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1957-10-08 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十月八日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 床次 徳二君 理事 保科善四郎君    理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    薄田 美朝君       辻  政信君    眞崎 勝次君       粟山  博君   茜ケ久保重光君       稻村 隆一君    勝間田清一君       下川儀太郎君    中村 高一君       西村 力弥君  出席国務大臣         国 務 大 臣 津島 壽一君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁長官) 上村健太郎君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     柏村益太郎君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (人事局長)  山本 幸男君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         大蔵事務官         (管財局国有財         産第二課長)  市瀬 泰藏君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 九月九日  委員島上善五郎辞任につき、その補欠として  中村高一君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員大坪保雄君及び眞崎勝次辞任につき、そ  の補欠として中馬辰猪君及び松田鐵藏君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中馬辰猪君及び松田鐵藏辞任につき、そ  の補欠として大坪保雄君及び眞崎勝次君が議長  の指名委員に選任された。 同月十六日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として三  宅正一君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長指名委員に選任された。 十月八日  委員淡谷悠藏君、三宅正一君及び久保田豊君辞  任につき、その補欠として勝間田清一君、受田  新吉君及び西村力弥君が議長指名委員に選  任された。 同日  受田新吉君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  国の防衛に関する件     ―――――――――――――
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選任についてお諮りいたします。去る九月十六日理事受田新吉君が委員辞任をせられましたので、理事が一名欠員となっております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、その方法は先例によりまして、委員長より御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 相川勝六

    相川委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長におきましては受田新吉君を理事指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 相川勝六

    相川委員長 それでは国の防衛に関する件について質疑の通告があります。この際順次これを許します。下川儀太郎君。
  5. 下川儀太郎

    下川委員 最初にお伺いしたいことは、昨年の九月七日静岡県の東富士演習場において米軍トルジェク一等兵根上きぬえさんがねらい撃ちされた、この事件に関しましては本委員会においてやはり本年の二月二十日にわれわれは追究申し上げた。それによるといろいろと調査中である、もしそれが事実とするならば善処する、そういう御答弁がありました。その後依然として報告はございません。その経過をまず報告願いたいと思います。
  6. 竹内壽平

    竹内説明員 東富士事件につきましては、本年の二月当時には中央部でよく内容を存じておらなかったのでございまして、その後調査しました結果判明しております事実を概略申し上げたいと思います。  本件被疑事実をまず申し上げたいと思いますが、被疑者トルジェクというのはアメリカ第三海兵師団第三海兵連隊の第三大隊1中隊に所属する上等兵でございましたが、昭和三十一年九月七日東富士演習場で行われた部隊演習に参加して、演習中午前六時ごろ、ちょうど廃弾拾いに付近におりました根上きぬえ当時三十二才に対しまして手りゅう弾の発射装置をつけましたMIライフル銃にから薬莢を填入して発射して、そのから薬莢根上さんの右側の胸部に命中いたしましたために全治約七週間を要する盲貫銃創を与えた、こういう事実でございます。本件につきましては本年の四月二十日に御殿場警察署長から静岡地方検察庁検事正傷害事件として事件の送致を受けたのでございます。この事件はその後五月十八日に起訴猶予処分に付されております。起訴猶予になりました理由といたしまして、本件発生被害者が厳重に立ち入りを禁止されておる演習場に入ったことに起因しておるのでありまして、被害者側にも責めらるべき点があるということが第一点。それからそういう事情でありましたために被害者事件発生当初本件が表ざたになることを極力おそれておりまして、しいて処罰を求めていなかったという点。それから第三には被害者の傷は幸いにして、すでに治療しておりまして、かつこの傷害を受けた点について、被害補償が確実になされるということでありましたので、これらの三点をふまえまして起訴猶予処分に付せられておる、こういうふうに承知しておるのでありまして、事件経過はさようになっております。この事件を受理いたしますまでの間には、主として警察当局現地米軍出先官とかなりひんぱんに折衝いたしておりますし、その間検察庁においても若干の情報を得ておりますが、それはそれといたしまして、事件処理は右申しましたような経過になっておりますことを御報告申し上げます。
  7. 下川儀太郎

    下川委員 九月四日の朝日新聞に横須賀米軍司令部の発表として、トルジェク一等兵昭和三十一年十月軍法会議において無罪になっておる。しかし、本事件は単なる執行猶予、あるいはまた補償によって云々さるべき問題ではないと思う。要するに本事件内容は、公務中か、あるいは公務中でなかったか、そういう点が現在明らかにされておらない。トルジェク一等兵の当時の状態を見ると、全然公務中ではない。告訴した警察官としても、非公務中だという建前に立っての傷害罪として告訴したと思う。その点に対して明らかな事象があるのか、公務中か公務中でないか、その調査をしておるのですか。
  8. 竹内壽平

    竹内説明員 その点は、日本側トルジェクを実際に調べておらないのでありまして、果してこれが公務中の犯罪であるかどうかという点は若干疑いが残っておるのでございますが、日本側とたいしましては今のライフル銃にから薬莢を詰めて撃つ、この行為自体から判断いたしまして、公務ではないという判断をいたしておるのであります。
  9. 下川儀太郎

    下川委員 公務中でなければ、日本側としては当然裁判権もあるし、あるいは捜査権もあるのでありますから、公務外として日本側は告訴するのが当然だと思う。ましてや本人トルジェク一等兵本国に帰還せしめられておる。本国に帰還させておいて、そういう処断を下すということはもってのほかだと思う。真実を追究するときにはあくまでも本人を拉致して来て、十分に尋問の機会をとる、あるいはまた捜査するのが当然だと思う。そういういろいろの処置をせずに、ただ単に向う側に委しておいて、執行猶予というようなそういうでたらめの判断を下すことはもってのほかだと思うが、その点に対する見解はどうですか。
  10. 竹内壽平

    竹内説明員 御質問の点はごもっともでございまして、この際捜査経過を明らかにいたしまして、併せて所見を申し述べたいと思います。本件は、事件発生直後ただちに所轄御殿場警察署におきましては捜査に着手をいたしたのでございますが、被害者その他日本側関係者を取り調べまして、米軍等からも被疑者の氏名、兵籍番号等電話連絡を受けたのですが、日本側警察でさらに被疑者その他米軍側関係者の取り調べの機会を得るように米軍当局連絡をいたしたのでございますが、米軍当局からは回答がないままに薄日が経過したのでございます。その間米軍当局から犯罪発生通知もいたされませず、日本側警察からもいまだ犯罪発生通知をするに足るだけの犯罪事実の概要が明確になっていませんために、米軍側に対して犯罪通知をいたしておらないのでございます。かような状態でじんぜん日を過したのでありますが、その後本年になりましてから被疑者及び関係者はすでに帰国しておる、しかも米軍側関係人取調べは一応不可能というような状態になっていることが、二月ごろになってわかってきたのでございます。そこで現地警察におきましては、米軍側に対しまして、被疑者その他米軍側関係人に関する米軍当局捜査資料等送付方を要求いたしました。ところがその部隊はすでに解散をしておりまして、容易にこれを入手し得なかったのでございますが、ようやくにいたしまして今年の三月二十七日に関係書類送付を受け、検討いたしました結果、本件被疑者につきまして傷害の容疑があるということで、四月十九日になって御殿場警察署長から、キャンプ富士憲兵司令官に対していわゆる犯罪通知をいたしますとともに、先ほど申しましたように二十日に事件検察庁送付してきたのでございます。静岡検察庁におきましては本件重要性にかんがみまして、二月以来警察を督励しまして、その処理手続に万全を期して、現場の実況見聞を行なったり、その他必要な措置を講じておりましたが、事件受理後検察官において被疑者その他日本側関係人を取り調べまして、さらに米軍側関係書類をも検討いたしまして、本件処理には被疑者その他米軍側関係人の直接取調べが必要であると考えまして、四月二十日に検事正から米軍キャンプ富士憲兵司令官あて被疑者及び重要参考人三名の召喚方を要求いたしました。これに対して五月十四日、憲兵司令官から検事正あてに右四名はすでにアメリカ本国に帰国しており、かつその中の参考人の一人はすでに軍籍を離脱して、これらの者を召喚することは相当の経費もかかり、かつ不便であること、並びに被疑者本件についてすでに米軍軍事裁判所において判決済みであるというようなことを理由といたしまして、右検事正の要求は引っ込めてほしいという要望をしてきたのでございまして、こういうことからして取調べすることが不可能になって参ったのでございます。  ここでかようにまで処理が紛糾いたしました原因について考えてみますと、米軍側協定によって定めておりますところの犯罪通報を行わないで、日本側連絡なく軍事裁判を行なった、この手続上の過誤が最大の原因であります。日本側警察におきましても、本件発生当時米軍側回答がないまま、捜査を一時中断したような形になり、犯罪通報も行わないで、結局被疑者ら関係人を帰国せしめるような結果になりました点も、原因一つと考えられるのでございます。経緯は、以上のような経緯になっております。  なお意見として申し上げますならば、本件アメリカ軍軍事裁判効力につきましては、日米両国間の協定によって、あらかじめ通報をせずして裁判を行うということは、協定違反でございます。かような協定違反を犯した場合には、その裁判は無効であるかどうかという点が疑問になるのでございます。かりに本件米軍側裁判が有効であるということに解釈いたしますと、日米行政協定十七条第八項に書いてございます二重処罰の禁止の規定がございまして、日本側としては本件について起訴するということによって、裁判権を行使することはできないことになるのでございます。また被疑者アメリカ木国から日本裁判のために召喚するということになりましても、例の人身保護令効力等がございまして、米本国法上難点が生ずるように考えられるのでございます。  それから犯罪無罪になりました理由につきましても、一件記録の取り寄せによりまして調べたのでございますが、本件に限らずアメリカ軍事裁判におきましては理由を示しておらないのでございます。ただ起訴状その他から推測をいたしまするのに、トルジェク統一軍法の百七十二条の違反によって起訴せられておることがわかるのでございまして、統一軍法の百二十七条によりますと、単純暴行、これは三月以下重労働拘禁になっております。それから殴打暴行、これは同じく六月以下のものでございます。それから兇器暴行、これは三年以下、故意による重大傷害五年以下、こういうふうにそれぞれきめられておるのでございますが、本件裁判が普通のいわゆる軍事裁判ではなくして、特別軍事裁判で審理をされております点から見まして、この特別軍事裁判管轄権から申しますると、前の二つの場合、単純暴行か、あるいは殴打暴行、この二つのうちのいずれかで起訴をされたものと思われるのでございます。その結果無罪である。無罪理由はいかなる理由無罪になりましたか、人違いであるとか、あるいは正当な職務行為であるというふうに判断したか、その点は理由がわからないのでございます。しかしながら日本側としましては、先ほど申しましたように、からの薬莢で撃ち込むというようなことは公務執行中の行為ではないというふうな判断をいたしております。しかもなおまた協定を無視して手続を誤まって向う側で勝手に裁判をしてしまった、そのような手続は無効であるという判断をいたしまして、わが方としましては独自の立場におきまして先ほど申しましたような、調べはできませんけれども、諸般の事情をしんしゃくいたしまして犯罪を認めて起訴猶予処分に付したのでございます。
  11. 下川儀太郎

    下川委員 先ほどの言葉の中に犯罪通報向うの方からなされなかったから重大な過失になったということを申しておりましたが、犯罪通報の件に関しましては、二月二十日の質問中に、御殿場の方には全然犯罪通報が来ておらぬと私は強く言ったのです。ところが当時の中川刑事局長犯罪通報は来ておる。来ておる、来ておらないと押し問答をした。そうしてみると、その責任は一体どこにあるのか。私が犯罪通報が来ておらないといったときに、なぜ即刻に向うへ行って事情を調べて、犯罪通報が来なかったら来なかったで向うに要求しなかったのか。そこに私は大きな原因があると思う。もしあの際、私が犯罪通報がないといったときに、即座に御殿場に行き、犯罪通報の来たか来ないかを調べて、そうして米軍にそれを要求したら、これはもっと有利に展開したかもしれない。それを怠っておいて、犯罪通報が来ておらない。おらないからかような結果になったということは、あまりにも無視したことではないか、その点いかがですか。
  12. 竹内壽平

    竹内説明員 警察庁の中川部長がどういう趣旨でそのような御答弁をなすったか、つまびらかにいたしませんが、私の承知しておりますところでは、今申しました通り犯罪通報は相互においてなされていない、そうして四月十九日に日本側から正式に犯罪通知がなされているというのが真実でございます。
  13. 下川儀太郎

    下川委員 その際私は言ったのですが、従来の犯罪に対して一回も通報が来ていない。あまりにも協定を無視したやり方である。それをそのままほっておくということは政府の怠慢じゃないかと私は思うのです。当然これは責任政府にもあると思うが、いかがですか。
  14. 竹内壽平

    竹内説明員 ただいま御説明申しました通り本件につきましては、犯罪通知を行わずして昨年十月二十六日に米軍特別庫裏裁判所において裁判が行われて無罪判決があったということで、それは後日本年の二月下旬ごろになって判明をいたしたのでございますが米軍当局日本側連絡がなくかような裁判を行なった点は、行政協定趣旨に反するものであることは明らかでございますので、その後警察方面からも出先検事正方面からも、出先米軍当局に対しましてその非を詰問しておるのでございますが、結局問題を中央に取り上げまして、日米合同委員会刑事裁判管轄権分科委員会というのがありますことは御承知のことと存じますが、それに対しまして正式に抗議を申し込みましたところ、本年の五月十五日に米極東海軍司令長官の命により、同量の法務部長テーラー中佐から、法務省の今の分科委員長をしております津田実あてに文書で陳謝の意を表してきておるのでございます。手続上の過誤によるものであること、それから今後厳重に注意するという旨の書面をよこしておりまして、この点は米軍側過誤を認めておるのでございますし、将来かかることがないように管下の各部隊にも厳重に通告したということでございますので、私どもはそれを了とした次第でございます。
  15. 下川儀太郎

    下川委員 あらためてお尋ねしますが、政府は本事件公務外殺傷事件、いわゆる殺人未遂事件あるいは傷害罪であると認めておるのか認めていないのか、それを一つ明確にお示し願いたい。
  16. 竹内壽平

    竹内説明員 公務外傷害事件として処理をいたしました。
  17. 下川儀太郎

    下川委員 公務外傷害事件というと、当然これは裁判権日本側にある。従って本人を拉致してきて日本裁判をするのが当然であると思う。どうしてそれができないのか。向うの意のままにまかして、いわゆる執行猶予とか、そういうふうに一方的に向う処理されて、どうして今日まで日本が黙っておるのか。もっと厳重に抗議し、なぜこっちまで本人を召喚させ、堂々と日本裁判に付さないのか。その点いかがですか。
  18. 竹内壽平

    竹内説明員 仰せのような処理をすべきであるかどうかという点につきましては、事案内容をわが方で検討をいたしました結果、先ほども起訴理由の中で第一に取り上げられました点等を考慮いたしまして、この種の事案裁判にかけるまでもなく処理して、それが適正な処理であろうということに判断をいたしたのでございます。
  19. 下川儀太郎

    下川委員 そういう情状酌量というのは向うの言うことであって、こっちの言うことじゃありません。ましてやトルジェク一等兵はほかにも犯罪を持っておる。昨年の十二月においては、御殿場時計商から二個も時計を奪っておる。そういうふうなたちの悪い一等兵です。そういうのを事情を酌量するとかいうことは全然考えられないことです。ましてや発砲当時の状態を見てみると、張り番中を逆に方向を変えて、そうして何らの警告なしに撃った。しかもねらい撃ちです。ねらい撃ちということは殺人意図があるということを示している。私はこの前もこれを痛切に突っ込んだわけですが、殺人意図がある傷害事件でございますから、最も悪らつな犯罪であると私は思います。それに対して、向うのやることを了とする、そういうことでなくて、日本国民を守る、権利を守るという立場でなぜ向うに交渉しないのか。ましてや裁判権はこっちにある。警察署公務外であるということを断定している。あるいはまた周囲の事情も、公務外であったということを言っている。そういう歴然とした証拠があるにかかわらずそういう処置をとるということはもってのほかであると思うが、その点どうですか。
  20. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 関連して伺いますが、刑事局長答弁を聞くと、私は絶対納得いきません。これはとんでもないことでありまして、そんなあなたの答弁で、この事件を、今までやってきたようにうやむやにすることは絶対に納得できないことです。あなたの御説明されましたところの、日本が不起訴にした理由アメリカ無罪にした理由は、全然これは理由になりません。この事件は、私は現地に行きまして下川議員と一緒に詳細な調査をしましたが、もちろん不法侵入はわかります。わかりますけれども不法侵入した場合には、当然アメリカ側はこれに対して退去指令をしなくちゃならぬ。退去指令をした後になおかつ出ないならば、これは不法侵入として何らかの処置をすることは当然ですが、この事案に関しては退去指令も何も全然していない。しかも一黒人兵は、御丁寧にもから薬莢二つかみも被害者に与えている。与えてしかも、実包の詰まった弾帯を示して、この場所に待っていらっしゃい、今にこの弾帯もからになるから、そうしたらあなたに上げるからここで待っていらっしゃいと言って待たしておいた。そこへもってきて、標的に向っておったその兵隊が、その標的に向って実包を撃ったならばまだ話はわかるが、わざわざうしろを向いて御弾筒発射装置のあるライフル銃の頭にから薬莢を詰めて撃っている。一発ではない、二発撃っている。一発は撃たれたので逃げた。ちょうど相馬ケ事件と同じだ、何ら変らないケースである。今下川委員も言うように、このアメリカ兵は明らかに悪意でしたのである。日本人を犬、ネコ同然に扱っておる。ここにレントゲン写真がありますから見てごらんなさい。ちゃんとからだの中に薬莢が入っておる。幸いにして命を取りとめたからいいようなものの、これがあやまって死んだら相馬ケ事件と同一の事件であります。こういう悪らつきわまるアメリカ兵行為に対して、日本がその実情を知りながら何らの処置もしないということは、日本主権放棄であり、日本裁判権放棄であります。私は絶対に許せません。従いまして私は今さら刑事局長の綿々たる弁明を聞こうとは思わない。日本政府のあやまちであるから、あやまちをはっきり国民の前にあやまって、この事件に対する処置のあやまちをこの席上で国民に謝すべきであると思う。アメリカもあらゆる捜査日本にさせないで勝手にしたのである。これは日米行政協定違反である。これはアメリカも認めておる。しからば、当然その犯罪を犯した一等兵アメリカから召喚して――人身保護令があろうとなかろうと、そんなことは相手の勝手である。日本人にこんな傷をつけたのである。根上さんはああいう衝撃を受けたのだから非常な故障がある。いつ重大な病体にならないとも限らないと思う。これは目に見えておる。とういう悪らつな行為をしたアメリカ兵人身保護令日本の手に渡せないということはあり得ないと思う。みずからのあやまちを国民に謝して、その犯罪を犯した兵隊をあらためて日本に召喚して十分な取調べを行い、日本裁判に付して、日本主権の確立と裁判権の主張をするのが日本政府のこの事件に対する当然の処置だと思う。またわれわれは国民の代表としてそれを要求する。従って刑事局長は今さらここでいろいろな弁明をするのではなくて、先ほど来指摘したように、あなたも言っているように、またアメリカ軍も言っているように、これは日米両国政府の重大な過失であるから、過失を認めた上に、両国政府とも日本国民一つ衷心から謝罪をして、あらためて出直して、日本の官憲による取調べをして、日本裁判に付すべきだと思う。こういった処置政府は全力をあげてすべきだと思う。これを私は要求する。従って今の下川委員質問とあわせて――私はきょうは法務大臣に言いたかったんですが、刑事局長でもよろしいでしょう。あなたは一つ弁明をして、この案件についてあらためて日本政府として重大な決意のもとに処置をする意思があるかどうか。そういった責任と義務があると思うが、これに対する明快なあなたの、日本政府を代表しての所信を聞きたいと思う。
  21. 竹内壽平

    竹内説明員 本件被害者である根上さんが、米人の不法なる行為によって傷害を受けるに至りましたことにつきましては、私ども衷心から御同情申し上げておるのでございまして、しかも今まで内容調査をいたしてみますと、米軍側に大いなる過失があったこと、それからまたわが方におきましても出先機関において若干の手落ちがあったことは、先ほど申した通りでございます。この点はまことに申しわけないのでございまして、関係当局者としまして衷心おわびをしなければならないものでございます。しかしながら本件内容は、事は刑事、司法の問題でございまして、今御指摘の黒人の問題とか、あるいはおびき寄せてねらって撃ったとかいうような問題は、私どもが今日まで調査しましたところでは、遺憾ながらいまだ明らかにし得ないのでございます。それから公務であるかどうかという点につきましても、私どもは他の事情がわかりません限り、今与えられておる状況のもとにおきましては、公務の執行中でないという判断をいたしておるのでございますが、米軍軍事裁判所は無罪という判決をした。その理由は明らかになっておりません。これは先ほど申した通りでございます。こういうことであり、しかも私どもトルジェクの情状が憫情すべきものがあるということで不起訴にしておるのではありません。繰り返して申しますが、本件は先ほど御指摘もありましたように、わが方にも、根上さんの方にも落度があるのでございます。これは根上さん自身が当初からないしょにしておいてほしいということを申していたのは、自分が罰せられるかどうかということではなくして、たま拾いに行く人たちに大きな影響が生ずるかもしれぬというので、あまりこれが表ざたになると困るのだというような趣旨であったかと思いますが、とにかくないしょにしておいてほしい。その大きな理由は、この区域内に入りますことは厳重に禁止されておるのでございまして、一週間に一度しか所定の日以外には入れないのであります。そういうことでありますので、それを承知しながら基地の中にかやをかぶって忍び込んだような形になっておるのでありますが、そういうような態度をとったことについて根上さんの方でも、しいてこの問題を表面ざたにしてもらいたくないという切なる希望があったのでございます。それと、傷の点につきましては、相当な補償がなされるということが確約されておりましたので、その他の駐留軍関係の一般事件と比較いたしまして、これを不起訴にすることは必ずしも不当でないというような判断からいたしまして、このような処置をとったのでございまして、この処置の結果は、当時出先機関からアメリカ軍の方に通告もされておるやに聞いておるのであります。  かようにいたしますと、本件につきましては、今度は単なる刑事、司法の問題よりほかに、もう一つ国際信義の問題もここに起ってきておるのでありまして、本件についてさらにこれを呼び寄せて、どうしても裁判しなければ承知ができぬというふうな処置をとりますことはさしあたって考えていない次第でございます。
  22. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 大体あなたは基地内に入ったことを犯罪行為であるかのように言われますが、それは具体的に突き詰めて言えば、言えないことはないでしょう。しかし問題は、刑事特別法はございますが、従前東富士演習場は一週間に一日の立ち入りを許可しておることはわかっておりますが、その他の日にも相当の人が入っておる。入ったことに対して決してアメリカ軍は撃退行為をしてない。特殊の演習の場合にはたまにはやっておるが、これは公然の秘密である。こういう事実をあなたは承知しなければならぬ。しかも入った者に対して見ておるのだから、じゃまになるなら当然追っ払うべきである。追っ払わないでたまをくれておる。あなたは知らぬ顔をしておる、全く怠慢しごくである。私どもが行って調べてわかっておるのに、警察当局や検察当局は何を調べておるのか、そういう重大なことを知らずに何をされたのか、こう言いたくなる。これはやはり職務怠慢である。黒人兵がたまをくれたということを知らない、追っ払ったのじゃなくして薬莢を詰めて撃つことは公務上の行為ではありません。ジラード事件もその通り。これは明らかに機関銃の警備をしておった。これはわかっておる。しかし上官は機関銃の警備は命じたけれども日本人のたま拾いに薬莢を撃つことは命じておりません。従って公務中であったかもしれぬけれども、あの傷害公務中でないということははっきりしておる。この事件もその通りなんだ。その兵隊がやったことは公務中かどうかわからぬけれども公務上のことではない。これははっきりしておる。そういうことを徹底的に調べれば、当然私は有無を言わさず日本裁判権があって当然この裁判に付すべき事件であった。それは根上さん自身があるいはそういう意向があったかどうかしりませんけれども、もしあったにしても重大な事件である。これは日本警察当局、法務当局は徹底的に事案を調べて事の黒白をはっきりする責務があると思う。しかもこのような事件は全国に多数にある。まだ資料をたくさん持っておる。これはすべてアメリカの一方的な押しつけと日本政府アメリカに対する屈辱的な隷属的な奴隷根性がこの悲劇を起しておる。私に言わせればそこに問題がある。日本政府アメリカに対する奴隷根性が日本国民をこのような窮地に追い込んでおる。何が国際信義であるか。国際信義を無視したのはアメリカじゃないか。アメリカ自身が国際信義を無視しておる。一方的なことをやって、こういう日本人に屈辱的なことを与えておって、今さら何が日本アメリカに国際信義を言う必要があるか。先ほども言ったが、そんなことだから、たびたび繰り返すけれども国民に対して政府は大きなあやまちを犯しておる。それであなたはさっきあやまった。あやまったのはよろしいが、国際信義を云々するならば、まずアメリカに対して、一方的な処置をしたこの国際信義の無視に対して抗議を申し込む、こういうことでなければ日本人は承知できない。ジラード事件アメリカがあのように騒いでおるにもかかわらず、日本国民の世論によってアメリカ日本裁判権をよこした。これは当然である。この根上さんの事件も、事件がわからなかった時代に起ったけれども、今明るみに出て国会で問題になった以上は、この問題に対しては国民は承知しません。根上さん自身でなくて根上さんを取り巻く現地の人々、大きくは日本国民がこの問題を具体的に知ったならば承知しませんよ。私も承知しません。従って先ほど言うように、あなたは弁解するのじゃなくて、あなた個人一人ではどうにもならぬだろうからそれはわかる。ここであなたは何とかという一等兵を召喚してやりますということは言えぬだろうから、持ち帰って政府部内で真剣に討議をして、国民が納得できるような結論を出す必要があると思う。私どもとすれば、その犯人を完全に日本に召喚して、あらためて第一歩から出直して捜索と調査をして日本裁判に付すべきことを要求する。従って、あなたとしてはここでそれをしますという答弁のできぬことはわかるから、一つ政府に持ち帰って関係当局と慎重な検討をして、いわゆる岸さんが盛んに言っていらっしゃる、アメリカにいってアメリカと非常な親交をあたためて、アメリカ日本の言うことは聞くとおっしゃっておる。聞くのであるならば、一つ日本政府としての意見を堂々と主張して、国際信義を無視したのは向うだから、それを一つあらためて出直して日本裁判権に付するような手続を早急にとってもらいたいと思う。従って、あなたはぜひそういうような努力をして、国会はもちろん国民が納得するような処置をする決意をここで示してもらいたい。そして自後の処置一つ関係当局と慎重な御協議の上またあらためてなるたけ早い機会に国会に対してその結論を表明してもらいたいと思う。ぜひそのように要求する次第であります。
  23. 下川儀太郎

    下川委員 あなたの意見を聞いておると、被害者にも落度があると言う。もちろん禁止区域に入ったというのは落度かもしれない。しかし向うは警告も発せずに撃つ権利はないわけです。その点十分御了解いただきたい。同時に根上さんが相当の補償があるから穏健に済ましてくれと言ったというが、そんなことはあり得ない。あとで勝間田氏からも質問があると思いますが、従来のそういう事件は何らの補償は得ておりません。従いまして、多額な補償がもらえるというようなことは全然うそっぱちのことで、単に禁止区域に入ったという、その考え方がそうさせたと思います。そういう点も一つ御了承願いたい。
  24. 竹内壽平

    竹内説明員 御趣旨のあるところはよくわかります。ただ刑事局長という立場から、すでに検察庁がこの事件起訴猶余処分に付しております。そういう関係その他を事務的に見ますと、先ほど申しましたようなことになるのでございますけれども、御趣旨のあるところをよく大臣にも申し上げて善処いたしたいと思うわけでございます。
  25. 下川儀太郎

    下川委員 本問題に関しましては、地元の勝間田清一君がおりますので、その方にお譲りしたいと思います。
  26. 相川勝六

  27. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まず一つお尋ねをいたしたいのでありますが、刑事局長の話によりますと、公務外ではあるが、一つ本人の意思があまり大げさにしてもらいたくないという条件を考えた、一つ補償がなされるであろうからということも考えた、こういうことでありますが、本人がたとえば大げさにしてもらいたくないというようなこと、あなたがそういう言葉を本気に考えておったとすれば、非常な形式論というものになる。軍事基地の悲惨な、屈辱的な条件というものをあなたは少しも考えていないことになるのであります。私はいろいろ後ほど聞きたいと思うけれども、たとえば、赤線地域で放火をされて全部焼けた。犯人が明白にわかっておる。だが事件をやれば営業停止をくらう、オフ・リミッツをくらうから明日から食えなくなるので泣き寝入りをする人だ。たま拾いをしたいのは、これは従来から陸軍時代から契約が行われて堂々と行なっておった地方の権利なんです。それが今度の問題で他に奪われておるわけでありますけれども、職を失った地方の農民諸君がそういうものにもたよらなければならない状態になって、これを大げさにすれば自分たちの明日からの生活の糸が絶たれるんだ、そういうところに追い込まれておるという状態を知らないで、また過般同じ印野において、夜半女の人が外の便所に出たときに発砲をされて、助けに出た主人がたまを受けた。その村では、残念なことにははしごをはずして夜は二階に寝るという姿になっておる。明日からの生活を奪われる。そういう脅迫の状態に置かれおいて、これは大げさにしないでもらいたいということを真に受けて、皆さんがそういう大きな判断の間違いをやっておられるということについては、これはまことに残念しごくである。ましてや今度の事件というものは、警察からは公務外事件として検察庁に出しておる。そういう状態にかかわらず、世間が騒げば何とかするけれども、世間が騒がなければやみからやみに葬ってしまう。一体今日ジラード事件が取り調べられて、根上きぬえさんがなぜ裁判にかけられないのか。裁判権の上においてジラード事件とこれとの違いはどこにあると考えられるのか。私はまずその点を聞きたい。
  28. 竹内壽平

    竹内説明員 ジラード事件の方は、御承知のように犯罪事実の内容が明確になっておりますが、本件は、勝間田委員も御指摘のように、出先機関の方で若干の手落ちがありましたために、まだ身柄が日本にあります間に十分な調査ができなかった。問題が中央に移りましてからはっきりさせようという努力をいたしましたが、そのときすでに身柄も参考人も帰米してしまっておるというのが本件の状況でありまして、それは先ほど御説明した通りであります。従いまして、本件内容が明確になっていないために、ジラード事件そっくりであるか、質的に違うものであるか、そこを明確にいたし得ないのでございます。ただ、から薬莢を詰めて撃った、そして当ったというこの外形をとらえてみますれば、まさに御指摘のように相馬ケ事件に似ておるのでございます。ただ、ねらって撃ったかどうかという点が、先ほど申しましたように捜査上は出ていない点がこまかく申しますならばあるいは違うかと思いますが、両者につきましては、片一方はかなり明確になっておるのに、片一方はさっぱりわからない状況になっておるという点が違いでございます。
  29. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ねらって撃ったか撃たないかというような点は、先ほど茜ケ久保君が言った通りに、二発撃ったのです。一発目が頭の上を飛んで、二発目が当っておるのです。それは警察の方でも明確に調べられておる。そういうことは実際知っておりながら、しかも手続上においてアメリカが陳謝しておるという非を認めておりながら、こういう問題をやみからやみに葬るという態度に対しては、私は茜ケ久保委員と全く同じ見解であります。これは不起訴処分の不当性を認めてあらためて起訴手続をとるのが当然だと私は思う。これは先ほどからの要望もあるが、同時に私からも強く要望いたしておきます。同時に、あなたは補償が行われるのであろうからということであったが、私は上村長官に聞きたいと思うのですけれども、この事件については約六万円くらいで済まそうというのがあなたの方の見解である。六万円金を出そうというのは一体どういう法律的根拠によっておるのか。それは見舞金であるのか、損害賠償なのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  30. 上村健太郎

    ○上村説明員 本件につきましては、公務執行中の事故に対する補償の取扱いを従来私どもとしてはいたしておりまして、申請額は約三十万でございますが、六万九千九百四十円という補償の査定をいたしまして提示しておる次第でございます。この根拠につきましては、昨年の十月に閣議決定をいたしておりまして、補償の基準というものを定めております。人の負傷に対しましては療養費及び休養補償、さらに機能の障害が残りました場合には、四階級に分けまして補償の金額を定めております。事故は非常に多いのでありまして、たとえば自動車の事故その他もございますが、この一般の基準によりまして額を決定している次第でございます。
  31. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで刑事局長と長官との意見の食い違いがあるわけです。これは公務外事件として考えておる。しかし補償がなされるから、本人が大げさにしてもらいたくないから、これは不起訴処分にしたのである、これが刑事局長の見解である。しかし、今の上村長官の話によると、これは公務中の傷害として取り扱って、その基準によったのである。従って三十万円の請求があったけれども六万六千円にしたのである、これは明らかに違うじゃありませんか。これが実際に刑事事件となっていくならば、あるいは公務上の事件となっていくならば、当然損害補償の態度がとられなければならぬのである。それを閣議決定による見舞金の基準によって出すという考え方に対しては、私は絶対に承服することができない。この点の食い違いを長官並びに局長は一体どう考えておるか。
  32. 上村健太郎

    ○上村説明員 先ほどちょっと申し落しましたが、私どもの方では、従来公務上の事故として行政協定十八条に基きますような損害補償の金額を算定いたしておったのでございます。しかしこれが公務外だということは私どもいまだ承知しておりませんでしたので、公務外になりますると、調達庁は関係いたしませんで、全部米側の補償になるわけでございます。
  33. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうすると、刑事局長は先ほど公務外としてこれを考えるということで答弁されて、速記にも残っておるわけであります。従って、今上村長官がこれは公務中の問題として片づけていこうと思ったけれども公務外ということになればこれは違うということでありますから、それを認められますか。
  34. 竹内壽平

    竹内説明員 刑事責任と民事責任の場合には、本来公務中であるかないかということは一致すべきものであろうとは存じますけれども、考え方としては多少違うのでございます。さればこそ十八条は民事責任をきめておりますし、十七条は刑事責任をきめておるのでございます。私どもの考え方としましては、刑事責任におきましては、公務外行為であるという判断をして、裁判権はわが方にあるという態度をとりました場合におきましても、損害補償という点につきましては、これを運用上なるべく補償ができますような方向に考え方をいたしておるのでございまして、調達庁が、補償を受けると――その補償米軍側補償ずるわけでございますが、補償を受けるという点から公務中の行為であるというふうに見られたのは当然だと思うのでございます。たとえば相馬ケ原の事件におきましても、裁判権の点におきましては、公務中の行為でないという判断のもとにわが方で裁判権をとったのでございますけれども、損害補償の点につきましては、公務中だということでアメリカ側に民事責任を持たしておるというような運用になって、これは考え方としましては、刑事裁判権の点におきましてはできるだけわが国が裁判権を持つというところに持っていきたいのでございますし、また民事補償の点につきましてはできるだけわが国民補償がなされるようにという、この二つのわが方の利益を中心にして考えた考え方の結果、民事と刑事との間においてさような分れが出てくるかと思うのでございますが、その点は御了承願いたいと思います。
  35. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたは非常に都合のいい方、都合のいい方というように分けてものを考えておられるので、これは事実を知らない議論です。すなわち今日補償がなされるという場合において、その事実、いわゆる米側における犯罪事実というものが、あるいは行なった行為に対する過失の事実というものが認められた場合と、しからざる場合の補償は違うのです。これは幾多の例がそうであります。六万六千円なんという金額は一体何を基準にやられたとあなたは思いますか。私は日本の調達庁の補償制度というものが、常に見舞金程度でそういうものがおさめられる、これは非常に遺憾とするところであります。そうではなくて、その人がどういう傷害を受けてどういう損失を受けたのだから、今後における生活はどう保障さるべきである、こういう公的な立場に立っての補償がなされていかないならば、私は何らの意味がないものだと思う。片一方は公務中の補償をなし、片一方は公務外のものとして刑事責任を問うのだということでこれは済まされるものではない。上村健太郎さんどう考えられますか。
  36. 上村健太郎

    ○上村説明員 私どもの方ではやはり公務外と決定されますれば関係することはできません。従いまして全部米側に補償責任があると思います。相馬ケ原につきましては米側におきましてこれは公務外公務中にかかわらず日本側に迷惑をかけないという申し入れがございまして、向う側が支払っておる次第でございます。額につきましては療養費は実費、休業補償費は通常得べかりし利益を算定いたしまして加算をいたしております。現在のところ六万九千円という額、少いようでございますが、この基準によりますれば大体この程度しかお支払いができないのではないかと思います。
  37. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その写真をごらんになったと思う。それだけの薬莢が背骨と腹との間に入ってそして今日働くこともできないという状態にあって、今言ったような公務中の問題としてただ実費の治療費を払って一体それでいいであろうか。私は刑事責任を追及するということと民事責任補償するということとは表裏一体の問題になると思う。検察庁の方ではこういう形でこれを不起訴処分にして、特調の方ではこれを公務中だとして六万何千円かを払ってそれで事を済まそうという、それが裁判主権の問題という重大な問題があると同時に、個人の人権に対する問題があるのです。そういうものを事なくしてこれを済ましていこうとするほおかぶりのやり方というものは、私は立憲政治のもとにおける、人権尊重の政治のもとにおける行政のやり方では断じてないと思う。でありますからこの点については私は上村長官も今十分刑事局長答弁を聞かれておったと思うから、もう一ぺん六万数千円については再検討するということの御答弁一つ願いたいと思う。
  38. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 関連して。調達庁長官、六万九千円というのでございますが、一年たった今日、今勝間田君の指摘せるように、これは傷がなおったとあなた方は言っている。この写真にあるようにこういう大きな口から入ったから薬莢が体内に入ったのですよ。それは傷口はなおったでしょう。なおったかもしれぬ。しかしこの状態が人間の微妙な身体にあった事実から見て、今日被害者がなお労働できない、苦痛を訴えておる、こういう状態は傷がなおったことではないのですよ。この根上さんが一生を通じて受ける非常な苦痛と労働に関する被害は大きいのですよ。そういう点を無視した補償をしてはだめです。従ってあなたの補償が一応これをなおったものと仮定した上に立った補償と私どもは考えましょう。しからばそれはあやまちだと現在の根上さんの実態をよく検討し直して、今後に対する根上さんの状態をも検討した上この補償を考え直して、そうして一つ政府としてこの案件に対する十分な補償をするように、これを私は勝間田委員の発言に関連して申します。早急な今後の措置ができるのかどうか、長官一つ……。
  39. 上村健太郎

    ○上村説明員 実は私ども連絡不十分でありましたので公務外の事故であるということを初めて今日伺ったのでありますが、公務外であるといたしますと支払いについてもう一ぺん検討いたさないとならないと思います。しかし私どもの方でお支払いいたしますことに決定いたしますれば、現在の六万九千円の内容は療養費が三万二千円、休業補償が九千円それから傷害補償が二万八千円という査定をいたしておりますが、金額につきましてはなおもう一応検討いたしたいと思います。なお根本の問題の公務執行中でないとした場合にお支払いができるかどうかということについての問題がさらに残ると思いますので、あわせまして検討いたしたいと思います。
  40. 勝間田清一

    ○勝間田委員 上村長官があらためて再検討するということでありますから、この点はさらに、本人はすでに公けの機関を通じて傷害の程度、今後また働き得る能力等諸般の問題を通じて科学的、医学的な内容を明らかにいたしておりますから、それに従って一つ人権の擁護のために政府の善処されんことを強く要望いたしておきます。  ついで、同様の問題でありますけれども昭和二十七年三月十二日午後、駐留軍の演習終了後富士岡村下和田九百七十七番地の杉山正三、当時三十七歳でありましたが、演習場内印野地先で米兵に捕捉連行されたが、同日夕刻同人の死体が米軍ジープによって運搬されて原里村の役場前に投げ出されておった。被害者は右の横腹から左前の腹にかけて小銃弾による貫通銃創を受けていた。遺族に対しては加害兵士の隊長が謝罪の意を表明するために訪問してきた。軍側では加害者を軍法会議に付したと伝えられておるが、氏名その他一切が今日明らかになっておらない。この問題も私は根上きぬえさんと同じような実は重要な問題であると思う。  もう一つ明白に申し上げておきたいと思うのは、昭和二十七年十月九日午後零時七分、米軍演習休憩中須山村百二十五番地平岩進、男子当時三十五才が演習場内の印野地先で米陸軍第三十四連隊B中隊ジョージ・A・マキシューム一等兵当時十八才に小銃で威嚇され、両手を上げて無抵抗の意を表したが発砲されて左の腕の第二関節に命中弾を受けた、そのため被害者は左腕を切断手術いたしました。米軍側は、加害者は軍法会議に付したと伝えられるけれどもその後の消息は何ら明らかになっておらない。これは根上さんの問題と関連をして三件全く同じような性格のものであります。この二件について一体検察当局はどういう調べをやったのであるか、同時に米軍側からはこれを単に軍法会議に付したといわれただけであって何らの通報が行われておらない、これに対して一体どういう処置日本側は行なったのか、この点をまず第一に刑事局長にお尋ねしておきたいと思う。
  41. 竹内壽平

    竹内説明員 御指摘のような事件があったかどうか、ただいま私はつまびらかにいたしませんが、伺っておりますと、第一の杉山さんのケースは占領中のことのようでございます。第二の平岩さんのケースは、行政協定改訂前の事件でございまして、占領中はもちろん、改訂前につきましては、わが方に裁判権のない時代でございましたので、果してどのような処置をとったか、わが出先官憲の方でつまびらかにできるかどうかわかりませんが、なお帰りまして調査をしてみたいと思います。
  42. 勝間田清一

    ○勝間田委員 刑事局長に警告をいたしておきたいと思うのですけれども根上さんの問題もそうですが、この二つ事件を見ましても、また従来下川君の答弁を見ましても、検察当局あるいは司法当局はこういう問題を質問されるときには、わからない、わからないという。そうして結局は時間のズレやいろんなズレが来てしまってだめになってしまう。私は現地におってよく理解するのでありますけれども日本警察諸君は一体日本警察なのか向う側警察なのか、さっぱりわからない。そういう状態のもとに置くから、地元の権利というものは一つも守られておらないのです。あなたがここで今日、私はそういうことを知らないと言われるのは、知らないことの方がむしろ大きな怠慢です。そういう状態演習場における地元の住民が大きな苦しみを受けつつあるという事実に対しては、私はもっと責任を持ってもらいたいと思う。そして日本裁判権なり検察権なりというものを十分に発揮してもらいたいと思う。これはあなたに要望いたしておきたいと思うのであります。  こういう一、二の問題について上村長官にお尋ねしておきたいのでありますが、こういうものに対しても、私はしかるべく調査をして当然補償の措置を講ずべきであると思うのですが、上村長官はどのようにお考えになっていらっしゃいますか、お尋ねをいたしたい。
  43. 上村健太郎

    ○上村説明員 第一の事件は占領期間中であると思うのでありますが、占領期間中の場合には日本政府に法律上の賠償義務がございませんので、厚生省におきまして一定の基準による見舞金を都道府県を通じて被害者に差し上げておったようであります。  第二の件は平和回復後でございますが、行政協定の成立前でございまして、私どもに対しましての補償の申請は出ておりません。しかしながら私どもの方ではこういう話が起りましたのを承知いたしましたので、その後静岡県当局その他現地につきまして実情を調査中でございますので、調査の結果補償ができますればいたしたいと思っております。
  44. 勝間田清一

    ○勝間田委員 第一の問題は厚生省で見舞金を出しておった、第二の問題については調査の上で補償をいたしてみたい、こういうことでありますから、この点は双方とも十分な補償が行われるように私は強く要望いたしておきます。  そこで上村長官にお尋ねをいたしたいのでありますが、東富士演習場は間もなく閉鎖されるということを聞いておるのであります。現にアメリカの軍隊は一度撤退をして、最近また沖縄の都合によって帰ってきておるようでありますが、雇用員は今日すでに百数十名解雇いたして、順次解雇いたしていくようであります。こういうふうに、実際は閉鎖の状態にありながら、何ら閉鎖の宣言も声明も出さずに漫然と地元の不安というものを増大いたしておるというのが今の状況であります。そこで、東富士演習場はいつ閉鎖されるのであるか、その点をまず明らかにしていただきたい。
  45. 上村健太郎

    ○上村説明員 一応といたしましては、東富士についてはそう長いこと使用している予定はないように聞いておりまするが、私ども米軍と折衝いたしております過程におきましては、現在のところまだ解除の時期その他につきまして明確な返事を得ておりません。従いまして私どもとしましては、今のところ、来年とか再来年とかいうことについて申し上げるような情報は得ておらないわけであります。
  46. 西村力弥

    西村(力)委員 関連して調達庁長官にお尋ねしますが、勝間田君の質問に対する答弁は、北富士の演習場も全部同一のものであるかどうか、その点を明確にして御答弁を願いたい。
  47. 上村健太郎

    ○上村説明員 北富士も同様でございまして、まだ明確な向うからの通告を得ておりません。
  48. 勝間田清一

    ○勝間田委員 防衛庁の方いらっしゃいましょうか。
  49. 相川勝六

    相川委員長 まだ参っておりません。
  50. 勝間田清一

    ○勝間田委員 防衛庁の出席を一つお願いいたします。  上村長官は、まだ撤退時期は明確にわかっておらない、しかしそう長く使うつもりはないであろうという答弁でありますが、演習場の撤退された後においては、当然その土地は農民すなわち貸与した農民に返ると思うのだが、その点についての長官の見解を聞きたいと思う。
  51. 上村健太郎

    ○上村説明員 お話の通りどもの方の仕事といたしましては、施設の返還後は、国有財産は大蔵省の管財局の所管になりますし、民有あるいは公有財産につきましてはそれぞれの所有者に返還になることは当然でございます。
  52. 勝間田清一

    ○勝間田委員 国有地については国家に――管財局に、民有地については民間に、これは当然返る、こういう原則でありますが、そういうことは当然であろうと実は思う。ただ国有地について、たとえば入会権等の特殊な農民の権利がそこに存在するとするならば、当然その権利は復活すると思うが、この点についての上村長官の見解を聞いておきたい。
  53. 市瀬泰藏

    ○市瀬説明員 一般論について申し上げますと、国有財産の土地の上に用益物権的なものがありました場合は、返還されて参りましたときに私どもはそれを尊重しておりますが、個々の問題につきましては別途お答えしたいと思います。
  54. 勝間田清一

    ○勝間田委員 原則を承認されましたが、個々の問題については、また後ほど政府と交渉なり、争いなりをいたしたいと思っております。従って私はここで返還されるについてのいろいろの問題を一つあらかじめ討議しておきたいと思うのでありますが、これは実は今後日本の全体に及ぼす問題でありますから、特に明らかにいたしておきたいと思うのであります。返還される前にまず第一に解決されねばならぬと思うのは、駐留中における懸案事項はすべて解決されるべきものと思うが、上村長官の見解はどうか。
  55. 上村健太郎

    ○上村説明員 お話の通りであります。
  56. 勝間田清一

    ○勝間田委員 従って今日東富士演習場については、まず第一に重大な問題は三十二年度の賃貸契約がまだできておらないままで、今日漫然として過ごしておるのでありますけれども、この問題について一体どういう解決をされるつもりであるか、本年度の契約をどうされるか、まず第一にこれを質問してみたい。
  57. 上村健太郎

    ○上村説明員 米軍が使用しております土地につきましては、一応米軍の駐留中は借地の権限を米軍に与えております。これは契約の内容でそうなっているのでございますが、ただし実際問題といたしましては、日本政府側の会計年度の都合がございますので、形式的に毎年契約更新をいたしております。東富士の問題につきましてはこの形式的の契約更新がまだ済んでおりませんので、現在横浜の調達局におきまして現地側と折衝いたしまして借地料その他の問題についてぜひ協議が成立いたしますように努力している次第であります。
  58. 勝間田清一

    ○勝間田委員 おもな争いの点は何であるかというと、単価の問題と同時に側積を一体実測面積にするか台帳面積にするかということであります。単価の問題はすでに不動産部長と地元との側における約束ができたようであります。しかし同時に実測面積は、単に農内側が測量したり、あるいは目分量でやったものではない。しかるべき公的は手続をとって公的な実測面積が出されておるのであります。従って明らかに信頼すべき実測面積があるにかかわらず、台帳面積というものに拘泥してものを計ろうというところに今日の農民と調達庁との間の争いがあると思う。当然信ずべき実測面積によるべきであると私は考えるのだが、長官のお考えはどうであるかお尋ねいたしたいて思います。
  59. 上村健太郎

    ○上村説明員 不動産部長からかわって答弁させていただきたいと思います。
  60. 柏村益太郎

    ○柏村説明員 賃貸借契約におきます面積のきめ方でございますが、台帳面積によるべきか実測面積によるべきかということにつきましては、原則として公簿台帳の面積を普通とっているのでございます。ただいま勝間田先生のお話のように、富士の土地の面積につきましては、非常に広大な面積でございますので、それの公簿面積と実測面積との違いはかなりのものがあろうかと思うのであります。ただいまお話もございましたが、実測面積がすでにあるということでありますので、その点は十分勘案いたしまして従来の単価のとり方においても考慮しているつもりでございます。しかし三十二年度の新契約におきましてその実測面積を参考にいたしましてきめていきたいという考えを持っております。
  61. 勝間田清一

    ○勝間田委員 予算に縛られてこれこれの予算の範囲内において単価をいじったり面積をいじることは正しくないと私は思う。収益補償なら収益補償をやって、その上において信ずべき面積なら信ずべき面積があって、その結果予算が膨張しようとも、それは賃貸借契約の当然の性格だと私は思う。幾ら幾らの範囲内で面積をいじってみたり、単価をいじってみたりというやり方は正しくないと思う。予算にとらわれず、あなたは今言ったお言葉を実行する御意思があるかどうか、それを一つお尋ねしてみたい。
  62. 柏村益太郎

    ○柏村説明員 単価のきめ方、それから面積のとり方につきましては、予算の面から制約されて、そういった面積とか単価にしわ寄せをするということは妥当なことではないと考えております。それで予算とのかね合いになるのでございますが、ただいま先生のお話の通りの努力は十分いたしたいと考えております。
  63. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ここで長官がこられましたから長官に一つお尋ねしておきたいと思うのであります。先ほど特別調達庁の上村長官からアメリカの駐留軍が撤退するならば、当然賃貸借契約に基いての土地の返還は国有地については大蔵省の管財局、また民有地についてはその所有者にお返しするのである、また大蔵省の方からは、国有地の上に入会権等の物権が存在しておる場合には、それは当然復活さるべきであるという私の質問に対して、一般論ではあるが、当然そのようであるという趣旨答弁がございました。従って東富士演習場アメリカの駐留軍が撤退された暁においては、私は当然農民または国家にその財産がまず返されなければならぬと考えるのでありますが、長官もそうだと考えてよろしゅうございますか。
  64. 津島壽一

    ○津島国務大臣 すでに調達庁長官からお答えがあったと思いますが、今のような主義は当然原則的にはとらるべきものだと思っております。具体的にどういうことになるかということは、これから検討いたしたい、こう存じております。
  65. 勝間田清一

    ○勝間田委員 従って、従来から本内閣委員会においてもいろいろの答弁があったと思うのでありますが、地元側、あるいは国有地について地上物権がもちろん存在する場合においては、そのあとに何らの承諾なくして自衛隊がその中に入るということはあり得ない、こう考えてよろしゅうございますね。
  66. 津島壽一

    ○津島国務大臣 関係者と十分話し合いまして、そういった措置をとることが可能であり、適当である場合には、使用する場合もありますが、地元の反対を押し切って、そういうものを勝手に使用するということは差し控えるべきだと思っております。
  67. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで調達庁長官質問に移りますが、賃貸借契約の場合においても明らかにされておるのでありますが、返還される場合においては、当然原状に復帰して返還されるものと思うが、長官はいかに考えておられますか。
  68. 上村健太郎

    ○上村説明員 お話の通り原状に復帰して返還すべきものだと考えております。
  69. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その原状復帰の中に、現にいろいろ御心配を願っておるのでありますけれども、軍施設のために起ってきた災害等、あるいは災害の防除、たとえば山林が荒らされておるために大きな洪水が起きて、田畑が全部流された、また今後何らかの施設を行わなければまたそういう事態が起るという予防の要請というものもある。だから原状復帰の中には、そうしたものも含めて返還するという建前でなければならぬと私は思うが、それに対する上村長官の御見解はどうでありますか。
  70. 上村健太郎

    ○上村説明員 お話の通りでございまして、災害復旧等につきましては防除工事その他もやらなければならないと思います。しかし具体的の事情々々によって違うと思いますので、一がいには申し上げかねますけれども、お話の通りであります。
  71. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから現在火のつくような問題が起きて参っておりますのは、実は駐留軍労務者の一斉の失業問題であります。すでに先ほど来申した通りに、百数十名についてはもはや首切りが起きておるという状況であります。この状況に対してどういう対策を政府としてとっていかれるか、これがわれわれの最大の関心事でありますが、もとより雇用者に対して完全雇用を行わせるという原則については私は承認されるだろうと思う。しかし完全雇用を行う一つの手段と同時に、失業の手当も当然必要になってくるだろうと私は思う。この失業の手当の範囲というものも今日いろいろ議論になっておるところでありますが、すでに時間もなんでありますからこれを省略をいたします。  私は特にここで政府答弁を承わりたいと思うのは、直接雇用者が大量に失業をいたすわけであります。この直接雇用者は認識が十分でないとその措置を間違うように私は思う。すなわち土地の接収を受けて農耕地が少くなったために失業した人、あるいは芝草刈りあるいは薬草取りあるいは炭焼きというような仕事ができなくなって勤めたという、いわゆる駐留に基き失業した人がその地域に再就職をしたという形になっておる、これが一つの重要な点であります。もう一つの重要な点は、将校のところに雇われた個人契約の形式をとっておる、しかしながら実際上におきましては県の労働課なり職業安定所が身分調査もやり身体検査もやりそれからいろいろの保証人もつけてそうして政府が行なったのである。しかも単にそれは直接の契約をとったか間接の契約をとったかあるいは職場がどうであるかという全くの形式上の問題だけで、これらの諸君はもうすでにこの十五日に首を切られる、しかもそれは日給でありまするから十六日から失業をするのであります。こういう婦人や男子の方々が今日路頭に迷うというのは当然だと私は思うのであります。これについては立法措置をあるいは必要とするのかもしれないけれども、私は当然立法措置をすべきだと思うと同時に、立法措置のいかんにかかわらずこれはやはり救済すべきだと私は思う。従って失業手当なりあるいは退職金なりしかるべき援助の方式をとるべきであると思うが、これらの直接雇用者に対する政府の態度は一体どういうものであるか。しかもそれはもう日々起きてくる問題で、十日や二十日後にきめられても困る問題でありますから、この点は一つ具体的にあなたにお尋ねをし、またできなければ数日のうちにでもこの問題は対策を立てていただきたい。これは日本全国の社会不安に関する問題で緊急を要する問題だと思うので御答弁をお願いいたします。
  72. 上村健太郎

    ○上村説明員 米軍の直接雇用者につきましては、一応私どもの方の範囲外でございますが、しかし労働省におきまして今回の特需連絡対策会議の議題に供しまして、全く間接雇用の離職者と同様の扱いをしていこうということになっております。失業手当あるいは退職金等の問題につきましては私どもの方で直接米軍と交渉する任務を持っておりませんので、私どもの方では交渉いたしておりませんが、なお関係方面連絡いたしまして、調達庁でできますことならば交渉をいたしたいと思います。
  73. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今の問題は重要でありますからどうか一つ緊急に誠意ある御交渉を願ってまず第一の不安を除いていただきたい、これを強く要望をいたしておきたいと思うのであります。なお若干の問題がありますけれども省略をいたします。  防衛長官にお尋ねをいたしておきたいと思いますが、われわれは東富士演習場の跡地に自衛隊が入ってはならないと考えておるし、またそういう権利もないと私は実は考えておるんだが、防衛庁はあれを自衛隊に使う計画を持っておるかのごとくに聞いておる。もしそういうことがあるならば今日明白にしていただきたい。しかしわれわれの態度は明らかにしておきたいのでありますが、すべてこれらの土地は農民に一つ返還をしていただきたい、同時に農民の了解なくして中に入り込むということは絶対にわれわれとしては承認ができない、地元が承知ができないということも明らかにいたしておきたいと思う。今後の防衛庁の計画に何らかのものがあるならばお聞かせを願いたい。
  74. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問の点でございますが、防衛庁においてあの演習場を将来使用する計画があるかどうか、こういう点でございます。演習場は今日の防衛体制上非常に必要なことでございます。ただしこれを実行に移すに当っては地元の方の意思も十分尊重してでき得る限り摩擦なくやりたいという方針でございます。全然あの演習場は使う計画はない、こういうことをこの段階で申し上げることは私は差し控えたいと思います。そういった事情でございます。
  75. 西村力弥

    西村(力)委員 関連して。返還の問題でありますが、東富士にせよ同様かと思いますが、北富士の演習場事情なんか調べてみますと、旧軍時代に町会の議決を一方的に軍の権力で踏みにじって接収しておる、こういうことが文書によって明白になっておるのです。ですから農民に返還する場合には、それを農民諸君は希望しておりますから、そこのところまで十分に考えてやってもらわなければいけないのじゃないか。現在返す場合には国有地であったものは大蔵省に移す、こういうきまりきった方法ではなく、もう一段とさかのぼって旧軍時代の権力によって有無を言わさず取り上げた、そういう地域に対しても仮還の措置を考えるべきである、こう私は思うのです。これは防衛庁長官に一つ答弁を願いたいと思うわけであります。
  76. 津島壽一

    ○津島国務大臣 古い沿革のことは私まだ就任早々で十分承知しておりません。ただいまの御所見のあった点は十分考慮いたしまして善処したいと思います。
  77. 相川勝六

    相川委員長 床次徳二君。
  78. 床次徳二

    ○床次委員 防衛庁長官にお尋ねいたしたいと思います。過般国防会議におきまして防衛力整備目標が確立せられ、その後岸総理が渡米せられましてアイゼンハワー大統領と共同コミュニケを発表されておるのでありますが、それによりまして米軍は陸上兵力をできるだけすみやかに引き揚げる、なお将来も在日兵力を引き揚げることになりました。従ってわが国の防衛というものは日本責任によってこれを将来考えなければならないのでありますが、来たるべき予算編成等におきまして、長官はこの日本防衛力に対しまして、国民負担の立場からこれをできるだけ軽減していこうというお考えであるか、あるいは既定計画によりましてできるだけ防衛力を充実しようというお考えであるか、承わりたいのであります。なおこの問題に関連いたしまして、ただいま申しましたような経過によりまして、今後の防衛というものは日本国民の自己の決定によって自己の責任によって行うべきものでありますので、この点は十分国民に了解をせしめておく必要があると思うのであります。このことに対して長官はいかようにお考えになっておるか、承わりたいのであります。
  79. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問の要点の第一は、米駐留軍の撤退に伴ってわが防衛体制を充実する必要がある、それが実行について今後の財政負担との関係についてはどう考えるかというのが第一点だったと思います。防衛体制につきましては、御承知のように六月の国防会議において一定の基本方針が決定に相なっております。その基本方針においても国力、国情に相応して必要なる防衛体制を作り上げるべきである、これがその要点の一つでございます。この国防会議において決定を見ました防衛体制の増強と申しまするか、整備目標というのが昭和三十五年度にわたって作成されたのでございます。これを今後逐次実行に移すわけでございますが、さしあたって来年度においても防衛庁といたしましては、前年度すなわち現年度に比して多少の経費の増加もやむを得ないものと考えております。その程度いかんは今後大蔵省との折衝の結果確定することでございまするが、三十二年度に比してある程度の予算上の増額は、これはやむを得ないものだと思っております。その程度いかんは、これは全体の予算の編成の上において全般的に、また民生その他の経費との調和、均衡を保って妥当なところに決定すべきものだと思っております。  ただいま申し上げましたのは防衛庁費の関係でございますが、なお日本防衛全体といたしましては、御承知のように、日米の分担金というようなものもございます。これらについては減額が相当されておるのでございます。そういった意味において国防充実は現在の事態に徴して必要であり、また整備の計画も持っており、これを逐次実行に移すという観点から、防衛庁費の増額はととにやむを得ないことと思っておりまするが、財政全体との関係、均衡を考慮して妥当な線にこれを決定すべきものだ、こういう考えを持っておる次第でございます。  なお日本防衛体制を、いわゆる言葉で申しますと計画を自主的にきめる、これはわれわれは絶対必要なことだと思っております。総理もこの考えを持って、国防会議において決定した方針のごときも、いわゆる自主的な計画によってこれが決定を見ておるというわけでございまして、防衛庁の具体的の予算計画においても、計画そのものはこれはわれわれがきめるのであるということでございます。ただその言葉に往々にして誤解を招く点があると思われるのは、自主的という言葉によって財政上の負担までも全部わが国の歳計の負担によってやるのだというところまでこの文字を解釈するということであれば、私は今日策定された防衛増強といいますか、整備の計画というものは非常な財政上の理由から困難があると思います。でありまするから、いわゆる計画は自主的にきめるという意味において自主防衛というようなことが用いられるのが至当でないか、こう考えておる次第でございます。
  80. 床次徳二

    ○床次委員 御答弁のように、日本の財政力を勘案しまして所定の計画をすみやかに完成する、その決意は一つ十分に強く国民に徹底させていただきたいと思うのであります。  次に、近時自衛隊がいわゆる愛される自衛隊として相当の功績を上げておるということにつきましては、防衛庁幹部、また隊員の努力というものを多とするものでありまするが、この自衛隊に対する関心の度合いというものを実は見て参りますると、全国の各府県の中におきまして、まだ自衛隊の設置を見ない府県もあるのであります。これは当初自衛隊を設置しましたときに建物の都合でありますとか、その他の関係によりましてかなり配置が片寄っておったと思うのでありまするが、自衛隊そのものの重要性から見ますると、また国民に対する防衛思想の徹底ということを考えまするならば、もっと各地方に分散するという考慮を持つべきではないか、これがやはり自衛隊を正しく発展させる一つの大きな理由であります。同時に治安上の立場から見まして必要なところにはもっと集中すべきものではないか、そろそろそういう配慮を行うべきときにきておるのではないかと思うのであります。今後兵力の増員等も予算に考えられておるようでございまするから、ただいま申し上げました二点はもう少し積極的に考えていただきたい。過般私は中国地方に行きまして視察をして参ったのでありまするが、自衛隊の存在を見ないところの府県におきましては、非常に防衛思想が薄弱である。たとえば応募率なんかも格段に下っておるというような実情であります。これが災害出動その他の立場から見ましても、いろいろと地元においては不自由を感ずることと思うのでありまして、今後一そう国家防衛ということを考えますならば、ただいまのような配置に対しまして今まで以上の修正を要する、改善を必要とすると思いますが、長官の御意見を伺っておきたい。
  81. 津島壽一

    ○津島国務大臣 床次委員の、自衛隊に対して一般の国民に親愛感を持たれるという点について御所見がありました。これは全然同感でございます。どうしても国民の自衛隊という、そのことを打ち立てていくということが大きな防衛上の力であると思うのでございまして、その方面には特に今後重点を置いていきたい、こう考えております。  第二の具体的の問題で、自衛隊の全国的の配置状況についての御意見がございました。これも私ども考えておるところと同じお考えのように承わっておるのでございます。大体御承知のように、北辺の方面あるいは西部の方面においては相当現在の隊員の配置が考慮されておりますが、中部地方はどちらかというと、全体の人数の関係でやむを得なかった次第でもございますが、はなはだ配置が手薄になっておるという事実は、これは見のがすことができないものでございます。従ってお説のように今後の配置については全体の状況を考えるということは当然でございますが、そういったような手薄と思われる部面に自衛隊を増置するという方針をとりたいと思っております。今後の自衛隊の増強ということが実現されますれば、特にそれらの点を考慮して新配置を考えたい、こういう方針でございます。
  82. 床次徳二

    ○床次委員 次にお尋ねいたしたいのは、最近自衛隊に対する志願者の応募率というものがだいぶ低下したように聞くのであります。それは経済方面の進展とも関連いたしておりまするが、自衛隊そのものに対するいわゆる一般の世評というものも相当影響しておる。同時に自衛隊の訓練そのものによりまして、その将来が就職にいかなる影響を持つかということに対しましても、十分な理解を持たなければならぬということもあると思うのであります。私、視察いたしましたところによりますと、また近時調べてみますと、自衛隊の除隊者というものが割合に就職はよろしい、非常に各方面から評判はよろしいということを聞いておるのでありますが、かかる点を考えますると、自衛隊におけるところの勤務におきまして、除隊後の就職指導等に関しましては従来もいろいろあっせんはやっておると思いますが、もう少し積極的に社会との関連をつけまして、もっと訓練をすべきものではないか。これがむしろ将来愛される、あるいは役立つ自衛隊としての一つの大きな要素になるのではないか。単なる。パブリック・リレーションによって募集をふやすということ以外に、国民の理解を求めるという以外に、そういう実質的な内容におきまして、いわゆる防衛勤務に支障のない限り社会に対して活躍し得る素地を作る。そして除隊後において支障がないということになりますならば志願者も非常にふえるし、社会も自衛隊の除隊者というものを歓迎するであろう。この点今日においてもう少し配慮をなすべきではないか。大臣のお考えを承わりたい。
  83. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの自衛隊員の将来の安定策をはかり、社会人として十分な活動ができるように養成していく、訓練していくという点は、最近最も重点を置いている点でございまして、除隊なさったあとにも社会人として、また職業の上において十分に役立つ、これが将来に対する希望をもって隊務に専念する、こういう格好に導きたいと思います。それが即募集の関係に大きな力になる、こう思っておる次第でございまして、お説の点は今後特に力を入れていろいろの施策を講じたい、こう存じております。
  84. 床次徳二

    ○床次委員 次に伺いたいのは防衛産業の問題であります。先ほども勝間田委員からもお話がありましたが、米軍の撤退に伴うところのいわゆる失業者、防衛産業におけるところの失業者も少くないのであります。むしろ将来におきまして、かかる防衛産業を積極的に育成するということを考える必要があるのではないか。内外の情勢からみましても、また国の国防計画というものを見て参ります場合におきまして、ある程度の防衛産業というものは極力これを維持する、そうして積極的にこれを充足するということにも役立つべきではないか。この点に関する防衛当局の今後の方針を伺いたいのであります。  なお防衛兵器等に関しましては新式兵器に対しまして、もっと大きな関心を持っていいのではないか。誘導弾あるいは大陸弾導弾等が今日世界において大いに使用せられておるのでありますが、わが国におきましては技術的に相当のおくれがあると見られております。これは単にいわゆる防衛兵器の発達を促すというばかりでなしに当然国内の産業の発展に非常に大きいのであります。かかる立場から、広い意味における技術研究、科学技術の研究に対して力を入れる必要があると思うのでありますが、この点大臣の抱負を承わりたいと思うのであります。  なお同時にかかる防衛ということを発展せしめます場合におきましては防衛兵器の秘密保持は当然ではないか。われわれ秘密のない兵器あるいは防衛そのものはあり得ないのではないか。そういうのは防衛に役立たないと思うのであります。かかる意味から言いますと、いわゆる秘密保護法の制定ということは当然ではないかと思うのでありますが、あわせて一つ大臣の所見を伺いたいと思います。
  85. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの防衛産業の育成という問題でございます。これは国防会議においても検討された問題でございます。具体的に今後の防衛庁の予算においても戦艦の建造という問題については極力わが国の造船能力を活用するという建前で案を作っております。現にそれは実行しておる問題でございます。それから航空機関係においても今後の新しい機種というか、新しい航空機の生産も国産によってやろうという方針を立てておるのでございます。そういった以外の各種の装備品等についてもわが国の産業で生産可能な分野においては、そういった方面に助長を試みていこう、こういう方針でございます。  なお第二の御質問だったと思いますが、新式兵器の研究、開発という問題についてどういった方針をとっておるかという第二の御質問があったようであります。これは内外の情勢から言って非常にわが国はこの開発研究がおくれております。昭和三十一年度から相当これを促進して参ったのでございます。しかし来年度等の計画においては技術研究所等における新式兵器の研究開発という予算を増加したいという希望を持っております。大体本年度に比して約三倍にしたい、こういう希望を持ってこれは大蔵省と特に折衝を試みたい、こう考えておるのでございます。そこで最後の御質問だったと思いますが、これらの関係からみて、これらの兵器ないし装備品とかそういったものに対する機密保護をする必要があるのではないか、こういう点でございます。ある種のものについてはこれは秘密を保持するにあらざれば十分な研究開発ができないものがあるということはこれは私は認めざるを得ないと思います。すでにMSAの関係においては機密保護法がさきに制定されたのでありまして、今後の必要からいって、防衛上の関係からいってこれを必要とする部面が生ずるかと思います。ただこの問題は非常に重大な関係がありますので、最も慎重に検討中でございまして、今直ちにこうするのだというお答えをするまでの段階には至っておりません。そういう次第でございます。
  86. 床次徳二

    ○床次委員 次に航空自衛隊の問題ですが、過般来非常な事故の頻発によって、航空自衛隊に対する国民の信頼というものが非常に失墜いたした。と同時に隊員に対して非常な同情を禁じ得ないことがある。いやしくも防衛をいたしまする以上は十分な整備を必要とするのですが、どうも新聞紙上で見ると、設計において遺憾な点があった、あるいは装備において、施設において不完全なために危険な事故が起るということである。あるいは生活環境が非常に不完全であるという点が指摘せられておる。同時に防衛庁におきましても調査研究をやっておられる。当然その結論は来るべき予算においてすみやかに補完し、国民の真に部隊として信頼できる程度の制度を維持すべきものであると思うのですが、この点に対する対策はすでにできたか、承わりたいと思います。
  87. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの航空機の事故の関係についての対策でございますが、自衛隊の航空機に事故がたびたび起るということは私ども非常に遺憾に思っております。本年度においてもこの事故防止対策というものに慎重な検討、綿密な検討をとげまして、その原因とするところに対して対策を行う、こういう方針で今年度の予算においては、すでに約六億円程度のものを航空機事故防止のために経費を振りかえ支出するという対策を講じております。これによって当面の事故防止対策を実行すると同時に、操縦士の環境といいますか、そういうような改善、航空路の開始その他をやっておる次第でございますが、これは非常に大きな問題でございますので、来年度においては予算概算を要求するに当っても、私は航空機の事故防止あるいは救難対策、これはわが航空防衛に直結する重大問題でありますので、これには優先的に予算を認めていきたい。現在の予算に比しまして相当大幅な増加要求をいたしたい。同時に操縦士の環境改善、またそういった直接操縦士に関係する面においても相当の増額をしていただきたいということでございまして、この場合まだ具体的に申し上げるのはいかがかと思いますが、これは先般来の本委員会においてもそういう点の強い要望があったのでございます。私はそれにこたえるためにも、この問題はぜひ実現いたしたい、こう存じておる次第でございます。
  88. 床次徳二

    ○床次委員 最後にもう一点伺います。自衛隊員の増強ということは一面において考えられておるようでありますが、むしろ過去において教育を受けた者の能力をいかにして保持するかということが非常に重大である、政府においても、いわゆる予備自衛官の制度を持っておられますが、どうもこの予備自衛官制度を十分に発揮されていないように考えられるのであります。この点はもっと積極的に予備自衛官を活用する、訓練、強化等をひとつ考えていただきたいと思うのであります。なお同時に予備自衛官にあらざるところの一般除隊者、これはいわゆる国民防衛立場からいうと非常に有力な動員であるわけであります。いわゆる予備隊、予備自衛官、また現役の自衛官、こういうものを一丸として強い防衛体制を作るととが必要である。かような立場の方々に対する処置といたしまして、わが国といたしまして、すでに防衛というものの必要をはっきり国民として認めています以上は、もっと積極的にこれに対する対策を考える必要があるのではないか。政府において何らかの対策をお持ちであれば承わりたいと思います。
  89. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問の予備自衛官の問題でございます。計画といたしましては来年度千五百人くらいの予備自衛官の定員を増したい、こう思っております。  なおこの予備自衛官の組織を十分にその目的に沿うようにするためには、現在のこれに対する処遇等においても十分でないものがございます。これらにつきましては先刻来申し上げましたように、来年度から予算に計上されるということであれば、この処遇に改善を加えたい、こう存じておる次第でございます。  一般除隊者の問題についても一同様、自衛隊員として勤務して満期になり、いろんな事情のために除隊した者に対しても、御所見のような措置を千分考慮したい、こう存じておるところでございます。
  90. 床次徳二

    ○床次委員 今の予備自衛官の訓練の問題ですが、どうも世上におきましてもおもに予備自衛官そのものの存在については、理論としては認めておるのでありますが、現実において予備自衛官として活動するということに対して、現在の職業上支障になるというような考え方を非常に持っております。この点はもっと一般社会に対して、予備自衛官を積極的に雇用いたしましても、これを比較的好意をもって処遇するというような、いわゆる雇用する者の立場においても、もっと積極的な協力が必要だ、これに対して防衛庁そのものに、一般の思想の啓蒙という点においてまだ足らないところが多いのではないか。なおできるならば予備自衛官というものを、もっと平素からその存在を一般社会に認めさしておくということが必要ではないでしょうか。この点、当局といたしましてももっと積極的な配慮を要望する次第でございます。
  91. 津島壽一

    ○津島国務大臣 御指示の点まことにもっともなことであると思います。御所見に沿うて十分善処いたして適当の対策を講じたい、こう序ずる次第でございます。
  92. 相川勝六

    相川委員長 茜ケ久保君。
  93. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 防衛庁長官のいらっしゃるうちに一、二点伺いたいと思います。  最初に調達庁長官にお伺いいたしますが、いわくつきになっております相馬ケ演習場でありますが、アメリカ軍もだいぶ撤退に伴い使用もしていないようだが、東富士、北富士と同じように現況のままであるか、あるいは近く返還の見通しであるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  94. 上村健太郎

    ○上村説明員 相馬ケ原につきましても、まだ私どもの方に連絡はございません。
  95. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 津島長官にお尋ねいたしますが、あそこは御存じのように、旧軍時代の演習地でありまして、群馬県といたしますと、ちょっとあのくらいの演習場は別にないのでございますが、長官の方で、あそこをアメリカ軍が返還したあとでお使いになる御予定がありますかどうか。聞きますと地元の桃井村でありますか、村会が何か決議をして、自衛隊誘致の請願をしたように聞いておりますが、これにこたえて新部隊の駐屯なり、あるいは演習場としてお使いになる御予定であるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  96. 津島壽一

    ○津島国務大臣 駐留軍の撤退で各地の演習場その他の施設の返還が行われ、また今後行われるのでございます。今お示しのところは自衛隊の関係ではなるべくこれを利用したい、こういう考えを持っています。そういう意味でございまして、これは全体とあわせて考える問題でございますが、地元の方においてそういったような御希望があるということも聞いております。そういった場合には、これを利用するにおいては何らのあまり摩擦もなく行われるということであれば、そういうことを考えたい、こういうわけでございます。
  97. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 その場合、部隊の駐屯を考えていらしゃるのか、あるいはまた演習場としてお使いの意向であるか、おわかりならば、この点も一つ答弁願います。
  98. 津島壽一

    ○津島国務大臣 部隊の配置の問題はこれはいろいろ各方面にあるのでございます。まだきまっていないものが多いのでございまして、今の演習場の近くに部隊を置くというような計画は、今のところは持っておらぬのであります。将来はどういうことになりますか、現在のところではそういう計画は防衛庁としては持っておりません。
  99. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 あの演習場は旧軍時代に約五百万坪でございまして、これはおもに国有地と昔のいわゆる御料林並びに県有林ですが、アメリカが駐留しまして約二百五十万坪の農地をつぶして拡張したわけでございます。従いまして国有地その他については一応きょうは触れませんが、二百五十万坪に達する旧農耕地はこの際農民に返還していただいて、農耕地として一つ復元したいということは、ああいう不祥事件を起しました農婦射殺事件も、農地をとられたものが生活に困ってやむなくああいうたま拾いといったようなことをしているのであります。これが二百五十万坪というような膨大な農地が返還されて農耕地として就農いたしますならば、ああいったこともないわけであります。従いまして私はこの際かつての農耕地は、アメリカの駐留軍の使用済みの場合には返還してもらいたいという地元の要望もありますし、われわれとしてもそれはぜひそういうふうに処置してもらいたいと思いますので、これは調達庁長官一つよろしく地元の要望も――これは率直に申し上げて私ども非常に遺憾でありますが、村会が自衛隊誘致を決定したと同時に、かつての土地所有者が農耕地の返還を非常に要望しておりますので、こういった面もぜひこの際明確にいたしていただきたいと思うのでありますが、長官はこういった点についてどのような見解を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  100. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの農耕地の返還の問題はこれは全体の問題で、先ほど原則的なお答えはしたわけでございますが、それによって御了承願いたいと思います。なお具体的にこれを使用するといった場合に、具体的のいろいろな話し合い条件があるのでございまして、まだその段階にはいっておらぬようですが、先ほどいった私の原則的といったようなことによって御了承願いたい、こう存ずる次第でございます。
  101. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 了承しますが、一つ具体的な問題になりますと、今までの政府のとった態度は、原則としては認めるけれども、ここはといって、必ず具体的な問題になると非常に政府の一方的な意思を押しつける可能性が強いのであります。私らは津島防衛庁長官の人間的な味を一つ含んで信頼いたしますから、当面いろいろな問題が起っております――全国的に私は今後は基地問題は、拡張よりも返還後における事後処理の問題が非常に重大問題として起ると存じますので、一つそうした具体的な問題に対しては地元民の要望を入れるという一つの気持を主体にして処理を願いたい、かように存ずるのであります。基本的な御答弁で了解しますが、重ねてそういった点を要望してこの点に対する質問を終ります。
  102. 西村力弥

    西村(力)委員 長官も新聞で、また閣議でいろいろ話しを伺って御承知と思うんですが、今年の七月、砂川で日本人がバリケードを破った、こういうことで刑事特別法にひっかけられて二十六人、そのうち誤まって逮捕をした者が一人、そういうことになり、その中で七人が起訴された、こういうことになっておりますが、この問題は日本政府の行き方が非常にファッショ的になっているということを示す重大なる問題であると私は思うのです。それはどういうことかといいますと、あの砂川の基地内の、青木氏ほかの所有地は契約更新に応じない。一年ごとの契約更新であるからそれに応じない。それで東京地裁に返還訴訟が起されておる。それに対して国側は、米軍が駐留する限り形式的には一年更新であるけれども、使用権は国側にあるんだ、こういう建前で今応訴をやっておるわけなのであります。ところがそういう態度で、一方では対抗をしながら、逆手では土地収用法に基く強制的な措置に出てきておるわけです。そのための測量が行われてああいう紛糾が起きたわけなんですが、土地収用法にかけるということは、その前提としては、国側が主張している使用権というものはこれは不確定のものである、こういうことが前提になってなければならぬわけなんです。だから強権によってこれを取るのだ、こういう措置に出てきたわけなんですが、そうしますると一方においてはこの使用の合法性を主張する。使用権があると主張する。一方においては使用権がないとする前提で強権を発動する。こういう全くファッショ的だと断ぜざるを得ない二面的な相反する行動に出てきておるわけなんです。そういう点からこの間の紛糾ということを私は非常に重大に見ておるわけです。国側とすれば必要とあれば何でもできるのだ。国民が自分たちの持っておる権利に基いて穏便なる法律的な問題に移して対抗すれば、またこっちの方の主張で対抗する。また一方自分の御都合では強権を発動する。こういうような身勝手な全く反する二つの行動が同時にとられるということは、これは許せないことではないかと私は思う。その件に関しましてこの間私たち愛知官房長官に会っていろいろ抗議を申したときに、法律的には何も不備はないのだ、こういうことを彼氏は言っておりましたが、われわれの追究にあって答弁ができない。こういうことになっておるのですが、私のこの見解に対して大臣はどういうお考えを持たれるか。そういう点は政府一つの方向というものを決定する大事な問題でありますので、はっきりと御答弁が賜わりたいと思うわけなんです。
  103. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問の点は、問題が所管としては法務というか、そういう問題に触れておると思います。それから、あの基地の測量その他の関係は、ここにちようど調達庁長官がおりますから、その方から一つ具体的の答弁をさすということで御了承願っておきます。
  104. 西村力弥

    西村(力)委員 この問題に関しては、事務的な調達庁長官の御答弁を私は期待はしないのです。この問題は閣議でもいろいろお話し合いなっておることと思いますので、大臣から実は御答弁願いたいわけなんです。そうして所管が違うと申しますけれども、調達庁が土地収用法の強権を発動する限りにおいては、その間の法律的な疑義というものを解明しているはずなんです。そうじゃないかと私は思う。そういうことを自己流にせよ何にせよ解明して、そうしてあの発動をせられた、こういうことになるのだから、それを管理せらるる大臣においてもその点に対しては見解をお持ちであろうと思う。ですから私は大臣の御答弁を要求するわけなんです。
  105. 津島壽一

    ○津島国務大臣 砂川の基地拡張問題について、過去において起りましたことは全く遺憾であったと思います。こういったことが今後ないことを私としては切望するものでございます。今後の基地拡張についても、十分こういった問題を考慮に入れて、でき得る限り十分の了解のもとにそういった措置を講ずる、これが一番大事なことだ、こう思っておる次第でございます。
  106. 西村力弥

    西村(力)委員 その御趣旨はわれわれとしてもまことにけっこうだと思うのですが、昨年の砂川のあの流血事件が起きた場合においても、以前においては船田防衛庁長官は、今津島大臣がおっしゃったことと同じことをおっしゃっている。ですから、個人の善意だけを信じてそれでよろしいというわけには参らないし、私が質問している要旨は、今後の問題よりも、あの二面的な問題つまり砂川の問題でこの六月、七月にとった政府の行動についての見解を聞いているわけです。全く反した二つの行動をとっている政府立場を私はお聞きしているわけなんです。使用権があるという裁判上の対抗措置をやるならば強権発動をしなくても済むはずなんです。そうしてまた政治的に見ましても、あそこは現在アメリカ軍に使われているのだから、地元民が何かしなければこっちには何も問題はない、自然の裁判の推移を見守っているわけである、使われているものはどうにもしようがないということを言って、そうして寝ている子を起すような工合に一方では強権を発動している。こうなってくるから問題が起きたのだ。使用権があるならば強権発動をやらなくてもいい、裁判に応ずるなら応ずるで、裁判は負けましたとはっきり対抗措置を放棄すればよいじゃないか、どちらか一方をとるのが正しい方向ではないか、それを、権力を持つからといって同時に二つ立場をとろうということはわれわれは認められない、こういう立場に立って、その点に関する大臣の御見解を、また政側府として解明せられた立場を御答弁願いたい、こう私は申し上げているわけなんです。
  107. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御質問の、その当時の法律関係は非常に複雑なものであるように承わっております。ただいまの御質問の要点は、法律関係と事実関係はどういうことにあったかというようなことで、将来の問題ではないというような御質問の要旨のように思いまするが、その点でありますれば、はなはだ恐縮ですが、どうしても私からの答弁が御必要だという御見解ならば、十分検討した上で、適切でまた間違いのない答弁を次回にいたしたいと思いますのでしばらく御猶予を願いたいと思います。
  108. 西村力弥

    西村(力)委員 法律と事実関係と言いますけれども、国が行動を起す場合に、その基礎に法律的な問題がないはずはない。何も法律に基かない行動を起すはずはないと私は思うので、やはり事実関係と法律関係二つ違うものだというような考えは成り立たないのではないかと思う。大臣の御答弁は、今即答を願えないということになりますればやむを得ないことでございますけれども、それでは調達庁長官にお聞きいたしますが、愛知官房長官は、法律的な問題についてもこの問題は関係当局から十分に聞いているということでございましたが、担当の大臣にはそのことを話をしてないというのはまことにおかしい次第ではないかと思うわけなんですけれども、どうでしょう。大臣も問題は重大であるということを感じられて、その場のがれの答弁をしないで、慎重な態度をとられるという、そういう態度については私はむしろ敬意を表したいと思う。それで、今調達庁長官が御答弁される場合にも、変な三百的なことではなく、真摯な立場で御答弁願いたい。
  109. 上村健太郎

    ○上村説明員 この問題になっております土地の契約につきましては、その契約の内容にもございますが、駐留軍のおりまする間は使用権を認めるということでございます。ただ、会計年度の都合上、日本では、二年度以降の予算支出義務負担というものを持ちまするといろいろ技術的な困難がありまするので、一応形式的な契約は毎年更新をいたしております。しかし私どもといたしましては、やはり契約の趣旨として一年ごとに使用権が切れるというのではないという見解をとっております。しかしながらこれを不服とされまして、青木氏その他の方々から明け渡しの訴訟が起されておりまして、これに対してやむを得ず調達庁は応訴をいたしております。従いまして、こういうような状況でございますので、一応私どもは法律上の使用権が米軍側にあるということを認めてはおりますけれども、なおさらにこれを確認すると申しますか、公法上の使用権をはっきりさせるということを目的にいたしまして、三十一年の六月十九日に総理大臣に使用認定の申請をいたし、土地についての調査をいたしまして収用委員会にかける要請をしたわけでございます。
  110. 西村力弥

    西村(力)委員 あなたの方では、前段では使用権があるということをはっきり確認されておるのですが、しかしながらあとの文句は必要ないんじゃないかと思う。それを必要とするのはどこの段階かといいますと、裁判において国側が敗訴になったときに初めてそういう措置というものは必要になってくる。それならば、まあそのことは好まないけれども手続としてはわれわれは了承するのです。ところがその段階に至らないのに、今裁判で係争中に、一方において強権を使用するということは正しくないと私たちは思う。しかも裁判で係争中の問題を国の権力で終止符を打つということになったら、これは重大な問題じゃないか。今裁判で係争中である。国を相手として対等の立場国民が権利を主張するのは認められておる。それを今度は国が権力でつぶすということになる。この測量が行われ、収用委員会で収用が確定された場合において、裁判において返還訴訟が消滅するということになるのです。そうすれば、国民の権利というものは、そういう工合に最も平穏なる手段で裁判に訴えておるその過程において、国の権力によってつぶされる、こういう重大なる事態になってくるわけです。その点は御自分の立場だけを考えられますけれども手続、順序というものは、もっと日本の民主主義のルールをくずさない方向において考えなければならぬのじゃないかと思う。この測量はゲートの中において行われたから、われわれはそれを阻止するすべもなかった。一時はアメリカ軍が防毒マスクをつけて、ピトスルのサックのボタンをはずして、機関銃の銃口蓋をはずしてわれわれに向ってきておる。そういう庇護のもとにおいて、一体あなた方はどうして日本人民の権利をつぶすのか。こういうことは、この日本の国がまたぞろ国家権力優先の国家体制に移行する端緒として私たちはとうてい見のがすわけには参らない。一体収用委員会において決定された場合において、その裁判は消滅するのかしないのか、その点はどうですか。
  111. 上村健太郎

    ○上村説明員 契約の問題は、結局私法上の関係に立っておりまして、私どもは一カ年ごとに更新をして使用権をきめるというものでないと思っております。しかし現地の所有者の方々は、これは毎年契約をするのであって、一年ごとにその契約が終れば失効をしてしまうんだという主張をされて裁判になっておるわけであります。私どもはそれでは困るのでありまして、やはり私法上の使用権と、土地収用委員会の裁決によります公法上の使用権というものもあわせて獲得をいたしたいという考えでございます。  最後のお尋ねの収用委員会の裁決と裁判判決といずれが優先するかという問題につきまして、公法上と私法上との関係がございますので、私法律についてそこまで詳しくありませんので、今ちょっとお答えができないのでございますが、いずれにいたしましても、収用委員会が裁決をいたしますと、所有者側においてはまた反対の抗告と申しますか、そういうものもできますし、また裁判が第一審におきまして、国側の不利になりまして、契約が切れておるということでございますれば、私どもの方は控訴、上告をいたすつもりでございますので、いずれも相当時間はかかると思います。最後の判決なり裁決なりがいずれが優先するかということにつきましては、研究しました上でお答え申し上げたいと思います。
  112. 西村力弥

    西村(力)委員 あなたは契約の更新に応じない、そうして返還訴訟を起されることは困ると言われますが、何が困るのですか。そのためにあすこの飛行場を米軍が使えなくなっている、そういう影響が少しでもありますか。困るということは一体どういうことなんですか。あなた方の御都合だけですべてがきめられたら大へんなことではありませんか。何が困るのですか。その点は困る事例を示してもらいたい。
  113. 上村健太郎

    ○上村説明員 砂川の滑走路の延長については政府において決定をいたしておるわけでありまして、しかも現在の土地は米軍が使用中の土地であり、かつ私どもとしましては契約上使用権が有効であると認めております。私は困るということを申し上げたかどうか知りませんが、政府が決定しました政策を遂行する上におきましていろいろ私法上の疑問はございましょうが、土地収用委員会にかけまして使用権を認めてもらうということは、政府の政策を私どもが遂行していくということでございまして、それができなければ私ども公民としては困るわけであります。
  114. 中村高一

    中村(高)委員 関連して。今御答弁によりますと、何か自分の方で使用権はあるのだけれども、訴訟を起されたら土地収用委員会にかけると言われる。防衛庁の諸君の考えというものは実にあいまいである。使用権があるということをあなた方が考えるならばそれでいいのです。訴訟を起されたからといってあわてて土地測量を始める。長官は御存じないかもしれませんけれども防衛庁の事務当局の諸君は法律の解釈を誤まって、あわててああいうことをやっておると私は思う。幾ら訴訟を起されてもあなた方が御承知の通り、訴訟は一審で負けても、控訴があり、さらに上告があり、日本裁判というものはなかなからちのあかない訴訟方式であって、五年も十年もかかるのです。これは皆さんも御承知だと思う。せめて一審の裁判政府が負けたというならば、これは危ないぞ、一つ何か考えねばいかぬということをお考えになることはあり得るかもしれぬが、まだ訴訟を起しただけで、第一回の裁判もやっていないうちにあわててこれは何かしなければいかぬということは、全く平地に波を起したのは私は防衛庁の諸君のやり方だと思う。まだまだ訴訟が片ずくまで、普通の私たちの常識からいきまするならば、五年や十年かかるのが幾らもある。それをまだ訴訟を起しただけで、あわててやってあんなことを始めた。あの当時長官がまだ変られておられないのでありまするけれども、小瀧長官に私が大ぜいの者と行って、なぜこんなことをするのですか、あのへいの中であって、しかもMPがおって、そして腰にピストルをさげたMPが歩いておるところに何で一体入れますか。かりに訴訟を起したとしても、これから第一審、第二審、第三審とやる、それで勝って初めて強制執行して農民の手に戻るという場合もあり得るかもしれないが、まだ訴訟を起しただけで第一回の裁判もやっていない、なぜそんなことであわてるのですかと小瀧長官に聞いてみたところが、どうもおれにもわからない、私が考えてみましても、どういうわけで基地の中の測量を急がなければならぬのかよくわからないから事務当局の者に聞いてみたところでは、方針がこういうことに決定しているからやるのですという答えだった。私はあの当時防衛庁の長官に聞いておるのですが、方針だというのです。方針はいいのです。方針は結局はあそこを取られては困るから使うという方針はいいのですけれども、今あわててやらなければならないという方針かどこから出てきたかというと、これは防衛庁の事務当局が全く法律の解釈と裁判の実情も考えないであわてた結果ああなっておるのだと思う。今上村さんの御答弁を聞いても、私法上の権利と公法上の使用権とがあって、公法上の権利、使用権を取りたいのだという、こういう意味だと思うのです。けれども、使用権のあるということは、公法上の権利があるということを防衛庁の諸君は常に言っておるのです。契約の上から発生をしてくるけれども、とにかくここを公けに使い得るところの権利があるということを言っておるのでありますから、私たちはあの当時も小瀧長官とも話しをして、こんな平地に波乱を起すようなことはおやめになった方がいいじゃないですかと言うたのでありますけれども、何か訴訟を起されたからというだけの理由であんなことを起してしまっておるのです。もっと私は冷静に事態をお考えになって、そしてこれが使えなくなる危険が発生したというような場合に初めてやるならば、防衛庁が使用権のあるというその前提と一致するのです。ところがまるであわてまして、使用権はあるとはいうけれども、どうもこれはあるのかないのかわからないというようなあやふやな態度であり、その上に訴訟を起されたというだけであんなことをやっておりますけれども、おそらくどこにもこんなことはないと思う。あの基地の中にだれが入っていけますか、撃ち殺されますよ。MPがピストルを持っておるところへ取りになんかいけはしません。だからこそ裁判を起して裁判の結果を待とうとしておるのに、ああいうようなあわてたことをやっておるのでありますけれども、私はちょうどいい機会でありますから事務当局が何によって一体あんな不必要な測量をやって、そして犠牲者を出して、そして警視庁なんかに命じて、問題が起ってから三月も四月もたってから検挙して二十三名か何名か引っぱったって、たった七名しか起訴しないじゃないですか、いずれまた検察庁の諸君なり警視庁の諸君にも聞いてみるつもりでありますが、もっと冷静に考えてやらなければならぬことだと思うのでありますけれども、事務当局は何で一体あんなことをやらなければならなかったのか、もう一度はっきりこの機会にしていただきたいと思います。
  115. 上村健太郎

    ○上村説明員 重ねてのお尋ねでございますけれども、調達庁といたしましては、賃借権は法律的には存続していると解釈いたしております。しかし所有者側の方から見ましてこれを強く否定されますので、公法上の関係から申しましてもこういう不安定な法律関係を早期に安定さして地上権の確立をはかる、裁判裁判として別に行われる様子を見ながら。しかし一応所有権者が否定しておられまするから、これを安定させる、不安定な状況を除くということで収用委員会の裁決を申請した次第でございます。
  116. 中村高一

    中村(高)委員 使用権があるかないかの判定は、防衛庁がやるんじゃないのです。そのために日本には裁判というものがあって、私権なりあるいは公法上の権利があるかないかということは裁判できめる。あなた方には、そんな権利があるかないかという裁判権はありやしない。裁判が起きたならば、裁判の結果を待って権利があるかないか、国の裁判権に服して、そうしてその上に十分にやり得る時間的余裕があるというのです。それをただ訴訟を起されたというだけで、しかも、あたかも自分たちに裁判権でもあるかのごとくに、収用認定すれば、それで自分たちの認定、行政権の認定によって私権が、あるいは公権がきめられるような考えをお持ちになることは、私は間違いだと思う。もう少し行政庁はこういう私権の有無というような問題に対しては裁判にまかせる、そういう立場じゃなければ三権分立なんか意味がありません。あなた方が権利を確定するような考えを持つということであれば幾らでもそういうものはあるか、国のそれぞれの機関が決定したものに従って、その上におやりになるということが正しいというととは西村委員の言われる通りだと思う。上村さんどういうふうにお考えですか。
  117. 上村健太郎

    ○上村説明員 私の申し上げ方に誤解される点があったかもしれませんが、私どもは、裁判の行われ方あるいは結果について左右しようとか、あるいは裁判を牽制しようとかいう意図は毛頭ございませんことは、もちろん申し上げるまでもございませんが、ただ私法上の関係で所有者が訴訟を起されておりまして、一応ともかく不安定なような法律関係を、法律の手続に基きまして収用委員会の裁決を仰ぎ、裁判の結果は別といたしまして、使用権だけを確立をいたしたいという考えで収用委員会の裁決を申請しておるわけでございます。
  118. 西村力弥

    西村(力)委員 そういう行き方は、裁判にかかってどうも不安定だからやってしまえというような、暴力団でも使って、そうして強引に取っちゃうのと同じだと思う。国はまさかそこら辺のチンピラを使ってやるわけにはいかぬだろうから警察官を使ってああいう措置に出たということなんで、これは同じような事例に見える。まことに情ない次第であります。それで私たちは同時に二面の行動をとるということは許せない。こういうことを認めていけば、国の考え方はいつでも人民の上に立ってしまう、こういう形になりますので、これははっきりした方法をとってもらわなければならぬ。そのためには裁判の措置を取り下げる、あるいはあのとき測量したものを一切御破算にして土地収用委員会に付することをやめるか、どちらか一方をとってもらわなきゃならぬと思う。その点大臣はどうでしょう。今までのいろいろなこと、われわれの賢問愚問をお聞きになってどうでしょう。どちらか一方の態度をとってもらわなければならぬと思う。
  119. 津島壽一

    ○津島国務大臣 だんだん質疑応答がありましたが、上村長官の言うことは政府の方針であると思います。従って、大臣としてはこれを支持する、こういうことでございます。
  120. 西村力弥

    西村(力)委員 せっかくさっきは敬意を表しましたけれども、行政官の言い方にまくられるようでは津島さんもちょっとどうかと思わざるを得ないことになるわけなんです。ああいう無理をやるために刑事特別法なんというものにひっかけられて苦しんでおる。そういうことが日本国民に対してどういう影響を与えるか。日本国民は決して政府の方向を支持していません。また私は警視庁が二十数名を逮捕したときにいなかにおりました。そのときに、私なんかには一票も入れたことがないような相当の年配のおじいさんが、また警視庁はアメリカの下請を始めやがった、こう私に申しております。先ほどから防衛問題についての床次委員質問に対して、自主的という言葉を連発されておりましたが、国民はそう受け取っておらないのです。ああいう事件をずっと見て全部、そういう感想を持っています。どうか一つこの点は検討せられて、今のような態度ではなく、どちらか一方をとる、こういう立場にきめていただかなければならない。大臣どうでしょう。政府の態度として、理屈のない、あるいはまた困るということの事例を示せない事情において二面の行動をとるということを政府の方針として貫こうとなさるか。この点は再度考慮を願いたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  121. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御所見は御所見として十分拝聴いたしておきます。なお長官の答弁中に説明の足りなかったところはよく調査しまして、あらためて私からお答えする機会があるだうと思います。しかし、先ほどもお答えしましたように、調達庁長官答弁趣旨は私としてはこれを支持する、こういうことでございます。
  122. 西村力弥

    西村(力)委員 私がせっかく言いましても思いが通じないようでございますが、調達庁長官趣旨が徹底しないのは、これは困ったという事情もないし、法律的な明快な立場もないからいろいろこね回すけれども、結局われわれにはわからないことなんです。こういうことを私どもが言っている過程においてはいいのですけれども、それがだんだん進んでいくと、あなたが私に「黙れ」と言う時代が必ず来るので、それをおそれるのです。  その点はその程度にしまして、砂川の昨年の血を見た一周年記念が間もなく参りまするが、調達庁は測量残りのところがあるようですが、あの件に関してはどういう方法をとろうと今考えておられるか、調達庁長官答弁を願いたい。
  123. 上村健太郎

    ○上村説明員 砂川の立ち入り調査の部分はまだ全部完了いたしておりませんで誘導路の敷地が残っております。しかしこれにつきましては、まだいつやるとか、あるいはいつまでにやらなければならないというようなことをきめておりません。できますならば、円満に話がつけばつけて参りたい、こういうふうに考えております。
  124. 西村力弥

    西村(力)委員 話がつかなければどうするのです。
  125. 上村健太郎

    ○上村説明員 私どもは話し合いがつくと思っております。また話し合いをつけるように努力いたさなければならないと思っております。あくまでもその線に沿って努力をいたしたいと思います。
  126. 西村力弥

    西村(力)委員 その努力はいつごろまでの期間を見込んでおられますか。
  127. 上村健太郎

    ○上村説明員 御承知の通り、主要滑走路の敷地の問題が今収用委員会その他の関係で訴訟になっております。その経緯をにらみ合せる必要もございますし、いつまでというはっきりした期限を今申し上げることができない次第でございます。
  128. 西村力弥

    西村(力)委員 それではだいぶ時間もおそくなりましたので、小牧の問題についてお尋ねしたいのですが、あすこは米軍の広報課の発表によっても、住宅地区や何かは返還になる、こういうことになっております。またあすこにおる第五空軍ですか、あれは司令部を移動しておるというようなこと、そういう諸般の状況からいいまして、われわれとしては当然遠からず返還になるものだと思っておりますが、調達庁側としてはどういう見通しを持っていらっしゃるか。
  129. 上村健太郎

    ○上村説明員 他の基地と比べて早く返還になるということはないと思います。従いまして、日本にありまする航空基地の中では最後の返還に近いのではないかと思っております。
  130. 西村力弥

    西村(力)委員 それではあすとにあなたの方ではバラ線を張っておりまするが、そのバラ線の区域内に、まだあなた方の説得に応じない、いわゆる反対派と称する人々の所有地があるのですが、そういうことは少し行き過ぎではないですか。私は直ちに撤去すべきだと思う。バラ線の中に農耕に入っていく、こういうことはちょっと気味の悪いことであるし、何かしらやはり自由な営農を阻害されている、そういう反感も持つわけです。直ちに撤去すべきだと思うがどうか。
  131. 上村健太郎

    ○上村説明員 ただいますでに承諾をいただきました地主関係の土地につきまして工事を開始いたしましたので、その部分についてさくを設けております。しかし、そのさく内で、まだ話し合いがつきません土地の耕作につきましては、そのさくに、たしか二カ所だと思いますが、穴をあけまして、門をあけまして、通行には差しつかえないようにいたしておるつもりでございます。しかし現地のいろいろの要望もございまして、さくの入口の門のところが狭いというようなお話がございます。これは実情に即しまして広げるなり適当な措置を講じたいと思っております。
  132. 西村力弥

    西村(力)委員 それは広いとか狭いとかの問題でなくて、十ぱ一からげにしてさくを結われちゃった、ここはアメリカの国だということにされたととろに入るということは、なかなか気持がよくないものだ。ですからやはりそれを全部撤去していくのが正しいのではないかと思うのです。そのさくを結うということは、とにかく米軍使用地として認めたのだということがはっきり外形的には出ておるわけなんです。その中に入っていくということはなかなか気味が悪い。よくあなたの方では、砂川なんか見ますると、ある一区画だけ囲いを結って日本の国土の切り売りのようなことをやっておる。今度は反対しておるのを全部十ぱ一からげにして結っちゃっている。こういうような形になっておる。あれは私たちとしてはすぐ撤去してしかるべきもの、こう思うのです。門を少し大きくするなんということじゃなく、全部撤去して、その十三名の人々が承認をした暁において全部さくを結うなり渡すなりやってもらわなければならぬのじゃないかと思うのですが、その点一つ御努力願いたい。いかがです。
  133. 上村健太郎

    ○上村説明員 先ほど申し上げましたように、すでに承諾を得、話のつきました方の土地の部分につきまして、これは大部分でございますが、その区域内で米軍が滑走路の工事を始めましたので、勢いさくは設けざるを得ないと私ども思っております。しかしまだ提供しておられない方々の境界に接する部分あるいはその方々が耕作に行かれるときに必要な門というようなものは、先ほど二カ所と申し上げましたが、十六カ所あるそうであります。そういうところはさくを設けないであけてございます。全部のさくを撤去せよということは私どもとしましても不可能であると存じております。
  134. 西村力弥

    西村(力)委員 とにかくこの米軍の基地となったがごとき形の中における自分の所有地に入っていく、そういう気持を持たせないように最良の方法をとってもらわなければならぬと思う。その点御努力を願いたい、こう考えます。私の今日の質問はこれで終ります。
  135. 相川勝六

    相川委員長 それでは午後二時半再開することにし、暫時休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十八分開議
  136. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の防衛に関する件について質疑を続行いたします。辻政信君。
  137. 辻政信

    ○辻委員 長官にお伺いをいたします。けさの読売新聞を見ますと、F86Fジェット機が機体の設計に欠陥がありまして、相当重大な障害になっておるような記事が出ております。これを私が調査をいたしましたところを簡単に申し上げますと、この故障は読売新聞によってけさ初めて発表されましたが、時期的に相当古いものだと思う。いつごろからこの事故に防衛庁として感づかれておったか、そのことを小山装備局長にまずお伺いいたします。
  138. 小山雄二

    ○小山説明員 この故障を発見しました最初は五月の二十七日でございます。
  139. 辻政信

    ○辻委員 五月の二十七、八日ごろ、それは空幕の第一線から報告を受けて内局が取り上げたのか、どういう経緯でそれを取り上げられたか。
  140. 小山雄二

    ○小山説明員 飛行機は点検をするのに規則がございまして、こういう燃料のフィルターの点検はその規則では飛行五十時間ごとにする、その点検の際発見いたしました。
  141. 辻政信

    ○辻委員 それから取り上げて処置を講じたのはいつですか。
  142. 小山雄二

    ○小山説明員 初めはどうしてそういうことになったかという原因が実はなかなかわかりません。米軍には連絡し、ノース・アメリカンの設計者、結局燃料タンクの問題でありますので、US・ラバーの技術者もその後参りまして、いろいろ検討いたしました結果、設計といいますか、タンクと外板を締めつける締めつけ工合のところが原因だということがわかりまして、それぞれ措置をとりつつある状況でございます。
  143. 辻政信

    ○辻委員 このタンクに原因があるということを発見したのはいつです。
  144. 小山雄二

    ○小山説明員 六月の下旬であります。
  145. 辻政信

    ○辻委員 六月の下旬発見をして、そうして防衛庁としては、今日まで約三カ月以上になるが、その処置はどういうふうにとられておるか。
  146. 小山雄二

    ○小山説明員 原因と対策を簡単に申し上げますと、燃料タンクはあちらこちらにございますが、この事故の起りましたのは前部胴体に入っております燃料タンクでありまして、外板とタンクとを締めつける場合に約一センチの間ボルトで締めておりますが、この燃料タンクがかわりました際に、これはわれわれも完全に設計のことはわかりませんが、そのときに設計といいますか、締めつけ工合をかえるべきではなかったかという疑問を持っております。要するに締めつけ工合のためにタンクが引っぱられまして、タンクが引っぱっておる外皮のところが少し破れて亀裂ができて、それに中のなまゴムに油がしみ込んでそれが溶けるというような原因で、かすがフィルターにたまっている、それが原因だったと思います。これが対策といたしまして二つの対策を考えておりまして、一つは締めつける外板とタンクの外体の間約一センチあいておりますが、それにスペーサーを間へ入れまして締めつけるという応急対策をとったわけであります。これはその発注を終りまして物は補給所の方にどんどん参っておりまして、逐次改造しつつあります。それから根本的の対策といたしましては、そういう突っかい棒をせずに外板を少し構造をかえまして、外板を繰り込むようにいたして接着さす、締めつける、こういう対策をとりたいと思いまして、これはオーバーホールをする時期のもの、あるいは国内生産をやっております今後のものは、これはその設計で直していくという段取りにいたしておるわけであります。
  147. 辻政信

    ○辻委員 私の調べたところではこの故障が発見されたのは第一線においては三月であります。三菱の小牧工場において発見したのは四月です。それから今日まで三菱の小牧工場には二十八機というものがこのために修理の部品もなくて倉庫に眠っておる。全体の機数からいえば二百二十八機のうち二十八機、一割強のものがこういう設計上の欠陥があって使いものにならない、危険だというので修理もできなければ、そのまま三菱の工場に眠っておる。この原因をさらに調査をすると、アメリカの空軍においては大して故障が起っておらない。日本に持ってきたものに故障が起るということは、おそらくノース・アメリカンがMDAPとして日本に出すときに粗製乱造の飛行機を出したのではないか、こう言われても弁解の余地がない。あなた方はアメリカからくれるものは何でもいいというふうに考えておったら大間違いである。尊い人命に影響がある。ことしの四月から今日までF86で事故を起したのは何機あるか。その事故のうちの幾つかのものがこのタンクの欠陥に原因があるとすれば防衛庁の怠慢である。それによって尊い人命を落したことになる。またノース・アメリカンの不信義によって日本の操縦者を殺したということまで言える。アメリカでは今日本のおもちゃに毒素が入っておるというのでとんでもない騒ぎをしておるが、これはあのおもちゃによって死んだという例は出ておらない。しかしF86の当然なすべき設計の規格に誤まりがあって航空事故を起して、われ一われの国民が死んだとすれば、そのことをどういうふうにアメリカに要求するつもりであり、また防衛庁長官としてはこの点は腹を据えてアメリカに反省を求められるかどうか、重大な問題になっております。現にF86には乗りたくないというノイローゼぎみにまでかかっておるのであります。航空事故の対策については私がことしの三月から耳が痛くなるほど申し上げておりますが、こういう重大な欠陥を少くも五月に発見したとして今日まで手を打っておらない。手を打ったならば、ノース・アメリカンの技師がその部品を持ってきて機体の交換・タンクの交換ができたはずだ。それが部品が入手できないために二十八機眠っておる。それで防衛庁としては第一線に対して責任が保てると思うかどうか、長官の所見を承わりたい。
  148. 津島壽一

    ○津島国務大臣 このF86のこういった故障の問題は、まことに遺憾の至りでございます。実は、はなはだ申しわけないと思いますが、こういった事故の存在について私自身は十分承知していなかったのです。もし当初の供与された飛行機に欠陥がありとすれば、これは十分アメリカ側に今後交渉して、今後のとともありますので十分私は抗議いたしたいと思います。なお六月以来、この故障の原因等が発見されて、これによる事故というものが起らなかったのが、せめてもの私は仕合せだったと思っております。御注意の点もありますから、今後とれに対する十分な措置を講じて、御期待に沿うようにいたしたいと存ずる次第でございます。
  149. 辻政信

    ○辻委員 ノース・アメリカンに対して買付をキャンセルする意思がありますか、それがはっきりできるまで……。
  150. 津島壽一

    ○津島国務大臣 その措置をとるまでには十分その事情を私自身としては研究いたしたいと思っております。ここですぐこうするということを申し上げるのは、私にはまだ十分それだけの事実の究明ができておりません。さよう御承知願います。
  151. 辻政信

    ○辻委員 これは新任間もないあなたを追及するのではありません。装備局長やあなたの内局の人たちは、この故障が明らかに設計上の欠陥にあるということを五月の下旬に結論を出しておる。そうして今日まで四ヵ月以上もその対策を講じておらないというその仕事のやりぶりに私は文句を言います。そういうことで人命を預かっている者の責任が果せるか。それからこの事故のために死んだ者はないと言われるが、果して四月から今日まで落ちたF86の中に――機体はすでにこわれてしまっているから原因の究明の方法はない。できたのもあるでしょうが、この原因によって生じなかったということが果して断言できますか。
  152. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今のこのためにどういう事故が起ったかという問題であります。これはちょっと手元に資料がございませんが、御承知のように私は就任以来航空機の事故防止ということは非常に重大問題であるとして、そのために特別の委員会を設け、また航空専門の相当の方は御承知と思いますが、日本全体にわたって航空基地の検閲をいたしまして、その詳細な報告も得ております。ただその中に、この故障のためにどういう事故が起ったかということは、つい私としてはそれをよく点検いたしませんでした。もしそういった具体的の計数、件数等について資料として提出すべきであるということでありますれば、材料はあるようでございますから提出いたしたいと存じます。
  153. 辻政信

    ○辻委員 私が言うのは死児のよわいを数えるというのではない。四月ないし五月にこの結論はわかっておると小山装備局長ははっきり言っている。そうして今日まで長官に報告もしておらなければ一おそらく長官は、ほんとうのところはけさの新聞を見て驚かれたと思う。私はそう思います。そこに内局の主任者が職務怠慢といわれてもやむを得ない点がある。事故対策を徹底するということは、単に予算をふやすだけではいけない。このような怠慢の官吏を首切る、そこまで責任を求めなければ直りません。これは単に一例を申し上げておるのですよ。特に人命を預かっておるのだというその気持からすれば、これくらい重大なことを四月ないし五月に知っておりながら、まだ長官の耳に入れておらない。そういう幕僚が一体どこにあるか、それを追及するのです。
  154. 津島壽一

    ○津島国務大臣 御注意の点十分了承いたします。
  155. 辻政信

    ○辻委員 次に最近調査団の結論が出ておるようでありますから、長官の所信を承わりますが、戦闘機の次期装備目標をF100にされるか、F104にされるか、それとも最近の新聞に出ておるようにF11にされるかという点であります。結論が出ましたかどうか、出ないとすれば、いつごろ出るのか。
  156. 津島壽一

    ○津島国務大臣 F100、F104、これは今後の航空防衛のために選択する機種としてどちらがいいかということは、相当長い間の問題でございます。しかしF104についてはまだ十分の調査ができておらなかったという事情がございまして、前回の委員会でも御報告申し上げたと思いまするが、特に調査団は専門家を送りまして、先月中旬に帰りましたが、その報告書が出たわけであります。昨日はこの問題について会議を開き、私はその報告を親しく聞きました。その際に、F100、F104というもの以外にいろいろな機種がある、それについての性能なり、また実際の生産の状況、それらのいろいろな点について相当精細な報告身受けたわけであります。しかし昨日の報告においては、まだ私としてはこれがいいという結論を出すのにはさらに一そうの検討を加えたい。この問題は航空幕僚監部の側においても、これらの報告に基いて熱心に検討中でございます。決定をする時期はいつごろであるかというお問いでございましたが、今週はちょっと間に合わぬかと思います。でき得れば来週ある程度の結論々出したいという私の予定を立てております。しかしながらこの問題は結局国防会議等にも御検討を願うべき問題であるのでございまして、最終的に決定を見るのはまだそれから先になる、こういう予定でございます。
  157. 辻政信

    ○辻委員 こういう重大な問題を今週、来週に結論を出そうというのに無理があるのじゃないですか。私は率直に申し上げますと、この結論は今年一ぱいくらい出さない方がいい。極端に申しますと、F86の生産をストップ、新しい機種の採用もストップして、そうして現在飛行機が余って、パイロットが足りないのですから、パイロットの数に必要なだけの飛行機を整備されてむだ使いをしないように、そうしてもう少し二、三年後の世界の兵器の進歩の状況を見通されて、むしろ日本としては戦闘機に重点を置くよりも、ミサイルの研究に思い切った予算を今からつぎ込む。西ドイツのこの方面に関する資料を集めますと、ミサイルのために二億マルク、日本円に直して百八十億円というものを研究につぎ込んでおります。そして西ドイツでは戦闘機は作らない。戦闘機隊さえ持っておりません。持っておるのは輸送大隊だけです。そしてもっぱらパイロットの訓練のために万全を期しておる。日本では反対ですね。たとえば千歳の第二飛行団を見ても、看板だけは飛行団です。飛行団といったら連隊を三つ四つ持たなければならないのに、その中身はどうだ。御承知の通りF86が二十機しかない。パイロットは十三人しかいない。一個中隊の兵力さえない。そこに団というような看板を掲げて、間口だけ、ブリキ張りならまだいいが、ビニール張りの空軍の拡張をやっておられる。これは一体日本の千三百機目標の行き方として納得できるかどうか。西ドイツの考え方というものをわれわれは謙虚にとって、無から有を生ずる日本防衛体制におきましては、遠い将来を見越して、むだ足を踏まない。かりに千三百機の飛行機を並べてみても、パイロットが半分しかなければ、半分の飛行機は倉庫の中で眠っておる。一機一億円もするものが倉庫の中で眠っておる。これは利息はつきませんよ。しかしその金は国民がみんな出さなければいけない。これくらい防衛予算のむだ使いは一体どこにあるか。常識からいえば、パイロットが六十人おれば、飛行機の機数は五十機でいい。現在はそうじゃない。飛行機の機数のみが多く、パイロットはその半分以下である。これで三十五年目標に千三百機の空軍が整備されるとお考えになるかどうか。今までのように数をそろえて、単に形式だけ、門戸だけを張ろうというような考え方を、この際根本的におやめになって、堅実にパイロットの養成、幹部の訓練、人間の教育に重点を置かれて、不必要な資材を買ったり作ったりしない。そうして三年、五年の将来の兵器の進歩を目ざして、研究方面に徹底的な重点を向けられることを、数年間私は言っておるのです。今予算編成の直前に当りまして、長官にもう一回この点について御再考をわずらわしたいと思いますが、いかがでございますか。
  158. 津島壽一

    ○津島国務大臣 御意見ごもっともな点が多いと思います。従って今後の計画といたしましては、操縦士の養成、整備負の充実ということに非常な重点を置くつもりでございます。なおまた研究部面、これについても全体の予算というもののワクがおのずから制約するわけでございます。しかし方向としては、こういった部面に重点的に予算を充当したい、こういう方針でございます。おのおの各国の国情、事情、四囲の状況によって、その国の防衛はどういうものに重点を置くかということについては、一がいにこれは統一して言うことはできないだろうと思います。しかしただいまのお示しの点は、まことに適切な点も含んでおりますので、そういった方向に私も今後の防衛の計画なり予算の措置というものを持っていきたいという考えでございます。しかしこれは一挙に転換というようなこともそう容易なことではございません。これは辻委員は長くその方面の練達な方でごさいますから、実際に当ってどういったような経過になるかというようなことについても、御了承が願えると思います。大体それだけのことを申し上げておきます。
  159. 辻政信

    ○辻委員 それではさらに具体的に伺います。来年度の予算で空軍拡張の整備機数、F86を一体何機搾ろうとされるのですか、幕僚でよろしい、大蔵省に出してある見積りは幾らになっておるのですか。
  160. 山下武利

    ○山下説明員 F86Fの生産は九十八機でございます。
  161. 辻政信

    ○辻委員 そうすると、今まであるのが二百二十八機、それに九十八機加えると、総計三百二十何機になりますね。そうしてパイロットは何名になりますか。
  162. 小山雄二

    ○小山説明員 三十三年度夫におきまして約二百五十名程度と考えております。
  163. 辻政信

    ○辻委員 現在は何人ですか。
  164. 小山雄二

    ○小山説明員 現在は九十一名ばかりおります。
  165. 辻政信

    ○辻委員 私は練達ではありませんが、このF86Fをこなし得るまでには、とても一年や二年では無理なんです。T33で教育して、それからやるのですから、ことしから皆さんが、さか立ちされても、二百数十名のF86の要員を三十三年度末までに完全に作るということは非常に無理があります。そこで私が言うのは、飛行機が余って人間が足りないという事態が現に出てきておる。現在もそうであり、来年度の計画もそうなんです。そこで申し上げるのは、この乏しい予算をもってわれわれが昭和三十五年を目標に所要の力をたくわえようとするならば、今は乏しい予算で、あり余った飛行機をよけい機数を製作するという愚を避けて、要るだけのものを逐次作って、人間の頭数を練習に支障のない程度に整備する。それをやると、三菱とか川崎は困るでしょう。しかし国の防衛は兵器メーカーの食うためにやっているのじゃない。われわれの必要なものをメーカーに作らすというその基本原則をお忘れになってはいけない。人がないのに飛行機だけ置いて倉庫に積んでおいたのでは機材は自然に損耗して参ります。利息はつかない。そこに非常なむだ金というものが使われておる。小さな十万や二十万の汚職でも新聞面をにぎわしておりますが、この数億、数十億、あるいは百億に近いものを倉庫に眠らして使わないものを予算でもって頭数だけそろえようという、その考え方に根本的な検討を要すると私は思うのですが、いかがでございましょう。
  166. 津島壽一

    ○津島国務大臣 まことにごもっともの御意見でございます。航空自衛隊が創設されて三年でございます。非常に急速に発展をしなければならぬという内外の事態に応じて今日までその計画が実行されたわけでございますが、ただジェット機に関しましては予想以上に訓練、操縦士の養成というものが意外に困難であったという事情もここにあったと思うのでございます。そこで飛行機操縦士の数がこれらの予定による飛行機の製造とマッチしなかったという、ここに一つの現象が起っておると思います。これを是正するにつきましても必ずしも一刀両断にいかぬ事情もあると思う。でありますけれども過去の経験なり、最近の訓練の状況その他から見て、今後は操縦士の養成も逐次順調と申しますか、従来に比しては改善の見るべきものがあると期待できるのです。そこで年度ごとに操縦士の養成されたものの数がここ二、三年まではそういったちぐはぐがないように計画をされ、またそうあるべきであると思っておるのです。こういった創設期における往々にしてちぐはぐというものが今日現われてきて、ただいま御指摘のような事実が起っておることは、これはまことに申しわけないと思っておりますが、それはかすに時日をもってして、そういったことがないように是正をしたい。このために最善を尽したいと思いますからどうぞ一つ御了承を願いたいと思う次第でございます。
  167. 辻政信

    ○辻委員 パイロットのない飛行機というものはかかしみたような軍備なんです。人間があって初めて飛行機が動くのです。常識から言えば操縦士三人に練習機一機置く、三人で一台のものをぐるぐる回しで使うということなんです。そこで私の質問がごもっともであるとおっしゃるなら、なぜそれを取り入れて修正なさらぬか。国民はあり余っておる税金を防衛費に出しておるのではありません。ほんとうに必要最小限度の機材なら一機一億円でもがまんするが、倉庫の中に何十機も眠らしておくために防衛予算というものをたっぷりとることは納得できない。とった予算をむだなく消化する、そうして作った飛行機は全部フルに練習機用として活用して初めて均整のとれた軍備の計画ができ上る。でありますからその頭の根本を切りかえてもらいたい。ことしはがまんしてくれじゃない。悪いと思ったらすぐ修正する、ごもっともと思ったらそれを実行してもらいたいのです。
  168. 津島壽一

    ○津島国務大臣 先ほどお答え申し上げた点で一つ御了承願いたいと思う。十分御所見はよくわかります。そういった趣旨に持っていくように努力いたします。
  169. 辻政信

    ○辻委員 それじゃこの機会に念を押しておきます。三十三年度の年度末までに二百三十名のパイロットが完全に養成できなかったら長官は責任をおとりになりますか。そこまでの決心で整備しなければいけませんよ。ただこの席上で了承してくれといってもできない。一年かすに時日をもってします。そのときに今日のような欠陥をこの席上において、委員会において暴露しないというだけの決意を持っていただけるかどうか。
  170. 津島壽一

    ○津島国務大臣 非常に問い詰めた質問でございます。私も来年この席におるかどうか……。(笑声)どうか御了承願います。
  171. 辻政信

    ○辻委員 それがいけない。この間ある自衛隊の下士官と話をしたのですが、防衛長官はだれかと言うと、しばらく考えておって、木村篤太郎と言いましたよ。(笑声)長官は半年足らずのうちに一人ずつかわっておるのです。経理局長装備局長の本家は大蔵省、通産省にある。二年経ったら古巣に帰る。これで一体どこに防衛庁を育てるという意慾が出て参りますか。その間に本省のきげんをそこなわないように経理局長はもっぱら予算を圧縮する。装備局長はもっぱら通産省の出先として点数を上げていく。そしてその次のいいポストをねらうというのが今日の実情です。こういうことで一体防衛庁がよくなると思うのですか。防衛庁をよくするには本家本元と縁を切ってしまって――ここに小山装備局長、山下経理局長山本人事局長というように書いてあるが、山本人事局長なんというのは最近来たばかりで人事も何もわかりはしない。(笑声)そして二年経ったらさっさと帰って行く。これで一体防衛庁がよくなると思うのですか。そこを私は言うのです。私は与党議員で野党の攻撃ではありませんが、ほんとうに皆さんに真剣にやってもらおうと思えばこそ突っ込んで言っておるのです。装備局長あたりはできることならF86の戦隊長として一ぺんジェット機に乗って飛ばしてみればいい。それで初めて第一線の苦痛がわかるのです。そこまでやらぬとほんとうの力のある軍隊はできませんよ。ただ自分の在職中大過なく過して古巣に帰るようなことばかり考えておる。ほんとうにお気の毒です。長官は三カ月あるいは半年でかわってしまっておる。そういうことをやるから警察予備隊以来の加藤君が事実上の天皇になって、加藤君の判こで皆さんはめくら判を押す。(笑声)とれが実情なんですよ。そこで今日のような下剋上の空気が出てきたのです。確実に指揮権を持ってひっぱっていけない。無理もないのです。ですから、この制度を根本的に改めぬと日本防衛庁はよくなりません。  これは答は要りませんが、次いで質問したいことは、最近新聞によりますと、習志野空挺降下部隊の中に脳震蕩、精神異常患者がほかの国のパーセントから見ますと、非常に多く出ておるという記事を読んでおる。これの原因調査してその対策をいかに講ぜられたか、関係幕僚からお答え願います。
  172. 山本幸男

    山本説明員 ただいま御質問の空挺隊員の傷害につきましては、空幕を中心としまして、空挺傷害対策委員会というものを形成して、この委員会を中心として空挺傷害のいろんな医学的な問題、あるいは心理的な問題、こういう問題をただいま研究中でございます。医療関係につきましては中央病院が中心になりまして、しばしば陸幕との合同会議を開きまして研究をいたしております。これは脳震蕩を起しましていろんな医学的な問題もあるようですが、その原因、あるいは対策等、逐次検討の結果を実現していくように考えておるわけであります。この傷害防止につきましても、いろいろ傘の開くときの衝撃あるいは着陸時の状況あるいは下りますところの地域の状況、こういうこともいろいろ考えていかなければならぬ。空挺被服の改良という問題あるいは訓練の合理化の問題あるいは肉体疲労あるいは精神的な疲労という問題、それに対する休養対策、いろいろ問題があるわけです。これらを一つ対策委員会でもって総合的に考えていって今後善処していきたい、こう考えております。
  173. 辻政信

    ○辻委員 あなた方に質問すると、いつも検討中、研究中ということで逃げるのですが、落ちておる連中は病気が出ておるのです。毎日々々理論闘争ならそれでいいですよ。しかしそうじやない。防衛庁というものは人間の命を預かっている。高い空中から落下傘で落して、そして捻挫をする、骨折をやる、脳震蕩を現に起しておるんですよ。その原因がいつまでたったら結論が出るのか。私が調べたところを簡単に申しますと、あの一切の装具がアメリカから来ておる。日本人の体格に合わない。そこに根本原因があると思うんです。現在使っておられるあの落下傘の装具は、日本人の体格を基礎にしたものじゃない。アメリカ人の体格を基礎にして、そうして日本によこしたものを使っておるからそこに無理があると思うがこれはどうです。
  174. 山本幸男

    山本説明員 おりるときの装具を軽くするということも確かに対策の一つでありまして、この点につきましても研究しております。ただ、今もらったとおっしゃった装具は、半分くらいの部分は国産品です。必ずしも全部が全部向うからもらったものばかりでもないのです。
  175. 辻政信

    ○辻委員 国産か米産かと聞いておるのじゃない。サイズが日本人の体格に合っておるかどうか。たとえばアメリカだったら直立して着陸する。日本人の体格じゃそうじゃない。こう丸くなってころがって着陸する方が安全なんです。これはわれわれの昔からの体験です。そういうことまで研究されているのか。アメリカの操典を直訳してそのまま採用しているのじゃないですか。日本人の習性に合わないようなやり方をして、アメリカ人のサイズで日本人の体格に合わないものを採用しているんだ。そとに原因があるのじゃないですか。
  176. 山本幸男

    山本説明員 そういう点も含めましてただいまも研究いたしておるわけでありまして、これは日ならずしてそういう結論を得れば直ちに実施したい、そういうふうに考えております。
  177. 辻政信

    ○辻委員 そういう点も含められるとおっしゃるが、現にそういう点があるんです。あったならば研究して、時間を延ばさないで即時修正していく。そうして一人でも病気になるのを救うというのがあなた方の仕事じゃありませんか。あなたは着任したばかりでわからぬでしょうから、このくらいにしておきましょう。  次は海上勢力の整備目標は十二万四千トンという整備目標のうち、その内容はこれはまだ未定でありましょうから、しいて申しませんが、重点を海上艦艇に置いておくか水中艦艇、潜水艦に置いておるか、その点は長官いかがでありますか。
  178. 津島壽一

    ○津島国務大臣 海上自衛隊の主たる任務は、御承知のように内航外航の護衛ということを第一義に考えております。なおまた港湾その他の防衛、あるいは主要海面、水路の掃海、こういったことを任務としておる。こういう建前で自衛艦隊というものができておるわけであります。従ってこの目的に沿うためには護衛というものを本体に置いた警備艦、護衛艦あるいは掃海艇といったようなものが、隻数において多くなっておるというのが従来の計画であり、また今後の海上自衛隊の増強の目的も、それに重きを置くという傾向にある。そこで今のお説の潜水艦と申しますか、水中の飛行機と申しますか、そういうこともあらかじめ構想としては特に考慮すべきものだと思っております。潜水艦も今後の計画においてはある程度増強をはかるという予定でございます。それらのあんばいは一にこのわが防衛上の見地から、適当に勘案して艦種をきめていきたい、こう考えておるわけでございまして、そこらの点を十分御検討また御了承願いたいと思う次第でございます。
  179. 辻政信

    ○辻委員 私は今、水中飛行機のことは質問しておらぬのです。これから質問しようと思ったのです。今あなたに申し上げておるのは、将来の整備目標の重点を海の上に置くかあるいは海の底に置くかという問題なのです。それが近代兵器の発達に伴って、日本の置かれた地理的条件から見まして、一体海上艦艇の整備に重きを置くのか。そうじゃなしに水中の防衛力に重点を置かれるかという、この根本方針をはっきり示してもらいたい。
  180. 津島壽一

    ○津島国務大臣 その点から申しますと、水中防衛、ということは、潜水艦はすでに実験済みで各種のいろいろな精巧なる艦種があるようでございます。今のそれ以外の方法において水中の防衛――水中による防衛といいますか、そういうものをやるということについてはこれは技術的に大いに検討を要する問題でないかと思っておるのであります。いまだ具体的に、この整備目標といったような中に現在のところは取り入れてないというのが率直なる御報告でございます。
  181. 辻政信

    ○辻委員 そうしますと、純然たる戦略論と兵器の発達から見て、あと三年後には海上艦艇よりも水中艦艇の整備に重きを置くということが必要であるという結論が出たら、建艦の内容、あなたの現在持っておられる腹案というものは修正できますね。
  182. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは全体の問題であろうと思うのです。内外の情勢が非常に変った場合、今立てた整備目標は、これは動きのとれないものだというふうに私は承知しておらぬのです。これはやはり何というか、弾力性というものはおのずからそこになくちゃいかぬ。しかしこれを変えるに当っては相当有力というか、強力なる理由がそこになければ、いたずらにそれが動揺し、変更を重ねていくということは避けたいと思うのでございます。そういう意味において今後は内外の防衛のいろいろな装具なり、いろいろなやり方については種々検討をしなければいかぬ。であるから、今きまったものがあるからただこれで押し通すのだという考えは、少くとも私は持っておりません。
  183. 辻政信

    ○辻委員 さすがは津島さんだけあって頭がやわらかい。しかし今までのあなたの方の欠陥は、五年前に立てたあの目標を一歩も譲らぬというかたい人が多かった。あなたは、情勢の変化に応じてさらに検討する余地があるとおっしゃったのは非常に心強いのです。それでは私申し上げますが、あと三年あるいは四年後のわれわれの予想する兵器の進歩から見ると、ミサイルが中心になって参ります。海上艦艇というものはミサイルの前にあまり大きな力はない。これはことに日本の置かれた実情というものは、海上の力を確保するということがほとんど不可能に近い。水中は確保の方法があると思う。水中を制するものが海上を制する、こういう状態に変ってくると思うのであります。そこをよくお見通しなさいまして、将来の建艦の内容においては十分に検討されて、海上艦艇よりも、水中の防衛力に日本の独創的なものを作るという御着想でお願いしたいのでございます。よろしゅうございますか。一つの例を申しますと、昨年か一昨年アメリカから潜水艦の千二百トンクラスのくろしおを買っていらっしゃった。あれはもう時代おくれの古い潜水艦で役に立たない。あれは何のためにもらったかというと、あれは練習のためだという。そうしておきながら、昨年の予算では三十億出して千二百トンの大型潜水艦を川崎で作られておる。その性能は大して進歩したものじゃないと私は見ておる。しかし最近ドイツにおいて作った潜水艦は三百トンです。それはドイツが初めて作った第一隻は三百トンで小型の新しいアイデアを盛った潜水艦を作ろうとしております。これが幸か不幸か日本にはあった。終戦のときに海軍の黒島亀人という少将が心血を注いで作り上げた結晶の海龍であります。これは先ほどおっしゃった水中飛行機、飛行機の原理を水中に応用した独想的な日本海軍の考案でありました。それを使わずに終戦になって、そのアイデアをアメリカが取り入れておるのであります。そういうことから考えて、昨年この委員会におきましてなぜ水中飛行機の研究をやらぬかと言いましたら、時の装備局長の久保君は、ごもっともであり、今度組んでおる潜水艦の予算から、百万円くらいはこの研究費に出そうとはっきりこの席上で言って、速記録に残っておる。その百万円の研究費は出したか、使ったかどうか、これは小山君多分申し送りを受けておると思います。小山新局長からお伺いをいたします。
  184. 小山雄二

    ○小山説明員 三十一年度計画しております潜水艦建造のためにいろいろな問題を研究しております。その中には千トン潜水艦そのものの試験はもちろんございますが、ある程度幅を広げまして、一般的な潜水艦の風洞試験、水漕試験その他の試験ではそういうことも含めましてやっておりまして、有翼小型潜水艦そのものを目標にした研究とも言えませんが、千トン潜水艦そのものとも言いにくい一般的な研究を相当程度――これはおそらく総体の試験費でも五百万円くらいでございますが、そのうちでも百万円以上のものはそういう方面の研究に使われております。
  185. 辻政信

    ○辻委員 私がこの委員会で昨年言ったのはそうじゃないのですよ。水中有翼艦という独創的な海軍の構想があった。この技師も残っておれば、設計もあるのだ。アメリカはそれをまねしておるのだ。なぜこの研究に使わぬのかと言ったら、そのために百万円出しましょうとこの委員会ではっきり言っておる。ちゃんと速記録にあります。そうして今聞くとどっちに使ったかわからない。こんなことで委員会をごまかすつもりかどうか、どうでしょう。
  186. 小山雄二

    ○小山説明員 たとえば翼、かじの問題等につきましても、従来の有翼のもの、そういうものを試験しております。そういう意味から言いますと、試験の項目としてはそういうものも含めますが、そういう型の潜水艦を作るという目的の研究とは言いにくいという趣旨で今申し上げたのであります。
  187. 辻政信

    ○辻委員 そこに人がかわると食い違いが出てくる。だから私は防衛庁の人事行政は悪いと言うのです。前任者のやったことを知らぬ顔して、そうしてつべこべと申しわけをする。そうして国会をごまかそうとしてもごまかされない。速記録に載っておる。速記録通りやったかどうか。ことにこの問題では、ずっと前の砂田長官が非常に共鳴をなさって大蔵大臣に話して、五億くらい出して試作をやろうというところまで話が進んだことがある。それが三ヵ月でおやめになって立ち消えになっておるのですね。いわゆる人事というものが、この長い生命を持った防衛力の整備というものにマッチしておらない。一人言ったことは、人がかわったら知らぬ顔をするというところに国会を無視するそういうことが生まれてくるのです。皆さんの任期は二年半かもしれないが、自衛隊というものは永久に続く生命を持っておる。それを人がかわるたびにごまかして、前任者の言ったことを忘れてしまう、これで一体一貫した防衛力が作れると思うのか。私はこの際はっきり申し上げます。昨日専門家を呼んで三時間議論しましたが、専門家も納得しておったのであります。あの海龍の発明者は佐藤五郎という技師で、現在生きております。十年間研究して一つの識見を持っておる。これを戦略上の見地から取り上げたのが黒島亀人海軍少将であります。その人も健在であります。そうしてきわめて有効な示唆をわれわれに与えられた。でありますから、ほんとうにこのようないわゆる民間の篤志の技術家、研究家を防衛庁が謙虚な気持で迎えられて、そのアイデアを生かすということをおやりにならぬというと、単に技研におる古ぼけた頭の技術者だけで日進月歩の兵器の進歩に追いつけるものではない。特にお願いをしておきたいことは、アメリカが使いものにならぬ古い物を持ってきて、二流品、劣等品を持ってきて、日本防衛力をやらそうというようなことは、アメリカ兵器メーカーのマーケットを日本に作ろうとすることで、これじゃ相ならぬ。われわれは、われわれの持っておる独創力によって日本の置かれておる条件にぴったりする新しいものを作り上げて発見をしていく、開拓をしていくというところに、一つ思いをいたしていただきたいのであります。  これで私の質問は終りますが、大事な点ですから、長官のはっきりした御見解を承わって質問を終ります。
  188. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの冒頭の事務の継続性ということは、これは防衛庁に限らず、政府各省に絶対必要なことだと思っております。ただ十分な申し送りというものがなかったというようなことも往々にあったと思いますが、もしそういう事実がございましたら、これは十分自戒いたしたいと思います。  それから次に、具体的な問題としての水中飛行機と申しますか、有翼潜水艦と申しまするか、この問題でございますが、私も話は聞いております。しかしながら、技術的にこれがどうであるかということについては、まだ十分な検討の結果の報告を受けておりません。ただいまの篤志の専門家の御研究は大いに多とするものでございます。ただ、これに対する検討がまだ十分にできていないものでありますから、そういったような有能な方には十分教えを請いたいと思っております。でありますから、そういった問題に限らずほかの問題についても、そういった権威者の意見を今後十分に尊重してやっていきたいと思う次第でございます。具体的な今の問題については、幕僚の方にもよく接触しまして適当な措置を講じたい、こういうことをここで申し上げる次第であります。
  189. 相川勝六

  190. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 九月の十四日でしたか、藤山外務大臣とマッカーサー大使との間で日米安保条約と国際連合憲章との関係に関する書簡というものが署名交換されたように聞いておるわけでございます。この安保委員会におきまして、長官も委員の一人であられるわけですが、この交換公文を政府としては非常に高く評価しているように聞いております。新聞によりますと、藤山外務大臣のごときは、アメリカの議会筋を刺激してはいかぬから大きな声では言えないが、実質的には相当大きな安保条約の改正といえると思う、また、これで日米安保委員会の一目的はほぼ達成された、片務的だという批判にも十分な返答になると思っているというようなことを述べられているようでございますが、私どもも一生懸命この交換公文なるものを読んでみましたが、一体どの点が安保条約の実質的な改正に当るような重大な意義を持っているのかさっぱり見当がつきません。そこでまず最初に、その重大な意義というもの、高く評価する点というものについて親切に御説明を願いたい。
  191. 津島壽一

    ○津島国務大臣 九月十四日の日米間の安保条約と国連憲章との関係に関する交換公文ですが、内容はすでに御承知の通り当時発表されたものでありますが、これは安全保障に関する日米委員会というところでこの問題が一応討議、協議されたわけでございます。この日米安全委員会は課題が三つございまして、第一は駐留米軍の配置及び利用を含めての日米間の安保条約に関する諸問題、第二の問題が、この日米安保条約と国際連合憲章との関係について、これが安保条約に合致するということを確保するということについての協議、こういうことになっております。第三は省略いたします。この第二の問題について、日米安保委員会において話し合った結果、結局これは政府間の交渉に移すということで、外務省と在日米大使館との間の正規の交渉によってこの交換公文が行われたということでございます。そこで、本来この問題は防衛関係でありまして、安全保障の問題でありまするから、防衛庁担当の者としてはもちろん十分の検討もいたし、またこれに対する見解も申し述べた次第でございますが、ただいま御質問があった点の中に、藤山外相は、これは日米安保条約の実質的の改正である、重大な意義があるというようなことを当時声明された、こういうことがありましたが、改正であるというようなことを藤山外相が申し述べたかどうか、とにかく私は十分聞き及んでおりません。この問題については、主管というか、外務大臣に御質問をなされて、十分に所見をおただしになっていただくのが適切ではないかと思いますが、せっかくの御質問でありますから、私の承知しておる範囲においてお答えをしたいと思います。  この交換公文の表わす意味は、文章そのものにありますように、A、B、Cの三つの点があります。Aの点は、日米安保条約は国際連合憲章のワクの中にあるという趣旨を表わしたものと思います。従来、この日米安保条約に関しては、種々の論議というか、批判があった。国際連合憲章とこの安保条約との関係はどうかということが、往々にしていろいろな疑問を抱かれたように思っております。  そこで、第一点としては、日米安保条約というものは国連憲章のワク内にあるものである。すなわち、文章に書いてありますように、この日米安保条約から生ずるところの両国の権利、義務というものは、国際連合憲章による国際連合の責任といったものに何らの影響を及ぼすものではない、いわば優先の原則というものがここにはっきりしたわけであります。  第二点は、日米安保条約も、そういった意味において第二条の国連憲章の原則を認めるということを、ことに相互に明確なる了解を遂げて公文に表わしたということでございます。これらの点は、ほかのNATOであるとか、あるいはSEATOであるとかいったような安全保障条約にはそういう規定があるわけであります。ところがこの日米安保条約は日本が国連に加入前のものであって、その当時の事態としてこういった条文は盛り込めなかったけれども、それを補足する意味において、この条約上の地位を明確にする意味において、今回相互の理解を公文によって確認した、こういうことでございます。  第三点は、米駐留軍がまた日本と共同防衛立場で自衛権の発動をする、従って実力行使というようなことがあった場合に、その実力行使は国連憲章第五十一条に準拠すべきものであるということが明確にされた。すなわち、具体的に言えば、安全保障理事会がそういった有事の場合にとるべき措置をとるまでの間、そういう実力行使というものは制約されるものである。でありますから、国連安全保障理事会において憲章の規定によって所定の措置をとった場合は、これはそこで終るべきものである、また報告をすべきものであるというようなことが第三項に表わされたものでございます。  これは決して日米安全保障条約を改正したものと見るわけにはいかないかと思います。しかし条約の精神、また国連憲章の精神と合致して、従来やや不明確であった点をここに明確にしたということでございまして、日米安保委員会の課題である第二点を協議の結果、その点において意見が合致し、正式に日米両国間の外交上の交渉によってこういうものができた、こういう事情になっております。  条約のいろいろな解釈の問題その他については、外務省に専門家がおりますから、そちらにお尋ねになれば十分詳細な説明ができると思いますが、私に関する限りにおいてはそういう経過であったということを申し上げて答弁とする次第でございます。
  192. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は防衛庁長官にお尋ねをしておるわけです。日本防衛責任者としての立場でお答え願ってけっこうなわけです。外務大臣がそういうことを言うたか言わないかはともかくとして、防衛庁長官としては別に実質的な条約の改正に値するような価値を認めない、こういうふうにわれわれとしては今の答弁の中からとるわけですが、その点よろしゅうございますね。
  193. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは条約の改正そのものではない。しかしながら、日米安保条約の、今日までやや不明確であった点を、ここではっきりと両国の了解によって補足されて、今後の運営において円満というか、誤まりがないようなはっきりした立場がここにできた。従って今後の日米安保委員会――私もその委員の一人でありますが、そこにおける今後のいろいろな問題を協議する上においても、これが大きな指針となって、いろいろな協議の事項が誤まった方向に向わないようにいくことができるという効果もある。その点から言えば、今日まで長い間の懸案であったというか、疑問であった点がことに多少明確化された、こういうことを申し上げていいだろうと思います。
  194. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もっともらしくこういう公文を交換しておるのでございますが、私はほとんどその価値を認められないと思う。現に当事国である日本にしても、アメリカにしても、現在においては国連加盟国であって、しかもこの国連憲章の精神を尊重していくということを再三言明しておる国で、何も事あらためてこういうものを取りかわしたから、取りかわさないからといって、内容が変ってくるものではないと私は思う。現に国連との関係については安保条約の中でも相当うたってあるわけであります。たとえば「国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、」云々といったように書いてあり、あるいはまた「日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従って平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、」云々、国連憲章の精神というものは安保条約制定の際にも十分に取り入れてあった、今あらためて公文を交換しなければどうもおかしいといったようなものではないと思う。外務大臣が言ったか、言わないかは別として、いかにもこの交換公文によって実質的な安保条約の改正が遂げられたと言わんばかりの宣伝をされることは国民に対する欺瞞だと思う。そういう意味において先ほど長官も御説明になっておりましたが、この安保委員会というものの性格のあいまいさというものをここで一つは暴露しておるのじゃないかと私は思う。安保委員会というものがどういうことをするのか、御指摘の通り三つばかりあげております。その中の一つがこれで片づいたというのですが、たったこれっぽっちのことです。重大と称するその一つの問題を片づけた。交換公文というものはこんなものである、こういうことになると、いよいよもってこの安保委員会の存在の価値というものも怪しいものだと言わざるを得ないと思うのですが、その点いかがですか。   〔委員長退席、保科委員長代理着   席〕
  195. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの御所見ですが、これはもう国連憲章に書いてあることで、そんなことは言わなくてもわかっておるものだという御見解のよであります。要約すれば、別に書いたからといってどういうことでもないとこういうような御見解である、そういうお考えの方にはそうでけっこうだと思います。しかし、これはいろいろ国民の中には、議会の速記録をごらんになってもおわかりになると思いますが、これは一つ調べて出してもいいと思いますが、日米安全保障条約については疑問とされる点が多かったわけでございますが、今回の公文交換によって全部解消したとは申しませんか、とにかく国民の間にいろいろ疑問をはさまれたというような事態は事実なんでございます。それをはっきりするということは無用なわざとおっしゃればおっしゃるかもわかりませんが、私は国民に対して、政府はこういう措置をとるということは当然の義務であって、おそかったといってもいいだろうと思うのです。その意味においては日米安保委員会というものは有効な存在だと思うのでございます。これは我田引水じゃございません。なおまた日米安保委員会は、この公文交換に現われたようなことだけをもって終始するものじゃございません。第一の米駐留軍の配置の問題、使用の問題、これも当面相当重大な問題であるということは御異論ないと思います。さらに第三においては、これは日米関係を、これから国民の所要、願望に沿って両国の関係をどう規制するか、調整するかというような問題も、まだ今日は審議というか、協議されていない問題でありますから、どうぞしばらく時をかして十分見守っていただきたいと思う次第でございまして、今回の公文交換によって直ちに何らかあまり効果のないものだという御批判はしばらく一つ御容赦願いたい、こう思います。
  196. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ具体的にお尋ねいたしますが、安保条約の第一条によれば、結局日本におりますアメリカの軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために、いわゆる武力行使といいますか、そういうことができるようになっておる。そういうことは今後完全になくなったというふうに理解していいわけですか。
  197. 津島壽一

    ○津島国務大臣 この条約そのものの第一条を改正したということは申し上げておりません。今の公文交換に関する限りにおいては、その関係部面において明確なる了解を得た、こういうことを言っておるのでございまして、第一条の、たとえば極東の平和維持のために米軍が寄与するといったような規定については、この交換公文は触れておらないわけでございます。だからこれを削除したのかとか、修正したのかということは、今まで申し上げておらぬわけでございます。
  198. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなたは先ほど国会の議事録を読んで見てもわかるとか、国民の中で非常に疑問を持っておるものがたくさんおるとか言っておられます。私はそれじゃ具体的にその点を持ち出そうという態度で今持ってきておるわけです。国会で論議され、国民の多数の人が不安を持っておる問題の第一は、日本の駐留米軍というものが、この第一条に基いて極東における国際の平和と安全の維持に寄与するためと称して、そして軍隊を実力行使に移すのじゃないか、出動させるのじゃないか、そういう点で疑問を持っておるわけです。日本政府の明示の要請も何も必要ない、そういう形で問題になりておる。あるいは自衛権というものの幅を逸脱するようなことがあるのじゃなかろうかという点で疑問を持っておる。そうすると、あなたはこれで一応安心なんだ、解明できたのだとおっしゃる以上、こういう抽象的なことは、今後たといそういう内容が第一条にうたってあろうとも、そういうことは絶対に米軍としてもやらないのだということの意思の統一がなされたら、その一つ一つについての御説明がなければ私は安心もできない、高く評価もできないと思うのですが、いかがですか。
  199. 津島壽一

    ○津島国務大臣 この交換公文は、日本が直接間接の侵略を受けた場合に、米駐留軍がどういった発動、実力行使をやるか、それを国際連合憲章のもとにおいて制限があるということを明確化したものでございます。従って、今仰せになりました第一条の前段と申しますか、極東の平和云々という問題については、実際上の運用になります。すなわちこの権威的な解釈は、はなはだ失礼ですが、外務省の権威ある当局、外務大臣にお聞き下さる方が私は適当でないかと思います。防衛庁としては、日本に対する間接直接の侵略に対して、どういった防衛措置を講ずるかということを主たる任務としておるものでございます。従って、極東の地域の米軍の行動というものについて、どういったことがあるかという問題は、条約の解釈の問題でして、その場合には防衛関係にどういう影響があるかということは、当然防衛庁の責務として考慮しなければならぬ問題でありますから、条約の解釈という問題でございますが、その場合は、私の解釈といたしましては、日米安保委員会において両国の共同声明によって了解したところ、すなわち米駐留軍の配置、使用ということについては、この委員会で協議するということに相なっておるのでございます。従って、米軍日本に駐在するものをどこにどうするという場合には、おそらく協議を受けるものだろうと考えているわけであります。そういう意味においては、これは日米安保委員会の運用の問題として考えらるべき問題、こういうふうに私は考えております。
  200. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 すると、そういった問題についても、まだ全然今度の交換公文は関係もないし、今後安保委員会で話し合いをする内容になるんだ、こういうことですか。
  201. 津島壽一

    ○津島国務大臣 大体その通りでございます。
  202. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと、やはり安保委員会の使命と申しますか、審議すべき事項としてあげられている第一の問題が一番重要だ、こういうことになるわけですが、その第一は、「米国によるその軍隊の日本における配備および使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生ずる問題を検討すること。」ということにあると思うのです。この「実行可能なときはいつでも協議する」という実行可能なときというのは、一体どういうことなのですか。必ずしも協議する必要はないというふうにとれるわけですが……。
  203. 津島壽一

    ○津島国務大臣 こういう表現はいろいろ解釈があるだろうと思います。実行可能なときはやると言えば、実行できなかったからやらない、こういうことは逆には言い得ると思いますが、これは両国間お互いの信頼関係というものがここに働かなきゃならぬと思うのです。であるから、実行できないからやらないという場合を、実行可能であるにもかかわらずというようなことであれば、相互の信頼はなくなるわけであります。そういう意味において、配置並びに使用の問題については、米側は誠意を持ってよく協議をするということを私は期待いたしております。
  204. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ従来は安保条約に基いて別に協議をすることなしにも米軍が一方的に軍を動かすことができたという前提にならなければ、こういう約束はなされないと思うのですが、その点は間違いありませんか。
  205. 津島壽一

    ○津島国務大臣 こういった文書によるはっきりした約束というか、そういったものができた場合と、またそれがなかった場合とにおいては、私はある程度の相違があると思います。しかしながら日米関係において、いわゆる共同防衛という形をとっておるこのときに、かりにそういった今までのように何らのこういった了解がない場合においても、これは法律上、条約上の観点は別でございますが、事実上の問題としてはこういうことはあり得たと思います。しかしながら、そういったようないわゆる解釈上の疑点をはっきりするということが一そう両国の関係を親善ならしめ、相互の間に摩擦そごを起さないという効果がある、こう申し上げてよいだろうと思います。
  206. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私はどうも共同防衛ということがわけがわからなくなってくるのですが、あらためて安保委員会でこのようなことを相談しない限り、   〔保科委員長代理退席、委員長着席〕 従来のままの方式でいくと、米軍米軍で勝手に、日本が危険だから、侵略されそうだからというような判断を下して実力行使をやる。自衛隊は自衛隊で、七十六条あるいは八十八条の手続を経て実力行使をやるというようなことになると、ばらばらになっていくわけですが、それが一体共同防衛と言えるのですか。
  207. 津島壽一

    ○津島国務大臣 その点は今度の交換公文に関連のない全体の問題だと思いますが、行政協定の二十四条だっだと思いまするが、それには、両国政府は一朝事あった場合、すなわち直接間接の侵略を受けて出動する場合には協議をする、こういうことが書いてあるのです。これは、行政協定は安保条約に付随したものでありますけれども、拘束力があるわけであります。そういう意味において、ただ従来はそういう出動行為をする場合に、何らの日本との協議なしに単独に出動するということは行政協定の手前からはできないものと私は解釈いたしておるのでございます。
  208. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 行政協定の手前からはできぬけれども安保条約の手前からはできるというのは一体どういうわけですか。
  209. 津島壽一

    ○津島国務大臣 安保条約にはその規正がはっきり出ていないということです。だけれども、安保条約と行政協定は一体的なものであります。そのことは安保条約にもちゃんと書いてあるわけです。一体とは書いてないけれども、実行については行政協定によってやる――その行政協定の中にそういう規定が盛り込まれておる。これは条約の形としていい悪いということはしばらく抜きにいたしまして、そういう形式的な問題は別といたしまして、そういうことは一体のものとして運用さるべきものだ、こう解釈しております。
  210. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 しかし、行政協定で明確になっておっても、条約自体が不明確だから協議されないままに使われるおそれもある、こういう解釈を下しておられるのでしょう。
  211. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ちょっと質問趣旨がよくわかりませんが、交換公文のねらいとしておるのは、自衛権の発動以外は米軍の出動は認めないというような原則を国際連合憲章との関係においてあそこに表わしたわけでございます。でありまするから、俗に言う、アメリカ駐留軍が自衛権発動以外に用兵出動行為をするということは、国際連合憲章の建前からは制約されるものだということを交換公文ではお互いに確認したということになっておるわけでございます。
  212. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私がお伺いしているのは、わざわざ安保委員会でこういうことを審議するんだということを日米、両国の間に共同発表されておるわけなんです。その第一に、安保委員会で審議すべき事項として、いわゆる「米国によるその軍隊の日本における配備および使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生ずる問題を検討すること。」とうたっているわけなんです。これは間違いないですね。私は、この「実行可能なとき」という言葉が入っていることも妙なものだと思いますが、今さら協議するということをここではっきりうたっているということは、今までは協議しなくても配備あるいは使用が自由裁量、米軍の一方的な裁量によって可能であったという前提に立たなければこういう取りきめは何にもならぬじゃないか、そうお尋ねしているわけなんですよ。だから今まではそういう米軍の一方的な裁量で可能であったのかどうか、その点の確認から先にしていただきたいと思います。
  213. 津島壽一

    ○津島国務大臣 敵対行為または侵略行為が起らない平時の状態において、駐留米軍が配置がえをするとか使用をどうするとか、配分、それは安保条約には規定がないのでございます。いわば条約上の地位からいえば、これは自由であっても何らこちらから文句のつけようがない、こう解釈するのが当然じゃないかと思います。
  214. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 これは平時の場合における使用についてのみですか。
  215. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは日米安保委員会において、非常時の出動の場合もこの委員会で取り上げるか、または行政協定の二十四条の規定によってやるかということは、私はまだはっきりした結論というか考えを持っておりません。十分検討いたします。
  216. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 どうもそこのところがわからないのですが、結局安保委員会で審議すべき事項として第一に掲げられております、この米軍の使用という場合、この使用というのはどういう意味で使われておるのですか、まずそれからお話し願いたいと思います。
  217. 津島壽一

    ○津島国務大臣 広い意味においては一朝事あった場合も含むかもわかりません。しかし必ずしもそういう二十四条そのものをさすものとは思っておりません。いかなる方向に使用するかということは、そのときの具体的の問題であろうと思うのでございまして、ここで直ちにこういう場合ということを申し上げるわけにはいかぬかと思います。
  218. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 われわれが一番関心を持つのは、平時において米軍の配備をどうするかということももちろんでございますけれども、やはり有事の際に問題が一番あると思うんですよ。そういう問題が協議されないとするならば、幾ら協議されたって、その値打ちは、半減どころか、ほとんどゼロにひとしくなってくるのじゃないかと思うのです。わざわざここに配備及び使用――特にこの間岸総理が外務委員会においてこういうことを言われておる。「共同声明にもはっきり書いてあるように、日本内地におけるアメリカ軍の配備及び使用に関しては、この合同委員会において取り扱っていくということが明瞭にされておりますように、従来のこの安保条約の条約面に現われておる字句解釈だけから言うと、無制限であり全然日本側の意思をいれずして一方的にすべてのことがやられるようなことになっておるわけであります。」と総理はお認めになっておる。この点お認めになりますか。
  219. 津島壽一

    ○津島国務大臣 条約上の立場からは自由であるということは今申し上げたつもりでございますから、総理の答弁とは私は矛盾しておらぬと思います。そこでつけ加えて申しましょう。日米安保委員会における課題としての、第一条の米軍の配備、使用という問題、この使用の部分は何であるかという御質問が先ほどあったようですが、これは行政協定との関係においてはこう解釈すべきが当然だろうと私は思います。すなわち行政協定第二十四条は、わが国に対する直接の侵略脅威が起った場合に、日米両国はこれに対処すべき措置について――共同措置でございますが、これについて協議をする。しかし、日本自身が脅威を受けないような場合において米駐留軍を使用するという場合もあり得るわけでございますね、ほかの地域に対する自衛のために。そういった場合は行政協定二十四条の範囲外でございますね。その意味においては日米安保委員会の協議事項となったものの方が広いということは言えるでしょう。しかし一方の二十四条の場合については、具体的にここにちゃんと両国政府で協議する――委員会の議にはかるかどうかということ、これは手続上どういうことがあるかわかりませんが、とにかく二十四条というものは厳として存在しておるわけでございます。この点からいって日米安保委員会の第一の議題に含まれているところの米駐留軍の使用という問題は二十四条そのものじゃないということを申し上げていいんじゃなかろうか。従って駐留軍の使用という問題があれば行政協定の二十四条へ行くか、またこの第一議題によって措置されるかということは、そのときの場合に応じて私は適当な措置が講じられる、こう思うのでございます。しかしこういうものがない場合においてはこの行政協定二十四条だけの力で協議が行われる、こういう意味であって、安保条約の上からいって、また行政協定の上からいって、岸総理がいかなる場合にも自由だというのは、日本防衛のために共同措置をとることも自由であるという意味には解釈できぬのじゃありませんでしょうか。一応御検討を願いたいと思います。
  220. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 この安保委員会の審議すべき事項の中でも「日本における配備および使用」となっておるのですよ。「日本における」と明確になっているのです。そうすると日本における米国軍隊の使用については行政協定の二十四条で明確になっているというのに、それ以外にどんな使用があるのかと私、聞いているわけです。今大臣がおっしゃったような場合ではない。明らかに日本における使用となっているのです。
  221. 津島壽一

    ○津島国務大臣 日本における配置を変えてそうして外へ持っていくという場合は、いろいろな、ただ単純な配置転換もありましょう。またそれが出動のための配置変えもございましょう。そういった場合に安保委員会の課題においては一応協議の事項になる、こういうような趣旨で――これは解釈の問題でございますから、はっきり書いてございませんが、そういう意味において日本から移動するというような場合は、やはりこの協議の事項になるものと私は了解いたしているわけであります。
  222. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 どうも私わかりません。行政協定の二十四条の論争は前の船田長官と私だいぶやったのです。ところが船田長官としては絶対に心配要らないんだ、協議が整ってから初めて日米共同作戦と申しますか行動に移るのだ、最初に協議がもう前提だといっているのですよ。一応その意味では了解しておったのですが、今度この安保委員会を作るという段になってきますと、日本における米軍の使用については実行可能なときはいつでも協議するというふうに、行政協定で定められた面よりもずっと落ちてきた、一体これは何事だという感じを持っているわけですが、そこのところを私が納得がいくように説明できないものですか。私は配備の問題は問うておりません。日本における使用についてだけお尋ねしているわけです。それが今までは二十四条で大丈夫、使うときは協議するのだとおっしゃっておったのに、今度は実行可能なときはいつでも協議する、これは後退ですよ。こんな後退するようなことをわざわざ初めて置いて、おいばりになる必要はなかろうという感じがするのですが、どうですか。
  223. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今のお説だと二十四条の規定は安保委員会設置のために改正され、また廃止されたというような御見解でございましょうか、もう一ぺん一応趣旨を……。
  224. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 当時の速記録をあとで読んでいただくとよくおわかりになると思うのですが、昨年の二月二十九日に私と船田前長官とで二十四条の解釈についてだいぶ論争をやったわけです。そのときに船田さんは何度も、私の意見に賛成されずに、「行政協定の二十四条によりまして、それらの点について協議をするのであります。まず協議をしなければ、どういう措置を講ずるかということはここでは言明はできません。そのときの事情によることでありますから、その協議をするということがまず必要なことでありまして」と、協議をすることがすべての前提だ、何回言っても船田長官、がんばっておられた。それじゃ一応その意味では安心ですよ。米軍を動かす場合には日本政府と協議する、そこで合意に達して初めて行動を開始するというのですから、その意味で私理解ができておった。ところが今度安保委員会を作るという段になりましたら、協議をするようになったといって、岸総理も非常に得意になっておられるのですが、しかも、今までは絶対に協議しなくちゃならないといっておったのに今度は協議するようになったのが進歩だ、こうおっしゃっている。その協議の内容たるや、「実行可能なときは」という前提付で、これはてんで前から政府が言明しておったことから見れば大幅な後退じゃないか。これが何が進歩を意味しているかと私は言っているわけなんですよ。
  225. 津島壽一

    ○津島国務大臣 この二十四条の規定は非常事態に処する場合のどうするかということについて協議する、こういう場合でございます。それから、安保委員会の議題になっているものは、たとえば今日の場合米軍撤退でございます。日本内地で向うの駐留軍をこちらへ移すという配置もあり得るかと思いまするが、米本国なりほかの地域に駐留軍が撤退していくわけであります。これは二十四条の規定の中には触れない問題であります。
  226. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それは配備の方です。私の言っているのは使用の方です。
  227. 津島壽一

    ○津島国務大臣 使用もそうでございます。でございますから二十四条は排除したという解釈ならば後退でございましょう、二十四条は排除してないのです。その上に平時の撤退等についてもこれは協議しよう、これは、でき得る何とかいうあれはありますけれども、先ほど言ったようにできないからやらないとかいうようなことはお互いの友好関係、信頼関係の上ではやらないだろうと私は確信をいたしております。平時の場合においてこの通りの協議をするということは、従来こういったものがない場合においては条約上の立場からいって米軍撤退については何らの協議も必要としないでできたと思います。であるから、後退という言葉はどういう意味でありましたか十分理解できませんでしたが、私は後退はしてないと思います。二十四条はそのまま存しておるわけでございます。その上に平時の配置転換その他について十分協議しよう、こういうわけでございますが、これは後退でしょうか。
  228. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それは私は明らかな後退だと思うのですよ。二十四条が現存している限り協議がすべての前提だと政府が言い張っておったのに、今度はそうじゃなしに「実行可能なときはいつでも協議することを含めて、」云々というようにいっているのですから、これは明らかに後退ですよ。
  229. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ちょっと意見の食い違いがあるようでございます。私の方も説明が非常に不十分かもわかりませんが、あとで速記録を十分検討いたしまして御納得のいくような答弁をしたいと思います。二十四条は非常措置であって緊張事態、すなわちここに書いてありますように、敵対行為が――急迫した行為がある、そういった場合に協議するのだということを書いてあるのであって、平時の配置転換については二十四条は関してないものでございます。しかして二十四条はそのまま存続するのでございます。これにプラス・アルファを作るのが後退だという意味がどうも私にはよくわからぬものですから、もっとゆっくりこれは検討してまたあらためてお答えする方が、私も十分検討ができてない点もございますから、ここであまり同じことを申し上げてもはなはだ失礼と思いますから……。
  230. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それは大臣がことさらにこんがらがすからわからなくなるのですよ。私はこの配備という方は頭からのけて下さいといっている。結局安保委員会で審議する事項の第一項の「米国によるその軍隊の日本における配備および使用について」とありますね、この配備の方はもうわかりました。今まで配備について協議する機関がなかったのですから、これからこれを協議するということは一つの前進です。その点は認めるのです。ところが、使用というのが入ってきているから私は問題にしているのですよ。配備の方については前進であることを認めるのです。今までそういう協議決定する機関がなかったからここで配備についても協議しよう、条件付でも協議しようという形のものが出てくることは一応の進歩でしょう。ところが、「配備および使用」の方の「使用」になってくると、これを後退じゃないとおっしゃる方が筋が通らないのじゃないですか。それじゃ一体日本における使用というのはどういう意味ですか、米軍の使用というのは。私たちはやはり有時の際というものに重点を置いて考えているのですがね。
  231. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは先ほどお答えの中にあったと思いまするが、日本防衛日本の脅威というか、直接侵略以外の場合で万一米軍が陸上部隊なり駐留軍を使用するという場合を想定するが、その場合はいろいろ想定の場合があるからということはちょっと申し上げたつもりでございます。二十四条は、日本直接の侵略行為、脅威という場合について協議する、これは日米安保委員会の手を待たないで両国間で協議をしよう、こういうことになっておる、こういう趣旨でございます。
  232. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 今大臣がおっしゃるようなことなら、日本における使用ということにはならないのじゃないですか、この場合の使用というのはそういうふうに非常に広範なわけですから。日本におけるというのは使用にまではかからないということですか。
  233. 津島壽一

    ○津島国務大臣 どうもこの問題は、外務省で条約関係の専門家に十分権威ある意見を聞いていただいた方が、私は十分の御了解を得られるのじゃないかと思うのです。条約の文句なりその他については、やはり専門家があるので、冒頭に申し上げましたように、日米安保委員会というものにおいてこういう協議ができるということを申し上げて、なお安保条約そのものの解釈の問題とかいろんな問題、その他の日米間の交換公文の解釈とかいう問題はしばらく時をかしていただいて、権威ある方面から十分納得いくような御答弁を得られるように措置したいと思いますから、どうぞその辺を御承知願いたいと思います。
  234. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 権威あるということになると、私は総理に出てきてもらわねばいかぬと思うのですよ。先ほど読んだように、総理がちゃんと七月三十一日の外務委員会で述べておられる。今まではとにかく、日本内地におけるアメリカ軍の使用に関しては結局無制限であり、全然日本側の意見をいれずして一方的にすべてのことがやられるようなことになっておるわけであります、と断定しておられるのですよ。だから、そういうことではいかぬから条約を改正したい、しかし条約を改正するというところに一ぺんにいくとアメリカの国内事情がある、だから安保委員会というものを作るのだ、こういうれっきとした説明をしておられるのですよ。今さら検討もへったくれもないですよ。総理大臣がおっしゃっておられることにあなたは閣僚の一人として反対されることはないでしょう。総理大臣は明らかにこう言っておる。米軍日本における使用についてはアメリカが自由自在に一方的にできるのだ、これがわれわれの不満なところだから、どうしてもこれを改正しなければならぬ、だから条約改正という問題を持ち込んだけれども、しかしアメリカの国内事情があってそう簡単に条約改正ができない、そこで安保委員会を作って、改正まではいかぬが、実質的な運用で何とかやっていこうという説明を総理大臣はしている。そうしますと、明らかに私が言っているように、この場合の使用というのは有事の際の使用、これが中心ですよ。米軍が勝手にできないようにするということが中心です。そうなってくると、今度はさかのぼって、船田長官が前に心配要らぬと言っておったのがまたおかしくなってくる。何が何やらわからない。これは明確にしていただくために、必要とあれば、この際総理大臣でも、外務大臣でも、納得のいく説明のできる陣容をそろえて下さい。
  235. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまの総理の答弁は全文読まないとわかりませんが、行政協定二十四条というものが今回廃止になって、安保委員会においてやるという趣旨に読めるようなものでございましょうか、あるいはこれは当然あるものだという前提のもとに従来なかったことも今度やる、こういう趣旨でございましょうか。これは速記録を読んでおりませんし、その場におりませんでしたから十分わかりません。でありますから、今の御質問、総理がこう言ったというその部分について果してその通りであるかどうかということについて、君はどう思うかとおっしゃっても、はっきりしたことをお答えいたしかねるのであります。御了承願います。
  236. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 委員長、これは非常に重要でございますからちょっと休憩して下さい。あとの質問の人には了解してもらいますから……。
  237. 相川勝六

    相川委員長 それでは暫時休憩いたします。    午後四時二十五分休憩      ――――◇―――――    午後四時四十六分開議
  238. 相川勝六

    相川委員長 開会いたします。石橋君。
  239. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 ただいまの質問については、総理、外務大臣、防衛庁長官、岸内閣の意見の統一をやって、近い機会にお答え願うということでございますので、一応私が言わんとしているところを結論的にもう一度申し上げて終りたいと思います。  問題は、岸総理がわざわざアメリカまで行って、今の安保条約というものが非常に不平等条約であり、国民がこの不平等性に対して非常に不満を持っているから何とかして改正をしたいと考えておる、その世論に従って持ち出してみたけれども、いろいろアメリカにも事情があって簡単には安保条約の改正というところまではいかない、それでそこまではいかないが実質的に運用面で改正に匹敵するようなことをやるために安保委員会を作った、こういう大きな打ち出しで実は安保委員会ができておると思う。そしてその安保委員会の審議すべき事項の第一として、「米国によるその軍隊の日本における配備および使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生ずる問題を検討すること。」こういうことをうたっておるのでございますが、前に鳩山内閣のときに、安保条約の第一条の目的を遂行するために協議が必要だということは行政協定の二十四条に明確だというお答えを私はいただいておる。そのように明確になっておるものを今さら安保委員会で取り上げて、しかも今度は「実行可能なときはいつでも協議する」などというふうに大幅な後退を意味するようなものを取り上げておるということについては私は不満なんです。一体これは何事だ、鳩山内閣と岸内閣との考え方というものが違うのか、そのほかにまた原因があるのか、これは非常に重要な問題でございますからなるべく早く取りまとめて御報告を願いたいと思いますので、その点委員長から日取りその他について一応の御確認を願いたいと思う。
  240. 相川勝六

    相川委員長 承知しました。  受田新吉君。
  241. 受田新吉

    受田委員 私は時間も迫っておることですしまだ西村君もあと質問するということでありますので、ごく簡単に二点について長官にお尋ね申し上げます。  第一点は、今回ソ連が先般の大陸間誘導弾の実験に成功した報道に相次いでいわゆる人工衛星を発射しその偉大な成功を見ておるということ、これは日本国にとりましても重大な影響力のある問題だと思うのでございますが、ただ単に科学技術の進歩としてソ連のこの成功を見るか、あるいは国の防衛の上における一新機軸を生み出すべきものだと見るか、防衛庁長官の見解をただしてみたいと思うのでございます。
  242. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今回の人工衛星の発射、これは本年の七月から始まります国際地球観測年の一環の行事といいますか、それとしてかねてから各国ともこういった面の計画は行われたのでございます。ところが今回のソビエトの人工衛星打ち上げというものは非常な成功であったと思います。これがただ純学問的の関係において研究され、またその本来の使命を達するという点においてわれわれは非常な関心を持つということは当然でございますが、さらにすべての学問についてこういった研究の進歩はおのずから軍事の関係においても影響があるだろうということは考えなければならぬ点と思います。それでその軍事的の意義がどうであるかということについてはまだ私どもは詳細な結論というか、評価というかは完全にはできておりませんが、こういつた超高空の状態がどうであるかということは、この実験の結果相当のデータを得る機会があると思うのです。そういうことになりますと、さきに実験されましたICBM、これの弾道の計算等において非常に大きな参考資料になるものがあると思います。こういった意味において今後軍事の方面においてもこれは相当の影響があるものだという観点を持っております。しかし具体的にこういった面はどうなるかというような検討はまだ完全にいたしておりません。これは各国における観測の状況その他を見まして研究を続けていきたい、こう思う次第でございます。
  243. 受田新吉

    受田委員 この人工衛星は、発射当時これを推進したロケットとともに九百キロメートルの地球の上空を回転をしておると報道されております。そうしますとこの発射した推進ロケットというものは、これは兵器としても十分尊重される新しいものでございまするので、単に科学技術の結晶であると見るべきのみでなく、軍事的に見て重大な意義があると、この推進ロケットを一例といたしましても長官はお考えではございますまいか。
  244. 津島壽一

    ○津島国務大臣 私がお答え申し上げたのはそういった趣旨も含んでのことでございます。これが正確なるいろいろなデータによってこのロケットを弾道的な武器に正確に利用されるというようなことがあれば、これは軍事上においても非常に大きな変化がある、こういうことを今申し上げたわけでございまして、今お尋ぬの点とその点は大体同じような見方をしておる、こういうように御了解願って差しつかえないかと思います。
  245. 受田新吉

    受田委員 それでは今時間が迫っておるという通報でございますので、いま一点長官にただしたい点を急ぎお尋ねします。あなたは御存じかと思いまするが、保安庁初代の長官木村さんが第十九回国会で参議院予算委員会において次のごとき発言をしておられます。自衛隊のあり方についてでございます。「志願制度には人員の点において限度があります。私の調査したところによると正確には申上ぐることはできませんが、先ず今の状態においては二十万或いは二十二三万までが限度と考えております。それ以上につきましてはお説の通り徴兵制度を布かなければならんと思っております。」という答弁をしておられるわけです。これについてそのあとお引き受けになっておられます津島防衛庁長官は初代の長官の見解と同一の見解を持っておられるかどうか、お答え願いたいのであります。
  246. 津島壽一

    ○津島国務大臣 当時の木村長官が今仰せのような答弁をなすったということは初めて承わりました。その点は別といたしまして、今日の防衛整備計画と申しますか目標においては二十万というものを目標にいたしておりません。でありますからその数字自体が直接に関係あるということで御答弁申し上げるわけにはいきません。ただ私どもは十八万という目標は一応決定いたしております。これも年度の実行の時期の問題もございましょう。また募集計画のやり方にもよりましょう。しかし、ただ一点いえることは、今のお話の木村長官の答弁にありましたように、それ以上は徴兵制度によらなくちゃならぬという意見には私は同意いたしません。そういった制度によらないで、今日の防衛制度というか、募集制度を活用することによって、自衛隊の隊員の充足は可能である、また可能な限度においてやろう、こういう趣旨に考えております。
  247. 受田新吉

    受田委員 時の流れとともに防衛庁長官の見解もだんだん変っていく。さっき石橋委員のお尋ねについても、行政協定の解釈もだんだん変っていく。こういうふうになってきますると、これははなはだわれわれは安心できない防衛庁の考え方だと思わざるを得ません。現に自衛隊の応募状況は優秀な隊員を募るのには限界にきておると聞いておるのです。りっぱな者は採れない。従って志願兵の制度をとる以上は、たとえば志願者が募集人員の三倍とか五倍とかおらなければ優秀なのがよれないのです。そうすると自然にこの限界がきて、ここに木村前長官が言われたような徴兵制度施行へおもむかざるを得ない立場に私は立ち至ると思うのですが、この状況について応募状況からあわせて優秀な志願兵が得られないという段階にきてはいないか、お答えを願いたいのです。
  248. 津島壽一

    ○津島国務大臣 今の隊員の募集状況はどうかということ、それがどういった情勢にあるか、今後の情勢と勘案してという御質問だったと思います。それで昨年度に比しては本年度は多少の応募者の数の減退を見ておるのは事実でございます。しかし今年度行いました第一次の募集の計数は、もう締め切って現実にこれが実行されておるものでございますが、一万一千八百名募集の計画目標でございます。応募者の数は五万一千二百八十六人、すなわち四・三倍、四倍強でございます。そういった意味において、ただいま御質問中にありましたように三倍、四倍なければいけないというその倍数には――本年度の過去の第一次の募集は一万一千名に対して五万一千名の応募者があったという事実でございまして、四倍を越しております。四倍以上でございます。最近行なっている第二次の応募状況、まだ正確なる計数はまとまっておりませんが、これも募集すべき人員に対して四倍に近くなっております。そういった状況でございまして、昨年の第一次のごときは五倍以上、六倍に近い応募者があったわけでございます。そういった意味において、募集のやり方その他についてもいろいろ工夫をする必要があるものがあるということは十分認めておりまして、また従来の不備な点に十分改善を加えていって、優秀なる隊員を募集をするということに大いに力を入れたい、こういう方針になっておるわけでございます。
  249. 受田新吉

    受田委員 自衛隊の現在の数が、すでにあなたがこの間発表された三十三年度の計画の中でも、陸上一万、海が二万六千、それから空が三万一千というような数字になって、合計していくと、少くとも予備自衛官を入れなくても二十三、四万という数字になってくる。しかももう一つ問題は、近く米軍が撤退するという声明を発しておるのでございますから、今残っている海空というものが撤退した場合に、当然補充として自衛隊員を増強しなければならぬという問題が起ると思うのです。この点につきまして、現在撤退をしつつある陸を別にして、今日本米軍はどれだけおるのか、そして艦船がどれだけあり、飛行機がどれだけあり――もし飛行機や艦船の数字を申すことができないとすれば問題があるわけでございますが、日本内における米軍の兵力というものを、人員と装備の上からちょっと申していただいて、今私が申し上げている自衛隊増強との関連をお答え願いたいと思います。
  250. 津島壽一

    ○津島国務大臣 海空関係のお尋ねでございますが、米駐留軍の海上部隊は大体二万くらいと了承しております。それから空の方は、それよりも多ございまして、大体五万くらいということに承知いたしております。そういうものでございます。との撤退の時期はまだはっきりわかりません。徐々に結集等その他のことはあるようでございます。  それら装備の関係は、私からこういうものであるということを申し上げることは差し控えておきたいと思うのでございます。これはそれで一つお許し願いたいと思います。
  251. 受田新吉

    受田委員 その装備の方が申されないという根拠は、どこにあるのでございますか、日本におる駐留米軍の装備が話されない理由は、何か根拠があるのでありますか。秘密保護法にもそういう規定がないようですし、またあちらとの協定の中にも、そういう条項は発見できないのでございます。
  252. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは従来国会においてもそういったことを申し上げたことはないように私は承知しているのであって、いわば理由は、徳義の問題とでも申しますか、そういった詳細の装備については申し上げない方がいい、こういう見解であったと思います。
  253. 受田新吉

    受田委員 徳義の問題ということになると、これは米国に対するお気がねという立場でございますか。あるいは政府自身が向うと秘密の取りきめか何かしてあるのでございますか。
  254. 津島壽一

    ○津島国務大臣 徳義という言葉は広い意味でございまして、駐留軍の装備については、先方でもこれは機密にしておる問題なんでございます。そういった意味において、私から米軍の装備を発表するというか、申し上げるということは、適当でない、こういう趣旨でございます。
  255. 受田新吉

    受田委員 私これで終りますが、日本防衛計画を立てる上に、米軍日本における兵力、これを無視しては立案できないわけです。国防会議にしても、そういう意味で米軍が撤退した後に幾らの日本軍の補充を要するかという問題を抜きにして日本防衛は考えられないと思うのでございます。そういう米軍日本における実態がわからないようなことでは、これはどうも相互の防衛国民に理解させる上に非常に支障が起ると思います。国民に対して防衛の実を上げたいと政府がおっしゃっておる、その防衛観念を植えつける上にも支障があると思いますが、いかがでございますか。
  256. 津島壽一

    ○津島国務大臣 日米安全保障条約による防衛の体制は、単に日本におる今の海空と申しますか、それだけにわれわれは期待するわけじゃないのでございます。極東空軍あり、極東艦隊あり、また御承知のように南太平洋の方にも艦隊がおるわけでございます。そういったような広い範囲における防衛というものもわれわれは考慮に入れることも必要かと思います。そういった意味において日本の装備関係がどうだということは、これは防衛当局としては十分連絡はとっておるつもりでございますが、しかしこれを日本防衛当局から具体的な計数を申し上げるということは適当でない、私はこういう考え方をしておるわけでございます。
  257. 受田新吉

    受田委員 安保条約の中にも、日本に駐留する米軍日本防衛に当るという規定が私はないと思います。従って日本を守ってくれる駐留軍という規定でなくして、駐留及び軍の使用目的しか安保条約には規定していない。そういう意味からいえば、米軍日本に来ておる実態を知らしめないという政府意図もわかるかと思うのでございますけれども、そうなれば、防衛分担金の問題などもすぐひっかかってくる問題なんです。少くとも国民が負担して米軍に対して協力しておる、この国費を費してやっておる米軍の装備の実態について、これを日本側だけ発表して、米側が発表されないということになると、非常に暗い影がただようておると思いますが、絶対にお答えできませんか。一つ言ってもらえませんか。
  258. 津島壽一

    ○津島国務大臣 これは私から申し上げるわけには参りません。  それから防衛分担金の問題は、直接装備の問題とは関係なしに、あれは方式がきまっておるようでございまして、それとは関係がありませんで、先ほど申しましたような適当でないということで御了承願いたいと思います。
  259. 受田新吉

    受田委員 装備と兵員とはくっついておる。従って兵員だけの関係で分担金の問題が論ぜられたりする問題でなくして、米軍のこちらにおることに対しては、国民の税金でこれをまかなっておるという問題が問題なんでございます。今非常にお苦しいようでございますし、時間も迫っておるようで、私はここで一応遠慮しますが、次会に何かの形で説明ができる限度を拡張してもらって、御検討を願っておいていただきたいと思います。
  260. 相川勝六

  261. 西村力弥

    西村(力)委員 大臣は航空事故防止に熱意を持っていらっしゃることは大へんけっこうです。いろいろ方法はあるでしょう。一つは、前に私C46に乗せてもらった場合にも地上からの指令があった、こういうことであったのですが、そういう点を改めるお考えはないか。それから日本の軍人精神のなごりであるかどうか、やはり飛行機は天皇のものである、これを損傷してはいけないというような昔なりの考え方が主位を占めておるので、相当危険な状態になっても飛行機を守ろうとする気持が先に立つのではないか、そんなようなことも考えられる。危なくなったら飛特機をぶん投げても自分だけのがれろ、こういうような工合にその二つの点が考えられないかどうか。これは大臣にその点だけをお伺いしたいと思うのです。
  262. 津島壽一

    ○津島国務大臣 第一点は地上から誘導する航空管制の問題だろうと思います。これは定員を充実してだんだん整備をやっております。来年度等においてはこれは非常に必要なものとして相当重点を置いてやることにいたしております。それから飛行機の搭乗員、操縦士が航空機を愛して、ただ自分の身を守るというような態度でやるべきでない、こういう御注意であります。まことに同感でございます。これは訓練の上においてまたいろいろ指導の部面においてそういったことに十分の注意を加えてやるということにいたしたいと存じます。
  263. 西村力弥

    西村(力)委員 二、三日前の新聞でしたか、伊豆の新島に誘導弾の試射の基地を作るのだということが出ておりましたが、いよいよ本格的になってきたのだなと思っておったのですが、あそこで試射する誘導弾はエリコン社から何機入っているのですか。それだけでは何ともしようがないので、そのあとの見込みをどういう工合に持っておるのか。国内生産あるいは米国からの供与、そういう見込みはどういう工合になっているのか、この点をまず伺いたい。
  264. 小山雄二

    ○小山説明員 訓練用のエリコン誘導弾でございますが、これは来年の初頭日本に来ることになっております。ただこれは海上に落ちました場合に、回収する装置を持っておりませんので、新島の射場ではこれはさしあたりは試射するつもりはございません。将来いろいろ改造いたしまして、この射場で試射するということもあり得ようかと思いますが、そういう装置がございませんので、訓練弾で撃ちましたいろいろ記録その他の装置を積んでおりますので、撃ちましたものを回収しなければならないので、そういう装置ができるまでは、エリコン社のものは新島では使わない。今、国内でいろいろ研究しておりますものが三十四年度ごろには射程と申しますか、普通の有効射程というより全部必要な射界、距離五十キロくらいのものを必要とする訓練弾といいますか、試射弾が出てくることになっておりますので、そのために今から手をつけることにいたしまして予算並びに国庫債務等を要求いたしまして手をつけまして、逐次射場として整備して参りたい。来年度要求いたしましたのは三十三年度後半以後できてきます試作品のための射場の準備、こういうふうになっております。
  265. 西村力弥

    西村(力)委員 これはちょっと先の話なんでしょうが、実際試射が行われれば制限海域はどのくらいの大きさになるのでしょうか。
  266. 小山雄二

    ○小山説明員 長さは今申しました五十キロ、幅が三キロないし四キロでございます。
  267. 西村力弥

    西村(力)委員 この誘導弾は地対空でありますが、目標物は敵の飛行機あるいは、ミサイル、こういうふうに二つとも目標として考えるか。
  268. 小山雄二

    ○小山説明員 これは空対空の誘導弾として、地対空の誘導弾として両方試作して参ることにしております。そしてねらいます目標は主として敵の飛行機、こういうことになっております。
  269. 西村力弥

    西村(力)委員 誘導弾的のものが、IRBM、ICBMには及ばないでしょうが、そういうようなものを目標とする攻撃、迎撃誘導弾というものはまだ研究も、また考えもできていない、こういうことになるのでしょうか。
  270. 小山雄二

    ○小山説明員 IRBMはアメリカ、ソ連あたりで相当実用とまでいきませんけれども、試験が成功したような段階、ICBMも登場しようかという段階でございます。これに対する対策といたしまして、われわれも詳しいことはまだわからないのでございますが、英国その他でも研究に着手しているようであります。われわれといたしましては、さしあたり航空機を地あるいは空から目標とする誘導弾の研究をがんばって進めておるわけですが、将来そういう技術的なデーターが入るにつれまして、そういうものに対する防禦策も逐次考えて参りたいと思いますが、何分にも飛び方といいますか、向うの性能その他もはっきりつかめないような状況でありますので、そういう資料を逐次入手次第にだんだんそういうものに着手していきたいと思っております。
  271. 西村力弥

    西村(力)委員 次に茨城県の百里原自衛隊の基地の問題ですが、ここは防衛庁の方で非常に御熱心に地元民の工作をやられるので、いろいろ動きがありますが、何としてもあそこの町民は基地に反対の立場をもって山西なるものを町長に当選させておるのですが、あの町民の意思が町長選挙にはっきり現われておるということは、これは慎重に考えなければならない問題であると思うのです。ところがこの間基地に防衛庁のブルドーザーが来た。そこで地元農民が自分たちの農道あるいは開拓営農というものを守るためにそれにいろいろの交渉を持った。そうしたときに防衛庁の某係官はブルドーザーの下敷にしてやるぞとおどかしたというのです。そしてそのあと地元の警察に出動を要請して、多数の警官を出動させて一人は三ヵ月の重傷を負った。防衛庁としては初めての警察官の出動要請をやったわけなんです。これは防衛庁は少しはやり過ぎるのではないか。あなた方の今までの立場、各大臣の答弁を見ますと、地元民との完全了解をもとにしてやるのだ、こういう答弁が繰返されておったわけですが、今回警察官を出動させて地元民を圧迫する、こういう事態が発生しておるのです。ここまで防衛庁が新しい踏み切り方をしたということは、どういうことを意味するのであろうか、私はその点を考えたのですが、一つは、大きくはやはり岸内閣の今示されておる方向そのものがあなた方に映ったのではないか。あるいはまた一つは年々防衛予算というものを余しておるために、その点で新しく新規要求の場合において支障がある。あるいはまた国民的な非難も加えられておる。であるから何が何でも一つ警察官出動を要請してでもやるんだ、こういうような考え方になったのだろう、こう推測をするわけですが、警察官を出動さしてまでこうしてやらなければならないという立場は、どういうところから生まれてきておるのか、防衛庁側のこの点に対する立場を御説明していただきたい、こう思うわけです。
  272. 山下武利

    ○山下説明員 お尋ねの百里原の飛行場につきましては大半円満な妥結を見まして、まだ承諾をいただけない人が十数名残っておるわけでありますが、その人たちに対しましても極力説得に努めまして、円満な解決をはかりたいと目下努力をしておるところであります。  お尋ねの事件につきましては、私の報告を受けておりますところを申し上げますと、先月の二十五日、防衛庁ですでに買収しました土地の中に工事用の仮設道路を設けますために、ブルドーザー一台等を持ち込んだのでありますが、その際に仮設道路が農道を横切るところがありまして、その個所に反対の人たちが数十名すわり込みまして、ブルドーザーの通行が困難になりましたので、担当の職員が妨害しないように極力説得に極めたのでありますが、聞き入れられなかったために、その状況を警察連絡いたしまして、立ちのかせてもらったことがあります。この際に調査いたさせましたところが、負傷者を出したような場面は実はなかったという報告を受けております。
  273. 西村力弥

    西村(力)委員 今までですと、警察官出動、そこまでは全然至っていないのでございましたが、初めて警察官出動を要請せざるを得なかったという事情は、単に外面に現われたブルドーザーの進行を阻害したという、だからやるんだというだけの表面的な問題ではない、こう思うのです。防衛庁は何かしらそこに強い決意というかあせりというか、そういうものが生まれてきておるのではないか、こう考えられるわけです。いずれにしてもあなた方は、そのブルドーザーの進行を阻止する連中は、それは悪いんだ、こういう工合にお考えになっておられるかもしれませんけれども、現在自衛隊というものは憲法に抵触するんだという一部と言うか、国民の中の相当多くの見解というものが存在する、そういう点からもこの警察官を出動させて日本の人民をけがさせるというような、こういう立場はとるべきではない、こう皆さん方に私は強く要請したい。しかもあの農地は、戦後不幸なる立場に置かれた引揚者たちが、営々として十年間築いてやっと開墾の成功検査が一年前に終っただけなんです。今自分たちの精魂込めた土地を放すまいとして残っておる人が相当たくさんおる。そういう人たちの立場もあり、また国の政策として開拓行政を推進してきた、そういう立場もあって、この開拓農地を転用する場合においては、農林大臣の許可を一定制限内においては必要とする、こういう工合にきめておるわけなのですが、この転用の際において農林省の側からはっきりした条件というものが示されておるはずなんです。その大事な第一の条件とするのは、この施設を設置する地域につき関係入植者及び増反者の完全な同意があること、これが農林省がつけたはっきりした条件のわけなのです。ところがこの関係入植者の中にもまだ同意をしない者があり、増反者には七十数名の不同意者がおる。だからこの同意者が農地法に基いてはっきりつけた条件というものは、はっきり守らなければならない。この農地法に基いてはっきりつけておる条件なんです。農地を転用する場合においてつけた条件なんです。単に儀礼的な条件ではない。農地法に基く条件だ。ですから、この条件がある限り、同意者が全部にわたった場合において初めて施設にかかる、そうでなければならない。それをそのような同意を得ない人が多数おるにかかわらず、施設を行おうとする、そういうやり方が紛糾を招いておるわけなんであります。ですから根本的に、あの今同意した、契約をした、そういう連中の土地が国のものになっておるのだから、防衛庁のものになっておるのだから、そこだけはやるのだ、こういうふうなやり方は中止せらるべきであると思う。そうでなければ、農地法に対する重大なる侵害、こういうことになってくるのではないか。それからまた自衛隊の合憲法に対して疑問を持っている多くの国民に対して、警察権をもって、権力をもって挑戦してくる、こういう工合に思われるわけなんです。この点に関しまして防衛庁側はどういう考え方を持っておられるか、御答弁願いたいと思います。
  274. 山下武利

    ○山下説明員 御承知のように農地の買収につきましては、農地法七十三条によりまして農林大臣の許可が要るわけであります。実際問題といたしましてその許可を申請いたします場合には、防衛庁におきまして十分現地と話をつけて、話のついた土地につきまして農地法の許可を申請するということにいたしております。従って農地法の許可を得て買収いたしましたところにつきましては、当然現地との完全な了解がついておるということに相なっておる次第でございます。
  275. 西村力弥

    西村(力)委員 それはごまかしである。完全に事前に了解をつけて仮契約を結んで転用を申請したとするならば、なぜこんな条件が必要でしょうか。必要ないのですよ。完全に了解をしたときに転用を願ったのだけれども、それだけに限った第一条件なんというものは意味のないことだ。それだったら仮契約をいたしたならば、その施設をどうしようと、これには異議ないはずなんだ。ここに示されておる問題は入植関係者及び増反関係者は、この防衛庁の施設を行われることによって被害を受ける、そういう全体の百里原の開拓民、入植者及び増反者、全体に対してこの条件が認められなければならない、こういうことになっているのだ、こう解釈しないわけには参らぬでしょう。あなたが言うように承諾をした人々に限ってであるから、この農地法の条件の違反にならない、こういうことであるとするならば、繰り返すようですが、この条件を付する必要はないということになる。だからこの条件が付されている限り、それだけに限局される条件ではないのだ、こう考えられるがどうでしょう。
  276. 山下武利

    ○山下説明員 この農地法の解釈につきましては農林省当局ともしばしば打ち合せてあるわけでありますが、決して全体としていきたいという意味ではなく、話のついたところがから逐次防衛庁側で買収をしていく。その話のつきましたところについてこれの許可を与えていこうということに相なっておるのであります。条件はつける必要はないと言われれば実際上はその通りでありますが、農林省当局といたしましては、慎重を期する意味におきまして、念のために完全な了解がついたところからやってほしいという意味でついておる条件であります。
  277. 西村力弥

    西村(力)委員 これはその防衛庁の説得に応じて同意した連中の所有地、すっとあなた方地図でごらんになって十分おわかりだと思うのですが、ところがそれだけの人が同意ができたからといって、何をやってもいいというここになったら、その中に点在する反対する人々、そういう人々は影響をこうむらないわけじゃない。これは重大な影響をそこをやられちゃったらこうむる。だからそういうところを顧慮して、農林省が入植さした入植者を育成しなければならぬ。こういうふうな立切に立ってこの第一条件というものは止まれている。これはやっぱりそういう直接関係を持つ人々が同意をする、そのことができて初めて施設に移るべきであるということを示しておるものだと、私たちはこう見るわけなんです。確かにそうであろうと思う。農林省はそれほど入植さした連中に対して薄情な農政を行なっておるとは考えられない。だから政府一体として、防衛庁がそう言うから、とにかくできたところだけ、申請があったところだけは農地転用はやむを得ないだろう、こういうところまで農林省は折れたわけでありますが、折れたにもかかわらず、なおかつ入植されたそれらの人々に対して、利益が損なわれないように最後の防壁としてこの第一条の条件を付したのだ、この善意に僕らは解釈するし、その方がほんとうに正しいのではないかと思われる。だからこんなことをやったら、あなたのおっしゃられる通りだとすれば、それはもう転用の許可になったところだけはどんどん何でもやって、そこに隣接する反対者がおろうとも、その人たちはどうなってもかまわぬという考え方になってくるわけなんです。これではあまりにひど過ぎるのではないかと思われる。そういうような無理をやられるから、結局地元の人々はことさらにあなた方のやっていることに対して抵抗しなければならない。一度抵抗したあの諸君は、くずれるかといえば、ますますはっきりした立場を持ってくるようになる。それで、この条件はそういう工合に解釈して、十分に慎重なる態度をとって、再び地元民とのこのような憂うべき紛糾が起きることのないようにやってもらわなければならぬと思うし、またそれらの反対派の農民諸君が、毎日の生活、あるいは学校の通学、あるいは仕事の上、そういうようなことから必要なる道路というものには一切耕作をやめて、そうしてこれからの話し合いに努力を向けられるならば向けられる、こういう方向をとってもらわなければならないと思う。私は第一条の条件というものをさように解釈するし、また普通一般の考え方も、あるいは地元の農民諸君の考え方もそういう考え方の上に立っているときに、あなた方が、契約ができたのだから何をやってもいいのだということでそういう人々にはっきり挑戦する態度に出るということになると、ますますあなた方のやり方に対して抵抗が強まってくるのではないか、こうわれわれとしても感ぜられるわけなんでありまして、その点防衛庁側は今後慎重なる行動をせられるようにお願い申し上げたいわけなんです。  おそくなりましたのでこのくらいにしますが、最後に、あなたの方が一番の責任者ですから、私が考えている条件の解釈、あるいは今後の推移に対する憂い、そういうものに対して防衛庁側としてはどういう方針をとられるか、この点を御答弁願いたいと思います。
  278. 山下武利

    ○山下説明員 土地の問題は非常にデリケートな問題でありますので、防衛庁におきましては、百里原に限らず、できるだけ慎重に現地の御同意を得た上で土地の取得に努力していきたい、かように考えるわけであります。  今お話のありました百里原につきましては、ずいぶん長い間懸案でありましたけれども、ほぼ解決の道に進んでいるわけであります。もうあとわずかばかりの承諾を得られない方に対しましては、誠意をもって説得に努めて、できるだけ円満な解決に尽したいと考えておる次第であります。
  279. 相川勝六

    相川委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会