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1957-03-13 第26回国会 衆議院 大蔵委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十三日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢重吉君       淺香 忠雄君    奥村又十郎君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       杉浦 武雄君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    前田房之助君       有馬 輝武君    石村 英雄君       春日 一幸君    神田 大作君       久保田鶴松君    横山 利秋君       石野 久男君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君  出席公述人         慶応大学教授  高木 寿一君         芝浦製作所専務         取締役     西野嘉一郎君         全国銀行協会連         合会副会長         大和銀行頭取  寺尾 威夫君         日本労働組合総         評議会事務局長 岩井  章君         税理士、公認会         計士      前川万治郎君         日本証券業協会         連合会専務理事 吉田 政治君         日本橋法律会計         税務相談所所長 平石  甫君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法  の一部を改正する法律案について     —————————————
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより大蔵委員会公聴会を開会いたします。  この際御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところを当委員会公聴会に御出席下さいましたことにつきましては、委員一同を代表して厚くお礼を申し上げます。申すまでもなく、当公聴会において御意見を承わります所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきましては、租税特別措置法案とともに最も重要な歳入法案でありまして、当委員会はもちろん、院の内外を問わず活発な論議が展開されておりますので、ここに公聴会を開き、広く各界の学識経験者並びに利害関係者の御意見を承わり、もって審査の慎重を期すとともに、その審査を一そう権威あらしめんとするものでございます。何とぞ各位におきましては、あらゆる角度から忌憚のない御意見をお述べ下さいますよう、お願い申し上げる次第であります。  なお議事の順序について申し上げますが、公述人各位の御発言順序は、特に必要ある場合は適宜委員長において取り計らいますが、大体公述人名簿にあります通り順序によって御発言願うこととし、お一人の公述時間は、大体十五分以内でお願いいたしたいと存じます。また公述人各位に対して委員より御質疑があることと存じますが、高木公述人西野公述人及び寺尾公述人は特に御所用の由でありますので、三君の公述に対する質疑は、三君の公述が終りましたあとでお願いすることとし、その他の公述人方々に対しましては、一通り公述が終りましたあとで一括してお願いすることといたします。  なお念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところにより、御発言の際は、委員長の許可を得た上で御起立して御発言願い、また御発言の内容は、意見を求められた範囲を越えてはならないことになっております。また委員質疑の際に、公述人より委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願っておきます。  それではこれより順次公述人の御意見を承わることといたします。まず最初は、慶応大学教授高木寿一君にお願いいたします。高木君。
  3. 高木寿一

    高木公述人 ただいま御紹介を受けました高木寿一でございます。御指定の時間内に、所得税法人税中心とする租税計画、ことに減税の問題について、私の考えておりますることを申し述べたいと存じます。  現在、すなわち三月現在の実情減税問題とが、かけ離れた基盤の上で論議が進められておると私は思います。従って三十二年度の租税計画論議する根本の出発点が誤まっておると思います。先ほど委員長もおっしゃいましたように、率直に申し上げてみたいと思います。これは誤まっておると言っては言い過ぎかもしれませんが、誤まる結果になっていると私は思います。根本的な前提条件が誤まっておりますれば、その上に立つ租税計画もまた完全ではあり得ないのは当然だろうと存じます。まずそれらの点について二、三申し述べたいと思います。  日本国税制度におきましては、申すまでもなく、相続税を除きましてはすべて国民所得源泉としておりますから、国民所得が増大すれば、その割合租税収入が当然増加いたします。ですから、所得増加に対する租税収入増加、すなわち自然増加額割合、これを限界租税函数と申しますが、日本現行税制についてこれを検討してみますと、約二七%であると私は推計しております。これは数回私がいろいろ研究してみました結果、日本国税制度における限界租税函数は、所得増加から生じてくる租税収入増加割合でありまするが、これは大体二七%であります。ですから、国民所得が一兆円増加いたしますれば、租税収入は二千七百億増加する結果を生ずる租税構造であります。しかし念のために申しますが、国民所得増加租税収入自然増加となって現われるまでには、約四ヵ月ないし五ヵ月の時間的のずれ、いわゆる時のおくれがあります。所得増加額に対して二七%の自然増収を生ずる租税構造でありますが、しかし所得増加して、それが税収の増加に現われるまでには、約四ヵ月ないし五ヵ月のおくれがあります。もちろん源泉控除が行われる場合には早く現われて参りますけれども、租税制度全体として申し上げておるのであります。  そこで、御承知通り日本経済は、一昨年の末から現在までに経済規模拡大国民所得増加が続いておりますから、約四ヵ月のおくれをもって国税収入増加に現われて参ります。従って臨時税制調査会答申におきましては、三十二年度の自然増収を約五百億ないし六百億程度と見込んでおります。この増収見込みの上に立って一千億の減税租税特別措置整理物品税増徴提案したわけであります。しかし、この臨時税制調査会提案基礎になっておりまする三十二年度における自然増収見込み額というものは、昨年の八月から九月へかけての増収見込み基礎にしております。ところが、先ほど申しましたように、租税増収国民所得増加を約四ヵ月おくれて反映いたしますから、臨時税制調査会がいろいろの減税計画、千億の所得税減税及び租税特別措置整理物品税増徴提案するその計画は、昨年のおそくも六、七月、まあ五、六月の所得増加を反映した租税収入見込み額でございます。その後、申すまでもなく経済規模拡大し、国民所得増加を続けております。ところが、政府提案されました三十二年度の予算案では、これは、地方譲与税は別といたしまして、国税自然増収額は約千九百二十二億円となっております。これにたばこ専売益金、これは租税専売でありますし、たばこ税でありますから、これを加えると、これが五十五億増加を見込んでおられますから、合せて千九百七十七億円でありますが、これは昨年の十一月ごろまでの所得増加を反映した自然増収見込み額であります。従って、その後三十一年度の国民所得増加は続いておりますから、ただいま、すなわち三月現在における自然増収見込み額は、この三十二年度予算のときに政府が示されておりまする自然増収とはだいぶ違っております。先ほど現行税制限界租税函数は二七%であると申しましたが、大事をとって二五%であるとして、内輪考えてみることにいたしましょう。三十一年度の予算編成の当時における国民所得推計額、これは昨年の二月の初めに企画庁が発表されたのでありますが、これでは六兆九千七百十億であります。ところがその後の推計額、ことしの一月二十六日という日付で出ております経済企画庁の三十二年度経済計画の大綱、この十七ページに示しております所得推計額、三十三年度の見通し、その差額をとってみますると一兆二千九十億円であります。先ほど申しましたように、一兆二千九十億円の二七%の自然増収を生ずる、さらに内輪に二五%の自然増収を生ずる、こう内輪考えてみましても、三十二年度の自然増収見込み額は、政府の言われるように千九百二十二億、たばこ税を加えて千九百七十七億でありますか、それとはだいぶ隔たりがあります。従って私は、三十二年度の自然増収額は二千五百億をこえることは確実であると思います。そのことについては、なおすぐ後に申しますが、それでは三十一年度内の国税自然増収、これはやはり地方譲与税を除きますが、現在すでに一千百億円をこえるという見込みは確実に大蔵省において立っているはずであります。これは、先ほど申しました経済企画庁分配国民所得推計、昨年の三十一年度予算編成当時の推計額との差額に対して、先ほど来申しております限界租税函数の数値を当てはめてみてもわかることでありますが、その上に景気上昇につれて、従来滞納されているもの——この租税及び印紙収入予算の説明という資料などにも、滞納をされているものの四五%とか五〇%が収納される見込みであるということがしばしば出て参りまするが、景気上昇の結果として、従来滞納されているものが非常にたくさん納められたということからも、それも一つの原因となりまして、大体先ほどの千百億円よりもそこに滞納が入ってくる、従来の滞納が納められるということの結果として、三十一年度内の自然増収は千二百億程度であると思います。補正第一号では所得税法人税とおのおの二百億、それから昨日新聞で拝見しますと、本日国会に補正第二号が提出されるというふうに承わりましたが、それを見ますと、酒税が四十億、物品税が三十億、関税が六十億、補正第一号と第二号を合せますと五百三十億でありますが、これはおそらく三十一年度内の自然増収を慎重に内輪に見積って、その約半額近いものを補正第一号と第二号の財源とし、あとの六百億は政府保蔵にして、政府余裕金として吸い上げたままにしておくというお考えに出ているのだろうと私は推察いたします。  先ほど、三十二年度の自然増収は二千五百億をこえるであろうと申しましたが、あるいは皆様の中には、そんなにあるものかとお思いになる方もあるかもしれませんが、一方に税務当局者は、そんなものじゃありませんよと言うだろうと思います。それで、二千五百億をこえるということを申しましたが、どれくらいこえるのだと申しますと、私は、現在までの状態から判断いたしまして、少くとも二千七百億までは増加すると思います。そこで、私の申し上げることに対して御不審であり、またそんなことを言ったってほんとかいと言う方がおありでしたら、どうか主税局当局者にお尋ねいただいて、三月現在の自然増収見込み額をお尋ねいただきたいと思います。そのお尋ねいただくときに、十二月末現在の見込み額ということならもうわかっておる。三月現在において幾らの三十二年度における自然増収見込み得るか。私は、これは実は予想外自然増収が多いので驚いているんだというのが実情だと思います。  そこでさかのぼって申しますれば、臨時税制調査会は六百億、あるいは五百億の自然増収程度であるということを、千億減税計画一つ基本的条件にしております。その租税計画基本的条件が全く違ってきた。五百億と二千七百億じゃ、そこに自然増収見込み額が五倍も違っていれば、租税計画考え直さなければならぬはずだと思います。いや自然増収が、五倍違ったって租税計画構造は同じでよろしいんだ、そうは私は言えないと思います。条件が、出発点における前提が非常に違っていれば、従って租税計画もまた変えなければならぬ、こういうふうに私は思います。そこでまたさらに三十二年度の自然増収、先ほど申しましたように、政府提案された自然増収見込み額が、たばこを入れまして千九百七十七億でありますから、それと私が申しました二千七百億をこえる、それにたばこもやはり加えますれば、八百五十億の違いが生じます。自然増収額見込みにおいて、三月現在において八百五十億の食い違いがあるわけであります。そこで、所得税一般的な減税は約千九十二億円となっておりまするが、これは財源が許すならば、国民租税負担軽減したいものだ。しかし軽減したいんだけれども、財源がないから今はこの程度でがまんしてくれ。また千億減税するといえば、そう少いものじゃないからがまんできないこともあるまい、遺憾ながら財源がないから今は千億の減税でがまんしろと言われておる。しかし国民租税負担軽減は、財源が許すならば、皆さん国民租税負担軽減に御賛成いただけると私は信じております。いや、財源があっても国民租税負担軽減しようという考えはない、そんなことは私はおありにならないと思います。そこでここに八百五十億の財源がありましたらば、それをいかがなさいますか。私はここで一挙に八百五十億を全部減税に使ってしまえなどと、そういうことを申すのではございません。決っしてはったりなどを言おうと思っているわけではありません。しかしここに政府提案の千九百七十七億の自然増収見込みよりも八百五十億多い財源があるということは、事実であります。  そこで私は、すでに衆議院を通過した歳入歳出予算でありまするから、これに触れようということは少しも考えておりません。これに少しも触れないで、他に摩擦も生じないで、そうして円滑に所得税中心とする減税規模拡大することを提案いたします。さればといって、八百五十億を一挙にその減税に使ってしまえなどと申すわけではございません。私は財源が許すならば、勤労所得者五人家族といたしまして、勤労所得者の五人家族に対しては、基礎控除とか扶養控除とか勤労除控などの諸控除を差し引いて、課税最低限年額三十六万円、月額三万円とすること、そこまで減税規模拡大していただくことを一応の目途としたいと考えまするけれども、月額三万円までは所得税がかからないと申しますと、皆さんの中で、それは多過ぎるじゃないかとお思いになる方があります。戦前物価と比べまして、月額三万円と申しますれば、物価指数を四〇〇と考えますれば、月額七十五円であります。七十五円でもって五人の世帯の生計を立てていけ、これは皆さんの昔の御経験からいっても決して楽なことではないということが御了解いただけることはもちろんであります。しかし勤労所得者課税最低限年額三十六万円、月額三万円、これは今申しましたように、戦前物価に直せば月に七十五円でございます、そこまですぐに減税規模拡大するということも、これは相当多額の財源を要します。従って八百五十億の自然増収見積り増を大部分使い切ってしまいます。従って私はもっと控え目な——自分で申すもいかがですが、着実な、実行可能な提案をいたしたいと思います。  これは先ほど申しましたように、先日衆議院で可決されました歳入歳出予算には少しも触れません。また他にも摩擦を生ずることなく国民租税負担軽減を行おうと、まず政府案では所得税基礎控除が九万円になっておりますが、これを十万円に引き上げていただきたい。それから扶養控除を、第一人目は政府案のように五万円でもいいと私は思います。しかし第二人目、三人目、四人目、これを現行税制よりも五千円ずつ上げていただく、こういうことを提案いたします。それから勤労控除を四十万円まで二〇%という政府案でありまするが、これを二五%に引き上げていただきたいと思います。そのただいま申しましたことに四十万円から八十万円は政府案のように一〇%にいたしまして、最高限度は十四万円になりまするが、これらの減税規模拡大することによって幾ら財源を要するのだというと、私は大体三百五十億から少し、四百億は要らないと思います。八百五十億の自然増収見込み増のうちから三百五十億程度をさいて、勤労所得者中心とする減税規模拡大していただきたいと存じます。政府案では、扶養控除は一人目だけについて五万円に拡大されておりますが、これは世間一般にいわれますように、例の律義者子だくさん、まじめに働いていて最も生計が苦しい、いわば中年のごく律義者子だくさん人たちは、黙って働いている人たちでありまして、多く声を出さない。一生懸命じみちに働いている人たち生計を救う。今日子供が三人あって、これがみんな義務教育を受けるとなれば、なかなか生計が苦しいのはもちろんでありまして、母親は自分が食うものをさいたって子供のために食べさせているという人たちでありますから、財源余裕があり、財源が許すならば、まずまじめに黙って働いている律義な中年人たち租税負担軽減をするということを考えていただきたい。またこれはやや私の専門以外でありますが、一般賃金体系考えましても、これら三十代の人たち賃金体系が中だるみになっているというのが、今日の一般賃金体系状態であると思います。従ってそれらの人たちがまた扶養家族が多い。そして黙ってまじめに働いている人たち生計を救うためには、租税負担軽減を行うためには、基礎控除の引き上げばかりでなく、扶養控除の二人目、三人目、四人目についても、扶養控除額現行制度よりも引き上げなければならぬと思います。それが政府案には出ておらないように私は拝見いたしました。この点の基礎控除額の増額、扶養控除の金額、勤労控除は四十万円まで二〇%という政府案でありまするが、これを二五%までにしていただきたい。なお勤労所得に準じまして、小営業者所得に対しても、四十万円までは一〇%の勤労控除に準ずる措置を行なっていただくことが、しかるべきではないかと存じます。  そこでそれらの措置を行いましても、これらは御承知通り初年度において要する財源は三百五十億をやや上回る程度である、こういうように考えます。従いまして差し引きますと、三十一年度の自然増収から、先ほど申しましたように補正第一号、第二号で五百三十億を繰り入れておる。三十一年度の予算財源とされたわけですから、あと三十一年度の自然増収のうちの六百億と、それから三十二年度の自然増収のうちで、ただいま申しました控え目な勤労所得者中心とする減税規模拡大によって、三百五十億をやや上回る財源を使うとすると、あと約五百億残ります。その三十一年度の六百億と三十二年度において五百億合せて千百億、これがただいま私が申し上げた減税規模拡大をいたしましても、政府の吸い上げ超過のままで政府保蔵になるのが千百億、あるいは今度の予算によってインフレ危険性があるということをおっしゃる方がありますが、もしその危険があるならば、一千億円をこえる政府保蔵がそれを調節する役割を持つと思う。そうなりますと、これは三十二年度の第一次の減税であります。それで三十二年度内における経済の動きを見て、第二段の減税計画に移っていただきたい。その減税計画は、先ほど申しましたように、勤労所得者五人家族考えますれば、年額三十六万円というところまでは持っていけると思います。私の先ほど申しましたところでは、勤労所得者五人家族の場合には、課税最低限は、初年度において三十一万円近くになります。従って政府案よりも第一段で五万円ふえます。そうして三十二年度内における経済の推移を見て、あとの五万円をふやす。一ぺんに三十六万円を最低課税限度にしたいのはもちろんでありますが、すぐそこへいっては慎重を欠くことになりはしないかと考えまして、政府案よりも五万円ずつ引き上げていく。そうすると、第一段政府案よりも三百五十億以上所得税減税額がふえますから、大体千四百億の減税になる。ところが、これは皆さんに申し上げては失礼でありますが、念のために申し上げておきます。千四百億の税法上の減税をいたしますれば、千四百億の純減収にはなりません。減税増収を生むわけであります。減税をすれば、国民の可処分所得がふえますから、可処分所得がふえれば支出がふえます。支出がふえれば、またその支出を受け取った人の収入になりますから、従って国民課税所得がふえるわけですから、その課税所得のふえた割合でもってまた租税収入がふえるわけであります。従って千四百億の減税は千四百億の純減収にはなりません。従って千四百億の減税の中から増収がたとえばどれくらい生まれてくるかというと、私は内輪考えて二〇%は浮いてくると思う。そうすると約二百八十億から三百億近いことになりますから、先ほど申しました政府案よりも三百五十億減税規模拡大するということ、それはその千四百億の減税から返ってきます。従って三十二年度の減税は、三十三年度からあとどういうふうになるのだというように連想なさるかもしれませんが、それは減税による増収によって、結果は政府案と同じことになります。政府歳入はほぼ同じレベルに達します。そうして一方に、三十二年度においては約千億の政府保蔵で、もしインフレの危険があるとすれば、それによってこれを調節する用意もある。従って私は、第一段階におきましては、さような措置をお願いしたいと存ずるわけであります。  なお法人税特別措置整理について申し上げたいとも存じましたが、大へん時間を超過いたしました。他の方々の御意見を拝聴いたすべきでありますから、私の公述はこの程度にいたしたいと思います。
  4. 山本幸一

    山本委員長 次に、芝浦製作所専務取締役西野嘉一郎君にお願いいたします。  はなはだ申しわけございません。わずか十五分で恐縮ですが、なるべく時間内でお願いいたします。
  5. 西野嘉一郎

    西野公述人 ただいま紹介を受けました西野でございます。  私は主として産業界を代表してということでございましたが、日ごろ考えておりますところの問題につきまして、全般的な問題よりも、今回の所得税並びに法人税の一部改正に関する法律案、特に租税特別措置法に関しての意見を少しばかり重点的に述べさせていただきたいと思うのであります。意見を述べるに先だちまして、今回臨時税制調査会答申に基きまして、千億減税なるものが今回の所得税法改正によって盛られておることに対しまして、まず全般的に賛意を表する次第であります。しかしながら税負担の公平ということが、この臨時税制調査会を貫いておる精神でありましたことからでありましょうが、そのために企業資本貯蓄の促進のための措置が、かえって今回の改正によって後退をしたということは、まことに遺憾と存ずるのであります。たとえば価格変動準備金貸し倒れ準備金限度額を下げたというようなことのごときは、まことに私は遺憾と存ずるものでございます。  最近におきまして、わが国の経済の発展は目ざましいものがありますので、これらの制度が創設された当時とは、かなり情勢が変っておるということを、今回の提案理由の中にも書いておりますけれども、今高木先生からもお話がありましたように、私はこの臨時税制調査会が審議されましたころの日本経済情勢と今日の情勢とは、かなりな変化を来たしておると思っておるのであります。従ってその見方におきまして、最近は御承知通りに、産業界神武景気などと称しまして、非常に景気をあおられておりますけれども、企業自体の実態をながめてみますと、企業がそれ自身において資本の蓄積が促進され、資本構成の是正がなされておるかと申しますと、決してそうでないのであります。表面は、確かに現在われわれの属しております仕事は多忙でございます。そして一年、二年の受注量を持っておりますけれども、そのために御承知通りに、設備投資が非常に促進されつつありますけれども、これらの設備投資をいかにするかということが、今日大きな財界の問題になり、これに対する設備投資資金の不足を感じ、金融は昨年末来非常な緊迫を生じておりますことは、皆さんも御承知通りでございます。われわれはかくあることを知りまして、この一、二年来企業資本蓄積、国民の貯蓄奨励と申しましょうか、資本蓄積の重要性をしばしば論じて参ったのであります。オーバー・ボローイングの指標になっておりますところの固定資産に対する自己資本割合、いわゆる固定比率と申しておりますが、これなどをながめてみましても、二十六年の下期は一一四でございましたのが、三十年下期には一三八%となって、日本銀行の調査によりますと、戦後最悪の状況を示しておると述べておるのであります。と申しますことは、三八%は、これは設備を自己資本だけでは足らないで、借金によって調弁しておるということの事実を示しておるのであります。戦前のわが国は、九二%というりっぱな比率を示しておったのであります。アメリカは一九五五年には、八三%という比率を示しております。しかもなお最近の情勢は、設備投資のために、自己資本の力ではとても及びませんので、借入金に依存しておりまして、この比率はますます悪化しておると思うのであります。資本構成の是正ということが、戦後しばしばわれわれの口から叫ばれましたけれども、これらのことも、今日におきましては、全くから念仏となって参りまして、二十八年以降ますますこれが悪化いたしておりまして、三十年の下期のごときは、これまた日銀が調査を始めてからの戦後最悪の状況を示しておると申しておるのであります。現在では、皆様も御承知通りに、三十年下期は自己資本比率は三八%に低下しておるのでありまして、戦前の六六%を考えますと、ますますこれは雲泥の差があると申さなければならないのであります。戦後十年を経過いたしまして、企業の実態は少しもよくなっておらないのでありまして、それは日本経済拡大企業拡大は全く借入金への依存によって膨張しておると言っても過言でないのであります。  最近新しい資本主義のあり方というものが、しばしばわれわれの中からも論ぜられておりますが、そのあり方は、景気の変動の幅を極力少くするということにあると申されておるのであります。ところがわが国の経済政策、特に税制政策は、この新しい資本主義の方向に対して逆行しているのではないかと私は思うのであります。今日のように企業景気がいい、そしてどうしても設備を拡張しなければならないということに対して、それはどうしても国家的要請のためにしなければならないものを、企業は自己資本によって、資本の蓄積によって過去においてできなくして、租税措置によってだけではどうしてもできないので、借金によってこの拡大をしておるのであります。その結果、金利の負担は非常なものになりつつあるのでありまして、もしこれが不景気になりましたならば、いかなることになるだろうか。借金が多くなって、企業は非常に危険な状態にあるが、景気のいいときは、それらの問題は上に浮かばずして、何とかやって参りますけれども、一たん不景気になったときには、必ずそれを加速度的に悪化せしめることは当然であります。一九二九年の世界大恐慌のとき、この問題がアメリカにおいて最も大きく露呈した事実をわれわれは知るのでありまして、今日の経済政策といたしまして、この点は最も考えていただかなければならぬと思うのであります。日銀の経営分析の数字を拾ってみますと、三十年の上下の一年間をとってみますと、わが国の、金融機関を除いた主要企業五百四十社の営業利益は、三千七百億円でありますが、そのうちに金利が入っておりますか、その金利負担が千七百八十六億あるのであります。それを差し引いた千九百十四億円というのが、いわゆる純利益であります。公表されている純利益は、企業負担しておりますところの金利負担とほぼ同額、きわめて近似の数字を示しておるのであります。この千九百十四億のうちから税金を払い、大体金利相当の配当金を支払いますから、支払った金が千五百億、それを引きますと、残ったものは二、三百億でありますから、きわめてわずかの、三百億か四百億近くの金しか社内留保ができていないのであります。これらの事実を見まして、これらの資金で、どうして今日の要請であるところの技術の革新と申される設備投資ができるでありましょうか。一九五三年の十一月、ナショナル・シティ・バンクがアメリカの戦後八ヵ年間の資本支出の総額を発表しておりますが、その支出千五百億ドルの資本源泉に対しまして九百六十億ドル、六四%というもの、これが減価償却を含む社内留保によって用を弁じておるのであります。一八%が短期の借入金、一二%が社債等による長期の借入金によっておるのでありまして、株式によるものがわずか六%、こういう比率を示しております。また西独のごときは、しばしばわれわれが口にすることでありますが、絶対に設備投資に対しましては、減価償却など社内留保によってなされておる事実は、われわれがしばしば聞き、また見るところであります。特に一九五四年の鉱工業八百六十社の設備資金を見ますと、五十億ドイツ・マルクございますが、そのうち自己金融、つまり減価償却など社内留保によって五十億ドイツ・マルクを支弁しておりますから、設備投資に対しては何らの借金もせずしてやっておる。最近においても、西独はかくのごとき状態でありますので、わが国の実態は今申しましたようなことでございまして、まことに嘆かわしい状態であるのでございますが、これらに対して、今回の特別措置など一覧いたしますと、特別の考慮が払われておらないばかりでなく、むしろ悪化しておるということに対して、私は非常に遺憾の意を表しなければならぬのであります。先ほど高木先生からも、自然増収の点が大きくお話がありましたけれども、私も同様に、現在のような好景気のもとにおいては、予想以上の自然増収があるかと思うのであります。これらの自然増収は、無論いろいろな意味において出てくるものでございますけれども、これらのある部分は、これは法人に返すべきである、企業に返して、企業がそれ自身の蓄積によって、次に来たるべきところの設備の拡大の資金に投ずべきであって、これをできるようにしていただきたいというのが、われわれの叫びであります。そのためには、われわれ経済同友会、あるいは経済団体連合会において最近その必要を痛感しておりますことは、技術革新に対する新減価償却制度の提唱でございます。これにつきましては幾つかの考え方がございますが、一つは陳腐化資産に対するところの処置でございます。御承知通りに、わが国におきますところの設備は、戦時あるいは戦後、これに対して特別の処置が行われないために非常におくれております。最近ここ四、五年来におきまして、これではいけない、世界の経済に立ちおくれる、またいわゆるプロダクティヴィティの上昇ということに対して立ちおくれるから、設備の革新をやらなければならないという声が大きくなりまして、それぞれの企業が立ち上ったのであります。それがために、この近年において設備投資の金が非常に大きく要っているのであります。これらのものに対する資金は、全部借金によってやらなければならない。これは一時的にはやむを得ない。しかしこの借金を必ず適当な時期に返せるような税法処置がなければ、ますます企業が困難な地位に陥る。また何年か後の不景気のために、大きな経済恐慌を起す原因となるのじゃないかと思うのであります。経済企画庁その他の調査によりますと、わが国の工作機械をとりましても、十年未満のものは二九・三%であります。十年以上のものが七〇%を占めておるという状態であります。これを最近われわれの会社でも、あるいは日立その他の会社においても、調査いたしましたところによりますと、工作機械の経済的寿命は十一年ということになっております。これの計算基礎もございますが、旋盤のようなものをとりましても、昭和五年に一のものが、昭和三十年に一三に経済的能率が上っておるのであります。そうしますと、年に五〇%くらい旋盤の能率が上ってきておる。これを計算いたしまして、経済的耐用年数を計算いたしますと、大体十一年になります。この十一年は、ちょうどアメリカが現在工作機械などにとっておりますところの耐用年数が十二年でありますから、大体合うのであります。いいますならば、現在わが国の減価償却制度においては五割低いということが言えるのであります。これはいろいろの統計がございますが、時間がございませんので、これを述べることを差し控えますけれども、少くともこの陳腐化資産に対する特別な処置をこの際とっていただきたい。これに対しましての案といたしましては、今回まだ細則がきまっておらないようでありますけれども。五〇%特別償却制度というのが現行ございますが、これを適用しまして、私は五割償却の制度を陳腐化資産に対してとっていただきたいと思う。これは、先日も電気機械工業会からその旨を国会その他に陳情しておりますが、昭和二十一年一月以前に取得した企業の陳腐の資産に対しては、この五〇%償却というものをとっていただきたいということであります。むろんこれは税の金額の限度もありますから、一ぺんに大きく陳腐化資産の償却をすることは困難でありましょうから、一定の限度を置くことはやむを得ないと存ずるのであります。  さらに大きく主張いたしたいことは、新規設備に対する処置でございます。技術革新の今日におきまして、設備の更新は、近代化を促進するために最も重大なことでありまして、西独におきましても、アメリカにおきましても、先ほど申し上げましたように、この減価償却制度の革新においてこそ、アメリカあるいは西独その他西欧諸国の企業の近代化が著しく促進されておるのであります。従いまして、私は今後の新規設備に対する処置といたしましては、任意償却制度というものをここに提案いたしたいのであります。企業の任意によって、業種、機種の制限を設けずに、一定の限度、これも一年、二年ということになりますと、あまりに短かく相なりますので、少くとも五年くらいを限度といたしまして、企業が任意に今度この設備を償却いたしたいという届出をするならば、それに対する特別償却制度を認めていただきたいのであります。むろんこれに対しましては、不要不急のものや、不必要な設備に対しましては例外を設けますことは当然のことでございますけれども、こうすることによって、金融機関におきましても、今日のように設備の近代化を促進するに必要とする資金は、五年なら五年、七年なら七年の間には必ず返るという見通しがつきますから、これに対しましては金融も楽になります。一時設備投資がふくらみましても、これが必ず戻ります。これが今のように十七年とか二十年とかいうような長期の設備減価償却の制度でありますならば、その資金はいつになったら返るかわからない。そのうちにまた技術革新が回ってくる。それでは、企業はいつまでたっても働けど働けど借金に追い回されて、その金利に追い回される。それがやがて日本経済の復興、並びに日本が今後東南アジアその他におけるところの工業先進国として働いていき、またその指導国となって、これらに対する需要を充たしていかなければならないときにおきまして、コスト高のために西欧諸国やアメリカに必ずその戦いにおいて負けたければならぬという実体がくるのであります。金利の負担は非常なものでありまして、これが今日のような状態に放置されるならば、それがますます増大する。しかもそれのみではなくて、その借入金の状態が恐慌を引き起すところの原因になり、資本主義の最も悪いところの景気の変動の幅を促進するというような実態を来たすということは、まことに今日の経済政策として願うべきことではないと私は思うのでありますので、いろいろなときの処置、特別処置その他に対して問題がございましょうが、減価償却に対して思い切った処置をおとりになることを希望するのであります。しかもこの減価償却というものは、私から申し上げるまでもなく減税ではございません。納税の繰り延べであります。一たん償却が全部終りますならば、それが働いてもうかった収益は、その次に全額所得となって現われてくることは当然のことであります。従って、そのときにおいてまた税金として、何年か先には全額それが収益として現われてき、それが課税の対象になってくるのでありますから、決して減価償却というものは、いわゆる重要産業その他に対する恩恵的な減税ではないのでありまして、どこまでもこれは繰り延べであります。この点については、十分に皆さんも認識を新たにしていただきたいのでありまして、私の強調いたしますところの、今後原子力、あるいはオートメーションとか、あるいはその他の化学工業の近代化のために必要とするところの設備資金に対しては、今申しました任意償却制度というものを提唱いたしたいのであります。これは、私の提案ばかりでございませんで、アメリカにおいては現在航空機工業、原子力工業、あるいは電子工業のような、あるいは軍需産業のような特殊の工業に対しては、すでにこの制度のものが多いのですけれども、戦時中から戦後にも採用されたのでありまして、その結果先ほど申したように、設備投資の七〇%、八〇%というものが、そうした減価償却その他の資金によって、あの大きな戦後の拡大を促進しておるという事実をわれわれは知りましたときにおいて、最もこの制度提案いたしたいのであります。  その次に、ちょっと簡単に申し添えたいのは、今回の中小企業における再評価の問題でありますが、これは、今回中小企業の育成のために、再評価を第四次と申しますか、三次の手直しと申しますか、採択されたことについては、まことに私も賛意を表するものでありますが、中小企業は、御承知通りにその数は非常に多うございまして、これを実施し、ほんとうに中小企業の育成のためにこのことをおやりになると言われるならば、きわめて簡単な手続によって、この再評価を実施していただきたいと思うのであります。たとえば簡単な届出制度にし、それについて各地の税務署の受け取りの捺印をしたらもうそれでよろしい。中身が少々違っておってもあとで修正し、めんどうを見てやるというくらいの、きわめて簡便なる処置によってやっていただきたい。できれば、全部の中小企業がそれに応じられるような制度、私は気持といたしましては、強制に近いようなやり方で全体の再評価をやらしていただきたい。それが事務的に混雑ならば、今申します届出制度のようなことで強制にかえるということにしてほしいと思っておるのであります。従って、そうした場合におきましては、これを促進するためには、きわめてわずかな税金でございますので、これら再評価税に対しては、無税にしても大した問題ではないのでありまして、大企業とのバランスという問題も出てくるでありましょうが、それに対する課税は、公平というようなことは除外いたしまして、きわめてわずかな税金で済むと思うのでありますから、これは再評価税を無税として、できるだけ中小企業が減価償却を実施できるような処置にしていただきたいと思うのであります。  ちょっと申し忘れましたけれども、先ほど申し上げました特別償却制度に対しましては、現在法律においてあるじゃないかということを言われますが、これの運用がきわめていろいろな機種、非常にむずかしいことでしぼっておりますために、実施が非常に少いということであります。その事実は、先日大蔵委員会税制調査会から配られました特別措置による減収見込み額の表を見ましても、平年度における減収見込み額は二十五億ほかないのであります。一千億以上の数字があげられております中にも、わずかに特別償却に対して減税見込み額というのは二十五億であります。それらは異常危険準備金とか、渇水準備金というような、きわめて特殊な産業に適用されるような平年度減収見込み額とやや似た——二十億という数字になっておりますが、そんな数字に似ている数字でありまして、いかにこの特別償却制度というものが、いろいろなワク内に入ってむずかしい業種にしぼり、機械にしぼっておるためにこれが適用がされておらないかということを、この際私は特に皆さんに申し上げて、特別減価償却制度、五割増し特別償却制度がもっと大幅に、私が申しましたような陳腐化資産並びに今後の新規設備に対する任意償却制度などの適用にこれをはめていただきたいと思うのであります。  時間が参りましたので、私の公述はこの辺でやめさせていただきたいと思いますが、要するに、どうか企業の実態が神武景気その他のことによってきわめて表面だけがから回りすることなく、今日の景気におけるところの自然増収は、これを一部を法人に返していただきたい。そうして法人は、それを自分の蓄積資金として設備の更新に使って、次の収益のために平均的にしていきたい。国がこれを全部吸い上げることのみが必ずしも日本経済の発展のためでない。われわれ経営者にそれを設備投資のために、技術革新のために用いさせていただきたいということを最後に申し上げまして、私の公述を終りたいと思います。
  6. 山本幸一

    山本委員長 次に、全国銀行協会連合会副会長大和銀行頭取寺尾威夫君にお願いいたします。
  7. 寺尾威夫

    寺尾公述人 私が紹介にあずかりました寺尾であります。これから三十二年度の税制改正につきまして、若干の意見を申し述べたいと思うのであります。  御存じの通り日本税制がどちらかと申しますと、直接税中心に傾いておるということは、もうすでに皆さんにおいて御了承願っておると思うのであります。臨時税制調査会におきまして、昭和三十二年度の国税の自然増収見込みを五、六百ないし一千億円近いものということを前提といたしまして、そのもとに所得税一千億円の軽減と間接税増徴並びに租税特別措置整理等によりまして、直接税にウエートの置かれ過ぎているのを若干この機会に間接税の力にもウエートを移すべきである、こういうふうな税体系の編成がえを織り込んで申し上げておるのであります。  今回提出されましたところの政府案は、自然増収見込み額を千九百億をこえるとの予想のもとに、物品税増徴をやめてしまい、所得税軽減租税特別措置整理と、この二つに準じた方針によって編成されておるのであります。国税自然増収が一千億円、あるいはそれ以下であるという場合には、臨時税制調査会答申程度改正もやむを得ないと思われるのでありますが、自然増収が三千億にも達しよう、こういうことが予想される今日におきましては、わが国経済の最大の弱点でありますところの資本蓄積の貧困を是正すること、並びに産業の対外競争力を強化する、こういうことのために、いましばらく資本蓄積の促進をはかるところの特別措置、これをそのまま存置し、その整理をすることをやめまして、もし軽減するというのでありますならば、法人税につきましても考慮すべきであったと思うのであります。政府案自然増収が約千九百億円に対しまして、所得税軽減特別措置整理等を含めまして、初年度七百二十億円の純減税を行うことになっているのでありまして、三十二年度の財政は、一千億円以上の歳出増となり、その経費の内容も、消費的性格が相当多いという点に私は問題があると思うのであります。むしろ財政支出の増大に充てましたところの自然増収の一部を法人税軽減に充てて、民間資本の充実によるところの経済の自然的な拡大を推進すべきであると考える次第であります。以下若干これらの問題につきまして、一々の項目にわたりまして所見を述べてみたいと思うのであります。  まず第一に所得税の問題でございます。所得税につきましては、全体といたしまして相当な負担減少になるのでありますが、なおこの案によりますと、給与所得者と他の所得者との間におきまして、給与所得者の負担が総体的に重いということが私は言えるのではなかろうかと思うのであります。この問題は、徴税技術上から生ずる点もあろうかと思うのでありますが、できる限りこういう点においての負担は、均衡を得るようにすべきだろうと私は考えるのであります。  なおこの機会に触れておきたいと思いますのは、退職給与金の問題でありますが、退職給与金というものは、長年勤労を続けまして高年令になりまして、就職の機会を失った者の生活保障金であるのでありますから、社会保障が必ずしも十分でない場合におきましては、一定年令に達しました後において退職する者に対しますところの退職給与金に対しましては、これはできる限り免税の形をとるべき、だろうと私は思うのであります。とにかくその職域におきまして十分働き、かつ老令に至って他に職を求むることができないというふうな人に対して、これをどういうふうにして今後の余命を安心していかせるかということにつきましては、単に税金の負担の均衡という面だけから判断すべきでなくして、これは免税措置を講じてあげるべきだろうと私は考えるのであります。  しかしながら、今回の政府案によりましても、一千億円の減税措置が個人所得に対して行われたのであります。これはとにかく一応けっこうなことでありますが、今度それを軽減されるところの対象となりました方々につきまして、それだけの所得がふえてくるのでありますから、これが浮動購買力にならぬように、貨幣価値の安定と貯蓄の増強をはかる面にいろいろな措置が講ぜらるべきだろうと思うのであります。これが最後に申し上げます特別措置の廃止の問題と関連を持つのであります。  次に法人税の問題についてであります。法人税につきましては、中小法人に対しまして軽減税率の適用範囲を広げて、三十二年度から実施することとしたのはけっこうでありますが、一般法人に対しては軽減を行わなかったのであります。従いまして、三十二年度の法人税収入見込み額は、中小法人に対しますところの軒減額十五億円、特別措置整理による増収額八十五億円を含めまして、全体といたしましては前年度予算額に比べて九百四億円の増徴となっておるのであります。法人の税負担は、戦前や外国に比べてなおかなり重加されておる今日、一般法人についても、でき得る限り早急に軽減をはかるべきだろうと思うのであります。わが国企業資本構成が、戦前におきまして、自己資本が六一%、借り入れ資本が三九%、こういう比率を示しておったのでありますが、戦後におきましては、自己資本が三七%、他人資本が六三%、こういう比率に全く逆転いたしております。この他人資本偏重という弊風は、法人税が重いということにも大きな原因があるのでありまして、自然増収におきまして、当初見積りの倍近いところの修正が行われ、これを歳出増に充当するというふうな三十二年度の予算におきましては、その一部をもちまして、むしろ重過ぎるところの法人税の引き下げに充当すべきであると思うのであります。またわが国の法人税率の三五%ないし四〇%というのは、諸外国に比しまして必ずしも軽いとは言えぬのでありまして、また本邦産業の対外競争力を保持するという意味におきまして、単に金利の問題ばかりでなくして、こういう面におけるところの助成方法も講ずべきであろうと私は考えるのであります。  なおこの問題に関連いたしまして、先ほど西野公述人からも言われましたが、減価償却の面につきましては、十分の配慮をなさるべきだろうと思うのであります。技術革新が世界的に進行しておる今日、旧来の法定償却方式は根本的に再検討を加えらるべきであると考えるのであります。わが国産業の近代化、また国際競争力の確保のため、産業設備は常に新しい技術水準に応じて更新しなければ立ちおくれるのであります。今日におきましては、この問題は一部の特殊部門だけではないのでありまして、全般的な問題としてこれを考慮すべきであり、単に特別措置というふうな考え方をやめまして、法人税法所得税法、こういうものの本法を根本的に改正いたしまして、理解ある態度を示されたいと思うのであります。  次に租税特別措置法の廃止に関して申し上げたいと思うのであります。租税特別措置個を別に見まするときに、いまだ所期の目的を十分に達成していないのにもかかわりませず、単に減税その他の財源調達の手段として今回整理されたことは、はなはだ遺憾に存ずるのであります。自然増収が多いときに、税源の調達のためにこういう重要なるところの制度の非常な整理に当られるということは、われわれといたしましては納得いたしがたいのであります。しかもこの整理によるところの調達額は、わずかに二百億円にすぎないのでありまして、それによりまして資本蓄積が阻害され、はかりがたい悪影響が今後に起ると考えて寒心いたす次第であります。税制調査会が特別措置整理に踏み切りましたのは、金融引き締まり政策採用以来、金融緩慢化並びに経済正常化の傾向が進展し、資本蓄積促進のために設けられました特別措置の任務は、一応終了したものと認めたことによることが多かったと考えられるのであります。しかしながら、その後の金融は繁忙傾向に転じまして、資本蓄積額をこえる資金需要が台頭し、輸出の見通しも楽観を許さず、インフレ傾向に逆転するおそれも必ずしもないとはいえない、こういうような環境でありまするので、資本蓄積の重要性が新たに認識し直されねばならぬ情勢にあると思うのであります。この情勢下におきまして特別措置整理を行うということにつきましては、なかなか問題が多いと考えるのであります。その中におきまして貸し倒れ準備金の問題であります。貸し倒れ準備金は、税制調査会の答申が、その内容を評価性引当金に近づける必要があるといたしまして、その適当な基準が発見されないゆえに、さしあたり現行制度資本構成はこれを維持いたしまして、毎期の繰り入れ限度を制限することを勧告いたしておるのでありますが、最近の貸し倒れ発生額は、貸し倒れ準備金繰り入れ限度額を上回る企業も多くなっておるのであります。われわれの業種おきにましても、これを毎期の繰り入れを三割も切り下げるといたしますれば、現在銀行の平均累積比率でありますところの一・八%は、今後低下のおそれがあるのであります。また銀行検査の結果も必要であると認めておりますところの累積限度額の三%は、なかなかそこには到達し得ない現状にもなるのでありまして、毎期これに対して繰り入れするということとの関連性が非常に薄れてくるのでございます。評価性引当金といたしまして累積限度額を積み立てる必要を認める以上は、毎期の繰り入れ額は、早晩これに到達し得るという率でなければならない、そういう希望の持ち得る率でなければならないと考えておるのであります。また価格変動準備金現行繰り入れ限度額の切り下げ率を二割といたしましたのに対し、留保的性格のない貸し倒れ準備金につきまして、これを上回る三割切り下げということにいたしますならば、均衡上もどうかと思いまするし、現行の毎期繰り入れ限度額は据え置きとすべきであるが、切り下げるといたしましても、価格変動準備金の切り下げ率と大体均衡のとれたところにしていただきたい、こう考えるのであります。  次に預金利子諸税の免税措置の廃止でありますが、これは長期のものにつきまして、期限一年以上のものにつきましてこの免税措置が講ぜられましたことにつきましては、大へんありがたく存ずるのでありまして、なおこの上に、われわれといたしましては、さらにこの環境を考慮されまして、免税措置の廃止によるところの大衆の貯蓄心理に与える影響、貯蓄心理が衰えぬようにもう一段の御配慮をお願いしたいと存ずる次第でございます。  それから第三に退職給与引当金の問題でありますが、退職給与引当金制度は、その累積限度額を過般二分の一に制限されて、支給する退職給与金の全額を退職給与引当金からとりくずさねばならぬようになったのであります。本制度は純然たる評価性の引当金であることは、疑問の余地がないところでありまして、これを実質的に否認する結果となるような改正はすべきでないと考えるのでありまして、早急に旧制度に復帰すべきが妥当であると私は考えるのであります。  以上、私の今回の三十二年度の税制改正について意見を申し述べた次第でございます。
  8. 山本幸一

    山本委員長 これにて高木公述人西野公述人及び寺尾公述人の御意見を終りました。  委員各位で御質疑がございますなら、これを許します。有馬輝武君。
  9. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 西野先生と寺尾先生、お急ぎだそうでございまするから、高木先生にはあとで御質問いたしたいと存じます。  西野先生も寺尾先生も、春日委員からも出ましたように、望蜀の望みといいますか、そういった観点から公述されたように受け取れて仕方がないのであります。失礼の段がありましたら、平に御寛容ただきたいと存じますが、御質問いたしたい点は次の点であります。  結論的に、西野先生からの話しのありました陳腐化資産に対する特別措置、新規設備に対する特別措置、それと中小企業に対する再評価の減税の問題、この中小企業の再評価の減税の問題につきましてはともかくとして、私は前に述べられました二つの点についてお伺いいたしたいと思うのであります。もとよりお話しのありましたように、企業の近代化ということは、現在名企業において要請されておるところでありまして、私たちもその意のあるところは十分納得できるのであります。また本日お見えになっております小山委員や内藤委員なんかと昨年一緒に国政調査に参りましたとき、富山県の吉田工業、これはチャックの工業でありますが、日本のチャックの八〇%くらいを生産しておる。それに対して新しい機械をアメリカからどんどん入れております。そして増産に増産を重ねまして目ざましいものがある。そういった実態について私たちはよく理解もし、納得もいたしておるのであります。しかし問題は、現在におきましても、御承知のような特別措置貸し倒れ準備金、あるいは価格変動準備金という工合に漏れなく行われておりまして、その上にさらに今おっしゃったような意味での陳腐化設備に対する特別措置、あるいは減価償却制度に対する特別措置というものが行われますことと、現在御承知のように、西野先生もお述べになりましたが、金融の逼迫ということから、また新規の設備投資というものが非常に行われまして、そのために鉄鋼その他の値上りを来たしておることは御承知通りであります。宇田さんがとんとんだといって、輸出入の収支もとんとんになるだろうという安易なことを申しておりまするけれども、そのためにコスト高を来たして、輸入が減退するであろうというようなことも当然予想されておるのであります。そういったことと関連いたしまして、やはり日本経済の実態に見合うところの設備投資というようなものを考えなくてはならないと思うのでありますが、今おっしゃったような意味では、どんどん設備投資をやっていく、しかも大企業におきましては、御承知のように今のお話では借入金が相当ある、この利子で食われておるというようなお話でありましたけれども、開発銀行その他を通じて、大企業においては優先的に融資が行われ、しかも長期、低利の融資が行われて、それによって、どんどん設備の更新をやっておるような状態で、中小企業に比べまして、金融の面においても、また特別措置の面においても、あまりにも優遇され過ぎておられるのが経団連を中心とするところの皆様方の企業じゃないか、私はこう考えておるのであります。にもかかわらず、今おっしゃったような二つの措置をさらに望まれるということは、むしろ望蜀のきらいがあるのではないか、私たちは、現在のそういう特別措置は早急に整理してしかるべきだ、こういう考え方に立っておるのでありますが、先ほど申し上げましたインフレの懸念、コスト高からくる輸出入のアンバランス、こういった点についてはどう考えておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  10. 西野嘉一郎

    西野公述人 御質問の要点はわかりますが、私はあなたの御質問の結果から、さらにしかるがゆえに、設備投資をして、この際鉄その他の増産をはからなければならぬと思うのであります、それが今日のような実態で、鉄の増産も、本年度の所要資金は千三百億とか千三百五十億とか聞いておりますが、これだけの資金の調達は非常に困難だと思っております。しかしながら現在鉄の需給のバランスがとれておらないというところに問題がある。そこでこの設備投資をし、しかもそれはやはりいたずらに値段が高くなるからといって海外から輸入したのでは、これは問題になりますので、これを増産するためには、その設備を近代化し、しかもコストにおいては世界的に負けないような程度にしなければならぬ。わが国は後進国というほどでもないのですが、学者はこれを中進国といっておりますけれども、アメリカあるいは西欧ほどにはいかないにしても、これらの問題は、輸出を促進してわれわれの国の経済を立てていくためには、設備を近代化してコストを下げるよりないと思うのであります。そのときに、その資金を借入金のみによれば、やはりその資金の源泉というものはきまっております。私は職務柄とかなんとかでなく、日本経済が今後発展するためには、設備の近代化以外にないと私は心から思っております。しかも戦時中のような、いたずらにいわゆる増産々々の進軍ラッパにわれわれは踊ってはいけないと思っております。質の向上をはかり、近代化をはかって、値段の安い、いい物を作る、そのためには設備の近代化以外にない。そのために、政府はこの措置法において特別償却に幾ら金を出しているか。私はこれは減税ではないと思う。減収見込みとしては二十五億しか出しておらない。こんな特別償却制度日本の設備の近代化が、あなたがおっしゃるようにわれわれは恩恵をこうむっているとは思っておりません。  なお今申しました各種の特別措置でありますが、これらにつきましては、財源がないということで今度は限度を切られたのでありますが、これらにつきましても、むしろこれは今後における問題点でありまして、せっかく積み上げた準備金が、別の形において今後やはり税の対象になってくるという懸念が多分にあるのでありますが、これらのことについては、今の御質問に対して、私はむしろ異議を申し上げたいと思うのであります。
  11. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 公述人に対して議論になることはまた恐縮でございますから、ただ私が御質問申し上げました点で、第二点の金融逼迫に対する関連について、御意見を承わっておきたいと思います。
  12. 西野嘉一郎

    西野公述人 金融逼迫の点は、今のお話しの通りでございますが、日本の国は今成長期にあります。つまり安定と成長という言葉がこのごろ企画庁その他からいわれておりますが、成長期にありますときは、多少そこに無理があっても仕方がないと私は思っております。しかしながらその限度があります。しかしその無理をした限度のものが、近い期間にその回収ができるという見通しがなければ、インフレになり、経済の安安を乱すのでありますから、その調整というものは非常にむずかしいと思うのでありますが、先ほど高木先生からもお話しがありましたように、自然増の額においては、大蔵省等が見積っておるよりもはるかに大きい金額があると思うのでありますから、こういうときには、その全部とは申しませんが、法人あるいはその他の法人を通ずる直接、間接税についての収益を法人に返すということによって、今膨張した、多少の日銀のオーバー・ローンのものが一年なり二年なりの間にそれが返ってくるということが必要だと思う。一年前に臨時税制調査会がやっておった時分には、金融緩漫であって、銀行は金を使って下さいとわれわれのところにしばしば来たのでありますが、それが一年も半年もたたないのに、今日のようになった。これは何であるかといえば、資本蓄積が企業になされておらない、ここに原因があるのであります。日本という国は、一年や二年でエンドになるものではないのでありますから、長期計画皆さんの頭でぜひお立てを願いたいと思います。
  13. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今金融との関係で、長期のものだというようなお話がありましたけれども、少くとも臨時税制調査会答申したころと現在とでは違う。その大きな原因を作ったのが、むしろ設備投資過剰の皆様方の責任ではないか、私たちはこう見ておるわけなんです。やはり経済に見合ったところの設備投資というものがなされなくちゃならない。それをやり過ぎたために、今金融が逼迫してきておる、また鉄鋼その他の重要物産の逼迫を来たしておる、こう見ておるわけです。この点については議論があるところだろうと思いますが、あえて今差しとめられておりますから、これ以上論議をいたしません。  第二の点といたしましては、先ほど冒頭で私が申し上げました、西野さんのおっしゃった第三点の中小企業の面、こういった面については、少くとも今私が申し上げました金融の面においても、また特別措置の面においても全然置き忘れられているのです。そういった面について、むしろ西野さん方がこういった二つの点を強調される前に、本日は申していただきたかった、この点を申し上げまして、私の質問を終ります。
  14. 山本幸一

    山本委員長 石村英雄君。
  15. 石村英雄

    ○石村委員 西野さん、寺尾さんにお尋ねいたしますが、いろいろ重要な問題もありまして、ただいま有馬君も申しました、金融問題と関連したこともあるかと思いますが、時間がありませんことと、またあなた方とこの席で議論するということもよろしくないと思いますから、ほんの簡単なことをお尋ねいたしますが、実は特別償却の点は、社会党の案においては、現行のまま据え置くということになっておるのです。これは党内にもいろいろ意見もありますが、その点においては、おそらく西野さんも、社会党はなかなかいい、こういうことになるだろうと思います。これについて詳しく社会党の案を申し上げるいとまもありません。特別償却とおっしゃったのですが、この減価償却の問題は、もちろん特別な産業における特別償却ということも、考え方においては全然ないことはないと私は思うのですが、むしろ本法において償却を認めておる耐用年数とかなんとかは古くて、現在の技術革新と申しますか、それに合わなくなっておるという面も相当あるのじゃないか。だから、その面は租税特別措置法による特別償却という形でなしに、現在の法人税法における償却の見方に対して、これを修正する部面が相当あるというお考えではないかと思うのですが、この点いかがでございましょう。
  16. 西野嘉一郎

    西野公述人 今のお話の通りでありまして、耐用年数の改正ということが、この税制調査会の答申にも出ておりますので、おそらく大蔵省は、これに対して御研究をなさるということを聞いております。しかしこれはなかなか容易なことではありませんで、三月や半年で完了するものではないと思います。その間において、経済の伸びは今日待っておられないものがある。同時にそれが結論を得るまでには、やはりここに特別の措置を講じていただきたいということであります。  それから先ほどの御意見でありますが、今日金融引き締めの問題は、これは議論がありますけれども、私は、やはり自然増収の超過による引き揚げ超過が大きな原因をなしておるのでありまして、現在の設備投資が今日の金融逼迫の全部の原因であると言われたようでありますが、私は必ずしもそう思っておりませんので、その点もちょっと答弁いたしておきます、
  17. 石村英雄

    ○石村委員 西野さんに対する質問は、これで終っておきます。  次に寺尾さんにお尋ねいたしますが、寺尾さんは、法人税自体を下げるということを御主張になり、また一方特別措置をさらに拡大と申しますか、現在締めておるのはいかぬというような御意見でございましたが、しかし現在の大企業なんかは、すでに特別措置によって、あの四〇%という法人税は実効税率では非常に下っておる、こう伝えられております。一方特別措置も反対に拡大するということになると、実効税率は一〇%台、一五%とかなんとか、そんなものに下ってしまって、両方やるということは無理なんじゃないか。法人税四〇%を下げるとすれば、特別措置は全部やめてしまうという方向をとらなければ、これは無理じゃないかと思うのです。法人税自体も下げ、特別措置も反対に拡大するということになると、法人税でとれるものはないということになりはしないかと思うのですが、この点いかがですか。望蜀というような話も出ましたが、両方できれば企業自体として大へんけっこうでしょうが、これでは日本の税というものは成り立たなくなるのじゃないか、こう考えますが、いかがでしょうか。
  18. 寺尾威夫

    寺尾公述人 特別措置の存続ということを私は申し上げておるのであります。私の力に関係いたしました点で申しますと、この特別措置においては預金の免税措置と、貸し倒れ準備金価格変動準備金というふうな問題になろうかと思うのであります。一番大きな問題といたしましては、預金の源泉課税ということになるのであります、預金というものの税金は、金融機関が免税されるわけでも何でもないのでありまして、預金者が全部免税されるということになるわけであります。これを新たに免税措置を廃止することによりまして、一般国民におきますところの貯蓄意欲を非常に失わしむるのではなかろうか、こういう点を私は非常に懸念いたしておるのであります。過去におきましても、この特別措置によりまして非常に貯金が多くなってきたということは言えるのでありますし、また現在におきまして、日本で一番不足いたしておりますものが金融機関の貯金という形の貯蓄で、これがまだ元へ返っておらぬのであります。私の手元にありますところの数字によりますと、昭和九年から十一年を基準といたしまして、現在日本がどういう力を持っておるかと申しますと、国民所得は、昭和九年ないし十一年を基準といたしました指数に直しますと、一四三・九になっておるのであります。また生産水準は二一八・九ということになっておるのであります。また財政規模は一三三・六になっております。しかも銀行預金は八二・八という比率にしかなっておらぬのであります。そういたしますと、昭和九年ないし十一年というのは、大体におきまして戦前におきますところの非常にバランスのとれたときだと思うのでありますが、このときを考えますと、銀行預金の部面におきまして、資金の蓄積という点が非常に劣っておるということが言えようかと思うのであります。こういうことが今日におきます非常な資金不足ということの原因にもなっておる次第でありまして、これははなはだ例は悪いかと思うのでありますが、たとえばそういうことによりまして、魚をつりに行ってまきえをすると、大きな魚が集まってくるということで、今日のような自然増収のたくさんあるというとき、また減税措置をされまして——減税措置というのは、ある意味において考えますと、私はインフレ要因だと思うのでありますが、減税措置をされておるときに、それをいかにしてこの銀行預金に回していただくか、こういう必要が非常に重大なときでありますから、私はこういうふうな特別措置を、今日においてもちろん期限一年以上のものについては御考慮願っておるのでありますから、大へんありがたくは存じておりますが、今におきましては、それよりももっと短かいもの、また大体定期預金といたしましては、六ヵ月が普通の標準になっておるのでありますから、そこら辺まで一つやっていただくということがいいのではなかろうか、こういうことで、まず貯金の免税の措置のことについては申し上げたいと思います。  また先ほど来、公社債とか市価証券とか貸し倒れ準備金の問題かありまするが、この問題につきましても、大体どういう事業をいたしましても貸し倒れというものはある程度あるのであります。貸し倒れの全然ないという事業はないのでありますから、ある一定の大よその線まで達し得るような形におきまして、貸し倒れ準備金というものを準備さすべきである、こういうふうに考えるのでありまするし、また貸し倒れ準備金というのは、今日におきましては、総貸出高の千分の十、あるいはまた収益の百分の三十五、そのどちらか低い方ということになっておるのでありまするが、私たちが考えますのでは、貸し倒れの危険というものは、貸出金がふえればふえるほど起るのでありますから、どういたしましても、千分の十という貸出額というものを標準にして算定すべきだろう、こういうふうに考えるのであります。そういうふうな配慮を、この際におきましてやはり考えるべきだろうと思うのであります。現在におきましては、もう貸出高の千分の十と、あるいはまた収益の百分の三十五のいずれの低い方ということになっておりますから、貸付額がいかにふえましても、今日におきましては、低い方というのが収益の百分の三十五という中へ入ってしまいまして、今後にふえる貸出金につきましての準備というものは、現状ではでき得ない状態になっておるのであります。私は、こういう社会におきまするところの金融機関というものは、一つのものさしのようなものでありますから、あくまでも堅実でなければならぬ、こう考えておるのであります。でありまするから、そういうものの一定の平均危険率と申しまするか、それをカバーし得るような希望の持ち得る範囲内において、一つ御配慮願いたい、こういうことなのであります。  以上はなはだ不十分でありますが、お答えといたします。
  19. 山本幸一

    山本委員長 春日一幸君。
  20. 春日一幸

    ○春日委員 西野さんにお伺いをいたしたいと思うのでありますが、あなたの御公述を伺っておりますと、これを集約いたしますと、本年度、明年度につながる国税の自然増というものは、法人税の貢献によるものがはなはだ大きいと思われるので、従ってこれを納税者である法人に還元するための各種の措置を論ぜよ、こういうことで減価償却、特別償却、臨時償却等さまざまな償却を要望されておったわけであります。私は、こういう工合にあなたが述べられるところを伺いますと、一体あなたは法人税の現在の実効税率をいかに理解されておるか、これは税制調査会の答申の資料の中にもありましょうし、主税局の発表した各種の実効税率の区分表等にもありまする通り、各種の租税特別措置の恩典をほしいままに受けることによって、一般中小企業法人四〇%に比べ、電力が二〇%銀行が二五%、金融機関が三〇%、その他さまざまな不均衡が現われてきておる。これを少しでも是正しようとするところに今回の税制改革のねらいが、これは微弱ではあるけれども、そういう方向に足が向いておる、こういうのでありますが、それをもっと開きをひどくする結果になりはしないかと思う。納税者にそれを還元するための税制施策を講ずるという形になると、法人税関係の自然増収が多いから、さらにこれにフェバーを持っていく、所得税には所得税、こういう形になると、たとえば耕作農民なんかはほとんど税金が納まっていないから、農業政策の財源なんというものはなくなる、あるいは貧乏人なんか、これはほとんど税金を納めてないから、社会保障の政策なんというものは財源がなくなってしまう、こういうことになってくるのです。私は、特に西野さんに反省を求めたいことは、現在大法人というものは、その事業の経営はもとよりのこと、その所得の形成というものは各種国家機関、公的機関の協力支援というものによってそういう成果が得られておる。従いまして、大企業、大法人であればあるほど、その行政コストは、そういう方向に非常に多く消耗されておる。だから、そういう多くの行政フェバーを受けておるものがより多く担税するということは、負担の権衡の点から考えても当然のことだろう思う。納税者にそれを還元するという形になれば、納税していない者に対する政策、財政資金というものはなくなってしまう。特にあなたは大企業の責任者の一人として、現在非難ごうごうたる租税特別措置、各種税制特別措置によって大企業法人が納めておる税金、いわゆる実効税率、これが中小企業者、それから勤労者、そういうものと比べてはなはだ大きな断層を示しておるのだから、これをやはりこの際修正しなければならぬ、こういう一つ一般的な世論というものを、あなたはもう少し研究されて公述されるのでないと、あなたの論述を聞いておると、自分のことのみに没頭してしまって、他を絶対に顧みないというエゴイストの話を聞いているみたいで、これは、公正なる経済団体の代表の公述としては、聞いている者にはひんしゅくするような公述であったと思う。一体あなたは、負担の権衡という点について何らか検討されたことがあるかないか。中小企業法人、零細法人等の実効税率と、あなた方大企業が現在納めているところの実効税率と比べてみて、そこに安過ぎて申しわけないという何か反省されたようなことがあるかないか、(笑声)一ぺん御意見を聞かせてもらいたい。
  21. 西野嘉一郎

    西野公述人 私はちょっと取り急ぎますので、簡単に申し上げますが、今のお話を聞いておると、私が非常にエゴイストのように聞えるのでありますが、(笑声)実は減価償却というものは、先ほど申しましたように、私は決して減税措置とは考えておりません。繰り延べでありまして、一時的に企業がそれだけのものをお国からお預かりして、当然それをしかるべきときにお納めする。その時期的なギャップはございますけれども、これは、いわゆる減税であり、特権的なものであるとは考えておりません。従って、今日のような日本経済が大きく伸びをしようというときには、そうした一つの誘い水と申しましょうか、そういうものがどうしても必要だから、こういうような自然増収のときには、そういう誘い水ができるのだから、していただきたい。そうしてその結果によって企業が伸びたときには、また経営としても税金を納める。全部償却してしまえば、これに対して償却というものがなくなるのですから、まるまる税金を納めなければならぬのであります。こういうことは、短期償却をいたしましても、そういう結果は十年で納めるか、五年で納めるか、三年で納めるかということでありますので、繰り延べの処置でありますので、こういうような自然増収の非常に多いときには、経営というか、企業——今日の企業も、御承知通りわれわれ個人のものとは決して思っておりません。社会的な責任を感じ、社会的なサービス機関だと存じておりますので、これに対して、経営はこういうときにお預かりをして、りっぱな設備をし、そうして安いものを消費者に提供いたしたいという念願から申し上げておるのでございまして、どうか誤解のないように、一つよろしく……。
  22. 山本幸一

    山本委員長 春日君、簡単に願います。
  23. 春日一幸

    ○春日委員 これは国家機関でありますから、当然いろいろな角度から考えなければなりません。これは、あなたのおっしゃるように、ただ設備の更新というだけでなくて、設備の拡充の事柄というふうに考えて、生産設備の機動力という点において判断されなければならぬ。ただこの際重要な計数から私は申し上げておきたいのだが、私が調査したところによりますと、現在あなた方経営者の生産設備に対する措置は、はなはだしく過剰投資になっておる。これは資金をむだ食いしておる。これは繊維関係で申しますと、現在においては大体八百二十万錘のうち百二十万錘が過剰である。梳毛においては百二十万錘のうち三十万錘。砂糖においては百三十万トン、こういうような工合で、あなた方は、自分資本をそういう過剰投資にむだ食いしてしまって、国家的資金を浪費しておいて、そうして税金における国の負担を免れんとして設備の更新に国家資金をもって償却しようとしておる、こういうようなわけでありますから、設備の機動力を論ずる場合は、やはりそういう過剰設備と、それから設備の革新という問題、これは一体不可分なんです。だから、そういう意味で今度自然増収があるからといって、国家資金に依存することによって、そういうような方面に多々ますますして蚕食していくというような、資本家の貧らん性というものを大いに反省をして、汽車の中でもう一ぺん考え直していただきたい。
  24. 山本幸一

    山本委員長 石野久男君。石野君、なるべくな簡単にお願いいたします。公述人お急ぎのようですから……。
  25. 石野久男

    ○石野委員 西野さんに一言だけ聞いておきます。いろいろこまかいことはありますけれども、あなたの公述は、ただいま春日君から言われたように、あなたの立場からだけ論議されたように聞き取れます。それはあなたの立場から、産業界を代表してそういうことを言われるのは無理もないと思いますけれども、ただ出すものは少くして、くれるものはたくさんくれというように聞えるのですが、そういうことはよくないと思います。そこであなた方が一番心配しているのは、とにかく今どうしても資本金が少いから、借入金が非常に多いから困るのだというのが、ざっくばらんに言って、あなたの方の言おうとする根底になっていると思うのです。なぜ資金が充実しないかという問題についての話を、今の公述だけについて聞いてみますと、どうも税金でうんと取られるからということになるようでございますけれども、先ほどあなたの説明にもありましたように、実は三十年度の上期における利益金の三千七百億のうち、利子だけでもとにかく千七百八十億取られている。この利子千七百八十億というのが、利益の中ではあなた方にとって非常に大きな負担になっておると思う。こういう問題と税金の問題をどういうふうに考えるかというのか一点、これはどうしてもあなた方にとっては考えなくてはならぬ問題であろうと思います。  私はあなたにお聞きしておきたいことは、こういうような金利が非常に高くかかっておるということのために、あなた方の企業に圧迫が来ておるという問題と、税金の問題をどういうふうに考えておるだろうかということを、一つここで聞かしておいていただきたい。この問題がはっきりいたしますと、今度は次に技術開発、あるいは機械を新しいものに変えようとするには、設備の投資のための金を、今の国家からのそういうような金でまかなうという、あるいはまた国家の補助とか特別償却というようなものによって、やろうという考え方と、利益金の中におけるこうした銀行利子というものが非常に多いということとの関係が将来企業に対してどういうふうに圧迫を加えるか、現在どういうふうに加えておるのかという問題が一つ出てくると思うのです。今私たちが税金の問題を考える場合には、いつの場合でも、公平の原則が一つあると思うのです。日本国民経済の中におけるところの公平の原則という立場から、あなた方の論述を聞いていると、きわめて不公平の原則に立っておる論述のように聞えるので、そういう立場からも、もう一つ意見を聞かしていただきたい。以上三つの点をここではっきり御所見だけ承わっておきたい、こう思います。
  26. 西野嘉一郎

    西野公述人 時間がありませんので、簡単にお答えしてごめんこうむりたいと思うのでありますか、金利の問題は、一朝一夕になかなか片づくものじゃないと思うのです。日本の敗戦と申しましょうか、これがやはり日本経済に及ぼした今日の事態でありまして、企業自体もそう感じております。戦後十年間、何とか戦後の痛手をなくすために、自己資金によって立ち上ることができないので、やはり他人資本による借金、あるいは財政投融資などによって日本経済というものは今日まで立ち直ってきた。しかしこれをこのままにしていいのかどうかという問題を私は声を大きく申し上げたのでありまして、西欧諸国、あるいはアメリカ、いわゆる先進国においては、そうした問題はもうすでにちゃんと手直しができておる。特に敗戦国で同様であったドイツのごときは、しばしばいわれておりますように、適正なる減価償却制度、つまり例のドイツ・マルク貸借対照表法案とかその他の法律によって、今日りっぱにそうしたことなく企業が立ち直ってきているという、この実態をわれわれは学ばねばならないじゃないかと思うのであります。従って、今の金利の問題でありますが、これは一朝一夕にどうするということはできませんけれども、これを手直しをしていきたい。そのためには、やはり西独がやったようなやり方で、おそまきながら日本も第三次再評価をやる。先日やりましたが、これが今日非常に企業の立ち上りに影響いたしております。しかしこれだけでは不十分ではなかろうかと思うのであります。私は決して全体を見ずして自分だけのことを申しておるのではありません。ただ特別措置に対して税がどれだけ使われているか。先ほど二十五億と申しましたが、それだけの数字しかないのでありますから、この辺もお考え願いたい。金利の負担というものがやはり物価高になり、結局ひっくり返っていけば、日本の国際競争力を少くしていくという原因にもなると思うのであります。私も十分な勉強をいたしておりませんから、お答えが正確でないかもしれませんが、こんなところでごかんべん願って、御放免願いたいのであります。
  27. 山本幸一

    山本委員長 横錢君。——横錢君の一問で西野君に対する質問を打ち切りたいと思います。
  28. 横錢重吉

    ○横錢委員 西野さんがお急ぎなので、一点だけお伺いいたします。今話に出ております租税特別措置は、税法上の公平の原則を非常にゆがめておる、従って特別措置をする場合には、数を少く限定しなければならないと思う。しかもこういうような租税特別措置を受けた場合には、その結果として、その会社の利益処分というものは制限を受けるべきである。税の過重によっていろいろな問題が出ている。しかしながら税の特別措置を受けなくては利益の配当もできないようなところがたくさんある。そこで租税特別措置で大へんな恩典を受ける一面において、利益の処分というものは野放しで、どんどん幾らでも処分ができる、こういうような制度は、国家の恩典という名に隠れて非常な租税上の妨害をしているといわれても仕方がないと思うのであります。もしも租税特別措置という恩典を受けるのであったならば、利益処分というものは制限を受けるべきである、こう思うのでありますが、この点いかがでありますか。
  29. 西野嘉一郎

    西野公述人 意見の相違になりまして、議論になりますから私はやめたいと思うのでありますが、日本の現在の経済機構から申しまして、そうした配当制限その他を考えていいかどうかという問題は、別の問題じゃないかと思うのであります。ただわれわれは考えなければならぬことは、企業の社会的責任と申しましょうか、というものは、先ほどから皆さんのお話がありますように、われわれは企業というものは公器だと思っておりますので、これを預かっているわれわれは十分な反省をして、あなたもおっしゃるような、無制限な利益処分をしたり、また放漫な経営をしたりすることは厳に戒めなければならぬと考えております。先日もわれわれ経済同友会では、経営者の社会的責任と実践という一つのスローガンを掲げまして、これをわれわれのバイブルとして今後実践していこうということも自覚いたしておるのでありますから、皆さんのお説を十分に体得いたしましていたしたいと思っております。しかし前段の償却理論に対しましては、私はこれは持論でございますので、この点に対しましては、また機会がありましたら皆さんとお話をする機会を持ちたいと思います。
  30. 山本幸一

    山本委員長 ちょっと、横山君の発言の前に私から申し上げますけれども、社会労働委員会で健康保険法が上ったらしいのです。そこで、議運はすでに済んで、委員長に一任せられて、本会議の開会は定刻という予定らしいのです。ただし幾分か遅れようと存じます。なお本会議が始まりましても討論等に時間を要しましょうから、それまで引き続いてやります。そこで、できる限り皆さんの御協力を得て、せっかく御出席いただいたのですから、公述人全体の公述だけは聞きたいと思いますので、その旨御了承願いたいと思います。横山利秋君。
  31. 横山利秋

    ○横山委員 簡単に高木さんにお伺いしたいと思います。先ほどのあなたのお話は非常に傾聴いたしましたが、時間がなかったせいでしょうか、まだ高木さんの言い足らないところがあるかと思うのであります。たとえば今議論しておりました租税特別措置、税が公平であらねばならぬけれども、しかし今日の経済政策上必要なこと等、いろいろな角度から主張されるが、公平論の、ここへ迫ってくる政策上の特別措置のリミットを一体どういうふうに考えておられるか。非常に抽象的でありますけれども、どこまで野放しにしておくか、私はそれをある程度限定したい。限定をして、納得するべきリミットというものを先生方はどういうふうにお考えでありましょうか、それが第一点。  第二番目に、高木さんがおっしゃる五人家族三十六万円まで無税、それができなければ、せめてといって第二案をお話しになりましたが、この第二案は、ちょうど私どもが今主張いたしておりますことに近いのです。非常に共感を覚えるのでありますが、その中で勤労控除の二五%について、先般もここで論争いたしました。論争の焦点になったのは、私どもは均衡上今すぐに二五%にしたい。ところが政府の言いますのは、申告所得を百パーセント申告しないから、それを百パーセント申告させるようにすればつり合いがとれるから、しばらく待ってもらいたい。私の方は、それは百年河清を待つものだということで、現在も二五%にすることは政府は待ってくれというのであります。ところが現在二五%にするのだという所論をお立てになる上において、申告所得を適正に、百パーセント取るべきである、それまで待つべきだという政府の見解についてどうお考えになるか、これが第二番目。  第三番目は、お話しの第一案なり第二案につきまして、答申が出て、それから政府案が出て、今あなたの御意見がある、もし二千五百億円の自然増収ありせば、こうあるべきだとおっしゃるのですが、それは二千五百億ありせば、今の政府案にプラスあなたの案ということであるのか、それとも、もし二千五百億のときに先生が議論されるといたしたならば、税制はどうあるべきか、それとこれとは一緒のことであるかということが御質問をいたしたい第三点であります。  第四番目は、二千五百億ありせば、かく減税に使うべきである、それからあとは施策に回してもよろしいという御意見ですね。そこで、国会で論争になっておりますのはインフレ論であります。このインフレ論について、少し角度は違いますが、予算インフレについて、先生の御意見をお伺いしたい。
  32. 高木寿一

    高木公述人 ただいまお尋ねを受けました点、ここへ控えてはおきましたけれども、もし聞き取り違いなどございましたら、どうぞお教え願います。  租税特別措置の政策的意義ということが出ました。冒頭に委員長がおっしゃったように、私の考えを率直に申し上げます。私は、租税特別措置というのは負の課税で、ネガティヴの課税でありますから、これは補助金であると考えます。従って私がかねて考えておりますことば、予算面に現われております産業部門に対する補助金、これを三十一年度の予算について見ますと、産業経済費のうちで、直接の補助金として現われておりますものは六十五億円でございます。ところが三十二年度の予算におきましては、そのうちから外航船利子補給が打ち切られましたから、三十二年度の予算面の産業経済費に現われて参ります産業部門への補助金は、六十五億円から三十一億円を引きまして三十四億円でございます。一方に特別措置は、経済政策的要求による減免及び繰り延べでありますから、これはさまざまな——先ほど西野さんのおっしゃったように、これは繰り延べであるということもありましょう。従って濃度の違いが非常にありまして、経済政策的要求による減免税、すなわちネガティヴの課税でありますから、これは補助金であります。補助金は前に九百何十億ありしましたが、それが二百億ばかり削られましたから、結局三十二年度におきましては、予算の面で七百億現われております。産業部門への補助金が三十四億であって、経済政策的要求による減免税、すなわち補助金は七百億である、二十倍違う。これがやはり日本の補助金政策の一つの現われである。私は皆さまのように政治家ではございませんから、事実の解釈を申し上げますが、それが日本の政治の上において必要であるか、そういう経済政策をとることが必要であるか。政治的な意味についてはただいま申し述べることを控えさせていただきたい。二十倍も違ったところに特色がありますし、外航船利子補給の場合には配当制限がございます。先ほどどなたか御指摘がありましたように、特別措置による経済政策的要求のネガティヴのものですから、補助金ですから、配当制限がないのです。私はかねて不思議なことだと思っております。  第二の勤労所得の二五%控除政府案では二〇%の控除と相なっておりますが、これを二五%にしたら、どうか。しかし四十万円をこえる場合は、やはり政府案程度でよろしいのではないかと私は感じておりますが、申告所得の場合に、これは営業所得に関することと解釈いたしてよろしゅうございますね、勤労控除に関係するのですから。従って私が先ほど申しましたように、個人業種所得のたとえば四十万円まで、あるいは五十万円でも、そこまでは勤労控除に準ずるものとして一〇%の控除をする。あるいはそこのところは数字の上で二五%がいいか、一二%がいいかということは、私はちょっと決心のつかないある部分があるのでありますが、個人業種所得に対しても、やはり家族その他の勤労によるものが多うございますから、これはやはり若干の勤労控除があってよろしいかと思います。そうすれば、申告所得との間のバランスがとれやいたしませんでしょうかということを、私はちょっと考えております。  それから三十二年度の自然増収は二千五百億をこえると私は申しました。それは二千九百億の近所ではないと思います。二千七百五十億から二千八百億近く三月現在では見込める。おそらく大蔵省の財務当局は、まだそれを言い切れないと思いますが、思ったよりも自然増収が多いので驚いておるのが実情だと思います。そこで皆さんは、一つ実情を担当者からお聞き取り願いたい。ただその場合に、一月の末の状態はこうでございます、二月にかかってこうでありますというならば、今後の計画の根底としては弱いものになると思いますので、三月現在はどういう見込みであるかということをお聞き取り願いたいと思います。さようなことを私が申すと、あるいは大蔵省の方は、よけいな迷惑なことを言うやつだとおっしゃるかもしれませんが、これは、やはりそこを確かめておきませんと、その上に立った減税計画と申しますか、租税計画というものがつかみにくい。国民租税負担軽減することができるのに、それをしないということになってしまうと思いまして、私はそのことを申しました。そうして政府案は、先ほど申しましたように、基礎控除が九万円でありますが、それよりももう一万円引き上げる、それから扶養控除のことも申し上げたわけであります。もちろん私は、財源が許されるならば、私の一応の目標としては、五人家族勤労所得者年額三十六万円、月額三万円、これは今四百倍とすれば七十五円であります。しかし、皆さん戦前において七十五円の収入がおありのときに、税金を払った方はないと思います。自分が若い時分に税金を払わなかったとすれば、やはり今できるなら、そういう小所得者に対しても租税負担を除くということのお考えは、当然持っていらっしゃると思います。しかし税源がないじゃないかとおっしゃれば、それは税源があるのです。大体今の進行状態からすれば、政府の自然増収見込みよりは八百五十億多い。それをみんな使ってしまって、それにぶち込んでしまえと言っては、これは少し慎重を欠くかもしれませんから、従って第一段階としては、五人家族勤労所得者初年度三十一万円、従って政府案よりも五万円ふえます。そしてもし——もしと言う必要はありません。今の状態では確実だと私は思いますが、いよいよそれくらい見ても財源は大丈夫だとなったら、さらに五万円引き上げて三十六万円まで持っていく、そういうことが私は可能であると考えておる次第でございます。  それからインフレ論でございますが、このインフレ論については、確かにいろいろ懸念はありますが、私は、考えのもとを非常に簡単素朴に考えたところから出発する方が、かえって雑念がなくてよろしいと思います。ただいまのところインフレの危険ありとすれば、これは国内需要がふえる。内需がふえることによって、外国への輸出というか、外需が内需に振りかわるということになります。たとえば率直に申し上げますと、国鉄の工事勘定がふえておる。そうすると、企業によりましては国鉄の注文を長くとっている、それをそでにするわけにいかない。しかし同時にその企業は、今車両、レールその他の外国からの注文もある。どっちをとるかということが起って参りますが、おそらくはこれまで外需、輸出に向けられておったものが、若干は内需に回るだろうと思います。それは、日本経済生活をよくするためには、なるほど輸出を増大することも必要でありましょう。けれども、それは国民の生活を豊かにするために輸出を増進するのですから、右の足を出すと同時に左の足も出していかなければならないのですから、その場合にどっちかが先になるということは当然のことです。両方足をそろえて飛んでいくのじゃないのですから、どっちかの足を互い違いに出していくのですから、あるときは輸出の方を多く、あるときは内需に向ける、そのバランスによって日本経済の内容がよくなっていくのだろうと思います。そこで私は、もしインフレの危険、そういうところから参りますインフレの危険ありとすれば、それは絶無とは申しません。これは企画庁の経済拡大推計でございますが、三十一年度においては、国民所得が一二%増大する。これが三十二年度においては、下半期における輸出の伸びがにぶるかもしれませんので、そこでもって七・五%にする、こういう推定でございます。これは私はもう少し内輪に見て、七・五%としないで、五%ぐらいに考えるのが妥当じゃないか。しかし、そうしたらこれまでに申した三十二年度の自然増収が減るじゃないかというお話がきっと出ると思います。そこで先ほど、一番初めに申し上げましたが、所得増加租税収入に反映していくには四ヵ月から五ヵ月かかる。それだけ自然増収がずれていくわけです。そこで、一方では自然増収が多いということは、財政の対民間収支よりいえば吸い上げ超過になります。その吸い上げ超過になっておるものの一部は所得税減税に充て、一部は——というのは、三十一年度内における自然増収の中から先ほど言った六百億、三十二年度の自然増収の中から六百億、合計千二百億は一応政府余裕金として押えておいて、もしインフレの危険ありとすれば、それを抑制する手段を講ずるし、もし金詰まりでいけないならば、それを短期資金として放出すればよろしい。ここはやはりある弾力性を持たせる用意がなくてはならぬかと思います。従って私は、一拳に三十六万円までの免税点にするということをしないで、ここは一歩慎重なステップを踏んだ方がよろしいと思いまして申し上げたわけであります。
  33. 山本幸一

    山本委員長 それでは、先ほど申し上げましたように本会議等の関係がございますから、この際残余の公述人方々公述を続けてお願いしたいと思います。日本労働組合総評議会事務局長岩井章君。
  34. 岩井章

    ○岩井公述人 時間がありませんから、ごく簡単に私たちが考えておることを申し上げまして、委員各位の参考にしていただきたいと思います。  第一番目に、私たち労働者といいましょうか、簡単な言葉で言えば貧乏生活をしている者から見ると、税金の体系というものをだれが見てもわかりやすいものにしてもらいたい。自然増収が相当あるので、今度の機会にはかなり手直しをされるわけですから、こういう機会に、むずかしい理屈は私もよく知りませんが、単一の税体系に一歩近づけることが必要なんじゃないか。これは私たち労働者ばかりでなく、おそらくは国民各階層が、もう少し税の体系というものはわかりやすいようになることを期待しているのじゃないか。第一番目にこのことを申し上げたいと思います。  それから第二番目に申し上げたいことは、先ほど来かなり議論になっております国民生活の上下の断層というものを、こういう自然増収のある機会でありますから、できるだけ埋めるような配慮をしていただきたい。具体的に言えば、個々の問題はたくさんありますけれども、私どもから見ると、上下の生活の断層というものが、今度の税改正によって一そう広まっていくのではないか、そういう心配をいたします。特に私たち勤労者に直接の関係がある所得税改正のやり方を見てみますと、大へんに不満を感じます。御存じの通り、五十万から百万のところを称して中堅所得者という言葉を使っておいでですが、私たちから見ますと、あるいは私たちの仲間の生活を見ると、月収で四万円もとる、あるいは五万円もとるという者は決して中堅所得者ではありません。おそらくはどういう職場に行きましても、月収で四万、五万とるというのは、会社でいえば課長であり、あるいは国家公務員でいいましても、おそらく課長くらいにならなければ、月給で四万も五万もとる人はありません。御存じの通り日本の平均賃金というものは、いろいろ説はありますけれども、よく見ましても一万八千円内外であります。その場合に五十万から百万のところに力を入れる、こういうふうなやり方というものは、私はせっかく金を使って手直しをするのですから、適当ではないのじゃないか。これは何党を問わず、国民の一番下の生活をしている人たちのために、もう少し税体系のことは配慮すべきではないか、こういうふうに私としては申し上げたいのであります。特に私は臨時税制調査会にも出ていた関係で、議論のあるところだと思いますから、研究をしていただきたいのでありますが、租税をとるに当りまして、先ほどから租税公平の原則ということがしきりに言われておりますけれども、もう一つの問題は、大衆課税にするのか、それとも非常にお金持ちの人から税を納めてもらうという方式をとるのか、この辺のことはもう一ぺん検討を行なっていただきたいのであります。今高木先生からもお話しがありましたように、戦争前昭和九年から十年くらいを——私はそのころ国鉄に入ったのでありますが、当時月給百円なければ国税というものは納める人はありませんでした。従って、私が小学校を出てすぐ機関区に入った際に、国税を納めている人で保証人を探してこいと言われまして、非常な苦労をしたことがあります。これはおそらく年輩の委員各位には、身をもってそれこそ御存じのところだと思いますが、当時の百円が今日どの程度の金になるか、これは常識的に私は答えが出るところだと思います。こういうふうに考えて参りますと、昭和十年のときの所得税を納めていた人が、正確な数字はわかりませんが、国税庁あたりの数字を見ると、六十三万人ということになっております。昭和三十一年の所得税を納めた人は、千百十七万人という数字が発表されております。こういう数字を見ますと、私の意見としては、できるだけ所得税を納める人を少くしていく。つまり言うならば、基礎控除の額、あるいは扶養控除の額、あるいは所得控除の額というようなものをできるだけ重点的に引き上げていってもらう。そうすることによってだんだん所得税を納める下の層の人たちが納めなくてよいことになっていくのではないか、この点は特に私は声を大にして訴えるものであります。特に昭和十年の数字を見ると、今日の金に換算して三十万から五十万の所得税を納めていた人たちが約三八%おりました。それに反して五十万以上の税を納めていた人たちは、六二%当時の税金の中で占めているのであります。ところが昭和二十九年の数字を見ると、三十万以下の所得の人が七一%、三十万から五十万までの人が二二%、そうして今日政府原案でいわれている、中堅階級と呼ばれている五十万以上の人たちはわずかに七%という実情であります。こういう数字を見ましても、私は特に今回の税制改正するに当りましては、こういう面の配慮を第一義的に考えていただきたい。  それから次に申し上げたいのは、所得税法人税との関係であります。先ほど来法人税の問題がずいぶん論議をされましたが、私が調べた数字によりますと、歳入中に占める税金の割合を昭和十年と三十二年、つまり予算原案として出されているものとを比較しますと、昭和十年には所得税法人税ともに一億円であります。ところが昭和三十二年の政府原案を見ますと、所得税は三千二百五十一億円、法人税は三千二十五億円であります。私どもから言われると、何でもかんでも法人税から取れ、こういうふうに主張するわけじゃありませんけれども、依然として二百億円近くの差異があるということは、やはり研究をしていただかなければならない問題の一つではないか。特にこのことも智さんに訴えておきたいと思うのであります。  そこで私が意見として申し上げたいことは、今の数字の中からも出て参りますように、できるだけ低所得者の減税というものを考えてもらいたい。これは昨年の春でありましたか、間接税の中で特に砂糖税だったか、たしか上ったことがあります。その砂糖税の上ったというような実例を私たちの生活に直接適用してみますと、減税の恩典は何も受けずに、貧乏人といえども砂糖くらいは食べますから、かえって税が引き上るという結果を示しておるのであります。従って、今回の税制改正に当りましては、間接税の問題はあまり手直しをしていないようでありますけれども、私はむしろ積極的に間接税を減らしていく、こういう方向をこの自然増収のあった機会にもっと考えていただく必要があるのではないか、特にこのことを申し上げておきたいのであります。  次に申し上げたいのは、いわゆる高額所得者に対する累進率をもっと引き上げることができないのか、こういう点を私どもからは主張いたしたいのであります。私どもは学問がありませんから、詳しく実情は知りませんけれども、イギリスあたりの実例でいきますと、最高の累進課税率は九五%だと聞くのであります。従いまして、今日戦前に直ちに比較することはもとより困難でございましょうけれども、こういう面の配慮も加えていく必要があるのではないか。そうすることによって初めて租税の公平の原則というものが貫かれていくのではないか、こういう点を申し上げたいのであります。  次に法人税の問題について、私どもの立場から若干意見を申し上げておきます。第一番目に法人税の問題で申し上げたいことは、十何年間続いてきておる傾斜生産方式をやめてもらう段階がきておるのではないか。先ほど来経営者側の方からいろいろお話しがあったようでありますが、経営者の皆さんがしばしば使う言葉の中に、もはや戦後ではないという言葉があります。もしその言葉が事実とするならば、敗戦以来今日までとってきました種々の国家的な援助というものを、大企業にのみ集中するやり方というものは、この辺でもはややめるべきではないか。税の上で言うならば、租税特別措置法というものは、長い間この委員会でも問題になっているようにいわれますけれども、私どもから見ると、原則的に廃止をすることが正しいのではないか。先ほど春日委員から御質問もありましたように、租税公平の原則から見まして、ひとりまじめに中小企業だけが四〇%納めておって、そして大きな企業は二〇%とか二五%とかいうことは、確かに説を立てれば、国家経済の発展とかいうお話しもありましょうが、やはりほどほどにしなければいけないのではないか。ことに私は全くのしろうとでありますけれども、かりにそういう必要を感ずるならば、これは税の面で処置をすべきものはなく、むしろ国家の経済政策の中で当然論議をすべきものではないか、こういうふうに私は考えるのであります。従って、この委員会がわずかではありますけれども、政府原案の中に示されている租税特別措置法整理しようという方向を、私は大いに歓迎するところであり、この際原則的にもっと検討をして、抜本的に廃止をする方法というものをとっていただきたい。  それから第二点に申し上げたいことば、全く私はしろうと論で主張するので、私自身自信がありませんが、法人税が一体一律に課税されるということはほんとうにいいのかどうか、全くのしろうと論からすると、所得税の面では、御存じの通り累進課税になっておる。法人税の方は、たとえば八幡製鉄のごとき、半期の決算で純利益十億もあげておって相変らず四〇%、それが租税特別措置法があるために二〇何%、こういうべらぼうなことになる。片方町の中小企業、一銭店屋のことを考えてみましても、五十万円の所得さえあればもう四〇%かかる、こういうことを考えてくると、全くしろうと論議ではありますけれども、所得税的に累進課税方式というものがほんとうにあるのがよいのではないか、むしろ公平の原則という立場からみると、やはりそういうことを私は主強したくなる。果して税体系の上でいいかどうかは全く自信がありませんけれども、法人擬制説だとか、実在説だとかやかましい論議がありますけれども、私としては、この問題については同様全く大いに疑問を持つところであります。  次に申し上げたいことは、最後でありますけれども、最近これは法律の中で現われておるのかどうか私よくわかりませんが、人格なき社団に対して課税をする、こういう動きがこの委員会で討論をされておるのか、政府考えておるのかよく知りませんが、あるようであります。これは私ども労働組合、あるいは大衆団体から見ますと、大へんな問題であります。御存じの通り、必ずしも法人になっておらずに、たとえばここに母親の会というものがあります。この母親の会が、たとえば料理の講習会をやる、そのために若干の費用をそれぞれから分担をしてもらう、それが利益と称して課税対象になる。私どもから見ると、まことにばかばかしさを飛び越えて、全く妙な感じを持つのであります。ですから、人格なき社団に対する課税というようなものは、この際本委員会におきまして、事の理非というものを冷静に判断をしていただきまして、そういうようなばかげたことのないような処置をとっていただきたい。労働者がいい音楽を聞くために、たとえば音楽会を催す、そのために先生に支払うための若干の費用を徴収すれば、これがもう所得だと言われて課税対象になる。全くこれはもうばかばかしさを通り越して、憤りさえ覚えるところであります。どうか本委員会におきましても、そういうばかげた現象がなくなるような御配慮をいただきたいと思います。  時間がありませんから、ごく簡単に私どもが申し述べたいところの要点を申し上げまして、参考にしていただきたいと思います。
  35. 山本幸一

    山本委員長 次に、税理士、公認会計士前川万治郎君にお願いいたします。
  36. 前川万治郎

    ○前川公述人 私はただいま御紹介を受けました税理士、公認会計士の前川でございます。この公聴会に出ましてお話をいたす機会を与えられましたことを、光栄に存ずるのでありますが、御指名によりまして、これからお話を申し上げますることは、税務職業人の一人といたし、かつ個人の意見も加えまして、公正なる立場の上から改正案の要点とその他につきまして、いささか所見を申し述べさしていただきたいと思うのであります。従いまして、ある場合には大企業にも不利なことを申し上げるかもしれぬし、また小企業にも不利なことを申し上げるかもしれませんけれども、公正なる第三者という面におきましてお話をいたしたいと思うのであります。  なおこれから申し上げますことにつきましては、時間の制限を受けておりますので、一々こまかく申し上げますと長くなりまするから、条文で申し上げる場合がございますから、どうか御承知おき願いたいと存じます。  まず所得税法について申し上げます。所得税法改正案の第一条第六項の、ただいまお話もございましたけれども、法人でない社団または財団に関する規定が設けられましたことは、これはあるいは民法上やや疑義が存することであるかとも存ずるのでございますが、私ども公正なる立場から考えますると、これは当然——当然と申しまするか、徴税上は入ってもいいことじゃないかと思うのであります。  第二に、第二条第二項、第六条第一項の第三号、第九条第一項の第五号、同条の第二項につきましても、これは改正案に賛意を表し得るものでございます。これは一々申し上げますと大へん長くなりますので、どうか皆さんあとでごらん下さい。  その次に第三といたしまして、改正案の第十一条の三であります。これは同一世帯の親族に対する資産所得の合算課税についての規定でありまするが、これについてはいささか異議がございます。現在の家族制度におきましては、私どもはなお従来のごとく所得の分割課税を主張するものであります。現に同一世帯であっても、その収支の区分を明らかにいたしまして、そうしてまた一つの世帯内におきましての実情を見まするに、同一世帯内において比較的多額の所得、あるいは資産所得を有している世帯者が、その世帯内の親族の生活費の一部を負担している場合が、これは普通に行われておるのでありますが、それを考えますと、やはり世帯内の平和維持と世帯内の幼少親族の養育にこれを使っておるのでありまして、合算課税を行うとすれば、同一世帯内の資産の分割、あるいは贈与につきましても相続税を免除すべきものである、私はかように考えるのであります。そういう議論も成り立つと思うのであります。もし所得のあれを合算するならば、その所得の起ってくるところの源泉である資産の世帯内の贈与というものは、相続税を免除してもいいという議論が成り立つだろうと思うのであります。もしその相続税を免除することができないならば、やはり現在のままそれぞれ分割課税にしていただくのが最もよいのではないか。これは現在の改正法案に反対の主張をいたすものであります。  それから第十三条の所得税率の改正は、いろいろ御議論もあると思いますが、私どもは現在の段階においては、大体賛意を表するものであります。ただし、地方税の課税もあるのでありますから、私はでき得べくんば三十万以下の所得者には所得税がかからないように——現在よほど減ってはおりますけれども、将来ともに御研究を願いたい、かような希望をこの点については申し述べておきます。  第二十六条中の改正点、第三十条中の改正点、第三十六条中の改正点、第六十一条中の改正点についても、これは私どもとして御賛成を申し上げることができると思っております。  第六番といたしまして、第五十三条の規定は、改正案において限度額増加されたのでありますが、第三者通報制度の廃止されました今日は、これを削除していただいていいと思うのであります、しいてこの新しい改正法の五十三条の規安を存置なさるとするならば、同条の最後にありますところの「命令の定めるところにより、公示しなければならない。」というのを「公示することができる。」となすっていいのであろう、かように考えます。  第七番といたしまして、附則の9及び10は、第十一条の三のいわゆる世帯内親族所得の合算規定について賛意を表することができませんから、これは改正案から削除を願いたい。  それから次に第八番といたしまして、概算所得控除につきましては、理論的には不備な点もあると思うのでありますが、社会保障制度のまだ十分にできておりません今日、これは一つの徴税上のグレースとして存続しておいていただきたいという声を多くの方々からも聞いております。私もまたさように考えるのであります。  次に法人税について申し上げます。第一に、第一条第二項の法人でない社団についての規定は、所得税法の部において申し述べましたごとく、民法上の疑義が存するところであると存じますが、特に収益事業を営むものについて、法人たる社団、財団とみなして法人税法を適用するというのでありますから、これは課税公平の趣旨に基いて、私個人といたしても賛成し得るところであります。しかしこれに関連いたしまして、法人たるといなとを問わず、いわゆるかような非営利事業団体が収益事業を営みますのは、非営利事業の運営を助成するためにこの営利事業を営むのでありまするから、現在の非課税限度の三〇%を五〇%まで非課税に拡張していただきたい、かように考えるのであります。  第二番に、改正法第五条の二、第五条の三、第七条の第三項及び第六項、第九条の七、第九条の八等は、いずれも第一条第二項に関連しておる条項で、これは異議がありません。  第三番といたしまして、第十八条第七項に定める添付書類については、いささか異論の存するところでございます。これはこまかい条文上の問題になると思いますが、外国法人についてはともかくも、第五条第一項各号の法人もしくは人格のない社団については、その本来の目的が非営利事業の遂行でありまして、その行う収益事業を除きましては、損益計算なるものはないのであります。   〔委員長退席、横錢委員長代理着席〕  そしてその計算は、市町村のごとく収支会計によって行わるべきが本来でございます。でありますから、財産目録と収支計算書を作成すれば足りるものでありますので、また収益事業を行うものについては、これは税法にも定めはございまするが、本会計と分離をいたしまして、そうして収益事業会計の関連を知る必要があるのでありまするから、同項の第三行の「貸借対照表及び損益計算書又は」とありますのを、収支計算書及びと訂正されんことを望むものであります。収益事業にかかるものにつきましては、貸借対照表及び損益計算書を添付すべきことは当然でありますから、これは原案のままでよいと存じます。なお財産目録及び貸借対照表の提出を必要とするものにつきましては、貸借対照表に付属明組書を添付することによりまして、財産目録の添付は省略し得るのではないか、さように考えますから、この点申しそえておきます。  第四といたしまして、第五十一条第一項及び附則に定められました人格のない社団についての規定は、これを法人とみなして法人税法を適用することについては、先ほども賛意を表しましたが、当然の定めといたしまして、これは賛成し得るものであります。ある場合には、さようなお取扱いを受けた方が人格のない社団におきましてもまたいい場合もあるのであります。  第五といたしまして、なおその他のこととしては、現行第十七条の二に定めるところの同族会社の積立金課税は、同族会社であるとの理由で重課されるのでありまするが、この規定は廃止されるようにお願いしたいと思います。法人税のほかに、さらに留保金に対して課税することは重複課税になりまして、やや酷であると考えられることと、それでなくても資本蓄積の規定の適用に恵まれない中小法人が多く同族会社になっておりますので、中小法人においては、なおその点をやめていただきたい、かように考えるのであります。またその他の点といたしまして、第四十二条の利子税の関係において、更正あるいは決定にかかる利子税及び加算税の起算日は、従来はその事業の決算決定の日にさかのぼるのでありまするが、これを更正あるいは決定のあった日から利子税を加算していただくようにしていただきたいという意見が、だいぶ業者の中にもございますから、どうかこれだけ付言しておきます。  次に租税特別措置法について申し上げます。特別措置法の全面的改正は、現下の国情に照しまして概して私は適切と考えるのでございます。従来特別措置法によって恩恵をこうむりまするものは大法人に限ってというと語弊があるかもしれませんが、大法人に限りまして、そして従来は、いわゆる旧十八条の居住用住宅等の買いかえとか交換等による規定のほかは、あまり中小企業方面には恩恵がなかったのであります。そういわれたのでありまするが、今回とにかく措置法の全面的改正を行われることになりましたことについては、私どもは賛意を表するものであります。なおこの点については、将来の研究に待つものが相当多いと存じまするが、どうか将来の改正案については十分御考慮を願いたい。ただし概算所得控除の廃止の件は、所得税のときにも述べましたけれども、これは存続をしておいていただいた方が、社会保証制度が確立されるまでは一つのグレースとして、置いていただいた方がいいと思うのであります。  次に別の意味におきまして、従来鉱業、マイニングにおきまして、非常に坑道の償却について悩んでおったのであります。この点について、今回坑道等の生産維持に必要であるところの機械、あるいは坑道の製作費等は、その用に供した年の必要経費に算入することが挿入されましたのは、これは非常に機宜を得た措置であると思うのであります。これは、私が先ほどの公正な立場から、たとえば炭鉱におきまして、あるところまで掘っていって、それから先の坑道の作製費が非常によけいかかる。しかしそれは、掘れた後はほとんど無価値のものになってしまうのでありまするから、石炭の増産、あるいは企業の進展という意味から申しましても、大へんにけっこうな御処置であったと思うのであります。  次に第三といたしまして、第六十二条の交際費の損金不算入の方法については、現行のものについてもいささか異論があるのでありまするけれども、しかし適用限度を出資金五百万円から一千万円に増加されました点については、賛成を申し上げるのであります。それからこの経費としての許容率を一〇%下げられました点については、これはやはり種々なる点を考慮されて立案されたものとしまして、これは納得し得るところでございます。また従来の方法によりますると、非常に適用に不公平があったのです。というのは、初めに基準年度がない法人に対しまして、非常に高い費用の否認をされるということになっておったのでありまするが、これが今度の改正によりまして訂正され、明確にされましたことは、非常にけっこうだと思うのであります。  なお租税措置法につきましては、全体的に見まして、永続性のあるものにつきましては本法に織り込んでいただきたいということと、なおこれの改正につきましては、将来とも御研究を願いたい、かように存ずるのでございます。  以上御指名に基きまして、今回の改正に関しまして所見を述べたのでありまするが、一般的に従来の税法の字句は、非常に難解であるといわれておりますので、今回の改正についてはその点をだいぶ考慮されまして、字句をよほど簡易明確にされたところもございまするが、この点は一般納税者に納税思想の普及をさせるという観点からも、将来ともになお御研究願いたいことを希望いたしまして、私の陳述を終ります。
  37. 横錢重吉

    ○横錢委員長代理 本会議散会後直ちに再開することとして、暫時休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時五十五分開議
  38. 山本幸一

    山本委員長 休憩前に引き続き公聴会を再開いたします。  それでは引き続いて日本証券業協会連合会専務理事吉田政治君に公述をお願いいたします。吉田公述人
  39. 吉田政治

    ○吉田公述人 ただいま御紹介いただきました吉田政治でございます。  今回の税制改正の案は、長期にわたる税制調査会の研究に基き、戦後の複雑な税制改正するとともに、一千億円の減税を企図して作成されたものでありまして、われわれは、関係当局の今日まで払われました御考慮と努力に対しまして、深く敬意を表する次第であります。改正案のうち、証券界として賛成な点、反対の点並びに希望いたしたい点がございますので、許されました時間内で、その大要だけを申し述べたいと思います。  初めに総括的な点につきまして申し述べます。わが国の税制に限らず、広く経済政策の面から申しまして、われわれが常に遺憾に考えておりますことは、貯金と株式、あるいは言葉をかえますと、利子と配当というものに対する取扱い方が、はなはだ不均衡な点があるということでございます。申し上げるまでもなく、資本の蓄積に関しましては、預金も株式もともに重要な使命を持つものであります。その上に企業の自己資本を充実させるためには、株式投資を推進いたしまして、企業の株式発行を円滑にすることが必要なのであります。また株式投資は、企業への直接投資でありますから、預貯金のような間接投資と比べますときには、積極性を持つものであります。従って配当に対する課税は、利子に対すると同様、もしくはより以上に有利に扱われてしかるべきものかと考えるのであります。明治以来わが国におきましては、金融偏重の政策が常にとられて参っております。特に戦後におきましては、預金に対しましては、まず無記名預金制度を設け、次に源泉分離制度を定め、さらに貯金利子に対する税率を幾たびも軽減されてきておるのであります。そうして一昨年からは、利子に対しては全面非課税ということにまで進んでおるわけであります。しかるに配当に関しましては、源泉課税のほかに申告による総合課税制度がとられております。従って利子は、預金者よりも高率の税金を常に課せられておる上に、常に税務当局から元本追及の対象となっておるのであります。企業の自己資本が少いということは、金融機関からの借り入れ過多となり、その結果は財界にオーバー・ローンの現象も起りやすく、また企業自体にも自主性と進歩性が低くなり、あるいは他から人事権までも干渉されるような事態になることは申し上げるまでもないことでございます。今やわが国におきましては税制上、行政上、全般的な経済政策といたしまして、株主の優遇というものを今まで以上に考えられなければならない情勢に到達しいていると信ずるものでございます。この点につきまして、私は証券界の全体の意向といたしまして、配当と利子との間の税制上の不均衡な点につきまして、今日日本経済の新しい発展に向わんとする時期におきまして、行政当局皆様の特別の御考慮を願いたいと思うのであります。  次に、改正法案のうちの各種の項目につきまして、証券に関係のある点を申し上げたいと思います。  第一に配当に関する税制といたしましては、配当源泉徴収率は、現行の臨時措置法のまま一割として据え置かれることは、まことにけっこうなことでありまして、賛成いたす次第でありますが、配当控除率は三割から二割に引き下げられましたことは、低きに過ぎますから反対いたしたいのであります。租税調査会の答申におきましても二割五分となっておるにかかわらずこれが二割に引き下げられましたことは、はなはだ遺憾に存ずる次第であります。法人擬制説などを拝借するまでもなく、株式に投ぜられた資金は、その運用収益に対して法人税が課せられるのでありますから、株主に分配される配当は、納税済み後の分配金であります。従って、これに課税することは二重課税と申して差しつかえないのでございます。配当控除率が三割に据え置かれましても、決して高過ぎるわけではないとわれわれは考えておる次第であります。  次に、所得の世情合算制度について申し述べたいと存じます。この制度につきましては、四つの点から私どもは反対をいたしたいと思います。  第一の点は、この合算制度の上で合算されるべき対象は、資産所得であります。すなわち利子所得と不動産所得及び配当所得の三つでありますが、利子所得は、税法上の特別優遇の関係から合算には除外となります。また不動産所得は、その実例がはなはだ少いのでありまして、結局この合算制度は、配当所得だけが対象となったものといっても差しつかえないのでありまして、ここにも利子と配当との非常な不均衡なる扱い方が現われておるように感ずるのであります。  第二の理由といたしましては、世帯員間の資産の移転に関しましては、そのつど贈与税を課して、個人本位の建前で扱っておりながら、その資産から生ずる果実だけを世帯合算とすることは不合理であるように思います。その上に、税額は合算をいたしておきながら、その納税者はさらに再びもとに返して、各世帯員が納税する建前になっておるようであります。このことは、皮肉に申しますれば、世帯合算の制度が、個人の財産権と矛盾しておる欠陥を政府みずから認めたその上での弥縫策として、かような、一たん合算をして、さらに納税の場合にはまたそれぞれの世帯員が納税するという建前をとられたものと考えるのであります。かような理論上から矛盾の多い措置は、おとりにならない方がけっこうだと考えるのでございます。  第三の点は、最も遺憾な点でありますが、これは配偶者に対しましては、子や孫に対するほどの独立性をも認めないで、当配偶者の収入いかんにかかわらず、すべて世帯主に合算するということになっております。このことは、シャウプ勧告によりましてとられました、税制が男女の平等権を経済的に確立して今日まで参ったのでありますが、それを打ちこわしまして——多くの場合は、配偶者に該当するのは妻でありますが、その妻は夫の従属となることになりまして、これはすなわち旧式の家長制度の弊に逆戻りするものでありまして、かような逆戻りの、民主主義とは相いれないような思想が恨底となっておる制度に対しましては、私どもは、税額のいかんを問題といたしませず、趣旨として賛成できかねるのであります。  第四の反対の理由は、この合算制度がとられている前提につきまして、賛成できがたい点があるのでございます。それは、租税調査会の答申書の中に示されております通り、二つの前提、のもとにこの制度が作られておるようであります。第一は、世帯員の所得は、世帯主が自由に処分するのが日本実情であるということ、もう一つは、多額の配当所得者は、その所有株式を家族の名義に故意に分割しておる、この二つのことを前提としてこの合算制度が定められておるようでありますが、この二つの前提は、必ずしもすべての場合に適用できる確定的なこととは申し得ないのであります。逆に、名実ともに世帯員各自の資産所得である場合の方が多いのであります。それが普通なのであります。また株式等に関しましては、家族のそれぞれの者に貯蓄心を向上させ、独立心を高めるという点から申しましても、かような資産な漸次当人の名義にし、名実ともに当人のものとして持たすことが、むしろ国の経済政策の上から申しましても推奨すべきことかと考えるのであります。それを事実と相違いたしました、きわめてまれなるケースを普通のケースのごとくに扱い、前提といたしまして、この合算制度が設けられておるということは、どういたしましても理屈に合わない、また実際の上からも弊害の多い制度だと考えます。このことはひとり税制上の問題だけにとどまらないで、民主主義の原則という点から申しましても、越ゆべからざる線を越えているような感もいたしますので、慎重に検討される必要があると考える次第であります。  次に、所得税法第六十一条第二項の追加修正、新聞で申しておりますいわゆる名義貸しの株式の問題についてでありますが、あの六十一条第二項の修正のことは、これは当然な措置考えまして、この法規につきましては当然のことかと考えますが、ただ、この法規の実施につきましては、次の二つの点について政府当局において御考慮願いたいと思うのであります。  その一つは、資産を預貯金といたしますれば、それが何千万円何億円になりましても全く不問に付しておるのでありますが、ひとり株式の場合におきましては、株式投資者はきびしく元本を追及されるということは、不公平ではないかという点が考えられるのであります。もう一つは、この制度をあまり急激にきびしく実施いたしますときには、証券市場に重大なる悪影響を生ずるおそれがあるようにも考えられる次第でございます。過去におきましても、幾たびかこれが問題になったのでありますが、実現されずに今まで経過してきましたことは、証券市場に対して、角をためて牛を殺すような措置を避けるべきであるとの深い考慮からとられてきたことかと考えるのであります。  次に、法人の交際費のうち損金に算入し得る限度が改正法によりまして引き下げられておりますが、この問題に関しましては、われわれとしましては、実施上はおきまして希望いたしたい点が一つあるのであります。それは、現行の法規では、証券業者を物品販売業者と同様は見ておりまして、交際費の算定基準が売上高のみを基準といたしております。しかるは証券業はおきましては、売りと買いというものは同じ商品について表裏の関係をなしているものではなくて、全く別個の委託注文にかかる、売りは売りの注文、買いは買いの注文を引き受けて、これを取引所において執行いたしておるわけでありますから、従って、売りの取引と買いの取引とは合算をして、そうして取引高の合計として交際費の算定基準とされるのが当然だと考えるのであります。この点につきましては、これは政令上において定められるものだと考えますけれども、関連をいたしておりますので、私どもの希望いたしておる点を申し述べておきます。  最後に、新税法のうち私どもが賛成を表します点は多々ありまして、深く感謝をいたしております。すなわち公社債の利子、投資信託の分配金に対する課税方法、価格変動準備金、貸し倒れ損失準備金、遺約損失補償準備金等に関する取りきめは、必ずしもけっこうとは思いませんけれども、これはごもっともなことと考える次第であります。また、増資免税の廃止、増資登録税の軽減の廃止等につきましても賛成をいたす次第であります。  なお、最後に一言申し述べておきたいことがございます。それは、以上証券に関して申し述べましたことは、実は全国多数の株主及び株式発行会社の立場からの要望でありまして、証券業者直接の利害関係と申しますよりは、株主及び発行会社の利害関係の重大な問題なのでありますが、不幸にして、株主及び発行会社を代表しての意見を発表する団体も機関もないために、営業上最も関係の深い証券業界から、かような問題の場合には常に意見を述べておるわけでありますが、本日ただいま私どもが申し述べました各種の税制に対する意見も、これまた株主及び発行会社の立場というものを考えまして、その実情に基いて証券界として公述いたした次第であります。
  40. 山本幸一

    山本委員長 次に、日本橋法律会計税務相談所所長平石甫君の公述をお願いいたします。平石公述人
  41. 平石甫

    ○平石公述人 ただいま御紹介にあずかりました平石でございます。ただいままで、公述人皆さん方は、一千億の減税という問題に重点をしぼって公述なさっておりますが、ただ一つ、どなたもあまり触れなかった法人でない社団または財団に対して新たに課税をしようという法律案が出ておりますので、私はその法律案に重点を置いて公述したいと思います。  まずこの法律案に反対いたします。その理由といたしまして、  一、租税法律主義の法衣に隠れて、   逆に租税法律主義が踏みにじられ   る。  二、恐怖政治になる可能性が生まれ   る。  三、改正案に便乗した合法的脱税組   織が公然と行われ、税制に大混乱   を生ずる。  四、法人でない社団等に対する法規   制の是非について、これまで憲法   学者、行政法学者、私法学者の意   見が全然徴されていない。  五、法人擬制説を採用している現行   租税法体系と矛盾することとな   る。  六、実質課税の原則に抵触する。以上六つの理由から反対いたします。では、以下詳しく述べてみます。  まず第一に、租税法律主義が踏みにじられるという点について申し上げます。  今、日本の社会には、自然人の単なる集まりといってしまうにはあまりに有機的に固まっており、そうかといって正規の法人になるには手続や法律上の条件等においていろいろな隘路がありまして、法律上は非人格者のままで存在している団体が無数に見受けられます。この団体は、民事や商事の私法関係におきましては、権利や義務の行為能力が認められておりません。わずかに民事訴訟法第四十六条で、その名において訴えたり訴えられたりできる、いわゆる当事者能力者でしかありません。この当事者能力者も、実は戦後初めて与えられたものでありまして、今までこれに関する判例すらない始末です。その代表的なものは政党であるというのが、私法学者の定説のようです。各種の経済団体や親睦団体、平和運動団体、主婦団体、慈善団体、学会、研究団体、芸能愛好団体、PTA、同窓会、神社仏閣の氏子や檀徒やその講、それから政党人の後援会のようなものがこれに入ると思います。極端な例をあげますと、やみ屋の集団とか、テキ屋仲間までこれに含まれそうでありますし、その数と種類は数え切れるものではありません。  さて、これまで納税義務者は、すべての租税法規におきまして、呼吸する自然人、たとえば何町何番地の何の誰兵衛、あるいは登記所に登録されている法人、たとえば何町何番地株式会社何々、あるいは何々協同組合というように人格者だけに限られ、ごく例外として旧取引高税法第四条、それから旧地方税法第七十二条、現行相続税法第六十六条第一項で人格のない社団または財団——以下私は非人格者と続けて呼びますが、それに納税義務を課しているだけです。  私は、現相続税法と地方税法の一部だけに人頭割課税がされておりますが、後者は大した問題でありませんので、引続税法だけに残っているという表現で申し上げます。現相続税法だけに残っている非人格者の課税規定について、その当否を検討してから、改正法律案に触れると、問題点が一そうはっきりすると思いますから、そうさせていただきます。相続税法第六十六条第一項では「人格のない社団又は財団に対し財産の贈与、遺贈又は包括遺贈があった場合においては、当該社団又は財団を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課する。」云々と規定しております。ところがこの非人格者が一体どんなものなのか、この規定からははっきりしません。このようなあいまいな字句が使われる場合は、すべての租税法規では、税務官庁と納税者との間に、そのあいまいな点をめぐって争いが起るのを防ぐため、別に政令を設けることをその条文につけ加え、その政令でそのあいまいな部分をはっきりさせる仕組みになっています。たとえば重要物産とか収益事業という文字を使用するような場合には、必ず政令の定むるところによりという補足語がついております。これは委任命令といわれるものでありまして、憲法第八十四条の租税法律主義から見て法制上欠くことのできない条件となっているもののようです。  現国税庁長官渡辺喜久造氏は、その著「税の理論と実際」という書物の中におきまして、これはまた世界の人民が時の権力者たちの好き勝手の行政に対抗して、その貴重な血と長い年月をかけて戦い取った租税上における大遺産であって、刑法上における罪刑法定主義と並んで、民主国家の支柱をなすものとされているというような意味のことが書かれておることをつけ加えます。では、相続税法において今次改正法律案と同じように、この非人格者は何をさすのか、委任命令が欠けているのはどうしたことでしょうか、法制上の手違いか、それとも別に理由があっての上のことでしょうか。前にあげたような非人格者群は、日夜至るところで集散離合するのを常とするものでありまして、政令でこれを具体的にきめることは全く不可能でしょう。現自由民主党にしてしかり、社会党にしてかりと言い得るでしょう。これをたとえば政党というように規定したとすれば、一人一党というにようなのはどうなるでしょうか。ここに政令にゆだねるにもゆだねられないほんとうの原因があったのだと思われます。幸か不幸か、自民党や社会党などが、その支持団体からの政治献金に対して、相続税法第六十六条第一項で贈与税などを取られたという話は聞いていませんが、この違法な目こぼしは、租税法律主義を貫きたいという建前に立つ私は、逆に喜んでおります。伝え聞くところによりますと、今回の改正法律案は、東京のある音楽愛好団体から租税法律主義をたてにとって、納税義務不存在の質問書で回答を迫られた国税庁長官の窮余の策だといわれておりますが、税法の法文中に、非人格者を納税義務者にするという規定を設ければ、なるほど第一段階としては、租税法律主義の建前が守られますが、種々雑多の内容や形式をもって集散離合しているこの非人格者群を、政令も設けないで、法制化しようとすることは、租税法律主義の法衣の下から、租税法律主義を踏みにじる戎衣が見えているように思われます。このことは、官僚独善と通達行政の弊風をますます助長する結果になりましょう。  二、恐怖政治が生まれるという点について申し上げます。租税は賦課するだけでなく最終的には強制執行できなければ何にもなりません。この非人格者群は、私法上の権利能力がありませんので、所有権の主体となり得ません。このようなものを納税義務者としてみても、徴税の最終段階で行き詰まらざるを得ません。このような致命的な欠陥を補うために刑事罰を設け、この非人格者の構成員やその使用人を罰することになっていますが、これは罪刑法定主義をも無視するものだと言えましょう。つまり人格なき社団などという言葉は、法律用語としては熟したものではありませんし、八千万日本国民のうち、そのほとんどの人の耳になじんでいない言葉ですから、主婦の会合やPTAの集まりや赤い羽根、青い羽根募金、救世軍の社会なべ事業等々までがそれに該当するのだと言われても、おそらくだれも納得することはできません。それが何か収益事業らしいものをやったからといって、申告書や決算報告を税法の定むるところに従って提出しなければ、無申告罪等で逮捕されることになるとすれば、まさしく恐怖政治だと思われます。私の親しい知人にこの法案を説明しますと、団体等規正令の税法版であり、氏名の書いてない逮捕状になっていると言いましたが、まことにうがち得て妙ではありませんか。  三、改正法律に便乗ずる合法的脱税組織が生まれ、税制が混乱するという点について申し上げます。改正法律案が通るものといたしますと、普通法人の税率は所得百万円まで三五%、百万円をこえると四〇%になりますが、この非人格者 法人税法第五条の法人、つまり公益法人等に準じて取り扱うことになりますと、現在人格を持っておる同族会社などが解散して、法人税法第五条第四号のみなす法人という看板を掲げたらどうでしょうか。そうして定款において公益目的をうたい込めば、収益事業の所得のうちからその公益目的の方面へ三割だけ損金支出が認められ、残り七割に対して三〇%の税率で済むことになります。実効税率は実に二一%にすぎません。こうしたことが起らないという保証があるでしょうか。これを防止することができるでありましょうか。  四、憲法学者、行政法学者、私法学者の意見が聞かれていないという点について申し上げます。民法や商法のような基本法において法規制が行われていない非人格者、つまり自然人や法人と次元を異にしておる不存在という存在を公法で一方的に人格者として規制していいでしょうか。学者の意見を十分に聞き、所有権の主体でないから強制徴収ができないという致命的な欠陥を民主的に補足できるまでは、法規制は見送るべきではありませんでしょうか。  五、法人擬制説を採用している現行租税法体系と矛盾するという点について申し上げます。現行租税法では、法人というのは自然人の集まりである、従って法人の段階で納めた法人税は、自然人の納むべき所得税の前取りであるから、個人申告において清算してやる仕組みになっております。つまり株式の配当がありますと、今まではその三割、今次改正ではその二割相当額が算出税額から差し引いて還付になるわけです。御参考までにその極端な例を申し上げます。ただいままで租税特別措置をめぐって経営者側からいろいろの御注文が出ておりましたのですが、私はその点で、この一例で反対いたしたいと思います。法人税法租税特別措置法には重要物産免税、輸出所得特別控除という規定がありまして、どんなにもうけても一定の条件を備えておりますと、一銭も法人税がかからなかったり、課税所得の八割まで免除するということになっております。ところが、このように法人の段階で全然一銭も払わなかったか、あるいは二割しか税金を払っていないのに、株の配当に対して個人申告をいたしますと、不思議なことには改正法律案でも、配当が一千万円未満ですと、二割は源泉課税の清算だといって国が税金を払ってくれることになっております。たとえばニッケルを製造している志村化工という会社がありますが、この会社は重要物産製造会社だからという理由で、全然無税になっております。十億もうけて全部配当いたしますと、株主には全部で二億だけ国が税金を払ってくれます。こういう仕組みが法人擬制説であります。このように擬制説が行われておる現行租税法体系のもとで、配当など全然予想しない非人格者群に法人税課税することは、矛盾もはなはだしいものがあると思います。  六、実質課税の原則に抵触するという点について申し上げます。御承知のように、第十六国会におきまして、名目課税を廃して実質課税をするという規定が、もみにもまれて制度化されました。この規定は、所得の名目上の帰属者に課税しないで、その所得の利益を実際に受けているものについて課税するというものです。このようなりっぱな規定といいますか、伝家の宝刀があるのですから、無理に非人格者という名義人を刑事罰を振りかざしてまでとらえようとしなくても、この非人格者の事業から生まれる利益を実際にふところに入れる者に課税できるはずですし、このことが租税公平の原則を貫くゆえんだとも思います。政府提案は、税取り主義に急であるために、せっかく十六国会で法規制した伝家の宝刀の存在を忘れているのではないかと思われます。  以上六つの理由から非人格者群に対するみなす法人の法制化に反対いたすゆえんであります。簡単でございますが、私の公述を終ります。
  42. 山本幸一

    山本委員長 御苦労さんでした。  これにて御出席公述人各位の御意見の陳述は終りました。ここで委員各位から御質問がございましたらこれを許します。
  43. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 古田さんにお伺いいたします。配当所得控除課税の特例につきまして、今回名目的にはいわゆる税額控除の率が三〇%から二〇%に引き下げられました。しかしその実態を見ますると、これは決して引き下げられておらぬのです。今まで百二十二万円までは、配当所得で食っている人は一文も税金がかからないということで、世の指弾を浴びてきました。これに対照的な勤労所得に対しましては、いわゆる標準家族におきまして、現行法で二十四万六千六百円までが免税され、それより出れば課税されるのに、配当所得におきましては、現行法ですら百二十二万円までは一文も税金がかからぬ。これはもう大へんな不公平です。そこへもってきまして、今回税額控除の率が三〇%から二〇%に引き下げられたので、その点は大いに是正されたのかと私どもは錯覚を起しておった。ところがよくそれを調べてみますと、大口所得者に対する所得税の累進度が緩和されましたので、結論的には百四十九万円まで全然課税されないのです。私は、これはとんでもない不公平だと思っておる。ところがあなたの所論は、そうした勤労所得と配当所得との均衡論には触れておらないで、ただあなたのいわゆる投資面におけるところの敵対的関係にあるとも思われる預貯金の利子との均衡論を言われておるのですね。私が御質問したいのは、利子所得と配当所得との均衡論をおっしゃる前にいわゆる勤労所得等と比較しての配当所得控除、配当所得の非課税の特例、これがどういう意味を持つかをお考えになったことがありますかどうかをお伺いしたいのです。
  44. 吉田政治

    ○吉田公述人 今の御質問は、私どもも常に聞かされておる御質問でありますので、私の考えておりますことを回答いたします。お説の通り、今回の改正によりまして、現行よりも税負担のなくなる人の所得が高くなる、つまりさらに多くの配当収入税負担なしということになることはその通りでございます。これは今度の控除率の引き下げの結果ではなくして、これと関係なく、所得税控除率並びに所得税率が下ったために当然出てくるほかの関係からの増加でありますので、もしほかの所得税その他控除率等が現状のままであるならば、二割に下ったということは、配当所得者にとっては明らかに負担が重くなるはずであったのでありますが、これは、控除率が下って負担が軽くなっておるじゃないかという議論にはならないように私どもは考えております。  もう一つの問題は、勤労所得とのふつり合い、これはいかにもごもっともでありますが、私がこういうことを申してははなはだ失礼な言い方ですが、勤労者にもやはり株主になっていただきたいとわれわれは常に宣伝いたしております。やはり勤労者も勤労所得から株主になってもらえばそれでいいわけでありまして、勤労者は株式を持つことはできないということがもしありましたならば、これは非常に不公平な原則になりますけれども、ただいまでは、会社の従業員も非常にたくさん株主になっておられますので、これをせんじ詰めていきますれば、当然ではないかと考えております。少し理屈がおかしいかもしれませんけれども、私どもはそういうように考えております。  もう一つ、ほかの税におきましても、勤労所得とすべてが一致しておるかと申しますと、均衡を失っておる各種の税が非常にたくさんあります。税金はすべてふところに入るお金の割合に応じて一律になっておるかと申しますと、そうではないように考えますので、この点はやむを得ないのじゃないかと考えております。  それから利子との不均衡という点だけを私は申し上げておるわけではないのでございますが、しかしちょうど今申しましたと同じように、各種の種類の異なる所得に対しては税率がいろいろ異なっておりますので、これはやむを得ないのじゃないかと思っております。  もう一つは、法人擬制説の問題の点から来ております。この法人擬制説によりますと、あの制度というものはやむを得ない、政府としてもその方針をとっておられるようであります。それで調査会においても伺ったところでありますが、法人擬制説は捨てていない、こういうお話なのであります。それならば、各国の例にしましても、程度は違いますけれども、やはり法人擬制説をとって、特別の考慮を払っておるようでありますから、この点につきましては、今の三割が二割に下るということは、虐待されたことかと考えておるわけでございます。
  45. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 法人擬制説は、法人を個人にとって仮の宿とすることなんです。所得は個人に帰属するという建前が法人擬制説だと思います。ですから、今あなたが、勤労者も配当控除の非課税の恩典を受けるようになることが願わしいとおっしゃったのですけれども、現実に個人に帰属された所得の比較において、片や今度の改正案の二十七万円をこえれば課税されるのに、片や不労所得に対して百四十九万円まで非課税だというこの政府改正案を客観的に見て、これをほんとうにいいとお考えですか。
  46. 吉田政治

    ○吉田公述人 ほんとうにいいと考えております。それで、書いたものでも常にそのことを説明しております。先ほどちょっとお話しがありましたように、二重課税の排除という点から申しまして、当然の措置だと思いますが、その排除の仕方がまだ足りないというふうに私どもは考えております。
  47. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと、あなたのお考えでは、三〇%はやはり据え置いてほしい、こういうことですね。
  48. 吉田政治

    ○吉田公述人 そうです。
  49. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そこで三〇%に据え置いた場合の計算をいたしますと、配当所得は五人家族で三百六十九万五千円まで非課税なんですよ。こういうひどいことになるわけです。あなたと私の質疑は、だいぶ次元が違うらしいですから、これは議論になりますからこの程度でやめておきます。では今度あなたのベースに立って一つの質問したいと思うのです。  目のかたきの預貯金の利子の恩典とあなたの方と比べまして、どうもわれわれは劣勢にある、こういうことであろうと思うのですが、なおせんじ詰めますと、資産の投資の仕方が、預貯金に行った場合にはその所在をくらまし得るのに、われわれの方は追及されて困る、こういうことに尽きると思うのです。そういう点から、名義貸しの問題についても、あなたはジャスティフィケーションができそうにお思いになるかもしれません。そして今名義貸しの問題についても行政的にこれを緩和してほしい、こういうふうにおっしゃっておられると思うのです。現在ある程度を出ますと、証券会社から税務署の方に申告しなければならぬ法規になっていると思うのです。その申告基準というものをどういうふうに変えてほしいか、具体的な御意見がおありになりますればお伺いしたい。
  50. 吉田政治

    ○吉田公述人 お答えいたします。今平岡先生のお話しになった通り考えております。それで実際の問題といたしましては、その限度の問題ということになりますと、これは証券業者の規模によって、また預かりの量その他も非常に変っております。また地方によりまして非常に違っております。それにつきましては、大蔵省当局の方におかれて適当におきめ願うことより仕方がないと考えております。私どもの方で相談をして、これがいいというような案は持っておりません。さようにお答えするよりほか仕方がないのでございます。
  51. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ありがとうございました。
  52. 山本幸一

    山本委員長 それでは時間の関係等もございますから、質疑はこの程度でとどめます。  この際一言公述人各位に御礼を申し上げます。本日は非常に御多忙中のところを公聴会に御出席をいただきまして、長時間にわたり貴重な、かつ忌憚のない御意見をお述べいただきましたことは、当委員会審査のために非常に参考になりました。本委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。大へんどうもありがとうございました。(拍手)  これにて公聴会を終了いたします。    午後三時三十九分散会