運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-07 第26回国会 衆議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月七日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 相川 勝六君    理事 大平 正芳君 理事 福井 順一君    理事 保科善四郎君 理事 山本 粂吉君    理事 山本 正一君 理事 受田 新吉君       赤澤 正道君    大坪 保雄君       大村 清一君    北 れい吉君       田中 龍夫君    田村  元君       辻  政信君    床次 徳二君       眞崎 勝次君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    木原津與志君       下川儀太郎君    中村 高一君       細田 綱吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小滝  彬君  出席政府委員         防衛政務次官  高橋  等君         防衛庁次長   増原 惠吉君         防衛庁参事官         (教育局長事務         取扱)     都村新次郎君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君         法務政務次官  松平 勇雄君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月六日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として矢  尾喜三郎君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員林唯義君、矢尾喜三郎君及び西村力弥君辞  任につき、その補欠として赤澤正道君、五島虎  雄君及び細田綱吉君が議長指名委員に選任  された。 同 日  委員赤澤正道君及び五島虎雄君辞任につき、  その補欠として林唯義君及び石橋政嗣君議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 三月六日  特別職職員の給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第八八号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第九一号) 同月五日  紀元節復活に関する請願外百十七件(纐纈彌三  君紹介)(第一六六七号)  同外五十一件(大高康紹介)(第一六六八  号)  同外四十五件(大坪保雄紹介)(第一六六九  号)  同外百九十二件(纐纈彌三君紹介)(第一七三  一号)  看護職に対する人事院勧告俸給表是正に関す  る請願赤松勇紹介)(第一六七〇号)  傷病恩給増額に関する請願加藤清二紹介)  (第一六七一号)  同(有田喜一紹介)(第一七三三号)  伊香郡中河内地区石炭手当等引上げに関する  請願外二十件(草野一郎平紹介)(第一六七  二号)  会津高田町の寒冷地手当引上げ請願平田ヒ  デ君紹介)(第一六七三号)  旧海軍特務士官及び准士官恩給是正に関する  請願松岡駒吉紹介)(第一六七四号)  帰還患者に対する恩給裁定促進に関する請願(  五十嵐吉藏紹介)(第一七〇八号)  恩給額調整に関する請願唐澤俊樹紹介)(  第一七三二号)  旧軍人関係恩給加算制復元に関する請願(赤  城宗徳紹介)(第一七三四号)  同外四件(奥村又十郎紹介)(第一七三五  号)  同(薄田美朝君紹介)(第一七三六号)  同外七件(田村元紹介)(第一七三七号)  同(千葉三郎紹介)(第一七三八号)  同(中馬辰猪紹介)(第一七三九号)  同(夏堀源三郎紹介)(第一七四〇号)  同外一件(橋本登美三郎紹介)(第一七四一  号)  同外一件(橋本龍伍紹介)(第一七四二号)  同(山口好一紹介)(第一七四三号)  彦根市の石炭手当等引上げに関する請願小林  郁君紹介)(第一七四四号)  滋賀県湖東地区石炭手当等引上げに関する請  願(小林郁紹介)(第一七四五号)  自動車庁設置に関する請願宇都宮徳馬君紹  介)(第一七九五号) 同月六日  美保基地拡張反対に関する請願足鹿覺君紹  介)(第一八〇一号)  帰還患者に対する恩給裁定促進に関する請願(  武藤運十郎紹介)(第一八一三号)  倉敷市の地域給引上げ請願星島二郎君外二  名紹介)(第一八二二号)  公務扶助料引上げに関する請願石坂繁紹介  )(第一八二三号)  元満州国等日本人公務員恩給法適用に関す  る請願大森玉木紹介)(第一八二四号)  傷病恩給受給者家族加給に関する請願大野  市郎紹介)(第一八二五号)  同(下平正一紹介)(第一八七八号)  傷病恩給増額に関する請願大野市郎紹介)  (第一八二六号)  同(中馬辰猪紹介)(第一八二七号)  同(小坂善太郎紹介)(第一八七一号)  同外一件(下平正一紹介)(第一八七二号)  同(高橋等紹介)(第一八七三号)  同(南好雄紹介)(第一八七四号)  旧軍人関係恩給加算制復元に関する請願(木  村文男紹介)(第一八二八号)  同外一件(高橋等紹介)(第一八二九号)  同外一件(橋本登美三郎紹介)(第一八三〇  号)  同外七件(木村俊夫紹介)(第一八六七号)  同(林讓治紹介)(第一八六九号)  同(楢橋渡紹介)(第一八七〇号)  明治、大正年代における殊勲者特権復活に関す  る請願芦田均紹介)(第一八七五号)  小牧飛行場拡張反対に関する請願春日一幸  君紹介)(第一八七六号)  恩給願調整に関する請願小坂善太郎紹介)  (第一八七七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第六六号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)     —————————————
  2. 相川勝六

    相川委員長 これより会議を開きます。  去る二日本委員会審査を付託されましたる内閣提出にかかる法務省設置法の一部を改正する法律案議題とし、これより審査に入ります。  まず政府より提案理由説明を求めます。松平政務次官
  3. 松平勇雄

    松平政府委員 法務省設置法の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説明します。  出入国管理行政は、申すまでもなく、わが国における外国人の公正な管理目的とするものでありまして、その基調は、あくまで円満な国際常識にのっとりつつ、国内治安その他の国の安全及び利益の面をも考慮し、円滑かつ強力にこれを実施することでなければならないと考えておりますが、最近における諸外国との国交回復国際連合加盟等によりわが国外国との往来はますますひんぱんとなり、外国人管理行政は今後ますますその複雑性困難性とを加えるものと思われます。  そこで、政府は、これらの新事態に対処するため、この際出入国管理行政の機構上の不備を改善し、一そう適切な業務運営を行い得るよう、その体制整備いたしたいと存じまして、本法律案を提出いたした次第であります。  以下本法案の内容について概要を御説明いたします。  第一は、広島入国管理事務所の新設であります、出入国管理行政地方機関の中枢をなす入国管理事務所は全国十二ヵ所に設けられておりますが、現在中国地方下関高松及び松江の三入国管理事務所管轄下に分れているばかりでなく、その中心地たる広島市には下関入国管理事務所港出張所が設けられているのみで独立の入国管理事務所がなく、中国地方における統一的な治安対策実施等について関係機関との連絡にも事を欠き、業務の遂行に種々不便を来たしているのであります。  そこで、この際、松江入国官理事務所を廃止して、新たに広島市に広島入国管理事務所を設置し、広島県、岡山県、鳥取県、島根県及び山口県の内岩国市をその管轄区域とするとともに、従前の高松入国管理事務所宇野港出張所並びに下関入国管理事務所広島港出張所、同尾道港出張所及び同岩国空港出張所広島入国管理事務所に所属を変更し、またこれに新たに松江出張所を配属し、もって中国地方における出入国管理行政の円滑な運営をはかろうとするものであります。  第二は、日ソ国交回復に伴う新事態に対処するため、新たに稚内港、根室港、酒田港及び敦賀港に、それぞれ入国管理事務所出張所を設け、一応臨機の必要に応ずる体制を整えるとともに、従来駐在官を派遣して出入国管理事務に当らしめておりました立川空港及び板付空港出張所を設け、これらの空港における出入国審査事務の充実を期したいと存ずるのであります。  第三は、神戸入国管理事務所管轄区域中、兵庫県伊丹市を特に大阪入国管理事務所管轄に変更することであります。  現在神戸入国管理事務所の管内にある伊丹空港は、客年九月日本航空株式会社沖繩定期航路が開始されて以来、同社航空機の発着がとみに増加し、乗員乗客出入国ないし寄港地上陸もこれに伴ってひんぱんになって来たのでありますが、地理的にもまた時間的にも大阪入国管理事務所をしてその審査に当らしめるのが便利でありますので、この際伊丹市を大阪入国管理事務所管轄区域といたしたいのであります。  以上が法務省設置法の一部を改正する法律案趣旨でございます。何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申します。
  4. 相川勝六

    相川委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。本法案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  5. 相川勝六

    相川委員長 次に防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一打議題とし質疑を続行いたします。茜ヶ久保重光君。
  6. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 小滝国務大臣が見えておりませんが、増原次長がお見えでありますので、去る四日に起りました美保飛行場における自衛隊航空機事故について若干お尋ねしたいと思います。  問題の核心に入る前に、C46が自衛隊アメリカから譲渡されました当時のいきさつを、簡単に増原次長から御説明願いたいと思います。
  7. 増原惠吉

    増原政府委員 C46は御承知のように輸送機でございます。これは昭和三十年に米国から相互援助協定に基きまして、いわゆるMDAPによりまして供与されれたものでございます。
  8. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 何機、どのような形で供与されたものか、そうしてこれに対して現在使用している機は幾機か、そういった点についての御説明を願います。
  9. 増原惠吉

    増原政府委員 MSA援助によりまして三十機を供与を受けておるわけでございますが、そのうち一機が先般の事故でなくなりましたわけでございます。現在まで持っておりました三十機は、現在稼働をしておりますものはうち十六機でございまして、そのほかで、二機は浜松の整備学校教材としてこれを使用しておる、残余のものは部隊において整備術中でございます。
  10. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 三十年に三十機供与された飛行機が、二年足らずの期間に稼働する飛行機が十六機と申しますと、あとの十四機は全然稼働してないのでございますが、アメリカから供与されるときに、三十機は三十機そのまま完全に使用される形で供与されたのか、あるいは供与されたがその後二年足らずの間にいわゆる全然使用不可能な状態になったのか、その間の事情をもう少し詳しく——アメリカが全然使用できないものを供与したのか、完全なる使用される形のままで供与されたのか、その点がわれわれとしては全然納得が参りません。従いまして三十機供与された当時のこの飛行機自体性能、あるは使用にたえるかたえないか、こういった具体的な御説明一つ御要望したいと思います。
  11. 増原惠吉

    増原政府委員 三十機もらいましたものは三十年一月でございまして、もらいます際は前年の二十九年に米国側オーバーホールをいたしまして飛行可能の状態でもらったわけでございます。自後飛んでおりますうちに小修理、大修理等もだんだん必要とするわけでございまして、そういう意味で今修理をいたしておりまするものは、十六機と二機を除いた残りの十二機が整備をいたしておるという段階でございます。
  12. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 もちろん飛行機が消耗するものであることは承知しておりますが、C46はアメリカにおいてすでにその製作会社がなくなっておる。従ってこれが修理等をするには、部品その他の関係でなかなか容易でないということも承知しておりますが、C46をアメリカ供与する場合には、すでにそういった情勢がわかっておったはずであります。従いましてこれが供与を受けましても、使用する過程において、今次長がおっしゃったように、二年足らずで半数近い飛行機使用できないような状態になっておるということは、この飛行機相当老齢に達し、ちょうどわれわれがボロ自動車を持って、修理に追われ、修理しながらも完全な運転ができないという状態が間々あるのでありますが、このC46についても同じようなことが言えるんじゃないか。すなわちアメリカ相当期間使って、飛行機として使う限界を越えた、あるては越える時期に一これを修理をいたしましてもざらに今度はその飛行機を作った会社がないということで、今後の修理にも大きな支障がくることはわかっております。そういった相当将来に対して不案を内包しながら受けた三十機のC46は、これを受けるときに防衛庁としては、そういったあらゆる点を総合的に御検討になって、これを供与を受けるならば、十二分にその性能を発揮して使用できるという自信があって受けたのか、あるいはただアメリカから供与するからこれを受け取るということでされたのか。この間増原次長は、一応事務的な面について、当然そういうことに関与されたはずであるが、供与されたときの、いわゆるそういった内面的な話し合いの実際をここに御発表願いたいと思います。
  13. 増原惠吉

    増原政府委員 C46は、お述べになりました通り、現在は製作いたしておらない種類でございます。当時もらいまするときも製造いたしておらない飛行機であるということはわかっておりました。従いまして修理補給等のための部品入手が、現在どんどん作っておる飛行機に比べて思うにまかせないという状況は、推定をいたしておったわけでございます。しかしながら、相当不自由はありましても、なお部品等入手可能であるという見通しを持ちまして供与を受けたわけでございます。その後部品入手いたしますのには、製造会社が新品の部品をどんどん作っておるようにはいかないことは予想した通りでございます。しかし相当不自由ではありまするが、部品の補充はその後可能でありまして、部品を補充してこの飛行機を飛ばし続けておるわけで、三十機のうちで、現在可動十六、そのうち一つがつぶれたわけでありますが、十六と教材二機のほかのものを整備しております。これは自衛隊における第一段階と第二段階整備をいたしておるわけであります。これが整備を終れば、また可動になる。可動をしておるものでまた修理を要するものは、部隊修理でまた動かなくなるという形でございまして、大体三十機中十六機の可動というのは、成績きわめて良好とは申し上げられませんけれども、通常の状態であるというふうに考えておるのでございます。
  14. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 私が申し上げたいのは、もちろん現在の日本自衛隊状態で、特に国内飛行機の生産ができないのは当然でありますが、といって今申しますように、幾らMSAによる、援助協定による供与といいながら、すでにその飛行機を作っていないということは、これはやはり今あなたもおっしゃったように、使用過程において修理する段階等においては、相当困難が予想される半面、たとい部品が間に合ってこれを修理したと仮定しましても、おそらく万全の、いかなる事態にも心配しないで済むというような完全な整備ができるとは考えられない。いわゆる聞に合せの補修に終ると思う。従いまして、もちろん自衛隊訓練等について、自衛隊自身がそういった古いものをもらってそれを訓練の途上使う、あるいは輸送機に使うという気持はわからぬではないけれども、今度の事故も私はそういった面に——これはあとでいろいろお伺いしますが、ただ単に突発的な事故というよりも、防衛庁自身のこういったことに対する基本的な態度と申しますか、特に対アメリカのそういうことが指摘できるのではないかという点がありますので、今伺ってるのですが、三十機の中で十六機が可動することは決して不良ではないとおっしゃるけれども、その十六機可動しているそれ自体も、私に言わせると、ほんとうに安全度が非常に強くて——これはもちろんどんなりっぱな飛行機でも不測の事故は起りますけれども、いわゆる不測ならざる事故の起る状態を内包しながら飛んでいる。これは昨年の八月でしたか、新聞記者諸君が乗った飛行機が非常な危機にさらされて、当時新聞相当騒いだのでありますが、こういった例等もございますし、私はこの飛行機入手の際における防衛庁アメリカとの状態に対する不安を持っておる。そういたしますと、この飛行機だけでなく、アメリカから供与されるあらゆる兵器というものが、国民相当大きな税金を使ってあなた方が日本防衛を担当するとおっしゃいながらも、実際においてはいざ事があった場合には、C46のように、あらゆるアメリカ側から一方的に供与される兵器というものでは、実際には使えぬのじゃないか。使えないで、ただ格好は兵隊の格好をしてるけれども、実際に役に立たぬというような国民的な不安があることもしいて否定できないと思う。そういったわけで、今度のC46の事故は、C46だけでなく、日本自衛隊それ自身が持ってる大きな対アメリカ関係から生まれる矛盾と申しますか、自己崩壊的な素因を持ってるんじゃないかということを非常に危惧するのであります。従いまして防衛庁当局は、今度の事故をただ単にC46が何かの原因であの海中に突っ込んだということだけでなく、私は防衛庁それ自体の中に大きな反省と大きなる自己批判をしながら考えていただかなければならぬと思う。私どもは自衛隊の廃止を主張してるものでありますが、現存してる自衛隊というものは国民の負担によって運営されておる。それがそういうことでは、これは国民にとってはまことに重大だと思う、従いまして、このC46の入手に関して今指摘したような点も感じますし、今あなたの御答弁によりましても、当時いま少し防衛庁当局は考えて、特に部員等入手も困難であることが予想され、あるいはその他の点もあるようでありますから、もう少し慎重に考えて、あるときにはほしいものであっても、それをアメリカ供与するということがありましても、日本防衛庁としては相当検討をして、ほしいけれどもあえて今言ったようなことを防止する意味からもこれを一応拒否することがあってもいいんじゃないか、私はこう思うのであります。従いまして、過去において日本アメリカからいろいろな武器供与されておりますが、その中でこのC46のように日本側が考えても何か不安なようなものも多々あるのじゃないかと思うそういった場合に、いわゆる武器供与に対して日本アメリカに対して拒否をした事実があるか。こういう兵器あるいはこういう武器供与するというのに対して、今までは全面的に、無条件日本側はこれを受け入れてきたのか。あるいは何かそういったことを予測して拒否した事実があるかどうか。この点に対する過去の例がありましたら、お示し願いたいと思います。
  15. 増原惠吉

    増原政府委員 御質問前段趣旨に対しまずお答えをしたいと思います。C46は、何というか不安な、そうして整備間に合せしかできないものを予想をしてもらったのではないか、そういうことはよくないという意味の御質問前段にございまするが、先ほど申しましたC46は現在製造をいたしておらない、従って部品入手等も現在どしどし作っておるものに比べれば不自由があり、相当の困難が予想されると申しましたことは、部品の入ってくるものは間に合せであるという意味では毛頭ございません。入りました部品は完全に整備をされまして、安全に飛べるということを確認しませんければ、その飛行機は飛ばせないのでございます。従いまして、部品入手が若干不自由であり、あるいは困難であるということの現われまする面は、整備機数が現在三十機のうちで十六機と、飛んではおりませんが現実に使っておる整備学校の二機と十八機でありまするが、これが部品入手がきわめて円滑でありまするならば、さらにあと三機なり四機なりというものが常時可動という形で動く、そういう意味に現われてくるものでございまして、動いておりまするもの自体が、間に合せ整備補修をして動かすということはいたしておらないわけでございます。C46はいわゆる型として古いものでありまするが、この形のものはC47というものがございます。われわれとしては、どちらかといえば、C46よりはC47をほしいというつもりはございましたが、米国側としてもいろいろな事情で、C47を供与することが困難でC46を供与したい、これは整備補給等をやりまして、安全反響においてC47に劣るものではないわけでございまして、十分に——大体三年に一度くらいで機体オーバーホール——アイランと称しておりますが、機体オーバーホールを行い、エンジンの方は大体米国基準では千二百時間でオーバーホールを行いますが、若干の安全度を見まして、七百時間でオーバーホールをするという基準によりまして今運航をいたしておるわけでございます。そうした機体及びエンジンオーバーホールを適当にいたしまするならば、安全皮において心配のあるものではないという技術的な見地におきまして、これを使用いたしておるのでありまして、機体形式が古いということは、スピードであるとか、上昇力であるとか、離着陸の距離とか、いろいろな面においてだんだん新しいものが優秀な性能を持つ、そういう優秀な性能のものがだんだんほしいわけではありまするが、安全度という点において心配のあるものではないということと、これがあるかないかということになりますと、これがあることが——航空自衛隊及び陸上自衛隊落下傘部隊訓練にも使うわけでありまするが、これはぜひともなくてはならないということでこの供与を受けたわけでありまして、向うがくれようというものを無条件で無批判に受けたわけではないのでございます。  後段の御質問は、そういうふうに何でもくれるというものをもらっておるのではないか、拒否したものがあるかという御質問であったわけであります。これは、一々私どういうものを拒否したということを列挙する資料は今打っておりませんが、向う供与する場合には、こういうものの供与を受ける以前に、こういう目的のものを供与されたいという要望をこちらが出すのでありますが、それに対してこういうものが供与可能であるという話が参りましたときには、その性能その他を考え合せまして、こちらは受け入れを決定するわけでございまして、向うが言ったものは何でも、夏も小袖でもらうわけではありません。航空機関係におきましても、わが方の訓練、将来の防衛ということを考え合せまして受け入れを決定するわけでございまして、航空機関係におきましても、これは海の関係と記憶しておりますが、やはり古い形式のものを、供与可能であるというふうに米国側から連絡がありましたものを、全体としての訓練及び将来の防衛を考え合せまして、種目が多種にわたることを避けるために、それはわが方で供与を適当と認めないということで受けなかった例はあるわけでございます。それから今記憶に浮かびますのは、船の関係供与可能を申し出られた、これは難船でございますが、やはりわが方の使用及び防衛目的をにらみまして適当でないものは供与受け入れをしなかったというものもあるわけでございます。陸の方面でも、現在受けております七十五ミリの榴弾砲等につきましては、向うの方でさらに多くの数を供与可能であると申して参りましたが、やはり使用関係、将来の防衛関係をにらんで七十五ミリについては現在以上に受け入れの必要がないということで受け入れをしなかった。そういう事例は陸海空にわたってあるわけでございます。防衛の問題及び種目が多種多様にわたって補修が困難であるということを避けるためには、適当なわが方における選択を実施しておる、こういう事情でございます。
  16. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 関連して。今C46の部品について盛んにお話がありましたが、昭和三十年度の決算の検査報告を見ますと、これには、この年度においてC46輸送機部品を、一千百四十万円よけいなものを買ってしまったということが書かれております。一体こういう使えないものを買い取ってしまうというやり方では、C46が修理その他が完全であったかどうかも疑いを持たざるを得ないわけですが、一体どういう事情で、どんな行き違いで一千百四十万円も使えない部品を買ったのか、まずこれから御説明いただきます。
  17. 増原惠吉

    増原政府委員 御指摘になりました会計検査院の批難事項のC46の部品の、これを買いますに至りましたいきさつは、当時C46をもらい受けまして、あまり時日のたっておらないときでございますが、わが方において、技術的にどういうものを部品として、カタログその他に基きまして拾い上げて注文をするかということについて、残念ながらまだ十分の知識、経験がなかったわけでございます。従いまして、顧問団及び極東空軍の方へC46の予想される必要な部品購入についての知識を求めたのでございます。その際に極東軍の方としては、この日本供与されました三十機は三十年の一月にもらいましたが、その前の年、CATと略称しておりますが、台湾にある航空整備会社——これは米国の方でこういうC46その他をオーバーホールをやらせておる会社でございますが、そこに米軍が依頼をし、検収をしてわが方へ供与をしてもらうわけでございますが、このCATへ問い合せて、そうして必要な修理部品のカタログを作ってもらうことが適当であろうという助言がありましたので、係官を台湾のCATにやりまして、そうして必要な整備部品、購入品目の表を作ってもらったわけでございます。これに応ずる技術カタログその他を当時わが方としてももらい受けたわけでありますが、これはだんだんと補備訂正、差しかえを要するような形のものでありますが、その補備訂正がまだ十分できておるというものでなく、その後これを完全に整備をしたわけでございますが、そういうものと若干照らし合せましたが、大体このCATの部品目録に従いまして購入をいたしました。そのために相当部分のものが同じC46でありましても、型式の違うもので部品の異なるものがあるわけでありますが、この異なる型式のC46のものが入っておる、一部は不工合のものがあるということになりましたので、会計検査院の指摘がありましたのに基きまして、相当部分のものは無償交換で現在わが方の使用しておるC46に適合するものに改めました、簡単な部品はわが方の補給所で手入れをしまして、使用可能にいたしました。結局においては自後の善後措置ではございますが、無償交換を行いましたものと手入れを行いまして措置したものによりまして、この部品類は全部適当にこれを使用することができる形に善後措置としてはいたしたわけでございますが、そうした十分の知識経験がなくて、CATの備品目録によったというふうなところはまことに遺憾でございまして、現在はそうした技術カタログその他を十分整備をいたしまして、わが方の知識経験で正確な目録を作り、これを購入することができる段階になりましたが、当時はそういう状況でありましたことに遺憾に存ずるわけでございます。
  18. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 お説を伺っておりますと、非常にもっともな感じがいたしますが、しかし一体自衛隊では自分の所有となる飛行機がC46のA型であるかD型であるかという区別さえ知らないのですか。それから伺いましょう。
  19. 増原惠吉

    増原政府委員 もとより承知しております。
  20. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もし知っているとすれば、CATのカタログの中にA型とD型の部品は区別をせられておったという話であります。自分の隊がD型しか持っていないということを知っているにもかかわらず、明らかにA型の部品であることを表示してあるものまで注文をする、その注文の仕方は、めんどうだから、何ぺ−ジから何ぺ−ジまで載っている部品全部、こういう注文の仕方をしたそうでありますが、一体こういう事実をあなたはどうお考えになりますか。注文係官は英語の読めない人ですか、これから伺いましょう。
  21. 増原惠吉

    増原政府委員 注文係はもちろん英語のわかる者でチェックさしたわけでありますが、当時としてはまだ知識経験が十分ありませんでしたので、大体においてCATの目録というものを信頼をして発注をしたところに遺憾の点があったわけでございます。
  22. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もし英語が少くとも中学卒業程度にお読めになるならば、A型の部品であるかD型の部品であるかわかるはずです。それた一箱に注文するということに、明らかに単なる不注意という程度を越した作為があると私たちは考えざるを得ないわけです。しかもそれはアメリカ軍から引き渡された技術命令書と先ほどおっしゃいましたが、テクニカル・オーダーによればもっと明確にわかるはずであります。補備訂正を必要としたというお話でありますが、しかしその部分についてどういう補備訂正が必要であったかをそれじゃお示しをいただきましょう。
  23. 増原惠吉

    増原政府委員 補備訂正というのは差しかえの意味でございます。カタログの差しかえを意味するものでございます。細部について私的確に御説明のできない点のあるのはまことに申しわけございませんが、このテクニカル・オーダーその他によってしさいに照合点検しますならば、今飛鳥田委員の仰せの通り誤謬を発見できたわけであります。それだけの経験なり時間なりというものを当時としては十分に打ち合せず、またさかなかったというところに遺憾の点があるわけでございます。
  24. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 十分に照らし合せてみればわかったはずだと今あなたもおっしゃるわけです。これは自分の財布の中からお金を出して物を買うわけでありません。国民の税金の中から何億というお金を出して貰うわけであります。経験が足りなかった、十分に検査しなかったということで済むことでしょうか。そう自分の小づかい銭を使うように心安くお話をなさらないでいただきたい。まず第一に、このCATに注文をなさるときに当初は第一物産、伊藤忠、三菱、米井、この四社に契約しようとなさったそうであります。ところが三菱は親切にもCATからのカタログを見まして、C46D型には不適当であるということを発見して、調達本部長にその旨を添書してこの契約を辞退したという事実があるはずです。注文する前に、もう注文しようとした商社の方が、これはもうD型には不適当ですよ、A型の部品ですよ、だからお買いになるのはおやめになったらどうですかと注意して、私はそんな非良心的な注文はいたしませんと断わって引っ込んだ、こういう話さえ私たちは聞いておるわけです。そういう注意をちゃんと調達本部長はお聞きになりながら、押し切ってD型しか持っていないのにA型の部品を御注文になった、これは何か涜職があるのではありませんか。
  25. 増原惠吉

    増原政府委員 これは全部A型であってあれしたわけでなく、一部そういうA型のものがあったということでございます。そうした三菱の方からの、このカタログの中に一部A型のものがあるという申し入れがあったことは、私ども事後承知をしたわけであります。当時は、先ほど申し上げましたが、その方面の係官の知識が十分でなくて、わが方の飛行機オーバーホールをしてくれたCATに行って目録をもらった、そしてそれを相当信頼したというところに遺憾の点が出たもとがあるということでございます。
  26. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 その経験が不足で、知識が不十分であったということだけならわかります。まだまだ幾らかわかります。国民のお金を経験不足知識不足で乱費されてはたまらぬのですが、しかしそれでもまだまだわかります。だが、経験が足りない、知識が足りない、わからないものを現に三菱から教えてもらっておる。あなたは上官として、そういう忠告があったことを事後に承知したとおっしゃる。なるほどあなたは事後に承知なすったかもしれません。しかし調達本部長は少くとも注文を発する前にそのことを知っているはずです。そういう忠告を受ければ、私たちでももう一ぺん調べ直してみます。ところがそういう忠告を顧みずに、強引に、A型の使えない部品を組んだものを、何ページから何ページまでというような注文の仕方をするということは、これは常識では解釈できないわけです。精神病院か何かで行われることならばわかります。しかし常識を持った者として、増原さん自身がそういう事実を今からお考えになって了承できますか。もしそうだとすれば、少くともそこに何か不正があると考えざるを得ないでありましょう。この点について十分お調べですか。新聞等によりますと、訓告、戒告を受けたということでありますが、一千百四十万もむだづかいをしておいて、戒告程度でいいのでしょうか。国民の疑問だと私は思います。その点について不正があったかなかったか、お調べになったかどうか、そしてまたこのような重大な事態について戒告程度でよろしいかどうか、一つ十分お聞かせいただきたいと思います。
  27. 増原惠吉

    増原政府委員 C46の購入につきましては、先ほど若干申し述べた通り、無償交換を行わせるのと、簡単なものはわが方で手直しをいたしましてこれを使用いたしましたので、そういう意味では事後の措置ではありますが、国損をかけることはなくて済む措置が幸いに事後とれたわけでございます。この問題について、責任者その他についてよく調査をいたしました上で、今お述べになりましたように、処分としては戒告、訓告等の措置をいたしたわけでございます。
  28. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 防衛庁のいろいろな予算の執行の状態を見ていきますと、よその官庁とだいぶ違っているように思います。そこで、たとえば三十一年度の予算執行について、今問題になっております器材費あるいは施設整備費というようなものをどの程度に消化なすっていらっしゃるのか、伺いたいと思います。三十一年度の中間の御報告でけっこうです。
  29. 北島武雄

    ○北島政府委員 昭和三十一年度の予算執行状況につきまして、一応御説明申し上げますと、昭和三十一年度における成立予算額は千二億円でございまして、これに前年度からの繰越額二百二十八億円を加えました額がいわゆる予算現額となりまして、予算執行のもととなる金額でございます。この金額が約千二百三十億円であります。このうち一月末日までに支出負担行為いたしました金額は八百五十六億円でありまして、予算現額に対しまして支出負担行為金額の割合は六九・六%ということに相なっております。また一月末日までに支出いたしました金額は六百八十六億円でございまして、同じく予算現額に対する割合は五五・八%ということになっております。このうち器材費につきましては一月末の契約済み額が二百二十三億旧でございまして、支出済み額は百五十九億円、それから施設整備費につきましては、契約済み額が七十四億円、支出済み額が四十一億一千万円、艦船建造費につきましては、契約済み額が百七億円、支出済み額は四十八億二千二百万円、こういうふうに相なっております。
  30. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今お読み上げになりました数字を伺ってみましても、予算の執行率が非常に低いわけです。まあ他の官庁に比べてお金がざくざく余っておるという状況でしょう。こういうところから、今申し上げましたように、めんどくさいから、何ページから何ページまでに載っておる部品全部というようないいかげんの注文の仕方が始まるのじゃないかということを、私たちは考えざるを得ないわけであります。こうしたいろいろなものの注文その他についてもっと真剣になっていただかなければ困る、こう私は考えるわけです。  関連質問でありますので、そう長くいたしますのは、茜ケ久保さんに御迷惑ですから、これでやめますが、まず第一に、注文する前に、使えないものだということを三菱からちゃんと忠告があったという事実に対して、調達本部長はどう処理されたか。当然これは上司に報告をするなり再検討を命ずるなりせらるべきであったろうと思います。一体どういう処理をなすっておったのか。使えませんということを忠告を受けておるにもかかわらず、注文をしておる、こういう点であります。その点を十分お調べをいただいて御報告をいただきたいということ、それからC46は別にさして秘密事項を含んでおりません。従ってA型とD型くらいの区別は私たちが見てもわかるはずです。従ってCATのカタログとテクニカル・オーダーを見せていただきましょう。それでA型とD型が専門家が見てもわからぬという程度のものであるならば、私たちは納得いたします。このことを次会に御報告いだだきますようにお願いをして、私は打ち切ります。
  31. 増原惠吉

    増原政府委員 若干の御説明経理局長が来たからできますが、今の御趣旨によりまして次会にお答えをいたすことにいたします。
  32. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 四日に起りました美保のC46の墜落に関しまして、防衛庁では特別調査委員会を作って調査をされておりますが、具体的な質問に入る前に、当局から今までに調査された事項について、簡単に、しかも要点をはっきりおっしゃってここに御報告をお願いしたいと思います。
  33. 増原惠吉

    増原政府委員 C46が事故を起しまして尊い十七名の犠牲者を出しましたことは、まことに遺憾千万で申しわけないと思います。このC46は航空自衛隊の美保の部隊に属しておりまして、当日三月四日はこれは訓練意味を持ちました定期便を行なっておるわけでございますが、これで必要な部品類等の輸送、あるいは人員の運搬等をやっておるわけでございますが、月曜日の定期便として美保を朝立ちまして、伊丹、小牧、浜松を経て立川に参りました。立川を午後三時三十分に出発をいたしまして、大体六時半ごろ美保に到着をする予定で帰って参ったわけでありまするが、この着陸寸前の六時四十分ごろ、沖合いにありまする大根島と飛行場との中間の中海で滑走路の西の端の方から約八百メートルのところに墜落をいたしたわけでございます。当日乗っておりましたのは機長の美保派遣隊所属の佐藤三佐等を含めまして十七名。乗務員は六人であります。美保派遣隊所属の航空自衛官が六人、陸上自衛官が一人、航空情報社の主幹及び編集長でありまする民間の方が二人、米軍軍人が二人、合計十七人が同乗いたしておったわけでございます。  美保は通常西風の吹くことの多いところでございまして、普通東の方から着陸をいたす飛行場でございまするが、当日は東から若干北に寄った風、風速は大体秒速にして六、七メートルの風が吹いておりましたので、平素とは反対の方向に着陸をするという状態で帰って参ったわけでございます。大体この飛行場の付近におきましては、雲の高さは二段になっておりましたが、一番低い雲の下辺が大体六百フィート、視界が約三マイルということで帰って参ったわけでございます。六千フィートくらいの高さで飛んで参りましたものが、GCAの誘導によりまして着陸しようとして五百フィートあたりまで下って参りまして、飛行場の標識その他が見える状態になりまして、いわゆる有視界飛行という形に入ったわけでございます。そうして一たん東から細長い半島を越しまして西の方へ参りまして、大きく北の方へ旋回をして着陸をしようとしたのでありまするが、若干風に押されたものと判断されます。うまく旋回ができなかったので再び半島を横切りまして東に出ました。こうした場合の通常の着陸の方式によりまして北に旋回をしまして、そうしてさらに西の方へ行って、こう着陸しようとした。初めは南側を行ってこういうふうにして入ろうとしたのですが、うまく入り切れませんので東へ一ぺん出て北へ回って西から入ろうとしたのでありますが、その際地上の見張り員の見ておりまするところで——標識灯を見ておったわけでありまするが、五百メートルからだんだん高度を下げて旋回をして滑走路に入るというときに、三百、二百とだんだん下げてきた状況を見ておったわけでありまするが、最後の旋回に入りまして飛行場に入ろうというときに、驟雨があったと見られるのでありまして、見張り員から標識灯が見えなくなった。そうしてこれを出まして——出ましたと判断をされるのでありますが、標識灯を再び見たのであります。それから間もなくまた標識灯が見えなくなった、このときが海へ突っ込んだものと推定をされるのでございます。当日の状況が雲の高さは約六百フィート、これは五百フィトのところで飛行場の標識灯その他がしっかり見える、いわゆる雲高が五百以下では着陸させないわけでありますが、六百フィートでありましたために、通常の形において着陸をさせようとしたところ、最後の旋回のところで驟雨にたたかれた。これは若干推測が入りますが、当時六時四十分ごろでありますが、あそこは日没が大体六時でございまして、当日雲があり部分的に雨が降っておるというふうな形で、相当にもう暗くなっていたわけでありますが、その中で最後の旋回で驟雨にあって今まで飛行場の標識を見ながら最後の飛行をしておったのが、急に見えなくなったというときに、事故を起す原因があったのではないかということでございますが、これはまだ一つの推測にすぎないわけでございます。そうして海中に突入いたしたと想定されるわけでございます。乗っておりました佐藤三佐は昔の海軍の操縦士でありまして、経験者を航空幕僚監部に入れまして、再訓練をいたしましてパイロットといたしたものであります。現在までの経験時間が約三千百時間、計器飛行証明を持っておる操縦士であります。副操縦士の岩木三佐は、元陸軍の操縦経験者でありますが、これもやはり再教育をいたしまして操縦士としたものであります。現在までの経験時間が約千九百時間、これも計器飛行の証明を持っておる操縦者であります。  航空自衛隊の持っておる飛行機は、先ほども申し上げましたが、三十機で現在のところ可動機が十六機、整備をいたしておりますものが、上二機、これは一段階、二階段と分けておりますが、部隊整備という段階のものが五機、野外整備という多少上の方の段階のものが七機、教材として整備学校に置いてあるものが二機という工夫に相なっておるわけでございます。これも先ほどお答えの中に若干申し上げましたが、機体は約三年目にアイランと称するオーバーホールを行いますし。エンジンは多少の安全を見まして大体七百時間ごとにオーバーホールをするという形で安全度を確保して飛ばしておるわけでございますが、この機体オーバーホール後千二百八十二時間を使用しておったものであります。エンジンは、左のエンジンオーバーホールの後五百九十七時間約六百時間、右の方がオーバーホール後百十三時間使用しておったものでございます。事故が起きまするや、飛行場の方としてはゴムボートその他を出しまして捜索に当り、境港の海上保安部、境、米子、松江の各警察署等に協力を依頼をいたしまして、捜索を行なっておるのでございます。けさほど参りまするまででは遺体は十一遺体を収容をしておる状態でございます。現在新聞でごらんになりまする、海の上に頭を出しておりました尾部の方は大体引き揚げができたのでございまするが、飛行機の前から見ますると大体二分の一か三分の一程度の尾部が上って参ったのでありまするが、あとは海へ突っ込んだのでありますが、推定の速力が百二十マイルぐらいと思われまするので、これは水に着いたと申しましても、地面に着いたのと大差ないほどのショックがあるとのことでございまして、前の方は相当にこわれて尾部とは離れ離れになって相当の距離に飛散をしておる。発動機は尾部などの落ちておりましたところから約八十メートルぐらいのところに落ちております。もう一つの発動機は先ほどまでのところまだどこに落ちておるかが確認できておらぬというふうに、若干散乱をして、ある程度のスピードで突っ込んだということが想定される状態で飛散をいたしておる状態でございます。事故の概要を御報告申し上げました。
  34. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 防衛庁当局は、この事故の原因を現在のところどういうところに発見せられるか、あるいは飛行機の故障によるものかあるいは操縦士のいわゆる操縦上の欠陥によるものか、もちろん当日の天候その他は、今次長がおっしゃったような状況でありましょうけれども、それは私は、総合的な判断において処置できるものでありますから、とにかくその起った原因がどこにあるかということに対して防衛庁当局の今までの状態における判断をお示し願いたいと思います。
  35. 増原惠吉

    増原政府委員 申し残しまして大へん恐縮でございますが、防衛庁としては事故が起りましたあと、直ちに関係者が登庁いたしまして、事故の正確な情報の収集に努めましたが、脇朝長官の命令決裁によりまして、事故調査委員会を組織することにしました。事故調査委員会事故がありますると作るものでございます。そうして幕僚副長秋山空将を委員長としまする調査委員会を作りまして、技術者、操縦者その他必要な関係者、経験者を集めまして、現在厳正的確に原因を究明中でございます。昨日も参議院内閣委員会で御質問がありまして、お答えをしたのでありますが、若干私が推測みたいなことを申し上げたのでありますけれども、これは実は少し適当でなかったのであります。現在のところで推測を申し上げるということは適当でないと存じます。われわれとしては予断を持たないで、厳正的確にあらゆる方面からこの事故の真相を究明をするという態度で参りたいと思います。原因の究明され次第、あるいは究明が相当延びるようでありましたら、中間報告という形で状況を申し上げたいと存ずるのでございます。現地の方から若干中間的な意見みたいなものが出たように話を聞きましたので、現地の方にも問い合せをいたしておりますが、現地の方でも一中閥報告というようなことをまだ申し上げる段階ではないので、原因の真相究明に鋭意今努力しておるという段階でございます。
  36. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 小滝防衛庁長官が見えましたが、おそらく予算委員会でもこの問題は問題にされたと思うのであります。しかし担当委員会であります内閣委員会において、現在この飛行機事故質問しておるのでありますから、防衛庁長官としてはこの問題に対する所見を一応ここで御表明願いたいと思います。
  37. 小滝彬

    小滝国務大臣 今般このような不幸なる事件を起しましたことはまことに申しわけない次第であります。ただ所感を申し述べるということについては、私としては抽象的に申しますならば、非常に遺憾でありまして、このような事件が再び起らないように、十分原因を究明いたしまして善処いたしたいという程度にとどめたいと存じます。と申しますのは、先ほど次長からも申しました通り現在調査が進行中でございまして、その間においていろいろ想像の推測的な説をなされる方もございますが、ただいま予算委員会においても申し上げましたように、今急にC46が悪かった、あるいはどこが最終的に原因であったというようなことを申し述べ得ない段階でございますので、この調査終了の上、その調査の結果に応じまして最善の処置をいたしたいと考えておる次第でございます。
  38. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 着陸しようとした当時は、飛行機の搭載燃料は、あとどのくらいの航続が可能であっただけの燃料を持っておったか、この点をお答え願いたい。
  39. 増原惠吉

    増原政府委員 その点ただいまちょっとなにを持っておりませんので、直ちに取り調べまして申し上げたいと思います。
  40. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 私はもちろんこのC46の事故についていろいろなことから検討もし、私どもの立場からいろいろお聞きしたのでありますが、機体状態等は何か新聞の発表によるとエンジンその他飛行機事故はなかったような発表がしてあります。これは責任ある発表かどうかわかりませんが、しかし一応特別委員会の調べに基いてのことであります。もし飛行機自体事故がなく、さらに操縦しておる機長以下の飛行士の諸君の腕が未熟でないという防衛庁の確信があるならば、私はやはり積んでおった燃料の量が非常に大きなウエートを持っておると思う。と申しますのは、いわゆる死の行軍でも問題になりましたように、何か一定の方向が打ち出されたら、その方向に向ってしゃにむに押していって、あと事故の起ったいろいろな問題は、全然これを没却して、すべて自分たちがきめたレールのままいかなければ承知できぬといったような自衛隊訓練、あるいはその方式の欠陥を私は暴露しておると思う。もし燃料が美保の飛行場に着陸することが非常に困難な状態であるならば——燃料さえあれば、私は、一番近い他の飛行場に着陸することが当然と思う。にもかかわらず、たとい驟雨といえども、今次長説明によりますと、五百フィート以下では着陸不能だとおっしゃる。ところが事故の起った状態では六百フィート——六百フィートと五百フィートが地上からどのような厳密な調査で判明するかは別といたしましても、とにかく先ほどからの次長の御説明によると、おそらくこれは着陸不可能の状態ではなかったかと推定される。にもかかわらずしかも、これはあとでお尋ねしますが、いろいろな電波等による指示の設備も、常に東から進入するので、西から進入する飛行機に対する処置ができないというようなことがいわれておる。当日は追い風であって、東から進入することが不可能であるので、西に回ったとおっしゃっておられる。こういうあらゆる条件を総合しますと、六時半というすでに日没後の相当時間がたったときに、しかもそういう客観的な情勢の中で着陸することが非常に困難であり、むしろ不可能な状態だと推定される、にもかかわらずしゃにむにそこに着陸させようとした機長あるいは飛行場の関係者、こういったことを総合すると、やはり死の行軍に現われた自衛隊が持っておる内部のいろいろな点が、ここにも出ていると私は思います、従って私が今燃料のことを聞いたのは、当然もし燃料が——今お聞きいたしますと、美保を出て伊丹、小牧あるいは立川等を飛んで帰っておるとおっしゃるけれども、これはまだ相当余分な、と申しますか、相当量の航続できる燃料を持っておったに違いないと推定されるので、そういう場合には先ほど来言われておりますように、最短距離の飛行場に着陸を変更することこそが、こういう際の事故防止の一番いい方法ではないか、こう思うのであります。燃料の点はさらに大至急調査されて御報告願いたいのであります。現在日本の空の管理アメリカにありますので、アメリカの制空管理関係から、当日は美保以外に着陸場を変更することが不可能であったというような事実はないかどうか、この点についての事情を御説明願いたいと思います。
  41. 増原惠吉

    増原政府委員 燃料のことは直ちに調べて申し上げまするが、飛行機を帰航いたしまする際、これは訓練意味を持ちまするので、毎日やっておるわけであります。がむしゃらに一回だけ猛烈な訓練をやるというふうなものではございません。燃料としては、大体立川から帰って参ります際、立川で燃料補給をいたしまするが、その際は予備的な——まっすぐ飛べるだけの燃料を積むだけでは決してございません。規定がありまして、相当の予備燃料、今おっしゃいましたように、美保へ着けない場合にはもよりの飛行場に着陸できるというふうな予備燃料は持つように相なっております。この事故がどういうことで起きましたかは、ただいま申し上げましたように、目下あらゆる点から細密に検討中でございます。この検討の結果を待って善後処置をし、将来再びかようなことのないようにいたす所存でございます。また御報告も申し上げるということにいたしたいと存じますので、ただいまのところでどういうところに原因があったということは申し上げにくいわけでございます。コントロールの方は、航空官制は現在仰せになりましたように米軍の方に日本政府が委託をする形で、統一を米軍がいたしておりますが、このコントロール・タワーなどには航空局の者、あるいは自衛隊の者も参加をして、サイド・バイ・サイドでやっておる、管理責任者は米軍であるという形をとっておるわけであります。ただいまの、当日ほかの方へ行きたくとも米軍の航空管理の都合でほかへ行けなかったのではないかという御質問は、その事実をまだ調査をいたしておりませんので、調査の上申し上げたいと思います。
  42. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ただいま次長の御答弁によりますと、もちろん具体的な調査は必要でありましょうけれども、立川基地を立つときに燃料補給をしておる。これは大体普通の場合にいつもやるのでありましょうから、当然燃料の補給をしておるとなりますと、燃料は美保に無理に着陸をいたしませんでも済むだけのものがあったと推測されます。そうなりますと、これは事故の原因の追究はもちろん徹底的にしなくてはなりませんけれども、やはり問題になるのは、そのような困難な状態において無理に着陸をしようとしたのか、させようとしたのか。新聞等の報道によりますと、しゃにむに着陸するような指令を飛行場側でやっておるというふうにも報道いたしております。こうなりますと、私はやはり問題はまことに遺憾な方向へ発展せざるを得ないと思うのであります。機体はすでにちりちりばらばらに破損をし、乗っておる飛行士も死んでおるのでありますから、もちろんそれは科学的に可能な客観的な御調査をなさるでありましょうけれども、何と申しましても死人に日なしで、操縦士が全部死んでおり、機体ももう今日引き揚げてみましても、これはどこに原因があったか、おそらくエンジン相当破損しておるでありましょうし、機体もばらばらでしょうから、私はこれは非常に困難だと思う。そうなりますと、やはり置かれました今までの実態を基礎にして究明する以外にないと思うのでありますが、当日のいわゆる着陸することに対する責任者はだれたのか。美保基地の司令官と申しますか、そういった人が着陸させる責任者か、あるいは機長が全責任をもって自分で自発的判断をしてやるのか、この間の事情は当然自衛隊の組織上の問題でありますから、わかると思うのであります。四日のC46が着陸しようとする瞬間におけるその着陸に関する責任者はだれなのか、この点をお教え願いたい。
  43. 増原惠吉

    増原政府委員 着陸の際は、コントロール・タワーの方で着陸してよろしいという合図を出すわけであります。この着陸してよろしいという合図と、着陸可能であるという操縦士の両者の判断によって、着陸を行うということに相なるわけでございます。
  44. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 美保の飛行隊の隊長がいわゆるそのときの情勢を判断して、コントローラーに着陸可能と申しますか、着陸をしてもいいという指示を与えさすのか、あるいはコントローラーの責任者がそれ自身の責任において情勢判断をするのか、十数名乗っており、しかも非常に大事な人命と飛行機を持っておるのでありますから、やはりそこに責任がはっきりなくてはならぬと私は思いますが、その間の事情はいかがでございましょうか。
  45. 増原惠吉

    増原政府委員 その美保飛行場にその時間に着陸してよろしいという指示は、コントロール・タワーから出すので、航空管制の方の指示として出るわけでございます。それを受けて機長が着陸できるという判断のもとに着陸するということになるわけであります。
  46. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 コントロール・タワーから、着陸してもよろしいという指示があったといたしまして、しかし四日のあらゆる情勢を検討いたしますと、これは私どもしろうとが考えても、相当困難が想像される状況であります。そういった場合、もし機長が、これはここで着陸することは危険が伴う、できればほかの飛行場へ行きたいと思ったとしても、いわゆるコントローラーの方から、美保飛行場に着陸してもよろしいという指令が来ますと、そのままやはり着陸しなければならぬものか、あるは機長が機長みずからの判断において、現在の状況では美保に着陸することは非常に困難であるから、他の飛行場へ変りたいという意見が出されて、これが検討されて、他の飛行場へ行くことができるものか、この間の事情はどのようになっているか。
  47. 増原惠吉

    増原政府委員 正確な法規的な関係はなお取調べまするが、私どもの今まで承知をいたしておる限りでは、着陸してよろしいという指示をコントロール・タワーは出すので、お前はここに着陸しなければならぬというふうな指示を出すものではないと了解をしております。従いまして、機長が、ここに着陸することは困難である、危険であると思って、たとえば伊丹の方へ行こうというふうなことであれば、そこから伊丹の方と連絡をとって、その力へ行くということは可能な建前になっておると承知をしております。
  48. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 特別調査委員会をお作りになったというのでありますが、私はやはり現地のそういった、いわゆるなくなった飛行機や、あるいはなくなった飛行士の現場の状態を早急に調査することも必要でありましょうが、そういった大局的な調査が、今お聞きすると、全然できていない。これは私はやはり防衛庁としては最も本質的な点を見落していると思う。そういったところは早急に調査して、総合的な判断によって、あの事故の原因を究明しなければ、機体に故障があったか、その他に何かあったかどうかということだけでは、この事故の原因が判明して参りませんし、さらに今防衛庁長官は、今後再びこういうことがないようにしたいとおっしゃるけれども、日本の航空権をアメリカが握っており、日本自衛隊飛行機が自分の思うように飛べない今日、そういうところに一つのメスを入れていかなければ、こういった不幸な事態が根本的になくなるという可能性が出てこないと思う。従って、いろいろとお聞きしたいことがありますけれども、私はまず今指摘した点を早急に調査してもらいたい。機長の責任とか、C46の機体整備の状況とかいうことももちろん大事でありましょうけれども、日本自衛隊日本を守るということをやっておりながら、一番大事な——今日陸上自衛隊が何十万ふえましょうとも、空というものが自主権を握ってないとなりますと、これは大きな問題というよりも、防衛そのものに根本的な改正がなされなければならないと私は思う。肝心な空がアメリカに握られておって、私はあなた方が幾らしゃっちょこ立ちされても追っつかぬと思う。こういうところに今度の事件の原因と、将来事故を防止する視野が向っていかなかったならばだめだと思う。そういうところをはっといて、ただ単に現場へ飛んでいって、現場でこわれた飛行機をいじくったり、あるいはいろいろな人の意見を聞く、それだけではいかぬと思う。この際思い切って防衛庁アメリカ軍の管理に対して、自主的な立場によって、少くともあなた方が握っている飛行機自衛隊飛行機だけでも自由に自分たちの思うように飛び、思うように行動のできることにならなければ、私は全然問題は解決されないと思う。この際この事故を契機に防衛庁日本の制空権——アメリカ軍がまだ日米安保条約で駐留することは、私どうも反対であっても、具体的にはどうにもならぬ事実でありますから、アメリカ飛行機の飛ぶこともやむを得ぬでしょう。しかし少くとも日本飛行機が自由勝手に、どこへでも着陸し、どこへでも飛び、どんな行動でも自由にできるような自主航空権を確立することが最も根本的であり、最も大事な問題であると思うが、小滝防衛庁長官はそのことに対してどのような信念と、さらにそういったことをアメリカに対して要求をして、自主航空権を確保する自信があるのかどうか、この点を一つ明確に御答弁願いたいと思います。
  49. 小滝彬

    小滝国務大臣 ただいま茜ヶ久保さんがおっしゃる点は全く同感でありまして、私どももできるだけ自主的な自衛体制を整えようと努力いたしておるのであります。今の具体的な問題につきましては、これは運輸省とも関係がございますが、もちろん方針としては、日本の方で防空関係あるいは航空管制についてこれをとり行いたいと思うのでありますし、またアメリカの方も一日も早く日本側にまかしたいという希望を持っているのであります。ただ実際上の機械の動かし方等、いろいろ訓練を要しますので、一度には参りませんけれども、漸を追ってそうした訓練の届きます限り——現在そうした点もすでに訓練いたしているのでありますが、これができるだけ早く終了いたしまして日本側に受け取れるようにしたい、またそれは決して米国側の希望に反するものでなくして、そうなれば米国も富んで日本に渡すという態度でありますので、要はわが方の受け入れ体制を整えるというところにある次第でございますから、仰せのように、私はできるだけこれを完成するように最善の努力をいたしたいと考えております。
  50. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 この問題は、私は今申しました見解から、相当徹底的に調査もし、また当委員会において検討もしたいと思っております。末梢的なことでなくて、やはりそういう本質的なものを考えながらこの美保の事故検討していく、また死の行軍とはもちろんいろいろ違いますけれども、先ほど申しますように、自衛隊の現在のあり方について、やはりこういった事故を中心に根本的な検討をしなくちゃならぬと私は思うのであります。従いまして、本日は今申しましたように概括的なことだけをお尋ねしましたが、早急に現地における調査、並びに先ほど増原次長にお尋ねした点等を大至急に調査をされまして、調査された御報告によってさらに検討していきたいと思いますので、一応本日は以上で私の質問を終ります。
  51. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 関連——自衛隊に関する事件がいろいろと相次いで起りまして、ほとんど収拾がつかぬような混乱を呈しております。これを見ますと、非常にきびしい訓練によって起った事故と、だらしのない自衛隊内の実際の形において起った事件と、両極端に分れております。たとえばこの間の浜松における酔っぱらい運転のごときは、まさにこのだらしのない一面でございまして、特に外部にはあまりどぎつい影響を与えておりませんが、本日の新聞で発表になっております通り防衛庁の経理に関する事件は実に大きい。会計検査院の報告によって見ましても、実に紊乱をきわめた経理状態が現われておるのであります。今回の事件についても、あの事故の原因がただ飛行機性能あるいは飛行士の何らかの錯誤にもとづくものという以外に、たとえば標識がどうであったか、滑走路がどうであるか、救命艇がどうであるか、こういう点についても私は十分なる調査報告を求めたい。特に検査院の指摘事項によりますと、さっき飛鳥田委員からも指摘されましたが、ただ部品の問題だけではありません。飛行場の滑走路に関する不正事実があげられておる、電気の設備に対する不正事実がまたあげられております。こうした経理面における非常に大きなあやまちが、やがて人命に関するような事態を招く最も大きな原因をなしておると私は思います。この点に対しては徹底的に御調査を願いたいし、また事後の処置につきましても、ただ戒告、懲戒というものではなく、まさに人命を損傷する重大な過失として厳重なる処分を私は要求したいと思うのであります。つきましては、今回のこの事件に対する調査も、決して今日だけで終るものではございません。増原次長の言われる通り、詳細な調査に基いてあらためて御報告を願うことにはなりましょうけれども、その際にぜひともこの防衛庁内の経理の紊乱の根本の原因についての御見解をはっきり伺っておきたい。これはこの報告だけではない。今や大きく広がろうとしておるところの全国の演習地の土地の取得に関しましても、実に悪質な、土地ブローカーと同じような不正な手段が、また恐喝的な手段が現地の警官等によってなされておる事案があるしまたあの庁舎その他の建築に関しましても、さまざまな取りざたがなされております。結局国費を最も有効に最も能率的に使うという方法ではなくて、あり余った予算をどうしたら使い果せるかといって苦心するところに、私は紊乱の根本的な原因があると思うのであります。どうかその点についても、一つ隔意のない御意見なども、この次に聞かしていただきたい。本日は時間も迫っておりますから、私は詳しく申し上げませんが、単なる現象的な問題にとどまらず、そうした根本的な問題に対しても、この際、防衛庁みずから立ってこれをなくするような重大なる決意をされるように、あえてお願い申し上げます。  特に経理に関しまして、納品の検査方法にも非常に大きな欠陥があると思う。もし検査方法がはっきりしておりますならば、打ち続くこのような誤ったことはなされないと思う。おそらくこのあり余った予算がある限りは、私は不正なる御用商人をめぐる防衛庁の不正事実はなくならぬと思う。もしもはっきりした御決意があるならば、不要なる予算はすみやかに返還されたい。それによって困っております社会保障やその他の面に大胆に回された方が、むしろ防衛庁の不名誉挽回の上から非常に大きな意味を持つと思いますが、この点長官はどう考えておりますか、一点だけ伺っておきます。
  52. 小滝彬

    小滝国務大臣 もちろん経費の支出につきましては十分な注意を持って行わなければならないことは、私どもの常に心がけているところでございます。しかし私はここで弁解的なことを申し上げるわけではございませんけれども、たとえば予算につきましても、あるいはあり余ったように見えるかもしれませんが、実は大蔵省と非常に折衝して作りました予算で、納入させようとする場合に、まだ今の予算ではまかなえないような点も多いのでありまするし、また検査につきましても、製造工程において検査し、さらにまた納入の際に各部隊に対して検査させるというようにいたしておりますが、何といたしましてもわれわれの方の人数にも限りがありまするし、また取り扱いますものが普通の使用品と違って特殊の技術的な知識を要するという点、また新規なものであって、十分経験がないというような点において、あとで調べまして問題を起したこともあることは、御指摘の通り事実でございますが、ぜひそういうことのないように、実はこちらで御審議をお願いしております今度の設置法の一部改正等におきましても、そうした調達面についても特に留意いたしまして、その機構を整備しようといたしております。同時にそれぞれの者の心がけの問題でありまするから、行き過ぎてもいけないし、一方それかといって弛緩してもいけない。そこに適切な措置がなければならないので、こうした隊内の綱紀粛正ということにつきましては十分留意いたしまして、信頼されるような、ほんとうに皆様から批判せられるところのない自衛隊ができ上りまするように、努力いたしたいと考えている次第であります。
  53. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 いずれ具体的な事例をあげて長官にまた御質問いたしたいと思うのでありますが、一方においては訓練の厳しさから死者が出ている。一方においてはだらしのない状態から多大の国費を乱費している。また酔っぱらって運転してみずから死んでいる。こういう混乱した状態は、今日の自衛際の内部の指導の形における混乱、訓練の理想における混乱を招来していると思いますので、その後の調査に当りましては、そういう点なども率直大胆に資料を提供されんことをお願いいたしまして、本日の質問は打ち切っておきます。
  54. 相川勝六

    相川委員長 午後一時三十分より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  55. 相川勝六

    相川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 委員長定足数が足りません。これじゃやれませんよ。
  57. 相川勝六

    相川委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  58. 相川勝六

    相川委員長 速記を始めて下さい。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 私はまず今回のC46輸送機の問題と関連をして、先般広島で起った自衛隊訓練死の事件を追及申し上げたいのでありますが、それに先だちまして、ちょうど去る四日、私は党を代表して、問題の広島自衛隊の死の行進の全コースをくまなく七十七キロにわたって実地調査をいたしました関係上、現地における一般民衆の声及び広島の第八連隊の幹部の方々との会談及び広島付近の一般民衆の声等を十分伺って参りました関係上、これらの総合的な観察をごく簡単に申し上げて当局の見解を求めたいと思うのであります。  実はかねてこの委員会は先般の自衛隊訓練死の事態を収拾するために、できるだけ自衛隊の自主的な立場でその解決策を講ずるように、私たちとしても謙虚な気持で当局の結論を待っておったのでありますが、事件発生以来満一カ月を経過した今日まで、依然として具体的な解決策をお示しになっておられない。私はこの満一カ月というこの時日は国民注視の時日であって、きわめて重要な期間であると思うのでございますが、当局はこの事件の解決に当って、現にいかなる捜査の段階にあるのか、これをお示しいただきまして、それに基いて私の現地より得た情報を提供し、比較検討して結論に導きたいと思います。
  60. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お答え申し上げます。この事件につきましては、前回において申し上げましたごとく、私どもといたしましては厳正なる調査をしておるのでございます。事実関係につきましては、大体において調査を終ったのに近いのでございますが、ただ、だめ押し的な意味におきまして、責任の所在を明白にいたしますために、たとえば当時における医官の配備及びその活動状況はどうなっておったか、各統制点の間における行進の速度はどうであったか、あるいは各統制点における落伍者の収容の状況はどうであったかというような点を、だめ押し的な意味におきまして、その調査を続けておる状況であります。近く結論を得ると思います。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 近く結論を得るという御説明でございますが、これがすでに満一カ月をたっているということは、重大な時日の経過でございまして、当局において捜査のテンポが念を入れ過ぎておくれておるという好意的な解釈もできると同時に、これがその間においていいかげんにごまかされるのではないかという不安を国民に与えていることは、当局おわかりでございましょうか。
  62. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 私どもといたしましては、実は一日も早く結論を出したいのでございます。しかし調査をいたしますると、だんだんとこの点も確かめなければいけない、この点も確かめなければいけないという点が、報告を受けますたびごとに若干ずつ出て参ります。念を入れておるというつもりでございまして、調査の結論を急ぎたいという気持には初めから変りございません。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 この事件の捜査は、単に自衛隊の警務隊のみでなく、一般の検察権の発動による捜査、すなわち共同捜査という形でなされておるのだということを、先般ここで明言されたのでございまするが、その点はいかがでございましょう。
  64. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 当初は、司法警察職員であります警務隊の調査よりも、一般の監察なりその他の行政事務の調査の系統の職員が主として当っておったのでございまするが、途中から警務隊の方に主力を切りかえまして調査を続けております。これは御承知と思いまするが、警務官は特別司法警察職員でございまして、検事の一般的な指揮を受けるわけでございます。そういう意味合いからいたしまして、逐一検察庁の方に連絡はしておりまするけれども、検察庁の方で捜査に乗り出しておるということは、まだ聞いておりません。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 そこに私問題がひそんでいると思うのです。私は、現地で住民の声を確めたのでございまするが、検事がみずから捜査に乗り出したという事実を聞いておりません。何か自衛隊の第八連隊に連絡におじゃましたことはあるようであるが、それ以後現地捜査に検事みずからが乗り出していったという事実も聞いておらぬのでございますが、これは警務隊みずからの手において何とか解決したいという自衛隊の心づかいが、そういう結果になっておるのではないかと考えます。いかがでございましょうか。
  66. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 御承知のごとく、検察官というものは、警務隊の者が調査をしておりましょうとおりますまいと、自分の権限として捜査権を発動することができるわけでございます。たた検察庁の方にもいろいろ御都合があるのであろうと思うのでございまするが、われわれの方から逐一連絡をいたしておりますけれども、検察庁の方では自分の方で直接捜査に当るということはなさっておらないというような現状でございます。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 そこに疑義が抱かれてくるのであって、もちろん自衛隊という特殊の部隊でございまするので、その特殊事情に基く捜査官の活動はうなづけるのでございますけれども、すでにこの問題は国民自衛隊として一般国民の中にアッピールした問題であって、今これを自衛隊内部の問題として処理することは、国民の疑惑を招く最も大きな根源であると私たちは考えておるのです。しかも今回私の視察した結果によりますると、自衛隊の警務官が私服で住民の意見を聴取しておる。それはやはり刺激を与えないという心づかいはわかりますけれども、きわめて秘密のうちに事件を解決したいという気持の現われであると私は断定したのであります。しかももう一つ、一般の住民の全部の声を聞いておらない。ほんに一部の人にしか当っていないということにおいて、目撃した多数の人から事情を聴取するという徹底した捜査に当っていないということもいえるのです。いろいろな捜査段階における警務隊の活動というものに対しても、秘密主義をあくまでも守ろうとしている気配を感ずるのでございますが、いかがでございましょうか。
  68. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 警務官は建前といたしましては制服を着用するようにいたしておりますけれども、職務上の必要によりましては、私服を着用することを認めております。隊長の判断によりまして私服で調査をして参ったこともあるであろうと思うのでございます。その調査の仕方につきましては、いろいろ御意見はあろうと思うのであります。すべての者について聞くということも、口では簡単なようなことでありましても、実行はなかなか困難な場合が多いと思うのでございまして、私たちはどういうような形で現われておるか現地についてよく存じませんけれども、決して故意に自衛隊の中におきましてこの事件を糊塗しようなんというつもりで調査を続けておらないということを確信いたしております。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 具体的な事例として私が直接当った住民の声の一、二を紹介いたします。これは氏名の発表を避けまするけれども、この事件の起った二月六日の午前九時ごろから十時ごろが一番山でございまするけれども、その事件の起った区域、すなわち地図で申しますと、黒瀬町に入った最初の地点から西条町に入る地点の一帯が問題でございますね。この問題点の各地域において、約一・五キロにわたって当日バスの運行が停止された。なぜバスの運行が停止されたかというと、普通は道の両側を歩いて行進をするのでありまして、その中をバスが通っておるのでありますが、隊員が疲れ切ってふらふらしていつバスにぶち当るかもしれないというので、この最先頭が乗りかかって最終の部隊が行軍を終るまで、その期間中バスは運行が停止された。しかもこの行軍の実態は、率直に申し上げまして、鉄砲をさかさに持ち、引きずり、またロープにささえられ、竹を握り、ちょうど敗残兵が落ちぶれた姿でのがれゆく姿そのものであった。これはその地区における全住民が全部確認をしておりました。米軍が行進をするのを幾たびか見た。呉から原村の演習場にやってくる部隊の行進を見たが、これは密集地区に入ると、適当な休憩をやったせいもあろうかとも思われるのでありますが、隊伍を整えて堂堂と行進をしておる。それを見かけた地元民は、このやつれ果てた自衛隊のあさましい姿を見たときに、これが日本自衛隊かといって、自衛隊に対するきびしい批判をしておるのでございます。私はそれほどまでに地元民の強い声はないと初め思ったのでございますが、かくまで徹底した批判を聞いた以上は、これを黙視することができなかったのであります。すなわち、一方において非常に厳格な、生命さえも軽んずるような訓練をしておるかと思うと、また一方においては、そうしただらしない姿の規律が行われておるという、午前中淡谷君から指摘されたような自衛隊の二様の姿を、私ここでもはっきりながめることができたのであります。まずこの自衛隊の行軍に対する規律という問題について、住民の声に対する当局の御見解を伺いたいと思います。
  70. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今受田委員がおっしゃったように、私どもの調べによりましても、統制点のC、安登中学校でありますが安登中学校あたりからは、第七連隊について調査をいたしてみますると、相当に隊員が疲労しておるようでございます。行進の速度を調べてみたのでありますが、初めの第一統制点から第二統制点までの間は、五・九キロぐらいの速度で行っております。その次は五・四キロ、安登辺は五・一キロぐらいで進んでおるのでありまして、その安登あたりから速度が四・三キロぐらいに落ちております。この辺から隊員が相当疲れただろうということは、これを見ましても想像できるのでございます。事実調査に行きました者の話を聞きましても、安登及び岡郷あたりから隊列が非常に乱れておるということを聞いております。こういうふうな行進の状況というものは、決して望ましいことではないのでございまして、行進はやはりあくまでも隊伍堂々と行わるべきでございます。今回のこの行進におきましても、これを競技の形でやりましたことは、前々申し上げておる通りでございまするが、その競技の審判の基準一つに、隊の規律ということを掲げておるのでございます。隊の初めと終りとがあまりだらだら長くならないで、隊の規律を保って秩序立って行進するということを、審判の基準一つにしておるのでございます。この第七連隊について申し上げますると、これも前回申しましたごとく、行進の速度は非常に早かったのでございまして、ほかの大隊よりは一時間以上も早いスピードで目標点に到達したのでございますが、隊の規律の点あるいは落後者の点というふうなことから、これは優勝になっておらないというのが実情でございます。自衛隊といたしましは、いろいろな状況はございますけれども、行進をいたしまする以上は、やはり隊伍堂々としていつも必要に応じまして適切なる行動が取れ得るような隊形をとっていかなければならないのだと考えております。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 さらに目撃した住民の声の中に、倒れている隊員を救急車に乗せないでジープに乗せておる。これをほうり込んだとか、いろいろ言われておりますけれども、とにかくあたかも物のような取扱い、物体をほうり込むごとくジープに入れておる、しかも無蓋車だ、みぞれが降っておる、こういうところで、その途中で落後しかけている者をどんどんこれに積み込んでいったというのでございまするが、ジープというのは、訓練過程における車であって、救急車のごとく、すでに落後して、医師の診断を受け、治療を受けさせるような形の車でないと地元の人は言っておったのでございまするが、いかがでございましょう。
  72. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この行進に当りましては、これも申し上げしましたが各大隊の後尾に救急車を一両、それからジープが、指揮官用のジープと合せまして二両ついておったのでございます。必要に応じまして、そのジープの二両と救急車の一両とに、疲労いたしました者を収容したのでございますけれども、その当時の隊長なり責任者の判断によりまして、救急車に入れます者と、ジープに乗せて運んだ者とがあったようでございます。これはなかなかむずかしい問題でありまして、私どもも実は精細に調べておるのでございまするが、当時のこの行進のやり方につきまして、救急車に乗せますると落後になるというふうなことが考えられておりましたので、救急車に乗せるよりも、なるべくジープで運べる者はジープで運びたいという気持があったように今では認めております。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 一般住民の声は、ジープはまだ訓練車であるから、ある統制点まで行って回復の見通しがついたらまたおろして歩かせる、そういう車なんです。それに入れた人たちは、ある地点で目撃した人の声によるならば、すでに電柱にささえた——いつかおっしゃったその例で申し上げまするならば、電柱にささえたその人が、瞳孔を開いてみると、瞳孔も散大しておる。よしといって、積み込め、ほうり込めといってほうり込ましたという。そういう瞳孔が開いているような、いわば相当重態であると思われるような患者をなお訓練車に乗せた、しかもみぞれという特別の冷たい気温のもとにおける車の中へ乗せて、その乗せられた人は足も手も硬直し、まことにむざんな形でジープが出発したと伝えております。これは目撃した人の正直な発言であって、いつかここで問題になった電柱に縛ったということが間違いであることも、私そこで確認したのです。またなぐったということも、あなたのおっしゃった激励の意味と私も確認をしましたが、その患者の取扱いが全く人間的でなかったということは、異口同音に聞いた声です。もう少しやさしくできないものか、もしあれが隊長でもあったならば、あのようなむちゃなことはしないだろうが、一般隊員であるだけに、あれだけ残酷なやり方をした。責任者の隊長がもし倒れたとなったならば、もっと丁重に扱うはずだというので、隊長と隊員の待遇差というものをそこではっきり確認したようでございますが、この問題は当局としてはどういうふうに判断をされておりましょうか。
  74. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 一般的に申し上げておきたいことでございまするが、私ここで御説明いたしましたごとく、いわゆる暴行という事件について御報告したのでございますが、全体として激励につきましても、お互いに隊員も幹部の者も当時の状態、当時の雰囲気では相当に気が立っておったということは私あるように思われます。でありますから、言語動作につきましても、ほうり込めと言いましたかどうか、その点確認をいたしておりませんけれども、そういうふうな相当荒い言葉を使っただろうということは私想像いたします。今お尋ねの川本君の件でございますが、この前私の言葉が足りませんでしたので誤解されましたが、受田委員が御確認になりましたように、電柱にもたれかかったのを、両方のロープを引っぱっておったのが電柱の向う側で交差して支えたのでございます。そうして同僚の隊員がその引っぱられておった者の顔を見ますと、前よりも青く悪いように思われたので、ヘルメットの上から、激励の意味でしっかりせい、こう言って、たたいて元気をつけて、薬を飲ませて、うしろから来たジープに乗車させた、こういうことになっております。私どもこの報告を読みまして、今御意見のようなことは実は感じなかったのでございますが、人格の尊重と申しますか、これは隊員であろうと、幹部であろうと、同じようにひとしく尊重さるべきものであると思うのでありまして、扱いにおいて差をつけるというようなことは、それがどういう形で現われたといたしましても、観念としては私はあり得てはいけないと思います。状況によりまして違うことはございましょう。しかし気持はひとしく同じように扱うということでなければならないと思います。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 また黒瀬町に差しかかったとき、ある家の前におきましては、哀れな姿で疲労こんぱいその極に達した隊員が二人にささえられて通りかかっておる。そこでそれを目撃した老婆が出て、ああお気の毒にと言って、どうぞこの縁でちと休んで下さいと麻袋を出した。ところがいやこんなものはいいのです。この石でいいのですと言って、石の上にすわらせて休ませて、そうしてあとから来たジープに積んでいった、こういうことなんです。せっかく親切に、疲れ切った隊員に対して麻袋を出して休憩させようというようなときには、住民とのつながりの上からいっても、だれが見ても、このような哀れな姿では行軍はできないだろうという、その愛情のある行為に対しては、これを快く受けて、そこで休ませてやるような幅が私はほしかったのですけれども、隊員の取扱いにおいて、訓練のきびしさを考え過ぎて、人間的な、あたたかみというものを欠いていたという事実を、今の例のほか幾つも私お聞きしておるのです。これに対する御見解をお示し願いたい。
  76. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは今初めて承わることでございまして、状況をよく調べてみたいと思いますけれども、おそらく想像いたしますに、隊員の方が遠慮したのだろうと思うのであります。この遠慮の仕方も、別に疲れておる者を虐待するとか、お前はこんなところでいいのだというようなことでなしに、自衛隊とその村民の方々との関係を考えて、やはり自衛隊の隊員としては遠慮した方がいいというふうな判断をしたのだろうと思います。もっとも、これは善意に解釈し過ぎておるとおっしゃるかわかりませんけれども、私はそう思いたいのであります。全体といたしまして、この前申し上げましたように、なぐったとか、たたいたとか、あるいはさすったとか申しますけれども、私は善意でやったと信じております。ただ善意でやったから責任が全然ないのだというふうには考えませんけれども、やりましたことが、やられる者にとりましてやはり善意をもって受け取られるような雰囲気というものが一番大切だ、問題の根本はここにあるというふうに私は考えております。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 その御判定の基礎は納得できないこともないのでございます。また例をあげますならば、午前九時ごろ、そうした疲れた隊員をかかえてきた人々が、うしろから来る隊長に、隊長、こういうふうにみんなが疲れてばたばた倒れるのは飯を食わぬからですといって、隊員がいわば食事の要求をしたような声も聞いている。だから、そうした率直な声というものには耳を傾ける責任が指揮者にはある。ある限界点に達して、それをなお強行突破しようとする無理が、ますます落後者を多くしたと私は思うのでありますが、今回のこの現地調査で具体的にそれぞれ私控えておりまするけれども、あげればきりがないことであります。要するに、これをまとめて判断をしますならば、今回自衛隊の多くの犠牲者が出たということは、特に十五連隊と八連隊はなるべく落後をしないようにという心づかいをして行動したことを、一応私は認めたのでございまするけれども、特に七連隊が行軍の途中でかけ足を加えてみたり、いろいろな方法をとって前の部隊との距離を圧縮しようとしたその無理が、黒瀬町あたりに来てこのように現われてきた。その現われた無理を即座に認めて措置をしておればよかったのでありまするが、無理を無理なりに最後まで持っていったということは、これは明らかに部隊の指揮者である皆さん方の隊長としての、指揮者としての業務上の適当な注意を怠ったと私は断定せざるを得ないと思うのです。ことにこの隊員の中に、一般の民衆の声を総合するならば、あの空気では落後をしたならば大へんな不名誉だというので、雰囲気としては落後してはならぬのだという空気があったと思われる。従ってその空気を作り、その空気の上に乗っかかって指揮をしたということは、隊長としての、指揮者としての業務上の過失であると断定せざるを得ないと私は現地でこれを確認したのでございまするが、あなたの方で捜査の過程におけるそうした問題に対する何らかの御意見はありますまいか。
  78. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 事実の関係につきましては、ただいま受田委員のおっしゃったことが、大体の状況といたしましては、私どもの調べておりまするところと近いものがあるのでございます。指揮官の問題につきましても、今責任の問題につきまして慎重に考慮中でございます。ただこの指揮官の業務上の過失に結びつくかどうかという点につきましては、まだまだ私どもは調査をし、検討いたしませんければ、にわかに申し上げることのできない段階でございます。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 私はこの自衛隊国民の前にきびしく批判をさせて自衛隊を壊滅させようなどという考えを毛頭持っておるものでないことは、おわかりいただけると思うのであります。しかしながら、結果は、自衛隊の志願においても、ああいう自衛隊であるならば、うちの子供たちは、これは志願はできませんと唱えておる人が多数おりました。これは明らかに今後の自衛隊に対する一つの警告であって、今回の事件が全国民に与えている影響ははかり知れないものがあると私は思うのです。この点について私自衛隊訓練、教育の目標というものがどういうところにあるのであろうかという疑義を実地調査をしながら考えたのでございますが、米軍が隊伍を整えて堂々と行軍をしていく、適当な休憩をとりながらやっていくという、そうしたきわめて実情に即したやり方をするときに、日本自衛隊は、今申し上げたように敗残兵の哀れな姿を一方で現出し、一方では重態を伝えられる患者を訓練車であるジープに乗せるというやり方をしておる。現地の連隊長の意見を聞いたところ、この四月より自衛隊は新しい教範——これは言葉が違うかもしれませんが、教範の実施の予備的な仕事に取りかかりたいということを言うておられたのでございまするが、自衛隊で教育訓練のある程度の教範的なものを近く実行に移されようとしておるという、その実体をお示し願いたいのであります。
  80. 都村新次郎

    ○都村政府委員 自衛隊の教育訓練の基本に関しましては、先般来長官からもいろいろお答えがあったのでありますが、自衛隊といたしましては、円満な常識を養いますこととともに、使命の自覚などを含みまする精神要素の涵養に留意いたしまして、あわせて体位の向上をはかるということに努力しておるわけでございます。これにつきましてはもちろんその前提といたしまして、人間性の尊重並びに合理的な基礎の上に行うということを根本といたしております。このたび問題になっております徒歩行進につきましても、段階を追いまして、やさしいものから順次むずかしいといいますか、度を加えまして実行いたしておるわけでございまして、過般の徒歩行進は、そのような段階を経まして、いわゆる補備訓練段階において行われた訓練であります。ただたまたま競技の形式で行われたということから、中には相当無理をするような結果になったのではないかと思うのでありまして、その点は私ども十分慎重に反省もし、また検討もしたいというふうに考えておるわけでございます。もちろんこの徒歩行進のようなことはぜひとも必要な訓練でありますので、今後ともいたしたいと思うのでありますが、今回の不幸な経験にかんがみまして、その点は十分反省いたしまし、いやしくも人命に危害の及ぶような結果となることのないように、合理的な基礎の上に計画を作り、実施していくというふうにいたしたいと思っております。  ただいまお話のございました部隊の運用及び訓練の準拠すべき教範類でございますが、これにつきましては、昭和三十年の三月以来編さんの作業を続行いたしておりまして、最近大体草案ができましたので、これを近く部隊において実地に試験してみる、その実際の試験によってさらに手を加えるようなものがあれば加えて、長官の訓令によって実施していくような段取りになるわけでありますが、そのためには大体三十二年度末または三十三年度の初めころにはそれができ上るのじゃなかろうかというふうに予定いたしております。この教範類の編さんに当りましても、もちろんその基本の考え方といたしましては、その内容が形式的になることのないように、また融通性のあるように、さらにまた合理的な施行過程をとるようにということを強調いたしておるわけでございます。
  81. 細田綱吉

    細田委員 関連して。いろいろ御説明を伺って私の感ずることは、何だか帝国国軍の再現を防衛庁自衛隊でははかっているというか、訓練しておるような感じがひしひしと身にしみてくる。私が申し上げるまでもなく、ある新聞雑誌等によりますと、将来の国防はきわめて高度な、大学教授以上の学識と技術の知識のある人でないと、原爆等の関係兵器は使えない、しかもこの知識のある人のみがまたこれを効果的に使えるのだとすら極言しておる。ところが話を聞いてみると、日本自衛隊は帝国国軍の歩兵の訓練をやはりやって、もう一歩もこれから出ていないような感じがするのです。そんなことをしておると、人間を安く引っぱってきて——今度は安くといってもはがき一枚というわけにはいきませんけれども、人間の数でものを言わせよう、日本の伝統でいえば、国のためといえば命を軽んずるというような、美点といいますか、またものの考えようによっては欠点に乗じて、それによって国防を全うするというような考えが、もしもあなたの方にあるならば、これはB29に竹やりで訓練をするような愚を繰り返すことになる。やはり何だか歩兵第一主義とでも申しましょうか、こんなような訓練がまだその残滓にあるのではないか、こういうことをひしひしと感ずるのですが、あなたの方の教育の基本方針はどうなっておるのですか。  いま一つ、この伊丹部隊第七連隊が一番乱暴なことをしたようですが、この伊丹部隊の現地の指揮しておった隊長及び伊丹部隊部隊長は、これは旧陸軍士官学校か何かをおそらく出た人で、あなたの力で再教育を怠っておるのではないかと思いますが、その人はどこの出身ですか。
  82. 増原惠吉

    増原政府委員 部隊訓練趣旨として、仰せになりましたように、われわれとしても正しい科学技術と申しますか、そういうものを取り入れて、最小限の経費人員で最も効果のあるものをやろうという趣旨でやっておりますことは、従来も長官から申し上げたところでございます。今度問題になりました部隊は普通科部隊、いわば歩兵科部隊でございます。他に施設部隊という工兵部隊なり、特科部隊という砲兵の部隊なり、特車部隊という戦車部隊なり、通信部隊という通信の部隊なり、衛生部隊という衛生の部隊なり、いろいろございます。問題になりました部隊は、そういう意味で昔の兵科で申しますならば、歩兵の部隊相当するもので、しかし従前と相当に違いますところは、若干の車両を持っておりまして、全部一度には参りませんが、若干ずつは車両機動ができる。そうして通信機を相当に持っておりまして、一々伝令で走っていくようなことをしないで、無線通信による指揮ができるというふうなところは、従来のものとは大いに面目を異にしておりまするが、いわば歩兵科部隊のようなもので、単に車に乗っておっただけでは、やはりからだが十分に強健にならない。困苦な状態のもので実力行動をするということのためには、やはり行進訓練というものは非常に重要であるという見地から、行進訓練を課しておるわけでございます。今度問題になりました第七連隊の第二大隊の隊長岡崎二佐は、陸軍士官学校あるいは海軍兵学校出身ではございません。
  83. 細田綱吉

    細田委員 次長の御説明を伺うと、これはもちろんいろいろある。昔だって歩兵もあれば工兵もある、重戦車の戦車部隊もあればいろいろあったのですが、今あなたの御説明を聞くと昔でいう歩兵部隊に該当して、身体の強健をはからなくちゃならぬ、これはもちろんそうです。そうですけれども、今は御承知のように、軍医というか何というか知らぬが、労疲をはるかメーターすら医者にあるのです。ここまでやらなくても、これはできるんです。そうすると人命を犠牲にしてまでもからだを強健にするためだというのは本末を転倒している。これはもちろんあなたの意思ではないでしょうけれども、しかしこれはどうなんですか、この二大隊と申しました人は旧陸軍の士官学校出じゃないという。これはおそらく伊丹部隊の隊長が計画したのでしょう。行進の計画をしたのはだれなんです。その人の出身は何ですか。それからこういうことをするのだったら、あなたの方の御意思はよくわかりますが、これはあなたの方の幹部に対する教育それ自身がなっていないのじゃないでしょうか。やはり歩兵部隊なんだから昔の歩兵に該当する、こんなことを一生懸命やっておったのでは、今あなたがおっしゃるように、無電があるときに、お前一つこれから五里をかけていって伝令をしてこいというような間抜けたことをやって、結局間に合わない間の抜けた軍隊ができてしまう。あまりにもからだの強健というようなことに熱を入れて、結果が科学技術を軽視するという傾向が強くなってくることは、旧国軍がよく証明しています。この点があなたの方の幹部教育に欠けている点なんです。兵隊の身体の強健をはかる、そのはかるべき幹部の教育に私は欠けている点がかなりあるんじゃないか。特に伺えば士官学校でない、前の旧国軍時代の一億玉砕のような考えはなかった人だとすれば、なおさらこれはあなたの方の教育に欠けている点がある。ただ訓練せよ、昔のように馬車馬のように訓練すればいいということで、人格の尊重ということを忘れた弊に陥っている、結果はそうなっている。この点私はあなたの方の教育にきわめて欠陥がある、こう考えるのが一つ。  それから今申し上げたように、この計画は伊丹部隊が計画しているのですが、その伊丹部隊部隊長が、今言ったような弊に陥っているのじゃないか、従ってこの人の出身学校を一つ伺いたい。
  84. 増原惠吉

    増原政府委員 私の説明の書架が足りなかったかもしれませんが、ただ歩かせばいいというような教育のやり方をしているというふうに申したわけではないのです。全部一度に行けないということですが、相当の者は車に乗っていくという車両を持っておる。ですから通常実力行動をする場合には、相当に車に乗っていくという形で演練をやる。しかし一方行進によってからだを鍛えておくということもあわせて必要であるので、行進訓練をやっております。こういうことを申し上げたわけであります。  このたびの行進訓練については、計画者及び現地へ行って統裁をしました者、そして部隊長として部隊を指揮した者、そういうふうにそれぞれ分けてみますと、責任の区分がありますが、これにやはり万全を期し得たとは言いがたい点も十分反省いたしておるわけでありまして、今度の行進はりっぱにやったのだということを絶対申し上げておるわけではないのであります。  なお指揮官その他の出身別でございますが、これはこまかくは人事局長から申してもらいますが、大綱の計画を立てました責任者の第三管区総監は旧士官学校、兵学校等のいわゆる正規将校ではございません。しかしその下の幕僚、第三部長この二人が補佐をして案を立てたわけです。この人たちは旧士官学校の事業者であります。そして幕僚長が現地に参って統裁をやったわけでございます。それから第二大隊長は先に申しましたように、いわゆる旧正規軍人ではございません。次の副長もそうではございません。次にいわゆる暴行問題で名前の出ております八幡二尉というのも旧正規軍人出身ではございません。副大隊長は陸軍士官学校出身でございます。
  85. 細田綱吉

    細田委員 責任は伊丹部隊長ではありましょうが、実際は前の参謀長、今の幕僚長が実際の仕事をし、特に伺っておれば現地で指揮しておったということです。こういう人は今御説明を伺うと旧士官学校出だ。そこで旧陸軍の士官学校出は兵隊としての本筋の教育を受けておるのだからということが、幹部教育をおろそかにしておるのじゃないかという点が、あなたの説明を聞いても何だかひしひしとこたえてくるが、幹部教育に対して士官学校出に甘いと言うと言弊があるかもしれませんが、全体の幹部諸君に対してあなたの方で教育に欠けている点がないか。そう思う節はございませんか。それから将来これを契機に何か改革する御意図があるか、この点を伺います。
  86. 増原惠吉

    増原政府委員 警察予備隊として発足をいたしまして以来、最初に入れましたのは、当時追放の関係で、いわゆる旧正規軍人の人たちは入らなかったわけです。そうでない人たちが入りました。その後二十六年の夏以後、追放が解除になりまして、年令その他の条件の適格な者は旧正規軍人の人が入ってきたわけです。この人たちは入りますときにまず短期の訓練をやります。これは新憲法に基きまして民主主義国家日本としての、そうして防衛庁法、自衛隊法に基くわが部隊のあり方というものを基本として、講習、訓練をいたしました。そうして一応部隊につける。その後現在では各種学校、たとえば教育について申しますならば、富士学校、通信学校、整備学校武器学校、業務学校、いろいろ学校がございまして、段階に応じて初等、中等というふうに分けまして、一時そこに入って訓練をし、また部隊に出るというふうにして、これは旧士官学校出でありましょうが、そうでない者でありましょうが、同様の標準に基きまして訓練、再教育といいますか、そういうものをいたしておるやり方であります。このたびの事故にかんがみまして、もとより長官の御命令、御意向もございまして、こうした事項については将来具体的な計画遂行実施というような面についても十分な注意を促し、これからさらに具体的な詳細な検討に基く注意、指示、教育をいたすつもりでございまするが、人権を尊重するという基本的な現在の建前に基く教育というものを十分徹底をしてやりたい、こういうふうに考えております。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 今訓練の目標を細田さんからお尋ねし、それに対してお答えがあったのでありますが、お伺いしておきますが、旧軍人の自衛隊員における比率というものが、陸海空とありまして、空海に現実に比率が高いということをお示しいただいておるのでありまするが、最近の陸海空にわたり——また先般お願いしておいたのですが、できれば将官、佐官、尉官別に旧軍人の占める比率がどの程度あるかということを、まず第一にお尋ねをしておきたいと思うのであります。それは今回の事件にかんがみて、旧軍人のかつての軍隊で鍛えられた軍人精神というものが、新しい部隊教育に相当深刻に、焼きを入れて鍛えあげるというおそろしいけんまくで行われているという、世に批判されているこの問題の解決のかぎにもなりますので、一つその数字をお示しいただいたらと思います。
  88. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今お尋ねの数字でありますが、手元に持っておりますもので、御説明したいと思います。全自衛官、陸海空の全自衛官の幹部の中における数字を申しますると、将——陸将、海将、空将が、二十六名中旧正規軍人——ここで正規の軍人と申しておりまするのは、短期現役を除きました現役である准士官以上の者をいい、技術、主計、衛生等の各部将校、及び陸士の五十九期、海兵の七十五川を含むということで統計をとっております。陸海空将二十六名中十四名であります。五四%。将補が——これはいずれも昨年の十月現在でございますが、将補が六十九名中五十名、七二%。一佐——一等陸佐、一等海佐、一等空佐四百四十五名中二百八十九名、六五%、二佐、二等陸佐、二等海佐、二等空佐でございますが、千三百六十一名中八百四十名、六二%、三佐——三等陸佐、三等海佐、三等空佐三千四十一名中千五百五十一名、五一%、一尉——一等陸尉、一等海尉、一等空尉五千七百三名中二千八十名、三六%、二等陸尉、二等海尉、二等空尉五千百五十四名山千百二十一名、二二%、三尉——三等陸尉、三等海尉、三等空尉三千七百九名中百九十七名、五%、総計いたしまして一万九千五百八名中六千百五十二名、比率で申しますと三二%ということに相なります。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 これは非常に貴重な数字でありまして、各階級別に旧暇人の占める比率が明らかにされたのでございますが、さすがに佐官クラス以上は全部旧軍人の方々が半分以上を占めているというけんらんたる姿でございます。この旧軍人の占める比率で、高級幹部が下級の隊員に与える影響力というものは、どうしても指導的地位にある方々の意思にゆだねられるおそれはないか。先ほど教育局長が、新しい教範を三十二年の末ごろまでに作りたいと言うておられたし、またその準備としてこの四月から部隊で実施しようと計画しているということを、私は現地の連隊長からも聞いたのでございます。そういう教範の骨子になるようなものを作る方々は、やはりこの佐官クラス以上の高級幹部の方々ではないかと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  90. 都村新次郎

    ○都村政府委員 お答えいたします。教範の編さんに関しましては、その方針にきまして防衛庁全体として十分に審議、検討いたしました上で、陸上幕僚長を通じまして関係委員会を設けまして、そこで編さん上の具体的な細目を作り、それぞれ担当を設けまして、三十年以来やっておるわけでございます。御指摘のようなことに関しまする御心配の点は、先ほど次長からも御説明申し上げましたように、幹部につきましても十分新しい時代に即応する幹部教育をそれぞれ受けて参っておりますので、そのようなことはないと確信いたしております。
  91. 受田新吉

    ○受田委員 私が心配いたしますのは、こうした教範のようなものを作る場合には、文官から入った方とかあるいは一般から入った人々ということになりますと、やはり専門的な知識に浅薄な面があるわけです、そこで旧軍人でかつての軍隊で教育を受けた人々が、かつての、受けた教育を基礎にして、それをあくまで生かすという方向の中心に立つことになることは、自然の姿だと思います。そういう人々が新しい教範を編さんして、その背景にかつての軍隊精神を盛り込むような形に持っていくおそれが多分にあると思うのでございますが、この点について防衛庁長官は、この教範の作成について監督をされて、かつての旧軍人の鋭い潜在意識が新教範の上に民主主義の姿に塗りかえられた形で現われるかどうかについて、いかなる御信念をもって当られようとするかを御釈明願いたいのであります。
  92. 小滝彬

    小滝国務大臣 いろいろ受田さんのおっしゃいますところを拝聴しておりましたが、私も共鳴するところが全然ないわけではございません。私自身が軍隊に二年ばかり文官として入っておりましたので、そういう弊害が全然ないとは私は申しません。いろいろ係の者が今まで説明いたしましたところにあるいは誤解を招いているところがあるかもしれませんが、私は新しい教範と申しますか、こういう基準を設けるについては、もちろん日本日本の特殊の事情も考えなければならないけれども、世界どこの国を見ましても、そういうものはあるわけでありますし、それはフランスにもあり、イギリスにもある。われわれはわれわれの角度から検討しなければならぬ資料をたくさん持っておるわけでありまして、決してそういう連中に引っぱられることなくしてこの民主主義下における自衛隊、特にあなたも御指摘になりました志願制度によるこの自衛隊というような点も十分に勘案して、あやまちのない指導精神によってこれが完成をさせるよう、十分監督いたしましてあやまちなきを期したいと考えております。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 幹部の方々の分布図を拝見しますると、三尉、またこれに二尉が続いておるのでありまするが、この三尉とか二尉とかいう防衛大学で新しい教育を受けあるいは新規採用された人々というものの中には、旧軍人の方がだんだん少くなることははっきりわかるわけなんです。そういう新時代の息吹きを受けた人々がたんだん成長していく過程において、頭の方では旧軍人で鼻息の荒い人がでんと控えて土性骨を入れようという姿に立っている、これが私現実の自衛隊の幹部図ではないかと思うのであります。この際教範の内容にどういうものがあるか。これは秘密にわたるものではないと思うのでございまするが、現に検討中の教範の内容等についてお漏らしいただけることができるならば、資料として御提出いただいたならば大へん仕合せだと思うのでありまするが、いかがでございましょう。
  94. 都村新次郎

    ○都村政府委員 先ほど申し上げましたように、大体草案を得まして、そして四月と思いますが近くこれを実地にやってみるというような状況でございまして、完成すればもちろんお見せできると思うのであります。私どもの手元にもコピーというものはきわめて少い状況でありまして、その点御了承願いたいと思うのであります。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 個人的に拝見をすることができますか。
  96. 都村新次郎

    ○都村政府委員 何といいますか、ごらんいただくことはもちろんできると思います。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 私は実はこの間現地の海田市の連隊長にお目にかかって、今回の演習計画をお尋ね申し上げたところ、競技演習の再終段階において原村演習場付近で実弾射撃をやる計画があった、それを非常に疲労こんぱいした現実にかんがみまして、その実弾射撃演習は中止になったのだということを伺ったのでございますが、間違いございませんか。
  98. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 当初の計画におきましては原村の目標点に到達いたしました後に、各大隊から若干の者を選抜いたしまして、射撃訓練をやるという計画であったようであります。それをとりやめております。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 あの疲れた体で実弾射撃演習をやるということになるとこれはもう大へんだと私も現地で確認したわけでございます。しかも途中で行進コースを楽にするために経路変更もされておる。もちろん雨という特殊の事情もありましたにせよ、当初からこの演習計画に無理があったことを私現地を全部踏破いたしまして強く感じたのでございます。そこでこの実弾射撃をとりやめて、途中で経路変更までして隊員の負担を軽くするところの努力をしたにかかわらずこの犠牲が出たというところに、自衛隊訓練方針あるいは訓練計画というものに常に無理がひそんでいるのではないか、それがたまたま今回こういう具体的な犠牲者が出たので表面化したのであって、平素もこれに準ずるようなあり方がひそんでいるのではないかということを私痛感するのであります。もちろん部隊訓練はこれは自衛隊一つの目標でありまするから、訓練のできていない自衛隊はそれは用をなさないことはわかります。わかりますが、その訓練の度合いというものが、隊員の体力及び部隊の全体の雰囲気、そうものによって常に調整されるごとくにやっていかないと、隊長そのものは激励の意味でなぐったことが、隊員からは暴行を加えられたと批判される結果にもなる。あたたかい愛情がひそんだ部隊でなくして権力組織体としての軍隊であるということに私はなると思う。この点につきまして防衛庁長官、自衛隊というものは権力組織体である、これをお認めになっておられると思いますが、さようお認めになってよろしいか。権力団体であり権力組織体である。そして同時にこの権力団体、権力組織体は、これはあたたかい愛が奥にひそまざる限り権力の乱用になるというおそれがあることもお認めになるかどうか、御答弁願いたいと思います。
  100. 小滝彬

    小滝国務大臣 権力組織体というのは正確にどういうことかわかりませんけれども、もちんろ部隊として訓練もしなければならない、階級というものは存在しているということは、その通りであります。そうして規律を厳重にしなければならない。そうして上官の命令に服さなければならないということは、これは部隊の特質上当然のことであります。しかしながらその指揮者はあくまで指揮者としての良識を持っておらなければならないわけでありまして、その間においてあなたのおっしゃいますような権力の乱用というようなものは、いやしくも許すべからざることであります。これも先ほどから御指摘の通り今の時代にふさわしい、ほんとに皆さんから信頼を受ける自衛隊として規律ある部隊が成長していかなければならないと思いますので、その意味で努力いたしたいと考えております。   〔「愛情は要らないか」呼ぶ者あり〕
  101. 受田新吉

    ○受田委員 私はこの自衛隊の中に、特に志願兵制度でできた自衛隊という以上は、かつての権力乱用がほしいままにされた旧軍隊とは違った要素が必要だと思うのです。しからざれば自衛隊はやがて権力乱用の犠牲者が相次いで現われて、徴兵制度をしかざれば自衛隊が存在できないような状態に立ち至ると私は思います。いかがでございましょうか。
  102. 小滝彬

    小滝国務大臣 私もその点を先ほどの答弁ですでに申し上げたつもりでございます。志願制度によっておることでもあるし、信頼せられる自衛隊でなかったならば、とうていこの組織を維持することはできないということを申し上げたのであります。先ほどはたから愛情というものは要らないかとおっしゃいましたけれども、私の申しました言葉の中には当然そういうものがなかったならばこの組織はりっぱに成長し得ないであろうというように信じまするがゆえに、今受田さんのおっしゃいました点を、そのまま受け取るのでありまして、その気持で進んでいこうというのが私の決意であります。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 現に私の憂慮するところは、小滝さんが防衛庁長官に就任せられて以来、相次いで従来見ることのできなかったような悲惨なる事態が幾つも現われてきた。いわんや今回は死の航空という言葉を——私この前の死の行軍の御質問をするときに、空にも死の航空というおそれがあり得るということを申し上げて御注意した直後に、こういう事件が起りました。明らかに今回のはまた死の航空として批判されるような重大な問題で、死の行軍、死の航空と相次いで自衛隊に襲いかかるこの悲しき事態は、今後ありいく自衛隊の姿の上に暗い影を投げたものだと断定せざるを得ないと思います。私は、発足間もなくして警察予備隊から七年間にして今日驚くべき発展途上にあり、かつてのオタマジャクシが今日はオヒキガエルになって世界に君臨せんとしつつあるこの事態において、(笑声)その総指揮官としての防衛庁長官はその職責のいかに重大なるかを自覚されておると思います。しかし今にして総司令官であるあなたが、方針をお誤まりになるとしたならば、先ほど私が憂慮申し上げた、自衛隊は徴兵制度の権力団体としての本領を発揮する日を招くおそれがあると思うのでありますが、総司令官である防衛庁長官の御決意のほどを承わりたいと思います。
  104. 小滝彬

    小滝国務大臣 まことにその通りでございます。ことに今度私が就任いたしまして以来いろいろな問題が起りましたので、ますますもって私の責任の重かつ大であることを自覚いたしておるものでありまして、皆さんの御支援によってぜひこの戦費を全ういたしていきたいと考えておる次第でございます。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 私は自衛隊の方々が、ここにおいでになる内局の局長さん、官房長さんたち、参事官として、あなたの部下として、長官の補佐官として次長を置かれ、名参事官を置いておられることに対しては敬意を表します。この前も申し上げた通り、御多忙の中をきいて長官以下次長、参事官と漏れなく御出席になって、国会の答弁に立たれるそのまじめな御帳度には深く敬意を表します。しかし今世間は自衛隊に対して非常に大きな批判をしておるのでございまして、新しい自衛隊のあり方に対する国際的な動きと、これに関連する内政上の問題とかね合せて、自衛隊の将来はどうなるのかという心配をしておるのでございますが、私は自衛隊の責任者である皆様方が常にこの国民の深い注意と心づかいを心してやっていただくならば、事故もなくして済むのであろうと思います。なぜかと申しますと、今回の死の航空につきましても、この間私が注意申し上げたことをよく聞いていただいたならば、事故も起らなかったかもしれない。なぜかというと、疲労をした操縦者が誤まって操縦させないように注意するということと、同時に環境を終えてやることとの常にあたたかい心づかいをしてやらなければならなかったにもかかわらず、今回の事件を見ますると、あの美保湾の周辺には救命艇すら一隻もなかった、助かる隊員すらも助けることができなかったと慨嘆久しゅうする声を聞いております。おぜん立てができておりません。すなわち生命を守る準備ができておりません。誘導施設に事を欠いているところもあったやに伺っております。救命具を互いがつけておるのであるから、その救命具を用いて脱出する道もあったと思いまするが、深い注意を怠って死の航空たらしめた責任は、防衛庁の首脳部の方針の不徹底というところにも原因があると思うのでありまするが、総司令官である防衛庁長官の御意見はいかがでございましょうか。
  106. 小滝彬

    小滝国務大臣 私のただいまの感じでは、今回の美保における不詳なできごとと先ほどから論及せられておりまする行進の問題とは相当違ったものがあるのじゃないかと思っております。私は今御指摘になりましたことを一々反駁しようというような気持は持っておりませんが、たとえばあの際において、もちろん救命具もあの飛行機の中にはありまするが、それをつける余裕はあの状況から判断いたしまするとなかったかに察せられるのであります。ただいま現地で詳細なる審査に当っておりますので、その結論が出ます前にいろいろ早まった結論的なことは申し上げたくないのでありますけれども、今御指摘の、たとえばGCAが不完全であるというようなことに対し出しても、実はあそこの地形から考えると、西側においては、そのきわめて近くに山があるという事情もありますし、あの事故を起しました百二十フィートから百フィートのところにおきましては、そういう山があってもあれほど低空になると有視界飛行をしなければならなかったということもあるようでありますし、あの際にパイロットが非常に疲労しておったというふうに即断し得るやいなや、私はいろいろの点からこの問題は検討しなければならないと思うのであります。  なおまた救命艇がなかったということも事実であります。目下あそこにありましたアメリカの救命艇も引き揚げたようでありまして、アメリカ側になるべく日本側からそこに置いておくように、提供してくれるように要請しておりますけれども、すでに航空自衛隊といたしましても救命艇を——予算にも載っておりますように、これを手に入れまして、ただその操縦は海幕の方にまかせた方が、それをまた航空自衛隊の方へ要請するよりも実際上都合がよかろうというのでそういう取り計らいをいたすようにもなっておるのであります。しかし御承知のように、昨年以来問題になりました中古エンジン——率直に内部のことを申しますれば、こういうものの購入についても係官が少し神経質になり過ぎて、また適当のものでないと値段についていろいろ批判が出ると困るというのでびくびくしておるというような内部の事情も、私はここで率直にぶちまけて申し上げるのでありますが、そういう点は一つ御同情を願いたいと思うのであります。今後こういう点には十分留意をいたしまして措置をしなければなりませんが、しかし結論的なことはこの審査会の方の結果を見まして十分検討いたしたいと考えております。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 私は防衛庁長官の責任を、いま一つお聞きしたことがあったのですが、それはお答えがなかった。とにかく部下をおしかりになるだけではなくて、総司令官みずからが悲壮なる決意でお立ちになる、そして全員に緊張せよと布告をしろとこの間申し上げたが、一体布告されたかどうか、一つお答え願いたい。
  108. 小滝彬

    小滝国務大臣 平素から各幕僚長を通じて必要な注意を与えておりますが、空幕について申しますならば、来たる日曜日には全国からみな集まってもらいまして、私が直接ひざを交えてお話をするつもりでございます。毎日国会に出なければならぬ、予算委員会にも出なければならぬ、参議院の内閣委員会にも出なければならぬ、こちらにも出なければならぬ、そうすると、せっかく全国から集まってもらいましても、一々親しく私の気持を伝える時間がございません。そこで、まずこの次の日曜、十日には全国から集まってもらって親しく私の気持を伝えたいと思っております。それから陸幕については、この次の日曜日——その間にはまた国会へ出なければならぬというようなことで、多忙であるかもしれませんので、そこで日曜日に全国から集まってもらって、朝から晩まで君たちと話をして私の気持を伝えるからということを言っておるわけでありまして、今御指摘のようなことが十分徹底いたしますように万全を期したいと考えております。
  109. 細田綱吉

    細田委員 関連して。ちょっと奇怪なことを伺うのだが、長官は今受田委員質問に対して、その問題とこの問題とは違うのだというのですが、人命軽視の傾向は、これは何といっても——あなたは高速救命艇のことは御存じだと思う、私よりも十分専門家の位置についたのだから。高速救命艇はこんな狭いところには必要がないですよ。ここはごく狭いところじゃないか。そうして二百五十億だとか二百八十億だとかいって繰り越しておる。  それからいま一つ民間人が乗っておるでしょう、民間人が乗っているのにそれになおかつ救命袋も待たせなかった。これは初めて聞いたのですが、これは確かに人命軽視ですよ。しかし高速救命艇のことは、問題は別です。十万五百円であったものを千二百五十万円で貰うというから問題になる。これはかりにあなたのところへかかってきたらあなただって問題にするでしょう、そういうことは理由にならぬですよ。そんなら国会なんかやめた方がいい。そうでしょう。十万五百円のものを千二百五十万円でなおかつ適当だというばかなことを言うから決算でも問題になるので、これはあなただって問題にするでしょう。これでいじめられたからノイローゼになっている、とんでもない話だ。もう一度お答え願いたい。
  110. 小滝彬

    小滝国務大臣 救命具はもちろん飛行機に備わっているということを申し上げたのであります。ただ急にぱっとした瞬間に、救命具があってもここにこうかけるという余裕がなかったでありましょうということを、私は今中間報告的に私の感想を申し上げたのであります。  なお救命艇につきましては予算はとってありますけれども、なかなか購入などに事実上時間がかかっておって、はなはだ遺憾であるという内情をぶちまけて申した次第でございます。
  111. 細田綱吉

    細田委員 これは次長に伺うのですが、高速救命艇は確かに衆議院の決算、参議院でも問題になった。それであなたの方はノイローゼにかかっておる。基地の周辺、特にあの海の近所である周辺にアメリカ軍が置いておったのを引き揚げたあと日本自衛隊はノイローゼの結果配置しないのですか。その点、衆議院の決算で問題になった後のことを伺います。
  112. 増原惠吉

    増原政府委員 決算の方であるいは御承知かと思いますが、決算委員会でも例の問題のパッカード・エンジンは買わない方がいいだろうという申し出がありました。当時の長官もあのエンジンを買うことは十分考えて適当な措置をとりたい、具体的には米軍から供与を受けるように努力するというふうに申したわけであります。その後米軍の方へ引き続き折衝をいたしておりまして、米軍から適当なエンジンあるいはエンジン付の救命艇というものを供与してもらうように自後折衝を続けておるわけでございます。内部的な経過を申しますると、八、九月ごろ供与可能であるようないい情報がありましたが、その後それが見込みがないということになり、また最近になりまして供与の見込みが若干あるというふうなことで、今具体的にぜひ供与してくれといり形で、この問題は一生懸命折衝をいたしておるという段階でございまして、現実にはそこに救命艇の備えがなかったことはまことに遺憾に存じておるわけでございます。ゴム・ボート、救命いかだその他のものは打っていましたので、そういうもので自衛隊としては救助その他の措置に出かけ、消防団、警察、海上保安庁等の援助を得て処置に当ったというのが今度の実情でございます。
  113. 細田綱吉

    細田委員 今高速救命艇の価格の点が、だれが考えてもべらぼうだということを申し上げたが、もう一つ高速救命艇は、御承知のようにガソリン・エンジンで四十ノット、四十五ノット出るといっても、飛行機に追撃されてぶるっと機銃掃射を受けたら、ガソリンが爆発して救命すべきものが救命される立場になる。だからこれが問題になってディーゼルでなくてはだめだという結論に立ってアメリカ軍がやめた。そんなアメリカの要らないものを千二百五十万円も金を出して買うというようなべらぼうなことをやるから衆議院で問題にしたのです。その点は防衛庁長官よほど長生きすると思うのは、あなたは予算にも載っておってこれからやる、こう言うのでしょう。予算に載っておるものは三十二年四月一日からの話です。この救命艇がどの程度の予算になっておるかまだ私は拝見していないが、三十二年度から予算に載せておるのに、三十一年度から、四月一日前に民間人まで乗せて飛び回るのだという考え方では、あなたはずいぶん長生きすると思う。まあこの点は余分ですが、高速救命艇についてさらにまた蒸し返されては困るので、あなたのノイローゼを救うために、この高速救命艇をあなたはどういうふうにお考えになっておるか最後に伺っておきます。
  114. 小滝彬

    小滝国務大臣 いろいろ技術的なことはありましょうが、とにかく私が申し上げましたのは三十一年度の予算に載っております三隻であります。しかし事実上の調達はエンジン問題でひっかかっておりますので、三十一年度内には調達できないだろうけれども、できるだけ早くこれを調達させるというこれまでの取り計らいの次第を申し上げたのであります。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 もうそろそろ時間が来たようでありますから、質問は明日以後に譲ることにしたいと思いますが、おしまいに一言申し添えておきたいことがあります。実はこのC46輸送機は、もう三十年に米軍から供与されて以来問題になっておった。昨年の三月、四月ごろに世論機関である新聞その他にも相当批判的な報道がされておった。昨年四月に内閣委員会をあげてこのC46輸送機に乗って九州の自衛隊視察をやろうと特に私が強力に申し入れた。ところが自民党の方がおそれて、おれは乗らぬ乗らぬと言われてやめてしまった。そういういわくつきのものです。それでともかく自衛隊の視察は実行できなかった。しかるところ七月に、はしなくも北海道の自衛隊の方の招きを受けまして、ここにおられる林防衛局長の御案内で私は勇を鼓して北海道に行って参りました。またその後九州へも旅行いたしました。なるほど乗ってみると気持が悪い。(笑声)けれども絶対安全だという御説明がありましたので、われわれはその防衛庁当局の御説明に信頼して搭乗したのであります。ところが、おりるときの救命具をつけるやり方は教えてくれたのでございますが、一般局間人がすぐ習おうったってなかなか覚えられないのです。そこで、あのとき乗っておられた一般民間人なども、突入しそうだというときにはつける方法も知らなかったのじゃないか。また着陸前には救命具をつけなければならないということになっておったと思っておりましたのに、それすらもやっておらないところを見ると、非常にルーズに人命が取り扱われておったということが言えると思います。そういう意味で、少くとも世間で非常に非難されたいわくつきの飛行機であるだけに、念には念を入れて不用意なことがないように準備をして、おりるときには経路変更のことも着陸場の変更のことも考えられるし、いわんや階下傘部隊を運ぶ飛行機でありますから、おりるときの訓練ぐらいやって人命を大事にする方法をとってもらいたかったものです。そこにあまりにも安易に人命を考える傾向が死の航空を実現せしめた結果になった。私は今にして顧みるのに、あれだけ御注意申し上げておいたのに、それを実行されなかったことを残念に思うし、世論がきびしく批判をしているときには、防衛庁は耳を傾ける、こうなければならぬと思うのです、最近起った自衛隊のいろいろな事件は、要するに、世論の注意を十分聞いてそそうがないようにする努力をされたならば、未然に防止せられた事件が幾つもあります。ただ高速救命艇の場合は、世論に遠慮して遂に製造を手おくれにせしめたという嘆きはございますけれども、概して言うならば、世論に耳を傾けてやるときには、国民自衛隊として間違いのない方向にいくだろうと思うのです。防衛庁長官、あなたがせっかくこうして三軍を指揮叱咤激励せられる最高司令官になられた今日、願わくば、日本自衛隊のほんとうの姿を、自民党の政府としては、自民党の政府なりに、国民自衛隊として間違いのないように十分の御注意と御努力をせられる必要があると思います。私は事件のあとを追っかけていくこの悲しい質疑応答に対して深い反省と嘆きを持っております。されどこの問題をこのまま放置するときには、病膏肓に入って、自衛隊の行方は奈落の底であるということを断言せざるを得ないと思うのです。きょうも「かたえくぼ」という欄にこういう皮肉が書いてございました。「自衛隊の信用」という題で「地に落ちました。——輸送機」と書いてあります。私はこの声を率直に一つ聞いていただいて、自衛隊の信用を回復するために、この際防衛庁長官を中心にして斎戒沐浴、大いに奮励努力せられんことを希望いたしまして質問を終ります。
  116. 保科善四郎

    ○保科委員 受田委員質問に関連して、私はちょっと意見を申し上げておきたいのです。もちろん旧軍隊には悪い点もありましたけれども、日清、日露の戦役に輝やかしい戦果をあげた美点もたくさん持っておるわけであります。従って、何もかにもが旧軍人がだめだというようなことは、これはそういうことは考える必要はないと思います。やはり過去のいいところも取り入れ、そして行き過ぎもあったのであり、過去のこの間の戦争において欠点がわかっているのですから、教育の面においてもそういう点を勇敢に改めて、そしてりっぱな自衛隊を作るということにやっていただかぬと、あるいはせっかく一生懸命にやっている方々がディスカリッジされるようなことがないように、特に御注意をお願いいたしたいと思います。
  117. 小滝彬

    小滝国務大臣 ただいまの御注意を承わりまして、十分その趣旨を徹底させたいと存じます。  ただ一言、報道関係の方もいらっしゃいますので、一つ受田さんのおっしゃいましたC46が非常に古くて悪いとおっしゃいました点について、私の調べましたところを——もちろん製造がされましてからは期間がたっておりますけれども、たとえば、この問題になりました飛行機にいたしましても、オーバーホールが済んでから千二百八十二時間という程度でありまして、他の現に民間航究などで使っておられる飛行機に比して特に古いというわけのものではないのであります。しかもまた事故につきましても、供与を受けましてから自衛隊においては三回事故があったのでありまするが、その一つは御指摘の築城から羽田に帰るときにエンジンが故障を起したということ、また美保の基地においては胴体着陸をした事故があったようでございます。この三つの事故がございまして、今度の事故は特に遺憾千万でありまするが、これはレコードとしてはよくはないかもしれませんが、航空事故として今度のを除きますれば、それほど他の種に比してこれが特に悪かったということは考えられないのであります。本日のニッポン・タイムズでも、極東軍の方でスポークスマンが正式に発表しておるところを見ましても、極東電においても、また同様米本国においても、C46を使っておりまするが、大体二万航空時間に対して一度の事故を起しておるというレコードのようでありまするし、ことに昨一九五六年においては、このC46の航空時間が十が時間であったのに対してその間には人命に関するような事故は一度も起してないということを発表いたしておるのでございまして、もちろんこれは人命に関することでありますから、真剣に研究させたいと考えまするけれども、今直ちにC46が非常によくない飛行機であるというようには即断いたしかねます。御趣旨のほどはよく体して今後研究させますが、この点は、報道機関の方もおられますので、この際一言申し添えておきいと思います。
  118. 細田綱吉

    細田委員 それで私は最後に伺いたいのですが、原因をまだ探究中であり、次長の御説明を聞くと、予断を持たないで、厳正に、正確に結論を得たい、こういう御趣旨ですから、それは非常にけっこうだと思うのです。しかし救命艇もそばにいなかったし、またあの輸送機ですか、落下傘部隊飛行機ですか、そういうもので、私も実際受田君と一緒に北海道までお供して、そういう簡単に着られるものでないことも経験したんだが、こういうこと自体がきわめて自衛隊にとっては不用意な点、言いかえれば、また民法上の過失なりとも思える。そこで、自衛隊の諸君は、いろいろ規則があって補償なんか受けられる、あるいは二階級特進とを何とかいったものがあると田ふうが、民間人に対して、あなたの方はどういうふうな手当というか、賠償というか、補償の御用意があるか、その点を伺います。
  119. 北島武雄

    ○北島政府委員 今回の事件に関しまして、なくなられましたと想定されます民間人の方二名に対する国の賠償責任の問題でありますが、この点は、ただいま事故調査委員会において原因の調査をいたしておりますので、この原因によって適用される法規があるいは異なるではないか、こう考えております。かりに、もし操縦士等の自衛隊職員の公務執行中の過失に基くものでございますれば、国は民法第七百十五条の規定によりして、使用者としての責任を負うべきでございます。それから、かりに自衛隊職員には過失がないといたしましても、航空機自体に瑕疵があったということになりますれば、これは国家賠償法第二条によりまして、公けの営造物の設置または管理に瑕疵があって、これによって他人に損害を与えたときは、国または地方公共団体は、賠償する責任がございます。法律関係から申しますれば、そのようなことに相なるかと思います。そして賠償の基準といたしましては、自衛隊防衛庁の内部におきまして、実は米軍の行為によりまして民間人に損害を与えた場合の基準に準じまして同一の基準を作っております。この基準は同時にまた国家公務員災害補償法に基く補償あるいは労働者災害補償保険法に基く補償とほとんど同一基準でございまして、ただいまのような事故の原因が判明いたしますれば、適用状況を異にいたしますが、これに基きまして防衛庁におきましては十分の損害賠償をいたしたいと考えております。
  120. 細田綱吉

    細田委員 少しあなたのお考えは甘いような感じがするのですが、こういう飛行機に乗した責任自体をあなたは少くとも今御説明にならなかった。あるいはあなたの方でどんな事故が起きてもおれの方は責任は負わないぞという一札をとっておるかもしれない。しかし乗ったって過失の場合は問題だが、過失でないとしても、こういう民間の人たち——いかに情報機関といえどもこれを乗したという責任によって賠償の結果が若干違ってくると思う、これをどういうふうにお考えになっておるか。
  121. 北島武雄

    ○北島政府委員 自衛隊側におきまして無理に乗っていただいたものではございません。御当人が乗りたいというので、長官までの承認を経てその申し出に応じたわけであります。その点につきましては防衛庁といたしましては責任はないと考えております。ただこれがもし、ただいま申しましたように、航空機の故障であります場合には、航空機も公の営造物の一種でございますので、国家賠償法第二条の規定の適用があり、あるいはまたもし搭乗員の過失によるものでありますれば、民法第七百十五条の規定によって防衛庁は損害賠償の責任があると考えておる次第でございます。
  122. 細田綱吉

    細田委員 私は希望するしないということは、民法上の、あるいは国家賠償法上の補償の判断に大した影響はないと思う。というのは、それだからこそ、あなたの方は乗せる場合は長官までの承認を受けるわけです。希望したとかいうことではなくして、乗したということ自体が私は相当問題じゃないかと思う。相当問題どころではない、その賠償責任は発生するのではないか。この点あなたのさらに御意見を伺いたい。
  123. 北島武雄

    ○北島政府委員 私の個人的の法律的知識の範囲内におきましては、先ほど申し上げた通りでありまして、ただ乗ったがための責任ということはないように考えております。それが航空機の故障に基く場合は、先ほど申しますように国家賠償法、操縦士の故意または過失による場合は民法第七百十五条によって防衛庁は責任を負うものと考えております。
  124. 細田綱吉

    細田委員 それでは私はさらにこの問題は若干調べて参りまして、次になお質問することにいたします。
  125. 相川勝六

    相川委員長 次会は明八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会