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1957-09-02 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月二日(月曜日)    午前十時十五分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 保科善四郎君 理事 床次 徳二君    理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    田村  元君       辻  政信君    灘尾 弘吉君       船田  中君    眞崎 勝次君       山本 粂吉君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    木原津與志君       島上善五郎君    下川儀太郎君       西村 力弥君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  委員外出席者         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (調達庁長官) 上村健太郎君         防衛庁事務次官 今井  久君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         総理府事務官         (科学技術庁         原子力局長)  佐々木義武君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 五月三十一日  委員田村元辞任につき、その補欠として大倉  三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大倉三郎辞任につき、その補欠として田  村元君が議長指名委員に選任された。 六月五日  委員茜ケ久保重光辞任につき、その補欠とし  て久保田豊君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員江崎真澄君及び粟山博辞任につき、その  補欠として伊東岩男君及び足立篤郎君が議長の  指名委員に選任された。 七月九日  委員下川儀太郎辞任につき、その補欠として  上林與市郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員足立篤郎君、伊東岩男君、田中龍夫君及び  福井順一辞任につき、その補欠として粟山博  君、江崎真澄君、灘尾弘吉君及び高橋等君が議  長の指名委員に選任された。 八月九日  委員木原津與志君辞任につき、その補欠として  阿部五郎君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員阿部五郎辞任につき、その補欠として足  鹿覺君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として中  村英男君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員北れい吉君、田村元君及び眞崎勝次辞任につ  き、その補欠として、綱島正興君、木村文男君  及び松浦東介君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委貫綱島正興君、木村文男君及び松浦東介君辞  任につき、その補欠として北れい吉君、田村元  君及び眞崎勝次君が議長指名委員に選任さ  れた。 九月二日  委員中村英男君、足鹿覺君、上林與市郎君及び  中村高一君辞任につき、その補欠として茜ケ久  保重光君、木原津與志君下川儀太郎君及び島  上善五郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事福井順一委員辞任につき、その補欠とし  て、高橋等君が理事に当選した。     ――――――――――――― 五月十八日  一、防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内   閣提出第一五五号)  二大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣   提出、第二十四回国会閣法第一五七号)  三、国家公務員法の一部を改正する法律案(内   閣提出、第二十四回国会閣法第一六二号)  四、内政省設置法案内閣提出、第二十四回国   会閣法第一六六号)  五、内政省設置法の施行に伴う関係法令の整理   に関する法律案内閣提出、第二十四回国会   閣法第一七〇号)  六、経済企画庁設置法の一部を改正する法律案   (内閣提出、第二十四回国会閣法第一六七   号)  七、憲法調査会法を廃止する法律案淺沼稻次   郎君外七名提出衆法第二三号)  八、国務大臣私企業等への関与の制限に関す   る法律案参議院提出、第二十四回国会参法   第一号)  九、行政機構並びにその運営に関する件  一〇、恩給及び法制一般に関する件  一一、国の防衛に関する件  一二、公務員制限及び給与に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  国の防衛に関する件     ―――――――――――――
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。本日は国の防衛に関して総理大臣外務大臣防衛庁長官に対して質疑を行うことといたします。なお質疑時間は理事会の協議によりまして、与党一時間、野党一時間三十分といたしておりますので、この点御了承を願います。  この際防衛庁長官より発言を求められております。これを許します。津島防衛庁長官
  3. 津島壽一

    津島国務大臣 ごあいさつを申し上げます。  私は過般の岸内閣改造に当りまして防衛庁長官に就任いたしました。なおまた調達庁事務を担任することに相なったのでございます。今後特に本委員会皆様方には格別の御厄介をかけることと存じます。はなはだ微力でありまして、また経験に薄い者でございますが、どうぞ御鞭撻御支援のほどを切にお願いする次第でございます。  一言簡単でございますがごあいさついたします。(拍手)
  4. 相川勝六

    相川委員長 これより順次質疑を許します。船田中君。
  5. 船田中

    船田委員 私は防衛問題につきまして、きわめて概括的な、概論的な問題について総理大臣質問をいたしたいと思います。  岸総理大臣が六月半ばアメリカを訪問されまして、アイゼンハワー大統領を初め、各首脳者会談をせられ、その結果につきましては、日米共同声明に明らかにせられておるのでございますが、この共同声明を見ましても、最も具体的な、しかも一つの大きな成果と申しますれば、防衛の問題にしぼられておると考えます。すなわちアメリカ日本総理大臣が示された防衛整備計画を歓迎し、それに応じてアメリカ在日米軍を撤退する、こういうことを明言せられておるのであります。共同声明の後において、ウィルソン国防長官が言明するところによれば、約二万五千の陸上戦闘兵力を今年のクリスマスまでには撤退する、こういうことが言明せられ、近く行われる日米合同委員会においても、そのことが正式に日本側に通告されるということになっておるように伺っておるのでございます。そうしてしかも今回の会談はすべて日本アメリカとが全く平等互恵立場に立っておるということが、共同声明においても明瞭にせられておるのでございます。従いましてこの共同声明に盛られており、ただいま私が申し上げましたよらな問題、こと日本防衛努力というようなことについては、岸総理大臣及び岸内閣としては、きわめて大きな責任を負われたことと存じます。岸総理大臣のこの防衛問題についての御所信とその大体の御方針、それをこの際あらためて伺いたいと思います。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 お答えいたします。防衛問題は、言うまでもなく独立国が他から不当な侵略を受けない、またそういう不当な侵略を受けた場合においてはこれを断固として排撃する、そして国及び民族の安全を守るというきわめて国としては重大な問題であることは言うを待ちません。しこうして独立国である以上は、自主的な立場からその国の国情と国力に応じた防衛力を持つということも当然のことであると思います。この防衛問題は、言うまでもなく私が今申しましたように一国のきわめて重大な問題でありますから、外交の問題やその他あらゆるものを通じてその国の安全と平和を守っていくということに努力をすることは当然であります。戦後日本防衛力というものが全然なかったために、われわれはアメリカの力に全部たよって国の安全を保つという体制であったのでありますが、われわれが過去十年にわたって防衛力増強努力をいたして参り、また国防会議が設けられまして日本国防方針及び国防の目標というものを明らかにいたしまして、これに向ってわれわれが努力していくという立場を明らかにいたしておるのでありまして、これは国民に対しても当然われわれが明らかにすると同時に、対外的にもこれを明らかにするという、内外を通じて自主的な立場でもってわれわれが防衛をしていく、そして国の安全を企図するというこの考えを、日米会談におきましても一貫して話し合いをいたしたわけであります。従いましてこの考え方が私は日本として当然とられなければならぬことであるとともに、アメリカをして十分これを了解せしめ、しこうしてアメリカも、すでに今御質問のちちにありましたように、日本に駐留しておるところの兵力は漸次これを撤退して、そして日本自衛力によるところの防衛によって日本の安全の責任を、日本自身が第一段に一義的にとっていく、こういう考えに一致したわけでありまして、これが日米共同宣言のうちに横られておる根本的な考え方であります。
  7. 船田中

    船田委員 次の私がお伺いしたいのは、日本防衛前提をなす国際情勢について、岸総理大臣アイゼンハワー米大統領との見解は全く一致したということが、共同声明にも盛られておるのであります。すなわち「大統領及び総理大臣全面戦争の危険はある程度減退してきたが、国際共産主義は依然として大きな脅威であることについて意見が一致した、よって両者は自由諸国がその力と団結を引き続いて維持すべきであることに意見の一致を見た。」云々とございます。ところがその後におきまして、第一にはソ連国内において一大政変が起ってきております。それから次にシリアにおいては親ソ政権確立をされたという事実が起ってきております。第三には八月二十六日のタス通信によりますると、ソ連において究極兵器と俗にいわれておるICBM大陸間弾道兵器の実験に成功したということが伝えられておるのでございます。それからもう一つ見のがすことのできない事実は、先月末に終りましたアメリカ国会内における政治情勢でありますが、アイゼンハワー大統領国会における指導力が漸次頽勢に向いつつある、またその事実がある程度現われてきておった、こういうような幾多の事実ないしは変化が起ってきておるのでございます。岸総理大臣アイゼンハワー大統領とお話し合いになりまして、国際情勢見通しについて意見が全く一致した、こう言われておるのでありますが、以上私があげました四つの事実、必ずしもそれだけとは申しませんけれども、少くともこの四つの事実、それは大きな変化であると存じまするが、そういうものを通じてなおかつ総理大臣国際情勢についての見通しが、アイゼンハワー大統領とお話しにたったときに意見が一致した、この共同声明に盛られておる国際情勢見通しを今日も続けておられるのであるかどうか。なおこの問題はわが国防衛計画を立てる上において、あるいは防衛問題を考える上において、きわめて重大なことでありますので、その前提となるべきこれらの国際情勢について、なるべく具体的に詳細なる総理の御所見を承わりたいと思います。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 国際情勢のいろいろな変化、また国際的に起ってきているところの各種の具体的な問題につきましては、われわれとしては常に深甚なる注意を払って十分これを検討していかなければならぬことは言うを待ちません。しかし国際の大勢として全面戦争の危険がやや薄らいでおるという、私がかつて国会において述べた、国際情勢雪解け方向に向っておるという考え方自体は、私は特に今日考え方を変えなければならぬとは実は考えておりません。しかしその場合においても、いわゆる雪解けの場合においてはなだれの危険があるということも警告をいたしておりますし、またアイゼンハワーとの話におきましても、やはり国際共産主義脅威というものについては、われわれ自由主義立場を堅持するところの国々においては、これに対して深い関心を持って、そうして十分にその脅威を取り除くことに協力しなければならぬといろことを申したわけでありまして、今おあげになりました幾多事例、あるいはソ連内における政変の問題がどういうふうに国際的に影響を持つかという点につきましても、十分われわれはあらゆる面からこれが検討をいたしております。しかし大きな趨勢として、今言っておるように、それをくつがえすような、すなわちソ連が対外的にこの政変によって強く出てくるという傾向は、私は認めておらないのであります。むしろその政変意義は、一面においては平和共存を主張し、いわゆる冷戦の形においていろいろな事態を発生するおそれは多分にあると思いますけれども、いわゆる全面的な世界大戦の危険というものをこの政変が直ちにかもし出すというような意義は持っておらない、こういうふうに私は見ておるわけであります。  中近東の国々政治情勢につきましては、これまた御承知通りきわめて複雑であり、この間における共産圏といおゆる自由主義西欧諸国とのあつれきやいろいろな策謀等につきましては、これまたきわめて複雑でございます。シリア問題等もその一つの現われであると思います。われわれが国際共崖主義脅威は依然として大なるものがあると言っておる一つ事例を示しておるものだと私は見ております。  またアメリカ国会におけるところの論議を通じていろいろな問題がございます。特に従来米国無償でもって諸外国に武器の援助やその他軍事的の援助をしておったのを、なるべくこれを削減していくべきだというアメリカ国会内のこの議論は、だんだん強くなってきておるように私は見ております。従いましてこれに対してわれわれのいわゆる防衛力増強に伴う、特にとの防衛産業確立の問題というようなものにつきまして、さらにわれわれは従来よりも力を入れてこれを推進する必要があるというふうに考えております。  また大陸間弾道兵器の問題につきましては、ソ連がその製作に成功した、試験に成功したというふう准ことが報道されておりますが、私は詳しい技術的なこれに対する考えを述べようという考えはありませんが、しかしこれが直ちに日本防衛日本の安全を脅かすところのものと、こら直ちに即断して考えることは適当でなかろうと思います。もちろんわれわれはあらゆるものに対して今後科学的な研究をして、日本防衛立場を十分に果していかなければなりませんので、こういうものをとらえ、途中においてこれがその効力を失うようにする研究も同時に行われておるわけでありまして、従いましてあらゆる点において、かねて申しておるように、われわれは防衛の点におきましても、十分科学的な研究技術的の研究を今後も進めていかなければなりませんが、このことが直ちに今日世界国際情勢を非常に大きく変更せしめるという段階ではまだないと思います。しかし、もちろんこのことは相当兵器発達の上から見ますると、重大な問題と意義を持っておることと思いまして、アメリカ方面においてもその意味においていろいろな衝撃を与えておるようであります。科学の今後の発達に関しては、われわれも常に十分な関心研究を続けていかなければならぬ、かように思っております。  国際的な大きな流れとしましては、今申しましたように、私はアイゼンハワー大統領と話し合った気持と、今日のこれらの事態というものを見まして、これを根本的に変えなければならぬというふうには考えておらないということを申し上げておきます。
  9. 船田中

    船田委員 ただいまの御答弁で大体の御趣旨はわかりましたが、ソ連における政変について総理大臣は、これがむしろ国際緊張緩和方向に向うというようにお考えのようでございます。またわが国においてはそういうふうに受け取る人が多いように考えられるのでございます。しかし欧米において、少くともアメリカ及び西ヨーロッパの大国の間におきましては、必ずしもそうは見ておらぬようであります。フルシチョフが独裁者であるかどうかは別としまして、スターリン主義を否認した。しかし、その結果直ちに平和共存という言葉通りにこれが行われるといろふうにはイギリスあたりでも見ておらない。現にマクミラン首相のブルガーニンに対する手紙の中にも、そういうことがうたわれておるということも伝わっておる。ソ連における政変というものは、必ずしもソ連対外政策世界政策どいうものに大きな変化をもたらすものでない、かように見ておるようであります。わが国における一部には、そういう平和攻勢に向うかと思っておる者も少くないようでありますが、これはきわめて重大なことでありますので、重ねて総理の御所見を伺っておきたいのであります。  なおもう一つICBMの問題でございますが、これもわが国において、ソ連が非常に優秀なICBM究極兵器発明したということを過大に評価しておる者もあるようでございます。またそういうものができ、また原水爆をもってする攻撃ということがいかに悲惨であるかというようなことから、こういうものができればもろ戦争は二度と再びないのだ、こういうような安心感も一部には出ておるようでありますが、御承知通り、一八六三年にスウェーデンにおいて、ノーベルがダイナマイトを発明し、しかもノーベルはみずからその発明に驚いて、こういう殺傷兵器ができたならば、おそらくこういうものを使ってやる戦争が起ったときには人類の破滅であろうということで、それを使わないようにというので、ノーベル平和賞というものを創設い方したことは御承知通りであります。しかしその後において、この九十四年の間において世界情勢はどうであったか、何べんか戦争があり、この近い三十年の間に二度も大戦を経験しておる。これが現実の姿であります。そういう点を考えましたときに、ソ連政変あるいはICBM発明、こういうようなことが国際情勢にどれだけ大きな影響を与えるか、私はわが国内における一部の世論があまりに楽観的であるということは、これは実情に沿わないのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、総理の御所見はいかがでありますか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほどソ連政変が決してソ連外交方針といろものを急激に、いわゆる積極化するものでないという意味のことを申したわけであります。これによって平和共存のいわゆる平和攻勢はむしろ盛んになるであろうけれども、世界の全面的な戦争の危険をさらに促進するような方向に、この政変意義を持つものではなかろうということを申したわけであります。必ずしもソ連がこれによって表に出るように、いわゆる平和共存ということを名実ともにこれを実現する誠意と、そういう方向に強く進んでいくというふうに即断もいたしてはおりません。ただこの政変自体が、むしろ平和攻勢という方向に進む可能性が多いのであって、全面戦争への危険をもたらすところの危険性というものは、むしろ現実的に去ったと見ることが正しいであろうということを申しておるのであります。しかし全面的に申しまして、共産主義脅威がこれによって全然なくなったとか、非常に薄らいだとか、こういうふうに見ることはもちろん適当でなかろう、こう思っております。またこの大陸間弾道兵器発明の問題につきましては、これは今後いろいろなやはり意義を持つものだと私は思います。しかし現在の段階において、直ちにこれによって、いわゆる最終兵器発明によって戦争というものがなくなるのだということも非常な楽観に過ぎたものだ、またそう即断することは適当でたかろうと思います。また逆にこれができたことが直ちにソ連優越性というものを確立し、われわれの自由主義にとって非常に大きな脅威であって、とうていこれに対抗できないようなものであるというふうに今日の段階において直ちに結論することも適当でなかろう。先ほど申しましたように、一方においてこういち攻撃的な兵器発達すると、それをとらえてその効力をなくする兵器についても研究が進んでおるわけであります。そういう意味においてこの問題を見るべきである、こう思っております。
  11. 船田中

    船田委員 この問題はこれ以上申し上げませんで、次の重要な問題について、二、三御質問申し上げます。  一つ先ほどもちょっと触れましたが、米国国会内における動向、ことに一九五八年度の予算の審議に当りまして、対外援助費が相当大幅に削減をされております。そうしてそれともにらみ合いまして、対外援助方針がそれを熱心に欲する国には与えられるが、熱心でない国にはそれがだんだん与えられない、そうしてしかも従来無償供与であったものを有償供与にする、あるいは借款方式にする、こういうような方向に変りつつあるように見えます。対日軍事援助につきましては御承知通り年々一億数千数十万ドル、すなわち五百数十億円ずつの金額に上る援助が与えられております。またそれなしには日本防衛体制整備ということはできないのであります。しかも最近におきまして、あるいは自衛隊の持っておる一万数千両の車両の更新をOSPによって与えられておる、あるいは警備艦二隻、二千三百トン級のものを、これまたOSPによって供与されておる、こういうようなことであって、それは要するにアメリカの対日軍事援助方向岸総理大臣のしばしば言われるいわゆる自主防衛が可能になるように日本防衛生産を育成強化していく、こういう方向に指向されておるように見えます。ところが最近も国会において決定せられた対外軍事援助の経費をみますると、大幅に削減されており、ただいま申す通り無償供与から有償、あるいは借款方式に変ろうとしておる、そこにいわゆる植村構想も生まれてくるのではないかと存じますが、そういうアメリカ国会において対外援助が削減されてきておる、そうしてしかもそういう方針がだんだん変りつつある、こういうことに直面いたしましたときにおいて、日本防衛整備計画をこのまま実行するということが果してうまくいくかどうか、これは相当大きな懸念があると存じます。もちろん日米安保条約によって漸次日本自衛力増強しなければならぬ、そうして数次の会談において、大体わが国防衛努力国民所得の二%強ということで話し合いをしてきており、またその予算を計上しておるにもかかわらず、最近になりましてはそれが漸減方式に変ってきておる。そうして三十一年度、二年度においては二%でありますけれども、三十三年度になりますと、一・七、こういうことになっておる。これから見ますると、少くとも形の上からいうと自衛力漸増ではなくして漸減傾向になってきておる、こういうことでありまするので、アメリカ国会内におけるその動向及びその予算措置等から見まして、日本防衛整備計画の上において今後支障が起ってくるという心配はないかどうか、これらにつきまして総理の御所見を伺っておきます。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 防衛計画を今日まで漸増してくることにおいて、アメリカ日本に対する軍事援助が非常に重要な意義をもっておったことは御指摘の通りであります。われわれが自主的に日本防衛力増強するという立場を堅持いたしましても、なおアメリカ援助を受けなければならぬ部分も少くなかろうと思います。特に防衛力の裏づけをなすような防衛産業というものの進出が、日本としましてはいろいろな兵器等につきましても、その生産ができないために、これをアメリカからの援助にまたなければならぬ点が非常に多かったと思います。今日においては技術的な面においての研究等も相当進んでおり、もちろん日本技術だけではできないところの科学兵器等もございますけれども、よほど産業技術の点においては、われわれとしては今後整備計画によって、具体的にこれが確立をはかる方策を実行するならば、相当な程度において防衛産業確立もでき得ると思います。また今アメリカにおいて大きな傾向として、先ほど来お話のように、対外援助をなるべく減らしていく、また無償であったものを有償やあるいは借款方式に変えていくという傾向が出てきておることは、御指摘の通りであります。しかし日本の真剣な今申しますよらな自主的な立場における防衛努力についても、アメリカとしては十分に理解を持っておることでありますし、また安保条約の実行実施に関してのいろいろな点をスムースにするためには、安保条約に関する政府間の合同委員会もできておることであります。十分これらと連絡をとって、われわれとしてはみずからの力によって、日本に必要な防衛産業確立していくという方向努力を続けつつ、日本の安全保障に必要な防衛力に欠陥を生ぜしめないように、アメリカの適当なる援助をその間においては得ていくというふうに、われわれとしては努力をしたいと思います。  防衛予算の問題について三十二年度の予算がむしろ漸増にあらずして漸減じゃないかという御意見が御質問の中にありましたが、これは従来の防衛予算の中にはいわゆるその年度内に使用できない、翌年度に繰り越しておるものが相当額あったことは、御承知通りであります。われわれはなるべく予算というものと実際の実行面とを合していって――この繰り延べの起ってくる原因というものをいろいろ見ますると、いろいろな原因がありますけれども、ある意味からいうと、日本防衛産業等の現状からの消化能力というものもあるわけであります。これらとにらみ合わせて実質的にわれわれは増強は続けておるわけであります。決して漸減方策をとっておるわけではないのであります。ただ表面的の予算の増額が三十二年度においては非常に少かったということは、これは事実であります。しかし実質的にわれわれが防衛力増強するという努力につきましては、三十二年度におきまして、相当前年度よりもこれを増強しておるということは御承知おき願いたい、かように思います。
  13. 相川勝六

    相川委員長 船田君に御注意いたしますが、時間が迫りましたから、簡潔に一つ
  14. 船田中

    船田委員 もう一つきわめて簡単に伺っておきます。それは防衛整備方針、内容、装備というようなことに関する、つまり内容的の問題でございますが、特に経済的に効率的な防衛をしようということになりますれば、新鋭兵器研究開発ということはきわめて大切であります。従って最終的には核兵器の問題にも触れてくるわけでありますが、総理は核兵器を持つという方針は全然とっておらないということはしばしば言明されておることでございますから、それはわれわれも了承いたすのであります。しかし新鋭兵器研究開発ということは、これは今日の日進月歩の技術、工業の発展段階においては、あるものは絶対に持たないと言って、今から自分の手を拘束してしまうということは、私はできないのじゃないかと存じます。しかし一方、新鋭兵器研究開発とともに、在来兵器というものの重要性も、国際情勢、ことに中近東等の紛争状態を見た場合におきまして、これも決して無視することはできません。従いましてやはり在来兵器による整備というものも怠ることはできないのであります。そういうことを考えて参りましたときに、ことにいわゆる自主防衛をするために、日本防衛生産を育成強化していかなければならぬということになりますと、そこにどうしてもある程度の装備について、少くとも装備品についての秘密保護法の制定ということが必要になってくるのじゃないか、かように考えるのでありますが、これについての御所見を伺いたいのでございます。  なお日米共同でわが国土の防衛に当るということは、少くとも国際警察軍が有効なものができて、そうして日本の国土を国際警察軍が守ってやるという保障のない限りにおいては、当分この日米安全保障条約というものによって日米共同の防衛ということに行かなければならぬと存じます。この問題については、いずれ具体的にいろいろ日米間において論議もされることと存じますが、ただいまの秘密保護法の問題、それから新鋭兵器と在来兵器との関係、ことに最終的には、何と言っても日本の国土の防衛というこの大切な仕事を全うするためには、どうしてもこれは敵の侵略を防ぐ、この防衛ができなければ、自衛隊を育成しても何にも役に立たないのであります。しかるに総理は、先般参議院の委員会においては、核兵器は持たない、そのために日本が負けてもやむを得ぬというような御趣旨の発言があったように聞いておるのですが、これは私はもってのほかだと思うのです。いかなる場合においても、いかなる努力をいたしましても、日本の国土の防衛を全うしなければならぬ、これが自衛隊の置かれた趣旨なのでありまするから、私は総理の御発言は何かの拍子でそういうことが出たのだろうと思いますけれども、私はその点について十分総理の所信をはっきりさせていただきたいと思う。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 すでに防衛方針としては、わが内閣は量よりも質に重きを置いてこれを増強する、新鋭兵器科学兵器等研究開発には特に力を入れる考えでおります。もちろんそれだからといって、在来兵器をすべて捨て去るということができないことであることは言うを待ちませんけれども、国際的に進歩しつつある科学兵器研究というものについては特に力を入れたい考えでございます。これに関連いたしまして、いわゆる秘密保護法の問題がございます。われわれは技術やいろいろな研究につきまして先進国の協力を受けなければならぬ点も少くなかろうと思います。しこらしてそれを入れてくる上におきましては、その秘密が保持されるということがそういうものを導入する上においても必要でありますし、またわれわれ自身が自発的に研究していく上におきましても、日本人の優秀な科学的の才能によっていろいろな発明や発見、また研究を進めていくということをわれわれは期待しておるわけであります。これについてその途上におけるところの秘密をいかにして保持するかという問題があることは当然であります。しこうして現在あります秘密保護に関する法律はその点において不十分である、しかしこの秘密保護法の改正という問題は、もちろん今申した方面においてその必要があるととは十分に私自身も認めておりますが、同時に各種の政治的な問題もこの問題については考慮いたさなければならぬ問題でありますから、政府としては慎重にこの問題は検討をいたしたい、かように思っております。  最後に、私が過般参議院の内閣委員会において、藤田委員であったかと思いますかの質問に答えて、核兵器は絶対に持つ意思を持たない――藤田委員の御質問は、持たないというが、一体どのくらいの決意があるのか、持たむいためにかりに防衛の目的が達せられないというようむ事態が出ても、持たぬと割り切っているのかどらかという御質問であったと思います。私は核兵器を持たないという私の信念並びに政策の決意を示す意味において、たといそれがために負けるようなことがあっても持ちませんということを申したわけであります。言うまでもなく、自衛隊を設け、そうしてわれわれが国土を守り、民族の安全を保障しようというこの根本の精神は、いかなることがあっても、不当なる、また不法なる侵略に対して、われわれはあらゆる努力をして、そうしてこの防衛の目的を達成するというところにあることは言うを待ちません。しかし私自身の考えから言うと、核兵器は、日本のわれわれ国民の確信から申しても、またこれを代表する政府といたしましても、これを持たないということは、私はいかなることもやるというか、やる場合においては、核兵器も使ってやるかと言われるならば、それはやらないということを申しておるわけであります。もちろん今日、この論議は、そういう核兵器を持つか持たないかということに対する私の信念の強さに対する質問であったがゆえにそういう御返事を申し上げたわけでありますけれども、日本防衛を全うするという意味におきましては、これは自衛隊がいかなることがあっても、この日本の国土、民族というものを、他から不法な侵略にさらしてその犠牲とすることはさせないという強い決意に立っており、またそのためにあらゆる努力が払われることは当然であります。また私は、日本侵略というものに対しては、日本のみならず、いわゆる侵略がどういう形において行われるかは、各種の場合があろうと思いますが、あらゆる事態におきまして、われわれが不法に侵されるという場合においては、国連なりあるいは世界の世論に訴えても、日本の安全を守るベきことは当然でありまして、自衛隊の力のみならず、政治力のあらゆるもの、あるいは外交の力のあらゆるものを用いて、祖国の安全と民族の安全は守らなければならぬ、また守る決意であることは言うを待たない、かように信じております。ただ質問の要旨がそういうことでありましたので、私の答えも核兵器を持たないという強い私の信念を申した意味において御了解を願いたいと思います。
  16. 相川勝六

    相川委員長 受田新吉君。
  17. 受田新吉

    ○受田委員 私は岸総理大臣に対しまして、特にあなたが先般米国を訪問せられた際に、米首脳部とかたく話し合いをしたいという約束を、御出発前に国会に対して意思表示しておられることに対しての裏づけが、いかようにされたかをまずお尋ね申し上げたいと思います。  あなたは四月十九日の参議院の田畑委員質問に答えられまして、内閣委員会で、すでに安保条約や行政協定等を全面的に検討すべき時期に来ておるとまず前提せられて、渡米したならば必ずこの問題の解決のためにあらゆる努力をするというお約束をせられております。しかし結果は、御承知のように、合同委員会が作られた程度であって、何ら条約そのものの、あるいは行政協定そのものの改訂に努力せられたという節を見出すことができませんが、この点は何だか途中に階段を踏んだよらな形になっているうらみがある。出発前にお約束されたことと、実際にあちらで努力されたこととの間に食い違いがあると思うのでありますが、この間の消息を御説明願いたいと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 私は日米間の、今後のまさにあるべき日米間の関係を作ることを目標にアメリカを訪問したわけであります。その際に安保条約及び行政協定というものは、日米の長き将来における友好親善の提携の基礎を作る上において、現行の安保条約及び行政協定というものについては、私は相当の点において意見を持っており、従って全面的に検討すベき時期であるということを前国会において申し上げたのであります。しこうして当然日米の関係を正常化し、強固にし、対等な形において両国の友好親善の関係を深めていくという上から申しますと、この問題に関する考えを率直に述べて、そうしてアメリカ側と話し合いをすることは当然しなければならぬことであります。ワシントンにおきまして、アイゼンハワー大統領、またダレス国務長官との間におきましての話し合いにおきましても、この問題に関する私の考えは率直に申し述べて、本問題を話し合いをいたしました。御承知通りこの問題は、一方においては、要するに日米両国の間において結ばれた問題でありますから、日本の、私の考えをすぐそのまま実現するということは、話し合いの結果できなかったわけでありますけれども、しかし私の、国会において申しましたような考えのもとに、日米合同委員会――安全保障条約に関係して日米両国政府の間におけるところの有力な委員会を作って、そうしてこの安全保障条約から生起するところの各種の問題について十分に話し合いをしよう、そうして具体的にこれを処理していこうということになったことは、私のこの話し合いの結果でありまして、今御指摘のように、直ちに安保条約や行政協定の改訂ということが実現をしなかったことは事実であります。しかし国会で申したように、十分に話し合いをし、またこれに対して検討を加え、これが両国民の満足するように運営され、また将来の各種の問題を両国民が満足するように処置するということについてこの委員会が十分に活動していくことを私は期待しておる次第であります。
  19. 受田新吉

    ○受田委員 私はあなたの御努力された重点が少しぼけておって、直接条約の改訂、協定の改訂等に実を結ばなかったことははなはだ遺憾であります。しかもあなたが共同声明として出されたものを拝見しますると、その中に、安全保障条約は本質的に暫定的なものとして作成されたものということを確認されておる。さらに第二の問題として、特に大統領が、脅威と緊張の状態が極東に存在する限りにおいて合衆国は現在の状態を維持する必要を認める。そのために沖縄、小笠原諸島に対する施政権の日本への返還問題を考えるということを、声明の中にうたってあるのでありますが、この二つの問題でお答えを願いたい。すなわち、暫定的なものという考え方でごく軽くこの条約あるいは協定をお考えになっておられるのか、もっと根本的解決に進むべきであるという努力をその際にお考えにならなかったかどうか。もう一つは、脅威と緊張の状況が極東に存在する限りにおいて合衆国は現状維持をするという声明を発しておる。この琉球、小笠原諸島に対する考え方に対して、あなたはこれらの脅威とか緊張とかいうものはいかなる形のものであると認識せられたか。この二つについてお答えを願いたいと思います。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約についての改訂あるいは国内においてこれが廃棄め議論すらあることに対しまして、十分国民のその気持というものを私はこの会談においてアメリカ側に理解せしめたわけであります。アメリカ側においても、この条約が恒久的なものではない、従っていろいろな客観情勢変化とともにこれを改訂しあるいはこれを廃棄するというようなことも、それは考えなければならぬ。客観的な情勢変化すればしなければならぬ。そういう意味において、この安保条約というものは暫定的なものであるということについては、十分アメリカ側と日本側との間に意見が一致したというのが共同声明の趣旨であります。また安保条約に関する合同委員会の任務として、特に日米両国の国民のために最も効果的であり、かつその国民感情に十分に適応するように、この条約の調整について考慮するということがあげられておりますが、この点等は現行の条約ではとうてい日本国民が満足しない。また日本国民の満足を得ることができない以上は、十分にその効果を発揮できないというような点が明らかにされれば、将来これが改訂の問題は取り上げるということはもちろん可能な問題であり、またそういうふうな方向にわれわれとしては努力すべきことは言うをまたないと思います。  それから沖縄及び小笠原の問題に関しましては、残念ながら日本考えアメリカ考えとはついに一致せしめることができなかったのであります。と申しますのは、いわゆる沖縄及び小笠原については、施政権の返還の国民的強い要望を体して、これが実現をはかるように、またその実現に向って、全面的に一挙に実現できなくとも、少くとも一部でもこれを実現せしめようとして十分に努力をし、自分たちの考えを述べたのでありますが、この点については遺憾ながら、過般の会談においては意見の一致を見なかった。そこで今受田委員の御指摘になっているようないわゆる極東における緊張の状態が続く限りにおいては、現状を維持するというアメリカ考えがそこに出ておるわけであります。その前に、日本としてはこれに対して強く主張したことも出ております。意見が一致しなかった。極東における緊張の情勢というものにつきましては、これまた見方がいろいろあろうと思います。しかし今日極東におけるところの、この日本を取り巻いておる共産圏兵力配備等の情勢から見ますると、今日アメリカはこの極東の安全保持のために沖縄の現状を維持しようという主張をしておるわけであります。私はこの点に関しては、今度の会談においてわれわれの意見が十分にアメリカをして了解せしめ、これについての態度を変更せしめることができなかったことは遺憾でございます。従って両方の意見が、沖縄及び小笠原に関する限りは一致しなかった、かように御了承願いたいと思います。
  21. 受田新吉

    ○受田委員 時間が非常に迫っておりますし、わが党は十名の委員が全部そろって総理にお尋ねしようとしておりますので、簡単、直明にお答え願って、全委員の希望を達成してもらうように御協力を願います。  私はこれに関連していま一度総理に伺いたいのでございます。この極東の脅威あるいは緊張というものの見方でございますが、あなたはアメリカの陣営につかれる。すなわち資本主義陣営、自由主義国家群の一翼として、日本立場を今守ろうとしておられる。しかしながらインドとか、ビルマ、インドネシア、これらの国々、及びシリアあるいはエジプト等の中近東の国々は中立政策をとっている。この観点から見て、あなたは自由主義国家群という形で、米国の一翼の外交政策に協力される形よりは、むしろ中近東あるいはアジアの国々のように純粋中立政策をもって日本の正しいあり方を各国に認識させる方が、国策としては非常に筋が通っておるとはお考えになりませんでしょうか。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 私はしばしば私の政治的信念を申し上げたのでありますが、日本としては私はあくまでも自由民主主義の国として完成していく。人類のこの大きな理想から言って、自由を守る、またこれを確立するということは、私は一番大事なことであると思います。その意味において自由民主主義の立場日本が堅持しておるということは正しいことであり、またこれに基いて世界の平和を作り上げるということが望ましいのであります。私は、平和ということはただ単に戦争がないことではない。戦争さえなければ、どういう生活であって、どういう状態にあろうとも、それでいいとは思っていません。われわれが自由である。われわれの民主主義というものが擁護されておる。その上に平和ができ上るということが私は真に人間の理想である、かように考えております。この立場を堅持しておりまして、私が自由民主主義の立場をとり、自由主義立場をとるということは、決してアメリカの政策に追随するというわけでもなければ、いわゆる自由主義国群に属して、その陣営で対立してどうするという考えではないのであります。今おあげになりましたビルマとかインドとかいうものは、過般私もたずねたのでありますが、これらの国々はいわゆる中立政策というものをとっております。しかしそれをとっている国の事情から見ますと、いろいろな事情があるわけであります。その国が具体的にどういう政策をとるべきかという具体的の問題については、いろいろな歴史的な事情もありますし、客観的に置かれているその国の情勢というものもありますが、それを貫いて必要なことは、やはり今申しましたように、われわれが政治上の信念また人類の目標としてどこをねらっていくかといろ道を発見して、その上に立って世界の平和を作り上げるというのが私の考えであり、またそうなければならぬ、こら思っております。
  23. 受田新吉

    ○受田委員 私はこれでお尋ねを終りますから、全部にわたって簡明にお答えを願いたい。私はインドもビルマも、あるいはシリアにしてもエジプトにしても、これらの国々日本と同じような資本主義機構の上に立っている国ではないかと思う。そういう形の国が堂々と中立政策をとっている。あなたの思われた特殊の事情がありましても、そういう形で現に成功している。にもかかわらず、日本アメリカを中心とする自由主義国家群の一翼として極東政策に協力している。その結果今申し上げたような大統領の声明が出て、脅威と緊張を与えているとはっきりとあなたは追い詰められている。しかも陸軍は近く引き揚げるが、海空軍を引き揚げる見通し等についてもまだ言明しておらぬ。従って私はお尋ねします。総理は、インド、ビルマ等の国々の機構が資本主義機構の上に立っている国と御確認たさるか。あるいはまたアメリカ日本に対する考え方は、アメリカ考えをもって日本に押しつける傾向があるので、海空軍は今後依然として長期にわたって引き揚げをしないという見通しがありはしないか。もう一つは、あなたがいかようにがんばられても、今船田委員のお尋ねに答えられたごとく、秘密保護法は次の通常国会等においてはやむなくこれを提出する運命になりはしないか。もう一つ最後に、日本自衛力は、船田委員質問によると、またわれわれの調査したところによると、現年度において大体一・七%を越えるところの国民総所得に対する負担部分がある。これを今後漸増したければならぬというお尋ねがあったのでありますが、これは国民生活に非常に負担の圧力になるのであるから、自衛隊の増強の限度をあなたはどういうところへ置いておられるか。かつて木村保安庁長官は、志願兵の限度は二十二、三万であると言明されたことがあります。それを越えると、結局徴兵制をしかたければならぬという示唆であると私は考えます。こういうことを考えて、陸上十八万、海上十二万四千、飛行機千三百機というものは、米海空軍を撤退せしめる目標ではないとあなたはお考えにはたらないか。これらの問題について、自衛力日本における限界線をどこへ置いておられるかをお答え願いたいと思います。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 ビルマやインドその他いわゆる中立政策をとっておる国は資本主義の国じゃないかというお話であります。この資本主義、社会主義と申しましても、御承知通り非常にティピカルなものもありますし、中間的なものもありますし、また同じ資本主義でもいろいろな形がありますので、これを一がいに言葉だけで申しますと、いろいろな誤解を生ずるおそれもありましょうが、しかしビルマ等を見ましても、やはり大きな仕事は国営の形でやううという傾向が強いのであります。しかし中小企業やその他のものまでみな国営にしようというような考えは持っておらないようでありまして、そういう意味において、全体的に見て大体資本主義的な国である、こういう見方もありましょうし、あるいはビルマ等は社会主義的な国であるというような議論をする人もあるようであります。いずれにしてもいわゆる共産主義の国ということは言えないと思います。  それから第二点の……、何でしたか。(受田委員日本の海空軍の目標です」と呼ぶ)アメリカでも今度は陸上の戦闘部隊だけは一次に引き揚げるが、あの共同声明の中にも将来駐留しておるところのものについて、海空軍についてもこれが撤退をしていく、これは日本の海上自衛隊や航空自衛隊の増強の程度とにらみ合わしての問題でありまして、永久にこれを駐屯せしめるというわけのものでないことは十分間違いないのであります。  それから最後は……。(受田委員自衛力の限界」と呼ぶ)限界については、一応国防会議において、陸上十八万、海上十二万五千トン、それから航空機が千三百機、こういう目標をきめまして、これをいわゆる三十五年度までに完成する、こらいろことであります。
  25. 相川勝六

    相川委員長 辻政信君。
  26. 辻政信

    ○辻委員 国防の基本方針というきわめて重大な問題が五月二十日の国防会議において決定されておるのであります。これは当院のこれに関係する者はほとんど知らないうちに、新聞に発表されて初めてわかったような次第であります。「国際連合の活動を支持し、国際間の協調を図り、世界平和の実現を期する。」ということが国防基本方針の第一項になっております。これは藤山さんがやられる外交の根本方針じゃありませんか、どうです。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 私からお答えするまでもなく、国防というものは、これはただ単に狭義の防衛力だけでなしに、外交もあるいは文教政策も、あらゆるものを含んで、そしてその国の安全を確保するということにあると私は思います。従いまして、日本は、何といっても戦争のないように侵略が行われないようにすることが、私は防衛の一番基本であると思います。そういう点を第一項に国防方針として明らかにしたわけであります。それを実現する上においては、外交方面における活動を特に期待しなければならぬということは言えると思いますけれども、そういう趣旨で第一項に掲げたわけであります。
  28. 辻政信

    ○辻委員 国のいろいろな活動はそれぞれの分野においてはっきりしておるのであります。この第一項の方針は、これは外務大臣がやるべきである。国防大臣といいますか、防衛庁長官のやることは、これはむしろ侵略をいかにして効率的に防ぐかということに重点が置かれる、これに基いて一国の国防計画というものが策定されるのであります。この国防の基本方針国防計画を策定するための準縄であります。そうしますと、あなたの持っておられる国防計画に、この「国際間の協調を図り、世界平和の実現を期する。」ということを具体的にいかに織り込んでおられるかということがなければ、国防の基本方針というものは作文である。この根本は防衛計画の基準であります。あらゆるものを含むならば防衛庁一本でいいはずであります。その点はどうですか。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 御承知通り日本国防の基本をきめる意味において国防会議というものが設けられております。国防会議は、内閣総理大臣のもとに、外務大臣も入っておりますし、あるいは大蔵大臣も入っておりますし、防衛庁の長官も入っておりますが、とにかく防衛庁の仕事だけが国防に関するものであるという見解はとっておらないのであります。その意味において、国防方針の全体をお読み下さると、国政の全般にわたる内治、外交とも含んだものになっておることは当然であると思います。
  30. 辻政信

    ○辻委員 第三項に「国力、国情に応じ、自衛のため必要な限度において効率的な防衛力を漸進的に整備する。」この効率的な防衛力というものは、核兵器を持った敵に対しても効率的な防衛力をお考えになっておるのかどらか。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 侵略のあらゆる場面をわれわれは想定をし、それに対応して効率的な防衛をしなければならぬことは言うを待ちません。従いまして、核兵器を使用する何に対しても、日本はいかに効率的に防衛するかということは当然研究の対象になっております。
  32. 辻政信

    ○辻委員 参議院内閣委員会の八月十六日の席上におきまして、藤田委員長質問に対し、これは先ほど船田委員も言われましたが、核兵器は絶対に持たない。そのために戦争に負けても仕方がないと大みえを切っておられるのですが、基本方針の第三項と矛盾する。核兵器を持たないものが核兵器侵略に対して防ぐ方法があるなら教えて」もらいたい。
  33. 岸信介

    岸国務大臣 私は、核兵器に対しては核兵器をもってするにあらざれは防衛できないとは実は考えておりません。
  34. 辻政信

    ○辻委員 それを教えてもらいたいのです。
  35. 岸信介

    岸国務大臣 それは私は今ここで具体的に申し上げることはできないのですが、先ほども大陸間の弾道兵器に対しては、弾道兵器をもってしなければこれに対抗できないというものでなしに、他の方法によってこれを早くつかまえて、そしてその効果を上らせないというように、核兵器につきましても、これに対する防衛科学研究は進めていかなければならない。今直ちに核兵器に対して有効なこれを防衛するところの方法は私も存じませんし、またおそらくないと思います。しかし、これは研究していかむければならぬ。核兵器に対して、核兵器があれば防衛が完全にできるかというと、それは私はそらでもないと思います。従って、この核兵器を持たないということの私の信念は、先ほど船田委員に申し上げた通り強い、ただいいかげんのものでないということを藤田委員長質問に対して述べたわけでありまして、質問と私の回答をよくお読み下されば――藤田委員長質問は、要するに核兵器を持たないという岸総理考え方はどのくらい強いのだ、そこは割り切ってどんなことがあっても持たないというだけの考えであるかどうかということを聞かれたわけであって、私は、その点は持たないという私の考え方は強いものだということを申し上げております。しかし自衛の万全を期さなければならぬ、これは効率的に考えなければならないという意味において、科学兵器研究、また核兵器に対抗すべき、これを無力化するようむ兵器研究等におきましても十分研究しなければならぬことは当然であります。
  36. 辻政信

    ○辻委員 ここに速記録を持ってきておるから私は言うのであります。「その持たないために敗れるというようなことがありましても、それはやむを得ない、こう思っております。」この言葉は不謹慎であり、総理大臣としては無責任だと思います。一体国民はこれに納得するか。相手の侵略は必ずや核兵器でやってくる。これは時代の趨勢であります。そのときには手を上げるんだということで自衛隊はほんとうに自信をもって日本防衛に当るとお考えになるかどうか。もう一ぺん詳しく申し上げますと、核兵器はすでに戦術兵器として局地戦争の限定目標にさえ用いられるようになっておるのであります、火薬をエネルギーとした兵器が原子力をエネルギーとした兵器に変ろうとしておる。それはちょうど戦国時代の末期にポルトカルから鉄砲が伝えられて弓矢にかわったと同じような兵器の革命を意味するものであります。いやしくも軍備を持つ以上は兵器科学的進歩を無視すべきものではない。それに目が覚めないということは国の最高責任者として怠慢であると言われてもやむを得ない。近代戦争の役に立たない自衛隊を、一体国民が千三百億出してどうして枕を高くしていることができるか、私はそう思います。最近イスのエリコン会社から誘導弾を買って研究されようとしておる。相当の金です。誘導弾は一体何に使うために研究されるのか。持たないならばそんなものは買う必要はないじゃないですか。この点についてはいかがですか。
  37. 岸信介

    岸国務大臣 これは専門家の議論があるところであると思いますが、私の国会においての論議のうちにおいても述べられておるのでありますが、私はここに核兵器と言っておるものの趣旨は、またその質問の趣旨は、原水爆及びこれにかわるようないわゆる原子力が破壊力の兵器として用いられているわけであって、そういうものを主にしておる。たとえばその前にも核兵器ということの論議があったときに、いわゆる原子力潜水艦というふうなものが核兵器であるかどうかというので、そういうふうに原子力が、今おあげになっておるような、エネルギーとして使われておるような場合には、いわゆる今の核兵器という範疇に入らないというふうな議論がされたわけであります。私のそこで申しておるのは、原水爆及びこれに類似するようむもの、破壊力によって与えるところの兵器という意味であります。私はこういうものを文明国が用いるということ自体につきましては非常な疑問を持っております。少くともこれを禁止させなければならないという考えのもとに、この原子力というものは人類の福祉のために使われて、人類を破滅に追い込むために使うようなものじゃない、これは文明国の当然やるべき一つの義務であり、そういう方向に持っていかなければならぬという根本の考えを持っておりますが、それは第二の問題として、現実にそういうものを用いてくる相手に対してはわれわれはこれに対するあらゆる対策を考えなければならぬが、しかし核兵器をわれわれが持ってそうしてやっていくということは考えていないということをはっきり申しております。
  38. 辻政信

    ○辻委員 核兵器にはピンからキリまである。師団砲兵のそのたまも核を利用したものもあるし、五千マイルを飛ぶ大陸間の弾道弾も核を持っておるのであります。そういうものは持たないことはわかりますが、師団の装備が火薬の装備から原子力の装備に変ろうとしておるときに、それもあえて持たないということは、鉄砲が来てもう矢と刀でやるというような感覚としか考えられない。これは私は言い過ぎだと思います。参議院の速記録は、これは長期政権を目ざしたあなたには命取りになります。今これを取り消されることが私は正しい見方だと思いますが、いかがでありますか。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる私の考えておる核兵器でもって自衛隊を装備するという意思は私は持っておりませんし、政策としては私はこれはやらないということを言明しておるのでありまして、今日この考えを変える意思は持っておりません。
  40. 辻政信

    ○辻委員 それではこの問題はこの次の機会に譲りまして、次の質問に移ります。  東南アジアを訪問された帰りに、台湾に立ち寄られて蒋介石と会談をなさったようですが、蒋介石の主張した大陸反攻に同意なさったかのような新聞記事がある。その結果中共が対日態度を硬化しまして、日本商社の滞在を許さず見本市を開くことをやめ、また李承晩ラインと同じように毛沢東ラインを引いて、日本の漁業を制限するなど  一連の反友好的報復手段を講じて参ったようであります。あなたは元民主党の幹事長として、第一次、第二次鳩山内閣外交方針を推進された当の責任者であります。日ソ交渉の締結や中共貿易を促進された責任があるはずでありますが、共産圏諸国との平和友好を促進するということは、これは個人が反共であるとかないとかいう問題じゃない、鳩山内閣以来ずっとわれわれの一貫した政策であります。それが非常に方向の変ったような感じを受けるのであります。国防基本方針の第一項には「国際間の協調を図り、世界平和の実現を期する。」とうたいながら、あなたの言動は国際間の協調をはばんでおる、対立を激化する結果になりつつありますが、これについて政治的な責任をどうお取りになりますか。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 私が台湾において蒋総統と会って、蒋総統の大陸反攻に何か激励を与えもしくは応援したように周恩来氏が私の言動を非難いたしております。私にはその周恩来氏の真意がどこにあるか理解できないのであります。蒋介石氏と私が会見した場合において、蒋介石氏から中国大陸反攻の話は私にはされておりません。従ってこれを激励するとか応援したことはありません。ただ蒋介石氏の言うのは、最近日本においてはどうも台湾が非常に弱小であるというような見方、従ってこれは中国大陸の一部に併呑されるだろうというような見解を持っておる者が、社会党の諸君のみならず相当保守党の人々にもあるようであるが、これははなはだ間違っておる考えである、中国の民族は世界の民族のうちにおいて最も強く自由を愛し、自由のためにはこの五千年の歴史が示しておるように、一時的な波があっても、独裁的に自由を奪うようなものがあっても、必ず中国の民族というものは常にこれを反撥して自由になっていくのだ、そういう意味において、たといこういうふうな状態であろうとも私は中国民族というものは必ず自由に解放される日が来ることを信じて疑わない、また、自分の属しており、また自分の尊敬しておるところの孫逸仙氏の理想であるところのこの自由の回復ということは、必ず実現するということが私の信念である、またこれを実現しなければならぬという決意は少しも動揺しないものであるということを蒋介石氏が述べたわけです。私は、中国民衆が自由になるということ、自由の回復されるということができるならば、それは非常にけっこうなことだということは申した、それだけでありまして、決していわゆる中国大陸の反攻の問題であるとかあるいはこれに関しての話というものは蒋介石氏からも何もありませんし、私も一言も触れたわけじゃないのであります。従って、このことを誤まり伝えて、周恩来氏がそういうふうに言っているのか、あるいはそういうことを十分知っておりながら何らかの意図でああいう発言をしておるのかということについては、私としては理解できないというのが私の今日の気持であります。
  42. 辻政信

    ○辻委員 国防基本方針の第四項には、「米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。」とありますが、両国が協定して守るからには両国の作戦協定というものがあるべきはずです。作戦協定というものはあるのかどうなのか。今度は国防当局と会談されたときにこの点に触れられたかどうか。従いまして陸上十八万、海上十二万四千、航空千三百というものはこの作戦協定に基いた日本の負担すべき目標であるかどうか、この目標は日本の意思で変えられるものか、あるいはアメリカの了解を得る必要があるものかどうか、この点を簡単にお伺いします。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 日米の間に作戦協定というものは、私は承知いたしておりませんし、またそういう点についての話があったわけじゃございません。国防の目標なり何なりというものにつきましては、日本は自主的な見地からこれをきめるのでありまして、将来これを日本の意思で変更するということがあり得るかもしれません。しかしながら日米安全保障条約によりまして、御承知のように、防衛庁の中には顧問の制度もありますし、将来とも十分アメリカ側の考えというものもわれわれは頭に置いて、そうしてわれわれの目標を定める、そういう考えでおります。
  44. 辻政信

    ○辻委員 それじゃあらためて聞きますが、ことし陸上自衛隊をさらに一万ふやして十八万になさろうとしております。これだけを増すのに五十億の金がかかるのですが、航空自衛隊の最近のあの事故を見ますと、ほとんど大部分が設備の不良、給与の不良、こういうことになるのでありまして、その事故を防止するという現実の欠陥補正のために相当な経費を要するのであります。陸上自衛隊一万を来年度ふやすという必要は、これは現実に迫られたものじゃない、また変更できるとすればそれをやめて、その予算でもって航空の事故をなくするようなことを、今お考えになることができませんか。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 航空自衛隊の事故防止につきましては、これは十分考えておりますし、またこれに対する方策というものは、優先的にこれを実現しなければならぬということは言うを待ちません。ただ陸上自衛隊を十八万にするということにつきましては、これは国防会議におきましてもいろいろな点を考慮して検討した結論であります。もちろん数は一万でありますが、その内容等につきましては十分に考えていくつもりでおります。国防会議の十分な検討の末に出た目標でありまして、私自身これを今変える意思は持っておりません。
  46. 辻政信

    ○辻委員 この一万を増員することは、昨年から党内において非常な異論があるのであります。非常な異論があります。その党の意見を無視して国防会議だけで決定して、また新聞に発表されるのかどうか。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 もちろんこの国防計画なりあるいは防衛の内容等につきましては、いろいろ党内においても議論があることは当然でございますし、また十分にその論議等も頭に置いて、国防会議におきましては検討を加えた結論として出たわけであります。今日のところ、私は国防会議の決定通りこれを実現したい、かように考えております。
  48. 辻政信

    ○辻委員 時間もありませんから、いずれ残りはあらためて伺います。
  49. 相川勝六

  50. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 時間がありませんので簡潔に私も質問いたしたいと思います。  岸総理アメリカに参りますときに、国民はいろいろなことを期待いたしておったことは御承知通りであります。おもなものといたしまして、安保条約、行政協定の改訂あるいは核兵器の持ち込み禁止、沖縄、小笠原の返還、日中貿易の制限緩和、そういったようなところにおもな要望一があったと思うのでございますが、結論的に私ども見まして何一つ国民の要望にこたえておらないということが言えるのではないか。日中貿易の制限緩和の問題については、イギリスのチンコムの一方的な放棄というようなしり馬に乗ってややその後緩和がなされておったようでございますが、そのほかの問題についてはほとんど何ら成果は上っておらないというような見方を、私どもいたしております。こういう点についてつぶさにお伺いいたしたいのでございますが、時間がございませんので、私は安保条約改訂の問題一点にしぼってお尋ねしたいと思うのでございます。  国民がこの安保条約の改訂というものについてどのような希望を持っておるかということは、総理はよく御存じだと思う。それはこの条約自体と、これに付随するところの行政協定というようなものが根本的に不平等である、この不平等性をなくしてもらいたいというところにあったと思う。総理は今度の国防方針その他でも明確にしたとおっしゃっておる。自主防衛なんということを盛んに言っておられるけれども、安保条約自体が不平等であって栗して本質的な自主防衛というものがあり得るのか、私どもはそういう考えを持っておりますが、一体安保委員会なるものを作って一私どもはこれは単にすりかえられたにすぎないと見ているのでございますけれども、そういうような形の中で平等性というものが果して確保されるものであるかどうか、その点、明確にお示し願いたいと思います。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 今の安保条約ができました当時の事情からいって平等でない、またこれを平等な立場において、日米の安全保障に関する条約をそういう方向に改訂すべきだという国民の多数の意見も私は十分頭に置いて、今回の日米会談をいたしましたことは、先ほど来お答えした通りであります。  しこうしてこの安保条約に関する合同委員会においてどういうふうな事項を取り扱うかということをごらん下さると、私はこの日米の安保条約上の不平等というものを実質的に平等な立場において処理していこうという考えが現われてきていると思う。もちろん究極的に申しますと、これが改訂やあるいはこれを根本的に変えるというふうなところまでいかなければ完全にその目的は達せられないでしょうけれども、第一段の目標として、たとえば日本国内におけるところの例の兵力の配備、使用等について、安保条約においては一方的にできるようになっております。これは非常に不平等ではないか、今度の委員会においてそういう問題を含めて、安保条約から生ずるところの問題をこの両国政府間の委員会で協議をしてその話をきめるということは、この両国のこういう問題に関する立場を平等ならしめているわけであります。そういう意味において、少くともこの合同委員会が私どもの目標としておる平等の立場に置く方向に進んできていることは否定できないと思います。  また第三の事項として、両国の国民の満足するようにこれを調整していくという一項が入っておりますが、こういう事項を取り上げてやるわけでございまして、従って将来においてはあるいは改訂問題等もここで論議されるような事態をわれわれは予想しておるわけであります。いずれにしましても、安保条約というものをすぐ改訂するということにつきましては、アメリカ側においてもいろいろな事情があって、これをわれわれの希望通りにすることはできないでしょうけれども、その方向に向ってアメリカも協力するということが今度の会談の結果実現されておるわけであります。
  52. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 条約の改訂が今アメリカの事情によってできないということをおっしゃっております。この答弁は、今まで開かれました外務委員会あるいは参議院における内閣委員会でも再三繰り返されておるのでございますが、アメリカ国内事情というものがどういろものであるかという具体的な説明は、一つもなされておらないわけであります。この点につきまして少し説明していただきたい。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、この安保条約は両国間の条約でありまして、そうして日本においても条約としての国会の批准を要する事項であり、アメリカにおいてもこれは上院の批准を得なければならぬ事項であります。これに対する今日のアメリカ国内の事情から、直ちにこれを取り上げてそういうことを実現することは、私はなかなかむずかしい困難な事情があるということは、これは常識的にも判断できると思います。要はこれを一日も早く平等な形において少くとも運営され、われわれが困ると考えているようなことが、アメリカの一方的意思において実現されるというようなことがあってはならぬわけでありますから、その点を合同委員会において十分に両国が平等な立場において協議してきめられるといろことによって、実質的に平等の実現をするということが私は最も必要である、かように思っております。
  54. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私はそういう形式的な問題だけではないと思うのです。あなたが言わんとしているアメリカ国内事情というものは私はそういう問題ではないと思う。それなら政府同士あらかじめ話し合いをして、後に国会に諮るという、そういう手続になると思う。肝心な問題を私はそらしているのじゃないかと思う。もうすでに十分御承知と思うのですけれども、結局アメリカにおいては、対等なこういった軍事関係の条約を結ぶという場合には、相互防衛、相互援助のできる国でなければならぬという大原則が打ち立てられている、ここに問題があるのじゃないか。これがアメリカの事情ではないか。裏を返して言えば、アメリカ側の事情だけでなしに、日本のいわゆる平和憲法、こういう日本の側の事情もある、こういう両方の側の国内事情から平等な条約は絶対できないのだ、こういうことじゃないですか、率直にお話し願いたいと思います。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 平等という言葉の問題でありますが、平等とか、あるいは片務的だからこれを双務的なものにしなければいかぬとかいうようなことが、安保条約についてよくいわれておりますが、平等ということを双務的というふうに解しますと、今石橋君の言われるように、日本憲法との関係が当然起ってくるわけであります。しかしわれわれが第一段に考えている平等というものは、そういう双務的な意味ではなくして、一方的にアメリカの意思だけで、日本兵力の配備であるとか、あるいはそのうちには、もちろんいろいろな原子力部隊の日本の駐留というような問題も、日本の意思を全然無視して一方的に入れられるのじゃないかという点において非常な不安があり、また不平等ではないかというようなことがいわれているわけであります。そういう点に関しては、少くとも今言っている合同委員会においてこれを解決していこう、これがわれわれの目標であります。従って今おっしゃるように双務的なことまで進んでいくということであれば、これは日本の憲法との関係が非常に重要な問題になってくると思うのです。
  56. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は単なる双務的な条約ということだけに限定して言っておりません。実際に対等な条約というものはできないのじゃないか、それは政治的な面からも、財政経済的な面からも両方から言えると思うのですが、ともかく今の日本アメリカとの関係の中で対等な条約などというものが果してできるのか、国民の要望にこたえられるのかという疑問を持っているわけです。この点いみじくも藤山外務大臣は、外務委員会において率直に認めているのじゃないかと思う。そのときの答弁を読んでみます。「安保条約とかそういう問題の改正を対等にするというのでなくして、対等の立場に立って今後の問題を話し合うという意味で、対等という言葉を使ったのであります。御了承願います。」まことに正直だと思う。私は岸総理もそういう考えではないかと思う。対等の立場に立って今後の問題を話し合うということの対等で、対等の条約を作るという意味ではないのだ。まことに日本アメリカの現在の関係というものを明確に示していると思うのです。一体対等の条約ができないで対等の話し合いができるのか、そんなばかなことは私は信ぜられません。安保委員会を作ったのだ、その中でいろいろな問題を話し合うのだ、そしてどうしても改訂の必要があれば両方の政府がこれを承認すれば改訂の問題も取り上げるのだとおっしゃっておりますけれども、少くとも対等の条約がないときに、条約を越えてどうして対等の話し合いができるのかという疑問すらわれわれは持っている。この点藤山外相の答弁との間には開きはございませんか。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 私は今お読みになりました藤山外務大臣のお答えしたことと、私との考えの間に相違があるとは思っておりません。
  58. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 一つの例をあげてみますが、安保委員会でいろいろ取り上げる内容を私ども共同声明の中で理解しております。その中に、日米両国の関係を両国の国民の必要及び願望に適するように今後調整することを考慮するというようなことも書いてあります。これも一つの任務として取り上げられておるのです。  それじゃ一つの例をあげてみましょう。たとえばあの砂川です。今まで基地拡張は絶対至上命令だ、条約、協定で定められにものだからしようがないという一点張りで政府は逃げておりました。今後は、国民の願望というものが明らかに困るということになったら、こういう問題についても話し合いができるのですか、対等の立場で。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 これは国民に安保条約上の日本が負うておる義務であるとか、あるいは飛行機の発達の現状にかんがみて必要な飛行場の拡張であるとかというようなことについて十分理解を与えるという点については、従来私は不十分であったと思います。こういう点を十分に理解してもらうならば、今日のいわゆる――これは私は国民全  体の反対だとは思っておりませんが、少くとも一部におて相当強い反対がある事実も承知いたしております。十分な国民的な理解の上に立っての、国民的な反対であるとかいうものについては、これは十分にわれわれは頭に置いて考えなければなりませんけれども、具体的の今の砂川の問題につきましては、いろいろな沿革なりいろいろないきさつにかんがみてみて、まだ政府として国民に十分な理解を求める点において不十分な点がある、また手続等におきましても十分尽すべきものを尽していないような点もあるように思います。従ってそういうことは十分に今後努めていくことも日本政府として当然やらなければならぬ。しかしその上に立って、もしも国民的に非常に大多数の反対があるならば、その願望も合同委員会において取り上げて、これをどう処理するかというようなことも話し合うことも当然である、かように考えております。
  60. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 安保委員会在日米軍の配置とか移動について日本側と協議するとかいろいろ言っておるのですが、そういうような問題よりも、やはり本質的にこの条約の一番不平等な面というのはどこにあるか、それからあなたが最近非常に強く言われておる自主防衛というものをほんとうのものにするためにも、どこに障害があるかということを考えてみた場合に、やはり極東の安全を脅かすというふうに見た場合、日本の危機というものがあると見た場合に、日本側の明示の要請がなくとも米軍が勝手に出動できる、こういう条約になっておるということが一番根本じゃないかと思うのです。自主防衛ということを叫ばれるならば、少くとも日本みずからが困った、やられそうだ、やられた、助けてくれということが先決でなければ、アメリカが勝手に日本は危なそうだからというようむことで、いわゆる戦争手段に訴えるというようなことでやられたのでは、これはもう日本人が何も知らぬうちに、局地戦争あるいは全面戦争に巻き込まれるという危険すらあるのです。この根本的なところは、それじゃ改訂できるわけですか。あなたがおっしゃっておられるように、ほんとうに自主防衛をやろう、対等の立場を保持しようということになると、大原則はここに来ると思うのですが、この改訂も可能ですか。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 しばしば私はお答えを申し上げておるように、安保条約を改訂したいという考えは、国民の強い要望であり、今御指摘のあったようなことも重要な点であることは言うをまちません。しかしその改訂には客観的ないろいろな諸情勢を作っていく必要があるということを、私はかねて申しております。その客観的情勢の一番大きなものは何かというと、極東における脅威と、この緊張をなくするということが一番大きな問題だと思います。そういう客観的情勢、またわれわれ自身、が持っておる自衛力というものがある程度の実力を持つということも、客観的情勢一つであろうと思いますが、そういういろいろな客観的情勢というものを作ることが、結局これを根本的に改訂する上において必要である。しかしそれができるまでには相当の時日がかかるじゃないか、その間何もほっておくのかと言われればそれじゃいけない、われわれは合同委員会において重要な問題については両国政府の間において話し合ってそしてやっていく、こういうふうに考えておるわけであります。
  62. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 直接お伺いしておる部分についてだけ簡単でいいですからお答え願いたいのです。今の日米安全保障条約によれば外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために米軍を使用することができるとなっておる。これは何も日本の政府のいわゆる明示の要請を必要としないということになっておるのです。日本が危険だとか安全を脅かされたと考えなくても、極端にいえばアメリカ日本が危険だからといって戦争状態に訴えるようなこともできる、そういう幅を持った条約になっておる。これが一番根本じゃないかというのです。これを直さなければあなた方が非難しているハンガリーの問題だって非難できませんよ。日本が危険だから助けてくれと言わないのに、アメリカ日本を守るためにという名のもとに自由に軍を動かせるというような、非常なでたらめな条約は私は許されないと思う。国民の一番叫んでおる平等性というものの究極はここにくると思うのですが、この条文も、今の日本の状態がほかに憲法を改正するとかなんとかいうことなしに、あるいはアメリカのバンデンバーグ決議というものか何か知りませんが、こういうものが現存する限り、こういう情勢の中で果して改正することができるのかということをお尋ねしておるわけです。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 今度の合同委員会では、第一に日本国内におけるところの兵力の配備や使用を含めて、安全保障条約からするところの各般の問題をここで協議するということになっております。従いまして日本に駐屯しておるところの兵力を、今言ったような意味において用いる場合においては、当然合同委員会において話し合いをしていくということになると思います。条文上、あなたがおっしゃる通り、今の現行の条文は一方的にそういうことを決定するのは、アメリカだけの考えでするという条文になっておることは御指摘の通りであります。従って根本的にいえばやはり改訂しむければならぬけれども、改訂には困難があるがゆえに、現実の問題としては日本を無視してやるということはないといちのが、今度の合同委員会の趣旨でございます。
  64. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そういうことは条約の改訂を待たなくても安全保障委員会の中で話し合いをすればできる、条約を越えて運用すらできる、こういうお考えなのですか。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 条約は言うまでもなく両国間における権利義務を規定しておるわけで、両国政府において、今言ったように、そういう趣旨においてこれを運用していくということであれば私は運用上はその目的を達成し得る、かように考えております。
  66. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もう一つ問題があるのですが、この自主防衛というものを唱えられ、そしてこの条約の平等化というものを主張される総理として、アメリカに行っていろいろ具体的に、こういうところはこうしてもらった方がいいのじゃないかというようなことは、一応話をされたと思うのです。その中で内乱というものには全然ノー・タッチでおってくれというようなことを言ったのかどうか。それから米軍の日本本土における平時駐留の兵力その他制限をするというようなことについても要望したのかどうか。それから条約に有効期間を明示するという点についても話し合ったのかどうか、こういう点についてお話願いたいと思います。
  67. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりましたような点については、私自身従来研究しておりますし、また国民の要望のあるところも胸におさめて参りましたので、そういう点についての話はわれわれの希望であり、われわれの考えはこういう考えを持っておるということは、十分に会談の際に申し述べました。
  68. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 総理はこの安保委員会の運営に関連していろいろ日本が要求したいというようなことについて述べておられますが、その中にいわゆる防衛折衝というものについてはやめたいということをおっしゃっておられます。これは非常にいいことだと思いますけれども、すでに予算編成期に入っておるわけであります。実際に今の防衛支出金削減の一般方式といったようなものがある以上、総理としてそういう希望を持っておられても、果して来年度予算を編成する際にこのあなたの御主張が通る見込みがある、こういうお考えでございましょうか。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 三十二年度の予算編成に当りまして、今石橋委員の御質問になった見解、それから私の見解を、実は実際に実行して参ったのであります。三十二年度予算の編成のときには、三十一年度以前のような、いわゆる予算編成に当って防衛折衝として、防衛費についての具体的な数字をアメリカ側と折衝するということをいたしておりません。またこれはいたすべきものではない、かように今でも考えております。
  70. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 その際には、結局三十一年度の繰り越し分というようなものとの操作の上に立ってややからくりが行われているという見方もあるわけです。実際に決算も終ったと思います。防衛庁費の三十一年度の繰り越し額がどの程度になる見通しであるかということが一つと、それからアメリカに行った際に、SEATOの加入とかあるいはNEATOの結成とかいう問題とからみ合せて、何か話が出てきたのかどうかということと、それから藤山外相が御出席でございますので、一点だけ、国連総会が近く開かれるわけでございますが、この国連総会において特に日本立場としてどのような問題を重点的に取り上げるというお考えを持っておられるのか、その点だけお尋ねします。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 SEATO加入の問題やNEATO結成の問題等についての話は全然ございませんでした。なお防衛庁費の問題は防衛庁長官から……。
  72. 津島壽一

    津島国務大臣 三十一年度の防衛庁費の繰り越し額についてちょっとお答えいたします。締め切ったところが二百三十六億でございます。
  73. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 初めて内閣委員会に出席いたしましたので、よろしくお願いいたします。  ただいま国連総会に出て何を主張するかというお話でございますが、今回の国連総会で日本が安保理事会の非常任理事国に立候補しております。これをできるだけスムーズに当選するようにいたしますことが、まず当面の一番大きな問題だと思います。その他国連の総会におきまして取り上げられます諸般の問題につきまして、日本立場を明らかにしていくわけであります。特に日本としては、今日まで核兵器の問題を持っております。また現在の諸般の世界的事情から見まして、後進国の経済援助の問題あるいは人口の問題というような問題が、相当大きな問題として取り上げる価値がある問題だと現状においては私考えております。まだ最終的にどういう問題を取り上げて提出するかはきめておりませんので、この席で最終的にお話する段階に至っておりません。
  74. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 時間がありませんから、これで終ります。
  75. 相川勝六

  76. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 岸総理アメリカ訪問に対して質問する材料がございましたが、同志諸君からだいぶん聞きましたので、私は具体的問題について二、三お伺いしたいと思います。  第一点は、今回の岸総理アメリカ訪問に関しまして、日米安保条約、行政協定の改訂について、共同声明で一応その一番主張された点は、日米安保合同委員会のできたことでありますが、その際岸総理アイゼンハワーないしはダレス長官と協議されました過程において日本防衛力の問題、さらに日米安保条約が結ばれた本質である条約の前段にございますいわゆる日本戦争に負けて無防備状態になったときに、アメリカは、いわゆる極東を中心とした世界に非常に無謀な軍国主義が横行しておって、とても日本を無防備のままに置いたのでは日本の自立が危険であるばかりでなく、世界の平和を撹乱するということから、日米安保条約の締結がなされ、しかもアメリカの軍隊が日本に駐留したということでございますが、それ以来すでに五年たっております。五年たった今日でもなおかつ日本がいわゆるそういっためちゃくちゃな軍国主義の跳梁によって大きな危険の中にさらされているといち状態であるかどうか、この点に対するアメリカ当局との話し合いの過程についてその概略と結論についてお伺いしたいと思います。日米共同声明について、いわゆる全面的な戦争は今考えられぬけれども、やはり世界共産主義脅威があるということを指摘しておりますが、このことはこれに対する答えであるかどうか、この点についてお答えしていただきたいと思います。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 国際情勢の判断につきましては日米共同宣言の中に、世界的な全面戦争の危険はやや遠のいた、しかし依然として国際共産主義脅威は大きいものがあるというこの考えは、先ほども申し上げましたように、私が、言葉は違いますけれども、国際情勢はいわゆる雪解け方向をたどっているが、雪解けの時期にはえてしてなだれを生ずるおそれがあるから十分戒心しなければならぬと言っていることと心持においては一致しておる見方をしておるわけであります。今極東の情勢につきましては、防衛庁におきましてもいろいろの情報から、この日本を取り巻くところの諸国の兵力の配備の状況等は研究をいたしておるわけでありますが、アメリカヘ参りましたときにもアメリカ側の見解等についても私ども説明を聞いたわけであります。決して極東の状況が手放しで安心できるというような情勢でないことは、これは茜ケ久保君もよく御承知のことだと思いますが、そういう全体の情勢判断の上に立ってすべての話し合いをして、それから防衛の問題も考えておるわけであります。
  78. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 ただいまの御答弁では安保条約を締結した五年前の状態と、日本の置かれた立場が大して差がないということのようにお伺いするのでありますが、そうしますと日本防衛力の決定される要素というものは――これはもら自衛力ということを起したのでありますから、日本がいわゆる極東において攻撃力を持ってこられた場合にこれを自衛する力はもちろん必要でありますが、この自衛力を決定する要因として国民所得ないしは財政的な負担の限界というものもございましょうし、しかしそれはそれとしましても、いわゆる自衛力を持って自衛をするというからには、いかなる敵が侵攻して参りましても、これを日本が完全に自衛し尽すものでなければならぬと思います。先ほど辻君がいわゆる原子兵器のことを言いましたが、原子兵器を持つ持たぬは別として、少くとも多大の国費を使って自衛隊をお持ちになる以上は、一応国民にはこれで十分自衛ができるという確信を持たせることが必要だと思う。そういう意味自衛力をお持ちになる一つの基本が、国民所得の関係もございましょうが、私はやはりここに攻めてくるであろう敵というものが考えられる、だれがどこからどういうふうに攻めてくるのかわからぬのに、私は日本自衛力を持つ一つの限界はないと思う。特にアメリカヘ行つて極東の情勢を分析し、防衛庁自体が極東のそういった状態を研究していうっしゃる、そうしますと、極東において日本に攻めてくるであろうというものがなければならぬ。岸総理は、日本防衛力を御決定なさる基本として、今極東において日本に直接侵略を与えるであろうという心配をされておる力がどこにあるか。私ははっきり申し上げるが、やはり昔の言葉でいえば仮想敵国じゃないかと思う。仮想敵国という言葉が悪ければ、あなたが国民に対してこういう実態であるから日太はこのような自衛力を持たなければならぬという、確信のある御表明を願いたいと思う。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 日本としては国防会議において、国防方針その他目標等を検討して、すでに発表しておるわけでありますが、今日の日本として仮想敵国というものを具体的に持って、これに対抗する意味における防衛力増強をしておるわけではないのであります。茜ケ久保君もよく御承知のように、今日のこの国際情勢から見まして、いろいろな侵略の場合がある。あらゆる場合を想定しましていろいろな場合があるわけでありますが、完全に一国だけの力でもっていかなる侵略に対しても完全にその国を防衛し得るというような国は、事実上独立国であっても、ごく少数の特殊の国を除いては、ほとんどあり得ないと言ってもいいのじゃないか。やはり国際的なあるいは集団的な安全保障の体制をとって、そうして自国の安全をはかり、他からの侵略をなされないようにしていく、また世界の平和を進める、これが今日の国際情勢でございます。従って特にわれわれが自衛力を国力及び国情に相応して増強をして、そうして国の安全をはかっていく。このために防衛力を漸増してきておるのでありますけれども、それは一国なりあるいはある具体的な国を仮想敵国として、これに対してわれわれがやっておるという趣旨ではない、こういうふうに御了承を願いたいと思います。
  80. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 アメリカ在日駐留軍の攻撃目標は、これは明らかにソ連、中共であります。その戦闘方式なり訓練の状況等からこれははっきりしております。さらに日本の自衛隊の訓練の状況を見ましても、これは共産主義から日本を守るということをはっきり言わしておる。昔の皇軍ではございませんから、天皇の兵隊とは言いませんけれども、共産主義から日本を守る、われわれは反共の戦士だというプライドを持たしてやっていらっしゃる。共産主義と戦うというならば、これは幾ら言葉をお濁しになってもはっきりすると思う。これは鳩山前総理もそういうことをよくおっしゃったのでありますが、仮想敵国はない。仮想敵国のないのはけっこうでしょう。しかし少くともたびたび申し上げるように、幾ら一国で防衛ができませんでも、防衛力を持つという以上は、必ずどこかから攻撃をされる。おけのわからぬところから誘導兵器が飛んでくるというわけではございません。具体的な日本に侵攻する力があるのであります。私はやはりさっぱりしないところに日本の自衛隊に対する国民のいろいろな不信や、また信頼感もないと思うのであります。先ほど辻君が言ったように、今のままでは無用の長物だと言っておる、自民党の中にもはっきりそういう者がいる。そのような状態で、国民がどうして納得しましょうか。といたしますならば、私はもうここまでくれば、あなた方もそう別に気がねをする必要はないと思う。たとえばこういう声明でも、はっきり世界のいわゆる国際共産主義だということをおっしゃっておる。共産主義なれば、ソ連、中共、これは連の国である。こういったことは私はやはり国民にははっきりなさった方がいいと思うのでありますが、どうでありますか。はっきり御答弁願います。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 この防衛のなにから申しますと、日本のなには自衛をあくまでも目的としておることは言うを待たないのでありまして、その意味からいうと、不法に侵略を受けた場合において、その侵略に対して祖国及び民族を守るというのが精神でありまして、いつ、いかなるところから、そういうものが来ましても、われわれは敢然として日本の祖国となにを守る、こういう体制を作っていくために、実は国力と国情に相応して自衛力を漸増してきているわけであります。政治上の理想として先ほど来私が信念を申し述べておるように、自由主義、自由民主主義をあくまでも妨げ、これを破壊するところの勢力に対しては、われわれはまたあらゆる力をもってこれを防ぐということは、日本の国の方針でございます。そういう内外の情勢に対応するために、防衛力というものを漸増しておるわけであります。特に具体的に、どの国をわれわれはいわゆる仮想敵国として考えておるというふうなことは、適当でない。われわれは国防方針の第一にもあげておるように、国連を中心としてあくまでも平和外交を推進していく、どの国とも友好関係を結んでいくといろ立場をとっておるのでありますから、具体的に、ある国を仮想敵国として、われわれはあくまでもそれと戦うのだというふうな考え方というものは、われわれとしてはとるべきものではない、かように思っております。
  82. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 この問題はこれ以上ここでは申し上げませんが、日米共同声明には今さらのように安保条約の暫定性が強調されております。先ほど石橋君も指摘したように、日米安保条約や行政協定が、国民に非常な不安と不信を持たしておるのはその不平等性であると同時に、この条約が永久性を持っており、日本だけの意思ではどうにもこれを破棄することができない。アメリカアメリカ的な考え方からこれを破棄するということをいわなければ、いわゆる破棄の条項がないのであります。無期限の、しかも無期限も短かい無期限ではなくて、長い将来にわたる無期限であります。従って今さらここで暫定性をおっしゃることは、何かここでアメリカと具体的な話し合いがあったと思うのであります。しかしまた反面、首相はいわゆる国の防衛は一国でできない、どこかと共同防衛が必要だとおっしゃる。それはわかります。しかし今の世界情勢で、完全な集団安全保障のできる可能性もまたないと思う。そういった中で、日本が現在あなたが考えている日本自衛力を完備されたとしても、アメリカの協力なしにはあなたのおっしゃる外部的な進攻に対して、日本はとうてい守り得る力はございません。そういたしますと、ここで一方ではいわゆる訪米のみやげとして安保条約の暫定性を強調されたにもかかわらず、一方においては、日本の現在の自衛力の限界においては、アメリカとほとんど永久的に共同防衛をするのでなければ自衛できないという結論が出て参りますと、あなたも前に声明で、陸上部隊は帰るけれども、海軍と空軍においては帰ってもらう意思はないということをおっしゃっておる。しかし今は日本自衛力を漸増して海軍も空軍も帰ってもらうとおっしゃるけれども、今あなたもおっしゃったように、共同防衛の必要性はどこまでいってもとうていなくならぬと思う。とすると、この共同声明に出た安保条約の暫定性と共同防衛との関係は、どのように理解したらいいのか、私の理解では、暫定だとおっしゃっても、アメリカの空軍、海軍はおそらく私どもの考えるような期間内には引き揚げる可能性はないのではなかろうかと、私どもも心配し、国民もそれを危倶しておる。この点に対して岸さんの明快な御答弁を願います。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 私は従来ともそういうことを申しており、また今日もそら思っておりますが、日本防衛については、少くとも第一次的に日本の自国民でこれを防衛するという体制を早く実現したい、この意味において外国の駐留軍が長く国内に駐屯しておるということは独立国として望ましい状態でない、かように考えております。それは陸上部隊のみならず、海上部隊やあるいは航空部隊についても同様でありまして、海上部隊また航空部隊は日本を撤退せしめる意思なしというようなことを言った覚えは実は持たないのでありますが、今日でもそら思っております。ただそれには一方国の安全保障という重大な責務を考えまして、相当な力をわれわれ自身が持つということが、やはりこれの撤退を要求し、また撤退させる一つの必要な条件であると思います。陸上戦闘部隊については、すでに本年中にもアメリカは撤退するというところまできておりますが、海上部隊及び航空部隊については、まだそういう程度になっておりません。しかし共同声明のうちにもこれらのものについても、日本自衛力増強に伴ってこれは撤退するという意思を表明しておりますし、またそういうふうに私は独立国たる日本としては持っていかなければならぬ、かように考えております。
  84. 相川勝六

    相川委員長 茜ケ久保君、もう時間がありません。時間が経過しましたから、もう一つだけ……。
  85. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 そういたしますと、首相のおっしゃる日本自衛力の限界、陸上十八万、海上十二万五千、それから航空機千三百、この一応の三十五年度に対する最終目的の自衛力は、当分現在の日本の国力においてはこれが限度だとおっしゃっておる。その限度が三十五年度にでき上った場合に、アメリカの海軍並びに空軍は撤退するだけのものであるかどうか、そこまでいってもまだ撤退できないのかどうか。撤退できないとすれば、どのくらいまで日本自衛力を漸増したら、アメリカの空軍や海軍は、あなたの御期待のように、また日本国民が希望するように、完全に撤退するものであるかどうか。これは国民が非常に知りたい点であります。一つ御答弁願います。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 海上十二万五千トン、航空機千三百機というのは、昭和三十五年度に完成する第一次の目標として考えておるわれわれの目標であります。これが完備すれば直ちにアメリカの空軍及び海上部隊が全部撤退するという数字ではないと私は思います。しからばどれだけのものができたら全部が撤退するかということに関しましては、各種の研究を必要といたしますがゆえに、ここにその数字を申し上げることはできませんけれども、しかしながらこういうふうに増強してくれば、それに伴ってアメリカ側が日本の方へいろいろな基地の返還であるとか、あるいは施設の返還であるとか、一部を撤退するというような方向に進んでくるものであって、われわれとしてはこの目的を達成するために今後といえども十分に努力をしていくというほかはない、こら思います。
  87. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 もう一点だけ、最後に一つ総理の所信を伺いたい点があるのであります。それは総理は東南アジアを訪問され、アメリカに行かれまして重要な問題についてそれぞれの国と御相談をなされ、特にアメリカとは今質問が集中され、また今後もいろいろな形で出ますような問題について日本の今後の進路に対する大きな影響を持っておる点について話をされました。しかるに、日本社会党は、その行ったことに対して当然臨時国会を早期に開いて国民にその成果をはっきり御明示願いたいということをたびたび申し上げておるのに、自民党並びに政府は社会党のさらに国民のこういった要望を無視して、なかなかお開きにならぬ。新聞の報道によれば、十一月になってまたさらに再び東南アジアを訪問される機会を前に召集するということをおっしゃっておる。しかも岸総理は涼しくなったら全国にアメリカ訪問の成果を自慢話をして歩くという話である。あなたは決して自民党総裁としてアメリカにいらっしゃったのじゃない、日本総理大臣としていらっしゃったのだ。自民党総裁として国民に演説会を通じて自慢話をされる前に、当然総理大臣として国会を召集して、国会を通して国民にその所信と成果を表明すべきだと私は思う。あなたは総理大臣と自民党総裁を取っ違えておられる。どうかそういった意味において私は、今からでもおそくないから、十一月なんてことを言わないで、もう早急こ臨時国会を開いて、そうして国民の前にあなたの所信を、自民党の政策を、さらにこうこらと表明されるときであろうと思うが、やはりあなたは依然としてこの国民的な要望におこたえになる意思はないのかどうか、この点を一つ最後に伺っておきたいと思います。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 臨時国会の召集につきましては、政府としてはただ単にアメリカ及び東南アジアを訪問したことの報告だけではなく、あらゆる国政上必要なものをこの臨時国会において御審議願うつもりにおきまして、鋭意準備を進めております。従いましてその準備ができ次第なるべくすみやかに開くつもりでおります。
  89. 相川勝六

    相川委員長 飛鳥田君。――飛鳥田君に御注意いたしますが、時間がございませんからなるべく簡潔に短時間で済むように一つお願いいたします。
  90. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 時間がないそうでありますので、大きな問題で伺いたいことはたくさんありますけれども、石橋さんが伺いました問題の続きを一つ聞かしていただきます。  それは安全保障に関する日米委員会、こういうものが訪米の結果作り上げられましたが、これの性格を新聞等で拝見いたしますと協議的性格を持っておる、こういうふうに述べられておりますが、このことに誤まりはありませんか。
  91. 岸信介

    岸国務大臣 この委員会は協議的なものであるという性格についてはその通りであります。
  92. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、双方の意見が一致しない間は何事もなし得ないという結果にならざるを得ないと思うのでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 その通り、協議でありますから、意見が一致することが必要であろうと思います。
  94. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、委員会において審議すべき事項はと書かれまして、三点が述べられております。米国によるその軍隊の日本における配備及びその使用について協議をする、こら書かれております。先ほど来の総理の御説明を聞いておりますと、今までは一方的にアメリカ軍の兵力配備が行われてきた、あるいは装備が行われてきたが、これは今回の訪米の結果として当然日本と協議をした上できめるということになった、こういってあたかも前進のようにお述べになりました。だがしかし、今のお話でありますと、意見が一致しない間は何事もなし得ないのですから、米軍の兵力の配備、装備、こういうものが意見の一致しないままに行われるとするならば、今までと少しも変らない状況ではないか。むしろころいう委員会を作ったことがごまかしであり、すりかえであるのにすぎない、こう私は思うのですが、この点どうでしょうか。
  95. 岸信介

    岸国務大臣 それは、飛鳥田君の御質問ですけれども、私は御質問自体が矛盾しているのじゃないかと思います。協議がまとまらなければ何事もしないというのがその趣旨であって、協議機関であるゆえに、意見が一致すればやる。配備であるとか使用ということにもしも意見が一致しなければこれはできないということであります。その意見が一致しなければ一方的にやるということではないのですから、今の御質問が私はよくわからないのですけれども、御心配は要らない、こう思うのです。
  96. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そこに問題があると思うのです。今までアメリカは安保条約に基いて兵力の配備、装備、こういうことは一方的にやってきたわけです。それを一方的にやってきて、日本の政府にはあとから通告をするという程度で終っておる。このことは非常によろしいことではなく、対等な立場に立って自主防衛をなさりたい、こういう御希望で、日本アメリカとがこの委員会の中で合意に達しなければアメリカは一兵たりとも動かさない、こういう形になるのならば、この委員会意義といろものは非常に重要になり、われわれも認めることができるわけです。ところがさっきの総理の御答弁によりますと、双方の合意に達しなければアメリカは安保条約に基いて自由にやる、こういうふうにしかとれないわけです。もしそうだとすれば、こんな委員会というものは一体何のためにあるのか。ただ一応日本に話しかけて、日本の人々を納得させるような形をとるという外形にしかずぎないのではないか、こういう意味を私は申し上げているわけで、決して矛盾ではむいと思うのですが一つ……。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 この機関は協議機関であるから、話がまとまらなければ何事もなし得ない、こういうのが趣旨でありまして、話がきまるまでは何もできない、こういうのでありまして、話がきまらなければ一方的にやるという意味ではないのであります。従いまして兵力の配備あるいは使用その他の問題につきましても十分話し合いをして、両国が意見が一致すればそういうことができるのであります。一致しないから一方的にやるという趣旨ではないのであります。その点御了承願いたいと思います。
  98. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、非常に重要な合意ができたように私は思うのです。今までアメリカ軍は安保条約に基いて兵力の移動あるいは配備、装備というようなことについては、日本の政府の承諾を必要としないという立場をとってきたと思います。そうしてそれがアメリカの安保条約の解釈であったろうと思います。ところが今のお話でありますと、今度この委員会ができました結果、この委員会の中で合意に到達しないとするならばアメリカは一兵たりとも動かさない、あるいは装備をも変えない、こういろ約束をあなたになすった、こういうふうに伺えるわけです。そうだとするとアメリカは今まで安保条約によって持っておった権利をみずから狭めることについてあなたに合意をした、こういうふうに伺ってよろしいわけですか。安保条約はすなわち重大なる修正を受けた、こういうふうに伺うことができるわけですが、よろしゅうございますか。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 この委員会が協議的なものであり、今回の日米会談というものが、両国の立場を十分に話し合って、両国の首脳部の間に意思が一致しまして、そうしてこの安全保障条約の改訂問題ということはいろいろな事情で今すぐ実行できないけれども、しかしこれの運用上の問題において十分に日本側の意のあるところもこれを実現するよろにするために、両国政府間にこういう委員会を作ろうという話し合いになってできたわけであります。それは協議的なものであり、本来これを作るということ自体が、両国の完全な理解と友好精神に基いてできておるわけでありますから、条約上の権利であるとか、条約の規定上どういうことができるとかいうように文句の上ではできておりましても、運用の面においてこれを両国の理解と友好の精神に基いて運営していこう、それにはこういう重要な問題については協議して、両方の意見が一致することによってこれをなしていく、この意味において、いわゆる対等な立場というものをおのおのとって、そうして話し合いをしていこう、こういうのが委員会の趣旨であります。従いましてその意味においては非常に重要な意義を持っておるものであり、社会党の一部の方から、これはごまかしであり、何ら意味がないじゃないかというような御批判もあるようでありますが、私はこれに非常に大きな意義を認めておるわけで、今後の運営に大いに期待いたしておる次第であります。
  100. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もっとずばっと答えていただきたいと思うのですが、安保条約の条文あるいは安保条約の字句は修正しないけれども、その運営について重大なる変更を加えた、あるいは制約をアメリカ承知をした、こういうふうに受け取ってよろしいのですか。すなわちアメリカの最高の方であるアイゼンハワーと、日本を代表するあなたとの間において、条文こそ変えないけれども、少くとも運営については両方の合意に到達するまでは兵力を動かさない、装備も変えない、こういうふうに了承した、こういうふうに正式に受け取ってよろしいのかどうか。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 その通り御了承になってけっこうであります。
  102. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそうだとすれば、それは何か文書にしたものとして残っておりますか、あなたとアイク大統領との話し合いという程度でとどまつておりますか。これは非常に重要な問題です。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 共同声明をごらんになりますと、その点委員会の性質が明らかにされております。
  104. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそうだといたしますと、将来日本には当然アメリカの戦略体制として誘導弾あるいは原子兵器というものを含んだものがやってくるのじゃないかという懸念をみんな持っております。御存じのように、韓国についてアメリカ軍は休戦協定を破棄して、原子力支援部隊を派遣いたしました。また沖繩にも原子力部隊がやって参っております。さらに台湾にもマタドールその他の原子兵器と言い得べき誘導弾装置がやって参っております。これも明らかであります。全体としてアメリカ世界中の自由主義諸国家に対して、その国の兵隊に、その国の軍隊に原子力を装備させるか、あるいはアメリカの原子力支援部隊を送るか、いずれかをとるという態勢を明白にしております。そういった大原則に立って、今申し上げた韓国、台湾、沖縄、こういう状況が現われてきております。日本だけをポケットにしておく、空白にしておくなどといろことは、私たちは考えられないのであります。こういう事態が発生いたしました場合でも、原子力支援部隊を向うが持ってくる、こういう提案をこの委員会にいたしました場合に、意見が一致しなければ絶対に持ってこられないということをあなたは保証できるのですか。
  105. 岸信介

    岸国務大臣 原子力部隊の日本への駐留については、私はこれを拒否するということを明確に申しております。従いましてこの委員会においてそういうことが当然協議の題目にならなければならぬのであって、また協議された場合において、意見が一致しない限りにおいて日本に持ち込まれるということはない、かように御了解いただきたいと思います。
  106. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この委員会は協議的性格を持つと同時に、その性格として一体両国の諮問機関なんですか、それとも代表を出し合って話をする機関なんですか、これは非常にわかったような、わからないような感じがいたしますので、もう一ぺん開かしていただきたいと思います。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 これは両国がそれぞれ代表の委員を出して構成しておるところの委員会でございます。
  108. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、この間外務委員会であなたがお述べになりました点を拝見いたしますと、条約の改訂について合意に達したときにはあらためて両国の政府に提案をする、とう書かれておりますが、もし代表であるならば、自分で自分に提案をするというのは非常におかしいように思いますが、この関係はどうなんですか。
  109. 岸信介

    岸国務大臣 この委員会はそれ自体改訂を目標として改訂を論議するために設けておる代表の委員会ではないのであります。しかしそういう点について意見があった場合に、両国の代表の間に意見が一致すれば、それぞれの政府にその意見を具申する、そうして両国政府の間において交渉する、こういう意味であります。
  110. 相川勝六

    相川委員長 稻村隆一君。
  111. 稻村隆一

    ○稻村委員 それでは時間がありませんから、私開きたいことはずいぶんありますが、対中共問題について簡単に質問したいと思います。  今日中共がどうであるかということは別問題といたしまして、中共を承認し、国連に加盟せしむることは、世界平和のためであるということは、何人も承認するところです。たとえばイギリスなどは過去においてもそうであったし、現在もそうであるし、将来も、これはおそらくアメリカとは絶対に離れられない運命共同体とでもいうべき国でありますが、そのイギリスを中心とする英連邦首相会議は、七月上旬に満場一致中共の国連加盟を決議しました。自由諸国と密接な関係にある日本としても、英連邦にならって、中共の承認を真剣に考慮して、国連の加盟を支持することが、アジア及び世界平和のために非常に重要なことであると思うのでありますが、首相の見解を承わりたいと思います。
  112. 岸信介

    岸国務大臣 今の国際情勢から申しまして、今直ちに中共を承認し、あるいはその国連加盟を認めるということを、私は国の方針としてとることは適当でないと思います。と申しますのは、今のあなたの御説の御要求のようにこれを承認し、加盟せしめることは、世界平和のためにいいということについては、何人も疑いを持たないというように論断されておりますけれども、国連の内部をよく御検討下さいますと、何人も異論を持たないじゃない、そう考えておる方が少数なのですから、そういう情勢のもとにおいて日本が今承認することは適当でない、かように考えております。
  113. 稻村隆一

    ○稻村委員 首相は将来とも中共を承認する方がいいと思いますか。その点です。
  114. 岸信介

    岸国務大臣 この問題につきましては、いろいろな客観的な情勢を作っていかないとならないのでありまして、現在のところにおきましては私は中共との間において経済関係、主として貿易を増進するということに力を入れていくことが適当である、かように考えております。
  115. 稻村隆一

    ○稻村委員 この間わが党の淺沼書記長が団長として中共を訪問したとき、中共としても、現実的に日本が中共を承認することの困難なことはよく知っておったのです。それで積み重ね方式を中共は考えておるようであったわけです。すなわち政府間の気象協定、郵便物業務協定、漁業協定、文化、貿易協定、こういうふうなことを考えておったようでありますが、その点に対して――今日貿易上の重要な問題もあるのですから、そういう点に対しては首相はどういうふうにお考えになるか、お教えいただきたいのであります。
  116. 岸信介

    岸国務大臣 貿易協定の問題は、御承知通り民間のレベルにおいて第三次まで行われ、第四次の協定をするということで近く国会からもその代表者が出かけていくような情勢になっております。御承知通り、これにはいろいろな問題が従来支障を来たしておるのでありまして、それらの点につきましても十分関係方面におきまして研究をいたしております。私はこの第四次貿易協定がスムースにでき上ることを望んでおります。
  117. 稻村隆一

    ○稻村委員 今中共貿易の問題で指紋と通商代表部のことがだいぶ困難になっているようでありますが、この問題に対する具体的な解決方法を外務大臣は持っておられるでしょうか。
  118. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 指紋問題につきましては、御承知のように問題が非常に複雑になっておりまして、国際見本市等に対します指紋問題は、すでに私は解決されたように感じるのでありまして、解決されたと思っております。将来何らかの形でもって貿易をスムースにするための機関が日本にできることになりました場合には、その場合に指紋問題はあらためて考慮いたしていきたいと考えております。ただ申し上げたいのは、私はアメリカに対しても自主的外交をやるつもりであります。中共に対しても自主的立場から問題を処理していきたい、こう考えております。
  119. 稻村隆一

    ○稻村委員 通商代表部の問題はどうですか。
  120. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 通商代表部はただいま申し上げましたように、何らかの機関を置くことによって貿易をスムースにしていく道があり得ると考えております。
  121. 相川勝六

    相川委員長 どうですか。もう時間が参りました。
  122. 稻村隆一

    ○稻村委員 私首相に対して最後に質問したいのですが、首相はいつでも自由主義とか民主主義とか言うのですが、実は岸内閣の政策に対して、私は非常に危惧を持つのです。というのは、ほんとうに自由主義、民主主義を守るかどらかということですが、いわゆる岸内閣の政策あるいは人事などを見ますと、この間衆参両院議員が三分の一以上、憲法の規定に従って案件を付し、日時を定めて議長を通じて臨時国会の召集を要求したのです。これが社会党に対して何の回答もないのです。しかも新聞記者に対しては十一月上旬に開くと明言しておるのです。こういうことは全く野党を無視した一党独裁のファッショ的な考えで、すでにそのことで憲法を無視しているのではないか、こう私は思うのですが、一体それはどういうわけですか。何の返事もないのです。
  123. 岸信介

    岸国務大臣 そんなことはないと思います。私は党及び政府の何としまして、内閣官房長官及び幹事長から社会党のそれぞれの機関に向って政府与党の意向を伝えて、十一月の初めにはおそくとも開くことはできるが、それまではいろいろな準備があるのでむずかしいじゃないかと思うという意向は伝えてあるわけであります。私は報告を受けておりますし、新聞にも伝えたことが出ておりますから、決して聞きぱなしにして返事をしないという失礼なことはいたしておらないのであります。
  124. 稻村隆一

    ○稻村委員 正式に伝えてない。淺沼書記長は、私にきょう内閣委員会に行っで聞いてくれとこういうのです。全然正式に伝えてないのです。  それからアメリカ駐留軍の撤退によって今度自衛隊が増強される、そういう場合にやはり装備がだんだん強化していくと思うのです。現在の自衛隊でも憲法違反であると思うのに、これ以上装備を強化し、大がかりに自衛隊を増強することは、まったく現憲法に反する行為だと思うのです。こうなればどうしても憲法の改正をやるべきだと思うのですが、現に社会党が入ってない憲法調査会を発足したということは、憲法改正を強行する意図かどうか、この点をお聞きしたいのです。
  125. 岸信介

    岸国務大臣 憲法調査会の発足に当りまして、私どもあらゆる手を尽して社会党の参加を求めたのであります。しかるに十分社会党の方にその趣旨が徹底しないためでありますか、参加を得るに至らなかったことは、私は国のために非常に遺憾なことである、また識者の間にもその点において非常に遺憾とする人が少くないと思うのであります。さらに社会党の方が思いを改められまして、これに参加されるようにちゃんと社会党のお入りになる議席をあけておりますので、一日も早く参加していただきたいと今でも念願しておるのであります。しかしてこの委員会は、初めから調査会法を制定のときに十分論議され審議されたように、今の現行憲法についてあらゆる角度からこれを再検討して、最も権威ある回答を政府及び国会にしてもらうということになっておりますので、初めから私自身は憲法改正論者でございますけれども、この委員会は、改正ということを前提としてその案を作ってもらうというための委員会ではないことは、あの調査会法制定のときの趣旨からも十分私は御了承いただけることだと思います。従って今なお社会党の方が入られず、これは決して一党一派の問題ではなくして、真に国政を議し、国政の将来を考えるという以上は、私は主張のいかんを問わず、やはり参加さるべきものであるという考えを持っております。
  126. 稻村隆一

    ○稻村委員 これは私はどうしてもあれしなければならぬのですが、憲法調査会に社会党が入らぬというのは、憲法調査会を内閣に置くことは憲法違反であると考えるから入らぬのです。戦術上入らないのじゃないのです。こういう点は憲法上の議論ですから、ここで論ずる時間もありませんけれども、大体御存じのように、政府や君主の無限の権限を制肘するために憲法ができて、そこで三権分立ができたわけでしょう。そういう場合に、権限を制限される政府が、憲法上の規定の変更を取り扱うということは、これは人民主権の憲法の歴史から言って――法律論としては成り立つかもしれませんよ、しかし憲法の歴史から言って、人民主権の憲法の建前から言って、それは私は明瞭に憲法違反だと思うのです。それだからどこの国でも憲法上の問題は立法権に専属しているのです。立法権だけが取り扱っているのです。現にイギリスなどは、憲法上の規定の一切の変更は国会がこれを取り扱うことになっておるのです。政府は関与しない、これがほんとうなんです。そういう建前からわれわれは入らないのです。憲法違反のところには入れない。もしもこれを国会に置くならば、私は社会党も入って大いに議論して差しつかえないと思う、こういう建前に立っておる。それを無理に自民党並びに政府は強行したが、しかし憲法上のいろいろな問題は、野党の協力なくしては一歩も進まない、われわれ三分の一以上を持っているのですから。だからこういうふうな内閣に調査会を置くようなことをやめて、あらためてやり直して、国会に憲法調査会を置いて、そうして野党もそれに参加して、憲法上の問題を堂々と論議できるようにしたらいいのじゃないですか。世間はそれを誤解している。なぜ入らないかと言っても、憲法違反であるという解釈をとっているのにどうして入れますか、この点に対してあなたはどう考えられますか。これは憲法上の議論を聞こうというのじゃない。とにかくわれわれは憲法違反だから入らない。これは当然憲法の歴史から言って国会が扱うべき問題だ。政府が扱うのは間違いである。だから国会に置いて、そうして野党も入れるようにしたらどうか、こういう考えを持っていないか、私はころ言うのです。
  127. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、憲法そのものの改正であるとか、あるいは憲法制定の問題につきましては、今の憲法の明示するように、国会の三分の二の同意が必要でありますし、さらにその上に国民の投票を求めて、国民の過半数がこれを支持することが必要であるわけであります。それは今お話の通り憲法が柄として明らかにしておることでありまして、将来もし改正しろという結論が出て、また改正するのにはこういう案がよろしいという案が出てくるならば、そういう手続にすべきことは言うを待たないのでありますけれども、憲法そのものを再検討し、そうしてそういう点についての意見を求めるということは、その調査会がどこに置かれましょうとも、憲法違反であるとかいう問題は絶対に生じないのでありますから、今お話の点は、将来この憲法の改正案というものができた場合において、これを扱う上におきまして、これは国会に専属し、また憲法の規定によるところの国民投票によらなければならぬことは言うを待ちませんけれども、これを検討するところの調査会を内閣に置くということが憲法違反であるという見解は、私自身は絶対にとりませんし、同時にそういうことは、憲法調査会法ができますときに、国会においても十分審議されて、国会の多数の者は、それは憲法違反にあらずという結論が出ておるのでありますから、この国会の意思は尊重されて、そうして一日も早く社会党の方の参加されることを重ねて私は望むものであります。
  128. 相川勝六

    相川委員長 淡谷悠藏君。どうか五分間の厳守を願います。総理外務大臣も所用がありますからどうぞ一つ
  129. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 具体的な問題で一、二質問したいと思います。さっき各委員に対する御答弁の中で、米軍は地上部隊だけではなくて空軍、海軍ともに漸減するという方針を大体明らかにされましたが、それと逆行して、最近米軍の施設、航空基地、あるいは通信施設等が漸次拡張、増強されるような形にあるのは、一体どういうわけでございますか。
  130. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろな兵器発達やその他装備の必要上、兵力は将来も減りますし、また基地等も全体的に言いますと減少することは当然でありますけれども、一部においてそういう不完全な施設等を完備するための整備が行われることは、これまた当然であろうと思います。
  131. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 小さな基地などは漸次解消されておりますが、たとえば砂川を初めとする新潟、小牧等の滑走路の拡張、あるいは美保における大きな通信設備の拡張などは、将来米軍が撤退するということを予想されるならば、その拡張ざれたものは一体どうなりますか、やはりこれは近い将来においてなくするという御意思でございますか。
  132. 岸信介

    岸国務大臣 飛行機がプロペラの飛行機からほとんどジェット機に変ってきておるのは御承知通りであります。ジェット機の発着におきまして滑走路が従来のものでは短か過ぎるので延ばさなければならぬ、これは米軍が使いましても日本の航空自衛隊が使いましても必要なのであります。そういう意味において、将来米軍の航空隊等が撤退した後においては、これは当然日本の航空自衛隊に引き継がれる。そういう意味におきまして、私は具体的の場所々々のなには申し上げませんけれども、必要な飛行場の拡張は実現しなければならぬと思います。それからまた通信施設につきましては、これまた御承知通り、通信に関する装備は非常に科学的に発達をいたしております。また日本の国土の上から見まして、通信施設の完備ということは、日本防衛の上から言ってきわめて重要な施設の一つであると思います。具体的に美保の問題につきましては私詳しく承知いたしておりませんけれども、そういう意味において装備上必要な通信施設の拡張は当然行われるものでありまして、またこれは米軍の撤退後において日本に引き継がれる、あるいは撤退前においても一部は引き継がれるというふうなことになるだろうと思います。引き継がるべきものであり、そうして日本の自衛の上から申しますると、こういうものは充実することが必要である、こう考えております。
  133. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 近い将来において米軍が撤退し、その場合にあの施設を全部自衛隊が引き継ぐとするならば、さっきのいろいろな御答弁の中から考えられますことは、現在米軍が日本で持っておる兵力と同じような兵力日本が持ち、また設備その他におきましても、米軍の有するものと同じところに達するまでは米軍は撤退しないという逆論もできるのでありますが、さように理解してよろしゅうございましょうか。
  134. 岸信介

    岸国務大臣 必ずしも数字的にアメリカ兵力と同じものがなければならぬとか、あるいは航空基地の数が同じ数でなければならぬというふろには、これは論断できないと思います。しかし御承知通り現在の日本の航空自衛力というものはまだ非常に弱いものでありますから、これが相当充実されなければアメリカ空軍の撤退というものはむずかしかろう、こう思います。
  135. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現在米軍が持っております程度の兵備を日本の自衛隊が持った場合に、憲法との関係はどうなりましょうか。米軍の持っておる現在の兵力と同じものを日本の自衛隊が持っても、なお現在の憲法でこれが許され得るという総理考えでしょうか。しかも核兵器の持ち込みはしないというととでございますが、大体ジェット機を日本の自衛隊が所有した場合、さっき辻委員からも追及されました通り日本を守るためにはそういうものもまたやむを得ないという事態が出てこないだろうかどうか、その点あらためて私確認しておきたいと思います。
  136. 岸信介

    岸国務大臣 一体憲法との関係をどういうふうに解釈すべきかということは、これは御承知通り非常に議論のあるところであります。が、反対論者におきましても、これは憲法が自衛権を認めておる。自衛権を否認するものじゃないのだということについては意見が一致しておると思いますが、その自衛権の内容というものについての判断なりあるいは論議が従来も国会においてしばしば行われたことでありますが、私はやはりこの自衛権というものが憲法にあり、われわれが他から不正に、不当に侵略された場合において、これを祖国を守り民族を守るというのが、憲法上否認されておらないとするならば、その不正なる侵略を排撃するだけの実力を持つということも、当然自衛権の内容として考えなければならぬと思うのです。そういうことはどの程度であるか、どういうことだということにつきましては、いろいろこの兵器その他の発達等も見なければならぬことでありまして、数が何ぼになったらいかぬとかあるいはどれだけのどういう兵器を持ったらいかぬとか、あるいは飛行機は今日のように発達し、非常に早くなってきた場合に、プロペラ機ならいいけれども、ジェット機ならいけないのだというふうな限定はいかぬと思います。ただこの原水爆及び核兵器の問題につきましては、私はとれは国民がこの問題に関して持っておる国民的感情及び私自身が政治家としてこの問題について考えておる、すなわち原子力はあくまでも平和的利用によって人類の福祉のために用いられるべきものであって、人類の破滅のため、にこれを用いることは文明の逆行であり、これをあくまでも防がなければならぬという意味において、私はこれによって装備するということはしないということを申しておるわけでありまして、その他の点においてあらゆる科学的の研究なり科学的の開発をしていくことは当然やらなければならぬことである、こう思います。
  137. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現在米軍が持っております設備を引き継ぐ場合に、今の範囲内では秘密保護法等を作る必要はございませんか。
  138. 岸信介

    岸国務大臣 今の御質問の趣旨私はっきりわからないのですが、現在の施設を引き継ぐだけなら秘密保護法の改正が必要でないか、こういう御質問でございますか。
  139. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうです。
  140. 岸信介

    岸国務大臣 今の日本にある設備についてはある程度の――ちょっとはっきりいたしませんけれども、しかし少くとも将来進歩するところの科学上の研究を進めるためには、今の秘密保護法では不十分だということはいえると思いますが、現在アメリカの持っておるものにつきましては――どうなんです。――防衛庁長官の話によりますと、今の施設については何もないけれども、それに用いておる装備のうちにはある程度の秘密保護をしなければならぬ点があるかもしれない、こういうことであります。
  141. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 最後に一点だけ聞きたいのですが、日米安全保障条約によって日本の安全が保障される、こういう観点に基いて、現在の米軍並びに自衛隊がその衝に当っておると思いますが、その場合に、さっき総理は仮想敵国を考える必要はないというふうに言われた。仮想敵国と言わないまでも、総理はしばしば不当不法なる侵略という言葉を用いておる。同時に自由主義国に同調するという立場を堅持されまして、国際共崖主義脅威ということをしばしば言われております。これはアジアを一個の怪物が徘回する程度に考えれば、一つの扇動にはなるでしょう。けれども総理の言われる国際共産主義脅威とは、具体的に一体何をさすか。この国際共産主義脅威というのはソ連もしくは中共の政府に関係があるのかないのか、その点を一つはっきりお伺いしたいと思います。
  142. 岸信介

    岸国務大臣 国際共産主義脅威ということは、国際共産党の活動や、あるいは今日までのいろいろな各地においてのできごとの背後における国際共産党の動きというものを見るならば、私は自由を愛しまた民主主義を完成しようという念願に燃えている人々からいうと、これは一つ脅威であるということは、これをいなむことはできぬと思います。私は、国としてはソ連との間においても国交を正常化しております。従ってソ連を仮想敵国として日本がなにするという考え方は、平和外交を推進し、いずれの国とも友好関係を作り上げていく上からいうと望ましいことではないと思います。しかしわれわれが国を守る意味において、この国際的な共産主義の各地におけるところの事態というものを見るときにおいては、日本もその脅威をやはり考えて国として防衛の手段を内外ともにとって、国内においても治安の維持に努めることは必要でありますし、国際的にも、そういう侵略が起ってくればこれを防衛するという考え方をするわけであります。
  143. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 共産主義の概念規定を簡単にお伺いしたい。総理の言われる共産主義というのは一体何をさすのか。その国について具体的に御指示願えないならば、あなたの考えている共産主義というものの概念規定を最後に一つお伺いしたい。
  144. 岸信介

    岸国務大臣 これは概念的に申し上げるまでもなく、私は世界各地における国際情勢といろもの、また国々における事態というものを見るならば、自由を愛し民主主義の立場に立つところの人々が、共産主義一つ脅威というものを感ずるということはいえるわけでありまして、特にこれを概念的にどうするという必要はない、こう思います。
  145. 相川勝六

    相川委員長 西村力弥君。
  146. 西村力弥

    ○西村(力)委員 総理アメリカに参られまして反共演説をぶたれてすばらしいかっさいを受けたようでありますが、それはそれといたしまして、お持ちになった防衛三カ年計画が計数的には以前からあったもので、また当時の政府の重光さんなりそういう方々が持っていってあの当時においては歓迎されなかったものが、今回お持ちになって歓迎されたといろところに私たちは非常に奇異な感じを持つわけなのでございます。なぜ今度総理のお持ちになった計画が歓迎されたのか、いろいろ考えられるところもありますが、総理自身はその点に対してどういう見解を持っておられるか。私たちは、さきに歓迎されなかったその計画が、計数上においては同じであるのに歓迎されたという変化について、やはり非常な関心を持たざるを得ないわけなんであります。その点が一点。  続けて質問しますよ。一括して答弁願うようにします。それから会談の結果持たれるに至った安全保障に関する日米の委員会、ここでは米軍の配置、装備、使用というものに対して相談が行われる。先ほど飛鳥田委員質問に対する答弁は、協議がまとまらなければ一兵たりとも米国側は動かさないのだ、こういうことを確信あるがごとく言われましたが、そのような具合にはっきりしましても、私たちは一つの危険を感ずる。それはどういうことかといいますると、現在米軍は一触即発の態勢を常にとっておる。今の兵隊はパール・ハーバーでやられたような工合にのうのうとしているはずはない。米軍の飛行機は臨戦態勢をとって、常に三分の一は空中にあって、指令一下敵陣に突撃するという態勢をとっているのだということを軍事専門家はすべて言っておる。ですから、この委員会において米軍の行動を開始する場において協議が行われる。それがもたもたしているのだというような余裕があり得るかどらか。私はこれからの戦争というものはそんなような事前にもたもたと相談をして、そうして議まとまったからこれをどうする、こういうような工合には絶対に参らない、こう思うのでございます。そういう態勢に米軍が立っている限りにおいて、戦争というものが発生する場合においては協議の余裕もなく行われるだろう、こういうことを言われるのです。ですからそういうことを考えていきますと、結局日本の国に米軍がおることは、合同委員会で協議をすることにしましても、それはだめなんだ、こういう結論にならざるを得ないわけなんでございます。その点に関しては総理はどういう工合にお考えになっているか。  第三点としましては、核兵器の持ち込み、これは確信をもって拒否するのだ、国民感情にこたえて、そしてまた日本の安全をはかるために、そういう工合にするのだと仰せられるけれども、そういう考えは、現実に横須賀なら横須賀に第七艦隊がおる。これは原子力武装していることは間違いない。板付あたりに原子力を搭載する飛行機がはっきり入っておる。そういうものが入っておるのに対しては一体どうするのか。これからそれを拒否するのか。第七艦隊は日本の横須賀に入る場合においては原子力武装を捨てて日本に入ってこざるを得ないということになるわけではないか。そういうことになりますと、政府側はとかくオネスト・ジョンが日本に入ったときのような理屈をつけるのではないか。オネスト・ジョンが入ったときには、先にコンクリートをつめるから原子兵器ではないのだというふうに、あの当時詭弁を弄された。しかし大砲でも鉄砲でも空砲を打つから兵器ではない、こういうことは言えないはずなんです。常々は空砲を打っておる。しかしながら、それは兵器ではないなんということは言えないと同じように、原子装備をするという兵器が常にコンクリートをつめる、あるいは爆薬をつめるから、それは原子兵器でないという誰弁は成り立たない。やはり原子装備をする兵器日本に入る限りにおいては、原子爆弾というものが使われるのだということは避け得られないことになるのではないかと思います。だからオネスト・ジョンにコンクリートをつめるから原子兵器でないというような誰弁は許されない。そういう工合に考えてきますと、やはりそういう原子装備をするというような目的をもった兵器は一切日本には入れてはならない。こういう立場をとっていかなければならぬ、こう思うわけなんであります。それが第三点。  次に近く国連総会が行われますが、国連の力が安保理事会というものから総会に非常に大きくウエイトが変ったということは、総理もお認めになることと思うのでございます。その力はアジア・アフリカのバンドン・グルーブというふうにいわれているあの力がそらせしめているんだ。ところが今度の総会においては、確かに原水爆の実験禁止の協定即時締結というような提案が行われるであろうと思う。かつて登録制を提案して世界の批判を受けたような、ああいうことではなく、今度国連総会においてそういう提案がなされた場合においては、一体政府としてはどういう立場をとられるであろう。私たちいろいろ検討いたしますに、この実験禁止協定は、国連総会において相当の可能性を持ってくるのではないだろうか。そのことは、アジア各国の力というものが総会に反映してそういろ工合に動くのではないだろうか、こう思われる。その場合において、日本立場というものは非常に重要な問題になってくるではないだろうか。一方においてはアメリカ側のいわゆる自由国家群と称せられる側に対する懸念から、それにらかつには乗れないということもあるでしょうけれども、また一方アジア・グループという中に日本方向をつげなければならぬということは、日本の多くの国民考え方であり、またそうすることが世界平和に寄与するという考え方が、現実に具体的に行動となって現われる姿である、私たちはそう考えるんです。ですからその際における日本の態度をどうせられるか。これは相当検討せられていることだと思いますし、また決断をもって行なっていただかなければならぬ問題ではないか、こう思うわけなんです。  次に第四点としては、昨日新聞発表によりますと、長期安定政権構想として経済計画を基礎とする、こういうことを申されておりますが、これは当然のことだと思うのです。そのあとの経済計画の基礎に立って――基礎に立ってという言葉がちょっと私にはわからないのですが、こういう基礎に立って労働、教育両政策に重点を指向する、こういうことをあなたが仰せられた。その記事を見まして、私はかつて産業報国会を仕組み、あるいは教育統制を仕組んだあの姿をまた思い起さざるを得ないわけなんでございます。これは私の単なる思い過ごしであってもらいたいものだ、こう思うわけなんですが、長期安定政権のために教育政策、労働政策に重点を指向するということに対しては、ぴんと国民全体一、あの当時の記憶のなまなましい人々は感じているだろうと思う。ですからそういう点に関してはっきりした御見解を示していただきたい。  以上の点について御質問申し上げます。
  147. 津島壽一

    津島国務大臣 今回のアメリカ訪問の直前に、国防会議におきまして国防の目標を決定したわけであります。このことは決定されたと同時に新聞にも発表いたしましたので、私が行く前からアメリカ承知しておったことでございます。従来はいわゆる防衛庁の試案として一つの案が示されたことは、過去においてございます。しかし日本政府が一つの意思決定の上に立って、政府としてこうするという案は従来なかったわけであります。アメリカとしては日本の政府が政府として強い決意のもとに、こういう計画のもとに防衛力増強をはかるのだというこの態度自身に対して、非常にアメリカ自身が理解を深め、そしてそのことを共同声明にもありますように、歓迎するということになったのでありまして、数字そのものよりも日本の政府の態度そのものに対しての理解がはっきりしたということであると思います。  それから第二点の安保条約に関する委員会において付議せられる事柄でありますが、私どもは兵力の配備、使用を含めて安保条約から生ずるところの問題をできるだけこれにかけなければならぬということは言うを待ちません。ただ非常な緊急な事態があって、委員会を招集することもできないような、何に侵略をされて、そしてそれを全然放置しておくということは、安全保障の上からできませんから、事実上不可能な場合もあると思いますけれども、あくまでも原則としてはこの委員会に付議して、両方の意見の一致の上にすべてが行動されるということに持っていきたいと思います。  それから第三点は、原子兵器を装備することができるような飛行機が来ているじゃないか、あるいは原子兵器で装備したところの艦隊が横須賀へ来ているじゃないかというようなお話でありますが、私はそういう事実についての何らの報告を受けておりませんし、なおまたいろいろな飛行機や艦船というようなものは、もしも唯一に原子力をもって装備しなければ意味をたさないというような艦艇やあるいは飛行機であるならばこれは非常な問題があると思いますが、そうでなしにやろうとすればそういう原子兵器をもって装備することもできるのだ、しかし実際は原子兵器をもって装備せずにも十分機能を持っており、そういう形において来ているというようなものを、ことごとくいわゆる原子兵器としてこれを拒否するということは、私は実情に合わないのじゃないか、こう思っております。  それから第四点の国連総会における原水爆の実験禁止やあるいは使用禁止等の問題についての新しい提案が出た場合における日本の態度いかんという御質問でありますが、私はこの原水爆の実験禁止という問題につきましては、あらゆる機会にこれを強く世界の良心に訴え、そしてこれを実現したいという念願を持っておりまして、それは私のあらゆる行動に出ております。しこうして、アメリカとの会談におきましても私はその問題を出しておりますし、また国連がさらに進んで有効な方法において実験禁止をするというような提案が出た場合におきましては、これを支持するような方向にいかなければならぬことは、私の今の信念なり私の行動から当然の帰結としてそういうようにしなければならぬと思います。そういう意味において、十分にこれに検討を加え、善処をいたして参りたいと思います。  最後に、私が昨日でありましたか箱根におきまして記者会見をしたことに対しての問題でありますが、労働政策及び文教政策について特に重点を置きたいということは、岸内閣の改造の際の内閣の声明にも明らかにいたしておるところであります。私は、やはり労働の問題については、一国の経済の繁栄、産業の繁栄ということに労使ともに協力して、繁栄をもたらすようにすることが必要である。やはり産業、経済が発展し、繁栄するにあらざれば、労働者諸君の生活も向上し、その福祉も十分にこれを確保することはできない。しこうして最近の事例を見ますると、ずいぶん産業、経済の発達を阻害するような事態が労働の問題に関して起っておりまして、いろいろな方面からの批判が行われております。こういうことのないように、労働政策というものを十分に立てて、そして経済の発展を期すようにしたいというのが私の念願でございます。  それから教育の問題につきましては、言うまでもなく民族の将来の運命、発展、繁栄、進歩というようなものは、要するに青少年諸君に対する教育が非常に大きな影響力を持っておることは言うを待たないのでありまして、こういう意味において、教育の問題を取り上げて、ここに重点を指向したいという考えでございます。私はしばしばこの国会においても私の信念を申しておりますように、民主主義に徹した考え方において、すべての施策をやるということをお誓いをいたしております。戦時中におけるところの事態というものは、これは私自身の行動に対しても十分な反省を加えておりますし、またそれに対する批判に対しましても、私は謙虚な気持でこれに耳を傾けておるわけであります。この私の申し上げることが、決して戦時中の施策を復活するというような意味でないことは言うを待たないのでありまして、誤解のないように特にお願いをしたいと思います。
  148. 相川勝六

    相川委員長 牛後二時三十分より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時三十七分休憩      ――――◇―――――    午後二時五十三分開議
  149. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際理事補欠選任についてお諮りいたします。去る七月二十三日理事であります福井順一君が委員辞任せられましたので理事が一名欠員となっております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、その方法は先例によりまして委員長より御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 相川勝六

    相川委員長 御異議なしと認めます。よって委員長におきましては高橋等君を理事指名いたします。     ―――――――――――――
  151. 相川勝六

    相川委員長 国の防衛に関して午前中に引き続き質疑を続行いたします。山本粂吉君。
  152. 山本粂吉

    山本(粂)委員 私はこの際茨城県の那珂湊市及び勝田市両市にまたがるいわゆる前渡基地において起った飛行機事故に関連いたしまして、その事故の起った原因並びにその結果、これに関連して前渡基地の飛行基地と申しますよりも爆撃演習基地として適不適の問題に関連して、関係当局に質疑を行いたいと存じます。  まず第一に法務省当局にお伺いしますが、那珂湊市の前渡基地に近接した前渡に通ずる県道上で北条という親子が自転車で通行中にゴードン中尉の操縦する飛行機の車輪がその自転車の搭乗者二人をひっかけて、老母は即死、自転車を運転していたせがれの方は瀕死の重傷を負ったという事件の起ったことは御承知のことと存じますが、この事件についてどのような捜査をせられたか、まずその捜査の方法について先に承わりたい。
  153. 竹内壽平

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。ただいまお話の事故の起りましたことは御案内の通りでございます。本件につきましては事故は八月二日でございますが、八月八日に所轄の警察よりゴードン中尉に対する業務上過失致死傷被疑事件といたしまして水戸地方検察庁が事件を受理いたしました。直ちに捜査を開始いたしまして、ゴードン中尉はもちろん目撃者等関係人多数を取り調べましたほか、さらに技術的な面につきましては、自衛隊の土浦第一航空隊長北川三等空佐そのほか航空局の亀山航務課長らからも専門的な意見を聴取いたしました。さらに米軍当局一に対しましては航空規則などを照会をいたしまして、所要の措置を講じました結果、大体捜査の結論といたしまして、八月二十一日に本件はゴードン中尉が公務執行の過程において引き起した事故であるという結論に到達いたしまして、わが方に第一次裁判権がないということで、不起訴処分にいたしたのでございます。
  154. 山本粂吉

    山本(粂)委員 ゴードン中尉が操縦した飛行機の事故は公務中の事故であった、かように結論せられたようであるが、公務中の行為であっても、その飛行機の操縦等においてどのような過失があったかなかったか、それらの点についての捜査の経過はどらであるか。
  155. 竹内壽平

    ○竹内説明員 どうしてこういう事故が起ったかというその原因につきまして検討いたしました結果によりますと、飛行機が離陸をいたします際に、通常の方法によりますと、離陸後高さが百五十ないし二百フィートに達しました際に、初めてウィング・フラップを三段階に分ちまして引き戻すというふうにされておるのでございます。ところが本件の場合には離陸直後高度百フィートの際に左旋回をいたして、そのために機首が下向きになった状況でありますが、その際にウィング・フラップを引き上げましたところ、どうしたものか、三段階に分けて引き上げるべきものを一挙に水平のところまで引き上げてしまいましたために、飛行機は急に浮力を失いまして、急降下するに至って、本件を発生するに至ったというふうに調査の結果なっておるのでございます。
  156. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そうすると、補助翼を三段階に上げる技術のごときは、これはもう飛行機操縦者の方から言えばいろはなんです。それを一挙に上げたという理由についてはどのような調査をされたか。
  157. 竹内壽平

    ○竹内説明員 この点につきましてゴードン中尉は検事の調べに対しまして、こういうふうに答えております。普通フラップは三段階に上げるのであるが、そのときは百フィートぐらいの高度で左に旋回し、機首を下げながらフラップを上げたところ、理由ははっきりわからないが、一時に全部上ってしまった。フラップが一時に上つたことと、同日暑かったこととで飛行機は下降し始めた。それで自分は操縦桿をあとへ引いて左旋回を直して、翼を水平にしたところが、飛行機は急に降下して地上に近づいていたのを知った。こういうふうに答えておりまして、三段階に分けて上げることは本人もしかと承知しておりますが、どうしたわけか理由ははっきりわからないが、一ぺんに上ってしまった、こういう供述になっておるのでございまして、この点が技術的に過失になりますことかと思いますが、これは米側の裁判において明らかにされることだと思います。
  158. 山本粂吉

    山本(粂)委員 それは米側の裁判で明らかになることはお尋ねしないでもわかることなんだが、しかしこういう事故が起った場合に、その事故の真相を究明して、かかる理由であったからこういう事故が起ったのだということを国民の前にこれを発表するということが、こういう事故の起った地元の住民に対して安心感を与える根本なんだ。それをゴードン中尉が、どういうわけかわからぬが三段階に上げるべきはずであったのだが一ぺんに上ってしまった、こういう答弁で、あとは米側の裁判におまかせするのだということでは、どうも私は犯罪捜査の面から、捜査当局としての捜査が不十分のように思われるのだが、それ以上捜査できなかったか。
  159. 竹内壽平

    ○竹内説明員 捜査当局といたしましては、それ以上の捜査ができなかったということになるわけでございますが、問題はそういう過失があるかどうかということによって、公務執行の過程においてなされたかどうかということに関連がないということに結論がなりましたために、それ以上突っ込んでの捜査ということはしておらないようでございます。
  160. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そうするとゴードン中尉の乗っていた飛行機には、飛行機そのものには故障は全然むかった、それは確認されますか。
  161. 竹内壽平

    ○竹内説明員 捜査の結果によりますと、出発の直前に点検をいたしておりまして、その事故の起りました当時には故障はなかったというふうに推定されております。
  162. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そこで問題があるのです。この前渡基地をゴードン中尉の飛行機が飛び出して、そうしておよそ三十メートル内外、百フィートぐらいの高さで飛んだらしいのだが、そうしてこの飛行機は事故の起った県道から五百ソートルぐらいの手前で急に左旋回をしておる。その急に左旋回がなかったならば、本件の事故は起らなかっただろうという推定は、現地を見た者は何人も常識上認められる。そこでなぜ左旋回をしたのかということがどうもはっきりしないので、地元の住民としては何かゴートン中尉のいたずら感を払拭することができない。その点に対する捜査の結果はどうなんですか。
  163. 竹内壽平

    ○竹内説明員 左旋回をしたことと、それから高さが百フィートのところでその処置をとったということにつきましての捜査の結果は、当時ジェット爆撃機の爆撃練習中であったようでございます。その練習はかなり低空飛行において行われるということでありましたために、ことさら当日は低空の処置をゴードン中尉はとったであろうというふうに考えられております。それで航空規則の方から申しますと、大体二百フィート以下の低空で出るということになっておるようであります。それで左旋回をいたしましたのは、爆撃練習中でありますために、その場合には左旋回をいたしまして一たん海に出て、海岸線を今度は南下する、こういう規則になっておるようでございます。それらの点は、二百フィートのところへ行って左旋回をするという処置を――事故が起ってみますとそういう結果になるのでございますが、ゴードンはこれを百フィートのところで差しつかえないと判断したところに問題があるのでありますが、そのとった行動等は一応飛行場規則にのっとっ、ておるようでございます。
  164. 山本粂吉

    山本(粂)委員 飛行場使用の規則にのっとっておるか知らぬが、第一百フィートぐらいで補助翼を急に上げてしまったということ、それからさらにその程度の高さで急に左旋回をした、操縦技術の面から考えてみて、百フィートぐらいの高さで急に左旋回をすれば、かりに補助翼を三段階に上げたとしてもなおかつ高度が落ちて墜落の危険性があるものだ、こういうふうに言われておる。それだから二百フィートぐらいの高さにならなければ左旋回等をやるべきでないということが言われておるのだが、それらの点については捜査の結果、結局ゴードン中尉の重大な過失だった、こういう結論に達したのか、それともそれでもいいのだ、百フィートぐらいで左旋回をしても、それは飛行場の使用の慣行であるか規則であるかは別として、そういうようなやり来たりで飛行機は常に爆撃演習中のときには急に左旋回をして・今日まで行われておるのだ、ただ補助翼を一挙に上げたために急降下して地面すれすれに落ちたのだ、こういうことになるのですか。
  165. 竹内壽平

    ○竹内説明員 百フィートのところで左旋回をしたことと、それから左旋回をいたしましたために機首が下の方を向いたという関係があります。それとフラップを三段階に上げるのを一挙に上げてしまった、こういったようなことが重なり合って浮力を失って下へ来たというふうに考えられるのでございますが、個々別々に百フィートのところで左旋回をしたことがいけなかったというふうにも、にわかには言えないと思いますけれども、それらの事情が総合して低下したことは間違いがないのでございまして、これはわが方としましては、過失を論ずることもできるかと思いますけれども、あげてこれは向う側の裁判にかかる問題でございますので、論評を差し控えたいと思います。
  166. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そこで捜査の結果についてもう一つ確かめておかなければならぬのですが、この飛行機は県道上で親子を殺傷して直後急上昇している。これは目撃者ことごとくがそのことを証言している。急上昇してそれから右旋回をして何か事故を起したということを認識したのか、それとも明らかに人を殺傷したことを認識したのかはわかりませんけれども、これはゴードン中尉の証言を待たなければわからぬが、いずれにしても急上昇をして右旋回をしてもとの飛行場に着陸をしている。補助翼を急に一挙に上げたために非常に飛行機が高度を失って、そしてイモ畑に車輪の跡を残しておる。車輪の跡が二本残っておる。飛行機のらしろの車輪と左の方の車輪との二つの車輪の跡がイモ畑に残っておる。それほど高度が落ちた。それが転覆もせずに県道上で親子を殺傷すると、せつなに上昇カーブをとって右旋回をして飛行場に戻った。ここにどうしても住民として納得のいかない線がある。この点についてはゴードン中尉の証言はどういうことを言っておるか、どういう事情ですぐに急に上昇できたのか、それらの点に対する捜査の結果はどうですか。
  167. 竹内壽平

    ○竹内説明員 御指摘のように畑に車輪の跡を残してある。これは尾輪の跡と、それから前車輪の跡とおぼしきもの、それからカンショの葉が倒れておるといったようなことで、機が地上に接触しておる事実を、検証の結果明らかにいたしております。そこで急上昇したことにつきましては、ゴードン中尉はかように述べております。非常に浮力を失って地上に接土いたしましたので、ひょっと見ると人が自転車で行くのを見かけたというので、急に大急ぎでこれを避けようとして操縦桿を引いた。そうしたらば上に上っていった。しかしその間に今のような事故を起してしまった、こういうふうに供述をいたしております。
  168. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そこで一つ明らかにしておかたければならぬ問題が起ってくるのです。ゴードン中尉の操縦上の証言は今答弁せられたような事情であったでしょう。ところが、私どもの方で那珂湊市市会及び市長、関係者が本件についての目撃者――明らかに目撃した人々の証言を求めているところによると、こういう事実がある。その日の事故の起った三、四十分、ないし四、五十分、時間の分数については多少の食い違いがあるかもしらぬが、およそそのくらいの時間の前に、那珂湊市の海岸を阿字ケ浦海岸に向って海岸すれすれにきわめて近接した海岸を、しかも高度およそ十二メートルの高さにある那珂湊市長の別荘の高台から目撃した者の証言によると、その十二メートルほどの高さの岸壁の上からその飛行機の飛来したのを見たときに、その飛行機は飛行機の翼の上が見えた、べらぼうもない低空飛行をしたものだ、こういう証言をしておる。飛行機の上が見えたというのですから、少くとも十二メートルよりも下を飛行機が飛ぶか、少くともその程度の高さを飛んだであろうということが言い得られる。それから阿字ケ浦海岸にその飛行機が出て、るのだが、その飛行機は当時一万人ほどの海水浴客の頭の上をすれすれに飛んだ。そのときには七、八メートルの高さであったと目撃者は証言しておる。そらして前渡飛行基地の方へその飛行機は飛び去った。その飛行機の種類は、単発で単葉の飛行機であった、こう言っておる。その飛行機がいわゆる本件の事故を起した飛行機と同一物であると、何人もさように推定しておる。この二つの事実をつなぎ合せてみると、百フィートないし二百フィートの高さで、もしこの飛行機が海岸を飛んだとするならば、目撃者がさような証言をするはずもない。ところが超低空飛行、すなわち十メートル以下の高さで飛んだと推定されるような低空を飛んでおる事実は、何を意味するか。おそらくこれはスリルを味わわんがために、しかも万人に余る海水浴客が海岸に遊んでおる、その上を超低空飛行をする、その一つのスリルを味わわんがためにそういう超低空飛行をしたのではなかろうか。同じ筆法で同一飛行機と推定されるから、すなわちゴードン中尉の飛行機が海岸を飛んだのである。そのゴードン中尉の飛行機がやはり今度は帰りしなに前渡飛行場を飛び出してわずか百メートルぐらいの高さで急旋回をして、しかもイモ畑に車輪が接地するほどの超低空飛行をして、そうして県道上を自転車で歩いている、その自転車にわきからつっかけて殺傷事故を起した、こういうのとつなぎ合せて考えてみると、どうしてもそこに割り切れないものが残る。すなわち人を殺傷することを目的として超低空飛行をしただろうとは言わないが、児戯に類したスリルを味わわんがために特に超低空飛行をやられたのではないだろうか、かよう准判断を下さざるを得なくなる。そうすると一体スリルを味わわんがために米軍の飛行機の犠牲になる日本人の立場から考えたときに、黙っておられない。とういう重大な問題が伏在するので、そこで今の海岸を超低空飛行をした飛行機とゴードン中尉の事故を起した飛行機とが同一であるかいなかといろことに対して、どの程度の捜査をせられ、どういう結論を得られたか、承わっておきたい。
  169. 竹内壽平

    ○竹内説明員 本件のポイントは、ゴードン中尉が超低空飛行をしましたことにつきまして、スリルを味わわんがための悪意に出たのではなかろうかというようなところは、まさに本件のポイントであろうかと存じます。その点を究明いたしますためには、本件の事故は出発の際に起ったのでございますけれども、その数十分前に着陸した飛行機が同じように超低空で来たということになりまして、その飛行機がゴードン中尉の操縦した飛行機であるということになりますと、ただいま御指摘のように、両々相待って悪意の意思があったのではないかというふうに推定する有力な資料になろうかと思うのでございます。この点は地元地検ももちろん注意して捜査したところでございます。  結論を申し上げますると、数十分前に到着いたしました飛行機がL20型、Lという字が書いてあるという証言等からいたしまして、ゴードン中尉の操縦した飛行機と同一ではないかという推定が成り立つのでございますが、これはそうではない、他に飛行機があったという確証は今日まであがっていないのでございまして、おそらくゴードン中尉がその飛行機を操縦して着陸したというふうに考えざるを得ないというふうに思うのであります。そこで着陸をいたしました飛行機が、それでは今御指摘のように、ある地点、十三メートルの高さのある地点から飛行機の上側が見えたというような低いところを飛んでいたかどうかというような点につきまして、検察庁におきましては目撃者として四名の取調べをいたしております。ただいま御指摘の点も調べておりますが、実際に目撃者がいた場所に臨んでみますると、その地点は標高が十三メートルではなくしてもう少し高いようでございます。三十メートルぐらいの高さのところから見たということになるようでございます。それからさらにまた水上六、七メートルの海面を飛翔しておるのを見たという証人につきまして調べてみますると、沖合い二百メートルぐらいなところを通っておって、こちらから見ると六、七メートルの高さのところを飛んでいるように見たといろのでございまして、実際に六、七メートルであったか、あるいはもう少し高い三十メートルぐらいな高さを飛んでおったのか、その点がはっきりいたさないようでございます。それからそのほかの証人もいろいろに述べておりまして、総合いたしますると海上五、六メートルの高さを飛んでおったというふうにはどうも確定できないというのが現状でございます。そしてそこへ入ります場合の飛行機の位置から推しましても、そこはやはり、先ほど申しましたように、航空規則の方から申しますと、二百フィートの範囲内の低空で入るということになっておるようでありまして、その二百フィートの低空を、かように低いところを飛ぶことまでもよろしいかどらかということは操縦者の良識に待たねばなりませんが、その低く飛んだという一事からしてスリルを味わわんがための所為であったというふうに確認することはできなかったのでございます。
  170. 山本粂吉

    山本(粂)委員 確認ができなかったというお答えでございますが、これは第一次裁判権が米側にあるか日本側にあるか、ジラード事件のように結局日本側に裁判権があるといろ結論になった場合は、裁判に付されてすべての真相が明らかになるから、従って国民としてもその事故の原因、動機、結果等についてはっきりした認識をすることができる。ところが米側に第一次裁判権があるということが確定した今日、すなわち公務中の行為であるということに認定して、事件の今後における処理については米側におまかせするほかないことは私もこれを是認するが、しかしこれが超低空飛行をしたという事実と、その飛行機とコードン中尉の飛行機とが同一であるということが確認されて、しかも目撃者一検察庁で調べた一部の目撃者の中には三十メートルぐらいの高さだったとか、二、三十メートルの高さであったとかいうような証言をしておる者もあるらしい。中には六・七メートルという高さのいわゆるほんとらの超低空だという証言をしている者もある。これをあとから何メートルぐらいだということを確実に推定するということは、非常に困難な捜査で…はあるけれども、いかに困難であってもあとら限りその飛行機がそういうべらぼうな超低空飛行をしたのかどうかということを捜査し、その飛行機と事故を起した飛行機とが同一であるということを確認して、そこで公務中の行為か、公務中の行為ではなくしていたずらの行為であるということになるかということを判断することも、また日本の検察当局においての責任じゃないか、こう思われる。もしこれがいたずらで、スリルを味わわんがため、すなわち国民性としてアメリカの人々は元来スリルを味わう、自分の生命の安全を保障しながら科学的にスリルを味わう一つ国民性を持っておるということは大体常識なのです。そういうようなことからも判断をして、そしていたずら飛行をしたのだ、どうもそういう疑いがきわめて濃厚だということになれば、これが公務中の行為ではない、公務時間中の行為ではあっても公務とはいえない、こういうような結論が出ないとはいえない。だからそれが安保条約やあるいは行政協定や日米合同委員会等のあらゆる規則、条約等の上から、日本側においてはそれ以上の捜査ができないのだというならともかく、私はさように考えておらない。なお慎重に捜査ができるものと思っておるのだが、それらの点についてそういう疑いを持って捜査をせられたかどうか、一つはっきりした御答弁を願いたい。
  171. 竹内壽平

    ○竹内説明員 スリルを味わわんがためのアドヴェンチュアとしてそういうことをやったのではなかろうかという点は、水戸地方検察庁が最も力を入れて捜査したところでございまして、もしそれがいたずらに出たものであるということになりますならば、御指摘のようにこれは公務執行中の行為とはいえないわけでございまして、わが方に裁判権があるということになるわけでございます。従いましてそこは裁判権がどちらへいくかという重大な議論になるのでありまして、慎重に、しかも誠実に捜査をいたしたのでございます。
  172. 山本粂吉

    山本(粂)委員 御指摘のように慎重に、いわゆる裁判権の有無の問題ですから捜査をされただろうことは考えられますが、その慎重な捜査の結果、結局ゴードン中尉の事故を起した飛行機と海岸を超低空した飛行機とは同一とは認められそうであるけれども、海岸を飛んだときの飛行の高さ、これがどうも百フィート前後で飛んだのか、六、七メートルの高さで飛んだのか、あるいはそれ以上、すなわち百フィート以上の高さで飛んだのか、これを確認する証拠が得られなかった。それからゴードン中尉が県道上で事故を起す手前で麦畑に接近した当時の事情は、先ほど御答弁のように、飛行機の補助翼の上げ下げの問題と比較して、低い高度、すなわち百フィート前後で急に左旋回をした。そのことに過失は認められるけれども、それだけでもってスリルを味わわんがための飛行をしたものとは認められない、こういう結論に達したというのですか。
  173. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま御指摘の通りでございます。
  174. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そこでこの事故に対する跡始末ですが、調達庁にお尋ねするが、この事故に対する跡始末はどういうことになったのか、その経過並びに結果について御報告願いたい。
  175. 上村健太郎

    ○上村説明員 お答え申し上げます。本件事故によりまして遭難せられました御遺族の方々には、まことに同情にたえない次第であります。調達庁といたしましては、事故が発生いたしましてから、直ちに御遺族の方のところに参りまして、補償申請手続その他について御相談を申し上げました。結局協議の結果、政府の一定の基準がございまするので、その基準に基きまして、総計四十三万二千四十四円という補償額で遺族の方々にも御納得をいただき、過日支払いをした次第でございます。
  176. 山本粂吉

    山本(粂)委員 その弔慰金の算出は、日米間における条約に基いてなされたことと思うが、ジラード事件との比較はどういうことになっておりますか。
  177. 上村健太郎

    ○上村説明員 ジラード事件につきましては、まだ補償額が決定いたしておりませんで、米軍側と協議中でございますが、米軍側の意向といたしましては、もう少し裁判の経過を待ちまして補償額を決定いたしたい、こう申しております。米軍の公務上の事故に対しましての補償の基準は、大体本人の日収額の千倍と、遺族に対して配偶者の場合には、その一日の日収額に対しまして百円を追加いたし、母親と子供の場合には五十円を追加いたすということになっております。従いましてジラード事件の場合におきましては、今回のなくなられた方よりも収入が多うございますので、少し多くなるかと思います。今回のなくなられました方の日収額は約三百五十円程度に見ております。
  178. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そうすると、今度のゴードン中尉のやった親子殺傷事件については、米側はジラード事件のように裁判の結果を見てからということを言わずに、当方の要求をいれて、そうして規則通りの弔慰金を支払うことに同意した、こういうことになるようだが、そうするとゴードン中尉の操縦上の過失を認めたことになるのですか、どうですか。
  179. 上村健太郎

    ○上村説明員 この補償は公務上生じました損害についての補償でございまして、過失の有無等は問うておらないようでございます。
  180. 山本粂吉

    山本(粂)委員 そうすると、そういうことで決定をしてしまうということはどんなものでしょう。過失の有無が明白にならない。かりに米軍側に第一次の裁判権があるとなったとしても、過失の有無等が弔慰金に影響するものと思われるのに、その問題が何らの結論を見ないうちにこれを決定してしまったということは、どういう理由ですか。
  181. 上村健太郎

    ○上村説明員 先ほどちょっと申し落しましたが、本件につきましては過失を認めておると思います。
  182. 山本粂吉

    山本(粂)委員 過失を認めた上での弔慰金の決定、こう承わってよろしいのですね。さらに進んで伺うが、この前渡基地を米側が使っておる目的はすでに御承知通りで、模擬爆弾の演習地、それから機銃掃射の演習地等に使われておるようでございます。しかもその使用面積がおよそ公簿面で三百六十万坪、その隣接地にはとの飛行場を使用し始めた後に、東海村に日本の原子力センターが設置されることになった。さような意味合いからこの基地の問題についてお尋ねをするのだが、この前渡飛行場を米軍が使用を始めてから今日までの間に、飛行場に基地として使用されておる以外の土地、すなわち飛行場外と申し上げれば簡単でありますが、飛行場外に模擬爆弾その他の爆弾が落っこちて、民家や道路や作物や山林に非常な被害を与えておるのだが、それらについての被害の事故の起った数等について御調査になっておりますか。
  183. 上村健太郎

    ○上村説明員 被害につきましては、一々報告を徴しております。昨年度におきましては二十二件、本年一月から五月までの間に二十六件ございます。六月以降におきましては一件でございます。
  184. 山本粂吉

    山本(粂)委員 最近のはそれでわかったが、私の調べたところによると、昭和二十九年二月二日から昭和三十二年八月二日、すなわち事故の起ったときまでの件数は百八十二件、それからそれ以前のものが九十四件、こういう事故が起っておる。数字については多少の違いがあるかもしれないが、大体こういう多くの事故が起っておる。そのために従来からこの飛行基地の使用については、付近住民において非常な不安の念にかられておったところへ、今度のような海岸超低空の飛行をしたり、たとい過失とはいいながら、県道上を自転車に乗って歩いていて飛行機の足に引っかけられ、殺傷させられるというような事故が起った。私の狭い経験で調査したところによると、世界で類例がない。こういう事故まで起っておるので、この模擬爆弾演習基地としての使用に非常に不安を持っておる。そこで今の事故の問題をお尋ねしたのだが、こういう多くの事故が起っておる上に、先ほど申し上げた通り、この隣接地に東海村の原子力センターができた。三百六十万坪の膨大な土地を飛行基地として使われておることだけでも、那珂湊、勝田両方の市としても、また地方の農民としても重大な問題であるけれども、それはしばらくおくとしましても、そういう膨大な土地を使用しておりながら、なおかつ飛行場以外に、今申し上げたような数字の事故が起っておる。こういうふうに考えてくると、日本の第二次産業革命の中心地になるといわれる原子力センターができた東海村が隣接地にある。ごく短距離のところにできた。そこへ今度は原子力燃料会社ができ、原子力研究所ができる、こういうような状態になっておるのですから、ここはそういう環境の上から、現在使用しておるような目的で飛行基地を使用されることは、付近住民のきわめて迷惑するところである。すみやかにその使用を禁止してもらいたい、こういう熱望を持っておるのです。それで私は現地に行って状況を見て、大きな面から見れば日本のような狭い国土で、たとい模擬爆弾の演習とは言いながら、ああいう超高速度のジェット機を使った演習をすることは、どう考えてみても適当の土地があろうはずはない、もちろん前渡基地もジェット機を使った爆撃演習基地としてはきわめて不適当な環境になってしまった。そういうような観点に立って考えてみると、この飛行基地をこのまま使用するということは、どう考えてみても危険この上もなしといわなければならない、原子力センターが東海村にできない以前ならば、多少まだ恕すべき点がある。がまんの使用もございましょう。すなわち今後の飛行基地としての使用についての万全の策を講ずれば、あるいはがまんのできないということもないかもしらぬが、現在の状況においては今申し上げたような理由で、環境の上からもうすでにここは現在のような使用目的で飛行基地として使用することは絶対に私は不可だと思う。よってこれは当局においてこの飛行基地を現在のような目的に使用することをやめてもらうような交渉を米側とする意図を持っておるかどうか。ありとするならばどういう方法で今後折衝をせられるのか、ないとすればどうするか、それらの点についての御所見を承わりたい。
  185. 上村健太郎

    ○上村説明員 対地爆撃の演習を行います周辺の地区の方々には非常に御迷惑だと思います。しかしながら日本防衛米国空軍が駐留しております以上、どうしてもどこかで対地爆撃の演習をせざるを得ないわけであります。現在日本の本州に、三カ所の演習場を持っております。そのうちの一つでございまして、中部日本におきましては唯一の演習場でございます。米軍に対しましては他の場所、たとえば広いところでできないかというようなことを申しまするけれども、しかし中部日本といたしましてこれにかわるべき土地がない限りは、どうしても水戸の飛行場は必要であるということを申しますし、私どもも事情はやむを得ないのではないかと思っております。ただ区域外に爆弾が落ちますことにつきましては、私どももたびたび警告をいたしまして、特に六月に入りましては厳重な警告を委員会を通じて発しております。米軍側におきましてはこの飛行場は非常に危険性も多いという関係から、今後未熟練の飛行士には使用させないというようなこと、あるいは爆弾投下装置を改善いたしまして、極力事故を絶滅させるということに努力する旨を私どもに言明をいたしております。そういう関係から申しましても、ちょっとこの飛行場、射撃場を廃止することは困難であろうと存じております。
  186. 山本粂吉

    山本(粂)委員 他に適当なところがないからここをやむを得ず使用しなければならぬということも一応ごもっともにも聞えるのですが、今申し上げたような理由で、もし他に適当な土地もない、またあろうはずもないのです。日本のような狭い国土で、しかもほとんど山岳をもって占められておるような国土で、こういう高速度の飛行機による爆撃演習をするような土地があろうはずがない、だからこういう問題については日本国民的感情の上からも、また日本防衛の上から考えてみても、日本の国土の中で演習をしないでも、私は幾らでも方法があろうと思う。日本防衛の必要上、他に方法がないのだというならば、これまた議論はわかりますけれども、この基地を使わぬでも、またこういうきわめて危険な爆撃演習をこういう狭いところでやらないでも、他に演習の方法があり得るとするならば、日本国民的感情の上からも、また防衛問題に関するいろいろの世論にこたえる意味においても、日本の国土内においてはなるたけこれを避けて、そうして防衛体制確立していく方法はないものだろうかどうか、この点に対する御見解を承わりたい。
  187. 上村健太郎

    ○上村説明員 先ほども申し上げました通り日本本土内におきまして、他にこれにかわるべき爆撃場を探すこともできませんし、また求められそうもないと思っております。従いまして、どうしても飛行機の爆撃訓練をいたすことが必要であります。ここのところ、この飛行場を廃止してもらうことは困難であると存じます。
  188. 山本粂吉

    山本(粂)委員 当局としてはそうお答えをするほかないでありましょう。もし当局がそういうお答えをしておる通りの事情であるとするならば、この飛行基地使用問題に対する地元民の気持は別として、万全の策を講じなければならぬ。先ほど申し上げた通り、隣接地に東海村という原子力センターができた。今までの事例から見ましても、二百件以上の三百件近い飛行場外の事故が起っておる。そうすると東海村の原子力センターにも事故が起らないとは何人も私は保証できないと思う。万一さような事態が起ったらもうこれは取り返しがつかない。だからこの飛行場をどうしても使用しなければならぬという、これが至上命令、絶対だ、しようがないものだ、やりようがないものだ、こういわれるならば、今度はその使用に対して、絶対に飛行場外に危険の及ばないだけの処置を講ずる、こういうふうにすれば絶対にそれ以外の、飛行場外に事故が起らぬという確信のある米側との結果を知らせなければならぬと思う。それに対する対策としてどういうお考えを持っておるか。
  189. 上村健太郎

    ○上村説明員 今年の五月に米側にほとんど最後的な厳重な警告を発しまして、六月以降幸いにして八月まで一件の事故もなく参ったのでありますが、八月に遺憾ながらまた一件場外に落したのであります。これに関しましてアメリカ側に警告を発しまして、こういう事故が絶対に起らぬように一つ保障措置をとってくれということを申しております。
  190. 山本粂吉

    山本(粂)委員 防衛庁長官に念のためお伺いしておくのですが、この米軍の使用しておる飛行基地が、午前中の防衛問題に関する質疑応答の結果から見ても、将来適当の時期には米空軍も引き揚げの運命にあることは論を待たない。そうすると米空軍が日本の国土防衛の必要上、日本に駐在する必要なしということになったときには、この飛行場は日本の航空自衛隊が使用することになるだろうと思う、そういうようなことになるのかどうか、この点も伺っておきたい。
  191. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。米軍の撤退は陸軍戦闘部隊の方は早く撤退する。空並びに海についてはまだ具体的に案を承知しておりません。そこでこの演習場の撤収と申しますか、返還というのが、いつ起るかという問題もまだ見当がついてないわけであります。一方自衛隊の今後の航空基地であるか演習場等についても、まだこれから研究すべきものがあるのでございます。その意味においてこれがすみやかに撤去されるか、または自衛一隊がそれを続いてすぐ使うかという問題は、しばらく時期をかして、そういった段階に言明いたしたいと存ずるのでございます。
  192. 山本粂吉

    山本(粂)委員 現在の段階としてはさような御答弁をされるほかないだろう。従って将来のことを申し上げておくのだが、将来米空軍が引き揚げた後に日本の航空自衛隊が使うかということも今はっきりした答弁をしろということも無理でありましょうから、その程度に承わっておきますが、最後に法務大臣に希望を申し上げて、法務大臣の御決意を伺っておきたい。  今度の飛行機による事故、世界にほとんど類例のない事故が起っておる。これに対する捜査当局の捜査がなまぬるかったというほどの非難はいたしません。非常に困難な捜査をやられたでありましょう。なぜかなら、日本に裁判権がない公務中の行為と認定せざるを得ないような事故であったのだから、従ってその犯罪捜査には非常に御苦労なさったこと、水戸検察庁並びに法務当局のその困難性は認めるが、しかしその結論を見ると、地元の住民が、なるほどそういう事情で事故が起ったのか、そうすればそれに対する心がまえはこうあるべきだということがはっきりしてこなければならぬのに、どうもその結果の発表を新聞を通じて見ると、あるいは湿度の関係だとか、温度の関係だとか、あるいは海岸を飛んだ飛行機と事故を起した飛行機とは同一を確認することができなかったとか、何か米軍の将校のやった事故なるがゆえに、日本の捜査当局が不十分な捜査でいいかげんに結論を出してしまった、こういうような疑いを抱いておる者が多数おる。こういうことは、今後に対処する意味におきましても、私は決して適当とは思わない。だから法務大臣におかれては、こういう事故が起らぬことを希望するけれども、万々一、後日においてもかような問題が起った場合における捜査の仕方については、何人も納得のいく捜査をせられ、そうして何人も納得のいく結論を得られるように、事務当局、捜査当局を指導せられて万全を期せられるよう熱望する。法務大臣のお心がまえを承わって私の質問を終ります。
  193. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 私このたび法務大臣を拝命いたしました唐澤俊樹でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  ただいま山本委員からの御親切な御希望がございました。全く同感でございます。このたびゴードン中尉の引き起しました事故は、まことに遺憾千万な不祥事でございまして、すでに水戸地検で不起訴の決定はいたしましたけれども、その決定後におきましても、今なおいろいろの疑惑があるということは、これまた山本さんの仰せの通りで、この点も非常に遺憾に存じております。しかしこれは非常に取調べの困難な問題であったようでございまして、地検におきましても、慎重に慎重をきわめて取り調べた結果、さような決定をしたわけでございますが、ただいまのお言葉にありましたように、将来万々一かような不祥事が再び起きました際の取調べにつきましては、さらに一そう注意を加えまして、さような疑惑が残らないような取調べをしなければならぬ、かように考えております。
  194. 相川勝六

  195. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 ただいま山本委員から水戸補助飛行場におけるゴードン中尉の事件が詳細に質問ざれたのでございますが、これに関連いたしまして、私、少しくお尋ねしたいと思うのであります。  お尋ねに入る前に、せっかく法務大臣がいらっしゃいますので申し上げておきますが、最近国内におけるアメリカ駐留軍のいろいろな事故が頻発をしておりますが、その中で先般の横浜に起りました酔っぱらい射殺事件初め、日本人をアメリカ駐留軍の兵隊が、あるいは殺し、あるいは重傷を負わせ、または強姦、強盗等をする事件がございましたが、これに対して日本の裁判所は国民の納得のいかない判決を下しまして、私どもに言わせますと、みずから日本の裁判権を裁判所自身が否定したかのような感があります。裁判所の件については、法務大臣の管轄でありませんからおきますが、しかしながら、こういったように、日本国民に全く不可解にして、むしろその決定に民族的憤激を感ずるようなことがございましたが、検察当局をお預りの、しかも日本の治安を預っていらっしゃる唐澤法務大臣は、こらいったことに対して法務大臣としてどのような御所見をお持ちになるか。またもちろん横浜の酔っぱらい射殺事件に対しては控訴をしていらっしゃいますのでいろいろな変化があると思うのでありますが、国民はひとしくこういった事件に対して、日本の政府はもちろん、最も信頼をしなければならぬ裁判所当局すら、アメリカに対してこのような日本人が全然想像もつかないような決定をすることに不審を持っておるのであります。この際私は冒頭に新任の唐澤法務大臣のこういうことに対する御所信と御決意のほどを承わりたいと思います。
  196. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま御指摘のように、最近駐留軍と日本人との間にいろいろの事故が起きまして、中には、あるいは駐留軍のことであるから、検察当局、あるいは極端に言えば裁判所まで大目に見ておるのではないかというような疑いを生ずる傾きもございまして、まことに遺憾に存じます。しかしながら法務当局といたしましては絶対にさようなことは考えておりません。間違いは未然に防がなければなりませんけれども、一たび間違いが起きました以上は、それが駐留軍に属する人であろうとどうであろうと、法の前には平等に取り扱っておりまするし、将来もこれは堅持していかなければならぬと存ずるのでございます。今、茜ケ久保さんが例にとって言われました横浜における米人の泥酔のあまり射殺したという事件がございました。これは裁判でございますけれども、一応第一審は無罪になりました。私どももまことにふしぎに存じたのでございます。そこで私もさっそく専門家に尋ねてみたのでございますが、御承知のように、わが国の刑法では心神喪失者の行為はこれを罰しないということになっておるのでございまして、泥酔のあまり全く前後を喪失してやった行為はこれを罰しないことになっておるような法制でございます。それならば日本人の場合においても同様じゃないかということを尋ねてみますと、従来の判例におきましても、医学上全く心神を喪失しておったという証明があがっております際には、結果において人を殺しましても無罪になっておる判例が多々あるそうでございます。その点は日本人たると米人たるとを区別しておらないのでございます。しかしながら過般の横浜の事件につきましては、果して真に完全に心神を喪失しておったかどうかということについて疑いがございまして、この点につきましては刑法のいわゆる心神喪失の完全なる状況ではないということで、検事控訴をしておることは御承知通りでございます。これはただ一つの例でございますけれども、私ども法を預っておりまする側といたしましては、これが駐留軍に関係があるからどらかというようなことで決定を一、二にすることは絶対にございません。どうぞ御了解を願います。
  197. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 法務大臣の御決意のほどは了承いたしますが、その御答弁と関連しまして、相馬ヶ原事件のジラードが現在前橋地方裁判所で裁判中であります。私は先般関係者といたしまして傍聴いたしましたが、検察庁の起訴事実の陳述並びに冒頭陳述を拝聴いたしておりますと、明らかにこれは、殺人であります。私どもは別個に日本社会党として殺人罪で告発しておりますが、検察庁も明らかにジラードが坂井なかさんに対して、から薬爽を投げ与え、これを拾ってもよろしいと言って呼び寄せている。しかも拾ったらそれを追い返して、うしろからから薬爽を詰めた空砲でこれを射殺しているということをはっきり明示している。してみると私どもが主張するように、これは殺人であります。しかるに検察庁はこれを傷害致死で告訴しておる。告発しておる。このことは非常に矛盾すると思う。唐澤法務大臣の御決意とこの問題を関連して考えますと、当然これは起訴事実並びに冒頭陳述等から推しまして、殺人罪で起訴すべきであるにもかかわらず、これが傷害致死になっておるのはいかなる理由であるか。私は残念ながら今唐澤法務大臣の非常な御決意は承わりましたが、具体的にこのような事実をわれわれは見ておるのーです。これはどうにも納得できませんが、この点について刑事局長一つ明確な御答弁をお願いいたします。
  198. 竹内壽平

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。本件につきましては、御指摘のように薬爽をまいておびき寄せて、そうしてそれをねらい射ちしたという事実関係を検察庁側は主張しております。しかし丘がらそこをねらい射ちをしました弾はこれは実砲じゃないのでございまして、その点からして殺人という認定をいたしますならば、かかって本人の故意を推定し得るかどうかということにかかるのでございます。被告は暴行の意思はともかくでありますが、殺意は否認しておるのでございます。殺意を否認しておりましてもなお殺意ありと断定いたしますためには、ただいまの捜査の仕方、そういうものからしまして、実砲でなかったという点に遺憾ながら殺意を認めがたかったのであります。
  199. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 少しそれはおかしい答弁でございます。冒頭陳述でもそうでありますし、杉本次席検事の、林弁護人への反対論述の中でもはっきりしておる。しかも証拠も出ておる。というのは、あの擲弾筒発射の空砲に薬莢を詰めて射てば、百メートルの推定距離ができる。しかも十メートルの地点で五分板をぶち抜く威力を持っておる。これは明らかに、射てば大きな傷害どころか殺人の実力を持っておることを検察が証明しておる。そこで、ジラードもそういうことをちゃんと承知しておるということを言っておられる。ジラード自身もあのいわゆる擲弾筒発射装置に対して、このから薬莢を詰めて空砲で発射すればこれは人が殺せるし、あるいは牛や馬も殺せるような威力のあるものであることを十分承知しておったということを言っておられる。そうなりますと、今の刑事局長のおっしゃった、遺憾ながら空砲であったから殺人にならぬということは、これは私は非常な詭弁だと思う。検察自身がそれをはっきり証明していうっしゃる。そうしますと、殺意があったかどうかは、これは私も断定できません。現地へ行って調べましたが、殺意があったかどうかは断定できませんけれども、あの射ったいわゆるあの装置によってのから薬莢の発射は、明らかに殺人し得るという実力を持っておるということでありますならば、今の刑事局長の御答弁では納得参りませんが、この点をもう少しはっきりと、ほかの理由なら……。ただそれだけならば、私は当然殺人罪であるべきだと思うのだが、いかがでしょう。
  200. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま御指摘のように、人を殺すに足る威力を持っておるということを検事は主張しておらないのでありまして、ある程度の威力がそれによってあるということは主張いたしておる。その点が少し先生の御指摘は大きく述べられておるように感ずるのであります。
  201. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 あなたはどういう御報告を受けたか知りませんが、これは録音にとってありますからわかります。それをあなたが主張されますならば、公判当時の録音なりあるいは冒頭陳述の資料を持ってくればはっきりしておる。これは私は何も故意にそのことを誇張するのでない。これはあとでまた示しましょう。それがそろいう威力があることがわかっておるならば、当然殺人罪で起訴すべきであるということはあなたも御了承されるか、その点を一つ先に聞きましょう。
  202. 竹内壽平

    ○竹内説明員 先生も先ほど申されましたように、殺意を持っておらなかったといろことは考えられる。そうしますと、未必の故意と申しますか、もしも人を殺すに足る凶器をもちまして実行を行なった場合に、それが客観的に見まして死の結果を招来するということが予見されるような状況においてなされたものであるということでありますならば、これは未必の故意による殺人ということに相なろうかと思うのでありますが、本件につきましては、先ほど申しましたように、ある程度の威力を持っておるものだということは認定し得るのでありますが、それによってすべて死の結果を招来するというふうには考えられない。そこで本人も殺意を持っておったのではないということでありますし、両々相待って本件は傷害致死という認定に至ったのでございます。
  203. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 この問題はもう少し言いたいのですが、次の問題に入りましよう。  そこで水戸の事件でありますが、私は大体山本委員の御質問で尽きておるかに思うのでありますが、納得のいかぬ点が二、三点ありますので、その点についてお伺いいたします。刑事局長もおっしゃっておるように、この事故のポイントというものは、不可抗力の低空飛行であったか、あるいは作為的な低空飛行であったかということが私は一番ポイントだと思うのであります。もし作為的な低空飛行の結果、この自転車に乗った親子を殺傷したならば、これは明らかに公務中の事故とはいえない。そうなりますと問題は、先ほど山本委員も指摘された、事故を超す前に海岸を超低空で飛んだ飛行機とこのゴードン中尉が親子を殺傷した飛行機が同一であるかということ、さらに海岸を飛んだ飛行機の高度の問題が問題であります。私は現地に参りまして、いわゆる事故のあった場所ないしは付近にいた人たちの証書並びに海岸における飛行機の目撃者のいろいろな話を聞いて参りましたし、さらに検察庁に参りまして、検事正や当時の担当検事の話も聞いて参りました。その結果検察庁も、ゴードン中尉の飛行機と海岸を飛んだ飛行機が別なものであるという確証はない。しかも当時この海岸を飛んだ飛行機が明らかに水戸補助飛行場へ着陸しておる。その着陸した飛行機がゴードン中尉の飛行機以外に飛び立った事実もない。いろいろな観点から同一飛行機であるという断定は検察庁も下せぬけれども、別なものであるというととも言えないとおっしゃる。そんならこれは当然同じものであると解釈する。問題は高度なんです。高度なんだが、先ほど山本委員刑事局長とが言われたように、一部の人は非常に低い高度。ところが検察庁のあとの検証では高い、ころ言われておる。私どもの現地でいろいろ調べた結果、低いのが事実のようである。と申しますのは、一万人もおった海水浴客が全部――おかにいるものは頭を砂につけてしゃがみ、海に入っているものは皆頭を突っ込んで一斉にえらいあわてて姿を低くしている。そして監視人としておられた市会議員でありましたが、自分の目標にやぐらみたいなものがあって、六、七メートルの高さのものであるが、ほとんどこれとすれすれだったという話です。いろんなことを総合しまして、私どもはせいぜい十メーター以下だったと思うし、さらに市長さんの別荘のがけの上にも上ってみましたが、これもやはり自分たちが立っていて下に見たということ。これは何百メーター向うならば、あるいは高さも違いましょうけれども、ほとんどがけ下を飛んだという事実と、下に見たということ、そういったことを考え合せますと、検察庁でお調べになった三十メーターか、ないしはその以上であるということは納得がいかない。しかも検察庁では、六、七メーターと言うけれども――検事の聞き方が、六、七メーターと言うけれども、二、三十メーター以上なかったという確信もなかろうという質問をされておる。これはあなた方の得意な質問の方法です。これははかっているわけじゃないのだから、しかもしろうとで、とっさのことなんだから、非常に低いと感じ、そろ思ったのに、あなたはそら言うけれども、二、三十メーター以上でなかったということは言えぬだろうと質問している。それはその通りだという答えをしている。そして低いということを否定して二、三十メーター以上という結論を出していうっしゃる。こういうことは私は、検察庁に作為があったかどらかは別として、まことに困った質問だと思います。そういう点から総合しまして、この海岸を飛んだ飛行機は非常に超低空の飛行をしたと私どもは断定せざるを得ないのであります。そうなって参りますと、明らかにとの海岸を飛んだ飛行機は海水浴客に対していたずらをする、驚かすためと申しますか、日本の飛行機もやりますね。鎌倉あたりでヘリコプターその他もやりますが、私どもにもそういったあれがある。それとついでに申しますが、私は現場の地図を持っておりますが、これは海岸です。飛び立った飛行機は必ずこっちに飛んで、ここで高度を上げてから海岸に出て帰る。それがここを飛び立って、この県道から千二、三百メーターの地点で左旋回をしております。この左旋回をした理由がわからむい。先ほど刑事局長は爆撃演習をしておったので、左旋回をしたとおっしゃるけれども、このコースは現地の人の証言では、ほとんど通っていない。これをまっすぐ行くか、あるいはわずかに左にそれるけれども、こういう急旋回をすることはないそうであります。…そのときはやった。これをゴードン中尉はどう言ったかしらぬが、ゴードン中尉がこの飛行場に入るときに海岸をすれすれに通った。海岸の海水浴客の方に行って、再び彼はこの海水浴場の上を超低空で飛ぶ意思があったのではなかろうか。たまたまその途中で――これはほとんど飛行場と変らない平坦地でございます。電柱一本ない、まことに飛行場と変らない、いつでも不時着できる状態である。たまたま飛んできたら、そこに御婦人を乗っけた相乗り自転車があった。聞いてみると、お母さんが赤いふろしきみたいなものを背負って、ひょっと見ると若い娘さんみたいな格好だったそうである。これは私の推測でありますが、海岸に出ようとしたゴードン中尉がたまたまそういった状態を認めて、この相乗りの親子ですが、アベックの自転車に一ついたずらしようという気持が起ったのではないかと思う。これは私だけではなくて、周囲の人がみなそう指摘している。そうなりますと、、この飛行機事故は、今指摘したように海岸線の状態あるいはこの左旋回した状態等から勘案して、明らかに最初の目的は海岸に出て海水浴場の海水浴客を来るときと同じような状態でいたずらしようと思ったのであるが、途中でそういうものを認めたので、これにちょっとそういった気持を起してやったんだと断定せざるを得ないのであります。あなたの今までの山本委員に対する答弁では、私はこれをくつがえすものがないように思うのでありますが、さらに刑事局長の検察当局としての御見解を承りたいと思います。   〔委員長退席、保科委員長代理着   席〕
  204. 竹内壽平

    ○竹内説明員 外人関係の事件の捜査はなかなか困難をきわめるのでございますが、先ほど大臣からも御答弁申しましたように、慎重にしかも、誠実に捜査をしていることは私どもよく承知いたしております。そこで今の御指摘の点でございますが、まず海岸から入ってきた飛行機、これは先ほども申しましたように確証はないけれども、おそらくゴードン中尉の飛行機であろうというふうに推定されるのでございます。しかし超低空であった点につきましては、捜査の結果によりますと、確かに証人の中には六、七メートルの高さというふうに証言をしている方もあるのでありますが、また三十メートル、四十メートルの高さ一もっと高かったというように証言しているものもあるのでございまして、これまた的確に高さを判断することができないのでございます。しかも航空規則によりますと、その地点は大体二百フィート以下の低空で飛行場に入るようになっているのでありまして、それらを総合いたしますと、出発の際の事故と入ってきましたときの低空とが何らかの関連を持っているという判断の材料にはなりますけれども、これをもっていたずらの処理であるというふうに断定する資料にはなし得なかったというのが捜査の結論でございます。  それからまた本件がいたずらであると断定してはばからないという御意見でございますけれども、先ほども申しましたのにつけ加えて申しますれば、百フィートの高さにおきまして左旋回をいたしましたこと、それが地点として少し手前において左旋回の処置をとり過ぎたという点は理解できるのでございますが、大体において左旋回をしつつ海に出て何かするというのが航空規則上の通例になっております。そういう点と、それから左旋回をしました際に、フラップと申しますか、あれを三段階に分けてやるべきものが一挙にいってしまったというようなこと、いろいろなことがそこに一緒に現われてしまって、浮力を失った、そういう状態のもとにおいて、つまり浮力がついていないときにここでいたずらをするとかいうようなことは、先ほど申しました航空関係の専門家の知識を総合してみましても、とうてい考えられないことではないかということでありまして、結局結論といたしましては、いたずらに出たものでないという判断になったのでございます。
  205. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 この事件が勃発した当時、アメリカ軍は気温が非常に高くて、飛行機が浮力を持つだけの気温でなかった。従っていわゆる上昇する処置を十二分にしたけれども、気温の高いために飛行機が浮力を持ち得なかったということを公式に発表いたしました。刑事局長は御存じか知りませんが、ジラード事件におきましても、明らかにジラードが射殺をしておるにもかかわらず、当時極東軍は、この事実に対して、発砲したことは認める、しかし空中に向って威嚇射撃をしたのである。空中に向って威嚇射撃をしたのが背中から当ったという発表をしている。日本人並びに日本に対して全く言語道断のことをやるのであります。もし事実上その補助翼云々ということがあり、それが最初からわかっておったならば、当然そういったことを発表すべきである。にもかかわらず、気温が上昇しておつて飛行機の浮力を保持し得ない状態であったから、こんな事故を起したという発表をしております。こういったことを日本政府はどのように理解されるのか。しかもあとでだんだん追い詰められると、結局補助翼を上げ過ぎたとか一ゴードン中尉は三年も飛行経験を持っている。しかも一番簡単な飛行機でありますが、簡単な飛行機の操縦を、そんな三段に上げるべきものを一挙に上げたなんといえるはずのものではないはずです。   〔保科委員長代理退席、委員長着席〕 それは何ともいえませんけれども、大体日本政府、日本人をなめ切っておる。何か日本の航空局関係の技術者に検察庁でも聞いておるそうでありますが、三年も飛行機に乗っておれば、ほんとうの熟練者である。熟練者が、しかもジェット機とかいったような非常に高度の技術を要するものは別として、単葉のしかもこんなプロペラ飛行機の操縦をそんなに間違うはずはない。最初は気温が高くて上らなかったと言っておったのが、今度それがだめになったら、補助翼を三段に上げるものを一ぺんに上げた、こういうことを言っている。これは現地を見なければわかりません。しかし、あなた方は客観的な事実で押していかないで、ああそうですか、それで下ったのでは話は終りです。ここに百名ばかりの傍聴者が見えております。この方々はみんな現地の方々なんです。今はこの事件で済んでいるけれども、いつこの百名余りの傍聴者がこんな事件に遭遇し、あるいは不発弾、模擬爆弾で殺傷されるかわからぬ心配があるので、きょうわざわざ見えている。だてに百名も傍聴なすっているのではない。納得がいかないと皆さんおっしゃっている。だれ一人今度の事件に対する日本政府の態度に対して了解をしていない。アメリカの一方的な主張や、一方的な証言だけで、簡単に公務中とか、あるいはアメリカの飛行士は故意がないということを断定することは、これは私どもは了解できない。あなた方が不起訴にした今までの事実では納得がいかぬからここで問題にする。納得がいかぬからこうして朝から見えている。これに対して今までの答弁や御説明では、やはり納得がいかないのです。どうです、もう一ぺん政府は、この調査についてはまだ遺憾ながら日本の検察側の手落ちがあって、まだ国民の納得する結果を出してないから、もう一ぺんこの調査をやり直します。――明らかにゴードン中尉の行為は、公務中でない、公務中の時間ではあるけれども、日本人を愚弄し、日本人をジラードと同じようにおもちゃ扱いにしておる。ひっかけて殺そうと、どうしようと勝手ほうだいという精神が入っておる。こんな状態では安閑と住んでおられない。従って、あやまちを直すのには何も遅疑することはない、アメリカに渡した裁判権をもう一ぺんこれを返してもらって、もっと徹底した調査をされ、日本人が、あるいはここにいらっしゃる代表の百人の方が、周囲の那珂湊三万五千の全市民が納得するような結果を出してもらいたい。これは法務大臣本先ほど非常な御決意をお述べになった、けっこうでありますが、いかに決意を述べられましても、具体的な事実がこのようになってきますならば、これは信頼できません。これは私が言うのではありません。日本国民は全部そう思っておるのであります。一つ唐澤法務大臣、まことに恐縮ですが、今申しました観点から、一度不起訴にされた事件であるけれども、私は、国民の民族的な怒りと民族的な要求にこたえて、この事件をもう一ぺん差し戻してもらって、再調査をして、その結果われわれ一般国民も納得するような不起訴の事実が出ますならば、これは何かか言わんや、現段階においては、検察庁以外のものはどうしても納得がいかぬ状態でありますが、これをさらに再調査をする――技術的のことはわかりませんが、そういう御決意なり、御意思がないかどうか、承わりたいと思います。
  206. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この事件は、先ほども申し上げました通り、また今茜ケ久保さんから御指摘のありました通り、非常に割り切れない不明朗な印象を残して、そして不起訴処分に相なっておることはまことに遺憾に存じます。しかしながら、この取調べは非常に困難をきわめたようでございます。一つは相手が進駐軍の人である、一つは飛行機に関するような技術的の問題があるというようなことで、検察当局も非常に苦心をいたしまして、慎重に慎重をきわめて調査いたしたのでございます。私が申すまでもなく、この案件が日本の裁判権に属するかどうかといえきめどころは、この事故は公務遂行山の事故ではあるけれども、公務遂行行為ではなく、俗に言えばスリルを味わうふざけた意図に出たものである、これが確認できますれば、日本の裁判権に帰すべきものと思うのであります。そうしていろいろの風評から考えますと、ゴードン中尉のふざけた結果が、かような不祥事を引き起したのではないかというような疑いを持つのでございます。この点につきましては、検察当局でも十分慎重に取調べを進めたようでございます。先ほど刑事局長からも申し上げました通り、超低空飛行と申しますか、相当の低空飛行――証人によって証言はまちまちでございますが、相当低いところを飛んだ飛行機、それが後に事故を起した飛行機とどらも同じであるというようなことからも、いろいろな疑いがあるのでございますけれども、本人を取り調べたところによりますと、どこまでも誤まってウィング・フラップと申しますか、下げ翼と申しますか、それを三段階に引き戻さなければならないのが一度に戻ってしまったということでございまして、その取調べの結果どこまでもこれは本人のいたずら心から出た行為だということを確認できないのでございます。かような次第で、ずいぶん苦心をいたしまして取り調べました結果、これは重大なる過失ではあるけれども、公務遂行中の過失であるから、こちらには裁判権がないという見解のもとに不起訴処分にいたしたような次第でございます。この点はあるいは茜ケ久保さん御満足いかないかと思いますけれども、十分慎重にまた苦心をして取り調べた結果下した決定でございまして、今これを再調査させるつもりはございません。ただ、一度不起訴処分にはいたしましたが、そのあとに今だんだんと御指摘のようないろいろの割り切れない心持、風評が残っておりますから、これは十分その真相を解明して誤解のないように努めなければならぬとは思っておりますけれども、すでに不起訴処分を決定しておりまして、これを再調査するつもりは持っておりません。
  207. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 また同僚委員質問がありますので以下一、二点にとどめますが、今申しますように、検察庁当局も非常に不明朗なものがあると指摘されるし、調査も非常に不十分な点がある。それならば私はやはりその不明朗な点をざらに調査をし、いわゆるだれもが納得のできる材料とあらゆる検討を加えられた結果不起訴処分になったならば、これは先ほど申しますように、われわれは別に容喙いたしません。しかし法務大臣もおっしゃるように、そうであるために今後も調査をするとおっしゃいますが、あとから同僚西村議員から提案もありますので、私はその点はそれで一応打ち切ります。  しかし私は法務大臣並びに刑事局長に申し上げたい。日本人のこうした事件ならばあなた方はそれこそあらゆる――一部においては人権を無視するようなことまでもして調査をなさる。たといアメリカの兵隊であろうと何であろうと、最後の不起訴処分が決定するまではあらゆる力を総合して徹底的な糾明をされる必要がある。その間私はやはりゴードン中尉に対する取調べあるいはその他関係者に対する取調べに遺憾の点があると思う。やはりこの海岸を通った飛行機がゴードン中尉の飛行機であるかどうかについて、飛行場に行って飛行場関係者のあらゆる具体的な証言をとっていらっしゃらない。従って同一飛行機とは断定できないけれども、別の飛行機とも言えない、こんなばかな結論が出ておる。もし検察庁が飛行場へ行って、時間と飛行機の関係を具体的に調べればこれははっきりするのであります。はっきりすればまた別な結論も出るのであります。そういうことは何もされていないという点もあります。こういう点について私は十二分に――これは陸軍部隊が帰っても海軍、空軍が残る以上はこんな事件は絶えない。今後こういう事件がないように一つ十分の配慮を希望する次第であります。  さらに調達庁長官にお伺いしますが、あなたは今山本委員質問に対して、この飛行場は中部日本においてはほかにないのでどうしようもないんだ、そのかわりに事故のないように警告もしているし、また事故のないようなことをやっておるとおっしゃるけれども、現に事故は起っている。日本防衛を担当すると言っておるアメリカ軍が、日本人の命を今言ったようにさように軽視をし、もう日本人の一人や二人殺傷することは何ら意に介してない。殺傷した結果が、殺しても無罪、せいぜい執行猶予、こういう状態でまるで日本人がアメリカ駐留軍に犬ネコのようにされておる。犬ネコをアメリカ人は好んで防衛はしません。これは私はアメリカ自体の防衛のために日本に軍事基地を持ち、日本人をこのようにいじめておるとしか言えませんけれども、それはまあいいでしょう。先ほど言った傍聴の方々はもちろんこの親子殺傷事件に対する政府の態度に対して、ふんまんを持ち疑問を持っていらっしゃるから、ここにいらっしゃったけれども、さらに一歩進んで、山本委員も指摘されたように、問題は模擬爆弾が落ちるのも、こんな事故が起るのも、あそこにあんなよけいな飛行場があるから起るとおっしゃる。飛行場がなければこんな事故は起らない。何も心配は要らない。従って現地の皆さんはどんな理由があろうともこの際こういうことを機会にあの飛行場を返してもらいたいという御熱望がある。これは市長さん初め全市民の要望である。東海村を含めた付近五カ町村の全住民の要望であります。あなたは政府代理として、ほかに適地がないからアメリカ日本を守るためにはやむを得ぬとおっしゃるけれども、それはあなたの見解であって、あの那珂湊市全市民並びに付近住民はだれ一人あの飛行場のあることも希望しなければ、一日も早く返してもらいたいといろ要望がある。そんな不誠意な御答弁をなさらずに――あの飛行場がなくても日本防衛はできます、あそこで模擬爆弾の練習をせぬでも日本防衛はできるのです、アメリカがほしいのだといって無条件に渡したらどうなりますか。この際一つ調達庁長官と同時に調達庁担当の津島国務大臣は、どらです、この傍聴者の前で、あなた方の要望にこたえてあの水戸補助飛行場を一日も早く返してあなた方がほんとうに平穏無事に日本国民であることを感謝しながら生活できるような状態にしてあげますという、明快な御答弁ができませんか。あなたは日本国務大臣である。アメリカの大臣じゃありません。こんな問題が起ったのを契機に――これはたびたび申し上げるように、ただ単に私だけの見解でもなければ、付近の住民だけの見解でもない、全日本のこれは一つの要望であります。どうか一つ津島調達庁担当の国務大臣は明快にこれに対する御所見と決意のほどを御表明願いたいと思う。
  208. 津島壽一

    津島国務大臣 本演習場に対する地元の御要望はまことにごもっともと思うのでございます。しかしただいますぐこの飛行場、演習場を撤去するかどらかということについて、私としてはっきりした言明をここで申し上げることは差し控えたいと思います。御趣旨のあるところはよくわかっております。しかしこの具体的な問題に対して、この場合ただちにこう処理するということは申し上げかねるのがはなはだ遺憾でございます。御意思のあるところはよくわかっております。
  209. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 そういう御答弁では納得が参りません。ここは国民の代表の国会であります。ほかでそろおっしゃるのはかまいませんよ、国会で、国の政治を論ずるここで御趣旨はごもっともでは通りませんよ。私は無理を言っているのではない。返してもらいたいという意思をアメリカに表明して、返してもらうような決意をあなたが示して、アメリカに折衝される意思があるかどうか。なければないでいいです。私はさっき言ったように、あんな飛行場はなくたってアメリカ日本防衛をできないとは申しませんよ。またあの飛行場がなければ日本防衛ができたいようなアメリカ軍なら、これはおってもらってもしようがありません。そこであなたは調達庁担当大臣として、あの地元民の要望にとたえて、返還要求をアメリカ政府に日本政府の意思としてなさる意思があるかどうか、これをお伺いしたい。
  210. 津島壽一

    津島国務大臣 はなはだ遺憾でございますが、この段階であの演習場を返還すべしという交渉を直ちにやることは非常に困難だ、これは全体の計画一つでありますので、そういったところは十分御了承願いたいと思います。
  211. 茜ケ久保重光

    茜ケ久委員 私どもは具体的な事実をもってこの問題を解決するように努力します。この点を申し上げて質問を一応終ります。
  212. 相川勝六

    相川委員長 西村委員
  213. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ただいままでお二人の議員の質問に答えて、法務省側は答弁なさっておられるわけでございますが、山本議員は本職は弁護士です、ところがその応答を聞いておりますと、まるで主客転倒のような感じがする。こちら側が検察庁で、検察当局が弁護士のような状態を示しておる。これは非常にわれわれが受ける印象としては不可解なものがあるわけなんであります。やはり検察庁はもっと国民全体が納得できるように突っ込んでもらわなければならないんじゃないか。口ではあらゆる努力をして、誠心誠意捜査に当ったとこう申されておりますけれども、まだまだ私たちとしては納得のいかない点があるわけなんであります。一つはあの海水浴客が一万余りもおるところを、ゴードン飛行機が飛んだという問題について、ゴードン自身にお前さんあそこを飛んだかどうか、こういうことを質問なされたかどうか、それを確認せられたかどうか、その点が一つ
  214. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ゴードンにその点の質問をいたしております。ゴードンもその付近の海岸を通って飛行場に入ったということを供述いたしておりますが、その同じ時刻ごろに自分以外の飛行機が来たかどうか、これは自分としてはわからない、こういう供述になっております。
  215. 西村力弥

    ○西村(力)委員 しからばあそこの飛行場に食料を積んでいく飛行機が、普通の場合あそこを通るコースであるかどうか、その点は追及しましたか。
  216. 竹内壽平

    ○竹内説明員 当時は演習中でありまして、演習中でございますと、ジョンソン基地から来る飛行機はそのコースを通るということになっておるのでございます。
  217. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そのことはだれからそういうことを聴取せられたか。地元民はそういう飛行機がしょっちゅう来る――ことに生鮮食料を積んでくるのですから、これはしょっちゅう来るだろうと思う。それを米軍側からだけ聴取したのか。地元の人々が目で見ておる、日々それに接しておる人々の証言をとられたのか、どうです。
  218. 竹内壽平

    ○竹内説明員 そのコースを通ることにつきましては、ジョンソン基地の担当官から取調べをして、その結果を得ておるのでございますが、個々の証人につきましてそういう点を確かめたかどうか、これは記録を見ませんとわかりません。
  219. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういう点がまず私たちはアメリカ側の弁護士だ、こういう印象を受けると言う一点なんです。  それでは、あの飛行機が低空を飛んだかいなかという問題でありますが、低空でなかったと言う証人もある、一般的にそういう証言がまちまちの場合において、それをしぼるのにどういう処置を検察庁側がとるか、ことに高低、そのどっちであったかというよろな人間の感覚による証言、そういう場合にいろいろのものが出る、出た場合にそれを一つ方向づける方法は、普通の場合どういう工合にやりますか。今回もいろいろの証言があるだろうと思うのです。十メートル以下ではなかったという一つの証言があった、あるいは海岸線から相当の距離を飛んだという証言もあった、それを唯一のよりどころとしてあなた方が判断せられるというようなことは正しくない。いろいろた証言を集約して一つ方向を出すということになるわけなんですが、こういう場合においては一体普通どういうことをなさいますか。
  220. 竹内壽平

    ○竹内説明員 いろいろな証言が食い違っております場合に、どれをもってよりどころとするかという御質問でございますが、かような場合におきましては経験測と申しますか、きわめて平たく申しますならば、健全なる常識によって判断をするよりほかないと考えております。
  221. 西村力弥

    ○西村(力)委員 しからばあなたにお尋ねしますが、人間の感覚というのは、水平感覚と高低感覚と常識的にどちらが正確性を持っておるか、いかがですか。
  222. 竹内壽平

    ○竹内説明員 私に御質問でございますけれども、調書に現われておりますところによると、垂直距離というものは割に近く感ずるものだそうでございまして、実際は相当高いのだけれども、頭の真上に来たときはまるで頭すれすれに感ずるものだそらであります。
  223. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私はそういうことを聞いておるのではない。水平に見る場合の感覚の正確さと、下から上に向ってなんぼくらいの高さと、こういう工合に見る場合の感覚と、どちらが正確か――あなたは常識的に集約せられると仰せられたから常識的にお聞きしているわけです。われわれが考えれば、自分の現位置から水平に見た場合に、自分の上か下かという判断はだれだって間違いはないだろうと思う。これは正確だろうと思う。ところがそういう確認をはっきりやった人がおる。その人はだれだか知っておりますか。
  224. 竹内壽平

    ○竹内説明員 それはだれであるか私は存じませんが、報告によりますと、野上某はほぼ二百メートルの沖合いを通過するのをかたり水平の距離において見ておるわけであります。それによりますと、水面十メートルくらいの高さと見えたが、あるいは遠い距離でありますので、実際には三十メートルくらいの高さであったかもしれないというような供述をしておるのが一つあります。
  225. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それはあなたが知らないというのがいけない。それだからずさんだ、一方的だと私は言うのだ。  ここにいらっしゃる那珂湊の市長さんははっきりそれをごらんになっていらっしゃる。自分が高いところに立って海水浴客を見ておられた。そのときに自分の水平視線以下を飛んだ、そういうことをはっきり確認しておられる。そういうことをあなたの方で供述書をとらないで、野上某なる者が二百メートル沖合いを飛んだ、それを最も唯一のよりどころであるかのごとく言われるところに、私が当初申し上げたあなた方は弁護士のようだ、こう言わざるを得ないということになってしまう。そういう確認をされた人々がはっきりわかっているにもかかわらず、なぜ正式に供述書をとらないのか、なぜそういう手続を省略されたのか、それをおっしゃって下さい。
  226. 竹内壽平

    ○竹内説明員 市長さんの供述はあるのであります。宮原さんとおっしゃる方だと思いますが、私どもの承知しておりますところによりますと、市長さんの別荘から現認されておるのでございまして、その供述によりますと、先ほど質問がございましたが、市長さんはむしろ羽の上部が下に見えるという形でごらんになっておったということでありまして、それによりますと、別荘の位置が十三メートルであるから、その位置から羽の上が下に見えるという距離でございますので、おのずから水面からは幾ばくもない、超低空であるというような結論になるようであります。しかしながら、その供述に基きまして実地を調べておるのでありますが、市長さんの別荘の位置は水面上三十メートルであります。これは的確な数字ではないかもしれませんが、十三メートルではなくして三十メートルの位置にあるということでございまして、その位置から今のように市長さんの現認があったといたしましても、海面すれすれというような高さとは認められないというのが調査の結果でございます。
  227. 西村力弥

    ○西村(力)委員 市長さんのあれは警察で調べられたと思うのですが、検察庁としてもさまざまの人の証言を正式にとられると同時に、市長さんの供述をどうしてとられなかったかということが一つ。それからその日は午後の何時か、時間がわかりますので、潮の高さというものは大体どの程度であったかということも調査せられて――その市長ざんのおられた場所は水面から大体何ぼくらいだったという実測をされましたですか、大体三十メートル、こちらは十三メートル、あまりに開きがある。あなた方もただこう見て市長はうそ言っているのだ、三十メートルだ、こうやったのか、実際に測量されているのですか、どうです。
  228. 竹内壽平

    ○竹内説明員 実際に測量をざれた結果の報告だと考えております。
  229. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その点は、と思いますということでございますが、私も実際に参りましてそこを見たのでございます。それは私の感覚だっていいかげんなものかもしれませんが、三十メートルとはとても思えない。そして私は何も水平に見たのではないが、こういう感覚が一番正しい。自分の水平な位置から下だったということを確認されたということを申し上げているのです。それはあなたのおっしゃる通りなんです。  それから法務大臣にお聞きしたいのですが、こういういたずらは那珂湊に限ったことではない。鎌倉なんかこの夏ジェット機までも低空に飛んで、そして海水浴客をおどかしている。それからまた熊谷あたりの問題は調達庁において御承知だと思うのですが、道の端っこを通るのをひっかけている、こういうようなこと、たくさんそういうことがあるわけなんですが、ああいうような米軍の故意のいたずらというものは各所にある。この鎌倉の事件は神奈川選出の山本代議士、あの方がよく知っているはずですが、ジェット機のあおりで帽子が飛んだ、あるいは海水浴客が水にくぐってしまう、ジェット機までそういういたずらをやっている。こういう事例を法務大臣は十分御承知かどらか、それに対してどういう処置をなさろうと考えておりますか、またなさったか、いかがでございますか。
  230. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま御指摘のような、駐留軍のいたずらに類する行動と思われるような二、三の事例について承わったことはございます。これは政府といたしましてもしかるべき筋から十分注意を喚起していることと存じますが、ややもすれば、そういうようないたずらが事故を起し、犯罪を起すきらいもございますから、私といたしましても今後十分これらの点には注意を喚起したいと考えております。
  231. 竹内壽平

    ○竹内説明員 大臣のお言葉につけ加えて申します。本件につきまして、爆撃練習の低空飛行につきましては、これは演習目的がありますので何でございますが、輸送機につきまして二百フィート以下の高度で入る、出るということの取扱いにつきましては、私どもも事故防止の観点からこの是正方を要望いたしまして、軍当局と話し合っておりますが、大体五百フィートないし八百フィートの線で出入りをするように航空規則の改正を見ることになっております。それを確認しております。
  232. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その点は那珂湊へ参りましたときに、ジョンソン基地の法務官の中佐の方が来ておりまして、あそこの助役に申しておりました。この問題については司令官も非常に心配をして、末端まで事故のないように徹底せしめておる。それから飛行高度については二百メートルですか、それを五百メートルに引き上げるようにするんだという趣旨のことを言つておりましたが、私思うに、二百メートルというものが守られればそういう事故は起きないはずである。どうでしょうか。それを五百メートルに上げると、今度は事故が起きないということはない。問題はそこだ。二百メートルなら自転車にひっかかる、五百メートルならひっかからないということはない。そういうところだけでもって問題が解決するという工合にはとうていあなた方もお考えにならないだろうと思うのです。要はもっとはっきりした日本立場に立った主張を持って進まなければならぬ。その主張の具体的現われというものは、こういう事故に対してきぜんたる態度をとるということ、そのことが一番だろうと思う。彼らが二百メートルを五百メートルに上げたって、日本の検察庁が国民の意思を無視して、それはやむを得ない事故であったがごとく主張する限りにおいては、彼らのそういういたずらはなくならない。そのようなことによって問題解決なんていうことは大きな間違いなんです。そういうことをあなたはおっしゃったが、輸送機は二百メートル以下は飛んでならないという航空規則があるということ、それが市長さんのがけが三十メートルだ、十三メートルだ、こうなっておりますが、それはもう二百メートルのあれをこえて、航空規則を破って低空に来たということがはっきりしておる。それもやっぱり気象状況ですか。そうじゃないでしょう。ことに日本のわれわれを虫けらのように考えないとすれば、一万人の人々が楽しんで泳いでおるならば、その二百メートルという最低規則があろうとも、それ以上に飛んで、事故なんかないように、ずっと離れて飛んで、何も差しつかえないはずだ、そういう気持が先行すれば。そういう点も、二百メートルという航空規則を破って、三十メートルだろうが五十メートルだろうが、とにかく低空を飛んでおる。なぜそういう低空を飛ばなければならなかったかということを御調査なさいましたか。
  233. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいまメートルでおっしゃいましたが、それはフィートでございます。それは二百フィート以下ということに航空規則はなっておるようでございます。当日は爆撃練習が低空でなされるというので、なるべく低く通るということが希望されておったようでございます。従って、二百フィート以下でございますので、支障のない限り、あるいは百フィートという線も搭乗者は考えたかもしれないと思うのでございますが、改正の暁におきましては、五百フィートあるいは八百フィートということに、なって参りますると、とっさに起ったレバーの操作の誤まりというようなことから、今のような事故を防げるだろう、こういう考えでございます。
  234. 相川勝六

    相川委員長 だいぶまだあとに質問者がありますから……。
  235. 西村力弥

    ○西村(力)委員 時間を急がれますが、何せやはり重大な問題です。先ほど申しましたように、二百フィートを五百フィートに上げようとも、それは事故が起きる起きない、県道上を日本人が歩いておるのに引っかかる引っかからないということは、その問題によってはきまらないと思う。これははっきりしておかなければならないと私は思う。今のは受け取り方にお互いそごがありました。それでは荷物をおろしたあと離陸して、約百フィートの高さで左に折れたという問題は、前方に爆撃機があった。これを見たから、それを避けるために左に折れたのだという、こういうことでございますが、その爆撃機がそこを飛んでおったという証明はどこからとられましたか。
  236. 竹内壽平

    ○竹内説明員 爆繋機を見たから左に折れたというふうには私ども承知いたしておりません。これはジョンソン基地の演習のさなかに、輸送演習機以外の輸送機、そういうものの発着は、離陸いたしましてから左に旋回いたしまして、一たん海に出てそれから南下してジョンソン基地に帰る、こういうのが航空規則の扱い方でございます。そういう意味先ほど御答弁申し上げたのでございます。
  237. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それはどこで見られたかですが、その土地の人々は決してそういうことは見てないのです。米軍の飛行機というものは右回りしかないといろのが常識なんです。それをわざわざ左に回ったのはおかしい、こらいろ工合に見ておる。普通は右回りなんだ、いつもは右に回っている。しかもその日は風は真向いに来ておるのだから左に折れる必要も何もない。風を受けて上昇していけばいいわけですから。その航空規則がそうなっておるというのですけれども、地元の人はそんなことは見たことがないのです。全部がすべて右に折れておるのです。その日に限って百フィートの低い高さから左に折れておる。今航空規則にそういう工合にあるということを仰せられたが、そんなものをごらんになられたのですか。
  238. 竹内壽平

    ○竹内説明員 これは爆撃練習をしていないときは右へ回ることになっておる。従って大部分の時間はもしその間に輸送連絡があります場合には、離陸いたしまして右へ回るというのが常態でございます。ときたまたま演習時間中でございましたので、規則に従って左に曲った、こういうふうに承知いたしております。
  239. 西村力弥

    ○西村(力)委員 演習時間であって前方に爆撃機を認めた、こういう工合に先ほどは仰せられたようですが、爆撃機がなくてもその爆撃演習時間中は左に折れる工合になっておると向う側では言うわけですね。ところが地元の人々は左に折れたことをほとんど見たことがないと言う。ずっと長い間見るのだから、その間確かに爆撃演習中だってあったはずです。それはしょっちゅうでしょう。そういう場合においても左に回らない、右に折れておる、それが通則だという。ですからそういう現地の人々の長い間やかましさに耐え、苦しさに耐えて見ておるそろいう証言をなぜとらないか、向う様がそういうときは左に折れることにきまっておると言うと、そうですかとすぐそれを受け入れておる。そういうことはおかしいじゃないか。だからあなた方は弁護士みたいだと私は言わざるを得ない。そういうところに手落ちがあったとお考えになりませんか。
  240. 竹内壽平

    ○竹内説明員 現地の証人の方々が右に回るのが原則であって、左に回るのは異例であるというような観察をなさっておるということ、そういうお言葉があることは承知いたしておりますが、犯罪の捜査といたしましては、ゴードンのとった処置が適式なものであるかどうかというところに主眼があるわけであります。それには規則上どういうふうな態度をとるべきかということからして、航空規則はどうなっておるかというところから調べまして、その規則に従った行動をとっておるかどうかという点を調べていくわけでございまして、そういたしませんと、そういうような判断に至らないわけであります。その点は御了承願いたいと思います。
  241. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それではお願いしますが、向うの航空規則をとられたわけでしょうから、それを一つ委員会提出してもらいたい。航空規則をあなた方は正確に調べられて、それにのっとって、左旋回であるからこれは公務中であるという断定をせられた、その航空規則なるものを当委員会提出してもらいたい。
  242. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま航空規則を出すようにということでございましたが、これは検察庁で航空規則の写しをいただいておりますが、これは向うの内部規則でございまして、国会提出することができるものであるかどうか、少し検討さしていただきたい意味におきまして、御猶予いただきたいと思います。
  243. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは委員長にお願いしますが、いろいろ事情もあるでしょうが、そういう先方の航空規則を唯一の基礎として公務中であるという判定をなすったあなた方であるから、それをやはり私たちに知らしめてもらわなければならない。そうしなければ左旋回をやったということが故意であったという私たちの印象はぬぐいかねる。ですから委員長は十分にその点御努力願いたいと思うわけであります。  次に原子力関係の科学技術庁の方がおいでだろうと思うのですが、あそこの東海村に近接して爆撃演習揚があることによって、あの原子力センターがいろいろな点において障害を現在受ける点があるかどうか、もしまた間違ってでもあのセンターに模擬爆弾なり何なりが落ちた場合のその被害、そういうのはどうなのか、その二点について一つあなたの方から答弁願いたい。
  244. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 お答え申し上げます。ただいまのお話の演習の中心地からは、御承知のように原子力研究の敷地は相当北になってございまして、私ども当初向うに立地を定めます際にももちろんそういう点も考慮いたしまして、あのくらい離れておれば大体間違いはないじゃなかろうかというふうに考えた次第であります。  なお後段の件でございますけれども、万が一のことがありますれば大へんな問題になりまずので、先ほど調達庁長官のお話のように、なるべく万全の措置を向う様でも講じまして、そしてそういう不測の災害の起らないように注意いたしたいという希望は十分持つております。
  245. 西村力弥

    ○西村(力)委員 もしそこに落ちたらどういう工合になるか、せっかく火をつげたのがどうなるか。
  246. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 そういう状態でございますので、万々が一落ちるということも予想しておりませんから、そういうことは考えておりません。
  247. 西村力弥

    ○西村(力)委員 あなたの方ではなかなかそんなことは言えないだろうと思います。  次に刑事局長に、もう一点ふに落ちない点がある。それは航空関係の専門的な問題を霞ヶ浦の何とかという方、運輸省の航空局の何とかという方、そういう方に証言を求められた、こういうことでございますが、日本の自衛隊のそういう人々は、私たち少しひがんで考えると勇敢な証言はできないだろうと考える。それはもら航空関係の人は英語で教育されて、アメリカの教官に教えられて、貸与された飛行機に乗って英語で指令を受けて飛んでおる人々なんです。あるいは運輸省の関係においてもそう事は簡単に勇敢な証言はできないんじゃないかと思われる。これは情ないかな日本の現状じゃないかと思う。それであそこは戦争中も飛行場のあったところで、あそこの飛行場において何百回、何千回と離着陸をした飛行士が確かにおる。そういう以前の専門家に証言を求めないというようなことは、私たちはやはり十分な措置であったとは言えない、こう思うのです。そういうお考えはなかったのかどうか。あってもそれを捨てられた、そういう手続をとることを捨てられたとしたならばその理由、それをお聞かせ願いたい。
  248. 竹内壽平

    ○竹内説明員 専門的な知識を主として必要といたしました点は、三段に分けてウィング・フラップを上げるというのが通常の操作であったそらでございますが、これを一挙に上げた結果浮力を失うということになるのであるか、あるいはエア・ポケットと申しますか、ああいうところへ入って落ちてきた、そういうことになるのか、そういう点を技術的な観点から確かめたかったという点が一点と、百フィートの高さで左旋回をしたときにそういう結果が起ってきた場合に、そういう操作をしながらなおかついたずら心でやれるものであるかどうかといったよらな点が、主として実際に飛行機を運転する方々の専門的な知識として検察庁は必要であったわけでございまして、御指摘のような、その他にもっと適切な鑑定をする人がいたかもしれませんが、一応こっちとしましては今の北川三等空佐あるいは航空局の亀山航務課長等が適任者と考えまして、その方たちの御意見をお聞きしたような次第でございます。
  249. 西村力弥

    ○西村(力)委員 事故に至った問題も向うの規則だけで、通常の飛び方に対して現地の人々から何も意見を聞かないとか、今のような航空技術の問題に対しても、政府部内というようなそういうところだけの証言でもって結論を下される。どこを見ても今回のやり方はどうも一方的に見えてならない。私たちはその点非常に遺憾に思うわけなんです。  次に防衛庁の次長かあるいは防衛局長かにお尋ねしますが、今模擬爆弾がしょっちゅう場外に飛び出すということは、爆撃方式が変ったそのために手元が狂うのでこうなるのですか、あるいはどうですか、今までの爆撃方式を変えてこういう爆撃をやるというのは、、何の必要あってああいう爆撃方式をとるようになったのだろうか、自衛隊としてもこれは当然向うの爆撃方式をまねて、そしてそういう訓練を始められたと思うのですが、どうでしょうその点は。今まではこう突っ込んで目標に向って爆弾を放すと正確に落っこったけれども、今は反転して、反転の途中においてその切線の方向に爆弾が飛んでいく、こういう爆撃方式をとる。それでしょっちゅう飛び出すのだ、こういうわけです。それで技術未熟でこういうわけになるのですが、ああいう爆撃方式は何の必要があって、そういう方式に変えられておるのか。専門的に一つお聞かせを願いたい。
  250. 加藤陽三

    ○加藤説明員 ただいま自衛隊の方では、御承知通り爆撃機は持っておらないのでありまして、爆撃の訓練をいたしておりませんので、その点は研究はいたしておりませんから、申し上げる知識はございません。
  251. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それではしょうがないのですが、その点は一つ専門家がおられるのですから御研究になって、後日の委員会においてお知らせが願いたい。  それから最後に防衛庁長官に、法務大臣でもけっこうですが、日本人が日本の国の中で殺されて、日本の国に裁判権ありということは当然なことですが、今残念ながらその件が第一次裁判権がどちらにあるかという争いをしなければならぬけれども、公務中なら向うだと言うが、そういうことを除いて原則的には日本人が日本の国で殺されたら日本に裁判権があるんだ、こういう原則が厳としてある、こういうようなことは確認願えますか。
  252. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 日本が今普通の状態でございますれば、わが国土の上において行われました犯罪につきましては、原則として日本が裁判権を持たなければならぬということは当然のことでございます。ただ御承知のように、いろいろ条約上の制約その他の関係からすれば、米兵の犯した犯罪について日本が裁判権を持たないような場合もある、こういう形でございまして、原則としてはどこまでもさように考えていかなければならぬと思うのであります。
  253. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その原則をはっきり貫く方向にいってもらわなければならぬ、こら思うのであります。それは結局は、米軍に帰ってもらわなければどうにもならぬということになると思います。今までいろいろお聞きしますと、私たちはまだまだ納得できない点があるし、ことに今回の捜査は、もう証書のとり方がまことに先方に好都合のような工合に、意識したかしないかはとにかくとして、そういう工合に行われておる。このことは今までの刑事局長の答弁によって、これはだれもそういう感じを持つだろう、こう思うのです。そういうことではこれはまことに困ったことなんでありまして、どうしても日本国民の納得するところとは参らない。そういう点から一つ委員会としてはもっとやはり突っ込んでこの真相をきわめて、国民の不安というものを除く、こういう観点から現地調査あるいは検察庁で調べられた証人、それ以外のわれわれが必要とするような証人、そういう人々をこの委員会に呼んで、そうしてもっと突っ込んだ調査をせねばならない、こう思うのです。そういう点について委員長において善処せられんことを望みます。  なお結論として、ああいう事故がないようにするために、その二百フィートを五百フィートにする、こういうような点が結論として出ておるようでございますが、二百フィートならばひっかかるのであって、五百フィートならばひっかからないということはないのだから、やはり結局私たちがあなた方検察庁も含めて、もっときぜんたる態度をとるということが事故を絶滅する唯一の道である、こう私たちは思うのです。こういう点について、先ほど茜ケ久委員からも希望がございましたが、私たちはそういう方向でもってこれからも努力して参りたいと思うわけなんでございますが、検察審査会といろものは、そういう検察庁の取扱いに対して、米軍に関する事犯に対しても活動しておられるかどらか。これはこちらの弁護士に聞けば一番わかるのですが、あなた方の見解はどういう工合に考えておられるか、その点を一つ最後にお聞かせ願いたいと思います。
  254. 竹内壽平

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。検察審査会の対象になります案件は、御承知のように検察官のなした起訴処分に対して審査するのであります。本件も形式的には不起訴処分――第一次裁判権がないという理由のもとに不起訴処分になっておるわけでございますので、審査の対象にならぬものと考えております。
  255. 相川勝六

  256. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今、西村君の聞きました検察審査会の問題について、実は関連質問をしようと思っておりました。ちょうどいい幸いであります。今回の事件について、先ほどあなたは茜ケ久保君の質問に対して、もう再びこちらに裁判権を取り戻すことはできないだろう、こういろふうにお述べになりましたが、それは間違いありませんか。
  257. 竹内壽平

    ○竹内説明員 大臣からお答え申し上げた点でございますが、私も全く同様に考えております。
  258. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もし、もら取り戻すことができない、こういうお話でありますと、今あなたがお認めになった検察審査会に被害者が審査の申し立てをする、こういうことをいたしましても、検察審査会は、検察庁に対して起訴を命ずることは不可能になります。これはどうでしょうか。
  259. 竹内壽平

    ○竹内説明員 先ほどお答え申しましたように、形式的には審査の対象になり得る案件でございますが、実体的には検事が実体の上で不起訴にしたのではなくして、裁判権があるかないかという管轄権の問題で審査をして、それを処理の上としましては不起訴、つまり第一次裁判権がないということで不起訴にしておるのでございまして、御指摘の通りに、いろいろ審査をいたしますとしても問題があろうかと存じます。
  260. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 形式、実体の問題は別に問おないことにいたしましょう。検察審査会法の第二条を見ますと「検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項」、こうなっておりまして、管轄権の争いの場合にはこれに含まれないという解釈は一つも出てこないわけです。検察官の公訴を提起しない処分という述べ方の中には管轄権があるかないかということ、こういうものも当然含まれるはずです。これはアメリカ日本との関係であるから、あなたはそうおっしゃるかもしれない。しかし日本国内で管轄権があるかないかという問題も別個にあり得るわけです。そういう場合にはあなたは除外するのか、こう伺いたくなるのです。少くとも形式的には不起訴処分である。だが実体的には管轄権がないのだ、こうおっしゃる。形式と実体的とを区別すべき法律上の根拠がどこにあるのです。条文を示して下さい。
  261. 竹内壽平

    ○竹内説明員 先ほどもお答えしました通り、本件は検察審査会の対象になり得る案件でございます。これはもう私違ったお答えをしておらないのでございます。ただ実体がそれじゃ審査をした結果不当であるというようなことになった場合に、こっちへ取り戻せるかどうかというような点になって参りますと、普通の一般の不起訴処分の事件と違いまして、いろいろ問題があろうかと存じます。かようにお答え申し上げたのであります。
  262. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 検察審査会に審査の申し立てをして起訴してもらいたいということを要求するのは国民に与えられた権利です。これは憲法並びに検察審査会法等によって定められた国民の権利であります。この場合についても被害を受けられた北條さんという方は今重傷を負っておられますが、この方の当然の権利でありまして、この権利をなぜあなた及び法務大臣は不当にじゅうりんする行為をなすったのか。一体どういう法律上の根拠に基いて、国民に法律上与えられた重要な権利を不当にじゅうりんすることができるのですか。条文を示して下さい。
  263. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま人権をじゅうりんしておるというお話でございますが……。(飛鳥田委員「いや、権利をじゅうりんしている」と呼ぶ)そういう権利は審査法上ございますけれども、まだそれは現実の形になって申し立てをなされておらないのでございまして、申し立てがありましたならば、審査会は当然審査をなさると思いますし、審査の結果によりましては検察庁にその事件を要望せられると思います。そういう場合には検察庁としては十分慎重審議しなければならぬ、かように考えております。
  264. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 問題が二つあると思います。一つは審査を請求することは、おっしゃるように今でも形式上可能でありましょう。だが、しかし審査をいたしましても、その審査の目的を遂げることが現実に国家権力の手によって不能な状態に追い込まれている、こういう状況を私は申し上げたわけです。そういう状態は少くとも国家権力の行使として不当ではないだろうか、こういうことを私は申し上げたわけです。それよりほかに手がなかったとおっしゃるかもしれませんが、あります。少くともこの管轄権の問題については、問題があるときには、正式には日米行政協定による合同委員会の中で処理をすべきものである。従って一応問題ありとして、少くとも日米合同委員会にかけて、これはペンディングの形にしておいて、そうして被害者が検察審査会に申し立てて、みずからの権利を正当に行使することのできるチャンスを作っておくべきが、あなた方のなすべき行為であったと私は思います。こういう問題が一つあるのです。  もう一つの問題は、もし検察審査会に被害者が審査の申し立てをして、その結果起訴すべきものだと審査会が決定をして検察庁に勧告をした、そういう場合に、あなたは今それを尊重しなければならぬとおっしゃったが、尊重するというのは、どういう具体的な行為ですか。あなたのお説では、もう起訴できない、こう言っているのです。起訴せよという命令を尊重しなければならないと今こちらで言い、こちらではもう起訴できない、こう言っているんです。尊重というのは言葉だけですか、内容はどういう意味でしょうか。もう少し具体的にその処分の方法を教えていただきたい、この二つ。
  265. 竹内壽平

    ○竹内説明員 第一のペンディングにしておけという問題でございますが、これは管轄権が、御承知のように、この手続は公務中であるという通告を駐留軍側から日本政府にもたらします。日本政府ではそれに対して何らかの意見をつけなければならぬ。その意見をつけますのには必要なる調査並びに捜査をしなければなりません。本件につきましては、いたずら的な行為であったかどうか、あるいは故意にそういうことを殺意を持ってやったかというようなことも、一応疑ってみるところでございます。そういう点を調査いたしました結果、結論といたしまして故意ではない、いたずら的な行為とは認められないという結論に到達しましたので、裁判権の問題はわが方にないという結論になったわけであります。それでこれに対する答弁をいたしました。それでその事件の処理としましては、第一次裁判権がないから不起訴にするという処分をしておるのでございます。従いましてわが方においても裁判権がある疑いのある、少くともわれわれは裁判権ありと主張するというような場合におきましては、これは当然御指摘のように、合同委員会に問題を持ち出しまして、両政府間において討議すべき問題だと思いますが、本件は今申しましたように、捜査の結果わが方も裁判権ないものと認めたのでございまして、ペンディングにするという問題はなかったのでございます。  それから第二の尊重するという意味は、これは審査の結果検察庁の処分と相反する結論が出ましたといたしましても、検察官としては的確な捜査の後におきまして一つの検察的な判断を下すのでありまして、その結果が審査会の意見と違うような場合がありましても、これを必ずしもらのみにして、前の処分を撤回してその審査会の結論に同調しなければならぬという法律上の建前にはなっておらない。しかしながら審査会の御意見というものは国民の声でございますので、そういう点につきましてはできるだけ謙虚な態度で臨みたい、こういう意味で尊重をするというふうなお答えをしたわけでございます。
  266. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 非常にあなたのお答えは独断的で、しかも権威主義だと思うのです。管轄権があるかないかということについて、あなた方は先ほど茜ケ久保さんあるいは西村さんに対していろいろ理由をあげてお答えになりました。しかしこれは事実認定でし、、う。事実をいかに認定するかということに基いて、その上に立って管轄権ありやなしやを決定するわけです。もしそうだとずれば飛行機が何メートルで飛んだとか、あるいはどのような型であったとかいう事実認定そのものに対して争いたい被害者の意思というものを、やはり認めなければならぬ。そしてその争いたい被害者の意思を認めるためにこそ、検察審査会法というものがあって、その不服の申し立てを許すわけでしょう。それをあなたはもうすでにそれに対しては認められない、こういう立場に立って相手方に公務中であるという認定をしたのだ、アメリカに対して公務中であるという答申をしたのだ、こうおっしゃるわけです。それではもう審査の申し立てをする国民の権利は完全にゼロに帰するじゃありませんか。そんなことは、いかに検察庁であろうとだれであろうと、できるはずはないんですよ、法律で定められている国民の権利を……。そういうことについてあなた方は責任をお感じにならないのか。少くとも決定をなさる前に、あるいは不起訴処分の決定をして、それからアメリカに対して公務中であることを認定するという答弁をされる前に、なぜ被害者に、あなたは検察審議会に申し立てる方法があるが、そういうことをおやりになるのか、ならたいのかということを確かめた上でそういうことをなさらないのか。これはあまりにも国民の権利をじゅうりんし過ぎはしませんか。私はこういうふうにしてやたらと法律上与えられた国民の権利がぽんぽんあなた方の手によってゼロにされていくようなことには耐えられないのです。先ほど法務大臣は、アメリカ人であろうと日本人であろうと、だれに対しても法の前には公平に扱う、国民の権利を尊重するとおっしゃったばかりじゃないですか。その国民の権利を尊重するという口の下で――昔からその舌の根かわかざるうちにという言葉がありますけれども、こういう重大な国民の権利の侵害がなされる、こういうことに一体あなたやあるいは法務大臣は、それで平然と、しようがないのだ、こらおっしゃるでしょうか。私は一国民としてのあなた方の意見を聞きたいのです。この検察審査会に申し出るという国民の当然の権利がじゅうりんされているかいないか。かりにあなたの言う、へ理屈と言ってははなはだ失礼ですが、へ理屈に基いて形式的にあるとしても実質はそこなわれてはいないか。われわれが問うところは実質です。こういう問題について法務大臣の御意見とあなたの御意見と両方をぜひ伺わしていただきたいと思います。それでなければ、今後またまたこういう事件が起ったときに検察審査会に申し出る権利が奪われるというようなことがあっては困ります。その点はっきりしていただきましょう。
  267. 竹内壽平

    ○竹内説明員 法務大臣の御見解もかわって私から申し上げます。検察庁が処分をいたします場合に被害者の意見を聞いてみよ、聞くべきではないか、こういうことでございますが、検察審査会法によりまして、検察官のなした不起訴処分に対しまして審査を求める権利を認めておるのでございますが、この権利の行使に当りましては、不起訴処分という結果に対しまして審査を求めるかどうかを後にその人から申し出るということになっておるのでございます。つまりこれは権利行使の方式を定めておるのでございます。検察官にもまた検察官として検察庁法その他によりまして与えられた職権があるわけでございます。本件につきましては裁判権があるかないかということの捜査をいたしまして、その結論を出しましたならばとれに基いてその職責を果していく、これは検察官の職責でございます。それに対しまして被害者側からその処分は不当であるといろことでありますならば、検察審査会法の手続に従いましてその審査を受けるということになるのでありまして、権利がございますけれども、その権利を行使いたしますのにはやはり会法の示すところによって行使しなければならぬ、こういうことになろうかと思うのでございまして、この点お言葉を返すようでまことに恐縮でございますが、私はさように存じております。
  268. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 僕の言うことを一つよく聞いていていただきたいと思いますが、不起訴処分に付す、同時にあなた方はアメリカ軍に対して公務中であったということを認める。検察庁は不起訴処分にする、法務省あるいは日本の政府は――まあ法務省と言いましょう。法務省は公務中であるということを認めるという回答をした。この間のことを僕は言っている。よく聞いていて下さい、また間違えるといけませんから。不起訴処分にする、これはお前さんは検察審査会に申し立てをするかしないかということを聞けというのではありません。そんなことは僕だって知っています。検察審査会に対して異議の申し立てをするかしないかということを確かめてから、それでやらないというのなら、向うに答えをするというのが法務省ですよ。日本政府ですよ。それくらいな親切心があってもいいだろうと僕は言ったのです。検察官が不起訴処分をして、同時に、あなた不服の申し立てをしますかなんてばかなことは、僕だって言いやしません。あなたはそういう点だけあげ足をとつて僕の言う問題をそらしていますが、こういう形式的な権利だげを残して、権利の実体を奪ってしまうようなことが、あなたは許せますかというのです。
  269. 竹内壽平

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。不起訴処分をいたしました場合に、法務省なり日本政府がその結果をとりまして駐留軍当局に裁判権を行使しないという通告をいたすのではないのでございまして、手続としましては、法務省、いわゆる日本政府が裁判管轄権は米側にあるという通告を受けますと、これを現地の検察庁に通達いたしまして、現地の検察庁がどちらを選ぶべきであるかということを決定、通知することになっております。そこで検察庁が不起訴にした、その結果を法務省が受け取って、そしてアメリカ政府の方にその旨を通達するのじゃないのでございまして、向うが不起訴にするときに、検察庁が検察庁の責任においてこれを通皆する、こういう手続になっております。  それから検察審査会が反対の結論を出した場合にどうにもしようがない結果になるのじゃないかという点は、先ほど来申しますように、形の上では審査することができるのでございますが、おのずから一定の制約があって、普通の不起訴処分の審査のようなふうにはいきかねる場合がある。これは検事が行き届かないとか不親切であるとかいう問題ではなしくて、行政協定そのものから来る制約もあるのでございます。その点一つ御了承願いたいと思います。
  270. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 さっき法務大臣は、アメリカ人であろうと日本人であろうと、相手が何国人であろうと、法の前には平等にする、公平に取り扱うとおっしゃったのですよ。ところが今あなたのお話によると、もら違っている。場合によっては仕方がない場合がある、おのずからなる制約がある、こう言うのですが、検察審査会法の第二条の「公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項」、そしてその申立権者は「犯罪により害を被った者」、こうなっている。この条文からどうしてそういう制限が出てくるのですか。この条文は行政協定によって重大なる制約をこうむっている、こういうふうにおっしゃるのですか、法律上の解釈として。
  271. 竹内壽平

    ○竹内説明員 その条文の解釈は御指摘の通り解釈されるのでございます。しかしながらおのずから制約があると申しますのは、行政協定によりまして、国内に起る犯罪について第一次裁判権、第二次裁判権、こういう類別をすることになっておりますところに、おのずから制約がある。先ほど大臣からお答え申し上げましたのは、一般原則として、国内に起った犯罪はひとしく憲法のもとでわが方の裁判権に服する、駐留軍の犯罪につきましては、行政協定に基く裁判権の類別という観点からしておのずからそこに制約が出てくるということを申し上げたのであります。
  272. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうも長くなって恐縮ですが、僕が納得できないことばかりですから……。行政協定というものは国会の審議を経ていない協定です。にもかかわらず、憲法によって定められた国民の権利がじゅうりんされるということは、これは不思議だと思う。むしろ行政協定というものは、政府がみずからの行政力を行使するについてのある種の制限を定めたものと原則的に解釈すべきだ、こう思います。もし行政協定によってこういう具体的な法律の権利がじゅうりんされるとするならば、それは当然政府として次の国会においてそのことを明確にしなければなりませんし、またあなた方としては当然法律改正を行うべきものだろう、こう思います。そうでなく、それをほうっておいて、ただおのずからなる解釈に制限があるということではたまらないじゃないですか。どんな法律でもみんな都合の悪いときにはおのずから制限があるということで解釈されてしまう、そんなことで一体日本の正義と秩序が保たれていくとあなたはお考えでしょうか。僕はこんなお説にはどうしても承服できないのです。行政協定の第何条によって、具体的にそれではどういう方向にどういうふうに制限されるか、おっしゃって下さい。
  273. 竹内壽平

    ○竹内説明員 行政協定は一般に安保条約の付属協定書としまして、条約の効力があるとされておるのでございますが……。   〔委員長退席、床次委員長代理着席〕 その条約の効力のあります行政協定によりまして、国内に発生した犯罪についての裁判も、あるものは日本側で、あるものは軍事裁判で、こういう形になっておるのでございます。そういう点をおのずからという、まことに抽象的な言葉で申し上げて恐縮でございましたが、そういう意味で申し上げたのでございます。
  274. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 さらに問題があります。第一次裁判権、第二次裁判権というようなあなたのお説をかりに肯定したとしても、それは直接にはこの審査会法による異議の申し立てとは関係がないはずですよ。第一次裁判権がアメリカにある、第一次裁判権が日本にあるというそういう判定は、なるほど一つ効力を発生するでしょう。だがしかし、それにまつわる幾つかの諸手続、こういうものまで全部抹殺してしまうということにはならないはずですよ。これはあなた方は非常に優秀な法律家であられるから、別に私がお断わりするまでもないと思いますが、法律はそんなずさんな解釈をすべきものだとは私は思っていないのです。これは第一次裁判権がかりにアメリカにあると考えられても、なおかつそういう帰結に至るまでに当然国民のすでに与えられた権利は保護せらるべきだし、じゅうりんしてよろしいなどという論理は出てこないのじゃないか。あまりに論理が飛躍し過ぎますよ。むしろ率直に、これは検察審査会のことは頭に置いてなくてやってしまった、済まぬ、今後はこんなことはやりませんとおっしゃる方が、私は確かだと思うのですよ。
  275. 竹内壽平

    ○竹内説明員 じゅうりんというふうにおっしゃられますが、まことに恐縮でございますが、これはこの処分に対しまして検察審査会が審議をなさることができるのでございます。その結論が出ました場合に、検察庁の出しました結論と食い違いができてきた場合、それが国内の一般犯罪の場合のように円滑に運び得るかどらかという点について、先ほど来私が申し上げたのでございまして、この検察審査会の審議が不能になるというようなものではもちろでございませんし、その結論を待ちまして、十分先ほど申したように尊重するという建前で検討いたしまして、そういうふうになりましたならばそういうふうに処置いたしたいと思います。
  276. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは水かけ論のようですから、世人の意見にまかせましょう。ただ大臣もさっきからお聞きでしょうが、形式的な権利は確かに残っています。だがすでにその実質はすべて失われているのです。しかし問題はその実質だと私は思います。不服の申し立てをして、かりに申し立て理由ありということになって、検察官は起訴すべし、こういう決定が出たとしても、それは今刑事局長のおっしゃるように、尊重いたしますという言葉で片づげられている、日本人は尊重いたしますということは、その通りいたしますということだと僕は思っておりました。ところが尊重いたしますということは、敬して遠ざけてしまうということになるらしい。これでは何もならぬでしよう。私はこんな形が――さまつな僕と刑事局長がやりましたような法律諭ば別にして、少くとも一国の法務大臣として国民の権利を守る責務に立つあなたとして、大まかに言って政治的にいいと思いますか、悪いと思いますか、これを一つ伺わしていただきたい。あなたの政治家としてのこのことに対する御所見を伺わしていただいて、僕はよします。もうこの議論はやってもつまりません。
  277. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 お答えを申し上げます。だんだんのお説いかにもごもっともと思います。憲法によって保障されたわれわれの人権はどこまでも尊重しなければなりません。それからまた冒頭にお話のありました日本人と米国人との間の法の前の差別待遇ということも、これは絶対に避けなければならぬことと存じております。ただ御承知のように現実の問題といたしましては、ただいま問題になっておりまする安保条約、それに基く行政協定、こういうようなものがございまして、元来わが国の裁判権に服すベきものも一つの例外として軍事裁判にまかせられておるというようか、その制度も今現実の問題でございます。その間にいろいろとお話のような問題が起きてくるわけでございますが、原則論といたしましてはお示しのようにどこまでも日米の両国人は法の前に平等である、ただ条約その他の制約のある場合はこれは例外でございますが、根本観念としてはどこまでも平等でなければならない、また憲法によって保障された人権はどこまでも尊重していきたい、かように考えております。
  278. 床次徳二

    ○床次委員長代理 次回は明三日午前十時より開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時五十四分散会