運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-04-03 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月三日(水曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       大野 市郎君    川村善八郎君       木村 文男君    草野一郎平君       椎名  隆君    鈴木 善幸君       永山 忠則君    原  捨思君       松野 頼三君    村松 久義君       阿部 五郎君    赤路 友藏君       有馬 輝武君    井手 以誠君       石田 宥全君    石山 權作君       川俣 清音君    久保田 豊君       楯 兼次郎君    中崎  敏君       中村 英男君    日野 吉夫君       細田 綱吉君    山田 長司君  出席国務大臣         農 林 大 臣 井出一太郎君  出席政府委員         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         管理課長)   石田  朗君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      新沢  寧君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         漁業調整第二課         長)      諏訪 光一君         通商産業事務官 左近友三郎君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐藤 京三君         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    奥宮 正典君         通商産業事務官         (鉱山保安局鉱         山課長)    大木  恒君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 四月三日  委員小川豊明君及び細田綱吉辞任につき、そ  の補欠として中崎敏君及び有馬輝武君が議長の  指名委員に選任された。 同日  中崎敏辞任につき、その補欠として日野吉夫  君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第八四号)  水質汚濁防止及び水産資源保護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小枝一雄

    ○小枝委員長 これより会議を開きます。  水質汚濁防止及び水産資源保護の問題について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。中村英雄君。
  3. 中村英男

    中村(英)委員 四月二日の朝日新聞に――大新聞にはみんな載っているでしょうが、四段抜きで、島根益田市で、「漁民、市議会で大暴れ」という記事が出ております。これはひとり益田市だけの問題ではなくして、全国的に大なり小なり、パルプ産業の発達とともにこういう問題が起っていると思うのです。そこで水産当局水質汚濁に対する態度についてお伺いしたいわけです。もともと益田市の漁民に十分理解されないために起ったものだと思うのですが、これについて私ども新聞紙上ですから詳しいことはわかりませんが、調査されたことがあれば、一つ御説明願います。
  4. 新沢寧

    新沢説明員 お答え申し上げます。島根益田市にパルプ工場を作るという計画のあることを私どもが聞きましたのは、昨年の初頭でございます。こういう工場設置計画が起りますと同時に、漁業者の側から、これによる非常な被害をおそれまして、いろいろこれに関する反対の陳情も聞いたのでございます。確かに既往の例を見ましても、パルプ工場設置によりまして、非常に水質汚濁を生じてくる懸念というものは、かなり大きいものがあるわけであります。そこで、私の方といたしましては、現地の島根当局に十分この問題の処理については慎重を期するようにということを指導したわけでございますが、その後島根当局といたしましては、会社との間にいろいろ折衝を行いまして、私どもただいま受け取っております報告によりますと、昨年の十二月八日に、県知事中越パルプ工業会社との間に、契約を取り結んでおるようであります。その契約を見ますと、水質汚濁による被害防止のための契約としましては、まずこれ以上の約束を期し得られないという程度の十分の配意をなされた契約がなされておるわけでございます。まず、工場漁業農業等悪影響を及ぼすような浄化不十分な廃水や廃ガス等を放出しないように最善努力をすること、そして、そのためには、知事の指示あるいは知事が指定する者の指導に従って、その浄化のための施設を行うこと、そして浄化施設ができた後も、直ちに本操業には入らないで、まず試験操業をやって、そこで出てくる水質を見て、その水質所期程度に達していないときには本操業は開始してはいけないということ、また試験操業の結果所期水質に到達をして本操業を開始した後であっても、操業中、原因のいかんを問わず、また悪影響を及ぼすような浄化不十分の水を放出したときには、知事工場操業停止勧告をし、会社側はこれに従わなければならない、また予期せざる被害ができた場合には、補償については知事裁定会社は従わなければならないというような内容を持った契約ができておるわけでございます。また益田市の市長と、同じく中越パルプ会社社長との間におきましても、汚水処理については慎重を期するというために、両方の代表者並びに学識経験者等をもちます汚濁処理対策委員会設置して、汚濁処理施設の完備並びに浄化実行、さらに公正なる補償額決定を、この委員会に諮って決定をするというような措置をとっておるわけでございます。昨日の新聞で見ますと、市会におきまして予測せざる事態が起きたようでございますが、これが何に基因して起きたのか、またその処理等につきましては、今島根県に対して照会中でございまして、まだ報告に接しておりませんが、県並びに市といたしましては、漁業者立場に立ちまして万全の措置をとろうという心がまえで現在まで事を処理しているということは、ただいま申し上げました契約あるいは覚書等内容によってうかがえるわけでございますが、今後とも水産庁としましては、この問題が漁業者生活の道に非常に大きく関係するわけでございますので、なお指導を十分にいたしまして、被害が起らないようにしていきたい、こういうふうに考えております。
  5. 中村英男

    中村(英)委員 今度の事件はきわめて遺憾な事件でもあるし、まあ、四段抜きになるような大きな事件ですが、去年も実はこれに似た事件が起っております。これはおそらく、農地買い上げ漁民の利害の問題を同時に解決されなければいかぬし、同時にそういう問題の話し合いを進めていくという、そういう当局態度が、漁民だけをほっておいて、農地だけを最初買い上げたという誤解のもとに、幾分感情のもつれもあったようです。そういうことから、最初の予定地を変更してまた問題が蒸し返されてきているわけです。しかしこの新聞で見ると、中越パルプ社長の言を知事が引用している言葉が出ているわけです。これは非常に大きな問題で、事実としたら大へんな間違いだと思う。これはパルプ事業もそうですが、ことに近代産業が発達することは、農業も発達するし、雇用も増すし、当然当地方における発展も想像されるので、誘致運動はどこにもあるのです。しかし後進独立産業との摩擦の問題、特に漁業との問題は、最小限度損害を食いとめるということを、会社側としては十分留意しなければならぬわけですが、この中越パルプ社長言葉が、そういう考え方が事実としたら、こういう問題が起きるのは当然だと思うのですよ。これで見ると、繊維は魚のえさである、漁民に頭を下げる考えはない――繊維えさではない。これは御承知のようにプランクトンを発生させずに非常に被害を及ぼす。私ども飛行機岩国周辺の状況を見ると、あの周辺は明らかに色が変っておる。私のところの一里先にも山陽パルプができておる。私のところは害がないのですが、当時山陽パルプができるとき相当騒いだ。騒いだけれども山陽パルプは地元の漁民の意向を十分くんで、できるだけの好意を示して、そうして会社は数億を投じて施設もする、そうして補償も、あったらしようということで、柴田さんを呼んできて調査もし・十分施設もして、最小限度に食いとめておる。しかし益田においては、これは設置を急ぐあまりかわからぬけれども漁民とのそういう関係を十分考慮しながらも、やはり打つ手が打ってなかった、十分了解をされぬまま、会社農地買い上げ土地買い上げの問題が先行したから、こういう問題が起きたと思うのです。これは従来、日本に限らず、近代産業が発達すると同時に、そういう魚族保護という問題とからんで、どこでも問題が起きておるのですが、日本でも大正十一年以来たくさんの請願があって、そうして水質汚濁防止法案を作ってもらいたいという運動が今日までなされてきた。なされてきておるだけでなくして、すでにこういう法律を作らなくても、水産資源保護法という法律があって、その四条では、省令規則を作れば水産資源保護ができるという、そういう条文もあるのです。条文もあるのですが、一体これはどういうわけで、この四条を生かすような省令規則を今日まで水産庁は手をつけなかったのですか。
  6. 新沢寧

    新沢説明員 お話のように、だんだん経済が進んで参りまして、工業化が進んで参りますと、こうした工業影響によります漁民に対するいろいろな被害頻発して参るわけでございまして、そういうことに対処するために水産資源保護法というようなものもできたわけでございますが、なぜ、法律はあるけれども実行上必要な省令ができていないかということでございます。確かにわれわれの方としましても、すみやかに実効のある措置をとるようにしなければならないというふうに考えておるわけでございますが、水質汚濁の問題はなかなか複雑な問題でございまして、基準を設けて、その基準で一律に律するということが困難な事情にございまして、ケースバイケース処理していかなければならないということが非常に多いわけでございます。そういう意味合いで、当初は一般的基準を立てて、それによって処理しようという考えを持ったのでございますが、それがなかなかむずかしいということもわかりましたので、ケースバイケース処理していくという方法を考えた方がより実際的であろうというふうに、私ども最近におきましては考えを変えておるわけでございます。ただそのようにいたします場合におきましても、いわゆる被害者側であります水産関係と、加害者側であります通産なり何なりとの関係で、いろいろ考え方を調整していかなければならない面も出てくるわけでございます。そこで私どもの現在とっております考えといたしましては、鉱害に関しまして、土地調整委員会というものができておりまして、それがケースバイケースで事を処理しておりますが、あれと似たような機関を作りまして、事の起りましたたびと申しますか、事前にそういうことを予想されます場合には、そのケースに従って最善措置をとるように、その委員会調査をし、研究し、さらに必要な勧告をするということがいいのではないかというふうな考えを持っておるわけでありまして、目下経済企画庁中心といたしまして、関係各省が寄りまして、こうした制度の具体化につきまして協議をしておるわけでございます。もう数回会合いたしまして、大体各省といたしましては、そうした基本的な考え方は大体一致しまして、具体的にどういう機関を作るかという研究に入っていくというふうな、今段階にあるのでありますが、水産庁、あるいは水道を担当しております厚生省といたしましては、この実現が一日もすみやかならんことを痛感いたしておりますので、私どもといたしましては、この実現につきまして、大いに努力をいたしたいというふうに思っておるわけでございます。現在までの段階におきましては、そういうところまで進んでおるわけでございますが、なお一そうこのスピードを早めるように努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  7. 中村英男

    中村(英)委員 これは私どもも実際に魚族保護という点から水質汚濁防止法案を作らなければいかぬということは、いろいろ検討しておりますが、あなたがおっしゃったように、そういう法律を作っても、その土地々々の事情で一律に適用するということは非常にむずかしいと思うのです。瀬戸内海と太平洋と日本海と事情が違うし、また河川においても事情が違うし、むずかしいと思うのです。むずかしいと思いますが、こうやって、これは島根県の問題だそうですが、これに類似したことが近来宮崎その他でも起っておるのです。将来ともこういう近代産業が発達すればするほど、漁民との摩擦が予想されるのです。ですからケースバイケースで片づけるということで今日までやってきたことが、非常に地方住民とこういう不祥事件を起してきた事実にかんがみて、この水産資源保護法省令規則が作りにくいとしたら、やはり早く水質汚濁防止法というものも作らなければいかぬし、すでにこういうことで、ことに近代産業後進産業漁民との力関係からいっても、なかなか法律ができても、こういう問題が起きやすいのです。これはかりに県が覚書をかわし、市と会社覚書をかわしましても、数億の金を要するものですから、会社側が、非常に害があるのだ、少々犠牲を払っても、命を投じても施設をして、そうして水産資源保護をしなければいかぬし、漁民生活に大きな影響を及ぼさぬようにしなければいかぬという、そういう考えのある人たちでも、これはなかなか解決しにくいむずかしい問題ですが、これは会社によってはそういうふうにばかり考えていない。ここまで極言しないにしても、害があまりないのだ、調査してみなければわからぬ、そう言うのです。それはそうでしょう。この廃液だけで害があるとは限らぬ。他の潮流その他いろいろな関係があるものだから、なかなか結論が出ないのです。調査しましても、実際に何年かの統計をとらなければいかぬから、どの程度被害があるかということはわからぬ。そういうことに籍口して逃げやすいんです。ですから近代産業を設立される人たちは、十分そういう水産業等についての立場を理解されて、少々お金を投じてでも施設をして、また施設をしましても、これは一日に数十万円の金を投じ薬液を投じませんと、何ら意味がないのです。またそういう委員会を作っても絶えず監視しているわけでないのですよ。施設が一応できておれば、済むのですからね。ですからこれは非常に力関係があるものだから、漁民としてはやはり思い過ごしをして、そうして自分の直接の生活のことでもあるものですから、どうしてもこういう方向に来やすいのです。そういう点からいってもこれは一日も早く水質汚濁防止法というものを関係各省が寄って作ってもらわなければならぬ。あなた方の方で手をつけなかったら、これは自由党なり社会党で研究しているようですが、議員立法か何かで出していかないと、これは毎年所々で起る問題です。ですから、今企画庁中心として研究していると、こう言っておられる。研究しているだけでなくて、おそらく私の考えているところでは、従来こういうような水産資源保護法があっても、省令規則で四条を生かすようなことをしないのは、やはり通産省あたり考え方も相当影響していると思うのです。そういう点で水産庁厚生省は、早くやりたいという考え方はあっても、通産省あたり考え方影響すると思うのですが、私どもはこの委員会であなた方にいろいろ質問するだけでなくて、実は広げて、そういう関係のある、むしろ加害者側に立つ通産省あたりに、十分その点を推進したいと実は思っておるのですが、これはそういうことをしなくても、あなた方水産庁だけで、企画庁中心としてこの案をまとめておるやつを、この国会に間に合わぬにしても、近い将来に出し得るだけの自信がありますか。
  8. 新沢寧

    新沢説明員 先ほど申し上げましたように、企画庁中心に今準備を進めておるわけでございますが、確かに数年前までは通産側としましては相当固い考えを持っておったわけでありますが、最近見られますようなこうした事例が非常に頻発をしており、また将来も頻発を予想されるという事態に直面いたしますと、やはり通産省としても何かこうした第三者的と申しますか、第三者的で権威ある機関によって裁定を下していくということの必要を最近感じ始めてきたというふうに私ども受け取っておるわけでございます。現在企画庁で行われています各省協議におきましても、従来の通産省考え方よりはだいぶ変ってきているように私ども見ておるわけであります。ただこれから作ります案の内容につきましては、被害者側水産庁あるいは厚生省なりが考えております案に対して、どこまで通産省が理解を示すかという問題は残るかと思いますが、従来に比べて通産省側も一歩前進をしてきておりますので、私どもといたしましても、この機を逸せず至急に法案の樹立までに取り進めをいたしたい、こういう心がまえでおるわけでございます。
  9. 中村英男

    中村(英)委員 どうも通産当局近代産業を見ておられる見方が少し甘いと思うのです。私どもこの事件以外の事件補償問題に直接関係もしてみたんですが、おそらく会社側は、岩川社長が言っておるように害がないのだという考えはないにしても、やはり自分たちの排出しておる廃液影響というか、害毒というか、そういうものがはっきり測定されるということは好んでないようです。ですから、補償の仕方も、損害があったから幾ら出すというような形は私は取っていないように思うのです。全国的にパルプ会社設置した場合、当地区の漁民補償という形で補償費を出しておりますか、そういう例がありますか。
  10. 新沢寧

    新沢説明員 言葉の使い方が、補償という言葉を用いているかどうかという点には問題がございましょうが、内容的には実質的に補償と見られるような金ですか、補償金に相当するものを出しておるという例はたくさんあるように思います。
  11. 中村英男

    中村(英)委員 私の知っておる範囲では、損害が幾らあったから、どれほどの損害があるからそれに対する補償費を出すんだという形では、私は出してないように思うのです。これは漁業協同組合漁民振興費として出す、そういう形式をとって全国的に出しておるように私は思うのです。このことはどういうことかというと、きわめて重要なことと思うのです。おそらく水産庁がこういう廃液漁業に及ぼす害について研究所を持つとか、あるいははっきりしたデータをつかんでいないから、会社としてはそういう逃げ方をしておるのです。ですから、将来こういう法律を作って規制することも当然早くしなければいかぬが、水産庁自体が少くともそういう廃液が出ることによって漁業にどれほど影響があるかということを科学的につかむ、そういう研究所かあるいは審議会がそういうデータをつかむ作業をしておかれないと、漁民会社側とのそういう補償についての問題が、最終的にはいつも漁民が不利のような結果において解決されやすいと思うのです。ですから、将来そういうデータが出てこなかったら――必ず補償するということでなくして、振興費として出しておるのです。このことは十分調査されて、あなた方のところも、どこの地域にそういう工場ができても直ちに少くとも基礎的な魚族に対する影響に関する資料というものをつかんでおく態勢は作ってもらわなければいかぬと思うが、それに対するお考えはどうですか。
  12. 新沢寧

    新沢説明員 確かに今お話水質汚濁の及ぼす影響ということは大切な問題でございますので、本年度の技術会議、これは農林省におきましては総合的に研究についての企画をやる任務を持っておりますが、技術会議におきましても水質汚濁の問題をほかの幾つかの事項と並べまして最重要事項として取り上げまして、総合的に各試験場等において研究を進めるという態勢をとっておるわけでございます。なお、必ずしもこれだけでも十分ではありませんので、将来さらに一そうこの研究につきまして力を注いで参りたいというふうに考えております。
  13. 田口長治郎

    田口委員 関連して。ただいま中村委員から質問されておりました水質汚濁の問題は、日本沿岸漁業及び沿岸漁業者の問題としては基本的の問題でございまして、農林省としていろいろ指導奨励しておられますけれども、根底をこの問題でどんどんこわされてしまっておる、こういうような実情でございますから、中村委員の言われるような水質汚濁防止法を今国会にどうしても提案するというだけの意気込みで、厚生省及び経済企画庁通産省と連絡をとってその準備を急いでもらいたい問題が一つと、それから益田市の問題はひとり益田市ばかりでなくて、宮崎県にいたしましても、鹿児島県にいたしましても同様のケースが起っております。この機会を利用して、水産庁は臆病であってはいかぬ、あの中に飛び込んで資料を集め、そうして水質汚濁防止法制定一つ推進資料をあそこから持ってくる、こういうような意味におきまして、できれば通産省あるいは経済企画庁水産庁、こういうものが一緒になって直ちに益田市に調査に行かれる、もしほかの省ができぬとすれば、水産庁だけでも急いで行って調査をするということが必要であると思うのでありますが、この二点について水産庁はどういうお考えを持っておられますか、お伺いしたいと思います。
  14. 新沢寧

    新沢説明員 法案の促進につきましては、私どもといたしましては、今御指摘がありましたような心組みで努力をいたしたい、こういうふうに考えております。また具体的事例として起りました益田調査問題につきましても、十分調査の手を尽したい、こういうふうに考えております。
  15. 田口長治郎

    田口委員 従来水産庁ケースバイケースでこういう問題を処理するということでございますけれども、外部から見ておりますと、こういう問題についてはむしろ非常に卑怯でないか、こういうような態度でございますから、この態度一つこの機会に改められて、問題の渦中に飛び込んでいく、こういう態度をぜひとっていただきますように要望いたしまして私の質問を終ります。
  16. 楯兼次郎

    楯委員 二点お伺いいたしたいと思います。汚水の完全な浄化装置というものはあるのかどうか、まずその一点を伺いたい。
  17. 新沢寧

    新沢説明員 完全なという言葉のその通りの意味から申しますと、完全とはいえないかと思いますが、現在の科学技術上でこの程度にまでは達せられるだろう、そしてその程度まで達せられれば、おそらく魚族に対する被害もほとんどないのではないかという程度のことは期待できるのではないかというふうに考えておるわけでございます。たとえばパルプにつきましても、これこれの施設をすれば水の汚濁度はこの程度まで軽減できるのではないかという現在の技術上達し得る目標というものは、その専門家等の意見も聞きまして持っておるわけでございます。しかし完全なという程度には若干到達し得ない技術上の隘路があろうかと思いますが、相当程度完全に近いところまでは達し得るのではないかというふうに見られるわけでございます。
  18. 楯兼次郎

    楯委員 今中村委員から現実に起きた問題で質問がありましたが、私の地方にもパルプ工場がたくさんあります。新しく工場設置するという場合には、漁業組合なり住民から相当抵抗があるわけです。従ってこの問題が取り上げられて、ある程度問題化し、問題の解決が進展する。ところが大正時代から工場のあるところはあきらめておる。私の地方にはそういう工場がたくさんあるわけでありますが、ほとんど住民あるいは漁業組合はあきらめておる。たとえば一つの例を申し上げますると、アユの放流時期等になりますと、会社にいってつまみ金をもらって泣き寝入りをしておるというような状態です。それはどうしてかといいますと、大体工場はいなかにおいてはその市町村における大きな権力者です。それから工場にはその地方における住民が多数職員あるいは従業員として仕事をしておる。従って相当不満はあるのだが、会社に対して文句が言えないで泣き寝入り状態になっておるという古くからの工場がたくさんあるわけです。従って新しい工場設置された場合にはいろいろ問題を起して進展いたしますが、古くからの工場はただ泣き寝入りで放置されておりますが、こういう点についてあなたの方では深くお考えになったことがあるかどうか、今後どう処置されていくかという二点をお伺いしたいと思います。
  19. 新沢寧

    新沢説明員 確かに既往にできました工場につきましてはいろいろ問題が残っておると思うわけであります。この点につきましても水質汚濁防止の根本的な問題を議論する際に通産省とも話しておるわけでありますが、通産省側としましては、確かにそういう事実は認めるのでありますけれども、これの改善のためにはやはり莫大な資金を要するわけでありますので、水質汚濁防止措置を講ずると同時に、資金面について何らかの道を開かないと解決できないということを申されているわけであります。私どももこの問題の解決のためには新しい工場のみならず、すでにできました工場につきましても考えていかなければなりませんが、その場合におきまして、そうした資金のあっせん等はどの程度できるかということにかかってくるわけでありますが、これらの問題につきましても、今相談をしております問題の中に含めまして研究をいたして参りたいと考えているわけであります。
  20. 楯兼次郎

    楯委員 私はいろいろな場合があると思いますが、そう会社の方の立場に立って遠慮されなくてもいいと思う。それから相当金のかかるそういう施設をするには、いわゆる神武景気で相当こういう会社は利潤が上っていると思いますので、今どういう法律ができるか知りませんけれども、あなたの方で指導監督をされるなら、これは絶好のチャンスではないかと思います。これはただ単に魚族だけの問題ではございません。私の方の市の中心部をまっ黒な汚水が流れていて、雨季になりますと町全体がくさくて、われわれはなれておりますが、ほかからこられた方は何のにおいだというような状態です。従って相当金の要る施設をやるには絶好のチャンスだと思いますので、先ほど田口委員の方から言われましたように、一つ国会ぐらいで先べんをつけるように強力にやってもらいたいと思います。
  21. 山田長司

    ○山田委員 中村委員質問に関連して伺います。大都市においては、ほとんど処罰規定のないような条例があるようでありますが、ただいまの中村委員質問については緊急に出していただきたいと思います。これは農林省だけにお願いすることは少し困難で、厚生、通産、農林各省にわたる案件になると思います。汚水だけの問題ではなくて、ごみ、におい、光、灰塵、汚水という問題が同時に一つ法案で取り上げられるような形式になされればいいと思う。こういう問題について農林省は、通産省とか厚生省とか、ほかの省に対して、今国民が非常に困っている問題として何か打ち合せしたことがあるかどうか、最初にこれを伺います。
  22. 新沢寧

    新沢説明員 水産庁といたしましては、水質汚濁の問題につきましては、ずいぶん前から各省と折衝を続けて参っておりますが、におい、光ということになると、水産庁の所掌事項と申しますよりは環境衛生に関する事項として厚生省の所管事項になるかと思います。厚生省として前からそうした問題についても法制化に手を染めているというような話は聞いておりますが、各省との調整が進まないでまだ具体化するところまでいっていないというふうに私ども聞いております。
  23. 山田長司

    ○山田委員 私の伺う要点にお答えしてもらいたい。各省と打ち合せたことがあるかどうか。
  24. 新沢寧

    新沢説明員 先ほど申しましたように水質の問題以外のにおい、光については、水産庁の所掌事項ではございませんので水産庁から待ち出したことはありません。厚生省がその問題について協議してきたということはあろうと思います。
  25. 山田長司

    ○山田委員 私は先ごろ北海道を旅行しまして石狩川の中に汚水が非常にたくさん流れておる。一体これはどういうわけだと尋ねたところが、これは国策パルプが紙の製造に当って、この汚水を流しているのだということを聞いて、これを一体政府当局はどうしてかまわずにおくのだろうと思うくらい憤激を感じて帰ってきたわけであります。やはり水産庁の場合は、水の問題だけに特に関心をお持ちだろうと思いますけれども、現在私はごみの問題、汚水の問題、光の問題、灰塵の問題をなぜあげたかといいますと、これはあなた方が水の問題を通して極力水産庁の中で主張していただけば、農林省の食糧増産の面の人たちもあるいはそのほかの人たちも、みんなこれに関連がありますから、立ち上ってくれると思うのですよ。第一磐城セメントの被害だけでも、静岡県ではミカン畑に灰が落ちるために、ミカンの花が咲きかかっているのが縮んでしまっておる。あるいは栃木県では葛生の盤城セメントの煙突から灰が飛んでくるので、農作物が非常に被害を受けておる。農民の場合などは、ほかの町村では反収五、六万もあるのに、二万数干しか収入がないという実例があのです。こういう事例を見たときに、どうしてもやはり水産庁が水の問題を中心になって研究されておると同じように、農林省の中にもやはりにおいの問題とか、あるいは灰塵の問題とかを研究しているところがあるに相違ないと思うのです。そういう形で農林省の全体の人たちがほかの省と連絡をとって、国民健康の見地からも、あるいはまた日本の農作物の被害を除くためにも、あるいは水産行政の面から考えてみても、どうしてもこれはおざなりにしておいちゃ困ると思うのですよ。そういう点で至急に、もう厚生省の方は厚生省の方でそういう問題を取り上げようとしているやさきでもあるのですが、何かしら通産省の圧力で問題にすることができずにいるそうですから、どうか水産庁一つ農林省のほかの局部にも働きかけて下すって、この問題を取り上げていただきたいと私は思うのです。どうか一つこのことを緊急にやっていただきたいと思うのですが、どうですか。
  26. 新沢寧

    新沢説明員 直接水産庁の所管ではございませんので、ほかの所管の、振興局になりますか、そのほかの局になりますかに、お話の趣旨は御連絡いたしまして、農林省としても関心を待たなければならない問題だと思いますので、その連絡を十分いたします。
  27. 中村英男

    中村(英)委員 ちょうどこの新聞を見ると、全く感を同じゅするわけです。昨今水爆実験の問題で日本からも松下さんが抗議に行きましたが、これは世界の人類に恐怖を与えておるのです。これと大なり小なり似ているのですね。また岩川社長が言っておることは、英国の総理大臣が言っておるようなことを言っておるのです。これは非常に問題だと思うのです。同じなのです。岩川社長はまるで英国の総理大臣である。廃液にまじった繊維くずが魚のえさになる、今までどこの工場でも補償問題は大して起らなかったと、大した心臓な考え方なのです。これは、ぜひその考え方を教育しなければならぬ。日本の国民が今水爆実験で恐怖しておるのと、魚が人間だったら同じ恐怖をしておると思うのですよ。あそこでどんどん廃液が出てきたら、やっぱり死ぬるのですからね。それに依存しておる漁師が生活のかてを失うのですから、これまたそういう考え方にぶち当れば当然心配するし、また私どもはこれはきわめて遺憾なことだと思う。遺憾なことではあるが、こういう考え方である限りは、これはそこにぶつかってしまうのです。そこで従来、これは島根県だけでなくて、全国的に国の試験場でその影響の結果について調査されずに、県だけの試験場あるいは県の委嘱で柴田さんあたりが来て、そうしてその結果について調査されている、こういうことなんです。ところが県やそういう柴田さんが調査されても、何というてもその近代産業の力というものは大きいのです。漁民の力というものはきわめて弱いのですから、その結果が正当に評価されるかどうかということすら漁民は心配している。そういう事情にかんがみて、水産庁は全国的にそういう機関を持って、県の機関だけでなくして、従来どこかで水産庁技術でそういう試験をされた例がありますか。
  28. 新沢寧

    新沢説明員 水質汚濁の問題に関しては、内海区、北海区の水産研究所におきまして、研究官を置いて研究を進めているわけであります。そして従来におきましても幾つかのケースにつきましては、それらの研究所研究担当官が参加いたしまして、浄化施設の設計あるいはそうした漁民会社との間の契約を、どういう程度まで結ぶかという点につきましても関与いたしまして、意見を述べ、施設の充実に対しての勧告をして参っているのであります。
  29. 中村英男

    中村(英)委員 今の水産庁技術をもってして、そういう結果について相当測定できますか。
  30. 新沢寧

    新沢説明員 汚水魚族に及ぼす影響につきましては、現在研究を進めているわけでございますが、着々結果が出ているわけでございます。ただ、ことにこれから建てます工場について、それから出る水がどの程度影響を及ぼすかということにつきましては、一応現在の技術水準でやれます最善の設備をして、最善努力をして、浄化の完備を期するという意味合いで設備の処置等について勧告いたしているという状態であります。
  31. 中村英男

    中村(英)委員 これは私最初質問したのですが、補償という格好をとらずに、漁業振興費として、その当該地区へ会社が貸金するか奨励金を出している事実があるのです。そういう事実から見て、私は県や農林省技術をもってしては、どれほど魚族影響があるかということは、はっきりと出ていないという一つの例だと思う。はっきり出ておれば、これは会社が何と言おうとも補償しますよ。補償せざるを得ません。しかし結果が出ないから、それに籍口して奨励金として――補償を出すということになると害毒を認めたことになるから、会社としてはきわめて重大だから、あるかないかわからない、またそれが飛躍してえさになるというところまでいくのです。ですから、これはやはりどれだけ費用を出しても、県の試験場だけではなかなか技術がそこまでいっていない。ですから早急に農林省は――少くとも現在の事情では、これは相当な金をかけたら施設はできます。非常な害毒は、今のあれでは周円一里くらい、あるいはそれ以下に食いとめるだけの施設なり設備はできるのです。できるが、さてそれではそれだけの範囲の中における被害も、どれほど被害があるかということは、これは海流やその他いろいろの事情があります。あるけれども、少くとも今の科学ではっきりとつかめるだけのそういう態勢を作ってもらわなければいかぬ。これはあなたの方では早急にやりたいと言っておられるが、早急にやりたいということではなくして、現在水産庁にあるでしょう、そういう機関が……。だから今田口さんが質問されたように、積極的に渦中に飛び込んで、そういう問題を解決して魚族保護をはかり、漁民生活を安定させるんだという気魄があれば、ある程度やれぬことはないと思うのですが、どうもこういう問題に対して従来あなた方は、地方々々にまかしてほっておくような態度をとっておったのではないか。田口さんの質問に対しては行くと言っておられるが、益田市におけるこういう漁民不祥事件がそれだけで終るということはきわめて遺憾なことですから、こういう事態を起さぬように、ぜひあなたの方では人を動員して実態調査を願いたい。私の見るところでは、この問題の起った原因は、会社側漁業への影響に対する認識の違い、漁民に対する理解のなさ、あるいは市長が工場誘致を急いだ点もあるでしょう、そういう手続上の問題もあるでしょう。しかし根本的にはやはり会社に、魚族に対する影響を測定しようとする誠意がないことが原因しておると思うのです。その地方としては魚族保護も必要でしょうが、近代産業を興すことも雇用量が増して産業・農業が発展することなんですから、どっちも必要なんです。それをどこで調整するかということが問題なんですから、ぜひ一つ調査に行ってもらいたい。水産庁としては間違いなく行くという答弁をされましたが、ほかの省にも呼びかけて実態調査をして、災いを将来に残さぬように、ケースバイケースで解決するにしてもそういうことは必要ですから、もう一度重ねてそういう意図があるかどうかお伺いしたい。
  32. 新沢寧

    新沢説明員 水産庁といたしましては積極的に調査に入りたいと思います。また先ほど来申し上げておりますように、たまたま水質汚濁につきまして各省協議を行なっている際でもあります、今日もその協議の日に当っており、その一つのテスト・ケースになるわけでございますので、その間におっしゃったようなことを提案してみたいと思います。
  33. 中村英男

    中村(英)委員 私は与党の田口さんからの発言で非常に意を強うしたのです。この水質汚濁防止法案については、私どもの方でも与党の方でも研究しておるのです。私は先ほど、この国会ではどうかと思うという遠慮の気持で発言したのですが、与党の田口さんがぜひこの国会へ出してもらいたいという意向でしたから、あなた方も一つ作業をされて、早くこの問題を推進してもらいたいと思うのです。そうしたら島根県におけるこの問題も犬死にならずに済む。この問題は大臣が見えたらもう少し突っ込んでお伺いしたいと思います。ことに通産省との関係ですね。あなた方は漁民立場に立っていろいろのことをお考えになるでしょうが、通産省は幾分ものの考え方が違うようですから、そういう点もだめを押していきたいと思います。一つ今度の国会に間に合うようにぜひお願いしたいと思います。
  34. 小枝一雄

    ○小枝委員長 有馬輝武君。
  35. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今中村委員田口委員楯委員、山田委員から、益田市に起りました今回の事件を契機として水質汚濁の問題について御質問があったわけでありますが、部長の御回答を聞いておりますと、いろいろ検討を進めておるけれども、現在のところはケースバイケースで解決していきたいという趣旨であったようであります。このことはすでに昭和十一年ごろから非常に問題になりまして、水産庁に対してもまた各省に対しても陳情が続々と行われておったはずであります。この水質汚濁防止法制定への動きの経緯についてはあとでお伺いいたしたいと存じますが、最初にこの実態その他について水産庁としてどのように考えておられるかということをお伺いしたいと思うのであります。端的に申し上げますならば、沿岸漁業にほんとうの意味水産庁が真剣になって取っ組んでおられるかどうか私たち疑問に思わざるを得ないのであります。特に昭和二十五、六年ごろから化学工業が非常に盛んになりまして、この問題は各地に急激に起って参りました。今度たまたま益田市の傷害事件等が起りましたけれども、これは一益田市だけの問題でなくして、全国的問題である。たまたまそういう状況にならなかっただけであって、ああいった事件が起らなかったからといって安閑としておられる問題ではなかろうと思うのであります。水産庁漁業調整第二課で作りました資料によりましても、昭和二十九年度の事例数が七百六件、被害高が三億七千九百万円以上に及んでいるということが報告されておるのであります。これは実際にあがった被害額だけであって、事実はどれだけあるかわからないということが予想されるのであります。問題は、大きな工場汚水による被害が非常に大きいということである。瀬戸内海の被害を受けた状況につきまして、瀬戸内海水産開発協議会というところから昭和三十一年六月瀬戸内海水質汚濁調査の結果を発表されておりますが、その状況を見ますと、和歌山とか山口とかあるいは大分県の被害件数が一番多い。これは工場数の多寡が問題ではなく、やはりどのような汚水が出るか、そしてその散布の状況がどうであるかということが関連して問題になってくるようであります。それといま一つは、たとえば大阪地帯は工場が一番多いのでありますけれども、こういった地域で問題が起っていないのは被害が少いからというのではなくして、長い間に結局弱い漁民がその被害に耐えられなくて他の産業へ吸収されていくという形の中でその声が起っていないだけであって、漁民がそのような状態の中で安閑としておるということではなかろうと思うのであります。ですから、汚水被害について、結局被害を受けたのは漁民だけで泣き寝入りだという状況が相次いで起ってきている。こういった観点から、この際まず第一にお伺いいたしておきたいと存じますることは、少くとも最近二、三年における被害件数、金額、それに関連する工場数等を水産庁としてはどのように把握しておられるか。この点をお伺いしておきたいと存じます。
  36. 新沢寧

    新沢説明員 御質問のように工業化の進展につれて汚濁水による被害が年年増加しております。私どもといたしましても放置できないことでありますので、従来とも各省と連絡をとって善後措置を講じて参っておるわけでありますが、これの調整上の問題がありまして思うように進んでおりませんでしたことは、はなはだ残念に思っております。そうした各省の注意を喚起する意味におきましても、また私どもとしての今後の施策を立てる上におきましても大切なことでありますので、私どもといたしましては、県なり水産庁の出先機関なりを動員して年々その推定原因と申しますか、そういうようなことについては調査を進めてきておるわけでございます。
  37. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 三十年度だけでけっこうでございますから、被害件数並びにその推定金額、そういうものをこの際お示し願いたいと思います。
  38. 新沢寧

    新沢説明員 ただいままでまとまっておりますのは二十九年度まででございまして、三十年度はただいま資料を整備中と申しますか、集計した数字が出ておりません。でき次第御報告申し上げたいと思います。
  39. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 では二十九年度のものを御報告願います。
  40. 新沢寧

    新沢説明員 これはいろいろな工場関係だけでございませんで、港湾関係も入っておるわけでございますが、二十九年におきまする事例数が七百六件、被害額にいたしまして二百四十五万貫、金額が三億七千九百万円、これに関係いたします事業所は約一千という数字が出ております。
  41. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 大臣が見えられましたので、先ほどの申し合せに従って私の質問は一応打ち切りましてあとでお伺いしたいと思いますが、ただ締めくくり上この際一点だけお伺いしておきます。それは各国における氷質汚濁防止法の制定状況についてであります。何国くらいがこの防止法を制定しておるか。そうしてそのおもなる国、たとえば英国とか米国等は制定いたしておりますが、それに対してどのような補償がなされ、また工場に対する規制、そういったことがどのように行われておるか、その概要についてお伺いいたしたいと存じます。
  42. 新沢寧

    新沢説明員 まだ世界各国全体的にどれだけできておるかということははっきりいたしませんが、アメリカ、イギリス等におきましては水質汚濁のための法律が制定されておるように承知いたしております。
  43. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 その運営状況、その工場に対する規制の状況などは英国並びに米国においてはどのように行われているか、そういった点についてお伺いしたい。
  44. 新沢寧

    新沢説明員 細部についてはただいま資料を持っておりませんので、後ほど調べて御報告いたします。
  45. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 では大臣の方が終りましてから、あとで今の資料をお願いしたいと思います。私の質問は一応保留いたします。     ―――――――――――――
  46. 小枝一雄

    ○小枝委員長 大臣がお見えになりましたので、本問題に対する質疑を暫時中止いたしまして、土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 土地改良法の一部を改正する法律案の審議について農林大臣に特にお尋ねしたい点があります。その前に申し上げたいことは、井出農林大臣が就任以来、今国会において当委員会に出席した時間というのはまことに微々たるものであります。日時にしてわずか四日くらいしかあなたは来ておらぬと思う。もちろん日ソ漁業交渉の政府の責任者としてその方で精力をとられておるということはわかりますけれども、そのために内政をおろそかにするというようなことであってはいかぬと思う。それで日ソ漁業交渉の見通し等も大体立っておると思いますが、何日あたりから専念して議会に出席して法案の審議等に真剣にこたえる御意思であるか。その点をまず明らかにしてもらいたいと思います。
  48. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 連日国会には出席しておるのでございますが、従来は予算の関係にだいぶ時間をとられて、かつはまた今言われます漁業交渉に当っておりました関係で、大へんごぶさたをいたしました。まあ今週一ぱいをもって何とか漁業の目鼻をつけたい、こう考えておりますので、来週はできるだけお伺いをいたすつもりでございます。法案もだいぶ山積いたしておりますので、どうか一つよろしく御審議の上御可決願えますようにお願いを申し上げます。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば先般衆議院で成立した開拓営農振興法の場合においても、当面した開拓行政の諸問題あるいは今後の開拓行政をどうするかという方向に対して、基本的な問題で、農林大臣自身の見解を明らかにしてもらうべき点がだいぶあったのですが、これもついに審議過程においては大臣の出席が全くなかったわけで、遺憾とするところでございます。それでこの土地改良の一部改正法案について、この改正案の用意は井出農林大臣が御就任された以降にできたものであるか、あるいはそれ以前に河野農林大臣の時代にもうすでに用意されたものを、あなたの時代になって提案されたものであるか。その点の経緯はいかがです。
  50. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 従来土地改良法に対する検討は農林省においてもいたしておったわけでございますが、今回の提案は、私になりましていたしたということに御了解を願います。
  51. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで今回の改正点は、これは大臣御承知のことと思いますが、大まかに分けると、四点が改正のねらいになっておるわけです。第一点は役員の任期の延長とか総代の定数を現在より減少させる。第二点は、予備審査の段階をはずして、審査段階の簡略化ということが一つのねらいで、第三点は、これが一番問題になる点でありますが、従来農地法に基いて処分されておった、国が造成した農地の処分をこの法律の改正によって、土地改良法の規定に基いて国の農地を処分するという点が改正案に出ておるわけです。第四点は、全国に地方連合会を設置するという問題でありますが、特にこの第三点の農地法と土地改良法の改正によるところの今後の問題というものは、わが国の今後の農地制度の上からいっても、重大な問題になる点であるというふうに考えるのです。それでこの改正案がもしも不幸にしてこのままで成立するようなことになれば・将来農地法と土地改良法の両方の法律によって、土地の処分とかあるいは農地管理とか、そういう土地制度が二分されるような事態が当然起きるわけです。ですからこれらの点に対して、農林大臣の責任のある御答弁を願いたいのであります。
  52. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 今回の土地改良法の改正によりまして、ことに干拓地の問題等が、ただいま御指摘に相なりましたように、主たる対象に相なると思うのでございますが、これを農地法から土地改良法に移しました次第は、すでに連日御審議を願っておると思いますが、従来一般会計において造成の事業を行いまして、農地法に基いてこれを自作農創設特別措置特別会計、これにおいて売り渡しを行なって参ったのでありますが、一方土地改良法においても、干拓事業費について負担金を徴収し得ると、こういう規定は従来も存しておったようなわけでございます。そこでこのたび特定土地改良事業特別会計を設置いたしまして、国営干拓事業の負担金収入を引き当てといたしました借入金をも財源として、事業の推進をするに当りまして、干拓事業が、全体としてこれをながめまするときに、土地改良としての色彩が強く、一面においては工事費もよけいにかかりまするし、他面においてその立地条件が有利である、かような点にもかんがみまして、これを土地改良法によりまして、入植者の協力を得て事業費の一部の負担をしていただこう、こういう考え方に出発をしておるわけでございます。これに応じまして、干拓地の取扱いについて、これを土地改良法に規定をして、計画、工事、負担金徴収及び処分と、一貫して土地改良法で取り扱うということが適当であろうというふうにわれわれは考えておるわけでございます。そこで一方これらを一貫して経理いたしまする特定土地改良工事特別会計の設置とも対応して、これが最も妥当であるという考え方に出発をいたしておるわけでございますが、もとより農地法の適用も、これらの取得されました土地に対して当然適用されるということでございまするから、これを総合して考えまするならば、特に今後においてトラブルが生ずるというようなおそれはなかろう・こういう考えでおるわけでございます。
  53. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の尋ねているのは、今回のこの土地改良法の改正によって、国の土地処分の方法がどうしても二元的になるのですね。土地改良法でもやれるし、それから農地法ではもちろんやれるということになると、農地の管理とか処分が、法律が二つあって二元的になるということは、今後これに基いて農地制度というものは弱体化したり、混乱するような端緒を開くようなことになると思うのです。これは非常にその点が憂慮される問題であるのです。ただ単に干拓、埋め立てによって造成された農地を、従来の農地法によって処分した場合においては、対価の算定等に限界がありまして、たとえば一反歩一万二千円の限度以上に処分することができぬというような規定があるので、何とかして干拓地等の造成農地をそれ以上高価に処分したいという、そういう便宜的な、採算的な考え方だけの上に立って土地改良法の一部を改正して、農地法から切り離して、埋め立て、干拓によって新たに造成された農地は、農地法と別途に、幾ら高く売れてもかまわぬというような、そういうやり方を採用するということは、それはまた逆に作用して、農地法の規定によるところの小作料の問題とか何かにもまた響いてくることは必然だと思うのです。ですから何のために、農地処分をする場合に従来の農地法でやれたものを土地改良法の方でやらなければならぬかという、そのはっきりした理由が了承できないのですね。ですからこの点はやはり農林大臣として一つの政治的責任の上からいっても、あなたが立案されたということでありますから、その点をもう少し明確にしてもらいたい。
  54. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 芳賀委員は二元的になるという点を非常に心配しておられるようでありますが、従来の農地法による手続とほぼ同じ手続によっておりまして、国有財産の管理あるいは入植者の権利保護という面については十分なる考慮が払われていると考えているのでございます。たとえば干拓地の管理であるとか、あるいは土地配分の計画、入植適格者の選定その他埋立予定地の一時使用というようなものになりましても、従来の農地法の規定とほぼ同様の趣旨に基くのでございます。そうしてこの改正せられます土地改良法によりまして、入植者が所有権を取得いたしました干拓地も、農地であります限りは、これはもう譲渡、貸借、所有制限、あるいは転廃用等につきまして農地法の規定を受けることは、言うまでもない点でございます。でありますから、この干拓農地のように多額の国費を投入いたしました農地を転用させるというようなことは、これは原則として許可しないという方向に考えておるのでございまして、この改正によって実情に最も即した方向をとったのである、こういうふうにお考えをいただけば、その間が明らかになると思いますし、またこれが小作料にはね返るというようなことは、今申し上げましたような取扱いの方針によりまして遮断することができる、こういうようにわれわれとしては考えているわけでございます。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとい法律で区分してみても農地農地なんですよ。土地改良法の方へ持っていっても、農地法の方へ置いても、農地農地であって、それ以外の何ものでもないと思うのです。特に問題になる点は、今農林大臣は、土地改良法の方で処分しても農地法の規定はそのまま受けるということを言っておりますが、その点がこの法律によっては非常に不明確なんです。干拓地に対して、入植者に対して配分の申し込みをさせるわけです。そうしてそれを農林大臣が選考して配分通知書を出すわけです。その干拓地が一応工事が竣工した瞬間に入植者が所有権を設定するということになっておるのですが、所有権が入植者に帰属するまでの間はその農地農業に供するということで申し込みをするのですが、原始取得の形で所有権が設定されるので、完全に個人の所有になった後においては何ら国の農地を売り渡したという制限とか拘束というものは受けないのでしょう。ですから、自己の所有に帰したとたんにまたその農地を転用することもできるし、それから合法的に、自由意思に基く合議の上に一つの手続をすれば、制限がないのですから、これまたよそへ自由価格で売り渡しをすることもできるわけなんです。ですから、今まで大臣が言われたように、せっかく一反歩何十万という多額の国費を費して農業に供するという目的で造成した農地がどういうことになるかということの監視とか監督とか検査というものは、この土地改良法の改正によっては何らそういう規定というものが法律の中に設けられていないのです。そういう点は、今大臣が言われたことと全く反対な表現がこの土地改良法の改正の中に現われているのです。合理的に実情に適するようにやったといっても、もらう入植者はあるいは非常に都合がいいかもしれんけれども、国の負担のもとにおいてこのような新しい土地の造成をはかって、それが農地法の今までの規定のように厳格に行われないというところに大きな欠陥があると思うわけなんです。この点はやはり農林大臣の責任において当委員会で明確にさるべき点だと思うのです。
  56. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 その点は、従来の場合は、国が介在をいたしまして、一方から買収をし――これは干拓以外の場合でございますが、これを売り渡す、こういう形のものと、それから原始取得という言葉を使われましたが、それと違うのではないかというような問題が当委員会においてもいろいろと御議論があったように承わりましたが、私といたしましては、この土地改良法の改正によっていたしますものの、やはり基本法としての農地法の精神というものは当然これに及ぶのであって、今おっしゃるような御心配は、従来のあり方と同じように、十分に規制をしていくことが可能である、こういうふうに考えておるわけであります。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは普通の農地の場合です。今日までの、たとえば旧自作農創設特別措置法に基くとか、あるいは六十一条以降の農地法の規定に示されておる国が権利を持っておる未墾地であるとか、あるいは干拓埋め立ての造成農地の売り渡しを受けた場合は、その所有権が個人に帰属しても、やはり法律によってのいろいろな規制とか制限は受けておるのですが、今度の土地改良法の改正によると、そういう拘束というものが何もないのです。ですから、この点は非常に問題があるのですね。心配がないということを言われるけれども、最初から心配があるのですよ。政府の提案としてそういう農地法よりもむしろ弱体化させるような筋の通らぬ改正をなぜわざわざしなければならぬかという理由が不明確です。この点が明確にならなければこれ以上審議はできないですよ。ですから、審議を進める方がいいという御意思であれば、もう少しこの点に対してわれわれが理解できるような条理を尽した御説明を願いたい。
  58. 石田朗

    石田説明員 それでは大臣に対する御質問でございますが、やや法律的のこまかい点にわたっておりますので、この点はかねがね農地局長からもお話し申し上げておるところでありますが、ちょっと簡単に御説明申し上げまして、大臣が先ほど御説明いたされました点の裏づけにいたしたいと思います。  ただいまお話ございましたように、従来の農地法におきまして未墾地を買収して売り渡すという関係を主にいたしました規定と一緒に扱っておりました干拓地の取扱いを、新たなる造成地であり、造成費がいかにかかり、それの負担関係をいかに見るかということが問題の主体となるものであるという見地からいたしまして、土地改良法の取扱いに移したということから、農地法との諸関係で問題が起ってくるんではないかというような御意見でございます。ただいまの入植者に直接取得せしめるということのために農地法との関係はどうなるかということは、先ほど大臣からお話ございましたように、農地であります限りは農地としての転用制限等の諸制限は当然受けるわけでございます。その場合に、自創地または新たなる六十一条売り渡し地におきまする諸制限、それらについていかがであるかというお話でございます。この点につきましては、干拓につきましては他の開墾地とやや異なっておる点があるわけでございます。これはやや技術的にも相なりますけれども、現在の開拓地等は、売り渡されました場合におきましても、これはある期限を画しまして成功検査というようなことを行いまして、これによって検査に合格いたされましたものは一定年限をもってほぼ他の農地と同じような取扱いに移るわけでございます。干拓地についてはいかがかと申しますと、干拓地におきましては、山の開墾等と異なりまして、開墾作業の占めるウエートはきわめて少いわけでございます。従いまして、これは現在の補助体系等におきましても、地区内工事といったようなものの補助はございますが、開墾作業につきましては、干拓地は開墾地と異なりまして補助が出ておりません。そのようなことで、開墾作業の完了時といったような時点を目しまして成功検査を行なって、それによって区分をいたして参るということといたしましても、干拓地においては開墾作業があまりウエートを持たないという点よりいたしまして、結論は同じような結果と相なって参るのではなかろうか。従って、もちろん農林省の取扱いといたしましては、これは自作農に精進していただく、農地として大いに活用していただくというような趣旨でございますので、これは当然そのような基本方針のもとに入植者の選定、その後の営農指導等が行われねばならぬことは当然でございますが、ただいまのような開墾地との取扱いの差等につきましては、現実問題としては問題は出てこないのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  59. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたように、二元的という点を御指摘になるのでありますけれども、これを運用して参ります上には混乱は十分避け得て、御心配のような点はなかろう、こういうふうに考えております。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 心配な点は、たとえばこの法律が成立し、運営してみてから発見される事態が今からもうわかっておるということです。ですからこれは当然法案審議の過程において、そういう点を明確にしておく必要があるわけです。特にわれわれが指摘する点は、従来農地法の規定によって完全にこれが行われておったのです。たとえば干拓埋め立ての造成農地の処分に対しても、完璧に近いような方法で行われてきておるわけです。ただ政府が改正して切り離したいという考えは、造成農地を高く売りたいということだけに尽きておるのです。それ以外の何ものでもないのです。そういうことであれば、国営で行う土地改良事業、干拓とか開墾事業というものは、営利を目的にしていないでしょう。わが国の農業政策の中における食糧増産とか農家経済の安定とか、そういう大目的のために農地を造成して、それによって農業生産力を発展させるという大きなねらいがあるからして、国の財政面においては相当多額の費用を投じても、土地改良事業自体の収支のバランスとか、赤字がどうなるということは、大局から見るとささいな問題になるというので割切って国営の土地改良事業というものをやっておると思うのです。今度の考え方はそれを一擲して、コスト主義は移行しようという考え方なのです。昨年一昨年あたりから農業政策の方向を大体コスト主義の政策に転向しておるということは言うまでもないことなのですが、そういう採算の上に立ったという考え方でいけば、今後の農地政策というものは全く逆行するというか、別の角度を歩まなければならぬということになると思うわけです。わずか二万町歩くらいの干拓等によって造成される農地の処分が、農地法によると安いから別の方法で高く売らなければならぬということは、国家財政全体から見ればそれほど重大な問題ではないと思うのです。特に神武景気を宣伝しているときに、農地を処分する場合に今までよりもどれだけ高く売りたいというけちな考えで、そしてその農地行政を二元化させるようなことをやるのは、これはとるべき手段ではないと思うのです。ですから、そういう点はやはり農林大臣の責任においてこういう悪法は作らない、改悪はしないというくらいにがんばってもらわないと、一歩一歩くずされていくということになると、今後どうなるかという不安が非常に大きくなるわけです。こういう点をわれわれ特に心配しておるわけです。良心的な井出農林大臣がこういう将来に禍根を残すような土地改良法改正をやるということは、井出さん自身の良心から見ても遺憾にたえないことであると思う。特に処分された農地というものは、今まで農地法の規定に基いて国の所有であった造成農地を売り渡した場合よりも非常に拘束とが制限が緩慢になっておって、どうなってもいたし方がないというような条件が最初から入植者にはついておるわけです。転用しようと思えば、そういう手続をして、転用がもっともだという理由があればやはり転用許可をしなければならない事態にもなるし、またこれを他に転売しようとすれば買受人の資格が農業に精進するものであるということが農地法上明らかになった場合には、あすの日にこれをよその者に幾ら高く売り渡したって農地法の規定から見るとそれはけしからぬということにもならぬと思うのです。たとえば一定の年限他に転売することができないとか、あるいは目的に供していない場合においては国が買い戻しをするとか、そういういろいろな規定が設けられておったのですが、今度の場合には、そういう規定も何も取得の形式が違うからして拘束が届かないのです。せっかく国が多額の費用を投じて作った農地が、個人に権利が設定されたとたんに自由な立場に放置されることは、非常に危険しごくなことではないかというように考えられるわけであります。この点は農林大臣の理解がまだそこまで徹底しておらぬというふうにも考えられるわけですが、いかがですか。
  61. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 従来のあり方と非常に違ってきた、これはこの農地に関する限りは非常に大きな転換であるという御指摘でございますが、今回のこの新しい特別会計を設置しましたゆえんのものは、これはこの前当委員会においても申し上げたつもりでございますが、これによって工事進度をスピード・アップしよう、そうして資金をこの会計に受け入れることによって事業量をも増大しよう、こういう目途に出ておりますことは御了解をいただいていることと思います。従いましてそれがために、入植者としては経済的利益が相当に見込まれるのでございますから、十分に負担にたえ得て所期の目的が早目に達成されるということからいたしまして、干拓地の価格は実情に即した価格であってしかるべきであろう、こういう基盤から出発いたしているわけでございます。そうして今御心配になられますような権利が直ちに移動するのではなかろうか、あるいは自由勝手に売り払うことができるからその点が心配だというような点は、われわれとしては、これが農地である以上は農地法の適用下にあるということで十分に防ぎ得るものだという考え方に立っているわけでございますから、御心配の点は十分に防ぎ得ると考えているわけであります。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は農林大臣はこの法律改正の内容が何だということがわからないのですよ。たとえば特別会計法のああいう方式によって事業の進捗をはかる、そういうやり方等に対して別にわれわれは絶対反対とかなんとかいうことを言っているのではない。会計法自体に対しては言っているのではない。ただあの会計法の中においては、対価と認めらるべきものを負担金という形で、特別会計の歳入の方に受け入れることになっているのですが、その場合は農地法によってその造成した農地を売り渡した場合、それを土地代金として特別会計が収入しても一向これは差しつかえないことです。ですから特別会計との間においては何もそれほどの問題はないと思います。ただ今までの農地法の規定によると、公有水面の埋め立てをする場合においても、まず自作農創設をやるとか、農家の経営安定のために公有水面に関する権利を国が買収して、権利を消滅させて農林大臣の管理のもとに置いて、土地改良法の規定に基いて国が干拓、埋め立てを行うわけであります。ですからそれによって造成された土地というものは、明らかにこれは農業に供するということが前提になって埋め立てが行われたのでありますからして、でき上った土地は国の所有する物件となって、それを国の意思に基いて、そうして農地法の規定に基いて売り渡し処分を行う。しかも売り渡しを行なった場合においても、その後の個人入植者に所有権を与える場合においても、一定の期間内の監督とか検査とか、あるいはそれがその目的と沿わない用途に供されるような問題における一つの制限とか制裁規定とか、そういうものは十分配慮されて、農地法の中においては今まで運用されてきておるので、その運用の中において、こういう点は不都合であるというような問題は、何ら生じてきておらないのであります。ただ問題は、この農地法の規定によって、この埋め立て等の造成地を売り渡す場合においては、対価が、実情に照らした場合においては、不当に安過ぎるのではないかというような批判が起きておることは、これは事実であります。しかしこの問題は、現在のわが国の農地の対価自身の算定が、農地の価格自身の最も適正妥当な算出の根拠をどこに置くべきかということは、いろいろな問題があると思うのですよ。ですからこれも高いとか安いとかいう問題を論じ出すと、これはまた旧地主勢力に力を与えるようなことにもなるし、農地改革の精神自体がまた破壊されるようなことにもなるので、この点だけに問題はあるといたしましても、あとの問題に対しましては、何ら運用上も万遺憾なき措置が万遺憾なく講ぜられておったということは、これは農林大臣としてもお認めになると思います。ですから価格問題だけにとらわれて、それを理由にして農地法から切り離して、この干拓等の土地の売り渡し価格を別個な立場で算定して、そして負担金という名前で、国の負担をできるだけ軽くする意味において処分をしようという考え方だけで、せっかくこの農地制度を維持している国の基本的な法律であるところの農地法を弱体化したり、あるいはゆがめるようなことは、この際避くべきではないかというふうに考えられるわけであります。このことに対しては農林大臣としても反対でないと思いますが、いかがですか。
  63. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、この土地改良法の改正ということによりまして、この手続を行うことになりますけれども、その後は、農地法というものは、それが農地であります限りは適用されるわけでございますから、今言われまするような問題は、解消するといいましょうか、御懸念はなかろうという考え方に立っているわけであります。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、農林大臣それは農地だか何だかわかないのですよ。これは埋立地ですから土地であることには間違いないが、農地かどうかという判断は、農地に供したか供しないかという事実行為が現われなければ、認定することができないと思うのです。土地ができたとたんに、それを一応入植者に収得させて、そうして土地としてのその所有権が設定されるのですから、だから農地かどうかというのは、その所有者が農業に供したかどうかというその事実がそこに生じなければ、これは農地であるとか農地でないという認定は、最初からできないと思うのですよ。農地に供して、農地だということの認定をされて、初めてその農地農地法の適用を受けるけれども農地に供しない場合は、これは農地としての認定をすることはできないでしょう。その場合には農地法の適用を受けることができないじゃないですか。これはそういう問題が生じてくると思うのですね。
  65. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 今まで御説明申し上げたところで、まだ触れておらないことについてのことになりますから、事務的にまず先に説明をさせていただきます。土地改良法の九十四条の八は、国が行います公有水面埋立事業の結果できる干拓地、埋立地につきまして、あらかじめ国自身または都道府県知事に権限を委任することもできる規定を備えて配分計画を立てまして、配分の申込書を入植の希望予定者からとりまして、選考、決定をいたしますれば配分通知書を交付するのでありまして、この配分通知書を交付するのは、国が行う当該土地改良事業である干拓事業完了の期日以前を予定いたしております。この配分通知書は、当然農地法と土地改良法という二つの法体系がございますけれども、ともに土地改良と農地に関する基本法でございまして、その上に立てる農業政策の理念と申しますか、これを執行する農林大臣の基本的方針というものはその上に立っておりまして、配分通知書を交付するには、法文にも書いてありますように、自作農として農業に精進する見込みのある者の中から、適当と認められる者をまず選定をして、以上の措置を講ずるのであります。それからまた九十四条の八におきましては、竣工の日を通知することに備えまして、さらに六項と七項を具しまして、配分通知書の交付を受けた者につきましては、まだ工事完了の期日以前におきまして、所有権の対象とするのではありませんが、将来のそれを予定しながら、また将来それが成功しないことがあるかもしれないことを予定しながら、まあないことを期待して選考するわけでございますけれども、埋め立ての予定地を、農林大臣が定める条件で使用させるのでございます。農林大臣が定める条件というのは、配分通知書で土地の用途、配分の条件におきまして、農業用にその土地を供するという用途が一つ、さらに……。   〔「ちょっと待って、委員長大臣が   退席したがどうするんだ。」と呼ぶ   者あり〕
  66. 小枝一雄

    ○小枝委員長 先ほどあらかじめ申し上げましたように、一時から日ソ交渉に出ます。そこで十分前ですから時間がありません。また明日大臣は出席します。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣が出席するまでは、この審議は中止ですね。――まあ農地局長の答弁は続けてよろしい。
  68. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 それではお許しをいただきまして答弁を続けさせていただきます。配分通知書には、いわば条件として土地の用途を定めるのでございます。土地の用途は、自作農に精進する見込みのある者に対して通知するのは、当然に耕作用に供する土地であるということ、またその次の配分の条件は同様に自作農に精進して小作地に出すようなことはしない、客観的にどうしても一時やむを得ない条件がある場合など以外はしないということにするつもりであります。そうして原始取得の前に、六項に書いてありますが、農林大臣の定める条件で使用させます。その使用させるのは無償であると七項に書いてある通りでございますけれども、干拓地は事の性質に従いまして未墾地よりも土地の生産力も高いのでありまするし、農業用に使用させて、あらかじめ耕作する段階を早くやらせるために作るのであります。そして耕作する前に、所有権を取得させる前にその入植予定者で配分する。そうして使用させる段階で自作農に精進し得るかどうかを認定いたします。未墾地においては入植をさせまして、それから五年間で開拓を進めていく八割までは補助をする、昔は五年でありましたが、今は適当な時期に検査をしまして、不成功と思うものは三年間で国が買収できるということがありますが、干拓地は土地事情も違いまして、所有権をこの法律案に基いて取得せしめます前に、不適格であるかどうかの認定をいたしまして、使用を取り消せば配分通知書の交付を受けても別の人にまた変えるべきである、そういうところで認定をしようと思っておるわけであります。早く検査といいますか認定をする、そういうふうにしようと思っております。従って所有権を取得する際には土地の状況も耕作に使用し得るものである。農地であるかないかは、ごく一時の期間において耕作をしていないということだけではない、そのことだけではいけませんので、耕作を途中でちょっとやめてもなお続け得る状態になるのは農地でございますから、そこで農地といたしまして、その譲渡、貸借、所有制限、転廃業等につきまして、その他農地法に定めます条件は適用をするつもりでございます。また当然適用になるのでございます。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げますが、ただいま農林大臣は中途から退席された、これは日ソ漁業交渉という国際的な交渉に行くのでやむを得ぬと思います。大臣に対する質疑は後日大臣の出席を求めてそのときからまた始めるということにして、今日はこの程度で終ります。
  70. 小枝一雄

    ○小枝委員長 それではこの程度にして、午後は一時半から再開いたしまして水質汚濁の問題について水産関係の質疑を続行いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十八分開議
  71. 小枝一雄

    ○小枝委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  水質汚濁防止の問題について質疑を続行いたします。有馬委員
  72. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 午前中にお尋ねいたしました外国における水質汚濁防止法適用の状況、補償の実例等をこの際お聞かせ願いたいと存じます。
  73. 新沢寧

    新沢説明員 概略でございますが、わかっている範囲内で申し上げます。比較的早く水質汚濁防止についての法制的措置ができましたのはイギリスでございます。イギリスにおきましては、現在の河川汚濁防止法の前身となる法律が早く一八六五年にできておるようでございます。現在の法制のもとにおきましては、その法律に基きます河川汚濁防止局という機関が数個できておりまして、その河川汚濁防止局が河川につきまして、その河川の水質の標準あるいはその河川に放流する水の処理後の水質標準等を設けて、河川の汚濁防止についてそうした監督の措置を行なっておるようであります。またこの委員会は単に取締りを行うだけでなく、みずから実験所を持ちまして下水や産業廃水の処理方法の研究、また管轄区域内におきますそうした廃水の処理につきましての管理に関する責任をもってこの処理に当っておるようであります。補償の問題につきましては、これらのイギリスにおきます河川の汚濁防止の発祥の由来は、水産というよりは河川そのものの水質を保持するということに主目的があるようでありまして、水産の問題については、ことに補償の問題がどうということは私どもまだ寡聞にして耳にしておらないわけであります。またドイツにおきましては、イギリスの例にならいまして法律が作られ、また汚濁防止の責任に当る委員会が設けられて、イギリスに準じた方法で河川の汚濁防止処理に当っておるようでございます。アメリカにおきましては、アメリカ合衆国連邦政府といたしまして共通基準を設けて、あるいは法律の制定をして、共通の標準を立てているということではありませんで、その標準を立てる、あるいは法制を立てることは各州にまかされておるようであります。そこで、各州ごとに標準をきめまして、その保持については随時監督官がパトロールいたしまして、その標準の維持をはかっているということでございます。概略でございますが、私ども承知しております範囲内では、そういうような状況になっておるようでございます。
  74. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次にお伺いいたしますのは、わが国における関係法規の問題であります。御承知のように、この水質汚濁防止のために現在ある法規によって規制をしていくということでありまするけれども、実際上はほとんど部分的な不十分なものにすぎないことはあまりにも明瞭であります。公衆衛生関係で昭和二十九年の清掃法、昭和二十三年の軽犯罪法、それから鉱山関係で昭和二十五年の鉱業法と昭和二十四年の鉱山保安法、それから水産関係水産資源保護法、その他として昭和二十九年の河川法、昭和二十三年の港則法等が一応はあるわけでありますけれども、私たちが見る限りにおきましては、これらの法律によっていささかも救われてない、規制されてないというふうに考えざるを得ないのであります。たとえば軽犯罪法でありますが、軽犯罪法の第一条の第二十七項が多分この問題に適用されるのでありましょうけれども、その規定は「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者」は拘留または科料に処するということになっておりまするけれども、まるっきり軽い法律でありまして、これが実際に適用されるものとも私たちは考えられません。また鉱業法におきましても、第六章で鉱害の賠償として第百九条で賠償義務が規定されております。しかしこれもまた鉱山保安法の第四条第二項の「ガス、粉じん、捨石、鉱さい、坑水、廃水及び鉱煙の処理に伴う危害又は鉱害の防止」についても規定しておりますけれども、これらも今申し上げたことと同断だろうと存じます。その他の法律においても同様だろうと存じますが、実際に水質汚濁防止のためにこれらの法律を適用された事例があるかどうか、実際に単独法を制定しないでもこれらで十分規制し得るのかどうか、実例があったら、それを水産庁並びに通産省の方からお聞かせいただきたいと思うのであります。
  75. 新沢寧

    新沢説明員 お話しのように、現行各種の法令によりまして確かにそれぞれ水質汚濁を防止する場合に適用し得る規定が幾つかあるわけでございますが、実際の適用に当りましては、午前中も申し上げました通り、一般的な基準を立てて律することがなかなかできないのであります。それからいろいろな被害者側、害を与える側につきましても、利害の調整の困難な部分があるというようなことから、残念ながら現在まではそれぞれ既存の法律条文によって処理をいたしたという例はないかと思います。ただ実際問題といたしまして、明らかに工業廃水による害と見られる例がしばしばあるわけでありまして、また害を及ぼすおそれがあると考えられる事例もしばしば起るわけでございますので、それらにつきましては現在までどの法律を適用してその処理をはかるかということではなく、それらの法律に盛られております精神にのっとりまして、利害関係者あるいは地方公共団体等の関係者が集まりまして協議をして、それぞれケースごとに処理をしていく、こういうのが実情でございます。ただ、こうした法的の根拠をはっきり持たないで、ケースごとに処理をしていくというのでは十分意を尽せない場合が出てくると思われますので、現在といたしましては、そうした調整につきましてやはり法的な裏づけを持った調整なり勧告なり調査ができるようにしなければならぬじゃないかというふうに考えて、今各省協議をして、その実現に向って準備を進めておるわけでございます。
  76. 大木恒

    ○大木説明員 通産省の鉱山の保安を担当しておりますので、鉱山の保安関係につきまして御説明申し上げます。  ただいまお話のございました鉱山保安法第四条に関連いたしまして、金属鉱山等保安規則におきましては、第十一章に鉱害の防止という項目がございまして、これにつきましては鉱煙、坑廃水によりまする鉱害防止のこまかい規定が載っておるのでございます。それで、この法律ないし規則が適用されたかいなかということにつきまして申し上げますと、元来鉱山におきましては、その操業の当初におきまして、鉱業施業案というものを通産局長が認可し、それと同時に鉱山保安監督部長が合議を受けまして相談にあずかるような順序になっておりまして、この鉱害防止設備につきましてはすべて許認可事項になっておるのでございます。さてその認可せられました施設によりまして鉱業を実施した暁、なお鉱害が生ずるおそれがある場合におきましては、鉱山保安法並びに金属等鉱山保安規則の各条項に照らし合せまして地方の監督部長が監督をいたしておるのでございますが、最近この法律ないし規則の条項に違反するような事態もございまして、保安法の鉱業の停止命令を出したような実例もあるわけでございます。しかし全般から見まして、鉱業の停止命令を出すに至るような事態は非常に少いわけでございますが、そういう事例も最近あるのでございます。
  77. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今水産庁通産省の方から御説明がございましたが、実際運営面において、先ほどの部長のお言葉ではありませんが、ケースバイケース処理していくというお話であり、また通産省では実際にこの法を適用した場合もあるという御説明ではございましたけれども、具体的にはあとで私は詳細に申し上げますが、その被害は続々と起きて、せっかくある法律が有名無実になっておるのは事実であります。たとえば鉱山保安法におきまして、第二十四条では、「通商産業大臣は、鉱業の実施により、危害若しくは鉱害を生じ、鉱物資源若しくは施設を損じ、又はそのおそれが多いと認める場合において、必要があるときは、鉱業権者に対し、その鉱業の停止を命ずることができる。」とはっきりうたわれてある。しかしながら運営の面においては、私はこれらが非常にぼかされておるとしか考えられないのであります。皆さん方はこれらの法律でもって、この水質汚濁による、あるいは鉱害によるところの被害者の負担というものを除去し得ると今でもお考えになるのかどうか、この点をこの際明らかにしておいていただきたいと存じます。
  78. 新沢寧

    新沢説明員 最近におきますいろいろな鉱山あるいは鉱業によります廃水による被害というものは非常にたくさん出ております。この問題を解決するにつきましては、私どもは、事実の認定につきましてもまた被害額の算定につきましても、なかなか困難な問題がたくさんあろうと思います。特に加害側と被害側が相対して事に当りますと、それぞれの主張が正面からぶつかり合いまして、なかなか解決が困難な面が出てくるかと思うわけであります。そこでやはり権威のある第三者機関と申しますか、権威のある調停機関処理機関が必要ではないだろうか、そうした機関を設けることによって、事前におきましても事後におきましても処理がうまくいくのではないだろうか、現在の法律の各関係条項をそのまま適用することによってもちろん処理はできるわけでありましょうけれども、そこには冒頭申し上げましたような困難さが伴いますので、事の処理を円滑に行わせるためには、やはり第三者が調停するようなことを考えるのがいいのではないかというふうに私ども考え、そうした方向に今後の問題処理の解決の方途を見出していこうというふうに考えております。
  79. 奥宮正典

    ○奥宮説明員 ただいま水産庁の方からもお話がございましたが、われわれも現在の保安法並びに保安規則鉱害が起きた場合に直ちに適用いたしまして、鉱山の操業を停止するというようなことで、この問題が根本的に解決できるということは考えておりません。たとえばわれわれの方といたしまして現在考えておりますことは、鉱山の場合に、その坑廃水を害のないようにして流す施設、あるいは炭鉱の場合におきましても、洗炭の汚水が川に流れてそれが農水産物に害を与える、その洗炭の汚水を清らかにして流すためにどういう施設が必要であるかということについて、いろいろ今度の鉱工業技術の補助金なんかも、それに該当するような研究事項に出されております。そういうような何か裏づけのある確実にやり得るものを与えて、しかもそれが相当な金を要するような場合には、何か補助をするとか、何かそういうような確実にやり得るだけの施設、やり得るだけの裏づけをして法律を厳格に適用する、両々相待って初めてこの問題が解決できるのではないか、今そういう方向で今後やっていきたいというふうに考えております。これは通産省だけでどうという問題でもございませんので、各省でこの問題の解決に、そういうような方向で今話が進んでいると私も了解しております。
  80. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 考えてもらっただけでは困るのです。そういう方向でいきたいと通産省考えているときに、実際に鉱害がどんどん起きている。通産局長は百二十二条で和解の仲介もしなければならないことになっている。実際にどのような和解をやったか、その具体例があったら一、二お聞かせ願いたいと思います。
  81. 小枝一雄

    ○小枝委員長 有馬委員に申し上げますが、今鉱山局の方の出席がありませんので、ただいまから出席要求をいたします。ただいま出席は保安局の方でございますから、その方に対しての御質疑がありましたら一つ続行していただきたい。
  82. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 そういうことだから困るのだ。少くとも官庁というものは有機的に動いていかなければならない。自分の担当でなければ、よそのことはわからない。最も密接な関連のある事項について詳細を知らないで、過ごされるととても思われない。現在の官庁機構の最も悪いところをその辺に現わしていると思う。やはり全体を把握して、法の運営についてほんとうの意味で一般大衆のために善処するという態度がなければ、せっかく法律があっても、それがそのまま生きてこない。今の点はあとでまたお伺いしたいと思います。  それでは次にお伺いいたしますが、油による水質汚濁について各国の間で一九二六年以来話し合いが進められていることは御承知の通りであります。それで英国がこれを国連に提議いたしまして、その後フォークナー委員会というものを作ってこの報告書が出されたのでありますが、イギリスはこの会議の結果できた条約を批准する、条約に署名するというような真摯な態度をとったことは御承知の通りでありますけれども日本は批准に運輸省その他が反対して署名までに至らなかった。その反対せられた理由についてこの際明らかにしておいていただきたいと存じます。
  83. 新沢寧

    新沢説明員 直接の所管ではございませんで、間接になりまして、聞いたところでお答え申し上げますので、あるいは不正確な点が出てくるかと思いますが、お許し願いたいと思います。今お話のように、この条約案はわが国でまだ批准するところまでいっておりませんが、日本の現在の海運会社の経済的能力からいいまして、完全に海水中の油を分離することにつきましては非常に多大な経費がかかる、そしてまた経済的な実力が十分わが国の海運会社には備わっていない、従ってそういう条約を作ってもまだ実行する力が残念ながらないので、ちょっと受諾しかねるというようなことが理由になっているようでございます。ただしこの条約ができませんでも、運輸省としましては、その廃水を完全に分離できない場合におきましては、それを港湾内で投棄しないで、遠く港外に出て投棄するようにということの、そうした法的規制はしているようであります。沿岸の水産、ほかの産業等に害を及ぼさないように遠く沖へ出て捨てるというふうになっているようでありますし、また入港前にそういう水は捨ててくるようにという指導をしているようでありますが、残念ながらわれわれが調査いたしました実例によりますと、それが完全には行われておりませんで、油による被害というものもやはり相当残っているようでございます。
  84. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次にお伺いいたしますが、昭和二十六年の一月に経済安定本部の資源調査会は、内閣に対しまして水質汚濁防止に関してすみやかにこの立法措置を講ずるようにということを勧告いたしておるのであります。それと同時に、あとで申し上げますが、民間団体におきましてもそれぞれの法案準備をいたしまして、鋭意これが促進化について努力してこられ、また自民党の政調会におきましても一生懸命水産部会で法案の審議を進められているにもかかわらず、現在まで政府、特に水産庁がこの法案に対して、昭和二十六年以来の問題であるにもかかわらず、午前中冒頭に申し上げましたように、もちろんこれに対する陳情その他は昭和十一年ころからどんどんなされている。そして与党の中においてもそういった熱心な努力が続けられているにもかかわらず、担当省の方で今までこれを促進し得なかった理由、この点をこの際明らかにしておいていただきたいと存じます。
  85. 新沢寧

    新沢説明員 お話のように数年前から立法化の動きがあったわけでございますが、今日まで残念ながら実現を見ておらないわけでございます。いろいろ理由はあるわけでございますが、(「熱意が足らぬのだ」と呼ぶ者あり)経済的な理由ということもありますし、また先ほどお話がありましたような幾つかの法律の規定の運用によってできるという見解をとられた省もあるというようなことで、現在まで各省完全な一致を見て立法化の段階に進むことができなかったわけであります。しかし問題が重要でございますので、さらに各省とその後も引き続き協議を重ねまして、今日におきましては従前のような考え方から一転いたしまして、各省相協力いたしまして、この問題の解決に当らなければならぬという気運になっておるわけでございます。
  86. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今新沢部長からの御答弁でありますけれども関係各省通産、建設、運輸、農林の関係者が集まって、水質汚濁防止対策連絡協議会を作ったのは、昭和二十八年であります。その昭和二十八年以来論議を続けられて、しかも結論が出せないという大きな障害はどこにあったか、またどこがどうとはいいませんけれども関係各省がどのような点に異論を唱えられておるのか、なぜこんなに長年月を要しても結論が出せないのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  87. 新沢寧

    新沢説明員 問題の従来困難でありました点は、画一的な基準を立てるという問題、それから各省が持っておりまするそれぞれ固有の権限の調整をいかにはかるかという問題につきまして、必ずしも意見の一致を見ることができなかったわけでございます。   〔委員長退席、笹山委員長代理着   席〕
  88. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今基準の問題についてのお話がございましたが、少くとも水産庁では産業廃水及び下水の処理に対する水産側の要望書、こういったもので水質基準についての結論を出しておられる。もちろん万全のものということを望みますと、それこそ百年河清を待つということになるのでありますが、こういったことをきっかけにして、熱意があれば――今赤路君から熱意という問題が話されておりますが、熱意があれば、こういったことを一つのきっかけにして、話し合いが当然ついておるべきはずだと思うのであります。また先ほども申し上げましたが、民間団体におきましても、昭和三十年には、全海苔から水質保護と産業水等との調整に関する法律案並びに水産資源保護法の一部を改正する法律案、こういったものが準備され、また同じ昭和三十年に、全国内水面漁業協同組合連合会から水質汚濁防止法案というものが出され、昭和三十一年には、これらの各団体が前のものを統合した形で漁場水質汚濁防止法案、こういったものまですっかり準備いたしまして、何とかこの問題を促進しようとして努力しております。このような具体的な案が出されておりましてもなおそれが進められない理由、これらの民間団体が作った法案については根本的な欠陥があるのかどうか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  89. 新沢寧

    新沢説明員 現在までいろいろ案が出ておりますが、ただいまお話のありました案につきましては、一定基準を作りますことがなかなか一律にいきかねる状況もありまして、構想を改めまして重要な水域につきまして、たとえば保護漁場と申しますか保護区域を設定いたしまして、そこについて特に保護施設をするという考え方で参ってきておるわけでございますが、問題といたしましては、保護区域の設定ということをいかなる立場できめるかという問題もございましょうし、また保護区域だけでいいのかどうか、ほかにも同じような水質汚濁防止をしなければならない地域というものは局限されないであるわけでございますので、そのような点につきましても問題があるわけでございます。そこで現在といたしましては考え方をさらに改めまして、現在鉱害についてできております土地調整委員会、あの構想にならってそれぞれの事態ごとに事を解決するという問題の処理の方法が一番実情に適しておるのではないかというふうに考え方を改めてきておるわけでございます。この改めました考え方につきましては、大体各省基本的な構想においては一致点に近づいておるようなわけでございます。ただ委員会にいかなる程度まで権限を持たせ、いかなる範囲の任務を与えるかということにつきまして、なお各省間の協議を重ねなければならない、調整をはからなければならない事項が残っておるわけでございますが、そういうように従来とは考え方も改め、また改められた考え方につきましては、各省間の考えが一致点に近づいておるという現状に相なっておるわけでございます。
  90. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 保護漁場の指定なりあるいは保護漁場自体の漁場の取扱いなり水質基準なりあるいは関連地域の問題なり、それらについてのいろいろむずかしい問題があることはよくわかります。しかしながら今お話のありましたように、基本的な構想については一致しながらも、委員会の権限なり持ち分なり任務というものについてじんぜん日を送らなければならない理由というものは私は了解できないのであります。むしろここらあたりについては四省が早急に歩み寄ってすっきりしたものを出して、この立法について促進するのがただでさえ置き忘れられた沿岸漁民に対するあたたかい政府の態度ではないかと思うのであります。あなた方がじんぜん日を送っておられる間に、午前中中村委員からお話のありました益田市のような問題が出てくる。益田市がたまたまああいうような状態になったけれども、あれに近い状態が全国至るところで起きておるのであります。  次に私がお伺いしたいと思いますことは、ケースバイケースで実際に処理していかれるというけれども地方自治体、特に再建団体その他の団体では、工場誘致については非常に熱意を持っております。また漁民自体も工場の誘致それ自体については反対しておるわけではない。これはさきの私が参りました鹿児島におきましても、宮崎の門川におきましても同様であります。原始産業だけにたよっている地域において工場を誘致したいという熱意は、漁民諸君といえども他の自治体の幹部にも劣らない熱意を持っております。しかしこの自治体と工場漁民が実際の面で相対立する場合に、政府はその間に立ってどのような調整の役割を果しておられるのか、この点を具体例をもってお話し願いたいと存じます。
  91. 新沢寧

    新沢説明員 従来の例でいいますと、確かに地方のそうしたいろいろな要請から工場誘致に関して強い希望を持っておりますが、ともすると誘致をしようとするその地元と誘致の対象になっている会社との間の話の方が先に進みまして、実際これによって大きな影響をこうむります農民あるいは漁民に対する納得の上で話し合いをする機会が非常におそく持たれているという事例が非常に多いわけであります。私どもが耳にいたしますのも、そうした工場の誘致に対する企画がある程度進んで、それが何らかの形で漏れて反対運動となり、それが私どもへの陳情という形で現われてくるというケースが実ははなはだ多くて、私どもは事を知り、処理に関与いたしますのが時間的にいつもおくれることになっており、これは非常に残念だと思っているわけであります。この問題の解決につきましては、工業化が進むという方向をむげに押えることはできないと同時に、この被害、犠牲を農漁民だけがかぶるということはとうてい黙視することができませんので、先ほどちょっとお話が出ましたように、工場廃水につきまして、現在の技術水準でいけばここまではできるはずだという一応の線を出しまして、計画工場等には少くともこの標準に達するまでの浄化設備の設置については努力してもらいたいということを申し入れているわけであります。また県にも、この水産庁としての基準についての案を完備いたしまして、これによって指導するように通達をしているわけであります。また実際の具体的の例が起きました場合には、たとえば最近起きました宮崎県における例におきましては、水産研究所水質汚濁の担当官を派遣いたしまして、工場設計についての設計作成と申しますか、そういうものについての示唆を与えているということをやってるわけであります。そういうようなことに側面から、あるいは直接的にも被害が農漁民に及ばないように十分の配慮をしていきたいというように考えているわけであります。
  92. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 十分の配慮をしているということでありますけれども、私は今の御答弁ではとても納得ができません。具体的な配慮をしていると言いながらも、一部工場の諸君の利益擁護の立場にまるきり立っているとしか見えないようなあり方です。これはあとで数字でもって伺いますが、その前に不特定多数の加害者の場合には被害者はそのままということでありますが、この点について特に水産庁並びに通産省ではこのような点をどのように現在処理しておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  93. 新沢寧

    新沢説明員 先ほどもちょっと触れましたが、二十九年度中に水質汚濁によります被害件数が約七百六件ほどあるのでございますが、それらにつきましてはそれぞれ原因別に調査をいたしております。またそれの解決につきましては県の当局にも指導いたしまして、解決の処理に当っておるのでございます。ただ、今お話にちょっと出ましたように、原因の把握の困難というような事情、だれが被害者であるかというような点が不分明なこと等のために、七百六件のうち二十九年度中において、正確な数字はちょっと資料を忘れて参りましたので概数でございますが、二割ほどが処理できないで残ってしまっているような実情でございます。約八割ほどはあるいは補償という形、あるいはさらに防禦施設を完全にするというような形で処理をして参ってきておるような実情でございます。
  94. 左近友三郎

    ○左近説明員 ただいまお話がありました多数のものの加害についての問題でございますが、中小企業者が排出いたします廃水が相集まりまして、漁業なりあるいは農業影響を及ぼす例がやはり全国にいろいろ見られるのでございますが、加害者も非常に多数だということから、従来ややともすればこの処理については困難な問題があったのでございますが、最近は各地方公共団体、たとえば県なり市なりが中小企業者、それから農村あるいは漁村の皆様との間の仲介に立ってそうして地方公共団体が共同廃水処理施設を作るという動きが出て参りました。これにつきまして、われわれといたしましても、建設省と共同いたしまして、これを調整するための補助金を要求いたしまして、昭和三十二年度の議決願いました予算の中には、三千万円この費用が計上されております。これによりまして、まずさしあたり全国で四カ所、静岡県の富士宮地区、これは紙パルプの中小企業の密集しておる地帯でございます。それから愛知県の尾西、尾張一宮地区、これは毛織物の染色加工業者の密集しておる地帯であります。それから大阪の布施市周辺、これは綿関係の染色整理業・加工業者が密集している地帯であります。それから和歌山県の和歌山市辺、これは化学工場、染色工場、皮革工場が密集している地帯であります。この四地域について各市ないしは県がやります共同廃水処理事業に対して補助金を出すということにいたしまして、この問題の円滑な解決に努めておるわけでございます。現在の状態ではわずか四ヵ所でございますが、われわれといたしましては今後こういう問題のある地帯をなるべく広く包括するような補助金として、この問題の解決に十分努力いたしたいと考えております。
  95. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 わずか三千万円くらいの補助金でもってこの全国的な問題が処理されるとはとても考えられないのであります。やらないよりはましでありますけれども、その程度たるや実にお寒い限りであります。この点については、通産省が積極的になって、来年度予算、再来年度予算から相当大幅の予算を獲得しない限り、せっかくの企図が企図倒れに終ってしまう、こういう結果になりますので、この点は強く要望いたしておきます。  次にお伺いいたしたいことは、廃水の完全浄化設備ということであります。少くとも現在の技術水準で、しかも企業採算の中で浄化装置ができ得るとお考えになっておるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  96. 新沢寧

    新沢説明員 私の方から申し上げることは適当かどうかとも思いますが、われわれの方としまして、水産庁側の要望として水質基準を出しておりますが、これは現在の技術的な水準において少くともここまでは到達し得る、してもらわなくちゃならないという程度の水準を出しておるわけでございます。なるほど企業によりましては、採算制のいかんによってここまでの基準に達するについても相当の困難があろうかと思いますけれども、しかしわれわれの側の要望といたしましては、ぜひこの程度までは到達してもらいたいということを強く要望いたしておるわけでございます。それにいたしましても完全に被害を皆無にまで持っていけるかどうかということになりますと、なお若干の問題が残るのではないだろうか、こういうふうに考えております。
  97. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 若干の問題どころではなくしてまるっきり――先ほどからあげ足ばかりとっておるようでありますが、そうではないので、具体的な例で申し上げたいと存じます。冗長にわたるかもしれませんけれども……。今若干の問題と言われましたが、鳥取県の米子における日本パルプ工業米子工場、これでは総工費二十八億のうち五億五千九百万円、沈澱その他に五千三百万円ほかにありますが、装置をいたしまして、しかも被害者側はこれについてすこぶる遺憾なものだという工合に言っております。佐伯における興国人絹パルブ工場も同様でありまして、現在も補償を要求しておることは御承知の通りであります。それから静岡県におきましても、今通産省から排水路を設けて云々というお話がございましれたけども、これは富士川河口に至る沿岸二十キロメートルの間は水が黒褐色に汚染されまして、漁業が壊滅しておるという状態であります。愛知県の犬山市の東洋紡の工場、これも河川、伊勢湾両方に大きな被害を与えておる。宮崎県の日南市における日本パルプ工場、これも同様であります。熊本県の十条製紙の場合も球磨川のアユは半減しておる。山口県の岩国、これについても同様であります。異臭ふんぷんとして海岸線三里以上、沖合い七、八里までひどい状態になりまして、アユも回遊魚も、ノリ養殖も壊滅しておる状態であります。宮崎県の日向市の場合、これもあとでお伺いしますが、同様な状態に追い込まれることはあまりにも明瞭でありまするし、鹿児島県の隼人日当山のごとき、あすこは桜島によってまるっきり沼みたいになっておって、もう海流の流れがない。そこで工場が設立されるということになれば、完全に死滅してしまう。   〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕 鹿児島県の漁業はあすこのえさにたよっておるのでありますが、そういうことになると、県全体の漁業が大きな被害というよりも壊滅するということも、今私が幾つか申し上げましたような例であまりにもはっきりしておるのであります。皆さん方がある程度のことはできるのだというのでしたら、鳥取の日本パルプ工場報告がきておりますからそれを詳しく読み上げてもいいのですが、冗長になりますから省略いたしたいと思いますけれども、実際の状況はこういうことになって、私が先ほど、通産省にしても食糧庁にしても大きな工場の側に立って零細漁民は見殺しにしておるということを申し上げましたが、実際の結果はそういう形になっておるのであります。  それで、今お尋ねしました門川、それから隼人日当山のうち門川の方は話し合いがついたということでありますけれども、実際にはどういった形で話し合いがついたのか。私が門川に参りましたときなんかも、宮崎知事はとにかくいつかは漁民側も折れるだろう、最初はすわり込みなんかやったりデモをやっておるが、いつかは折れるだろうということで、のほほんをきめ込んで、疲れるのを待っていて強引に誘致するんだという態度がありありと出ておったのであります。実際に話し合いがついたということでありますけれども、私がここで心配しますのは、話し合いがついても漁民諸君の負担の上に立って話し合いがついた、やむを得ずそういう形に追い込められたという工合にしか受け取れないのであります。それで具体的に話し合いがどういう工合についたのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  98. 新沢寧

    新沢説明員 最近に起きました二つの事例についての解決の模様についての御質問でございますが、一つは日向市細島におきます東洋紡の工場の誘致の問題でございますが、これにつきましてはお話の通り長い期間話し合いがつかないでおりましたが、昨年の暮れに至りまして宮崎知事が中に立ちまして話し合いがついたということになっております。その話し合いの内容一つは、工場汚水についての処理を完全にするということが一つの条件でございますが、これにつきましては先ほどお話がございましたように、現在の技術水準で魚族に対して完全に無被害程度までいけるかどうかということにつきましてはなお問題が残っておりますので、さらにこれに加えましてこの関係漁民につきまして、沿岸のみにたよらないで沖合いに出て漁業ができるような漁業転換についての配慮――県自身がそれに対して補助金を出す、金融のあっせんをする、また会社も県の措置に加えて漁業振興費という形で漁業転換についての援助をするという条件が相加わりましてこの話がまとまったという報告を受けておるわけでございます。  鹿児島県におきまする隼人日当山へのパルプ工場設置の問題につきましては、これはまだ解決したというふうには私ども聞いておりません。ただお話のように工場の立地条件の点で、ほかの外海に面したところに廃水を流すのと違いまして湾内に廃水を流すということ、また単にそこの漁民の生計に関係しているばかりでなく、湾の漁業が遠洋漁業の重要な餌魚の生産地であるということも関連いたしまして、県としては非常に慎重な態度でこの処理に当るということで管理委員会を設けたり、そこでこの問題の処理につきましてあらゆる資料を集めた上で慎重に結論を出したいということで、まだ結論を出したとも、結論を出す方向に向っているとも聞いておりませんので、とにかく慎重な態度をもってこの事の処理に当らなければならない、その態勢を作って今事の処理に当っておるということを聞いておるわけであります。知り得た範囲内で申し上げますと以上の通りでございます。
  99. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 あとに中崎委員の方からも御質問があるようでありますから、私はこれで終りたいと思いますが、私がきつい口調で申し上げましたのは、結局先ほども申し上げましたように、関係法規ではどうともならない。これは私が申し上げるよりも、水産庁並びに通産省当局の方々がよく御承知の通りであります。そして近代産業たるこの化学工業の勃興の陰に、ものも言えない漁民の方たちが多くの被害をこうむりながらもその犠牲の下積みになっておる。先ほど例で申し上げましたが、大阪の場合のあのたくさんの工場汚水による漁業に対する犠牲というものは相当なものであったろうと思いますが、長年の間に今申し上げますように、弱い漁民はものも言えないでほかの産業に吸収されていくというような状態になってきておる。これは歴然たる事実であります。このような事態日本全国の漁民の上におおいかぶさってくることを防ぐためには、どうしてもこの際政府が積極的にこの立法化に乗り出していただくよりほかないのであります。幸いにして先ほども申しましたように、与党の政調会では非常に熱心にこの法案の検討が続けられ、またわが党におきましても、法案成立に対しまして各民間団体と十分なる話し合いをいたしておるのであります。この法案ほど通りやすい法案はない、あらゆる条件が整えられておって、ただやってないものは政府の関係各省であると極言してもいいような状態に置かれておるのであります。その意味におきましても、田口委員中村委員楯委員、山田委員からも積極的に要望がございましたが、ぜひこの農林水産委員会の一致した意見を無視することなく、積極的に推し進めていただきたいと存じます。もちろん予算問題その他がからんで参るとは思いますけれども、少くとも今次国会においてその芽を出していただく、こういう努力を、関係四省との話し合いを昭和二十八年からせっかく持たれた努力を、この際ははっきりと実を結ばせていただく、このことを強く要望いたしまして私の質問を終ります。
  100. 小枝一雄

    ○小枝委員長 中崎敏君。
  101. 中崎敏

    中崎委員 この問題につきましては、午前中から長時間にわたって論議されておるのであります。事きわめて政治問題であります。単なる事務上の処理という問題ではないと思います。その影響する点はきわめて広範であって、しかもこれに関係するところの各庁省の関係というものも相当広くまたがっておるのであります。そこで私委員長に要望するのでありますが、こうした重要な問題は、それぞれ関係各省庁におけるところの最高責任者が出てきて――われわれ単なる事務的な取り扱いを聞いておるのではないのでありますから、この際差しつかえのないところの大臣は、まず農林大臣は日ソ関係の問題について、今どう進んでいるか今のところよくわかりませんが、一応のところなんですが、御都合があればこれにかわるべき政務次官に出てきていただくことを要望したいし、それから通産大臣も出てきていただきたいと思いますし、これと同時に建設大臣それから経済企画庁長官、少くともこういう人に出てきてもらって、そうして現在当面しておるところの、火のついておるところの重大問題にもなっておるのでありますから、これに一体どういうふうに対処していくかということも含めて、あわせて将来の方針を大きく取り上げていくという考え方も含めて、いつまでもいつまでも同じことを繰り返して、その間に多数の零細な人たち生活が刻々と脅かされて、泣き寝入りになっていくという、こういう姿というものがこれ以上黙視できないという考え方の上に立っておりますので、すみやかに委員長の方から、私がただいま申し上げました大臣もしくは政務次官にこの際出てきていただいて、その意のあるところをはっきりとこの委員会において言明してもらうことを要望してやまないのでありますがどうかそういうふうにお計らい願いたい。
  102. 小枝一雄

    ○小枝委員長 ただいま中崎委員の御要求の点は、さっそくそれぞれ出席の要求をいたしておきます。ただ農林大臣は、御承知のように日ソ交渉、建設大臣は今運輸審議会へ出席をいたしておりますので、そのほかの関係一つ……。
  103. 中崎敏

    中崎委員 それでは時間の関係もありますので、一応質疑は続けていきたいと思います。  そこでこの水質汚濁防止等の問題については、いろいろこれから進めたいと思うのでありますが、まず一番何といってもこの犠牲の大きい、被害の大きい、また問題をよけい起しておるのは漁業関係だろうと思います。一面は河川関係中心とするところの淡水漁業に関する問題であり、一面においては沿岸漁民の内水面におけるところの多数の零細な漁民生活に関する問題だと思うのであります。そこでそういう角度から、ちょうど水産庁の部長も出ておられますので、その問題に一応しぼって進めていきたいと思うのであります。先ほど有馬委員質問に対しまして漁政部長から、二十九年度の被害状況について説明があったのであります。ところがその後約二年の年限が経過しておるのであります。しかもこうした問題は年々歳々そのスケール、被害の状態等が大きくなっておるのであります。たとえばパルプにいたしましても、あるいはまたダム等の工事にいたしましても、年々歳々近代的な大きなスケールのもとにおいて、一面工場の設備の拡充をされる、さらに次から次べと新設をされる、増産をされるというふうなこと等によって、この汚濁に関するような水量、分量というものも加速度的な勢いをもって伸びてきておるのであります。従いまして、これによるところの被害のスケールというものも、非常に大きくなっていっておるのであります。それを昭和二十九年度の統計しか持ち合せていない。この統計も私たちの目を持ってすれば、これはきわめて内輸であって、ほんのただ思いつきはすぎないのではないか、実際のわれわれが考えておる被害から見れば、スズメの涙程度のものではないかというふうに考えておるのでありますが、それはそれとして、水産庁で昭和二十九年度の一応の統計は出されたのでありますが、三十年度において的確なといいますか、あなたの方で集められたところの確実な数字がないとしても、三十年度においてはおよそこの程度であろう――まあ締め切りは多少おくれるという事実もありましょうが、そういうふうな大体の見当というものがあっていいのではないか。たとえば、私たちは最近におけるこの年度の状況を見るというと、五十億、百億というところのオーダーでその被害があるのではないかというふうにも考えるのでありますが、一体これらの点についてどういうふうにこの観察をしておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  104. 新沢寧

    新沢説明員 先ほど申しました資料でございますが、確かに二十九年というとちょっと古いようでございますけれども、実は調査のやり方といたしまして、被害の発生とその後の処理状況とあわせて調査をしておりますので、二十九年度中に発生しかつ三十年度中においてその処理が行われたものというような格好で資料が出て参りますので、一年ずつおくれて出てくるわけであります。今の三十年度の発生で、三十一年度でその処理がどういう程度で進行しているかという資料は、ぼつぼつ県から集まって参ってきているところでございます。まだ現在のところは集まっている県の方が少いので、大勢としてこれをどういうふうに推計するかというようなことも、ちょっといたしかねるわけでございますが、間もなく多数が集まって参りますれば、その傾向がわかってくると思いますが、現在のところはまだ資料がそういうような状態でございますので、ちょっと三十年度の状態を申し上げる基礎を欠いておりますので、悪しからず御了承いただきたいと思います。
  105. 中崎敏

    中崎委員 一番重要な、多数の漁民生活をあずかり、そして漁業の生産という大きな食糧生産の使命を持っておられるところの水産庁において、ただいまのようなそういう状態であるからこそ、結局においてこれだけの大きな問題が次から次へと起ってくるのにかかわらず、いつまでたっても解決されない。何といってもほんとうに熱意を持って、責任を持って推進するところの立場にある水産庁が、こういうふうな状態において、私に言わせれば、怠慢であるというのか、あるいは何かためにするようなことで、ことさらこれをネグレクトしているのじゃないかというふうな気もするのでありますが、いずれにしてももう一歩突っ込んでこうした問題と取り組んでもらわなければ、とてもたくさんの漁民、ことにわれわれはそういう者の生活を守っていかなければならぬ責任のもとにおいて、このまま見のがすことができないというように考えているのであります。そこで水産庁の部長は、たとえば二十九年度には三億七千九百万円程度であるということを先ほど発表されたのでありますが、処理したものはこれだけであるということならば、私は実際の被害はどうかということを聞くのでありまして、たとえばこの中に大きなパルプ工場――これはパルプ工場に限りません。あるいはセメントにしても、どんどんそれが川に流される。それが魚に実害を与えるということになれば、それも含めているのでありますが、そうしたようなものを含めて、全国的に、こうしたような事業によって受けるであろうと推定されるところの数字が、およそどんなものであるかということを、推定でもいいのでありますから、一つそれを――二十九年度は今発表になったが、私の言った点から見て、これは一体どのくらいの金額になるのか、それが三十年度、三十一年度についてはおよそどのくらいの数字であるのかということを、やはりざっとしたことでも言うてもらわなければ、われわれもこれを審議する上において、めくらめっぽうに議論するわけにもいかないし、そこらのところを一応ここで御説明を願いたいと思うのであります。
  106. 新沢寧

    新沢説明員 私どもといたしましては、県の水産課を通じて調査をいたしているわけでございまして、県の調査を通じて上ってきたもの、それは先ほど申し上げましたように、二十九年度中に発生をし、かつ処理が三十年度にかかるわけでございますので、その処理の経過を見て報告が出てくるということもありまして、二十九年度の資料が三十一年度中にようやくまとまるというようなことになっているわけでございます。そこで、はなはだ申しわけないのですが、三十年度につきましては、今そうした資料が着々到着しつつある段階でございまして、ちょっと推定の基礎を持たないので、ちょっと申し上げようがないのですが、これは早晩取りまとめができると思いますので、その際には御報告を申し上げたいと存じます。
  107. 中崎敏

    中崎委員 こうした各省にまたがる、しかも各省間における立場が異ったそうした問題と、取っ組むに当って、一番被害者の多い、一番熱意を持ち責任を持って突っ込んでいかなければならぬ立場水産庁において、今のようなことで交渉を進められて、その使命が達せられるという工合にお考えになるかどうかをお尋ねしたいのであります。
  108. 新沢寧

    新沢説明員 資料の収集につきましては、今申し上げたような技術上の事情もありましておくれておるわけでありますが、事態の重大さにつきましては、十分承知をしておるわけでございます。この防止措置の策定充実につきましては、最大の努力を払って参りたい。まただんだんそうした新しい防止態勢ができるような機運に着々近ずいていくものというふうに考えておるわけであります。なおおしかりをこうむりましたように、われわれの努力もなおなお一層傾けていかなければならぬというふうに痛感しておるわけでございます。
  109. 中崎敏

    中崎委員 昭和二十九年度における先ほど発表された統計の中に、たとえば先ほど問題となりました日本パルプの米子工場の場合においては、どの程度の一体被害を算定しておられるか。さらに島根県の江津にあるところの山陽パルブの江津工場の場合においては、一体どういうふうにお考えになっておるか。そうしてこの間建設委員会においても取り上げられたところの江川のあの淡水漁業被害については、どういうようにお考えになっておるか。そうして被害を受けるところの人間の範囲、それから数量、金額がどういう数字になっておるかをお尋ねしたいのです。
  110. 新沢寧

    新沢説明員 鳥取県におきましての被害といたしましては、二十九年度内の報告といたしまして、石炭以外の鉱山関係が二件、それからパルプ製紙関係が二件、澱粉関係が一件という報告が県から出ております。被害金額につきましては、鳥取県当局としては不詳という報告であります。島根県につきましては、石炭外の鉱山関係で一件、パルプ関係で七件、紡織関係で一件、合計九件の被害が二十九年度内に起きました。ただし被害金額については不詳という報告を受けております。
  111. 中崎敏

    中崎委員 そうした不詳というものが非常に多いようでありますが、その不詳というのは三億七千九百万円のうちの一体どういうふうなことに計上されておるのかをお尋ねしたいと思います。
  112. 新沢寧

    新沢説明員 三億八千万円の中には不詳というものは入っておりません。県として報告を受けたもの、金額の判明したものの総計が三億八千万円でございますので、不詳が相当多数の県にわたっておりますので、不詳の分を加えれば、三億八千万円の金額は相当増加してくると考えております。
  113. 中崎敏

    中崎委員 ただいまの例でもわかるのでありますが、たとえば二つの県を例にとって、しかもこれは相当大きなところの被害、近代的産業によるところの相当大きな被害が、すでに明らかになっておるところの例です。それがいわば数字の上にはゼロである。こういうふうな状態から見ましたときに、三億七千九百万円、約八千万円のこの金額というものが、およそ私に言わせればナンセンスである、こういうことが言えるのでありますが、こういうふうなデータをお持ちになって、そして各関係官庁とその大きなるところの取っ組みの相撲をやろうというときに、こういうふうなことで一体できるのかどうか。これはきわめて重大な問題でありますので、むしろ私は漁政部長を責めるよりも水産庁長官、さらには大臣、次官、少くとももう少し高いところの責任者から聞きたい。今日までの怠慢と言いたいと思う。こういうふうなやり方で重要な漁業の行政をつかさどっておるということは、私たちはどうしても納得がいかない。でありまするから、次官程度の人はどうしましたか。
  114. 小枝一雄

    ○小枝委員長 今農林政務次官は探しております。ほかはみな差しつかえるようでございます。
  115. 中崎敏

    中崎委員 というふうなわけでありまして、その被害がいかに大きいかということがわかる。ただいま言われたのはただ処理条件で、具体的にこういう問題が起って、これはこれだけのおおよその損害と査定して、そしてそれと取っ組んで一応処理したのだというものにすぎないと思うので、実際に大部分の人間はみな眠らされて、大きな資本と大きなる政治力とによってひどい目にあわされておるということがはっきりわかると思うのでありますが、いずれにしても三十年度、三十一年度においては、さらにさらに大きなるところの被害が生まれておると思う。さてこうした事態の中から、現実にけさほどから問題として取り上げられた中越パルプ益田工場の建設にからんで、相当大きなるところの混乱が生まれておることについては、すでに質問があったと思うのでありますが、この点はきわめて重大な事態であるがゆえに、私もさらにもう少し突き進んでこの問題について検討を加えてみたいと思うのでありますが、漁政部長はこの問題についてどういうふうな情勢の把握をしておられるか、さらにこれに対してどういうふうな処置をしようと考えておられるかをお尋ねしたいのであります。
  116. 新沢寧

    新沢説明員 中越パルプ益田市誘致問題につきましては、この計画を耳にいたしましたのは昨年の初めでございますが、その当初からなかなか問題があるということを聞いておったわけでございます。しかしその後におきまして島根当局が市と会社との仲に立ちまして、あっせん調停に努めた結果・昨年の暮れにおきましては、県知事パルプ会社社長との間に、汚水処理について遺憾のない措置をする、そしてもし所期水質が得られない場合には、本操業の停止を勧告してもそれに従うのだというところの約束を取りかわしたという話を聞いておるわけでございます。また市と会社との間におきましても、この汚水処理についての完全なる設備の設置と、それからその履行、並びにそれによってもなおかつ生じますところの被害に対しては公正な補償を出すのだ、そうしてこれらのことを決定するためには、会社側代表者漁民側の代表者とそれから市の代表者と、さらに第三者的な学識経験者をもって委員を作り、その委員会において審議をして公正なる決定をする、こういう約束ができたという話を聞いておるわけでございます。もし先ほど申し上げました県知事社長との間の契約並びに市長と社長との間の契約がその通り履行されまして、また必要な処理委員会もできて、それで行われていきますならば、問題の解決に一歩近づいていくのではないだろうかというふうに考えていたわけでございます。一昨日でしたか新聞の報道を見まして非常に驚いたわけでございますが、どうしてそういうことになったかということにつきましては、今県に対して照会を発しておるわけでございます。ただいままで承知をいたしております事項はそういうことでございますが、なおそうした事態が悪い方に発展いたしませんように水産庁としても十分の関心を持ちましてこの処理に当って参りたいと考えております。
  117. 中崎敏

    中崎委員 漁政部長の今の意見に対しては大きな問題がある。まず第一にそうした取りきめをされても一体漁民はどうなるか。まずその前提として漁民が全体に納得してやったらこれは問題はないのでありますけれども、納得がいかないのにただ市なり県なりがどういうような話をしても、そうしてまたかりに合議してみても、いつまでもこういう状態において漁民生活を脅かして、死活の問題を強引に無理やりに権力をもって押し切っていくというようなこともできないと思うのであります。まず第一に前提条件である漁民側が納得しない。たとえば中越パルプ岩川社長が、こんなものは問題じゃないというようなことを言って、知事に対してまるっきり木で鼻をくくったような受け答えをしたということが新聞に出ておる。そして今度は益田市長も漁民が幾ら話し合いをしよう――たとえばその近所の江津川の下流の江津に山パルの工場がある。あそこは初めは完全な設備をするといって、漁民の大きな反対もあったのだが、何だかんだと言って結局一応作ってみたものの、実際においては設備もやると言いながら不十分な点が多くておそろしいほどの漁民被害がある。ほとんど壊滅的な打撃を受けておる。そういう実情もあるのだから、その点もよく調査の上で、さらに今度の益田における工場設置についても、お互いが納得のいくような話し合いの上に立ってやるべきではないか、そうしてその損害というものも必然的に考えられるのだけれども損害もどういうふうな程度かということは目の前にある、殷鑑遠からざるところのあの山パルの例について検討してみようじゃないか、調査をしようじゃないかと言っても、そんなものはあえてこれを無視して取り合わない。こういうようなことがついに漁民を憤慨せしめて、これじゃ市長と話をする余地はないのだ、おれたちはおれたちの道を行くよりほかはないのじゃないか、おれたちはおれたちの生活をどこまでも守るのだという立場に立って正面衝突の姿が今の姿のわけです。であるから漁民のそうした切実な苦しみ、理不尽なるところの、権力をもって押し切ろうとするこうした一部資本家側に立ったやり方に対して、一体事前にどういう処置をとってどういう解決をするのか、そうしてまた将来かりに話がついて今度は損害の問題が起っても、かつての実態がわかっていないとどういうふうな損害を将来補償していくかということも明らかでない。だからこれをこの益田の場合に限らないで、たとえば今の江津の山パルの場合においても、およそこのパルプ廃液がこういう状態においてこういうふうに流れてこれだけの被害があるんだ、仙台の場合、岩国の場合でもどこの場合でもそういう実例があるんだから、それが一体どの程度被害パルプの場合にはある、セメントの場合にはある、ダムの場合にはあるんだという実態的な調査があなたの方でされておるのかどうか。将来一体ことさら漁民をいら立たせて、そうして問題を提起して次から次へやはりそういう状態を起させるような無責任な態度をとられるかどうか、そこを一つお尋ねしたい。
  118. 新沢寧

    新沢説明員 この工場設置につきましては、昨年の初めに県の部長が参りまして、一方においては工場誘致の問題もあり、それに対して漁民側としては非常な反対をしておるという報告でありまして、一方で私どもの方としましても、問題が重大であるので、県としては両者の間に立って公正な立場でこの解決に努力をしてもらいたいということを申したのであります。その後の報告といたしまして、知事との間にこのような契約ができたという報告を受けたわけであります。その間の事情お話のように単に県と会社との間に契約ができたというだけで、県としては漁民会社の間に立って事の公正な処理をはかるという措置がもし行われていなかったとすれば、これははなはだ遺憾なことであると思います。その辺のことも今照会をした結果によりまして、私どもとしても善処しなければならないと思うわけでございます。  工業用廃水の魚族に及ぼします影響研究につきましては、現在二、三の水産研究所におきまして研究を進めておるわけでございます。本年度におきましても、特に農林関係のいろいろな研究のうち七つ八つ重点事項がありますが、そのうちの一つとしてさらに今後の研究を十分いたしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  119. 中崎敏

    中崎委員 その対策として今研究所かどこかで研究しておるということでありますが、問題は一つの例――ケースバイケースじゃないのですが、具体的な一つの例をとらえてその実態調査をして、ここにはこういうふうな状態において廃液が流れる、こういう状態においてその被害を受ける、その損害はどの程度のものである、これに対する防止の方は一体どうなるかというふうな問題が関連してこれは取り上げられなければならぬと思うのですが、その実態調査が今までやられたことがあるのかどうか、それを一つお尋ねしたいのであります。
  120. 新沢寧

    新沢説明員 すべてのケースについてではありませんが、非常に大きな問題になりました若干のケースにつきまして、現地におもむきまして調査をやったという事例はあります。
  121. 中崎敏

    中崎委員 現在益田においてああした問題があって今なお相当はげしい対立状態が続けられておると思うのです。ところでこの中越パルプ会社側においては、三菱とかいうところの財閥資本を背景にして、それと今度は一緒にやるんだということで、一つの経済力と政治力とをそのうしろだてとして、そしてやっぱり強い圧力をもって今後強引にこれを押していくということも考えられるのであります。こうした相当広範なる漁民生活に関連し、ある部分においては農民にも関連するような問題が、同時に一つの社会の秩序の上にも大きな憂慮をもたらしておるという現在の段階において、水産庁としては一体これにどう対処していこうとするのか。依然として市なり資本家なりが一緒になって、背後に警察の実力をもって強引にこれを押し切っていけば、傍観していても結局は解決がつくだろうというような考えでおられるのか。あるいはもう少し真剣にこの問題と取っ組んでその解決に一歩進んでいくんだ、場合によれば水産庁自分で出向いていって、まず一応両者の間に冷却期間を置くような手を打たれて、しばらくこの問題を自分の方へ預けろというのではないけれども、われわれとしても調査の責任を持っており、あらゆる再度から検討した上でこの問題と取っ組みたい、それがためには実情を調査する相当責任のある人を現地に派遣する、そういう用意があるのかどうか、お尋ねしたいわけであります。
  122. 新沢寧

    新沢説明員 午前中にもそういうお尋ねが出ましたわけでございますが、確かに水産庁といたしましては、従来県に事をゆだねたような実態であったわけであります。県からの実情報告を私ども十分把握していないという点もありますので、私ども自身の手でやはりもう少し実情を把握しなければならぬということを痛感している次第であります。さっそくそのような措置をとりたいと考えます。
  123. 中崎敏

    中崎委員 水産庁の当面の緊迫した問題に対処する心構えもわかりましたので、この問題について模範的なといいますか、なるほどと納得のいく処理であったという方向へ最善努力を払ってもらうと同時に、今後再びこうした問題が起らないように、一面において、もしほんとうに工場の誘致をする心要があるというならば、やはり納得の上に一つのレールをしいて、そのレールの上をすべっていくような態勢をとるために、水質汚濁防止法のようなものを初めとして、やはり必要な措置が総合的に検討されなければならぬ。そういう意味において、各官庁にもいろいろ関連があることでありますから、委員長からもそうしたことを十分お伝え願いたい。きょうは大臣が見えておれば、いろいろここで論議を尽してみたいと思ったのでありますが、残念ながらまだ見えないようでありますから、その点よくお伝え願って、こうした問題をもう少し突っ込んで真剣にやってもらうことを要望して私の質問を終りたいと思います。
  124. 小枝一雄

    ○小枝委員長 中崎委員の御要望の点は十分了承いたしました。  それでは水質汚濁防止に関する質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会