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1957-03-30 第26回国会 衆議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月三十日(土曜日)     午後一時四十四分開議  出席委員    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 田口長治郎君    理事 稲富 稜人君 理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    五十嵐吉藏君       石坂  繁君    大石 武一君       川村善八郎君    木村 文男君       綱島 正興君    八田 貞義君       原  捨思君    松浦 東介君       赤路 友藏君    井手 以誠君       石山 權作君    川俣 清音君       久保田 豊君    楯 兼次郎君       中村 英男君    細田 綱吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         自治政務次官  加藤 精三君         農林政務次官  八木 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    和田 正明君         農林事務官         (農地局管理部         長)      立川 宗保君         農林事務官         (農地局管理部         入植営農課長) 安藤文一郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月二十九日  委員細田綱吉辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長の指名委員に選任された。 同月三十日  委員伊瀬幸太郎君及び武藤運十郎辞任につき、  その補欠として井手以誠君及び細田綱吉君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  天災による被害農林漁業者等に対する資金の融  通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一八号)  開拓営農振興臨時措置法案内閣提出第八三  号)     —————————————
  2. 小枝一雄

    小枝委員長 これより会議を開きます。  天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案及び開拓営農振興臨時措置法案一括議題といたし審査を進めます。質疑を続けます。  この際委員長より政府お尋ねをいたします。自治庁長官が御出席でございますから、政府を代表いたしまして御答弁をお願いいたします。  天災法並び開拓振興法に関しましては被害の激甚な農家には三分五厘の金利の資金を融通することとしておりますが、被害の激甚な農家を含む地方公共団体は、税収入等が減少するとかその他の対策のための財政負担が増加するとかの事情にあるのでございまして、ついては現に特別交付税交付額算定に当っては、一般的な基準率より計算するほか、特別な事情がある場合にはこれを考慮した額を付加することとしているので、この趣旨を生かし、天災法による三分五厘資金にかかる利子負担額についての特別交付税交付額を、国の補助率が引き上げられた事情もあり、これに見合う額となるようにして地方公共団体負担が減少するよう取り計らうべきでありますが、政府の御所見はどうでございますか、お伺いいたします。
  3. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説のような場合に、その災害地災害の状態並びにその地方財政事情の実態をよく押えてみまして、このような場合にはお説のごとく平衡交付金算定につきましては格別の考慮を払いまして、その地方負担の減少に努めて参りたいと存じます。
  4. 八木一郎

    八木政府委員 農林省は事業を執行して参ります立場から御趣旨通り努めて参る所存でございます。
  5. 小枝一雄

  6. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は開拓振興法について要点を四点ばかりごく簡潔にお尋ねいたしますので、一つはっきりお答えをいただきたいと思うのであります。この法案自体を見ましても、またこれに連関いたしまする政府側の今までの御答弁を詳細にお聞きいたしましても、それらを総合判断してみた場合に、どうもこれで、少くとも現在の非常に行き詰まった、崩壊一歩手前にある開拓者営農状況が立ち直るとは考えられないのであります。そこで、ほんとうに立ち直らさせる上において、最も具体的に必要だと思われる点についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、既入植開拓者立ち直りをはかる意味におきましては、政府の方の資料では現在約百七十億ばかり、私ども調査によりますと少くとも二百四十億程度負債があろうかと思います。個人債まで含めますとそのくらいの負債があろうかと思うのです。一戸当りにしまして大体十二万円、一年間にこの償還額が三万円ないし三万二、三千円になろうかと思うのであります。おそらくは政府の方の資料によりましても、約十五万戸の開拓者の中で、粗収入三十万円以上のものはわずかに一六%しかございません。この粗収入の点については私はあとお尋ねをいたしたいと思いますが、ほかの場合はいわゆる農家収入農業所得ということを標準にしながら、開拓農家の場合だけはすべていわゆる農業粗収入であります。しかも政府の出した資料によりますと、この粗収入のうち約四七、八%というものは経営費であります。この経常費の中には労賃その他は入っておらないのであります。従って開拓農家ほんとう所得というものがいかに少いかということはわかるわけです。そういうようにほとんど生活の維持もできないような農家から一カ年に三万円以上の旧債を、しかも大部分政府関係旧債であり、こういうものを返させるというところにも、今日の開拓農家がほとんど崩壊に瀕しておる根本原因一つがあります。そこでこの法案では、そのうちで特に天災関係政府融資だけを十カ年間延期をしようと、こういうわけですね。そのうち政府利子補給をするのは、たった五年です。どういうわけで五年にしたのか。私どもの推定では、全体で約二百四十億と思われますが、その二百四十億のうちで四十数億のものを、かりに全部が十カ年間の償還延期になりましても、これで開拓農家借金重圧がなくなるというわけにいかない。しかもそれを利子補給あるいは損失補償をするのはわずか五カ年間、あとの五カ年間は当然利子補給はなくなる、こういう関係になるのでありますが、これではとうてい私ども開拓地立ち直りはできないと思う。特に政府利子補給ないし損失補償を五カ年間に切った合理的な基礎はどこにあるか。大体の見当で、五年だけ何とかしてやれば、あとは何とかできるだろうというのか。私ども見通しでは、とうていそういう見通しにならないのでありますが、この点の御説明を、理由がはっきりわかるようにしていただきたいのです。少くともこの法律で実効のあると思われますのは、ほとんどその点だけでありますから、政府はせめて十カ年の延長期間だけは、当然利子補給なりあるいは損失補償をやることが、どうしても必要であると思いますが、この二点についてはっきりしたお答えをいただきたいと思うのであります。
  7. 立川宗保

    立川説明員 この法律は、たびたび御説明をいたしました通り、特別の措置も講じまして開拓地経営振興していくわけであります。そこでその施策昭和三十二年度から始めまして、五カ年間で経営を刷新してよくするという計画を立てております。そこで六年目になりますと、大部分開拓農家は、現在と違いまして非常に態勢が立て直るということを想定いたしております。一方今御指摘になりました天災による債務、それの利子補給額を一戸当り平均にして、六年目以降十年目までの利子額を想定いたしまして考えますと、利子補給に当る部分は一年に二戸当り平均七百円、六年目は一千四百円、十年目は四百円ほどでありますが、二戸当り七百円、そこで五年間に集中をして、よく経営が立て直りました場合に七百円の利子負担ができないかどうかという問題になりますと、そのくらいのものは十分いけるだろうという判断をいたしまして振興施策が前年五年に集中することと平氏をあわせまして利子補給も五年にいたしたい、こういうわけでございます。
  8. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その程度お答えでは、実はまだ不十分でありますが、まあ水かけ論になりますから、またあとでこの点に触れます。そこで旧債の問題で一番大きな問題は何かというと、やはり開拓資金の百二十三億でございますが、これの始末をどうするかということが一番根本の問題だと思う。そこで、特にこの点で私がはっきりしていただきたいのは、この百二十三億ばかりのいわゆる開拓資金融資の中には、脱落者が今日約三分の一出ている。今十五万人しか残っておらないが、すでに脱落者が八万人あるわけです。その脱落者負担分というものは、これから概算いたしますと、少くとも四十数億のものがあるわけです。これは御承知通り全部連帯保証です。その連帯保証になっておって、これを返さなければ、ほかの政府関係資金はほとんど出ないということが今日の実情です。しかも脱落者が八万人も出たということは、数の大きさからいっても、これは脱落した者にも多少の責任はありましょう。しかし大部分は、政府開拓政策がなっておらぬからこういう結果になった。これは政府御自身もはっきりお認めになることと思う。そこでこの開拓資金百二十三億、これの全体の償還重圧をどうしてやるかということ、特にそのうちでも、脱落者分の約三分の一に関しまするこの旧債をどういうようにしてやるかということが開拓者借金重圧を少くする根本だと思う。ところがこれについてこの法案には何も触れていない。過般来の御説明だと、この分については国の債権管理に関する法律によって政府は処置している、こういうふうな御説明です。しかしそれだけではどうも私どもには納得がいかない。私はこの二点をはっきりしてもらいたい。一つは、少くとも脱落者八万人に相当する四十数億のこの開拓資金は、今日の段階においては、これは法律上応分の処置をすべきだと思う。これは当然の話であります。今の開拓者実情から見ても、従来の開拓政策に対する政府の失敗の連続から見ても、また脱落をした諸君の大多数の今日の経済の実況から見ても、これははっきりしなければならぬ問題だと思う。これをはっきりしてやらなければ、とても開拓者立ち直りは、今までの御説明を聞いた範囲においての政府の今後の政策では、期待できない。そこでこの脱落者の分についてどういうふうにお考えになっているか。特に具体的に申し上げたいのは、私が今申しましたように、この分については、これは国の債権ですから、そうむやみに棒引きというわけにも参りますまいが、一応脱落者脱落事情なり、その後の経済事情というものを具体的に十分把握されまして、当然支障のある者は早急にこれの免除措置をとるべきである、少くともあと残った開拓資金、これの連帯債務連帯責任というものは、解除してやる必要がある、こういう点であります。さらに、こういう国の債権管理に関する法律を見ますと、これは契約してから十年たったものでなければ、そういう債権でなければ免除できないことになっている。ここで初めて今後十年間、この重圧は続くということに当然なると私は思う。そこでこれについては、少くともこの開拓営農振興臨時措置法を作る以上は、国の債権管理法律の三十二条ですか、これに対する特別法を、はっきり本法の中に規定する必要がある、こう考える。ですから今申しましたように、この免除をする気持があるか、どうか、そして少くとも現在おります開拓者から、連帯債務を抜いてやる必要がある、それに対しては、特例法をこの中にはっきり設ける必要があると思うが、これについてのお考え一つ……。
  9. 立川宗保

    立川説明員 ただいまのお話のような場合におきましては、実際上は、脱落者のために連帯債務を負っております開拓者負担がかからないように、しかもその債権が、どうしても行方不明であって取り立てられないというような場合には、免除措置を講ずるというようなことを、お話のような趣旨のことを、実質上は債権管理法律で実行いたすつもりでございます。そこで、今の法律特例を設けるという必要は、実質上ないと考えるのでございます。と申しますのは、この国の債権管理に関する法律第三十二条によりまして、無資力の者に対してその債務については履行期限を延ばしまして徴収の延期をしております。従ってその連帯債務者等についてもかかっていきません。そこで実質上は負担がかからないわけであります。免除のためには一定期間を要しますけれども、しかしその間真にやむを得ないものについては履行延期をしておりますから、実質上は影響はない、こういう工合に考えておるわけであります……。
  10. 久保田豊

    久保田(豊)委員 実質上は影響がないと言うが、実際に開拓者はそれで困っておるのです。あなたは実質影響がないと言うが、これは連帯債務になっておるから、この関係債務を返さなければ、あと政府資金組合の方に流さないという重圧現実にかかってきておる。そうして代行入植、入れかえ入植連中にこの債務がかかってくるのです。ところがこの入れかえ入植をする連中はどうかというと、これはよく皆さん承知通り、ほとんど荒廃したところにまたやってくる。自己資金も相当要るし、前の人のあらゆる借金を背負わされて、しかもこれが一番大きい。それで入れかえ入植をさせたい人があってもなかなか入れない。入ったのはまた経営が成り立たない。そうして既存開拓団はそういう連中にできるだけそういう負担をかけようとしておる。これが現実です。あなたはこの三十二条によってそういう措置をしておるから、実際にかかっておらないというけれども現実はどこでもかかっておるじゃないですか。それなるがためにこれらの返済が非常によく行っておるというのは何かというと、つまり牛を売ったり何かして拡大生産基礎となるべき物件をあるいは能力をだんだん小さくしながら、この借金だけ優先して払っておるというのが現実です。それを今の三十二条だけでそういう措置は実際にできない。では実際延期の契約をしたのがありますか。現実にたくさんあって、これがどんどん行われて、そして連帯性がどんどん落ちていって、そして実質免除に等しい扱いができておれば、私はこういうことを言わない。事実できておらない。私ども開拓地を歩いて、一番どこでも言われることはこの問題です。ですからこの点、今の程度の御答弁では私は不十分である。もしこの本法に特別の規定を入れる必要なしとするならば、何らかの形でこれに対して明確な基準を与えて、はっきりした行政指導なり何なりをする必要がある。行政指導をはっきりするにはどうしても法的な根拠が要るわけですし、この点について今の程度お答えでは私はちょっと納得がいかぬので、もう一回はっきりお答えをいただきたいと思います。
  11. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 開拓者の営農不振のお方債務の多いお方につきまして、国の債権管理法適用をしようと政府が思ったことはございませんでした。しかし今回この法律が三十二年度から施行になることになりまして、大蔵当局と打ち合せいたしました結果、その債権の猶予及び十年たったら免除してしまう、この措置農林省責任者となりましてやることになりました。従いましてこの開拓営農振興臨時措置法案が審議可決せられまして、この法案によりまして営農改善計画農家ごとに立ちまして、また組合としては振興計画が立つようになりますと、それの審査を確認しました後は、その債務につきまして該当するものは、国の債権に対しましては、同法の適用を三十二年度から勇敢に実施するつもりであります。その旨は農林省から都道府県等また開拓関係団体等明文をもって通達をいたします。
  12. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この点については、そうはっきり言って明文を出しておるなら、その明文通達資料一つ出してもらいたい。  それから次官一つこの点を御確認をいただきたい。今局長からお話がありましたけれども、単なる事務当局間のお話し合いでは、十分に行かないと思う。そこで大臣なり次官なり責任を持って少くとも脱落者に対する開拓資金については現存者には迷惑を絶対かけない、こういう一つ言明をいただきたいと思います。
  13. 八木一郎

    八木政府委員 この法案立案過程において最も苦心の払われた点が御指摘の点であります。従いまして農林省といたしましては、本法案が成立の上は、誠意と責任を持って御期待に沿うように実施して参ります。
  14. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まだこの旧債の整理の問題についていろいろありますが、時間が限られておりますので、この程度にいたします。  その次にお伺いをいたしたいのは、今度の新法の第二条で、省令できめるというその基準ですね。これが営農類型の一応の基本に今お考えになっているところだと思う。今まで御説明を聞いたところでは、従来五つの類型に分けておったが、これを大体全国的に七つの類型に分け、粗収入二十三万から五十万、こういうことにして、これを一応の基準にしてやるというお話です。大体そうお聞きしたのですが、私どもはこれはどうも納得ができない。こういうのを省令基準にされて、これでもって開拓地再建計画は絶対に立たない。第一に私が指摘をいたしたいのは、普通の農業政策考える場合には、大体農家所得というものが根本です。にもかかわらず開拓に関してだけは農業粗収入ということである。その粗収入の中には、当然粗収入から善し引かれるべきものとして経営費が承るわけです。その経営費というのは、政府が三十年度に二十一年ないし二十三年に入植した比較的上位農家の百戸の調査をされた結果によりましても、これは大体年粗収入が二十九万、三十万、現状から言えば非常に高い方です。政府資料説明にも、はっきりこれは上位の非常に優秀な開拓農家だと書いてある。その調査を見ましても、大体において農業経営費が半分かかっております。しかも農業外収入が約七万円ある。それでも生活をいたしますと、大体年に一万七千円くらいの赤字になります。しかもその生活の内容、生計の程度というものは非常に低い。三十万円というと、現状では非常に高い方です。粗収入約三十万円の農家であっても、なおかつ経済は黒字にならない。今の開拓農家のうちでは、政府みずからが言っているように、もうすでに十年近くたって、経営も安定して上位農家である。その上位農家が、別に約七万円の農家粗収入を入れても、そしてしかも生活程度を非常に落しても、年に大体一万六千ないし一万七千円の赤字を出しておる。こういう実情です。この実情を土台にされて、しかも今度は省令で定める営農類型を一これは開拓地の全体の振り合いがどうなるかわかりませんけれども、少くとも三十万円のものが重点になるようです。こういう類型基準省令で定めておやりになるというお考えが私はわからぬ。やはり今でもあなた方はいわゆる研究開拓当時と同じような基礎理念に立って、開拓地だけはいわゆる別扱い厄介者扱いにするという考え方の根本がここに出ているように私は思う。これではおそらく皆さんがどうお考えになったって、これで立つはずがありません。既存開拓地ほんとうの安定をはかろうというには、少くとも従来の借金を返して、新しく今後経営を充実するための拡大生産資金ができる、そうして私は通常農家とまでは言いません、それよりは少し低い、生活が安定してできる程度基準というものを作らなければ、それに向ってあらゆる施策を集中するということでなければ、こういう法律を幾つ作ってみたところが、とうてい既存開拓農家ほんとうに安心する、希望を持ってやれるというところには参らない。今農林省が各地でもって自主的な振興計画を一戸々々立てろ、それによる必要な援助はしよう、しかしその基準を置かれるものは二十三万円とか三十万円、これは粗収入ですよ。農家所得じゃありませんよ。この半分は経営費に消えなければならぬ。この消えたあとの半分の方、これで六人、七人の家族が食っていかなければならぬ。食うだけでも食えないわけであります。低い基準省令でおきめになって、これを基準にしていわゆる振興計画を立てろ、こういう根本的な態度、考えが大きな間違いである、こう思うのですが、現状とあわせてこの点についてどうお考えになっておるかお聞きしたいと思います。
  15. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 省令基準としましてはお話にありました通り、また私どもがすでに御説明しました通り農業粗収入が第一点、もう一つ農家の年間の償還金の割合をとらえまして規定をいたしたいと思っておるのであります。久保田先生の御意見も有力な御意見と思いますが、それなるがゆえに、私どもはこの基準は営農不安定な開拓者基準にして、営農生活がそれ以上に出るようにしたいと思うのであります。そこで今回はすでに入植されて土地の配分を受けられてしまった方について、その開拓地において半分の農家数にしてしまうほどに改善しようという案でございませんで、まだ予定の開墾面積平均六九%しか開墾していないお方々に対して、せめて当初の目標は早く達成していただきたい、しかしそれだけじゃ十分じゃないから、土地がすでに配分された既入植開拓農家について、営農類型のある程度の改訂も加えて、せめてそこまで早く到達していただきたいというので法案を出しておるのであります。またなお一そう経営改善をはかりまして、経営費を引いて適当な家計費が残るような生活が営まれるということを望んでおりますが、本法案においてはこのようにお願いしたいと思っておるのであります。省令で定める基準でありますから粗収入を押えるのが一番簡明でありまして議論は先生おっしゃる通りでありますが、各戸の経営につきまして経営費家計費おのおの要素を加えれば、多過ぎてかえって行政に簡明を欠く、こう思いますので、議論上はそういう点がありますが、今回はこの方がむしろ開拓者にいいのじゃないかと思っておるのでございます。
  16. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも今のような御説明じゃわからぬ。あなたのおっしゃるのは、実際の基準というものはもっと高く置くのだ、しかし事務上の便宜から一応省令でやって実際の振興計画を立てさせる、農家についてはこういう低い基準でやるのだ、こういうことですが、そういうことだとこれは実際に計画が立ちませんよ。どの程度までいけるかという到達すべき目標がある程度明らかにならなければ、こういうふうな低い基準ではこれは生活がどうやったってできない。何とか借金を延ばしてもらおう、新しい資金を借りようというだけの、いわゆる形だけのものならいいですけれども、この計画ほんとうにやるにはどうしても開拓民一人々々がほんとう自分経営なり自分開拓全体を本気にみんなでもってながめ合って、そしてほんとう自分たち期待のできるような、希望の持てるような生きた基準というものを持ってこなければ、私はこの計画はなかなかできないと思う。省令でこういう低い基準をきめてこれをやってごらんなさい。これが基準になって末端にいけばみんなこれになりますよ。これでは私はどうしてもうまくいかないと思う。  私はもう一点あとでお聞きいたしますが、旧債についての全体の償還計画、これがどのくらいになるか、そしてさらに新規の拡張をしなければなりませんが、それに対する新しい借入金がどのぐらいになるか、そういうものを総合して返していく場合に、借金を返せるだけの経営規模を持つか、そして生活がやっていけるような規模を持つか、この点が一番大事である。これを省令で明らかにしないことには私は意味がないと思う。今のようなお話だと、事務的にこの方が簡便である、こういうことですが、償還額が一割くらいになるものにはみんなこれをやるんだ、これでは私はほんとう振興計画は立たぬと思いますが、重ねてこの点をお伺いするわけです。
  17. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 久保田委員のおっしゃいますこともよくわかります。事は省令で定めるごとでございますので、開拓者のこの法律適用する実態とにらみ合せまして、御意見を尊重して定めて参りたいと思います。
  18. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今までの御説明の中でも、これからやる新規の開拓者については新しい営農類型も準備しておる、まだ公表の段階にはならぬがということでございましたが、それと連関いたしまして、私は既存開拓農家に、お話のありました通りまだ開墾も十分にいっていない、六五%くらいですから規模も大きくなるものもありましょう、ただ単に経営面積の規模というだけでなく、ほんとう開拓民がやっていけるような、希望の持てるようなはっきりした基準を、行政措置でも何でもよろしいが、少くとも振興計画が立つ場合においては、ほんとうにいけるような目標をはっきり規定してやっていただくようにお願いいたしまして、時間の関係もありますからこの問題についての質問を終ります。  その次にもう一点お伺いしたいのは、今の開拓地の状況から見れば、新規の投資をしなければ旧債の整理だけではとうてい成り立ちません。旧債の整理もある程度延ばしてやって、その間に自己資金の蓄積ができて、その自己資金の蓄積によってそれぞれの経営をよくするという幅は、特殊の場合を除いてはほとんど少いように私は思う。大多数の開拓農家というものは、旧債延期によってその間に多少の余裕ができたとすれば、これはおそらく今の生計費の極端にひどいものを埋めるか、それでなければ今家がほとんどだめになっている、この家の修理に使うか、それでなければ義理の悪い個人借金をしておるのにいやおうなしに取られるか、こういうことになって農業経営の充実のために使われる資金というものはそれによってはほとんど出てこないと思う。そこで政府もいろいろな新しいものに対して援助の計画も立っておられるようでありますが、少くとも今まで聞いたところでは非常に不十分であり、不安定であります。ほとんどこれに対しましてはっきりしたものがない。たとえば開拓資金八億五千万円の中から大体牛の三千四百頭、馬の千頭、乳牛六千頭とかあるいは寒冷地の振興特別対策、国有林の貸付をやるとか、こういうことです。それから中期資金を回して中小家畜を少しやってやるとか、今までのところはこのような程度であります。これではとうていほんとう振興計画にならないと思う。やはり大蔵省との関係においてはいろいろ困難もあられようと思う。あられようと思うが、少くともこの点についてはもっとはっきりした資金計画あるいは事業計画というものをお持ちになってぶつかられることがぜひ必要だと思う。そうでないと、一生懸命振興計画を立てても、結局今言ったようなワクの範囲においてしか実行はできないということになる。これでは振興計画を立ってもその大部分が砂上の楼閣ということになる。賢明な農林省当局のことですから、おそらくいろいろ考えてはみたと思うが、大蔵省に頭を押えられて結局できないから、この程度で何とか一つつじつまを合せて農林省の面子を立てようということだろうと思う。その御苦心のほどはわかるが、こういう態度では今後の開拓政策もだめです。現在おるところの開拓民も、これによってはとうてい立つことができないと思う。この点について農林省はもっと勇気を持つべきだ、確信を持つべきだ。少くとも研究会の時代とは違う。これに対しては財界とか、あるいは与党の中でもいろいろ反対がありましょう。しかし開拓政策をやる以上は、明確な計画資金を持つべきだと思う。この点については何にもない。御苦心のほどはわかりますけれども一つもっとはっきりした具体的な計画を立てて、開拓民が自主的な振興計画を立てたらこれに十分こたえられるような態勢をこの際どうしても立てることがこの法案を生かす道であると思う。そういう点からいうと、この六条の規定というものは、農林省の非常に苦しい立場をこういう程度に反映したものだと思うが、農林省の今後の強力な施策を打ち出す法律的根拠としてはきわめて不十分だと思う。この点についてのお考えを聞いておきたい。
  19. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 平素よく御研究の久保田委員でございますから、すでに前回までに申し上げましたことは繰り返して申し上げません。相当苦心を払って、新たな政策も三十二年度から緒につくわけでありますが、今後ますますしっかりした計画を立てて実行に移したい、この法案の運営に尽したいと思います。  なお今までに、債務の条件を緩和したり、場合によれば免除しようとする措置を申し上げましたが、このほか開墾事業費の支給が所定の方式によって終りました以後の債務整理等の困難な場合は、自作農創設維持資金の活用によって長期低利の融資を行い、りっぱな自作農になっていただくように努力するつもりでおります。
  20. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうもその程度の御答弁では……。御苦心のほどはわかります。  次官一つ聞きたい。この点について、今まで農林省がここで説明した程度では、振興計画を立ててもほとんど大部分開拓民はそれに手が届かない。立ったけれども金が出ない、そういうことであろうと思う。戸当り少くとも二十五万円ないし三十万円の準備資金を入れなければならぬ。いろいろな形態がありましょうが、そのおもなものは開拓農家の有畜化である。この有畜化によりまして、一頭の乳牛を入れ、畜舎を作り、サイロを作る、そういうことをやっても——最低限悪い牛を入れましても二十万円ないしところによっては三十万円である。この三十一万円の資金を入れれば高冷地、単作地帯の農民は大部分立ち直れる。私どもはそういう例をたくさん見ている。こういう点について農林省に明確な決意なり計画がなければこの法案全体が死んでしまう。局長事務当局でありますからなかなか困難だろうと思うが、その程度の覚悟があるのかないのか、次官のはっきりした御答弁をお伺いしたい。
  21. 八木一郎

    八木政府委員 開拓農民の心を心とされた御熱心な御主張は、法律施行の上において生かして参るということをお誓い申し上げます。
  22. 久保田豊

    久保田(豊)委員 本日はもっと詳しくこまかい点を突っ込んでお聞きしたいと思ったのですが、時間がないからやむを得ずなるべく簡単にやります。  そこでもう一点。ほんとう自分開拓地をりっぱにしていこうというためには、もう一つ大きな問題がある。それは、開拓関係の建設事務が非常におくれているということ。政府からいただいた資料によりましても、現在入植しているものに対して、電気とか水とか家屋の問題を抜きにいたしましても、政府が予定している計画資金が百億以上残っております。これに対して今年は三億何がししか出ていない。あるいはもう少し出ているかもしない。開拓地基礎建設に対してこういうちゃちな予算で、そうして不便なところへ入れて、あとはろくろくめんどうも見ずおっぽらかしておいて、借金だけはぎゅうぎゅう取り立てる。こういう態勢は非常に大きな間違いである。もっとやりたいのですが、時間がありませんからこまかい点は省きますが、すべてを含めた開拓地の建設について政府はどの程度本気になっておるのか。こういう法案を出して借金の返済をわずか延期しただけでは今の開拓地はとうてい立ち直らない。わずかばかりの予算ではどうにもならない。これに対して政府としては具体的にどういう気持を持っておるか。五年間でやる以上、現在のおくれておる開拓地の建設を五年間で取り戻すだけの予算、計画がなければならぬ。ところが予算措置はうんとおくれておる。そうしてこの法案だけやって実行計画を立っていると言っても何にもならぬ。この点どういうふうなお考えを持っているか。こまかい点は時間がないので聞いてもしようがないが、まず局長答弁をいただいて、それから次官にはっきり裏づけをしていただきたい。
  23. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 この法案開拓営農振興をはかる趣旨を明確にいたしますのは初めてでございますので、この法案を御通過させていただきますれば五年間でしっかりやるつもりであります。
  24. 八木一郎

    八木政府委員 開拓政策が非常におくれてきた、そのために苦しんでおるのは開拓農民であるという現状の認識については御指摘通りだと思います。そこで、これまでおくれて参りました開拓の諸般の仕事は、この法律を契機といたしまして、おくれた分を取り戻すために、乏しい予算ではありますが、最善を尽して御指摘の点を解決して参りたい、五年を一応の想定の目標といたしましたのもそれでございますし、事務当局を大いに鞭撻いたしまして御期待に沿うように努めたいと思います。御了承願います。
  25. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大へん時間が限られたので十分な質問ができなかったことは残念ですが、全体を通じて考えられることは、御苦心のあることはよくわかる。大蔵省に押えられて、中身はほとんどそろっておらない。レッテルだけ変えて、そうして何とか今の開拓地の不満を押えていこうという程度のことしかこれだけでは考えられません。これは単に開拓だけではないのです。たとえば特別土地改良の予算にしても、あるいはその他のいろいろのものをやりましても、最近の農林省の態度は、大蔵省もしくは大蔵省の裏におります大資本なり何なりの圧迫を受けて、実質的には農政がだんだん後退の一歩をたどっており、その負担というものはほとんど全部農民にかかってきておる。それを表面いろいろ美辞麗句、小さな技巧を弄してごまかしているという程度にしか私の方には受け取れない。特にこういうしわ寄せを食っているのは開拓農民である。皮肉な意味で言うのではないが、こういう点については農林省ももっと真剣に取り組んでいただきたい。もちろんこういう時勢ですから、いろいろの圧迫はあると思うが、勇敢に主張すべきものは主張し、少くとも農業団体や農民団体や全農民の力を結集してやらなければ、今の態勢では大蔵省ととても太刀打ちはできまい。それを押されるままに格好だけごまかして、お茶を濁している態度は私は不十分だと思う。特にこの法案については私どもは不十分だと思う。不十分だと思うが、これの実施の面については、今申したような点を十分に考慮して、腹をきめて実施計画を進めていただきたい。それでないと、今の御説明にあったように、五カ年で十五万戸の既入値開拓民ほんとうの安定のできるような施策にはならないと思う。この点を心配しますので、この点について重ねて次官からはっきりした御決意の表明をいただきたいと思う。
  26. 八木一郎

    八木政府委員 御趣旨を体し、真剣に開拓地振興のために努力いたして参ります。
  27. 小枝一雄

    小枝委員長 他に質疑はありませんか。——なければ、両案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  28. 小枝一雄

    小枝委員長 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案に対し芳賀貢君より修正案が提出されております。その内容は各位のお手元に配付してある通りであります。  本修正案の趣旨について提出者の説明を求めます。芳賀貢君。
  29. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案に対しまして修正案を提出したいと思います。まず案文を朗読いたします。   天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   附則を附則第一項とし、同項中  「昭和三十二年四月一日」を「公布の日」に改め、同項の次に次の一項を加える。  2 昭和三十一年四月一日からこの法律施行の日の前日までの間において天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法第二条第一項の規定による指定のあった天災については、前項ただし書の規定にかかわらず、第四条第二項の規定中年三分五厘以内に定められている資金に係る経費についての政府の補助額に関する部分適用については、改正規定による。  その趣旨を簡単に申しますと、本法律案の事項は、被害農民に対する利子の軽減をはかることが規定されておりまして、その点は法第四条第二項の規定の中にそれぞれ六分五厘、五分五厘、三分五厘と定められておるのでありますが、そのうち特に三分五厘資金に対しましては、現行法のもとにおいては系統融資の金利が下った場合においても地方公共団体利子補給負担率が下らぬというような実情になっておりますので、この法律案の改正を機会に、昨年の昭和三十一年四月一日からこの改正規定適用できるようにとの趣旨において、修正案を提案した次第でございます。
  30. 小枝一雄

    小枝委員長 本修正案は予算の増額を伴いますので、国会法の規定により、内閣に対し意見を述べる機会を与えることにいたします。八木政務次官
  31. 八木一郎

    八木政府委員 政府といたしましては、ただいま御提案になりました修正案に同意いたします。
  32. 小枝一雄

    小枝委員長 次に修正案及び原案を一括して討論に付します。討論はありませんか。—なければ採決いたします。  まず芳賀貢君提出の修正案について採決いたします。修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  33. 小枝一雄

    小枝委員長 起立総員。よって本修正案は可決されました。  次にただいま可決されました修正部分を除く政府原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  34. 小枝一雄

    小枝委員長 起立総員。よって本案は芳賀貢君提出の修正案の通り修正可決すべきものと決しました。  なお本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  36. 小枝一雄

    小枝委員長 次に開拓営農振興臨時措置法案を議題といたします。  討論に入ります。討論はありませんか。—なければ採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  37. 小枝一雄

    小枝委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に本案に対し附帯決議を付したい旨の申し出があります。これを許します。笹山茂太郎君。
  38. 笹山茂太郎

    ○笹山委員 ただいま決定になりました開拓営農振興臨時措置法案に対しまして、この際当委員会としまして附帯決議を付したいと思うのでございます。まず案文を朗読いたします。   政府は、地区別営農振興計画の達成に必要な措置を積極的に講ずるはもちろん、とりあえずこのさい、経営不振地区の開拓農家に対し、三十二年度以降五ケ年間を限り、次の措置を講ずべきである。  (一)自作農創設維持資金資金源の拡張に努め、毎年五億円を限度として特別枠を設定し貸付けること。  (二)農林漁業金融公庫が貸付けた資金償還額については、実情に応じて償還延期を行うこと。  右決議する。  この趣旨は、先ほど来当委員会におきましてしばしば申されました通り、今度きまりましたところの開拓営農振興臨時措置法のおもなる事項は、災害資金の借りかえが主になっておるのでございます。しかし、開拓民実情から考えまして、かようなことではとうてい十分な措置でないというので、現行制度におきましてできる限りこの補完作用を講じてもらいたいというのがこの決議案の趣旨でございます。何とぞ御賛成願います。
  39. 小枝一雄

    小枝委員長 笹山委員提出の附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 小枝一雄

    小枝委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時三十八分散会