赤字の帳じりを合せるとともに、いわゆる皆さんの言われている健全なる食管会計になったときに、この管理制度の維持温存を強調するのではなくして健全になったと同時にこの制度をやめてしまう内容をもって皆さんはこの問題を進めていっているのではないか、こう思われてなりませんが、どうでしょう。
  143. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 臨時食糧管理調査会が自由米価に近づけようというふうな結論であるとは私は考えておりません。ただあの中には、需要供給関係である程度価格をきめる方がいいのじゃないか、あるいはまたコスト主義でいった方がいいのじゃないかというふうな考え方がありますけれども、今の食糧管理制度を改める方向へいくというふうには私はとっておりません。  それから米価審議会でありますが、これも設置法にありまして、農林大臣の諮問機関としては重要な機関でありまして、この答申も尊重してやってきておるのであります。消費者米価だけをとればそういうことになるかもしれませんが、答申の全体につきましては非常に重きを置いてやってきたのであります。消費者米価の点については見解が違いまして、いろいろ検討の末改訂するということになったのであります。  そこで、赤字がなくなるかというけれども、ことし二百四十億の分を消費者と一般会計で負担するということになりましたが、依然として百億以上は赤字であります。一般会計で負担するというのは俗にいう赤字であります。これによって食管会計の収支がプラス、マイナスなしという形にはいきませんで、依然として赤字というものは残っておる。でありますからこの制度は今度の措置によってなくするというような考え方ではないのであります。
  144. 石山權作

    ○石山委員 それから消費者米価の改訂について三十二年九月二十日に出されたこの資料を見ますと、なるほどこういう結果だからこうなるのであって消費者米価を少しくらい上げても何ら家計には響かないといってそれぞれの数字を出しているようでございますが、そのうちの二ページの3、国民経済の成長というふうなところに、家計支出は一割以上増加していると書いてありますが、これはどこからとった数字ですか。
  145. 小倉武一

    小倉説明員 ちょっと御質問の趣旨を聞き漏らしましたので間違っておるかもしれませんが、日本経済の成長率が年率一〇%ということだろうと思うのでありますが、これは経済白書その他にも出ている数字と存じます。  なお、消費者家計自体のことにつきましては、先ほど成田委員からも御質問がございました数字でございまして、あれは二十九年と三十二年になりましてからの比較でございます。ここでいう一〇%というのは日本経済の成長率の年率でございます。
  146. 石山權作

    ○石山委員 それはあなたの方で説明されている基礎数字になるのですからもう一ぺん調べていただきたいと思います。私たちの覚えているところでは、あなたたちのお示しになっている家計支出について見れば、一割以上の増加を示しているというこの点ははなはだ納得しかねる数字になっております。数字が違いますので必ずしも根拠になりませんからこれはあと回しにします。  次に、4の三十二年度予算編成に関しての中にこういうことを言われております。つまり千億減税の問題が、今回の消費者米価に対して非常に恩恵を与えているというふうな言い分でございます。「減税を断行して国民負担を軽減する反面、受益者の負担能力に余裕があるものについては、料金改訂を行うこともやむをえないとされた。」とあって、その料金改訂の中に、いわゆる消費者米価も含めたような考え方で出してきていると私は思います。ですからあなたたちのこの報告資料に従えば、片方は減らしてやったけれども片一方で取ってやるということなんだ、簡単に言えば。いわゆる羊頭を掲げて狗肉を売るどころではない、減税はやってやったけれどもあらゆるものを料金でその分を差し引いてやるという考え方。無理もない、その通りです。鉄道の料金も上げますし、電力も上げますし、今またお米も上げますからその通りだと思うのだが、それであっては、減税に大太鼓をたたいた点には非常にうそがあったのではないか。そして次に言っていることは、幸い消費者家計もかなり向上充実した、これは大へんなうそでしょう。片っ端から取っていってしまって何が家計の充実でございましょうか。つまりこれが衣服とか電気洗濯機とかテレビジョンとかいうふうな、あるいは家を増築するというような、いわゆる形に残るものならいいのですけれども、料金改訂という何も形に残らないようなものによって取られるのでございますから、減税は決して幸い消費者家計もこれに伴い向上充実したというふうな表現になり得ないと思うのです。それは表面は確かにそうでございましょう。平均でいきますと確かに消費者の家計は出たようになりますけれども、それは内容を充実するためのいわゆる消費者指数にはならないということです。特に私、この場合に申し上げたい点は、私はこの前も減税の点にちょっと触れたのですが、減税の恩恵に浴した方は五十万以上だというふうに私は申し上げておきましたが、それは間違いはないと思うのです。われわれの言っている五十万以下の人たちはどのくらいおるかというと、納税者のうちて二十万から三十万の人が三百四十二万、十万から二十万の人が三百三十九万、こういうふうな数字になっております。もうちょっと多く、つまり五十万以下の単位をとってみますと、これがまた三十万から五十万の間で二百四十九万、全納税の方々が一千一百万いるうちに大体九百万人程度がいわゆる減税の恩恵にあまり浴さない人なのでございます。しかるにあなたの方からお出しになった「消費者価格改訂関係資料」の中の五枚目の「階層別影響」の「全都市」を見てみますと、二万四千円から二万七千九百九十九円、この人たちの、いわゆる私たちに示されている今回の消費者米価の負担率、飲食費、それらの割合から及ぼすところのエンゲル係数、こういうふうなものが示されているわけでございます。私がこの中で特に注意をしていただきたい点は、上からずっと見てきまして、三万六千円から三万九千九百九十九円、この以下の階層が、どういうふうな数字によって消費者米価影響を受けているかということでございます。減税においては何ら恩典に浴しておらない。受けておっても非常に少額なものであるということ。しかしここで表わされた表を見ますと、その負担率は確かに〇・三%あるいは〇・三二、〇・三六、〇・三七、これが中堅の数字でございますが、それにしても〇・三という数字が出ておる。しかし上の方の高額所得になりますと、それの二分の一程度のものである。だからそれ以下の、たとえば二万四千円月収以下の人の数字を調べてみますと、高給者と下給者の間は二倍、あなた方のいわれる中間をとって〇・三%という負担率の場合には一・五倍という数字が現われているわけでございます。ですから、ただトータルにおいて負担率が少いといっても、結局政府に納めてしまう手数料に準ずるもの、あるいは手数料、そういう形によって間接税のような格好で剥奪されておりますから、内容は決してよくなっていないということでございます。そこでまたぞろ消費者米価が値上げをされるとするならば、先ほど私の方の成田委員からいわれたように、分母と分子のとり方によっては、いわゆる数字の魔術によってうまいような数字が出ても、中身を分析していきますと、決して豊富になってきたのでもない、向上しつつある生活になってきたのでもないということが数字的に理解されるのでございます。特に皆さんの方で昭和二十九年をおとりになったでしょう。昭和二十九年以来なぜ米価が動かし得なかったかということは食糧庁長官が一番よくわかるでしょう。なぜ動かし得なかったか。不景気があったから動かし得なかったのでしょう。日本の経済は、経済白書にも言っているじゃありませんか、好景気になったとき一番最後に恩恵をこうむるのは何か、中小企業と給料取りだという、不景気が来たとき一番最初に影響を受けるのは何か、中小企業と給料取りだと言っているじゃありませんか。神武天皇以来の好景気だといってちょっぴりもならぬうちでございました。ですから、あなた方が二十九年以来動かし得なかった、特に昭和三十二年まで動かし得なかった原因はどこにあったかということをお考えになったらおわかりになるでしょう。今回動かし得る要素というものは一体どこにあるのです。この数字から見ても、どこから見ても、動かし得るという数字がないじゃありませんか。内容など充実しておりません。向上しておりません。どこからあなた方は国民生活の消費内容が充実をしたかを〇・三%くらいの値上りは何でもないなどと、そんなに簡単に言い切っていいでございましょうか、御質問します。
  147. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 階層別に見ますと、いろいろ御議論があると思います。しかし全体として見た場合には、国民の消費水準もあるいは所得水準も上っておることだけは、これは御否定できないのじゃないかと思います。そこで階層別には影響も多いのと少いということが出てくると思います。そういうことでありますので、たとえば日雇いというような方々に対しましては、賃金も十月一日から改訂いたしたい、あるいは生活保護、こういう面で社会保障制度の面から、生活保護費の増額ということもしていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。統計のとり方によっては、いろいろ議論もわかれるところだと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、われわれの統計の調査によりますると、八百五十円ということは、この表にありまするように、家計に及ぼす影響もありますけれども、この程度であるならば、一般会計からのみ負担するということでなく、消費者にも持ってもらいたい、こういうことから改訂になったということを繰り返して申し上げるような次第でございます。
  148. 石山權作

    ○石山委員 去年の厚生省の白書によると、厚生省関係で救済を要する人数は一千万くらいおるというように規定されております。それが全部云々というようなことを私らは申し上げるのではないのですが、今赤城大臣がいわれた、いわゆる日雇い労務者に対しても値上げをする。しかし当初予算から見ましても、例の自由労働者の単価は上ったけれども、その人数は減らされたという現象を起しているわけでしょう。表向きは単価が上ったのだから大へんいいだろうと思いますが、しかし全体の稼働総人員は削られておる。これは肺病のベッドに寝ている人の例を見てもわかるのでありますが、なるほど表向きは上げますけれども、内容において操作する場合に、人数を減らして、そして帳じりを合せるようなやり方をしておる。ですから消費者米価の場合は、それ以外の人、たとえば政府が目をかけてやってもどうにもならない人まで消費者米価というのは影響するということなんです。ですから私たちは声を大きくして言わざるを得ないし、たくさんの人々の意見を聞いて善処してくれというふうなことを言っているのもそれなんです。つまり金持ちであっても貧乏者であっても、思想の違う者であっても一日二合なら二合の御飯を食べるというところに私はこの本質があると思う。それをあなたのようにただ中間の指数がやや該当するからだといって、むぞうさではないが、私らはむぞうさだと思うけれども、むぞうさな形で、われわれが声をからして十一日に言ったのを十四日ごろの閣議決定というのは全くむぞうさだと思う。それできめてしまうというふうなやり方でございますが、これはだめを押しても何にもならぬでしょう。これ以上改める気があるかと言っても役に立たぬことでしょう。しかしこういうふうなたくさんの世論を押し切ってぜひともやらなければならないほど食管会計制度は急場に迫っているかということになりますと、私は大へんな疑問を持つ一人でございます。二十九年のことを考えてみますと、相当まだ経済的に耐久力を持ち得る可能性があるのではないか。二十九年にこらえ得たことだから、三十二年の上半期においては去年度の黒字からして相当まだ余力があると思う。この余力がもしかりにないとするならば、結局私は過剰設備によるところの皆さんの経済のやり方が悪いことに尽きるのではないか。しかし一説によると、過剰投資の中には相当程度材料として各倉庫に充満しているという説もある。いずれにしましても、不景気という前夜を迎えて消費者米価を上げるということは、国民の経済に及ぼす影響と、国民の心理状態に与える不安定ということはぬぐうことのできない現象だと思うんです。それでもかりに、ことしあたりから食管会計の赤字をばなくするために来年度は一つ工夫をこらして、食管制度の内容をもうんと整理をして、赤字を少くして、その結果皆さんにその差額を負担していただく、こういうふうなやり方で出てくるならば、これはまた話がわからぬはずはない。それが今度の場合はそうではないのですよ。そうして農林省ではこういうことを話し合っているというじゃないですか。食管会計合理化のために、今までのどんぶり勘定をやめよう、そしてそれぞれ独立会計を持ってこの赤字を整理していこう、こういう考え方もあるそうです。そういう考え方があるとするならば、先ほども私の方の代表委員からその点を指摘されておったのですが、これをなぜ先にやらぬかということです。いわゆる食管会計の赤字の問題、分離しなければならない会計は分離をする、中間費用は検討する、人件費は行政機関として、負わなければならぬものは負う、消費者価格に入れなければならぬものは入れるというふうに、きちんと区別して原価計算をなされた結果、どうしてもこれだけは皆さんに負担をしていただく、これだけは行政費として一般会計から入れるのだ、こういう出し方をするならば、主婦連の連中だって、何もあんなでかいしゃもじを持ってあなた方のところに押しかけていく必要はないと思うのだ。私は新しい政治というのはそういうものだと思うのです。よく知らしめて、よく話をして、理解させて、そして了解をさせるという工夫が、保守党だって私は必要だと思う。そうでなければ政治というものがうまくいくはずがないじゃありませんか。あなた方は共産主義がおっかないとか、革命がおっかないとか、暴力がおっかないとかというけれども、そういう知らしめて、理解させて、了解させるという手段を経ないで、自分たちの良識のみが最上のものであるというふうなやり方で物事を行うからそういうふうな方向をたどるのじゃないか。消費者米価の場合もそうじゃないでしょうか。われわれ委員会というものはあなた方の御意見を聞いていろいろなことを知ったのだけれども、ちっとも了解の線に達しておりません。なぜ了解するようにやらないのですか。それは十一日にやって今度の委員会を開くまであなた方の方では決定をなさらぬでしょうねとくぎを打っておいた。委員長もそれまでの間には必ず委員会を開きます、それまでの間に善処して委員会を開きますと言った。閣議決定をみてからあとでいろいろ言ったってなかなか元に戻らぬと思うけれども、そういうやり方で階級云々だとか労働攻勢が激しいとかと言う方がよほど乱暴だと私は思うのです。最近のあれで見ますと、消費者米価が上りますと、五人家族で約二千円費用ぶ多くたるということが統計上出ているではありませんか。そういうところにもってきて、中間の数字がいいとか言われても私は納得できない。消費者米価の問題は私はまだ申し上げたい点がありますけれども、お隣の井上先輩がおれもやらなければいかぬと言っておられますので、これはここら辺で打ち切りにしたいのですが、この消費者米価にからんで、先ほど大臣に二、三の方々からも大へん強く言われておりましたいわゆる食糧庁の検査官と集荷の関係であります。これは端的に数字をあげて言いますと、前の米価審議委員会において、秋田地方、北海道、北陸等は百数十円上りました。秋田県の場合は大体二百万石と軽く押えて全県下において約三億円くらいの増収があるだろう。これは農家のためにも喜ぶべきことだし、単作地である秋田県の商人の方々には大へんに潤い得る数字でございました。しかして今回食糧庁から出されましたあの通達によりますと、あれをあのまま厳守しますと、早場米が出なくなるわけですから、結局二億五千万程度の減収を来たすだろうというふうにわれわれは推定をしているわけです。一体何であれを唐突に十四日あたりにすぐ出したのですか。なぜことしの春予算を組むとき出さなかったのですか。秋田なんか二十日に刈り込んで月初めに出すわけでしょう。みんながさっき言われたように、すぐこうしろと言われたって、天候相手の百姓です。まさかたんぼにテントをかけて通風機を使って早く乾燥さして出すということのできない産業ですよ。その場合に、東北地方は二十日に刈り始めるとき十四日に通達を出して、そうして五時まで受け付けていくということは、一体何を考えておやりになっておるか、はなはだ理解に苦しむわけです。農林大臣、五時までやってあとはいかぬというのは一体何です。
  149. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから申し上げておるように、五時からあと受け付けてはいかぬということではなくて、五時前までに早く受け付けて農民に奨励金が回るように督励したいということで、農民のふためになることではなくて農民のためになるという趣旨で検査員の方々にも農民の方々にも誤解のないようにお知らせ願いたい。私の方からもお願いいたします。
  150. 石山權作

    ○石山委員 あなたの方で予備倉庫でもお建てになってそうして五時まで受け付けるなら——これは食糧庁長官にお伺いしますが、五時までということは、五時までに何千俵受け付けても奨励金の効力は発効しますか。
  151. 小倉武一

    小倉説明員 五時までというのも別に絶対的なことじゃございませんし、緩急よろしきを得なければならぬと思います。また受け付けたものは、場合によりましては数量が多ければその日に検査を了するということは事実上困難があると思います。そういう場合は便宜の措置をとり、早場米奨励金を打ち切るというようなことは考えていないのであります。
  152. 石山權作

    ○石山委員 あなたの方では労働組合から最盛期における超勤の手当を要求されたわけですね。そうしたら最終回答としまして十一日に農林大臣は、去年度よりは決して下回らないように支給するとかいろいろなことを言って、そのときはそれでごまかしていったわけですね。そして十四日に全国の検査部長会議を開いてそして全食糧にこの最盛期における超勤手当の問題には答弁をする、こういうふうに約束したそうでございますが、この検査部長会議を開いた回答が、いわゆる五時以降受け付けないということとイコールになるわけですね。そうすると、超過勤務手当をやらないという一つの含み、もう一つはいわゆる早場米奨励金を出さないという含みと、二つの含みを持ってなされているだろうと思う。そうではございませんか。
  153. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 逆でございます。超過勤務手当はこの間私が申し上げましたように去年同様出しております。それ以上に最盛期には別途相当額を支給するように指示しております。それから奨励金はできるだけ出したい。そのために検査員の方でも奨励金が出るように便宜をはかってもらいたい、こういうことでありますから、今の話は実は逆なんであります。
  154. 石山權作

    ○石山委員 大臣は大所高所から言うから私たちもなるほどと思うのです。だけれども食糧庁長官はそれはひどいのだ。実際あなたは検査官の一番の親方でしょう。それが今回のあなたの通達は、組合運動に追い打ちをかけるのですよ。農民と検査官をばまっ正面に対立させたことになるのだ。これは今、実際は行われていることですよ。それはあなた、あんまりでしょうが。今まであなたの方で、検査官の一日の予算をどういうふうに算定しております、大体一日四百俵でしよう。それを再盛期に秋田みたいなところでは一日どのくらいやっておられると思う。知っておられるでしょう。三千俵から四千俵やっておられるじゃないですか。そうしたら、あなたは今までそれに対して超勤をどのくらいお払いになっておりました。今まで全くわが愛すべき全食糧の検査官の諸君は、おおむねただ奉仕みたいな形で、一カ月二時間半くらいの超勤手当で、夜の十二時までも働いていたのですよ。それは県とか農業協同組合から、たまには慰労のそばくらいごちそうになるかもしれぬけれども、全く涙ぐましい献身でやってきておる。それをあなたの方では、聞きますと、去年の一千四百万円でさえも、ことしはどうも大蔵省が云々言うから出せないようなことをほのめかしていたではございませんか。これは出すという大臣の話とは全然別だ。大臣は、再盛期の場合は去年分の予算にプラス・アルファぐらいをつけるようなことを言っておられます。ところが実際から言うと、あなたは責任者としてなかなかそういうことを今まで言わないということ、それからさっきの答弁によりますと、五時に打ち切ってもいわゆる早場米の出る所と早場米の出ない所があるから、人事の交流をやらして、検査には支障を来たさないようにすると言っておるけれども、あなたは、だからお役人だと言うのだ。金勘定してごらんなさい。他の地域から他の地域へ検査官を出したら、あなた、それでただでいきますか。交通旅費、とまりの宿賃を出さなければいかぬでしょうが。それを勘定したら、その土地におけるところの検査官を活用して超勤を出した方が、どんなに利益かということを、あなたは計算してみないのだ。計算してごらんなさい。あなたがそこまでやらなくても、だれか課長級の方に計算させてみなさいよ。はっきりしたデータが出るのだ。それをしゃくし定木に、政府の公務員の綱紀粛正ですか、服務規程を順法せよというかけ声に、いい点数をとるなどと言うと、あのやろうよけいなことを言うというけれども、いい点数をとるという格好で五時までを厳守しようなんで、これはあまりに行き過ぎですわ。ここに大臣がいるけれども大臣は保守党でしょう。保守党というのは、一体何を意味しているのです。保寺党というのは、いいことをば改良しながら、それを守っていくということが保守党のやり方でしょうが。昭和二十九年にやったことをずばっと思い切りよくやめてしまえということ、そういう思い切ったやり方はファッショのやり方なんだ。独裁のやり方なんですよ。どうもあなた方は、古いことを守って、漸次改良していくとおっしゃるけれども、やることは何も漸次じゃないのだ、ばっさばっさと首を切っていくやり方でしょうが。それでうまく能率を上げろとか服従をしなさいとかいったって、これはなかなかうまく動きません。まず私は農民のためにもそれから検査官のためにも、この五時までということに関しましては——これはなかなか前やったことは、あれは間違っておったから今度は十二時までいいから適当にやれという通達は出せないけれども、やり方はあるだろうと思う。そのやり方をこの次の委員会まであなたは研究して、一つ出していただこうじゃありませんか。それはなぜかというと、時期別格差は十月の十日、十月の二十一日というふうに期限がきめられているのですよ。早く示してもらいましょう。そうして、農民がせっかく百何十円値上りしてやれやれと喜んでいたのが、今度は逆に時期別格差が全部とられてしまって、そうして検査官とけんかをする、こういうやり方はだれが考えたってやらしちゃいけません。一つこの次のときまであなたは工夫をこらして、お米もよく集まるし農民と検査官がけんかをしないような方法を案出をしていただきたいと思います。これは政治的に大臣は確認できるでしょうね。一つ大臣の御答弁を承わります。
  155. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 五時までに出荷の受付をするということは先ほどから申し上げているように、決して五時で打ち切るということでなくして、五時以後においでも便宜をはかってやるべきだという趣旨のものですが、五時までに、なるたけ早いうちにということでありますからそれは御了承願います。  それから農民と検査員がけんかをするということはまことにまずいことであります。私の方としてもそういうことのないように注意させますが、どうぞあなた方の方でも一つ、特にあまりしゃくし定木に順法々々といって、さっき川俣さんのお話のように検査の表を張るまで自分でやらなくちゃならないということにすると、結局これはやはり農民にも迷惑がかかるしお互いの感情もまずくなりますので、お互いにそういうことがないようにいたしたいと思います。私どもの方としては、便宜をはかりそういう摩擦がないようにいたしたいと思います。
  156. 石山權作

    ○石山委員 それでは私の質問は終ります。
  157. 小枝一雄

    ○小枝委員長 井上良二君。
  158. 井上良二

    井上委員 時間が大へん長くなりましたので大臣もお疲れのことと思いますが、消費者米価の値上げは国民の生活に非常な影響を及ぼし、かつ国の経済の上にも重大な関係を持ってきますので、重要と思われる数点について伺っておきたい。  先ほどから同僚各位から重要な点について質疑がございましたから大体は了解をいたしましたが、この米価の値上げは、政府だ昭和三十二年度予算を編成いたしますときにすでに十キロ当りで八百五十円値上げをするということで、一応閣議では値上げ決定になったのです。ところが党内で反対が出まして、また一般からも非常に世論的には反対が出まして、ついにこれは取りやめになった。そしてその後政府は、臨時食糧特別調査会なるものを設けて、これによって一応糊塗をしようとした。そこでこの問題が、食管の赤字問題とからみまして、予算委員会及び農林委員会その他で非常に論議の的になりました。つまりこの米穀年度に政府は米を上げると違うのか、上げるつもりではないのかということをいろいろの角度から質問をいたしたのであります。その当時政府といたしましては、この臨時食糧特別調査会の結論をまたなければ何とも言えぬ、こういうことで一にその答弁を逃げてきた。私どもが一番心配いたしましたのは、国会開会中にこの問題が明確に結論をつけられずに、国会においてはどうにかその責任の所在を明らかにせずしておいて、国会が終ったならば必ず政府は値上げをするのじゃないか、そういう心配を私どもは非常にいたしたのでございます。ところが私どもの心配がまさに的中をして、今日再び米価審議会の答申にもかかわらず米価改訂が閣議決定によって行われようとしております。しかも今政府のこの値上げに対するいろいろの御答弁を承わりまして、私どもが一番伺っておりまして遺憾に思いますのは、政府は食管特別会計は原価主義、コスト主義だけではいかぬ、それだけでやったならば、どうしても十キロ当り八百八十六円に売らなければいかぬが、それを政府は八百五十円にしておる。こういうわけで、ほんとうはコスト主義が正しいけれども、コスト主義ばかりにはいかない、こういうことです。そこで私ども国民の側から見ますと、コスト主義でいかぬ他の要素というのは、政府は一体何を考えておるか、何を理由にして八百八十六円に値上げをせずに八百五十円にしたのか。別の説明によりますと、消費者の家計負担はわずか〇・三%しか響かない、問題にならぬ。しかも米価を上げることによってインフレになるというようなことは考えられぬ。こういうふうに強調しておる。それなら八百八十六円に上げたらいい。何ゆえに八百八十六円に上げられぬのですか。その理由はどこにあるのですか、それを明確にして下さい。
  159. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自由経済というようなことでありますならば、これは需給関係によってコスト主義という形になるだろうと思いますが、今の食糧を統制しているというのについてコスト主義を貫くということは、お話のように私はまずいと思う。しからば八百五十円にする理由はどうかというお話であります。これは生産者からの買い上げはやはりその所得を補うように、消費者には家計負担に支障があまりないように、こういう建前になっておりますので、八百八十六円というようなコスト主義で価格をきめるようなことは不適当だ、さりとて今の七百九十円ということでは、一口で言えば高く買って安く売るというような制度にひびが入る、そういうことから考えまするならば、一般会計で負担すべきものと消費者に負担してもらうものと二つに分けて、その分け方によって価格改訂をしよう、その価格が八百五十円というところにきましたのは三十二年度予算編成当時にそういう価格も出ておったのであります。その後いろいろな調査統計によりまして、これはいろいろ影響がありますが、家計に及ぼす影響としてはこの程度ならば限度として考えてもいいんじゃないか、こういうことで、先ほど成田委員からも質問がありましたが、お渡し申し上げておる表の中にも、八百五十円という価格算定の基準が示してあるわけであります。しかしこの算定方法につきましても、先ほど御議論がありましたが、私どもはいろいろな要素から考えてこの程度が適当である、こういうことできめたわけであります。
  160. 井上良二

    井上委員 今の答弁はきわめて重大であります。私の考え方によりますと、今の大臣答弁は、政治的な考慮を払って八百五十円という米価をはじき出している。それから八百五十円にするがためには消費者家計にどれだけの影響があるか、それをさらに逆算をして、物価にはどうなる、指数にはどうなるというような作業をやっている。そういう印象しか私どもは受けません。私がこの問題を特に聞いておりますのは、何ゆえに八百五十円にしたか、ほんとうにいうならば八百八十六円にしなければならぬのだが、そうはいかぬのであるというのなら、八百五十円にした根拠を明らかにしなければならぬ、それを赤字が二百四十億ある、そのうち百億は一般会計から持ってくることにした、あと百四十億は今度の値上げでどうにか帳消しできる、こういう根拠に立って八百五十円という線が打ち出されてきたようにわれわれは解釈せざるを得ないのです。そうじゃないのですか。
  161. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それではないのであります。初め八百五十円という価格が出たときと決定するときには相当違っております。いわゆる食管会計の赤字につきましても、先ほど石山委員から何も食管会計の整理をしないじゃないかということでありますけれども、私どもは十四億以上の中間経費も節約いたしております。それから二千七百万石の買い入れ予定でありましたが、先ほど申し上げましたように二千九百八十万石と買い入れの予定もふえたのであります。そういうことで米についての損というのも二百八十億と出たのであります。それを麦や何かのほかの方面から補てんするものは補てんして、その結果が二百四十億ということになったのであります。それを百四十億と百億に分けて八百五十円という算出をしたのでありませんで、八百五十円という基礎を作って積算をいたしましたところが、たまたま百四十億と出たのであります。でありまするから予算編成当時とこの食管会計の赤字は米価決定のときとは大へん違っております。その赤字を配分してその結果が八百五十円になったということでなくて、八百五十円で計算していった結果が百四十億と百億と分れたのであります。
  162. 井上良二

    井上委員 問題は、政府説明によりますと、米を上げることがインフレの要素にならぬということを言っているのですが、そういうふうに大臣もお考えですか。
  163. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは非常にむずかしいことで、これが相当物価影響するということになれば、インフレ要素は含んでおると思うのでありますが、先ほど石山委員からもお話がありましたが、私どもでは家計に及ぼす影響が二千円というような大きな数字は出ておらないのであります。それで他物価にあまり影響のないところがこの辺だと見たのでありますが、世間ではこの結果風呂代を上げるあるいは私鉄を上げるその他等々いろいろうわさされております。そういうことでは今政府といたしましても、物価の安定、低物価に持っていく——しかしでこぼこがあるのですから必ずしも一率に低物価というわけにはいかないだろうけれども、安定に持っていきたいという努力をいたしておるわけでありますることは、もう申し上げるまでもないのであります。そういう点から考えまして他物価の値上りは政府の手で押えられるものは極力押えていきたい、そうしてこの影響全然ないというわけじゃありますまいから、ないように万全の措置を講じていきたいということで今進めておる次第であります。
  164. 井上良二

    井上委員 今、日本の当面しておる一番重大な問題は国際収支の改善ですね。それで輸出を振興さすことです。輸出を振興さす一番重要な問題は安いいいものを作ることですね。安いいいものを作ることによってできるだけ健全な労働生活が営まれるわけです。労働者の一番大きな要素は、食生活の問題が一番大きな問題になるのです。この食生活の一番中心が米麦になっているのです。それは、あなた方の計算ではそういうことになるかもしれませんけれども、米が上ったということによって、これに付和雷同して上るものが待ちかまえておるのです。現に環境衛生法の制定によりまして、ふろが上るかしれない、散髪代も上るかしれないということが言われております。そこへまた私鉄の電車バスがそれぞれ政府に値上げを要求してきておる。これも私は当然いつの日か上ると思う。これは絶対に押えつけられるものじゃないと思っております。ただ米と一緒に上げたのでは人気が悪くなるからというのにすぎない、そういうふうに私は見ております。そうなってきますと、全体的に労働者は現実の生活に耐えきれなくなってくる。そうしますと、そこに賃上げの要求あるいは待遇改善の要求が必然的に起ってくる。起ってきました以上は当然これは解決しなければならぬ。何ぼか要求をいれなければならぬ。それがまた生産物にはね返って生産コストが高くなっていくということになって、政府の意図とは違ったことになってしまう。だから米がわずか〇・三か四か知りませんけれども、それによって待ちかまえて一緒に上げようというものがあらゆるものがあるのです。最近の新聞等によって卸売物価の動向を見ましても、決してそんなに下っていない。また反騰してきているとも言われておる。小売物価はもちろんのことです二そうなってきますと、米が上った場合直ちに副食が上る、あらゆるものがこれについて上っていくということになってきたならば、一体その責任はどうするのですか。そして実際輸出の上に大きな影響を来たしてくるというようなことになった場合どうなるのです。しかも政府は、御存じの通り十月、十一月に総評を中心にする労働攻勢があるということを非常に警戒しておる。ですから米価を上げるということはその労働攻勢に大きな材料を与えることになるでしょう。米価が上ったから当然賃金を上げてくれという大きな理由になるのです。そのことが結局生産物価へはね返っていくことは当然です。そういうことを考えた場合、この際百億や百四十億、しかも来年度予算には一千億からの余裕金が出るかもしれぬということが予想されておる。また本年度も一千億からの余裕が出るということも言われておる。そういうことを考えたときに、そういう他の物価の値上りを誘引する米の値上げは、これが何百億も大きく負担になるということになりますると、これはまたいろいろな角度から検討しなければなりませんが、お話のように二百四十億くらいのものなら、一般会計から負担をして、大きな経済的反動を呼ぶ米価値上げの事態は食いとめるべきではないか、これが最も正しいやり方じゃないか、こう政治的に判断ができませんか。もう一ぺんお考え願いたいのですが……。
  165. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のような事態にいくということでありますれば、私どももまことに遺憾であると思います。私どもが一番心配していることは、米の消費者価格を上げたために、それに藉口して他物価を上げられるということが非常に心配です。そのときにおいては私どもといたしましても十二分にこれは押えていきたいと考えています。ただ今お話のように給与の点でありますが、これにつきましては当然ベース・アップといいますか、こういう問題が出てくるだろうと思うのです。国家公務員の場合には五%以上物価が上らぬということでありますならば一これは勧告の内容であります。一般産業の点につきましてもそういう傾向があるかと思います。しかし私どもも、今二百四十億程度だ、こういうお話でございましたが、やはり米だけで二百八十億になりますし、昨年の百六十億もありますので、四百四十億、こういうことでありますから、これは極力少くしていきたい、こういうことで措置をとったのでありますが、お話のようなことにならないように、十二分に私ども考えざるを得ないのであります。そういう傾向になって政府の政策がうまくいかぬということにならないように私どもも十二分に考えておるのですが、その点につきましては、なお全体的な政策からそういうことにならないようにやっていきたい、こう考えております。
  166. 井上良二

    井上委員 ならないように努力をすることは当然政府の責任でありますけれども、米以外に統制しておりません。どうして押えるつもりか知りませんが、米だけなら政府が自由にきめられる。米以外には、あらゆる物資を政府が統制しておる時代ならば、これは政府が自由に動かせるでしょうが、今米以外には、許可、認可を受ける業種以外にはどうにもならない。そこに問題があるのです。  それからもう一つ、国民が一番重要に伺っておかなければならぬ問題は、さきに私が申しました八百五十円に上るという根拠が、ほんとうは八百八十円に上るけれども、いろいろな都合であまりよけい負担をかけてはいかぬから八百五十円にしたのだ、そういう説明では国民は納得いたしません。そうではなしに、石山君からもお話があり、川俣さんからもお話がありましたように、もう少し食管会計の内容というものを明らかにしていただきたい。つまり一般行政費が負担すべきものはこれこれだ、食糧統制というものは国の国民生活の安定の必要からやっておることでありますから、国の政策です。政策を実行するのに国が少しも経費を負担せぬというばかなことは現実にないのです。これが自由取引なら、何もあの膨大な今問題になっております検査官などを国費で雇う必要はない。もちろん穀物には国営検査というものはありますけれども、輸出その他をしない場合は、品物を、いいものをよって買えばいい、品質が中心になりますから。ですから統制をしておればこそ国営検査をやるのです。そしてこれが消費者負担にかかってきておる。あるいはさきのお話のように、この出来秋に一ぺんに買うて一年中倉庫にためておいて倉庫料と金利を負担しなければならぬ。これがみな消費者米価にかかってきておる。自由取引ならそんなことをする必要がない。自由に買えばいいのですから。そういうふうに統制をして国民経済を安定させるということが目的の政策ですから、当然それに必要な所要経費は国が負担すべきですよ。これはこの前の予算委員会でもずいぶん議論になりまして、われわれはずいぶんやかましく言っておきましたが、とにかく負担すべき区分を明確にすべきじゃないか、そういうふうに区分をして、さて実際にこれだけどうしても負担してもらわなければいけませんぞというのなら国民も納得いたしましょう。そういうことをやらずに、ただつまみ勘定のようにやられたのでは国民は納得できません。そういうことをやる意思がありますか、それを伺いたい。
  167. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御説の通りであります。それで今度の改訂につきましても、今まではあと始末といいますか、決算の赤字で財政当局が処理せざるを得ないといいますか、処理してきたのでありますが、それではまずい。やはりあと始末じゃない、今負担すべきものをきめるべきだ。今負担するということになれば、統制をしているためにかかっている費用、これは行政費として一般会計で当然持つべき性質のものは持つべきだ、こういうようなことで負担を財政当局にさせるように交渉したわけであります。そういう概算の計算も実はいたしたのであります。時期が十月一日ということになっておりましたので、この決定については、一般会計で行政費として持つべきものの仕訳というものははっきりはさせませんでしたけれども、三十二年度の予算編成に当っては、今お話のようなことを検討する。一般会計で負担すべきもの、検査員の人件費、あるいは自由経済と比べて統制しているためによけいかかっている差額というようなものは、一つ研究の上、私どもの方だけできめるわけにはいきませんが、財政当局とも話し合って、三十二年度の予算を編成するに当っては検討しようという申し合せで話し合いはしているわけでありますので、お話のようなことは進めたいと思っております。
  168. 井上良二

    井上委員 それは国会の意思ですから、当然その問題については農林委員会なり大蔵委員会等でさらに掘り下げて研究をしたいと思いますが、国会の意思としてはそういう方向に一つ持って行ってもらいたい。その方が正当なんです。消費者をして値上げ、あるいは値下げ、あるいは正常米価を納得してもらう唯一の理由ではないか、こう考えるのです。これをぜひ一つ次の予算では明確にしていただきたいということを私は申し上げておきたい。  それからその次に伺いたいのは、さきに成田氏からもお話がありましたが、今度の値上げによりまして地域別に配給量に格差がついた。それは大臣の御説明によりますと、いわゆるやみ米対策らしい。ここに実は非常にけしからぬ問題がある。やみ米が出るというような食糧政策は本質的にあるものじゃないのです。そんな統制というものはあるものじゃない。それなら統制じゃない。自由に、勝手に売れる米があって、そのために政府の正常価格が守れぬから、その地方だけは配給を安くしてやみ米をよけい出す、こういうことだが、やみ米は都会へ集中しているんです。あなた方うそだと思うなら、大阪や京都へ行ってあの普通列車に一ぺん乗ってごらんなさい。おそるべき米が運ばれてきている。都会にやみ来が集中してきているんです。都会に配給する値段をうんと下げたら、やみ米は入ってきません。往生しますよ。同じ国民でありながら、この川から向うは十キロ当り何ぼ安い、こっちにおったら十キロ当り何ぼ高い、そんなむちゃな話が一体ありますか。同じ国民であって、同じ生活をしておって、川一つ隔てて高い米を買わなければならぬという、そんなむちゃなことがありますか。道一つ距てて、向い側とおれのところの米と受け取る量が違う、内地米の配給の量が違う、価格が違う、そんなむちゃなことはありませんよ。そんなおかしなことをしてもらうとえらいことになってしまう。あなたは自分の子供にそんなことができますか。あなたの子供です、みんな配給を受けているのは国民ですから。お前の方はこれだけだぞ、お前の方は安いやつをやる、そうして内地米を片一方は十一日、片一方は九日しかやらぬ。三日も違う。そうして価格が違う。そういう分け隔てをどういうわけでせんならぬのですか。それはやみ米対策だという。やみ米があるということならもっと買い上げたらいい。買い上げたら赤字が出るから、できるだけ買い上げぬようにしようという。そういうことなら、いっそのことやめたらどうです。統制する意思はないのでしょう。そんなことはむちゃくちゃです。大臣どうするのですか。そんなばかなことはないです。ここに資料として出してあるが、生産県、中間県、それから消費県、こう分けておる。兵庫県の隣の岡山県は中間県だ。道路一つ、川一つ隔てて県が違う。そこで片一方はよけいもらうわ、値段は安いわ、片一方はそこにおって値段が高いわ。どういうわけで国民にそんな色をつけたんです。この方は別に減税でもよけいしてやりますか。ここにおる者には勤務地手当でもよけいやりますか。どうですか、この点は直してもらわなければ困りますよ。
  169. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 地域差を設けましたので、川一つで違うということもあると思います。しかしこれはやみ価格に従ってということではありませんで、やはり消費県まで持ってくるのには相当運賃もかかり、いろいろな費用もかかるのであります。ですからコスト主義ではありませんけれども、そういうことから考えまして消費県は高くなっているし、生産県は大体そのまわりのもので配給ができるということになっていますから、そういうことで生産県は安いということにいたしたのであります。それではやみがあるような統制はやめたらいいじゃないか、こういうお考えも世の中にはあるのであります。ですから食糧管理制度というものにつきましてはなお検討しなければなりませんが、全面的に統制して、食糧管理制度を戦後あるいは戦争中のようにして、全部配給にして全部買い上げてしまうという強力な統制に戻すか。それでなければ自由販売的な形にいくかどうかということが二つの議論でありましょうけれども、私は今のできるだけ配給に乗せる制度で買い上げて配給していく、こういうのが現在の状態としては一番適しているのじゃないか。ですから先ほど成田委員にも申し上げましたように、やみ価格にまねて価格決定するということではなくて、流通の面ではやみ流通があるかもしれませんけれども、幸いに豊作でありまするから、価格の面においては、消費者米価を上げた結果においては生産者米価も上っておりまするから、これを配給の面に乗せた方が得だといいますか、いいというような考え方も、生産者の方にも出てくるというねらいを持っておるわけであります。そういう関係から第二次の予約買付もしてなるべく配給面に乗せていきたい、こういうように考えているわけであります。
  170. 井上良二

    井上委員 私は先般食糧庁長官にちょっと申し上げたのですけれども、この格差が生産県と消費県とでおのおの違いますね。ところが生産県では御存じの通りやみ米が安い。従って政府の配給米はどっちかといえば配給辞退ということになりますね。そこで政府はそれを食いとめようとして、できるだけ安い価格で配給米をとってもらうようにということでやられたと思うのですが、しかしそれは逆で、その場合、その配給辞退の米を米屋なら米屋が全部買い占めて、あるいは消費者なら消費者がそれを買い占めて、川一つ離れた隣の県へ持っていったら、一升で十二円も十三円ももうかるということになったらどうなります。政府の米だけで、農家へ行って買いあさらないでもいい、配給米だけを集めていって、すぐ生産県から消費県へ持ってくれば、一升で十二円もうかりますよ。そういうことが平気で行われだしたらどうします。だから農林大臣、同じ国民に分けへだてをするということはやめて下さい。これだけはもう一度御検討願いたいですね。米価を上げるということについてはいろいろ議論もありましょう。われわれの方は絶対反対をいたしておりますが、あなた方はそういう世論を押し切って上げようとするのだが、上げた場合、せめて公平に食わしてくれたらどうです。分けへだてをするということだけはやめましょうよ。わずか六日分や十日分しかやらない米を、お前のところは三日分少い、お前のところは三日分多いというようなことはやめた方がいい。値段がまた違うなんということは、どだい工合が悪い。それだけは何とか考えぬと、国民の心理的影響は大きいですよ。大へんな不平が起りますぞ。これはぜひ何とか改めてもらいたい。考える余地はありませんか。米価に直接これは関係はないが、どうですか、お考え願えませんか。
  171. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私の方では、これが実態に近いということでこういう案でやってきたので、今これを改めるということは、なかなかここまできてどうかと思います。その論拠も、私の方の考え方と井上さんの公平の考え方と——私の方では、実際に消費県等においては当然運賃その他がかかるので高い、生産地は安いという見方であります。考え方の基礎が、公平の面でいくか、また実態の面でいくかということで少し食い違ってきます。なお研究いたしますけれども、今のところではこれでやっていこうという方針でおります。
  172. 井上良二

    井上委員 今日までこういう制度がずっととられてきておるのならいいんです。なるほど、米の集荷の関係やいろいろな管理その他の関係で、また県内の集荷の協力を県に願わなければならぬ関係から、地方のそれぞれの行政機関からいろいろ強い要求もあって、配給日数は内地米で相当よけいやっておるということは私ども知っておる。けれども、値段まで違うのだというのは、赤城農林大臣になって初めてです。これはあなたの悪政の第一歩です。これだけはやめたがいい。そうしてもらわぬと、私ども都会におる者としては猛烈な反対が出てきますよ。あなたの言うように運賃がよけいかかっておるからなんと言いよったら、とにかくむずかしい理屈になってくる。そういうことは言わぬ方がいい。そういうことを言いよったら、ややこしいことになる。そういうことは私は知っておるから言わぬが、ぜひそういうことでなしに、価格の面だけはやはり何とか一つ価格にして、統制をしておる政府が——間接統制とかなんとかなら別ですが、統制をしておる以上は、政府の責任においてすべての国民に平等にというのが私は当然ではないかと思うのです。そういう点もぜひ一つさらに御検討を願いたい。  それから徳用米というものを今度やるそうだが、これはどのくらいあるのですか。そうしてこれは配給は希望でやるのですか。要求すれば何日分でもよけいやるのですか。おそらく希望配給だろうと思うが、基本配給を断ってこればかり三十日くれますか。
  173. 小倉武一

    小倉説明員 私から申し上げますが、徳用米と称しておりますものは、先ほどもお話が出ましたが、準内地米、陸稲、それから水稲五等玄米、普通外米、こういうのでございます。陸稲、水稲五等玄米、これらがほぼ十万トン近くでございます。それから準内地米につきましては、年間約五十万トン程度いくと思います。それから外米でございますが、これは売れ行きがよければよけい輸入します。今のところ売れ行きが惑うございますから、そうたくさんは用意はしておりませんけれども、持ち越しも相当にございます。なおその上に今後二十数万トン輸入することにいたしております。さようなわけでございまして、大方の需要には応ぜられると存じます。ただ水稲五等玄米だけをほしい、あるいは台湾の蓬莱米だけをほしいというふうに各消費者が言って来られますと、これは需要に応ぜられないのであります。その間の按配は、やはり需給の関係も考慮して、できるだけ消費者の需要に応じたいと存じております。  それから内地米の配給を辞退して、安い方ということでございますが、これも他方において配給辞退があるというふうなことがある程度予測されますので、こういう業者の手元で他方の配給辞退がある部分につきましては、内地米を配給辞退した分に相当する量を安い方のものでもらうということもいたしたい、かように存じております。
  174. 井上良二

    井上委員 最後に農林大臣にちょっと申し上げておきますが、先般大蔵委員会で大蔵大臣出席を求めまして、この年末から来年の春への政府の財政の運営方針、それから来年度予算編成の基本構想等について伺いました。そういたしましたところ大蔵大臣は、この年末から年度末にかけて金融緩和はしない、そうして投資の繰り延べを約一割五分やっておりますが、これもこの年度内には実施面に融資はなかなかむずかしいだろう、こういう国際収支改善のために非常に強硬な金融措置、財政措置をとろうとしております。それから来年度予算編成の構想も、既定経費は大幅に削減する、新規経費はできるだけ押える、やむにやまれぬ所要経費はできるだけ検討して必要なものだけ認める。そういうことになると、それはデフレですねと言ったら、デフレだ、こういうことをはっきり答弁をしておる。そういう意見を述べておる。しかるに政府の今やっておる米価の値上げの問題、これから派生してくるいろいろな問題は、岸内閣は物価値上げの内閣という、新聞においてすでに攻撃の言葉さえ出るに至っておる。これを一体農林大臣はどうお考えになるか。政府みずから国民に対して引き締めを要求し、さらに緊縮を要求し、さらに国際収支の改善に向って一層貯蓄の増強を初め、貨幣価値の高まることを要求しておきながら、一方において物価を引き上げる大きな要因になっていこうとするところの米価を上げようという考え方は、大きな国の財政計画とは全く違ったまた別な関係がここに出てきているのです。このやり方は相矛盾するのです。そうお考えになりませんか。米価を上げたところで、ふろ賃を上げたところで、むろん大して国民生活にも影響しない、総評がストライキをやれば、法規に照らしてどんどん取り締まる、社会党がこれを応援すれば解散する、こうお言いになる。そういうような構想であなた方はお考えになっておるかもしれないけれども、国民はそんな甘いものじゃございません。ですからそこはもう少し慎重に一つ米価問題を御検討願いたい。特に最後にお願いしておきたいのは、もう少し国民にわかるように、値上げの理由を明確にされたい。この点だけを私申し上げまして、時間がおそくなりましたから質問を打ち切ります。
  175. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それでは本日はこの程度にとどめまして、明日は大臣は午前中出席されます。午後はやむを得ない差しつかえがありますから、大臣に対する質問は午前中にお願いします。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十三分散会