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春日委員 中小企業においても、二十八年、九年は不況であり、本
年度あたりは好況だというこの一律の概念が、私は根底において大きな誤まりをなしておると思うのです。これは、私が何も資料なく申し上げるのではありません。なるほど大
企業、大財閥においては、十カ年にわたるところの
資本家擁護一辺倒の政策で、
企業利潤は増大してきました。それは、一兆円内外の財政資金をもって大
企業のための政策が累積されてきたのだから、今日大
企業が繁栄することは当然のことだ。ところがこの大
企業の傾向を類推して、
中小企業も非常に景気がいいという、こういう判断は、いろいろな政策を立案されるに当ってきわめて大きな危険をもたらす心配があると思う。これは、私が
中小企業問題の総括質問のときに、東京手形交換所について調べた資料、これは本
会議で申し述べましたので御記憶があるかもしれませんけれども、
昭和三十年の十月、十一月、十二月の不渡り手形件数と、昨
年度昭和三十一年の十、十二、十二の三カ月の不渡り手形の件数をそれぞれ調べてみました。そういたしますと、大体において一割二、三分不渡り件数がふえておる、しかもその手形自体が少額の手形であるところから判断をして、これは
中小企業の発行手形であるということは、評論家もみなこれを結論づけておるところであります。そうしますと、手形の不渡りということは、
中小企業にとって自殺行為なんです。不渡り手形を出せば、自然その
企業の信用が失墜し、取引はすべて現金取引に局限される、取引が小さくなる、これはほとんど自殺行為で、あらゆる手を尽したあとで、最後に音をあげて出すのがこの手形の不渡りなのです。だとすれば、なるほど世をあげて神武景気だと言っておるけれども、こんなにも不渡り手形が、三十一年は三十年よりも多いのだから、これは、逆に神武景気は
中小企業には無
関係である、無
関係であるというよりも、さらにその窮迫の度が深められている実証である。こういうようなときに、収益率が多いから
中小企業が
資産再
評価をみずから望んでいるとかいうあなたの
考え方は、私は必ずしも正しい
理論ではないかと思う。もとより
中小企業者は、だれしも
資産の再
評価をしたいですよ、けれども、それに伴っていろいろな
負担が加わってくれば、税率が今回は三分の一に下ったということはわかるけども、そんな三分の一や三分の二の問題じゃない。これは、結局の話が、そういうことをすることによって
地方税が加わってくれば、そうしてその二%の
税金を短期間に納めなければならぬ、こういうところから、
現実にはやっていけないわけです。あなたのところに来る
中小企業者は、どうせひどく困った人は来ないので、割合に景気の恩典を受けておるような人たちが来るのであろうから、従ってあなたの判断というものは、片寄った資料によって言っておるというふうに私には想像されるのだが、どうか
一つ、そういう科学的資料を――もちろん私は、東京手形交換所だけについて言っておるので、これは大阪もよろしい、名古屋もよろしい、九州その他をずっと手形交換所において、
中小企業者が発行している手形の不渡り件数が減っておるかふえておるかを調べて、そのことを十分に御判断を願いたい。税務署が調べた
所得額というものはだめです、これは苛斂誅求というか、おどしをかけたり何かしためちゃくちゃなものだから、そんなものはだめです。だから、平常の何ら拘束を受けないところの経済上の現象として現われた
数字を把握して、これは流動する経済のあらゆる要素の錯綜する中において、手形が不渡りになってくるということ自体が、景気不景気の一番いいバロメーターなのです。私たち経済学者は、これを資料として大体とっておる。そういうわけでありますから、私が申し上げるのは、
中小企業というものは、今景気がいいと一律には断じがたい、中にいいものもあるけれども、大
部分はこういう工合で悪い傾向をたどっておる、こういう立場から、
資産再
評価の問題をよく検討願わなければならぬと思う。それで、私が特に非難したいことは、大
企業に対してはいろいろ特典を与えておるが、彼らは担税力があるのです、そうして収益率はうんと大きいのだ、こういう連中に対しては、いろいろの恩典を与えておる、たしか三十六
年度までだったかと記憶しておるが、延納の特典を与えた、かつ
地方税についても、特別の恩典を与えている、それと同様のことがどうして
中小企業にできません、まあ実子とまま子との
関係があるかもしれないけれども、池田さんがこういうことを
考えられたとするならば、これは重大問題だ。大
企業、大財閥のためには特典を施した、
中小企業者のためには、その与えてあるところの前例を今度は特に剥奪してしまう、これは、本来
両方子供だと思ったら、まま子いじめというか、全くひどい仕打というものは、世論の許すところではないと思う。どうかこの点を十分御検討を願わなければならぬと
考えます。なるほど今度は、六%が三分の一に減っておるからというけれども、
昭和二十五年から三十二年、三年までの時間的ずれを
考えて下さい、片方は、この特典を行使し得て十分減税が行われており、
資本の蓄積も十分に行われておる、片方は、いろいろな
意味合いで、本日までその特典を行使することができなかった、従って、それだけ今まで実際的な正味の利得ではないものを、自分の
資本を食いつぶして
税金を納めてきておる、この
現実は正視していただきたいと思うのです。だとすれば、この二%というものを全然減免して、さらに再
評価による特典をあわせて行使しても、私は
理論に何らの撞着がないと思う、いかがでありますか。