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1957-05-16 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十六日(木曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       淺香 忠雄君    大平 正芳君       奧村又十郎君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    小西 寅松君       杉浦 武雄君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    古川 丈吉君       坊  秀男君    前田房之助君       山下 春江君    山本 勝市君       井手 以誠君    石野 久男君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       山田 長司君    横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君  委員外出席者         議     員 石田 宥全君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    市川  晃君         大蔵事務官         (管財局接収貴         金属監理官)  池中  弘君         専  門  員 椎木 文也君 五月十六日  委員西村彰一君、古屋貞雄君及び八木昇辞任  につき、その補欠として横路節雄君、春日一幸  君及び井手以誠君議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十五日  補助金等に係る予算執行適正化に関する法  律の一部を改正する法律案石田宥全君外四名  提出衆法第三五号)の審査を本委員会に付託  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  補助金等に係る予算執行適正化に関する法  律の一部を改正する法律案石田宥全君外四名  提出衆法第三五号)  準備預金制度に関する法律案内閣提出第一二  四号)  トランプ類税法案内閣提出第四五号)  接収貴金属等処理に関する法律案内閣提  出、第二十四回国会閣法第一四八号)     —————————————
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより会議を開きます。  昨十五日当委員会審査を付託されました、石田宥全君外四名提出にかかわる補助金等に係る予算執行適正化に関する法律の一部を改正する法律案議題として審査に入ります。  まず、提出者より提案理由説明を聴取いたします。石田宥全君。     —————————————   補助金等に係る予算執行適正化に関する法律の一部を改正する法律案    補助金等に係る予算執行適正化に関する法律の一部を改正する法律   補助金等に係る予算執行適正化に関する法律昭和三十年法律第百七十九号)の一部を次のように改正する。   第十九条の見出しを「(延滞金)」に改め、同条第一項を削り、同条第二項を同条第一項とし、同条第三項中「前二項」を「前項」に、「加算金又は延滞金」を「延滞金」に改め、同項を同条第二項とする。   第二十条を次のように改める。  第二十条削除   第二十一条中「加算金若しくは」を削る。   第五章中第二十二条の前に次の一条を加える。   (補助金等交付申請等特例)  第二十一条の二 災害復旧事業土地改良事業その他政令で定める事業で積雪、寒冷等の特殊な気象状況その他やむを得ない事由により前年度以前に行ったものについて補助金等交付する場合においては、その補助金等交付申請決定等に関し、政令で、この法律規定特例を定めることができる。     附 則   1 この法律は、公布の日から施行する。   2 この法律施行前に納付すべきであった加算金(この法律施行の日の別口までの期間に係る加算金に限る。)の納付・免除又は徴収については、なお従前の例による。     —————————————
  3. 石田宥全

    石田宥全君 ただいま議題となりました補助金等に係る予算執行適正化に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  この法律は、連年の決算検査において不当事項として指摘せられる事項のうち、補助金に関する事項が非常に多い事実にかんがみ、予算執行適正化のための措置の一環として制定され、昭和三十年九月から実施を見ておることは御承知通りであります。  しかしながら、この法律の円滑なる運営をはかるためには、補助金等交付に関する本法規定の厳格なる適用もさることながら、国の側においては、地方公共団体等の当面する財政事情の窮迫の実態を十二分にしんしゃくして、事務処理の実際に当って地方実情に合致するよう万全の考慮が払われることが肝要であると存じまするし、また地方実情を見まするに、関係者本法に対し必要以上の畏怖心を抱いていることも明らかでありまするので、この際、このような事態について何らかの是正策をはかる必要があると思われるのであります。たとえば、農作物の作付の関係その他の理由から施越し工事を行なった場合、この法律に何らの規定が設けられていないことから、たとい行政措置によって法の不備を補うとはいうものの、事業者をして果して本法に違反しないであろうかと危惧の念を抱かしめ、事業の遂行を萎縮させておるのが現状であります。  このような地方実態に対処していわゆる施越し事業関連事業等について明文をもって手続規定を置こうというのが本改正案の主たる目的であります。  以下、改正案の内容につきまして説明いたします。  まず、前年度以前に実施した事業に関する補助手続について特例を設けることといたしております。すなわち、前年度以前に実施した聖業、たとえば施行工事等について、本年度以降で予算が認められ、補助を受けることとなったような場合には、本法が予定している手続、すなわち補助金等交付申請、その決定精算報告等の一連の手続のうち、不要のものまたは特例を設ける必要のあるものがありまするので、これを政令で定め得ることとするものであります。ただしこの改正は、当年度予算の認める範囲内での補助についてその手続に関する規定を設ける趣旨であって、後年度補助を約束し、予算を拘束するような財政法会計法等特例を設けるものでないことは言うまでもありません。  次に補助金等返還に関し、加算金日歩三銭の割で徴する規定、及び他の補助金等の一時停止または未納額との相殺の規定や削除することといにしております。   〔委員長退席平岡委員長代理着席〕  すなわら、現行の規定によれば、補助金等交付決定が、当該補助金等の他用途への使用あるいは補助条件違反等理由によって取り消された場合、すでに交付した補助金等返還が命ぜられることになりますが、この場合において、その補助金等の受領の日までの日数に応じて、日歩三銭の割で計算した加算金を徴収することになっております。しかしこの措置補助事業実情から見て不適当であると思われますので、この規定を削除いたしたいのであります。また補助金返還を命ぜられた補助事業者がその納付を怠った場合、もしその者に対して同種の補助金交付せられることになっておる場合には、国の側でその補助金交付を一時停止しまたは未納額と相殺することができるようになっておるのでありますが、間接補助事業者等に大きな責任があるような場合には、国と補助事業者等との間でこの措置がとられても、補助事業者間接補助事業者との間の問題には直接に強制力がなく、従って中間に立つ都道府県などをいたずらに苦しめることとなり、やや苛酷と思われるので、この規定もまた削除することといたしたいのであります。  以上がこの法律案趣旨とするところであります。何とぞ御賛成賜わらんことをお願いいたす次第であります。
  4. 平岡忠次郎

    平岡委員長代理 これにて提案理由説明を終りました。本法律案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員長代理 次に、準備預金制度に関する法律案議題として質疑を続行いたします。横山利秋君。
  6. 横山利秋

    横山委員 大へん恐縮ですけれども、質問をする一番の中心である春日委員が今整理をしておるそうでありますから、私の質問はちょっとはずれるかもしれませんが、五分間ばかりお許し願いたいと思います。  実は、先般本委員会池田大蔵大臣井出農林大臣愛知用水のことについて御質問をしたことがございますが、その際両大臣からは、この問題については今世界銀行と折衝中であるから、告示もおくれているけれども、先月の二十日までには告示をするのだということを大臣も言われ、それから第二番目に、農民に対する負担については、これは両大臣とも、ないようにするという答弁をこの委員会でもらったわけです。ところが最近新聞で伝えるところを見ますと、池田さんは一生懸命に世界銀行ときのうもやられたようでありますが、どうもその辺が、農民年次償還計画に対して重大な支障を及ぼすような結果に相なるように思っておるわけであります。聞くところによりますと、基本計画では反当り二千八百円が、大蔵省の案ですと三千四百円、こういうお話があるようでありますが、これは先般のお約束と話が違うようであります。こういう時間で恐縮でありますけれども、一つその辺の経緯を明らかにしていただきたい。
  7. 池田勇人

    池田国務大臣 愛知用水につきまして、四月の何日、先月の何日までに措置するという御返事をした記憶はないようでございます。私はできるだけ早くやりたいという気持は持っております。日にちをお限りしたことは私は記憶いたしておりません。しかしいずれにいたしましても、先般来世界銀行の総裁が日本に来られまして、愛知用水の件は話題の一つとして折衝いたしました。大体世界銀行の方も、愛知用水実態その他の研究は済みまして、私は近いうちに愛知用水関係者をアメリカに送りまして、最後の契約をする段取りに至ったごとむここで申し上げます。ただいろいろの条件計画その他につきまして今後折衝し、あるいはまた検討しなければならぬかと思いますが、いずれにいたしましても、当初の計画とあまり変らないようにいたしたい。たとえば世界銀行から借り入れます借入金の金利は五分とか、あるいは五分五厘という計画であったかと思うのでありますが、最近では、世界的に長期資金金利は相当上って参っておりますので、五分五厘ではただいまのところ困難ではないかと思われます。従いまして、その辺の調整は今後十分検討いたしまして、今までの計画とそう変らないようにできるだけの措置をとりたいという考えでおるのであります。
  8. 横山利秋

    横山委員 この聞もちょっと時間の合間を見て、あなたと農林大臣にこの席で実は質問したのです。あなたはお忘れになっておられるかもしれませんが、そのときの話は、先月の初めでしたか、もう二十日間ぐらいで何とか告示のできるようにするということを農林大臣はこの席で言われ、あなたは、農民負担については、まあまかしてもらいたい、増加にならぬようにする、こういう御返事を、本席上で、短かい時間でありましたけれども、いただいたわけです。今のお話を聞きますと、まだ海のものとも山のものともわからぬようですが、先般私は愛知用水の名古屋の本部へ行ってみました。またそれを取り巻く業界やあるいは所管庁のうわさを聞いてみました。ところが、去年の暮れに発足すべきものがいまだに発足しないので、士気全く哀え、そうして運営状況に至ってもほんとうによくないわけです。こういう状況が続きますと、人作費についても、あるいは物件費についても、愛知用水に割り当てられております予算運用にいたしましても、どんなに政府が言ったところで、これはみすみす損失を招いていることは、火を見るよりも明らかであります。この際世界銀行との話がつかないにしても、告示だけはやる方法がないのか、告示だけやって、多少の変更はあっても仕事を実行させるということにする方法はないのか、これを大蔵大臣として農林大臣協議の上認める、そうしてとにかく仕事を実際にやらせる方法はないのか、その点をお伺いいたした。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 先般この席で、愛知用水施行に関して、農民負担の問題につきましてはお答えした記憶がございます。しかし告示その他の点につきましては、私は記憶がございません。しかしいずれにいたしましても、お話し通り、このままでやっていきますと建設費が非常にかさんで参りまして、無意味な建設費がかさみますので、われわれとしてはできるだけ早く手をつけたいということで臨んでおるのであります。農民負担につきましては、先ほど申し上げましたごとく、われわれとしては十分考慮いたしまして、当初の計画によりまして期待した気持をそうひどくこわす、あるいは農民からそういうことに対しての熱意のなくなるようなことはいたしたくないと考えております。
  10. 横山利秋

    横山委員 それでは、この点について大臣としてすみやかに農林大臣協議の上、一つには告示宿すみやかにして、無用な負担等のないように処置をしていただきたいし、農民負担について重ねて御答弁を承わりましたけれども、この趣旨を貫いていただきたいと思います。聞くところによりますと、今の大蔵省の案でいきますと、最初の一年から十年までは反当りにして約六百円くらいの増加でありまして、総額としても一万円くらいの増加になる、こういうような見通しであります。また年額にいたしますれば三十万円以上の増加となるでありましょうから、これは当初出発いたしました際に農民の協力を求めたその公約に若しく背反することになり、愛知用水の今後について重大なる支障をもたらすものと思いますから、この点について重ねて十分なる検討をわずらわしたいと思うわけであります。  そこで準備預金制度について少し伺いますが、聞くところによりますと、昨年来銀行協会としてはこの問題について強い反対を持って、どうしてもこれをやるならば、その前提条件として三つのことが、実現されなければならぬ、一つは、日銀貸し出しの激減、市中銀行手持ち現金日銀預け金が憎加し、コール資金もより潤沢になって、政府短期証券の保有も多くなった場合である。第二番目には、産業界の資本のです積も進み、企業借り入れ過多状態がある程度緩和した場合である。第三番目は、政府短期証券金利公定歩合、市中金利などが資金需給の実勢を反映してきめられるなど、金利政策が弾力的に行われるようになった場合、こういうような前提条件が満されなければいかぬ。従って、こういう前提条件が満されない事情においてこれを実施した場合においては、貸し出し、社債、投資等に向けられる資金等も圧迫し、産業資金は窮屈になる。第二番目には、ようやく活況を呈しているコール市場資金も必然的に減少し、レートの暴騰はもとより、資金交流が妨げられる。第三には、市中銀行日銀への依存度が高まって、信用調節のための制度創設効果も期待しがたい。こう言っているわけであります。このこと自体が全くそうかどうかは別といたしましても、少くとも銀行協会としてこのように強い反対——結局としては反対だと僕は見ておるのでありますが、こういうような態度をとっておるわけであります。この銀行関係意見に対して、大蔵大臣としてはどういうような意見を持っておられるか。また銀行関係を説得せしめる方法や、その理由はどういうことであるか。またこういうふうに言う意味は、おれの方は損だという気持があるのだろうが、これをやると損だという点について、あなたの方としてはどういう対策を考えておられるか等についてお伺いをいたしたいと思います。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 私は寡聞にして、今横山さんのおっしゃるような議論は、金融制度調査会にも相当多数の銀行家が入っておりまするが、そういう議論を聞いていないのでございます。答申によりますると、本制度の発足に当っては、準備率決定は、経済実情に照らし、慎重を期すべきである、こういうことでざいまして、いろいろ議論はあると思います。その議論がよってきたるところも、いろんな考え方があると思いまするが、私は大体の世論といたしましては、もうやるべきだ、おそきに失するくらいに考えられておると思うのであります。もちろん銀行自体としては、有利子の預金を無利子で日本銀行へ預けるということになるわけでございますから、利害関係からもうしますと、いろんな点があると思いまするが、これはささたる問題で、そういうところにとらわれる必要はないと考えております。
  12. 横山利秋

    横山委員 表面立っていうたはおらねけれそも、その潜在意識として、こういうような意見が昨年の秋に全銀協、の理事会決定をされておるのでありますから、それ密表立ってよう言わぬかどうかは別といたしまして、それが潜在意識となっていることは事実でありましょう。もしこの準備預金を実行に移す過程においてこういうふうな考え方が潜在しておって登録がうまくいかないということになったら、あなたは一体どうされますか。ものを言わけれども、腹の中でうっくしているという状態であるならば、それに対して親切に解明をし、そうではないのだというふうな努力もいたさなければならぬのでありますが、この点はいかがでありますか。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 こういうものは個人的には利害関係があるのでありますから、たびたび開きました会議の中で、一回だけちょっとそういうふうな気持発言があったそうでございますが、ほとんど全部の人、またその発言をした人も、この制度は望ましいというので賛成されたようでございます。個々のこまかい問題につきましては、施行後に十分考えなければなりませんが、本制度や設けることにつきましての本質的な、しかも致命的——と言うと言葉が強うございますが、非常に支障のあることはないと私は考えております。
  14. 横山利秋

    横山委員 第二番目にお伺いしたいことは、この制度を実行する上において、大蔵省と、いな大蔵大臣日銀との関係についてであります。ずいぶんいろいろ経緯を経てこういう案になったわけでありますが 世間がいろいろ言っておりますことは、権限争いというか、日銀大蔵省との間にずいぶんやりとりがあってこういうことになったというのでありますが、大蔵省がこれによって認可権を持って、その認可を乱用する、こういうおそれが非常に強い。それによって金融制度について大きな問題が将来潜在するのではなかろうか、こういうふうな懸念を持っておるのでありますが、この点はいかがでございますか。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては、大蔵省日銀ということよりも、準備預金制度につきまして立案の場合に、金融制度調査会で非常に皆さん御苦労なさったのでございます。私もいろいろ考慮をめぐらしました。今お話しの点は十分考慮いたしまして、どちらかといったら、日本銀行自体できめるべきであるという気持が私にも強いのでございます。各国の例もそういうふうになっておりますが、日本は今の法制上の建前から申しますと、財政金融責任者は、何と申しましても大蔵大臣でございます。法制的に申しまして、この第四条第三項のようにきめるのが妥当であるという結論になったのでございます。しからば運用につきましては、私は法案ができますまでの経緯考えまして、十分その点について大蔵省としては考慮しなければならぬ、こういう気持を持っておるのであります。
  16. 横山利秋

    横山委員 実際にこの準備預金を発動するというときの条件を、大臣はどういうふうにお考えでありますか。たとえば国庫収支季節的変動等調整とか、そのほか実際に準備預金調整して発動をする場合はどんなときであるか。きのうのあなたの話は、持っておるだけで大きな効果がある、蓄積しておるだけで大きな効果がある、そこに、重点を置くとおっしゃったのだけれども、しからば持っておるだけでなく、パーセンテージを変えて、これを実際に実効を上げるという場合の条件はどういう場合であるか、お伺いをいたしたい。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 金融を引き締める必要のあるときでございます。
  18. 横山利秋

    横山委員 そう言ってしまえばそれだけの話でありますが、しからば金融を引き締めるべき必要のある条件というのはどういう場合でありましょうか。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 投資が非常に旺盛で、国力以上の投資が行われたり、あるいはまたいろいろな点で金利を上げるか、あるいま通貨を少くして投資意欲を押える、いろいろな場合があると考えます。昨日私が、この制度を受けておくこと自体が相当効果があると申しましたのは、やはり金融制度を整備していくことが金融調節目的をなすのでございます。本法案の第一条にも書いておりますように、整備をしていく、これが本法制定一つ目的でございます。問題をあげて御質問になればなんでございますが、先ほど申し上げますように、金融を引き締める、金融を引き締めるのはどういうことかというと、これはやはり過大投資が行われる、あるいはインフレ気味になる、いろいろ言葉の表現はございましょうが、各国で今までやっておりますときには、先ほど申し上げましたように、引き締めの必要のときに公定歩合引き上げか、あるいは支払い預金準備率引き上げ、こういうことをやっておるのであります。
  20. 横山利秋

    横山委員 申すまでもなく通貨調節手段としては、公定歩合の問題の政策、あるいは公開市場の操作の政策、それから今度のこのやり方、いろいろあるわけでありますが、大臣としてはこの三つを並行的におやりになるというのか、あるいは今度の制度を一番最後のものとしてお考えになるのか、どちらでありましょうか。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 最後のものとか最初のものではございません。やはり金融市場の情勢を見まして、同じ列で考えるべきものだと想います。
  22. 平岡忠次郎

  23. 春日一幸

    春日委員 今回の日銀公定歩合引き上げが影響いたしまして金融市場においても、また経済界に対しても、大へんな衝撃を与えておることは大臣承知通りであります。特に株式市場は大暴落を続けておりますし、また商社においても破産、倒産が相次いで起っておりますが、わけて金融機関選別融資の傾向をたどっておりまするために、それらの一切のしわが中小企業に寄せられまして、今日中小企業は、その連鎖反応とでも申しましょうか、私は愛知県でありますが、特に繊維関係が、一宮なんかでは一日に二軒くらい平均して整理を発表いたしておるわけであります。今やまさに経済界における大恐慌一歩寸前の姿であると警戒をすべき事態であろうと考えるのであります。このことは、大臣が過ぐる二月本会議において、その財政演説の中で述べられておりました、本年度におけるわが国の経済見通し金融見通しとは非常に相隔たる様相であると考えておるのでありまするが、大臣はこれをいかに考えておられますか、まずこの点から大臣の所見をお伺いしたいと思うのであります。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 経済界変動につきまして、非常に好景気の人もありますし、お困りの人もあると思うのでございます。われわれは、なべて全体がどうなるかということを考えていっておるのであります。経済の基調について、世界経済動きは、大体私が想像しておったような動きを続けております。しかし国内の状態を見ますと、世界のそれとは違いまして、少しではない、相当行き過ぎの点が見受けられますので、この際金利引き上げをいたしまして、急がない設備投資につきましてはできるだけ手控えていただこう、そうして堅実な歩みによって経済の拡大を進めていきたい、こういう考えのもとにやっておるのであります。各業種いろいろ事情は遣います。最近におきましては、繊維関係は生産過剰ということから、かなりお困りの人も出ておられるようでございますが、全体といたしましては、私は今の場合、行き過ぎが起らないように、そうして健全な歩みで拡大していくことを期待してやったのでございます。
  25. 春日一幸

    春日委員 私がお伺いいたしましたのは、あなたの二月四日の財政演説に、わが国の経済見通しをお立てに相なっておるわけでありますが、その述べられておりますところと現状とは、見通し通りのものであるかどうか、これを伺いしておるのであります。世界経済見通しについては誤まりはなかったとのことでありますが、あなたは日本大臣といたしまして、財政金融の最高の責任者といたしましてわが国経済のこの見通しは、あなたが財政演説に述べられた通り状態であるのかあるいは現在の株価の暴落、中小企業関係者の不渡り手形の激増、特に繊維産業を中心とする破産、倒産の続出、こういうような事態とあなたの経済演説と花照合いたしまして、あなたの見通し通り事態であったか、あなたが予想された通りのコースをわが国の経済はたどっておるのかどうか、この点をまずお伺いいたしたいのであります。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、財政演説で申し上げましたごとく、財政は健全だ、金融の方も健全であってほしい、その金融の健全とは、預金増加の範囲内におきまして投資が行わるべきだということを申し上げたのでございます。しこうして今のところは健全な金融かどうかという問題になりますと、非常に設備投資が旺盛でございまして、えてして貯蓄よりも投資が上回るというような状態が出て参りましたので、今回金利引き上げに賛成いたしたのでございます。お話しの点の、それでは株価がどうかという問題になりますと、私は、株価につきましてはとやこう言いたくはございませんが、昨年の今ごろの株価と比べまして、昨日大体ダウで五百四十円でございますが、昨年の今ごろは四百七十円程度であったのであります。従いまして、大体一割五分のダウで値上りということになっております。ですから、今が暴落したと申しましても、それならダウで五百九十円が適当なところかと申しますと、なかなかそうも言えない。日本経済からいって非常な暴落だと言い得るかどうか、五百九十円までいったものが、一週間あるいは十日くらいで五百四十円と、ダウで五十円も下るといった暴落事態ではございますが、それが経済に非常に根本的な差を起したという問題かといいますと、必ずしもそうも言えないと思うのであります。中小企業の問題、あるいは繊維産業の問題につきましては、先ほど申しましたごとく、経済の各般にわたりまして全部がいいというわけのものではありません。波を打つことは、これはやむを得ぬ、われわれとしては、小さい波を打たないようにしたいと同時に、大きい波が打ってはならぬ、これが心情でございます。従いまして、経済動きとしましては、大体いろいろな手を打ちまして、私が財政演説に申し上げました線に沿っていきたいというのが意向でございます。もちろん財政演説をいたしますときに、金利を動かさないとか、いろいろな点も起らないと言った、わけではございません。こういう線によって財政金融運営をやっていくのだ、こういうことでございます。
  27. 春日一幸

    春日委員 そういたしますると、あなたは本年度立てられております財政投融資計画、その他本年上期における外貨予算のその実行というものは何ら修正をする必要はないとお考えになるか、原案通り執行が可能であるとお考えになりますか、この点をあわせてお伺いしたい。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 財政投融資につきましても、原案通りやっていきたい、またそれでいけると確信いたしております。しこうして財政投融資も原案通りやっていくためには、私が期待いたしておりますごとく、貯蓄の増加の範囲内において投資をやってもらいたい、こういうことでいくことが財政投融資を原案通りやっていく道である、こういう考えでいっておるのであります。
  29. 春日一幸

    春日委員 実はこの問題につきまして、一昨々日でありましたか、日銀総裁を参考人として御出向を願いまして、その見解をお尋ねいたしました。そのとき山際日銀総裁の意見といたしましては、このような金融市場実態にかんがみまして、この財政投融資計画を原案通り実施していくということについては、非常な困難性があるものと思われる。なお外貨予算通りの輸出入を計画通り実行に移すということについては、これまた至大の困難が予想される、かくのごとき意見を述べられておったのであります。それは池田大蔵大臣も御同席でありましたので、お聞き取りに相なっておるかと存ずるのであります。そういたしますると、この日銀総裁の理解と大臣の理解とは全然相異なるのでありますか、この際お伺いいたしたいと思います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 私は異なっていないと考えております。もともと財政金融政策というものは、楽々に行くものじゃございません。いろいろな支障か出て参りましょう。私が財政演説で健全金融を堅持すべきだ、こう申しましても、実際問題としては、投資が非常に盛でございます。そこで金利引き上げ日銀でやる、これは困難だから引き上げをやられた、それに私は賛成をいたしました。だから楽に行くわけじゃありません。いろいろな手を打たなければなりません。だから困難であるということと、できないということとは違うのであります。私は困難であるがでかす、この所信でいろいろな手を考えておるのであります。
  31. 春日一幸

    春日委員 これは相当重大な要素を含んでおると思われるのであります。あなたは先般参議院の委員会における質問に対しまして今回の金利引き上げは、私の今までの楽観論が非観論に転じたものではない、これは金融市場操作のための一つの基調を作ることにとどまるものである、こういうような答弁をなされております。きわめて困難ではあるけれども、その困難を切り抜けてやってしこうというのと、これは既定方針通りやればやっていける、既定方針通りやることができるんだというのは楽観論であり、非常に困難な諸要素がその原案をめぐってひひめいておる、しかしこれはやらなければならぬ、あらゆる施策を打てばやれるというのと、物事は非常に違うわけであります。困難な情勢を排除いたしますためには、それぞれそれに伴う副作用、直接の作用というものが生じて参ると思うのであります。そのことを行えば、やはり他の面において欠陥を生じてくるとか、悪い現象を生じてくるとか、こういうことは、やはり経済政策の中において常にうかがえるところであるのであります。従いまして、私はこの際すなおに一つ答弁を願いたいと思うのでありますが、あなたの財政演説に述べられておった事態と現在の事態とは、相当に変ってきておるのであるかどうか、変ってきておるのであるならば、当初計画については、時に臨んで修正を伴う場合もありましょうし、あるいは既定方針を貫くことのためには、一切の障害、どのような副作用が起きようとも、断々固として実施していく、いろいろあると思うのであります。これはわが国経済の上において重大な影響をもたらすことであろうと考えますので、私は率直に伺いたいと思いますが、現在の金融情勢並びにその経済情勢、こういうものは、あなたが二月四日に本会議で述べられた財政演説通り状態、すなわちその既定の方針を貫いていけるものであるかどうか、進んでいって差しつかえのないものであるかどうか、これをいかに考えておりますか、いかに理解されておりますか。この点を一つあらためてお聞きしたい。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 結論から申し上げますと、基調において変化はございません。ただ私が考えておりましたところと、今の現象がある程度変ってきております。それは、昨年の暮れから今年の一月、二月までに相当投資か行われ、相当の原材料の輸入が行われました。従いまして、三月くらいになったら投資も頭打ちをし、そして輸入も減少する、こういう私は見込みでおったのであります。しかるところ、二月の輸入信用状なんかの発行を見まして、これは輸入は相当続くな、輸入の増大はまだまだ続くという見通しかつきましたので、三月の初めころに、これは将来の金融情勢を見て、ここで弾力的政策のとれる措置をこしらえておくべきだ、こういうので、高率適用の緩和と、一厘の引き上げをやりました。そのときの私の気持は、将来まだ輸入がどんどん上り、あるいは投資意欲が衰えないというときに、やはりこれは公定歩合引き上げをやらなければならぬ、その場合の下地を作る必要があると自分は考えました。そして、たまたま日銀総裁の申し出がありまして、それはけっこうだ、国会中でもやった方がよかろうというのでやった。そして、その様子を見てみますと、投資は依然として多いし、また四月の輸入は、今までの最高の十二月をこえる、こういう状況に相なりましたので、私は日銀総裁の相談を受けまして、公定歩合引き上げは一時間でも早い方がいい、こういうので双手をあげて賛成して、抜き打ち的と申しますか、国会開会中でもこういう措置をとるべきだ。しかし基調といたしましては、物価も安定いたしております。そしてまた輸出も伸びてきております。ただ国内の投資が非常に盛んであるために、国内の金融の逼迫、またその投資の盛んなことに基きましての輸入の増加、いわゆる機械受備その他の輸入の増加等を考えましてこういう措置をとったのでございます。もちろん経済は生きものでございます。われわれ自由主義経済でやっておるのでございますから、基調の変化はないが、あらゆる現象が起ってきまして、基調に変化を及ぼすようなことがあるのを防ぐために、今回のような金利引き上げ措置をやったのでございます。今のところ、いろいろな現象が起って参りますが、私の見通しとして、基調においては変りないと確信いたしております。
  33. 春日一幸

    春日委員 経済現象はすべて生きものでありますし、一がいに断ずることは困難ではありましょうけれども、少くとも自由経済のもとにおいて現われてくるところの現象というものは、やはり基調が基調となるべき必要から、その変化がそのまま投資してくる、こういう工合に受け取るのが正当な理解ではないかと存ずるわけであります。ただ、一つや二つの企業が変則的に度を越えて操作をしてくるというならば別でありますけれども、それはあなたが述べられております通り、この数カ年間におけるわが国の経済活動が、海外の好況のいろいろな関連においてこういう方向をたどってきたのでありますから、その基調と現象とを、全然別個のケースとして切り離して断ずべきものではないと考えるのであります。そういうような意味合いから、基調は変らないけれども現象が変ったんだから、その現象を軽く押えておけば、既定方針通り執行が可能であるという見通しというものは甘きに失するのではないか、私はこういうことを深く憂えておるわけであります。  なおあなたは、ただいまの御答弁によりますと、中小企業も千差万別なんだから、従って今この過剰投資が行われたり、あるいは過剰生産が行われた結果として、繊維産業にのみ一つの不況が襲来をしておると述べられておりますけれども、それは、常に景気のバロメ一ターが第一番に繊維の側から現われてくるという、この過去の経済現象の実績から考えまして、これは大いに警戒を要すべき事柄ではないかと存ずるわけであります。ただこれひとり綿なら綿とか、絹なら絹ということでなく、先般も私栃木県方面に参ったのでありますが、特に足利なんか——一宮は毛織物でありますが、足利は絹製品で、一宮の状態については、あの生産地帯が非常な恐慌におおわれておる。絹の足利なんかでは、あの地帯における中小企業者は、ほとんど全滅の状態であるといって、怨嗟の声をあなたに投げかけておりました。こういう状態で、この繊維産業全般をおおう恐慌来襲の兆を随所に見せておるわけであります。中小企業といえどもいろいろな実態があるから、繊維産業だけの恐慌をもって一がいには断じがたいというのでありますが、連鎖反応をなして二次生産、三次生産、そういうようないろいろな面にこれが波及しつつあるということは、東京手形交換所、大阪手形交換所における不渡り手形というものが、交換所始まって以来の悪いレコードを示しておる、そのことから徴しましても、これは非常に重大な事柄であろうと存ずるのであります。あなたは、こういうような実態について何ら心配を必要としない、予定通りの楽観論、これで押し切っていって、何も心配ない、なおそういう説を固持されますか、この点、重ねてお伺いをいたします。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 一がいに楽観論とおっしゃいますが、楽観を一つもしてはいないのです。この点は誤解のないように、とにかく財政経済政策で申し上げましたあの基調に沿うように、いろいろな手を日夜打っておると言っておるのであります。日夜打っていけば、基調として変りなく進むかといったときに、変りなく進む見込みでございます。そういうふうに困難でありますが、努力して参ります。こう言っておるわけであります。  私は、経済現象を見ますのに、一部のところを見て全体の見方をあやまってはいかぬと思います。お話し通りに、景気、不景気は参ります。景気、不景気は参りますが、景気、不景気の一番初めを動くのは、お話し通りやはり繊維産業であります。私は過去十年間くらい戦後のいろいろな様子を見て参りまして、いろいろな点がございますが、今の状態で不渡り手形が非常にふえておるということは、まことに遺憾でありますが、日本経済実態が、非常に不渡り手形がふえるほどそんなに危険になっておるかといったら、そう思いません。手放しに楽観はもちろん禁物でありますけれども、経済動きといたしまして、私が予想しておった基調を続けていっておると思います。出て参ります現象につきましては、そのつど善処すればやっていけるのではないか。もちろん現象と基調というものはうらはらでございます。先ほどもそれに触れましたように、基調を変えるほどのひどい現象は出ていない。基調を変えなければならぬというふうな現象が出てくれば、その現象を直すというのが私の考え方であるのであります。もちろんこの前もお触れになりましたように、金利引き上げがあれば、そのしわが中小企業にくるということは自然の勢いであります。これにつきましては、予算面におきましても、従来以上に中小企業方面の財政投融資も考えております。また今後の情勢によりましては、できるだけ中小企業の方面に力を入れていきたい。今まで私の聞くところでは、金利引き上げが起りますと、いわゆる選別融資ということになりまして、あの悪い例の歩積みがふえてくる、こういうことが中小企業に一番ひどく当ることでありますから、歩積みその他をしないように、いろいろ勧奨はしていきたいと考えております。
  35. 春日一幸

    春日委員 三月の第一次公定歩合引き上げのときには、これは日銀総裁も、やはり高金利政策というようなものではない、なお市中の金利が上るということは期待しないと、明確に日銀総裁談話で述べておりました。それから五月の第二次の公定歩合引き上げのときには、これはもはや今までの楽観論から、警戒を要すべきものという考え方に変ったものである。従って、今後の市中金利も、これに伴うて上ることが予想される、こういう工合に述べておりました。そこで、相次いで市中銀行金利も二分方上ったわけであります。これは、従来わが国の金融政策が、世界金利の水準から比べまして、非常に高い水準にありますので、これを低金利に持っていかなければならぬということが、金融政策の基調であったはずであろうと考えるわけであります。市中金利が下っていくから、そうしてこれににらみ合せて中小企業金融機関金利なんかも、特に中小企業金融公庫の金利なんかも、とにかくこれを下げることのための努力がされておったことは事実であります。すなわちここ一年ばかり、前の金融政策、特に金利政策の基調となるものは低金利政策、そうして世界水準にこれをならして輸出の振興をはかっていこうというのが、金融政策の基調であった。ところが今回、結局輸入金融を抑制し、設備投資を抑制し、そうして対外通貨価値の信用を維持するためには、好むと好まざるとにかかわらず高金利政策に転じざるを得ないわけであります。これをしも基調が変ったのではないとあなたは答弁されますが、従来の低金利政策を、今後は金利を高くして、そうしてそういうような設備投資を中心とするところの消費的といいましょうか、輸入金融等を含めまして、この資金の流出を抑制される、こういうような方向に行っておりますことは、明らかに高金利政策に転じたものであり、金利政策の基調に大変革がもたらされたものとわれわれは理解せざるを得ないのでありますが、これを金利政策の共調に対して何ら変更が起きたのではないとあなたはなお断言できますか、この点、お伺いいたします。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、日本経済の基調につきましては変化がないと申し上げておるのであります。個々の現象につきましては、相当変化しておることは、先ほど御説明申し上げた通りであります。経済全体の基調は、私が予想しておるような進み方をいたしておりますが、今の投資その他の点につきまして行き過ぎの現象がございますので、これを押えるために、日本銀行公定歩合を二里上げたのでございます。そうすると、今度金利政策の基調はいかん、こういうことで、今度は金利政策だけの基調でいきますと、金利政策が低金利政策から高金利政策かに移った、こうお考えになる春日さんの御議論も、私はある程度わかります。しかし私とかあるいは日本銀行総裁は、低金利政策の旗じるしはおろすわけにはいかない、おろすべきではない、しかし、片方で過剰投資がある場合にどうするか。過剰投資を押える一つの警告でございますので、これは上げたのでありますが、全般の問題としては、これは将来永久に上げるべきでなくて、また投資の方が相当おさまってくるならば、金利を引き下げるべきだ、こういうことを予想しまして、たとえば定期預金利子の引き上げをしないとか、あるいは公社債の利子につきましては従来通りでいく、こういうことは、低金利政策の旗を巻いたということでなしに、低金利政策を維持しながら過剰投資を押えていく、こう私は考えておるのであります。しかし公定歩合を二里上げたといったら、これは定期預金を上げなくても、長期の社債なんかはしかくても基調の変化だとおっしゃるのなら、これは御意見でありましょう。私どもの考え方としては、低金利政策の旗じるしのもとに、長期資金につきましては今まで通りにし、ただ輸入金融あるいは設備投資につきまして、手控えをしていただく意味においての警告の金利引き上げでございます。
  37. 春日一幸

    春日委員 これは、やはり議論の骨子になるところでありますから、くどいようではありますが、明確にしておかなければならぬ問題であろうと存ずるのであります。なお私は、言葉じりを拾うわけではありませんけれども、あなたは孝議院における予算委員会で、委員質問に答えて、次のように答弁されております。すなわちただいま述べられたように、三月における公定歩合引き上げは、将来弾力的金融政策をとる下地をこしらえたものである、今度の措置は、この弾力性を具体化したものであって、このねらいは、国内金融を引き締め、投資需要を押え、その結果輸入が自然に減ることにある、かくのごとくに述べられまして、さらに言葉を継いで、今度の措置で、私が楽観主義者から悲観論者に変ったわけではないと述べられておるわけであります。そうすると、悲観論ということにはいろいろな内容がありましょうけれども、とにかく楽観すべきあなたの基本的な経済に対する見通しは、この財政演説でありましょうが、これをずっと通読してみますれば、この中には、警戒を要すべしということは一つもないわけです。従いまして、大体これも楽観論だと見るべきでありましょう。内容を簡単に拾って参りますならば、こういうふうに述べられておるのです。「このように、安定した経済基調の上に経済の拡大発展が実現しつつあることは、戦後の復興期には見られなかった現象であります。日本経済の実力が一段と大きくなったことを示すものといえましょう。」かくのごとくに表現されておるのでありますが、いうなれば、設備がどんどんと拡大されていくということは、すなわち日本経済の実力が一段と大きくなることを示すものであって、これは何ら悲観すべきものではない、このことが言外にニュアンスとしてにじみ出ておると思うのであります。その次にあなたが述べられておるのは、そこで、今後われわれは何をなさんとするか、そこをあなたは述べられて、ところで、このような著しい経済の拡大に対して、昨年半ばごろから、電力、輸送等について不足が生じてきておる、その険路問題を解決しなければならない、なお社会保障の面では、衣食はすでに足ったが、住宅についてはおくれておる。こういう工合に述べられて、このような産業活動及び国民生活の面における不均衡を是正しながら、全体として経済力を強化拡大していくということが、今後における施策の眼目であると存じます。こう述べられておるわけです。繰り返して申しますと、経済基調の上にこの拡大発展が実現しつつあって、設備投資がどんどん行われておるということは、日本経済の実力が一段と大きくなったことだから、むしろ歓迎すべきことである、そこで、今後池田大蔵大臣が断行せんとすることは、この隘路問題の解決と住宅政策である。言うなれば、その不均衡を調節していくということが、今後のあなたの施策の眼目である、こういう工合に述べられておる。現在あなたが特に関心を持って措置されておりまするこの金融上の恐慌——といっては当らないかもしれませんが、とにかく第一次、第二次のこの公定歩合引き上げは、私ども十国会の大蔵委員会でいろいろと勉強させていただいておるのでありますが、かつて見ざる非常措置であります。こういうことは述べられておりません。従いまして、あなたが楽観論から悲観論に転じたものではない。すなわち財政方針で演説をしたところの内容と現状とは大して変っていないとあなたは述べられておりますけれども、あなたのやっておられることは、すなわち財政方針の演説の中でやらんと述べられたことは、国民に公約されたことは、隘路産業、それから住宅問題、そういうようなアンバランスを是正するというところに施策の眼目が置かれる、こういうことでありましたが、あなたが今眼目として置いておるのは、そこではないでありましょう。それはまさに襲い来たらんとするところの巨大なる外貨の損耗、対外信用の確保、通貨価値の維持、そのためには設備投資を非常な手段によって押え、そうしてその目的を達せんとしておられる財政演説の中で述べられた今後の施策の眼目と、あなたが今眼目として必死に努力をされておる事柄とは違っておる。現実にあなたの努力は眼目が違ってきておる。そのことは、経済の基調も、それから経済の現象も、現象と基調というものは違うとあなたはおっしゃるけれども、これは一体不可分のものでありまして、経済実態からさまざまな経済現象が起きてくるわけであって、これは分離して考えるということはあり行ない。現象こそ実体である、私はそう考えます。こういう意味で、重大なる要素を含んで現象がここに現われつつあると断ずるのが、私は公正なる見方ではないかと思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 私は財政演説で申し上げましたように、降路産業を拡大し、住宅を予定通りやっていくために、今までのアンバランスを除くためにそういうことをやっておるのでございまするが、このままほうっておきますと、そういうふうな隘路産業の方に金が行って隘路を打開するよりも、もっと片一方の方で広がり過ぎる、こういうことがありますので、金利引き上げ等をやっております。もちろん現象が、実体になることもありましょう。しかし経済全体の基調としては、私の予想した通りで行っております。それから投資が予想よりも多い。そこで、それが輸入増大の原因になっておる。こういうことで、過剰投資という現象を押えようといたしておるのでございまして、何らそこに矛盾はないと思います。  外貨が減ったということにつきましては、私は何も楽観はしません。と同時に、悲観はいたしておりません。常に、われわれが国内の現象をどう見ておるかという判断と、同時に外国人が日本の現象をどう見ておるかということを、私は他山の石として調べておるのでありまするが、今回の金利引き上げについてのアメリカあるいはイギリスの考え方、また最近専門家として言われておりまするブラック世界銀行総裁等からも、日本経済の基調はますますよくなっていっておる、こういうことを言われておるのであります。決して悲観とか楽観とかいうのじやなしに、今までの基調を確実に進めていき、経済の拡大発展をはかるための措置として考えて、説を変えなきゃならぬというところまできておりませんし、またそういうことのないようにわれわれはいろんな手を打っておるのであります。
  39. 春日一幸

    春日委員 これは重大な要素を含んでおると思うのです。あなたは信念の人として、私どもとにかく敬意を表しておりますが、しかしあなたはがんこ過ぎる場合があるのです。私はこの前のあなたの舌禍事件なんかを今申し上げようとは思いませんけれども、当時あなたは超均衡政策をとられたときに、中小企業者の三人や五人死んだって仕方がないではないか、日本経済全体の破綻を防ぐためにはやむを得ないと述べられた。これは、見ようによっては正しい見方でもありましょうけれども、当時それが国民全体にとっていか受け取られたか、また国会はこれをいかに理解したか。その結果がいかなる事態によって処理されたかということを十分御理解願わねばならぬと思います。あなたはその後数カ年間、ずいぶん人間もみがかれたはずであります。私があなたに申し上げたいことは、今あなたは、何ら警戒をする必要はないと述べられておるけれども、私は繰り返し繰り返し申し上げますが、とにかく、先日も私は地方へ参りまして、そうして中小企業者の窮乏の実情を訴えられました。その人は目に涙を浮べて言うのです。親の代から引き継いできたのれんが手をあげなければならない、家も財産も銀行の担保に入っておって、これが処分をされて立ちのかなければならない、一つ池田さんをがんとやっつけて下さいと言って、ほんとうに泣いておるのですよ。それが一人や二人のことなら私は申しません。一宮においても、一昨晩も足利に行けば、数百の中小企業者の諸君が、この辺は火の消えたようなものだ、一体これはどうしたらいいのか、ほうっておけば手形の支払い期日が回ってくる、商売はほとんど動かない、何ともかんともやりくりがつきませんと言っておるのです。そこで、あなたは経済の基嗣は変らぬ、変らぬと言うておられても——かつてあなたは、中小企業者の三人や五人どうでもいい、そういう表現じゃありませんでしたけれども、どんな犠牲があっても国の経済全体のためにはあえて忍ぶべしと言われた。しかし、とにかくそういうのが一人や二人、五人や十人ではない。あなたも述べられた通り、景気の象徴は繊維産業において第一段の口を開いて、その繊維産業が各地においてこういうような窮乏の状態に陥っておるということは、経済の基調に対しておそるべき変革がもたらされつつあることである。これは正確に一つ理解をされて、救済のために必要なる措置を講ずるのがあなたの責任であり、任務ではないかと私は考えるのです。あなたも世界的な関連において、また国会の会期末において、特に大蔵大臣としてのお仕事が忙しいので、実態を十分に把握されるいとまがないのかもしれませんが、現実にあなたがその気になって調査をしようと思えば、即日その資料が集まってくると思う。中小企業窮乏の実態は、あなたは何らこれを重視する必要はないと考えられておるか、繊維産業に現われてきたところの、この破産、倒産続出の現象を、わが国の経済の基調に何ら変化をもたらしていないということをなおかつ断定できるのであるか、重ねて御答弁を願いたい。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、日本経済の基調につきましては、根本的な変化はないと考えております。基調はずっと行なっております。しかし、その一問におきまするいろいろな現象につきましては、お話しのような点があることは十分承知いたしております。しこうしてこのよくない現象が積み重なって日本経済の基調が狂うようなことがあってはいけません。そこで、あらゆる派生的な現象につきましては、十分これを是正するように善処いたしたいと思っておるのであります。
  41. 春日一幸

    春日委員 あなたは今横山君の質問に、わが国の財政金融責任者大蔵大臣であると述べられておる。あなたの経済の衝に当る任務は、適時適切に、瞬時もよどみなく必要な措置を緊急に打っていくところにあると思う。カンフル注射でも、命のあるうちに打たなければなりません。死んでからどのような手を施してもだめだ。ことに今回の第一次、第二次にわたる公定歩合引き上げなんかの、私は最も参考に供すべき事柄であろうと思う。これなんかは、私は経済のいろいろな論評を読んでみますと、この事柄が、もし昨年の十月から十二月までの間に公定歩合引き上げ措置がとられたならば、今日のような事態はあるいは回避できたかもしれないとなす説が相当ございます。こういう意味合いにおいて、あなたは、現在産業界に現われておる恐慌のこの徴候が警戒を要すべきものである、緊急に国家として何らかの策を施さねばならぬと理解されるならば、これは早きにこしたことはない。けれどもあなたがあまりに自信に満ちて、基調は変っていないのだから根本的施策の方向転換をする必要はないとあくまでされると、——ちょうど第一次公定歩合引き上げて、それから異常な第二次公定歩合引き上げを行なって、それに伴うて市場金利の暴騰を来たし、株式が暴落して、破産、倒産の続出、こういうことになつて現在現われてきておると私は理解しております。今にしてあなたが経済の基調に相当変貌の徴候があるといち早く察知されたならば、これは適時適切に、瞬時もゆるがせにせず、策をとつて参られるならば、将来起るべきところの破綻を未然に阻止することもあるいは不可能ではないと考える。しかしあなたが自説を固執するごとく、経済の基調に何ら変化はないから、このままやっていけばやがて収束する、こういうふうに事態が推移すれば、われわれはあえて何をか言わんやであります。まことに喜ぶべき事柄であります。しかしあなたの予測に反して——あなたは、わが国における財政経済のとにかく最高の権威者の一人であると思う。ところが最高の権威者ですら、あなたがとにかく切磋琢磨して想を練られた財政演説と、あなたがいかに抗弁されようとも、現在の経済実情とがその通りであるとは断じがたいと、相当の経済学者もそれを指摘しております。私もまた自分の独断に陥ってはならぬと思って、いろいろ先輩諸君の意見も聞いてみましたが、この財政演説通りであるとは断じがたいとみんな述べておる。でありますから、あなたのような権威者も、過去においては誤まっておったと見るべきである。だとするならば、今日のあなたの分析と理解がもしも違っておって、後日日本経済に大きな破綻を生じてから、それから第二次第三次の策を急いでとられたとしても、そのときにおいてもはや収拾すべからざる事態に陥っては、何にもならぬと思う。私はそのことを最も憂うるのであります。だから、あなたとあげ足を拾い合うという意味でなしに、日本経済を健全に発展せしめて、もし起るべき事故があるとするならば、未然に相携えて阻止する、こういう観点に立ってこれを論じておるのでありますから、この点について、あなたはなおかつ何ら憂うる事態はないと考えておるかどうか。それから、中小企業の破産、倒産の実態、また経済現象の一つの公約数として、不況になるときには、まず第一番に繊維界からその徴候が現われてくるという一つの定義みたいなもの、こういうところからいろいろ判断いたしますと、経済政策として、特に中小企業政策として金融政策以外にいろいろとあなたが手を打たなければならぬ政策があるように考える。この点いかがでありますか、何らその必要はないとお考えになるか、重ねて御答弁を願います。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいままでは、私が申したところで尽きると思いますが、中小企業の問題について特にお話し申し上げますと、先ほども申し上げましたように、とにかく今年の予算の面から申しますと、中小企業の方には、従来よりもかなりふやしておるのであります。しかし情勢の変化によりましては、まず第一に中小企業にしわが寄るのでありますから、できるだけこういう方面に力を入れていくことは申すまでもないことでございます。今後十分事情を見ながら努力していきたいと思います。  なお、これはお答えしてどうかと思いますが、今になって、公定歩合引き上げを昨年の暮れごろやったらいいじゃないかという議論を私は聞くのであります。しかしこの点につきましても、知恵はあとからと申しますか、そういうことにまで私は考えないのであります。それじゃ、去年の今ごろ、あるいは秋ごろにやっておった場合日本経済がどうなるかということと、それからいえば、この金利引き上げ措置が一カ月も二カ月もおくれてはいかぬと思います、一時間も早くやれというような状態でございまして、これでは十分ではなかった、こういろいろな議論はありましょうが、ただいま日本銀行考えておりますこと、またわれわれが大蔵省の立場において考えておりますこと、また政府全体としての考え方で、この発生する現象を見ながら善処をしていけば、そう大蔵大臣が警戒しなければならぬというふうな状態にはまだまだなっていかない。私はそういうふうな心配の起らないように今手を打っておる。そして、これは非常におそきに失した、将来の日本経済に非常に悪影響を及ぼすことが今起っているというふうにも考えておりません。繰り返して申し上げますが、世界経済動きを見ながら、わが国のあらゆる経済事象を十分観察いたしまして、私が国会で述べました財政金融政策が誤まりでないように進めていきたいと考えております。
  43. 春日一幸

    春日委員 第一次、第二次の公定歩合引き上げの経過も、今日から顧みて見るならば、あとでいろいろと批判もできょうというお説でありましたけれども、少くとも一国の大臣は完全無欠であらねばなりません。至らざればすなわち去るであります。そういうわけでありますから、今過ぎ去ったことをとやかく言ってもらっても困るという意味の御答弁は当らないのです。あなたは常に完全無欠でなければならぬ、あなたの見通しは正鵠を保たなければならぬ。もし間違っておれば責任をとる、これでなければならぬのであります。  そこで話はちょっとわきへそれるのでありますが、御承知通り、今回の金融措置によりまして、市中金融機関選別融資の傾向に走りまして、ために中小企業が現在非常に困っていることは申し述べた通りであり、大臣もこれを認めておられる。そこで先般中小企業金融公庫や商工組合中央金庫、国民金融公庫など中小企業関係政策金融機関中小企業からの借り受けの申し込みが非常に殺到しているということです。ここ二週間くらい特にその傾向が顕著であるといわれているわけであります。あなたは、本年度は当初の財政投融資計画において、なるほど従来の実績から考えますと、相当これを加えての御措置はとられておりますけれども、現在日本銀行がとりましたところの金融措置によりまして、中小企業へのしわが予想外に寄ってきているわけであります。従って、このはけ口はやはり政府関係金融機関をして、これを受け入れる態勢、消化でき得る能力を持たせる必要があるのではないかと考えるわけであります。幸い本年度予算措置の中においては、例の三百億になんなんとする産業投資特別会計のまた使途も明確でない金の蓄積もあると思うのでありますが、大臣中小企業にしわ寄せされているこの実態にかんがみまして、これらの三金融機関に対する投融資、あるいはまた現在わずかでありますが、行われております政府余裕金の預託というふうな特別の措置を講じて一層中小企業の諸君が今続々と倒れているのでありますから、お調べになって、私の言うことが間違っておりましたならば、何ら措置をとられる必要はないと思います。しかしどんどんと倒れているのが実情であるならば、その中小企業をとにもかくにも救済することのために、産業投資特別会計にあります三百億のものでも、あるいは政府の余裕金でも、これを大幅に預託して、現に血がほとばしって流れている中小企業の血をとめるために、包帯をまくとかなんとか応急の措置をとる必要があると考えるのでありますが、大臣にそのお考えがあるかどうか、この際お伺いいたします。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろ中小企業対策について御研究、御心配のようでございますが、私もあなたに負けないように努力をいたしているのでございます。政府の余裕金の指定預金というものは・会計法上ちょっと異論がございまして、実は数年前よりやっているのを今ストップいたしております。預金の残は六十二億そのままにしておりまして、拡大はされていないのでございますが、私はただいまの予算の範囲内におきまして、また特に国会において議決を願わなくてもできる措置につきましては、十分あの手この手で、お話しの包帯をまくと申しまするか、血どめ薬と申しまするか、いろいろな手を打つ用意はいたしているのでございます。まだ年度当初でございまして、相当の金もあることでございます。一幕重要な仕事でございますので、十分注意をしていきたいと考えております。
  45. 春日一幸

    春日委員 幸いに御理解のある御答弁でありますが、ついででありますから、この際意見調整をはかりにたい思うのでありますが、例の政府余裕金の金融機関に対する預託行為が、財政法上疑義があるという点につきましては、実は本委員会におきまして、その疑義があると指摘した会計検査院の背任者に来ていただきまして、会計検査院がそういう指摘を行なったので、大蔵省が会計検査院の警告に応じて、そういうことをやめることになっているそうだが、事実はどうであるか、一つ見解を述べてもらいたいということで質疑応答をいたしました。そのとき会計検査院が述べましたことは、これは速記録をごらん願ってもけっこうでありまするし、また直接電話をおかけ願ってもけっこうでありますが、預託するということは、予算決算及び会計令その他財政法上、どこから見ても疑養がない、ただ願わくば、予算総則の中で最高限度額を表わして、そして余裕金をこの限度の範囲内において金融機関に預託することができる、こういうことを取りつけておいていただくならば非常に望ましいことだ、こういうことを述べたにとどまると言っており免した。従いまして、その見解を骨子といたしまして、本委員会は、大蔵省が、これは法律に疑義があるから預金を引き揚げるのだといわれたその直後において、これは法律上何ら疑義はないので、従って現在預託してあるものを引き揚げることを中止することはもちろん、さらに進んで新しく預託して下さい、これは本委員会でも決議をいたしましたし、昨年の国会において、通産委員会の発議によりまして、本会議においても、中小企業危機突破の対策十一か何かの具体的な施策を掲げた中に、その一つとしてこれが要望されておるわけであります。大臣は、閣内においても非常に強力な大臣として、どうか一つこの疑義をただしていただいて、そういう法律上の疑義がないならば、大臣責任において——国会はまた本会議の議決をもって、これは法理上何ら疑義はないから引き揚げないで、なおかつ新たに預託しろといっておるのでありますから、これは国会の意思なんです。当面いたしております中小企業金融が、今回の非常措置によりまして非常に困っておる。現にこれらの三国家金融機関に対して借り受けの要請が殺到しておる現状にかんかみまして、一つあなたの責任で、会計検査院とお打ち合せいただいて、これが法律上根本的な違反でないならば、この際一つ中小企業の当面しております窮状を救済することのために大幅の預託をして、そうして何らかの局面の展開をはかる意思はありませんか。今あなたに劣らないように善処するとお述べになりまして、非常にけっこでありますが、国会はまさに終うろうとしておりますから、この際本委員会を通じて、あなたのなきらんとするところの具体的な措置は何であるか、これを全国の中小企業者のためにお示し願いたいと思いますが、いかがでありましょうか。非常に絶望的に困っておりますから、あえてこのことをお伺いするわけであります。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 政府の余裕金の預託の問題につきましては、お話しの点もありますので、今後研究してみたいと思います。それから、今の預託金の問題は、相互銀行等でございますが、片一方のお話中小企業、国民金融公庫等につきましては、予算の総則で借入金なんかもあれしておりますから、情勢に応じまして、予算を早く使うとか、いろんな点で研究し善処いたしたいと思います。
  47. 春日一幸

    春日委員 大臣、具体的に何か手をお打ちになりますか。早期に、今月中くらいにお打ちになる意思があるならばある、何かやる、やるならばどんなことをやってみるか、この際一つ具体的にそのとらんとされる措置、これをお述べいただきたいと思います。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう措置をやる、ああいう措置をやるということになると、非常に派手のようでございますが、御承知通り、今年度使います金がまだ何百億とあるのでございます。そういうものを出していったその状況によりまして、私は考えてもいい、当座の問題は予算に認められたものをやり、また予算上許された措置をとり、そうしてまた新規の点、今の預託金のようなものにつきましては研究する。あの手この手で中小企業の方々が非常にお困りの場合を緩和していきたいと考えております。
  49. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、まず予算の範囲において認められておりますそれぞれの資金計画のうち、当面しております中小企業金融難を緩和するために、それぞれのワク内においての繰り上げ支出、これをまず第一段としてやる。それから第二段として、政府余裕金の預託を行う、この二つを早期におやりいただく、こういう工合に理解をしておきます。  重ねてお伺いするのでありますが、実行予算の編成——これは一昨日でありましたか、石村委員と山際日銀総裁との間で、その見解を応酬されておりましたが、これはいかがでありますか。今までの方式によりますと、こういうような金融情勢になりましては、政府のとるべき財政金融政策も、おおむねその方向ははっきりしたわけであります。すなわち公定歩合の再引き上げのねらいは、国内の投資需要の抑制に重点が置かれておるわけでありますから、従って、今後の財政措置は、対民間払いについても、その影響がそういうふうな方向でとられていくのではないか、こういうことが考えられるわけであります。今までは、金融が梗塞をしておると、政府は民間に対するいろいろな勘定を、できるだけ支払いか促進できるような措置をとって参りまして、そうしてその金融難緩和のための措置をとったのでありますが、今度は事態ががらっと変っておる。従いまして、財政も金融引き締めの方向に、これは逆ではありますけれども、同調せざるを得ないような傾向があるのじゃないかと考えるわけであります。従いまして、今度は財政面でも、特に民間投資を誘発しやすいような公共事業補助金、それから財政投融資の支払いを繰り延べられる。あなたが財政演説の中で述べられておる隘路産業以外のものについては、その支払いをあるいは下期に繰り延べられてしまうのではないか、こういうような心配、あるいは批判等も出ておるわけであります。これは、あなたの方針はどういうようなものであるか、この際あらためてお伺いをいたしておきたいと思います。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどのお言葉で、繰り上げ使用ということにつきまして、私は十分考えます。それから今の預託は研究いたしますが、やるんだという約束はちょっと——法制的に検討いたしまして、できるならばやりたいと考えております。  それから、ただいま国民金融公庫におきまして支所長会議を開いておりますので、係官をして十分地方実情を検討さして、善処いたしたいと思います。  それから、予算執行でございますが、私は、せっかく御審議いただいたあの予算は、普通に執行していきたいと思っております。  金融の引き締めという問題につきまして、御承知通り、昨年の暮れに八十億、一月、二月、三月で六百二十億、七百億ほどの買オペをしておりますが、これをもとの銀行に売り戻すということにつきましては、引き締めだから一つ売り戻してはどうかという議論もありますが、これはこのまま続けていきまして、様子を見たいと思っております。ただいまのところ、今までのあらゆる措置によりまして、実行予算を作ることはもちろん必要ないと思います。また公共事業補助金の方につきましても、私は普通にやっていく考えでおるのであります。きょうのある新聞に、大蔵省には実行予算を作れという議論があるとかいうようなことが載っておりますが、そんなことは絶対にないのでございます。私の所信をここで申し上げておきます。
  51. 春日一幸

    春日委員 次にお伺いをいたしたいことは、今度の公定歩合引き上げは、長期性のものとは直接つながりを持たない、従って公社債の金利は上げない、こういう工合に大臣は述べられておるようでありますが、その通りでありますか。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 政府発行の公社債はもちろん、地方債あるいはまた民間の社債につきましても、今までのあれでやっていく考えでおります。現に今月におきましても、電電公社、北海道開発、日本航空会社等の社債につきましても、大体三十億、今まで通り条件で話がついたと聞いております。
  53. 春日一幸

    春日委員 私は、この問題は、国の施策を遂行する上において重大な問題であろうと考えまして、特に一昨日は日銀総裁にその所見をただしました。そのとき、日銀総裁が言いますのには、三十二年度の財政投融資計画は八百四十五億になんなんとする、こういう膨大なものを今まで通りの安い利子で消化するということについては非常に困難が伴うのではないか、言うならば、その見通しについては悲観的な説を述べられておりました。申し上げるまでもなく、資金源というものは総ワクが減ってくる、そこへもってきて、般金利は上っておる、何というたところで、これらの銀行は商業ベースで事業をやっておるわけでありますから、やはり政策的な影響というものについてはおのずから限界があろうと思う、買え買えというたところで金がない、日銀は貸してくれない、ほかからは資金需要というものが非常に旺盛である、そういうことになって参りますと、今月などは、今三十億というお話でありましたけれども、これはまだ過渡的段階でありますが、来月、再来月になってくればだんだんこれが深刻化されて参ると思ます。八百四十五億の全額を消化するということについては、私は非常に困難性があるのではないかと思う。これはわれわれしろうとの推測ではなく、日銀総裁の見解がそうでありました。  そこで、私は伺うのでありますが、あなたは、この北海道東北開発公庫のほか、電電公社、道路公団、特に住宅公団事業債というものを含めて、このことごとくが市中銀行によって消化されるという大確信をお持ちになっておりますか、この点を重ねて伺いたい。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 これは金が要らないようになれば別でございますが、結果においては消化されると思っております。もちろんお話しのように困難はありましょうが、金融機関の公共性から見まして、私は協力して下さることと期待いたしております。
  55. 春日一幸

    春日委員 それでは、最終的には消化されると述べられておるわけでありますが、言うならば、これだけのものは大蔵大臣責任において完全に消化し、その資金を調達し得る、これは本委員会における公式の言明として、大臣責任が持てるわけですね。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 私は持てると思います。
  57. 春日一幸

    春日委員 最後一つ伺いをいたしたいのであります。現在輸入の抑制がはかられておりまして、さらにそれが強化されて参ると思うのであります。そういたしますと、三十二年度の上期の外貨予算は修正を必要とするとはお考えになりませんか。この組まれた予算通り輸入を進めて参られると思いますか。これは相当の矛盾を生じてくるので、勢いこの外貨予算については、相当大幅の修正を必要とするのではないかと考えるわけでありますが、いかがであります。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 私は修正しなくてもやっていけると考えております。
  59. 春日一幸

    春日委員 それはどういうわけでありますか。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 大体外貨予算は、資金源におきまして必要な最小限度の額を見込んで作っておるのであります。従って、今のような状態で外貨予算を変えるという必要に迫られていないと思います。
  61. 春日一幸

    春日委員 三十二年度の上期の外貨予算は、三月末の年度末ぎりぎりに決定されまして、その予算総額は、輸入物資予算が二十二億三千六百万ドル、それから貿易外収支予算が四億七百万ドル、合計二十六億四千三百万ドルでありまして、三十一年度期外貨予算に比べて、輸入物資予算では四億七千万ドルの大きな増加、それから貿易外収支の増加が六千四百万ドル、合計実に五億三千四百万ドルの増加となっておるのでありますが、これによりますと、国内物価の安定と経済規模の拡大に見合った原料確保という線から、必要なものはできるだけゆとりを持って計上した。言うならばたっぷり予算で、十二分に見ておる。   〔平岡委員長代理退席、委員長着席〕  十分にこれを見て、この予算の組み立てが行われておる。ところが政府は国際収支や経済見通しに対して、このままでは確信が持てない。それで、これまでのように、外貨予算に積極的な性格を与えることはできないから、実需に応じて機械的に割当をふやしたにすぎない、まあずさんな予算であるというふうに理解がされておるわけであります。ところが、三月に引き上げたばかりの公定歩合が五月に第二回の引き上げがされた。その第一回の引き上げは、国際収支が予想外の急激なテンポで悪化したことがその原因になっておるわけであります。そういたしますと、わずか一カ月ばかり前にこんな無定見な外貨予算をきめて、経済界に対して甘い期待を持たせておるのでありますから、今度は、この第二次の公定歩合引き上げと同時に、外貨予算については相当の修正ができてくるということが経済の必然だと思います。そうすることなくしては、実際海外信用の確保とか、国際収支の改善とか、外貨損耗の抑制とか、そういうような実があがって参らぬのでありませんか。少くともこの外貨予算については、相当大幅の修正が必要ではないのですか、いかがでありますか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、外貨予算を修正するような非常手段と申しますか、そういうことは今とるべきではないので、国内の金融の引き締め、続きまして輸入につきまして、特に与えました恩恵をこの際縮めることで正常化が保てると考えておるのであります。
  63. 春日一幸

    春日委員 今までにわたりまする質疑応答を通じまして、とにかく大臣も必死にこの問題とお取り組みになっておることは、これまでの答弁でわかる。そういうわけでありますから、一つ大臣は、その信念に満ちて、とにかく事に当っておられるその気持はわかりますけれども、もとより人間というものは完全無欠というわけには何人もなりがたい。でありますから、なおよくお考えいただきまして、ほんとうにわが国の財政金融責任をあなたは一身にになっておられるのでありまして、もしあなたの判断が間違って、施策が当を得なければ、わが国の経済は破綻するのです。そのときになってからどうにもできないのです。でありますから、私の申し上げたことどもの中で、一つでもあなたの御参考になることがありましたら、一つ緊急に施策に移していただきたい。  なお特に中小企業問題については、私は日本における最高の権威者であると思うから、特に私が申し上げた中小企業金融政策については、ぜひとも一つ御検討願いたい。  なお東条さんは、政府の余裕金の預託については疑義のあるような耳打ちの気配がありましたが、これは本委員会もその点を重視いたしまして、会計検査院の責任者をここに呼んでいただいて検討をし、通産委員会もその問題について疑義を明らかにし、少くとも本会議においてこれは議決しておるのです。引き揚げをやめて、さらに新規に預託をしてちょうだい、これを政府に向って要望、議決をしておるのでありますから、国の意思でありますから、その官僚たちのささやきに耳をかすことなく、今中小企業者がほんとうに困っておるのですから、まずその局面からでもこれを救済していく、そのために緊急に適切な措置をおとりいただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  64. 石村英雄

    ○石村委員 この準備預金制度については、制度自体について、これを読みましておそらく反対する者はいないと思うのです。ただわれわれの懸念するのは——目的なんかはっきりしておりますし、またそのやり方が日本銀行への預け金、こういうようになっておるので、この法律自体反対はいたしませんが、ただ懸念するところは、こういう制度を作りまして、これを一角として今後公債なんかを準備に加えるというような、単なる通貨調節だけでなしに、公債政策にこれが悪用されるおそれがありゃしないかということを懸念するわけでございます。諸外国の例を見ましても、こうしたものに公債を入れておるという場合がありまして、特に日本では、そういう公債政策日本の政治家が信用できないという意味か、一般に懸念されておりますが、これに対して大蔵大臣として、法律はこの通りだからそのままだ、こうおっしゃられればそれまでですが、今後ともそういうような公債をこの中にこっそり引き込むというようなお考えはないというなら、ないということをはっきりさせていただきたいと思います。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 もしお話しのようなことか万が一ありましたら、支払い準備預金制度を設けた趣旨は根本からなくなるのであります。だから、そういうことはございません。御安心いただいていいと思います。  なお立ちましたので申し上げますが、先ほどの春日さんのお話、まことにうんちくがあり、傾聴すべき点が多多あると思います。十分あなたの御意見も尊重し、また他の一般の有識者、経験者等の意見も聞きまして、誤まりのないよう善処いたしたいと思います。
  66. 石村英雄

    ○石村委員 もう一点大蔵大臣に注文をつけておきますが、ただいまの春日君との質疑応答を聞きましても、またわれわれがかつて大蔵大臣質疑いたしましても、どうも池田さんは、何を考えていらっしゃるのかわからない。一般に受け取るのは楽観論じゃないか、こう言うと、決して楽観論じゃない、こう言う。しかし言われることは、普通の者は一応楽観論ととらざるを得ない。ところがそれは楽観じゃない。二月十三日に私も池田さんに御質問いたしまして、そうして楽観論じゃないかと言うと。最後に決して楽観論じゃない、こうおっしゃる。いかにあなたが健全金融だとかなんとか説教をされましても、経済実態は、説教通りには動かないから、具体的な施策をどんどん出していただきたい、発表していただきたいという注文をつけておいたのですが、依然としてそうした傾向ではなしに、何を考えていらっしやるのかわからない。経済の基調は変らない、変らないとおっしゃるが、池田さんは、経済の基調をどう考えていらっしゃるのか、現象とは別だというようなことをおっしゃって、さっぱりわからないのです。たとえば十三日の私の質問の中で、あの当時すでに現われた金融梗塞の問題を取り上げて聞きましたところが、あなたは、これは一時的な金融のあやにすぎない、こういうようにおっしゃった。決して一時的な金融のあやではなかったと思います。あの十三日に、先々日の日銀貸し出しか約二千億、千八百億になっておるというような事例をあげて聞きましたが、金融のあやにすぎないというようなことをおっしゃっておられて、そのときの最後の御答弁を聞きまして、おそらく金融のあやだと言われたのは政治的発言だろう、こう思って理解したのですが、どうも今日考えて、だれが見ても、あのときから、これを金融のあやにすぎなくて、すぐそのうちにこういう状態はなくなる、こう御判断なさったとは思いませんし、また実態もそのように解消されずに、日銀公定歩合引き上げも再度にわたって行わなければならないというようなことからもわかると思うのですが、どうか大蔵大臣は、率直に考えていらっしゃることを申し述べていただきたい。そうでなければ、国民には何のことかわからないのですから、この点を重ねてお願いいたしておきます。具体的な施策があれば、それをどんどん遠慮なしに発表していただく。お考えについても、あまり政治的な含みを持たずに、日本経済実態について大蔵大臣として御判断なさったことがあれば、それを絶えず常に公表していただきたいという希望を申し述べておきます。
  67. 石野久男

    ○石野委員 私はこの機会に、大臣がちょうど見えておりますから、一問だけ簡単にお聞きしたいと思います。簡単な答弁をいただきたいと思います。  それはほかでもありませんが、閉鎖機関であった朝鮮銀行とか台湾銀行に関することですが、これはすでに法律手続によって、預金者の預託金は応三分の一に切り下げて処置したことなのであります。しかしこの問題に関しましては、その後預金者等において、その三分の一の切り下げの問題については不満があるという要望が強いわけです。この点、当時朝鮮銀行とか台湾銀行なんかは、すでに退職金を払った上に離職手当などもやっております。ことに朝鮮銀行なんかは、三億以上のものを出し、台湾銀行は二億以上のものを出しておるのですが、それらのものに対しまして、預金者の方では、どうも自分の預金が三分の一以下に切り下げられておることに不満があります。こういう不満を何とか解決してやらなければいけないのではないかというふうにわれわれは常に考えておるのですが、そういう問題に対して、大臣は、閉鎖機関令の第十一条の規定によって、この閉鎖機関の債務の弁済、その他の債務を履行させる行為を命じたわけでございますけれども、その際第十一条がうたっております「一般社会の経済秩序の保持を旨とし、特に預金者等小額の債権者の利益を考慮し」という問題に関連して、こういう人々の不満の解決に対するお考えをどうお持ち一になっておられるか、この点を一つお聞かせ願いたい。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 寡聞にしてよく存じませんが、今事務当局から聞きますと、預金の三分の一切り下げでなしに、外地の金とこっちの換算率の問題と聞いておるのであります。事情を十分よく存じませんが、換算率の問題であれば、ほかの場合にもそういうふうなことをやった例が多いようでございますので、今直ちにどうこうということはございませんが、今の措置でやむを得ないのではないかと思います。しかしいずれ研究いたしまして、またの機会にお答えすることにいたします。
  69. 石野久男

    ○石野委員 今事実上切り下げという問題は、換算率に関連してでございます。ただ、しかし換算率に関連してではあるけれども、実際問題として、株主とか、あるいは役職員に対する退職金、または離職手当の問題は、相当やはり高額に上っておることは事実であります。ところが片方預金者の方は、換算率に関連して、そういう切り下げが事実上行われておるので、こういうハ々は相当大きな不満花持っておるわりです。しかしわれわれは、銀行業務はどは、今日まで、また今後におけるしころの業務の運営に当って、こういうことをたびたび繰り返されたのでは出る、特に今日の場合は、実質問題として、戦争を契機として起きた問題でありますので、こういう不満は早急に解決すべき問題だと思うのです。法的な手続の上から言えば、もちろん問題はないことでありますけれども、人間的な立場によってこれを考えると、これは不問に付することはできないので、一つ行政上の措置として何か御配慮になるお考えがあるかどうかということだけを、一つこの際明確にお示し願いたい。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答えいたし仇したように、事実関係は私よく存じません。後日検討の上お答えすること一いたしますが、私の察するところ、炉なかこれはむずかしい問題ではなかと思います。しかし調査の上、確答することにいたします。
  71. 石野久男

    ○石野委員 この問題については、あとでいま一度銀行局長等から詳しく一つお聞かせ願いたいと思います。
  72. 山本幸一

    山本委員長 他に質疑はないようでございますが、なければ、本法律案に対する質疑は終了することに御異議ごございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって、本法律案に対する質疑は終了いたしました。  これより討論に入るのでありますが、別段討論の通告がございませんので、直ちに採決に入ります。お諮りいたします。本法律案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって、本法律案は全会一致をもって原案の通り可決をいたしました。     —————————————
  75. 山本幸一

    山本委員長 次に、トランプ類税法案議題として質疑を続行いたします。質疑はございませんか。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 山本幸一

    山本委員長 質疑もないようでありますから、本法律案に対する質疑はこの程度にて終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって、本法律案に対する質疑は終了いたしました。  これより討論に入るのでありますが、石村君より討論の発言がございますから、これを許します。石村君。
  78. 石村英雄

    ○石村委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本案に対する賛成討論をいたします。  このトランプ税の税率を下げるということは、あまりにトランプ、マージャン、骨ぱいの税金が高くて脱税が非常に行われておる。つまりこういう物品税によってマージャンのようなものを取り締ろうという考えが間違いだという政府の御説明ですが、われわれとしても国民一般の感情として、マージャンのような、どちらかといえば世に害を及ぼすような遊戯の材料の税金を下げるということに対する国民の懸念というものを心配いたしまして、なかなか賛成という態度にも出にくかったのですが、いろいろ党内でも、国民に対するそういう理解、税金によってマージャンをやめきせるというような考えは間違いであるというようなことも検討いたしました結果、賛成する、こういうことになったのですが、政府といたしましても、一つこういう点を十分国民に理解させるように御努力をお願いしたいと思うのです。この点の御注意をお願いいたしまして賛成いたします。
  79. 山本幸一

    山本委員長 以上をもちまして討論は終局いたしました。  これより本法律案についての採決をいたします。お諮りをいたします。本法律案を原案の遡り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よって本法律案は全会一致をもつて原案の通り可決をいたしました。  次に、ただいま議決いたしましたトランプ類税法案に対する附帯決議について、横山委員より発言を求められておりますので、これを許します。横山利秋君。
  81. 横山利秋

    横山委員 提案を申し上げます。朗読をいたします。    付帯決議   現在の租税体系は、本国会における税制改正によって直接税については多くの改革がなされたが、間接税については多くの問題が残された。   間接税就中酒税、物品税については時代の変遷とともに課税物件の選択、課税物件間の税率の権衡納税者の負担力について速かな検討と軽減が必要であると考えられる。   さきに税制審議会においては、物品税について玉ラムネをはじめ中小企業関係の諸品目について税率引下げの答申案が提示されたが、諸般の事情から今国会には上程に至らなかった。しかし、これらのものは最小限のものであって、その他不均衡を生じているものを含めてこの際速かに税率の改正を加える必要がある。   一部には物品税について増税の意見もあるようであるが、本委員会は当面これはなさるべきでないと考える。   よって本委員会は、政府が三十三年度において、如上の点を考慮し、間接税殊に酒税、物品税について根本的な検討を加え、全面的な改正を行うよう要望する。  御説明の必要はないかと存じますから、何とぞ満場一致御賛成をお願いいたします。
  82. 山本幸一

    山本委員長 ただいまの横山委員よりのトランプ類税法案に対する附帯決議について採決をいたします。本附帯決議を可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  この際お諮りをいたしますが、ただいま議決いたしました両法律案に対する委員会の報告書の作成及びその手続手続等につきましては、先例によって委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 山本幸一

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  午前はこの程度にいたしまして、午後は本会議関係もございますので、四時を目標に再開をいたしたいと存じます。  暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後五時三十七分開議
  85. 山本幸一

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  接収貴金属等処理に関する法律案議題といたします。     —————————————
  86. 山本幸一

    山本委員長 質疑に入ります。横山利明君。
  87. 横山利秋

    横山委員 この接収貴金属等処理に関する法律案は、すでにだれも知っておりますように、数年間にわたって委員会においてしばしば議論を引き起してきた問題であり、特に行政監察委員会においては、過去におけるあらゆる問題について議論があり、今なおそれが処理できないような実情になっておるわけです。従って委員会としては、いろんな意見があることでございますが、慎重に審議して、一つ十分に時間をかして審議を経ることができますように、委員長並びに政府側、及び与党の皆さんにも特にお願いをいたしておきたいと思います。  私が質問をいたしたい点は、要は三点あります。一つは、この法律の基本的なものの考え方であります。一つは、過去に起きましたケースであります。もう一つは、この法案の内容についてであります。要すれば、この法案のものの考え方議論の焦点とはなりましょうけれども、かりにこの法案が実施されたといたしましても、過去において起った問題が解明されて国民が釈然といたしませんと、どこまでたっても、この法案に対しては、国民の疑惑は深まるばかりでありましょうし、それからかりに法案を実施いたしたといたしましても、その内容において不明確なところがあれば、これまた問題があろうと思います。以下その三点について順次質問をいたしたいと思うのであります。  第一のこの法案のものの考え方であります。まず第一にお伺いをいたしたいことは、この法案というものが、連合国の占領軍に接収された貴金属を公平適正、かつ迅速に返還その他の処理をするということを言っておるのでありますが、国民が考えております判断の基礎として、二つの点があります。一つは、実情ないしは法律の建前を知っている者の立場からする法理的判断であります。いま一つは、庶民的判断と申しましょうか、あるいは政治的判断と申しましょうか、大筋からものを考えるという立場であります。  第一の法理的判断に立てば、議論も大いにあるでありましょう。政府としても、事務当局としても、言いたいこともございましょう。しかし、それだけでこの法案を立案なさったものではなかろうと思う。政治的判断なり庶民的判断、この判断をいかに法律の中にくみ入れられたか。世間の常識としては、これを返すならばあれも返すべきだ、引き揚げ財産についての権利も確保すべきだという判断がほぼその大勢を占めていると私は思うのであります。  通読いたしましたところ、この法律案には、そのような庶民的判断、政治的判断はあまりにも希薄なように思うが、この二つの判断について、どういう考慮を今日まで払ってこられたか、これがまずお伺いしたい第一であります。
  88. 足立篤郎

    ○足立政府委員 横山委員の御質問でございますが、私も過去のいきさつ等には暗いものでございまして、事務的な問題、あるいは実態に関する内容の問題等につきましては、管財局長からお答えをいたしたいと思いますが、ただいまお尋ねのこの法案政府提案いたしますまでに払いました政治的な考慮はどうかということでございます。基本的な問題といたしましては、日本が歴史始まって以来初めて体験いたしましたこの占領という事実、またこの占領軍の持っております特権によりまして、日本政府が所有いたしておりましたものも、あるいは国立銀行である日本銀行が持っておりましたものも、あるいはまた個人が持っておったものさえも、その貴金属を接収されたのであります。これが独立いたしましてから解除になったわけでございますが、この接収という事実についての法理論的な解釈につきましては、ただいま申し上げた通り日本開闢以来初めて起った事実でございますので、法律学者の間におきましても、意見はいろいろに分れたわけでございます。ある者は、接収という事実は没収にひとしいものである。言いかえれば、過去の所有権の関係はそこで打ち切られるんだという、少数意見ではございましたが、相当有力な意見もあった。また所有権はどこまでも潜在的に認められておるんだ、これが解除になれば、過去の所有権が復活すべきである、言いかえれば、占有権が一時接収という事実で断ち切られたんだという解釈も多数意見としてあったわけでございます。  かような疑問があり、なお横山委員御指摘の政治的な判断という問題、これは申すまでもなく、戦争に勝たんがために、国民が先祖伝来の貴金属まで国のために供出した、あるいは安く売り渡したというような事実に立って見ますると、やはり庶民的な感覚でもこれを見なければならぬ、政治的な考慮も必要だということは申すまでもないわけ、であります。  こういう点をかみ合せまして、政府としては総合的に判断いたしまして、現在の憲法に認められている限度におきましてこの法案を作り上げたのでございます。もちろん今回の法案を御審議願いますまでには、過去において二回ほど法案につきまして御審議をわずらわし、特に行政監察委員会等におきましても、いろいろな問題について議論がありましたことは申すまでもないわけでございまして、過去における国会においての御議論、御意見を十分参酌いたしまして、ただいま申し上げましたような点を十分注意して政府としてもこの法案を作りまして、御提案申し上げているような次第でございます。御質問の御趣旨でありましに政治的な考慮という点につきましても、われわれとしても十分これをくみ入れて、なおかつ法理的に許される範囲、憲法に許される範囲というものでこの法案を作り上げて、御審議を願っておるという次第でございます。
  89. 横山利秋

    横山委員 私の質問をいたしました法理的判断と庶民的判断というものは、率直に申せば矛盾をするものであって、相いれないものであると私は思っておるのです。庶民の感情というものは、二つの意味から成り立っておると思う。一つは、ものには順序があるという立場であります。これをやるならば、なぜあれを先にやらぬか、こういうようなものについてかりに権利があるといたしたところで、その一部特定の人々にのみこの恩典が与えられて、庶民の、裏長屋におるわれわれの出したものについてはなぜ返してくれないか、引揚者または在外財産に対する補償をなぜやってくれないか、目くされ金でなぜおれたちをだますのか、ものには順序がある、もしもこういうことをいたすならば、まず何から始むべきかという点について大いに異論を持っておるのです。それが第一。それから第二番目は、そもそも今法理的判断をもってするならば、この接収は没収に通じ、これについてはもう権利は喪失したものと見なす、戦争というものは八千八百万がすべて痛手を受けたものであるから、あの問題についてはもうだれもかれも、富める者も貧しい者もすべてが同じような条件のもとにあったのであるから、あれをもうとやかく言うべきではない、これは没収とみなす、戦争はもうそれで済んだのだ、これが第二の感情であります。この二つの庶民的感情から判断をいたしますならば、これはこの法案それ自体がもうなくてよろしい、こういう立場というものが圧倒的多数なのです。今足立さんが、それらの判断をもしてこの法案が作られたとおっしゃるけれども、どこにその内容が宿っておるかという点をお伺いいたします。
  90. 足立篤郎

    ○足立政府委員 お答えいたします。私が政治的な判断も十分くみ入れてこの法案ができておる、また過去の国会においていろいろ御議論があった点も、政府としてはこれを十分尊重してこの法案を作り上げて、御審議を願っておると申し上げましたのは、過去において御審議を願いました場合には、たとえば戦争中に政府の代行機関であった交易営団等、これらの機関に売り渡したようなもの、こういうものも、過去におきましては返すべきではないかというような議論もあったわけでございます。しかしながら国会におけるいろいろな御議論を拝聴いたしますと、かようなものはむしろ没収すべきであるという御意見も強かったのでございまして、この法案におきましては、御承知通り、こういったものにつきましては、没収をするという建前でこの法案提案しておるという点につきましては、今横山委員御指摘の政治的な考慮といいますか、庶民的な感覚も十分考えまして、憲法の許される範囲において、なるべくその処置によって不公平な結果が起きないように、私ど承としてもできるだけ考慮した法案であるという趣旨で申し上げたわけであります。しかしながら、終戦後におきまして占領軍に接収をされたものにつきましては、これはいきさか趣きを異にいたすわけでございまして、これは現在の憲法下において、しかも占領軍という、いわばオールマイティの権力を持ったものによって押えられたというものでございます。これは、やはり現在の憲法の建前を守って、個人に返すべきものは返してあるいはその他政府に帰属するもの、日銀に帰属するもの、いろいろな措置をこの際はっきりさせたいということでこの法案を出したわけでございまして、先ほど私が法理上、あるいは憲法上ぎりぎりの線まで、横山委員御指摘の政治的な考慮というものを払った法案であると申し上げたのは、そういう趣旨でございます。
  91. 横山利秋

    横山委員 その政治的判断、庶民的判断をどの程度にすべきかについては議論の余地があろうかと思います。あなたと私との間には多少の食い違いがあろうとは思う。けれども、しからばこれをその庶民的判断、国民の庶民感情を尊重をして、没収とみなし得ないかというところに一歩論旨を一つ進めてみた場合においては、これは絶対にし得ないものではないのではないかという気がいたすのであります。この点については、あとで法律的にももう少し解明をしていきたいと思うのですが、第一に申しました、ものには順序があるという点についてはいかがですか。御返事がございませんでしたけれども、今日もなお戦争の被害を受けた人人、戦後においてもその余波を受けて苦しんでおる人々がある。現に先般国会でえらい問題になりました引揚者につきましても、この点については、債権を確定をした立場でなくして、つかみ金というような格好で解決をしておるのです。ものには順序がある、今これを実施する前になすべき多くの気の毒な生活に困っておる人々があり、戦争で傷ついた人がある。そういう人たちにこそ最初になすべきであるという点については、これは私は、政府としてもお考えにならなければならぬ点ではないか、こう思うわけでありますが、いかがですか。
  92. 足立篤郎

    ○足立政府委員 その点につきましては、横山委員のおっしゃる通り、いずれを先にすべきかということは非常にむずかしい判断でございます。なおまた、今日戦争の犠牲によって生活にも困る方もございましょうし、身体が一生不自由で、生活能力の欠けている者もございましょうし、また終戦前後の処理によりまして、いろいろと犠牲をこうむっておるお気の毒な方々もたくさんある。今、政府といたしましては、できるだけ財政の許す範囲で、こういった人々に対する処置はとっておるわけでございますが、なお十分とはいえないことは御指摘の通りでございます。従って、そういうものの救済をあとにして、こういう接収貴金属の返還をこの際政府考えるということは、順序がおかしいじゃないかという御指摘の点につきましては、あるいはそういう御批判もあろうかと思います。しかしながら、この点は見解を異にすると言われてしまえばそれまででございますが、ただいま私が申し上げた通り、過去においては、今御批判をいただきましたような法案政府も出したこともあるわけでございますが、この点は、国会の御意見に十分耳を傾けて、法理上許される限度まで、今御指摘のような点を考慮し、政治的な配慮をいたしましてこの法案を作ったわけでございまして、私は、先ほど申し上げた通り、われわれが今返還をどうしてもしなければならぬと判断をしてこの法案に盛り込みましたのは、終戦後において、現在の憲法下において進駐軍に接収されたもの、この個人の所有権を尊重しなければならないというので、一割の納付金によって元の所有者に返還をせざるを得ないということでこの法案を作ったようなわけでございまして、残余のものにつきましては、当時の代価は支払いをし、閉鎖機関等の処理は続けまするけれども、個人に特別な恩恵がいくというふうには考えないのであります。終戦後できた今日の憲法下において、個人がすでに所有しておったものを進駐軍によって押えられた、これを個人に返すということについて、私は特別な恩恵になるというふうな解釈は、政府としては実はいたしかねる。これは、感情としては御議論はわかるのでありますが、特別な恩恵というふうには私は言えないんじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  93. 横山利秋

    横山委員 十数年もたった今日でありますから、その接収をされた人々は、かりに当時は痛手を受けたとしても、十数年の間には、その痛手というものはなおっておるはずです。しかもこれらを持っておった人々は、大体どういう人かということを考えなければなりますまい。これらを持っておった人々は、大体においてはお金持ちでありましょう。大体においては、生活の水準がはるかに高い人々でありましょう。しかもその人々は、政府から出された業種別件数調べの業種を見ましても、りっぱに戦後といえども経営をし生活をしておった人らしく見えるのです。しかし私が言う、ものには順序があるというその人々は、すべてと言っていいほど困難な戦後の状況を渡って、今なお疲弊のいえない人々であります。私は、政治というものは四角四面な法律ですべて律せられるものとは思いません。最も厳格な意味で憲法に触れる、あるいは所有権に絶対触れる、こういう点については正すべき点がある、傾聴すべき点があると思いますが、しかしながら、全般的な構想から見るならば、これはわれわれが政治的判断をより優先に考えるべき問題ではなかろうか、政府としては法律を、あるいは規定を四角四面に解釈されるけれども、事国会については、法律を作るところ、庶民の感情なり国民の示すところ、希望するところを、そのように大多数の幸福をわれわれが考えてやるべきところであります。従って私が言わんとすることは、多少の議論はあっても、この際国民が全般的に、多くが支持をしておる点について構想を考えるべきではないか。この接収貴金属を今日どうしても返さなければ、その人々がこの世の中に生きておられないとか、その人々が何か自殺をするとか、それならば別であります。しかし、この法律を通すごとによって、圧倒的な多数の国民は、ほとんどが義憤を感ずるでありましょう。おれたちはどうなるのだということを言うでありましょう。ものには順序があると言うに違いないと思うのです。そういう意味から言えばあなたがおっしゃる点は、政治を担当するわれわれとしては考え直すべき点があるのではないか、こう私は考えるのであります。  たとえば、例をとって見ますと、民間に返される金が四十三億円だといいます。けれども、これを個人と法人の業種別の件数を拾って見ますと、法人が百四十八件ですか、個人が百九十三件でありますか、ごく少いのであります。この少い人々に四十三億円の金が今われわれの審議いかんによっていくということは、どう考えても、これは国民が納得するものではないと思うわけであります。これは少し議論になりますから、私は自分の見解として申し述べるにとどめまして、次の質問に移りたいと思うのでありますが、そもそも連合国占領軍による接収の意義、法律的な根拠、当時の事情というものはどういうものであったかということを、私は自分の所見をも含めてお聞きをしたいと思うのです。接収をいたしました占領軍のやり方というものは、私の聞く範囲内においては、相当強権を発動したらしく見えます。接収をされた人々は、それに対して、ああ取られた、こういうふうに感じたのであります。また占領軍の当時の状況から判断をいたしますと、これは賠償に充てるというのが一般的な通説のように考えられる節がございます。接収は、少くともされに当時は、没収と考えられた。そうしてこれは賠償に充てられる、こう判断をされておった。ところがその後占領軍が返してきたことによって、事態は新しく右か左かという議論が出てきたのではないか、少くとも当時は、接収は没収に通じ、それは占領軍が持って帰る賠償の身がわりというふうに考えて、持って帰るというふうに法律的に解釈すべきなのが妥当ではないか。返ってきたからといって、もう一ぺん当時の事情、当時の雰囲気というものをひっくり返して考えることに実は誤まりがあるのではないか、こう考えられるのでありますが、いかがでございましょうか。
  94. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 それでは私からお答えを申し上げたいと思いますが、接収につきまして、いわゆる当時の社会情勢並びに連合国占領軍の行動につきまして、いろいろと一般に与えた通念というものが推移を経ておるということにつきましては、ただいま横山委員の仰せのことは非常にそれに近いと思います。ただこの点につきましても、また最初に政務次官にお尋ねになりましたように、法理と庶民的感覚と二つあったと思うのであります。当時御承知のように、占領されまして、敗戦という初めての経験に直面をいたしまして、占領軍のやりました行動に対しまして、われわれは相当きびしい法理的批判というものじゃなくて、負けた国としてやむを得ないというふうな庶民的感覚と二つあったと思うのであります。ただいま御指摘の点は、後者、すなわち庶民的感覚に重点を置いた御講論であろうかと思うのでありますが、この点につきましては、やはりわが国が占領されておりましたときといえども、いわゆる国際法規その他に照らしまして、公正妥当な保護と申しましょうか、これは当然われわれとして主張すべきであったということも、また正しいかと思うのであります。御承知のように、二十二年の七月には、極東委員会一つ決定が行われております。これは、接収貴金属等を賠償に充てるということを決定いたしておりますが、これはいわゆる内部的な決定にすぎないのでありまして、わが政府に対しまして何ら通告されてはおりません。またいろいろ国際法規につきましては、くだくだ申し上げませんが、ヘーグの陸戦法規その他から考えましても、当時かりに占領軍がいかなる意図を持ってやったにいたしましても、これを没収を解することは、わが国の全体の置かれました立場を保護する法理的な立場に立ちます限り、絶対に容認できないということは、私からあらためて申し上げるまでもないことと思うのであります。そこで、そういう見地から、やはり接収というものを、先ほど政務次官からお答えがありました通りの、一つの法的性格を持つものということに、これは行政監察委員会におきましても、大学の先生方も呼んだり、あるいは委員の方々もいろいろ御議論になりましたが、交易営団等政府一つの特別の機関がやったことにつきまして、またそれの持っておったものを接収したことにつきましては、特別の考え方をとるべきでありまして、また今回われわれの御提案申し上げておる法律も、さようになっておるのでありますが、しかしながら接収が没収であったという法理に一度に飛躍していくということは、今申し上げたような意味におきまして、とうてい許されないいろいろな事情があったという解釈をとっておるわけであります。
  95. 横山利秋

    横山委員 今お話しの極東委員会における原則ですか、賠償に充てるというその決定というものが、日本政府に通告をされなかったからわれわれの関知したことではないという点については、いささか私は議論の余地があろうかと思うのです。あの決定というものは、日本人が所有をしておったと見られるものは、終局的には賠償に充てるのだ、こういうふうに明確に言ってのけておる。ところがその後のいろいろな事情によって、占領政策も変って、一つそれじゃ日本の方に返してやるということに至ったところには、明らかに政策の変更があると私は思うのです。これを政策の変更があったから、あった立場においてこの問題を判断するということは誤まりがあるのではないか。当時の接収をした経緯、極東委員会における決定という状況というものは、新聞にも載り、あるいは接収を受けた人はみずからがそういう判断をしたのでありますから、その当時であるならば、足立さんも正示さんも当時そこに坐っておったとしたならば、いやあれは何ともなりませんとお答えなさるに違いない。その当時あなた方は、いやあれは断固として返してもらうのだとか、あるいは返すのだとかいうことは、おそらく言わなかったであろう。国会で当時問題になったかどうか私は知りませんけれども、少くとも当時の経緯を追想してみまするならば、そういう答えは、政府としてはしなかったのではないか。今ここに情勢が変り、アメリカの政策も変ってから議論するに当って、当時のそういう雰囲気を没却してやるということについては、審議をするということについては、これは間違いがあるのではないか、こう考えるのでありますが、いかがですか。
  96. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 重ねてお答え申し上げます。これは、やはり占領軍のやりました行動の中で、いわゆる没収に当るものというのは、私ども寡聞にしてこれを存じておらないのであります。大体接収という言葉は、これにはいろいろの意味があったわけでありますが、やはり公式にこちらに通告してきたところによりますれば、貴金属の散逸を防止するために行う行為である、こういうことをはっきり言ってきておったことは、最初から変っておりません。なおまた同じ接収を行なったものに麻薬がございます。麻薬につきましては、やはり接収という言葉をもって表現をいたしまして、これまた日本政府が何ら介在することなく、占領軍の直接行動によってやった事柄におきましては、全く貴金属の接収と変りなかったのでございますが、これまたその後に至りまして返還をいたしました。いわゆる接収解除の行為が行われまして、もとの所有者に返したわけであります。当時麻薬をそのままにしておくことは、占領下における日本にいろいろの弊害があるという配慮から、強制的に一応管理をいたしたということが、結果的にはっきりいたしております。これが第一であります。それから第二といたしまして、同じくアメリカの占領軍がやったことでございますが、これは日本の国内ではなくて、韓国において行われました行為で、韓国にありますところの日本財産を接収いたしたのであります。それを韓国政府に移譲いたしておるのでございまするが、これにつきましても、わが方におきましては、終始一貫、この接収というものは何ら所有権に影響を及ぼすものではない、単に強制的な管理の一つの現われであるということに立脚をいたしまして、さような主張で今日も対処しておることは、申し上げるまでもないのであります。すなわち法理的に申し上げるならば、接収というものは何ら所有権に影響するものではないということにおきましては、もとよりそれの印象の強さ、濃さということにつきましては、先ほど来お述べのように、情勢の変化によっていろいろと濃淡はございました。あるときには、クモの糸のごとく細くなりかけたときもあったことは事実かと思いまするが、しかしながら、それは連綿として絶えずに来ておるというのが、私は正しい見方であろうかと思うのであります。
  97. 横山利秋

    横山委員 あるときには細く、あるときには太く、連綿としてそれが続いておるのだが、今あなたのおっしゃるものは、連綿として続いた太いところの話をなさろうとしておる、私は連綿と続いた細いところの議論をしておる、あなたも細いところがあることを忘れてしまっては困るのであります。現に政府は、この問題についてどういうふうな——当時正示さんはおられたかどうか知りませんけれども、どういうふうな立場にあったかということが、当時の行監の記録をひっくり返してみますと、あるようであります。政府は、一体接収なりあるいは没収についてどんな態度をとったのであるか、私は知りませんけれども、見るところ、聞くところによりますと、政府が盛んに国民に報告を求めたり、アメリカ軍を援助したりしてやったということが、記録に載っておるわけであります。そういうことを政府としてやっておいて、そうして先ほど言ったように、極東委員会決定はわしは知らぬというのは、いかがかと思う。政府は、おそらくこの接収に関与しておって、そうして委員会決定をも承知しておって、今になって、それは違うとかおかしいということは、いかがであろうかと思うのでありますが、どういう経緯をもって、それは勝手にアメリカ軍がどんどんやったのか、あるいは政府がそれに対していかように指示をされ、指令をされ、そして協力したものか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  98. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 連合国占領軍は、二十年の九月、すなわち終戦の直後でございますが、彼らの直接行動によりまして接収を開始したのでございます。最初は国の各省各庁——今日で申しますと、各省各庁に当るものであります。あるいは日本銀行というふうな非常に明白なところから接収を開始いたしまして、そしてさらにまた戦時中の回収機関でございますか、はっきりしたところから接収を開始いたしまして、漸次民間に及ぼしておるわけでありまして、その間ただいまお話しの、日本政府に対しまして臨時貴金属数量等報告令の公布の要請があったことは事実であります。いわばこの報告令は、一般にはっきりいたさないところの貴金属等を接収する便宜のために、日本政府がいわゆるポツダム勅令として公布すべきことに相なったわけでございます。従って、はっきり申し上げますと、日本政府は、かような要請に基いて報告を徴するというような、いわば側面的な便宜の供与はいたしておりますが、この接収という行為自体には、何ら直接には関与しておらないということが事実でありまして、いわば向うの責任においてやっておったというのが実情でございます。
  99. 横山利秋

    横山委員 関与しておらないとおっしゃっても、報告をしろというて報告をさせて、あそこに金、銀、ダイヤモンドがあるということをアメリカ軍に言うて、アメリカ軍がそこへ乗り込んで行って接収をしたということになれば、これは明らかに政府が関与したということになるでありましょう。そういう場合に、当時の事情は、記録を見ますと、どうも政府は、いろいろな問題もあって、逃げて回っておるという感じがしてならぬ。あとでいろいろとお伺いをいたしますけれども、いろいろたくさん出てきた問題で、政府が、私には責任がないということを言っておるけれども、結局接収自体の基礎となる資料こついては、政府が提供したということはまぎれもない事実のように私は思うのです。いかがですか。
  100. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 あとで具体的な事案についてお触れいただいた場合に、それぞれお答え申し上げますが、一般的に申しますと、先ほどお答え申し上げましたように、臨時貴金属数量等報告令による報告をとりまして、この報告に基く資料を提供いたしたことは事実であります。従って、相当程度に接収のための便宜がこの資料から得られておるということは、事実かと存じます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、接収自体は、あくまでも占領軍の直接行動として、その責任において行われたものであります。
  101. 横山利秋

    横山委員 それは、言葉の言い回しの違いはあっても、占領軍が行動をする基礎となったものがあなたの方の資料です。そうして接収をされたのでありますから、当時の政府としては、接収個所、接収された人々、そういうものを大体において知らないとは言わせない。従って、そのような事件の経緯について、いかに混乱時とは申しながら、これは政府側として資料が残っておるはずだと思う。その占領軍に提出した、ここに貴金属なりダイヤモンドがありますという資料は今残っておりますか。
  102. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 臨時貴金属数量等報告令によって報告せられました資料はございます。
  103. 横山利秋

    横山委員 今質問の中心になっておりますのは、接収をなさ石ならこれによってしてもらいたいというか、それによってアメリカ軍が接収をした基礎になった資料でありますか。
  104. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 日本政府といたしまして、これによって接収をしていただきたいというふうな何らの意思のない、いわば単なる受け身の立場におきまして、アメリカ占領軍の要請に基いて集めましたところの数量等報告令に基く資料にすぎません。
  105. 横山利秋

    横山委員 それによる数字は概括的なことをお伺いしますと、あなたのおっしゃるのは三十一年五月の問題ですか。
  106. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 さようでございます。
  107. 横山利秋

    横山委員 その以前に、二十年の九月に、米軍はもう直接行動によって接収を開始した、これが第一段階、そうすると、二十一年五月に、さらに政府の接収のための資料を徴収するために公布したポツダム政令によって第二段階の接収が行われた、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  108. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほども申し上げましたように、まず占領軍は独自の活動といたしまして、明白なものから接収を始めたのでございます。その後だんだんと民間等の分の接収をいたすにつきまして、そのような資料を得ることが接収のために便利である、おそらくそういう判断を下したものと存じますが、そのことによりまして、日本政府をしてポツダム勅令を公布せしめたわけであります。従いまして、この臨時貴金属数量等報告令に基く報告は、すでに接収をいたしたものを除きました、いまだ接収をされていないものにつきまして報告をとったわけでございます。
  109. 横山利秋

    横山委員 いや、私の聞いておるのは、二十年の九月に第一段の接収がされた、二十一年五月に報告令を公布して資料を求め、その衣料をアメリカに出した、さらにそれによって接収が行われたかといって聞いておるのです。
  110. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 それによって行われたものと考えられます。
  111. 横山利秋

    横山委員 二十年九月に接収をされた数量、二十一年五月に行われた数量、その合計が大体において接収貴金属の数量となると思うのでありますが、その当時の合計の数字は、今日の数字とどのくらい違っていますか。
  112. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 これは、正確にはただいま数字を申し上げますが、大体の観念といたしまして御承知のように、接収後に、占領軍は略奪物件の返還というふうなことをやっております。それから次には、接収をいたしました後に解除いたしたことも御承知通りであります。さようなことにおきまして、今日われわれの持っておりますところの、管理をいたしておりますところの現在数量と、この接収をいたしましに当時の数字というものとの間には、今申し上げたような差異があるわけでございますが、一番著しい相違は、戦争中に日本軍がその占領地におきまして略奪をいたしましたものを被略奪者に占領軍が直接返還をしておるわけであります。これらの数字は、ただいま正確な数字を申し上げることにいたします。
  113. 池中弘

    ○池中説明員 臨時貴金属数量等報告令によりまして報告が出ました数字は、全部で一万一千四百七十三件でございます。それで、このうち臨時貴金属数量等報告令に基く報告をし、しかも接収されたのは、法人は六十三人でございます。百四十八人ございますが、そのうち六十三人、個人は百九十三人ございますが、八人でございます。従って、必ずしも臨時貴金属数量等報告令に全部よったというのではなく、一応の参考にいたしまして、独自の立場で、これによらないものも接収をした、こういう工合に考えます。
  114. 横山利秋

    横山委員 その接収宿されてから、二十七年の四月に接収金属を解除されるまでの保管というものは、言うまでもなく占領軍が保管をしておったことになるのでありましょうけれども、その保管の間に起った事件というものは、行政臨察の中でも、何か聞くところによれば、アメリカ軍の大佐がアメリカの港に着いてつかまえられて、それが戻されたというような話もあるのでありますが、保管中にアメリカ軍が、一言にしていえば悪いことをしたという点について、あなたの方としてはどういう調査と、どういう結果が出ているのですか。
  115. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま御指摘の、占領軍が保管中に起りました問題として、行政監察委員会におきましても議論の対象になりましたいわゆるマレー大佐事件というようなことは、私どもも行政監察委員会の御調査等によりまして承知をいたしております。これは、御承知のようにマレー大佐が金庫の管理者としての立場を利用いたしまして、一部のダイヤモンドを不法に窃取したということであったのでありますが、その後米軍におきましてこれを逮捕いたしまして、それぞれ適当な処置を講じたということも承知をいたしておるわけであります。そういうふうなこと、が一部あったということは、従って事実でございますが、全体といたしましては、ことにCPCでございますか、そういう機関が責任を持って相当厳重なるダブル・チェックのシステムによりまして管理をしておったのでございますから、今申し上げたようなケースはあったと存じますが、これは私どもとしては、一つの例外的なケースではないかというふうに考えておる次第であります。
  116. 横山利秋

    横山委員 あなたはアメリカ軍を弁護して言っていらっしゃるかもしれませんけれども、私はそのマレー大佐事件というものが起ったということ自体は、その接収貴金属が、アメリカ軍の保管中においていろいろな意味において散逸をいたしたことは容易に想像ができるわけです。もう一ぺん重ねて聞きますけれども、マレー大佐事件というものをかりに不法な行為といたしますと、合法なりあるいは不法なりによって散逸をしたであろうケースは、どういう点とどういう点があるか。たとえば先ほど言ったように、東南アジアなりあるいは中国から略奪をしたというような、そういうものを返した、これを合法と申しましょう。散逸脅したとおぼしき条件はどういうケースとどういうケースであるか。それによって、これが少くなった数量は、ほぼどういうものがどのくらいであるかということについて明らかにしていただきたい。
  117. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 数字はまた正確なことを申し上げるといたしまして、大体の事柄を申し上げますと、一番大きなアイテムは、先ほど申し上げましたように、やはり日本軍の旧占領地における略奪品の返還、これが一番大きかったと存じます。次に、占領下におきましても、日本における経済の復興等に必要なものにつきましては、占領軍の判断によりましてこれを解除いたしております。これまた相当の数字に上っております。第三のアイテムといたしましては、占領軍みずからがアメリカにおいて白金を売却いたしまして、これをドルの形において、預金をいたしておるのがあります。なおまた、日本の占領軍のいわゆる購買部と申しますか、そういうところにおいて売却をいたしまして、やはりこれまたドルの預金等になっておるのもあります。なおその間ドルの預金にならずして、かわりの、たとえば白金を処分いたしまして、これにかわる金を出しておるというふうな場合もあるようであります。大体大きなアイテムといたしましては、さようなことによりまして変動が起っておるかと思います。ただそのほかに、先ほど申し上げましたように、当初の意図が散逸を防止するということにあったことは、いろいろの公文によって明らかなのであります。そのために形態を大いに変更いたしておりまして、相当程度に溶解混合等が行われておるのであります。これらは、全体の数量としてはそのまま残っておるものと想像されますが、しかしながら、それは形を被接収前の形から比較いたしますと、相当程度に変更しておるという点は、大きな相違を来たしておるというふうに申し上げなければならぬかと思います。
  118. 横山利秋

    横山委員 たとえばそういう略奪品を返還した、あるいは経済復興に役立てるために、これを解除した、あるいはアメリカ自身がそれをアメリカで売却をした、あるいはマレー大佐事件があってなくなった、こういう四項目の問題をとらえてみますと、それじゃ、一体この品はだれのものであったか、その品がこの法案によって返還をされる場合——具体的なことはあとで聞きますが、この機会に聞いておきたいのは、この中の特定のものは返される、不特定のものについては按分比例で返される、それの該当のものは、こういう結果になるわけですか。
  119. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私どもの御提案申し上げております法律考え方にただいまお触れいただいたのでありますが、基本的な考え方といたしましては、大体お述べのように、特定するものはそのものを返す。それから特定しないような場合におきましては、これはしかしながら所有権というものがあるということは、諸般の資料によりまして——保管貴金属等という表現をいたしておりますが、接収をせられたものがいろいろ形を変えておるけれども、今日保管せられておる貴金属の中にあるということが相当程度において立証せられるという場合におきましては、その特定しないものにつきましても、大体におきましてまずそれに近いもので返す。それから形状あるいは重量、品位等によりまして、ある程度違ったものが出てきたような場合におきましては、やむを得ない場合には最低の重量、最低の品位という形におきまして返還をしていく。大体同じ条件にありますものには同じ規制を加えて扱いの公平を期する。先ほどお述べのように、第一条の公正かつ迅速なるという考え方に立脚いたしまして、そういう考え方をとっておるわけでございます。
  120. 山本幸一

    山本委員長 横山さん、さっきの数字、いいですか。
  121. 横山利秋

    横山委員 そこでわかっておったら一つ……。
  122. 池中弘

    ○池中説明員 まず占領軍がイヤマーク基金を返しております。その数量は七十二トン余でございます。それから略奪品をオランダとか、イギリスとか、中華とか、そういうところに返しております。非常にこまかい数字がございますのですが、要約しますと、金が一トン半くらい、それから銀が百六十二トン、それからダイヤモンドを十二万九千カラットほど返しております。それから米国内で白金を三トン余売っております。そのかわりといたしまして、金を六トン余とドルプ五万九千ドル返してきております。それから米軍のCPOで金銀を売っております。それが金が百二キログラム、そのかわりにドルを十一万五千ドル、それから銀を十三トン余売っております。そのかわりにドルを四十万ドル返してきております。以上のような数字で処理が行われたものと思います。
  123. 横山利秋

    横山委員 このような略奪品の返還については、アメリカ軍のとった措置日本としてはかりに妥当といたしましても、たとえば極端な話のマレー大佐の事件については、このような趣旨のものについては、日本政府としては承知しがたいものであります。こういう問題について、米軍のとった措置のうちのおもなるものについて、日本政府としていかなる見解といかなる行動をしたか、承わりたいと思います。
  124. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 仰せの通りわれわれといたしましては、最初に申し上げましたように、接収ということの法律的な性格から申しまして、所有権を剥奪するものではないという観点に立脚いたします。従って、ただいま特にあげられましたマレー大佐の事件のごときは、全く不法なる事件でございます。従って、また米軍におきましても、先ほど申し上げましたようにたしか十年の禁錮、それが後に五年ということに変更されたように聞いておりますが、相当の処罰を受けた、現物は返還された、こういうふうに承知をいたしております。   〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕  なお全体として溶解、混合、またただいま数字をあげて御説明いたしましたように、いろいろの処分をしておるということにつきましては、これは果して国際法的に合法性があるかどうかという点については御手論があろうかと存じますが、それらの一切は、御承知のように平和条約の締結に際しまして、十九条によりまして、これに対するクレームを申し入れることは、日本政府は放棄をいたしておる次第であります。われわれとしましては、当時においていろいろ申すべき点もあったかと思いますが、今日におきましては、平和条約締結後の事態といたしまして、一応さようなクレームはもはや放棄したということになっておる、こう思っております。
  125. 横山利秋

    横山委員 今の点は、米軍のなした行動について質問をいたしましたが、この間日本政府自体ないしは日本自体が接収を受けた問題についても、汚職なり、あるいは略奪なり、あるいは貴金属の行方不明という事件が起っておる、それらはどういう状況のもとにそういう問題が発生したか。アメリカ軍に突如として接収をされる、そしてアメリカ軍が保管をしておる、保管しておるといっても、日銀や米軍の中ばかりじやございません、日本政府が保管を委託され、命令されて保管をしておる最中にも、日本人なり政府機関の名でそういう悪い問題が起きたのか、あるいは接収が解除されて日本政府に返ってきてから、いわゆる行監で調べました問題が起ったのか、また起った問題はどういう問題があるか、それを御説明を求めます。
  126. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの御質問は、行政監察委員会等でお取り上げになりました接収貴金属をめぐるいろいろの事案の中に、日本政府の機関等の問題としてどういうことがあったかという御趣旨でございますが、われわれが行政監察委員会の記録、また当時の関係者等から十分伺ったところによりましても、大体におきまして大きな問題はむしろ接収を受ける前、日本が敗戦という先ほどもお話しのありましたような歴史に例を見ない事態に直面をいたしまして、いかにして当時持っておりました貴金属等をむしろ占領軍の目から守るかというふうなことで、多少今日から見ますと、その最初考え方は、これは了とできるのかもしれませんが、やり方におきまして、相当ろうばい的な形においていろいろのことが行われておった、そういうことがいろいろの疑惑の対象になりまして、行政監察委員会におきまして、たとえば交易営団のダイヤモンド事件でございますとか、陸軍、海軍等におきます金、銀その他の問題でございますとかいうことが具体的にあがっておるのでございますが、それらは、私は大体これを通覧いたしますと、接収を受ける前の問題がむしろ主ではなかったか、こういうふうにまず第一に申し上げることができるかと思います。  接収を受けまして以後、アメリカの占領軍の管理下にございました間は、日本政府機関その他は、これはもとより近寄ることを許されなかったのであります。すべて先方の責任と権限のもとに管理されておったことは申し上げるまでもございません。問題は、むしろ物理的管理を通じ、これをいわゆる接収目録と現物との対比というふうなことによりまして、だんだんと日本側におきまして調査をいたすというふうな段階になりますと、またいろいろの点につきましてたとえば大蔵省のやり方がどうもルーズじゃないかというふうな御議論を行政監察委員会においてもしておられるのでございますが、しかしながらこれらの点につきましても、われわれといたしましては、それぞれの記録また現物との照合の結果、さような疑いはございましたが、少くともわれわれの関知する限りにおいては、さようなことは一切行われていないというふうに心得ておる次第でございます。
  127. 横山利秋

    横山委員 そうはおっしゃいますけれども、当時の行監の記録を繰り返して見ましても、あるいは私が昨年でありましたか、見た当委員会のその結果なりというものは、ずいぶん違っておるのであります。本件の状況なりあり方というものについては、さっぱり——相当最近改善された節があるが、そのこと自体は、当時の接収を受けた直後においては、記録を見ましてもですが、ずいぶんいいかげんな接収解除の受け取り方をしておるという節が見られるわけです。従って、この接収解除をされた直後といえども、私は問題があるような気がしてならぬ。  それから、あなたの言うように、接収をきれる以前に、敗戦の混乱の中に、アメリカにとられるよりはということが表面の理由で持っていった人間が非常に多い、これを一体政府はいかなる立場において追及されたか。それは敗戦の況乱だからしようがありませんでは、これは済みません。国会がこれを追及すると同時に、政府みずからこのような当時の実情について、いやしくも国家の役人がやったといたしましたならば、断固としてこれは追及しなければならぬが、一向にその音さたがないようでありますが、政府はいかなる態度を持って終戦直後接収されるまでの、あるいは接収当時における役人がやった行動について摘発をいたしましたか。
  128. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 これは相当古いことになるのでございますが、行政監察委員会においていろいろお取調べをいただき、また司直の手によって調べましたケースもございます。なおまた政府といたしましては、たとえば交易営団につきまして、その後御承知のように閉鎖機関といたしまして、これが清算の面につきまして、政府において監督をいたしておるのでございます。従いまして、それぞれの機関並びに政府部内におきまして、とかくのさような疑惑を受けました場合においては、みずからこれを調査するのみならず、ただいま申し上げたように、外部的な御調査もいただき、なおまた司直によってお調べをいただいたというふうに、一応われわれといたしましては、それらの疑惑というものはそれぞれの手を経て取調べが済んでおるもの、かように考えております。
  129. 横山利秋

    横山委員 そういう抽象的なことをおっしゃってもだめであります。私が冒頭に申しましたように、この法案をかりに通過させるに当っても、やはり国民のこれにまつわる疑惑というものは、一ぺんこれをさらけ出して、処分はかくして行われた、これ以上はどうしようもない、事の経緯はこういうことであるということを、国会を通じ、あるいはその他の方法を通じて国民に解明をして、そしてさてというならばいざ知らず——それは、本件については非常に重要なことだ。野党である私どもとしての任務も、やはりそこに一つの焦点が注がれる。従って今私が質問をいたしました点については、この際明らかに、どこそこの役人がこういう問題で取り調べられて、こういう処分を受けたのなら受けた。あるいはこの種の問題については、かくなっておるということを、問題がありました点の全部を、ここで説明をされる義務と責任があなたにはあると私は思うのであります。
  130. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私どもといたしましては、接収を、先ほど申し上げましたように、占領軍が独自の責任と権限においてやっておる。これにつきまして、その後講和発効とともに、一切の処理権限を日本側にゆだねられた。この処理権限をゆだねる際のメモランダムの中に、正当なる所有者に対し返遷及び補償の計画を立てることができる。なお、そのために必要なる調査を行うことができる、インヴェスティゲートという言葉を使っておりますが、さようなことによりまして、初めて日本側にそれをいたすことが許されたのでございます。そこでさっそくこの現物といわゆる接収目録との突き合せをいたしたわけであります。それを一番大きな根本と心得まして、その突き合せに相当の力を注ぎ、これによりまして、現物と接収目録との対比を行いまして、大体においてこれを明確に御説明のできるようにするということを、一番の大事な点と心得てやって参りました。  次に、個々の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、それぞれの手によって調べたのでありますが、では、どういう事柄があったかと申しますと、たとえば恤兵品として貴石類を交易営団等から一応接収をいたしたものを、占領軍は返還をして参っておるのでありま、が、これを交易営団に返還をするような手続を進めておりましたところ、これは不当であるということで、さっそくその返還を取りやめまして、目下保管貴金属等の中に入れまして、他の接収貴金属等と同じく保管をしておる。こういうことは、まさに批判にこたえた是正策と心得ておるような次第であります。なお、たとえばこれは接収前の問題でございますが、軍人の一部の方が司直の手によって調べられましたが、これは証拠不十分というようなことで起訴にまで至っておりませんが、それらの点につきましては、行政監察委員会のお取調べの中に明らかに出ておる事柄でございます。
  131. 横山利秋

    横山委員 その恤兵品事件なるものも、一ぺんやって取り上げたということでありますが、私のお伺いしている点は、どういうケースがあったかということ、これらによって不正不法なことをやった役人が、いかに処分をされたか、処分の事実はあるかないかということであります。
  132. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 この接収貴金属に関連をいたしまして、不正な行為をいたして、ために処分をされた者というものは、私は存じておりません。
  133. 横山利秋

    横山委員 そういうことでは私はいかぬのではないかと思う。第一、その不正をやったことがあったか、なかったかという調査宿、一体なさったことがあるだろうか。今あなたのお話を聞きますと、まず、その対照がおもな仕事であったという事務的な面にのみ、あなたの方の仕事は集中しておって、政府としては、この問題を最終的に処理をするためには、国民の疑惑を一掃することが何といっても先決問題である、ここに思いがいかなかったならば、これは非常に遺憾なやり方である。同時に政治的判断というものが欠如しておったと思わざるを得ない。私は、この際この前提要件として、何としてでもいろいろ行政監察委員会なり新聞なり、方々で議論になりました諸点について、やはりあなたの方がみずから、この点についてはこういう結果になった、この点についてはこういう結果になったということを、少し時間がかかってもいいから明白にされることが必要だと思う。もしもあなたの方で明白にされなければ、私の方から聞いてもいいですけれども、あなたの方が、事務的に時間の節約上おっしゃれば、それで済むのでありますから、事こまかに行監で議論があった諸点についての経緯を、三十分くらいおしゃべりになったらどうであろうか、こう思うわけであります。
  134. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 行政監察特別委員会の御調査の結末につきましては、私も熟読玩味をいたしておりまして、個々の事案につきまして、それぞれ承知をいたしております。ことに行政監察委員会昭和二十八年でございますかにおまとめになりました本会議に対する報告につきましても、われわれは十分承知をいたしております。この事案の中に、いろいろと疑わしいというふうなことでおあげになっておりますが、これらの点につきましては、従いまして行政監察委員会でそれぞれ指摘をされましたことについて、その後において、当時の責任者が、たとえば先ほど申し上げたような恤兵品の解除については、これを是正するという措置を講ずることによりまして、行政監察委員会のお取り調べにこたえておる、かように考えております。  そこで重ねての御質問でございますが、接収を解除といいますか、接収貴金属の管理の権限を日本側にゆだねられまして以来、不正行為をいたした者は私はないと確信をいたしております。従ってその不正行為に基く処罰ということはなかった、かように心得えておる次第であります。
  135. 横山利秋

    横山委員 あくまでそういうことをおっしやるならば、私どもとしては、行監当時から出ておりますもろもろの問題を全部聞かなければならぬのですが、それでよければ聞きます。またあなたが不正の事実は断じてない、こうおっしゃるなら、これは非常に重要な問題でありますから、行監の委員諸君に当時の経緯質問をしてもらわなければならぬと思います。そういうことではなくて、やはり問題になった諸点は、この際明らかにして、そうして政府のとった措置をこれまた明らかにして、その人間はどういうふうになったかという点を明らかになさる必要がある。私は善意で言っているのですよ。もし、それがきょうどうしても時間がかかるというなら、あしたの朝までに印刷をしてきてもらって、そうしてこの経緯を明らかにされる、これは与党の皆さんにもやはり考えてもらいたいと思う。与党の皆さんは、この法案を通したいとおっしゃっておられる、私どもは実は賛成ができぬのです。できぬけれども、かりにこの審議をする前提要件としても、今日までのもろもろの経緯については、この際ピリオッドを打って、そうして理非曲直を明らかにしなければ、これはお互いに与党も野党も国民の疑惑を一掃するわけにはいかぬと思うのです。善意で言っているのでありますから、あなたも善意でこれを理解して、私はあなたが隠しだてをしておるとは必ずしも思わぬけれども、やはりさらけ出すことは全部さらけ出す必要があろうかと思うわけです。いかがです。
  136. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 行政監察委員会におきまして問題になりました事柄の多くの部分が、先ほど申し上げましたように、接収を受ける前の混乱した状態のもとに行われた事柄であるということをお答え申したわけでありますが、だんだん大蔵省が保管の責めを負うようになって以来のことにつきましてお話が進んでおるのでありますが、私のお答え申し上げたのは、少くとも大蔵省が管理の責任を負うようになりまして以来のことにつきましては、不正はないということを申し上げたわけであります。しかしながら行政監察委員会では、大蔵省の管理の状況についても、いろいろ御疑問を投げかけておられることは事実であります。そこでそれらの点につきましては、御承知のように、最初はこれは理財局、それから管財局においてその事務を扱うことに相なったのでございますが、行政監察委員会でいろいろ御議論のあったような点につきましては、先ほども横山委員御自身がおっしゃられましたように、管理の体制につきましてできる限り改善を加えまして、疑惑を一掃するように努めて参ったことは事実であります。なおそれでもいろいろ世間からは疑惑を持たれたようでございます。しかしながら、私は少くもこれは大蔵省の管理に属しまして以来、先ほどお話しのあったマレー大佐のような事件というものは、一つもないという意味におきまして、不正はないということを申し上げたわけであります。ただ、たとえばダイヤの鑑定につきまして、占領軍がやった鑑定人と同じような者をまた使ったのはどうであろうかというような点についての御指摘でありますが、これはやはり実際問題といたしまして、ダイヤのような非常に専門的な知識を要するようなものの鑑定ということは、なかなか日本では、そうほかの者をもって充てるということもできないというような事情から、やはりそういうことをやっておったようでございます。これらの点につきましては、しかしながらわれわれとしましては、今回この法律を御制定願いまして、せっかく返還あるいは処理ということにまで進みますれば、この行政監察委員会でお取り上げになりましたようないろいろの御意見というものは、十分心にくみまして、一そうその取扱いについて世間一般の信頼を回復するようなやり方をやっていかなければならぬというふうに心得ております。さような点につきましては、今後も一そう配慮をいたしたいと思います。   〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  137. 横山利秋

    横山委員 どうもやはり抽象的でいかぬと私は思うのです。あなたのおっしゃるのは、管財局へ移ってからとおっしゃる、あなたは管財局長でありますから、そうおっしゃるのは無理もないだろうと思うのですけれども、私は政府密相手にして今質問脅しているのでありますから、あなたが管財局長としての立場でしか答弁ができないというなら、やはりこれはどこへ行ったか知りませんけれども、政務次官なり大臣に来てもらって、その間の経緯を明らかにしてもらわなければなりません。誤解をしておられるようでありますから言いますけれども、私が質問をしております焦点は三つあるのです。一つは、占領軍が接収をいたします以前ないしはその前後に、政府の役人なりあるいは関係者が悪いことをした。第二番目は、占領軍が接収をして日本銀行なり何なりに保管をしておった当時に起きた問題。それから第三番目は、返還がされてから今日に至るまでに起った諸問題。この諸問題で今日議論になっております点について、それぞれの事件の経緯を明らかにされ、そうしてその人々に対してどういう措置が行われたかということを明らかにすることが、この法案の審議に当っての前提要件になる。それは国民の疑惑を解く一番大事なことである、こう言っておるのです。それがうやむやにされたままにこの法案通りますならば、惑いことをした人間はそれで済む、どこかで今ごろせせら笑って、ああおれはいいことをした、得をしたということになっておる。これは重ねて伺いますが、そういうことをなさるお気持がありますか、ありませんか、それともそういうことはとうてい私には返事ができません、こうおっしゃるつもりですか、それだけ御返事下さい。
  138. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま三つの段階にお分けになりましたので、御質問は、これはむろんわれわれとしてもそのように考えます。そこで先ほど来いわゆるおもなる事案というものには触れたつもりでございます。すなわち占領軍の接収以前の問題といたしましては、先ほど申し上げた交易営団の問題、あるいは陸軍、海軍の問題、これらにつきましては、行政監察委員会で非常なお取調べを受けまして、そうしてそれぞれの関係者が証人として呼ばれましてその経緯は御承知のように明らかでございます。これについて処罰を受けた者がありやいなやという点につきましては、先ほど申し上げましたように、軍人の一部が司直の手をわずらわしたのでございますが、しかし、これはやはり証拠不十分というようなことで不起訴になったような事案もあります。大体そういうことでおもな問題に触れたつもりでございます。なお占領下における問題としての代表的なものは、マレー大佐の事件でございまして、これは申し上げましたように、十年、これが後に五年となったようでございますが、処罰を受けておる。また現品は返還されたものというふうに聞いておるということも申し上げたわけでございます。返還されまして以来と申しますか、日本政府に管理権が移りまして以来の問題につきましては、とかくその間行政監察委員会におきまして、大蔵省のやり方について、いろいろ御疑問の点もあったようでございますが、私どもといたしましては、日本政府責任において管理を始めまして以来は、できる限り——もとよりいろいろの事情でなかなか十分参らなかった、ちょうど国有財産の管理がなかなかうまく参らなかったようなふうで、御信用を願えなかったようなこともございましたが、しかしながら、少くとも私どもとしましては、記録をとり、またたとえば金庫に立ち入るためには、一切その日その日の日記をつけましてどういう者がどういう資格において立ち入ったかということを明らかにする等によりまして、大蔵省の管理責任というものは、一応疑惑はございましたが、全うされておると、こういうふうに考えておるのであります。
  139. 横山利秋

    横山委員 アメリカ軍人であるマレ大佐が処分された。処分されたのはマレー大佐一人である。自余のいろいろな問題については、いろいろなことがあってけれども、処分された者は一人もない、こういうような御返事のようであります。そういうことでは私はいかぬと思う。これは、政府が自分のところの内部における諸問題について隠蔽これ努めたというふうな感じがするわけです。まあいろいろな問題がありますけれども、一つ皆さん、どうも眠けざましがほしいように見受けますから、天皇家のダイヤ事件について御質問いたします。新聞に伝えられましたところによりますと、天皇家から供出された王冠の行方不明事件とは、昭和十九年九月、当時の白根宮内次官から軍需省の竹内次官に皇太后陛下の御手許品であった女官用の英国製王冠と皇后陛下の御手許品であった御木本製の首飾りなど、数々の貴金属類が供出された。  しかし、そのうち五箇の大粒ダイヤは工業用に使うのに忍びないので、最後のときに使うということにして宮内省に預けておいたが、いつの間にかその五箇のダイヤは宮内省の金庫から姿を消していたのである。  行監委の証人に立った宮内庁次長宇佐美毅氏、現宮内庁長官は、「金庫に入れておいたことは間違いないが、昭和二十二年、皇室財産の調査が行われたとき、紛失していることが判ったので、あらゆる方面を探してみたが、遂に見当らず、又、軍需省からの預託の書類も表類だけで中味がなくなっていた。当時金庫の鍵を預かっていた小林某という宮内属が死亡しているので、どうも真相が判らない。」  と述べている。しかし、昭和二十七年の夏、大阪市心斎橋の仲庭時計店に菊花御紋章入りのケースに廿一カラットの大粒ダイヤが三百廿万円で売りに出た事実があることをみても、それらが誰かの手によって何処かに持ち去られていったことは間違いのないところであろう。ダイヤをめぐるエピソードはこの他にもたくさんある。どれもこれもルーズだった当時の状況を物語るはかりだ。大蔵省管財局特殊財産課のある事務官」特に名を秘す、「の話では、極端にいえば、交易営団の集めたものはほとんど紛失してしまったのではなかろうか、といっている。」以下いろいろ続くのでありますが、こういう問題が新聞に書かれ、雑誌に載り、そうして今あなたは、政府部内において不正不当の事実なし、こういうようなことをおっしゃられるのは、これはいかがかと思うのですよ。私は、あなた自身に責任があることでもなかろうかと思うのだけれども、過去において起ったさまざまなケースについては、ここにはっきり理非曲直を明らかにし、死んだ者はしょうがないとしても、その当時これのそばにおった人間を続々呼んで、そうしてはっきりすべきものははっきりする、さっぱりすべきものはさっぱりして、さてこの法案の審議にかかるということが、何としても最大の要件であると思う。だから、先ほどからしちくどく言うておるのですけれども、あなたが、日本政府の役人その他関係者は不正不当の事実なしと強弁されるのは、これを世間は一人としたって承認する者はない、理解する者はないと、こう言っておるのです。
  140. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま御引用になりましたのは新聞記事のようでありますが、私どもは、今お述べになりました新聞記事の中の一部を行政監察委員会で御議論になった、そのことは承知しております。要するにこれは皇室におかれまして、皇室用のものでありましたところのダイヤモンドを軍需のためにお下げ渡しになったことに関連いたしましに問題であります。従って、まず第一に明らかにいたしたいことは、これはやはり接収を受ける前の問題であったということが第一であります。かようなことで、皇室用のダイヤモンドがある程度軍需省等にお下げ渡しになったのでありますが、そういうもののあるものが、今横山委員御自身がお述べのように、工具用としてお国のお役に立ったところがその他のものは、お役に立たずにあった、それが結局行方不明になったのではないかというふうなことで、この行政監察委員会でお取調べになったわけであります。私は、これらのもののうち、お役に立ったものもあり、また軍需劣等からそれぞれのルートによって接収されたものもあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、これは接収前の問題であったということをまず第一に申し上げておかなければなりません。接収を受けましてからさようなことがあっにのではございません。  それから第二でございますが、私どもといたしましては、しかしながら混乱のときでありましても、それぞれこれは宮内庁その他におきまして、むろん責任のあるものは究明されるべきであったし、また現に行政監察委員会はさような観点からいろいろ御尋問になったものと心得ております。従って、そこにおいて当然責任のあるものであるなれば、これは責任を追及せられてしかるべきものであったと考えております。  それから第三といたしましては、国会の御追及のみならず、もしこれが刑事事犯に相当するものならば、当然司直の発動を見たものと考えております。このように二重三重の、一つ日本の混乱した事態のもとにおきましても、そういう犯罪があったとするならば、司直はこれを発動したであろう、また国会は厳として行政監察委員会において責任を追及されたのでございますから、とるべき責任があったならばとられておったであろう、かように考えます。  以上の御質問につきましては、新聞の報道の後半につきましては、相当興味本位の記事があろうかと存じます。大蔵省管財局外国財産課某事務官というのは、私は全然承知をいたしておりませんが、具体的にお述べ密いただければ、これは私の管下の問題でございますから、さっそく取調べをいたしたいと思います。
  141. 横山利秋

    横山委員 このような問題は、全く枚挙にいとまがないのです。あなたは今、大蔵省特殊財産課の某事務官の名前を言え、もし以前にこれが事実であったならば、警察がつかまえたであろうし、また行政監察委員会がやったであろう、それがやらなかったということは、これは白だ、そういうお考えのように思われるわけでございます。しかし、それはあなたにはえらい間違ががあると思うのであります。国家の役人として仕事をしておる限りにおいては、二つの問題があります。一つは監督者、上司としてのなすべきことと、それから警察なり裁判所がなすべきことと二つある。裁判所がやるのだからわしの方はやらぬでもいいという議論は、これはいかがなものでありましょうか。非常に総明な正示さんとしては、どうも的はずれの答弁だと思う。今この接収貴金属の問題を政治的に国民に理解を与えるためには、私はくどく言っておるようでありますけれども、この疑惑を一掃すべき措置というものはどうしても必要なんだ、これなくしてこの法案を実行し、これなくしてこの接収貴金属を返すという点については、どうしても国民の納得が得られないところである、こう言っておるのです。だから、あなたが今こういうこともありました、ああいうこともありましたと言うて事の経緯を明らかにし、しかしこの人はもう死にました、この人はこのままになっています、これはまだ追及ができませんでした、けれどもかくかくの事情において、接収貴金属については返還をせざるを得ないと言うならば、これはまだ話は違うのです。けれども今までのことは一切白です、大蔵省政府の問題に関する限り疑惑は一切ありませんと言うならば、断じて私はこの法案を通すわけには参らぬ。これは国民の理解と協力を求め、あるいは不公平な人々に対して、私どもは国会議員として説明する方法がない。あなた自身も良心にとがめるところがあるはずだと思う。そういう点について、もう一度あなたの方針を聞かしていただきたい。
  142. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほどのお答えをもう一度繰り返すようになりますが、まず接収される前の問題につきましては、管財局長は何らの権限がないわけであります。接収せられました貴金属の処理、この接収をせられましたものが私どもの管理に移されまして以来、かくかくの不正があったということをおあげになっていただくならば、これは私は責任をもってお答えせざるを得ません。しかしながら、接収をせられる以前におきましていかに問題がございましょうとも、これはいかんともいたし方がないということだけをはっきりお答申し上げます。
  143. 横山利秋

    横山委員 だから私はしちくどく言ったのです。あなた管財局長として自己の局の所管にかかる問題しか答弁をしない、今言っておるのはそういうことではありませんか。接収される以前についてはあなたは知らぬ、こう言っておられるのでしょう。ところが国民の側からいえば、接収される以前も、接収されたマレー大佐事件も、それから解除されたあとも、国民としてはだれが見ても同じことである。この貴金属にからまる問題について事の経緯を明らかにしてもらいたいという国民の要望について、あなたは管財局長である限りにおいて、管財局には不正不当の事実はない、この以前の問題については私は知らぬ、こう言うならば、委員長にお願いいたしますが、接収以前のことについて責任をもって答弁をしていただける人を出してもらわなければ相なりません。
  144. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私は知らぬということを申し上げたのではございません。私どもの意図しておりますこの法案の扱う範囲は、接収をせられたダイヤその他の貴金属をこの法律の定めるところに従って接収をせられる以前の状態に戻したいという、きわめてつつましやかなことをお願いいたしておるのでございますということをまず申し上げたわけであります。それに関連をいたしまして、接収せられる前についてはいろいろ問題があったようだということになりますれば、これは接収をする以前の状態に戻しまして、なおいろいろ疑惑の点について、それぞれ政府の部内において責任を問われるということは、これは私は当然のことかと思いますが、今日私どものお願いをいたしておりまする法律案は、接収を受けました貴金属等を対象にいたしまして、それを接収をせられる以前の状態に戻すということにすぎないという意味において、お答えを申し上げたわけであります。
  145. 山本幸一

    山本委員長 管財局長、私が聞いていると、あなたの答弁もちょっと不親切なところがあると思う。要するにこれは、なるほどあなたの言われるように、法律案そのものは、今日銀の金庫に保管されておるものについての処理をしようという法律案であることは間違いない。ところが横山君のたびたび強くあなたにお尋ねしておることは、これは、国民感情として国民が見るときには、自分の手元から離れたときから今日まで一貫した問題と国民は考えておる。だから、あなたも、接収前のことは自分の権限ではないけれども、知らぬとは言わぬと答弁せられておるのだから、接収前の知っておることを答弁されれぱいい。そういうふうにもう一ぺん答弁して下さい。
  146. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほど申し上げましたように、おあげになりました宮内庁関係のダイヤの事件につきましては、行政監察委員会におきまして、当時宇佐美証人が証言をいたしております。これは私がここで繰り返すまでもなく、この当時金庫のかぎを預かっていた小林某というものが、これは官内属であったようでありますが、死亡しておりますということをお答えを申し上げております。なお行政監察委員会におきましては、昭和二十七年の七月ごろに行政委員会事務局の調査員が大阪市心斉橋筋の時計店におきまして、菊花御紋章入りのケースに入っておるダイヤにつきまして発見をした。これを委員会から大阪警視庁に調査方を依頼しておられる。大阪警視庁ではいわゆる、古物商取締りの権限で取り調べたけれども、すでに売り主は持ち去ってしまった後であったということを私どもは行政監察委員会の調査によって承知いたしておるのであります。おあげになった事案はそういうことで一応結末をつけておるのであります。そのほかに大蔵省になりまして以来、各事案につきまして、場合によりますれば、御質疑いただきますれば、私の承知いたしておりますことにつきましてはお答えをしたいと考えております。
  147. 横山利秋

    横山委員 今ちょっと聞えなかったのだけれども、大阪にあった二十一カラットのダイヤが三百二十万円で売りに出ておったことは事実であって、そのダイヤは、皇太后陛下のお手元品であった女官用の英国製宝冠、ないしは皇后陛下のお手元品であった御木本製の首飾り等に該当しておることをお認めになるわけですか。
  148. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 これは、私が今引用申し上げましたように、行政監察委員会の御調査の記録だけを御報告申し上げたのであります。
  149. 横山利秋

    横山委員 行政監察委員会の調査の結果としては、それは同じものであるということであったのですか。
  150. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私は、この点につきましては、行政監察委員会がどういうふうな判断をされたのか、この記録だけでははっきりいたさないかと思うのでありまして、ただ単に行政監察委員会に所属されたところの調査員が調査されまして、これを大阪警視庁にその後の報告を求められたところが、すでにその対象はもうなかったということだけを、この行政監察委員会の記録から承知をいたしたわけであります。
  151. 横山利秋

    横山委員 えらい他人ごとみたいにあなたはおっしゃるはれども、それを聞いて政府はどうしました。
  152. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 これは、大阪警視庁というものは、やはり当時いわゆる市警でございますが、広い意味の全体の警察の一環でございますから、これを結末をつけました大阪警視庁の措置というものが、国の一種の機関としての措置であるかように考えております。
  153. 横山利秋

    横山委員 それはおかしい。それは警視庁は、大阪の警察は市警である、だから市警が調べたと思われるとあなたはおっしゃっているようでありますが、この問題を政府として所管をしている管財局なり、あるいは当時の大蔵省は、所管をしておる行政問題としてはどうしたかと聞いているのです。
  154. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 そこで、また官僚的だと言っておしかりを受けるかしりませんが、大蔵省はダイヤモンドの所管省ではないのであります。大蔵省は、接収貴金属の管理省でございまして、管理をいたしておるのでございますから、接収貴金属がどこかへ散逸したということでございますれば、これは私どもが全責任をもってその全部を調査をいたし、真相を明らかにすべきでございますが、接収以外のダイヤがどこにあったかというふうな場合におきまして、大蔵省はこれに対しては何らの権限もなく、また調査のいたし方もないのであります。
  155. 横山利秋

    横山委員 まことに親切な、いんぎんな御答弁でございますけれども、やはり委員長、正示さんでは私の質問はだめです。接収以前の問題について御説明を願い——私も正直なことをいうと、別にこの問題について、天皇のダイヤがどうなったか知らぬのですよ。しかし国民の疑惑を代表して私が質問する。白であったか黒であったか質問するのですから、その当時の経緯をだれかが一つ説明してくれなければ、この疑惑は一掃しない。委員長にお願いするか、正示さんにお願いするかしらぬけれども、きょうは政府部内を代表していらっしゃるのですから、あなたが知らぬとおっしゃるならば、この問題について当時の経緯を知っていらっしやる人に——天皇のダイヤ問題については白であった、ないしは黒であった、調査いたしました、調査いたしません、そのままにしたということを明確にしてもらえる人をやはり出してもらわなければならぬ。  同様の問題でもう一つ、これもやはり正示さんのお御返事がないかどうかしらぬけれども、念のために聞いてみますが、名前を出しますが、これはしまいまで聞いて下さって、誤解のないようにしていただきたい。中央物資活用協会に例をとる。「ここは地方でのダイヤの買入れ事務をやっていたが、貴金属多数を埼玉県の自宅に疎開したといわれる当時の理事青木正氏は行監委での証言で初め、「米軍が進駐する二、三日前、当時大蔵省の久保外資局長から、日銀にある貴台属の疎開を頼まれ、日銀地下室からダイヤ、白金入り木箱(十六箱)と金塊(廿五個)を運んで徹夜で埼玉県北埼玉郡共和村の自宅の地下に埋めたが、約二週間後、大蔵省からの連絡で進駐軍が来訪、保管してあった貴金属を全部トラックで持ち去った。その貴金属はその後は再び日銀の地下室に入れたように聞いているが、しかし現在日銀にあるダイヤの全部が、疎開当時のものかどうか判らない」と証言したが、三日後、それを記憶違いだった、と前言をくつがえして、「国家のために金、銀、ダイヤなどを安全なところに運ぶためにやったのに、いろいろなことをいわれて頭が混乱し、幾分記憶違いの点もあった。日銀から運んだから政府のものだと考えていたが、ダイヤ等はまだ政府に引渡しがすんでいないので、中央物資活用協会のものだった。久保局長らに会った時に、戦後の混乱で紛失しないようにいわれたことがあるので、依頼されたと思い違いをしていた。また自宅へ運んだのは白金と金と地金だけで、ダイヤは入っていなかった筈だと、当時ダイヤの整理をやっていた協会の中田氏がいっている。自分は絶対にやましいことはない。家を焼くなり宅地を全部掘り返すなりして、徹底的に調べてほしい」と述べた。大蔵省側としては青木氏の最初発言に対して、そういうことを依頼した事実はないと言明したために、記憶違いという青木氏の前言訂正となったのだが、この証言の食い違いも、大きくたたって、当時、青木代議士の反対派からダイヤで選挙資金を作ったなどとカゲ口をたたかれたり、地元の埼玉四区ではダイヤモンド代議士という異名があるとかないとか、とにかく噂だけは大変なものだった。青木氏は自ら大蔵委員会に出向いて発言を求め、事実無根を主張した程である。この話など、あの混乱期に貴重な品物を簡単に持ら歩けたということだけ考えてみても、その、金属が非常に危険な状態におかれていたことを物語っているわけだ。」これは国会で議論になった問題です。この問題からいろいろなことが考えられるわけですが、大蔵省からの連絡で進駐軍が来訪して、保管してあった貴金属をトラックで持ち出した。このとき大蔵省はいかなる見解を持ち、いかなる立場において進駐軍に連絡して、青木代議士のうちから没収をしたか。また外務省の久保外資局長は、いかなる立場において青木氏に対してダイヤ、白金入り木箱十六箱、金塊二十五箱を埼玉県の青木氏の自宅の中に埋めるように依頼をしたか。あるいはあとになって、当局は依頼はしないと言っておるのだが、依頼をしないならば、なぜ青木代議士はうちへ運んだものか。あるいはこの記事の結論からいって非常に危険な状態に置かれておるというのだから、これらの経緯はどうなったのか。明らかに大蔵省が連絡をしたという事実になっておるのでありますが、この問題の経緯を明らかにしていただきたい。
  156. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまお述べになりました事案も、行政監察特別委員会におきまして取り上げておることは事実でございます。われわれは、その記録によりまして承知をいたしておるのでございますが、今お述べになりましたような、これは新聞の記事によってお述べになったと存じますが、青木理事につきましては、大蔵省といたしましては寸当時の十三国会における大蔵委員会におきまして同人が政府所有の金、白金、ダイヤモンドを大蔵省の要請によって持ち出したということで、これが問題になったということが第一。しかるにその後になりまして、民間団体の中央物資活用協会の中田清算人の願いによりまして、いろいろと調査を命じておったという点が第二点、それからこれに対しまして、二十七年度に接収報告というものを協会から出されておりますが、これらの点につきましても、われわれのところも資料によりまして一応取調べをいたしております。しかしながら今お述べになりましたように、青木証人がいわゆる記憶違いということで前言を取り消されたというふうなことから、いろいろ疑惑を持たれたようでございますが、行政監察特別委員会の調査といたしましては、これにつきましても、一応のけりをつけておられるというふうにわれわれは承知をいたしております。  なお本件も、これまた接収前の問題でございまして接収を受けましたのちの貴金属の管理につきましては、われわれとしては、先ほど申し上げましたように、何らの不正は行われていない、こういうふうに心得ております。
  157. 横山利秋

    横山委員 何か聞いていますと、接収が解除されてから世の中が変ってまるきり違った世の中であるような錯覚に私は陥るのでありますが、これは一つ正示さんも考え方を改めてもらわなければなり顧せん。これはあなたの今の気持が、管財局へ移ってからは不正不当の事実なしといって、その点だけははっきりしたいという気持はわからぬではないのですが、私はあなたの話はそうだと聞いても、かりにそうだとしても、接収以前の問題についてあなたがあまりにも事実を知らなさ過ぎる。それから私がこの記事を読めば、あなたは、行政監察委員会の記録を客観的に読むだけであって、しからば政府がこの問題についてどういう措置をとったかということについて、一言半句だもおっしゃろうとしてもいない。あまりにも客観的な記録読みのような状況であります。こういうことではいかぬというのであります。行監の当時のこれらの問題については、今ここであらためて当時の行監の記録をあなたが読むだけではだめだというのです。行監で一ぺんこれが問題になったならば、その後の経緯はどうなったか、政府自身としても、国民の疑惑を明らかにするために、こういう点を調査いたしまして、こういうことになりましたという結論をここで明らかにしなければだめではないか。もしもあなたが、それはもう全然見当がつきません、管財局長になってからのことについては責任は持ちます、あとのことは一切責任を持ちません、わかりません、行監の記録を読むだけです、こういう態度であるならば、これは、やはり一つこの際委員長にお願いをして、当時の経緯を明らかにされる人の答弁を私は求めたいと思います。委員長の善処を要望いたしておきます。
  158. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほどのお答えの第三として申し上げましたように、御承知のように、昭和二十七年に法律を作っていただきまして、接収貴金属等の数量等の報告に関する法律というものによりまして、私どもは接収報告をとっておるわけであります。これによりまして、中央物資活用協会からも報告をとっておるわけでございますが、この報告の示すところによりますと、二十年九月に占領軍の管理下に置かれておる、それから十一月五日に接収されたということがはっきりいたしております。なおこの接収を表明するものといたしましては、米軍担当官が貴金属等を輸送したことを証明するターリー・チケットを三つ出しております。これによりまして、接収されたものは、金が九百十三キロ六百二十五グラム、白金、が百十二キロ七百三十グラム、ダイヤが九千九百六十六カラット八十一、こういうことがはっきり私の手元には出ておるわけであります。
  159. 山本幸一

    山本委員長 横山さん、ただいま御要望の問題につきましては、私どもで明日理事会にも御相談して、できるだけ善処するような努力をします。それから、なお時間もごらんのように七時半ですが、この際この程度にとどめてもらって、明日午前十時半からあなたの質問を続行していただく、こういうことでいかがでしょうか。——御異議がなければ、そういうふうに御了承願うことといたしまして明日は午前十時半から開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後七時二十五分散会      ————◇—————