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1957-03-01 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月一日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       遠藤 三郎君    大平 正芳君       奥村又十郎君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    杉浦 武雄君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       古川 丈吉君    坊  秀男君       前田房之助君    有馬 輝武君       井上 良二君    石村 英雄君       春日 一幸君    神田 大作君       久保田鶴松君    田万 廣文君       竹谷源太郎君    横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      白石 正雄君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    市川  晃君         大蔵事務官         (管財局特殊清         算課長)    向井 正文君         大蔵事務官         (為替局総務課         長)      佐々木庸一君         大蔵事務官         (国税庁直税部         所得税課長)  亀徳 正之君         通商産業事務官         (通商局輸入         第一課長)   加藤 悌次君         日本専売公社塩         脳部塩業課長  守田 富吉君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 二月二十一日  委員萬田尚登辞任につき、その補欠として  松岡松平君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として中  村寅太君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中村寅太辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十一日  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四三号) 同月二十二日  トランプ類税法案内閣提出第四五号) 同月二十五日  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号) 同月二十六日  中小企業信用保険特別会計法の一部を改正する  法律案内閣提出第五五号)  関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五六号)  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第五七号) 同月二十八日  国有財産特殊整理資金特別会計法案内閣提出  第六〇号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国スウェーデンとの  間の条約実施に伴う所得税法特例等に関す  る法律案内閣提出第六一号) 同月二十一日  租税特別措置法第七条の十及び十一存置に関す  る請願池田清志紹介)(第一一〇一号)  永年継続積立貯金に対する相続税及び所得税の  免除に関する請願大野市郎紹介)(第一一  〇二号)  こと及び三弦に対する物品税軽減請願春日  一幸紹介)(第一一〇三号)  元満鉄社員の会社に対する債権の国家補償に関  する請願小林かなえ紹介)(第一一〇四  号)  同外一件(大坪保雄紹介)(第一一八四号)  噸税法廃止に関する請願大矢省三紹介)(  第一一七五号)  揮発油税率引上げ反対に関する請願  (石山權作君紹介)(第一一八〇号)  同(五島虎雄紹介)(第一一八一号)  同(門司亮紹介)(第一一八二号)  同(山口丈太郎紹介)(第一一八三号)  国家公務員等の旅費に関する法律の一部改正に  関する請願下川儀太郎紹介)(第一一八五  号) 同月二十三日  政府払下げ財産返還補償促進に関する請願(勝  間田清一紹介)(第一二一三号)  ビール税率引下げに関する請願小坂善太郎君  紹介)(第一二一四号)  揮発油税率引上げ反対に関する請願井岡大治  君紹介)(第一二一五号)  同(北山愛郎紹介)(第一二一六号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第一二一七号)  薪炭手当免税措置に関する請願田子一民君紹  介)(第一二八五号)  揮発油税及び軽油引取税引上げ反対に関する請  願(西村彰一紹介)(第一二八六号) 同月二十六日  こと及び三弦に対する物品税軽減請願(高橋  等君紹介)(第一三六四号)  揮発油税率引上げ反対に関する請願川村継義  君紹介)(第一四一五号)  同(中井徳次郎紹介)(第一四一六号) の審査を本委員会付託された。 二月二十二日  国庫補助金等に伴う予算執行適正化に関する  陳情書  (第二二六号)  揮発油税引上げ反対等に関する陳情書外一件  (第二二九号)  同外五件  (第二九九号)  生糸課税反対に関する陳情書  (第二三〇号)  同(第二六〇号)  導入預金等取締貸金業者対象陳情書  (第二三一号)  高金利に関する指導金利徹底に関する陳情書  (第二三二号)  電話業者電話金融における高金利取締に関す  る陳情書  (第二四三号)  石炭手当免税に関する陳情書  (第二四八号)  機械漉和紙物品税課税反対に関する陳情書  (第二五七号)  揮発油税率引上げ反対に関する陳情書外三件  (第二五八号)  税理士試験制度撤廃に関する陳情書  (第二五九号)  国民金融公庫資金わく拡大に関する陳情書  (第二七七号)  会計年度暦年制に関する陳情書  (第  二九八号) 同月二十五日  石炭手当免税に関する陳情書  (第三三一号)  地方自治体借用国有地無償払下げに関する陳  情書  (第三四六号)  揮発油税率引上げ反対に関する陳情書外四件  (第三六〇号)  果実かん詰物品税課税反対に関する陳情書  (第三六一号)  生糸課税反対に関する陳情書  (第三六二号)  燐寸に対する物品税撤廃に関する陳情書  (第三六三号)  災害等による滞納税金延滞利子免除に関する  陳情書  (第三六五号)  第三次資産再評価の期限延長に関する陳情書  (第三六六  号)  印紙税法改正反対に関する陳情書  (第三六  七号)  法人税率引下げに関する陳情書  (第三六八号)  免税点引上げ反対等に関する陳情書  (第三六九  号)  住友銀行等金融機関監督に関する陳情書  (第三七〇号)  信用保証協会に対する国家資金導入に関する陳  情書  (第四〇九号)  中小企業金融公庫審査に関する陳情書  (第四一〇号)  国民金融公庫融資額増額に関する陳情書  (第四一三号)  噸税法廃止に関する陳情書  (第四一五号)  阪神国際空港早期実現に関する陳情書  (第四二一号)  神戸税関定員増加に関する陳情書  (第四二六号)  公用に供する新民有地登録税免除に関する陳  情書  (第四四一号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  とん税法案内閣提出第一五号)  特別とん税法案内閣提出第一六号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一九号)  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四三号)  トランフ類税法案内閣提出第四五号)  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  中小企業信用保険特別会計法の一部を改正する  法律案内閣提出第五五号)  関税定率法の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第五七号)  国有財産特殊整理資金特別会計法案内閣提出  第六〇号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国スウェーデンとの  間の条約実施に伴う所得税法特例等に関す  る法律案内閣提出第六一号)  金融に関する件  外国為替に関する件  専売事業に関する件     ―――――――――――――
  2. 山本幸一

    山本委員長 それではこれより会議を開きます。  去る二月二十一日、当委員会審査付託されました内閣提出にかかわる交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案、同二十二日に付託されましたトランフ類税法案、同二十五日に付託となりました国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案、同二十六日に付託となりました中小企業信用保険特別会計法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び昨二十八日付託されました所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案国有財産特殊整理資金特別会計法案の合計八法律案一括議題として審査に入ります。  まず政府側より順次提案理由の説明を聴取いたします。足立政務次官
  3. 足立篤郎

    足立政府委員 ただいま議題となりました交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案外七法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  まず交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  政府におきましては、今般、特別とん譲与税に関する制度を創設することといたしまして、今国会に特別とん譲与税法案提案いたしているのでありますが、これに伴いまして、特別とん税収入及び特別とん譲与税譲与金に関する経理を、交付税及び譲与税配付金特別会計において行うため、交付税及び譲与税配付金特別会計法所要改正を加えようとするものであります。  また、地方財政健全化をはかるための措置といたしまして、地方交付税の総額を現行所得税法人税及び酒税収入額の百分の二十五から百分の二十六に引き上げることといたしまして、同じく今国会地方交付税法の一部を改正する法律案提案することとしているのでありますが、この改正に対応いたしまして、交付税及び譲与税配付金特別会計法におきまして、毎会計年度一般会計からこの会計に繰り入れるべき金額として、当該年度における所得税法人税及び酒税収入見込額の百分の二十五に相当する金額と定められているものにつきまして、その割合を百分の二十六に引き上げることとするものでございます。  次に、トランプ類税法案につきまして申し上げます。  この法案は、最近におけるトランプ類製造及び取引の実情に顧み、これに即応して現行法不備を改めるため、所要規定整備明確化するとともに、税率が特に過重と認められるマージャンの一部についてその調整を行い、もってトランプ類に対する課税の適正を期そうとするものであります。  以下改正内容につきましてその大要を申し上げます。  まず第一に、最近における税法立法例にならい、骨ぱい税法の全文を口語体に改めるとともに、この名称をトランプ類税法とすることといたしました。  第二に、現行骨ぱい税印紙納付制度は、課税の適正をはかる上に不備があると認められますので、これを他の間接税と同様に現金納付制度に改めるとともに、別にトランプ類税証紙制度を設け、移出の際、トランプ類の包装にこれを張りつけさせることにより納税が確実に行われるようにいたしました。  第三に、トランプ類製造者等材料等を支給して下請業者トランプ類製造を委託する等の場合には、その委託者等納税義務者とみなして、徴税合理化をはかるとともに、製造工程中のトランプ類もこれを完成トランプ類とみなすことにより、課税上の取締りを充実する措置を講ずることとしております。  第四に、象牙製及び牛骨製マージャン以外のマージャンにつきまして、たとえば合成樹脂製のものは、製造者販売価格に対する現行税負担が一・五倍をこえる高率となっており、これが租税回避の誘因となっていると認められますので、さきに申し上げました徴税適正化と相待ち、この際その税率現行の一組二千円から千円に引き下げることといたしております。  次に、国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  国民貯蓄組合は、地域、職域、同業者団体青少年団等を基盤とする民間の自主的貯蓄実践組織として発達してきたものでありますが、昭和十六年三月、政府は、これら国民貯蓄組合の結成によって貯蓄の奨励を行うことのきわめて重要かつ有効であることにかんがみ、国民貯蓄組合法を制定してこれを法制化し、一面その運営に適当な指導監督を加えるとともに、他方組合あっせんによる貯蓄について税制上の優遇措置をとる等、組合助成の道を開いてきたのであります。これによりまして国民貯蓄組合は非常な発展を示し、国民貯蓄増強に顕著な業績をおさめ、昭和三十一年三月末現在では、組合数約十万二千、組合員総数約三千二百万人、そのあっせんによる預貯金額は八千二百億円に達し、組合員数においては国民の三六・三%、預貯金額においては全金融機関預貯金額の一五・一%を占めている実情であります。  今回この法律改正しようとする要点は、さきに申し上げました税制上の優遇措置である所得税非課税限度を引き上げようとするものであります。すなわち国民貯蓄組合あっせんによる預貯金等貯蓄に対しましては、それがきわめて大衆的な貯蓄である点にかんがみまして、その利子所得について一定元本額に対するものを限り、所得税を課さないこととされておりますが、現在の限度額十万円は去る昭和二十七年四月に定められましたもので、その後の物価、国民所得貯蓄水準等の推移から見まして、今日では低きに過ぎると考えられるのであります。この点につきましては、さき臨時税制調査会からも答申がありましたので、この際、その限度額を二十万円に引き上げ、貯蓄増強の要請にこたえようとするものであります。  なお、このほか二、三形式的な整備を加えまして、この法律案提出するものであります。  次に、中小企業信用保険特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  政府は、中小企業に対する金融円滑化をはかるため、信用保証協会に対し、その保証能力を増大するために必要な原資となるべき資金及び保証債務の履行を円滑にするために必要な資金を貸し付けることとし、別途信用保証協会法の一部を改正する法律案提出して御審議を願っている次第であります。これに伴いまして、この信用保証協会に対する資金貸付事業に関する政府経理を、現行中小企業信用保険特別会計において行うこととするため、ここに中小企業信用保険特別会計法の一部を改正する法律案提出した次第であります。  次に、この法律案概要を申し上げますと、改正の第一点は、この会計保険勘定融資勘定に区分し、保険勘定においては、従来行なってきた中小企業信用保険事業に関する経理を、融資勘定においては信用保証協会に対する資金貸付事業に関する経理をそれぞれ行うこととすること、第二点は、信用保証協会に対する貸付金原資は、一般会計から予算の定めるところにより融資勘定に繰り入れることとすること、第三点は、融資勘定歳入は、貸付金回収金及び利子一般会計からの繰入金並びに附属雑収入とし、歳出は、貸付金事務取扱費及びその他の諸費とすることでありますが、以上のほかに、所要規定整備を行うことといたしております。  次に、関税定率法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  この法律案は、最近における貿易実情等にかんがみ、関税減免する品目を追加し、課税原料品による製品を輸出した場合等には関税を払い戻すこととし、その他所要規定整備を行うとともに、セラック等品目税率調整するため、関税定率法の一部を改正しようとするものであります。  以下、改正内容を簡単に御説明申し上げます。  まず、関税減免につきましては、貿易振興等の見地から、アセトン、ブタノール製造用のなつめやしの実、国際連合から寄贈された教育、宣伝用物品国際見本市等無償で提供されて消費される物品等をそれぞれ製造用原料品減免税無条件免税及び特定用途免税品目に追加するとともに、従来の製造用原料品免税品目から免税実績のない油製造用の落花生を削り、その他所要規定整備をすることとしております。  次に、関税の戻し税の制度につきましては、加工貿易振興に資するため、外貨原料不足等やむを得ない事由によって課税済み原料品保税工場における貨物の製造使用し、その製品を輸出した場合には、関税払い戻しができることとし、その他輸入された違約品に対する関税払い戻しを、従来の返送された場合のほか、返送にかえて保税地域内で廃棄された場合にもできることとしております。  次に、別表輸入税表につきましては、国産の保護のため、セラック黄麻製品、D・D・T、硫酸ニコチン等品目税率を引き上げるとともに、国産の困難な二酸化ゲルマニウムについては、電子工業育成のため、その税率を引き下げることとしております。  次に、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済事情等にかんがみ、昭和二十九年に制定されました関税定率法の一部を改正する法律の附則を改正し、本年三月三十一日で期限が切れる関税暫定的減免制度について、その期限をさらに一年間延長し、放射性元素等減免税品目に追加するとともに、鉄鋼の一部について関税減免することができることとしようとするものであります。  以下、改正内容を簡単に御説明申し上げます。  まず、従来暫定的に関税減免を認めている重要機械類学童給食用乾燥脱脂ミルク原子力研究用物品及び小麦、A重油、四エチル鉛航空機等別表甲号物品並びに原油、B・C重油カーボンブラック等別表乙号物品につきましては、諸般の事情を考慮して、なお一年間その減免期限を延長することとしております。  次に、関税免除を受けた重要機械類用途外使用制限期間は、従来においては輸入後五年でありましたが、これを一般特定用途免税の場合と同様に輸入後二年に改めるとともに、放射性元素及びその化合物をこれらの物品用途及び原子力産業の現況にかんがみ、別表甲号免税品目に追加し、また、皮革工業の進展に資するため、合成めし剤別表乙号軽減税率適用品目に追加することとしております。  次に、鉄鋼の一部につきましては、その需給状況及びこれがわが国経済に及ぼす影響等にかんがみ、その需給逼迫のため輸入の必要があり、かつその輸入価格国内主要生産者の生産した同等品卸売価格に比し割高な場合には、昭和三十五年三月三十一日までに輸入されるものに限り、政令で品目及び期間を指定して、その関税減免することができることとしております。  次に、国有財産特殊整理資金特別会計法案につきまして申し上げます。  政府におきましては、国の庁舎及びその敷地等の適正かつ効率的な使用をはかるため、国の庁舎等使用調整等に関する特別措置法案を本国会提案して御審議を願っているのでありますが、この法律案実施になりますと、同法の規定により、特定庁舎等使用効率化及び配置の適正化をはかるための特定庁舎等特殊整備計画が立てられることになっております。この計画実施されまする場合に、この計画に従って処分する特定庁舎等処分による収入金は、これを同じくこの計画によって取得いたします庁舎等取得に要する経費に充てることにいたしまして、もってこの計画の円滑かつ的確な実施を促進するため、国有財産特殊整理資金を設けますとともに、この資金に関する経理一般会計と区分して行うことが適当であると認められますので、特別会計を設置することといたしまして、この法律案提案いたしました次第であります。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、国有財産特殊整理資金は、特定庁舎等特殊整備計画実施により処分すべき特定庁舎等処分による収入金及びこの資金資金運用部へ預託いたしますことに伴う利子収入金をもってこれに充てることとし、同計画実施により取得すべき特定庁舎等取得のために必要な経費のうち、建物の建築、模様がえ等の工事代価、土地または建物等購入代価及びこれらの物件の買収に伴う移転料その他の補償費に充てるためこの資金使用するものとし、資金使用にあっては、予算の定めるところにより、一般会計歳入に繰り入れ、同会計歳出として経理することとしております。  第二に、この会計は、資金の受け入れをもってその歳入とし、資金の払い出しをもってその歳出として経理し、毎年度末における資金残額は、決算上の剰余として翌年度歳入に繰り入れることとするとともに、毎年度歳出予算支出残額は、翌年度に繰り越して使用することができることとしております。  第三に、その他この特別会計の設置及び運営等に関して必要な技術的事項規定いたしております。  最後に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スエーデンとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案につきまして、提案理由を説明いたします。  政府は、今回スエーデンとの間に、所得税及び法人税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約を締結し、その批准について承諾を求めるため、別途条約について御審議を願っているのでありますが、この条約規定されている事項のうち、特に法律規定を要すると認められるものについて所要立法措置を講ずるため、ここに本法律案提出した次第であります。  以下本法案大要について申し上げます。  まず第一に、利子所得等に対する所得税法特例を定めることとしております。すなわち、今回の条約によりますと、わが国及びスエーデン両国とも、国内恒久的施設を有しない非居住者に対して支払われる利子所得等につきましては、百分の十五をこえる税率課税をしてはならないこととなっておりますが、わが国所得税法では、これら利子所得等に対する税率は百分の二十となっておりますので、条約適用のある場合には、所得税税率を百分の十五に軽減することとしているのであります。なお、租税特別措置法等規定により、これらの利子所得等減免される場合には、これらの減免規定が優先的に適用されることとしております。  第二に、特許権等譲渡により生ずる所得に対する所得税法及び法人税法特例を定めることとしております。今回の条約によりますと、わが国及びスエーデン両国とも、国内恒久的施設を有しない非居住者特許権等譲渡による所得に対する租税は、収入金額の百分の十五をこえてはならないこととなっておりますが、わが国所得税法及び法人税法では、この種の所得につきましては一般所得と同様に、個人については累進税率により、法人については一般法人税率により課税することとなっております。従って条約適用のある場合で、これら所得に対するわが国税法による税負担収入金額の百分の十五をこえることとなるときは、その負担を収入金額の百分の十五に軽減することとしているのであります。  最後に、今回の条約実施に関して必要な手続は、条約の趣旨に従い、大蔵省令でこれを定めることとしているのであります。  以上が交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案外七法律案提案理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成を賜わらんことをお願いいたす次第であります。
  4. 山本幸一

    山本委員長 これにて提案理由の説明は終りました。これら八法律案のうち、主計局所管の三法律案に対する質疑は、後日に譲ることといたしまして、主税局及び銀行局所管の五法律案、及びさき提案理由の説明を聴取いたしました所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案、とん税法案、特別とん税法案及び印紙税法の一部を改正する法律案の五法律案との合計十法律案一括議題として質疑に入ります。  この際私からちょっとお願い申し上げたいのですが、きょうは予算委員会がただいま開会中でありまして、総会をやっております。そこで、午後一時過ぎから主として大蔵大臣に対する質問が行われる予定になっておりますので、従って大蔵大臣に対する質疑は、午後一時までに一応予定しておいていただきますよう御配慮をいただきたいと思います。  質疑を許します。石村英雄君。
  5. 石村英雄

    ○石村委員 所得税法その他についてのごく具体的な問題は、主税局長にお願いすることといたしまして、大蔵大臣が見えておりますから、先日横山君の代表質問に対する御答弁を中心にしてお尋ねしたいと思います。  まず第一点は、池田大蔵大臣は、法人擬制説について詳細にお答えになったのですが、どうも会議録を読んでみましても、真意が捕捉しにくいのです。大蔵大臣は、法人擬制説は理論的にはいいようである、ところが実際問題でそうもいかないというので、今度の改正をしたのだ、そこで、今法人実在説に帰るわけにはいかぬ、すぐそこに踏み切るわけにはいかない、やはり税制というものは、時代の流れによって徐々に変えていくのが、経済界に悪影響を与えないゆえんである、こう御答弁なさっていらっしやるのですが、大蔵大臣は、理論的には擬制説が正しいと思っておる、しかしすぐには踏み切れないが、いずれは実在説——理論的に擬制説が正しいということになれば、実在説は正しくないということになるのですが、その正しくない実在説にすぐにこそ踏み切ってはいかないが、徐々に実在説の方へ行く、そういう徐々に持っていくことが経済界に悪影響がない、こういう答弁にとれるのですが、どうも理論的に正しいのが擬制説で、正しくないのが実在説だとすると、正しくない実在説の方へ徐々に持っていくという御答弁は、どうも論理的に矛盾があるのじゃないか。気違いか何かでないと、正しくない方へ今度持っていこうというようなことは言わないはずで、普通の人間なら、一ぺんに正しい方に持っていかなくても、徐々に正しい方に持っていく、こういう答弁が出てくるのが当然だと思うのです。池田大蔵大臣は、反対に、理論的に正しくない実在説の方に徐々に持っていくという御答弁のようにとれて、まさか大蔵大臣が気違いだとは私は考えませんが、この答弁がどういう意味かはっきりしない。どうか、この点をはっきりと御説明願いたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 税法というものは、経済機構のあり方によりまして、いろいろ説があるのでございます。昔から法人擬制説が是なりや非なりやということは、学者間におきましても、実際家の間におきましても、非常に議論されておるのであります。法人擬制説につきましては、私は、理論的にはいい面も考えられると思いますが、実際的に、また負担の点から申しまして必ずしも理論ばかりに走るわけにはいかぬ、こういうことを申し上げたのでございます。どちらにも割り切りにくいというのが、今の状況であるのであります。
  7. 石村英雄

    ○石村委員 どうも言葉というものはいろいろ——しかし実際と離れた理論というものはあり得ないと思うのです。実際面を見て理論が組み立てられるのであって、架空な理論というものはあるはずがないのです。理論的に正しいとおっしゃるが、理屈は完全に擬制説通りにはいかないにしても、その方へ徐々に持っていくという答弁の方が、こういう言葉のやり方こそ理論的だと思います。理論的に正しい、こう擬制説をおっしゃれば、徐々にその方に持っていくということに、結論は当然生まれてくるはずだと思うのですが、大蔵大臣の今の御答弁はどうもはっきりしなくて、いよいよ正しいのか正しくないのかわからなくなってしまっている。そうすると、そういう言葉が論理的かどうかという争いはやめますが、大蔵大臣は、この言葉で見ますと、徐々に実在説に近い方へ持っていく、実在説そのものではないでしょうが、あいまいなところになってくるでしょうが、その方へ今後も進めていくというお考えでございますか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 法人税につきましても、非同族会社と同族会社がございます。同族会社の定義もまたいろいろございまするが、同族会社の方の分は擬制説が正しい、こういう考え方が強いのでございます。非同族につきましても、同族の割合等によりまして、ほんとうの非同族という分につきましては擬制説でなしに、実在説の方が正しいんじゃないかという見解もあるのであります。しかし、これは産業組織の状況によって違うのでありまして、先ほど申し上げたように、いろいろ擬制説、実在説があるのであります。沿革から申しましても、擬制説のようなことから始まりまして、そうしてかなり実在説にいっておったのであります。それがシャウプの勧告で、擬制説が非常に強くなりまして、相当税制において変化を見たのでございます。これは一がいに申されません。従いまして、今擬制説の建前をとっておる分を、負担の権衡から申しまして、ある程度実在説の方に向いていくのが、公平の理論から言っていいんじゃないか、こういう考えでおります。極端に実在説をやりますと、親子関係の会社等につきまして、配当が孫会社までいくと、ほとんど収入にならないというふうな場合もございまして、いわゆる持株会社につきまして、従来非常に議論があったのでございます。だから実在説につきましても、親、子、孫の法人会社の実在説と、個人と法人という実在説と、これはまた考え方がある程度違ってくると思います。従いまして、私は、会社の形態によっていろいろ考え方が変って参ると思いますが、今負担の問題を主にして考えますると、法人と個人との間におきましては、擬制説をだんだん薄らかしていく方が、負担の権衡上いいんではないかという考えで進んでおります。
  9. 石村英雄

    ○石村委員 法人にもいろいろ種類があって、お説のように、なかなかむずかしい問題だと思うのですが、だんだん擬制説でなしに、実在説に一般的には持っていきたい。その意味で、今度一千万円以上は一割というふうにお下げになったと思うのですが、そうなんですか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、やっぱり負担の権衡から見まして——擬制説をやめたというわけではございません。主として負担の均衡からああいうふうに変えたのでございます。しかし、その結果実在説に踏み切ったかと申しますと、必ずしもそこまではっきり言えない状況でございます。ただ、主として負担の公平ということからきております。
  11. 石村英雄

    ○石村委員 実在説と擬制説はなかなかむずかしいと思うのですが、今のような、一般には二割控除、そうして一千万円以上は一割控除、こういうやり方にしても、擬制説に幾らか寄っておることになると思うのです。その擬制説によってその問題を考えると、資産所得といわれる配当所得で、低額な配当所得ほど負担が大きい。こういうことは二割にしても起るように思うのです。この点は徐々に実在説的なものに持っていくにしても、現在においても擬制説のにおいがかなり強くあるとすれば、やはり依然として、この点も資産所得だから、どうでもいいというわけにいきませんが、その資産所得でも、低額な資産所得が割合に負担が大きい、こういう結果になるように思うんですが、いかがですか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 低額の配当所得の負担が重いとは考えておりません。一率に源泉で取っておるのでございまするが、これは、申告によりまして戻すことに相なっておるのでございます。
  13. 石村英雄

    ○石村委員 これは、擬制説を全然無視すれば別になるんですが、擬制説の考えを一つ取り入れて計算してみますと、たとえば配当百二十万円をもらっておる者、これは、法人のもとの所得まで含めると一応二百万円ということになると思うんですが、二百万円についての税額をはじき出し、そうして法人で四〇%としまして、八十万円納めておる、こういうことになると、その両方を対照しますと、百二十万円の配当所得をもらっておる者は、約七二%納め過ぎになる格好になる。四〇%の法人税を個人が実は負担しておるのだ。擬制説の考え方によって、そういう一つの立場をとった場合には、約七二%納め過ぎ、こういうことになるんです。次の段階で、六百万円くらいをやってみたんです。配当六百万円の場合、これは本来の所得は一千万円ということになるんですが、この人はどのくらいの納め過ぎになるかというと、約二〇%。さらに配当一億二千万円、こう大きく出してみますと、これは本来の所得が二億になりまして、この人の納め過ぎは八%。所得の大きいほど—これは今度の一千万円以上は一割という計算でやったんですが、配当の多いほど、擬制説を立場にして計算した場合の納め過ぎが少くなる、低いほどひどくよけい納め過ぎ、こういうことになって、理論的にふつり合い、低額所得ほどよけい税金を納めておる、こういうことになるんじゃないかと思うんですが、こうした面からも、擬制説というものは非常に無理なものだということになってくるんじゃないか、こう考えるんですが、いかがですか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまの計算は、よほど精査しないとお答えできませんが、擬制説がいいか悪いかという問題につきましては、先ほど来申し上げておる通りに、いろいろの点があるのであります。同族会社であるか、完全な非同族会社であるか等によりまして、よほど負担の点で変って参ります。今お話しの数字につきましては、後ほどこまかく計算してお答えすることにいたしましょう。
  15. 石村英雄

    ○石村委員 こまかな数字は別として、私はやはり税法を作られる場合には、こうした面も検討してみないと、税法が具体的にいいか悪いかわからない。ただ言葉だけ、文句だけ見ると、いかにも合理的にできておるようですが、税法ばかりは一々そろばんをはじいてみないと、いいのか悪いのか、とんでもない考え違いをするんですから、大蔵大臣もこの辺まで十分事務当局を督励せられて、そうして税法を検討していただきたいと思う。  そこで、今の問題にも関連するんですが、大蔵大臣は横山君の質問に対して、今度の税制改正におきまして五千万円以上の方々は相当の増税であります、こう言っていらっしゃるのですが、大蔵大臣は、五千万円以上が増税だという見地で、今度の税法を正しいもの、いいものだとお考えになって御提案になったのだと私は思うのです。私の計算が違うかしれませんが、私の計算では、決して五千万円の線から増税にはなっておりません。大蔵大臣が今度の税法を御提案になった判断の基礎が、私は狂っておるのじゃないかと思うのです。重大な誤まりだと思うのです。私の計算自体に間違いがあれば別ですが……。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 五千万円以上にいたしましても、いろいろ所得内容によって違っております。配当ばかりで七、八千万円の方々は相当の増税になります。あるいはまた配当がなくて、勤労所得その他の控除の少い所得で五千万円の人は、下の税率が下るから、減税の場合があります。一がいには申し上げられませんが、主として擬制説を前提としての話になりまして、それが配当を主とした所得でありますれば、御承知の通り下の方が安くなりましても、今までと違いまして一〇%で切るとか、あるいは五千万超は七〇の定率に相なっておりますので、擬制説を中心とした議論としての増減税ということになりますと、所得内容によって違いますが、配当を主とした場合におきましては、相当増税になると思います。日本では、配当を主とした高額所得者が多いのでございますが、一億円程度の配当を主とした納税者につきましては、かなりの増税に相なっております。
  17. 石村英雄

    ○石村委員 本会議での御答弁が、そういうように、中には五千万円以上で増額せられるものもありますという御答弁であったなら、私も別に取り上げて聞くわけじゃないのです。一般論として今度の税制改正においては五千万円以上の方々は云々、こうおっしゃっていらっしゃるから、これは税法自体を取り上げて論じていらっしゃる、こう判断せざるを得ないのです。いろいろ特殊な例が所得の中にはあるでしょう。その特殊なものを取り上げて、五千万円以上がと言ったんだというただいまの御答弁は、もう本会議の答弁とは違った答弁だと言わざるを得ないと思う。それは本会議で、配当をたくさんもらっている者は、今度は五千万円からは、千万円以上の控除を一割にしたのだから、今までよりも重くなります、こうおっしゃったというのであるならば、何も申し上げません。しかし本会議では、そんなことは一言もおっしゃっていらっしゃるわけじゃなくて、横山君の低額所得者に対する減税が少いのだという質問に対しての御答弁は、一般的に高額所得者の問題を御答弁になったのだと思うのです。そういうふうに所得の種類を一々分類して、こういう場合もある、ああいう場合もあるとやれば、そうしたことにもなると思うのですが、一般的に税法で言えば、五千万円以上なんというものは決して安くはならなくて 一千万円が、手取りの増加率を見ると、所得税だけでは三七%からふえるわけです。この五千万円という意味において、あるいは今度の地方税を五%上げるから、それで高くなるのだ、こういう御趣旨かと私は思って、地方税を入れて計算してみると、地方税を含めると、むしろ五五・九%ほど手取りは反対に大きくふえてくるわけなんです。これではやはり横山君の言うように、高額所得者に対する減税を大きくしたという結論は、当然生まれてくると思うのです。大蔵大臣の前提がかなり狂っておるのじゃないか。減税率は、なるほど一千万円というものは二八%程度に下りますが、現実の問題は、減税率ではなくて、お互いの階級のお金が幾らふえるかという問題だと思う。その手取りの増加率を見ると、今申しましたように、一千万円のものは地方税を含めれば五五・九%、約五六%も手取りがふえることになるわけで、結果において高額所得者にうんと大きく減税をして、低額所得者は、これは御説のように税金を納めていないんだから、これをゼロと見たって手取りは幾らもふえません。こういうことになるわけなんですが、しかし、一千万円とかいうような高額所得者の手取りをこれほどふやさなければならないということはないと思う。これは技術的に可能なことで、結局、大蔵大臣が今度の税法をお出しになった前提に狂いがあるんじゃないか。まさかこんなところへ、そう五割以上も手取りをふやしてやろうという考え方ではなくて、判断に狂いがあったんじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 私の、五千万円以上の人はおおむね増税になりますということは、実際もう五千万円以上の所得者になりますと、おおむね配当ばかりなんです。俸給で五千万円をとっておる人は、私の聞くところではほとんどございません。大体、一千万円以上の所得者の所得内容を見ますと、七割程度が配当に相なっておるのであります。実際に今納税者の立場では、一億円近い人がございますが、これはほとんど配当でございます。五千万円ぐらいの人も、七、八割は配当。三千万円ぐらいの人でも、配当が相当ございます。従いまして、一千万円以上の資産、勤労所得の割合を見ますと、配当が七割平均に相なっておるようであります。配当が七割とした場合において、今回の税法でやりますと、この調べで見ますと、一千万円のところでは、今の一〇%というのがあまり影響いたしませんから、二五%の軽減になりますが、三千万円の人で、配当が今の実績から申しまして七割ある場合においては、七・六%の増税、それから五千万円の人は一割八分二厘の増税、七千万円の人は二割五分四厘の増税ということになりまして、私の頭は、大体資産所得者は配当所得が多い、そして一割で切るということになれば、おおむね五千万円以上の人は増税になる、こういうことを申し上げたのでございます。一千万円でほとんど配当ということになりますと、かなりの増税に相なることになっておるのであります。
  19. 石村英雄

    ○石村委員 そういう御答弁なら、本会議でそのようにおっしゃっていただかなければ——委員会よりも本会議の方が大事な答弁だと思う。代表質問に対する答弁なんですから。それで、そのようなことを言わずに、ただ一般的に、今度の税制改正で五千万円以上の方々は相当の増税であります、こういう一般論をなさったのでは、これは国民に対する答弁として、きわめて不適当だと思う。もし本会議でもただいまのような御答弁だったら、国民の受け取る感じは、非常に違ってくると思うのです。だから、まあ本会議で取り消すというのはどうかしりませんが、この場で、本会議での答弁は、言葉が非常に不十分だったぐらいなことはおっしゃっていいんじゃないかと思います。この委員会を通じて、国民に、本会議の答弁を補足するぐらいなことはなさってもいいんじゃないか。
  20. 横山利秋

    ○横山委員 関連して。今石村委員から二点にわたっての、私の本会議の質問に対する答弁についての質問に対して、あなたのお話は、やはり二点とも本会議における言葉ときょうおっしゃった言葉とは違いがある。たとえば擬制説の問題にしても、今あなたがおっしゃったような言い方であるならば、いい悪いは別として、筋が通ると私は思う。けれども、本会議では、まず第一に、私は擬制説を正しいと思うというふうに言われて、その後、正しからざる実在説の方向へこれから私としては徐々に行こうと思う、こういうことは非常に問題をはらんでおるわけです。私は、あの場合においては、再質問がないという立場においてやったのでありますから、再質問はしませんでしたけれども、これは非常に論理的に矛盾がある。あなたは今、あちらから言い、こちらから言いしながら、確かにそれを修正された、こういうふうな気がするわけです。正しからざる実在説の方向へこれから行くということは、もう一ぺん筋を通して、あなたは本会議において修正をされる必要がある。  第二番目の、一千万円以上は増税だということ、すなわち、かりに配当という事実があなたの言う七割であっても、私の質問というものは、また本会議ですべての人が聞いておる感じというものは、配当なかりし問題として取り上げておるわけです。それが証拠に、あなた方はきょうこの表を出しておられる。この所得税改正に関する主要資料も、配当については何らの論述もなく、私の質問した立場において出しているではありませんか。これが一般論です。その一般論に対して、あなたが一般論でない立場において反駁をし、一千万円以上は増税になるということは明らかに間違いであります。あなたの答弁の間違いであるか、あるいはそうでなくしてごまかしであるか、どっちかということにならざるを得ないと私は思う。答弁が誠実であるあなたにとっては、これは誤謬であろうと確信をいたします。誤謬であれば、本会議において御訂正をなさることが正しいのではないかと私は思うのです。率直にお答えを願いたい。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 法人の擬制説あるいは実在説につきまして議論のあることは、先ほど来申し上げた通りでございます。また租税の原則につきましても、公平の理論とか、徴収便宜の原則とか、あるいは経済政策を加味する原則とか、いろいろな原則がございます。しかし、そこにおきましても、公平の原則にばかりとらわれるわけにはいかない。公平の原則は守らなければいかぬ。しかし、その他の原則につきまして調和をするということは、租税政策上あり得ることです。ですから、擬制説ということにつきましては、理論的にはそれが正しい場合もありますが、実際的には沿わないから擬制説を貫くわけにいきません。実在説を加味していこうということは、私の信条である。この点につきましては、私は今でもそう考えております。  第二段の、五千万円以上の者は増税になりますというときには、私は、実際論として言っておるのであります。俸給だけというようなことはないのでありますから、全般論として五千万円以上の人は相当配当が多いのです。その場合に、実際の納税者を見ましてもそうなんでございますから、そこで実際論として、五千万円以上の人がどうなるかという場合に、極端な例をとらずに、今の五千万円以上の人はどうなるかということを経験率的に申し上げまして、実際もまた見まして、五千万円以上の人は配当か相当多いのでありますから増税になる、こう私が言うのはほんとうじゃないかと思います。本会議の議論と委員会の議論とは、別に差等はございません。どちらも重要でございます。しかし、私は、今の納税者の実情を知っておりますがゆえに、五千万円以上の人は配当が大部分を占めておるから、実際において増税になる、こう申し上げたのでございまして、個々の委員会でこまかい問題になってきますと、場合によっては増税にならぬ場合もありましょうが、今の五千万円以上の大納税者をずっととってみましておおむね増税になる、こう私は考えておるものでありますから、五千万円以上の人はおおむね増税になると答えておるのであります。
  22. 横山利秋

    ○横山委員 あなた一人はそういう立場ですでに答弁されておる。ところが、今日まで当委員会提出をされる諸資料並びに事務当局の答弁は、この資料なりほかの資料が証明するように、すべて配当所得等を含まない立場においてなされておるのです。あなたの言う通りであるとするならば、これらの資料は、一般論として成立しない。これはすべて架空の資料が出ておるということになるのであります。こういう資料を出し、こういう答弁を今日までしておいて、あなた一人が本会議でこういう資料の基礎に立たない答弁をされておる。あなたに言うならば、それが実情だ、こうおっしゃるかもしれませんけれども、あなた一人がそういう答弁をしておられる。今までわが大蔵委員会なり他の委員会における諸資料と答弁は、あなたと全然立場が違うような資料と答弁であるのですが、それでよろしいと思いますか。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 私はこういう資料を昨夜見たので、内容はまだ見ておりませんが、私は大蔵大臣として、自分の気持を率直に申し上げておるのであります。資料にはいろいろな見方での資料があると思います。俸給所得の場合はどうだとか、あるいは配当所得の場合はどうだとか、また実際の納税者の実情からいったらどうだとか、いろいろな資料の作り方があると思うのでありますが、今問題になっております五千万円以上の方々が実際にどうなるかというのを見ますと、今ここにあります主税局の調べにもありますように、先ほど申し上げたようなことでありまして、私の言うことと変っていないのであります。
  24. 横山利秋

    ○横山委員 初めて見られたかどうかは私は知りませんが、もしそうであるならば、これらの資料が、本委員会のわれわれの審議に対して非常な影響を与えておる。われわれは、諸資料というものは大蔵省としては十分精査をされ、委員会審議に適当なるものとして、政府の立場において代表せられて提出をせられておると思いますから、そういうものがあなたの言うように実情に合わないものであるとするならば、私はこの本税法法案審議に対しては、もう一ぺんすべての資料を全部出し直して、われわれの判断をあやまたざるような資料を出してから審議を開始すべきであって、このような資料において審議をすることは実情に合わぬ、大蔵当局の御答弁によれば、実情に合わぬと思いますから、一応政府部内において意見を統一されて、資料の再提出をお願いいたします。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 政府部内で不統一ということはございません。私の監督不行き届きということはあるかもしれませんが……。しかし、私はあなた方に率直に私の考えを申し上げておる、それは、私の経験率から申し上げておることなんでございます。だから、俸給所得ばかりだったらどうだとか、配当所得ばかりだったらどうだとか、あるいは配当と俸給とが半々の場合にはどうだとか、あるいは今申されたように、実際に七割配当を持っておるときにはどうだとか、こういういろいろな資料は御要求によって出します。しかし、私は、資料を出します前に、まず私の考え方で、大体今ごろの所得納税者はこういうふうな格好をしておって、大納税者はこういうふうなこと——私は上の人につきましては個々の人について実は、資産の内容を知っておる九千万円の人二、三人に当ってみましたが、これはやはり増税になる、配当八割余りを持っておる、こういうのはかなりの増額になっておる、私はこういう経験率から大蔵大臣として率直に申し上げたのであります。だから給与所得者はこうなります、あるいは配当ばかりの所得者はこうなります、こういう資料が御入用ならばさっそく調製いたしますが、私は率直に、正直に自分の考え方を申し上げておるのであります。資料で不備の点は直します。しかし、私と事務当局との考え方においては変りはございません。
  26. 横山利秋

    ○横山委員 それは納得できません。少くともあなたの言うことをかりに妥当としましても、本会議における答弁というものは、配当所得の場合と、それから普通の給与所得の場合とによって増税と減税になるものがある、こういうことは質疑応答を通じて明らかであります。あなたが答弁をされたことは、百パーセント増税になるのだ、こういう立場で答弁をされたことは議事録に明らかである。少くともあなたは、減税になる人、そういう事実は、一人もないという印象を本会議では与えたことは事実であります。その点は、明らかに本会議のあなたの答弁は修正をされなければならぬ、また事実に基いて審議をするにいたしましても、今日まで大蔵省が出してこられた諸資料は、あなたの言う立場でいえば、現実とかけ離れた資料であることももはや明白になりました。その二つの点が解決をされなければ、具体的に筋を通した審議というものは不可能でありますから、この点を委員長においても十分お考え下さって、政府部内の意見を統一して下さって、二点を解決をして下さって審議を進めていただくことを私は要望いたします。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 この資料を見ますと、給与所得で一億円の人は、私の答弁とは違うようになりますけれども、実際問題として、給与所得で一億円の人はないのです。そんなものは架空の数字を出したかとおっしゃると、事実ないのですから、架空論と言える、計算上はこうなると言える。これはやはり親切だと思う。しかし実際問題として、そういうふうなないものを私は頭に置いてお答えはできない。経験率から申しまして、五千万円以上の人は、大部分の人は配当所得でありますので、増税になります、こう申し上げたのです。実際から私は言っております。
  28. 横山利秋

    ○横山委員 私は、本会議におけるあなたの答弁は、一般のわれわれが今日まで受けておった印象と立場の違った答弁であった。それからいま一つは、五千万円以上においても減税になる者があるというのに、あなたはすべて増税になる、こういう答弁をおっしゃったことと、それから議事録は、あなたは一億を材料にしていらっしゃるのだけれども、出しておられる。五千万円以上においても、圧倒的な事実と反するという、事実に根拠を置かない資料が今日までの資料であったということが、あなたの答弁によって明白になったから、これらの資料を再提出をしなければいかぬという二点について、責任ある措置をとってもらいたい。それは、石村委員が言うように、私は本来本会議において、適当なる機会に池田大蔵大臣が答弁を修正されるということが、本会議の権威にかけて必要かつ適当な手段であると思うのであります。その二つの問題について、責任ある措置をとっていただきたい、こういうことであります。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、今のこの資料につきましては、一億円の勤労所得ばかりの人の場合を出したのでございまして、ほかに実際に沿うような資料がありますれば、追加して提出しても差しつかえございません。私は、総体的にお答えしておるのでございまして、おおむね五千万円以上の実際の人をとってみますと増税になる、しかし将来俸給所得だけで一億円の人が出たならば、そのときには考えますが、私は今のところ、一億円の給与所得の人が出ようとも思えませんので、実際論として申し上げたのでございます。実際現在五千万円以上の人が今度の税制改正でどうなりますかという分は、これから調製してごらんに入れてもよろしゅうございます。私は五千万円以上の今の所得者は、おおむね増税になると考えておるのであります。
  30. 春日一幸

    春日委員 議事進行について。私は、この問題はまことに重大な内容を含んでおると考えるのであります。これは、明らかに一般論と現実論とが当然合致しなければならぬとは考えますけれども、本会議における池田大蔵大臣の御答弁は、一般に対して明らかに誤認を与えるような御答弁であったことは疑う余地がございません。私は、これを率直に修正をされるということは、必要にして欠くべからざる事柄であろうと考えます。池田大蔵大臣は、かつて、今を去ること四年前ですか、加藤勘十氏の質問に答えられて、例の麦飯論議ですね。これを頑迷に再確認された。修正されなかったことによって大きな政治責任をとられたことがありますが、横山君の質問に答えられたところは、これは一般論としては、明らかに間違っておる。前提として一般論は、横山議員が質問の通りではあるが、現実にはかくかくの情勢になっておるので、従って増税になる面もある、こういう答弁であるならば、石村君も横山君も、強くあえてこのことを追及するわけではない。しかし、これは一般論として質問したのに対して一般論として答えて増税になるということは、これは明らかに不実なんです。少くとも本会議における御答弁が十分でなかったということは、大臣も率直に認めなければならぬ。だから、麦飯論議においても頑迷に自説を固執された前例もあるのだから、この際その経験を大きく生かして、ここでこれを卒直に御訂正なさるのでなければ、与党の諸君が強く要求されております税法各案に対してわれわれは審議に入るわけには参りません。ですから、これは、そうあなたの政治的生命に対して致命的打撃を与えるようなことでもありませんから、この際に率直に御訂正に相なるか、しからざれば、この際暫時休憩をされまして、この問題をさらに御検討されたいと思いますが、この際池田大蔵大臣の所信はいかがであるか、御答弁を願いたい。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 一般論であるか、どこが例外であるかということは、おのずから実際面で検討しなければならぬ問題だと思います。一般論といたしまして、実際面から一つ話をするのがいいので、例外を取り上げてそれによって結論を出すべきではない。従って、先ほど来申し上げておりますように、私は、今の実情がかくかくであるから五千万円以上の人は増税になると申し上げたのであります。しかし例外的に、こういう場合はどうかという御質問ならば、それはあの表に示すがごとく、一億円の給与所得だけという人があったとすれば、それは増減税、いろいろな場合が出てくると思います。一般論というものは、実情からお答えするのが私は適当だと思います。
  32. 春日一幸

    春日委員 個人の事業所得者で五千万円以上の人はありませんか。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 今その分の記憶はございませんが、炭鉱その他で、あるかもしれませんが、しかし実際五千万円以上の所得者とすれば、おおむね配当を主としたものであります。
  34. 春日一幸

    春日委員 僕の友だちの上田清次郎君のように個人事業をやっておる人、名古屋においても個人で事業をやっておる人がある。こういう人たちで、五千万円、七千万円を個人でやっておる人が幾人もあるのです。そういう場合においては、これは明らかに減税になるのです。そういうわけでありますから、これはやはり一般論としては、給与所得ばかりでなく、事業所得があるのだから、あなたの話のように、配当所得の場合においてはこれは増税になるのだが、その他の場合においてはそうはならないのだから、そういう立場において質問をした横山君に対する御答弁としては、一般論としてはこれは減税になるかもしれないが、しかし実際に配当所得が多く構成されておるので、従ってこういう結果になるのだ、こういう御答弁があってしかるべきではありませんか。しかし、この点は実際だれが聞いても、あなたがその当時答弁をされた速記録を一ぺんお読みになって、言葉が足らないと思ったら、相手に誤認を与えたと思われるならば、この点に対して修正的な発言があってしかるべきだと思うのですが、この点、率直に問題をお取り扱いになる気はありませんか。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 納税者にはいろいろございます。お話しの通りに、事業所得で相当の納税をしておられる方もございましょう。しかし、大体において、私は五千万円以上の人は主として配当所得者が多いので、一般論として答えたのであります。従いまして、今後給与所得でそういうふうな人もありましょうし、また事業所得で五千万円以上の人が多くなってきて、減税になるような場合もありましょう。そういう場合は、もちろんお話しの通りに、減税になる場合もありましょう。しかしおおむねこうだというお答えをいたしたのでございまして、この程度で御了承いただけるのじゃないかと思います。なお、もし、どうしてもというのならば、速記録を見まして、また適当に措置してもよろしゅうございます。本会議でございますので、十分意を尽せぬところがありましょうが、大体論として私は申し上げた次第でございます。
  36. 春日一幸

    春日委員 やはり速記録をごらんいただいて——ここまで論議が進んできたわけでありますから、このままでは、私どもも了承はいたしかねます。従いまして、幸い速記録もここにありますから、大臣においてこれをよく熟読翫味されまして、誤認を与えたとわれわれは主張いたしておるのでありますから、誤認を与えたか誤認を与えないか、そしてこの答弁をもって完全なものであると考えられるか、もう一ぺん再検討をされる必要があると考えますから、この際暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
  37. 山本幸一

    山本委員長 委員長からちょっと申し上げますが、動議を諮る前に、理事諸君に御相談申し上げたいと思いますから、おいで願いたいと思います。  そのままの状態でしばらくお待ち願いたいと思います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  38. 山本幸一

    山本委員長 速記を始めて。春日君。
  39. 春日一幸

    春日委員 伺いますと、ただいまの理事諸君のお話し合いにおいて、この問題についてのお取扱いが円満なる妥結に達した様子でありますので、従って本件に関します私の休憩動議は、これを撤回いたします。
  40. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣にお尋ねします。さっきから問題になりました横山君に対する本会議における答弁は、一般には非常に算術が違う、知った者からいえば、そろばんが違う、こういうことになります。これは非常に誤まった印象を与えております。これは、大臣としてどういう御処置をおとりになるか、国民にこれを明らかにせられる必要があると思います。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 本会議で私が横山君の御質問に対して申し上げました言葉は、「今度の税制改正におきまして、五千万円以上の方々は相当の増税でありまして、負担する額は相当多くなっております。」こうお答えいたしたのでございます。これにつきまして、いろいろお言葉がございました。私は、今の実情が、五千万円以上の方々はおおむね配当所得が主たる所得になっておりますので、全般的に申し上げたのでございますが、あるいは事業所得あるいは勤労所得のみで五千万円以上の方々がおありになるとすれば、これはやはり例外的に減税になる場合もあります。しかし、私は総体として申し上げたことでございますので、御了承を願いたいと思います。
  42. 石村英雄

    ○石村委員 もう一つお尋ねしますが、大蔵大臣は物品税に関して「今の状況から申しまして、大体ぜいたく品課税を主とする建前でございますので、」こう答えていらっしゃいます。そこで物品税三百四十二億のうち、ぜいたく品がこの三百四十二億の大部分を占めておる、こうお考えですか。これは物品税の判断に重要な問題が起ってくると思う。大蔵大臣は、ぜいたく品を中心に三百四十二億をとられておると判断しておられるか。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 物品税につきましては、発生の当初、片方ではぜいたく品という建前でいきますし、片方ではある程度節約し得るものだというこの二つの建前からいっておるのであります。しかし、これは過去二十年経過いたしましたので、その間いろいろ修正がございましたが、しかし私は、物品税の建前としては、おおむねぜいたく品を主とし、そうしてまた節約し得るものを考えて、今の品目を選んでいると承知しておるのであります。
  44. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、本会議の答弁は、また言葉が足らなくなってくる。とにかく本会議の議事録を読み上げますが、「物品税は、今の状況から申しまして、大体ぜいたく品課税を主とする建前でございますので、」そうすると三百四十二億というものは主としてぜいたく品からとっておるのだ、こういう趣旨だと思うのです。三百四十二億のうち、大蔵大臣はぜいたく品が八〇%もある、こうお考えになっていらっしゃるのですか。そうすると、ラムネとか、その他たくさんありますが、女の口紅なんというものも、必ずしもぜいたく品とは言えないと思うのです。麦飯だけがぜいたく品でなくて、あとは全部ぜいたく品だと言えば、これはまた別ですが、この点一般のものは、なるほど物品税というものはぜいたく品だけにまずかけておるのだ、それなら廃止しろというような世間の声は間違っておる、大蔵大臣の答弁を信用するとそういうことになる。ところが、大蔵大臣の答弁がその通りかどうか確かめておきたい。ぜいたく品を主として三百四十二億というものをお取りになっているのか。そういう判断であるかどうか明らかにしていただきたい。もし言葉が足りないなら、またお尋ねしたいと思います。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 ぜいたく品を主として課税する建前に相なっております。
  46. 石村英雄

    ○石村委員 それでは、資料として出していただきたいのですが、大蔵大臣、特にその点の作業の監督をお願いしたい。三百四十二億のうち、大蔵大臣がぜいたく品として判断せられておる金がどれとどれで、そうして全体で三百億になるとか、何ぼになるとかいうことをはっきり出していただきたい。ぜいたく品の論議は、程度とかなんとかいろいろあるでしょう。しかし一般論として、ぜいたく品にそれほど主として課税しておるかどうかということは、物品税がいいか悪いかという現実の物品税を判断する上において重要なポイントだと思うのです。だから、これを明らかにしていただくことを要求いたします。
  47. 山本幸一

    山本委員長 資料の御要求については、委員長において善処いたします。春日君。
  48. 春日一幸

    春日委員 私は、この際申告所得税徴税行政のあり方についてお伺いをいたしたいと存じます。本会議においても若干触れてお伺いしたのでありましたが、御承知の通り、税務署は個人事業者に対しまして、確定申告を行いますその前に、あなたの本年度所得はこれこれでありますというお知らせを行なっておることは、大臣も御承知の通りであろうと思います。このことは、申告所得税の本義に触れて重大な内容を持つものと考えるのでありますが、一体このお知らせ制度は、いかなる法律に基いてこういう執行をおやりになっておるのでありますか。よって立っておりますその法律、これが何であるか、この際一つお答えをいただきたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 しばらく第一線を離れておりますので、どういうような実際の取扱いをやっているか、私はっきり知っておりませんので、どういうふうな文面でどういうふうなことをやっておりますか、調べた上で御答弁したいと思います。
  50. 春日一幸

    春日委員 大蔵大臣は、税制の根本的な改革をなされた当事者でありますし、かつは歴年の吉田内閣の大蔵大臣といたしまして、少くとも徴税行政においては、わが国きってのベテランであられるわけであります。御就任になりましてから、すでに数カ月を経過いたしておるわけでありまして、少くともこの徴税行政の中の大きな要素になっておりますお知らせ制度に対して何ら知ってはいないということは、まことに重大な事柄であります。知らないということならば、これは、下僚まかせで、ずいぶんずぼらな大臣だと思うわけでありますが、しかし、私は論議を展開するに当りまして、一体どの法律に基いてこういうお知らせ制度を行なっておるかということを明らかにしていただくのでなければ、次の質問に入ることはできません。従いまして、この際主税局長からでもけっこうでありますから、一体このお知らせ制度をなし得るところの法律の基準は何であるか、この際御答弁を願いたいと思います。
  51. 原純夫

    ○原政府委員 私も、就任後間もないのではっきり知りませんが、大体青色以外については、まだある程度やっているようにただいま聞きました。これは、数年前のことをお考えになるとおわかりと思いますが、申告がありましても、更正決定されるものが非常に多いという事態が相当続きました。そういうような状態が、だんだん青色が広まり、また税率控除も合理化されてよくなってきておるわけですが、青色以外の人たちについてはなおそういう状態があって、黙っておいてしかるべく申告をしていただいて、あと行ってみると、これはみんな間違いです。まあ全部ではありますまいが、非常に間違いが多いというようなことよりも、申告をより適正にするために、そういうふうにした方が全般としてよろしかろうということで、実際上の扱いでやっていることであります。法律に基いてということではなくて、実際上の税の関係をより正しいものにするために、前からこちらでお手伝いするというような気持でやっているのだと思います。
  52. 春日一幸

    春日委員 それは、まことに驚きいった御答弁であります。大臣は下僚まかせで全くずぼら、そうして主税局長は何も知らないずぶのしろうとというようなことでは、私たちは全く不安にたえかねます。今局長の御答弁によりますと、この白色申告はみんな違っておる。だから、後日修正の煩瑣を避けるために、事前にこれをお手伝い的に知らせるのだ、こういうことです。知らせるからには、本人の所得がどれだけであるかということは、あなたの方が調査して、どれだけ損金と益金があるか計算をするのでなければ、所得額というものは出てこない。ところが、一般白色申告に対するお知らせは、風のごとくにして舞い込んでくる、何も根拠がない。もとよりお調べになるはずがない。調べずしてどうしてわかるのですか、この点を一つお伺いをいたします。
  53. 原純夫

    ○原政府委員 調べはやってお知らせをするわけでございます。
  54. 春日一幸

    春日委員 それでは、その個々の事業体について調査を行うことなくして、調査の過程を経ずしてそのお知らせが発行せられた、こういうような場合は一体どうなりますか。なお申し上げておきますが、それが全部であります。
  55. 原純夫

    ○原政府委員 調査にもいろいろございますから、非常に精密な調査をするというのと、非常に簡単な業種につきましては、外形的な標準で大体の見当をつけるというような場合もあるかと思います。おっしゃるように、全然調査しないでやるということはないと思います。
  56. 春日一幸

    春日委員 これは一つ大臣にお伺いをしたいのでありますが、少くとも徴税行政の執行は、国民国会を通じまして法律に基いて、これを税務署に信託をしておるわけなんです。法律によらざる執行は、これは越権行為です。私が申し上げたいことは、その方が親切だとか何とかいうおためごかしの局長から御答弁がございましたが、これはひとりよがりの早合点で、これは御本人にすれば迷惑この上ない。ただ私が指摘したいことは、本年度の国税収入というものは、これは本会議でも一ちょっと触れて大臣にもお伺いいたしましたが、明らかに昭和三十一年度と三十二年度の国税の収入予算額というものは、一千九百億ふえておる。一方大企業は景気がいいというが、中小企業は必ずしもそういうわけに参らない。現実に東京手形交換所の不渡り件数はふえておるのです。三十年度年末よりも三十一年度の年末十月、十一月、十二月は、いずれも一割二、三分程度の不渡りがふえておる。その額面の少額であるところから類推して、中小企業の発行手形がそういう状態になりつつあるということを示している。そういうわけで、予算額は一千九百億の増収になっておるから、従って景気がよくない、神武景気に関係がないといわれる中小企業者にも、この概念で一律に類推されて水増し課税が行われる心配がある。その水増し課税がこの白色申告に対するお知らせ、すなわち去年三十万円の人は、ことし三十六万円かかる、あるいは去年五十万円の人は、ことし六十万円という形のお知らせになっておる、苛斂誅求おそるべきものがある。このお知らせ制度というものについては、特に本年度はこれを慎重に取り扱わなければならぬということを指摘しておるわけであります。  そこで、私はいろいろ調べてみたのだが、この白色申告に対するお知らせ制度は、現実に税務署がやっておる、あなたの所得はこれこれです、これで申請なさいということでやってくるが、そのお知らせに対して納得できない者は、再申請とか、再審査とかいろいろな形をやらなければならぬ形になっておる。いずれも法律に基準がありません。法律に基準がないことを執行するということは、どういうことですか。うしろのめがねの人が首を振っておられるが、法律に基準があるなら私たちは文句を言わない。法律を修正するなり改廃するなりすればよろしいけれども、法律にも何もなしにお知らせをやっておられるので、われわれは論議するにも雲をつかむようなもので、手ごたえがなくて困るのです。これは、法律に基準がないならやめていただかなければ、特に本年度なんかは、いわゆる景気がよくない人々に対しても、国民所得の増という一律の概念から類推されて増徴の危険があるのですから、この際法律に基準があるなら、その法律の基準を示せ。ないなら、法律で与えていない権限を行使することは、この際やめていただくのでなければ、これはめちゃくちゃになってしまう。国会は何を論議しておるかわからない気休め的なものになってしまう。この点を明らかに大臣から御答弁を願いたいと存ずるのであります。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 租税の賦課徴収につきまして、法律によらずにいろいろ国民に迷惑をかけることは、これはお説の通りでございます。しかし御承知の通り、青色申告をしておられる人とそうでない人がおられます。そうして税務執行上申告をよくなすっていただければ、これでけっこうなんでございますが、申告が毎年出にくいというふうな場合におきまして、今秘書官から聞きましたが、全般的にはやっていないが、ある署においては、今のお知らせをやっておる。そのお知らせというものは、私十分知りませんが、多分法律に基いてどうこうというのじゃございますまい。税務執行上、あなたのところの御申告なさるときの参考にという程度でやっておると思います。先ほど申しました通り、その衝に当った人から聞いていないのですから、そういうお知らせということが税法に基かないからこれは法律違反だ、こういう結論はちょっと出てこないのじゃないか。それは、何と申しますか、税務署としてりっぱな申告をしていただきたいために、経済界の変動その他を見まして、参考に申し上げるということが不親切であれば別ですが、親切の場合もあるかと思うのであります。従いまして、全国一律にやっておるとは聞いておりません。実際面におきましては、納税者も納税に協力してもらいますように、また徴税機関も納税者とよく話し合っていくようにという、あたたかい気持でやっておるのではないかと私は思います。もしそれがそうでないとすれば、法律に基くものでないのですから、強制はできないことと思っております。
  58. 春日一幸

    春日委員 国民は、すべて法律の前に平等でなければならない。徴税行政またしかりであります。ある税務署ではお知らせをやって、ある税務署ではやっていないということですが、実情はそうなっておるのですか。私の知っておる限りでは、白色申告の申告納税については、大体においてお知らせ制度をとっておられるように承知しておるのでありますが、一体分布状態はどういう工合になっておりますか。いよいよもってけしからぬと思います。あるところではやって、あるところではやっていない。徴税行政のやり方が区々まちまちである、税務署の思い思いというようなやり方でなされておるということでは、いよいよもって不安を深めます。おわかりになっておる方がありましたら、御答弁を願いたい。
  59. 原純夫

    ○原政府委員 どの程度どういうところでやっておるかということにつきましては、ただいま国税庁から主管の者を呼んでおりますから、お待ちいただきたいと思います。なお先ほどお話しのお知らせによって、あと不服があれば再調査、審査ということでありますが、それはそうではございませんので、お知らせは、要するに調べに行きますと、納税者はよく聞くわけです。うちの所得は幾らになりますか、そのときに話してあげるのを、文書で差し上げることがあるということにお考えいただいた方がいいのじゃないか。従いまして、申告は納税者の自分の判断で申告されるということになるわけです。その申告に対して、税務署の方しで、これは過小だと思えば更正をすることになります。更正に対して、再審倉の請求なり再調査の請求をするということに法律上の筋道はなっております。実情はただいま主管の者が参りましてから申し上げます。
  60. 田万廣文

    ○田万委員 関連してお聞きしたいのですが、今のお知らせ制度でありますが、本年度は一千九百二十億でありますか、自然増収があると見込まれておる。この自然増収に見込まれておるという金額が、大きな意味からいえば、国民に対するお知らせであろうと思う、その割合において、春日君の言われたようなお知らせを各税務署においてなさるつもりであるか。現行通りやるのであるかどうかという点をお尋ねいたします。
  61. 原純夫

    ○原政府委員 国税庁側からお答えすべきことと思いますが、予算の見積りとも関連いたしますから、私の考えを申し上げますと、自然増収を見込みますのは、生産なり物価なり経済活動の変遷、伸び方を見まして、それによって三十二年度幾ら税収があるか、これは予算を組みます上に当然必要なことでありますからやるわけであります。その際使います仮の指数は、差し上げてあります資料にもある通り、企画庁、あるいは各省のいろいろな計画、あるいは見込みの数字を基礎として作るわけであります。その千九百二十二億というものがすぐに税務行政につながるというものではございません。つながりますれば、つまり頭から非常に大ざっぱにきめた見込みでそれを細分しているという、いわゆる昔の割当制度というふうなことになるわけであります。そういうことは毛頭いたしておりません。全体としての見込みでありまして、実際の税務行政は、個々に、所得については所得を調査する、あるいは間接諸税におきましても、いろいろな課税の対象の実質なり何なりを調べて、それによって課税するということになりますので、そこに別段のつながりはございません。
  62. 田万廣文

    ○田万委員 お話の筋は一応わかったのでありますが、実際問題として、やはり私の地方などにおきましても、これは税務署の秘密事項であるかもしれませんが、各業種別に、この業種に対しては何割、この業種は何割という工合に、ちゃんとお知らせ制度の前提となる割当基準というものを出しておるようであります。これは大きな意味から言えば、やはり自然増収と言いながらも、千九百二十二億というものは国が一応徴収し得る見込み額ですね。その見込み額が徴収できなければ現実に国政がまかなっていけないという立場からいえば、やはり春日委員が今御質問になっておるお知らせ制度というものによってこれを徴収し得るという、われわれから見れば一つの装いだと見るわけです。あなたの御答弁はわからないことはないのですけれども、現実の徴収方法というものは、やはりお知らせ制度というか、とにかく事前に、この業種は何割というふうに、自然増収の割当を実際面においてやっておる事実があるのです。従って、そういうことが行われる危険性がさらに今後増大すると思われますので、私は春日委員の質問に関連してお尋ねしたのですが、絶対そういうことはないと保証できますか。
  63. 原純夫

    ○原政府委員 割当的なことはやらないという方針で年来参っております。ただお話しのような、業種別に、ことしの所得は前年の所得に比べてどのくらいふえるだろうかというよなうことは、これは当然税務をやります者が研究し、判断をいたします資料として持ってなければうそであります。私どもが歳入を見込みます際に、いろいろな指数を使いますと同様に、やはり担当者は、業態別の景気の状況を調べ、そして売り上げが全体としてはどのくらい伸びているということは、持っているのは当然だと思います。ただ、たとえばある業種が、ことしは三割売り上げが伸びているというようなことが一般論として言える場合に、個々の納税者にはいろいろ伸び方に程度の差があるわけでありますが、それをそのまま一率にやりますならば、伸びの少い人に対しては酷になるし、多い人に対してはかえって甘くなるということになりますので、この点はそういうことのないように、すべてそういう指摘は散らばりのあるものであるということを十分に教えてやるように努力しておるつもりでありますが、そういう努力がまだ十分でなくて、おっしゃるようなことがありますれば、これは将来ともますます気をつけてやっていかなければならないと思います。十分御趣旨は伝えておきたいと思います。
  64. 春日一幸

    春日委員 この際大臣にお伺いいたします。ただいままでの質疑応答を通じて明らかであると思いますが、大臣、結局こういうことでありましょうか。その年の所得額に対して査定権を持つ税務署長が、当該業者の所得額について調査を行うことなくしてそういうお知らせを発するということは、これは明らかに税法上違法の事柄であると私は考えるのでありますが、大臣はどうお考えになりますか、御答弁願いたい。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 納税者と徴税機関の間でいろいろ意見を交換することは、私は法律違反ではないかと思います。その一つのあれといたしまして、あなたのところはことしはどのくらいになりますか、なりそうですということを言うことがいいか悪いかという具体的の問題になりますと、私は個々の場合で判断しなければならぬと思います。それが、徴税機関の方で正確な申告を出していただく手段として無理じいするということでなければ、場合によってはいい場合もありましょう。しかし、それが全部にそういうふうなことを出すという場合においては、行き過ぎの場合もありましょうから、やはり、業種、業態によって、またその人の申告状況等によりまして、個々の場合に接触してやるということは、必ずしも税務行政上悪いとばかりは言えぬのじゃないか。具体的に個々の問題で検討すべき筋合いだと思います。
  66. 春日一幸

    春日委員 私の質問に対する御答弁にはなりません。私が伺っておりますのは、その業者の所得額に対して査定権を持つところの税務署長が、調査を行うことなくしてその所得額に対して通告を行うということは、これは、ある場合においては過小通告の場合もあるでありましょうし、ある場合には過大通告の場合もありましょう。このことは、明らかに徴税行政が所得のある者に課税を行うというこの原則の上に立ちます場合に、本人が申告する場合には、少なければ後日査察を行うなり再調査を行うなりして、的確な、正確な所得額を捕促することができるでありましょう。けれども査定権を持つところの税務署長が、調査を行うことなくして、本年度のあなたの所得額はこれこれですと言うて通告を行うことは、その通告自体がすなわち査定的な、最終的な、有権的な通告であるところに、これは税法上、ある場合においては過小通告があり、ある場合においては過大通告が伴うてくる。しかも本人は、相手の通告に基いて申告したのだからとって、責任が後日なくなってくるという心配なしとはしないと思うのであります。こういう意味で、このお知らせというものは、所得額というものが明確でないのに、それに対して事前的にこの通告を行うということは、申告納税制度のよしあしは別問題として、それがずさんなものであったり正確を期しがたいものであるならば、これは制度そのものを再検討しなければならぬと思いますが、制度がずさんな状態においてそれを補完的な措置として行政的にやることは、これは明らかに弊害を伴うのみならず、時にはその正確を期しがたい、こういう形になると思います。申告納税制度がことごとく不正確な結果を招くという心配があるならば、それ自体を再検討しなければならない。法律をそのままにしておいて通告を行うということは、通告によって一方的な独断によってその所得額を決定していくということは、明らかにこれは強権的であり専制的である。取るところの税務署長がそれだけの権利をもって通告したものに対して、それはそれより少いと言ったところで、なかなか問題というものは解決できません。承認しなければ査察でも調査でも何でもやろうということで脅かされて、それまで所得がない者が、何らかその通告に基いての申告をなさなければならぬという結果になってくる。これは明らかに違法である。特に本年度においては、私はこういう通告については慎重を期すべき段階であると思う。すなわちいい景気の者と悪い景気の者とがある。ところが一方予算は千二百億の増税であり、それから経済企画庁は、国民所得一般的にふえるという大きな線を打ち出しておりますので、その線に基いて、税務署長は水増し的な通告を行わざるを得ないという結果になってくるから、この際所得額というものを的確に把握するためには、そういう調査をなさずして事前の通告をなすということは、はなはだ危険である。だから、これは違法であるならば取りやめるべきではないかというのが私の見解でありますが、どうでありますか。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 どういうふうな文面で出しておるか存じませんが、これは査定権、税額決定権の発動であるならば違法でございます。しかし、各納税者の所得決定の参考資料に、われわれはこう考えておりますというふうなことであり、またそれによって御相談いたしたいというようなことであって、査定権、決定権の行使でない場合においては、一がいに違法とは言えないのじゃないか。本年のように自然増収の多いとき、しかも来年もよくなるというふうなときにおきましては、お話しの通りに、注意は十分しなければいかぬと思いまするが、御相談の上一つきめましょうというふうなことは、青色申告以外の場合においてはいい場合もある。おおむね悪ければ直さなければいけません。私は一がいには言えないのじゃないかと思いますが、実際面を見ておりませんので、後日実際をやっておりまする国税庁の役人をして答弁をさしてけっこうだと思います。
  68. 春日一幸

    春日委員 本年度におきまするこの通告制度というものは、やはり一つの断層を描いておりますだけに、たとえば不景気と好景気、ある者は好景気であってある者は不景気であるといったように、いろいろと明暗こもごもと実在しておりますだけに、こういう一律の概念でもって押し通すということには危険が伴う。しかもこの国民所得の増、それから予算面に示された国民収入の増というこの立場から、執行の衝に当る税務署員、税務署長等は、やはり水増し的な通告を行いたくなるという、そういう情勢下にあるので、このお知らせ制度については、特に本年度はこれを深く掘り下げて検討しなければならぬと考えます。大臣も、それから徴税行政をつかさどるところの主税局長も、この問題については深く御検討にはなっていない、また実際にどうなっておるか知らない、またそのお知らせの文面がどうなっておるかわからない、こういう状況下において責任ある御答弁を願うことも困難でありましょうし、またこの場において最終的な解決をはかるということも困難でありましょう。従いまして、私は、この際大臣と主税局長にお願いを申し上げておきますが、以上申し上げましたそれぞれの理由によりまして、このお知らせ制度というものが適法であるかどうか、それから事実に徴して弊害を伴わないものであるかどうか、こういう点についてさらに十分御検討をいただきまして、火曜日なり、あるいは次の機会に一つこの問題を主題といたしまして解決をはかることのために、疑義を解消いたしますことのために、一つ責任ある御答弁が願えるように御検討を願うことといたしまして、本日は私の質問はこれで留保しておきます。
  69. 山本幸一

  70. 前田房之助

    ○前田(房)委員 今回政府が交際費の課税範囲を拡大されたことは、まことにけっこうなことだと思うのであります。それに関連いたしまして、旅費の問題について、大蔵大臣に御意見を伺っておきたいのであります。  現在法人、ことに大法人ですが、旅費を経費と認めて課税をしておらぬという額が相当巨額に上っておると思うのであります。そのうちには経営上必要な旅費も相当ありましょう。しかしながら、中には不必要な旅費も相当あるのじゃないかと思う。はなはだしきに至っては、脱税を目的とした仮装的の旅費も相当あるかのように推定され上るのであります。そこで私どもは、昨年大蔵委員として大阪の国税局に参りまして、この問題について検討したのでありますが、国税当局のお話では、むろん旅費の内容も検討はしておるのであるが、現在の人員をもってしては、旅費の内容を徹底的に検討して一々その性格をつかむということは不可能だ、こういうお話があったのであります。もしそうであるとすれば、やはり資本金とか、あるいは取引高、あるいは業績、そういうものを標準とされて、一定金額以上の旅費は課税するというような措置を交際費と同様なさるということが、この場合適当ではないかと思うのであります。ことに今回大減税をやられるのでありますから、私はそういうことをなさる最もよいチャンスではないか、こう思いますので、大蔵大臣のこの問題に対する考え方を伺っておきたいと思います。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 前田さんのお話しのようなことも、私昔経験したことがございますし、また最近でも耳にするのでございます。実際問題といたしまして、出張しないのに旅費を出しているか、あるいは実際出張したかということを個々に調べることはなかなか困難だと思う。だから、交際費につきまして処置したと同じような方向で進んだらどうかという御意見でございます。るが、これは、なかなか交際費よりももっとむずかしいのじゃないかという気がいたしております。しかし、そういうふうな仮装的に出す旅費が非常に多いという結論に達しますれば、これは考えなければならぬと思いまするが、ただいまのところ、私は旅費というものは、交際費よりはもっと各会社によって千差万別でございまするので、実際問題としては、研究はいたしまするが、直ちに踏み切ることにつきましてはまだ結論を見出し得ない状況でございます。
  72. 前田房之助

    ○前田(房)委員 それでは、各法人で旅費として経費に落しておる額、それを大中小企業別に一つ資料を御提出願いたいと思います。また大蔵省の方で一つ十分御検討をお願いいたします。
  73. 山本幸一

    山本委員長 有馬輝武君。
  74. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は、本日は大蔵大臣に、徴税の際における会社概況説明書の問題につきまして若干お伺いをいたしたいと存じます。この点につきましては、詳細な面については、国税庁長官並びに担当課長からお伺いしたいと思いますけれども、本日お伺いしたいのは、現在大蔵省で企図しておられるところの、しかも三月から実施される予定になっておると聞いておりますが、この会社概況説明書の提出を求めることについて、所得税法に基く質問検査権の範囲内に属するかいなか、所得税法に基く質問検査権の行き過ぎではないかということについて若干お伺いしたいと思うのであります。といいますのは、最近国税庁の法人税課長は、この問題につきまして、相当現在までよりもその質問の範囲、それから概況について詳しいものを求めようとしておるらしいのでございます。しかもその理由とするところは、従来のものがきわめて簡単なものであって、申告が妥当であるかどうか判断しにくい、しかもこれをワクを広げることによって、徴税者はもちろん、納税者も相互が利益を受けるというような理由づけでもって、この質問事項について、会社役員の身分、経歴を初め、金融機関に対する当座預金の入金帳、小切手帳、現金の管理者名、また売り上げの多い時期、額、その理由、こういったものを記載せしめようとしております。ただそれだけに限らないで、会社役員の経歴ばかりではなくて、趣味までも記載させようとしておる。こういうことになりますと、たとえば税金を正確に申告するために、また国税庁としては正確に把握するために、会社役員のねやの中までのぞかなければならない。奥さんと夕べ寝たか寝ないかというようなことを調べるようなところまで進まなければ、正確な把握はできない。(「不謹慎な言辞はあとで取り消せ」と呼ぶ者あり)不謹慎なのは大蔵省なんだ。そういうところまでいかなければならないような危惧を中小企業の経営者に負わせておるのであります。こういった点について、大蔵大臣は、果して三月からこういった規模においてやらせようとしておるのかどうか、この点についてまずお伺いしたいと思うのであります。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、まだ国税庁からどういうものを出しておるか聞いておりませんが、国税庁の方が来ておりますから、それから答えさせます。
  76. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 実は法人税の方の所管でございますが、私かわりまして答弁させていただきたいと思います。  会社概況説明書は、税務署がいろいろ会社の実情をある程度把握しておきたいというために、いろいろ資料を御提出願いましてまあ直接店に臨んでいろいろお開きしてもよろしいのでございますが、非常に時間のかかる場合もございますし、あらかじめその会社の概況をとりまとめて報告していただくということになりますと、いろいろ双方にも便宜であろうかということで、こういった概況書をとっておるわけでございますが、これは、あくまでも任意に提出していただくという性格のものでございます。従いまして、われわれは、この質問検査権に基くから当然出せというやかましい考え方で、権利と義務というような形でやかましく言っておるわけではございませんが、しかし、こちらが会社概況書をとります相手先は、大体納税義務があろうと思われる方々に出しておりますので、質問検査権というほどではございませんが、われわれとしても、いろいろ書面でもってお尋ねするという意味も若干含まれておるわけでございます。
  77. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 現在までもしばしば会社におもむいて、少くとも今私があげましたような点については詳細に報告させ、企業に対して大きな制約を与えておられるのは御承知の通りであります。しかも今回は書類でとると言われる、しかも任意でと言われますけれども、少くとも担当の法人税課長のお話によりますと、罰則さえ設けられようとしておるのであります。重大問題だ。何が理由ですか。質問検査権に基かないと言いながらも、何に基いて罰則を設けられるのか、その矛盾についてお伺いいたします。
  78. 原純夫

    ○原政府委員 私どももこれに罰則を設けるという気持はございません。ただいま所得税課長から申したような気持でやっているので、要するに税の関係につきまして、常々からよくお話し合いをするという態勢でいかなければならぬのはもちろんでありますが、そういう気持で、その一つの手だてとしてやっておるということであって、決して押しつけがましいとか、これで何かをあばくというような気持は毛頭ございません。
  79. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それではお伺いいたしますが、少くとも法人税課長がそういったことをしゃべっておるのは行き過ぎであるか。法人税課長があなた方の意図に反してこういったことをしゃべっておるのか。青色申告の取り消しを要求したり、罰則を適用したりすることもあり得るということが巷間に流布されて、中小企業の諸君に大きな危惧を抱かせておる。その責任はどこにありますか。
  80. 原純夫

    ○原政府委員 法人税課長がどこでどう言うておるか私は存じませんが、会社概況報告書を出せ、出さなければ罰則を適用するという気持は、法案を準備する私としては持っておりません。
  81. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の点、法人税課長がどういうふうにしゃべったか知らないというお話ですけれども、私は、あえて法人税課長の責任は追及いたしませんが、お帰りになりましたら、よく事情を聞いておいて下さい。法人税課長の談話として、そういったことが巷間に流布されておるのは事実であります。やはりそういった点について、大蔵大臣並びに担当局長は十分監督をしていかなければ、要らざるところで大臣あるいは局長、大蔵当局の意図を曲解される。曲解されるだけならいいけれども、そのために、中小企業が自分の経営に対して自信を失う。そういったことがあっては、せっかくの大蔵大臣の積極財政とかなんとかというような意図も反映しなくなる。こういった点については十分気をつけていただきたいと思います。  さらにお伺いしたいと思いますのは、今任意であるというお話ですから、安心いたしましたけれども、それにいたしましても、その説明させるものに、一年を通じて売上高の多い時期はいつであるか、また売上高の少い時期はいつか、それはなぜか、そうして各月の売上高、お盆の十五日前の売上高及び二月一日から十五日までの間の売上高、仕入れ及び商品の管理、売上高がどのように計算されているか、売り上げ、仕入れ状況、こういうことを毎月報告させようとしておる。それでどうして経営の自主性が保たれるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  82. 原純夫

    ○原政府委員 そう毎月ではないと私は思うのであります。事業年度か、あるいは短かくとも四半期かでやっておるのではないかと私は思いますが、その中で、売り上げその他所得がきまってくるために必要な条件についてなるべく書いていただく。それを書くと自主性がなくなると言われますと、税の方はちょっとやりようがないので、やはりできるだけそれはわかるようにさせていただきたいと思います。もちろん、それは税務当局が他に見せるというようなことは絶対すべからざることで、これは法律でもはっきり押えております。その限りにおいて、納税者との関係においては、できるだけ真実をお話しいただく、常時できる限り御連絡を、こちらも申し上げるし業者の側からもしていただくという気持でやっておるわけでありますから、御了承願いたいと思います。
  83. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今重要な点として、任意に基くものであって、質問検査権に基いて強制するようなことはしない、罰則は設けないというような御答弁がありました。がしかし、これも志場君の話によりますと、取引関係や役員の経歴調査を、すべて所得を正しく掌握する上での必要事項で、これらを削除することは全く考えていないというようなことを言っておりますが、今仰せのように、こういう点については任意である、記載して報告しなくてもよろしいということと、毎月ではない、少くとも経営の自主権を侵すようなことはないという点について、大臣からはっきりとこの際御答弁をいただいておきたいと存じます。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 税の徴収が正確で公平であることは、国民全般が望んでおることであります。しかし、正確で公平を期するために、税務署の手不足ということが手伝って納税者に御迷惑をかけるということも、これはまた考えなければなりません。しかし、公平であり正確であることを期するために、ある程度納税者の——自発的ではございませんが、協力を得まして調査を十分するということも、これはまたやるべきことであって、やむを得ぬのじゃないか、従いまして、こういう問題は、やはり納税者と徴税機関の方が話し合って、了解を求めてやるべきことだと思います。一方的に押しつけるということは、私は考えるべきではないと思う。それからまた協力を得ることにいたしましても、あまりに煩瑣であって御迷惑をかけるということはよくないことでございますので、やめなければなりません。従いまして、こういう問題につきましては、やはり一般納税者の……。
  85. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 僕の言ったことを、その通りですね。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 あなた方のお気持は十分わかっております。私は、今後施行上におきまして御迷惑をかけないように、そうして正確な調査をすべきものと思うのでございます。従いまして、あなたのおっしゃったようにやっていかなければいかぬと思っております。
  87. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それからただ一つ希望しておきますが、国税庁の所得税課長がいいことを言っております。このためには、プレス活動を大いにやりたいと言っておりますから、それを今大臣のおっしゃったように十分やらせて下さい。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 承知しました。
  89. 山本幸一

    山本委員長 それでは午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時五十分から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  90. 山本幸一

    山本委員長 それでは、休憩前に引き続きまして会議を開きます。  金融に関する件、外国為替に関する件及び専売事業に関する件について、質疑を許します。竹谷源太郎君。
  91. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 私はこれから閉鎖機関に関する諸問題についてお尋ねをしたいと思います。質問が非常に多岐にわたりますし、またきわめて事務的な問題も多いのでありますので、時間がかかりますから、政府はできるだけ簡潔に、結論を明確にお答えを願いたい、私も簡略に質問を進めて参りたいと考えます。時間の関係がありますので、そのように進めていきたいと思いますから、御答弁も御協力をお願いしたいと思う。  第一番目に、閉鎖機関の特殊清算の進捗の状況について承わりたい。閉鎖機関の特殊清算につきましては、昭和二十年の九月以来一生懸命進められてきたことと思う。最初は千八十八に上っておった閉鎖機関のうち、現在までに千五十五くらいの機関が特殊清算の結了を見たということを聞いておるのでありますが、その数字及び残余の閉鎖機関の特殊清算についての結了の時期の見通しはどうなっておるか、また残余の閉鎖機関中のおもなものについて、最初に御説明をお願いしたいと思うのであります。
  92. 市川晃

    ○市川説明員 閉鎖機関は、ただいま御質問のございましたような数字をもちまして、千八十八でスタートいたし一まして、今日現在残されております数が四十二機関でございます。その四十二機関のうちで、大部分は本年の七月、八月ごろまでの、あと半年ぐらいのところで終結するであろうと考えられておるわけでございますが、おもなものといたしまして横浜の正金銀行、これが御存じのように、各国にいろいろな関係を持っております関係から、なお相当継続するのではないかというふうに考えられております。その他のものにつきましては、ほとんど本年の半ば過ぎまでに大部分完結するのではないか、かように見通しを立てております。
  93. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 われわれ聞いているところでは、昨年千五十五結了を見たというのであるが、今承わりますと、四十二残存しているというのですから、千五十五にはまだ達しておらない、この数年の食い違いはどういうわけですか。当時千五十五結了を見たのは、これは大蔵側の公式の見解じゃなかったのですか、どういう食い違いか承わりたい。それから残っておるものの大部分、正金を除いては、全部半年ぐらいで結了するというのであるが、残っておるもののうち、正金のほかに相当資本金の大きかったもの、あるいは少し重大性のあるような機関があるのではないか、全然ないのかどうか、その点を承わりたい。
  94. 向井正文

    ○向井説明員 数字の食い違いにつきましては、千五十五という数字は、私ども実は承知しておりませんので、昨年の十二月末千四十六が、正しいのでございます。ただ、いわゆる清算事務という事務らしいものはなくなっておりますけれども、登記関係でございますとか、訴訟関係でございますとか、ちょっとまだ最終結了に至っていないのも若干ございますので、実質的には終了しておるものと見得るものの数は、今お説の通りの数くらいになると思います。それから正金銀行以外の閉鎖機関でございますが、私ども念頭にございますのは、交易営団というものでございますが、これは例の接収貴金属の方の関係でございますので、この法案の見通しとも関連いたしますので、これがかりに今度の国会で通過いたしますということになりますれば、あと一年くらいでおしまいになると思いますが、そういう関係がございます。それから戦時金融金庫というものがございます。これは、御存じのように戦争中の実に多種多様の債権債務の関係が残っておりますので、これをどこで打ち切るかというのは、非常に困難な問題だと思います。これをどこかで踏み切りをつけなければなりませんが、どこで踏み切るかということにつきましては、なお研究を要する点が多いだろうと思います。大体それくらいが、私ども今頭にあるもので、本年の夏ごろ、あるいはおそくとも本年一ぱいという結了見込みからしまして、少しずれるのではないか、今その程度でございます。
  95. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 次に、閉鎖機肉の清算結了を見て、第二会社が設立されたあとの引当財産の管理の方法について伺いたいのであります。閉鎖機関が第二会社を設立したときは、当該閉鎖機関の特殊清算事務は、第二会社設立の日において終ることになっておりまするが、当該閉鎖機関に在外債務に対する引き当ての財産がある場合、この引当財産の管理については、別に政令があって、閉鎖機関の引当財産の管理に関する政令、これで定められているのでありますが、これを読んでみると、引当財産の管理は、閉鎖機関管理人が行うということになっております。この管理人は、大蔵大臣または大蔵大臣が選任した者をもってあてることになっておりますが、第二会社を設立した場合には、第二会社の役員中から管理人を選任する方法をとるというのが、大蔵省の考え方であるかどうか、これをお尋ねしたいのでございます。実は、特殊清算の結了後も、引当財産の管理の目的の範囲内及び在外財産に対する関係においては、当該閉鎖機関はなお存続するものとみなされているようでありまして、そうなりますると、むしろ最も実情に精通した当該閉鎖機関の過去の関係者のうちから、この閉鎖機関の存続するものの管理人を選任するのが妥当ではないか、こう考えられるのでありまするが、従来の例を見ると、第二会社の役員等にその管理人を充てているようであるが、これはどうお者えであるか。むしろ従来の事情に精通した旧会社の関係者にやらした方が実情に即した処理ができるのではないか、こう思うのでありますが、御所見を伺いたいのであります。
  96. 向井正文

    ○向井説明員 私どもこの法令によりまして留保財産と考えておりますのは、当該閉鎖機関の在外資産に比べまして、在外負債の方が超過しておる場合に、その超過額を国内資産の中から引き当てさせる、こういうものを考えておるわけであります。それで、従来閉鎖機関におきましては、在外負債超過ということで、国内資産を引き当てさせておるというのはまだありません。そういう例が起りましたときに、どういう人に管理人をやっていただくのがいいかという点につきましても、まだ今お答えするほどには考えがまとまっておりません。
  97. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 朝鮮銀行あるいは台湾銀行等に、そういう種類の財産がまだあるようである。この朝鮮銀行、台湾銀行は、開くところによれば、四月一日ごろから第二会社が発足するということでありますが、そうした場合に、朝鮮銀行にもなお幾らかの留保財産があるようです。これの管理はだれがやる、だれという個人を指定しなくてもどういう方面から選任するか。そういう場合には、やはり従来の事情をよく知った人がいいのじゃないかと思いますが、その所見を伺いたいわけです。
  98. 向井正文

    ○向井説明員 朝鮮銀行、台湾銀行につきまして、ただいまお話しの留保ということでございますが、これは、先ほど申し上げましたように、在外負債関係の留保でございませんので、外地で預金をされておった方で、その後二十九年のいわゆる在外三法の改正によりまして、その積金、債権が国内債権とみなされて、閉鎖機関の国内機関から支払わせるということになりました。預金者は大勢いらっしゃるわけでございますが、まだいろいろな関係でとりにおいでにならない方が多うございます。第二会社を作らせる場合にも、そういう方々の権利をこの際切ってしまうということは適当でないと考えましたので、この関係の引き当ての額を新しい日本不動産銀行、及び台湾銀行の場合は日本貿易信用株式会社でございますが、この会社に債務として引き継がせて、引き続き第二会社の方で支払わせる、こういう構成をとったわけでございます。
  99. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうしますと、今の留保財産というものは、一応第二会社の資産になっているのですか、管理をさせているだけですか、それとも第二会社のものになっているとみなされるのですか、その点をもう少し……。
  100. 向井正文

    ○向井説明員 現在、申し上げるまでもなく、閉鎖機関朝鮮銀行の新会社ができ上りますと、その債務が新会社に継承されます。資産の方も、見合いの資産は、もちろんこれを見合いで新会社に引き継がれるわけでございます。
  101. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうしますと、今私問題にしました閉鎖機関の引当財産の管理に関する政令、これはどういう場合に適用されておりますか、御説明願いたい。
  102. 向井正文

    ○向井説明員 これは、先ほど申し上げましたように、当該閉鎖機関の第一店舗にかかる債務の方が第一店舗の資産より多いという場合には、将来の国際問題を考慮して、その債務の超過額を国内資産の中からとっておかせる、そういう場合に、この政令が適用あるものと私どもは解釈いたしておるわけでございます。
  103. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、今朝鮮銀行にはそういうものがないのですか—そうしますと、朝鮮銀行にない。しかるに、そういう今後問題になる横浜正金銀行、これはそういうものがたくさんあろうかと思いますが、これはどうなりますか。この閉鎖機関の引当財産の管理に関する政令、これに基いて閉鎖機関管理人というものが任命せられて、その管理に当る、在外関係ですね、そうなるかどうか。
  104. 市川晃

    ○市川説明員 正金銀行に対しましては、外国に相当な資産があると同時に、また負債もございましていずれも未確定な要素もそれぞれ若干ずつ入っておるのでございますので、現在のところでは、それらの見通しが立つまでは、そのまま閉鎖機関としてずっと継続されていくわけでございまして、まだ第二会社という問題は起きていない状況でございます。
  105. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ちょっと、今最後のところがわからなかったのだが、まだ在外資産関係がはっきりしないうちは、第二会社の設立は認めない、こういうのですか。
  106. 市川晃

    ○市川説明員 債権債務の状況全体からながめまして、いまだ処理すべきものが相当量残っております。それがために、第二会社という問題について考慮を起すだけの段階にまだ至っていないのでございます。
  107. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 段階になったらどうするかというのを聞いているのです。この政令の適用を受けた管理人が置かれるのかどうかということを聞いているのです。その点どうなのですか。
  108. 市川晃

    ○市川説明員 在外負債が超過になりますとそういう問題が起きるのでございますが、まだその点まで十分に詰めて検討を加えて、おりません。
  109. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そこで、これはそういつまでも果てしなく続くものではない。そのうちに在外資産も相当目鼻がついてくると思う。そうして第二会社ができるということになって一方ただいま申し上げた政令で管理人というものが置かれ、終局的には債権債務の関係がはっきりしてきて、そこに財産が残ったという場合には、この法律規定からいうと、終局的に株主に配当せられることになるのだろうと思いますが、現在の法律規定では、閉鎖機関の清算管理人の手元で最終的に残余財産が残ったという場合には、それは終局的には株主に従属するといたしましても、その間の手続や方針等に関して何ら法律規定がないように見受けられる。新たに法律でも作らなければその処分ができないのではないかと思いますが、この点はどうなりますか。
  110. 市川晃

    ○市川説明員 ずっと進捗いたしまして、いよいよ結着をつけるという段階になりますと、あるいはお話しのように、いろいろ複雑したむずかしい問題がこんがらがって出てくるということが想定されないことはございません。そういう意味合いにおきまして、ひとり正金銀行だけでなしに、全体の閉鎖機関を通じまして、あるいは場合によって一連の閉鎖機関を中心にしました作業の最終の仕上げと申しますか、そういう意味合いにおいて、一つの法律をもって片づけるということは、考え方の一つとして私どもの中でも議論はいたしておりますけれども、具体的にどういう問題をどうという点につきましては、全く研究不十分の段階でございます。考え方といたしまして、そういうことも一応研究していいものではないかというふうには存じ上げておる次第でございます。
  111. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 次に、旧朝鮮銀行のことをちょっとお尋ねしたいのですが、閉鎖機関朝鮮銀行は、残余財産が六十七億四千九百万となっておる。それに対しまして、政府への納付金、あるいは清算所得税というようなものを出しましたが、それでもなおかつ十七億三百万円、これに対して払い込みの資本金は五千万円でありますから、株主としては三十四倍ほどの配当にあずかれる、こういうことになったのであります。しかるに預金者に対する払い戻しは、閉鎖当時の預金が一億五千八百九十万円、預金の口数が七千六百三十三口、零細な預金でありますが、七千六百三十三口に上る一億五千八百九十万円の預金に対しましては、その元金の三分の二及びわずかな利子を支払っているにすぎないようである。その金額は一億二千三百三十四万円程度であるようであります。これを法律を調べてみますると、日本円の一円に対して朝鮮銀行券は一円五十銭だ、こういうわけ合いから三分の二払えばよろしいというのだそうでありまするが、一円に対する一円五十銭という為替レートは、聞いてみると昭和二十二年のものである。これはもう朝鮮銀行が解散したあとなんだ、もともとこれはパーでなければならぬ。これはおかしいと思う。このような一円対一円五十銭という比率はおかしいと思うのでありますが、それよりも株主に三十四倍配当になる。これは、究極において会社は株主のものあるから、まあそういうことになるわけでありましょうが、しからば旧職員に対してはどうかというと、これは相当残存財産が多かったからということで、総額で三億数千万円旧職員に対しまして最近に離職手当という名目で支払ったということを聞いておる。これは、終戦のときに退職金を出したということを聞いておるのです。それをまたその上に離職手当、これはどういう名目なのか、われわれには十分な理解ができない。実は、私の選挙区に船岡鉄道病院と称するものがある。これは、昔の海軍の火薬廠の病院を鉄道が引き継いだもので、当時やはりそれぞれの規定に従って退職金が支払われた。ところが判任官以上の者で、預金の形で支払われたのかどうか預金になっておる。それはけしからぬというので、占領軍から返還を命ぜられて、判任官以上の預金をしておった分はみな巻き上げられた、没収された。そして現金で支給された者並びに雇員以下の人たちに対しては、現金でやったからそのままということになった。そうして十数年たちまして、今海軍火薬廠時代から国鉄病院になって継続して勤めている人が退職するという場合に、国鉄で支払う退職金の問題でそれが問題になり、国鉄でいろいろ調べた結果、そのときに支払われたのだ、だから支払いはしたが、銀行に預金しておったので、進駐軍の命令で返還させられた分だけを国鉄が今回退職の場合に支払うということで、当時現金で支払われた分については全然見ない、昭和二十年以後国鉄の病院になってからの退職金しか支払っておらない。そのときの金額が非常に少かったとか、もらったかどうか不明瞭だということで、これはかなり紛争を起しておるのでありまするが、そのように、旧朝鮮銀行も終戦のときに退職金を支払ったといわれておる。だとすれば、これはまた残存資産が多いからというので三億数千万円を支払うということは、どういう名目であったのか。一説には、昭和二十年に重役会でそういう決議があったのだというようなことにして、そのようなことになったのかと疑う人もある。それからまた昭和三十年か三十一年の十一月ころに、三千万円という金を旧朝鮮銀行が日韓中央協会というものに支出をしておる。これは一体どういう根拠で、いかなる目的、理由によって支出したのか、このようにかなりルーズに支払いをすることを大蔵省が認めながら、一応法律規定はそうであるとしても、少額の預金者に対して、きわめて不親切な処置ではなかったかと思う。これに対して、今となってはしようがないというのであるか、あるいは法律規定でこれ以上はできないのであるか、こういう問題に対して親切な御処置を政府としてはお考えになる意思はないかどうか、お尋ねしたいわけです。
  112. 市川晃

    ○市川説明員 一つは、換算率を中心にした問題を最初に御質問下すったと思います。これは、主として現地の預金と申しますものは、本来は現地店舗から支払いを受ける建前でございまするが、今日においては、それは不可能でございます。そこで、本邦円との間で為替相場によって支払う。それで、かりに現地通貨の変遷をたどるということになりますと、非常にむずかしいことになるのでございます。ほとんどはいわゆる引き揚げ関係の方々でございまして、昭和二十八年の在外財産問題調査会におきましての御研究による答申にも基きまして、現在の換算率ができておるような次第でございます。実際問題といたしまして、これによりまして大部分の支払いが動いてきておりまするので、これを再び違った形をとって行うということは、非常に過去のものとの間に複雑した混乱を生ずるような次第になる、かようにも考えられるのでございます。また銀行の利息と申しまするのは、一年もの最高の預金の利息を十年で複利にいたしますと、大体三割九分七厘という数字にぶつかって参ります。これをもとにいたしまして、四割というような形で出てきて参っておる次第でございます。そういうような関係におきまして、なるほど従業員に対しまして、お話の中で触れられました、退職金に関連した問題とそのまま比較いたしましてどうだろうかという御疑念が起きるのでございますが、この従業員に対しまするものは、お話の通り、指定日の前の確定債務として金額が重役会の決議によってできておるものでございます。それに基いてこの支払いが行われたということは、要するに指定日以前の確定債務であるという考え方から出ている事柄でございます。その他、国鉄関係のお話を私ども直接には存じ上げかねるのでございますけれども、以上申しましたような事情でございますので、私どもといたしまして、この朝鮮銀行等がやって参りました一連の支払いにつきまして、それぞれ相当の理由をもって行われたものと考えまして、第二会社設立に移行する関係におきまして、是認をいたしておる次第でございます。
  113. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 その職員に対する離職手当は、確定債務として指定日以前の確定債務だから支払いを受けたのだ、こういうのでありますが、しからば、重役会の決議の行われた年月日をお知らせ願いたい。それから三千万円の日韓協会に対する支払いの事情、それから、そのような一応法律規定に従って預金者に対する支払いが行われたのであるから、やむを得ないと申しますが、それに対する善後措置というようなものについてお考えはないかどうか、それをお尋ねしたい。
  114. 市川晃

    ○市川説明員 先ほど御質問の点を一つ落して申しわけございません。朝鮮銀行は日韓協会に対しまして、お話しの通り三千万円の寄付をいたしております。それから、まだ実施されておらないのでございますけれども、台湾銀行関係におきましても、高砂協会という、台湾関係の引揚者の援護を中心にいたしました財団法人でございますが、これとの間にほぼ同様な措置をいたすべく折衝しておるようでございます。これらにつきましては、約一年ほど前に、二十四国会と存じますが、国会の決議がございまして、政府においてしかるべく善処するように、こういうような御趣旨のことがございました。これは衆参両院の大蔵委員会におきまして、多少文言を異にいたしますが、同趣旨のことがございましたものですから、この御趣旨を十分体して善処いたしました関係上、こういうようなことになったのでございます。  なお、従業員債務に関しましての、当時の役員の確定債務成立のもとになりました決議の日でございますが、まことに申しわけございませんが、ここに今正確なものがございませんので、後刻御連絡申し上げますから、御宥恕願いたいと存じます。
  115. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今衆参両院の決議のお話が出ておりますが、それを見ると、閉鎖機関の従業員の解雇手当の支給に関し、あるいは旧役員に対する指定日以前の重役間の決定等について、書面による申し出があったときは考えろ、これは衆議院。参議院の方の大蔵委員会の決議では、本法の実施に当り預金者その他の関係者の特殊事情を考慮して適宜の措置を講ずる、こうなっておる。そうして役員、従業員の方だけ考慮をして、預金者の方は考慮をされてない。これは片手落ちじゃないかと思う。これらに対して、このように重役間の決議があれば、確定債務として三億数千万円——この決議があったかどうか、われわれは多分に疑問に思う。昭和二十年会社解散前の重役会で、三億数千万円の手当を旧役員、職員に出すというような決議がほんとうにあったのかどうか。あったら、昭和二十年終戦のときに支払われているはずだ。そのほかに二重にそういうものがあったということは想像できない。それに第一の疑問がある。こういう決議があったからということに便乗して、存在しない債務に支払うということは背任行為である。それからまた日韓協会あるいは高砂協会、そういう引揚援護その他のことをやっておる公益的財団法人に対してこういうことをする。こういうものに確定債務がありやいなや、また債務がない、道義的なものにすぎないものにまで、このような多額を支出しておる。聞くところによれば、朝鮮銀行の旧役員に対しては最高九百万円くらい出しておるという話です。一万田日銀総裁がやめたときの退職金は何ぼか知らないが、一千万円かそこらくらいだったろうと思う。三、四十年も日銀へ奉仕した一万田さんに一千万円か千二百万円しか出さないのに、一年か二年朝鮮銀行の総裁、あるいは頭取、あるいはその他の親玉をやった人に、十何年もたってその債務があるかどうか疑わしいものに、九百万円も出すというそれだけの親切がありながら、預金者に対して特殊事情を考慮して云々というこの国会における決議等を尊重しないのはどういうわけだ。市川さんや向井さんに聞いてもあるいは答弁できぬかもしれぬ。あとで大臣にでも聞きたいと思いますが、市川さんが今の調査官になられたのは最近のことじゃないかと思います。向井さんもそうだと思う。事情をよく知らぬ点が多いようだから、もう少し研究してもらいたい。よって私はあと突っ込んでお尋ねしたいと思うのでありまするが、今の預金者の問題につきましては、十分御考慮を願いたい。時間の関係がありまするから、追ってまたお尋ねすることにいたしまして、次へ移りたい。  これからまだ残っております特殊清算で大きなものは、言うまでもなく横浜正金銀行でありますが、これについて二、三お尋ねしておきたい。閉鎖機関の特殊清算につきましては、従来とも特別の事情があるときには、当該閉鎖機関の旧関係者のうちから特殊清算人の選任をし、最も実情に即した清算を行わせるという方針をとってきたようであります。現に朝鮮銀行もそうであるし、台湾銀行もしかり。さらに近くは朝鮮殖産銀行、あるいは東亜海運、これらについても同様に旧関係者から特殊清算人を選任しておる。ところが横浜正金銀行につきましては、これは明治十三年の創立であり、わが国の為替銀行の重鎮として、その業務地域の広いこと、またその業務量の非常に多いこと、ことに戦争中戦費調達の金融機関として、朝鮮銀行や台湾銀行と比較して決して遜色のない活動をしてきた。しこうしてこのような複雑な銀行の清算事務は、とうてい門外漢が十分な成果をおさめるような仕事がなし得ないことは明らかであります。  〔委員長退席、平岡委員長代理着席〕 であるから、この際、旧横浜正金の関係者の中から特殊清算人を選んで、清算事務の適正妥当な、しかもすみやかなる結了を見るように処置することが妥当でないか、こう思うのであります。政府の御所見を承わっておさたいと思う。
  116. 市川晃

    ○市川説明員 横浜正金銀行が閉鎖機関になりまして、元来閉鎖機関は幾つかのものを取りまとめて最初スタートして参りました。お話に触れられました、たとえば朝鮮銀行あるいは台湾銀行というような仕事が相当進捗しましてから、いよいよ第二会社を作ろう、こういうふうになって参りますと、おのずから株主の総意を受けまして、そのそれぞれの旧関係者というものがここに登場して参りまして、それがまたきわめて当然のことでもある次第でございます。現在正金銀行に関係して仕事をしておられまする方は、なるほどかつての正金銀行に直接関係のなかった方でございますけれども、仕事の知識とか、経験とか、さばきぶりとか、そういった問題について別段御指摘のような差異があろうとも思っておりません。現在のところ、そういう関係者の更迭と申しますか、そういうことについては全然考えておらないというのが、私どもの状況でございます。
  117. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 朝鮮銀行や台湾銀行は、外地で仕事をしておる銀行であって、複雑な内外の関係を持っておるから、相当専門的知識が要るだろうと思いますが、正金銀行に至っては、全世界にわたってその業務を運営してきたのであるから、一そう複雑多岐である。承わるところによると、諸外国との在外財産の関係も、今後いろいろと有利に交渉しなければ日本の損になるようなことが多いと思う。この点はまたあとでお聞きいたしますが、従って朝鮮銀行や台湾銀行どころではなく、いろいろと複雑な点があろうかと思う。今別の人にやってもらっておるから、当局としてはそう言わざるを得ないだろうと思う。しかしそういう実情にかんがみて、横浜正金よりもそう複雑でないところにおいてさえも、従来の経験や知識を持っておる人を活用しておる。ところが、これだけは特に除外するという理由は見出せない。むしろ一そうそういう人を必要とする事情にある、こう思うのでありまして、この点は十分御考慮を願っておきたい。  次に、同じく横浜正金銀行のことでお尋ねしたいのでありますが、旧横浜正金銀行は、海外に相当の財産を持っておるはずであります。ところがそのうち、スイスとかブラジルにあった財産は返還をされて、特殊清算の対象に取り入れられておると聞いておりますが、これらスイス、ブラジルで返還された財産の金額と、これをどのように処理をしたか、その処理てんまつをお尋ねしたい。また今後在外財産として返還される見込みのものはどんなものがあるか。これにはイタリアなり、あるいはインドシナなり、あるいはアメリカ合衆国なり、その他たくさんあろうかと思う。特に北米合衆国には二十億くらいの資産があるといわれる。そういうものの返還の見通し、それをお聞きしたいのと、それらに対する預貯金の支払いは済んでないだろうと思うのですが、今まで預貯金で支払いをした金額、全体に対する支払い金額の支払いの率をお尋ねしたい。そして不足分がありとすれば、その不足分はいつ、どんなふうにして支払うか、それらの点をお尋ねしたい。
  118. 市川晃

    ○市川説明員 初めにブラジルとスイスの関係の事柄につきまして申し上げます。ブラジルにおきましては、昭和二十九年に大統領令によりまして、ブラジルにある資産を返還するという態度をとってきたのであります。これによりまして、いろいろその事務的な所要時間を経ました後に、総額で、日本円にいたしまして一億八千百七十四万六千円という額が戻って参りました。それからスイスにおきましては、スイスにおきましての資産の凍結が解除されまして、これまた日本の円の額にいたしまして三十八億九千一百万円というものが正金の手に戻ったわけであります。現在閉鎖機関としての正金におきまして、これは全部預金として保管いたしております。まずブラジルとスイスのことにつきまして簡略に御報告いたした次第でございます。  それから支払いの問題につきまして申し上げまするが、なおアメリカにおきましては、お話しの通り十八、九億くらいあるんじゃなかろうかという——持ち帰り資料によりますとか、向うへ出張したりいたしましたときにあれこれと口頭で尋ねたりいたしましたもの、できるだけそういう資料をまとめてのことでございますので、確定的なものではございませんが、そのくらいのものがあるのではなかろうか、そのほかにまだあちらこちらに若干ずつございまするが、そういうものが今後どういうふうになっていくであろうかということは、もっぱら相手国との間の今後の状況によって結果が出るほかございませんので、いずれも推定と申しますか、ある程度の期待を持つという程度以上には出ていない状況にございます。そういう関係がございまして、支払いの方につきまして、最終的に割り切った処理をいたしかねております。そこでかりに全部の支払いをいたすといたしますれば、総額で五十三億九千万円という計節を立てておりますから、大略五十四億でございます。これに対しまして、先ほど申しましたスイスから非常に大きな三十八億九千万円というものが戻って参りましたものを含めまして、五十四億というものを現に各市中銀行等の預金として持っているわけでありますから、ちょうどその他のものを別にいたしまして、すっかり支払いをする態勢にはできているわけでございます。
  119. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、今預金として持っているものは五十四億、それに対する支払いはまだ全然やっておらないか。やっておれば、それは全体の債務額約五十二億ですか、それに対する何パーセントになるか。
  120. 市川晃

    ○市川説明員 少額なものは優先的にという趣旨を法律規定しておりますので、十五万円までは全部支払いをするという建前をとっております。従いまして、事実上十五万円以下の少額の方々は、おいでになればどんどんそれで処理されていくわけであります。十五万円をこしますものにつきましては、他面におきまして、イタリアなどに相当の債務を抱えておりまして、その債務が確定的になるまで最終的な支払いということができかねるという形になっておりますので、現在こちらの持っております資産とその債務とを勘案いたしまして、五五%支払っております。従いまして全部支払うという場合には、総額で五十三億九千万ということになるのでございますけれども、十五万円以下は全部、それをこすものは五五%という中間的な処理におきまして処理を進めているわけでございます。
  121. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 四五%支払ったのですね。
  122. 市川晃

    ○市川説明員 五五が支払った方でございます。
  123. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それは支払い済みですか、支払うべき金ですか。
  124. 市川晃

    ○市川説明員 支払い済みでございます。  そこで率でございますが、ちょっと計算いたしまして後刻申し上げたいと思います。
  125. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ちょっとわからぬ点をもう一言お聞きしておきますが、イタリアのリラで向うから三十六億よこせと言っておる。こちらは四千五百万円じゃないかというのだそうだが、それを加えると五十三億の七〇%ぐらいになるんじゃないか。支払い額が五五%というのはおかしい。イタリアに対する債務はこちらの計算通り四千五百万円、そういう計算ですか。
  126. 向井正文

    ○向井説明員 ただいま市川説明員から申し上げました五五%でございますが、この五五%という数字を出しました年次をちょっとはっきり覚えておりませんが、数年前でございます。その前に四〇%というのがございまして、四〇%から開始いたしまして五五%まで返済率が上っております。当時は、イタリア特別円、仏印特別円、この問題について今お話がありましたが、三十六億でございますとか、そういう数字についてまだそう激しい折衝も行われておりません時代でございましたので、大体の帳簿資産額を見まして、正金の資産と見合せて返済額をはじき出したのであります。その後資産が若干ふえたので、五十五億に上げた。その後、御存じのように国際交渉の問題になって参りましたので、先方の巨大な要求を無視して、さらに返済額を引き上げることは適当かどうかということはよほど慎重でなければいかぬ、こういう感覚から、今申し上げましたように、イタリア円、仏印円を正金の帳残だけで計算しますと、さらに上げ得るのでありますが、そういう関係もございますので控えておる。ただ法律にも、少額債権者は特に保護しろという規定もございますので、預金者につきまして、十五万円までは無条件に一〇〇%払おうという措置をいたしておるわけでございまして、大体十五万円と申しますと、一般の預金者はほぼこれで救える。おそらく私どもの推計では、九五%を越える程度の預金者の方は、それでお支払いできる、こういうふうに判断されましたので、そういうような措置をいたして、両方にらみ合せながらやっていっているわけでございます。
  127. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 まだふに落ちない点がございますが、またあとで資料で出していただきたいと思いますから、その程度といたします。  次に、横浜正金の株を宮内省、皇室が多数持っておるというように聞いておるが、こういうのが今どこへ行っておるか。それからこの横浜正金の旧株のうち、一体何%大蔵省の方に入っておるか。ずいぶん入ったということを聞いておるのです。横浜正金銀行の株を、政府は今その何%を持っているかという問題。もう一つは、先ほど特殊清算をやっておる閉鎖機関の交易営団のお話がありましたが、横浜正金が交易営団に十九億円の債権を持っておったということですが、これは、交易営団が横浜正金に対する債務を支払ったかどうか。払ったら、その払った金額はどれくらいになっておるのか、その二つをお尋ねしたい。
  128. 市川晃

    ○市川説明員 最初に皇室関係でございますが、これは当時財産税として全部国に物納されておられます。その株数でございますが、二十万九千三百十八株というものが財産税の関係で入っております。当時の天皇家の財産税総額は約五千万円でございました。その一部として納入されておるわけでございます。
  129. 向井正文

    ○向井説明員 国の持ち株数その他の比率という点は、ちょっとまだはっきりしておりませんが、半数弱であったと記憶いたしております。四五%と六%の間であります。
  130. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 全体で四十五万株くらい、五十万株ですか。
  131. 向井正文

    ○向井説明員 五十万だったと思いますが、はっきりしたことはちょっと記憶がございません。
  132. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そのくらい政府が持っているわけですね。そのほかにも持っているのですね。
  133. 向井正文

    ○向井説明員 政府が全体の株の半数弱くらい持っておったと記憶いたしております。  それから交易営団と横浜正金銀行の間の、正金銀行の交易営団に対する貸付金でありますが、交易営団が閉鎖機関に指定された現在におきまして、約二十億六千万円という債務を持っております。そのうちすでに、ちょうど五〇%の弁済を終っております。従いまして、現在残っておりますその半分の十億三千万円というのが、まだ交易営団の債務として残っております。交易営団の現在の清算資金の状況から判断いたしまして、あと確実に追加して払えるだろうと思われますのが、約一〇%ございます。従いまして、全体といたしますと、約四〇%程度のものが払えないということになるのではないかと考えております。ただしこの点につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、交易営団はいわゆる接収貴金属の問題がございます。この関係は、法案がまだ成立しておりませんし、私ども今の計算では、接収貴金属の点は入れてございません。これらの金額は、約二億近く帳簿に残っております。もしこれが戻ることになりますれば、若干の追加ができることになると思います。
  134. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そこで、いろいろ聞いておりますと時間がかかりますから、まとめて資料を要求したい。第一は、旧朝鮮銀行に対する資料でありますが、石橋特殊清算人から星野特殊清算人に旧朝鮮銀行関係の引き継ぎが行われたわけでありますが、その引き継ぎのときの財産の状況を、その財産の種類、たとえば国債とかその他の有価証券、現金とかあるいは動産、不動産、種類別にその額面金額、あるいは時価等によって価格を表にした、引き継ぎの資産の表をいただきたい。  第二は、横浜正金関係で、横浜正金が指定当時と現在の貸借対照表、及びその主要な項目に対する内容の説明をした資料がほしい。  次は、横浜正金に関するもので、未払い送金為替及び預貯金の総額と、これに対する支払い済みの金額、支払いの率、これは大体聞きましたが、もっと確定な詳細な数字がほしい。  最後に、同じく横浜正金関係で、ブラジルやスイスなどの返還財産の内容、先ほど金額については聞きましたが、その内容、その処理状況、その処理状況は預金だということでありますが、その旨、並びに今後の北米なり仏印なりイタリアなり、その他各関係の諸国からの在外財産はどれだけあるか、また返還の見込みはどのようなものであるか、その資料がほしい。以上の資料をなるべく早く出していただきたいと思います。  次に、もう一つだけ伺っておきたい。それは、戦争中の政府借入金の跡始末がどうなっているかという問題、これが閉鎖機関の処理に非常に影響があります。また、われわれ国民としても非常に不可解で、どうなるのか、また今後外国から非常な金を要求されるのではないかというような心配もありますので、伺っておきたいのでありますが、戦争中に中国の中部なり南の方なり、いわゆる華中や華南においての軍費調達のための政府借入金は、中央儲備銀行等によって行われておる。この借り入れ先は横浜正金であったわけです。すなわち政府の貸上金収入というものは、正金銀行から中央儲備銀行券をもって日本銀行支払い代理店に納入された、この貸上金に必要な儲備券資金というものを、横浜正金銀行は、横浜正金と中央儲備銀行との間のいわゆる預け合い契約によって調達したということであります。頂け合いというのは、申すまでもなく二つの銀行がお互いに同額の預金をし合う帳簿上の操作にすぎない。そういう預け合いの方法によって、横浜正金銀行上海支店では、この横浜正金上海支店に、中央儲備銀行から預けられたお金を貸記する、儲備銀行は、またそれに相当する儲備券のお金を正金銀行の預金として、自分の銀行の上海支店の勘定に貸記するという方法によって、横浜正金銀行は必要な儲備券資金を調達しまして、この儲備券をもって政府は借り入れをする。このようにして横浜正金銀行から政府が借り入れた総額は、当時二百六億三千九百万円に達しておる。その後外資金庫なる全額政府出資の金庫ができた。これに伴いまして昭和二十年の三月一日付をもって、この横浜正金銀行の政府貸上金関係の債権は、外資金庫に対して債権を持つ、外資金庫は政府にかわって承継をする、こうなっておったようであります。その後外資金庫から政府が借り入れをする、そうして軍費を調達する、このような方法でやっている。そうして終戦になったのでありますが、この横浜正金銀行から政府が借りたお金につきましては、戦争中は一回も償還されなかった模様であります。そこでこの政府の借入金、また外資金庫が横浜正金銀行から借り入れたこのお金は、ともに政府の借り入れなわけでありますが、これがどう処理されたものであるか。また処理されるのであるか。外資金庫は全額政府出資であり、これは政府関係機関でありますから、政府の債務になるわけなんです。これは一体どのように処理した例があるのか、するのか、それを承わりたい。さらにまた外資金庫が肩がわりをした政府貸上金の大部分は、終戦のときに行われた金の売却の代金で返済されたというようなことも伝えられておるが、この間の事情はすこぶるあいまいでありますが、この際その真相を明らかに説明をしてもらいたい。また外資金庫の設立の後も、やはり軍費調達のために預け合いをやりまして、そして儲備資金を調達した。これもやはり預け合い方法によって、いわゆる正金銀行と外資金庫が預け合いをし合い、そしてこれもまた調達した。そうして正金銀行から外資金庫に金を融通した。正金銀行は正金銀行で、外資金庫へ資金を調達してやらなければならない。そのために中央儲備銀行とまた別個に預け合い契約を結ぶ、このようにいたしまして、外資金庫ができる前には、儲備鉄行と横浜正金との預け合いによって、帳簿上にただ計上した金を儲備銀行から引き出してきて、それを正金銀行は政府に貸した。外資金庫ができてからは、儲備銀行から預け合いによって儲備券を調達し、これをまた外資金庫と正金との間で預け合いをやって、儲備銀行から持ってきた儲備券を外資金庫に渡す、外資金庫はそれを政府に渡して、政府がこれを軍費に使う、こういうようなことで、華中や華南における正金銀行の外資金庫に対する払い込みの金は四千二百九十八億円に達したといわれているのですが、この処理はどうなっておるか。かなり古いことでもありますが、非常に膨大な金であり、結局は儲備銀行から儲備券を引き出してきてぐるぐる回りをして政府の軍費調達ということになった、一体これはどうなるのか、またどうしたのであるか、終戦のときに内地から金をたくさん持っていって、それを売り払ってそれを払ってしまったのかどうか、その間の事情を御説明願いたいと思います。  なおついでに申し上げておきますが、正金銀行から政府へ貸上金を提供した、そのときの条件は日本円建であり、利率は年三分五厘、五カ年間の貸付期限である、ただし期間は、適宜によって延長することができる、利払いは年二回、日本円をもって利払いをする、このような条件が定められてあったようでありますが、こういう膨大な金額政府の債務として残るということになりますと、単に横浜正金だけの問題ではなく、対外関係もあり、また横浜正金としては、四千二百九十八億円というような債権を外資金庫を通じて政府に対して持つということになると、これは大ごとであります。これはどういう事情になっておるか、その処理のてんまつをお伺いしたいのであります。
  135. 向井正文

    ○向井説明員 戦争当時の現地金融機関からの軍費の調達ということは、お話しのようないろいろ複雑な過程をとっておるようであります。この問題の処理につきましては、私どもの管財局の所掌でございませんで、大蔵省では理財局ないし主計局で処理されることでございます。ただ、申すまでもなく現地金融機関の通貨債務ということになりますと、いろいろ対外的な関係もございますし、これをどういうふうに処理するかということは、私どもよく承知いたしておりませんが、どういう意見かということにつきましては、その主務局の方からお答えいたした方が間違いがなくてよろしいかと思います。私どもは、清算に当りましては、この現地通貨調達による軍費支弁という関係の債権債務の処理は、一応特殊清算の対象からはずしております。そして、かりにその処理がおくれました場合には、一応それをたな上げにしまして、清算を中間的に結了するということで清算は促進するつもりでございます。もし将来この問題の取扱いがきまりますれば、またその際に清算を復活しまして、ぐるぐる処理を回していくということになろうかと思います。私どもの立場で申し上げられることはその程度で、処理意見とか処理方針とか、詳しいことを申し上げるほどのものをちょっと持ち合せておりませんので、お許しを願いたいと思います。
  136. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 管財局の当局としてはやむを得ないかもしれません。ただこれは横浜正金の特殊清算に非常に重大な関係がありますのでお聞きしたのであります。これは追ってそれぞれ主管の係の人々、並びに大蔵省の主脳部に質問するということにして、この点はぜひ調査をして、説明のできるように準備するようにお伝えを願いたい。そこで、このように横浜正金にはいろいろ複雑な事情が多々あるわけでありますが、これが処理についてはきわめて適切、公平妥当にやらなければならぬ、そういう観点から、私は最初に申し上げました通り、従来の関係者をして特殊清算をなさしめるのが一番妥当ではないか、こういうふうに考えられる。海外関係は非常に錯綜しておりまするし、日本政府の借入金の問題等もございまして、なかなかめんどうなことであろうと思いますので、この点は十分御考慮を願っておきたい。それから朝鮮銀行の預貯金者の方の問題、これも、とくと大蔵当局において研究をして、善処してもらいたいということを申し上げて質問を打ち切りたいのでありまするが、先ほど要求した四つの資料につきましては、正確なものをできるだけ早く御提出を願いたい。以上をもって私の質問を打ち切ります。
  137. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 石村英雄君。
  138. 石村英雄

    ○石村委員 ちょっと本質問に入る前に、ただいまの竹谷委員の質問に関連してお尋ねしますが、朝鮮銀行の債権債務を第二会社に継承させる、こういう御答弁と受け取りましたが、これは、もちろん債権債務といえば、在外債権債務も含んでの一切がっさいの債権債務、こういう意味なんでしょうか。よく聞かないと、けさの大蔵大臣の答弁のようにいろいろ違ってきますから……。
  139. 向井正文

    ○向井説明員 これは、現行法で私どもそういうふうに考えておるわけでございますが、債権債務関係のうち特殊清算の対象になりますものは、国内の債権債務ということになっております。従いまして、新会社へ継承させますのも、この特殊清算の対象になっておる債権債務に限るということになっておりますので、新会社には、在外債機債務は一切継承させておりません。この関係は、残存いたします閉鎖機関の債権債務として今後処理させる、こういうふうに考えております。
  140. 石村英雄

    ○石村委員 よくわかりました。それではもうけっこうです。  今度の外貨予算ですが、上半期の分は大体でき上りましたか。でき上らないにしても、大体の数字はわかっておると思うのですが、三十一年度に比較してどういうことになっておりますか。
  141. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 三十二年度上期の外貨予算につきましては、目下作業中でございます。従いまして、数字を申し上げられるまでにまだ固まっておりません。
  142. 石村英雄

    ○石村委員 大まかな総体くらいの数字はわかりませんか、何億何十ドルというような……。
  143. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 その総体の数字が非常に問題の数字でございますので、非常に議論を重ねておりまして、まだお話しできるような一つの数字にまとまっておりません。
  144. 石村英雄

    ○石村委員 こういう問題は、なるべく大蔵大臣にお尋ねしたいと思っておったのですが、お見えになりませんから……。今度AA制なんか非常に拡大される御意思があるのですか、どうですか。
  145. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 AA制度につきましては、これを貿易管理、為替管理を自由化する方針をもちまして、拡大せしめていきたいと考えておるのでございます。しかしながら、なおAA制にはめた方がいい物資はいかなる物資になるかというような問題等につきましては、検討中でございます。
  146. 石村英雄

    ○石村委員 一切がっさい検討中ということになると、質問をしてもしようがありませんが、今度は、一つ大蔵大臣でなくても御答弁できると思うことをお尋ねいたします。昨年三月二十三日に大蔵委員会でお尋ねしたことがあるのですが、それは外貨の内示書というか、割当書の売買の問題です。これに対しまして、そういう事実を聞いておるかどうか、こう聞きましたところが、当時の板垣政府委員は、そういう事実は存じません、黙認しておるのじゃないか、こう言ったら、いや黙認もいたしておりません、大体そんな外貨の割当書の売買なんていうものを認めていない、こういう御答弁であった。そのときには、大蔵省の為替局長も御同席ですから、単に通産省の見解だけではない。これは、政府として外貨割当書あるいは内示書の売買を認めていないものだ、こういう御答弁であった。ところが今年の二月七日の日本経済新聞を読んでみますと、メリヤスなんかの中小企業者が現在非常に困っておる、その困っておる機屋さんを救うために原綿の割当をする、そうして機屋は、この内示書を紡績や綿花輸入商社に転売してプレミアム——現在はポンドあたり四十円をかせぎ、紡績に対する立場を強めようというわけだ、こういうことが新聞記事として出ておる。中小企業の機屋さんを救ってやるということはけっこうだと思いますが、それが政府として認めていない内示書の売買によって救われる、そういうやり方を通産省が考えていらっしゃるとすると、これは実におかしな話で、飯が食えないと言えば、警察があき巣ねらいに入る七つ道具を心配してやるようなものだということになりますが、どうもおかしなことが新聞に出たものだ、こう思っておった。ところがおかしいと、こう言う方が実はおかしいので、今までの経済新聞なり何なりに、常に内示書のプレミアムが今は七〇%だとか、いや今度それが下って五〇%だということは、昨年三月二十三日の御答弁のあとに何回となしにプレミアムが堂々と新聞に出ておる。そうして今度は通産省が、そんならそういうことをやって機屋さんを救ってやろうか、こういうことをおやりになったのかと思ってびっくりしてこの新聞記事を読んだのですが、これは一体どういうことですか。考え方が変ったのですか。
  147. 小室恒夫

    ○小室政府委員 前の板垣通商局長が、内示書の譲渡は認めないし、またそれについて承知もしていないということを言われたそうでありまして、私どもも基本的な立場は同じことでありますが、ただ実際問題として、綿花なり羊毛なりが、輸入がある程度制限される、この間に設備も相当ふえておる、あるいは糸の値段も非常によろしいというような場合に、ある程度原料の奪い合いが起るということは、経済原則としてあるいはあり得ましょうが、どの程度のプレミアムで、どの程度の売買ということは、私どももうわさの範囲以上には承知いたしておりませんが、これが実態的に見て絶無だということもなかなか言いにくいことだろうと思います。ただ私どもは、そういう情勢等もありますから、外貨予算の許す限り年年必要な原料の輸入のワクを拡大して参りまして、そういうプレミアムが実際上なくなるようにやって参りたいということで、一時に比べますと、それらの弊害はずっと少くなってきておるというふに考えておるわけでございます。
  148. 石村英雄

    ○石村委員 私は、実際問題として、そんなことがあってはけしからぬという意味で、政府の御答弁に対して、おかしいことではないか、こう聞いたのですが、ただいま絶無ではないという御答弁だった。どろぼうしてはいかぬということはだれでもわかっているのですけれども、実際はどろぼうがいる。政府としては、売買なんかやることは認めていないのでしょう。ただ現実に内緒で売っている人がいる。そういうことが発生するのは、海外の物資の輸入が窮屈だということから自然に起る。その自然現象は、輸入を多くすることによってなくしたい、こういうことなんですが、それはわかっておるのです。だた政府が認めない外貨の割当書を内緒で売買することによって通産省の繊維局は、メリヤス業者その他の機屋さんを救うという考え方、つまりこれによって四十円のプレミアムがつくから、それで機屋さんが助かる、そういう考えに立って原綿の割当をやるということはおかしなことではないかということを聞いておるのです。
  149. 小室恒夫

    ○小室政府委員 お話しの新聞記事に出ておるメリヤス屋さんに対する割当というようなことは、まだ成案は別に得ているわけではありません。ただ機屋の例をかりにとりますと、現在綿機の例で言えば、全体の四割くらいはおそらく紡績兼営の業者がやっておりますので、あとの六割について、半分がいわゆる紡績の系列で賃織、あとの三割くらいが自営といいますか、専業者、糸で買って布で売るというようなことだと思うのです。兼営の紡績業者の立場に比較しますと、糸で買って布で売る場合には、なかなか糸の取引値段等で不利な点がある。ただでさえ中小企業は安いのに、それが少々糸の取引条件で紡績自体あるいは紡績の系列のものに比べると不利な点がある。そういう点で輸出がうまくいかないということでは困る。何とか輸出用の糸が安く手に入るように、また賃織でいえば加工賃が高くなる、そういうふうな環境を作ってやりたい、こういうことについては常に苦心しております。別に内示書の売買というような形でなく、ただそういういろいろの施策を考えていく中に、そういうことも——むろん今新聞に出ているようなことも一部研究はしておりますが、別にそれにきめたという成案を得ておるわけではございません。
  150. 石村英雄

    ○石村委員 私は、機屋さんを救うためにいろいろお考えになることは、大へんけっこうだと思います。現在は、大紡績会社に牛耳られて困っておるのです。われわれの見るところでは、むしろ通産省は大紡績の庇護ばかりせられて、小さなところが苦しんでいるのをさっぱり考えていらっしゃらないくらいに思っておるのですが、それを助けるために、いろいろな施策を考えられることはけっこうなことで、そのことには反対しないのでありますが、検討の一つの中に、割当書の売買による救済策を考えていらっしゃるということは、検討にしてもおかしなことじゃないかと思うのです。内示書の売買は全然認められないことだ、こういう立場からいうとおかしなことを検討されることになる。そういう検討は、今後は為替の割当内示書の売買を認めるということもあり得るということで検討せられるわけですか。
  151. 小室恒夫

    ○小室政府委員 輸出振興のために、商社が非常に高級な繊維製品を出しておる、あるいは新規市場を開拓しておる、そういう場合に、商社に若干の原綿や原毛を割り当てるということはあります。それから輸出品を作っておるのは機屋なりメリヤス業者自体であります。それが、この原綿のリンク制の一つの形として綿をもらっておるということは、それ自体別におかしなことではない。それは内示書の売買ではございません。制度としては、そういうリンク制の一つの運用として考えられるもので、本筋としては間違っておるとは思いません。ただ、それは今成案を得ておらないで研究中のものです。これは、輸出振興にも中小企業のためにもなるという線で、いろいろな案を研究しておる一つの題目にはなっておると思います。
  152. 石村英雄

    ○石村委員 私は、そういう割当がけしからぬと言っているのではない。今日、それによって糸にしないにもかかわらず売買を前提にして割当をする。外貨の割当書を売買してプレミアムをかせぐということを前提にして割り当てるということはおかしなことじゃないですか。実際輸入したもので作るというならば、何も不思議はないのです。ただ売買して四十円のプレミアムをかせいで、そうしてもうかって助かるのだということは、売買を認めない以上はおかしなやり方だと思います。こういう趣旨のことを聞いておるのです。割当そのものに反対して聞いておるわけではないわけです。
  153. 小室恒夫

    ○小室政府委員 売買を認めない原則で従来輸出のリンク制というものがあって、これは輸出したものに原綿、原毛を刺激になるように割り当てる。これは売買しておるわけではありませんので、割り当てられると自然その立場が強くなるということはございます。
  154. 石村英雄

    ○石村委員 私はしろうとだからよくわかりませんが、売買という意味じゃなくて、実は売買と同じような結果を生むのですから、その点を……。
  155. 小室恒夫

    ○小室政府委員 あまりこまかい話をするのもどうかと思いますが、輸出をいたしましてその輸出した分に相応する原綿をもらうわけです。その原綿を紡績会社の方に持っていけば、自然その糸の入手価格その他で考慮が払われる、こういう微妙なところであります。売買というわけではございません。
  156. 石村英雄

    ○石村委員 実際問題としては、かなりおかしなことが起るのじゃないかと思います。現に昨年もそのことで聞いたのですが、羊毛なんかで、古い機械があって、設備だけは持っているのだが、割当書だけをもらってきて、それを売ることによってもうけておるものがある。こういう例をあげて聞いたわけなんであります。そういう場合は、明らかに売買を前提にしたことになると思います。そういう事実は御承知でありましょうか。
  157. 小室恒夫

    ○小室政府委員 そういう事実は承知しておりません。もし承知すれば当然割当を停止いたします。現在は、輸出のリンクと設備に対する割当と、こうありますけれども、むろん設備を休止しておって、全然動いていないというものに羊毛を割り当てるというようなことは考えられないことであります。そういううわさもありますので、われわれの方も、通産局を通じて調べるようにしております。しかし何分にも軒数も多いことでありますので、もしそういうことがあって、事実こうだということを教えていただければ、私の方としては、直ちに適当な措置をとります。
  158. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 田万廣文君。
  159. 田万廣文

    ○田万委員 塩業課長さんが見えておられますので、お尋ねいたしますが、聞くところによると、少くとも明三十二年度には、塩の価格が引き下げられるというような情報がございますが、その事実の有無、それからもし引き下げるという意向があったならば、どういうところから出てきておるか、これを御説明願いたいと思います。
  160. 守田富吉

    ○守田説明員 お答え申し上げます。塩の収納価格は、原則といたしまして前年度の業者の生産費を公社で調査いたしまして、その生産費の実績に基きまして、翌年度の収納価格を決定するというふうな原則になっておるわけです。そこで三十年度の生産費調査を公社で行いましたところ、現在の収納価格より幾分低目になっておるわけでございまして、そういう点からいたしますれば、明年度の収納価格はある程度下げ得るということになるわけでございます。ただ、現に業者の方では、多額の改良資金をかけまして、塩田の改良工事も実施中でございますし、また燃料の値上り等もございますので、下げるかどうかということにつきましては、目下なお検討中の段階でございます。
  161. 田万廣文

    ○田万委員 業者の方では、明年度中に収納価格が下げられるという不安を非常に濃厚に持っておるわけであります。従って、できることなれば、明年度、三十二年度においては、今お話があったように、業者としても、また塩業に従事しておる労働者の賃金コストからいっても、収納価格を引き下げるということは不適当であるというような見地から、できることならば、三十二年度においては収納価格を引き下げないようにという希望もいたしておるのでございます。明確な時期について御回答がないのでありますが、御回答がないならば、不安はつのる一方で、できることであれば明年度においてはやらない、あるいはやるのだという明確な線のお話ができればしていただきたいと思うのです。
  162. 守田富吉

    ○守田説明員 ただいま申し上げましたように、三十年度の生産費の実績からいたしますると、多少引き下げの余地はあるのでございますが、何分現在流下式への転換工事のために、あるいはそれに伴う煎熬設備の拡張をやっておりまして、非常に多額の資金を投下しておるわけであります。そういう改良工事が現になお進行中でありまして、あと三割程度進めば完成するというふうな状態にあるわけであります。そういう時期でありますことなどもございますので、なかなかいろいろファクターがございまして、公社としては検討中でございますけれども、まだ結論に達していないわけであります。
  163. 田万廣文

    ○田万委員 結論から私がお話ししたいことは、今守田説明員からお話がありました通り、業者も、流下式に切りかえるために巨額の国家融資を受け、あるいは地方から借金をしておるというような事情で、経営自体はまだ黒字になっておらない。大きな赤字において経営しておる。塩業者の犠牲において行われておるという実情からいって、その収納価格の引き下げという問題は、業界の大きな死活問題になってきておるのであります。もっとも理解のあるようなお話でありますけれども、なおかつ収納価格を引き下げしようという意向がおありになるように私は伺えてならないので、さらにお尋ねしたいのですが、現在の企業者の経理状態並びに労働者の、いわゆる浜子の諸君の生活状態、賃金問題という点から考えても、多大の困難な問題が横たわっておるのでありますが、当局におかれましては、この塩業労働者の現在の賃金制度というものがどういうふうになっておるか、これを御存じでありますか、それをお尋ねしたいのです。
  164. 守田富吉

    ○守田説明員 塩業の雇用形態は非常に複雑でございまして、従来入浜式塩田当時におきましては、塩業組合組合員というのが一応塩田の業主でありまして、この一人々々の組合員が数人の労務者を雇って採鹹作業をやるというふうな格好になっておりまして、従って、労務者は直接組合に所属しないで、その組合の構成員たる組合員の雇用者である。そういう形態が大部分でございまして、従いまして、労銀ベースなども、必然的に他の産業に比べて相当下回っておったのでございます。最近流下式塩田の進行に伴いまして、漸次採鹹事業が組合の直営事業に変って参りました。公社といたしましても、極力これを推進して参ってきておるのであります。その結果、労働者が直接組合の雇用者になるという形に現在変って参りまして、労銀ベースの方も漸次向上してきております。
  165. 田万廣文

    ○田万委員 私の調べたところによりますと、労働省の統計によれば、一般産業の労働者の賃金は、月一万八千五百円ということになっております。ところが塩業関係につきましては、全国平均の賃金は、一万四千円から一万五千円の程度でとまっております。これを言いかえるならば、一般の産業に比べて非常に低賃金に押えられておるという事実がここに現われておるわけです。私は香川県でありますが、香川県は、御案内の通り有数な塩の生産県であります。ここの賃金のベースをとってみますと、平均賃金は、八時間労働で一万円になっております。一カ月のうち休日も出勤し、十八時間平均で深夜作業もやって、総収入が一カ月一万二千五百円、こういう数字が出ておるわけです。これは、言いかえるならば、香川県においては、重大な塩の生産県でありながら、労働者の雇用条件が最悪な立場に置かれておるということがはっきり証明されておると思うのであります。ところが、今政府がお考えになっておる収納価格を引き下げるということになりますれば、ただでさえも相当低賃金で抑えられておる塩業労働者が、その収納価格の引き下げのしわ寄せを受ける危険が多分にあると思うのです。そういうところから、企業家も赤字財政で苦しんでおるために、収納価格の引き下げについては反対しておりますが、地元で働いておる労働者の諸君も、今言った実情で、賃金にしわ寄せをせられるということを非常に不安に思っておるので、これはぜひ実情をよく御考慮いただいて、収納価格引き下げについては、慎重な態度で臨んでいただきたいと私は思うのです。  それと、もう一つこの際申しておきたいことは、なるほど流下式への切りかえで、企業の伸展度に大きな開きがあることは聞いております。従って、特殊な二、三の企業体の場合を除いては、その大半は、ほとんど事情やむを得ないで出足がおくれておるというので、今ここで収納価格を引き下げられたら、たちまち生活困難を来たします。これも、業者並びに労働者の諸君の一つの大きな反対の原因になっているということも、御承知を願いたいと思うのです。  それからもう一つは、先ほどちょっとお話がありましたが、石炭、鉄鋼、こういう生産に必要な物資の値上りがどんどん今行われております。そういう物価高のときにおいて生産された塩は、相当高いコストで政府に売り渡しをせなければいけない、相当な価格で引き取ってもらわなければいかぬ。反対に高く引き取ってもらわなければいけないと思うものが安くなるということは、これは、だれが考えても反対せざるを得ない大きな理由になっておる。これも、はっきり御承知いただいておると思いますが、なお、さらに考慮していただかなければならぬことだと思うのです。現在聞くところによれば、引き下げは大体一トン当り普通品で五百円から千円までの間で引き下げようということを考えておるというふうにいわれておるのでありますが、この点いかがでございますか、なお念のためにちょっとお伺いしておきたいと思います。
  166. 守田富吉

    ○守田説明員 金額の点につきましては、全く現在なお決定いたしておりません。ただ生産費の昨年度の調査の実績からいたしますと、その程度低くなっておるわけでございまして、数字的にはそういう数字も一応出ておるわけであります。これは、収納価格の引き下げとは直接には関連していないわけでございまして、明年度どの程度下げるかということは、全く現在まだ未決定でございます。
  167. 田万廣文

    ○田万委員 業者の方から専売公社に対して、収納価格引き下げには反対が今行われておるかどうか、この点いかがでございますか。
  168. 守田富吉

    ○守田説明員 塩業者の団体であります塩業組合中央会並びに全国塩田労働組合総連合というのがございますが、これらの団体から引き下げ反対、二カ年くらいぜひ収納価格を据え置いてもらいたいという相当強い要望が出ております。先ほど先生のお言葉にもありましたように、御趣旨のほども体しまして、十分検討いたしたいと思います。
  169. 田万廣文

    ○田万委員 収納価格の点についてお尋ねしますが、現在収納価格を決定せられておる線は、どういうような手続で、どういう人々が集まって決定しておるのでございますか。私どもの聞くところでは、少くとも米価審議会のように、一般の民主的な組織における決定のいたし方をしておらぬというふうに聞いておるわけです。その実態を話していただきたいと思います。
  170. 守田富吉

    ○守田説明員 収納価格の決定は、前年度の生産費調査に基いて行うのでありますが、この生産費調査を行うに当りましては、各地方局ごとに業者並びに適当な学識経験者も入っておることもございますが、そういう人たちを、各地方局ごとに生産費調査委員というものに委嘱いたしまして、その調査委員と公社の出先の者とが一緒になりまして、各組合なり会社なりに参りまして実績を調査いたすことになっております。なおもし調査委員と公社の生産費調査の方式で意見が食い違うというふうな場合には、この調査委員は、意見書をつけて、公社の調査が不適当だ、自分の意見ではこういうふうな調査にした方がいいとか、あるいはこういう項目を入れた方がいいというふうな意見をつけまして、本社の方へ申達してくることになっております。そういうふうにして集まって参りました各地方局の管内の各塩業者の生産費を集めまして、大体安いところから並べまして、下の方から七五%ないし八〇%のところくらいにバルク・ラインをとりまして収納価格としておるわけであります。
  171. 田万廣文

    ○田万委員 小さいことを聞くようですが、そのバルク・ラインですが、このパーセンテージの中で、労働者の賃金をどのくらいに評価されておりますか。ウエートの問題ですが……。
  172. 守田富吉

    ○守田説明員 現在の収納価格は、二十九年度の生産費の実績によって作ったわけであります。そのときのバルク・ライン上にありました事業者の各費目の構成を見ますと、採鹹労務費が塩トン当り三千六百四十五円になっております。
  173. 田万廣文

    ○田万委員 トン当り三千六百四十五円という比率からいくと、特に香川県の全国で最低の賃金ベースに比べて、どういうふうな考えを持たれますか。というのは、三千六百四十五円の率に比べれば、香川県の賃金ベースというものは非常に低過ぎるという線がここに出ているのではないでしょうか、いかがでしょう。
  174. 守田富吉

    ○守田説明員 香川県は、一ヘクタール当りの生産量は全国一の成績を示しているのでありますが、何分にもあそこは企業単位が非常に零細でございまして、普通半軒前と申しまして、大体七反五畝ぐらいが一組合員の経営単位になっております。そこにまた数人の労務者が雇われてやっているというようなことでありまして、労銀ベースといたしましては、おっしゃる通り非常に他の地区に比べて低いようであります。
  175. 田万廣文

    ○田万委員 説明になっておられます守田さんは、かつて香川県の出先機関の塩脳部長をなさっている、従って特に香川県のことはよく御案内でありますが、この専売公社に対して、地方の業者が、労働賃金はこのくらいになるといういわゆるバルク・ラインの計算に基く報告をいたしておるわけですね。その報告している賃金のレベルと、実際に労働者に香川県の業者が払っている賃金の額というものとは大きな開きがある。これを、私どもは大きに問題にせねばいかぬと思うのでございますが、とにかく公社としては、一応業者の申請した、報告せられたところの賃金というものを信じておられたと思うのでございますけれども、実際問題としては、払っている金はうんと切り下げて払っているのに、労働者の賃金は、あたかもたくさん払っているという計算において、自分に有利な報告をしているというのが実態である。これは、当時塩脳部長でおられた守田さんも、十分実態は御存じでなかったかもしれませんけれども、そういうことで、ほんとうに香川県の労働者は低賃金で押えられているという事実を、東京のこちらに来ておられまするが、そういうことを御認識いただきたいと思う。それだけに、今度の収納価格の引き下げというものは、二段にも三段にも切り下げられて低賃金に追いやられ、非常な苦痛な立場になるということを御認識していただきたいと思うのです。それと、もう一つ私はお尋ねいたすのでありますが、収納価格については、今のお話しによれば、学識経験者の地方局における調査委員と、それから出先機関のおえら方がきめるというお話でありますが、この学識経験者という人は、どういう人をさしておるわけですか。
  176. 守田富吉

    ○守田説明員 地方局で現に委嘱しております生産費調査委員は、塩業者の場合といたしましては、当該組合の役員、もしくは経理に特に明るい経理担当役員、もしくは職員を委嘱することもございます。それから一般学識経験者としては、塩業連合会の事務当局、あるいは公社出身の塩業精通者というふうなものを委員に委嘱しているわけでございます。
  177. 田万廣文

    ○田万委員 米価審議会におきましても、やはり国会議員を入れておることは御案内の通りであります。塩といえば、生活においては重大な役割を果しておる食料でございまして、ある意味においてはお米と同じくらいの物資です。従って、塩に対する価格は、米価審議会におけるごとく、やはり地方の有識者といいますか、言いかえるならば生産者代表、労働者、資本家、それから消費者代表、それと学識経験者といえば、国会議員が必ずしも学識経験者とばかりは言えないでしょうけれども、中には優秀な学識経験者もおるのでありますから、米価審議会におけるがごとく、やはり国会議員というものも含めて塩の価格を合理的に決定していただきたい。これは民間の声なんですが、これに対して専売公社の方では、そういう機構で収納価格をきめてやろうというお気持はあるのでございますか、ないのでございますか。これはもしお答えできにくければ、その局の人でもけっこうです。
  178. 白石正雄

    ○白石政府委員 ただいままで公社側から御説明申し上げましたことは、塩の収納価格をきめるに当りまして、事実上今までやってきている実際を申し上げた次第でございます。御承知のように米価につきましては、法律上の制度といたしまして、米価審議会が設けられておりまして、そこに選ばれた方々によって審議が行われておるわけでございますので、専売制度の全体といたしまして、塩だけでなしに、葉タバコも御承知のように収納いたしておりまして、これにつきましても同じような問題があるわけでございます。今回葉タバコにつきましては、特に法律上の制度として、収納価格の審議会を設けてもらいたい、こういう御要望がございまして、従いまして、私どもといたしましては、この御要望にこたえまして、近く法案提出いたしたい、かように準備を進めておる次第でございます。そういうことになりますと、塩につきましても、やはり建前上法律上の制度として、収納価格の審議会を設けることが筋道かと考えるわけでございますが、これにつきましては、いろいろ関係者の御意見もあるようでございますので、タバコの方の法案とにらみ合せながら準備して参りたい、かように考えておりまして、その節においては、御説の点も十分検討の上善処いたしたい、かように考えておるわけであります。
  179. 田万廣文

    ○田万委員 まことにけっこうなことでありますが、今度の三十二年度の収納価格を決定する際におきましても、やはり民主的な、今のお話の線に沿った一つの審議会と申しますか、そういうものができて後に十分検討してきめていただかなければならぬと私は考えるわけですが、もちろんそういう線になっていくわけでしょうが、どうですか。
  180. 白石正雄

    ○白石政府委員 タバコにつきましては、先ほど申し上げましたように、今国会にその法案提案すべく準備いたしております。塩につきましても、筋道は本国会提案すべきかと思うわけでございますが、これは、関係諸方面の御意見をただいま徴しつつありますので、直ちに今国会提案するところまでいくかどうか、本日までのところ、まだはっきり決定いたしていないような状況でございますので、もし本国会提案いたしまして成立いたしますれば、もちろん法律公布時からさように相なるかと思うわけでございますが、もしその準備がさように相ならないというような場合におきましては、あるいは若干ずれるということも考えられるわけでございまして、私どもといたしましては、できる限りこれは歩調を一にすべきものだと考えておりますので、さよう関係者の意見のまとまることを期待しておるような状況でございます。
  181. 田万廣文

    ○田万委員 タバコの方においては、今話されたような機関ができる、そして合理的な価格の決定をいたしたいという御意見ですが、タバコももちろん大切かもしれませんが、塩はタバコより以上に生活必需物資として必要だと思う。従って価格の決定について、タバコでさえも委員会ができて合理的な価格を決定して、これを大衆に理解していただくという線でやるのならば、今度の収納の価格の点については、なおさら委員会あるいは審議会というものを作って、その委員会において正当にきめられた価格で収納価格を決定してもらいたい。これは私の希望でありますとともに、絶対にそれは業者なり労働者の諸君なり、塩業関係の者は一体になって希望していることだと思うのでありまして、今直ちにあなたの方から、それをいたしますとか、あるいはそれはできないという御答弁ができなければ、そういう大きな世論をはっきり耳にとめておいて善処していただきたいと思います。  それから最後に流下式に切りかえたために失業者ができている、この問題についてお尋ねしますが、全国で流下式に切りかえて、従来浜で労働しておった労働者の首切り問題が起きていると思いますが、これはほとんど解決しておりますか、未解決の問題が全国で残っておりますか、その実態を聞かしていただきたい。
  182. 守田富吉

    ○守田説明員 各地で相当の合理化、人員整理が行われておるわけであります。公社としては、労働者と使用者側で円満解決を見ましたところから流下式をやらすように指導いたしております。従いまして、ほとんど各地とも現在は問題を残している点はないのでございますが、ただ香川県で一カ所現在解決を見ないで、多少ごたついているところがございます。
  183. 田万廣文

    ○田万委員 お話によれば、全国でほとんど問題は解決せられた、ただ香川県において一つまだ争議といいますか、労使間に話がついておらぬものがある、これは私もよく存じておるのでありますが、鹹水請負契約というものが果して企業体であるか、あるいは鹹水請負契約をしておるその者が会社の従業員であるかということについての御見解はいかがなものでしょうか。ちょっと立場が違うからお答えがしにくいかもしれませんが、いかがですか。
  184. 守田富吉

    ○守田説明員 法律的な解釈につきましては、おのずからその方の機関がございますので、私の方といたしましては、法律的な解釈につきましては何とも申しかねるのであります。ただ、この企業請負人と申しましても、非常に小さな一つの面積を請け負うておるわけでありまして、しかもほとんどは自分が浜におりて作業しているというような点から見まして、やはりこれが整理に当っては相当の配慮をなすのが当然であるというふうに考えて、現地の地方局にも指導するように申しておるのであります。
  185. 田万廣文

    ○田万委員 経営者の方で朝旗を出す。赤い旗を出し、白旗を出す。いろいろ旗によって、その日、その日の鹹水の生産高がきめられておるというような場合であれば——これは仮定の話です。やはりそれは一個の企業家でなくして、従業員的な立場に置かれている労働者であるというふうに解釈せられると思うのですが、もしそれが、今話しているような実態であればいかがなものでございましょうか。
  186. 守田富吉

    ○守田説明員 そういうふうな、作業の内容につきまして一々指図をするということになりますと、事業者的な色彩が非常に薄い、言いかえれば、労働者的な要素が多いということに考えられると思うのでありますが、それだけをもってどうという結論は下しにくいと思います。
  187. 田万廣文

    ○田万委員 結論は鹹水請負契約が企業家であろうが、あるいは労働者であろうが、専売公社としては、この流下式に切りかえる結果として失業しないように、相当な金を支給して生活を安定さしてやるということになっておると私は思うのです。この間、塩脳部長さんにもお目にかかってそのお話をしましたが、そういうお話があったと私は記憶しておりますけれども、当局のお考えは、やはりその通りと承わってよろしいわけですか。
  188. 守田富吉

    ○守田説明員 現に紛争中の香川県の問題につきましては、流下式塩田への転換に対して、普通、公社といたしましては、農林漁業資金あっせんをいたしておるわけでありますが、現に紛争中でございますので、一応農林漁業資金あっせんを保留いたしております。それで、極力これを円満解決をするように現地であっせんをいたしておる次第でございます。
  189. 田万廣文

    ○田万委員 最後に申し上げますが、どうか香川県における問題は、日本でただ一つ残った問題として、一日も早く専売全社が地方局を督励して問題の解決に当らせるように、あっせんをお願いしたい、こう思うのです。これは私の希望でありますから、御答弁は要りません。
  190. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 竹内俊吉君。
  191. 竹内俊吉

    ○竹内委員 金融問題について二、三お尋ねしたいと思っておりましたが、時間がなくなりましたので、一つだけわからぬ問題をお聞きしたいと思います。  大蔵当局は、現下起きている金融事情から考えたことだと思いますが、市中銀行に融資協調団、シンジケートを結成さしたいという希望があるようで、先般池田大蔵大臣が公けにその旨を発表されたように記憶しております。そのねらいは、要するに銀行間のむだな競争を避けて、貸し出しを押えて、資金の効率を高めようということだろうと思うのであります。また実際、今日民間の協調融資が行われておりますことは、私ども五、六年金融機関の役員をしたことがあって、一年間くらい実務をやったことがあるから知っておりますが、これは別に法律の基礎に基いたものでもなく、銀行間の話し合いでやっておるわけでありますが、今度大蔵省が考えておりますこの協調融資銀行団を作るということは、このことに対して何らかの形を与えようということだろうと思うのであります。これは、もちろんうまく運用されればいいことには相違ありませんが、一面またこれを作っても、そう大きなきき目があるかどうかという疑問も感ぜられることがあるし、やり方によっては、相当の弊害も生ずることである。最近の新聞の報ずるところによると、先般全銀連の理事会においてこの問題を取り上げて、自主的に融資銀行団の結成をはかってみたが、結論に達しなかったということが出ておりました。そこで、大蔵当局はどういう形において結成しようと考えているのか。銀行間の自主的な融資の調整の方法として、銀行協会で自主的にやらせようというのか、それとも法律をもって多少強権をもって融資規制法というようなものを作ってやろうとしておるのか。まだ構想の範囲だと思いますが、今考えられている点を一つお聞かせ願いたい。
  192. 東條猛猪

    ○東條政府委員 ただいま市中金融機関の融資に当りまして、シンジケート的なもの、つまり協調融資の態勢で参りますことは、当面の金融情勢上適当であるということにつきましては、そういう大きな方向につきましてはさように考えておるのであります。大蔵大臣が財政演説その他いろいろな機会に申し上げておりますように、いわゆる健全金融という方針のもとに、原則として蓄積せられた資金の範囲内において融資が行われるということに相なりますと、自然融資の行われますいろいろの融資先にいたしましても、あるいは各種の産業部門にいたしましても、各種の金融機関の間でむだなく効率的に資金の運用が行われることが必要なことは当然でございますので、さような観点からいたしますと、当面の資金の需給の状況、あるいは全体の経済情勢にかんがみまして、そういう融資に当って協同歩調がとられることが望ましい、こういう次第でございます。そこでお話しの、それは金融機関側の自主的な運営によるのか、あるいは何らか構想としても法制的なことを考えておるのかという点でございますが、私どもは、やはりこの問題は、金融機関の自主的な動きによって達成せらるべきものであると考えております。政府といたしましては、御承知でいらっしゃいますように、金融機関資金審議会というものを持っておりますが、市中金融機関の融資の基本方針につきましては、ここへ金融機関、産業界、あるいは学識経験者、そういう方々に御参集いただきましていろいろ審議をいたします。そういう審議会におきまする各種の審議の結果といたしまして、やはり民間の市中の金融機関において各種の連絡なりを持っておりますので、どういうふうにすれば共同的に、しかも効率的な資金の運用がうまく行われるかということについて、自主的な運営でその効果を上げて参りたい。たとえば特定の会社につきましては、社債の受託会社でありますとか、あるいは幹事銀行というものがありますことは御承知の通りでありますが、実際問題といたしましては、個々の場合に、そういうものが中心になって関係の金融機関と話をして仕事を進めていくということに期待をいたしておるわけであります。先般の全国銀行協会の会議におきましても、もちろん結論までは行っておりませんが、大きな方向といたしましては、何とか自主的にそういう実をあげて参りたいという熱心な動きが見られますので、私どもの方といたしましては、法的な規制というようなことは考えておらないのでありまして、自主的な動きで効果が上るだろう、かように考えておる次第であります。
  193. 竹内俊吉

    ○竹内委員 これを自主的にやるか、あるいは法制的な根拠に基いてやるかということは、非常に大きな問題だろうと思います。今のお話では、自主的におやりになるということですが、これは現在もやっておるわけです。現にやっておるのだが、そのやっておる点がなお足らない。あるいは、たとえば幹事銀行というものがあって、幹事銀行だけがいろいろな担保の管理でありますとか、そういうようなことに当っておって、他の銀行はあまりそれに関与していないために、何か事が起きた場合にかえってめんどうなことが起るから、これらに対して何らかの形を与えようとすれば、自主的にやるとしても、大蔵省の考え方というものはよほど強く反映するものだと考えますが、現状の協調融資に対して、特に融資協調銀行団の結成を要望するという声を新たにあげた理由はどこにあるのか、その点、簡単でよろしゅうざいますから、御説明願います。
  194. 東條猛猪

    ○東條政府委員 最近の各種の産業の設備資金、あるいはそれに伴います運転資金の需要は、根強いものがあるということは御承知の通りだと思います。従いまして、最近の資金の需給の状況、また新年度予算は、御承知のように、中立的な予算であるという観点からいたしますと、やはり今後におきましては、こういう資金の需給の状況、あるいは経済全般の状況から、金融機関に蓄積せられた範囲内において、昨年度以上に貸し出しが行われるという原則を貫徹いたして参りますためには、従来よりさらに一段と各種の金融機関の間で行き過ぎた競争は避け、重点的に、しかも協同歩調をもって大事な部門には金が流れて参るということはどうしても必要なことであろうと思います。その必要性は、昨年にも増して今後必要になってくるというふうに考えておるわけであります。  そこで、仰せのごとく、ただいままでの実績を振り返ってみますと、幹事銀行あるいは受託銀行というものがいろいろ努力はいたしておりますが、必ずしも十分の効果を上げておらないということも、これまた事実でございますので、先般全国銀行協会に自主規制委員会、投融資委員会の共同の委員会を作りまして、その下に、各銀行の相当大事な仕事をしておる常務クラスの合同幹事会というものを結成せられまして、その合同委員会ないしは合同幹事会でいろいろと意見を交換し、また考え方を忌憚なく申し上げております。こういう機関の発足の当初は、必ずしも十分の効果が上らないということもありますが、私の方も、だんだんお互いの気持を遠慮なしにそこでぶちまけて話し合っていくという機運もできておりますし、一部の銀行の経営責任者の方の中には、受託銀行、幹事銀行というものを中心にして、あるいは開発銀行との話し合いの機会も作る、そうして政府関係機関と市中金融機関との融資の順位、金額あるいはボリュームの調整というものもやって参りたいし、場合によっては、各種の金融機関資金量、あるいは当面これだけの融資ができるというような話し合いを中心にやっていきたいと言っておる方もありますし、そういう大きな方向に向いておりますので、私といたしましては、そういう自主的なことで効果を上げて参りたいと思っておりますが、大蔵省といたしましても、そういう方面で効果が上るようにできるだけの協力はして参りたい、こう考えております。
  195. 竹内俊吉

    ○竹内委員 これは、大蔵省の指導方針いかんによっては、一種の資金統制的な色彩を帯びてくる、こういう考えがあるようにお聞きするわけです。大口の貸付は、協調融資の形によってやっていきたい、そうすることによって資金の貸付の行き過ぎを押えることもできるし、危険の分散もできる、こういう考え方が銀行家の中にあると思いますが、端的に言って、そこがねらいでありますか、その一点だけお答え願いたい。
  196. 東條猛猪

    ○東條政府委員 今仰せのようなことが相当大事なファンクションになると考えております。
  197. 竹内俊吉

    ○竹内委員 そうなってくると、これは非常に法制的ではないが、金融界及びそれを受ける産業界に重要な影響を与えるものだと考えるのでありますが、この問題について、最近全銀連の佐藤会長が意見を発表したところを要約してみると、一、二、三と分けて、こういうことを言っておる。優良大会社の多くは、特定の銀行と系列関係にあるので、他の銀行を含めて協調融資団を作ることを好まない、これが第一点。第二点は、銀行側で協調体制をとっても、産業界の競争が激しくなれば、銀行の意見だけで各社間の資金量を調整することは不可能である。第三点は、これは競争を制限するので、独禁法に触れるおそれがある。以上の三点をあげてやや難色を示しておるわけであります。  そこで、第三の、競争を制限するので独禁法に触れるという佐藤会長の考え方は、銀行側から見た考え方でありまして、銀行間の競争を制限することが独禁法に触れるおそれがあるという意味だろうと思いますが、このほかにも、協調融資というもののやり方によっては、いわゆる独禁法に触れると申しますか、そういう傾向が強く現われてくることを懸念するものであります。そこで一、二、三の全銀連会長の意見に対して、大蔵当局はどういう考えを持っておられますか。
  198. 東條猛猪

    ○東條政府委員 現在の現実の問題としてむずかしい問題があることは否定できないと思います。しかし、先ほどから申し上げておるように、現在の国の経済情勢から考えますと、やはり金融機関の供給する資金というものがむだがないように、しかも蓄積の範囲内において一番大事なところに流れていくということは、ぜせとも達成しなければならぬことでありますので、いろいろむずかしい現実の問題があるということはわかりながら、なお何とかそれを解決をいたしまして、所期の効果を上げたいということをわれわれは望んでおるわけであります。それで、あるいは順序が乱れるかもわかりませんが、銀行と企業との間に、場合によりまして、系列関係がありますことも、御承知の通りであります。しかしながら、その系列ということが、必ずしもほかの金融機関と提携するということではなくて、大きな系列には入っておるけれども、やはり取引の銀行というものも多数にあるという事例もあるわけでありまして、そういう場合において、やはり話し合いの余地はある問題である。  それから第二の産業家との話し合いが必要だということも、これもその通りであると思う。直接打ち合せの結果を聞いておりませんが、先般も九電力の経営者側の方と金融機関側の方と経済団体連合会で会合を持たれたようなことも聞いております。金融機関だけでこういう問題の解決はできないこともお話しの通りでありまして、これだけむずかしい問題でございますから、お互いに隔意なく意見の交換をし、資金計画の再検討できるものは、企業側でも再検討してもらい、また金融機関側でも、勉強すべきことは勉強してもらうということで、産業側と金融機関側との間の話し合いでやっていかないと、なかなかむずかしい点があることはお話しの通りだろうと思う。  それから第三の、独占禁止法関係に抵触するようなおそれがありはしないかという点でも、これは、こういう措置が講ぜられる場合、こういう話し合いが行われる場合において、最も注意を要すべき点でありまして、さればこそ、私どもといたしましては、事実上の話し合いによってそういう弊害を生ずることなく、しかも所期の成果を上げるように、これはみなに努力してもらわなければならぬし、われわれとしても注意しなければならぬ、こう思っております。仰せのように、非常にむずかしい問題がありますことは、私は決して否定いたしませんけれども、むずかしい事実があるにかかわらず、現在の経済情勢はそこにいかざるを得ない、またいかざるを得ないのではあるまいかということで、金融機関側も、産業界側も、またわれわれも努力しなければならぬのではないかと考えております。
  199. 竹内俊吉

    ○竹内委員 今の一、二点は、これはやり方いかんによっては、局長のお説の通り、努力によってはよくいく可能性も大きいと思いますが、第三の独禁法に触れるおそれがあるということは、むしろ佐藤会長が言っておるように、銀行間の競争を制限するから独禁法に触れるおそれがあるという懸念よりも、私は、協調融資が行われた場合は大へん便利であって、うまくいけば効果の多いことではあるが、もしこれがやり方によっては、一社が単独に貸し付けた場合よりも、産業資本に対する金融の圧力と申しますか、それが非常に強いということはいなむことのできない事実だろうと思います。従来行われておった協調融資等におきましても、えてして問題が起ります場合は、幹事銀行が、いい意味においては他の銀行に対する責任上やらざるを得ないという場合もありましょうが、単独の一行から貸し出す貸出よりも非常に強烈な方法をとって、いわゆる債権保全の道を講ずるということが今までの例であるようであります。この点の懸念は非常に強いと思いますが、そこはどういうふうにお考えになっておるか。
  200. 東條猛猪

    ○東條政府委員 協調融資ということによりまして、その結果金融機関の貸付というようなことが、いわばその個々の場合において独占せられるというようなことでございますると、ややもすればお話しのように、いわゆる不公正取引ということに走る危険なしとはいたさないのであります。そこで、その協調融資が現実に多くの場合、現在でも、たとえば船の場合とか行われておりますが、そういう一方において、ぜひとも協調的な融資方法によって達成したい一つの目的があるわけであります。それを行うことによって、他面において、いやしくも不公正な取引のおそれの生じないように、これは金融機関の側におきまして行き過ぎのないようにかたく自粛してもらわなければならぬことでありますとともに、監督官庁でありまするわれわれの方でも、そういうことにならぬように十分の戒心をして参りたい、かように思います。
  201. 竹内俊吉

    ○竹内委員 もう少し順序を立ててお聞きしたいと思いましたが、時間がだいぶおそくなりましたので、この協調融資が、今申し上げたような債務者にとっては、非常に強力な圧力を加える可能性が多い。その点の懸念が、これから大蔵省がどういう形において協調融資を奨励するにしても、重要な眼目の一つであろうと考えられるのであります。そこで最近協調融資が、今申し上げたような、いわゆる金融資本の産業支配の形をとったものが二、三にとどまらず事例があるわけであります。先般、この二十五国会になりましてからも、商工委員会において二度、わが党の篠田弘作君と社会党の中崎敏君から質疑がありました三菱銀行と近江絹糸の間に起きております。また読売新聞を初めとして各新聞に最近報道せられておりますこの事案は、そういう意味で、私は一つの大きい政治的な意味があると考えますので、先般の委員会で局長から篠田君に対する答弁もありましたが、必ずしも明瞭でなかったので、この問題を、今申し上げたような観点から二、三具体的なことをお聞きしたいと思うのです。要するにこの事例は、三菱銀行が第一、三井、協和、富士その他七行と協調融資の形式をもって大口に近江絹糸に貸付をした。その幹事銀行が三菱銀行である。それがたまたま近江絹糸の争議を奇貨としてその跡仕末の場合に、近江絹糸の債権を名目として、結局は三菱銀行が近江絹糸を乗っ取ったという疑いがあるというのが喧伝せられておる要旨であります。この事案は、今公正取引委員会にかかっておりまして、事柄はそこで運ばれておりますが、そこで私はお聞きしたいのであります。まず最初に、この事例の篠田君の質問に対して銀行局長は、十二月の何日かでありますが、よく調査をして、その実態を把握して御報告しますという意味のことを御答弁されておりますが、その後だいぶ時日がたっておりますので、今申し上げたような疑いに対する大蔵省側としての調査ができておりますならば、それを一応御説明願いたい。
  202. 東條猛猪

    ○東條政府委員 個々のこまかい成り行きにつきましては、すでに御承知のことでございますので、一々については省略を申し上げたいと思います。私どもといたしましても、銀行側から銀行としての考え方、また銀行側としていろいろの措置をいたしました事情につきましては聞き取りをいたしました。それからまた、これは私どもの仕事の範囲が、何と申しますか、比較的制約されておりますので、金融機関以外の方に直接われわれの方にお越しを願ってお話を伺うという機会は、比較的ないわけでありますけれども、私間接的な方法で、今回いわゆる融資銀行団の態度を不服としておる側の考え方もよく承わったつもりでおります。そこで、現在のところ私どもといたしましては、この融資銀行団の一連の措置が、果して訴えられたごとく近江絹糸紡績株式会社の、言葉は悪いですが、乗っ取りということであるのか、あるいは融資銀行団が融資者の立場、あるいは株主としての立場、そういうものから、いわばそういう株主あるいは債権者、こういう立場からやむを得ずやった措置であるのかということにつきましては、その結論については、今大蔵省としては態度をきめるべきでない、公正取引委員会で事実関係の調査をいたしておりますので、その結果をにらみ合せまして最終的な態度はきめるべきである。しかし大蔵省といたしましては、そういういわば事実関係の十分なる調査とにらみ合せてやりたい。と申し上げておりますのは、私どもがいろいろ聞きました限りにおきまして、この融資銀行団のやり方が、会社の乗っ取りということを目的とした直接的な意図のもとにやった、従って是正を命ずる必要があるというところまではわれわれの考え方は立ち至っておらない、そのいずれになるかということは、公正取引委員会の事実上の調査の進行とにらみ合せて定めたい、かようなのが現在におきます私どもの立場でございます。
  203. 竹内俊吉

    ○竹内委員 銀行局長のお立場はわかるのです。わかるが、調査をした結果、今問題になっておる点の事実とはなはだしく反する点があるかどうか。大体あの通りだが、今われわれは判定を下す立場じゃない、公取の結果を待って、それとにらみ合せてやりたい、こういう意味なのか。その一点をお聞きしたい。  それから公取がどういう勧告を出すか、あるいは審決に達するかということは、これは公取独自のことであってこれは私は全く別だと思う。一体どこが法に触れるのか、触れないのか、触れるとすれば、どういう点が触れるから、これを排除しようとして指示するのか、これは公取がやることであって、大蔵省のやることではないかもしれません。公取そのものは、行政指導の任を持っておるものではもちろんありませんが、大蔵省としては、それとは別個に、日本の金融行政を扱っておるものとして、かような事態が起きた、しかもこれは非常に喧伝されておって、産業資本に対する金融資本の攻勢の最も代表的なケースといわれておる場合に、どうも公取の態度がきまるまでは大蔵省は態度をきめがたいのだということでは、ちょっと了承がしにくいと思う。そうなると、どうも銀行局というものが、何か無定見のそしりを免れないということを言わざるを得ない。そうでなくて、まだわれわれは判定に達するまでの事実は把握していない、これからもっと掘り下げていきたいと思う。そのためには公取云々というなら多少わかるのですが、公取のあとをついていかなければ大蔵省の金融行政は行われがたいのだということだと、私は了承しがたい、その二点を一つお聞きしたい。
  204. 東條猛猪

    ○東條政府委員 争議行為がございましたあとで、融資銀行団から新しい経営者、特に労務管理の問題と経理の関係を中心にいたしまして、新しい経営者が乗り込んできた、これは事実でございます。それから加古川工場の建設資金の問題で、新しい資金を出すのには、どうも従来の社長の立場というものを信頼しがたいということでもって、この水野という副社長が選任をされた、これも事実であります。それから後日元東洋紡績に関係しておりました神前氏が技術関係の専門家として会社に迎えられた、そうして神前氏に社長になってもらいたいという交渉が行われたのでありますけれども、本人の意向でそれが実現しないということで、今の水野元副社長が社長に昇格して、神前氏が副社長になり、そして夏川氏が会長となった、この時期の順序は必ずしも正確には覚えておりませんが、そういう一連の人事の変革があった、こういう事実につきましては、融資団の態度がけしからぬと言っておられることは、事実はまさにその通りであります。いろいろとこまかい点になりますと、多少のニュアンスの違いはありますけれども、事実の大筋においては変りはないと思います。  それから銀行局として、公取の調査を待たないと態度がきめかねるというのは、無定見ではないかという仰せでございましたが、これは、あるいは私の言葉が足りなかったかと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、私の方の調べております範囲では、金融機関側からは直接話は十分聞いておるつもりであります。それから銀行団の態度が悪いといって訴えておる側の立場、説明も間接には私は聴取いたしております。しかし公取が行なっておりますように、たとえば工場の職員側と申しますか、工員の代表の人を呼ぶとか、あるいはそれに関連いたしまして全繊同盟の人を呼んで、いわば労働者側の本件に関する態度なり考え方を聞く、これが、相当私はこの近江絹糸の場合には、人事の刷新その他において大きなファクターであったと思っておりますが、そういうことは、私どもの方としては実はいたしかねております。そういう関係もございますので、私どもといたしましては、事実関係の調査について公取の調査も進行中でございますので、その結果を待ちまして、私どもとしての最終的な態度をきめたい、こういう趣旨でございますので、言葉が足りませんのは、どうぞ御了承願いたいと思います。
  205. 竹内俊吉

    ○竹内委員 私は、近江絹糸と三菱銀行の問題は非常に大きい二つの意味があると思う。一つは、銀行が債権保全のために手を尽しておるということ、これはある程度当然であります。当然であるが、銀行の任務であるところのいわゆる産業育成の考え方を全部そのために忘れてしまうということであるならば、大へんな問題が起るわけです。この事案は、その点から見てやむを得ないものであるか、行き過ぎであるかという一つの大きい代表的なケースであるということが一つ。もう一つは、いわゆる最近いわれておるところの金融資本の企業支配というものの一つの代表的ケースである、そういわれておるのである。この内容を明らかにするということは、政治的に非常に大きいばかりでなく、大蔵省の金融行政の面においても相当に重要視しなければならぬ、こう考えるので、二、三銀行局側の方にたってお尋ねしたいと思いますが、この事案の中でちょっとわれわれ不思議に思いますことは、独禁法によると、金融機関が他の会社の株を百分の十以上持ってはならないという規定があるわけですが、この規定は、一つは、いわゆる金融資本の産業支配をどう予防するかという点も含むだろう——もちろんそれだけではありませんが、それを含むだろうと思うのですが、近江絹糸に現われたところを見てみますと、その融資銀行七行が持っておるのは、総株数に対して二八%であります。いわゆる二千万株のうちの五百六十万株を持っておりますから、二八%であって、一行々々について見るといかにも法定の範囲内ではありますが、問題が起きて、近江絹糸再建の名のもとに行われましたあの一連の操作の際に、この二八%の株権の行使によってほとんど旧経営者を全部、何といいますか、悪い言葉で言えば追い出して、そっくり新しい重役が、銀行側の指名する者が入ったというところに、私は一つの問題があろうと思う。なるほど、これは個々の銀行についてみると法定範囲内の株であるし、株主が偶然に一致した行動をとるということも、もちろんこれも法的に何とも言えない問題ではあるが、この二八%の株主権行使について考えてみると、新聞等でいわれておる、銀行が持っている株であるから、銀行そのものは二八%しか株を持っていなかったが、他の株主に対して相当な圧力があったであろうということさえいわれておるわけでありまして、こういう点から考えてみると、貸金と株主と双方から攻め立てられたならば、こういう事態に立った産業人というものはたまるものじゃない、そういう事態から考えてみると、法的にはもちろん正当行為であるけれども、銀行の力がときどきこういうように貸金と持株と双方から発揮されるというのであれば、全産業人が金融機関の前に萎縮せざるを得ないと思う。これはいいとか悪いとかいう決定的なことを大蔵当局に求めても無理かと思いますが、この事態に対してどういうお考えを持つか、御調査されて、この程度のことは銀行側から見て御承知のはずでありますから、その点を一つ伺っておきたい。
  206. 東條猛猪

    ○東條政府委員 計数の問題でございますから、これは申し上げぬでもいいことでありますけれども、念のために申し上げておきますが、現在の資本金は御承知のように二十億円、倍額増資になっておりますので、この点の数字だけ、よけいなことでありますが申し上げておきます。  それで、私的独占禁止に関する法的な解釈につきましては、今竹内先生もお話しのように、私は法規違反ではないと考えております。問題の中心は、そうはいいながら、事実上相当数の株を持っている、しかも債権者としての強い力がある、そういうものをバックにして経営者を送り込んで、いわば経営陣の壟断をやっている、乗っ取りというように思われるが、その点はどうかという点であります。そこで、そういう有力な債権者でもありまするし、また大株主であるということは、お話の通りであります。しかし、金融団が経営陣を送らざるを得なかった事情というものが別にある、これは、従来の経営者がそのままやっていきますということでは、労使の関係がうまくいかない、労働協約の問題でも現われておりまするように、一たんは話し合いがついた労使の間が、ややもすれば険悪な状況になりがちである、そういう面から考えまして、今後のこの会社の発展をはかっていくためには、経営陣を変えてもらうことが、いわば正当な株主として、あるいは正当な債権保持の立場から見てぜひとも必要であるという、株主権、債権者の立場を保全するということから経営者の入れかえが必要であります。またそうでなければ、この近江絹糸というものが立っていかないんだ、株主権がそこなわれるし、債権保全がうまくいかない、そういう考え方からこの重役陣の入れかえが行われた。つまり、事実そういう勢力を持っておるのじゃないかということは、お話しの通りであると思いますが、私どもは、しかし重役陣の一新ということは、そういう勢力に基いて不当な入れかえが行われていると考えるべきではなくて、入れかえないと、いろいろな観点から会社が成り立っていかないんだ。そこで、株主権あるいは債権保全という観点から経営陣の入れかえが行われたものであるという見方もあり得るんだということを申し上げたわけでございます。
  207. 竹内俊吉

    ○竹内委員 そこは、どうも水かけ論になるようですから、多くを申し上げませんが、原因は争議にあった。その争議は、旧経営者がおったんじゃおさまらないんだ、こういう見解を銀行側がとった、その通りであります。その通りとったところに私は問題があろうと思う。近江絹糸は、二十何年かの営業のうちに、たった一度のストライキが起きて、そのストライキがたった一度起きたために、ストライキの性質にもよるが、そういう判定を大株主であり債権者である銀行がとるということ自体が、きわめて産業に対して同情のないやり方であると思うのです。一歩譲って、しからばそういうことが各地に行われた場合に、日本の産業がうまくいくのか。多年の経験と苦労とを重ねてきておった産業人を、そういう理由で追い出して、それに銀行屋がとってかわって経営しても、私は日本の産業のためによくないと思う。たとえば近江絹糸がそうなった場合に、事業の成績が上りましたかどうか、そのデータは、おそらく大蔵省にあると思うのですが、どうなっているのですか。
  208. 東條猛猪

    ○東條政府委員 特にあえて反対のことを申し上げるようで恐縮でございますが、私どもは、争議行為の問題につきましては、銀行がこう言った、あるいはこうだという判断もさることながら、当時の中労委のいわゆる調停に当りました報告、ないしはその当時の記録というようなものが、いわば客観的な材料といたしまして、判断の材料になるのではなかろうか、こういうふうに考えております。それで、あるいは竹内先生の仰せのように、お前の解釈はどうも銀行側に近い解釈だ、こういう御非難もあると思いますけれども、私どもといたしましては、客観的なデータがありますれば、できるだけそういうものをよく取り調べておるということだけは、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。  それから、近江絹糸はしからば伸びたか、その後の業務の状況はどうかということでありますが、この数字も、とにかく好転を示しておるということは御承知の通りであります。こまかい数字は省略いたしますが、ここに公表数字を申し上げますると、二十九年の十月に終りましたときは、ストの関係もありまして、三億をこえるような赤字であった、それが逐次よくなって参りまして、最近では一億四千万ぐらい上っている。純損で申しますれば、二十九年の十月期におきましては七億の赤字、それが最近では六億四千四百万、売り上げとか収支がよくなっております。しかしこの数字自体に対しましても、いろいろな批判があるわけです。専門家に言わせれば、こういう状況なんでいいんだ、専門家でない銀行屋が経営をやっているんだから、この程度の黒字でとどまったんだ。元の経営者がやったらもっと業績が上ったんだという御批判をせられる向きもございます。そこで、この数字も見方の問題ではありまするが、角度はいろいろあるにいたしましても、業況は順調に上っているということは申せると思います。
  209. 竹内俊吉

    ○竹内委員 最近の経済雑誌、ダイヤモンドは、日本の経済雑誌としては相当に権威があると思いますが、近江絹糸は真に立ち直ったかという記事を見てみますと、今局長がおっしゃったように、収益は確かに上っておりますが、それは、要するに製絹の値上りから来たのであって、事業そのものの内容は必ずしもよくない、何かちょっとした経済の波が来ても、急に低下するような懸念が多分にあるという総評的な結論を先に述べておって、あながち事業そのものが発展してそういう数字が上っているのだとは思えないという批判を、あらゆる角度から分析して、ここにあげておるわけであります。しかしながら一方百歩譲って、そういうふうに上ったとしても、成績が上ったならば上ったで、銀行は企業を経営しないで、立ち直ったならば、近江絹糸に限らず、そういう場合には、そういう事態を解くといいますか、元の姿へ返すのが現在の銀行の社会的任務じゃないかと思うのであります。いつまでもこういう状態で、しかも最近の、私もデータを持っておりますが、銀行から各事業会社へ入っている数は、この二、三年来おびただしいものがあります。会社には役人から天下りしたのが、近ごろは銀行から産業会社へ天下りしている。これは日本の産業の傾向としては、もうある限度に来ておるのであって、憂うべきことだと私は考えておりますが、その点近江絹糸は、非常に大きい代表的なケースだと思いますので、今申し上げた一般論として、銀行が銀行管理と称するものでやった場合、その相手方が立ち直った場合、経営にいつまでも居すわるのはよくないという考え方をわれわれは持っているのでありますが、大蔵省はどう考えていますか。
  210. 東條猛猪

    ○東條政府委員 近江絹糸の場合、前社長の立場をどういうふうに見るか、もし復帰してきた場合にどうかというようないろいろの見方もございますので、特定の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、もう少し私どもの方も、公正取引委員会の事実関係の調査の進渉状況と相待ちまして、検討を続けるべきものは続けて参りたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。一般論といたしまして、金融機関からあまり産業方面の経営陣に人を送ることはよろしくない。またかりに債権管理のためにやむを得ず行った場合、そういう原因が消滅した場合には、元の経営者の手に戻すべきだということにつきましては、一般論といたしましてはお説の通りだと思います。やはり金融機関というものの保つべき限界があると思っております。
  211. 竹内俊吉

    ○竹内委員 時間もだいぶたちましたので、最後にいま一点伺ってやめたいと思います。それは、去年あたりから、今申し述べました近江絹糸と三菱銀行のようなこの種の事例として新聞に報道され、あるいは両者間で問題が起きておりますものはたくさんあります。おもなるものだけを拾ってみても、千葉銀行と阿寒硫黄との問題、昭和製鋼と横浜興信銀行との問題、興銀と日本冶金との問題、勧銀と新潟鉄工との問題、又一商事と三菱銀行との問題、東京麻糸紡績と三菱銀行との問題、最近では近畿紡績と三菱銀行を背景とする勢力との間にも問題が起きているようであります。こういうふうにたくさんこういう事例が起きておりますことは、もちろんこれらの事例のことごとくが、銀行の方に一方的な無理があったとは申し上げるわけではありませんが、こういういわゆる金融資本の産業支配の動向が顕著になったという証拠にはなると考えるわけであります。これはおもなるものであって、地方へいきますと、これに類似した小さい型のものがたくさんあるわけです。こういう情勢に対して、今大蔵省は協調融資のシンジケートの結成を要望していることとからみ合せてみて、こういう金融資本の企業支配の傾向に対して、さらにもっと強い警告を発すると申しますか、対策をとる考えがないかどうか、その点についてお伺いいたします。
  212. 東條猛猪

    ○東條政府委員 御指摘のような事例がありますことは、内容のいかんは別として、これは遺憾なことであると存じます。私どもも大いに努めなければならない点でございます。具体的な事例でございますので、抽象的な申し上げ方でごかんべんをいただきたいのでありまするが、ただいまおあげになりました事案の中でも、公正取引委員会の調査と並行いたしまして、審決等の結果を待つことなく、銀行側に対しまして、その行き過ぎについて反省を求め、措置の是正を求めておるという事例もあることはあるわけであります。冒頭にもお尋ねがございましたように、もし、今後新協調融資的な方向に出るということになりますと、その点は、先ほどもお言葉がございましたように、私どもとしても注意をいたさなければならぬ点であると思いますので、表面的な警告、かれこれのことは今考えておりませんが、この実行におきましてよく注意をいたしたいと思います。
  213. 平岡忠次郎

    ○平岡委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる五日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時十一分散会