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1957-04-10 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十日(水曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 笹山茂太郎君 理事 白浜 仁吉君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    五十嵐吉藏君       石坂  繁君    大石 武一君       大野 市郎君    川村善八郎君       鈴木 善幸君    永山 忠則君       原  捨思君    本名  武君       松浦 東介君    松田 鐵藏君       松野 頼三君    村松 久義君       赤路 友藏君    伊瀬幸太郎君       石田 宥全君    石山 權作君       久保田 豊君    楯 兼次郎君       中村 英男君    永井勝次郎君       日野 吉夫君    細田 綱吉君       山田 長司君  出席国務大臣         農 林 大 臣 井出一太郎君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         水産庁長官   岡井 正男君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      河野 恒雄君         農林事務官         (水産庁生産部         長)      坂村 吉正君         参  考  人         (前全国購買農         業協同組合連合         会会長)    田中 順吉君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会会         長)      荷見  安君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月十日  委員有馬輝武君及び川俣清音君辞任につき、そ  の補欠として赤路友藏君及び永井勝次郎君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  北洋漁業に関する件  全国購買農業協同組合連合会事業運営に関し  て参考人より説明聴取     —————————————
  2. 小枝一雄

    ○小枝委員長 これより会議を開きます。  北洋漁業について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。松田鐵藏君。
  3. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 日ソ漁業条約について井出農林大臣水産庁長官生産部長が非常な御努力をされて、おくればせにはなりましたが、今日ようやく着漁の実施に直面するところまでこぎつけたことに対して、その労を感謝するものでございます。しかし今日の北洋漁業出漁は目前に迫って、この着漁というものに対してまた非常な御苦労のあることだと存じまするが、内容について今まで条約にもある通り西カム鮭鱒に対しては昨年の実績が一万六千トンでありましたが、今年は一万三千トンに減ぜられたということに聞かされておりますが、しかし今度は四月以降のことでございますが、この点に対しても母船側と四十八度以南流し網業者とのトン数割当というものに対しても、これから非常に御苦労されることだろうと思います。しかし大体北洋漁業日米加国漁業協定によって再開されたものであって、日米加国漁業協定そのもの基本的なものの考え方というものは、従来の実績基本となっているものでありまして、その基本線がどこまでも維持されなければならないものであろうと存ずるのでざごいますが、この点に対する水産庁長官考え方は、どのように考えておられまするか、御答弁を願いたいと存じます。
  4. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいま松田さんの方からお尋ねになりました、日米加条約基本の精神というものは慣行漁業中心にしたものであるということ、まさしくその通りでございまして、ただいま日米加条約で決定せられる区域から向うの方へは日本は過去において実績がなかったということになっております。その点は日米加条約はまさしく御指摘通り日ソにつきましては若干その点が異なる、むしろ日ソにつきましては極東の日ソ双方の競合する鮭鱒資源そのものについて将来資源をそこなうことなく、しかも最大限度にこれを利用するというような建前でもって、この条約の方向が植え付けられておる、かように考えております。
  5. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 日ソ漁業条約に対しては、ただいまの長官の御意見によって、いろいろとこれから資源維持日ソ両国において協力していかなければならない。しかしこれに対してただいま私が申し上げることは、日米加日ソとその趣旨において異なりますが、いかに漁獲割当をするかというのが焦眉の急になっておる。私どものところにも母船側からも独航船側からもいろいろ陳情もあり、鮭鱒流し網業者からもいろいろと陳情があり、こうしたことにより以上水産庁においては御苦労なさることだろうと存じますし、また私ども一つ意見を持っておるものでございます。しかし自己の意見はさておきまして、一日も早く漁獲量割当がきまらなければ、操業に大きな支障を来たすという建前からいきまして、やはりこれは何といっても従来の実績——昨年度の実績というものがここに一つ基本となって現われてくることでなかろうかと考えておるのですが、こういう点に対するお考えはどのように考えておられますか。
  6. 岡井正男

    岡井政府委員 御指摘通り母船と一体をなす独航船並びに単独で基地から出漁しております四十八度以南漁船、この二つに対する総体的な十二万トンの割当は、一刻も早く決定すべきものであるという考え方で、日ソが済みまして以来日夜深更までわれわれ事務作業に移っておるわけでございます。一両日中にはこれを決定して内示するということに運びたいと考えております。
  7. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 日ソ漁業条約についてのソ連主張は、昨年西カムにおける漁獲数量は一万六千トンである。西カムに対するソ連考え方は、資源維持という建前から一万六千トンは多過ぎる。結局の話、一万三千トンに落ちついたということであるのでありますが、しからば十二万トンの今年の割当からいきますと、一万三千トンを引かれますと、あとに残っているものは九万七千トンということになるのですが、九万七千トンという数字と昨年の実績を見ますと、ブルガーニン・ライン内において母船側漁獲数量は六万何千トンという関係もありまして三万二千トンであった。それからこのライン外母船漁獲した数量は四万五千トンであった。合計いたしまして一万六千トンと合せて九万三千トンが母船側でとったと報道されておりますが、この点には誤まりはないのでございましょうか。
  8. 岡井正男

    岡井政府委員 その通りでございます。
  9. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 しからばこの九万三千トンというものが今年西カムにおいて三千トンを減らされたということからいけば、九万トンよりならないということになると思いますが、そうしますとここで四十八度以南条約海ライン以内ではその数か結局——水産庁で発表されております流し網業者は二万一千トン漁獲したということになっておる。業者は二万六千トンまたは八千トン、合計三万四千トンとったというようなことに対して、私どもは詳細はわかりませんが、こういう点に対しては流し網業者はどれほどとっておるか、お知らせを願いたいと思います。
  10. 岡井正男

    岡井政府委員 二方一千トンという数字も、私の方がそれを確定したという意味で発表はいたしておりません。交渉の際には、いわゆる国際的ないろいろな観点から、推定数字はその程度に話し合いをしたことはございますが、双方ともこれを確定数字というようには確定しておるわけではございません。役所は推定とはいいながら、最も適当な計数をあらゆる資料によって求めて、それを作業の場合には勘定にいたします。もっとも昨年の四十八度以南漁獲区域外相当量とったといたしましても、それは例外的に昨年はそういうふうにたくさんとれたのでありまして、昨年以前においてはそういう姿ではなかった。以前は外ではあまり多くをとっていなかったというようなこともあわせてわれわれとしては参考資料として計算しまして、双方に対して不公平なようにはせないというわけであります。
  11. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 そういたしますと昨年の母船側漁獲数量は九万三千トンであった。本年はその九万三千トンから西カムの方で一万三千トン割り当てられた。そういたしますと東の方における残余は、昨年の実績からいって八万トンとなる、こういうふうに了承して差しつかえはないのでございますか。
  12. 岡井正男

    岡井政府委員 これはブルガーニン・ラインが去年あった時分におきましても、東と西とでなくて、ブルガーニン区域というものは西カムも東も含めて区域となっておるわけでございます。その区域で六万五千トンということであります。今度も西と東と合せまして十二万トンでありまして、西の方が当面一万三千トンで押えられましても、区域内の総体量十二万という計数中心として考えたい、かように思っております。
  13. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 そこのところは岡井長官は非常に老練にして要領を得たような得ないような答弁をされますが、結論からいっても昨年は母船側漁獲が九万三千トン、そこから一万三千トンというものが西の方に割り当てられた、そうすると九万三千トンから一万三千トン、昨年の実績としても、一万三千トン引くと、母船側の東の方で漁獲されたのが、ことしは目の子算でございますが、私どもの常識からいくと八万トンある、そういうことになるのですが、こういう点はどのようにお考えになるのか、数字においてはこれに間違いないのじゃないか、こう考えるのですが、この点はどうでございますか。
  14. 岡井正男

    岡井政府委員 どうもそういうこまかいことを言われますと、母船側にしても、あるいは四十八度以南にしても、それぞれの言い分がまたこまかく現われるだろうと思います。たとえば去年母船側の方の、あとから追っかけて、漁期でどうせとれぬことを予想しながらも無理に出した二船団の方にも、漁獲数量は常態における漁獲数量でなく、従ってとり残しが七千トンあったというのは、ソ連が悪いとか日本が悪いというようなことは別問題といたしましても、九万三千トンに当然プラス・アルファーがつくべき漁獲数量が言われるじゃないかという一部の主張もあるいはあるかもしれぬ、四十八度以南にしても二千トンのとり残しは、外でせっかくかせぎたいと思って時期を失したために二千トンはとり残したのであって、あれは必ずしも自分らの方の自責にすべきものではなかろうという言い分があるいは成り立つかもしれぬし、あるいは場合によれば外でとり過ぎたから、そちらへいくひまがなかったから、外でとれた証拠だというような反論も出るかもしれません。ですからあまりこまかいあやを作らなくて、私の方はすっきりとした計算でいきたい、かように思っております。
  15. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 この問題に対しては私どもは目の予算で言っているので、長官の言われることがむしろこまかいと思う。私の言うことが大ざっぱなのでございます。だがこの問題は鈴木君や川村君からもっと質問されるからこの程度にしておきます。  次に、これは非常に大きな問題でありますが、現在の独航船側においての考え方は、西カムにおける一万三千トンを五十一そうで操業するとしたら、わずかに二百二十トン平均よりならない、こういうことになるのでございますが、二百二十トンで果して独航船採算が合うかどうか、私ども計算からいきますと、千三百二十万前後よりならないのじゃないか、こういうように考えられるのであります。そこで常識的にどうしても自主的な減船していかなければならないという考え方がここに台頭してきているのでございますが、東においても同様だと思うのでございます。東がかりにただいまの数字からいきまして、昨年の実績から八万トンに割当されるとしたならば、百八十トンよりならない。何でも独航船側の会合において、二百二十五トンをとろうという考え方を持っている、また二百三十五トンでなければならない、それが網の投網率、それからいろいろなことから水産庁の御意見も承わって二百二十五トンに落ちついたというようなことも聞ていおりますが、これだって二百二十五トンで果して漁業的な採算が合うかどうかということも考えなければならぬ。たとえば東海区に行く独航船は三カ月かかる、それから出漁の準備に一カ月かかる、切り上げてきたときに一カ月、それに三カ月も沖合いに行った場合においては、どうしても休養もある。こういうようなことであとの裏作というものを考えた場合において、四カ月半ないし五カ月北洋に行った場合時日を要するということになる。これが直ちに事務的の考え方でもって、何十何日出漁しておるから、それによって船の償却、やれ船員待遇ということばかりを考えることはでき得ないんだというようにわれわれは考えておるのでございます。それからまた私どもが常に考えておりますることは、この場合における日本北洋漁業あり方というもの、また沿岸漁業あり方というものを一つ再編成しなければならないという考え方を持たなければならないのではないか。現に北洋漁業出漁の場合においては、以東底びきの整理をもってこれに充当した、流し網漁業整理をもってこれに充当した。そうして沿岸と沖合というものに対する考え方を立ててやっていった今までの漁業政策なるものが、日ソ条約によって昨年以来根本的に変ってきたという現実の姿をもって、沿岸漁業とそれから北洋漁業、これらに対して根本的な政策を変えていかなければならないでなかろうか、その時期に到達しておる。もしこれを、今年は時期がない、または母船漁業の、資本漁業の圧力によって、このまま等閑に付していくというようなことがあったならば、悔いを千載に残すことになるのではないかという杞憂をわれわれは持っておるものでございます。なぜならば、まず昨年の魚価値上げに際しまして、——私も独航船を一そう持っております。その採算からいきまして、どうしても一割の値上げは至当であろうと考えておった。しかし自分の立場が代議士なるがために、そういう点に対しては口を出すことを遠慮しておったのであります。ところがその点における交渉の結果、それはカン詰価格、または塩魚価格、こうした点からいきましても十分に一割の値上げが可能であった。交渉の結果が五%程度値上げに落ちついたようでございます。ところがその理由はどこにあるかということからいきまして、その理由は各独航船側母船会社から相当借金がある。ボスであればあるほど借金がある。こういう点からややもすれば、一つ肩をたたかれて、ぐにゃぐにゃになってしまったというのがその実態であったのでございます。こういう点からいきまして、何といっても中小漁業者は弱い。令年カン詰または塩魚実態からいっても、これは当然また値上りが必要であろうという考え方を私どもは持っておるが、これをそのままにしていったならばどういうことになるか。トン数は十二万トンに限定されておる。それにこのまま独航船側が自主的な整理をして、まだりっぱな漁業もある、この方法によって自主的な整理をしようというのに、母船側においては、今まで通り母船を出していこうという考え方を持っておるように承わっておる。こういう点からいったならば、独航船漁獲トン数は十二万トンにきまっておる。母船経費というものは、やはりそこにおいてはっきりと一そう何億という金がかかる、結局その負担が魚価にかかってくる、こういう点からいきまして、ここは水産庁としても相当考えを新たにしてかからなければならないではないかという考え方を持つものでございますが、こういう点に対する水産庁考え方はどういう考え方を持っておられるか承わりたいと思います。
  16. 岡井正男

    岡井政府委員 自主的に一つ相当整理をする。従って母船側も順応して、減らしたらいいじゃないかという意味の御発言のように了承いたしましたが、われわれ事務当局考えといたしましては、母船なりあるいはまた独航船経営者、いわゆる企業者という人は、従来よりも、制限トン数割当での操業でありますると、利潤は非常に少くなり、場合によればとんとんの人も出るかもしれぬ。しかし一応そこは忍んでいただいて、相なるべくは従業者とかあるいは漁業労働者という人に失業者が出ぬようにがまんをしていただきたい、かように思っておりますので、われわれの方からは積極的に母船をやめさすとか、あるいは独航船をやめろとかいうような線を打ち出すことはしたくないというのが率直な気持でございます。  なおもう一つ、やはり来年のソ連交渉ということに思いをいたさなければなりませんが、その場合にわれわれとしては、今度も委員会の席を離れましていろいろ向うと交渉の過程におきましては、日本が四つの島で非常にたくさんの過剰人口を擁している、それらの働く場所としての海を、せっかくの公海自由の原則をある程度制約をしてまで、ソ連と共同して資源保護のためにという苦痛を忍ぶ以上は、君らの方も日本の働く人の職場の狭まるような、あるいは失業者を出す羽目に陥るような漁獲量をしいるということがあっては、将来日ソの親交に暗影を来たすのではなかろうかというような点を強くこちらが言うていることも、若干妥結に関連があったようにも思われます。従いましてこちらの方がいさぎよく早目減船をしたり、あるいは早くいえば気前よくこちらが退くという姿を見せることは、来年そういう発言力を弱めるようないや味も残るので、われわれとしてはあれやこれやを思い合して、この際にあまり減船ということをやりたくないという気持はあります。
  17. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 交渉中はそういう気持を持ってやられることが、これは大事であって、私どもも十分その点に対しては注意をして、日本の民間の意思を先方に察知されたいように注意をしたものでございます。同様な考え方を持っておったものでございます。しかし明年度交渉ということからいきましては、何らそれは杞憂にならないことであろうと私は考えておるものでございます。むしろそれが有利に展開するものであろうと考えるものであります。しかして独航船側整理をしたいという考え方は、自主的な整理を要望しておるのでございます。なぜならば、その漁獲から起きる経済的な問題だけでなく、水産庁水産行政に非常に支障を来たす問題がここにあるのでございます。それは船員に対する待遇の問題、こうこう点からいきましても、安全操業の点からいきましても、漁船は漸次大型化されてきております。その漁船の大型化されたトン数というものは、実に三千五、六百トンに上っておるのでございます。この三千五、六百トンというトン数を今年——昨年は暫定的な水産庁の好意ある了解によって、三十二年度にはそのトン数を補充するという一札をとられて、書いて差し上げて出漁しておったものでございまして、今年度においてもし一そうの減船もなくしてこのトン数を補充しようということになったならば、独航船の人々は、鮭鱒流し網トン数をこれから買収するとか、または底びきのトン数を買収してこれに充てるとか、こうした方法より道がないのでございます。そうしたならば、今の時価は幾らしておるかという点からいきますと、約十億の金をこの利益の上らない北洋漁業に対して充当しなければならない責任があるのでございます。こういう点からいって、国際関係によって今年も昨年と同じような了解を得るとかりにしたならば水産庁水産行政というものは根底からくつがえされて、一札さえ入れたならば何でもいいから、たとえば底びきの建造をする場合に四十トンよりない船を七十五トンにするためにはどうかこれは了解をしていただきたい、来年は必ず補充いたしますからということで、これにいなやということはできないはずでございます。そうしていったならば、いつまでたってもそのトン数は補充できない、ないのだから補充できない。現在出漁せんとしてもトン数はないのだからこれも補充できない。こうしていって、水産行政なるものが根底からここでもってくつがえされるということになろうと考えられるのでございます。三千八百トンに余るトン数というものをどのようにお考えになっておるか、この点を承わりたいと存じます。
  18. 岡井正男

    岡井政府委員 お説ごもっともでございまして、未補充の三千六百トンをそれなり見のがしてしまうというようなことをいたしましては、過去の経緯から考えて、正直者がばかを見るという非難が相当集中されて、灰をかぶるものは事務当局でございますから、そういうことはまさしく将来に対しても行政措置としてマイナスになる。従いまして、この問題については、今明日中にも割当の決定すると同時に、この方針を固めて、関係業者の方へ内示を早くするというような方針でせっかく勉強中でありますので、今ここで発表するのは、しばらく時をかしていただきたいと思います。
  19. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 米にしんにゅうの迷案が出ないと信じておりますから、この点は強く追及いたしませんが、しかし水産行政にひびの入るということだけはどうか念頭に置いて、誤まりのない、名古屋の名の名案をお作り願いたいと存じます。しかしここにおいて必然的にこの問題が一番の今年出漁独航船の許可に対するガンになろうと思います。こういう点は十分考慮していただかなかったならばならないと考えます。もしこれ以上の金を出して補充するということは、現実の問題としてでき得ない問題であろうと考えます。これができ得るような名案があるならば、これはもう今明日中に発表するというんだから、それは今でも案があるはずですが、もしそういう米へんでないほんとうの名案がありましたなら、片鱗でもちょっとお聞かせを願いたいと存じますが、こういう点はどうでございましょうか。
  20. 岡井正男

    岡井政府委員 片鱗を言うくらいであったら全部言いますが、ちょっとお待ちを願います。
  21. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 井出農相は大へんに正直な方でありまするから、しばしば言われますが、岡井長官はこの点に行きますと、なかなか農林省随一の人でありまするから、どうもごまかされやすくて困るのですが、そういう点から考えても、自主的な減船をして、まじめな企業を起し操業しょうということから言っても、十分考えなければならぬ。もしこれが八万トンの東における割当があった。何でも十万トンとか十二万トンとかいうて考えておるそうですが、母船側は十二万トンくらいのことを考えておるそうですが、国際漁場でございますから、割当が十二万トンですから、それ以上にはならないと思います。しかし十二万トンのうち十万トン、十一万トンとかいうことになると、これは大へんな政治問題化するおそれがありまするので、この点も一つ十分気をつけていただかなければならないと思います。私どもはまず昨年の実績から言って、八万トンないしは七千トンがどうだこうだということもありまするし、こういう点に一つ長官の辣腕と言おうか怪腕と言おうか、こういう点を期待するものであります。だがどうしても採算が合わない、採算を合うようにしなければならない、失業しなくてもいいという名案独航船側にもあったならば、こういう点も十分聴取されて、せっかくのことしのこれからのことでございまするから考えていただきたい。それから必然的に母船側考え方というものを是正願いたいと思います。これはこのままで行ったならば、現在独航船平均千八百万円の借金があるということを聞かされておる。そうしたならば、一年の金利だけでもって二百万円なり百五十万円なりの金利がついていく。最後には船も権利も全部母船側にとられてしまうという形になるのでございます。いかに母船独航船と共同の企業だという意味で許可されておりましても、実態母船側に全部吸収されてしまうという形になるのでございます。こういう点は今までの例から言ってもあるのでございます。またあの資本を持っておる資本漁業のうちにも、中小漁業の底びきまで自分の会社が経営している母船会社まであるのでございます。また流し網、独航船においても、その表面はどのようになっても、内面においてはやはりそうした経営がなされておるといううわさもあるのでございます。正当な理由をもって魚価値上げ交渉しても、母船会社がかりに三十そう独航船を持っておっても、その三分の一である十そうさえ自分の範囲内のものであったならば、とうていその値上げなどというものはでき得ないものでございます。社会党のうちにもある御用労働組合的なものが出てくるのでございます。こうしたならば、正しい議論というものは全部ご破算になってしまうものでございます。こういう点のないように十分気をつけてやっていただかなければならないと思います。  私だけが質問してもいけませんから、この注意と希望をいたしまして、私の質問を終りたいと思います。     —————————————
  22. 小枝一雄

    ○小枝委員長 この際お諮りいたします。本日午後予定しております全購連の事件についての参考人よりの説明聴取につきまして、農協の指導監督に当っております全国中央会の荷見会長を参考人として追加いたしたいと存じますが、御異議あませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 小枝一雄

    ○小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  24. 小枝一雄

    ○小枝委員長 質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  25. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際農林大臣に日ソ漁業協定の内容についてお尋ねします。先週の当委員会において農林大臣から特に秘密会を要求されて、経過の大要についてのお話があったのでございますが、その報告等はまことに簡に過ぎるというような憂いもありますので、この際公式の公開の委員会の席上において、もう一度あらためて要点を明確にお述べ願いたいと思います。
  26. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先般当委員会においてあらましの経過の報告を申し上げましたが、ただいま芳賀委員の御質問に基きまして、あらためて大要を申し上げたいと思います。  日ソ漁業委員会は、二月の十四日に第一回の会議を開いたのでありますが、自来会を重ねること二十数回に及んでおるかと思います。北西太平洋におけるサケ、マス漁業その他の問題について審議を続けて参ったわけでありますが、そのうち最も重要な問題は、一九五七年度における総漁獲量について、当初わが方からは十六万五千トンという数字を要求いたしたのでございます。先方は、昨年のモスクワにおける交渉においてすでに決定を見ておるのだという論拠から、凶年は八万トン、豊漁年には十万トン、こういう数字を固執をいたし、わが方はこれを反駁する等いたしまして、委員会は激しい論争の応酬を続けたわけでございます。その間私といたしましては、しばしばソ連のクータレフ代表と折衝を重ねて、これが打開をはかって参ったわけでございますが、三月十五日に至りまして岸外務大臣をわずらわし、テボシャンソ連大使を招致いたしまして、本件の解決について大局的な見地から配慮してもらいたいんだ、こういう要請をいたしたのであります。三月二十一日に至りまして、先方は一九五七年度の総漁獲量は例外措置として十二万トンまで認めると同時に、オホーツク海におけるサケ、マス漁獲は将来は全く中止されるべく、さらに本年度はこれを著しく削減をすることを条件とする、こういう旨の回答を寄せて参ったわけであります。しかしわが方といたしましては、右の二条件に同意をするわけには参りませんので、その後も双方の代表間において交渉を継続いたしました。四月二日に岸外務大臣はさらに再度テボシャン大使を招致いたしまして、この例外措置としての表現を変更すること、それからオホーツク海においては将来全く中止されるべくとかあるいは著しく削減するとかいうことの撤回を求め、当方としては自主的にオホーツク海における出漁を二船団、漁獲量を一万三千トン、こういうことを申し入れましたところ、同大使は四月四日に至りまして、わが方の要請に同意をする、並びにオホーツク海におけるサケ、マス漁獲は将来全く中止されるべく、本年度は著しく削減をするというこの条件については本年は論議をしないということに同意をする旨の回答を寄せて参ったわけであります。よって同日右の了解に基きまして、私はクータレフ代表とさらに細目の折衝を行いました。四日深更に及び実質的な合意が成り立ちまして、六日の午前に議事録に両国委員の署名をするということに相なった次第でございます。  なお右委員会においてはそのほかに決定された問題がございますので、それを申し上げますと、第一にベニザケの資源保護漁業規制の問題でございます。北緯五十二度以北、東経百七十度二十五分以西のカムチャッカ半島の東方海域においてサケマス漁業をする場合、一九五七年においては七月二十日以降これを停止するということにいたしまして、特にこれはベニザケの保護を目的といたしたわけでございます。一九五八年以降においては、この問題は委員会でさらに再検討をするということに相なっております。  第二点としては、子ニシンの混獲許容限度の問題でありますが、一漁船一航海について尾数にして全漁獲量の一〇%をこえない範囲とする、もし一〇%をこえましたときには当該漁船による当該場所における操業は中止されるか、または大きな網目の漁具にこれを変えなければならないという取りきめでございます。  第三は、雌ガニ、子ガニの混獲許容限度及びカニ網の設置についての問題でございますが、これはカニ網一反当り平均一尾、オリュートルの区域においては〇・五尾、この程度をこえない混獲率とするということでございまして、漁獲が停止される混獲限度というものは今後共同調査によってこれが決定せられることになっております。カニ網の配列の長さは千七百メートル以内、配列間の間隔は百メートル以上、配列の線の間の距離は二百五十メートル以上とする。これがカニに関する問題でございます。  次に距岸四十海里のサケ・マス禁漁区域についての問題でございますが、科学的資料に基いて一九五八年の会議においてこれは再検討することといたしまして、一九五七年においては北緯四十八度以南区域については距岸二十海里、これ以外の区域については従来と同様四十海里の禁漁区域を設けるという暫定的取りきめをいたしたのであります。  第五点としまして、科学的調査の調整の問題でございますが、科学的調査研究の基本方針を定め、一九五七年度の共同調査計画をきめたのでございます。なお漁業資源及び漁業規制についての研究に関する経験を相互に交換するために一九五七年には漁業使節団の交換を実現するよう両締約国に対して委員会から勧告することに相なりました。  第六に、統計その他資料の交換に関する問題でございますが、両国が委員会に提出する統計及び資料の範囲と内容とを調整いたしましてこれを決定する。大体このような次第でございました。以上をもってお答えといたします。
  27. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの御報告によりますと、五十数日間を費して両国間においで非常な努力をなさったわけでありますが、結果の十二万トンという数字に対しては、それぞれ論議の余地はあると思いますけれども、とにかく農林大臣が日本の政府を代表して最大の努力をされたというその努力に対しては敬意を表するものであります。  そこで若干お尋ねいたしたいのでありますが、本年の取りきめの場合に、特に一九五七年は豊漁年とみなして十二万トンとするという取りきめでありますが、本年に限りということと、本年は豊漁年とみなすという点はやはり明年度以降の交渉にも不可分のつながりを持っておると思いますので、この点についてもう少し詳しく大臣から説明を願いたいと思います。
  28. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 本年が出漁年であるか凶漁年であるか、この論争には両国門でかなりの日子が喪されたのでございます。わが方といたしましては、過去何十年間にわたる漁獲統計というものがございまして、これから立証いたしまするときに、上西暦の年数で奇数年次は豊漁、偶数年は不漁ということが大体狂いなく過去の実績によって立証せられるのでございます。先方はサケ・マスのソ連領域の河川に遡河して参りまする尾数あるいは産卵の終った後稚魚が川を下る数をつかまえるというようなデータを中心にして論ずるわけでございますが、最初は一九五七年はむしろ不漁の年ではなかろうかというような議論を展開して参ったわけでございます。激しい応酬がありました後、先方が歩み寄って参りました結論というものは、一九五七年はまず豊漁年であるということは認めるけれども、一九五五年に比べればこれを下回るのではないかというのが先方の結論でございます。従いまして両国の意見は豊漁、不漁という点について完全にぴったり一致しておるというのでもないわけでございますが、しかし両方豊漁という文字は使っておりまするから豊漁年とみなされる、こういう表現にいたした次第でございます。  それから一九五七年の例外措置ということを先方は強く主張をして参ったわけでございますが、和々折衝の結果、一九五七年においてのみという表現にこれを切りかえた次第でございます。このことはニュアンスの違いではないかというふうなお感じもあるかもしれませんが、私どもといたしましては、本年度十二万トンをとにもかくにも認めたということは、将来にわたって一つ事実がここに確立されたということに考えておるのでございます。あるいは論争は残るかもしれませんけれども、しかしここに一つの十二万トンという数字が明らかになったということは、これを基礎にして今後の議論が展開され得るものであろう、こういう、ふうに考えておるわけであります。
  29. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでお尋ねしますが、十二万トンが今年に限るというような例外的措置であるといたしましても、こういう数字が明確になった以上、ソ連主張する凶漁年八万トン、豊漁年十万トンという原則的な主張は、この十二万トンの一つの取りきめによって原則の根拠がくずれたというふうにも見られると思うのですが、その点の判断はいかがですか。
  30. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 八万、十万に対する考え方が、先般申し上げましたように、わが方としましては、昨年におけるソ連の計画量八万二千七百トンを見合いにしてきめられたものであって、その漁獲量が実際的に動く場合にはやはりこれとスライドして動き得るという観点に立っておるわけでございます。この主張双方議論の中においてはずっと対立をしてきたことでございます。しかし今芳賀委員も言われまするように、向うがこのワクを飛び越えて十二万トンというものを認めたというこの事実は、これは情勢が相当に変化したものである、今後の交渉をしあるいは議論をいたしまする場合には、当方としては向うの八万、十万に固執する線をこれで打ち破ることができる、こういう考え方のもとに扱ってしかるべきであると考えております。
  31. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、今回の会議一つの決定事項として、次回の会議明年度の取りきめを行う会議は、一九五八年一月十三日からモスクワにおいて脚催するということを決定されておるように伝えられておるわけです。そういたしますと、本年度の今回の交渉は幸いにして東京において行われたのでありますが、明年度は今度はこちら側から出かけてモスクワにおいて第二回会議が開かれるということになりますので、そのためにも今年度の決定に基いた完全なる協定内における実施という問題は、やはり明年度会議に非常に大きな影響を与えるものであるというふうにも考えられます。そういうことが前提になりますと、今後この協定に基いて政府が行うところの北洋における諸般の行政的な措置あるいは指導態勢等においても、相当重大な一貫した方針相当強い決意を持って政府としては臨まれると思うのでありますが、それらに対する基本的な態度等についてすでに内容がきまっている点に対しては、この機会にお述べ願いたいのであります。
  32. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 本年の委員会において決定を見ました事項は、昨年は一種の暫定取りきめでございましたが、今回ははっきりとこの条約によって明確化いたしたわけでございますから、われわれとしても、相手国に対する信義の問題もございまするし、十分これにおいてきめられた問題に対しては、忠実に履行しなければなるまいと考えているのであります。今言われまする具体的な措置というふうな問題につきましては、まだ調印をしましたのが過ぐる六日のことでございますので、目下鋭意取り急ぎまして、諸般の措置をきめたい、このように考えている次第でございます。
  33. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど大臣が出席される前に、松田委員からもこの問題についての質疑が行われたのでありますが、当面する問題としては、何としてもこの条約区域内における十二万トンを母船流し網漁業にどのように適正に配分を行なって、そしてまじめな操業をやってもらうかということにあると思います。特に今回の漁業協定を通じて、今後の北洋漁業はわが国から見れば一つの恒久的な、しかも安定性のある漁場であるということが言えますし、その上に立った恒久的な北洋漁業に対する政府の一貫した指導とかあるいは行政措置をこの際明確に確立される必要があると思うわけであります。今までのように、一年々々その場限りの考え方やあるいはいろいろな関係勢力の、発言力の強弱等によって北洋漁業に対する政府の態度が朝変暮改されるようなことであってはならぬと思いますので、今回の協定を契機として、やはり恒久的な、しかも基本的な方策を政府が立てて、これに対して関係業者等の協力あるいは責任のある出漁態勢を立てさせる必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。当面する問題としては、やはり母船あるいは流し網漁業に対する区域内の十二万トンの配分の問題あるいはまた昨年は十七船団という全く無謀な出漁をさせたような経緯もありますけれども、昨年の実績から見て、昨年の母船並びに独航船の全船が出漁するような場合においては、これはやはり採算上からいっても赤字になるとかいうような声も、非常に流布されておりますので、安定した恒久的な漁場に、しかも経済的にも安定した恒久的な対策の上に立った出漁をさせるということになると、単に無方針に昨年の実績船が金船出漁するというようなことを放任しておくわけにもいかぬと思うのです。そういう点に対しては、政府としては傍観するとか、業界の自主性にまかせるというような責任のない傍観的な態度というものはとるべきでないと思うのです。この点に対して農林大臣の明らかな所見を水わりたい。
  34. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 今回の協定を契機にして、北洋漁業というものを一つの安定した恒久的な立場で考えていかなければならないというお説は私も全く同感でございます。従来は若干過渡的な不安定な様相もあったと存じますが、これからはただいまお述べになりましたような点を十分に勘案して参らなければならぬと思うのでございます。その場合政府がある一つの規制的な措置に出るのがしかるべきかいなか、これは業界の実情等とも十分にかみ合せまして判断をしなければならないと思うのでございますが、制限区域内における十二万トンの配分の問題に関しましても、最も公正妥当な配分方法を期しましてただいま鋭意検討中であることを申し上げてお答えといたすわけであります。
  35. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで具体的にお尋ねしたいのですが、たとえば母船については昨年通り十七船団、五百隻の独航船によるところのその編成のままこれを容認するお考えであるか、あるいは北洋漁業一つ採算ベースの上に乗るような態勢を整えさせて、そうして安定した態勢で出漁さすべきであるか、これはかかって政府の決意のいかんによるところだと思うのです。何ら無方針に無責任な態度でこれを放置するということであれば、やはり昨年通りということにもおそらくなりますし、また強力な行政的な指導を加えるということになれば、昨年のままでは相ならぬということになると思うわけなんです。その辺の判断とか決意というものはもうすでに用意されておると思うのですが、その点まずお尋ねいたします。
  36. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お尋ねの点はわれわれも十分心してやって参らなければならぬ点でございますが、その場合あるいは従来の実績というふうなものも一つの大きな要素でございましょうし、また御指摘のような採算ベースというふうなものも考えなければならない点でございます。これらの点につきましては御趣旨の線をも十分に勘案をいたしまして、適切な処置を講じて参りたいと思っております。
  37. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうも適切とか適当ということでは抽象論に終ってしまう。ですから一定の時期が来れば出漁しなければならぬですから、政府の態度も早急に決定して、その線に協力を求めるということでなければいけないと思うのですよ。毎年々々そのことによって失敗を繰り返しておるのですからね。この際やはりきぜんとした態度で、ソ連に対しても向うの主張が豊漁年でも十万トンといったのから見れば、十二万トンに持っていったということに対しては努力の跡が見れるといえばいえるわけです。それだけの努力をしたのですから、今度は国内において問題の起きないように、恒久的なはっきりした対策を立てるには一番絶好の機会であるというふうにも考えられるわけです。この機会を失った場合には、今後これをもっと適正妥当な行政措置の中において処理するということはおそらくできないと思うのですよ。これは実に今後の問題に関しても重大な点であると思うので、農林大臣は漁業に対してはしろうとでありますけれども、むしろしろうとであることの方が、問題を解明するには一番適格者であると私は考えるのです。なまはんかに業界のひもつきになって、特別の利害関係の上に立った主管大臣である場合においては、こうしなければならぬということを考えておっても、明快にそのことの処理ができないのです。幸いにして井出さんは全くその方にはしろうとというよりも、清純無垢な立場にあるというふうにわれわれは考えておるので、この際やはり井出農林大臣の在任中の一番大きな仕事になるかもしれませんので、この問題は、はっきりやるならやるということを明確にされた方がいいと思うのですがどうですか。
  38. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 まず今回の国内措置いかんによっては、五十日間の交渉の結果があるいは台なしになるのではないかという意味だったと思いますが、御指摘のように私といたしましてはこの国内措置を誤まりなく決定をいたしまして、最後の仕上げをいたしたいと考えておるわけであります。
  39. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうもしまいの方になると期待に沿わぬような答弁になるのですが、それでは問題をさらに分けてお尋ねしますが、たとえば昨年の母船関係実績を見ても、相当赤字であったという声も聞いておるのです。しかしその赤字の場合においても、母船独航船採算というものは必ずしも同一のものではないと思うのです。独航船相当数赤字になっておったとしても、必ずしも母船が赤字になるということにはならないのですね。ですからこの点はやはり母船独航船との間における魚価の協定、そういう点が今までは非常に不明確な点に置かれておったのですね。力関係からいうと、やはり独航船母船の三社の系列の大きな経済支配のもとに置かれておるので、対等な発言権というものはなかなか獲得することができない。ですからそういう場合は母船側独航船側の相互間の話し合い等によって魚価の協定をさすということは、これは全く間違ったことだと思うのです。ですから第三名的の的確な判断のできる機関が、その母船独航船の間における魚価の基準というものをきめて、その線に沿ってこの引き渡しを行うということにしなければ、これは単なる口実だけを一方に与えるということにすぎないと思いますし、この点が適正に行われていない場合においては、全船出漁ということになれば、その赤字を解消するために、国内の消費者である国民に対して価格をつり上げることによって赤字を解消するというような、そういう好ましくない考え方も生じないとは限らないと思うのです。ですから魚価の問題等に対しては、政府としてはどのような責任のある態度で本年は臨まんとするか、その点はいかかでしょうか。
  40. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 この問題は水産庁におきましても、従来の事例に徴して、いろいろな資料を持ち合せておる次第でございますし、今の母船独航船との間の不均衡というふうな問題に対しましても、さようなことの起らないような適切な処置を講じて参りたい、かように考えておる次第でございまして、まだきょうこの段階においては、もうしばらくかすに時間をもってしていただきたい、このように申し上げたい次第でございます。
  41. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点に対しては、先般の水産小委員会においても、資料として、母船あるいは独航船関係の昨年の採算内容に対する計算書の提出を求めておるわけですが、まだこれは御提出になっておらないわけです。おそらく農林省としても、母船独航船の間における、いわゆる利益の配分といいますか、そういう点が今大臣が言われたようにアンバランスであるということは確認されておるわけですか。
  42. 岡井正男

    岡井政府委員 だいぶこまかい御質問で便宜上私の方からお答えいたします。元来ほかの母船漁業の許可形態と違いまして、最も新しい形をとって北洋鮭鱒母船式許可をいたしております。母船に対しても一として許可をする、独航船も小さいながら各一つの単位としての許可をいたしておりまして、われわれの指導方針としてはこういうような形態でやって、母船に隷属したような形をとらないで、発言力も当然一対一の発言力を持つという考え方でもって、当初から臨んできたわけでございます。不幸にして、先ほど松田先生からも御指摘があったように、そういうふうな政府の心がけなるにかかわらず、独航船側の人たちの中では、母船の方へ依存度を非常に高めまして、船の金も、網の仕込み金も、全部母船から借りていくというような形で、おのずから一対一の許可を昔の他のマグロ許可のように、母船の配下にある隷属船みたような形になっている向きも相当あろうと思います。それらのような形で、今現に売魚契約のときでも弱いのではあるまいかというような、結果を見ての御質問のように受け取れるわけであります。われわれとしては、できれば母船に依存する仕込み金というようなものはなるたけ避けて、系統機関金融を使ってもらうようにして、いわゆる一人前の業者として、一人前の口をきいてもらいたい、できれば市価でアンバランスにならぬような魚価に近い発言をして、母船にひけをとらぬようにしてもらいたい、常に指導として、われわれはそういうふうな形で臨んでおるわけであります。不当に価格母船独航船の間にやられるといたしましても、商取引ですから、非常な干渉をその間に加えるということはできません。たとえば形は違いましても、陸上へ魚を売る漁業者と、母船に売る漁業者と、その間に商取引行為としては何ら隔たりはないわけであります。ただ母船で、宿命的なつながりがあるから、どうもその間にもう少し干渉したらいいじゃないかというように受け取れるわけなんですが、不当にその間にやれるというようなことでありますれば、われわれ干渉まではできないにしても、ある程度相当な強い示唆をするというような点は、われわれも心がけたいと考えております。
  43. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点が政府としてなまぬるいんですよ。元来北洋漁業を日魯、大洋、日水のこの三社の系列下に置くというその考え自体からもう誤まっているわけです。ですから市場の独占的な支配が三冠の系列によって行われるような状態の中において、独航船母船の力関係を一対一の立場に置かなければならぬというようなことは、全く根拠とか意味を失なっているのですよ。だからそういう対等でない、力関係がアンバランスになっている事態の中において、いかにして適正な取引の正常化をやるかということに対しては、やはり政府の責任においても、これは権力的な介入ということはできないとしても、政府の行政的な指導の範囲においても、適正化としての取扱いは、これは可能だと思うのですね。やれると思うのですよ。それを今まで全く行なっていないというところに政府の怠慢があると思う。ですからもう内容はどうなっているということは、私ども以上に当局はわきまえているのですから、今年は母船独航船の間における取引の適正化あるいは正常化というものを、政府の責任において、行政的な指導を加えてでもやるということの言明はできると思うのですが、いかがですか。
  44. 岡井正男

    岡井政府委員 先ほど言葉が足らなかったので重ねての御質問ですが、ですから行政的に及ぶ範囲において、無理の行かぬ限りにおきましては、私の方もおっしゃる通り善処いたしたいと、かように申しておる次第であります。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 ただいま水産庁長官は、母船独航船との関係を一対一の対等の立場で発言なり出漁させる、そういう希望に反して最近の結果が起った、こう言っておりますが、これは水産庁長官がほんとうにそういう希望を持ち、そういう意図を持っていたが、意図に反してこういう結果が生まれたというならば、よほど水産庁長官というものは寝ぼけた行政官だといわざるを得ない。少くとも資本主義の経済の中で経済的な力関係というものを度外視して一ただ一対一の許可を与えたんだということだけで、そうしてその結果をそういうふうにありたいという希望をするのは、これはそういう土俵を与えて、横綱とふんどしかつぎと対等に相撲を取れ、こういう希望をしているようなもので、問題じゃありません。もしそういうようなことをほんとうに期待するならば、それなら伺いますが、それじゃ一対一で戦えるようなどういう経済的な条件を与えたか、あるいは行政の上においにどういう指導を与えたか。これだけの経済的な一対一で戦えるような条件を与えたにもかかわらずこういう結果になったというなら、それは独航船側の怠慢であり無自覚である、あるいは意図に反したことであるということはいえると思うのですが、そういう努力をしないで、そうしたただ結果だけを期待するというような寝ぼけた答弁ではわれわれは承服できません。一対一でやるというなら、今までもしその実行の過程においてそういう色合いが見えておったならば、問題というものはちゃんはっきりしているのだから、それじゃこれはこうしなければならぬ、ああしなければならぬと、今までに最初の意図を実行するためにどういう手を打ってきたのか、明確に、具体的に伺いたい。
  46. 岡井正男

    岡井政府委員 一対一の許可をされた独航船側に対しましては、系統機関金融について、たとえば船を作る場合、あるいは網の購入その他許す範囲におきまして、できる限りわれわれとしては関係機関と連絡いたしまして金融措置ができるような道を開きます。またわれわれとしては、当初からいわゆる水協法による組合組織内において、これをできる限り系統機関の組合が現に許されておるもろもろの施策に乗ってくるようにというような御指導も申し上げておるわけでありますが、業者側の方におかれましては、手っ取り早く任意団体の形でスタートされておる。従いまして任意団体でスタートしたというような形をとられますと、金融機関との結びつきが非常にまずくなってくるというような点がありまして、たまたま鈴木先生などが、そういうことはいかぬと言うので、一時その点を非常に苦慮されまして、やはり系統組織の方の団体組織に移行して、金融の結びつきをやるというような計画をされたのが、現に私の申し上げるようなことの裏書きにもなろうかと思います。
  47. 永井勝次郎

    ○永井委員 芳賀君の質問時間の過程でありますから、時間は長くかけません。  少くも金融措置をしよう、こういうことが主眼だという紙一片の通牒とか、そういうことで問題は解決するのではないので、これはやはり、あるものについては経済ベースで金融のつくものもありましょう。あるいは金融ベースでは入らぬが、政策的な立場から金融をつけなければならぬというものもありましょう。それぞれの実態に即応してそういうようなことを措置しなければならぬし、もちろん力の弱いものはまず組織を作らなければいけない。そういうことは、最初から水産庁長官がほんとうに考えるのなら、そういう措置は講ぜられなければいかぬ。そういう措置を講じたにもかかわらずというなら話はわかるのですが、そういう措置を講じないで、そうして任意のなにで出発したからどうだというようなことは遺憾であります。今からでもまだおそくはない。今までは北洋漁業は試験の時代を経て、そうして日ソ交渉の過程においていろいろな障害があった。先ほど来芳賀委員が質問しているように、今度は安定した形において再出発しようという段階であります。ほんとうにそういう考えを持つならば、今の現状の診断、分析の上に立って、そうして再出発に当ってどういうふうに措置することが一対一になるのか、そうしてそのためには経済界のいろいろな動きから見ても、大企業自分の系列下に置くためには金融支配によってやるという経済的な支配をすることは、これはわかり切った一つの公式的な方式でありますから、それでは一対一の対立した立場を与えようとするならば、これからどういうふうな措置をすればそれが可能であるかという条件を、簡単でいいですから、これこれが組織の上ではこうだ、こういう具体的ななにを明確に示してもらいたいと思います。
  48. 岡井正男

    岡井政府委員 やはり一応母船独航船側の貸借関係を正常の金融ベースに引き戻すような指導を、具体的に早くそういうふうにさせるということが先決問題であろうと考えますので、その点はわれわれもできる限り、独航船側のそういう人たちと今後のあり方についてよく懇談いたしたい、かように考えております。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの点は長官からもいろいろお述べになったのでありますが、この点はやはり農林大臣、政府の責任において強い行政的な指導とか行政措置をもってすれば、母船独航船との間における魚価の協定であるとか、あるいは正常取引というものは必ず可能であるというふうにわれわれは判断しておりますので、この点は一つ自信を持ってことしはやるという言明を願いたいのですが、いかがですか。
  50. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 詳しくは長官からお答えを申し上げましたが、母船独航船との関係において、一つは組織化とでも申しましょうか、そういう面における指導を行う、また金融の面についても長官から申し上げましたが、政府としてはできる限りの便益を供与するというような指導を行いまして、今の御質問に述べられたような方向に持って参りたい、こう考えます。
  51. 芳賀貢

    ○芳賀委員 とにかく昨年のごときは四十八度以南の流し網は十分採算がとれて、独航船側がほとんど赤字であったということは、やはり取引条件に非常に差異があったということが一番大きな問題だと思うのです。ですから独航船の場合には採算がどうしてもとれない、不利であるということになれば、今後母船独航船によるところの漁業方式というものを再検討する必要がくると思うのです。基地に近い地点はあるいはたとえば西カムのごときは母船式でなくて基地漁業でやればやれぬことはないと思う。今後の母船漁業あり方についても、適正な取引が行われるかどうかということの推移が直ちに今後の漁業方式にも大きな影響がくると思いますので、そういう点を十分腹の中へ入れて、ことしは何人が見てもよくやったというような政府の明確な態度をわれわれは期待しているわけです。  その次にお尋ねしたい点は、これは先ほども問題点として申し上げましたが、母船流し網漁業の間における配分方式というものをどうやるかという、基本的な方針をお聞かせ願いたいわけなんです。
  52. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいままでは非難されればいつもだれからも同じような程度に非難されるようです。公平な配分をいたしますということを繰り返しお答えを申し上げてきたわけでございますが、昨年の実績並びに過去の若干年度の実績もあわせて私の方は一つ参考資料にいたします。それからなお四十八度以南及び独航船における最小限度の収入ベースといいますか、コマーシャル・ベースの限度は、下回ればその業態がだめだというぎりぎりの線を参考に一つ試算表を出して、それも参考にしたいと思います。そういうのを船型その他トン数などを勘案いたしまして、公正適正に計算してアンバランスにならぬように出したいと思います。中心はそういう点に重きを置いてやりたい、かように考えております。
  53. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合基礎的な問題になるのは昨年の漁獲実績だと思うのです。条約ライン内における昨年度のたとえば母船あるいは流し網の実績がどうであったかということも重要な要素になると思います。ところが先日の水産小委員会で私はこの点を質問したのですが、政府の答弁によると、本年度締結された区域内における実績は総量で十一万四千トンというような答弁があったわけです。その内訳は、母船式による漁獲高が九万三千トン、流し網関係が二万一千トンで合せて十一万四千トンだったというのです。これに対しても政府が責任のある答弁をされたんだから、それが一番的確な信用のおける数字であるかもしれませんが、数字はそれだけではないと思うのです。たとえば一説には十二万七千トンであって、母船が九万三千トンで、流し網関係が三万四千トンだったという、これも政府から出た数字であるということも聞いておる。問題は区域内の漁獲高と自由海域における漁獲高との関係にもあると思うのです。それで、この点は農林大臣から明確にしていただきたいのですが、日ソ交渉の過程において日本側が提示した漁獲実績というものはどういう数字を用いて——最初は十六万五千トンを主張し、その次には十四万五千トン、最後には十二万トンということに落ちついたわけでありますが、やはり最初に出された十六万五千トンにしても、その次の十四万五千トンにしても何らかの根拠の上に立った、その段階においては譲れない主張であったと思うのです。ですから、昨年の総体の漁獲実績とその条約海域内における実績と、さらに細分して母船、流し網がどういうような配分で実績を上げておったのかというその詳細な数字をこの席上でもう一度表明してもらいたいわけです。
  54. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 当初わが方が主張いたしました十六万五千トンという数字は、先般も申し上げましたが、過去何十年かにわたる漁獲統計を基礎にいたしまして、しかも本年は豊漁年である、こういう観点に立ちまして主張をいたしました数字でございます。これは御案内のように、交渉は相手方もあることでございますから、順次妥結の方向へ向うに連れてその数量が変更されて参ったことはやむを得ないのでありますけれども、そのつど決して理論的な根拠を放擲しておるわけではございません。さらに十一万四千トンという数字は、母船漁獲高というものは確定的につかめますけれども、そのほかの小漁船、流し網等によりますものは推定の部分もあるのでございまして、今芳賀委員が御指摘になったように、あるいはその数字が動いて伝えられたというふうなことがあったかも存じませんが、われわれの交渉過程におきましては、十一万四千トンという数字をもって当ったわけであります。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その間の交渉の過程においての経緯が十分つまびらかでないんです。最初から日本側の主張として、昨年の実績がこの条約海域内においては十一万四千トンであるという主張をなさったんではないというようにわれわれは承知しておるわけですが、その点はいかがですか。これ以上の数字を提示したのだけれどもソ連側の何らかの指摘にあって急遽この数字を改めた、海域内の数字を縮小したというようなことも伝えられておるわけです。ですから、これは条約が締結されてソ連の代表も帰国したあとなんですから、その経緯等についても当委員会において説明できないというものではないと思うのです。これはやはりまた明年度会議の場合にもこういう数字の取扱いというものが交渉の一番基礎になるものだと思いますので、この点は率直にお述べ願いたいわけです。
  56. 岡井正男

    岡井政府委員 便宜私からお答え申し上げます。先ほど御指摘の流し網の漁獲量については、ソ連側におきましても、日本側におきましても、双方とも合意された点は、この流し網についての区域内の漁獲量区域外漁獲量、これはソ連側は口には出しませんが、相当過大評価しております。それで過程におきましていろいろ話し合ったということで、それを的確に確認した数字が動いたという意味ではございません。従いまして、十一万四千トンという数字も向うの方がそれを承服したという数字ではございません。また私の方もただし書きを入れまして、これは主として生産部長が向うの担当官とよく折衝したわけでございますが、これはお互いに推定量として、しかし最後には両方ともこれは伏せましょうというようなことで、結局最後に、早くいえば委員会のもう一つの上の段階で十二万トンに決定したのでございまして、その間にその数字が向うの方でどういうふうに扱われたかということは、委員会以上の問題でございますので、その点はもう想像におまかせするよりほかないと思います。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは数字の扱いはどの段階で話し合いをしても、数字を曲げるということはできないと思うのです。政治的の会談にしても、あるいは事務的な会談にしても、数字の取扱いというものは同じだと思うのです。ですから、この数字の問題は井出・クータレフ会談の場合においても、あるいは岸・テボシャン会談の場合でも、会談の性格によって、あるいは段階によって数字を別なものにするということはできないと思う。ですから、やはり数字に対する尊厳性というものは両国間においても確認されておると思うのです。ただ奇異の印象を受けるという点は、昨年の実績が、たとえば海域内において十一万四千トンであるとするならば、何のためにソ連が譲って本年度の場合には十二万トンという線が出たかということなんです。むしろ昨年よりもふえて十二万トンが出てきたとということはちょっとこれはすなおに了承できないのです。去年がたとえば十二万七千トンの実績があったにもかかわらずことし十二万トンということで余儀なくそこで落ちついたというならまだ納得できる点もあるが、昨年は日本側の資料によって十一万四千トンしか水揚げがなかった、そういう実績の上に立ったこの海域内においてことしことさらに十二万トンにしなければならぬという根拠というものはないと思うのです。まあ豊漁あるいは凶漁ということでいけば別かもしれませんが、これはやはり今年度の十二万トンと昨年の実績というものは非常に重要なつながりがあると思うのです。単に今後の配分の基礎にするということだけでなくて、いかがですか。
  58. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その点は今芳賀委員が後段でお触れになりましたように、豊漁年とみなしてという考え方が取り入れられた次第でございまして、約一カ月近い間、豊漁か不漁かの論議を戦わせました結果、向うが豊漁と認める、こういうところまで上って参りましたので、その十一万四千トンにかかわらず十二万トンという数字を示して参ったものと、このように理解をいたしておるわけであります。
  59. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると政府としては、昨年のこの区域内における実績が十一万四千トンだということには必ずしもこだわらぬという意味ですね。
  60. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先ほど申し上げましたように、母船漁獲量というものは明確でありますけれども、しからざる分野において推定という要素が入っておるという意味に御理解をいただきたいと思います。
  61. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただこの点は今年度の配分をやる場合に、繰り返して言うようですが、十一万四千トンの中における母船、流し網の両者の実績ということになると、九万三千トンと二万一千トンということになるわけです。またもう一説の十二万七千トンが実績であるとすれば、これは九万三千トンと三万四千トンということになるから、その占める割合というものは総体の数字によって違ってくるのです。ですから、もしこれを意図的に配分の基礎数字に用いるとすれば、十一万四千トンを用いた場合においてはこれが母船側に有利になるし、反面流し網側には不利な基礎数字になるということが具体的な事例としていえるわけですね。ですからこの点の取扱いは、単に日ソ交渉の過程において日本側の主張数字をできるだけ多く確保したいという努力の経緯とまた違って、国内における両者の配分に対する重大な影響がきますので、非常に大事な点になってくるというふうに考えるわけです。  しかもこの配分のもう一つの要素としては、たとえば母船独航船が全船出漁するのを容認する場合においては、やはり採算ベースの上に乗せるという考え方もそれに付随して必ず生じてくると思うのです。ですから昨年の九万三千トンでこの母船側の全船出漁の場合においては採算ベースに乗らぬということになれば、結局は母船側に対する漁獲量数字をもう少しよけい与えるとか、あるいは価格の引き上げを行うというようなことをしなければ、採算ベースに乗せることにはならないと思う。もし一方だけがそういう全船出漁採算の上に乗せなければならぬということであれば、やはり他方の立場を相当圧迫したり犠牲にするという事態が必ず生ずると思うのです。ですからその場合に、先ほど長官が言われたように、両方に不平を言わすか、苦情を言わすか、——両方から喜んでもらうという条件の中においてこの配分をやるという場合においては、やはりどちらから見てもこれなら納得がいくという配分の方法を講じなければ、長官のさっき言われたような表現は用いることができないと思うわけなんです。その場合における配分の基本的な方針というものはやはり明確にしておいてもらう必要があると思うわけなんです。それでこの点は繰り返してお尋ねするようなことになりますけれども、その根拠をどこに置いてやろうとするか、もう一度農林大臣から御答弁を願います。
  62. 岡井正男

    岡井政府委員 計数作業は私の方がやりまして、最終的に大臣の御指揮を仰ぎつつ御決裁を仰ぐということになりますので、便宜私からお答えします。  十一万四千トンの外交交渉の過程における計数で、特に流し網の関係につきましては、先ほども申し上げましたように、向う側も納得がいかない、こっちも推定ということを正直に言いまして折衝したわけです。従いまして私の方が配分に当って用います基本的な流し網関係の規制区域内における昨年度の漁獲量は、必ずしも二万一千トンにもこだわりませんし、二万七千トンにもこだわりませんし、役所の見た正しいと思うもろもろの資料によって最も的確と思われる数字を用います。しかしその数字のみでなく、過去における流し網の方がいわゆる区域外であって非常に少くとっておったというようなのもあわせて私の方は参考にしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと結局、たとえば昨年だけの実績というわけにもあるいはいかない点もあるかもしれませんが、少くとも昨年におけるこの条約海域内における母船あるいは流し網の占めた既成事実ですね、これがやはり重要な配分の基礎になるということだけは確認して差しつかえないですか。いかがです。
  64. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先刻も申し上げましたように、昨年の実績も有力な一つの要素だ、こういう考え方のもとに進めて参りたいと考えます。
  65. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特にその場合に、西カムの船団一万三千トンという制限は、これは昨年に比べますと船団の数は同じですが、昨年は西カムの海域においては一万六千トン、それが今度の協定によって四カムの場合は、三千トンをそこで母船漁獲高を減らすということが決定になっているわけですね。そういたしますと、この配分の場合においても、やはりこの西カムにおいて三千トンを減らされたという事実は影響がくると思うのですが、いかがですか。
  66. 岡井正男

    岡井政府委員 それは先ほど申し上げましたように、規制区域内総体の十二万トンということを、やはり分け合いのときには基礎の数字にいたします。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 しかし十二万トンのうち西カムの一万三千トンはそれをふやすこともできないのでしょう。それから西カム以外からほかの母船が行って漁獲することはできないのでしょう。ですから十二万トンの海域の中における一万三千トンとうのは、一つの独立性を持った制限だと思うのですが、いかがですか。
  68. 岡井正男

    岡井政府委員 それは昨年のブルガーニン区域においても同様でございます。ことしだけそういうふうに区分をした比例をとるのはおかしいじゃないか、かように思います。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 おかしくないですよ。これは協定の中に明らかになっているじゃないですか。それがおかしいというのはあなたの方が変なんだ。何のために調印したのですか、おかしければおかしいということを指摘して、こういう調印には応じないといってがんばるべきだったのです。今ごろになっておかしいというのはあなたの方がどうかしている。どうなんですか、これはあくまでおかしいということなら、もう一回条約はやり直しということにしたらどうですか。
  70. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 オホーツクの問題は全規制区域の一部分でございまして、われわれとしては海域全体について勘案をして参りたい、こう考えます。
  71. 芳賀貢

    ○芳賀委員 勘案のしようがあるのですか。西カムに向ける母船独航船は許可を得て行くのでしょう。それ以外の母船独航船西カムへ入れないと思うのですが、どうですか。勘案したいといっても、それは母船独航船全船をプール計算でもやるとすれば、漁獲高に対する共同計算の方式が使えるとしてもそうでなくて、特定の海域を指定して、漁獲高が指定されておって、そして特定の母船独航船だけが指定された海域に出かけるということになれば、その全体を勘案するという余地はないと思うのですが、その場合どういう方法で勘案されるのですか。
  72. 岡井正男

    岡井政府委員 一万三千トンがオホーツクである、そして残りのものが東のべーリング海の区域のものであるということはもうはっきりしているわけであります。だから総体の配分として私の方は適当に考えますから、その際に、御質問の要点は、それがために流し網が非常に損しやせぬかということだと思いますが、そういうことは私ども考えておりません。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私はそういう先を見越して聞いているのじゃないのですよ。特に西カムの場合には昨年の一万六千トンが一万三千トンというように条約では決定になっております。ですから総体の十二万トンの中のこの一万三千トン分はやはり別個に取り扱われるということに当然なるわけです。ですから、実績を基礎にしてやる場合は、母船の全体の昨年の実績が九万三千トンだという場合においては、昨年はそのうちの一万六千トンが西カム実績であったのですから、その実績内においてはことしは一万三千トンに制限されているという新しい事実が出てきたわけなんですから、それはやはりすなおに認めた形でやっていくかどうかということで、別に質問するような問題でもないのですが、特に念のため聞いておくわけなんです。
  74. 岡井正男

    岡井政府委員 いわゆる母船つきの独航船西カムの一万三千トンというのは、やはり前年通りと仮定しますと、五十九隻出るわけですから、五十九隻に配分されるのがかりに一万三千トンとします。そうすると、五十九隻というものは差し引きますから、従って流し網と独航船の配分をされる船数はそれを差し引いたものによっての按分比になりますから、そう流し網と独航船は不公平なことにはなり得ないと思います。それは十分に私の方は考えて配分します。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は別に流し網の味方で言っているのじゃないのです。水産庁母船側、社会党は流し網側、そういう判断の上に立つと適正を欠いた答弁になると思う。その点は農林大臣からあなたの役所である水産庁の各位にも注意を喚起してもらいたいと思います。どうですか。それにこだわった立場でわれわれは質問しているわけではないのです。  その次に、あわせてこれは簡単な質問でありますが、海域内の問題ではありませんが、これとやはり関連がありますので、この機会にお尋ねしておきます。水産庁におかれては通達か通牒で「昭和三二年度さけ・ます延縄漁業の許可の取扱」なるものを関係都道府県知事に対してすでに流しておられるわけなんですが、それが最近またその方針が変るんじゃないかというような説も関係府県によっては行われておるのですが、そういうことになりますと、行政庁の行う指導とか通達とかいうものが時々刻々変るということになると、今後やはり行政庁のあり方というものに対して地方は非常に不信の念を抱くということになるのです。特にこれらの点は、地元関係との利害が非常に強いような問題の取り扱いの場合においてはなおさらであるというふうに考えるわけです。ですから本年度のサケ・マスのはえなわ漁業に対する、特に水産庁の態度は一貫してやっていかれる方針であるか、あるいはまたここらで一応態度を豹変してやるというお考えで進むのか、これは昨年度からはえなわ漁業を許可漁業にしたような経緯もありますから、この際態度を明確にしていただくことが適当ではないかと思いますので、これは大臣が御承知になっておれば大臣からまずお尋ねいたしたいと思います。しかし大臣としてもこういう通達を水産庁が流すということについて、全く関知しないというわけじゃないと思うのですがね。
  76. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいまの、水産庁方針がぐらぐらするようではいかぬではないか、まさしくその通りであります。私どももきめたことはその通りやりたい、かように考えております。ただきめた通りでありましても、筋を変えないで、その間に行政措置として若干手直しをするという場合はあり得る、その程度はあり得るということを御承知願いたいと思います。
  77. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その程度ではわからぬのです。われわれは漁業専門家でないですから、内容が具体的にわからぬと、なかなか納得できない。  それでは一つずつお伺いいたしますが、「昭和三二年度さけ・ます延縄漁業の許可の取扱」こういう通達でありますが、そのうち「方針」として、第一に、「さけ・ます延縄漁業沿岸零細漁業対策の一環として取上げられた経緯に鑑み四〇屯以上の漁船に対しては、今後許可しないものとする。」この方針はいかがですか。変えますか。
  78. 岡井正男

    岡井政府委員 変りません。
  79. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では第二点は、「本漁業の昭和三一年度における許可及び操業実態その他諸般の情勢に鑑み、今後極力その許可の縮減を図ることとする。」この点はいかがですか。
  80. 岡井正男

    岡井政府委員 できる限りそういうふうな考え方でありますが、今後、将来ともずっとそういうことでいくかいかぬかということは、漁況を私の方でもながめながら考えたい、かように考えております。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは府県側ではどういうように理解すればよいのですか。通牒にはこういうことが書いてはあるけれども、これを受け取った側ではどういうように理解して処理をするのですか。
  82. 岡井正男

    岡井政府委員 府県側も誤解はないと思います。
  83. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その次は、「昭和三二年度さけ・ます延縄漁業の許可は、次の場合に限るものとする。昭和三一年一二月末日をもって許可期間の満了したさけ・ます延縄漁船の船主経営者が同船又はその所有に係る同トン数以下の漁船をもって許可を申請した場合。但し次のものは許可の対象から除外する。(1)昭和三一年許可を受けて出漁しないもの。(2)昭和三一年許可を受けて法令に違反したもの。(3)母船式さけ・ます漁業独航付属漁船経営者漁船、四、三の適格要件を具備しないもの」、この点はどうですか。
  84. 岡井正男

    岡井政府委員 大体においてこの通りでございますが、中で一部たとえば兼業者は絶対にだめだというのはあまり厳に過ぎはしないかと思って、これは実情に即して善処したい、この点だけはさように考えておりますが、ほかはその通りでございます。
  85. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に試験船の取扱いの問題ですが、昨年はいろいろな情勢等に対処して、水産庁におかれては基本方針は四十トン以上のはえなわ漁業を認めないという原則をおきめになっておったけれども、完全出漁の態勢ができたものに対しては、便宜的な措置として昭和三十一年度に限って四十トン以上の分に対しては特に府県に許可するということにして、一カ年限り試験船としてこれを認めるということに扱われたのであります。ですから当初から一カ年に限るというはっきりした条件が付されてこれをお取り扱いになったのでありますが、本年度の方針によりますとこれを二カ年間に削減するという方針をきめて、本年度二分の一、来年度二分の一の方針のもとに試験船は一切なくするという方針をとっておるのでありますが、この点に対してもやはり基本方針通り臨む態度に変りはないか、いかがですか。
  86. 岡井正男

    岡井政府委員 これは許可とは異なりまして府県に責任を持たした調査船であります。従ってこれは日ソ関係で一応十二万トンというようにしぼられたわけでありますが、なお区域外においても小漁船相当活躍できる余地があるかどうかというものをもう少し調査を続ける必要があるかないかということを目下検討中でございます。この点はなお水産小委員会などでの先生方の御意向を十分に尊重しながら善処いたしたいと考えております。
  87. 芳賀貢

    ○芳賀委員 長官あなたは何を言っておるのですか。今聞いておるのははえなわ漁業に対する昨年の試験船の取扱いの問題をどうするかということなのですよ。昨年はいろいろな余儀ない事情もあるのだから一年限りということにして、これを許可船にしないで四十トン以上の分に対しては試験船という名前をわざわざつけて、一年限りということで出漁を認めたのです。本来からいうと一年過ぎた場合においてはこれは完全に消滅しなければならぬ船なのです。しかしその点に対しても考慮を加えられて二分の一ずつという方針で、本年度、明年度においてこの試験船、いわゆる四十トン以上のはえなわ漁船はなくするという基本方針に戻るためにそういう方針を明らかにされておるのじゃないですか。それを今度は北洋漁業等の関係があるからしてまだ調査の必要があるかもしれぬということになると、あなたの真意がどこにあるかわからなくなる。試験船の取扱いはどうするのかということを私は聞いておるのです。
  88. 岡井正男

    岡井政府委員 ただいま申し上げましたように、調査はもう必要ないという今までの見通しで、大体半分くらいでとめたいという考え方でありますが、しかしなお水産小委員会などでの従来のいろいろ御示唆もございますので、一応再検討して、結論をしばらく後に出したいと考えております。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は影響するところが相当あると思います。昨年の場合は調査を必要として試験船を認めたのではないでしょう。四十トン以上の取扱いに困るから一応名目を試験船ということにして操業させることにしたのであって、調査の必然的な必要から出発した試験船の五十五隻ではないと思います。こういうことはだれでもみな知っておる。今になってまたその必要があるかもしれないということになると、水産庁が言っているように、沿岸零細漁業対策の一環としてはえなわ漁業を存続させるという行政的な配慮があるとするならば、四十トンなら四十トンというところに一線を画して、それ以下の零細漁業に対してこの対象にするということであれば話はわかるけれども、これを温存して四十トン以上でも今度はやらせるということになると、根本的に方針がくるってくると思います。こういう点は、基本的な行政方針が一回きまった場合においては、ある程度の困難や障害があってもそれを貫いていくという努力がなければ、影響を受ける都道府県においても非常に困惑すると思いますが、この点は農林大臣としてどのようにお考えになっておりますか。あなたの所管内におけるたとえば水産行政は、こういうように基本を失って絶えずいろいろな力関係に脅かされてぐらぐらすることになるのを好ましいと思っておりますか。
  90. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 あるいは長官の配慮が実情に即してという面から出たかとも存じますが、ただいま芳賀委員の言われましたことは十分に承わりまして善処をいたす次第であります。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間の関係がありますので、本日は北洋問題並びにはえなわ漁業に対する質問はこれにとどめますが、当委員会としても、農林当局のこの取扱いに対する態度は、監視というわけにはいきませんが、今後十分に見守っていきたいと考えますので、大臣以下そのように了解してもらいたいと思います。
  92. 小枝一雄

    ○小枝委員長 永井君。
  93. 永井勝次郎

    ○永井委員 農林大臣に伺います。昨年以来日ソ交渉が運ばれ、今回も五十余日にわたって非常な努力のもとに交渉が成立いたしました。このことは農林大臣の手腕によってこれが成立したというべきものではなくて、国民的な世論の支持を背景にこれが成立したと考えます。そういうような立場からこの話し合いがまとまった。従ってこの日ソ漁業問題については、単にこれは母船がどうとか流し網の関係がどうとかいうような問題だけの立場から処理すべきものではなくて、わが国の水産業の将来の問題としてどうあるべきか、またその背景となるわが国の経済産業の立場からどうあらしめなければならぬという観点に立って、国民が期待しているような正しい処理の仕方をしなければならないものであると考えますが、これに対する農林大臣の心がまえを明確にしておきたいと思います。
  94. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 今回の交渉成立に当りまして果して国民諸君の御満足を得られますかどうか、私も内心じくじたるものがあったのでありますが、まさしくただいま永井委員の言われるような国民的背景のもとにとにもかくにも妥結をしたと考えております。従いまして今後の国内漁業の問題でございますが、これも御指摘にありましたように、バランスを失うというふうなことなく、やはりこれを全国民的な立場において考えて参るべきであるという点は同感でございます。
  95. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういたしますと、この交渉の経過なりあるいは交渉の話し合いなり、こういうことは、将来にわたって、日ソ漁業の問題がどういうふうに展開されるだろうかという展望の上からいたしましても、国民が非常に知りたいところであります。本委員会に配付されたものを見ますと、ここに「北西太平洋日ソ漁業委員会第一回会議の議事録」こういうものとあとは議事規則——何か資料を配らなければならぬから、まあこの程度のものを配っておけばいいだろうというのか、へのようなものしか配ってありません。本委員会がもっと知りたいことは、この経過なり何なりで、もちろん日ソ交渉でありますから、国際的な関係からいっていろいろなかけ引きもあったでありましょう、この間における交渉経過全部が公開できるというものではないかもしれません。しかしある程度の一これだけの関心とこれだけの支持を与えた国民に対する資料の配付としては、こういうものはあまりに冷淡といいますか、人をばかにしたようなものではないかと思うのであります。先ほど来の芳賀委員の質問を聞いておりましても、実績々々ということが言われておる。その実績ということは、もうすでに過去の事実として確定したものである。そういうものすら的確な答弁をなさらない。こういう経過の内容は、この委員会だけが知らないんで、業界や何かは細大漏らさず知っているような状況でありますが、そういうものまでもこの委員会では質疑の過程において表明されない。あるいは資料としても何ら配付されない。まあおれの方で正しくやるんだから黙って結論を待て、こういうお考えなのかどうか、こういう扱い方の問題に対して大臣の御答弁をわずらわしたい。
  96. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 決して特に交渉の内容を申し上げずにおくというつもりは毛頭ございません。従来も機会がありますれば大要を御報告申し上げて参ったつもりでございますが、一方交渉のために忙殺をされまして、思うようにならないで——あるいは御満足のいかたかった点もあろうと思います。けれども今日の段階においては、御要求がありますればできるだけ的確にお伝えをいたしたい、こう考えております。
  97. 永井勝次郎

    ○永井委員 それではお伺いいたしますが、もし数字の内容なんかにわたって大臣がこまかくおわかりにならなければ長官からでもけっこうですが、ソ連との折衝の過程で数字が出たと思う。その数字を最初からずっと経過的に、どういう数字を出して折衝し、それがどういう経過をたどってどこに落ちついたか、時間がありませんので簡単でいいですからぱっぱっとお知らせ願いたい。
  98. 岡井正男

    岡井政府委員 先生から御指摘がございましたが、実際問題としてお配りしたものが——両国の記録として残っているものはその程度でございまして、それをお配りしたわけでございます。従ってあとは口頭の交渉過程における双方のやりとりが中心になっておるのでございます。従いまして先ほど申し上げましたように……。
  99. 永井勝次郎

    ○永井委員 議事進行。これはいろいろな弁解は要りません。数字はこうであったということを言えばいいのです。言えなければ言えないと言えばいいのです。くどくどした答弁は要りません。
  100. 岡井正男

    岡井政府委員 当初こちらの方から出した数字は十六万五千トンです。それに対して向うの方が言うのは、当初、不漁としてあるから大体八万トン程度が適当でないかというような口頭の数字が出たわけでございます。従って数字といたしましては十六万五千トン、それから向うの方からは八、十の数字が出たわけでございます。(「言えなければ言えないと言えばいいんだよ」と呼ぶ者あり)その間の委員会で出たのはそういう数字でございます。その他は委員会から上の段階で政治的な御折衝があっただろうと思いまするが、それは一つお許しをいただきたいと思います。
  101. 永井勝次郎

    ○永井委員 言えないというならば、また別の機会に本委員会で論議する機会もあろうと思いますから、本日はこの程度にとどめます。  先ほど長官は、この十二万トンの総ワクを持ってきて、総ワクの内輪でどういうふうに分けるかという段階で、これは利害が相反する条件がたくさんあると思います。でありますから、そういう長官の御心配だろうと思うのですが、芳賀委員が質問しますと、質問しない先まで先回りして、流し網に得だとか得でないとか言うようにまで神経過敏になっておるように、問題はいろいろあると思います。やはり母船式と流し網とこういう大きな系列の中における大網の中でまず対立がある。それから母船式の中に持っていっても、ある一つ母船中心にして、ここに独航船をたくさんくっつけてやろう、ある母船には独航船を少く削ってやろうというように、母船式は母船式の内部でまた問題が残っておる、こういうふうに思います。そういう個々の問題はもう少し先へ行ってから論議いたすといたしまして、先ほど来長官は、公正にやる公正にやる、こういう公正にやる一つの基準の条件として昨年の実績一つ、それからその他のもろもろの実績一つ、それからコマーシャル・ベースを考える、大体この三つの基準に基いて配分を考える、こういうふうに答弁されたのでありますが、これに誤まりありませんか。
  102. 岡井正男

    岡井政府委員 その通りでございます。
  103. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういたしますと、昨年の実績が問題になる、それからその他の実績が問題になる。これは原則的なことですから発表できると思うので、昨年の実績はどういうふうに統計を出しておるか、その他もろもろの実績というものはどういうふうに出しておるか、これを明確にしていただきたい。
  104. 岡井正男

    岡井政府委員 これはそこまで言いますと数字がほとんど出てしまいますので、この一両日の間にはっきりいたしますので、次回適当なときに適正公平な資料を持ってかようにいたしましたという御説明の時期も間近にありますので、それまで一つお許しをいただきたいと思います。
  105. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほど来長官は、役所の見たもろもろの正しいと思う数字を用いる、こう言う。その役所の正しいと思う数字が果して正しいのかどうかということは、これは第三者的な批判に待たなければ、公正であるかどうかと言うことはできない。ところが一方的に独善的におれの考えることは正しいんだ、こういうふうなおっつけではこの委員会は了承しがたいと思います。でありますから、話がきまってしまってから、こういうふうにしてやったんだとあとの祭になってはいけないのです。何といいましても今度のこういうような交渉というものは、先ほど大臣がお答えになっておりますように、国民的な世論を背景として出した。従ってその結果が一将功成って万骨枯る、母船だけが利益をとって、そうしてあとのものは、のほほんと口をあいて、あれよあれよという間に問題はきまっちまった、こういう始末になってはいけないのでありますから、この配分の基準が昨年の実績、その他の実績、それからコマーシャルベース、こういうふうな三つの基準でやるという以上は、これはもう一つの個々の会社の、日魯がどうであろうかとか、日水がどうであろうかとか、大洋がどうであろうかとかいう問題ではないのでありますから、こういう数字が出せないということはないと思うのですが、大臣いかがですか。先ほど来資料は十分に出します、ごう大臣がお話しになったのですが、こういう問題は、実際そういう具体的なことでなしに抽象論で問題を進めるということは、われわれは了承しがたいと思います。
  106. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 御案内のように水産庁当局も、ついこの間まで相手方との交渉に心血を注いでおったわけでございます。従いましてきょうも引き続いて作業をいたしまして、国内措置の問題を解決をしなければならぬわけであります。でございますから、ここで今その数字を示すようにと言われまするが、もう少々準備に時間をお与えいただきまして、いずれしかるべき機会に申し上げたい、かように考えております。
  107. 永井勝次郎

    ○永井委員 この結果が来月きまるんだというようなことなら大臣のお話でいいです。ところが先ほど来水産庁長官は一両日に発表できるだろう、こう言っておる。本日の新聞で見ますと、この日ソ交渉の議長をやりました平塚さんが函館に帰って、いろいろ談話が新聞に出ております。母船式はこれだけで、流し網はこれだけになるだろう、間違ないだろう。そこまで数字がきまっておるのに、一両日にきまるんだ、適当な機会にと言う。適当な機会というのは、もう問題がきまってしまって、事後報告になってしまう。それは審議過程においてこれが正しいかどうか、決議機関である議会が行政庁の監督の立場にあり、行政をあやまちなからしめようとして、こういうふうに昼飯も食わないでおそくまで論議しているわれわれの誠意に対してこたえるゆえんじゃないのじゃないかと思うのです。でありますから、私は実績というのですから、これは過去の——これからの予定されるいろんな作業の問題とは違って、これは過去の数字のいろんな計算の仕方だとか、もしこれが先ほどから言っているように公正な数字であるというなら、公表したって何も差しつかえない。一つの日魯はどうなるんだ、日水はどうなるんだという質問なら、これは今の段階で答弁できないということは言えるんですが、配分の基礎の材料となる、基準となるこれらの数字について言えないということはないと思う。
  108. 岡井正男

    岡井政府委員 たとえば四十八度以南の流し網にいたしましても、航海日子あるいは航海回数、基地へ帰ったのがどういうふうな姿であるかというものはずっと積み上げて勘定しております。そうして母船式のものは九万三千トンははっきりしております。推定でありましても流し網の方に対してあとで納得の行くような説明のできるように、できる限り遺漏のないような積み上げ計算をいたしておりますので、今その数字を読み上げろと言いましても、今の間には合ないわけであります。これは正直なところその通りお答えするより手がないと思います。
  109. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうすると、間に合わない数字を基準にして配分を一両日中に答えを出そうというのですか。
  110. 岡井正男

    岡井政府委員 お答えいたします。今間に合わないと申し上げたので、徹夜してでもなるだけ早くやろう、こういうつもりでおります。
  111. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうならば、この正式決定の前に、その作業が何も一日、二日発表を急くというわけじゃないんですから、それならその積み上げた数字をこの委員会に発表するということは約束してもらわなければ、そうですがと言ってわれわれはここで了承することはできません。母船式の九万三千トンはきまっています。しかし総ワクがきまらないのですから、相手方の流し網の方は、長官は先ほど来の答弁の言動から見て、流し網には相当しわ寄せをしようというような心組みらしいから、うしろ暗いところがあると見えて、盛んに流し網には不利になりません、なりませんと弁解し、予防線を張っているようでありますが、そういう事情でありますから、九万三千トンのプラスになる数字をどれだけ見るかということが問題だと思うので、これは大臣お約束していただけますか。正式決定、割当を配分する前に、本委員会に諮って後に決定するということが約束できるかどうか、お答え願います。
  112. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 もちろん国会の委員会における皆様方の御意見というものは十分尊重して参るつもりでございます。従いまして、これが決定はいわば行政の仕事でございますので、その分野はなかなか微妙な点はございましょうけれども、今の資料というふうなものに関する限りは、これはできるだけ御要請にこたえたいと考えます。
  113. 永井勝次郎

    ○永井委員 行政権限と決議権限の区分は承知して話しておるつもりであります。これはぜひそうしてもらわなければ、こういう問題だけに、国内の行政権限の範囲内で問題がおさまるものじゃありません。もし下手にしますと、これは大騒ぎになります。沿岸漁民は騒ぎます。もちろん国際的にも響いて参ります。そういたしますと、来年からの交渉その他にも決してプラスになる条件はないと思う。また日本の国の水産行政の面から見ても、十二万トンを持ってきて、内輪でごたごたしたというような、みっともない結果になってはいかぬと思うので、そういう心配も考慮して私はお尋ねをいたしておるわけであります。そこで国際的にも影響があるから、ここで行政権限できまっただけでおさまるものではありません。来年に影響もしますから、特にこういう問題については考慮してもらいたい、こういうことを言っているのです。  それから第三点、これは大臣にお伺いしたいのですが、コマーシャル・ベースを条件としてとるという。これはコマーシャル・ベースをとるとしたら大へんな問題だと思いますが、基準は、ただ単に去年の独航船の方の計数はどうであったとか、収益はどうであったとか、流し網の方はどうであったとか、こういう野蛮な原始的な数字計算だけではコマーシャル・ベースを条件とするなどということにはなりません。コマーシャル・ベースを基準にするというからには、もっと合理性を持った内容でなければならない。こういう非常に幅のある、角度によってはずいぶん違うコマーシャル・ベースを条件としてとるという以上は、相当慎重に検討され、学問的にもあるいは実際的にもそういう問題が組み合されたことと思うのでありますが、一体コマーシャル・ベースをどういう基準によって取り上げるのか、その基本的な内容を示してもらいたい。
  114. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 コマーシャル・ベースという言葉が当るかどうかわかりませんが、少くとも北洋漁業という一つの経済的な仕事でございまするから、広い意味で、経済面と申しましょうか、そういうものが一つの要素として勘案せられるという意味に御解釈をいただきます。
  115. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほどコマーシャル・ベースとおっしゃったから私もコマーシャル・ベースと言ったのです。そこで、コマーシャル・ベースでとろうとするならば、現状の固定した条件でコマーシャル・ベースのファクターをいろいろとるのか、あるいは合理化していけばこうなるという条件等も入れるのか、あるいは今までの短かい期間の試験時代、あるいは制限があったとか漁期が非常におくれたというようないろいろな条件の中で、それをどういうふうにプラスし、どういうふうにマイナスし、正常な形ではどういうふうにすればコマーシャル・ベースでわれわれ第三者が納得できるような正当な資料が出るかということについては、相当問題があるだろうと思う。大臣は、コマーシャル・ベースという条件をこういう漁業の上において出すだけの自信があるかどうか。それを伺いたい。
  116. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 理論的に詰めて参りますると、今、永井委員の言われるようになかなかむずかしい問題であろうかと思うのであります。しかし、やはり一つの経済につながる仕事でありまする以上、これを全く無視するというわけにもいきかねまするので、一つの参考に供さなければいかぬのではないかと考えます。
  117. 永井勝次郎

    ○永井委員 参考にするだけならけっこうなんです。しかし、それを配分の基準にするというからには、いいかげんな参考程度資料ではわれわれ納得できない。しかも非常に問題のある条件でありますから、資料に基いてこれは正しい、これは正しくないという批判がなければ、行政当局がただ計算しただけではわれわれ納得できない。  なおいろいろ問題がありますが、こういうような不確定条件をここへ出してきて、過去の実績、その他の実績というふうに実績にもいろいろ条件をつけてきて、そうしてそれに非常に問題のあるコマーシャル・ベースを出して、大きく言えば母船と流し網との利害関係母船母船との間におけるいろいろな条件の焦点をずらしてやるところに官僚のずるい手品があるようにわれわれは考える。そういう点においてこれは問題であると思う。もっともこまかい内容にわたって質問しようと思いましたが、こういう不確定な条件の上に立っていろいろ言ったって何にもなりませんし、きょうはほかにも用事がありますからこの程度でやめますが、先ほど芳賀君が言ったように、井出農林大臣だからこれはやれるはずで、しろうとだといったって、常識も円満であるし、身辺が非常に清潔であるということに対してわれわれ万幅の信頼を置いたのです。清潔な身辺で正常な常識をもって判断するならば、原子力がどうだとかいうむずかしい問題とは違う。利害がからんでいたとしても、利害に関係なく判断すれば正しい結論が出ると思うのです。でありますから、残すところは、農林大臣が事務当局や何かのよこしまなことをやろうとするのに対して戦うか戦わないか、勇気があるかどうかが問題を左右する条件だと思うのです。政府は武器等製造法案というものを出しましたが、空気銃をどうするか、猟銃をどうするかということは表面だけで、そういう法律を出しておいて、今度は政令で機関銃をどうするか、銃弾をどうするかということをきめている。そういうずるいことだって何ぼでもやれる。表は空気銃、猟銃であるが陰では機関銃、銃弾と本物を出してくる。電力料金の改訂も、表面はこう出しておいて、陰ではどうでもやる。こういうずるさとごまかしにわれわれ議会がたぶらかされて、それぞれの条件で、過ぎてしまえばしようがないじゃないかということで過しては、官界も政界も粛正ができません。  どうかりんとした勇気を持って国民の期待に沿うような結論を出していただきたいということを希望いたしまして、残余の質問は次の機会に譲りたいと思います。
  118. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 永井委員の御発言、よく承わりました。ただ、今の御発言の中に官僚に対する御批判がありましたが、私は水産庁長官以下、行政のニュートラリティを維持しておると考えておりますので、一言申し上げます。
  119. 小枝一雄

    ○小枝委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十七分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  120. 小枝一雄

    ○小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより全購連の事業運営の問題について参考人の方より御説明を承わりたいと存じます。参考人各位には御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席下さいまして、厚くお礼を申し上げます。  最近全購連の事業運営をめくって種々の事件が報道され、当委員会といたしましてもきわめて重大な関心を持っておりますが、この際直接その仕事に当っておられます参考人の各位及びこれが指導監督に当っておられます参考人の方より事件の内容につきまして説明を承わりたいと存じます。  なおこの際委員各位に申し上げておきますが、参考人といたしまして、本日は全購連の田中会長、全国農業協同組合中央会の荷見会長が御出席でございます。全購連の総務部長が御出席の予定でございましたが、取り込みの事情がございまして本日御欠席でございます。なお荷見会長は特に事情がございまして三時半には退席いたしたいとの申し出がございますので、さよう御了承願います。大体会議は四時過ぎには終了いたす都合でございますので、各位におかれましてもそのつもりで御発言を願いたいと思います。(「そうは簡単にいかぬ」「議事進行について」と呼び、その他発言する者多し)それでは参考人の御発言を願います。     〔「議事の進行について」と呼び、その他発言する者多し〕
  121. 小枝一雄

    ○小枝委員長 山田委員
  122. 山田長司

    ○山田委員 ただいま委員長から時間の制約についてこの御発言でありますが、きょうは全国の国民が非常に関心を持っている問題でありますだけに、一つ最善の時間をおとり下さいますように切にお願いしたいと思うのです。どうぞ一つ委員長からそのことを参考人各位にお伝え願いたいと思います。
  123. 小枝一雄

    ○小枝委員長 委員長といたしましてもでき得るだけの時をいただきたいと思っております。参考人の各位におかれましても、でき得るだけ一つ時間を与えていただきいと思います。  それでは参考人の荷見会長より御発言を願います。
  124. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 議事進行に関して。一つ全購連の田中会長から、先に経過の報告を求めます。荷見参考人意見は、この際各委員の質問に答えてもらいたい。まず田中全購連会長の経過の報告をしてもらいましょう。
  125. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それでは田中全購連会長から経過の御報告を願います。
  126. 田中順吉

    ○田中参考人 私全購連の会長の田中順吉でございます。去る六日に一応会長並びに理事は辞職をいたしているわけでございますが、この際参考人といたしましての喚問によりまして、御報告申し上げたいと存じます。  まずもってお断わりしておきますが、小沼専務理事の召喚を受けておったわけでありますが、旅行をいたしておるようでございまして、行き先を取り調べておりますけれども、現在までわかっておりませんで、ここに出席することができなかったのであります。かわりまして真板総務部長を出席せしめるような取り計らいをいたしておりましたけれども、今朝、会内に取り込みの不幸が起りましたので、その措置のために、今出ることができませんで、はなはだ相済みませんけれども、欠席いたしておりますことをお認め願いたいと存じます。  全購連におきまして、さきに河村秀郎なる一職員によりまして公金詐取、費消という不祥事件を起しました、さらにまたその後におきまして、贈賄あるいは横領というような被疑事件を会の内部に起すに至りまして、世間を騒がすとともに、農協全体、さらに全農家に対しましても非常なる衝撃と申しますか、さらにまた系統農協に対する不信感を招来するという不祥事を起し、また関係各方面の皆さんにも非常な御迷惑をおかけしておるような次第に相なりましたことは、その責任の地位にあります私といたしまして、監督の不行き届きでありまして、何ともおわびの申し上げようもないわけでございまして、真に心から恐縮をいたしておる次第でございます。さきに三月二日に経理部の河村秀郎なるものが警視庁に連行されまして、取調べの結果逮捕となり、その取調べの結果起訴に相なっておりますが、現在までに判明しておる事態といたしましては、五千数百万円の公金詐取の被疑があるというようなわけでございまして、これは目下当局においてさらに取調べの過程にございますので、それ以上の内容といたしましては、まだ明確にここに申し上げる段階には至っておらぬわけでございます。この事件が発生いたしましたにつきましては、私どもその責任にあります者といたしましては、当然その善後措置なり、あるいは対策等につきまして、当然とるべき最善の処置を尽して参ったっもりでございますけれども、全農協、農民に及ぼしました影響あるいは動揺のあまりにもはなはだしきにかんがみまして、何としてもこの際にわれわれは責任をとっておわびするほかはないということで、直ちに理事会を開きまして辞任の申し入れをしたのでございますが、理事会におきましてはなお常勤役員が私と同時に辞任を申し出まして、これを役員会に申し出ましたところ一役員会といたしましてはこの際、これは理事あるいは監事全体の責任であるので、ひとり会長、常勤役員だけの責任をとることによって事態をおさめることはできない、役員全体が当然責任をとるべきであるということに相なりまして、去る三月三十一日に会員であります全国の各府県の県連会長会議を開きまして総辞職の申し出をしたのでございますが、会長会議意見といたしましては、この責任をとるべき考え方についてはわかるけれども、当然事件の措置を完全にやる、また今後の会の運営についても遺憾なきょうな対策を立てて、事件の収拾をした上で措置をとるべきものと思う。もう一点は、本年の五月ないし六月におきましては全国の県連の大部分の役員は任期が満了いたします。その際に当然改選の結果現在の県の会長がかわることもあり得るので、そうした県連の会長の任期満了によって改選の後において、総辞職を認めることによって全購連の役員の改選を行うことにすべきであるという結論に相なりまして、われわれといたしましては会長会議の意思に従いましてそれまでこのままで踏みとどまりまして、それらの今後の最善の処置をとることにして参っておったのでございますが、今月の二日に至りまして突如として経理部長の立岩順一が警視庁に連行されまして、これは贈賄被疑ということによりまして逮捕されるに至りました。さらにまた数日置きまして前の主計課長でございました川原三なるものが、これが横領被疑ということで、さらにまた逮捕されるというような事態に立ち至ったのでございます。その事件の内容につきましては、もちろん現在当局において捜査中でございますのでわれわれにもその内容はわかりませんし、また必要な帳簿、書類というようなものが河村事件以来押収されておりますために、会の内部におきましてこれを十分に調査して、実態を把握するということも非常に困難でございます。でき得る限りの手を尽しまして、会自体といたしましてもその真相の掌握に努力はいたして参りましたけれども、遺憾ながら完全なものが把握できないし、何分にも捜査の最中でございますので、内容につきましては何ら御報告申し上げることはできない現在の段階でございます。つきましてはさきに申し上げましたように、五月ないし六月の県連の会長の改選期後において総辞職、総改選をするという予定は、もはや新事態の発生によりまして、それまでこのままでじんぜん日を過ごすごとには参らないということに相なりましたので、急遽去る六日に役員会を招集いたしまして、新しき事態の発生したことの報告をいたしますとともに、さらにわれわれ会長並びに常勤役員の責任の重大であることを痛感いたしまして、前の会長会議の申し合せばございますけれども、どうしてもこの際にぜひとも辞任を認めていただいて、そしてわれわれの責任と、また組織農民全体に対するおわびにかえたいということで相談をいたしました。その結果役員会におきましては、事態ここに至ればやむを得ない、しかしこれは会長、常勤役員のみをもって辞任することにおいて解決のつく問題ではない、全役員は当然この際に辞任をすべきであるという結論に相なりまして、直ちに臨時総会を開きまして改選を願うという手続をとることに相なったのでございます。しかしながら法定上の招集手続の問題もございますので、本月の二十日に臨時総会を開くことに相なっております。ただしその際におきまして、総辞職とは申しましても、総改選をいたしますとこれは任期を更新いたまして、新しい役員はさらに三年の任期になるわけでありますが、そういたしますとさきの申し合せと若干食い違う点が出て参りますので、この際は補欠選挙にするという考え方と、この総会開催によって改選いたしますまでの十数日の期間の空白をできるだけ会務の運営上支障なからしむるための措置といたしまして、副会長並びに常任監事の二名の辞職を保留いたしまして、あとの職員の改選を願うというような、異常な措置をとって参っておるわけであります。以上のような一応の経過をもちまして、本日に至っておるわけでございます。さらに御質問によってお答えいたしますけれども、大体の一応の経過だけをお伝えいたしまして、私のお答えといたします。
  127. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 質問に先だちまして一言申し上げたい。それは、私はこの質問を全国の農民が非常な注意と関心をもって見ておると思いますが特に質問に先だって、私の先輩とかあるいは同僚が、この質問が農協運動の一つの大きな後退になるのではないか、こういうような御心配のあまり注意して下さった方もありますが、私はそうでなくして今日の農協がほんとうに農民の利益機関としてのますますよりよい発展をこいねがうために、あえてこの質問をいたす次第であります。  私も長い間農協人として、しかも指導連合会の会長として就職しておったので、この間の事情並びに会長の気持はよくわかる。しかしながら、私はあえてこの質問を全国の農民のためにするのでありますから、時間がございませんようですが、一つ率直、簡単、明瞭にお答え願いたいと思います。  それから委員長にお聞きさするのですが、きのうは、小沼専務をぜひ参考人として呼んでいただきたい、こういうことをお願いしたはずなんですが、出席できないのはきわめて遺憾でございますが、なぜ小沼さんは出て来られなかったか、まずお伺いしたいと思います。
  128. 田中順吉

    ○田中参考人 私といたしましては、小沼専務の行動につきまして何らここで申し上げる自信はないのでございまして、本人の都合で、県の連合会の方の会長もやっておりますので、あるいはその方に出向いたのではないかというので、直ちにその方に連絡をとらしましたけれども、連合会の方にも行っておらないというようなことでございまして、どういう要件でどういう方向に参りましたか、私としてはここで自信のあるお答えをすることができないことをはなはだ遺憾でございますけれども、御了承いただきたいと思います。
  129. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 少くともきのうの午後四時までは東京におられたはずなんです。それは私の事務室へ向けて、この問題に関して職員の方、しかもそれは有力な職員の方が参られて、この質問に対する阻止方を陳情に来られております。そのときの率直な話では、小沼専務が参考人として呼び出されたならば、何を言い出すかわからぬ、これ以上の重大なことを委員会の席上で発言せられたならば、とんでもないことが起るから、ぜひどうぞこの小沼専務だけには質問しないようにというようなことを言って来られた、こういう事実を会長は認められますか。
  130. 田中順吉

    ○田中参考人 私といたしましては、そういうことを申し上げるように指示をいたしたり、また小沼専務がそういう意味において、今日出席しないようにというような指示とか命令は私としては絶対にいたしておりませんことを申し上げます。
  131. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 そうすると、会長が専務の行動は、しかもこういう重大な段階になってきてわからないということになりますと、一体会長と専務との関係——ここに四月八日の朝日新聞がありますが、彼は、役員はつんぼさじきだと言っておりますが、会長もそのつんぼさじきに置かれているわけですから、一つ率直にお答えを願いたい。
  132. 田中順吉

    ○田中参考人 小沼専務の新聞記事になりましたことにつきましては、私としてもこれは小沼さんの意思によって話したことであると思うのでありまして、またその新聞記事そのものも、あるいはその通りであるかどうかも私としてはわからぬのでございますが、少くともつんぼさじきとか、浮いておるとかということにつきましては、あるいは小沼専務そのものについては、そういう感じなりあるいはあれがあったかもわかりません。従って私は小沼専務が浮いておるかどうか、私のところまで重要な問題がこないで、私が知らないで済んだこともあるのではないかという気もいたしますが、少くとも、ことに会長は会長としての会の基本的な方針、運営上の重要な問題につきましては当然指示もいたしますし、また相談も受けるわけでございます。また専務は専務の立場においての段階でございますから、そこまでくる問題であって、私のところまでは当然こないということも、これは会の運営上あるいは内部のルールにおきましてもきまっておるわけでございます。従いまして、私は小沼専務が浮いておった、私も事実上浮いておった面もあるかもわかりませんが、私はすべてにおいて浮いておって、何らわからぬのだということは申し上げられない、かように存じております。
  133. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 それでは会長は、小沼専務が浮いているといまいと実権はすべて会長が握っておられるというのであれば、私はそれで大へんけっこうだと思うのですが、その認識の上に立って二、三重要な質問をしてみたいと思います。  昨年以来肥料の含み資産が莫大な金が隠されておる、こういうようなことを伝えられておったのでございますが、そういう事実は御承知でしょうか。
  134. 田中順吉

    ○田中参考人 これにつきましては事後の報告を受けまして承知をいたしたことはございます。最初から私がそういう方針でやるべきであるという指示をするとか、あるいは運営の方針をきめたとかいうことは毛頭ございません。
  135. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 莫大な肥料の含み金がある、こういううわさは、小沼専務によって——しかも当時は常任監事であった、その常任監事の監査の結果、莫大な含み資産を発見した、こういうことをいっておりますが、そのくらい莫大な肥料の含み資産を持つほど、一体肥料というものは利益をとっているのか、われわれは少くとも農民には、全購連として末端農協を通じて耕作農民には少しでも安い肥料を配給せなければならぬと考えております。しかしながら、いろいろ末端農協には、農民の声として、どうも農協の肥料が高い、商売人から買う方が安い、こういうようなことを耳にするのでございます。しかも単協では購買貯金をやらされ、そしていやおうなしに申し込んだらその貯金から代金が落されるというようなことで、高い安いと言っているのじゃない、品物が来ると同時にそれが落されている。こういうことでまるきり前渡金で肥料を買わなければならぬというような状態に置いているのに、ひとり全購連だけは数十億というような莫大な利益を得ているというのは、ほんとうに農民の利益機関であるならば、こういう莫大な利益を得ずに、農民に安い肥料を売るのが私は当然ではないかと思うのですが、この点の明快なお答えを願いたい。
  136. 田中順吉

    ○田中参考人 御承知のように私も多年農協に関係して参っておりまして、お説のごとく、購買事業におきましては、肥料にいたしましてもその他の扱う物資がすべてできる限り安く組合員に提供できるということが使命でございますから、そういう方針に従って経営をやるべきであるという基本的な考え方に基いてやっておったつもりでございます。ただいま御指摘の含みの問題は、数十億とおっしゃいましたが、これは五億何千万というようなことになっております。これは実はカリ肥料の取扱い、すなわち輸入肥料でございますので、昭和二十七年ごろから八年、九年、三十年というように、年を追うに従いまして当時は外貨の制限等によりまして非常に輸入量が少なかったのでございますけれども、漸次外貨のワクも増大して参りました。また一方日本におけるカリの消費も非常な勢いで増大して参りました。二十六年当時たしか二十五、六万トンであったと思いますが、それが最近では七十万トン以上にも達するというような急激な増加でありまして、その間におきましての急速な需要の増大ということは、これを取り扱う過程におきましてその輸送でありますとか、船からの荷揚げでございますとか、包装でありますとか、あらゆる方面において非常な合理化が実現したわけでございます。従いまして、その間におきましてはいつも全購連のカリ肥料は、末端に、商人の価格と比較いたしますと最低十貫につきまして二、三十円、多いときは約百円近い安い値段で実際は供給ができておるのでございまして、それはわれわれの方でも取り調べた資料もございますが、そのくらい安く配給いたしましても、取扱い上の合理化によってある程度のなお残余ができました。これは非常に国内肥料と違いまして、年間二回の外貨割当によって向うに値段をきめて発注いたしましてから、現品が入りますまでには三カ月あるいはそれ以上もかかりますし、また半年以上先のものを外貨の割当によって購入しておかなければ、需要期に間に合わない、こういう輸入肥料としての特別の要素がございますために、非常に都合よくいきますときは、ああいうふうにかなり安く配給いたしましてもなおかつ余剰があったのでございますけれども、一たんこれが逆の状態になりますれば、相当大きな犠牲が当然伴うという危険性のあるものでございますので、当時の担当の者といたしましては、やはりある程度の機動性といいますか、クッションを持っておらなければ、円滑な仕事ができないということで、過去のいろいろ相場の変動によって受けました苦難にかんがみまして、何とかそういう場合のこれを一つの補てんの財源にしたいという考えから保留したというわけでございます。私もそのことを承知いたしまして、これはそれにいたしましてもかりにそういう含みがありましても、何もこれは全購連自体のものでなくして、要は組合員のものである、農民のものであるから、そういうふうな事業上でやむを得ない場合の機動的な財源に充てることはやむを得ないことであり、また年間七百億に上る事業をやっておりますためには、かなりのそういうゆとりもなければ、当然行き詰まるということも予想されまずので、若干の含みを持つ、またある期間を経ましたならば、当然それぞれの手続を経まして組合員、県連に戻すなり、あるいは会の成規の積立にするというような当然の手続はとるべきであるという考えでございましたが、たまたまそうした手続が手おくれをいたしておりまして、非常にこの問題が大きな疑惑を生むに至りましたことは、何といたしましてもわれわれの不手ぎわと申しますか、非常にその間の手続がおくれましたことによって、何とも申しわけのない結果に相なりましたけれども考え方といたしましては、そういう考え方でございましたことを御了承を得たいと思います。現に本年に入りましては、カリにおきましては、その当時と全く逆の情勢に相なりまして、現在、本年度春肥におきましても十万トン以上の過剰であります。外貨ワクの非常な増大によりまして、輸入は非常に増大をいたしました。現在需要量をオーバーする十万トンという在庫がございます。従って業者もこれに対しては非常な売り急ぎをいたしまして、値くずれで全国至るところにダンピングが出て参りました。全購連といたしましても、さっき申しますように、半年先のものを買いまして、農家の需要量を取りまとめておりますので、これに応ずるための手当をすでにいたしておりますが、これがわれわれの仕入れ価格が十貫、八百三十四円でありますものが、現在八百円にしか市価は通らないという事情でございます出ために、さきの含み益から価格変動準備金として積み立てておりましたものを、この際役員会の決定によりまして、二億五千万円を取りくずして、この値下りの補てんに充てる、こういう事実がすでに出て参っております。これはやはり農民のために今後の価格の変動に処してのそうした正しい手続による準備をいたすことは必要である、かように感じておりますが、過去におきましては、そういう手続のやり方が非常にまずかったということを一つ御了承いただきたいと思うのでございます。  なお、非常に高い手数料を取ったとか、全購連がもうけとたいう批判はございます。ただ含みがあったということからそういう批判はあるということは当然でございますけれども、手数料そのものは総会できめておりまする手数料以上のものはどの肥料につきましても取らない、またもちろんこれは共同計算で清算をいたしますので、全国の各連合会から代表者が出て参りました審議委員会に付しまして、仕入れ原価すべてをガラス張りで公表いたしまして、その委員会で最終価格は決定をいたしております。  なおまた、さっき予約と同時に先金をとるというお話がございましたが、事実これは予約の際に大体予定価格の八割程度の予約金を集めております。これには当然それに相当する金利を付して清算の際にお返ししておりますので、決して先銭を取って、その金利をこちらが取っておる、こういうことはございませんので、その点も申し上げておきます。
  137. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 田中会長は十数年も全購の会長をやっておられるので、なかなか御説明はうまいのですが、現実にはそういう含み資産をこしらえて、それが職員の特別賞与とか、あるいは役員の慰労費に使うとか、慰労金にするというようなことでは、あなたがどのくらいうまい御説明をなさっても、全国の農民は納得いたしません。職員に特別賞与を出したり、役員に特別慰労金を出すようなそういう金があるなら、なぜ農民に安く肥料を渡さないか、こういう問題です。あなたは農民の利益代表として末端農協から出てこられ府県の会長をなさって、そうして全購連に出てこられたほんとうに農民の気持を一番よく知っていられる会長ですが、十年も十数年も全購連の会長にすわっていたら、農民の気持を忘れて、全購連の利益のためにのみ走っているように思われるが、この点はどうですか。
  138. 田中順吉

    ○田中参考人 ああいう結果からいたしまして、そういう御批判を受けることはやむを得ないと思います。甘んじて私はその批判と御叱正は受けます。ただし若干の、職員に賞与というようなことはございますが、これはそう多額のものを出したとか、あるいは非常に不当なものであるということはないと思いますけれども、ただそういう事実があるということによりまして、ただいまのような御批判がありますことは、甘んじて受けますとともに、私どもほんとうに正しい視野に立って、そういう批判がないように正しい反省のもとに今後はそういうことの絶無を期さなければならないということは強く反省をいたしておるわけでございます。
  139. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 そこで中央会の荷見会長にお尋ねをするのですが、あなたの方は全購連に対して監査の指導をなさっておると考えておりますが、そういうような全購連の指導に対しては、あなたはこの現実の問題に対してどういうお考えを持っておられますか、お伺いしたい。
  140. 荷見安

    ○荷見参考人 中央会の監査は、いわゆる監査の指導でございまして、府県において行う監査あるいは中央の各団体において行う監査を適当にすることを指導する役目を持っております。御承知の通りであります。それでありますので、その方面には十分努力しておりますが、ただ私現在でも、前からも同じように考えておりますのは、その指導の機構がきわめてわずかでありまして、私が考えるような十分な活動をするのにははなはだ不足な点があるということを考えております。それで本年も若干その方面の機構を増加する予算を先般の総会でも決定いたしましたが、それはかような問題が起ります前でございます。今後は一そう強化いたしたいと存じまして、関係の方とも協議をいたしております。
  141. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 中央会長として当然なことだと思うのです。大体中央会の経費というものは、全購連、全販連、中金というようなものから出されておるし、特に中央会の会員に対しては、私が全国指導連の理事をやっておった当時は、全購連が賦課金すらなかなか出さなかったような状態です。従ってあなたの方は全購連には頭が上らぬということは当然なことです。会長、あなたの気持はよくわかります。ところがこういうふうな大きな含み資産を持ちながら、それを農民に発表せずに持っておるから、いろいろな問題が起るのです。農林省の渡部経済局長がおられるのでまことに言いにくいことだが、この間本委員会のときには、そういう役人がおったら、もう農林省へは一日も帰さないですぐ出ていってもらうんだ、こういうようなお話すらあったのですが、過般の新聞を見ると、農林省の課長やあるいは係長が毎晩のごとく料亭で豪遊してマージャンをやり、あるいは二号、三号を持っておるというようなことが出ています。これは経済局長、この間の答弁なら、あなたの方の部下には一人もそういう人はいなかったはずですが、どういうようなお考えですか。
  142. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 先般お答えいたしましたのは農業関係組合の検査についての御質問でございました。ただいま御指摘になったのは検査に関する職員とは関係がないことであります。     〔発言する者多し〕
  143. 小枝一雄

    ○小枝委員長 静粛に願います。
  144. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 それだからいいというわけにはいきませんが、先般の御質問に対するお答えは、検査のことをお答えしたのであります。
  145. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 検査に行って酒を飲まされたら農林省へ帰れないのだ、その他の肥料のことでいろいろ便宜を与えたり収賄したりしても農林省へ帰れるということですか。
  146. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいまお答えしました通り、前段は検査に関する御質問であり、そのほかの職員が供応を受けたらよろしいということを申し上げておるのではありません。これも悪いことであります。私どもも非常に恥じておるのであります。
  147. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 私一人質問して長く時間をとることは恐縮ですが、もう一、二点聞きたいと思う。小沼専務もまことに重大な発言をしておる。それはそういう金がどうもふに落ちない点がある。全購がぎりぎりの予算でやっているのなら、総選挙のときに農民代表の代議士に陣中見舞として選挙資金までは出せないはずだ。含み資産の中からこういう選挙資金を出しておるということを言っておる。これは重大な問題です。少くとも農民代表としたら、私どももいわゆる農民代表の代議士です。これは与野党を問わず、こういうことを小沼専務が発表したということは、これは田中会長どう考えられますか。知らぬはずはおそらくないと思うのですが、どうですか。率直に一つお答え願いたいのであります。
  148. 田中順吉

    ○田中参考人 小沼専務はどういう考え方でそういう新聞発表をしたかは私にはわかりませんが、私といたしましてはそういう覚えはありません。
  149. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 さっき私が聞いたのは、つんぼさじきにおらぬ会長だとおっしゃったから私は聞くのですが、こういうような莫大な金のうちから選挙資金が流れておる、こういうことは聞き捨てならぬと思う。これは代議士に対する一つの侮辱だと思う。またこんなことを聞いたら全国の農民が承知しない。われわれが選挙区へ帰ったら、君も全購連から選挙資金をもらって出ておる代議士か、こういうことを言われるのにきまっておる。また君らもそう思うだろう。そういうようなことを、会長、金の出し入れということに対してはあなたに責任があるのだから、あなたがそんなことは知らぬと言えるはずはないと思う。
  150. 田中順吉

    ○田中参考人 もろろん問題によりましては当然会長決裁がなければどうにもならぬこともございますが、そういうことについては私といたしましては全然覚えはございません。
  151. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 覚えがないと言うたって、あなたの方の専務がこういうことをはっきり言っておるのだ。この新聞記事はあなたはうそだとおっしゃいますか。これは四月八日の朝日新聞の記事なのです。あなたもよもやお読みでないとは言えないはずだ。きのうはあなたの方の職員が僕のところへ来て、そのことだけは質問してくれるなと言っておった。私はほかに質問したくないのだが、これだけは名誉のためにでも一つ明らかにしたい。(「はっきり言え。」と呼ぶ者あり)
  152. 田中順吉

    ○田中参考人 そのことはただいま申し上げますように、私としてはそういうことの記憶はございません。小沼専務がどういうことで申し上げ、あるいは新聞がどういうふうに取り上げたか、そういう経過につきましては私どもはわかりませんし、私自体としては、そういうことをしたという覚えはございません。
  153. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 すべての責任を持って、しかも金銭の出納に対しては全責任を負わなければならぬ会長が、このお金に関しては私は覚えがないとか、知らぬとか……。これは小沼専務がはっきり言っているのです。あなたが知るとか知らぬとかいう問題ではなしに、一つこれは渡したなら、その金額、渡した人の氏名、年月日、これを明らかにしてもらいたい。
  154. 田中順吉

    ○田中参考人 私は会長といたしまして、会の内部に起っております問題について道義的責任は、当然外部あるいは会員に対して持ちます。しかし個々のポストにおいて当然やるべきことになっておりますものは、もしそれが法に触れあるいは間違ったことをやっておるという場合におきましては、その者の責任でございます。しかしこれは外部に対し、会を代表する私といたしましては道義的責任は持ちますけれども、その個々の事態につきましては、これはわからぬことがございますし、またそれを一々私がそのこと自体に対しての責任をすべて持つということは、できないことを御了承いただきたいと思います。
  155. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 だから私はさっきあなたがつんぼさじきにおるかいなかを尋ねたら、決してそうではないと言うから僕は尋ねるのですが、あなたは都合の悪いときは、私は知らないと言っていますが、会長事務を三年もやっていたら、知り過ぎるほどわかるはずなのです。それは無理にとぼけるということなのですよ。きのうは私のところへ、小沼専務を出されたら困る。ほかの質問はしてくれてもいいが、この質問をされたら何を言うかもわからぬから、言い出したら大へんだから、これだけは一つ言わぬでおいてくれ、とこういうことを言ってきておるのです。あなたにそれがわからぬというのであるなら、これは小沼を呼んで——委員長にお願いします。小沼専務を呼んで、小沼氏から私は直接聞きたいと思う。(「異議なし」と呼ぶ者あり)ぜひそういうふうにお取り計らい願いたい。  それからこれも委員長にお願いですが、肥料の含み金の処分について、一つ明確な経理の参考資料を要求します。これは即刻出すようにされたいと思います。  それからもう一点お伺いしたいが、今何か田中会長が辞職なさったということで、後任の役員が十八日にできる……。(田中参考人「二十日です。」と呼ぶ)二十日にできるというようなお話でしたが、私の知る範囲では、単協の役員の改選が大体四月の下旬から五月になっている。しかも今度県の経済連あるいはその他の連合会の役員は、大体五月の中旬以降においてなされる、こういうふうに了承しておりますが、その通りですか。
  156. 田中順吉

    ○田中参考人 その通りです。
  157. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 それでは、今おやめになると、会長の新しい選挙を待たずに、全購連だけの役員選挙をなさるのですか。
  158. 田中順吉

    ○田中参考人 その通りでございまして、この際は、こういう緊急な新事態が起りましたので、この責任を明らかにするために、先ほど申しましたように、三月三十一の会長会議の申し合せとは変りますけれども、これは会長にも了解を得まして、この際に改選をする。改選をいたしまして選任されます新役員は、本来でございますと全購連の役員の任期が十月でございますので、あるいは十月までそのまま補欠役員ということで参るごとになりますか、あるいはさきの申し合せのように、五月末ないし六月の上旬ごろに県連の会長の改選が終りました後において、そこでもう一応選挙をやり直すということになるか、その二つのいずれかをとることになろうと思います。これは会員の意見によってきまるわけであります。
  159. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 もう一点だけ。先般河村某が逮捕されて、当時五千六百万円の使い込みがあった。その補てんに関しまして私は当委員会で質問をやったのですが、当時は警察の方で調べられているからというようなことで、詳しい答弁がなかったのです。そこでお伺いするのですが、あなたの方の小沼専務から直接聞き、またあなたの方の職員が、この院内に来られてある代議士を通じて私の方へ話されたことには、五千六百万円の使い込みは、職員が全部給料からさいて赤字の補てんをいたしました。こういうような報告でございましたが、事実その通りですか。それは確認できますか。
  160. 田中順吉

    ○田中参考人 そのことにつきましては、あの事件が起りました直後に、職員組合の方から、こうしたわれわれ従組の職員の中で不正事件を起したことは、職員全体としても非常に責任を痛感するところであるので、何とかわれわれの力でこの損失を補てんするよう、できる限りの努力をいたしたいという話がございました。しかしながら、これは必ずしも職員にそういうことをやらすべきではないという考え方をわれわれとしては持っておりましたが、自主的にそういう申し出がございました。役員といたしましても当然道義的責任における私財を提供いたしまして、ある程度の補てんはいたすことにいたしておりますが、何分にも金額が大きいのでございます。その後これの横領残余財産の回収に努力をいたしておりまして、今日までにある程度のめどがついておりますけれども、これとても最終段階に至っておりませんが、極力本人からの回収をいたしまして、どうしても不足するものにつきましては、これは役員はまあできるだけのことはやる考えでございます。職員といたしましても、現在のところまだ具体的に決定はいたしておりませんが、何とか一つ、時期は相当長くなりましても、またとうてい一時にはできませんが、少しずつでもお互いの責任において補てんをいたしたい、こういう考え方で相談をいたしているようでございます。まだ最終的に決定はいたしておりません。
  161. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 そういう含み資産がたくさんあるのに、ごとさらに職員から零細な金を集めて、そうして補てんしなければならぬわけはないと私は思います。少くも全購連内部の含み資産によってこれを解決すべきだと思う。なおそういうお金があるから、いろいろなうわさを私は耳にするのです。ここではちょっと申し上げられないことも、私はたくさん聞いておる。(「言え。言え」と呼ぶ者あり)あなたはそんなあぶく金だから方々に湯水のように流せると思うのだ。そういう金があるなら農民にもっと安い肥料を、農民のサービス機関としてもっとサービスしたらいいのだ。田中さん、あなたはもう農民から浮き上っているのだ。京都の農民はどう言っております。あなたは全購連の会長としてあぐらをかいていますが、京都の農民は困っている。あぶく金、痛うない金をどんどんよそへ流してやるというようなことは、私はほんとうに農民の利益代表機関として嘆かわしいのです。これだけ申し上げて私の質問は終ります。
  162. 小枝一雄

    ○小枝委員長 石田宥全君。
  163. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ただいま伊瀬委員より一応事業の概要を尋ねられたわけでありますが、たまたま春肥の輸送の最中であり、国鉄の輸送力等の関係から農民は肥料が適期に施肥に間に合うかどうかということで非常に憂慮いたしておりまするときに、河村事件が起き、さらにまた農林省との関係における事件が報道されて、六百万の農民はまことに重大な関心を持ってこの成り行きを見守っておるわけであります。私は事ここに至りますまでの購連の内部の監査の状況、それから農林省の監査の状況についてはこれは別の機会に政府に対し質疑をいたしたいと思いまするが、少くとも月例検査というものによって全購連の内部の監査というものは相当緻密に行われていなければならないと思うのでありますが、月例検査の状況とさらに一年に何回ぐらい監査の実施をやっておられるのか、その実情をまず承わりたいと思います。
  164. 田中順吉

    ○田中参考人 全購連の内部監査機能といたしましては、監事が三名ございまして、その中で一名が常任監事、こういうことになっております。もちろん県連の会長でございますので、常任監事と申しましても毎日詰めておるわけではございませんが、監事はおのずからわれわれ執行部とは独立した機能においてやっておりますので、われわれがあえてそれをどうこうということはありませんが、実際はいわゆる全面的な監事の監査は年に二回でございます。決算が終りまして、その年の決算がまとまりましたものにつきまして十分綿密な監査をいたしております。さらに中間決算を、年度のちょうど上半期の経過いたしました時期に同様の全面監査をやります。それから月例検査というのは、何分監事室におきましても専任職員がわずか三人しかおらないのでございますので、毎月そういう綿密な検査を全面的に、膨大な事業分量と組織を持っております全購連についてやることはとても不可能でございますので、その定期検査のほかにおきましては、いわゆる部分検査を申しますか抜き打ち検査と申しますか、特にこの支所だけやるあるいはは本所だけやるあるいはこの工場だけやるということで、月例的にはやっておるのでございます。今申しますように、監事室の専任職員はわずか三名でございます。これは専任でございますが、そういう監事が必要を認めて検査をやります場合には、一般職員の中から監事の要求によりまして事務の応援をやらすということはやっております。そういう程度であります。
  165. 小枝一雄

    ○小枝委員長 石田委員にちょっと申し上げますが、荷見参考人がやむを得ぬ事情で帰りをお急ぎでございますから、先に一つ御質疑を願いたい。
  166. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは荷見会長に伺いますが、さっき荷見会長は中央会としては組合の監査を指導するという任務を持っておるとおっしゃっておりましたけれども、農協法の七十三条の九には、「組合の組織、事業及び経営の指導」「組合の監査」こういうことを書いておる。組合の監査の責任も中央会にはあると思うのでありますが、この点はどうなんでしょう。
  167. 荷見安

    ○荷見参考人 中央会は御承知の通り農協の普及発達をはかることを任務といたしまして、しかして今読み上げられましたような事項をいたすのでありますから、監査の程度にも限界はございません。力がありますれば自己の監査も可能であります。ただ最初の設立のときからいたしまして、大体機構が小さいのでありますので監査の指導表する、指導監査というような最初申し上げましたような取扱いをいたしております。そのことだけ申し上げておきます。
  168. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 先ほど田中会長から含み利益の問題についてお話がありまして、これは欠損をする場合もあるから運営上当然であるというお答えでありますが、荷見会長に伺います。いやしくも農協というものは特別に法によって免税をされ、あるいはものによっては独禁法の除外例まで設けてこれを保護して、そのかわりに第八条において「組合は、その行う事業によってその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない。」と明記してある。こういうふうに農業協同組合というものの業務について明確な一線が引かれておる。にもかかわらず現在は相当営利的な業務を行なっておる。こういう業務の運営について会長としてはこれはこれでよろしいとお考えなのか、こういうことであってはならないというふうにお考えになっておるのか、またこれであってはならないということであるならばどういうふうにこれを指導しようとお考えになるか。
  169. 荷見安

    ○荷見参考人 その両方の部面がございまして、農業協同組合は組合員たる農家の経済の改善、生活の向上ということをはかるための機関でありますから、その面においては組合員の利益に最も奉仕すべき職務があります。ただその行う経済事業につきましては、これは他の経済機関と折衝をいたしまして、その間に物資の購入、生産物の販売、信用事業というようなことをいたして参る関係になりますので、その経営の基礎も確立しなければなりません。従いましてその面においては企業というものを大事にする面もございますが、いれずかと申しますれば、企業の面よりは農家の利益の改善の面の方を重く見るべきである、かように考えております。
  170. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次にもう一点伺いたいことは、ただいま御配付になりました資料によりましても、購買品の売却高は七百六億をこえております。こういうふうな膨大な事業分量を持つ全購連の役員の構成でありますが、理事が九名、常務理事が二名、会長、副会長、専務理事で五名、こういう構成になっておる。先ほど伊瀬委員からも指摘がありましたように田中会長も村の組合の組合長であり、県の連合会長であり、中央の会長であるということであります。こういうふうに七百億に及ぶも売却高を持つ、膨大な事業分量を持つこの機構の中に、その会長やあるいは常務理事といわれるような重要な枢機にあるところの人たちが村の組合長もやり、県の連合会長もやり、そうしてほかに中央の重要な地位についておって、果して完全に職務の遂行ができるかどうか、私どもははなはだ疑いなきを得ないのであります。こういう点は機構そのものに大きな欠陥があるのじゃないか。中央へ出て参りましても、地方の連合会長のいすにかけておらないと足をさらわれてしまってあとが出にくくなるというような事情もあるでしょう。あるでしょうが、それをこういうふうな構成にしておくというところに重大な欠陥がありゃしないか。この点は一つ荷見会長の考えを承わっておきたい。
  171. 荷見安

    ○荷見参考人 お話のような点につきましては、あるいは見方によると、その通りであるかと思いますが、それを補いますために、他の組織以外からの役員の選出も認められております。なお事務機構の運用については、新農協法におきましては参事制度がございまして、それが事務の中心を運営するような組織もございまして、これらのものを適当に合せて運用いたしますれば、さようなものと組織体から出ておる会長あるいは他の役員の方々の両方の知識が総合融和されて適当な結果を生むようになるのじゃないかとも考えられますが、お話の点につきましてはなお十分研究の余地はあると存じます。  ただいまお話のございましたことについてちょっと私の感じを申し上げてみますと、購買事業、販売事業、信用事業は農協の三つの根幹でございますが、そのうちの農薬、肥料等の購買事業が、ただいまお話になったような著しい発達を遂げて、適時適量の配給に相当の効果を上げておるということについては、私はその活動面について当局者が非常に御尽力になっているということには尊敬をいたしておるものであります。ただあるいは経理の取扱い等について若干のただいまお話あったような不手ぎわな点があったかと思いますので、さような点は十分是正されなければいけませんが、中心になる事業についてはよく成績が上っておるように私は考えておりますので、申し上げておきます。
  172. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 監査の陣容が手不足であり、不十分であるということをお認めになった。この点は今後十分検討すべき題問であろうと考えております。別に答弁はいただきませんが……。  そこで荷見さんは、日本における農業協同組合事業の中心的な指導者でありますから私はここで原則的な問題を少し伺いたいのでありますが、今荷見会長がおっしゃったように、今の農協というものは購買、信用、販売が重点的に行われているというお話であります。私は農業協同組合というものは、購買、販売、信用というようなところに重点を置くということはこれは邪道じゃないか。農協というものは、文字が示すごとくに、農民の経済的協同組織であって、これは生産を中心とする生産協同体として発足しなければならない性質のものでないか、私は本質的にそうあるべきだと考える。ところが終戦以来安易な購買事業、販売事業、信用事業という方面にのみ力を注いで、生産協同体としての歩みをしなかったところに日本の農協というものの誤まれる姿が今日現われておるのじゃないか、こう考えるのですが、荷見会長にこの機会に所信を明らかにしていただきたい。
  173. 荷見安

    ○荷見参考人 私もその点は同感でありまして、すでに三年くらいになりますか、全肥連時代からの総合事業計画で営農の改善を主とした計画的経営に関しての今申し上げました三つの部門について仕事を進めていくということにいたしております。なお本年四月から発足いたします農協の刷新拡充三カ年計画は、全国農協大会においても満場一致で決定し、その後各団体においても中央地方を通じて熱心にいたしておりますが、それはいずれも営農に結びついた、ただいま申し上げたような事業の発達をはかるということになっておりますので、お話のような点は間違いないと考えます。
  174. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 もう一つ伺いたいことは、要するにそういうふうに邪道に入ってきておった。そのことが各方面にいろいろなトラブルを起す要因であろうと私は思う。そこでさっきこれは伊瀬委員からも質問があり、私もあとで田中会長にお尋ねいたしますけれども、今度の事件を通じて見ましたときに、非常に重要な問題がある。それは何であるかというと、農民は春肥の仕入れ時にはほとんど手持ち金がない。ですからせめてこれを若干一カ月程度でもあと払いにしてもらわなければ困る、こういうことをずいぶん農民は言う。ところが貯金通帳から差っ引いて単協では現金払いにしてしまう。現金払いの形でありますから、金のないものは立てかえ払いをしてもらって、それにすぐ受け取った日から利息を計算されて支払わなければならない。ところが中央においては、さっき田中会長がおっしゃったように、五百億、六百億に及ぶところのその八〇%程度のものを予約と同時に前払いをする。こういう膨大な金額に対する前払いでありますから、今度会社の方からその前払いのリベートをとっておる。それが一億程度になるのじゃないかということがいわれておる。その一億程度のものがいろいろ問題を起しておる。こういうふうな取扱いの根本的なそういう操作、現実に農民の利益を守り得るような操作をなぜ指導されないか、大きな一流の資本家に前払いをしなければならない理由はないじゃないか、それが一体わからなかったのか。今日の農協というものは、信用農協は日銀の支配機関化している、購連は産業資本の販売網化しておるといわれるのはそういうところにある。そういうふうな考え方の根本的な問題について、荷見会長は、なぜ一体そういう点を等閑に付しておられたのか。農民の利益代表機関である農協の措置がこれでいいのか。またなぜ等閑に付しておったか、これを一つ伺っておきます。
  175. 荷見安

    ○荷見参考人 私の考えでは大体組合の本質は、いわゆる昔からの三原則の、現金主義、時価主義、特別配当主義、これはただいまでも正しいと考えております。従って購買事業におきましても、でき得れば現金買いが望ましいのであります。ただ金融の操作において金利が高いか安いかというようなこと、また現金払いをいたしました結果組合が企業経営において利潤を生じましたならば、これは組合法当然の規定によりまして特別配当、事業分量に応ずる特別配当ということを利用者に対して行うということが組合の建前になっておりますから、その点においては間違いはないと思うのであります。
  176. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこでもう一つ原則的な問題を聞きたいのですが、今度の事件を起しましたのも、一つは農協というものが肥料価格の問題に関与をし、商社との配分の関係について立ち入っておる。もちろんそれは農林大臣の権限事項であります。しかしながらそこにやはり官庁には官庁の立ち入り限界がある。従って全購連の一部の職員がいろいろ問題を起しておるわけであります。一体そういう価格の問題とかあるいはまた商社との配分の比率の問題とかいうような政治的な活動を農協がやるべきかものかどうか。やっていいのかどうか。私は農協というものは、やはり農民の経済団体であって、政治的な活動にはおのずから限界がなければなららいと思う。もしその限界を越えて政治活動をいたしますると、たとえば今農地の問題が非常な問題になっておって、地主と小作人との対立が非常に深刻になって参っております。こういうときに農協が高度の政治活動をやりますると、内部において政治的意見の対立をいたしまして、内部における対立から自壊作用を起す問題であろうと私は思う。従って農協はやはり農民の経済的利益代表機関であって、高度な政治活動を行なってはならない、行えば必ず問題を起す、自壊作用を伴うものである。そこで農民の自由な政治的な要望のために政治活動をやるための団体としては農民組合というものが絶対に必要なんだ。農民組合というものだけが自由な政治活動をやり得る団体である、こう私は考えておる。そういう建前からいたしまして、私どもは一日も早く農民組合法を制定すべきである。今日中小企業団体法というものまで政府の責任において出されて、中小企業まで一つの組織を持とうというときに、農民組合法を作らないということは、私は片手落ちじゃないかと思う。これは今後の農政活動の面における大きな問題の一つでありますので、この点を一つ伺っておきます。
  177. 荷見安

    ○荷見参考人 前段のお問いに対して私の考え方を申し上げます。農協法に定められてあります、つまり農民の経済を改善し、生活の向上をするというための事業に障害を与えるようなことにつきましては、この障害を排除するということは必要なる農政活動でございまして、これがためには政府にも建議するようなことまで規定しております。従いましてその範囲においては農協も農政活動に関与してよろしいと思っております。それには限度があるということもおのずから私の回答に入るわけでありますが、その限度を越えた部分をいかにするかということは、私どもが申し上げるよりも皆さんの御研究に待つことであろうかと思いますので、御回答を差し控えます。
  178. 細田綱吉

    ○細田委員 関連して。私は質問の前にちょっと前提として伺いたいのですが、中央会の歳出歳入は年額幾らでございますか。
  179. 荷見安

    ○荷見参考人 年々少しずつ変っておりますが、大体一億円程度が普通でありまして、これもまだ二年目でありまして、最初は半年ばかりしかありませんからはっきりいたしておりません。その中に特別に先ほどお話の出た営農指導等に対する経費が二千四、五百万円入っております。
  180. 細田綱吉

    ○細田委員 そうすると農林省からあなたの方へいった部分、補助金というか助成金というのか知りませんが、直接くる金は幾らですか。
  181. 荷見安

    ○荷見参考人 総合事業計画等に対するものが一千万円、半額助成になっておるかと記憶しております。
  182. 細田綱吉

    ○細田委員 歳出歳入一億、とこう言われるのですが、ただいま伊瀬委員、石田委員から伺ったところによると、われわれはたで聞いておると、中央会というものは実際何の仕事もしてない、何にもならないものだ、こう思う。こんなものをこしらえておくから、そして農林省の大先輩がすわっているから農林省も検査すべきところをしないので、それでああいう疑獄が続出するということでは、むしろ取ってしまった方がよいのではないかと思うが、率直にその点の御意見を伺いたい。
  183. 荷見安

    ○荷見参考人 私は中央会は非常によく働いておると考えておるのであります。ただ金を使わぬから仕事が少いというばかりには参らないのでありまして、各方面に活動を活発にいたしております。  なお後段にお話がございましたが、私どもの方も農林省が参りまして、一億円ばかりの金の内容は実にこまかに御検査になっておりますから、つけ加えおきます。
  184. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたは大物だから一億円ばかりの金と言うけれども、それは農林省から国民の血税を回すにしても、あるいは三団体から賦課金を回すにしても、いずれにしても農民にすればこれは大へんな金です。よほどの活動ができていいはずです。先ほど石田委員が法規的に条文を示してあなたの方でやっていない点を言われたが、人が足りなくてやっていないのだというようなことで、あなたの今の御意見を聞いてみると、例によって今年度も昨年程度に仕事をしないとすると、これはどうもなくたっていい、一億円なんという金は全くもったいない感じがするのですが、それは別として、きょう山川一三という人が今度の疑獄事件で重代室で自殺した。それは上部の圧迫があって、そこで意見の対立があって、ついにそういう悲しむべき結果になったといって職員は騒いでいるということを聞くのですが、あなたはこの事件圧率直にどういうふうにごらんになつしいるか。
  185. 荷見安

    ○荷見参考人 私もまだその事件の内合をよく聞いておりません。ただ人聞きに伺いましたところによっては、はなはだ遺憾な事態であるということを感じます。ただ最初の、一億円ばかりで仕事はせぬとおっしゃいますが、一億円の経費というものは非常に有効に使われてわりますので、そのことをもう一ぺん繰り返しておきます。
  186. 細田綱吉

    ○細田委員 そんなことを聞いているのじゃないのです。あなたの方は上部機関として全購連も全販連も中金の動きもよく注意していなくちゃならぬところでしょう。それが上部機関の任務です。先ほど石田委員が、田中会長は単協の会長もやっているのだ、府連の会長もやっているのだ、また中央の会長もやっている、それもあなたの話によると何だか参事というものがあっしどうのこうのと言っているけれども、国会議員が府県会議員を兼ねてはまかりならぬということは弊害があったからそういうことが禁止されているのです。また市町村会議員を兼ねてはならぬということは、弊害があるから禁止されたのです。あるいは裁判所にしたって、高等裁判所所長が地方裁判所所長を兼ねるならば、高等裁判所町長の役目が勤まりませんよ。そんなことは常識です。そんなことをなおかつ結論が出ないというのだから、全くあなたは大先輩としてあぐらをかいて一億円の金を使っている。こう見られたってしょうがない。これは農民の率直な意見である。  そこで私が聞きたいのは、山川一三君が前途のある身を重役室で意見の対立からついに自殺した一この事件に関係責任もあって自殺したかどうかは深いところは知りませんけれども、そこで、そういうことを上部機関で見ておって、そういう雰囲気が全購連の中に満ち満ちておったのかどうか、それすらあなたは知らない。ただあぐらをかいて一億円を使っておったのか、それを聞いている。
  187. 荷見安

    ○荷見参考人 あぐらをかいておった気持一つもないのでありますが、ただいまの人が自殺したということについては、これはまことに残念なことだと申し上げたのでありまして、その雰囲気とか何とかいうことまでをこまかに私が知るほどの状況には今なっておりません。
  188. 細田綱吉

    ○細田委員 この問題が遺憾なことであるなんということは、鹿児島県の端の一農民だってこれはけっこうなことだと言う人は一人もありません。そんなばかなことを聞いておる議員はおそらく一人もないと思う。あなたとしてこれをどう見ておるか。そうして最後に伺いましょう。大阪の信連でも大きな疑獄を起しておる。今度も中央でこういう疑獄を起しておる。しかも一億円の予算を使ってでんとしてあぐらをかいておるあなたはどういうふうな責任を感じておるか、その二点を伺います。
  189. 荷見安

    ○荷見参考人 私は中央地方における農協内部のいろいろな不祥事件につきまして、かようなことをなからしめるために努むべきだと考えておりまして、努力はいたしておりますが、何さま現在のような状況のもとにおきましては、努力してもそれを絶滅するというまでに至っておらぬのは遺憾であるのであります。それらの内部監査の充実強化というようなこともはかりまして、さようなことの今後の絶滅を期したいと考えております。それだけ申し上げておきます。
  190. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私は田中会長に伺います。田中会長は先般も明らかになりました河村事件の五千六百万円以上に上るといわれるこの事実は、いつごろお知りになりましたか。
  191. 田中順吉

    ○田中参考人 その事実は本人が召喚されまして調査の結果弁護人から——調査当局の大体の調査が済みました段階でございましたので、三月二日に逮捕されまして、たしかそれから三、四日後において大体の外貌を承知した、こういうわけでございます。なお会の内部におきましても自主的な調査を極力やりましたけれども、先ほど申しますように、関係書類等が押収されまして自主的には完全につかみ得なかったのでございますが、これを当局の方にも御了解を得まして関係の書類を極力調査をいたしまして、こちらで調べましたことと、当局の調査と大体一致をいたしまして、事件発生後一週間くらいには大体外貌をつかみ得たわけでございます。  なおこの際先ほど来の御質問の中で、私からもちょっと申し上げますが、実は私は現在単協の組合長はいたしておりません。これはもちろん全購連の会長になるまではいたしておりましたが、三団体の責任を持つことはとうてい不可能であるというふうに感じまして、単協の方は理事だけはいたしておりますけれども、組合長はいたしておりませんことを申し上げておきます。なお県連の方を持っておりますために全購連に専念できないという不合理につきましては、私も痛感をいたしておりまして、これは今後の制度上の問題として、将来どうすることが有利かということは、関係者で十分に調査研究する必要がある問題であると思います。私がみずから痛感をいたしておりますことを申し上げておきます。
  192. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは、今御発言がございましたら、今の役員は全部辞職をされたということでありますが、辞職される前の役員のうち二つ以上の団体の責任者となっておられる人は何名くらいおられますか。
  193. 田中順吉

    ○田中参考人 県の連合会を代表して出て参っております理事、監事はすべて県連の会長でございますから、まず専任の責任を持っておるものと思います。それから常務理事の二人は学識経験者として選任されておりまして、これは他に何ら兼職は持っておりません。
  194. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこで河村事件でありますが、今会長は事件が起って検挙された後に知った、こうおっしゃった。ところがわれわれの聞くところによると、これは農林省の監査課でもまた購連の内部でもうすうすわかっておった、わかっておったにもかかわらずそれを追及しなかったということが言われております。的確なことはわからないにしても、どうもおかしい、くさいということだけは会長の耳にも入っておったのじゃないかと思いますがどうですか。
  195. 田中順吉

    ○田中参考人 その点につきましては、そういう本人の不正に関連するような風評というものは、私の耳までは毛頭入っておりません。これはもう絶対であります。ただあるいはあとで聞きますと、本人の行動そのものに不審な点があったというようなうわさをする者がありますことを聞きまして、非常に遺憾に存じております。
  196. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこでそのあとでわかったようでありますが、大体いつごろからいつごろまでの期間で、件数は何件くらいあったのですか。
  197. 田中順吉

    ○田中参考人 不正の事実が発生しておりますのがたしか二十九年の八月と聞いておりますが、それから発覚いたしました三月二日までの期間でありまして、その間に手形三十四件と承知しております。以上でございます。
  198. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこで、さっき伊瀬委員指摘されましたが、役員というものはつんぼさじきで内容がわからないのじゃないか、こういうお話があったわけですが、事務分量も大きい構成でありまするから、ことに役員が大部分地方の県連合会の会長というような要職にある人たちだけで構成されておる、そういたしますと結局部長クラス、課長クラスの古い職員が官僚的な機構になってしまって、自分では目が通せると思っておっても、事実は中までどうしても目が届かない、こういうことになるのじゃないか。ことに今の陣容は、巷間伝えられておりまするように二重政権である、こういわれておる。これは一つは田中政権、一つは島田政権。田中政権の方は浮いておって、島田政権の方が実態を把握しておる、こういうことをいわれておる。これは事実みんなそう言っております。そこにいわゆる島田政権というのが、古手の職員が中心になって実権を掌握しておるのであって、事実上役員はそこになかなか手が及ばないのではないか、こう思うのですが、そういうふうな官僚化を阻止し、そうして役員が実際の業務の責任を負い得る態勢にするには一体どういうふうにこれを改革すべきか。これはもう辞任をされましても、私は田中会長らの重大な責任の一つであろうと思うのでありますが、どうお考えになっておりますか。
  199. 田中順吉

    ○田中参考人 その点につきましては、外部からの批判は、この実態におきましてそういう批判をされることもやむを得ないと存じます。ただ政権があったとか何とかいう意味でなしに、私自身も県の責任を負っておりますために、終始完全にこまかく目を通すということは不可能でありますし、また会長という立場にいたしましても、先に申し上げましたように会の基本的な方針と、運営の重要な問題を指揮あるいは決裁する、さらにわれわれ県から出ておる者といたしましては組織委員、要するに県連との円滑なる協調連絡ということを一つの大きな使命と考えてやって参りました。またわれわれはへを信頼しなければ仕事ができませんので、常務の理事あるいは部長というような人々は、私は非常に信頼をしてやって参っております。従いましてそれには相当重要な問題も、ある程度は信頼の範囲においてはまかしております。従って事後報告というようなことになる場合も相当多いのでございますので、そういう見方になるということは、これはあり得ると思います。はなはだそういう点は遺憾な点があったかと思いますけれども、私どもは少くとも常務理事、あるいは部長とは十分に一貫した考えでやっておったつもりでございます。結果がこういう事態になりましたので、そういう欠陥があったということも、これは外部からの批判なり、またわれわれといたしましても若干率直にそれは認めざるを得ない点もあるかと、かように考えております。
  200. 小枝一雄

    ○小枝委員長 石田委員にお願いいたしますが、なお発言の通告が二、三ありますので、でき得る限り一つ簡単にお願いいたします。
  201. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは次に、さっきちょっと触れました前払い金に対する一億くらいの利息の行き過ぎというか、そういうものがあって、六千万円くらいそれをリベートに取っておられる、こういうことを河村という人は言っているようですが、この金額はいずれにしてもよろしいですが、それだけの大きな金は一般の経理の中へ入れて、そしてこれを出して使っておるのか、それを別ワクで一部の人たちが使っておるのか、これを承わっております。
  202. 田中順吉

    ○田中参考人 先ほどの御質問にもございましたが、単協からの決済が現金であって、県連からもおおむね現金に近い決済が行われておる、しかも全購連は、最終的にはかなりの業者とは期間を置いて決済することによってその金利の戻しを取っている、こういうことでございますが、これは整理促進の一つの行き方としまして、過去においてああいうふうな県連にいたしましても、全国団体の組織にいたしましても、大きな赤字を出したという原因の一つに決済の非常な不規則と申しますか、だらしなさがございましたので、決済程度については、この際にはっきりした行き方をしなければならないというのが整理促進の一つ基本的な考え方になっております。その方針に従いまして決済が行われております。組合員、単協、県連がほとんど現金に近い決済をしているのに、全購連が金利を取って勝手に使っていることはけしからぬ、こういうおしかりを受けるのも当然でございますが、これは全購連といたしましては、県連に対しましては三十日のサイトに相当するだけの日歩二銭五厘ないし二銭三厘の金利を戻しております。二銭五厘と申しますのは、県連が全購連に対しまして日を定めていわゆる三十日のサイトのうちで必ず十日に決済をする、あるいは十五日に決済をするというふうに、すべて決済をするものにつきましては日歩二銭五厘を戻しておりますし、そういうふうに日をきめずに県連の手元の金の都合で適時決済を早めてくるものにつきましては日歩二銭三厘の戻しをしておりますので、これは単協にまで当然金利は戻しておるようであります。また単協はその組合員にも、それだけの金利というものを代金の上か、あるいは金利の方で戻すということに承知をいたしております。ところが全購連が最終的に仕入れをいたしますには、三十日あるいは四十日というサイドで仕入れをする場合が多いのでありますから、その際におきましては金利の差がある。金利の差をもって今申しますように二銭五厘ないし二銭三厘の戻しをするのでありますが、このメーカーから取ります金利と戻します金利とにおきましては、若干全購連の方がまだ負担をして県連の方に戻してしるような実情でございまして、決してピンはねをやっているということではないのでございますが、その手形の買い戻しをした金利のうちで、今回問題になりました若干の二重帳簿的なものによりまして、処理ができておったということが事実ございました。これは非常に遺憾なことでございますので、その点は私もその実情を知りますと同時に、これは厳重にそういう処置をしないように中止をしております。これは一年以上前のことであります。それまでの間にそういうものができておりまして、これが一つの大きな疑問を含んでおることになっておりますので、すでにそういうことは一年近く前から全然やっておりませんけれども、それまでにできておったものにそういう疑問を生ずるような事態がありましたことは、非常に遺憾に考えております。
  203. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そうするとそのリベートの取扱い等については、やはり一応御承知のはずでありますが、先ほど伊瀬委員の質問に対して、その金の使い方について立岩なる人は、その金で農林省方面の運動費に使ったり、あるいはその他の政治資金に使ったと言っておる。また政党方面については若干陣中見舞と、いうようなものが出ておると言っておる、またそれは一般の常識のように言われておる。そういうものを会長が知らないはずはないと思う。これはもう一般に常識化しておるのだから、陣中見舞程度のものを出さないはずはないと思う。割当の問題とか、価格の問題とか、いろいろな関係で世話になるという関係から、これは出さないはずはない。それを知らぬ存ぜぬでは通らない。国民はそれじゃ納得しない。今私が聞いたのは、そのリベートの問題というものを承知して処理しておるのかどうかということを聞いたのですが、承知して処理しておられる。そうすればその使途や何かについてもわからないはずはないのです。私はこまかくどこの党に幾らとか、だれに幾らということを聞こうとは思いませんけれども、おおよそどれくらいの額、そうしてそれは選挙のたびか、あるいはその他の機会か、こういうことだけは明らかにしてもらわなければ、これは農民も納得しませんし、国民が納得いたしません。この点は一つここですっきり話をしていただきたいと思います。
  204. 田中順吉

    ○田中参考人 私が知っておると申し上げましたのは、そういうものによって県連に金利の早期決済をしたものに対して金利の戻しをしておる。これは当然会の方針としてやっておるのでございますから、私のみならず役員にも協議しておりますので、知るも知らぬもない。当然そういう点は知っておる。しかし金利のリベートを勝手に処理するというような措置に対しては、私は全然知らなかったのでありますけれども、そういう事実があるということを知ったときに、これをすっきり中止をするという命令を下しまして、それからは絶対にやらない。私がそういうことを知った範囲においてはとめておることは絶対に間違いございません。なお立岩が、これを農林省関係あるいはその他の関係においてどうこうしたというようなことも、捜査当局の調査によって新聞等には出ておりますが、立岩がやっておったという事実につきましては、そういうことは絶対に私は承知をいたしておりません。そういうことだけは間違いございませんので御了承願います。
  205. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういたしますと、会長のわからない金というものが、全購連としては相当に動いていると見なければなりません。一体全購連として、そういう会長のわからないような政治的な金というものは、どの程度動いておるとお考えになっておりますか。
  206. 田中順吉

    ○田中参考人 そういう金がどの程度の金額になっておるかということは、現在調査を進めさしておりますが、まだ判明いたしておりません。そういう点は捜査当局の方でも当然調査を進められておるようでありますが、この事態については、私どもの方でも十分調査を命じてやらしておりますが、現在ではここで申し上げるところまでまだ参っておりません。
  207. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 捜査当局が今捜査中でありますから私はこれ以上申し上げることははばかりますけれども、六百万農民が非常に心配をし、重大な関心を持ってながめており、国民もまた疑いの目を持って見ておる問題でありますから、その概要だけはやはり国民の前に、農民の前に明らかにされることが、田中会長の責任の一つであろうと思うのです。  そこで、さっき申し上げたように、何もかも一切がっさいしゃべろというのではございません。ほぼ見当がつかないはずはない。もしそれがわからなかったというならば、これは完全なロボットであって、全購連というものはもう島田政権のもとにあって、役員は全部つんぼさじきである、小沼専務が言われる通りだということを会長が裏書きするにひとしい。こういうことではわれわれは——きょうは実はここは決算委員会やなんかと違いまして、農林委員会は建設的な立場から事態の真相を究明することによって、今後再びかくのごとき誤まりを繰り返さないようにいかなる措置をすべきかということを、真剣にわれわれは考えるから、こういうことをやっておるのです、われわれは何もあなた方の責任をただ追及しさえすればいい、暴露するという意味ではございません。そういう意味で私どもは農協を育てなければならないんだし、しかしながら悪い点は徹底的にこれを追及し、反省して、りっぱな全購連にしなければならないという立場からこれを聞いておる。ところが田中会長は全く言を左右にして、肝心のところはことごとく知らぬ存ぜぬ、こういうことは許されませんよ。そういう人をなめたような答弁はわれわれ満足できません。一体どういう金がどのくらい動いてたか全然わからない。そうすれば完全なロボットじゃないか。それじゃ今後われわれが全購連をどういうふうにして立て直したらいいか考えてみようもないじゃないですか。捜査当局は犯罪の有無を調べるだけなんです。われわれは犯罪の有無だけじゃない。日本の農協をどういうふうにしてやっていったならば、りっぱな農協に育てることができるか、全購連をほんとうに農民の利益代表機関とするにはどうするかということを真剣に考えるから、質疑をやっているのです。ところが今のような答弁ではわれわれは承知できない。少くとも会長の耳に入っている程度のことは、誠意をもって答弁する義務がありますよ。たといわずかな期間であろうとも、全購連の会長として一切の決裁の判こを押しておったでしょう。それか全部めくら判だということになりますよ。どうですか。こういう点はわれわれは少くとも誠意をもって質疑を行なっておる。もっと誠意ある、自分の知っている限りのことはここに答弁をして、今後どうしたならばそういう禍根を断つことができるかということを、あなたは真剣に考えなければならない立場だと思うのです。そういう意味で、もっとまじめな、真剣な、責任を感ずる態度からの答弁を私は要求する。
  208. 田中順吉

    ○田中参考人 御指摘の点は重々責任を痛感しております。しかし、そうであれは会長は完全にロボットではないかという御指摘も、これはやむを得ないこと存じますが、全然私のところまで上らないで処置されておりましたものにつきましては、ここで幾ら追及されましても、それを今申し上げることはできないのでございまして、捜査当局が 五を進めており、われわれも自主的に調査をいたしまして、これが明確になりましたならば、これたけの事態を起しまして、全農民なり全国民にいろいろな疑惑を招きましたこの問題を、ほんとうに明確にして、どういう金額がどういうふうになっておったということを公表いたしまして、これは今後はこういうふうに改めるということで、これはすっきりしたものにして会の信用を挽回し、また農協の系統の活動が今後復活できるような努力は当然しなければならぬ、かように存じますけれども、何分今当局の調査の際でありますので、その点だけはまだここで私から金額等を、概要にしても申し上げることのできないことを一つ御了承をいただきたいと存じます。
  209. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まだ二、三尋ねたいこともありますけれども、他の同僚議員の質疑もあるようでありますから、この辺で終ります。
  210. 小枝一雄

    ○小枝委員長 山田委員にちょっと申し上げますが、荷見参考人に対する質疑を先にお願いしたいと思います。山田委員
  211. 山田長司

    ○山田委員 私は荷見さんについては一点だけでありますから、最初に伺います。  荷見参考人に伺いたいのは、長く農林省におられましたから、農林省の関係のいろいろな外郭団体にいろいろな角度から推薦を受けるなり、お知恵を拝借するなりして、あなたが団体の責任者になったことはわかりますけれども、あなたは現在農林省の外郭団体で幾つ御関係になっておりますか。
  212. 荷見安

    ○荷見参考人 農林省の外郭団体というのはどういう関係になりましょうか。私は今農協中央会は会長をいたしております。それから自分が設立いたしました農村金融研究会というのの会長もいたしております。しかしこれは農林省から補助金をもらっているわけでもありませんし、何もお世話になっておるわけでないのでありまして、農林省の直接の関係になります分は農協中央会だけであります。
  213. 山田長司

    ○山田委員 私資料を持たずに来ておりますので、ほかにも伺いたいことはあるのですけれども、一応あなたに対してはこれで終ります。
  214. 小枝一雄

    ○小枝委員長 山田委員、ちょっと委員長として、御発言中に恐縮ですが、荷見参考人は実は三時半までにぜひということでありまして、芳賀さんもありますししますから、荷見参考人発言を先に許可するようにいたしたいと思いますが、御了解願いたいと思います。
  215. 山田長司

    ○山田委員 ほかの委員の方が荷見参考人に対して伺う点があるんじゃないかと思いますが。
  216. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それを先にやりたいのですが、暫時恐縮ですけれども、お待ちを願いたいと思います。
  217. 山田長司

    ○山田委員 大へん申しわけないけれども、質問順に——私のはそう長い時間かかりませんから、どうぞ一つやらしていただきたいと思います。
  218. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それでは山田君。
  219. 山田長司

    ○山田委員 先ほど田中さんのお話を伺っていますと、六日に今度の事件の責任を感じておやめになられたというお話を伺ったのですが、私は全国の農民のことを考えますと、事件が発生したからといって、この事件の処理をせずにおやめになることは、ちょっと卑怯でないかと思うのです。そういう点でよく何か事がありますとすぐにやめてしまう人たちがありますが、やはり全国の六百万からの農民のことを考えますと、このことの結論を出さずにおやめになられてしまって、あとは野となれ山となれということでは、どうしても理解ができないのですが、おやめになられたあとの処理というものを——世間にはやめてしまうと何かしらあとの人が何とかやるんじゃないかということで、往々にしてかまわなくなってしまう場合があるのですが、それについてどういうふうにお考えですか。
  220. 田中順吉

    ○田中参考人 お説の通りでございまして、これは二つの見方と考え方があると思うのです。御指摘のように、この段階でやめて、ただ責任をとったということで責任をのがれるということはけしからぬという見方と、それからこれだけの大きな会員に影響を及ぼしました事態において、依然としてこの事件に責任のある者がその席におりまして、そうして会務を執行するなり、あるいはまた事態の処理に当るということは非常に困難がある、あるいは無理が伴うということによって、むしろマイナス面が非常に多い、また農家に対しましても、一応責任をとっておわびをしたということで一つこの面はすっきりさしていただく、ただしやめたからといいまして、責任が全部解消したものでは毛頭ないことをわれわれは自覚しております。任期中にできましたことにつきましては、あくまで責任を持ちまして、これを最終的に、われわれは新しい役員の指揮のもとにおいて協力をして解決に努力をしなければならぬということを十分に痛感いたしております。もちろん来たる二十日に開きます臨時総会におきましても、会員からはいろいろな御指摘なり御批判、お上がりがあろうと思いますが、十分われわれの考え方を申し述べまして、この際ほんとうにすっきりした姿で会が出直す、ただし従来の責任は当然われわれの責任においてあとう限りの努力をしていくということによって御了解を願いたいという心境でございます。
  221. 山田長司

    ○山田委員 さっきから石田委員及び伊瀬委員等の質問の関係から、私がこれから質問する順序として伺うわけですけれども、あなたは全購連の会長はいつから今日までおやりになっておったですか。
  222. 田中順吉

    ○田中参考人 全購連が創立いたしましたのは昭和二十三年の十一月でございまして、その当時は副会長をいたしておりました。最初一期間は副会長でございましたが、二期目からは会長に選任されまして今日まで約八年近くになっておると思います。
  223. 山田長司

    ○山田委員 会長になられてから八年といいますと、今度の事件の六千五百万円の金を使い込んだ河村事件というのは、全く最初から今日までの間というものはあなたが責任のある立場における期間中において起った事件だと思うのです。先ほどから伺っておりますと、あなたの伊瀬委員に対する答弁の中に、六千五百万円の負担については、職員が非常に責任を感じて、職員がこの負担をしようという話をしておるというような意味の御発言があったように思うのですが、私はこんなことが事実あるとすれば、ますます理解のできない、不可解に感ずるんですけれども、一体そんなことが職員の中で言われておるのですか。
  224. 田中順吉

    ○田中参考人 実は昭和二十五年にドッジ・ラインの経済激変に遭遇いたしまして、県連が軒並みに大きな赤字を出しまして、全購連に対する決済の遅滞あるいは不能あるいは購買品のキャンセルというような事態が起りまして、そのときに数億の赤字を全購連が出したことがありました。中金からは全購連の手形はきょう限り全然めんどうを見ない、融資も全然しないということで、金融機関から見放されまして、ついに事業はストップいたしまして、もっぱら整理に当った時代がございましたが、そのときに職員が一割減俸、あるいは旅費を三等に落して、この際はわれわれの努力によってこれの再建をはかりたいということで、そういうことを実施したこともございました。今回の事件とはその内容、趣きは非常に違いますけれども、当時の職員がそういう気持でやりました事実もございまして、今回も職員としては、先ほど申しますように、これは非常に申しわけないことである、また今日まで職員組合としましてもかなりいろいろ強い要求もしてきておったが、こういう点についてもこの際十分今後会の再建のためには協力せなければならぬじゃないかという自主的な気持で立ち上ろうとしておるのでございます。これはわれわれとしましても、あるいは会員としましても、そういうことは当然やらすべきでないという考え方は強いのでございますが、せっかく職員が自発的にやろうとしておりますものを、今これを徹底的に阻止するというところまでは参っておりません。ここで新しい役員ができましたならば、新しい役員の考え方によりまして当然それ相当のこれにつきましては措置をしていただくというふうにわれわれとしてもお願いしなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えております。
  225. 山田長司

    ○山田委員 ただいまの田中さんのお話を伺っておりますと、莫大な損をした場合の話だけ今おっしゃられましたけれども、あなた方の組織がやみ物資をたくさん動かしている事実も私は知っております。そういう場合における利益は一体どういう工合にそのことの記帳をされているのですか。
  226. 田中順吉

    ○田中参考人 やみ物資とおっしゃるのは、現在ではほとんど物資統制がございませんから、統制のあった時代のことかと思いますが、それはあるいは全然なかったとも申し上げられませんが、今私はそういうものが事実あったということもあまり記憶もございません。ただ終戦直後におきましては、農業会の時代に農機具を初めといたしまして農業用の生産資材が主として農業会に一元配給を担当させられておったのであります。その当時の在庫品が、だんだん終戦後品質が改良されていいものが出るに従いまして、そういうものがほとんど配給不能になったということによりまして、そういうものをかなり処分いたしましたり、いろいろの方面に処置をするというような事実があったことは記憶しておりますけれども、あえて積極的なやみをやったということは、これは絶無とは申されませんけれども、今のところそういう記憶はございませんが、もしあったといたしましても、そういうもので大きな利益を得てそれをどうこうというようなことはおそらくはないというふうに私は考えております。
  227. 山田長司

    ○山田委員 私はそれらの事実についてっかんでいる資料があるのですが、今それらのことを聞こうとしている時間がないのでやめます。  次に、一般の商社と違いまして、一般の商社の場合は、利益という問題についてはそれが明確になる面が少いのですけれども、あなたの方の場合は商社ではありませんから、一応肥料を扱った場合においても、その肥料によって幾らの利益があったということは明確に出るわけですが、年間における全購連の肥料の収益というものは一体どのくらいの金額になっているのですか。
  228. 田中順吉

    ○田中参考人 これは肥料によりまして手数料は差異がございます。最も手数料の低い硫安におきまして〇・四%であったと思います。一番高い化成肥料等におきましてたしか一・五%くらいになっている、こう思います。平均いたしまして肥料では大体一%になっていると思います。従いまして、現在肥料の取扱い高が五百億ちょっとこしている程度かと思います。従って五億程度の手数料がある。これは総会で事業計画と予算を提出いたしまして、それによって手数料もきまっておりますし、その手数料収入によっての支出もこれは総会で決定されておりますので、その範囲においてやっておる、こういうわけでございます。
  229. 山田長司

    ○山田委員 ただいまのお話によりますと、それは国内の消費の場合における五億だと思うのですが、国外の、輸入の八百億からを入れますと、一体どのくらいの金額になりますか。
  230. 田中順吉

    ○田中参考人 五百億と申しますのは、国外から入りますカリ肥料も含めてでございます。ただし、カリ肥料につきましては、さきに問題のありました含み利益ができた場合には、これはそういう手数料とは別個に、先ほど申しましたような操作上の特別のものを蓄積しておった、こういう事実でございます。もちろん海外との関係ということは、輸出はもちろんわれわれの方では全然ございませんし、輸入の方では、カリ肥料だけがございます。それはその中に含んでおるもの、こういうことに御了承願いたいと思います。
  231. 山田長司

    ○山田委員 先ほど細田委員からも発言があったのですが、山川一三さんのけさの自殺の問題は、この一番重要な捜査の裏づけになる人であったと当局は言われておりますが、この山川さんが肥料の一番大きな金額になりまする硫安ですか、硫安について警視庁へ呼ばれていることが今までに五回あるというのですが、この五回の期間中にこの肥料のことについて、おそらく幹部の人たちに何か報告してないはずはないと思いますが、一体どんな報告がなくなられる前にされておりますか。
  232. 田中順吉

    ○田中参考人 山川職員が自殺をいたしましたことは、まことに気の毒なことで、遺憾なことでございましたが、山川君は肥糧部の燐酸加里課という課の課長の次におりまする調査役という仕事をしております。従って、硫安は窒素課でやっておりますので、硫安等については全然これは関係をしておりません。警視庁に出頭を命ぜられまして、これは任意出頭で数回取調べを受けたようでございます。私も二度本人からその模様を聞いたのでございますが、これの調べられております内容は、聞くところによりますと、立岩の贈賄容疑に対しまして、その使い走りをしておったということのようでございます。そういう関係の取調べを受けた。しかし非常に峻烈と申しますか、非常にきつい調べを受けたので、本人の性質上、少し興奮といいますか、憤慨といいますか、そういう報告を私どもにしております場合のいろいろの面を考えましても、極度に興奮をしておった。で、取調べの事実もかなり峻烈であるかのようなことを申しておりましたが、何分すでに現在では本人が死んでおりますからわかりませんが、何もあの山川君のやっておりました仕事といたしまして、あるいは山川自体が贈賄をするとか、横領するとか、どうするとかいうようなことの非常にできにくい、そういうことはおそらくできないという地位に、また職責におったということは想像がつきます。ただ立岩の指揮といいますか、命令といいますか、その使い走りをしておったという程度のことに承知しております。決して硫安なんていうようなことには関係ないと思います。
  233. 山田長司

    ○山田委員 山川さんの調べが、警視庁当局の非常に峻烈な調べだったということで興奮して自殺したのじゃないかというあなたの御発言のようでございますが、立岩さんと非常に緊密な連絡があったということは間違いないと思います。さらに農林省からも、この人たちに対していろいろな圧力があったというような話もあるのですが、こういう点について何か農林省の圧力はあったのですか。
  234. 田中順吉

    ○田中参考人 そういうことは全然聞いておりませんし、また山川君の立場、職責からいいますと、それはわかりませんけれども、そういうことはないのじゃないかというふうに私は考えます。
  235. 山田長司

    ○山田委員 この間の新聞の報道でも、農林省の人たちが全購連の人たちと一緒に料理屋などに出入りしておるということは明確だと思います。実は私が局長のところに尋ねたときにも、やはりそういうことはあったのではないかということが局長からはっきり言われておるのですから、そういうことがないということはないと思います。やはり会長として部下を完全に掌握しておるならば、ただ峻烈な取調べくらいでなくなるはずはないでしょうし、重役の中からもかなり峻烈な批判があったのではないか、そういうことから死に至ったのではないかということをさっきも細田君が言われておりますし、意見がいろいろ出ておる。ですからやはりなくなられておる人のことも勘案して、もっと情愛のある話があってしかるべきだと思いますが、どうですか。
  236. 田中順吉

    ○田中参考人 もちろん本人の今日の事態に対しましては衷心同情にたえないのでありますけれども、御指摘のような点は、私としてはどういうことが事実あったかもちろんわかりません。また私はただ峻烈な調べによってのみ死んだということはもちろん断言できません。ただそういうような話をしておったということを申し上げたにすぎぬのでありまして、これは全然断言はできぬのでございますから御了承願いたいと思います。
  237. 山田長司

    ○山田委員 重ねて同じようなことを伺って非常に恐縮に思いますが、けさあった出来事を新聞で詳細に見たり、あるいは全購連の人たちから伺ったわけではありません。ただラジオの報道によるだけで伺うので、非常に疎漏な点がありますけれども、数回にわたって取調べを受けて、それでけさのことですから、果してだれがお会いになったかわかりませんけれども、自宅でなく職場に来て、しかも会議室でなくなるに至っては、どう考えてみてもこの真相を明らかにしないようにするためか何か重役の圧力がかかったのではないかと思われるのですけれども、その点重役の皆さん方は何も知らなかったのですか。
  238. 田中順吉

    ○田中参考人 重役と申しましても副会長、専務、常務でございますから、あるいはそういうところでどういうことがあったかは私にはわかりませんけれども、私といたしましては全然そういうことはございませんし、事実わからないのであります。たださっき申しますように、二回ほど取調べの模様の報告を一緒に聞いただけであります。
  239. 山田長司

    ○山田委員 角度を変えて、日本の中小企業家の立場から現在の全購連のやっている仕事に話を変えて伺います。先ほど荷見会長の話によりますと、全購連では農業者の利益を擁護するようなものしか扱っておらないと言われますが、今日の全購連で扱われている製品は、中小企業家の商売のじゃまになる製品がたくさんあるわけです。たとえば洋服、下着類、学用品、酒、しょう油、薬品、ゴムくつ、地下たびとかいうものは確かに農民には必要には相違ないけれども、これがあなた方の組織を通して販売する段になると、大資本と連係して商品を扱うことになるわけでありまして、地方の小さな町や村では、全購連が本気になって農協と手を握って商売をするという段になりますと、そのことによって中小企業家は全く困る立場に追い込まれるわけです。確かにそういう点があり得るわけです。こういう点について、農家に必要な品物といっても広範になるけれども、その点中小企業家を圧迫しないように限度を作って商品を扱うことはできないのですか。
  240. 田中順吉

    ○田中参考人 ただいま御指摘のありましたような品目につきましては、単位農協におきましてはおおむね全品目を扱っているところが多いと思います。これはもちろん組合員の便宜のため組合員の要求に応じましてやっているものと思います。全購連におきましては、農業生産資材、肥料はもちろん飼料、農機具、農薬、温床紙というようなものに重点を置いております。ただし地下たび等は農業生産上必要なものでございますから、自己生産工場におきましてみずから作って農民に配給しております。その他のものにつきましても作業服とか、石けんとか、マッチとかいうようなこまかい日用品のようなものもごく品目を限定して扱っておりますが、これも県連なり単協なりの要請によりましてやっているわけでございまして、あえて中小企業と塗擦を起すというようなことまでしてやろうというような気持ではございませんが、何分組織が農民から単協、県連という組織でございますので、組織をしている組合員からの要望があれば、またそれが組合員のために経済的にプラスになるという判断がつきますならば、あえてこれを取り上げて取り扱うわけであります。何でもかんでものべつまくなしにやるということはもちろん考えておりません。中小企業と摩擦を起すとか競合するとかいうようなことはできるだけ避けまして、農民の自主的な要請に基いてやるという考え方でやっておりますことを御了承いただきたい。ただし実際問題といたしましては、こちらがそういうものを若干扱いますので、生産資材にいたしましても、当然中小企業との間においてはいろいろと問題があることは避けることはできないような事情でございます。
  241. 山田長司

    ○山田委員 ただいまの御答弁でありますけれども、私はそのことについて論争しようとしているのではありませんから、これ以上そのことについてはお尋ねいたしませんけれども、実際末端の町村や何かの農協に行きますと、中小企業家との間に猛烈な商品の販売競争がなされている。このままやられていけば、農協の場合においては税金がかからないわけですから、かなり単価を下げても商売ができるので、その点中小企業家は全く困っている場合がある。そういうことをあなた方は耳にしてないことはないと思う。しかし今はそのことを伺おうとは思っておりませんから、その話はこれで終ります。  次に、先ほどからかなりあなた方の古手職員と役員とのあつれきがあるような印象を受けますが、これは何といっても産業組合時代からそれが農協と変る期間において、前の人たちがほとんどどこにも残っておる、こういうことでやはりあつれきがあると思うのです。そういうことでやむを得ないといたしましても、どこの農協でも大体において言い切れることは、農協の幹部というものが実際農協の職員や働いている人たちの立場を理解せずにおる場合が非常に多いために、各町村の組合及び県の連合会あるいは中央の皆さん方においても、今度のような事件が起ったということは、実際において仕事の内容がよくわかっていない人が多いんじゃないかと私は思う。あなたがどういうふうにおっしゃられるか知りませんけれども、あなたの場合などは、末端の、県に出る前に町村の組合をおやりになるというような経過を経てきておりますので、比較的わかっているのかもしれませんけれども、実際の実務がわかっていないためにこういう弊害が起っていると私は見ている。ですからこれから実際にこういう問題をなくすためには、やはり何といいましても実務に明るい人が末端職員のやっている仕事にまで全部目を通されなければ、ただ政治的に中央で各政党の人や大会社の人などと連絡をとるがけの仕事でなくて、やはりそういう仕事も私は必要だと思うのですけれども、これからあなたが去ったあと、今度のような事件を起したその結論として、その批判をしてみた場合に、どういうところから農林省の関係及びあなた方の団体、あなた方の類似の団体等に次々といろいろな問題が起っているのか、こういうことについてのあなたの正しい判断が、今度の事件で辞職するに当ってなければならぬと思うのですが、この点どうですか。
  242. 田中順吉

    ○田中参考人 農協全体に最近いろいろ不祥な問題があることを聞きまして、私も非常に遺憾に存じますが、私としましては全体の問題につきましてはどうこう申し上げる立場でございませんが、少くとも全購連に関する限りにおきましては、私が県の仕事を責任を持ち、かけ持ちでやっておるということによって十分な内部の把握に欠くるところがあったということは、私は謙虚に反省いたしまして、先ほど申し上げましたように、こういうことを今後いかにして直していくかということは、関係の皆さんとともに心がけなければならぬと思います。  御指摘のように役員と職員との間にあつれきというようなことも、これは場合によってあろうかとも思いますけれども、全町連の場合におきましては、現在までにそういう露骨なあつれきとかいうようなことはないと私は信じております。ただこういう不始末ができたということには、やはりその機構の上におきまして欠くるところがあったのじゃないか、かなり無理をしておったということが一つあげられると思います。といいますのは非常に事業の分量が上りまして、事業そのものが増大しておるのに比例いたしまして、その機構なり人員等が従来のようなままで、かなり無理をしておったというところにもかなりの欠陥があると思いますから、ここでやはり機構と内部組織というものに一そうの充実と改善を加えまして、そういうすきが起らないように、また相互牽制組織を十分緊密にやりまして、今後はこういうことが起らないようなシステムをこの際に確立いたまして実行しなければならぬのじゃないか、こういうふうに痛感いたしております。
  243. 山田長司

    ○山田委員 先ほどからの同僚の質問及び私の質問等から、私がどうしてもふに落ちないのは、あなたが知らなかった過程においても、農民の団体とかあるいは政党とかに、いろいろ目の届かなかった世界の中から政治献金とかあるいはそれに類するものが出ているに相違ないと思うのです。それがやはりわれわれの耳に入り、あるいは新聞紙上等に出ていると思うのです。私があなたのさっきからの答弁を伺っておって、何としてもふに落ちない点は、あなたの目の届かなかったということはあなたも認めておるのですから、必ずやその中からあったに相違ないと思うのです。今去るに当って、あなたが目の届かなかった過程の中からそういうものがあったのじゃないかという理解は、おそらくされておるのじゃないかと思うのですよ。そういうことが全然今になってもあなたにはされておりませんか。どうか一つそういう点は、われわれ全然知らない農業団体から出ている話を実は耳にしているのです。どうかきょうは、知らないわれわれにも、あなたが去るに当って、何かこういうことがあったのじゃないかという、そういうことをあなたから私は聞きたいのです。あなたは終戦後二十三年から副会長をやられ、今日三十二年まで約十年以上の歳月おられたのですから、その間まさか会長という立場から、全然これを耳にしなかったということは、どうしても私どもには理解できないのです。どうか一つ今去るに当って、そういうことがあったのじゃないかというふに落ちない個所があったら、ここで御発表願いたいと思うのです。
  244. 田中順吉

    ○田中参考人 いろいろ今後のために御心配いただきまして、そういう点を点を追及し御指摘いただくことはごもっともと存じますけれども、私はそういうことがあったのじゃないかという相愛は持っております。非常に心配はいたしておりますが、私がそういうことがあったということをはっきり申し上げるということは、私も記憶にありませんので、あしからず一つ御了承願いたいと思います。
  245. 山田長司

    ○山田委員 朝日新聞の紙上には、あなたの同僚であった専務は、農林省から圧力のかかったことも言っておられるし、さらに代議士から陣中見舞を取られたかのごときことも言われておるのです。これは私は全然ないとは思いません。しかしあなたが、同僚の専務が——専務というのは実際上仕事をやられておる方だと思うのです。その方から言われておるにもかかわらず、十年の歳月全然お聞きにならなかったということは、あなたは全然正直にお答えにならずにおるのだとしか理解できないのですよ。十年の間そういうことを全然耳にしなかったですか。
  246. 田中順吉

    ○田中参考人 先ほど来申し上げた通りでございます。
  247. 山田長司

    ○山田委員 それは私も承知しておるが、理解できないので最後に伺っておるわけなんです。耳にしておるだけで、こういう問題については、いつ何日にだれが来て、その人にどれだけ渡しておるということは言われないと思うのですよ。しかし相手の専務が言われておるのですから、あなたが幾らつんぼさじきに置かれたといっても、専務はまさかうそを言っておるのではないと思うのです。あなたは全然知らない。専務が言ったことにはおれは関しない、こういうことで、きょうあなたの御発言が終りになってしまうということは私も非常に残念です。全然このことについては専務の品からも耳にしなかったですか。
  248. 田中順吉

    ○田中参考人 その点ははっきり申し上げることのできない私の経過の記憶からいたしまして、非常に申しわけありませんけれども、先ほど来繰り返し申し上げておる通りでございますので、一つ御了承願いたいと思います。
  249. 小枝一雄

    ○小枝委員長 芳賀委員
  250. 芳賀貢

    ○芳賀委員 荷見さんにお尋ねしますが、これは重要なことですから、特に全国農業協同組合の健全化、運営のあり方の上に立って全中の会長の立場でお答え願いたい。第一の点は、荷見さんも御承知の通り、国会においては前国会以来農林漁業組合の再建整備のための法律案を審議いたしまして、先週衆議院を通過して現在参議院においてこの法律案は審議中であります。これは過般荷見会長も参考人として当委員会に出席されて、農林漁業再建整備組合に対する現行法律を改正して、再建整備組合が再建した暁においても、今後なお健全経営のできるように法律の改正をしてもらいたいという、そういう意見の開陳があったわけです。私たちは、諸般の情勢を判断してこの際農林漁業組合の再建整備を了した組合に対しても、今後なおかつ一定の期間健全な経営ができるようにとの国の配慮をこれに払うための措置も現在講じておるわけでありますが、今日問題を惹起いたしました全購連の場合についても、実はこの再建整備組合の一つになっておるわけであります。非常に大事なこのときに、かかる事態が全国段階の全購連からも生じたということは、おそらく府県の連合会並びに再建整備組合であるところの全国の単位協同組合も、このことによって非常に不安と困惑の念を持っておると思うのです。それでこの際全中の会長として、この再建整備の今後の方向に対して、今度の全購連の問題というものは直接的な関係はありませんけれども、しかし協同組合の今日の健全な経営というものに何か大きな欠陥があるということは否定することはできぬと思うのであります。で、全中の立場から見た場合において、全購連が今日全く不祥事件を起したということに対する大きな欠点と称するものは必ずあると思うのです。ですからそれを全面的に判断された場合の見解と、今後の農林漁業組合再建整備の方向に対して今回の事件が及ぼした影響等に対する意見を聞きたいわけです。
  251. 荷見安

    ○荷見参考人 農協の運動はただいま御指摘になりました再建整備法の関係のときに申し上げました通りでございまして、これは町村の単協から県の連合会、中央の全国団体というものが冬独立した法人にはなっておりますけれども、これは形態上の問題でありまして、実体上は一身一体の活動をいたしまして初めて系統農協の運動が強化されるわけでございます。そういうわけでありますから、その間の関係といたしましては、全国各町村にわたる系統団体の間がおのおの相信頼し、相密接な関係を保つということが根本的な要件でありますところにただいまのような問題が起りましたことは、あるいは信頼感を弱める、系統運動を弱めるとかいうようなことになりがちだと思いまして、その点を非常に残念に思っておるのでありますが、今お尋ねの、それならはいかなるところにこういう原因があると思うか、さようなことでございますと、私は何といたしましても、組合のあるいは連合会の機構の運営というものを十分責任をもって行うようにしなければならない。これは各関係者の自覚に待つことが多いのでございまして、そこはわれわれの運動の一つの部面になると考えております。それから何といたしましても組合の事前の監査、事後の監査によりましてあやまちのないようにいたすということが根本でありますので、従来もずいぶん注意はいたしておりますが、さらに地方における監査の態勢も整え、中央におきます態勢も整えまして、つまり監査機構の自主的の強化によりましてかようなことを起さないように、従って系統団体の間における信頼感を弱めることのないように努力をするということが根本の問題であると考えております。
  252. 芳賀貢

    ○芳賀委員 原因が機構上の問題にあったというお説でありますが、その場合、一つは人的機構の問題、もう一つは業務機構の問題、もう一つは監査機構の問題があると思いますが、人的機構の場合、役員組織と職員組織の間における完全な一貫した体制が業務体制の上で講ぜられておったかどうかということが重大な問題であるというふうに考えるわけです。その点はどうお考えになりますか。
  253. 荷見安

    ○荷見参考人 その点はさらに十分検討をいたしませんと具体的なことは申し上げにくいのでありますが、何さま欠陥がなければかようなことにはならないのでありますから、何らかの欠陥があったのではないかと考えておるのであります。十分検討いたしましてさようなことのないようにいたしたいというのが私の考えでございます。
  254. 芳賀貢

    ○芳賀委員 全国団体の連合会の場合は、全購連だけでなくては、荷見さんの会長をやっておる全国中央会、それから全販連、それから金融機関を掌握しておる農林中金、こういう大きな全国団体の業務の内容を異にした連合会があるわけですが、たとえば役員機構に一例をとってみると、大別して二つの流れになっておる。一つは会長あるいは専務、役員の枢要部門が旧農林官僚の古手と——言っては語弊がありますけれども、旧農林官僚の指導的な地位を果した人たちが、たとえば全国中央会あるいは全販連、農林中金、こういう連合会の場合においては農林官僚の指導的な地位を果した古い人たちが連合会の指導者になっておる。ひとり全購連だけは民間の出で、田中さんにしても専務にしても末端の協同組合の組織陣営から出ておるわけです。これは全国団体の協同組合の連合会の役員構成のあり方として、従来からこれは批判された問題でありますが、協同組合の連合会の場合に、あくまでもこれは自主的な役員構成でいくべきであるか、あるいは官僚機構を農民組織の中に移したようなやり方でいくべきであるか、これは論争の点もあったわけでありますが、この際この問題を旧農林官僚である荷見さんにどうだということを聞くことはいささか差しさわりがありますけれども、この全国段階における経済事業を責任をもって掌握するという役員の立場にある場合においては、まず町村の協同組合長をやっておるということによって県段階の経済連の会長になる、各府県ごとの経済連が全購連の会員ということになっておりますので、各県段階の連合会の立場を代表する会長が総会を構成して、その中から会長あるいは専務、常務理事が出るというような機構になっておりますけれども、その場合の利点というものは、末端農民の意思を率直に代表して全国の会長あるいは専務理事になるというそういう非常に民主的な利点もありますけれども、一方においては、たまたま会長あるいは専務の重職にある人たちが、少くとも日本的な全国的な経済情勢の中において明確な判断と行動をするという場合においては、やはり経済人としての訓練とか認識とか能力とかいうものが備わっていなければ、どのような人が会長や専務の地位に座った場合においても、経営の全体を掌握して、しかも年間七百億以上の事業量を持っておる。その業務の内容をつぶさに掌握するということは、非常に困雑な事態であるというふうにも考えられるわけであります。しかも今月の二十日には、責任を感じて役員は総退陣して、改選さえも行われるというこの重大な事態に当面をしておる今日の場合、この連合会の人的構成の中において、大いに改善すべきような諸点もあると思うのでありますが、それらの点に対して、これは荷見会長並びに田中会長においても、お考えがあればこの機会に述べてもらいたいのであります。
  255. 荷見安

    ○荷見参考人 いろいろお話しになりまして、実態的にあるいはさような外観を備えることがあろうかと存じますが、大体法律の規定によりまして、各総会等において自由に選任された者か、その局に当ることになっております。従いまして、あるいは組織を代表しておる方が役員になっておる場合もありますし、しからざる学識経験者の中から出た者が役員になっておる場合もあるのでございます。これは現在においては全く自由な総会の選任の結果によっておるのでございます。従いまして御指摘のありました中央会のごときも、副会長は組織から出ておる方もございます。それからあと参事のごときも、民間の団体から、ずっと経験を積んだ方がなっておられます。あるいは御指摘のありました全販のごときも、会長は監事の経歴のある者でございますけれども、副会長、専務等はしからざる者から出ておるのでございまして、いろいろな組み合せになっております。要は役員陣というものを補完いたしますために、事務陣営の強化ということが制度上設けられてございまして、参事制度というのは、戦後の組合の特異の組織でございます。さようなわけでありますので、ただいまお話しのようなことは、各団体の構成員の自由意思によって構成さるべきものと考えておりまして、現在の制度におきましては、わきからとかくの干渉をいたすべきものではなかろうと私は考えておりますので、それだけ申し上げておきます。
  256. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は荷見さん、大事な点だと思うのですね。現在までの方針によって、たとえば全購連の役員改選が行われたといたしますと、必ず全国の常勤役員が県連の会長を兼ねておるという事態があるわけなのです。そうなると、中央に常駐してその全力を注いで、たとえば全購連の常勤役員としての地位を完全に勤め果すということはできないと思うのです。しかしながら今の機構のもとにおきましては、それならば全購連の常勤役員になったとたんに県連会長をやめたらいいのじゃないかというような説もありますが、今の機構のもとにおいては、そういうことは現実の問題としてはできかねると思うわけなのですね。ですから少くとも常勤役員になった場合においては、なるまでは県連の会長であっても、中央段階の常勤役員になった場合においては、やはり県連における会長とかあるいは専務というような常勤的な、責任の一番重い地位を退いてそうして中央における常勤役員としての勤めを十分に果し得るような、そういう機構に改めなければ、何回改選を行なっても、結果的にこうした事態が生じた場合には、ただ単に役員として連帯責任の上に立った道義的な責任だけは感じます、という事態に終ると私は思うのです。これはやはり日本の協同組合の今後の健全なる発展の上から見ても十分批判、検討すべき余地があると思うのでありますが、そのことに関して全中の会長である荷見さんも率直な意見を述べられる機会であると私は思うのです。
  257. 荷見安

    ○荷見参考人 ただいまのお話はまことに有益な御示唆でございまして、私ども十分考慮を払わなければならぬことと考えます。ただし現在の法制におきましては、どちらの方法もとり得るのではないかと考えるのであります。戦前のことを申し上げるとはなはだ恐縮でありますが、戦前府県の信連の会長さんが、産業組合中央金庫の理事におなりになったときには、地方の信連の会長はやめてこちらに参るというような取り扱い例もございます。それでありますから、それらの点はただいまも従前も同じような制度でございますから、皆さんの、つまり団体を構成している総会の方々の御意見によっては、適当にあんばいされることと思うのであります。ただ一言つけ加えておきますと、前に県の連合会をおやめになって、中央で専念されてる方を、あとからながめますと、どうも地方との結びつきが弱くなりまして、何とかして地方の地位を保持しながら、適当な活動ができるようになることが望ましいのではないかと、連絡の関係からは私は率直にそう考えるのでありますが、今の芳賀さんのお話はまことにごもっともなお話でございますので、私どもは十分この際考えさせていただきたいと思いますが、結論を申し上げるまでに至っておりませんので、その点で御了承を願います。
  258. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は、県連の会長をやめる場合においても、県連の理事としての地位まで去る必要はないと思います。中央の会長、専務になった場合には、県連の一番重要な地位を兼ねてということになると、やはり力が分散さますので、こういう事態が起きやすいと思うのであります。私どもは決して農業団体の最高責任者が、農林官僚の体験者でなければならぬという、そういう間違った、非常に逆コース的な考えは持っていない。しかしこの機会に、全購連の事件があったことによって、農協陣営から出た会長方はもう勤まらぬというような、そういう自信を失ったような空気が全国的に広がった場合においては、どうしても農林官僚の古手に依存しなければならぬというような事態になることをわれわれは憂えるわけでありまして、こういう点に対しては、やはり二十日の役員改選の機会までに十分、心配されるような事態に対しては、改善の跡が見えるような人的構成をぜひともやってもらいたいというふうに考えるわけであります。  その次にお尋ねしたい点は、これは従来こういう例がとられておったと思うのでありますが、現在はどうでありますか。たとえば全購連にしても、全販連等にしても、重要な議題を持った役員会等の場合においては、その監督官庁であるところの農林省のその部門の係官等がその役員会にオブザーバー的な役割を占めて出席しておったというような過去の事例もあるわけでありますが、これらのことは、そういう会議の場所に農林省等の関係係官が出席するということの是非はとにかくといたして、大事な会議の運営とかその内容等に対して、やはり関係のある農林省であるとか、あるいは全中の適当な役職員が、それらの団体の会場に顔を出しているということだけでも、これは非常に違うのじゃないかというふうに考えられますが、現在はそういう運営はどういうことになっているか、この点をお伺いいたします。
  259. 荷見安

    ○荷見参考人 私の関与した点だけ申し上げますと、私どもの役員会には農林省の官吏は一回も出席いたしておりません。ただし農林省の監督を受けるために必要な事項につきましては、みなの意見が決定いたしますれば、農林省の方へ連絡をいたしまして、意見を聞く機会は持ちますが、出席はいたしておりません。ただ農林中央金庫だけは、法律によって監理官を置いて、それが会議に出席して意見を述べるという規定になっておりますので、これはただいまでも出席しているのじゃないかと存じますが、以前ははずっと出席しておりました。それだけ申し上げておきます。
  260. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点に関して農林省の経済局長から考え方を聞きたい。
  261. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 現在の法律の建前からは、農業協同組合その他の農業団体は、ただいま荷見参考人から御指摘のありました農林中央金庫を除きましては、法律上何らの規定がありません。監督規定といたしましては、組合の行為が法律または定款に違反した場合に注意を与える、注意を聞かなかったら役員の解任を命ずるとかその他の命令を出す、こういうことの規定だけであります。戦争前の法律とは違った法律構成になっております。これは戦後の新しい憲法あるいは法律体系からそういうふうになっておるのであります。今これをすぐどうこうというわけにはいかないと思いますが、少くとも行政庁といたしまして、農業団体の監督の責任を負わされるということになりますれば、もっと密接な関係ができた方があるいはいいんじゃないか、こういう気もいたします。それをすぐ法律に書いたらいいのかどうか、そういう点は問題が残ると思います。これは私の方から役員会に出席させるとか、こういう権限はないまたそういうことは適当でないと思います。農林行政を行う上におきまして、それぞれの団体、それぞれの機関が、その場合その場合の問題の重要性なり問題の性質によりまして、そういう密接な連絡があった方があるいはいいんじゃないか、こういうふうに思います。
  262. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に一点お尋ねしますが、それは監査機構の問題です。これは農業関係の監査機構というものは、まず第一は協同組合自身の自主的な監査、それから農林当局の指導的な監督の意味を含めた監査と、それから全国中央会におきましてもやはり指導的な監査を行うということが当然できるのでありますが、この三つの系刑の中において、協同組合の業務実態の監査が行われるにもかかわらず、ただいままでは、参考人が述べられた意見を聞くというと、どの段階においても十分なる監査を行うことができなかったということに尽きておるわけです。ですから、監査機構が不完全であるという場合においては、自己の業務実態の明確さを把握することができませんし、また指導的な機関の立場から見ても、その団体が果して正確な業務をやっておるかどうかということもわからないのであります。だからこれに対してはやはり早急な監査機構の確立というものは何としても必要なことになってくると思うのでありますが、この点に対しては早急に陣容を確立してやるということを明確にしてもらわなければならぬと思うのであります。  それからもう一点は、両参考人は御承知と思いますが、協同組合の業務の欠陥に対しては、たとえば決算が行われたあとの業務報告書の内容等に対しても、これはやはりわきまえているとわきまえていないとにかかわらず、理事の共同の連帯責任というものは農協法の規定の中にもうたわれておるわけです。ですからたまたま業務報告書というものが総会に提出されて、その承認を求める場合においても、監査を受け監事が正確であるという内容の確認をしない限り、総会に書類を提出して承認を求めるということはできないのであります。ですから結果的に見て、それが正確を欠いた不正な業務報告書であるというふうなことが明確になった場合においては、これは当然当時の理事の連帯責任に帰すということにたるわけでありますが、そういうことを考えた場合においては、たとえば役員が、看板だけでよくわからぬからといっても、結局最終の責任というものは、わかってもわからぬでも理事が連帯で責任を負うことに当然なっておるのでありますから、これらに対する責任の所在というものは就任の当初からわきまえてかからなければならないと思うのであります。この二点に対してはっきりした御判断が持たれておるかどうかという点を両参考人からお尋ねしたいのであります。
  263. 荷見安

    ○荷見参考人 監査の点につきましては、前にも申し上げましたように、早急に適当な方法を講じまして強化いたしたいと考えております。これは中中地方を通じてさようなことにいたしたいと思いまして、実は本日も三時からその会合を全部召集いたしておきましたが、かようなことでいたしませんが、あす、あさってにもいたすつもりでございます。ですからそれはしばらく時間を要すると思いますけれども、できるだけの知能をあげてそちらの方に進みたい、かように考えております。  それから役員の責任の問題でありますが、これは内部の関係でいろいろあろうと思いますが、ただいまお話がありましたように、収支決算につきましては法律の規定によって監事の監査を受けて、その結果をあわせて報告して承認を受けることになっておりますので、監事の監査の重要なことは申すまでもないことと考えます。  それから理事の責任でありますが、これは執行者として当然のことと考えますが、法律上の問題といたしますと、いろいろな範疇があろうかと思いまして、それらの点につきましても、私どももできるだけ詳細な研究を遂げてはっきりいたしたい、かように考えておりますので御了承願います。
  264. 田中順吉

    ○田中参考人 ただいまの決算に対する役員の責任の問題は荷見会長の御発言と私も同じように考えております。
  265. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間の関係がありますので、私の質問はこれで終ります。
  266. 小枝一雄

    ○小枝委員長 細田委員、荷見参考人に対してはさきに関連質問がございましたのでよろしゅうございますか。
  267. 細田綱吉

    ○細田委員 けっこうです。
  268. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それでは、荷見参考人には長時間どうも御迷惑をおかけいたしましたが、どうもありがとうございました。細田委員
  269. 細田綱吉

    ○細田委員 先ほど私の聞き違いであったかもしれませんが、副会長と常任監事二名が留任して、ほかの方々は辞職された。私はちょっとおかしいと思うのですが、常任監事の諸君がしっかりしておればこういう問題は起きなかったわけです。当の責任者は常任監事の諸君、その人たちが残るということは、何かあとに残ってくさいものにふたをするような感じを強く受けるんだが、これはどういうわけですか。
  270. 田中順吉

    ○田中参考人 先ほど申し上げましたように、理事といたしましては副会長それから監事の中で常任監事が残るということになっておることはお話の通りであります。これはどういうわけかと申しますと、先ほども申し上げましたが、ここで全員が辞任をいたしますと、総改選ということになりますと、そのときに選挙できまりました理事、監事は、定款に規定されております任期の通りに、これから三年ということになります。そうなりますと先刻申し上げましたように、この際県連の会長が大体五月ないし六月にほとんど改選になるということになりますと、あるいはこの際に全購連の役員に選挙でなりましても、あるいは県の方で次の選挙に出ないというようなことになる人もある可能性がございますので、それではまた欠員ができるとか、いろいろな問題が起る心配もございますので、五月の県連の会長の選挙が終りましたころにもう一度選挙をやり直す、こういうことに会長会議で実はぎまっておるわけであります。それで副会長、常任監事が一応この際は残りますけれども、それは今申しますように総辞職でなしに、二人だけ残っておりますから補欠選挙ということになるわけであります。補欠選挙で役員がきまりましたならば、その二人の残っております副会長と常任監事はそこで辞任をする、こういう申し出があり、またそれを了承しておるわけでございます。そこで二人は辞任をいたしまして、あとは約二カ月程度の期間でございますからそこでもう一度総改選をする、こういう二段がまえになる一つの手段でございますから御了承願いたいと思います。
  271. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたのところへ農林省から肥料の保管の何か倉敷料ですか、そういうのがきているのですが、これは幾らぐらいきているのですか。
  272. 田中順吉

    ○田中参考人 これは肥料需給安定法に基きまして、調整保管用の硫安は全購連がこれを農林省の指示に従って実行する、こういうことに法律できまっておりますのでやっておるわけであります。それは農林省からきめられておりますところの保管料あるいは金利というようなものの交付があるわけでございます。金額はちょっと今わかりませんが、年間六千万円くらいのもののようでございます。
  273. 細田綱吉

    ○細田委員 その中にあなたの方としては輸入肥料を一緒にしてかなり保管している。そしてその農林省の方から出た六千万円の金で一緒に操作しておられるというふうに聞いておりますが、これはどうですか。
  274. 田中順吉

    ○田中参考人 輸入いたしましたカリも当然配給過程におきましては貯蔵をいたしております。けれども法律による硫安の保管とは全然別個の経理をしております。これは明確に経理をいたしまして、それはそれぞれ農林省にも報告をいたしまして、また十分な調査のもとに絶対間違いはないということで実行いたしております。カリと混同して保管する、また従ってその経費等を混同して処理しておるという事実は絶対にございません。
  275. 細田綱吉

    ○細田委員 今芳賀委員からも荷見さんにお尋ねしたのですがこの点重要ですから……。監査機構が三段階、これが十分でないので何だかネズミがちょっと端っこを食いさしたように、どの機関も、あなたの方の監査機構もあるいは中央会の方もそうだし農林省の方もそうだということだと、何段階になっておってもちっとも実効が上らない。監査機構は一本に集中して、むしろ農林省に一つそういうことをしてもらうというようなことはお考えになれませんか。
  276. 田中順吉

    ○田中参考人 それは事実上はできないことでございまして、農林省は当然農林省としての権限のもとに検査機能をお持ちになるわけでございます。それから中央会は中央会としての定款に基きまして、これは全国の農協のための監査機能を持つわけでございます。ただ実質的には予算等の関係で、全国多数の県連や組合あるいは全国機関の監査まで完全にやるということは事実上は非常に困難な事情にございますけれども、これを一つにすることは事実上はこれはできないことでございます。全購連自体の監査機能は、これは当然法律、定款の定むるところに従いまして監事の十分な活動ができるようにしなければならぬことでございますが、これにも先ほど申し上げましたように、人員等の関係におきまして若干十分でない点があることを認めております。それは今後さらに充実いたしまして完全なものにしなければならぬということを痛感いたしております。
  277. 細田綱吉

    ○細田委員 渡部局長にちょっと伺うのですが、小沼専務理事の新聞記事を見ると、全購連と農林省は親類づき合いでどうも思うように監督もしてもらえないんだ、またしょっちゅう世話になるので無理は言われぬのだ、これは確かにそうだと思うのです。私も戦時中ある外郭機関に若干関係しておったが、これは全くその通りだと思います。私はこの記事は毛頭うそ偽わりはないと思う。そこで外郭団体あるいは下部の機構等に対する監督機関としては、親類づき合いでない一つのポストが必要だと思う。これは大臣に聞くことかもしれませんが、経済局は経済局なりに親類づき合いをしない一つのポスト、監督機構をお考えになれないか、その点を一つ伺います。
  278. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 経済局には農業協同組合部に組合検査課というのがあります。これが農業協同組合の検査をやっておるわけであります。これは直接業務に関係するのでありませんで、もっぱら検査だけをやっておるのであります。農林省の中で経済局あるいはそのほかの局で肥料なり飼料なりそのほかの農薬等の資材、それぞれの局でいろいろなものを担当しておるのであります。その行政事務と検査の事務とははっきり区別いたしておりまして、親類づき合いというお話がありますが、行政的ないろいろな相談と検査は全然別になっております。
  279. 細田綱吉

    ○細田委員 局長に伺うのですが、そこまで峻別されておるのに、検察庁にほじられてこういうでっかいミスが出てきたということは、それはどこかに大きな欠陥があると思う。その点あなたの御感想を一つ伺いたい。
  280. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 農林省の外郭団体の検査については、町村の組合、県の連合会、全国の連合会、それぞれ組合経営者の能力なり組合の経理なりあるいは事業管理が違うわけであります。全国連合会になりますれば、これは先ほど来お話がありますように数百億の事業分量を持っておるのでありまして、その中で自分のうちのいわゆる監事、会社でいう監査役、それがまず最初に責任を持つべきで、そういう非常に大きな事業で大きな責任を持っておる中央の団体の監査をやる場合には非常な労力と手数がかかります。河村事件を発見できなかったということは、この監査の方法なり陣容なりあるいは機関、そういうものをさらに拡大してやれば、あるいは見つかったかもしれませんけれども、今の段階ではそれだけの検査能力なり陣容なりありませんし、なおかつ、日本の肥料の取扱い商社では、一番大きい団体が悪いことをしているという立場で検査することは、行政庁としてなかなかむずかしいのであります。たとえば証拠書類にしましても、相手の会社へ行って、そこで帳簿を照合するという権限がないわけであります。従って、いろいろなつき合いなり疑問がありましても、連合会の中で追及していくだけであって、検察庁なり、裁判所なりのように、有権的に相手方へ行って、そこでつき合せて調べるという権限がありませんから、今の検査では、そういうように巧妙に仕組まれておるところまで見つけるのはなかなかむずかしいのではないか。これだってつき合せて在庫品から何から全部押えてやればわかるはずなんです。しかしそこまでいくのには支所、工場、全部同時に押えて、そこでつき合せなければならないのでありまして、私の方でできないのは当然だとは言えませんけれども、そこまではいけなかったのであります。
  281. 細田綱吉

    ○細田委員 だいぶおそくなりましたので、最後に田中さんに伺いたいのです。支出伝票とでも申しましょうか、お金を出し入れする伝票、これをあなた方がめくら判でなくやっておれば、こういうでっかい不当な支出はなかったと思います。しかしどこでも、課長限りは幾らまでいい、部長限りは幾らまでいい、重役は幾らまでいいということがあると思うのです。あなたのところは、課長限りではどれだけ、係長限りではどれだけということになっているのか、その段階と金額をお伺いいたしたい。
  282. 田中順吉

    ○田中参考人 私の方では、経理についてのすべての責任は経理部長にあるという会の規定がございます。これは役員会で決定した規定でございます。ただし、それの毎月まとまったもの——資産表なり貸借対照表なりに上ってきたもの、あるいは損益の内容というものは役員のとこへ上ってきまして、報告を受け検討するわけであります。少くとも支払い伝票とか、振替伝票とかいうものは、経理でございますと主計課長というのが責任でございます。それから上の方でそれを処理してまとめるのが部長の責任でございます。伝票というものは常務理事のところまで上ってこない、こういうことになっております。
  283. 細田綱吉

    ○細田委員 今度は経理部長も調べられたそうですね。
  284. 田中順吉

    ○田中参考人 事件の起りました当時の経理部長は直ちに経理部長をやめさせまして、事件の終末がつくまで役員室付ということで現在その処置を保留してございます。そのあと任命いたしましたのが立岩——贈賄をやって調べられておりますのがあとで任命いたしました経理部長でございます。
  285. 細田綱吉

    ○細田委員 そうすると、経理部長が一人で何百万円も金を自由にするわけですね。そういうところに大きな間違いがあるというふうにはお考えになりませんか。あなたは今去るに臨んでそういう点をお考えになっているかどうか。また渡部局長は傍で聞いておられて——あなたのさっきの説明のように、それだけの権能が検査課にはないからわからないということでは何にもならないわけです。くろうとの目からよく業務の内容を検討してみればわからないことはない、勉強不足だからわからないのです。今の田中会長の御感想と、あなたの御意見を伺いたい。
  286. 田中順吉

    ○田中参考人 その点につきましては、あれだけの膨大な事業分量と、従いまして、それだけの金額の動きます伝票までを一々理事が目を通して確認するということは事実上困難でございます。非常に多くの理事がおってやればともかくでございますけれども、やはり理事は事業の運営につきましておりますので、伝票まで目を通すことは事実上困難ということで、部長限りの決裁になっているのでございます。それをまとめたものは理事のところまで上ってきますけれども、一枚々々の伝票、その伝票についております証拠書類あるいは現金というようなものを一々照応するというところまでは参っておらぬ、これは部長のところですべて処理をやらしておるというのが事実でございます。
  287. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいま会長の御説明になったのは伝票のことだけだと思いますが、伝票の記入に際して、どういう事業でどういう金が要るかということは事業計画として、それぞれの仕事の分量に応じて部長なり理事なりあるいは会長まで決裁をとるのがあると思います。それに基いて、実行に移すときの伝票はもう許可を得たものの実行でありますから部長限りでやっていく、こういうことではないかと思います。
  288. 山田長司

    ○山田委員 議事進行について。本日、今問題になっております全購連の問題を中心として、全国六百万農民の理解のできるような結論を私たちは聞きたかったのですが、本日の田中及び荷見参考人の御意見では全く納得いきません。きょうは大へん委員の人も少くなってしまいましたけれども、国会の名誉のためにも事件は明らかにしなければいかぬと思うのです。そういう点で、委員長理事会に諮って、小沼専務理事を証人として本委員会に喚問していただくことを切に懇請して提案します。本日の両参考人だけでこの事件を封じてしまわないようにぜひお取り計らい願いたいと思います。理事諸君にお諮りになって、このことについての結論をお出し願いたいと思います。委員長からもそのことを諮っていただきたいと思います。
  289. 小枝一雄

    ○小枝委員長 ただいまの山田委員からの議事進行に関する発言の小沼専務理事を証人として呼ぶかどうかということは、至急理事会を開いて御協議することにいたします。  ほかに御発言はございませんか。——別に質疑がございませんければ、本日はこれにて散会いたします。     午後六時十一分散会