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1957-04-19 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十九日(金曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉川 久衛君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    石坂  繁君       大野 市郎君    木村 文男君       椎名  隆君    鈴木 善幸君       原  捨思君    本名  武君       阿部 五郎君    足鹿  覺君       石田 宥全君    石山 權作君       川俣 清音君    楯 兼次郎君       中村 英男君    日野 吉夫君       細田 綱吉君    山田 長司君  出席国務大臣         農 林 大 臣 井出一太郎君  出席政府委員         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡辺 伍良君         林野庁長官   石谷 憲男君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         業保険課長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  藤巻 吉生君         農 林 技 官         (農林経済局統         計調査部作物統         計課長)    石川  里君         農林事務官         (林野庁林政部         林政課長)   家治 清一君         專  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月十九日  委員伊瀬幸太郎君、川俣清音君及び楯兼次郎君  辞任につき、その補欠として日野吉夫君、中村  時雄君及び石田宥全君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 四月十八日  広尾町に営林署設置に関する請願本名武君紹  介)(第二八〇〇号)  水産資源保護水質汚濁防止に関する法律制定  の請願櫻内義雄紹介)(第二八一二号)  水俣市の奇病発生に伴う漁業対策に関する請願  (川村継義紹介)(第二八二九号)  異常発生病虫害防除用農薬購入費等国庫補助  に関する請願黒金泰美紹介)(第二八三〇  号)  宇治群島周辺海域機船底びき網漁業の進出反  対に関する請願池田清志紹介)(第二八五  七号)  芳沼ため池補強工事に関する請願荒舩清十郎  君紹介)(第二八八六号)  米の統制撤廃反対に関する請願池田清志君紹  介)(第二八八七号)  同(中馬辰猪紹介)(第二八八八号)  大隅地区国立ポンカン試験場設置に関する請  願(二階堂進紹介)(第二八八九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  森林法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇六号)(参議院送付)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三一号)  農業災害補償法臨時特例法を廃止する法律案  (内閣提出第一三二号)  農業災害補償法第百七条第四項の共済掛金標準  率の改訂臨時特例に関する法律案内閣提出  第一三三号)     —————————————
  2. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 これより会議を開きます。  森林法の一部を改正する法律案議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。質疑を通告された委員は全部終了いたしております。ほかに質疑はありませんか。—なければ質疑はこれにて終了いたしました。  次に討論に入ります。討論はありませんか。—なければ採決いたします。  本案に賛成の諸君起立を求めます。     〔総員起立
  3. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって本案原案の通り可決すべきものと決しました。  この際本案に対し附帯決議を付したい旨の申し出があります。これを許します。芳賀貢君。
  4. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま可決されました森林法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付するの動議を提出いたします。  まず案文を朗読いたします。    森林法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、本法に基いて林政転換を図るにあたり森林資源の現況と林産物需要の趨勢にかんがみ、次の各項に留意し、その実施に遺憾なきを期すべきである。     記  一、広葉樹重要性にかんがみ、森林計画の編成にあたつては有用樹種の保続培養について具体的計画をたてるとともに、今回の改正によつて適正伐期令級未満のものの濫伐におちいらぬように適切強力なる指導を行うこと。  二、奥地未開発林積極的開発を行うとともに、材種転換による人工造林の促進を図るため所要の助長策を講ずるものとし、特にその造林補助については格別の考慮を払うこと。  三、木材の需要の増加にともない、針葉樹のみならず広葉樹についても生長量の多い品種育成を図るため、育種場原種苗畑設置等林木品種改良事業を強力に実施すること。  四、薪炭林面積の減少に伴い、農山村民経済に悪影響を来すこととならないよう、残存する薪炭林改良を図るため助長の方途を講ずること。  五、市町村有林等の荒廃の現状にかんがみ、その管理、経営について抜本的方策を樹立し、公有林行政の刷新を図ること。  六、酪農地域の拡大および寒冷地農業振興対策に応え、国有林野等において畜産共用林野整備拡充を促進すること。  七、林政遂行の基盤である森林組合育成強化に努めると同時に、組合員の総意を治山、造林林道等森林資源の涵養のために行う事業に反映させることができるよう措置すること。   右決議する。  趣旨につきましては、過般来の当委員会における各委員諸君質疑の中に十分尽されておるわけでありますが、特に今回の森林法改正の中におきましては、広葉樹林に対しましては適正伐期に対する伐採の制限規定というものを撤去するような改正点がありますので、この点は、今後の森林計画あるいは林政上に及ぼす影響というものは、決して軽視できないと思うのであります。われわれはこのことが今後のわが国の森林行政の全体の面から後退になるということを憂慮いたしまして、特にこの附帯決議を付するというのが趣旨重点であるということを申し上げまして、以上で説明を終ります。
  5. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいま芳賀貢君の説明されました自民、社会共同の提案による附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  この際附帯決議に対する政府の所見を求めます。八木政務次官
  7. 八木一郎

    八木政府委員 ただいま御決議になりました附帯決議各項には、政府といたしましても十分に留意いたし、誠意を持ってその実施に遺憾なきを期する所存でございます。
  8. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 なお、委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  午前中の会議はこの程度にいたしまして、暫時休憩いたします。     午前十一時二十分休憩      ————◇—————     午後二時十八分開議
  10. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業災害補償法の一部を改正する法律案農業災害補償法臨時特例法を廃止する法律案及び農業災害補償法第百七条第四項の共済掛金標準率改訂臨時特例に関する法律案、以上三案を一括議題といたし審査を進めます。  質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。足鹿覺君。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣お尋ねを申し上げたいのでありますが、いずれこまかいことは各論に入ってから政府委員にその都度お尋ねを申し上げたいと思うのです。きょうはその基本的な問題に限定して二、三お尋ねをしてみたいと思うのです。  まず私の質問は、農業災害二つに見まして、一つ自然災害の問題、一つ人為災害とでもいいますか、最近公共施設によっていろいろ農民被害を受けることについて、後段時間があればお尋ねをしてみたいと思うのです。  まず最初に本問題であります農業災害補償法改正についての基本方針一つ承わりたいのであります。大臣も私と一緒に農林委員をされ、また農林委員長として親しく私どもも御指導願ったのでありますが、二十八年の四月からこの問題が問題となり、今日まで足かけ五カ年間、政府は三代にわたって変ったのでありますが、私どもはその間この改正案基本的に取り上げられてくることを待望して、努力してきました。ところがようやくにしてて五年ぶりにこの改正法案が出たのでありますが、これを一読して感じますことは、非常に農民期待を裏切るのみならず、関係者期待とも相当遠いものがあるように思うのであります。全体を通じましてきわめて微温的でありまして、この程度改正では果して制度自体が現在直面しておる困難な段階を乗り切ることができるかどうかということについても心配がないではありません。しかし政府が三代の内閣にわたってなし得なかった点について、とにもかくにもここまでまとめられたという苦心の跡は法案を通じていろいろ見受けられるのでありますが、いずれにしましても私ども期待しておったものとは相当遠いのであります。具体的にこれを指摘してみますると数限りなくあるのでありますが、大臣お尋ねしたいのは、去年の十一月ごろ出ておりました農経局原案というものは、現在提出されたものよりも相当進んだものであった。ところが去年の十二月に自民党の特別委員会が設置され、これが活動を開始して、最近結論を出されるに至って、その当時の案はほとんど骨抜きになってしまった。そうして現在出されているものが、私どもへ一応示されておるのでありますが、この法案全体としてどこに基本方針があるのか。今までこの法案が問題になっておるのは、農家の相互共済制度であるといっておる。一面においては保険の形式を取り入れている。また根本においてはその法案の名称が示すように農業災害補償法であって、国家がある程度補償をするという立場をとっておる。そこにいろいろ運用をめぐって、また法の欠陥をめぐって、過去においても好ましからざるところの姿が出ておるのであります。でありますから、今度の改正の骨子というものはどこにその基本方針を置いて改正をするのか、また現在一足飛びには上れないとするならば、次の段階にはどこにこの構想を置いてどこに持っていこうとしておるのか、その基本構想というものがなければならないと思うのです。要するに国家補償制度をもって貫いていこうとしておるのか、保険制度でとことんまでやっていこうというのか。問題は、相互共済というには現在においてはその運営の面からいって全く実態は遠いものでありまして、残されておるのは国家補償制度でいくか保険システムでいくか、この二つに、だんだんと制約されてきておると思うのです。そこでこの法案全体を通じて大臣構想されました基本構想というものはどこにあったのか、また今後どこに置かれようとしておるのか、これをまずお示しを願いたいのであります。
  12. 井出一太郎

    井出国務大臣 本改正案の御審議をお願いすることに相なりまして、私も顧みまするといろいろの感想を持つものでございます。ことに足鹿委員におかれましては、当委員会の中に共済小委員会というものを設けられまして、足鹿さんが中心になられて十原則というようなものを打ち出され、改正方向を明示せられましたこともなお記憶に新たなところでございます。従いましてそういったいきさつ、経緯にかんがみまするときに、この改正案はただいま御批判を受けましたごとくまことに微温的である。当時の考え方というものは影をひそめておるかのごとき御批判でございました。当時を承知しておる者としては必ずしもこれに満足をしておるわけではございません。しかしながらこれをもっていたしまするときにも、なお従来の線よりも一歩前進であるということはお認めいただけるものと思いまするし、当時の小委員会で打ち出された構想の幾分かは取り入れておる所存でございます。どうも焦点がぼけてしまったと言われまするゆえんは、ともかくこれだけに固まるまでにもずいぶん長年月を要したわけでございまするし、その間のいわば最大公約数というふうなものがこれに表現されておるというように御理解をいただきたいと思うのであります。そこで問題の基本はどこにあるのか、一体保険システムでいくのか国家補償でいくのか、このあたりが確かに問題でございましょうが、さりとてこれを明確に直ちに割り切るというわけにも参らないのでございまして、この改正案はまあその両方のファクターを持っておるという次第でございまして、ここ当面は一つこの程度をもって御了承を願いたい、こういう次第でございます。
  13. 足鹿覺

    足鹿委員 まあそういう御答弁だろうと思っておったのですが、しかし全体を通じて一歩前進だとおっしゃるのは、公共的性格経営主体特例に見られるような道をお聞きになったということろは刮目すべき重点だったと思うのです。私の見たところでは、やはり公共的性格を強めていくということは、これは運営を公正にしていく面からいっても、またその団体なりこの関係の仕事をしておる役職員のまじめな要求にこたえていく上においても、また農民に正しく、今までの制度に対する不信を払拭していく上においても、公共的な性格を強めていくという方向重点が案全体として動いておるものだと私は見ておるのですが、そうじゃないのでしょうか。その程度は、もう少し大臣構想としては末端から上ったものを押しつけられたというのではなくして、少くとも確たるところは一つつかんでおいていただいて、そうしてこれをもって満足せずして、今後も改正の時期なり、方法というのはあろうと思います。なかなか一ぺんに取り上げるわけには参らない複雑な問題でございますから。少くともその見通し、大臣の確信というものだけはこの際明らかにしていただきたいのです。
  14. 井出一太郎

    井出国務大臣 その点は御指摘のように本改正案一つの大きな特徴でございます。またそのゆえに、このあたりが一番大きな問題点となりまして提出がおくれたという次第も実はあったわけでございます。一応道をあけたということにとどまってはおりますけれども、まあここに一つ方向があるとお考えをいただいてよろしかろうと思うのであります。まあ共済制度というものが大きな試練に立っておるという時期でございまして、こういう道をあけたことによりまして、公共性という面が強まって参り、それによって従来の信頼感の喪失しておったものを取り返して参りたい、こういう構想を示しておるわけであります。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 時間がありませんから、もうこれからは意見をやめまして、具体的な点を、大臣の御見解が明らかになりましたから、申し上げます。複雑な現在の機構簡素化していくことについて特別の注意を払われたかどうか。たとえば現在のこの機構は、特別会計昭和十九年の法律に基いて政府部内に置いておる、一方においては経済局中心監督官庁立場に立っておる、また昭和二十三年には共済基金制度が設けられて現在も存続しておる、また社団法人として、任意団体として全国共済協会というものができておる、しかも最近の制度の改革によって評価の上に農林統計調査機構を活用するような運営になってきておる、今度はまた市町村の主管するような立場制度を持っていこうとしておる、こういうふうになって非常に今度は自治庁との関係が出てくる。また農林省内部においても、たとえば農林統計調査機構を今後は一つきめ手として使っていこうという意図が強く出ておるようでありますが、戦後における農林統計調査機構というものはその性格が変化しておると思うのです。それはどういう点かといえば、食糧の供出制度が非常にやかましいときに、作報と称して、むしろこれは強権供出数字的裏づけをするということが陰における大きな任務としておった。ところが現在予約制度になってその必要はなくなった。従って農林統計調査部というものの機構ないしその性格というものはよほど変ってこなければならぬはずだ。ところがいまだに郡別統計はあっても市町村統計はない。また被害統計というものは表だってとっていない。それに対するところの対策一つも立てられてないという状態にあって、農林省内部機構の上においても活用する点があるならば、少くとも新しい転換に備えて、機構を簡素整備していく筋合いのものであろうと思う。にもかかわらず、このたびの改正案においては、特別会計についても、共済基金制度についても、協会についても全然触れておらない。また農林統計調査機構制度への活用の点についても、有機的な機構自体の変化も行われていない。こういうことで一片の法律改正を行うことによって目的が達成されるものではないと思うのです。その点は制度改正していこうという場合にあっては、機構上における重大なポイントだと思う。その点については考慮をお払いになる余地はなかったのでありますか、またあってもできなかったのでありますか、全体として明らかにしておいていただきたい。
  16. 井出一太郎

    井出国務大臣 全体的に簡素化というふうな論点から見ますならば、これはたとえば一筆反建であったものを石建に改めるというふうなことも、そういう御要請には応じておると思うのでありますが、今お話のございましたもろもろの機関、こういうものとの調整をもっと考え簡素化すべきではないかという御意見でございますが、ただいまのところは、今の統計調査部にいたしましても、あるいはまた市町村との関係というものにしましても、それぞれこの中へ取り入れて参っておるのでありまして、これらを有機的に、総合的に運営をして参ります上において、そういう問題は解決して参りたい、こういうように考えておるのであります。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 たとえば統計調査部の事例を私は申し上げたのですが、これはもっと本気におやりにならなければ、この制度の一番重点の魂が入らないのです。今度の制度改正を通じて一番抜けておる点は、損害評価きめ手について何ら新しい新味がないということです。会計検査院が、あるいは行政管理庁が従来しばしばこの農業災害補償制度を建設的な立場において批判し、あるいは決算上の会計検査立場から批判をしておるのは、いわゆる損害評価をめぐる水増しの評価であるとか、それに端を発するいろいろな不正等の問題を追及しておるのです。そこからいわゆる運営上を通じて悪いことが行われておるのです。農民の利害に相反するようなことが公然と行われておるのです。これを直さなければ私はうまくいかぬと思うのです。ところがいろいろと非公式に、ここでしゃべるばかりが能でありませんから、具体的に建設的にいろいろ意見を聞いてみますれば、わずかな財政上の制約によって、いろいろな案があっても実行できない、こういうような実情なんです。今度四億七千万円ばかりの三分の一負担が二分の一負担に変ることについても、最後まで大蔵省が難色を示したという経緯を私は聞いて知っておりますけれども負担の問題も、もちろん大蔵省とのあの程度の折衝によって目的を達成されたのはけっこうですが、少くとも損害評価きめ手について、もっと注意を払い、それに必要な最小限度財政措置等は講じられて、少くとも一歩前進の姿をお出しにならなければならないはずだったと思うのです。ところが今申し上げましたように農林統計調査機構関係については、その性格がよほど大きく転換しておるにもかかわらず、しかも再出発にひとしいようなこの制度改正に当っても、その機構を活用していく上における根拠が明らかでないし、運用上における点においても何ら改善や一歩前進の跡がない。こういうところに私は問題があると思う。これについてはまたあと局長等にもお尋ねしますが、大臣としては少くとも制度改正をおやりになる場合は、日本の農業政策の大きな支柱の一本であるこの制度について、百数十億の金が使われている、農民もこれに見合うところの負担金を一応出している、この大制度が、この程度改正で果してうまくいくかどうか、このたびの改正で失敗すれば、ほとんどこの制度は自壊するでありましょう。それだけに私は心配をいたしておりますが、もっとこの点については一段と工夫を要する点があるのではないかと思う。それから共済基金の問題にしましても、三十億の基金をもって十五億を政府が出資する、あとの十五億は農民負担ということになっておりますが、どの程度農民出資になっているか、私はつまびらかにしておりません。あとでまた説明を聴取したいと思いますが、現在この共済基金の果している役割というものを無視するわけではありません。しかし少くともこの程度基金に農林中央金庫の理事長級の給料を払うような人を置き、膨大な機構を置いておやりになるだけの機能を果しているかどうかということは疑問です。農林金融公庫特別部門を作って、これに政府がある程度財政を補給していけば機能は十分果せるわけです。何もこんなものを別に置いておく必要はない。私どもはこの機能というものは無視はしません。無視はしませんが、作ったときの機能を発揮しない。大災害があったときには政府が別途の措置を講じなければ何一つできないのです。そういうような点についても、このたびはほとんど触れておられません。根本改正抜本改正でないからいたし方はないというものの、そういった点についてほとんど触れておる点がない。説明を読んでみてもそういう点を考慮した余地もない。こういう点は私は非常に遺憾に思います。これ以上申し上げてみても、大臣も御答弁がどうかと思いますが、制度改正協議会答申昭和二十九年十二月に答申をいたしております。その点について若干答申案を尊重されたと思われる節もないではありませんが、機構上の問題についてはほとんど触れていない。重大な問題についてはほとんど触れていない。そこに私はこのたびの改正案が微温的であり、今後を期待することができないのではないかという心配を持つのであります。そこで農林大臣お尋ねしますが、制度改正協議会が、昭和二十八年の本農林委員会決議を尊重されて出発いたしたのは二十九年の七月であったと思う。炎暑を冒して相当の人々が寄って慎重審議をし、まじめな審議をして十二月に一応中間答申をしたことはこの経過報告書を読みまして、私も当時を追想しておるのでありますが、この協議会運営はその後ストップしておる。これは死んだものでありましょうか、生きたものでありましょうか、今後運営されるつもりであるのかないのか。根本改正はこのたび達成されておりませんから、いずれ根本改正の時期は遠くはないと思うのですが、何かこれについてこの協議会をそのまま自然消滅されていくつもりであるのか、これをまたさらに活用して今後に備えられていごうというのか、この答申については従来どの程度考慮を払われたものであるか、将来に対する対策はどうか、この点を伺いたい。
  18. 井出一太郎

    井出国務大臣 損害評価の問題が最初に御質問にございましたが、これは本制度運営上基本的な問題でございます。この改正案自体には細目にわたってはおりませんけれども具体的方法あるいは具体的な改善策につきましては準則を定める予定でありますので、御意見のほども十分尊重をしてその準則の内容に盛り込んで参りたいと思うのであります。そういう際に統計調査部を活用する、こういうことももとより考えなければなりませんし、また統計調査のあり方についても、供出制度のなくなった今日といたしましては、これにも工夫をこらしていかなければならぬ、このように考えでおる次第でございます。  それから基金の問題が出ましたが、これはわれわれ部内で検討をいたしました際には、基金共済中央機関というふうなものをどういうように組み合せるかというようなことも、構想の上には上って参ったのでございますが、当面としてはそこまで及ばずして、こういうものをお目にかける結果になった次第でございます。なおまたこの国会の決議に基きまする災害補償制度や検討する機関といたしまして、ずっと御苦労をかけて参ったのでございますが、その答申につきましては、今回の改正案の中である程度の部分は取り入れておると考えるのでございますが、あの機関も何か少したなざらしになったという感じでございますので、むしろこの改正を機会に、あるいは別個に考え直してみたならばどうか、つまり編成がえをするか、そういう点を少しく検討させていただきたい、こう考えております。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員 私は少くともあの制度改正協議会にこの改正案を出されるならば、一応は正式にお諮りになって、あそこまで努力をし、苦心をした者の意見をいま一応お確かめになる必要はなかったか、相当時間を過ぎておりますからあるいはそういう点で何か別に考えられるところがあったかもしれませんが、少くとも内閣は変っておりましても、の努力したものが、このたびの中に言いろいろな形で、目だけは一応入れておられる点も私どもは買うのでありますが、やはりもう少し尊重されるような態度がほしかったと思う。今後もまた運営上についてはいろいろお考えになっておるようでありますが、これ以上申し上げません。  そこで、今度の改正について私が一番問題にしたいのは、いろいろな参考資料を読んでみてもわかりますが、一番問題になるのは、制度をどう改正してみても、運営の面において制度そのものがあまり複雑に過ぎる、そのよき意図とは違った結果が出てくる、こういうことだろうと思うのです。昭和三十年度の決算検査報告書を見ますと、農業共済保険特別会計中の不当事項というところが長文にわたって出ておりますが、このいろいろな事項を指摘しております中で一番重大な点は、昭和二十八年度決算検査報告に掲記した指摘事項のうち、当局において変則払い等の不当経理を是正し正規の支払いを行なった旨を、その検査を受けた組合から回答があった、そこでまたそれを再調査してみたところが、実際は指摘によって直したといいながら、それは帳面の上だけで全然直しておらぬ、このことが一番遺憾であるという旨を会計検査院は指摘しております。膨大な報告の中で昭和二十八年にたとえば兵庫県加古郡天満村の事例—私は当時小委員長をしたときに資料を出してもらってよく記憶しております。そうしてこれは変則であるから直せといって、直しましたと返事がくる。また今度調査してみたが、これは帳簿上のことだけであって、全然是正されておらないということは、この検査報告書の中で一番重視すべきであろうと思う。どんなに制度改正してみたところで、こういうことではおそらく問題にならないだろうと私は思う。そういった点で本制度簡素化していくためには、この前もこの問題が問題になったときに、いろいろと小委員会の案として作りました備荒資金制度のようなものを作る、そうして病虫害ははずして、病虫害はできたものに補助を与えるというよりも国営あるいは国の負担において予防に重点を注いでいくという方式に変えまして、そうして風水害等の不可抗力による災害については国が補償をしていくという、いわゆる国家補償の方式を備荒資金制度的な方向で求めたらどうかということを当時相当検討したのです。ところが衆参両院ともに一番問題になったのは、現在国が使っておる程度の金をそのまま積み立てることが可能であるならばそれでよろしいが、もし大きな災害が起きたときにはその予算の範囲内で大蔵当局に打ち切られる危険性がある。その点では現制度は自動的にふくらんでいくという強みを持っている、この自動的にふくらみ得る制度を生かしながら、しかも国家補償制度に切りかえていくにはどうしたらよいかということが、私はこの制度改正基本であったと思う。そういう点については歴代の内閣を経、足かけ五年の検討をやられたわけでありますから、全知全能をしぼってみても、少くとも法律的にそういう手段がなかったかどうか、これが一番問題なんです。だから、検査院が膨大な機構を使って検査してみても反応がない。中にはりっぱな運用をしておるものもありますが、間違った運営をしたものははなはだしく多いのです。こういう間違った運営をやらさないためには、備荒貯蓄のような形で、災害を受けたものに対し国が補償していくという行き方が私は一番簡素でいいと思います。この制度が一番いいと思います。だがしかし今言ったような大きな災害があったときに、自動的にこれに対応するような国家予算の支出が伴わないようになった場合は、むしろこの制度自体が後退をする危険性があるというので、あの当時は踏み切らなかったのです。大体意見は一致しておったのです、制度改正調査会も、当委員会の結論も。ただ参議院の方でもその点を心配されて、そういう重大な問題であるならばわれわれもそうむちゃなことはできぬというので思いとどまったのです。そこでその問題を今後どう検討するかという間に内閣が変ったり解散があったり、いろいろな政変のためにそのままになってしまって今日に至っておるのです。この点についての検当はどうでありましたか、これは局長の意見もお聞きになってけっこうですから、もう少し詳細に御説明願いたいのです。
  20. 井出一太郎

    井出国務大臣 ただいまお示しになりました一方は備荒貯蓄という考え方で、むしろ防除を中心にしてやって参る、他方自然災害に対しては国家補償でいくという考え方は私も当時承わっておりました。これは一つの理想的な形であろうと思うのでありますが、実を申しますと会計検査院の指摘等にもございます通り、ともかく現行制度に対する非常にきつい批判が各方面から起って参っておりまして、むしろこのままではくずれ去ってしまう危険性も多分にあるというような現実の状態に追われた次第でございます。それがためにはともかく年々百何十億かに上る国家資金というものをこの制度の形のままであれば受け入れることができるし、オートマティックにこれを災害の量によって伸ばすこともできる、こういう角度から、御指摘のような点はもちろん承知しておりながらも、当面の必要に迫られてこういう形で改正案をお示しをした次第でございます。
  21. 足鹿覺

    足鹿委員 時間がもうないようですが、あした引き続き大臣に御出席を願えるならば質問を継続したい。同僚委員の、緊急質問をしたいという御意向もありますし、きょうの質問は、大臣が御出席になることができるならば明日に継続したいと思います。
  22. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  23. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 速記を始めて。芳賀委員
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣が時間がないそうですが、緊急を要することですから重点的にお尋ねします。農林大臣は十七日に記者団と会見をされまして、全購連事件を中心にして農林大臣としての意見を発表になったのでありますが、この記者団会見の中に非常に重要と思われる事項があるわけでありまして、この点に対してお尋ねします。  第一の点は、この全購連事件を契機として今後協同組合に対する一つの全面的な検討を行うために、全国農業会、全国農協中央会を中心にして農協再建委員会を設置して、広く学識経験者等を集めて再建の方策を講ずるという点が一点。  それからもう一つは、現行の肥料行政に対する再検討を行うために、肥料審議会の墾談会を開いて肥料二法案に対する内容の論議を行いたいということを述べられておりますが、この内容について大臣の特に真意とするところをお尋ねしておきたいのであります。
  25. 井出一太郎

    井出国務大臣 その前段の再建委員会と申しましょうか、これも仮称でございますが、今回の全購連事件を契機にいたしまして、農協特にその中央団体のあり方というものが大きな批判を浴びておりますことは御承知の通りでございます。従いましてこれは農林省としてもこの際看過するわけに参りません。もちろんこれは農林省部内においても当然戒めなければならない幾多の問題を惹起しておりますが、それはそれとして、やはり団体には団体が自主的な立場においてそのあり方を討究していただくことがよいのではないか、それには決して役所の方からどうこうというのではなくて、それは一つの試案でございますが、そういうような形で中央会というともかく一つの指導機関があるのでありますから、このあたりが肝いりされることによって、自主的にこの際農業団体、特に農協のあり方を検討していただき、世論にこたえてもらうことが適当ではないか、かような考え方でございます。  それから肥料の問題につきましては、実は一部の肥料審議会の委員のお声として、肥料審議会を開いたらばという御要請も受けているのであります。これは正式な委員会というのでなしに、墾談会でも持っていただいたならばどうか、そうして今日の肥料状況というものが、生産は非常に増大をして参っておりまして、国内の措置もさることながら、一方においては輸入輸出の問題などが大きく検討されなければならない時期かと思うのでございます。いつという目安はまだついておりませんけれども、こういう際にやはり肥料の問題にも言及をしていただいておくことの方が、施策をやって参る上においても有益ではなかろうか、こういう考えを記者団会見において述べた次第でございます。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 第一の点について農協が、しかも全国段階における連合会が非常な問題を起すということについては、これはやはり根本的な原因あるいは欠陥があるということも一応考えられるわけですが、そういう場合に、これは果して制度上の欠陥であるか、あるいは運用上の欠陥であるか、あるいはまた農協それ自身の陣営内における質的な原因であるか、たとえば中央団体において、ああいう膨大な経済的な行為を行うに足る人的というか、質的素質が非常に欠如しておるのでこういう問題が起るというこの三つの根本的な原因というものは探求されなければならないと思いますが、農林大臣はどこに一番大きな欠陥があるとお考えになって、あのような見解を発表されたかという点であります。これは先日参考人を招致した場合においても、現在責任のある役員が全部辞職しておりまして、暫定的に明二十日役員の選挙を行なって、一応事業の継続をやっていこうということをわれわれ承知しておるのであります。こういう大事な役員選挙を前にして、農林大臣の見解の発表というものは非常な影響をいろいろな面に与えておるというふうに考えられるのでありますが、大臣のこの見解の発表というものは、単なる当面の問題におびえて、その場のがれ的な思いつきの見解を発表しておるものであるか、ほんとうに農林大臣として、現在の協同組合全体の各面の検討を行なって、制度運用上こういうところに欠陥があるということをお気づきになってあのような談話を発表されたかどうかという点であります。
  27. 井出一太郎

    井出国務大臣 明日とり行われると聞いております全購連の役員の改選、これを別に意識してどうのこうの、これに影響を与えるというふうなことは私としては考えておりません。むしろもう少し一般的な問題として、今芳賀さんのおっしゃるような制度機構の上にもあるいは運営上にも、人的要素にもいろいろ欠陥のようなものが伏在しておりはせぬか、そういうことを農協の皆さんに自主的に討究していただくという意味において一つの示唆を投げかけたというように御解釈をいただけばけっこうかと思います。
  28. 芳賀貢

    芳賀委員 次に肥料関係の問題であります。肥料審議会は結局臨時肥料需給安定法に基いて運営されるわけであります。ですから肥料需給安定法という法律が現存しておる上において、審議会だけ開いて問題の検討を行なっても無意味だと思います。昭和二十九年に肥料二法案が成立したときの諸情勢と、現在における国内あるいは国際的の肥料情勢というものは、必ずしも環境が同じだということはいえないと思います。ですから肥料二法案が成立当時意図した目的が一応達成されているということの判断がつき得る場合においては、法律それ自体に対する検討を加える必要はあるいはあるかもしれぬと思います。法律運用上も現在においては単に硫安を中心にしたア系肥料だけがその対象になっておる。今度問題を起したのは、ほとんどが輸入に依存しているカリ肥料の取扱いから発生した問題です。あの当時からもア系肥料以外の重要肥料に対しても農林大臣が認める場合においては政令等によって法律の対象にすることができるということを肥料安定法の第二条にうたってあるわけですから、特に外国に依存しなければならぬような重要肥料に対しては法律の適用をこれに加えて取り扱うべきであるということは、今まで一貫して私どもが主張している点なんです。こういう点を全く政府の責任において放置しておったような状態の中から、ああいう事態が大きく発生したということは否定することができないと思います。肥料法それ自体の中においても、たとえば輸出のごときは何ら法律の必要性はないようなことになっておるのですから、そういう点に対して政府の責任において検討を加えておるとするならば別でありますが、単に漫然として肥料審議会の懇談会を開いて検討してみても意義がないと思います。この二つの問題に対しても非常に苦心されているという点はわかりますけれども、この際農林大臣として信念的なものを十分固められて、この当面している問題の処理にどうしても当ってもらわなければならぬと考えておるのです。閣議の関係できょうは時間がないそうでありますから、明日また当委員会に御出席になりますので、それまで保留しておきますが、この点に対して農林大臣としてのもう少し具体的な責任のある意見を整理されて御出席を願うことにいたします。
  29. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 本日の質疑はこの程度にとどめます。  これにて散会いたします。     午後三時七分散会