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1957-03-15 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十五日(金曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 福井 順一君 理事 保科善四郎君    理事 山本 正一君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       北 れい吉君    薄田 美朝君       辻  政信君    床次 徳二君       船田  中君    眞崎 勝次君       粟山  博君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    木原津與志君       下川儀太郎君    中村 高一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         労 働 大 臣 松浦周太郎君         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (国防会議事務         局長)     廣岡 謙二君         防衛庁次長   増原 惠吉君         防衛庁参事官         (教育局長事務         取扱)     都村新次郎君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君         大蔵政務次官  足立 篤郎君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    鈴木  昇君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十五日  委員中村時雄君辞任につき、その補欠として川  俣清音君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月十四日  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第八五号)  建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇四号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第八五号)  特別職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第八八号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第九一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣拠  出第一二八号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)     —————————————
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  去る六日本委員会に付託されました内閣提出にかかる防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案議題とし、これより審査に入ります。  まず政府より提案理由説明を求めます。小瀧国務大臣
  3. 小滝彬

    小滝国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びに内容概要を御説明申し上げます。  政府は、今般人事院の勧告の趣旨にかんがみ、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたが、防衛庁職員は、特別職でございまして、その給与につきましては、防衛庁職員給与法の定めるところになっております。従いまして今回一般職に属する国家公務員給与改正趣旨に準じまして防衛庁職員給与改正いたすこととし、本法律案を提出した次第でございます。  次に本法律案内容概要を申し上げます。今回の給与法改正は、俸給制度改正中心とするものでありまして、参事官等並びに自衛官に適用される俸給表を従前と同様の方法でこれに対応する一般職俸給表にならって改正いたしますとともに、事務官等につきましては、今までと同様に今回新たに制定されます一般職職員に適用される俸給表によることといたし、この際自衛官以外の職員につきましては、一般職職員の例にならって職務等級制度を新設することにいたしました。  なお、俸給制度改正に伴う新旧俸給額の切りかえ及び切りかえに伴う措置に関しましては、本法律案の附則に規定いたしておりますが、これまた一般職に属する国家公務員のそれに準じて定めたものでございます。  その他、今回の給与改正に関連いたしまして、関係諸規定の整備を行なっております。  本法律案施行期日等につきましては、それぞれ一般職に属する国家公務員と同様に規定いたしました。  以上が本法律案提案理由並びに内容概要でございます。  どうかすみやかに御審議の上御賛成下さいますよう御願いいたします。
  4. 相川勝六

    相川委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。本法律案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 相川勝六

    相川委員長 次に去る六日本委員会審査を付託されました内閣提出にかかる特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、これより審査に入ります。  まず政府より提案理由説明を求めます。足立大蔵政務次官。     —————————————
  6. 足立篤郎

    足立政府委員 ただいま議題となりました特別職職員給与に関する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  本法案は、今般、一般職職員給与制度改正が行われることになりましたのに伴い、特別職職員の一部につきまして一般職職員との権衡を考慮して給与改訂を行うほか、特別職職員であって常勤を要する国家公務員として長期間在職した者について特別手当を支給できるようにする等のため、特別職職員給与に関する法律所要改正を加えようとするものであります。  次に改正の要点を御説明申し上げます。第一、特別職職員のうち俸給月額が七万二千円以上の者及び憲法調査会委員等のいわゆる非常勤職員につきましては、一般職職員給与制度改正趣旨等にかんがみ、この際給与改訂を行わないこととし、その他の職員すなわち、東宮大夫式部長官及び秘書官の給与についてのみ、同等の一般職職員との権衡をはかり、俸給月額を現行より若干増額することといたしました。  第二に、常勤を要する国家公務員から引き続いて特別職職員となった者のうち、国家公務員としての在職期間長期にわたる者に対しては、特別手当を支給することができるようにいたしました。所要在職期間特別手当支給額等については、他との権衡を考慮して政令で定めることとしております。  第三に、在外公館のうち一部公使館の大使館への昇格に伴い、大使の俸給表に公使の最低の併給月額と同額の俸給月額を設けるため俸給表改正いたしました。  以上がこの法案提案理由であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
  7. 相川勝六

    相川委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。  本法律案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     —————————————
  8. 相川勝六

    相川委員長 次に、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、質疑を続行いたします。辻政信君。
  9. 辻政信

    辻委員 長い間外交畑に活躍されて正しい国際情勢見通しを持っておられる新長官に対して、私が心から期待しておるのは、今までの古い頭で立案された既定防衛計画に、根本的な修正検討を加えられるという点であります。その前提をなしますものは、国際情勢の正しい見通しでございますが、小滝長官にまずお伺いしたいのは、第三次大戦が近く起るとお考えになっておりますか。また朝鮮事変のような局地戦争が、日本の近くに近く起る可能性があるというふうにお考えになっているかどうか、それをまずお伺いしたいと思います。
  10. 小滝彬

    小滝国務大臣 私は簡単に申しまして、第一次戦争が起る可能性は遠のいておるというように、概括的に申し上げて差しつかえないと思っておるのであります。しかしそうかと申しまして昨年中の例から考えましても、局地的な問題が起らないというように即断するのは、これは実際に即しないところの単なる希望的な見方であってそういう可能性は全然ないということは言い得ないのが、現在の国際情勢であると考えております。
  11. 辻政信

    辻委員 明快な御答弁です。第三次大戦が近く起らないということを前提にいたしますと、日本防衛は数年先を見通して立てるということが必要になって参ります。従来の陸上十八万、海上十二万四千、航空千三百の目標は、将来の科学の進歩を考えますと、私は根本的に立案し直すべき必要があるのじゃないかと思う。それはドイツの再軍備を見ましても、アメリカから要求された五十万の既定案を昨年の秋根本的に改編をしております。そして新しい兵器である誘導弾中心とした、全く独創的な計画に練り直しております。アメリカにおきましても同様でありまして、在来の師団の編成を根本的に改めて、誘導弾、オネスト・ジョンというものを中心とした、いわゆる先頭弾的なものをもって充てようとしておるのであります。しかるに日本防備計画のいわゆる長期目標防衛庁内における一試案なるものは、三年、四年前から陸上で八方、海上十二万四千、空軍は千三百機という古い頭でワクが固まっておりやしないかと思うのであります。長官はそういう見通しのもとに、在来計画を新しい頭で根本的に立て直していただきたいということを心から念願しておりますが御見解はいかがでありましょうか。
  12. 小滝彬

    小滝国務大臣 御承知のように、こうした長期計画国防会議にかけてこれを決定しなければなりませんが、それにつきまして、すでに国務的にはいろいろ検討いたしておりまするけれども、まだはっきりこうするということは決定いたしておりませんけれども、しかし御指摘のように、現在の兵器の発達の状態にかんがみまして、また世界戦略体制というものの変化に伴いまして、もちろん質的な変化も否定することができない。また部隊機動性の重要であるということも、これは否定し得ないところでありまするので、こういう点もよく勘案いたしまして、従来防衛庁として持っておりました試案をそのまま、これを国防会議にかけるというような考えでなしに、現在の事態ともにらみ合せてこれを検討していきたいと考えております。
  13. 辻政信

    辻委員 その一つの例をとってみますと、日本防空でありますか、これは防空兵器体制根本的に変っている。にもかかわらず、現在はF86という落後した古い戦闘機中心にして、数年後の体制をやろうとしておられる、数年後にはおそらくF86というものは姿を消すだろうと思う。誘導弾を主体とした新しい防空体制世界の趨勢になっております。それを知っておるのか知らないのかわかりませんが、空幕ではF86の飛行場を全国に探そうと血眼になっておられる。こういうことは時代錯誤もはなはだしい。防空体制はF86じゃない。誘導弾中心とした新しいものがある。この一つの例をとってみても、そこに大きな考え方の差がありはせぬかと思いますが、長官の御見解を伺いたい。
  14. 小滝彬

    小滝国務大臣 航空機が非常に発達いたしまして、御指摘のように、今のF86というものは最小限度の空に対する備えとして果して至当であるかどうかということも、検討の余地があるかと思います。しかしこれはやはり日本経済力、また国民感情というようなものをよく考えなければならないところでありましてそういういろいろな角度から研究しなければならぬところだろうと考えます。現にF86では不十分であるから、七ンチュリー・シリーズというようなもの、100とか104というようなものを使わなければならないのではないかというので検討はさせておりますが、いろいろな角度から考えなければならぬことがございますので、今はっきりとどうだということは決定しておりませんけれども、仰せのような実情というものは常に頭に置いて、最小限度防空体制を整えるべく、今後努力していきたいと考えます。
  15. 辻政信

    辻委員 きのうの東京新聞の夕刊におもしろい記事が出ております。それは、「脅威のソ連誘導弾基地群」というのですが、お読みになったと思います。これは一つの徴候であります。F86で大陸からの誘導弾を一体防げるのか。日本に対する攻撃が加えられるとすると、その兵器有人飛行機でなしに、誘導弾です。形の小さい、快速誘導弾です。それを一体F86で防げると思っておられるのかどうか。国民感情ということをおっしやいましたが、国民感情はF86に救済を持っておらない。また経済力と言われましたが、経済力飛行隊よりも誘導弾の方が安上りであります。そういう点についてどうお考えになるか承わりたい。
  16. 小滝彬

    小滝国務大臣 誘導弾につきましては、すでにいろいろな委員会でも御説明申し上げておりますように、今のように誘導弾が使われ、あるいは非常に快速飛行機が使われるというような場合においては、全く一時的な防衛といたしましても、これを検訂する必要があるだろうという立場からいたしまして、現に誘導弾研究開発ということを目途といたしまして、できればこれが附発に必要な見本的な意味においても、一そろいずつ見本として適当と思われる誘導弾について、これを提供してもらってそうして日本日本に最も適した誘導弾開発するという考えのもとに、これまでもアメリカ側と折衝も  いたしましたし、またスイスからもこうしたものを取り入れる、買い入れるというので、昨年も皆様の御承認を受けたような次第でございまして、こうした点を決して見のがしておるわけではなく、日本の事情に適するような、また日本ではこれは少し行き過ぎた攻撃的なものになりはしないかとおそれられる種類のものは、あくまで排除いたしまして、日本として最も格好と思われるものの開発をしていきたい、こういう方針で進んでおります。
  17. 辻政信

    辻委員 次に訓練について二、三お尋ねいたします。過日大問題になりました行軍事件、それを十分調査した上で長官としては処罰なさったのだろうと思いますが、お伺いしたいことは、この計画は第三管区総監発意したものか、それとも中央から指示したものか、あるいは実行部隊が希望し、もしくは幕僚進言によってこの計画が立てられたのか、それを御調査になったか。これは長官以外でけっこうです。
  18. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは本委員会でもたびたび申し上げましたが、中央の方からは一般的にこういうふうな訓練をやれという抽象的な指示はいっておるのでございます。その抽象的な指示に基きまして、この第三管区総監部において計画して実施したということに相なっております。
  19. 辻政信

    辻委員 その発意者が何者であったか、実行部隊進言をしてその案が成り立ったのか、それとも金山総監が自分の発意でそれを発動したものか、あるいは幕僚がやろうとして総監の決済を受けてやったのか、そこまでお調べになったかどうかということを承わりたい。
  20. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この計画は昨年度も実施しておるのでありまして、昨年度は比叡山及び饗庭野方面にかけまして、やっぱり七十数キロの行進競技をやっております。今回はその行進競技経験をもとにいたしまして、若干構想を変えて広島県の原村において実施しました。これが総監発意になるかあるいは幕僚発意になるかということでありますが、私は両方の意見が合致してできたものだと思っております。
  21. 辻政信

    辻委員 死亡された方は三曹及び士長と承わっております。三智といえば昔の軍隊の伍長であり、士長上等兵であります。おそらく入隊後二、三年たった熟練した隊員であろうと思います。これは単に行軍そのものが過重であったとは私には考えられない。いわゆる初年兵に相当する人たちが死なずに行っておるのであります。そうしますと、死んだ原因がほかになかったかという疑問が起ると思います。お伺いしたいことは、これだけの強行軍を実行するときに、隊長もしくは総監は、参加せる隊員の精密なる健康診断をおやりになったかどうか、それを承わりたい。
  22. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これも本委員会で申し上げましたが、これらの隊員はいずれも数年前に入隊しておる者でございます。今回の行進競技に関しましては、昨年の十一月に全員の定期健康検査をやっております。その際は両名とも異常ございませんでした。その後今回の行進に至るまで三回も予行演習をやっておりますが、そのうち三等陸曹の千頭君につきましては、三回の予行演習に参加いたしまして無事に競技を終えております。岸上君につきましては、初めの二回は参加いたしておりませんで、三回目に参加いたしておりますが、その三回目におきましては、若干のキロ数ジープに乗って終っております。今回の行進の前には、さらに大隊長が健康の不良なる者に対しまして申し出を待ちまして、医官検査を受けさせまして、不適格者を除いております。さらに行進の開始に当っては、医官を連れまして問診及び指診をやっております。
  23. 辻政信

    辻委員 それでは伺いますが、現在自衛隊全体を通じまして、軍医定員は何パーセント充足されておりますか。
  24. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 手元に資料を持っておりませんので、正確なことは申し上げかねますが、陸海空を通じまして約千名であります。そのうち実員が三百二、三十名あります。
  25. 辻政信

    辻委員 三〇%の実員があって、七〇%が欠員になっておる。衛生関係で承わりたいのは、参加した第七連隊の第三大隊には、演習当時何名の軍医衛生兵がついていたか。
  26. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この演習につきましては統裁部といたしましては救護所を二カ所設けまして、そこにはそれぞれ医官一名と救護員二名が配属になっております。そのほかに参加いたしました三個大隊につきまして一個ずつの収容班をつけております。その収容班には医官一名、救護員数名が参加いたしております。
  27. 辻政信

    辻委員 昔の軍隊でありますと中隊に二人の衛生兵がおります。大隊に一人の軍医衛生下士官連隊には二人の軍医衛生下士官がおります。こういう演習をするときには、連隊大隊を全部かき集めてきて、少くとも一個大隊に二、三人の軍医をつけ、中隊には二名ないし五名の衛生兵をつけなければ実行部隊としてははなはだまずい。この二人がなくなったのは、行軍訓練が過重であったというより、発作的な病気とか何かがあったのじゃないか。従って応急処置をやれば助かったのじゃないか。軍医手不足とか衛生人員手不足のために、こういう結果が出たとお考えになりませんか。
  28. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいま御説明を落しましたけれども、各中隊には救護員が数名ずつ、これは普通の隊員でございますが、これを救護員と指定いたしまして、健康の管理について配慮するようにしております。  二人の死亡につきましては、非常に遺憾なことでありますが、その原因につきましては、必ずしも医官手不足によるものだというふうには断定をしておりません。
  29. 辻政信

    辻委員 私は四年前新町の特車大隊を見学に行ったことがあります。あのときに軍医がいないために四十度を越した患者が長い間放置されておった事実を見たことがある。現在の自衛隊最大欠点衛生部門の軽視である、定員が三〇%しか充足されておらない、とうとい子弟をあずかるあなた方中央部責任者として、だまってこれを見ておれるのか。私は四年前から衛生部門欠陥をこの委員会指摘しております。しかるにまだ防衛庁内局におきましては、衛生局というものが作られておらないのであります。世界中どこの軍隊をごらんになっても衛生局のない軍隊がありますか。単に隊員三名の衛生課だけで二十万の衛生の指導というものができるとお考えになるのか。何がゆえに三年前からやっておることを、今日までその欠陥を承知しておりながら充足するという努力をなさらなかったか。その点から申しますというと、第一線部隊責任があるのじゃない、この大きな中央部の画策に私は今度の事件の大責任があると思うのであります。これについて長官どうお考えになりますか。
  30. 小滝彬

    小滝国務大臣 私も衛生関係隊員が少いということを聞きまして、非常に遺憾に思っております。実際問題といたしましては、これは研究機関とか、施設なんかがまだ十分でないというようなことにも起因しておるでありましょうが、なかなか入ってくれない。そこで学費を給与して自衛隊の方で修業後働いてもらうというようなやり方もいたしておりますが、この点は非常に防衛庁としては悩みの種であるということを、私も率直に認めるものでございます。今私限りの思いつきを申し上げるべき場所ではございませんけれども、陸上自衛隊の方には衛生官がおりますが、ほかの方もだんだん充実して参りますと、三自衛隊一緒にした一つ衛生関係のものは作らなければならぬのじゃないか。それには今御指摘のように、衛生局というようなものは非常に必要だ。そうしてさらに突っ込んで考えますならば、同じ中央病院においても、カーキ色の者もネーヴィ・ブルーの者もあるというのでなしに、少くとも医官くらいはグリーン・ユニホームと申しますか、三自衛隊一緒になったものを着て、ほんとうに一致して衛生面医薬面を研究させるようにしたならば、限られた予算の中でもそれがうまくいきはせぬか。こういうような考え方も、私自身としては、まだ就任いたしまして一ヵ月にしかなりませんけれども、持っております。いろいろ事務当局とも協議しなければならないでしょうが、私の方針といたしましては、御指摘のように非常に衛生問題は大事である。かつまた今の民主主義部隊におきましては、みんなから支持してもらわなければならぬ。また志願制度でもあるし、いろいろな面から見て、この辺の充実はぜひやらなければならないと思いますので、この点につきましては、いずれ具体的な案をもちまして皆様にもお願いすると思いますが、政府部内においても、私は最善を尽しまして大蔵当局などとも折衝いたしたいという気持を持っておる次第であります。
  31. 辻政信

    辻委員 これは今始まったことではない。長官は御存じありませんが、四年前からわれわれはここで声を大にして衛生部面欠陥指摘しておる。にもかかわらず、内局にまだ衛生局さえ設けてない。一課である。教育はどうか。教育は陸海、航空自衛隊にそれぞれの教育機関充実しておるにかかわらず、必要のない教育局というものを作って、そこに軍隊訓練経験のない方を局長にしておる。人間の命を二十万預かっておる自衛隊が、その衛生の元締めである衛生局を作らないという理由はどこにあるか。これは今言ったことじゃないのです。四年間ここで叫んでおるが、やろうとしない。どうか長官は、今までのそういう間違った考えを一擲されまして、人の子供を預かっておるのだ、それを手不足のために病気にしたり、殺したら申しわけない。この死の行軍事件を契機にされてあなたの御在任中に、最大欠陥である衛生部面充実にまじめに取っ組んでいただきたい。そうしないと、演習命令を受けて職務に忠実にやった大隊長以下は全部重い処罰を受け、それを命令した総監が軽く、また根本をさかのぼれば、衛生関係欠陥を全体の上に持っておる中央部が涼しい顔をしておる。私から見れば逆であります。相済まぬことです。これは中央部欠点がそこにきているのです。上は責任を感じて下を軽くするというのが、軍隊統帥根本です。新聞に出た金山総監以下の処分を見て私は痛切に感じた。実行した大隊長だけを首にして、総監は一ヵ月十分の一の減俸です。しかもおもしろいのは、帯僚長の方が総監よりも処罰が重いのです。こういうことでいいのですか。軍の統帥はこれでやっていけるとあなたは確信されますか。兵隊がほんとうに身命を賭して働くのは、間違ったら上官が責任をとってくれるからやるのです。その実行部隊をこっぴどくやっつけておいて、最高責任者がきわめて形式的な軽い処罰で終っておる。最高責任者は私から見たらそこにおられる諸君です。実行部隊じゃない。衛生部面全体の計画を今日までなおざりにしておいた諸君の中にある。それをよく考えていただきたいのであります。
  32. 小滝彬

    小滝国務大臣 詳細は係の局長から説明さした方がいいかと思いますが、先ほど加藤局長も申しましたように、今回の事件に対しましては、特に衛生関係の者が手不足であったからこういうことになったのだというようには、私どもは判断いたしておらないのであります。しかしながら、辻さんがおっしゃいますように、衛生関係充実するということの必要は十分痛感いたしておるものでありますので、こういう事件もありました際でありますから、われわれ防衛庁の方では従来からこの衛生関係を強化するということを希望しておったのですが、ぜひその希望を達成するように皆様からも御支援をお願いいたしたいと考えておるのであります。  それから処罰について不公正であるということでありましたが、これにつきましては、詳細説明すればおわかり下さるだろうと思います。なるほどこれを立案いたしました者の責任は重大でありまするが、しかし立案者におきましては、従来もこれを実行しておったし、現地も監査いたしております。そうして雨が降ったら場合によってはやめてよろしいということも指令をしておる。そうして規律を一番大事にするのだ、速度が大事ではないのだということも指令いたしておるのであります。ところで、それではなぜこの幕僚長の方が重い処罰を受けたかと申しますると、幕僚長はこの相談に乗ったというだけでなしに、事実統裁官としてこれに加わったのであります。事故のために総監が来られないので、統裁官になったのは幕僚長であります。そこで私どもも、この冬やったというような点とかいろいろなことを考えまして、またこの計画についても必ずしも計画が万全であったとは考えないけれども、あの計画というものが総監の方で計画した通りに、そうして指示の通りに行われたら、あるいはそういう問題も起さなかっただろうと思います。昨年も起しております。ただ競争の形であって、また昨年と違いまして、選抜の大隊を出したのがおもしろくなかったのではないか、こういうような点を考えまして、もちろん計画者にも責任を負わせ、しかもこれは第三管区の総監から陸上幕僚監部にかわってくるというような処置もとっておるのであります。ところがこの幕僚長の方が重かったのは、今申しましたようこ、現場におって事実を見ておる。雨も降るし、寒くなるし、途中で行軍を一時休もうかとした際に、できる——その判断は、情勢としてできると考えたのでありましょう。必ずしも間違ったとは申しませんが、その際に、いろいろな部隊を統裁官として見て十分注意をしたら、あるいはもう少し円満にこの行進が実行できたのではないか。少くとも最初の部隊、その次の部隊は一人の犠牲者もなく行なっております。ことに最初の部隊は、速度は最後の問題を起しました部隊より二時間くらいおそいけれども、非常に規律正しく入ってきておる。そうして落後者も一人も出していない。その次の方は、少しスピードは早かったが、しかし部隊長が回ってみて、むしる勧めて、お前は悪そうだからというので、落後者は十人も出したけれども、とにかくきちんと目的地に到達いたしておるのであります。ただ問題は最後の部隊です。そこに相当実施面に無理があったのではないかということが感じられる。しかし全体の実施面につきまして、統裁官として幕僚長は加わっておったのですから、そういう意味におきましては、実施面においても責任を負うべき人ではなかろうか、こういうような判断をいたしたものであります。下の方に過酷だとおっしゃいますが、なるほど上と下では、下の方に処罰が重くなっておりまするけれども、この実況につきましては、社会党の議員の方からもいろいろ私どもに御指摘になりました。私ども、単に監察隊のみならず、警務隊も派遣いたしまして、詳細調査いたしました。気持といたしましては、あくまで激励の気持であったでありましょうが、いろいろその実況について調査したところによりますると、特に最後の大隊というものが、もしほんとう計画通りの気持でやったならば、こういうことにならないで済んだかもわからないものを、相当無理なことをやっておる。これは新聞なども書いておって、辻さんも御承知だろうと思います。そういう点から、特に明らかに刑法上にいう暴行罪に該当するとは私どもは考えませんけれども、とにかく激励の気持はよかったかもしれないが、相当行き過ぎた激励の方法を大隊長みずからとったということも、これは明らかであります。しかりとすれば、私どもの決定いたしました処罰が特に大隊長、また現場の最後の大隊の人に対して重かっとたいうようには考えない。最も公正を期してこれを処断いたしたつもりでございます。
  33. 辻政信

    辻委員 次に、米子の事件について申しますが、これはここでも質問がありましたが、C46の事件で十七名死んでおる。死人に口なしで、操縦者が悪い。誤まった。天候が悪かった。一切の責任を操縦者と天候に転嫁しておられるのではないか。私は、根本アメリカの廃品飛行機を使っておるという点にあると思います。米軍が使っていない飛行機である。アメリカでは旧式であるというので製造を中止しておる。それを、もらうものは何でもというこじき根性で、今までもらっておるというところに原因があるのではないか。もしそれが原因がない——この前の委員会では、あの飛行機は大丈夫だとおっしゃいましたが、それでは私はあなた方にお勧めします。長官以下内局諸君が旅行されるとき、視察されるときには、これからC46に乗っていただきたい。そうして国民の前に、この通りおれたちは乗っているんだ、大丈夫だというあかしを立ててもらいたい。その御決意があるかどうか。それができないならば、アメリカに強硬に要求して、ああいうものはやめたい、ごめんこうむるとなぜ言わぬか。決して民間航空機に乗らないで、C46で内局の人は飛び回っていただきたい。そうしないと、これを扱っておる兵隊の士気が保てません。それを特に申し上げておきます。
  34. 小滝彬

    小滝国務大臣 もちろん私どもはC46に乗れる機会さえあれば喜んで乗ります。私も国会のお許しさえあれば、今度ああいう非常に不幸な事件を起しました美保へも喜んで乗っていこうと思っております。私は今までも飛行機でアパリの水田の中に落ちたこともあります。私はそんなことを……。しかし、C46はアメリカが、なるほど今製造はしておりませんけれども、現に使っておるのであります。ヨーロッパでも使っております。私はここで長々とC46の性能を説明しようとは思いませんが、辻さんは御承知だろうと思う。みんな向うも使っておるのでありまして、内局の者も部隊訓練などに差しつかえない限り当然乗るべきである。時間も節約できるし——終戦直後のごときは、大阪からここに参りますときには、私どもは席のないあの輸送機にどれだけ乗ったかもしれない。私は自信を持ってこれからできるだけ大いに乗り歩いて皆さんに範を示そうと思っております。
  35. 辻政信

    辻委員 ぜひそうしてもらいたい。  次にお伺いしたいのは、操縦者の給与についてですが、現在F86、T33を操縦できる人員は一体何人ぐらいおりますか。
  36. 都村新次郎

    ○都村政府委員 今はっきりした数字を持っておらないのでございますが、私の記憶によりますれば、F86の操縦士は四十五名、それからT33が約百名と承知しております。
  37. 辻政信

    辻委員 これは私の調査によるとだいぶ違っておりますから、あとでお調べ下さった方がいいと思う。ここでは無理でしよう。  それではお伺いしますが、F86の飛行機を一人前に扱えるようにするには金がどのくらいかかりますか。
  38. 北島武雄

    ○北島政府委員 約二年間の訓練を経なければなりませんが、私どもで計算したところによると、約三千万円ということでございます。
  39. 辻政信

    辻委員 それは私の調べたものの半分ですね。一人大体五、六千万円かかっています。これは給与と油、油が大へんですが、給与にどれだけの特典をおつけになっておるか。一日百二十六円という食費を今度の予算でどのくらいお増しになったか。
  40. 北島武雄

    ○北島政府委員 航空機の搭乗士の給食経費は、現在基本食九十七円、加給食三十円で、御指摘のように百二十七円になっております。三十二年度におきましては、ジェット機操縦士につきましては八十円増額いたしまして、基本食と合せまして二百七円ということになっております。
  41. 辻政信

    辻委員 アメリカの兵隊は七百二十円です。アメリカの将校は千円です。もちろんぜいたくですけれども、これはぜいたくというよりも、あの疲労とカロリーの補充に要る費用なんです。これをやらぬと体力が持たないということを私自身も体験したのであります。  だいぶ話は古いが、ちょうど昨年の九月に私が築城を視察しましたときに、あの練習生が、一回飛ぶと、二回目に飛ぶときには非常に疲れるから甘いものがほしくなる、キャラメルも食いたくてしょうがないが、金がないから自腹を切って自分でキャラメルを買ってなめているという状態でありました。もう一つは、若い操縦学生け半年築城におらなければなりませんが、新婚の家庭は、その転住のための家族手当もなければ旅費もないので、遠いところから嫁さんをわざわざ連れていって、民家の六畳の部屋を借りて三千円の家賃を薄給の中から払っている。そうしてその奥さんは、空を飛ぶ飛行機を見て、朝から晩まで主人の生命の安全を祈っているというような状態が続いている。また、築城の居住設備を見ますと、これは御承知でしょうが、ひどいバラックでありまして、夏は四十三度になります。体力を休めるところが蒸しぶろのようでありまして扇風機一つ備えつけてない、また、食料の腐敗を防ぐための冷蔵庫一つない、こういうような悪条件で命がけの訓練ができるのか、今度の予算でそれをどう補正されたか、それを承わりたい。
  42. 北島武雄

    ○北島政府委員 ジェットの搭乗員の給食費につきましては、実は、基本食三十円の増加をとりあえず大蔵省に要求いたしました。その後データを整えまして、基本食から加給食まで合せまして約二百五十円近いところを要求したのであります。折衝の結果、最後に二百七円ということに落ちついたわけでありますが、これは現状から考えますとちょうど八十円の増加になっております。一応この程度で実行しましてその上の成績を見てさらに必要があれば来年度以降において増額を要求いたしたいと考えております。
  43. 辻政信

    辻委員 経理局長人事局長はT33に乗った体験がありますか。
  44. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 私は昨年十一月に乗ってみました。
  45. 北島武雄

    ○北島政府委員 私はまだ乗っておりません。
  46. 辻政信

    辻委員 アメリカのバートリッジ空軍司令官は自分でF86とT33を操縦しておりまして、空軍司令官みずから自由に飛んでおりますし、台湾の蒋介石の国防部長と参謀総長は、自分でF86を操縦して大陸の偵察をやっている。また源田空将は年は五十三だが、この老人が自分でF86を操縦して、夜間雨の中で強行着陸をしている。そういうような体験をもってあれが養われているということを経理局長一つよく考えまして、そうして、大蔵省の連中が文句を言うならばT33に乗せてみればよい、どのくらい疲れるかわかる。そういうふうにして、給与であの人たちが困らないように今後とも努力していただきたい。  次に、小さい問題ですが、隊長加俸が十二日以内で切られている。日給八百円という高級ニコヨン隊長は、実際は隊長が率先して毎日飛んでいる。隊長が乗るのをきらうと士気に影響するからである。ことに天候の悪いときはそうである。それを日額八百円増して、十二百以内でストップしているが、これは今度どういうふうに改められたか、それをお伺いしたい。
  47. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今の辻先生の御指摘の点は、私どもの方でも重要な問題として検討したのでございまして、今度は、沖乗配置にある者とそうでない者と区別いたしまして、搭乗配置にございません者でも、技量を保持するために月何回か乗らなければならない者は、航空手当を搭乗配置の者の六割支給するようにいたす予定でございます。
  48. 辻政信

    辻委員 私の貧弱な体験を御参考に申し上げますと、昨年九月七日十時三十五分にジョンソン基地を立ってT33に乗りまして、十一時五十五分には築城に着いております。一時間二十分です。それから三時間半視察しまして、十五時三十分に築城をたって十七時五十分にジョンソンに着いております。二時間二十分です。途中ちょうど台風の前線にぶつかりまして、悪い天候のために落下傘でおりる準備をしました。そうして家に帰ったときには、腹が減っておるにかかわらず、疲労しまして食欲は全然ありません。そうしてきたない話ですが、小便が赤くなっておる。そういう体験から見ましても、操縦者の最大の負担というものは、カロリーをどうして保持するかという点です。もう一つは、その飛行機に乗っておる三時間近くの間に耳に聞えるものは英語ばかりです。これは地上の米軍から気象通報があり、コースを報告しなければならぬ。雲にぶつかって所定のコースを下げるのも、あるいはちょっと退避するのにも、一々無線電話で米軍司令官の許可を受けなければ、どうにもあの飛行機が動けない。日本は独立したというが、空中は完全に米軍に占領されておる。地上は独立しておるかもしらぬが、空中は占領されておる。その青年たちが漏らしておることは、われわれは今訓練を受けておるが、努力の七割を英語に向けておる。もし死ぬようなことがあったら、技量でなくて英語で死ぬだろう。英語を知らぬために、どんなに優秀な者でも、英語ができない者は採用されない。一体どこの国防をやっておるのか。なぜその言葉を日本語に直すことができないか。空は完全に占領下にあって、これを修正しようという努力、またその訓練を英語でなしに日本語でやって、あの人たちの努力を軽くしてやる、これだけのことがアメリカに対してできないのですか。長官いかがでありますか。
  49. 小滝彬

    小滝国務大臣 私どもの方では、今レーダー・サイトを日本側に引き受けるようにしよう、これは結局技術上の訓練も要りますし、いろいろ経費の関係もありますが、とにかく特に技術者を訓練する必要がありますので、急にやるというような野心的な案を立てましても、実際上不可能でありますから、漸を追うてこれを全部日本側の方において管理するという体制を整えようと、目下努力をいたしておる次第でございます。そうなりますれば、言葉の点もそれに関連して考えられるだろうと思います。ただしかし辻さんも御承知のように、最近の航空は、民間航空などにいたしましても英語が使用されておるので、英語の信号もわかるように訓練しておくということは、あらゆる意味において意味のあることでありますので、絶対的に排除し得るようになるかどうか知りませんが、今御指摘のような点は十分考慮すべき問題だろうと思います。
  50. 辻政信

    辻委員 戦闘機に乗っておる操縦者が築城から松島に行く途中、天候が悪くてジョンソンにおりることがある。そのときには旅費は支給されないので、疲れた操縦者が自腹で旅館を探して、自分で生活しなければならぬようになっておると思うのですが、そういう訓練中に不時君者に対して旅費を支給するということができておるかどうか、経理局長に伺いたい。
  51. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま先生御指摘のような場合、あるいは従来予算上の制約から旅費を支給していないかと存じます。これは部内の旅費規程を変えますれば、私は可能だと存じます。
  52. 辻政信

    辻委員 即時できるからやってもらいたい。くたくたになった者が自分で宿を探して、二千円の宿賃を払わなければならぬ。訓練の不時着で、そういうばかげたことはない。やろうと思えばすぐできる。  次にお伺いすることは、滑走路の補修に今年度幾らお金を使われたか。
  53. 北島武雄

    ○北島政府委員 どちらの滑走路でございますか。
  54. 辻政信

    辻委員 今まで使っておる自衛隊の飛行場の滑走路です。
  55. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま滑走路だけ分離しては資料が出ておりませんが、三十二年度予算に計上されております航空基地関係の経費といたしまして、約六億円の歳出予算であります。
  56. 辻政信

    辻委員 飛行機が一機大体一億円するのですが、その一億円の飛行機の寿命は滑走路できまる。滑走路が非常に悪いと早くいたむことは御承知の通りであります。高いものを大事にしようと思ったら、ほかのところで金を使うよりも、滑走路をよく整備してやる。その例をとりますと、ゴムタイヤを米軍で塗二百回使っております。しかし日本では滑走路が悪いために早くいたんで、二十回で廃品になっている。二百回使えるものを二十回で廃品にしておる。また砂塵がエンジンに入って命数が著しく短縮しておる。こういう高度の機械を扱う軍備はどこに大きな欠点があるか、どこに手を入れればよくいくかということのポイントを押えられて——これは小滝長官に特にお願いしますが、滑走路をきれいに整備しますと、飛行機の寿命が二倍になり、タイヤの寿命が二十倍になる。六億円で滑走路を整備する方が、飛行機を六機買うよりはるかに安上りになる、そういうことを念頭に置いて、もし上足りなかったらそれをふやすように御考慮を願いたい。  次に、塔乗員が死んだらどうなるか、これを一つ加藤さんから伺いたい。
  57. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいまのところでは、国家公務員災害補償法によりまして給与をしておりまして、公務災害補償の遺族補償費といたしまして千日分、これはその航空手当等が支給されましたものが基準の日数に加算されました千日分であります。葬祭補償として六十日分、退職手当とし、てこれは勤続年数によってきまりますけれども、一年につきまして一ヵ月分の百分の二十というものが大多数の場合でございます。それから死亡賜金が百二十日分、共済組合の方の弔慰金が三十日分、ほかに恩給法によります遺族扶助料がございます。
  58. 辻政信

    辻委員 少尉はどのくらいになりますか。
  59. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 手元に持っております資料は一尉でございますが、二尉で一時支給金が百九万七千円となっております。恩給が九万九千円であります。
  60. 辻政信

    辻委員 昔は少尉の俸給が七十五円のときに、飛行機で落ちて死にますと一万円の特別の賜金があったわけです。それから私の知り得た世界の資料のうちで、これを一番重く見ておるのがソ連であります。共産主義のソ連におきましては、そのわれわれの戦争中の額よりもはるかに多い。詳細な数字は今持っておりませんが、決して金で人命をあがなうというわけではありませんが、その日その日が命がけの仕事であります。家族のことを考えられると、この死亡者に対する手当は、一般、公務員がその辺で自動車にひかれて死んだのと違うのです。よくお考えになって厚くしていただきたい、こう考えるのです。答弁はよろしゅうございます。  次は国防会議廣岡事務局長に一、二お伺いしたいと思いますが、国防会議法案は昨年の七月この委員会で大騒動した最も重要法案一つであります。あなたは全国から簡抜されてその要につかれたので、非常に大きな期待を持っておりますが、防衛担当参事官は今だれになっておりますか、それをお伺いしたい。
  61. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 現在国防会議の事務局におきましては、防衛担当参事官というような制度でございませんで、すべての職員が総合的に国防に関する諸施策を検討するという必要がございますので、一体となってこれが検討に当るというような組織に相なっております。特別に防衛担当の参事官を置くというようなことにはなっておらないのであります。
  62. 辻政信

    辻委員 参事官は三名でしたね。それのうち今何名おりますか。
  63. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 現在三名おります。
  64. 辻政信

    辻委員 欠員はどうしてふやさないのですか。
  65. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 この補充、選任につきましては、速急に選考するというように努力をいたして参ったのでございまするが、いろんな事情もございまして、今日までこれが決定を見る段階に至っておりません。しかし速急に選考いたしまして、これを決定いたしたいと考えております。
  66. 辻政信

    辻委員 私確かめたわけじゃありませんが、話によりますと、いわゆる防衛関係を担任する参事官は内局防衛一課長が兼任しておるようなことを聞いておりますが、それは間違いですか。
  67. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 そういうことはございません。
  68. 辻政信

    辻委員 あなたの任務は、単なる狭い視野の軍事知識じゃなしに、非常に広範な視野に立って、防衛庁その他で企画された案を検討しなくてはならぬ重要な立場にあります。そこで、今あなたが全体の国防計画、基本方針等をお考えになる上において、一番頭を悩ましておられる問題はなんですか。
  69. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 申し上げるまでもなく、国防計画、国防方針というものは、国の安全と独立をはかる上におきまして、きわめて重要な問題であります。しこうして国防の問題におきましても、ひとり純軍事的の問題のみならず、あらゆる視野から、広い角度からこれを総合的に検討していかなければならない問題でございますので、中心となりまする軍事的の諸問題につきましては、私どももあらゆる在野の方々の卓越せる識見を取り入れたいということで、今日に至りますまで五十数回にわたりまして、各方面の方々の御意見を拝聴して勉強いたして参りました。その他現在におきまする国際情勢、あるいは国際的な軍事の情勢であるとか、経済の問題でありますとか、新しい兵器の問題でありまするとか、いろいろ関連いたしまする事案が多いわけでありまするから、すべての点についてこれを健全、円滑に運営いたします上において、検討を加えて参らなければならぬという点で運営をいたしておる現状であります。
  70. 辻政信

    辻委員 非常に抽象的でどこが何かわかりませんが、具体的にお伺いいたします。  一番大事な問題は、私は燃料じゃないかと思うんです。自動車、飛行機を持っておっても、燃料がなかったらどうなるか。燃料問題について検討されたことはありますか。
  71. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 私どもの今までの研究、勉強におきましても、従来の防衛庁計画におきまして燃料の備蓄という点について相当今後考慮していかなくてはならぬ重要な問題が残されておるのじゃないかという結論を持っております。
  72. 辻政信

    辻委員 その結論は半年かからなくても出る結論なんです。私の言うのは、もっと具体的に、一体日本の燃料というものはどうなっているか。現在どのくらい要るのか、これについて検討されたかと言うのです。
  73. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 この問題につきましては、今日まで関係官庁、それから在野のその方面における見識ある方々の御意見を伺いまして、目下検討中でございます。
  74. 辻政信

    辻委員 それじゃこの前の戦争のときに、軍用と民間を合せてどのくらいの油を使って、どのくらいのストックを日本は持っておったのですか。
  75. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 そこまで現在のところ手元に持っておりません。
  76. 辻政信

    辻委員 燃料で負けたのです。それじゃ私は申しますが、あのころは軍用と民間を入れて年間の消費が五百万トンです。そのときにどのくらいストックを持っておったかというと、海軍が八百五十万トン、陸軍が百五十万トン、民間で五十万トン、合計千五十万トン、二年分のストックを日本全体として持っておったのです。今はどうかというと国内の消費は一年に一千万トンです。一千万トン消費をしなくてはならないのに、ストックはどのくらいあるか、たった六十万トンです。二週間油がこなかったら、その辺の自動車もあなた方の持っておる飛行機も全部ストップするのです。そういうような燃料国策一つとってみても、現在アメリカから無制限にもらった自動車、古ぼけた飛行機、ああいうのを飛ばして喜んでいるが、一たび中東で戦乱が起り、アメリカの石油の日本に対する供給がなくなったときには、あなた方は全部二週間で手をあげなければならぬ。燃料問題については、これはあなた一人を責めません。日本政府の大きな欠陥であると思います。われわれが生きるためには、食糧と燃料を確保する。その体制ができておらない。だから自衛隊員一万ふやす、そんなことはやめて、予算があるならストックを持ちなさい。少くとも自衛隊自身において半年分のストックを持つようにすることが、防衛計画根本でございます。あなた方が自動車や飛行機を幾ら持っておっても、役に立たないのだ。また防衛の見地から見ると、まさかのときには燃料が足らぬから、燃料の要らない編成装備を考えなさい。そこで私はたびたび自転車装備ということを言っている。そういうことをよく皆さんが考えられて、一つの燃料問題だけを深く掘り下げていっても、皆さんのやっておられる編成装備にどういう手心が要るんだ、どういう訓練が要るんだという着眼が出て参ります。そういう意味で広範な資料を目下検討中と言われるが、とにかくいつまで検討していてもだめだ、現実は現実だから、いかにしてその欠陥を補正していくかに頭を向けてもらいたい。  次に伺いたいことは、防衛生産の根本方針です。防衛生産もあなたの方で検討することになっている。これはどういうふうにお考えになっておりますか。
  77. 廣岡謙二

    廣岡政府委員 防衛生産につきましても、今後国防会議において審議される一つの大きい問題と考えているわけであります。現在まで防衛庁の主要装備につきましては、MDAP協定の形式によるものが多かったのでありますが、だんだんとわが国における技術の発達に伴いまして、またいろいろな情勢に伴いまして、今後国産の調達形式をとって参るというのは、自然の順序だと思います。従いましてこれらにつきましても、どういう種類をどういう規模でどういう方法でやっていくかという問題があるわけであります。国内生産と申しましても、旅算に乗るというようなことも考えてみなければならない問題でありますし、簡単にこういうものをやっていこうじゃないかというのできまるものでもありません。いろいろな条件と順序を勘案いたしまして、健全な国内生産の軌道に乗っけることが必要だと思うのであります。現在がはたしてその段階まできているかどうか、徐々にいっているという面もございますけれども、これらの点につきまして、やはり長期計画の一環といたしまして、防衛生産のあり方については十分検討していくべきであるというような考えを持っております。
  78. 辻政信

    辻委員 これもまた検討するということだけの結論しか出ていない。それでは具体的にさらに聞きますが、F86の組み立て工場、これに昨年どれくらいの金を突っ込んでおられるか。
  79. 増原惠吉

    ○増原政府委員 今明確な数字を記憶しておらぬのはまことに申しわけありませんが、昨年度は国庫債務負担行為を合せて約百億程度であります。
  80. 辻政信

    辻委員 百億の金をつぎ込んで旧式のF86の組み立て工場の設備をやって、そうしてようやく日本でそれが自給できるようになったときには、そこで作られた飛行機は役に立たないということになる。百億の金は何のためにどう生きておるか、こういう点になるのですが、これは一つのおもしろい側を今度の旅行で発見しましたが、トルコへ参りました。トルコでは西ドイツへ六億ドルの弾薬を輸出しておるの下す。あの工業の発達した西ドイツが、工業のおくれたトルコから六億ドルの弾薬類を買い入れておる。おかしいたと思ってドイツ人に聞いてみると、おもしろいことを答えました。おれの国は古い兵器や古い飛行機は作るのはよしておる、そういう工場を作ってみてもでき上ったときには役に立たないから、そういうむだな金を使わないで、そういうものは外国から安く買って間に合せておる、とうといドイツの税金は、将来できるであろう新しい科学兵器、新しい防衛に必要なものを研究し試作するために使っておる、こういうことを答えておられる。これは一つセンスの新しい小滝長官によくお考えを願いたい。せっかく百億つぎ込んで工場の設備一切を整えてF86ができ上るようになったときには、もうその飛行機が役に立たなくなるのです。そういうものは安いものを買ってきたらよろしい。アメリカからもらえるのだったらなおさらよろしい。要は人間さえ訓練しておけばいいのであって、防衛生産というものは、五、六年先のことを見通して、そのときに現われるのであろう科学兵器、そのときに必要な日本を守らなければならない技術部隊、そういうものの装備を研究し試作して、思い切ってそれに金を使われるということにしないと、税金が泣きます。これは別に答弁は求めませんが、小滝長官は新しいセンスで一つ今までの間違った考えを是正していただきたいということを特にお願いしておきます。  まだたくさん聞きたいことがありますが、ほかの方の質問もありますので、一応これで質問を打ち切っておきます。
  81. 相川勝六

    相川委員長 午後一時まで休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十八分開議
  82. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  昨十四日本委員会審査を付託されました、内閣提出にかかる一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、これより審査に入ります。  まず、政府より提案理由説明を求めます。松浦国務大臣。
  83. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びに内容の概略を御説明申し上げます。  この改正案は、昨年七月十六日付の人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般職国家公務員俸給制度改正を行い、新制度べの切りかえに当って必要な調整措置を講じようとするものであります。  すなわち、第一に、現行の五種類の俸給表を合理化して、職務の特性に応ずるように、行政職俸給表、税務職俸給表、公安職俸給表、海事職俸給表教育俸給表、研究職俸給表、医療職俸給表及び技能労務職俸給表の八種類十六表の俸給表を設けることといたしました。  第二に、現行の十五級の職務の級が職務の段階の実態に即応しないものがありますので、各俸給表ごとに、七等級を原則とする等級区分を設けることといたしました。  第三に、俸給表の各等級の俸給の幅を合理的なものとするとともに、等級ごとにこれに応ずる適正な昇給金額及び一年を標準とする昇給期間を定める等、昇給制度を改めることといたしました。  第四に、職員の俸給を現俸給額から新俸給額べ切りかえるに当っては、原則として現行の俸給表による一号上位の額を基礎として切りかえることとし、かつ切りかえ時期または切りかえ後の昇給期間を調整する等の措置を講ずることといたしました。なおこの切りかえ措置によって職員の俸給額は前年度に比し平均約六・二%の引き上げが行われる見込みであります。  この法律案は、以上の趣旨に基きまして、一般職職員給与に関する法律及びその他の関係法律改正を行うとともに、必要な経過措置を規定いたし、本年四月一日から施行しようとするものであります。  何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
  84. 相川勝六

    相川委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。本法律案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  この際総理大臣がお見えになるまでの間暫時休憩いたします。     午後一時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十二分開議
  85. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案、及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、午前に引き続き質疑を続行いたします。福井順一君。
  86. 福井順一

    ○福井(順)委員 きょう千葉県の九十九里豊海射撃場の問題について閣議があったそうですが、その内容を概略承わりますと、今まであの豊海の射撃場は、岡崎・ラスク協定で二十七万坪が使用されて、これはまだ行政協定では保留になっておる。それが今回は二十一万坪が正式に返還されて、そして行政協定で、四万坪の射撃場の敷地と二万坪のドロップ・ゾーン、照準機の差陸場、合計六万坪が返されることになったということを聞いておりますが、その通りでございましょうか。
  87. 小滝彬

    小滝国務大臣 その通りでございます。
  88. 福井順一

    ○福井(順)委員 私は先般、つい数日前のこの内閣委員会におきまして、ちょうど防衛庁長官が御出席がなかったので、調達庁長官に質問をしたのでありますが、それは例の赤トンボと称する無人標的機の着陸場、いわゆるドロップ・ゾーンに、四月の一日に七十五ミリ砲玉門が据え付けられて、そして突然射撃を開始した。日本側には何らの通告もなされていない。その後、県当局といたしましても、地元といたしましても、米軍に極力この高射砲の撤去方を直接交渉いたしましたけれども、とうとう撤去されないで連日射撃をいたしておる。私はこの照準機の着陸地帯が今までいろいろ紛争を起したことをよく承知いたしております。と申しますのは、かつて、この無人機が民家に突入いたしまして、二人の人命を失ったことがある。そういうことから、この無人標的機に対しては、現地の住民は大へん危惧の念を抱いておる。何がゆえにこういうように操縦を誤まって民家に突入するというような事故が起るかということを聞いてみましたが、このドロップ・ゾーンに漁船が係留いたしてあるので、どうも思うような着陸の操作ができない。そこでこういう事故が起るのだというよへな話でありましてその後いろいろ紛争はいたしましたけれども、この漁船を撤去して安全なドロップ・ゾーンを設定いたしたのであります。ところが、これが黙って協定を破って、米軍がまた五門も砲を据え付けて、ここで射撃するというようなことになれば、一体標的機はどこべ着陸をしたらいいのか、これはまた非常に危険ではないかということから、本委員会におきまして、私は調達庁長官に注意を喚起して、少くとも事人命に関する問題であるから、早急にこの五門の高射砲を撤去されたい。これは米軍に強硬に交渉をしていただきたいということを要望いたしたのであります。ところが、幸か不幸か私はこの委員会で、そういうことであれば、いつ、また赤トンボが事故を起して民家に突入するようなことがあるかもわからぬという注意をした翌々日に、不幸にもこの民家に墜落をいたしまして、二、三百枚のかわらが割れて、屋根がこわれただけだった。これは大へん不幸中の幸いだったのでありますが、現地の住民をまたまた非常にびっくりさせておる。こういうことでありますから、なぜ突然米軍がそういう行動に出るのか、何ら日本側との話し合いもなくて、協定に違反してそういうことをするのか、これを一つ長官にお伺いしたい。
  89. 小滝彬

    小滝国務大臣 私もこの経過はよく承知いたしております。このドロップ・ゾーンの方へ、日本語で何というのですか、ガン・ポジション——砲を備えつけた、これは今までの話し合いと違うじゃないかというので事務当局もやっておりましたが、私は長い間アメリカ人と電話でも何でもやり合う方でありますから、さっそくバーンズというあそこの参謀長に、これはどうもおかしい、こういうことをやられたら、あの土地では非常に協力を得て円満にものが進んでおるのにけしからぬというので、これに抗議を申しましたところが、向うの方も、この問題はごたついてきはしないかということを懸念したらしくて向うの参謀長もこの問題を知っておりましてしかしこれまでの接収地域というものは、そういう必ずしもはっきりしたドロップ・ゾーンに据えちゃならぬということはなかった、その後係官が来て自分らの方へ、七十五ミリ以下ならば差しつかえないだろうということを言ったから、こうなったので、今急にやめさせるわけにはいかぬということを、しきりに言い張りまして私の部屋でがみがみけんかをしておるのを、私の方の局長連中も聞いておりましたが、その後また私の方から、これはかりにその後に誤解があっても、こういうことをやるということは、今後の日米協力にも非常に悪いし、せっかく話し合いのできそうなものをぶちこわすものだというので、とにかく現地に人を派して一時でもとめなければいかぬということを私は固執いたしました。ところで、その後いろいろ調べてみますと、こちらから行った係官が通訳を使っての話であって、あるいはこっちの言い方が悪かったかもしれないし、向うの聞き方が悪かったかもしれませんが、そういう誤解を起させたことは事実のようであります。しかしながら、いずれにいたしましても、本日閣議でも決定いたしました書面にある通り、これを変える場合は、双方で協議をすることになっておる。何か係官が行って話したというようなことで、とにかくこういう問題を、ああそうかというので部隊に命令を出したというのは参謀長の方も手落ちじゃないかと言いましたところ、それではとにかく現地で調べて、せっかくそういう申し出ならば、なるべくその趣旨に沿うようにしようということでございましたが、いよいよきのうごろから、あれをいわゆるドロップ・ゾーンからはずしまして、当然置くべきいわゆるガン・ポジションの方に移したようでございます。現在においてもまだ正式の回答は参りませんが、ドロップ・ゾーンには一つも置いておらないという状況でありますので、多少は今までの誤解について言いのがれを課長の方で私の方へよこすかと存じますが、少くともそういうふうに実行しようという意思は持っているようであり、私の方の係官を先方の司令部べ派遣いたしました際にも、大体そういう意向を表明しておるようでございますから、この問題は一応解決すると思います。ただ御指摘のR・CATというあの赤トンボが先般落ちましたことは非常に遺憾でありますので、この点についてはもちろん行政協定の取りきめに従いまして賠償を要求するという考えで進んでおる次第でございます。
  90. 福井順一

    ○福井(順)委員 事情はよくわかりましたが、長官の方の御答弁を承わって、私はまことに不思議に思うのであります。その前に調達庁長官の御答弁を承わったときにも全く要領を得なかったのでありますけれども、私は大体のことを想像しておったのでありますが、米軍が、日本の係官が来て、七十五ミリ以下ならばここに砲を据えて撃ってもいいということを言ったから、砲を据えて撃つようになったんだといわれるのでありますけれども、米軍と交渉されるところの機関があるわけです。その正式機関を経て——たとえば日米合同委員会というような正式機関を通じてなされなければならないわけであります。それにもかかわらず、米軍が、一係官が来て七十五ミリ以下ならば据え付けてもいいと言ったから据え付けたということは、私はどうしても了解に苦しむところであります。  特に本問題はこれだけじゃない、かつてこの間も話をいたしましたが、本委員会から福岡の板付飛行場の調査に参りましたときに、司令官に会って話をいたしましたところが、滑走路の横のエプロン地帯だとか、あるいは滑走路のずっと前方の二キロくらい先に標識燈を作る地帯を接収しなければならぬというようなことを申し出た。そこで福岡の調達庁の係にそのことを話をいたしますと、全く寝耳に水であって、いまだかつてそういうことは米軍当局から聞いていないということであったのであります。そういうように米軍が何らの通告もなく、あるいはまたその計画について何ら日本側に相談することもなく、実際にはどしどし行動を行なっておるということが、私には全く不思議でならないのであります。そういう点につきましてなぜそうなるのか、これは一つ長官の御見解を承わりたいと思うのであります。
  91. 小滝彬

    小滝国務大臣 私も二、三年前まで外務政務次官をしておりましたときには、これを直接取り扱っておったものでありますが、今までに比べればよほど改善をされていると思うのであります。しかし改善されたからといって、さっき一例にあげられましたような事件が起るということは、はなはだ遺憾でありますので、もっとはっきりさせなければなりませんが、合同委員会は必ず定期的に二週間のうちに一度開いておりますし、さらに必要のあるつどこれを開くということになっております。今問題になっているような案件は、施設委員会でやるのでありますが、これも随時開いておるのであります。でありますから、今のような新しい地域を必要とする場合、あるいはこれまで取りきめましたものの修正を要する場合には、この必要な手続をとらなければならぬ。正式に言えばその方を担当している施設委員会の方へかけてやらなければならないわけでありますが、ただ非常に急を要する際、こちらから申し入れをして是正をさせるというようなときに、委員会を開くだけの余裕のない際にはもちろん交渉をしなければなりませんが、新しい取りきめというようなものは必ず委員会で正式に文書でやることは必要だろうと思います。ここに調達庁の係も来ておると思いますが、私はこの前文書を見ると、これは言葉の関係が、日本語を使わないので不利な点があるかもしれませんが、私が読んでも多少——実は率直にわれわれの非を認めますが、誤解を起すような文句もございました。しかし今後そういうことの失態のないよう、十分その点は指導いたしまして文書を作るときにも十分検討して出すということ。もう一つは、係官が行って情報の交換をするのはけっこうであるけれども、それが決定だというような誤解を起させるのはよくないことでありますから、この点については私の方から、今後はたれかが行って話し合いをしたということだけで、こちらの了解だというようにとってもらっては困るということをはっきり正式に申し入れをするつもりであります。なお施設委員会についても、その点ははっきりさせまして、参考の意見を出してお互いに話し合いをすることは相互の了解をつけるのに便利でありますが、今申しましたようなことで、それで向うに承知したというような口実を、今後は絶対に設けさせないような正式な申し入れをいたすことにしておるのでありまして、この点は今仰せになりました九十九里浜の問題で返事が来たらさっそくやろうという所存で進んでおるのであります。
  92. 福井順一

    ○福井(順)委員 私は翻訳の間違いや何かでそういうことになったのではないのではなかろうかと思っております。というのは、これは板付飛行場あるいは九十九里というようなところばかりじゃなく、まだほかにも二、三そういう事例があります。突然米軍がやってきてそこで射撃を開始したり何かやった。そこで調達庁では、現地の住民の声もありますので、大急ぎでそれを何とかしなければならないということでそこへかけつける、ちょうど現象を追うてもとを正さないというのが私は調達庁のやり方ではないかと思う。これは幾ら現象のみにとらわれて現象のみを追っかけても、次々にそういう事故が起るのでありますから、これは何にもならない。そこで考えますことは、どうも施設委員会というようなものが開かれておっても、米軍の方で本気で施設委員会のメンバーに対してそういう計画を通達しないのではないか、あるいはまた施設委員会に行っている日本人の担当官が——これははなはだ失礼でありますが、無能であるのかどうか、人の問題かあるいは機構にそういう欠陥があるのか、こう私には思われるわけであります。先般同僚に聞いてみますと、どうも旧軍人であった人がそういう委員になって米軍と折衝しておればそういうことはないはずだ。少くとも年の計画に対してはことごとくよく知っておる旧軍人が、そういう衝に当ればおそらく米軍が黙ってそういうことをするということはなかろう。軍事行動というものにはおのずから一つのレールがあって、大体軍のことについてよく知っておる人ならば、旧日本軍にしてもアメリカ軍にしても同じようなことであるから、旧軍人がなればおそらくいいのじゃないかというような御意見も伺ったのであります。そうしてみますと、その意見の通りだとすれば、これは明らかに人の問題である。どうもその人が無能でこういう結果になるということでありますが、ではもう一つ考えられることは何か。やはり日米合同委員会、施設委員会というようなものが、何かそこにもう一つ足りないものがあるのではなかろうか、機構上に不備な点があるのではなかろうかと思うのであります。米軍が何も言わないで射撃をし、砲を据えたというような問題は、見方によってはそれほど重大な問題ではないように思われるかもわかりませんけれども、このために親米感情を非常に阻害され、しかもまた無用の基地闘争というものが激化されておるというのが事実であります。こう考えて参りますと、米軍が何らの通知なしに行動するということは、非常に重大な問題にもなり、国民感情を刺激することこれよりはなはだしいものはない。でありますから、私は、これはぜひとも調達庁長官に御一考をわずらわしたいのであります。人の問題でありますか、あるいは機構上の不備なのか、これは考えられる範囲において御答弁をお願いしたいと思います。
  93. 小滝彬

    小滝国務大臣 調達庁長官が参っておりませんから、私からかわって御答弁いたします。もちろん限られた予算の中で仕事をしておりまするし、調達庁というとこるは、だんだん米軍の部隊も減るということになれば、先行きも必ずしも明るくないというような関係もありまするので、実は今働いておる人には非常に御無理を願っておるのであります。非常に多岐にわたった仕事をやらなければならない、そこで自然十分に手が回らぬという点もあるのでありましょう。しかし私は、これらの人が決して無能であるとは考えておりません。福島君が長官をしております際に、年々整理をいたしまして今残っておるのは、最も精鋭な連中でありまして、この連中は能力の点において最善を尽しておるものでありまするが、さっきから申しまするように、言葉の関係、あるいは軍事的な知識が十分でないという点で、あるいは欠けておるところがあるかもしれません。全く完全であるとは申しませんが、そういうような事情のもとに置かれて最善を尽しておるのであります。それから予告なしにやるとおっしゃいますが、原則としては全部一週間前に通告する、そうして安全措置を講ずるというようなことをやっておりまして、まあまあその間に誤解などがあり、また米軍側でも指令が十分徹底していないというようなことのために、御指摘のように起さないでもいい問題を起し、双方の協力関係を阻害するというような点もありまするから、十分調達庁の係官を督励いたしまして、そういうことのないようにいたしたいと思います。  なお、その機構内に旧軍人を入れるかどうかという点は、これは相当考慮を要する点でありますので、研究題目として、御指摘の点は私の考慮の中に入れておいて十分今後善処していきたい、こういう所存であります。
  94. 福井順一

    ○福井(順)委員 施設委員会の中にどういうメンバーがおられて、そうして米軍のそういう関係については、それは一週間前に情報の提供を受けるとか、あるいは相談をして日本側の了解を得なければやらぬとか、それは一体どういうことになっておるのですか。メンバーと機構を一つお話し願いたいと思います。
  95. 鈴木昇

    ○鈴木説明員 御質問のございました施設特別委員会は、合同委員会の下部機構になっておりますが、日本側の委員といたしましては、調達庁長官が主席となりまして、他の省の関係では外務省の欧米局長、それから大蔵省の主計局次長、大蔵省の管財局長、農林省農地局長、水産庁の漁政部長、運輸省の港湾局長、そのほかに若干の関係の課長が日本側の委員として出席をいたしております。また米側の方におきましては、極東軍総司令部から代表者が出ておりますほかに、陸軍、海軍、空軍を通じまして、それぞれ代表する係官が出席をいたしておりまして、施設委員会は、定例の会議といたしまして一週間おきに火曜日に実施をいたしております。
  96. 福井順一

    ○福井(順)委員 調達庁が防衛庁の中へ吸収されてしまったら、そういう問題が一つはなくなるのではないかと思います。労働省についておるというのが、これは非常に間違いのもとではないかと思うのでありまするが、それに対する御見解一つ承わりたいと思います。
  97. 小滝彬

    小滝国務大臣 調達庁を防衛庁の外局にしたいという案は、自由民主党の特別委員会でお考えになっておるようでございます。このことは、前内閣時代にも問題になったことがあるそうでございますが、さっき申しましたように、調達庁はもちろん米軍に提供する施設あるいは労務についての仕事をしておりますが、施設というような方面におきましては防衛庁と非常に関係のある仕事をしておるわけであります。また防衛庁においては建設本部というものがありまして、同じような仕事をして、一緒に働いておる、こういう見地から見まして、あるいは外局にすると申しますか、一緒にした方が便利である、また合理化し得る点もございますが、御指摘のような労務関係などにおいては、相当立場の違うものであって、しかも実際には同じような仕事をしておる人もあるという関係もございますので、その辺であまり問題を起さないように、いかにしたらうまく実施できるか、せっかくそういう御意見も出ておりますので、実際的な解決方法があるならばそういうふうにするのも一つの案かと考えまして、目下検討中であるという段階でございます。
  98. 福井順一

    ○福井(順)委員 総理が来られましたから、今度は一つ総理に御質問いたしたいと思います。  基地紛争が全国的に拡大いたしまして、日々反対闘争が激化いたじまして重大なる段階に立ち至ったのでありますが、砂川の紛争を契機といたしまして、表面的には一応反対闘争も小康を得た形であります。しかし底流におきましては、ますます深刻となって、事と次第とによっては第二、第三の砂川事件がいつ勃発しないとも限らないというような様相をはらんでおると思うのであります。基地紛争の要因はたくさんあると思うのでありますけれども、まず第一に、何といっても日米安全保障条約及び行政協定によるサンフランシスコ体制にあるということは、これは論を待たないところであります。安全保障条約を締結いたしましてすでに五年有半、その同国の内外におきまして大きく情勢は変化いたしておる。昨年はわが国も国連に加盟して、完全に国際社会に復帰し、懸案のソ連との国交回復もできたのでありますから、まさに安全保障条約、行政協定の改正をしなければならぬ時期だと思うのであります。また最近における沖縄の完全基地化、あるいはまた誘導兵器の供与、また航空機の長足の進歩、これは戦略戦術思想を一変するほどの長足の進歩をいたしたのでありますから、これは基地の意義というものも全く変ってしまった、こういうことを考え合せますと、何としても安全保障条約は改正をしなければならない時期がきたと思うのであります。国民の間にも、この条約改正の機運が、ようやくほうはいとして起りつつあるのであります。岸総理は六月以降にはアメリカに行かれましてこういう懸案について米国といろいろ折衝をされるそうであります。この条約改正というような問題は、将来の日本の運命を決するところの一大事業でありまするから、これは軽々にやれないということはもちろんでありまするけれども、日本の国家百年の大計を決するような大事業であればあるほど、私は近来にない名宰相だと期待する岸首相に、ぜひともこれはやってもらいたい、こう思うわけであります。アメリカヘこの六月以降に参られまして、もちろん米国と条約改正について折衝されることと思いますが、大体どういう点について折衝されるのか、それからまたそのお見通し、またその御決意について承わりたいと思うのであります。
  99. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は本国会におきまして、いろいろな機会にこの問題に対して私の所信を明らかにいたして参っておりますが、われわれとしては、こういう条約や協定のもとにおることは、国民の感情からいうと、一日も早く自分自身で祖国を防衛して、こういう事態をなくしたいという気持を持っておるということは当然であると思う。ただ現在の国際情勢、また日本防衛力の実態から見まして、日米共同防衛によって日本の安全を保障するということの根本は、まだ私は変えることのできない情勢にあると思います。しかし条約が制定された当時と今日の状況におきましては、今御意見にもありましたように、内外の諸情勢も相当変ってきております。またわれわれは今日までこれらの条約や協定を執行して参りまして、その実績から見まして、真に日米共同防衛によりまして日本の安全を保障し、日米間の将来の友好関係を永続的に強化するという見地から見まして、望ましくないような事態も現実に起っております。従って私としましては、今どこをどうするということを申し上げることは適当でないと思いますが、真剣にそういう見地に立って、これらの条約、協定を検討をいたす、そうして率直にわれわれの考えアメリカ側に述べ、またアメリカ側のこれに関する意見等を率直に交換して、そうして日本の安全保障を完全ならしめ、また日米間の関係を調整することが、現在最も必要である、こういう考えを持っております。ただ具体的に今どこをどうするということを申し上げることは、責任者として適当でない、こう思います。
  100. 福井順一

    ○福井(順)委員 御決意のほどを承わりまして、大へん私はけっこうだと思います。条約の改正ができない場合には、基地問題の根本的な解決は私はなかなかむずかしかろうと思うのでありまするけれども、いろいろ基地問題の闘争が激化したゆえんのものを考えてみますと、従来の政府のやり方に、大へん熱意を欠くものがあったのではないかと思われる節がたくさんあるのであります。それは基地問題といえばくさいものにふたをするというようなやり方であって、真正面からこの問題に堂々と取っ組んで解決をするというような、情熱と気魂に欠けておる。一例をあげますと、私は鳩山内閣成立直後に、日本で五カ所の飛行場が拡張されるという情報を得まして総理大臣室に鳩山首相をたずねて、この問題の話をいたしましたところが、自分は一向知らないという話であったので、そこで調達庁担当の西田労働大臣を総理大臣室に呼んで話を聞いてみますと、自分も全く知らないという話であったのでありまするけれども、事態はすでに刻々に進んでおって、それから間もなく調査が開始されたのであります。こういう政府の首脳部が投げやりな熱意のないことでは、基地問題は解決しないばかりか、ますます紛糾し激化するばかりであります。そこに私は原因があったと思うのであります。国民は一体何のための基地であるか、また飛行場などを何のために拡張するのかということを知らない。今、一番問題になっております、政府が従来計画をいたしておりますところの五カ所の飛行場の拡張、これは立川、横田、新潟、小牧、木更津でありますが、この飛行場を何のために拡張しなければならないかという理由さえ、国民は知らないのであります。はなはだおかしな話でありまするけれども、実際現実はそうであります。アメリカのために飛行場の拡張をするのか、それとも日本防衛のためにするのか、祖国防衛のためにはどうしてもこれはしなければならない拡張であるかということさえ、政府ははっきりしていない。国民は知らない。そこにこの基地紛争の大きな原因があるのであります。簡単にわかり切ったような話でありまするけれども、私はここで岸総理に、この五カ所の飛行場の拡張はアメリカのためにするのか、祖国防衛のためにするのかということをはっきり御答弁願いたいと思います。
  101. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、日米安全保障条約及び行政協定というものは、日本の安全を保障するために、日米共同して防衛するという体制になっておるわけであります。私は立川飛行場等の基地拡張の問題は、言うまでもなく日本の安全を保障するために、すなわち祖国を防衛して日本を安全に置くために必要なる設備の拡張でありまして、これがただ米軍が駐在しておるということが米軍それ自身の目的でやっておる、その米軍の使用に供するという目的だけでもってやられておるというふうに一般に考えられておるところに、非常な混乱が生じておる。福井君の言われるような点があると思います。従って政府としては、あくまでもこれらの基地の拡張という問題は日本防衛のために、防衛上必要なる基地の拡張であって、従って従来の方針通りこれをやっていく。やっていくにつきましては、今申しましたところの趣旨を十分徹底して、現地住民の方々の御協力を願うということに進んでいきたいと思います。
  102. 福井順一

    ○福井(順)委員 急迫不正の侵害に対して、これはどうしてもこういう飛行場の拡張が必要だということであれば、いわゆる祖国防衛のためには飛行場の拡張が必要だということであれば、日本国民たる者、一人として反対しなかったであろうと私は思う。当時の責任者が、今、岸総理が言われたように、はっきりした見解を持っておられたならば、基地の紛争はかくのごとく激化、あるいはまた深刻にならなかったであろうと思うのであります。  重ねてお伺いをいたしますことは、最近、従来政府計画してきた五飛行地、先ほど申し上げました立川、横田、新潟、小牧、木更津、この五飛行場につきまして、どうも岸内閣になってから、この拡張をやらないのではないかといううわさがしきりと飛んでおります。そして基地所在の町村におきましては、非常にこのために迷わされておるような状態にありまするが、重ねてもう一ぺんお伺いいたしますが、この五飛行場の拡張は、従来の計画通りに岸内閣においてもおやりになるのかならないのか、御答弁を願いたいと思います。
  103. 岸信介

    ○岸国務大臣 お答えをいたします。従来の方針通りこれを実行するつもりでおります。
  104. 福井順一

    ○福井(順)委員 総理は、従来の計画通りに実行をすると言っておられますが、従来の計画通りに実行するということは断じてできません。それは現実の問題としてできていない。土地の収用ができない。使用ができない。そこに大きな法の不備があるのであります。福岡では、昭和二十七年からこの土地収用をやっておりまするけれども、いまだに片がついていない。砂川のあの調布も一時中止の状態であります。これは土地の住民が協力しないのが理由でありますけれども、一つには法の不備があって、収用しようと思っても、これは収用できないのであります。そこで法律改正をしなければ、土地収用法か、あるいは行政協定による特別措置法というものを改正をしなければ、飛行場の拡張ということは、従来の計画通 にはできないのであります。今の法律から参りますと、これはいつまでたっても収用するということができない、使用することができない。少くとも半年くらいのうちには総理大臣が決裁するというような法律でも作らない限り、現在は、町村の首長が事務執行を怠ったり、あるいは反対をすればできない。そういうことから、現在は基地の拡張はできておらないと私は思うのでありまするが、今後岸総理は、この土地収用法か、あるいはまた行政協定の特別措置法を改正されても、基地の拡張をされるかどうか、一つ明確に御答弁を願いたい。
  105. 岸信介

    ○岸国務大臣 今私は、法律改正ということは具体的には考えておりませんが、何といっても一番必要なことは、関係住民の方々が、この趣旨をよく理解して協力するということであり、また同時に、知事や、あるいは当該市町村長等におきましても、十分にこの拡張の趣旨をこれに徹底せしめ、そしてその協力によってやるという方法を、私は、従来のやり方よりも一そう徹底してやって、そして実現をするという方向が、一番望ましいと思います。しかし、どうしてもそういうあらゆる方面の十分な協力を得て、そしてなお実現ができないという場合においては、あるいは法律の問題として考えなければならぬかもしれませんけれども、私は、あくまでも、今までの方針からいうならば、さっきから論議されておるような点が十分に理解され、そうして地元において協力するという態勢になっておらないと——これを作り上げるようにこの上とも努力していくことが第一段の務めであると、こう思っております。
  106. 福井順一

    ○福井(順)委員 大へんごりっぱなお考えで敬意を表する次第でありますが、現実の問題としては、なかなか法律改正をしなければ、基地の拡張はできないにもかかわらず、最後の最後まで岸総理が、地元の住民と話をして、納得ずくで拡張されようという大へんごりっぱな考えには、いたく敬意を表する次第であります。私は実は、その通りぜひやっていただきたい、こう思う次第であります。また基地問題に関連しまして、間接補償をどうするかというような問題があります。今回の国会におきましては、単独立法として、基地交付金の問題が出ると思うのでありますが、これは基地所在の市町村に、固定資産税相当額の交付金をやろうということでありまして、平年度十億、本年度が五億だそうでありますが、こういうことも、まことに私は基地問題解決のためには、非常にけっこうなことだと思う次第であります。私は、この基地交付金のために一年半、ほとんど寝食を忘れて運動しましたので、非常に自分でも喜んでおる次第でありますが、また内灘だとか、あるいは九十九里などにいたしましても、内灘あたりも、あの河北潟の埋め立ての問題があり、あるいはまた全部補償をもらって転業をして、出かせぎに行っておりましたので、新しく舟を買って漁をするには、また生業資金も要るというような問題も、内灘あたりにはあるようであります。九十九里あたりにいたしましても、作田川の河口に、待避を兼ねて漁港を作ろうというような計画もあるように承わっておりまするが、ぜひそういう間接補償を十分にやっていただきたい。要は、基地の拡張というような問題にいたしましても、現地の住民の協力のないところに完全な防衛はできないと思うのであります。もとより基地の拡張なども、法律ざたにしないで、そういう意味におきましても、ぜひとも話し合いで現地住民の納得のもとにやっていただきたい。そうしなければ、いつまでたっても基地問題というものは解決しない。私は、基地問題というものは、従来の内閣が非常に軽く扱っておられた。先ほど申し上げましたように、くさいものにはふたをしろ。基地問題といえば逃げていくというような、真正面から取り組まないで逃げていくというような方針でありましたけれども、岸内閣では、この方針を改められまして、真正面から対決して、現地の住民とよく相談をされて解決するというようにしていかれなければ、私は、大へんなことが起きてくると思います。基地問題というのは、これから先の一番大きな政治問題の一つだと思っておるわけであります。そういう意味において、ぜひとも岸総理におかれましては、そういう方針で基地問題に処していただきたいと思うのでありますが、御見解をいま一応承わりたいと思います。
  107. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、福井君が、従来基地問題の円満解決のために非常に努力されておることに敬意を表するものでありますが、御質問にもありましたように、この問題は、先ほど来の質疑でも明らかなように、どうしても日本防衛上やらなければならない。そうして従来の計画を、なるべくその計画に近い形においてこれを実現するというのが、政府方針でございます。従って、今お話がありますように、あらゆる面において十分これに関係される住民や、あるいは関係の公共団体の首脳部等と、十分な理解と協力によってこれを実現する。それには政府みずからがはっきりと、今お言のように、この問題解決のために全責任を持ってこれの解決に当るという態度でもって、関係者の納得を得るように、この上とも努力していきたいと、かように思っております。
  108. 福井順一

    ○福井(順)委員 それでは時間ですから、これで終ります。
  109. 相川勝六

    相川委員長 木原君。
  110. 木原津與志

    ○木原委員 ただいま基地問題について福井委員と総理との間に問答がございまして、聞いておって、私としては非常に遺憾に思う点がありますので、あらためて総理に御見解をお伺いしたいと思います。  御承知のように、行政協定の第二条、第三条の規定によりますと、アメリカが軍事上必要ならば、防衛上必要ならば、日本の国全土あるいはその周辺の全水域にわたってでも、軍事基地を日本に要求して作ることができるというような建前にすらなっておると私どもは考えておるのであります。そこへ持ってきて、先ほど福井委員の言われたように、軍事基地をどんどん拡張するについて妨げのないような法律を制定しろといわれるし、また総理がそれに沿うような御答弁をなすったというようなことであれば、行政協定そのものの解釈からすれば、日本国全土を軍事基地にしてさえかまわぬというような法律のもとに、あなた方のような態度で基地問題を処理されるということになれば、日本国民は不安でしょうがない。まごまごしておったら、全土にわたって基地を設定されるということになる。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)そんなことはないじゃない、法の規定を見てごらん。しかもこの基地決定については、日米合同委員会で協議してきめるのだということになっておりますが、日米合同委員会の決定についても、もし日米合同委員会の決定がアメリカの権利行使に不利益な場合においては、アメリカはこれについてアメリカの権利の制限だとして、国会の承認を受けなければならぬというような強いことを、アメリカの国務次官補ラスクはかつてちゃんと言ったことがあるのです。そうなると、日米合同委員会において協議して決定するといっても、その内容は、アメリカの力によって日本の主張というものはことごとく弱められてしまうし、しかも非常に力のないものになってくることは、現実の場合に当然なことだと思うのです。こういうような事態でございまするから、基地問題の重要性にかんがみまして、私はこの基地問題について、いま一回岸総理の御見解をただしたいと思います。
  111. 岸信介

    ○岸国務大臣 お答えをいたします。今、日本全土を向うの基地にすることもできるというふうにお話がありましたが、安全保障条約及び行政協定というものは、先ほど申し上げたように、日本の安全を保障するために、国際情勢及び日本防衛力の実情から見て、日米共同防衛体制をとって日本の安全保障をすることが望ましいと両国において考えてこれができておる。従いまして、今お話のようなことは常識上あり得ないことであります。なお、具体的の基地の問題については、合同委員会において協議するということになっておることも、今御指摘の通りであります。私は、先ほど福井君の質問にお答え申し上げたように、あくまでもこの基地問題というものは日本防衛のために必要なものであるという見地に立って、十分にそれを国民に了解、納得してもらうということが必要であり、またこれを計画通り実現するのに、今日までの経験で見ると、非常な困難があり、支障があるということは、よく承知しておるけれども、しからば、直ちに法律を制定してこの困難を除くことを考えるかという御質問に対して、私はあくまで今の趣旨を国民に十分に徹底するように、また納得してもらって、関係地の住民や、あるいは公共団体の首脳部に十分に了解してもらってその協力を得てこれを実現することに一そう努力したい。しかし、どうしてもできないという場合に初めて法律のことを考えるべきであって、今の現状においては、私は福井君の御提案になっているような法律改正ということは考えておらないことを申し上げたのでありまして、考えは今私が繰り返したことによって御了承願いたいと思います。
  112. 木原津與志

    ○木原委員 あなたが今御答弁になりましたように、私どももアメリカが何も日本国土の全部にわたって基地を設定するというようなばかげたことはしないことは、もうわかり切ったことなんです。基地を全部設定されたら、八千万の国民の行きどころがないのですから、そういうむちゃなことをするはずはない。しかし、行政協定の条文の文理解釈あるいは文理解釈の趣旨から見まして、もしアメリカが必要とする場合においては、全国土も軍事基地として要求できるというような建前になっておることを私どもは心配するわけなのであります。そこで、また先ほど福岡の基地の拡張の問題について福井君からお話がありましたが、福岡のあの板付の基地拡張は、あれは話し合い云々の問題ではないのです。あれは明らかに違法な拡張をやって取り上げたのだということを、裁判所自体が判決をしているのです。あの訴訟は私が弁護人として出まして、第一審において私どもが勝訴の判決を受けたのでありまして、松本治一郎所有の土地を勝手に法律の権限なくしてアメリカが使っておる。だから、アメリカはその土地を原告に返すべきだという判決さえ、福岡の地方裁判所がやっておる。それに対して国はもちろん控訴をいたしております。その結果は最高裁判所の判決を待たなければ何とも言えませんけれども、話し合いどころじゃない、法を不正に使用して拡張をやっておるというような現実を総理に知っていただきたいのです。ですから、話し合いまことにけっこうですけれども、法を無理に適用して基地拡張をやるというようなことは、国民感情を刺激するだけでなしに、これは権利の乱用として、私どもは許すことができないと思う。その点について総理の御所見を伺いたい。
  113. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は具体的な板付の問題につきましては、正確なことは承知いたしておりませんが、しかし、私が先ほど来申し上げていることは、あくまでも法は守るべきものであって、法の権利を乱用してこの問題を解決しようということではありませんで、あくまでも法律に準拠して正当に基地拡張の意義を国民に徹底せしめて、地元の関係各方面との間に理解と協力を得て、これを実現するということになお一そう力を尽したいというのが私の趣旨でありまして、決して法の乱用等によって理不尽にこれを実現しようと考えているものではありません。
  114. 木原津與志

    ○木原委員 アメリカに行って云々という質問がありましたから、それに関連していま一点だけお伺いいたします。先ほど申しましたように、あなたがアメリカにおいでになりました際に、日米合同委員の点について、ぜひあなたに主張していただきたいことがあるのです。今例にあげましたアメリカの国務次官補のラスクが、合同委員会の決定がアメリカの権利の行使を妨げるような事態があるときは、アメリカの主権に対する重大な制限として米議会の承認を得なければならないというような発言があったということを、私は聞いておりますが、私はおそらくこの一点だけで日本の自主性だとか独立性だとかいうものはないと思う。こんな勝手な言いぐさを受けて、あなた方が自主だ独立だと言われるのはナンセンスだと思うのです。こういうようなどうかつを受けるということになれば、なんぼ日米合同委員会を双方独立国対等の間で話し合いをしようとしても、できないと思うのです。現在の力の関係で、アメリカ日本が特にこういった条約の制限を受けておる力関係で、日米合同委員会の決定がアメリカの権利行使を妨げるような事態があったときは、アメリカの主権の制限になるのだということをきめつけられたのでは、合同委員会の協議そのものは、もう勝ったものと負けたもの、強いものと弱いものとの最初からの勝負にならぬ話し合いということになると思うのであります。でございますからその点については、アメリカにおいでになりましたら、日米合同委員会の協議事項についてぜひとも是正していただくように総理に要望したいと思います。
  115. 相川勝六

  116. 下川儀太郎

    ○下川委員 時間がありませんので、簡単に質問いたします。岸総理は六月アメリカにいらっしゃるそうでありまするが、この主たる目的は何でございましょうか。
  117. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、まだいつ訪米するかという時期につきましては明確に申し上げたことはございませんが、彼我の両国の便宜なときに行って、アメリカの主脳と会ってみたいという考えを述べておるりであります。その目的は、現在の国際情勢、また将来の国際情勢見通し、分析等について、日米両国の考え方が同じであるかどうか。また将来の協力関係を深めていく上においては、そういうことについての根本的な考え方が一致しておる必要があると思います。これについての意見を交換いたしまして、両国の間の将来の長い友好関係、協力関係を強化していく上から見ると、日米間において現在サンフランシスコの条約が締結されて以後、今日までのいろいろな内外の変化から見て両国の関係の間においては再調整すべきいろいろな問題があると思います。これらについて隔意のない意見を交換して将来の両国の関係を明朗に、かつ、日本からいえば自主的な立場において、両国の友好関係、協力関係を深めていくということの目的を達していきたい、かように考えております。
  118. 下川儀太郎

    ○下川委員 もちろん拝聴すべきこともあるでございましょうが、当然防衛問題が主となると思います。従いまして、こちら側からそういう意見を並べなくても、向う側から必ず日米の共同防衛の建前からいろんな条件が付されてくると思います。たとえば自衛隊の増強とか、原子兵器の持ち込み、そういう問題が必ず出てくると思う。そういう際に際して岸総理はどういう態度をとられるか。それを行く前に国民の前に十分意見の開陳をしてほしいと思います。
  119. 岸信介

    ○岸国務大臣 防衛問題につきましては、すでに国会でもはっきりいたしておりますように、日本の国力に応じてこれを漸増していく、しかもわれわれは量よりも質に重きを置いて増強をはかっていくということを申しておりますが、その方針は国民の前に私がはっきり約束していることであって、従ってこの方向にいくことは当然であります。また原爆、水爆等を日本に持ち込む問題や原子力部隊日本駐在につきましても、私は私の所信をはっきりといたしておりまして、この方針でこれを曲げるようなことは絶対にいたさないつもりでございます。
  120. 下川儀太郎

    ○下川委員 先般本委員会におきまして、わが党の議員から沖縄に対する問題を提示されたことがございます。その際岸総理大臣は、沖縄に関してはやむを得ないというようなことを言ったと思いますが、しかし沖縄もやはり日本の領土でございます。もちろん実際の権限は向うにあるといたしましても、やはり領土を保持し、あるいは同じ民族を安らかに置く立場に立って沖縄の立場、日本民族の立場に立って沖縄原子兵器の持ち込みその他は、強く要望してこれを拒否するという態度をとれないものでございましょうか。
  121. 岸信介

    ○岸国務大臣 御承知の通り、沖縄と日本の内地との関係は、今違った関係にあります。特に安全保障条約やあるいは行政協定等による権利義務というものは、これは内地に限られておりまして、沖縄の問題は別であります。従いまして沖縄については、根本的な問題、すなわち沖縄における施政権を日本に返還してもらう等のことについては、国会において決議がされております。国民の意思もそこにあると思います。そういう見地に立って沖縄の問題を根本的に処理する方向に進んでいかなければなりませんが、今の現実の事態としては、特にそこに駐在しているアメリカ軍隊の性格につきましても、これはおのずから差異があるのでありまして従いましてこれを同一にやることはできないと思います。私はその際にも申し上げたのでありますが、国民の気持として相談されるならば、同じわれわれとしての意思を表明することはできますけれども、しかし内地と同じように、われわれが承諾しなければそれが実現することのできないというような状態に沖縄がないことは、はなはだ遺憾でありますけれども、現実はそうなっているということを申し上げたのであります。
  122. 下川儀太郎

    ○下川委員 要するに要望してほしいということであります。  それから先般小滝長官防衛六カ年計画を目下作成中だと言われました。しかし代々の防衛庁長官は、みんなそんなことを言っている。すでに木村長官以来ぶつ通しいつも防衛庁長官防衛六カ年計画は作成中だと言われる。一体できているのかできていないのか、あるいはほんとうに作成中なのか、その点を一つこの際明らかにしてほしいと思います。
  123. 岸信介

    ○岸国務大臣 言うまでもなく長期防衛計画というものは、各種の点を網羅してその総合的結論から生れるものでありまして、今日までもこれが作成について防衛庁においても努力をいたしております。また国防会議ができまして、この計画は最後的には国防会議において決定されるものでありまして、国防会議関係におきましても、われわれはこれを研究し、さらにそれの作成については努力をいたしておるところでございます。
  124. 下川儀太郎

    ○下川委員 作成中であるならばいつごろできるのですか。大よその期日をお教え願いたいと思います。
  125. 岸信介

    ○岸国務大臣 はっきり時日を申し上げるわけにはいきませんけれども、今申し上げたような……。
  126. 下川儀太郎

    ○下川委員 およそでけっこうです。
  127. 岸信介

    ○岸国務大臣 私はこれがきまっておらないためにいろいろな点において支障を来たしておることも承知いたしておりますので、関係の人々にもなるべく早くということを申し上げまして督促いたしておりますけれども、大体の見込みはいつごろだということを今申し上げることは適当じゃないと思います。
  128. 下川儀太郎

    ○下川委員 先ほど岸総理は量より質の自衛隊を作るんだと言われましたが、毎回ごとに自衛隊を増強しておる。しかし何らの構想もなく計画性もない、まるで水ぶくれのような軍隊をこしらえておる。だから事故が多いし、あるいはまた死の行軍などをやっておるような結果になっているのだと思います。一体何を根拠に、何の理論付けでかような増強をするのか、それをお示し願いたいと思います。
  129. 岸信介

    ○岸国務大臣 これはもちろん防衛庁というものがございましていろいろな点から日本防衛力を国力と見合わして漸増していくという基礎的な案を立て、内閣において審議した上において、その年々の予算を決定して進んできておるのであります。ただ下川君の御質問のように、私どももいつまでもそういう状態に置くことは望ましい状態ではないのであります。やはりわれわれが一つ長期計画を持ってそれを年度別に実現していく姿にすることが望ましいと思って、さっき申し上げたようにせっかく研究いたしておるわけでございます。
  130. 下川儀太郎

    ○下川委員 研究中ならば私はあえて増強しなくてもいいと思う。やはり現状のままで研究していくのがいいと思いますが、毎回々々いつも増強しておる。しかもその費用は一切国民に負担をかけている。こうであってはならないと私は思います。従いまして十五国会以来何回も繰り返しておりますが、岸総理は一体防衛の限界ということをどういうように考えておりますか。要するに防衛力を漸増するという建前に立っての自衛隊の増強だと思いますが、一体何年に何万人にしたら防衛に役立つのか、あるいは完全な防衛ができるのか、あるいはまたどのくらい飛行機があったらいいのか、そういう限界が私はあると思う。毎回々々こういうように伸ばしていったら際限がないと思う。しかもむだな軍隊を作り、むだな兵器を作り、先ほど各委員からお話がありましたけれども、実際的に空砲にひとしい軍隊を作っている。むしろそういうことよりも軍隊なんかはない方がいいのじゃないか。一体防衛力の限界をどこに置くのか、その点を一つ明らかにしてほしいと思います。
  131. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほどから申し上げているように、結局それは日本長期防衛計画が今申したような手続なり研究の上に立てられまして、そこに初めて明確になる問題であって、しからばそれまでは何もせずにおったらいいじゃないかというお話でありますけれども、これは私どもがかねてとってきておる国力に応じた漸増方針というものが基礎をなしておるわけであります。それが一定の長期国防計画というものに具体化されますと、今あなたが御指摘になるように、陸上部隊は何万ならいいんだ、あるいは飛行機は何機ならいいんだ、軍艦といいますか、海上部隊はどれだけの数になり、船舶はどれだけのトン数ならいいかという問題が初めてきまるのでありまして、今明確にどれだけやればいいんだということを言い得ない状態にあるのであります。
  132. 下川儀太郎

    ○下川委員 だからこそ計画性のないところに軍隊を増強することはもってのほかだと思う。計画あって初めて軍隊の増強ができるであろうし、またいろいろな企画ができると思います。計画のないところに軍隊を増強することは不思議だと思う。それはいかがですか。
  133. 岸信介

    ○岸国務大臣 今申しましたように、結論的なはっきりした計画はまだ充実されておらないのであります。しかし根本方針として、われわれは国力に応じて最小限度の自衛力を漸増していく、そういう方針のもとにここ数年漸増して参っております。常に国力とにらみ合せ、国民生活の点も十分考えて最小限崖と思われるものをわれわれは増強してきているのが現状でございます。これを正確に密に批判しますならば、今下川君の言われたように、それじゃ不明確ではないかという御批判が出るのは、実は根本的の防衛に関する長期計画がないことからきているわけでありまして、これは今申しましたように、できるだけ早く作り上げるようにせっかく努力をいたしているのでございます。
  134. 下川儀太郎

    ○下川委員 それとともに防衛々々とおっしゃいますが、一体防衛の対象はどこに置くか、その点お答え願いたい。
  135. 岸信介

    ○岸国務大臣 ちょっと御質問の御趣旨が私にはっきりわからないのですが、防衛の対象ということを、かつて考えられておったように、仮想敵国というような意味でお話であるとするならば、そういうものは前提といたしておりません。
  136. 下川儀太郎

    ○下川委員 今日大体仮想敵国といわれるのは中ソでございましょうが、中ソとしても現在侵略の意図がない。万一侵略した場合には、第三次世界戦争あるいは原子力戦争になることは明らかであります。従って日本が平和的な国民として営みをしているときに、何も侵略する国はないと思いますが、そういうときにどうして防衛々々といってアメリカのセコハンの機械を乗り画したり、あるいはまた自衛隊を増強して国民の血税をしぼるのか。平和的な国民である限りは、実際的に見て侵略国は全然あり得ないはずです。あるとするならば、それはアメリカに対する侵略であって要するに日本アメリカの属国としての植民地的なにおいがするのであります。それに対する牽制的なひらめきはあるかもしれませんが、平和的な国民としての日本に対してのひらめきはあり得ないと考えるのであります。その際、どうしてこのように漸増々々といって自衛隊を増強するのか、防衛の対象がないときに何のために自衛隊を増強するのか、それが私にはわかりません。
  137. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは今の国際情勢なりあるいは諸外国の状態をお考えになるときわめて明白であると思うのであります。今日日本は特に平和を基礎の考えといたしておることは言うを待たないのでありますが、平和であり同時に他から不正な侵略を受けないという安心感を、国民が持っておる状態が作り上げられておらなければならぬことは、言うを待たないのであります。国民にそういう安心感を与える意味においてわれわれが祖国を防衛する、自分たちの力で不正、急迫の侵略に対しても、祖国を守り民族を守ることができるという安心感を持つことが、日本自身が平和に、また国際的に世界平和を日本が増進する上に寄与できる基礎であろうと思う。その状態を作り上げる上から申しますと、今全然無防備で、一切の防衛力を持たずに、そういう安心感が作り上げられるような国際的の関係になっておるかと申しますと、遺憾ながらそうではない。諸外国の実例等をごらん下さいましても、平和を愛好し、平和のために何しておるところの国も、やはり仮想敵国というようなものを持たなくても、自国を自分の力で防衛するに必要な防衛力というものは持ち、そこに自分の国の、また民族の安全が保障されているという安心感のもとに立っておるわけでありまして、こういう国際の現実から見ますと、われわれの力で、祖国がいかなる場合においても不正急迫の侵害を受けないという体制をとっておることは、私は絶対に必要である、かように考えております。
  138. 下川儀太郎

    ○下川委員 自国を防衛する力といっても、もうすでにソ連、中国に侵略の意図は絶対にあり得ないと思うのであります。一体どういう立場で自国を防衛する力というのですか、その点を伺いたい。
  139. 岸信介

    ○岸国務大臣 言うまでもなく、今世界の各国において、自国だけの力でもっていかなるものにも対抗できると思われるような国防力を持っておる国は、おそらくアメリカとソ連だけであろうと思う。その他の国々においては、従って集団安全保障を確保するという意味において、いろいろな地域的の集団安全保障の形態もございますし、あるいは共同防衛の形において安全を保障されておるということもありますし、私はやはりわが国の理想としては、国連に加盟をいたしまして国連による集団安全保障というものは世界的に強化されていく、これによって世界の平和が保たれ、またそれの一員としての集団安全保障が一番望ましいと思いますけれども、それは現実の問題から言うとまだそこまで行っていない。そこで日本は日米共同防衛体制において日本の安全を何しておる。しかしこの関係から、あるいは安保条約、行政協定等によるいろいろな事態がございますので、これをなるべく自国の力で一応安全の保障が確保されるように、また日米共同防衛体制におけるアメリカ軍の駐留等のことも撤退されるようにするのには、日本自身がある程度の防衛力を持つことは必要であり、その方向に向って努力しておるというのが現状であると思います。
  140. 下川儀太郎

    ○下川委員 防衛論議はこの程度にしまして、それでは渡米して防衛分担金の削減についての交渉をしますか。
  141. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、そういう具体的の問題を交渉するような意味で渡米をいたす意思はございません。と申しますのは、アメリカの方もそうでありましょうが、私自身としても訪米いたしましても、きわめて短時日ならざるを得ない。そしてもしもそういう問題の交渉をするならば、それぞれの機関がありまして交渉することもできるのであります。私はもう少し大局的な見地から、先ほど申しましたような何における、ほんとうの首脳部の間の隔意のない意見を交換して、そうして今後の日米関係の調整の基礎を作っていくということが必要である、こう思っております。
  142. 下川儀太郎

    ○下川委員 われわれは安保条約並びに行政協定の破棄が主張でございますが、自民党の内閣ではそうもできないでしょうが、少くとも現在日本の世論となっておる行政協定の改正とか、あるいはまたその他不祥事件が起ったとか、いろいろな問題もございますので、それに対処しての改訂ですか、そういう点を向うで強く主張していただくという点についてお伺いしたいと思います。
  143. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろん私は、私の外交の根本考えとしまして、日本の自主的な立場を強調して、独立、自主の立場からアメリカとすべての話し合いをするつもりでありますから、自然今のお話のような点にも触れることがあると思います。あくまでも日本の自主的な立場を明確にして話を進めていきたいと思います。
  144. 下川儀太郎

    ○下川委員 最後に一点だけ質問申し上げますが、今までのたび重なるアメリカ兵の暴行事件やいろいろ複雑きわまる事件がございます。それというのは、おそらく日本に対する蔑視感から生まれてきたと思いますが、それを裏返せば、従来のアメリカへの媚態外交の現われだというふうに私は考えるわけです。従いまして、交渉の担当者である岸総理は、日本人岸信介ここにありというきぜんたる態度をもって交渉に臨んでほしい、日本民族の名においてやっていただきたいと思いますが、その決意と勇気があるか、その点を一つ伺いたい。
  145. 岸信介

    ○岸国務大臣 今の下川君のお考えは私は全然同感でありまして、あくまでもそういう心がまえで処していきたいと思います。
  146. 相川勝六

    相川委員長 受田新吉君。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 私は総理が若さと健康に恵まれておることを誇りとしておられることについては、非常に敬意を表するのでございますが、総理の退席される時間が迫って参りましたけれども、週末旅行で適宜休養をせられることと信じまして、今しばらくの間親愛なる総理に対して質問をすることを許していただきたいと思います。  私は岸さんが前々から憲法改正を意図されておられることはよく承知しておったのでありますが、幸いにしてあなたは今の大宰相としての地位をお占めになられたこの機会に、かねての熱願を達成せんと心されておられるやに伺っておる。それはどういう形でかと申しますと、憲法調査会を大いにこれから生かしていきたい。天皇は国際的儀礼的な立場から元首としての地位を憲法上に置くべきであるというような所見を、今国会においてもお述べておられるようであります。私がそのあなたに対してお尋ね申し上げたいのは、現に日本国には厳たる現行憲法があることは大臣よく御承知の通りです。従ってこの憲法の存する限りにおいては、憲法を徹底的に尊重するという考えを総理はお持ちであるかどうか、これをお答え願いたいと思います。
  148. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは現行法を尊重することは当然でございます。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 しからばこの憲法に盛られた精神を国民によく普及徹底せしめるという任務も、憲法を尊重する立場から当然生まれてくると思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  150. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろん現行法の存する限り、これに対する国民の十分の理解と、またこれを尊重することを普及することは、当然であると思います。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 五月三日は憲法が制定されて満十年になります。しかしこの新憲法に対して、先般あなたの官房審議室が世論調査をやりましたところ、憲法の大まかな精神さえも理解しない者が約三分の一、それから憲法改正手続についてよく知らないのが三分の二という数字が出ておる。従って憲法はよく普及徹底していない。そこで五月三日には政府として、徹底的にこの憲法の精神を普及徹底せしめる記念式、あるいはいろいろな行事を行う御用意があるかどうか、お答え願いたい。
  152. 岸信介

    ○岸国務大臣 目下、そのことにつきましては考究中でございます。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 従来憲法記念日には政府みずからが予算を取ってこれが普及徹底に努めて参りました。しかるところ鳩山内閣以来は、五月三日に政府の行事らしいものを私は拝見いたしておりません。あなたはその点において、現行憲法の存する限りこれを徹底的に尊重し、これを普及徹底せしめると仰せられたのでございますが、この機会に政府として、国民こぞって祝う憲法記念日に当って、しかもそれが意義ある満十年記念ということになりますと、より一そう意義が深いと思うのでございますが、考究中でなくて、何かの形のものはやりたいという気持は総理としてはお持ちかどうかをお答え願いたいと思います。
  154. 岸信介

    ○岸国務大臣 今お答え申し上げたように、私自身もそのことについて考えておりますし、またそういうことの要望もありまして、政府としては、今考究中でございます。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 現行憲法は、その存する限りにおいてはそれを守り、普及徹底せしめるために目下行事を考究中であるということでありますから、考究のすみやかな実現をこいねがいます。  私はこの際総理にお尋ねを申し上げたいのは、天皇の憲法上の地位を、元首として国際儀礼の場などにおいて特にはっきりする必要があるので、そういう形におきたいというお気持、非常に天皇に対する敬意をお持ちでございますが、国会開会式のつど天皇のお言葉があるわけです。そのお言葉の中に、必ず憲法の規定をよく守りという言葉があることを総理御記憶でございましょう。
  156. 岸信介

    ○岸国務大臣 よく記憶いたしております。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 あなたはその点におきましては、天皇を国の元首とすることに憲法改正をするという、非常に天皇を大事にされる御精神におかれて、天皇のお言葉を忠実に行うのが国務大臣としての任務であり、もしそれにたがうような憲法改正で、現行憲法を粗末にするというようなことであるならば、不忠の臣であるということになると思うのでありますが、そこをよく考えられて、一つ五日三日には盛大なる記念式典をあげられて国民に憲法の精神を普及徹底せしめることに十分の努力をされることを重ねて御希望申し上げておきます。
  158. 岸信介

    ○岸国務大臣 私はあくまでも現行憲法を尊重することは、先ほど来その所信を明らかにしておりますが、しかしわれわれは民主主義の政治を行なっており、民主主義国であります。言論は自由であり、研究は自由であります。従ってこの憲法改正に関する論議につきましては、私がいかなる意見を持っておるかということも尊重されていいと思う。この通りのことを実現しなさいということを言うのではありません。国民多数が憲法の規定によっていろいろな論議を批判し、判断して、そうして考えるというのが民主政治のあり方であると私は思う。従って私がそういうことについて意見を申し上げておるということは、決して現行憲法を尊重する念において人後に落ちるという意味では絶対にないのでありますから、誤解のないようにお願いいたします。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 その点は了解をいたします。従って五月三日の記念式典は前古未曽有の大盛典をあげられることを大臣としては御計画に相なるように希望しておきます。  私はもう一つ憲法に関連する問題でお尋ね申し上げたいのです。法制局長官が御用意のためにおいでになっておられますが、現行憲法の第六十六条に国務大臣は文民であらねばならないという規定がその第二項にあげられているわけです。この規定は従来いろいろ論議されておったのでありますが、はしなくも石橋内閣の成立に当り、いやその以前の鳩山内閣のときにおきましても、かつての大帝国として世紀の立役者であられた野村先生が、防衛庁長官の話題にお上りになった。特に今度の石橋内閣のときには、今あなたのお隣におすわりになっておられる小瀧さんがおなりにならなければ、なられたであろうという立場に、野村先生が非常に大きなうわさに上られ、すでに決定的な空気にまで持ち込まれたことは、大臣よく御承知であろうと思うのであります。これはあなたにも直接響く問題でございますので、あなたが閣僚としておられるときにその問題が出ておったのでありますが、石橋内閣の文民という解釈だけははっきりしていただかなければならぬと思いますので、この際明瞭に総理から御答弁願いたいのです。  この憲法ができる当時の国会の論争を私いろいろと研究してみますと、当時の国務大臣金森先生が担当国務大臣として答弁された速記録及び質問者の国会におけるいろいろな意見交換等を通じてみられたものは、文民というものをわざわざこの憲法に書き立てた理由は、平和主義、民主主義を侵すおそれのある者を排除する規定であったということを、はっきりわれわれは了承せざるを得ないのでありますが、大臣、さよう心得てよろしゅうございますか。
  160. 岸信介

    ○岸国務大臣 憲法六十六条のいわゆる文民という規定の解釈につきましては、学者の間にも意見が一定をいたしておりませんし、また制定当時、いろいろの論議を見ましても、これはいろいろ意見のある規定であろうと思います。従来この点について国会において政府当局との間の質疑もしばしば行われております。あるいはこれをもってかつて職業軍人であった人は一切いかぬというような解釈をする人もあり、あるいはこれの原語である、翻訳の基礎になりましたシヴィリアンという言葉から、要するに現役軍人でない者は一切シヴィリアンだという解釈もありますし、私どもはやはり従来政府がとってきておりますように、一切のかつて職業軍人であった人を排除するという意味ではなくて、やはりこの憲法の中心精神である平和主義、民主主義というようなものに根拠を置いて日本の平和主義、民主主義というものを完成する上からいって、元軍人であって、そうして軍国主義、あるいは今の平和主義や民主主義にどうしても反するというふうに考えられる人を除くという趣旨に解釈するのが正しいのではないか、こういうふうに政府としては考えております。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと総理の政府を代表する御見解としては、元軍人であって、それがしかも軍国主義、極端な国家主義者である場合に排除する、こういうある程度の制約をされた結論が出ていると思うのでありますが、こう了承していいですか。
  162. 岸信介

    ○岸国務大臣 そういうふうに考えております。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 非常に明瞭になってきているようでございますが、元大将というようなものは、少くとも三軍を指揮された最高責任者であって、長期にわたる軍人経歴と根強い信念が入っている。ここには私が平素非常に信頼しております同僚の方々の中にも、元軍人の高級の方がおられます。私はこの方々はさようなことはないと信じておりますけれども、私はここではっきりしておかなければならぬですが、どの程度のものかの判断は非常にむずかしいことではございます。しかしその中にひそむ軍国主義、極端な国家主義というものを判定することが非常にむずかしいだけに、少くともそのおそれのある者は遠慮するというのが常識ではないかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  164. 岸信介

    ○岸国務大臣 今私が申し上げた標準を具体的にはめますと、なかなかこれは判定のむずかしい場合があろうと思います。ただかつて軍人の階級が大将であったからどうだ、将官はどうだ、佐官はどうだというふうに簡単に論ずることはできないと思います。これは私自身の一個の考えであります。政府を代表してという意味ではありませんが、一体民主政治、民主主義の政治においては、私がここで申し上げるまでもなく、主権は国民にあるわけであります。従って選挙を経て国民が審判して、これは日本民主主義政治を完成する上から望ましい人だとして、国会議員に選出されてこられるような人は、私は、今申したように、ただしその人の過去の経歴が大将であろうとも、あるいは中将であろうとも、その後におけるところのその人の行動なりあるいは実際の政治的信念というものを十分主権者たる国民が判断して、民主政治完成のために国会に送っているというような場合においては、この憲法の規定には大体抵触しないと見るのが適当じゃないか、こういうふうに思っております。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 国務大臣は過半数を国会議員からとるようになっております。それはあなたが任命される立場に立たれるわけですから、いつでもあなたの部下である大臣の首を切って、あなたの信ぜられる人をすげかえていいわけなんです。ところが国会に選び出された人は、一応軍国主義や極端な社会主義者でないという信頼を得たのだという、私は、やはりそういう限定をすることは、あなたにははなはだ危険な思想があると思う。(笑声)もともと、当時大河内輝耕氏は貴族院で、代表賛成演説をされたときに、私はこの法案を通すのに、元軍人ということはワクをはめない。少くとも国家主義者である、軍国主義者であるというものは、これは軍人であろうとなかろうと、戦争誘発の危険のある者は全部いけないのだという了解のもとに、この法案に賛成する、と言われたのであります。従って憲法草案に賛成されたのでございますが、そういうことになれば、岸先生の過去のことは私はもう申し上げたくございませんけれども、当時大河内氏が予定した中には、そういう大東亜戦争の指導者の要素が、ちょっぴりちょっぴり論議の中に出てきておるところを見ますと、岸先生もあぶない一人でいらっしゃる。(笑声)しかし私は、幸いきょうは謙虚な気持であなたが反省されて、祖国の再建に努力されるという熱情に御共鳴申し上げて、御健闘を祈っておる一人であります。従ってあなたは、どうか今仰せられた、国民が投票して選んだ国会議員はだれでも防衛長官にしてもいいのだという御判断は、なぜしからば「国務大臣は、文民でなければならない。」という明文を書いたかということから、私は一つの大きな疑義があると思うのです。従って大将とかそのほかの最高指揮官であった方々、りっぱな方がたくさんおられますが、そういう方々は、あるいはそういう軍国主義を鼓吹して、それに軍国主義的な要素の国民の分子が枝栗して選び出される場合もあります。元軍人の猛烈な、極端な軍国主義者だけの数でも、一人の参議院議員を選ぶのは優に可能であるのを、あなたは御承知でありましょうか。お答え願いたい。
  166. 岸信介

    ○岸国務大臣 今の現行憲法におきましては、大臣の任命は結局内閣総理大臣責任でありまして、従って先ほど私はただ私一個の見解を述べたのでありますが、政府見解としては、先ほど申したように、この現行憲法の根本精神である平和主義、また民主主義というものに反するような、三国主義の非常に濃厚な旧軍人は、この規定において排除すべきものであるということを申し上げたのでありまして、結局はある元軍人であった人を任命した場合における政治上の責任及び批判というものは、当然内閣総理大臣が受けなければならぬ何でありましょうけれども、私は今申したような精神、趣旨を貫く意味において、適当な人事をやっていくのがいいのだ、こういうふうに思っております。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 林先生の前の法制局長官であった佐藤達夫先生は、大将という地位にあった人は、これはもちろん文民であらねばならないという規定をわざわざ書いた明文の上からは、当然排除すべきであるという意見をもっておられるのでございまするが、いかがでございましょう。
  168. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の前任者であります佐藤達夫氏が国会でお述べになりましたことは、大体先ほど大臣からお述べになりましたような見解と同一でございます。つまりこれは旧職業軍人全部を排除する規定ではない。やはりその中で、過去の経歴等に徴して、この憲法の趣旨とするところに反するようなことが濃厚に認められる者、こういう人を排除する趣旨であろう、こういうことに抽象的に考えるべきものである、かように述べておるわけでございます。ただいま総理大臣がお述べになりましたことも、それと別に反することではないと私は思っております。ただ具体的な問題になりまして、その判断は結局これは政治的判断、政治的な批判にさらされる判断にあるのだと思うのであります。従いまして、機械的に、あるランクにある人をどうこうというのは、必ずしも適当ではないのじゃないか。やはりその方の全体の問題をとらえて——大将はいけないとか、少尉ならいいという問題ではないのではないかと、私はかように考えるのであります。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 いや、大将中将の問題ではない。とにかく野村さんという個人がもう問題になってきておる。また、いつ小瀧さんにやめていただいて、野村さんにやっていただかなければならぬ(笑声)というようなことを、岸さんがやられるかもしれぬという危険があるので、私は今申し上げておるわけです。岸さんのお答弁では、野村さんも可能であるという結論に達したと思うのでございます。野村さんの場合も、これは国民が選んだ代表であるからという意味で、これはりっぱな人であると思うと、総理が今答弁されたわけなんです。そこを私御指摘申し上げた。今の野村さんの場合も、総理よろしゅうございますね。将来問題が起ると思いますから……。
  170. 岸信介

    ○岸国務大臣 具体的に、私は今個人をあげて、これがいいか悪いかということを一々申し上げる気持はありません。(受田委員「国会議員です」と呼ぶ)国会議員云々と私が申し上げたのは、これは私の一個の意見でありまして、今の場合としては、政府の公式の意見としては、先ほど申し上げたところに尽きておるのでありますから、それで御了承願いたいと思います。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 これは総理、大事な問題ですから、この際、ロシヤ大使との会談はちょっと待ってもらうようにして……、この際もう一つだけ。総理大臣、今度はあなたが総理大臣の立場からの内閣法関係一つお尋ね申し上げなければならぬのでございますが、この内閣法という、内閣の構成に関する基本法は、これは特にあなたの権限に関する規定が出ておる次第であります。第九条に総理が事故があったり欠けたときにおける副総理の設定も書いてあるのであります。ところがこの法文は、きょうは法律的にお答え願いたいのでございまするが、はっきりと第九条には、内閣総理大臣に事故のあるとき、または欠けたときと、二つあげまして、ときは、あらかじめ指定する国務大臣がその職務を行うという規定があるわけです。あらかじめということになりますと、これはどうしても事前にあなたの職務代行者、臨時総理大臣となる人、副総理を置いておかなければならぬという、一つの、任意規定でなくて、強行規定であると私は解釈するのでございまするが、法文の解釈をいかがお取り扱いでございましょうか。
  172. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは私は、原則としてはやはりあらかじめ指定しておいて、そしてそういう不測の場合に処するというのが九条の精神であろうと思います。しかしいっそういう指定を行うかということは別に規定はないわけでありまして、幸いに今事故を生ずるような状況にございませんから、適当なときにはそれらの目的に従う、こう考えております。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 この規定の中で、総理大臣事故あるときにあらかじめというのは、それは適当なときでいいというけれども、総理大臣が欠けたときはあらかじめ指定する国務大臣が総理大臣の職務を行うとなると、欠けてしまったらあらかじめはなくなってしまうのです。欠けたときには、あらかじめ指定した国務大臣がいなければならないのですね。ところがこの法文を率直に解釈するならば、欠けたときに指定した人がいなければ、だれがあとの臨時総理になるかわからないことになるのです。こつ然と総理が去られたときに、(笑声)そういうことを考えたくないけれども、この法文で考えるときには、そういうことも考えなければならぬ。欠けた場合に、あらかじめ指定した国務大臣がいないということになると、法文無視、内閣法違反であると思うのです。その法文解釈について、一つ法制局長官からよく教えてあげていただきたい。
  174. 林修三

    ○林(修)政府委員 もちろんこの内閣法は、事故あるとき、あるいは欠けたときにあらかじめ指定された国務大臣があることを予定しておるわけでございまして、将来の例では、内閣成立の際にこういう指定が行われるのが例であったわけであります。しかしこれは必ずしもそのときにしなければならないというまでの拘束はないわけでありまして、適当な時期にされることをいけないとまで言っている規定ではないと思います。そういう事態に備えてあればいいものだ。今御質問の万一の場合にどうなるかという問題でございますが、その場合は、結局内閣法第九条は直接には規定しておりません。従いまして当然に欠けたときには、次の内閣総理大臣が国会において指名されるわけでございますが、それまでの暫定期間につきましては、やはりそこの法理といたしましては、内閣の残られた閣僚が協議してきめられた方がやる、かように考える以外にはないと思います。万一と仰せられますから、そういうことを想定するのがおかしいのでございますが、もしあるとすればそういうふうに考えるほかないと思います。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 それは大へんおかしいと思う。法制局長官としてははなはだ不謹慎な発言です。つまり万一の場合は考えたくないが、今ごろは万一の場合が起り得るのです。(笑声)石橋さんの御病気だって、ほんとうに突然でしょう、私は岸さんの御長命を祈っておる一人でありましても、生き身ですからいつどういうことが起るかわからない。そのときに、この法律には「予め指定する国務大臣」とはっきり書いてある。しかも置くことができるでなくして、あらかじめ指定した国務大臣が総理大臣の職務を行うと書いてある。そういうことがはっきりしておる。任意規定じゃないと私は解釈するのです。
  176. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは先ほどお答、えいたしました通りに、実は内閣法第九条は、当然今受田委員から仰せられたようなことを予定しております。従って当然にしかるべき時期にこの代理予定者と申しますか、これが指定せられておることが内閣法の予定しておるところだと思うわけでございます。そういう方が予定されておれば、万一のことが起っても当然スムーズにその方が臨時の総理大臣代理をされるわけでございます。しかし今おっしゃったように、万一それがない場合に起ったらどうなるかというお話でございますから、その場合にはどうにもしようがないということは、これはやはりおかしなことでございます。そういう場合がもし万一あるとすればという仮定の御質問でございますから、それに対しましてもし万一そういうことがあるとすれば、やはり残された閣僚が相談して、臨時にしばらくの間でも代行をするということよりほかあるまいということを申し上げたわけであります。
  177. 受田新吉

    ○受田委員 仮定ではありませんよ。事故があって欠けることは通常考えられる場合です。こつ然と去っていくことがあり得るのですから。この法律が「欠けたとき」というのは、万一という仮定じゃないのです。あり得ることをあげているのです。ここは法律はそういうことを想定してありません。はっきりと、「欠けたときは、その予め指定する国務大臣」と書いてある。欠けたときにあらかじめ指定する国務大臣がいなければ、臨時総理の職務を行う人がいないわけです。そのときにあなたがおっしゃるように、みんなが協議してだれが臨時総理になるかということを話し合いする、そういうめんどうなことが起る。そういうことは仮定でなくして現実にあり得る問題です。そうでしょう。そういうあり得る問題をあなたは仮定の問題として考えられていることは、私は非常に不届きだと思う。あなたは法制局長官として、この「欠けたときは、その予め」という明文を良心に従って答弁してもらいたい。
  178. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは先ほどからお答えしておるところでございまして、この規定はそういう方があらかじめ指定されていることを予定しているものだということを、先ほどからお答えしておるわけでございます。しかしこれは内閣成立の初めに必ずやらなければならないというほどのことではありません。従来からの例に徹しましても、しばらくの聞こういう方がいなかった時期は何回かあるわけでございます。従いましてそれをもってただちに違法なりという必要はない。しかし万一そういうことがない場合に起ったらどうなるかというお話でございますが、それについては先ほど申し上げたようなお答えしかできないわけであります。その場合にないからどうにもしようがないじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、しかしその場合にはどうにもしようがないということで済ましておるわけにはいかないわけでございますから、当然そのときの法理を考えなければならぬということを申し上げたわけであります。しかし前提といたしまして、こういう臨時代理者をいつまでも指定しておかないことはあまりよろしくないということについては、おっしゃる通りだと私は思います。
  179. 受田新吉

    ○受田委員 一国の総理大臣の法制的御用学者である林先生として、これははなはだ柄にもない御答弁です。私はこの法文はいいかげんに取り扱う規定じゃないと思います。きわめて明瞭に内閣法の第九条として、総理が欠けたときはあらかじめ指定する国務大臣がその職務を行うと明言してあるのです。任意規定じゃないと私は思う。従って欠けたときに指定した副総理がいないとしたならば、その次にみんなが協議して、だれが臨時総理代理になるか話し合いましょうというようなことでなくして欠けると同時に、直ちにあらかじめ指定された人が臨時総理代理でさっと職務を遂行されるというところに、内閣法の規定の精神があると私は思う。あなたはあとから残った人がみんなで相談して、だれが臨時代理になるか話し合いしてきめたらよかろうということをおっしゃっておる。仮定ではない、現実に起り得る大事な問題であるから、一つ法律を正直に解釈してもらいたい。
  180. 林修三

    ○林(修)政府委員 どうも先ほどから私が申し上げたことが御理解願えないように思うわけでございますが、もちろんあらかじめ指定する国務大臣がおれば、それは当然その方が内閣総理大臣臨時代理と申しますか、欠けたときには別の言葉を使った方が適当かもわかりませんが、そういう総理大臣の職務を代行する方になるわけでございます。これは別に何も不思議なことはないわけでありまして、その通りであります。しかし今の御質問は、もし万一なかった場合にはどうなるかという御質問でございますから、私は先ほどから申し上げておるようなお答えをしておるわけであります。
  181. 受田新吉

    ○受田委員 それ以前の問題です。欠けたときにちゃんとあらかじめ指定する国務大臣がいなければならぬと、この法律は規定しているというふうに私は解釈するのです。欠けたときにはあらかじめ指定する国務大臣がその職務を行うと書いてある。行うことができるじゃないのです。
  182. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点も先ほどからお答えしておる通りでございまして、内閣法は当然そういう方があることを予定しておるということは、先ほどからお答えした通りでございます。しかしそれを内閣成立の初めにしなければどうこうというほどの問題ではない、適当の時期に指定されておればいいものだ、かように私は先ほどからお答えしておるわけでございます。
  183. 相川勝六

    相川委員長 受田君、ちょっと御相談しますが、総理は国際関係でおいでにならなければなりませんから、本日はこの程度で一つ
  184. 受田新吉

    ○受田委員 それではこれはこの次にやることにして、問題を残しておきます。あなたは研究しておいて下さい。  そこで総理にお尋ね申し上げたいのですが、総理は国防会議の議長でもいらっしゃるのです。そうしてそれにもやはりこういう規定が出ておるのです。そういうことを考えねばならぬ悲惨なる場合が必ず出てくるようになっておると思うのですが、これは一つ総理も長官とよく御相談していただいて、明確なお答えを願いたい。  最後に一つ、あなたは行政部門の最高責任者ですが、国家行政組織法における総理府の外局に防衛庁もあれば自治庁もある、いろいろな役所があるわけです。その役所の最高責任者として一つお答えを願いたいことがあるのですが、総理府の外局である自治庁の自治庁長官は、国務大臣をもってあてることになっているということは、私は規定でよく承知しておりますが、自治庁長官室には大臣室の看板がかかっておる。自治庁の大臣をやっておるのは、行政各部門の担当国務大臣では私はないと思います。政政長官たる国務大臣ではない。総理府の外局の長官を兼ねておる国務大臣は、すなわち自分の担当行政部門のない国務大臣と私は解釈するがいかがでありましょう。
  185. 岸信介

    ○岸国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がわからないのですが……。
  186. 受田新吉

    ○受田委員 自治庁の長官は自治庁長官であって、大臣室という看板をかけるような立場にはない。自治庁長官は国務大臣が兼ねているのであって、自治庁長官を兼ねている国務大臣は、単なる国務大臣である。いわゆる無任所大臣としての国務大臣であると私は解釈するがいかがであるかということです。
  187. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点私からお答えした方がいいかと思いますので、私からお答えいたします。御承知の通りに、現在の憲法から申せば、内閣を構成する大臣は全部国務大臣ということになっております。内閣法も、そういう国務大臣でもって内閣が構成されておるわけであります。その国務大臣は、それぞれ実は行政事務を分担管理するいわゆる行政大臣の地位を持っておられるわけであります。この行政大臣、分担管理大臣と申しまするか、あるいは内閣法にいう主任大臣は、現行法のもとにおきましては、総理府の長としての内閣総理大臣及び各省の長としての各省大臣、これをもっていわゆる主任大臣としております。それ以外の国務大臣、つまり総理府の長あるいは各省の長でない国務大臣、これは広い意味においてはいわゆる無任所大臣といっていいものだと思いますが、しかしその中には、今仰せられたように、自治庁長官あるいは防衛庁長官あるいは北海道開発長官あるいは国家公安委員長、それぞれの職務にあてられた国務大臣があるわけです。こういうものをさらに無任所大臣からのけていけば、最後に残るものは何もポストを持たない国務大臣、これが狭義の無任所大臣だと思います。無住所国務大臣というものは、広い意味にも狭い意味にも使えると思います。そこで今自治庁長官のお話しがございましたが、自治庁長官は、これは御承知の通りに、自治庁設置法によりまして、国務大臣をもってあてるということにしております。従いまして自治庁長官は、もちろん国務大臣であられるわけであります。行政長官としては総理大臣のもとに外局の長官でございますが、国務大臣たる地位を持っておられることは間違いないわけでございます。それでその看板は私も見たことはございませんが、おそらく自治庁長官たる国務大臣という御趣旨までつづめて書いてあるのじゃないか、かように考えます。
  188. 受田新吉

    ○受田委員 国際儀礼を失礼してはいけませんのでこれで私は終りますが、そこで最後に一つお願いしておきたいことは、自治庁の長官である某大臣が、国務大臣という立場の方を重視して看板をかけるということは筋違いである。国務大臣なら総理官邸のどこかに国務大臣室を丘いて、各省長官でない国務大臣の看板をかけておけばいい。あそこまで看板をかける必要はない。そうすれば防衛庁長官のところにも防衛大臣室と書いておかなければならない。総理府の外局であなたの部下がでたらめをやっておる。大臣室と書いてあるものと、長官室と書いてあるものとまちまちなのですがそこを直される御用意はないか。あなたはその点を最高責任者として御答弁願いたい。
  189. 岸信介

    ○岸国務大臣 事情をよく調べて適当に処置いたします。
  190. 相川勝六

    相川委員長 眞崎委員。一分だけ許します。
  191. 眞崎勝次

    眞崎委員 時間がおありにならないときまことに恐縮ですが、先刻からの質疑応答の軍人恩給の問題は事重大と思いますので、一言申し上げますが、御答弁はこの席ではけっこうです。先ほどからの質疑応答を伺っていると、問題はこの戦争がどんな思想で起ったかというところに誤解がある。軍人はみんな軍国主義だ、こういう前提のもとに立っておる。それから軍人が戦争の下手人であったがために、この戦争を軍人が始めたものだと思い込まれておるところに非常な誤解がある。それで軍国主義という思想は、ややもすると国家社会主義と混同しやすい。当時は相当の者までも国家社会主義は日本の国体に合うと称しておりました。それに軍人の一部と官吏が、よく思想がわからぬためにこれにだまされて、ドイツ、イタリーの全体主義、ファッショと同盟して、しかもその国家社会主義はスターリンの一国共産主義と同じであるということに気がつかぬために、上手にロシヤに操縦されてこの戦争が起ったのであります。決して軍人全部が軍国主義でもなく、軍人だからして必ず右翼だときまったものではございません。軍人が戦争の下手人ではあるが、これを操縦したサル使いは、いわゆる国家社会主義をモットーとした、共産主義をモットーとしたところの連中である。それに上手につき回された。社会主義のためにこれは起った。その根本を研究していないために誤解がある。そして愛国心が起ってこないところがここにある。この点をよく御研究下されて、将来適当な時期にお答えを願いたいと存じます。
  192. 相川勝六

    相川委員長 次会は来たる十九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十七分散会